○
国務大臣(宮澤
胤勇君)
昭和三十二
年度運輸省
予算について御
説明申し上ります。
まず、
歳入予算でありますが、
昭和三十二
年度運輸省主管
歳入予算総額は、十三億三千二十六万四千円でありまして、前
年度予算額六億三千七百八十六万二千円に比較いたしますと、六億九千二百四十万二千円の
増加となっております。このなおも理由は、三十二
年度におきましては、
日本国有鉄道に対する
政府貸付金の一部償還を見込み、六億五千二百三十六万三千円を
計上したことによるのであります。
次に、
歳出予算について御
説明いたします、三十二
年度の運輸省
所管一般会計歳出予算総額は、二百五十三億三千六百二十一万二千円でありまして、これを前
年度予算額二百四十四億四千百五十四万五千円に比較いたしますと、八億九千四百六十六万七千円の
増加となっております。この他、他省
所管予算として
計上されておりますもので、当省に
関係あるものといたしまして、
北海道港湾
事業費
北海道空港
整備事業費等三十億二千五百六十三万九千円がございます。
以下
歳出予算のおもな点につき、御
説明申し上げたいと存じます。
まず、国際収支の改善を目的とした
施策に関連した
経費でございますが、第一に、国際観光
事業の振興に必要な
経費として、一億五千万円を
計上しております。これは前
年度予算額に比べ、七千万円の
増額となっておりますが、海外からの観光客は年々
増加の傾向にある現状より見まして、さらにこの誘致を推進し、これによる外貨の増収をはかることがきわめて必要と
考えられますので、三十二
年度においては、財団法人国際観光協会に対する
補助金を大幅に
増額するとともに、観光
事業振興に必要な諸調査を
実施し、もってわが国国際観光
事業の飛躍的進展をはかろうとするものであります。
第二は、国際航空
事業に対する助成措置でありますが、これに要する
経費といたしましては、大蔵省
所管、
産業投資特別会計中に、前
年度と同額の十億円が
計上されております。国際航空
事業の振興については、各国とも積極的助成策をとっているのにかんがみ、
日本航空株式会社に対し、
昭和二十八
年度以来四カ年にわたって、四十億円の
政府出資をなしてきたのでございますが、さらに健全な
発展をはかるため、三十二
年度においても、十億円の
政府出資をいたしたいと
考えているのでございます。
なお、
日本航空株式会社に対する
補助金は、同社の営業状態の改善にかんがみ、三十二
年度は、これを打ち切る方針でございますが、同社に対する
融資の円滑化をはかるため、社債の
政府保証は、三十二
年度も行いたいと存じます。
第三に、船舶車両等の輸出振興に必要な
経費でありますが、これは、船舶、舶用機関、車両及びこれらの部品等の輸出の増進をはかるため、
関係団体の行う海外市場の開拓、維持のための諸
施策に要する
経費の一部を、補助しようとするものでありまして、通産省
所管の貿易振興費の中に含まれて
計上されております。
以上は、国際収支の改善に関する
経費でございますが、これに関連いたしまして、外航船舶建造
融資利子補給につきまして、一言御
説明いたしたいと存じます。御
承知のように、目下の
ところ海運界は、好況に恵まれ、海運会社の経理
内容は好転いたしております。従って、第十三次
計画造船につきましては、利子補給を行わないこととするほか、第十二次船以前分の利子補給についても、円満に辞退していただくことといたしました。しかしながら、海運の国際競争力保持は、きわめて重要な問題でございますので、将来、もし海運界が不況に陥るような際にはまた利子補給を行うようにいたしたいと存じております。また、わが国の
経済規模の拡大に即応し、貿易の振興と国際収支の均衡をはかるためには、引き続き、積極的に外航船腹の拡充をはかることが必要と
考えられますので、
計画造船のための
日本開発銀行よりの
融資につきましては、これを
重点的に拡充し、百八十億円をこれに充てることとし、さらに同銀行の「その他」のワクより二十億円を加え、
合計二百億円の
資金をもって、約四十万トンの建造を遂行いたしたいと
考えております。
次に、
輸送力の
整備に関する
経費について申し上げますと、第四に、港湾の
整備に要する
経費として、運輸省
所管に八十六億三千五百九十六万五千円を
計上いたしておりますが、このほか、総理府
所管に
北海道港湾
事業費十一億六千六百五十万円が
計上されており、また、
労働省所管の
特別失業対策事業費補助のうち、四億五千七百万円が港湾
事業に充てられることとされております。従いまして、三十二
年度の港湾
整備のための
経費は、
総額百二億五千九百四十六万五千円となり、前
年度に比べ約二十七億円の
増加となっております。港湾
整備事業の
内容といたしまては、外国貿易港、工業原材料の輸送、特に石油輸入に
