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1957-03-26 第26回国会 参議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十六日(火曜日)    午後零時五十九分開会   —————————————   委員異動 本日委員木村篤太郎君、石坂豊一君、 泉山三六君及び久保等君辞任につき、 その補欠として佐野廣君、小幡治和 君、成田一郎君及び海野三朗君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            小林 武治君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            中田 吉雄君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            小幡 治和君            小山邦太郎君            佐藤清一郎君            佐野  廣君            柴田  栄君            高橋進太郎君            土田國太郎君            苫米地英俊君            仲原 善一君            野村吉三郎君            野本 品吉君            林田 正治君            前田佳都男君            武藤 常介君            内村 清次君            海野 三朗君            岡田 宗司君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            中村 正雄君            羽生 三七君            松浦 清一君            山田 節男君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    法 務 大 臣 中村 梅吉君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    農 林 大 臣 井出一太郎君    郵 政 大 臣 平井 太郎君    国 務 大 臣 宇田 耕一君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 小滝  彬君    国 務 大 臣 田中伊三次君   政府委員    法制局長官   林  修三君    調達庁長官   今井  久君    調達庁不動産部    長       松木 豐馬君    経済企画庁調整    部長      小出 榮一君    経済企画庁開発    部長      植田 俊雄君    外務省アジア局    長       中川  融君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主税局長 原  純夫君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    文部省社会教育    局長      福田  繁君    農林大臣官房長 永野 正二君    郵政省電波監理    局長      濱田 成徳君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    経済企画庁開発    部参事官    浅田 重恭君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員異動について申し上げます。  本日久保等君が辞任され、その補欠として海野三朗君が指名されました。   —————————————
  3. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 次に、本日の理事会意見の一致した点を御報告いたします。  それは三月二十八日中に、さきに各会派に割り当てた質疑時間の範囲内で一般質疑を終了することでございます。   —————————————
  4. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) これより昭和三十二年度一般会計予算外二件を議題といたします。  質疑を続行いたします。
  5. 松浦清一

    松浦清一君 私は外交に最も関係の深い日本漁業問題全般について、外務大臣農林大臣大蔵大臣に若干の御質問を申し上げたいと思います。従って、全体の質問の要点が漁業問題におおむね限定をされておりまするので、御多忙中の農林大臣出席を願うために、若干委員会の審議の時間をお待ちを願いましたことを、まことに恐縮に存じております。  まずお尋ねをいたしたい第一の問題は、日ソ漁業委員会が、新聞等に報じられておるところによりますると、大体大詰めに近づいてきておる模様であります。今までこの委員会における質疑を通して断片的に問題となりましたけれども、系統的にその経過の御質問を承わっておりません。従って、この委員会が始まりましてから今日の段階に至りますまでの経過並びに現状について、外務大臣農林大臣の御説明を願いたいと思います。
  6. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 漁業委員会は、開催されましてから相当回数委員会を重ね、また小委員会においてそれぞれの両国専門家の間に科学的な資料について検討をされたのでありますが、ソ連側におきましては、本年度のサケ、マスの漁獲高について十万トン、八万トンという昨年の五月にイシコフ河野大臣の間に一応の話し合いがあります。この数字にこだわって、それを強く主張しておったのでありますが、これは当時の状況から見まして、いろいろな条件のある数字でございまして、決してこれで本年度数字がきまったわけでないというのがわが方の主張でありました。両方の主張対立して、停頓した状況になりましたので、私はテボシャン大使を呼んで、せっかく両国国交正常化されて、今後ますますこの友好親善関係を強めていかなければならないその当初に当って、漁業問題について根本的な意見対立でこれが解決を見ないということでは、はなはだ将来が危ぶまれる状況になると思っておる。自分たち考えでは、せっかく国交正常化せられた今日において、また将来友好関係が深められようという際において、国交正常化がなかった昨年よりも下回るような漁獲高になるということは、とうてい国民感情として了承できないことである。ソ連政府が大局的な見地からこの問題を一つ再考して、そしてこの問題の円滑なる解決をするように考慮してもらいたいということを申し入れまして、これに対してテボシャン大使は、ソ連政府意向をもたらして、ソ連政府としても大局的見地から一つの案を提案するという意味をもちまして、数字については、本年度は従来の主張であった十万トン、八万トンの数字にこだわらない一つ数字提案して、またそれに関連してオホーツク海における漁業制限問題を提案して参ったのでございます。これにつきましては、その後この提案について鋭意両国委員の間に論議が重ねられて参りまして、今まだ結論を得ないというのが従来の大体の経過並びに現在の段階でございます。詳しいソ連側最後提案の内容や、あるいはそれについてのこちら側の意見等につきましては、今、両国の間に、委員の間に交渉が行われておる際でありますから、私が今申し上げました程度以上の詳細な事実は、まだ申し上げかねるというのが現状でございます。
  7. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) あらましは、ただいま総理から申し上げた通りでございますが、少しく敷衍をして申し上げまするならば、日ソ漁業委員会は二月の十五日から始まりまして、今日まで本委員会をすでに十二、三回開いております。その間、小委員会も七、八回に相なるかと思っております。当初わが方といたしましては、従来の統計的資料に基きまして、戦前約四十年間にわたって日本漁獲高、これがはっきり把握されておりまするので、日本の沖取漁業というものが資源に悪影響を及ぼしておらない、こういう観点に立ちまして、本年が豊漁年ということから十六万五千トンという数字を提示いたしたのでございます。しかしながら先方は今総理が申し述べられましたように八万、十万という線を固執して、しかも本年は不漁年であるということをしきりに力説をいたしたのでございます。その間いろいろとやりとりはございましたが、最終的にはやはり本年は豊漁に近い年であろうという程度まで向う認識を改めてきたわけでございます。しかし十万トンの線を一歩も上回ろうとしないままに一カ月を経過いたしました。その間わが方からも一つの調整的な考え方として、十四万五千トンという数字を示したことがあったのでありまするが、しかしながら先方はこれに反応を示してこないという状況対立のまま約一カ月の日子が流れたわけであります。そこでこれはもう少し別な角度からという考えのもとに、総理テボシャン大使との会談が行われ、これがたしか三月十五日であったかと思いまするが、それにこたえて、大所高所から日ソ国交回復第一年の初の問題であるこの漁業交渉を進捗せしめるという意味でございましょう。ソ連側から十二万トンという漁獲量中心とする提案がなされたわけでございます。これに関してただいま鋭意折衝をいたしておるわけでございますが、一つオホーツク海の制限規制をさらに強化したいという問題、あるいは本年を暫定的な取りきめとするのであるが、しかし豊漁の年である、こういう認識の上に十二万トンというものが提示されている、こういうことでございます。今それらの問題を中心にして、実は私もきょう昼をクータレフ代表と会ったために、当予算委員会へおくれて参ったような次第でございます。目下そういう段階にあるわけでございます。
  8. 松浦清一

    松浦清一君 今日までのこの予算委員会でこの問題の質疑が行われました際に、今外務大臣のおっしゃった河野イシコフ会談の際に八万トン、十万トンという話し合いがあったので、それが交渉過程に非常に障害になったような御発言でございました。今までの総理としてのこの委員会における答弁ではそれが障害になっているような御答弁でもございませんでしたし、また河野君は八万トン、十万トンというような話し合いイシコフとの間にしたことはない。きょうの新聞でしたか、その新聞にも談話としてそういうことを発表しておったように記憶をいたしておるのです。しかし今の御答弁によれば、これが障害になってなかなか交渉は困難であったと受け取れるような御答弁でございましたが、それが交渉障害になったのかならなかったのか、その点を御明確にしていただきたいと存じます。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは今私がお答え申し上げましたように、向う側はそれを固執する一つ理由として、昨年五月にイシコフ河野両相の間にそういう話し合いがあったということを根拠にいたしておるのであります。しかしその問題につきましては、すでに河野前農相が国会において答弁をいたしておりますように、また私どもが聞いておるところによりますというと、そういうはっきりした問題ではないのみならず、それにはソ連側の陸上における制限というものが付帯しておる問題でありますし、また一応の話としてそういう話が出ておりますが、あくまで本年度漁獲高の問題は、漁業委員会においてきめることに条約上はっきりなっておるのでありますから、その問題が私ども支障になっているという考えではなくて、ロシア側がそういう一つ主張に縁由しておるというのが実情でございまして、その点についてはすでにその問題に関する見方なり考え方彼我両国の間に違っておるということを、私どももはっきりいたして参っておるわけでございまして、そういう問題でありまして、今度の交渉支障になったかならぬかというふうな問題に関しましては、おのずからいろいろな見方もありましょうけれども、今申したようなソ連側がそういうことを主張する。八万トン、十万トンの線を固執する理由として彼らはあげておる。しかしその問題に関するわが方の解釈なりその当時の事情なり各般のところから申しまして、彼らが主張するところはこれは理由がないと、こういうふうに考えておるわけであります。
  10. 松浦清一

    松浦清一君 交渉は相手方とするわけでありまするから、こちらの方でそれが障害にならない、こういうふうに自任をいたしておりましても、先方がこの漁業条約をきめまするときに、両国の代表的な立場にあった人同士の間で八万トン、十万トンという話し合いがあったということが、それがもとになって、漁獲量を決定しようとする委員会話し合いがされておる。こういうことになりますると、やはり八万トン、十万トンの線を河野君が出したということが明らかに障害になっていると思う。しかりとすれば、河野君の責任はきわめて重大であると考えまするが、外務大臣のお考えを伺いたい。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その旨に関しましては、今私が先に答弁いたしたことできわめて明瞭であると思いますが、私はこの問題について河野農林大臣責任を問う意思はございません。
  12. 小林孝平

    小林孝平君 関連。今外務大臣の御答弁を承わっておりますと、私は非常に今後の外交交渉をやる上に、単に今回の漁業交渉だけでなく、非常に重大な問題があると思うのであります。それは今回のこの八万トン、十万トンという問題は日本側はそういう約束はしなかったと、向う約束をしたと、こういうことでただいま言い争っておるのであります。これは双方いずれがいいか悪いかということは速記録もないのでありますから問題になりませんが、私はこれに関連いたしまして考えなけばならぬのは、先般数日前に総理大臣テボシャン大使とお会いになりまして、翌日当委員会において経過を御説明になりました。その際に総理大臣テボシャン大使は今年に限り特に十二万トンを許すという提案をされた、こういう御説明がありましたので、私は直ちに、本年に限り十二万トンということになっては大へんであります。これは問題ではありませんかとお尋ねいたしました。総理大臣は実は必ずしもそうでなく、これは来年はまた別なんだ、こういうふうに補足されたのであります。私はそのとき特に総理大臣にお言葉を返して恐縮でございますけれども、それは来年はやはり八万トン、十万トンの線になるのではないかと重ねてお尋ねしたのでありまするけれども、ただいまのような御答弁があったのであります。ところがその後やはり昨日の日ソ漁業委員会においてのソ連側提案は本年に限り特に二万トンふやして十万トンにする。さらにオホーツク海域における漁獲高制限をするという提案をはっきりと出されておるのであります。こういうことを見ますと、先般総理大臣のこの御答弁とやはり食い違っておるのであります。私は、日本語は非常に表現が複雑というか、むずかしいので、同じことを言っても、いろいろにとれる場合があるのであります。そこでそういう点から考えると、今回のただいまの、非常に頭脳明晰をもって知られておる総理大臣の御答弁でも数日の間にちょっと疑問が出る、こういうことでありますので、この河野イシコフ会談においていろいろ論議されたのは、この双方自分の都合のいいように解釈したところから出発しているのではないかと思うのであります。そうしますと、私は今後日本がいろいろの外交交渉をする際にこういう事例がひんぱんと出てくるおそれがあるのではないか、こう考えるのであります。  そこで私は外務大臣にお尋ねいたしますが、過去の日本外交交渉において、このように双方一つの問題について全然異った解釈をして、それがいろいろの交渉の重大なる支障になったという前例があるのかないのかという点を一点お尋ねいたしたいのであります。  さらに第二点は、現実にどちらがいいか悪いかという問題は別といたしまして、こういう誤解が生じておる、これはイシコフ・河野会談解釈の相違なのでありまするが、これを解決するために本国のイシコフ漁業相に、何らかの方法でもって河野イシコフ会談の当時の模様を思い起してもらって、あれは河野全権の言っていた通りだというような措置が講ぜられないものかどうか。単に井出クータレフ会談だけで押し問答しておったのでは解決しないと思いますから、そういう方法を講ぜられる意思があるのかないのか、またやられる必要があるのじゃないかと思うのでありますが、この点をお尋ねいたします。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国際交渉やあるいは条約等につきましていろいろな解釈の差異を起したり、あるいはいきさつ等についての見解を異にする場合もいろいろと国際的にはあるのでありますが、なるべくそういうことをなくするためにいろいろ議事録であるとか、いろいろなものを整備いたしまして、そういう疑念を生じないように努力をいたしておるわけであります。今かつてそういう例が具体的にあったかと言われることにつきましては、私としてはそういう事例を具体的には承知いたしておりませんけれども、そういうことは、一般的に論じますというと、ともするとあり得ることでございますので、十分に注意をいたしておるわけであります。  第二の点につきましては、今ソ連側提案について両国委員で十分に検討し、これが妥結に現在努力いたして、おるわけであります。その途中でありまして、御提案のように、直ちにイシコフ漁業相にその意向なりあるいは当時の事情確めるというような考えは、現在の状態においては持っておりません。
  14. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣は本日もクータレフ会談されたのでありますが、あなたは直接交渉されまして、今回交渉が何らかの形において妥結するといたしましても、ソ連が、十二万トンは、これは今年限りのものである、今年は日ソ国交回復の初年度であるから、特別の計らいをもって二万トン増加すると、この線は譲られないだろうと思うのでありますが、あなたは交渉されまして、特に本日抗議を申し込まれたはずでありますが、その結果どういうふうにお考えになりますか。そういうことを除いてですね、八万トン、十万トンは全く白紙に還元してやられる自信があるのかないのか。またないとすれば、私はただいま外務大臣にお尋ねいたしましたが、あなたはその責任者として、何らかの方法でもってイシコフ漁業相に、その当時の問題を反省をしてもらうという努力をされる必要があるとお考えになるかどうか、御答弁を願いたいと思います。
  15. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) きょうただいまもクータレフ氏と会談をして参ったのでありますが、私といたしましては、今年限りというような条件を排除すると、こういうことのために努力いたしておるさなかでございまして、なお忍耐強く当らなければいかんと思っておるわけであります。  それから先方漁業相との交渉を持ったらばいかがかというお問いでございますが、これは外務大臣ともよく御相談をいたしまして、そういう必要があるかどうかというような問題をも十分検討いたしたいと思っております。
  16. 松浦清一

    松浦清一君 私どもが今までに得ておりまする情報によりますと、漁業委員会で、最初日本側から十六万五千トンという声がかかって、その次には、先ほど農林大臣おっしゃったように、十四万五千トンという線が出て、さらに十二万七千トンという提案をした。このように伝えられておるのですが、その十六万五千トン、十四万五千トン、十二万七千トンのそれぞれの漁獲量についての提出をしました具体的な根拠ですね、それを御説明を願いたい。
  17. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) その最後数字の十二万七千トンというのは、これはどういうところから入手せられましたか存じませんが、それは全然ございません。十六万五千トンという数字は、先ほども申し上げましたように、過去の漁獲統計というものをつぶさに検討いたしまする際に、本年を豊漁年とみるならば、まず魚族保存意味から申しまして支障がないであろう、こういうまあ考え方に立っておったわけであります。それを途中で十四万五千トンという線に切りかえましたのは、先方とのにらみ合せと申しましょうか、交渉過程におきまして、問題をより現実的に詰めてみるならば、昨年度漁獲量等をもあわせ考えて、問題を詰めてみるならば、まずそのあたりかと、こういうような考え方に立っておったわけであります。
  18. 松浦清一

    松浦清一君 今の十四万五千トンとしいうのは、ライン内といいますか、制限内といいますか、制限内だけですか。制限内外を通しての漁獲量をさしているのか、どちらですか。
  19. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 制限内外というよりも、もし十四万五千トンという数字を了承するならば、規制区域について若干の考慮をすることあるべし、こういうことでございますので、総漁獲量というものはそれ以上に上回る、こういう考え方でございます。
  20. 松浦清一

    松浦清一君 交渉過程で、その十四万五千トンという日本側主張のくずれたところは、一体どういうところにございますか。つまり先方がそれを受け入れなかったという理由はどこにございますか。
  21. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まだその当時先方としては、八万、十万にこだわっておった当時でございまして、やはり主として魚族保存という関係から、その漁獲量というものは過大である、こういう考え方の上に立って拒否いたして参った、こういうふうにみております。
  22. 松浦清一

    松浦清一君 冒頭に詳細に交渉経過の御説明を求めましたのは、一説によりますというと、日本側から十四万五千トン、つまり制限内外を通して十四万五千トンという線を出したときに、しからばそれを主張される日本資料を出してもらいたい、こういうことで、ソ連側の求めに応じて提出いたしました日本側資料すなわち実績として、制限内十一万四千トン、制限の外二万八千トン、こういう線が出たと、このように伝えられているのですが、そういう事実はあったかなかったか。
  23. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) この海域における漁獲量というものは、松浦委員、御承知のように、母船式操業によりまするものは、これは的確に捕捉が可能でございますが、しからざる部分については、これは推定と申しましょうか、そういうものの入り込む余地が多いわけでございまして、大よその推定ということを前提にして、数字を示したわけでございます。
  24. 松浦清一

    松浦清一君 昨年度実績によりますと、母船式の方の独航船の漁獲量が合計九万三千トン、それから四十八度線以南の流し網の方の漁獲量が三万四千トン、これを合せると、大体制限線内の漁獲量が十二万七千トンとなる。これはむろん政府側から出た資料ではございませんが、十二万七千トンという線を出したのは、昨年度実績が十二万七千トンであった、こういう資料を出したと、こう伝えられておるのですが、今、農林大臣の御説明によりますと、十二万七千トンという線は出しておらぬ、このような御答弁であったように思うのですが、これは間違いございませんですか。そうしますと、現に十四万五千トンという線で交渉が続けられていると理解してよろしゅうございますか。
  25. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) これは先方の拒否するところとなっておるのが現状でございます。
  26. 松浦清一

    松浦清一君 そういたしますると、ソ連側から正式に回答をされておる、つまり回答といいますか、提案といいますか、十二万トンの線を中心として、それにくっついておる二つの条件をのむかのまないか、こういうところが今の交渉の焦点になっておるわけなんですか。そうしますと、十四万五千トンというものはソ連から拒否をされて、日本側はそれを放棄して、ソ連側提案による十二万トンを中心としての具体的折衝が続けられている、このように理解をする段階でよろしゅうございますか。
  27. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まだ十二万トンというものをこちらが容認をしたという段階ではございません。それに付帯をしておる条件について検討をしておる、こういう段階でございまして、まあ自余の点は目下微妙な段階でもございますので、一応この程度で差し控えさせていただきたいと考えます。
  28. 松浦清一

    松浦清一君 私はこのようなことを尋ねておりまするのは、この交渉の結果において、日本側が不利になるようなことを毛頭期待をしておらぬので、農林大臣外務大臣と志をひとしくして、できるだけ有利な条件において、しかも日本ソ連との間に締結をされました諸般の条約等が、完全にその目的を達成することを希望いたしておるのであります。いうならば、政府側ソ連に対して交渉いたしまするその背景的な援助を与えたいと思っておりこそすれ、その障害になるようなことをお尋ねしようとは思っておりません。しかしながら、日ソ漁業条約、海難救助協定、日ソ共同宣言等が国会に承認を求められました際に、私どもは強力にこの交渉経過においても支持を与え、そして積極的にこれに承認を与えてきたのでありまして、その結果、一番最初に開かれている漁業交渉の問題の経過については、障害になるから答弁ができないといって逃げられればこれはしようがないわけですが、障害において詳細な説明を求めるということは、これは私どもの義務であると同時に、答弁をする責任があなた方にはあるわけなんです。ですから、今までの御答弁によってまだ明確になっていない点は、十四万五千トンの線は捨てている、しかし十二万トンの話し合いに応じているというわけではない、こういう段階と理解をして、十二万トン以上に妥結をする場合もあり得ると了解してよろしゅうございますか。
  29. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) いかにして国益をより増大をするか、さような観点から建設的なお立場で御質問をいただいていることは、よく了承いたします。ただいまは主としてソ連側提案検討をしているさなかでございまして、御指摘のように、できるだけ有利に取りまとめたい、こういう所存で相当っている次第でございます。
  30. 松浦清一

    松浦清一君 まだ明確になりませんけれども、十二万トンで妥結するにしても、十二万トンを上回る線で妥結をするにしても、その話し合いがまとまった後に残されている一つの問題がある。これは国内的な問題ですが、四十八度線以北の母船式独航船の漁獲量の問題、それから四十八度線以南の流し網の方の漁獲量の配分の問題が起ってくるわけです。その点については、おそらく今週中に交渉の方は解決がつくのではないかと想像されるのですが、すぐに、もう五月の初めになれば出漁をしなければならぬ、その話し合いがついたあとで、国内における四十八度線南北の独航船と流し網との間で問題が起って、もたもたしているというようなことでは、これは大へん困ると思う。あなたの水産行政の建前から、この配分についてはどのようにしようと今お考えになっているか、その点を伺いたい。
  31. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) この問題は、これからの問題でございまして、ただいまのところは、もう交渉に全力をあげている最中でございます。従いまして、まだ私自身として、今御指摘の点に入って、自分の案を持ち合せているということではございませんが、できるだけこれは公正妥当な配分をしなければならぬと、かように考えております。
  32. 松浦清一

