運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-27 第26回国会 参議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十七日(水曜日)    午前十時三十五分開会   —————————————   委員異動 本日委員高橋進太郎君、野村吉三郎 君、小幡治和君、佐野廣君、土田國太 郎君、苫米地英俊君、松浦清一君及び 中田吉雄君辞任につき、その補欠とし て西田信一君、泉山三六君、石坂豊一 君、木村篤太郎君、新谷寅三郎君、館 哲二君、久保等君及び藤田進君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            小林 武治君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            中田 吉雄君            吉田 法晴君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            泉山 三六君            木村篤太郎君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            柴田  栄君            関根 久藏君            土田國太郎君            苫米地英俊君            仲原 善一君            西田 信一君            野本 品吉君            林田 正治君            前田佳都男君            武藤 常介君            内村 清次君            海野 三朗君            岡田 宗司君            久保  等君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            中村 正雄君            羽生 三七君            藤田  進君            山田 節男君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 神田  博君    農 林 大 臣 井出一太郎君    通商産業大臣  水田三喜男君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    労 働 大 臣 松浦周太郎君    国 務 大 臣 宇田 耕一君    国 務 大 臣 小滝  彬君    国 務 大 臣 田中伊三次君   政府委員    自治政務次官  加藤 精三君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁人事局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 北島 武雄君    経済企画庁調整    部長      小出 榮一君    経済企画庁計画    部長      大夾佐武郎君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    文部省社会教育    局長      福田  繁君    農林大臣官房長 永野 正二君    通商産業大臣官    房長      松尾 金藏君    通商産業省公益    事業局長    岩武 照彦君    運輸省鉄道監督   局国有鉄道部長  細田 吉藏君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道副    総裁      小倉 俊夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○分科会設置の件 ○昭和三十二年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を開きます。  委員異動について申し上げます。  三月二十六日、木村篤太郎君、石坂豊一君、泉山三六君及び松浦清一君が辞任されまして、その補欠として佐野廣君、小幡治和君、成田一郎君及び久保等君がそれぞれ指名されました。  また本日、小幡治和君及び佐野廣君が辞任され、その補欠として石坂豊一君及び木村篤太郎君がそれぞれ指名されました。   —————————————
  3. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより昭和三十二年度一般会計予算外二件を議題といたしまして、質疑を続行いたします。
  4. 小林孝平

    小林孝平君 日ソ漁業問題に関連いたしまして、河野一郎氏の参考人として当委員会出席されることを委員長に要求しておったのでございますが、委員長は非常に努力されたにもかかわらず、今日に至るまで出席はないのであります。そこで昨日、特に重ねてお願いしておきましたように、オホーツク海の出漁制限の問題に関連いたしまして、非常に重大な段階に参りましたので、私たちといたしましては、どうしても御本人から、出席していただきまして、その間の事情を明らかにしていただきたいと考えます。そこでさらに委員長から御努力を願うことにいたしまして、その努力にもかかわらず、明日の午前十時までに河野一郎氏より出席の御通告がない場合は、私たちは明日の委員会開会劈頭河野一郎氏を証人として喚問するの動議を提出いたしますから、委員長においてはこれを御承知の上、できるだけ参考人として出席されるよう手配されんことを願います。(「了承」と呼ぶ者あり)
  5. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 承わりました。きょう正午理事会を開くことになっておりますから、その理事会に諮りまして善処いたします。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは外交、防衛農林関係等についてお尋ねをしたいのでありますが、最初農林関係について少しお尋ねをして、それから他の問題に進みたいと思います。  御承知のように、政府経済自立五カ年計画を策定して、食糧増産計画を五カ年間に千百十二万石の増産目標として立ててきておるわけでありますが、その後新農村建設計画を樹立して、つかみ金的な補助金制度をとっておるわけでありますけれども、必ずしもこの前の五カ年計画と今の新農村建設計画が全く相反したものとは考えませんが、しかし私どもが考えてみて、どうも政府日本農業基本政策が首尾一貫していないと考えるのでありますが、一体、政府日本農業に対する基本政策は、従来の、長年立ててきた食糧増産計画を樹立しつつあるのか、その点農林大臣にお伺いいたしたいと思います。
  7. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 食糧自給度をできるだけ向上させよう、この基本的な考え方には少しも変るところがございません。その意味において五カ年計画を策定いたしまして、あるいは土地改良の問題でございますとか、耕種改善の方法でありますとか、こういう事柄によって目的を達成したいと考えております。  で、新農山漁村建設計画は、適地適作ということを申しておりますが、これはやはり食糧自給度総合性という観点から考えまするときに、歯車は自立五カ年計画とかみ合っておるわけでございまして、両々相待って増産効果を発揮したい、このように考える次第であります。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 まあ御説明はそういうことになると思いますが、しかし農林関係予算の変遷を少し調べてみますと、昭和二十六年が八百三十八億、二十七年が千四百億、三十八年が千七百億、二十九年が千百億、三十年が九百六十億、三十一年が八百七十七億、そして三十二年度が若干ふえまして八百九十四億、こうなってきて、一番多い昭和二十八年の千七百億に比べますというと、約七、八百億の農林予算は減になっております。もっとも食糧補給金のあった当時、多分二百七、八十億かと思いましたが、二百七、八十億の食糧補給金がありましたから、必ずしも予算の絶対額を論議しても意味のないことでありますが、それにしてもとにかく数百億減ってきておる。このことは政府のいろいろな御説明にもかかわらず、実際には農林予算は毎年減っていくんだ、本年においては土地改良費が若干増額になっております。これはけっこうであります。そのほか寒冷地対策、それから寒冷地機械化振興等数億を計上してありますが、これも私一つの傾向と思って大いに賛意を表しております。これはわれわれ社会党としても指向しておった点で、予算は少しだがふえておる、けっこうでありますが、それにしても予算の全体のワクは、これがあまりにも毎年だんだん減り過ぎていく。これで、井出農林大臣が参議院の農林委員会説明された、わが日本農業の転機に立って他の産業均衡のとれた農業政策を実行していきたいという御説に沿い得るのかどうか、農相の御見解を承わりたいと思います。
  9. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 農林予算が年々漸減をしておる、これでは農政は後退するのではないか、こういう御指摘でございます。この点は、羽生委員も従来の数字をただいまおあげになりましたが、おっしゃいますように過去のピークでありました昭和二十八年あたりには、食糧補給金でありますとか、あるいは災害関係費用というものが相当見込まれておったのでありまして、ネットの農林関係費用というものも比較いたしてみますると、これは必ずしも従来と非常に見劣りがするという数字ではなかろうと思うのであります。しかし、まあそこには貨幣価値問題等も織り込まれておるでありましょうし、私も決してこれで満足をいたしておるわけではございませんが、この限られた予算を重点的に使う、効率的に運用する、こういうことで所期の目的を達成いたしたい、このように考えております。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 私はいささか抽象的なことを申し上げますが、先日この委員会豊田委員から、農林関係予算に比べて商工関係予算が少いというお話がありましたが、それは私、商工関係予算が少いことは認めますが、しかしまあ農林関係予算がそれほど多いかというと、私は一つ日本農業には非常な問題があると思う。これは私質問農林大臣ですが、総理にもここでお聞き取りを願いたいと思う。  というのは、私よくこの委員会で申し上げたことがありますが、外国、特にアメリカやオーストラリアやカナダのように五十町歩、百町歩農業、あるいはデンマークのような二十町歩農業、あるいは少くともフランスあるいはドイツのように七、八町歩農業などに比べまして、日本はわずかに七、八反歩農業です。この耕地はふえる可能性は全然ないのです。むしろ耕地は減りつつある。耕地の詳細な資料は今持っておりますが、時間の関係もありますので省略いたしますが、耕地面積に比べて、ここ近々七、八年間に数十万町歩耕地は減少しておる。それじゃ農業生産性が高まるかというと、他産業に比べて農業生産性が高まる可能性は非常に少い。また同時に農産物価格が幾らでも収入の増大を来たすことができるかというと、農産物価格一定の、特に主食には一定限界がありますから、これは無制限に上っていかない。そうすると、耕地面積はふえる可能性がない、むしろ減る。生産性増強ができるかというと、どうもこれはほとんど可能性がない。それから農産物価格についてはこれも無限に増大していく可能性は全然ない。かりに他の産業やあるいは中小企業なら、店舗を拡大するとかあるいは投資を増大すれば、それに相応して規模が大きくなっていくとか、そういうことができる。それじゃ農地が拡大できるかというと、今申し上げた通りできないし、生産性向上もまた同様でできない。そうするとある一定程度国家助成というものが必要だ。ところが国家助成の結果、非常にスキャンダルを起す。効率的でない、非常に非効率的な補助金の使用が見られる。こういう問題を徹底的に追及しなければなりません。それにもかかわらず、ある一定程度保護助成日本農業では続けない限り、他産業均衡のとれた農業というものは維持できないのですよ。たとえば経済企画庁説明でも、農林水産生産の三十二年度の見通しは、三十一年度とほぼ同様なんです。ところが鉱工業生産は前年度対比一二・五%の増を見込んでおる。農林はほとんど同様であります。これは農業における生産性というものの向上はほとんどこれではきめ手がないということであります。そういうことを考えてみますと、私はある程度国家保護助成なくしては、日本農業は他産業均衡のとれた発展はできない。しかもこれは日本の全人口の中における、非常に大きな人口上においてもウエートを占めておる。だから私はこの予算を見て、毎年こんなに減っていくのは不満で、やはりある程度のこの限界をもって日本農業に対しては保護助成政策を続けるべきであると考えますが、これは農林大臣と、できればここで、きょうは外務大臣の資格でおいで願った総理に伺うのも何でありますが、総理にも一言承わりたいのであります。
  11. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 御指摘の点は、私も大体さように考えておるわけでありまして、近次耕地漸減をする、農家の戸数は逆にふえる。それがために経営単位面積も減りつつありまするし、あるいは一方兼業農家というものは相当な勢いでふえて参っておる現状であります。これは農家の持っております一つ停滞性と申しましょうか、自然を相手の、店舗を自由自在に変えるということができないというところにまあ一つの拘束があるわけでございまして、それゆえに、これは単なる経済政策的な扱い方だけでは、日本農業の場合には農村対策としては不完全である、こういうまあ考え方のもとに、やはり相当な保護助成政策、こういうものが必要であるという点については同感でございます。  しからば本年度予算は少いではないかというところへ議論が発展するでございましょうが、先ほどお答えもいたしました通り、この予算をいかにして一つ効率的に使って、その目標に達せしめるか、こういう点に配慮いたしておるわけでございます。
  12. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 農業と他の産業との関係を見まするというと、今、羽生委員の御指摘のように、農業には農業特殊性があり、ことに日本農業には私はいろいろな特別な意義があると思うのであります。従いまして、これに対する対策につきましても、やはりこの農業特殊性十分頭に置いて考えなければならぬ。一面耕地が非常に限られておる。しかし同時に干拓やあるいは開墾の余地あるものについては、やはり農地の造成を考えていくことも必要でありましょうし、また経営そのものの実態にも入っていろいろの施策をしていかなければならぬ。ただ、今も御指摘ありましたが、保護助成を加え、これに対して国が特別の保護を加えていかなければならないということは、私も同感であります。ただ、その保護施策については、よほどこれは検討を要する点があるのじゃないか。ただ、いたずらに補助金、いろいろな各種のものに対する補助金を増すというようなことが、必ずしも効率的に従来効果を上げておらないというようなことも頭に置いて、この予算の編成に当りましても、重点的な考え方に特に力を入れていかなければならぬと思いますが、いずれにしても、十分農業特殊性日本農業特殊性というものを頭に置いて、国としてはこれに対して適当な助成をしていかなければならぬ、保護助成をしていかなければならないというお説に対しましては、私も同感でございます。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど農林大臣から先回りをしてお答えがありましたが、とにかくそういう立場をとりながらも、実際においては予算は減っていってしまい、本年度においては総額で十七億前年度に比べて増加しておりますが、予算ワクの中における農林予算との比較で見ると、三十一年度のそれが八・五%であるのに、三十二年度七・八%で、逆に農林予算は低下している。しかも政府積極政策をとったといわれておりますのに、日本人口の中で非常に大きな部分を占める農林関係については、もとより、もちろん減税の恩典に浴するものはほとんどない。のみならず、予算面においても逆に前年度よりこれだけ低下している。それでは将来、食管赤字問題にも私若干触れたいと思いますが、食管赤字をなくしていくのには、生産者米価を下げるか、消費者米価を上げるかというようなことを政府考えておられるかと思いますが、生産者米価を下げる下げないは別として、生産コストを切り下げるためには、生産性増強をしなければならぬ、それではそういうことに何らかの投資なり考慮が払われているかというと、本年度予算では若干のことは、非常に少額で触れられておりますが、見るべき施策というものは全然ない。そこで将来、それでは農産物価格支持政策、プライス・サポートを続けられるかというと、ぜひやっていただかなければならぬ部面もありますが、ある程度保護助成は必要でありますか、当然ではあるのでありますが、しかし、無制限価格支持政策ができるかというと、これはなかなかできない。それなら生産コストを切り下げるために、農業の積極的な生産増強というよりむしろ、生産性向上をやらなければならないが、政府には何ら見るべき施策はない。それをやらなければ、消費者米価がどうとか、生産者米価がどうとかいう、これはむしろ私は枝葉末節の問題で、国際農業競争に対応できるような、そういう生産コスト日本農産物が作られるのには、どういう施策をしなければならぬか、そのために数千万か一億程度のわずかな金をあっちこっちばらばらばらまけばいいなんということは、私は毛頭考えておりません。いわゆる重点的な施策をやらなければならぬ。しかも一貫して、長期計画を持って、自民党の内閣あと社会党内閣ができても、社会党が踏襲するというような、一貫した長期計画が必要であろうと思う。そういうものが何もない。だから日本農業についてはむしろ出たとこ勝負で、行き当りばったりで、予算は毎年減っていく、これでは私どうにもならぬと思いますのでお尋ねをするのですが、この日本農業生産性増強に対して何らか積極的な施策農林大臣はお持ちかどうか、この点を一つお伺いいたしたい。
  14. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 日本農業生産性向上の問題は、一つにはやはり土地条件の整備という方向においてこれを考えるべきではないか、こういう観点から、本年は特定土地改良特別会計というふうな試みをいたしまして、従来よりも土地改良効果が早目に、またその資金量も大きくなるというふうなことから、生産性向上が期待できる、こういう考え方もございます。また昨年から発足いたしました農林水産技術会議、この機能を十分に発揮をいたしまして、試験研究の成果、これが実践普及に至りまするパイプを適切につなぐことによりまして、こういう面からの配慮も一段と前進が期待できるのではないかというような考え方のもとに、国際農業に対する競争力を増すというような方向考えておるような次第でございます。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 そういうお話にもかかわらず、三十二年度予算において、土地改良費で約三十二億円の増、新農村建設助成関係で十五億、寒冷地農業振興対策事業費で二億四千万、農林水産技術会議の経費で一億五千万等々、この程度のもので、前年度に対して積極的に見るべきものがない。それで私は、質問ではない、注文をしておきますが、なかなか農林部面は他産業みたいに簡単にいきません。きめ手というものはなかなかない。それはよくわかりますが、しかし、積極的にこの農業生産性増強考えられないと、私は矛盾を永久に繰り返すことになると思いますので、これは積極的な政策をお考え願いたい。われわれとしても若干の試案は持っておりますが、こんなことをここで言う必要はありませんから申し上げませんけれども、ぜひお考えおき願いたいと思います。  それから食管赤字の問題でありますが、先日来、衆議院予算委員会で、食管赤字については一般会計から補てんする。不足分については一般会計から補てんをするというお話は、大蔵大臣農林大臣からそれぞれあったようでありますが、消費者米価の値上げはやらないという保障はどこにもなかった。そこで、すべては食管特別調査会結論待ちということになっているのですが、結論によっては消費者米価を上げることもあるわけでありますか。結論によっては米価を上げることもあるのかどうか、結論のいかんにかかわらず、政府としては本年度消費者米価を上げないというお考えなのか、その辺はいかがでありますか。
  16. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) この問題はすでにお答えもいたしましたが、ただいま臨時食糧管理調査会が開かれておるさなかでございまして、この結論を待ちまして、これを十分に尊重してやって参りたい、こういう考え方でございます。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 これは私は政府として、行政の府として、自分たちとしては食管赤字の出てきた原因はどこにあるか、これを的確につかみ、これを解消するにはかくかくの処置が必要だという結論政府自身が持って、しかし、さらにそれを確かめ、自分考えをコンクリートにするために調査会結論を待つというなら、これはわかりますが、全然白紙で、すべて調査会結論待ちというようなことでは、私は責任ある政府としての努めは果されないと思うのであります。立場はよくわかりますよ、政府立場はよくわかるが、すべては白紙結論待ちというようなことで、しかも、私は時間を食いたくありませんからあまり多く言いたくありませんが、昨年の二月の当予算委員会で私の質問に答えて河野農林大臣は、速記録にちゃんと載っておりますが、当時のインベントリーを百億とりくずして、六十八億でしたか、一般会計から補てんするときに、明年度からは絶対に赤字を出しませんと、しかしそんなことを言っても間違いはないか、出やしないか、赤字が。いや、いかなることがあっても絶対出ませんということが、速記録にちゃんと載っております。一年たちませんよ。それが百六十一億出てきております。これは内閣が変った、大臣が変ったといえばそれまででありますが、公式の予算委員会の席上で絶対責任を持って明年度赤字を出しませんと言われましたにもかかわらず、一年たたぬうちにこういう膨大な赤字が出る。しかも赤字が出たあとで、政府としてはすべてそれは特別調査会結論待ちだということでは、責任政治というものは確立できない。政府はこういう考え方を持っておるが、しかしなお足りないところがあるかもしれないから、専門家諸君の意見を聞くために調査会結論待ちということはうなずけますが、これではあまり無責任とお考えになりませんか、いかがでございますか。
  18. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあ既往の赤字が出ましたことはまことに遺憾でございますが、この処理につきましては、これはすでにお答えをいたしてございます。それで昭和三十二年度の問題でありますが、今御指摘に相なりましたように、一年たたずしてこのていたらくは何事であるかということでございますが、まあそういう現象が起りますることに、やはり食糧管理特別会計のあり方をこの際真剣に考えなければならない、こういう段階でございまして、政府は今もろもろの資料をとりそろえまして、調査会と相ともに問題の解決をはかりたい、こういうことで進めております。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 農林問題については他にお尋ねしたいことがたくさんありますが、もし分科会もあればそのときといたしまして、この程度にいたします。  次に外務大臣お尋ねをいたしますが、昨日外務大臣記者団との会見で、いろいろ見解を披瀝されたようでありますが、また同時にイギリスからも日本水爆実験中止要請に関する回答もあったようでありますので、この問題に関連して最初少しお尋ねをして、他の問題に移りたいと思います。  イギリス水爆実験禁止に関するわが方の要求に対して回答があったわけでありますが、これについては政府記者団との会見で、重ねて中止方を要請する意思はないと、まああげて特使にまかせるということだと思いますが、私はもっと積極的に、やはり国連の場を通じて、むしろ日本外交の積極性を、従来は全部追随だとは言いませんが、この積極性を生かして、ほんとうにこの問題と取り組むべきだと思うし、そのために何らかもっと具体的なことを考えなければ、すべて特使まかせというようなことではいけないと思うし、それからもう一つは、イギリスの回答の中に、あのクリスマス島周辺の海水域をわが方の従来の伝統的な漁場とは認めがたいという、非常な私は注目すべき発言をしていると思いますが、これは黙って黙過されるのか。少くとも水爆実験とは間接の関連ではありますが、これを黙認することは、非常に私は将来日本にとって大きな障害になると思いますが、これに対する外務大臣のお考えを承わりたいと思います。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 水爆実験禁止の問題は、御意見のように私はしばしば私の所信を明らかにいたしておりますが、あらゆる機会にあらわる合理的方法をもってこれが実現をはかって参りたいと思います。ただ昨日記者団との会見で申しましたことは、イギリスに対してさらに回答に対する第四回目の抗議を出すかという質問に対しましては、これに対しては、松下特使を送っているから、松下特使をして自分の、日本政府考えを十分に一つ述べて、イギリス政府の反省を求めるという方法をとりたい。もちろん、国際連合や、その他あらゆる方法でこれをやることはもちろん必要でございまして、特に今回は、過般の参議院における決議を国連を通じて各加盟国の国々に事務総長からこれを、日本の意思を通じてもらうような措置もとっております。これは今後十分にあらゆる方法を通じて積極的にやる考えでおります。  なおイギリスの回答のうちにおきまして、今検討をいたしておりますが、私どもは、その回答をすべて承認した意味ではございません。従ってクリスマス島付近を日本の伝統の漁場とは認めないという一項につきましても、十分今これに対する当方の具体的の意見を言ってやるに必要な資料その他を検討いたしております。もちろんそういう点につきましては、イギリスに対しましても、十分わが方の権益を将来に向って主張するということはいたすつもりでおりますが、ただ、原水爆実験禁止に対するイギリスの回答に対して、さらに折り返してやるかという問題に関しては、松下特使をして日本政府の意見を十分にイギリス政府に伝えるという方法によってその反響を見たいというのが、私の考えでございます。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 この問題についてはさらに重ねて要請を続けるかどうか、私要請をすべきだと思いますが、それはまあ多くを言わないとして、私は国連という場で日本がこの米英ソ等を初め、新らしい核兵器の実験を志向している国々に対して、積極的にこの外交を展開していくべき立場日本はあるし、非常にそれはいい立場と言っちゃ語弊がありますが、積極外交を展開する一つの契機でもあると思うので、その意味とともに、わが日本国民のこの要求をさらに強く貫く意味で十分なる検討を願っておきます。  それから昨日の記者団との会見の際に、総理は渡米前に日ソ通商航海条約が締結されることはないと言っているのでありますが、これはまさかそんなことはないと思いますけれども、アメリカと日本が打ち合せをしなければできないという意味ですか。そんなばかなことはないと思いますが、これを明確にしておいていただきたい。
  22. 曾禰益

    ○曾祢益君 関連質問……。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 今の答弁をいただいて  おいてから……。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その問題は、きのうの記者会見の意味は、こういう意味であります。ソ連側から通商協定を結ぼうという何らかの申し出があったかという話、また漁業交渉と関連してそれが提案されているというふうなことも伝えられているがどうか、全然そういう事実はない。もちろん自分はソ連との間の通商協定というものについては非常な関心を持っておって、日本でもこれができ上ることが望ましい。ただ具体的に通商協定がどうとか、あるいは今日まで話されているように、日本との何がうまくいけば十億ルーブルできるのだというようなばく然たる何では通商協定はできない。もちろんこれに対しては具体的に検討してみなければならないいろんな問題がある。日本産業との関係もあるし、ココムとの関係もあるだろうし、あるいは支払いの問題もあるし、いろんな問題があるから、なかなか提案されても相当な時日が従来の例からみてもかかるものである。いまだそういう提案が全然ない状態から言うというと、自分が国会が済んだ後において適当な機会に渡米したいと考えているが、その前に締結されるというような事態にはならぬと思うので、もちろんこの問題についてアメリカと相談しなければならぬというような意味を私は頭に置いて言うたのではない。事実上、そういう時間的にまだこの提案もないし、具体的内容も全然検討もされておらない。何か突如として一、二カ月の間にできるということはとうてい考えられないという意味で申したのであります。
  25. 曾禰益

