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1957-05-10 第26回国会 参議院 予算委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十日(金曜日)    午後四時二十七分開会   —————————————   委員の異動 本日委員松村秀逸君辞任につき、その 補欠として石坂豊一君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            中田 吉雄君            吉田 法晴君    委員            石坂 豊一君            大川 光三君            木村篤太郎君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            柴田  栄君            関根 久藏君            土田國太郎君            苫米地英俊君            仲原 善一君            成田 一郎君            武藤 常介君            内村 清次君            岡田 宗司君            北村  暢君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            鈴木  強君            中村 正雄君            羽生 三七君            平林  剛君            森中 守義君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    農 林 大 臣 井出一太郎君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    労 働 大 臣 松浦周太郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局第三部長 西村健次郎君    大蔵大臣官房長 石原 周夫君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       村上  一君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    運輸省鉄道監督    局長      權田 良彦君    郵政省経理局長 八藤 東禧君    労働省労政局長 中西  實君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道総    裁       十河 信二君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまより委員会を開きます。  昨日の委員会運営につきまして、時間もおそかったため、政府との連絡不十分で、審議に至らなかったことは、まことに遺憾でございました。今後十分注意いたします。何とぞ御了承を願います。   —————————————
  3. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) まず委員変更について申し上げます。  五月八日、武藤常介君、野本品吉君、石坂豊一君及び成田一郎君が辞任され、その補欠として、田中茂穂君、松村秀逸君、大川光三君及び松岡平市君がそれぞれ指名されました。  五月九日、松岡平市君及び田中茂穂君が辞任され、その補欠として成田一郎君及び武藤常介君が指名されました。  本日、松村秀逸君が辞任され、その補欠として石坂豊一君が指名されました。   —————————————
  4. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより昭和三十二年度特別会計予算補正(特第2号)及び昭和三十二年度政府関係機関予算補正(機第1号)を一括議題といたします。質疑を続行いたします。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は春闘の問題についてお伺いをいたすのでございますが、この処分問題について国鉄総裁出席を要求しておいたのでございますが、お見えになっておらないようでございますが、これはどういうふうになっているのでございましょうか。
  6. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 今参りました。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 一昨日春闘処分発表をされまして、特に国鉄関係者におきましては大量の解雇が出たのでございます。これは非常に大きな問題であると私は思う。単にこれは過去に起りましたことに対する処分ということでおやりになったようでございますけれども、これが影響というものは重大な問題があるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)今日これが大きな問題となっておりますだけでなくて、将来の日本の労働問題につきましても大きな暗影を投げる問題でございます。従いまして、この問題は、重大な政治問題であろうと思うのであります。おそらくこの処分問題については、政府もまた相当大きな問題として、単に事務上の問題としてお考えになっておったのではないと思うのであります。従いまして、この問題については、私は主として政治的な問題としてお伺いをしたいと思うのであります。この処分が起ります原因については、すでにもういろいろ論議されておりますので私は申し上げませんが、去る三月国鉄中心といたしまして、いわゆる実力闘争が起りました。この実力闘争が起りましたときに、三月の中旬に鈴木岸会談が行われまして、この論争の解決について両者話し合いができたのであります。そして政府の方におきましては、裁定を尊重するということを総理大臣の口を通じて言われ、さらにまた処分の問題についても慎重に考慮をすると言われておるのであります。その際に岸総理処分について慎重に考慮すると言われたことは——先ほどの本会議答弁を聞いておりますというと、いやそれは解雇しないということを言ったのじゃないのだというようなことを言われておったのでございますが、私はこれはあとからの三百代言的な言いのがれにすぎないと思うのでございます。とにかくあのときには、問題は解決した、従いまして、これは両者政治的会談においてそういうふうな話し合いができたのでありますから、もちろん政府は将来のことも考え、そしてこの処分について慎重にやるということは、当然そこには政治的にひどい処分はしないということが暗に含まれておると、これはだれでも解釈するようになると思うのであります。当時もそういう解釈が行われておるのであります。その当時における岸総理が、この処分については慎重に考慮するということについてどういうお考えになっておったか。これをまず第一にお伺いしたいのであります。
  8. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の春闘のうち、特に国鉄中心とした公企業体のいわゆる実力行使の問題に関しましては、私は一面政府としては仲裁裁定を申請して、その裁定が下れば、これを誠意をもってその実現をいたすという意味においてこれを尊重する、と同時にこれらの公企業体の性質が、一般公共の利害にもきわめて関係するところが多い、国民日常生活にも及ぼす影響が大きいので、従ってこれらの実力行使において法規違反しておる者に対しては、将来に正常なる労使関係を作るために、やはり責任を明らかにしてその処分をしなければならぬという考えのもとに初めから臨んで参ったのでありまして、十五日に鈴木委員長と会見をしまして私はこの考えを述べたのであります。これに対して鈴木委員長及び淺沼書記長等の何は、第一点についてはぜひ、ただ単に尊重するということ、表面的にはそうしか言えないだろうけれども、必ずこれを、内容を完全実施してもらいたいというお話がございました。私は仲裁裁定が下ったらば責任をもって忠実にその内容を実現すると、完全に実現するということについて努力することをお誓いしてよろしいと、しかし申し上げる言葉としては、誠意をもって尊重するという言葉にしておいてもらいたいという話を申し上げた。同時に今度はその場合に、処分問題については強く処分をしないようにしてもらいたいという強い要望がございました。ところがこの問題については、先ほど申しましたような、政府は最切からすでに幾たびかそういう意味事柄を公表もいたしておりますし、またその方針が動かないのだということでございまして、私が鈴木委員長と会います前に、いろいろ下交渉がありました際にも、われわれの方から強く要望するから、それは何の方で少くとも聞きおいてもらいたいというお話で、ございました。私はその強い要望に対しましては、実は何とも御返事申し上げられない、しかしあの事態において政治的にこれを収拾するためには、少くとも慎重に考慮するという意味くらいのことを外にわれわれとしては発表をしなければ、この事態を収拾することができないから、そのくらい外に発表することは認めてもらいたいという話でございました。しかし私はその際にも趣旨としては、私は先ほど申し上げますように、政策として一貫した方針でおるのでありまして、まず事実に反して特にわれわれが不当に処分するとかいうことはしないけれども、しかし処分を全然しないとかあるいは処分については手かげんをするというようなことでは、これは私は公企業体本質政府としてそういう態度はとれないということを申し上げたので、従いまして昨日淺沼書記長外数人の方が今度の処分発表について、社会党側の抗議を私の方へ申し入れられたときに、私は当時の事情を詳細に申して、それでその点についてはいろいろ私の申し上げたことについて決してそれを否認をされない、そういう事情もあったけれども、とにかく外に現われておることが慎重に考慮するということになっておる以上は、処分はしないという意味一般考えるのが当然じゃないかというようなお話でございました。