関係のある港湾、地方中小港湾、離島、僻地の港湾及び避難港の
整備、
海岸保全事業、港湾
災害復旧事業等がおもなものでございます。
第五に、離島航路
整備補助に必要な
経費として五千五十四万三千円を
計上しておりますが、これは離島航路
整備法に基きまして、民生の安定と向上をはかるため、国が特に維持を必要と認める離島航路
事業に航路
補助金を交付するに要する
経費及び離島航路用船舶の建造または改造
資金の
融資に対し、利子補給を行うための
経費であります。なお、三十二
年度において締結する
新規の利子補給契約の限度額は二千万円といたしたいと
考えております。
第六に、地方鉄道軌道
整備補助に必要な
経費として、二千五十二万円を
計上いたしておりますが、これは地方鉄道軌道
整備法によりまして、天然資源の
開発等のため特に重要な新線及びその運輸が
継続されなければ、国民生活に著しい障害を生ずるおそれのある老朽線に対し、
補助金を交付するために必要な
経費であります。第七に、高速自動車道
整備計画樹立のための調査に要する
経費として五百万一千円を
計上いたしておりますが、高速自動車道の
建設は、多額の
経費を要するものであり、かつ陸上輸送体系の根本的革新をもたらすものでありまして、その
整備計画の樹立に当っては、十分な調査を行わなければならないと
考えられますので、三十二
年度においては、高速自動車道に関する
経済調査を、東京—神戸間について
実施しようとするものであります。
第八に、空港
整備事業に必要な
経費として、運輸省
所管に六億一千二万円を
計上いたしておりますが、このほか、総理府
所管に
北海道空港
整備事業費一億二百五十万四千円が
計上されております。従いまして空港
整備のための
経費は、
総額七億一千二百五十二万四千円となり、前
年度に比べ、約五億五千万円の
増加となっております。
三十二
年度の
事業といたしましては、東京国際空港に関しては、
昭和三十五
年度よりのジェット輸送機の就航に即応するため、一万フィート滑走路の新設
工事に着手することとし、ローカル空港に関しては、三十一
年度に着工した稚内、高松、大村、熊本、鹿児島の五空港の
整備をさらに進めるとともに、釧路、函館、広島、松山、高知の五空港を
新規に着工いたしたいと
考えております。
次に、交通安全確保と
災害防止に関する
経費について申し上げますと、第九に、自動車検査施設の
整備に要する
経費として、四千二十八万三千円を
計上いたしております。これは最近における自動車数の激増に対処するため、所要の地に車検場を新設するとともに、既設車検場における検査の合理化、能率化をはかるため、機械、器具等を充足
整備するに必要な
経費であります。
第十に、海上保安態勢の
整備に要する
経費として、七億四千八百四十五万三千円を
計上いたしておりますが、これは海難救助、海上犯罪の捜査の態勢を強化するため、巡視船艇、航空機及び諸施設等を
整備するとともに、海上航行の、安全と能率化をはかるため、水路業務、燈台業務を強化するに要する
経費でありまして、このうちおもなものは、巡視船艇の代替建造に要する濫費二億三千二百七十五万八千円、航空機の増強に要する
経費二千五百九十三万三千円、航路標識の
整備に要する濫費四億二千八百六十六万六千円等であります。
第十一に、気象業務の
整備に要する
経費といたしまして、三億六百十二万四千円を
計上いたしておりますが、これは、気象観測、通信、予報の態勢を独化し、もってその的確化と迅速化をはかり、
災害の防止、
産業の
発展、国民副利の増進に資するため、施設の
整備等をはかりますのに必要な
経費でありまして、そのおもな
内容は、無線模写放送の
実施に要する
経費五千三百三二八万三千円、水理水害気象業務の
整備に要する
経費一億二千二百八十五万七千円、測候所新設に要する
経費一千四十七万円等であります。
なお、このほか、数値予報の
実施に必要な電子計算機の借入契約をあらかじめ締結するため、国庫債務負担行為一億円を
計上いたしております。次に、第十二といたしまして、科学技術の振興に要する
経費一億四千四百六十五万八千円を
計上しておりますが、これは運輸
関係の科学技術の向上、振興をはかるために必要な
経費でありまして、運輸技術研究所及び気象研究所の
整備に要する
経費、原子力の利用に必要な
経費並びに民間の科学研究を
促進、奨励するための科学研究
補助金守がその
内容であります。
第十三に、船員教育の充実に必要な
経費として一億五千八百三十四万一千円を
計上いたしておりますが、これは船員教育の重要性にかんがみ、その充実をはからんとするものでありまして、その
内容は、海技専門学院、航海訓練所及び海員学校における施設の
整備等をはかるに要する
経費並びに小型船舶職員の養成に対する
補助金であります。
以上が、
昭和三十二
年度の運輸省
予算の