    ○曾祢益君 途中で質問して恐縮ですが、外務大臣羽生委員に対する御答弁並びに昨日の記者会見における水爆の問題について、松下特使をやるのであるから、イギリスの第三回ですか、今回の回答に対する日本政府の再抗議といいますか、再申し入れについては、まだ考えておらない、あるいは今後考えると言うかもしれない。私はこの御発言というか、この態度は、非常に私は不幸なことであると思う。何となれば、もとよりわれわれも、松下特使がこれはもちろん政府の代表の資格で行かれるのでしょうし、従ってイギリス政府とも十分な話し合いの機会を与えられておると思いますけれども、しかし何といいましても、むしろ国民的使節といいますか、あるいは人道問題であるから、特に宗教家の立場を十分に代表されるような方として松下さんが選ばれたと思う。従って、ただ単なる外交的な、オーソドックスな外交的な使いではない。むしろ国民的な、あるいは世界の良心をゆり動かすような立場の人をお選びになった。従って松下特使の非常な重大な使命については、われわれもその御健闘を祈るのにやぶさかではございません。しかしこれと別に、やはり普通の外交チャネルを通じての日本政府の申し入れに対するイギリスの今回の回答については、私は根本的にこれは、抗議といいますか反駁といいますか、当然に御検討の上、しかし機を移さずに、普通のチャネルを通して、はっきりとした政府及び国民の意思を明らかにしていく必要があると思う。これは羽生君も指摘された通り、これはこれとして、そのつど、そのつど折り返し繰り返し日本の主張を述べなければいけない。このことをあえて否定されるという意味ではないと思いますけれども、何となく、まあ三回もいっての回答であるから、もう今度は少くとも一回二回ぐらいの爆発はやむを得ないだろうというような感じを与えることは、これこそ重大です。従って今度の回答の内容が、主として補償の責任限界という方に展開をされておる。これについても今羽生委員指摘されたような重大な日本の漁業の利益を認めないぞと言わんばかりの点もございましょう。これも重大な点でありますけれども、もっと根本的な問題としては、イギリスの今回の回答の中に、依然として、まあソ連側が実験をやっている以上は、自由世界防衛のために実験をやるのは当り前だという向うの基本観念がふっと出ている。私はこの問題こそ、さらにたとえばバミューダ会談における共同コミュニケ等の新しい事実もとらえて、実験禁止についての日本の主張を折り返しさらに強くやっていくのが、これが順序でなければならない。こう思いますので、私は少くとも、昨日の記者会見及び今の羽生委員に対する御答弁だけから生まれるインプレッションは、ややイギリスの抗議のために腰折れをしている感を与えたならば、これは非常にまずいと思うので、やはりイギリスの回答に対する、時を移さない、慎重に御検討になると思いますけれども、これはこれですぐに打ち返して、さらにチャネルを通じての、堂々たると言っては語弊があるかもしれませんが、論駁は、むしろ文書をもってはっきりとした点を直ちに出していただきたいと思います。この点についての外務大臣のお考えをもう一ぺん伺いたいと思います。
  26. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 曾祢君のお考えの基礎であり、また羽生委員の御質問の趣旨であるその実験禁止に対する日本側の強い要望、またはこれに対する根強い実現に向っての努力というものは、私はこれはぜひとも続けて行かなければならぬ問題と思います。イギリスの第三回目の回答に対する取扱いについての曾祢君の御意見は、私は御意見として十分拝聴いたしておきまして、検討いたして処置したいと思います。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題に移る前に、今のことに関連してもう一応、これは質問ではない、意見を述べておりますが、今曾祢君も触れられましたように、昨日の官房長官の談話がある新聞にちょっと出ていましたが、イギリスの回答は日本にはよく気を配ったもので、自由世界の防衛ということもうたわれているというようなことを言われておりましたが、そういう考え方でこの問題を扱うことは断じていけないと思います。自由世界の防衛であろうと、共産世界の防衛であろうと、そのことによって水爆実験の可否が多少でも評価されるということは非常な誤りだということを、私は特に強調しておいて、次の問題に移ります。
  28. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して。岸総理は実験禁止については非常に御熱意を持っているということはよくわかるのですけれども、その根底には、製造及び使用の禁止についてやはり同じような信念をお持ちなのかどうなのか。私は、ただ製造あるいは使用の禁止ということを度外視して実験禁止だけという訴えは、非常に弱いと思います。今回のイギリスのあの回答書にもやはりその根本に触れる問題があると思いますので、製造及び使用禁止について総理のお考えをこの際明確にしていただきたいと思います。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の考えは、原子力が破壊兵器として作られ用いられるということは、人類のためにこれを禁止しなければいかぬという考えから来ておるわけであります。従って原子力が兵器として、破壊兵器として製造され、使用されるということを禁止する前提として、その実験に対しては反対をし、これを中止せしめようとしておるものであります。
  30. 湯山勇

    ○湯山勇君 それも御提唱になる用意があるわけでありますか。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろんそれをやらなければなりませんが、まず今の問題としては、現実の問題としては、実験をしておるというこの事態から禁止して行かなければならないと思います。製造使用を禁止するという前提として、われわれはあくまでも実験禁止に反対いたしておる。私は、使用、製造等の問題につきましても同様な観点考えを持っているわけであります。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 次に防衛関係のことからお伺いして行きたいと思いますが、昭和三十二年度においては防衛庁の費用の千十億、それから防衛支出金四百一億等、そのほか国庫債務負担行為あるいは継続費等で相当多額に上っておりますが、この内容については、私、今日は一々検討いたしません。また社会党としては、航空機は何機にすべきだとか、自衛隊は何万程度とか、船は幾らにすべきだという議論をするのは適当でありませんから、私の質問は勢い非常に抽象的なものになると思いますけれども、その点をお許しいただきたいと思います。最初に、小滝長官はしばしば、各種の委員会で、自衛のための最小限の戦力はやむを得ない——戦力という言葉でありませんが、防衛力はやむを得ないと言われますが、現行憲法内における自衛軍の限界というものはどこにあるのでありますか。最小限ということはどういうことで限度をきめられるのですか。非常に抽象的な質問ですが、まずこの点から伺っていきたいと思います。
  33. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) これは、裏から申しまするならば、私は防衛力はあくまで必要最小限度の自衛の目的を達成するものであるべきであって、従って、他国に脅威を与えるような、また換言すれば攻撃的侵略的なものと解せられるような程度のもの、あるいはそういう種類のものは持たない。あくまで第一次的な自衛力を構成する限度のものにとどめる、そうすれば、それは憲法の規定にも反するものではない、こういう考え方で進んでおります。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 これは実はお尋ねするのがやぼなようなことで、質問も抽象的になり、お答えも抽象的になるのはやむを得ませんが、しかしこの自衛のためということでいけば、これは無限に拡大できるのです。他国に脅威にならぬといいますけれども、今のような兵器の発達の時代は、脅威の限界だってなかなか不明確だ。ですから、こういうことでいきますと、日本は、憲法があってもなくても、今の現行憲法のままで、もうどこまでも戦力を拡大していくという議論が成り立ってきます。自衛の限界というものはもうないのですから、今の御答弁でわかりますように。そうすると私は、だから憲法改正したら再軍備をさらに進めていいかということを言っておるわけじゃない、憲法が守られないようなこういう政治態勢をずっと続けていくことに対する不信から、私は申し上げておるのでありますが、そういう点から、今の御議論によると、限界というものはない、無限の拡大になっていくじゃありませんか。それを規制するものは予算上財政上の規制だけだ、こういう議論にはならないのでありますか。
  35. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) 私は羽生君のような考えには賛成できないのであります。と申しまするのは、なるほどきちんとした限界数字的に設けるというようなことはむずかしいかもしれませんが、日本といたしましては、国連の集団安全保障機構、またそれが十分でなければ、現在の段階においては日米間の共同防衛というものをもって大規模な侵略に対抗しなければならぬ、こういう立場をとっておるものでありまするからして、従って日本の自主的な防衛というものには自然限度を持ち得るというように考えまするので、例を申しますれば、たとえば戦略空軍のようなものを持たない、具体的にもそういう例をあげて申し上げることができまするので、私は現在の憲法下において一定の限度のもとにおける自衛力を持つという考えで進むつもりでございます。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 昔はこの戦力を規定する尺度があったのです。例えば空軍何千機、それから海軍では何十万トンとか何百万トン、地上では何個師団、これはもう戦力を規定する尺度でありました。ところが今でも、自衛隊は十六万とか、あるいは今度の予算の中に盛られておる空軍関係の人員増とか、いろいろありますが、しかしもう兵器がこのように無限に発達してくると、日本の地上部隊で十何万であるとか何が幾らであるというようなことは、もう戦力を規定する尺度にほとんどならなくなってきている、それじゃ何を尺度としてものを今後——たとえば今戦略空軍を持たないというお話がありましたが、実際上それじゃ、外敵があるかないか知りませんが、防御するに足る日本の自衛力というものはこの程度ならというものは、一体どういうもので、何を尺度でおきめになりますか。またどういう程度のものでありますか。
  37. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) 指摘のように、数的な限度がこれだけということは、新しい近代的な兵器の発達などに伴いましてはっきりときめにくい点があるかもしれません。しかし、さっきから申し上げますような立場から考えまするならば、そこには限度があり、今申しました最小限度と申しますか、敵の上陸を一応押え得る力、また友好国ないし集団安全保障の機構を活用することによって日本に対して救援が来るまでにおける、たとえば空軍の侵入を困難ならしむるような措置という点を考え、かつまた、こうした新兵器の研究をいたしまして、それに対応する力を持つという考えで進みまするならば、その点には当然限度を持ち得るものと私は確信いたしておるものであります。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 この兵器の発達に応じて、自衛隊に、構成上の変化、構造上の変化が起ると思うのです。そうすると、前の池田・ロバートソン会談当時のアメリカの要求がそのまま生きておるのか、それとも新たに新しい要求がアメリカからあるのか、日本防衛庁として、特に長官として、この新兵器の発達に即応する自衛隊の構造上の変化をどのようにお考えになっておるか。ただ今までのように、地上部隊はどんどんふやしていく、飛行機を毎年十機か何十機ずつふやしていく、そういう形のものか。それとも何か重点を置いて構造上に新兵器に対応する変化をもたらされようとするのか、その辺を少し親切に具体的に承わりたい。あまりに日本の自衛隊の問題はばく然として語られ過ぎておる。具体的に一つ承わりたい。
  39. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) かつて防衛庁限りに持っておりましたいわゆる防衛六カ年計画というものは、絶対不変のものであるというようには考えておらないのでありまして、私ども現にそうした素案のあることは知っておりますし、それも貴重な材料ではありますが、その後における情勢の変化、また国内における現実の自衛力の増強というところをよく勘定いたしまして、これを今後国防会議にでもかけまする際には、そうした新しい要素をもその中に付け加えて考えたものをお諮りしたいという気持を持っておるのであります。もちろん新しい近代的な武器の発達に対応いたしましては、先ほども申しましたように、それに対する研究もしなければならぬ、また事実従来よりもより軍隊に機動性を持たせなければならない。また機械化の程度というものもさらに重視しなければならない。換言すれば、質的な増強ということも非常に重要な問題でありまするので、そうした点もよく考え、従いましてそれに対応する編成あるいは装備品の変化ということもあり得るのでありまして、こういう点を十分あわせ考えて、私は今の実情に応ずるところの計画を立てたいと思っておるのでありまして、これまでありました試案が必らずしもそのまま今後実施せらるべきものであるというようには考えておりません。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 私は必らず自衛隊の構造上の変化が起ってくると思うのです。そこで、こういう問題はどうでしょうか。外国軍隊の撤退ということが強く要望されて、それには、あとからもまたお尋ねで触れることでありますが、岸総理外務大臣は、それには一応の段階が要る、予備的段階が要るということを外人記者団に語っている。これはあとお尋ねいたします。そこで外国軍隊の撤退というようなことは、日本軍の増強に応じて米地上部隊だけの撤退というように常識的に考えられておる。だから日本防衛力が増強してアメリカといろいろ話し合いをする一応の予備的段階ができると考えるのは、日本の地上部隊だけを指して、それが一応の段階にきたときには外国部隊の撤退ということを言っているのか、そうでなしに、日本もアメリカと同様に、空軍あるいは海軍あるいはその他の地上における機動部隊というものを相当強化して、アメリカの空軍も海軍も機動部隊も全部撤退してもらうことを含めて外国軍隊の撤退と言われておるのか、この点非常に不明確です。そこで防衛庁として今すぐ外国軍隊が撤退するとは考えていないでしょうが、少くとも指向する方向としては、アメリカ地上部隊だけは撤退してもらって、あとの機動部隊が日本におるのはやむを得ないと言われるのか。それらもすべて含めて、日本が独自の自衛力と言いますか、戦力を持つということを考えておられるのか。それをやりたいが、それを制約するものは予算上財政上の措置だけだということなのか。その辺はどうなのでありますか。もう少し明確にしていただきたいと思います。
  41. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) 理想を申しまするならば、また国力が許すならば、少くとも平時において外国の軍隊が日本に駐留することのないように、陸海空均衡のとれた自衛力を持つということは望ましいことであります。しかしながら、現実の問題として考えますときには、陸上の部隊の方が海空のように金の非常にかかる自衛隊よりもより早く充実に近ずきつつあるので、これまでのところ陸上部隊の撤退ということが考えられておったのは御指摘通りでございます。今後それじゃどうなるかということにつきましては、われわれの方で、海空の方もさらに充実すれば、向うの海空の部隊が漸次撤退するということは私どもも期待しておるところでありまして、そういうようになりたいものでありますが、しかしこれは国際情勢等にもよりますので、日本で一部隊がえふたからそれだけ向うが一部隊減らすというような、算術的に比例するというやり方もできないわけであります。いろいろな点も一緒に考えまして、逐次駐留軍の撤退するように、私どもは最低限度の自衛力を増強する、こういう方針で進みたいと考えております。
  42. 海野三朗

    ○海野三朗君 ちょっと関連して。過日、岸総理大臣は、この防衛力について質問がありました際に、それはソビエトに聞いてみればいいのだということをちらっと言われましたが、この防衛力というのはどの程度まで持っていこうというお考えを持っておるのであるか、これにはおのずから限度があると私は思う。防衛力と言っても、ソビエトと対抗するところの軍備を作るのか、防衛力を作るのであるか、どの辺を目標にしていらっしゃるのか。どの程度防衛をやらんがために必要であると言われるのであるか。まず岸総理大臣に私はそのことをお尋ねいたしたい。その防衛力にも限度があると思うのでありまして、どこを目当てとしておるのか、どれくらいの防衛力を持たんとするのであるか、そういう点を私はお伺いしたい。
  43. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ちょっと海野さんの御質問の前段にありました私がなにかこの前発言したということは、全然記憶のない問題でありますが、その点は別にいたしまして、私自身の防衛力の限度というものに対する考え方について申し上げます。私どもは、もちろん日本の自衛という問題を考える場合に、先ほど来から質疑応答されておるように、これは限度があると思います。しかしその限度を数字的にあるいは何か尺度でもって示すということは、非常にむずかしい問題です。結局あくまでわれわれのこの防衛力というものは自衛の限度でありまして、自衛ということはどういうことかと言えば、われわれが他から急迫な不正な侵害を受ける、その場合に、われわれの国土を守り、一応国民がそういう侵略に対して守られておるという安全感をとにかく感ずる限度のものを持っておらないといかぬという点が私は基礎であると思う。もちろん、かつてわれわれが軍国時代のときのように、仮想敵国を持っておって、その敵国に対抗するような軍備もしくは戦力を持とうというようなことは毛頭考えておるわけじゃないのであります。従いまして、究極の日本の安全保障というものは、決して日本の力だけで、独力だけでできるものじゃない。究極は、この今日のところにおいては、日米共同防衛のなにによって安全保障が成り立ち、さらにわれわれは国連に加盟して、国連の集団安全保障によってわれわれ民族の安全ということを保障していくという考え方に立っております。ただわれわれが今日現行憲法のもとにおいて持とうという自衛力の限度というものは、決して、他に脅威を与えるとか、あるいは他に対して攻撃的ななにを持とうとかいうことではなくて、われわれ自身が急迫な侵略を受けた場合に、それを少くとも一時的にでも防衛して、そうしてわれわれの究極の安全が保たれるようにしていきたい、かように考えるのであります。非常に抽象的でありますけれども、自然そうならざるを得ないと思います。
  44. 海野三朗

    ○海野三朗君 ちょっともう一点。そうすれば、現在のこの防衛庁のあり方についてはもう少し考えがおありにならなければならないと私は思うのです。今日の防衛と申しましても、ただ昔のような陸軍、海軍だけの時代じゃないので、そうすれば今日の防衛庁のあり方というものはもっと吟味して変ってこなければならないのじゃないかと私は思うのですが、防衛庁長官はいかようにお考えになりますか。
  45. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) 私は、国土の防衛をするのに、もちろん平和外交の推進ということはまず第一段として考えなければならないと思います。防衛庁は、防衛庁の設置法にも出ておりまする通り日本の平和と独立を守って、そうして日本の安全を維持するのだ、この目的のためにあるのですが、その目的を達成するものは必ずしも自衛隊だけではない。いろいろの国策においてこれが総合的に日本防衛を全うし得る態勢にならなければならないのでありまして、自衛隊に関連いたしましては、防衛産業の問題もありましょうし、あるいは国土開発等につきましても、防衛という見地から大いに勘案していろいろな策定が行われなければならないと思いまするから、私は、自衛隊の増強というものが国土防衛策としてのすべてではないということを考えておるのでございます。
  46. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連ですから簡単にいたしますが、防衛はこの自衛の範囲内で最小限度でなくちゃならぬというお気持を先ほど総理は御答弁になりました。それから自衛隊で本年度P2V、対潜哨戒機を作りたいという希望があったが、それを押えられた、こうまあ承知をいたしております。あるいは防衛費につきましても繰り越し等も多いし、今年度増強を抑えられたということも今年度予算について承知をいたしております。その点は、先ほど言われました国連によって防衛をはかりたいという基本線と、それから最小限度にという先ほどのお気持、それから、前には原水爆兵器について実験も製造もこれを禁止する、こういう御方針を明らかにされたのであります。ところが、まあ自衛隊ができて、一つの部隊ができますと、その力、数にいたしましても、あるいは装備にいたしましても、あるいはこの原子兵器にいたしましても、それ自体としてはやはり大きくなろうとする要望をこれは持って参り、またそういう要望を三十二年度予算についても多少出して参ったりするわけです。そこで、これはP2Vは一つの例でございますけれども、最小限度に抑えていこう。経費の点からいって、財政支出の点からいって、現況以上にふえていくということについては消極的なのかどうか。  それからもう一つ原子兵器については、それが日本だけでなしに、あるいはイギリスだけでなしに、実験も製造も使用も禁止さるべきだと、こうおっしゃいましたが、オネスト・ジョンが入ってき、またロケット弾でございますけれども、研究ということで、あるいはスイスのエリ・コン社の誘導弾を入れたい、あるいはほかにも購入を考えたりしておるわけです。原子弾頭はもちろん参っておりませんけれども、オネスト・ジョン等の使用等も、あるいはこれは貸与でありますかとも、考えたりしておりまして、先ほどの総理の御発言と、それから自衛隊でその装備あるいはその他について考えておりますこととは、矛盾をしておるようであります。オネスト・ジョンを持ち、あるいは富士学校において対放射能訓練をなされたと聞いておりますが、そういう点に総理の言明と、それから自衛隊がこれは装備の強化ということなり、何なりという名目でやろうという方向とは若干違うのじゃないか、こういう感じがいたしますから、政府の方針を一つここで明らかにしていただきたいと思うのであります。
  47. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は自衛力の限度についての考えを先ほど明瞭にしたわけです。その限度内において、どういう実質を持った自衛力を持つかということについては、私は、これはやはり本年度予算の編成に当っても政府考えておるように、ただ先ほど来議論があったように、陸上部隊を幾らにするとか、あるいは海上の部隊を何万トン持つとか、飛行機を何機持つということだけでなしに、やはり質的な点を非常に考えなければならぬ。質的に考えておる。しかし、質的な向上、兵器の発達につれていろんな技術的な研究もいたさなければならぬことは言うを待たないのであります。ただ、いかなる場合においても日本は原子力というものは平和的に使用さるべきものであって、これが兵器に使用されて、人類を破壊し、滅亡させるようなものに用いられることについては、日本人は強く反対しておるという考えは、私は私の信念であり、一貫しておるのであります。ただ、そうだからといって、兵器は昔のままの兵器でやれということでおるということは、決して自衛力を持つということにはならないのであります。やはりいろんな研究をこれはしていかなければならない。やはり誘導弾につきましても、これは攻撃的な誘導弾は——従って長距離の誘導弾というものについては、自衛隊においても考えておりませんが、しかし防御の意味における何にしては、いつまでも竹槍でもって防御をしろということを考えておるのは、これは世の中の進運に合わないのであります。十分科学的な研究も持つということは当然考えていかなければならぬと、こう思うのであります。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 私は先ほどから自衛力の限界お尋ねしたのは、必ずしも書生論をやろうというわけではないのであります。  私は、次に安保条約に関連して伺うわけでありますが、安保条約について、あるいは行政協定については、政府はすでに改訂の時期が近づいておるということを判断されておるのでありますが、そこで、この実際問題として安保条約の第四条をわれわれが見た場合に、「この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。」となっております。そしてこれは日米の合意が必要でありますが、アメリカ側の見解は別として、日本としては、どの程度になったら話し合いの条件がお整いになったとお考えになりますか。これは抽象的な質問ではないのです。先ほど来私が言っておる戦力の限界ではない。この条件が整ったと政府が認めなければ、アメリカの意向はいいのですが、アメリカがまだ不満足だ、まだ整わないという回答をされるかもしれない。しかしわれわれとしては、この程度でアメリカと話し合いをして、第四条を改正するの客観的条件が整った、あるいは主体的にもわれわれはそういう判断をする、そういう判断の基礎がなければ、これはアメリカに言ってもすぐやられます。だからそういう意味で、政府がもしまじめに日米安保条約の改訂なり解消ということをお考えになっておるとするならば、当然日本がどの程度になったならば自国の安全に、別の言葉で言えば、第一義的責任を負い、諸般の条件から安保条約の改正なり解消をする時期が整ったと判断をし、アメリカと話し合いをする条件がこれでできたという判断をされますか、これは外務大臣防衛庁長官と、両方にお伺いをいたしたいと思います。
  49. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は安保条約や行政協定等につきまして、これが制定をされた当時の事情と、今日の事情は非常に、日本を中心として考えてみて違っておる。私どもは、今日の自衛力をもって一応自衛力の限度で、日米共同防衛をしないでも、独力で一応防衛できるというまだ確信には達しておらないかもしれませんが、しかしこれが結ばれた当時においては、ほとんどそういうものを全然持たなかった時代と、今日において、ある程度これができたという現実と、また日本自身がこれを結んだときにおいては、国際連合に加盟いたしておらなかった。また加盟するような情勢にもなかったのでありますが、今や国連に加盟をされておる。加盟して、その一員として日本がやってきておる。こういう事態も、この事柄の協定や条約ができた当時とは非常に情勢が変っておる。こういう事態を考えてみるというと、これを全部四条を改正し、もしくは日米共同防衛というものの体制を根本的にやめるというような意味において安保条約を廃棄するというような時期でないと、私はそう思いますけれども、しかし今申したような事情の変化から、少くともこれらの全面にわたって検討をすべき一つの状態ができておるというのが、私の考えの基礎でございます。しかし具体的にどこをどうするかというような問題につきましては、さらにわれわれとしては十分に考えていかなくちゃならぬことでありますから、少くとも考え方の基礎としては、今申しましたような状態にある、かように考えております。
  50. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) 私の申したい点は、大体総理が申された通りでございます。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、こういうことになりはしませんか。日本日本一国で完全に防衛できるというような意味でもし戦力をいうならば、なかなかそれは将来問題はあろうが、少くとも今、日米安保条約に関する限りは一応の限界にきた。つまり安保条約の少くとも解消とはいかないが、改正について、私たちは意見を異にしておりますけれども、政府立場に立ってものを言う場合、一応この改正については、自国の責任を果し、またわが国の防衛については別に今までの、今日までのようなアメリカと日本との関係でなしに、もっと実質的なものとして、改正の基礎を提起し得る、そういう条件が大体整ってきたと、そう解釈していいのでありますか、この辺はどうでありますか。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は自衛力の限度として、日本が一応責任を果すといいますか、これで一応の限度のところに達しているとは思っておりません。先ほど申し上げましたように、当時の安保条約のときには、全然自衛力を持たずしてであり、国際連合にも加盟しておらなかった状態のもとに結んだものであって、今日の状態は決してこれで自衛力の限度という何は考えませんけれども、ある程度の自衛力ができたことは事実でありまして、これらの現実の事実、また国際連合に入ったという事実に基いてこれを検討してみたい、こう考えております。
  53. 羽生三七