従って私は社会党鈴木委員長と会い、両方ともあの当時の事情からいって誠意をもってあの事態を収拾するという見地に立って、このお話し合いをし、またそのときに私が申したことに対して今日不信の呼ばわりをされることは、私としてははなはだ迷惑でありまして私自身があくまでも鈴木委員長と党首としてあの場合の事態を収拾するためにお話申し上げたことは誠実に実行しておる考えでございます。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 あの十六日のですね。両者会談によりまして、十六日以降に予定されております実力行使が避けられたのですが、従いまして両者会談はあくまでも政治的な解決であり、またその政治的解決として政府側から見れば、その後に起した実力行使を避けることになり、そういうことになって参りますれば、あそこに両者の間に行われましたこの内容の第一の点はもっともでありますけれども、第二の点につきましても、だれが見ましても、常識的にそれによって今後また問題を大きく紛糾させる種を蒔くということは考えられない。当時においては恐らく岸首相はこの処分問題について、今日と考え方が変っておったんだ、違うんだ、こう私ども考えざるを得ない。ただおそらく二十三日に行われましたあの実力行使以降において、世論あるいはまた政府部内あるいは与党におけるいろいろな変更によって、岸総理の心境が変って、当時の慎重なる考慮が二カ月にわたる慎重な考慮の結果大量の解雇を出すというようなことに変ったのではないかと思うのであります。その点についてどうお考えになっておるのか、もう一度お伺いしたいのであります。
  10. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 根本の考え方につきましては、先ほど申し上げましたように、私は終始一貫しておるつもりでございます。ただ具体的にいかなる処分をどういうふうにするかということにつきましては、これは企業当局においてその後慎重に検討をし、そうしてその事業の本質にかえりみまして、公労法に違反、その他の法規違反する者に対して処分するという、その具体的に検討した結果がああいうふうな数字を生んでおることであると私は信じておりまして、別に当時は処分しないつもりであったのだが、その後何らかの意味において急に処分するように私の考えが変ったわけではございません。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかしこの二十三日に起りました事態というものは、相当その後のいろいろな点から帰納してみますというと、政府考え方を変えておるようだ。おそらく岸総理大臣も十六日と二十三日以降においては処分問題についての考え方が変ったんではないかと思うのであります。これは確かに私どもはそうと考えられるのでありますが、もしですね、二十三日の事態が起らなかったならば、一体総理は今日二十八名というような、あるいはまたその他のいろいろな処分者が出ておりますが、そういうふうな大量の処分者を出すつもりであったかどうか、二十三日のことがあったので、それがああいうふうに大量になったのだと私は思うのですが、その点はどういうふうにお考えになるか。もし二十三日の事態がなかったならば、どうであったかということをお伺いしたい。
  12. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は今申し上げましたように、具体的のこの事実並びに処分内容等につきましては、これは企業当局におきまして今申したように違反の事実、当時の実力行使の実情というものを詳細に調べあげた結果として出てきた数字であり、処分内容であると私は確信いたしております。従いまして私自身が初めからどれだけの者を処分すべきだとか、あるいはどのくらいの数がこれに該当するのだというようなことは、最初から私の念頭にはなかったんだ。従いまして二十三日の事件があったから急に数がふえたとか何とかいうことではございませんので、その点はただ私としては先ほど申しましたような方針によって、公共企業体におきまして、実力行使という名のもとに法規違反し、国鉄に迷惑をかけるというような事態を生じていることは非常に遺憾であるから、その事実を十分に調査して将来にそういうことを起さしめないように、このやはり責任を明らかにしてもらいたいということは申しておりますけれども、数とか範囲とか内容とかいうものは一切企業当局において事実を調べた結果として出てきたものである。こういう事実でございますから、別に二十三日の事件があったからどうだ、なかったからどうだということにおいて、私は今申したような具体的な考えを少しも変えてはおらぬわけであります。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 数の問題は別として、二十三日の事態がありましたので、これは容易ならない、従って二十三日の事態について一そうこれは厳重に処罰をして、将来のために備えなければならぬというふうにお考えになったかどうか。二十三日の実態はですね、十六日以前の事態よりももっと重く処分すべきであるという方針をお考えになったかどうか、その点をお伺いしたい。
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 二十三日の事態に対しては、当時の国民世論は、非常に強くこれに対しての気持が国民世論として現われたことは事実であります。しかし私自身としては、今申しましたように最初から今回の春闘に対する態度として方針をきめまして、その方針に基いて、企業体をして事実を調べさせておるのでありまして、それから先は企業体当局におきまして私は責任を持って事実を調査して結果が出たことで、別に二十三日の事件があったがゆえに、特に私として強く罰せなければいかぬというふうなことを考えたわけではございません。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 この二十三日の問題がやはり私は相当政府がかような大量処分を出すことについて考え直した点があるのじゃないかというふうに思うのは、これは先ほどの松浦労働大臣の御答弁にもあったように、松浦労働大臣が旅先で言われましたことをお取り消しになった。そして二十三日の問題もあわせて考える、こういうふうなお考え方であったようでありますが、松浦労働大臣はもちろん政府労働行政担当者として、具体的な問題を一々処理しているわけではないでしょうけれども政府労働行政方針はあなたが責任者としておきめになっているだろうと思います。それは二十三日以前と二十三日以後とお変りになっておりますか。二十三日以後これはもっと厳重に処分しなければならぬのだというお考えになったのかどうか、その点まずお聞きしたい。
  16. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 名古屋発言でいろいろ誤解がありまして恐縮に思っておりますが、新聞記者の方の問いが二十三日はどうするかということでありましたから、それは十一日、十二日もともにやるのだということを言ったのが誤まり伝えられておるのであります。私は十一日、十二日、二十三日も総合して、やっぱり公共企業体当局は総合してお考えになったものであるとかように思っております。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、二十三日のものを総合して考えておると言われるが、おそらく当事者である国鉄の方もあるいはそうお考えになったのかどうか私は知りませんが、国鉄側においては二十三日の事件があったために、この処分についてかたい決意をし、そうして重く広く罰するというふうにお考えになったのかどうか。これは一つ国鉄総裁からお伺いしたい。
  18. 十河信二

    説明員十河信二君) ただいま松浦労働大臣からお話がありました通り、今度の処分春季闘争全体を総合した結果、事態をつぶさに調査いたしまして、それぞれ公企労法に従って処分を決定した次第でございます。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますというと、これは前の十一、十二、並びに二十三日を含んでいる、こういうことでありますが、二十三日の問題については、これはもう明らかに起らないでいいものが起ったので、どうして起らないで済むものが起ったかというならば、すでに支払うべき業績手当をこれを大蔵省の方から支払いを差しとめたと同時に、月給支払いもとまったということから、多大の不安を起して二十三日の事態が起った。これは政府側においてもすでに認めているのです。もう明らかに政府側においてこれは責任を負うべきものである。しかるにもかかわりませず、政府側においては何にも責任を負わないでもって、そうしてこの処分については総合してと言うから、十一日、十二日以上のものを加えておることは明瞭なんです。そういたしますというと、政府は何ら責任を負わないということになる。また十一日、十二日の問題にいたしましても、前にさかのぼって考えますれば、これは政府仲裁裁定について完全な実施をしない。そればかりでない。ときにはほったらかしてしまったというようなことから、公務員の間に非常に政府に対する何というか、不信の念、そういうようなことがあの事態を引き起さしめたものなんです。従いまして、この問題の原因ということを考えないで、結果だけを考えて処置をするということであっては、これは事態解決にはならない。また将来よき労働慣行を確立しようということにはならないのであります。私は岸総理大臣政治家であり、この争議の問題を、大きな国民全体に影響を及ぼすような争議の問題を、政治的に解決しようとするならば、そこまで考えて、これはこの原因というものも十分にくんだ政治的判断をすべきであって、単に法律の違反だけでもってこれを大きく処罰しては、将来に向ってのよき労働慣行を立てる上の妨げになる。また政府公共企業体労働者との間の不信を高め、不信をさらに増すようなことをして、どうして一体解決ができるか、将来に向ってよき労働慣行が立てられるであろうか、岸総理大臣は、今度の処分をいたしました結果、一体これによって将来この種の労働争議は円満に解決できる道が開ける、あるいはよき労働慣行が立てられる、こういうふうにお考えになっておるかどうか。