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1957-03-23 第26回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十三日(土曜日)    午前十時二十一分開会     —————————————   委員異動 本日委員新谷寅三郎君、成田一郎君及 び小山邦太郎君辞任につき、その補欠 として仲原善一君、佐野廣君及び田中 茂穂君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            小林 武治君            左藤 義詮君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            泉山 三六君            木村篤太郎君            佐藤清一郎君            佐野  廣君            柴田  榮君            関根 久藏君            高橋進太郎君            土田國太郎君            苫米地英俊君            仲原 善一君            野村吉三郎君            野本 品吉君            林田 正治君            内村 清次君            海野 三朗君            岡田 宗司君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            中村 正雄君            羽生 三七君            松浦 清一君            山田 節男君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 神田  博君    農 林 大 臣 井出一太郎君    通商産業大臣  水田三喜男君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    労 働 大 臣 松浦周太郎君    国 務 大 臣 宇田 耕一君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 小滝  彬君    国 務 大 臣 田中伊三郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    内閣総理大臣官    房公務員制度調    査室長     大山  正君    自治政務次官  加藤 精三君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁人事局長 加藤 陽三君    経済企画庁調整    部長      小出 榮一君    経済企画庁計画    部長      大來佐武郎君    経済企画庁開発    部長      植田 俊雄君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁企画    調整局長    鈴江 康平君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    科学技術庁調査    普及局長    三輪 大作君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       宮川新一郎君    大蔵省理財局長 河野 通一君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    文部大臣官房会    計参事官    天城  勲君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    文部省社会教育    局長      福田  繁君    厚生省保険局長 高田 正巳君    通商産業大臣官    房長      松尾 金藏君    運輸省鉄道監督    局長      權田 良彦君    労働省労働基準    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   参考人    日本銀行総裁  山際 正道君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員異動について申し上げます。三月二十二日、一松定吉君が辞任され、その補欠として野村吉三郎君が指名されました。     —————————————
  3. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 次に、昨日の理事会決定いたしました事項を御報告いたします。  一、昭和三十二年度総予算に対する一般質疑の時間の割当は、自由民主党三百分、社会党三百七十五分、緑風会百二十五分、無所属クラブ二十五分、十七控室二十五分とする。  二、本日、二十三日の山際日本銀行総裁に対する質疑社会党三十分、他会派三十分とし、終了次第一般質疑に移る。  以上でございます。     —————————————
  4. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより昭和三十二年度一般会計予算昭和三十二年度特別会計予算昭和三十二年度政府関係機関予算を議題といたします。  この際お諮りいたします。昭和三十二年度総予算審査のため、山際日本銀行総裁参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  山際総裁に対し御質問を願います。
  6. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本銀行は、三月の十九日に、日銀の政策委員会決定をされて、例の高率適用緩和をやられると同時に、公定歩合引き上げるという措置をおとりになり、これを翌日から実施に移されたようでありますが、これについて、こういう政策をおきめになった背景金融情勢経済情勢、最近のそういう情勢をどういうふうにごらんになり、今後の見通しをどういうふうにお立てになってこういう決定をなされたのか、まず、その点をお聞きしたいと思います。
  7. 山際正道

    参考人山際正道君) お答えをいたします。  お話の通り日本銀行におきましては、去る十九日に政策委員会を開きまして、ただいま御指摘高率適用改正並びに基準公定歩合引き上げ措置決定いたしまして、翌二十日から実施に移したのでございます。これをいたしますに至りました経過につきましては御承知通り昨年の秋以来、金融市場はとかく引き締りがちになり、年を越しまして年度末に近づくに従いまして、その勢いはますます強まって参りました。金融市場は非常に繁忙な状況を呈して参ったのでございます。そのよって来たる原因につきましては、何と申しましても、昨年の秋以来財政関係租税収入にいたしましても、その他国営の各種事業にいたしましても、収入状況が非常によくなりまして、そのために民間資金引き揚げが非常な多額に上ったのでございます。加うるに、年を越しましては、御承知通り貿易状況からいたしまして支払いがふえまして、その関係上、これまた財政資金引き揚げということになり、金融市場影響を与えたのでございます。そのほかに一般経済界も俗にいわれております投資景気と申しますか、その方面からする資金需要が非常に増高いたしまして、これらが相待って一そう金融市場を窮屈にいたしたのでございますす。その結果最もその現象が端的に現われましたのは、いわゆる短資市場コールマーケットでございまして、その金利のごとき非常な増高を続けまして、時には三銭以上といったようなレートを出す日もございましたのでございます。日本銀行貸出もそれにつれまして漸次増加をいたしまして、ただいま御指摘高率適用制度にいたしましても、本来高率適用制度は、特定銀行が特に貸出超過等に陥りまして、他の銀行等に比べて特段に資金需要を必要とする際に、その銀行についてある一定限度以上は特定の利率を高く貸しまして、これによって、その銀行貸出の行き過ぎを押さえようという例外的な規定になっておりますものが、主な銀行が軒並みにこの高率適用にひっかかるというような窮屈さを現出いたしたのでございます。さような情勢コールマーケット金利が高騰いたしますというようなことは、あるいは起債市場を圧迫し社債の発行を困難ならしめますとか、あるいは本来は預金に流るべき資金コール市場一つの利殖の場として、それに引き込まれるとか、好ましからざる現象を誘致するおそれが生ずるに至りましたのであります。そこで、この金融市場あり方を、この際、実情に合わなくなりました高率適用制度ワク拡大いたしますことによって、正常化をどうしてもいたさねばならぬ。この正常化をはかりますことが、各種金融情勢の基礎を強固にするゆえんだと考えましたので、そこでただいま御指摘のございました通り、その高率にひっかかります間の限度相当拡大いたしまして、金融市場実情にこれを適合せしめて、そして同時にまたかような金融措置が比較的円滑に参りまするように、担保制度等にも改正を加えましたのであります。これはまさに、ただいま申し上げましたような各種事情によって起りました金融市場あり方正常化いたしたい、という考えでいたしたわけでございます。半面公定歩合引き上げを御指摘通りいたしまして、大体一日に日歩一厘の引き上げをいたしたのでございます。このことは、私に申させますれば、健全金融日本銀行はどこまでも堅持するということの一つ意思表示という考え方をとったのでございます。一方において、高率適用ワク拡大いたしまする結果、金融正常化をいたしまするが、同時にあたかも緩和するがごとき印象を与えるのでありますけれども、日本銀行の企図する金融政策基本はどこまでも健全金融の線である。と申しますことは、各銀行融資貸出はどこまでもその吸収し得た預金その他の資金範囲内でまかなってもらいたい、日本銀行から造出する信用によって資金需要に応ずるということはあってはならぬ姿である、ということの意思表示を表明いたしますために、金利一厘を引き上げたわけなんでございます。これによりまして、御承知のように、一昨年以来馴致せられて参りました金融緩和情勢は、銀行の営業の面におきまして、なかなかにわかにここで健全金融の線にかたくその立場をとっていくといったようにはやりにくい点が相当あるのであります。競争を激化いたしまして、必要以上に金利を引き下げましたところもございましょうし、また自然新需要家との対応の場面において、にわかに銀行がその態度を改めるということがむずかしいという事情も発生しておると思うのであります。これに一つの反省の契機を与えて、これに一つの転換の機会を与えるということは、私は日本銀行公定歩合引き上げによってその契機を作るということが最も適当であろうと考えたのであります。その意味におきまして、比較的低率ではございまするが、日歩一厘の引き上げということを決定いたし、実行いたしたのでございます。  要するに、前段の高率適用緩和の問題、これはまさに乱れそうになりました金融市場正常化を企図いたしたものでございまするし、また同時に行いました公定歩合引き上げは、これを契機として金融機関融資態度がどこまでも健全金融の線において今後施策を実行する、その契機を作りまた、その再検討を促したもの、かような効果を期待いたしたわけでございます。
  8. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 大体ねらっておられることはほぼ伺ったのですが、その場合に、もう少しそういう政策をおきめになる背景として、国庫収支を現在の状態あるいは三十二年度あたりをどういうふうにごらんになってこういう政策をお取りになったか、あるいは国際収支をどういうふうに考えていらっしやるか。それからもう一つは、今お話しになった資金需要の問題、投資需要といいますか、そういう面からの資金需要、それの規模問題あたりを、最近の情勢から三十二年度にわたって、ほぼどういうふうにお考えになっているか伺いたい。
  9. 山際正道

    参考人山際正道君) 三十二年度の現在御審議中の予算実施されました場合において、国庫収支関係がどういうふうになっているであろうかというお尋ねでございます。  私は、三十二年度の予算案自体均衡を得ている財政計画でありますので、そのこと自体から対民間との間において資金上の収支関係が大きく影響されるとは考えておりません。たとえば三十一年度におきましては予算審議の際に予想されざりし大幅の自然増収等が起りまして、非常にこれが収支の上に大きな変化を与え、またひいては民間金融関係に甚大なる影響を及ぼしたのでありまするけれども、ただいま御審議中の三十二年度の予算自体につきましては、三十一年度に起ったような問題は、少くとも一般会計自体においてはそう心配することはないのではないか、と実は見ておるんであります。ただ問題は、御承知のように、ただいま貿易関係その他対外支払収入関係というものは、国の会計で行なっておりますんで、いわゆる外国為替特別会計でございまするが、この外為収支のいかんによりましては、これはやはり財政資金民間金融市場影響を及ぼすという結果を起し得る問題でありまするので、この点はしばらく別に考えねばならぬかと思うのであります。ただ三十二年度の国庫収支自体は、ただいま申し上げました範囲においては、なるほど全体としてつじつまはむろん適合いたしておりますんでありまするけれども、何分にも財政日本経済において相当大きな比重を占める要素でありますので、この実施の際におかれましては、どうか政府当局におかれて、物資関係なりあるいは資金需給関係などをよくお見定め願って、一時に多額の発注が起ったり、一時に急激な資金需要が起ったり、あるいは資金の散布が起ったりということのございませんように、財政自体の運営についての御心配をいただきますならば、そのこと自体からの民間に対する収支影響は、三十一年度に起ったようなことはあるまいと実は考えておるのであります。  次に国際収支の問題が、一面ただいま申し上げましたような意味において財政収支にも影響をいたしまするが、この点は特に三十二年度において最もわれわれが注意を要する問題だと考えます。ことにこれは財政上の問題ということばかりでなしに、一般国民経済全体の問題として、この点は最も留意を要する要素であろうと思います。この問題の見通しを立てますことは、これは実に難事中の難事とも申すべきことかと思うのでありまして、申すまでもなくこの関係は単に国内情勢の推移ばかりでは解決いたしません。広く国際経済情勢がどう動くであろうかというようなことが、自然わが国貿易前途その他国際収支前途に大きな影響を持つわけでございまするから、世界情勢をひっくるめまして、内外の経済情勢から割り出して、三十二年度の国際収支がどうなるか、こういう見通しを立てねばならないわけでございます。このこと自体はなかなかこれはむずかしい、幾つかの大きな仮定に立たなければなかなか結論が出ない、こういうちょうど世界的に移り変る段階に差しかかっておるのが三十二年度の経済実勢ではないかと思うのでございます。一がいに現在の与えられておる材料だけで申しまするならば、御承知のように米国を初め英国もドイツも、その他欧米の主要国におきましては、経済繁栄上昇カーブが必ずしも今まで通りではなさそうだ、ややここで高原景気と申しますか、天井をはうと申しますか、大体高度の繁栄は維持するにいたしましても、今まで程度伸びを直ちに期待するということはむずかしくなってきておるんではないかという論評が、ことに本年に入りましてからいろいろと言われておるわけでございます。その結果が、私はおそらくこれら主要国は、今後輸出貿易その他の面において、広く世界市場において自国貿易繁栄せしめ、これによって自国繁栄をもたらすという政策をとって参るのではないかと考えるのでございまして、これはきわめて自然に想定されるところであろうと思います。そういたしますと、なかなかわが国輸出貿易も、それらの世界主要国輸出情勢に対処いたしまして、おくれをとらぬだけの努力を払わないと、なかなか輸出の一そうの伸びを期待していくのに、そう簡単には参らないという世界情勢になりつつあるやに思うのであります。従いまして私は日本の最近の経済拡大経済繁栄を維持しますその基本、これはやはり何と申しましても外国貿易にあろうと思いますが、どうかかかる世界情勢においてこの輸出伸びというものはぜひとも今後も続けて参らねばならぬ。かくせざれば日本基本的な経済繁栄は持続しがたいという考えを持っておりますので、これはあらゆる官民を通ずる努力を払いまして、輸出の増進に邁進せねばならぬかと思うのであります。伺いますれば、政府においては三十二年度大体二十八億ドルの輸出目標として達成したいというお考えで御討議だということでありまするが、ぜひとも私は、この程度輸出日本経済規模拡大しつつ発展せしむる意味において、ぜひ実現させたい数字だと思うのであります。しかし一面において申し上げましたように、世界の体制はますます貿易競争を激化する情勢にありまするので、この二十八億ドルの目標を達成いたしますにつきましても、私は日本経済界の格段な努力が必要だと思うのであります。一そうの努力を要せずして達成し得る目標とは考えておりません。ぜひとも努力することによってこの程度拡大はもたらすことにいたしたいものだと考えておるのであります。  一面この輸入の問題でございますが、これまた世界情勢変化に応じて前途の目途を立てねばならぬ事柄に属するのであります。御承知の思わざる世界の各部分政治経済上の変化が起りまする結果、それが経済界前途各種の見込みを生じまして、あるいは思惑的に輸入を推進するというような趨勢を馴致しやすいことは、過去においても幾多のその例を見たのでございます。最近におきましては例のスエズ問題が突発をいたしまして、スエズの問題が長びけば自然世界的に物資需給の疎通が阻害される結果、この際輸入を急がねばならぬ機運もまさにあったかと思うのであります。スエズの問題は皆様御承知通り幸いにいたしまして解決に近づきつつありますので、その面からくる物資需給の緊張はややほぐれて参ったかのように思われます。海上運賃その他にいたしましても、その面ではいい影響を与えつつあると思うのでありまするが、しかしながら御承知のように物資輸入は、単に輸出原材料として必要であるばかりでなく、国内消費に向う部分がこれまた相当のものがあるわけでございます。そこで問題はこの現在行われつつある輸入が、果してどういう意味において行われつつあるかということの判断であろうと思います。輸入増加輸出増加をやや上回りまして、自然その結果本年の一月、二月そして本月も相当のこの輸入超過による支払いは出ておりますのであります。これはむろん一面においては、過去におけるきわめて顕著な輸出増加のため原材料が不足をいたしました結果、在庫を補充するという意味においての輸入相当あろうかと思うのであります。この現在行われつつさりまする輸入が、果して輸出原材料として在庫の充足の程度でとどまるものであろうか、それともまた一両年来の国内市場の好況を反映いたしまして、各種投資その他の消費が増大を見ておりまするが、その方面に向う部分が多いのであるかどうか、これが重要な私は判断の分れ目だと思うのであります。輸出のための原材料輸入が多いということでありますれば、やがてはそれがいつか輸出に還元されまして、国際収支均衡回復に寄与いたしますと思いますが、いたずらに国内市場拡大によって消費増高するにとどまるというのでありますれば、失われたる外貨は再びこれを回復することはむずかしいということに相なるわけでございます。現在果してどういう段階にあるかということは、実はきわめて判定がむずかしい点でございます。数字等によりますると在庫の補充は一両年前の水準に大体近づいてはおります。経済規模拡大されましたので絶対量においては大体その程度になりましたけれども、在庫率から申しまするとややまだ足らない点もございます。が果してそれがただいま申し上げましたような、国際収支改善のために将来役立つ部分にとどまり得るかどうか、ということがこの際注目を要する点でありまするけれども、ただいま得ておりまする材料だけでは、それがどっちへ向うかということの判定決定的にいたすほどの材料はまだ得られないのであります。すでに日本銀行といたしましては、目下最大注意を払いまして、この輸入された物資の行方と申しますか、いかにしてこれが循環過程において消化されていくかということに大重な注意を払いつつあるわけでございます。でこの点は私は、三十二年度における国民経済発展の方向を決定する最も重要な要素、と考えておりますのでありまするけれども、ただいま申し上げましたように前途をトする決定的な判断を下すまでにはまだ材料が整っていない、こういう状況判断いたすのでございます。  その半面を受けまして国内資金需要の点でございます。世界経済情勢がややゆるんで参ったということを背景といたしまして、大企業その他の方面に、今までの計画を進めておった事業をやや繰り延べよう、という気配も起りつつないではございません。またあるいは既存の計画を少しく縮小しようという考えも出ては参っておるようでありまするけれども、私はまだこれは相当大きな力にはなっておらぬと考えます。金融機関の窓口における資金需要は相変らず強大でありまして、ややもすると私が先ほど申し上げました健全金融範囲をこえて、いわゆるオーバー・ローンの形で日本銀行から金を借りて、それで経済建設をまかなうという危険が少なからず存在しておることは事実だと思うのであります。この問題は、私、世界経済状況自体がややおくれをとっておるといわざるを得ない日本経済において、ことに最新の各種技術発明等世界的に続出いたしております際におきまして、日本がその設備を合理化し、近代化し、また新しい技術を取り入れるという必要は大いにあると思うのでありますが、このことと前段申し上げました国際収支均衡を保持するということ、そうしてまたしかもこの資金需要資金集積範囲においてまかなうという健全金融の線、これらを総合いたしまして均衡を失せずに進んでいくということが、今後経済施策を進める上においての最も重要な点であろうと思うのであります。  資金の今申し上げましたような需要のややもすれば超過しようとする際に、いかにしてこの情勢緩和するか。一つ根本的な問題は資金蓄積増加するということでございます。三十二年度におきましては、日本銀行貯蓄推進部も大いに力を入れまして、この預貯金の集積その他資金蓄積については、最大努力を傾ける考えでございまして、それらが国民消費性向国民貯蓄性向等にうまく協力を得まして、資金供給量をふやすことができまするならば、ただいま起っておる資金需要につきましても、相当対処し得るわけでございます。  しかしながら、もしその資金蓄積が十分でございませんならば、どうしてもこれは健全金融の建前から申しまして資金需要自体の方を考え直してもらうより仕方がない、こういう事態に相なろうかと思うのであります。現在の段階におきましては、まずその前提といたしまして金融機関健全金融の線をかたく守る。それについて従来不十分であったところは、これを契機として十分にその姿を正していくという一つの時期を作ります意味において、ただいまお尋ねの公定歩合引き上げが有効な措置であると考えましたゆえに、これを実行いたしたのであります。全体の今回の措置といたしましては、国際収支状況なりあるいは国内の物価情勢なり資金需要、供給の情勢なり、それらに対処いたしまして、日本銀行として均衡を得せしめるために必要な措置というものは、今後何どきでもこれを発動し得るという姿勢に日本銀行を置くということが、これまた重要な問題であろうと思ったのであります。で、今回の措置は、直接意図するところはただいま御説明申し上げた程度のことでございまするけれども、全体といたしましては、今後の推移を十分に注目いたしまして、必要ある場合においては何どきでも、日本銀行が与えられておりまする操作によりまして、この変っていく事態に時機を逸せずに対処する、こういう構えに日本銀行が立っておるという意思表示をこの措置によって表わしたいと考えました次第でございます。  なお、お尋ねの点で漏れておりまする点は、さらに後ほど補足させていただきたいと思います。
  10. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしますと、この高率適用緩和のねらいと、それから公定歩合引き上げのねらいとは、ある意味では表面矛盾したねらいを一つ政策の中に包蔵をしているように思うのですが、従って、これをもう少し見通しその他を早くから立てておかれれば、むしろこの決定はもう少し早目になさるべきであったのではないかという感じがするのですが、この時期について誤まりなかったというふうにお考えになるかどうかということが一つと。それからもう一つは、一体ねらいとしておられるところは、その高率適用緩和の方が主たるねらいなのか、公定歩合引き上げの方が主たるねらいなのか、今後どっちを主として使っていくことになるであろうか。その辺をどういうふうにお考えになっておるか。従ってまた、一体私たちによくわからないのですが、その高率適用緩和といった場合に、その内容的なものは、どういう運用の仕方といいますか、内容はどういうことを考えておられるのか。たとえばこの貸出ワクその他について、現在どれくらいあって、それがどれくらいまでにどういうふうに緩和されるというような見当を持っていらっしゃるのか。その辺のことをもう少し御説明を願いたい。
  11. 山際正道

    参考人山際正道君) ただいまお話のございました、高率適用緩和ということと公定歩合引き上げということとは、相矛盾するような感じを与えると思われるがどうかという点でございまするが、この点につきましては、なるほど御指摘通り、一面においては異常に窮屈化しておった金融市場あり方を是正する、これは緩和の印象を与えると思います。と同時にまた公定歩合引き上げるということは、今後金融をゆるめないということの意思表示なわけでありまするから、これまた相矛盾するような感じを与えることもごもっともと思うのであります。しかしながら、今回その措置をあわせ用いました理由は、実際は金融市場自体に非常に変調な事態が起っておるからであります。すなわち、これは先ほども申し上げましたように、短資市場を中心といたしまして異常な状態が起っておるわけでございますので、まずこの姿を直すということは、今後強力な金融施策を実行いたします土台といたしましてぜひとも必要なことであったのであります。しかもその窮迫を告げました理由が、三十一年度中における経済界の実需はむろん増加はいたしておりますけれども、それ以上に強く財政収支というものは影響しておったのでありまするから、この際においてこれらの事態を平常化するためには、高率適用範囲をどうしてもこれは拡大するというのは、最も基本的な点である。かく考えましたがゆえに相矛盾するがごとく思われまするけれども、やむを得ざる地ならしといたしまして、高率適用範囲拡大をいたし、同時にまたこれがあるいは緩和の印象を与えることも申されましたが、同時に、また将来何どきでもこの公定歩合引き上げ等による金融操作は、日本銀行としてはその実行の用意ありという意思を、この高率適用制度改正という確かな土台の上にそれを表明いたしておるんでありまするから、将来に対するこれも備えになろうというのであわせて実行いたしたのでございます。ちょうど、最近アメリカの中央銀行が利上げをいたしました際に、一面利上げをいたしながら、他面、いわゆる市中公開市場操作によりまして、有価証券を買い上げるというオペレーションをやったことがございます。その事態その事態の金融界の姿によりまして、各種の効果を持つ手段をあわせ用いるということもやむを得ないことだろうかと思うのであります。それにしてはやや時期がおそきに失したのではないかというお話がございましたのでございまするが、私は、これは相当日本銀行といたしましては、従来のあり方を変えて参る問題でございますので、機の熟するを待つ必要があると考えたのでございます。公定歩合引き上げは、一昨年八月に行われました以来、一年半以上をそのまま据え置かれておったのでございますが、その間、ややこれの取り扱い方がどっちかと申しますと固定視されておりまして、そうにわかには、一たんきめられた公定歩合というものは動かされないのだという印象も与えておったかとも思うのであります。そこで前段申し上げましたように、この高率適用緩和は、三十一年度の年度末に近ずくに従いまして最もその窮迫の欠陥が露呈をいたして参ります、三月の二十日ごろから、自然貸し出し増加等が始まります、年度末における金融の繁忙が、高率適用のためにゆがんだ姿において市場に反映するということを恐れたので、この年度末を控えてその直前にその緩和を行うのがその意味において適当な時期ではないかと考えたのでございます。   〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕  また、公定歩合引き上げまして、同時に健全金融の建前を堅持するという日本銀行の意思を表明いたしますことも、資金需要が多少は下りぎみの傾きはありまするけれども、今なお旺盛であるという事態、また一月以来輸入相当かさんできておるという事態を控えまして、その推移をしばらくながめながら、この三月の下旬を期して行うのが最もその時宜を得たものと考えましたがゆえに、二十日からその実行を期した次第でございます。  しからば今回の措置は、高率適用緩和ということと、公定歩合引き上げということといずれに重きを置くのであるか、ややそのねらいの重点がはっきりしない。どっちかというと、むしろ金融緩和の印象の方が強くないかというお尋ねでございましたが、この点、当局者といたしましての考えは、全く同じように、二つのことを重要視して措置いたしたのでございます。全体の金融情勢から考えますと、ここでどうしても、私のいわゆる金融健全化、健全金融の実行ということを金融機関に守ってもらわなければならぬ。と同時に、またそれを実行する上において、金融市場が、その姿が平常な状況でなければならぬということも当然の要求でありますが、そのために、一方においては、公定歩合引き上げ、一方においては、高率適用緩和をはかるという、相矛盾した政策のようなものを同時に行わざるを得なかったわけでございまするけれども、私のねらいといたしましては、そのいずれにも同様程度の重要さを置いておるのでありまして、彼此相待ちまして、私の最も希望いたしまするところは、今回の措置が、将来何どきでも、弾力的に、事態の推移において発動し得る姿勢に日本銀行がおるということを理解してもらいたいというのが、私の今回の措置をとるに至りました結局の希望であるのでございます。
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 国庫収支の問題でありますが、今のお話にもありましたように、三十一年度に非常に大きな引き揚げ超過になっておる。これは、当初われわれが三十一年度予算審議します場合には、大体、計画として九百八十億程度の散布超過になるだろうということで出発をし、それを基礎にして、いろいろ金融政策を少くとも政府はとってきたと思うのですが、それが結果においては、今、総裁もおっしゃるように、一千億以上の揚超になってしまった。こういうことだと思うのです。これが高率適用緩和をやらざるを得ない主たる原因かと思います。こういう趨勢、形勢は、すでに年初からもはっきり見通されていたことであるので、従って、これに対処する対処の仕方であるならば、もう少し早く高率適用緩和をやられて、そうして今のこの金融逼迫状態、季節的な金融逼迫状態に対処するやり方があったのではないかと思うのですが、そこいらに非常に時期を誤って、あまり慎重のために、むしろ無為にして、今まで無理に押してきたのじゃないかという感じがするのですが、この点をどうお考えになるか。同時に、それと関連をいたしまして、今、総裁のお話にもありますように、国庫収支を正確に見通しをつけ、もっとこういう季別の波が大きくうねるということを、政策としては、あるいはこれは政府の問題になるかと思いますが、もう少し緩和しなければならないのじゃないか。と申しますのは、三十年度も、当初の見込みは七百億程度の散超と考えていたのを、実績としては二千八百億近くの散超になって、これは、方向は同じ散超ですけれども、数額が非常に開いている。三十一年度は、今申し上げたように、むしろ散超のつもりのやつが、逆に非常に大きな揚超になった。三十二年度は、それが大体収支はそう違わない。せいぜい、今の予測でいくと、三百五十億程度で済むだろうというようなお話のようになっていますが、これらの国庫収支の問題を、もう少し見込みの違わないような、計画的なものにするということが非常に必要になってくるのじゃないかと思うのですが、それらの点について、日銀の総裁としては、どういうふうにお考えになりますか。
  13. 山際正道