    羽生三七君 岸総理がずうっと前外人記者団との会見の際に、この日付はちょっと記憶しておりませんが、その会見の際に、安保条約の改正については日本全国民のこれは議論であるが、それには予備的段階が要るとおっしゃったことがありますが、予備的段階とは具体的にどういうことを指されるのでありましょうか。
  54. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 言葉は私はよくはっきり記憶いたしておりませんが、予備的段階という言葉はおそらく使わなかったので、私の考えではこれを改正するのには客観的な環境を作る必要があるというような言葉を用いたかと思うのです。同じ意味でありましょうが、要するに一つ日本自身が持っている自衛力の増強ということも一つの条件、あるいはさらにそれよりも根本的な問題は、世界の対立、特に東アにおける対立している国際情勢の緩和ということも非常に大きな条件であります。そういうことは私は国際連合に日本が加盟したということから、いろいろ国際連合を中心に今後やっていき、また現にこの前の総会におきましても、すでにそういう線が現われていると思うのでありますが、そういうふうな国際情勢の問題、それから今の自衛力の点であるとか、あるいはさらにアメリカとの間のこれに対する話し合いというような問題も、要するにそういうものを積み重ねていって、はじめて安保条約が改訂され、あるいはさらに究極の面においてはこれが廃棄されるというところに向ってわれわれは進んでいきたい、こういうような意味で申したわけであります。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 先日来、総理大臣外務大臣は、日米安保条約について根本的に検討するような時期が近づいてきたように言われ、また今少くとも安保条約の解消ということは考えておらぬが、改正についてはある程度の条件が整ったといわれておりますが、何か昨日あたり記者団との会見では、具体的に話し合う考えはないとも言われております。そうすると今度の渡米目的というものは、国民の期待は、日米間の友好を温めるというのはけっこうでありますが、同時にそういう問題に触れられることを期待しておった。その触れられるのにはどういう触れ方があるかということは、これからあと私はお尋ねして参りますが、その問題、今条件が整わない、また全然日本はそういう条件になっておらないというような判断の基礎に立たれるなら別でありますが、今内部的条件の基礎は整って、あとの外部的条件は別として、日本自身としては話し合いの基礎的条件はできてきた、そういう御判断に立てば、当然今度アメリカに行かれた場合には、こまかいことかもしれませんが、この問題に私は触れられるべきだと思いますが、この問題に触れられますか、いかがですか。
  56. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 当然日米の間の基本的な問題についての考え方について話し合いをするつもりでありますから、こういう問題に触れることは当然であります。きのうの新聞記者会見においては、具体的に第何条をどうするとか、あるいは個々にそのめぼしい、何といいますか、交渉に行くというような意味において自分は行くのだという意味のことを申したわけであります。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 そこで私は具体的な、第何条をどうするとか、あるいは行政協定ではどことかという方向については、あまり多く触れませんが、さてそこで行かれた場合、もしほんとうに、はなはだ失礼でありますが、国民にはそう言い、向うへ行っては一般的な情勢交換くらいで、大して触れられないというならば、これは別でありますが、いやしくも真剣にお触れになろうとするならば、必ず私は一つの問題に打ち当るだろうと思う。これは私本会議でもこの前申し上げました通りに、今の協定が片務協定であるならばこれを双務協定にする、こういうような考え方でもし行く場合には、これはこの前にも曾祢委員がこの席で触れられましたように、前のなくなられた重光さんが、非常な決意をもって向うへ行かれて、向うのペースに巻き込まれて、結局は双務協定ということになると逆に海外派兵ということにぶつかるというようなことで、重光さんがお帰りになった、私はきょうはその当時の資料も全部持って参りましたが、しかも日米共同声明のほかに、アメリカの高官がそれぞれ補足説明しておることが詳細に出ております。これを見ますと、非常に困難なところへ重光さんは追い込まれて、国へ帰ってきていろんなことに困惑されたことは御存じの通りであります。そこでもしほんとうに日米安保条約の改正をお考えになる場合には、当然向うは、一国だけで日本防衛できる、つまり個別的な最高限の軍事力を持つという判断を日米がやれば別でありますが、そうでない限りは当然双務協定的なものになるし、また日本の自衛の力は別としても、戦略的な立場から、アメリカが簡単に日本の軍事基地の提供や、あるいはアメリカ軍の駐留の権利を放棄するようなことはないと私は思います。非常にむずかしい。しかし国民に与えておる今の印象を払拭するような形で条約改正をやろうとするならば、当然もっと積極的な場面が出てくると思います。その場合政府としては、一体向うから双務協定というようなものを求められて、その場合には当然海外派兵の問題にも及ぶと思いますが、この場合においても、海外派兵あるいは新たなる日本の軍事的義務を負うがごとき、いかなる双務的な協定も絶対に結ばないと、これはお約束願えましょうか。つまり単に今度の渡米の会談の内容だけでなしに、安保条約の改正あるいは解消、日本のあり方、これはあとからまた詳しくお尋ねいたしますが、それらと関連をして日本の新たなる軍事的な義務を負う形、あるいは海外派兵の約束を迫られるような形でのいかなる話し合いというものにも、今度の渡米の際には触れられないし、またそんなことを約束される意思はないということをかたくお約束願えるかどうか、承わりたいと思います。
  58. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 海外派兵の問題につきましては、私は日本の現行憲法の解釈上も、これは認められないものであるという解釈に立っております。従ってどこの国からどういう話がありましても、日本として海外派兵の義務を持つということは私はいたさないということをはっきり申し上げたいと思います。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 さて、そこで、海外派兵の義務は負わないと、約束はしないと、これはいい答弁をいただいたわけでありますが、どうかその方針で貫いていただきたいし、この点は前の吉田総理もやはり参議院の外務委員会で、私どもの質問に答えて、SEATOあるいはPATO等いかなる軍事同盟にも参加する意思はないことを約束され、また衆議院においても岸総理がそういうことを言明され、今またここで海外派兵を含むような取りきめはされないことを言われて、これは私どもとして満足であります。  しかし、さてそれでは一体、安保条約の改正に及んでいった場合に、そういうことでいきますと、アメリカとしては双務協定を結ぶ場合の基礎が非常に少いとみるだろうと思う。それなら今のままでいいじゃないかという議論になってくると思うのでありますが、そうすると海外派兵の義務を伴わない、新たなる戦力の義務を伴わない、そういう形で片務協定を双務協定に直せるどういうケースがあるか、私はこまかいことは言いません。そういう義務も何にも負わない形で、しかも片務協定といわれるところの今の条約を双務協定に直せることが可能であるならば、どういうケースが考えられるか。少くとも渡米を近く控えて、その辺はもちろんお考えになっているところであろうと思いますが、一つこの点を具体的に承わりたいと思います。
  60. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 片務的であるから双務的にしろとかいうふうな抽象的の議論、あるいは両国を平等な立場に置いたなににしろというふうな抽象的な原則論をいたしますと、いろんな具体的な問題とすると、いきつかえる問題が私はできると思うのであります。しかし今の安保条約自身を、そういう意味において全然平等な、あるいは全然双務的な見地からこれをそういう立場に改訂するのだ、こう申すというと、今申しましたようにいろんな支障を生ずるということは言うを待ちません。私はそういう考え方を持っておらないのであります。今、どこをどうするかということについては、これは私は具体的に申し上げることを差し控えますが、全体的に検討してみますると、そういう一つの抽象的原則を立てて、それを貫くということでなくして、現実の問題として、われわれがこれを制定した当時と現在の状態との差異から、また国民的な感情なり国民の考え方というもの、また日米の間の恒久的な友好関係、協力関係というものを進める意味から申しまして、私は検討してみると、おのずからそこに結論の出る問題があると、かように考えております。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 それは非常な抽象的な御答弁でありますが、私は、少くともこういう公式の予算委員会の席上で、少くとも渡米の際に総理が全く困るような質問をしようと思いません。またそういうことで拘束することは適当でない、常識を持っております。しかしそれにもかかわらず、やはりもうあまりにも問題が明白になってきて、しかも問題の所在というものを漸次明らかにしなければならないので、その段階に今の御答弁はあまりにも抽象的過ぎる。そこで、けさの新聞を見てもそうでありますが、たとえば記者団質問に対する答弁の中で、「日米間の基本的なものの考え方をキタンなく話合って両方の意見を一致させることが目的である。安保条約、沖縄問題、ガリオアの問題をどうするかということではなく、それよりも根本的なことを話合って了解がつけば自然これらの問題も解決の方向がきまるだろう。」とこう記者団に答えられている。そうすると安保条約や、そういう今私がお尋ねしたような問題は、私は基本的だと思うのです。それを除外する基本的な方向って日米の友好を強化すると言われましたが、私はもう友好は友好過剰であろうと思います。今までの日本のいき方は。さらにこれ以上強化する余地もないほどに政府としては友好的であろうと思います。それをあらためて再確認をされるほどのこともなかろうと思うのですが、そういう立場考えると、根本的に話し合うということはほかに何かあるんでしょうか。それは鳩山内閣以来若干いざこざのあった問題を一応もっと親密なものにするとか、そういうことはこの前の話でありました。それはけっこうであります。しかしやはり根本的な問題といえば、今秋がお尋ねした問題に触れられなければならないと思うのですが、それを除外して、昨日記者団に答えられたような根本的な問題というのはどういうことでございますか。
  62. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども申し上げました通り、この日米共同防衛の体制ということは、日米の現在の関係の非常な重要な根本的な問題でございます。従ってこの問題に触れることは当然でございますが、具体的に第何条をどういうふうに改正するとか、あるいは具体的にいろいろな問題をどう解決するということの話し合いよりも、日米の間の基本的なものの考え方、また日米の関係の基本的な事項について、両国の首脳部が腹を打ち割って話し合うということが非常に必要であるということを私は申したわけでございます。従って先ほど来申しておるように、この防衛問題に関することに触れることは当然であると、かように考えております。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 その場合に、少し具体的な問題に触れるのでありますが、われわれのような解消という立場でなしに、改正という一応立場に立って考える場合に、先ほど来関連質問にもあり、また参議院の議決にもあった原水爆の禁止というようなことからいって、この改正の中に、これは衆議院でどなたかからも質問があったということを聞いておりますが、原爆の持ち込みというようなことをかたく断わる、そういう条項を新たに設けられるようなお考えはございませんか。いかがでありましょうか。
  64. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 具体的には、私今申し上げましたように、改正をどういうふうにするということの、また従ってその条約の中にどういう規定を挿入するというふうなことを具体的に話し合うつもりはございませんが、当然、この日本に駐留する部隊や兵器というようなものにつきまして、実際上日本の意思を無視して入ってくるということは現在までもアメリカはやっておりませんし、また日本としては、そういう場合において私は原子兵器等についての持ち込みについては、これに応ずる意思なしと断わるということを申してきておるわけであります。その考え方はもちろんアメリカに参りまして、そういうことに触れての話は自然出るかと思いますが、当然日米の将来の基本的な問題として話し合うことにはなると思います。ただ条約にそういうことを持ち込むかどうかというようなことにつきましては、今回の私の渡米においては、そこまでの時日も、また具体的な問題に触れる考えも実は持っておらない、こういうことであります。
  65. 羽生三七

    羽生三七君 私がこういうことを申し上げておるのは、政府がそのつど、新兵器の来るたびに問題にぶつかって、そうして苦労される。それよりも条約で明文化しておけば、もう今後そういう煩を避けるという政府立場考えていっても、私は今言ったように手っとり早いし、問題が明確になると思いますが、それはこれ以上申し上げません。  そこで、これもちょっと細かいことに触れ過ぎて、総理としてはちょっといやなことだとお考えになるかもしれませんが、外務省が今検討中といわれておるものの中に、つまり総理が渡米される場合のアメリカとの話し合いの内容についてでありますが、その問題の中に、たとえば今の日本の条約では、米軍の駐留は、米側の権利で、日本の依頼で駐留することになっておることは御存じの通りであります。その場合に、アメリカ側の日本の駐留は権利ではあるが、しかし日本防衛については何も義務はない、それは明文が何もありません。それからもう一つは、大規模の内乱、騒悩等については、要請に応じてアメリカが日本を援助する、こういうような場合、日本が自力解決、アメリカの援助を得なくても、せめて国内の治安維持、騒擾鎮圧等についてはアメリカ軍の依頼を求めることなく、自力で解決する、そういうことをこの条約の中で検討したいということを外務省で作業されておると伝えられております。また一部新聞の報道によれば、一条及び三条の米軍の配置と使用に関する問題ですね。これについても新しい検討がされておるようですが、そういうことについては、アメリカと話し合うか話し合わないかは別として、総理としては、今のこの私が申し上げた問題、少くとも日本の国内における騒擾等については、やはり依然としてアメリカの援助を受けるのか、日本が自力解決ということの方向が正しいのか。それを今度の話し合いの内容とするしないは別として、そういう方向をお持ちになっているのか。いかがでございますか。
  66. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その問題は具体的の安保条約の問題とは離れてお答えをいたしますが、私は、やはり国内におけるそういう騒擾的な治安の問題につきましては、これはあくまでも日本の自力でこれを鎮圧して、そうして治安の維持に当るべきものである。すでに自衛隊等の実質から申しましても、また国内の治安状況から申しましても、私はそれは自主的に、自力で解決するということをあくまでも第一義として考えなければならぬ。かように考えております。
  67. 羽生三七

    羽生三七君 非常にくどいようでありますが、どうしても私理解ができないので、これは社会党でも研究するとともに、今の共同研究というような意味でお考えを承わりたいのでありますが、何も義務を伴わない形で安保条約がどうやって改正できるか。何も義務を伴わなくても、首相が渡米をしていろいろ説明すれば、日本の好ましい形で条約の一条から四条まで、あるいは行政協定の各条項にわたって——行政協定でいえば特に十八条、私非常に問題になると思うのですが、それは別として、個々の改正ができると、何も義務を伴うことなしにですね。個々の条約上の内容について改正ができると、そういうケースがあると御確信になっておるかどうか。義務を伴うことなき条約改正ということは可能であるかどうか。これはわれわれだって非常にむずかしい問題にぶつかるだろうと思いますが、一つぜひ率直にお聞かせを願いたい。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは先ほど申しましたように、海外派兵の義務とかあるいは日本の新しい軍事的な、言葉はいいか悪いかしりませんが、軍事的な新しい義務を負うということなしに、これらの安保条約や、それから行政協定等の検討をする場合において、その考えはやはり基礎に置かなければならぬと思うのです。その場合に、われわれが要望するものがかりに十あって、十が全部向うをして承認せしめることができるかどうかということについては、これは話し合いしてみなければわからぬことでありますけれども、私は根本的に特に日米の将来及び世界の平和なり、あるいはアジアにおけるところのいろいろな日本の平和外交あるいは経済協力というようなものの具体的の進め方によって、東亜における情勢というものの緩和ということが考えられるということに根本がなってくれば、相当の程度においてわれわれの考えも実現できるのじゃないか。もちろん相当な困難もあろうと思います。ですから、そう簡単にこれらのものが改正できるとか、あるいは変更できるというふうに非常に甘く考えることは私は禁物であると思いますが、それらのことの根底には、やはり国際情勢に対する見方なり、あるいはアジアにおける平和の遂行についての考え方なりというようなことに対する両国の考え方を十分に検討し、またそれについて率直に話し合って、われわれの考えを述べて、そうしてアメリカにこれを納得せしめるというようなことが実は前提であって、そういうことが基礎にでき上るというと、私はよほどこれらの問題を解決する上から申しましても、困難はあっても、できるのじゃないかというふうに考えておりますが、具体的の問題につきましては、なかなか国民が要望しているところのものがことごとく一回や二回の話し合いで解決できるというような簡単な問題でないことは、言うを待ちませんけれども、われわれがやはり国をあげて国民的の要望を実現するという根強い考えに立って、また一面においては、率直にわれわれの信念なりわれわれの考え方というものを話して、そうしてこれについての了解、アンダスタンディングができ上るということと並んで、これらの問題を処理していきたい、こういうふうに考えております。
  69. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題は、岸総理それから小滝長官等は、この席で、一国だけでの自分の国の防衛は非常に困難だと、従って集団的安全保障機構または国連による安全保障機構が必要だと、こう御答弁になっておるわけでありますが、これは非常に抽象的なんですね。集団的安全保障というのは何を指すものか、日米間のそれが、言われる集団安全保障なのか。国連による安全保障措置というのはどういうものであるか。これが明確にならないと、やはりこの今の安保条約の第四条との関係からも考えて、非常に問題が抽象的になる。だから少くとも、このこまかい点はいいのですが、外務大臣としてはこういう構想を持っておると、こういう条件が整えばこういうことになると、それを指向する自民党、今の岸政府の集団安全保障に対する考え方、それから国連による安全保障措置というものは具体的にどういうものを指向されておるか。この点を承わりたいと思います。
  70. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現在の状況から申しますというと、御承知通り日本の安全保障は、日米共同防衛の体制によって保たれております。私は、日本の自力でもって日本の安全保障というものが、現在の状態においてできるとは考えておりません。しからば日米のなにであるけれども、さらにわれわれが国連に加盟して考えるというと、また国連を中心に将来の日本の国際的な活動なり、あるいは外交方針というものは、そこに重点を置いて考えますというと、国連の集団安全保障という措置によって日本の安全保障ができ上るということは一番望ましいと思うのです。ただ、これまた現状から申しますというと、私はそれで日米共同防衛の体制をやめて、日本の自衛力と、そうしてあとは国際連合の現在の集団安全保障措置にまかして、そうして日本が安全であるということが言い得る状況でもないと思います。しかし同時に、一部に言われておりますSEATOにそれじゃ加盟して日本の集団安全保障がなされるかと申しますと、これは実質的に見てはそれは適当でないのみならず、さっきから話があります海外派兵等の義務を伴うようなこれらに加盟することは考えてもおらないし、またそういうSEATOでなしに、さらにこのアジアにおける共産国も入れた集団安全保障体制というものを考えないかというような御議論もありますが、これもまた現実の問題としては私は実現の可能性のきわめて薄いものである、かように考えておりまして、一応とにかく日本の現在の状況からいえば、日米共同防衛の体制により、さらに国連の集団安全保障に関する措置というものを強化して、これによって日本の安全が保たれる方向に進むというのが、今日私の考えておる根本の考え方でございます。
  71. 羽生三七

    羽生三七君 まあ実をいうと、みんな国連による安全保障措置と簡単に言っておりますが、これはなかなか現実にそういうことはすぐできるわけのものでもなし、理想であってもなかなかむずかしい。そうすると、ここに出てくるのは、地域的集団安全保障ということになってくるわけであります。そこで、今の日米間の措置がどうかということをお尋ねしたので……。それは別として、小滝長官その点どういうようにお考えになりますか。少し具体的に、専門家ですから、今の日本の安保条約と対比して、今の地域的集団安全保障についてどういうふうにお考えになりますか、承わりたいと思います。
  72. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) やはり国連の集団安全保障機構というものは、憲章の四十三条による特別取りきめでも見ないというと、完全な形にはならないと思いますが、同時に国連の方は、地域的集団安全保障を排除しているわけではないのでありまして、その意味において、こういう保障機構ができるということが望ましいことであります。がしかし、日本の憲法の立場、いろいろな関係から、総理説明されましたように、日本が軍事的な義務を負うような、そういう機構に入り得るかどうか、それには日本には制約があるということは、さっき申し上げた通りであります。しかし、こういう機構には、経済的な協力関係というものも、憲章の中においてもこれは予想しておるところでございまして、そういう意味の、限度における協定というものができ得るとするならば、それは私は差しつかえないことと思います。しかし、今の実情からいうと、結局直接的なものは、安保条約、これが実際問題として、集団安全保障機構の一つと見るべきか、見るべきでないかということについては、意見が分れるでありましょうが、あるいはそれを一種の機構と見ることができるかもしれません。ただ羽生さんがしきりに引用されます第四条というものは、結局失効のことを規定した規定でございまして、これが完全にできたら、全部効力がなくなってゼロになってしまうという規定でありますから、その前における努力、今総理が言っておられる努力というものは、必ず四条によってカバーされるものではなくて、安全保障の機構が不完全なものでありましても、改訂の仕方いかんによっては、新しい構想が生まれてくるわけでありますから、私は、この意味で四条にこだわることなく、現実の情勢というもの、また日本の自衛力の増強努力というものとにらみ合せて考えらるべき問題であろうと存じます。
  73. 羽生三七

    羽生三七君 もちろん私は四条はそういうものだと理解して質問を続けておるわけでありますが、もうそんなめんどうくさいことをすべてやめて、新しく日米間で何か相互協定を結んだ方がいいというような議論も一部あるようですが、そんなことはまさか政府はお考えになっていないと思いますけれども、お考えになったことがあるかどうか。  それからもう一つは、あなたの方から触れられましたが、日本のこういう憲法のもとでも、朝鮮における海外派兵というような場合は、国連加盟国はかなり自由であったようであります。日本も、国連に入っても、そんなことにすぐ拘束されるとは私解釈しておりませんが、しかしそれにしても、日本国の憲法というものをもとにして、積極的に日本の憲法を認めて、そういう特殊除外例を認めて、それで何か安全保障措置というものが課せられるようなケースがあるとお考えになりますかどうか。つまり国連に加盟しても、日本が積極的に海外派兵の義務は持たないというようなことでなしに、地域的集団安全保障ということを、われわれじゃないですよ、政府がお考えになる場合に、日本の憲法という特殊条件を考慮して、それでなおかつ、積極的に何か地域的集団安全保障を結ばれるという、そういうケースがあるかどうか。これはよくわからないので、一つ御意見を承わりたいと思います。
  74. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) 私は、今、SEATOの条約を持ってきておりませんけれども、義務が経済的の点にだけ限られるというようなものもバグダッドとかSEATOの条約を見るとあると記憶しております。たとえば、これは政府の方針を述べるのじゃございません。しかし掘り下げた話をしろということでございまするから申し上げますが、日本の相互的な協定を作るというような場合においても、私一個の考えからいたしますならば、海外派兵の義務というようなものなくしても、たとえば日本区域というようなことになれば、日本は当然固有の自衛権を持ち、そうして自衛力を持っておる場合においては、そういう意味における相互的な取りきめもできるし、また集団安全保障の機構につきましても、かつて朝鮮事変のときに日本が協力をしたというような形の条約を作りますれば、それが完全なる相互主義になっておらなくても、私は当然条約締結に際して、作ろうとすれば作り得るというように信じておりますが、これは、ただし政府の方針を申し述べた次第じゃございませんから、さよう御承知願います。
  75. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、これもちょっと抽象的な議論になりますが、一国の防衛考える場合に、防衛力を強化することだけが防衛と言われておるわけでありますけれども、先ほど首相もちょっと触れられましたように、やはりアメリカへ行って話し合いをする場合の予備的条件として、国際情勢の緩和ということは必要だろうと思うのです。ただ防衛力だけを高めるのじゃなしに、防衛力を過度に必要としない程度日本国の周辺の国際緊張をやわらげていく、これが伴ってのみ、私はほんとうの外交になると思うのですが、その場合に、そういう議論でいくならば、時間の問題はあっても、中共との国交回復というものが、これは言い古されたことでありますが、当然問題になるし、それから日ソとができ、中共ともでき、それから中共の国連加盟が実現できた場合、特にアメリカの台湾海峡における行動等がなくなった場合に、そういう場合は、むしろアジアにおける侵略の危険とか、安保条約の前文にうたわれておったようないろいろな諸条件というものが漸次解消いたしまして、アメリカが杞憂し、また日本が今まで問題にしておったような条件はなくなる。そういう意味からいっても、安保条約は、そういう条件ができれば、そんな新たなる軍事的義務を伴わなくても、もっと話が変ってくるような条件が整っていくと御解釈になりませんか。また、そういう意味では、中共問題なんか時間の問題ですから、日本はあまりアメリカに遠慮せずに、今度アメリカに行かれた場合には、貿易の拡大どころではない。その問題よりもむしろ積極的に触れられて、そうして中共の国連加盟を実現さして、台湾水域、あるいは中共本土と台湾間の諸紛争を解決するために、むしろ岸総理が新たなる外交の積極性を持つことの方が、防衛力の強化だけを念願としておる方式よりも、より一国の安全に役立つとお考えにならないでしょうか。
  76. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話のように、この安保条約や行政協定の改訂に関する条件のうちには、国際緊張の緩和ということが一つの大きな要素をなしておる。従ってこれに対して積極的に日本考えを述べ、また、いわゆる平和外交の推進に関する積極的な日本考えを述べるということはきわめて必要であると考えております。ただ、今日の状況から申しまして、日ソの間には国交が正常化されましたけれども、領土問題その他むずかしい懸案が残ってもおりますし、また中ソの間の条約も現存しておるというような現状において、直ちにお話のように、中共を承認するとか、あるいはこれに対して台湾海峡……国府と中共の問題について積極的な解決ができるというふうな段階に達しておるかどうかは、これは、いろいろな意見があると私は思います。なかなかまだ困難な事情が幾多あるという前提に立って考えていかなければならぬと思いまするが、いずれにしても、自衛力の増強だけではなくして、そういう国際緊張緩和に関する情勢を作っていくということが非常に重要なファクターであるという考えにつきましては、私全然同感でございます。
  77. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 羽生さん、時間が経過しておりますから、どうぞ……。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、私の安保条約に関する質問はこの程度にいたしまして、最後に、予算に関連して、ごく簡単にお伺いしたいと思いますが、今度の防衛庁の予算の中で、航空自衛隊の拡張の点で、今の制服一万四千四百三十四人、それから一般職員千八百六十六人、それをそれぞれ五千百九十一人及び八百五十六人増加することになるわけでありますが、空軍が約二万人になるわけですね、人員で。これは、機数にしてどの程度の飛行機を、もしこれを全部フルに活用するとすれば、どの程度のことをお考えになっておるのか。二万人の航空自衛隊の人員を全部活用する場合に、どういう種類の飛行機がどの程度要るのかということを伺いたい。
  79. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) 詳細は、政府委員から説明さした方がよろしいかもしれませんが、今、概括的に申しまして、五百機余り航空自衛隊として持っておるわけであります。この増強によりまして、機数では大体三百二十六機さらに増強しようということを考えておるのでありまして、その増強の機数の一番大きいのは、練習機百六十機と、それからF86というのを今使っておりまするが、これが百四十五だけ増強せられる。そのうち、向うから供与せられる部分もございまするが、国産か大体百機、これらを合せまして、もちろんC46が六機、あるいは連絡機の方が四機というようなものを合計いたしまして、大体三百機程度増強ということになっております。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 もう一問だけで終りますが、もう一つお伺いしたいことは、これは長官にお伺いしたいのですが、先日の新聞を見ますと、防衛庁で対潜機P2V、先ほどの吉田君の関連質問に関連したことですが、これを三十二年度から三十七年度まで、五カ年計画で生産をしたいと、その必要な経費は三百六十億円、それで、日米の分担も示されておるようでありまするが、この三百六十億のP2Vを五カ年計画でやられる場合に、三十二年度は、この新聞記事が正しければ、流用でやられるのか、予算上はどういうことになるのですか。この点を一つ承わっておきたいと思います。
  81. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) P2Vにつきましては、まだどうするということを確定いたしておるわけではございません。私どもといたしましては、これは、必要な機種であると考えております。もしかりに、五年とか七年計画でやるということに決定いたしましても、初年度からすぐ生産するわけではないのでありまして、むしろこれを引き受ける会社側における増資とか、あるいは借入金というような、設備関係のものにあるいはあっせんをしなければならないかもわからぬ。が、しかし、予算面におきましては、別段支出を要しないのでありまして、かりにやるといたしましても、予算関係では影響ないことになります。
  82. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日米安全保障条約並びにそれに基く行政協定の問題について、一点関連質問をいたしたいと思います。  それは、行政協定の運用の問題であります。日米安全保障条約に基く行政協定が、往々にしていろいろな問題を起し、紛争を起しております。そして、これが日本の独立性を傷つけるものもかなり起っておりまして、従って、私どもは、これが廃棄を主張しておるわけでございますが、実は、本月の二十日に、仙台の地方裁判所におきまして、日本の女子に残虐なる暴行を働き、これを殺害いたしましたアメリカ兵が死刑の宣告を受けておるのであります。ところが、この死刑の宣告を受けました米兵の身柄につきましてアメリカ側は、仙台の地方検察庁に参りまして、これをついに引き取りまして、しかも、仙台の苦竹の地区におりました兵隊でございますが、熊谷まで連れて来てしまっておるのであります。このことに関しまして、仙台の地方裁判所は、勝手に仙台の検察庁が犯人をアメリカ軍に引き渡したということはまことにおかしいというように言っておるのであります。この点につきましては、私は重大な問題だろうと思うのであります。日本側がかような日本の婦女子に対しまして暴行を働いたアメリカ兵に対しまして裁判権を持つことは、これは行政協定の十七条に明記されておるのであります。そして、たといそれが死刑の刑を宣告した者でありましょうとも、これは、日本側において当然刑の執行まで行うべきものであるのであります。もちろん、これから、二審、三審まで参るでございましょうが、しかし、それにいたしましても、この犯人を軽々に引き渡したということは、まことに重大な事態だろうと思うのであります。この点については、果して外務大臣として御存じかどうか。あるいはまた、引き渡しの交渉があって、それに対して内諾等を与えられたのであるか。その点をまずお伺いしたい。
  83. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、引き渡した事実は承知いたしておりませんし、それについての私ども交渉を受けたことは全然ございません。
  84. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 御存じにならないということでございますので、その点については、私は、他の機会に、法務大臣等にも十分にお伺いすることにいたしますが、この点は、アメリカ側が行政協定に基いて規定してあることをじゅうりんいたしまして、日本側の裁判権に対して不当な干渉をしておるものと言わなければならぬのであります。たとえば、相馬ケ原の事件におきまして、これはまだ、裁判の管轄権がどちらにあるか、合同委員会の小委員会においていろいろ検討しておるのでありまするけれども、こういうような場合におきましても、犯人は、アメリカ軍の方に抑留したままにおいて押えてあるわけであります。もしアメリカ軍が移動するというようなことになりまして、たとえば、今ここにあります、仙台の死刑を宣告されました犯人にいたしましても、あるいは相馬ケ原の農婦を射殺いたしました犯人にいたしましても、そのアメリカ軍の移動につれて、身柄が日本国内から他に移されるということになりましたならば、これは重大な外交問題に発展せざるを得ないのであります。従いまして、これは、まだ御存じなかったのでありますならば、直ちに取り調べていただきたいし、また、アメリカ軍がかような勝手なことをいたすことに対しましては、十分な御検討を願いたいと存ずるのであります。岸外務大臣は、かような場合に、犯人を引き渡すことが正しいかどうか、これは条約並びに行政協定に基いておるものかどうか、その点についての外務大臣としての御解釈並びにこれに対する今後の外務大臣としての取るべき措置をお伺いしたいのであります。
  85. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 事情を全然承知いたしておりませんから、十分事情を調査し、検討いたしまして、これの処置をいたしたいと、かように申し上げるほかないと思っております。
  86. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これにて午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十一分休憩    —————・—————    午後二時二十七分開会
  87. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告申し上げます。  本日、野村吉三郎君、高橋進太郎君及び中田吉雄君が辞任されまして、その補欠として泉山三六君、西田信一君及び藤田進君がそれぞれ指名されました。   —————————————
  88. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 次に、本日の理事会で決定いたしました事項を御報告いたします。  分科会は四個の分科会を設けること。  各分科会の所管事項は、次の通りとする。  第一分科会、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、人事院を除く内閣防衛庁及び経済企画庁を除く総理府及び法務省所管並びに他分科所管外事項。  第二分科会総理府のうち防衛庁、経済企画庁、外務省、通商産業省及び郵政省所管。  第三分科会農林省運輸省及び建設省の所管。  第四分科会、大蔵省、文部省、厚生省、労働省及び内閣のうち人事院所管。  各分科担当委員の数は次の通りとする。  第一分科会は十一名で自民党六名、社会党三名、緑風会二名。  第二分科会は十一名で自民党が六名、社会党が四名、緑風会が一名。  第三分科会は十一名で自民党が五名、社会党が四名、緑風会が一名、無所属が一名。  第四分科会は十二名で自民党が六名、社会党が四名、緑風会が一名、十七控室が一名、こういうことです。  各分科会の主査の報告は三十一日午前中に終了する。  以上でございます。  なお、申し上げますが、分科担当委員の選任は、前例によって各委員の希望をしんしゃくして、委員長において指名することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 御異議ないと認めます。各分科担当委員は公報をもって御通知を申し上げます。   —————————————
  90. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより質疑を続行いたします。
  91. 武藤常介