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 申すまでもなく、よき労働慣行というのは、労使とも法規を守り、民主主義に徹して両方で話し合っていくということが基本でなければならぬと思います。従いまして私は政府の立場において、法規上なすべきことに対しては正しくこれを実現すると同時に、過去におきまして、あるいは仲裁裁定等が完全に実施されてないというような事態もあったようでありますが、私はすべてそれはいかぬ、全部政府としてやるべき事柄はどんな困難があっても、その困難をあらゆる方法で克服してそしてこれを完全に実施する、しかし同時に将来に正しい労働慣行を作るためには、労使双方とも法規を厳守して、そうして正しい基盤に立って話し合いをするということの慣行を作らなければ、これは私は真の正しい、望ましい労働慣行はできないと、かように考えて、政府としてなすべきことは完全にするとともに、また労使双方におきまして反省を求め、責任を明らかにすべきことについてはあくまでもその責任を明らかにして、将来にこれによってのみ正しい労使関係はできると、かように考えます。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま岸総理大臣は、過去において仲裁裁定が完全に実施されなかったという点をお認めになっておる。二十三日の問題について政府側のとりました態度は、一体あれは正しかったとお考えになるかどうか、これをお伺いしたい。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 二十三日の実は事態は、私としては二十三日の午後になって、そういう事態にあることを聞きました。そうして事を処理するために、二十三日の午後にその業績手当の支給を行う、そのために少し時間がおくれたという事実はございますけれども、二十三日中に私が知りましてからは、さっそくこれを実行せしめることに努めて、二十三日中に間に合わしたわけであります。ただその以前にそういう……二十三日にそうなっておるということは私は存じなかったし、政府としては正式に知らなかった事実でございます。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 政府は知らなかったというけれども政府機関の一部である大蔵省から払いの差しとめが出たのならば、これは政府責任じゃないですか、はりきりしているじゃないですか。その点はいかがですか、これは政府責任ではないのですか。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の当時聞きましたことは、別に政府が差しとめたという事実じゃなくして、おくれておるという事実は検討の上においておくれておるということで、私は、それはいかぬからどうしても二十三日中に支払いをするようにいたしまして、時間がおくれたというだけの事実であるというのが、事実通りであります。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはまあそういうふうにおっしゃるけれども、すでに団交によりまして払う日もきまり、そうしてちゃんと払う準備もできておる、ひとりでにおくれたということはないのであります。月給袋は自分でもって金庫の中に逃げ込んだはずはないのであります。これは何ものかが差しとめたから支払いがおくれたのです。そうじゃないのですか。(「弁解の余地なし」と呼ぶ者あり)この点はこれは大蔵大臣の方はこれは大蔵省責任者でありますから、この点は御存じだろうと思います。ただ自然におくれたのじゃないでしょう。あなたの方のどこかの局なり何なりからちょっと待ってくれと言ったのでおくれたのじゃないですか。その点大蔵大臣からお答え願いたいと思います。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 業績手当を出しますことにつきまして、大蔵省が差しとめた事実はございません。ただいかなることによってやるかということにつきまして研究をし、協議をしたことはございます。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし研究をし協議をするために、一応その支払いを待てということになったのじゃないのですか。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 支払いを待てという指令はいたしておりません。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは一つ国鉄総裁にお伺いいたしますが、当時業績手当支払いはすでに国鉄では準備をされておった。しかるにそれがおくれたというのは、自動的におくれたのではないと思う。もうすでにその当時はその事態は明らかになっておるのでありますが、今の大蔵大臣のような詭弁はどうも私どもに受け取れないのです。そのときの事情について国鉄総裁から承わりたいと思います。
  30. 十河信二

    説明員十河信二君) 私のところでは、業績手当政府承認を経てでなければ払いません。そこで政府承認を求めたのであります。その手続をしておるという政府の方の——運輸省のお話でありましたから、私の方はあの二十三日に払えるものと、こう考えまして、準備をいたしたのであります。ところがその手続きがまだ済んでいない——済んだという通知がこないために払えなかったということになっておるのであります。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは宮澤運輸大臣にお尋ねいたします。ただいまのお話ですと、あなたの方に国鉄の方からお話があり、運輸省の方から大蔵省の方にいろいろお話をして、そうして二十三日に払うはずになっていたのだ、これがなぜおくれたのですか。これは大蔵省側の方で待てといったために私どもはおくれたということを聞き、またいろいろなところから、そういうふうなことも立証されるのでありますが、その点は一つ宮澤運輸大臣からはっきりと御答弁願いたい。
  32. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 業績手当を出すことは、十六日のあの臨時実力行使を阻止する話のときにも、業績手当は出すことはきめてあります。私は国鉄当局者がそのような話し合いであの臨時ストをやめるということを承認しております。ただこれが二十三日に支払うということは、十六日の後十八日ごろ私は承知いたしました。従って二十三日にそれを支払うについては、いかなる資金源からこれを出すかということを事務当局をして大蔵当局話し合いをさしております。その話し合いが二十二日の晩になってまだ全部結了しないということを聞きましたから、私は自分が直接今度はその話し合いに出なければならぬと思って、その晩に出ました。その二十二日の晩においても、明日二十三日に払うという約束をしておるなら、払うことは私が引き受けるから払いなさい、ただ大蔵省との資金源についての話を私が聞けるのは朝になる。そこで朝、私は大蔵大臣と話をして、資金源に対する方針をきめました。きめたのですけれども、それは私九時か十時に払えると思いましたけれども、私は万一のことがあるといけないから、午後五時まで待て、午後五時になれば必ず払えるから、手続上の問題だから、午後五時まで待て、きょう払ってよろしいということは、その朝国鉄当局者にちゃんと指図をしております。従ってそれを払うから、結局午後五時まで待て、五時までに……給料の方は二十三日に払う、手当の方は五時になっても差しつかえない。払うということは、二十三日ということを国鉄当局が団交できめてあるというから、二十三日に必ず午後五時までに払うことははっきり資金源をきめてから、渡すから、それまで待て、午後五時までには必ず払わせることにする、こういうことでありまして、午後三時半になって、資金源も話がつきましたから、午後三時半になって払ってよろしいということで払ったのであります。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは事態が紛糾したからあわてて払ったにすぎないのです。それは大蔵省の方では研究するといって、実は払いをストップさしておった。命令は出さないけれども、この資金源の問題についてとやかく言って事実上払わせなかったのです。ところが、あの問題については、明らかに政府責任を負わなければならん。さらに前の問題についても、さきに総理大臣が言われましたように、政府側仲裁裁定を完全に実施しないことがあったのだということを言われておるのです。そうすると、今度のこの争議というものの原因は、明らかに政府側において仲裁裁定の完全実施をやらなかった。二十三日においては、まあ理屈はいろいろあるけれども、とにかく二十三日に払うべきものをとめた。こういうことなんです。これは今皆さんの言われることから明らかなんです。そういたしますと、自分のことは棚に上げて、片方だけ厳重に処分をして、大量の解雇を出すというがごときは、これで一体政治的解決ができますか。一体将来によき慣行が確立できるのですか。一体これによって政府労使の間を円満に運んでいくようなことをやり得るとお考えになるのですか。今日かようなことによって処分が行われるといたしますならば、政府公企業体労働者、あるいは政府と公務員との間において、不信の念が増すばかりだ。この不信の念が増して参りまして、どうして政府と公務員との間の関係がうまくいくでありましょうか。よき労働慣行などということは絶対にできない。しかもこの二十八人の大量解雇処分によって、すでに騒然としておるではありませんか。これらは、政府が単に法律によってこの解雇問題を事務処理をすれば足りるというがごとき、簡単な考え方からか、あるいはまたこの際に、労働組合に一つ目にものを見せてくれる、こういうことでおやりになろう、あるいはまた労働組合をつぶしてしまえというようなことでおやりになろうとしておるのではないかと疑われるのであります。そういうことでありますならば、これはよき労働慣行どころではない。いよいよ闘争は激化するだけであります。今日の労働組合は、もはやそれくらいのことで、政府によって押しつぶされるものではない。おそらくこれに対する反発は相当大きいでありましょう。そうして今後よき労働慣行どころではない。むしろますます紛糾するだけである。そうなって参りますれば、これはもう完全に岸内閣の労働政策というものは失敗であると断ぜざるを得ないのであります。私はかような、政府自体にかかる事態を招いた責任がありながら、その方については、てんとして責任を負うことなく、一方だけ処断するがごときことは、断じて民主主義の世において許されるべきことではないと思う。これは政府側におきましては、すみやかにこの解雇処分を撤回すべきであると思うのでありますが、総理大臣の御見解を承わりたい。
