運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-22 第26回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十二日(金曜日)    午前十時五十八分開会     —————————————   委員の異動 本日委員前田佳都男君、堀木鎌三君及 び一松定吉君辞任につき、その補欠と して武藤常介君、高橋進太郎君及び野 村吉三郎君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            小林 武治君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            中田 吉雄君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            泉山 三六君            木村篤太郎君            小山邦太郎君            新谷寅三郎君            関根 久藏君            佐藤清一郎君            柴田  榮君            高橋進太郎君            土田國太郎君            苫米地英俊君            成田 一郎君            野村吉三郎君            野本 品吉君            林田 正治君            武藤 常介君            内村 清次君            海野 三朗君            岡田 宗司君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            羽生 三七君            松浦 清一君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    法 務 大 臣 中村 梅吉君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 神田  博君    農 林 大 臣 井出一太郎君    通商産業大臣  水田三喜男君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    建 設 大 臣 南條 徳男君    国 務 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 宇田 耕一君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 小滝  彬君   政府委員    法制局長官   林  修三君    経済企画庁計画    部長      大來佐武郎君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    農林政務次官  八木 一郎君    農林大臣官房長 永野 正二君    通商産業省重工    業局長     鈴木 義雄君    通商産業省公益    事業局長    岩武 照彦君    運輸省鉄道監督    局国有鉄道部長 細田 吉藏君    建設省道路局長 富樫 凱一君    建設省河川局長 山本 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選昭和三十一年度一般会計予算補正  (第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十一年度特別会計予算補正  (特第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十一年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十一年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出、衆議院  送付)     —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を開きます。  まず御報告申し上げます。本日、堀木鎌三君及び前田佳都男君が辞任されまして、その補欠として高橋進太郎君及び武藤常介君が指名されました。右の結果、理事が一名欠員になりましたので、この際慣例により理事小林武治君を指名いたします。     —————————————
  3. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより、公報をもって御通知申し上げました通り昭和三十一年度一般会計予算補正(第1号)外四件を議題といたします。  質疑を続行いたします。
  4. 内村清次

    内村清次君 今朝の新聞によりますると、日ソ漁業交渉が、総理政治的配慮によって十二万トンの線が出たようで、妥結方向に進んだと聞いておりまするが、その経過について御説明願いたいと思います。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 過般どなたかの御質問にお答えを申し上げまして、私がテヴォシャンソ連大使を呼びまして、日ソ間に行われておる漁業交渉が停頓しておる、行き詰まっておる状況を打開するためには、日ソ両国においてさらに両国友好親善を今後推し進めていく、その意味において大局的見地から考慮してこれを打開する必要があると思うという私の考えを述べて、ソ連政府においても特にそういう見地に立ってこの行き詰まり打開されるように一つ考慮してもらいたいという旨をソ連政府に、テヴォシャン大使を通じて申し入れをいたしたのであります。これに対してソ連政府の意向を昨日私のところへもたらしたわけでございます。その内容は具体的に私まだここに申し上げることができませんけれども、とにかくソ連政府におきましても、私の申し入れた趣旨を了として、将来の友好親善関係を増進したいという見地から、本年度に限って従来主張しておったソ連側主張をさらに緩和いたしまして、ある具体的の提案をしてきたのであります。それをソ連側としてはソ連側委員に訓令をしたからという意味において、私に報告があったわけであります。そこで私はソ連政府がこの問題を、私の趣旨を了解されて、大局的見地から打開しようとされておる配慮に対して、私は感謝するとともに、そのあなたの方からあった通告を私の方の委員に伝達して、さらに専門的に両者の委員会の間において交渉することにしたい。私自身が従来数量的には何も提示をいたしておりませんし、また数量等について専門家でないからそれは専門委員にまかしておくから、そのソ連側の今回の措置に対しては、私はできるだけ早く、円満にその線に沿うて妥結するように、わが方の委員にも十分伝えておこうということを申して、昨日別れたのであります。本日は両国委員がその案を中心にして話し合いをしておるはずでありまして、私は非常に行き詰まり打開して、妥結方向に急速に進むのである、かように考えます。
  6. 小林孝平

    小林孝平君 関連して。ただいま総理からテヴォシャン大使との交渉経過をお伺いいたしましたけれども、ただいまの経過をお聞きいたしますについても、今回の日ソ漁業交渉が非常に不明朗であると私は考えざるを得ないのであります。今総理もおっしゃったように、今年に限り、従来の主張を変えてある程度緩和をする、こういうふうにおっしゃったのであります。その本年に限り従来の主張を変えてというのは、ソ連は今回の交渉の当初から八方、十万の線を強く主張されておったのであります。これは総理はこまかいことは御存じないと思いますけれども、この委員会でもしばしば問題になったのでありますので、こまかいことは御存じないかもしれませんけれども、今回の交渉の停頓の最大理由は、わが方の主張に対して、ソ連が不漁の年は八万豊漁の年は十万という線を、当初から譲らないために停頓したことは明らかであります。そこで、このようにソ連が八万、十万の線を強く主張して参りました理由は、何といってもこの前の河野一郎氏が全権として行かれましたときにこの八万、十万の話が出まして、私どもも非常にこれを心配して、これが将来の交渉ソ連側の強い主張根拠になるのではないか。あるいはここではそういうことを河野氏は否定されましたけれども、これがいわゆるイシコフ河野密約として言質を取られてそして日本は八万、十万の線で将来押えられるのではないかというので、この委員会におきましても、国会においてしばしば論議されたことは総理大臣も御承知通りでございます。そこで私たちは、先般来そういうことで停頓しておるから、すみやかにこれを打開する意味からもそういう密約があるのかないのかということを、前全権河野一郎氏にお尋ねいたしたいと考えるわけであります。政府ももしすみやかにこの交渉打開される意思があったならば、河野全権から、当委員会に出ていただいて、この経過を明らかにせらるべきが当然であろうと考えるわけであります。しかるにこういうことをされないで、テヴォシャン大使総理大臣がお会いになりまして、私は非常にこの総理大臣の御努力を感謝するものではありまするけれどもソ連側から提案されたものは、新聞紙の報ずるところによれば十二万トンという数字でありますが、これは当初日本主張いたしております十六万トンという数字からは、はなはだしく下回った数字であります。総理大臣はこの数字を御発表になりませんから、私は強くここにこれを取り上げて言う気持はありませんけれども、それにしましても今年に限り従来の主張を変えてある提案をされたということは、私は非常に不可解であります。すでにそういうことを前提として、日本がこのソ連から今回提案されました数字をのむということになれば、明年度以後は八万、十万の線を日本が認めたということになるのではないかということを考えるわけであります。これは今後の日ソ漁業交渉に当りまして、重大なる問題であって、全国の関係漁民は非常に失望落胆するだろうと考えるのであります。この点につきまして総理大臣はこまかいことは御存じないけれども、このテヴォシャン大使と御交渉になりまして、今年に限りある提案をされた、こういう提案をどういうふうに解釈されるのか。これが将来のわが方との交渉の際に長く影響されるのではないかという点について、どういうふうにお考えになるか。さらにこの新たなる提案日本の当初からの希望からは相当下回っておるのでございますけれども、こういうことで日本は大体納得するものでありますかどうか、お伺いしたい。
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 漁獲高の問題は、実は私は漁業委員会を開いて交渉いたしておりますのは、今年の漁獲高をどれだけにするかということを中心に話をしておるのであります。将来に向ってどうするということは、あの委員会の今までの経過を見ましても、要するにああいう制限をするということは申し上げるまでもなく、北洋におけるところのサケ、マスの資源を確保して、将来長きにわたって両国漁獲によってその利益を受けようという意味において制限をするのでありまして、従って従来の統計であるとか、従来のまたとってきたことがこれらの資源にどういう影響を与えておるか、というようなことをしさいに科学的な検討をいたしておるのは、御承知通りであります。従いまして、本年に限ってある従来の主張を変えるということを申しておるということは、私どもは、まだ来年は来年の漁獲高についての何をしなければならぬと思いますが、本年どこにきまりますか、きまった結果の漁獲したものがどういうふうな影響を及ぼしておるということをやはり科学的に検討して、また来年以降のものをきめていく。こういうことになるのでありまして、私自身、もしも従来のソ連側主張であるような八万、十万トンでない、それを上回るような数字にきまるということであれば、一つの私は既成事実ができるわけでございまして、決して、将来においては八万、十万トンに必ず変えるのだということを制約されるものではないと思います。もちろん、といって将来漁業資源というものが非常に少くなれば、あるいは八万、十万を下回るような数字両国できめるようなことも、長き将来においてあるかもしれませんけれども、本年の漁獲高において、従来の主張ソ連が緩和してきたということは、決して、私は将来においてさらにソ連の八万、十万の主張を認めるということを前提とするものではない、かようにまあ考えております。ただ、数字の点につきましては、今申し上げましたように、私はここにはっきり申し上げることができませんし、なお、また私自身は、漁業専門家でありませんので、専門家委員に任命しておるから委員会においてそれは十分検討しよう、そのままソ連側提案を私はうのみに、まるのみにするということをテヴォシャン大使にも申しておりませんし、これから委員会において検討されまして、それはわが方の最初提案と同じものであるかどうかは、これはまあ当事者になっておりませんけれども、しかしそれがどういうふうに北洋漁業に適用してなるかという専門的のことは、委員会でなお検討いたしたいということをテヴォシャン大使にも申しておりますので、これは委員会においてさらに検討されるということで御了承を願いたいと思います。
  8. 小林孝平

    小林孝平君 私は総理大臣の御努力に非常に感謝します。なお、言葉を返すようではなはだ恐縮でございますけれども、非常に重要な問題でございますから、もう一度お尋ねいたしておきたいと思います。  総理大臣は、専門家でございませんから、数字の点はおわかりにならぬことは当然であるのでありますけれども、今回の交渉は、当初から、ほんとうならきわめて順調にいくべきはずのものが、ソ連の八万、十万という線を固執される結果、今日まで妥結できなかったのであります。この八万、十万という線はきわめてソ連の強い希望であったことは総理も御承知通りであります。そこで先ほど総理がおっしゃったように、総理は、来年だとこうおっしゃいますけれども最初お話になりました際は、本年に限り従来の主張を変えてある提案をした、こうおっしゃったところからいたしますれば、どうしてもこのソ連は将来にわたって八万、十万という線を強く主張されることは明らかであろうと思うのであります。そこでもう一度この提案はどうなんだという点を重ねてお尋ねいたしたいことと、私たちはこういうような従来の経過から考えまして、今回のこの交渉暫定的のものとして、かりにソ連のある提案日本がのむといたしましても、これは正式の取りきめではなくて暫定的のものとして、将来日ソ両国が共同して科学的な調査をやって数量をきめるということにしたらどうかと思うのでありますが、これについての総理のお考えをお尋ねいたしたい。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 数量の点は御指摘もありましたし、私も申し上げておるように、私自身専門家でありませんので、専門委員会において十分に検討をして適当のところできめてもらいたいとかように考えておる次第であります。ただ、今お話の本年度について特に考慮してこうするというソ連側提案というものは、もちろん今年きめたから来年も再来年もそうなるのだという、一つソ連側が将来に向って義務を負うという意味提案でないという意味におきまして、来年の委員会交渉のときに、あのときに、あのとき八万、十万だということを持ち出して、ソ連側の方でも主張するということは十分覚悟しておかなければならぬ問題だと思います。しかしわれわれは本年とった量というものが八万、十万の線を上回る数をとって、しかも漁業資源というものに科学的にみて非常に重天なる影響を与えるものでないということが証明されるということになりますれば、来年は来年としてわれわれはさらにこの適当な数字をきめて交渉に当らなければならぬとこう思っております。ただ、私の先ほど申し上げましたように、ソ連側に私の意見を述べた基礎は、将来の両国の間に友好親善関係を増していく上において、昨年われわれが現実にとった数字よりも、国交を正常化した後において、さらに強い制限を受けるというようなことでは、なかなかそれは日本国民も納得できないし、現在やっているところの者に失業者を生ぜしむるということでは、これは、日ソ両国友好関係をわれわれが積み重ねて増進していこうという、大きな趣旨に反する結果になるからということで注意を喚起したのでありますが、その趣旨ソ連側においても、ソ連政府としては十分に了承して一つ提案をいたしてきておるのでありまして、従って、来年の交渉を私は決して楽観して、もうこれがあったら来年はソ連は新しい今年の数字に基いてそれを認めて交渉する、というように私は決して甘くは考えておりませんけれども、基本的の日ソ両国友好関係を増進していくという、この積み重ねていこうという気持ちというものを、ソ連政府においても十分に同感してこういうものを提案されておるということは、私は、将来の交渉においては、本年度よりか気持の上において少くとも楽に交渉ができるようになっていくのじゃないかと、こういうふうに考えております。
  10. 小林孝平