    松浦清一君 公正妥当な線とは、昨年度実績等を勘案して、一部の巨大な資本漁業に圧力を加えられるというようなことのないように、公平に配分をきめるということに理解をしてよろしゅうございますか。
  33. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあ昨年の実績はもちろん尊重をすべき一つの要素でございましょう。また経済採算というふうな問題も検討をしてみなければならぬと考えます。いずれにいたしましても、先ほど来申し上げる公正にして妥当な線を念願いたしているわけでございます。
  34. 小林孝平

    小林孝平君 関連。経済採算も考慮しなければならぬとおっしゃいましたが、昨年の実績にはそういうことを考慮されてなかったのですか、それから、されてないとすれば、経済採算を考慮するというのは、具体的にはどういうことなんです。これは非常に重大なことです。あなたそういう不確定なことでおっしゃると、直ちに明日からてんやわんやになります。具体的に一つ
  35. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 昨年の実情は、御承知のようにブルガーニン・ラインというものが適用をされておったわけでございます。あるいは時期的にも非常にアブノーマルな形であったかとも思うのであります。そういうふうなことで、あるいは今年の場合と事情が違うというふうな点もあるのではないだろうか、こういうふうに考えておりますので、先ほどの経済採算というふうな言葉もそういうところから出ておるわけでありまして、いずれにもせよ、私の目下の立場というものは、その問題に対しては既成観念を持っておりませんので、御指摘のような公正妥当な考えのもとにいたしたいと考えております。
  36. 小林孝平

    小林孝平君 私はそんなことを聞いているのじゃありません。経済採算というのは、経済採算も考慮してというのはどういうことなんですか。私はこの問題だけじゃないのです。あなたがそういうことをおっしゃると、じゃ経済採算というのはどういうことか。ことしは新たな割当は経済採算も考慮してやるというので、関係者みんな大騒ぎをやると思うのです。それからもう一つ申し上げたいのは、あなたはそういうような不明確な言葉を使っておられますと、クータレフとの会談にもそういうあいまいなことで交渉されるのではないかと思うのです。そうしますとまた、イシコフ・河野会談のような問題ができて、クータレフ井出会談、ここであなたはまた、私はそういうつもりではなかったというのは、日本人にもわからない、経済採算も考慮してなんと言われますと、これは重大な問題です。なお、あなたから交渉していただかなければなりませんので、老婆心ながら申し上げるのですが、もう少しものは具体的に、明確にお話しなさるようにお願いいたします。ともかくその経済採算も考慮してというのを承わっておきたいと思います。
  37. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 目下の交渉の問題と、それから国内の割当の問題は、これはもう全く別個でございますから、決してそのような御懸念はなく、御了承をいただきます。    〔理事左藤義詮君退席、委員長着席〕  それから経済採算という言葉が不明確だと言われましたが、これは実際の漁獲量がきまりまして、問題をもう少し詰めてみないと、ここで今にわかにどうというわけには参りません。まあ経済採算が不都合な言葉であれば、これは一応取り消しますが、要するに公正妥当に取り計らう、こういう線でございます。
  38. 松浦清一

    松浦清一君 今の何といいますか、採算といいますか、母船式の方は投資額が大きいわけですね、それから四十八度線以南の流し網の方は投資額が少いわけですね。その投下資本の採算率というようなことが重要になるのか、昨年度実績というものが配分の際に非常に重要なポイントになるのか、公平といってもどっちをとるかということで、だいぶ違ってくると思います。それをあなたはどっちをとられるのですか。
  39. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 要すれば昨年の実績は、これはやはり実績として十分尊重される要素である、こういうふうにお考えいただいてけっこうでございます。
  40. 松浦清一

    松浦清一君 どっちに重点が置かれるのですか、それで非常に問題が違ってくるのですね。もうすでに十二万トンというソ連側提案がありましてから、おそらくその辺で解決するのじゃないかということが、業界漁民関係で想像されて、それをどう配分してもらうかということについて非常な対立が起っている。あなた御存じの通りだ。二十三日であったか、水産庁か何かが、南と北の諸君を集めて、団体の諸君を集めて、いろいろ意見を交換されたようなことが新聞に出ておったと思うのですが、とにかくその際も意見の一致をみなかった。おそらく今日に至るも毎日そのことについての、どういう形においてか対立抗争が展開されていると思う。まことにこれはソ連側交渉されている最中に、情ない話であるけれども、これは必然的な結果としてやむを得ない。それに対して公正妥当な判断を農林大臣がされて、そして無理の起らぬ処置をとらないというと、これは大へん困ることになると思う。ですから今の資本力に対する採算なのか、前年度漁獲量に対する比率が重点になって判断されるのかということは非常にこれは意味が違ってくる。その点を伺っているので、公平妥当だといううちのいずれの点をとられるか、こういうことを明確にしておいてもらいたいと思います。
  41. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) これはまあ漁獲量がまだ確定をしない現在におきましては、まだ実はそこまで入りますることは、私としても、今情ない状態だとおっしゃるごとく、そういう点はまことに残念でありますが、しかし昨年の実績は、これは十分に尊重をいたしまして、御指摘のような方向に処理をして参りたい、こう考えております。
  42. 松浦清一

    松浦清一君 それは一つ投下資本に対する採算点というものも、これは問題にしないというわけにいかん。非常に重要な要素ではありまするけれども、何としても昨年度実績というものが非常に重要な要素なんですから、その点を十分御勘案の上で配分の率をきめていただきたい、こういうことを希望しておきます。  それから十二万トンで解決したわけではないのに、十二万トン説をしばしば出して、これはどうかと思うのですが、もしその点で解決したとすれば、これは独航船五百隻、流し網五百隻、それこそ全体の船の採算点を割るのじゃないかと思う。昨年の実績が九万三千トンに三万四千トンですから十二万七千トンですね。七千トンの違いというものが採算点を割るのじゃないか。昨年度もあまりよくはなかったようです。大体独航船の方で、これは私の計算が間違っているかしれませんけれども、昨年と同じ値段として、サケの値段が同じ値段として、独航船は二百五十トンないし二百七十トンくらいとらなければ採算点にならぬのじゃないか。それから流し網の方は七十トンないし百トンのサケをとらなければ、これは採算点に達しないのではないかと思う。これを南北一千隻に割ってみるというと、これは採算点を割るのです。水産庁が計算されたいろいろな原価計算が出ておりますけれども、それを割ってしまう、こういうことになる。そうすれば損をしてでも全船団を出漁させるのか、あるいは若干の隻数の制限をさせるという必要が起ってくるのではないかと、こう考えるのですが、これは仮定として、十二万トンか十七万トンか知りませんが、とにかくその辺のところで話し合いがついたとして、昨年行った全船が出漁するということは非常にこれは困難な問題が起りやせぬかと思うのですが、その点はどういう工合にお考えになっておりますか。
  43. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) これも今の段階におきましてはまだ明確に申し上げるわけに参りませんので、それらの点は十分に考究をして当って参る所存でございます。
  44. 松浦清一

    松浦清一君 日本漁業問題全体というふれ出しで質問を始めて、日ソ漁業関係だけで大から時間が済んでしまいましたが、あとは一つ項目別にお伺いをしますから、外務大臣農林大臣のお答えを願いたいと思います。  その前にとにかく十二万トン以上で解決するように努力を願いたいということを一つ懇請をします。それから二つの条件は、これはなかなか将来の北洋における日本漁業のためには非常に大きなこれは障害になると思うのです。オホーツク海の制限、それから河野イシコフ会談の八万トン、十万トンがいつまでも生きてくるということは、これは非常に将来の交渉の上に障害になると思うので、この点はよく話し合いをされて、漁業委員会で話がつかなければ、また外務大臣・ブルガーニン会談をしばしば繰り返されて、根気よくこの問題が解消されて、そして妥結をするように御努力を願いたいと、こういうことをお願いをしておきます。
  45. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 関連質問。ただいま松浦君が最後にあげられましたオホーツク海での出漁の制限が、これはオホーツク海に面しております日本としては、単に漁業だけの問題でなくて重大な問題であろうと思います。この問題につきましては、もちろん交渉の際に十分に日本の立場を主張されておるとは思うのでありますけれども、伝えられるところによりますというと、昨年の河野イシコフ会談の際に、このオホーツク海への出漁をもこちら側で譲歩をして、みずから制限するようなことを受けたということも伝えられておる。そういたしますというと、これは八万トン、十万トンの線でいろいろ問題が起っておりますが、それ以上にまた重大な問題が加わったものと考えなければならぬ。一体このオホーツク海への出漁制限の問題は、私ども今度突如として向う側から出されたと思っておりましたのに、そういうような事態があるとすればきわめて重大な問題でございますので、この問題についてのいきさつを伺いたい。そして特にその問題は、昨年の河野イシコフ会談の際にもそういう問題が出たのか、そうしてそれに対してはその際は、河野全権はどういう態度をとったのか、またこれが、その際の話し合いが今日また出てきたのかどうか、それらの点を明らかにしていただきたいと思います。
  46. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 昨年モスクワにおける話し合いの際にそういうふうな問題も出まして、その結果、当時七船団をオホーツク海へ回そうという当初の意図を二船団に切りかえるということをいたしまして、まあ資源保護と申しましょうか、こういう観点から相協力をして措置をした、こういうように私は伺っておるわけであります。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは非常に重大な問題だと思うのです。果してそれは資源保護の立場からやられたのかどうか、私どもはそう聞いておらぬのです。この問題につきましては、前回の漁獲量の問題、あるいは採算の問題、そういう問題からして、出す船団についていろいろ話し合いをして少くしたというようなことも、こちらでは言われておるのであって、初めからそういうようなことでオホーツク海へ出ることを向うから制限され、これをこちらが受けたというふうには、河野全権のお話の中でも私どもそれを了承していなかった、といたしますというと、これは重大な問題だと思う。本年向うはやはり去年の河野イシコフ会談に基いてさらにオホーツク海への出漁の制限を持ち出してきたと思うのですが、この点については、確かに河野イシコフ会談の結果に基いてそれを持ち出してきたのでございますか、そのいきさつを一つはっきりさしていただきたい。なぜ持ち出されてきたか。
  48. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先ほど申し上げましたように、そういう話が当時出て、自主的に日本側は七船団の計画を二船団にしたと、こういうふうに私は承知をしておるのであります。そして今回の話し合いにおきましては、まあ従来はそのような問題は出ておらなかったのでありますが、つい最近になりまして、その問題が一つの論点に相なって参っておるわけであります。
  49. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうもただいまの御答弁でははっきりしない。七船団から二船団に減らしたということは、向うの要求に基いて、こちら側がオホーツク海に出ることをみずから制限したのかどうかということが一点。それから今度まあ十二万トンの案を向うが持ち出してきたときに、オホーツク海の出漁を制限することを要求してきたが、これは河野イシコフ会談において向う側がこれに基いてその説を持ち出してきたのかどうか、この点を明らかにしていただきたい。
  50. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先般ソ連側から新しい提案を持って参りました際に、資源保護の建て前からオホーツク海の漁撈を相ともに制限をしてほしいのだと、こういう意図のもとに打ち出されてきたような次第でございます。
  51. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 岡田君、簡単に一つ願います。
  52. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 非常にこれは重要な問題なんで、さらに明らかにしておきたいのは、先ほどのお話ですと、自主的に七船団を二船団に減らして出漁さす、その河野イシコフ会談の際にオホーツク海の制限の問題も出たというふうに言われておったのでありますが、その七船団を二船団に減らしたのは、そのオホーツク海の漁業制限と関連して減らされたのか。もしそうだとするならば、昨年全権の報告には、そのことは何ら含まれておらなかった。私どもに聞かされない秘密の話し合いだったのだとも考えられるのです。そしてそれを日本が了承したがゆえに、本年またこのオホーツク海の出漁制限の問題を持ち出したといたしますならば、これは日本にとりまして重大な問題です。李承晩ライン以上の問題だと言わなければならぬのです。この点につきまして、もう一度その経緯を明白にしていただきたい。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 過日テボシャン大使が私に、十二万トンという数字を、ソ連としては日ソ国交正常化された今日、また将来の友好関係考えて、私からの申し入れの意思ソ連政府としては了承して、特に本年の漁獲高を十二万トンにするという回答がありまして、その際、十二万トンにするがオホーツク海における制限を一そう強化したい考えであるから、これの制限を特に強化してもらいたいという話が私にあったわけであります。このオホーツク海に関する制限の問題の根拠をどうだからということでなしに、むしろ十二万トンに数字において譲るからオホーツク海の制限を強化してもらいたいという意味の私に対する回答であった。私は、数量及び制限海域の問題は重大な問題であり、専門委員会において十分検討さるべきであって、私自身は専門家でないから、その案が直ちに妥当であるというようなことは申し上げることはできない。ソ連側が私の提案に対して、日ソ両国国交をさらに進めていこうという趣旨で特別の考慮をされたことに対しては、私は感謝するが、内容自体は専門家漁業委員会において十分検討することにしましょうということで、実は別れたのであります。その際オホーツク海の制限問題に関する根拠については、何にも提示はなかったのであります。またそういう話合いになっているからこれを制限しようというのじゃなしに、数量において十二万トンに譲るから、一つ制限地域においてはこのオホーツク海というものに対する制限をさらに強化してもらいたい、こういう提案であったわけでありまして、これはもしも河野イシコフ会談においてそういうことがすでにできておって、それを根拠に今度の交渉がされるということであるならば、私は最初からそういうことをソ連側としては提案してきたであろうと思う。ところがそれがなくて、十二万一トンということにして従来の主張であった八万、十万の線は譲るから、そのかわりにというふうに、いわばそれに関連してソ連側が今回提案してきたと、私はかように了解しております。
  54. 小林孝平

    小林孝平君 議事進行。ただいまの問題はともかく従来の八万、十万という問題と全く別個であり、また岡田委員が言われたように、これは李承晩ライン以上に重大な問題であることは明らかであります。そこで、この問題の経緯を明らかにしなければ、日ソの親善の上にも非常に重大なる支障があると思う。いたずらに誤解に基いて反ソ感情をあおるというようなことも、こういうところから出発するであろうと思うのであります。また、そういうことが行われるのは、全権として行かれた河野一郎氏にとってもはなはだ不本意であろうと思うのであります。そこで先般来八万トン、十万トンの問題に関連して、河野氏を参考人として招致する問題を取り上げたのでありますが、この問題は、理事会の申し合せで委員会で議事進行に名を借りて発言することは困るということであるので、私はいたしません。しかし、今回はこの八万トン、十万トンと全く別個の問題でありますから、新たにこれは八万トン、十万トン以上の重大なる問題として、もう一度河野一郎氏に本委員会に来て説明を聞く、というあっせんを委員長がやられることをここにお願いいたします。従来は、出席されない、国会で答弁した通りであると、こういうことでございましたが、それは八万トン、十万トンに対しては御答弁がありましたけれどもオホーツク海の出漁制限については何らのお話がございませんので、どうかここに来て明らかにしていただいて、河野さんの心情をここで述べていただいて、そうしてわれわれも快くこれを了解したいと思いますから、どうぞお願いいたします。(「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) その問題につきましては、前に理事会にまかせられた問題もありますから、いずれ理事会に諮りまして取り計らいます。
  56. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいま岸外務大臣のお話でありますと、テボシャン大使と会見した際十二万トンの問題と関連して突然持ち出されたというようなお話でございました。先ほど井出農林大臣のお答えでは、これは先年の河野イシコフ会談の際にも出た問題であると、こういうようなお話でございまして、まるっきり食い違っておるのであります。これは岸外務大臣には初めて持ち出された。そうして、それの説明はなかったかもしれないけれども、おそらくこれを持ち出されて、そうしてそういうようなことが問題になったにつきましては、単にやぶから棒ではないだろうと私は思うのであります。おそらく井出農林大臣の言われたようなことがあったがゆえに、そういう問題が持ち出されてきたのではないか。これは交渉過程でございますから、あるいは最初から持ち出さないで途中から持ち出すこともあり得るのであります。従って、そういうような観点から見ますと、昨年の河野イシコフ会談におけるオホーツク海の漁業制限問題ということは、私どもに隠された重大な問題と言わなければならぬ。この問題につきまして、ただいま井出農林大臣が示唆されましたようなことがあるといたしまするならば、これは八万、十万以上の重大な問題でありますが、この点について井出農林大臣は、先ほど言われましたように、今日の漁業交渉においてそのオホーツク海の漁業制限問題がどういう理由向うから持ち出されたのであるか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  57. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先ほど総理からもお答え申し上げましたように、従来はこのことは話題になっておらなかったのでございます。しかるところ二十一日でござまいすか、十二万トンの線を示す際に同時にそういうことが伝えられた。しかも私その翌日クータレフ氏と会いました際にも、同じことが伝達せられたわけでございます。そこで私としては、もし制限ということをさらに強化せよというならば、すでに昨年われわれの方としては、七船団という予定を二船団に縮減をして、十分その要請にこたえておるはずである、こういうことで先方に論駁をしておるという次第でございます。
  58. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうもはっきりしないのでございます。七船団を二船団に制限をしたというのは全体の問題で、オホーツク海の制限の問題ではない。オホーツク海の制限の問題については、どうも伝えられておるところもあり、あるいはまた先ほど井出農林大臣の述べられたところを見ますと、何か問題があるのじゃないかということを私どもに疑わしめるものが非常にあるのです。その点の解明がどうもはっきりしない。もちろん、私どもはこの問題については、政府は確たる態度をもってオホーツク海における漁業制限のごときことは、これは重大な問題と考えて、向うに対して日本の正当なる主張をされることを予想しておりますけれども、しかし、この問題についてそういうような点で何かいきさつがあるということでありますというと、私はどうも納得できないものがありますので、それらの関連について、たとえば向うがそれをほんとうにやぶから棒に持ち出してきたものか、あるいはまた河野イシコフ会談の際に七船団を二船団に制限する際に、オホーツク海では漁業をしないということを自発的にでもこちらが言ったために、それがもとになって向うが持ち出してきたのか、そこのところをはっきりさしていただきたい。
  59. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) その点は先ほど来申し上げておりますように、二十一日に初めてそういう問題が向うから出たわけであります。そこで、あるいは岡田さん先ほどの私の答えをどう受け取られましたか、要するにわれわれとしては、もし、君の方の制限規制を強化せよ、こういう主張にこたえるためには、昨年すでにこのような措置がとられておるということをもって先方と折衡をいたし、もはやこれ以上の、昨年の実績を下回るというようなことは断じて承服できないということで折衝を続けているわけであります。
  60. 曾禰益

    ○曾祢益君 簡単に一点だけ。井出農相に伺いたいのですが、総理に対するテボシャン大使回答と、それからあなたがク一夕レフ漁業代表とお会いになって、向うから、要するに十二万トンにことしはするから、その条件一つとして、オホーツク海の制限の問題が持ち出されたということはわかっております。今回の東京の漁業会談について、その問題は、オホーツク海の問題は初めてだ、これもわかた。その場合に向うから、実はこの問題についてはきょう突然出すわけではない、すなわち去年の五月のモスクワ会談におけるイシコフ河野間の話合いの中に、たとえ自発的にもせよ、結果としては日本が自発的に船団を減らすという形はとったにせよ、当時からソ連側としては、オホーツク海における制限問題を出しておる、この線も今度出すのだ、要するにモスクワ会談に触れて、今回突然出したわけではないというような説明があったのか、ないのか、この点だけ伺っておきたい。
  61. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) その点は総理からお答え申し上げた通りに了解していただきたい。
  62. 曾禰益

    ○曾祢益君 政治的な御答弁ではなくして、これはイエス・オア・ノーでいいのです。モスクワ会談にひっかけた説明等があったかないか、これはもうはっきりしている、これはどっちなんですか。
  63. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 総理からお答えいたします。
  64. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は農林大臣に聞いているのです。外務大臣に聞いているのではありませんよ。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  65. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) クータレフ氏からは昨年そういうふうな問題が話合いの中に出たはずである、こういうことでありましたが、すでにわが方としましては十分それに対して答えを出して、この問題はもう解決済みである、こういう態度で臨んでおるわけであります。
  66. 松浦清一

    松浦清一君 いずれにしましてもこのオホーツク海の漁業制限に関する問題は、これはうしろの方から議事進行という言葉もかかっておりますけれども、政党政派を超越した日本国としての重要問題だと思うのです。そこで今農林大臣が、前にそういう話もあった模様であるけれどもという説はあったけれども、それを反駁をして、前に話がなかったことにして、今話を進めておるという御答弁でございましたが、しかし十二万トン案を出してきたその条件として、この海域における漁業制限が打ち出されたということは、これはもうきわめて重大な問題だと思う。だから私どもはこれに関心を持って、いろいろな関連質問が出てきますのは、前の河野イシコフ会談のときに、八万トン、十万トンの話やオホーツク海の制限に関する話合いがあったかなかったかということがきわめて重要である。この点の真偽を今確かめておるところなんです。私は予算委員会の議事を引き延ばすために河野君の呼び出しどうこうという意味ではない、そういうことは毛頭私は考えません。毛頭考えぬけれども、この重大問題がうやむやのままになってしまうということは、これは日本国としてきわめて重大だと思うのです。ですから、この席で解決をされることは困難でありましょうから、やはり理事会等を開かれてこの処置をどうするか、こういうことについて真剣に御討議を願うことを私は希望いたしておきます。  それから、先ほど申し上げましたように、私は五分だというあれを持ってきてから一口も言っていないのですよ。あと五分だというのを持ってきてから何も言っていないのですよ。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)関連質問で、私はあと五分ですというこれを持ってきてから何も言っていないのです、すわっておっただけです。
  67. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それは間違いでしょう。
  68. 松浦清一