  34. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来申し上げました通り、私は本件の処理につきましては、政府としては責任を持って仲裁裁定を尊重して、これを実現するということを、鈴木委員長にもお約束を申し上げ、そうしてこれを公けにいたして参っておりますと同時に、本件に関して、今申しましたように公労、法違反等の事実ありとするならば、これに対しては、われわれは処分をして、そうして将来そういう事態を生じないように、そうしてこれ自体が、この公共企業体の事業自体が、国民生活に非常な影響のある重大な仕事でございますから、国民がこれに対して信頼を持ち、これに対して世論が支持するというふうな労働慣行を作り上げることが望ましい、こういう意味におきまして、私としては、今、岡田委員お話でありますが、処分の案を撤回する意思は持っておりません。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 政府仲裁裁定を完全に行わなかったと、二十三日においては、大蔵省側の方から、まあ、命令は出なかったけれども、とにかく支払いの遅延の原因を作ったようなことをしておいて、そしてそれによって起りましたことについて、片方だけ罰するということは、これは私ども納得できない。片方の政府側の方における責任については一体どうお考えになっておるのか。これは全然責任なしとお考えになっておるのか。今度の事態における原因政府側の方には全然ない、労働組合側にのみそれがあるというふうにお考えになっておるのか。その辺を伺いたい。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど運輸大臣が当時の事情を所管大臣としてきわめて明瞭に申し上げております。私は政府として、特にこの場合において責任をとらなければならぬような責任はないと考えております。(「馬鹿野郎」と呼ぶ者あり)
  37. 内村清次

    ○内村清次君 関連して……。先ほど岡田君が最後に言いました、そればかりではないのです。あの二十三日の事件に対しましては、政府にこれは十分なる責任があると同時に、国鉄総裁はそれを認めておる。政府責任を認めて、そして団交の際に、今回の、抜き打ちストといわれておりますが、こういうような事態は、これは絶対処分者を出さないということを労組との間にちゃんと協定をしておるんじゃないですか。これは当局の非も認め、政府のすなわち干渉に対しましても認めて、政府責任ありと考え当局責任ありと考え処分者を出さないということを総裁自体が認めておる。総裁、そうでしょう。その点をはっきりして下さい。あなたの答弁の中にはっきりしておるわけです。その点をあなたは黙っていらっしゃる。しかも先ほどあなたの御答弁によりますると、今回は春闘全体に対して、国鉄法及び公労法というような法に照らして処分したとおっしゃっておる。その処分も、主文の内容については、いわゆる馘首をした人、停職以下の行政処分をした人について、はっきりその行為の点を明確にしなければならぬ。その点をしておりますか、その点は……。初めの方をはっきりして下さい。
  38. 十河信二

    説明員十河信二君) 最後に御質問になりました……(「最後ではない、初めだ」と呼ぶ者あり)処分の理由は、それぞれ各人に明らかにしております。団交におきましては、二十三日の事件だけでどうこうするということはしない、春闘全体を十分に考慮して処分すると、そういう意味において、団交で二十三日だけのことを問題にして処分することはないと、こういうことを述べたのであります。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、これはいよいよ不思議なことになる。一体何のために二十三日の問題で処分をしなければならなかったかということは、非常に根拠が薄弱になってきておるのであります。それにもかかわりませず、政府が十一日、十二日並びに二十三日の事態を総合してやった、こういうことになって参りますというと、この処分全体がまことに根拠薄弱のものになってくる。ただその場合に考えられることは、政府がこの際、労働組合をつぶしてしまえ、あるいはその勢力をそげ、あるいはまたこの際、総評の活動を押えろ、こういうことからおやりになったとしか考えられない。つまりこのことは、どうも政府自体が責任を負わぬ、一方的に労働者側に責任を負わして、そうしてこの際労働組合の力を削減するというようなお考え方、それがこの岸内閣の労働行政の根本的思想であるとしか考えられないのであります。そのために根拠のないものを無理におやりになったということしか私どもには考えられないのですが、一体、松浦労働大臣労働行政の根本的観念をまずお伺いしたい。(「やめた方がいいよ」「ちょっとむずかしいよ」と呼ぶ者あり)
  40. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 先ほど総理大臣の仰せになりましたような、よき労働慣行を作り、健全な労働運動(「健全とは何だ」と呼ぶ者あり)の発達に協力し努力するものであります。(「何を言う」「内容がないじゃないか」「関連々々」と呼ぶ者あり)
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは一体、よき労働慣行を作るということに、今度のように政府の方で全然責任を負わなくて、片方の首だけ切っておいて、そういうような解決方法がよき労働慣行の糸口になるとお思いになっておるかどうか。(「やめた方がいい」と呼ぶ者あり)
  42. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 政府側の方には私は責任がないと思っております。(「何を言う」と呼ぶ者あり)それで、従いまして今度の問題は、法律を犯した人はその犯したことに身をもって償いをしてもらいたいということは最初から申しております。(「政府の方の責任はどうする」と呼ぶ者あり)これは私どもは使用者の方の側ばかりではなくて、勤労者の側にも立ち、生活の安定を保障をすることもしなければならぬ。けれども誤まったことがあるならば、わが子でもやはり法のさばきを受けることを勧めることが、よき労働慣行を作ることであると確信しております。(「何を言う」「関連々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまの松浦労働大臣お話を伺っておりますと、これはまことに噴飯にたえない。とにかくこういうような事態が起ったことについては、いろいろ原因なしに起るものではない。しかもこのベース・アップの問題等は、これは内閣ができたときからすでに予想されておることなんです。そういたしますというと、この岸内閣の労働大臣といたしましては、あなたが労働大臣になられたときから考えていなければならぬ問題、そうしてまたこれに対する解決策を考えなければならなかったはずなんです。ところが、そういうことを一向おやりにならないで、事態が起ってから政府の方には責任が、ございません、あれはどうも法を犯した者が悪いのだと、これで一体労働行政があったと言えますか。私はあなたに労働行政の根本概念をお伺いしたいのでありますけれども、先ほどよき労働慣行をお作りになると言っておるけれども政府において何らお考えもなくて一日々々送ってきて、事態が起ってからあわ食って首を切って、それでもって、ものを片づけるというような考え方で、それで一体よき労働行政があったと言えるかどうか。第一、労働行政に対してあなたが識見を持っておったと言えるかどうか。そういう点を考えますと、あなたは労働大臣としてまことに不適任であったと言わなければならぬ。(「その通り」と呼ぶ者あり)あなたはこれに対して解決する策も持っておらないとしか言えないのです。ただ首を切っただけでもって将来労働慣行がよくなるなどというようなお考えであったとしたならば、これはもう全く噴飯に値するものと言わなければならぬ。もうおやめになった方がいい。そういうふうに、何もお考えになっておらぬ、策もないならば、岸内閣の労働大臣は勤まりません。七月十五日に改造があるそうでございますけれども、それまでおとどまりになる必要がない、きょうすぐに、即刻辞表をお出しになるか、そうでなければ岸総理大臣はおやめになってしかるべきだと思う。(「異議なし、なし」と呼ぶ者あり)私どもは、こういう労働大臣が、一体ここに起っております重大な労働問題の解決の能力があるとは考えない。岸総理は、この労働大臣をおかえになりまして、そうして岸内閣の労働行政の根本的改革をおやりになる意思があるかどうか。それをお伺いしたい。(「労働大臣やめろ」「責任責任」と呼ぶ者あり)
  44. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は今日いろいろとこの問題について論議がございますが、十分に事態を明らかにして、国民にこの事態の解明をし、納得をしてもらう必要があると思っております。従って政府の所信についてはきわめて率直に、また従来の経過につきましても、その事実のままに事を述べまして、そうしてわれわれとしてはこの際責任政府としてとる必要はないという結論に達しておるわけでありまして、従いまして労働大臣を罷免する考えはございません。(「あつかましいぞ」「関連」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  45. 平林剛