    参考人山際正道君) 金融市場の逼迫は、年初来すでに予想されておったのではなかろうか。しからば、もっと早くこの措置を講ずべきではなかったかというお尋ねであります。年初来しばしば国庫収支の予想を立て、加うるに、ただいま申し上げましたように、国庫収支の違いの相当大きな部分でありまする外為会計の予測等も加えまして、いろいろ判定をいたしており、相当急迫する事態に向いつつあるということは予想しておったのであります。そのために、高率適用ワク拡大するということも一つのむろん方法ではございますけれども、同時にまた、吸収された政府資金がなるべく早く民間に還元をするということを促進するのも、また一つの方法であろうとし実は考えました。これは、日銀信用を先に使うか、あるいは蓄積されてたな上げになっておる政府資金の放出を先に考えるかという判断の問題になりますのですが、私が当時考えましたのは、なるべくこの蓄積された資金、たとえば一般会計ではありませず、預金部でありますとか、あるいは簡易保険でありますとか、そういった経済資金政府によって吸収せられ、これが市場から姿を消しておるという部分については、早い還元をまず望むべきではなかろうかということで、大蔵当局にもいろいろ御相談申し上げ、御承知通り、十二月、一月、二月、三月と続きまして、預金部から七百億円がすでに放出せられ、また、国庫の一部分が今後放出することになっておるのであります。しかもなお、この際、この国庫収支引き揚げ超過のために生ずる金融圧迫は、その程度では緩和できませんので、根本的にここに、高率適用制度緩和をはかったわけなのでございますが、大体、日銀信用のワクをいじりますということは、その影響する範囲、そのもちます意味、そのことの与える世間の印象等、いろいろ複雑に考慮を要する点でありますので、私といたしましては、ただいま御指摘のごとく、その点は非常に慎重に考えまして、各方面の御意見等を十分承わり、結局その判断を固めまして、先ほど申し上げましたように、年度末を控えてこの時期にこれを実行する、こういう決意をいたしたわけであります。非常におくれて、そのために大きな金融上の弊害を生じたということには、実は私自身考えておりませんので、まずこのときが、大体いわゆる機の熱した時期ではなかったか、かように考えておるのでございます。国庫収支から生ずる波をぜひともこれを緩和するように考えねばならぬという御意見につきましては、全く私も御同感でございます。今の国庫制度は、収入と支出が大体各月別に均衡をして、放出して吸い上げられるようになっておるのでありますが、実は、今後におきましては、国際収支関係は別にしまして、一般会計に関する限りにおきましては、建前は相当均衡がとれて参ることに相なっておるということで、それに信頼をいたしておるわけであります。  ただ、申し上げますまでもなく、租税収入自然増収等で非常に多くなったということは、経済繁栄の度合が予測以上に大きかったということの反映でございますし、また、国際収支の動向云々は、これはまた、必ずしも一般会計自体国庫収支からくる問題でもございません。国民経済全体の趨勢からくる判断でございますが、これも、相なるべくは十分な御調査、十分な予測のもとに、なるべく国庫収支からは金融上の波の立たないようにお運びを願いたい。これは日本銀行のお願いをいたしておる点でございます。ただ、何人も予測せざる事態によって生じまする波につきましては、金融上の調節によってこの金融の疎通をはかりますることは、日本銀行に与えられた職務でございますので、これは、その範囲のことは十分にいたしますけれども、どうか、見込みといたしましては、国庫収支から大きな波が立ちまして、それが金融情勢に大きな影響を持つようなことのございませんように、十分にその点は、予算その他財政措置の実行についても、御審議をわずらわしたいと考えておる次第でございます。
  14. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今度の高率適用緩和という措置、それが、コール市場にはどういうふうにすでに現われているか、あるいは今後現われるというふうにお考えになるかということと、それから、公定歩合引き上げということと、市中の金利との関係がどうなるかというふうにお見通しなのか、どういうことが望ましいとお考えになるか。それとの関連において、一体この公定歩合引き上げによって、どうしても強含みになると思うんですが、しかし日本としては、他方において低金利資金コストを引き下げなければならないという問題もあると思うんですが、それの関連はどういうふうにお考えになり、今後どういうふうに運用をしていこうとしておられるか、その点……。
  15. 山際正道

    参考人山際正道君) 第一のお尋ねの高率適用緩和の結果が現在コール市場にどういう影響を与えておるかというお尋ねであります。新措置をいたしましてから一両日経過したにとどまるのでございまするが、まず第一には、コール・レートはだいぶ下りまして、むろん三銭というようなコールはございませず、大体ただいま、月越しものとか、長いコールというものはだんだん少くなりまして、ほんとうの当座の資金の余裕の出合いという範囲に自然戻りつつあるわけでございまして、たとえば、コール・レートのごときも平均いたしまして、これはなかなか実態はつかみにくうございますけれども、三、四厘は確かに下っておるだろうと思うのです。今度の引き上げの結果、いわゆる優良な一般手形を担保とする貸し出しでも、二銭三厘程度で参れると思うのでありまするが、そうなりますと、コール・レートも、まあ二銭三、四厘の程度で落ちつくというふうに考えられるのでありまして、実施後ただ一両日を経たにすぎませんから、まだ的確な結果は出ておりませんけれども、見込みといたしましては、大体その辺を中心に最高がきまってくるのではないか。現に近ごろは、この一両日はコール市場はまさに取り手の市場になりまして、だいぶ余りましたコールが非常に安いレートで融通されておるという状態まで戻っておるようでありまして、日本銀行公定歩合と権衡のとれた、低いコール・レートになってくるだろうと予想いたしております。  ただ、それとあわせて重要なことは、コール・レートが異常に高い結果、コール市場というものが、ほんとうの余裕金のごく短時間の出合いということ以外に、一つの利殖の場のように利用されるという傾向が現われて参ったのであります。たとえば、本来預金にしておくはずのものをコール市場に放出するとか、あるいは社債を買うのを見送って、しばらくコール市場で遊ばせるというようなことが行われがちであったのでありますけれども、こういう好ましからざる秩序というものは、今回の措置によりまして、漸次そのあるべき姿に帰りつつあるということが申し上げられると思うのでありまして、この点が今回の高率適用制度の及ぼす一つ影響として、私の最も重要視しておる点でございます。  それから、今回の公定歩合引き上げの結果が市中金利にいかなる影響を及ぼすであろうか。日本としては、世界主要国に比べれば、金利水準は依然として高いのであるからして、これが引き上げをされて、その結果が輸出貿易その他に影響を及ぼすような金利であってはどうかと思うが、というような趣旨のお尋ねであったかと思うのでありますが、その点につきましては、私は、今回の公定歩合が、いわゆる一般金利水準の引き上げであるとか、あるいは有価証券その他の発行条件なり、長期の金利に直接影響を及ぼすというところまで実は考えない範囲決定をいたしたのであります。従って、わずか一厘ということに相なりまするけれども、その意図は、これによって一般金利水準を上げるとか、ただいま申しましたような、有価証券の発行条件にこの機会として再検討を加えるとかいう意図は持たぬということの表明と、御理解願いたいと思うのであります。  ただ、実際問題といたしますと、過去の非常な金融のゆるみがございました結果、貸し出し競争相当激しかったことはいなみがたい事実でございまして、そのために、特殊なものについては、特段の低利の金融が行われておったことがあると思うのでございます。これがやはり一連の措置と関連いたしまして、正常な姿に戻り、あるべき適当な金利におさまるという意味の修正は、これは行われる可能性はあろうと思いますけれども、これによって、市中金利が一般的に上るという情勢には立ち至らぬと考えまするし、私は、この場合、この措置契機として、そこまでのことを期待はいたしておりませんのでありまして、しばらく、何と申しますか、金融市場なりあるいは金融機関融資態度等に対する地ならしと申しますか、秩序立てることそのことについて、これが一つ契機となることを期待しているにとどまるのでございます。
  16. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、総裁がきょうもこの席でしばしばおっしゃておる、今後の金融政策は弾力的にやるんだということを示し、今後はうんと弾力的にやるんだというお話ですが、その弾力的にやるんだということは、将来どういうふうにしようとして、そういう発言をしておられるのか、その辺をもう少しお聞きしたいんですが、と言いますのは、なるほど市中金利なんかが上ることは、資金コストその他を引き上げることになって、その意味において不利でありましょうが、同時に、やはりねらいとしておられるところはどうも——これは大蔵大臣は違うとおっしゃるかもしれないけれども、どうも実際には、やはりねらいとしておられるところは、日本経済に対するある意味での警戒信号、そうして投資需要等の行き過ぎをチェックするというようなことを考えておられるし、また、そうであってこそ、初めて公定歩合を上げるということの意味が出てくるんだと思うんですが、そういう点をどういうふうに考えておられるか。ことにそういう金利政策が、日銀の金利政策が非常に慎重であることは、これはどうしてもとられなければならない態度であると思うんですけれども、その慎重に名をかりて、的確な判断に欠けるところがあったとか、あるいは的確な判断をしておるにかかわらず、これは政治に、あるいは政策にわずらわされて、勇断をふるえないで、やるべき時期にやらないで、従って、金利政策が固定化してしまって、機動性を失ってしまう、動脈硬化症に陥ってしまうという、少くとも過去においてはそういうふうなことがあったんじゃないか、今後は、それをどういうふうに直そうとしておられるか。従って、それに関連をして、一体中央銀行というものと大蔵省の金融政策というようなものを、日本銀行総裁としては、この関連の問題をどういうふうにお考えになるか。それと関連して、日銀法というようなものをどういうふうにお考えになっておるか。これは、私から言うまでもなく、あなた自身がお作りになったものだし、第一条からはっきりしておるように、これは、戦時日本銀行法であると思うんですが、そういう意味ではすみやかに改正もしなければならないし、その場合に、あらためて今お尋ねをしているような問題が明確になっておらなければならないと思うのですが、そういう点をどういうふうにお考えになっておりますか。
  17. 山際正道

    参考人山際正道君) しばしば私が、今後は弾力的な金融政策日本銀行としてとり、それがためには、基礎を固める意味において、今回の措置を実行したのであるということを申し上げておることにつきまして、そのいわゆる弾力的とはいかなる傾向を持つものであるかというお尋ねであったと思うのでありまするが、今、当面の事態として、日本経済前途考えておりまする者の心配は、やはりこの金融で申しますと、オーバー・ローンを避ける、物価騰貴を阻止する、あるいは国際収支の取り返しのつかぬ不均衡を招来しないように維持するという、各種の点に帰着するであろうと思います。その方面から申しますと、日本銀行といたしましては、どっちかというと、一口に言えば、金融を引き締めるという方面に弾力的に動かなければならないという機会の方が多く予想されると思います。むろん、世界情勢その他の推移によりまして、金融が非常にゆるんで参りまする情勢になりますれば、これはむろん、ちゅうちょするところなく、金融緩和する方向に弾力的に運用せられるべきでございましょうけれども、当面の場合としては、おそらく皆さんは、そういうふうに、金融引き締めの方に弾力的に動くという場合をお考えになっていらっしゃるのではないかと考えます。現在の段階におきましては、しばしば申し上げますように、投資需要金融の供給力、すなわち健全金融範囲において確保する。少くともその原則をここではっきり確立するということが先決問題だと思うのであります。そのために、一面におきましては、金融の供給力、すなわち、国民貯蓄の増強等に努力をいたしまして、供給力をふやすことはむろんでございまするけれども、それでもなお、その需要が供給を超える部分につきましては、これはどうしても、これを阻止しなければならない。さような場合に、日本銀行金利政策その他によってこれを阻止することが必要であるという段階におきましては、私は、ちゅうちょするところなく、金利引き上げその他によって、この趨勢を阻止することに最善の努力をいたす考えでございます。貨幣価値を維持するということは、日本経済建設貿易の振興には欠くべからざる最大の前提であることは、これは申し上げるまでもないのでありまして、そのために必要なる措置は、私は、ちゅうちょなく、今後は発動をするという意思を表示いたしたいのでございます。それについて、一体この金融をつかさどる日銀総裁、大蔵大臣その他政府当局との間において、いかに調整しながら、さようなことをやっていくのであるかというお尋ねがございましたが、日銀総裁がこの金融調整のために行い得ますところの手段なり方法、手続等は、日本銀行法によって命ぜられておるのでございまして、私は、日本銀行法を順奉いたしまして、その与えられておりまする権限は、みずから信ずるところによって、ちゅうちょなく実行いたしたいと考えております。しからば、現在の日本銀行法において、一体この金融に関する責任と申しまするか、あるいは権限と申しまするか、それは、政府との間にどうなるのかというお尋ねでございまするが、私は、管理通貨制度をとっておりまする日本の現状において、単に大蔵当局ばかりでなしに、物資需給をつかさどる各種政府当局その他と十分な協調連絡を保つことは、これはもう当然必要な措置と思うのであります。しかしながら、日本銀行自体といたしましては、法律に与えられました権限に基きまして、その総合的判断の上に、みずからその責任において与えられた権能を実行するということは、これまた当然の義務だと思うのであります。その処理は、実際は、それは管理通貨制度という大きな建前のもとに、非常にむずかしい問題があろうと思います。しかし、われわれは、各金融当局にいたしましても、あるいは物資需給の調整をつかさどる当局にいたしましても、科学的な精細な調査資料を基礎にいたしますならば、そう大きな見解の相違があろうはずはないと実は思います。相なるべくは各般の調査資料、統計資料等を十分に検討し合いまして、これにより、なるべくその結論を帰一させることにいたしますけれども、日本銀行としてみずからの判断で動かすべきところは、十分に、顧慮するとろなく動かしたいと考えております。  御指摘日本銀行法は、これは戦時の立法でございますので、今日の事態を考えますと、いろいろ改正を要する点が多いと思います。すみやかに御審議を願って、御改正願うのがまことに望ましいことであり、政府当局といたされましても、金融制度調査会にこれを付議すべきことを、かねてその御意図として御発表になっておりますので、われわれは、金融制度調査会の議題といたしまして、慎重に御検討に相なり、そうしてまた、それが皆様の御審議によって改正されるという日をわれわれはむしろ期待をいたしておるような立場にございます。  なお、質問の点で落ちている点がございますれば、付け加えさせていただきたいと思います。
  18. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今後の弾力的な運用というようなこと、それがほぼわかるような気がするのですが、その場合に、先ほどちょっとお触れになりました、マーケット・オペレーションの問題と公定歩合の上下の問題、この両方をどういうウエィトで運用をしていこうとされるのか。それから、オペレーションの方は非常に余地が少くなりつつあるのじゃないか、この辺をどういうふうにお考えになるのか。それから同時に、今後の金融の調整といいますか、それは、オペレーションあるいは公定歩合の上下だけでは、もはや問題が解決しないことになって、もう少し融資の質的な選別等々の問題が必要になってくるのじゃないかと思うのですが、これらの問題は、金融界としては、どこでどういう機構でこれをやるべきかやらないべきか、やるとすれば、どこでどういう機構でこれをやればいいというふうにお考えになるか、その辺の対処策、それから質的な選別融資が今後相当効果的に行われるとすれば、必ず中小企業への金融逼迫のしわ寄せという問題が出て参ると思いますが、それらに対する対処策をどういうふうに考えればいいか。日銀当局としては、それをどういうふうに考えておられるか。その辺を伺いたい。
  19. 山際正道

    参考人山際正道君) 第一のお尋ねの、市場操作と公定歩合の上下による金融操作との関連の問題でございますが、御指摘通り、遺憾ながら、今日の日本金融界におきましては、証券市場というものが十分確立いたしておりません。従いまして、市場操作を通じて金融の繁閑をはかるという範囲は非常に限られておりまして、ややもすると、銀行間の相対取引で、特定銀行金融をゆるめるというような措置に出でざるを得ないような状況にあります。これは、私は、なるべくすみやかにこの証券市場というものを育成することに努力いたしまして、そうして一般の金融繁閑の操作の場として、その証券市場を使えるように、早く育成をいたしたいと考えます。そういたしますならば、公定歩合の上げ下げによる金融操作と、それから市場操作による金融繁閑の調節というものは、おのずからそこに種々な意味を持つと思いますので、その場その場によりまして、同じ程度に両者が重要視されて働く場を持ち得るものと考えております。  それから、将来金融が引き締ってきた場合に、いわゆる選別融資等は、いかなる段取りで行われて参るか、かようなことでございますが、私は、この際といたしましては、御承知輸出審議会もございますし、また、それを受けまして、金融機関の団体におきましても、あるいは利子規制委員会でありますとか、投融資委員会でございますとか、さまざまの協力機関がございます。現在でも電力、鉄鋼その他基幹的な、いわゆる隘路産業の打開につきましての金融方面の問題は、この銀行協会の投融資委員会あるいは自主規整委員会等において検討されておりますので、これらの諸機関を通じまして、その間の調節は果し得るものと考えております。なお今後、中小企業に対する金融に疎通を欠くような事態は生じないかというお話でございましたが、私は、中小企業の面は、中小企業なるがゆえにその金融の道が閉ざされるという例は、大体の傾向としては、だんだん少くなって参っておるように思います。銀行の統計などを見ましても、いわゆる中小企業金融銀行投資いたしておりまする比例は、統計上だんだん増加して参っております。のみならず、三十二年度の予算に関連いたしましても、政府におきましては、予算あるいは財政融資を通じまして、いろいろとその方面の御心配もおありのようでございます。特に中小企業なるがゆえにその金融の道が閉ざされるというような御心配はまずまずなく、いくと思うのであります。多くの問題は、企業の内容なり企業の運び方の方に、往々にしてその欠陥が伴っておるという点が多いのでございますので、これはまた、しかるべき措置によりまして、漸次是正して参りまするならば、この問題もまず解決し得ることになるのではないか、かように考えております。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 資金の調整の問題が、銀行間のいろいろな自主規制その他で、非常にスムースにいくだろう、その点は非常に甘くお考えになっておると思うんですが、これは、現在の資本主義自由経済のもとにおいて、ことに日本の現在の銀行間のいろいろな状態を考えますと、それがなかなか簡単にうまくいくとは思えないのであります。と申しますのは、なるほど過去においても、これまで、この一、二年あるいはもっと長い期間にわたって、日本では、資金蓄積ということが非常にやかましくいわれて、インフレにならないためにというので、資金蓄積が非常にやかましくいわれて、毎年々々国民総合経済のバランスをとってみると、資金蓄積、資本形成というのは、金額からいっても、それから総合的な経済バランスの中からいっても、比率からいっても、非常に高いものが毎年々々蓄積されて、ある意味では過剰蓄積といっていいくらいに大きな蓄積が、金額としても比率からも行われておる。これは私は、世界に類を見ないのじゃないかと思います。それにもかかわらず、ほんとうの意味での蓄積がなされていないために、現在のように、基幹産業その他に資金が回ることが非常に過去に少くて、そして今になって、その規模拡大しなければならないといって、あわててきている。今まで資金蓄積がなかったかというと、決してそうじゃない。金額的には、あるいは比率的には非常に多かったにかかわらず、必要なところにそれが効果的に回っていないというようなのが過去の実情であったし、現在においても、選別融資なり何なりが行われなければならないのにかかわらず、なかなか市中の金融機関相互の間においては、それが効果的に行われるとは、ちょっと私はみられないと思うんですが、従って、そういう事態でありますから、それを前提とすると、もっとやっぱり対策なり政策考えなければならないのではないか。金融機関の、特に市中銀行の諸君は、口を開けば、公共機関であるからということで、公共性を非常に振り回しておりながら、しかし、利益を追求することにおいては、最も私的な、エゴイスティックな動きをしているのが率直に言って金融機関だと思う。従って、そういうものにまかしておいて、果して選別融資その他がうまくいくのかどうか。この点はもっと、この機構の問題としても、政策の問題としても、十分に掘り下げて考えてみなければならない点じゃないか。これは、中央銀行としても、さらには政府としても、十分考慮をしなければならない点のように思うのですが、そこいらを総裁はどういうふうにお考えになっておりますか。
  21. 山際正道

    参考人山際正道君) 日銀総裁は、銀行の自主規制能力にあまりにも信頼し過ぎてはいないかという御疑問かと考えるのでありますが、この点につきましては、私は、現在の金融界の人を絶対に信用いたしております。みずから自主規整委員会を作り、投融資委員会を作りまして、できるだけ努力を払っているものと認めるのでございます。むろん、最大努力は払いましても、御承知のように、この一両年来われわれの経験しました世界並びに日本の国の経済情勢の激変、これに対処いたしまする具体的な当務者といたしましては、なかなかこの観念だけでは動き得ないわけでございますので、現実の事態を跡始末をし、新しい事態をどう進むかという、いろいろのそこに、実際上の複雑な処理を要する点がございますので、その点は、ある程度時間を私はかさねば無理だ、実行できんと考えているのであります。もっとも金融界の人々が、今日の経済界における良識層であるということを私は信頼いたしまして、極力この信頼にこたえてもらいますように、機会あるごとに懇談の場を持ち、お互いに励まし合っているわけでございます。  過去の実績によれば、日本は貯蓄性向は相当強いのに、なお今日、重点産業に隘路を来たすところがあるのは、この点に欠くるところがあったのじゃないかというお話でございますけれども、私は、貯蓄性向が、まず日本として、世界的に国民の協力で相当強固になっているということは、まことにこれは、心強く感じているところでございますが、その他基幹産業の発展につきましては、いろいろ御承知の監督官庁等の計画もございますし、大体その計画にはのっとって参っていると思うのでございますが、何分にも、この予期せざる経済上の変化等のために、その計画自体も改訂されねばならぬ。従って、それを実行するための金融措置にも、自然そこに影響がくるというのが現在の事態であると思うのでございまして、これは、ただいま申しましたように、多少の時をかしますれば、この金融界の自主的規制の能力が働きまして、十分に政府当局とも御相談の上に、大体において満足する方向に進み得るかと考えて、やっているような次第でございます。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも、過去の実績なり現在の実情考えますと、その点において私たちは、甘く、ただ単に信頼をしているというだけでは問題は解決しないのじゃないか。相なるべくんば良識に期待をするということが最も希望するところでありますけれども、単にこの問題は、金融に従事している諸君の個人的な道徳の問題とか、信頼の問題とか、良識の問題では解決されない問題として今はもう当面をしているのじゃないか、資本主義あるいは自由経済のもとにおいては、この問題が解決し得ないというような情勢段階にきているので、そういう点においては、もう少しやはり、中央銀行の当局にしても、あるいはさらには政府当局としても、われわれ国会議員としても、政治的にもこの問題は十分に掘り下げて、制度改正の問題なり政策変更の問題として、検討をしてみなければならない問題であると思いますが、従って、この点については、さらに他日、大蔵大臣の意見その他を聞きながら、もう少し事態を鮮明したいと思いますけれども、きょうは、私はこの程度で、日銀総裁への質問を終りたいと思います。
  23. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それでは、山際総裁に対しまして若干の質問をいたします。先ほど総裁のお話でございますというと、今度の公定歩合引き上げ、あるいは高率適用緩和は、日本銀行として金融の健全化をはかるんだ、こういうことを強調されておったのでございます。お話をだんだん伺っておりますというと、これを行いました一つ背景といたしまして、世界経済の動きの点にお触れになっておる。そして世界景気は大体において伸びがとまった、そして高原景気と言おうか、あるいはまあ天井を横ばいしておるというような状態になってきておる。まあこういうような事態から、これが日本にも影響しておるんだというようなお話もございました。そしてまあ日本といたしましては、たとえば世界景気の伸びは、昨年までとだいぶ違う情勢でなきゃならぬ。たとえばある企業がいろいろ拡張の計画を持っておる。これを繰り延べるとか、あるいはまた既存の計画を縮小するというような方向にいかなきゃならぬ。現在銀行は非常にオーバー・ローンになっておりますが、このオーバー・ローンのなにを解消しなきゃいかぬというお話もございました。これらから見ると、今度の公定歩合引き上げというのは、単に健全化というだけではなくて、すでに警戒的措置であるというふうに私どもには見られるのでありますが、これはそういうような場合に対する警戒的措置を含むものである、こういうふうに解してよろしいのでございますか。この点をまずお伺いしたいと思います。
  24. 山際正道

    参考人山際正道君) 今回の金融措置が、健全金融の建前を堅持したいがためであるという私の考え方に対しまして、そのことはすなわち企業計画なり産業の進め方に関する一種の警戒ではないかというお尋ねでございます。今回の措置自体といたしましては、私はそこまで考えてはおりませんけれども、健全金融を守ります結果といたしまして、これ以上オーバー・ローンは生ぜしめないという方針を堅持いたしますならば、諸般の経済計画、産業計画もやはりその金融の基調に合せた調子においてお考えを願わねばならぬということは、当然に生ずる問題だと思いますので、その程度関係は認めますのでありまするが、直ちにお話のようなことを意図いたしまして今回の措置をとった次第ではございませんので、その点を申し上げたいと思います。
  25. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは世界景気並びに日本の景気とも関連をする問題になって参りますが、先ほど総裁は、世界景気につきましては、昨年までとだいぶ違った兆候が見えてきておる、で、まあ頭打ちしておるというようにごらんになっておるようであります。国内の景気の見通しにつきましてはいかようなお見通しをお持ちになっておりますか。
  26. 山際正道

    参考人山際正道君) 世界経済情勢の推移、ことに先ほどは申し上げませんでしたけれども、ヨーロッパにおきましては欧州経済共同体というものを結成されつつございまして、これらが自然わが国貿易伸び前途影響を持ち来たすであろうということは予想できますわけでございます。そこで、日本経済といたしましても、今後は十分それらの情勢を頭に置きまして、健全なる発展を企図せねばならぬと思うのであります。その健全なる発展を企図する一つの条件は、経済計画なり産業計画なり自体が、資金需給範囲においてまかない得るということであろうと思うのであります。その結果、健全金融の建前をとりますその内部においても、日本経済を発展させるために大いに努力を要する、その余地というものは相当あろうと思います。すなわち努力いかんによりましては、この建前のもとにこそ、健全なる今後の日本経済の発展が企図できるというふうに考えるのでございます。本年の景気がどうなるかという問題、これはなかなか判定がむずかしいと思いますけれども、私は、健全なる基礎にこの際それを建て直すことによって、景気の永続性を企図し得るというふうに考えておるわけでございます。
  27. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 景気の永続性という問題でございますが、これは世界景気とも関連をすることで、やはりなかなかいろいろな要素も入って参りますので、観測は非常にむずかしいというふうに私どもも思いますけれども、少くとも政府にいたしましても、あるいは日銀にいたしましても、その政策を行うに当りましては、この景気の見通しということをはっきりつけとかなければならぬ、そういうふうに考えるのでありますが、ただ健全なる発展というだけでは、どうも私どもには理解できない点がある、重ねて日銀として、その政策を行う場合の前提としての景気の見通しということについて、もう少し一つ御教示を願いたいと思います。
  28. 山際正道

    参考人山際正道君) 日本銀行がその与えられております金融措置範囲内において、健全なる経済の堅実な発展を企図するためになし得る場面が、金融上あるわけでございまするけれども、私の考えでは、経済全体を健全に発展せしめるためには、単に金融措置だけではなかなか解決がむずかしいと思います。政府の各般の方面におかれましても、また民間各団体等有識者におかれましても、この点につきましては同じ目的のためにいろいろと御努力相なるだろうと思うのでございます。彼此相まって、ここに経済の健全化、その永続化がはかり得るのだと思うのです。日本銀行はその一端といたしまして、金融の建前から、そういう目標のために措置をとって参りたい、かように考えております。
  29. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 たとえば日本の今後の経済発展に大きな影響を持つ問題でございますが、この輸出入のバランスの問題、最近の輸入の増大でございますが、これらはまあ大蔵大臣等のお話ですと、何ら憂うる傾向を持っておらないようでございますけれども、しかし私どもとして見てみますれば、これが日本経済にとりまして相当危険な要素をはらんでおる、警戒的な要素を持っておるのだというふうに感ずるのでございますが、この輸入が非常に増大いたしておりまして、在庫量がふえて参りますのですが、これについて日銀総裁の見解、並びにこれに対してたとえば今度の公定歩合引き上げがどういうふうに影響するかという点等についてお聞かせを願いたいと思います。
  30. 山際正道

