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1957-03-28 第26回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十八日(木曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————   委員異動 本日委員小山邦太郎君、野本品吉君、 関根久藏君、久保等君及び藤田進君辞 任につき、その補欠として野村吉三郎 君、中野文門君、高橋進太郎君、松浦 清一君及び永岡光治君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            小林 武治君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            泉山 三六君            木村篤太郎君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            柴田  栄君            新谷寅三郎君            高橋進太郎君            館  哲二君            中野 文門君            仲原 善一君            西田 信一君            野村吉三郎君            林田 正治君            前田佳都男君            武藤 常介君            内村 清次君            海野 三朗君            岡田 宗司君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            中村 正雄君            永岡 光治君            羽生 三七君            松浦 清一君            山田 節男君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    法 務 大 臣 中村 梅吉君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 神田  博君    農 林 大 臣 井出一太郎君    通商産業大臣  水田三喜男君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    労 働 大 臣 松浦周太郎君    建 設 大 臣 南條 徳男君    国 務 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 宇田 耕一君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 小滝  彬君    国 務 大 臣 田中伊三次君   政府委員    法制局長官   林  修三君    人事院総裁   淺井  清君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    内閣総理大臣官    房公務員制度調    査室長     大山  正君    行政管理庁管理    部長      岡部 史郎君    自治庁財政部長 小林與三次君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君    防衛庁人事局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 北島 武雄君    経済企画庁調整    部長      小出 榮一君    経済企画庁計画    部長      大來佐武郎君    法務省刑事局長 井本 臺吉君    外務参事官   法眼 晋作君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局給    与課長     岸本  晋君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    大蔵省為替局長 石田  正君    文部大臣官房会    計参事官    天城  勲君    文部省調査局長 北岡 健二君    文部省管理局長 小林 行雄君    厚生省社会局長 安田  巖君    厚生省児童局長 高田 浩運君    農林大臣官房長 永野 正二君    食糧庁長官   小倉 武一君    通商産業大臣官    房長      松尾 金藏君    運輸省鉄道監督   局国有鉄道部長  細田 吉藏君    労働政務次官  伊能 芳雄君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    労働大臣官房労   働統計調査部長  堀  秀夫君    建設省住宅局住    宅総務課長   鮎川 幸雄君    建設省住宅局住    宅計画課長   井上 義光君    日本国有鉄道経    理局長     久保 亀夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員異動について申し上げます。  三月二十七日、苫米地英俊君及び館哲二君が辞任され、その補欠として土田國太郎君及び新谷寅三郎君が指名されました。また本日藤田進君及び関根久藏君が辞任され、その補欠として永岡光治君及び高橋進太郎君が指名されました。   —————————————
  3. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより昭和三十二年度一般会計予算外二件を議題といたします。  河野一郎君の本委員会への出席問題につきまして、委員長理事会申合せに基き、昨日来種々連絡をいたし、今朝電話をもって再度出席を求めたのでありますが、本日は出席ができないとのことでございました。  よって、理事会申合せにより、この際、去る十四日栗山委員から提出されました河野一郎君を証人として喚問することの動議議題といたします。  討論の通告がありますので、順次これを許します。
  4. 左藤義詮

    左藤義詮君 私はただいま議題となりました栗山君の動議反対いたします。  河野一郎君の出席問題につきましては、過般、委員長自宅を訪問せられ、またただいま御報告のありました通り電話で御交渉になったわけでありまして、河野君は本日までには出席の意思がないことがはっきりしているのであります。その理由として承わるところによりますと、昨年河野君が訪ソの際の会談内容については、当時農林大臣として答弁された通りであり、また現在行われております漁業交渉についてとられた行動につきましては、一切農林大臣に報告してあるので、必要があれば農林大臣にただしてもらいたいということであります。昨年河野君が訪ソされましたのは、現職の農林大臣として全権に加わられたのでありまして、昨年の漁業交渉内容は、当然現在の井出農林大臣に引き継ぎが行われているわけであります。また本年の交渉につきましては、河野君は全権委員でもなく、ただ側面から非公式に政治的な話し合いを行なっておられるにすぎないものと考えます。従いまして、漁業交渉そのものはもちろん、国会における答弁も井出農林大臣が全責任をもってこれに当るべきものでありまして、私どもは、河野君のあげられました不出席理由を了とするものであります。私どもは、社会党の各委員要求もあり、もし河野君が自発的に参考人として出席されるならば、円満に事を運ぶためにけっこうなことであると考えましたので、委員長をわずらわし、また与党といたしましても再三努力を重ねたわけでありますが、今日のところでは出席できないことがはっきりしました以上は、この上、証人として出席を強制することには賛成するわけには参らぬのであります。ことに河野君は私どもと同じ国会議員でありまして、国会議員国会証人として喚問するがごときはその前例もまれであり(「あるよ」「吉田首相喚問したぞ」と呼ぶ者あり)しかしまれでありまして、(笑声)この際は妥当な措置とは考えられぬのであります。  以上の理由をもちまして、私は本動議反対をいたします。(拍手
  5. 小林孝平

    小林孝平君 私は、河野一郎君の証人喚問として当委員会出席を願う動議賛成いたします。  それは今回、ただいま継続中の日ソ漁業交渉は非常に難航をいたしております。当初から難航をいたしております。この最大理由は、ソ連側から強くソ連主張として提案されたことが、わが方がこれをのむことができないからであります。ソ連側主張内容というものは、いわゆる八万トン、十万トンの線の問題であります。この問題は昨年国会におきまして、農林水産外務連合委員会がありました際に、私は河野農林大臣にお尋ねをいたしました。この八万トン、十万トンの線は将来おそらくソ連が強くこれを固執して、今後の日ソ交渉に重大なる支障を及ぼすであろうということを私は尋ねたのであります。これに対しまして河野農林大臣は、これはほんの双方の心覚えにすぎない、何ら両方を拘束するものでないということを強く言明されたのであります。私は、この言明にもかかわらず、おそらくこれが将来の重大なる支障になると考えておったのであります。たまたま今回のこの交渉が開始されるや、私が心配いたしましたこの八万トン、十万トンの線がソ連側から提案されまして、しかもその提案に当りましては、これは昨年河野イシコフ会談において取りきめられたものである、両方がこれは確約したものであると、終始ソ連側主張されておったのであります。このために当方は、河野農林大臣主張によりまして、これは確約でない、そういう相談はしたのでないという主張を繰り返しておるものですから、この会談が進展しなかったのであります。  そこで私たちはこの交渉を円満に妥結するため、また日ソ親善を深からしめる意味におきましても、河野農林大臣の当委員会出席を願いまして、その間の経緯を明らかにされたいと考えまして、参考人として御出席委員長にお願いした次第であります。委員長は非常に御努力をされまして、河野氏の自宅にまでおいでになりまして、この御相談をされたことに対しましては、私は非常に委員長敬意を申し上げます。その際に河野農林大臣出席ができないと出席を拒否されたのでありますが、その理由としては、ただいま自由民主党左藤委員から述べられたように、この交渉経緯につきましては、詳細農林大臣説明してある。これ以上のことは私は何もない。さらに今回のこの河野イシコフ会談内容なるものは、自分は関知しないと、こういうことを言われまして、当委員会出席を拒否されたのであります。左藤委員は今これをあげられまして、これがもっともであると言われたのでありまするけれども、私たち出席要求しました理由は、河野農林大臣がこの経過井出農相に話をされ、その話をされたものをわれわれが聞くということではないのであります。問題はその河野農林大臣井出農林大臣に話をされましたその内容が違っておるから、われわれは直接御本人から聞かなければならないということがわれわれの主張なのであります。(拍手)  八万トン、十万トンのこの問題は二つの重大なる意義があります。一方におきましては、日本関係漁民、あるいは日本国民は、河野イシコフ会談によりまして両者の間に密約が交されたのではないか。あるいは河野全権イシコフ漁業相に対して言質を与えたのではないか。きわめてこれは不都合であるという強い、根強い意見が全国にびまんしておるのであります。私は河野農林大臣が、この日ソ国交調整日ソ漁業交渉に当りまして、全力を振われ、非常に努力をされましたことに対しましては敬意を表するものであります。またわが党といたしましても、この点につきましては鳩山内閣に御協力を申し上げた次第でございます。この意味からいたしまして、私がこの河野農林大臣が絶大なる努力をされたのが、いたずらに誤解をされることによって、河野さんのこの努力が無になることを私は心配するところであります。おそらく河野農林大臣はさような言質を与えたり、あるいは密約をされたことはないであろうと考えるのでありまするから、この意味からも、私は河野農林大臣が進んで当委員会に出られることを河野さんのために私は望んでやまなかったものであります。  他の一点は、このようにして、これと反対河野さんがかりにそういう言質を与えなかったり、あるいは密約をしたのでないとすれば、ただいまこのソ連側から出してきておりまするところの条件は、これはいたずらに事をかまえ、そうしていたずらにソ連主張日本に押しつけるものという考え方が、また国民の一部にあるわけであります。こういう考え方が今後漸次強くなりますれば、日ソ国交親善の上に非常に暗影を投ずるものであろうと思うのであります。今後一部の事を好む人によって反ソ運動一つ手段に使われることを私は恐れるものであります。  この両点から考えましても、どうしても私は日本のため、また河野さんのため、特に自由民主党のために、河野さんが進んで当委員会に出て証言されることを私は望んだものであります。しかるにこれは拒否されました。しかるにこの八万トン、十万トンの問題は今までの問題であります。二、三日前に突如さらにソ連はこの八万トン、十万トンの条件のほかに、新たに十二万トンを日本に許可するかわりに、オホーツク海の出漁制限の問題を出して参りました。これは八万トン、十万トンの問題とは別に、国会において全然論議されなかった問題であります。河野全権から話を聞いたことのない問題であります。このような問題がいわゆる河野イシコフ会談によって決定されたものであるとして、新たな条件としてソ連側から提示されたものであります。これは考えようによれば、李承晩ライン以上の重大な問題でありまして、日本の今後の漁業の死命を制するものであろうといっても過言でないと存ずるのであります。この意味からも重ねて河野農林大臣が当委員会においてこの間の事情説明される必要があると考えまして、私たちは強く委員長にお願いいたしましたのでありまするけれども、ついにこれが参考人として出席を拒否されたのでありますので、私たちはここに新たに証人として喚問をして、河野一郎氏からいろいろこの間の事情を承わりたいと考えておるのであります。  ただいま左藤委員国会議員証人として喚問する例はない。あるいはごくまれであると言われましたけれども、かくのごときごくまれな例をわれわれがあえてやらなければならなかった理由は、河野一郎氏が参考人として出席されることを拒否され、さらにこの参考人として出席されることに対して賛成されました自由民主党諸君がこのわれわれの要求を今まで同調されたにもかかわらず、単に証人として喚問することの形式的な点にこだわって反対されるから、こういうことになったのであろうと私は考えるのであります。もし自由民主党委員諸君も、この間の事情を考えられるならば、河野一郎自身のために、また日本の今後の日ソ交渉の前途のためをも考え合せられるならば、おそらくこの証人喚問反対態度を改められて賛成されるであろうということを私は確信いたしまして賛成をいたすものであります。(拍手
  6. 曾禰益

    ○曾祢益君 私はただいま提案されました河野一郎君を本委員会証人として喚問するの動議に対しまして賛成討論を行いたいと存じます。  最初に申し上げたいことは、私及び私どもは決してこの問題をただ単なる委員会戦術とか、あるいはいやがらせとか、そういうような気持で従来まで主張し、あるいは本日なおこの動議賛成するものでは断じてないのであります。また私どもは非常に重大な日ソ国交全般のことを考えればこそ、どうしても河野君にこの委員会出席を求めて解明しなければならない、かように信ずるが故に、いわゆるこの点を強く主張するものであります。小林委員も今指摘されましたように、もしこの問題がうやむやで過ごすならば、せっかく日ソ間の国交調整ができ、いわばその最初の試金石ともいうべき今後の日ソ間のほんとうの建設的な積極的な協力関係を打ち立てることに対して、この河野君の言動が非常に大きなわざわいをなすことを憂えるからであります。もし昨年五月のモスクワにおける漁業交渉実相というものがあいまいにされておるならば、どうしても日本国民としてはソ連の今度の漁業交渉に対する態度はまことに不可解千万あるいは不合理きわまる、こういうような不信感を払拭することが不可能ではないかということをおそれるのであります。従いまして問題の中心は、河野一郎氏の喚問だとか何とかということが問題ではなくて、あくまで問題は、当面問題になっておりまする漁業交渉を円満に解決し、さらにそれを基盤として日ソ間の親善関係を強くするためには、昨年五月におけるモスクワ漁業交渉実体全貌をこの際内外に明らかにすることが必要である。その手段としてどうしても問題は交渉当事者であり、しかも従来から見るならば、非常に異例なことであるけれども、この外交交渉に当って必ずしも全貌を知らせないいわゆる秘密交渉をやった疑いが非常に濃厚な河野自身に、この委員会に出てきてもらわなければ真相の解明ができない。この段階に到達したがゆえに河野君の喚問要求するにほかならないのであります。  このことは私から今さら委員長並び同僚委員諸君に申し上げるまでもなく、決して今回の八万トン、十万トンあるいはオホーツク海に対する何らかの密約ということだけが、昨年の五月に河野君によって行われたモスクワ交渉の何といいますか、秘密ベールに包まれた問題の、これが初めてではない。これは皆さんよく御承知通りであります。すなわち、領土問題に関する点についても多くの疑惑に包まれたのが実は五月の交渉であったことは、皆様御記憶の通りであります。さらにまたこれは五月の交渉ではありませんけれども鳩山総理首席全権とする第二回の重夫なるモスクワ会談におけるこの交渉についても、実際上機微に触れた重要な、歯舞、色丹島に関する、あるいは国後、択捉島に関するあの共同宣言の非常にデリケートな交渉について、これまた河野全権がフルシチョフとのいわゆる水入らずの話し合いによってきめられたことは御承知通りであります。しかもその内容たるや非常に不明確であって、何ゆえに国後択捉継続交渉という日本主張が、最後に共同宣言内容に盛られなかったかの経緯については、委員長及び同僚委員の方が御承知のように、本委員会でありませんが、外務委員会において去る国会において共同宣言等が審議された際に、特に和みずからこれは秘密会でもよいから、重要なことであるから、この領土問題に関する実相、ことにアメリカの領土——小笠原沖縄等関連において、いろいろな重要かつ機微であるけれども、決定的な線が出たことを明らかにしなければいけないということで、特に河野君の出席外務委員会に求め、そうして外交秘密であるからいえないというようなことでなしに、この問題に対する解明を行なったことも御承知通りであります。従って今回が初めてではない、残念ながら。  こういう過去の歴史から見ても、どうしても日ソ漁業交渉を円満に解決し、繰り返して申し上げますが、それを跳躍台をして日ソ関係を建設的、積極的なよい方向にもってゆくためには、どうしても河野君みずからの説明が必要である、かように考える次第にほかならないのであります。  さらに申し上げるならば、今さら私が申し上げるまでもなく、本日の新聞にも出ておりますように、われわれが数回政府当事者である井出農相あるいは岸外務大臣総理大臣等から伺いました八万トン、十万トンに関する去年の五月のモスクワ会談経過と、今日なおソ連官辺主張しておりまする経過とは根本的な食い違いがある。左藤委員河野一郎氏は昨年の経過はすべてを井出農林大臣に話してあるから、井出君から聞けばいいとおっしゃりまするけれども、その点が今日完全に食い違っておるということが実体である。昨日のモスクワ放送によってもソ連側は、これはモスクワ放送のことでありまするから、無責任なる民間の意見ではなくて、ソ連官辺筋の意向を代表する放送局における対日放送の中において、確かに八万トン、十万トンという話が去年の五月のモスクワ交渉においてあった。さらにこのことは約束である、こういうことを言っておるのであります。当時、去年の五月の、あるいは去年の押し迫ったあの国会における日ソ漁業協定に関するわれわれの質問の際にも、われわれがこの点を非常に重視いたしまして、果してこの八万トン、十万トンという約束がどういう性質のものであるか、いろいろ解明に努めたのでありまするが、その当時、農林大臣河野君の御説明によれば、これは一応のものであって、決して拘束的な力はない。しかもこれとさらにソ連側国内において漁獲するいわゆる国内漁獲高との関連において、最終的に両国間の最大限度持続的制限を可能ならしめるような漁獲高規制を行うのであって、決してこの八万トン、十万トンというものが、そういう何といいまするか、永続的と言いまするか、包括的一般的の協定ではないということを繰り返し述べておられる。しかし事態はどうもそうは言い切れない。こういう事態が明らかになってきておるのであります。これははなはだ不幸なことでございまするが、そういうような事態をどうしても解明しなければ、両国間のこの交渉は決してうまくいかない。単なる政治的折衝では解決できない。かような段階になっておることは明瞭だと思うのであります。さらに当時は河野農相説明によれば、今度の漁業委員会が開催される前に、日本調査団ソ連の領海における漁獲状況等も十分に調べて、そうしてお互いに、いわゆる何といいまするか、カードを見せ合って、テーブルの上にカードを全部出して、そうして科学的基礎に基いて規制量をきめておる、こういうことをはっきり言っておられる。そういうことは今日行われておらないじゃありませんか。そういう状況である。  さらにオホーツク海の出漁制限については、これは全くわれわれから見ると、寝耳に水であったということであります。昨年のいわゆる暫定的な取りきめには、はっきりとわれわれに対してはオホーツク海における出漁制限あるいは自制ということは一つも示されておらない。それが今回ソ連は八万トン、十万トンをかんべんしてやるかわりに、実はもう一ついわば約束があったのだ、それはオホーツク海におけるこの自発的という形における漁獲制限問題と、こうなってくると、ますますもって昨年五月のモスクワ漁業交渉全貌というものは、全くわからない。全く秘密ベールに隠されておって、実体を知っておるものは、遺憾ながらソ連当局河野一郎全権以外にないということになったのでございます。  従いまして私はそういう理由でどうしても本委員会河野君の御出席を求めることが正しいのである。当初に申し上げましたように、戦術とかあるいはいやがらせとかいう問題では断じてない。この点をどうか委員長並びに各委員の方々が率直にお認めを願って、今やはなはだ遺憾であるけれども参考人として御出席を拒否されたということでありまするから、われわれとしてはやむなく、きわめて異例なことでありまするけれども証人として喚問する必要があると信ずるのであります。この点を十分に各委員にお考えを願いたい。一々左藤委員のおっしゃったことを反駁いたしませんけれども、まず趣旨において左藤君のいっておられることは筋が通らない。われわれはあくまで参考人として自発的に来られることが正しい。もしこれを拒否されることははなはだ日ソ国交の上において憂うべき状態を起すということを私は指摘申し上げたいのであります。  付随的な理由といたしまして、しかしこれは非常に大きなことは、いやしくもこれだけの重要な審議をしようというのに、どうしても自発的にお出にならない。従って委員会としては、委員会の意向は出席を求めているのであるから、委員会の威信にかけてやむなく証人として喚問するという段階になりました以上は、私はこの委員会の威信にかけたこの問題が、委員会内部の一種の対内的な考慮、自民党内部におけるいろいろ御事情かもしれませんが、そういうような考慮からこの問題が曇りを、暗影を受けて、そうして委員会として意見が合わない、賛否両論になって、そうして委員会の意思が暗影を受けて、威信が貫かれないというようなことになることは、はなはだ遺憾だと思うのであります。どうかそういう意味におきまして、これは確かに左藤委員も御指摘のように異例なことであって、われわれもあえて望むところではございませんけれども、われわれの予算審議もいよいよ終末に近づこうというこの段階において、きわめてわれわれの決定いかんが重大なる対内、対外の責任があるということを、どうぞ自民党の方々も、あるいは緑風会その他の各委員におかれても、十分お考えの上に、十分なる後世の世論に対する責任をお考え下すって、どうか全員一致河野君を証人として喚問するの動議に御賛成賜らんことを切にお願いいたしまして、私の討論を終りたいと存じます。(拍手)   —————————————
  7. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいま委員異動がありましたので御報告いたします。  久保等君、小山邦太郎君及び野本品吉君が辞任され、その補欠として松浦清一君、野村吉三郎君及び中野文門君が指名せられました。以上御報告いたします。   —————————————
  8. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は本動議賛成するものであります。(拍手)  元来、同僚議員を参考人、ことに証人として委員会出席を求めることは、よほど慎重考慮を要します。しかるに先般来本委員会として河野氏に参考人として出席を求め、また委員長みずからわざわざ訪問されたのは、昨年、河野イシコフ会談において、八万、十万トンの線を暫定的に話し合いをせられたことが、今回の漁業交渉に重大なる障害となっている懸念があるがためにほかなりません。  しかるに出席要求に対する河野氏の回答はきわめて不満足なものでありました。ソ連が本年を豊漁の年として、サケ、マスの漁獲量を十二万トンとするが、原則として八万、十万の線をくずさず、かつオホーツク海海域における日本漁獲量を制限するという二条件がついているのであります。  オホーツク海の問題については、昨年五月の衆議院の予算委員会において和田博雄氏が、ソ連から直接日本に帰らずして、何ゆえアメリカを回って帰ってきたかという質問に対し、河野全権は次の通り答えられております。「日ソ交渉の結果、アメリカ、カナダの漁業関係におきまして、説明を加える必要が生じてきたわけでございます。詳細に申し上げれば、従来オホーツク海における漁業計画を変更いたしまして、東海岸の方面にこの船団を回す必要が起ってきた。これは昨年アメリカ、カナダに私から説明をいたしました漁業計画に多少変更を加えることになりますので、変更を加える面における説明をする必要が起ってきた。その説明をするために私がアメリカに参り、カナダの方面には中部顧問と、松平全権をこれに当っていただくことにした」云々という答弁があったのでございます。この答弁によっても、また昨日のモスクワ放送から察しましても、オホーツク出漁制限の問題は、河野・イシコフの会談において、何らか話し合いがなされたのではないかと思われるのであります。  昨年三月ロンドン交渉が中絶し、その翌日からブルガーニン・ラインによる日本漁獲制限があり、河野全権によって漁業協定は結ばれましたが、七月末までに日ソ交渉の再開の条件つきで、しかもその後幾多の波乱曲折を経て、共同宣言の妥結とともに漁業条約は発効しましたが、河野氏は単に全権たるにとどまらず、強硬に日ソ交渉を妥結にまで持ち込んだ立役者であります。  鳩山河野、松本三全権が再三説明されましたにもかかわらず、参議院が付帯決議をつけたことは、日ソ会談内容国民が不安を持っておる証拠であります。  今や日ソ漁業交渉は重大岐路に直面している際、この問題を直接担当せられました河野氏の出席を求め、その説明を聞くことは漁業条約の成り行きを国民にかわって監視する責任を有する国会としては当然であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  ただここに希望を申し上げたいのは、年度末も切迫いたしておりまするから、河野氏の出席は、予算審議終了の後とし、いま一度参考人として出席するように再考を求め、これを拒絶せられました場合に初めて証人としての喚問手続をとられるという順序を踏まれたいことであります。  これをもって私の本動議賛成討論といたします。(拍手
  9. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより栗山君の動議の採決を行います。  栗山君の動議賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  10. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 少数と認めます。よって栗山君の動議は否決されました。   —————————————
  11. 小林孝平

    小林孝平君 議事進行。ただいま栗山君の動議が否決されましたけれども、予算審議上、われわれはどうしてもこの間の事情を明かにしなければならないと存ずるのであります。従いまして次善の策として、私は次のことを委員長に提案申し上げたいのであります。  それは昨年のモスクワにおける漁業交渉には河野全権のほかに随員として外務省から法眼参事官、水産庁の長官塩見友之助氏の両君が行っております。さらに顧問としては大洋漁業株式会社の社長である中部兼吉君、同じく日本水産株式会社の社長の鈴木九平君の両氏が顧問として行かれておるのであります。これらの方々は河野イシコフ会談には絶えず立ち会われまして、いろいろこの間の事情をよく御精通になっておると存じます。特に外務省の法眼参事官は今回の交渉に当りましても直接その責任者として活躍されており、さらにクータレフ氏に対しましても、この河野イシコフ会談内容はこうであったということを説明されておるはずでございます。従いましてこの四名を早急に当委員会出席してもらいまして、事情を聞きたいと思います。もっともこのうち法眼参事官と水産庁の長官でありました塩見君は政府委員でございますから、直ちに出席の通告をしていただけばいいのでありますが、顧問の中部兼吉君、鈴木九平君の両氏に対しましては、当委員会参考人として出席するの手配をとっていただきたいのであります。さらに私は午後から総理大臣、外務大臣にこの問題に関連いたしまして日ソ漁業交渉について質問をいたしたいと思いますから、それまでにこの四名そろって出席されるようにお手配願いたいと思います。
  12. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) お諮りいたします。ただいまの小林君の動議賛成の方の起立を求めます。(「動議じゃないよ」「委員長要求だよ」「政府委員は当然出るべきだよ」「何でも動議でやるのか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  ただいまの小林君の御趣旨に沿いまして理事会に諮ってこれを……(「理事会じゃないよ」「政府委員だけじゃないから」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  それでは私の申し違いであります。ただいまの小林君の御趣旨に沿うように努力をいたします。
  13. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 議事進行について。昨日私は本委員会におきまして、岸外務大臣に対して、仙台において死刑の判決を受けましたアメリカ兵の身柄が、仙台からアメリカ軍当局によって熊谷に移されました問題について質問いたしましたところ、外務大臣は、その事態については何ら報告も受けておらぬし、知らない。従ってこれを取り調べて善処するようなお答えがございました。この問題につきましては、これは法務省ともいろいろ関係のある問題でございますので、その岸外務大臣の実情を取り調べることに関連をいたしまして、法務大臣の御出席を願いたいと存じます。一つお取り計らいを願いたいと思います。
  14. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 承知いたしました。
  15. 天田勝正

    ○天田勝正君 関連いたしまして。ただいま岡田君から、死刑判決を受けた米兵の問題が申し述べられましたが、これのみならず、先日わが党の佐多忠隆君の質問、すなわち原子力研究所職員処遇問題についての答弁がまだ明らかにされておりませんので、あらためて宇田長官からこの問題を明らかにすることに相なっております。さらにまた、経済長期計画につきましても同様に明らかにすることに相なっております。かようなことを要求されるまで放置いたしますると、本委員会の審議がとかく停滞いたしますので、委員長におかれましては、私どもがかような発言をいたさない前に、保留になっておりまする部分はしかるべく処理していただきたいと存じます。  さらに私が先般の補正予算に関連した、補正予算のときに質問いたしました粗悪品輸出問題の一つの例といたしまして、気象観測器の中共向け未検査のものが輸出された件につきましても、これまた十分調査をして報告されることに相なっておるはずでありますが、これは後ほど私、本日質問するつもりでありますから、該当大臣はその御用意を願いたい。かような処置をそれぞれにとっていただきたいと思います。
  16. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 承知いたしました。  それではこれより質疑を続行いたします。湯山勇君。(「どういうふうにするのだかちっとも言わないじゃないか」「承知しましたと言ったんだ」「事務局しっかり補佐せよ」と呼ぶ者あり)
  17. 湯山勇

    ○湯山勇君 委員長、大臣の御出席は皆そろっておられますか。厚生大臣……。
  18. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 岡田君と天田君の御発言の御趣旨に対しては善処いたします。
  19. 湯山勇

    ○湯山勇君 私は完全雇用の問題についてお伺いいたしたいと思います。完全雇用は、政府としても経済計画の重大な支柱であるということを述べておられるわけでございますが、第一次、第二次五カ年計画の線は、非常に大きく後退して、もう十年もたたなければ完全雇用はできないといったような御言明がなされております。ところが対策もそういうふうな状態であるだけではなくて、完全雇用というのはどういうことかというのにつきましても、石橋総理大臣は、失業者のあるということは、経済の余力を示すものだというふうに言っておられるし、岸総理はこれに若干補綴を加えて、大体まあこういう考え方を肯定しておられる。ところが衆議院の予算の討論において、党を代表した討論の中では、完全雇用というものは、二%あるいは二・五%程度の失業者のあるのは当然だ。従ってあと二、三年で完全雇用はできると、こういうことを党代表の意見で述べておられます。こういうふうに見解がまちまちでは、一体完全雇用というのはいつできるのか、全く見当が立ちません。対策があるのかないのか、それさえわかりません。そこでまず完全雇用というのはどういうことなのか、関係大臣のこれに対する定義を一つ伺いたいと思います。労働大臣、経済企画庁長官、通産大臣、厚生大臣、おのおのから伺います。
  20. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) ただいまの完全雇用の定義につきましては、一定の定義はまだはっきりいたしておりませんけれども、社会通念上、失業者が最小限度の摩擦失業の範囲内にとどまるとともに、現に就業している者は安定的な職業についているという状態であると、私は思います。そう私は考えます。政府はこの線に沿ってすでに諸般の施策を推進しているところでありますが、これは並行して、完全雇用の具体的内容の設定については、新設を予定しているところの雇用審議会において慎重審議、検討いたしたいと存ずる考えでございます。この完全雇用の定義について、さらに他の例を申しまするならば、国連経済社会理事会の定義は、完全雇用とは失業が当然認めらるべき摩擦的、季節的要因の影響によるものを最小限度とし、その限度をこえない状態である、かように言っております。また国際労働機構、いわゆるILOの定義は、完全雇用とは失業している人々の割合が小さく、失業の大多数がわずかな短期間だけの失業しておる状態を、かように言っております。  また、もう一つは米国の雇用法、一九四六年の定義でありますが、完全雇用とは労働の意思及び能力を有する求職者のために、自家営業をも含めて、有効なる雇用の機会を与えるという状態であるといっております。政府はこれに対しまして、先ほど申しましたように雇用審議会を活用いたしまして、善処いたしたいと思います。
  21. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 私はこの定義について、学者やその他むずかしい定義を下しておると思いますが、私はごく平たく常識的にこの言葉を理解しておりますが、結局、雇用政策の目標というものをどこへ置くか、各国の事情によって違うと思いますが、日本の場合におきましたら、年々高等学校、大学というふうに学校を出る新規卒業者の中で、雇用を希望する者は漏れなく雇用の機会を与える。それからいわゆる潜在失業者に対してはできるだけ正常な雇用にこれを吸収していくというのが、まあわが国における大体雇用政策の目標といってもいいんじゃないか、そこらの目標が妥当ではないかと私は考えますので、こういう状態になることを、大体私どもは完全雇用といっていいんじゃないかというふうに、まあ平たく私は理解しております。
  22. 湯山勇

    ○湯山勇君 完全雇用の問題の中で、ごく切り離されて、簡明にわかる問題を外務大臣としての総理にお尋ねいたします。  それはやはり労働人口が海外へはけるということは、イタリー等においても非常に重視しておりまして、イタリーで雇用問題が深刻化しないのはそこにあるということでありますが、一体、来年度の移民の計画はどういうふうになっておるか、これについて将来の見通し、あるいは新たに開拓すべきところがあるかどうか、そういう問題についてお伺いいたしたいと思います。
  23. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 海外へいわゆる移民が推進されることは、やはり国内における雇用の問題にも相当な影響力があるのでありますが、しかし日本の現在の状況からいたしますというと、本年、三十一年度において出ていった者が約六千名でございます。三十二年度の計画といたしましては約九千人を予定いたしておりまして、もちろん、これが大きく今問題の日本の雇用に対する意義というものは、イタリー等とはおもむきを異にいたしておりますから、今後の何といたしましても、私どもはこの移民の関係は、あらゆる面における施策を遂行して、これを増していきたい、かように考えております。現在、主として御承知通り、中南米に出ておりまして、また本年度もそういう計画でありますが、受け入れの方面からは相当に期待がされておるのでありますけれども、一番大きくネックがあるのは、私は現在のところ、輸送の点において非常にネックがあるように思うので、これらの点につきましても、どうにかして増強して、将来はもう少し拡大していきたいと、かように考えております。
  24. 湯山勇

    ○湯山勇君 私はオランダへ参りましたときに、オランダの政府が、まだ公式ではありませんけれども、ニューギニアに四十万ないし五十万の日本の移民を受け入れてもいいというような内意を持っておるということを聞いたのでございますが、こういうことについては御検討になっておられるでしょうか。
  25. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) その問題については全然私ども聞いておりません。おりませんから、一つ事実の点をなお調査検討いたしてみたいと思います。
  26. 湯山勇

    ○湯山勇君 それからまた飛び飛びになりますけれども、完全雇用と生産の伸びとの関係、それから国際収支との関係で非常に重要になってくるのは、これは経企長官が見えてからお尋ねいたしたい問題ですが、日本のチープ・レーバー、これが輸出の増進に相当影響しておるんじゃないか。つまり国際競争力を高めるためにコストを下げる、そのコストを下げるということが逆にはね返って、輸出を阻害するというようなことがあるのではないかということを心配するわけですが、実際問題としてそういうことが輸出を妨げておるというような実例、そういうものは現在どれくらいありましょうか、これは外務大臣か通産大臣か、どちらかからお伺いいたします。
  27. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) このチープ・レーバーによるダンピングというようなことによって今輸出が妨げられておるという例はございません。その疑いを欧米諸国から持たれて、具体的に調査された例はございます。たとえば合板とかミシンとか、そういうようなものについて日本が調査を受けたことはございますが、結論として、これは日本のチープ・レーバーによるダンピングではないのだ、やはり公正な値段だったということが認められて解決しておる例がございますし、そのほか、たとえばフランスとか、いろいろ日本品の輸入を制限している国は幾つかございますし、またそういう傾向も今出ておりますが、結局向うの国では、国内産業の保護という観点からやったものであって、日本のこの低コストをはばむというためにとられた措置というものの例は現在のところございません。
  28. 湯山勇

    ○湯山勇君 外務大臣に御答弁いただくことは終りましたからけっこうでございます。  それとあと、企画庁長官がお見えにならなければどうも質問ができないので、待たしていただきます。
  29. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  30. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 速記を始めて下さい。
  31. 湯山勇

    ○湯山勇君 企画庁長官にお尋ねいたしますが、今、労働大臣からは、完全雇用の定義をお聞きしたわけです。それは、完全雇用についての把握が各大臣まちまちで、また、党内でも全くまちまちになっておる。こういうことではとうてい完全雇用の達成が望めないので、まずその定義からお尋ねしたわけですが、長官の完全雇用に対する定義を、どういうふうに把握しておられるかを承わりたいと思います。
  32. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) お答えいたします。完全雇用の定義につきましては、第一は、農林業以外の全産業部門において近代的な雇用労務者をできるだけ増加させる、毎年の新規労働力人口に対してすべて従業機会を与える、そして現在不完全従業者と称せられているもののうち、転業可能な者、約二百万ないし二百五十万と見ておりますが、これを正常な雇用に転移させる、こういうことであります。  そうしてさらに低所得者層に対しましては、その所得の向上、それから疾病とかあるいは老令等によりまして労働力を失った者につきましては、社会保障の充実をはかる、そういうことを考えております。
  33. 湯山勇

    ○湯山勇君 厚生大臣がお見えになりましたので、やはり同じことをまたお尋ねしますから、厚生大臣は厚生大臣の立場において、完全雇用というのはどういうものだとお考えになっておられますか。
  34. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 完全雇用とはどういうものかというお尋ねでございますが、非常にこれは学説もいろいろあるようでございますが、私といたしましては、失業者が一定の摩擦状態におって、それから就業者が満足し得るような状態において全部就業している段階だと、こういうふうに私は考えております。
  35. 湯山勇

    ○湯山勇君 労働大臣は、数の問題だけではなくて、安定的な職業につくということを言われました。それから企画庁長官は、近代的な労務者が——近代的な労務者という内容をおっしゃいました。それから厚生大臣は、就業者が満足し得るという中身を言われたわけです。  そこで、そういうふうに各大臣が考えておられる完全雇用は、一体どうすれば達成できるか、現在、神武以来の好況といわれながら、それが達成されない理由はどこにあるか、この二点について各大臣から伺いたいと思います。
  36. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 経済計画を立てます場合には、経済規模の拡大を、国民分配所得の面におきましては七ないし八%の伸びをとるのが適当である。その伸びを七ないし八と押えますと、現在の完全雇用目的を達成するためには十年ないし十二年を必要とする、こういうのが経済企画庁の結論であります。
  37. 湯山勇

    ○湯山勇君 答弁漏れておりますがね、なぜそれが今日達成できていないのか、どこに問題があるか。
  38. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) それをどういうわけで達成しておらないかと申しますると、それは労働力人口、生産年齢人口の増加が非常に多い。特に学校卒業生が昭和三十一年から三十五年までは平均年間九十九万人、そして昭和三十五年から昭和四十年までは平均年間が百十四万人、昭和四十年から昭和四十五年までは平均年間が九十九万人、こういうふうに平均の学生の新規労働力人口というものは五カ年後、三つに区分をして数字を拾ってみましても非常に差がある。そしてそれが従業機会を与えなければならないと思われるものは、昭和四十年からはぐっと少くなりまして、五十万以下にこれがなる、こういう数字の傾向があります。従ってただいまの日本の労働力人口の配分を見てみますると、学校卒業生が非常に多く社会に出てくるという特殊な人口の成長、労働力人口の構造現象があります。従ってそれに合わすために、今明年だけではそれを消化し得るだけの力はない。従って長期にわたってわが国の年齢別の労働力人口に合わす必要な企業を計画をして、そしてそれは経済の伸びを七ないし八%の中に持っていって、そうして短期間にこれを吸収し尽すということはむずかしいから、十年ないし十二年でこれを消化するように導いていきたい、こういうわけでございます。従ってただいまのところ、すぐに雇用希望者を全部吸収し尽すということはできないと、こう思っております。
  39. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 完全雇用に対する経済計画に対しましては、企画庁長官の仰せになりました通りであると思います。ただ先ほど神武景気であるのになぜこういうような状況であるかという御指摘でございますが、私はお問いになりました心持と同じに考えております。今日、神武景気と言っておりますけれども、それはやはり景気が偏在しておる、自由主義経済の中においては当然こういうことはあると思うのです。それでこれを是正するというのが、この内閣の持っておる一番大きな任務でございますから、一千億減税、一千億施策、約七百億に達する財政投融資というようなものを計画的に行なって参りまして、その偏在する経済状況を引きならしていきたい、それが今後の岸内閣の一番大きな任務であると思っております。同時に完全雇用を達成するためには、ただ経済拡大だけではこれは私はなし得ないと思います。再三ここで述べました通りに、やはり社会保障と並行しなければならないというのは、今日の労働市場を六十五才以上の人がどれだけ圧倒しておるかというと、約二百万人であります。また十五才から十八才までの幼年齢の人がどのくらい労働市場にあるかというと、四百七十万ぐらいであります。これらの老齢の者及び弱年の者というものが、養老年金その他の社会保障制度が拡充強化されまして、労働市場を圧倒しない、老後安心して生活ができるという道が一方に開かれているのでなければ、完全雇用は達成しないのじゃないか、かように思っております。
  40. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 企画庁長官、労働大臣もすでにお答えのようでございますが、私はこの完全雇用を達成するということは、やはり公共事業であるとか、あるいは財政投融資であるとか、あるいはまた、一般経済力の拡大強化によって雇用が増大する、そこで完全雇用が行われると同時に、その際は十分な社会保障を実施する、そういうような総合的な施策によって完全雇用というものが実現すると、こういうふうに考えております。
  41. 湯山勇

    ○湯山勇君 労働大臣の御答弁はそれとして受け取れますけれども、厚生大臣の御答弁は、社会保障を担当する厚生大臣の御答弁としては了解できません。それは労働大臣は、完全雇用も雇用の拡大と社会保障と並行するという言葉を使われましたけれども、厚生大臣はその方の担当ですから、一体この二つは並行的にやられるべき性質のものか。所得の第一次分配、第二次分配の関係にあるわけでありますから、厚生大臣が現在のような雇用の状態、量質ともにそういう状態で、一体社会保障の完璧が期せられるか期せられないか、これはおのずから問題が違ってくると思います。どうお考えでしょう。
  42. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 社会保障の充実といいましても、やはりこれは国力の裏づけがなければできないわけでございまして、私が先ほどもお答え申し上げたのは、雇用の増大は、公共事業であるとか、あるいは財政投融資であるとか、あるいは経済界の活動によって雇用の増大をすると同時に、また社会保障を並行して、相ともに総合的な施策を強化していく、そこに完全な完全雇用ができるのだ、こういう意味のお答えをしたわけであります。
  43. 湯山勇