    小林孝平君 もうこれでやめますが、ただ、いま総理は来年度交渉に当っても非常な決意を持ってやられるということを伺ったのでありますが、それにつきましても、この八万、十万という線がソ連があくまで強く主張される理由は、国民は何といっても、河野全権イシコフ漁業相とある約束をされたのではないか、いわゆる密約があるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。従って、われわれはこの河野全権に当委員会へ来ていただいて、その経緯を明らかにしたいと考えたのでありますけれども総理承知通り河野氏は当委員会にいまだ出席をされないのであります。そこで私は自由民主党総裁である岸さんにお尋ねいたしますけれども、この河野一郎氏は国会承認を得て全権としてソ連に行かれたのであります。そうしてその行動が非常に一部国民に不審の念を抱かせて、またそれが大きな日ソ漁業交渉障害になっておるというふうに考えられておるのであります。この際、自由民主党といたしましても、党員である河野一郎氏を国会参考人として出ていただいて、この国民疑惑を解く必要があるのではないかと考えるのであります。進んでこれは出席されて国民疑惑を解き、またこれは国会承認を受けてソ連に行かれた全権として当然の義務であろうと思うのであります。従って私はこの際総理大臣並びに自由民主党総裁として、岸さんに所見をお尋ねいたしたいのであります。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 河野農相参考人としてこの委員会に来てもらって、そして意見を聞くということにつきましては、かねて小林君その他の方から御提案がありまして、当委員会理事会委員長においていろいろその問題を扱っておられると思います。私はやはり委員会として御決定になればその通り実現するようにいたしたい、かように考えております。
  12. 曾禰益

    曾祢益君 関連して、この問題について岸総理大臣に二点お伺いいたしたいと思います。  第一点は、ただいま小林委員からるる指摘されましたように、河野農相の昨年の五月におけるモスクワ交渉の結果、八万トン、十万トンという線を、おそらく当時はまだ昨年度暫定の話と、その後の各年度の話とがまだもやもやしている間に、そういう大まかな話をされたということになれば、非常な、今日振り返ってみるならば、せっかく漁業協約ができ、とにかく最大限度の持続的な生産をするための科学的な根拠を出し合って、そしてやるところの今度の漁業委員会においても、非常に大きな障害になった約束をしてしまったことになる。そういうような非常な政治的責任を、やはりこれは前内閣であるけれども日本の保守党としてやはり一貫して負わなきゃならぬ。その御当人を何ゆえに今度の漁業交渉クータレフ氏に会うとか、そういうような交渉にお使いになったか。私は、これは非常に政治責任からいっても不明朗であり、これは河野氏がいかなる資格において漁業交渉についての政府責任の一端を持っておるのか。しかもその最も不適当なる人物をお使いになっておることは、これは、外務大臣として河野一郎氏をいかなる一体責任においてこの交渉に携わらしているか。しかもわれわれ特に不可能な点は、そういう河野氏がクータレフ氏と会って、いろいろ過去の説明をされたかもしれませんが、それでも打開できない。幸いにしてその際に、話が軌道に乗ったといいまするか、今度は外務大臣テヴォシャン大使と正規の外交交渉をされて、そして今日とにかく一種の打開の線にとぎつけられたことは、これはまた小林委員が言われたように、われわれとしても当然のことではあるが、外務大臣努力は、私はこれを了とするにやぶさかではございません。そこで話が軌道に乗ったと思われるのに、新聞の伝うるところによると、今度この細目についてまた河野一郎氏がクータレフ氏と会うなどということが書いてある。これはますます筋がおかしくなる。それこそ政治的の打開がついたならば、純然たる科学的根拠に立ったこの漁業委員会において、あるいは漁業委員会における代表の一人として、農林大臣井出君がやられるならいいのですけれども、また河野一郎氏なるものがこの交渉に携わるということは、ますますもって国民は不可解である。外務大臣はこの点についていかなる責任を感ぜられるか、これが第一点。  第二点もこれまた河野一郎氏の八万、十万トンから始まったことでありまするけれども、くどくどしく申し上げるまでもなく、漁業委員会の本来の性質並びに任務というものは、バナナのたたき売りみたいなことであるはずがない。去年暫定協定の際にはどういう話があったにせよ、正式に漁業条約によって、そうして漁業委員会を持たれる以上は、あくまで科学的根拠に基いた数字検討し合って、その上に立って本年度漁獲高をきめる、これが条約精神でなければならない。ところが不幸にして、これまた河野一郎君のやったことの結果ではありまするが、ソ連側が八万トン、十万トンという線を固執している。その打開のために外務大臣が乗り出されたことは、これはよくわかりますけれども、その結果話が軌道に乗ったのではなく、またもとのまたもやまあまあ十二万トンぐらいで今年はいこうじゃないかというような線で話がきまるとすれば、いつになったら、この条約精神に基いた、正しい科学的根拠に基いた最大限度持続的生産をするように、この両国間の漁業に関する建設的協力関係が打ち立てとれるか、私は見込がなくなる。だからこの際、ソ連側政治的考慮をすることは非常にけっこうであります。この際、小林君がしばしば指摘したように、八万トン、十万トンというような過去のことを一切払拭しまして、今年は大まかに政治的に十二万トンにしようじゃないかというのはやめにして、あくまで両方とも科学的な数字を出し合った結果、科学的な根拠のある本年度漁獲高をおきめになるのが私は適当ではないか。またこのことは本委員会において私どもも……。
  13. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 曾祢委員に申し上げます。関連に関する質問は簡単に願います。
  14. 曾禰益

    曾祢益君 簡単に結論だけ申し上げます。この委員会においてもこのことを申し上げて、あなたも井出農相もそれに賛成された。またそれより前の外務委員会においても、私から当時臨時総理大臣であられた岸さんに申し上げている。あくまで話は科学的根拠でやるべきだ、その通りだと、ところが結果はその通りでない方向にある。また去年の八万トン、十万トンと似たような性格の、数字は違うけれども、そういうあいまいな話の方にきまるとすれば、これははなはだ不可解なことであり、あなたの言明に反する方向になってきはせんかと思うのですが、以上の点について明確なる御所見を承わりたい。
  15. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今度の漁業交渉につきましては、政府はそれぞれ責任をもって委員を任命して、委員同士交渉をいたしております。河野君がいろいろその間において動いていることは、河野自身がこの前漁業交渉にも行っておりますし、その当時の事情等ソ連側委員に十分一つ話をして、その誤解のないように、もしくはその当時の事情等というものを話すという意味において、河野君がソ連側漁業代表と数回会っているという事実は、新聞等にも報ぜられている通りであります。別に私の方でこれを使ってどうしているという意味では全然ないのであります。  第二点。この数字の点につきましては、私は曾祢君の御意見と全然同感でありまして、従ってソ連側から提示していただきましたところの数字につきましても、私としてはこれはあくまでも漁業委員会において検討して、科学的な検討によって適当な数字が定められることがいいと、ただ従来ソ連が八万、十万の線を堅持して動かなかったことに対して、日ソ両国友好関係を増進する見地から、その数にこだわらずに、ある数字提案してきていると、この何に対してはそういうソ連政府の意図を、これはまた日本政府の意図でもあるが、それを体して、さらに専門委員の間にこの数字を科学的に検討しようということに申しておるわけでありまして、決して御説のように、いいかげんな数字で妥協するという意味ではございません。委員会においてなお検討されるものであると思います。
  16. 曾禰益

    曾祢益君 簡単に一言……
  17. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それでは、ごく簡単に。
  18. 曾禰益

    曾祢益君 ただいまの御答弁ではっきりしたと思うのは、河野一郎君はそうすると、政府の命令ないしは委嘱なしに、個人として会ったりしていると、これははっきりいたしている、その通りでございますか。
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の方から委嘱するとか、あるいはある資格をもってやらしているということではございません。ただ会うということ、また、会ったところの結果については報告を受けております。
  20. 内村清次

    内村清次君 総理は、昨日の自民党大会で、新総裁に公選せられまして、名実ともに、政党の責任政治が二大政党対立のもとに運用せられますることは、同慶に存じます。  総理は、この新総裁就任という新事態の上に立ちまして、衆議院を解散して、信を国民に問う気持はないか、この点承わりたい。
  21. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 解散問題につきましては、しばしば御質問がございまして、私は、今日のところ、解散する意思がないということを明白に申し上げておりますし、総裁になりました今日におきましても、その心境には変化はございません。
  22. 内村清次

    内村清次君 総理は、複雑な党内事情のために、新総裁としても多忙であると思いますが、内外の情勢から、総理兼外相の兼任を解いて、外務大臣の専任を置く考えはないか、承わりたい。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が外務大臣を兼任いたしておりますのは、臨時的でございまして、私はこれを永久に続けていく、私の内閣総理大臣をしておる間続けていくという考えではございませんが、なおしばらく兼任しておるのが適当であるという見地から、今日のところ、兼任をいたしております。
  24. 内村清次

    内村清次君 それでは、内閣を改造する考えはないか、その点伺いたい。
  25. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 内閣の改造につきましても、今日改造する意思は、私は持っておりませんが、もちろん、内閣責任をもって運行していく、また、政策も進展していかなければなりませんから、いろいろな情勢を考慮していかなければならぬとは考えておりますけれども、今日改造する意思は持っておりません。
  26. 内村清次

    内村清次君 欧州共同市場案について質問いたしますが、ヨーロッパの新しい情勢といたしまして、フランス、西ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグの六カ国が原子力共同体、共同市場計画を進めてきましたが、三月の二十六日に、ローマで調印が行われようといたしておるのです。この共同市場案によりますと、加盟国相亙間の関税率の協定、輸入制限の解除、原子力発電量の増強の問題が内在しておるようでございます。欧州共同市場のわが国経済に与えます影響は、私はきわめて大きいであろうと考えておりますが、これに対しまして、その見通しの点について、あるいは日本の態度の点につきまして、総理所見を承わりたいと思います。
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問のように、欧州共同市場の問題は、六カ国の間に調印をされようとしておりますし、これが実現をいたす暁におきましては、六カ国の間における関税も、十数年後のうちには全然撤廃され、また輸入制限等の関係も撤廃され、共通の通商政策をとるようになりまして、いわばこの間が単一の経済地域となるような傾向にございます。また同時に、これとともに、イギリス、スイス、スエーデン等がいわゆる欧州自由市場のブロックを形成しようといたしております。これらのこの関係は、日本の貿易にとっては、私も重大な影響があると思います。というのは、欧州に対してわれわれの輸出いたしておりますのは、日本の貿易額から申しますというと、非常に大きなものではございませんけれども、しかし、品物によっては、これを非常に重要な市場としているものも少くないのでありまして、金額だけで論ずることは適当でないと思いますが、わが産業に及ぼす影響というものは相当大きいと思います。また、これらのものが単一の市場になり、共通の通商政策をとるというようになりますと、東南アジアや中近東その他日本のいわゆる重要市場におけるヨーロッパ諸国との間の競争関係というものがきわめて激烈になり、向うの競争力が大きくなることを想像していきますというと、これらの地域におけるわが貿易に対する影響も、相当大きいものがある、こういうふうに考えてきますというと、この問題は、日本の経済、また、日本の貿易の上から見まして、大いに重大な影響を持っているものとして、今後これの対策を十分に考えて参らなければならぬと、こういうように思っておりますが、根本は、言うまでもなく、日本のこの産業の国際的な競争力を増すように、その生産性を上げていくことを根本の方策として考えなければならぬということは、言うをまちません。また同時に、この欧州以外の、いわゆる中近東や東南アジアあるいは中南米等に対する日本の経済協力なり、いわゆる貿易政策に、私の言っている経済外交の推進について、格段に一つ力を入れていく必要がある。もちろん、欧州の共同市場や、そういうものができますれば、欧州が繁栄し、欧州の購買力がふえるというような点において、わが国の貿易等についても、楽観的なことも考えられるわけでありますけれども、しかし私は、むしろ日本としては、今申したような、日本のこれらの地域に対する貿易、また、それらと競争しなければならない地域に対するわが方の施策を中心考えていかなければならない、かように考えております。
  28. 内村清次