    参考人山際正道君) お尋ねの今後の貿易見通しについての問題でございますが、輸出につきまして世界経済界の推移は、一そう輸出目標を達成いたしますためには、日本人が努力しなければならぬという要素はふえて参っておると思います。そしてまた、貿易によらずんば国を立て得ない日本といたしましては、この点に対して全体がその困難を打開するため協力すべき問題であろうと考えております。ただいま行われております在庫輸入の問題が、果してこれが輸出原材料として再び国際収支均衡に役立つのであるか、それとも国内消費のみ多くして、ついにこれが国際収支の悪化のもとになるかという問題は、先ほど申し上げました通り、今後におきまして最も留意を要する点でございます。むろん私ども日本銀行の立場といたしましては、極力それが輸出に向けられて、輸出原材料として国際収支の改善に役立ちます方向において、金融上とって参ります措置はとって参りたい、かように考えておる次第でございます。
  31. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今度の公定歩合引き上げ輸入の抑制の方向に作用するかどうかという、この点はいかがでございますか。
  32. 山際正道

    参考人山際正道君) 今回の金利引き上げは、だんだん申し上げます通り金融の健全化を確保したいという意図でございます。その結果、あるいは思惑的の輸入等がございました場合に、おそらく金融機関判断では、さような融資は自分の方で扱えないという場合も起り得るかと思います。金融健全化の一環といたしまして、全体的判断のもとに、健全ならざる融資というものは押えられて参るであろうと思っております。その限度におきましては、今回の措置といえども、やはりこの不要不急なる物資輸入等につきましては、作用を持ち得るものと考えております。
  33. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いいたしますのは、先ほど佐多君の質問でも触れておりましたけれども、今度の公定歩合引き上げによりまして、これは金融が引き締められて参ります。この結果、先ほどもお触れになりましたような、産業の計画のあるいは繰り延べとかあるいは計画縮小というようなことも起るであろうと思われるのですが、またそれを若干ねらっておるというふうにも考えられますが、これがたとえばいわゆる不要不急の産業の方にいけばいいのでありますが、全体の引き締めの結果といたしまして、たとえば今度日本としてさらに発展せしめなければならない基礎産業、特に現在隘路となっておる産業についても、やはり資金が足りないというようなことになりまして、政府計画しておりますものに対して、資金の面からいたしましてチエックされるような結果が生じないかどうか、これに対しまして、これをどういうふうに処置されていくかという点について、お伺いいたしたいと思います。
  34. 山際正道

    参考人山際正道君) 先ほども一言その点に触れましたが、御承知のように今資金審議会というのがございまして、政府のお考え金融界の事情とを照し合せまして、そこに重点的な融資を行う方針を御相談いたしております。それを受けまして、金融界といたしましては自主規整委員会なり投融資委員会なりできておりまして、これらの機関が相寄りまして、これを実際にどう割り振っていくかということを協議いたしております。彼此相待ってこれがうまく動いて参るようにいたしますならば、大体においてその目的は達成し得るのではないかというふうに考えております。
  35. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これはまた同時に資金蓄積の問題とも非常に関連があるわけでございますが、先ほどのお話では、資金蓄積を強めていくために貯蓄の増強を盛んにやらなければならないというお話でございました。従来もこの点については非常な努力をされ、最近の、景気と相待って貯蓄がふえて参りました。しかもなお追いつかないような状況になっております。そういうような状況で、今度たとえ相当な量の資金蓄積されましても、なおかつ政府計画しておりますような産業の拡大、ことに基礎産業を大きくしていくという点については、相当資金の面でむずかしい問題が起るのではないかというふうに考えるのでありますが、これに対しましては今お話になりましたような選別融資を厳重にする、そして単に市中銀行等とはかって自主的にこれを、何といいますか、その方向に向けていくというだけでは、どうも足りないような気がするのであります。もっともっと強い措置をとらなければならないと思うのでありますが、その点についてどういうふうにお考えになりますか。
  36. 山際正道

    参考人山際正道君) その点につきましては金融団体が、たとえば電力でございますと、九電力の方々と御懇談をいたしまして、実際上月別に、年度別にどれくらいの資金が要るのであるか。これは今少しく倹約できないかとか、繰り延べができないかとか、いろいろ具体的な相談をいたしておりまして、造船についてもさようでございます。また鉄についてもさようでございます。電気、造船、鉄あるいは石炭等、主要産業につきまして、それらの話し合いができて参りますれば、私は、健全金融範囲内において、こうした重要隘路産業に対する資金の供給というものは、相当期待できるのではないかと信じておるわけでございます。
  37. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 三十一年におきまして日銀の非常に貸し出しが増加しておるわけであります。これは盛んな投資需要があったためでございますが、それと同時に、日銀券の発行も増加しておる、こういうような事態になっておりますが、三十二年度は、これがどういうふうに推移するか、この点について見解を承わりたいと思います。
  38. 山際正道

    参考人山際正道君) 三十二年度におきましては、私は特別の事態が起りません限り、日銀貸し出し等がこれ以上増大いたしますことは期待いたしておりません。そのためにこそ、ここで健全金融態度堅持を要望いたしておるのであります。むろん予期せざる経済取引以外の要素による金融の異変がございまして、あるいは季節的な変動等もございまして、調整を要する場合はあり得るかと思うのでありますが、さような臨時的な処置は、これは地ならしいたしますのが日本銀行の任務でございますから、これは十分相努めたいと思いますが、いわゆるオーバー・ローンの系統に属するようなものは、これ以上生ぜしめないというような態度で臨んで参るつもりでございますが、これはぜひいろいろ努力いたしまして、さような実績におきめたいと考えております。
  39. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 この点につきましは、一昨年三十年度、あるいは三十一年度の状況から見ますというと、なかなかお説のようには推移しないのではないか。従来の計画相当大きくなっておりますし、そのためにやはり継続的に相当資金需要がある。従いまして、それを押えてゆけば、逆にその計画達成というようなことが非常に困難になるというような点で、計画資金のバランスがくずれてくるというようなことも考えられるのでありますが、そういう点について楽観的な見通しを持っておられるかどうか。
  40. 山際正道

    参考人山際正道君) 日本銀行といたしましては最も深く関心を持ちますのは、みずから発行いたしておりまする銀行券の価値、これに対する信頼が少しでもゆらぐというようなことがあっては相ならぬということでございます。申しかえますならば、通貨価値の確保ということに相なりますが、私はこれを最大の要件として考えまして、金融はその範囲において調節せらるべきものであり、また、このことなくしては産業計画も実は実現できないと思っております。今まで申し上げましたような具体的な健全金融確保のため・そうしてまた重点産業に融資する方法等をあわせ用いて、その範囲内において十分に協議を進めて参りまするならば、おのずからそこに目的を達成し得る道は発見し得るものと思うのでありまして、これはむろん簡単なことではございますまいけれども、最善の努力関係者一同によって払われまするならば、達成し得るものと考えます。
  41. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 持ち時間が参りましたので、簡単に願います。
  42. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の問題に関連してですが、日銀総裁のお考えでは、健全金融、従って蓄積資金限度において貸出をやるならば、昭和三十二年度も日銀の貸出は増額しないし、従って日銀券の発行高はふえない。そういうめどで政策を運用していくというようなお話のように承わったのですが、しかし、どうでしょうか、その点は。たとえば日本経済相当やはり成長をする、その成長に伴って生産も増加するし、従って流通物資もふえる、それに照応する通貨増というものが一つ。それから輸入原材料が、さっきお話のように、相当年度と年度との比較においてはふえておりますから、これはいわば物的な増加でありますから、これに見合う通貨の増、そういうものはそう固くならないで日銀の貸出増というものがあり、日銀券発行増もお考えになって、立てておかれるというようなことをめどにして政策をおやりになった方が、今、岡田君の言うようなデフレ的な作用をしないことになりはしないか。インフレになることはもちろん困りますが、といって、今のような絶対額を固執されると、むしろ逆にデフレ的な作用になるのではないか、その点は総裁どういうふうにお考えになりますか。
  43. 山際正道

    参考人山際正道君) 私は経済界の健全な自然的発展に伴って通貨所要量がふえるのは当然と思っております。従ってこれはオーバー・ローンでもなく、また憂うべき通貨膨張とも考えておりません。ただ、その自然発展に要する通貨量が銀行貸出という形によって日本銀行から出ていくのがいいのであるか、あるいは企業が保有することによってそれがふえるのがいいのであるか、あるいはマーケット・オペレーションによって増大するのがいいのか、これはまたおのずから方法があろうかと思いますが、要は経済の発展に伴う通貨所要量の増加につきましては、これは当然だと考えております。
  44. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまの日銀総裁のお話と関連しまして、三十二年度における資金の供給ということが非常に問題になるわけですが、日銀総裁としては、貯蓄がどのくらいが三十二年度において適当であり、またもちろん多ければ多いほどいいわけでありますけれども、大体計画はどの辺にめどをつけておられるか。それによって今政府で立てております五カ年計画の遂行に順調にそれを進めていくに必要な要というものをどこに置いておられるか。
  45. 山際正道

    参考人山際正道君) いわゆる貯蓄目標が三十二年度においてはどの辺にきめられることが妥当であろうかというお尋ねであろうかと考えますが、これは制度といたしましては年度末に大蔵省が大体計算をされましてその目標額を発表されることと相なっております。実は一両日前に貯蓄推進中央委員会の総会を開きまして、そこでもいろいろ皆さんの御意見を拝聴いたしました。これは政府の方でどうお考えでございまするか、まあ一番妥当な線だろうと今考えられておりまするものが、三十二年度は一兆四千億前後ということであろうかと思います。私もその程度目標を達成いたし、その範囲内において経済の堅実なる発展のための金融を行う。こういうことにいくのが妥当ではないかと考えております。
  46. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 昨年三十一年度までとはやや経済界状況等も変りましたが、なお三十二年度におきまして、今示されました目標の達成は容易であるというふうにお考えになっておりますか。
  47. 山際正道

    参考人山際正道君) 三十一年度の実績は、日本銀行の調べによりますと、一兆二千、まだ年度が締め切られておりませんが、一兆二千数百億じゃないかと思っております。それに対しまして、諸般の状況を考慮しまして、一兆四千億内外ということでありますれば、私はそれは穏健な、そしてまた可能な目標であり、ぜひともその程度は達成しなければならぬものというふうに了解いたしております。
  48. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いいたしますのは、今後の金融引き締めによりまして、私どもどうしてもそのしわ寄せが中小企業の方に寄ってくるのではないかということを非常に懸念いたすのであります。先ほどのお話ですと、市中銀行金利が上らないのだというようにおっしゃっておられましたけれども、しかし傾向としては、そういう方向にいくように私どもは考えられますし、特に引き締めの結果、中小企業の金融が困難になりまして、ここにやみ金利等が発生する余地がある、できてくるいうことから、中小企業は金が足りないということと、高い利息を払わなければならないという面で、二重の苦しみをするというような結果になるのではないかと思われるのですが、これに対しまして、何か特別な措置をお考えになっておるかどうか。
  49. 山際正道

    参考人山際正道君) 中小企業金融の問題に関しましては、先ほども佐多委員のお尋ねに対しまして一言申し上げましたわけでございますが、中小企業が日本の産業経済の構造上占める重要性にかんがみまして、そしてまた相当堅実に経営されている中小企業が非常に多いということにもかんがみまして、それに対する金融というものについては、金融機関は十分な留意をして、その疎通に任ずべきであるということを、常時申し合せております。先ほど申し上げましたように、実績におきまして、各銀行の貸し出しております中小企業金融部分も、毎年その率は増加して参っております。ことに今日三十二年度予算で御審議をなさっていらっしゃいますうちには、財政融資関係等において、相当その点は重点を置かれているように考えます。これは重要な問題でございまするから、常時その考え方において、中小なるがゆえに不当の金融のしわが寄るということがございませんように、相戒めて進んでおるような次第であります。
  50. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今の点でございますが、政府財政融資だけでももちろん足りないことは明瞭です。それでは市中銀行の方は、今のお話のような相戒めてやっておられるかというと、それはどうも当にならぬ。今後引き締められてくると、なおさら困難が増加してくる。もちろん中小企業のうちでも、経営のいいものはこれによって助けられますが、ボーダー・ラインにあるものがなかなか政府の方の金の融資も受けられない。銀行に走って行っても、どうも財布のひもが固くてだめだというようなことで、せっかくよくなろう、また少しめんどうを見てやればよくなるというものが、そのためにどうもうまくいかないというような事態が起るということを憂慮されておるのでありますけれども、この点については、日本銀行といたしましても、これは一つ十分な御配慮を願いたいと思うのであります。  次にお伺いいたしたいのは、先ほどもお話になりました選別融資の問題等でいろいろ御配慮になっておるようでありますが、この公定の歩合の引き上げでは、社債の発行に影響を及ぼしはしないか。そうしてこれが同時にまた基礎産業等の重要産業の資金計画あるいはそれの計画の遂行に影響を及ぼしはしないかという点についてお伺いしたいのであります。
  51. 山際正道

    参考人山際正道君) 今日社債の発行は相当困難視されておりますけれども、一月以来の実績によります、相当、量は増加いたしております。一方事業債について申しますと、一昨年は確か五十億台、毎月五十億台であったかと思います。昨年中は七十億台に上ったと思いますが、本年一月来は百億台を維持しております。だんだん出ておりますが、これがなかなかむずかしくなって参りました一つの有力な原因として、先ほど申し上げましたコール市場の異常な状態というもので妨げられておったのでございます。今回の措置によりまして、これが平常化いたしまするならば、社債発行の金融は比較的楽になろうかと思うのであります。もちろん今度の公定歩合引き上げは、先ほども申し上げました通り、一般金利水準を引き上げたり、あるいは社債発行条件を変えなければならぬという状態を考えてのことではございませんので、その市場正常化するという範囲において、社債発行は一そう円滑にいたしたい、かように努力したい考えでございます。
  52. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もう一点。政府の短期証券のレートが固定されております。この点で、金融調節が非常にむずかしくなって、不便な点もあろうかと思うのでありますが、この短期証券のレート、これをもっと市場金利に近づけた方が操作に便宜ではないかというふうにも考えられるのですが、その点についてどういうふうにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  53. 山際正道

    参考人山際正道君) いわゆる日本銀行の行います金融市場操作の材料といたしまして、政府の、ことに短期証券というものが、非常に有効な働きをいたしますことは御指摘通りでございます。ただいまの条件は、お説のごとく、必ずしも市場情勢を反映しているとはいえないかもしれませんが、実はその市場なるものがはっきり存在しないということが、なかなかその条件をはっきりきめかねる原因にもなっております。今後、だんだん申し上げました通り起債市場の育成等によりまして、適正な政府短期証券の金利を推定し得る時期になりますれば、そのように政府とも御協議をいたしまして、この金融市場操作を有効な材料として用いたい考えでございます。
  54. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあこれで、時間がございませんから。
  55. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連して。ちょっと一点、簡単にこの際一万円券発行についてお尋ねいたしたいのですが、印刷はされておりまするけれども、発行されないところを見ると、一万円を発行するとインフレ的な傾向を促進するのじゃないかという相当の世論の批判にかんがみて、お出しにならないのではないかと思うのでありますが、その点について、日銀総裁としてどういうふうにお考えになっておりますか。  それからその逆に、デノミネーションの主張がございますが、それについて日銀総裁としてどういう工合にお考えになりますか。お伺いしたい。
  56. 山際正道

    参考人山際正道君) 第一のお尋ねの二万円札の問題でございます。実はこれを通貨として許されるかどうかということの決定権は大蔵大臣がお持ちでございまして、大蔵大臣はまだ決定しておられません。  その次に、今度法定通貨として一万円札が認定されましたといたしましても、それをどういう場合にどういう支払いのために使っていくかということは、これは日本銀行の仕事に相なります。御指摘通り、過去のいろいろ経緯によりまして、一万円札を通貨として認定すること、あるいは特定支払いにこれを充当することが、直ちに物価の高騰、インフレを意味するといったような一種の心理状態が一部存在することは御指摘通りでございますので、私といたしましては、日本銀行がこれを取り扱い得る段階に相なりましても、その辺の一般的心理状態を十分斟酌いたしまして、一万円札を出す、用いるということ自体が、直ちにその心理を惹起するようなことのございません時期を選ぶことが必要かと、実は考えております。根本的には、まだそれは日本銀行が取り扱い得る段階には至っておりません。  次にデノミネーションのお話でございまして、私はこれはほんの私見でございますけれども、時期を得ますれば、デノミネーションをやった方がいいのじゃないかと実は思うのでございます。ということは、やはり通貨の基準になります一単位というものは、それ自体に何がしかの購買力を現実に持つという単位を選ぶことの方が常識的ではないかと思うのであります。けれども、諸般の情勢は、御承知のごとく、内外経済情勢は安定いたしておりません。その際にこれを実行いたしますと、またいろいろなことがこんがらかりまして、いろいろな国民心理の上に微妙な好ましからざる影響を持つこともあろうかと考えますので、その時期やその段取りにつきましては、むろん今は考えてはおりませんけれども、相当慎重を要する問題であるということは、自分では考えている次第でございます。
  57. 迫水久常

    ○迫水久常君 日本銀行総裁十二時までというお約束でしたので、十二時もだいぶ過ぎましたので、私の質問を申し上げたい点多々ございますけれども、きわめて簡単に一、二御質問いたしたいと思います。  先ほど山際日本銀行総裁のお話で、総裁の一番の希望とされることは、日本銀行券の価値の安定であるということのお話、まことにごもっともでございまして、全く同感でございまするが、日本銀行銀行券発行の元になりまするもの、すなわち金の保有、あるいは外国為替の保有、あるいは貸出、公債の保有等、いろいろございますが、現在の日本銀行銀行券の発行元の割合は、大体どういうことになっておりましょうか。
  58. 山際正道

    参考人山際正道君) お答えをいたします。ただいまのお尋ねでございますが、日本銀行券を発行いたしますその準備といたしましては、商業手形、国債その他有価証券類等、いろいろ法律の規定によりましてございますが、そのうちで金及び外国為替はどうなっているかという問題でございます。金及び外国為替の保有は、政府の管理下に入っておりまするのでございます。日本銀行の持っております金は、おそらく再評価前の価格で帳簿に載っているのではないかと思いますが、いずれにいたしましても、政府のコントロールのもとに入っておりますのでございますが……。
  59. 迫水久常

    ○迫水久常君 私の言うのは、金の保有の割合を伺っているのではなしに、発行準備のレィシォー、公債が何割であり、商業手形が何割であり、大体公債と商業手形だと思いますけれども、その割合がどういうことになっているか。
  60. 山際正道

    参考人山際正道君) 御質問の要点がはっきりいたしました。ちょっと実はこまかい割合の表を今持参いたしておりませんが、私の感じでは、やはり手形が多いのだろうと思います。それは、商業手形及び貿易関係の手形が相当入っております。その次が国債その他有価証券ということに相なっているかと思いますが、どっちかというと、やはり手形が多いと思います。
  61. 迫水久常

    ○迫水久常君 そこで、通貨の価値の維持ということについては、発行の準備の割合というものがきわめて重要な要素になると私は思います。要するに、通貨価値の維持をするということについては、通貨の数量というものを日本銀行が比較的楽に、容易に収縮しあるいは増発するという、通貨の数量を比較的楽に調節し得る、そういう態勢、準備を持っていることが一番いいことだと思うのでございますけれども、現在の通貨の準備の状況は、通貨発行の元になる状況は、先ほど総裁のおっしゃいました日本銀行券の価値維持という見地からいって、適正な、適当なものであるか、あるいは総裁のお考えでは、こういうような格好になった方がいいという何かそこにお考えがあるか、私がこういうことを伺いますのは、公債政策の問題との関連において、実は伺っているのでございまするけれども、その点について何か教えていただきますれば仕合せであります。
  62. 山際正道

    参考人山際正道君) 御指摘通り日本銀行券価値維持のためには、その準備となっておりますものが、直ちにこれは換価し得るという条件が非常に必要なわけでございます。その意味におきまして、国債、証券が重要な準備であることも、むろんその通りでございまするが、実際の問題といたしますと、先ほども申し上げました通り、証券市場というものが十分発達しておりません。で、保有有価証券が果して直ちに市場において資金化し得るか、あるいは手形等の方がその資金化が容易であるか、この判断は、現在の金融市場状況では、にわかに判定を下しがたいところであるわけでありますが、しかし理想といたしましては、証券市場の発達を育成いたしまして、国債、証券等が最もよい通貨準備として利用し得るような状態というものを、なるべくすみやかに達成いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  63. 迫水久常

    ○迫水久常君 もう一点。先般来当予算委員会において、主として社会党の方が御質問になったのでございますけれども、その質疑応答の状態を聞いておりまするというと、それを注釈して申しますというと、従前一兆円予算というワクをはめられた予算を組んでおる当時には、とかく財政の面からするデフレ的な影響日本銀行に、何といいますか、貸し出しの調整によってそれを調節してもらう。日本銀行にやはりげたを預けておった。ところが今度の予算では、私はきわめて適切なる予算と思うのですけれども、感じからいって、何となく日本国民経済の立場からいって、力一ぱいの予算を組んでおるような感じがするものですから、いわばインフレーションになるおそれが非常に多いということを感ぜられる方が多いようです。そうして政府側の答弁の状況では、金融と一体になってそのインフレ化は防ぐのだというお話もあるものですから、今度は逆の意味で、政府財政の跡始末を日本銀行に半分しょってもらうという格好になっているようだという点で、そういうような前提のもとに繰り返された質問が非常に多かったように私は思います。そこで大蔵大臣もわきにおられるのですけれども、山際総裁と池田大蔵大臣とは、何十年という親友ですから、きっとウマが合ってうまく行くにきまっているのですけれども、山際総裁のお口から、政府がこういう予算を組んで、自分としてはインフレにならないで済ましていく自信があるということをおっしゃってくださったら、社会党の方々も非常に安心されるのじゃ、なかろうかと思いますから、一言お話を願います。
  64. 山際正道

    参考人山際正道君) 先ほど申し上げました通り財政面から参ります金融上の影響につきましては、十分その具体的な方途について御配慮願いたいということを申し上げているのです。先ほど佐多委員から御指摘ございました財政面から生ずるような波は、極力避けて御運用を願いたいということをお願いいたしているのであります。それから金融の面につきましては、先ほど来申し上げております健全金融の線を貫くつもりでございまして、この建前をはずして、かりに何かのことで財政面からのしわが寄るということがございまして、健全金融の建前に反する以上は、どうもこれは日本銀行もお扱いしかねるということになります。しかし、私が財政の運営について要望するような点を、その通り具現せられ、また民間においても健全金融の線を確保し得るということでございますならば、私は私の最も念願いたしております日本銀行券の価値維持という点について、まずまずその責任を果していけるのではないか、かような念願で努力を続けるつもりでございます。
  65. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) これをもって山際日本銀行総裁に対する質疑は終了いたしました。  山際総裁には、御多忙中のところを本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。  午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  66. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず、委員異動について申し上げます。本日新谷寅三郎君及び成田一郎君が辞任され、その補欠として仲原善一君及び佐野廣君が指名されました。     —————————————
  67. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより昭和三十二年度総予算に対する質疑に入ります。
  68. 吉田法晴

    吉田法晴君 速記をちょっととめて下さい。
  69. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  70. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 速記を始めて。  小林君、議事進行について発言ありましたが……。
  71. 小林孝平

    小林孝平君 日ソ漁業問題に関連いたしまして、前全権である河野一郎氏を本委員会参考人として御出席を願い、いろいろお伺いいたしたいということは、しばしば委員長にまで申し入れたところでございます。特に昨日の総理大臣の御答弁によりまして、近く大体十二万トンの線で日ソ交渉は妥結するのではないかというような情勢になりましたので、河野さんからいろいろ従来の経過をお聞きすることは、非常に重大になったわけでございます。従って、従来河野さんの御出席に関しまして委員長がとられましたいろいろの御努力に対しては、非常に敬意を表しておりまするけれども、さっぱりこれが実を結ばないで今日に至っておるわけであります。委員長は、今後どういうふうにしてこれを解決されるのか、いつ御出席になるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  72. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) お答えいたします。私は去る十九日の朝に、河野一郎君の宅をたずねて参りまして、本委員会のさような御意見を伝え、そうしてそれに対する返事をもらってきました。それで、そのことはその日の理事会に報告いたしておったのですが、理事会はまだそれに対する熟議をまとめておらないことは、はなはだ遺憾でございますが、この問題については理事会にその処理を一任していただいておりますから、最近の理事会にさらにその結論を出していただこうと、委員長はそう考えております。
  73. 内村清次

    ○内村清次君 そうしますとすべて白紙に返して、この理事会に一任すると、こういう考え方ですか。これはぜひやはり総括質問が済み、あるいは補正予算の関連の質疑が済み、いよいよ本審議に入りましたそういう段階には、おそらくこれは理事会が開かれておると思うのです。これはそういう理事会の交渉があって、その中でこういう重要な問題は早く決定なさって、そうしてその移りかわりの当初に、委員長は、必ず出席を求めて、希望に沿いますというのが最初のお約束でございましたからして、これはやっぱり実行なされていかなくちゃならぬと私は思うのですが、かりに、委員長のただいまのお言葉では、理事会に一任だということで、呼ぶか呼ばないか、そういう点もすべて理事会に一任だというふうに私たちは感じますけれども、呼ぶことを、これを前提として、そうしてその日にちを最近の理事会において決定するという御意思ですかどうですか、この点をはっきり、呼ぶことは呼ぶということをはっきりしていただきたいと思います。
  74. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) その点は、呼ぶか呼ばぬかということを含んで理事会に一任されたと私は思っております。(「違う違う」と呼ぶ者あり)
  75. 内村清次

    ○内村清次君 それはおかしいじゃないですか。それは最初に委員長発言されておる。呼んでくれということで、委員の方からそういう要求もあり、しかもこれには動議まで出た問題ですから、呼ぶと、呼ぶことについて全力をあげて努力するということを委員長発言なさっておるでしょう。この約束というものは、委員会に対する約束というものは変っておらないはず、いつそれを呼ぶかという問題について、努力の結果、理事会にお諮りになって、どの日に、どういう時間に呼ぶということだけは理事会決定をするというふうに私たちは承わっておるわけですが、この点明確にして下さい。
  76. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) いや、私の理解しておるのは……。
  77. 左藤義詮