    松浦清一君 そこで、項目別にお伺いをしますから簡潔にお答えを願いたいと思います。その第一は日米加三国漁業条約の問題です。これは昭和二十八年の六月の十二日に発効をいたしておりまするから、この条約が国会に承認を求められたときに、私どもはやはり漁業に関する制限条約であるとして賛成ができなかった。この条約の中に区域の制限が加えられておりますが、その条約の第十条の第三項に「締約国は、この条約の実施の五年後から一年の間に、本条の取締規定の実効性を検討するため、また、望ましいときは、それを一層実効的に実施する方法を審議するため、会合することに同意する。」この条文をどのように解釈するかしれませんが、私の理解によると、これが発効して五年がたてば、あと一年の間に、いずれかの締約国が条約の内容について意見のあるときには会合を開くということがきめられてある条章だと理解をするわけです。そうするというと、北洋の鮭鱒漁業の問題に対するいろいろの制限の問題もきわめて重要な問題で、今論議されてきましたが、この機会に、日米加漁業条約制限を緩和する、あるいは撤廃するという方向に、この五年後は、来年の六月が五年になりますから、あらかじめ準備を進められて、話し合いをされる必要がある、このように考えますが、政府としてはどう考えておられまするか、外務大臣農林大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
  69. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この条約に基きまして、北太平洋漁業国際委員会というものが設けられておりまして、いろいろ資源の状況の調査や、あるいは西経百七十五度線付近のサケ、マスの分布状況というようなものを科学的に調査研究をいたしておりまして、また、その研究に基いて、将来の対策を検討するということになっておりまして、毎年この委員会が開かれております。これで、この条約の施行についての各種の科学的研究を行なっておりまして、このデータに基いて、将来いろいろ改訂問題というようなことを考えていくべきではないかと考えまして、私どもは、この科学的検討の結果に待って対策を考えたいと、かように考えております。
  70. 松浦清一

    松浦清一君 項目別ですから……。  それから沿海州漁業問題ですね。これは農林大臣に伺いたいのですが、戦争前に、昭和九年から十六年ごろまでにかけまして、兵庫県の香住を中心として、約三十隻の漁船が出漁しておったはずです。香住だけで二十六隻ですか、十六年最後のときですね。十六年に二十六隻が出漁して、七百万貫の漁獲をしておる。それが、戦争が激化してからとだえまして、今そのままになっておるのです。これは、何らかの制約があって行けないのか、行きたいという希望を有しておるのですよ。非常に強い希望を持っておる。それで行っていない。これは、どういうことに現状なっておりますか。将来道を開いて出漁させるという方針でありますか、しからざるかだけのことをお答え願いたい。
  71. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 沿海州の問題につきましては、底びき網をやるという目途のもとに、明年度漁場調査をいたすと、こういうことに取り運んでおります。
  72. 松浦清一

    松浦清一君 具体的に何隻か出漁することを許可する方針であるというように伺っておるのですが、それは、実際に操業をやるのですか、単なる調査だけですか、どういうのでしょうか。
  73. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 当面は、まず調査をいたしまして、その成果を見た上で操業に当らしめると、こういう考えでございます。
  74. 松浦清一

    松浦清一君 漁業問題は、まだだいぶあるのですが、時間がありませんから、せっかく大蔵大臣、そこにおっていただいて、何もお伺いしないということは恐縮でありますので、一点だけお伺いします。  それは、最近、いよいよ一万円札と百円銀貨を発行するという方針をきめたということが伝えられておるわけですが、これはどのようになっておりますか。
  75. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 一万円札につきましては、従来からその必要性を認めまして、印刷にとりかかっております。大体今、三百万枚程度印刷いたしておるのであります。なお、この際五千円札も必要であると考えますので、五千円札も印刷をいたしております。いつからこれを市場に出すかということは、ただいま検討中でございます。  それから百円銀貨は、今回貨幣法を改めまして、今、百円札でございまするが、こればかりでは必要を満たし得られませんので、印刷費等を考えまして、大体一年八万枚程度の百円銀貨を出す予定であります。
  76. 松浦清一

    松浦清一君 一万円札、五千円札は、その必要があって発行するという御説明ですが、具体的な必要性はどういいうところでございますか。
  77. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいま通貨は非常にふえて参りまして、銀行の窓口その他におきましても、千円札ではこれに応じ切れない。ほとんど物理的に不可能の状態が来つつあるということが考えられますので、一万円札を出しまして、手数の簡素化をはかりたいと考えておるのであります。
  78. 松浦清一

    松浦清一君 印刷をする方や、金の勘定をする面では、額が大きくなるほどめんどうがないでしょうが、通貨のその額が大きくなればなるほど、紙幣の額が大きくなればなるほど、これはインフレのやはり要因になる、こういう説をあなたもお聞きになっておるでしょうが、ずいぶん強いわけですね。たとえば、先般私は、こういうところにも一万円札を発行することに反対の声があるものだと思って驚いたのですが、たばこ屋さんが一個三十円の光を売るのに、一万円札を持ってこられるというと、九千九百七十円かのつり銭をいつでも用意しておかなければ、光一個のたばこを売ることができない。これは、おつりがないからと言うて、断わらなければならぬ。これは、単なる一つの例証にすぎませんが、零細な小売業者にとっては、一万円札を持ってこられるたびごとに、つり銭がないと言うて、せっかく物を買いにきてくれたのに、これを断わらなければならぬ、こういう事態が起るので困る、こういうことなんです。これは庶民のすみの方からの見えざる大きな大衆の声なんです。一万円札がインフレになるかならぬかという議論は、あなたの方が達者ですから、その議論はいたしませんが、そういう弊害のあることをあなたはお認めになっていられるかどうか、この点を伺いたい。
  79. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 一万円札を出すと、インフレを助長しないかという議論は聞いております。私は以前に、千円札を大蔵大臣のとき出したのであります。その当時も、千円札を出すとインフレになるという議論がございましたが、私は、そうではないと言うのであります。また、各国の例を見ましても、五万フランとか、あるいは五万リラ、あるいはアメリカの方も、百ドルというようなものがあるのでございます。  第二段の、一万円札を持ってたばこを買うときに困るというお話は、それはあり得ることでございます。しかし、昔も百円札があったのであります。われわれは、初任給のときは七十五円で、百円に満たなかったのであります。そのときだって、百円札を持ってバットの五銭を買いに行くこともあり得たのでありますが、そういうことを全体として考えて、経済の運行を円滑にすることが一番の問題だと思います。
  80. 海野三朗

    海野三朗君 関連をして、大蔵大臣に私はお伺いをいたしたいのでありますが、もともと私ら衆議院に出ましたときの衆議院の歳費と今日の歳費とでは、大へんな違いがあった、今、一万円札であるかもしれないけれども、将来十万円札、百万円札もお出しにならなければならぬときがくると思うのであります。昔の一円札は大した値打があった。ところが今日は、一円などというものは昔の一厘にも当らない。その根本がどこにあるのでありましょうか、私は、それが一番根本問題に考えなければならぬのじゃないかと思うのです。でありますから、貯金をするということは損なことなんです。貯金をするということは、金の値打がだんだん収奪されていく。その根本はどういうところにあるでありましょうか。私は、その点について大蔵大臣のうんちくある御説明をお伺いいたしたい。
  81. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 金の値打の下らない、貯蓄して得になるような経済政策をやらなければならない、だから政府は、あくまで物価を安定し、そして貨幣価値を維持することに努力いたしておるのであります。しかし実際に、過去七、八年前にありましたようなインフレ時代があったのでございますから、通貨の単位が非常に上ったと申しますか、貨幣価値が下りまして、一万円札を出す方が便利な状態に相なったのでございます。従って、先般参考人として来ました山際日銀総裁が、デノミネーションという問題も考えられるが、それは時を選ばなければならぬ、こういうことを言っております。しかし私は、必ずしも直ちに賛成するわけではございませんが、今その経済の実情に合ったような通貨制度をこしらえることが、これまた必要でございます。今後は十万円札とか百万円札などを出すときは、私は毛頭考えておりません。そういうことをやったのでは、経済政策はゼロであります。今の状態では、一万円札を出すというところが適当だと考えております。将来は、十万円札ということは、私は考えません。
  82. 海野三朗

    海野三朗君 もう一言。ただいまのお話というのは、私は、そういうふうなことになっていくことがどこに根本があるのでありましようか。それを一つ大蔵大臣のごうんちくある御説明を伺いたいと思うのです。それは、何というてもインフレにならないように、ならないようにと、歴代の大蔵大臣が血眼になってやっていらっしゃるのはよくわかるのです。わかるのですけれども、いかんとしても、これは避けがたい現象だと思うのです。今日の百円札と去年の百円札とは値打が違う。おととしのは値打があった、だんだん値打がなくなってくる、その根本がどういうところにあるのでありましょうか。そういうことを一つ承わらして下さい。
  83. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昔、一両といったときには、米が一石四円くらいでございます。お話のように、百円札の非常にありがたかったときは、米が一石十五円か二十円であった。一万円札を出さなければならないときは、米が一石一万円、これは、結局物の値が高くなった、円を同じようにして、物の値段が高くなったからであります。
  84. 林田正治

    ○林田正治君 私は、まず第一に、大久保長官にお伺いいたしたいと思います。それは、公職選挙法、いわゆる選挙運動の取締りについて御意見を承わりたいと思います。  このごろ、私の見るところによりますと、わが国におきましては、いわゆる告示なき選挙といいますか、ほとんど二・六時中選挙運動が行われておる。ことに新しく町村合併促進法によって生れました町村おにきましては、いわゆるこの町村長の選挙になりますると、告示前に、もういわゆる買収ともいうべき行為がひんぱんに行われておることは、おそらく御承知と思いまするが、そうして、そういうふうに告示なき買収行為が行われた後に、いわゆる告示があったときには、あるいは形だけは公明選挙のような形であるかもしれませんが、実際はそういうふうになっておる、そうして、警察当局におきましては、選挙後においていわゆる一網打尽式に検挙いたすのであります。これは、そのやり方としましては、私は、これは非常に国民に対しては、不親切きわまるやり方であると言ってもいいと思います。私の郷里の熊本県の例を申しますると、これは、菊池郡の大津町、あるいは菊池村の選挙におきましては、選挙後において検挙されたる者が一つの町村において何千という数に上るのであります。あれがもし恩赦が行われなかったと仮定するならば、その町におきましては、いわゆる公民権を停止される者が何千という数に上る。そうすると、町政の執行というものが停止すると、こういう事態になるということを私は憂慮いたしたのであります。そういうようなことは、私は、決してやるべきことではないのであって、警察は、あるいはそういう事前運動の取締りをやることによって、選挙干渉というようなそしりを受くるというお考えであるかもしれませんが、私は、選挙干渉というようなそしりを受くることは、これは別個の問題としまして、当然世間には、こういうような買収を行うことは十分知っておるのであって、警察だけ知らないということはないと思いまするから、今後は、ああいうような野放しの選挙運動は取り締っていただきたいと思いまするが、この一点をまず長官にお伺いいたしたいと思います。
  85. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 選挙の取締りについての御方針というお話がありましたが、私どもといたしましては、告示前であろうと告示後であろうと、また、選挙が済みました以前あるいは以後においても、同じ気持をもって取締りをいたしたいと思って考えております。すなわち、事前でも事後でも同じ気持で進みたいと、こう考えております。すなわち、違反がありましたならば、事前といえどもこれを検挙する、事後はもちろんのことであります。そこで、問題になりまするのは、この事前の問題を検挙して、これを証拠と結びつけて、はっきり証明することがなかなか困難な場合が多いのであります。事実上はそういう場合が多いのでありまして、そのために、ややもすると事前運動の取締りが緩慢のように見えますけれども、証拠をあげますにも骨が折れますので、そういう結果になっておると思います。私どもは、気分といたしましては、事前であろうと事後であろうと、全く公平に、違反があったら取り締るという気分を持っております。
  86. 林田正治

    ○林田正治君 そのような御答弁をいただくということは予想いたしておりましたが、しかし、実際は決してそうじゃないのでありまして、いわゆる事前にそういうような忌まわしき運動が行われるということは、ほとんど世間周知の事実で、全部が知っておるのであります。警察だけが知らないという筋合いのものではないのでありまして、どうか、今の言明の通りに将来やっていただきたいことを希望いたしまして、一応その質問は終りまするが、次に、やはり選挙運動に関連してお伺いいたしたいことは、私は、この間のあの特赦というものは、日本の選挙運動の上においては、これは非常なる弊害を及ぼしたと思います。少くとも形式犯だけの特赦ならば別問題でありますけれども、一切の選挙犯罪が特赦になったということは、これは、日本の選挙運動の上からいうならば、将来大きな弊害を残すものであると思いまするが、この間、海野委員の、大体こういうような意味だったと思いまするが、質問に対して、岸総理大臣は、将来のことは大いに考えると仰せになりましたので、私も、この機会に法務大臣意見をお伺いいたしたいと思いまするが、私は、もう将来予想されるところの皇太子殿下の御慶事の場合に、また恩赦が行われる場合に、ああいうような処置をおとりになるならば、私は、日本の選挙界は、永久にこれは粛正は不可能である、こういうふうに考えるのであります。この皇太子殿下の慶事の場合におけるところの恩赦の取扱いについて、どういうお考えをお持ちになるか、お聞きしたいと思います。
  87. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) お答えいたします。先般の恩赦につきましては、いろいろ世間の御批判もあったようでありますが、私どもといたしましても、日本が国際舞台に復帰いたしまして、国連に加盟をしたという歴史的なできごとについて、恩赦に値するできごとであったことは間違いないと私ども考えますが、ただ問題は、戦後恩赦が数回ございまして、恩赦の機会が多かったということが、一つの批判の最も対象になる点であったろうと思います。ただいま御指摘にございました皇太子殿下の御成婚の場合に、恩赦をどうするかという御質問でございましたが、まだ私どもといたしましては、そういうような過去の実績に徴しまして、最も慎重に今後検討いたしたいと考えております。今この際、先を予想いたしまして直ちに言明をすることは、この際、差し控えさせていただきたいと、かように存じます。
  88. 林田正治

    ○林田正治君 次には、私は文部大臣にお尋ねいたしたいと思いまするが、それは二点でありまして、第一は国史教育という問題、第二は大臣が常に力説されるところの徳育、言葉をかえるならば、道徳教育と申しまするか、修身教育、この二点についてお尋ねいたしたいと思います。  私の一応の意見を申し上げて御質問いたしたいと思いまするが、私は、この世界の歴史というものは、過去より現在に至りますまでに一貫しておるところの流れは、これは民族相互間の争いであると同時に、また場合によっては弱小民族が、かつて滅ぼされたところの民族が、独立をはかるという、結局民族意識の高揚に努むるということが、歴史に流れておるところの一貫せる私は流れであるというふうに、こういうふうに実は考えておるのでございます。この間、ある人の本を読みましたる際に、こういうことがありましたが、それは北欧三国、いわゆる今日世界では福祉国家として有名でありまするところのデンマーク、ノルウエー、スエーデンの三国においては、博物館やら、あるいはレストランあたりにヴァイキング、すなわち海賊という言葉を書いた名称がいかにも誇らしく掲げてあるということを私は承わりました。これは、昔あの三国が、いわゆる海賊行為をいたしたということの今日なごりをとどむるとともに、おそらくあの人たちは海賊をしたことを誇りにするにあらずして、海賊のような、いわゆる開拓者の精神と申しますか、冒険、勇気、パイオニア精神というものに非常に誇りを持っておるために、そういう名称が私は使われておるのだと思います。そういうふうに、民族というものは、確かに長い間につちかわれましたるところの伝統と歴史があるはずであります。わが日本におきましても、申すまでもなく相当古い歴史を持っておるのであって、これは神武天皇以来の歴史につきましても、あるいは一部においては崇神天皇以前までは年代において不正確であるからこれを抹殺しようというような考えを持っておりまするけれども、多少の時間的のズレがありましても、まだ今日だれも神武天皇そのものの存在を否定するものはおらないのであります。今日ちゃんと神武景気、神武景気といって、神武天皇のお名前はさん然と光を輝かしておるのであります。私はそういうような、これは冗談でありまするが、そういう意味合いからいたしまして、われわれの今日の現代史というものも、やはり神武天皇につながるのでありまして、私はこういうように国史の一部を抹殺をするような考え方とか、あるいはまた近世日本の発展を単純なるところの帝国主義や軍国主義によって築かれたものであるからといって抹殺するごときも、これは非常に大きな考えの間違いであって、現に駐日大使グルーも、あの「滞日十年」に、日本のいわゆる世界政策は時期が間違っておったということを書いておるのであります。世界の各国がやったことを、時間的におくれたがために日本が制裁を受けたと、こういうことが書いてありますが、これは至言であると私は思うのであります。単に手段と方法、時期が誤まっておったというだけによって、われわれの誇りや民族の歴史、たとえば日露戦争を日本の侵略史であるというがごときに至っては、これは非常に誤まりであると思いますので、そういうような意味合いで、私たちはやはりもう一度日本の歴史そのものを正しく見て、そうしていわゆる日本の今日までの発展のあとを考えて、国民に対して、次の時代をになうところの国民に対しまして誇りを与えるということは、私は日本の将来あるゆえんではないか、こう考えるのであります。一昨年私はドイツに参りまして、あの地において西ドイツの復興を見たときに、こういう質問をいたしましたところが、それには向うさんが非常に共鳴いたしました。それは私は、ドイツの復興は、おそらくあのフィヒテのベルリン大学におけるところの、あのまだ戦火のおさまらない際に、「ドイツ国民に告ぐ」というところの、あの雄大なドイツの伝統と歴史に基くところの、あのフィヒテの講演がまだ生きておるのではないかと私が質問いたしましたるのに対して、ドイツの人は、あなたの言うのはその通りであると、そのときも言いましたが、カントやあるいはヘーゲルの国家哲学のごとき問題は、これはむずかしい問題で、ドイツあたりにおいてはそう共鳴はないけれども、フィヒテの「ドイツ国民に告ぐ」というものは今でも生きておるということを承わりました。そういうような見地からいたしまして、私は文部大臣に、もう一度、国史教育というものをお考え願って、これを一つの系統ある科目として、小学校から高等学校までの一貫せるところの科目としてこれをとり上げていただきたい、こういう考えを持っておりまするが、これに対する御意見を承わりたいと思います。
  89. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。歴史の教育は、国民の精神の上から申しましても、民族の発展の上から申しましても、非常に大きな影響を持つものと考える次第であります。さような意味合いにおきまして、歴史教育につきましては特に力を入れてやって参らなければならぬと思うのであります。現在の学校におきます歴史教育につきましては、さような点におきましてなお検討を要する点もあろうかと考えるのであります。ただいま文部省といたしましては、教育課程の再編成につきまして、いろいろ検討を重ねておる次第であります。これを独立の、歴史に関する科目にいたしますか、あるいは従来のごとく扱いますか、その結論を待って決定いたしたいと考える次第でありますが、いずれにいたしましても、歴史の教育は決して単なる学問的な労作というだけではないと考えます。お話にありましたような御趣旨もございまするし、日本の民族精神あるいは国家の発達というふうなことは十分に考慮に入れまして、うそを教えるわけには参りません、事実にないことを教えるわけには参りませんけれども、単なる知識を与えるというだけのものじゃない、かようにも考えますので、系統的に日本の歴史が子供の頭によく入るようにいたしたい、さような念願のもとに検討を続けておる次第であります。
  90. 林田正治

