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1957-03-20 第26回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十日(水曜日)    午前十時五十二分開会     —————————————   委員異動 三月十九日委員青木一男辞任につ き、その補欠として青柳秀夫君を議長 において指名した。 本日委員高野一夫辞任につき、その 補欠として佐藤清一郎君を議長におい て指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            中田 吉雄君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            泉山 三六君            木村篤太郎君            小林 武治君            小山邦太郎君            新谷寅三郎君            関根 久藏君            佐藤清一郎君            柴田  榮君            土田國太郎君            苫米地英俊君            成田 一郎君            野本 品吉君            林田 正治君            一松 定吉君            前田佳都男君            内村 清次君            海野 三朗君            岡田 宗司君            栗山 良夫君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            中村 正雄君            羽生 三七君            山田 節男君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 神田  博君    農 林 大 臣 井出一太郎君    通商産業大臣  水田三喜男君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    国 務 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 宇田 耕一君    国 務 大 臣 田中伊三郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    法制局第一部長 龜岡 康夫君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君    防衛政務次官  高橋  等君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    経済企画庁調整    部長      小出 榮一君    経済企画庁計画    部長      大來佐武郎君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務参事官   法眼 晋作君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省理財局長 河野 通一君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    大蔵省為替局長 石田  正君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    厚生省保険局長 高田 正巳君    厚生省引揚援護    局長      田邊 繁雄君    食糧庁長官   小倉 武一君    通商産業大臣官    房長      松尾 金藏君    通商産業省公益    事業局長    岩武 照彦君    運輸省航空局長 林   坦君    郵政政務次官  伊東 岩男君    郵政省貯金局長 加藤 桂一君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十一年度一般会計予算補正  (第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十一年度特別会計予算補正  (特第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十一年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十一年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十一年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出、衆議院  送付)     —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員異動について申し上げます。  三月十九日青木一男君が辞任され、その補欠として青柳秀夫君が指名されました。  以上御報告申し上げます。     —————————————
  3. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより昭和三十一年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十一年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和三十一年度一般会計予算補正(第2号)  昭和三十一年度特別会計予算補正(特第2号)  昭和三十一年度政府関係機関予算補正(機第一号)を一括議題といたします。  まず、お諮りいたします。右各案審査のため、参考人として本日日本銀行総裁山際正道君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  5. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それでは昨日に引き続き、これから質疑を続行いたします。
  6. 田村文吉

    田村文吉君 私はきわめて簡単な問題について一つお尋ねをいたしたいのでございますが、それは一昨年、昨年にかけ、また本年の春にかけまして、日本としましては未曽有の好景気を現出いたしましたようなわけでございまするが、そのよって来たる原因をきわめてみますると、世界の各国が非常に景気がよかったということに刺激されたことが一つ、国内におきまして農産物が非常に豊作で余計とれたこと、この二つのことが大体大きな原因だろうと考えておるのでありまするが、そこでぜひこういう少くも食糧だけに対しては十分豊作状況を続けるようなことを望ましいと考えておったのでございまするが、この問題につきましては、私農林大臣にまずお伺いいたしたいのでありまするが、今年は十何年ぶりに雪が多いんであります、多雪なんであります。それで十二月から雪が降り出しまして、一月は小康を得たのでありまするが、二月、三月に至りまして非常な大雪に相なって参りまして、そのために東北地方では水力が枯渇して電気が出ないとか、いろいろの障害が出ておりまするけれども、私の一番心配いたしておりまするのは、ことしのこの大雪というものは今年の作柄にどのぐらい影響するであろうかということを実は非常に心配しておるのであります。で、専門家方々にいろいろ伺いますと、あまりはっきりした御認識をお持ちになっておらぬようでありますが、必ずしも多雪の年が凶作であったとは言えないと、こういうことも言われる方もあるのでございまするが、私の過去の経験から申しますると、大体冬非常に雪の多かったような年は、その夏も温度が低い場合が多いんでありまするし、かりに温度が低くなくても、いわゆる雪の消える消雪時期が大てい十五日から二十日間おくれます。おくれますというと農作物には非常な影響を与えてきたということが、過去の私の体験なんであります。私はもとより農業専門家でございませんから、そういうことについておこがましくお訴え申したり、お質問することは実は恐縮なんでありまするけれども、ただ実際自分でそういう体験を持ちます上から、農林大臣に、私の心配杞憂であればけっこうなんでありますけれどもお尋ねする次第なんであります。  京都大学榎本教授が発表されたところによりまするというと、摂氏の二十五度まで八月の水温がある場合はまだよろしいが、二十五度が限界線であって、摂氏の二十五度を下りますということになりますと害が出る、二十二度以下になりますると、その害が相当に大きな害となりまして、実る、いわゆる稔実が不十分である、こういうことを言っておられます。で、なお溝口——もと参議院議員でおられました溝口博士が、二十三年の東北におきまするところの等水温線と申しますか、つまり水温度を平均して同じところに線を描いた等水温線と、収獲量の等収量線とを比較されたのがあるのでございますが、八月における気温が十七度である場合と三十度である場合との差によりまして、収獲が三分の一に、つまり水温の低い場合には減っておる、こういうようなことを発表されております。従いまして寒いところでは一石しかとれないが、水温の暖かいところでは三石とれておる、こういうような発表をされておるのでございます。御承知のように積寒地帯で収獲しておりまする米の量というのは、大体三千万石近くもあると思います。そこでもしこれが一割減りまするというと三百万、二割減ると六百万、こういう数字が出まして、これは国際、いわゆる貿易じりの上からいっても非常に大きな関係が出て参りまするので、この問題はよほど慎重にいかなければならぬ問題じゃなかろうか。いよいよ八月になって凶作であるというようなことを言い立ててから、各地から毎年大蔵省に向って何とかこの災害補助の問題を訴えたりするような場合が毎年あるのでありまするが、こういうふうに私ども自分体験ではありまするが、また学者によってもそういうことを言っておる人があるのと、水温の問題は確実にそういう影響があるということは学者が立証しておるのでありまするので、私ははなはだ不祥の言をなすようでありまするけれども、今年はあるいは九〇%はいわゆる凶作になる可能性積寒地帯にはあるんじゃないか、こういう心配を私はしておるのであります。もしさようなことに相なっては非常に問題でございまするので、今からこういうものに対する対策を立てておいたらどうか。幸いに一〇〇%の中の一〇%がそういうことにならないで、異常に気温が夏上って雪の消え方も非常に今までに例のない、早く消えるというようなことが起ってくれば、これは、私のそういう心配杞憂であったということで済むでありましょうけれども、おそらくさようなことはあり得ないと考えますので、たとえば撒土消雪をやるか、あるいは品種の選択をしてみるとか、また今行われておりまする温床苗代の問題であるとか、あるいはさっきも言われた循環式の灌漑法とか、また寒いときには必ずつくであろういもち病、こういうものに対する農薬の手配をするとかいうような準備をなされることが必要なんじゃなかろうか、こういうふうに考えておりまするので、無論農林大臣はお考えになっていることは考えるのでございまするが、私は、もしこれが万一凶作状況にもなりまするというと、その地方民の困惑は申すに及ばずでありまするが、国際収支の上からいって、日本経済に非常な大きな影響を与える、こういうことを考えますときに、重大な問題であると考えますので、緊急な意味で、農林大臣にまず第一にお尋ねをいたしたいのであります。
  7. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) お答えいたします。東北北陸地方におきまして、本年特に降雪が多かったということは御指摘通りでございまして、私ども田村委員の御発言一つ警鐘というような意味に承わりまして、遺憾なく対処をいたしたいと考えております。従来この地方が冷害によりまする影響を非常に強く受けますることは御指摘通りでありまするし、同時にまたこの東北北陸地帯日本米作の半ば近い部分を受け持っておるということも、きわめて重要視しなければならない点でございます。二年続き豊作経験いたしたのでありますが、気象庁等における従来の統計から見ましても、なかなか三年続き豊作は、これは記録にもきわめてまれのようでございます。従いまして今から心して試験研究の面におきまする動員態勢をとる、これを技術指導に結びつけまして、今から配慮いたしたいと思っておるのであります。それで、雪のために麦類であるとか、あるいは菜種などにも雪腐れ病などというものが発生いたすのであります。これに対しまする手当等も十分に考え、また稲につきましては、御発言の中にもありましたように、これは品種を選定する、危険分散というような意味で、今まで多収穫を目途とするおくてを余計作りたがるのでありますが、昨年北海道の例から徴しましても、危険分散配意をいたしました農家は、あの悪い気象条件の中にも、とにかく平年作に近いところで食いとめておる事例があるのでございます。だからそういう意味で、品種の選定をいたす、あるいは保温折衷苗代普及が近ごろは非常に著しくなって参りましたので、そういう意味から、やむを得ず健苗育成、健全なる苗を育成するという方面に力を注ぎたいと考えております。なおまた、いもち病心配等もございまするので、これに対しましては、農薬備蓄施設がだいぶ行き渡って参りましたので、一朝事ありまする場合には、その備蓄農薬というものがすぐに発動できる態勢はとれておるのであります。いずれにいたしましても、農林省としましては、都道府県に対しまして十分連絡指導をいたし、これが農家に浸透して参る施策を万全にとりたいと考えているわけでございます。  まあこれらは大体予防的な心がまえでございまするが、従来の例もございまして、非常な凶作という場合に対処する道は、これはまた別途に講じなければなりませんが、それを未然に防ぐべく、できるならば一つここに三年続き豊作という記録を打ち立て、戦後ずっと研さん努力をして参りました農業技術成果というものが、今年あたりはその試金石ともいうべき年ではなかろうか、こういうようなつもりで万遺憾なきを期したい、かように考えている次第でございます。
  8. 田村文吉

    田村文吉君 具体的な方法についてある程度のお話があったのでありますが、私はさらに、一つ具体的な問題としてお取り上げいただいたらどうかと考えておりますることは、こういう年は、警鐘を鳴らすという意味からいたしましても、この三月中とかあるいは四月すぐ初めでもよろしゅうございますが、やはり各県の農事試験場専門家、エキスパートをお集めになり、あるいはまた篤農家と言うと語弊がありまするが、そういうことについて長年の経験を持っている人が各地におられますので、やはりそういう人をお集めになりまして、これに対する万全の策をお講じになる必要があるのじゃないか、こういうふうに考えております。これは農林省だけの特段の計らいだけでできることでありますから、簡単にできると私は考えているのであります。が、そのくらい私は過去においてあまりに寒冷というような問題について、あるいは雪という問題については、考え方がどうも粗雑であったのじゃないだろうか、だんだん科学が進歩して参りますると、またそういう科学と同時に経験というものを生かして、一つある程度の論をお立てになる、立論なさる。同時に今お話がちょっとありましたのですが、いかにして農村にこれを徹底させるか、これが私は非常にむずかしい問題だろうと思うのであります。ただおざなりにやったのではいかんので、一つ大々的に各農事試験場長とか、そういう者を集めまして、この多雪に対する今年の作柄に対する準備はどうするかということについて、一つはっきりとした会合をお持ちになるというようなことが、必要じゃなかろうかと考えております。  それからこれは実は造林関係で、もうすでに今年の大雪で枝折れ等があり、苗木が倒れたり非常ないたみをしているのであります。これはすでに起った問題でありまするが、こういうことも今後の造林政策の上からいったら、多雪地帯における造林については、よほどお考えいただかないと、ことに新植の場合はよろしいのですが、これを撫育するという点からいきまして、そういう点について非常に雪の多い多雪地帯と、そうでないところに対するお考えが、まだはっきりとできておらんように私は存じております。こういう問題につきましても、農林大臣、どうお考えですか。今後こういう雪の多いところに対しては、造林の助成、補助に対して、特段のお考えをなさる必要があるのじゃないか。もう造林量あるいは伐採量を、今後ふやしてゆく植林の大きな目的から考えていって、そういう点までお考えになっておく必要があるのじゃないか、こう考えまして、以上の二点について重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  9. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 前段の農業技術の問題でございまするが、これは農林省に昨年以来機構を拡充いたしまして、農林水産技術会というものがございまするが、これを中心といたしまして、それを、これはまあ指導研究でございますが、これと実際面を担当いたしまする改良普及員というシステムとを密接に関連させまして、遺憾なき配慮をいたしたいと考えております。御指摘のような農事試験場長会は、篤農家体験を生かす、これらももとより取り入れて参りたい所存でございます。さらに多雪地帯における造林の問題をお取り上げになられまして、たしかに雪深い地方造林についても困難な条件が横たわっておるわけでございます。これらにつきましては造林補助政策を浸透いたしまする場合に、やはり特段配慮をいたすべきであろう、そういう方向へ持って参る所存でございまするし、さらにこの雪によるところの林木の損傷というふうなものについては、あるいは一つの損害保険的なものも考えなくてはいかぬのではないかというようなつもりで目下考究をさせておる次第でございます。
  10. 田村文吉

    田村文吉君 先刻ちょっと申し上げましたように、災害は起ってから初めて大蔵大臣一つ配慮を願うということになりがちなんであります。そこでこういうような未然一つ災害を防ぐようなことについての大蔵省の支出につきましては、あるいは予備金で済む場合もあるかもしれませんが、そういう点についての、大蔵大臣としてのお考えを、まあ災害が起ったらやるんだ、災害がない場合にはそういうようなことが八分通りわかっておっても、そこまでは手が回らぬということでは私いかぬと考えるのでありますが、大蔵大臣はどうお考えでありましょうか。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 米作のいかんが日本経済ことに国際対策に非常な影響のあることでございまするから、農林省その他関係省十分連絡をとりまして、予算の範囲内で、またそれでむずかしい場合には予備費等、あらゆる方法を講じていきたいと思います。
  12. 田村文吉

    田村文吉君 最後総理大臣にちょっとお伺いいたしたいんですが、私しろうとながらで、今のいろいろの日本各省における技術研究、そういうような問題を総合的に拝見して参りまして、その間にどうも脈絡のないようなうらみが多いのであります。ことに根本的の観念からいたしますと、学問的に勉強する、研究するというような考え方と、私どものように何とかして、あるいはことしは非常な凶作になるんじゃないか、それに対する学問的の研究をどうするか、こういうようなことで、ある政治目的を持って問題の研究に重点的に力を入れるというようなことの考え方が、むろん各省の有能な方々はそういうことをお考えになっているかしりませんけれども、これを一つ統合的にやって下さるのは、あるいは企画庁でございますかどうかしりませんが、こういう問題について欠けている点があるんじゃないか、こういう心配をしてるんです。たとえば農林省内には今御説明がありましたような農林漁業に関する総合的な技術研究されるなにができておる。そこで気象庁に参りますると、今の農業気象に関する係りの方がおいでになる、まあそれぞれの専門家でいられまするが、さて私ども心配するようなことについてのデータをいただこうということになると、なかなかちょっと出てこないのですね。それでこういう点が、ひとり官だけ言うのではありません。民間でもラボラタリィというものはどこでもございますけれども、ややもすると学校の延長みたいになるきらいが多いのです。技術というものが生きてこない、莫大な費用を使って有能な方をお集めになりながら、国政に稗益するところは非常に少い、こういうことが常に官でも民でもそういう弊害が多いのです。官としては範を示して、そういう点についての何か御構想を一つお願いをしたい、こういうふうに考えるのでありますが、そのお考え方についてはどういうふうになさるとしましても、今私の申し上げているようなことを御痛感になりますならば、一つ何か手を打っていただきたい、こういうふうに考えるのですが。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来政府に置かれておりますいろんな科学技術に関する試験研究機関等試験研究というものは、どうも連絡が十分でない、これが総合的な機能を発揮しておらないということは長く言われておることでございまして、すでに科学技術庁もできまして、科学技術の大いに振興をやるという国の政策の根本が示されております。私も過去において農商務省商工省にありまして、今お話のようなそぞれの役所にある試験研究機関というものが、十分実際方面において要望されておることに即応したような研究試験が行われずして、ややともすると、博士論文を作るための研究をしておるというような非難を受けるような、あまりにも純学問的で、実際から離れているような傾向も従来見受けておるのであります。しかし政府がこれらの機関を置いているということは、直接産業関係しあるいは経済面から見て、これの応用であるとか、あるいは実際面に触れていろんな研究試験をするというところに、これらの研究機関の主たる目的があるわけでありまして、最高学府における純学問的の研究とか、試験とかいうものと、おのずから政府のこれらの機関の使命というものは違っております。この点を十分にやはり担当のお役所におきましてはよく把握して、そうして試験研究をそういう方向指導していく必要があるし、また同時にこれらの間の連絡をとって、総合的な見地から成果をあげていくようにしなければならぬということは、私も田村さんのお考えと全然同一の考えを持っており、また私自身もある点に触れてそういう実際の体験を持っておりますので、なおこの上とも御趣旨の線に沿うて、これらの機関が十分にその機能を発揮し、また現実の産業界経済界の要望、また政治的な目的を十分に達するように特に関係方面とも話し合いをいたしまして、努力をいたすようにいたしたいと思います。
  14. 田村文吉

    田村文吉君 ありがとうございました。
  15. 千田正

    千田正君 まず総理大臣にお伺いいたしたいのでありますが、総理大臣外務大臣としまして、表向きの外交としましては、すでに国際連合ヒノキ舞台において一応日本自主外交の窓をあけておりますが、逆にその裏の経済外交、そういう問題に対しての実際の総理並びに外相としての方針を私はまだ承わっておらないのです。特に問題となって参りましたのは、昨日の夕刊各紙におきまして、ソ連の第一書記のフルシチョフ氏と畑中政春氏との会見におきまして、日ソ漁業が行詰ってきたこの段階においては、科学的な基礎の問題ではなく、すでにそういう問題を置き去りにされまして、逆に政治的なかけ引き、しかも貿易と相関連してこの問題を解決しようじゃないかというようなことが各新聞に出ておりますが、こうなってくるというと、農林大臣が懸命になって日ソ漁業委員会において、八−十の漁獲量の問題、それを裏付けするところのいわゆる科学的基礎、そういうような学問的な、実際問題を離れて、もう政治的なかけ引きの問題に追い込まれてきたという点をわれわれは深く考えるのであります。これは当初から私は非常に杞憂を持っておって、最後にはそうしたかけ引き的な問題がくるのじゃないか、かような杞憂を持っておったのが、それが当ったような感じさえするのであります。日ソ漁業交渉が行き詰って、最後段階としまして貿易問題と相関連して、この問題を解決しようじゃないかというような空気がソ連側の一つの方針として出てきた、こういうことは今度の岸内閣としましても、大きな外交問題として考えなくちゃならないと思いますし、先般総理はテボシャン・ソ連大使とお会いになられて、約一時間半にわたりいろいろな御交渉があったようでありますが、その間におきまして、  この行き詰った日ソ漁業問題の解決に、先方側から貿易という問題をかけ引き一つの議題として出されておるのかどうか。これは今後におけるところの日ソ漁業に大きな転換を意味するものでありますから、総理としましての、また兼外相としての御所信を承わりたいと思います。
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私とテボォシャン大使との会談の内容につきましては、昨日この席上でお答えを申しておきましたが、今御指摘のような漁業問題の解決と、貿易、通商の問題を関連せしめてこれを解決しようという提案は、その当時何にも私に提案された事実はございませんし、また一部の新聞に報道しておりましたように、私の方からそういう提案をしたがごとき新聞の報道も見受けるのでありますが、そういう事実も全然ございませんし、私は昨日も申し上げた通り、またかねて申し上げました通り、日ソの関係一つ一つ友好関係を増進していく意味において問題を解決していく。漁業問題は今千田君がお話しの通り、これはきわめて科学的なあるいは統計的な専門家によって十分検討をされて、その結論を出すべきものでありまして、その委員会におけるそういう論議なり、研究なり、意見の交換というものは十分尽されております。しかしその結論においては、両者が一致しない状況にありますので、私はさらに国交正常化した第一歩のこの交渉において、将来の友好親善関係を増進する上からいうと、この問題をわれわれの主張しておるような点において、政治的にソ連政府としては大局的に考慮をしてもらわなければ、今の状態ではとうていわれわれは漁業問題を妥結することができないし、またそれができないということであれば、日ソ国交の増進の将来にとって、非常に私は遺憾な事態になると思うから、十分そういう点を大局的に考慮してもらいたいということを申し入れただけでありまして、テボシャン大使もそのことをよく了承して、本国政府へ申し送るということを約束して帰ったわけでありまして、この席上において貿易協定云々というようなことは、どちらからもそういうことは出ておりません。
  17. 千田正

    千田正君 重ねてお尋ねいたしますが、それで総理のお考えがよくわかりましたが、この問題が行き詰ってきましたとしましても、日ソ漁業問題については、あくまで両国の従来の条約あるいは準備会談の間になされた一つの問題を根本的に掘り下げてその解決に当る、貿易その他の問題はこれは別個の問題として考える、別個の問題としてあくまでこの問題とは関係なく、関連せずに一つの方針としてやってゆく、こういうふうに了承してよろしうございますか。
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その通りであります。
  19. 千田正

    千田正君 日ソ漁業の問題の、この行き詰りの科学的な問題について、これは農林大臣にお伺いしておきますが、ただいまのようなことであれば、行き詰ったといいましても、なお、科学的基礎の問題につきましては、相当日本側としても研究もし、また向う側からもいろいろな反省なりあるいは内省なりして考えてもらう点が相当あると思う。特に私はこの際主張したいと思いますのは、この前、鳩山内閣のときにもこの問題は私は予算委員会で特に慎重にお答えをいただきたいと思って伺ったのでありますが、はっきりしない。それが御承知の通り、今度の日ソ漁業問題の一つ基礎的な問題としまして、ソ連側から提出されましたところの接岸四十海里、さけ、ます漁業に関しては接岸四十海里——いわゆる国際法的な考えからいいますというと、大体三海里説、あるいは広く考えても十二海里説が流布されている程度で、現実においては、領海は大体三海里というのが一つの通念になっている。ところがこのたびの漁業問題に関しては、向う側はいわゆる距岸四十海里説を主張して曲げない。これがこのまま約束され、あるいは六年間におけるところの協定期間だけはそれだけの四十海里説を認めるとしましても、将来においてこれは一つのソ連の領海における通念になるおそれがある。この問題につきましては、今までの日ソ漁業委員会においては議題にならなかったかどうか、ならないとするならば、将来におきましての問題としまして、この問題を取り上げて十分検討する必要があるのじゃないかと私は思いますが、農林大臣としてはどういうお考えになっおられますか、お答え願いたいと思います。
  20. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) ただいまの距岸四十海里という問題は、公海における漁業の制約という意味から申しまして、御説明のように日本側としてはきわめて重大な問題でございます。従ってこれらの点についても科学的合理的な基礎に立った話し合いというものが当然なされなければならないわけでございます。今回の交渉に当りましても、その問題ももちろん話題となるべきものでございますが、最初漁獲量の問題で日子を費し、引き続き、にしん、かにというふうな問題に入っておりますので、それに話題が触れますのは、これからということに相なると予定をいたしております。   〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕
  21. 千田正

    千田正君 ただいま総理大臣から、経済外交の一環としての対ソ問題に対しての貿易関係は、日ソ漁業とは切り離してやっていく。さらに私は、岸総理はかつて経済閣僚として歴代の内閣において十分に手腕をふるわれておりまするから、特にお伺いしたいのでありまするが、経済外交としての重点をどこに置かれるか、いわゆる岸内閣の一つの方針として、一は国連においての純正なる政治外交をし、一方においては実際的な経済外交としての具体的重点をいずこに置くのか。たとえば中南米に置くのか、あるいは東南アジアか、あるいはソ連、中共を含むところのアジア大陸に向って行うのか、あるいはもしくは、ただいまネックになっておりますところの対米外交の裏づけの一つとしまして、アメリカ国内におけるところの、日本貨物の輸入に対するあらゆる制限を行おうとしておるところのアメリカに対する新たなる経済外交の手を打つのか、この点をいずれに岸内閣としては経済外交の重点を置かれるかという大綱を一つお示し願いたいと思います。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今日、また将来の日本の立場を考えてみまするときに、いわゆる経済外交の推進という、この私が申し述べておることは、ただ単に東南アジアとかあるいは中南米とか、あるいはアメリカということに限定せずに、全体に向ってこの問題は考えて参りたいと思います。ただ国々、地方々々によりまして、その主題となり、また経済外交のやり方なり、その内容等につきましては、それぞれ異なっておると思います。たとえば中南米方面におきましては、われわれの経済外交の何から申しまして、もちろん、貿易の増進ということも重大な問題でありますが、特に移民問題というようなものは非常に大きく取り上げて参らなければならないし、これを推進していく必要がある。また、アメリカとの関係におきましては、今お話のように・主として貿易関係並びに将来の日本における技術的な提携や、その他日本各地における産業の発展の上にアメリカの技術を導入するとか、いろいろな提携するという問題もありましょうが、アメリカに向っての日本の輸出品のいろいろな制限であるとか、あるいは輸出についてのいろいろな問題というものを解決していくことが重要な問題となろうと思います。また東南アジア方面につきましては、主として、しばしば申し上げておりますように、これらの国の政治的独立を裏づけるような経済計画、また経済の繁栄ということをこれらの国々が望んでおり、努力しておりますから、これにいろいろな意味から協力していくということが主題になると思います。私は特にどこそこの地域に主眼点を置くということではなくして、一般的に今申したような各種の事情を考慮して、その国に適した、また、最も緊要な方向に対応してわが方の経済外交を進めていくということが必要だろう、かように考えます。
  23. 千田正

    千田正君 これは総理あるいは大蔵大臣か、どちらでもよろしいから、お答え願いたいのでありますが、たとえば国際収支のバランスを非常に今度の予算においては真剣に考えておりますが、一つの、国際収支においてある程度減少するのじゃないかという点を私は危惧するのであります。それは、たとえば日本貿易相手国との間の特殊関係から生じてくるところの一つの問題として、いわゆる清算勘定協定を廃止して現金決済の方向に入ってきた、そういう国は、たとえば西ドイツであるとかイタリアであるとか、スエーデンであるとか、あるいは将来ブラジルあるいはオランダもその範ちゅうに入ってくるだろう。もう一つは対フィリピンの貿易にしましても、あるいはインドネシアにしろ、あるいはその他の新しい、ビルマ、ヴェトナム等に対するところの貿易にしましても、この賠償問題を中心として賠償にからむところの一つ貿易としての収支が、むしろ賠償問題そのものの決済が貿易の収支に食い込んでくるのではないか。そういう意味においては、収入の面からいいましては減少するおそれがあるのじゃないかと思いますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ビルマあるいはフィリピンの方との賠償交渉につきましても、常にそういう点を留意いたしまして、賠償によって一般の貿易が食い込まれないようにということは、相互に了解してやっておるのであります。
  25. 千田正

    千田正君 清算勘定協定から現金決済に変えたために、私はある程度収入が減るのじゃないかと思いますが、大蔵大臣はこの点はいかがですか。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 清算勘定を持続していくかどうかということは、非常に問題があるのでございますが、やはり今となりましては、現金決済の方がとるべき道だと考えておりますので、だんだんそういう方向に向っていきたいと思います。
  27. 千田正

    千田正君 総理にもう一点伺いますが、今度まことにお気の毒で、わが参議院におきましても、このフィリピンのマグサイサイ大統領の奇禍に対して弔意を表するものでありますが、マグサイサイ大統領がなくなられたあとのフイリピンというものは、他国のことかだらよくわかりませんけれども、新聞紙や、あるいはラジオによって報ずるところによれば、今秋の大統領改選期を中心として、あるいはフイリピンの国内事情は相当変るのじゃないか。同時に国際事情も転換するのじゃないかといういろいろな論評を加えております。マグサイサイ大統領のなくなられた後におけるフイリピンというものに対する日本側としての、日比貿易並びに外交に関してはどういうふうなお考えを持っておられますか、その点を伺いたいと思います。
  28. 岸信介

    国務大臣岸信介君) マグサイサイ大統領の今回の飛行機事故による逝去に対しましては、同大統領が日本に対して非常な深い理解と好意を持ち、日比間の懸案であった賠償問題を解決し、国交正常化を行われたこの大統領がなくなったということは、ほんとうにわれわれも心から哀悼にたえないところでありますが、しかし日本との関係につきましては、すでに同大統領によって基礎的の国交正常化の問題や、賠償問題等が解決をされて、今や実施に入っております。そうして、その実施もきわめて順調にいっている現状から見て、日比間の関係が、今後大統領の死によって変化を来たすということは私は絶対にないと、かように信じております。またマグサイサイ大統領が、非常なフイリピン政界において偉大な存在であったために、それがああいった不慮の死をとげられたということが、おそらくフイリピンの政界に非常な大きな影響を与えておることも想像できますけれども、私としては、やはりフィリピン国民は、マグサイサイ大統領に対して国をあげて哀悼の意を表しておるようでありますし、従ってそのマグサイサイ大統領の遺志を継いでこれを前進させることに、フィリピン国民はおそらく全力をあげられることであろうと、かように考えております。従って私としては、この間に非常に大きな変動があるとは今日において考えておりません。
  29. 千田正

    千田正君 先般も総理大臣からお話がありましたが、テボシャン大使とお会いになったときに、ソ連に残留しておるところの生存者が七百九十三名、その他の行方不明という人たちに対しての調査はまだ不十分でありますけれども、これは非常に大きな問題でありまして、残っておるところの留守家族としましては、先般も申し上げたように焦慮にたえない。これは厚生大臣にも申し上げてお伺いするのですが、今度の第二次補正予算の内容を見まするというと、軍人遺家族に対してはある程度恩給のベースを上げておる、あるいは追加しておる。ところが、こうした留守家族の手当等に対しましては、国内におけるところのそうした処遇に対しては、ちっともその上においては考えておられないようでありますが、この点はどういうふうにやるつもりでありますか。これは厚生大臣の方から大蔵省に要求されておったのか、あるいは全然これは考えられないで、軍人遺族の恩給その他だけが今度の第二次補正予算に組まれておるのか、その点をはっきりしていただきたいと思います。
  30. 神田博

    国務大臣(神田博君) 留守家族の待遇改善等については、政府内においても検討中でございます。それからただいまの厚生省予算で増額いたしましたのは、いつも恩給関係の方から流用をしておったのでございますが、その方が窮屈で流用できないということで、今度規定通り当方の予算に組み入れた、こういう事情でございます。
  31. 千田正

    千田正君 今の厚生大臣のお考えは、お考えになっておるというのですか、一体、実際にはどうするというお考えなのです。
  32. 神田博

    国務大臣(神田博君) これはいろいろ関連するところがございますものですから、総合的に検討を加えまして改善をいたしたい、こういうような趣旨でございます。
  33. 千田正