    ○湯山勇君 厚生大臣の御答弁は逆になっておりますが、これはあとの質問でだんだん明らかにして参りたいと思います。ただいまの御説明では、結局企画庁長官の言われたように、新たな労働人口が減るのを待つよりほか手がない。結局お手あげの形ですが、これは明瞭です。何かおっしゃることがあればあとで伺いますが、全く対策はありません。ことに労働大臣、厚生大臣、企画庁長官の言われる経済の伸びに従ってと、そういうことですけれども、これも私は大へん問題があると思います。その第一は、今日、日本の経済の動向は国際収支に非常に大きくかかっている。国際収支、国際競争力を高めるためにはコストを引き下げなくちゃならない。コスト引き下げのために合理化をしていく、生産性の向上をやるという、この要求と、雇用を増大するという要求とは、互いに矛盾する要素を持っております。あなた方は、ただ生産が向上すれば雇用もそれに伴って増大するのだと言われますけれども、今の欧州共同市場の問題とか、あるいは国際物価は軟調を示しかかっているという実情とか、それから先ほど通産大臣言われましたように、直ちにチープ・レーバーが輸出に影響はしてないと言われるけれども、いろいろ調査があったりすると、そういう傾向もあります。こういう困難の中にあって輸出を伸ばしていこう、そのためにコスト引き下げをするという大きな命題と、それから新らしい就業者を吸収する、これは最も大きな矛盾があるわけですけれども、この調整については一言もお触れにならない。ここが私は一つのポイントだと思うのです。これについて各大臣はどうお考えですか。
  44. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 経済規模の拡大の途中においてオートメーションをはかっていく、こういうことは当然のことであります。そしてそのオートメーション化の途中において所要労働力が低下するおそれがある。これもお説の傾向の面もあると思います。ただオートメーションをいたしました場合に、経済の拡大とオートメーションによって、たとえば鉄鋼をとってみましても、第一次製品、第二次製品、第三次製品と、こう基礎材料からだんだんと加工工程が精密になってくる過程を見てみますと、たとえば八百万トン、鋼材八百万トンという場合に、その中のオートメーションによって基礎の部門の従業数あるいは雇用量が多くなるということは、期待は少いと私たちも考えております。オートメーション化によって良質なものをマス・プロできるということの効果の方が大きいと、こういうふうにそれは思っております。しかし、その良質のものをマス・プロにかけた場合に、第二次製品としてこれを加工する、第三次製品として、たとえば日本で最も最近顕著なものは造船でありますが、造船のように労働吸収力が非常に増しておる。要するに第一次製品部門においてオートメーションが行われて、良質のものが多量に出てきて、そしてそれがコストを安く供給された場合、第二次、第三次製品部門においては基礎材料が豊富になる。しかも、それが安価であるということの原因によりまして、造船のようなものが非常な輸出力を見せておりますし、また労働吸収力は非常に多かった。また最近の日本の貿易のウエートの中で、機械関係は特に伸びが非常に顕著でありますけれども、機械関係のような伸びの顕著なものは、ほとんどこれがオートメーションによって非常な影響を受けることが大きいというよりも、むしろ新職場を中小企業以下に与える機会が非常に多かった、そういうふうに思われる点がたくさんあります。輸出、たとえば造船が非常にいんしんになって所要労働量は増しておりますが、造船関係関連産業、たとえば内燃機の関係、あるいは弱電関係のいろいろの部門等々を検討いたしますと、それぞれの部門において労働吸収力は増しておりますから、そういう意味でオートメーションの振興ということは、産業全般の伸びには必要でありますけれども、その結果、労働従業機会が多くなったというのは、われわれは見のがすわけにはいかぬ、むしろ歓迎すべきものであったと、こういうふうに思っております。
  45. 湯山勇

    ○湯山勇君 労働大臣は同じですか。
  46. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) ただいま企画庁長官の申しました点と、私は全く同感に考えております。ただ私は、御指摘になった矛盾があるんじゃないかということについて、私もそう思うのです。しかし、わが国が置かれているところの現在の運命というか、わが国の置かれておる現状というものは、私はあらゆる困難を克服して、加工貿易の線と、未開発国土の総合開発計画によって、多少の困難はあっても、この経済力を発展することによって、完全雇用の道に行くよりほかはないと思っております。その間において、過渡期における摩擦的なことがあることは、一つ政策を豊かにいたしまして、これを救済して行くほかはないと思います。
  47. 湯山勇

    ○湯山勇君 労働大臣のあらゆる困雑を克服するという考えは私も賛成です。ぜひそうしてもらいたいと思います。それじゃ何をやってもらうか、あとで申し上げます。企画庁長官の御説明では、ただ、ばく然とそういうことをおっしゃっただけで一向納得ができません。私は生産全般についてコストを下げなくちゃならないという要求があるわけです。それは第一次であろうが、第二次であろうが、第三次であろうが、みなあります。そこで、いずれもがそういうふうにするというその要求と、それからそれらへの雇用を増大して行くという要求とは矛盾する、それをどう調整するかというので、大臣のように、二次も三次も手放しでおっしゃったのでは、私の問いに答えていないし、生産の伸び八%に対して、一体労働生産性がどれだけになっておるかというような、そういう分析に立ってのお答えもありません。そこで、私は企画庁長官がかなりずさんなことをおっしゃっておるというのを数によってお尋ねしたいと思います。労働生産性は一体どれだけ伸びておりますか、三十一年の前半、後半で。
  48. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 生産性につきましての定義は、非常にいろいろ技術的にむずかしい問題を含んでおりますが、しかし、これをどういうふうに定めるかというのは、実は学者の間に定説がないのじゃないか、こういうふうに思います。しかし一応生産指数を雇用指数で割りました労働生産性について見ますると、製造業部門におきましては、昭和三十年度には前年に比べまして六・六%の上昇であります。三十一年度は九・一%、三十二年度におきましては八・四%で、引き続き上昇が見られるということであります。
  49. 湯山勇

    ○湯山勇君 私のお尋ねしておることと違っておるわけです。総労働生産性は幾ら伸びておるか、それからそれらの業種別、規模別、その内容を承わりたいと思います。
  50. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 政府委員から数字を上げさせます。
  51. 小出榮一

    政府委員(小出榮一君) 補足して御説明申し上げますが、生産性に関するお尋ねでございまするが、先ほど大臣からお答えになりましたように、製造業の部門につきましては、昭和三十年度におきましては前年度に比べて六・六%、三十一年度におきましては九・一%、三十二年度におきまして八・四%というふうに上昇しておるのでございますが、この中でマイニングの方の鉱業部門につきましては、昭和三十年度におきまして前年度と比べまして二七・四%の上昇でございます。三十一年度は一八・七%、三十二年度は一〇・四%というふうに、それぞれ上昇が見込まれております。製造業部門におきましては、特に業種別のこまかいデータはただいま持っておりませんけれども、全体といたしまして、生産性向上の特に著しいものといたしましては、鉄鋼関係、セメント関係、それから化学工業、それから紙パルプ、自動車工業、化学繊維というふうな各業種につきまして、生産性の向上が特に製造業部門の中におきまして、他の業種に比較して著しい、こういうふうな関係にあります。
  52. 湯山勇

    ○湯山勇君 私の方から申し上げますと、経団連で調べました数字によりますと、三十一年度だけを見て、上半期と下半期では平均して三〇%以上の上昇が見られます。調査した業種は二十九です。その中で労働者数より生産性が上回ったもうが十九あります。二十九の十九、それから労働者の数が変らなくて生産性だけが向上したものが三、労働者が少くなって逆に生産性の上ったものが五、労働者の数が生産性を上回った率を示したものは、わずかに二十九の中で二つしかありません。しかも、これらの生産性の伸びた率というものは非常に大きくて、時間当ての生産量にいたしましても、二十九の中で二十六の業種は上っております。そういたしますと、八%の生産の伸びと言いますけれども、生産性の伸びは、これで見ますと多いのは八〇%も伸びております。わずかに下回ったのが二十九の中の二つ、一割にも足りないというような状態では、長官の言われるように総生産八%の伸びに対して、それに対応する八十九万というようなそういう新規雇用の伸びというものは見られない。この点をどういうふうに計数的に御説明になるか、これを伺いたい。
  53. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) ただいま御指摘になった面の八%と申しますのは、われわれは経済全部、農業も含めてのパーセンテージでありまして、製造工業部門とかの非農業関係の数字だけを取り上げて参りますと数字はまた違ったものになりまして、それはまたそれぞれのただいま御指摘になった産業部門の特殊な、今二十九種ですか、二十九につきましては、それぞれそれは別の数字を持っております。
  54. 湯山勇

    ○湯山勇君 そうすると、農業とか、その他の今言われた以外のようなものは、逆に生産性が下がらなければ、言われるような雇用はできないことになりますが、そういうことを期待しておりますか。つまり生産性の向上と、それから雇用との関係ですから、生産性が今のように相当大幅に上っておると、そこは労働者を締め出す要素しかありません。締め出されたにもかかわらず、現在より少くなるにもかかわらず、農業等の部面においては雇用がふえるというような今の御説明だとすれば、その他の部面でふえるとすれば、その他の部面というのは生産性が低下する、こういうことでなければ、言われたような実績にはならないということになりますが、そういうことになりますか。
  55. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 農業部門を含めて経済の伸び七ないし八%と、こういう伸び率で参りますると、雇用量は結局経済の伸びが七ないし八%の復利計算方式で参りますから、そうなって参りますと、十年ないし十二年でもってただいまの労働力人口、いわゆる失業者を吸収することができる、こういうことであります。そうして農業関係の雇用量は増大傾向にはただいまありません。むしろ農業関係の労働力人口は第二次産業部門に就業、転業をする傾向も最近あります。従って第二次産業部門、第三次産業部門の労働吸収力というものは最近は上昇傾向を見せておるのです。それは上昇傾向を見せておりますが、それはどういうところに原因があるかと申しますると、一人当りの生産性の向上ということは、もちろんただいま御指摘になったような数字もあるでありましょうが、設備の拡大化、あるいは新規産業の育成等によって労働力を吸収し得る場が作られて行く、それが経済の規標七ないし八%の中にそういう新規職場の増加がある。特に第二次産業部門、第三次産業部門に顕著な傾向になってきておりますから、農業の従業者数が低下いたす反面、吸収力はそういうところにあると、こう申したわけでございます。
  56. 湯山勇

    ○湯山勇君 だから第一次産業から吐き出されたものが第二次第三次へ移行して行くと、こういうことですか。
  57. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 第一次産業の中にも第二次産業へ移動して行くものもあります。しかし労働力人口それ自身の構成は、何と申しましても新規の学校卒業者が一番多いわけでありまして、それ以外の部面から年々出てくるところの労働力人口は、それはそれほど、いわゆる完全失業者の中に入る要素は少いと、こういうのでありますから、第一次産業から第二次産業に移るだけの数字が非常に多くて、その移動によって労働力構成内容が変っておると、こういうふうに申し上げておるわけではありませんので、年々の雇用対象は、学生を中心とする新規労働力人口と、そうして農家その他から第二次、第三次産業の方に希望移転してくるものもある、それを含ゆて、われわれは第二次、第三次の産業部門でこの吸収し得る能力を最近の数字から持っておるのだと、そういうことを申し上げたわけであります。
  58. 湯山勇

    ○湯山勇君 大臣の御説明は私にはよくわかりません。というのは、生産性は、つまり一人当りの生産は非常にふえる、そこで第一次産業からは人はむしろ減る傾向にある、農村も労働人口の吸収力は減ってくる、それだからあふれた者は、大臣の説明で言えば第二次産業、第三次産業以外には行くところはないわけです。ところが二次、三次においても、やはり生産性の向上ということを考えておられる、そうすればその受け入れも少くなって行く、これにも限度があると思います。それからもし二次、三次の方へ受け入れるとすれば、新規とか何とかいうことを抜きにして、それからの生産性が低下しなければ受け入れるだけの余地はできないのじゃないか。つまり新しい工場で当分は建設事業に当るとか、生産は何にも出てこないというふうなところでなければどうにもならないのじゃないか。極端な例ですけれども、国鉄が二倍の事業量を来年度かかえます。それでいて、それに関係する人員は一人もふやさない、こういうこともこの前運輸大臣が述べておられる。そういうことの関係を明確に、一つよくわかるように御説明願いたい。
  59. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 御指摘のように、運輸省関係の問題は、私はこのこまかい数字をまだ手元にそろえておりませんから、よくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、貿易の規模におきましても二十四億ドルの輸出が二十八億ドルというふうに伸びて参ります。従ってその背後におけるところの生産の量は伸びるのでありまして、鉄鋼だけを見てみても、来年の原材量の輸入計画スクラップだけ見てみても、三百五十万トンを交渉しなければならぬというふうな数字になっております。従って量が大きくなるということは雇用量を増大する原因であって、たとえば公共事業におきましても、八万人ばかりのものを新しく吸収し得るというふうにわれわれは見ております。それは事業量の増大、生産量の産業部門における増大、貿易規模の拡大に見合う国内産業の拡大、それに伴う所要労働力人口の増加の需要傾向等から見まして、われわれは生産性の向上はしましても、所要量の拡大に伴う労働吸収力は増すと、こういうことでございます。
  60. 湯山勇

    ○湯山勇君 大臣が生産が増すから労働力が増すという一本やりの片道の御議論のようで納得できないけれども、時間がかかりますからこれでこれはやめます。
  61. 栗山良夫

    栗山良夫君 ちょっと関連質問。経企長官にお尋ねいたしますが、ただいまのあなたのお答えを聞いておりますというと、なるほど湯山委員が理解されないのは私は当然だと思います。従って重ねて関連で御質問を申し上げたい。今まで申し上げたことおわかりになりますか、よろしいですね。
  62. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) はい。
  63. 栗山良夫

    栗山良夫君 今あなたは、経済が拡大すれば雇用量が伸びる、たとえば公共事業のごときと、こういう例をあげられました。公共事業は何とかして失業を救済しようという、そういう目的をもって起されておるわけであります。従って公共事業を起せばそれだけ就労数がふえるということは、これは当然のことだと私は思います。公共事業を起して就労数がふえないというのであれば、これは何ら意味のないことであります。従ってそういうことは別でありますが、ただいま日本の経済の拡大の中心になっておりますのは、近代的な大企業であります。これはお認めになると思います。鉄鋼、石炭、金属、その他化学産業まで含めて近代的な大企業の組織下にある。従って経済がどんどんそういうところが中心になって伸びて行きまするときに、そこで果してどれだけ雇用量がふえるかということが私は問題だと思う。ところが私が持っておる資料によりましても、たとえばある製鋼所のごときは、生産稼働は三〇%もふえておるにもかかわらず、常用者というものは全然ふえておりません。また造船のごときにおきましては、三〇%生産がふえておるにかかわらず人員がかえって減少しておるという例もあります。こういうことはどういうことかと申しますと、生産の質的な向上があった場合に、一人当りの仕事量というものが機械にどんどん置きかえられて、そして人間が働らく量が減っておることを示しておる。機械に人力がどんどん代替されつつある。従ってこういう状態を続けて行けば経済の拡大が即比例をして、プロポーショナルに雇用量がふえるということはどうしても言えない。雇用量は停滞をしてしまう。雇用量の増加ではなくて生産がどんどんふえて行く、こういうことになる。しかもそういうことをどんどん続けて行きますと、最後にどういうことになるかというと、相当高度な技術を持った勤労者というものが近代産業の中にどんどんできて参る。そして技術を持たない、こういう近代産業の中で働らくことができないようなたくさんの勤労者というものが町にあふれてくる。これが二次、三次産業へ吸収されて、低賃金の労働条件で働かなければならない。こういうような、今までの雇用問題を論じておったときとは全然違った形が今経済界の中に現われつつある、私はこう考える。これの分析なしに、ただ完全雇用であるとか、潜在失業者をどうするとか、そういうようなことを申しましても、近代化による完全雇用にはならないと私は深く信じておる。そうして自分は及ばずながらもこの点で勉強しておるのですが、企画庁の長官はそこまでお考えになっておるか。先ほど述べられた、数年前に国会で論議されたと同じような御答弁で、果して雇用問題を乗り切って行けるかどうか、この点を関連質問申し上げたいと思います。
  64. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) ただいまお話がありましたように、経済、特に貿易もそうでありますが、国内の需給関係をみましても、質的に非常に内容が変りつつありますので、特に科学的な技術的なものを必要とする貿易品が多くなっております。機械部門、化学工業部門、繊維関係だけを見ましても非常な変化が起って参っておりまして、それに対応するためにオートメーションを必要とする面も非常にふえて参っております。従って御指摘の通りに、技術的なレベルの高い者でなければ、これをこなすことができないような環境もますますふえてきておるという面は、今御指摘の通りと私は思うのです。それに対しましては、政府はどうしても教育、あるいは既教育者の再教育、また従来の加工工程の技術だけでは参りませんから、新規の技術の教育等ももちろんこれをやらなければいけないと思っておる。それに対する配慮はいたしております。ただオートメーションによって非常に雇用量を少くし得る面ももちろんありますけれども、先ほども申し上げました中の工業部門の中でも、たとえば化学繊維等の新しいもの、これがオートメーションによって非常に機械的に優秀な品物ができてくる。そういたしますと、それを織り、加工する分野も非常に広くなってきております。そうしてわれわれの調査によってみますと、末端の加工、家内工業的な就職機会というものも非常にふえて参っておる。従って良質のものをたくさん製造し得る機械化の進展に伴って、第二次、第三次加工部門におきましては手工業的なものが非常にふえて参っております。こういうことも言い得ると考えます。従ってただいまの日本の産業構造は、御指摘のように科学的な技術的な養成に応じて再編成をしなければならぬ環境にありまして、そうしてそれを急ピッチに行う、こういうことでありまして、その間に所要労働の内容について非常な変化、特に技術的な配慮、施設をしなければならぬものが多い、こういうふうにもちろん考えております。そういう点につきましては、十分な施策を技術的に、科学的に対策を立てて行う方針であります。
  65. 栗山良夫

    栗山良夫君 ちょっともう一点だけ。今のお話の中で、だいぶおわかりいただいたようでありますが、もう少し突っ込んで申しますというと、たとえば技能程度、技術程度の高い勤労者というものに技術教育をやって、これによって雇用量をふやして行くのだというような意味のお話がありましたが、これは私は全然ふえないとは申しません。工場ができればふえるでありましょうが、しかしそういう者の技術教育というものは、各大企業がみずから自分の手でやっております。そうして完全に充足されておるわけであります。たとえばある例をあげますと、最近できました最新式なセメント工場におきましては、勤労者一人当りの一日の生産高は九十五万円に達しておる。こんな高い生産高を上げておる工場はほかにないのでありますが、この工場は徹底した技術革命を行なったオートメーション工場なのであります。あの粉じんの飛びかうはずのあのセメント工場に、ほとんど粉じんは見当らない、私は実際工場を見ておりますが。そうして勤労者は肉体労働を全然しない、ただメーターを見ているだけです、全部機械がやる。そういうような状態でありますので、いかに政府が声を大にして大企業を伸ばし、雇用数を拡大して行こうと言われましても、今のような技術革命の傾向の中において、大企業の中に雇用し得る勤労者の数というものは多くを望めないということであります。そうすると、第二次、第三次の方で吸収するとおっしゃいますが、そういうところは、自民党の最低賃金法の制定すら今日ちゅうちょされておる状態において、この大企業と、ますます劣悪な状態で労働条件というものは離れて行くのであります。そこで企業そのものにも、大企業と中小企業、零細企業があると同じように、勤労者の中にもこれと同じような階級分裂が起きてくる、これをおそれるのであります。そうして、勤労すれば生活が充足されて文化的な生活を営み得るということを憲法が努力目標にしておりますけれども、その努力目標からますます離れて、そうして働いて一日のかてすらも得られないような勤労者が日本の中にどんどんふえていると、こういうことをおそれて、湯山委員もおそらく完全雇用理論というのは、大企業並みのような、そういう労働市場というものはどんどんできるということを前提として御議論になっておるのだろうと思いますが、そういうところまで深く考えておいでにならないのではないか、私そう考えるから御質問申し上げたのであります。その点は長官の御説明ではまだちょっと足りないのでありますが、そこまで御認識をいただいておるかどうかお尋ねしたいと思うのであります。
  66. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 大企業の中におけるオートメーションに伴って雇用量が必ずしも事業量の増大に比例しない、こういうことはたしかに言い得ると思います。ただ、国全部の雇用をどう考えるかということになりますと、日本の産業の九九%までは御承知のように中小の企業でありますから、労働吸収力の一番大きい面は何といってもこれは中小企業の部面でありまして、中小企業に対するところのこの技術的なレベルアップをわれわれは考えなければならない。そうして御指摘になった賃金格差等も起らないような社会的配慮は、これはもうもちろんいたさなきゃならぬと考えております。特に中小企業の中には非常な、技術で他にかえることのできないものがあって、たとえば六十時間も勤務するというような、非常な経済の過渡期における特殊現象も起っておるのでありますから、そういうものは当然一人の労働者にまかすのではなくて、新らしい雇用の機会を、そういう時間の不当延長等のないことによって、これをカバーして行くということは、特に熟練関係では最近顕著な傾向が起っております。そういうこともなるべく、労働時間の短縮、必要な短縮の標準がありますから、それに応じて再配分計画を当然これはきめておかなければならぬ。それにはやっぱり技術の普及をはかる、こういうふうに考えております。ただいま申されたように、階級分裂がそういう面から起るおそれがある、そういうものについては十分な配慮をしなきゃならぬ。これは全然御指摘の通りと考えております。
  67. 湯山勇

    ○湯山勇君 大臣が今たまたま長時間労働等の問題に触れられましたので、その方をお尋ねしたいと思うのですが、その前に、やはり大臣のおっしゃることには、たとえば中小企業の数、これは数が九九%あっても生産が九九%という意味じゃないと思いますし、それから生産の伸びが八%あれば、複利的にやっぱり雇用も伸びて行くのだ、たしかに生産が伸びれば雇用もふえると思いますけれども、その伸びる率と、それから合理化による伸びる率、これとのギャップができるので、大臣の言われるような複利計算には行かないということを指摘しておったわけです。それはまあそれだけにします。  それで、この就業時間の関係ですけれども、長時間就労の数、短時間就労の数、それを一つ労働大臣から承わりたいと思います。
  68. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 就労者の就業時間の時間別分布については、今数字にわたることですから、こまかしく申し上げておきます。  昭和三十一年における農林業における就業者数は千六百八十二万であります。その就業時間分布を見ますというと、週一時間から十九時間のものが三百十万であります。それから二十時間から三十四時間のものが三百十七万であります。三十四時間から四十八時間のものが三百五十九万であります。四十九時間から五十九時間のものが三百二万であります。六十時間以上のものが三百七十万であります。  次に非農林就業者について見ると、就業者総数は二千五百四十六万でありますが、一週一時間から十九時間のものが百四十八万、二十時間から三十四時間のものが二百十五万、三十五時間から四十八時間のものが七百九十九万であります。四十九時間から五十九時間のものが六百五十五万であります。六十時間以上のものが六百九十四万でありまして、これを前年度と比較してみますというと、農林業においてはいずれの場合も微減傾向を保っております。だんだん減ってきております。非農林業においては三十四時間未満のものが十六万に減少いたしております。三十四時間から四十八時間のものは二十七万増になっております。四十九時間から五十九時間のものが六十二万増になっております。六十時間以上のものが七十六万増と、長時間のものの増加の傾向が著しい状況になっております。  なお、昭和三十一年三月における企業規模の就業所分の分布を見ると、三十人未満の規模のものに属するものは全産業が七三・四%であります。非農林業では五六・五%であります。三十人から九十九人の規模に属するものは全産業で五・七%であります。非農林業は九・四%であります。百人以上の規模のものに属するものは全産業で二〇%九であります。非農林業は三四%一になっております。  以上であります。
  69. 湯山勇

    ○湯山勇君 そうすると、企画庁長官にもお聞き願いたいのですが、六十時間以上の長時間労働者が七十六万、一割もふえています。そこで、先ほどの生産の伸びということは、これはたしかに合理化による伸びもあると思いますけれども、むしろ長時間労働、これにかかっている面が多いのではないかということも考えられますが、両大臣の御所見を伺いたいと思います。
  70. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) その点は確かにあると思います。要するに長時間労働によって生産の伸びが支えられている面がある。これはこの急激な拡大経済に伴う技術者の補充が十分でないことによって起っているのが原因というふうに思っております。従ってそういう点につきましては特別な緊急措置を講じなければならない。それからもう一つは、雇用条件について十分な雇い主との関係において、うまく話し合いのつかない社会的な面があるように思われます。そういう点につきましては緊急対策を講じなければならぬと思っております。
  71. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 大体、今、企画庁長官の御答弁と同じでありますが、私どもも小さな企業をやっておりまして、熟練工や技術者というものの不足していることは、先ほど栗山さんの御意見もございますけれども、これは実際熱練工と技術者の数は足りません。従って追いまくられて、輸出工業なんかやっている場合に、やむを得ず夜業あるいは時間外の作業をさせるということになりまして、これは労働基準法で許されている範囲内における二割五分増の賃金を払ってやっているのでありますが、私はこの日本の雇用関係を完全にするためには、やはり日本の教育制度というものを、日本の伸び行く産業、近代産業国家としての日本の姿をほんとうに担当し得る勤労者と言いますか、国民教育をそこへ持って行くのでなければ、ほんとうのものにならないと思っておりますから、私は文教も大いに考えなければならぬ問題だと思っております。
  72. 湯山勇

    ○湯山勇君 私はそんなに遠い先のことをお尋ねしているのじゃなくて、緊急な問題について、まあとりあえずお伺いします。  そこで、今技術者が足りないから長時間労働するのだということですが、それだけでしょうか、お二人に聞きます。
  73. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) ただいま御指摘になった七十万余りの……。
  74. 湯山勇

    ○湯山勇君 いや、六十時間以上で七十六万という……。
  75. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) その数字の内容につきまして、今非農林だけでなく……。
  76. 湯山勇

    ○湯山勇君 非農林だけです。
  77. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) その数字の内容につきまして、今、業種別の数字が手元に……整理をさしておりますから、その上で申し上げたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、熱練工の不足のために無理をかけておる面がかなりある。そのほかには労働条件が十分に検討されないことによる影響もある。たとえば家内労働関係の中小企業以下の、むしろ零細企業の中にはそういう現象が特に起るおそれがある。こういうふうに思ってそれに対する調査をいたすように配慮いたしております。
  78. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 今、宇田君の答えましたように、中小企業の面においてこの増加率が非常に多いと思います。それは技術、熟練ということを申しましたが、もう一点、先ほどちょっと触れましたけれども、輸出産業その他政府に納入する仕事というものが、船積みその他の期限がありますから、期限に追いまくられる場合は、生産はやはり期限内に作らなければならぬということが、これは熟練工あるいは技術者のみならず全従業員にそのウエイトはかかって参ります。特に輸出産業においてはそれが非常に多いと思いますが、大体において中小企業の関係が一番長時間の方に行くと思いますから、これは中小企業の振興対策とともに、やはりこれからも考慮しなければならぬ問題だと思います。
  79. 湯山勇

    ○湯山勇君 両大臣とも大へんきれいごとでおっしゃいますけれども、もっと実態は深いところにあると思います。私は一つ例を申し上げますからお聞き願いたい。これはある定時制高校を出まして、この十二月に上京してきたある会社の工員です。つい十二月上京し、今の所に幸いに勤めることができるようになりましたが、さて会社に入って働いてみますと、給料がとても安く、その上一日に残業を四時間行うのに二千五百円しかもらえぬ始末、よろしゅうございますか、それから途中は省きますが、残業も月何十時間やらぬばなりません。もちろん働くということを僕はいとうのではありません。むしろ残業を一時間二十円余りでも喜んで今後の自分の道を開かんためにがんばっております。こういう実態がむしろ私は多いのではないか、先ほどの中小企業の中ではですね。どうお思いになりますか、両大臣から伺いたいと思います。
  80. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) そういう御指摘の事件はかなりあると思います。
  81. 湯山勇

    ○湯山勇君 お認めになりましたので、結局低賃金が過重労働を強いておる。低賃金が過重労働を強い、それが新しい就労者を拒否しておる、こういう事実もお認めになりますか。
  82. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) そういうことも中小企業の中にはあると思います。
  83. 湯山勇

    ○湯山勇君 低賃金、貧困がその原因にあるということも両大臣ともお認めになりましたので、次には勤労者の性別、年令別、これも先ほどちょっとお話ではありましたけれども、詳しくお聞きする時間がありませんから端的にお尋ねしますが、共かせぎの数がおわかりでしたらお伺いしたいと思います。
  84. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 数字に対しましては説明員に答えさせます。
  85. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) お答えいたします。労働力調査によりますると、昭和三十一年の九月におきまして、有配偶者で女子が就業しておるという者の数は九百五十三万人、こういう数字になっております。
  86. 湯山勇

    ○湯山勇君 その働いておる理由について伺いたいのです。
  87. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) これにはいろいろ理由があると思います。一つは、終戦後、やはり女子が家庭から職場に出まして働こうという気運が非常に醸成してきたということが、まず第一にあげられると思います。それから第二番目には、やはり収入の足りない点を外に出ることによって補って、さらに向上さしていこう、こういう気分もあると思います。また特に最近家庭内の合理化というような気分が非常に出て参りまして、卑俗な言葉で申せば、共かせぎしても電気洗濯機を買おうというような気分も出てきておる。これらのことが相待ちまして、女子の有配偶者の就職数がふえておる、こういうことだろうと考えております。
  88. 湯山勇

    ○湯山勇君 生活補助のために働いておる者の数は大体どれくらいございますか。ただいまの第二の理由
  89. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) その点は特に数字におきましても出ておりません。これらにつきましては、またいずれ別途調査をいたしたいと思っておりますが、現在のところ的確な数字はございません。
  90. 湯山勇

    ○湯山勇君 両大臣にお尋ねしますが、低賃金者の実態調査を労働省はするようにということを昭和二十五年に、どこでしたか、賃金審議委員会から答申されてもう何年になるでしょう。七年になるでしょう。そしてまだそれがわからないというのはどういうわけですか、お伺いいたします。
  91. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 毎月勤労統計その他五人未満の従業員の勤労統計というようなものが不完備であります。それで今年の予算におきましても千六百万円ばかり、片一方は五百三十万円ぐらいの予算を計上いたしまして、毎月勤労統計を確実に把握して、これを基礎にしていろいろな施策を講じたいと考えております。
  92. 湯山勇

    ○湯山勇君 昭和二十五年に三年間かかってこういう実態を調べるように答申があったのですが、これはやったのですか。もう七年もたって、三カ年の仕事ができてない。
  93. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 以前のことでありますから、説明員から全答弁いたします。
  94. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) ただいまのお話でございますが、昭和二十六、七年ごろにそのようなお話がありました。労働省では低賃金、産業別にその平均賃金的な調査は実態調査をしておるわけでございます。それからなお一、二年おきに、現在毎月勤労統計が三十人以上についてのみとっておりまするが、これを補足する意味において一、二年おきに中小事業所の実態調査をやっております。ただ私の申し上げましたのは、生活困難のために共かせぎをしておる者がどのくらいあるかというお尋ねでございましたが、そういう調査をやっておらない、こう申し上げたわけであります。
  95. 湯山勇

    ○湯山勇君 そこで今のように生活補給のために働いておる者、特に婦人が解放されて職場に出るというのは、未婚の人も多いと思うのです。今お尋ねしたのは配偶のある者で尋ねたわけですから、第一の理由は収入不足、こうなりますね。よろしゅうございますか。……肯定になりましたので、これもまた低賃金が原因です。それから十五才以下の勤労者、基準法違反といいますか、これはどれだけありますか。
  96. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 十八才未満じゃないですか。十八才から十四才まで。
  97. 湯山勇

    ○湯山勇君 ええ。
  98. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それは大体記憶は四百七十一万だと思っております。
  99. 湯山勇

    ○湯山勇君 義務教育を受けながら職場で働いているもの、これは幾らありますか。
  100. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 統計的な数字でございますから私から御説明申し上げます。  ただいま大臣の申されましたのは、十四才から十九才までの低年令就業者の数でございます。なおただいまお話のありました十五才未満で義務教育を受けながら働いておるというものは、労働基準法によりますると監督署長の許可を受けまして証明書をもらった上で働いておる。いわゆる新聞配達が典型的な例でございますが、そういうものであります。この数は私今、手元に持っておりませんが、やはり全国で七、八千はおるのではないかと考えております。後ほど正確な数字はお手元に差し上げたいと思います。
  101. 湯山勇

    ○湯山勇君 そのために学校に行けない者の数はどれくらいありますか。
  102. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) そのために学校に行けない者の数は、私の方では調べておりません。文部省でただいまのような児童について、やはり副業をやっておるために事実上学校に通えない者がどれくらいあるかという数字は調べたものがあるはずでございますので、これも後ほどお手元に差し上げたいと思います。
  103. 湯山勇

    ○湯山勇君 基準局は学校へ行けなくてもそういうものを許可しますか。
  104. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 基準法によりますると、許可いたします条件は、学業の妨げにならないということを条件にして許可いたしておりまするので、許可いたしますものは、その点を調べて学校長の同意書と申しまするか、そういうものをつけさした上で許可することになっております。
  105. 湯山勇

    ○湯山勇君 よくわかりました。ところが実態は労働大臣お聞き願いたいのですが、中学校の夜学が、これはやむを得ず黙認のような格好になっておるのが現在三千九十八名あります。それから貧困のための長期欠席者は十五万以上ありますよ。その中で家計の助けのために働いておって、学校に行けないというのは約二万あります。これらもやはりその主になったものは生活困難つまり低賃金からきておる、都会に特に多いという現象だと思うのですが、どうお考えになりますか。
  106. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) その低賃金の問題については、やはり中小企業の振興対策によって回復するよりほかに道はないと思います。そういうことはあると思っております。
  107. 湯山勇

    ○湯山勇君 それから厚生大臣にお尋ねしますが、勤労者であってもしかもボーダー・ラインにある、つまり生産に従事しておりながらしかもボーダー・ラインにあるという者の数はどれくらいございますか。
  108. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) お答えいたします。ボーダー・ラインの労働可能な労働力人口というものは詳細わからないのでありますが、政府委員より答弁いたさせます。
  109. 湯山勇

    ○湯山勇君 それじゃよろしうございますが、生産に就職しておりながら生活扶助を受けておる者の数、これはどのくらいございますか。
  110. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) その数もちょっとわからないのでございますが、ただこういうことは調べがついております。ただいま生活の保護を受けている数が約六十万世帯、このうちの半分三十万世帯、その中に約五十七、八万の労働可能の人口がある。それがどの程度働いておるかということになると、ちょっと今のところ資料はない。
  111. 湯山勇

    ○湯山勇君 そういう資料がなければやはり対策は立たないと思います。ボーダー・ラインにある勤労者の数は約九百七十万と厚生白書にあるはずであります。それから就業していて生活扶助を受けている者、これも相当数あります。これもあなたの方の資料にあったかと思います。これらもみな低賃金からきておると思います。生産に従事しておって、しかも生活できないような賃金をもらっておる者が相当数ある。現在の完全失業者よりもたくさんある。こういう事態はやはり雇用問題を含めてこれらを解決する基本的な要素だと思います。そこで労働大臣にお尋ねいたしたいのですが、一体仕事をしながら食えないというのですが、労働再生産のためには最低どれくらいな賃金が必要とお考えになりますか、労働大臣。
  112. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) その限度についてはいろいろな見方がありますが、日本政府考え方として立てたものがございますから、政府委員から答弁させます。
  113. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 労働力再生産のためにどのくらいの費用がいるかというお尋ねでございますが、これはその地域あるいは労働者の年令とかあるいは性別とか、家族構成とかその場合々々によって相違するものであると考えます。それから日本の特殊性といたしまして、農村周辺等におきまして副業的に工場に通っておる、あるいは内職的な仕事をしておる、そういうような者が非常に多いというような特殊性も考慮いたさなければならないと思います。これらの者につきまして、やはりその地域あるいは業種あるいは雇用形態というようなものによりまして、再生産費用を測定していくということが適当ではないかと思われますので、一律に幾らというようなことはちょっと申し上げかねる段階でございます。
  114. 湯山勇

    ○湯山勇君 たとえば東京で十八歳で独立している者ではどうでしょう。
  115. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 東京におきまして十八才で独立しておると申しましても、やはりその地域が、どこから通勤しておるか、あるいは実物給与がどのくらいあるかというような点を考慮いたさなければならないと思いまするので、これが十八才の者について再生産費がどのくらいであるということにつきましては、私どもまだ申し上げかねる段階でございまして、こういう問題は、御承知のように近く中央賃金審議会等も再開されますので、そういうところで十分議論していただきたいと思います。
  116. 湯山勇

    ○湯山勇君 議論してくれではありません。これはお尋ねしておるのです。それではだれかモデルとしてこういう数字だということをお示しを願いたい、幾らという額を。
  117. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) たとえば東京におきまして、通勤しておる、しかも実物給与がないという年少十八才の労働者につきまして、どのくらいの収入が必要であるかと申しますると、これは一律のものは申し上げられませんが、まあ大体のところ私は今のところ親のある者もあります。それから独立しておる者もあります。独立しておる者についてはやはり四、五千円くらいのところではないか。かように考えております。ただこれもものによりまして、業態によりまして非常な差異があるということをつけ加えさしていただきます。
  118. 湯山勇

    ○湯山勇君 大体標準の考え方はおありになると思いますが、それに達しない者の数が全国でどれくらいあるとお考えになりますか。
  119. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 今のお問いはたしか八千円未満の者をお聞きになっておると思いますが、それは六百十六万であります。
  120. 湯山勇

    ○湯山勇君 いや、八千円ではありません。
  121. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) これは総理府統計局の労働力臨時調査によりまして申し上げますが、全国で四千円未満の所得を得ておる者の雇用者の数が百二十一万人でございます。それからなお四千円から六千円までの収入を得ておるものは二百二十五万人、かような数字になっております。
  122. 湯山勇

    ○湯山勇君 そこで労働大臣、最初の困難を克服してやる問題にくるわけです。今のように、かりに十八才六千円なら六千円、これを保証すれば、時間外労働はうんと減って参ります。それだけ雇用がふえて参ります。共稼ぎの分も大分減って参ります。貧困のために働いておるというのが相当あるのだということがわかったわけですから。そういたしますと、最低賃金六千円を実現すれば、どれくらいかかるでしょう、経費は。
  123. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 金額については、政府委員から答弁させます。
  124. 堀秀夫

    説明員(堀秀夫君) 最低賃金の六千円をかりに実施いたしました場合に、最低賃金未満の労働者を最低賃金六千円までに引き上げるに要する費用は、大体一年間で五百億ないし六百億円程度であると考えます。ただこれには、六千円あるいは七千円程度におきまして、下のものを上げまするために、労務管理上、押し上げられるという費用は入っておりません。純粋に下のものを六千円まで上げるというのに要する費用は、五、六百億円程度であると、かように考えます。
  125. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 湯山君、時間が来ましたから……。
  126. 湯山勇

    ○湯山勇君 五分くらいはいいと言っておられますから。  大へん違うのです。私の計算では、百九十三億ということになっておりますが、それはあとでお願いします。  そこで、今のような実態ですから、労働大臣はこの際、今までのいきさつから判断して、どうしても困難を克服して、完全雇用のためにも、最低賃金制を実施されなければならないという御決意をお持ちだと思いますが、お持ちかどうか。
  127. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 最低賃金の問題は、過日、閣議懇談会において決定いたしまして、近代産業国家としては、どうしても最低賃金を検討する必要がある。従って、労働問題懇談会においていろいろ答申を受けたものを内容といたしまして、四月一日から中央賃金審議会の再開をいたすことを決定いたしまして、同時に行なわれる業種別の協定賃金の内容でありますから、これに対する調査検討を進めることにいたしております。また、中央の賃金審議会を設けるとともに、地方の賃金審議会の問題が問題になってくると思いますが、これは、その後の情勢の推移を見まして、決定いたしたいと思っております。
  128. 湯山勇

