○曾祢益君 私はただいま提案されました
河野一郎君を本
委員会に
証人として
喚問するの
動議に対しまして
賛成の
討論を行いたいと存じます。
最初に申し上げたいことは、私及び私
どもは決してこの問題をただ単なる
委員会の
戦術とか、あるいは
いやがらせとか、そういうような気持で従来まで
主張し、あるいは本日なおこの
動議に
賛成するものでは断じてないのであります。また私
どもは非常に重大な
日ソの
国交全般のことを考えればこそ、どうしても
河野君にこの
委員会に
出席を求めて
解明しなければならない、かように信ずるが故に、いわゆるこの点を強く
主張するものであります。
小林委員も今指摘されましたように、もしこの問題がうやむやで過ごすならば、せっかく
日ソ間の
国交調整ができ、いわばその
最初の試金石ともいうべき今後の
日ソ間のほんとうの建設的な積極的な
協力関係を打ち立てることに対して、この
河野君の言動が非常に大きなわざわいをなすことを憂えるからであります。もし昨年五月の
モスクワにおける
漁業交渉の
実相というものがあいまいにされておるならば、どうしても
日本国民としては
ソ連の今度の
漁業交渉に対する
態度はまことに不可解千万あるいは不合理きわまる、こういうような
不信感を払拭することが不可能ではないかということをおそれるのであります。従いまして問題の中心は、
河野一郎氏の
喚問だとか何とかということが問題ではなくて、あくまで問題は、当面問題になっておりまする
漁業交渉を円満に解決し、さらにそれを基盤として
日ソ間の
親善関係を強くするためには、昨年五月における
モスクワ漁業交渉の
実体と
全貌をこの際内外に明らかにすることが必要である。その
手段としてどうしても問題は
交渉の
当事者であり、しかも従来から見るならば、非常に異例なことであるけれ
ども、この
外交交渉に当って必ずしも
全貌を知らせないいわゆる
秘密交渉をやった疑いが非常に濃厚な
河野君
自身に、この
委員会に出てきてもらわなければ真相の
解明ができない。この
段階に到達したがゆえに
河野君の
喚問を
要求するにほかならないのであります。
このことは私から今さら
委員長並びに
同僚委員諸君に申し上げるまでもなく、決して今回の八万トン、十万トンあるいは
オホーツク海に対する何らかの
密約ということだけが、昨年の五月に
河野君によって行われた
モスクワ交渉の何といいますか、
秘密の
ベールに包まれた問題の、これが初めてではない。これは皆さんよく御
承知の
通りであります。すなわち、領土問題に関する点についても多くの疑惑に包まれたのが実は五月の
交渉であったことは、皆様御記憶の
通りであります。さらにまたこれは五月の
交渉ではありませんけれ
ども、
鳩山前
総理を
首席全権とする第二回の重夫なる
モスクワ会談におけるこの
交渉についても、実際
上機微に触れた重要な、歯舞、色丹島に関する、あるいは
国後、択捉島に関するあの
共同宣言の非常にデリケートな
交渉について、これまた
河野全権がフルシチョフとのいわゆる水入らずの
話し合いによってきめられたことは御
承知の
通りであります。しかもその
内容たるや非常に不明確であって、何ゆえに
国後、
択捉継続交渉という
日本の
主張が、最後に
共同宣言の
内容に盛られなかったかの
経緯については、
委員長及び
同僚委員の方が御
承知のように、本
委員会でありませんが、
外務委員会において去る
国会において
共同宣言等が審議された際に、特に和みずからこれは
秘密会でもよいから、重要なことであるから、この領土問題に関する
実相、ことにアメリカの
領土——小笠原、
沖縄等の
関連において、いろいろな重要かつ
機微であるけれ
ども、決定的な線が出たことを明らかにしなければいけないということで、特に
河野君の
出席を
外務委員会に求め、そうして
外交の
秘密であるからいえないというようなことでなしに、この問題に対する
解明を行なったことも御
承知の
通りであります。従って今回が初めてではない、残念ながら。
こういう過去の歴史から見ても、どうしても
日ソ漁業交渉を円満に解決し、繰り返して申し上げますが、それを
跳躍台をして
日ソの
関係を建設的、積極的なよい方向にもってゆくためには、どうしても
河野君みずからの
説明が必要である、かように考える次第にほかならないのであります。
さらに申し上げるならば、今さら私が申し上げるまでもなく、本日の新聞にも出ておりますように、われわれが数回
政府の
当事者である
井出農相あるいは
岸外務大臣、
総理大臣等から伺いました八万トン、十万トンに関する去年の五月の
モスクワ会談の
経過と、今日なお
ソ連官辺が
主張しておりまする
経過とは根本的な食い違いがある。
左藤委員は
河野一郎氏は昨年の
経過はすべてを
井出農林大臣に話してあるから、
井出君から聞けばいいとおっしゃりまするけれ
ども、その点が今日完全に食い違っておるということが
実体である。昨日の
モスクワ放送によっても
ソ連側は、これは
モスクワ放送のことでありまするから、無責任なる民間の
意見ではなくて、
ソ連官辺筋の意向を代表する
放送局における対