    千田正君 これはとりもなおさず、いわゆる行方不明者の家族というものは、ほとんどある、面はあきらめておる。言いかえれば、準遺族のようなものです。そういう問題に対してはそのまま投げやりにしておいて、ただここにおいては、軍人恩給が上るとか、遺家族の恩給がベース・アップするとかいうことは、これはちょっとひとしからざるものを私は憂うるのでありまして、この点ははっきりしておいてもらいたい。もう一つは、行方不明者、これはいつまでたっても……もう終戦後十二年たっている。もう早く死亡確認をしてもらいたい。そうすることによって、自分らの生活の態度も変えなければならぬし、あるいは帰るであろうという夫を待っていても、どうも帰れないとすれば、再婚の機会も考えなければならない。いろいろな家庭悲劇が今も続行されておるのであります。これに対して、一体死亡確認というような問題がいつごろ決定するのか。ソ連なり中国なり、あるいはその他の国国の報告がはっきりしないうちは死亡の確認ができないと、かように考えておるのか。ある程度の遺族の目安も立ったならば、そうしたあきらめの断定を下してやらなければ、真の温情ではないと思うのですが、その点はどうですか。
  34. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいまの千田委員お尋ね、まことにごもっともでございます。厚生省といたしましては、中国あるいはソ連等との外地につきましては、いろいろの手を尽して調査を進めております。さらに、まあ先般総理大臣がここでお答えもいたしたように、中共等について調査団を派遣するという場合において、なるたけ一つそういうような援助をしたいというような御答弁もございましたようですが、外国に対する調査につきましては、できるだけの手を打って参りたいと、考えております。なお、引揚者等の情報等も、内地におきまして調査いたしまして、できるだけ生死の確認を進めて参りたい、こういうふうに進めております。  そこで、なお生きておるのだが、帰る希望がないというようなのもございますので、こういう方面ももっとしっかりした調査を一ついたしまして、それぞれ手続の完結をいたしたい、こういう考えでございます。なお、未引揚の援護の関係は、昭和三十四年七月末で、御承知のように七カ年の期間になっておりますので、終了するわけでございます。そこでこの死亡確認を、いつが最終期かということになりますと、それまでに情報がないということが明らかになった者については、そのときが最終確認というようなふうに取り扱わなければならないのではないか、こういうふうな一応のめどはつけておりますが、なお一カ年余もございますので、この点につきましては特に一つ考えまして、調査を並行いたしますと同時に、その点も一つ考慮いたして参りたい。三十四年の八月には、何とかこれは八月以降には結論を出さなければならぬわけでございますので、取り急いでおるような実情でございます。
  35. 千田正

    千田正君 軍人恩給あるいは軍人遺家族あるいは引揚者、戦災者等に対しては一応の方針を立てておられますが、こうした留守家族の人たちに対する手当その他に対しては十分に考えていただきたいということを要望しておきます。  それで、これは総理大臣外務大臣としての首相にお伺いしたいのでありますが、昨年中国側から、いわゆる中共側から一時帰国の婦人が相当参りました。日本に帰国してくる、子供を連れて相当来たわけであります。日本に滞在して、そうして帰るという際において旅費あるいはその他について非常に不足して、非常な困難を来たした。日本側はかって日本人であるか、一応今は中共の婦人を、かっての日本人を迎えるにあまり国内におけるところの待遇はかんばしくないのじゃないかということを、中国側は、中共側は新聞その他で言うておるのでありますが、本年も相当数の一時帰国の婦人並びに子供が要請されるということを情報に聞いておりますので、こういう問題に対しては一応やはり考えてやる必要があるのではないか、この点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨年、今お話のような一時中共から帰国された日本婦人、子供等に対しまして、それの取扱いが十分温情をこめた何でなかったのじゃないかという御批判でありますが、私も当時自民党の幹事長として、その問題に多少関係をいたしまして、いろいろな関係団体等と連絡をしまして、できるだけの処置を講ずるというつもりで、いろいろな関係団体の方々とも連絡をとって、多少のお世話を申し上げたのでありますけれども、さらに本年、または今後におきましても、そういう意味でもって一時帰国するという、そうしてかつての祖国をたずねてくるという婦人等に対しましては、これはできるだけ滞在及び帰っていくことについてお世話することは、これは当然であろうと思います。関係の団体等とも十分連絡して、政府でもできるだけの便宜を供与するように努めていくべきである、かように考えております。
  37. 千田正

    千田正君 通産大臣にお伺いしたいのであります。それはスエズの例の問題から、船の航行が十分じゃないために、海上運賃が非常に値上りした。それに連なって石油原油その他の単価が非常に高くなった。ところが国内におけるところの油類の流通過程を見ますというと、すでに長い契約をしておる会社が大部分であるにもかかわらず、そういうような国際的な情勢を一つのチャンスとして、この業者の中の、しかも元売り会社等が価格を急につり上げておる。その結果、農業、漁業あるいはその他の産業の、ことに基礎産業に及ぼす影響というのは非常に大きい。あるいは交通に対しましても非常な値上りを来たすという、非常にインフレを助長する要素を相当はらんでおります。これに対しては、業者間の申し合せの単価の値上りを、どうも通産省としてはあまり厳重に監督していないんじゃないか。その結果、先般はあなた方の方から、特に船を見つけたならば・それに対しては外貨の割当をやろう、こういう手を打ったけれども、実際はその船などは見つかりません。御承知の通り世界各国の海上航運の状況を見ましても、なかなかそんな安い船が見つからない。一体こうした問題に対して、通産省としてはどういう手を打つのか。なぜならば、それが農業にも漁業にも、あるいは交通その他にも非常な影響を及ぼしてくると思う。ただ一般の人に迷惑を及ぼす原因は、一部業者の国際事情を奇貨として、彼らの利潤追求を目標とした値上げをやっておるというような、こういう状況に対しては、監督官庁の通産省としてはもう少し研究をして、厳重に取り締るべきじゃないかと私は思いますが、通産大臣はどう思いますか。
  38. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年の秋以来の需要期に加えまして、中近東紛争が起って、おっしゃる通り運賃が上った。従って需給の逼迫期でございますので、需給状態が緊迫して、値段の上昇傾向になったということは事実でございますが、こういう紛争に便乗して値上げをすることは困るというので、そういうことのないようにという警告は、再三役所としてはいたしております。警告をして、便乗的な値上げを阻止するということと、同時に需要の緩和策として、約百六十万キロリッターの原油を緊急に追加輸入を許可する。それから繰り上げ、重油の点では繰り上げ輸入を二十万キロリッター、それからさらに追加輸入を四十万キロリッター、合わせて六十万キロリッターの緊急輸入というような措置をとって、需給状態の逼迫からくる値上りというものをとめるという措置をまず第一にとりました。その結果、ガソリンで見ますというと、昭和三十年平均が大体約三万一千円ということですが、去年の九月ごろは夏の乱売によって二万七千七百円くらいに落ちておった。これを大体底値にしまして、この中近東紛争以来だんだんに値が上ってきて、今年の一月になって三万一千円というのですから、ようやく今年の一月になって昭和三十年度の平均値段に戻ってきておる、回復しておる、こういう状態になっておりますので、これ以上上げることはとにかく阻止しなければいかぬということから、私どもは業界を全部呼び出しまして、出荷価格を全部今後政府に報告してもらうということと、それから今度値上げをする場合には、事前に政府の了解を得るということと、これに違反した場合には、外貨の調整を行うというようなことで、業界と折衝しましたが、業界も全部これをのんで協力してくれるということになりまして、一月から三月までの値段は据え置きという実効をとにかく見ておるわけでございますが、今後の対策としましても、この需給の逼迫からくる価格暴騰は防ぐ、従って十分に必要量を入れるという方針でございますが、船の契約でも何でも、ほとんど今年の六月までのものは百パーセントの手配済みという状態になっておりますので、石油の需給逼迫というような事態は今年は避けられると私ども考えております。そうすれば、その点からくる値上りは避けられる。その次は運賃の問題でございますが、これはスエズの再開が大体見通しがつきましたので、おそらく運賃は今が峠であって、今後下る傾向だろうと思っておりますので、その点からくる値上りも、私どもは避けられるのじゃないか、そうすれば、業界の自粛態勢政府の、違反に対してはこうするというような、いろいろな行政措置とあわせて、石油の製品の値段を不当に上げるということだけは私どもは避けられると今考えております。
  39. 千田正

    千田正君 今の問題は、時間もありませんから、私はあまり追及しませんけれども、大体けさの電報を見ましても、世界市場におけるところのこのスエズ運河を中心とした航行運賃というものは、もうすでに最大限にきて、むしろ下降しておるという発表をしておるのであります。それから今お話のありました業者を十分に取り締る、ところが実際は、私ども研究した結果から見ますというと、元売り業者が四〇%ももうけておる。そうしてそれを取り扱うところのディーラーその他末端に至るまで、そう大してもうけていない、むしろ元売り業者の方が四〇%ももうけておって、その間に介在するところの中小企業者、あるいは末端の購入するところの農業、漁業のそうした人たち、あるいはトラック、あるいは自動車その他の関係の人たちは、非常にその影響をこうむっておる。これはよほど厳重にあなたの方から行政的な十分な監督をしなければ、勝手に元売り業者が上げていくという、相当の強いあの人たちは団結がありますから、通産大臣はよほど腹を締めてかかっていただきたい、こう思うのであります。  もう一つ、これは通産大臣でありませんが、最後お尋ねしますが、これは総理大臣並びに……防衛庁長官はきょうお見えになっておりませんが、どなたか防衛庁からお見えになっておると思いますが、先般、一昨日、東京新聞に「自衛隊の犯罪」という見出しのもとに大きく報ぜられております。それによるというと、自衛隊六十人に一人ぐらい犯罪を出しておる。三十一年の一月から三十一年の十二月までに、海上自衛隊が、犯罪発生数が八百七十九件、検挙者の数が七百二十二件、送検者数が四百七十件、陸上自衛隊は七百件、送検者数が二百六十六件、航空自衛隊が二百七十三件、検挙数が百九十九件、送検者数が六十八件、こういうふうに見るというと、六十人に一人、ないし航空自衛隊は六十五人に一人という勘定になる犯罪者が起きておる。しかも犯罪の内容を見まするというと、盗みをやる、詐欺をやる、横領である、傷害、賄路と、内容を見ますると、窃盗が三百三十件、詐欺が百五十七件、横領九十三件、傷害暴行が六十五件、賄路は六十二件と、こういうような、まことに破廉恥罪を犯したり、あるいは自衛隊員としてあるまじき行動が六十人に一人というように発生しておる。総理が先般来、みずから日本の国を守るためには自衛隊が必要だと常に説かれておる。また防衛庁長官以下われわれの隊員は、いずれも国を守るためには国民の師表と仰がれるだけの規律と節度をもって国民のためにやっているのだということを、大きなことを言いますけれども、現実においてはこのような犯罪が起きている。犯罪人の巣くつといってもあえて過言ではないほどの、六十人に一人の犯罪に対して、総理大臣及び、きょうは防衛庁長官がいないで政務次官が来ておりますが、どういうような取締りで、今後これに対してどういうような措置をやるか、そういうことについてはっきりした御方針を示していただきたい。
  40. 高橋等

    政府委員(高橋等君) お答えいたします。昭和三十一年の一月から十二月までの自衛隊におきます隊員の送検件数は千二百三十件となっております。この内訳は、陸におきまして六百九十二件、海が四百七十件、空が六十八件となっております。それで送検件数は、自衛隊におきまして隊員の百人について〇・〇六人の割になっております。全人口に対しまして、この法務省における調査発表によりますると、全人口に対しまして、国民が犯しておりまする犯罪の送検件数の割合は百人について〇・〇五四人、こういう割合になっております。幾分自衛隊の方が上回っているのでございますが、これはもう一度申し上げますと、百人について〇・〇六人、そうして一般国民の全人口に対します割合は〇・〇五四人でございます。それで幾分これは上回っておりまするが、全国民の中には老齢者もあり婦女子もあるわけでございます。自衛隊の場合は男子の、しかも成年の者が多い関係上、こうした現象が出ていると思うのですが、もちろん規律をわれわれは厳格にいたしまして、国民の信頼にこたえる自衛隊でなければならないことは申すまでもないのでございまして、そういう意味で、これらの問題につきましては非常に、たとえば部内で友人の物を盗むとか何とかいうような事件が起りましても、それがどんなに小さい事件でも、徹底的にこれは糾弾をし、調べさせております。それとともに、われわれといたしましては、ますますこの善行のある者はこれを表彰し導いていくようにする。そうしていろいろなそういう角度から、この自衛隊のこうした隊員の犯罪を一般国民の水準よりも少くする方向努力をいたしたいと思っております。
  41. 千田正

    千田正君 どうも今の御答弁は、その原因が那辺にあるかということはちっともお答えはないということと、それから国民の犯罪数と比較しての御答弁でありますが、これは比較の対象としては、国民を相手にするということはおかしいと思います。なぜならば、自衛隊の経費は国の税金でまかなっている、国民の血税によって自衛隊の経費はまかなってあるはずであります。そうしたいわゆる国から選ばれた人たち、そうして国の税金で養われており、そうしてその最高至上の目標とするものは、日本国民を守らなくちゃならないという、そういうふうな観点から自衛隊が組織されているにもかかわらず、かような多数の犯罪者を出して、その原因が那辺にあるか、しかもこの国民の血税を使って、なおかつ盗みをしなければならない、なおかつ国民の師表たり得ないところの自衛隊を飼っておかなければならないということはどういうわけでありますか。あなた方は国民に対して、どういうふうにこれを釈明するか、その原因は那辺にあるか、どのような取締りをするか、その点をはっきりして下さい。
  42. 高橋等

    政府委員(高橋等君) ただいま申しました通り、国民一般の犯罪送致件数から見ればやや上回っておりますが、しかし、今御指摘のように、自衛隊としましては、国民より尊敬される、しかも規律あるものにいたさなければなりませんので、そうした方面について、先ほど申し上げましたような努力を繰り返しているわけでございます。
  43. 天田勝正

    ○天田勝正君 関連して。ただいまの御答弁は全く御答弁になっておりません。それは全国民との比率を比較いたしておりますけれども、全国民のうちには生活困窮者がたくさんんあります。しかもこの生活困窮者がやむを得ずして犯罪を犯して参るというケースが非常に多い。ところが自衛隊は生活困窮をしておらない。食は保障されております。衣服も保障されております。住居も保障されております。全く恵まれているとはいわないけれども、衣食住ともに保障されている者の犯罪と、衣食住が不安な状態に置かれている全国民とを一体比較して、幾らか上回るとか、びしびし取締っているから表に出たのが数が多いというようなことでは、とうてい答弁にならない。今の私の前提に立って一体どう考えるのか、はっきりしていただきたいと思います。
  44. 高橋等

    政府委員(高橋等君) もちろん、国民の中にはいろいろな環境の人もあるでありましょう。また自衛隊を構成をいたしておりまする者の年令層その他の関係もございますが、いずれにしましても、一応ここで自衛隊の犯罪が非常に多いという新聞社の発表があって、それに対して御質問もございましたので、一般国民との比較を申し上げたのでございまして、われわれとしましては、先ほど申し上げましたように、そういう角度から、この問題を今後できるだけこうしたことの起らない方向でやりますとともに、ささいな事件といえども規律を厳格にして、できるだけ警務隊等によりまして問題を摘発をして、はっきりした態度を持っていきたい、こういうことをやりたいと考えている次第でございます。
  45. 左藤義詮