    内村清次君 私は、このヨーロッパ共同市場案というものが成立いたしましたならば、日本の対西ヨーロッパ輸出が、関税及び輸入品の取り扱いにおいて差別待遇を受ける。それからまた、そのために非常に不利になる。そればかりでなくして、一国同様となりましたヨーロッパ諸国が、分業と大量生産によって、安い値段で、中近東から東南アジアの方に進出してくるということも予想しなくちゃならぬと思いますが、フランスの植民地の援助対策、後進国の開発とにらみ合せまして、私は、岸内閣の自由国家群一辺倒のこの経済外交が内部から障害が発生しはしないか、こう思っておるのでございますが、これを総合いたしまして、岸内閣の経済五カ年計画を改訂をするというような必要があるいは起ってきやしないかと思いますが、総理はどう考えますか。この点につきましては、また宇田企画庁長官からも答弁を願います。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 経済の長期計画につきましては、私ども、この問題だけではなしに、いろんな各種の内外の情勢に即応しまして、今検討をしております。詳しいことは、企画庁長官からお答え申し上げます。
  30. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) ヨーロッパの共同市場の、われわれの輸出に対する影響というものは、かなり重要視しなければならないものと考えております。従って、それを補充する意味で、ただいま中近東、東南アジア、アフリカ等、従来伸び率のよくなってくる傾向のあった諸国に対しては、なお一そうの輸出努力を払わなければならない。少くとも欧州共同市場からくる競争力に抵抗し得るだけの努力は払わなければならないと考えております。そうして、ただいま御指摘の、中共を含む新しい市場の開拓についても、積極的に努力をいたさなければならないと、こういうふうに考えます。   〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕
  31. 内村清次

    内村清次君 五カ年計画の改訂の問題につきましては、お話がなかったようですが、この点はあとに譲りまして、国土総合開発について、総理質問をいたします。  昭和二十五年、国土総合開発法が施行せられましてから、もう今日まで八年です。歴代内閣が施政方針演説で、このことはよく述べられております。実施に当りまして、特定地域開発計画と相待って、完全な総合開発計画を実施するに必要でありまするところの全国計画及び地方計画がまだ作成せられておらないところの現状です。さらに、総合開発関係予算作成の現状も、財政計画が開発計画とほとんど無関係に作成されておる。各省もまた、事業種別ごとに年次計画を立てて、これを基礎として予算の要求を行なっておるという状態です。従って、総合開発の実績はあがっておりません。事業の進捗度は全く区々であるのでございます。現に、十七特定地域の総事業費は、六千八百六十七億円でありまするが、その進捗率というものは、二六%うち公共事業はわずかに一七・一%にすぎないのです。政府の国土総合開発の構想というものは、全くこれは机上プランである、、単なる政策のアクセサリーである、こういうものにすぎないと私は申しましても過言でないと思う。で、産業、食糧、人口、雇用、電源開発等々の見地からいたしまして、この基本政策に対しまして、総理はどんな構想と熱意を持っておるか、この点を伺いますと同時に、早期に実現するために、開発行政機構の一元化をお考えであるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  32. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国土総合開発につきまして、今御指摘のように、国土総合開発法、あるいは北海道開発法等の法制もできておりますし、国土の総合的の利用開発を目的としてやってきておるのでありますが、今日までの成績は、私は、必ずしも所期のように進んでおらないという御質問の御趣旨通りであると思います。言うまでもなく、この問題は、非常に広範にわたっており、また、関係するところがきわめて広い関係上、なかなかこれの実施に当りましては、困難もあるのであります。しかし私どもは、十分に今までの成績も一面において検討しながら、実地に即して、これが実現について、今後といえども十分努力して参りたい、かように考えます。
  33. 内村清次

    内村清次君 昭和二十六年の七月、電源開発促進法というものが施行せられまして、この国土総合開発というものが、電源開発の異名と化したような感じがあるのです。国土総合開発が、その一環でありまする電源開発にのみ重点を置いておる。他の治水利水、農山資源の開発、工業、立地の整備を閑却しておるように私たちは見受けております。なお、総合開発の名のもとに、電源開発中心に、多目的ダムを建設をいたしておりまするが、政府は、電気事業者にのみ利益を擁護するような方法で考えておるようでございます。その発電と関連事業との矛盾というものは、ますます深刻になってきおる。そうして、発電中心にすべて処理されてきておるように考えます。これは総じて、総合開発計画の基礎調査が不十分である、関連事業の基本計画の不備と、連絡の不徹底に起因するものであると私は信じておりまするが、この事例をたくさん私は申し上げたいが、しかし、時間の関係もありまするから、まず所管大臣から、佐久間ダム、利根川水系の藤原ダム、北上川水系の湯田ダム、宮城県の鳴子ダム、高知の永瀬ダム、熊本県の市房ダム、白川改修等々につきまして、十分調査されていると思いまするが、まず所管大臣から、この点を御答弁になりまして、最後に総理の答弁を要求いたします。
  34. 南條徳男

    国務大臣(南條徳男君) 電源開発の問題につきましては、通産大臣あるいは企画庁の方にも関係あると思いますが、建設省関係としての多目的ダムの関係している方面につきましては、本年度の予算には、この特別会計を設定いたしまして、公共事業費等において相当大幅に促進をはかることになっておるのであります。お説の佐久間ダムその他のいろいろな電源開発のみに関係したことは、建設省の関係でございませんので他の所管大臣の方から……。
  35. 内村清次

    内村清次君 建設大臣、市房ダムは、あなたの方の関係じゃないですか。
  36. 南條徳男

    国務大臣(南條徳男君) 熊本の市房ダムにつきましては、ただいま調査中でありまして、十分今後調査いたしたいと思います。
  37. 内村清次

    内村清次君 農林大臣はおりませんか、委員長
  38. 左藤義詮

    理事左藤義詮君) 農林大臣はおりませんので、政務次官が出席しております。
  39. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 多目的ダムの操作とか管理につきましては、これは、関係大臣が十分に協議してやっていくことになっております。で、建設大臣が関係大臣に管理あるいは計画について協議するということになっておりますので、その間の調節は、十分とれていると私は考えております。で、私の聞いた範囲では今あなたのおっしゃられたような、治山治水は、電源の開発にのみ重点があって、治山治水の方が閑却されておるというお話でございますが、これは通産省の関係のせいでありますか、、私の方は、やはり治山治水にむしろ重点がおかれて、発電に非常に支障を来たした事例の方が多いというふうに聞いておりますが、詳しいことを御説明するのでございましたら、事務当局に説明させたいと思います。
  40. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 二、三の事例につきまして申し上げますが、佐久間につきましては、これは発電だけのダムであったわけでありますが、建設がきまりましてからあとで、豊川用水の関係が出て参りました。これにつきましては豊川用水に必要な水の量を関係省で相談いたしまして、それの取れるような措置をしております。永瀬ダムは、これは多目的ダムでありますが、その辺の関係は十分当初におかれまして調整されておるわけでございます。ただ、いろいろ現地に参りまして調べておりますると、先ほど大臣が申し上げましたように、治水の方に重点がおかれて、早く水を出してしまうものだから、発電に使われるのがどうも割合少いというふうな声もあるようでございます。これはそういう声があるということにお聞きを願いたいと思います。  市房の方は、これは灌漑と発電のダムの予定でございまして、今年度から着工ということでございまして、これはまあそれに応ずるような計画が適正に行われていくと思っております。いずれにいたしましても、大臣が申しましたように、発電、灌漑、治水というふうな点につきましては、十分に当初の根本計画の際に、各関係機関が集まりまして調整をいたしてやるわけでございまして、それからその後のダムの管理操作につきましても、その基本になりまする取扱い操作規程といったものにつきましては、十分に利害関係ある機関間で協議いたしましてやっておりまして、特に発電に重点をおかれておるというふうな所はないかと思っております。
  41. 内村清次

    内村清次君 総理もただいま所管大臣の言葉を聞かれた通り、たとえば発電中心にやっておるというような重要な問題につきましては、まず佐久間ダムの問題がある。これは電力開発会社がさきに着工してしまっておる。そこで、水系の科学的検討が十分になされておらない。このために総合開発の問題が停頓しておるということが第一にある。きょうは農林大臣が見えておりませんが、農林省の方でもまず利根川水系の藤原ダムの問題では、農業の受益面積が、計画では一応五千町歩になっておるけれども、その事情は全く不明であるというような状態です。そこで、これは農地の問題とも関連いたしましょうし、あるいは市街地、それから村の問題ともこれは関係いたします。特にまた熊本の市房ダムの問題は、電力会社と県と今盛んにけんかしておるじゃありませんか。そういうようなことがたくさんあるのです。これを機構を一元化するというような考え方はないかどうか、調整する考え方はないかどうかということを聞いておるのです。総理はこれに対してどうお考えですか。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 総合的な見地から、治山治水、あるいは電源開発等等、十分意見を調整した計画を立てなければならぬことは、御指摘の通りであろうと思います。ところが、今の機構では、十分そういう意見の調整なり総合的見地から具体的な問題を考究していくことができないのじゃないか、いろんな意見の衝突で決定を見ぬような事項もあるから、総合的な、一元的な機構を作ったらどうだという御趣旨だと思いますが、私なおその問題を検討してみまして結論を出したいと思います。今日すぐ総合的な、一元的な機関を作るべきだという結論を出すことにつきましては、なお検討をいたしてみたいと思いますが、御趣旨のように、非常にその点において今の質疑応答を通じて従来の何が不十分であるかということを考えまして、十分一つ検討していきたいと思います。
  43. 内村清次

    内村清次君 交通、政策について質問いたしますが、政府は国鉄運賃の値上げを行いまして、輸送力の増強、産業発展の隘路打開の名のもとに、六千億円の巨費を投じて画期的な国鉄五カ年計画をもって実行しようといたしております。一方道路関係におきましても、予算措置において投融資合せて七百七十七億円の多額の資金を突っ込んで、さらに六千五百億円の費用を必要とするところの国土開発縦貫自動車道の建設に乗り出そうといたしているのです。この事業の規模、予算の巨大さをもっていたしますれば、これは終戦以来のわが国の一大建設事業のわけで、当然これらの大建設事業を実施するに当りましては、道路と鉄道との関係、道路と交通機関との関係、輸送機関別の輸送力の問題等々、一貫した総合的交通政策が確立されていかなくてはならないと私は思います。しかるに現内閣の交通行政というものは、これまた各省ばらばらの施策によって交通秩序が混乱いたしているのです。国民の税金というものは多額に費消されている現状でございます。総合交通政策一元化の見地に立ちまして、総理はこの点に対してどうお考えであるか、この点をまず第一番にお尋ねいたしておきたいと思います。
  44. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 最近経済の拡大と産業の繁栄に伴って、輸送が特に大きな隘路をなしているという現状にかんがみまして、将来ますます経済基盤を拡大し、産業を繁栄さしていく上から申しますと、この輸送、交通関係の隘路を恒久的に打開していかなければならぬことはお説の通りでありまして、そのためには鉄道と自動車道路、あるいは海運というようなものを総合して、ここに一つの交通政策、運輸政策というものを立てなければならぬことはお説の通りであります。私ども今度の予算におきましても、そういう見地でまたいろいろこれらの隘路を打開するに必要な方策を立てております。また将来それらの運営につきましても、私は十分総合的に、これらのものを総合して考えて運営していって、この輸送と交通の隘路を恒久的に打開していきたい、かように考えております。
  45. 内村清次