    ○湯山勇君 私がお尋ねしておるのは、大臣の心がまえをお聞きしているのです。とにかく生産に従事すれば生活できるというだけの賃金は確保するという御決意はあるかどうか。
  129. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) これは私は、やはり働いたら食えるという世界にしなければいけないと思うのです。それが、今直ちにやるという場合に、困窮の結果働いておる方々に満足させることができませんけれども、ところが、今直ちに一律に八千円とか、六千円ときめますというと、先ほど来いろいろ御質問のありましたような実情の中にある中小企業は、全部つぶれてしまいますから、そうなると、むしろ現在よりも失業者が多くなるという結論になることをおそれまして、従来この問題についても、やはり相当な時間と研究と、政府の施策が必要であると思います。いわゆる従来四千円しか出しておらん。これを六千円出すと、二千円違うのであります。その二千円の違いは、生産コストの内容に影響ないように、つまり原料費の中から、あるいは経営費の中から、あるいは運賃の中からそれを生み出していくという工夫が生産確保の場合において行われなければ、経済戦に勝つことができませんから、それらの総合施策が行われるように、またこれは、政府の政策として成功させて、困窮の方々が働けば食えるという世界を早く作ることが必要であると私は思っております。
  130. 湯山勇

    ○湯山勇君 そのためには、やはり最低賃金制を早く作ること以外にないと思います。  厚生大臣に、お急ぎのようですから、まとめてお尋ねいたします。それは、今のような最低賃金の確保、つまり働けば食える。そして全部のものが仕事につくという態勢にならなければ、私は、社会保障はできない、財政的にもできないし、それから理論の上からもできないと思いますが、これに対する御意見と、あと、そういうことの裏づけとして、零細企業に対する対策の一つ、五人未満の事業所の健康保険、これはどうするか。いろいろお考えのようですけれども、健康保険法というのは金持ち保険、五割の負担が持てないものはかかれません。今、労働大臣が言われたように、零細企業のものは、全部国保に入れられても、半額負担ができませんから、何の恩典も受けないことになります。これを解決する方法は、私どもが提案しておるように、全部健保と、一律にするか、あるいは社会保障制度審議会の第二種健保を設けるか、政府が国保の給付内容を七割にするか、そういう施策がなければ、現在のまま国保へ入れても、これは私は、何ら零細企業の恩典にはならないと思う。これをどうされるのか。  それから、国保を四年間で必ずやられるのか。その御決意。それからそのためには、公平な基盤を作らなければなりません。無医村の解消とか、給付の公平化とか、あるいは地方財政にしわ寄せしないための事務費の——今、大蔵大臣いらっしゃいませんけれども、大蔵大臣のお考えのようなことでは赤字ができますから、強制的な法律を作らない限り、これは市町村は応じません。これもおわかりだと思うのです。そこで、これをどうなさるおつもりなのか、やるつもりならやるつもりの、明確な一つ案をお示し願いたい。それから、国民年金制度をおやりになるということですが、これは、三年後に必ずおやりになるか。おやりになるとすれば、どういう方法でやるかは別として、やるということについての根拠がなければなりません。これこれだからやるのだ。方法は別だ。これは検討する。ほんとうにやるのかどうなのか、それについて財政的な見通しはどうか。  それから、次にお尋ねしたいのは、生活扶助を減しておりますけれども、今まで、お聞きのような事情で、生活扶助を受けながら働いておるボーダー・ラインが数百万もある。こういう状態では、生活扶助を来年度減しておりますけれども、これはまことに根拠が明確ではありません。むしろ今度、実績が減ったのは、地方財政の赤字の二割負担がここへしわ寄せされて減っておるという観測もできると思います。で、それはそれとして、単価は上げておられますが、こういう人の生活の中で占めるエンゲル係数は非常に大きいのですから、米価が上れば当然基準も上げなくてはならないということになりますが、これはそうかどうか。これだけ申し上げて、お尋ねします。
  131. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) たくさん数がありましたようで、落ちましたらまたおっしゃっていただければお答えいたします。  第一点の、最低賃金をきめなければ、社会保障が完全にできないのじゃないかというお尋ねでございましたが、最低賃金をきめるということについては、私は、これはもう非常に当然のことと考えております。ただ、まあ諸般の事情がありますので、急いできめてほしいということについては、全く同意見でございます。われわれ厚生省といたしましては、というか、政府といたしましても、いわゆる弱体労働力が労働化されていく。そこに完全雇用をはばんでいるという面につきましては、これはやはり社会保障の方に持ち込んで、できるだけ完全雇用の方を促進したいという考えであることを申し上げておきます。  それから、その次の健康保険の問題でございますが、これは、四カ年間でやるという政府がはっきりした態度をきめておりますので、いろいろこれは、御指摘になりましたような困難の事情がたくさんでございます。これらの事情は、十分まあ計算済みと申しましょうか、予想のもとに立って、実は踏み切ったものでありまして、今お述べになられましたようないろいろな困難の事情は、一つ解決して参りたいと、かように考えております。  それから、五人未満の零細企業者に対する政府の医療保障の問題をどういうふうにしたら解決するか。いろいろこの問題について案が出ております。その案をお述べになられたのでございますが、私どもどれをとるか、ただいま検討中でございまして、まだきめてございません。しかしこれは、もうそう長く放置を許さないと思います。十分検討いたしまして、はっきり踏み出したいと思います。しかし、それについては、やはり今お述べになられましたように、相当これは、財政上の負担を覚悟してかからないと、ほんとうの保険制度、社会保険ができないことは、今お述べになりました通りでございます。それらも十分考慮の上で、一つ踏み切って参りたいと、これは、そんなふうに考えております。  それからもう一つ、この国民保険を法律で調整してやる意思があるかというお尋ねでございましたが、私どものただいまの考え方といたしましては、国民保険をしたいということは、政府も、これはもう医療保障四カ年の計画をやるということを声明しておりまするし、また、国民も、これは非常に待望されておりますので、市町村の熱意のあることも、これはもう御承知通りでございますので、できればその支障になっている財政上の問題を中心として、法律の調整をしなくともできるように追い込んで、そうしてまあ四カ年で解決いたしたい、こういう一応の考えを持っておりますが、しかし、それだけでは成果を期せられない。どうしても法律によって調整するようなことをしなければ解決できないというようなことがはっきりして参りますれば、それも一つ解決しても、皆保険を完全実施しよう、こういう今のところ考えでございます。  それからもう一つ、生活保護の問題でございますが、生活保護費の基準改訂をしたのであるが、予算がふえていないということは、これは、たびたびお答えを申し上げておりますが、就職の増加と申しましょうか、要保護者の収入増加に伴いまして、生活費の支給額が減って参ったのでございまして、これは、国といたしましても、地方といたしましても、今お述べになられましたような、財政上の理由一つしぼろうというような意図を強く出したために、ふえ方が少なかったというふうには考えておらないのでございますが、しかし、いろいろそういう見方もございますので、これらの点については、十分一つ実施の際に注意いたしまして、そういうことのないようにいたしたいと、これはまあ義務費でございますから、予算は一応のめどとして計上いたしておりますが、実施面にはそういうことのないようにいたしたい。もう一つ、米価が改訂される。上ったら一体生活保護の基準を見るかというお尋ねでございましたが、これは十分見るという考えでおりますから、御承知願いたいと思います。
  132. 湯山勇

    ○湯山勇君 じゃ、厚生大臣けっこうでございます。  それから、時間がありませんから、これで終りますが、最後に私どもは、政府の完全雇用の政策というものは非常に無計画であると思います。これは、ただ生産の伸びだけに依存して、それで、結局人口の減るのを待っている、こういう状態で、十二年先の状況を今から見通すことは不可能です。おととし作った五カ年計画がまた変っておる状態ですから、そこで、こういう問題を別の角度から解決するために、最低賃金法を出しております。それから、今の健康保険の改正とか、あるいは失業保険に五人未満を入れたらどうか、こういうのをお出ししておるので、これらは、政府がお考えになっても当然御賛成になる問題ばかりだと思います。それで、ぜひ一つ関係大臣、これらの問題を、これは党派の問題じゃなくて、国に課せられたものとして、今の貧困、それから低賃金、これからの解放、完全雇用の実現のために早く実現していただきたい。これを実施していただいて困られるのは防衛長官だと思うのです。それは、ニクソン副大統領が、仕事のないものは自衛隊に入れというような発言をかつてしたことがあります。この間、自衛隊員のいろんな放送の中に、仕事がないから仕方なく入ったのだということが非常に多うございました。それで、そういう状態になれば、防衛庁長官は、徴兵制度というようなことをお考えになるかどうか。完全雇用ができれば、自衛隊は減るというようなことはお考えになりませんか。最後にそれだけお聞きして終ります。
  133. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 防衛力の充実は、ただ部隊を作るだけではございません。国家の経済力が伸びなければ、この国力の基盤というものはよくならないのであって、その意味では、失業者が減る、雇用が増加するということは決して悪いことではない、また、いろいろ新聞などでは書かれているかもしれませんが、去年なども、平均いたしまして五倍以上の応募者を持っております。そして、いよいよ入隊のときに、入るものは少いというようなことも指摘せられておる節がございますしするけれども、これは、募集いたしましたときと入隊いたします際の時間的なずれもありまするので、年々大体二〇%ぐらいは、通知を出したもので入らないものがあることを予定してやっておりますので、最近特に悪くなったとは思わないのでありまして、私はむしろ、よほど多数、何倍もあるのを、たとえば、五倍あるのを、そのうち五分の一しか採用しないということになると、ぜひ入りたいという意欲を持った人がかえって自衛隊に対して反感を持つというような場合もございまするから、私は、これは、ふえましても何ら差しつかえないと確信いたしております。
  134. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 先ほどの岡田委員からの質問に対しまして、法務大臣から発言を求められておりますから、これを許します。
  135. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 先ほど、衆議院の法務委員会に、最高裁判所の機構改革の議案の質疑を願っておりまして、出席をしておりましたので、岡田委員の質疑を直接拝聴することができなかったのでありますが、御質疑の趣旨は、去る三月の二十日に、仙台の地方裁判所で判決のありましたアメリカ兵のオービス・J・C・ブーンという男の身柄の移送についてのことであったようであります。この問題は、この米兵が日本人を殺害した事件で、日本側で検挙いたし、事件を起訴いたしまして、仙台の地方裁判所で裁判が進められておったのでありますが、同時にこれは、米軍も殺害をいたしておりまして、米国側においても起訴をして、裁判を進めておる事案でございます。さような関係と、もう一つは、この米軍は仙台の苦竹キャンプに勾留をされておったのでありますが、アメリカ側といたしましては、苦竹のキャンプが非常に手薄で、こういう重大犯人を勾留しておくのに場所的に適しないということから、埼玉県の朝霞キャンプの方へ移したいという希望をかねがね持っておりまして、仙台の地方裁判所で本件の裁判が開始された当時から、日本側に了解を求めておったのであります。しかしながら、日本側といたしましては、いろいろ一審の裁判が進行いたしまして、裁判内容等が十分に明確になって、公判を通じて明確になってからでなければ、遠い地点に移されるということは困るということで反対いたしまして、そのまま最近まで苦竹のキャンプに勾留されておったのであります。で、ちょうど三月の二十日に第一審の判決がございまして、死刑の判決になりました。被告は二十二日に控訴の手続をいたしました。一審の判決が済みまして控訴の段階にもなりまして、証拠も十分に確定をしておる段階になりましたので、米軍の希望を日本の検察側が了承いたしまして、そこで埼玉県の朝霞キャンプに移されて、こちらで勾留をされることになったのでありますが、これにつきましては、米軍側としては、日本の裁判に支障を来たさせるようなことは絶対にしないと、必要な際には何どきでも指定の場所に直ちに護送をいたしまして出頭させると、こういうかたい約束を申し出ておりましたので、これを信頼いたしまして日本側も同意したと、こういうことであるのであります。で、従来も、この事件はもちろんでございますが、日本側の裁判に出頭を必要とする場合に、米軍側でこれを拒否したり、あるいは支障を来たした事実はないそうでございます。ことにアメリカ側としては、必要があればヘリコプター等で直ちに護送をいたしますので、まあ、高等裁判所における裁判に支障はなかろうという判断のもとに、同意をいたしたようであります。  それから行政協定の第十七条の関係でございますが、行政協定の第十七条には、「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行うものとする。」と、こういう定めになっております。従いまして、合衆国の手中にある人間である場合には、公訴を提起するまでは合衆国側が拘禁をすると、日本要求に基いて拘禁をすると、こういう定めになっております。この公訴提起後のことを、あらためて規定は、明文はないのでありますが、この明記された十七条の反対解釈及び推理解釈からいたしましても、公訴が提起されれば、日本側の勾留を必要とする場合には、日本が勾留状を発しまして勾留をすることは可能なのであります。しかしながら本件の場合は、先ほども申し上げましたように、事件が米兵を殺した事件でもありまして、米軍側の方でも軍事裁判にこの被告を付しておりますことと、日本側といたしましては、そういう事情から、本人に逃亡のおそれがないということ、並びに証拠の隠滅されるような事情も、証拠がすでに捜査当時明確でありまして、おそれがないと、こういうことから、こちらは勾留状を発しませんで、米軍の勾留に託しておったと、こういうような次第でございます。突如仙台の苦竹キャンプから埼玉県の朝霞キャンプに被告が移されましたので、世間にはこの報道だけで誤解の向きもあるようでございますが、いきさつは以上のようになっておりますので、御了承を願いたいと思います。
  136. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの報告は、アメリカ兵をも殺害した事件と一緒であるためにというようなお話もございました。で、本来ならば、私は日本人を殺し、しかも特に公務中でもないのでありますから、当然こちらから裁判を行使する場合は、身柄をこちらに拘束して取り調べるべきものである、こういうのが本来でありましょう。しかしながらあの行政協定の成り立ちが、これは占領治下において事実上できたというようなことからいたしまして、実際において日本側として非常に不利な事態になっている。私どもはそれがゆえに、行政協定の改訂を問題にしているわけでございますが、ただいまのお話でも、どうもその公訴になりましてからの身柄の問題でございますが、これは当然日本側でやはり引き取って拘置して、私はこの裁判を行うべきものであると思います。アメリカ側の方が、裁判がまだ続いているといたしますれば、それは向う側に身柄を置いておくこともやむを得ないといたしましても、アメリカ側の方の裁判が済んだときに、身柄を日本側の方に引き渡すようにこれを要求すべきだと思うのですが、その点に対する法務大臣の御見解を承わりたい。
  137. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) お答えいたします。行政協定の精神からいいましても、日本側が犯罪を捜査いたしまして公訴提起をしてから後は、こちら側で勾留する方が行政協定の十七条の精神に合うと思うのですが、しかし実際の問題からいいますというと、アメリカの被告を日本側が拘禁をいたします場合には、やはりアメリカ軍に適する拘置所あるいは刑務所の施設改善をしなければなりませんので、そういう施設の関係上、アメリカ側が拘禁を引き受けまして、絶対に裁判の審理に支障を来たさないということが明らかでありまする場合は、従来も他の事犯におきましても、でき得るだけこちらに身柄を引き取らないで、アメリカ側に拘禁をさしておく、そうして必要に応じて指定の場所に護送をしてもらう、こういうように実はいたしておりますのであります。これは拘禁のために要しまするいろいろ施設の関係で、事件の起きました所在地にそれだけの施設がないのが多いものでありますから、施設の関係から、やむを得ずそういう取扱いをいたしてきておりますが、従来さような取扱いをいたしておりましても、アメリカ側が信義を破って規定の日時、場所に護送をして来ないで、こちらの裁判の進行及び審理に支障を来たしたという事例はないのであります。さような関係で、行政協定の十七条には、先ほど申し上げましたような規定がございますが、実際の取扱いとしては、そのような事態になっておりますわけでございます。
  138. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、ただいまアメリカ側の方でも裁判をやっている。こちらは第二審に入ったわけでありますが、アメリカ兵に対する裁判は、比較的進行が早く行われているようであります。それで、日本側の方は、これがまあ最高裁までいくというようなことになりましても、他の事件と違いまして非常にそう長い時間はかからない。一方アメリカ側におきましても、軍の裁判が行われるといたしまして、日本側の方の裁判と、それからアメリカ側の方の裁判とが食い違いまして、アメリカ側の方では死刑にしない、こういうまあ裁判なんです。日本側の方は第一審の死刑が確定した、こういうようなことになりました場合に、これはいずれの裁判の結果が執行されることになるか、この点をお伺いしたい。
  139. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) これは判決が競合いたしましても、事件が別でございますから、日本側としては日本側の裁判権に属する事件として起きました事件について、日本の判決が確定いたしました場合には、もちろん日本側で判決の執行をいたします。従いまして、本件の場合で第一審の死刑判決でございますが、最終的に死刑の判決が確定いたしました場合には、日本側において死刑の執行をする、こういうことに相なります。
  140. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今度死刑の判決につきまして、アメリカ側でだいぶ問題があるようです。たとえばあるアメリカ人の弁護士がUPの記者に対して、日本の裁判はでたらめであるということを語りまして、それがアメリカ側に流れておるというようなことを私は聞いておるのであります。こういうような点につきまして、大臣はどういうお考えをお持ちになっておるかお伺いいたしたい。
  141. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 第三者の批判は勝手でございますが、私の方といたしましては、日本側としては、ことに米軍の軍人でもありますしいたしますから、捜査及び裁判は慎重に進められておるものと思います。その結果が法律に照し、また情状等についても調査を、判断をされました結果、結局仙台の地方裁判所で第一審の判決としては死刑の判決が出たわけでございますから、私どもは裁判は公正に行われておるものと思います。従ってたとえ外国の記者等がいかような批判をいたそうとも、われわれは日本側の裁判の公正であることを確信をしておる次第でございます。
  142. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 岡田君に申し上げますが、関連質問ですから、この程度でとどめていただきたいと思います。
  143. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまのお話でございますが、アメリカ側で今次の裁判につきまして、いろいろなことが行われているということも耳にしておるのであります。たとえば、今度移されることになります場合に、この犯人の方から、テキサス州の上院議員あてでありますが、その方に嘆願書なんか出しまして、そうしていろいろ日本側の取扱いが悪いというようなことを訴えたというようなことをも耳にしておるのであります。またそれに基いたせいかどうか知りませんが、アメリカの方の法務関係の担当者並びに憲兵隊の隊長等が参りまして、警察へ来て、いろいろ警察の取扱いが悪かったとかいうことで、いろいろ尋問めいたことまでもしておるというようなことを聞いておるのでありますが、そういう点について、どうも日本側がやりましたことについて、向う側からいろいろと干渉がましいことがされておるようなことを聞いておりますけれども、その点について大臣はどういうふうにお聞きになっておるか。  それからまたもう一つは、今次の移したことにつきまして、これは単に仙台の検察庁だけの判断でやったことであるか。それを移すにつきまして、やはりこちらの方の最高検察庁なり、あるいは法務大臣なりの指揮を仰いだのか、その二点をお伺いしたい。
  144. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 移すことにつきましては、仙台の地検が担当しております事件でありますので、仙台の地検が了承して移したようであります。それから御指摘のような干渉がましいことがあったかどうかにつきましては、私は詳しく承知いたしておりませんが、万一あったといたしましても、判決の結果から見ましても、たとえいかようなことがあっても、日本側の検察及び裁判は厳正にこれは進められまして、さようなことに動かされていないものであるということを御了承願えると思うのでありまして、日本側としては、司法権は完全に行使すベきものであり、また行使せられておるものと私は確信をいたしております。
  145. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 暫時休憩いたします。    午後一時五十五分休憩    —————・—————    午後三時四分開会
  146. 安井謙

    理事(安井謙君) ただいまより委員会を再開いたします。
  147. 天田勝正

    ○天田勝正君 議事進行について。  本日は各派の話し合いによりまして、本日をもって三十二年度予算の一般質問を終了する、こういう約束に相なっております。従いまして、私どもは本日は特に議事に協力して参ったつもりでございます。午前中におきましても、二時過ぎまで質疑を行い、その間におきまして議事がいささか停滞いたしましたのは、要求いたしました政府関係大臣等の出席がなかったということ、またこれは表面の問題にはいたしませんでしたけれども、御承知通り与党席がほとんど数名の者しか出席しない事態すらあった。    〔理事安井謙君退席、理事左藤義詮君着席〕  こういう中におきましても、私どもは各派の話し合い、それに基きまして協力して参りました。しこうして午前中を終り、委員長の宣告により二時半から再開するということは宣言されておるはずであります。従って私どもは、少くともわが会派に関する限りちゃんと安定数を越える人間をそろえてお待ちいたしておったのであります。ところが三十分を過ぎましてようやくにしてただ一人の大臣が来るという状態であります。こういう中でもなおかつ私ども協力いたし、一人の大臣しか出席しなくても質疑を続けようといたしております。こういう状態でありますから、私どもは可能な限りの協力はいたしまするけれども、与党並びに政府の責任においてこの審議が遅延いたすということになり、結果において本日中に終らないということに相なりました場合には、私どもはその責任は一切負いませんから。(「その通り」と呼ぶ者あり)まだきょう中に終了するということをあすに延ばすということは、にわかには申しません。まだまだ私ども協力するつもりでありますけれども、かような事態委員長も十分御承知でありまするから、これらのことを今後の運営に当ってよく留意いたされまして、私が今ここで申し上げるようなことのなきょう、与党並びに政府側の一つ猛省をうながしたいと存じます。従って、もしこの要請をいたしましても依然として聞かれないという場合がありましたなれば、私どもは明日にこの審議を延ばす、こういう発言もいたさざるを得なくなりますことを注意申し上げておきます。
  148. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 本日は委員会が輻湊いたしまして、大臣が他の委員会からも非常にやかましく要求がございましたために、そろえることは非常におくれまして、特に午後今お話のような事態になりましたことは、まことに申しわけございません。十分政府を督励いたしまして善処いたしたいと思います。  それでは内村君。
  149. 内村清次

    ○内村清次君 建設大臣にまずお尋ねいたしますことは、先日本委員会におきまして、私が質問いたしました国土開発縦貫自動車道建設法案の修正の一件、及び高速度自動車国道法案附則第八項撤回の件、この二点に対しまして大臣は善処するとおっしゃった。この一点に対しましては、その後どう処理されておるか、これをお伺いいたします。
  150. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) お答えいたします。  過般の当委員会におきまして、私がこの国土開発縦貫自動車道建設法案の問題にからんで高速自動車国道法案の附則八項の修正の点につきまして、政府は十分考慮したいということを申し上げておきましたが、その後いろいろ野党側の委員なりと折衝いたしまして、先般これを修正削除することに閣議できめまして、従ってただいまその修正された点で高速自動車国道法案は衆議院の委員会に付託中であります。もう一方衆議院を通過いたしました国土開発縦貫自動車道建設法案の方は、本日参議院の建設委員会において、この問題のいろいろ検討の結果、満場一致で通過したような状態でございます。  以上御報告申し上げます。
  151. 内村清次

    ○内村清次君 私はここで指摘いたしましたことがそのまま実行されたということになれば、私といたしましても満足するところですけれども、これは大臣も知っておるように、この法案の施行面に当りましては、画期的な施行がなされるし、しかもまたそれには六千億近くの費用がこれにはついておるという問題もあります。この点に対しまして、いろいろ法案審議中に反響があった、非常な反響がきている。このために国民の方でも一方これを急ぐと同時に、その施行面において疑惑を胚胎するようなことがあるかもしれないという点も心配しておると思いますが、この点は施行の責任者でありまする建設大臣は、どう施行に当って公正な取扱いができてゆくかどうかという点を、はっきりとしておいていただきたい。
  152. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) お説のように、この国土開発縦貫道法案は、まことに画期的な日本の国土総合開発の上に重大な役目を果す法案でありますので、特にまた国会多数の同僚が議員提案といたしまして、審議をしたものでございます。そこでその実施に当りまして、実施官庁であります建設省あるいは運輸省等におきまして、十分協議を整えまして、各位の御不安のないよう、りっぱな高速自動車道としてこれを完成したいと考えておるような次第でございます。
  153. 内村清次

    ○内村清次君 それでは政府の住宅政策について、質問いたします。戦後十一年、衣食の問題は一応安定したかの観がありますが、それでも低所得者層には手の届かない、充満されていないところの現状が胚胎いたしております。憲法二十五条は国民はすべて文化的にして最低限度の生活を営む権利があるとうたっております。しかしながらこの住居の問題は、国民階層の間ではなはだしき懸隔があることは申すまでもございません。確かに国民の間には相当住宅建設の盛んな意欲のあることは否定できませんが、しかしまだ解消いたしておりません。この住宅不足と、同居所帯、非住宅居住所帯、狭小過密住居、老朽危険住宅等々、言いかえましたならば、低所得者層の住宅難は何ら解消されておりません。政府のこの住宅対策の欠陥がここにあると私たちは思っておりますが、この点を順次質疑によって明らかにしていきたいと思います。  で三十二年度予算編成に当りまして、住宅対策として三十六年までの五カ年間で住宅不足を解消することを目途としと、こうやって三十二年度において財政資金で二十万戸、それから民間自力によって三十万一月計五十万戸を建設するとしております。三十一年度に比しまして二百二十五億円の増加、七百三十七億円を予定しておる。そこで三十二年度の建設戸数の内容及び資金配付の内容、この点をまず明らかにしてもらいたいと思います。
  154. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 三十二年度におきまして、政府出資によりますものが約二十万戸、民間自力のものが三十万戸ありますが、その二十万戸のうちの内訳といたしましては、公団住宅と公営住宅、その他厚生年金資金による住宅、あるいは社会保障によりまする住宅等のものが加わっておるのであります。その内訳を申し上げますと、公営住宅が四万六千戸、公庫住宅が八万八千戸、公団住宅が三万五千戸、これが十六万九千戸であります。厚生年金住宅その他が三万戸、これで合せて十九万九千戸、約二十万戸ということに相なります。
  155. 内村清次

    ○内村清次君 資金の内容はどうです。
  156. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 資金の内容は、国費が二百三十三億、政府低利資金が三百五十五億、民間資金が百五十億合計七百三十八億であります。
  157. 内村清次

    ○内村清次君 それはそれでよろしゅうございますが、先ほど申しました公営、公団、公庫の住宅建設戸数に対する資金の内容、これも一つ説明していただきたい。
  158. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 申し上げます。公営住宅が百六億端数を切ります。公庫住宅が三十億、公団住宅が九十五億、総計二百三十一億五千万でございます。
  159. 内村清次

    ○内村清次君 三十年度は、三十一年度は鳩山内閣は四十二万戸建設を宣伝いたしておりますが、三十一年度の計画及びその進捗状態をまずお示し願いたい。
  160. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 三年前に鳩山内閣の当時に計画いたしました進捗率は、大体三十一年度で九〇%くらいに相なっておると存じております。三十二年度におきまして、今までの計画よりも一そう飛躍した約五十万戸をいたすのでありますから、大体において計画は完成するものと思っております。
  161. 内村清次

    ○内村清次君 九〇%進捗したと言っていらっしゃいますけれども、あなたの政府、これはまあ建設委員会での説明ですが、五月末までに公庫、公団及び公営住宅の進捗率というものは約七五、六%だということを説明されておるのですね、ただいま九〇%できておるという、この違いはどういうことですか。
  162. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 昨年の五月末でございますが、この建設計画は御承知通り年度を継続してまたがりますので、大体三十一年度末におきまして、この計画のものが完成することに相なっておるのであります。なお三十一年度のものが継続して年度をまたがって、さらにこれができるのでありまして、計画として三十一年度にいたしたものが、大体先ほど申したような計画は実施できるものといたしておるのであります。
  163. 内村清次

    ○内村清次君 それでは重ねて聞きますが、この建設のおくれておりますたとえば公営、あるいはまた公庫というようなものは、何月までに三十一年度の分が建設が終るかと、同時にですよ、同時にこれはあなたの予算要求によって三十二年度の今回予算書に出してありまするところのこの建設計画というものは、その後に建設されていかなくちゃならぬと思いますが、そうやった二カ月ばかりのズレというものは建設の戸数の建て方のおくれということに認めていいかどうか、この点をまず伺っておきたいと思います。
  164. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) この年度計画で大体こちらでは申し上げるのでありますが、多少この二、三カ月ずれることはやむを得ないと思うのであります。三十二年度の予算に御審議願っておる分は、これが国会を通過すれば早速四月から着手することでありまして、三十二年度の計画としてこれを達成するようにいたし光いと考えております。ただこの予算の中には宅地造成の資金等もありまして、こういうものは相当事前に計画をいたしまして宅地造成をいたすのでありますために、こういうものが資金を相当食います。さような関係で、これも皆住宅費の中に加算してあるのでありますが、こういうものが全部完成をみることにいたしまして、申し上げました計画を立てるのでありますから、多少のズレのところは御了承願わなきゃならぬと考えます。
  165. 内村清次

    ○内村清次君 それではわが国の住宅不足数は一体どれくらいあるか。
  166. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) ただいまのところ、約二百四十万戸ということに計算いたしております。
  167. 内村清次

    ○内村清次君 二百四十万戸の住宅不足という数字はこれは推定ですか。と同時にこの点は政府が認めた、また計画中の基礎になる問題ですから、これは私は確実に覚えておいてもらいたいと思うのですが、これは推定ですか。
  168. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 推定ではございません。計算の上に立った基礎数字でございます。
  169. 内村清次

    ○内村清次君 それでは年間の新規需要数というものはどれくらいあるか、この点を一つはっきりしていただきたい。
  170. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 今年は、三十二年度は御承知通り約五十万戸という計画をいたしておりますが、逐次国民経済が、所得が伸びるということを考えまして、将来五カ年間には毎年六十五、六万戸ないしは七十万戸ぐらいの上昇率をみることによって、一面約三百五十万戸ぐらいのものができるわけでありますが、半面において毎年二十万戸近いものが損耗するものがある、こういうものを加えますと、やはりどうしても二百四十万戸にプラス百万戸ぐらいのものはいろいろな破損、滅失等のものも加えまして、そうして考えますので、将来は約五カ年の間に三百五、六十万戸のものは建設しなければ、この二百四十万戸の現在の不足を補えないものと考えて、その計算の上に立って進めておるわけでございます。
  171. 内村清次

    ○内村清次君 建設省の計算では三十年四月から三十二年の三月までの二カ年間、これまでの新規需要数は四十六万六千戸と見積っておる。これは年間二十三万三千戸となるわけですが、同じこの建設省が公営住宅建設第一期計画のときには、新規需要として必要な戸数は年間三十二万戸と、これは計算しておるのです。そうして第二期計画の三十年四月から三カ年間のときには年間二十五万五千戸必要であると計上しておる。そうしてまた三十一年発表の、これはあなたの方の出した建設白書では、年間新規需要数は二十五万戸であると書いてあるのです。二十五万戸。こういうようなふうにもう三カ年間の統計をとりましても、出された新規需要数というものがまちまちです。非常に大きな数の懸隔がある。そうしてこれを見ておりますると、あるいはそのときによっては増したり、あるいは減らしたりしておる。少しも科学的な根拠というものが持たれておりませんが、これはどういう関係ですか、その点を……。
  172. 井上義光

    説明員(井上義光君) ただいまの新規需要の件につきまして説明さしていただきます。  この新規需要につきましては、災害あるいは老朽あるいは世帯の増、そういったものを合計して算定した分でございますが、災害の数字につきましては、三十年度、三十一年度が従来に比しまして非常に減りまして、三十年度は災害によります滅失が一万八千戸、三十一年度は一万七千戸、こういう推定になっておりますので、二十九年当時にとりました二十七、八年の非常な災害の多かったころの数字よりも若干減らしております。なお世帯の増加につきましても、経済企画庁の人口の自然増加推計、国勢調査による世帯員数、こういったものを考慮いたしまして、現在の数字を算定した次第でございます。
  173. 内村清次

    ○内村清次君 今課長説明されましたけれども、この災害だとか老朽その他で倒れていくという、そういう移動のある数字というものは私は申しません。ただ、一体大臣は不足分は二百四十万戸あるとこう言っている。それではこの新規需要は一体どれくらいがあると、その数字の大半だけを言われまして、その変動の状態を言っていらっしゃらぬが、私は一つ聞きたいことは、この建設白書というものが、これはあなたの、大臣の名前で出るのでしょう。この建設白書というものの中に書いてあるこの需要数というものは、これは正確でございますという御証明ができるかどうか。そうでないと、私たちのこれに対するところの意見も申し上げるわけにはいかないのです。この点を明確にしてもらいたい。
  174. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) お答えします。建設省から発表いたしました住宅建設白書というものは、当然これは建設省において責任を負うべき筋だと存じております。
  175. 内村清次

    ○内村清次君 それではこの調査統計といたしまして、建築動態統計調査というのがあるはずですが、これはどういうふうに見ておられますか。
  176. 井上義光

    説明員(井上義光君) ただいまの動態統計による数字の正確度のことでございますか。
  177. 内村清次

    ○内村清次君 動態調査の数字というものは一体どういうふうな権威あるものであるかということを聞いておるのです。
  178. 井上義光

    説明員(井上義光君) 建築動態統計につきましては、建築基準法によるところの着工届けというものが着工者から出て参りまして、それを集計いたしております。なお住宅の着工戸数を推定するに当りましては、若干の統計漏れが——統計漏れといいますか、報告漏れがございますので、それを相当期間の漏れ数を算定いたしまして、その漏れ率でもって修正いたしまして着工戸数と、こういうふうに出しております。
  179. 内村清次

    ○内村清次君 建設大臣はこれをどういうふうに重く見ておられるか。これを主体として考えておられるかどうか。正確にその点を聞きたいのです。
  180. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) もちろんこの建設省で発表しました白書を主体といたしまして、これに責任を持って今後の対策を進めておるわけでございます。
  181. 内村清次

    ○内村清次君 そこで三十年一月から十二月まで、この動態統計調査によりますると、二十七万九千二百四十一戸、三十一年一月から十二月までが三十万八千六百八十六戸、計五十八万七千九百二十七戸ということになっておるのですね。そうしますると、これは、先に建設白書その他によりまして統計を出しておられるのは、二年間で八十六万戸と、こう出ておるのです。そうすると、二十七万二千戸というものが、この動態調査によりますると少いのです。少い。こういうような大きな開きが出ておりまするが、こういう開きをもとにして、五カ年間で毎年五十万戸建てる。そうして二百五十万戸ですね、これで建てるんだというようなお考え方が、その基礎において出されたのかどうか、数字の誤謬の上に立った問題であるか、あるいは、科学的御調査がないからしてこういう数字というものが出て誤差が出ておるのかどうか、こういう点を大臣から一つ明確に御答弁願っておきたいと思うのです。
  182. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 説明員から答弁をさせます。
  183. 井上義光

    説明員(井上義光君) 私ども着工として使用しております数字は、建築動態統計調査によりますところの、ただいまの統計数字には漏れがございますので、一六%程度の補正をして、それをもって住宅の基礎資料といたしております。なお実際に出て参りますところの年度途中の数字につきましては、一般的に政府施策による住宅の着工は、たとえば公営住宅につきましても、起債の関係その他によりまして、着工が比較的おくれますので、政府施策による住宅は、年度途中の数字によりますと非常に漏れておりますので、この分につきましては、正確に、現工事事業主体からとりまして、別途に計上いたしておりますが、それが年度末に比較的集中されると、そういう関係かと思っております。
  184. 内村清次

    ○内村清次君 私たちは、従来政府がその基礎とあげました五十五万戸の政策自体に対しましても、元来政府の施策によって建設をされるのは十九万九千戸でしょう。あとの三十万戸は自力建設ですね。この自力建設というものは、施策のうちに入るものかどうか、これが問題であろうと思う。それからいま一つの問題は、私たちは、先ほど建設白書におきましても、あるいはまた動態調査によりましても、非常にこの戸数の不明確さというものが明確になっておりますからして、この不足数ということを住宅難の解消ということと一緒にいたしまして、そうしてこれ自体、不足数を解消するのだというようなことで考えていく住宅政策というものは、私たちはどうも考え方が違う。というのは、私たちは住宅不足を非常に困っておるところの階層によって、いわゆる、すなわち低所得者層の住宅難というものをいかにして解消していくかという点に重点を置くようなこのやり方、この政策のとり方、建設の仕方、これこそ私たちは住宅不足を解消するところの根本的の理念でなくちゃならぬと思うのです。この点に対しまして、まず大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  185. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) お説のように、低所得者に対するこの住宅難を政府の施策として積極的にすべきじゃないかというお説はごもっともだと思いますが、その意味において、政府の施策として公営住宅を三十二年度におきましても四万五千戸計画いたしておるのであります。公営住宅をできるだけたくさん建てまして、これらの低所得者のための施策をいたせばけっこうでありますが、これにつきましては、町村の負担等の関係もありまして、なかなかこの計画が大幅に進まないことは、まことに遺憾に存ずるのでありますが、政府のその年々のやはり財政計画もありまして、本年度はしかしながら特に公営住宅の方におきまして四万五千戸のうち、一種、二種のうち二種の方を五千戸もふやしまして、特別な低所得者の手当をいたしているような次第であります。決してこれで満足と言っているわけではございませんが、将来政府の財政計画の拡大に伴いまして、この方針を進めていきたいと考えております。
  186. 内村清次

    ○内村清次君 公営住宅の問題につきましては、あとで申し上げたいと思いますが、それでは大臣はこの三十万戸の自力建設をやると、こうおっしゃっているのですが、これはどういう基礎によって、根拠によってそういう点、三十万戸だということを推定をなされているのですか。
  187. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 民間自力建設の計画が、従来二十五万戸という計画を立てて参りましたが、その計画におきましては、大体これが計画通りに進んできた状況からみまして、三十二年度は特に国民経済も伸びており、今日の国民所得の関係から言うならば政府が二十万戸近いものを援助をする場合においては、もちろんこの従来の経験から考えまして、民間自力建設も三十万戸は可能であるという考えにおいて、この計算を出しているようなわけであります。
  188. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 関連して、一言お聞きいたしたいのですが、今内村委員からお話がありました通り、この大部分のものは自力建設という計画による建設なんですが、政府によるこの公益住宅にしてもあるいはその他の住宅施策にしても、ある程度まできますと非常にもう限界点がきて、それはその根本は、そのネックとなるものは土地問題だと思う。どんどんと国の住宅政策が推進するにつれて、だんだん土地の入手が困難になり、この前の総括質問のときに建設大臣にお伺いしたときには、来年度は土地についてはあまり心配がない、こういうようなふうに手当をしているのだというお話がありましたが、これは非常に今のような土地の獲得方法ではある限界がきて、ここ二、三年も過ぎればどうにもやっていけないと、こういう形になるのじゃないか、従って私はこの住宅の土地獲得については、農地法なり何なりとの均衡からみましても、法制的にある程度の問題を解決しなければ、土地問題を法制的に解決しなければ、この住宅政策というものが将来強力に計画通りに進まないと思うのですが、これに対する建設大臣の御意見を承わりたい。  それからもう一つは、従ってその土地については、土地そのものの問題もあり、同時に現在のような都心に、たとえば東京都であるならば、都心に近いところについては、むしろ一階建とか二階建とかいう土地の効率を考えないような建て方ではなく、むしろ進んで高層建築にして、土地を効率的に考えるような建物、そういう今の高層建築制限とは逆な規制によって、土地の効率的な使用も考えなくちゃならぬと思うのですが、この二点をお尋ねいたしたいと思います。
  189. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) この宅地造成のことに関しまして、これが建築のネックであるというお説はごもっともでありますので、この点についてはこの前も答弁を申し上げましたが、今度の政府が大幅の住宅建設を考えましたにつきましては、特に大蔵省と折衝いたしまして、国有財産を早急に敏速に整理してもらうということで、この点の特別会計を作ってもらいまして、国の不用の土地、これらのものが全国に約六十万坪くらいのものがあるというようなことで、これを早急に処理してもらうようなことを一面考えており、また住宅公団におきましては、従来三十一年度以来三百万坪からの宅地造成をいたしております。また住宅金融公庫におきましても二十五万坪からの宅地に対する手当をいたしておりますが、この国会におきましても、特に公団法の一部を改正いたしまして、海岸埋め立てであるとか、宅地の造成のための特別の措置を御審議願っておるのでありまして、ここ二、三年の間は、今の政府で考えております住宅建設につきましては、宅地の面においては不安がない、こういう考えを持っておるのであります。将来はこの点についてはもっと多く考えたい。  そこで第二点の、これに関連して都会地における住宅の高層化ということにつきましては、特にお説のようでありますので、今回御審議を願う公団法の一部改正につきましても、中、高層の建築を考えまして、それに対する金融の措置も考える。そしてできるだけ防火、耐火、そして高層建築によって土地の効率を高めるという方向にだんだんと進みたいと考えて、その方向に向っておるような次第であります。
  190. 内村清次