    ○理事(左藤義詮君) 千田君、時間が過ぎております。簡単に……。
  46. 千田正

    千田正君 ただいまの防衛庁の政務次官のお答えは、まことにわれわれは納得いきません。しかし、私の持ち時間はすでに過ぎましたので、最後総理大臣から……。あなたが岸内閣を組織すると同時に、われわれ国民に約束したことは、少くとも健全な日本の国を作る、国民生活を守り、しかしてまた健全な日本の独立を守っていくんだという非常に高度の理想を唱えられましたが、あなたの部下のうちからかような、しかも国民の信頼を受けて立たなくちゃならないところの自衛隊の中から、かような犯罪者を出すということは、私は総理大臣としても責任を負わなくちゃならない問題だと思いますから、この際明らかに将来のこうした問題に対するお考えを承わっておきたいと思います。
  47. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいま自衛隊内における犯罪の問題について御質問でありまして、いろいろ統計的な数字についての当局からの返事もございました。いずれにいたしましても、自衛隊内においてかくのごとき犯罪、しかもその犯罪の内容が破廉恥もしくはこれに準ずるような犯罪があるということは、これは非常に遺憾なことであります。われわれとしては十分その原因を、ただ出た事実を罰するというだけでなしに、原因を十分に検討し、そして、言うまでもなく私はこれについては自衛隊内における規律とか、あるいは綱紀という問題について考えなければならないと思います。と同時に、自衛隊の人々も自衛隊の真の使命であり、自分たちの任務ということをよく自覚せしめて、かくのごとき事態を、将来に責任をもってこういうものをなくして行くように、われわれとしてはあらゆる努力をいたさねばならぬ、かように考えております。
  48. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は岸総理兼外相にお伺いいたします。  第一点は、日ソ共同宣言の第九項に平和条約締結の継続交渉のことがあることは御承知の通りでございますが、この問題に関連してお伺いいたします  総理は、大使の交換、漁業問題、通商協定等、日ソ間相互融和をはかってから後に段階的に平和条約の交渉を進めたい、従って今年度内には交渉は再開しないというふうなお考えのように承わっております。しかしながら、私どもは領土に関するわが国の主張の最低限はすでにきまっておりますし、この交渉を先に延ばしたからといって情勢の変化も不明でありますし、現在継続交渉というておるのにこれを中断的に放置しておきまして、先に延びれば延びるほど、択捉、国後をソ連が占有しておるという既成事実がだんだん積み重って行くおそれがある、これが国交回復の前でありましたならば、軍事占領ということで一応片がつくわけでありますけれども、国交がすでに正常化したあとでありますから、勢いソ連がこの国後、択捉を占有しておるといううことを黙認しておる形になりはせんか。でありますから、どうしてもこれは共同宣言の文字にあります通りに、継続交渉をなるべくすみやかに開始する方がいいのじやないか、こう思うので伺う次第であります。
  49. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 平和条約締結の問題につきましては、御承知の通り領土問題がその主眼になるわけであります。すでに国交が正常化されて、日ソ共同宣言において、その他の問題については大体解決または解決の方向が示されておりますけれども、領土問題につきましては彼我両国の主張が真正面から対立しておって、そうして過去において、及びモスクワの会議におきまして、両方の主張というものはとうてい一致を見ることができなかった問題であります。そしてわれわれはこの両会議を通じて、わが方の主張、わが方の考えというものが明確にソ連側に述べられておることも、これは御承知の通りであります。また日ソ共同宣言におきましても、これを将来の継続問題として——決して現在占有しておる、占拠しておる状態をわれわれはそのままに正当化するという問題でなしに、この領土問題については将来の継続問題として、平和条約の締結問題において解決するということになっております。で、私は今お話通り、なるべく早い時期においてこれを再開することが適当じゃないかという御意見に対しましては、私は別段異議を持つものではございません。ただ従来の交渉の経過から見まして、なかなかこの問題を解決するのには、十分両国の間において少くとも友好親善の気持ができ上って、いろいろな基礎的のものができないというと、やはりロンドン、モスクワの会議をただ繰り返しておるだけでは実は意味をなさない、かように考えまして、まず大使館を設置し、これも両方がそれぞれ設置して、さらに漁業問題であるとか、あるいは抑留者の消息不明の者に対する調査の協力であるとか、あるいはさらに貿易の問題であるとかいうような問題も、これを積み重ねて行って、そうして両国の友好親善の関係というものがある程度基礎が確立するなり、さらにソ連の方におきましても、この領土に対する要求というものは、日本の国民の一致した何であり、これに対する日本との間の友好関係を進めて行くためには、どうしても日本の主張に対して、少くともある程度耳を傾けなければならないという気持をあらゆる面から作って、そうしてこの問題を解決するということを進めて行きたいというのが私の考えでございます。しかし同時に、それがために必ず私は今年中にやらないということをここで明言したわけではございませんが、必ず今年中に再開するんだということも、そういう関係において明言できないということを申し上げたんでありますけれども、なるべく、ただこれを放擲しておるというような印象を少くとも与えないようにしなければならないという御意見に対しましては、私も全然同感でございます。
  50. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 松本・グロムイコ交換公文に明らかにしてありました領土問題の字句が、共同宣言から除かれたという点について非常な不安が起りまして、共同宣言の批准承認のときに、参議院では二つの付帯決議が付せられたということは御承知の通りでございます。そこで、この付帯決議が外務委員会で通過いたしましたその翌日にモスクワの放送がございまして、そのモスクワ放送では、この付帯決議は領土問題に対して日本が勝手な解釈を下しておるんだ、こういうモスクワ放送があったために、十二月六日のこの予算委員会で、私どもは重光外務大臣にその点についての真相を承わったわけであります。当時の重光さんの御返事は、まだ国交の回復もされておらぬのだから、国交が回復されたならば、いずれ真相も十分きわめて見よう、こういうお話でありまして、委員諸君からも、また私からも、真相が確まったならば、その確まった真相に対する政府の見解もあわせて国会に報告をしてもらいたい、こういう別れになっておるわけであります。その問題を外務省でお取り上げになりましたことがございますかどうか、承わっておきたい。
  51. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私そのいきさつにつきましては、はなはだ行き届いておりませんで、知らなかったのでありますが、言うまでもなく松本・グロムイコ交換公文というものは、両国の正当なる権限を持っておる者の間に正式に交換されたものでありまして、これが生きていることは、これは国際慣例上、解釈上当然のことだと思います。従って私はソ連がどういう放送をしましょうとも、実際は松本・グロムイコ交換公文の趣旨によって、日本としてはあくまでも主張すべきものは主張し、われわれの考えはこれに基いてやるべきものだ、かように考えております。事実はそういうふうないきさつになりまして、その後、外務省でどういうふうに扱っておりましたかを実は私調べておりませんので……。
  52. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は日ソ共同宣言採決のときに、ソ連側から見て平和条約交渉のときに残されている領土の問題とは、国境線確定という問題以外にはないと、こう考えますがために、日ソ共同宣言には反対したのでありますけれども、参議院ですでに院議として付帯決議が可決されまして、その中では、平和条約の締結交渉の中には国後、択捉が入るのだということがはっきり意思表示されておるのでありまして、逆に言えば、非常にこの問題に対して参議院自体も不安を感じておるというわけであります。そこへたまたまソ連の放送がありましたので、より以上にこの感を深めたのであります。かりに先ほどお話通り、日ソ平和条約の締結の継続交渉を先にお延ばしになりましても、このモスクワ放送に対するソ連の見解だけは、すでに大使もモスクワに行っておいでになることでありますから、一つ十分お確かめをいただいて、そうしてこれに対する政府の見解もあわせて承わりたい、と申しますのは、最近の漁業交渉でも、河野・イシコフ会談の八万——十万トンという線は、ただそのときの暫定的な話し合いであって、将来を拘束しないものだというふうな説明はしばしばあったにもかかわらず、今回の漁業交渉では、それが一つの大きな障害になっておる事実があるのです。だから当時の交渉のいきさつからみまして、モスクワ放送というものは相当政府としては抗議と言いますか、真相を解明しておく必要がある、かように考えますので、その点の善処を要望するのでありますが、いかがでしょうか。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 領土問題に関して、国後、択捉が日本の固有領土であり、従って日本の領土権をあくまでも強く主張して、それを裏ずけるような、これを証明するところのいろいろ古い条約からずっと引いて、日本側の主張というものは精細をきわめ、また論理的に私ども考えてみて、実に正当な根拠を明白に向う側へ述べておる。向う側の従来の外交上の態度としまして、今度の漁業条約にもそういう点が現われておるのでありますが、非常におっかぶせるような調子でこうだと言う、また別のソ連の方の側から申しますというと、あるいはカイロ宣言だとか、ヤルタの協定であるとか、そういうものが、本来、日本を拘束するということは国際的には、これは国際法の何から言うと私はないと思うのです。にもかかわらず、そういうものを引いて非常に高飛車に出て自分の方の主張を勝手に宣伝し、また宣言しておるという態度も従来しばしば見受けられたのであります。私どもは日ソが今後友好関係も増進し、ほんとうに提携を深めて行くという上から申しますというと、こういう点に関しては十分ソ連自身が一つ反省してもらわなくちゃならぬと思います。そういう意味において、わが方のもうすでに主張がきわめて詳細に明確にされておる領土問題に対する主張というものについては、私は今までの態度を少しも変更する考えはございませんし、これをあくまでも貫いて行かなくちゃならぬ、こう思っております。従いまして、今のモスクワ放送というものがどういうふうにありましたか、またその当時の事情等から見まして、ソ連側の従来の態度なり、やり方から見るというと、そういうような態度に出たということも想像できるのでありますが、しかしあくまでもこの問題については、われわれは一貫した正しい主張を貫いて行くということに終始したいというのが私の信念であり、また今後の努力の目標でございます。
  54. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、モスクワ放送の問題はもう少し大使館を通じて究明していただきたいと思うのでありますが、時間の関係もありますので、先に移りたいと思います。日ソ平和条約締結交渉の時期いかんにかかわらず、わが国としての主張の根拠は十分固めておく必要があると思うのであります。そこで、まず第一点に私が伺いたいのは、サンフランシスコ平和条約が審議されました第十二国会で、桑港平和条約中の千島列島には南千島を含んでおるかどうかとうい質問に対しまして、草葉外務次官と西村条約局長は、択捉、国後は桑港条約の千島列島の中に含まれておるというふうな御答弁があったのであります。   〔理事左藤義詮君退席、委員長着席〕  そこで、私はこの解釈には賛成はいたさないのでありますけれども政府の責任者が国会で明らかにこういうことを答弁しておられるのでありますから、これは一つ理由を付して、総理の口から正式に、あれはこういう事情で言っておるけれども、今の政府の見解では間違っておるということを、まずお取り消しを願う必要があると思います。
  55. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その問題につきましては、前国会において重光外務大臣が数度にわたってはっきりと取り消しをいたしております。またサンフランシスコ条約の解釈につきまして、サンフランシスコ条約署名国の有力な国であるアメリカも、この解釈について、日本が放棄した千島のうちには南千島を含まないという見解を明らかにいたしておりまして、今さらこの放棄した千島に択捉、国後が包含しておるものと解釈すべき何らの根拠はないと、こう思っております。
  56. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 当時の重光さんの返事はきわめて不明確でありまして、私としては衆議院の速記録も拝見したのでありますが、クーリルをうっかり千島列島と訳してしまったところが千島列島という日本の人の言葉の中には、南千島を包含しておるのだというふうな、訳文から、ひいてそういうところまで結論がなったのではないかというふうな質問もあり・割合に筋の立った解釈であると思うのですが、その見解に御賛成であるかどうかということと、もう一つは、一八五五年の日露通好条約、日露の国境を確定しましたあの条約にも、一八七五年の樺太、千島交換条約にも、クーリルには南千島は含まないということがはっきりしておりますし、この解釈は今でも生きておるのだということをやはり論拠とされておるだろうし、今お話しのありました昨年九月六日のアメリカの公式覚書も、南千島に対する領土権の解釈の根拠とあわせてお考えになっておる、こう思うのでありますが、この点を念のために確認しておきたいと思います。
  57. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。今、八木君の御意見の通りに私ども考えております。
  58. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、桑港条約によって放棄した北千島、南樺太の領土権は、現在どこにあるというふうにお考えになっておりますか。
  59. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これはサンフランシスコ条約において日本は領土権を放棄いたしておるのでありまして、そうしてそれを現実にはソ連が占有しておるという状態であって、私どもはその帰属が、条約上どこに帰属するということは決定されておらないと、こう見るべきであると思います。
  60. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 不確定の状態であって、しかも日本がそれに対して何らの意思表示をしなければ、占有しているソ連の占有状態を黙認するということになりはせぬかということを私はおそれるのであります。従ってこれはやはりソ連には領有権がないんだということを日本からアメリカなり……、一応意思表示をしておく必要があるんじゃないか、かように考えるのでございますが、いかがですか。
  61. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一応日本は桑港条約でこの領土主権を放棄いたしております。ただ日ソ交渉におきましては、ソ連側に対して、われわれは先ほど申したような意思をソ連側にははっきり言っておるというのでありますから、今われわれが桑港条約に署名している国々に対して、日本の見解をはっきりしたらいいじゃないかという御意見だろうと思いますが、その点につきましては、なお私としては一つ考究してみたいと思います。
  62. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 日ソ交渉のときに、北千島等の問題について日本は何か意思表示をしたと、今そういうふうにお話になったのですが、この問題について、私前の条約局長に、重光さんがサンフランシスコ条約の確認をソ連に対して申し出たのはどういう意味かということを伺ったのです。ところが重光さんは、そういうことを申し出たことはないのだと条約局長が言われた。私はどうも自分の記憶ではそうなのだが、おかしいと思って後に調べましたところが、条約局長自身の口からも、重光さんの口からも、やはり桑港条約の確認をソ連に求めておるわけなんです。その求めている意味合いについて私が伺ったんです。その意味合いと申しますのは、桑港条約をソ連に確認せしめるという意味は、放棄したことによって現在の領有状態を認めるのであるから、ソ連にこれが帰属するんだということをあらかじめ日本が申し出たのか、もしくはこの北千島は日本が桑港条約署名国に対して放棄したのであるから、現在ソ連が領有しておってもお前の方のものじゃないんだぞ、これは桑港条約に署名した各国に処分権があるんだということをソ連に確認さしたのか、どっちなんだということを伺ったわけなんですけれども、前提がないから答弁せぬといって、きわめてあいまいになったのですが、今、総理お話では、この問題についてソ連に申し出たとおっしゃるのは、ちょうど私の記憶とぴったり合っているんですけれども、申し出の内容を伺いたいと思います。
  63. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の承わっておるところによれば、重光全権が日ソ交渉に当りまして、この桑港条約について日ソの間に言及して、この事実を認めしめておるというふうに私は聞いておるのであります。従って今の北千島及び南樺太の問題については、日本はサンフランシスコ条約署名国に対して、放棄しておるという事実をソ連の方へ申し出たものである、かように考えております。
  64. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そうすると、つまりソ連の領有というものではない、処分権は桑港条約署名国にあるという日本の見解を申し出たと了解してよろしうございますか。
  65. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 明確に、そういうふうな言葉で重光全権が向うへ通じたかどうかということは明確でございません。しかし解釈としては、そういう意味に解釈することは私できるだろうと思いますが、明確にそういう言葉で向うへ申し出たという事実はないようであります。
  66. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこでサンフランシスコ条約の署名国が国際会議でその帰属を決定する場合に、北千島はカイロ宣言の領土不拡大の原則を日本がとって、もう一ぺん返してくれと、こういう申し入れをするのが当然だと思うのですが、いかがですか。
  67. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういう御意見もあるようでありますが、私は元来これらの領土権は日本がすでに放棄しておるのであるから、この条約を前提として考えてみて、それを日本に返してくれという主張は私はできないのではないか、こういうふうに解釈をいたしております。
  68. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 現在は放棄しておるのでありますが、放棄したその先にいずれ国際会議、主としてアメリカがその中心であるのでありましょうが、帰属をいずれ決定しなければならぬ時期がくると思います。そのときにカイロ宣言には御承知の通り領土不拡大の原則がありますし、ポツダム宣言の第八にも、将来日本の四つの島以外の小さい島は国際会議で決定すると、こういうことがあるのでありますから、その決定の時期において日本はもう一度日本の領有にしてくれと、返してくれという言葉が悪ければ、日本の領有にしてもらいたいということを日本国民の感情として要求するのは、私はこれは当然だと思うのですが、いかがでしょう。
  69. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 将来これの帰属をきめる、サンフランシスコ条約署名国の間に国際的な会議が行われるというような場合におきましては、日本として日本に返してもらいたいということを主張することは、もちろん私は国民の希望、要望をいれて、そういうことをすることは差しつかえないと思います。ただ当然日本のものであるという法律的の主張というものは、私は条約を前提としてはできないのじゃないか。しかしその場合に、どこへきめるかという場合において、われわれはこういう従来の沿革なり、それからずっと関係を述べて、日本に帰属するようにしてもらいたいということを主張することは、これは当然、またやるべきであろうと、こういうふうに思います。
  70. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、漁業条約の問題について伺うのですが、三月五日の日本国の提案として新聞紙が報ずるところによりますと、従来の規制区域を拡張して、わが国が三十二年度の総漁獲量を十四万五千トンとすると、こういう新提案がなされておるということが新聞に報ぜられております。ところがこの規制区域を拡大してというのは、これは非常に重要な問題であると私は思うのです。その拡大の範囲も、ここに新聞は、暫定的に漁業条約に明記してある水域から東経百七十五度、北緯四十五度の交点から北海道の襟裳岬を結ぶ水域まで拡大する云々、この規制区域の拡大ということは非常に重大な問題だと思うのですが、そういったような一体申し入れをなさったのでありますか。
  71. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御承知の通り、この漁業交渉は目下両国の間に交渉中でございまして、まだ交渉の経過、あるいはそこで論議になっておることの具体的問題等については、両国の申し合せで途中においては公表しないということになっております。まあ途中でいろいろな提案とか何とかというようなことじゃなしに、いろいろな意見も両国の間に交換されているという事実はありますけれども、今、新聞で発表されているような具体的な問題については、私からは今ちょっと公表いたしかねるということを御了承願いたいと思います。
  72. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それでは私その点について深くは申し上げませんが、ただ、この制限区域の拡大ということは、逆に言えば、自由操業の面積を狭めるということでもあるし、また一方、国防上と申しますか、日本の近海にソ連の巡視船がずうっとおるということになると、非常に日本に対して脅威を与えるということにもなりますから、これは漁獲量の少々ふえるということの問題以外に、きわめて重要な問題を含んでいると思いますので、どうかこの規制区域の拡大というようなことを、いやしくも日本の方からは提案せられぬようにということを私は希望いたしておきます。  それからもう一つは、この規制区域の拡大ということは、現在の漁業条約の第四条に「定例年次会議において、その時に実施されている協同措置が適当であるかどうかを検討するものとし、必要に応じ、この条約の附属書を修正することができる。」という規定があるわけであります。ところが去年の漁獲量の決定は暫定的なものでありまして、ことしの漁業交渉が最初のものでありますから、このときの付属書に決定せられている規制範囲を変更するということは、これはこの第四条に私は違反するものであると思います。何となれば、一度きめたことが適当でなければ変えるというんですが、まだきめたことが一度もないわけでありますから、それをまた変えるということは、これはこの条約の違反であると思うのでありますので、具体的な内容は別として、その見解はいかがでありますか。つまり規制区域を拡大するということはこの第四条に違反しないかどうか、こういう問題であります。
  73. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 条約の付属書の内容を変えるということは、やはり両方の意見が一致すればできることであると思うのです。従って規制区域というものを変更するということについて、両方の意見がまとまれば改正していいことだと私は解釈いたします。
  74. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に抑留邦人の問題について伺うのでありますが、国交回復当時のソ連における行方不明者は一万五十二名、この間、十六日に駐日ソ連大使から発表せられました数は、すでに帰国した者が百三十九名、死亡者が八百九十五名、残留者が無籍者として七百九十三名、合計千八百二十七名でありましたので、その他の未調査者が八千二百二十五名になっているわけであります。これはすでに日ソ共同宣言が発効いたしましてから三カ月以上になるのでありますから、これはもう少し早くわかるべきはずのものであると思うのでありますが、残りの八千二百二十五名に対するソ連側の報告はどういうようになっておったか、承わってみたいと思います。
  75. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先方ではさらに調査を続けて、明らかになったものから順次こちらへ報告するということになっております。そうして実際問題として、なかなかこの死亡者等が死んだということの事実を確かめるということ、正確にするということにつきましては、相当にやはり時日を要する点が私はあると思います。そうしてソ連側が共同宣言に調印して三カ月くらいの間に、これだけのものをとにかく調べて、そうしてこちらへ報告したということについては、私は何といってもソ連側が誠意をもってこの問題を扱った結果である。そうしてこれに対しては私は感謝をしておりますが、さらに向う側からも調査を継続するとして、わかり次第通告すると言っておりますし、私の方からも、ぜひそれをやってもらうように依頼したのでございます。
  76. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、この七百九十三名の名前をフルシチョフから畑中某に通知したなんということも、どうも外交常識からいって非常に私不審に思うのです。次に、大使館員は、ソ連と日本は大体同数をお置きになるつもりであるか、向うの要求はどうで、日本の数はどうか、領事館の員数も同じであるかということを承わりたいと思います。
  77. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは相互主義によってきめるということになっておりまして、一応大使館の館員が両国とも五十五名という点で協定ができております。
  78. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、昨日かの新聞で、フルシチョフが、漁業交渉は貿易問題と関連する、こういうふうな話が出ておりまして、総理は、この点に関するこちらからの提案をしたことはないというようなお話があつたのですが、そこで日ソ共同宣言のときにも、まず抑留邦人を人質として国交の調整を推進した、漁業条約は五月に結ばれたけれども、その発効はやはり日ソ共同宣言の締結にこれをかけたというふうなことで、あれは押し切られてしまった形でありますが、今度の漁業交渉でも、やはり貿易協定をこれにからませるということのねらいは、むろんシベリアの開発等というようなこともございましょうけれども、また一面には、ソ連が通商代表部を日本に置くという点にも相当の重点があるのではないか、かように考えますので、ソ連の通商代表部というのは大使館員と同じように、いわゆる治外法権的な特権を持っているのであるかどうか。それから通商代表部ができましたら、日本も大体同じくらいの人数を向うへおやりになるのかどうか、その点を伺って私の質問を終りたいと思います。
  79. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 通商代表部の問題は全然まだ話になっておりません。私どもは先ほど申しました大使館員の数以内において、両国のいろんな問題を調整して行く、交渉して行くというのが、今後の考えでございます。
  80. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これにて暫時休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      —————・—————    午後二時二十八分開会
  81. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を再開いたします。  まず、委員異動について申し上げます。本日、高野一夫君が辞任され、その補欠として佐藤清一郎君が指名されました。  なお、山際日本銀行総裁は、さっそく連絡をとりましたが、本日は都合が悪く、出席いたしかねるとのことでございましたので、あわせて御報告いたします。  これより午前に引き続き質疑を続行いたします。
  82. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 昭和三十一年度補正第一号は、自然増収が非常に多過ぎて、それの処置に困ったので、その使い方をいろいろお考えになった結果、これを三十二年度以降に使うということがその大体の趣旨だと思うのですが、どうもそういう考え方なり構想をいろいろ私自身も考えてみたのですけれども、いよいよわからなくなっておりますので、これは私がよく知らないためでありますが、もう一ぺん改めて、まず法制局長官に、財政法の第十二条は一体どういうことを規定をしようとしておるのか、まずその条文を一応御説明を願いたい。詳しく御説明を願いたい。
  83. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 法制局長官はちょっと用がございますので、かわりまして答えさしていただきます。御指摘の十二条は「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。」という規定になっております。いろいろ御質問の事項もあると思いますけれども、一応十二条の規定から事は明白ではないかというふうに考えます。御質問によりまして、さらにこまかい点はお答えしたいと思います。
  84. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは、今その条文を読まれただけですが、その意味がよくわからないのですよ。もう少しそれを御説明願いたい。
  85. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 要するに、ある会計年度における経費はその年度の歳入をもって支弁する。これをまた言いかえたようなことでございますけれども、年度区分というものを乱してはいけないという、言いかえればそういうこともあろうかと思いますが、要するに、年度区分を明らかにしたものというふうに、これを御理解願ったらいいだろうと思います。
  86. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 もう一つ、それじゃ第四十二条はどういうことを規定しようとしているのか、その四十二条と十二条との関連、関係と言いますか、それはどういうふうにお考えになりますか。
  87. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。四十二条は特定のものは除かれておりますけれども、「毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを翌年度において使用することができない。」、要するに、その年度の経費はその年度の歳入をもって支弁しろというのが十二条でありますが、その年度の、毎会計年度の歳出予算に計上されたところの経費の金額、これは翌年度において使用をしてはいけないということになっておるわけでございます。
  88. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、これは十二条を裏から言ったような感じですが、そういう補足的な意味でこの条文を盛っているのか、もっと別の意味を持っているのか、そこいらはどういうふうに御解釈になりますか。
  89. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 十二条とそれから御指摘の四十二条の規定と、あわせて年度区分の原則を明らかにしていると申すこともできると思います。つまり、うらはらの関係にあると言ってよろしいかと思います。
  90. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしてさらに第四十四条を規定しているのですが、この四十四条の規定と、今の両条の規定とはどういうふうな関係になるのですか。
  91. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 四十四条の規定は、「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。」とあるわけでありますが、資金と申すのは、申し上げるまでもなく、ある特定の用途、目的に供するために一定の金銭を保有する施設と言いますが、そういう制度でございまして、その資金につきましては、先ほど来お尋ねでありますこの年度区分の観念というものはないというのが、われわれの考えでございます。
  92. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、それは十二条なり四十二条で規定している一般原則に対して特別な場合を考え、しかもその特別な場合は予算の経費自体の使用の問題ではなく、その経費のうちで特別の資金だけについては、そういう特別な運用が許されるということと解釈していいですね。そうすると、その特別な資金なるものは、なぜこの特別な資金として特別に規定をしたのかという問題が一つ、これは法制局に御説明を願います。  それから今までにそういう特別な資金として、先例においてどういうものをおやりになったか、これは一つ大蔵省の事務当局にお願いいたします。
  93. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) この資金はどういう趣旨、目的によって、特に四十二条なりあるいは十二条の、例外的と申すと語弊がございますが、別の観点から、こういうものが設けられたのかということに帰着するのかと思いますが、当該年度でそれを使用し尽すというようなことでありますならば、むろんその当該年度の歳入をもって歳出に充てればいいわけでございますが、後ほどお答えがあると思いますが、ある特定の用途、目的に供するような場合につきましては、そういう目的ごとに供するために一定の資金として保有しておくことが合理的に相当と認められるというようなものがありますので、これはいろいろ例がございますが、そういう場合のために特に設けられた制度であろうと思います。もっともそれにつきましては、ある種の例外でもありますので、特に「国は、法律を以て定める場合に限り」というふうにワクをはめてございまして、法律がないというと、その資金が設定できないということに相なっておるわけでございます。
  94. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) この資金は財政法以前の旧会計法のときにもたくさんございましたが、それは省略いたしまして、財政法制定後におきます例を申し上げますと、昭和二十二年に貿易資金を設けております。二十六年に特別調達資金を、これは一般会計所属でございますが、設けてございます。それからさらに二十五年でございますか、補助貨幣回収準備資金、これは造幣局造幣特別会計に設けております。同じ年度に緊要物資輸入基金、これも特別会計でございますが、設けております。また同じ年度に外国為替資金、これは特別会計でございますが、こういう資金を設けております。大体最近の先例といたしましては、こういうものがあります。
  95. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、今あげられた先例からいうと、第十二条あるいは第四十二条の原則から例外的に設けらるべき資金なるものは非常に特別な性格のものである。今一つ一つ具体的におあげになったことで明瞭でありますが、非常に特別な形における資金であるということが明瞭になったと思うのでありますが、そこでこの補正第一号の問題に入るのですが、補正第一号の問題は、第一には、三十一年度は予想外に非常に大きな自然増があって、初めの見積りから非常に狂って、しかもそれの使い道にいろいろ考慮をめぐらされた結果と思います。そこで一体三十一年度自然増収は今の段階で幾らとお見積りになっているのか。これはしばしば出ましたし、それからきのうもちょっと吉田委員の質問に大蔵大臣からお答えがありましたが、大体今私がいただいております資料によると、二月末までの累計がもうすでに出たと思いますが、それらの実績を勘案しながらあと一カ月の予想を立てて、ほぼ正確に見通されると思いますが、それらをごらんになって税の方の自然増収幾らとお見積りになりますか。これは大蔵大臣にお伺いいたします。
  96. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三十一年度の自然増収は大体一千百億円前後と見ております。これは非常に当初の見込みよりも動きましたのは、昨年の九月期の法人決算が非常によろしゅうございました。また個人の方で源泉徴収の年末の調整資金で相当入って参りました。一月の中ごろくらいまでは九百数十億円と見込んでおったのでありますが、その後も予想以上の自然増収が見込まれますので、ただいまはきのうの集計では大体一千百億円前後と見ております。そのうちおもなものは所得税の方でございまして、これは三百八、九十億円・法人税が三百七十億円あるいは三百八十億円、その次は関税でございます、これが百億円で、酒税が七十億円、物品税が三十億円、こういうものがおもなるものでございます。
  97. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 砂糖消費税はどうですか。
  98. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは大した金額ではございません。
  99. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると今の一千百億円というのは租税及び印紙収入だけで、税外収入の方の自然増収はどれくらいですか。
  100. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 税外収入は、今回の第二次補正で十七億ばかり見ておるのであります。これはあまり大して動きはないと思います。
  101. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと一千百億の自然増収、それをどう使うかという問題でありますが、ここでこの補正によって三十一年度からそのうち四百億が出るということが予定されておるのですが、その四百億がどういうふうに受け入れられるかという数字はどこにどういうふうに出ておるわけですか、その点を一つ
  102. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 第一次補正予算で四百億円を予定いたしました。うち三百億円は資金として産業投資会計に入れることにいたしております。法人税並びに所得税でございまするから、当然地方交付税に配付いたさなければなりません。従いまして自然増収四百億円といたしまして、それの二割五分の百億円が地方交付税の方へ回わりまして、産業投資への資金は三百億円と相なっておるのであります。第二次補正におきまして百四十七億円でございまするが、うち十七億円は税外収入で見ております。税収の増収百三十億円のうち、酒税を四十億円見込んでおります関係上、これまた所得税、法人税、酒税は交付税の基準になりますもので、四十億円のうち十億円は地方交付税の方へ回わることに相なるのであります。従いまして、千百億円前後見込まれまする租税の自然増収のうちから、ただいまのところ第一次、第二次を合せまして五百三十億円を予定いたしております。
  103. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、第一次だけに限ってお尋ねをしますが、第一次の四百億という数字はこの予算の歳出からいうと、どこから出るという形式になっているんですか、その四百億をどこから出すか。それからもう一つ聞きたいのは、どこにその四百億を受け入れるのかということが、形式的にどこに立っているのか。
  104. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 補正第一号で四百億の歳入を計上いたしまして、これを一般会計の歳出として三百億円は産業投資特別会計に繰り入れております。さらに百億円は地方交付税交付金と特別会計にこれを繰り入れておるわけであります。それを受けます方といたしましては、地方交付税特別会計におきましては、特別会計の補正をお願い申し上げまして、百億の歳入とそれから百億の歳出を計上いたしております。それから産業投資特別会計の方は、これは別途法律案を提出いたしまして、その三百億をもって産特に資金を設けて、その資金にいきなり充当をいたしておるわけでございまして、資金に充当いたすことは歳入歳出外として取り扱っております。その点は今回提出いたしました法律案の規定によりましてさような規定を設けております。それが財政投融資に充てます場合には、その資金から取りくずしますものをこの会計の歳入とし、財政投融資に充てます金額を歳出とする。そこで初めて歳入歳出になるわけでございまして、資金を設けまする段階におきましては、これは歳入歳出という取扱いにいたしておりません。従いまして、産業投資特別会計につきましては、本年度の補正はこれを提案いたしていないわけでございます。これは資金の性質から申しまして従来の取扱いもさょうな取扱いに相なっております。
  105. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 しかしその設けるのは特別な資金を設ける、しかしその資金は産投特別会計の中に特別な資金として設けるという趣旨じゃないのですか。そうであるならば、この三十一年度の計算の中に受け入れなら受け入れの中にきちんと四百億が受け入れられていて、そうしてそのうちから、まあそれが許されるかどうかはあとの問題にしますが、そのうちから三十二年度にここに書いてあるような百五十億ですか、が受け入れられる、それからあと百五十億はなお特別投資会計の中に特別資金として保有されている、そういうふうな収支の仕方でなければその資金を特別に設けたのだけれども、それがどこにあるのか。ことに私たちがこれを見ていて非常に奇異に感ずるのは、三百億出た、その三百億がどこから出たかということが明瞭でないのみならず、受け入れる場合にどこにも受け入れてない。ただ三十二年度のところに卒然として百五十億が受け入れられているだけで、あと百五十億は行方不明だというふうな勘定の仕方になっていく。こうした勘定の仕方が一体許されるのかどうか。
  106. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 一般会計から産特会計に繰り入れますのは、これは一般会計の歳出になるわけでございます。で、産特会計ではこれを受け入れるわけでありますが、先ほど申し上げました法律案の規定によりまして、これで資金を設けるわけでございます。この資金を設けるというそれだけの段階では、これは財政法第二条のいわゆる歳入歳出に該当しないわけでございまして、法律によって資金は従来設けられる、そういう従来の取扱いもさようなことに相なっております。その資金をとりくずして歳出にあてる、そこで初めて歳入歳出になるわけでありまして、そのことは昭和三十二年度の産特会計の予算に示されておるわけでございます。しからば産特会計の財務諸表上三百億が全然出てこないが、これは決算上の産特会計の貸借対照表にはむろん資金として三百億が出てくるわけでございまして、決算はいずれ確定後国会の御承認をいただくわけでございますが、今予算を出す必要があるかどうかという点から申しますと、ただいま申し上げましたようなことで、予算を補正をする必要がない。先ほど申し上げましたような数々の資金の場合におきましても、予算をくぐらさないで、いきなり法律の規定をもちまして資金を設ける。さような取扱いになっておりますので、御了承いただきたいと思います。
  107. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこのところがどうもおかしいのですが、そういうふうな出し入れをされるから、その資金の行方なり何なりがこの予算説明なり予算書からわからなくなってしまって、非常に何といいますか、計算上は出てこないので隠し金みたいなものが特別資金に設定をされて、しかもそれじゃ特別資金の経理の仕方はどうかということを見てもどこにも出てこないのです。そういうことが予算の扱い上許されるのかどうか。特にその特別な資金を設ける場合には産投会計の中に設けるという趣旨なんでしょう。ただ単に宙に別な用途があってあれされるのじゃなくて、産特会計の中に一つの特別な資金を設ける。それならばその産特会計の中にちゃんと一般会計から三十一年度の産特会計の中にすでにはっきりそれが出ていて、そして産特会計は三十一年度は百八十六億ではなくて、それに三百億プラスした四百八十六億のものになっているのだ、すでに。しかしそこから出す場合には三十二年度にまず、百五十億だけを繰り入れるから、百五十億の繰り入れが今度は歳出の方としては特別歳出の方の繰り入れに百五十億がまず入ってくる。あと百五十億は何か特別な資金の項目としてそこへ残っているということにならなければ、資金の操作としてはおかしいのじゃないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  108. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 四十四条の資金の設置につきましては、法律の規定が要るわけでございまして、今回この資金を設けるにつきましては、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案を提案いたしております。この法案の第三条の二といたしまして、「この会計においては、投資の財源の一部を補足すべき原資の確保を図るため資金を置き、一般会計からの繰入金及び資金の運用利益金をもってこれに充てる。」とございまして、さらに第三条の三に、「資金の受払は、大蔵大臣の定めるところにより、この会計の歳入歳出外として経理するものとする。」という法律案を提案いたしておるわけでございます。この規定の意味するものは先ほど申し上げましたように、資金のみの受け払いは歳入歳出ではないから予算は伴わない、この資金を使用いたします場合に、この資金から特別会計に投資の財源として受け入れます受け入れ金を歳入としそれをもって歳出にあてるときには、これはほかの原資に由来する歳出と同じように歳出として取扱いをする。さような会計法規を提案をいたしておる次第でございまして、これが従来からの資金の取扱いに関する通則でございます。その通則に従いまして、今回の資金につきましても、処理をいたしておるわけでございます。  財務諸表に出てこないのはおかしいじゃないかという点でございますが、これは決算の際にはむろん資金として貸借対照表なり何なり出てくるわけでございます。今回は歳入、歳出の補正をする必要はございませんでしたので、予定貸借対照表等も国会に提出いたしておりませんが、これは先ほど来申し上げておりますような理由によるものでございます。
  109. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじゃもしそうならば、何らかのやはりその資金体の歳入、歳出をはっきりするようなものを別に示されなければ、その点の勘定は非常に不明瞭になってくるのじゃないか。だからもし産投特別会計と別なものであるならば、別な一体としてこれは特別会計になるが、あるいは少くとも資金勘定として別途な勘定が一応出されて、それとこれとを突き合せたときに初めて出入りがはっきりなるということでなければ、どうもその収支が明瞭でない。そういうふうな感じがするのですが、そういう特別の資金の経理をされるならば、それは特別会計なり何なりとして設定をする必要があるのじゃないか。それなしにただ資金勘定だけとしていうのなら、やはり産投特別会計の中の収支の問題としてお書きにならなければならない。そういうものを無視して勝手に資金だけを立ててその勘定は別に出さないのだとしておやりになることは、先ほど財政法上いろいろ御説明を願った点に明瞭に違反をしている結果になってしまう。その点はどういうふうに。
  110. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 先ほども申し上げましたように、この資金の動き、これは決算にはむろん当然出るわけでございます。それから来年度以降予算を提案いたします場合の参考書としての財務諸表これにも当然出るわけでございます。今回はこの法律によって初めてこれが創設されたわけでありまして、その関係予算を伴いませんために、三十一年度末の貨借対照表その他の財務諸表をお示しする機会がなかったわけでありますが、予算を伴いまする場合には、資金の動きにつきましても参考書として必ず予定貸借対照表等を添付することと相なりますので、それによって御審議をいただくということに相なろうかと存じます。なお決算につきましてはこの資金の動きの報告を国会に提出いたしまして、御承認をいただくということになっておりまして、先ほど来申し上げております各種の資金につきましても、同じような取扱いになっておりますことを御了承いただきたいと存じます。
  111. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうもそういうことになりますと、決算のときに予算になかったものが決算になって突如として出てくる。それから財務諸表、参考書類も三十一年度からその原資はすでに発生をしているのに、その三十一年度にはあったが消えてしまって、三十二年度にもそれが参考書として出てこないで、三十三年度になって初めて参考書として出てくるというような結果に相なるので、そこは完全に切れちゃうのです。そういう会計法上の処理があるのかどうか。これはやはりどうもあなた方の方で無理なこういう会計の立て方をされた結果、法律を無視して違反をした結果になっているのじゃないか。
  112. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) この資金につきましての会計法上の扱いは、先ほど来申し上げている通りでございます。今回のこの三百億円の資金設置に関連いたしまして、たとえば三十一年度中にもし三百億の一部が歳入として受け入れられ、あるいは歳出として出されるというような予算の補正を必要とするような事態がもしあったといたしまするならば、当然その予算の参考書として財務諸表を提出しなければならぬわけでございますが、そういう機会もございませんでしたし、ということは、つまり本年度内はこの三百億円には手をつけないというようなことからくる当然の結果でございまして、この法律を出しました当初における処理といたしましては、やむを得ない取扱いに相なると存ずる次第でございます。
  113. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうもそこのところがはっきりしないのですが。非常な無理をやっておるのであります。で、そういうこの財政法で規定しておる特別資金なるものは、たとえば特別調達資金、あるいは補助貨幣云々等の問題のように、それはなるほど回転はするけれども、長期にわたって消費されることがないそうして保有されるというようなもの、そういう特殊な意味で特別の資金勘定ができていると思うのですが、そうでなくて今あなた方が設けられようとするその資金は、普通の一般の歳入歳出と同じような性質を持つものであって、ここでいう特別な性質の資金では絶対にあり得ないわけなんです。そういうものを特別の資金であるかのように擬装をして、そういう無理をされている。しかも今のように財政勘定上はどこに行ったか、しばらくの間行方不明だというような無理な勘定の仕方をして、最もこの大事な資金の問題を非常に混迷に陥れてしまって、私もこれをいろいろやってみてどうもわからないので、今のような疑問を起したのですけれども、この点についてはどうしても財政法上の違反としか考えられないのですが、法制局ではこの点はもちろん法律をお作りになるときにいろいろ協議をされたわけでしょうが、何らこういう問題は問題にならなかったのでしょうか。
  114. 林修三

    政府委員(林修三君) お答え申し上げます。先ほど私の方の次長からお答えしたと存じますが、この産投特別会計の特別の資金の問題でございますが、この資金を特別会計あるいは一般会計に設けて、それぞれ特殊の理由がある場合に、そういう資金を設けて歳入歳出外現金として操作するということは、これは例の多いことでございまして、そういう特別の必要はわれわれも十分大蔵省から説明を受けまして、法律体系上差しつかえないと、こう考えておるものでございます。産業投資特別会計法の一部改正法案については私どもそういう見解で審査をいたしまして、私の方も通したわけでございます。
  115. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 資金の性格でございますが、これはいろいろな目的の資金があり得るわけでございまして、まあ大ざっぱに申しますと、消費的な資金、つまり支払いに充当することによって逐次消費されるような性質の資金、それから準備的資金、何か将来の用途あるいは欠損の補てんに備えての資金、あるいは資本的な資金、これは固定資産に相当するような資金でございます。基本財産的意味の基本的資金、そういったいろいろな性質のものがございます。今度の資金は財政投資に充当するために資金をとりくずしていくわけでございまして、その意味では消費的な資金に該当するわけでございますが、これに類した例は、たとえば昔、大学及び学校資金というようなものがございまして、これは資金を持っておりますが、これはいずれば学校の建築なり何なりに使ってしまう、そういう性質のものがございます。そういったような先例も幾多あるわけでございまして、財政法四十四条の違反であるとは私ども考えておりません。
  116. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 法制局長官は、それが特別な用途を持っておる資金であるから、そういう特別な資金としてやったのだというお話でありますが、法制局の判断としてはその資金の目的、用途等等の、経済的な内容にわたる用途が何であるかということを御審議になる必要は毛頭ないのだ。法制局としては形式的な、ここで財政法に規定をしておるような特別な資金、すなわち一般の歳入歳出として取り扱われるもの、そういう一般のものと、一般の歳入歳出の経費と違った勘定上の意味を持つ経費であるかどうかという、形式上の問題だと思うのです。それが特別な意味を持っておるから、この年度区分の単年度制度をくずして処理してもいいと、ここで例外的に言っているわけでしょうから、そういう一体、一般の歳入歳出経費と形式上違ったものであるかどうかということを判定されればいい。それはどういうふうに法制局ではお考えになっておりますか。
  117. 林修三