    左藤義詮君 議事進行。河野一郎氏を参考人として呼ぶ御希望がございました。これに対しては委員長努力をすると、しかし、出る出れぬかについては責任が持てないが、最善の努力をすると、河野さんの自宅まで訪問せられて努力せられたことは、理事会で御報告を承わっているのでありますが、これについて、どうしても、参考人でなければ証人として喚問しようという動議がありまして、動議の扱いについては理事会に一任をいただいたわけでありまして、自乗二回、理事会を開きまして、委員長から河野さん訪問のことは御報告がありましたが、この動議をどう扱うかについては、日程等のことが非常に忙がしくて、そこまでまだ話が進んでいない実情でございます。次の理事会において引き続きこの問題についてはまた御相談があるはずだと思います。従って、理事会までは、きょうはこの問題はまだ決定していないわけで、理事会におまかせしてあるままになっているわけでございますから、その点を委員長は先ほど御報告になったのでありますから、理事会におまかせを願いまして、きょうは直ちに質疑にお入り願うように願いたいと思います。
  78. 吉田法晴

    吉田法晴君 委員長は、速記録に残っておると思いますが、河野氏を呼んでもらいたいということについて、善処をいたしますということを約束されたのです。善処いたしますということは、証人で呼ぶ、呼んでもらいたいという動議が出たけれども、その形はとにかくとして、この委員会に呼んで明らかにする、この点を私は了承をされたものだと思う。そこで呼ぶか呼ばぬかを含めてではなくて、呼ぶが、その具体的な日時あるいは方法等については理事会において相談をしてきめると、こういうことで、委員長もそういう意味の御発言になったことだと思いますし、(「それは違いますよ」と呼ぶ者あり)左藤委員の御発言ございましたけれども、理事会で取り扱うのは、私はそういう取扱いだと思うのです。理事会におまかせになるのはかまいませんけれども、善処いたしますという表現で小林委員の動議を私はお取り上げになったものだと思います。いつどういう工合に呼ぶかということを理事会で相談をする、こういうことでおおさめ願います。(「理事会にまかせて進行して下さい」と呼ぶ者あり)
  79. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 理事会でこれを計らいます。(「質疑続行」「これはもう理事会にはっきり出ている」「委員長発言を求めている」と呼ぶ者あり)
  80. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いろいろ論議はありますが、われわれはさっきから申し上げておるように、呼ぶことを前提にして、いつどういう形で呼ぶべきかは理事会に御一任いたしたいと思いますから、そういうふうにお扱いになることを前提にして、きょうはこの論議を繰り返すことをやめて、直ちに議事にお入りを願います。
  81. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それは理事会で協議いたします。(「はっきりして下さい」「理事会でやるということをはっきりすればいいのです」と呼ぶ者あり)理事会で協議をして、そしてその問題について結論を得て取り計らいます。(「それではもの足りない」「委員長はっきりして下さい」「佐多君の発言を了承されたのですか、されないのですか」「呼ぶことを前提にして理事会に諮ると、その点をはっきりして下さい」と呼ぶ者あり)呼ぶことを前提とするということでなく、(「それでは駄目だ」と呼ぶ者あり)私の訪問した報告も理事会に申し上げてあるのです。そういうこととからみ合せて理事会で協議してもらわなければならぬ問題があるのです。ですから、次の理事会でその結論を出すようにして、そしてこれを善処すると言うより方法がありません。
  82. 吉田法晴

    吉田法晴君 そう言われると進みませんから、佐多君の通りに、呼ぶことを前提にして理事会に一任すると、こういう点を明らかにしていただきたいと思います。
  83. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それでは私から、この間河野君を訪問したときに、そのことを理事会に報告した件がありますからそれを……。その報告によりますというと、こういうふうになっているのです。十九日、今朝八時ごろ委員長は河野一郎君を自宅に訪問、同君と会見したが、その模様は左の通りであります。  一、昨年自分が訪ソの際の会談内容については、農林大臣在任中質疑にお答えした以外のことは何もありません。  一、現在行われている漁業交渉について自分のとった行動については、一切農林大臣に報告してあるので、必要があれば農林大臣にただしていただきたい。  一、従って私としては、参議院予算委員会出席する意思はありません。  こういう返事をもらってきて、これを理事会に報告しておるわけです。理事会はこれに対しどういう態度をとるかということが、まだ結論を得ていませんのです。従って、ごく最近のときにもう一ぺんこれを理事会に諮って、善処願いたいと思います。(「委員長委員長」と呼ぶ者あり)簡単にやって下さい。
  84. 吉田法晴

    吉田法晴君 総理なりあるいは農林大臣等にはここで質問をなされている。ところが総理は、私の方から指示したことはない、報告は受けたと、こういうお話でございますけれども、その河野発言の、そこで今読み上げられました点は、これは委員会でも問題の点、ですからそういうものを含んで委員会をやりたい、こうはっきり申し上げる。そして呼ぶことを理事会において相談してもらいたい、こういうことです。理事会としても、小林君の要望にこたえられるところまでまだ参っておりません。そこで、従来のそういうあれを含めて、小林君の要望に沿うために、呼ぶことを前提にして理事会で相談を願う、こういうお取り計らいを願えれば、話は理事会に移ります。小林君の要望にこたえて、河野氏を呼ぶことについては理事会で相談をしたい、こういうことに御確認を願えれば、これは議事にすぐ入って参ります。(「賛成」「質疑続行」と呼ぶ者あり)
  85. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) あらためて申し上げます。河野君の問題につきましては、参考人として呼んでくれという意見もありましたし、また栗山君からは、証人として喚問してくれという動議も出ておるわけでありますが、それらは今申し上げた私の報告もあります通り参考人としては出る意思がないと、こういう返事をしているのです。そうすると、次には証人として喚問するかどうかという問題が残るわけです。その点については理事会でよく相談をして、その結果をもたらして委員会に諮ると、こう思っておるのでありまして、できるだけ委員会の希望を満たすようにしたいと思っております。特に理事会でその点をはかります。(「了承」と呼ぶ者あり)  それでは質疑に入ります。
  86. 海野三朗

    ○海野三朗君 ごく簡単なんですけれども、総理にお伺いいたしたい。特赦の問題です、過日の。この特赦の問題は、ずいぶん私は世道人心によからぬ結果を及ぼしておるんじゃないかと、こう思うのでありますが、選挙の問題とか資金の問題についてだけ、特にこの特赦をねんごろにおやりになったようであって、これは、この特赦は、どうもはなはだ私は範囲が遺憾であったと思うのでありますが、総理はどういうふうにお考えになっておりますか。
  87. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 過般行いました恩赦は、大体従来のこの種の例にならってやったのでございますが、しかし、これに対しましてはいろいろな批判もございます。今、海野君のお話しのように、世道人心に及ぼす影響等も十分考慮しなければならぬ問題でありますから、これらの点を十分考慮いたしまして、将来かかる場合における一つの参考として将来の問題を考えたいと、かように考えております。
  88. 海野三朗

    ○海野三朗君 過日、原子兵器を日本に持ち込む場合には、国民の総意として断わると、総理は言われたのですけれども、アメリカの方では機密に属するのでありますから、一言もそういうことは口外しない、黙って持ってきておる。それでありますから、日本人にはわかろうはずがない。その点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  89. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 従来原子爆弾、その他原子兵器の問題につきましては、日本国民の非常にこの点についての深い関心と真剣な要望というものがございまして、従ってアメリカにおきましても、今年初め原子部隊の移駐の問題が一部の新聞に伝えられましたときに、責任ある国防省及び国務省の当局からそれを否定し、またさらに、そういう場合においては日本と協議をするのだ、協議せずしてそういうことはしないということを言明をいたしております。そこで私は過般来、国会における何におきましても、そういう持ち込まれる場合においては相談を受けることになっておるし、その相談を受ければ、これをお断わりするということを明瞭に申しておるわけであります。
  90. 海野三朗

    ○海野三朗君 東南アジアは、みないずれも仏教国であって、東南アジアのいわゆる外務省の出店に対しましては、宗教の面のいわゆる仏教の学者、そういうう人たちをその出先のアタッシェにでもされたならば、非常にいいのじゃないかと、こう考えるのでありますが、総理はいかようにお考えになっておりますか。
  91. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 御指摘のように、東南アジア諸国の大部分が仏教国でございまして、この仏教に対するこれらの国々の信仰というものを、これらの国々との友好関係増進の上に適当に加味して考えていくということは必要であると思うのであります。ただ今日御提案のような、宗教人を大公使館のアタッシェとしてそこに駐在せしめるということにつきましては、なお十分考究をしてみたいと思います。
  92. 海野三朗

    ○海野三朗君 科学技術庁長官にお伺いをいたしますが、化学分析のセンターはいかになさったのでありますか。
  93. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 分析センターは、当初国立のものを希望しておりましたけれども、本年度の予算規模の中では、東京の工業試験所の方にこれを、分析センターの将来国立移管を目途として、これを扱わしめる方が適当と思って、本年、三十二年度の予算措置においては、東京の工業試験所にこれを拡充設置するということに方針を立てたわけであります。
  94. 海野三朗

    ○海野三朗君 工業試験所の分析に一緒になさったという、そういうふうなお考えは、あなたの方でこれに対しての御構想がなかったのでありますか。どういうふうにしていこう……それに対しての予算の裏づけなどがどうなっていたのですか。
  95. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 私の方は、当初は、国立の分析中央センターを作るのが好ましいと考えておりましたけれども、三十二年度としては、それはいろいろの内部事情があって、むしろ三千万円ばかりの予算をもって、東京の工業試験所の方に委託するのが順序としては適当である、こう考えまして、そういう措置をとったわけでございます。
  96. 海野三朗

    ○海野三朗君 この関係行政機関の試験研究に関する経費などに関する実施方針については、すでに公約通り、大蔵省はあなたの方の意見を十分尊重されたのでありましたか、どうですか。
  97. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 大蔵省と打ち合せまして、そうしてそれが、われわれが計画しておるのに最も適合するものとして、そういう両方の合意の上でそういうことが成立いたしたわけでございます。
  98. 海野三朗

    ○海野三朗君 簡単なことでありますが、総理にお伺いしたい。この国会の運営の正常化でありますが、野党が三分の一もいるのでありますから、なるべくこの自民党だけの考えをもって無理に押し通すということをされないで、幾らかその方面状況をも勘案して政治をとっていかれるのがいいのじゃないか、これを無理にするからして、この前のような乱闘国会などが起るのである、私はこういうように思うのでありますが、総理はいかようにお考えになるか、その点だけ。
  99. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 国会の運営を正常化して参りますためには、私は二大政党になっておる現状から見まして、この両政党の意見というものを十分議場において、あるいは委員会におきまして論議を尽して、そうしてたとえ野党、少数党といえども、その論議の中にとるべきものがあるならば、これを取り入れて修正して、一つの案ができ上ってくるということが、国会の運営をしていく上からいえば、正常化の見地から見て当然であろうと思いますが、ずいぶん、しかし両党においてとうてい相いれない、また非常に議論がそういうふうに対立をして、そうして両方の論議の歩み寄りなり、あるいは取り入れることがどうしてもできないというような問題も、もちろん問題によってはあろうかと思いますけれども、十分に論議を尽していくならば、その間におのずから一致点が出てくるというところが、私は委員会やあるいは本議場等において十分に論議を尽すということの意義であると思うのであります。従いまして、当然、すべての問題において野党の見解を取り入れるということではございませんけれども、できるだけ論議を尽して、そうして意見の相違であるけれども、そこに話し合いのできる限りにおいては話し合いをしてもっていくということが必要じゃないか、かように考えております。
  100. 海野三朗

    ○海野三朗君 宇田国務相にお伺いしますが、研究公務員の待遇改善策はお考えになっておりますか、これはどういうふうな方向におやりになっていますか。
  101. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 研究公務員ないし技術公務員につきましては、従来待遇が非常に劣って、見劣りのしている点がありましたので、それぞれ今回は公務員につきましては別表に掲げて、そうして較差のないように配慮をするようにいたしたいと思います。
  102. 海野三朗

    ○海野三朗君 このたびの公務員のこの改訂案から見まするというと、やはり研究者の方は少しもよくなっておりません。その点については、具体的に申し上げますならば、事務官と技術官との差がはなはだしいし、その技術官の下に研究官がくることになっておる、昇給の順序は。それで金高も、私はここに計算をしてきておりますが、そういう点についてはいかようにお考えになっていらっしゃいますか。
  103. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 技術官が事務官の下になっているというふうなことにはならないと思っております。技術公務員の待遇は、われわれは差等なしに、しかも特に内部的に運営上特別な配慮を払って、十分その御心配のないような方向に配慮いたさなければならない、こう思っております。
  104. 海野三朗

    ○海野三朗君 現行法によりましてはね、事務系の方と技術官の方とは、大学を出て十年たつというと四千五百円の差になる。十五年たつと一万円の差になる。二十年目には一万六千円の差になります。これを今度は改訂した場合においては、十年たてば五千円の差があるし、十五年たてば一万一千円の差がある、こういうふうな結果になってくるのでありますが、その辺はいかようにお考えになりますか。
  105. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 給与担当でございますからお答えしたいと思います。技術官と事務官との給与の差が非常に多いという御指摘でございますが、これは技術官も事務官も同じ俸給表によってやっておりますから、運営のいかんによるものであると思います。それでありますから、今度の改正によりまして特に悪くしたとは存じません。今後のこの表によって行政的に運営される場合にいろいろなことが起ると思いますから、最善を尽していきたいと思っております。
  106. 海野三朗

    ○海野三朗君 運営といって、今そこに弾力性を持った、いわゆる弾力性、お話でありますが、そういうことがないようになさったらいかがですか。
  107. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 今度の俸給表の上にはそういうことのないように考慮してあります。
  108. 海野三朗

    ○海野三朗君 このたびの改訂については明かに差が出て参ります。もう少し、この点については御研究になっておるのでありますか、どうなんですか。
  109. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 海野委員の仰せられるように、たとえば研究所に長年勤めておるとか、特殊な職を奉じておる者につきましては、とかくそういうふうな傾向に流れるおそれがありますから、この異動のたびに自分の地位が、あるいは給与がよくなるというふうな傾向の起るようなことによってその技術関係の者がしわ寄せの犠牲にならないように、われわれは特別に考え、そして今後は制度上そういうことを避けることのできるような研究は進めていきたいと考えております。
  110. 海野三朗

    ○海野三朗君 こういうふうな公務員の給与改訂の問題、科学を最も重要視しなければならぬときに当ってこういう制度をお出しになるということは、時代の認識不足なこともはなはだしいと私は思うのですが、今日の世の中は経済、科学技術なのであります。それに従事する者があまりにこれはもう俸給が下になっておる、そういうふうな仕組みになっておるのが今度の公務員制度だと私は思うのですが、いかがなものですか。
  111. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 公務員制度の欠陥は、まだ仰せられるように幾分各方面に散見されるようにわれわれは考えます。従ってそれをどういうふうに全体を総合的に運営する上において改正をすべきかということは、特に技術を大切に考えますわれわれの職場の方面から申しますると、なお一そうこれは深く研究を続けていきたい、そして仰せられるようなことの欠陥の起らないような具体的処置を考えたいと、こう考えておりますから、御趣旨に沿って今後研究させていただきたいと、こう思います。
  112. 海野三朗

    ○海野三朗君 科学技術情報センターの御構想を承わりたい。
  113. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 科学は御承知のように最近は非常な新しい研究が、世界的に情報を取らなければならない環境にあります。しかもそれが民間とか政府でばらばらに入ってくることでは、国の総合的な技術的なレベル、あるいは技術的な要求を満足することは困難でありますから、そういう意味で、国を一本にして内外情報をまとめて、しかもすみやかに、そしてそれを大企業のみならず、最も必要とするところの中小企業の企業体制を整えるために必要な技術をすみやかに導入することのできますように、また配給できますようにいたそうと思って、科学情報センターを設置することにいたしたわけであります。
  114. 海野三朗

    ○海野三朗君 その特殊法人としてお考えになった理由と、それから民間との意見調整がどんなふうでありますか、調査普及局と、御承知の東北大学でやっております科学技術総覧と、それから製鉄でやっております製鉄総覧、そういう方面との関係、また諸外国におけるこの情報機関の実情を承わりたい。
  115. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 詳細は政府委員からお答えいたすことにいたします。
  116. 三輪大作

    政府委員(三輪大作君) お答えいたします。  特殊法人になぜしたかという点につきましては、ただいま長官からお話のありましたように、科学技術の振興をはかるために情報センターが最も必要であるという建前から申しますと、公共的性格を帯びておるという点で、準国家的機関といたしまして特殊法人が最もふさわしいという点、それから、これはサービスをモットーといたします関係上、弾力性がなければいかぬ、運営におきまして。なお人材を広く集めるという点から考えましても、純然たる国家機関でありますというと、給与その他の点におきまして、人材を集めるというためには困難でございますために、特殊法人という形がこのような機関としては最も適切であるという理由から特殊法人にいたしたわけでございます。  次に、外国の事情でございますが、欧米諸外国におきましては、科学技術情報活動は昔から古く非常に盛んにやっておりまして、米国におきましても、商務省の中に技術情報所というのがございまして文献活動などをやっております。英国におきましては科学技術研究庁の中に情報部がございまして、ここでやっております。フランスにおきましても、国立科学研究センターの中に文献センターがございましてやっております。またイタリアにおきましても国立科学研究会議の中に文献センターがございます。その他の国におきましても同様の文献活動をいたしまする機関が古くから存在しておりまして、非常な活動を続けております。これらの諸国の実情を調査いたしますと、その性格が国家的機関であるかまたは国家的機関に準ずるというものが多いわけであります。  第二としましては、いろいろほかの文献活動をやっておりまする専門的な機関を総括するところの中央的、中枢的な科学技術情報機関がございます。  なお第三といたしましては、図書館のような書籍とか資料を永久保存する業務をやっております。図書館業務とは別に、文献活動をする機関がはっきり区別して存在するという三つの点が諸外国の実情からはっきりいたしております。  次に現在日本にありまする民間の情報活動との関係でございますが、科学技術庁の中に科学技術審議会という機関がございまして、その中に情報部会がございます。この情報部会の意見は広く学界、業界、その他関係行政官庁から専門家、あるいはこのような活動に対して御理解のある方々を委員にしておるわけでございますが、そういう部会におきまして広く民間の意向も織り込みまして、本科学技術情報センターの構想を練ったわけであります。なお、現在活動をやっておりまする鉄鋼総覧とか、あるいは科学総覧という機関に対しましては、再三再四お互いに意見を交換し合いまして、今後情報センターの運営に当りましては、現在既存の情報活動をやっておりまする、いわば専門的文献情報活動機関とはともどもに提携いたしまして、かような機関は一つの単位情報機関といたしまして、それを総括するのが今度できまするところの日本科学技術情報センターということで、情報センターは法律にも書いてありますように、日本の科学技術情報に関する中枢的機関といたしまして、内外の科学技術に関する情報をすみやかに、かつ的確に提供すると、こういうふうな中心的な機関といたしまして発足するということでございますので、現在ありまする既存の民間その他の情報活動をやっている機関とは十分連絡を密にいたしまして、重複を避けてりっぱな運営をやっていきたいと考えております。以上でございます。
  117. 海野三朗

    ○海野三朗君 この科学技術総覧でも製鉄技術総覧でも容易な仕事じゃないのでありますが、この情報センターに対する機構や人事については、どういう御構想を持っていらっしゃるか、人間は何人ぐらいでどういうふうにしておやりになるお考えでありますか。
  118. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 当初は百五十名程度で出発をいたしたいと存じております。そうして情報はどうしても民主的に公開していくのを原則にさせたいと、こう考えておりますから、いずれにいたしましても、民間の意見をよく活発にその中に取り入れまするように、官庁の事務に流れないようにするために、官民一致して組織運営をはかることのできるように配慮をいたしたいと存じております。従って資金の面におきましても官民半分々々になっております。
  119. 海野三朗

    ○海野三朗君 とても百五十人ぐらいでは仕事はできないと私は思うんです。まあそれはそれとして。  この技術法案の、その技術士の法案のその必要なる理由とその構想及び建築士、測量士との関係についてお伺いいたしたい。
  120. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 技術士のたとえばヨーロッパでコンサルタントとか、コンサルティング・エンジニアとか、いろいろ新しい技術的な社会的要求に応じて、われわれはこれをそのレベルを一応社会的要求に応じ得るような権威あるものにいたさなくてはならないというのが基本考えであります。従って、それに応ずるようなこの試験あるいはそれに必要な彼の経験等を十分に調査いたしまして、そうしてその要求に応ずるような制度を持たなければならないというのが、自分たちのこの法律の基本考えであります。そうしてそれにこの分類をして、そうして技術士としてこれを国家が待遇する場合の分類の仕方は十数目に分れて、そうしてそれぞれの専門の立場で社会的にその地位を責任を負ってもらうようにすべきと考えておりますが、ただいま申された建築士、もう一つ何ですか、それぞれの既存の法律との関係等については、別に政府委員の方から技術的な説明をいたさすことにいたします。
  121. 原田久

    政府委員(原田久君) お答え申し上げます。ただいまの建築士あるいは測量士と、技術士法による技術士との業務の関連でございますが、前者の測量士、建築士というものは、御承知のように、業務につきましてその者でなければできないという業務がございます。いわゆる業務の独占でございます。ところが今回制定します予定になっております技術士法の方では、名称の独占となっております。その技術士の名称を用いて、技術上の相談をすることを、技術士でない者がすることは禁ずる。要するに名称独占の規定があるだけでございます。従いまして両者の間には業務上そういった意味の区別はあるわけでございます。もう少し詳しく申し上げますれば、技術士の名称を用いない限りは技術上の相談を何人が対価を受けて指導をしてもよろしいという形になっております。そういうわけで業務の独占と名称の独占ありますが、技術士の方は名称独占だけであります。名称を独占させますゆえんは、技術士というものは他人の技術上の秘密にまでわたっていろいろ相談に応じますので、そういう意味で十分信用を受ける必要がありますので、そういう名称独占の形をとった次第でございます。
  122. 海野三朗

    ○海野三朗君 今世界技術革新の時代に当って、この科学技術庁は発足後どんなことをされ、またどんなことをこれから先やっていこうという御構想を一つ具体的に承わっておきたいと思います。
  123. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 科学技術庁の当面の処置といたしましては、新しい技術の基礎を日本の学界にいかにうまく的確に配分していくかということと、もう一つはただいままで存在するところのいろいろの科学的な、技術的な研究が国によって、国立でなされておる、あるいは民間において広範になされておりますが、それが重複をしておる、あるいは過不足、技術的に見て非常なアンバランスの面がある、そういう点を取り上げまして、われわれが総合的に国立と民間との研究機関の総合運営をはかりたい、これがただいまとっておる行政措置一つの重点であります。  その次に非常に特許がたくさんありますが、非常に貴重な特許もわれわれは随所に見受けられると思います。それはわれわれの経済の中、生活の中にいち早く導入すべきものでありますが、特許行政に関する限りはわが国は非常に立ちおくれております。従つて非常に重要な発明がなされた場合に、むしろその特許は外国人に買われてしまって、せっかくの貴重な発明がわれわれの手の中に残らず、むしろ外国人の手の中に先に渡って、われわれがこの重要な研究を進める場合にはむしろわれわれが国費を投じて一部分ロイアルティを出して買い戻さなければならないという矛盾が各所に見受けられます。従って科学的な、技術的な進歩の早いときに、日本人の頭脳で当然発明されたものがわれわれの特許行政の不備のために不本意に外国に利用されて、逆にそれを買い取らなければならないというような行政ははなはだ遺憾でありますから、科学技術行政といたしましては、特許行政を特に重要視いたしまして、すみやかにこの権威ある特許はわれわれの責任において取り上げて、そうして実際の企業面、生活面において活用すること、少くともこのロイアルティをわれわれが外国に売るという配慮は行政的にすみやかにとらなければならないものである、こういうふうに考えまして、研究機関の整備と特許行政のすみやかなる体系秩序化ということを考えなければならないと思っております。  そうしてその次に、この科学技術庁のとりあえず本年度に取り上げております問題点は、金属材料研究あるいは航空技術研究、それの機関の整備、また最近におきましては、御承知のように原子力に関するところの基本研究をするために、日本原子力研究所の整備をはかっていく、こういうのが具体的な行政措置であります。いずれにいたしましても、それは総合した長期計画の上に乗せなければ十分の成果が上らないものでありますから、現在のところ科学技術庁は経済企画庁の長期、短期計画と合せまして、科学技術に関する特別な計画をそれぞれの専門分野にわたって立て、総合的な科学技術の開発計画を持ちたいと思って、ただいま検討中でございます。
  124. 海野三朗

    ○海野三朗君 ただいまの特許庁のあり方は、あれでよろしいと思っていらっしゃるかどうか。各部門にわたってのあの特許申請の書類が積んで山をなしている、これで今特許を云々なさったが、いかなる具体的な御構想をあなたはお持ちになっていらっしゃるのか、今の特許庁のあり方でよろしいと思っていらっしゃるかどうか、ちょっと伺いたい。
  125. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 特許庁の審理がおくれていることは事実でございますので、これを解決するために本年度百人の陣容を増しまして、そうしてこれを処理する、で、一度に大きく審査員を増すことはできませんので、これを二、三年計画で今後事務が渋滞しないように計画的にこの処理方法をはかるということで、本年度これを予算化しましたので、今年度からは非常に審理の事務が進むだろうと考えております。
  126. 海野三朗

    ○海野三朗君 特許庁の調べる人たちはほとんど技術官であって、その技術官の人たちはほんとうに盛り上る熱意がはなはだ欠けておるように私は思う。で、その点に対して待遇の問題が出てくるのでありますが、その点についてはどういうふうに通産大臣はお考えになっていらっしゃいますか。
  127. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 先ほど宇田国務大臣からお話がありましたように、技術職員の待遇が不平等にならぬようにという考えで、事務職員と比べて待遇の悪くないような方法をとってやっております。
  128. 海野三朗

    ○海野三朗君 昨年国会で付帯決議さされたわが国の研究試験所に関する実態調査の結果はいかようになっておりますか、宇田長官にお伺いしたい。国立研究試験所の研究機関の研究成果の活用状況はどんなふうでございますか。
  129. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 昨年中の成果につきましては、いろいろの分野に広範にわたっておりますから、それは特別に調査いたしまして、最近国立研究試験所の調査はでき上っております。それでそれの整理中でありまして、もうごく最近にその結果を発表してお届けできると思っております。
  130. 海野三朗

    ○海野三朗君 化学分析機関についていかなる構想をお持になっておりましたのでありますか、先に。そうして大蔵省はどういうふうな理由でこれを受け入れられなかったのであるか、宇田長官と大蔵大臣にお伺いいたします。
  131. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 先ほど申し上げましたように、この民間の試験所に約三千万円ばかりの予算を立てまして、それで本年度はとりあえず差しつかえないとこう考えまして、とりあえず本年度はそういう措置を講じてあります。来年度以降におきましては、もう少し拡充をいたしまして整備をはかりたいと考えております。
  132. 海野三朗