    ○平林剛君 今度の処分問題に関連し、また仲裁裁定の処理をめぐって、政府の方には少しも責任がない、あるいは経営者の方には少しも反省する余地がないなどという答弁は、私は納得できない。(「ずうずうしすぎる」と呼ぶ者あり)少くとも今回の春闘に当って、あるいは仲裁裁定の取扱いをめぐって、政府は三つの責任を負わなきゃならぬ。一つは仲裁裁定を完全に実施することです。これがなかったならば、政府はいばって、法に照らして労働組合の幹部を処分するなんということは言えないはずです。だから私は、少くとも政府仲裁裁定についてはこれを完全に実施をする責任がある。これについては後ほど私はお尋ねしますけれども、少くともこれを言明通りおやりになる責任はあると思います。  もう一つは、経営者に責任がないと言うけれども公共企業体の運営について、国会は経営者とまた職員に全般のことをお任せはしておる。公共企業体等労働関係法にもあるように、円満な調整をして公共の福祉に反しないようにする義務は、職員にもあるかもしれないが、一番あるのは経営者にある。ところが経営者の不手ぎわによって、また政府のいろいろな介入や予算の拘束などあったでしょう。しかし経営者もこれを押えることができなくなり、二十三日の事態のごときは明らかに経営者の方が大いに責めを負わなきゃならぬ。経営者に責任がないなんということは断じて言えないじゃありませんか。私はこういう意味では、経営者も同町にその点については責任を負うべきだ。これを負っていないじゃありませんか。(「所信をただせ」と呼ぶ者あり)  もう一つは、先ほどから岡田議員が追及しておりますように、労働組合運動に対する政府の介入、これは私は、労働問題というものは労使に任せるのが原則であるにもかかわらず、今回は政府が一番先頭に立ってきて、そうしてかき回し、紛争を拡大しておる。こういう意味では、労働運動に対する政府の介入ということは、ある意味では民主主義に対するところの挑戦とも言える。(「その通り」と呼ぶ者あり)そういう意味で、私は国民に謝罪すべき政府責任というものがあると思うのであります。  この三つの点から言いましても、明らかに政府や経営者は責任を負わなきゃならね。それぞれについて一つ岸総理大臣から、三つの責任についてあなたの方の所信を聞きたいと思うのであります。
  46. 岸信介

    国務大臣岸信介君) おあげになりました三つの責任のうち、仲裁裁定を完全に実施する政府には責任があるというお考えにつきましては、私は全然同感であります。(「やってないじゃないか」と呼ぶ者あり)従いまして、今日私どもは完全に実施しているという考えでもって予算の御審議を願っておるのでございまして、(「三分の一でいいのか」「詭弁だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)この点につきましては私は責任があると思います。  それから経営者の問題につきましては、これはもちろん公企業体として責任が——重大な責任を任せてあるわけでありますから、私どもさらに監督権を政府が持っておる立場から、十分に検討する必要があると思いますが、今日直ちに私は経営者に責任があると言うことは適当でないと思います。(「それじゃ一方的じゃないか」と呼ぶ者あり)  それから第三、政府の介入の点につきましては、私はこの労働争議政府は介入しないという所信を最初から明らかにいたしております。ただ問題は、公企業体及び公務員の問題につきましては、それぞれ法規がございまして、御承知の通り政府として、公共の利害に関するところがきわめて重大でありますから、最初からこれに違反しないように、われわれは幾たびか警告を発して、そして、もしも不幸にしてこれに違反するような事実があるとすると、処分するというような非常な不幸な事態にもなるから、十分注意するようにわれわれは最初から申しておりますが、決して労働争議そのものに政府が介入した事実はないと思います。
  47. 平林剛

    ○平林剛君 その三つの責任について、私は本格質問でありまんから、関連でありますから、岡田議員の方から追及してもらいますが、少くとも、三つの質問のうち、前半の二つについては完全に実施をするということと、経営者に対しても、今はしないが、適当な時期を見て処分をする、責任を明らかにするということは聞いております。しかし、第一の問題についてちょっとお尋ねをしておきます。  岸総理大臣は、きょうの岡田議員の質疑応答を通じてもそうでありましたが、仲裁裁定を完全に実施をすることは政府責任であるということを明らかにした。それから、衆議院の本会議を私は傍聴しておった。淺沼書記長の質問に対し、あなたも同様に仲裁裁定は完全に実施をするという答弁があった。それから先ほど淺沼、鈴木岸会談の実情についても御報告がありましたが、その中で、仲裁裁定の取扱いについてのいきさつが報告をされた。私はそれを聞いたところが、淺沼書記長が、仲裁裁定については完全に実施をするか、こう言ったら、政府は、これについては完全に実施をする、言葉では忠実に誠意をもって実施をするようにすると言ったが——完全に実施をするという意味を約束をされておるわけです。ところが、今日までの国会の審議を通じてみるというと、政府は何か完全実施という言葉を避けてきておる。労働大臣は、労働委員会で、切めは完全実施をすると言っていたやつを、しまいには完全という言葉を使わなくなって、誠意をもって尊重するという言葉にすりかえておる。今まで政府の中では、完全に実施をするという言葉を、ことさらに、誠意をもって尊重するという言葉にすりかえてきた。ところが、一両日の岸総理大臣答弁を聞くと、再び政府責任においてこれを完全に実施するという言葉を使い始めた。私はこの点についてお尋ねをしたいわけです。もしも補正予算の審議の途中において、あなたの見解が間違っておる。あるいは仲裁裁定は非常に難解でありますから、お互いに解釈の相違ということもありましょう。もし私どもの質疑を通じて、誤まりがあったのではないだろうか、この点はこういうように解釈もできるというようなことがあったならば、あなたは今完全に実施をするという誓いの通り改める御意思があるのですか。
  48. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもこの予算を提案します場合に、今御指摘のありましたように、仲裁裁定は相当に難解の点がございます。従って、これの意味を正確に把握することにつきまして相当に努力をし、政府部内において検討しまして、今出しておる案が私は仲裁裁定意味を最もすなおに実現しておるものである。この意味において私は完全に実施しておるものであると考えております。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまの問題は、いずれまた十分お伺いすることにして、私は先の問題に帰りまして、もう一度労働大臣にお伺いしたいのであります。  一昨日でありましたか、予算委員会が午後一時半から開かれるところが、急に何かの都合でもって、予算委員会の開会が延びた。そうして予算委員会の開会が延びた間に閣僚会議が行われまして、その結果、処分方針がきまって、そうして公社、あるいは郵政大臣その他の方において処分発表されることになった。ところが、その後のお話を聞きますというと、処分は、これはそれぞれのところでやっておるのだ、こう言っておる。それで、政府の方では一向介入しておらぬ。——そんなばかな話はない。とにかくあの閣僚会議の結果、統一的に行われたことは事実です。政府の方においてこれは時期を選び、また同時に各関係の方面に、当日一斉にやるべしということを、指令かあるいは通達をされて、そうしてああいう処分を一斉に発表されたのかどうか、それをまずお伺いしたい。
  50. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 関係閣僚並びに企業体の方々のお集まりを願って、いろいろ相談いたしましたことは、準備が結了したということの報告を受けたのであります。でありますから、その報告に基いて、全部が結了したならば、それぞれの企業体において決行されることは、これは、法規上当然でございますから、われわれは準備の結了したことの報告を受けたのであります。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 準備の結了をしたことの報告を受けて、だまって、はあ、と聞いておいでになったんですか。そうじゃないでしょう。おそらく関係閣僚会議においては、それでは発表しろと、こういう結論をお出しになったんでしゃう。そこはどうなんですか。これは、労働大臣が、ただ、はあ、と承わっておるだけじゃ、全くでくの坊ですからね。(笑声)
  52. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 準備の結了したという報告を受けましたから、そこで、皆さん関係の閣僚の方々が、それじゃ、あしたやろうというようなことは、それは、きまったケースにおいて、各結了した内容において、そういうふうな話し合いはあったのであります。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 ところが、どうも準備の結了した報告を受けて、そういうふうにやったとも思えない節があるのですね。それはまあオフ・レコード等のことが出たためにあなたもだいぶ迷惑をしたと、こう言われておるのでありますけれども、名古屋かどこかでもって、三十一人首切るのだということをお話になった。人数は三人ほど食い違いがあるようでございますが、それを追及された際に、何か第六感による何とかというようなことを——総合情報による第六感とか言われておった。どうもこれは総合情報による第六感ではなくて、すでにそういうふうな方針で臨むということをおきめになっておる。それで、その結果、それがぺらっと口からすべって出た。まあ、出て騒ぎになった。このままほおっておくわけにいかないから早くやれと、こういうことでもって、この二十八人の馘首を含む処分を一斉に閣僚会議を開いてやることにおきめになった、こうしか私どもにはとれない。事実の経過はそうなっておる。そうしますと、あなたが言うように、ただ報告を聞いて、それじゃおやりなさい、この程度の問題じゃない。しかも準備が完了したから、だからやりましたというならば、国鉄でもってあの処分発表するときに、どんな事態が起ったか、あなたも御存じでしょう。こういうことも報告を受けているでしょう。これは決して準備が完了しておってやったのではない。あなた方の方から、閣僚会議の結果か何かに基いて、国鉄の方に指示があって、そうして国鉄の方であわ食ってやったんじゃないですか。これは明らかにあなた方の方から命令をしてやったのだ。あなた方の方で幾ら、あれは独立に、自主的にそれぞれのところでもってやったとお言いになったところで、そうでないことは、あの一事を見ても明瞭じゃありませんか。この点どうですか。