概要でございますが、何とぞ十分に御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
次に、
昭和三十二
年度日本国有鉄道予算の
概要について御
説明申し上げます。
来
年度の
予算編成に当りまして、まず収入につきましては、今
年度の
経済情勢がそのまま来
年度も持続するものと想定いたしまして相当の増収を
予定し、一方支出におきましては、避けられない
経費の
増加もありますが、極力経営の合理化に努めることといたしております。最近の国内
経済の活況を反映いたしまして、国鉄に対する輸送需要は急激に
増加し、これに対応いたします
輸送力はその限界に達しており、一方累積する老朽施設の取りかえを行い、輸送の安全を期しますことは、これまた遷延を許さないまでになっております、しかしながら、これらに要します
資金は莫大なものがありまして、とうてい従来の運賃率ではまかないきれないものでありますので、極力外部
資金を調達いたしますほかに、最小限度の運賃改訂を行うことによりまして収支の均衡丘はることにいたしたわけであります。
次に、収入、支出
予算について、損益、資本、
工事の各勘定別に御
説明申
まず損益勘定の収入について申し上げますと、旅客輸送人員は対前
年度増一一%四十五億六百万人、人キロでは一千三十九億一千万人キロといたし、旅客収入一千七百三十六億円を見込み、また貨物輸送トン数は対前
年度増一〇、七%で一億八千七百万トンといたし、貨物収入一千五百五十七億円を見込んでおります、これら旅客、貨物輸送に要します列車キロは四億二千万キロで対前
年度一一%の
増加となっております。以上の旅客、貨物収入のほか、雑収入等を合せまして三千三百八十二億円の収入を見込んでおります。
次に、経営費について見ますと、人件費につきましては、
昭和三十二
年度の昇給を見込んで算出いたしておりますが、このほかに期末手当一、五カ月分、奨励手当半カ月分、休職者給与等を見込んでおりまして給与の額は一千百八億円となっております。
また物件費
関係につきましては、動力費の大宗であります石炭費として、二百九十五億円、修繕費として四百九十二億円、その他、業務費等あわせまして経営費
総額二千三百八十七億円であります。以上の諸
経費のほかに、資本勘定への繰り入れ八百二十八億円、利子百三十七億円、予備費三十億円をあわせまして損益勘定の支出
合計は三千三百八十二億円となっております。
次に、資本勘定について申し上げますし先ほど申し上げました損益勘定より受け入れます八百二十八億円、
資金運用部よりの借入金八十億円、鉄道債券の発行による二百三十五億円、不用資産等売却による四億円、
合計一千百四十七億円を収入として
計上いたし、このうち一千六十九億円を
工事勘定に繰り入れることにしております。このほか借入金等償還七十五億円は、
資金運用部よりの借入金の年賦償還額並びに既発行の鉄道債券の一部償還金及び
政府会計よりの借入金の一部償還金であり、出資としての三億円は、帝都高速度交通営団の増資に伴うものであります。
次に、
工事勘定について申し上げます、
輸送力増強を主たる目的とする国鉄五カ年
計画の初
年度といたしまして、
総額において前年比四百八十五億円の
増加となっております。
まず新線
建設費についてでありますが、前年に引き続き、さらに十五億円を
増額し七十億円を
計上いたしております。
電化設備費につきましては、現在
施行中の山陽本線、東北線、北陸線の電化
工事を引き続いて行うため、六十一億八千万円を
計上いたしておりますほか、これに伴う電気機関車八十三両、電車九十七両、その他の
工事費等
合計百二十三億円を
計上しております。
また、通勤輸送の緩和対策として東京付近五十三億円、大阪付近十三億円、電車増備二百八十三両、四十四億円
合計百十一億円を
計上しております。以上のほか幹線輸送強化対策、車両増備諸施設等の取かえ
工事、総掛り費等を含めまして支出の
合計は一千六十九億円となっております。これらに要します
財源としましては、さきに資本勘定の御
説明の際申し上げました
通り、資本勘定より一千六十九億円を受け入れてこれに充てることにいたしております。
なお、以上の諸
計画の
実施に要しまでありまして給与の
総額といたしましては、休職者給与をも含めまして
合計一千三百二十四億円を
計上いたしております。
以上御
説明申し上げました
日本国有鉄道の
予算は、今後の
経済界の動向にもよりますが、これに盛られました
予定収入を上げ、
工事計画を完遂するには、格段の努力が必要であらうと
考えられますので、公共企業体としていま一そうの経営合理化をはかり、もって
日本経済の
発展に資するよう指導監督をいたして参りたい所存でございます。
以上
昭和三十二年
日本国有鉄道予算の大綱につきまして御
説明いたしましたが、何とぞ御審議の上御承認あらんことをお願いいたします。