    ○海野三朗君 今のはちょっと違うんです、ただいまの宇田長官の話は。私は化学分析機関というものはどういう御構想を初めお持ちになっていたかということをお伺いしたんです。で、それに対して大蔵省の方と交渉なさったんでありましょうが、大蔵省の方ではこれをどういう理由で削られたのであるか、その点をお伺いいたした、どういう御構想をお持ちになっていたか。
  133. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 当初は国立の中央分析所を作るのが適当じゃないかと考えておりました。それで中央の分析所を設立することについて大蔵省と折衝いたしましたが、予算規模等の関係がありまして、特に原子力等の関係もありまして、本年度は東京試験所にこれを委託して、そうして三千万円をそれに交付するのが適当である、こういう結果になりました。
  134. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 化学分析の問題につきましては、各方面からいろいろ要求があったのでございます。ことに役所の方からの要求というよりも、民間の方の要求が強うございました。そこで当初は科学技術院の方からと工業試験所の方と両方出て参ったのであります。もともと宇田さんの方では国立のあれを別途にお作りしたいというふうなお考えでございました。しかし何分にもこの問題は今の状況から申しまして非常に急ぐ問題でございます。で、新たに土地を選定し家を建てるというのでは間に合わない、とりあえずすぐ動く工業試験所の方に適当な予算を見込んで、今年はそれでやってもらった方が民間の要求にも応じられるというので、工業試験所の方に予算を組んだのであります。
  135. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは化学分析機関というものは、来年度かあるいは来々年度においてでもお建てになるお考えを持っておるのでありますか。今の工業試験所に委せただけでいいと思っていらっしゃるのでありますか。
  136. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 産業技術の発展に非常に重要なことでございますから、将来相当の施設をいたしたいと思っております。
  137. 海野三朗

    ○海野三朗君 この科学研究所は将来どういうふうになさるお考えでありますか、宇田長官にお伺いしたい。理研です。
  138. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) これは従来の歴史がありますから、その歴史に沿って、また現在持っておる優秀な技術でありますから、現在持っておる優秀な技術を伸ばすように、そうしてそれぞれのただいままでの研究の過程を尊重いたしまして拡充すべきものであると考えております。
  139. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますと、あのままで大きくしていこうというお考えですか。
  140. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) あのままでいいとは断言はできないと思いますけれども、とりあえず当面の処置としては、現在の技術院と現在の研究分野を尊重して、そうしてこれを伸ばしていく、制度上これを株式会社をあるいは他の法人として切りかえるかどうかという意見もありますけれども、それにつきましてはまだ結論は持っておりません。
  141. 海野三朗

    ○海野三朗君 現在の世の中は経済と科学技術以外にはほとんどないと言っても過言でないと思うのでありますが、科学技術振興に関するいわゆる長期計画の御構想と、今日までのまず科学技術庁の進んできた道がこれでいいとお思いになっているか、これでまだまだ足りないのだというふうにお考えになるか、その点一つ御構想をはっきり伺いたい。
  142. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 科学技術庁ができましてようやく一年そこそこでありますから、もちろんただいまのような科学技術庁のこの能力では新しい技術革命に対応する体制にはなっておらない、こう考えておりまして、ただいま申しましたようないろいろな分野において新しい計画を立てて、国の進む方向に合うような科学行政を拡大拡充していかなければならないと考えております。
  143. 海野三朗

    ○海野三朗君 それでは方向を少しかえまして、原子力の予算が、まあ相当取ったとお考えになっておるようでありますが、私考えると、ほんとうにこれは鼻くそほどの予算である。このうちの原子力の基礎研究費にはどれだけ向けようとお考えになっていらっしゃるのか、基礎研究です、これを伺いたい。
  144. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 原子力の基礎研究費と申しますると、ただいまのところ日本原子力研究所のことであろうかと存じまするが、その点につきましては約六十億を振り当てることになっております。また燃料関係でしたら燃料公社でありますが、燃料公社におきましては探鉱、製錬等を合せまして約十億ばかり配分する、こういう考えであります。
  145. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 関連して。今のは原子力関係の経費すべて合わして六十億、従って原子燃料公社の分も含めてというふうに私たちは承知しておりますが、ちょっと……。  それからもう一点、同時に国庫債務負担行為がさらに三十億ついておりますが、これはどういう方面にこういう国庫債務負担行為が必要になっているのか、その点……。
  146. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 国庫債務負担行為を合せまして日本原子力研究所関係予算は約九十億、また燃料公社関係予算は約十億、こういうことになっております。その内訳は政府委員より説明させてもよろしゅうございます。
  147. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 じゃ、政府委員から……。
  148. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) ただいま大臣から御答弁がございましたように、九十億の予算の中で六十億は現金で、三十億は債務負担行為になっておりまして、この債務負担行為をつけました理由を御質問のように拝聴いたしたのでございますが、原子力予算の方は、御承知のように非常に事柄自体からいたしましても、なかなか初めにはっきり予定を組みましても、事態の進み方が早かったり、あるいは外国との関係等もございまして、必ずしも当初現金で組んでおったものばかりでまかない得ないという意味合いも出てくるかと思いますので、こういう債務負担行為の予算をちょうだいいたしまして、それによりまして年度の後半期等におきましても建設したりあるいは資材を買い取ったりというようなものに対しましては、その支払い額を来年度に繰り延べてもやっていいのじゃなかろうかというふうな趣旨もかね合せまして、負担行為を三十億を見てもらったわけでございます。
  149. 海野三朗

    ○海野三朗君 私のお伺いしたのは、原子力の研究といっても、アプリゲーションの研究もありましょうし、伺っておるのはその基礎研究に幾ら費されるお考えであるかということを伺っておるのです。原子力の基礎研究……。
  150. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 原子力予算の内訳にはいろいろの分野がございますが、特に完全にこれは基礎研究の分野だと思われますものは、研究所の予算に組んであります十四億の分野が基礎研究の分野に該当いたします。ただ同時に国立試験所とかあるいは関連重要産業等に補助金あるいは委託金等を出しまして、そうして応用研究の一歩手前の基礎研究の段階を非常に広範囲にわたって進めておりますので、その方の金額も約八億近くの金額に上ります。従いまして二十数億の分野が大体基礎研究の額というふうに考えてよろしいかと思っております。
  151. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと関連して……。先ほどの債務負担行為について御説明がございましたが、買いたいものと申しますか、支出の先がはっきりいたしませんが、先ほどは機材等を買って六十億で足りない分があるかもしらんと、何かこういう余裕金のような説明でございましたが、そういう債務負担行為はこれは許されるべきじゃないと思いますが、もう少しどういうものに支出する予定なのか、あるいは買う予定なのか、もう少しはっきり願いたい。
  152. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 御説明申し上げます。債務負担行為などで一番大物になりますのは建築関係のものでございまして、年度に計画をしまして、そうして建設をどんどんやっていった結果、その支払いは来年度で支払うというふうなのが一番大口になっております。そのほかにたとえば燃料等の問題もございまして、買い取りを契約はいたしますけれども、支払いは来年度に繰り越すというふうなものもございます。
  153. 吉田法晴

    吉田法晴君 大蔵大臣にちょっとお尋ねしますが、そういう燃料を買って、それで予算の中であるいは払えるかどうかわからないから繰り延べて支払うかもしれない、そういうものを債務負担行為としてお認めになったのですか。まあ建築と燃料と二つだけ出たのですけれども、私どもそういうものは、これは従来普通の予算で行われてきた、債務負担行為のものでなければ出すべきではないという今の御説明で、私どもは債務負担行為にされた点について納得がいきませんから、どういうように御了解になって認められたのか。
  154. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 原子力関係予算につきましては、実を申しますと、われわれにはなかなか初めわかりにくいのでございます。どの程度進むべきか、またどの程度受け入れ態勢があるかということは、初めての仕事でわれわれもなかなかわかりにくい。数回にわたりましていろいろ財界、学界の人とも検討いたしました。海野さんもたびたびおいでになったようでございまするが、そういう関係で特に重要な研究費目でございまするから、十分基礎的研究とそうしてアプリケーション等もやっていきたいという考え方でいっておるのであります。従いまして今後一年間にどういうことが起りまするか、重要な仕事でございまするから、できるだけ予算は、この問題にはたっぷりしよう、そうしてその状況を見ながら予算の執行をやっていこう、予算外の債務負担行為でございまするから、もちろんよほどよく考えてやらなければいけませんけれども、せっかく進行している計画予算関係で途中で消えてどうもこうもならぬようになっては、これは事を欠きますので、一応昨年は、あれは十五、六億円でございましたが、これを六十億にふやす、そうしてまた建物その他いろいろな点で債務負担行為もみた方が適当であるという考え方から、両方にわたって計画いたしたようなわけでございます。
  155. 吉田法晴

    吉田法晴君 重ねて恐縮ですが、それならばこれは三十二年度に支払われなくても、三十三年度にもしまたがるとしても、三十三年度の初期には、これは支出済みになるものの性質のようです。今のお話ですと、燃料、建築……。それなら六十億の予算を三十億ふやすかどうであったかは別として、ふやすことはいいことでありますので、三十億の債務負担行為をなすべき理由は、少くとも先ほど局長の御説明では、私ども納得ができぬのです。その辺をどういう工合に理解をされて支出をされたか、それをお尋ねいたします。
  156. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 建築その他の施設の場合でございますが、契約は三十二年度にする必要がある、しかしその代金の支払いは三十三年度以降にわたる。これはまさに国庫債務負担行為を必要とするわけでございます。さようなものとか、あるいは原子核燃料の購入、または賃貸借にいたしましても、その契約が翌年度にまたがって、翌年度に現金の支払いを必要とするようなものがもしございますれば、これは予算ではなくて国庫債務負担行為の御承認をいただかなくっちゃならぬわけであります。さようなものがあることを予定いたしまして、三十億円の予算外国庫負担契約の御承認を願っておるわけでございます。ただいまの一吉田委員が例にあげられましたような、三十三年度の初頭において支払いを必要とすると、そういうものにつきましては三十二年度の予算でいいのじゃないかというお尋ねでございましたが、もしその契約の履行、代金の支払いが三十三年度にわたることが明瞭でございます場合には、これは予算よりもむしろ国庫債務負担行為の御承認をいただくことが適宜かと存じます。
  157. 海野三朗

    ○海野三朗君 湯沸かし原子炉を東海村に入れたということ、私はまだ行ってみないのでありますが、つまり原子力時代に当っていかなる受け入れ態勢をしておられるか。その受け入れ態勢がどういうふうにできておりますか、それを一つお伺いいたしたいと思います。
  158. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) どういうふうに受け入れるかということにつきましては、とりあえずウォーター・ボイラー型は日本原子力研究所に置く、次にCP5が三十二年度末期に入って参りますが、それにつきましても従来通り計画に従って、日本原子力研究所に受け入れて置く、こういう方針であります。そのほかの実験炉等につきましては、まだ発注にも至っておりませんから、その点につきましては、なお情勢変化等もありますから、もう少し検討いたしたいと考えております。
  159. 海野三朗

    ○海野三朗君 でき上ったものを買うことはいと簡単でありますが、こちらの方に入ってきてから、やはり原子力というものは地からわいたものでないといけないと私は思うのです。ほかから買ってきたものだけ、それをそっくりやって、もしそれが故障が起ったときどうするかというふうな点を考えてみまするというと、この受け入れ態勢が十分できていなければいけないのです。その受け入れ態勢がどんなふうにできておりますか、それを具体的に私はお伺いいたしたい。
  160. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 受け入れ態勢の第一番は、やはり本年の予算によって何といいましても技術員の養成が、これが非常に重要なことと考えております。技術員の養成につきましては、すでに技術の優秀な者もありますけれども、それの数が御承知のように非常に少いのでありますから、これの養成に全力をあげていかなければならない、そして炉は何と申しましても、国産炉でこれを仕上げていくということにならなければいけませんが、それにつきましては日本の既存の産業界との連係も考えなければならない。そういう方面の受け入れのための設備ないし技術員の養成、これをはからなければならないと、そういうように考えております。
  161. 海野三朗

    ○海野三朗君 いま少し具体的に私は承わりたいのですが、どういうふうにつまり生徒を教育してやっていこうというお考えがあるか、もう少し具体的に詳しく承わりたい。
  162. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 詳しく政府委員から御説明申し上げます。
  163. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) お答え申し上げます。原子力関係技術員の養成問題でありますが、これに関しましては二つ大きく分けられるのじゃないかと思います。  一つは新しい産業でございますので、国外に留学生あるいは研究者等を派遣いたしまして、そして海外の知識を十分に習い覚え、あるいは吸収というふうなやり方、あるいはもう一つの問題は、今年度から国内でどういうふうに養成するかという問題が新しく出てくるのじゃなかろうかと思います。国内の方は先ほど大臣からお話がありましたように、原子力研究所、東海村に間もなく日本最初の原子炉が動き出しますので、それを契機といたしまして、そして国内で具体的な研究を進めていきたいというふうに、二つの面を考えてございます。  そこで前者の海外にやる留学生の問題でございますが、ただいまのところでは、民間あるいは官の研究所を、後者と合せまして、大体八十人近くの留学生を今年度は予定しております。なおそのほかに、昨年度調査ミッションを派遣いたしまして、英国等では相当長期間にわたって調査をしたのでありますが、今年度も引き続きまして優秀な技術者の方等を派遣いたしまして、そうして海外の実際的な研究をしたいというのが前者でございます。後者に関しましては、ただいまの段階では、大学の方はしばらくおきまして、一つはアイソトープ学校を九千万円の予算で作りまして、そうしてアイソトープ関係技術を大量に教え込みたいというのが第一でございます。もう一つは、研究所の性格は、御承知のように原子力研究所は、公開的な研究所にいたしたいという趣旨でございますので、単に研究所に所属している専門の方たちだけでなくて、民間の各会社、あるいは関係官庁のそれぞれ技術を修得したい方たちに、一種の内地留学というような格好でお集まり願って、勉強さしたらどうだろうということで、そういう方面の設備等も万遺漏ないように考えて、そうしておくれた日本技術でございますから、一つは海外、一つ国内で、できるだけスピーディに技術者を養成したというふうな考えでおります。
  164. 海野三朗

    ○海野三朗君 ただいまのはツリートメントの方面の人を意味しておるように思うのですが、基礎研究をやる方面に対してはどういうふうにおやりになるか。
  165. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 基礎研究の方は、先ほどの予算の説明の際に申し上げましたように、大学で従来やっておりますコースをさらに拡大強化していくというのはもちろんでございますが、そのほかには、原子力研究所が、何と申しましても中心でございまして、原子力研究所では、ただいままでのところでは、まだ具体的に炉が動いておりませんから、それぞれ大学の研究室等に派遣いたしまして、そうして大学のそれぞれの専門の教授に、金属材料であれば金属材料、あるいは燃料関係の問題であれば燃料関係というような、実験段階の勉強は、それぞれ頼んで今まで養成してございますが、この七月一日からその皆さんがそれぞれ現地に参りまして、そうして実際に生きた炉で、生きた機材で勉強せしめるというふうな段階でございます。基礎的な研究と申しましても、やはりそういう今までの一つの、抽象段階と申しては語弊があるかわかりませんが、その段階から、今度は実際の生きた炉そのものに取っ組んで、そうして技術を修得していくという段階になるかと考えております。
  166. 海野三朗

    ○海野三朗君 理研の黒田博士の門弟、和田博士がベニバナの研究について、文部省に研究費を要請し、二百万円が内定された。ところが地元の山形県がこれに補助を与えていないというのを聞いて、文部省がそれを削ってしまったというのを聞いたのですが、それはどういうわけで研究費を削ったのか、文部大臣にお聞きしたい。
  167. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 和田さんという方から四百万円の御希望があって、二百万円を、地元負担ができないので削ったというようなお尋ねでございますが、このことにつきまして、あらかじめお話もございましたので、取り調べをいたしたのでありますが、さような事実は文部省に関してはないようでございます。三十一年度といたしましては、和田さんという方から科学試験研究費といたしまして、五十五万一千円の申請があったのでございます。それに対しましては、御承知のように、文部省には科学研究費等文化審議会というのがございます。そこの審議会で審議いたしました結果、不採択と決定したようであります。なお三十二年度分といたしましては、五十八万六千円ほどの申請があるのでございます。これにつきましても、科学的研究費等文化審議会におきまして、慎重に検討をとげて採否を決定いたしたいと考えております。
  168. 海野三朗

    ○海野三朗君 もう一つ、私は文部大臣にお伺いいたしたいのですが、このベニバナは、ただいま東南アジア方面にもなくなって、わが東北の山形県の一部に存しておるだけであります。植物性のベニ、これが高血圧に非常にいいという話、ところがこういう方面の研究を専門にやっておるのがこの和田さんの研究なんで、これは国際的にも非常に重要な研究であると思うのでありますが、こういう方面に文部大臣は一そう努力してもらわなければならぬと思いますが、文部大臣の一つ御所見を承わっておきたい。
  169. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 貴重な研究につきましては、文部省といたしましても十分に考慮はいたしたいと考えております。事柄が専門的、学術的のことでございますので、私がかれこれ申し上げることは差し控えたいと思いますが、御趣旨のあるところは十分に承知いたしております。
  170. 海野三朗

    ○海野三朗君 通産大臣にお伺いいたしますが、中小企業団体法、それから鉄鋼需給安定法は、それは一体いつお出しになるお考えでありますか。新聞に伝わるところによれば、しりごみしつつあるということでありますが、どんなふうになっておりますか。
  171. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 法案の検討が非常に進んでおりますので、今の見通しでは四月上旬には、国会に提出できる運びになろうかと考えております。
  172. 海野三朗

    ○海野三朗君 四月の何日ごろお出しになるおつもりでありますか。聞くところによると、これは出したくないというので、党内でいろいろ話があって、何でも国会の幕切れくらいにひっかかって審議未了になるのをねらって出そうという考えであるというような風評もあるのです。四月の何日にお出しになるお考えでありますか、二つの法案について御所見を伺いたい。
  173. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) ただいまのような問題は全くございません。中小企業の組織法案の方は、早ければ来週閣議決定ができるのではないかと思われるくらい進んでおりますし、一方の法案の方は、相当おくれておりますが、今申しましたように四月上旬、そのころまでには、たとえば法制局とか公取委員会とか、そういういろいろ政府部内の折り合いがつくのではないかと考えております。
  174. 海野三朗

    ○海野三朗君 鉄鋼需給安定法案もそうでありますか。
  175. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) そうです。
  176. 海野三朗

    ○海野三朗君 通産大臣にお伺いいたしますが、前々国会において通産省の課が百二十二もあって、そのうち技術者の課長はたった十人くらいしかない。そんなことでは通産行政がよく行われていかないのじゃないか。同時に待遇の問題を力説したのであります。その後、どれほど改善されておりますか、それを私お伺いいたしたい。
  177. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) お答え申し上げます。通産省のいわゆる指定官職と申しますか、そういう職におります人間の中で、技術関係の者は現在八十人おるのでありますが、そのうち、本省関係では約二十人程度技術関係の者になっております。御承知のように、本省関係のうちでも前年と特に変っておりますのは、一局長技術官に変ったという点が特色になっております。
  178. 海野三朗

    ○海野三朗君 もう少し通産省の方では技術官を優遇して、技術官に働かせなければいけぬじゃないかということを、この前も盛んに私は力説したのでありますが、その後どのくらい改められているかを私伺っているのであります。
  179. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 具体的にどういう方法でどう改めたかという説明は非常にむずかしいかと思いますが、ただいま申しましたように、たとえばこれを、通産省における重要な官職の地位と申しますかにおける技術官の数、また先ほど申しましたように、本省における各局長の人事につきましても、従来の事務官の局長であったものを新たに技術官の局長にかえたという点も、一つの現われであろうかと思います。その辺で御了承願いたいと思います。
  180. 海野三朗

    ○海野三朗君 私が申しますのは、技術を尊重しなければいけないといっておりながら、少しも尊重した実績がない、今の内閣では。前の内閣もそうなんです。そうしておいて、科学技術の振興というようなことを言われておったって、問題にならぬじゃないかというのが私の考えなんです。従って、今度の給与改訂なんぞでも、ここにちゃんと実績を調べて持ってきているんです。技術官と事務官とが格段の差があります。それでいても差がないようにやっていこうというようなことは、ちょろまかしであろうと私は思うのでありますが、そういう点についてもう少しはっきり、給与の問題についても労働大臣に一つ伺いたい。その後、通産大臣にもこれを伺いたい。また科学技術庁長官にもその所見を承わりたい。
  181. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 先刻もお答え申し上げましたように、今回の給与改訂表では、一般行政庁の事務官、技術官は、同様の俸給表によって適用を受けるのであります。でありますから、これは法の問題ではなくて、運用の問題でありますから、今後十分注意をしていきたいと思っております。
  182. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 事務官と技術官の待遇を差別しない、そうして適材適所主義でやっていくということについては、お考え通りに運用していきたいと考えております。
  183. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) ただいま通産大臣の言われたように、確かに不備な点があるとはわれわれも認める点があります。従って、そういう点につきましては、先ほど申し上げましたように、特に技術員につきましてはわれわれは今後等分に配慮をいたしていきたい、こう考えます。
  184. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちょっと関連して。技術官、それから特殊技能を持った学者、そういうものを非常に尊重しなければならぬということを力説しておられるわけですが、当然だと思うのですが、伝えられるところによると、原子力研究所の研究員になるために日立製作所から派遣をされたある学者が、やみくもに原子力研究所から日立に帰され、日立ではまたほとんどやみくもに馘首をされているというような事実があると伝えられておるし、しかも、それが何か思想関係で問題が処理されたのだというようなことも言われておるようでありますが、原子力は平和的利用、しかも秘密があってはならないということが、原子力基本法に明瞭にうたわれていると思うのです。そういう点から見たら、今のようなことがあったとすれば、非常に不都合であると思うのですが、この事件の内容、経緯等について、宇田長官に御説明を願いたい。
  185. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) ただいまの御質問に関しまして、安川研究所長を招致いたしましてその真相をただしたのでありますが、安川研究所長の報告によりますと、日立の方から本人を帰してほしいという話がありまして、その線に従って、研究所はかわりの者と入れかえることではないかと思って、その求めに応じて、向うの出向員を帰すことに承諾を与えたのであります。そうして向うへ帰りましたあとで、日立の都合で、新聞等で見られておりまするような問題が起っておる。そういうわけで、研究所といたしましては全然事前にそういうことを察知せずに、研究所長としては事務的にそれを向うの求めに応じただけであったので、その後の経過を聞いて、実はそういうことがあったのかと思って、自分はその点について話し合いがあらかじめなかったので、十分わからなかった、そういう報告が本日ありました。経過はそういうことでございます。
  186. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 経過は非常に明瞭にわかりましたが、しかし、そういうことであったからといって、簡単にそれを、ああそうでしたかということで処理されるつもりなのかどうか。先ほどから原子力関係の経費を聞いておりますと、六十億、あるいは国庫債務負担行為三十億、それがどう使われるかあまりはっきりはしないけれども、非常に必要だから、大蔵省としては珍らしくたっぷり与えてあるんだということを言っておる。われわれもそれを了とします。たっぷり与えたがゆえに、非常に大事であるような人には来てもらって、うんと優遇してそれをやってもらおうといって、相当金をつぎ込んでいるはずだ。そういうふうに大事に扱わなければならない人が、そういう前後の事情もわからないようなことで、やみくもに処置をされていて、しかもそれで、ああそうでしたかということで、そのままになっているというようなことは、政治的な責任なり、研究所長としての行政的なやり方からいえば、何としても許せないのじゃないか。そこらは、長官がもう少し、どういうふうに措置をし、どういうふうに扱おうとしておられるのか。金も大事であるが、その金をたっぷり差し上げて、そうして大いに積極的にやろうとする非常に大事な人である、それをそういうふうに簡単に扱っていかれていいのかどうか、それをさらにどう処置をされるか、どう結末をつけられるつもりなのか、明瞭に一つお答えを願いたい。
  187. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 研究所が設立されて日にちが非常に浅いので、実を申しますと、専門の技術員が非常に少いのが実情でありまして、従って、それぞれの既存の団体からこちらへ出向してもらうという方法をとらざるを得ない実情であります。従って、民間あるいは大学その他から参る者に対して、従来の予算では十分待遇ができない点もありましたし、制度上またそれができない点もあります。従って、向うの負担において、全然無給でこちらの設備の拡充に参加をしてもらうという人も、やむを得ずあるわけでございます。従って、そういう関係で、実を申しますると、それの出向せしめた母体の団体の人事につきましては、こちらはどちらかというと非常なてきぱきとものをさばくことのできるような立場にありませんから、どちらかというと、向うの申し出に対しましてはこれを尊重して参るというのが根本の方針になっております。その点につきまして、向うとの交渉連絡が十分でなかった点があったと私は考えます。それで研究所長も実はその内容等について事前に十分な調査をせずに、研究上の先方の都合で交代を必要とするという申し出であったというように考えたようでございます。従って、すなおに向うの希望に沿ったというので、研究所長としては遺憾な点があったということを申し出て、本日見えております。そういうわけでありますから、研究所といたしましても今後ともに十分その点については配慮をしなければなりませんでしょうし、初めてのことでありましたので、なお実情等はもう少し私の方も、研究所を通じまして、今申されたような調査をいたしたいと考えております。
  188. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それ非常に、事情はわかりませんので、今も大臣もそうおっしゃっていますが、この点はもう一ぺん明瞭に精細に調査の上、政府として責任をもってどういう処置の仕方をするかということも、あわせてはっきりきめて、他の機会に責任をもって御答弁を願いたいものと思います。その処置の問題については、私はさっきから申し上げておるように、非常に大事に尊重をしなければならない人であるはずでありますから、その点を十分に配慮されて取り扱われることを特に希望をして、後の御説明、御報告に待つことにいたします。
  189. 海野三朗

    ○海野三朗君 大蔵大臣にお伺いいたします。風水害予算の縮小、減っております。この復旧工事というものはいつでも、あとからついていく形になっておりますが、何年継続ということでやっておるやつは急いでやらなければならないのじゃないかと私は思うのですが、いかがなものですか。
  190. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話の通り、災害復旧は急いでやらなければなりません。幸い三十年度、三十一年度は災害が割合に少かった。過年度分の二十六、二十七はほとんど完了いたしました。二十八年度におきましても相当できたと考えております。あるいは一応の計画を作りまして、計画でやるようにいたしております。
  191. 海野三朗

    ○海野三朗君 建設局の復旧の三十一年度の割当一覧表を見ましたところが、そこに排土という項目がある。これは熊本県の方です。ところが、年々再再積雪で苦しんでおる東北地方では、一ぺんだって国費で雪を掃いてくれたためしがない。一ぺんだって、水害で土が上ったからといって、国費でやったことはあるだろうかと思うのですが、それはどうなんですか。これに対する御所見はいかがですか。排土、土を除くことですね。
  192. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) よく事情を知りませんので、取り調べましてお答えいたします。
  193. 海野三朗

    ○海野三朗君 政府委員は、だれかわかっていないかしら。
  194. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 二十八年度災害につきましては、議員立法がございまして、排土等につきましても、法律による補助をいたすことといたしまして、所要の予算を計上いたしたわけでございますが、通例の災害につきましてはさようなことも規定がないわけでございまして、私どもといたしましては、法律の命ずるところに従って、それの災害復旧に必要な予算を計上いたしておるわけでございます。二十八年災、たとえば熊本市等における排土は、これはもう想像に絶した量でございますので、特別な措置が講じられたわけでございますが、普通の場合にはそこまでの国庫補助はいたしていないわけでございます。
  195. 海野三朗