    政府委員(林修三君) 結局この財政法で言っております、つまり国の需要に充てるものを歳出とし、その需要に見合うところの収入を歳入とし、この歳入歳出を予算に組むというのが財政法の建前でございます。特殊なそういう用途に充てます資金につきましては、そういう資金に入れたりあるいは出したりするのを歳入歳出とすることを、性質上適当としないものが多々あるわけでございます。資金運用部資金あるいは外国為替資金とか、あるいは昔ございました貿易資金、あるいは一般会計にもございますが、大学資金あるいは国税収納資金というようないろいろな資金がございました。こういう資金はそれぞれ特殊の性質をもって、特殊の用途にあてられるものでございますから、これを直ちにその資金の出し入れを歳入歳出として扱うことが不適当、こういう性質上の特色を持っております。要するに結局今お尋ねの点も、そういう歳入歳出とするに適しないような特質があるかどうかというお尋ねでございます。これは私ども考えまして、一種の資金を設けて、その資金の運用としてある融資をする、貸付をする。あるいは投資をするというものであれば、これはやはり歳入歳出に必ずしも組み入れる必要がないわけであります。その資金の回転として考えている、かように考えまして、私どもとしてもやっております。
  118. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうもよくその点がわからないのですが、それならば逆にお尋ねをしますが、これを直接に産投会計の歳入歳出として処理をすることがどうしてできなかったのか、そっちはどういうふうにお考えになりますか。
  119. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) その年度に財政投資に充てますものを、それだけの金額だけを限って一般会計から入れます場合には、これは資金にする必要がないわけでございます。これはむしろ資金を設けないで、一般会計から産特会計に入れまして、産特の方はそれを歳入に立てまして、次にその年の歳出の財源に充てればいいわけでございます。今度はそういう単年度の問題としてでなくて、自然増収を活用する意味で数年度にわたって計画的、弾力的にこれを財政投資の原資として活用しょうということでございますので、そういった歳入歳出だけの処理では処理ができなかったわけでございます。  なお先ほどちょっと申し落しましたが、三十二年度の予算には、三十二年三月三十一日現在、本年度末の貸借対照表を、三十三年三月三十一日、三十二年度末の貸借対照表のいずれをも財務諸表として添付いたしておりますので、これによりまして期首、期末の動きはごらんいただけるかと存ずる次第でございます。
  120. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 もう一ぺん今のを。どこに出ているんですか。
  121. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 三十二年度特別会計予算の百二十二ページに、三十二年三月末現在の貸借対照表が出ております。それから百二十ページに三十三年三月末現在の予定貸借対照表が提示してございます。
  122. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点はどうも私にはふに落ちませんが、それではもっと内容的な問題の方に移ってお尋ねをしたいのですが、その自然増収がそういうふうに予想以上にたくさん出た場合に、これをどう使うかということについては、いろいろな問題があり得るし、いろいろに考えられると思うのですが、大蔵大臣は、これを使うのにどういう場合を想定し、それらのいろいろな場合をいろいろ彼此勘案して、最後に結論としてこれ以外にないというふうにお考えになったのでしょうが、その辺の考え方をどういうふうにお考えになったか、大蔵大臣に御説明を願いたい。
  123. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の要点がはっきりいたしませんから、一応想像してお答えいたします。私は、昭和三十二年度におきまして、財政投融資は基幹産業、重点産業の方に相当金を出したいとこういう気持があったのでございます。従いまして、三十二度において一般会計からどうこうするということよりも、たまたま三十一年度で相当の自然増収がございますので、弾力的にこれを産業投資に使った方が財政の効率が上ることと思いましていたしたのであります。
  124. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それでは非常な無理をして、こういう財政法違反ともおぼしきようなことをあえてして、一つの資金を設定されたことになっていると思うのですが、この自然増収を普通の財政法に規定する通りに使うことにすれば、どういうふうになるのか。  それから、そのことがどうも財政運用上あるいは金融との関連において不利だ、不都合だというふうにお考えになった点があるであろうと思いまするが、それらの点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  125. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、佐多さんのように、資金会計を設けてそうして後年度への弾力性をも持たすということが、無理とは考えておりません。それが私はベターだと思っておるのであります。その点が出発点から違います。で、もし私がこの資金を設けずにそのままでやっておりまするならば、これは翌々年度の歳入として上るわけでございます。翌々年度の歳入で、当初予算を作りますときに九百数十億円と見ておりましたが、例年から申しますると百億円余りは不用額その他が立ちまして、千億円をこゆる前年度剰余金ということになるわけです、昭和三十三年度におきまして。そうしてそれが半分は国債償還に充て、半分がその年の歳出に充てられる。こういうことを三十三年まで待って、そうして五百あるいは六百億円のいつもと違ったここに財源がある、そうして今度三十四年度には非常に財源が少くなる。こういうことを考えましたときに、私は、この際三十二年度におきまして基幹産業その他が非常に困っておりますから、この際これを使うことがベターであると考えてやったのであります。無理とは考えておりません。財政法第四十四条でそうすることを予定しておるのでございます。その点がお考えとちょっと違うのじゃないかと。私はあの際、自然増収は相当出るんだ、しかも三十二年度においていろんな施策をやるんだ、ことに基幹産業への融資を相当やっていかなければ、経済基盤の拡充強化がはかれぬというときにはこういうことがベターであったと私は考えておるのであります。
  126. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 経済財政運用の仕方としてどっちがいいかどうかという問題は、いろいろ問題がありますから、私はまだその論議には入っておりませんが、しかし少くとも形式的には非常に無理であるということは、これは争えないと思います。その点は一応おいて、大蔵大臣は、そのようにお考えになるならば、これは一つの資金の何といいますか、弾力的な、しかも国家による運用という問題になると思うのですが、大蔵大臣、あるいはあなた方の政府は、しばしば言っておられるように、資本主義体制のもとで自由経済を基調として、経済、財政、金融を運用をしていくというお考えだと思うのですが、そうであるならば、むしろこういうふうな基金制度を設けて国家が非常にたくさんの資金をもって、これを国家が積極的に運用をするという方向でなしに、資本主義体制であるならば、むしろ取り過ぎたのだから、これは国民に返しておくべきだ。そして国民のふところにしまわしておいて、それを金融機関その他を通じて適当に吸い上げたり出したりすることの方がより有利だと。こういうふうになるじゃないかと思うのですが、その点はあなた方がふだん資本主義体制のもとに自由経済でやるのだということと、全く背馳した反対な方向がとられつつあるように思うのですが、この点を大蔵大臣はどういうふうにお考えになるか。で、私は、この点はさらに大大蔵大臣にお聞きする前に水田さんにお聞きをしたいのですが、私が特に水田さんにお聞きしたいというのは、この予算編成の当初に当って、昨年の暮でしたか、もう少し前になりますか、あなたが政調会の会長として一つのアイデアとして水田構想として出されたものだと、私はそのときからのいろいろなあれを見てそう承知をしておるのですが、水田さんは今のような制度、体制をどういうふうなつもりでお出しになったのか。いわゆる水田構想なるものはどういうようなことを当初考えておられたのか。まずそれからお答え願いたい。
  127. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私が政調会におりましたときも、今大蔵大臣が言われたと全く同じ構想で考えておりました。ただ私の場合は三百億じゃなくて、ことしの自然増収の趨勢からみて、もう少し大きい資金を産特会計に入れておいてもよくはなかったかと考えたことでございますが、構想は全く同じでございます。
  128. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 だから、構想は全く同じで、そしてあのときにお考えになったのは、後ほど問題にする資金委員会なり何なりとの関連の問題として、とにかく国家が資金を持っていて、それで少くとも基幹産業その他の資金運用は、弾力的に国家がやるのだという構想なり考え方に基いていたと思うのですが、そうなれば先ほどから言っているように、あなた方の資本主義体制なり自由主義体制の資金運用から、非常に違ったものに変質をしつつあるその第一歩であると考えていいのかどうか。この点まず水田さんから。
  129. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 従来の予算におきましても、一般会計からの産業投融資というものは、非常に多い額でございまして、この二、三年来税金による投融資というものはなるたけ避けようという方針でやってきましたので、現在では非常に少い額になっておりますが、今度のような、非常な自然増収があるというような予想をされておるときにおきましては、従来から、非常に多く出ておった投融資を最近非常に圧縮しておりますので、むしろ資金の弾力性というようなものを与えるために、この際、産業投融資会計に相当の金額を繰り入れるという措置がいいだろうと考えたわけでございまして、あれくらいの額を投融資しても、従来からの方針から見ましたら、まだ国の直接投資を非常に強化したということにはならないので、数年前の実情から見ましたら、非常にその投融資部分は減っておるということになりますので、その点にはほとんど問題なかろうかと存じております。
  130. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点、大蔵大臣はどいうふうにお考えですか。
  131. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 佐多さんの、前段の、税の非常な収入があるときには、これを減税にするとか、あるいは国の施策に使うことが資本主義のあれとしていいではないか、こういうことをおっしゃったと思いますが、国がこれに投資をするのではなしに、税の増収のあった場合においては、これを減税に充てるとか、あるいは社会保障制度その他国家の施策に充てればいいのではないか……。
  132. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは別の問題です。あなた方の体制だったら、返してしまうということが筋なんじゃないですか。資本主義経済を守ろうとされるならば、なぜ返さないのか。
  133. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それがわれわれの考え方でございますから、減税も、あるいは社会保障制度その他の国の施策をやったわけでございます。しからば三十一年度をどうするか。これは、さかのぼって減税をするというわけに参りません。従って、今ちょうど民間の事業が非常に発展してきましたが、民間だけではできない仕事があるのでございます。これを財政の持つ役割と言っておりますが、たとえば、電源開発をするとか、あるいは住宅を建てるとか、道路を直すとか、こういうことは、民間の資本だけではできない部面があるのでございます。(佐多忠隆君「資本主義だけではね」と述ぶ)資本主義だけでは、こういう場合があります、それは過渡的に……。資本主義が高度に発展すれば、そういうこともできましょうが、日本のようなところでは……今、住宅をこれはやっております、生命保険会社その他があるいは労務者住宅としてやったりしておりますが、それではまだ及び切れない。それが原則ではございますが、過渡的にはそういう場合がある。そこで、過去において非常な増収があった。これをいかに使うかということもまだ高度に行っていない資本主義経済のもとでは、国家がこれに力を貸してやる、こういうことが私はいいことではないかと言うので、過去の自然増収の分を財政投融資にして、電源開発あるいは住宅を建てる、こういうふうに向けたわけでございます。何ら今までの、今の施策はわれわれの主義主張に反しておるのではございません。われわれの主義主張をずっと通しながら、しかも、及ばざるところをやったのでございます。
  134. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の答弁ではっきりしますように、少くとも日本においては、現在の段階では、自由経済なり資本主義的な体制だけではやれないので、たまたまそういう資金がたまってきたので、これを国家の力で補完的に——量的にあるいは質的に補完的な作用をさして、弾力的な運営をしていくのだというお考えだと思うのです。その限りにおいては、資本主義だけではいけないということをあなたでも認めざるを得ないということなんでしょうが、問題は、これが経過的な、単に一時、今足りないからという措置であるのかどうかという問題、それから、あなた方のおっしゃるように、資本主義の発達が幼稚な段階であるから、それが不可避だというふうに考えるのかどうか。これは、長期計画とも関連をする問題でありますが、あなた方の長期計画から考えれば、こういう体制はほとんど今後もずっと続いて行って、少くともこういう体制が大きくなるというような計画になっておると思うのです。従って、もう体制的にそういう方向をとるということになるのではないか。  それからもう一つは、資本主義の発達の段階が低いからという問題ではなくて、むしろ戦後の資本主義のもとにおいては、どこでも財政が経済の比重よりも大きくなって、財政が金融に優先をする、むしろ高度に発達をしたところの体制としては、こういうことで取り扱われているのじゃないか。そうなれば問題は、これを一時的な経過的なものとして見るか、いや、将来にこれはさらに発展をして行って、体制としてはそっちに移り変る意味での過渡的なものであるというふうに考えるかどうか、しかも、その過渡的な形が、われわれの立場からいえば、それが社会主義から転化した過渡的なものであり、あなた方からいえば、それが資本主義の余命を長からしめる一つの方策と思います。そういう補強工作からやるのだということの違いだけがそこへ出てくるのじゃないのか。それは、ちょうど社会保障の問題でも同じだと思う。社会保障の制度は、資本主義の国において、労働党も保守党も同じようにこれをやり、これ自体はいいことであるから、保守党の諸君もやらざるを得ないし、あなた方も工夫をされる。これが果して十分できているかどうかは別問題です。その場合に、社会保障を、あなた方の方では、やることなしには、資本主義の命脈が長らえないから、それを彌縫するものとして、これで、延命策をやるというお考えであろうし、私たちは、体制としての方向は、それが社会主義的な方向であり、それの過渡的な問題としてその問題を推進するのだ。あなた方と私たちとの政策なり体制の相違はそこにあるのだろうと思います。従って私は、この今の自然増収をどう使うかという問題、ことに産特会計なり、あるいはもっと大きくは、財政投融資の問題を財政の中においてどういう位置のものかということを考える場合に、そういう点が問題になるのじゃないかとという意味で、その基本的な考え方なり構想をあなたにはっきり聞きたい、こういう質問なんです。その点、どういうふうにお考えですか。
  135. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 資本主義とか社会主義とか、こう簡単におっしゃるのですが、(笑声)私は、そう一がいに言えるものじゃない。それから、高度のところか低度のところかという問題も、その国の状態によって、たとえば、アメリカのように、非常に高度の資本主義の国と申しましても、道路その他につきましては、国が税金でやっております。一がいには言えぬと思います。われわれ保守党と申しましても、何の進歩も考えないことはないのであります。(笑声)こういう点は、一がいにここで資本主義ときめつけられて、どうこうと言われるとということは、いかがなものであるかと思いますが、われわれは、ともかく国民生活の安定向上と社会保障制度の拡充でありますとか、もう一つ言いますれば、完全雇用の目標達成、こういう三つの柱で行っているのであります。
  136. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと関連……。  三十一年度の自然増収の中から産業投融資特別会計に投資する点について質疑が行われておりますが、百億の地方交付金に回す分はとにかくとして、四百億——今、自然増収をあるいは電源開発あるいは住宅という話もございますけれども、主として産業投資に回して、これは階層からいいますならば、大資本に回していくという点は明らかだと思うのでありますが、そうすると、一千億を超します三十一年度の自然増収の大部分は大資本に回って、社会保障その他を言われますけれども、所得の低い部分には、これは回らないという方向だけははっきりしておるのではないかと考えられますが、そういう点について、どう考えておられますか。  それから、ちょっと戻りますけれども、どうも佐多委員の質問に、大蔵省それから法制局から御答弁がございましたけれども、私どもも納得がいかぬのでございますけれども、特別会計に回しても、財政投融資に回していくということはかわりがない。そうすると、その財政投融資に回す場合には、特にどういう工合に財政投融資をするかという計画も伴って、予算の場合にはお示しになるわけです。それを四十四条の特例で特別会計に回すということだけれども、そういたしますと、国会の、何と申しますか、予算審議から離れて、特別会計として、政府だけで融資をされて参る、三十三年度に決算としては出て参るということでありますけれども、特別会計に回ってからは、国会の直接の監督というものはなくなる。そういう意味で、国会の、何と申しますか、国民の承諾を得るという点は、これは希薄になるのではないか。そういう点が、財政法の基本方針に反した制度がまた一つふえるということではないか、こういうことだろうと思いますが、それについて、法制局の意見も承わりたいと思います。少くとも法的には、これは合法的な手続をとられておるということでありますけれども、財政法の精神、国民が国会を通じて、収入についても、あるいは支出についても十分承認を与える、あるいは審議を通じて監督をする……そういう点から言って、財政法上好ましくないという点は私は言えるのではないか。その点、もう一度重ねて御答弁を願いたいと思います。
  137. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 第二の点からお答えいたします。これは、御審議願いまする産投特別会計の改正法律案によりましてはっきり書いてある。しこうして、三十二年度におきまして、百五十億円は、歳入、歳出に載っております。それから三十三年度、その資金から繰り入れまするときも、これまた歳入、歳出に載るわけです。それで、特別の法律を設けまして、三十一年度の自然増収から資金を三百億作ります。こう法律で書いてあるので、私はそこに、何と申しますか、どこへ行ったかわからぬというふうなことはないと思う。法律にはっきり書いてある。そうして三十二年度には歳入、歳出に載り、そうして三十三年度にもそれが載り、決算でもそれが表われてくるのでありますから、この点は疑問はないと思います。  それから第一の問題。自然増収を産投へ入れて、大企業、資本家ばかりを援助する、こういうお話でございまするが、ごらんいただいてもわかりますように、今、電力炉非常に不足でございます。これを早く開発して、電力不足をなくすることは、何も大資本ばかりではございません。中小企業にしても、また停電で困っている一般民家も。これは、みんなに喜ばれるようにというので、政府で設けました特別の電源開発会社に出資するのでございます。しかもそれは、電力料をできるだけ安くするように、利子を取らない。これは、私は国家としてぜひ必要だと思います。しかしてまた、今国民的に非常に困っているのは住宅でございます。今年は、住宅金融公庫に三十億、前年度、三十一年度はございませんが、三十二年度から三十億、それから住宅公団に九十五億、前年の三倍近くもふえている。住宅の増強をはかるということは、何も大会社に援助を与えるという意味じゃございません。私は、こうすることが国民全体として喜ばしいことであるから、早く電気を起そう、早く住宅を建てよう、こういう念願からやっているのであります。   〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕
  138. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこで今、産投会計といいますか、産特会計といいますかの問題が、大資本家だけの問題ではないというお話ですが、まず、それに関連して聞きたいのは、産投会計が昭和二十八年度には三百六十七億、二十九年度には二百五億、三十年度には百八十億、三十一年度には百三十二億というふうに変化をしてきております。そこで、ここから考えられることは、二十八年度が一番多くて、これは、産投会計のできた当座でありますから、多いことも当然でしょうが、それからだんだん減ってきて、百八十億になり、三十一年度は百三十二億になりまして、だんだんこの産投会計は減ってきている。それが三十二年度からは、また非常に大きなものにふくれ上ってくるというのが長期に見たときの趨勢だと思う。  そこで、それを考えますと、とえばこの三十二年度は、ここに出ておりますように、四百三十一億になります。非常に大きな、飛躍的な増加になる。そうすると、金額が非常にふえたのみならず、性格が非常にここで違ってきたものになりつつあるのではないか。これを金額の増加と関連をして、性格変更を大蔵大臣はどういうふうにお考えになってこれを編成をしておられるか、その点をお聞きしたい。
  139. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、今のお話の数字、のみ込めませんが、大蔵省から出した資料でございますか。
  140. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうです。大蔵省から出した、二十八年度から三十一年度までの財政投融資計画実績対比表の中の産投会計の数字です。
  141. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は資料を見ておりませんので、ちょっと資料を取り寄せまして……。あなたにお上げした資料を私がみな持っていればいいのでありますが、持っていないので……。(笑声)
  142. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 数字自体は問題でないのですよ。
  143. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のように、産業投資特別会計の投資額は、二十八年度に比べまして、二十九年度は半分以下になっております。それから三十年度が二百三十億、三十一年度が百三十二億でございます。これは、御承知の通り、産投会計を設けました当初におきましては、貯蓄国債をやった記憶がございます。それで、これを入れたのがあります。それからいろいろな、財源的にそういうものが相当あったんでございまするが、これが枯渇いたしましたために、だんだん減ってきたわけでございます。そこで、産投会計におきまして、今、政府として、先ほど申し上げましたような、電力とか住宅とか、あるいは農林漁業金融公庫とか、お金をたくさんにすると同時に、一般金利を安くする。すなわち無利子の金利を入れる必要がある。で、三十二年度におきましては、思い切ってそういうものに金を出すことにいたしたのであります。日本経済の基盤強化の上からいって、私は、三十二年度においては、今までずっと少くなった産業投資特別会計を多くするという私の基本方針によりまして、大きくしたわけでございます。
  144. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 だから、この三十二年度から飛躍的に増額をしてきている。それから、長期計画等から考えると、これが前のように漸減をしてしまうんじゃなくて、むしろ漸増あるいはさらに飛躍的な増加をする趨勢にある、資金需要その他から見ていいんじゃないかと思うのですが、そうなると、ここに産投会計自体の性格変更の問題が生じてきておるんじゃないか、こういうことをお尋ねをしておるのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。ことに、今御説明がありましたように、かってはこの産投会計というものはだんだん縮小してしまって、資金がないのだから、だんだん食いつぶされていくんだから、縮小一をしてしまって、そして民間資金を有効に活用をするんだというのが、あなた方の財政方針だった。財政金融方針だった。そうしてそれは、一萬田大蔵大臣その他に言わせれば、これが資本主義の本来のあり方なんだから、こういう方向に返していくんだ、今までの方がむしろアブノーマルだったんだという御答弁です。ところが、ことしになると、資金の需要も非常にふえたが、資金も手持ちが出てきた。そこでそれに関連をして、やはりいや、また、これは、比重の大きなものにして、国家による弾力的な運用の資金にするのだという態度に変ってきたし、そういう意味では、性格変更をしてきているのじゃないか、そこいらの変転をどういうふうにあなた方はお考えになって、この政策をおやりになっているのか。
  145. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 原則といたしましては、たとえば電力にいたしましても、開発銀行でやっておりまする一般基幹産業その他につきましても、民間でやっていただくのが原則でございましょう。しかし、鳩山内閣のときに、住宅の計画的増築をやるというふうなことでございまして、そしてまた、今の日本の置かれた経済から見ますると、民間にまかしておくことでは、時期的にも金利的にも困るというふうなものにつきまして、政府が積極的にこれに介入していこうと、いわゆる健全な積極財政が今度現われてきたのでございます。たまたま自然増収もございますので、この際、日本経済基盤の拡大強化、そして国民の非常に要望している住宅の建設に当ろう、こういうのでございまして、考え方としては、民間資金でやることが常道でございますが、民間資金でできない点がございます。たとえば今度の——今あなたは主として三百億円——百五十億円ふやした点を言っておられるようでございますから、それに局限いたしまするが、全体の産業投融資としては、三千数百億で、非常に多くなり、これもおおむね民間資金と言えば言えるのであります。資金運用部資金、簡易保険(佐多忠隆君「それは民間資金じゃないですよ、政府資金ですよ。」と述ぶ)政府資金といたしましては、たまたまこれが郵便貯金になったり、あるいは簡易保険になったりする。銀行やあるいは生命保険へ行くのがこっちへきておる。だからこれは、民間に還元すべきものだ。だから、そういうものも相当民間に還元しております。でありますから、今申し上げたような状況で、自然増収のうち、早く使って基盤を早くよくしよう、こういうのが健全な積極政策である。こういうことでございます。
  146. 左藤義詮

    ○理事(左藤義詮君) 佐多君、時間が尽きておりますので、簡単に願います。もうだいぶ前に尽きております。
  147. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私が聞きたいのは、あなた方は自由主義経済に返すというので、そういう産投会計にしても、大きくは、今お話の触れた財政投融資にしても、だんだん減すことをお考えになっておる。ところが、ことしになって、突如としてあのいわゆる積極財政の考え方が入ってきて、これが量的にふえたのみならず、質的に財政が日本経済に占める地位、あるいは特に金融に対する地位炉非常に変ってきた。これは、今までのあなた方の政策なり何なりの非常に大きな変更んです。政策変更だと私は思うのです。それは、積極財政に変ったのだから、当然だと言われるかもしれぬが、あなた方は、内閣としては継続しているのだというふうな意味で言っておられるので、本来ならば、そういう性格変更は許されないはずなんだけれども、ただ量をふやしたということでなしに、そういう大きな性格変更があることをはっきり認識をして、それを明瞭にむしろ打ち出されることが必要なんじゃないか。それをほとんどやっておられずに、ただ積極財政だとか何とかいうような言葉でごまかしておられる。そこのところが、それはそういうふうにごまかさなければ、内閣が継続しているのだということと抵触するから、おそらくそういうふうに言っておられるのだろうが、それではわれわれとうてい許されないということで、私はあなたにお尋ねをしている。  それからもう一つ、特に産特会計でお聞きをしたいのは、産特会計は、私から申すまでもなく、第一条で明瞭にしておるように、その目的は、経済の再建産業の開発、貿易の振興というような、いわゆる厳密な意味における産業投資特別会計なんですね。ところが、今度の産特会計は、今、あなた自身もおっしゃったように、そうでない、いろいろな公団とか何とかいうようなものに非常に多額の金を出しておられる。特に私がけげんに思うのは、日本住宅公団の出資金十五億であったのが九十五億という、非常に飛躍的にふえているのです。これは私は、厳密に言えば、産特会計の目的なり何なりからはずれた性質のものだと思う。産特会計の目的は、さっき言ったように、産業特別資金、産業投資特別会計なんです。厳密に言えば、日本住宅公団なんというものは産業じゃないはずなんです。それに非常に大きなものをやっておられる。しかもこれは、後ほど、住宅政策の問題として、内村君から詳しく質問があると思いますが、公営住宅の制度あるいは公庫住宅の制度を、ずっと金額をふやさないで、あるいは場合によっては減らすような政策をとってきながら、住宅公団にだけは非常に大きなものをやっておられる。こういうのは、産業特別会計の非常な乱用なんじゃないか。それをどういうふうな意味、気持でこういう組み方をしておられるのか、特にその点を御説明を願いたい。
  148. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 産業投資特別会計のうちで、政府の狭い意味の財政資金につきましては、すなわち税収入で上ったものにつきましては、先ほど来申し上げましたようなことでふえました。しかし、広い意味で財政資金に入りますが、実際は民間資金とその源を同じようにしております簡易保険、あるいは郵便貯金等、厚生年金等におきましては、これはある程度ふえておりまするが、民間のふえておる程度と同じでございます。だから、去年とことしを産業投資でお比べになれば、非常にふえたようになりますが、日本経済自体、日本産業自体は、ここへ盛っておる金額に劣らないようにふえておるのであります。その全体の動きをごらん願いたいと思います。従いまして、郵便貯金がふえ、厚生年金がふえ、簡易保険がふえた場合の金の使いようを有効に使うために、そのふえ方が、民間の預貯金が今年度は一兆円をこえる、それが投資に向くというようなことを考えますと、何も政府ひとりが非常に膨張したことをやっておるのじゃない、その点を御了承願いたいと思います。  それから、住宅公団に十五億円出した、それを今度九十五億円、非常にふやしたじゃないか、これは、鳩山内閣と石橋内閣は違うのであります。鳩山内閣のときには十カ年計画でございました。そして二年経過しておる。あの計画でいくと、あと八年かかるのを、石橋内閣は八年を五、六年に縮めようとしておるのであります。その政策のいい悪いは別といたしまして、産業投資特別会計で、そういうことをやっていいかということを申しますと、やっぱり経済の再建でございます。国民全体の住宅を建て、そして住宅に楽に住まえるようにしてやることが経済の再建、産業の開発や貿易の振興に当るのであります。産業の開発に当るといってもよろしゅうございますし、貿易の振興に当るといってもよろしゅうございますが、やっぱり住宅を持つことが経済の再建に私はなると考えまして、やっておるのでございます。
  149. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう意味でならば、学校をたくさんお建てになることも経済の再建なんですよ。そういうものと特に区別して、産業投資特別会計なるものをなぜお作りになったか。あれを作られたときに、ちゃんと説明をしておられるじゃないですか。具体的には、電力だとか海運だとか石炭だとか鉄鋼など、経済の基盤となるべき重要産業に対する設備資金の供給なんだ、もう一つ貿易振興のための設備、または運転資金の供給なんだと、非常に限定しておられるのですよ。そういう限定を破って、住宅が必要だからといって……住宅が必要なことは私たちもわかりますよ。しかしこれは別の出し方がある。住宅公団は、今申し上げたように、公営住宅、公庫、住宅、公団住宅と、こう比べれば、公団住宅は、同じ政府の住宅としても、上層の、少くとも中以上の、中の上のクラスの人が利用する住宅なんです。しかも、これは公団なんです。公団だからして、これは資金の貸し付けなり何なりでやればいいことであって、そういう上層の、しかも支払い能力のあるような人たちを相手にしたところの公団に、そういう九十五億もの金を使う余裕があるならば、なぜ庶民大衆の公庫住宅をもっとお作りにならないのか、あるいはもっと庶民大衆の公営住宅の方に財政支出をしてお回しにならないのかというような問題が出てくる。しかも、住宅政策の問題は、さっき私が申し上げたので申しませんが、少くともこういう公団に金をお出しになることは、非常に本来の産業投資特別会計の目的を逸脱したものである。もしもそういうことをされるならば、法律の改正をおやりになったらどうですか。しかも、あなた方がこういうことをおやりになるならば、今あなたの御説明は、この財政投融資の問題と産特会計の問題と混同しておられる。広く財政投融資の問題であったら、あたなのおっしゃるような説明もつくでしょう。そのために、産業投融資の項目があって、そこで財政措置をあなた方はしておられる。それをわざわざ避けて、産業投資特別会計に持っていかれる。そうしてそこから九十五億もの金を回しておるというのは、何としても法律を軽視した、乱用もはなはだしいと私は言わざるを得ない。あなた方が財政法の違反に類するようなことをあえてする、さらには、産業投資特別会計をむちゃくちゃにするような、こういう乱雑な運用の仕方をしておられることは、われわれはどうしても、何としても納得ができないのですが、どういうふうにお考えですか。
  150. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、今の日本経済産業の全体を見まして、産業投資特別会計において、この程度のお金を盛ることは適当であると信じておったのであります。財政法違反に類するとか、いろいろな御議論がありますが、私の信念は、これが産投会計のあり方としていい、これは、毎年九十五億出すとか、あるいは二百億出すとかいうものではございません。そのときどきの状況によりまして、金額は移動はいたしまするが、日本産業経済全体から申しまして、産業投資特別会計のこの使い方はうべなりと思って、御審議を願っておるのであります。
  151. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 あなたは、自分の信念でありさえすればよろしいんだとおっしゃいますけれども自分の信念であれば何をやってもいいというなら、それはファッショですよ。ちゃんと法律に、どういう目的に沿うものをお出しなさいということを、われわれはあなたと一緒にきめた。その法律に準拠してお出しにならなければ、いかにあなたの信念であろうと、何であろうと、これは許されないはずなんです。ただ、だからこれが最良の方策であって、私の信念ですということでは、これは通らないんですよ、あなたがいかに強引であろうとも。それで簡単に通るようにお考えになっておるから、われわれ了承ができない。法律に従って了承ができないと言っておる。もっと考え直したらどうですか。
  152. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどの答弁で申し上げましたごとく、私は、今の日本の置かれた状況におきまして、経済の再建に国が住宅をふやすということが当てはまらぬとは考えていないんです。金額の多い少いは財源によってきまりまするが、住宅公団に出しておることは、三十年度も出しておるのであります。で、今住宅をたくさん作るということが日本経済再建に私は必要なりと、こう考えてやっておる、これは先にも申し上げたことであります。それを受けて、そういう考えのもとにやっておるということでございます。何もファッショとか何とかいうものではございません。十分御議論をして、そうしてあなた方に御審議を願っておるのであります。
  153. 左藤義詮

    ○理事(左藤義詮君) 佐多君、もう時間が尽きておりますから、これだけに願います。
  154. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 非常に重要な点ですから……。  これが何でも経済再建になるんだというお考えならば、さっきから言っているように、小学校をたくさん作ることも、研究所をたくさん作ることも、みんな産業経済の再建なんですよ、あなたのそういう考え方からゆけばですね。しかし、あなたもまさか、これは産業再建になりますから、小学校をこれだけ建てますとはおっしゃらないだろうと思う。同じようなことが住宅公団にお出しになった金の性質から言える。それは、初めちゃんとこの法律をお作りになったときに、それをはっきり言っておられるんだから、経済再建は、基幹産業にまず集中的に出すんだ、しかも、それがかりに基幹産業でなくて、それの関連産業であっても、経済であるならばいいですよ。しかし、これは経済でなくて、公共的性質のものなんです。そしてしかも、そのためには、財政投融資の項目とか、住宅の項目とか、公共事業の支出というような項目がちゃんとある。もしどうしても必要であるとお考えになるならば、そこからお出しになることがしかるべきだし、あるいは公団の性格からいえば、借入資金で、政府資金であろうと、おそらくそれは借り入れの形式でお出しになるのが、政府金融機関からお出しになるのが当然であるべきにかかわらず、このように財政支出で、しかも、ただの金をこういう公団にお出しになる。なるほど公団自体の経営としては、非常に安いコストですから、いいでしょう、しかしそれは、公団の性質に反するものじゃないか、そういうことを乱用されて、しかも、それをてんとして、これでいいんだというようなことを言われることは、法律無視もはなはだしいから、これはお考え直しになることを繰り返し主張して、一応私の質問は終ります。
  155. 前田佳都男