    ○内村清次君 昭和三十年の住宅事情調査結果によりますると、住宅困窮者の対策別のところで、総数二百七十五万世帯のうち、自己資金で新築すると答えたものが十八万、家を買うと答えたものが八万、それからほかは公庫借り入れ、公営住宅申し込み、それから民間借家、貸間探し、増築、修繕、対策が立たないというような答えで、自己建設によるものは総数の一〇%にしかすぎない。この点はこれは建設省の方ではよく誤まりがあるかどうかということを調べられたことがあるかどうか。この点を一つ……。こうやってみますと、生活困窮者については、七〇%から八〇%までは国の特別措置を要するというような考え方をもっておることがこの状態調査によりましても明白でございます。ところが政府の三十二年度の住宅建設計画では、ここにありますように、二十万戸だけは施策してやろう、しかしあとの三十万戸はこれは自力で建てなさいと言いっぱなしですよ。そうすると経済情勢がよくなるから建て得るだろう、こういうような考え方では、私は政策の徹底と申しますか、実際と合わない建設戸数というものが生まれてきはしないかと思うのですが、この点一つ大臣から……。
  191. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) お答えいたします。民間自力建設の成績につきましては、先ほど申しましたごとく、三十年度、三十一年度においては、大体計画の八、九〇%になっておるのでありまして、こういう計画から申しますと、三十二年度は相当国民の経済力も伸びておるし、所得も伸びておりますから、三十万戸の計画をいたしましても、これは決して過大なものではないと考えておるのでありますが、これにつきましては、特に政府といたしても、この金融措置、また民間の自力建設に助成をするような方途を十分考えまして、その運びにしたいと考えておるのであります。
  192. 内村清次

    ○内村清次君 政府の気持だけはわかりますが、といいますのは、私は政府の住宅政策というものは、これは中流及び上流層の高額所得者、これに重点を置いておられると考えている。それは先ほども私が調査の報告を申しましたように、住宅難の世帯が二百七十五万三千四百世帯、そうしてこのほかに過密住宅、同居、それから老朽住宅、立ちのきを迫られている等々の主観的な困窮者世帯が二百四十八万六千四百九十世帯、つまりこれを合せますと、五百二十四万世帯が何らかの理由で住宅を求めているわけです。これをまず基礎において考えてもらわなくちゃいかんのです。そうしてその中の五五%が課長以下の俸給生活者、筋肉労働者、それから貸し家を求めている者はその中の四五%、この大半の七三%が公営住宅を求めているのです。また住宅困窮者総数の二一%、これが五十九万世帯、この五十九万世帯は、増築も修理もまた公営住宅の申し込みも全く立たない世帯です。これが五十九万世帯もあるのです。政府の施策によりますと、とうていこの五十九万世帯の解決というものは緑遠い先の問題になる。あなたは五年間でこれを解消するとおっしゃっておられますけれども、とうてい今の考え方ではできない。それはかりでなくして、今回の四十七万戸——三万戸は先ほど課長もいわれたように、いろいろ災害その他でこれは善っ引くといたしまして、この四十七万戸の中に、公営住宅は四万六千四百六十六戸、公庫住宅は八万八千戸、公団住宅は三万五千戸、そこで公営住宅の比率は九・九%、公庫住宅は一八・八%、公団住宅は七・四%、このパーセンテージから見ましても、またさらに低所得者層を対象とする第二種公営住宅についてみると、わずか五・三%しかない、こういう比率です。これは低所得者の住宅対策をお立てになった政策ではない。どうしても中流、上流、高額所得者を目当ての政策である。こう私は申しましても、この面から、あなたの打ち出した基本的な戸数の面から、これは明確になると思いますが、どうでございますか。
  193. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) ただいまの住宅難の基本数につきましては、いろいろなお説のような御意見もございますが、これはいろいろな希望者等の数も入れてのことでありますが、現在建設省におきまして、どうしても住宅がなくて、これに対する手当をしなければならぬというものが二百四十万戸と踏んで、その手当をしているわけでございますが、そこでこの低額所得者に対しては、きわめて政府の施策が足りないではないかという仰せに向いましては、先ほど申し上げましたように、二百四十万戸の中には、低所得者ばかりではなくして、たとえば公営住宅については一万二千円以下の人を対象といたしますが、それ以上の中流の、二万五千円まであるいは三万五千円までの人、これらの人々も相当住宅難で困っているのであります。これらの人人のためにも政府といたしましては住宅対策を立てなければならぬのでありまして、さような意味で一方においては公営住宅も作るのでありますが、また一方においては公団住宅も作るのでありまして、千二百円ぐらいの家賃のものも作るし、また四千五、六百円の家賃の公団住宅も作る、あるいは分譲住宅も作るなどということで、各階層の住宅難の、ほんとうに困っている人人を救済するために施策をしておるのでありまして、一方に偏したことのみをやるということでありますればこれはおのおのまた見解が異なると考えるのでありますが、政府の財政資金等の関係もありまして、昭和三十二年度は政府が今年立ったような計画を最も是としておるようなわけでございます。
  194. 内村清次

    ○内村清次君 で、私は一方的な問題だけをやってくれということを言っておるのではないのですね。あなた方の政策というものは、これは低所得者に対してはほんとうに考えておられないという点を指摘しておるのです。ほんとうに求めておるものはそういう階層ですね。それをなぜどういうお考えで少く見積っておられるかどうかという点を聞いておるわけです。  そこで、先ほどちょっとお言葉もあったようですが、それでは月収別にどういう希望者数があるかということをお調べになったことがありますか。
  195. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 大体今までの調査によりますと、低所得者一万二千円以下の人に対する住宅、それから二万五千円から三万円ぐらいの程度と、それ以上というようなものを区分いたしまして比較いたしたところが、大体低所得者の人々に対しては三〇%、その上も三〇%、その上が四〇%というぐらいの分野で、今までの政府の施策の住宅が分布されておるようなわけでございます。その以下の生活保護者のような人々に対する住宅につきましては家賃が補助を受けまして無料でありますが、こういう人々についてはまた別途の考えで住宅の手当をしていくことにしております。
  196. 内村清次

    ○内村清次君 どうも大臣はほんとうに数字的な根拠からものを見ていらっしゃらない。今回二百二十五億という大きな増額になっておるから、この予算で安心して少しも御研究なさっておらぬじゃないですか。これは、三十年八月にあなた方の出した建設白書によりますると、一万六千円以下のものは三〇%ですよ。それから一万六千円から二万五千円までが三〇%、二万五千円から三万二千円までのものが一〇%、それから四万円以上が一〇%で、いわゆる月収二万五千円までの住宅困窮者というものは六〇%あるのです。そして三万二千円までのものを含めると七〇%です。そうしてみますると、大体今までこの家賃の支出というものは所得の一割だと、これが普通だった。こういう点を考えてみますると、大体高額所得者に対するものが約九割までをものの考え方で今回の住宅政策の基本となしておられるというようなことが、この月収面の要求者の統計から見てみましても私たちはこれは発見することができるのです。これは重大な問題ですが、この点いま一ぺん一つ
  197. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 家賃の占める割合が所得の一割が妥当であるというお説もございますが、一割からないし一割五分ぐらいが大体妥当ではないかとも考えておるようなわけでございまして、最近にできました公団住宅については十三坪ぐらいの鉄筋のアパートでありまして、相当念入りのものができておるのであります。従いましてこれについて四千五百円ぐらいの家賃でございますが、二万五千ないし三万円の所得者でありますならば一割五分ぐらいの家賃を払いましても、このくらいの公団住宅であれば十分満足のでき得るというような、まああまりりっぱなと言っては語弊がありますが、相当な住宅であると考えておるのでありまして、従いまして最近においてはこれらの公団住宅ができますると、その申し込みが非常に殺到をしまして、六十倍ないし百倍というような抽せん率でありますのを見ましても、いかに今まで全然住宅のない人ばかりでなく住宅を持っている人でも今の持っている家よりもこの方に入った方が安くてりっぱだという観念で非常に私は希望が多いのではないかと考えておる次第でございますから、必ずしも所得者の所得の一割でなければ家賃が高いというような考え方でなくて、ともかくも日本の現状において二百四十万戸も住宅が払底いたしておるのでありますから、できるだけ早くこれを完成するようにして、いかなる方法でもよろしいから、そうして満足を与えるようにしむけることが私は適当な施策ではないかと考えておるのであります。決してこれをもって満足といたしておるのではございませんが、一応さように考えておるわけであります。
  198. 内村清次

    ○内村清次君 そこで厚生大臣にちょっとお尋ねいたしますが、厚生省は三十二年度の予算要求に対して、低所得者層に対する住宅計画をなされている。そうして簡易住宅設置の予算として五千戸分、十四億九千四百五十八万円を要求されておったが、大蔵省が削った。これはどういうような理由で削ったのか、この点を一つ明確にしていただきたい。
  199. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 厚生省の要求予算を大蔵省が削ったが、どういう理由かというようなお尋ねでございましたが、これはまあ年々のことでございまして、予算の要求をし、そうしてまあ話し合いをいたしまして、そこで適当に落ちついて政府として予算案として決定をし、御審議を願うわけでございまして、今回のこのいわゆる第二種住宅に関する問題につきましても、これは厚生省が要求はいたしましたが、要は第二種住宅が国の金でできればよいのでありまして、建設省当局と十分打ち合せいたしまして、建設省が建設を担当して行こう、こういうような話し合いになりまして、三十二年度におきましては母子家庭として千五百戸、それから海外引揚者用として千二百戸、こういうな一応の話し合いになって予算化した、こういう事情でございます。
  200. 内村清次

    ○内村清次君 そうすると、たとえば生活保護法によるところのものですね、こういうような方々に対するところの住宅の建設計画というものは厚生省では一応持っていらっしゃるかどうか、あるいは五カ年計画に相当した計画を持っておられるかどうか、この点はどうですか。
  201. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 一応のめどはつけております。ただ何と言いましょうか、第二種住宅の方は低家賃をねらっておりまして、しかも数をたくさん建てたいということで、五カ年計画と申しますか、もっと長期な実は考えを持ちまして、厚生省の方としては一応のめどをつけておりまして、建設省と十分連絡をとって、そうして大蔵省と交渉の上予算化している、こういう実情でございます。
  202. 内村清次

    ○内村清次君 それではこの建設計画を一つお示し願いたいのと、大蔵大臣にちょっとお尋ねしますが、こうやった住宅建設の問題に対しましてはその主管省をどういうふうに大蔵省では見ておられるか。あるいは一元化そうとするお気持のためにそういうような予算を、厚生省要求のやつを削除するという根本のお考えがあるかどうか、この点を一つまた……。
  203. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 住宅問題につきましては、これは建設省で一元的にお考えいただくこともけっこうだと思います。しかしやはり各省々々におきましておのおのその見るところがございますので、今お話のように厚生年金の方からの分も私は厚生省の方の要求に応じまして、適当な金額をもっておるわけでございます。で、昨年は厚生年金の方での住宅は、三十五億であったのでございまするが、大蔵省はこれを四十五億円、十億円ふやしております。実際厚生省の方へ申し入れられた住宅資金というものはわれわれは三十七億円と承知いたしておるのであります。従いまして三十二年度四十五億円を受けておれば大体要求に沿い得るのじゃないかと、ただいまのところはそう考えております。
  204. 内村清次

    ○内村清次君 それからいま一つ、大蔵大臣にお尋ぬいたしたいのですが、これは先般この産特予算の問題で佐多委員からもお話がございましたが、まあ今回はこの住宅公団の方に三十一年度では十五億、今回九十億、これは倍数によりますと、六倍ばかりになりますね、ほとんどこの産特の投資関係ではこの点が第二位べらいになっています。あとは数字の少い農林関係の方に出しておられるのですが、まあこうやった非常に住宅公団に——しかも住宅公団は先ほどから論議がありましたように月五千円という家賃ですね、こういうような高い家賃を払うようなもので低所得者の要求には沿わない——公団住宅ですね。これに非常にこの資金をよけいに出していらっしゃるのですが、これをなぜその公団……公営住宅の方に回すような……、もちろんこれは資金関係は違います、配付の資金関係は違いまするが、そういうお心で一般予算公共事業費の中で、補助率を増大しておやりにならないのか、こういう点を一つ承わりたい。
  205. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 産業投資特別会計から三十二年度におきまして、公団あるいは住宅金融公庫に対して相当大きい金が出ておる、こういうことにつきましては佐多委員より先般御質問を受けたのでございます。この産業投資特別会計から公団に出す出さぬ、いわゆる住宅営団その他に出す出さぬにつきましては、内閣におきましてもいろいろ審議した上で経済再建のために出すことは産投会計設置の趣旨に反するものでないという結論に伴い昨年来出すことにいたしておるのであります。しこうして今年度、昨年の十五億に対しまして九十億——百億になんなんとする多額のあれを出したというゆえんのものは、やはり今住宅の建設が政治の一つの大きい題目でございますので、私はこの際八年計画——十年計画で残っておる八年を五、六年に縮めたい、こういうことで今年は思い切って出したのであります。こうすることによりまして、家賃の低減をはかり得る、こういう考え方で今後毎年こういうような倍数でふえるとも言えません、あるいは減ることもあるかもわかりませんが、いろいろ今年は、画期的なものでございますから、こういうふうに出した次第でございます。従いまして、公団あるいは公庫の方に出すよりも第二種住宅の方にやった方がいいじゃないか、こういう御意見、私も十分前から考えておりました。しかしこれは地方財政の問題もございますし、私はまあ第一種よりも第二種をふやした方がいいというので、ある程度はふやしました。しかしこの計画を立てます場合におきまして、大蔵省といたしましては今お話のように昨年厚生省でお調べになりました住宅事情調査によりまして一万六千円以下の者が三〇%、一万六千円から三万二千円まで四〇%、それ以上の者が三〇%、こういうふうになっております。従って公営住宅の一種、二種、あるいは公団住宅、あるいは厚生省の方から出ます住宅等々ずっと割り振りまして、そうしてその住宅事情調査に合うようにやっておるのでございます。で、第二種の方は第一種よりも少し多くしております。私は予算査定の途中におきまして、第一種公営住宅というものが少し安過ぎやしないか、東京都内の第二種の分もずっと検討して見まして、少し安過ぎやしないか、そうして今後入り込む第二種の分と不均衡になりはしないか、ある程度プール的に考える余地はないかというところまで検討いたしてみたのでございますが、しかし既得権を侵害するのもなかなか困難でございます。そういう点から考えまして、今ただいまのところは産業投資の方で少したくさん持って、そうして住宅事情調査の結果に沿うように努力していっておるのでございます。
  206. 内村清次

    ○内村清次君 建設大臣にこの点をお尋ねいたしますが、ただいま大蔵大臣からの答弁でございますが、御答弁通りに住宅公団に対しましては産業投融資特別会計が九十五億、それから政府からの低利資金が百二十億、それから一般民間資金が百五十億、総計三百六十五億円の、これは三つの、一番大きい膨大な予算が出たのです。ところが、この公団が設置されまして、日はたちませんが、もう団地には住宅が建った、その工事面に非常な不正が出ておる。具体的な例といたしまして大阪の金岡団地についても非常に不正建築が出てきた、こういうような問題が今回のあなたの方の建設の計画によりまして相当また出てくるような様相がありはしないか、私どもの耳には全国的にだんだん出てきております。これを建設省はどういう監督のもとに、またそういう事件をもう調査して件数をあげておられるかどうか、その点がありましたらばお聞かせ願います。御所見も合せてお聞きいたします。
  207. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) ただいまの点はまことに傾聴をいたすべきことでございまして、いたずらに住宅建設を急いでばかりおっても、粗悪なものを作ったり不正的なものを作るということではまことに国民に対して申しわけないのであります。ただいま御指摘になりました堺の金岡団地の問題につきましても、最近これが相当問題になっておりまして、建設省といたしましては、公団に、その真相を今究明いたし、その調査を進めておる次第でございます。その調査内容によりましては十分この原因を探究いたしまして将来かような事態の起らないように監督を厳重にしようと今思っておるわけでございます。
  208. 内村清次

    ○内村清次君 この点につきまして私は具体的な資料を持っておりますから、実は私は公団の総裁を一つ要求したい。この点はあとで理事の方にも通知をいたします。そうしてこの点を十分に私はここで究明したいと思っておりますが、この点は委員長においてもお取扱いをしてもらいたいと思います。
  209. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) その点に関連して。ただいまの御指摘の問題につきまして、実は本日の参議院の内閣委員会でこの問題が取り上げられまして、さっそくこれを調査するためにあらためて明日午後から内閣委員会でその調査の報告をしろということのお達しがありました。さよう取り計らうことにいたしまして今調査いたしております。ことに大阪から所長も呼びまして真相を委員会に申し上げることになっております。そこで明日午後さらに公団の理事、総裁等も内閣委員会の方でお調べを願う、こう考えておりますので、そのことも申し上げたいと思います。
  210. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 内村君、時間が過ぎましたから簡単に願います。
  211. 内村清次

    ○内村清次君 それでは分譲住宅の問題について建設大臣にお尋ねいたします。  分譲住宅というのは非常に評判が悪い、端的に申しまして。同時に、この分譲住宅のまずお尋ねしたいことは、東京、大阪、福岡、この三点だけでいいですが、一体どういう需要数が上っておるか、これを求めておる数が上っておるか、これを一つお伺いしたい。
  212. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) この分譲住宅につきましては、公団が三十年度来作ったものが、昨年初めてその分譲をいたしたのでありますが、大阪等におきましては、最初の計画よりも非常に申し込みが少かったという事情がありまして、そこでこの計画を変えまして、分譲住宅を賃貸住宅に変更いたしまして、今日はまあ全部の入居者が入っておるわけであります。そこで大阪における分譲住宅が計画通りいかなかったという大きな原因は、いろいろございますが、金利の点において、分譲住宅の方が高い金利でありますために、一回にこれを買い受ける者が少い。それからもう一つは、大阪の付近の風習として、何と申しますか、ビルの中に分譲住宅で一戸をかまえるというようなことを非常にきらうというような習慣もありまして、そこでその地方の風習に合わなかったというような点が、最初の計画のようにいかなかったような事情もございますので、かようなことを考えまして、今後はその土地々々の民間の風習等も考えた方向に進めたいと考えておるようなわけでございます。なお、数字の点につきましては、今説明員の方からお答えいたさせます。
  213. 鮎川幸雄

    説明員(鮎川幸雄君) ただいまお尋ねのございました支所別の数字は、手元に持ち合せがございませんが、住宅公団におきましては、昭和三十年度に一万戸、昭和三十一年におきまして一万一千戸の分譲住宅を建設いたしておりますが、この分譲住宅は、住宅難を早く解決するというような建前から、民間資金を相当取り入れて建設費に充てておるわけでございます。特に、先ほど大臣からお話がございましたように、この分譲住宅の中の大阪支所管内におきましては、若干申し込みの応募率が低かったという点がございましたので、その点につきましては、さっそく賃貸住宅の方に切りかえまして募集いたしたわけでございますが、賃貸住宅にいたしましたところ、応募者が三倍以上もあったというようなことで、現在その住宅は十分に入居が終っておるというような状況でございます。
  214. 内村清次

    ○内村清次君 宅地問題について、私はずっと今日質問したかったのですけれども、時間がきておりまするから、最後に、大蔵大臣と建設大臣に二点だけお尋ねします。と申しますのは、大蔵省の所管といたしましては、いわゆる官有地がたくさんございますね。これが住宅の宅地に転換をするような坪数が一体どれくらいあるものであるか。これに対して、政府の施策は一体でございますからして、そういう国有財産を大幅に払い下げになって、住宅の解決をこの面からも一つ助成しようというお考えがあるかどうか、この点が第一点。  第二の問題は、建設大臣には、この宅地の造成につきましては、先ほど御答弁もありました。また、その点は各委員会でもお話になっておるようですが、私はこの宅地転換の際に、農地の問題、この転換が相当今後公団におきましてもあると思うのです。農地を宅地にするということですね。これに対しては、補償その他の問題が醸成いたしまするが、これは政府の造成計画ともあわせて、こういう点は一体どういうふうな御注意をもって、施策をもって対処されようとするか、この点を詳しく一つお話を願いたい。
  215. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 国有財産の処理につきましては、先般国有財産審議会の答申を得まして、国有財産全般につきまして再調査をして、そうしてこれが利用をはかろうといたしております。差し向き住宅関係の問題といたしましては、これは土地造成その他はやはり建設省でおやり願うことになるのでございまするが、大蔵省といたしましては、市街地にありまする官庁が平屋あるいは二階建で、非常に土地をたくさん使って効果があがっておりません。まず、官庁の営繕を主眼にいたしまして、特別会計を設けて、各官庁を高層建築にして、余った土地を建築資金にするとか、あるいはまた、都会地付近ならばこれを建設省の住宅に振り向けるとか、とにかく徹底的に整理して効率をはかろうといたしておるのでございます。何と申しましても、軍用財産その他のものが雑種財産として大蔵省に移管されましたけれども、手不足その他で整理が十分ついておりません。今年度から特別会計を設けますると同時に、雑種財産につきましての処理を迅速にして、住宅問題解決の一助にいたしたいと思っておるのであります。
  216. 南條徳男

    ○国務大臣(南條徳男君) 宅地造成につきましては、先ほど申し上げましたような施策で、三十二年度からさらに三百万坪くらいのものを公団がいたしますし、住宅金融公庫も二十五万坪のものを造成いたしますが、さらに法律で御審議願って、今度は公団の方で、海岸埋め立て、あるいは他の農地の転換による宅地造成等も考えておるのであります。従いまして、先ほどの御指摘の、農地を宅地に造成する場合に、食糧増産等の関係もあって、これをあまり食い込んでは困るじゃないかという御意見は、先般委員会等において御審議のときにもありまして、これらの点を付帯決議をしていただいて、先般公団法を通過さしてもらったのでありますが、十分この点につきましては考慮いたしまして、日本国における農地の全体から見ればごくわずかのものでございますが、それにつきましても、十分これらの点を勘案いたしまして、御指摘の点について留意いたしたいと考えております。
  217. 中村正雄

    中村正雄君 質問に入る前に、ちょっと委員長にお願いしたい点があるわけでありまするが、各委員出席状況を見まするというと、社会党の委員は三分の二以上出席いたしておりまするが、与党委員は三分の一を割っておると、こういう状態では、今後の審議に非常に支障を来たしますので、与党の委員諸君出席を督促を願いたいと思います。
  218. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 督励をいたしますので、一つ御質疑にお入り願いたいと思います。
  219. 中村正雄

    中村正雄君 日本国有鉄道の一二十二年度の予算につきまして、運輸大臣にお尋ねしたいと思います。  提案されております国有鉄道の来年度の予算を見てみますると、私の見るところによりますと、過去七、八カ年間の国鉄の予算と比べまして、非常に窮屈な圧縮された予算だと私は感じております。監督者としての運輸大臣が、この予算の基礎になっておりまする計画が、この予算で完全に三十二年度実施できるという自信があるかないか、この基本的な問題について、最初御答弁願いたいと思います。
  220. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。実はこの三十二年度の予算を作るときにおきまして、非常に窮屈にできておるということを私も聞いたのでありまするが、いろいろそれらの点について、これが実行の上にそごを来たすことはないかという点を心配いたしていろいろただしてみたのですが、国鉄の職員、経営者の努力によって、これはまあやり得ると、こういうことを聞きまして、これを了承したわけでございます。
  221. 中村正雄

    中村正雄君 歳入の予算につきましては、これは見積りでありますので、おそらく運輸省としても自信を持って見積られていると思いますので、これにつきましては意見を申し上げません。歳出の二、三の点について見ましても、私は、この予算では基礎になっておりまする計画が遂行できないと思っております。たとえば、今新聞紙上で問題になっておりまする石炭を一つ例にとって見ましても、予算に載っておりまするこの価格で計画されました石炭の数量が確保できる自信があるかないか。今日の交通新聞を見ましても、国鉄当局が上半期の入手について、数量においても価格においても非常に開きがあると、こういうことを新聞は伝えております。動力費のうちの石炭だけを一つ例にとって、この価格で入手できるか、お尋ねしたいと思います。
  222. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) その点政府委員から……。
  223. 久保亀夫

    説明員久保亀夫君) 私からお答えいたします。ただいま仰せのように、三十二年度の石炭費の予算は、この単価は三十一年、本年度の下期の単価によって積算いたしたわけでございます。もちろん、石炭の市況は非常に強うございまして、現在石炭業者とネゴシエーションをやっておる最中でございまするが、数量につきましては、大手あるいは中小を通じましてある程度の見込みが、いろいろと輸送の問題もございまするし、見込みが大体立っておるわけで、もっぱら単価の問題につきまして交渉いたしておるわけでございますが、石炭業界といたしましても、一方その石炭輸送の面も石炭の増産の面には非常に大きな影響もございまするし、かたがた、本年度の予算が、仰せのように、経営合理化を徹底しました非常に窮屈な予算であるということについても十分理解を持ってくれておりまして、今交渉中でございますが、全体の予算として、運用のできる程度にはまとまるものだと見通しを立てておるわけでございます。
  224. 中村正雄

    中村正雄君 予算全体について、あるいは一部の計画を中止して重点的な施策の方をやるというような面から考えれば、予算は実施できるかもわかりませんが、予算に盛られておりまするすべての計画が、各費目に従って実施できるという点については、非常に私は危惧の念を抱いております。たとえば五カ年計画の修正を見て参りましても、九百五十億円の追加をやって、五千九百七十億という財源を計上いたしておりまするが、これを見ましても、九百五十億の調達について施設関係を一割削減すると、こういうふうなことで収入見積りを計画されております。ところが、大臣も御承知のように、たとえば鋼材一つを例にとってみましても、現在値上りの段階にあるわけです。工事関係であれば、これは現在の国鉄の工事の請負単価は高い。いろいろな問題がありまするので、これは一割程度の削減はできるかもわかりませんが、たとえば車両等の関係になりまして、一割単価を安くして車両が新造できるかどうか。私は、この点におきましても、この予算ではとうてい計画されました全部の車両が車両費として計上されておりまするこの予算でまかなえるかどうかという点については疑問を持っておるわけでありまするが、これに対して、運輸大臣どうお考えになっておるか。
  225. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) これはまあ中村さんのような専門的の立場から検討いただいておるので、私がしろうとで漫然たるお答えもなにと思いますが、こまかい点は政府委員にお答えさせますが、大体においてこういうように了解しております。ただいまの客車もしくは貨車の注文につきましては、今日業者の側において五割ぐらいしか操業しておらぬ、従って、この五カ年計画によって七割及び八割になるとこういうことでありまして、業者の側も政府のこのたびの五カ年計画をそれぞれ承知して準備も進めておる。従って、話し合いを進めておりまして、政府の計画のできるように、単価をできるだけ上げないで協力をしてもらう、こういうふうに話を進めておるそうであります。  それから工事につきましては、今お話のありました通り、工事単価の問題でもっと一つ厳正にやって、何とかこの工事をやっていきたい。こういうことで計画にそごのないようにやっていこう。こういうことを聞いて、それを信頼してやっておるわけであります。
  226. 中村正雄

    中村正雄君 今お尋ねしました施設関係、あるいは動力費の関係については、当局の努力によって何とか計画を遂行できるという御答弁をいただいて、窮屈なということは当局もお認めになっておりますが、窮屈な中にも何とか計画を遂行したいという決意を聞いておりますので、この点についてはこれ以上質問いたしませんが、もう一つ別の面から、施設なりはいいとしても、たとえば人件費を一つ例にとって見ましても千三百二十四億となっており、本年度に対しまして約六十億弱の増加になっておるわけでありますが、この人件費で来年の、三十二年度の賃金その他がまかなえるかどうか。この一点だけ見ましても、非常に私は危惧の念を抱いておるわけであります。その前に、一応国鉄の経理当局の人も見えておりますので、見込みをお聞きしたいわけですが、本年度の給与額は千二百六十六億になっておりますが、すでに三月の終りにきておりますので、本年度の給与総額の決算見込みについてお尋ねしたいと思います。
  227. 久保亀夫

    説明員久保亀夫君) お答えいたします。  本年度の給与総額の予算は、仰せの通り千二百六十六億でございます。これに対しまして増加いたしまする額の概算で申し上げますと、相当輸送量が増加いたしておりまするので、これに伴う超過勤務手当等を中心といたしまして、約二十四億ないし五億これに加算したものが決算額になる予定でございます。
  228. 中村正雄

    中村正雄君 たとえば、二十五億ふえるといたしましても、本年度の決算見込みと来年度の予算を比べて見ますると、わずかその間の開きは三十億前後になるわけです。来年度の予算が、本年度の決算見込みよりも三十億ふえただけで、来年度の問題は解決できるかどうか。この一点だけでも、私は来年度の予算が実行不能なという危惧の念を抱くわけです。これは運輸大臣御承知のように、たとえば、現在は解決いたしておりませんが、政府は尊重するという言葉で表現されておりますが、近く国鉄の賃金問題に関しまする仲裁委員会の裁定が出ると思いますが、これが出た場合は、政府は当然尊重ということで何らかの最小限度の実現だけは、最悪の場合でもなさると思います。おそらく、調停委員会の案と同じだろう、実現すれば年間八十億近い金が要ると一応計算いたしております。これだけ見ましても、来年度のこの予算は、給与の面から全然実行不可能な予算ではないか。こういう私は数字の上から見てはっきりした例示をして大臣にお答えを願いたいと思うのですが、これに対しまして、どうお考えになるか御答弁願いたいと思います。
  229. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。  給与の問題は、なるほど来年度予算の上には、定期昇給として四%を見ておるだけであります。従って、この仲裁裁定が下されましたときには、もとよりそれではまかなえないと思うのであります。政府がこれを尊重いたしまして、そこでまあそれだけ穴があいてるということになりますれば、ことしの秋から暮れごろまでまかなってみて、どうしてもいけないときには、そのときに政府として合法的な処置をとるより仕方がないと、こう考えております。
  230. 中村正雄

    中村正雄君 仲裁裁定の問題は、これはまあ先の問題でありますから、そのときにあらためて審議するといたしまして、今運輸大臣がおっしゃいました来年度の予算の編成の方針は、本年度の給与に対して四%の定期昇給を見込んだものが千三百二十四億何がしの給与総額であると、こういうお話なわけですが、そういたしますると、本年度のすでに決算見込みが本年度の予算よりも二十五、六億ふえておる。来年度は本年度より一般の賃金総額が減ることはあり得ないわけなんです。そうしますと、四%の昇給さえもこの予算であれば実際実施できない予算ではないかと、こういう数字の結論になると思うのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  231. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) 四%はもう予算に組んでありますし、それは実施できると思います。それ以上のところは、どうしても秋から暮れごろまでやってみて、そして一つそれまでにはいろいろな努力を各方面から重ねましてやってみた上で、これは実際問題ですから、給与しないでおくというわけにはいきませんから、そこで処置をするということです。
  232. 中村正雄

    中村正雄君 私の質問の意味がおわかりにならなかっと思うわけなんですが、本年度の予算の四%が約五十八億に相当するわけなんですね。従って、その予算を見積っておりますが、本年度の実際の実績というものは千二百六十六億でなくして、これよりか二十五、六億多くなってるわけなんです。従って、昇給を全然考えなくっても、本年度よりも来年度が賃金が減るということは考えられないわけだから、四%の基礎になっておるのは本年度の予算であって、実績ではないわけなんです。すでに二十五、六億本年度の実績は上ってるわけですから、四%の昇給資金五十八億は実際は三十億しか残っておらない、これでは来年度の四%の昇給ができないじゃないかということを申し上げておるわけなんです。
  233. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) ちょっとその点は説明員から……。
  234. 久保亀夫

    説明員久保亀夫君) 今の点、数字にわたりますので私からちょっと御説明申し上げたいと思います。来年度の予算は、給与総額で約五十八億増加いたしておりまして、そのうち二十五、六億はただいま大臣も申されました四%の昇給に相当する金額でございます。そのほかに、来年度の業務量増加に伴うものとして、約二十二、三億超過勤務手当の増加が入っております。本年度の、先ほど申しましたように、年度中間で予算総則の弾力条項に従って超過勤務手当の増加をお認め願ったわけでございますが、来年度につきましても、予算面で二十数億の超過勤務手当を見込んでございますので、ですから四%昇給財源としては五十八億のうち二十五億あると、こういうことに相なるわけでございます。
  235. 中村正雄

    中村正雄君 来年度の予算の中にありまする超過勤務手当等の内容につきましてはこの席上言及いたしませんが、私が今まで大臣の御説明なり、あるいは国鉄当局の御答弁を聞いておりますと、来年度の予算は非常に窮屈な、私をして端的に言わせば実行できないんじゃないかと思いますが、じゃこの国鉄の予算全体においてどこに弾力性があるのか、弾力性のある費目を一つお知らせ願いたいと思います。
  236. 久保亀夫

    説明員久保亀夫君) 予算の弾力性というお言葉でございますが、法律あるいは予算総則には収入の増加したとき、輸送量の増加したときには政府の承認を受けて経費の総額をふやすことができるという規定がございまして、これはもちろん収入が増加したときでなければ発動しないわけでございますが、その他の弾力性といたしましては、それぞれの費目はそれぞれの所要の費用を積算して計算してございますので、弾力性というものはもちろんあるはずはございません。ただ予備費を本年度二十億を三十億にいたしておりますので、その点では今年度よりは弾力と申しますか、若干ゆとりがあるということに相なろうかと思います。
  237. 中村正雄

    中村正雄君 計上されております予備費につきましては、日鉄法の三十九条の六によってはっきり「予備費を設ける」と書いてあります。私のお尋ねしているのは、日鉄法三十九条に、国鉄の予算については弾力性を与えなければいけないという、財政法に優先する法律があるのです。この弾力性を与えなければいけないという国鉄の予算に、どこに弾力性を与えておるか、その点を明示願いたいという御質問をしているわけです。
  238. 久保亀夫

    説明員久保亀夫君) その点につきましては、私どもの解釈いたしますところは、予算総則に、それに従って輸送量の増加した場合には政府の承認を受けて増額することができると、これを弾力条項とも称しまして、その趣旨にこたえているものと、かように考えております。
  239. 中村正雄

    中村正雄君 輸送量の増加、その他は将来の問題であって、これは予算に計上いたしておりまする歳入が反対に確保できない場合もまた想定されるわけです。従って、将来に輸送量の増加した場合云々ということは、三十九条に規定する弾力性とは、これは考えられないと思うのです。反対に減る場合もあるわけですから、従って三十九条のいう弾力性は、やはりこの予算の金額の中に、数字の中にやはり弾力性を持たすというのが三十九条本来の使命だと思うのです。従って、私のお尋ねしているのは、国鉄の予算全体の中に、三十九条にいうところの弾力性はどの費目か、これを提示願いたい、これを申し上げているわけです。
  240. 久保亀夫

    説明員久保亀夫君) 繰り返すようでございますけれども、ただいまの日鉄法三十九条に書いてございます「需要の増加、」これは先ほどの収入の増加に伴う弾力条項、それからその他「経済事情の変動」と申しますのは予備費のことをさしているものと一と申しますのは、その他の費目につきましては、それぞれ必要の経費につきまして、あるいは石炭費でありますれば列車キロの数値とか、そういったものをとりまして作っておるわけでございまして、それぞれの費目にゆとりとか弾力性とかいうことは考えられていないのでございます。
  241. 中村正雄

    中村正雄君 そうしますと、三十九条の六に、「予備費を設ける」と書いてありますのは、三十九条と重複するわけですか、今の御説明によりますと。
  242. 久保亀夫

    説明員久保亀夫君) 三十九条は、国鉄の予算、企業体としての予算については弾力性のあるべきであるということで、むしろ先ほど来申し上げております収入の増加、輸送量の増加に伴いまする弾力条項を中心として精神をうたったものと私ども解しまして、ただいまの仰せの「予備費を設ける」という条項とは、そういう意味ではあるいはダブっているということになるかとも存じます。
  243. 中村正雄

    中村正雄君 最後に五ケ年計画の遂行について、運輸大臣の所信をお伺いしたいわけでありますが、一応来年度が第一年に当るわけでございまして、これにいろいろ来年度の経費を盛られて、特に車両等につきましては、大幅な新造を考えられているようでありますが、これによって一応の輸送力の増強は数字に現われておりますが、問題は来年度一カ年間の予算経過を待たなければ、これだけの計画は実施できないわけでございます。四月一日から一ぺんにこれだけの設備ができるわけではありません。来年末までにできるわけですが、特にそのうちに私注目したい点は、輸送力を増強するために来年度輸送力を食う面が相当あると思うのです。たとえば北陸で今電化工事をやっておりますが、北陸電化の工事をやるためにいろいろな輸送力を食っておるわけです。そういう面でも平年度輸送力よりも、こういう改良工事あるいは施設の増強をやるために輸送力が減っているわけです。そういう面をこの五カ年計画の数字の上において検討をなさっておるかどうか、この点をお伺いしたいわけです。
  244. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) 政府委員から今の点だけ先お答えいたします。
  245. 細田吉藏

    政府委員(細田吉藏君) お答え申し上げます。最初に輸送力を食う面というお話がございましたが、その前にこの五カ年計画を遂行していきます上に、初年度の輸送力というものが非常に大事なものでございますので、実は特に車両につきましては債務負担行為並びにある程度の見越しで材料等を準備させるというような手を打っておりますので、車両の増備につきましては、新年度に入りましてからフルにというわけには参りませんが、相当程度実動はやっていけるかと考えておる次第でございます。それから工事につきましては、繁激な輸送をしながら工事をいたすわけでございますので、そういった点はお説のように、若干の支障になるということは当然考え得ると思いまするが、ただこの点につきましては、在来とも鉄道の工事は電車、汽車を動かしながらやっておるのでありまして、そういった点から影響を最小限度に食いとめまして、この程度の数量を確保いたすように、工事に十分注意をいたすというようなことで考えておる次第でございます。
  246. 中村正雄

    中村正雄君 最後に、運輸大臣に、来年度の予算につきましては、これは今までの経過を聞きますと無理からぬ点もあるわけでありますが、少くとも三十三年度の予算編成のときに、この五カ年計画に要します財源その他について、特別な措置をお考えになる意思があるかないか。先ほども運輸大臣は、来年度の予算は非常に窮屈な予算だ、また、財源的にも無理をしているということを十分御承知のはずでありますが、三十三年度の予算につきましては、この点も十分考えて、特別に考慮し得る意思が今あるかないか、この点をお伺いいたしまして、私の質問を打ち切ります。
  247. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) 三十二年度の予算の実施の状況を見まして、三十三年度はまた実情に応ずるようにせざるを得ないと考えております。
  248. 小林孝平

    小林孝平君 最初農林大臣にお尋ねいたしますが、今回の予算のうちの生産者米価でありますが、この予算米価のときの算出のパリティは十一月の数字で計算されておるようでありますが、その後のパリティはどうなっておりますか。十二月あるいは一月のパリティはどうなっておるか、もしおわかりにならなければ、事務当局でよろしゅうございます。
  249. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) パリティのその後の動向についてのお尋ねでございますが、予算米価におきましては、ただいま御指摘のように、三十一年の十一月を基準に策定をいたしたのでございます。その後十一月の一二〇・九二に対しまして十二月は一二一・六九、一月は一二二・一一、こういうことに相なっておりまして、傾向としては上昇ぎみに相なっておるわけであります。
  250. 小林孝平