    ○海野三朗君 排土は、東北地方の水害でもずいぶんひどい泥がたまって……。それは一ぺんだって排土の金をもらったためしがない。また東北地方は雪が降って、丈余である。それを一ぺんだって国費でもって雪を掃いたためしがない。泥が雪にかわっただけである。なぜこういうふうに差別待遇をするか。それだから、東北の方は発展しないで、貧乏人ばかりいるのである。この点について、私は大蔵大臣に聞きたいというのはこの点である。不公平じゃないですか。泥が雪にかわっただけです。
  196. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 雪害地方におきます雪の排除に要します経費は、これは事業所得の計算上入れておりますけれども、また土地建物の賃貸価格を見ます場合においても、雪害地等の賃貸価格につきましては、相当これを考慮して賃貸価格をきめるようにいたしておるのであります。
  197. 海野三朗

    ○海野三朗君 いや、雪というのは道路の雪でありまして、それはみんな各個人の家で出て、みんな雪を掃いておる。たけなす雪を、それを一ぺんだって国家が掃いてくれたためしがない。(笑声)何年かに一度ただ泥が上ったからといって、それを国費でもって取り片づけてやったということは、私は納得いかないのでありますが、大蔵大臣はどんなふうにお考えになっておるか、それを私は伺いたい。
  198. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほど主税局長がお答えいたしましたように、熊本の白川のはんらんによります水害につきましては、異例に属することでございまして、特に災害復旧の場合に排土の問題を出したのでございます。原則としてこういうのは例も少うございますし、出さないことが原則でございます。なお、雪積寒冷地の方におきまして、道路に積った雪を国費でやるというところまでは、まだ行けないのじゃないかと考えております。(笑声)
  199. 海野三朗

    ○海野三朗君 新潟県を除いた東北六県だけでさえも、いわゆる人口が一千二百万もある。その東北開発の公共事業費としては五十七億、昨年は二十億でありましたが、ただ三十七億ふえただけである。それでもって一千二百万の人の方に対する公共事業費である。ところが、熊本の方のあの鉄道はどうですか、小国線は四十四キロあるところへ持ってきて、五十億の金を投じてやるというような、どうもそういうところは私は納得いかないのでありますが、運輸大臣の御所見を承わりたい。
  200. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 運輸大臣は今、急用があって、総理大臣に会うために行きましたが、政府委員でよろしゅうございますか。
  201. 海野三朗

    ○海野三朗君 ええ。
  202. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 政府委員の方、どなたか答弁できますか。
  203. 權田良彦

    政府委員(權田良彦君) お答えいたします。新線建設についてだと思いますが、御承知通りに、新線建設につきましては、運輸大臣が許可いたしますときに鉄道建設審議会の御答申の線に沿って許可をする。在来、終戦後は、すでに御案内のように、全国で三十線着手をしておりまして、逐次改良をして参りまして、三十二年度以降工事がなお継続になりますのは十四線でございますが、これについては各地区各地区の重要性、その線のいろいろ経済開発の効果、民度の問題、それからいろいろなことから勘案してやっておりますので、特にどの地区を重視してどの地区を軽視したというようにはいたして参りませんで、まあすべてそういうことによって、国家的また国民にも重要なものをいたして、なお今後のものにつきましても、近く開かれまする鉄道建設審議会の議を経て、この線に沿って逐次重要なものから着工して参る、こういうことに相なっておりますので、さよう御了承願いたいと思います。
  204. 海野三朗

    ○海野三朗君 鉄道建設審議会の構成メンバーはどういうものでありますか。国会議員の名前をあげてちょうだい。(笑声)
  205. 權田良彦

    政府委員(權田良彦君) お答え申し上げます。ずっと申し上げます。鉄道敷設法によりまして、「審議会ハ委員二十七人ヲ以テ之ヲ組織ス」、委員の中には「衆議院議員ノ中ヨリ衆議院ノ指名シタル者六人」「参議院議員ノ中ヨリ参議院ノ指名シタル者四人」、それから「運輸政務次官、運輸事務次官、大蔵事務次官、農林事務次官、通商産業事務次官、建設事務次官及経済企画庁次長」、それから「運輸審議会ノ会長」、日本国有鉄道総裁」、それから「運輸業、鉱工業、商業、農林水産業、金融業等ニ関シ優レタル識見ト経験トヲ有スル者六人」、それから「鉄道建設ニ関シ学識ト経験トヲ有スル者二人」、この二十七人でございます。
  206. 海野三朗

    ○海野三朗君 ただいまの衆議院と参議院の名前を聞きたいのです。(笑声)
  207. 權田良彦

    政府委員(權田良彦君) 申し上げます。衆議院議員淺沼稻次郎氏、衆議院議員小澤佐重喜氏、それから衆議院議員塚田十一郎氏、衆議院議員砂田重政氏、衆議院議員正木清氏、衆議院議員三木武夫氏、参議院議員岡田宗司氏、参議院議員堀木鎌三氏、参議院議員谷口彌三郎氏、参議院議員森田義衞氏、運輸政務次官の福永一臣氏であります。
  208. 海野三朗

    ○海野三朗君 もう一度、東北の方の全体に対する公共事業費として五十七億、昨年よりたった三十七億ふえただけである。ところが、熊本の方のあの小国線のごときは四十四キロの山脈重畳たるところの線に対して五十四億を投じておる。これはあまりに不公平じゃないかと私は言うのです。こういうふうなものは、権力の座にある人たちがこの敷設をきめるから、そういうことになる。私はそう思う。どうなんですか、それに対して答弁を要求します。
  209. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 東北開発につきまして、昨年は特定の重点産業として二十億出しておったのを、このたびこれを五十七億にふやすということは、これは非常に異例なところでございます。なお、株式会社として東北開発会社を設け、いろいろの手を尽しておるのであります。なお、鉄道新設につきましては、ただいまお話のありましたように、新設につきましての制度を蹈んできているのであります。これは何県だろうが、何地方だろうが、鉄道関係で国の経済発展、運輸の点から考えまして新設を考慮いたしているのであります。従いまして、これは権力とか何とかという問題ではございません。一応鉄道事業というものと一般会計から出します国土開発というものとは、別個に見ていくべきじゃないかと思います。
  210. 海野三朗

    ○海野三朗君 今、何もないとあなたはおっしゃったが、実際世間ではそう見えるのです。権力の座にある人たちがこれをやっているぞとしか見ていない。それでありますから、国有鉄道でなく、国会鉄道なんと言っている、(笑声)国会鉄道と。東北六県のあの公共事業費はたった三十七億よけい金を出している。大きな金じゃない。ところが、四十四キロのところのその鉄道を敷くのには五十四億出している。そうしてその周辺の人口が四万、東北は千二百万もいる。それに対して三十七億ということはないじゃないか。私はそういうように考えるのですが、大蔵大臣として、あなたはそれは正しいとお考えになっておりますか。私はただ説明を聞くだけでなしに、あなたはほんとうに胸に手を当てて、それが正しいかどうかということを、それをあなたに聞いているのです。
  211. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 東北の開発に関しましては、今年だけで三十七億円もふやしたのであります。これは重点産業だけ。これは毎年基本になって参る。あるいはそれ以上に毎年なるかもしれません。そして鉄道の新設の問題は、一年こっきりではございません。そうして大体全国的には、新線建設は今年度七十億円を見ているのであります。七十億円が、熊本県の方に五十億円今年行くものではございません。これは運輸の関係から全国的に考えていく問題で、そうして特に審議会を設けて適切な新線の建設をやろうとしているわけでありますから、これを金額的に見て比較なさるのはいかがかと私は考えます。
  212. 海野三朗

    ○海野三朗君 それから、鉄道のことでありますから、鉄道の政府委員の人おりますか……。山形県が三管理局に分割されているのですが、あれは一つの管理局に入れてもらう方法はないのですか。県民百三十万が非常にそれを困っている。三つの管理局に分割されているのです。
  213. 權田良彦

    政府委員(權田良彦君) お答えいたします。国有鉄道の地方機構につきましては、経営の合理化の点、それから輸送のいろいろな配慮の点、その他施設の保守の点、いろいろ技術的な点もございまして、これは国有鉄道総裁の方にまかしてでございますが、ただいま御指摘の山形県が、以前の管理部時代と違って、今度管理局になりましてこれがなかなか不便である、こういう御質問かと思いますが、まあ私どもは、それが直ちに組織から来ているものかどうか。組織から参りまするならば、不便はこれはできるだけ改善しなければならぬ。しかし現在の輸送の隘路と申しますか、輸送上の困難、特に貨物輸送につきましては特別に、経済界の好調を反映いたしまして、非常に今貨物の申込が多い。滞財も今日現在で二百五十万トンくらいになっているのであります。これを解決しますには、やはりどうしましても、貨車をもっとたくさん作る。それからあるいは、線路がもうつまっておりますので、この線路の施設をもっとよくする。あるいは操車場をよくする。こういうことについては、この日本経済の隘路になりますことは、基幹産業の輸送にとっても遺憾の点でございますので、今後特段のこれには増強の手配をとりたい。三十二年度からは、新たに五カ年計画も策定いたしまして、これをいろいろな資金手配もいたしまして、至急これをやることによってそういう面を解決したい、かように考えておる次第でございます。
  214. 海野三朗

    ○海野三朗君 ちょっと伺いますが、仙山線はいつ電化されるのでありますか。半分だけ電化をやってそのままにしておられるようですが、どうなんですか。
  215. 權田良彦

    政府委員(權田良彦君) 仙山線の電化でございますが、御承知のように、作並——山寺間は直流方式で電化されておるのです。作並——北仙台間は交流電化の今試験をいたしております線区でありまして、交流方式によって電化して、今試験を継続中でございます。北仙台——仙台間も現在工事中でありまして、これは本年の九月ごろには完成することになっておりますので、試験の結果を勘案いたしまして、仙台——作並間に交流電化はよって営業を開始する予定でございます。そういたしますと、残ったのが山寺——山形間、これが残るので、これが約十四・一キロくらいでございますが、この区間については、現在のところこれを電化する計画はございませんけれども、今後の電化五カ年計画ともあわせまして、また直流、交流の接続方式も今検討いたしておりますので、これらの結果を待って善処したい、かように考えておる次第でございます。
  216. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちょっと関連して。少しあと返りしますが、宇田長官にお尋ねいたします。それは、先ほど予算外契約の御説明の中で燃料の購入というようなお話がありましたが、この問題は、先般の研究協定と申しますか、濃縮ウランの受け入れ協定、それの改訂の問題ともからんでおるのではないかと思います。実験協定の変更については、日本側の方で米国の方へ申し入れをしておるということでございますが、その後の経過はどうなのか、この見通しはどうなのか。  それからいま一点は、それと関連をもって、一般協定の案を委員会の方ではどなたかが持って帰られて検討中だと聞いております。それで、こういうのが公開されないというのは、私は非常に不明朗だと思います。と申しますのは、原子力基本法によって民主、自主、公開の原則が示されておりますので、こういうものは公開して審議すべきものであるように思いますから、先方から持って帰っておる案はどういう案であるか、それを現在どういうふうに検討しておられるか。  そのついでに、先ほど長官は、やはり国産原子炉の製造ということを重要視しておるということでございましたが、国産原子炉建設のとにかく構想ができてから、すでに三カ年になります。で、一年たったときに、重水等は旭化成で研究させて、現在どれくらいの産額があるか。それからマジック・ハンドについては、もうすでに国産で成功したというような御発表があったのですけれども、その後民間委託の研究の成果とか、あるいは探鉱の成果とか、そういったものについては何ら御発表がないわけでございまして、こういう状態だと、果して三十四年に国産第一号炉が生まれるか生まれないか、これはまあはなはだ私ども心配いたしております。  そこで、ただいまの二点、つまり実験協定の改訂と一般協定の状況、さらに国産原子炉の研究の進捗状態、これをお尋ねいたしたいと思います。
  217. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 先ほどの燃料費と申し上げましたのは、研究協定に基く燃料の購入の費用というよりも、国内ウランの開発のために必要なウラン鉱の買い上げを中心とする燃料費と、こういうことでございます。  それから研究協定の改訂につきましては、十八日にドラフトを向うからもらえる約束でございましたが、向うの連絡によりますと、それの責任者が病気になったので延ばしてほしいというので、ただいまのところ出先官憲に対して、いつくれるのか、それの明確な日にちを聞かしてほしいということを申してありまして、まだ手元には参っておりません。  それから一般協定につきましては、石川一郎さんが個人的にもらってきたものがあります。それは私も拝見しました。しかし、これを公開することにつきましては、石川さんがお話し合いの上で何か条件があったように伺いまして、これを取り上げるかどうかということについては、もう少しこれは研究したい。むしろわれわれは、少くとも一般協定のような重要な問題につきましては、向うから正式なドラフトをもらうように交渉すべきであると考えまして、その点につきましては、委員会から外務省に交渉、連絡を申してあります。   〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕  それから国産原子炉につきましては、ただいまこの金属材料その他、ただいま申されたグラハイト、重水、あるいはマジック・ハンド等々につきまして、それぞれの分野で研究を進めさせてあります。従って、そういう点の進捗状態につきましては、別の機会に申し上げる機会を得たいと、こう考えております。
  218. 海野三朗

    ○海野三朗君 再三私は先ほどから申しましたが、根本は技術者の待遇問題ですよ。あなたが幾ら熱心にやられても、皆が動かないのだよ。そこで私は、根本のこの給与改訂というものが、全然これは間違っておると思う。それでありますから、私はこれを強く言いましたが、実例をあげてまたいずれ分科会におきましておめみえすることにいたしましょう。  幾らあなたが号令かけなさったって、予算ができたって、人間の熱意がなければだめなんです。その熱意はどこにあるかといえば、待遇問題ですよ。技術者が差別待遇をされておってはだめなんです。どうか私は、いずれ分科会でもお会いするけれども、その点について特に深い御考慮をお願いします。
  219. 湯山勇

    ○湯山勇君 長官の御答弁の中で、研究協定が今のように貸与から購入に変った場合には、予算が変らなくちゃならないのではないかという疑問を持ちますが、これはどういうふうになっておりますか。  それから、簡単に次にお尋ねいたします。一般協定は、委員会で御検討中にもかかわらず、公開されないというのは、原子力基本法の三つの原則に私は反すると思うのですが、これはたとえ非公式なものであったというような場合でも、こういう提案があったということは公開されてしかるべきだと思いますが、公開される御意思はありませんか。  それから第三点は、国産原子炉についての現在の進捗状況については、別な機会ということでございますが、これは明日でも一つ資料をもってお答え願えますか。  以上三点。
  220. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 研究協定の改訂に伴う燃料購入費は、予算には掲げてあります。予算に組んであります。  それから一般協定の、石川さんの持ってこられたものの中で英文のものは、もうお渡しをしてあります。  それで国産原子炉の研究の進捗状態につきましては、もちろんこれは私の方からその進捗状態についての報告書を差し上げたいと思います。あした差し上げることができるかどうか、ちょっと申し上げかねますが、いずれにしても、すみやかに提出をして御期待にこたえたいと思います。
  221. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 最初農林大臣にお尋ねをいたしますが、御承知のように、やみ米のいわゆるかつぎ屋は全く集団暴力化いたしまして、国鉄当局はもちろんのこと、警察当局ですら手がつかぬというようなことでありまするし、かと思うと、一方においては、米屋に対しては電話一本すりゃ直ちにやみ米を配給せられるというようなことでありまして、全く食管制度というものはくずれ切っておるわけであります。しかも順法精神は地に落ちて、世道人心に及ぼす深刻な影響というものは今日最も問題となっておると考えるのであります。しかも、食管制度自身を見ますと、特別会計は八千六百四十三億円の多額でありまして、国全体の一般会計予算総額にも近いというような金額であります。しかも、事務費だけでも百億近い金でありまして、これだけ莫大な国費を使って順法精神を根本的に破壊し、関係公務員は何千万円のつまみ食いをやるというようなことでありまして、まさに食管制度というものは世道人心悪化の温床となっておると言っても過言ではないと考えるのであります。今ごろになって調査会を設けて、消費者米価をどうするとか、赤字をどうするとかいうような問題ではないと考えるものでありまして、この社会全般に対する影響、これ自身について、農林大臣はどういう御見解を持ち、また今後どういうふうにせられようというふうに考えておられるか、その点を伺いたいのであります。
  222. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 先般来御同様な御質問を承わったのでありますが、なるほど、ただいまの食管制度あり方につきましては、御批判のような点があることを認めるのにやぶさかではございません。ただ、国民の主食の問題でございますので、国が責任をもちまして集荷と配給をいたす、この建前が決して完全ではないという御批判はあろうと思いますが、しかし生産者に対し、あるいは消費者に対し、安定感を与えておる、この役割は私は過小に評価できないものであろうかと思うのであります。従いまして、集荷の正規のルートに乗ってこないところの米に対しましては、いわゆる余剰米対策というようなことから、代表者売渡制度でありますとか、臨時匿名集荷制度というようなものをもち、なおかつ系統集荷機関を動員いたしまして、極力集荷の努力をしておるような状況でございます。  しかし、現状を私はこのままでいいとは決して思っておりませんので、今回食管の問題がいろいろと世間の耳目を騒がせておる、この時期でございますので、臨時食糧管理調査会で御調査をいただくということとあわせて、政府におきましてもこの問題の研究に十分取り組んで参りたい、こう考えております。
  223. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいま農林大臣の言われるところによりますと、今まででも相当努力をしておられる。しかしながら、ただいま申しまする通り、かつぎ屋の集団暴力化、あるいは米屋自身は電話一本でもやみ米を配給するということになっておるのであります。食管の調査会に諮問をせられるにいたしましても、これは赤字処理の問題はあるいはできるかもしれない。しかしながら、ただいま申しまするような順法精神を全うし得るかどうかの問題、あるいは世道人心を悪化させるかどうかの問題、そういう問題について今後自信をもって善処し得るという確信がおありになるのであろうかどうか、この点を伺いたいのであります、今まででも努力をしておられるだけに、なおかつああいう事態が起っておる、それで今後全く画期的に禍根を断ち得るようになるのかどうか、その点を伺いたい。
  224. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) この問題については、現在のような直接統制のほかに、しからば何が考えられるか、こう申しますと、あるいは間接統制という問題も考えられるでありましょうし、あるいは統制自体をどうするかという根本的な問題にもなるかと思うのであります。しかし、米の絶対量が不足であるということは事実でございまして、なかなか、食味の関係等から、従来の食習慣というものを直ちに変えるということが困難でございます限りは、すでに外米などが内地米の代替性を持っておらないというようなことも立証せられたわけでありまするし、ごく簡単に切りかえるということは困難ではないかと思うのでございます。しかしながら、これは一面に順法精神を振起するという一つの指導啓蒙の問題もございましょうし、取締り等の問題もございましょうし、ないしは日本の食生活を改善するというふうな問題等、いろいろ多岐にわたっておりますので、それらと関連をして考えて参りたいと思うのでございます。
  225. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいま米の不足の問題、これに触れられたのでありますが、しかしながら、豊作は二年続かぬと言われておりながら、豊作は二年続いておる。しかも、今後考えてみまするというと、冷害に対する品種の非常な改善、あるいは農薬に対して非常な改良が行われ、また肥料については大改善が行われている。こういう点を勘案してみますと、風水害はもちろんおそろしいでありましょうけれども、風水害自身は、大きいのでも、一回に百万石が二回、三回来たって、全体の八千万石からに比べれば、それほどでもない。ほんとうにおそろしいのは冷害だが、しかし冷害に対する改善方策は着々進んでおる。非常な進み方である。しかも一方、農林大臣のあげられた食生活の改善ということも、また非常に進んでおります。特に青少年層のパン食、あるいは肉食、これを中心とする食生活の改善というもので、米の一人当り消費量というものは非常に減りつつあることは御承知通りであります。こういう点を考え合せてみますると、米は足らぬと言われるけれども、だんだんその懸念というものは少くなるのではないか。あるいは場合によると、豊作二年続くといっているが、これが三年、四年続くかもしれない。こういう事態は総合的に判断してみまするというと、出つつあるんじゃないか、こういう点から考えまして、今後食管制度というものは赤字が出る一方だということを覚悟せざるを得ないのじゃないか。そういう点について、今後食管の調査会にお諮りになるでありましょうけれども、事態はもうすっかり変ってきておる。ことに今申しまする農薬あるいは肥料、これらの非常な改善、品種の改善、こういうものを織り込んだ場合に、今までのような考え方じゃいかぬのじゃないか、こういう点について御意見を伺っておきたいのであります。
  226. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 御指摘のように、近代農業技術の進歩は、これは相当なものでございまして、二年続くのみならず、三年目の豊作があるいは期待できるかもしれない、こういうわれわれも考え方は持っておるわけであります。従いまして、おっしゃいまするような事態というふうなものが一両年後にできて参りまするならば、これはもう考えるべき時期でございましょうが、ただいまこの段階では私はもう少し慎重にかまえたい、こう考えておるわけであります。
  227. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 まだまだ御議論をいたしたいのでありますけれども、大蔵大臣お急ぎのようでありますから、農林大臣には、必然的な自然の現象というものがすっかり変ってきておるという前提のもとに、今後真剣にお考えにならなきゃならぬということを申し述べまして、大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、とにかく現状からみまするというと、ただいまいろいろ御質疑もありましたるごとく、非常な血税を使いながら、かような全く何のためにやっておるかわからぬような状態になってきておるのであります。こういう点について、大蔵大臣はどういうふうにお考えになるのか。  さらに、これに関連いたしまして、もう一点は、農林関係の経営者単位というものは約六百万といわれておるのであります。これに対しまして商工業の経営単位が約三百万、二対一であります。そのほとんど全部が御承知のように中小企業であります。ところが歳出関係を見ますると、農林関係は一般会計だけで八百十億、商工関係は百億、そうして中小企業関係はということになりますと、十八億であります。それぞれの事情が違うという御説が出るかと思いまするが、しかしあまりにもアンバランスではないか。しかもこういう歳出予算関係、アンバランスは国関係だけでなく、地方公共団体もかようなことに相なっておるのであります。こういうことでは、わが国の至上命令でありまする輸出振興、こういう点を見ましても、輸出のコストに直接間接これがかかってくるのでありまして、そういう点からは、この農林、商工の歳出予算の中央、地方にわたるアンバランスというのは非常に大きな禍根をなしておるのではないか。もちろん農林関係をよくしなければならぬのでありますが、あまりにも商工関係がアンバランスである。これにつきまして大蔵大臣の御見解を伺いたいのであります。
  228. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 食管会計に対しまする赤字の問題でございまするが、敗戦後、二十四年の四月までは例のガリオア資金でこれをまかなっておりまして、これもやはり私は相当な金額に相なっておると思うのであります。二十四年以後におきましては、一般会計から今まですでに認めたものがやはり六、七百億円に相なっておると思います。なお三十一年度の赤字、三十二年度等を考えますると、相当な、千億にもなんなんとするのじゃないかというふうな問題は、私は常に考えておるのでございまするが、しかし国民の主食であります問題でございまするから、単に一般会計からだけ考えるべき筋合いでございません。従いまして、今度十分学識経験者の意向を借りまして、政府としてもきめたいと思うのであります。一般会計からの赤字という問題になると、そういうふうな累積でございます。しかしこれは私は何らとらわれてはおりません。  次に農林行政と通産行政との予算の問題でございまするが、これは単に予算の支出だけでなかなか比べることはできないのじゃないか。たとえば、何もしないということはございませんが、大蔵省はそう行政をしてはおりませんが、千三百億円を大蔵省は持っておりますが、もちろん防衛分担金とか、あるいは徴税費とか、国債費とか賠償費というものがございますが、何と申しましても、農林省のは原始産業でございます関係上、各国の例を見ましても、やはり原始産業方面予算の使い方は相当多いのであります。これは私は政府としての実情ではないかと思います。なお通産行政につきましては、片一方で、ただいまお話のございました輸出面で、こういうようなものは、これはぜひ必要でございますので、今度の租税措置法におきましても、従来通り免税を続けていこう、この分なんかはやはり六、七十億円の減免税になるのであります。その他産業施策の方といたしましては、租税特別措置法で相当認めております。これは大産業になるというお話でございますが、中小企業の方におきましても、できるだけ国民金融公庫とか、あるいは中小企業金融、あるいは商工中金、こういうふうにやっておる。農林関係の方は農林漁業だけでございますが、これを比較いたしますると、財政融資の方は、一般会計ではございませんが、中小あるいは産業の方面には相当出ておるのであります。また通産省自体予算を比べましても、御承知通り昨年は八十億円でございましたが、今度は百億円台にしたのございまして、お話の点を十分考慮しながら、通産行政の特殊性にかんがみまして、できるだけの配慮はいたしておるつもりでございます。
  229. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいま大蔵大臣お話のごとく、商工関係予算はようやく百億円台に達したのでありますけれども、これも小さな階段をやっとこさっとこ上りつつあるというような状態でありまして、大観すれば農林、商工の予算のアンバランスというものは非常なものであります。これは諸外国の例、あるいは原始産業と加工産業との違う点等はもちろんありましょうけれども、あまりにも違う。そういう点について今後漸次これを是正せられるよう、農林ももちろん必要でありましょうから、悪くするという意味ではないのでありますが、商工関係、特に中小企業関係に重点を置かれるいき方をせられるように希望をいたしておきます。  同時に今度、反対的に歳入面でありますが、これを見ますると、農業関係の方につきましては、ただいまの米作関係の所得に対しましては、減免措置がとられておる。さらに事業税が課せられておらない。ところが一方商工業者、特に弱小な中小企業者にまで事業税は課せられておるというようなことでありまして、これを所得に対する税の負担率から見ますると、農業者は四・四%であるが、商工業者の方は一〇・一%にもなっておるというような数字も見るようなわけでありまして、あまりにアンバランスになっておる。これの原因というものの主なるものは、やはり事業税のあるなしが問題になると思うのでありまして、その点から将来農業と商工業についてバランスのとれたような税制、これを作っていくという必要があろうと思うのでありますが、今回事業税は二%の引き下げにはなりましたけれども、これは全く弥縫的ないき方でありまして、根本的な農業、商工業のバランスのとれる税制の確立というものについて、どういうふうに大蔵大臣お考えでありましょうか、また地方自治庁長官の御見解を伺いたいと思います。
  230. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 農業所得と事業所得との問題は、常に議論のあるところでございますが、農業におきましては、主産業の米麦が主食である関係上、いろいろ保護政策をとらざるを得ない状況に相なっておるのであります。所得税法本来の立場から申しますると、今の農業所得に対しまして、臨時的にある程度の減免をしておりまするが、これは今の状態としてはやむを得ないのではないか。一部に農業事業税を創設するという説もございまするが、私は今直ちにこれを設けることはいかがかとちゅうちょをいたしておる次第でございます。商工業の方におきましては御承知通り事業税がございまするが、これはお話の点もございまするので、当初やはり一二%でございましたが、これは八%にし、今回また六%に下げております。固定資産税の方は農業と商工業同じでありますが、固定資産税の方の下げ工合いがよほど少い、こういうことがある程度均衡を是正するという現われではないかと思います。いずれにいたしましても、事業税はやはりできるだけ安くするのが中小企業に対しましての恩恵的措置ではないかというので、引き下げに努力をいたしております。
  231. 田中伊三郎