    前田佳都男君 数日前の新聞でございますが、郵便貯金の第二封鎖預金についての記事が出ておったのでございます。この第二封鎖預金の支払いにつきまして、預金者の間では相当強い要望があるということを聞いておるのでございますが、この第二封鎖預金で切り捨てられましたる金額はどれほどあるか、また、預金者の数は何名程度あるか、切り捨て額は一人当りどのくらいあるかということにつきまして、郵政大臣の御答弁を願いたいと思うのでございます。
  156. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) お答えする前に、御了解を得たいのでありまするが、大臣が出席ができませんので、かわってお答えいたしますることをお許しを願いたいと思います。  お尋ねの郵便貯金の第二封鎖で切り捨てました金額は、郵便貯金で一億六千百六十二万四千円、振替貯金で七百八十八万二千円、合計一億六千九百五十万六千円でございます。切り捨てた預金者の数は、郵便貯金で六万一千三百人、振替貯金で千二百人で合計六万二千五百人でございます。一人当りの切り捨て額はどのくらいかと申しますると、郵便貯金で一人当り二千六百円、振替貯金で一人当り六千六百円でございます。
  157. 前田佳都男

    前田佳都男君 昭和二十一年の当時は、その債務を打ち切ることにつきましては相当の理由があったと思うのであります。しかしながら、預金者の保護という点から、また国営事業の信用を保持するという点からいたしまして、これらの切り捨てられましたる預金者に対しまして、補償する考えはないかどうかということにつきまして、大蔵大臣、郵政大臣の御意見を承わりたいのでございます。また、すでに民間の銀行、保険会社では、同種の第二封鎖預金の切り捨て額に対しまして補償が行われておるいうことを聞いておるのでございますが、その実情もまたあわせて承わりたいと思うのでございます。
  158. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) お尋ねの後段の方を申し上げますると、民間金融機関の切り捨てた第二封鎖の補償状況でございまするが、昭和三十年五月に六大銀行は百パーセント支払って補償いたしております。地方銀行においても補償を完了しておると聞いております。政府が郵便貯金の第二封鎖の預金の切り捨てを補償する考えがあるかどうか、また補償する方法をどう考えているかと、こういう問題でございまするが、これは非常に重大な問題でございまして、具体的の問題についてはただいま大蔵省と折衝中でございます。ただし私見をもっていたしまするならば、郵便貯金は政府事業でございまして、信用保持という点から申しましても、また国民の大衆が零細貯金をいたしたというこの点からいたしましても、郵政省としては責任をもってこれは補償すべきものだと、私はかように考えておりますることを、卒直にお答えいたします。
  159. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お尋ねのうちに、銀行は第一封鎖あるいは第二封鎖を返したと、銀行、保険会社の方は調整勘定がございまして、調整勘定内の経理で第一封鎖をおおむね返し、第二封鎖も銀行が自分の力でやっておるのであります。政府は補償はいたしておりません。郵便貯金につきまして第一次封鎖、第二次封鎖とございまするが、なかなかの問題でございまして、十分検討いたしたいと考えております。
  160. 前田佳都男

    前田佳都男君 法律的にはもうすでに切り捨てられました金額に対しまして、預金者の権利はもう消滅しておるわけであります。この切り捨て金額を補償するとすれば、法律的にどういう措置をするかということにつきまして、郵政大臣にお伺いいたしたいと思います。
  161. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) 補償のために要する資金は、切り捨て額が一億六千九百万円で、利子を含めて二億二千余万円になっておるのであります。その補償の方法をどうするかということについては、これは大蔵省との関連がございまするので、ここではっきり申し上げられませんけれども、私の考えでは、いよいよこの補償をいたしまするならば、やはり大蔵省預金部等の損失特別処理法という法律を一部改正をいたしまするか、あるいは一般会計から借り入れをするか、あるいは他に適当な方法をもってするより道がないと考えておるのであります。
  162. 前田佳都男

    前田佳都男君 国民の富は積極的な施策でその増加をはかることが必要であることはもちろんでございまするけれども、消極的に増加をすると、すなわち減らないようにするということがまた大切なことだと思うのであります。せっかく粒々辛苦いたしまして築き上げました国民の富を、一朝にして失うのは火災である。せっかく住宅政策を遂行いたしまして住宅が増加をいたしましても、その効果を減殺するのもこれまた火災であると思うのであります。ことにわが国では木造家屋が非常に多いと、世界有数の火災国であると思うのであります。昭和三十年度におきまして二万九千九百四十七件の火災がある、損害額が実に三百十八億という巨額に上っております。これらの国の富、国富を守る消防施設の拡充、防火施設の整備ということが、これは刻下の急務ではないかと思うのであります。ところが消防施設の行き届いておりまするのは大都市だけではないか、地方に参りますると、刺子のはっぴを着て手押しのポンプで消防するというまことに原始的なものであります。これらの消防施設の整備ということにつきまして、政府はどういうふうな整備計画をお持ちでございましょうか、その点をお伺いしたいのでございます。
  163. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 消防施設の拡充強化は、お話通りにまことに必要でございまして、政府といたしましても昭和二十五年か六年からか補助を出すことにいたしております。当初は、二億円程度でございましたが、今年度は四億円に相なっております。これだけでも十分ではございませんので、消防税というものを火災保険会社に設けたらどうかという議論がございまするが、これまた税としては私は適当でないといつかの機会に言っておきましたが、火災保険の方では大体七千万円程度の寄付金をいたしまして、消防の強化に当っておるようでございます。しかし政府の四億円とか、あるいは民間火災保険会社の七千万円では十分ではございません。地方におきましても地方自治体であるいは歳出とし、あるいは給付金として相当やっておると思いまするが、都会ほどやはりいなかの施設は十分じゃございませんが、今後もいろいろな施策でこれを強化して参りたいと考えております。
  164. 前田佳都男

    前田佳都男君 消防施設の整備につきましては、ただいま大蔵大臣から御説明を承わりまして、その熱意のほどを察したのでございまするが、いかに消防の施設を整備いたしましても、消防の施設だけでこの火災の損害というものを防ぐことはできないと思うのであります。一度発生いたしましたる損害を填補するのが、すなわち火災保険の制度であると思うのであります。火災保険の会社は現在わが国に二十社ばかりある、ところが、この二十社の火災保険というものが、それほど普及していないと思うのであります。昭和三十年の十月から一カ年の間に、五つの都市、すなわち新潟、那瀬、能代、大館、魚津というような五つの都市で、相当大きな火災があったわけであります。その罹災の世帯数が六千二百六十一世帯、損害額が百九十一億円に達しております。これに対しまして、火災保険の支払い割合がわずかに損害額に対しまして一割前後ではないかと思うのであります。これは、いかに火災保険が普及していないかという一つの証拠であると私は思うのであります。火災保険の普及率すなわち総世帯数に対しまする火災保険契約の割合は、全国平均で約三〇%程度ではないかと思うのでありますが、このうちでも一つの世帯で数個の契約を持っておるものもあるのでありまして、総世帯数に対しまする保険契約の加入世帯数は、二〇%程度ではないかと思うのであります。これは外国に比較いたしまして非常に成績が悪い、損害填補の役割を果していないといってもいいんじゃないかと思うのであります。こういうふうに、民間の火災保険では普及をしない。原因はいろいろあるだろうと思います。その原因一つに、やはり私は保険料が少し高いのではないか、それが大きな原因ではないかと思うのであります。もちろん昭和二十四年ごろから数回にわたりまして、保険料の引き下げがあった。しかしながら、まだ引き下げる余地があるのではないかというようなことを考えられるのであります。現に収入保険料に対しまする保険金の支払いの割合、すなわちいわゆる損害率が約三〇%である。また収入保険料に対しまする人件費その他事業費の割合が約五五%である。契約者に還元する二倍半の事業費を使っておるということは、これは本末転倒ではないか、保険料率はもっと下げるべきではないかというふうに私は考えるのでありますが、この点につきまして大蔵大臣の御意見を拝聴したいと思います。
  165. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 火災保険の契約者は、お話通り大体世帯の三割程度に相なっております。やはり東京が一番多く、六大都市、十五万以上、こういうふうにいろいろ数字がございまするが、お話通り、やはり火災保険はできるだけ普及をはからなきゃいけませんが、また保険会社の会計が、今お話のようになっておることも承知いたしております。ずっと昔からあれしておりますので、代理店収入が相当多かったり、いろいろ改善すべき点が多々あると思うのでありまするが、お話の保険料金につきましては、終戦後たびたび下げて参りまして、今回も大蔵省といたしまして、保険料を一割程度下げたい、三月末ぐらいから実施いたしたいという考えで今成案を練っております。
  166. 海野三朗

    ○海野三朗君 関連質問でちょっと伺いたいのですが、今保険の話が出ましたが、生命保険で、入っておった人が死んだ。ところが今まで入っておった加入額の約三倍の額で次の人が入れということを要求して、これに応じられぬときには支払わないというような態度をとっておる生命保険がある。これは大蔵省ではどういうふうな監督をしていらっしゃるのでありますか。それをちょっと伺いたい。それは実に私はよく知っておる人でありますが、この間、ある青年がなくなりました。三十万円もらうのです。ところがその弟に、百万円入れ、そうでなくては三十万円支払わないというので、泣く泣く百万円に判を押して、それを三十万円のうちから百万円の掛金を取ってしまって、今度支払いをやる、そういうことが、これは実例を私はつかんでおるのでありますが、最近保険会社への監督は、大蔵省はどういうふうにしておられるのか、ちょっとお伺いしたい。
  167. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうことは民主主義の法治国としてあり得べからざることであります。もしそういうのがありましたら、さっそくその会社に注意をいたします。そういうことはよくございません。
  168. 前田佳都男

    前田佳都男君 最近、ここ数年来、中小企業協同組合、消費生活協同組合、農業協同組合、水産業協同組合というふうな、それらの協同組合におきまして、火災共済の事業を始めておるのが相当多いのでございます。聞くところによりますと、契約金額が二千億である。収入掛金が十四億、支払い共済金が三億五千万というふうな状況でありまして、この傾向はますます増加する傾向にあるのでございます。これは私は一つは民間の火災保険に対する無言の抗議ではないかと思うのであります。これらのうちには、もちろん府県、市町村などから支払い保障を受けておるのもあるのでございますが、それにはおのずから限度がございます。ところが単独の共済では大火のとき非常に危険でございまして、その損害を填補できないというような事態もあるのではないかと思うのであります。これらの火災共済につきまして、これを取り締るような監督の規定をお設けになるかどうか、あるいはまた支払いを保障してやるとか、あるいは災害準備積立金に免税するとか、これを保護育成するというふうな考えはお持ちかどうか、これらの点につきまして、通産大臣の御意見を拝聴したいと思うのでございます。
  169. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 中小企業等協同組合で火災共済事業をやっておる数は、仰せの通りたくさんございますが、現に最近某所の大火で、この火災共済金の支払いが不能になっておるという協同組合の事例もございますので、監督の必要は十分ございます。監督権を強化するのでなければ、今後この保険者に迷惑をかける事態が非常に多かろうと思いますので、今関係省の間でこの火災共済事業のできる協同組合の法制化の問題で、いろいろ話し合いをしておりますが、まだ最終的な結論を得ておりません。と同時に、この法制化の問題と関連しまして、この助成方策ですが、やはり異常災害積立金に対する非課税の措置というようなものは、しなければならぬと考えておりますが今申しましたように、関係省間で最終結論を得ておりませんので、今国会には今のところ私は間に合わないと思っておりますが、来国会においてはそういう監督権を強化した法的な措置のとれるようになるのじゃないかと考えております。
  170. 前田佳都男

    前田佳都男君 火災共済がこのようにどんどんと増加していきますのは、結局要しまするに、掛金の安い、簡便で小口の——二十万から百万円ぐらいの小口の火災保険を国民が求めておるからではないかと私は思うのであります。ところが事業費のコストの高い火災保険会社は、保険料の少額な小口の契約を取って歩くことができないと思うのであります。何となれば、保険料よりも経費が多くかかるからであります。ところが幸い現在政府は、全国的な組織を持つ郵便局で簡易生命保険をやっておるのであります。しかもこの簡易生命保険は、創業以来小口保険として相当の成績をおさめておると思うのでございます。火災保険につきましてもこれを利用しますると、火災保険の集金事務は平易に行われ、かつその普及は容易でございます。そうして、その積立金は、消防、防火施設などに使われる。損害の填補と防火ということ、この二つの考え方が一体となりまして、これを政府で行うのが効果的ではないかと思うのでございます。全国の市長会でも、火災保険の公営という問題について陳情されておるようでございます。また私の聞くところによりますと、ドイツ、フランスでは、公営の火災保険制度が非常に発達しておるということを聞いております。もちろん民業圧迫は避くべきでありますが、民業圧迫にならない限度におきまして、政府におきまして簡易火災保険というようなものを行うというふうなことにつきまして、そのお考えはいかがでございましょうか。その点につきまして、大蔵大臣並びに郵政大臣の御所見を拝聴したいのでございます。
  171. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の点はわからないことはないのでございますが、何分にも火災保険界の一大革命にもなりかねないのでございます。十分検討いたしたいと思います。
  172. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) ただいま前田委員発言は、まことに傾聴すべきものがございます。ことに郵政省の立場からは、これは相当考えなければならない、かように考えるものでございます。ただし、これは非常に重大なことでございまするので、軽々しくお答えするわけにも参りませんので、十分検討を加えたいと、かように考えます。ただし、私の考えをもっていたしまするならば、火災保険の大衆化ということは、やはり保険率の低下ということが中心でなければならないと、こう思うのでございます。そこで、根本問題は、これは、今おっしゃったように国営にするというような問題は、国営か民営かというようなことは、根本問題でございます。しかし、すでに各種の協同組合では、相互扶助の立場から、この保険をやっておるのでございます。それは自然に発生したものではございまするけれども、これはやはり民営のただいまの保険会社の保険率からいいますると、大体三分の一ぐらいありはしないかとこう考えておるのであります。ですから、どんどんこれは発展性を持っておるわけでございます。しかるに貧弱なる協同組合が中心になって、むろん再保険の方法はあるといたしましても、限られたる地点に非常なる大火が起ったとするならば、これは支払い能力がないということになると、ここに保険に対する危険が非常にございます。そういうような点から考えますというと、前田委員ただいまお話のごとく、すでに郵政省は簡易生命保険の制度を持っておって、すべての組織網を持っておるのでございまするから、これと並行して、簡易火災保険の制度を設けるということは、これは相当考えていい問題であると私は思うのであります。かくすることによって、集金のごときはきわめて簡単にでき得るのでございます。そうして相当の剰余金があった場合には、これを消防施設等に振り向けることなども決してこれは等閑に付するべき議論じゃないと、こういう工合に考えておりまするが、いずれにいたしましても重大問題でございまするので、十分検討することにいたします。
  173. 前田佳都男

    前田佳都男君 明治三十年に、文化財の指定制度が確立されてから今日まで、相当数の指定宝物、指定建造物が焼失をしておると思うのでございます。最近は法隆寺、金閣寺、延暦寺が焼けております。これらの文化財は金をもって償うことができない、損害を填補することができないかけがえのない、たっとい国民の宝でございます。これらに対しまして、どういうふうな防災の措置を現在とりつつあるかということにつきまして、文部大臣の御所見を拝聴したいと思います。
  174. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。  重要文化財とかあるいは国宝、これが火災のために焼失してしまうということは、まことにお話通りに惜しみてもあまりあることでございます。この国宝とか重要文化財の対策につきましては、文部省といたしましてもいろいろ苦心をいたしておるところでございますが、今日までに約三百五十件ほどこれがために必要な施設を講じて参りました。昭和二十五年以来、ことに火災は日本に多いのでございまして、一番心配いたしておるところでございますが、国宝あるいは重要文化財たる建造物についてはもちろんのこと、その中に重要な国宝とかあるいは重要文化財を持っております建造物につきましても、いろいろな消火に必要な施設に対する補助をいたして参っております。また特に多量な国宝その他の重要文化財を持っております社寺等に対しましては、耐震、耐火の収蔵庫を作り、これに対する助成も講じて参ります。明年度は約七千万円ほどの予算を計上いたしましてお願い申し上げておるようなわけでございます。かようなことは、ただ単に国の助成だけの問題ではなくして、その管理者に十分注意してもらうことはもちろんのこと、一般国民の協力と理解も得なきゃならぬと思うのであります。その面につきましても及ばずながら努力をして参る。先般も国宝、重要文化財等の火災の場合の取り扱いについての、心得というふうなものを小冊子にしまして、それぞれ配付して注意を喚起しておるというようなことでございますが、決して今日までの措置が十分とは考えませんので、今後なおその方面につきましてはできるだけの努力をはかりたいと考えております。
  175. 前田佳都男

    前田佳都男君 次に運輸大臣にお伺いしたいのでございますが、わが国に自主航空が発足以来すでに五年の歳月を経過しております。国際線はサンフランシスコからバンコックに延びております。国内線は福岡、札幌。またローカル線は国内の主要各地を結んでおります。聞くところによりますと、日本航空は黒字である。また国内の二つの航空会社は赤字であるというように聞いております。現在航空輸送事業としての経営状況はどういうふうになっておるか。またその見通し等につきまして、運輸大臣の御所見を拝聴したいと思います。
  176. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。  御承知の通り国際航空とそれから国内主要幹線は日航がやっております。これはここ一両年黒字になって参りました。国内のローカル線の方はまだ黒字に至っておりません。しかし最近両者が合併をする話が進みまして、それとともに国内のローカル航空の整備もだんだんできてきましたので、近くちゃんとペイする事業になるのではないか、かように考えております。なおしかしながら、日航の方もローカル線の方も、まだ十分今日の時勢の進運に伴っていくという力が非常に乏しいので、これに関しましては、何とか今の予定よりももう少し新しく世界の航空界に順応していけるような態勢をとっていかなきゃいけないのじゃないか、こう考えておる次第でございます。
  177. 前田佳都男

    前田佳都男君 次は航空機の乗員——パイロットの問題でございますが、国内線は日本人のパイロットによって操縦されておる。国際線はいまだに外人のパイロットによって操縦されておるようでございます。しかもこれらの外人には高額の給与を支払っておる。その上に外地滞在手当というものも出しておる。しかも、なおまた、万一その外人が何かの拍子で引き揚げるというふうなことがありますると、日本航空の国際線はとまってしまうというふうな事態が生ずると思うのであまりす。自主航空、自主航空というふうなことをよく言いまするが、この自主運航を確立するためにも、一刻も早く日本人のパイロットに切りかえる必要があるのではないか。これに対しまして、政府はどういう政策をおとりになろうとしておるかということをお伺いしたいのであります。  なお、船舶につきましては、国費をもってその乗員の養成をしておる。ところが航空機のパイロットに関しましては、航空大学という大学があるだけであります。ことに航空機の操縦は、船舶と違いまして非常に高度な技術を要する。これらの高度な技術を要するパイロットの養成には、非常な経費がかかると思うのであります。この航空機のパイロットの養成にあまり力を現在入れてないのではないかというふうな疑懼があるのでありまするが、その点につきまして、運輸大臣の御所見を拝聴したいのでございます。
  178. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 御質問の通りでありまして、その航空パイロットについては非常に苦心をしております。ただいまの計画といたしましては、現在その外人のパイロットが三十名ほどおります。日本人の熟練した者が百名ほどおってやっております。一応は、三十六年度までの、ちょうどこれはジェット機の来るころまでに、外人の今三十人のパイロットというものはなくなってもいいというふうに養成はしております。しかしながら、御承知の通り、昨年度までは日航に対する補助金のうちで養成をしておったのでありまするが、日航が黒字になりましたから、明年度から補助金は打ち切ったわけであります。お話通り、航空大学だけでやっております。航空大学は現在十名で、来年度も十名ですが、三十三年度からは四十名という計画にして、まあ航空大学一本にしておりますが、これで果していけるかということは、もう少し模様を見ないと、あるいはあらためて何か一つ補助政策をとらなければいけない。それから一応外人のパイロットは三十六年で打ち切りますけれども、三十五、六年ごろジェット機が来ますと、果してこれが日本人だけでやれるかということにもまた疑問がありますので、それらにつきましても、この航空の要員というものに対しては、何とか一つ明年度あたりまでにもう少しその検討をして、新しい構想を立てなければいけないと、かように考えておる次第であります。
  179. 前田佳都男

    前田佳都男君 先ほどの運輸大臣の御説明で、国内の航空につきましては現在二つ会社がございますが、これが近く合併するような運びになっておる。合併するとすれば、かなり合理化されると思うのでありまして、これはまあ非常にけっこうだ、望ましいことだと思うのであります。また、日本航空がペイしておるということは、これも非常にけっこうだと思うのでございます。しかし、日本の航空事業というのはまだ五年ばかりで、ほんとうに緒についたばかりで、これでその見通しを楽観することは私は許されないと思うのであります。ちょっと黒字になったからといって、喜ぶわけにはいかない。長い目で物事を考える必要があると思うのであります。ことに、今後わが国の外交経済外交の推進ということを重視しておる。これを実現する手段としては、航空機をおいてほかには私はないと思うのであります。それがためには、必ずしも採算のとれない地域にも飛んでいかなけりゃならぬというふうなことがあると思うのでありまして、現にイギリスのBOACであるとかアメリカのパン・アメリカンが強力な国家の保護のもとに路線を定めまして、それぞれの国の外交貿易の基盤を果しておることは、その寄航地を見れば判然とすると思うのであります。今後経済外交実現の手段といたしまして、航空事業をどういうふうに拡充しようとするか、いわゆる長期拡充計画というふうなものにつきまして、運輸大臣の御所見を拝聴したいのでございます。
  180. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お答えいたします。  御質問の御趣旨全く私どももお気持に同感でありまして、ことにまあ経済外交ということをこの内閣の一番の大きな外交上の主張にしております。これにつきましては、今お話の航空と、それからやはり観光とを結びつけて、一つ新しい計画を立てなれけばいけないのじゃないか、こう考えております。ことに航空におきましても、ただいまやっております路線の中でも、すでに国際協定においてロンドンまでは道が開けておる。にもかかわらず航空機のないためにロンドンまで飛べない、バンコックでとどめておる。それから東南アジア方面に対する航空路というものも開設の余地があるのですけれども、航空機並びに今のパイロットその他の準備ができないために、残念ながら手がつけられない。しかもこの方面を初めとして、外来の客、ことに観光ともあわせて、わが国の立場というものが世界的に開けていくのでありますから、どうしてもこれは今までの行き方にもう少し新しい一つ計画を立てていかなければいけないのですが、ただいまのところはこういう考えで、まあこの国会でも済みましたら、新しく一つそれに対して案を立てて、明年度からの事業としていきたいという気持を持っておる次第であります。
  181. 前田佳都男

    前田佳都男君 一つ郵政政務次官にお伺いしたいのですが、現在郵便物輸送のために航空逓送料はどれほど支払われておるか。これは国内の航空会社に対してはどれほど支払われておるかということと、外国の航空会社に対しての輸送料がどれほど支払われておるかということをお伺いしたいのであります。
  182. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) ただいま航空機によりまする郵便の輸送料金は、総額で約二十億でございまして、うち十六億くらいが外国の航空、六億くらいが、国内の日本航空に支払っておるようでございます。
  183. 前田佳都男

    前田佳都男君 大体、諸外国の航空政策というものは、航空逓送料、郵便物の航空輸送料ということを通じましてこの助成をしておる例が多いように私は聞いておるのであります。ところが、わが国では郵便物の輸送料は純粋の郵便物の運賃だけを支払っておる。これもまた私は一つ政策である、方針であると思うのであります。しかしながら、現在の純粋の郵便物の輸送料といたしましても、現在、ただいま次官の御説明にもございましたように、航空輸送事業経営に占めるその地位というものは、相当大きいと思うのであります。ところが、現在各国の航空会社がわが国に乗り入れをしております。同じ路線を同じ日に飛んでおる会社が非常に多いのであります。どの国の会社の飛行機を郵便物の運送のために選択するか、選ぶかということは、まことに大きな問題であると思うのであります。外国では実際よく自分の国の航空事業を助成し、保護するために、自分の国の飛行機を優先して郵便物の運送に用いておるという例が相当多いということを聞いておるのでありまするが、この点は、外国の実情は一体どういうふうになっておるか。また、わが国で自分の国の航空事業を保護するために、自国航空機優先主義というふうなものをとる御意思はないかどうかということにつきまして、郵政政務次官の御答弁を拝聴したいのでございます。
  184. 伊東岩男

    政府委員(伊東岩男君) 御質問のように、外国の航空会社の中には、若干優先的に郵便物を取り扱っておるところもございまするけれども、平和をモットーといたしまする郵便精神から申しましても、わが郵政省におきましては、外国のうちどの航空会社を選ぶかというような、どれを優先的にやるというようなことでなしに、むしろスピード第一の郵便物といたしましては、外国の航空機に対しては早く積み込めるものを順次積み込んでいくということが、これが国際的にも当然であり、平和主義からいってもそうである、また郵便の迅速化という立場からもしかるべきことだと思いまするので、ただいまもそうやっておりますが、私の考えでは今後もさような方針をとっていきたいと、かように考えます。
  185. 前田佳都男