  54. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 数のことについては、宮澤運輸大臣からも平井郵政大臣からも、絶対に聞いておりません。そこで、準備が結了したという報告を受けただけであって、この数のことについては絶対に聞いておりません。お話はなかったのであります。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 数のことについて聞いておらぬ、こんなばかな話がありますか。一体、政府がこの労働行政について責任を持ち、そしてこの事態に処理していこうというのに、処理についてどうするかという方針も聞かず、整理の人員が幾らになるかも聞かず、それを絶対に知らないなんという労働大臣は、それこそ耳もなければ口もない、何もない、頭の中もないと言う以外にない。そうじゃないですか。どうでしよう。私どもはっきり言ってもらいたいのですが、政府で閣僚会議の結果、これは政府の統一せる方針として打ち出したのだということをはっきりお言いになってなぜ悪いのです。なぜそういうことをお避けになっているのですか。これは、はっきり言ったらいいじゃないですか。
  56. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) いろいろお話がありますけれども、事実その日には、数を、つまり、解雇を何人にするとか、あるいは行政処分を何人にするとかいう数の話はなかったのであります。それぞれ公共企業体と相談されて、公共企業体におまかせになっておるから、大臣といえども、それは、そのときに責任を持って言われなかったのだろうと思います。でありますから、その日の実際の姿を言っておるのでありますから、他の大臣のいらっしゃいますから、一つお聞き願いたいと思います。
  57. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまのお話ですと、全然お知りにならぬ、こういっておる。一体、先ほどからお伺いしておるというと、公共企業体労働法に違反する者は処分するということは三月の十二日以降からきまっておるのだ、こういうお話であります。その方針できておるということであります。それに、処分する人がどれか、その人間がだれか、人数がどれくらいかということがわからないで、一体労働大臣の職にいられますか。私もそんなにばからしいお答えを承わろうとは思っておらぬのです。実は、政府で統一した方針をもって、国鉄の方にやれ、こういうふうに命ぜられた、国鉄の方では、まだその準備ができておらぬ、そのためにあわくって発表があくる日になったのじゃありませんか。そういうふうなことで、政府は、やはりやらしたのです。明瞭なんです。指示をしてやらしたのであります。だから国鉄の方であわててやって、人数の点についてもいろいろ問題があったもので、その日のうちに発表できないで、あくる日まで発表が延びた。先ほどのあなたの話だというと、準備が完了して、その報告を受けた、準備が完了したということは、ちゃんと人数のこともわかるし、どういうことでもってこれはその処分に値するかということもわかるのでなければ、準備が完了したとは言えない。準備なんか完了してない、実は。国鉄に命じて、国鉄の方では、将来の問題を考えて、問題は円満に解決したいというので、国鉄当局者とあるいは組合の方との間にいろいろ折衝が行われている際に、あなた方の方は命令で急遽やらして、事態をさらに紡糾させようとしておるとしか思えない。そうじゃないですか。私どもは、あなた方のやり方というものは、むしろよき労働慣行を作って、そして労使の紡争をなるたけなくすという方針ではなくて、むしろ、ここにおいて労使慣行を悪化させる方向へ向けている、激化させる方向へ事を進めておるとしか思えないのです。政府方針は一体そこにあるのかどうか。もう一ぺんお伺いしたい。
  58. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 政府は、そういうますます事態を混乱させるようなことは絶対に考えておりません。よくしようと考えておるのであります。同時に、岡田さんも御存じのように、公共企業体関係においては、それぞれの関係企業体が具体的な事象を把握し、その法に照らして処罰されるものであって、労働大臣は、そこの具体的なことをわかるはずがない。でありますから、この間の準備の結了したという報告を受けると同時に、それぞれの事象によって公共企業体においては実際の数字を把握しておられたでありましょうけれども、運輸大臣は、それを申されなかったのであります。私どもは、それを努めて聞こうとはしなかったけれども準備が結了したから、適当な時期だと思ってこれを決行することになったのであります。
  59. 岡田宗司

    岡田宗司君 それはおかしいので、それならば、あなたが総合情報に基いて第六感でもって三十一人なんて数を言うはずはないじゃありませんか。これは失言にせよ、何にせよ、そういうことを言ったということは、すでにそういうことがあなたの耳に入っていることなんです。しかし、それはそれといいたしまして、あなたはよき労働慣行を作ると言われた。しかし、今度のこの事態は、この処分によって一体これで片づくと思いますか。おそらくこれを契機にいたしまして、紛糾は避けられないと思う。この紛糾に対して、あなたは労働大臣としてどういうお考えをもってこれを処理されようとしておるのか。ただ、このために実力行使等が起ったならば、もう一ぺん首を切るんだということで片づけようとされておるのか、その点をはっきりお伺いしたい。
  60. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) やはり法律に基いて、法を誤まったものはやっぱり責任を持ってもらうということは反面に行うと同時に、一面においては、これはやはり友愛の精神でよき労働慣行を作るようにお互いに協力し合って行くということがほんとうであると思う。それは、たとえば、今度総評の方で言っておられるように、処分しないうちから、処分したならば反対ストライキをやるというようなことを発表されることも、よき労働慣行を作るゆえんではないと思うのです。お互いによき労働慣行を作るように両方から協力し合わなければならないと思うのです。それが私ども考えであります。
  61. 内村清次

    ○内村清次君 労働大臣は、委員会を侮辱しておる。しかも、あなたは詭弁ばっかり出しておるんだ。というのは、八日の委員会で、私は閣僚懇談会の内容についてあなたに質問したはずです。ところが、その際に、各大臣から報告を聞いただけだと、こう言った。きょうは、岡田君の質問に対して、報告を聞いて、そうして所管の大臣にそれぞれ処置をしなさい、こういうことを言ったと言っておる。具体的数字は知らないと言っておる。ところが、私たちは、岸総理答弁もどうも詭弁だ、言っておるのは、まず総理は、慎重にこの処分問題は今考えておりますということ一点張りだった、これまで、八日までは。そのうち、閣僚懇談会を開いて、委員会もストップして開いておる。だからして、私は、この内容は重要であるから、その具体的な内容をここで報告しなさい、こう言った。ところが、先ほどの通りでしょう。ところがその際にですよ、その際に、わが党の池田君、衆議院の池田君が来た。あなたどうする、ちゃんと、そのときそこで発表すると言った、きょう発表すると。しかも、その際に手を握っておる。その握り方というのは、二十五名やるということでちゃんと手を握っているじゃありませんか。(「博労みたいだ」と呼ぶ者あり)そういうようなことをして、それで国鉄総裁は、口には、各労組の委員長を初め、該当者は、総裁とすなわち面会をしたい、こうやった。総裁から労働組合の方に通知をいたしておる。こういう事態で、私たちは、慎重にすなわち処分問題に対しては考えておる、その慎重というものは、この予算にかかっておるところの不完全実施の問題、こういう裁定の問題を含めて、そうしてこの結果においてどうのこうのというような慎重の態度がとにかくこの事態は大きな問題にからまってくるから、そういうような問題も含めて慎重に考えておると言いながら、もうその日の委員会の陰では直ちにやろうとしておる。どうですか、その点は。こうやって詭弁々々で、裏を返して、自分たちのほんとうの反動政府のこの性根を出しておるじゃないですか。この点は労働大臣どうですか。確かにあなたは具体的なあれの問題まで検討して、しかも中村君の質問の際にも、運輸大臣は退席していっているじゃないですか、そういう事態を明らかにしなさい。
  62. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 御注意申し上げます。委員外の方の御発言は御遠慮願います。
  63. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) ただいまのお問いでありますが、この間の八日の日にお答えしましたのと同じことを言っておるつもりであります。八日の日にもやっぱり報告を受けたといっております。それで、やはりこの報告を受けている。そこで報告をし合った後に、それじゃやろうということがきまったので、それは自発的にきめたので、こちらから無理に押したのではありません。それから、池田君云々ということは、私はそんなこと関与しません。