    ○林田正治君 私は一応大臣の御答弁に満足いたします。  次は道徳教育の問題でありますが、御承知の通りわが国におきましては、戦争前は修身科の科目のもとに、少くとも小学校から中学校まで、あるいは高等学校あたりにおきましても、倫理という名前においてこれが一つの科目になっておりましたことは御承知の通りでございます。これは元来申し上げるまでもなく、いわゆる東洋の政治道徳と申しまするか、一つの政治理念であるところの修身、斉家、治国平天下のその根元から、修身というものが生まれたものであると思います。道徳は申し上げるまでもなく、これは生活に直結しまして、宗教というようなものよりも、私は一般の道徳というものは先にあるべきものと思いまするので、そういう見地からしまして、どうしても私は、この人の道を教えるということは必要ではないかと思います。今日ややもすればこの徳育の問題につきまして、子供の、あくまで自覚に待たなければならないというお考えの方がおられます。あるいはまた自覚と、他動的と申しまするか、教え導くことの両方からそれをしなければならないと。ところが、今日は、多くは児童の純真ということに、あまりウエートを置いて、子供を教えるというようなことは間違いである。こういうような考えの方々が多いようでございまするが、これは私は非常な誤まりでないかと思います。ことに今日のこの社会環境、あるいは家庭の環境というものを考えまするときにおきましては、ただ単に、児童の自覚に待つとか、あるいは生活指導とかいうようなことだけによって、この問題は解決されない。こういうふうに考えます。ことに生活指導の問題、社会科の問題を見ますると、よく新聞社であるとか、あるいは放送局あたりに、中学校の生徒あたりが参観に参りますると、最初聞くことは何かというと、この俸給はどうなっておるとか、あるいは経営がどうなっておるかというように、全く経済の問題だけに理念を置いて、その科学的と申しますか、何がゆえにこういうふうになっておるかというような、科学の面に対するところの質問なんかはほとんどないように私は聞いております。いずれにいたしましても、私は子供というものに対しては、やはり教え導くということが必要である。今日あるいは先生方が、自分は子供を教える資格がないとおっしゃるのならば、それは何をか言わんやでございまするけれども、私はどう考えましても、今日の社会環境なり家庭の環境からいたしまして、やはり修身と申しまするか、徳育と申しますか、一つの体系をもってやる、単に強制してはいけませんけれども、やはりじゅんじゅんとして教えさとすという意味においての修身というものの独立が必要である。こういうふうに考えますが、これに対するお考えを承わりたいと思います。
  91. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 教育に関する理論の問題となりますというと、私には十分な御議論もできかねるのでございますが、今日の教育の基本方針といたしておりますことは、いずれもけっこうなる方針であると考え、それが完全に行われることを期待しておるわけでございますが、ただ、子供の可能性を伸ばす、子供の持っておる素質をどこまでも発展さしていくということはきわめて必要であると思いますけれども、同時に、年の少い子供たちを教育する上から申しますれば、お話になりました要素を十分に考慮に入れて参らなければならぬと思うのであります。現在、世間の状態を見ておりましても、いろいろと学校でも苦労をいたしておるわけでございますけれども、いわゆる徳育の効果が果して十分に上っておるのかということになりますというと、批判なきを得ないのでありまして、私どもといたしましても、この点につきましては世間の御批評にこたえまして、もっと徳育の効果が上るようにいたしたいと考えておる次第であります。この問題は教育の上におきましても、非常に重要な問題でございますので、先ほど国史教育のことについて申し上げましたが、文部省といたしましては、今日この方面の教育課程につきましても再検討をいたしておるわけであります。十分に検討いたしまして、できるだけ成果が上るようにいたしたいものと考えておる次第であります。
  92. 林田正治

    ○林田正治君 私の与えられた時間は非常に制約されておりますので、文部大臣にもう少し伺いたいのですけれども、この程度にとどめまして、最後に田中自治庁長官にお伺いいたしたいのであります。今日の地方財政は、御承知の通り国家財政を上回るように大規模になりましたが、その内容がきわめて貧弱であるということは、これは申し上げるまでもございません。人によりましては今回自治庁が策定されましたるところのあの税の自然増収につきましても、絶対にああいうことはないという人がありました。あるいは減収になりはせぬかという人さえもあるようでございますので、必ずしも地方財政の規模があれだけ大きくなったからといって、内容がそれだけ堂々たるものでないことは、もう申し上げるまでもございません。私は、こういうような地方財政の貧困なる原因は、自分の経験からいたしましても、二つの理由があると思います。第一は、これは国家がいわゆる義務を怠ったことに基く問題、第二は、地方のやはり自治体の、言葉はあるいは苦しいか知れませんが、浪費というか乱費というか、そういうようなことに原因があると、常に考えておるのでございます。そこで、長官にまず第一に伺いたいことは、今回長官の御努力によって、いわゆる平衡交付金の一部をもって、地方の、当然国家が負担すべきものであった公債の償還をしていただきますのでありますが、これは非常にけっこうでございますけれども、これは本来は私は平衡交付金によってまかなうのでなくして、別個に国家が、当然別個の財源をもって私は支出すべきものである、こういうふうに考えておるのであります。従いまして、今お尋ねいたしたいことは、三十三年度におきまして、相変わらずこういうようないわゆる平衡交付金の、自分の足を食うようなことでこの公債費の支弁をおやりになりまするかということ、そうでなくして、三十三年度あたりにおいては、別個の財源をもって必らずやるというような、そういう御意見、確信がありますかどうかをお伺いいたしたいと思います。第一として。
  93. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 三十二年度に行わんといたしております交付税を通じましての公債費対策なるものは、例外的な臨時応急的な措置でございます。従って三十三年度以降におきましては、さらにこの三十二年度に行わんとしております小規模な公債費対策を、これを交付税の外に抜き出しまして、独立の対策といたしまして予算に計上をし、その予算の執行としての別個独立の立法もいたしました上で、公債費の性質上、国が責任を明らかにすべき性質のものにつきましては、お言葉の通り別個の予算上の対策を講じていくことに努力をして参りたいと存じます。
  94. 林田正治

    ○林田正治君 今、三十三年度においては私の意見のように努力をするというお話でございますが、元来日本の国におきましては大蔵省がなかなか財政面においては非常に強い位置を取得しておるのでございまして、ことに池田大蔵大臣はなかなかこの私の見解によりますると、地方財政にはあまり同情して下さらぬのでございまして、どうか一つ田中長官はその若きはつらつたる精神をもって池田さんに体当りをされまして、私の今希望しましたことを、長官は実現するとおっしやいましたので、どうかそれが単純に意見に終らぬように、ぜひ実現をしていただきたいことをお願い申し上げておきます。  次に、私の意見を申し上げたいことは、私は今日日本の自治体、特に府県の制度につきまして、非常に私は意見を持っておるのでございまするが、元来今日府県の財政がこのように逼迫いたしましたところの事由の一部は、今申しましたように府県の乱費というと語弊があるかもしれませんが、そういうようなことがあったと思います。そういうふうになる原因は、私は知事公選制度に根本の原因がありはせんかと思います。これが一回ならいいけれども二回、三回、四回というように選挙いたしますると、どうしてもその間乱費に流れることがこれは人情として当然なことであると存じます。次に一番考えなくちゃならんことは、そういうふうに一人の知事が十年もあるいは十五年も一つの地位に固定いたしますことになりますると、どうしてもこれは人事の渋滞というものが起って参ります。あるいはごきげんとりのベース・アップということも必要になって参ります。そうしますとやはりせっかく今赤字の対策で再建整備ができておりまするけれども、またぞろ私はそういうような赤字というような事態が出てきはせんか。こういうふうに憂慮いたすのであります。そういうような見地から私は、この地方の財政の貧困を防ぐ意味、あるいはもう一つは一番大事な人事を刷新するという意味におきまして、この地方制度に根本的の改革をお考えになる必要がありはせんか。たとえば本院におきましても、同僚小林議員あたりからいわゆる知事制度の任期についての制限ということが考えられたことがありまするが、私はこれは決して時代錯誤の意見ではないと思いました。長官はそういう方面にはどういうお考えをお持ちになるかということをお聞きしたいのであります。  第二は、やはり、今日そういうふうに一人の知事というものが長い間勤続いたしますると、どうしても議決機関というものに対する対立対立よりもいわゆる議決機関によって制約されるという、多分にそういう現象が起ってくるのであります。そういうふうになりますると、やはりこの執行部と議決機関によるところの両者による経費の乱費というものが、私は当然招来されるものである、こういうふうに考えるのであります。そういう意味からしまして、私はこの議決機関に対するところの制度を再検討していただきたいと思います。一例を申しまするならば、今日のたとえば市会議員の例から申しまするならば、あまりに私は議員の数が多すぎはせんかと思います。人口四十万、三十四、五万の都会において約四十四、五人、約五十人の議員がおるということは非常に誤りである。いやしくも市の代表者になろうというものであったならば、いずれも有効投票の三千票以上の人でなければ当選ができないように、私は、議員の数というものをもう少しく制限する必要がありはせんか、こういうふうに考えておりまするが、今の知事の公選制度あるいは議員の定数に対して、将来長官はどういうお考えをお持ちになりまするか。これはあるいは個人としての御意見になるかもしれませんが、一つお聞かせ願いたいと思います。
  95. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 第一点の知事公選に対して一定の制限を加える意思はないかという御意見でございます。これは先生仰せの通りのような弊害も相当あろうかと思います。また現実に、これは公選制が無制限に続いておる結果の弊害影響であろうと、考えられるような具体的な事案も相当に見受けられるのでございます。でございますが、つらつらこれを憲法に照らして考えてみますると、必ずしも憲法上疑念なしとしない。少くとも憲法では選挙法上の被選挙権を持っております者の制限というものは一応原則としてはできない。これはどのような立場の人でも公平に平等にその選挙権も被選挙権も持たせなければならぬという事情でございます。と申しますのは社会的な身分いかん、具体的に申しますと、この人は十年以上も知事でおる、十年以上市長でおるという、そういう憲法でいう社会的身分が何年に及んでおるからという、そういう特殊な事情をもって被選挙権に制限を加え、これを禁止するということは明らかに憲法に抵触するおそれがあるのではないかというような疑念もございまして、お説はまことにごもっともな点でございますが、この点についての決意をいたしかねておるという政府の実情にあるわけでございます。  そこで、公選制に対しましてはどのような処置を講ずるかということでありますが、選挙に関する一般住民の意識というものを指導高揚せしむることに努力をいたしまして、そういう人をそういう同じ地位に長い問置くことがいいか悪いかという、こういう問題の点につきましては、一般の有権者の判断と高揚されていく意識に待って処断をされる選挙の結果に待とう、ということの方がよいのではないかということが今のところ考えております結論に近いものでございます。  それから第二の一体議員の定数が多過ぎるではないかという、そのお言葉もごもっともであると存じますが、現在のところは御承知の通りに七十万の人口の場合に五十何名ということは、何かお考え違いでありまして、四十名以下の定数ということになっております。それから百万までは五万をこえるたびごとに一人、それから百万をこえます場合には七万の人口ごとに一人をふやす、ということができるようになっておりまして、ほぼこれは適当なる数字ではないかと思うわけでありますが、やはり財政の建て直しをやっていきます上から、いま少し少くてもいいのではないかということもあります。合理的に考えられますので、そこで各地の場合には法律に基きまして、条例を設けまして、条例の定めるところにより、定員を減少することを自発的にすることができるごとくに、法律の制度を立てておるわけでございます。そういう事情でございますので、政府といたしましては、今直ちに第二の御質問の点について、定員を法律制度の上でこちらから積極的に現在の定数を減少せしめていくような立法をしよう、という意図は今日は持っていないわけであります。
  96. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) もう時間が参りました。
  97. 林田正治

    ○林田正治君 長官からお話のありましたごとく、いわゆる最後の公選知事の憲法違反かどうかということは、これは私も疑念があることは存じております。しかしながら全然これが絶対的に違反するものであるとするならば、当時は緑風会であったかどうか知りませんが、本院あたりでこの問題を取り上げられるべき筋合いのものではないのでありまして、私はやはり今日の実情からいたしまするならば、絶対的に憲法違反でないというものである限りにおきましては、政府も相当慎重にお考えになる必要がありはせぬかということを申し上げておきます。  第二の議員の定数を条例によって減少することができるということも私もよく存じておりまするけれども、実際はなかなかこの条例そのものが行われないのであります。やはり私はこういう問題は大局から考えて、国家の立法というような立法措置によってやるべきものではないか。それにない限りにおきましては、条例にまかせただけではおそらく全国にその例はあまりたくさんないのであります。やはり大局から考えるならば法律をもってこれを規定することが妥当ではないか、という意見を持っておることを申し上げて私の質問を終ります。
  98. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は、大蔵大臣に特別会計の設置の基本的な方針といいますか、これについてお伺いしたいのであります。  特別会計、ことに企業特別会計的なものは一般会計と違って一面において弾力性があり、財政の効率的運営という点においては特徴があるわけでありますけれども、時によるとその弾力性があるがゆえにかえって財政上乱に流れる、というと言葉は過ぎますけれども、ゆるみがありがちだということもあり得るわけであります。現在の財政法においては、もちろん特別会計を設ける場合の条件がありますけれども、これをどういうふうにこなしていくかという点に私は相当問題がありはしないかと思います。来年度の財政においても新しく三つの特別会計ができるわけであります。もちろん現在の特別会計でも、それぞれの会計についてそれぞれの理由はもちろんあるわけであります。しかし、方針いかんによっては特別会計というものは漸次ふえていくということも考えられるのであります。特に企業的特別会計では過去の事例より見ましても、一応特別会計になり、それがその次の段階においては特別の企業体になっていく、国全体の財政運営からいえば、それももちろん一つの形態ではありますけれども、なんらかやはりそこに一つの運営上の方針の基準があっていいんではないか、こういう感じがするのであります。特別会計を設けていく上についての基本的な考え方、これを一つ承わりたいのであります。
  99. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 財政法は、原則として単一予算制度をとっておりますことは御承知の通りでございます。単一予算制度が最もわかりやすく合理的であることはわれわれも認めるのでございますが、なお財政法におきましても、国が特定の事業をなす場合、あるいは特定の資金をもって運用する場合、あるいは特定の歳入をもって特定の歳出に充てる場合において、一般会計で処理するよりもそれの方が経済的である、合理的であるという場合におきましては、特別会計を設けることができると規定いたしてあるのであります。従来その方針でずっとやっておるのでございまするが、経済界、あるいはまた政府の仕事がふえますにつれまして、だんだん特別会計がふえていくことは御承知の通りでございます。今回新たに設けました三つの特別会計でも、多年議論のあった点でございます。相当強い要求があったのでございます。私は、今後多目的ダムとかあるいは主として干拓を中心とした村作りの仕事、こういうものにつきましては、一般会計から出すと同時に借入金を認めまして、その事業を促進すると同時に、その個々の事業につきまして経理を明かにして、経済的運営のできるようにした方がいいのではないかと決断いたしまして、多目的ダムと特定土地改良工事特別会計、二つを設けた次第でございます。これによりまして、一般会計でやっておるよりも特別会計でやって、先ほど申しますように借入金の制度を設け、個々のダム個々の干拓地地域ごとに経理をはっきりし、利息の計算もするとかいろんな方法でやっていった方が促進になり、実態をよく見られる、こういう気持で設けた次第でございます。  なおまた国有財産整理資金のごときも、官庁の建物を合理化してそして土地を民間に払い下げ、その資金をもって官庁の営繕を今後やっていこう、こういう特定の目的のために、財政法第十三条二項によりまして、特別会計を設けたのであります。しかし、これはあくまでやはり原則は単一予算制度を守りながら、必要に応じまして必要最小限度にこれを拡張して行くということで行く方針であります。
  100. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 今お話の多目的ダムそれから特定土地改良事業の関係、これはお話のようにそれぞれ意味合はもちろんあると思います。しかし、今度の予算に現われておる形を見ますると、借入金といいましても、地元負担の関係が、従来一般会計の経費で立てかえ式にやっておったものが、借入金に振りかわるということであって、一般会計の経費の節約といいますか、これには若干なると思います。たしかになるに違いない。しかし、土地改良事業それ自体に積極的にそれが伸びるという計算には、必ずしも私なってこないじゃないかと思うのであります。それからまた各事業区ごとに特別会計ができていけば、これまたお話のように相当はっきりした事態になる。しかし、土地改良のごとき直営にいたしましても非常に数が多い。それをかりに一つにまとめて、一応の何といいますか、一般会計の場合よりも会計的には正確さが出るかもしれませんけれども、さしたることはないじゃないかと、こういうように思われるのであります。こういう道が開かれますれば、これに類する一般会計に属する事業というものは、私はほかにも相当あるように思われる。従って、今後も、これに類するといいますか、特別会計にした方がともかくも便利だというような考え方では、相当こういうものがふえて行くことになりはしないかということを実は懸念しておったのであります。多目的ダムにしても土地改良事業の場合にいたしましても、格別それによって事業が促進する、というふうな計算にはどうもならぬと私は思うのであります。一般会計のものを借入金に切りかえる、切りかえたらそれだけの一般会計の分をさらに積極的にそれを入れればこれは別であります。特別会計にそれを入れるか入れぬかは、特別会計になったから入れるというふうに私はならぬと、こういうふうに思うのであります。  それから国有財産の特殊整理の問題であります。これもたしかに一つ意味合が私はあると思います。しかし、国有財産の処分という面からすれば、きわめて膨大な処分がある。それはことごとく一般会計の歳入に単一的になって、そのうち特に官庁関係の分だけ取り上げて歳入面で別ワクを作って、そうして官庁関係の営繕にひもつき的に出して行くということであろうとも、もし、それがその特別会計において官庁関係の営繕というものが自給自足的にまかないがつけば、それはまた一つの価値がある。でありましょうけれども、いざという場合においては、やっぱり一般会計で相当持って行かなければ目的を達しない。そうすれば、歳入の中でややひもを一応つけた程度にとどまるじゃないか。格段特別会計を設けてどうこうすることは、かえって、先ほどの予算の単一化といいますか、そういう点からいっていかがなものであろうか、こういう懸念を持つのであります。いま一応一つ答弁をいただきたい。
  101. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 特定土地改良工事特別会計から申し上げますが、梶原さん従来御存じのように、一般会計でやっておりますると、干拓等におきましても、非常に安い値段でいってるわけなんです。どれだけ経費がかかったかわかりません。従いまして、いろいろ財政的にも問題がございまして、今後におきましては、ただいま取り上げておるのは八郎潟でございまするが、八郎潟の干拓というものを特別にとりまして、これを工事するときに、一般会計からももちろん出しまするが、借入金もいたしまして、それで、この干拓が幾ら幾らかかった、こういうことにいたしまして、それで、売り払いのときに適当の価格を出していこう。あるいはまた、ほかの干拓のところだったら、やはりそれと同じように、別個の計算でいたしまして、そうして時価で売るわけにはいきませんけれども、適当な価格で売ろう。今までのよりは、干拓とか、大きい国営工事の土地改良をやりますときにも、そういうふうにした方がガラス張りの中できれいにいく。そしてまた、必要な分も一般会計からの金だけでなしに、借入金もやっていこう、こういう気持でやっておるのであります。従いまして、ただいまのところは、当初でございまするから、大きい干拓、そうしてまた、国営の土地改良でも、大きいものから手をつけていきたい、こういう考えでおるのであります。今まで、大きいものも小さいものも、また、採算その他のことを考えずにやっておったのを、大きいものから、はっきりした計算のもとにやっていこうというのが目的でございます。  それから、特定の多目的ダムにいたしましても、治山関係、水力関係、いろいろな点がございまするから、多目的ダムの個々の分につきまして計算をはっきりし、そして電力等の促進、あるいは治山治水を別々にはかっていく。  それから次の、国有財産でございまするがこれは、御承知の通り、市街地に相当ございまして、そうして民間の方でも払い下げを要求する。しかも、官庁の建物は、二階建のごく貧弱なもの、こういうふうなものを特に早く整理いたしまして、そして官庁の建物として高層のものをやる、売った土地で建てるというような、今度予算を要求いたしておりまするが、外務省の建築とか、あるいは労働省、厚生省、いろいろなものがたくさんございまして、こういう官庁の整備をすると同時に、不要に使われている土地を換価いたしまして、そして官庁の整備をしていこうという考えでおるのであります。
  102. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 御趣旨の点は、私も異存はないので、けっこうなんであります。ただ、特別会計にしなければ、そういう趣旨が一体達し得られないかの点なんであります。一般会計で地元負担等を負担しておったものを借入金に切りかえると、それはそれなりに一つ意味合いがあると思います。そのあと、一般会計で運営する場合においても、お説のように、個々の事業について、やはりはっきりした一つの実体というものをガラス張りにしなきゃいけない。特別会計にしても、初めに言いましたように、特別会計は、非常にいい面と、反面において、やや財政的にはゆとりといいますかのある面もあるのでありまして、相当一つの特別会計の中にたくさん入ってくれば、結局大蔵大臣の言われておることが結果においては実現されないのではないかということになりはしないかと思うのであります。これは、今後の運用に待つほかないかもわかりません。  それから、特定の国有財産の払い下げ関係でありますが、もし払い下げて、その財源だけで新しく営繕、建築していくという、自前の特別会計であれば、これはまた一つ意味合いがあろうと思う。おそらくそれじゃやはり動きがつかないんで、その収入財源に一般会計から相当繰り入れをして、一般会計と合わしてやらないと、ちょっと間に合わぬのじゃないかと、こういうふうに思うのであります。そうだとすれば、何も特別会計に、別ワクにしておく必要はないんではなかろうか。むしろそうやるんであれば、広く国有財産全般の処分関係で、そういうものを一つ、しばらく特別会計でやるという方が意味がありはしないかという感じを持ったのでありますが……。
  103. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 国有財産の官庁の高層化、これは今のこの特別会計でやっていきたい。自前でやっていきたい。外務省の方は、先ほど申し上げましたが、これは一般会計から一応出しておりまして、こういうものも今後あるのであります。ただ、地方におきまして、税務署とか、あるいは小さいものがございます。これはこの分でなしに、とにかく大都市の官庁高層化という分をこの自前でやろうとしているのであります。
  104. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 次に、政府関係の諸機関——政府機関の関係あるいは政府機関的な機関の問題を伺いたい。これは、必ずしも財政面の問題でなくて、一般行政機構、行政組織の問題だと思いますけれども、一応財政面ということにしぼりまして、大蔵大臣に伺いたい。  国の財政の活動というものが量及び質の面で非常に多くなり、また複雑になっていく、それが機構の面と関連して、そういうふうになってきておると思うのであります。戦前に比べますと、非常にその点が複雑になっておる。これはやはり、終戦後の経済の実態の移り変りに即して、そういう必要性が私当然あったと思うのであります。現在になってみますと、その間に何らか一つ、財政面の観点からいっても、再検討をする必要がありはしないかという感じを実は持つのであります。財政活動というものが非常に広範な機関によって運営されておるという現実である。公団というものがあり、あるいは公庫というものがあり、それから金融会社があり、銀行がありへ公社がありというふうな形、しかも、そのそれぞれの政府機関に従事する職員の身分関係がこれまたまちまちで、一般職もあれば特別職もある。その両方の組み合せのようなものもあれば、純粋な民間人だけでやっておる政府機関もある。従って、この責任関係もきわめて不明確。それから財政の運営の面にも、共通した一つの規律といいますか、基準というか、それを見出すことも困難である。それから会計検査院式の検査をやるとしても、それに対応する受け入れ的な制度はできておらないというふうなことになっておって、しかも、これらの機関が国の広い意味での財政活動の重要な役割を担当して活動をしておるわけなんです。すぐにこれをどうこうするということは、これはなかなか大きな問題でありましょうけれども、このままでいきますると、今後も、相当こういう種類のものがふえていく傾向にどうしてもなりがちだと思うのであります。まあ一つ、基礎的な、基本的な考え方、方針に即して、必要に応じて生れてくるならいいのでありますけれども、過去のものを見ますると、どうもその場その場の、その時の情勢によってできるというふうなうらみがあったように思うのであります。特に今度、新しい年度からできますものには、北海道の金融公庫が東北地方をあわせることになる。これは、単に事業分量がふえただけでなくて、北海道の金融公庫の性格が変ったものだと思います。それに、これは政府機関、純然たる政府機関ではないでしょうけれども、ほとんど政府機関に類するような東北開発会社ができる、大部分政府財政資金によって動くのであります。そうすると、かりに東北を考えましても、開発銀行による財政投融資がある、それから北海道東北開発金融公庫による財政的な投融資がある、そこに、さらにまた、東北開発会社による投融資がある、こういうことでは、財政的なロスが必ず出る。必ずロスというものが私は出る危険があると思う。一体こういう姿というものが、果して財政運営の面からいって適当かどうかであります。大蔵大臣の、これは財政面からの見方でけっこうなんでありますが、お考えを承わりたい。
  105. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 財政面からだけ答えよと、こういうお話でありますが、これは、実は財政面ばかりではないのでございまして、財政的に申しますと、集約することが効果的だと思います。しかし、北海道、東北というものは、国内において、他の地域と比べまして、今後十分開発していかなければならぬ、手の届かなかった地域といい得るのであります。従いまして、開発銀行だけでは、これはなかなか困難でございます。従いまして、昨年から北海道開発公庫ができたのでございまするが、北海道と東北ではどれだけ違うかと、やはり東北におきましても、相当開発していかなければならぬ、こういう観点から、北海道と東北を一緒にいたしまして、開発公庫をこしらえたわけでございます。また、東北開発会社は、御承知の通りに、昔の東北興業の受け継ぎでございまして、今までほとんど眠っておりましたから、今までの東北開発の観点を踏襲すると、いうわけではございませんが、別の株式会社として、別の方面からてこ入れをしょう、こういう考え方で、眠っておったのをこの際起していってやろうというでのあります。お話の通りに、いろいろな政治的目的もありますし、また、経済的にも、この際相当各分野から力を入れて開発していこう、その間におきまするお話のようなロスの点は、十分大蔵省といたしましても注意を払いまして、ロスのないようにいたしたいと思います。
  106. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 東北の問題は、私、残されておる日本における非常に大きな資源の地帯であって、この開発ということは、将来にわたって非常に大きな重要な問題であると思うのであります。そういう観点から、特にこういう、そのときの簡単な便宜主義で、ちょこっと機関ができるということに、かえって、何といいますか、心配を感ずるのであります。北海道の場合は、それは、北海道の開発は、長年にわたる経過と問題があり、あのときも、開発銀行で特別のワクを考えればいいのじゃないかという感じもしたのでありますが、まあまあ北海道は、これは特殊な歴史的な観点からいっても、別に作ることも一応是認されたのであります。北海道と今度東北はどう違うかということだけで、それがまた東北に及ぶ、そうすれば関東だって、関東の地域だって、東北とそう変らない地帯もあるわけなんであります。現に新潟も入っておる。こういうことでは、はなはだ東北関係の開発というものをむしろ僕は軽く考えておるのじゃないか、こういう懸念がするのであります。  そこで、これは私、経済企画庁の長官に伺いたいのでありますが、今度の東北開発会社、これの一体性格がどうも私にははっきりしないのであります。一体資本金がどれだけあって、どういう性格のものであるか、政府機関でないことははっきりしている。しかし、ほとんど政府出資による会社のように思われるのであります。しかし、一部民間出資がやはり残っている。一体その民間出資と政府出資の関係がどういうふうになって、東北開発会社というものを、われわれはその性格をどういうふうに考えれば一等正しいかということを一つ承わりたい。
  107. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 東北開発会社の性格は、東北地方の各県を総合した経済的な、特に経済開発を目的として、これを運用するのがねらいでありまして、事業目的には、そういうふうな工業の、特に立地条件中心としての整備をはかるということを揚げてあります。そうして本年度は、資本金は五億増す。そうして債券の発行限度を二十億にするというふうにいたしてあります。それで、民間の資金をたくさんこれに吸収するということは、従来の東北開発会社の歴史の経緯にかんがみまして、容易ではありませんから、今後はそういうふうな、内容的に見て、会社が信用度を高め得ない面をよく是正いたしまして、単独に独立して経済開発の活動のできるような内容にこれを整備していかなければならないのでありますけれども、本来の使命が公共的な、公団的な性格を持っておりますから、その間折衷して運営をはからなければならない、こういうふうに考えております。
  108. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 民間出資は幾らになるのですか。
  109. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) その点については、政府委員からお答えいたします。
  110. 浅田重恭