    小林孝平君 米価がきまるのは相当先でございますが、米価決定のとき使うパリティは四月とか五月になると思いますが、そのときのパリティは今より相当上るとお考えになりますか、あるいは下るとお考えになりますか。
  251. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) これは一般物価の動向にもよることでございまするし、あるいはまあ季節性というふうな要素も入ってくるかと思いまするので、今日から五月ころを予測することはまだ困難な事情もございまするけれども、まあ上りぎみに推移するということになろうか、こういう感じであります。
  252. 小林孝平

    小林孝平君 かりに一月のパリティ、今おっしゃいました一月は一二二・一でございますが、これで計算すると、予算米価の一万円は大体幾らぐらいになるのですか。
  253. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 後ほど計算をさせてお答えをいたします。
  254. 小林孝平

    小林孝平君 私が今お尋ねいたしましたところによれば、十一月は一二〇・九二、一月は一二二・一一ということでありますから、パリティは一以上上っているのです。そうしますと、後ほど正確な計算はお聞きいたしますけれども、パリティが一上れば、一万円米価で計算すれば、大体一上るごとに百円上ることになると思うのです、概算。そういたしますと、大体今の一万円米価を一月のパリティで計算しても、すでに百円、米価は値上げしなければならぬ、こういうことになると思うのですが、農林大臣はどうお考えになりますか。
  255. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 大体大よその推算では、そういうことになろうかと思います。
  256. 小林孝平

    小林孝平君 後ほど正確の数字をお尋ねいたしますとして、ともかく今の概算でも、一月のパリティを使ってもすでに百円上る、さらに農林大臣が御答弁になったように、パリティは上昇ぎみである、しかも先のことはわからないけれども、おそらく四月とか五月には相当上るであろう、こうおっしゃいましたから、この百円はさらに上って、二百円になるかもしれません。そういうことを、これは先の予想でございますから、後ほどまたこの問題には触れますけれども、一応この予算米価というものが、非常に変動をすでに予想されるものであるということを今申し上げておきます。  次に、消費者米価の問題でありますが、農林大臣農林水産委員会におきまして、私の質問に答えまして、今後、いろいろ調査会や何かで検討するけれども、消費者米価はある程度上げなければならぬことになるのじゃないかというふうに御答弁になっております。当委員会においても、表現は少し違いますけれども、他の委員の質問に対して、同じようなお答えをされております。大蔵大臣は、この問題については、自分は白紙だ、こうおっしゃって答弁は避けておられますが、どうも農林大臣と大蔵大臣の御答弁が食い違っておるように私は思うのでありますが、農林大臣はどうお考えになりますか。
  257. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) もちろん、ただいま開かれております臨時食糧管理調査会においてお出しになります結論を尊重をする、こういう建前で進んでおりまするので、それが出た上で、的確なお答えが申し上げられると思うのでありますが、先般何と申しますか、大かたの方向と申しますか、推移と申しますか、そういうものから判断いたしてお答えをしたように記憶をしております。
  258. 小林孝平

    小林孝平君 これは大蔵大臣と農林大臣の御答弁が相当食い違っている、農林大臣は非常にまた、あいまいなことをおっしゃっておりますけれども国会資料として私たちがいただきました、農林省の食糧庁の資料でありますが、その最後の問題点というところを見ますと、この消費者米価の改訂についてということを特に取り上げておりまして、消費者米価の値上げはやむを得ない、また、当然でもあるかのごとき表現が書いてあるのです。私はこれを見ますと、政府が消費者米価についてはあいまいな表現を用いられておるけれども、値上げの意思があるということは私は確実であると思うのです。また、大蔵大臣は非常に老練でいらっしゃいますから、白紙であるとおっしゃいますけれども、私はその内心をそんたくすれば、これもある程度やむを得ないと、こういうふうに考えておられるのじゃないかと思います。そこで大蔵大臣にお尋ねいたしますが、あなたは、先般私の質問に対しまして、消費者米価の値上げについては白紙であると強く言い切られておるのでありますが、あなたは白紙であるのですから、その白紙にはだれが何を書いてもいいのですか。値上げをするというふうに書いてもあなたは白紙なんだから、それをおのみになるのか。具体的には、調査会があなたのその白紙に食管会計の赤字は一般会計から補てんするということをきめましたら、それをおのみになるかどうかということもお尋ねいたします。
  259. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 調査会の結論が出ましたら白紙がどうなるかわかりません。それは私が意思決定をいたします。
  260. 小林孝平

    小林孝平君 それならちっともそれは白紙じゃないと思うのです。白紙というのは、これは全然自分には態度がきまっておらぬ、そうしてこれは今あなたはそうおっしゃったけれども、この間から総理大臣、大蔵大臣、農林大臣が、いずれも調査会の結論に従ってやる、こういうふうにおっしゃっている。また、調査会の性格をわれわれが聞いたときは、調査会の結論を政府の原案として農林省で原案を作る、こういうふうに農林大臣は答弁をされておるのであります。私はただいまの大蔵大臣の御答弁は、非常におかしいと思うのです。農林大臣はそれでいいですか。
  261. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 衆議院の予算委員会並びに本院の予算委員会におきまして申し上げておる通りに、ただいまは消費者米価の問題につきまして白紙、意思はきまっておりませんとこう言っておるのであります。将来永久に白紙ということはあり得ません。
  262. 小林孝平

    小林孝平君 それはきまっておりますよ。あなたが白紙なら予算は編成できないじゃありませんか。僕らはそういうことをお聞きしておるのじゃなくて、どういうふうにしてこれが決定をされていくのかということをお尋ねしておるのであります。私はそういう答弁は、非常に答弁にならないと思いますけれども、時間の関係がありまして、後ほどこの問題に触れることにいたしまして、予算米価の、一万円米価の算出基礎は農林省から資料としていただきましたそれによりますと、いろいろ計算が行われておりますけれども、三十一年産の三等基準の価格、これには時期別格差も含んでおる、こういうふうになっております。早場米格差も含んでおる、この価格は九千六百四十七円ということを基礎にしておりますが、この中にこの早場米格差は幾ら入っておるのか、もしあれなら事務当局でもよろしゅうございます。
  263. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 百七十七円というものがその中に含まれております。
  264. 小林孝平

    小林孝平君 そうしますと、この農林省からいただきました三十二年度の米価算出の基準の資料を見ますと、この中には予約申込金百円ですね、去年もおととしも出された百円というものが入っていないのです。これは一体どこに飛んだのです。落されたのじゃないのですか、間違われて。
  265. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 昭和三十年に予約申込み制度を採用いたしましたそのときには、これは新しい制度でもございますし、一つの奨励措置として百円の申込み格差を設定をいたしたわけであります。三十一年度も引き続いてこれを踏襲いたしたのでありまするが、ようやく予約制度ということも確立をいたしたのでございまして、本年あたりはさような特別な奨励措置も大体取りやめてよかろうという考え方のもとに、本年はこれを含めておらないわけであります。
  266. 小林孝平

    小林孝平君 これはおかしいと思うのです。この予約売り渡し制度というものは、この奨励金を出すということを含めまして、予約申込み売り渡し制度というものは成立した歴史的の経過があるのです。それを突如、このうちの申込金百円を除くということは、すでにこれは予約売り渡し制度の内容を変えたということに私はなると思うのです。これをしかもこの予算書の説明には、全然これにはこういう重大な問題は書いてないのです。この金はかりに二千七百万石の買い付けをするとすれば二十七億円です。これは政府は赤字が出ることが困るから、こっそり落した、こういうわけですか。農林大臣は非常に御正直なんですけれども、このやり方はちょっとあまり感心したやり方じゃないと思うのです。
  267. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) ただいまも申し上げましたように、事前予約売り渡し制度というものにも生産者の諸君がだいぶ習熟して参りましたし、ことしは三年目でございますから、一応一万円米価というその一つの基準のもとに予約をいただくことでことが足りる、こう考えた次第であります。
  268. 小林孝平

    小林孝平君 このことは国会でも御説明を積極的におやりにならない、私は初めて今回これをよく検討したらわかったのです。それから一般の農業団体あるいは関係者にも御説明をなさっておらないと思うのです。これは全く一方的な、抜き打ち的なやり方であろうと思う。これは労働大臣はそこにおられますが、この間の二十三日の実力行使は抜き打ちであるとえらいお話があったのですが、これはそれにも劣らない政府のやり方じゃないか。政府は自分の都合のいいときはこういうことをやる、都合の悪いときは黙っている、そういうことでは、私は井出さんのやり方としては非常にこれはおかしいと、こう思いますが、どうお考えになりますか。
  269. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) この点は決して説明をことさらに回避しておるというのではなくして、算定の基準というものは明かにしておるのでございまして、まず、今日の情勢をもっていたしますれば、予約格差をなくしても御了解を得られるであろう、こういう考え方に立っております。
  270. 小林孝平

    小林孝平君 これは簡単なわずかの金じゃないのです。二十七億という金なのです。これを何ら一言の御相談もなく、突如やられたというやり方は、あなたがいかに弁解されても、私はこういうやり方は納得できないと思うのです。これはかりに今後調査会で問題になって出すべきであると決定になりましたらお出しになりますか、あるいは米価審議会にはかって出すべきであるというあれがあったらお出しになりますか。これは出すべきであると思うのですが、どうでございますか。
  271. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 調査会なり米価審議会なりで、もちろん私ども考え方は御説明をいたすつもりでございますが、まあわれわれとしては御納得を得られるものであろう、こう考えております。
  272. 小林孝平

    小林孝平君 こういう問題があるから、あなたの方で今度の調査会の委員等の選定についても相当考慮をお払いになって、こういう点があって納得をいかれるような委員だけ任命されたのではないかと私は考えざるを得ない。これはこれ以上水かけ論になりますからやめますが、三十二年度の米価は一体どうされるんですか、生産者米価の。従来のこの予算米価の算出方法と同じにおやりになるのかどうか、お尋ねいたします。
  273. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 予算米価としてお示しをしてあるわけでございまして、まず、それを御検討願うということに相なろうかと思います。
  274. 小林孝平

    小林孝平君 予算米価の方式でございます。井出さん時間がありませんから、そう逃げないで、わからないことはわからないでいいんですけれども、あいまいなことを言わないで——様式はどうかということを聞いておるわけです。
  275. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 従来の米価決定方式に関しましては、暫定パリティ方式でありますとか、あるいは暫定修正パリティ方式というふうなものを根拠にいたしたのでございますが、明確にどういう方式を用いるべきだという実は規定はないわけであります。やはり一番最近年次における作柄の正常な年、こういうものを基準にとるのが合理的ではなかろうか、こういう観点から三十二年産米について考えまする場合に、三十一年度というものが比較的正常に近い年であったのではないか、こういうところからこの年を基準にして適用をいたしたわけでございますが、これは米価審議会にお諮りをいたしまして、十分御審議をいただくつもりでございます。
  276. 小林孝平

    小林孝平君 非常によくわかりました。基準は三十一年度をとられ、そうして予算米価決定の方式を採用すると、こういうことでございますね、よくわかりました。  そこで、先ほど申し上げたように、パリティは上りますから、この計算でやれば少くとも百円は上る、場合によれば、井出さんの見通しによれば、今後上るんですから、二百円上るかもしれませんが、そういうことで原案をお作りになると私は解釈いたします。それで間違いありませんですな。
  277. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 一月のパリティ指数で計算をいたしまして、まあおよそ五、六十円というような数字が出るわけでございます。今後の推移でございますが、私はまあ目下の関係から上り勾配だという感じを持っておりますが、まだ先のことでございますから、そのときになって研究をいたしたいと考えております。
  278. 小林孝平

    小林孝平君 そういうふうにこのパリティの今後の上り方はわからない、それによって決定されるというならば、私が申し上げたことの計算はどうなるか知らないけれども、ともかくこの様式によってやる、ともかく一月、かりに一月のパリティを使えば六十円上る、将来上れば百円上るかどうかわからないが、そういうことになる、こういうことでありますね、これはよろしいと思います。  そこで政府は、今年度の赤字は百四十二億と言われますけれども、このようにしてもうすでに、生産者米価が、政府の御言明によれば、それだけでも大体百円上る、これだけでも二十七億、さらにこの予約格差、これも米価審議会におかけになれば、これは井出さんがいかに政治力があるといえども、私は納得させることはできないだろうと思う。そうすれば二百円上って、全部でこれは五十四億の赤字がふえる、こういうことになるということを御承知願っておけばいいと思います。これについてさらに申し上げたいことはありますけれども、今ここに触れないことにいたします。  そこで、米価審議会の委員はいつおきめになる予定でありますか。それからその米価審議会の委員の中には国会議員をお入れになるのかならぬのか、これをお伺いいたします。
  279. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 米価審議会の委員の任期が切れておりまするので、なるべく早急にこれをきめまして、審議に支障のないようにいたす所存でございます。なおまた、御指摘の国会議員は、これはもう従来の例でございまして、御参加を願う予定でございます。
  280. 小林孝平

    小林孝平君 この調査会にも国会議員を入れた方がいいといろいろ衆議院でも、あるいは農林水産委員会でも意見があったのでありますが、ついに御説明にならなかったわけです。ところで、この調査会と米価審議会の権限はしばしば総理大臣以下の御答弁でも、ずっと調査会の方が強い、また、原案を作る、その原案を作ってその原案を政府の大体の原案としては米審にかける、こういうことでありますから、調査会は今回は米非常に重大なる性格を持っておるのです。そこで、この重大な調査会の方には国会議員を入れないで、米価審議会の方には従来通りまあきまっておるからいいのであると、こういうことを今おっしゃっておるのでありますが、これは国会議員は調査会の作った原案を、この据えぜんを君たちは食べたらいいと、こういうことでお考えになっておるのですか。国会議員はその出されたものを審議したらいいと、肝心のことは調査会にやらせると、こういうお考えなんですか。
  281. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 調査会と審議会とは共通の課題もございましょうけれども、その職分において相異なるものがあろうかと思うのであります。われわれとしましては、決して国会議員敬意を表することを怠って、調査会に議員を入れないというのではございません。これはまあ主として学識経験者という立場でものを見ていこうと、こういう所存にほかならないわけであります。
  282. 小林孝平

    小林孝平君 敬意は表しておるけれども敬意にもいろいろありまして、まあやかましいからそっちへ適当にやれと、こういう意味です。井出さんも国会議員ですが、そういうことでは私は困ると思う。国会議員には据えぜんを食えという、そういう態度で、この重要な問題を処理されようとしておるのは非常に私は困ったことだと思う。これをさらに詳細にやりたいけれども、時間の関係もありますから、この程度にして、調査会の結論は、衆議院で御答弁の場合は国会に報告すると、こういうふうに御答弁になっておりますが、おやりになるお考えでございますか。また、当然おやりになると思いますが、念のためにお伺いをします。
  283. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 先般、農林水産委員会においての御質問だったと思いますが、当該委員会でございますから、当然御報告をしなければならぬと考えております。
  284. 小林孝平

    小林孝平君 予算委員会ですよ、ここの委員会ですよ。
  285. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) まあもし予算委員会が開かれておりまして、しかも調査会の結論が出るという場合には、御報告をいたすつもりであります。
  286. 小林孝平

    小林孝平君 これは当該委員会といっても、予算委員会は当該委員会ですよ。当然おかけになりますね。念のためにお尋ねいたします。そうしますと、中間報告もおやりになるか。これもおやりになるようなお話でございますが、おやりになりますか。
  287. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) そういう機会がございますれば、御報告を申し上げます。
  288. 小林孝平

    小林孝平君 機会が、というのはおかしいです。かけるとおっしゃったから、念のために聞いているので、機会とか何とか……。おかけになりますね、当然。米審についても同様ですか……。  委員長に申し上げます。ただいま農林大臣国会にかけるとおっしゃいました。予算委員会にかけるとおっしゃいましたから、この中間報告並びにこの結論が出たら、すみやかに委員会を開催されまして報告を受けられるように、お取り計らい願いたい。なお念のために申し上げますが、この結論は、国会は五月の十八日に終りますけれども、五月十八日までにはおそらく調査会の結論並びに米価審議会にかけることができないと思いますから、休会中であっても予算委員会を開きまして、そうして今の報告を聞くようにお取り計らい願いたいと思います。念のために委員長に申し上げておきます。
  289. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) これは後刻理事会にも御相談をいたしまして、決定をいたしたいと思います。
  290. 小林孝平

    小林孝平君 米価審議会は一応お開きになりますか。  それから、あわせてもう一点お尋ねいたしますが、赤字対策として、特に作況がよい場合は赤字対策として、早場米の価格差を廃止しようという声が相当強いのであります。そこで、本年は早場米の減額をされることはないかどうか、従来通りお出しになるかどうか。この早場米は非常にねらわれておりますから、念のためお尋ねいたします。
  291. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 米価審議会は、昨年の例によりますと、五月末から六月にかけて開くと思いますが、大体そういう予定で開催いたすつもりであります。  なおまた、早場米の奨励金の問題でありますが、これも従来の例にならいまして、目下検討しているわけであります。
  292. 小林孝平

    小林孝平君 目下検討というのはおかしいじゃないか。これは従来通り出されるのが普通であって、検討されるのは、どういう点から検討されるのですか。
  293. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 従来とも、この時期をどういうふうに設定するか、あるいはその場合の値幅をいかにするかというようなことは、年によって変動があったかと思うのであります。そういう点を検討いたしておるのであります。
  294. 小林孝平

    小林孝平君 総額として大体今年度程度だということは、間違いありませんですね。
  295. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) まだその点は明確に相なっておりませんが、先ほど来申し上げるように、従来の方向に従って検討いたします。
  296. 小林孝平

    小林孝平君 今、早場米は赤字対策としてねらわれていると申し上げましたけれども、そのねらっているのは大蔵大臣池田さんなんです。(笑声)そこで池田さん、今の農林大臣の御答弁の通りでよろしゅうございますか。
  297. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 早場米はいろいろ歴史のあることでございますし、また地方的に非常に重大問題でございますから、農林大臣の言われたような方向で、十分各方面から検討して決定いたしたいと思っております。
  298. 小林孝平

    小林孝平君 食管の問題はまだありますけれども総理もおいでになりましたから、漁業問題についてお尋ねをいたします。  最初に、法眼参事官はおいでになっておりますか。
  299. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 参っております。
  300. 小林孝平

    小林孝平君 あなたも御承知のように、この日ソ漁業交渉が停頓いたしました。この停頓いたしました最大理由は、ソ連が二条件を出したことだ。その一つは八万—十万トンという問題、一つオホーツク海、これは最近になってからでありますけれどもオホーツク海海域の出漁制限の問題であります。ところが、この二つの問題につきましては、ソ連は、河野イシコフ会談においてはっきりしておるのだ、こういうふうに言っております。昨日のモスクワ放送もこれを非常に強調し、各紙いずれもこれを載せております。ところが、日本側は、これは河野さんが全権として行かれたのでありますが、河野さんはそういう約束が全然しておらないと、こういうことで言い争っているわけであります。そこで、こういうことは非常に珍しいことであると考えるのであります。重大な問題であるというので、河野さんの証人喚問を本日当委員会として動議を採決いたしましたら、これが否決をされました。そこで、この問題は明らかにしなければなりませんから、あなたからその間の事情を聞くことになったのであります。  あなたは、河野全権の随員としてモスクワに行かれまして、河野イシコフ会談にずっとついておられたわけであります。また今回の漁業交渉に当っても、直接関係されておるのであります。そこでこの河野イシコフ会談内容がどういうふうになっているのかということを、ここで詳細御説明願いたいと思います。  あなたから今御説明を聞く前に、条約局長はおいでになっておりますか。
  301. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 参っております。
  302. 小林孝平

    小林孝平君 じゃ、条約局長にお尋ねいたしますが、私は、今般のこのソ連側の提案、八万—十万トン、オホーツク出漁制限の問題、これは非常に重要な問題であって、河野イシコフ会談において話し合ったのを、わが方はこれを否定し、向うはこれを肯定する、こういうことで、話し合いは全然別の立場から主張し合っておるのであります。これは外交交渉上実に異例のことであろうと思うのであります。一つの条約の条文の解釈上紛争を生ずることはありますけれども、こういうことは非常に珍しいことでありますので、先般総理大臣にお尋ねをいたしましたが、こういう例はわが国外交交渉上あったのかという質問をいたしましたけれども、外務大臣は、そういう事務的のことはおわかりにならなかった。あったかなかったかわからないということを、御答弁になったのでありますが、条約局長にお尋ねいたしますが、こういうことはわが国の外交交渉上前例があるのかないのか、それをお尋ねいたします。
  303. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) お答えいたします。条約の問題になりますと、単に条約の解釈のみならず、条約締結当時のいろいろの事情とか、考え方とか、その基礎にもやはり完全に意見の一致がしばしば行われない、お互いに誤解してそのまま分れ合うというようなことも、決して絶無ではないというふうにわれわれは考えております。その方の例と申しますと、ちょっと今思いつきませんのでございますが、古来しばしばあったことではないか。そのために、よく条約の末尾には、解釈や適用の問題が起りました場合は、必ず司法裁判所の判決を求めるというようなこともございます。従いまして、解釈その他につきましても、よくいろいろそういうふうな誤解に基くと申しますか、解釈の相違、考え方の相違というのが、あとの実際の適用になって現われてくるという場合が多々あると思っております。
  304. 小林孝平

    小林孝平君 私は、そういう今条約局長の申されたような意味においては、あることを承知しております。また当然あるでしょう。しかし、今回のように、この河野イシコフ会談において相当広範な話し合いが行われた、その大部分が、お互いに、片っ方は全然話したことがない、片っ方は確約した、こういうような例がないかどうかということをお尋ねしておる。おそらくこれはないと思います。条約局長は、それは専門でございますから、おわかりになると思います。あなたが承知されておらない、承知していないというのは、そういうことはないということじゃないですか。
  305. 高橋通敏

    政府委員高橋通敏君) お答えいたします。私個人といたしましては、はなはだそういう点に不案内でございますので、現在のところは承知いたしておりません。
  306. 小林孝平

    小林孝平君 これは非常に異例であることは間違いありません。この点について後ほどお尋ねいたしますが、法眼参事官から先ほど申し上げましたように、河野イシコフ会談内容、その随員としてあなたはずっと参加されたのでありますから、当然外交官としてその職責を果しておられると思いますから、その内容をことごとく知っておられると思う。どういうふうなことが行われて、現在のような紛争は、どういう話し合いの結果こういうことになったかということを、御説明願いたい。
  307. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) いわゆる河野イシコフ会談につきましては、当時しばしば当委員会におきましても、本院のいろいろな委員会におきましても、御答弁のありました通り、これはいわゆる豊漁年十万トン、不漁年八万トンとする了解でございました。これはしかしながら、当事、ソ連側が当時の漁獲量を計画いたしておりまするその量が八万二千七百トンであるということに見合ってなされた了解であるわけであります。それからまたオホーツク海の問題は、これは日本といたしましては、そうオホーツク海にむやみに漁船を出すつもりはないのだという意味の了解であったと承知しております。
  308. 小林孝平

    小林孝平君 あなたは、ただいまお話しになりましたことからいたしますと、ただいまソ連側が言っておること、特にこれに関しては、昨日モスクワ放送からはっきりと、日本は不当な宣伝をし、主張しておるということを言っておるわけです。あなたの今のお立場からいたしますれば、むしろソ連の方が不当な主張をしておる、こういうふうにあなたはお考えになりますか。また、あなたの今のお話では、当然そういうことになると思いますが、いかがでございますか。
  309. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) 了解の解釈というものは、まま双方によって違うことがありがちでございまして、本件につきましては、まさにその例でございます。従いまして、日本主張しておることは決して間違っておることを主張しておるのではない。昨年は、ソ連は八方二千七百トンという計画量にかかわらず十六万二千七百トンをとっておるということからいたしまして、陸と海と見合うという原則からいたしますれば、当然日本主張は正しい、こういうことになるわけであります。
  310. 小林孝平

    小林孝平君 そういたしますると、日本主張は正しくて、従来この交渉の非常な障害になっておる、この交渉を停頓させておる原因はソ連側にある、こういうふうにあなたは主張されますか。また昨日のモスクワからの放送は、むしろ日本ソ連に向って言うべきことである、こういうふうにお考えになりますか。
  311. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) 交渉はすべて、言うまでもなく、いわゆる虚々実々でございまして、双方おのおのその了解するところを打ち明けあってやることでございますから、その間意見の相違が出ることはたびたびございます。それを、われわれ双方の委員は、全力を尽して打開しようと努力いたしておりますのが、現在の段階でございます。
  312. 小林孝平

    小林孝平君 あなたは随員として、外務省の専門の外交官としてついていかれたのです。こういうふうな誤解を生むようになりました最大理由は、何ら議事録も作らないで、ただ話し合いをやって、そうしてその結果今日のようになったのです。あなたは随員としてこの交渉に当られまして、こういう交渉のやり方でいいと当時お考えになったか。あなたは専門家として、こういうやり方は将来紛争の種になると当時お考えにならなかったかどうか、その点をお尋ねいたします。
  313. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) ただいま条約局長の申されましたごとく、外交交渉はきっちりとした会議録をとることととらぬことがございます。むしろ昨年のごとくきわめて困難な環境のもとに行われた交渉におきましては、双方とも自由自在に話をするということによって出てくる了解が、時にしばしば目的を達することができるのでございまして、その観点からいたしますると、御指摘の河野イシコフ会談において会議録がなかったことは決して私は責むべきことではないと、このように考えるのであります。
  314. 小林孝平

    小林孝平君 自由自在に話し合う、こういうことは双方対等の力があったとき初めて言われることであろうと思う。ソ連日本のごとき、戦後非常に国力が相違しておる。また、私はしろうとでわかりませんけれどもソ連外交というものがいかに老獪——老獪という言葉は適当でないかもしれませんが、ともかく非常に巧みである。そういうことは十分あなたは御承知だろうと思う。その際に、このいわゆるおとなと子供が話し合いするのに、自由自在ということはないと思う。これは一方的に押しつけられることは明らかです。対等の力があって初めて自由自在になるのです。こういうことは当時からおわかりになっていると思うのです、あなたは。私は、あなたが随員として行かれたその労苦には、非常に同情いたします。また河野さんのような非常に強力なる政治家の随員として行かれたので、これは困った、将来困ったことになると思っても、あなたは言われないかもしれない。今はそれを合理化してそういうことを言われているけれども、私はこういうことはあなたを責めるのではないのです。こういうことが今後も行われれば、日本外交は非常に問題であろうと思うのです。自由自在などと、あなたは戦前のことを考えておられるのじゃないですか。日本が世界の強国として外交交渉をやったときは、それでよかったのです。あなたはまだ戦前の自由自在に話し合ったときのことを考えてやっておられるのではないか。そういう考え方から、今日本外交があらゆる点で行き詰まりを来たし、あるいは後手をとるというようなことになっているのではないかと思う。私はしろうとで、はなはだ当を得ていないかもしらぬけれども、ほんとうに国民がみんな心配しておりますから、あなたにお尋ねしているのです。率直に一つ御答弁願います。
  315. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) 私は、すべての交渉におきましては、単に国力の相違とかいうことだけから結論を導き出すのでなくて、理屈のあることはあくまでもこれを主張することが一番正しいと思っております。従いまして、昨年の交渉におきましても、きわめて困難な環境にありましたけれども、しかしながら、双方が条理を尽して、従ってまたその条理なるものは、日本も当然に条理を尽して自由自在に論議をして、その結果一つの結論を得るということがむしろ当然で、国が弱いと言われれば、言われるだけ、あらゆる議論を尽して、理論もまた力なりという立場から行くのがよろしい、こう信ずるのでございます。
  316. 小林孝平

    小林孝平君 あなたは実に有能なる外務官吏でありますから、それは実に自由自在に御答弁なさいますけれども、そういうことではだめです。もっと率直に……。私はそんなことを聞くなら、あなたに来てくれとは言わない。あなたがもっとまじめに、全国民が関心をもって心配しておる。これを明らかにし、また外務省の官吏として将来の日本外交をどうするかということを考えたら、今のような御答弁はあるはずがないと思う。そういうような態度だから、外務省はいつの間にか、どこか影が薄くなって、しろうとにかき回されたりなどするのです。あなた方がしっかりやっていれば、そんなことにならないのです。私は外務省に関係ありませんけれども、あなた方の立場を考えて私は申し上げておる。それをあなたは、そのいわゆる国会答弁をやって、そういうことをやっては私は困ると思うのです。しかし、まああなたも外務省の役人であり、ここに岸さんもおられますから、あのときは間違ったということは言いにくいだろうと思って、これ以上聞きませんが、その態度はやめなければ、日本外交は、これは今後重大なる蹉跌を来たすでさろうということを、私は御忠告申し上げます。  そこで、総理大臣にお尋ねいたしますが、この日ソ漁業交渉は重大なる段階に入りました。最終段階に入ったといわれます。この八万トン——十万トンの条件、あるいはオホーツク海の出漁制限条件をおそらく日本はのむことができないだろうと思います。伝えられるところによると、この二条件には触れないで十二万トンをのむということがありますけれども、触れないでというのは、これはごまかしだろうと思うのです。こういうことはやがて将来の紛争の種になることは明らかであります。そこで、外務大臣にお尋ねいたしますが、あなたは、この段階に来てテヴォシャン大使とさらに御会見されるというようなことをおやりになるか、あるいはイシコフ漁業相に直接門脇大使をして了解を求めるというような手段をとられるとか、そういう何らかの、この非常に行き詰まった局面を打開される方法をおとりになる意思があるかないか、お尋ねいたします。
  317. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私はぜひこの日ソの間における漁業交渉を、せっかく国交正常化した第一年の最初交渉として円満に妥結することが私の目的でございまして、これがためには、あらゆる有効なる手段をとってその目的を達したいと考えております。ただ今日の段階におきましては、非常に両方主張が一方においては対立をいたしておりますが、同時に、委員諸君がしばしば会見をいたしまして、なお、この意見の相違の問題点について話し合いを進めております。従いまして、今日の委員相互間の話し合いで、絶対に話がデッド・ロックに乗り上げたと見ることはまだ早いと思います。さらに事態を見まして、これに対してあらゆる点から考慮して、最も有効なる方法をさらにとりたい、かように考えております。
  318. 永岡光治

    永岡光治君 まず冒頭、岸総理にお尋ねいたしますが、御承知通り、ただいま国会政府の方から国家公務員の給与改正法案が提案されております。今日の国家公務員の給与は、ご承知通り昭和二十九年一月一日に改訂になりましてからその後放置されております。三年三月の長い間にわたって放置されておるわけでありますが、この間におきまして、昨年七月人事院から勧告が出ましたのも御承知通りであります。その内容とするところは、民間及び三公社五現業等を含めました他の給与と比較いたしまして約一一%、金額にいたしまして千九百二十円の開きがある、こういうもとに勧告が出ておるのでありますが、その勧告を政府は——まあ御都合主義の尊重と考えておりまするけれども政府は尊重したということで、先ほど申し上げました今国会に改訂法案が出されておるわけでありますが、その金額は千九百二十円にほど遠い金額であります。そういうさなかに去る三月の九日には三公社五現業に対しまして、基準内賃金といたしまして、千二百円の給与改訂の調停案が提示されました。政府はこれを不満といたしまして、ただいま裁定委員会に持ち込んでおるわけでありますが、見通しとしては、私は大体調停案がそのまま提示されるものではないかと考えられますが、それは別といたしまして、いずれにいたしましても、裁定がこの金額に近いものを——あるいはそのままかどうかしりませんが、いずれにいたしましても、千二百円というものが出るだろうということは、当然これは予想されるわけでありますが、そうなりますと、すでに千九百二十円の開きがあるというところにもってきて、その改訂ができないうちに、さらにまた千二百円の開きが出てくるということになりますれば、国家公務員の立場からいたしますならば、当然給与改訂の金額について不満を持つのは当然だろうと私は思うのであります。そこで、ただいまは本委員会におきましては予算案の審議が行われておりますが、すでに衆議院を通過したものであります。これがどういう結論になるか別といたしまして、おそらく近いうちに成立を見るでありましょうが、そういう事態になった際において、政府は今後国家公務員の給与について、一体どういう考えを持っておいでになるのか、そのかまえをまず私は聞いておきたいと思うのであります。
  319. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 国家公務員の給与につきましては、人事院におきまして検討した結果の勧告が出ております。私は永岡委員にもこういう公務員の給与の問題について、かつてお話をしたこともあるのでありますが、私は、政府がこの人事院の勧告をできるだけ忠実に実現するというのは当然の政府の義務であり、また政府はそういう方法によって公務員の給与の改善ということをやらなければならぬという考えのもとに、今回人事院の勧告を尊重して、これに基いての給与改訂をやっているわけであります。そうして公務員は、言うまでもなく公務員という特別の地位から自分たちの給与の改善についての要求に対しまして、一般労働組合の人々とは違って運動方法が制限されております。従って、常に人事院というものがこれにかわって公正なる公務員の給与もしくは給与体系がどうあるべきかということを常に検討いたしまして、公正妥当な案を得て、これを政府に勧告するという制度になっておるのでありまして、従って、これを尊重して、政府は公務員の給与を公正かつ妥当なところにもっていくということに、今後といえども努めて参りたい、かように考えております。
  320. 永岡光治

    永岡光治君 そういたしますと、人事院の勧告がなければ、今のところ給与改訂に対する態度は検討していないと、どうするかという考えは今のところ持っていないと、こういうことですか。それとも、当然三公社五現業等の裁定というものが出れば、これは実施するでありましょうから、そういう際においては、政府が当然考慮しなければならぬと私たちは考えるのでありますが、そういう考えは持っておいでにならぬと、これではきわめて、国家公務員の諸君が非常に落胆をすると思うのであります。おそらく国家公務員及びその家族を含めますと相当な数に上るのでありますが、岸総理大臣もかつて官吏生活をされた経験をお持ちの方であります。おそらくあなたの誠意を期待をいたしておると思うのでありますが、あなたは、この仲裁裁定後において、出された後において、国家公務員の給与改訂について全然考えていないのか、あるいはその点については十分改訂について今考慮しているのだと、そのいずれであるのか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  321. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 仲裁裁定が出ますれば、三公社五現業について、これを誠意をもって尊重するということは、かねて私、声明いたしておりまして、そういう考えでおりますが、これがどういうふうにきまりますかを、今日あらかじめどれだけかかるのだとか、どうなるのだということをまだ申し上げる段階にないと思うのであります。しかして、これの結果として、三公社五現業については、今申しますように、私は誠意をもって尊重をいたしますけれども、それのきまり方いかんによって、当然、一般公務員にも直ちにそれだけのものをつけ加えるというような考えは私は持っておりません。もちろん、今申し上げるように、公務員の給与というものを公正に、また妥当にして、公務員がその地位に安んじて公務に従事できるようにすることは、これは政府として当然やらなければならぬ問題だと思います。従って、そういう意味において、人事院が常に公務員の給与の問題を検討いたして、公正妥当な線がどこにあるということを常に政府に勧告すべき義務がある、そういうものを尊重して、これを実現していくということが、最も私は正しいやり方である、かように考えております。
  322. 永岡光治

    永岡光治君 それでは、きょうは人事院は来ておりませんか。
  323. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  324. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記を始めて。
  325. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して。岸総理永岡委員の質問に答えて、人事院というのは、公務員の公正妥当な給与の線がどこにあるかということを十分検討して、それを政府に勧告する——人事院というものの性格、それから機能というものを非常に尊重されておるというふうに御答弁からは受け取れますが、そう受け取ってよろしゅうございましょうか。
  326. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) その通りお考えになって差しつかえないと思います。
  327. 湯山勇

    ○湯山勇君 そこで、大久保国務大臣にお尋ねいたします。ただいま岸総理大臣は、人事院というものはきわめて重要な、しかも、公正妥当な公務員の給与について検討する非常にりっぱな機関であるということを御肯定になったのですけれども、今回行政機構改革によって、人事院をなくしようということをお考えになっておるようでありまするが、これは明らかに総理大臣の御意思と違うやり方であって、私はどうも納得が参りません。あなたは、総理大臣と別な考えで、総理大臣の意思と違った行動をなさるおつもりなのかどうか、伺いたいと思います。
  328. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 人事院が公正妥当な考えを持って人事行政に尽しておるという点は、今総理から言われた通りであります。私もそう考えております。機構の問題でありますが、これは、御承知通り鳩山内閣の末期において立案され、鳩山内閣の閣議を経て目下衆議院の内閣委員会において継続審議中であります。ところが、この問題につきましては、閣内においても、また閣外においても、衆議院の各位においても、参議院の各位においても、いろんな議論があります。この案が全部進行していいかどうか、多少疑問の点が出てきまして、そこで、私どもはこの点を研究して調整しております。調整ができ次第、この案がどういう方向に御審議願うようになるかはっきりすると思います。しばらく、調整のつく間、この論議は見合していただきたいと、こういう希望でございます。原案は今あなたの言われておるような案がありますけれども、どういう案になりますか、まだはっきり見通しがきまっておりません。
  329. 湯山勇

    ○湯山勇君 ただいまのようなお考えでしたら、一応案を引っ込めて、検討して国会に出すというのが順序ではないかと思います。政府態度がきまっていないけれども、そのまま提案しっ放しにしておる。これは鳩山内閣末期の、何といいますか、どさくさまぎれに出したものだから、閣内において異論がある。もちろん総理の御意思とは全然違っております。国会人の中にも議論がある。それを出しておいて、今から調整というのは、私どもは妥当でないと思いますが、撤回になって、あらためて成案を得た上でお出しになるという御意思はございませんか。
  330. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 湯山さんの言われますのも一つの御意見と存じます。また、私のように、政党内閣でありますから、多少政党の主張を調整して修正するというのも一つの方法であると存じます。私どもはその第二の方法をとっておるわけであります。
  331. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 人事院総裁が参りましたので。(湯山勇君「もう一回」と述ぶ)簡単に願います。
  332. 湯山勇

    ○湯山勇君 総理の御意向は、ただいまのように、人事院といのは全く申し分のないりっぱな機関である、こういう御意向です。従って、岸内閣の一員である大久保国務大臣としても、もちろん政党内閣だから党内にいろいろ意見があるにしても、大久保国務大臣も岸総理と同じように人事院はやはり存置すべきだというお考えだと思いますが、最後にこれを承わりたい。
  333. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私が申し上げておることとちょっと誤解がありますといけませんから。私は機構の問題として、人事院の機構をそのまま存置すべきかどうかという議論をいたしておるわけじゃありません。人事院の、公務員に関する給与その他待遇の改善、公正妥当な線を研究するという人事院の機能に対して、私は満腔の賛意を表しておるわけでありまして、今の機構がどうだという意味とは違いますから、誤解のないようにお願いいたします。
  334. 湯山勇

    ○湯山勇君 そうなると私はもう一つ言わなければならぬ。
  335. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 簡単に願います。
  336. 湯山勇

    ○湯山勇君 岸総理の御意見と私も全く同感であります。ただ単に、機構の問題だけではなくて、今回は人事院を廃止して別の機能の機関を作るというのが趣旨なものですから、私はお尋ねしておるので、私も総理と同じ気持で申し上げております。そこで、大久保国務大臣の御答弁をお願いします。
  337. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 人事院の機能については、さきに申した通りであります。総理の言われた通り、私もそう考えております。人事院の機構をどうするかという問題は、全くこれは別個の問題になってくる。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)別の問題になってくると存じます。従って、今この案としては、政府及び党において調整中であります。その間に御審議を願うようになると思います。
  338. 永岡光治

    永岡光治君 淺井人事院総裁にお尋ねいたしますが、ただいま人事院の勧告に基きまして、それを政府が受けて国会に給与法の改正案が提案されておりますが、その実現を見ない今日、三公社五現業等につきましてはすでに調停案が示され、政府はこれを不満として仲裁委員会にかかっておりますが、日ならずして裁定案が出ることはこれは間違いないと思うのであります。そこで基準内賃金においてすでに千二百円という調停が示されておりますが、私はこの金額はおそらくや裁定委員会においても提示されるものと考えておりますが、裁定されるものと考えておりますが、あなたは今日まで国家公務員の生活の保障というそういう問題について、保護者的な立場にある機関の責任者であるわけでありますが、その人事院総裁は今日この段階において、国家公務員の給与がこれをもって足りると考えておるのか、足りないと考えておれば一体どういう処置を今努力をしておるのか、その点をまず私は伺いたいと思うのであります。
  339. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お答え申し上げます。団交権のない公務員にかわって公務員の保護機関として人事院はあるものとわれわれは確信をいたしております。従いまして、人事院が公務員の給与の改善をはかりますことは、これは当然の責務であると考えて、過去においてもさようにやっておりましたし、将来においてもさように考えておるつもりでございます。
  340. 永岡光治

