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1957-04-26 第26回国会 参議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十六日(金曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————   委員の異動 四月二十五日委員成田一郎君及び前田都男君辞任につき、その補欠として 草葉隆圓君及び大谷瑩潤君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            小林 武治君            迫水 久常君            左藤 義詮君            安井  謙君            吉田 萬次君            中田 吉雄君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊二君            泉山 三六君            大谷 瑩潤君            木村篤太郎君            草葉 隆圓君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            柴田  栄君            関根 久藏君            土田國太郎君            仲原 善一君            林田 正治君            一松 定吉君            武藤 常介君            内村 清次君            栗山 良夫君            小林 孝平君            中村 正雄君            羽生 三七君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    国 務 大 臣 小滝  彬君   政府委員    大蔵省主計局長 森永貞一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度特別会計予算補正  (特第1号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員の変更について申し上げます。  四月二十五日成田一郎君及び前田佳都男君が辞任されまして、その補欠として草葉隆圓君及び大谷瑩潤君が指名されました。  以上御報告申し上げます。   —————————————
  3. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより、昭和三十二年度特別会計予算補正(特第1号)を議題といたします。  これより討論に入ります。
  4. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は、ただいま議題になりました昭和三十二年度特別会計予算補正特第一号に関しまして、日本社会党を代表しまして反対討論を行わんとするものであります。  まず、反対いたします第一の理由は、本予算補正によりまする駆逐艦二そうの建造は、わが国独立と平和に対しまするわが党の基本方針と全く相いれないからであります。本予算補正は、新設されまする臨時受託調達特別会計に関しまするものでありますが、この会計は、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基き米国より無償で譲渡される予定の艦船二そうを、日本国内で調達するために、新たに設けられるものであります。すなわちこれによっても明らかなように、これは、日米間に取りきめられていますMSA協定に基くものであり、さらには、日米安全保障条約に由来するものであります。これらの安全保障条約MSA協定については、わが党はその成立の当初より、かえってわが国独立と平和を脅かし、民主主義をそこなうものとして、全党をあげて反対してきたところであります。自来両条約を締結いたしましてから、それぞれ、安保条約は五年、MSA協定は三年を経過して参りましたが、いわゆる安保体制MSA体制わが国独立を妨げ、いかに平和を脅かしているかは、九千万同胞ひとしく身をもって、いやというほど体験しているところであります。すなわち、終戦以来十二カ年間を経過した現在においても、なお防衛分担金四百余億円をてことして強いアメリカ内政干渉を受け、また、軍事予算性格を与えられ、わが国経済の正常なる発展と国民生活の安定を著しく阻害しているものであります。また、米軍は今なお数百カ所に基地を保有するばかりでなく、その拡張さえも要請し、ために、内灘、砂川、相馬ケ原等同胞相争い、国論は完全に分裂をいたしておるのであります。かかる事態をこのままに放任し、艦艇譲渡等を受け、幾ら再軍備をやりましても、わが国安全保障とならないことは明らかであります。従って、かような国民的悲劇の根源である安保条約行政協定MSA協定改廃ほど急務とするものはございません。不平等条約改廃運動のわが党の提唱が、国民のほうはいたる共感を呼び起していますのは、這般の消息を物語るものといわなくてはなりません。従って、わが国が今なすべきことは、本補正予算のように、艦艇譲渡目的とし、艦船を建造し、安保MSA体制矛盾をさらにこの上拡大することでは断じてございません。