    説明員(浅田重恭君) お答え申し上げます。現在の民間出資といたしましては、県の関係が若干ございますが、市町村といたしまして百十四万五千円、農業協同組合が百三十八万五千円、その他団体、個人といたしまして千九百五十七万円、これらの割合から申しますと、政府の出資が七六%でございまして、県を合せますと九五%に相なります。
  111. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 総額でけっこうです。政府以外の出資総額でけっこうです。
  112. 浅田重恭

    説明員(浅田重恭君) 政府が三億七百五十万円でございます。全体で四億で、今度ふやしまして、九億に相なるわけでございます。現在は四億でございます。
  113. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 政府出資九億で、それに対応するといいますか、政府出資以外の民間出資、その中には府県も町村も、いろいろ団体も個人もありましょうけれども、いわゆる純然たる民間、出資としての総額は幾らかというわけです。
  114. 浅田重恭

    説明員(浅田重恭君) 農業協同組合その他団体、個人で約千七百万円くらいでございます。
  115. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうすると、全部で千七百万円見当でいいわけですか。
  116. 浅田重恭

    説明員(浅田重恭君) そうでございます。
  117. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 長官にお伺いしたいのですが、特殊な東北の開発を担当する会社ですけれども政府出資が来年度の投資を合せまして九億なんです。それに対して民間の出資が、今の御説明によると、約二千万円足らずなんですね。こういう一つの株式会社の形態自体が私、これは東北の開発会社の特殊性だといわれればそれまでだけれども、こういうところに問題がありはしないかと思う。当初、東北興業のできましたときは、こういうところに意味合いを置いて、それぞれ、県も持つ、関係の団体も持つというので、その株の構成に特別の意義を持たしたと私記憶しているのでありますが、ところが、事態が変って参りまして、国の出資がとにもかくにも九億近く、しかも民間出資が二、三千万円ひよこっとついているというような形では、かえって民間出資、こういう性格が、新しい性格に災いを及ぼしはしないか、むしろここまで政府がおやりになるのであれば、なぜ政府機関としてはっきり国だけの出資でおやりにならないか、こういう感じがするのであります。では民間出資をふやすかというと、先ほどお話のようになかなかそれはむずかしいのでございます。新しい、国が責任を持つ政府機関にしておやりになった方がむしろいいのであって、わずかの出資を残して、株主総会でござれ、大会で運営する、しかもそれは地域的のバランスと申しますか、そういうものがついておって、私はとうてい期待のできる運営はできないのじゃないかということを実は心配するのでありますが、その点についての長官のお考えをもう一度承わりたい。
  118. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) お説のような御意見も、十分われわれは今まで東北会社の改組に関する検討をいたす場合には、それぞれ考慮を払ってみたわけでございます。ただ、従来出資いたしておりますこと、また現在懸案中の諸事業がありまして、法律的にもまた実際的にも、現在の組織そのものを改めて、補強していくのが、関係事業の整備の面からいっても最も適当である、こういうふうな結論になりましたので……。ただ、新しく改正をいたしました要点は、経済活動を活発にするために、新たに出資五億、そうして公債を二十億限度で発行し得るようにいたして、そうして本来の定款、事業目的に合うようにし活動力のあるような態勢を整えたい、こういうので、御趣旨のような線を考えながら、従来の経緯に徴して、ただいま懸案中のいろいろの権利義務の関係がありますから、そういう点に欠陥の起らないようにしながら、新たに経済団体としてこれを育成していくと、こういうことになったわけでございます。
  119. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 おそらく私はそういうことではうまくいかないであろうということを申し上げて間違いがないだろうと思います。  そこで、一つ伺いたいのでありますが、今回の、来年度の予算として、東北方面の開発ということに相当重点が置かれておるわけであります。先ほどお話のありましたように、東北開発会社関係で、出資とそれから借入金合して二十億、それから北海道東北開発公庫では、政府出資、資金運用部資金、開発債券等を合しまして、約百七十億が出るわけであります。この北海道東北開発公庫から来年度出るであろう百七十億のうち、東北方面に振り向く資金はどれほど想定されておるでしょうか。
  120. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 公庫は四十五億であります。
  121. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうしますると、三十二年度においては、公庫とそれから開発会社と合せまして六十五億見当の金が新しく東北に回ることになるわけですね。おそらくこの東北開発会社の方は、自分でやる仕事もあれば、出資したり融資したりする面もあるでしょうけれども、この六十五億見当の資金によって、来年度どういう事業が一応計画されておるか、これは東北開発全体の観点から、おそらく企画庁とされては、これだけの資金を効率的にこなすだけの基本的な調査なり計画があろうと思う。その概要を一つお示しを願いたいと思う。
  122. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 詳細は政府委員から申し上げますけれども、たとえば砂鉄であるとか、天然ガスでありますとか、あるいは木材関係の利用とか、あるいはウラン鉱の探鉱とか、その他水産関係等がおもなものでございます。
  123. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 公庫がわからないのですが、大体金の割り振りといいますか、どういう面にどれほどというやつは……。
  124. 浅田重恭

    説明員(浅田重恭君) 公庫の方は、御承知の通り公庫ができまして、いろいろな融資希望の中から公庫がいろいろ審査をいたしまして、適格性のあるものにつきましてそれぞれ融資をして参るわけでございます。政府として、こういうものに融資をするという計画をあらかじめ立てるわけには参らないのでございますが、一応融資がどういう方面に期待されておるかというのを、各県あるいは商工会議所その他いろいろな方面から取りまして、推定いたしておるのがございます。それによりますと、砂鉄利用工業、天然ガス利用工業、亜炭利用工業等に四十五億の期待がございます。それから農林水産物の加工につきまして、ハード・ボードあるいはチップ・ボード、それから水産物貯蔵加工事業、食肉、乳製品事業その他リンゴ等の特産品加工につきまして二十六億五千万円、それから地下資源開発事業、これは主として中小炭鉱等の選鉱施設等に要望のありますのが二十億、それからいろいろな交通運輸施設につきまして十億程度の要望がございます。その他機械工業でございますとかセメント第二次製品、あるいは海水を利用いたしましていろいろなものを作るというものが二十九億五千万円、合せまして百三十一億程度の融資期待が現在あるのでございます。
  125. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それは融資期待といわれるのは、公庫とそれから開発会社においてやる事業と、一緒に合せてそうなるわけですね。
  126. 浅田重恭

    説明員(浅田重恭君) ただいま申し上げましたのは公庫貸付だけでございます。
  127. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 開発会社の方はどうです。
  128. 浅田重恭

    説明員(浅田重恭君) 開発会社といたしましては、先ほど長官から申し上げましたように、新しく工業立地条件の整備事業が加えられるわけでございますが、その他、従来の肥料工業でございますとか、新しくハード・ボードの計画等もあるようでございます。これらはさらに十分検討いたしまして、民間事業ともあわせ考えまして、なかなか民間では取りつきにくい、しかし将来東北の開発を促進いたしますためにはぜひともやらなければならぬというような事業を選定をいたしてやって参りたいと、かように考えておる次第でございます。
  129. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 一応説明はわかりました。そういうふうな考え方であれば、私は開発銀行の機能を若干拡充して、十分目的を達し得る、東北地帯の開発ということは大きな問題であって、その役割をほんとうに果していく事柄がどうしても必要だ、そのためには、開発庁の総合開発計画あたりを基礎にしながら、東北開発の計画を作って、それを遂行する特別な政府機関を作る必要があるだろうと思います。今のお話であれば、単純に政府資金をそれの要求に応じてあんばいしていくという性格を出ない、そういうことは財政資金の効率的な観点からいって、はなはだ策を得たものじゃない。おそらく東北開発会社というものは、また東北興業のような立場に陥る危険が多分にある、で、こういう仕事を、ほんとうを言うと、経済企画庁長官が担当せられることは、実質上の責任をお持ちになることだろうと思う。私は不本意だと思う。今の制度ではっきりそうなっているようでありますが、できればこの数十億のお金を財政投融資をするくらいならば、その一割か二割をさいて、こういう仕事を一年か二年先に見送って、その間、東北開発の基本的な調査をするとか計画を立てるということの方が、はるかに私は財政の金の使い方としては、国のためになるだろうと、こう思うのですが、これは言うだけであります。  次に、時間がありませんので、外務大臣にお伺いいたしますが、経済外交を推進する観点で、特に東南アジアとの関係においては、私は賠償の実施を円滑にするということ、それから賠償と不可分の関係にありまする経済協力というものを、ほんとうにそれらの国の将来のためになるように実施していくということが最も大事だろうと思うのです。特にこれらの問題は、一年限りの問題じゃなくて、十年、二十年にわたるのでありまして、それだけに、すべり出しのこの二、三年というものは特に大事じゃないかということを考えるのであります。それで、昨年はフィリピンとの賠償の条約ができた、ビルマは御承知のように少し前であります。フィリピン、ビルマそれからタイにつきましては賠償ではありませんけれども、特別円処理についての取りきめがあるわけであります。そういうもののここ一年、二年ぐらいの間の経過、最近は割に順調だという話を聞いておりますけれども、実際どういうふうに進んでおるかということを、一つお伺いしたいと思うのであります。
  130. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 東南アジアに対する経済外交推進におきまして、賠償問題がきわめて重要であり、またその実施が特に注意しなければならぬというお説は、全く同感であります。すでに御承知の通りビルマ及びフィリピンにつきましては、賠償協定ができまして、その実施に入っております。なお、インドネシア及びヴェトナムにつきましては、いまだ協定ができませんので、いろいろと現地の方と交渉いたして、なるべく早急にできるということを望んでおります。フィリピン及びタイにおける賠償実施の問題も、ようやく大体軌道に乗って参った、大体順調にいっていると思います。詳しいことはあとで政府委員から御明説申し上げます。  それからタイの特別円の問題につきましてもすでに約半額のものは現金でのなには済んでおりまして、残る五十数億の問題につきまして、経済協力の形において具体的に目下現地におきまして、私どもの大使とタイの政府交渉を進めておりまして、これも遠からずその結論を得ることと私は考えております。賠償実施の状況一つ局長から。
  131. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいまの総理の御説明を補足いたします。フィリピン賠償につきましては御承知の通り二千五百万ドル毎年賠償を払うということになっております。今第一年度にあるわけでございますが、これは初めから計画が、相当準備ができておりまして、実施計画も急速にできまして、また実施の段階に入りました今日におきましても、満足すべき進捗状況を示しておるのであります。これを日本円に換算いたしますと九十億円になるわけでございます。そのうちの五十億円は、大体生産物で提供するということになっております。四十億円が役務で提供することになっております。五十億円の生産物の方は約八割見当、四十億円見当はすでに業者との間の話し合いができたもの、あるいはできかかっておるものでございます。従って、これは順調に進むと考えられます。なお、四十億円の役務の方でございますが、このうちの約半額は沈船引き揚げの役務でございます。これは中間賠償協定としてすでに三年前より実施に入っておる問題でございまして、この方は全部支払い済みでございます。なお、今の四十億円の役務のうち、約半額が新しい役務でございます。この方も順調に話し合いが進んでおるのでございます。なお、ビルマとの賠償の実施でございますが、第二年度が今年終るところでございます。これは二千万ドル、七十二億円でございますが、毎年払うということになっておるのでございますが、これの方は賠償協定ができました当時におきましては、なかなか準備が整っておりませんために、実施計画を作るのに約半年以上もかかったことは御承知の通りでございます。その後納一年半の間に、大体半年のおくれは全部取り戻しまして、本賠償年度の終りには第一年度分、第二年度の分全部合せまして、これを完済し得る見通しが立っておるのであります。従いまして、両方とも賠償は順調に進みつつあると御了承願いたいと思います。
  132. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 順調に推移しておってきわめてけっこうだと思うのでありますが、ただ、役務賠償の点が少し当初考えられておったよりは窮屈といいますか、不円滑じゃなかろうかという感じがするのが一つと、それから一般貿易、日本からの輸出でありますが、これに対して、若干支障を与えておるようなことがないかどうかという点を局長にお聞きいたします。
  133. 中川融