    内村清次君 ただいま今後の施策として総合的な見地でお考えになるということでございまするが、昨今この交通機関相互の競争が非常に激しくなってきました関係で、政府の方でも確かにこれは昭和三十年の八月二十五日、内閣に交通審議会が設置されまして、自動車の輸送量その他鉄道の新線建設と新道路開設とのコストの比較というような問題を検討しておりましたが、ところが、それが検討中に、結論がつかずに本審議会は消滅してしまっているのです。   〔理事左藤義詮君退席、委員長着席〕こういうことであって、一方通産省の方針といたしまして、自動車の製造は無制限にやる、あるいはまたは狭い道路の中に大型のバスを運転してそうして道路法や都市計画法それからまた道路、路線の免許等々で運輸省と建設省が権限、なわ張り争いをやっておる。その点が非常に深刻に内在しておるのです。こういうようなことで、その結果はタクシー、バス、トラック、こういう輸送機関が市街地にはんらんしており、交通事故が続出をしておる。それで総理は、これはまあだれに教えられましたか知りませんけれども、週末には温泉とゴルフで健康を養っておられますが、これはけっこうです。民主主義の世の中ですから、これは私はとやかく申そうとは考えませんけれども、ただ、私が総理考えていただきたいことは、あなたたち政治の怠慢から、統計によりますると交通事故というものが漸増して参りました。一日平均発生件数が三百六十三件、死者が十八人です。傷者が二百八十人、物的損害が六百五十九万円と悲惨な被害が毎日々々発生しておるのです。総理は、早急にこの交通調整をするために交通審議会を継続される意思があるかどうか、各省の権限争いというものをいかに調整せられるか、この点は、まず関係大臣の方針から承わりまして、総理から答弁をいただきたいと思います。
  46. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 自動車事故が頻発しておりますことは非常に遺憾にたえませんが、これは、お話通り道路の狭溢並びに道路が整備されておらない問題、それから自動車業者に対する訓練の行き届かないというようなところがありますけれども、これはまあ道路交通の問題を漸次……、決して各省対立ということはありませんけれども、行き届かないという点があります。また、ただいまの建設省と運輸省の権限の問題は、先般道路交通に関する限り両者協調しまして、話し合いがつきまして、今度高速自動車国道法案などが出ますのもその一つでありまして、この点だけはそれなりに問題が解決しております。
  47. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 通産省の方は、まだ日本の車輌が国産でまかなえるというところまでいっておりませんので、なるたけこれを国産に置きかえたいということで、国産奨励によって大いに増産を助成しておりますが、今のところ、その車のできの工合が悪いために、交通事故を頻発させておるようなところまではいっていないと思いますので、これはやはり全体の交通政策と申しますか、道路の問題、取締りの問題に関連することだろうと考えております。
  48. 南條徳男

    国務大臣(南條徳男君) ただいまの交通事故の頻発に関する交通整備のことに関しまして、建設省の道路網についての政策の一端を申し上げます。  御承知通り今日自動車が非常な激増をいたしまして、自動車事故が増発いたしますことは御承知通りでありますが、これは一面日本の道路が非常に狭隘であり、あるいは不完全であるということにも基因いたしておると考えますので、今年度の予算におきましては、道路整備十カ年計画を考えまして、完全舗装にいたしまして、この道路の幅も相当広くいたし、そうして舗装道路も完成いたしたいという計画から、今年は五百四十億の予算を計上いたしておるようなわけであります。また高速自動車道というようなことも、今日の文化的な時代においては相当考えなければならぬということから、名古屋、神戸間の高速自動車道を進めたいということで、三十億の予算も計上いたしておるようなわけでありまして、今後はこの交通網を、ただ日本の鉄道のみに依存したようなことでなく、道路網を相当整備いたしまして、これらの交通事故を緩和することに十分考慮したいと考えておるようなわけであります。
  49. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 道路行政につきましては、建設は建設省がやり、運送事業は運輸省でやっておる、自動車の製造はもちろん通産省がやっておる。道路の交通政策の方は公安委員会でやっておるというように、御承知のように分れておりまして、その間の連絡なり総合的な運営なりというものについては、私も従来十分にはいっておらないということを聞いております。また、今御質問にありました交通審議会というものが内閣に閣議決定で置かれておったのでありますが、これは今日はなくなっております。しかし交通審議会でこの交通上の問題を恒久的に企画庁でやれというような勧告を出して、実はあの審議会がなくなっております。今日また今後ますます増加していきますこの道路運送の関係というものが、今までのように円滑にいかないというようなことは、これはよほど考えていかなければならない。何といっても一つは道路を完成し、整備すること、それから自動車の数につきましては、私どももよく言うのでありますが、こんな道路の状況で自動車が、特に大型の自動車がはんらんするということは、日本のなにとしては、とても交通事故の危険があって、いかぬじゃないか。それにはやはり根本は、道路の整備というところに主眼を置いて急速にやっていかないというと、なかなかこれは、自動車のそういう要求というものは……、それだけわれわれの生活なりあるいは産業経済というものが繁栄してきて、それが要求しておるのですから、道路が悪いからその方を制限していくというよりは、道路をやはり根本的に整備するというところに一番方を入れるべきものじゃないか、こういうふうに思っております。
  50. 内村清次

    内村清次君 国鉄の新線建設につきまして、本年度予算は七十億円の大幅増額をして、近く新線建設審議会におきまして公正に審議決定せられようといたしておりまするが、私はその公正なる御決定を信じております。ただ私が申し上げたいことは、総理はかつてこの審議会の会長をしておられた。審議会は毎年この新線建設の資金というのは政府資金でまかなうべきであるということを満場一致で強い決意をしておったことは御承知通りです。ところが今回の政府の予算を見ましても、この点はみな借入金でまかなっておる。国鉄側は経営の赤字から新線建設を好んでおりません。ただ日本の経済の拡大のため、資源の開発のため、地方文化の向上のため、こういうような国家的目的をもちまして、赤字で経営いたしておりましたこの新線建設というものを、国鉄の方を押し切って、そうしてこれを毎年々々やっておるわけであります。そこで当然この国の国策として新線を建設せられるとしたならば、資金もやはりこれは政府の手によって建設の費用を出さなくてはならない、これは私は理の当然と思いまするが、今日総理内閣責任者です。もう当時の会長でよく御存じだと思うのですが、責任者ですが、このような建設資金を政府の方から出されるかどうか、この点が第一点。  それから新線の決定に当りましては、あくまでこれは公正でなくてはならない、ところが何々大臣の選挙地盤だとか、あるいは与党の幹部の選挙地盤だとかいう所で、政治圧力をもって原案調査あるいは作成をするところの機関に圧力をかけられておるというようなうわさがあるのです。全くこれはけしからないことでありまして、いわゆる国民の鉄道でなくてはならない、国民のための鉄道として公正に厳選されなければならないと思いまするが、総理はどのようにお考えであるか、その点をお伺いしたい。
  51. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 鉄道の新線建設の資金の点におきましては、私もかつてこれの会長をいたしておりまして、この委員会のいきさつ等についても、またその実情等につきましても、ある程度承知いたしております。これは国家財政の全般とにらみ合して、建設委員会趣旨をなるべく実現するように努力していきたい、かように考えております。  それから新線建設が公正に行われなければならない、これは当然でございます。新線に関する建設委員会というものが、ああいうふうな構成でできております。趣旨もこれを公正にやるのでありまして、何か特殊の政治的目的、一部に偏するようなことが行われるというような想像や、あるいは疑惑をなくするために、公正に建設委員会において新線を審議していこうということになっておるのでありまして、あくまでもその趣旨を貫いていきたいと思います。
  52. 内村清次

    内村清次君 最後にぜひ総理質問しておきたいことがございまするが、それは国土開発縦貫自動車道建設法案のことでございます。本法案は二十二国会で議員提出法案といたしまして、衆参約二百名以上の議員が署名せられて、総理自身も、池田大蔵大臣も、また南條建設大臣も提案者の一人でございます。本案は審議過程におきまして、前申し上げましたように、六千億以上の国費を要するところの高速自動車道のことでございますから、いろいろと大きな反響がございまして、そうして今日まで衆参両議院の間を往復しておりましたが、今回この国会に衆議院で修正されて、現在参議院で審議されておるわけでございます。ところが、今審議中のこの法案に対しまして、奇怪なことには、審議の半ばで今回政府の提出の修正案というものが出てきた。それからまた、別に高速自動車国道法案というものが、別にこの大法案が出てきておるのです。しかもその第一の問題の点は、この重要な縦貫道路法できめてあります第三条に、審議会で決定をする路線、建設路線、予定線ですね、これを審議会の議を経ずして、そしてもうすでに先ほど建設大臣もちょっと言われたが、名古屋から吹田までは、これはもうちゃんと書き込んできておる。これが第一点。  第二の問題は、別に先ほど言いましたように、国土開発縦貫道路法と別に、高速自動車国道法案というものを出しております。その付則の第八項で、あなたのすなわち「内閣総理大臣」、これを削ってしまっておる。そして施行責任者であるところの運輸大臣と建設大臣とで、そうして施行するというようなことに、第三条、第四条、第五条というものを、これを付則で変更してしまっているのです。こういうような前例というものは、今日まで内閣の提出としては一回もなかった。しかもこれは衆議院で通したことが修正可決されて、そして参議院に回ってきております。私はこのような政府の態度、議員提案で修正をして、そして法案になすというような、こういうような、成規の手続ならば、それでいいでございましょう。しかしながら、そうして法案を実行してみて、政府の方で修正が必要だとすれば、政府提案で次回の国会かあるいはまたその次の国会かで修正なさることは、これは必要でございましょうが、そういう手続をせずして、まだ審議中のうちに政府の方でやっている。しかもその予算は今年度の一般予算の中に三十億五千万というものを出してある。これを政府使いたいでしょう、使いたいでしょうがこういう異例なような方法でもって参議院の審議が迷わされておるということは、私は参議院の軽視もこれははなはだしい。しかも議員提案というような、こういう提出議員に対するところの侮辱であると私は思うのです。こういう点は一つ総理はあなたも発案者の一人ですが、どうお考えですか、この点は……。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その点につきましては、いきさつ、内容について建設大臣から一応御説明いたします。
  54. 南條徳男

    国務大臣(南條徳男君) ただいまの御質疑、国土開発縦貫自動車道建設法案のいきさつにつきましては、すでに御承知の点と思いますが、衆議院を通過いたしまして、この国土開発法案がただいま参議院で審議中でございますのは御承知通りであります。その中に修正をいたしました小牧、吹田間の道路を加えて、衆議院で修正になっていることの御指摘でありますが、この点につきましては、衆議院において、ことに野党側の方からぜひこれは修正をして、この名古屋、神戸間の路線の中にこれを決定してもらいたい。そうして三十二年度の予算が通過後においては直ちに着手してもらいたいということから、衆議院の修正になってこちらに回付されておるのでございまして、政府がこれを何と申しますか、申し出て、さような修正にいたしたのではございません。  それから政府がかような今までの国土開発縦貫道建設法案が通過したにかかわらず、追っかけて高速自動車国道法案でもって、その八項で縦貫道の中の、総理大臣の権限を運輸大臣並びに建設大臣に修正するということは不当ではないかという御意見につきましては、これは当時今までの継続中の国土開発法案というものは、基本法でありまして、お説のように当時議員の多数の人々が署名をいたして議員提出として提案したものであります。従って基本法でありますけれども、実際にさて予定線を決定し、あるいは基本方針をきめる場合におきましては、総理大臣がこれを一々測量をいたしたり、または道路行政の上に関与するということは困難でありますので、これを施行するための細則をきめなければならぬということが、今まで運輸省と建設省の間に、先ほどお説のあったように、いろいろ意見の食い遠い等もあって、なかなかきめられなかったのであります。そこで、このたびはこれを両省に調整をしまして、そうしてこれを実際に国土開発縦貫自動車道建設法案が通る場合におきましては、どういうふうにして道路行政をやるか、その管理をするかということについての意見の一致をしまして、そうして高速自動車国道法案は国会提案することになりました、いわゆるこれが施行規則でございます。さようなわけでございますので、実際に施行することになりますと、基本法にあります総理大臣が何でもやるということだけでは足りませんので、実際の運用に当る、運輸大臣あるいは建設大臣が予定線を決定したり、あるいは建設線の基本計画を決定する権限を両省に与えるということによりまして、実際の測量をいたしたり、そうしてすべての管理をするということをきめることが、実際にも即するという意味で、かような八項に修正案を出しておる次第でございます。これが衆議院の方で一事不再理にならぬかというような法制上の疑義もありましたけれども、法制局等の見解によって、これは一事不再理でないということでございまして、そこで提案したようなわけでありますが、しかしながら、この点についてはいろいろ政治上いろいろな論議もございまして、野党側の御意見もありましたから、この点につきましては十分この趣旨が貫徹いたしますることであれば、この八項は削除するにやぶさかでないということを、先般も衆議院の議運において申し添えておるような次第でありますので、ただいまこれは野党側の議員諸君とも折衝中のことでありますので、いずれこれらの協議がととのいますれば、御満足いくような方向に行くと考えております。
  55. 内村清次