    ○武藤常介君 私は木材引取税の件につきまして、自治庁長官に二、三お伺いいたしたいと存じます。  今回の地方税制の改正に当りまして、木材引取税の現行標準税率の百分の五を百分の四に、制限税率百分の六を百分の五にそれぞれ引き下げたのでありますが、この木材引取税の件につきまして、従来非常に問題になっておりまして、関係業者からも、また学識経験者からも租税理論の立場から、非常にこの税金は不明確な税金だ。そうしてまた、きわめて不公平な税金であるから撤廃すべきものである、こういうふうな意見が相当あったのでございまするが、今回は政府におかれましては、その一%を引き下げた、こういうことになっておるのでありまするが、その根拠はどこから一%引き下げたのであるか、まず第一にこれをお伺いいたしたいと存ずるのであります。なお、引き下げにつきましては、その財源をどこから求めたか。この大蔵省の資料を見まするというと、別に昨年の総額と今年の総額、三十二年度の総額に変りがない。こういうことになるというと、一体税額の引き下げがどういうふうになっておるか、こういう点につきまして、非常な疑問を持たれるのでありますが、これらの点につきまして、お伺いいたしたいと存ずるのであります。
  92. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 木材引取税でございますが、これは現実に徴税をするという立場から見ますると、素材引取の実態がなかなかつかみにくい、これを裏から申し上げますと、相当の税の取れない部分が存在するのではなかろうか、こういうふうに観測をしておるわけでございます。これを標準税率が百分の五で制限税率が六となっておりますが、この税率を特にこれを一%引き上げなければならない特別の事情は、見当らないのでございますが、今日まで、何と申しますか、そういう徴税の方法が的確でないという意味において、相当逃がしておるものがございますので、この際は税制改革のこの機会に、一%を引き下げますと同時に、一方において適正に、合理的に徴税をやっていこうと、こういう努力をいたしますと、一%を引き下げましても、結果においては税収総額はあまり変らないところでいくことができるのではなかろうかと、こういう特殊な事情によってやっておるわけであります。
  93. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいまの大臣の御答弁によりますというと、税率は引き下げたけれどもが、今後徴税の方法を厳重にして、そして従来と同じ額の徴税をすると、こういうことになっておるようでありまするが、そうするというと、今日までこの税率はきわめて不的確な税率であり、なお、この税金がきわめて不正確な、穏当を欠いておると、こういう点から考えて参りまするというと、今度の税率の引き下げということは、学識経験者の税法の理論や、あるいは一般業者の要求には全く反した結論を出されたと、こういうふうに私は考えるのでありまするが、これは学識経験者やまた業者の要望には何ら関係なく決定したと、こういう結果になっておるんでございましょうか。
  94. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 業者の声も聞いておりまするし、お説のような学識経験者の間においてそういう御意見があることもよく存じておりますが、このたびの一%の引き下げというこの根拠は、先ほど申し上げましたように考えたわけでございます。
  95. 武藤常介

    ○武藤常介君 先ほどの根拠は伺いました。大体この木材の引き取りの現況から参りまするというと、標準税率の百分の五それを百分の四にいたしましても、また制限税率の百分の六を百分の五に引き下げましても、これをほんとうに的確に徴税ができるとするならば、私は相当の額になるだろうと思います。現在の表から参りますというと、大体実際に徴税されている額は、現在の取引数量に比較いたしまして、大体四〇%、四割くらいの徴税しかできていないのではないかと思うのでありまするが、そうするというと、そんなに徴税ができないならば、まだまだきちんとしてうんと取っていいのではないか、こう一応考えるのでありますが、それは非常な誤まりでありまして、ずいぶん徴税には各町村とも相当の困難を感じている、それでもなおかつ四割しか徴税ができないのである。こういうことになっておりますので、これは要するに、この税がきわめて現実的に即しまして穏当を欠いており、また、不正確な税金であり、また公平を欠いておるということが明らかな証拠なのであります。実際から申しますると、町村にいたしましては、あるいは全然課税しない町村もあります。相当の山林の町村でありましても、課税しない所もありますし、また、現在課税はいたしておりまするが、種々なる問題を惹起いたしまして、なかなかこの解決には困難を感じておる、こういうところが相当多いのでありまするが、これらの点を、大臣はどういうふうに観察をせられておりますか。実際形式的な問題ばかりでなく、ほんとうに真相をやはりつかまないと、この税金には非常な無理ができる、こういうふうに私は考えておるのでありますが、いかがでございますか。
  96. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) この素材引き取りの実態を押えることに一段の努力を払います場合は、相当量の税収を納めることができるのではなかろうかということが、現在の見通しでございます。しかしながら、お説のようになかなかこれは捕捉することの困難な実態のものでございます。たとえて申しますと、その伐採をされた山より切り出します、出し口の道路が一本であるというような場合においては、比較的簡単に捕捉ができるわけであります。しかしながら、何本かの道路があったり、あるいは山深い所でこれが伐採されるというような実態がございますと、なかなか一本一本の切り口を押えまして税をかけるなどということが、現実の問題としてはできにくい面がございまして、大へん困難を来たしておるということは、事実でございます。しかしながら、今後は徴税の成績をうんと上げることに熱意をもって努力をすることを指導いたしまして、相当量の徴税ができます見通しのつきました場合においては、この税率をさらに引き上げるというようなことについても、慎重に検討を加えて参りたいと思います。
  97. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいまの大臣の御答弁ですが、実際の状態をよくおわかりにならないで反対の方向を御答弁なされておるというようなふうに私は承わるのでありますが、実際の状態は、この木材引取税は、町村条例を作りまして、大体、伐採してから一カ月以内に引き取れない場合にはどうするかということは、これは非常に問題になっているのでありまするが、ところがなかなか一カ月以内には引き取れない、そういう場合には、大体これは一カ月というのは条例できめるのでありますが、その場合には、立木の元の所有者がその税金を負担するのであるというふうな条例が多いようでありますが、ところが、実際はどうであるかというと、国有林などは伐採してから数カ月大体たっております。それでなおかつ引き取りができない。けれども徴税のときには、その管理者であるところの営林署は納めないで、直接には将来において、引き取ったところの買受人から徴税する、こういうふうなことになっておりますが、最近問題になっておりますのは、買受人から数カ月たってから巻し押えをしておる、役場が。これは違法であるというので相当問題を惹起しております。それは鹿児島県であるとか、あるいは群馬県であるとか、茨城県などにもそういう問題ができております。非常に課税の標準が繁雑であると同時に、徴税面においても、なかなかややこしくって、これはきわめて妥当性を欠いておると私は思うのでありますが、かれこれ考えて参りまするというと、この税金は当然私はこれは撤廃した方がよろしい、こういうふうに考えておるのであります。なぜそういうことを申すかというと、一体この税金は買い受けた材木業者が支払うということが、きわめて理不尽なところに出発いたしておるのであります。まず第一に、この税金の出発はどこから出たかというと、これは立木には固定資産税をかけない、固定資産税をかけないからして、これを伐採して販売する場合には、その固定資産税に大体見合ったところの額を徴税することがよろしい、それにはどういうような方法がいいかというと、これは引取税という名前で取った方がいいというようなところに根拠を発しておる。ところが、現在この方面は一体どういうふうになっておるかというと、大体木材業者というものが引取人でありまするが、現在木材の引取業者はいずれも貧弱でありまして、終戦後、住宅の建築のために、あるいは産業の伸展のために、相当命がけの働きはしましたが、いずれもこれは労務者兼企業者でありまして、全く気の毒な状態であるが、何といっても立木を買うことができなければ商売ができないというところに非常な難点がありまして、立木の所有者には頭が上らない。しばらくの間、固定資産税を払わないからして、立木の所有者が払うべきものを業者である買受人に払わせる、それでも業者は泣き寝入りをせざるを得ない、こういうことでありまして、きわめて弱い者いじめである、実に気の毒な税金である。こういう税金を今日の行政下においては課すべきものでないと、私は信じておるのでありまするが、大臣はこれにつきましてどういうふうなお考えをお持ちになっておりますか。
  98. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 何ぶんお話しのございましたように、立木からは固定資産税が取れない、こういう事情がありますほかに、これを伐採して、何にしても町に運び出しましたときには、搬出の中途において非常に大事なことは、道路、橋梁を重量運搬をする関係上、これがいたむ、こういうところに、実は固定資産税が取れないということのほかに、道路をいためる木材の引き取りについては、税をお払い願わなくちゃなるまいということが、税を、長く、明治以来今日まで引き続いていただいておる事情でありますが、そもそも、それは全国でどの程度の税が取られておるかと申しますと、まあずさんな取り方をしておるという言葉はどうかと思いますが、大体そういうふうに見ておるわけでございますが、それで今日においては十八億内外、二十億までは収入がないわけでございます。そういう事情でございますので、立木そのものからはどうしても道路、橋梁をいためるという点から見ましても、この税をちょうだいしたいと思うのでございます。  将来の問題としてお答えを申し上げますと、今のお話しの通り引取人、すなわち多くの場合には、製材業者が窮屈な事業の中からこれを払わなければならぬという気の毒な事情にあることも、お説を承わってなるほどと存じますので、どの段階からこの税をちょうだいするか、立木そのものからもらうか、あるいは搬出においてはどういう段階においてこれをもらうかというような課税の方式については、一つ十分慎重に検討を加えて参りたいと存じます。  それから先ほど私のお答え申し上げました中で言葉が前後間違っておりますが、徴税成績を上げることに努力をした暁においては、この一%引き下げました税率をさらに引き下げることについても考えをもちます。こういうふうにお答えを申し上げたことにお願いいたします。
  99. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま長官からのお話しで、この木材業者の哀れな状態の者に課税することは、気の毒であるというような感を持たれたことは、私、非常に御理解のあるお言葉であると存じまして感謝いたすわけでありまするが、ただいまのお話しのうちに、たとえば町村の道路に関して木材を出すというと非常に道路がこわれる。これの修理には相当の費用がかかるからと、こういうようなお話がありましたが、これは実際の実情を御承知がないのでありまして、もちろん木材を出せば非常に道路はこわれます。こわれますけれども、実情はたとえば立木を引き取る場合には、この税以外に部落なり、あるいは町村に道路の修理費というものが寄付の形において取られまして、むしろ今まではほとんど車馬の交通がないような道路でも、木材が出るというと道路が非常にりっぱになりまして、そうしてそのために実際は交通を非常に便ならしめておる。こういう実情でありまして、一般の方面から見るのと実際の状態は、そのような差があることを御承知を願いたいと思うのであります。  なお、ただいま私が申しましたうちに、業者の経済状態は果してどういうふうであるかということを申し上げてみますというと、大体中小企業の収益率は三・八二%くらいになっているらしいのですが木材業者は終戦当時は多少の利益もあったようでありますが、今日ではいずれも赤字で、ほとんど方法に困じておりまして、気がきいた工場はないというような状態であります。たまには大企業もありますが、これは別物でありますが、実際零細な企業で、企業とは申しながら、半ば労働であり、半ば企業であるので、非常に気の毒な状態の者がしかも立木の所有者が納むべきものまで引取税として納めなければならぬ。ところが、それならば買うときに安く買ったらいいじゃないか、こういうことが考えられるのでありまするが、現在の状態は工場を休ませるわけにいかないから、命がけになって買っておる。その買うときには、引取税も、実際の利益率も、ほとんど考えないで買っておるという実際気の毒な状態なんでありまして、そういう方面からこういう税金を取るということは、私は相当考えなければならぬことではないか、こういうふうに考えるのであります。  なお、時間もないので最後に、大臣が、将来においてとりあえず撤廃するまでも、その前に税率をいま少しく下げよう、こういうようなお言葉がありましたが、実際においてこれを何とか公平にしかも妥当にやるとするならば、今回は一%の引き下げでありますが、あと三%ぐらい下げてそれでやっても、私は現在の十八億の徴税はできる、その方が業者がお互いに理解して納めることができるのではないか、こういうふうに考えるのですが、これに関する大臣のお言葉を伺いたいと思います。
  100. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 一%引き下げのお許しをいただきましたならば、先ほど御答弁を申し上げましたような趣旨にのっとりまして、一つ厳格に徴税の成績を上げるようにこれを指導いたしますれば、相当なる成績を上げ得るものと信じますので、その暁におきましては、御趣旨に沿いまして税率の引き下げについては、誠意をもって検討を加えて参りたいと思います。
  101. 武藤常介

    ○武藤常介君 ただいま長官の非常に御懇切なるお話を伺いましたが、なおいろいろと私申し上げたいこともありますが、時間の関係上、私の質問を打ち切ることにいたします。
  102. 藤田進

    藤田進君 私はここに提案されております三十二年度予算の関連から、実際にこの予算が執行される場合に、国政に重大なそごを生じるのではないだろうかという点から、若干の点を関係大臣にただしたいと思うのであります。  その第一の点は、過去鳩山内閣以来経済五カ年計画を立てられてきたわけでありますが、    〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕 これが過般来の他の委員会における質疑応答で明らかになった点は、一応三十三年度からやり直しということになったようでありますが、しかし、なかんずく重点施策として電源の開発、基幹産業の振興については、特に力を注ぐということのようであります。そこでまず第一番目にお尋ねしたいのが、電源開発審議会の会長である岸総理にお伺いしたいのであります。ことしの二月二十一日、当時石橋内閣でございましたが、当院の商工委員会におきまして運輸、通産、企画三所管大臣出席を願ってただしたわけでありますが、国鉄の新線の建設と、電源の開発の関係がたまたま競合する場合に、準備を早目に進めた、たとえば運輸省、国鉄の方がどんどん仕事を進めていくために、電源の開発が従って不可能になってくる。せっかくのわが国の水資源をそのために失ってしまう、あるいは朝令暮改、せっかくの国鉄路線をさらに設計の変更をして手戻りがあるというような事案がわが国に、少くとも大きな問題としては、四国と中国地域にあると思います。そういう場合に企画庁長官におかれて、これが調整をはかられるのが至当かと実は考えておりましたし、その点を実は強く要請いたしておりましたが、今日必ずしも企画庁における調整という問題が実を結ばない現状にある。そうなりますと、法制上の企画庁の地位は一応保留するとしても、時の内閣総理大臣であり、電源開発審議会の会長という、きわめて重要なポストにある岸さんとしては、膨大な国費がそのために浪費せられるということ、ないしは重要なわが国の乏しい資源の中で、水資源を国鉄の新路線のために失ってしまうというような場合には、みずからこれらの調整に乗り出して解決をなさるのが至当ではないだろうかと思うのです。この点について具体的に申し上げれば、島根県の江川における三江線と高梨ダムの関係があります。これは私ども当院の委員会の派遣によって、現地も調査いたしましたが、むしろ二者択一でなくて、両立させるべきものだと思われますし、また、四国におきましては、四万十川の開発に関連して、これまた早急に解決されなければならぬ問題が同様あるわけであります。これらに対する具体的な岸さんとしての、総理としての処理の方針をお尋ねいたしたいと思います。
  103. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 電源開発の問題につきましては、いろいろな他の産業、あるいは計画との関連におきまして、いろいろな問題を生ずる場合が少くないのでありまして、これを総合的な見地から調整をすることはきわめて重大であると考えます。御指摘になりました江川の三江線との問題につきましては、実は私が当時鉄道の建設審議会の委員長をいたしておりましたような関係もございまして、多少その案件については、別の見地から私も研究をいたしておったのでございます。この問題は、さらに技術的に、今お話しのように、二者択一のものであるか、調整がさらにできる問題であるか、技術的に研究を当時要する点があると考えまして、それぞれ関係の面において、技術的にさらに一そうの研究をして、結論を早急に出すようにということを、当時申したことがございます。しかし、こういう問題が、ただ江川だけでなしに、他の面においても生ずる、そうして、あるいは鉄道建設の面の意見と電源開発の面の意見とが一致しないというような場合もあろうと思います。これらの問題につきましては、十分実情を調査し、また技術的の面からも十分な検討を行なって、国土の総合的開発と申しますか、全体を総合的に見てこれを調整しなければならぬ。問題の最後は、私は内閣総理大臣としてその問題の最後の調整なり、あるいは決定をいたすべき地位におりますから、相当な途中の、研究途上においてのいろいろな議論はもちろんあろうと思いますけれども、しかし、それがために膨大なる予算や国土がむだになったり、あるいはせっかくの資源が十分に利用されないということのないようにやって参りたいと、かように考えております。
  104. 藤田進

    藤田進君 所管大臣の所見をただしまして、あとで岸さんにもお伺いをいたしたいのでありますが、通産大臣は、先ほど指摘いたしました二月二十一日、企画庁長官並びに運輸大臣とともに、三大臣が商工委員会での確約は、非常に急を要する問題であるから、すみやかに三省間で話し合いをして調整をとりたいということであったようであります。しかし、当時石橋内閣でありましたが、さらに岸内閣に継続して所管大臣でありますし、いたしますからして、おそらく当時の所信というものに変更がなかろうかと思います。念のために、この江川ないしは四国における先ほど指摘した四万十川等の膨大な水資源と国鉄新路線の競合する場合に、どういう考えをもって所管大臣として処理されようとするのであるか。水田通産大臣にお伺いいたしたい。
  105. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私はこの前の参議院の商工委員会で申し上げましたように、中国地方にとって唯一の電源開発地帯であるし、この電源開発をやめるということはできない、そうかといって、鉄道の方もすでに計画を決定して、着々進行中でございますので、ここまで来たら、両立案を考えるよりほかはない、電源開発もできるし、鉄道も敷設する。そのためには、鉄道に設計を変更をしてもらわなければなりませんので、変更するために要する経費、増加経費というものは、これは別個に見る、そうして鉄道に負担をかけないという形で、一つ両立するように鉄道側の善処を願いたい、こういう考えで、今まで両省の次官同士で話し合いをずっとさせましたが、なかなかこの話し合いがうまくまとまりませんので、先般、私から運輸大臣に、どうかそういう方向で運輸省は考慮していただきたいという申し入れをしてある。こういう状態でございまして、私はやはりこれは両立させてやりたいという方向で、今後とも折衝したいと思っております。
  106. 藤田進

    藤田進君 この点について、企画庁長官の現在における所信を伺いたいと思います。
  107. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 先般来委員会で申し上げた通りの方針によりまして、運輸大臣並びに通産大臣と、ほとんど最近連日打ち合せをいたしております。ただ、技術的な面で、なお事務当局の話し合いにまかせておかなければならぬ点があるという結論になりましたので、ただいま通産大臣も申されたような経過をたどっております。
  108. 藤田進

    藤田進君 経過は概略御説明になりましたが、現在では、企画庁長官が去る二月二十一日の商工委員会においては、やはり両立して、これは調整をはかっていくべきだという所信であったわけですが、当時自分は石橋内閣のもとの企画庁長官だから、今日は違うとおっしゃるのかどうか、よくわかりませんが、その所信は今日どのようなことであろうかということで、先ほどお伺いしたのであります。
  109. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) ただいまも全然その当時と変りはありません。
  110. 藤田進

    藤田進君 運輸大臣にお伺いをいたしますが、国鉄の三十二年度予算等の内容並びにこれに付帯する資料を調査いたしますと、山陽線の電化が今度考えられているようでありますし、このことは喜ばしい現象でありますし、いたしますが、山陽線が少くとも岡山付近までの一部の電化の工事を進めていくということになり、引き続いて継続工事としての山陽線の電化が進められる場合に、今後のこれがテンポですね、どういう計画であるのか、私のいただいております資料では不明確でございますから、この点と、それに使用する電力量、概略でよろしゅうございますから、この点をお伺いいたしたい。
  111. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 山陽線の電化計画は、今度の五カ年計画で完成するようになっております。しかし、これは実際にはもう一年くらい早く、四年目くらいにはできるのじゃないかと大体は考えておりますが、計画は五カ年計画のうちで、山陽線全線電化ということになります。また、これに要する電力量は、やはり五カ年計画でできておりまして、数字については、ただいま事務当局から申し上げますが、大体の見通しではまかない得る、こう考えております。
  112. 藤田進