    政府委員(中川融君) 御指摘の通り賠償協定、賠償条項——平和条約の十四条の賠償条項は、賠償は役務で払うということが原則になっておるのでありまして、その根本趣旨から申しますと、できるだけ賠償も役務を多くしたいと思うのでございますが、これは御承知の通り交渉過程におきまして、役務のみではどうしても相手国が納得しないという事情にありましたので、長い交渉過程を通じまして生産物をも出してよろしいということに踏み切ったわけでございます。現在の賠償実施計画におきましては、国によって違いますが、フィリピンの場合におきましては、先ほど申しました通り九十億のうち四十億円は役務ということで、現在のところは相当役務の方の分量は多いのでございます。ビルマとの賠償におきましては、約四分の一程度が今のところ役務であろうかと思うのであります。これは役務の分量が少いということも、見様によっては、相当見えるのでございますが、われわれとしては、できるだけ実施計画を作るに当りまして、役務の分量を多くするように努めていきたいと考え、今後もその方向で努力いたしたいと思っておるのでございます。なお、もう一点は何でございましたか。
  134. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 けっこうです。今後の見通しとして、ヴェトナムとは何か具体的に、来年度あたり話し合いができる段取りになるのですか。インドネシアは向うの政情関係でちょっと見当がつかないと申しますか、われわれの方でああいう政情のもとで、しいて急ぐ必要も、私はなかろうかと思うのでありますが、ヴェトナムの方は、何か見当がつくのですか、どうでしょうか。その点だけお伺いいたします。
  135. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ヴェトナムの賠償問題につきましては、最初わが方の賠償総額とヴェトナムの要求しておる賠償総額との間に、あまりにも大きな開きがありまして、ちょっと歩み寄りと申しましても、あまり違っておったものですから、さらにわれわれはヴェトナムの経済事情その他をさらに一そう具体的に検討いたしますし、また、ヴェトナムの方にも、ただ総額というだけでなしに、現実にヴェトナムが建設の上において、あるいは産業開発の上において、やらなくちゃならない仕事というものを、具体的に見当をつけまして、そうしてこれらの計画をよく検討いたしておるわけで、だいぶん話しも、そういう具体的な仕事の上から話し合いを進めておりますので、よほど近づいては参りましたけれども、まだ相当の開きがございますので、せっかく両国の間に交渉を続けておる。必ずいつできるということは、申し上げることはできませんけれども、私はよほど話が具体的になって参りましたので、今後なお一そう力を入れて解決したい。かように考えております。  インドネシアの方は、今お話しもありましたように、最近アリ政権が変りましたので、しばらく停頓するかと思いますけれども、政情がもう少し見通しがつけば、これも進行さしたい。かように考えております。
  136. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 大蔵大臣がいないので、経済企画庁長官をわずらわしたいと思うのでありますが、貿易収支外の外貨の収支、これが来年度どういうふうな見通しになるであろうかということでありますが、大体の見当でけっこうでございます。
  137. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 大蔵省の政府委員がおりますから、政府委員から……。
  138. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) お尋ねの点は、外貨予算における貿易外収支の計数でございましょうが、三十一年度の貿易外の外貨予算は、上期が三億四千六百万ドル、下期が四億二千六百万ドル、年間の合計が七億七千二百万ドルということでございましたが、現実のところは、上期が三億二百万ドル下期が十月から一月までで二億七百万ドル二、三月で大体一億二千万ドル年間では六億三千万ドル、これが現実の額になる見込みでございます。来年度がどうかということでございますが、来年度の外貨予算は、まだ検討中でございまして、計数がまとまっておりませんが、年度を通じますと大体三十一年度の六億三千万ドルよりも若干上回るのではないか、何で上回るかと申しますと、来年度は輸入が増大いたしましたのに伴いまして、運賃を主とする貿易外の支払いがふえるという関係になるようでございます。
  139. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 スエズ問題の関係等で、若干運賃が下がることが予想されても、なおやはり輸入の増加でふえると、こういう計算をされておるのですか。
  140. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) スエズ問題の影響で、運賃がどの程度下がるか、ちょっと見通しも立っておりませんですが、為替局ではその値下りをオフセットして、若干運賃の支払いがふえるのじゃないかと、かように見ております。
  141. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 最後に、これも長官にお尋ねしたいのでありますが、外貨の適正保有量の問題であります。外貨がそのときの状況によって増減するということは、これはむしろ当然である、固定的なものではないわけであります。従ってしいて適正保有量というようなものを設けて、どうかするとそれに意識的にも、無意識的にも制約を受けるということは、これは好ましくないと私は思うのであります。しかし、一面外貨の保有量というものが国内的にも、あるいは国際的の経済の交流の上にも、一つの大きな安定感を与えて、また現業上の操作面においても、相当有効な機能を出しておることは申すまでもないのです。従って何らかそこに一つのめどといいますか、そういうものがあっても、これまたいいのではないかという考え方もするのであります。一般においては外貨の適正保有、量の問題がいろいろ論議されておるのでありまして、長官としてどういうふうに考えるか、一つ御所見だけでけっこうであります。お伺いしたい。
  142. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 適正外貨の量をどういうふうに見るが適当かということにつきまして、お説のように必ずしも説が一つにまとまっておりません。従って来年度の外貨予算をどういうふうに組むかということは、ただいま検討中でございまして、それとも見合って、われわれは来年度通じての適正外貨を、どういうふうに持っていくかということを、あわせて検討したいと考えております。要するに国内の経済政策が放漫に流れて、それによって信用度を落すという本質的の原因を違えないように、財政その他の運営において、外貨信用を高めるようにいたすのが、根本の問題じゃないかと考えております。従ってどういうふうに、ドルをたくさん持つ、持たんという量によって、非常な大きな影響があるようなことにならないような、本質的に、財政経済の運営を世界的の状況に合せて、信用度を失なわないように配慮いたしたい。それが根本の方針でありまして、来たるべき年度の外貨の決定は二、三日うちにいたしたいと思います。
  143. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうすると、企画庁としては、別にその適正、いわゆる適正外貨保有量というような一つの想定はとらずに、全体の結果として、その表われたものが、まあ適正と、こういうふうに、適正と言われるのですか。総合的に考えたもの、それ自体を考えるのであって、別段そのほかに適正な意味合いの保有量は考えない、こういうふうに理解していいのですか。
  144. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 企画庁といたしましては、十二億ドルでいいとか、あるいは十億ドルでいいとか、巷間いろいろの説が流布されておりますけれども、そういう数字にこだわらない。国の財政経済の基本線が、放漫に流れないように配慮を払っていきました場合には、たとえ、十億ドル前後に保有量が少くなったといたしましても、それはわが国の外貨の信用度を落すものにはならない、そういう建前でおります。
  145. 山田節男

    ○山田節男君 私は岸総理兼外相に御質問申し上げたいと思いますが、質問の点は、国連に対する対策としての一、二の質問を申し上げたいと思いますが、その前に前提として、岸外務大臣は石橋内閣が成立いたしましたときに外相として御就任になった。しこうして岸内閣ができまするや、岸さんは総理大臣として外相をも兼ねておられる。これは以後の私の質問に関連いたしますから、一応最初に確かめたいと存ずるのでありますが、なるほどヨーロッパの、これはまあ二流、三流の国でありまするが、総理が外相を兼ねるということは、これは決して異例ではございません。総理は承わるところによると、国会が済めばワシントンへいらっしゃる、なおまた、東南アジアへもお出かけになりたいという計画があるやに承わっております。岸総理は当分、当分というよりか、岸内閣が存続する間は外相をずっと兼ねていらっしゃるのか。    〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕  あるいは適当な人物があった場合には、外相を任命するという御意見なのか。そのいずれかをちょっとお知らせを願いたいと思います。
  146. 岸信介

    国務大臣岸信介君) しばしばその問題について御質問もございましたが、私がこれを兼ねていることは、あくまでも臨時的でございまして、適当な機会には専任の外相を置くつもりでございます。
  147. 山田節男

    ○山田節男君 岸さんは石橋内閣総理大臣の臨時代理として、あるいは岸総理大臣外務大臣としましても、当委員会あるいは本会議等におきましても、しばしば日本の今後の外交の基調は国連に協力してやるのだと、こういう所信を明らかにされておるのであります。これは私としましても、まことには総理は今後の日本外交政策に対しまする一つのレールは、正しいレールにはまっていらっしゃるということは、私も了解するのでありますが御承知のように、岸さんは憲法改正論者であります。そのことにつきましては、ここでしばしば言明になったのでございまするが、少くとも今後日本がああいったような、国連総会におきまして五十一カ国というほとんど過半数、絶対多数の国々が加入の共同提案によって、しかも全会一致で国連に加盟をした。これは国際社会が日本に期待することが、まことに大であります。これは御承知でありましょうが、国連の憲章の前文を見ましても、あるいは一九四八年に出ましたいわゆる世界人権宣言の前文を見ましても、これは偶然と申しますか、日本の憲法の前文と文章もほとんど同じに近いような文言があるのであります。こういう点につきまして、私どもはこの憲法はことに国連に加盟いたしましてからの日本としては、今日のこの憲法を、むしろ世界の各国にこれを知らしめて、これにまね、これにむしろ従わしむるようにするのがいいじゃないかと思う。これは私、念のために日本の憲法の前文の一部を読みまするが、しかも、この世界人権宣言あるいは国連の憲章の前文に同意義なことがあるからあえて読みまするが、たとえばこの日本憲法の前文の中ほどに、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しょうと決意した。われらは平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と缺乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と、これと同じような文句が先ほど申し上げましたように国連憲章の前文、あるいは世界人権宣言の前文にうたわれている。ことに国連憲章の前文の中において、日本の憲法の第九条戦争放棄、この条項に匹敵すべきものといたしましては、あの国連憲章の前文には、共同の利益以外には武力を行使しないということがございます。日本は国連に加盟いたしますならば、当然これに従わなくちゃならない。これを裏を返しますというと、日本の憲法の第九条、すなわち今後戦争は国策遂行の手段としてはこれをやらないということと、私はこれは一致しておると思うのであります。先日当委員会におきまして、同僚の憲法改正の質問に対しまして、岸首相はたとえば、今、天皇は憲法上国民のシンボルであるというようになっているけれども、これは元首としたい。こういうようなことを申されたのでございますが、日本が国連にいよいよ加盟して、しかも今申し上げましたことにこれは世界に誇るべき憲法の前文をこれをむしろ振りかざして国連に協力する、これが世界平和のためであり、人類平和のためであると思うのでございますが、岸総理考えていらっしゃる憲法改正の理念なり、あるいは憲法改正の各条々に、これに矛盾するような点があるのじゃないかと思うのですが、その点に関しての総理のあるいは外相としての御所信を伺いたいと思います。
  148. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国連憲章やわが現行憲法の前文に盛られている世界平和を念願し、これを実現するために平和を愛好する国々と国際協力を強めて参りまして、そうして世界の平和、人類の福祉を増進するという、この理想は、私は今御指摘のごとく国連憲章も、わが現行憲法におきましても、そういうことを明瞭にいたしております。こういう私は点に関しては、これはあくまでも、われわれはこれを存置し、この精神を発展せしめなければならぬことは言うを待たないのであります。私自身が憲法改正論者であり、自主憲法制定論者であるという意味は、実はそういう点に関する現行憲法の大精神を変えようという考えでは、毛頭ないのでありまして、従いまして、今御指摘になるような点は、これは将来の憲法におきましても、日本のわれわれ民族の理想として強く掲げる必要があるとかように考えております。
  149. 山田節男

    ○山田節男君 岸総理の国連に対するこの御所信の根本の理念というのは、わかりましたが、一体この国連が今日八十一カ国の加盟国を持ち、世界総人口の約二十二億余でありますが、こういう一つの国際機関、世界の一つの機構としましては、これは何としても動かすべからざる存在であることは、申すまでもございませんが、総理もおっしやるように、日本外交の基調は、国連に協力することによって達成するんだということをおっしゃっておりまするが、私の考えでは、国連に協力して日本外交政策を実現するという道に、二つ私はあると思います。その一つは、これは何と申しまするか、世界平和と世界人類の福祉の増進のために国連に協力するという面、もう一つは、外交政策の実質の面で、たとえば日本の人口問題であるとかあるいは資源の問題であるとか、あるいは通商自由の問題であるとか、その他通貨とか、あるいはいろいろな問題がございますが、こういうような実際の重大な国連に対する対策を実現するにおきましては、これは日本でも今日そうしておりまするけれども、ニューヨークの国連の所在地に少くとも外務大臣の格を持っておる人を派遣してやるということ、これは日本もやっております。これはしかし、私は数回国連の本部にも参りましたが、たとえばアメリカの例を見ますると、アメリカはワシントンに政府はある、しかし、あそこにちゃんとU・Sミッションという、いわゆる合衆国の国連代表部というものをニューヨークに置いているのです。そうして常時百名近くのスタッフを持っている。それが総会が開かれまするというと、もうその倍くらいの人員になる。イギリス、フランス、イタリア、みな比例いたしまして相当のものを持っている。日本は国連に加盟して早々でございまするが、わずか六、七名ぐらいしかいない。これは私は、今後岸総理外務大臣外交政策を国連を通じておやりになるというには、あまり貧弱であると思う。これは出先の問題。翻って国内におきまして、あなたが総理兼外相として今の外交の基調を国連を通じてやるということ、これを推進なさるのには、これはやはり、アメリカとか、イギリスとか、その他の国がやっておりまするように、国連の事務を担当する常任の次官級の者を置いて、そうして向うの情報をしょっちゅう取って、これを分析さして、今申し上げたように、特に第二の資源獲得なり、人口問題、その他日本として主張しなければならないものを主張する、そういう機構をぜひ持つべき必要があると思う。これは、岸総理がやがて向うへおいでになって、いろいろごらんになると思いますけれども、幸い総理が外相としていらっしゃる間に、国連を基調としておやりになる以上は、そういう点に一つ私はぜひ御努力願いたいと思うのでありますが、そういうものに対する首相の御所見を承わりたいと思います。
  150. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今後国連を中心日本外交を推進して参りまする上におきましては、今御意見のように、出先におけるところの国連において、わが国を代表すべきスタッフの問題及び国内における国連の事務を扱っていく機構というようなものに関連しまして、これを強化し、これを充実する必要は、お説の通り私も全然同意見でございます。十分にそういう機構や、あるいは人員の問題もさることでありますが、これに派遣すべき実質的に有力な人を出して、そうしてわが方の主張及び国際連合の協力を得て、今お話しになりました日本としては、非常に大きな問題でありますから、人口問題等につきましても、私は適当な機会に、国連を通じてわれわれの主張を実現するということに、ぜひとも努めなければならぬ。それには、今お話がありましたように、十分注意して機構及び人的の強化をはかっていきたいと、かように考えておる次第であります。
  151. 山田節男

    ○山田節男君 私なぜそういうことを申し上げるかと申しますと、私個人としましても、ジュネーブの国際連盟に一九三〇年の前後数年間おりまして、国際連盟を舞台とした国際政治というものを見ておるから、そういうことを申し上げるのでありますが、ことに国連のように、何と申しますか、国際連盟よりも一歩連帯性を強めた世界機構におきましては、国際政治というものが、単なる本会議あるいは理事会だけで行われるのでなくいたしまして、むしろ、国連の本部におきましては、ロビーであるとか、あるいは新聞記者会見をするとか、あるいはパーティーを開くとか、そういったようなものがむしろ能率が上るということになってくる。これは国際連盟の時代もそうでありました。私のおりました当時には、事務次長には新渡戸博士がおられ、あるいは政治部長には杉村博士がおられ、あるいは安達峯一郎さんというような、今日の日本外交界におきましても、あれほどの逸材はない。そういう人がおられて、しかも日本は五大国の一つであるというので、かなりはなばなしくやっておりましたけれども、それほどの逸材をもってしましても、まだ他の諸国に負ける。国連に今度いよいよ入って、八十一カ国、やがて八十五カ国になる。そういうときにおき まして、やはり今総理のおっしゃった、国連に協力することによって日本外交政策を実現していこうとおっしゃるのには、今日の外交というものが、非常に変ってきておるということを十分御勘案になって、もちろん外務官僚で多年の御経験を持っておっていい人もあるでありましょうが、必ずしもそういう人ばかりに求めないで、むしろ民間の財界の人たちとか、あるいは学者の人たちとか、そういった国際人としてほんとうに貫禄を持ち、またそういう国際社会に入っていって談笑裏にわれわれの主張をいれさせるというような、こういう人をどうしても求めてからあなたが向うにお送りにならないと……。今年度予算を見まするというと、国連の会費が約三億五千万円、その他付属機関に対する負担金を入れまするというと、六億円余の予算が計上されております。金額から申せばわずかなものでございまするけれども、これをいかに有効に使うか、これは一にかかって今後のそういう人材を選び得るかいなかということに、私はよると思うのでございますが、総理はこういう点に関して、真剣にそういう人材を探してやろうというだけの決意をお持ちになっておるかどうか、この点をお伺いしたいと思う。
  152. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お説のように、これは有力なる人材を用る必要がありますし、また、予算の点につきましても、十分ではございませんけれども、これを最も有効に使って、国連加盟の意義をあらしめなければならない。また、今後の日本の進んでいく外交方針の基調としてこれを樹立するという考えを実現するためには、ぜひとも今お話しのように有力な人材をできるだけ網羅して参りたいと、こういうつもりでおります。
  153. 山田節男

    ○山田節男君 国際連合ができたということは、要するに国際連盟では世界平和の維持ができなかったというところに、私は国際連合が生れた理由があると思うのであります。ところが、御承知のように、今日の国際連合におきましては、米ソの二大陣営の対立ということになっておる。ことに、現在の国連の規約によりまするというと、安全保障理事会、これは一番中心的な何と申しますか、執行機関のようなものでございますけれども、この中にはいわゆる五大強国の一致の原則というものがございまして、すなわち拒否権を発動し得るということがある。これは国連がわれわれの期待したほどの平和というものを、確実に維持し得るかどうかということを疑わしめる一つの欠点であると思う。たとえば、昨年の十一月の初めに、ハンガリアにおける例の暴動が起きた。ソ連が出兵いたしました。あるいはスエズ運河に関して英仏が出兵し、イスラエルもこれを出兵いたしまして、例のガザ地域、シナイ半島、アカバ湾、あの問題につきましても、なかなか国連としては迅速にしかも効果的に処理できない。こういうようなことからいたしまして、国際連合もこれはもう一つ飛躍させなければいかぬということで、これは岸外相が御存じかどうか、おそらく御存じと思いまするけれども日本の国会におきましても——世界政府建設のための国家委員会というものが四十三カ国にございます。日本の衆参両院におきましても八十四名の会員がある。これは来たる十月の第十二総会、国連の総会までに国連の憲章の改正、これは国際連合をもっと強くしよう。具体的に申しまするならば、今日の国連総会を一つのパーラメントにしよう、議会にしよう。理事会は安保理事会、信託統治理事会というのがございます。あるいは経済社会理事会、これをエグゼキュテイヴ——執行機関、換言いたしますると、一つ内閣のようなもの、執行機関にしよう、こういうことが今やほうはいとして世界各国に起っておる。憲章改正のための準備会議というものを八月に開く。その結果を十月の第十二総会に報告すべしということになっておりますが、日本も加盟早々でありますが、国連の憲章の改正という問題を、あなたは日本政府として、どういう点を修正すべきかということに対して具体的な御研究なりあるいは研究の結果どういう点は改正すべきか、修正すべきか、日本政府としてのそういう考えを具体化したものをお持ちかどうか承わりたいと思います。
  154. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 世界連邦の考え、理想というものは、私は非常に深い関心を持っております。ただ国連には、私の方は御承知の通り昨年末加盟したばかりでありまして、国連を中心として今後わが国の外交を推進するという、国連そのものを見まするというと、まだこれが理想的なものであるとは申しかねる。その理想は非常に高い、高遠なものを掲げておりますが、実際の働きにつきましては、今お話しのありました拒否権の問題等、いろいろ問題点があると思います。同時にまた、世界連邦の理想につきましても、これに共鳴し、これを実現しようとする一方において非常に強い声も起っておりますが、同時に、国際の現実というものは私どもから考えるというと、国際連合が掲げているこの理想から見るというと、現実は相当まだ遠いものがあるという実情にかんがみまして、私はまず第一に日本としては国連に加盟して、その忠実なる一員として国際連合憲章の精神を実現することに各国と協力して進んで参りたい、こう思っておるわけでありますが、しかし同時に、国際連合の憲章やその他の点につきまして、改正をすべき点につきましては検討をして、そうして十分に国際的情勢とにらみ合せて、日本考えを国際連合において実現し、そうして国際連合自体をより高く、より強く、よりわれわれの理想に近いものに持っていくように努めることが、今後日本に課せられたる使命であると、かように考えております。今現実に国際連合の憲章をこういう点をこういうふうに改正するというような案につきましては、具体的の意見を持っておりませんが、そういう心組みで今後検討もし、努力もして参りたい、かように考えております。
  155. 山田節男

    ○山田節男君 私の質問はテレビの問題ですが、松方説明員がまだお見えになっていないのですか。
  156. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  157. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記を始めて下さい。
  158. 山田節男

    ○山田節男君 これは岸総理大臣も御臨席でございまするし、所管大臣の平井郵政大臣もお見えになっておりますので、私はこれからテレビのチャンネルの割当の問題について、御質問申し上げたいと思います。これは岸総理も、すでに新聞あるいはいろいろな報道機関で御存じと存じまするが、このテレビのチャンネルの割当につきまして、今日けんけんごうごうといたしまして、極端に申しまするならば、全く百鬼夜行のごときありさまでございます。あたかもこのテレビジョンのチャンネルの免許を受けるということは、一つの利権運動に化しておるのでありますというほど、まことに憂うべき事態になっておりますので、私は本来ならば逓信委員会でこれは質問すべきでございまするけれども、本日本委員会においてその事態を憂うるのあまり、一つ質問をいたすのであります。これは最高責任者の平井郵政大臣がお見えになっておりますので、私は率直な意見一つお伺いしたいのであります。なぜこういったようなテレビジョンのチャンネルの割当に対しまして、今日まことに憂うべき事態を引き起しておるか。これは昨年の二月の十七日の日付でありますが、村上郵政大臣のときに、テレビジョン放送用の周波数の割当計画基本方針というものを作ったのでございます。そういたしまして、これが日本のテレビジョン放送の割当の根本方策としてきめられておったのでございまするが、昨年の十二月のこれは下旬、おそらく二十日前後と思いますが、これは濱田電波監理局長お見えでございますから、その点は御説明願いたいと思いますが、基本方針の修正案が出たのであります。それが平井郵政大臣の名前によりまして、今年の一月二十一日付になっております。これが今日のテレビのチャンネルの割当に対して、まことに憂うべき混乱状態を来たしておるのであります。私は念のためにお伺いするのでありますが、この修正案は平井郵政大臣が昨年年末に御就任になりましたが、その前にすでに村上大臣の手でできておったのかどうか。また、それを平井大臣はそのまま受け継がれて、そしてあなたの名前で電波監理審議会に諮問されたのか、その間のいきさつを一つ承わりたいと思います。
  159. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) お答え申し上げます。チャンネル・プランは村上前郵政大臣が十分検討されて作られておったのでございまして私が引き継ぎましてこのチャンネル・プランを十分拝見をいたし、その内容に至りましても十分検討いたしました。そこで私の考えといたしましては、一応村上前郵政大臣検討され十二分の資料を持たれて作られておる電波監理審議会に諮問するその内容としては、まあ一応十分であろう、かように考えまして村上郵政大臣のその諮問書を尊重いたし、私はそのまま監理委員会提出しました。  ただし、そのうちお答えをいたしておかなければいかん個所は一つございます。それは電波時報にも大体諮問書の内容は出ておりますが、実は直した個所といたしましては、教育に関する個所でございまするが、「もっぱら教育的効果を目的とする放送を行う局の設置を必要かつ適当とする場合においては、」この「場合においては」というところを私が直したのであります。それは前の文句は適当とする地域については、こう書いてあったのを、私は七字訂正をいたしまして、電波監理委員会提出をいたしたのであります。
  160. 山田節男

    ○山田節男君 そういたしますと、今問題になっているこのテレビのチャンネル割当基本方策は、今申された教育放送設置の局の「地域」を「場合」とこれを置きかえただけで、あとは全部村上郵政大臣の改正案をそのまま踏襲されたと、これは疑いございませんか。
  161. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 疑いございません。
  162. 山田節男