    永岡光治君 いや、あなたが保護者的立場でおるということはわかっておるのでありますが、必ずしも私は保護者的な立場を十分発揮しているかどうか、大へん疑問に思っておる次第でありまして、そういう意味でお尋ねするわけですが、今日の段階において、さらにあなたはこの国家公務員の給与改訂についてどういう考えを持っておるのか、もう少し明確に具体的に説明していただきたいと思うのであります。
  341. 淺井清

    政府委員(淺井清君) ただいまお答えを申し上げました通りでございまするから、昨年給与改善の勧告をいたし、これを政府は受諾せられて、ただいま御審議を願っておる次第でございます。
  342. 永岡光治

    永岡光治君 それは現在のやつでありまして、私が質問をいたしておりますのは、今日すでに民間の会社におきましてもかなりな給与改訂が行われております。同じ関係にあるといわれる三公社五現業についても調停案が提示され、仲裁の裁定が提示されるという段階にあるわけです。この段階において、今の新しく政府も、昨年七月勧告されましたその改訂額で事足れりと考えておるのかどうかということです。
  343. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 御指摘のごとく、ただいまの勧告は政府が受諾されております勧告は、昨年の三月の民間給与その他を勘考してできたものでございます。その後の推移につきましては、ただいま調査中でございまして、これは今年の七月十六日までにあらためて報告をいたさなければならないと思っておりまするが、その際改善の必要ありと認めましたる場合においては、あわせて勧告をいたすことになろうかと存じます。
  344. 永岡光治

    永岡光治君 法律によって義務づけられておりまするのは、一年以内の制限がついて、それで勧告ないしは報告をしなければならぬということになっておるわけですが、何も七月を待つ必要もなく、それはその事前においてでも勧告をすることが当然であると私は思うのであります。何も法律の制限というのは最悪——どんなに長くなっても一年以内には勧告ないし報告が出さるべきであるということが規定であるわけでありますから、今千二百円等々の問題が論議されておる今日でありますので、当然それはもうすみやかに人事院としては保護者的なほんとうの機能を発揮するというのであれば、もう当然私は作業を進めておってしかるべきだと思うのですが、そういう誠意は持っておられないのかどうか。
  345. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 御承知のごとく、人事院の給与の第一の問題は民間給与との比較であります。これは公務員法六十四条の規定におきましても、第一に人事院が考えるべきものは民間賃金でございます。これは毎年三月を基準といたしまして調査することになっておりますので、これは全国にわたる大規模の調査を必要といたしまするので、これはそうたびたびできるものではないのでございます。もちろん人事院の責務といたしましては、年に一回の勧告に限ることはございませんけれども、調査の規模から申しましても、これはやはり七月になろうかと考えております。
  346. 永岡光治

    永岡光治君 まあただいま調査をしておるということでありますから、それは調査されることはけっこうでありますが、見通しとして大体改訂の勧告は出さるべき情勢だろうと考えられますが、どうでしょうか、その点は。
  347. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 今日の段階においてはその点は何ら結論に達しておりません。これは全く白紙として臨む方がよろしいかと思います。
  348. 永岡光治

    永岡光治君 それは今の段階であなたに紋切り型で私は答弁することを望んではいないのであります。当然あなたの気持の上で考えて、保護者的な機能の責任者としての人事院総裁ですから、今明らかに言われていることは、昨年七月でも、かつこれだけの開きがあるということは事実あなたは勧告されたわけです、よろしいですか、その改訂の勧告をまだ実現していないその矢先に、すでにまた千二百円の開きがあるということは、それだけの余分なものは、余分なものといいますか、今の開きの上に、さらにそれが加えられることは当然じゃありませんか。それをしもあなたは否定されるのですか、千二百円が裁定されても、あなたはそれでよろしいと考えておるかどうか。
  349. 淺井清

    政府委員(淺井清君) そのことは最初に私の気持でお伝えをしたのでありまして、過去において人事院が公務員の給与改善に努めたごとく、将来も努めていくであろうと、一番最初に抽象的に申し上げた次第でございます。三公社五現業との関係を御指摘になりましたが、私は三公社五現業と公務員の給与との間にはある程度の均衡は必要であろうと思っております。それは国鉄法二十八条の規定によりましても、国鉄職員の給与が国家公務員の給与を考慮して定められると書いてありますし、五現業におきまする給与法の特例法におきましても、ほぼ同様の規定がある。このことは裏返してみますれば、国家公務員の給与と三公社五現業の給与との間には、たとえそれは同一水準であることは必要でないかと思いまするけれども、一定の権衝は保つべきものと考え、そのつもりでやっていきたいと思います。
  350. 永岡光治

    永岡光治君 その答弁で大体見通しはつきました。近く勧告をされるという期待ができるわけでありますが、その際において、今度は岸総理にお尋ねするわけでありますが、当然これは次期の機会において改訂さるべきものと思うのでありますが、岸総理は人事院からの勧告があった場合に当然これはその通り尊重するというのであります一から、実施さるべきものと考えますが、その点はどうあなたはお考えになっておりますか。
  351. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほども私が申し上げました通り、人事院の勧告に対しては政府はこれを尊重すべきものである、また尊重していくのが私の方針でございます。
  352. 永岡光治

    永岡光治君 ところがその尊重するというけれども、これは労働大臣の出席を求めまして、さらに私はただしたいと思うのでありますが、とかく今までの政府態度というのは御都合主義の尊重であろうかと私は思うのであります。事実昭和二十九年の七月に、淺井総裁も今おみえになっておりますが、地域給の改訂の勧告が行われましたが、これはいまだに実現されておりません。勧告を尊重するというのであれば、当然私はあの二十九年七月の勧告されたものが尊重さるべきものと、こう考えますが、しかもあの勧告に基きまして、衆参両院におきましてそれぞれ意思がまとまりまして、衆議院、参議院の話し合いができまして、いよいよ成立という段階になったわけでありますが、その際に解散が行われまして、あの法案が今日に至りましてもまだ日の目を見ていないというのでありますが、この勧告を尊重するという態度であるならば、なぜその地域給の人事院の勧告を尊重しないのか。もう一つ公務員制度、この退職年金制度ですか、これも昭和二十八年の十一月に勧告されております。もうすでに三年になろうとしておりますが、それについてもいまだに実現いたしておりません。そういたしますと、政府の尊重というのは私はどうしても御都合主議ではないかと思いますが、その点はどう思いますか。しかもさらにお聞きをいただきたいと思うのですが、現在の今政府が出されております給与改正法案のもとになっております人事院の勧告におきましても、昇給期間は触れていないのであります。七百円未満は六カ月ごとに昇給する、それから七百円から千五百円未満は九カ月ごとに昇給する、千五百円を超えるものは一年以上、こういう法律になっておりますが、これを改正しろという勧告がなされていないのであります。にもかかわらず政府の方では一方的にこれを改正いたしまして、全部最低一年の期間にしております。従って二百円の昇給をする者でも一年の昇給期間を要するということになるのであります。この点は明らかに人事院の勧告を尊重してないと私には思われるのであります。その辺の御都合主義の勧告であるという私の断定について、あなたはこれに抗弁の余地があるならば、どういうところに抗弁ができるか、それをお尋ねいたしたいのであります。
  353. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 地域給の問題につきましては、これは今検討をいたしております。これが実現するという考えのもとにこれが研究調査を進めております。御承知通りなかなかこれは実現する上におきまして簡単な問題でございませんので、その趣旨を実現するという目標のもとに研究を進めておるのであります。  それからあとの退職年金制度のものは、一般の公務員制度全体の問題としてこれも考究をいたしております。  それから最後の昇給期間の点は、やや具体的なこまかい問題でございますので、私よりも政府委員から答弁をいたした方が、……  私かねて申しておる通り、人事院のなには決して御都合主義でなにするというわけでございません。ただ政府としてはもちろん財政の全体のことも考えなければなりませんし、公務員全体の問題を考えてこれが実現を考えていく。しかしそれは決して御都合主義であるとか、いいかげんの、口の上だけで尊重するというのでなしに、誠意をもって私は尊重してその実現を期したい。かように考えております。
  354. 永岡光治

    永岡光治君 あなたは御都合主義の尊重でないとおっしゃるけれども、地域給の問題について総理にちょっと聞いていただきたいと思うのです。あなたの方では今検討しておると言うのですが、その検討は人事院の勧告を尊重する建前に立っておるかどうかという地域給の勧告の点、それから退職年金制度です。人事院の勧告を尊重したという、そういう形でやっておるのかどうか、尊重しているなら尊重している、尊重していないなら尊重していないとはっきり言ってもらいたいと思います。
  355. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 人事院の勧告についての尊重の問題が出ておりまするが、われわれは総理からお答えになりましたように、人事院の勧告はこれを尊重していっておるのであります。  その問題につきまして昇給の問題が出ましたが、われわれは人事院の勧告につきましては昇給の問題は触れておりません。しかし実際の問題から考えまして、事務の簡素化からいって私はこの際昇給を原則として一年とした方が便利であり、合理的であるという考え方からいっておるのであります。  そうして次に地域給の問題につきましてのお話がございましたが、これは人事院の勧告にはなかったのでございます。(「あるよ、二十九年に」と呼ぶ者あり)公務員制度の方からきておるのであります。しこうして地域給につきましては、いろいろ問題がございました。国会の修正その他もありまして、財政的に非常に困難だといって議論があるときに解散になったのでございます。しかしこの問題は、公務員の俸給制度と不即不離の重要な問題でございまするから、ただいま政府におきまして、公務員の俸給の関係とあわせて考慮いたしておる次第でございます。
  356. 永岡光治

    永岡光治君 それでは人事院総裁にお尋ねいたしますが、二十九年の五月に地域給の改訂の勧告があったが、それがまだ実現していないと思っておりますが、どういう経過になっておりますか。今池田大蔵大臣は地域給の改訂の勧告がなされていないということでありますが、そういうことがなかったのかあったのか。
  357. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 大蔵大臣のお答えは決して間違ってないのであります。大蔵大臣は昨年七月十六日の勧告の中には地域給の勧告は含んでいなかったという意味でお答えになったものと了承いたします。それはその通りでございます。しかし人事院はその前に、二十九年でございましたか、御指摘のように地域給の勧告をいたしておるのでございます。ただ問題は政府側におきましても人事院側におきましても、地域給というものは将来廃止すべきだという基本と申しますか、基調というものは、これは同一でございます。ただそれまでの段階において一度手直しをした方がいいと人事院は考えたのでございまして、人事院は終局の形として地域給は廃止すべきものであろうとは思っております。
  358. 永岡光治

    永岡光治君 池田大蔵大臣お聞きの通り、二十九年五月に勧告しております。それをまだ政府は実施してないわけです。よろしいですか、これははっきりしてもらいたいのです。尊重してないのです。二年数カ月にわたってあなた方が尊重していないのは明確です。だからあなた方の尊重は御都合主義の尊重といわれても抗弁の余地がないのです。  それから今の人事院総裁のはしなくも言に漏れましたが、地域給は整理の方向に進む方が正しいという話のようでありますが、勧告を尊重しないのです。あなた方は勧告があったならば尊重すると言うのです。今回の給与改訂におきましても、次の機会に勧告があったならば尊重するという岸大臣の言明です。政府で勝手にやってはいけないことです。都合のいいときは政府は勝手にやっておいて、都合の悪い場合には人事院の勧告がないからとか、あるいは人事院の勧告がこういうふうにされたからということで、まさにこれは御都合主義の最たるものだと思う。それならば当然私は人事院から地域給の改訂についての勧告がなされて、初めてそれを受けて——国家公務員の給与全般についての責任を持っておる人事院でありますから、それを受けて考えるべきが至当だと思う。それをあなた方が一方的にやるということは、二十九年五月の人事院の勧告は一度も実施しておらずに、政府は勝手に今度はやろうというのです。それは人事院の勧告の尊重にならぬと思いますが、どうですか。
  359. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 二十九年に人事院勧告がありまして、地域給についてはいろいろ議論があったのでありますが、その後公務員制度の調査会におきましては、今、人事院総裁のおっしゃったように、これは縮小されるというような意見が出ておるのであります。でわれわれは最近におきまして、過去のそういう事例をもちまして地域給につきましては再検討を加えようといたしておるのでありますが、人事院の勧告につきましてはいろいろな点がございます。過去数回出まして、尊重しないと申しますが、財政上の理由でその通りにいかなかった場合もないことはございませんが、おおむね政府は人事院の勧告を尊重してきておるのであります。
  360. 永岡光治

    永岡光治君 おおむね尊重していないと思う。二十九年五月の勧告は尊重したのか。尊重したのならばその事実を示していただきたい。
  361. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほども申し上げたように、ずっと過去数年間におきまして五、六回勧告があったと思います。その大部分は政府の方で聞いておるのであります。
  362. 永岡光治

    永岡光治君 退職年金制度及び二十九年五月の人事院の地域給の勧告は実施してないと私は断定しておりますが、いつ実施したか。その時期と方法、こういう形で尊重して実施したのだという例を示していただきたい。
  363. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 過去五、六回の中で……。
  364. 永岡光治

    永岡光治君 その二つです。
  365. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 一回ぐらいなかったかと思いますが、あとはおおむね実施しておると承知いたしておりますが、地域給の問題については勧告を実施しない、こういうことですが、それは先ほど申したように議会が解散したり、いろいろな事情がございまして、その勧告について考慮しておるときに公務員制度調査会から答申もございました。そうしてそういうものをあわせて今回やろうといたしておるのであります。で大体われわれとしましては過去の歴史からして、おおむね勧告の線に沿っておると断定できると思います。
  366. 永岡光治

    永岡光治君 おおむねというのは、私が指摘したものについてはおおむねという表現は当ると思いますが、それ以外は当らぬということを私は主張しておるわけです。議会の解散があったというけれども、次に国会が成立しておるから当然やるべきだと思う。当時もあなたは大蔵大臣をしておったと記憶いたしますが、それは誠意がないからやってない。ですから、はしなくも公務員制度調査会というものに触れられましたが、それは法律できめられたものですか、政府が勝手に作ったものか、国会の承認を経て作ったものか、人事院はどういう権威の上において対立できるのか、その点を説明してもらいたい。
  367. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 公務員制度調査会は閣議決定においてできたものであります。
  368. 永岡光治

    永岡光治君 閣議決定なら政府の勝手ではございませんか。それは諮問機関です、政府の。人事院はそういう諮問機関ではないのです。給与についての保護者的機能を持っておる独立機関でございます。その機関が勧告しておることを実施せずに政府部内の言うならば御用機関です。御用機関の答申を尊重するから、こういうことになるのです。今度の給与改訂においてもしかりです。昇給期間を一年にしたら便利である。どこから来ておるかといえば、公務員制度調査会からそういう答申があった、こういうことも私は聞いているのですが、政府内部で、御用機関で作られたものは、人事院がそれをやってはならぬという立場をとる限りは人事院の方が優先しなければならないと思うのであります。人事院の地域給改訂の勧告は、明らかにやりなさいということを勧告をしているのです。なぜやらないのですか。公務員制度調査会には人事院のそれを打ち消すだけの権限があるのかないのか。人事院の勧告をニグレクトする権限を持っておるのかどうか。その点をお尋ねします。
  369. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 人事院の地域給の問題は昭和二十九年で、私はその当時直接関与はいたしておりません。しかし、そういう問題がありまして、国会でいろいろ議論のあったことは聞いておるのであります。公務員制度調査会は内閣が勝手に作ったものだと、こういうようなお話でございますが、やはり内閣といたしましてそういうものを作る以上は、やはり世間の納得の行くような結論を出すように努力しておるのであります。しこうして公務員制度調査会の委員のうちにもやはり人事に関する問題、俸給その他の問題がありますので、人事院からもまた参加を得てやっておるのであります。
  370. 永岡光治

    永岡光治君 人事院から入っておるかもしれませぬけれども、それは何ら権威はないのです。法律の上から権威はないのです。どう抗弁されてもその権威はございません。内閣のあなた方が作った一つの諮問機関ですから、どこまでも諮問機関です。ところが人事院というのはそうじゃない。政府に対して勧告権を持っているところの、憲法の上でも保障されておるりっぱな機関なんです。ですから、その人事院の勧告をニグレクトすることは私はできないと思うのです。明らかに人事院の勧告が出ておるのに、それを実施していないというのは政府の怠慢という以外にないと思うのです。それから今公務員制度調査会のことも触れられておりましたが、その中に一体労使双方の、労使それぞれの意見というものが一体入っておるのか。労働者側の意見が入っておるのかどうか私は疑問だと思うのです。これはあなたのかつての同僚でありました大蔵省の今井一男さん——ただいまは労働金庫の理事をやっておられますが、この方が公務員の給与改訂について国民の声を聞き再検討せよと言ったことが出ておるわけです、この中に。こういうことが書いてある。あなたは公務員制度調査会のことを非常に触れているから、私は公務員制度調査会というものはこういうものであるということを、私が言えばこれは社会党の諸君が言うからということになるかもしれませぬから、特に機威ある今井さんの言を借りたいと思うのです。今読み上げてみます。「実は数年前公務員制度調査会なるものが設けられ、その結論も一応発表され、それを検討するため内閣に調査室まで作られているが、この調査室が全くふざけた成行なのである。メンバーは、高級官僚と、政府お気に入りの少数学者、官僚出身者で構成し、一切のジャーナリズムを締め出して、秘密のうちに審議を終えているのである。したがって政府や高級官僚の扱いやすい公務員制度をねらったものと言っても弁解できないほどである。」ということを明らかに指摘しているわけです。こういういろいろ答申された案が、あなた方が人事院勧告に対立して、それが優位するような考えでおったならば、私は大へんなことになると思う。そういう性質のものです、公務員制度調査会というものは。構成についても、おそらく国家公務員の代表が入っていないと思います。下級職員というか、国家公務員の中の今労組を作っている、つまりほとんど大部分を占めている方々、そういう言うなれば労使双方と言った方がいいかもしれませぬが、そういう代表も入っていないと思っておりますが、何か入っておりますか。私は今公務員制度調査会についてのこういう今井一男さんの言だけ指摘しておきますが、これについてあなたは人事院よりこっちの方が大事なことのようなことを言っておりますが、人事院の権威とどっちの方が権威があるか、それをお尋ねしたいと思います。
  371. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 人事院とどっちが大事かという問題じゃございません。政府といたしましては、人事院の勧告を尊重いたしますが、政府自体といたしましても公務員制度調査会を設けましていろいろ検討しております。従ってその構成委員には労使双方を入れているかという問題でございますが、私は公務員制度調査会の委員につきましては、これは上の方の公務員と言われるかもしれませぬが、人事院の方も入ってもらいますし、そうしてその委員委員会以外において各方面の意見を聞いて、そうしてりっぱな答申をなされるように努力せられておると思うのであります。
  372. 永岡光治

    永岡光治君 それはそういうことになっていないのです。あなたはやっぱりその内容を知っておいでにならないのです。労使双方と申しますが、組合の職員の意見は全然聞いていない。聞いていないから今日見るような非常に公務員が喜ばない給与体系というものを原案として出しているわけでありますが、そこでもう一回尋ねますが、今政府の考えている地域給改訂については、この人事院の勧告を尊重するという態度があるならば、当然これを取り入れるべきと考えますが、もしこれを取り入れていないとすれば尊重していないということになると思うのですが、当然取り入れてないものと解釈してよろしいかどうか。
  373. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) ただいま検討中でございまして、そうしていろいろ地域給の問題も公務員の給与改訂とうらはらになるものでございますから、十分人事院の意向等もくみ、そうして政府の考えておる給与法の改訂の趣旨に沿って立案をいたしておると思います。
  374. 永岡光治

    永岡光治君 かまえです。検討してみなければわからんということよりも、尊重している態度で検討しているのかどうかということを聞いておるのです。
  375. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 給与の問題につきましては、人事院の案につきましては十分取り入れるつもりでおります。
  376. 永岡光治

    永岡光治君 労働大臣が来るまで一応質問を保留いたします。
  377. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) ちょっと速記を  とめて。    午後六時十七分速記中止    —————・—————    午後六時四十分速記開始
  378. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記を始めて。
  379. 永岡光治

    永岡光治君 給与担当大臣にお尋ねいたしますが、ただいま国会に提案されております国家公務員の給与法の改正についてでありますが、これは現在の十五等級制度を七等級に、行政職に例をとりますれば七等級に縮めておりますが、これについては国家公務員に非常に強い不満があるわけでございますが、いやがるものを無理に押しつけて、そうしてどうしてものませなければならないという理由はどこにあるのか。このために士気高揚に支障を来たしたならば、政府として同じ金額を使うのに、むくれて受け取られる使い方がいいのか、あるいは喜んで働いてもらえるような支給の仕方がいいのか、こういうことになりますと、おそらくあなたはいやがって無理に働かないように、働かないように押しつけておるように思うのでありますが、こういうことをあなたはいいと考えておるのか、このねらいは一体どういうところにあるのか、その点をお尋ねいたします。
  380. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 十五等級を七等級に縮めましたことは、これは職務給というものに重点を置いて、従来もやはり、十五等級ございましたけれども、職務は七つに分れておりまして、その中が非常に複雑でございますから簡素にするという考え方、職務給を簡素にする。同時に号俸の方におきましては、頭打ちになる場合、生活給として非常に見るところが少いものでございますから、ワク外昇給を認めまして、職務給、生活給、これを調和いたしました次第であります。しこうして簡素にいたしました。
  381. 永岡光治

    永岡光治君 簡素というのはどういう意味ですか。私にはよくわからないのですが。
  382. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 十五等級を七等級にいたしましたから簡素になったわけであります。
  383. 永岡光治

    永岡光治君 そういうことで一体どういう効果があるのですか。効果を私はお尋ねしたいのです。十五等級を七等級にしてどういう効果があるのですか。
  384. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 十五等級を七等級にするということに対しましても、これはやはり人事院の勧告に従ってなしたのでありますが、なお政府といたしましても技術的な面におきましては責任をもってやったのであります。
  385. 永岡光治

    永岡光治君 人事院の勧告を尊重するということがあるとまた私は開き直らなければならぬのでありますが、最後に私は開き直りたいと思いますが、地域給の改訂の勧告、それから公務員の退職年金制度の勧告、これについて尊重された事実を示してもらいたい。それがない以上は尊重をしたということは私は許すことができないと思うのです。明確にその事実を示してもらいたいと思うのであります。
  386. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 二十九年の人事院の勧告の地域給の問題でございますが、当時は大体八十六億くらいの人事院の勧告でありましたが、これが今計算いたしますと九十二億くらいになると思います。その当時与野党が相談いたしまして、百八十四億にこれを修正しました。そうしてこれを国会で通そうと努力いたしましたが、財政当局の意見もありまして、なかなかこれは通らんうちに解散になったのです。それで解散になってしまったものですから、この解散後の国会が今日開かれておりますので、今後これを考えていかなければならぬということで、現在これは地域給というものは廃止する方がいいという意見もあります。しかしそれらのものを勘案いたしまして現在検討中であります。なお退職年金制度の問題につきましても、公務員制度の改革の一環として検討いたしたいと思っております。
  387. 永岡光治

    永岡光治君 検討じゃない。尊重しているかどうかということを私は聞いておるのです。尊重したならばもう実現しなければならぬと思うのでありますが、実現したかどうか。実現してなかったらこれは尊重しておるということにはならんと思う。昨年の七月に勧告されたものは、今給与法の改正は実施しておりますが、その前のものは実施してなければ尊重にならん。これが第一点。  第二番目として聞きたいのですが、地域給改訂の勧告は九十二億の増額をするということでありますから、それは尊重するのですね。するのかしないのか。するならする、しないならしないと明確に答えてもらいたいと思うのであります。
  388. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 勧告を尊重しておりますことは変りはございません。しかし政治上の変化で解散になったものですから、行えなかったのです。その解散後において、今これをどうしようかということをいろいろ検討いたしているのであって、(永岡光治君「尊重するのか」と述ぶ)それは尊重いたしております。今の九十二億という問題については、今後この地域給というものをどうするかということについて検討中でありますから、それは九十二億になるかどうかということはわかりません。
  389. 永岡光治

    永岡光治君 私は、尊重する以上は、最低限九十二億の財源は増額しなければならぬと思います。それは百億になるか百二十億になるかわかりませぬが、地域給の改訂に当っては、今のいろいろの案を聞きますれば、既定経費内でやろうとしておりますが、既定経費内じゃないんです。最低九十二億増額することが、それが尊重の精神だと思いますが、間違いないですね。
  390. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それは九十二億になるかどうかわかりません。今後、検討中でありますから、その結果において御相談申し上げます。
  391. 永岡光治

    永岡光治君 検討は、尊重するという立場に立って検討しているかどうかということです。尊重するということは九十二億をのむということですよ。既定経費の中でやるということは尊重したことにはならん。九十二億の財源がありますよ、それを使いなさいという勧告です。それをあなた方認めないということになれば、尊重したことにならんのじゃないですか。
  392. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 先刻も申し上げましたように、地域給の問題につきましては、今検討中でありますから、それが結果がきまりましてから発表したいと思います。
  393. 永岡光治

    永岡光治君 結果の内容は、私はきまったあとで発表を聞いてけっこうですが、臨む態度は、尊重するという態度で臨むとあなたは答弁されているわけです。それから、先ほど大蔵大臣も尊重するといっております。ですからこの九十二億の財源は、最低限地域給の原資としてはふえるものと解釈しなければ、尊重したことにならぬのじゃないかというのです。それを組まなくてどうして尊重したことになりますか。
  394. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 先ほども申しましたように、最初は九十二億出たのでありますが、それを与野党が百八十四億に直して国会を通そうとしたのです。けれども原資の関係その他で、どうしても、これをやることができないうちに解散になったのです。でありますから、今その処理を、いかにすべきかということを検討中でありますから、その検討の結果発表します。
  395. 永岡光治

    永岡光治君 私は結果の発表を聞くわけじゃないのです。尊重するのかしないのかというこの点に限定してお尋ねしているのです。尊重するのかしないのか、するならする、しませんならしませんと明確に答えてもらいたい。
  396. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 先ほど申したように目下検討中であります。
  397. 永岡光治

    永岡光治君 検討中じゃない。尊重するのかしないのか、イエスかノーか、二つに一つの答弁を求めます。それがない限り先の質問はできません。
  398. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それは何べんも答弁申し上げますように、目下検討中でありますから……。
  399. 永岡光治

    永岡光治君 尊重するのかしないのか。答弁になりません。しないならしないでいいです。明確に答えてもらいたい。
  400. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) この地域給の問題に対しましては今廃止する方がいいという議論も相当あります。それらを勘案して検討中でありますが、廃止するということになればこれは当時の人事院の勧告というものを尊重しないことになりますし、これを存続していくということになればこれは考えなければならぬことになるだろうと思います。
  401. 永岡光治

    永岡光治君 どうも大臣は横道にそれた答弁ばかりやっておりますが、私の言うのは、あなたは人事院の勧告を尊重するといっているから、尊重するという以上はこの地域給の改訂の勧告についても尊重するのか、しないならしないでいいですよ、明確に答弁してもらいたいと思います。しなければまたしないで次の質問を行いたいと思います。尊重する、尊重しない、いずれか、これが答弁できないのはおかしいじゃないですか。
  402. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 人事院の勧告は、給与体系の担当といたしましてはすべて尊重していかなければならないのでございますが、地域給の問題は目下検討中でありますから、これはその検討の結果申し上げたいと思います。
  403. 永岡光治

    永岡光治君 まあこれは幾ら言っても答弁にならないのですから、おそらく、私は尊重するというさっきの池田大蔵大臣の言明を確認をいたしまして、先に移ります。従って池田大蔵大臣の言明によれば、九十二億の財源は最低限度増額をして組む、こういうことになるわけであります。確認をいたしておきます。  それでさらに質問を続けますが、給与体系は七等級というものを今度政府は作っているわけでありますが、それによりますと頭打ちがやはりできておりますが、この頭打ちの解消はできるのかできないのか、やはり頭打ちの解消はできないものと思うのでありますが、その点はどうなっておりますか。
  404. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 先ほど申しましたように、生活給ということをどうしても考えなければなりませんから、頭打ちの問題についてはできるだけ頭打ちのないようにワク外昇給を認めていきたい、こういう方針でおります。
  405. 永岡光治

    永岡光治君 ワク外の昇給を認めるというのはどういう方法になるのですか。ここに例を申し上げますが、六等級に一応格付けされたある人があるとしますと、その人はこの俸給表によりますと二万二百円でしたか、それで一応頭打ちになるのですか。等級を変えずにそのままどんどん延ばしていくと、こういう意味ですか。どこまで延びていくのでありますか。
  406. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 技術的の問題でございますから、大山室長から一つ
  407. 大山正

    政府委員(大山正君) お答え申し上げます。六等級に格付けになりました者が上の等級に昇格いたしますれば、ただいまの御指摘の問題はないわけでございますが、そのまま六等級にとどまっておりましたような場合に二万二千六百円からワク外に出る、それでワク外昇級というふうになりまして、人事院の定めるところによってワク外昇級する、こういうことに相なります。
  408. 永岡光治

    永岡光治君 ワク外昇級するというのはどこまでいくか、人事院と相談してこれはきめておるのか、それとも人事院とは全然関係なく一方的に政府だけで考えておるのか、その点をお尋ねいたします。
  409. 大山正

    政府委員(大山正君) 法律案におきまして、ワク外昇給の期間は、行政職の場合には三十六カ月ということになっておりまして、別に回数の制限は設けておりません。その具体的細目は人事院規則に定めるということになっております。
  410. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 時間が過ぎておりますので、簡単に願います。
  411. 永岡光治

    永岡光治君 こまかい技術の問題はいずれ内閣委員会あるいはまた分科会等でこれは明確にしたいと思っておりますが、私が特に政府の考慮をいただきたいと思いますのは、冒頭申し上げましたことであります。同じ金を使うのに、公務員がいやがって働く元気もなくなるような、そういう使い方をしていいと考えておるかどうか。私はそういう使い道は愚の骨頂だと考えております。同じ金を使うならよろこんで働ける、そういう給与の仕方がいいとこう思うのでありますが、その辺は給与担当大臣としてどう考えておりますか。後者の方を選ぶのか前者を選ぶのかお尋ねをいたします。
  412. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 御指摘になりましたように、公務員の方々が、感激して働いていただけますような心理作用を、十分この改正には取り入れるべきだと思います。従いましてわれわれが今提案いたしておりますのは複雑であったものを簡素にする。そして職務給と生活給を調和いたしまして前よりも改善いたしたつもりでございます。
  413. 永岡光治

    永岡光治君 答弁ではっきりいたしました。公務員がもう感激して働けるような給与体系がいいと、こういうことであります。だとすると公務員はこの問題についてはきわめて反対している、これじゃ働けないと言っているわけですから。当然公務員のこの給与法を改正するに当りましては、その国家公務員の意見を尊重してこれは改正されるものと考えますが、その点は間違いございませんか。
  414. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 私の申し上げた意味のとり違いがあると思いますが、私どもの提案いたしておりますそのものが、心理作用に非常な影響をして、公務員が感激して働いていただける内容を持っているということを私は申し上、げたのであります。
  415. 永岡光治

    永岡光治君 給与担当大臣には、職員組合の方からこれでは困る、士気の高揚をしません、いやでございますということをしばしば申入れておると私は承わっておりますが、そういうことはあったのかないのか。これなら感激して働けますというそういう話があったのかどうなんでしょう。
  416. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 一部の職員組合からは改善を要望せられました。しかしこれは全体の公務員の代表とは認めておりません。
  417. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 簡単に願います。
  418. 永岡光治

    永岡光治君 ただいまの答弁きわめて重大だと思うのでありますが、全体の公務員というのはどういう意味ですか。私は今の官公労の職員、つまり国家公務員の組合を結成しております諸君の意思というものは、公務員の大部分の意見と考えておりますが、あなたはそれを少数意見というふうに解釈されているようですが、そのように受取っていいのですか。
  419. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 私のお会いいたしましたのは一部の省の組合でありまして、全体の公務員を代表した組合ではなかっのたであります。
  420. 永岡光治

    永岡光治君 もう一つだけ。ただいまの答弁きわめて重大であります。そこでもしあなたがその全体を代表する公務員の諸君と会っていないと言われるが、もし会っておったならばその責任をあなたはどうとりますか。私は代表する諸君に会ったとしばしば承わっているのでありますが、一部の諸君に会ったとあなたは解釈されているようですが、その点念を押して私の質問を終りたいと思います。
  421. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 私は、労働省、私どもの省の組合の者に会ったことを申し上げましたのですが、官公労の方にも一、二度会っております。
  422. 永岡光治

    永岡光治君 それは官公労の諸君というのは国家公務員を代表する組合の責任者ですよ。当然それは全体の意思と見なきゃならんのですよ。そのあなたの受ける感じはこれはきわめて私は認識不足だと思うのです。全体の意見はこれでは働けないという意思なんですから、どうかその辺を考えて全体がこれでは困るという、そういうものであってはあなたはおもしろくない、やはり感激をもって働いていただけるような、そういう体系がよろしいというのでありますから、国家公務員を代表する諸君が、全体の意思がこういうことだということになれば、どうかそういうふうに改正してもらいたいということを今の答弁の中からはっきり確認できるものといたしまして、一応私の質問を終ります。
  423. 天田勝正

    ○天田勝正君 質問に先立ちまして一言申し上げたいと存じますが、本日の本委員会の審議に当りまして、私ども社会党は先ほどまで朝からずっとほとんど全員の出席を確保いたしまして審議に協力して参ったつもりであります。また各派の申し合せによりまして本日をもって一般質問を終了いたしたい、こういうことからいたしまして全閣僚の出席を求めたいところでありまするけれども、いろいろな都合からしてその希望もなかなか入れられないと察しまして、それぞれ途中所用のある大臣の御退席はこれを認めながら協力して参りました。ところがしばしば私ども協力に反する事態、すなわち私ども社会党がもし半数も退席するならば常に定足数を割るやの状態を見て参りました。私どもはなはだ遺憾でございます。さらにまた閣僚の方におきましても、退席は了承いたしましても帰ってくる時間は当然それぞれの質問者の時間にはお帰りいただかなければならないのに、それもまた満たされない。かようなことであっては私は非常に困るので、さればといってここまで参りまして私どもは今までの方針を一擲いたしまして審議に協力いたさないのだと固いことは申しません。この点は私どもがもう一ぺん議事進行で発言をいたさない前に、委員長において十分留意をされたいことを申し添えます。  そこでまず私の今日の質問の順序と要求閣僚をそれぞれ申し上げます。第一は過日質問の残っておりました経済外交の推進につきまして、外務大臣、通産大臣、大蔵大臣を要求いたします。第二に継続費、国庫債務負担行為の問題につきまして大蔵大臣、防衛庁長官、北海道長官を要求いたします。第三に租税関係につきまして、大蔵大臣、経済審議庁長官、自治庁長官、文部大臣を要求いたします。以上でありますのでそれぞれ御手配を願いたいと存じます。
  424. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  425. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記を始めて。
  426. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、まず、先般経済外交の推進についてお伺いいたし、その残余がございますので、その点から質問をいたしたいと存じます。  先般、外務大臣は、経済外交推進の方針については、石橋内閣、岸内閣通じて大きな方針であるということを明確にされました。そこで、お伺いいたしたいのでありまするが、私、経済外交を推進して参りまするに、東南アジア地域におきまする、かつてわが国が、戦争によって御迷惑をかけた諸国、これらの諸国のまず対日感情を好転せしめなければならないと存じます。フィリピンは、この中でも最も対日感情が悪い地域でありましたが、新聞の特派員その他の視察者の報告によりますれば、ここ二年の間に非常に変った。その変った原因がどこにあるかといえば、言うまでもなく、賠償問題が片がついたということにあるということはことごとく報じております。そこで、一方インドネシアの賠償の問題については、過日、他の議員の質問に対して、しばらくこれを見送るやの答弁があったわけであります。私がお聞きしたいのは実にこの点でありまして、何より早くそれぞれの国の賠償を解決しなければならない、その第一歩を踏み出さなければならないと思っておりまするが、この点について、外務大臣は先般の答弁と違って、さらにこれに一段と御努力なさるかどうか、この点をまずお伺いいたします。
  427. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。東南アジア諸国に対する経済外交を推進して参ります上において、賠償問題をまず解決して、そして対日感情を好転せしめ、同時に、諸種の問題を進めていかなければならぬというお考えに対しましては、私も全然同感であります。インドネシアの問題につきまして、しばらく見送るということを申し上げたということになっておりますが、実は、御承知通り、今インドネシアにおきましては、政変がございまして、アリ内閣が総辞職いたしまして、その後の政権が今まだ決定されておらない状況であります。インドネシアの問題につきましても、私は、できるだけ早く解決するつもりで、過般の一月に行いましたアジア太平洋地域の公館長会議に、インドネシアに駐在しております倭島公使も参りまして、倭島公使に、相当従来よりも交渉の幅を与えまして、そうしてできるだけ早く解決するようにということを指令して、帰させたのであります。自来、倭島公使も、熱心にアリ内閣と話をしてやってきたのでありますが、今申しました、そのアリ内閣が辞職しまして、今、インドネシアの政情がやや安定を欠いており、次の内閣ができないという状況でありますから、実は、話を進めようにも進めることのできない段階にあるわけでありまして、そういう意味において、今停頓をしておるのでありまして、決してしばらく見合せて、この問題を先に延ばすというような意味ではございませんが、そういう特殊の事情によるものでありまして、そういう状態がなくなれば、もちろん早急にこれが話を進めたいという考えております。
  428. 天田勝正

    ○天田勝正君 確かにインドネシアには政変がございまして、後継内閣は、スウイルヨ国民党総裁でありますか、組閣を急ぎつつあるやに外電は伝えております。このスウイルヨ国民総裁党は、従来から非常に親日的であると伝えられております。また、同国はインフレに悩んでおりまして、賠償をこの際非常に急いでおるやにも伺っておるわけであります。こういう二つの条件を考えれば、従来見ない非常に好機であると、私はさように考えるわけでありますが、外務大臣は同様なお考えでございましょうか。
  429. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) お話の通り国民党は、従来日本に対する感情も非常に親日的でありますし、また、賠償問題に関しましても、従来の主張も、よほど緩和した考え方を、現実に即した考え方を持っておるのであります。国民党の総裁が中心になって内閣が組織されましてやれば、これは、非常に賠償問題の交渉は有望であると考えます。また、アリ内閣自体におきましても、最近賠償問題につきまして、非常に現地側としても、急いでこれを解決したいと、これには、今お話のように、インドネシアにおける経済事情等も私は相当に影響しておることだと思うのであります。いずれにいたしましても、後継内閣ができまして、われわれの責任をもって交渉できるような政権ができまするならば、きわめて賠償問題を解決するのに好機であると、かように考えております。
  430. 天田勝正

    ○天田勝正君 去る三月二十一日の読売新聞のトップに、インドネシア賠償の新方針という記事が出ておりまして、総額五億五千万ドル、焦げつき債権一億ドルを繰り入れる、こういうことで、内容はさらに詳しく出ておるわけでありますが、そのインドネシア賠償に対する方針は、この報道の通りでございましょうか。
  431. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) いかなるところからその記事が出ておるか、根拠はわかりませんが、私どもの考えており、また交渉しております、話し合いをしております案とは、その案は全然関係のない案でありまして、私どもは、その出所については全然心当りもございませんし、われわれの考えている案とその案との考え方については、よほど相違がございまして、その通りがわれわれの考えておる案ではないのであります。
  432. 天田勝正

    ○天田勝正君 この案とは別でありましても、新しい方針というものをお持ちでありましたら、この機会に示すわけには参らぬものでございますか。
  433. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) これは、交渉中に属しておりまする問題であり、従来のこの両国主張の間にも相当の間隔があった問題でございますので、今、具体的に当方からお示しすることは適当でないと存じます。
  434. 天田勝正