    藤田進君 電力がまかなえなければ、電化いたしましても蒸気機関車を使う以外にないのでありますから、その見通しがなければなりませんが、その見通しの中には、今問題になっております江川の電源開発、最終的には二十二万キロの設備、これが三十五年度までに完成するものとして、見込んで電化というものの需要量をまかない得ることになっておるわけです。その点は御承知でしょうか。
  113. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。つまり江川の電力によらないでも、電化の五カ年計画だけはまかない得る、こういうわけでございます。
  114. 藤田進

    藤田進君 その点具体的に御説明いただきたいと思います。どこからその電力をどのように持ってきてまかない得るのか。
  115. 細田吉藏

    政府委員(細田吉藏君) お答え申し上げます。山陽場線が電化いたしまして、所要の電力量は、一応計算いたしたものでございます。昭和三十三年度から逐次ふえて参りまして、昭和三十七年度におきましては三億五千四百万キロワット時の計画にいたしております。もっともこのうち、大阪管内でございますので、中国の管内は二億四千という計画でございます。で、この三十七年度数字は、中国電力管内の需要電力量、これは日本電力調査委員会資料でございますが、これに対しましてほぼ四%に相当いたすのでございまして、ただいままでの話では今後の中国地区の電力の開発の増強と見合って、この程度ならばいけるというふうに承わっておるわけでございます。
  116. 藤田進

    藤田進君 こまかい議論は時間の関係でできませんが、具体的に、御承知のように国鉄が自家発をどこかに建設してこれをお使いになるならそれ。そうでなければ大きくは九つのブロックに分れておる今日の電力の形態の中で、六十サイクルならば六十サイクルで、どこから幾ら持ってくるという見通しがなければならぬ。まかない得るだろうというようなことでは、私どもが商工委員会において非常にこまかく検討いたしまして、電力関係参考人も呼び、この二月二十一日も三名の参考人を呼び、政府委員からもいろいろただしたことでありますが、三十二年度からしばらくの間は中国地域においては——これは一例でありますが、不足の状態が続く、今日異常渇水とはいいながら、全国的に制限をしているというような実情が出てきているのですが、こういう渇水時を考えないまでも、各地区別に電力が不足する。だから計画を変えて、これが強化をはからなければならぬというのが、政府説明なのであります。そうなりますと、関西地域から、関西一円の電力というものを中国に送るという計画なのかどうか。この点は自家発を作るとおっしゃるのか。この予算に関連して三十二年度焦眉の問題になっておるわけです。
  117. 細田吉藏

    政府委員(細田吉藏君) 国有鉄道の自家発電は計画いたしておりません。電化につきましては、買電でまかなっていくという考え方であります。それから中国地区が電力が非常に窮屈であるということにつきましては、私どもも承知いたしておるのでございまして、ただこれを三十二年度は実は電化は大阪、姫路間でございまして、山陽本線が姫路までが一応でき上るということになっておりまして、これにつきましては具体的にいろいろ計画がもう進められておるのでございます。その先の方につきましては、今後の問題になろうかと考えております。
  118. 藤田進

    藤田進君 それは説明しがたいところだろうと思うのだが、説明ができるような段取りで答弁されるから、私は追及せざるを得ないので、運輸大臣も言われたように五カ年計画の電化は繰り上げてでも完成見込みがあるということなんです。三十二年度だけじゃありません。その場合に一体電化されたときの電源というものはどこでまかなうのか、その需給が見通しがないのに電化してみたところで、電気機関車は動かない。これがたまたま最終的には二十二万キロに相当する江川の開発というものがない限り、この地域への電力の需給のバランスをとることはできないということになる。それのみか、一たび停電等があった場合に、詳しい資料はあるけれども、省略しますけれども、一部例を申し上げると、少くともあの地域で水力の開発のない限り、一般の利用者が困るのは、ほとんど火力でまかなうという結果になる。設備は水力、火力、水主火従という時代は過ぎ去って、火力時代になってくる。その事故のあった場合に火力を急に回すといえば、四時間前後その操作にかかっておるわけです。今の近代設備でもかかっておるわけです。その間停電があったならば、水力ならば間髪を入れず送電をすることができる。こういう技術的な操作から見ても、どうしても水力の開発というものがなければ、原子力時代になったとしても、その操作ができないということは、これはだれもこれに対して抗弁をすることができない実情にある。だから江川の開発なり、四国で言えば四万十川の開発というような、この点は重要さというものが出てくるわけです。これについてこまかいことはおきますが、以上のような諸点から、おそらく通産大臣も企画庁長官も、この際江川の関係は両立する案で調整をいたしたいということになるのが、これは当りまえのことだと思うのです。運輸大臣はこの点について過般商工委員会で詳しい質疑は行なっているから、問題はおわかりだろうと思います。この三江線と開発というものをどのように調整されようとしているのかお尋ねしたい。
  119. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 三江線と江川の電源とをいかに将来調整していかなければならぬかという問題は、これはむろん重要でありますが、その前にただいままでお話しの、五カ年計画の電化の江川のあれでやれるかというと、これは私ども五カ年計画で、これは短かく言えば、ただいま申し上げている四年でやりたい。ところが江川の開発が今の状態から見ると、これが五年や十年でできょうには私どもはちょっと思えない。それを江川の電源を山陽線の方へ持っていって、それでもって山陽線の電化をやるとすれば、山陽線の電化は十年もかかることになります。ただいま江川の開発も御承知通り地元では絶対に反対しております。第一水源を握っておる知事が断じて承知しない。八百戸の、日本の歴史にない八百戸の戸数を移転するということが、五年や七年でちょっとできょうがないということは、今日まで過去の例でもわかっておる。三十軒か四十軒で五年や七年みなかかっておる。ですからこの江川の電源を中国において必要とするという点は、もちろんこれは重大な考慮を加えなければなりませんけれども、これを五年か四年で山陽線へ持っていって使おうということは、事実上できないことである、こう考えております。
  120. 藤田進

    藤田進君 しからばこれは開発は放棄して、やはり三江線を付けて、水没になろうと、将来これを付けるということになるのか。今三江線の新設というものも、今後まだ数年要するわけです。あなたがお出しになっている資料から見ても、このまま予算計上ができたとしても、今年度三億三千万円のようですが、さらに来年度は四億、その次は五億五千万円、そういうことを見通しても、昭和三十七年まではかかるようになっている。ところが、電化の方は四カ年でやるとおっしゃるが、今かりに着手したところで、それは来年や再来年の電力にはなりません。それだけに非常に急を要する問題でもあるが、電化とともにこれに見合う電源の開発というものがなければ、ただ架線を引いただけで電気機関車は走らない。これはやはり今から政府としては調整される必要があるのではないか、こういうことを私は申し上げているわけでありまして、この点、しからば、その水資源は放棄するということに通じるのかどうか、運輸大臣のお考えを伺いたい。
  121. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) この江川の水源というものを放棄するという意味ではありません。これは何年か将来の問題としては今からこれは考えなければいけない、こういうことは私どもそう考えますけれども、しかし江川の問題をほかにして、この電化五カ年計画は、現在の中国における電化の電気量の需給からいたしまして、わずかに全体の四%ですから、それは大体の供給を受け得るという計画のもとに、この江川のことを考慮に入れないで五カ年電化の計画というものは立っております。ですから、その江川の問題をそれだから放棄するという意味ではなくて、これは別個に考慮しなければならぬ問題であると思うのですが、電化の五カ年計画を山陽本線の五カ年計画に結びつけて、この電力量をもってそれをまかなうのだということになっておらないという点だけを申し上げたのです。
  122. 藤田進

    藤田進君 その点はもっと検討していただきたいと思うのであります。五カ年計画はこの開発とは別個にまかない得るとおっしゃるが、非常に不経済なものになるわけです。当該地域でまかなわないで、これが木曾川の辺から山口やあるいは広島、岡山の辺まで送電をするという計画を恒常的に立てるということは、そういうことは成り立たないはずなんです。これは緩急に応じて、急を要する場合にはそういうことは一時的にいたします——この点の説明はない。自家発を設けるとはおっしゃってない。ほかに設ける地点はないのですよ。しからば、どこから足りない部分を持ってくるか。四%とおっしゃるが、あらゆる産業において、消費電力というもの四%、これは四%よりもっと大きいと思いますが、相当な大きなウエートだと思うのです。電力量に直してもそうです。しかもこれはほとんど二十四時間、まあ深夜は別として、お使いになる質の電力だと思う。こういう点から見て、どうしても水資源というものをここで放棄するわけにはいかない。それは将来考えるのだとおっしゃるが、また岸総理も、これは今後技術的にその他調整をはかってと、ゆうゆうとしておいでになるが、ここに出されている昭和三十二年度の国鉄の予算は、昭和三十二年度からか電源開発をするとすれば、水の中へ没するのです、水没になるのです。昭和三十一年度でも一部、ほんの一部ではあるが、残念ながら水没になるのです、一部は。三十二年度の今出されているこの計画というものが三億三千万円をお出しになっていると思うが、これがずっとおやりになると、これは物価その他は別として、今の予想では約二十五億というものがこれは手戻りになるのですよ。これはやっといて、あとから必要があれば電源は開発したらいいとのんきなことを考えておられるが、来年の問題で——来年といっても、ことし四月一日からの問題で、あとわずか。あと考えるということになれば、これは各省大臣考えがお聞きになるように岸さん、これは違うのですよ。この重大な年間十数億のこれは資源なんです。この一カ所だけで御承知のように電力は三十年も五十年も使えるでしょう、水力は。膨大な水資源というものが、これは国鉄が新路線をつけないでやめてしまうということは、これは多年の三江線を熱望してきた地元の関係者としては放棄できない。それはわれわれにもわかる。だからこれはやはり通産大臣の言う通り両立させ得る、技術的に。この点はこの予算案と並行して解決されなれば、予算案だけは通しておいて、工事はやらさしておいて、なに三億や四億の金だから、そいつは放棄してまたやり直せばいい。平均三十数メートル路線を上げればいいと思う。六十数メートルの路線のようですから、平均三十数メートル路線を上げて山の上を通しさえすればこれはできるのです。両立できるのです。それを一たん三十二年の四月一日から何かこの工事をやっておいて、年々二十数億の金を使っておいて、それではというようなことで国の政策として、長期計画を立てなければならぬこの種の問題として、議会としては許せる問題ではないと思うのですよ。この点は運輸大臣、いかがですか。総理大臣からも、この点についてもっと早急にこの問題が解決されなければならぬと思うので、さらに意見を伺いたい。
  123. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お話のような次第ですから、これについては、政府部内においてなお順次進めていきたいと考えております。
  124. 岸信介

    国務大臣岸信介君) きわめて急ぐ問題として解決調整をいたします。
  125. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 先ほどの運輸大臣の御発言中、言葉を返して大へん恐縮でありますが、少し穏当を欠く内容がありましたから、取り消し、あるいは修正をせられたいと思います。ちょうど水田通産大臣もお見えになっておりまするし、公益事業局長もお見えになっておりますから、この点よく実証願えると思います。先ほど運輸大臣の御発言の中に、ただいま問題になっているところには八百戸の水没家屋があるので、これを処理するのには七年とかあるいは十年とかかかる、こういうことをおっしやいました。それは将来のことでありますから、私は何年かかるか、ここで断定をいたしませんが、精力的にやればそんなにかかるはずのものではないと思います。特にその発言の中で、過去においても三十戸ぐらいの家を移転するのに五年ぐらいかかった、こうおっしゃいますが、これを数字をあげてお述べになりましたが、これははなはだしく事実と相違することであります。もし三十戸の水没家屋に五年も十年もかかって移転をしなければならぬようなことでありますならば、昭和二十七年以来、ここに電源開発審議会の会長の岸総理大臣もお見えになりますが、あの五カ年計画が今日のように着々と実現して軌道に乗ってきたでしょうか。私は、こういう認識のもとに権威ある国会の委員会で発言されることは慎しんでいただきたい。もし私の言葉に反論があるならばしていただきたい。
  126. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 三十戸に五年かかったというのは言葉が足りなかったかもしれませんが、私の地元において、三十戸ばかりですが四年ばかりかかっておる。六十戸のがやはりそのくらいかかっております。それですから、ただそのことを申し上げただけであります。
  127. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それはどこの川の何という発電所ですか。
  128. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 長野県の美和ダムです。
  129. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それはどこの企業体がやったものですか。
  130. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) これは電源開発の事業として、企業体はどこでやったか知りませんが、長野県の美和ダムというのでもって、この数年やっております。
  131. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そんなわけのわからない怪しげな例を引例されないで、どこの川の何という発電所で出力は何キロでいつやったか、それをお述べ願いたい。
  132. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 長野県北伊那郡美和村という所を通っている川でありまして、三万二、三千キロであります。
  133. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私の申し上げているのは開発者です。開発者はだれがやったかということです。
  134. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 長野県ではないかと思いますが……。
  135. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 わかりました。私は電源開発の問題については一つ考えを持っておりますが、最近多目的ダムを中心として水力発電所まで県営でやりたいという動きが相当ありまして、しかも県営でやられる発電所というものは、多額の固定資金を投入しておるにかかわらず、建設のスピードが非常におそいことを嘆いております。これは毎年予算をつけて、予算が終ればそこで工事を中断して次の工事にまた移っていく、こういうことをやっておりますから、非常にスロモーなんです。ただいま電源開発会社あるいは九電力会社が専門家の電源開発としてやっておるものは、そんなスロモーなものではありません。これはもし私の発言が間違っておるならば、水田通産大臣から一つ御答弁を願いたい。三十戸のうちを動かすのに五年がかっていたのじゃ、日本の電力の不足状態は緩和しません。そういうでたらめな答弁差し控えて下さい。実例があったにいたしましても、そういう工合にこれはきわめて例外的なことです。今話題になっておるような、こういう大きなものはスピーディにやらなければならぬ。その辺をはっきり御答弁願いたい。
  136. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 令運輸大臣のおっしゃられたのは長野県の県営だそうでございます。で、お聞きのようにこれは特殊な事情があったらしくございまして、これは一般の例ということにはならないんじゃないかと考えております。
  137. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 栗山君簡単に願います。
  138. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 よくわかりました。私は運輸大臣によくわかってもらえば質問する必要がないのです。運輸大臣は長野県の運輸大臣じゃないわけだ、これは日本の運輸大臣ですから、もう少し広い視野に立って、一般的な問題を一つこういう権威ある委員会のときには例証していただきたい。特例的な問題を引っぱり出してきて、そうして今藤田君の質問に対してこれをあたかも反証的に述べられようとするから問題は紛糾するのです。しかもなおかつ、運輸大臣は決して私の申し上げていることを理解されていないのです。まだ一生懸命に自説は正しいと思ってただいま答弁に立っておられる。こういうことでは私は問題が進展しないと思う。議事進行できないと思う。もし運輸大臣がどうしても聞かなければ藤田委員の発言時間中でありますが、藤田君の了解を得て、徹底的にわかっていただけるまでこれは議論するより道はないと思う。
  139. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。いや、私は何もそれを固執するという意味じゃありませんが、ただこの美和ダムのことが、私が二年半もその中に、途中から入って親しく苦労して、非常に困難だということを感じましたから、八百戸に上るものはなかなか容易なことでない、こういう考えから申し上げて、それで五年間の私どもの計画の中にそれが入るということでは、山陽線の電化はまかなえない、こういうことを申し上げたにすぎません。
  140. 藤田進

    藤田進君 重ねて運輸大臣にお伺いをいたしますが、あなたの説でいきますと、昭和三十二年度を含めて、今後六カ年間この三江線の開通には要するようになっております。これには一応二十五億になんなんとする経費が盛られておる。あなたの説でいけば、さように時間がかかるんだが、とりあえずこれはもう進めていく、三十二年度以降三十七年度まで進めていって、もし開発するならば開発をおやりなさい、通産省、所管大臣の方でおやりなさいというように聞えるわけです。かように閣内の意見が不統一のまま三十二年度予算提出されているわけです。三十二年度すでに水没になるという……。これは与党とか野党とかいう問題じゃないと思うのです。この点は、今なお既定方針通り運輸大臣としてはこの予算が通過する限り進める、こういうことなんですか。
  141. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 私は、山陽線の電化に関係ないからしてこのまま進めていくのだという意味では決してありません。これはやはり早急に政府において調整をつけなければならぬ、こういうふうに考えております。
  142. 藤田進

    藤田進君 その調整ということで、すでに二月からそういう約束があり、本日のところ、いまだその解決を見ていないままに予算案の通過をはかろうという所存のようでありますが、これが見通しにつきまして、通産大臣並びに企画庁長官の今後の対策なりを含めてお伺いいたしたいと思います。
  143. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) ただいまの予定の線路に比べて、先般委員会でも話がありましたように、技術的に、また資金的に新しい企画が必要でありますので、その関係で、先般二月のあれは二十一日でしたか、あれ以来検討はいたしております。誠意を持ってそれは二つが一つにまとまって仕上げるようにということは検討はいたしております。ただ技術的に、あるいは事務的に事務官の方で検討をさせてきたそれが十分了解点に行っておらず、従って、ただいまなるべく早くごく最近のうちにその結論を、いい方の結論をもらいたい、こう思ってなお努力を続けております。
  144. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私の方もさっき話しましたような方針で努力中でございますが、日が迫って参りますので、聞くところによれば、鉄道建設審議会が四月三日に開かれると聞いておりましたので、四月三日までには話し合いをつけたい、で、こういう問題があるから、政府部内の話し合いを十分つけてから決定してもらわないと大きい問題が起るからということも、鉄道審議会の会長の方へ私どもの方から申し入れをしてございまして、ことしの実際の予算を決定する前に解決したいと考えております。
  145. 藤田進

    藤田進君 聞くところによりますと、すでに電源開発会社の方では一億前後の調査費その他を投じているようであります。しかも三十二年度から水没になる、三十一年度も一部はあるが、これはまだ大した問題ではないが、三十二年度ここに提案されている予算の部分から少くとも手戻りになる、両立をいたしますと。そういう非常に、従来内閣がしばしば変ったせいもあるのか、非常に国政がそごを来たしているわけです、この点に関する限り。私はお聞きの通り岸さんもお気づきだと思うが、運輸大臣の方はとにかくこの予算が通った以上、おれのものだという格好で進めようとなさっているのです。それに間違いないです。従ってまあ本日の言明を尊重いたしまして、今後早急にこれが調整をはかり、水資源の放棄をしない方向でおそらくおやりになるだろうと思うが、この点お聞きの通りでありまして、閣内の意思が不統一のまま予算案の提出に及んでおるわけでありまして、岸総理におかれても、この際内閣総理大臣としてのやはり調整をせられる時期ではないだろうか、そういうほんとうに重要かつ国家資源をどうするかという問題になっているわけでありますから、今通産大臣は四月三日ということでありましたが、あるいはたまたまその当時がこの予算案の成立するかしないかの時期でもあろうかと思います。岸総理におかれても、重ねてこの点、時間的な面を考え合して善処なさるように要望いたしたいと思います。そのお答えをいただきたい。
  146. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 十分緊急な問題としてこれが調整をいたします。
  147. 藤田進

    藤田進君 運輸大臣の方ではこれはやはり予定の通り、現地の実情はごらんになればわかりますし、いたしますからるる申し上げませんが私どもは商工委員会として各党が現地調査もいたしております。これが両立させるということについて、国鉄の部分に関する限り、さして問題はなかろうかと思います。これが建設費について、若干の増高を見るでありましょうが、これは通産大臣の言明のごとく、処理が可能だと思われる。従って、予算がもし通過いたしましたあかつきも、三十二年度予算の執行については、十分その緩急、順序を考慮する用意があるかどうか、この点を重ねてお伺いしておきたいと思います。
  148. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。政府部内の調整によりましてこれを進めたいと思っております。
  149. 藤田進

    藤田進君 私がお尋ねいたしておるのは、三十二年度予算通過後の問題はやはり運輸大臣の所管に移るわけで、この調整については、四月三日という通産大臣お話もあるけれども、この種問題がさようにここ一週間や二週間でそんなに簡単につくとは思われない。また現地では、少くとも昭和三十二年度の現地の測量なり、なんなりということも若干日時はかかると思われる。そういう用意がなければ、空論になると思う。この点を運輸大臣の所見としてお伺いいたしたのでありまして、調整ということは、もとよりお約束になったのでありますが、その調整のつくことを予想しながら予算執行をさるべきではないか、この点についてどう考えるかということであります。
  150. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 政府の方で急いで予算のこの問題の調整をいたしまして、それから進めていかなきゃならぬと考えております。
  151. 藤田進

    藤田進君 時間が参りましたので、以上をもちまして私は終りますが、総理大臣ほか各省担当大臣からもここに言明、約束されたように、やはり早急な調整をぜひはかってもらいたい、このことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  152. 西田信一

    西田信一君 私はまず岸内閣総理大臣お尋ねいたしたいのでありますが、それは岸内閣の基本的な政策に対する考え方についてでございます。岸内閣は石橋内閣政策並びに予算を受け継いで、経済政策の基調にも変化はないと明白にお答えになっておるのでございます。従いまして、岸内閣の掲げておられます重点政策は、今後五カ年間に日本経済の規模を二倍に拡大する積極的な産業政策を推進をするということ、また、一面におきましては、国民皆保険その他年金制度の確立などの一連の社会保障制度の充実をはかる、この二つが二大特質と考えるのでございます。そこで大臣お尋ねをいたしたいのは、この両者の関係をどう考えておられるかということでありまして、つまり経済規模の拡大による雇用と生活水準の引き上げ、これを第一義として考えて、社会保障をこれらの補完的なものとしてお考えになっておられるのであるか、そういう御方針であるか、それともまた、まず社会保障の充実、これを先に考えていく御方針であるか、こうお尋ねいたしますのは、この点が将来の岸内閣の施政並びに経済政策方向を定めると考えるからでございます。この点について総理大臣の御所信を伺いたいと思います。
  153. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今後の施政の大きな方針として、産業基盤の拡大という面と、それから社会保障制度の拡充というこの二つの点は、石橋内閣以来の重要なる施政の方針でございます。その関係についてのお話でありましたが、私どもはやはりさらにそれを包括して考えるならば、国民生活を向上し安定する、そうして国民の福祉を増進するということにあると思います。そのためには経済の基盤を拡大し、産業を繁栄せしめて雇用の増大もはかって、一般の国民の生活の向上も期さなくちゃならない。しかし、この自由主義経済のもとにおきましては、そういう繁栄なりあるいは経済規模の拡大というものが、同様にすべての国民に行き渡るかという面を考えてみまするというと、現に最近の好景気だと言われておりながら、中小企業の面であるとか、あるいはいろいろの面におきまして、国民のうちにその景気の利益を十分に受けない面があるわけであります。こういうふうに国民の間にそういう政策が行われた場合における差ができてき、それが均分な形において行き渡らないということは、これは政治の上において考慮していかなければならぬ問題であります。そこに社会保障制度ということを常に頭に置き、これを推進する考え方を持たなければならない、こう考えてきてみまするというと、今の御質問のように、どちらを先にし、どちらをあとにするという問題ではなくして、これは常に施策においてこの二つの点を重大な問題として考えなくちゃならぬ、それで前後とか、どちらを先にしてどちらをあとにするということじゃなくて、両方をあわせ行なっていくというのが、私どもの考えの根本であります。
  154. 西田信一

    西田信一君 次に、私は人口対策についてお尋ねをいたすのでありますが、わが国の人口がもうすでに九千万を突破したのは昨年のことでございます。しかも、年間なお百万以上の自然増加がございまして、この狭い国土で一億の人口を擁するのはおそらくは昭和四十年ごろではないかと考えるのであります。国民生活にこの人口圧力が異常な状態で加わって参っておりまするし、今後わが国の経済政策の上に人口政策の要素を十分に取り入れられ、特に雇用問題にその政策の焦点を置くべきであると考えるのでございますが、残念ながら、三十二年度予算に現われておりまする人口対策というものは、きわめて少額であって十分とは言えないと思うのでありますが、人口対策こそ、いろいろ諸政の基本である、こういう観点から政府人口政策に対する御所見をまずもって総理大臣から伺いたいと存じます。
  155. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この人口の問題はお話通りきわめて重大な問題でありまして、考えようによりますというと、すべての政策、施設というものは、これの解決と申しますか、人口問題から生じておるいろんな面を是正して、全部の国民に、先ほど申し上げたように、生活の安定と向上をはかるということになるわけでありますから、すべての政策がこれに関係を持ってくるわけであります。ただ、人口問題自身を取り上げまして、これをどうするかという問題を考えてみますというと、なかなかこの問題を一つ政策でどうするというわけにはこれはいかぬと思います。だからやはり一面においては経済基盤を拡大して産業の繁栄をはかっていくという問題と、それから同時に、社会保障制度の拡充によりまして、これらのどんな人々も一応生活の安定といいますか、が確保せられるというふうな政策をなしたい。もちろんわれわれは、このために国内におきましても、人口の非常に稠密な所と比較的まだ開拓の余地のある所へ相当な人口の移動も考えていかなければなりません。あるいは海外に向っての移民その他の問題もありましょうし、いろんな点も考えられますけれども、根本としては、やはり産業の繁栄を期してそうして雇用問題を解決していくということが私は大事である、かように思います。
  156. 西田信一