    ○山田節男君 そういたしますと、昨年の二月の十七日のこの基本方針によりますというと、テレビジョンの割当のVHF帯の六チャンネルでやっていくんだと、これで当分日本のテレビジョンの放送の需要に一応こたえられるものだと、まだほかに、今の割当の六チャンネル以外に他に五チャンネル以上もあるけれども、しかしこれは現在駐留軍に使われておる。ことに公衆通信業務その他の公益的通信業務に使用されておって、その重要性を考慮して、これを除外することにすると、こういうことになっておるのでありますが、今度の修正案によりまするというと、それを全く忘れたかのごとく十一チャンネルと、こういうことになっておるのでありまするが、そういたしますると、この公益的通信に使っておるVHFのチャンネルはなくてもいいんだと、これはまことに重大な修正と思うのでありますが、どうしてこういうような修正をされたのか、この点を承わりたいと思います。
  163. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 私が承わったところによりますれば、最初六チャンネルを計画いたした。しかし、その後に至って五チャンネルという波が生れてきた。そうするともったいないので、これをやはり十一チャンネルにして、国民大衆のために活用することが一番いい方法でなかろうかと、かように私は存じまして、村上郵政大臣の計画をそのまま諮問書として提出いたしたのでございます。なお、その当時の模様その他は電波監理局長も十分参画いたしておりまするので、事務的な問題だと存じまするので、どうぞ監理局長にお聞きを願います。
  164. 山田節男

    ○山田節男君 これは事務的問題もございまするが、しかし、このチャンネルというものは、これは無制限のものではないのであります。しかもこれは国民の共有の利益であり、財産であります。しかもこれはテレビばかりではなく、VHFのチャンネルというものは、これは今申し上げましたように公益の通信業務に使われておる。であるからこれは重要であるから、一応六チャンネルだけでやっていくんだと、そうすると、今の修正案によりますと、公益的通信業務が使っておるチャンネルも全部テレビに割当ててしまうんだと、これは事務的以上に重大な、私は政府の態度が変っておると思うのです。いわゆる公益的に使うVHF帯を全部犠牲にしてしまう、テレビジョンに使ってしまうんだと、これは非常に大きな、これが後ほど質問申し上げる今日の混乱を来たしている重大な原因になっておると思う。これは今あなたはテレビにたくさんやれば、それだけ公共の福祉になるとおっしゃる。私はそうは考えませんか、この点に関してもう一ぺん平井郵政大臣にお伺いしたい。同時にそのいきさつについては電波監理局長おられますから伺いたいと思います。
  165. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 私は六チャンネルによる日本のテレビの計画というものは、あまねく日本国民全体にサービスし得ない、かように考えます。そこで五チャンネル足した十一チャンネルあれば、相当に全国に配分ができ、またその当局におけるサービス・エリアの混合問題も、おそらくその点で解消いたしまするので、どうしても、現段階においては十一チャンネルなければ、現在の国民の要望にはこたえ得ない、かように私は存じております。そこで、御指摘のように、大事な十一チャンネル全部をテレビ放送に向けるということは、全く不経済ではないか、よくないではないか、というお話しでございまするが、私も一応その点は了といたしまするが、今日、文化国家として、やはりテレビの熾烈なる要求は、われわれが常に耳にいたしておるので、この際、国民全般に、どうしても待望しておるこのテレビ放送を、あまねく普及するということが、今日われわれに課せられておる大きな問題かと存ずるので、十一チャンネルを私はあくまで主張いたしたい、かように存じます。
  166. 濱田成徳

    政府委員(濱田成徳君) 郵政大臣のお話しになりましたことを、少しく詳しく申し上げたいと思います。  昨年の一月に、前郵政大臣から、テレビジョン周波数の割当基本方針が、電波監理審議会に諮問されまして、それに対する答申が出ました。その答申の中に、付帯意見として、現在日本が使い得る六チャンネルのテレビジョンの周波数だけでは足りないだろう。もう少し増すように努力してもらいたい。そういう付帯意見がございました。実は、当方では、六チャンネルで当分間に合うだろうと考えまして、これをもって全国のテレビジョン周波数の割当をやってみましたところが、御承知のように、全国あまねくテレビジョンを普及せしめますためには、NHKに全面的に、それから次に一般商業放送になるべく多く、同時に重要な基幹地域には、さらに一局ないし二局多く割当しますというと、六チャンネルではとうてい足りないことが分明になりました。それで、何とかしてこのほうはいたる要望を満たし、テレビジョンを早急に普及せしめて、日本の文化の向上、あるいは産業の振興に資する必要があり、それにはどうしても六チャンネルを増す方向を考えなければならんというので、いろいろ考えてみましたところが、先ほど山田委員から御指摘がありましたように、公衆通信業務に使っておりますところの電波がVHF帯にあります。これをこの際テレビジョンに流用するように配慮いたしました。もちろんその場合には他の周波数を持った電波をこれに置きかえるわけであります。この方の調整ができますならば、これは大きな一つ方法でございます。それから、さらに民間航空業務に使っておりまする電波が、現在のチャンネルよりも高い方にあるのであります。それをこの際において、テレビジョンに回すように国際的に調整を行うならば、これまた可能であろう。そういうふうに考えましたので、国内的には公衆通信業務の電波を回す。それから、国際的には民間航空業務の電波を、この際思い切ってテレビジョン用に回すことをしよう。そういう判断を、決心をしたわけでございまして、これにつきましては、昨年以来国内的にも、国際的にも、いろいろ調整措置をとりまして、今後一年ないし一年半の後には、確実にこれがテレビジョン用として転換せられるという見通しが、はっきりいたしましたので、今回この修正案にございますように、六チャンネルを十一チャンネルに                  増すということを決定したわけでございます。  それが大体のいきさつでございます。
  167. 山田節男

    ○山田節男君 先ほども申し上げたように、こうして国内の公益的な通信業務に使うチャンネルを犠牲にしてまで十一チャンネルをあみ出してあくまでもテレビジョンを設置すべきであると、こういう御意見でありますが、たとえば東京を見ますというと、東京のチャンネルの割当は二つあります。それに対して十一の申し込みがある。大阪におきましても、二つに対して十一社、名古屋におきましても、一つに対して六社か七社かあるように承わっております。そういたしますと、これは絶対に足りないのであります。このチャンネルを一体どういうようにして割当てられるのか。これは電波法にもございまするが、財政的基礎がしっかりしておるとか、あるいはその地域に特殊の結びつきがあるべきだ。いろいろなものがございまするけれども、全部完全な条件を持っている場合に、どうして一体これを割当てるか。この十一やることによって、全部が満足するならよろしゅうございますけれども、そうでない。そこに今日の混乱を来たしておる。これは郵政大臣としてどういうようになさるのか、この点承わりたい。
  168. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 御指摘のように、なかなか——東京地区においても二つの波に対して十何ぼという申請書が出ております。これの割当につきましては、相当郵政大臣、苦慮をいたしております。しかし、これを解決しなければ、やはり私の職責は全うできないのでございまして、私自身といたしましては、広く一般の識者の意見を拝聴いたし、将来悔いの残らないようなりっぱな態度で一つやっていきたいと考えております。
  169. 山田節男

    ○山田節男君 非常にりっぱなことをおっしゃいますが、具体的にどうしておきめになるか。たとえば東京の十一社、しかも経済界、財界、国会議員あらゆるものがこれ、ひもをつけて、おそらくあなたのところへずいぶん来ているだろうと思う。今の、お気持はいいですけれども、具体的にどうなさるのですか、二つのものを。あなたのそういうごりつぱなお言葉を、具体的にはどういうふうに——くじ引きでやるのか。あるいはその他の何かの方法考えなければいけない、と思うのですが、その点どうでしょう。
  170. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) ただいま電波監理審議会の委員会に諮問案を私からお願いをいたしております。いずれ近く委員会におかれても十分検討して、チャンネル・プランの答申案が出ることと存じております。そこで、私はその答申案が出た場合に、十分この答申案に向って心を注ぎ、また一般識者の重要なる御意見を拝聴いたしまして、どこから見ても、なるほどよくできたということに努力をいたしたいと、かように存じております。
  171. 山田節男

    ○山田節男君 どうも平井郵政大臣たるものが、賢明なる大臣の御答弁として、私が申し上げておる点をどうしても御披露になりませんが、これは私、どうしてもはっきりしてもらわなくてはならんと思いますが、もう一つ私はこれに加えて質問申し上げますが、あなたの修正として電波監理審議会にお出しになった修正案の中に、重大な修正をされている点が三つございますが、その中に、特に教育放送、今あなたが修正されたとおっしゃる、あなたの修正される前の村上郵政大臣の場合には、放送教育のための放送局を設置する地域には——こうなりますと、全くこういう放送にはチャンネルを割り当てるという建前で、地域のみをきめればいいのだというような気持でおったところを、あなたが教育放送の局を設置する場合と、これは、私はあなたは非常に賢明であったと思うのです。しかし、私の見まするところによりますと、この電波監理審議会の答申案を見ましても、よって立たれたもとの基本方針の中には、教育放送始むべしということは書いてないのです。なぜ平井郵政大臣は、この教育放送というものをやる場合と言うことを考えられたのか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  172. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 教育放送を場合によっては検討してくれという諮問をいたしたその内容は、現在の放送は、大体似たり寄ったりの放送番組をもって公共放送も商業放送もやっております。そこで今回十一チャンネルの波の中において、余裕の波が出た場合においては、一つ教育的な放送を考えてみてくれぬかという私の諮問でございます。そこで私が考えておる教育放送とは、学術、技芸、職能教育を目的とした教育的方向を十分加味した局を私は考えているのでございます。
  173. 山田節男

    ○山田節男君 それは、商業放送としての教育放送を考えておられるのか、あるいはそうではなくて、ほんとうに公共的な機関でやらせるという御意思なのか、どっちによってこれをやろうとおっしやるのか、伺いたい。
  174. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) この教育放送というものは、非常に重大な問題でございます。そこで、いろいろ諸外国の例を見ましても、教育放送というものについては非常に関心が払われております。そこで、わが国におきましても、これを公共放送でやるべきか、また商業放送でやるべきか、また別に特殊法人等を考慮して、これにやらすべきか、これは今後重大な問題と私は考えておるのでございます。これこそ、大いに各方面の御意見一つしんしやくして、特に山田先生のごとき大先輩、博学の士にも、こういう点は大いにお聞かせ願いたいと、かように考えております。
  175. 山田節男

    ○山田節男君 どうもこれは質問者がおだてられたようなことになりまして、大へん僕は困るのでありますが、これは私はもし村上郵政大臣がそういうことをきめられ、あなたが教育放送もやるのだ、場合によっては商業放送もやるのだ、これは私はきわめて危険なことだと思う。これは私が申すまでもございませんが、一体この放送業者、ことに民間業者が放送というものを全く一つのビジネスとして考えておる。これは前例を申し上げますが、たとえばラジオの文化放送であります。これが免許を申請した際に、宗教教育でもってプログラムの八割以上は占めますということであって、実際そうしてみますと、そんなものでスポンサーがつくわけがない、重役のけんかになって、ごちゃごちゃになって、今度いよいよ再生してやってみますと、今日の新聞を見ましても、そういう使命を受けて免許をもらった文化放送の九割は全く他の民間放送と違わないのであって、娯楽放送ばかりであります。こういうことで、テレビジョンの場合にそういう大臣の今おっしゃったような、きわめてロマンチックといいますか、というような気持でおやりになると、これは非常な私は教育上の弊害を来たす、アメリカの例をとってみましても、アメリカのようなああいう民間放送の発達した国におきましても、教育放送は全部非営利的な法人でやっておる。PTAとか教育委員会とか、それに財団が金を寄付してやっておる。営利的にこれができるわけがない。それにこういったような特に教育放送を設けるのに、商業放送、特殊法人でやるのだというような含みをもったことを発表なさるから、私らの手元に民間放送株式会社組織で教育放送をやりたいという請願をしているやに……、われわれのところにも請願がくるのであります。これは私は全く真剣に考えてもらわなけりゃいかぬと思っている。どうですか。この点についてあなたはここにちゃんと、教育放送をやるということをちゃんと修正案を諮問されるから、今のような大阪でも東京でも株式会社で教育放送をやります、スポンサーつけてやります、スポンサーがつかなければ自分はテキスト・ブックでもうけてやるのだ、こういうことを言っておるのじゃないですか。こういう点は大臣は一体どういうお考えですか。
  176. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 御指摘の点は全くごもっともな点だと考えます。そこで、教育放送が商業放送で行われた場合、私もいろいろ心配をいたしております。商業放送で教育放送をやる場合、これは慈善事業では決してございません。やはり営利を目的としなければならぬ。そこで今先生が御指摘になったように、スポンサーがつくかつかないか、そのスポンサーによって営業がペイするかしないか、これは重要な問題でございます。私も十分その点は検討をいたしております。従いまして、現在の私の心境といたしましては、この点は白紙でございます。なおまた公共放送につきましても、いろいろ検討の要があると思い、これも現在の心境は白紙でございます。(「白紙じゃ困る」と呼ぶ者あり)これからいろいろ色がついて参ります。かような事柄におきまして、十分一般識者の御意見を拝聴し、悔いのない態度で、ガラス張りで一つしっかりやっていきたいと思っております。
  177. 山田節男

    ○山田節男君 これは平井郵政大臣の意気は、全く私は壮とすべきでありますが、実際問題として、そう心がまえを持っておられましても、今日こういう百鬼夜行の利権運動のようなことになって参りますと、これは岸総理もよほどしっかりなさらぬと、とんだことになると思うのです。自来、テレビジョンの民間放送ができましたとき、これは吉田内閣のときでございます。それから民間放送を始めるとき、それから今度はテレビジョンの民間放送を始めるとき、すべて、これNTVの場合は会期末、それから民間放送ができたのは、これはちょうど解散の直前でございます。今度のこの修正案に基く重要なテレビのチャンネル割当を、公益的通信業務を犠牲にしてまでやろうということが、昨年末二十日前後、鳩山内閣没落必至というときに決定されている。これは極端に申せば、前郵政大臣の食い逃げのような形であると申しても過言ではないと思う。その遺産をいま岸内閣の郵政大臣の平井さんが受け継いでおる。どうも民間の放送事業の免許とか、あるいはそういうものを創設していくのは、えて政変とか解散、こういうときにやる。これは私は岸総理大臣よく気をおつけにならぬと、実に国民をして疑わしめるような事態になるのであります。のみならず、テレビジョンという放送は大へん金が要るのであります。ことに今日こうして東京に三つもテレビジョンのアンテナの塔があるということ自体が私はどうかと思う。さらに二つふえて五つもテレビの塔が東京にそびえる、これは何を意味するか。しかも昨年を見ますると、民間放送のラジオに約百三十億、テレビジョンに対しまして約二十数億の広告費を使っている。これが五つもできまして、全国で申せばこれが膨大な数になってきた場合に、広告費年間七百五十億と言われておりますけれども、その半分ぐらい占める、テレビジョンが。そうしますと、これが一体結局何をするかといえば、そういう商業放送に出すのは薬だとか化粧品、あるいは酒であるとか、その他国民の消費物資を奨励する、需要を奨励するようなことをするのであります。これが果してわれわれの国民経済生活に有利であるか。そういう広告費用は全部転嫁されてくる、商品に。まして経済の浅い日本において非常にテレビを乱立さして、しかも商業放送をどんどんふやすということはいいか悪いか。これは私は岸総理に対しまして、もう少し日本の経済というものに立脚した、それにふさわしいような一つのテレビジョン放送というものを私は真剣に一つ考えにならなければいかぬと思うのです。郵政大臣は全くこういう修正案を出したけれども、今では明鏡止水、白紙の気持である、こうおっしゃるのでありますが、これは私は岸総理にもお願いしたいのであります。それならば今の郵政大臣が出しておりますこの修正案、この内容についていかなる答申を電波監理審議会が出すか、これはわかりませんが、今郵政大臣のおっしゃったような御意見からみましても、これはもう容易ならぬ混乱を今引き起しておるのであります。これはアメリカがつい数年前までやったように、しばらくこういうチャンネルがあるが、ことに教育放送のようなもの、これはそんな簡単に考えるべきものじゃない、それにはいろいろな素地が要る。学校構内テレビであるとか、または民間のいろいろなテレビ放送等ができて初めてそういうものができ、そうして非常に広い範囲の効用が起きてくるのであります。まだ四十万に足りないテレビの受信機の普及しかないところにそういうようなことを、これはまあ今からあれしても一年先かも存じませんけれども、たとい百万になってもまだそういう素地がないのであります。この教育放送などということをここで騒ぐこと自体が私は悪く解すれば、こういうようなことで一つ教育放送会社を設けようというような、こういう私は働きかけでもあったのじゃないかと疑わざるを得ないのです。大臣がそういう白紙の心境であるならば、むしろこういう十一チャンネル、しばらく事態を研究するためにこれを凍結して、しばらくアメリカ連邦通信委員会がやったように、こういうごたごたを一つ冷却期間を置いて、ほんとうに日本のテレビジョン政策を立てるためには、今この修正案というものはしばらく凍結しておくのだ、これが私は一番いいと思うのでありますが、どうでありましょう。郵政大臣の御見解を……。
  178. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) お答え申し上げます。  お説の点は十分私にもわかります。しかし現在電波監理審議会において目下作業中の諮問書につきまして、これは作業を非常に慎重にやっておるということの私報告をいただいております。おそらく山田委員が御指摘になったような点も電波監理審議会の委員各位は十分慎重にせられておられるというように私は解釈いたします。そこでもうしばらく審議会の結果を見て、私はいろいろ検討をいたしたいと、かように存じます。
  179. 山田節男

    ○山田節男君 これは先ほど申し上げましたように、こういう平井郵政大臣が修正案を出されたということは、この電波監理審議会の答申案にある付帯意見にのっとってやったものだということをおっしゃっております。また濱田局長政府委員もそういうことを言っておられますけれども、私の今いただきました資料によると、電波監理審議会の付帯意見の中に、なるほどこのテレビに対する周波数の割当を増加すべきことは書いてありますけれども、こういったような民間放送を場所によったら二つ以上設けたっていいし、あるいは教育放送もやるべきだと、そういうようなことは全然書いてないのであります。私はどうして村上前郵政大臣並びに郵政大臣がこういう付帯意見をきっかけとして、国民のこの公共放送に使うチャンネルまで犠牲にしてテレビジョンをやる、これは私は重大な事項でありますので、電波監理審議会の松方会長の御出席を求めたのでありますけれども、行き違いでおみえになりません。この答弁はこれで決して完了いたしませんけれども、私は後日の機会におきまして、ぜひ一つこの松方会長と平井郵政大臣と対決してもらわぬことには、この問題に対する私は質問は完了しないのであります。この点は一つ私は留保願いたいと存じます。  もう時間がございませんから、最後に私は一言文部大臣質問いたしますが、過日参議院の文教委員会におきまして、この教育放送の問題が論議されまして、要望書も出ておるやに私は聞くのでありますが、一体この文部省としては従来放送教育にきわめて無関心じゃないかと思う。ラジオがもう放送されましてすでに三十数年であります。ラジオによる放送教育に関する民間団体というものも、すでに十に余るようなものがあるのです。文部省として、今日はすでにテレビジョンにおいても教育放送をやろうというようなこことになっておる時代であります。ほんとうに私は文部省が文教の府でありながら、学校教育あるいは社会教育の点から、このマスメディヤとしての放送教育はいかに重大なものであるかということの認識が私はないのじゃないかと思うのですが、一体今年度の予算にもそういうようなことに対して全然一文も組んでいない、これは私はまことに文部省が教育行政の府としては片手落ちであり、一面に私は非常に残念に思うのでありますが、そういう点に対して文部省は、過日の参議院の文教委員会の要望書に見るがごとくきわめて重大なものです。文部省としては非常に、これは郵政大臣はああいったような修正案を出して教育放送をやろうという、これを文部大臣にもそういうようなことが郵政大臣、当時の村上大臣なりあるいは平井大臣からあなたに対して、これは教育放送をやろうと思うのだがと、意見を求められたことがあるのかどうか、その点もあわせて一つお聞きしたい。
  180. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。放送がラジオにいたしましても、またテレビにいたしましても、これは教育と重大な関係があることはお話しの通りでございます。それがよく参りますれば、非常に教育上いい結果を来たすことになりますし、万が一悪くなりますというと害毒を流す、こういうようなことになるわけでございますが、私といたしましては、これにつきましては十分関心を払っておるつもりでございます。今回のこの教育テレビの問題につきましては、あたかも私が就任いたしました当時この問題があるのだということを下僚からも聞きましたので、また下僚といたしまして、事務的にはすでに郵政省、電波監理局等との間にいろいろ連絡があったようでありますが、私はテレビの教育に及ぼす影響というものが非常に大きいことを感じますので、この問題については特に関心を払って郵政省、電波局とも十分に連絡して、作るものならばほんとうにいいものを一つ作ってもらうようにしようじゃないかということで、いろいろ郵政大臣あるいは電波局の局長あたりと連絡をいたしてお願いをいたしておる次第でございます。いずれにいたしましても、事柄が教育に非常に大きな影響を与える問題と思いますので、私ども文部省といたしましては、何とか一つりっぱな教育テレビというものがわが国に実現するようにいきたいものだと、かような考えのもとにお願いをいたしておるわけでございまして、郵政大臣からもお話しもございますし、私からも郵政大臣にいろいろお話しを申し上げて、これは政府部内のことであります、始終会っておることでありますので、意思の疎通を十分はかっておるつもりでございまするし、また同時に事務当局といたしましても、電波監理局との間に時々連絡をいたしておりまして、われわれの要望するところをお伝え申し上げておるようなわけでございます。先般衆参両院の文教委員会におきましても、それに関する要望書がございましたが、私どもも教育テレビをやります以上は、全国津々浦々これが利用できるような形において一つやっていただきたいということと同時に、これをやる企業主体と申しますか、事柄が公共性のある問題でございますので、ほんとうに安心のできる、公共性なり中立性の確保できるような条件のもとにこのことが行われるようにお願いしたいということは、強く郵政大臣にもお願いしておるようなわけでございます。
  181. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 山田君、時間が過ぎておりますので、簡単に願います。
  182. 山田節男