  64. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 議事進行について。先ほどの労働大臣の発言中にはきわめて不穏当な言葉がありますから、取り消しを願います。理由を申し上げます。先ほど発言の中に、まだ春闘処分が決定しない以前において総評が処分反対の闘争を企てることは、よき労働慣行を作る上においてプラスにならぬとおっしゃった。もしこれがそのまま真であるとするならば、よき労働慣行は労働組合だけが作るのではありません。労使であり、特に政府は、本会議岸総理大臣答弁におきましても、労働組合の健全なる発達、育成に努力すると言われました。非常な責任がありますその労働大臣が、先ほどの話を聞きまするというと、閣僚懇談会において数すらも聞かないと言われた労働大臣が、ずいぶん昔に名古屋において、数をあげて処分発表をするということは、これは一体何事であるか。これがまさによき労働慣行を作ることになりますか。私は自分の非は秘めていて、相手を攻撃することが政府の労働対策であるとするならば、こんな政府は一日も存置を許してはならないと思う。労働大臣の責任ある取り消しを私は要求いたします。
  65. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 総評が発表いたしましたことは、これは事実新聞に出ておりますから、私は総評の問題についてのことは……(「出ているじゃないか」「発表しないのになぜ出したのだ」と呼ぶ者あり)私はここでもこの間申し上げましたように、あのことは非常に遺憾と思っております。
  66. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど私がお伺いしたのは、今度の処分発表において、いろいろ事態の紛糾が起るであろう。十一日、十二日には実力行使も行われるような状況にもあり、さらにその後においてもごく大きな波乱が起ることも予想されるのであります。それらの問題についてどういうふうに労働大臣として処理されるかということをお伺いしたところが、ただ、まあ法規に照らしてやるだけだというような意味お話があった。なかなかそれだけでは片づく問題ではないのです。もし、あなたがほんとうにこの紛争をおさめ、将来に向ってよき労働慣行を作ろうとするならば、政府全体としての労働行政を再検討して、そうして、この際解雇を撤回し、労働組合側と胸襟を開いて話し合って、そうして事態を収拾する以外にはないと思いますので、労働大臣においては、この際いかなる方針をもって起ろうとする事態に対処されるか、もう一ぺん具体的にお伺いしたい。
  67. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 反対闘争が十一日、十二日に行われるということを聞きまして、私は非常に憂慮いたしております。できるだけそういうことが行われないように一つお願いしたいと思います。(「撤回すれば起らないのだ」と呼ぶ者あり)同時に、このことについては、総評当局とも話し合ってみたいと思っておるわけであります。また、今度、法を犯してはぜひ一つやってもらいたくない。法の許せる範囲内においてのことならばいいと思いますが、法を犯して国民に迷惑をかけて、あのダイヤを大混乱させるというようなことは、ぜひ避けてもらいたいと思っております。
  68. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま、何とかして避けたい、非常に憂慮している、こういうお話であります。しかし、今度起ります事態は、政府が、先ほど私が申し上げましたように根拠のない、また、政府みずから責任を負わなければならぬのに、その方は考えないで、労働者側を一方的に馘首したことから起るその問題に触れないでは解決できない。あなたが総評と話し合って解決しようとするならば、その問題について触れていかなければならぬ。そうしてそれに触れなければ、この問題は解決されないわけでありますけれども、あなたは総評と話し合うという際に、この処分の撤回の問題について考慮をされ、そうしてまた、その処分の撤回の問題について話し合う。そして、それをもとにして将来の問題について、よき労働慣行を確立する方向への具体的の話を進めるおつもりがあるかどうか、そこをもう一ぺんお伺いしたい。
  69. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 各企業体の経営者におきましては、それぞれ法律に従って、具体的問題でかように御決定になったものだと思いますから、私は現在の発表せられた処分は、これは緩和することは困難であろうと思います。しかし、再びこういうことの起らないように、また、この次にこういう問題が起きまして、行政処分や公労法の処分をしなければならぬということは、お互いにどうもいいことではございませんから、こういうことの起らないようにやってもらいたい、かように思います。現在決定して発表したものは、これはそれぞれ具体的におやりになったものでございますから、これは私の力ではどうすることもできないと思います。
  70. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは岸総理大臣にお伺いいたします。これは政府として、今後起るべき事態に対処するための方針をお立てになろうとするならば、やはり今私が申し上げましたように、この原因になっておる今度の処分問題に触れなければならぬと思います。ただいま労働大臣は、その点で総評とも話し合ってみたいと言っておりますが、この将来の紛争を避けるために、総評との話し合いを労働大臣がすることをお認めになり、またその際に、この処分の問題についての話をすることを岸総理大臣はお認めになるかどうか、その点をお伺いしたい。
  71. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 言うまでもなく、この今回の春闘の経緯をずっと考えてみまして、私は非常に、こういう事態になったことは、たくさんの人を処分しなければならぬというような事態になったことは遺憾でございます。しかし、この処分をするに際して私は、政府及び公共企業体と十分慎重に事実を検討して、そうして法律違反の事実が明確であり、やむを得ないものは処分して、将来こういうことを繰り返さないようにしなければならぬ、こう考えて、その処分というものを各企業体責任をもってきめたわけです。しかし、これに対して、さらにその処分に反対であるから第二、第三の実力行使をもってこれを阻止しようというような企てがあるということを聞いておりますが、これはさらに遺憾な事態でございまして、従って政府としては、できるだけそういうことを未然に防ぐということに努力をしなければならぬということは言うを待ちません。私は、三月のいわゆる春闘に際しましても、これを未然に防ぐためにあらゆる努力はいたしたんでありますけれども、ついにそれを達し得なかったことでもありますから、今後におきましても、できるだけこれを未然に防ぐように努力しなければならぬことは言うを待たぬと思います。そのために、労働大臣その他必要な所管大臣が、やはりそれぞれ必要な方法を講じて、未然に防ぐことに努力をすることは当然であろう。労働大臣がその判断によりまして、総評の首脳部や何かと会うということは、これは事態を円満にこれでもって収拾することは大へんけっこうなことであります。もちろん、労働大臣が自分の労働行政上の立場からそういうことをされることは、私は、差しつかえないのみならず、それによって事態を円満に収拾するように努力することは当然であろうと思います。ただ問題は、しからばこの発表されたところの処分を撤回するかどうかという問題に関しましては、先ほど来申し上げているように、私はこれがきまりますまでの経緯から考えてみましても、公企業体の経営者におきまして十分に事情を調べ、そしてやむを得ず、これだけは仕方なく処分するということを決意したものであると信じますがゆえに、これを今、撤回するとか緩和するとかいう意思は持っておりません。その辺の事情を十分によく誤解のないように、理解を求めることは当然であろうと思いますが、できるだけ事態を事前に収拾するように今後とも努力をしていきたいと思っております。
  72. 岡田宗司

    岡田宗司君 事前に収拾されようとするならば、この問題に触れなければ当然片づくものではない。私どもは、岸総理大臣がよき労働慣行を作り上げるということでありますならば、これは政治的な配慮をもってそうすべきであると。単に法律の適用、あるいは事務的な処理だけでは問題というものは片づくものではない。これは私よりも年配である岸総理大臣が、その生涯の長い間においてもいろいろ経験されたことであろうと思うのであります。法規一点張りで問題は片づきません。法規以外の点において問題の解決をすることが、かえって問題を全体としてよく解決する道にもなろうかと思うのであります。その辺のところは、岸総理大臣の知らないはずはない。私はこの際、岸総理大臣処分の問題を撤回して、将来のよき労働慣行を作るために英断を望みたいと思うのであります。もし今度起りますような問題につきまして、さらに今までと同じような方針をもって、あるいは警察力をもって弾圧をするとか、あるいはまたさらに、馘首を重ねるということをいたしますならば、それこそ混乱は拡大するだけで、そうして円満なる解決も何も望めない、将来にわたって禍根が残るばかりである。この将来に禍根を残すということを避けられようとしますならば——これは日本の経済全体のためにとって必要なことでありますが、そうされますには、この際、岸総理大臣が英断をもってこの処分を撤回する方針をもって労働組合に臨まれる必要があろうと思うのであります。この点について、あらためて岸総理の政治的な配慮をお伺いしたいと思います。