    西田信一君 私は、人口問題は量的な調整をはかる、こういう問題も重要でありまするが、それと並んで人口収容の問題がきわめて重く考えられなければならないと考えるわけであります。最近の国内における人口動態を見ますと、非常に不生産的な都市過度集中というような傾向が非常に見えます。ことに東京、大阪等の大都市を含む都府県に向って、その傾向は顕著であって、地域傾向の状態が非常に現われて参っておりますが、ところが、この人口問題に対する政府施策は、消極的な人口規制、こういう面以外については比較的考えられておらないではないか、言いかえまするならば、国内におけるところの、ただいま総理からもお話がございましたが、人口の地域調整、こういう点について、もっと言いかえまするならば、未開発地域の人口移動計画というようなものが真剣に取り上げられて、もちろんこれに対して経済的な経済政策というものが裏づけにならなければなりませんが、そういうような長期計画というものが果してどのように立てられつつあるかということについて、経済企画庁長官からお答えをちょうだいしたいと思います。
  157. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 人口問題につきましては、ただいまの雇用政策から申しますると、第一次産業から第二次、第三次産業部門へ転向するものがかなり多い、従って、そういうふうな新しい国の貿易あるいは消費傾向から起るところの需要に対して、労働力人口をなるべく吸収せしむるような予算措置をとる、あるいは財政投融資計画を立てるということも一つでありますが、そのほかに、全国十七地区にわたって総合開発計画に基いて地区開発をやっております。ただいま東北開発の促進法も国会に提出する運びになっておりますが、北海道その他を含めるところの地方の主として資源開発をいたします。その目的は、地区別の労働力人口の吸収対策にあると、こういうふうに考えております。
  158. 西田信一

    西田信一君 地域開発によって人口を吸収するという考え方は、ただいまの御答弁でうなずけるのでありますけれども、私がお尋ねをしたいのは、一つの国内における人口調整、人口移動計画というのが立って、そしてそれを裏づけするいろいろな開発計画なり、あるいは経済政策というものがその裏づけになるべきだ、そういうようなもっと一歩進んだところの人口地域調整というものが行われてしかるべきじゃないか、こういう点について、どうお考えであるかということをお尋ねいたしたかったのであります。それからなお、人口問題についてもう一点お聞きをいたしたいのでありますが、それは人口構造の問題、最近出産が比較的減って平均寿命が延びたというような関係から、今後当分の間成年人口、つまり就労年令人口が非常にふえる傾向にあるようであります。むしろ年間の人口増加を上回るのじゃないかというくらいにいわれているのでありますが、そういたしますると、本年新たに百万以上の就労人口がふえる、こういうことになると思うのでございます。そこで、政府は経済政策と並行して完全雇用の問題を強く打ち出しておられますが、こういうような特に人口増加に伴う就労人口の増加というようなことが、十分計画の中に取り入れられて、これらの調和の上に立った完全雇用計画を立てられておるのかこの点に対する具体的な対策がございましたならば、お伺いをしたい。
  159. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 前段の人口配分計画をどういうように考えているかということにつきましては、たとえば北九州とか、その他人口の過剰に集中する地区につきましては、分散計画を立てて、新しい企業あるいは公共事業を中心とする分散計画を持っております。それは建設省ないし労働省において詳細御説明できると思います。  それからなお、後段の点につきましては、昭和三十一年から五年までは平均九十九万人ふえます、昭和三十六年から四十年までは百十四万程度ふえます、それから昭和四十一年から四十五年の間は平均がぐっと減りまして、四十八万人ぐらいの増加にとどまる、これは学生の労働力——卒業生の人口であります。これが一番今の雇用対策として取り上げなければならない重要な点だと考えております。その点につきましては、経済計画を立てます場合に、ただいままでは年国民総所得の伸びを五%に見ておりましたけれども、ただいまから七ないし八%の伸びは、わが国の経済力においてはそうひどいものじゃないという見解のもとに、新しい五カ年計画はその線に沿って、貿易ないし産業規模を考える。そうしてただいま申し上げました学生のうち、まず最初の五年は七十五万、その次の五年はまた七十五万ぐらい、その次の年はずっと減りますから、そういうような傾向を合せまして十年ないし十二年で吸収し尽せるような経済構造体系を立てたい、こういうように考えております。
  160. 西田信一

    西田信一君 労働省の地域開発に伴うところの人口調整問題あるいは雇用問題について、具体的な計画ができておるという企画庁長官のお答えでございましたが、労働大臣がお見えになっているようでございますから、労働大臣から一つ御所信をお伺いしたいと思います。
  161. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 資源開発は建設関係の方で扱っておりますが、完全雇用問題についてのお尋ねだと思いますから、簡単にお答えをいたしたいと思います。  先ほど企画庁長官の御答弁にありましたように、大体今年の経済の伸びを七・六%とわれわれは押えまして、それの必要な雇用量の増大は、大体八十九万と考えております。そこで今年の十四歳以上の人口増加による者が大体百三十万人と見て、それの六八%が雇用量でございますから、大体八十九万、これが需要と供給が大体同じであります。ところがこの完全雇用の見通しに対しましては、今、宇田長官が十二、三年かかるとおっしゃいましたが、まさにその通りであります。現在われわれが雇用可能と見ておる数は大体二百二十万から三十万の範囲内であります。そのほかに潜在失業者等がございますから、これは現在新しくふえる労働力、雇用量の増大というものが同じような数である以上は、現在の潜在失業者その他を吸収するのには、やはり経済計画を今日よりも非常に大きく増大して吸収していく以外に道がないということでございますからそういうような方向考えたい。もう一点は、先ほど総理大臣のおっしゃいましたように、ただ単に企業だけが拡大せられましても完全雇用にはいかないと思います。それはやはり社会保障を拡充強化いたしまして、現在六十五歳以上の者、あるいは十八歳未満の者等は大体腰だめで申しますと二百五十万ばかりで労働市場を圧迫いたしております。こういう方々が社会保障の拡充強化によりまして、養老年金であるとか、あるいは少年者が労働市場に出ないようにするというような社会保障を兼ね行われなければできないのでありますから、われわれの完全雇用は一面において経済の拡大、他面において社会保障の拡充強化ということによって完成いたしたいと考えておる次第であります。
  162. 西田信一

    西田信一君 次に、運輸大臣にお伺いいたしますが、国鉄運賃の引き上げその他を財源といたしまして、国有鉄道の輸送力の増強の実施計画を立てられつつあるわけでありますが、この輸送力増強の具体的な計画の樹立に当って、私は中央集権と申しますか、そういった輸送力の強化を考えてはこれは適当ではないのではないか。と申しますることは、ただいまも人口問題等に関連してお話がございましたが、いわゆる国土開発計画、これらと十分な調整をはかっていく必要があろう、そうすることによりまして、あるいはこの計画の内容にも多少の考え方が変ってくるのではないかというふうに考えるわけでございますが、これらの国土計画との関連をどのように調整する御方針であるか、運輸大臣の御見解を伺いたい。
  163. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) このたびの五カ年計画は、現在の輸送の隘路を打開することに中心が置いてあります。従って今あなたのお話のような中央集権というのでもありませんが、幹線の方に割合重きを置いて電化してもらっております。しかし新線建設その他におきまして、また幹線でない所でも今度の五カ年計画で相当に輸送力の増強をはかる面でやはり国土開発の面も考慮に加えてやっております。
  164. 西田信一

    西田信一君 そこで関連してお尋ねいたしますが、輸送力の増強、これにつきまして私は北から南に長い日本の現状から考えまして、これはわが国を縦貫する動脈幹線の輸送力の確保、こういうことはきわめて重大な問題と考えるわけでございます。すでに関門隧道もでき上って非常な効果を発揮しておりますが、特に青函航送は非常な輸送隘路になっておりまして、もうすでに二十年余にわたって基礎調査が進められ、またすでにこれは国会におきましても敷設法に追加をされておりまして、すでに技術的な検討も終ったように伺ったわけであります。国鉄当局からある程度の調査結果も発表されたように伺っておりますが、その調査の結論はどうなっておるかということについて運輸大臣から伺いたい。
  165. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お話のごとく青函につきましては、多年の問題であり、ことに技術的には大体調査ができ上っておりますが、その調査の結果は、もし必要があれば政府委員から申し上げますが、大体非常に条件がよくてでき得るという結論を今のところ得ておるわけです。ただしかしながらこれはこのたびの国鉄の五カ年計画のうちに入っておりませんが、しかしながら今お話の北海道との関係から、どうしてもこれは急速にやりたい。私ども運輸省自体では今さよう考えております。またこの予算でも済みましたならば、国鉄として事業並びに資金を別個の計画としてこれに一つかかっていきたい。これに伴いまして四国との連絡の鉄橋の問題もあります。これからも一応の見通しもついておりますので、これを両者合せますと、ちょうど青函が六百億円、四国の方が四百億、合せて一千億円というものを何とかして一つ事業と資金の計画を別に立てて、一つ政府の方へ私どもから申し出て、それで一つこれを急速に進めたい、今のところさよう考えております。
  166. 西田信一

    西田信一君 技術調査の結果はきわめて良好であり、しかも工費等の見通しも立った。そこで運輸大臣としては急速にこれを進める考えを持っているということでございまして、まことにけっこうだと思いますが、もう現況におきましてもきわめて輸送の隘路になっており、悲惨な洞爺丸事件を想起するまでもなく、交通安全の見地からも、またあるいは私は航送という問題とトンネルによるところの輸送とでは、将来の経費の点でもかえって有利になるのではないかというようなことを考えていますが、しからば運輸大臣としては明年度からでもこれを実施する考えで御推進なさる御意思があるかどうかという点について、なお確認をする意味で伺っておきたい。
  167. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) これは国鉄をして事業と資金の問題を別個に取り上げさすとしても、やはり国会の御決定がなければやれないことであります。しかし具体的にはどうしてもこの夏において一つそういう線に進めていきたい、こう考えております。
  168. 西田信一

    西田信一君 次に、私はわが国の北方における近海漁業の安全操業に関連してお尋ねをしたいのでありますが、農林大臣が何か御都合が悪いようで御出席ないようでありますが、幸いにこれは外交にも関係する問題でございまして、外務大臣がおられますので便宜上お伺いをしたいと存じます。日ソ国交回復後なお北方沿岸漁場におきましてはいろいろ領海侵犯等の理由によって拿捕事件が相変らず頻発しておるということでございますが、その状況はどのようになっておりますか。おわかりでございましたら伺っておきたいと思います。
  169. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今日なお漁船で向うにつかまって帰って来ないものが九十八隻、漁夫が二十一名と相なっております。そのうち最近においてつかまったも一のが四隻でござまして、うち一隻は帰って来ておって、三隻がまだ残っておる状況でございます。
  170. 西田信一

    西田信一君 しばしばの各種委員会におきまして問題になっておりまする例の領海の問題に、三マイルであるか、十二マイルであるかという問題でございますけれども、いまだ未解決のままにございますことは残念でありますが、外務大臣お尋ねをいたしますが、たしか一九五六年と心得ますが、英ソ漁業暫定協定というものが締結をされて、しかも現在もなお効力が継続しておる。このように伺っておるわけでございます。その暫定協定は、ソ連領北部沿岸及びソ連領の島嶼の周辺漁場におきましていわゆるわれわれが公海と心得ておる海岸線から三マイルないし十二マイルの距離の区間の中において、英国政府が漁猟することに同意する。こういう内容のように承知をいたしておるわけでございますが、外務大臣はこれらの英ソ漁業暫定協定の内容について御承知になっておられまするならば、どういう内容であるかお伺いをいたしたいと思います。
  171. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問の英ソ間の漁業協定というのは、一九五六年五月二十六日にモスクワで締結せられた英ソ漁業条約であると思います。右協定によりますと、ソ連政府は、これはイギリスの連合王国の港に登録されている漁船に対して条約所定の海域内においてソ連領から海岸を離れること三海里と十二海里の間で漁業ができるということを認めております。ただ、この協定と同時に両国の間には領水に関する交換公文がありまして、この協定のどの規定も領水の範囲に関する締約国の意見なり要求というものをちっとも阻害するものでないということを了解しておる交換公文があります。すなわちソ連は依然として領水としては十二海里を主張するということを留保して、そうして一定地域において、イギリスの船にそういう近海漁業を許した、こういうことであります。
  172. 西田信一

    西田信一君 日ソ共同宣言批准の第二十四国会におきまする質疑の過程におきましても、河野農林大臣は、その必要があるならば日ソ漁業委員会において近海漁業の暫定取りきめを話し合う用意があるという答弁をされております。そこで今なお、先ほどの外務大臣の御答弁によりますと、やはり拿捕事件が起きておるという現状でございまするし、従って漁業上相当な支障があるようでありまするし、また日ソ間の友好関係という立場から考えましても、この際この問題を何らか両国間において解決しておくことが適当であろう、こう考えるわけであります。そこでサケ、マスの問題等を中心とする日ソ漁業委員会が現在交渉を行なっておるわけでありますが、この委員会においてこの問題を——近海漁業の問題を取り上げた交渉をする御意思が政府としておありになるかどうか。この点をお伺いいたします。
  173. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この近海漁業、領水内における漁業の問題につきましては、これは今度の日ソ共同委員会の問題にはなっておりませんし、これで取り上げて問題にする考えはございませんが、お話のごとく日ソ国交が正常化して、友好関係を今後進めていくという上から見ますというと、この点に関してそういう条約の、国交が正常化せられなかった時代のやり方がそのまま続いていくということは望ましくないと思いますから、これは適当な方法において話し合う必要があると思います。
  174. 西田信一

    西田信一君 私はこの日ソ漁業委員会の開かれておる今日、きわめていい時期であると考えるのでございまするが、外務大臣は別の機会にとおっしゃいましたが、しからばどういう時期にどういう方法でこの交渉をなさろうというお考えでございまするか。  それからその交渉の場合に、その内容でございまするが、北千島、南千島、あるいは国後、択捉、また将来日本に返還することを約束しておる歯舞、色丹等もございます。これらについては、ことに歯舞、色丹等につきましては、もう接岸してとるということを——これは日本に返す意思を持っておるわけでございまするから——交渉する余地を持っておる、私はこのように考えておりますが、そういう地域、あるいは距離、漁業の種類等についてもどのような交渉をなさろうというお考えでございましょうか。
  175. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 歯舞、色丹の日本への返還につきましては、御承知通り日ソ共同宣言のうちに、平和条約が締結されてそれが発効するときにこちらに引き渡すということになっております。将来返ってくるという一つの約束はされておりますけれども、現在なおソ連がこれをソ連領として占有しているわけであります。従って当然あの共同宣言からこれの接岸漁業ができるのだということを主張する法的の根拠はこれはないと思います。しかし友好関係、また日ソの間のそういう将来返ってくるということが少くとも両国の間に意見が一致しておる地域でありますから、特別の考え方をすることはこれはまた交渉のいき方であると思います。ただ北洋の問題につきましては、領水に関する従来のソ連の主張もありますし、それからなお領土権の問題もありますし、また現実の漁業の内容、それから時期等の問題もございますので、十分専門的にそういうことを一つ検討いたしまして、こちらからかりに話を持ち出す場合におきましては具体的なこちらの要求というものをはっきりいたして、そうして適当な機会に話を進めていくということがいいと、かように考えております。
  176. 西田信一

    西田信一君 外務大臣の御答弁で了承いたしますが、北方漁業、近海漁業の現状をながめまするときに、その交渉は努めて急ぐ必要があろう、かように考えまするので、政府の御善処を希望いたしておきます。  自治庁長官見えておりますか。
  177. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 自治庁長官は衆議院の委員会に出ておりましてもうすぐ参る予定でございますが、もし政務次官でよろしければ参っております。
  178. 西田信一

    西田信一君 それでは政務次官にお答えを願いますが、これは自治法上の問題でございまして、地方自治法の八条には、市の設置要件として人口五万ということが条件になっておるのは御承知通りであります。ところが、自治法の附則によりまして、いわゆる合併による市の人口は三万という従来のが踏襲されておることも御承知通りであります。  そこでお尋ねをしたいのでありますが、二百以上に上るところのそういう新しい市ができました。ところが、その中には、と申しますよりは、その多くが、きわめて、合併に熱心である関係もございますが、市としてのほんとうの意味の体裁を備えておるという点について、遺憾と申しますか、多少無理な面もあるような所が相当多いのであります。ところが、従来から相当の人口を擁しており、三万以上あるいは四万、五万近く持っておるが、現在は市になる資格がない。ところが、その町は、むしろ合併によって多少無理をした市よりもはるかに財政力もあり、あるいは都市形態を備えておる。しかしながら、法の建前上、これが市になることができないというのが全国に相当ある。しかも、これは熱心に、いわゆる地方自治の振興という意味から、善意な気持で市になることを希望しているようでありますが、私は、そこに非常に何と言いますか、矛盾というか、不合理というか、不公平というか、そういうものを感ずるわけであります。これはもちろん法律がしかれておる以上不可能でありますが、地方自治の振興という面から考えるならば、何らかこの場合適当な臨時措置をとって、それらとの関連において、一つ考えてやる必要があるんじゃないか、このように考えるわけでございますが、そういう点について、自治庁はどのように考えておられますか、御見解を伺いたい。
  179. 加藤精三

    政府委員加藤精三君) 大臣が採決直前でございますので、かわってお答えいたします。地方自治法第八条の都市要件でございますが、御承知通り、四つの要件がございますうちの、第一の人口要件についてのお尋ねでございます。この点につきましては、政府の方といたしましては、特に地方制度調査会に諮問しまして、そうして人口要件を三万から五万に引き上げましたのでございまして、ただ町村合併の促進の必要上、奨励の意味をかねまして、経過的に五万を三万でいいことにした部分がある。と申しますのは、合併の手続途上にあるもの及び府県知事の定める当該府県の町村合併計画がすでにきまりまして、そうしてその後に手続を始めたもの、それらにつきましては、例外的に人口二万でも市になる道を開いているのでございまして、現に、そうして市になりましたもの及びまた、都市になる申請をいたしまして、市になることの可能な状態にある町村がそれぞれ数十カ町村ございます。残りましたものについてのお尋ねでございますが、これらにつきましては、現在のところ、慎重にその対策考えておるのでございます。御指摘のような、若干考慮を要するような部面もあるのでございまして、鋭意検討中でございます。ただ、また、現在は町村合併が今でも進行中でございますので、その町村合併の進行を促進するということを兼ねて特例期間を少し延長しようかということをも考えておるのでありまして、かれこれ十分政府当局の方におきましては、御趣旨のあるところを体しまして、調査いたしたいと存じます。
  180. 西田信一

    西田信一君 今厚生大臣がお見えになっておりませんが、大蔵大臣がお見えになりましたので、大蔵大臣お答え願えることでございますから御質問申し上げたいと思います。  大蔵大臣一つお尋ねをいたします。国民皆保険という重大政策を掲げられまして、しかもその中心は、国民健康保険の充実、四カ年間で国民皆保険を実施するというお考え、その政策には私は全幅の賛意を表するのでありますが、従来三千万に上るところの国民大衆がこの恩恵に浴しなかった。要するに、この制度の実施がおくれておる理由は、私は市町村の国保経済の不安定にあると考えるわけであります。そこで、今回の予算措置におきましても相当考慮をされておりまするが、なお不十分なものがあるわけでございまして、たとえば、国民健康保険の事務費補助のごときは、全額負担しなければならないという法の建前にもかかわらず、なお、見積り過少のように思うのでありますが、承わるところによりますと、市町村では、こういう状態ではどうも事業開始を足踏みするというような状況にあって、年度内五百万人の新規加入もこれは果して実現できるのかどうか、危ぶまれるわけでありますが、聞くところによりますと、この事務費等の問題につきましても、大蔵、厚生両省間において事務費の実態について共同調査をする、こういう御方針のように伺うわけでございます。ところが、その調査費すら予算に載っておりませんが、どういう方法で調査されまするかは別といたしまして、その結果、この事務費等が明瞭に不足である、こういうことがはっきりいたしました場合に、年度内にもこれらの補正を行なって、いわゆる政府の重点政策であるところのこの皆保険の政策が十分達成せられるような配慮をなさる御用意があるかどうか、大蔵大臣お尋ねをいたしたいのでございます。
  181. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 国民健康保険の事務費につきまして、厚生省でもいろいろ調査をなさったのでございます。厚生省の調べでは、百七円程度というお話でございます。現行は六十八円二十銭でございまするが、われわれの方といたしましては、百七円かかる所もございましょうが、もっと低くて済んでいる所もあるように聞いておるのであります。これは加入者の数と事務員の数の割合でございまして、地方別に違っておるわけであります。従いまして、今回は六十八円二十銭を八十五円まで上げまして、そうして昭和三十二年度で十分調査いたしまして、その結果を見まして、今回八十五円まで上げましたが、これを実際の数に三十三年度から合わしていこう、こういう計画で進んでおります。
  182. 西田信一

    西田信一君 調査をなさって三十三年度から考慮するということでございますが、私の懸念をいたしますることは、今年度は、約四カ年の計画でございますその初年度であります。しかも、五百万人を新加入させようというねらいでございます。そういうような、要するに、町村の保険財政が不安定であるということが市町村の踏み切りを足踏みさしておる有力な原因であると考えるのでございまして、そういう点から、もしも調査を急がれて、その調査の結果が判明いたしまして、不足であるという結論が出ましたならば、この四カ年計画の遂行のためにも、本年度不足分を適当の機会に補正されるお考えであるかどうか。そういうことによってしなければ、この国民健康保険を中心とする国民皆保険の初年度の成果は上らぬじゃないか、こういうことを心配いたしてお尋ねをしておるわけでございます。
  183. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今年度調査いたしまして、私は三十三年度からは赤字の出ないようにいたしたいと思いまするが、今年度の調査がいつごろできますか、これも疑問でございますので、私は趣旨としては赤字の出ないように考える、こういうことを申しまして、早急に全部保険に入られるように指導していきたいと考えます。
  184. 西田信一

    西田信一君 時間も参りましたし、厚生大臣がお見えになりませんので、国民皆保険に関する法律改正の問題もお尋ねしたいのでありますが、これは保留いたしまして、なお、北方農業の確立について、農林当局の御見解も伺いたいのでありまするが、これも農林大臣がお見えでございませんから、この点も保留いたしまして私の質問を終らしていただきます。
  185. 久保等

    久保等君 一昨日に引き続きまして、私、国鉄運賃の値上げの問題に関して若干お尋ねをいたしたいと思います。申すまでもなく、国鉄の運賃が今回一割三分程度の値上げが行われようといたしておりまするが、非常に国民生活に重大な影響のある問題であり、しかも政府からいろいろ出されました資料等につきまして、いろいろ検討をいたしてみたいのでありまするが、非常に納得できない点が多いわけであります。今度値上げに対して、国鉄の輸送力の増強並びに施設等の近代化をはかろうという趣旨が非常に大きなウエートを占めておるようでありまするが、具体的に国鉄五カ年計画なるものか、従って一応その計画として出されておるのでありますが、その内容につきましても、まことにずさんな点が多いと見受けられるわけであります。そこで、私は運輸大臣最初にお伺いいたしたい点は、果してこの一割三分の値上げによって、国鉄五カ年計画を完遂しようとする計画に対しまして、運輸大臣は十分なる一体責任を持ってこれを完遂する自信があるかどうか、国民に対してこの点明確にしていただく必要があるのではないか、かように考えますので、まず最初に、その点についての運輸大臣の所信のほどをお伺いいたしたいと思います。
  186. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。この五カ年計画は、大体におきまして、日本の経済そのものが今日のような歩み方をもって進んでいくということであれば、これは完遂できると、こういう自信を持っているわけであります。
  187. 久保等

    久保等君 従って、計画そのもの、五カ年計画そのものについても、これを各年次を追って、十分に計画通りやっていく自信があるというただいまの御説明なんでしょうか。その点を一つはっきり公約を願いたいと存じます。
  188. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) この五カ年計画全体といたしましては、ただいま申し上げた通りであります。年次計画につきましても、企画庁その他と計画を十分に尽しまして、この線でいける、それで昨日の久保さんのお求めになった資料等にも、昨日は非常に欠けるところがありまして、一応はお届けしたつもりであります。  なお、これらにつきまして、工事量もしくはその他について相当御疑問の点もあるかと思いますが、数字の正確を期するため、この点だけは計画を持っておりますから、政府委員からお答えいたさせます。
  189. 細田吉藏