    内村清次君 ただ一点申し上げておきますことは、この法案は、先ほど言いましたように、六千五百億の国費をもって行われるような画期的な縦貫道路法です。高速度自動車国道法です。そういうような提案者の一人のまあ岸総理大臣もよく御存じでなかったと、ただ形式だけ内閣総理大臣提案ですからというようなことで、いきさつを建設大臣におまかせなさっておるけれども、私はそういうことではいかんと思うのです。やはりこの点は、政府が出す際に、修正案を出したり、あるいは先ほどは何か小さい規定のようにあなた考えておられるけれども、大きな問題ですよ。縦貫自動車法の中で予算の六千億というものを使うのでしょう。それを高速自動車国道法の付則で通産大臣にも、それから大蔵大臣にも、それからさらに運輸大臣にもあるいはまた建設大臣にも、また学識経験者その他を寄せました審議会の議を経ずして、総理大臣が、それでこそ総理大臣があるわけですから、総理大臣が管掌する事項を削って、工事を施行するところの両大臣にまかせてしまっておるというような、これを付則で出すというようなことは、全くこれは論外です。こういうような法律の提出方法というものは私はないと思うのですから、十分一つ考えになって、疑惑がかからないように、これは交通の一つの大きな発展でございましょうから、疑惑がかからないように、公正な予算の工事ができまするように、私は注意を要望いたしておきまして、質疑を終ります。
  56. 天田勝正

    ○天田勝正君 私はまず同僚議員が先ほどから質問いたしましたその事柄について、時間及び政府の答弁の不備等によって残されておる問題を質問いたしたいと存じます。  まず、沖繩問題についてでございますが、この沖繩問題を扱うに当りましては、その基本的に重要度の認識は大切だと存じます。私考えますに、各旧海外領土の比較をして見まする場合に、これはもちろん朝鮮、台湾等は論外でありますが、いわゆる樺太、千島沖繩、小笠原、この条約的にも解決つかないか、あるいは条約的にはたとえかりに解決いたしておったといたしましても、その帰属がはっきりいたさない、この四つの島についてでありますが、いうまでもなく千島、樺太の問題はやがて国際会議で決定することになっておりますけれども、ここには日本人が数多くいるわけではない。大方これは通念的にも、もしおられても未帰還者と、こういう考え国民も対処しております。小笠原については、逆に日本内地に引き揚げている者が帰島いたしたいという問題であります。これらに対して、沖繩は八十万の日本の同胞がいる。もちろんこの同胞を引き揚げ問題などで考える人は一人もいない。こういうことからいたして、これらの四つの問題の中で、沖繩問題が最も重く扱わるべき筋だと私は思いまするが、政府考えはいかがでございましょう。
  57. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問の点でありますが、申すまでもなく樺太……南樺太及び北千島の問題と沖繩、小笠原の問題は性質が違っておりまして、沖繩小笠原については、われわれはあくまで小笠原沖繩は領土権を持っている。ここにおる者は日本人であること、そういう立場にありますから、これが取り扱いにつきましても、おのずから別でありますが、今お話しのように、どれが大事であり、どれが比較的大事でないかということは、私はまあいずれも大事な問題であると思います。しかし、特に沖繩については、沖繩の住民というものが多数にあり、そして問題がいろいろとたくさん惹起されているという意味において、われわれが最も関心を深くして扱っていかなくちゃならない、また、諸問題を解決しなければならん、かように考えております。
  58. 天田勝正

    ○天田勝正君 政府も、沖繩問題は最重要と言わざるまでも、これを深く認識して考えるということでありますから、その考え方に立って質問いたします。この問題を処理するには、一つの序列があろうと思います。最善の方法は、いうまでもなく領土主権の返還である。しかし、これが直ちに行えないということは、幾たびかの政府の答弁で明らかであります。そういたしますれば、かりに次には軍政権は別といたしても、民政権だけはわが国に復帰せしめるという方向であろうと思います。さらにまた、第三の道は、ちょうどわが国が占領下に置かれている当時と、現在の状態とのあいの子とでも申しますか、軍事基地それ自体はそのまま認めて、その他の権限を日本が獲得するという方向でありましょうし、さらに次には、現在交通も不自由になっておりますけれども、交易と住民の移動の自由を認めるという方法が、その次の問題でありましょう。最後の問題が、今回政府がとろうといたしております、予算上多少の経済援助と申しますか、今回は見舞金といった形でありますが、そういう方法をとる、こういう順序になると私は考えますが、政府考え方はいかがでございましょう。
  59. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今もお答え申し上げましたように、沖繩に対しては、いろいろな諸問題がございます。従ってこれらの問題を処理し、解決していく上におきましても、また、困難の程度におきましても、今おあげになりましたようないろいろな段階があろうと思いますが、私どもはできるだけ最後の目標に向って、あらゆる問題を解決していくという努力をしたいと思います。今回の見舞金の措置は、日本人である沖縄の人々の困窮しておる状況を、日本政府として見捨てておくわけにはいかないという趣旨から、これを措置したわけでございます。
  60. 天田勝正

    ○天田勝正君 最後の目的に向ってというのは、完全なる主権の復帰ということであろうと思いますが、しかし、先ほど来言いましたように、幾つかのケースがあって、その最後の目的が直ちに達せられないといたしますならば、その他の手も当然打つべきであると思いますが、それらについて一体今日まで手を打ったかどうか、また、今後岸内閣といたしましては、手を打っていこうと考えておられるかどうか、以上伺います。
  61. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来も、御承知通り国会で施政権の返還についての御決議がされておりまして、これはアメリカ側に通告をしてその意図を伝えてあるわけでありますが、これはまだ今の状況においては、実現できないということになっております。しかし、いろいろな諸問題につきましては、われわれは今日までもできるだけのことはいたしておりますけれども、さらに進んで今後完全にこれが復帰するという目標のために、あらゆる努力をしていきたいと、かように考えております。
  62. 天田勝正

    ○天田勝正君 それでは、さらに下った見解でありますが、せめて住民移動の自由及び交易は国内同様に行える、これらの問題について手を打たれましたか。また、近く打とうとお考えございましようか。
  63. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今日まで、そういうことについて具体的に話し合いは行われていることはございませんけれども、また、近くそういうことを私は話すという意味でなしに、全体的の問題として、沖繩問題に関しましては、最近わが方の議員の方を軍司令官が招待して、議員及び民間の人々も行って視察して参っておりまして、その報告等も聞いております。これらの問題をあわせて検討をいたして、今後の沖繩問題の解決のいろいろのことを、向う側と話し合いをして参りたいと、かように考えております。
  64. 天田勝正

    ○天田勝正君 今回の予算措置は、従来島民が叫んでおりました土地問題の解決、四原則の貫徹、この問題の一つ助けとして行なったものだと存じますが、その土地問題の解決及び四原則の貫徹について、いかなる話し合いを進めつつありますか。
  65. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 四原則の貫徹の問題につきましては、沖繩住民の強い要望を、アメリカ側にもわれわれは通達いたしまして、これに対して十分な考慮を用いるようにということを要望いたしております。アメリカ側のこれに対する措置、扱い等につきましては、過般ごらんになった通りの状況になっておるのでございます。
  66. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと関連して。今の四原則問題について、総理は衆議院の質問に答えて、これはもう二週間近くたつと思うのでありますが、四原則貫徹のために、アメリカに強く伝えたい、こういう言明をしておられます。ですから、その後どういう工合に交渉をされ、実現をしたか、こういう点であろうと思います。  それからもう一つ、ついでにお尋ねをいたしますけれども、占領中の補償については、これはアメリカ側から当然支出せらるべきものだ、補償さるべきものだ、完全補償という点は四原則の中にも入っておりますから、四原則の中の交渉として交渉せられたと思うのでありますが、十億の見舞金云々ということになっておりますが、言明をされました衆議院での答弁以来、どういうように四原則貫徹のために努力をせられ、現状においてはどうなっておるか、今後どういう工合に努力して参るか、こういう点を明確に一つ御答弁願いたい。
  67. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 四原則の問題につきましては、われわれがさっき申し上げましたように、現住民のその要望というものをアメリカ側に伝えて、住民の要望を実現するようにということを、私の方からも申し入れてあるのでありますが、これに対しては、アメリカの方としては、とにかくプライス勧告というものは、アメリカの国会承認を得て、あれができておるのであって、これに基準を置いて、この範囲において、自分たちはその範囲内において、できるだけの措置を講じていきたいということで、ことしの一月の初めに軍司令官が日本に参りまして声明を出して、とにかく最初の何から申しますと、一段の処置を講じたわけであります。しかし、その結果は決して四原則をそのまま実現したものでないことは、言うを待たないのであります。その結果について、現地の事情を見てもらいたいということで、過般の招待が行われたわけでありまして、その結果を私ども検討をいたしまして、その結果に基き、さらにアメリカ側との折衝も今後やって参りたい、かように考えております。  なお、十億の、今回われわれの方で払う見舞金というものは、かねて政府側から答弁をいたしておりますように、われわれとしては、アメリカ側が支払うべき義務のあるものであって、しかしその解釈については、日米の間においてまだ条約上の解釈が一致いたしておりません。おらないためにおくれておるのでありますが、これがおらないためにおくれるということになっては、現状はそういうふうに放擲しておくわけにいかないという意味において、とりあえず前渡しのような意味におきまして、私どもは今回の措置をとったのであります。なお、そのわれわれの考え方の意向は、アメリカ側に私の方から通告がいたしてあります。
  68. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは今までの説明であって、先般来四原則を国民の要望としてアメリカ側に取り次ぎ、強い要請をする、こういうあなたの言明からするその折衝じゃないじゃありませんか。それは今までの説明であります。それじゃこの間の言明がどうなっておるか、それに基いて折衝されたところがどういう工合に進展をしたかという説明にはならぬと思う。重ねて御答弁願いたい。
  69. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げますように、四原則の実現ということについては、四原則の住民の希望は、私の方からすでにアメリカ側に取り次いでありまして、その実現を要望いたしておるということはすでにやっておるのであります。それに対してアメリカ側の方では、とりあえずことしの一月の初めにこれだけの範囲内においてやった、その結果はどうなっておるか見てくれというのが、今日までの経過でありまして、私はそれの視察の結果を検討して、さらにその実現についての今後努力をする、かように考えております。
  70. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して。昨日大蔵大臣にお尋ねしておる中で、答弁が留保しておるものがありますので、この際岸総理に御答弁を伺いたいと思います。  それは今岸総理の御答弁にも、十億の問題については、通告がしてあるということだけであって、先方、つまり米国が了承したという御報告がございません。通告だけでこの特別措置が実施されるものかどうか、この解釈に私は疑義があると思います。もし、先方が承諾をしたのならば、いつ承諾したか、今後承諾を求めることになるのか、それらの見通しについて伺いたいと思います。
  71. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その問題は先ほどもお答え申し上げましたように、条約の解釈として、彼我両国の間の意見の一致しないところであります。従いまして私の方からの通告に対しては、今了承したとか、了承しないとかという返事は来ておりません。われわれとしてはこういう意思でもってやるのだということを、はっきりアメリカに通告して、将来条約上の解釈の問題において、われわれは従来の主張を捨てたわけではないのであって、また、この金はその意味において出すのだということを明瞭にしておきますれば、将来の条約上の解釈において、われわれは十分われわれの主張主張し得る、かように考えております。
  72. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちょっと御答弁がそれておるようですから……。私がお尋ねをいたしましたのは、その問題よりも、今回の特別措置でお出しになろうとする十一億の支出の方法についてでございます。もし、ただいまおっしゃったように通告だけの段階で、これを沖繩の方へ出すということになれば、これはある意味においては、日本政府の行政権が沖繩に及ぶと解釈もできると思います。そこでどうしても今回沖繩政府あるいは特定の団体をもってこの十一億を沖繩の人たちに渡すためには、沖繩の行政権を持っておる米軍当局の了解がなければできないのではないかということを考えますが、そういうふうにしないでもできるのかどうなのか、この点をお尋ねしておるわけでございます。
  73. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは私ども従来沖繩の住民は日本人であり、われわれはここに潜在主権を持っておるという、このことにつきましては、アメリカ側におきましても異存のないところであります、あるいは不幸があった場合において見舞を出すとか、あるいは暴風雨の何に対して、われわれの方で見舞を出すというような先例もございます。今日この占領地の土地の所有者等の収用された人々の生活状況を見るというと、非常に困っておる状況である。これに対して見舞金を出すというのは、同じような気持でやっておるわけであります。ただ、この場合はっきりしておかなければならんことは、単純な暴風雨の見舞に出すのと違って、本来アメリカ側が補償すべき義務のあるものを、われわれはかわって出しているのだという意思だけは、アメリカ側にはっきりと通告してあるということでございます。
  74. 天田勝正