    ○山田節男君 簡単に……。今のお話だけではどうもよくわからないのですが、先ほど申し上げておるように、ラジオの放送時代から放送教育ということはもう実に重大な問題であります。社会教育においてもしかり、番組の編成はもちろん文部省が干渉するわけにはいきませんが、しかし、この教育放送というものをよくするためには、直接間接やはり文部省がこれを助長する方向でやり、協力する方法を講じなくてはいかぬ。これをやっておらないのです。今のような大臣のお考えだと、おそらくこれは社会教育局がやるのじゃないかと思うのですが、具体的にどういう課がやるか、それがなければそういう一課を設ける。ことに今のようなテレビジョンの教育放送をやろうというのですから、文部大臣は、それらに対する一つの態勢をもって、これは指導するのじゃなくて協力して健全なものにするということでなければいかぬ。そういうものはまだないのでございますか。
  183. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 今日までのところ、さようなものは予算的にはございません。ただ、パリのユネスコ本部との連絡のもとに、今日全国六十四カ所かと記憶いたしておりまするが、農村におけるテレビの集団聴視の状況につきまして、実験、調査をいたしておる、この程度でございます。将来の問題といたしましては、この教育テレビというものがいかなる形においてでき上っていくか知りませんけれども、その様子によりましては、政府といたしましても予算的にも考えなければならぬ点があると思いますので、十分一つ考究いたしてみたいと思っております。
  184. 山田節男

    ○山田節男君 最後に簡単に……。  岸総理大臣が今日お見えになりますから申し上げたいのでありまするが、今郵政大臣、文部大臣との応答によってもおわかりのごとく、ことに今日郵政大臣が、こういうテレビのチャンネルをふやして、そうしてそのことによって報道の独占化を防ぎ、それでこの放送の番組をふやせば、国民の公共の福祉が大きくなるのだというようなことでやっておりまするけれども、実際は、十一にしましても、とても足りないだけの申し込みがある。それがためにいろいろと弊害が今生じつつあるわけでありまするが、先ほど郵政大臣が、全然これは白紙にしたつもりで考えるのだと、こういうようにおっしゃっておるのでありまするから、ことに岸総理大臣、重要なテレビのチャンネル、これは国民の財産であります。であるから、これを三年の期間に免許するのでありまするから、それでありますから、一たん事業を始めると、どうもこれはけしからぬからやめさせるというわけにいかない。何十億も金を使うのでありますから。これがために国民の持っておる周波数が乱費され、また弊害を及ぼすというようなことになれば、そういう事業をする人はもとより、国民も迷惑するのであります。この点につきましては、総理も必ず一つ郵政大臣意見を聞かれると同時に、そういう過去の放送事業の免許についていまわしい問題が幾多起きておるのでありまするから、綱紀粛正といつもおっしゃっておる岸総理のことでありますから、どうかこの点は国家百年の大計をもって、十分一つ厳正な気持をもって、郵政大臣を大過なからしめるようにお取り計らい願いたいことを特にお願い申し上げまして、質問を終ります。
  185. 湯山勇

    ○湯山勇君 委員長関連、今の問題に……。郵政大臣にお尋ねいたしますが、先ほどの御答弁では、一般に割り当てて余裕があれば教育放送に回すと、こういう意味答弁をしておられるようでございますけれども、今山田委員の御質問によって明らかなごとく、十一チャンネルの中で新たに割り当てられる分については、ひょっとすれば十倍以上の申し込みがある。こういう状態では、私はとても余裕があるというようなことは、これはただ口で言っただけで実態としてはないと思うのですが、そこでもし郵政大臣が教育放送のチャンネルをお取りになるとすれば、これは余裕があるとかないとかいう判断の問題ではなくて、教育放送をやるかやらないかという大臣の決心いかんにかかっておると思います。そこで、もう余裕があるなしということは、この際議論の対象にはならないと思いますから、そういう点での大臣のお気持を聞かせていただきたい。  それからもう一点は、教育放送の内容についてでございますけれども大臣の先ほどの御答弁では、おそらく商業放送で教育放送をやった場合にはこれはスポンサーもつかないだろう、採算も合わないだろうというような一般的なまあ御見解があったわけですけれども、これは特殊な形態において、たとえば大都市でその中に一つの教育放送を持っておるというような場合であれば、私はやり方によれば決してこれは採算の合わないものではないと思います。そこで、アメリカのようなああいう自由主義の経済の国であっても、教育放送については非常に強い規制がなされております。たとえば広告をやっちゃいかぬとか、あるいはスポンサーがついてはいけないとか、そういう原則の上に立って教育放送を認める認めない、こういう問題になっておるのですけれども、今の段階では、教育放送についてはあとで何らかの規制を加えるという御説明があっても、現在教育放送については、こういう条件があるのだということが示されていないためにいろいろ憶測して、これでもやっていける、これでもやっていけるというようなことから、教育放送については特に混乱があるのではないかと思います。そこで大臣として、この際、教育放送というのは少くとも特定の広告などしてはいかぬものだとか、あるいはスポンサーがついてやるというものではないというような、一般的な性格の規定を御発表になれば、私は非常にこの際この問題の解決には役立つのではないか。こう思いますが、この二点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
  186. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 御答弁いたします。第一の問題でございまするが、現在十何社も申請をいたしておる、そういう段階において余裕がないではないか、余裕がなければ教育放送に何ら渡らんだろう、こういう御質問だったと思います。この点につきましては、十一チャンネルをいろいろ全国に各区分いたしまして、サービス・エリアの混合を防ぎますため十分技術的に検討をいたして配置いたしております。そこで東京地区におきましては、いろいろ人口の密度、経済状態などを勘案いたしまして、特に重複数の割当をいたしております。そこで、ただいま電波監理審議会に対しましては、私の諮問書にもあるごとく、教育が必要とあれば、ぜひ答申はさように検討して下さい、これで今電波監理審議会におまかせをいたしておるのです。十分御検討下さって、正しい答申が出ると期待をいたしております。  なお、第二点の教育放送に対する基本方針を示せ、こういうお話でございます。この点につきましても、やはりただいま電波監理委員会に諮問をいたしておる最中でございます。かれこれ今郵政大臣がその答申を待たずして、この席上で発表いたすことは委員会を無視した態度かと存じます。どうぞ御了承を願います。
  187. 湯山勇

    ○湯山勇君 私は大臣が諮問になっておられるような内容について、(「愛媛をどうする」と呼ぶものあり)こまかく大臣の御所見を伺うという意味ではありません。大臣の御諮問自体にもちゃんと教育放送については、こういうことと、こういうことについては検討しなくちゃならないと、規制をしなくちゃならないとお書きになっておるわけです。そうすると、私はそういうこまかい問題でなくて、今のたとえば営利的であってはならないとかあるいは特定の広告をしてはいかぬとか、そういうようなものは、これは別に審議会の答申を待つ、待たないにかかわらず、大臣の御所見として言えることではないかと思いますので、これはここでおっしゃることは、やはり審議会の審議を非常に有利にすると思いますので、一つ答弁いたいと思います。
  188. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) ただいま御指摘の点は、私も非常に重大な問題として扱っております。そこでたびたび私が申し上げた通り、各方面の有力な御意見を拝聴いたしまして善処いたしたいというふうに考えております。
  189. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私は総理総理として、また外務大臣として、日米親善の基本外交の線を打ち出しておられることに対しては深く敬意を表するのであります。しかるに、世間にはだいぶ反米的な動きが活発になりつつある。その対象となるのは安保条約、行政協定でありますがこの行政協定に関して少しく御意見を承わっておきたいと思うのであります。時間がありませんからきわめて率直に要点だけお伺いいたします。  一体この、接収をされるときには、個人は発言権がなくて、米軍がどんどん入ってしまって、あとから政府が紙に書いた相互契約というものを持ってきて判を押せ、これはほとんど強制なんです。敗戦のあのときでありますからして、だれも拒否することができない。判を押した。それを今政府がたてにとっておる。政府の方は調達庁であるとか、主計局であるとか、国税庁であるとか、いろいろの窓口がありますけれども、調印をしたその本人は、政府というものを相手にしているので、その別々の窓口を相手にしているわけではない。ところが、その別々の窓口では、それはこっちのことじゃないこれはあっちのことだと責任をのがれておる。しかも一方で決定したことを、他方でぶちこわすというようなことになっておるのであります。接収になった個人の営業権、住居権、財産権というものが長年にわたって奪われている場合の損害補償、これの法的の根拠は私どこにあるか知りませんが、この日米の条約によるというと、安全保障条約の一条に掲げる目的を遂行するに必要な施設及び区域の使用を許すことについて同意する、それでこれが二条ですか、三条と二十五条、三条は二つありますけれども、合衆国はその施設に対して何らの責任を負わないということがきめてある。そして二十五条では、日本政府がこれを補償するようにできておる。けれども国民は、これはアメリカがどうだ、アメリカの方へしりをもっていってしまう。借上料も調達庁の意見によれば、政府が適正なる値段で相互に協約してきめたのだからいまさら何ともならない。その借上料の内容が問題なんです。これは調達庁の話によれば、内閣の決定だとこういうのです。私は内閣決定でこういう営業権や住居権や財産権というものを奪うことができるかどうかということに疑問をもっておるのであります。借上料は建物資本利子という一項目があります。これは年七分政府が払う。それから固定資産税、これは実費を払う。減価償却費、これも実費を払う。火災保険料、これも実費及び地代。これだけですが、これ見ると、自分の住居を追われて、営業を奪われて、財産を接収されておる人間が得るのは、建物資本利子年七分というものだけです。これが果して適正であるかどうか。この借り上げ料金というものは、調達庁の説明によれば閣議決定したということである。この閣議決定で、法律によらないで個人の営業権、住居権、財産権というものを奪うことができるかどうか、まず第一、これをお伺いしたいと思います。
  190. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) 今御指摘のような事件は、占領下において調達命令といいますか、接収命令——プロキュアメント・オーダーによって家を提供した、あるい宿屋を提供したという場合の話だろうと思います。しかし、現在といたしましては、相互に話し合いまして、これを使用いたしますときにはなるべく話し合って円満にやるという方法をとっておるのでありまして、一方的に強制するという考え方でやっておるのではありません。  でこれが、接収解除になった際の補償の問題であろうかと思いますが、これにつきましては、御指摘のように、閣議の了解を得ました補償基準というものを設けまして、そうしてそれぞれの実情に応じて、できるだけ施設を提供せられた方の御意向をも勘案いたしまして、その補償の額もその際に話し合いの上で決定するということにいたしております。ただ一方で特殊の要求がありまして、それをそのまま引き受けてやるということになりますと、他の方にも非常に影響を及ぼしますので、その点で調達庁の方と、また、その施設を提供せられた方の間に意見の相違もあって、これは苫米地さんにも御迷惑をかけておるかと思いますが、十分こういう点はそれぞれの場合を考慮いたしまして、適正な措置をいたすようにしたいと思う次第であります。
  191. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私は総理外務大臣にお伺いいたしたいことは、この借上料、これを今調達庁長官は、合意だと言うけれども、合意じゃありません、判は押してるんですが、これを適正だとお考えになるかどうか、お伺いしたいのであります。
  192. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私その問題について詳しく研究をいたしておりませんが、問題は、最初に占領下において接収されたような場合と、それから小瀧国務大臣の言っている最近の場合とにおいては、取扱いがおのずから差があるのではないかと思います。そうして賠償——補償の基準につきましては、閣議の決定、いろいろな関係方面が事務的に検討して、閣議の決定している基準が設けられたものだと思います。従いまして、詳しい取扱いの問題につきましては、調達庁の長官から一つ説明をさせたいと思います。
  193. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私は取扱いについては、この窓口幾つかの所へ行っていろいろ話しましたから、今さらここで何もお尋ねすることもなければ、説明してもらうこともないのであります。ただ私は、国民としては国というものが対象である。しかるに、たとえてみれば、調達庁で現実を調査して補償をすると持っていくと、主計局でこれを減らしてしまう。それから終戦後は違うと言いますけれども、もう敗戦の当時から昨年まで十年の間、この借上料というものは建物の資本利子、固定資産税、減価償却費、これには修繕費は入っておらないんです。減価償却費も、国税庁へ行けば減価償却費が入っているから修理費は要らないと。これはとんでもない話で、適当な修理をし、管理をしていかなければ、この寿命が縮まってしまうんです。ところが、その修理について請求をしたところが、調達庁からこう言うてきているんです。「維持管理励行方について陳情を受けたが、接収中の建物の維持管理はすべて米国の責任にあり、日本側は所管外であって、当局としては処理し得ないから、右御了承相なりたい。」これはどういうことでしょう。米国の方にあるんだから、そうして荒れほうだい荒れてもこれは日本政府責任じゃないと。こういうあり方を総理は是認されるかということを伺いたいんです。先ほど申しました通り、この建物の資本利子以外の四つの項目は実費なんです。そうして生活の場所を追われ、営業を停止され、そして財産は修理もできないで破壊してしまうということを、日本政府として総理はお認めになりますかと私はお伺いしたいんです。  これは各窓口へ行っては口をすくして話しているんですから、調達庁の長官の御説明は私要らないんです。
  194. 岸信介

    国務大臣岸信介君) せっかくの御質問でありまするが私は実は先ほど申し上げましたように、具体的な実例を承知いたしません。それでただ抽象的にお話し下さいますと、一応閣議決定のこの基準として補償の基準が、これは政府において十分各般の事情なり、あるいは関係方面におきまして検討した結果、閣議の決定の基準ができておるんだと思います。従いまして、抽象的な議論から申しますと、政府としてはそのきまっておる、内閣のきめておる補償基準に従って補償が行われておるならばこれは適正なものであると、こう言わざるを得ないと思います。ただ具体的な実例につきまして、あるいは扱いにおきまして、窓口が幾つもあるというふうなことは、これは確かにそういうふうな実例になっておると思うのです。私自体もある具体的な事件につきましてそういうことを痛感したこともございますので、従って、窓口を統一して、そうしてもしも閣議決定の一応の標準がきわめて実情に合わないということであるならば検討して、これはもちろん変えることもできる問題でございますので、検討すべきものは検討して、そうして適正にこういう補償というものが行われなければならぬことは、これは言うを待ちません。従って、従来いろいろな窓口が幾つも分れており、その窓口における説明意見等が食い違って、現実に御迷惑をかけておるような点も私あろうかと思います。従って、そういうものについては十分窓口を統一して、具体的の問題については適正に処置されるように実行して参りたい、かように考えております。
  195. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 総理のお答えはそうお答えにならなければならないと思うんですけれども、この内閣の基準というものであるか知らぬけれども、補償されたものがまちまちなんです。のみならず、これはどういう事情があったか知らぬけれども、東京のすぐ近くにあるホテルですけれども、これは調印をとうとう拒否したんです。ところが、それに対しては、主計局は裁判をやれば負けるから全部補償したというんです。主計局長今ここにおるから御存じだと思いますが、裁判をやれば必ず負けるから払うというものを、内閣の決定だからしてそれが正当だとおっしゃるのは、私には了解できないんです。そうしておとなしい弱い方に向っては、これは適正だ。土地の接収の場合でも、みんなして集まって騒ぐから地代がどんどんどんどん上っていく。ところが、こういう弱い国民、善良なる国民だけがしいたげられておる。これは私決していい政治だとは思わないんです。総理は抽象的だとおっしゃいますけれども、抽象的じゃないんです。借上料はこれだけの項目なんです。抽象でなしにこれだけの項目なんです。この固定資産税が幾らになるか、減価償却が幾らになるか、火災保険料がどのくらいか、地代が幾らか、これは抽象的であるけども、自然にきまってくるものであります。ただこの生活権、営業権、住居権のかわりに、資本利子わずかに年七分と、これが適正であるかどうかということなんです。でそういうふうな工合なまちまちなものがあるということを一つ私申し上げる、具体的に言えと言えば申し上げてもいいんですけれども、私はそういうことよりも、日本の政治としてはこういうような弱い者いじめをやらないで、内閣としてはすみやかに、もうすでに財政の困難な時代も過ぎたのですからして、こういう被害者に対しては適正な賠償を与えるということでなければいかぬと思うのです。それで内閣の基準があってというならば、現地を調べた調達庁と主計局——主計局は現地は調べておらないのです。この意見対立して、主計局がこれに勝って押えてしまうということはあり得ないことだと思うのです。総理も即答はお困りでございましょうけれども、こういう事実がありますので、私詳しいことをまだいろいろ申し上げたいのでございますけれども、時間がおそくなりましたから、それは差しひかえますけれども、どうかこういう事実がある、これが反米思想をあおる一つの原因になっている、そうして弱い者がしいたげられておる、こういう政治を改めなければならないということについて、すみやかに御検討を願いたいと思うのでございますが、総理いかがでございましょう。
  196. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 言うまでもなく、補償は適正に行われなければならないことは言うを待ちません。それから弱い者が非常にしいたげられておるというような結果になることも、これは政治の間違いであることは言うを待ちません。また、基準につきましていろいろ御意見もございますから、私としては基準のできました経緯なり、また、内容なりというものを十分に検討をいたしまして、適正な補償ができるようにいたしたいと思います。
  197. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私は、これ以上総理にお疲れのところをお伺いしても無理だと思います。こまかい点に入るとまことにこまかくなりますから、総理には感謝して御退場を願います。  次に、文部大臣にお伺いいたしたいのでありますが、今度の法人税法の改正に当りまして、人格のない社団についても課税する、収益事業に課税するということでございますが、私はこれは当然なことである。学校法人であろうと、私立学校法六十四条第四項の規定によって設立された法人であろうと、収益事業をやる以上は当然税を負担すべきものであると私はこういうふうに考えます。ことに、この人格のない社団等が膨大な脱税をしておるのは、私どもも目に余って見ておるのでございますから、これに課税することも私は賛成でございますけれども、この収益事業というものをどういうふうに見るかということが問題の中心になるのでありますが、文部大臣にお伺いしたいのは、この学校法人と私立学校法六十四条の四項によって規定された法人と、これを平等にお扱いになるかどうかという点でございます。
  198. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答え申し上げます。税法上の取扱いといたしましては、お話のように扱ってしかるべきものと考えます。
  199. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 これを平等に扱わなければならぬことは、もうわかりきったことであるけれども、この平等に扱うということによって大きな穴をあけていく点ができるわけであります。呑舟の魚をのがすという結果も生まれてくる。御承知のように、その理論と実施との間に非常な困難があると思います。そうなってきますというと、収益事業というものをどういうふうに規定していくか、どういうふうに当てはめていくかということが大事なんでありますが、これは今はおそくなりましたからお尋ねいたしません。大蔵省関係から伺っておるし、また、文部省とも協議中ということでございますから、そういう小さい問題には私は触れたくないと思います。ただ、この収益事業というものを、規定の仕方を間違うというと、これは全国に大波乱を起して、そうして教育が混乱されるおそれがあるのでありますが、私は大蔵省方面からも伺ったのですけれども、技芸教育というものは、一体文部省では技芸教育と申しましても、どういうふうに見ておられるか、お伺いしたいのです。
  200. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。  教育であります以上、これは教育として扱わなければならぬと思います。ただお尋ねの点は、なかなか実際問題として課税上むずかしい問題がございますが、学校法人とか、その他公益法人がいろいろな事業をやっております中に、収益事業があるということになりますと、その収益事業に対しましては、これが課税の対象となるという問題も起ってくるわけであります。今度大蔵省の方でいろいろ御検討になって、おられますが、各種学校を設置する公益法人に対する法人税の問題というようなことが現実に今問題となっております。大蔵省の方からも御連絡がありましたわけでありますから、文部省といたしましては、各種学校も、これは学校教育法によって設置せられておるものでございますので、少くとも準学校法人その他の公益法人がその本来の事業としてやっておる、こういうふうな教育事業につきましては、これは法人税を課すべきではない、こういう見解をとっておるわけであります。その趣旨をもちまして、大蔵省ともいろいろお話し合いをいたしております。その点につきましては、大体われわれの考え通りになるのじゃないか、こういうふうな期待をいたしておる次第でございます。
  201. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 その点がはっきりいたせば、私は安心いたしております。大蔵省も非常に研究しておられることでありますし、文部省も努力しておられることでありますから、ただこの収益事業というもの、それから準法人であるところの各種学校等についてあまり必要以上の圧迫を加えないようにということを希望いたして、終りといたします。
  202. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十九分散会