    ○天田勝正君 時間がありませんから、この問題はこれだけにいたしまして、次の問題に移ります。  次はA・A地域への輸出の問題でございます。私は、先般、経済外交推進に当って、従来の在外公館及び外交官の態の度をもってしては、なかなかその推進は困難であろうということをば、三つの点をあげて指摘いたしました。しかし、これは、全部の公館及び外交官に当てはまるものではございませんで、かなり満足すべき外交官もおったのであります。しかしやはり各国の経済外交を見ておりますると、ドイツのやり方というものが格段にすぐれているようなふうに私には見られました。たとえば、イラン等に行って見ますると、非常な勢いで機械の売り込みをやっている。この場合に、彼らは、いわゆるペルシヤじゅうたん、これは、自国においては一向使わないのに、これを買付を行うことによって機械を入れる、特に機械等、わが国においても、軽工業から重工業製品の輸出に転換しなければならないと思いますが、重工業製品は、一たん入れますると、実にその国の工業を左右するということになる。このことについて、過日も私は、今日、機械については、わが国がメートルにあらずして、ほとんどがインチ、フイートであり、八十年もそういう状態が続いて参ったということを若干指摘いたしましたが、そういうドイツのやり方を、たった一つしかこの際申し上げられませんが、かようなことからいたしますと、日本あたりも、たとえばイラン米は、一番多いときで十万トンの輸出能力があり、通常の場合は八万トン、この米をもし三万トンないし五万トン買い入れることをいたしますならば、極端な話でありますが、イラン外交を左右もできるという状態を聞き、また見て参ったわけであります。ドイツのように、要らぬものを買うということではございませんで、わが国としては、米はいまだに必要でありますから、他の国からここに転換をすることを思い切っていたしまするならば、新しい所にわが国の市場が開ける、こういうことになろうと思いますが、こういう具体的な問題について、いかが推進されるつもりでございましょうか。
  435. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) アジア・アフリカのグループに属する国々に対して、日本の貿易を拡大してやるというのは、一つの共通した方針でありますが、これを推進していく上におきまして、いろいろな困難のあることも事実でありまして、また、われわれの従来の努力の足りない点も多々あると思います。今、イランの例をおあげになりましたが、日本の機械等を売るという場合に、その国から日本に輸入するものとの関係をどうするかという問題は、もちろん考えなければならぬ。今、イランの米の問題が一つあげられておりますが、米につきましても、たとえば、すでにタイであるとか、あるいは台湾であるとか、ビルマであるとか、いろいろ日本が従来の買付を前提としてこれらの国との貿易ができておるなにに対しまして、昨年及び一昨年のような豊作が続きますというと、これらの国々に対する米の買付もなかなか困難であるというような事情もございまして、すぐイランにおいて具体的に米をどうするかという問題はなお考究の余地がある、しかしそういう米というのは、一つのおあげになつた具体的な例であって、要は、われわれが進んである国に輸出しようとすると、その国から物を買って、日本の品物に対する購買力を持つようにしていかなければならないことは言うを待たない。私どもは長い目で見ると、やはりこれらの地域は経済的開発がおくれておるのでありますから、やはりいろいろな経済開発についての経済協力日本自身が相当に強化して、そうしてこれらの国々における日本品の購買力というものを作つていく、またこれらの国々の経済基盤ができて、これらの国々から日本も適当なものを買い付けるというふうに、相互的に持っていかなければならないと思いますが、この事情は、国々において特殊の事情を十分考えていく必要がありまして、経済外交——過般御質問になりましたような在外公館の人事の問題やあるいはその仕事のしぶり等にもよほど頭を切りかえていく必要があると思います。
  436. 天田勝正

    ○天田勝正君 政府は昨年財界の藤山愛一郎氏を査察使としてこのアジア・アフリカ地域に派遣され、ちょうど私もたまたま向うで何回か一緒になり、何回か離れながら旅行をいたしました、その報告は当然政府に参っておられると思います。おそらくこれらの地域を歩いてみまして、実に日本品が、繊維品にいたしてもいかに多く入っておるかにびっくりするのであります。商社はほとんど日本の商社はない、ない状態で一体どこの国かだれかの手によってとにかく入れられておる、アラブ諸国を歩きますとチャドールという婦人の服装がありますが、これらはほとんど日本の製品です。これを見ますと、とにかく直接その国と連絡をとっての輸出、輸入の結びつきというものはさらに一段と必要であるということを、経済査察使も痛感されたようであります。これらの点を一体どうされるのか。これはむしろ外務大臣より通産大臣の方がよろしかろうと思いますけれども、いないのですか……外相に御抱負がありましたら伺いたい。
  437. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 外務省は中近東あるいは中南米等に経済界の経験の深い有力な人をいわゆる査察使として出しまして、これらの報告を詳細に受けておるのであります。今お話のごとく、従来日本の繊維品等はインドの商人の手で相当あの地域に出ておったものもあるように考えます。これを直接日本から出すように持っていくためには、日本の商社がやはりこれらの地域に相当支店なり出張所を設けて取引する必要がありましょうし、また、これらの国々の商社との間に直接の取引関係を作る、これに関連しての金融機関の問題もあると思います。いずれにいたしましても、一方においては国内における商社の、かつて三井、三菱というふうな非常に大きな商社がございましたが、戦後においては商社もなかなかその実際の経済力からいい、また人の関係から申しまして、十分戦前のこういう大商社がやっておったような活動もまあ十分できないというようなことのために、商社が各地に支店とか出張所を設けるとかいうことが、まだ十分できておりませんけれども、これもだんだん推進していく傾向になっておりますし、また金融機関等につきましても、だんだん海外における取引関係というものが強化されていっておりますから、なお今後の施策によりまして、この趨勢を一そう助長して参りたい、かように考えております。
  438. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、一体この方面をいかに打開するかということについては、先般人間の問題も申し上げましたけれども、そうかといって直ちに財界人を外交官の中に入れるということがよろしいかどうかは、私は疑問に思っている。大きい組織の中でありまするからチーム・ワークが十分とれなければなりませんから、一、二の人がその国に行っただけではとうていうまくいかなかろうと思いますけれども、少くとも経済外交専門の査察使をしばしばお出しになることが必要であり、さらにまた財界人は、当然政府のもちろん認証のもとであっても、みずからそれくらいの経済負担をしつつ全部世界じゅうどこへでも参るというくらいの、国家に対するといいまするか、自分の事業というか、奉仕をする必要があろうと思うし、そういう勧奨を政府がされたらよろしかろう。たとえば私シェリングという化学会社へ参りましたところが、この重役諸君と会いますると、その半数は日本に来ておる、こういう状態から比べると、いかに日本の実情というものが世界の経済の面に暗いかということが痛感されるのであります。そういう面で、政府はどういう考えを持っておられるか、お示し願えれば幸いだと思います。
  439. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) お話のように在外公館の査察に——各国に査察使を出すというような問題もこれは外務省としては当然考えていかなければならぬと思いますが、同時に彼我両国それぞれの国々との間に経済人、産業人が交流することは、私は非常に貿易関係を増進していく上において有益であると思います。外務省としてもそれぞれの国との間に、そういう交流を今後一そう盛んにしていくという考えのもとに、いろいろな企画を立てて今後実行を促進して参る必要がある、かように考えております。
  440. 天田勝正

    ○天田勝正君 貿易を振興いたしまするには、何よりも粗悪品を送ったならばもはや再び取り返しがつかない。良品廉価といいますけれども、実際回ってみまするというと、良品ならば高価でちゃんと売れておる。特に今後日本が目ざす重工業製品についてはしかりである。たとえば日本製品でも光学機械等はそのよき例であります。そこで、何しろ粗悪品輸出ということは、どんなに力を用いてでもやめさせなければならない。ところが先日中共への粗悪品輸出の例をここへ二つあげた、その一方の気象観測器についてはお答えがございませんでしたが、後ほど答えられるということでありましたが、この機会に一つ、それがどうなったか。まだ通産大臣は……。
  441. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  442. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記を始めて。
  443. 吉田法晴

    吉田法晴君 先般補正予算の審議に際しまして、沖縄問題について若干のお尋ねをしたのでございますが、総理は、その際外務大臣としてでありますか総理としてでありますか、沖縄、小笠原の施政権の返還については、国会の決議もあることであるし、施政権返還について努力をしたい、それから四原則についても、土地問題その他に関連いたします四原則についても、アメリカに強く申し入れて、実現に努力すると、こう言われて参りました。ところが、昨年末からことしにかけてでございますけれども、自民党の、これは名前はあげませんけれども、沖縄に昔関係のあった議員さんたち等で沖縄民主党と連絡をして、四原則の原則をいつまで言っておっても問題は解決しないという理由で、土地の賃貸料の一括払い、これも仕方がないじゃないか、あるいは地役権という名前で期限内に取られることも仕方がないじゃないかと、こういう態度をまあ相談をしておられる向きもあるかのように聞くのであります。そうすると、国民の要望であり、あるいは国会も決議をし、あるいはせっかく総理、外務大臣として施政権の返還をはかりたい、四原則を強く申し入れて実現に努力したいという外務大臣なり総理の方針が、これは強く主張できないことになると思うのであります。従って、そういう一部にございます自民党の党内の動きというものは、これはむしろ総裁として、あるいは総理として是正をされるべきだと思うのですが、その点について、外務大臣あるいは総裁として、一部の動きを押えて、この施政権返還あるいは四原則の実現のために努力せられるかどうか、その点を一つはっきり承わりたいと思います。
  444. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今御質問になりましたような点は、私事実は承知いたしておりません。そういう事実を承知いたしておりませんが、施政権の返還の問題は、言うまでもなくこれは国会の決議でございまして、一致した決議でございますから、そういうなにはなかろうと思います。ただ四原則の問題について、あるいは、私何も聞いておりませんけれども、これは沖縄の住民のわれわれは強い要望としてこれを実現しようとするのに、もしも沖縄住民の大多数の人が、今お話のような傾向になってくるということになると、これはアメリカ側へ私ども主張しても、現地住民はそういうことは考えていないじゃないかということで、なかなか実現がむずかしくなるのであります。事情は今私は全然承知いたしておりませんから、よく事情を聞いてみますけれども、そういう問題であろうと思います。
  445. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点は、これは自民党の動きというものが沖縄民主党につながり、せっかくの施政権返還なり、あるいは四原則実現のための努力の力を弱めるという結果になりますから、その点御努力を願いたいと要望を申し上げておきます。それからこれは国際的な世論としてもだんだん沖縄の問題が取り上げられて参っております。御承知でもあろうと思いますけれども、米国の人権擁護委員会でも、何べんも取り上げてこれは意見を述べられて参っております。ことしに入りましても、自治権、あるいは軍当局による土地の接収問題、それから島民と——沖縄県人と、それから外から、本土からあるいはフィリピンあるいはアメリカ等から参りました者との間にある賃金差の問題、それから本土との往復、人権擁護委員会は緊急帰国の問題と言っておりますが、そういう問題に触れて米軍の占領下の制度としても前例を見ないものであるという表現がなされております。それからごく最近アメリカの上院のいわゆるハンナ報告の中でも、沖縄が依然として民政に移管せられず軍政下にあることは望ましくない、こういう表現をして、この自治の問題、あるいは土地問題、あるいは賃金差の問題、あるいは人権問題、あるいは往復の問題、こういう問題についてすみやかに改訂せられるべきことを、それぞれ意見を述べております。あるいは前東亜局長においても、日本に施政権を返してやるべきだ云々という意見もあります。こういう世界の世論も支持しておる自治権の問題、あるいは軍当局による土地接収問題、それから賃金差の問題、往復緊急帰国の問題、具体的にこれは人権擁護委員会からでありますけれども、現行の日本官憲による身元調査を廃止するか、あるいは在日米官憲による急速な身元調査を行うか、現状をとにかく直さるべきであるといった具体的なあれも出ておるのでありますが、そういうすみやかに直され得る問題について、是正され得る問題について、どういうように外務大臣として解決せられるか、首相訪問の際に、沖縄問題にも触れられるということでありますけれども、こういう点まで入って相談をするということが困難であるとするならば、対米折衝で、やはりまだ国連提訴の段階ではないと言われるのでありますが、具体的にどういう工合にしてそれを実現せられるか、その点を渡米問題と関連をして具体的な方向をお示しを願いたいと思います。
  446. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 沖縄の施政権返還の問題につきましては、私委員会等においてお答えをしたこともあるのでありますが、もちろん目的は施政権の一切を日本に返還すべきことを、われわれとしては要望しておるわけであります。実情に即してこの一部といいますか、段階的にこれを日本の方に返してもらうということも、これは考えられると思います。今おあげになりましたような具体的な問題に関して、少くともアメリカの一部におきましてもそういう議論も出ておる際でありますから、私としては、アメリカ側といろいろな話合いをする場合におきましては、率直に日本側の国民の要望、またこれを実現していくのに、現状に即しつつ、この方向に、究極の目的を達するように、十分一つ話をしていきたいと考えております。
  447. 吉田法晴

    吉田法晴君 その具体的な問題について、そういう問題を訪米の際に片づけられようとするのか、もしそこでこまかいお話ができなければ、何らか別の方法でおやりになると思うのでありますが、具体的なその対米折衝の方法をどういう工合におやりになるか、こういうことをお尋ねいたします。
  448. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 御承知のように新らしい大使も参っておりますし、いろいろ問題になっておる点等につきましても、新任大使との間に、外務省でそれぞれの手を通じて話し合いを時々いたすようになっております。従いまして、これらの問題についても当然適当な機会に話が出てくることだと思います。また今度の私の訪米に関して、そう具体的に一々の問題をあげて、これが解決を求めるということは私は事実上困難であり、また適当な方法ではないと思いますが、一般的の話しは、沖縄問題についても当然触れることでありますから、十分そういうことを一つ腹に持ちまして話をしてみたいと、かように考えております。
  449. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  450. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記を始めて下さい。
  451. 天田勝正

    ○天田勝正君 それじゃやむを得ませんから先ほどのを繰り返します。  先日、この席で外務大臣と通産大臣に質問いたしましたが、それは中共向けの粗悪品云々の問題でありますが、その例をあげた二つのうち一つ、すなわち気象観測器の問題、このことは、言われたのが気象庁の和達博士でありまするだけに、これは学者の言でありますから、全然一つもかけ引きも何もなかろうと私は思って、そのことについてお答えをいただくはずになっておりますが、そのことはどうなりましたか。
  452. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 実はこの間のお尋ねの二つのうち一つの方が大体調査が進んでおりますのでお答えいたしましたが、いま一つの方はもう少し調査をしたいからということでございましたが、きょう係の方でもまだ正式にクレームがついてきていない問題なので、もう少し調査期間の御猶予を願いたいというお話でございましたので、天田さんにさっき私の方から御了解を得ておくようにと官房長に申しました。もし御了解が得られなかったら、会議中ですから、そこへ連絡するようにと言いましたら、連絡がきませんでして、多分御了解していただいたと思っておりまして、どうも申しわけございませんでしたが、これがまだ今のところはっきり調査ができておりませんので御了承願います。
  453. 天田勝正

    ○天田勝正君 これは通産大臣も御承知のように、後進国はこうした高度の機械についてはそう知識がございませんから、日本が明治維新の当時さようであったと同じように、あるいはクレームがこないかもしれない。しかしこちらで、学者の良心に訴えて、これは通常精密な検査をするには欠陥のある機械である。こういうようなときには、やはりクレームのくるこないは別問題といたしまして、良品を送るということでなければ国際競争に勝ち得ない。しかもさっきも申し上げたのですが、重工業の製品、精密機械等については、最初に入れたものが何としても長くその国の市場をこれは確保するのであります。幾たびも言いますが、日本の今日に至るも機械というものがすべてインチ、フィート、こういうものさしではかられる、こういうことは、八十年前に英米の機械が一番多く入った、その修理から今日だんだん機械工業を日本が発達せしめてきたという歴史からもわかりますのですから、この点から、向うから苦情を言われるとか言われぬとか、そういう問題でなしに真剣に考えていただきたい。これを例にとったわけでありますが、世界中後進国に対しての輸出について、貿易の担当のあなたはどう考えておられるか、どう対処せられようとしておるか。
  454. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 従来の輸出の検査方法が、一定の基準を示して自己検査を許しておるというものと、品目を指定して強制検査をするものと、こういう二つの建前で輸出の検査をやっておりましたが、最近そういうような問題もございますので、日本品の成果をあげる、そうして信用を落さぬようにというために、今回の法律の改正におきましては、原則として第三者の検査機関による強制検査を行うということにいたしましたので、今後はそういう強制検査によって、こういう問題は十分避けられるだろうと考えております。
  455. 天田勝正

    ○天田勝正君 通産大臣も例については十分まだ調べていないということでありますから、別の機会に質問することにいたします。  そこで、経済外交ばかりでない問題でありますけれども、これは大蔵大臣が所管でありますから大蔵大臣にお聞きしますが、およそ日本の税関くらい不評判の税関というのはそう世界になかろうと思う。ちょいちょいこれは新聞でも指摘されます。私どもが世界を歩いていても、実に一時間も待たされたり、カバンの底まで調べられるなんという不愉快な思いは日本税関だけなのです。このことはしょっちゅう指摘されまして、かようなことではとうてい外貨獲得だとか、観光日本だとか、経済外交だなんということは夢物語りだ、こう常に言われております。これに対して大蔵大臣はどうお改めになるつもりでありますか、伺っておきます。
  456. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 税関の行政問題でございまするが、いろいろ苦情を聞いております。どこの国でもあまりいい感じはしません。しかし日本におきましても、やはり苦情の起きないように、できるだけの指導はいたしておるつもりでございます。
  457. 天田勝正

    ○天田勝正君 まことに不満足でありますが、時間がありませんから……。
  458. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 関連質問。税関だけでなしに検疫関係の検査ですか、あれが非常に、たとえば飛行機で羽田に着きますと、まず入ってくるのが検疫関係の役人らしくて、それがうさんくさい目をして、二人くらいがずっと飛行機の中を検査をする。一体あの検査がどういう意味を持つのかしりませんけれども最初に非常に不愉快な思いをさせる。これがまあきれいなお嬢さんでも来て、あいきょうでも振りまきながら検査をするのならばまだいいのですけれども、そういうのでなくて、うさんくさい顔をした諸君がじろじろと、まるで罪人か何かを監視するような感じなんですが、ああいう不愉快なことが一体必要なのかどうか、それらの点をどういうふうにお考えになっておるか、これは所管が厚生大臣でしたかどなたでしたか、一つ観光日本なり、外貨獲得等の関連において、あの点をもう少し真剣にかえる方法を一つ考究していただきたい。
  459. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 外国の例をいろいろ調べまして、日本が一番よくなるように努力をいたしております。  検疫の方は、大蔵省の所管ではございませんが、これはどこの所管にかかわらず、やはります第一に入ってきてからの印象でございますので、十分注意はいたしておるつもりでございまするが、今後もその方向に向って努力いたしたいと思います。
  460. 天田勝正

    ○天田勝正君 とにかく注意をするということでありますから、それはそれといたしておきます。ただ私は希望いたしておきますが、経済外交推進の問題は、何といたしましても、私ども社会党の政権がくるならば、もっとりっぱにやりたいと思っておりますけれども、それでは、あすではもうおそいのであります。ことに重工業製品の輸出については重要でありますから、十分お気をつけていただきたいことを申し添えておきます。  次は、継続費と国庫債務負担行為の問題でありますが、きょうは多く質問できませんから、まず防衛庁の関係からお尋ねいたします。防衛庁長官が見えておられますが、私も調べたつもりでありますが、防衛庁の継続費、国庫債務負担行為は総額それぞれ幾らになっておりますか。
  461. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 三十二年度の予算では両方を合わせまして、継続費の後年度割の方が三十億、それから国庫負担行為の方が二百億、これは昨年に比べますと大体六十四億ほどふえております。
  462. 天田勝正

    ○天田勝正君 継続費の方が潜水艦と甲型警備艦二つ合わせて六十三億八千七百八十八万円、国庫債務負担行為の方が二百億六千百九十四万円、こういう数字だろうと思いますが、間違いございませんか。
  463. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) お答え申し上げます。ただいま長官がお答え申し上げましたのは、国庫債務につきましては二百億六千百万円、それから継続費につきまして、ただいま長官がお答えになりましたのは、継続費で新規に追加いたしましたものの中で、すなわち昭和三十二年度甲型警備艦建造費、この新規の継続費がございます。それの三十三年度以降の金額を申し上げておる、これを合計いたしますと約二百三十億になるわけであります。継続費そのものにつきましては、昭和三十一年度において潜水艦の建造費二十七億千八百万円を御承認いただきました。今回その分については年限を延長するとともに年割を改訂いたします。それに新たに昭和三十二年度甲型警備艦建造費といたしまして、総額では三十六億六千九百万円の計上をいたしております。この後年度分が二十一億三百万円、こういうことになります。
  464. 天田勝正

    ○天田勝正君 ところで、この二つの問題につきまして予算書をずっと調べ、さらに予算の総理関係のこの明細書というのがございますが、この二つを調べて見ましても、国庫債務負担行為の書かれております三十二年度一般会計予算の五十五ページ以下のところを調べてみましても、これが単に航空機購入なら購入、こういうことが書いてあるだけで、いかなるものをどうどこから買うかというような説明は一向ないのであります。時間がありませんから一ぺんに私聞いてしまいますが、説明書を見るというと、器材購入ならば航空機を除いた何ということを書いてあって、さっぱりそれ以外はわからない。そこで航空機購入、その内容はどういうものか。器材購入とは一体何をさすのか。施設の整備とは一体どういうものか。艦船建造とは一体どういうものか。さきの継続費の方の潜水艦とはこれは別のものでありましょうが、それぞれ詳しく御説明願いたいと思います。
  465. 北島武雄

    政府委員(北島武雄君) お答え申し上げます。航空機購入費の国庫債務負担行為は、ただいま御指摘の通りでございます。この内容を申し上げますと、T33ジェット練習機関係の国産化関係が十六億五千六百万円、F86ジェット戦闘機関係の国産化関係が百二億一千百万円、それに航空機の試作関係六億五千一百万を加えますと、航空機購入費といたしまして国庫債務行為が百二十五億一千九百万円、こういう内容になります。  それから器材費につきましては、陸上自衛隊におきまして九億三千八百万円の国庫債務が計上いたされております。これはいわゆる装備品甲類すなわち殺傷火器類でございますが、具体的には百五十五ミリの榴弾砲、大型陸上車等であります。この関係の国庫債務といたしまして三億四千九百万円、それに編成装備品の乙類非殺傷火器類、この関係で五億八千九百万円を計上いたしております。それから海上自衛隊におきましては、器材費関係で五億六千九百万円が国庫債務負担行為関係、その内訳は、航空機の修理用補充部品費で二億七千九百万円、訓練用備品費は五千四百万円、航空基地整備用備品費は九千五百万円、航空基地用電子機器八千百万円等でございます。  それから航空自衛隊におきましては、器材費の中で航空機購入関係につきましては、別途ただいま御説明申し上げます。その他の分につきましては、施設器材で七千百万円、車両関係が二億六千五百万円、航空機部品で八億千百万円、整備器材で一億四千四百万円、教材で一億五百万円、なお技術研究所関係の器材費が一億七千九百万円の国庫債務負担行為をお願い申し上げております。その内訳はガスタービンが一億五百万円、対潜魚雷で二千六百万円、攻撃用探信儀千二百万円等でございます。
  466. 天田勝正

    ○天田勝正君 国庫債務負担行為は、継続費の扱いよりも、この将来にわたって私は拘束があると思います。それは継続費でありますれば、かなり政府自体で繰り延べ等も自由自在に行われる筋でありましょうけれども、これは他との契約が基礎になりますから、それに縛られる、従ってこの分は今年度はもちろん、三十三年度以降において、どうしても、いやおうでも予算を組まざるを得ないものがあります。一体今説明を聞きましても、私は二つの点を感じます。全体といたしましては、それぞれ、たとえば施設整備なら整備というのは、今年度予算にもちゃんとある。そのほかに説明されたようなことがどうして将来の縛るような約束をこの際しなければならないのか、これが一つ不思議である。ことに器材購入についてはその点が特に感じられます。  さらにもう一つは、再軍備論者でありましても、このごろF86などというのはもう古くさくなって、実際には使い道がだんだん薄らぐとこういうことを聞いておりますが、そういうものまでも一体将来の予算を縛るような方法をもって、これを国庫が負担しなければならないのか、まことにもって疑問でありますので、これを一つ解明していただきたいと存じます。
  467. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 今いろいろ例を御指摘になりましたが、御承知のように防衛庁におきましては、従来予算をもちましてもそれは結局繰り越しになるというような場合が少くなかったのであります。いろいろ設計に時間がかかるとか、またアメリカの提供品を一部に装備するというような関係でその品物が到着するのがおそくなったために、せっかく予算はいただいたけれども、それを執行し得なかったというような関係がありますので、防衛庁としてはぜひ必要でこれを実施しなければならないけれども、しかしこの会計年度内においてはとうていそれが支出し得ないものにつきまして、これを今までのような要素を改善するという意味において、従来は予算に組んだものもそういう弊をなくすという意味で、今後国庫債務負担行為の方に回した。私はこの予算の実施というものについて、これによって改善し得るという点があると考えまして、特に今年度は従来よりも国庫債務負担行為がふえたのであります。  なおF86はもう使いものにならぬというお話でございますけれども、これはアメリカなどでも現在使っておりますし、この規格によるものの日本での製作を始めております。これは十分これでジェット機として演習にも使える、実戦にも役立つというものでございますので、これを継続しておる次第でございます。
  468. 天田勝正

    ○天田勝正君 不思議な答弁を聞きました。今までずっと予算をとっても使い切れないような状態だから、まあこういう処置をとった方がいいんだ。これは私の質問したのはそれぞれ今経理部長ですか説明された内容のものが、なぜに継続しなければこれの調達が不可能なのか、こういう説明をされればいいのに、今まで余ってきたからこういう措置をとったんだというのでは、いかに、われわれが指摘したように、今日まで防衛庁の予算というものが、まあ何とゆるやかに組まれたものか、こういうことに相なるわけであります。で、他の予算はなかなか窮屈でありまして、今度は一千億の施策などと言っておりますけれども、昨年まではきわめてあらゆる費目とも窮屈であります。どうして防衛庁だけにこんなゆるやかな予算を一体今まで組んできたのか。今後もこの継続費という形で結局転嫁してゆるやかな予算ということに相なるわけであります。この点についての所見を大蔵大臣から伺います。
  469. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 防衛庁の予算につきましては器材その他物件費が相当多いのでございます。しこうしてその製造に当りましてはいろいろ設計その他の難点がございまして、また技術面あるいは製造工場の不備等がございまして、予算に組みましたものが予定通りに使用できなかった。従いまして従来本委員会におきましても防衛庁の予算について相当繰り越しがある、こういうことはよくないのだという議論を私は聞いておるのであります。従いまして昭和三十二年度におきましてはそういう非難の起らないように、一応三十二年度で使い得る、また調達し得る予定をきめまして、そうして三十三年度への繰り越しはできるだけ少くするようにいたしたのでございます。なお継続費あるいは国庫債務負担行為の問題につきましては、これは天田さん御承知通りに、継続費は一応予定金額ができている。各年度毎年予定金額ができているのでございますが、国庫債務負担行為は必ずしも各年度にわたってどれだけというはっきりした見通しのつかないものにつきましては、おおむね国家債務負担行為として計上するのを例といたしておるのであります。従いまして先ほど防衛庁長官の言われたように、継続費よりも国庫債務負担行為の方が少し今年度は多くなっておると思いますが、これは実情に沿うようにやっていきたいという考え方から出ておるのであります。
  470. 天田勝正

    ○天田勝正君 この問題はもっと検討いたしたいわけでありますが、先ほど経理局長申し述べられたその資料をば明日から始まります分科会に一つ提出をいただいて、その席でさらに検討いたしたいと思います。  ただ最後に、継続費のことについて大蔵大臣に伺いますが、昨年までは河川の総合開発に継続費を組んでおったはずです。で、災害がないといいながらこういうときこそ河川の総合開発等は継続し、あるいはそれこそ国庫債務負担行為等をもって処置いたしまして万全を期さなければならないと私は考えるわけでありますが、三十二年度、来年度からはこうした国民こそが最も待望する河川の総合開発などに継続費をやめたという理由は一体どういうことでございましょうか。
  471. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 三十一年度まで建設省所管で継続費を御承認いただいておりましたのはダム関係でございます。今度は特定多目的ダム特別会計として、特別会計に大部分の事業が移りましたので、特別会計の方で継続費を従来同様に御承認をお願い申し上げております。従来とその点は会計が変りましたが、継続費を認めていることにつきましては変りはございません。
  472. 天田勝正

    ○天田勝正君 この問題はこの程度にいたします。  次に租税関係につきましてお伺いいたします。今度の減税目標を政府昭和十五年を基準にいたしまして行う、こういう態度であると承知いたします。ところが昭和十五年は戦争に入っておりまして、十四年あたりからはかなり増税が行われたときであると思います。こういたしますと、当然その目標は直ちに達成できるかできないかは別といたしまして、通常すべてのことが昭和九年、十年を基準としてはかられもいたしますし、目標にもしているようでありますが、この減税だけをなぜに昭和十五年を目標にされたのか、なぜ九年、十一年を目標にされなかったか。この点をまず伺います。
  473. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは衆議院あるいは参議院の大蔵委員会でよく聞くのでございまするが、説明の便宜といたしまして、所得税につきまして各階級ごとの負担の状況を見るのに、昭和十五年の中央地方を通じました根本的税制改正のときを参考にしたと思うのでございます。税制改正全般を十五年としたとは私は考えておりません。所得税の各階級別の負担を十五年のときにとってみればということでいっていると思います。
  474. 天田勝正

    ○天田勝正君 そこであらゆる経済計画が、五カ年計画とか、または住宅等につきましてもそれぞれ年次計画があるようでありますが、私は、やはり経済の伸びということを常に政府側が申されまするから、この経済の伸びから考えましても、やはり減税五カ年計画でも立てて、そうして将来はかくかくするということを示すならば、国民は非常に安心すると思いますが、そういう計画を立てるつもりはございますかございませんか。
  475. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 大蔵省といたしましては、できるだけ減税を毎年いたしたいという希望で進んでおるのでございます。昭和二十五年以来年々やって参りましたが、今回は経済力の非常なる増強がございましたし、国民所得もふえておりますので、この際相当の減税をしようというのでやったのでございます。将来も機会あるごとに減税の方面には進みたいと考えております。
  476. 天田勝正

    ○天田勝正君 政府の自然増の見積りは一千九百二十二億円、こういうことでありますが、しかしこれは実業人にも、また学者にも、これよりもはるかに上回った見積りをしている人もございます。現に今年、三十一年度でも見込みよりもかなり上回った増収があるという状況になって参りました。そうでありますれば、この減税は私どもまだまだ手直しして満足なものにいたしたいとは思うわけでありますけれども、それにしてもこの一月から遡及することが可能ではないか。こう考えますが、その点についての御見解はいかがでございますか。
  477. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 三十二年度につきましての自然増収は御承知通り二千億近くでございます。これ以上増収があるという説もごく最近には出てきたようでございますが、私は大して動かないと考えております。しこうして租税の減税をさかのぼってやるということは、これは払い戻し、その他非常にやっかいでございまして、今までもこういう例を私は聞いておりません。私は三十二年度四月からやればいいのではないか、こう考えております。
  478. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は昨日大蔵省の連絡の方が見えたときに、毎日新聞連載の「税金にっぽん」というのを見ておいてくれということをことずけました。その初日は先月の二十日だと記憶しておりますが、その最初の記事に、記者があなたにお会いした談話がずっと載っておるわけでありますが、これはその通りでございましょうか。
  479. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 毎日新聞の記者と会って話をしたことはございます。
  480. 天田勝正

    ○天田勝正君 この中にいろいろ重要な部分がございますが、私が特にあなたにお聞きしたいのは政治家にはいろいろな金も入ろうが、右から左に出ていく金なんて所得じゃないよ云々、時間がありませんからその以下は申し述べませんが、かようなことを言われておるわけであります。御自分池田蔵相自身はアメリカに行かれるときに集めた金のうちから七十万円税金を納めた。これは実に近ごろの美談だというので新聞に書いてあるわけであります。こういう美談はさておきまして、一般国民は大てい生活費に追われまして、すべて右から左に出ていく金ばかりなんです。それが時の大蔵大臣がかようなことを言われるのは、まことにもって私は国民に与える影響は悪かろうと存じますけれども、蔵相のお考えは一体どういうことでございますか。
  481. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) いろいろしゃべっている間にそういうふうな話がありまして、そういうこともあろうかなといった程度で、私は自分でしゃべったのではないと思います。そのときの零囲気でそういう言葉がかわされたと記憶いたします。
  482. 天田勝正

    ○天田勝正君 まあ政治家にもゆとりやユーモアがあってもいいのでありますから、それを私は必ずしもどこどこまで追及しようとは思いません。しかし国民は実に苦しい中から納税をいたしておって、しかも先般来指摘されますように、今回の減税といいましても、これは全く自分には縁もゆかりもないという人々の方が数多い時期に、かようなことを話のついでといえども向うにとられるようなことを言われたのは、何としても不謹慎のそしりは免れないと思います。時の大蔵大臣だけに国民は非常に不思議がっておることであります。これらの点は十分御注意いただきたいと思います。  次に移りますが、給与所得者の他の業種との比較でございます。これは給与所得者と他の業種とは、税務当局はよく九・六・四の原則などと言いますが、営業者及び農民が六か四か、こういうことは大いに異論のあるところでありますけれども、いずれにしても給与所得者が九どころか百パーセントその所得を捕捉されることは、これは間違いございません。そういたしますると、これには特別な何か措置を講じなければならない。たとえば自由業等についても、それぞれ俳優ならば、まあ五割ぐらいが所要経費として認められる、こういう制度がありますけれども、給与所得者が苦しいのは、私は一つは所要経費というのはびた一文も認められないというところにあろうと思う。営業者ならば仕入れに東京へ参りましても、これはその費用は認められる。給与所得者は一時間もかかる所から東京に勤めに出て、しかしそれはすべて所要経費には認められない。あるいはまた他の業者ならば、今、税金が来た、しかしこれを今納めずして、これを繰り延べておいて、その間にも世帯のやりくりもできるけれども、これが天引き制度でありまするために、そうしたやりくりも一向できないというような、いろいろ例をあげればたくさんあると思いますが、こういうことからいたしましても、給与所得者には特別な何らかの措置を講ずる必要があろうと思いますけれども、将来これらを検討し考慮する用意がございますかどうか。
  483. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほどのあの毎日新聞の問題でございますが、私は、自分のことなんか書いてありますが、ことにあれはオフレコで話したことが載っておりまして、あとから抗議を申し込んだのであります。そういう点は一つ御了承願っておきたいと思います。  なお給与所得の問題といたしまして、捕捉が完全にできるのだから、必要経費その他を考えてはどうか、こういうふうなお話でございます。この点は前から議論のあるところでございますが、大体給与所得につきましては控除制度を認めまして、その範囲内でという気持があるのでございます。必要経費として靴や洋服の減るのを考えるということはなかなかむずかしいので、大体控除の制度のうちでまかない得るようにという考えで控除ができておるのであります。これは必要経費ということばかりではございません。担税力ということもある程度加味されておることは申すまでもございません。
  484. 天田勝正

    ○天田勝正君 このことを議論していますと、これだけで全部の時間をとってしまいますが、一つだけ例をあげますと、たとえば俳優等の座頭、これらは五百万円もそういう所要経費が認められておるものもある。これと比べますと、それは給与所得者の控除のあることはわれわれも十分知っております。知っておりますけれども、これは他の業種との比較上実に少いではないかということを指摘して、今直ちに直すということは困難であっても、これは将来は直していかなければならない。ことに税務当局自体が九・六・四の原則といっておる。そうすれば、今現在ただ税率をかけただけからすれば、営業所得者よりも給与所得者の方が税額が少い。しかし九と六というこのパーセンテージをもし考慮に入れますならば、明らかに今でも高い。でありまするから何らかの形でこの所要経費をさらに見る必要があるというのが私の主張であります。この観点に立って、蔵相はいかがお考えでしょうか。
  485. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 給与所得の控除につきましては、そのときどきの状況によりまして、いろいろ変っておるのであります。今お話の九・六・四というのは、ちょっと聞き取れませんでしたが、どういう意味でございますか。
  486. 天田勝正

    ○天田勝正君 これは、よく税務署などでは、給与所得者はその所得の九〇%を捕捉ができる、それから営業者はその六〇%を捕捉している、農業者は四〇%捕捉している、こういうことをよく言うわけです。私は、農業者の四〇%あるいはすべての営業者が六〇%しか捕捉されていないとは思いません。だけれども、前提に申し上げましたように、給与所得者は少くとも九〇%とか、一〇〇%捕捉されることは間違いない。こういう前提から申し上げておるわけであります。
  487. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 九・六・四というのは、天田さんのお話の通りに、私はそういうことは信じられぬのでございます。税務行政におきましては、できるだけ所得の正確なる把握をいたしたいと努力しておるのでございますが、ときによっては、苛斂誅求という非難も受ける場合もあります。私は、みんなが九・九・九といたしたい、こういう気持で努力をしておるのであります。
  488. 天田勝正

    ○天田勝正君 時間が迫って参りましたので、今度は一ぺんにお聞きいたします。  資産所得の合算、こういう制度が今度開かれるようになりますが、これはこれとしてうなずけないではありませんけれども、さて、そう資産をたくさん持っておらない人が、夫婦が給与所得でなしに、別のところで共かせぎをしておる、こういうような場合、これがやがて給与と事業所得が合算されるのではないかという、そこに伏線が隠されておるのではないかということについては、いかがお考えか。  それから証券名義貸しの問題であります。これは、今度の報告の制度によって、かなり税金を多く取ることができるのであると思います。おそらく四、五百億は取れるのじゃないかと思いますが、この額というものは、今度の自然増収のうちに入っているのかいないのか。入っているといたしますれば、これこそ、かつて取らるべきものを逃れてきた税金でありますから、第二次分配に当って、社会保障に全額投ずべきものだと思いますが、いかがでございましょう。
  489. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 第一の家族合算の問題は、資産所得だけに限っております。しかもこれは、夫婦を原則といたしておるのであります。従いまして、勤労所得、共かせぎの場合におきましては、これを課税するという気持はございません。昔は、共かせぎの場合は非常に少のうございますから、家族が全部合算でございましたが、最近の状況におきまして、給与あるいは事業所得の合算というのは、各国ともやっていないので、そういう伏線はございません。  なお、名義貸しの課税は、今までいろいろ弊害がございましたので、今回改めて課税することになったのでございますが、税収入としては、多くを期待できないと思っております。なぜかと申しますと、総合所得税を納めておる人は、源泉で一割取られております。ところが、今度名義貸しをやめまして、いよいよその人の所得になるということになりますと、当然一割の源泉で納めておるものは控除して戻すことになりますので、こういうところは非常に適正になって参りまして、収入としては、そういう場合も考えられますので、あまり多くを期待できないのであります。そして大株主の名義貸しになっておる部分は相当の増収になると思いますが、ここで特に多額の増収ということは期待できないと思います。
  490. 天田勝正

    ○天田勝正君 ここで、経済企画庁長官に伺いますが、いない……いなければやむを得ません。大蔵大臣にお伺いいたしますが、今、現在の通貨の分布状況はいかが相なっておるでありましょうか。たとえば農村に何%とか、そういうことです。
  491. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) どうも通貨がどういうところにたくさんあるかということは、これはなかなかむずかしい問題で、昔、たんす預金その他について一応調査をしかけたことはございまするが、これはなかなかむずかしい問題で、たれも答え得られぬと思います。調査もいたしておりません。ただ、金融機関等にはどのくらいあるかということはわかります。
  492. 天田勝正