    前田佳都男君 以上で質問を打ち切ります。
  186. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 第一次と第二次の補正予算に大体関連のある問題二、三について、お伺いしたのでございます。  第一点は、第一次補正の四百億のうち、三百億円の産業投資特別会計への繰り入れの事柄であります。この問題は、先ほど佐多委員の質問及びそれに対する大蔵大臣の御答弁に若干関連があるんでありますが、御了承を得たいのであります。  それに入りまする前提に、これは主計局長にちょっと伺いたいんでありますが、こういうふうに財政法の解釈を理解していいかどうか、解釈の問題であります。本年度の剰余金は一応は来三十二年度の歳入に入る。従って、解釈としては三十二年度に入って当初においても補正予算の財源になり得ると——解釈上ですよ。もちろん国債償還の二分の一の限度、これに関する見通しは、これははっきりつけなくちゃいけない。その見通しがはっきりしておれば、今私が申したようなことは解釈上妥当であると、こう理解して間違いないかどうかということであります。
  187. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ある年度の剰余金が決算上確定いたしまするのは、翌年の七月末でございます。で、確定いたしました時をもちまして、その翌年度の歳入になるわけでございます。ただし、財政法第六条でございましたかの規定によりまして、その剰余金の二分の一は翌々年度において国債償還に充てるべきことを規定せられておるわけでございまして、そのままいわばイヤマークでございます。残りの半分をいつから使えるか、これは財政法の解釈といたしましては、決算が確定いたしました日の属する年度において使用できないことはございません。財政法が施行されました後におきましても、昭和二十四年、五年でございましたか、そのうちの一部を財源として使用したことがございますが、大部分の年度におきましては、これを国債償還と一緒にいたしまして、翌々年度において財源に繰り入れて歳出の財源に充当しておる、それが最近の慣例になっております。ただし、これは慣例でございまして、法規上の解釈といたしましては、決算の属する、つまり翌年度使用することを拒む規定はございません。
  188. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 今回の補正予算をもって、三百億を一般会計から産業投資特別会計に繰り入れる、そうして百五十億を三十二年度、それからあとの百五十億を三十三年度以降というふうに、財政投融資の観点で使用する、こういうことであり、それに対して大蔵大臣は、そういうことは財政上弾力的な操作であり、また財政上の効率的な運用であるということを言っておられるわけであります。で、このこと自体は、本年のごときやや異例な剰余を出しますときにおいては、一応私は考え得るだけの妥当性があるであろうと思うのであります。ただ、現在の財政法並びにそのシヴィリティにおいて、補正予算を、追加予算を編成する場合においては、相当の制約が言うまでもなくあるわけであります。必要避くことのできない事項、これに対して追加予算が組み得るわけであります。  私のお尋ねする第一点は、大蔵大臣の言われるこの効率的に使うとか、あるいは弾力性を与えるということそれ自体は実質的にいいとしても、現在の財政法の建前というものは、補正をする場合においては必要避くことのできないケースというのに一つ限定を与えておるのであります。その点から見れば、大臣の言われることはもっともであるとしても、現行法の運営の面からいえば、少くとも形式的には四十四条の特別の資金に回すという観点で、違法とはこれは言えないでしょうと私も思います。しかし、少くとも現在の財政法の立て方、補正予算に対する制約等から見て、それを乱る危険があるのではないか、こういう感じが私には率直に実はするのであります。大臣に、補正予算の性格との関連を一つ伺いたいと思います。
  189. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来いろいろ議論のあったところでございまするが、私は四十四条の規定は、資金を作った方がいいという場合におきましては、十二条並びに二十九条、四十二条を排除し得るものと考えておるのであります。
  190. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 資金を作ることが適当であり、いいということであれば、補正予算に関する制約、これも当然排除していい、こういう御見解ですね。少し行き過ぎではないかという感じがいたしますが、それはそれでいいです。もう一ぺん後刻触れます。  それから第二点、百五十億が三十二年度の本予算において産投特別会計において、歳入及び歳出にそれが入って投融資に使われる、またその行く先等も一応三十二年度としてははっきりしておるのであります。ところが、残りの百五十億、いわゆる三十三年度以降になる分については、一応資金として産投特別会計にあるんですけれども、これが果して出資になるのか、あるいは融資になるのか、どういう面にそれが振り向けられるのか、一切白紙のわけなんです。で、かりに補正予算で必要やむを得ないというので、三十二年度の分については補正予算のあの条項の制約も考え得るとしても、三十三年度の分までこれがいいからというので、別ワクにリザーブする、補正予算ですよ、ということになりますると、なおさら行き過ぎではないかという考え方が実は強くなるのでありますが、三十三年に持っていかれる分についての一つ御見解を承わりたいと思います。
  191. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その点はいろいろ考慮した点でございまするが、私の気持といたしましては、一般会計は歳入歳出合って……。特別会計全体を見ますと、御承知の通り、食管会計におきましては百五、六十億の借入金と、こういうことになっておりますので、産投会計においては百五十億を置いておれば、全体を通じては、私は歳入歳出が合うと、こういう見方も一ついたしまして、そうして片一方では非常に自然増収が多いときでございますので、弾力的にそういうふうにした方がいいと、こう考えたのでございます。
  192. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 全体の見合いとして、計数は別として、見合いとしての考え方、これは私一応、何といいますか、慎重な一つ考え方であろうと思います。三十三年度なり三十三年度に入って、必要によって、これも仮定でありますけれども、必要によって産投に入れたこの資金を、一般会計に逆に繰り入れをするというようなことが出てくるわけでしょうか。
  193. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうことは一切考えておりません。やはり三十三年度において使用するつもりでございます。
  194. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 いま一点、産投特別会計において保有される百五十億の資金ですね、これの管理といいますか、運用といいますか、これはどういうふうに計画されるわけでしょうか。
  195. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) その点につきましては、今般本国会に提出いたしております産業投資特別会計法改正案に資金に関する規定を設けておりまして、資金受け払いは歳入歳出外として経理すること、それから資金は、資金運用部に預託して運用することができると、それによって運用利益金を生じたときは、その利益金は資金に編入する、それからこの資金をくずして財政投資の財源にいたします場合には、あらためて歳入を通すこと、そういったような原則的な管理の規定が設けられておりまして、その規定の命ずるところに従って管理するわけでございます。  なお、この資金の管理と申しまするか、三十二年度中における増減につきましては、三十二年度の特別会計の予算の参照書に増減計画表を付しまして、国会の審議に付しておりますことを付言いたします。
  196. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 三十二年度における百五十億につきましては、お話のように、産投特別会計において資金から、何といいますか、歳入に入ってきているわけですね。私のお聞きしているのは、片一方の百五十億ですね、これは一体三十二年度中にはいかに運用されるのかと、こういうことです。
  197. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ただいま読み上げました規定にございましたように、歳入として財政投資の財源に充てられない残余の部分百五十億につきましては、これを資金運用部に預託するということになっております。
  198. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 とにもかくにも、本来の目的が一応、大ワクではあるけれども、大ワクはきまっておって、内容ははっきりしないということを、単に現在の状況における一つの情勢から、そこに妥当性を認めて、弾力的に特別の資金に繰り入れるということは、大蔵大臣の見解もありましょうけれども、そういうことが是認されるとすれば、むしろ私は財政法自体を、若干その将来を考えても、改正すべきじゃなかろうか。弾力的な運営ということ、このこと自体はいいわけですけれども、財政法自体はやはり一つのノルムといいますか、相当厳格な秩序、規制というものがある。それによって運営されてゆく。弾力とかいうことになれば、なおさらどういう基準によって弾力的な運営をするかということが、はっきりそのよるべき基準がないというと、相当将来危険なことが出てくるのじゃないか。財政法上ですね、むしろ一定の基準によって動かし得るようなこの財政法の改正といいますか、そういう事柄が検討されてしかるべきじゃなかろうかというふうに思いますが、一つ御見解を聞きたい。
  199. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 四十四条の資金のことが、こんなに今まで問題になったことはないと思いますが、戦後におきましても数回実はやっていることでございまして、われわれは財政法を改正してというところまでいかなくてもいいのではないか。やはり法律によりまして、四十四条の規定に基きまして、別に法律を定めて処置するのでございまするから、私は今財政法を改正しなくても、従来もやっておりましたし、できることではないかと思います。
  200. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私、従来の例を実はよく知らないのでありますが、この補正予算の措置によって、四十四条ですか、四十四条の資金を創設したという例は相当あるのですか。
  201. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 昭和二十二年の貿易資金、これはやはり補正で資金を創設いたしております。二十六年の特別調達資金も、やはり補正の際に資金を創設いたしております。それから外国為替資金、これは資金そのものの設置は本予算で行われましたが、補正で昭和二十六年資金を三百億増額をいたした例がございます。いずれもその年度内において費消されることを予定しない、数年度にわたりまして保有せられる資金でございまして、今回とちょうど同じような例になりますわけでございます。
  202. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 今後の財政運用上、財政投融資の方法というものは、まあ資本主義とか社会主義とか、イデオロギーの問題は別として、私はその役割というものはふえることがあっても減ることはあるまいと、こう思うのであります。そこで、伺いたいのは、税金から来る一般会計の分ですね、これを活用する面と、それから郵便貯金等の、先ほど大蔵大臣の言われた本来民間資金に属すべき性質のもの、これでは多少運用の方法といいますかあり方といいますか、これは私異なっていいのだろうと思うのです。これまでは、どちらかといえば、一般会計からの分はこれを押えていくといいますか、控え目にしていくという考え方であったようでありますけれども、今回相当それが表面に積極的に出てきておるというところに、一つの特徴があるように思うのです。出資に出す場合、それから融資として出す場合、今度の投融資を具体的にずっと見渡しましても、投資、融資の区別がどういう一体基準によって分れていっておるのか、どうもはっきりしない面があるように思うのです。どうもそのときの簡単な状況で、片一方は出資にやる、片一方は融資にやるというようなことが行われておるのじゃないかとも思われるのであります。どういう考え方でこの両者をうまく使い分けておるかということを、一つ伺いたい。
  203. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろ見方はございますが、大体三つに分れると思います。たとえば元本の回収困難というふうなものにつきましては、一般会計で出しております。たとえば原子力その他の問題でございます。それから財政投融資の方で投資の問題と融資の問題、財政投融資の本来の今年度三百七十五億円というものは、これは一般会計から参ります百五十億円と、それから開発銀行その他から入って参りまする本来政府のお金、こういうものはその利子を要しませんので、これはたとえば農林漁業金融公庫とか、あるいは住宅公団とか、あるいは電源開発会社、こういうふうなものに出すようにいたしておるのであります。それから資金運用部等の分は、これは六分何厘かの利子を払わなきゃなりません。従って、この利子のない財政投融資本来の三百七十五億円をいかに振り当てるかということの振り当て方は、たとえば電源開発会社へ今年は百億円出しております。昨年は三十億円。しかし発電した電力量を安くするためには、民間の方から集めます金あるいは預金部から集めますお金の利子を、ある程度安くしなければいかぬというときには、電源開発の方に利子のかからない三百七十五億円を相当割り当てるわけです。それから今年農林漁業金融公庫に、昨年は十億でございましたが、今度七十億出すゆえんのものも、農林漁業金融公庫の貸付金利を相当安くしておりますから、預金部その他の分から高い分をアジャストするために公庫には少し出す、こういうことにしておるのであります。住宅公団の方へ出しましたのも、住宅料金を安くするために相当思い切って今年は出した、こういうことで、主として金利調整、金利低下の作用といたしまして無利子の分を使う。そして片一方の資金運用部とかあるいは一般公庫の分とかね合せまして、各機関の割当を考えていっておるわけでございます。
  204. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 一応の筋道としては、お話通りだろうと思う。ただ、それぞれの機関の資金コストのあり方等が、果してそれ自体妥当かどうかという問題が私はあろうと思います。それはそれでいいと思うのであります。たとえば電源開発に対する財政の投資であります。先ほどもお話しのように、資金コストを安くする、こういうわけで説明されておるのであります。昨年はいわゆる財政金融一体化ですか、民間における資金の協力というのがあった。今回は資金コストをさらに増高を押えるという趣旨で、大蔵大臣お話しのように、相当大幅な財政出資が行われるのであります。ところが、説明資料によりますると、必ずしも資金コストが下っていないように思うのでありまして、むしろ三十二年度の方が三十一年度よりも資金コストがふえるような数字があるのであります。三十一年度と三十二年度と比べて、電源開発の資金コストがどういうふうになるか、これは一つ通産大臣からお伺いいたしたい。   〔理事左藤義詮君退席、委員長着席〕
  205. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 三十一年度は電源開発の資金総量は、御承知のように、三百二億円でございます。それで金利の平均は大体三分八厘ということになっておりますが、本年度は資金総量が四百四十六億円。非常に多くふえておりますが、出資と預金部の資金との比率が、出資分がそう多くないというようなことから、金利は少し上っておりまして、大体四分一厘くらい、こういう計算になっております。
  206. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうしますと、約資金コストとしては三厘方上るわけですね。
  207. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そうです。
  208. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 電源開発の資金コストが上るということは、それほど財政的な出資をしてしかもなお上るということは、私は非常に遺憾なように思うのであります。ときによると、電力料金、電気料金の引き上げの問題がやはり話題になることがあるようであります。資金コストの面、さらに各種重要資材の騰貴、値上り等から見て、電力料金、電気料金の引き上げの問題が起るかどうか、それらについての一つの見通しなり御見解を承わりたい。
  209. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 電源開発の資金コストは今言ったような工合でございますが、一般の九電力の方の金利を申しますと、昨年の資金総量約千六百億円、これは各社によって違いますが、平均大体六分程度ということになっております。本年は御承知のように、二千二百億円という非常に膨大な量でございますが、大体六分五厘程度の金利になるのではないかと、平均してそのくらいになるのではないかと思います。ですから、コストは上る傾向にあることは確かでございますが、しかし、それ程度の金利が上ったからといって、本年度の電力料金の値上げにすぐ響くかどうかということになりますと、必ずしもそう参りませんで、経営面の非常にいい、少くとも九電力会社は現行料金である程度の吸収ができるという見通しになっておりますが、問題は東北北陸のこの二つの電力会社が非常に、そういう資金コストの上昇というようなものによって、経営内容が悪化しておりますので、その会社についてはどういうふうにしたらいいかというのは、ただいま検討中でございますが、しかし電力料金が一般産業に及ぼす影響は非常に大きうございますので、私どもは極力上げないように慎重な態度で望みたいと考えております。
  210. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それから三十二年度の財政投融資は、今回のような措置によって相当急激に膨張をした結果になっておるのでありますが、その反面、これを受け入れると申しますか、この投融資の対象になる面の計画等が果して慎重に行われておるかどうか、実は若干疑問があるのであります。たとえば、今度新しくできるのですか、東北関係の金融公庫、これは北海道と一緒になるんでしょう、これが突如現われてきたわけであります。それから従来の東北興業関係が再編成をして現われてくる、こういうのがまだその実体の固まらぬさきに、まず政府の投融資が先に計画されておるわけなんです。果してこういうことで、この貴重な財政投融資がほんとうにその効果を果し、目的を達するかどうか相当疑問に思われるのであります。これはもちろん大蔵大臣の所管ではないと思いますけれども東北関係の金融公庫ですか、こういうものの本年度の計画なんというものは、相当実際に即した計画ができているのかどうか、これからぼつぼつやるということなんでありましょうか。これの所管大臣は、法制局長官、だれになりますか。
  211. 林修三

    政府委員(林修三君) 東北関係の今の開発関係の仕事は、経済企画庁の開発部で大体所管いたしております。
  212. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 そうしますと、この金庫の計画はそうですけれども、行政庁の責任の大臣はだれですか。
  213. 林修三