    政府委員(細田吉藏君) 補足いたしまして御説明を申し上げます。  一昨日でございましたか、工事関係の人間がこれで足りるかという御質問がございました。三十二年度の国鉄予算のうち、工事経費は千六十九億でございます。このうち車両、船舶、自動車、それから総掛り費を除きますと、工事費が五百七十七億でございまして、昭和三十一年度に比べますと、約七五%の増加でございます。大体過去の実績を見ますると、年間一人当り、平均一人当りの工事消化額が三百二十万円程度になっておるのでございます。ただ、在来でもこれを局所別に見ますというと、若干のでこぼこがございまして、五百七十万円程度にまで上っておるところも相当にあるわけでございます。    〔理事左藤義詮君退席、委員長着席〕  さらに三十二年度の工事は、額はただいま申し上げましたように、七五%も増加いたしておりますが、非常に大きな工事をこの機会に入れることになっておりまして、また、多年懸案になっておりました工事で、設計、測量等が完了したものも相当にございます。その他、設計の概要ができておるというものもかなりございます。  それから第三番目としまして、発電機、変圧器等の器機の購入、これは電化あるいは電化区間の強化等の問題でございますが、こういった資材の投入量の多いこと等もございまして、三十二年度におきまして、一人当り五百万円程度の消化は可能であると、こういうふうに見ておるわけでございます。大体所要人員は一万一千五百人ばかりの人間で見ております次第でございます。
  190. 久保等

    久保等君 ただいま御説明がございましたので、その問題について、一言これは運輸大臣にお伺いいたしたいと思うのですが、なるほどまあただいまのような、あげられた事由によって、ある程度三十二年度の工事費の中で占める工事設計並びに調査あるいは監督等の要員を節約をすることができることは、ある程度了解されるのです。ところが、問題は三十二年度の、倍額程度にふえる工事量を持っておりまする工事を行うのに、全く一人も予算定員の面では三十一年度と比べてふえておらない。またさらに、さかのぼって、三十年度とも比較した場合に、一人もふえておらない。私はいかに工事の規模が、一工事当り比較的大きな工事がある。あるいはまた、設計その他で、長い間の調査その他に基いた設計図面等ができ上っておるからとはいっても、工事が倍額にも上るような膨大な工事がふえたのに、それらに要する設計並びに監督、調査等の人員が一人もふえないでいいのだ、間に合うのだというようなことは、とうていこれは考えられないわけです。もし考えられるとするならば、今までの人員に、これはもう非常に莫大な実は何か隠したものがあったかということになるのですが、そういうことはもちろん今日の国鉄の現状においてあり得ようはずがないのです。私はそういたしますと、やはりこの三十二年度計画そのものに、非常に大きな無理がある。これは何人が考えても、私は、一万九百人の三十年度、三十一年度でやった人員と同じ人員で三十二年度もやれますということは、とうてい理解ができないのです。これは一つ運輸大臣として、こまかい事由等をあげる必要はないと思うのですが、私は大臣として、だれにでも納得ができる御説明がぜひ願いたいと思うのです。
  191. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 私の立場としては、国鉄当局の実際の計画と、それを運輸省の監督機関がこれを調査して認めた、これを聞きまして、自分の判断をきめるよりないのであります。ただいまのお話の、一人もふえないという点は、なるほどごもっともな疑問ですが、私どもも同様な疑問は持ちましたけれども、実人員においては減っているのがあって、千五百人くらいふえる、こういう点もありますので、国鉄の当局者が責任を持ってこれをやり得る、あの大きな組織で、あれだけの経験と技術と組織を持ってやっているのでやり得る、それはまた、私ども運輸省の監督機関が、大体これでもっていける、こういうことであるならば、私はそれを信頼して、一つこの計画を進めていくよりない、こういう判断のもとにこれでいき得る、こう考えている次第であります。
  192. 久保等

    久保等君 今の運輸大臣の御答弁は、私はこういう公開の席上での公式論としての御答弁だと実は拝聴せざるを得ないのです。むしろ、相当数の増員を計画したのだが、これは大蔵省で削られた、率直にいって。そういう経過がないならば、私は運輸大臣が、単に国鉄なりあるいはまた、運輸事務当局の意向を判断して、運輸大臣が自主的な判断に基いてそういう裁断をしたとするならば、これは私はまことにわれわれしろうとが考えてみましても、事のうといにもほどがあるという気がいたすわけであります。これは千五百人程度の、人員の若干の弾力性があるといってみても、一万九百人の人で、従来やっておった程度の工事の倍額の工事をやるのに、かりに一千人、二千人程度の人員の融通がついたとしても、果してこれで二倍に上る工事を私は十分に監督し、調査しあるいは設計等を行い得ると断言はこれはできがたいと思うのです。これは運輸大臣として、私はおそらく大蔵当局との折衝等の過程において、結論的にこうなったという説明なら、これまたある程度了承できるのですが、大臣立場で、それが適当であると判断せられているのですか、真に。
  193. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。予算の面に関しては、この審議の経過において、政府部内において大蔵省と話し合うということはありますけれども、しかしながら、この大蔵省のいわゆる査定というものにも限度がありまして、私ども実行機関を縛るようなことはないのでありまして、私どもは、やはり私どもの責任においてちゃんと果すべきものは果し、行うべきものは行う、こういうところで、自分責任においてこれはきめたことでございます。
  194. 久保等

    久保等君 それで問題をもとへ戻しまして、五カ年計画の問題について、私は今の岸内閣が、非常に物価にも重大な影響が危惧せられるということで、国民に、また、現実に生活にとっても重大な影響のある運賃値上げの問題を決定せられ、しかもそれに基いて国鉄を、この景気の非常に上昇過程にある需要にも応ずるという立場で、国鉄の輸送力の増強をはかろうという意味で、五カ年計画を策定せられたということは、非常に重要な意義を持っていると思うのです。私はそういう意味で、一体この計画そのものについて、大蔵当局並びに経審長官の方でも、もちろんこういった問題については十分に検討せられたと思うのです。私は従ってその点について、大蔵大臣と経企長官がそれぞれいかなる確信を、やはり同じ閣内の担当する責任者といたしまして見解を持っておられるか、この際ついでにお伺いをしておきたいと思うのです。
  195. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 日本経済の歩んできた発達等から考えまして、五カ年計画、大体六千億円近い投資をいたしました。あるいは電化、あるいは線路の補修、また輸送に最も重大な河川等、万般の問題につきまして計画を立てたのでございます。しかしてこの計画はぜひ必要でございます。こういうことで、今後におきましても六千億近い資金の見通しをつけましてやっておる次第でございます。
  196. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 経済計画の中におきましては、昭和三十二年度産業の拡大規模は、前年に比べまして七%以上の伸びがあるだろう、そうしてその伸びの中においてこの計画は当然負担し得るものである、そういうふうに判断をいたしまして、大蔵省と打ち合せて運輸省の計画に賛成をいたしております。
  197. 久保等

    久保等君 まあ連絡その他で協議をせられたというお話でございまするが、私はこれだけの大規模な計画、しかも非常に重要な基幹産業、といっても最も重要な産業である国鉄事業につきまして、一体この五カ年計画というものが、閣議において、岸内閣というものの一つ施策として正式に私は閣議決定を経たものかどうなのか。それからまた特に問題になりまする五カ年計画の中で必要な資金の面において、一体閣議において正式にそういう計画を立てられたものかどうか、この点を一つ運輸大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  198. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。このたびの五カ年計画は、運賃の値上げの計画といたしまして、運賃値上げとともに閣議に提出して、その決定を経ております。
  199. 久保等

    久保等君 そこをお尋ねしているのではなくて、私のお伺いしておるのは、運賃値上げと引きかえにというか、国民に対しては五カ年間の計画をもって、これだけのサービスの改善、施設の改善、輸送力の増強を行うんだということを公約せられておるのです。従って私はそれだけの、五カ年間に対する見通しについては、これはやはり自信を持って国民の前に私は提示せらるべき五カ年計画であるし、これは当然閣議において決定するに値する、あるいはそれより以上に私は重要な問題だと思うのです。ですから私のお伺いしておるのは、国鉄の運賃値上げに関する法律の一部改正案という、そういうものについての閣議決定というのじゃなくて、五カ年計画そのもの、特にわけても資金計画の面に対して、一体これは閣議において正式に決定をせられたものかどうか、この点を一つお答えを願いたい。
  200. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) この五カ年計画を別個に切り離して、この計画として閣議決定ということは行なっておりません。運賃値上げに伴う五カ年計画を私から説明いたしまして、それと一体として閣議の了解を得ております。
  201. 久保等

    久保等君 まあそういう私は熱意と今後に対する信頼を一体国民が真に寄せ得るかどうか、そういう御答弁で……。少くとも六千億という国家予算、一年間の国家予算の五割以上を占める膨大な資本を投下して、国鉄の輸送力の増強をはかろうという英断を、もし私は下されるとするならば、その五カ年間のコースを一体どういうコースを歩んで、最後の終着点であるところの昭和三十六年度末において、よく言われる収支の結論、あるいはまた施設の改善、そういったような問題は私は途中五カ年間というもの、三十二年度は別といたしまして、残る四カ年というものは、どういうコースを歩んで終着点に達するかは、これはわからないと思うのですがね。そこで、ここへいただいております資料は、まあいわば一年ごとに頭割りで割ったような形の金額にほぼ出て参っておるのです。こういう経過をたどって私は最後の終着点に無事到達できるとは考えられないのです。一体そういうことで、私が劈頭にお伺いした、完全にこれを完遂できるという自信は一体どこから出ているのですか、今の御答弁では残念ながら理解できないのですが、運輸大臣はそれでも当初言われた確信がおありですか。
  202. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) これは確信があるかないかと、こういうことのお答えでありますと、今日までの国鉄の持っておる組織と技術と力が現実に今日まで働いてきておる。この見通しからいたしまして、国鉄が自分が立てたこの五カ年計画というものを責任をもってやり得る。そうして私ども監督の機関においてこれを調査して、そうして適当であると、こう認めたのですから、これはもうやり得る。しかしながら、今後、日本経済の歩み方に急激な変化が起れば、それに対応する処置はとらなければならぬことは申すまでもありませんけれども、今日の事態が大きな変化なく推移して行くというならば、これはやり得るという見通しを持ち、また私はこの五カ年計画については多くの人々が了承して下すっておるのだと思っておる次第であります。
  203. 内村清次

    ○内村清次君 関連。この五カ年計画の第一年度においては、やはり資金関係は九百億ばかり、第二年度において一千百億というような、こういう膨大な資金計画をなされておるのですが、現在、工事費といたしましては三百億ないし三百五十億です。そうしてこれで鉄道の工事が施行されておる。それが、それの倍以上の資金計画でやられまするが、その人員の構成におきましても、一体これをどう消化されて行くかという点が第一点、それから第二の点は、この路線計画に対しましてもやはり工事監督というものがある、その監督面を非常に縮小されておるのですね。ほとんどあとは請負というようなことでやっておられるが、あの国鉄の輸送の安全と、それからまた堅実というような工事計画をやって行かなくてはならないのに、監督行政を非常に少くしている。人員を少くして、そうしてすべて請負でこれをやらせるというような計画で、果してこれが正確な従来の鉄道の工事計画として正しいかどうか、この点が第二点、それから第三点におきましては、この鉄道には路線に対して調査会を設けておる。こういう調査会で、東海道線のどこを通り、どこの市街地を通って行くというような路線計画の工事の調査会ですね。こういうものを今作っておられるという状態ですが、その調査会というものが、第一年度の施行に迷惑をかけないように調査選定ということができて、そうしてその施行がまんべんなく遺漏なく、時期的にそれができるようなことになるかどうか、この点がもしならないとしたならば、これは第一年度、第二年度、第三年度のこの計画というものは、だんだんあとの方へずれてくるというような状態になるか、この点は一つ明確に総裁からもお話しを願いたい。
  204. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) ただいまのお話の、この工事量の問題ですが、三十一年度において五百三十億、それが一千六十九億増します。しかしこのうちに請負と言いますか、貨車、客車その他の外注のものは、今日の能力が大体各汽車製造会社の五割くらい、それでこれが五カ年計画を実施しますと、まず八割くらいの工事量、その工場の能力が八割くらいになる、こういうことであり、またこの五カ年計画ということを聞きまして、それぞれの業者においても準備を進めておるわけであります。従ってこの外注のうち、工事の外注というものが今あなたのお話の問題になると思うのです。工事の請負というもの、それに対しては国鉄において十分計画が立っておると、こういうことでありますから、それを信じて、私どもは大体の計画を見てこの工事量が倍になったということは、これは大きなことではありますけれども、今までにそういう準備も進めておるし、資材等の面においても相当に準備が、これをそれを予想して、業者のことでありますから進めておる、そういうことを信頼しておるわけであります。その他のこまかい点は一つ国鉄当局から……。
  205. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) ただいまお尋ねのございました工事量がふえたについて工事人員がふえてないが、これで工事の進行ができるか、こういう仰せでございまするが、これは先般、工事局長を、全国のを集めまして、種々検討しました結果、確信を得ておる次第でございます。具体的な方法といたしましては、土木工事、建築工事につきましても、現在民間の水準が非常に上っておりまするので、設計その他につきましても、差しつかえない程度はこれに請負わせるというようなことで、国鉄の設計の手をすくということもございまするし、監督につきましては、監督陣の多少の増強はできるつもりでございまするから、それで監督の方につきましても万遺漏なきを期し得られる確信でございます。それから何と申しましても、運賃値上げをお願いしておる反面といたしましては、国鉄として十分節約をし、各人がさらに勤勉の度を加えていたさなければ相済まないのでございますから、ここは全員が特に従来以上の努力を払って、この工事の遂行に当って行きたいと、かように考えております。  それから東海道線につきましては、これは東海道線が現在でも相当行き詰っておりまするので、部分的に強化して参りたい、で、これには東海道線の委員会を作りましたばかりでございまして、これにつきましては、今後いかなるルートで、いかなる方法で増強して参るかというのを、これから検討いたすことになっております。ただ、現在東海道線の隘路区間と申しますのは、これははっきりいたしておりまするので、それを対象として研究して行きたいと、かように考えております。
  206. 内村清次

    ○内村清次君 関連。第三点の、東海道線の調査会の問題ですが、ただいま作っておるということだけですね。今から御検討になる、それが隘路の点は十分検討しておるから、これから施行するという順序になるのか、しかしこれは五カ年計画の第一年度、第二年度に、この調査会から立案されたものが施行面に回ってやられるとするならば、私はこういう計画として、またその遂行上年度的におくれてきはしないか、こういう点を心配しておる。そうすると、これがもし根幹がおくれるとすれば、全体的な計画が、これがくずれてくる要素はここにあると、私は認める。これを明確にもう少し御説明にならないと、この運賃問題の根本はくずれてきはしないかと私は思いますが、その点をもう一度明確にしていただきたいと思います。
  207. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答えいたします。東海道線の隘路区間は、大阪付近あるいは名古屋付近、それから東京付近と、これで輸送量と線路容量の正確に統計が出ておりまするので、どこどこの区間が現在の線路容量では足りないかということがはっきりいたしております。それからまたヤードの問題もございまして、どうしても清水あるいは静岡付近に操車ヤードの新設が必要だというようなこともはっきりいたしております。それで五カ年計画にはこの資金が見込んでございます。五カ年計画の中に入っております。しかしながら、先ほど申しましたのは、具体的にもっと計画を詰めまして、そうしてできるだけ早く用地買収にとりかかりたい。設計もいたし、進んで用地買収をいたしたいということで調査会を作りましたので、決して時期的に間に合わないということは考えておりません。
  208. 久保等

    久保等君 先ほどの工事用員の問題については、非常に辛いという一つの例を申し上げたのですが、今度は非常に私ども納得できない甘いと見積られておる一つの点は、事業の収入の面でこの計画を見ますと、三十四年度以降は、毎年百十億円ないしは百十五億円程度の増収を見込んでおるのです。ところが三十二年度においてすら、三十一年度予算規模でもし三十二年度に一貫してそのまま移行して行ったといたしましても、三十二年度では二百八十五億の自然増収が予想されておるわけです。さらに運賃の値上げに伴って、六百四十九億が大体三十二年度において三十一年度よりも多くなる増収の見込み金額であります。この点を比較してみますると、三十一年度から三十二年度に移った際に、運賃の値上げを行わなくても二百八十五億、すなわち約二二%程度の増収が見込まれておるのに、三十四、三十五、三十六の各年度は、前年度における事業収入の比率から見ますと三%程度の増収しかなっておらない。これは一体どういうことなのかお尋ねをしたいと思う。総額の点、事業収入の。
  209. 細田吉藏

    政府委員(細田吉藏君) お答え申し上げます。お手元の収入の見込みでございますが、これにつきましては、実は修正前の計画の際には、経済企画庁が中心になって立てました経済自立五カ年計画のうちの輸送の部門、その中の国有鉄道、この数字を採用いたしまして当初の五カ年計画を作ったのでございます。ところが実際問題といたしましては、昨年度の下期あたりから非常に経済界の好況を反映いたしまして、輸送も伸びて参っておるわけでございまして、経済企画庁とされても、いろいろ計画を再検討しておられるようであります。まだはっきりしたものが出たわけではございませんが、一つの試みの案といたしまして、在来のカーブをある程度上向きにいたしましたかわり、具体的に申し上げますと、昭和三十年度をベースにいたしまして、年々四・五%程度の増加をすると、こういうカーブを一応試みとして描かれておるのでございます。そこでカーブを当ってみますと、三十一年度の実績はそのカーブよりも上へ出るわけでございます。三十一年度の実績というものは、ただいまお話がございましたように、三十二年度でも二百八十何億というものを見込んでおるわけでございまして、三十一年度から三十二年度、非常に大きく上るわけでございまして、このままの勢いで伸びましたら、大へんなことでございます。また輸送力がそこまでついていくということも大へんなことでございまして、今日までのところでは、いろんな努力をいたしまして、余力を振りしぼっておるわけでございますが、今後の問題につきましては、この五カ年計画による輸送力増強と見合って、ほかに企画庁の試みの案、これはいずれ、はっきりしたものが出るかと思いますが、その四・五%と、こういうわけでございます。
  210. 久保等

    久保等君 そうなってくると、これは全く三十二年度については、ある程度確たる根拠に基いておるが、三十三年度からは全く一つのやみぐも的な計画に過ぎぬということになるのです。しかも三十三年度以降は、実は年々一千億円程度の資本を投下して、いろいろ施設の改善、車両の増設、あるいはまた線路の新設等があるのですから、従来のカーブどころではない、私は増収が当然あると思うのです。私の申し上げるのは純益という意味じゃなくて事業収入なんですから、これは当然大幅に上ってくると思うのです。そういう点を抜きにしてみても、三十一年度の施設そのままの状態で、ただ持ち込んだという状態を前提にして、二百八十五億の増収が見込まれる、さらに三十三年度からは年々一千億円程度の資本投下を行うのですから、その場合のカーブというのは急上昇をたどるのではないか。ところがその点についてわずか三%、三十一年度から三十二年度には一三%程度の値上げを行なわなくても、一三%程度の増収が見込まれるのに、その翌年度からは資本投下を大幅に行うのだが、わずかに三%程度しかこの計画では出ておらぬということになりますと、いかにまだ経審の結論が出ておらぬといいながら、いやしくも国会の私どもにこういうデータを配る以上は、架空も架空全く問題にならない説明だと思うのです。一体運輸大臣はいかが考えますか。
  211. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) この点については私もあなたと同じような疑問をもって聞いてみた。たとえば昨年度百四十五億出てるのだから、来年度そのくらいは出そうなものだというと、それはとんでもないことで、せいぜい十五億か十億出るかだ、それはどういうわけかと聞きますと、この計画数字を、うんと広くとっておるのです。ですからして、つまり来年度三百六十六億の運賃値上げの収入から、その他の点を非常に一ぱいにとっておりますので、これからはそういう余裕が出ないということで、私もそれ以上の数字のこまかいことの検討はできませんけれども、一応責任ある当局者の話ですからなるほどというわけで、そういう同じようなことを疑問を持ったのですけれども、だんだん説明を聞いてみると、そうでないようであります。
  212. 久保等

    久保等君 経企長官がおいでになりまするから、一応五カ年の国鉄の問題についての、一体見通しとお考え一つ承わりたいと思うのです。
  213. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 私どもの方も四分五厘の年間五カ年各年度における旅客貨物輸送量の増を見込んでおります。それはこの経済の伸び七%を基準としてそういう輸送力の要請量を四分五厘と見ております。ただしそれによって収入増がどういう傾向をたどって行くかということについては、国鉄の実際の現場の数字のそろって出るのをただいま待っておるという状況でございます。
  214. 久保等

    久保等君 それから三十二年度で運賃の値上げを行わなくても二百八十五億の増収が見込まれる。それから三十二年度では三百十五億の外部資金を一応予定しておるのですが、この二つを合せますとちょうど六百億になるのですが、そういたしますと、三十一年度の工事規模は、三十一年度予算が完結はいたしておりませんが、とにかく予算案を見ますると五百八十三億ばかりが昭和三十一年度の工事規模になっております。この点を比較いたしますと、実は運賃の値上げを行わなくても十七億程度のむしろ余剰が出て来るような計算になるのですが、一体これはどういうことでしょうか。
  215. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答えいたします。三十一年度は工事経費が約五百億でございます。で、三十二年度におきましては予算上は二百八十億ふえまするが、そのうちでいろいろな経営費の増強もございまするし、借金の利息の増加もございまするので、そういう点を差し引きいたしまして、これを昨年の五百億に加えましても、とうてい九百九十九億大体一千億の工事予算には及ばないのでございます。もう少し具体的に詳しい数字を申し上げますると、三十一年度に対しまして三十二年度は自然増収が二百八十五億ございます。それから運賃引き上げによる増収が三百六十六億円ございます。それからこのほかに従来上っておりました収入がございます。つまり従来とも減価償却費に引き当てまして工事経費に回したのがございます。つまり工事に回りますのはこの三つでございまして、くどいようでございますが繰り返しますと、従来工事に流れておった自己資本と、自然増収による自己資本と、それから今度は運賃値上げによります増収分と、この三つに区別して考えております。そのうち三十一年の減価償却費をそのまま三十二年度も工事に振り向けますと、これが二百七十八億円になります。昨年と同様でありまして、それから第二の自然増収の二百八十五億円がございまするが、これには増収に伴ういろいろな費用を払ってしまわなければなりません。その第一は経営費の増でございまして。これは六十二億ございます。それから利子の支払いの増が十六億円ございます。それから借入金の返還の増加が五十一億円ございます。それから予備費の増加が十億円ございます。これを合せますと百三十九億円になります。従いまして二百八十五億円の自然増収から今申し上げました経費が増す百三十九億円を引きますと百四十六億円になります。これが自然増収の分として工事経費に回って来る金額でございます。第三に今度運賃値上げによる増収分が三百六十六億円ございまするが、このうちで固定資産税納付金の増加が三十七億円ございますからこれを引きますと、三百二十九億円になります。従いましてこの三つ、つまり二百七十八億円と百四十六億円と三百二十九億円、これを合計いたしまして七百五十三億円というのが、収支計算の上から工事経費に回ってくる金額でございまするが、そのほかに外部資金といたしまして三百十五億円ございます。これを加えまして一千六十九億円になりまするが、このうちの外部資金には七十億の新線建設費がございますので、これを差し引きいたしますと九百九十九億円ということになります。従いまして自然増収も、運賃値上げによる増収も、従来あげておりました資金も全部つぎ込みまして、今回の九百九十九億円の工事経費が出てくるのでございまするからして、逆を申しますると、そのうちの一つでも金額が不足いたしますれば、やはり工事費がそれだけ減じてくると、こういう計算になっております。
  216. 久保等

    久保等君 いや、それは御説明を伺うまでもなく、一千六十九億円に上る工事を六百億でやれと私は全然申し上げておるわけではないのです。今の御説明は、三十二年度に料金の値上げを行なって、一千六十九億の工事を行うのに要る内訳をいろいろ御説明せられたのですが、それはその通りです。だから、私は運賃値上げを行わなくても、運賃値上げを行なったと同じ程度の工事がやれるとはさらさら申し上げておるわけではないのです。三十一年度程度の規模の工事を行うのだったら、運賃値上げを行わなくても、今私が申し上げたもちろん項目の中には、若干金額は落ちておるかもしらぬが、とにかく一応はじき出した数字は、むしろ十七億程度の余剰が出るという結果にしかならない。従って三十一年度程度の工事幅さえやっていくのであれば、運賃値上げ一割三分をやらなくても間に合うんじゃないかという点を私はお聞きしているわけなんです。従って六百億程度の、昨年度は五百億余の工事幅しかなかったのですが、その程度の工事しかやらないとすると、運賃の値上げを行わなくても、経済の最近における著しい発展という事情がある関係を考慮するならば、二百八十五億という自然増収も考えられる。その上、外部資金の調達に当って、大蔵当局は三十二年度の場合三百十五億、これは前年度よりわずかに十億しか上っておりません。もし若干足らない点があるならば、外部資金の調達の点について一段の努力を願うならば、それこそ数十億程度の資金の確保は必ずしも困難ではない。従って数十億の赤字が出る、金が間に合わないという点において、その点は運賃の値上げをやらなくてもやっていけるのではないかという質問をいたしておるのです。  時間もきたようでございますので、私さらに続けることを差し控えたいと思いまするが、要するに、先ほど来の御説明を伺っておりますと、経済企画庁での実は結論もこの十月、今年の何か一ぱいくらいたたないと、確たる見通しが出ないというような御説明もあったのですが、そうすると、五カ年計画なるものはそういう経審の結論等を待って再検討するのだ、従って今のところは一応運賃値上げをやるために、五カ年計画という計画も出さなきゃならぬし、それに対してとにかく一応数字も出さなきゃならぬというので、私は割り振って五カ年間の計画を出された、こういうふうにしか実は受け取れないわけなんです。従ってこの五カ年計画というものはきわめて近い将来において根本的に再検討するのだ、経審等の具体的な数字、経済状況の動きとにらみ合せて、もう少しはっきりした計画を立直すのだという結論にしかならぬと思うのですが、運輸大臣いかがですか。
  217. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 今のお話ですと、これは重大なことになりますけれども、決してそうではありませんので、今日におけるこの諸般の資料からいたしまして、五カ年計画は遂行できると、こういう確信のもとにやっておる次第であります。
  218. 久保等