    ○天田勝正君 かって予算書のうしろの参考の欄に、二十三年ごろ、農村四二%というのを見て、記憶しておりますので質問したのです。それでは、農村関係のことは省略いたします。  人格なき社団の問題でありますが、これは、大蔵委員会でもかなり詳しく検討されたはずなのであります。この適用次第によりましては、非常にこれは危険なものでありまして、それで私、時間がありませんからこちらからは損するから述べませんけれども一つ政令は用意されておると思いますが、どういうもののとどういうものと、どういうものにはかける。ただ収益のあるものといいますると、これは大へんなことになります。ちょっと婦人会がバザーをやりましても、収益があるのであります。また、私ども政党が出版物を出しましても、その部分だけ見れば収益があるのであります。そういうことについて、これは、事務当局でけっこうでございますから、お示し願いたいと思います。
  493. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは、いろいろ大蔵委員会で議論が戦わされたようでございまするが、やはり継続して収益事業を営み、そこに所得のあることを予想いたしておるのでございます。施行に当りましては、十分注意していきたいと思っております。
  494. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 天田君、時間が過ぎておりますから、簡単に願います。
  495. 天田勝正

    ○天田勝正君 だから、もう五つか六つ聞けばおしまいです。  今度は、税金の問題で文部大臣に聞くというのは、珍しいことだと思いますが、私、この際文部大臣にお伺いしたいのは、文部大臣の手元において、宗教法人にいたしましても、その他公益法人にしても、かなりお認めになります。そういたしますと、これがまた、非常に脱税の巣になる。これは世間も周知であります。たとえば、家元なんというのが、その最たるものだということは、だれ一人知らぬものもないくらいであります。こうした、あなたが認可をされる場合、税務当局等と連絡をされて——税務当局ばかりではございません。他の政府機関と連絡をされて、一体御協力なさるのでございましょうか。どういうことをやっておられるのでしょうか。
  496. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) お答えいたします。  文部省で認可いたしております法人が、必ずしも脱税を目的としている法人とは私は考えません。ただ、多くの中には、そういうような疑いを受けるものがあるいはあるかもしれませんけれども、認可に当りましては、十分審査いたしておるはずでございます。また、必要に応じましては、関係の機関と連絡もいたしておるつもりでございます。
  497. 天田勝正

    ○天田勝正君 そういう答えをされるから、質問が長くなるのですよ。だれが、脱税をいたしますと、あなたのところに届ける人がありますか。必ず公益ということで、もっともらしく書類を作って出すのです。出すけれども、事実それは、たとえば、何々家元なんというのでも、昔と違って、どんないなかの女の子でもお花を習うのです。この組織というものは、ピラミッドみたいになっておりまして、必ず免許料というものは、ピラミッドのてっぺんに集まってくるような組織になっているのです。直接家元自身が教えるのでなく、段階ごとに師範なりその他の役割がありまして、収入それ自体は、公益法人にしようと、個人にしようと、一こう変りがない。目的がそういうふうに来ないけれども、かようなところも、やはりまじめな納税者から見ますと、納税意欲を失う大きな原動力になって参っておることは事実なのですから、そういうことは、今後十分調べて連絡をとってやるとか何とかいうお話ならばいいけれども、そういう目的の団体はありませんなどと言われたのでは、それは困ります。
  498. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 文部省といたしましては、認可に際しましては、その資産の状況、事業の計画、それぞれ十分審査いたしました上で認可いたす次第でございます。そしてまた、その事業は、もちろん公益的なものに限っておるつもりでございます。また、ただいまお花の話がございましたが、お花の関係におきまして、文部省で認可いたしております公益法人は、きわめて少いのでございまして、いずれも十分審査を遂げて、認可いたしておるつもりでございますが、しかし、御指摘のようなことがございますれば、さらによく調査いたしまして、善処いたしたいと考えております。
  499. 天田勝正

    ○天田勝正君 滞納処分の強化について、かなりお伺いしたいのですが、時間がありませんから、これは次の機会に譲りまして、最後に一点、地方税の関係について、自治庁長官が参っておられますので、お伺いいたします。それは、長官もすでに御承知のごとく、地方には、法定外普通税なるものが条例によって作られまして、これが実に数の多いことは、ここでもう時間がありませんから申し述べません。その中には、実に農村が貧乏なためにそうなったのでありますが、牛なぞも、二才ぐらいになると税金をかけるという極端なのすら実は出て参っております。このことは、これ自体として何らかの形で私は救わなければならない問題だと思っております。このことについて、あなたと、実は農林大臣ともにお伺いしたかったのでありますが、農林大臣所用だそうで、おられません。そこで、こういうものの整理、これは単に、それはやめてしまえということにできないところに一つの悩みがありますが、どっちにしても、日本の生産、ことに農村の生産、牛馬等をますますふやすという時期に、あべこべに税金をかけて阻害するという状態は、どこかで救っていかなければならないと思いますが、これに対する構想、それから、ついでに伺いますが、過日も言われましたけれども、こういう苦しい納税をしておる一方、今度は芸者の花代ということになれば、一ぺんにこれは軽減される。それで、衆参両院ともに、この答弁に当ると、必ずあなたは均衝論を持ち出す。ほかのこれに類似したものとの均衡をとって下げたのだと、こういうのですけれども、これはまことにおかしい話で、こんなのこそ均衡を失してちょうどいい。均衡を失するほど高くてもいいというのが国民だれもが考えるところでありますけれども、これをお直しになるおつもりはございませんか。  次には、やはりこれは地方税の関係ですが、固定資産税の問題、これは、住宅を建てれば、償却の期間を早めるという一つの優遇の措置がとられております。ところが、実際には、地方税の関係になりますると、さようなことにはお構いなしで、標準というのがちゃんときまってしまって、四十年、五十年、すでに木造で、耐用年数なんかはるかに切れておっても、地方の財政が苦しいものでありまするから、そこで、これがやはり新築とそう変らないような値踏みにされておるというような例すらあるわけであります。これらについて、やはり庶民住宅、これは、どんな大きい住宅ででもみんな変えろというような、むちゃなことを私言うのではありませんけれども、何十坪までの庶民の住宅、あるいは所得に応じて、この程度までは特別な見積り方をさせるとか何とか処置をとらなければ、住宅はふえて行かぬと思いますが、この三点についてお伺いいたします。
  500. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) まず、第一の法定外普通税の問題でございますが、何にいたしましても、現在の自治体は、特に法定外普通税を取っておりますところは、税収が非常に僅少で、税の収入が乏しいという点から、こういう無理な税金を取るというような傾向となっておるわけでございます。この問題は、合理的な考え方から申しますと、お説のごとく、極力この法定外の普通税は押えていくという方向でなければならぬものと存じます。しかしながら、同時に、その方向をとります決意をいたしますについては、これらの地方における税収が少いといたしますならば、これをあるいは交付税の姿なり、あるいは特別交付税の形において、その収入があるように措置をいたしますことが非常に大事なことであると存じます。まあ幸いにして、まだいよいよ取ってみなければわからぬわけでありまするが、三十二年度以降においては、相当数の地方税それ自体に増収も考えられる。それから一方において、国税の関係におきましては、三税といわれまする酒税、それから法人税、所得税、この交付税の基礎となっております国税三税についても、相当程度の大幅の増収が見込まれておることは、御承知通りでございます。従って、これらの増収の結果は、その二五%としての交付税の税収にも相当量の幅の広がりがあることも事実であると見通しをつけますので、こういう段階において、だんだんと、一方において交付税、他方において地方税全体の増収がありますような場合におきましては、お説の通り、この法定外普通税というものは極力押えていく方向に運営をして参りたいと存じます。  それから、第二の花代の問題でございますが、この芸者の花代は、今あなたの方からお話をいただきましたように、これはやはり均衡論で、今度の地方税の改正の第一の方式は、これは、相互間の均衡のとれないものは、たとい多少の減収があっても、均衡をとるより道がない、こういうふうに考えたわけでございます。一口に申しますと、芸者は、花代方式によってその行為に税をかけておりまするが、同じ方式をとる、花代を取らない芸者類似のものというものが相当わが国にたくさんございます。たとえて申しますと、芸者の花代を取って、芸者としてやっておりまする者が二万五千名内外と推計ができるわけでございます。しかるに、カフエーの場合は、カフエーだけで二万八千人の同様の行為をする類似行為者があり、それからキャバレーにおきましては三万名に及び、それからバーにおきましては一万五千人をこえるような人数が、芸者類似の行為として接客行為を行なっておるという実情にあるわけであります。その他、料亭あるいは待合、その他いろいろなものを換算いたしますと、相当量に及ぶ。しかるに、花代方式をとっております芸者については三割、同じ行為をしております者については、類似行為をしている者については一割五分、こういう不均衡は、均衡をとるという大方針のもとに、改正に手をつけてみるというと、これは捨ておくことはできないということになるわけでございます。そこで、これを引き上げてバランスをとるか、下げてバランスをとるかということになれば、芸者以外の類似行為者の場合も、三割に上げてバランスをとるという道はございます。しかしながら、この際、私の判断は、どうしても下げてバランスをとるということが均衡をとるゆえんであろう、こういうふうに考えまして、これを思い切って、つらいところでありますが、下げることにしたわけであります。  それからもう一つは、この固定資産税につきまして、相当償却されておる老朽のものについて、なぜ高い率の税を取っておるかという問題でございますが、この点は、お説のようなことが全国各地にあろうかと思います。これもやはり、税収の少い地方において、より多くこういうことが存在をするのではなかろうかと考えますので、これは、お説の趣旨に基きまして、慎重に調査を遂げました上で、御意向に沿いますように、その軽減の道を考えて参ります。
  501. 天田勝正

    ○天田勝正君 これで終りますが、要望だけ申し上げておきます。何にしても、芸者の花代に関連することになりますと、田中長官は該博な知識を持っておられまして、(笑声)私がとても太刀打ちするところではございません。何しろこの点は納得ができない。しかし苦労人でありますから、私の第一点で申し上げた点、すなわち農村で畜産振興をやらなければならないのに、地方税の関係でまたこれが阻害されるというような問題、あるいは今後立体農業をやっていかなければならないのに、山に植えた桃の木一本幾らという課税の仕方をしておる。こういう農村の生産力及び収入をふやす道、せっかくの苦労人でありますから、この方へ一つ苦労を集中していただくことと、それから住宅政策が地方の固定資産税の問題からやはり阻害される。こういう問題をぜひ一つ御検討いただきまして、直していただきたいことを希望いたしまして、質問を終ります。
  502. 吉田法晴

    吉田法晴君 途中で切れた質問を続けたいと思います。  初め沖縄問題、これは本土同様に出してやらなければならぬと考えておられます徴用船舶の補償再建費あるいは郵便貯金、簡易保険等の払い戻しと申しますか、国が支払わなければならぬ債務、それから恩給の先般の補正予算で出されたものの残り、それから引揚者更生関係、それから今度在外財産の補償問題について本土について措置をせられましたそういうもの等について、これは今後いかなる機会に支出をせられるおつもりでありまするか、大蔵大臣に伺いたいと思います。
  503. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 徴用船舶の分につきましては私は初耳でございまするが、わが国の内地におきます分は一部補償を打ち切ったのではないかと思います。十分今後調べてみたいと思います。  郵便貯金につきましても同様でございます。  引揚者につきましては、内地と同様に今後取り扱うことにいたします。  それから沖縄県庁に勤めておられました人の退隠料につきましては、今後一億円の中からまかない得るようにいたしておるのであります。  その他更正につきましても、この前御説明申し上げた通りでございます。
  504. 吉田法晴

    吉田法晴君 在外財産は……。
  505. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 在外財産というのはまず引揚者の問題だと思います。これは内地と同様に取り扱うことにいたします。
  506. 吉田法晴

    吉田法晴君 一部施政権云々という問題で、税金は相当納めておるわけでありますが、銀行と申しますか、金融機関を持ちたいという強い希望がございますが、たとえば、これは国民金融公庫というような形をとるか、どういう形をとるか知らぬけれども、そういう点について大蔵大臣としてお考えがございますか。
  507. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 沖縄におきましてはこちらの施政権がないのでございます。また私は向うの銀行制度その他については存じておりませんし、またそのことについての陳情も何も受けておりません。従いまして、ただいまのところはお答えする材料を持っておりません。
  508. 吉田法晴

    吉田法晴君 施政権の返還を個々にしたいということで、補正予算を審議いたします際に教育行政から施政権の返還を実現して参りたいと、こういう答弁が岸総理兼外務大臣からなされたわけでありますが、これについて文部大臣の所見を承わりたい。
  509. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 岸総理がどういう御答弁をなさいましたか、私つまびらかにいたしておりません。あるいは施政権を包括して返還を受けるのでなくして、部分的に受けるというふうなお話しがあった際に、あるいはその例としてさようなことを申し上げましたのではないかと思うのであります。これは私といたしましては、さような場合に、教育行政権が返還ざれるということはきわめて望ましいことと考えております。
  510. 吉田法晴

    吉田法晴君 外務大臣なり、それから総理として御答弁になりましたが、問題が教育行政ということならば、これは文部大臣の所管事項だから、その一般的な方針を具体的に文部大臣としてどういう工合にやったらよかろうか、こういう点について、これは御意見がなければならぬと思いましたので伺ったのであります。  それじゃもう少し具体的に承わって参りたいと思うのでありますが、従来本土と同じ教科書を使い、それから戦前までは同じ免許状によります教職員が教育をやってきた。ところが教育法令について、今までと同じような教育をやりたいということで、立法院で二度、三度にわたって法律を作ったけれども、それが拒否されて、市会が今日出ておる。そして民族教育がだんだん困難になるのではなかろうか、こういうことで、教育行政から施政権が返還されることを望んでおるわけでありますが、それについて、その期待にこたえて文部大臣としては、たとえばこういう点からでも漸次実現をしてもらいたいと、こういう点がございましたらば、その点を承わりたいと思います。
  511. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) この問題はきわめて広範にわたる問題でございますので、教育行政権から一番先に戻してもらうというふうなことを明確に申し上げる段階ではないと思うのでございまして、私は私の心持を先ほど申し上げたような次第であります。ただ現在の場合といたしましては、沖縄におる同胞諸君の心持を察し、またその将来を考えまする場合に、できるだけの教育に関する協力援助はいたしたいと考えております。
  512. 吉田法晴

    吉田法晴君 お手元に差し上げましたから、一々読み上げませんけれども、たとえば学校や家庭で国旗の掲揚をしたい、それから教職員の待遇を本土同様にしてもらいたい、戦前から教育をしている者はとにかくだけれども、戦後の若い教職員については恩給の適用がないから、それに適用をしてもらいたい、家族手当をもらっていないから、給与を本土並みにしてもらいたい、あるいは健康保険もない、社会保険がないから将来不安であるから、その点についてどこからでもいいから一つ適用をされるように願いたい、あるいは共済組合を部分的にでも適用されたい、その一つの例として、教職員の宿泊所を那覇に作ってもらいたい、あるいはこれは本土で教育されておるのでありまするから、これは文部省でできることでありまするけれども、教育研究生の研究補助金が少くて勉強にも困難をしておるから、その点について増額を考慮されたい、あるいは教科書を無料配給してもらいたい、これは政府からでも援護団からでもよろしい、あるいは地図の中に現在沖縄は入っておらぬ、これは学童の将来にわたって、沖縄は日本であるということについて疑問を持たして参ってはいかぬから、地図に入れてもらいたい、あるいは教科書の中に沖縄のことを材料として取り上げてもらいたい、等々。そのあとにも若干交換教授やあるいは教授の本土研修生について、あるいは日本本土の大学で大学院に学生を受け入れてもらいたい等、その点については文部大臣として直ちにできること等もあるわけであります。それらの点についてこれを具体的にあげましたが、御回答をぜひできる部分については願いたいと思うのです。
  513. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 非常に広範多岐にわたるお尋ねでございますが、お答えが漏れましたら、御指摘いただきたいと思います。  今日まだ沖縄に対して教育の面におきましてやっておりますることは、御承知通りに、昭和二十八年以来、毎年五十名程度の学生を国費でもって招致いたしております。大学に入学さしております。来年は全部で二百名ぐらい在学することになる見込みでございます。このために予算も取っておるわけでございますが、このほか私費で来日する留学生に対しましても、入学上それぞれ便宜をはかっておるような次第でございますが、この沖縄留学生に対しましては、予算をもってこれを援助しているわけでございますが、その金額が少いというような声もございます。かような点につきましては、今後とも努力して参りたいと存じます。なおまた、琉球の中小高等学校の教員に対しましては、毎年五十名ずつ六カ月間内地で研修することになっておりまして、これに対しましても、毎月滞在費の補助をいたしておりますが、かような問題につきましても、今後実情に合うように、できるだけ協力して参りたいと考えております。それから琉球政府で琉球大学と共催のもとに現地で中小高等学校教員の夏季研修を行うというふうな場合の講師の派遣についても便宜を供する、援助をいたしておるわけでございます。また教科書のお話がございましたが、この問題はこちらの方で言えば、財政の関係もございますし、また向うの方で言えば、向うの政府の思惑というものもあろうかと思うのでありますが、現段階におきましては、琉球政府からの申し出に基きまして、小学校、中学校の教科書のあっせんを行なっておる程度でございます。無料でもってこれを向うに供給するということについては、なお検討さしていただきたいと思うのでございます。  それから国旗の問題でございますが、これは私どもといたしましても、日本の国旗が自由に掲げられるようになるということは、きわめて望ましいことと考えておりますけれども、向うの政府関係もございますことでありますので、簡単に結論をつけるわけには参らない。ただ、われわれもそれを希望しておるということを申し上げるにとどめたいと思うのであります。  それから学校教員の恩給の問題でございますが、行政が分離する前に日本の公務員でありました者については、御承知のように恩給の問題は一応解決をみているわけであります。その後において向うで新たに採用せられた人たちに対しましては、今日の建前上、これに対して恩給その他の給与に関する待遇措置をするということは、これは現在といたしましては困難ではないかと考えます。  それから学校教員の資格の問題でございます。琉球において取得いたしました教員の資格を、そのまま日本の内地において適用させるという事柄でございますが、この問題は、現状のもとにおきましては、必ずしも容易でないと思うのでありますが、十分これは一つ検討させていただきたいと思います。ただ現在といたしましては、向うで資格を取得いたした人が内地において、地方の教育委員会で行なっておりますところの検定試験を受けて、内地で就職しておる人はいるということを申し上げたいと思うのであります。  教科書の問題でございますが、私は現在の教科書につきましては、実はそこまで十分検討いたしておりませんでしたが、よく検討いたしまして、御指摘のようなことがありましたら、将来注意して参りたいと思います。
  514. 吉田法晴

    吉田法晴君 厚生関係の中に日雇いの問題が入りますけれども、お尋ねをしたいのでありますが、それは、神武以来の景気といわれ、それから一千億積極施策ということで、これはかつてない、何と申しますか、いい状態で予算が組まれておる。ところが減税にも関係のない階層、この何と申しますか、日の当らぬ階層についてどれだけの積極政策がなされたかということをお尋ねしたいのであります。  まず労働大臣に、日雇い労働者からいろいろな要望が出ておりますが、これはあとでお尋ねをいたします。厚生省関係の生活保護なり、あるいは社会福祉関係の対象と同じだと思うのでありますが、実情は私が申し上げるまでもございません。それに対して、私ども年末来非常にたくさんの陳情書と申しますか、率直なる訴えをいただいておりますが、時間がございませんから、たくさんそれを読み上げるわけには参りませんけれども、実際涙のこぼれるような陳情書をもらっております。一文を読んでみますが、「神武以来の好景気といわれている此の世の中に私たちが一日の日給をもらって其の日の食生活に血のにじむようなやりくりに其の日のつかれもわすれて、女としての三人の子供の世話も致さなくてはなりません。又学校側より給食代の話があれば目からは涙が出るか血が流れるかわかりません。此のような日常な生活故に子供達にも思うように学校でえんぴつ、ノートもかつてやれず、これでは子供たちが一人前の子供になる事が出来るでしょうか。」母親の苦労を訴えて参っておりますが、従って、この陳情にいたしましても、それから日雇労働者健康保険についても、傷病手当金の支給をしてもらいたい、あるいは年末あるいは盆にいたしましても、その手当について改善をしてもらいたい、これは関連をいたして参りますけれども、生活保護の基礎を引き上げてもらいたい、こういったような要望が出ていることは、これは御承知通りであります。根本的な点はとにかくといたしまして、こうした実情の訴えを、この神武以来の好況、あるいは積極政策の中で、これはこの際こそ実施すべきだと思うのでございますが、要望を実現さしてやるべきだと思うのでございますが、労働大臣あるいは大蔵大臣、どのように考えられますか、お答えいただきたい。
  515. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 失業対策事業の日雇いの問題だと思いますが、今回二百八十二円から三百二円に、二十円上げて、幾分でもこの神武以来の景気に浴せしめたいという気持でやったわけでございます。これは昨年九月の賃金調査に基きまして、これがちょうど当時三百三十六円という数字が出ておりますので、従前の例にならい二十円、七・一%上げたというわけであります。また夏季あるいは年末の手当ということがありましたが、失対事業は申すまでもなく、日々雇われるという法の建前でありますから、これに手当を出すということは、法の性質上から許されないものでありますが、ただ実態に即して、ここ二、三年来、夏季あるいは年末に賃金の増給、あるいは、就労日数の増加ということで対処して参ったのでありますが、三十二年度におきましては、夏季三日、年末七日、これを精算した基礎の上に加えておきまして、これによって夏季並びに年末に対処いたしたいということで、万全を期しておる次第でございます。
  516. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) お答えいたします。この神武以来の景気であるが、景気に恵まれない、日の当らない者にどういうふうに処理したか、こういうお尋ねのように伺ったのであります。まず要保護者の方につきましては、生活基準を六・五%引き上げる。そこでなお、母子加算というような制度を新たに設けまして、生活基準引き上げの結果、東京都の標準家庭と申しましょうか、老人一人、未亡人一人、子供三人というような家庭におきましては、従来でありますと九千五百二十三円という一カ月の基準額がございますが、今度の改訂引き上げによりまして一万百三十九円でございますか、それに母子加算が五百円つきますから物価の値上りよりは率がよくなってくる、こういうことに相なるわけでございますが、しかし困ってる家庭でございますから、それで十分だというふうにはもちろん考えておりませんが、できるだけその方面のことをなおよくしたいと考えております。  なお、ボーダー・ライン層と申しましょうか、低額所得階層につきましては、世帯更生資金の、今まで一億というような資金でございましたが、これを三億円に引き上げて、しかもこれは二分の一の国庫補助を三分の二に引き上げて、そして地方は減るような仕組みにした、さらにまた貧困の原因が病気による原因が多いというようなことを勘案いたしまして、今度初めて医療貸付制度を新たに設けまして、この方面に二億円の手当をいたしまして、三分の二国が負担し、地方が三分の一負担する、病気中無利子で一つ貸し付けよう、そして適当な期間に生活力が出てから返済させよう、病気による貧困を一つ防止しよう、こういうような手を打ったわけでございます。
  517. 吉田法晴

    吉田法晴君 日雇い労働者にいたしましても、あるいは生活保護を受ける人たちにしても、若干の単価の引き上げで、こういうことでよくなったと、こう言われますけれども、実際の生活水準は変ってないと思う。その生活の実態等については、それでよろしいかということはあとでお尋ねいたしますが、要保護対象の人員が、三十一年と三十二年と比べて、二十四、五万の差、あるいは二十六万に近い差があるようでありますが、その差は今の世帯更生資金、これは医療貸付金のことを言われましたけれども、これは医療で要った金を貸し付けるのでありますから、それで生業資金にするというわけにはいかぬ、立ち直りはできません。従って生業資金は幾ら、あるいは産業に吸収する云々ということで見込んでおられるのか、二十数万という数をどういう工合に保護を要しなくなるという計画を立てられているのか、これをお伺いしたいと思います。
  518. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 要保護者の保護人員が減ったということは、これはやはり景気の余波を受けまして、保護者の方に収入が流れてきておる、そこで保護人員が減少しておる、こういうことであろうかと思います。大体調査によりますると、昭和三十年の十月以降から月々一%の割合で要保護者の人員が減っておるような状態でございます。これはまあ就労率を見ましても、約一%くらいずつ増加になっておる、それから失業者も一%くらい減っておるという状態になっておりますので、この数字は相当根拠があるのではないかと、こういうふうに考えております。しかしこれは申し上げるまでもなく、要保護者の生活保護につきましては、これは事務費でございますから、予算の計上額は十分したつもりでございまするが、もしこれは何かの変動が生じて足らないというような事態がございますれば、これは当然予備費なりあるいはまた補正予算などによって当然政府としてやらなければならぬわけでございまして、いろいろ要保護の人員を減らすような仕事をしておるのではないかというような非難もございますので、その点につきましては十分督励いたしまして、十分な要保護者に対する生活保護を与えるような指導を努めたい、こういう実態でございます。
  519. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がないから、争う時間がないのでありますが、地方財政の貧困化と、それから数年前に乱給云々ということで締めようとされたその方針が、これは法規関係についてもそうでありますが、今日までこれが残っておりましたために、ときには新聞の投書欄に現われておりますように、若干でも仕事をして浮び上ろうとすると保護費が削られる云々ということで、末端はそれだけの実態がないのにかかわらず締められる。地方財政の困窮化もあって、そして言われるような、あるいは仕事につきあるいはほんとうに更生するのならいいのだけれども、そうでなくて、無理に切り落されていくという実態が起っておるということは、これは御承知だろうと思う。もしたとえば世帯更生資金にしてももっとふやして、要求のごとく五億にもふやしてやっていかれるということなら、これは多少根拠があると思うのですが、この積極政策あるいは神武以来の景気という際には、もっとその点についてあるいは生業資金にも金を確保し、あるいはそういう無理をなしにやっていけるように施策されることこそが、厚生大臣の今日の任務だと思うのであります。問題はそういう方向でなくてむしろ逆だと思うのであります。その点についてこれは今後の運用でもありますが、あるいは来年度予算等についてさらに努力をせられて参ります所存でありますかどうか、伺いたい。
  520. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) ただいま要保護者に対する地方財政の困難等からして圧迫した例があるようだというようなことは、私も実は耳にいたしております。さようなことのないように一つ今後は十分注意いたしていきたいと、こういう考えでございます。  なおまたボーダー・ライン層等に対する医療貸付あるいは生業資金貸付等の金額等が少く、これでは十分ではないという御意見のようでございまして、私もその点については、これはもう十分であるとは考えておりません。だた医療貸付等は初めての制度でございますので、この運用によりまして、将来そういう面が相当足らない、もっと十分にすることが必要だということでございますれば、これは当然ふやして参りたいと、大蔵当局にもそのような打ち合せをいたしております。
  521. 吉田法晴

    吉田法晴君 生活保護関係の事務費が全くなくて、あるいは一部県において負担するところもあるし、三分の二程度については全く県費負担もなくて社会福祉協議会等において負担しておるという実態があるようでありますが、こういう際にどうして事務費を支出していくということをなさらないのか、承わりたい。
  522. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) お答えいたします。生活保護施設事務費の予算でございますが、これは昭和三十一年度におきましては八億四千九百六十五万円、それから三十二年度におきましては十億一千五百七二十万円でございますが、差し引き一億六千六百余万ほど増になっておるのでございます。これは足らないというおしかりを受けますれば、これは十分一つまた検討を加えなければなりませんが、両省の協議の際には、大体基準額を引き上げた関係上、小規模の保護施設における事務費にも充当できるのではないかというような一応のめどをつけて、実は計上いたしたわけでございまして、今後運用によりまして万全を期したいと思いますが、今御意見のような非常に工合の悪いというようなことが実際面に表われて参りましたならば、来年度予算においては十分一つ考慮いたしたいと、かように考えております。
  523. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは話が違うんだと思うのでありますが、たとえばまあ生活保護法関係の事務もでありますが、その他の事務について保護施設、あるいは保育施設それから社会事業関係全部についてでありますが、給与が一般に低く、特に期末手当あるいは勤勉手当あるいは退職手当と申しますか、老後の生活の保障は全くないのであります。若干はもちろんございますけれども、社会事業関係の表彰式等に参りまして、何年も非常に恵まれない給与のもとで苦労をしてきた老人が紙一枚をもらって感激しておるのを見て、実は私どもももらい泣きと言いますかするわけでございますが、依然として給与面について劣悪な状態においておかれている、こういう状態がほうっておかれていいものと考えないのでありますが、養老院その他社会福祉施設から給与関係改善のため九億円余の要求も出ているようでありますが、どうしてこういう際に改善をせられなかったか、本格的な改善をせられなかったか、これはあるいは公立と私立の場合と比べてみたら歴然たるものでありますが、従事者に世間並みのとにかく待遇を与えてやるべきだと思うのでありますが、厚生大臣どういう工合にその欠陥を補なっていこうとされるのか承わりたいと思います。
  524. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) お答えいたします。社会事業関係の職員等が期末手当等がないじゃないか、なおまた待遇等が一般から見て低いというような声のありますことは仰せの通りでございまして、私もこの点につきましては改善いたしたい、こういう意図をもちまして、今回の予算につきましてもいろいろ折衝いたした次第でございます。超過勤務手当でございますか、月二千円というようなことで一応予算計上をしていただいたのでありますが、将来の問題につきましては、これは全く同意見でございますので、その辺のことは一つ増額いたして参りたい、来年度においては十分一つ考慮いたしたいと、こういう所存でございますので、御了承願いたいと思います。
  525. 吉田法晴

    吉田法晴君 こういうとにかく神武以来の景気といわれ、あるいは二千億も自然増収が見込まれるというときにやっていかなければ、なかなか困難だと思いますので、今の二千円というのはこれは一カ月ですか。私は一カ年のように承知いたしておる。一カ月三時間というのです。一カ月三時間分では、これは施設がそれぞれ御承知のように八時間以上の勤務を実際はやらざるを得ないような実態でありますから、とうていそれではカバーできないと思う。今後努力したいということでありますから、あと一括して大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、次の問題はこれは私設であります。公立の分についてはとにかくでありますが、私設の点について、たとえば保育所の例をとってみましても、全国八千七百、平均収容人員七十人、坪数が百坪、小規模でそうしてまあ三、四人、従って劣悪なる労働条件で、それこそ労働時間の観念もないような状態でサービスをしている。あるいは乳児あるいは孤児等を預かっておるところにおいては、これは夜もおちおち寝ないで実際にやられておる、そしてそれに対する報いるものは、平均七千幾らというような数字が出ておりますけれども、実際にはもっと低いし、公立を入れてそういう私は実績になると思うのであります。しかも、生活保護についてもそうでありますが、こういう問題について、まあドッジ・ラインなりあるいは乱給云々ということで締めるという態度を、ここ数年変えずにおられる。従って、末端において、この生活保護についてもそうでありますが、あるいは施設全部についてない。そうして措置を要する児童についても、収容することができない。あるいはその数が二十数万といわれ、あるいは要措置児童十六万ともいわれておる。ですから、この私設について、あるいは社会福祉事業振興会の資金にしても、もっとたくさんあって、そして、借りて設備も改善されるというなら別問題、ところがそれもない。これはついででございますでけれども、同じ私の問題にしても、たとえば教育施設については、私学振興会というものがあって、相当な金が、それはやっぱり施設の改善なり、あるいは戦災復興に出てきております。ところが社会福祉事業振興資金については、ほとんど問題にならぬ。各県に分けたりすると問題になりません。惨たんたる苦労をしておるというのが実情でありますが、社会福祉事業資金にいたしましても、あるいは社会福祉事業の補助金にしても、成果を上げるために、もっと増額をする努力をせられて参るべきだと思うのでありますが、厚生大臣の所見をお伺いしたい。
  526. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) ただいま吉田委員の、社会福祉事業等に対する政府の財政負担があまり上昇しておらぬじゃないかというお話でございまして、これは私も全く同感でございまして、今後十分意を用いて、一つ増加をはかりたい、こういう決心でございます。  なお、先ほどお答え落したのでございますが、社会事業等に勤務いたしておりまする従業員のベース・アップは、これは当然のことでございますが、六%ほどいたしておりますので、超過勤務手当のほかに、ベース・アップはしているというように考えております。
  527. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 時間が過ぎておりますので、簡単に願います。
  528. 吉田法晴

    吉田法晴君 養護施設について、昨年間食費五円、リンゴ一個要望されたが、それが削られた。ことしはまあやっと五円の間食費を認められたのは喜びますけれども、しかし、その結果をもってしても、一日のとにかく施設の給食費が六十六円六十八銭、六十六円六十八銭で、果してまあ児童憲章その他にうたわれておりますような、あるいは憲法にうたわれておりますような人間らしい給食ができると考えられますか、あとで総括してお尋ねをいたしますけれども、この点等についてもわずか五円じゃなくて、給与についてもわずか六コンマ幾らと言われましたけれども、こういう際に、なぜもっと画期的な施策をなさらないか、これで十分だと思っておられるのかどうか、一つ承わりたい。
  529. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 昨年四円五十銭食事代が上りまして、そうして今年間食費代として一人五円、こういうふうに上って参っているわけでございまして、合計いたしても六十六円六十八銭でございますから、これは安いという御批判は、まあこれは全く同感でございます。しかし政府の方といたしましても、逐次上げてきている、御要望に沿うてきている、ことに今年はどうしても五円上げてくれという、たっての希望をそのまま承認されたわけでございますが、しかし、今吉田委員の申されたような、社会福祉事業等にはもっと一つ財政投入して、日の当らない方にうんと明るくしようじゃないかという御意見につきまして、私も同感でございまして、政府としても、そういう方面に、今後、金を出そうという心がまえでございますので、来年度以降におきましては、十分一つ御期待に沿いたい、こういうふうに考えております。
  530. 吉田法晴

    吉田法晴君 二つ一括してお尋ねをいたしますが、葬祭扶助について、現状では葬式もできない。特に養老院等で不幸をみました場合には、要するに火葬場にも行けない。周囲のものを寄せ集めて浄財を集めて、かろうじて葬式をしている。死ぬにも死ねぬという実態で、五千六百五十円の要求が出ておりますが、これらの点について、どうしてこの際実現できなかったか。もう一つ一緒に申し上げますけれども、これは社協の全国大会での要望でありますけれども、養老院の冬期加算の要望が出ておりますが、現行一律一人一円の採暖費しかない。老人あるいは病弱者等については湯タンポすらも沸かすことができないという実情だといわれておりますが、どうしてこういう点について改善をすることができなかったか。あるいは今後改善の方針であるならばそれを一つ承わりたい。
  531. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 葬儀料でございますが、東京都では大人一人三千円、こういうことになっておるというお話であります。いろいろこういった要保護者のそうした葬儀等につきましては、いろいろ火葬場、その他の施設が減免措置などもとられておるわけでございまして、これはそれで足るか、こういうことをいわれますと、それで足るというふうにはどうも私も申し上げかねるのでございますが、今後なお検討しまして、そういう場合においても一つ、十分とはいかなくても、まあやっていけるというようなふうにもっていきたい、かように考えておりますので御了承願いたいと思います。
  532. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 吉田君、簡単に願います。
  533. 吉田法晴

    吉田法晴君 最後に、失業者、しかも日雇いという形であれされておりますのは、憲法二十五条に基いて勤労の権利がある。その仕事がない場合に、国がその仕事について保障をしなければならん。あるいは二十七条に基いて、国民が健康で文化的な最低限度の生活をすることを保障しなければならん。こういう点で行われておるわけでございますが、失業対策として仕事が与えられる。あるいは生活保護でそれぞれの生活保護費が出される。これは憲法に基いておりますけれども、その生活水準たるや、あるいは失業対策において、同種の職種別の賃金の六〇%、あるいは一般生活の六〇%、こういうことで、最低限の生活を保障するに過ぎませんが、その結果、この間、最低賃金問題について本会議で問題になっておりましたように、一消費単位当り三千円を切る。あるいは飲食物費について千五百円以下という実態になって、母親の健康も維持せられないが、子供の知能、あるいはは健康その他については、これは重大な影響が現われておる。こういう点等は、これはここで長々と読み上げるあれはございませんけれども、労働科学研究所の調査を待っても、あるいは国際的に、飢えの経済学等において示されておるところと、これは一にするところでございますが、決して憲法のいう最低生活を保障するものではなくて、まさしく危険信号が出ておる。で、あるいは失業対策事業は臨時の仕事だからということでやっておられますけれども、実際にはその七〇%が固定をしておる。固定をしておるということをお認めになるからこそ、法律はございませんけれども、実際の運営として、盆あるいは暮については何がしかのとうろう代あるいはもち代というものを支給されておる。ところが生活保護を受けている者については、そうした年末あるいは盆の加算を要望されたけれども実現しなかった。そうしてその生活が、あるいは現在の母親——父親にしましてもそうでありますが、児童に至りましては、その体位も知能も落ちている。児童憲章に言うがごとく、人として尊ばれる、あるいはその将来が、いい環境が作られるという事態でない。まったく逆の事態が現われておる。これは私は神武以来の景気じゃなかろうと思う。あるいは一千億施策でなかろうと思う。当然救済をせらるべき緊急な政治の課題だと思うのでありますが、三十二年度予算でさえも一千億施策の中では行われておらぬ。この実態は、私がただいままで質問をして参った何カ条かの点でも明らかだと思うのであります。これでいいと考えられているのか。あるいは実態について固定をし、その生活を今のような危険信号を救済するというならば、抜本的なこれは施策を講ぜられなければならない、あるいは生活水準等も引き上げられなければならぬと思うのでありますが、総括をいたしまして、それらの点について厚生大臣あるいは、労働大臣はおられず、労働政務次官かもしれませんが、それから大蔵大臣、今までお聞きになられました点、一括して直さるべき点等について、積極政策の中で当然直されて参るべきだと思うのであります。まさに三十二年度予算の中でも日の当らぬ階層が非常にたくさんあり、そして緊急なたくさんの問題があるわけでありますが、これらについて政府として、あるいは大蔵大臣として、どういう工合にしなければならぬと考えられておるか一つ承わりたい。
  534. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 生活要保護者の生活条件が、先ほどもお答え申し上げましたように、東京都においては五人家族で、未亡人、子供三人、そして父親というような家庭で、九千五百二十三円が一月の保護である、それが今度の六・五%の基準の引き上げによって一万百三十九円でございますが、さらに、母子加算五百円が増加になった、これらの基準では、今日の物価基準からして、また、国民生活の実態からして、低過ぎはしないか、基準を上げる必要があるというふうに承わったのでありますが、政府におきましても、この程度でそれはいいのだというようなことで引いたのではないのでございまして、これは逐次引き上げていこう、こういう考えでございまして、国家財政の許す限り、また、国民生活の向上に伴って、順を追って一つできるだけやっていこう、こういう趣旨であることは先ほどお答え申した通りであります。できるだけ一つ御趣旨のような考え方であるということを一つ御了承願いたいと思います。
  535. 吉田法晴

    吉田法晴君 考え方で腹はふくれません。
  536. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) いろいろ有益な御意見を承わりまして、われわれは非常に得るところがあったのでございまするが、いろいろ御議論はございまするが、過去数年間を振り返ってみまして、わが国の社会保障制度は相当進んできたのでございます。その歩みにつれまして、ことに三十二年度の予算におきましては画期的ともいわれる程度の施策をしたのでございます。しかし何分にもまだ十分ということはできません。まだまだ足りないのでございます。しかしわれわれは三十二年度予算におきまして社会保障制度に向けましたこの努力を、今後ますますふやして、そうして先ほど来おっしゃっておられたような方向に向って、うんと前進いたしたいと考えておるのであります。
  537. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 日雇い労働者の失対事業の数字が低いということにつきましては、まことに御同情申し上げておるのでありますが、この性質上、また法制の建前から、同一地域における同一業種の通常支払われる賃金にいつもついていかなければならないので、そういう賃金が上らなければ失対事業の賃金を先に上げるということはできませんから、私どもとしましては、現在の立場におきましては、今九〇%になっているのは、これはもう失対事業としては私どもは最高と思っておるのでありますが、ただ今固定しているということにつきましては、できるだけこの中から抜け出てもらうように、固定しないように努力いたしたいと考えます。
  538. 吉田法晴

    吉田法晴君 長々と質問をいたしましたけれども、残念ながら、労働政務次官も、それから今の最低生活しているものの実態、危険信号が出ております点等については、大蔵大臣十分御理解が願えなかったことは大へん残念でございます。努力はするという点でありますから、さらに一つ事態の認識について御勉強を願い、思い切った施策を願うことを要望いたしまして、質問を終ります。
  539. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) これにて一般質疑は終了いたしました。おそくまで御勉強ありがとうございました。明日より分科会に入ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後九時四十三分散会