    政府委員(林修三君) 東北興業は従来、御承知の通り、建設大臣が所管しておりましたが、今度の法案でその点を改めまして、東北開発に名前を改めますと同時に、所管大臣は内閣総理大臣といたしまして、経済企画庁においてこれを行い、内閣総理大臣を補佐してやる、そういうことになるわけです。  それから北海道開発公庫は、御承知の通りに、従来内閣総理大臣大蔵大臣と共管でやっておりました。それから内閣総理大臣を補佐するのが北海道開発庁です。今度は東北が入りますので、やはり現在では経済企画庁と北海道開発庁とが総理大臣を補佐する、こういうことになっております。
  214. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 いずれ内容等についてはまた伺う機会があると思いますから……。  もう一つ、これは大蔵大臣に伺いたいのでありますが、計画を見ますと、不動産銀行が出ているわけです。これは朝鮮銀行の持っておった財産の跡始末といいますか、更生といいますかそういうもののように説明されておるのであります。これは私、純然たる民間の株式会社としての銀行であろうと思う。別段政府機関でもなければ公的な機関でもないように思うのでありますが、大体従来の財政投融資の対象は、政府機関なり非常に公的の性格の強いものであったと思うのです。私は、不動産銀行が対象となって、その優先株を財政投融資として持つということは、ちょっとふに落ちないといいますか、理解しがたい感じがするのでありますが、一つ御説明をお願いいたします。
  215. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げますが、今度設立になりました不動産銀行は、長期信用銀行法によりまして、特別の銀行法によってできたのでございます。ただいまこれによっておりますのは、日本興業銀行、日本長期信用銀行、この二つがございます。不動産銀行はその系列に入るのでございます。日本興業銀行あるいは日本長期信用銀行には、以前におきまして出資をいたしております。その振り合いもございますので、長期信用銀行ほどではございませんが、大体比率をとりまして、七億五千万円と従来の例にならっておるのであります。
  216. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 これは少し問題からそれるのではないかと思いますが、不動産を主とする金融機関が、御承知のように、なかった。一般銀行においては、この不動産担保を対象にする金融というものは、従来大蔵省の方針として抑制してきたというふうに聞き及んでおるのでありますけれども、そういうことであったのかどうか。言いかえれば、不動産金融というものは、今度できるこの不動産銀行ですか、これに重点が置かれて、一般銀行ではやはり従前のように不動産金融というものを対象にする金融はやらない、こういうことになるのですか、その点ちょっと……。
  217. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵省の方針といたしまして、不動産担保の金融は差し控えろという特別の通牒は出しておりません。ただ、銀行におきまして、不動産投資をどの程度、こういうふうな内規はございまするが、絶対に不動産担保の金融をとめるという方針ではないのでございます。ただ、実際上の経済事情といたしまして、借地借家等の問題住宅資金の問題等がありまして、なかなか不動産担保の金融が実際上むずかしいということはあるのであります。今回名前は不動産銀行でございまするが、銀行法上の建前はやはり長期信用銀行法によります銀行でございまして、これは今の興業銀行とかあるいは長期信用銀行のように、直ちに活発な活動はいたさないかと思いますが、やはり数十億の資産を持ち、この出資をもって、今後債券を発行して、不動産銀行としての役割を勤めて行こうといたしておるのであります。
  218. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 今回のこの産投特別会計を中心とする財政投融資の関係で、電力その他に非常に重点が置かれていることは、計数が示している通りであります。ところが、それに比べて、国鉄の五カ年計画を対象にしての考慮というものが全然ないように思われるのであります。きわめて少い。輸送関係が大きなネックになっておる。そのために、運賃の値上げが計画され、五カ年計画がスタートせんとしているのであります。なぜこの面に財政投融資の考え方が及ばないのか、非常に薄いのはなぜであるか。先ほど申しました百五十億の一般会計の分が、ともかく一年間、資金運用部には回りますけれども、一応その計画としては寝ているわけなんです。そういうものは、かりに一年であっても、国鉄の五カ年計画に活用されてしかるべきでなかろうか。どうしても資金がなければ何ですが、百五十億というものがあるのです。なぜそういう面が活用されないのか疑問なんですが、一つこれは大蔵大臣からお答え願いたい。
  219. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国鉄の長期計画でございまするから、翌年度回収するようなものはなかなか、端境期のものには使うわけにいかないのであります。従って、国鉄の方には大体前年度と同程度の公募債を認めてあるのであります。二百四十億が二百十五億になっておりまするが、何分にも原資が相当、自己資金が相当ふえて参っておりまするから、事業の分量といたしましては、前年度程度のことができることに相なっております。
  220. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 初めの問題に戻りまするが、三百億の剰余金が特別資金に留保されるわけであります。結果的に見ますると、財政法の剰余金の決算、剰余金の半分は国債償還の方に振り向けろという考え方があるわけです。従って、結果的には、国債償還に振り向ける額が少くなるわけなんです。これはまあその剰余金が少くなるのだから、当然だといえば当然であります。しかしながら、一面において異常に剰余金の多いような場合には、やはりその国の借金というものは返す段取りをするということも、これは一つの行き方じゃないかと思うのです。で、現在の国債に対する大蔵大臣考え方です、それを一つ承わっておきたいと思います。
  221. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その国の国債が少いのに越したことはございませんが、各国の財政と比べまして、日本の財政の国債負担というものは非常に少いのでございます。たとえばアメリカのような持てる国にいたしましても、大体国債は国の国民所得と同じ程度ぐらい持っております。またフランスでは、国民所得の十五割という膨大な国債を持っておりまするが、日本はこれと異なりまして、国民所得の一割にも及ばない。今度は引揚者の方で五百億出しまするから大きくなりまするが、長期の国債というものは非常に少いのであります。これは少いのに越したことはございません。各国の財政を見ましても、国債費の負担というものが日本ほど少い国はまれなのでございます。しかし私は、それでも今年も二百数十億円の利子を、ある程度の償還をしていこうといたしております。大体百五、六十億円程度、少くとも今までやっておりまするが、何分にも軍人遺家族に対しまして出しました九百億円の国債は十年間でございます。これはまあ毎年九十億円ばかりやっております。今度五百億円も出しましたが、これは十年としますると五十億円でございまするから、百五十億ぐらいは、まあ今までの状況でいけばやっていけるんじゃないか。  ただ問題は、内国債はそうでございまするが、外国債が別に二億数千万ドルばかりでございまして、昭和三十六年には一千五百万ポンド程度の分が一度に来るわけであります。こういう分につきましては、国債費の中にある程度買入償還をする計画をいたしまして、一度に外債の償還の来るということは努めて避けるように準備はいたしておりまするが、わが国の国債の状況は他国に比べまして非常に負担が少うございます。しかし少いに越したことはないし、そういうことを考えながら、前前年度の剰余金でこれを埋めるようにはいたしております。実情はそういうことでございます。
  222. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちょっと関連して。今のその剰余金というものの半分をもって償還しなければならない公債または借入金の、年度末現在額はどのくらいになるのでしょうか。これは事務当局で、政府委員でけっこうです。
  223. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 四千億程度だと思います。
  224. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 次に、私は第二次補正の問題に関連してお伺いしたい。  沖縄関係の特別措置でありますが、外務大臣がおられませんので、大蔵大臣一つお願いいたします。この問題は相当将来にわたっていく問題であろうと思われまするので、若干明白にしておきたいと思う。  講和発効前、アメリカの占領時代におきまする沖縄における損害の補償関係の実態なり、特に責任の帰属関係がいまだに解決されないが、これはまあいつ解決されるかちょっと見当がつかない模様でありますが、今回のこの措置は、本来損失補償をすべきものであるけれども、それの身がわりに、本来損失を補償すべきものだけれども、その身がわりに今回の措置をとるという考え方であるのか。あるいは損失補償は将来の問題として問題は残るのだ、しかし、この際それはそれとして別個に、とりあえず十億の見舞金を出すのだ、言いかえれば身がわりではないのだという意味合いなのか、このことを伺いたい。  それからいま一つは、現在の沖縄の施政権者はこれはアメリカなんでありますが、この見舞金を出す相手の責任者は一体アメリカなのか、だれが責任を持つのかという点であります。それから少くともアメリカとの、これを出すについてアメリカとの折衝があったであろうと思うのでありますが、それはどういう経過になっておるかということ。  それから最後に、沖縄における通貨はどうなっておるのか。おそらくドルなのか円なのか、そういう点は私不敏にして知らぬのでありますが、そういう点を一つお答えを願いたい。
  225. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 講和条約発効前のアメリカが占領中におきまして、沖縄の方々の所有しておる土地を接収した問題につきましての補償は、日本政府考え方としては、日本政府に補償の責任はない、アメリカ側においてやるべきものだ、講和条約の点からいろいろ議論がございまするが、日本政府としてはそういうふうに考えておるのであります。従いまして、今回十億円を出します場合におきましても、外務大臣よりアメリカ政府にその意味をはっきり申し上げ、通告いたしております。従って、日本政府が、アメリカの責任のものを、アメリカのかわりに出すというのじゃない。全然別個の、日本国民に対しての日本政府の見舞金としての、志としての見舞金、こういうことははっきりいたしておるのであります。  しかして、十億円をだれに出すかと申しますると、見舞金でございまするから、接収せられて困っておられる沖縄の方々個人に出すことに相なっておるのであります。  向うの、沖縄の通貨は、B円と申しまして、大体為替相場日本の三円に対して向うが一円という比率に相なっております。
  226. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は、次に第二次補正予算の中での食管会計の赤字の問題について、農林大臣にごく簡単にお伺いしたいのです。  三十年度、三十一年度、三十二年度の三年を通算いたしますると、米だけの、内地米だけによって生じた赤字というものは約七百億近くになるわけであります。六百八十四億。それからこれに内地麦の赤字を加えますると、かれこれ三年間に九百億円の赤字が出ておるわけでございます。この膨大な赤字について、この際に簡単に一般会計で補てんをして、それでいい、それで済むという私は問題ではないと思うのです。やはりこの赤字補てんは、一般会計であるとすれば、国民の税金、国民の負担、税金になるのであって、やはり納税する国民はその面において納得することが私必要だ、こう思うのであります。それからまた消費者の立場におきましても、大体の消費者は米価が上ることは絶対にいかぬというわけじゃない。気持から、気持ですよ、安い方がけっこうだけれども、上っちゃ絶対いかぬというわけじゃない。むしろ消費者の持っておりまする不満というものは、配給日数が非常に少いじゃないか、政府の配給する米は悪いじゃないか、悪い米をわずか配給しておいて、消費者価格を上げるということはどうも割り切れないというのが、私、率直な気持であろうと思うのであります。  昭和二十九年から見ますると、この三年間にエンゲル係数もかれこれ、初め二十九年の四八・四ですか、これが三十年末には四〇・三、最近私は四〇を割ったのではないかと思うのであります。それから国民所得の増加等から見まして、消費者自体の内に相当の負担力がふえてきた。私はこれは疑いを入れない。かれこれこの膨大な赤字と見合って、若干の消費者価格の引き上げというものが、あるいは調査会等によって結論づけられるかもわからない。これは将来の問題ですが、しかし消費者のほんとうの協力を求めるためには、やはり率直な、そういう気持を少くともなくす努力政府において行われなくちゃならぬ、こう思うのであります。それで若干消費者の立場から二、三の点を私伺いたいと思うのであります。  第一は、三十年の食管特別会計の数字を見ますると、約二十五億の固定資産の評価益が出ておるのであります。どうも食管特別会計の持っておりまする固定資産、かれこれ五、六十億でありますか、それの評価益を計上して、損益にそれを入れていくということはちょっと私、ふに落ちないのでありますが、これはどういう事情でそうなったのか、ちょっとお伺いしたいのであります。
  227. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) ただいまの固定資産の評価益でございますが、従来国有財産の台帳価額が取得価額によっておったのでございます。昭和三十年に国有財産法施行令が改正されたものですから、三十一年の三月三十一日現在をもってその評価がえを行いました。自後五年に一回ずつ台帳価額を改訂する、こういうことに相なっておるわけであります。この規定に基きまして、三十一年度末に食管特別会計の所管する土地、建物、耕作地、これらの台帳価額の改訂を行いました結果、ただいま御指摘の二十五億円何がしのものが出た、こういうことに相なっております。
  228. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 評価がえをして益が出たので、決算上は赤字が減ったわけであります。しかし、五年目ごとにそういうことをやるとすれば、大体償却をしておるわけではなし、今度は逆に評価損が——評価損といいますか、出る場合が当然起ってくると思います。そういう損を消費者が負担する筋合いは私はないと思う。それから食管特別会計の固定資産というものの、何といいますか、資金源といいますか、金は、御承知のように、一般の国有財産と違って、借入金で私できているのじゃないかと思う。従って、食管特別会計のこの固定資産ですね、これはいろいろ、倉庫もあれば事務所もありましょう。そのほかいろいろの施設がある。そういうものには、これは金利が加わっているわけです。その金利まで、これはその中間コストだというので、消費者が負担するというようなことは、これはとうてい考え得ないわけなんであります。しかし、今の建前からいえば、やはりそういうのがすべて金利となって、中間利益だということになって、食管のコスト主義というものはコスト主義として一応の正しさがあるのですけれども、そういうものまで入れて、そしてこれが米価の計算の中に入るというようなことは、私は消費者としては納得ができない。これは生産者に何も関係ないのであります。そういうしわは大体は消費者に寄ってくるのでありますが、これは一つ十分御検討を願いたい。  それからなお、それに類似したようなことがあるのであります。たとえば食管の人件費約九十億、百億近くある。これは一般会計で持つべきだという議論は、御承知のように、ずいぶんあるのであります。しかし、その中の検査員のごときは、これは性質上米価それ自体の中に入っても一応の妥当性が私はあると思う。一般会計で持ってもらえば、それはそれでけっこうでありますけれども、理論的にいえば、一応米価にそれが入っても理屈はあると思うのであります。ところが、当然に一般行政費であるべき性質のものが米価の中に、何といいますか、擬装して入っているのですね。そういうことがこれまで行われてきている。私は非常に遺憾だと思う。  たとえば、例を申し上げますと、早場奨励金でございますね。早場奨励金というものは、統制の始まった当初においては、多分に米価を形成する要素であった、と思います。しかし、その後の動き方、現在のあれを見ますると、これはもうほとんど完全な単作地帯に対する農政上の措置のような性格になっていると思います。今何も、消費者の面からいいまして、苦しんで出来秋にたくさん政府に買ってもらう必要は少しもない。そのことはあとで申し上げますが、また非常なしわ寄せを消費者にしているのであります。この早場奨励金のごときが、先年でしたか、時期別格差という言葉の上に、いかにも格差ですから米価らしい感じを一般に与えているのですけれども、時期別格差というものはあり得ないのであります。当然これは農政上別個に考えられるべき性質のものだ。これが相当、かれこれ、ときによっては百億近くあると私は思います。こういうものは消費者が負担すべき筋合いでは毛頭ないと思う。それから、これも昨年問題になったのでありますが、予約格差であります。予約格差というようなものは米価にはあり得ないのであります。これは予約を円滑にやる一つの奨励施策にすぎないと私は思います。そういう奨励施策は、これは一般会計で必要があれば持ってもらいたい。それまで消費者が、米価じゃないものを米価のような格好で負わされるということは、これは私は何としても筋が通らない。そういうものをそういうことにしておるから、消費者は納得できないのであります。  それから、いま一つは、品質の問題があるのであります。膨大な赤字のありまする食管の運営のしわは、いろいろの面で寄ってきているのは、みな消費者です。たとえば早場奨励金を出して多量に買う。相当水分の多い米であることは御承知の通りであります。それが夏場を持ち越して消費者に配給される。非常に品が悪い。品が悪いけれども、価格は安いわけじゃない。きまった価格なんです。それから、たとえば陸稲のごとき、これは普通の場合においては一般消費者は、陸稲はほとんど主要食糧としては消費しなかったのです。ところが現在畑作、これは私は奨励であろうと思うのでありますが、畑作奨励の観点に立って非常に強いところから来ておると思いますが、陸稲が非常に優遇されておるのであります、現実は。これは消費者としては非常に迷惑だ、そういうものがやはり同じ価格で配給されるのだ、消費者は配給辞退をせざるを得ない、政府はそれをもてあましておるのであります。御承知のようにもてあましておるのであります。こういうふうに、それから古米の問題があるわけなんであります。年末年始でも、地帯によりましてはほとんど新米の配給がない所がある。現在でもなお三月、四月になりましても、新米の配給より古米の配給の量の方が多い地帯がずっと多いわけであります。やみは新米であります。こういう価格はやはり初めの価格なんです。少くも物に即した、物が悪ければ若干安くするというような操作は加えておらない、これは結局どこに原因があるのだといえば、食管特別会計に赤字があって、動きがとれないという現実の影響だと私は思うのであります。いろいろなしわが消費者に実は寄ってきておるのであります。消費者の気持は初めに申しましたように、いいものを、適当のものを豊作であれば多く配給するということであれば、あるいは若干の価格引き上げをとやかく言う気持は私は少いと思う。ところが豊作であっても基本配給は十日であります。あと希望では若干あげます。しかも去年の秋から最近までは古米が非常に多い、物は悪いというところに、私は非常な一つの消費者の立場から見ての不合理があると思うのでありまして、これらの点は何も食管特別会計、食管制度の根本的な改革をどうこうとかという前に、ことに現在の食管制度運営上相当是正さるべきものがあるのであります。ことしの古米のごときも、去年の夏からでき秋までにさばけばこれは優にさばけたのです。ところが食管の配給は基準は十日だから、今は米があっても十日以上は配給できないとか、いろいろなことがあるわけです。私はまだそれにはそれで政府としての言い分はある、会計法というものがあって、なかなか思わしく動かぬということが、こういう場合に常に言われているのであります。どうもこういう大きな企業体は、現在のシステムではこれをもし続けていくとすれば無理じゃないか、何か特別な合理的の企業体に場合によれば編成がえすることを考える必要がありはしないかという感じも最近私には非常に強くなっているのでありまして、消費者にしわが寄っていく点を一つどういうふうに考えておられるか、農林大臣のお考えを承りたいと思います。
  229. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) だんだん御指摘になられました点は、私どもといたしましても大へん参考に相なる点でございます。一々お答えは申し上げませんが、根本的な食管制度の再検討以前にもっと打つべき手はあろう、こういう仰せでございますが、確かにそういう向きもあろうかと思っております。それでともかく食管会計のあり方が非常にライトを浴びてきておる時期でございます。ただいま来の諸問題も十分検討の議題に供しまして、善処いたす所存でおります。
  230. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 なお一言つけ加えておきたいのでありますが、これも消費者の立場でありますが……。
  231. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 梶原君、時間が過ぎました。
  232. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 食管特別会計の赤字について、特に輸入の外米、それから輸入外麦によって大きく補てんされておることは御承知の通りなんであります。ところで消費者の立場から見ますると、本来安く外麦が入ってきておるわけであります。それで内地の麦との間は御承知のようにその縁が切れておるわけであります。従って本来であれば、消費者は安い麦が食べられる立場にあるのであります。それが食管の赤字のために穴埋めになっておるわけなんであります。大蔵大臣がおられませんけれども、貧乏人は麦を食ったらいいとかどうこうという論議がずいぶんあったのであります。そういう論議は別にしまして、現実に経済上の観点、生活の観点から麦を食っておる層がずいぶんあるのであります、現実は。この現実は無視することはできない。ところがそういう人々のためには安く配給し得るにかかわらず、比較的高い麦が配給されておる。米と麦の価格のバランスの問題ももちろん大事でありますけれども、本来安く供給し得るものはやはり安く供給するような考え方でいかないというと、食管特別会計全体の価格安定はけっこうですけれども、いろいろのしわというものが生産者には何ら寄らずに、ほとんどといっていいほど消費者に寄る。これは一つ公正な立場にある農林大臣としては、十分一つ考えおきを願いたいということを付言して終ります。
  233. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は時間が十分ありませんので、いろいろなことをお聞きしたいのでありますが、きょうは主として総合エネルギー並びにこれと関連いたしまする電力政策につきまして、お伺いをいたしたいと思うのであります。きょうは電源開発調整審議会の会長である岸総理大臣がお見えになっておりません。また大蔵大臣も今退席をしておられますので、従ってお聞きすることが少し少いと思いまするが、特に通産大臣及び審議庁の長官は、その主たる役割を果しておられるわけでありまするから、この両大臣につきましてお尋ねをいたして参りたいと思います。  まず最初に今度の石橋内閣並びに延長の岸内閣の重要政策の中に、産業政策として隘路産業の積極的な打開をはかるということがございました。従って隘路産業というものを一体どれとどれに予定をしておられるか、これを伺いたいと思うのであります。
  234. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 現在われわれが隘路産業として考えておりますものは、第一番が電力、その次が鉄鋼、石炭、それから輸送、ここらを一番隘路産業考えております。
  235. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 よくわかりました。要するにいずれも今お述べになった業態だけをながめてみましても、これはお互いに密接な相関関係をもつておりまするから、いずれを隘路産業の第一におくかというようなことは、にわかに断定をできないところでありましょうが、しかしこの鶏と卵との関係においても、特に電力というものを非常に重要視しておられるということにつきましては、私はまさしくその通りであろうと思うのであります。従って電力というものがわが国の産業は申すに及ばず、一般国民生活の上に非常な重要なウェートをもち、またひとたびこれが需給のバランスを失しましたときには、簡単にこれを回復するすべがないという一つの宿命的な姿がありまするがゆえに、さようにお考えになったものと私は信じたいのであります。  そこで、この点は電力事業の再編成が行われ、続いて電源開発促進法によりまして電源開発調整審議会が設置をせられ、電源開発株式会社が設けられまして、そこに電力の基本計画が立てられ、五カ年計画というものが策定をせられまして、一つの軌道に乗った電源開発というものが進められて参りました。そうして電力の需給バランスを一刻も早くとりたいという意思のものに、これは政府もまた電気事業もあげて努力をして参りまして、本来ならば昭和三十二年ごろには一応需給バランスを回復いたしまして、若干の余剰電力が持ち得る状態に最初計画があったのであります。それが今日のような終戦直後に経験したような、国の権力をもって電力の制限を行わなければならぬというような事態に立ち至りましたところの最大の原因はどこにあるか、これをお伺いいたしたいと思うのであります。
  236. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 最大の原因は、何といつてもこの日本産業の拡大率をどう見るかという、この四、五年来の産業計画が全く見当が狂って、当初の予想よりも非常に想像もつかないくらいの率を示して発展してきたというところに根本の原因があろうと思っております。これはひとり電力問題だけでございませんで、各産業の計画についても御承知のように五カ年計画を立ててやっておりましたが、五カ年にならない昭和三十二毎度において、すでに当初考えた最終目標の線をみな突破するというような事態が起りましたために、従って、基本産業である電力、鉄鋼と、そういうところに増産計画の大きい狂いがあつた、こういうことになろうと思います。
  237. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 通産省、企画庁の方の政府委員だれもおられませんが、それで御答弁できますか。
  238. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) おります。
  239. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 どこにおられる、どこに……。   〔左藤義詮君「企画庁の計画部長、通産省は官房長、それから公益事業局長がすぐ参ります」と述ぶ〕
  240. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 栗山さんいかがですか。
  241. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 政府委員がおられぬというと、私が質問したことについて大臣がぴたっとお答えいただければよいけれども、お答えいただけなかったときに、もう一ぺん栗山君説明してくれとおっしゃっても私も大へん疲れますから、よく聞いておっていただきたい。
  242. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 御要求の通産大臣と企画庁長官は見えております。見えておりますから、御答弁ができると思います。
  243. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでは続けて質問まいたします。  今、通産大臣は、電力が今日のような最初の計画と離れて不足状態に陥ったことは、わが国の産業経済の異常なる拡大発展の結果であったと、こういう工合におっしゃったのでありますが、それをさらに突っ込んで申しますというと、かくのごとき異常なる拡大をいたしましたことについて、その産業政策あるいは経済政策とマッチするように遂行することができなかった政府のこれは政策の失態であるのか。あるいはまた、自然的にそういう工合になったのでありまして、政府の責任としてはとり得ない状態であったのか。どういう工合にこれをお考えになるかを、これは企画庁長官から伺いたいと思います。
  244. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 経済の伸びは、われわれは初めに国民分配所得でまず五%程度と思っておりましたが、御承知のように、国際環境が非常に好転をしてきて、輸出が思ったよりも非常な伸びがある。それに加えまして、天候によってこの農産の収量が非常に多かった、豊作であった、そういうふうなわれわれの計画と違うような特別な現象が起った、こういうわけでありまして、そこに見込み違いがあった。従って、事務当局の計画しておった基本の分析に合わない現象によって影響を受けた面が相当あった。そういうことによって食い違いが生じた。こういう工合に考えております。
  245. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 産業界が非常に好転をしたとおっしゃっておりますが、その好転は正直に申しまして、一昨年の秋ごろから去年一年、一年間のことだったと思います。昭和二十七年ごろから五カ年通じてそういう上向きのカーブをとってきたのではないのでありまして、従って、わずか一年ばかりの異常な発達があったからといって政府がとらなければならぬ長期の産業計画、基本計画の根底をゆるがすというようなことによって、ゆるがしたということによって、政府がこの事態をおのがれになろうということでは私ども理解できないわけでありますが、その点はもう少し真剣に、こういう状態に陥った政府の施策の間遣いというものを反省なさる余地はないものですか。
  246. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) こういう見込み違いがどうして起ったかという理由も私どもは検討しておりますが、一番大きい問題はやはり海外市況の見通しというものを立てることが困難だった、お話通り見込み違いを一番多く起した年は三十年度と、それから三十一年度でございますが、じゃ三十年度のときの見通しはどうかと申しますと、今宇田長官から言われましたように、大体日本の生産力の伸びは五%程度だろうという想定に基きまして海外市況もそうよくならぬという想定に基いて計画を立てたわけですが、実際には海外市況が非常よくて、予想外に輸出が伸びた、輸出が伸びましたためにこれに伴って関連産業の設備投資というものがこれもまた予想外に伸びた、そのために昭和三十年度では生産の伸びに、もう約二倍半、三倍近くの生産の伸びに狂いがあったということになっております。三十一年度はどうかと申しますと、海外市況はやはり大体横ばいで、これ以上よくはならぬだろう、今程度を維持するだろうという想定のもとに生産も今度は、少し生産の伸びを多く見ようといって七前後の伸びを見た計画を立てましたところがこれがまた全部狂いまして、実際には日本の生産が二〇何%、これも三倍以上生産の伸びの見込み違いがあった。従って輸出も当初の見込みから大きくはずれましたし、それに伴った投資需要というようなものも六割に増というような、ほとんどだれも想像しないような異常な投資状態を起した、こういうことからこの関連産業のいろいろな供給計画というものが全く狂って、政府はあわててと申しますか、あわてて三十一年度の実績から計画の立て直しをやるし、緊急の措置もあわせ行なったというような状態になっていますが、根本的には国内事情の点はそうむずかしくありませんが、国外事情がつかめなかったというために起ってきた私は見込み違いだ、こう考えております。
  247. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 輸出に全部の責任を今かぶせておっしゃったが、実際にこの間も大蔵大臣がおっしゃっておるように、ただいまの日本の景気をささえておるものは消費景気ではないのであります。中心は投資景気であります。しかもその投資景気の源泉をよくたずねてみますると、実はアメリカなりヨーロッパにおきましてここ六、七年来黙々として彼らが努力しておったいわゆる産業の近代化と申しますか、オートメーション化に通ずるところの徹底した、戦争前には考えも及ばなかったような革命的な産業の近代化を進めておる、そのことが漸次わかって参りまして、わが国の産業陣もあわてて、おととしごろからどんどんと設備の更新、斬新な設備の更新に競争のような形で投資をしておる。これがやはり景気の一つの中心をなしておるわけであります。従ってそういうことについて政府が全然見通しを立て得られなかったというのでありますから、ただ単なる輸出の見通しの誤まりではないのでありまして、国内における産業を見る目が非常に間違っておった、こういう工合に私は極言してはばからぬと思うのでありますが、これについてはどういうお考えをお持ちになっておりますか。今水田さんや宇田さんのおっしゃっているようなそういう解明だけで私がここでへこんでしまうということであれば再びあやまちを犯すのじゃないか。もっと根には深いものがあるのじゃないか。こういう工合に私は考えるのですが、どうですか。
  248. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) お説のような観点にわれわれは深く思いをいたさなければならぬと考えます。戦後のヨーロッパの情勢を見てみても各国ともに大体経済に計画性を持たしておりますが、経済に計画性を持たしているところのねらいはいずれも雇用量の増大、あるいは労働時間の短縮、そういうふうな近代的な労働政策をとるというのがおそらくドイツあるいはフランス、イギリス初めヨーロッパの新しい傾向のように見受けるわけです。従ってその目的を達成するために必要な設備の拡張ないしは所要の原材料の輸入という面について非常な計画性のある、そうして経済の拡大化が行われるというのが戦後の非常な新しい傾向であって、従って景気の粘着力といいますか、景気の乗っていく伸び率というものの底が従来戦略的な目的のために物資の移動があったというよりもむしろ社会政策的な観点から起るところの経済の拡大ないし雇用のための貿易政策というものが非常に重く取り上げられて、そして世界の景気の底を流れておると、こういうふうに思われます。従ってわれわれもそういうふうな最近の数年間の、特に西ヨーロッパにおける社会情勢の生んでいるところの貿易の底力、伸びというものはわれわれのところにも当然これは影響があるものでありますし、また日本におきましてもそういうふうな社会政策を含んだ貿易政策をここに取り上げざるを得ない環境に来ている。従って経済の計画性をわれわれの立場から持つ場合におきましては、それは深く考えなければならない、こう考えまして本年度の予算編成の裏づけをいたします場合にも雇用の増大、あるいはそれに伴う均衡ある経済の伸び率を求めたい。そういうところに参ったわけでありますして、従来の計画の中にそういう考え方が深く織り込んでなかった点もあったと、こういうふうに思っております。
  249. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 だいぶ御答弁混乱が出ておりますが、まあそれはそれとして、水田通産大臣は、今あなたは輸出の伸びがこういう見通し難に陥ったのだとおっしゃったのですけれども、その裏には今申し上げましたような当然的確に見通しを立て得る重要な点をここ数年来政府が見落しておって、その結果が去年おととしの暮あたりから現われてきた。こういう現象になったのだということを先ほど私が述べましたその理由によって率直にお認めになりませんか、どうでございましょうか。
  250. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その点は率直に認めます。というのは、早くから一応設備の近代化というようなことは言われておったにもかかわらず、この外国のいわば技術革命と申しますか、こういう情勢が急にくるという要素はたしかに見落しておったと思います。従って輸出増というものと、これに刺激されて急速に国内の設備近代化というための需要というものがこの昨年、一昨年の需要の中には相当部分入っているというふうに私ども考えております。(佐多忠隆君「委員長ちょっと関連して」と述ぶ)
  251. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 栗山君に発言を許しましたから……。
  252. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 どうぞ。
  253. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 栗山君から了承を得ましたから。非常に電力の計画の誤まりを一般的な経済発展の伸び方その他の狂いからだというお話がありましたが、そういう大きなワクの見通しの狂いもさることながら、それはむしろ経済企画庁その他の見通しの狂いがあると思うのですが、今栗山君が聞いているのは、そういう大きなワクの見通しの狂いもさることながら、電力政策自体の見通しがもっと致命的な問題ではなかったかという点を指摘しておられると思うんです。たとえば先ほどから問題になっております産業投資特別会計、これは御承知の通り昭和二十八年度には百三十億出す、二十九年度には百二十億出すということであったのが、三十年度にはがたっと落ちて三十億になり、三十一年度にはさらに三十億と非常に縮小をしているという計画なり、見通しを立てておられる、ここに非常に大きな致命的な見通しの差がある。なるほどそう申しますと、いや総額としてはほかの資金で相当補給しているとおっしゃるでしょう。ほかの資金とは何ぞやといえば、三十年度、あるいは三十一年度に余剰農産物の資金を相当使う計画をしておられる。ところがこういう不特定な、不安定なものをこの最も重要なものに使って、そうして何か長期の計画ができるように、全くお先まっ暗な計画にたよっておられる。従って三十二年度は余剰農産物の資金はもうゼロになっちゃっているというような激変の仕方をしておる、どこに長期計画なり、政策があるかわからない状態です。これは電源開発会社の資金でありますが、もう一つ、十電力、いわゆる開銀が受け持っておる資金についても、同じようなことが起っている。二十八年度には四百億みておられる、それが二十九年度には三百五十億になり、三十年度には二百十五億になり、三十一年度には百二十億というふうに開銀からどんどん縮小をしてきている。すでにもう二十九年、三十年等においては、経済が拡大することが非常に明瞭になっているにかかわらず、その趨勢に逆行して、今みたように政府の電力政策、設備政策はどんどん縮小をしてきているという実情です。これらはもっと電力政策自体の見誤まり、見通しのむちゃさ、そういうものに原因をしていると思うので、そういうものとしてもう少し厳正な過去の政策の再検討の上に新しい政策が立てられなければならないと考えます。その辺を通産大臣はどういうふうにお考えになっているか。
  254. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっき申しましたように、そういう経済計画の全体の狂いがあったために、個々にみましたら、電力政策においても同様に計画の誤まりがあったことは確かでございますし、同様に他の部門——鉄鋼、石炭、いろいろな部門において、それに関連した計画の誤謬があったということは確かでございます。で、電力について申しますと、これは一番計画の見通しがはずれておったと私は考えております。他の物資は今からでも計画の立て直しによって、相当需給の逼迫を緩和できる自信がございますが、電力の需給の円滑ということはなかなかむずかしくて、今年度あらゆる努力をしても、若干、全国で二つの地区を除いてはあとの七地区はどうしても電力不足を免れない、来年になればこの状態は相当私どもの手で緩和できると思いますが、そういう計画の誤まりのしわ寄せが電力は、申しわけない話ですが、この三十二年度にきているという状態で、私どもは極力これに対処する方法考えたいと今考えているのであります。
  255. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これはあまり重要な問題なものですから、私は一問一答形式でやって順次明らかにしていきたいと思っておりますので、大臣の方も御答弁は、時間がだいぶたちますから、簡潔に、お尋ねしたところだけ一つお答えを願いたいと思うのです。それはどうせいずれあとから出てきますから……。  そこでこれは通産大臣にお尋ねいたしますが、電源開発促進法に定められておる電源開発審議会というものが、昭和二十七年から設けられたのでありますが、毎年何回ずつお開きになったか、そうして結論をお出しになったのは何回であるか、これは年次別にお知らせをいただきたい。
  256. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その点は政府委員からお答え申し上げます。
  257. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 年次別のはあとで申し上げますが、昨年の幕開きましたのが二十一回でございます。そのつどそれぞれの場合に応じまして、必要な決定事項を行なっております。
  258. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうしますと、私の伺っておるところによれば、二十七年、二十八年、二十九年、三十年、三十一年といずれも五カ年計画というものをお立てになって、そのつど内容を変更なさっておるということを伺っておりますが、それは一体どういう工合になっておりますか。二十七年にお立てになった五カ年計画、二十八年にお立てになった五カ年計画、その他ずっと三十一年まで五カ年計画でおきめになった総開発量というものは、どういう工合になっておりますか。
  259. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) お答え申し上げます。ただいままでに実は五回ばかり計画を立て直しておりまして、第十一回の審議会、第十七回の審議会、それから経済技術計画ができましたときに一応作りましたもの、それから十九回の審議会、それから最近の分が二十一回——昨年の末に開きました審議会で改定五カ年計画を策定いたしております。数字は非常にこまかくなりますのですが、場合によりましては印刷してお手元に届けたいと存じます。
  260. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうこまかくなくてもいいのです。私が承知しているのを申し上げますから、それがあとで間違いがないかどうか、一つおっしゃっていただきたい。二十七年度に五カ年計画できめられました電力開発総量は四百万キロワットであつたと思います。それから二十八年度は五百十六万キロワットに変更になっている。二十九年度はうんと落ちまして四百万キロワットに再修正になっている。それから三十年度は六百万キロワットにふえている。三十一年度は八百四十万キロワットにふえている。こういう工合に毎年五カ年計画が訂正されておるというふうに私は承知しておりますが、どうでございますか。
  261. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) 大体ただいまの数字に間違いございませんが、五百十二万五千というのが二十八年の計画で、その次は四百五十九万、その次は六百三万、その次が五百九十九万、最後が八百三十九万五千、八百四十万とおっしゃいましたが、大体一致いたしております。
  262. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 こういう工合にそのつど変更をされたときのおもな理由を一つ述べていただきたい。
  263. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) 一つ申し落しましたのですが、ただいま五つばかりの計画——ものによりましては四年計画、ものによっては六年計画あるいは五年となっております。変更の際の事情につきましては、ごく最近のものは先ほど来いろいろ説明がございましたように、経済自立五カ年計画に合せまして作りました案が自立計画で見積りました経済規模よりも非常に上回っておるというので、それがおもな原因で修正いたしたわけでございます。  それからもう一つは、従来の経過で経済規模の伸びに対します電力需用の割合が、鉱工業生産指数に比べまして、比較的下回っておりましたのです。鉱工業生産指数の伸びよりも下回る電力需用の率の伸びをみておりました。ところが二、三年前からだんだん鉱工業生産指数の伸びと電力需用の指数が近づいて参りまして、御承知のように三十一年度については、大体鉱工業生産が二一%伸びて、電気が一七%余り伸びる。非常にこの差が近づいて参りました。これがどういう理由でそうなって参ったか、いろいろ検討しておりますのですが、そういう一番大きな原因は、工業が大きくなるに従って、電力需用の中に占める工業的な需用の割合がふえてきたためだと思うのですが、そういうような面の要素の見方が不足しておりましたこと。それと、今の経済規模、つまり日本経済の戦後の回復率の伸びの見方が、従来は過小評価でありまして、それを少しずつ広めて参りました、こういうことが原因になっております。経済規模の見方といたしましては、戦前の長期の日本経済の発展率が大体年率四%強であった。そういうものに少しとらわれておったのではないか。戦後は戦前の長期の経済情勢とやや違った要素がいろいろ出ておるらしいので、そこいらの見積りが十分に行われておらなかったというようなところに原因があるかと存じます。
  264. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私がお尋ねしているのは、昭和二十七年に作られた五カ年計画でも、三十一年にはこれは余裕度はほとんど出なかったと思うのです。需給バランス一ぱいだったと思うのです。従って二十七年度に作られた計画でずっといけば、三十一年度には一応電力過不足なしというところになったのです。ところがあの当時は朝鮮ブームがあり、二十八年にはもっと景気がよくなるということで、二十八年には五百十二万キロにこれはふやされたのです。ところがその次が肝心で、朝鮮事変が一応終末を告げてずっとデフレの状態になってきましたから、先ほど水田さんがおっしゃったように電力というものはそう簡単にできるものではない。長期計画でしなければできない。それをしなかったからこういうポケットがきたのだとおっしゃっておるのに、その政府が二十九年度にはがたんとまた計画を減らしているのです、四百五十九万キロに。そしてこれでまた三十年度には六百万キロにふやす。三十一年度には八百四十万キロにふやす。こういうでこぼこの、計画あってなきがごとき状態で進めておられるから電力というものはちっとも安定しない。こういうことになるわけなんです。従って私は過去の過ぎ去ったことを追及するわけではありませんけれども、とにもかくにも五カ年計画という名前をつけ、電源開発促進法というようなこの麗々しい法律を作って、開発会社も置き、電源開発審議会などという、総理大臣が会長をやるような権威ある機関を作っておいて、こういう毎年変更するような五カ年計画というのはこれは一体計画ですか。私はこういうところに根本的な電力不足が出てきておる原因があると思うのですが、この点は両大臣一つ率直にこれもお認めになれませんか。私はこの点を岸総理大臣に、もうとくとお聞きしたかったのです。
  265. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 国の基本的な経済の基盤についての計画というものは長期なものを立てて、お説のようにこれを変更することなく、長期にわたって建設していくということが必要なことと考えます。ただ長期に計画を立てておったものが、経済の伸び率に合わないために拡大しなければならなかったというときには、それは論議が……将来非常な大きな禍根の残ることは少いと思いますけれども、ただいまのお説の中で、長期の計画の中でそのときの環境に応じて縮小計画を修正をせざるを得なかったという点につきましては、これは非常な錯誤があったのじゃないかと思われます。従ってわれわれが今後計画を立てますのには、そういう点については十二分に検討すべきものと考えます。その点についてはあなたの御意見の出る点も、われわれは十分注意しなければならぬものとこう考えます。ただもう一つ、この際そういうふうに伸びの非常に強いときには、やっぱりやむを得ず年々修正、ないしは新しい伸びに合わす計画に変えて、そうして今後の五年というふうな長期の見込みを拡大することは、これはやむを得ないと思います。
  266. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は今おっしゃったこと、まあ大体理解されたようですからいいわけですけれども経済の伸びに準じて五カ年計画を拡大していかれることは、私はちっとも追及いたしません。これを減らす計画を立てられるから私は追及しておるのです。特に今年、三十二年度は、先ほどおっしゃったように電力が不足して相済まぬと水田さんがおっしゃったが、その三十二年度の不足はどこからきておるかというと、二十九年度の計画を落したために、二十九年度の着工分がちょうどここで竣工したのですよ、それの竣工容量が少いために三十二年度は電力不足に見舞われるのです。これは、私は数字を栗山言えと言われれば言いますが、そういう工合に二十九年度の計画を落したために三十二年度に現にしわがくるじゃありませんか。私はこれはとにかく水田さんは御答弁いただかなくてもよくおわかりのようですからけっこうですが、一つよく腹へ入れておいていただきたいと思います。こういうことで産業政策などと言うて水田さんにいばられたのでは国民はとてもたまったものではありません。特に最近の電力不足はある意味においては電気事業者が悪いとか、あるいは事業が大きく伸び過ぎたとかで政府の方には大した責任の所在があるようには言われておりませんけれども、これは全く片手落ちの私は言い方だと思います。ほんとうの責任は政府にあると、こう申し上げて差しつかえないと思います。よく御認識いただきたい。
  267. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それはそれでいいのじゃなくて、今お話のようにだんだん、生きものですから成長していくのですから、それに合わなくなったら逐次変更していかれることはちっとも差しつかえないと思うのです。今栗山君が申し上げたように……。しかしその変更のあとを振り返ってみると、全く酔っぱらいがどこを歩いているかわからぬというような、ふやしてみたり、減らしてみたり、酔いどれの足どりをとっておるということが、何ら計画になっていないということを、明瞭に数字が足どりを示しておるということ、その点になればあなた方は計画だと称して立てておられるけれども、それは何ら計画でもなくて、一つの安易な見通しを立てておるだけで何にも計画になっていない。しかも計画になっておらないからその計画に重要性を付与して、どこに責任があったのだということの検討を根本的に慎重にやらないままに、また根本はいいかげんな見通しでやっておられる、そのことはあなた方の政府経済を、特に電力みたいような経営を計画的にやるということに何ら重大な意義を付与をしておられない、あるいはこれは重大な意味を付与をしておられないということは、もう一つ言いかえればあなた方みたような自由主義の、資本主義的の政策では、もはや経済を計画的に意識的に、従って非常に重要なものとして考えて遂行をするということが不可能なんだ。あなた方自民党の、保守党の資本主義政策のこれは破綻を示しておる以外の何ものでもないということが証明をされていると思うのですが、その点を宇田長官りあるいは水田大臣はどういうふうにお考えになりますか。政治的な問題です。
  268. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 計画がそごする場合のいろいろの基礎条件というものは、非常にとらえ方は複雑であって困難なものがあると考えます。たとえば中共の五カ年計画を見てみましても、食糧の面でも、われわれが向うへ行って五カ年計画を見てその五カ年計画に応じて契約をしてきたものでも、一九五四、五年、われわれが向うへ参りました時分でもあとから修正を加える、あるいは契約を解除するというふうなこともあったようなわけで、われわれと計画の立て方の違うような国柄の国でもああいうふうな特に農産物の生産に対する見通しが非常に狂ったということもあります。従ってそれは大部分天候に支配された結果であったとは思いますけれども、それによって百パーセントに到達しないものが出てきておって、そして計画の内容の一部を改訂する、われわれと貿易取引のキャンセルも行われざるを得ないという通知ももらった実情もあります。従ってわれわれは十分な注意を払っておりますけれども、そのときの経済環境、少くとも国際環境の見通し等につきましては、まだ十二分な資料を持ち得なかった点がたくさんありまして、その点には十分反省をいたしたい、こういうふうに考えております。
  269. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 しかも計画の総量を、こういう工合にたびたび変更せられただけではないのです、ようございますか、電源開発促進法には第五条に、「政府は、電源開発及び送電変電施設の整備に必要な資金を確保し、且つ、電源開発等を行う者に対し、その資金の公正な配分が行われるように努めなければならない。」と書いてある、第五条に。こういうふうになっておるにかかわらず、電源開発株式会社に対してすら、これは政府出資によってやるということに法律できまっておるその会社に対してすら、二十七年設立されたあと、その後ずっと毎年見てみますと、出資金をぐんぐんしぼって、電源開発会社が資金運用部の金を借りたり、あるいは社債まで発行して電源開発に努めて来ておる、ましてや九電力会社の資金ぐりのために苦労したことは、これは言うまでもないことでしょう。法律できめておることもやらない、計画で当然やらなければならないこともやらないでおいて、そうしてここまで電力がどうにかこうにか来ておるのは、これはほんとうは政府以外の努力かもしれない、まあ言い過ぎかもしれませんが。そこまでしてどうにかこうにか電気がついておるわけです。ですからこの点は私は答弁は要りませんけれども、どうか一つそういう事情が過去にあるんだ、従って電力などという問題はよほど長期に、後藤新平じゃありませんけれども、大ぶろしきで開発をしていかなければ、とりかえしがつかなくなるということを一つよくわかっておいていただきたいと思います。  そこで今国民が非常に危惧の念を持ってながめておられることは、三十二年度の電力の需給バランスは一体どうなるかということであろうと思います。従って三十二年度の電力の需給バランスの見通しというやつを、これは三十二年度に稼動する新しい発電所の分も入れて、どういう工合になるのか、これを一つ知らしていただきたい。
  270. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 三十二年度の需給につきましては、まだ最終案を実は得ておりませんが、一応現在までに見通しを得ておりますところを申し上げますと、需用の増加が本年度のまあ一部推定を加えました実績に比べて、約一四%程度の増加になるのではないだろうか、五百八十五億キロワット・アワー程度になるのではないだろうか、こういうふうに見ております。これに対しまして、供給し得る量が、これは一応自流式発電所につきましては、出水は過去十三年間の平均の率で計算いたしまして、火力につきましては、相当老朽、休廃止一歩手前のものまでも動員いたしまして、なお新設の発電所も極力運転開始を早めるという手をとりまして、需用端におきまする供給力が五百六十九億キロワット・アワーというふうに一応見通しております。そうしますと、需用端におきまして、大体十六億キロワット・アワー程度の不足に相なるかと思っております。地域的には東北北陸が一番不足の程度が強いようでありますが、その他の地区におきましても、若干の不足が予想されておる、でこれをある程度、でき得べくんばならすということ、それからもう一つは、供給力がもう少し出ないかということで、目下作業をやっておりますが、融通その他を見込みましても、供給力の増加はあまり期待できないのではないか、結局不足量を分け合うということになるのじゃないかと思っております。
  271. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこで今、平年のことをおっしゃったのですが、平水から五%出水減、あるいは一〇%出水減のときはどのくらいになりますか。
  272. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) このうちで自流式の水力から期待しておりますものが、山元におきまして、四百十七億でありますからこれに想定渇水ないし豊水の率をかけていただきますれば、大体出るかと思います、五%であれば約二十億キロワット・アワー程度落ちるかと思います。
  273. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これはあとにいたしまして、もう一点電気事業会社の経営のことで少しお尋ねをしたいことがあります。それは先ほど水田さんは、九電力会社にも成績のいい会社があって相当コスト高も吸収できる会社がある、こうおっしゃったところが東北とか北陸はさっぱりだめで大へん苦慮している、コスト高のためにこういう工合になった、こうおっしゃいましたが、あなたの気楽におっしゃっております言い方というものはどうも理解できないのです。ただいまは電気事業法はありませんが、電気事業法の臨時措置法によりまして旧公益事業令が生きているわけであります。あれによりますというと、電気料金の認可というものは全部政府がやることになっております。しかも政府が認可いたします場合には一定の認可基準というものでやっているわけであります。従って電気料金の認可する基準は何かというと原価計算主義にのっとってやる、すなわち一斉に認可をやります場合には、ただいま日本には九つの電力会社がありますが、九つの電力会社を全部同じ経営状態に引き直す、要するに企業格差はないという前提のもとに料金の認可というものは行われているはずだと思いますが、この点はいかがですか。
  274. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 認可の当時の方針は大体そうでございます。その後各会社の事情が変って参りますと格差が出て参るということでございます。
  275. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 認可したときにそういう状況であって、しかも五年たっていない……五年たちましたかね、これほどの大きな企業格差が出たという根本原因はどこにあるかということをこれは一つ通産大臣からお聞きしたいと思います。どこにそういう原因があるか、しかも電力の再編成をやるときに電源と需用の結びつきがまずくてこういうことになったのか、あるいはその他需用の伸びに特別の現象があったのか、あるいはその他火力と水力の割り振りでこういうことになったのか、どうして企業格差がこんなに出たか、これも政府の大失態だと思います。料金を認可するときには九つが同じ企業状態でやれる、企業格差はない、そのために北海道から九州まで電気料金はでこぼこにして、均一料金ならいいが、高いところと低いところとを作って、そうして経営状態を同じにいたしますと言っておいて、お客様にとっては迷惑な話であります。少しよけい電力料金を納めているからこれで電力だけは豊富に送ってもらえるだろう、会社の経営状態も東京のような優秀なところと、同じ状態で四国もやれるだろう、北海道もやれるだろう、こういうふうに政府政策できめられたものが数年たってみると電力料金も差がついている、会社の内容にも差がついている、それが原因になって開発もうまくいかない、こういうことになるならば政府政策の大失態だと私は思うのです。この点を通産大臣からお聞きをしたいと思うのです。通産大臣からちょっと言うて下さい。
  276. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 五年間においてそういう格差が出た原因はいろいろあると思いますが、まず第一が火力の発電がおくれて、水力を主としている地域と、火力が非常に多く発電されてる地域との違いがまず一つ。それからやはり都市の発達度によりまして、当時から比べたら、電灯と動力の比率の変化があった。それから、さらに今逼迫している地方では非常に料金の地方格差がございましたので、いろんな工場が移ってるというので、たとえば東北のようなところはカーバイド工業とか、そのほかの鉱山のものだとか、いろんな工場が最近多くなってきて、この需給の状況が変ってきてるというような、いろんな原因によって五年間にそういう差が出てきたものだろうと考えております。
  277. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 一番今大事なところなんですね。電源開発に直接関係のある経営状態のことです。今の程度の御認識では、とても水田通産大臣、大へん失礼ですけれども、電力政策について通産大臣として行政をおやりになるには、まだ至らないと私は思うのですよ。これは一つ公益事業局長がおいでになっておりますから、もう少し的確にどういう原因でこういう工合になったのか、お述べを願いたいと思います。
  278. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 企業格差の出ました原因は、まあ大約すれば、大臣が申し上げたことに帰するわけでございますが、詳しく申しますれば、一つは各会社の事業内容の差異及び変化じゃないかと思います。端的に申しますと、東北及び北陸は水力地帯ということで安い電気が使えるということで比較的電気を多量に使用いたします工場が蝟集し、東北のごときは、再編成以来大口電力が約五倍になっております。北陸は約三倍。で、しかも、これは当初、料金決定の際予定いたしましたよりも、さらにふえておりまする結果、平均の販売単価、キロワット当りの単価が予定よりも低下しているという現象を呈しております。それからもう一つは、従って、この電灯と動力との比率も、予定以上に動力の方がふえて、電灯の比率が下っておるという現象にも現われております。それからもう一つ原価面の構成でございますが、両地区とも火力発電所を今まで持っておりませんで、水力発電所だけで、東北が再編成後六カ年間に四十万キロ、各社のうちで一番多く開発しておりますが、御承知のように、水力の開発費は火力の倍以上になりますので、従ってその資本費、つまり償却及び金利の累積が原価を大きく圧迫して参るということになるわけです。それからもう一つの原価として見のがせませんのは、融通の問題であります。どの地区も水力でありまするから、豊水期には関西あるいは東京に融通をし、冬場の渇水期には融通を受けるのでありまするが、豊水期の電気料金が、非常にこれは安い電気料金になりまするし、渇水期の電気は、これは火力原価になりますから相当高くなるのが実情でございます。その辺が販売面から申しますれば、高い火力料金ベースの融通を受けて、それを低い料金体系の大口電力に供給すると、従って送電費をのけましても逆ざやになる、こういう実情もございます。あれこれ合せましてまあ現在のような企業格差が出て参っているかと思っております。
  279. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 まあ東北を例にとってけっこうですが、東北の昨年三十一年、一年の販売総電力量、そのうちで産業用に使われた電力量、そのうちで今あなたがおっしゃたように、化学、電炉だとか、そういうような東北へ目ざして集中した産業のために使われた電力がどのくらいになっておりますか。これをちょっと参考のために伺っておきたいと思います。
  280. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 三十一年の実績はわかりませんが、便宜三十年の下期と三十一年の上期で申し上げますると、東北は六十キロワット・アワーの販売電力量で、料金収入が二百三十五億円でございます。で、この電力量の方の大まかな内訳は大体大口が約三十億キロワット・アワーと見ております。小口が七億五千、残りが大体電灯であります。
  281. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それからそのうちで電解電炉に使われている電力はどのくらいありますか。三十七億のうち……。
  282. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) ちょっと今正確な資料を持ち合せておりませんが、大体東北の需用の五割ぐらいが電解電炉ないしそれに準じます特約料金制度を適用している工場のあれかと思っております。
  283. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今お話しになった点は、大体私その通りだと思います。総販売電力量のうちの三分の二が産業用電力、その半分、三分の一が今の電解電炉用に使われている。しかもその電解電炉用の工場へ幾らでも送られているか。発電原価が幾らで、販売原価が幾らになっておりますか。
  284. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 発電原価でございますが、実績はちょっと持ち合せておりませんが、今の料金体系に織り込んでおりまする料金原価は需用端で平均四円でございます。これは水火力調整金をたしか入れた計算だと思いますから、春先現在ではこれより少し安くなっておると思います。  それから収入の方の料金単価は、当初の料金原価の方としましては大体大口が二円弱でございます。そのうちでこの電解電炉の方はよくわかりませんが、特殊がだいぶ入っておりますから、これより安くなると思っております。
  285. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大体東北へ今集中している電解電炉関係の単価は一円七十銭から八十銭なんです。だから発電原価が四円するものを、大産業のために一円八十銭で売っている。しかもその売る量は販売電力量の三分の一ですよ。こんなに電力を売ることによって大企業にサービスしなきゃならぬですか。しかもこのことが東北だけじゃありません。東北から九州まで、全電力料金にわたって大企業に対してこういうことが行われている。従って、税金で発電所を作って、作った発電所の電気はほとんど全部大企業に持っていき、大企業では原価を割ったこういう安い値段で電気を使っているのです。私は今ここに簡単に漫画のような表現で申し上げましたが、これをお認めになりますか、お認めになりませんか。
  286. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 今栗山委員からきわめて簡単に素描されましたが、これは御承知のように、各電種とも個別原価で計算をやっておりまするので、従って、平均の料金原価は四円でございましても、それぞれの電種、電圧等に応じまして個別原価を開いておりまするから、大口電力の方が原価を割っているということには相ならぬかと思います。平均原価より安い原価で供給はしておりまするが、これがその供給先に対する原価を割って安く供給しているということにはならぬと思っております。
  287. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その通りでいいですか、その通りで……。
  288. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 大体よろしゅうございます。
  289. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 たとえば、あなたは四円だとおっしゃったですね。これは平均だとおっしゃった。しかし、東北は先ほどあなたがおっしゃったような融通で高い電気を受けているとおっしゃっている。高い電力は一キロワット・アワー七円にも八円にもなっているのがあるのですよ。それを受けてきて、電解電炉として一円八十銭で売っているのですよ。それだから、発電原価がそんなに一円八十銭よりも安いということは絶対考えられない。幾ら個別原価でもですよ。だから、これはもうきょう資料なしでお話を申し上げておるので大へん恐縮だが、私は今岩武さんがおっしゃったようなことは絶対にないということをここで断言します。それをあなたが資料なしでおっしゃったので、私も反駁いたしかねるけれども、絶対にそういうことはありません。だから、大づかみに申しますが、この前の料金決定のときは、いいですか、三千キロ以上の大口需用家に対しては、個別原価も出た原価の九掛で売っているのですよ。個別原価が出たら、少くとも幾ら割り引いてもそれで売らなければならぬのを、九〇%で売って二〇%はみ出た差額はどこにつけているかというと、電灯需用家につけているのですよ。だから、あなたの今おっしゃったことを断言なさるならば、私はまたさらに論争するし、保留されるならば次の機会を待つし、どうですか。
  290. 岩武照彦