    ○国務大臣(田中伊三郎君) 事業税の負担の均衡の問題でございまするが、内閣所管の地方制度調査会、それから大蔵省所管の臨時税制調査会はいずれもお説のごとくいろいろ心配をいたしまして、農業事業税を新設すべきであるとの答申をして参っておるわけでございます。これは一致の意見でございます。しかしながら、一面においてただいま大蔵大臣からお話をされましたような供出米価の統制中であるというような問題、比較的にこの農家の収入が低いのではないかといったような心配が一面においてございまして、今ここで直ちに農業事業税を新設するということはいかがなものかという懸念が若干ございますので、本年はとにかく事業税につきましては、ただいま適用いたしております中小企業の内部においての負担の均衡を是正する程度に一応とどめて整理をしよう、しかる後に慎重に検討しようということでございまして、農業事業税を新設するかいなかという問題につきましても、目下慎重に検討をしておるということで、本年は、新年度においてはこれは実現することを得なかった、こういう事情でございます。
  232. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 先ほど大蔵大臣御答弁になりました節を考え合せまして、今後事業税をさらに引き下げて、そうして両者のバランスをとろうというようなお考えがあるのでありましょうかどうでありましょうか、その点お伺いいたします。
  233. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は事業税はできるだけ低い方がいいと考えます。
  234. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 最近直接税から漸次間接税の方へウエートを移行させたいという世論が政府筋からも、また学界等からも出ておるようでありまするが、これにつきまして、私は考えなければならぬ面があると思いまするのは、わが国の中小企業は外国の中小企業と違いまして、非常に弱小なものがしかも非常に多い弱いものが同士打ち的な競争をするということに相なっておりまするがために、間接税を課しましたる場合に、理論的には転嫁ができるはずのものでありまするけれども、実際的には転嫁のできないものが出てくる。相当それが多い。これの例外をなすのは専売品でありまして、専売品関係はいくら弱い業者が扱っておっても、消費者にはどんどん転嫁ができる。またやらなかったら営業の取り消し等になるというようなことでありまするから、これはいいのでありますが、一般のものになりますと、弱い中小企業者がしかも激烈な同士打ちをやるということから、転嫁できる建前のものが転嫁できない、その結果どういうようになるかと言いますと、結局は間接税を重課されるということになりますと、実質的には中小企業者がかぶらんならんということになりまして、名前は間接税でありまするけれども、実際上は直接税を増徴せられたのと同一の結果が出てくる、これがわが国の特殊事情だと思うのであります。こういう点について大蔵大臣はどういうふうにお考えでありましょうか。
  235. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 直接税と間接税との比率の問題は、租税理論としましては重要な問題であります。ただいまの状態では、間接税のうちに流通税を加えまして、大体半分々々ということに相なっております。今の状態では私はこの程度が適当ではないかと思います。  それから間接税の転嫁の問題でございまするが、今、間接税で転嫁の問題は物品税にあると思うのであります。間接税のうちおもなるもの、酒税あるいは砂糖消費税、こういうものにつきましては、例外がございますけれども、ほとんど転嫁いたしております。物品税の問題につきましては、そういうふうな意見がございますので、品目はできるだけだんだん少くいたしておりますし、また新たに物品税の増徴その他も私は今回は見合わしたような状態でございまして、一般の間接税増徴に移行すべしという理論のあることは存じております。私は直ちにそういう理論に乗ってはいけない、こういう気持でおります。
  236. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまお話の物品税の問題でございますが、これが一番問題だと思うのであります。これは大蔵大臣最も御承知のように、戦時の物資不足、それからまた消費の抑制をやる当時の税制でありまして、今日から見まするというと、物品の選び方にいたしましても非常に無理があるのであります。税率あるいは免税点などから見ましても、アンバランスの点があるのでありまするので、これを公平な新しい税として再出発する必要があろうと思うのでありますが、これにつきまして、大蔵大臣の率直な御見解を伺いたいと思います。
  237. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 税制調査会の方では売上税と申しまするか、取引高税と申しまするか、そういう流通税の方に持っていくという議論があるようでございますが、なかなか日本の状態としまして、売上税は今いたしますことは、先ほど豊田さんのおっしゃった通りの転嫁の問題等がございまして、アメリカなんかでは売上税と、それから物品税に相当するもの両方をやっておるのでございます。しかし売上税に踏み切らぬ場合において、物品税を全廃するということは私はなかなかむずかしい。しからば売上税をやらない場合において物品税をどう改正するかという問題になりますと、お話の通り、これは非常にむずかしい問題でありまして、十分これは今後検討してみたい。今のところ物品税を全廃するという気持はございません。
  238. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それでは、物品税は御承知のような庫出税になっておりますために、中小企業者の資金繰りの苦しいような連中にとりましては、特に負担がかかってくるわけでございますが、この庫出税を改められるというその点だけについてのお考えはありましょかどうか。それからもう一点は、過去にシャウプ・ミッションが見えましたる際に、生活必需品は除くべしという意見が当時からあったようでありますが、今後物品税についてこの生活必需品を極力除いていくということについての御見解を伺いたいと思います。
  239. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 物品税は小売課税にいたしましたり、あるいは庫出税にいたしましたり、たびたび変えたのであります。私は今の庫出税の方がいいのではないかと考えております。また物品税について生活必需品はどうするかという問題でございます。たとえば電気洗たく機なんかは、これは生活必需品と見るか見ないか、洗たく機の方は免税にいたしておるのでありますが、今回課税したらどうかという議論もありまして、生活必需品なりやいなやというと、なかなか困難な問題であります。ただ物品税を創設いたしましたる経緯から申しますると、生活必需品には課税しない方が望ましいという気持を持っております。
  240. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 庫出税関係につきまして、もう少し延納を認めるという程度の親心をお示しになるおつもりはありませんでしょうか。その点を伺いたいのであります。
  241. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これはなかなか各品目ごとに非常に厄介な問題でございまして、原則から申しますると、砂糖とか、あるいは酒とか、あるいはまた揮発油税につきましても、十五日くらいは待っておりまするが、これは金額的にいってなかなかむずかしい問題だと思います。たとえば物品税のおもなる、非常に大きい税額の紙なり、おもちゃ、こうなりますと、なかなか一がいに言えない点がございますので、十分研究してみたいと思います。
  242. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 租税特別措置法の整理、合理化をおやりになろうとしておるのでありますが、一時は少くとも九百億、千億のうちの半分の四百五十億くらいは廃止しようという声が出ておったのでありますが、それに比べて相当大幅に残ることに相なったのでありますが、それにかかわらず、概算所得控除制を廃止せられまして、八十億からの財源を捻出せられたのであります。ところが、この概算所得控除制は、申し上げるまでもなく、社会保険に加入できない階層の人々に対する一つの恩典になってきておったのであります。これをこの際廃止いたしますると、社会政策的な考え方から見るというと、非常に問題じゃないだろうかというふうに考えられるのでありますが、この点につきましての御意見を伺いたいと思います。
  243. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 所得概算控除の制度は、一昨年か昨年設けたのでございますが、こういう税制簡素化の場合におきましては、これを廃止し、ほんとうに医療控除とか、あるいは社会保険料の控除を厳密に見ていった方がいいのじゃないか。ことに、今回は相当の減税をやりますときでありますから、これをやめるのに非常にいいときであります。片一方は、国民皆保険という旗じるしのもとに、全部の方々に国民健康保険に入っていただくように施策いたしておりますので、この際やめるのにいい時期だと考えまして、やめることにいたしたのでございます。
  244. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 減税をこの際するからということでございますが、減税をするからということになりますると、概算所得控除をやめるという問題だけじゃなく、その他の問題もこれは同様なことになろうと考えるのでありますが、要するに全部の特別措置を廃止するならば格別であります。またお話の、全部の国民に社会保険が及んでいくということになりますると、その際に概算所得控除をやめるのは、これまたやむを得ないと思うのでありますが、ただいまのところは、その段階に至っておらぬのでありまして、この点について、大蔵大臣の御見解を重ねて伺いたいと思います。
  245. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) こういう控除制度がいいか悪いかというのは、相当議論のある点でございます。いろいろな控除制度を税法上認めておるときに、そういうものをやめてしまって、一律に五%、一万五千円までというのが、こういうのがいいか悪いかということは、これはなかなかむずかしい問題でございます。私は理論的には、やはり各種の所得税法に認める控除をやっていくのが本筋だと考えておるのでございます。従いまして、従来そうであったのでございますが、昨年か一昨年か、アメリカ式に一ぺん改め、これでやってみますと、必ずしも適正でない。こういう制度は減税のときしか実はやめられない。で、皆さんが入ったときにこれをやめるということになりますと、そのしわが相当かかってくると思うのであります。従いまして、片一方では所得税を減税し、また地方では住民税を軽減し、そうして新たに国民皆保険に向って進む機会が一番いいのじゃないか、こう考えましてやめることにいたしたのであります。
  246. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 国民皆保険のお話がしきりに出ますので、この際伺っておきたいと思うのでありますが、御承知通り、社会保険は、五人未満の従業員を使用しておるような零細階級には及んでおらぬのであります。これがいつ及ぶのか、またどういう段階で進めようとしておられるのか。今、大蔵大臣の言われるように、国民皆保険になっていくのだから、概算所得控除制もこの際やめていいのじゃないかというような御意見すら出ておるのでありまして、この際国民皆保険の線に、しかも、零細階級に対する社会保険の拡大適用について、どういう段取りで進まれつつあるか、これについて御意見を伺いたい。
  247. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 五人未満の零細企業者の健康保険の受け入れの問題でございますが、これは国民保険の方に入れて達成するか、あるいは健康保険法の改正によるか、または第二種健康保険というようなものを作るか、これはいろいろやり方について実は検討中でございまして、しかし、この検討もそういつまでも時間をかけるというわけには参りませんので、近いうちにそのいずれかに決定いたして、そうして国民皆保険の実施一つやる、こういうような考えのもとで検討いたしております。
  248. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 国民皆保険の方はまだ検討中で、見通しもつかぬようでありますが、一方、概算所得控除制の方は、それを前提にして、もう廃止せられるということなんでありますが、その点どういうふうになるのでありましょうか。
  249. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) あと、大蔵大臣からお答えがあると思いますが、国民皆保険は、先般、総理の演説にもありましたように、昭和三十五年を目途として達成いたしたい、こういう方針でございまして、その線に沿った準備を進めておる段階でございます。
  250. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 厚生大臣のお答えになったのは、国民健康保険でいくか、あるいは健康保険でいくか、あるいは第二種健康保険を作るか、こういうものを検討しておる、こういうお答えと私は了承いたします。ところで、五人未満のものにつきましては、私はやはり地域別の国民健康保険がいいのじゃないか。今のところ、全国各都市におきまして、相当今の保険に加入する機運が出ております。私は今年度大体五百万人程度のものがいけるのじゃないかと考えておるのであります。
  251. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 いずれにいたしましても、まだ国民皆保険の線は検討中、せいぜいよくて準備中程度でありまして、一方、概算所得控除制の方はぴしゃっと廃止される、そこに非常に気の毒な面が出てくると思うのであります。この点については、これ以上追及いたしましてもどうかと思いますから、この辺にいたしますが、このはっきりいたさぬ点を十分にお考え願いまして、五人未満の従業員使用の零細階級に、保険の拡大適用がすみやかに実現いたしますように御努力願いたいと思うのであります。  この際、特にそれに関連いたしまして質問いたしておきたいと思いまするのは、社会保障制度審議会からも第一種・第二種に分けてでも、拙速主義といいますか、それで早く零細階級への健康保険の拡大をしたら、という意見が出ておるようでありますが、これについての厚生大臣の御見解はどうでありましょうか。
  252. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) お説の通りでございまして、できるだけ一つ急いで実施をしたいと、こういうふうに考えて検討いたしております。
  253. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 元へ戻りまして、税金問題でありますが、減税が行われますと、あと必ず徴税攻勢が伴うというのが、これは世間一般でもそういうふうに思い込んでしまっておるのでありますが、今回のような相当大きな減税をやられますると、大蔵大臣はちっともそういうことをお考えになっておらぬでありましょうけれども、末端の税務当局になりまするというと、いわゆる苛斂誅求これ努める、かえって減税じゃなくて増税になるなんという面が出てくるおそれが過去の例からはあるわけでありますが、この際、画期的な減税に伴いまして、苛斂誅求はしないというふうに、極力注意をするようにというような示達を第一線にお出しになるような親心はおありになるでありましょうか、どうでありましょうか。その点。
  254. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) よくいつの国会でもそういうことを言われるのでございますが、また別の方面では、勤労所得者は非常に高くて、事業所得者は非常に安い、ほんとうの所得について納めていないのじゃないか、こういう議論も非常に強いのであります。もちろん、大蔵当局といたしましては、苛斂誅求は絶対禁物、これはもう言わずもがなでありますが、これは、機会あるごとに、私は国税庁長官並びに国税局長には指示いたしております。予算ごらん下さいましても、問題の中小企業を主体にいたします申告の所得税におきましては、三十一年度は六百二、三十億でございましたが、三十二年度は五百七十億円と予算自体が減ってきておるのであります。源泉徴収の分は、減税いたしましても減らずに少しふえておる。法人税の方はうんとふえておる。しかし、個人の中小企業を中心とした申告納税というものは、予算面からも相当減らしておるのであります。われわれは、決して苛斂誅求などということは頭にございません。そういうことはすべきでないと考えております。
  255. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 これは非常な画期的な減税なのであります。よって、この際そういう御趣旨をはっきり何らかの方法で明らかにせられる御意思はないのでありましょうか。
  256. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) この際ばかりではなく、常にそういうことは考えておるのでございます。ただいま御説明申し上げましたように、予算も減っておるのでございまして、好況の時でございまするが、決してふくらんだ見方はいたしておりません。
  257. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 青色申告につきまして、最近いわれておることなのでありますが、かつては指導育成的な立場でこの青色申告を処理せられておった。ところが、最近では、なかなか厳重になりまして、むしろ青色申告を押えようというような風が第一線には見えるというのでありますが、その点につきまして、大蔵省の方針が変ってきたのでありましょうか、どうでありましょうか。この点をお伺いいたします。
  258. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 誠実な申告をしていただきます上におきまして、青色申告は非常にいい制度だと思っております。従いまして、青色申告制度は従来通り奨励していきたいという考えであります。
  259. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 大蔵大臣は、今はっきり奨励をしていこうというふうに言われたのでありますが、どうも第一線ではそうでない。押えよう押えようとする。思ったよりもあまり青色申告が減税的な結果になるものだから、これを押えていこうという風があるというのでありますが、しかし、大蔵大臣は、はっきり奨励をしていこうと言われるのでありますから、その趣旨を第一線に十分に徹底をさしていただきたいと思うのであります。これに関連いたしまして、ごく最近の事例でありますが、青色申告について、三割ぐらいよけいに税を出せということを——これは具体的に申しますが、京橋税務署管内などでは、そういうことが、しかも、一せいに行われているということまで言っておるのであります。一せいにやるところを見ると、これについて、どこからか指令が出ておるのではないかというのでありますが、これにつきまして御所見はいかがでございましょうか。
  260. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 最近衆議院の大蔵委員会でお知らせ制度というのが問題になりまして、これが民間にきつくするということは申告納税制度の根本にも触れるというのでやめさせました。青色申告の場合に、三割増加というようなことは私はないと存ずるのでございます。あくまで申告制度でございます。税務官庁といたしましては、厚薄のないように、しかも、誠実な申告をしていただきまするように、できるだけの努力はいたしておりまするが、税法は、昔のように賦課決定でなしに、申告を待って後にやるという建前になっておりますので、行き過ぎの点はないと思っております。私四、五年税務から離れておりましたので、個々の税務署でどういう態度をとっておるか存じませんが、私は行き過ぎた点はないものと心得ております。
  261. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 これは、ただいま申しまするように、京橋税務署の管内で、明らかに青色青告をした者に対して、三割ぐらいよけいに納めるのが当然だ、そこで、現実に納めて帰ればそれでよし、納めぬ場合はこれはあとでまた問題になると思って帰ってくれというようなことを言われておる。それが一人や二人でなくて、相当の数に上っておるということなんであります。これは実情をお調べ願いまして、もしもそういうことでありますと、大蔵大臣の青色申告はむしろ奨励はやっぱりしていこうと思っているのだというお考えと全然相背馳いたしますので、その点を希望を申しておきます。  次には、資産再評価、中小企業資産再評価の法律案が出るわけでありますが、これに関しまして、かつては三%であったのでありますが、これを無税にしてもらいたいという声が非常に出ておるのであります。大蔵大臣は、関西方面の声をいれられて、三%にせられたのでありますが、中小企業のむしろ振興をはかろう、合理化をはかろう、これをぜひやらせようという意味合いからいいますると、やはり無税にせられてしかるべきものではないかというように考えるのであります。この点と、もう一点は、第三次再評価のときには、御承知通り、固定資産税につきましては、三年間課税標準を据え置かれたのでありますが、今回はそれがどういうふうになっておるのでありましょうか、その点をお伺いいたします。
  262. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 固定資産の再評価の問題につきましては、御承知通り、初めは五千万円以上の払込資本金についてやる、また、一億円以上の資産を持っておる者には三千万円以上からできることにいたしておったのでございます。従いまして、大企業におきましては、相当経理の合理化がはかられた、しかし、中小企業のものにつきましては、その恩典に浴することができなかった、しかも、中小企業と申しましても、最近の状態では、相当の資産の増加を来たしておるのがあるのであります。従いまして、私は、先般大阪に参りましたときに、そういう陳情を受けましたので、これはもっともな陳情だというので、実は中小企業の方々に対しても資産再評価の分をやろうといたしたのでございます。しこうして、次に税率の問題でございまするが、これは豊田さん御承知通り、初めは六%の税率でとり、第三次再評価のときから三%にいたしたのであります。今回、中小企業なるがゆえに、六%あるいは三%を二%にいたしまして、従いまして、これを再評価いたしまして、そうしてその再評価したところから減価償却を見ていきますると、二%の分を二年分納で納めまして、初年度、二年度も相当納税額は減ってくるのであります。三年目からは著しく減るように相なるのでございまして、再評価をしました中小企業の方は、これによりまして非常な恩典を受けることは確かでございます。そうして無税にと、こうおっしゃいますが、これはやはり大企業が六%あるいは三%納めているのでございますから、これを無税にするということは、これは税の公平の点からいってもできません。しかも、これは二%の税を納められるからというので、再評価をすることのじゃまには決してなりません。非常な特典になることと私は考えるのでございます。大体この程度が中小企業に対しましても適当な措置であろうと考えております。
  263. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 固定資産税の三年間据置くらいの特別扱いはやるお考えはないでございましょうか。
  264. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 固定資産税の三年間の据置と申しますと……。
  265. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 これは第三次評価のときに、三年間は再評価前の課税標準でやっていこうという特典を与えておったということに対するバランスを考えてもらいたいという点であります。
  266. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 固定資産の再評価をいたしましたら、私はやっぱり税率によって徴収いたしたと思いますが、こまかい問題については存じませんが、やはり再評価をして、そうして減価償却によって所得を減少する場合においては、やっぱり再評価税を納めていただくのがほんとうの筋だと思います。
  267. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 この点については、なお一つ御研究を願っておくことにいたしまして、次に、金融関係でありますが、大蔵大臣の財政演説で、商工中金の金利は、一割五厘から一割以下に引き下げるということを言われておるのでありますが、これは、長期資金だけのことであろうか、どうであろうかという疑問を一般に抱いておるのでありまして、これは、長期資金だけのことではなく、短期資金も合せて平均のことであるかどうか、この際明らかにしておきたいと思います。
  268. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 豊田さん御承知通り、商工中金は短期資金も出しておりますし、それからまた一年以上二年以下の分、あるいは二年以上と相なっております。これを平均いたしまして一割五厘何ぼだ、それを平均して、九分九厘何毛かになるはずでございます。たとえば、一年以上二年か二年半は一割一分でございますが、これを一割にいたします。二年以上は一割一分五厘、これを一分下げて一割五厘でありまして、短期の方は八分から九分でございます。これも相当下げまして、平均で一割を割るということになっておる次第でございます。
  269. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 長期資金だけの平均では、どれくらい引き下げるということを目標にせられておるのでありましょうか。
  270. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 長期資金では、先ほど申し上げましたように一割一分のものは一割、一割一分五厘のものは一割五厘、この程度になると思います。
  271. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまのお答えによりますと、まず一割五厘、それから一割一分のものは一割というようなことでありまして、これを個人で借りまする中小企業金融公庫の貸出金利は、これは御承知のように九分六厘でありますが、これに比べてみますとなお高いということになるのであります。御承知のように中小企業対策の根幹というのは、歴代内閣で常に組織を中心にして考えるんだということを言われておるのでありますが、借り入れの金利から見ますると、個人よりも組織の方が借りると高い、要するに尊重するという組織の方が冷遇せられまして、個人の方がかえって割安の金利で借りられるということに相なっておるのであります。こういうふうで参りますと、中小企業団体法などを作りましても、組合というものはむしろ崩壊の方へ向いていくのでありまして、この点について大蔵大臣はどういうお考えを持っておられるでありましょうか。
  272. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 以前からの問題の点でございまするが、個人の方は特に今回金利を安くするようにはいたしません。中小企業に対しましての商工中金のあり方といたしまして、私はこちらの方を徐々に金利を下げていきたい、こういうので、財政融資の方で十五億円を入れまして、金利の低下を徐々にやっていこう、こういたしておるのであります。
  273. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 その御方針まことにけつこうだと思いますが、これを早く具体化いたしまするために、資金運用部資金というのは御承知のごとく戦前は商工中金などに直接、貸付ができるようになっておったのでありまして、これによりましていわゆる低利資金運用をやっておったのでありますが、これを戦前の姿に返すというお考えはないのでありましょうか。
  274. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 資金運用部の資金は直接政府関係の機関には出しておるのでございます。ただ、商工中金というものが、組合金融を主とした政府関係機関でないのでございます。民間機関という建前になっておりますので、直接、資金運用部の金を出すということは、今の考え方としてはなかなかむずかしいのじゃないかと思います。従いまして資金運用部の金は商工中金の金融債という格好で出しておるのでございます。今、資金運用部の直接の貸し出しをする場合に、政府の出資をした政府機関と同様に、商工中金の取扱いになるかどうかということはなかなか厄介な問題だと思います。それよりも、今の低金利の方針を実現すべく産業投融資の方から出していくとか、あるいは資金運用部で商工中金の金融債を、商工債券を引き受ける、この方向でいくのが、今までの考え方を変えずに、そうして他に影響を及ぼさない、そして商工中金の金利低下が早く実現できるのではないかと考えております。
  275. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 資金運用部資金金融債を引き受けるということになりますと、御承知のように市中の消化をいたしまする場合の金融債の金利と同じ金利になってくる。それで結局金利高になる。資金コストが高くて貸出金利が高いということで、現在の組合金融金利が、個人である貸出金利よりも高いのだという矛盾が出てきておるのであります。従って資金運用部資金金融債を引き受けるのだということでやりますと、特別の低利で引き受けるという線が出てこないと問題は解決しないと思うのでありますが、その点についての大蔵大臣の御見解また対策を伺いたいと思うわけであります。
  276. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは商工中金の組織の問題でございます。で、大蔵省で見るところでは、国民金融公庫とか、あるいは中小企業金融公庫というような政府関係機関ではない、組合の出資によってできた一つ金融機関であります。私は政府関係機関ということよりも、これは民間金融機関だ、こういうふうな観点に立っておるのでございます。それを、商工中金というものを国民金融公庫とか、あるいは中小企業金融公庫と同じような組織、建前にすれば、そういうことも考えられますけれども、今のように組合金融機関として立っている場合におきまして、他の長期信用よりも別の利率の金融債を引き受けるということは、私は邪道と考えるのであります。それよりも組合金融であるが、中小企業を相手にしておるのであるから、財政融資金利のかからないものを出していく、そうして一般の貸付金利を下げていくことが筋であると自分は考えております。
  277. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうなりますと、政府出資など、非常に多く増額をしなければならぬということになろうと思うのでありますが、要するに大蔵大臣も組合で借りる金利というものが個人で借りる金利よりも高いということの矛盾は何とか是正しなければいかぬというお話でありまして、線は全く私ども同感なんでありますが、これを具体化する上においてどういう方法でいくのか。政府機関ではないという点もはっきりいたしておりますが、政府機関でないしかも建前で組合の貸し出し金利が個人の借りる金利よりも高くないという線を持ち出していくということについては、今後どういう方向で進んでいくか。今の政府出資の増額を中心にするということならばまた話はわかるのでありますが、その点についての御意見はいかがでございますか。
  278. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は個人に貸し付けまする国民金融公庫、あるいは中小企業金融公庫の金利よりも商工中金の金利が下でなければならぬという議論はいたしておりません。ただ実情は組合金利が高くなっているからこれを安くしようということだけでありまして、組合で金を借りる場合は、個人よりも低くしなければならぬという私は建前じゃないのでございます。それは同等であるか、あるいは時によれば低い場合もあり、あるいは時によれば高い場合もあるかもしれませぬが、個人の方で割に安い金利の場合に組合金融の商工中金の分はなるべく安いということが趣旨でありまして、下でなければならぬということを言っておるのではございません。しこうして商工中金が組合金融であるという関係におきましては、私はこれを政府機関の金融機関とするよりも、今のような状態を続けていってそうして財政融資その他でやっていくのがいいのではないか。商工中金の社債あるいは割引商工債券というものの実情等は十分考えていっておりまするが、長期信用銀行、あるいは日本興業銀行の方の金融債を引き受ける場合におきましてもやはり商工中金というものを考えてやっておるのでありまして、金利の低下はやはり財政融資でいくよりほかないのじゃないかと思います。
  279. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 重大な問題に触れられたわけなんでありますが、この組合関係で借りるということになりますと、組合関係で借りる金利のほかに組合の経費が御承知のごとくかかる。それからまた組合から組合員に借りた金を転貸する場合にある程度の手数料を取るというようなことが出てくるのは、実際上やむを得ない点でありまして、そういう点からは組合で借りる金利というものが個人で借りる金利よりもむしろ低いということがどうしても組合を維持しよう、また組合を尊重しようということになると必要だということになるのであります。それでなければ組合を作った妙味がないということになってくるのであります。そこでどうしてもこの組合で借りる金利の方が個人で借りる金利よりも安いか、あるいはお話のごとく少くとも同等でなきゃならぬということになるのでありますが、この同等にするについても先ほど来申しまする通り財政融資ということになりますと金融債の引受金利が高くなる、資金運用部資金の引受金利が高くなると、もう結局政府出資を増額する以外に道がないのだということになるわけであります。この点については御見解はいかがなものでありましょうか。
  280. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは、国民金融公庫から出しておる零細な庶民金融の分と、それから商工中金で出しておるのは金額も違います、また中小企業金融公庫から出しておるのもまあ地方銀行の間でさやを取られたりいろいろな点があるのであります。個人の方にいたしましても信用保証協会を通じればまた手数料を出す。ですからこれは一がいには私は言えないと思います。しこうして今の商工中金が組合金融であるという民間金融機関としては私は中小企業金融対策として政府出資をふやして金利を低下するということが一番の早道だと考えておるのであります。
  281. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 まあ一般にはこの神武景気だなんて言われておりまするけれども、御承知通り中小企業、特に零細階級になりまするとその金融は非常に困っておるのでありまして、その状態はちっとも変らない、また特に最近はかえって上りつつあるというような情勢であります。こういう点から考えますると中小企業金融のうちでも特に零細金融、これをよほど重点を置いて考えていかなければいかぬ段階になってきたのじゃないかと思うのであります。要するに十万、二十万の金でやみ金融をたよりにした、しかもその結果が悲惨な結果になっておるというのは幾多例があるわけでありまして、この際この特に零細金融について政府は画期的な何か手をお打ちになる必要があるのじゃないかというふうに考えるのでありますが、この点大蔵大臣の御見解はいかがでございましょうか。
  282. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 従来からの問題でございまするが、商工中金に十五億円の出資をいたしましたり、あるいは信用保証協会の方に今回新たに一般会計から十億を出しまして、そうして借りやすいようにしようとしたことがその一端でございます。大体私の見るところでは、大企業の収益状況はよほどよくなりました、しかしこれにつれまして中小企業の方も徐々に採算もよくなっていきつつあるのでございます。ただ最近は金詰まりによりまして中小企業の連中が金を借りる場合に歩積みその他の問題がまた持ち上っていることも聞いております。しかしこういうことはできるだけ少いように指導をいたしておりまするし、片一方の方におきまして補正予算でお願いいたしましたように国民金融公庫や中小企業金融公庫との両者を三十五億円も年度内に使うようにしたのもその一端でございます。そうして来年度におきましては国民金融公庫と中小企業金融公庫を通じまして本年度よりも二百億余り原資を増加しておる等いろんな手で中小企業の方への施策を進めておるわけでございます。
  283. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 まあ一般に中小企業金融の中でも私今御質問しておりますのはごく零細な面でのこの金融関係なのでありますが、この十万、二十万の零細なる資金を円滑に供給いたすということにつきましてはよほど信用保証制度を強化していく必要があるだろうと考えるのであります。ただいまこの信用保証協会というのは各県ばらばらでありまして、うまくいっているところもあれば全然うまくいっておらぬところもあるというような状態であります。従ってこの各県ばらばらの信用保証協会を一元化いたしまして、そうしてこれに政府相当大幅な出資をする、そうしてこの全国一元化せられた信用保証組織で迅速にまあ簡単に信用保証をやっていくいき方によりまして十万、二十万の零細資金を円滑に供給していくということが一つにはこの社会政策的に非常に必要な段階になってきておると思うのでありますが、これにつきまして信用保証協会の画期的な一元化、拡充強化ということにつきまして大蔵大臣の御見解を伺いしたいと思います。
  284. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 五、六年前から各府県にある信用保証協会をもっと活発に働いていただこう、こういう念願から初めて十億円の出資を国の方でしたわけであります。この十億円の出資によりまして各府県の状況がどうなりますか、その経過を見まして私は今後の問題として研究していってみたいと思います。
  285. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それと同時に最近の金融逼迫の情勢がまた再び出てきつつあるということに関連いたしまして、従来のこの預託金の引き揚げを延期せられ、あいるはさらに増額をせられるというような必要すら出てきておるように思うのでありまするが、これにつきましての御見解はいかがでありましょうか。
  286. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 指定預金につきましては、会計法上いろいろ疑義があるのでございます。従いまして、大蔵省といたしましては、会計検査院と相談の上、今六十五億円ばかり残っておりまするが、これはまあ今のような状態でございまするから引き揚げるのを延ばしておりまするが、今後この指定預金をふやすという方針はとらぬつもりでおります。これはいろいろ疑義がございます。ただ、政府の余裕資金資金運用部から民間に放出しようということは、御承知通り、昨年の暮れに八十億円から始まりまして、三月の末までに七百億円の金を出そうといたしておるのでございます。これが、指定預金をします場合はなかなかいいのでございまするが、引き揚げるということが全くむずかしいのございまして、私は、そういうことよりもやはり本筋でいくべきではないかと思います。
  287. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 最後に、大蔵大臣にお尋ねをいたしておくのでありまするが、今の、現在の指定預金引き揚げだけはしないということは、さように了解してよろしいのでありましょうか。
  288. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) こういう金融情勢でございますから、今引き揚げるようなことは考えておりません。適当なときまで待ちたいと思います。
  289. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 大蔵大臣はもうけっこうでありますから、どうぞ……。  労働大臣に伺いたいと思うのでありますが、御承知のように、ただいまの労働基準法というのは、大企業から零細企業まで一本の法律でいっておる。そこに非常に無理があるのであります。そこで、中小企業独自の労働基準法を作る御意思はないでありましょうか。その点お伺いします。
  290. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) お答えいたします。  中小企業の問題に対しまして、先刻以来指導実践の見地からいろいろと御心配いただきますことを感謝いたします。  ただいま御指摘になりました点に対しましては、私どもも全く同感であります。従いまして、臨時労働基準法調査会を一昨年八月に作りまして、その後、総会を九回、小委員会を六回、さらに中小企業等それぞれ調査を厳密にいたしておりまして、その運営につきましても、民主的に自主的にこれを行わしめておりますから、この答申を待って、御指摘になりましたような点の改正を行いたいと、かように思っておる次第でございます。
  291. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 これは伝え聞くところでありますが、労働大臣は、法律はいじらんで運用上の手心でいこうというようなことをどこかで御発言になったとかいうことを承わるのでありますが、運用上の手心ということになりますと、労働基準監督署長に生殺与奪の権を与えることになりまするので、弱い中小企業、零細企業というものは非常にそこで困ってくるのであります。手心次第でどんなことにでもなるということは、結局やられようによってはひどい目にあわされるということになるわけでありまするので、そういう点では、運用上の手心ということでなく、実情に合うような行き方をするということがまず先決問題だと思うのでありますが、実情本位に少くとも労働基準法を改めていこうというお考えはないかどうか。これを具体的に申しますると、中小企業関係には御承知のごとく、非常に季節的の関係のものが多いのであります。盆、暮れの関係とか、あるいはクリスマスの関係であるとか、あいるは輸出シーズンの関係が非常にあるというようなものが相当多いのでありまするが、一方、シーズン関係のあるものについては、農林水産業は御承知のように、大きな除外例が設けられておるのであります。こういうシーズンに関係のあるものについては、少くとも農林水産業程度の除外例を置くということについてはお考えがあってしかるべきじゃないかと思うのでありますが、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  292. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) お答えいたします。  今御指摘になりましたような点に対しましては、私も全く同感であります。まず手心の問題でありますが、手心と申し上げたかどうかはちょっと記憶ありませんが、そういう意味のことを申し上げたことはわかっております。それは、今申し上げましたように、調査会の方の答申がまだ急にできませんし、ここ当分はかかるであろう、その間は、現在の基準法を適用していかなければなりませんから、これの摘発主義を廃しまして、中小企業、零細企業の育成強化、あるいは完全に発達せしめて、そのワク内に当てはめていくように摘発主義をやめて、誘導的な行き方に持っていきたいということの意味でございましたが、これに対しましても、その基準局基準局に勝手にこれを行わしめるとお話のような点になりますから、そういう点に対しましては、本部の方で統一いたしましてそれを処置したいと思っております。また、季節的な業務に対する考え方でございますが、それらは今指摘になりましたような点一切を臨時労働基準法調査会の方で検討願っておりますから、これの答申によって改正したいと、かように思っております。
  293. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 経済計画の大綱の関係につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  経済計画の大綱によりますると、商業、サービス部門に就業増加が期待できるというふうに書いてあるのでありまするが、どの程度、商業、サービス部門に完全雇用の見地から期待をせられておりまするのか、具体的に一つ数字を伺いたいと思います。
  294. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 昭和三十二年度におきまして、新しく八十九万人の労働人口を吸収する予定でございますが、サービス部門、商業部門合せまして五十二万人を吸収するという予定でございます。
  295. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 商業、サービスそれぞれ分けると、どの程度になるのでございますか。
  296. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) サービス部門が二十七万人で、商業部門が二十五万人となっております。
  297. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 商業、サービスと一口に言いますけれども、これは非常にいろいろ業種が分れておるのでございますが、その積算基礎はどんなふうになっておるのでございましょうか。
  298. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) この商業、サービス部門のうちに、中小企業以外のもので、たとえば映画でありますとか、金融関係銀行、信託、保険というふうなむしろ大企業に属するようなものもサービス部門の中に含めて計算をいたしてありますから、中小企業の必ずしもサービス部門の数字に一致しない点があるかとも思われます。また、そのほかに、増加数とこれに対応する雇用との間に一定の函数関係がありまするので、これを基礎にいたしまして、三十二年度の増加の見込みからその限界雇用計数を推計する。そういうふうな方法をとってあります。
  299. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまお話のありました商業二十五万、サービス部門二十七万を期待するということにつきまして、それを推進していく方策はどういうものを用意せられておりますか。
  300. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) それにつきましてはいろいろの方法がありますが、金融関係、税制関係等につきましては、先ほど来お話がありましたが、それ以外に中小企業、特に零細企業等につきましては、通産省を中心としての組織化の問題、あるいは技術的な新しいレベル・アップのための指導育成、あるいは貿易等に関する特別な組合の組織化、市場調査等、国内ないし国際的な環境に合うような対策を具体的に考えていく。こういうことを考えております。
  301. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 本年の一月二十六日閣議決定になりました経済計画の大綱というものを見ますと、消費組合、購買会等の活動の調整をはかり、商業活動分野の適正化に努めるということが出ておるのでありますが、これは具体的にいうとどういうことを裏づけとしてお考えになっておるのでありましょうか。
  302. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 特に小売業等の弱体、またはしわ寄せによって転落することを防ぐために、特別に確かに通産省におきましては、新しい計画のもとに立法措置を講じておると、こういうふうに考えております。
  303. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 いわゆる小売商振興法案がそれになるのかと思うのでありますが、これはほんとうに今度の国会に出るのでありましょうか。出るとすれば、いつごろ出るのか、その辺を伺いたいと思います。
  304. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 通産大臣がお見えにならないので、その的確な時期については十分な打ち合せはいたしておりませんけれども、国会に提出するかしないか、的確なことは私からは申しかねる点があります。
  305. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 これが出ないということになりますと、閣議決定にちゃんとなっていることが国会で実現しないということになりますので、一種の閣議決定違反になるのじゃないかと思うのでありますが、その点どうでありますか。
  306. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 私かわって申し上げますが、御承知のように、中小企業振興審議会におきまして中小企業の組織化、小売商振興等につきまして立法をしたらどうかという答申をいただいております。その線に浴いまして、先般から通産省内部でも種々検討をいたして参りまして、組織法の方は大体提案の運びに準備は整って参りましたが、この方が相当大きな立法でございますので、同時に検討して参りました小売商振興法というような内容の立法につきましては、現在までまだ若干準備不十分な点はあるのでありますけれども、内容としてはそういう内容のものを、今国会に提案をするように、大体検討を今させておる状況でございます。
  307. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今の答弁ではっきりいたしたのでありますが、小売関係についてはその法案が出てくるということでありますが、これと両翼の関係になっております中小企業振興助成法案、要するに工業部門についての適正分野を守ろうという法案はどういうふうになっておるのでありましょうか。
  308. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) ただいま御指摘のありました第三の法案の準備も従来続けて参ったのであります。先ほど来申しましたように、中小企業組織化の関係の法案の準備に予想外の時間をとりました。内容の調整のほかに、条文の整備等につきまして法制局審議にも相当の時間をとりました。現状におきましては、中小企業の組織化に関する法律と小売商の振興に関する法律は本国会に提案ができる運びになると思うのでありますが、中小企業振興助成法というような名前で呼ばれておりますものは、現状では、どうも今国会にはまだ十分検討を終えて提案をすることには準備が不足になるのではないかと、こういうふうに考えております。
  309. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうしますと、今の商業部門関係についてはちゃんとした一つの裏づけができてくる。ところが、工業部門関係については裏づけが今回はできないということになるのでありますが、それでいくと、この経済計画の大綱に出ておりまする商業部門、サービス部門以外の中小企業部門への就業期待ということが相当懸念せられるのじゃないかと思うのでありますが、その点いかにお考えでありましょうか。
  310. 宇田耕一