    ○天田勝正君 次は、人権問題でございますが、この問題は一々例をあげると時間が長くなりますので申し上げませんが、沖繩島民が非常に強い団結をいたしました。その出発点は一体どこにあったかといいますれば、一昨年の七月に起きました石川市における七才の少女の強姦圧死、この問題に端を発しておるのであります。そこで、私はこの問題が大きく沖繩島民を団結せしめましたが、しかし次々と起って参りますこうした類似の事件、人権問題、このことは日本が潜在主権を持っておりまして、手の伸びない今日でありましても、どういう方法をもってしても解決しなければならぬ。そこで、私昨年の夏内地へ参りました瀬長亀次郎氏とともに遊説をして歩きながら、こうしたデータを、しっかりしたものを持って、私自身も昨秋アメリカへ参りましたので、その機会に話し合ってみたい、さらにまた、アメリカは非常に宗教家の言を重視いたしまするから、国際人でありまする賀川豊彦などに特に行ってもらって、これらの問題を米国民に訴えるという方法が必要ではないか、こういうことで実は準備をしたことがございます。向うに参りましてシーボルト氏にも私は会いましたが、どうもわれわれの言うことと、向うの聞くこととは、まるでちぐはぐだというたような感じを受けて参りましたが、とにかくこの人権問題解決のためには、私は今申し上げました国際的な宗教人でも政府の特使として派遣する必要があろうと思いますが、この点について総理のお考えはいかがでございますか。
  75. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 過去においていろいろ沖繩において惹起されておりまする事件の処理、さらに進んで将来のそういう事件を根絶し、また、沖繩に関する幾多の問題を解決するというためには、われわれはあらゆる努力をしなければならぬこと言うを待ちません。従いまして、私はこの沖繩問題という用のを全面的に検討をいたして、そしてこれらの問題に関して日米の間の今までの関係というものを、十分に再調整をして参りたいというのが、私の念願でございます。今具体的におあげになっておるような事件をとらえて、人道的な立場からやるということも、一つの方法であろうと思いますけれども、私としてはこれを全面的に再検討をして、そしてこれに対する日米両国関係を調整するということが必要であろうと、かように考えて、せっかくそういう努力をいたしておるわけであります。
  76. 天田勝正

    ○天田勝正君 この点は時間がありませんので、私は要望だけいたしておきます。根本的な、かつ全面的な検討をいたすといいましても、そう検討しておる最中にも人権問題が次へ起きて、わが同胞が危害を加えられるということであります。でありますから、根本的な解決をはかるのは、もちろんだれも異議はございません。しかし、それ以前に打つべき手が打てる点は打ってもらいたい、このことを強く要望いたしておきます。  次は、原子力支援部隊の問題でありますが、すでに先般沖繩を訪問しました視察団も見て参ったことでありますが、沖繩には原子力支援部隊が参っておると、こういうことであります。この部隊が参っておる以上は、いつの日にか原子兵器が全面的に持ち込まれまして、沖繩がその出発点になりますか、また、日本内地がその根拠地となるか知りませんけれども、このことは日本国民にとっては非常に大きな問題である。やがては原子戦争が日本中心にして、と言いましてはあるいは強過ぎるかもしれませんが、少くとも世界の原子戦の中心一つ日本に置かれる、こういうことにもなりかねないのでありまして、これらの点につきまして、どう対処されるつもりでございましょうか。
  77. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 原水爆やいわゆる原子兵器の持ち込み、原子部隊の国内への移駐については、すでにしばしばお答えを申し上げております通り、私はアメリカ側はそういうことは日本に相談せずして一方的には持ち込まないということを言明をいたしておりますし、そういう相談があれば、私はこれを拒否するということを申しております。ただ、沖繩の問題につきましても同様な御質問がございました。私は沖繩の地位が、残念ながら日本の内地とは違った扱いになっておるから、アメリカが果して沖繩についても相談してくるかどうかということについては、自分は確信を持たない。もしもしかし、相談があれば、同様にこれをお断わりするつもりであるということを申し上げておりますが、そういう考えでございます。
  78. 天田勝正

    ○天田勝正君 先ほど来、今回の沖繩に対する見舞金は元来アメリカが行うべきものをわれわれが行うのである、こういうお話しであります。そういたしますと、単に、見舞金という形式はとりながら、単なる見舞金ではない。こういうことは考えられます。そうであるならば、将来これはどこかで精算をつける、こういうことであろうと思いますが、この点について大蔵大臣は、その積算の基礎はどこに置かれましたか。
  79. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 講和条約前の接収の土地問題についても問題でございまするが、大体われわれの調査したところでは、五万世帯程度あるようでございます。で、見舞金として平均一世帯二万円と考えておる次第でございます。
  80. 天田勝正

    ○天田勝正君 時間がありませんから次の問題に移ります。英国の水爆実験についてでありますが、このことはここ二、三日の新聞が大きく報道いたしております。資料も持って参っておりますけれども、一々これを披露いたすのはやめます。ただ、モールデン島の水域で水爆実験、これは第一回だ、こういうことで報道され、しかも、司令官であるオールトン少将が記者会見でこれを明らかにしたということでありますから、ほんとうでございましょう。さらにすぐそれに引き続いてマラリンガにおきまして、これは濠州でありますが、これまた水爆実験を行い、しかもその際は原子砲の初の実験を行う。こういうことであります。また、この報道によれば、国連において世界的な軍縮計画が取り上げられると、そこで禁止される場合に備えて急いで行うのだ、こういう報道であります。これらの点につきまして、政府側にはさらにこまかい報告が参っておることと存じますので、この機会にこの点を明らかにしていただきたいと思います。
  81. 岸信介

    国務大臣岸信介君) まだ詳細な確報を、政府としては得ておりません。
  82. 天田勝正

    ○天田勝正君 それでは、これはわれわれにとってきわめて重大な関係がございますので、特に日本漁民にとっては非常に大きな問題でありまするから、すみやかに確報をとっていただきまして、三十二年度予算の一般質疑の際にお答え願えるように御準備願いたいと存じます。  さらに、別の報道によりますれば、これは民間人畑中氏でありますが、フルシチョフソ連第一書記と会見した際に、ソ連としては一方的に実験を中止する意図はないと、こういうことでありますし、また英国においては、労働党二人の議員の提案に対してマクミラン首相は実験を放棄することは、ソ連と話し合う場合に、英国が劣勢に立つ結果になるから、これはそうはいかない、こういうことで、それぞれに相手方がやめないうちは、おれの方はやめないのだという形で、水爆実験を結局容認する、こういう態度をとっておるのであります。かようであれば、一体何とわれわれは対処したらいいのか、こういうことになって参ると思います。近ごろのうわさによりますと、船団座り込みと、こういうようなことも報ぜられておりますけれども、さてさようなことをやっても、これは竹やり戦法の一つでありまして、そんなことをきく相手ではない、こう想像されます。そうすれば世界の世論に訴えるほか仕方がないと思いますが、その地道な手間のかかる手段でありましても、われわれはこの際とっていかなければならない。この点については、世界各国に派遣しておりまする外交官を総動員して、それぞれの国の世論を盛り上げていくよりほか方法はないのではないかと思いますけれども、近ごろ国連等にはかなり政府側も行っているようでありますが、世界に派遣した外交官を全部動員しておるというようなふうには見受けられませんが、これに対してどういうお考えを持っておられましょうか。
  83. 岸信介

    国務大臣岸信介君) われわれが米英ソ三国に対して、同様に原水爆の実験禁止の申し入れをいたしておりますがこのことについては、そのつど各在外公館にもわれわれはその事実を通報をいたしております。特に各駐在国の政府に申し入れるという処置はとっておりませんけれども、そうしてまた、この原水爆禁止についてのわれわれの強い考えは、これらの抗議もしくは申し入れをするたびに、在外公館にも通報をいたしておりまして、その国におけるこれらに対する世論の動向等につきましても報告を取っております。で、私は今お話しのように、ソ連もまた米英もお互いに対立して、競争してこの実験をやっておる。また自分たちだけやめるということはできぬという態度をとって、両方で張り合ってやっているという状況は、これは何としてもやめなきゃならないことでありまして、国連における軍縮会議が、その問題を全面的に取り上げてこの論議をし、検討をするようになると思います。一部におきまして、これらの三国の間にそういうことをやめるという協定をさせたらいいじゃないかということでありますが、そういう協定ができれば、もちろんけっこうであります。しかし、軍縮委員会自身でこれが取り上げられて検討されて、そうして結論が出るようならば、これは協定というものができ得る、条約もでき得る可能性もあるのですが、従来の例を見ると、軍縮会議で議論はされるけれども、結論が出ないということは、三国の間にそういう条約をさせろといっても、そういう条約ができ得ないようなまだ国際情勢であることは、私は非常に遺憾であると考えておるところであります。
  84. 天田勝正

    ○天田勝正君 この問題はいかに論議いたしましても、論議が過ぎてるということはない問題でありますが、これまた時間がございませんので、私はただ最後に要望いたしておきます。昨年バンコックに開かれました列国議会同盟の第四十五回の大会におきまして、各国の代表の演説を聞いておりますと、すべての代表各位の口から出る言葉は二つある。一つはハンガリー問題、一つ日本における国会の原水爆の禁止の問題であります。私どもこれを聞いて、われながら驚いた次第であります。かように、今日本院の決議、また衆議院の決議が、大きく国際的知識人の間では取り上げられておるというのが事実であります。きょうの新聞によりましても、ネール総理も、被害者は日本人だ、けしからん、こういうことを言っておられますし、英国のバートランド・ラッセルという有名な学者、これもまた日本の怒りは正当である、こういうことでありますから、何としても私どもは根強い働きかけを通じまして、国際世論の盛り上げに、政府一つ努力を続けていただきたい、このことを申し上げます。  次は、経済外交の問題についてでありますが、岸外相は、石橋内閣外務大臣といたしても、経済外交の推進を強く叫ばれたのでありますが、岸内閣になりましても、この方針にはみじんもゆるぎがないと私どもは存じますが、さようでございますか。
  85. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お言葉の通りでございます。
  86. 天田勝正

    ○天田勝正君 私昨年列国議会同盟に、各党各派の議員の方とともに、世界を回ったわけでありますが、その際、実に驚くべきことを実は発見いたしました。質問者がしゃべっては損でありますが、このことだけは申し上げなければならない。(笑声)それは日本の外交官が、案外それぞれの駐在地の国の総予算すら知らないという状態を見、かつ聞いて、実に驚いたのであります。日本では一兆円予算といえば、どんな農民でも承知しております。日本の外交官が、その国の総予算すら知らない。こういう状態を見て、実は先の第二次大戦の勃発いたしたときに、軍の横車だということで、こういうことにだれも承知しておりますけれども、しかし、外交官から、それぞれの国の底力というものが、的確に日本政府に送られておるならば、そういう無謀な戦争をやらなかったのではないか、ここに第二次大戦勃発の一つの私は原因を発見した気がいたしております。次には、それぞれの駐在地の誇るべき施設は何であるかという問題については、全く関心がないのではないか。たとえば、私パリにおいて最も誇るべき施設とは、ナポレオン時代に作りましたあの下水である、こう考えまして、これを案内させ、さらにまた、二十キロ遠い郊外の汚水処分場を見たのでありますけれども、こういう場合でも、そういう無理なことを言うのは先生方だけだ、なんというようなことで、少々争わなければそういうところは見られない、こういうようなことであります。第三は、全くここに一々言うことはよしますが、形式ばかり激しくて、私は、もっともばからしいから、実は大使の招宴に参りませんでしたけれども、保守党の議員諸君も行かない。パリのことでありますが、行かないというのでありましたが、しかし、まあ文句を言いに行こうというので行ったそうでありますが、その席でも鳩山さんに報告した事柄を、わざわざ、自分で言いもしないで、外交官補を呼んでそれを読み上げさせる。とにかく、こまかいことでありますけれども、天皇の代理だということばかりが主である。また、どこへ行きましても、鳩山さんが自分の任地を通過するかしないかということは、一番先に話を始めるけれども日ソ国交の中身が、一体どうなったかということを話をする外交官はほとんどなかった。まあ例外はございます。が、しかしそういう状態、こういうような人事をもってして、一体今日非常に激しい競争に打ち勝っていかなければならない経済外交は、まことに暗たんたるものだと、つくづく考えて参ったのでありますが、人事の刷新について、外務大臣はどうお考えになっておられますか。
  87. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は外務大臣に就任いたしましてから、在外公館の実情ないしその人事等につきましても、ずっと検討を重ねて参っております。お話しの通り、いろいろな批評も私ども耳にいたしますし、また、検討してみますというと、十分に在外公館としてのその任務を果しておると思われないようなところも多々ありますので、これらについては、今申しましたように、私が検討いたしました結果に基いて、逐次人事の刷新を実現して参りたい、かように思っております。
  88. 天田勝正