日放送の中において、確かに八万トン、十万トンという話が去年の五月の
モスクワ交渉においてあった。さらにこのことは
約束である、こういうことを言っておるのであります。当時、去年の五月の、あるいは去年の押し迫ったあの
国会における
日ソ漁業協定に関するわれわれの質問の際にも、われわれがこの点を非常に重視いたしまして、果してこの八万トン、十万トンという
約束がどういう性質のものであるか、いろいろ
解明に努めたのでありまするが、その当時、
農林大臣河野君の御
説明によれば、これは一応のものであって、決して拘束的な力はない。しかもこれとさらに
ソ連側が
国内において
漁獲するいわゆる
国内の
漁獲高との
関連において、最終的に
両国間の
最大限度の
持続的制限を可能ならしめるような
漁獲高の
規制を行うのであって、決してこの八万トン、十万トンというものが、そういう何といいまするか、永続的と言いまするか、包括的一般的の
協定ではないということを繰り返し述べておられる。しかし
事態はどうもそうは言い切れない。こういう
事態が明らかになってきておるのであります。これははなはだ不幸なことでございまするが、そういうような
事態をどうしても
解明しなければ、
両国間のこの
交渉は決してうまくいかない。単なる
政治的折衝では解決できない。かような
段階になっておることは明瞭だと思うのであります。さらに当時は
河野農相の
説明によれば、今度の
漁業委員会が開催される前に、
日本の
調査団に
ソ連の領海における
漁獲の
状況等も十分に調べて、そうしてお互いに、いわゆる何といいまするか、
カードを見せ合って、テーブルの上に
カードを全部出して、そうして
科学的基礎に基いて
規制量をきめておる、こういうことをはっきり言っておられる。そういうことは今日行われておらないじゃありませんか。そういう
状況である。
さらに
オホーツク海の
出漁制限については、これは全くわれわれから見ると、寝耳に水であったということであります。昨年のいわゆる暫定的な取りきめには、はっきりとわれわれに対しては
オホーツク海における
出漁の
制限あるいは自制ということは
一つも示されておらない。それが今回
ソ連は八万トン、十万トンをかんべんしてやる
かわりに、実はもう
一ついわば
約束があったのだ、それは
オホーツク海におけるこの自発的という形における
漁獲の
制限問題と、こうなってくると、ますますもって昨年五月の
モスクワ漁業交渉の
全貌というものは、全くわからない。全く
秘密の
ベールに隠されておって、
実体を知っておるものは、遺憾ながら
ソ連当局と
河野一郎全権以外にないということになったのでございます。
従いまして私はそういう
理由でどうしても本
委員会に
河野君の御
出席を求めることが正しいのである。当初に申し上げましたように、
戦術とかあるいは
いやがらせとかいう問題では断じてない。この点をどうか
委員長並びに各
委員の方々が率直にお認めを願って、今やはなはだ遺憾であるけれ
ども、
参考人として御
出席を拒否されたということでありまするから、われわれとしてはやむなく、きわめて異例なことでありまするけれ
ども、
証人として
喚問する必要があると信ずるのであります。この点を十分に各
委員にお考えを願いたい。一々
左藤委員のおっしゃったことを反駁いたしませんけれ
ども、まず趣旨において
左藤君のいっておられることは筋が通らない。われわれはあくまで
参考人として自発的に来られることが正しい。もしこれを拒否されることははなはだ
日ソ国交の上において憂うべき状態を起すということを私は指摘申し上げたいのであります。
付随的な
理由といたしまして、しかしこれは非常に大きなことは、いやしくもこれだけの重要な審議をしようというのに、どうしても自発的にお出にならない。従って
委員会としては、
委員会の意向は
出席を求めているのであるから、
委員会の威信にかけてやむなく
証人として
喚問するという
段階になりました以上は、私はこの
委員会の威信にかけたこの問題が、
委員会内部の一種の対内的な考慮、自民党内部におけるいろいろ御
事情かもしれませんが、そういうような考慮からこの問題が曇りを、暗影を受けて、そうして
委員会として
意見が合わない、賛否両論になって、そうして
委員会の意思が暗影を受けて、威信が貫かれないというようなことになることは、はなはだ遺憾だと思うのであります。どうかそういう
意味におきまして、これは確かに
左藤委員も御指摘のように異例なことであって、われわれもあえて望むところではございませんけれ
ども、われわれの予算審議もいよいよ終末に近づこうというこの
段階において、きわめてわれわれの決定いかんが重大なる対内、対外の責任があるということを、どうぞ自民党の方々も、あるいは緑風会その他の各
委員におかれても、十分お考えの上に、十分なる後世の世論に対する責任をお考え下すって、どうか全員一致
河野君を
証人として
喚問するの
動議に御
賛成賜らんことを切にお願いいたしまして、私の
討論を終りたいと存じます。(
拍手)
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