    久保等君 総裁はお見えにならないので、副総裁にかわって御答弁願いたいと思うのですが、去る二月七日に、NHKの放送で国鉄総裁が、今次の運賃値上げが一割三分で決定をみたちょうど翌日ぐらいになるのですが、二月七日のあの放送で、一割三分程度の値上げではとても思うような工事も、あるいはまた要望にも沿えないのだというような、非常に自信のないことを放送せられたという話を聞くのですが、その点副総裁ももちろん御存じのことと思いますし、実際の執行機関である国鉄当局は、運輸省じゃなくて国鉄当局は、一体その総裁のそういう言明とも関連して、また先ほど来私がいろいろ指摘をしておりますようなこととも相関連して、どういうふうにお考えでしょうか。
  219. 小倉俊夫

    説明員(小倉俊夫君) お答えいたします。鉄道の輸送力は現在全く頭打ちの程度でございまして、これをいかほど能力をつけていくかということにつきましては、いろいろな見方があるのでございます。ごく簡単に申しますれば、たとえば旅客におきましても、これは長距離旅客に座席を提供すればその程度でいいのか、さらに通勤輸送をどの程度に緩和するのかというような度合いによりまして、増強の度合いをいかが見るかということが、輸送力の増強をどの程度にするか、従いまして資金をどの程度考えるかということでございます。また貨物にいたしましても御承知通りにいろいろ季節々々で波動がございまして、これは大体平均いたしますと、非常な貨物の出回り繁忙期と閑散期とでは、従来の統計によりますと、二割あるいは二割五分程度の開きがあるのでございます。そういたしますと、繁忙期も何と申しますか送り不足が全くないように、必ずその日のうちに運ぶというところまで考えますれば、これは非常に輸送力を増大しなければなりませんですが、多少のおくれはがまんしていただくという程度考えますれば、これはそれに相応した能力をつければいいのでございまして、これはまあ私が申し上げるまでもなく常識的なことでございますが、それをどの程度にするかということによりまして、資金が違います。逆に申しますれば、資金にあわせて、輸送力の増強考えるということでございまして、国鉄としましては私どもの理想は、できるだけ資金を豊富にしまして、できるだけ輸送力をつけたいのでございまするが、それも借金といたしましても限度がございまするし、運賃収入としても限度がございますので、ただいまの程度になりましたので、要するにこの五カ年計画では、まだ十二分に御満足をしていただくという程度であるかどうかというふうなことにつきましては、おのおの見方がございますので、総裁はそういう見地から、もっと輸送力を増強すべきだという意味を言われたのではないかと思いまするが、現段階におきましては、この程度の資金で輸送力を強化するということで進んでおる次第でございます。
  220. 久保等

    久保等君 関連して。実は私が先ほど来二、三具体的な事例をあげて指摘をしておりますることは、非常にジグザグといいますか、甘いと思われる節があると思えば非常に辛くて、給与の改訂等の問題についても、これは当然計上せられるべきものが全然計上せられておらないというようなことをやり、しかもまた工事要員の問題についても、全然これを一人もふやさないというような形の、これはもう実は必要欠くべからざることがはっきりしておりながら、それが計上せられておらないというような、私は、数字を根拠にして組み立てられた五カ年計画、しかも二年度目以降については、これは全然先ほど来の御説明では、具体的な確たる資料は実はお伺いできないわけだし、経審方面でも、まだ結論が出て、それを裏づけにして作った五カ年計画じゃないということでありまするから、これ以上、私いろいろお尋ねをしても無理かと思うのですが、とにかく直接仕事をおやりになる国鉄当局の立場からするならば、これは、何といったって、やはり最後までやり抜かなければならぬ立場にあられると思う。ところが、最高方針そのものの大体一体策定が、私に言わせるならば、あまりにも軽々に扱われているのじゃないか。気持がどうあったか、こうあったかは別として、五カ年計画について閣議の決定も経てない、閣議において論議もされておらないという五カ年計画、そういうことで、ほんとうの六千億の資本を投下することが果して結果的にできるかどうか、かりにやったとしても、十分な結果を得ることができるかどうか、私は非常に大きな実は疑問を持つわけなんです。しかも私、時間がございませんから、最後に、これは、総裁もおいでを願ってお伺いをしたいと思ったのですが、運輸大臣がおいでになりまするから、お伺いをいたしたいことは、例の実はいろいろ汚職等の問題に関連した責任者の処分問題でありまするが、この問題については、私も先般、決算委員会で運輸大臣お尋ねをいたしたのですが、運輸当局の方針そのものが非常に不可解なのです。先般、具体的に御説明されました、前官房長問題等についての扱い方にいたしましても、大臣、一昨日、この二十三日の国鉄の職場大会の問題を非常に大きく取り上げられて、断固、法の照らすところに従って処置するとか何とか、非常に大みえを切られたのですが、私は、あの一つの処分の問題も、これは明らかに国家公務員法違反だと思うのです。これはもう、申し上げるまでもなく、国家公務員法の第百三条の二項に規定されている「職員は、離職後二年間は、栄利企業の地位で、その離職前五年間に在職していた人事院規則で定める国の機関と密接な関係にあるものにつくことを承諾し又はついてはならない」それで、次の第三項として、「前二項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。」ということになっておりまするから、あの前官房長がやめられて、これは明らかに人事院の承諾を得ない限り、実は人事を行うことができないのですが、現実には、日本タンカーとかいう会社に就職しておるということは、これは明らかに国家公務員法違反なんです。私は、そういうことを片っ方においてやられ、しかも、国鉄の職場大会等の問題については、これはもうきびしい、法治国家のもとにおいては云々と言われるのですが、この国家公務員法も法治国家の重要な一つの法律だと思う、こういったようなことについても、私は、少くともやはり国鉄関係の監督行政を扱う運輸当局としては、きわめて不謹慎だと思うのです。一体こういうことで、先ほど来私が指摘しておりまするように、運賃値上げを大幅に行なって、しかも、その公約として、その裏づけとしては、五カ年間に六千億の資本を投下して、そして最終的には、三千八百四十一億の最終年度においては事業収入を確保するのだと言われておる。これはちょうど、私は、最初の始発の駅の、昭和三十二年度駅の到着点までのダイヤとレールは敷いてあるけれども、三十三年度からは、全然レールもなければ、ダイヤもないような汽車を出そうとしているようなものだと思うのです。しかし、やはり国民は、始発の駅を出たときには、終着点に間違いなく——昭和三十六年度末には、事業収入少くとも三千八百四十一億の収入を上げるんであるということを、これは当然信用するであろうし、また、政府としては、絶対に責任のある問題だと思う。残念ながら、途中の計画、途中のレールというものは全然敷かれていない。こういうことで、今次の運賃値上げの問題について、大臣は冒頭に、責任をもって実現するというお話があったのですが、裏づけが何らないのです。  私は最後に、責任者の処分問題に関連して、決算委員会では、大臣の御答弁では、非常にお気の毒だったからこれを認めたのだ、依願免の形をとったのだというお話だったのですが、こういうばかげたことはあり得ないと思うのです。少くとも刑事責任の容疑者として起訴せられておるものに対して、これを依願免という形で扱って、横すべりで、日本タンカーという会社の方に就職させるというようなことで、一体綱紀の粛正も、それから国鉄自体に対しても、綱紀の粛正をもって監督できるかどうか。この点、責任者の問題については、私は国家公務員法違反だと思うが、大臣は一体その点についてどう考えるか。それから、先ほど来指摘しているいろいろな具体的な事項等を考えた場合に、私はこの際、手おくれであっても、ぜひ閣議を経て、しかもそれぞれの所管において、十分具体的な数字をもとにして検討をして、閣議にかけたものにして、そしてしっかりした五カ年計画に、先ほど来指摘しておるような点について、はっきり固められる一体お考えがあるかどうか。五カ年計画についての特に資金計画等については、私は確たる閣議としての決定を経る必要のある重要な問題だと思う。そういう方法をとられるかどうか、私は、再び質問申し上げる時間がありませんから、非常に早口でしゃべって恐縮でしたが、それぞれの点について、一つ、誠意をもって、結論的な御答弁を願いたいと思うのです。
  221. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 今の御質問の三点につきましては、御質問の御趣旨に沿って、慎重に考慮してきめたいと思っております。
  222. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は、総理及び文部大臣に対しまして、主として御質問申し上げ、なお、それに関連する点につきまして、大蔵大臣の御所見を承わりたいと思っておりましたが、総理はあいにく都合が悪くてお見えになりませんので、この点は後日に譲りまして、主として文部大臣質問し、なお、これに関連する点につきまして、大蔵大臣の御所見を承わりたいと思っております。  第一の点は、国民道義の高揚に関する問題であります。終戦後十カ年間にわたりまする国民の非常な努力と、海外における好景気等に恵まれまして、今や、わが国は、いわゆる一千億減税、一千億施策という、経済的な繁栄をもたらしてきています。まことに喜びにたえません。しかしながら、この経済的繁栄に全く伴わない一つの重大な問題がある。それは、道義の高揚、道徳の実践におきまして、この繁栄とはるかに食い違っておるという点であります。綱紀の粛正は、あらゆる各内閣におきまして、口に繰り返し繰り返し強く叫ばれておりまするけれども、しかしながら、いまだ汚職、疑獄等がそのあとを断ちません。それからまた、かつて国民に向って遵法の精神を説き、遵法の模範を示しておりました多くの公務員の中には、遵法という言葉を闘争のときに使うだけで、口にさえしないというような傾向もないではありません。さらに風紀の頽廃でありますが、これは、学校の環境維持のために、特別な立法措置をしなければならぬというような状態にまで立ち至っておるわけであります。それから、よく言われますように、青少年の犯罪、これは、昭和三十年の統計の示すところによりますと、十六万五千という多数に上っております。かようなふうに考えてみますると、私は、道義の裏づけのない経済的な繁栄は、砂の上に打ち建てられた楼閣のようなものであると思いまして、繁栄の喜びと同時に、日本の将来を憂えざるを得ないのであります。何ゆえにかような状態になったかということにつきましては、いろいろありましょう。一番大きい原因は、何と申しましても、思わざる敗戦によりまする国民の虚脱状態に陥つたことであります。しかしながら、国民が長い間、個人としても、家庭人としても、社会人としても、そのよりどころとしておりました教育勅語というものが全く姿を消し、力を失つたことであります。私は、かつての教育勅語をそのまま復活しようというような考えはないのでありまするが、あの教育勅語の中に盛られておりました不変の道徳の基準というものが全面的に否定されたところに一つの原因があると思います。  そこで私は、昭和二十三年の六月二十日に、第二回国会におきまして、参議院において、教育勅語等の失効確認に関する決議というのが行われております。これを思い起すのであります。この教育勅語等の失効確認に関する決議によりますと、全文は省きますが、おしまいの方に、「しかし教育勅語等があるいは従来のごとき効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんぱかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にするとともに政府をして教育勅語その他の諸詔勅の謄本をもれなく回収せしめる。」これが教育勅語失効確認の本院においての決議案文であります。私は、かような決議を必要としました当時のことを思い起し、また、かような決議によって、残さるべきものまで失つたことを思いまして、感慨無量のものがあるわけであります。そこで私は、最近のいろいろな状況を見ておるのでありますが、その一つは、民間人の中に、国民一般がそうであるかもしれませんが、精神的にうつろな生活をすることに堪えない。そこで何とか、個人としても、家庭人としても、社会人としても、日本人としての生活のよりどころを探し求めたいという気持になっておりますことは、これは、万人共通の事柄であろうと私は考えておる。そこで、民間におきまして、いわゆる教育勅語にかわります国民の生活のよりどころを、よく話し合って、研究し合って、作り上げて、いこうではないかという動きが起って来ておりますが、私は、かような動きは実に尊いことでありまして、これらを育て上げることの努力をしなければならぬと考えておるわけであります。なお思いますことは、欧米各国におきましては、御承知通りに、いわゆる修身科なるものがないにいたしましても、宗教的な情操の涵養、あるいは宗教的な訓練によりまして、生活のよりどころがぴしっと与えられておる。日本には、かつてのよりどころでありました教育勅語がなくなり、宗教的な情操の涵養も、宗教的の訓練もない。そこに日本の道義の混乱がある、かように考える。従って、日本の政治全体を通じまして、特に教育文教の面に携わっております文部当局におきましては、これらの点について、具体的な構想をもって、盛り上がる国民の声、国民の気持を育て上げる努力がなされなければならないと思う。私は、この点について、灘尾文部大臣の御信念と具体的な構想とをお伺いいたしたいと思います。
  223. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答え申し上げます。国民道義の問題につきまして、非常に御熱心な御質疑をいただいたわけでございます。わが国の道義の問題につきましては、終戦後の状況については、お述べになりました通りであります。あの大きな事件に遭遇いたしました結果、国民の精神生活において、かなり破綻を生じたということも事実でございます。だんだんと、国民諸君の努力によりまして、生活が改善せられ、落ちつきを示すに伴いまして、道義の問題につきましても、若干改善をせられたということを、私は申し上げることができるであろうかと考えるのであります。しかしながら、現在の世相を考えます場合に公けの面においても、また、私生活の面におきましても、なお改善を要する点が多くあるということは、お示しの通り、全く同感でございます。これを何とかして改善をして参る。すなわち、いわゆる道義の高揚をはかっていかなければならぬということは、申し上げるまでもございません。文部省といたしましては、その責任として、この方面に努めていかなければならぬと、私どもも考えておる次第であります。その方法はどうかというようなお尋ねでございますが。特に事新しく申し上げることはございませんけれども、何と申しましても、われわれとしましては、いわゆる学校教育ないしは社会教育を通じて、その方の目的を達することに努めなくちゃならぬと思います。ひとり教育だけの活動分野で解決のできる問題とも私は思わない。政治全般にわたって、そのことを考えなければならぬと思いますが、われわれといたしましては、学校教育、社会教育の方面を通じまして、この目的のために努力をして参らなければならぬと思うのであります。御承知のごとく、今日、学校教育におきましては、教育基本法というものがございます。この教育基本法につきましても、いろいろ論議もあるわけでございますので、私は、この教育基本法の基本精神とするところは、きわめてりっぱなものであると考える。ほんとうに日本の国状に適するがごとく解釈、適用していくということが、きわめて必要であろうかと考えるのであります。学校教育の面におきましても、あるいは私どもも、先ごろ質問がございましたが、子供に対する道徳教育が不十分ではないかという御批判も受けておるわけです。私も、これはある程度認めざるを得ない。従いまして、今日の場合、日々の生活を通じ、あらゆる機会、あらゆる場所を利用して、この児童に対する、生徒に対する道徳教育の徹底に努めなければならぬことは、申すまでもございませんが、一面におきましては、教育課程につきまして再検討を加えまして、いわゆる道徳教育がもっと充実するように努力して参りたいと考えておる次第であります。  なおまた、学校教育の上におきまして、最も大切なことは、教師にその人を得るということであろうと思います。いかに教科書がりっぱでありましても、いかに教科課程が整備いたしておりましても、これを教える人の人格、識見というものが最も大きな働きをすることと考えるのでございます。きわめて大切な問題と思いますので、この教師の再教育と申しますか、訓練と申しますか、さようなことにつきましても、一段と力を尽して参りたいと考えております。  さらにまた、社会教育につきましては、野本委員も十分御承知のことでございます。いろいろな施設、いろいろな活動をいたしておるわけでございますが、これらの施設あるいは活動を通じまして、ただいま申しましたような基本理念というものを周知徹底し、また、その実践を促すように努力して参りたいと考えております。
  224. 野本品吉

    ○野本品吉君 ただいま文部大臣から、教育基本法の基本理念ということでございますが、私は、教育基本法に示されておりますところの、いわゆる真理と平和を希求する人間の育成、こういう言葉で表現されておるのでありますが、それを日本の国民の生活に、日本の国民の実情に合せて、どういうふうに具体的に理解し、把握するかということの検討が足らない、この真理と平和を愛する人間の育成ということを具体的に理解し、把握する努力を必要とすると思うのでありますが、これは時間もありませんので、この点については、それだけにいたします。  次に私は、勤労青年の教育、勤労青年問題につきまして以下若干御質問を申し上げたいと思うのであります。石橋総理はその施政方針の演説の中で、特に青年の自主独立の思想、真理探究の努力をすべきであるといって、非常に青年に呼びかけ、その施政方針の終りには、青年と会ってひざを交えて話し合っていくというようなことを言われております。岸新総理もまた所信の表明におきまして、青年の奮起を促しておるのでありますが、私はこれらの青年の奮起を促すとか、青年よ奮起せよというような言葉はけっこうでありますけれども、その言葉を使う際に、青年というものを内容的にどういうふうに理解しておるかという点に一応の疑問を持つのであります。それは一がいに青年と申しましても、その青年はいろいろに分れておるということを私は申し上げたいわけであります。私は一応ここで言う青年を、中学校を終えましてから大学を終るまでの、年令十五歳ないし二十四歳の範囲に限定して考えたいと思う。これが統計によりますというと大体一千七百万人おります。この一千七百万人のうちきわめて恵まれた青年として高等学校におります者が二百三十万、大学におります者が五十二万、短期大学におります者が八方、合計二百九十万、この一千七百万のうちの教育の機会に恵まれておる者は二百九十万人であるということ、この事実をはっきり意識して考えなければならぬとかように考えます。さらに五十四万の者は働きつつ学ぶいわゆる勤労青年学徒でありまして、長時間汗とあぶらを流して働いて、その余暇と努力をもって学習しておる青年たちであります。なお、百九万人近くの者はいわゆる青年学級と称する所に集まりまして相互研究をいたしておる青年諸君であります。それから高校の通信教育を受けておる者が四万六千、これらを合せましてもその総数は百六十七万六千でありまして、学校教育に恵まれない者が実に一千二百万余もおるということ、千七百万の青年のうち全く学習の機会に恵まれておらない青年が一千二百万余の多きに達しておる。この事実を意識せずして、いたずらに青年よ立てというようなことを呼びかけても、それは私は言葉だけであり、文字だけであるような感じがしてなりません。そこで私は青年に呼びかける前に、かような事実をよくはっきり認識していただきたいということを特に申し添えたいのであります。これらの青年は一体何をしておるかというと、日本の今日の経済発展の原動力として農山村に働いており、工場事業場に働いておる青年諸君であります。従って私はこれらの青年を頭において、これらの青年に対する政治的な配慮というものが、日本の政治の上においてはもっと大きく考えられなければ、日本の将来というものの健全な発展は期待し得ないというのが私の考え方でございます。そこではっきりここで申したいのでありますが、国立大学の学生一人に対しまして、国は文部省の調べるところによりますと、十万八千円を負担いたしております。しかるに先ほど来申しました農山漁村に、事業場に工場に働いておる青年に対してどれだけの政治的配慮がされておるか。私は具体的にここに申し上げたいと思う。  夜間課程を置く高等学校の給食設備施設として一千三百余万円、高等学校の定時制教育、通信教育振興として九千二百余万、定時制高等学校の整備費として五千余万円、青年学級の振興費として六千余万、それから農林省の農村建設青年隊事業費補助として千四百余万、青壮年の海外派遣費として九百余万、農村青年実践活動促進費補助として四千五百余万、これを合計いたしますと、わずか三億三千万なんです。わずか三億三千万、これを先ほど申しました、いわゆる働いております青年一人当りに割り当てますというと、わずか二十四円なんです。国立学校における大学生に対して十万八千円の国が負担をしておるのに対して、これらの働く青年に対しては二十四円である。これでいいかと言うのです。私はこれは絶対にいいとは申せないと思う。そこで私がお伺いいたしたいと思いますことは、青年の奮起を促す前に、青年の大部分を占めておりますこれらの青年に対して、政治的な配慮、あるいは教育の便宜をはかるための国の経費、予算の考慮、こういうようなことを絶対に必要とするのではないかと思うのでありますが、この点につきましては、私は文部大臣大蔵大臣にはっきりとお伺いいたしたい。(拍手)
  225. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 御質問の御趣意は私も同感であります。ただ国の財政のこともございます。また戦後新しい制度を実施するというようなことがございまして、その整備にいろいろと財政上の負担がかかるわけでございますので、お話のように学校といいますか、国立関係の経費とそれから就学の機会を得ない働く青年に対する施設との間における大きな懸隔が生じておることも事実でございますけれども、ある程度またやむを得ないところもあったのじゃないかと思うのでございます。国立大学とか、そのほか公立の学校等にいたしましても、なお、今後大いに整備充実しなければならぬ点があるわけでございますが、同時に普通の学校に入る機会を得ない青年に対しまして、いわゆる教育の基本理念の一つでありますところの教育の機会均等、この目的のためにわれわれといたしましても努力しなければならないということは、これは当然なことでございます。今日御承知通りに定時制高校、あるいは通信教育振興法に基く通信教育、あるいはまた社会教育施設としての青年教育、いろいろやっておりますけれども、それは私から申し上げるまでもなく、野本さんがよく御承知なんです。確かに不十分だと考えますけれども、今後財政の都合に従いまして、漸次この方面のことを拡大し、充実して参りたいと考えております。
  226. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいま文部大臣お答えになった通りでございまして、国立大学の方につきましてもまだ十分ではございません。しかしお話通りに、教育を十分受けていない青年も相当あるわけでございますから、今後におきましても、できるだけ財政的に考えていきたいと考えております。
  227. 野本品吉

    ○野本品吉君 大学その他さらに充実しなければならない場所があるということを文部大臣も言われ、また大蔵大臣もそれらの点について今後青年の問題についてお考えになると言われておるのでありますが、私が特にこの点を問題として取り上げましたのは、まあ言葉が適当でないかしれませんですけれども、ホワイト・カラーの生活をしておる若い者だけでは、日本は繁栄しないということなんです。ほんとうに工場、事業場で汗みどろになって働いておる青年諸君に、もっと政治はあたたかい扱いをすべきだ、これは素朴な青年の心情からいたしますというと、わずかなことでも非常な感激を持つのです。この間の石橋さんの、青年とも会って話すというあの施政演説の言葉の一句を見まして、青年は非常な感激を持ち、また期待をかけておったわけです。私はかような意味におきまして、全国千数百万の勤労青年のために、もっと政治家が大きな目を見開いて、そうして彼らのためのあらゆる便益を与えるような施策を講ずるところに、職場における活気が起り、いわゆる農村山村、工場を通じての生産性向上というようなことは、かような政治の上に生まれてくる、かように考えますので——もう時間がございませんから遠慮申し上げますが——今後これらの点につきまして、政府当局においても十分お考えを願いたいと思います。  さらに最後にもう一点、この月の六日から八日にかけまして、明治神宮の外苑の日本青年館で全国の勤労青年の研修大会というのがありました。終戦直後の大会は、資本主義がどうだ、社会主義がどうだという、浮き上ったような議論がにぎやかだったのでありますが、私は昨年のこの青年の諸君の研修の状態、今年の内容等を見ますと、非常にまじめになり、地についた研究をして、相互に発表し研究しております。新農村建設の努力の経過の報告と、そられの隘路と、実に耳を傾けるに値いする発表をいたしております。非常に地についたまじめな研究をして、彼らの青年団生活を続けていこうとする深い反省と慎重な態度がうかがえるので、私は非常に喜んでおるわけでありますが、これは憲法の規定するところによりまして、かつては国なり府県なりから、これらの青年団に対しましての補助の道があったのでありますが、今は全然ありません。従って、今青年団の諸君は、みずからの勤労によって得たものを醵出するとか、あるいは地方の有志に寄付を求めるという方法をとっております。私は、寄付を求めるというようなことによって、伸び伸びと育たなければならない青年が、卑屈になることをおそれております。従って、どういう名目なりどういう方法かなりで、非常にまじめな青年の団体に対しましては、これを助成する道を検討する必要があるのじゃないかということを考えております。この点について文部大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  228. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 青年がだんだん精神的な落ちつきを取り戻し、そうして自発的にいろいろと自己を磨いていく活動勅をするということは、まことに望ましいことであります。ただいまお話になりましたようなことも、私といたしましても意を強くいたしておる次第でございます。お話にもございましたように、今日いわゆる民間団体に対しまして政府が直接助成するということが法律上できない関係になっておるのでございます。これにつきましては、なお私どもといたしましては、とくと一つ検討さしていただきたいと思います。
  229. 野本品吉

    ○野本品吉君 私の質問はこれで終ります。
  230. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十四分散会