    ○天田勝正君 コロンボ・プランに協力の問題でありますが、昨今、東南アジア各国から日本の技術者の援助を受けたいという申し込みがしきりにある、こういう状態であります。しかるに、その予算は、外務省では一億五千万円要求したそうでありますけれども、わずか八千万円、このことのために、新年度になりましても、予算上ブランクができまして、その要請に応ずることができないという事態が発生しておると聞いております。そのような状態では、これまた経済外交の推進は、とうていなし得ないのでありまして、一体、かくなったのはどういう理由によるのか、外務大臣と大蔵大臣に伺っておきます。
  89. 岸信介

    国務大臣岸信介君) コロンボ・プランに基くいろいろ日本の技術者等の要望は、だんだん強くなってきておる、多くなってきておることは、御質問通りであります。私どもなるべくそれに応ずるような処置を現在まで講じてもきておりますし、今後も講じていくつもりでありますが、しかし、何か予算が非常に少いので、向うの一つの要求に応ずることができない。ブランクができておるというようなお話しでありますが、そういうことは私はないと思います。もちろん、今日の予算が十分であるとは申し上げられませんけれども、私どもは相当にこの経済外交推進の上からいって、コロンボ・プランに協力を今後も積極的にやって参りたい、かように考えております。
  90. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お話しのように、経済外交をやっていく場合において、特に東南アジア、中近東の方は技術援助が一番望ましいのでございます。従いまして外務省の予算につきましても、こういう意味で、技術援助の方は今年相当認めておるつもりでございます。なお、この問題は民間の方の協力も望ましいのでございまして、具体的に計画ができますれば、大蔵省としては、決してこの点の経費はやぶさかではございません。
  91. 天田勝正

    ○天田勝正君 この技術援助の問題は、一朝手おくれになりますると、なかなかこれは取り返しがつかないのであります。わが国の機械が、今に至るもヤード、ポンドというようなことで、すべての物をはかるにいたしましても、八分の一インチを一分というので、各機械工場とも通用しておる。そういうことで、あとでこれをメートルに直そうなんと言ってもできない。これは一番簡単なことを申し上げておるわけでありますが、そういうことで、一たん手おくれになりましたものは、もうとても取り返しがつかない問題でありますから、私は、この補正予算について今このことを言うておるのは、今の予算の不足というものは三十二年度予算であります。しかし、せっかく本年におきましても多くの自然増収があるというときでありますから、これは今現在でも直ちに関係者と連絡をとられまして、今現在不足と伝えられておる額は、わずか三千万円か四千万円にすぎません。このような手当はどういう面からでもできるのであって、この点は十分直ちに一つ検討願いたいと存じます。  それから、もう一点だけ伺いますが、昨年の中共見本市におきまして、粗悪品問題が非常に問題になりました。このことは、確かに十七、八円の万年筆等の問題でありますから、こちら側はおもちゃとして輸出した、向う側はそうでなく取り扱ったという誤解もあったでありましょう。ところが、それと違って、去る二十日の日経でございますが、これに、日本政府の毛織物が中共でクレームがあって、関係商社が調査団を派遣するという見出しで、内容がずいぶん大きく出ておりました。しかも、これはどう中身を見ましても、事実のようであります。かようなことをやって、新しい市場の開拓なぞはとてもできるものではございません。このことは、通産大臣にお伺いし、また、外務大臣にも十分聞いておいてもらいたいから持ち出したのでありますが、とにかく、こういう状態である。さらに一方、これは、気象庁の和達博士、この和達博士が、わが党の、ここにおられます佐多君に話をされたことでありますが、気象観測機械の検査票のないものを、いわば日本では使えないものを中共に輸出されたということであります。学者の言うことでありますから、おそらくうそではないと存じます。こういうふうなことで、一体経済外交あるいは市場開拓、そういうことの達成ができるはずがないのであります。これに対して、外務大臣、通産大臣は一体どう対処されるつもりでございましょうか。
  92. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 中共向け毛製品のクレームの問題は、調査の結果、大体実情が現在判明しております。毛製品は、御承知通り輸出検査法による指定品目でございまして、強制検査をいたしておりますが、従って、輸出契約のときでも、日本側の検査合格ということが条件になっております。今度の場合はこちらの検査はむろん合格しておりますが、中共の検査局側でいろいろ誤解があったようでございまして、現在すでに一部の業者はこの誤解を解いて問題が解決しておりますし、他の業者も近くみんな解決するというはずになっております。従って、これは検査を受けなかったとか、あるいは特別な粗悪品を送ったという事実はございません。それから気象観測機の問題でございますが、これは、強制検査を必要とする品目にはなっておりませんが、また、いわゆる特認品目となっておるものでございまして、若干日本から向うに輸出されたことは事実でございますが、このクレーム問題につきましては、まだ役所側としては十分実情を知っておりませんので、これは至急調査したいと思っております。そういう製品に対する不信用から、経済進出に故障が起るというようなことがあっては困りますので、御承知のように、今度輸出検査法の改正をこの国会にお願いしまして、過般参議院の御審議も願ったというような次第でございますので、この検査法の改正によって、今後そういう粗悪品が外国に出るという事態は、ほとんど避けられるのではないかと考えております。
  93. 天田勝正

    ○天田勝正君 これ最後でやめますが、強制検査の規定に入っておらないから、この粗悪品を出す、これは通産大臣といえども望んでおってそうおっしゃるのではないと、私は善意に解釈いたします。しかし、そういう心がまえであれば、とても日本の商品は伸びるはずがないと思います。昨年の中共見本市の問題にいたしましても、これは衆参とも派遣団それぞれ痛感したのでございますが、これを実に英国はうまく利用しておるのですね。これはぜひ一つ各大臣とも聞いておいていただきたい。非常にうまく利用しておる。日本品は、悪いのだ、安いが悪いのだ、ところが世界中歩いてみますると、いわゆる良品廉価でなければ出ないというようなことはないのであって、良品であれば高価で出ておるのです、みな。しかも、日本は良心さえ持つならば、世界ほとんど身につけるようなものであったならば、太刀打ちのできないものはないということを知って、私どもは非常に確信を深めたような次第で、今日は時間がありませんし、とうに持ち時間超過であるそうでありますから、私はやめますけれども、しかし、このことはやがて一般質問の場合でもさらに取り上げて論じてみたいと思います。しかし、とにかく経済外交は岸さんが非常に大きく掲げた看板でありますから、人的な面におきましても、また機構の面におきましても、法律整備の問題におきましても、十分一つ留意をしていただきたい。このことを申し上げまして、産投の問題、食管の問題等もございますが、これには本日は触れずにこれで終ります。
  94. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これにて質疑は終了いたしました。暫時休憩いたします。    午後一時十八分休憩      —————・—————    午後二時五十四分開会
  95. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和三十一年度一般会計予算(補正第1号)外四件を議題にいたします。  これより討論に入ります。
  96. 吉田法晴

    吉田法晴君 私はただいま議題となっております昭和三十一年度予算補正五件に対しまして、日本社会党を代表いたしまして、反対の討論を行わんとするものであります。  この第一次、第二次補正をもって五百四十七億の補正を行い、当初予算一兆三百四十九億に追加いたしまして、三十一年度予算として合計一兆八百九十六億にせんとするものであり、これは一千百億の自然増のうち、三百億を産投特別会計に、百億を交付税及び譲与税配付金特別会計に、百四十七億を遺族留守家族援護その他に支出せんとするものでありますが、私は反対の第一の理由にあげますものは、今回の補正が財政法の精神を根本的に踏みにじっておるということであります。すなわち、第一次の補正予算に計上せられました産業投資特別会計への繰り入れ及び地方交付税特別会計への繰り入れば、いずれも三十二年度またはそれ以降において使われるものであり、会計年度の独立という財政法の根本原則を踏みにじっておるからであります。特に、今回提案せられております産投の資金三百億円は、三十二年度、三十三年度に使用しようとして、無理に財政法四十四条の資金の形にでっち上げて、合法な形をとっているのでありますが、池田大蔵大臣は、本年度の自然増収が異常なものだし、これを財政投融資に使うが、将来にわたり最も有数であると、一人ぎめをしておりますけれども、三十三年度に百五十億を何に使うのが最も適当であるかは、今日とうていきめ得ることではありません。今回の措置は、三十三年度の歳出を拘束するもので、はなはだ不当となすべきであります。  さらに第二次補正のごときは、その大部分が三十二年度予算編成に際しての復活要求のはみ出し分であり、大蔵省原案に対し二千五、六百億円に上る復活要求を出された政府が、ついに一般会計において二百二十九億円の復活を認めざるを得なくなり、昭和三十二年度の財政規模の膨脹をごまかすために、そのうちの八十一億円を三十一年度予算の補正として組んだものであることは、明白な事実であります。単年度予算主義により、その年の税収等収入と、その年に支出される財政支出は、その年の予算として、国会国民承認し、監督するという財政法の精神をじゆうりんするものであります。従って、補正予算の緊急性のごときはいずれにも、ごうまつも見当らないところであります。これが反対の第一。  次に、千百億の自然増収は、自民党のいわれる資本主義の原則からすれば、減税として国民に還元すべきものであります。もしそうでないとするならば、経済基礎の拡充、各階層別の国民生活を考慮し、計画的に、言いかえれば社会的に財政支出をすべきであります。しかるに政府は、昭和三十一年度予算の実施においては、ことごとく失敗をして、三十一年度予算説明になされております目標、政策、趣旨と正反対の傾向が出るような事態に立ち至っております。両補正予算によっても、国民経済、国民各階層に政治的、政策的に還元するのではなく、昭和三十二年度予算編成に漏れた要求を埋める無計画的な支出をし、地方財政を初め、雇用の増大、給与の改訂等にしても、社会保険あるいは義務教育費その他にいたしましても、その窮状、矛盾を解決することができず、むしろ日本経済の矛盾を拡大する方向にあります。昭和三十一年度予算説明には、貿易収支は黒字になり、財政資金の支払い超過、投資の需要、消費需要、貯蓄傾向等の変化はなく、金融機関の資金繰りも好転し、日銀依存度の低下、オーバー・ローンの解消、金利の低下等、金融の正常化は急速に進行しつつあると、こう書いてありますけれども、事態は全く逆であります。国際経済の従来の繁栄あるいは景気の上昇の頭打ちの影響を受けて、漸次その当時の欧米同様の事態になりつつあります。輸入が増加し、輸出が伸びない、手持ち外貨が減少し、引き揚げ超過となり、失敗した財政の金融へのしわ寄せば、公定歩合の引き上げ等、金融部面に赤字信号が出ているではありませんか。防衛関係費あるいは軍人恩給等のみが確実にふえ、インフレの傾向すらあります。欧州共同体市場に対しては十分な対策もないし、中国貿易、アジア貿易の伸展についても何ら見るべきものはありません。経済の健全化、通貨価値の安定、インフレを避け、経済自立を目標にし、生産基盤の強化、輸出の振興、雇用の増進をうたいましたけれども、全く事態はこれと反対の事態が生じております。これひとえに政治が無計画的に、社会的でないからであります。これが反対の第二の理由であります。  第三の反対の理由は、食管会計の三十一年度の赤字を補正に組んでいないことであります。食管会計は毎年赤字を出しており、三十二年度に予想される赤字を加えますと三百三十五億円の多額に上るのであります。政府は、今回の補正において、三十一年度末の赤字三十一億円だけを組み、確実に予想される三十一年度の赤字百六十一億は補正に組んでないのであります。その年度の歳出はその年度の歳入をもって充てるという財政法の精神に照らしましても、当然三十一年度の赤字も補正に組むべきものであります。しかのみならず、今回補正に組まれている三十年度の赤字も、河野農相責任でありますが、河野農相は、三十年度予算の補正に際し、三十年度はこれ以上赤字を出さないということを言明してこられたのでありますけれども、三十年度決算において三十三億の赤字を生じたものでありまして、ずさんきわまる収支予想を組み、国会を欺いて参ったという以外にありません。また現内閣は、三十二年度予算編成方針の決定に当って、消費者米価値上げを一たん閣議で決定しておきながら、党内抗争と選挙を考慮してか、その方針を変更して、調査会の結論を待って処置をするというごまかし方法をとるに至ったのでありますが、三十一年度の赤字を今回の補正に組まないところを見ますと、依然として消費者米価値上げの方針を捨てていないものと解せざるを得ないのであります。かくのごときあいまいなる政府の態度は、断じて許すことができません。  反対の理由の第四は、地方財政に対する措置でございます。地方交付税交付金は、第一次補正で百億円、第二次補正で十億円、計百十億円を追加計上しておりますが、これは国税三税の二五%という税率をそのままにして、自然増収に見合う額を計上しただけで、三十三年度において精算交付される分の先食いをいたしたにすぎません。断じて増額ではございません。しかもそのうち八十六億円は、地方債の元利補給に充当されるものであり、自主財源たるべき交付税を特定財源に充当するものでありまして、これまた不当な措置であります。地方債の現在高実に五千二百億、ここ数年を出ずして地方債の償還額と借入額がひとしくなると言われておる地方財政の現状を考えてみますならば、かくのごときなまやさしい措置では、とうてい地方債の重圧から地方財政の窮状を救うことはできません。これでは明らかに、地方財政の窮乏を昭和三十一年度の自然増収で救うことにはならないのであって、公債費を要望している自治体の要請にこたえるゆえんではありません。これ反対の第四の理由であります。  第五の反対の理由は、主として独占資本等に回ります産投三百億と、旧軍人遺家族恩給等、純消費的支出がおもなものであって、中小企業にも、農村にも、あるいは公務員等労働者、庶民階級にはほとんど見るべき支出がなく、社会保険、社会保障関係費も申しわけ的で、千百億の自然増収を国民生活の安定のために支出するについて妥当でないという点であります。公務員の給与は民間給与に比し一昨年五月において一一%の差ありとして、昨年七月、千二百円ベースの改訂を勧告していることは御承知通りでありますが、従前の例によりますと、補正予算において本年一月一日以降ベース改訂をすべきにかかわらず、補正予算において何ら措置がしていないのであります。雇用の増大をうたいながら、日雇いの首切りが行われ、失業者は減らず、ふえているのはただ臨時工のみであります。事態は三十一年度予算の説明とまさに逆行であり、失対費の増額もございません。新農村計画は多く有線放送の設備に終って、農業改良費の減少を補正でカバーする増額すらございません。国民金融公庫、商工中金等、中小企業金融の実態は、希望を公けに募集することができず、関係者はせめての三倍の原資をほしいと要望している実情でありますが、補正予算においては何らの措置もございません。義務教育費については、本委員会において湯山委員が指摘されたように、六十名以上の学級が六千、市町村負担学級が二千五百八十九、PTA負担の総額が百億、未報告分の推定分を加えますると百二、三十億が市町村、PTA等において負担せられ、国が責任を持たぬ、不十分な教育が行われておるという実情で、第二次補正十七億、しかもその一部は年末手当に充当されるわけでありますが、これをもってはとうてい事態の解消に資するわけに参りません。科学技術の振興という点に至りましては、宗谷丸の実態が、この科学技術振興の支出の実体を証明いたしております。  最後に第二次補正に組まれております沖縄関係特別措置費についてでありますが、今回補正に組まれましたのは、土地等の所有者に対する見舞金十億円と引揚困窮者に対する貸付金一億円にすぎませんが、土地等の補償百七十一億は、当然米国が支払うべきものであり、沖縄を含む九千万の日本国民の強い要望である祖国復帰、四原則の貫徹が実現いたしますならばこのような姑息的な措置はとらなくても済むはずであります。政府は、施政権の返還に努力する、四原則貫徹を申し入れると申しておりますけれども、裏では自民党としてレムニッツアー声明の線で解決に努力し、この十一億の支出も、その緩和された軍用地の新規接収一括払いに協力せんとしつつあるかのごとくであります。わが党は、強い国民運動によって四原則の貫徹、施政権の返還を要求し、米国の補償見舞の本見舞金も小笠原並みに計算をいたしますならば、少くとも二十五億円は支出すべきである。退職吏員の恩給四千万円、徴用船舶一億、郵便貯金、簡保等六千五百万円、引揚者更生資金二億七千万円等は当然支出されるべきであり、十一億でなくて、三十億を支出すべきが当然だと考えるのであります。本土よりの交通も自由ならず、問題の解決に祖国の協力を切望しております沖繩八十万県民の切望に対して、政府、自民党の対米協力の態度には私ども賛成するわけには参りません。補正予算は不十分であります。  以上六点の理由をあげて、補正予算五案の反対討論といたす次第であります。(拍手)
  97. 迫水久常