  73. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん労働争議というものをおさめるのに、単に法律の適用だけでこれができるものじゃないことは、岡田委員お話しの通りであります。政府としては、こういう公企業体争議、それが行き過ぎた場合におきまして国民一般の——直接にこの労使関係でない、関係者でない国民全体の、たくさんの人の生活にいろいろな悪影響を及ぼすとか、あるいはさらに大きく国民経済に及ぼす影響等も考慮しまして、事態をあくまでも事前に収拾することに努力すべきことは当然であります。  私は、しかし同時に、よき労働慣行というものは、労使両方面においてあくまでも法規を順守し、そしてすべてが民主的に、法規に準拠して解決されるという慣行を作らないというと、これはまたその弊害の及ぶところ、はかり知るべからざるものがあると思います。私はそういう意味におきまして、あくまでもこの公企業体関係のある労務者はもちろん、経営体におきましても、あくまでもその公企業に関する公労法やあるいは各種の事業法等に関して、これを十分に一つ順守して、そして将来に向って正しい、合法的な、よき慣行を作るように努めなきゃならぬと思います。これらのことにつきまして、政府が決して事を好んで、弾圧をしようとすることを意図しているものでもなければ、われわれはそういう意図でもなければ、また政府として当然やらなければならぬ、先ほど御質問がありましたこの仲裁裁定を完全に実施するというようなことにつきましても、従来はいろいろな疑惑があるかもしれませんが、私は、私の内閣の続く限りは、これはあくまでも誠意を持って実現するという方針を樹立して、これを十分に理解してもらい、お互いが正しい慣行——信頼の関係に立って公企業体のよき慣行を作らなければならぬ、こういう考えでおります。従いまして、ただ単に裁判所のように法規を適用するという、正当な法規の解釈だけでもって終始する考えはございません。(「今やってるじゃないか」と呼ぶ者あり)しかし、今申すように正しい将来のよき労使関係というものは、やはり法を守り、法に準拠して、そうしておのおのが協力するということでなければならぬと、かように考えております。
  74. 岡田宗司

    岡田宗司君 実力行使が明日に迫っておるわけであります。従いまして、未然に防止するということであるならば政府は速急に動かなければならぬ。その点について、私ども政府においては、やはりほんとうにこの問題を未然に防止し、将来に対してよき労働慣行を作ろうとするならば、至急それにふさわしい、そうしてその成果の上る方法をとることをここに要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  75. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。先ほど御答弁を伺っておりますと、岸総理の御答弁の中に、仲裁裁定の完全実施をやっておるつもりだと、それから解釈上も政府が出したのは正しいと信じておるというお話がありましたが、これは、この予算審議の過程において御解釈上のもしあやまちがあるという事態が明らかになった場合には、手直しされることは当然であろうと思いますが、この点に関する御答弁を承わりたい。
  76. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それはいかなる場合においても、国会にわれわれが法案や案件を出しまして、御審議の何によりまして、そうしてわれわれが改めなければならぬものであれば、政府としては何事によらず改めるのは、これは議会政治として当然のことであろうと思います。
  77. 吉田法晴

    吉田法晴君 議事進行について。岡田委員の質問の過程で気がつきました政府の大臣なりあるいは政府委員答弁の間に食い違いがございますので、その点は明らかにこの際しておいていただきたいと思います。  第一点は、二十三日の事態について政府責任があるかないかという問題であります。これは衆議院の社会労働委員会で労働大臣は、この二十三日の事態について第一の責任は経営者にある。第二次的には政府責任があると言われたといわれております。その経営者なりあるいは政府責任があると言った衆議院社会労働委員会での言明と、それから先ほどの答弁とは明らかに食い違っております。その点は、いずれが明らかなのか。先ほど来の事態によりますと、経営者あるいは政府責任があるということが明らかになっております。これは運輸大臣なり、あるいは国鉄総裁が言われたところにおいても明らかになるかと思うのでありますが、その点を重ねて明瞭に言明を願いたいと思います。  それから、ただいま羽生委員から完全実施であるかどうかという点で、自後の委員会において完全実施でないという点が明らかになったら云々という御質問でありましたが、運輸大臣は、当参議院の運輸委員会において、完全実施とは言えない、八割であるか、九割であるかは知らぬけれども、その大半は実施したと思うけれども完全実施ではない、完全実施でない部分があるということをお認めになったと言われておりますけれども、しかし先ほど来、総理を初め政府委員答弁は、完全実施であるかのごとく言われておりました。事態の究明はあとでなされるとしても、従来の答弁についても明らかに食い違いがございますから、その点について、運輸大臣なりあるいは総理は、完全実施でないとお認めになりますかどうですか。その点を、今までの御答弁の食い違いについて明らかにせられたいと思います。  それから第三は、総理岡田委員の質問の前半において、二十三日の事態について政府責任があるかどうか、あるいは二十三日の事態がどうであるか、今回の春闘については、その事態いかんにかかわらずこれを処分するのだと、初めからどういう事態が起ろうともこれに対して処分をするという方針だという重大な言明がございました。これは速記録にはっきり残っておると思うのでありますけれども、そういう事態のいかんにかかわらず、春闘に対しては処分方針で臨むんだと、強硬な処罰方針で臨むんだと、こういう方針であったと、先ほどの御答弁からはうかがわれますけれども、その後の事態は明らかにそうであると思いますけれども、そうであるのかどうか、はっきりここで伺いたい。
  78. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、春闘最初政府がこれに臨む方針としまして、一方、できるだけ労使の間において平和裏に話がつくようにということを希望し、いかなる場合があっても、この公企業体公務員等は、それぞれそのあずかっておる仕事の性質上、特別の法規が設けられてあるので、これをあくまでも順守してもらいたい、これに違反するような事態ができるというと、やむを得ず処分しなけりゃならない。その違反するところの事実が起った場合においては処分するということを申したのでありまして、事態いかんにかかわらず、初めから罰するということを言ったのではございませんで、違反したところの事実が生ずるならば罰すると、どうか違反するような事実がないようにということを、幾たびか最初から警告をいたしたわけであります。  完全実施の問題につきましては、私は仲裁裁定の解釈につきまして、いろいろな御議論もあることも承知いたしておりますが、政府としては、十分仲裁裁定の趣旨にのっとって、その趣旨を完全に実施しておるものである、かように考えてこれを提示いたした次第であります。
  79. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 私は仲裁裁定について、政府誠意をもってこれを尊重すると言いましたときから、国鉄当局者に向っては、私はその言葉の裏には、私自身の解釈では、完公実施をすると考えておると、そのつもりでやってくれ、こういうふうに話しております。なおその後、補正予算の出ましたときに、私はこれをもって完全実施なりと、自分で信じもし、閣議の席上でも、これをもって完全実施だ、こういうことを申し上げた。(「完全実施でないよ」と呼ぶ者あり)ところが先般、運輸委員会におきましての言明は、私はこれをもって百パーセント完全実施と思う。しかしあなた方の立場からごらんになっても、これだけ実施すれば八〇%ぐらいは実施なさったとお思いになるでしょう。(「それじゃ完全実施じゃない」と呼ぶ者あり)こういうことを、あなた方の立場から見てもお思いになるでしょう。これだけ政府が完全に仲裁裁定を実施した例はいまだかつてないと思う。われわれはこれをもって十分、完全実施したものと考えておりますと、こう申し上、げたのであります。(「そんな主観的なものじゃないよ」と呼ぶ者あり)
  80. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 吉田さんのお問いでありますが、これは衆議院の社会労働委員会において、たしか福岡県出身の滝井さんの御質問の場合と思いますが、それは格差問題を議論しているときにそのことになったのです。俗にいうやみ問題である。やみ問題について、この格差問題のときです。格差問題のときに、だれに責任があるかということになったから、私はこう申し上げました。きょうの参議院の本会議でも言おうとしたのですけれども、皆さんがいろいろ言われたので、全部言わなかったのですが、格差問題について、このもらった勤労者には責任はないと、私はそう言ったのです。それは話し合いでもらっているのですから、払った方に責任がある。払った方に責任があるというのは、だれに責任があるのだと言うから、これは第一に格差問題ができたのは、第一の責任は経営者である。その監督に当っている政府は第二次責任である。こう申し上げたのであって、それは格差の問題です。やみ問題の論議のときにそう申し上げたのであって、今度の春季闘争全体のことを私は言ったのじゃありません。(「この予算には入ってるよ、それは」と呼ぶ者あり)
  81. 吉田法晴

    吉田法晴君 重ねて議事進行。答弁を得ましたけれども、なお前の総理答弁、それから労働大臣、運輸大臣の答弁等は、速記を見て明かにしなければなりませんので、速記を取り寄せた上で、当委員会において、明日以後の委員会で、この点を委員会として明らかにしなければならぬ、その点を委員長としてお取り計らいを願うことを強く主張いたしまして、これは自後の委員会にまかせたいと思います。
  82. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 本日は、これにて散会いたします。    午後六時七分散会