何よりも安保体制を再検討し、これが改廃の上、新しいベースの上に日米百年の友好関係と真の平和の素地を確立すべきであります。  しかるに、安保条約行政協定を結んだ当時、これを礼讃された自由民主党におかれてすら、その矛盾を認められ、総理大臣自身安保条約の再検討岸政権てこ入れのために渡米を計画されていながら、ただでもらうのだからと防衛を安易に考えられ、岸内閣において、依然として旧套を脱することのできない点は、まことに遺憾といわなくてはなりません。  そもそも、今回の米国よりわが国に対するわずか二そうの船艦の譲渡といえ、これはアメリカの大きい世界政策の一環としてのもであり、決して慈善事業としてなされるものではないのであります。すなわち、アメリカは、一九四七年三月のトルーマン宣言以来、一九四九年四月のNATO、一九五二年四月のわが安保条約、一九五五年二月のSEATO条約等、ギリシア、トルコ援助をきっかけにいたしましてとられつつある一連の措置に基くものであります。このアメリカ対ソ封じ込め政策に協力することに対する代償として、わが国への今回の援助が、果してわが国防衛や平和について、日米の利害の完全なる一致があるでしょうか、はなはだ疑問といわなくてはなりません。これは、最近におけるアメリカの与国の動向をみても明白なところであります。特に原子兵器誘導弾兵器の出現とその発達は、安全保障条約前提でありますアメリカ世界戦略外交一大転換と修正を迫られつつある状態であります。すなわち、一九五五年においては、西欧同盟諸国は、人口において三〇・四%、共産主義諸国は三八・五%、中立諸国は二四・六%であり、面積においては、西欧同盟諸国は三三%、共産主義諸国は二七%、中立主義諸国は実に四〇%の多きに達しているのであります。すなわち、米ソそのいずれにも属さない諸国が、全世界の三分の一を占めつつあることは、本予算補正の審議において、決して看過することができない点であります。特に、米ソ両国の間にはさまれた諸国で、日本のような大国でありながら、アメリカかソ連かいずれかという割り切って、対米一辺倒外交を今なおとっている国は、世界にはその例をみないわけであります。わが保守党以外にはないといっても決して過言ではないわけであります。すなわち、原子戦勝利者はなく、原子戦防衛がないといわれる現在においては、もっと、このような集団安全保障体制とは違った次元の安全保障体制を探究すべきであります。ヨーロッパにおいてNATO、ワルシャワ両機構を包摂する新体制が熱心に求められつつあり、アジアにおいても、自由民主党内閣のごとく、一九四二、三年ごろの廃品同様の輸送機哨戒機駆逐艦をもらい受け、やがて原子力部隊の駐留を求められ、中ソ両国仮想敵国とするようなことは、断じてわが国安全保障とはならず、こういう際には、アメリカに偏せず、思想や制度は違っても、中ソ両国を敵にしない、自主独立の、日米中ソを含むわが党の相互安全不可侵体制こそ、最良の安全保障といわなくてはなりません。  元来、独立の十分でない国が作る軍備は、いかなる名目をつけましょうとも、自国のためでなく、強国の手段に利用されますこどば、歴史がこれを証明するところであります。今なすべきことは、艦艇の供与を受けたり、軍備を増強することではないわけであります。なすべきは、アメリカからのもっと完全な独立でおり、基地撤退であります。防衛力の充実が基地撤退前提では断じてないわけであります。完全に独立してから再軍備をなすべきかどうかを国民の由自なる意思によって決定いたしましても、決しておそくはないわけであります。また、インド、パキスタン、ビルマ、インドネシア、セイロン等、主要なるアジア諸国は、中共政権をいち早く承認しているにもかかわらず、アメリカの意向をそんたくし、対中共政策をきめかねているような現内閣は、その外交政策とともにアメリカ決定に左右され、いかに再軍備をいたしましても、完全にわが国の安全には役に立たぬといわなくてはなりません。従って、わが国が今なすべきこととは、重ねて申し上げますが、独立の完成であり、外交自主権を確立し、積極的に対中共政策を確立すべきであります。しかるに、岸総理は、安全保障条約の改訂を唱えられ、また、外交防衛についてわが党と平仄を合わせ、あるいは世論を刺激しないような慎重な発言をされながら、その本質ば徹底した対米追随である点は、油断のならない点であり、鳩山、石橋内閣より外交が大きく後退している点は、この際きびしく指摘しておかなくてはなりません。本予算補正は、単に駆逐艦二そうに関するものでなく、その本質に触れる一端として、まず基本的に以上のような点から反対するものであります。  第二に反対します理由は、財政法上、憲法上等の立場からであります。まず、臨時受託調達特別会計設置であります。本特別会計設置をもって昭和三十二年度特別会計の数は合計四十二の多きに達し、逐年増加の一途をたど。ています。これを特別会計が最も多かった大東亜戦争のまつ最中の昭和十七年の五十一にはなお及ばないといたしましても、整理検討もせず、見さかいもなく安易に特別会計を乱設いたしますことは、財政法第十三条に単一予算主義原則の例外としまして、特別会計を認めている根本原則に反し、慎重を欠くものと言わなくてはなりません。  次に、国庫債務負担行為を三カ年間としたことは長きに失するものと言わなくてはなりません。