    ○国務大臣(宇田耕一君) 立法措置につきましてはなおよく連絡はいたしたいと思いますがお説のようなバランスの破れることのないように、十分に配慮をいたしたいと思います。なお、通産大臣と話をしていきたいと考えております。
  311. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまの点ぜひ一つバランスのとれるような行き方を考えるように希望をしておきますが、同時に、小売商部門に対する一つの脅威といたしまして、国鉄従業員の共済組合の取扱い物資に対しまする運賃八割引というのが非常に問題になっておったのでありますが、この運賃八割引はやめたとかというようなことも聞くのでありますが、果してやめたのか、やめないのか、その点伺いたいのであります。
  312. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。本年の一月一日から八割引は全部やめました。
  313. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 八割引を全部やめられて国鉄の収入増がどれくらいになったのでありましょうか。
  314. 宮澤胤勇

    ○国務大臣(宮澤胤勇君) 四億円。
  315. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 文部大臣に伺いたいと思いますが、新生活運動というのは現内閣でもお続けになるおつもりでありましょうか。
  316. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 新生活運動は御承知通りに、国民の盛り上る運動ということに相なっておるわけでございますが、建前から申しまして、政府が続けるとか続けないとかという性質のものではないと思うのでありますが、政府といたしましては、御承知のように、鳩山内閣以来民間の方々が新生活運動協会というものをお作りになり、それに対しまして助成金を交付いたしまして、側面から御援助申し上げておるというような形になっしおります。われわれといたしましては、これをやめるとかというような考えはもっておりません。
  317. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そういたしますと、新生活運動の実践項目の中に、青少年の不良化する原因を除去する、それからもう一つは、防犯運動の徹底化をやるということが出ておるのでありますが、今までの実績を見ますと少しも進歩して、おらぬ。むしろ事態はだんだん悪化しておるというように考えられるのでありますが、青少年の不良化防止あるいは防犯運動の徹底化等について、一体今までどういうことをやってきたのか、また、今後どういうことにしようかという点について、御意見を伺いたいと思います。
  318. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 青少年の不良化防止の問題は、まことに大切なことでございます。また、現実の状況を見ましても、まことに心配にたえないところでございますが、従来この問題につきましては、政府におきましては中央に青少年問題協議会というものを作って、そこでさような事柄に対するいろいろな施策を協議して参っているわけでございます。また、地方におきましても県市町村にそれぞれこの種の協議会を設けまして、互いに中央、地方、連絡いたしまして施策を講じて参っておる次第でございます。中央におきましては、この協議会で決定した事項を関係諸機関に通じまして、それぞれ協力してその目的を達成するというような仕組みで参っておる次第でございます。不良化防止の問題につきましても、かなりな成績を上げている面、私はあると思うのでございますが、お話しの通りにまだ十分な成果を上げるというところまで参っておらないようであります。これにつきましては、申すまでもなく関係各機関が協力いたしまして、たとえば私の方で申しますれば学校教育、あるいは社会教育の面を通じましてこの問題に対して努力をする。また、関係機関の協力をお願いいたしまして、社会の青少年を取り巻く環境の改善ということに努力をいたさなければならないと思うのでございます。お話しもございますように、思うように成果が上げにくいので苦慮いたしているわけでございますが、せいぜいこの問題につきましては、今後ともに努力して参りたいと存じます。
  319. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 現内閣は青年層に働きかけしいくということを、強く言われてきておるのでありますが、具体的にはどういう方法で青年層に働きかけようということを考えておられるのでありましょうか、具体的に一つ……。
  320. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) この問題は総理の演説にありましたことでありまして、総理からお答え申し上げるのが適当かと存じますが、経理のお気持といたしましては、できるだけ青少年に接触し、青少年の自覚と奮起を期待する、こういうお気持で申されたと思うのでありますが、それに従いまして政府といたしましても、それぞれの関係機関におきまして、その趣旨をもって青少年の自覚、奮起を促すために必要な施策を講じて参らなければならぬと考えるのでございまして、その具体的な方法というものは、いろいろあろうと思います。一がいにこれというわけにも参らぬと思いますが、あらゆる機会、あらゆる施設を活用いたしまして、この趣旨の徹底に努めたいと考えます。
  321. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 最近自民党の組織方針というので、新聞などに発表せられたのでありますが、青年層に強く働きかけるというのは、この組織方針の関連においての問題でありましょうか、あるいは従来の新生活運動のような、ああいう行き方についての青年層への働きかけの問題なんでありましょうか。その点、要するに政治的な面でのことなのか、あるいは青年の精神作興といいますか、そういうような意味でのことなのか、その点お伺いをいたします。
  322. 灘尾弘吉

    ○国務大臣(灘尾弘吉君) 政府で申しておりますのは、お話しにありましたような党の組織方針というような意味合いから申しておるのではないと思います。一般的に青年が日本の国情、日本の状態というものについて正しい認識を持ち、国家民族の発展のために自覚し、奮起をしてもらう、そういう趣旨でのお話しでございます。   〔吉田法晴君発言の許可を求む〕
  323. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 議事進行ですか。
  324. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと休憩して下さい。
  325. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  326. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 速記始めて下さい。
  327. 千田正

    ○千田正君 本日私は日米加ソ連に関係しますところの条約の批准が、内閣ですでに決定されて国会に要請されている点がありますので、それをお尋ねするために、外務、大蔵、農林の三大臣御一緒のときでなければお尋ねできませんので、私はとりあえずきょうは防衛庁長官にだけお尋ねしたいと思います。  防衛庁長官にお尋ねするのは、先般あなたが御欠席になっておられたので、政務次官がかわって御答弁なさいましたが、それは防衛隊員の犯罪の問題であります。新聞紙に伝うるところによれば六十人に一人、あるいは六十五人に一人という自衛隊員の犯罪が発表されておりますが、これに対して私はその発生の原因並びに将来これをいかに取り締るかということについて、直属長官でありますところのあなたからお伺いしたいと思っておるのであります。ところが、先般高橋政務次官のお答えによりまするというと、自衛隊は青年からなっておるので、一般の国民に比較すると多少犯罪者の率が上回るのはやむを得ないようなお答えであったのであります。ところが、われわれから考えますというと、自衛隊並びにこの防衛庁に対する国民の血税によって予算は編成され、そのもとに自衛隊の諸君が、伝うるところによれば一人前大体百万円くらいかかる、このように衣食住一応の整備を整えて選ばれた自衛隊として現存しておるのにかかわらず、このような犯罪を起すということはわれわれは解せない、むしろ国民が自衛隊員によって起されるところの犯罪を、逆にわれわれは守るために必死にならなければならないということを考えると、まことにりつ然たるものがあるのであります。  そこで、このたび長官が新しく自衛隊の最高の責任者といたしまして就任されたのでありまするから、このような国民から信頼されなければならないところの自衛隊の諸君の規律、あるいはその信頼にこたえるところの精神がなければならないのにかかわらず、かような事態を起すということは、まことに遺憾なきわみでありますので、長官からあなたの今後の方針、並びに何がゆえにかような犯罪が起されるのか、その原因を一応お調べになっておると思いますので、ここでお答えを願って、今後の方針についての所信のほどを承わりたいと思っておるのであります。
  328. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 自衛隊内で、いろいろ犯罪事件がありましたことは、はなはだ遺憾でございます。これの原因といえば、いろいろな角度から考えなければなりませんが、実はこの予備隊ができました当時において急に募集をして素質において必ずしも十分でなかったものがあった。それがあとに尾をひいたというような関係もあるかと思いますので、まず第一はできるだけりっぱな志願者に多数応募をしてもらいまして、この中から素質のいい者を選ぶということがまず第一だろうと思います。しかし、さらに入りました以上は、それに対して教育、指導というものがよくなきゃならない。ところが、まあ今のところ特に申しまして、この直接指導に当る者は中隊長とか小隊長という方面でありまするが、この方面の指導に当る人の訓練というものも非常に大事でありまして、まあ御承知のように、自衛隊の方では学校教育というものを非常に重要視いたしております。明後日は防衛大学校の卒業生も三百数十名、四百名近くも出て参りまするので、こういう長く訓練をされた連中が出てきまして、直接隊員に当る責任者として、りっぱな教育を徹底させるようにいたしたいと考えております。  さらに犯罪の原因と申しまするか、まあ主として三十前の者でありまするが、こういう連中は普通の生活から離れまして隊内に生活しておりまするから、環境をよくしてやるということが必要と考えまするので、たとえばスポーツであるとか、レクリエーションというようなものは私は大いに奨励いたしておるのでありまして、過般総監連中を全国から集めました際にも、この点は特に強調いたしておいたところでございます。  なお、業務体制を整備するという点も必要でありまするが、こういう事件が起りました際には、今申しました事前の措置と同時に、最も厳正な調査をして、警務隊員などもよく厳正な調査を行わせまして、処分についても、ただ単なる温情主義でなしに、こうした規律に反したのみならず、刑事事件を起すようなものについては、自衛隊としても妥当なる処分をいたしまして、そういうことの再発するのを防ぐというように事前措置と同時に、そういう問題に対しまして厳正な態度をもって臨みまして、できるだけこういう事件が起らないように、御指摘のように国民からの税によってこれだけのものを作っていただいておりまするから、そうした期待に反しないよう最善の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  329. 海野三朗

    ○海野三朗君 関連して一つ。米軍が日本に駐屯しておる間に、四十人に対して一人ずつ牧師がついて来ておったのであります。それは御承知のことだと思うのでありますが、私はその犯罪は、いわゆるやはりそこに宗教的訓練と申しますか、あるいは人格の養成といいますか、そういうものが日本では欠けておるのじゃないか。米軍の駐屯しておる間四十人に対して一人ずつの牧師が加わって一緒に行動をともにしておった。そういうことに意を用いておったのでありますが、防衛庁長官としては、何かそういうふうな精神的な指導者をこれに入れるというようなお考えはないのでありましょうか、どうお考えになりますか。米軍は四十人に対して一人ずつの牧師が来ておったのです、日本におります間。それらをにらみ合せまして、犯罪者の多いところから、何かその辺に対して防衛庁長官はお考えになっておりませんか。
  330. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 先ほど申しました教育という面では、特に精神教育というものを重要視いたしておりまするが、御承知のように国内にはいろいろな防衛庁に対する議論もございまして、そういう点もあるいは自衛隊員に反映するおそれがありはしないかと思いまするが、私ども自衛隊を引き受けておりまする者といたしましては、あくまで自分の任務を自覚して、そうして規律正しく、国民に信頼される自衛隊になるようにというので、そうした面の教育につきましても、内局でいろいろ指示も与えまして努力いたしております。ただ、宗教家を入れるかどうかということについては、いろいろ問題もございまするので、具体的には考えておりませんが、順次講習会などをいたしまして、そうした面についての成果を上げるように努力いたしておる次第でございます。
  331. 千田正

    ○千田正君 先般も同僚天田議員からも関連質問がありましたように、この一般国民よりも上回っている。しかも一般国民そのものが相当貧しい人もあるし、生活保護を受けておる人たちあるいは刑余者、そういうような相当犯罪を構成するような状況を持つ人たちがおってさえも、自衛隊よりも犯罪の率が少い。しかも自衛隊の諸君に至っては、海上並びに航空あるいは陸上ほとんど同一人員において六十人に一人ないし六十五人に一人、こういうような犯罪が起きてくる理由というものをもう少し長官は探究されまして、そうして国民の信頼にこたえるような方法を厳格にとっていただきたい、これは要望しておきます。  次に、去る二十九年自衛隊を退職した者が、防衛庁の経理の行き違いから、もらえないはずの退職金を一部受け取ったことが埼玉県下で現れている。労働省と防衛庁では全国の各職業安定所を通じまして一千九百七十九人に対して支払った一千四百五十九万八千円の回収に当っているということが報ぜられておりまするが、これが一体どういうふうな状況になっているのか。間違ったとは言いながら、それはやっぱり防衛庁の失策であります。そういうことによってすでに受け取った人たちは、それによって一応生活の資にも供しているでしょう。そういう者に対して強制的にこれを回収するだけの何か法的な根拠があるのか、あるいはどういうふうな方法によってこういう問題を解決するのか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  332. 小滝彬

    ○国務大臣(小滝彬君) 十分末端まで退職手当に関する規則が徹底しなかったために、職安におきましても、防衛庁の自衛隊の出先においても、こういうことが起りましたことは、非常に遺憾に思っておりますが、実は二重に払った関係もありますので、これを法律的に回収する必要があるわけでございまして、そういう方法をとっているのでありまするが、いさいは人事局長から説明させていただきます。
  333. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) お答え申し上げます。これは昭和二十九年の七月から例の保安隊が自衛隊に切りかわったわけでありますが、そのときに今までと任務性格を異にいたしますので、あらためて宣誓をした者を継続して任用する。そのとき宣誓をしなかった者は自然退職にしたわけであります。そうして国の政策の都合によりまして、そういうことに法律が変えられたわけでございますので、そのときに宣誓をしないでやめた者についても、二年の任期が満了しなくても、二年の任期に相当する特例の退職手当を……、今までは勤続期間に相当するものを支給するということが法律で規定されてあるわけであります。それでそれらの退職者に対しまして当時の第一幕僚監部から通達を出しまして、退職手当を交付するようにという指令をしたのであります。ただ、その指令にありましては、別の通達をもちまして失業退職手当を受ける者は、勤続期間が六カ月以上でございまして、しかも退職手当が失業保険法による賃金日額の百八十日分に満たない場合に支給されるという別の通達があったわけであります。しかも特例の退職手当を受ける期間は、その勤続期間から除算するのだという別の通牒を出しておったわけでありますが、別の通牒が出ておったにかかわらず、後に出しました通牒に、その点についての十分な説明がなかったわけであります。それが末端の部隊の方で新しい通達を受けました際に、前の通牒を参照して決定をすることにつきまして徹底を欠いたうらみがございまして、約一万名の退職者のうちに千数百件の退職手当を誤まって支給したというものが出たわけでございます。まことに申しわけないことに思います。われわれといたしましては、直ちに労働省と連絡をいたしまして、目下各人別に精細なリストを作りまして、善意に訴えてその回収に努力をしておるような状態でございます。
  334. 千田正

    ○千田正君 それはまあ、あなたの方で誤まった方法によって行われたのでありまするから、ある意味においては法律的には強制する方法があるかもしれませんけれども、現実においてはほんとうに回収できておるのですか。何パーセントくらい回収できておるのですか。
  335. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 今まで労働省の方と連絡をいたしまして回収に努めておるのでございますが、昨年の十一月末日の回収状況は五百四十八名、返納額が二百九十九万三千三百十七円になっております。
  336. 千田正

    ○千田正君 定足数が足らないようでありますが、これ以上続行するのもどうかと思います。ただ一点だけ最後に。約半分回収し得たかどうかという状況でありますが、これはいつまでの間に回収するのか、あるいは打ち切るのか、その辺の考えはどうなんですか。
  337. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) これは引き続きまして、あくまでも本人と話し合いを遂げまして、回収をしたいと思っておりまして、打ち切るという考えは、ただいまのところございません。
  338. 千田正

    ○千田正君 払わないということで、拒否した場合はどうしますか。
  339. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 今までのところ、われわれの方に入っております報告によりますると、それほどの強い態度に出ている者はないようでございまして、そういう場合が起りました際に、あらためて協議をしたいと思っております。
  340. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 本日はこの程度質疑を終了いたし、二十五日午前十時から、引き続き千田正君に質疑を願うことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会