    ○迫水久常君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和三十一年度第一次、第二次予算補正に対しまして、賛成の意を表明するものであります。  御承知のごとく、昭和三十一年度における租税収入は異常なる増加を見るに至りました。今回の二次にわたる予算補正は、この増収をもって本予算作成後に生じた事由のため、当面必要とされる最小限度の所要額に充てるとともに、将来にわたり最も有効と認められる目的に充当いたさんとするものでありまして、各般の経済情勢に即応したきわめて弾力的な財政政策であるということができるのであります。すなわち、一般会計から三百億円を産業投資特別会計に繰り入れ、三十二年度及び三十三年度の財政投融資の原資に充てておりまするのは、国民経済の発展、産業基盤の拡大強化に資せんとするものでありまして、わが党の積極政策に全く合致するものと思うのであります。この繰り入れについては財政法違反であるとの意見もありましたが、これは財政法の規定に従って特別立法を行なっておりますし、補正予算において資金を置いたことも前に幾多の事例のあることで、財政法に何ら抵触する措置ではないのであります。むしろ本年度のごとく、異例なる経済好況により発生いたしました巨額の自然増収を、三十三年度を待たないで、三十二年度から使っていくことの方が財政計画に安定性を付与するゆえんであると思うのであります。ただ食管会計の赤字補てんにつきましては、政府案は三十年度の決算確定分三十四億円をこの第二次補正で措置し、三十一年度の赤字については決算の確定を待って措置する方針であるのに対しまして、社会党案は過去の赤字全部について直ちに処理せよというようであります。これは食管会計の過去の赤字全部を直接消費者に負担させるものではないかとの疑いからと思われますが、そのようなことば絶対にないことはしばしば大蔵大臣からも答弁いたしておるところで明らかであります。決算が確定したならば、これを補てんすることはもとよりであります。  その他いろいろの疑点は、質疑応答の過程において岸内閣総理大臣、池田大蔵大臣、その他関係閣僚の明快な答弁によってすべて解明され、私どもはこれを了承するものであります。  要するに本補正予算は全く時宜に適した措置であるということができるのでありまして、私はその意味において第一次、第二次予算補正に対しまして賛成の意を表明するものであります。
  98. 森八三一

    ○森八三一君 私は、ただいま議題となりました昭和三十一年度一般会計予算補正第一号外四案につきまして、緑風会を代表して以下申し述べまする意見を付し、政府の格段の留意と努力を期待し原案に賛成の意を表するものであります。  まず、補正第一号についてであります。本案は、世界的な好況に伴い、わが国産業が予期以上の驚くべき進展を示し、経済界も未曾有の活況を呈し、昭和三十一年度の歳入におきまして一千億円余の自然増収を見込み得ることとなりましたので、これが自然増収を財源として、昭和三十一年度予算に四百億円を追加補正し、うち百億は地方交付金に、三百億は財政投資特別会計に繰り入れんとするものであります。  元来、わが国財政制度は単年度制を採用して参っておるのでありまして、財政法第十二条には、各会計年度における経費はその年度の歳入をもってこれを支弁すべきことを明確に規定いたしております。さらに、また追加予算は、原則として緊急必要やむを得ない経費を所要する場合においてのみ計上さるべきであると思うのであります。しかるに産業投資特別会計に繰り入れまする三百億円は、その半分を昭和三十二年度に、残額百五十億円を昭和三十三年度以降に使用せんとするものでありまして、これが措置のため別途所要の法律案を提出されておりますのと、財政法に資金の保有をなし得るの規定等もありますので、法律的、形式的には必ずしも違法の措置と申すべきではないかとは思いますが、前述いたしました趣旨よりいたしまして必ずしも妥当なものとは申しがたいように思われます。ことに昭和三十三年度以降に使用することを予定いたしております百五十億円につきましては、財政法第六条の原則に従って、決算確定を待って昭和三十三年度に措置いたしましても不都合を生ずるようなことはないと思うのでありまして、今回の措置が前例として、将来も当然のこととして行われませんよう、財政法の解釈なり、あるいは財政法の運用は、あくまで厳密にされますることを希望する次第であります。  次に、わが国産業経済の異常なる進展に即応し、さらに一段と飛躍的な発展を講じまするために、電力等基幹産業の拡充を講じますることも、きわめて困難な情勢に置かれておる住宅問題を解決することも、目下の最大の急務でありまして、政府が重点施策としてこれらの問題の解決に対処されんとする趣旨に対しましては全く同感であり、すみやかにこれが成果を期待するものでありまするが、産業投資特別会計を通じて住宅問題の解決をはからんとせられておりますることはいかがかと存じまする次第であります。すなわち、産業投資特別会計は、電力、石炭等基幹産業の発展を目途として設定されたものであることは申すまでもありません。住宅の建設も産業の発展に全然無関係とは申されないかとは存じますが、少くとも常識上は産業の範囲を逸脱しておると解すべきでありましょう。存在する幾多の特別会計は、いずれも一定の限られた目的をもって設けられておりまする以上、時の政府の都合によって拡大解釈がとられて運用せられることになりますれば、ついには収拾すべからざる混乱を生ずる危険を感ずるのでありまして、特別会計の運用につきましては、その会計本来の使命を厳密に理解し善処されんことを要望するものであります。  次に、補正第二号についてであります。食管特別会計の昭和三十年度における赤字三十余億円は、本案によりまして一般会計から補給することになっております。現に予見されておる昭和三十一年度赤字見込額百六十億円につきましては、決算確定を待ってこれが処理を行うということであります。特別会計の規定に照しまして一応了承されるところではありまするが、さきに石橋内閣におきましては、食管特別会計の赤字対策として消費者米価の値上げを決定されたのでありまするが、その後諸般の情勢よりして消費者米価値上げの閣議決定を白紙に還元し、調査会を設けて食管特別会計の全体にわたって調査を行い、その結論を参考として赤字処理の根本的方策を樹立することになりました。もちろん本調査会の運営に何らの作為があるものとは存じませんが、世上前後のいきさつからいたしまして、消費者米価値上げを理論づけようとするためのものであるというような危惧がないわけでもありません。政府はわが国経済の樹立とインフレ回避という至上命題に立って、食糧自給体制の確立に対処しつつ、生産者、消費者双方の米価に遺憾なきを期せられたいのであります。  次に、沖縄県民に対する土地補償に充てられる十億円であります。本来米国政府責任において処理さるべきでありますが、諸般の手続上急速に解決し得ない現状にかんがみ、とりあえず見舞金として立てかえを行うものでありまして、きわめて適切な措置と存じますが、本件解決上十億円が補償に対する基準であるかのごとき印象を与えて、合理的な解決に対する障害となるといたしますれば、親切がかえってあだになるのでありまして、かくのごとき遺憾な結果が生まれませぬよう留意を払うとともに、本件の具体的解決に対し日本政府としてなし得る最善を尽して、同胞沖縄県民関係者に対して努力せられますことを特に希望する次第であります。  以上四点を申し述べ、重ねて原案に賛成の意を表し、私の討論を終ります。(拍手)
  99. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 以上をもちまして討論の通告は全部終了いたしました。  これより昭和三十一年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十一年度特別会計予算補正(特第一号)、昭和三十一年度一般会計予算補正(第2号)、昭和三十一年度特別会計予算補正(特第2号)、昭和三十一年度政府関係機関予算補正(機第1号)の採決を行います。  右各案に賛成の諸君の起立をお願いいたします。   〔賛成者起立〕
  100. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 賛成者多数。よって右各案は可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容及び報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願います。  ただいま賛成された方々は順次御署名を願いたいと思います。   多数意見者署名     迫水 久常  左藤 義詮     安井  謙  吉田 萬次     森 八三一  青柳 秀夫     石坂 豊一  泉山 三六     木村篤太郎  小林 武治     小山邦太郎  佐藤清一郎     柴田  榮  新谷寅三郎     関根 久藏  高橋新太郎     土田國太郎  苫米地英俊     成田 一郎  野村吉三郎     野本 品吉  林田 正治     武藤 常介  加賀山之雄     梶原 茂嘉  田村 文吉     豊田雅孝
  101. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十四分散会