債務負担行為歳出予算とは違いまして、本来後年度にわたるものであり、従来非常に長きにわたったことが多いのであります。しかし議会の議決を経たものといえども、あまり長期にわたることは避くべきであるとされているのであります。それは時の経過につれ、国会の構成も、また経済界情勢等の変化することが予測されるからであります。財政法第十五条の三項はこれを三カ年以内に限ったことは十分理由のあることと言わなくてはなりません。しかも国内においてならともかく、外国と、しかも現在をもって明年を予測することのできない、猫の目の玉のごとく変化してやまないアメリカ防衛計画を対象とするのでは、後年予算単価その他紛争なきを保しがたく、また安全保障体制検討の折、本予算補正を通じて、MSA体制に今後三カ年間の長きにわたり国民的な要望でありますこの改廃を著しく困難にするようなこの規定は断じて容認することのできない点であります。  次に、丙号繰越明許費要求書としてある繰越明許費についてであります。繰越明許費が本予算補正のごとく軍事費目的とするものにありましては、かつての臨時軍事費わが国財政に与えましたおそるべき悪夢を想起しただけでも、予算補正によってかかる治外法権的特権を与えることは適当でないと思うわけであります。  次に、受託契約に対して政府が私契約としておる点であります。本予算委員会におけるわが党議員の質問に対し、岸総理池田大蔵、小瀧防衛長官等関係閣僚の答弁でも明らかなように、本予算補正による受託契約日米安全保障条約に基く単なる私契約に過ぎないものとして目をそらさんとしつつある点であります。しかしこれを決して軽くみることはできないのであります。ことに安全保障MSA協定わが国防と外交性格規定しつつある事実をもってみましても、本契約によって、特に譲渡を予定されている二千三百トン型の艦船は、米国においてはすでに誘導弾フリゲートまたは駆逐艦として誘導弾発射装置が備えつけられつつある状態であります。艦船のかような性格からいたしまして、また日米安全保障等から考えましても、かかるものを私契約とすることは、妥当でないことと思うわけであります。特に憲法七十三条の三項に規定していますように、これは当然慎重を期し従来の艦艇貸与協定のごとき条約あるいは協定等をいたすべきであって、かかる措置をとりますことは、憲法七十三条の規定の趣旨に違反すると言っても、決して過言でないと思うわけであります。  以上のような点をもって、私は本予算補正に対するおもなる反対理由といたすものであります。  最後に、私はこの際思い起しますことは、昭和二十九年の九月二十六日に吉田総理は、アメリカ日本の安全と平和、吉田内閣てこ入れを求められて出発し、わが日本社会党はそのとき同じ日に中国に行って日本の再建を、平和を、独立を目ざす方向がはっきり分れたことを思わずにはいられないわけであります。今また日本社会党首脳部中国に渡り、しかも岸さんが近くアメリカに参られることは、当時と符合を合わすものではないかと思い、まことに感慨深いものがあるわけであります。特に岸総理国民的な要望を解散によってきくことなく防衛計画を持ってアメリカに行き、そして日本の安全と岸政権てこ入れを求められようとすることは、まことに遺憾と言わなくてはなりません。特に本予算補正もそういうこととの関連を持つ、決して艦船二そうに関するものでなしに、わが国外交国防に関する基本に関するものとしまして、日本社会党は強く反対するものであります。  これをもって日本社会党反対討論といたすものであります。(拍手
  5. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これにて討論は終局いたしました。  これよヶ昭和三十二年度特別会計予算補正(特第1号)の採決を行います。  本案賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立
  6. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 起立多数と認めます。(拍手)よって本案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長口頭報告の内容及び報告書作成等につきましては、慣例によりまして委員長に御一任願いたいと存じます。  本案賛成の方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     小林 武治  迫水 久常     左藤 義詮  安井  謙     吉田 萬次  森 八三一     青柳 秀夫  石坂 豊一     泉山 三六  木村篤太郎     小山邦太郎  佐藤清一郎     一松 定吉  柴田  栄     関根 久藏  仲原 善一     草葉 隆圓  林田 正治     大谷 瑩潤  武藤 常介     加賀山之雄  梶原 茂嘉   —————————————
  7. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) なお、次回の日程は昨日の委員長及び理事打合会決定に基き、五月六日午後一時委員長及び理事打合会、五月七日午前十時委員会を開き、昭和三十二年度第二次補正予算の審査を進めることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時九分散会