    政府委員(岩武照彦君) 一〇%引きで販売しているというのは、実は私は初めて聞きました。不勉強なのかもしれませんが……。二年前のことですから、もう少し調べてみたいと思っております。  それから、先ほどの融通料金の関係は、これは御承知のように、全体の料金原価に入って参りますから、融通してきたものが直ちにそのままひも付きで大口工場の原価に相なるという計算はいたしておらないのでございます。  それから、御参考までに申し上げますが、先ほど大口の方が二円弱と申しましたが、これは需用端換算の発電原価を上回っておりますから、その点は発電原価を割るようなことはないと思っております。
  291. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これはまあだいぶ古い話で、この前の電力料金の認可をする寸前に、国会で私どもが通商産業委員として議論をしたときに、これは速記をつけて、今申し上げましたことは、通産省からデータをもらって、そうして議論をしたことを私ははっきり記憶しているのですよ。それですから、あなたが今そこでそういう工合に資料なしにおっしゃっても私は理解できないわけです。原則的にこの前料金をきめる前においてすらそういうことがあったのに、その後こういう工合にして電解電炉がどんどん東北に集中していったところから、なおさら条件が悪くなった、これが企業格差をくずした根本の原因なんです。先ほど水田大臣は、東北は水力発電所をどんどん作って発電コストが高くなったから企業格差が下ったとおっしゃったが、それは全然影響がないとは申しませんが、主なる影響ではない。主なる影響は、これが影響なんです。これは水田さん一つ、どういうふうにお考えになるか、私の説もまた一説として研究してみる御熱心があられるかどうか、私は伺っておきたいと思う。
  292. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私もさっきそう申したつもりですが、東北はほかの地域よりも電力料金が安いと、従ってそこに電力を原料とするような産業、新規産業東北に相当集中する傾向を持ったと、これがさっき言いましたように格差を生じた原因だというふうに考えております。
  293. 天田勝正

    ○天田勝正君 議事進行……これは栗山君の質問時間は三十分ということになっておって、しかしその三十分を有効に使って的確な答弁をいただかなければならぬ。しかし、先ほど来一カ所を回って、一向的確な答弁がございません。それは、資料がないからということなんです。かようなことでありましては、この先幾ら続けたって同じことだと思う。本日はこの通りおそくなりましたので、そこで私は、他の質問までも取りやめてこれをどうしようとは今申しません。しかし、栗山君の質問の部分につきましては、これは資料を整えてきていただいて、改めてあさって質問をした方が、むしろ審議の進行になろうと思いますから、さように取り計らっていただきたい。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  294. 安井謙

    ○安井謙君 それは、その資料のあるなしという程度は、非常に主観の相違でありますし、相当確信を持って答弁をしておるのでありますから、これはこのまま既定通り続けていただきたいと、こう思います。(「東北の赤字がどこに採算漏れがあるかということは基本の重要な問題じゃないか」と呼ぶ者あり)
  295. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 栗山君どうですか、できませんか……、政府の方は要求せられた大臣が責任を持ってお答えしておるわけですね。(「これはもう見解の相違になっちやう」「見解の相違じゃない、基礎的な事実の観念の問題じゃないか」と呼ぶ者あり)
  296. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は将来の電力政策についてずっとお聞きしたいと思っておるのです。昭和五十年の原子力開発の必要な時期が来るまでのエネルギー政策を中心にしての質問をしたいと思っておりますが、その前提となる昭和三十一年前の政府のおやりになった電力政策、これについてやはりお尋ねをして、政府考えのやはり基本というものをただしておかなければ、将来やったって意味ないことですから、沼田の上にコンクリートの建物を作るようなもので意味ない。そこで、私は今基礎工事をやっておるわけです。ところが、その基礎工事がさっぱり今のような御答弁では進まないですよ。これは私の確信を持っておることと違うのですから、見解の相違じゃないのです。私は数字を持っているのだから……、言いましょうか。少くとも電力問題については、私はでたらめを申し上げておりません。そんなことじゃないのですから……。
  297. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 栗山君の発言の時間がもう経過しておるのですね。それですから、……(「発言の時間で答弁が的確でなければしようがない」と呼ぶ者あり)だから、政府はとにかく責任者が見えて、そうして確信を持って答弁をしておるのですから、これ以上要求することは少し困難じゃないですか。(「その通り」「そんなことじゃだめですよ、どこが核心に触れておる」「答弁が的確であればちゃんと時間も守る、答弁が的確でなければそんなことを言ったってしようがない、私はむちゃを言っておるのじゃない。ほかの質問までとめようとしていない。今夜どうするのだ」と呼ぶ者あり)
  298. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) どうですか。もし御不満であれば、この次の機会に一つ御質問をなさることにして……。
  299. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は大へん不満に思いますのは、北海道の開発については特別な開発法ができてやっておいでになる。それも失敗であったというようないろいろな記事も出ているわけです。私もこれは追及したいと思います。ところが、そういうことを全然国会において追及しないで、また、東北の方に拡張してこようとおっしゃって法案を出しておられる。そういう工合に国の金を、慎重さを欠いてお使いになることについて、私は国民の一人としてまことに残念に思う。特にその東北が電力問題でこういうことになっておるわけです。私はどこに問題があるかということを明らかにしなければならない。それをしようと思えば、さっぱり的確な要点に触れられないので進めないわけです。私は委員長が持ち時間のことをおっしゃいますから、これはやはりお互いに他党との約束の信義がありますから、これ以上無理は申しません、申しませんが。しかし、この問題は持ち時間云々という問題でないと思います。従って、理事の方で一つどういう工合にこの問題をするか御相談を願いたいと思います。その前提として今の問題の締めくくりを一つつけておきたいと思います。  今までのことで、まだいろいろやらなければならないことがありますが、問題は、電気事業の経営の実態の問題に触れたわけでありますが、政府が法規によって当然こういうような状態の起きないように措置しなければならなかったにかかわらず、ここ五、六年の間の施策、これは事業構成が変ったとおっしゃいますから、大きく言えば自然的な現象であったかもしれません。自由主義経済においてはやむを得ないことかもしれません。しかし、それも含めて、とにもかくにも政府政策の若干の欠陥というのがここに出ておる。そうして今、回り回って国民に相当な迷惑を現実にかけているのです。そういうことを認めていただけるかどうか。そうしてその結果、今私が申し上げたことについての関係資料というものを当予算委員会一つ通産省としてお出し願いたいと思うのです。その資料に基いて、あらためてもう一ぺんこの問題は研究をいたしたいと思う。そういう認識に立ってお願いできるかどうか。そういたしまするというと、私の質問といたしましては、三十二年度以降の長期電力政策、総合エネルギー政策というものを、今後いつか機会を見て時間をちょうだいしておただしをすればそれで足りる、こういうことになるわけです。
  300. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 資料の不足な点、あるいはただいままでに差し上げた点で的確に御希望に沿い得ない点がありましたら、私の方は御希望に合う資料を調製してお届けいたしたいと思います。
  301. 湯山勇

    ○湯山勇君 今回の第一、第二補正につきましては、先般来、佐多委員その他から御質問がありましたが、私は別な角度からこの予算の性格について大蔵大臣お尋ねいたしたいと思います。  財政法によりますと、補正予算には、その性格として、歳出の緊急性というようなことがよく示されております。ところが、今回出された第一、第二補正を通覧してみますと、三十二年度の決算に基くもの、これは当然といたしまして三十一年度の一部を今回補正でお出しになっているもの、たとえば義務教育の予算とか、漁船あるいは恩給、年金等、そういうことがあれば当然この範ちゆうには食管も入るのじゃないかということが考えられるにもかかわらず、これは省かれております。さらに、三十二年度に繰り越して使われるもの、交付税交付金、あるいは沖縄関係の特別措置費、あるいは国庫債務負担として継続するものには、問題の北海道開発庁、それからさらに三十一年度とは無関係に、三十二年度以降において使用されるところの今の産投会計への繰入れ、こういったように見て参りますと、大蔵大臣の御答弁の中には、弾力性を持つという御説明がありましたけれども、弾力性を持つということは、それだけ全部必要だという意味ではなくて、要る場合もあり、ある場合には要らない場合もある、こういうようにも解釈されますので、これらの予算の緊急性というようなものについて大蔵大臣はどのようにお考えになってこういうふうにまちまちなものをおきめになったか、これを伺いたいと思います。
  302. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 現在の財政経済状況から申しまして、私は今回御審議を願いますような第一次補正、第二次補正がやむを得ないものと考えて出しておるのであります。特に、お話のありました三十一年度の食管会計の赤字につきましては、食管会計法におきまして決算確定を待ってやることが原則であると考え、しかもまた、特に、三十二年にありまして、食管の合理化につきましての調査会がありまする関係上やったのであります。いろいろの問題がございますが、一々私は必要やむを得ざるものといたして御審議を願っている次第であります。
  303. 湯山勇

    ○湯山勇君 時間があまりありませんので、繰り返しての質問ができないと思いますから、一つ的確にお答え願いたいと思うのでございますが、三十一年度の補正というのは、三十一年度に支出する緊急性があるということだと思うのでございますけれども大蔵大臣としては、どのようにお考えになられますか。
  304. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 原則としてはその通りでございますが、四十四条の資金はやはり三十一年度で支出しなくても、三十二年度でやる場合も適宜あると考えております。
  305. 湯山勇

    ○湯山勇君 この予算を見ますと、ただいまのような原則が、原則はそうだと肯定になられたように、原則がよく守られていないというような点につきましては、私どもは非常に遺憾に存じます。  なお、一、二の点についてお尋ねいたしますと、この中での産投にお入れになった百五十億、それから交付税交付金の七十六億、これは先般の御説明によれば、当然実質的にも三十二年度の財政規模に入れらるべきものではないか、こういうふうに考えられます。しかし、実際は三十一年度の歳入歳出で処理されておる。これは三十一年度の歳入歳出で処理して、実質は三十二年度にある。こういう形は単年度予算の原則に私は反するのではないかというような疑問を持ちますが、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  306. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう御疑問がございますので、先ほど来御説明申し上げておりますように、資金につきましては、財政法第四十四号の規定に基いて今回法律を出しましてやっておるのであります。しこうして次の地方交付税につきましては、これは自然増収を見積って三十一年度の一般会計で歳入歳出に充てまする関係上、当然百億円というものが出てくるのであります。しこうして、この百億円というものは、三十一年度の地方交付税として使用さるべきものでございまするが、年度末に差し迫っておりまして、これを今直ちに全部を使うというわけにいきませんので、いろいろ調整いたしまして、二十四億円を使い、七十六億円はこれまた法律によりまして、三十二年度の交付税に加算して使用し得ることを御審議願っておるのであります。
  307. 湯山勇

    ○湯山勇君 法律をお出しになっておるということは、こういう支出が無理だということをお認めになって法律によったのだというように解釈されますので、やはりこの出し方が相当無理があるということは、ただいまの御答弁からも私は受け取ることができると存じます。  次にお尋ねいたしたいことは、交付税の使途についてでございますが、三十二年度における。これは当然私ども考えからいえば、補給金等で一般財源で見るべき性質のものであると思います。ところが、それが交付税の中から出されるということは、結局当然地方へいくべきものを——地方へ当然いって地方で使われるべきものを、こういうふうにひもつきにして出した。しかもこれを償還関係に充てるということになれば、地方は結局自分でもらえるものを、一般財源で受けるもののかわりに使うという格好になりますから、結局タコの足を食べるというような格好になるのじゃないかと思うのですが、この点については、大蔵大臣並びに自治庁長官の御見解を伺いたいと思います。
  308. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 法律を出しまするから、無理があると解釈すべきものではないと思います。四十四条の資金につきましては、従来ともそういうふうにやっております。しこうして、地方交付税法におきまして百億円を入れました場合において、従来の法律解釈におきましても繰り越し得ることには相なっておるのでございまするが、一度に多額でございまするから、一応法律を出して御審議を願うことにしておるのであります。次の問題の、交付税百億円を今年度に使い得なかった分を次年度の交付税に加算してやるということは、これは地方自治庁の方で公債償還に充てることが適当とお考えになりまして、御相談なさって、われわれもそれに賛成しておるのであります。しこうして、これはひもつきの金とか、あるいはほかの、政府が国で負担すべきものをたまたまこの金を交付税でもってまかなう、こういうものではございません。やはり原則といたしまして、法人税、所得税あるいは酒税の歳入から当然二五%が出てくるのでございます。これは法律上の当然の結果であると考えておるのであります。
  309. 田中伊三郎

    国務大臣田中伊三郎君) 交付税の使い道でございますが、公債費対策の一環としてこれを使う、こういう考え方で使うのであります。その点は大蔵大臣から答弁いたしましたことと同様でございます。
  310. 湯山勇

    ○湯山勇君 自治庁長官がそういう御答弁をなさることは私はまことに心外であって、このようなものは補給金等でやってもらいたいという御答弁があってしかるべきだと思います。なお、大蔵大臣の御答弁の中で、額が大きいから——法律にしなくもいいのだけれども、額が大きいから法律にしたということも、これも私は了解できません。しかし、それはそれといたしまして次に移ります。  沖縄関係の特別措置費でございますが、繰り越し明許の要求で、本年度支出の残については繰り越しの承認を求める、こういうことでございます。本年度どれくらい支出して来年度にどれくらいになるか、御予定があれば承わりたいと思います。
  311. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 講和条約以前の土地の問題につきましては、われわれの方としても従来相当調査をいたしておるのでございます。従いまして、できるだけ今年度内に支出するようにいたしたいと思っておりまするが、何せアメリカの統治権の中にあることでございまするし、もし全部がいかない場合をおもんばかりまして、一応繰り越し明許をお願いしておる次第でございます。
  312. 湯山勇

    ○湯山勇君 これは先般の御説明のように、一括して、たとえば適当な団体あるいは一億の分は、琉球政府にお渡しになるわけではありませんか。個々に日本政府から沖縄の方にお送りになるわけですか。
  313. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この、土地を接収された方々の個々の人につきましては、一応委任状を取りまして、まとめて個々の人に渡す手続をとりたい、こう考えております。
  314. 湯山勇

    ○湯山勇君 まとめておやりになれば、結局十億の中が二回か三回になるとか、あるいは一億がばらばらになるとか、こういうことはないのじゃないかというふうに思いますが、その点いかがでしょう。
  315. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この十億と一億とは違いまして、十億の方は、個々の土地を接収せられた個人に渡すのでございます。従いまして、数多い中でございます、大体五万件ぐらいと考えております。そういう方々につきましては、代表者をきめまして、委任状で政府から渡すことにいたしたいと思います。政府というのはこちらでございます。それから一億円の更生資金の方につきましては、先ほど来申し上げましたように、沖縄政府に見舞金として一括差し上げたい、こういう考えでございます。
  316. 湯山勇

    ○湯山勇君 そこで、大臣は先刻このことについては、琉球政府の方には外務省から通告しておる——明瞭に通告しておるという御答弁がありましたが、通告だけではなくて、当然軍政府当局の了解が要ると思いますが、了解はお求めになっておられるかどうか、いつお求めになられたか、お伺いしたいと思います。
  317. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 通告は琉球政府ではございません。アメリカ当局にいたしておるのであります。このことは、私が第二次補正予算を組みます前におきまして、十分アメリカに日本政府の気持を知ってもらわなければいかぬ、こういうので、外務大臣に申しまして、外務省からその手続をとっておられるはずでございます。
  318. 湯山勇

    ○湯山勇君 向うからは、承知したというようなことは……。
  319. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 向うから承知の返事は私は聞きませんが、外務大臣におきましては、アメリカ政府に誤解があってはいけないというので、はっきり外務大臣よりその旨の手続をとるようにお願いいたしまして、外務大臣からは手続をとった、こういう返事をいただきましたので、それではというので第二次補正に組んだわけでございます。
  320. 湯山勇

    ○湯山勇君 手続をとったということと、先方の了解があったということとはちょっと違うように思いますので、この質問は留保さしていただきたいと思います。  次に大臣に伺いたいのは、防衛分担金については、解釈としては、日本の会計検査院が検査できるという解釈をとっております。この場合の沖縄に出された金については、昨日は一億は貸付の形とか、たしかお聞きしたのもあったと思うのですけれども、そうだとすれば、やはり会計検査の対象になるかどうか、これはどういうことになるか伺いたいと思います。
  321. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 防衛分担金でございますが、これは日本政府が米軍に渡しましたときに、日本政府としての支出を受けるわけでございますが、特にその点につきましては日米合同委員会で、日米間で合意をいたしまして、双方合意に基きまして、必要があれば支出の内容を監査できるということに相なっております。これは検査院ということではございません。関係の職員が監査できるということでございます。今回の沖縄関係でございますが、十億円の方は、これはただいま大臣からお答えいたしました通り、各個人に支出いたしますのが日本政府からの支出でございまして、この支出いたしますのは日本機関でございます。その段階におきましては、当然検査院の検査の対象になるわけでございます。  別の一億円でございますが、これは沖縄政府に交付いたしますことをもって支出の内容といたすわけでございまして、これまた、交付の段階日本政府の支出が終ります。その段階につきましては、もちろん会計検査院の監査の対象になるわけでございます。沖縄政府はその一億円をどう使いますか、その点につきましては、日本と沖縄との間にいろいろ御相談もしなくてはならないわけでございますが、一たん贈与と申しますか、交付いたしました後の行為、これは琉球政府の問題になるわけでございまして、その段階にまで会計検査院が立ち入って検査をいたしますことはこれはできないことでございます。
  322. 湯山勇

    ○湯山勇君 昨日の御答弁でしたかに、一億の貸付という御答弁がありましたが、その分はどうなりますか。
  323. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 一億円を沖縄政府に贈与いたしますにつきましては、これをたとえば——たとえばでございます、沖縄にございまする国民大衆金庫に出資をして、そこから貸し付けるのも一つ方法でございましょうし、あるいは貸付でなくて、引揚困窮者等に対して見舞金として金一封を渡すというのも一つ方法でございましょう。そこらの辺は、日本政府としては要するに、引揚困窮者の救恤に使っていただきたいということで交付するわけでございますので、これを貸付にするかどうかという点につきましては、あまり干渉がましいことは言うべきではないと存じます。もちろん希望はこれは述べるわけでございますが、いかにそれが使用せられるかということは、琉球政府ともちろん相談をいたしますけれども、琉球政府におまかせすべき性質のものと考えております。
  324. 湯山勇

    ○湯山勇君 それじゃそういうことは万ないと思いますけれども、極端な議論をすれば、琉球政府日本政府の意図してないことに使っても、これはもうやむを得ない、そういうことはないと思いますけれども、理屈を言えばそういうことになりますか。
  325. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 一億円の交付金がよって参りましたゆえんのものは、もともと沖縄における現地の切実なる要望に基くものでございまして、万さようなことは、目的外にこれが使用せられるようなことはあるまいと信じておる次第でございます。万一、目的外に使用せられた場合にどうかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、そういうことがないように極力よく御相談をして参るということで、そういう場合のことを想像いたしたくない気持でおります。
  326. 湯山勇

    ○湯山勇君 大蔵大臣お尋ねいたしたいのですが、今回の措置は、措置としては私ども大賛成ですけれども、果してこの十一億で十分とお考えになっておられるかどうか。と申しますのは、一千一百億もの自然増の見込まれる今日、この沖縄の人たちにわずかに十一億程度で大丈夫というように御判断になっておられるかどうか。もしそうでなければ、今後何かお考えになっておるならばそれを伺いたいと思います。
  327. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 十億の土地の接収によりまする見舞金でございまするが、これはいろいろ計算をいたしまして、相当の金額に上るやに聞いております。しかし、これはあくまで沖縄の方々とアメリカ政府との間の問題で、岸総理お話になったように、われわれはアメリカにこれを補償する義務があると考えております。従いまして、そういう方面にわれわれは力を尽していきたいと考えております。ただこの十億円の問題は、ただいま申し上げましたように、五万世帯の方々にせめてものお見舞金として出すのでございまして、もちろん十分とは考えておりませんが、見舞金としてはこの程度でがまんしていただけるのではないかと思います。  それから次の一億円は、今問題になっておりますが、これは引揚者に対しまして、内地におきましては国民金融公庫から三十億円程度の貸付金をいたしておるのであります。それにならいまして、沖縄の方々にも沖縄政府より、大衆金庫というのがあるそうでございますが、それに貸付金をして、引揚者のお困りのところを幾分でも慰めたいと、こういうことを主眼にしてやっておるのでございます。
  328. 湯山勇

    ○湯山勇君 次に、今回国保の国負担分として十億余りが見込まれておりますが、これはこれだけで十分かどうか、厚生大臣に伺いたいと思います。
  329. 神田博

    国務大臣(神田博君) それでまかなって参りたいと、こう考えております。
  330. 湯山勇

    ○湯山勇君 三十年度の国保の赤字はどれくらいになっておりますか。
  331. 神田博

    国務大臣(神田博君) 厚生省の調べによりますると、十七億ないし二十億というような数字に計算できるようでございますが……。
  332. 湯山勇

    ○湯山勇君 その原因はおそらく事務費の実績単価とそれから政府の方でお持ちになった単価との差からきたと思いますが、三十年度の事務費の実績単価は幾らになっておりますか。
  333. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。一人当り百七円と、こういうふうなことになっております。それからもう一つ、赤字の原因は今お述べになりましたほかに、だいぶん滞納と申しますか、未収金があるようでございます。
  334. 湯山勇

    ○湯山勇君 時間がありませんので、簡単にお尋ねいたしますが、実際は、この二十億の赤字を十億でまあ何とかなるという厚生大臣のお考えは私には了解できません。それから実際事務費単価が百七円であるにもかかわらず、実際にお出しになったのはわずかに六十八円、これでは国保はますます私は窮地に陥っていくのではないか。それから未収金とおっしゃいますけれども、未収金についても市町村は親心でもって、無理なところからは取らないで、従来市町村費で埋めておりました。ところが、再建団体になったために、一切、自治庁の指図によってとめられてしまった、こういうことから私は現在、国保はきわめて危険な状態にある、こう思いますが、自治庁長官並びに厚生大臣の御所見を承わりたいと思います。
  335. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま御指摘になりましたように、町村によっては非常に不健全と申しますか、心配になるようなところも出ております。それから今の赤字の原因になりました事務費の問題でございますが、これは三十二年度には八十五円というような計算でいたしております。
  336. 田中伊三郎

    国務大臣田中伊三郎君) お説の通り、国保の赤字は、勢い地方自治体の一般会計から赤字補てんのために国保の特別会計に繰り入れなければならぬと、こういう状況となっておりまして、その繰り入れの総額は三十六億円に及んでおるという状況で、相当な地方財政に対する重圧となっておるような現状であります。
  337. 湯山勇

    ○湯山勇君 私の言ったことに仰せの通りと言われたんでは困るわけです。それでは国保はつぶれてしまいます。これに対して何か対策をお持ちかどうか、厚生大臣は六十八円を八十五円にしたとおっしゃいましたけれども、それでもなお赤字は続きます。で、将来国民皆保険ということをおっしゃっておられますけれども、これではとてもできないということは大臣もお認めになっておるのかどうか、さらに、この皆保険のための国保の法改正を用意しておられたはずでありますけれども、これはお出しになるのかならないのか、これも伺いたいと思います。
  338. 神田博

    国務大臣(神田博君) 国民保険の問題につきまして、ただいま赤字は御指摘があったわけでございまして、相当赤字で悩んでおることは事実でございます。  それから事務費の問題につきましては、三十年度は百七円というような一人当りの単価になっておりますが、これはまあ、三十二年度には八十五円にしよう。さらに事務費の一体適正単価というものはどの程度が正しいのか。三十二年度に、一つ厚生省と大蔵省と共同調査をやって、そこで事務費の単価の正確なところを把握して、そこで指導していきたい。こういうようなことになっております。
  339. 湯山勇

    ○湯山勇君 時間があればあと厚生大臣に一、二点伺いたいのですけれども、時間がありませんから、次には、やはり補正に組まれております義務教育費の国庫負担、これについてお尋ねいたしたいと思います。  今日、義務教育は非常に危険な状態にあるということを言われておりますけれども、その原因は、実は三十年度の予算、決算及び三十一年度予算、だからこの三十年度がきわめて重要な役割を演じております。そこで伺いたいのは、三十年度の教員定数の予算が幾らになっておって、その実績が幾ら、それをまず伺いたいと思います。その差が幾らあるか。
  340. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 政府委員から答弁いたさせます。
  341. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 三十年度の予算定員が五十二万三千四百二十二人、実績の人員が五十二万六千百五十八人、差し引き二千七百三十六人の不足でございます。
  342. 湯山勇

    ○湯山勇君 これは小中合せて全員ですか。
  343. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) さようでございます。
  344. 湯山勇

    ○湯山勇君 こういうふうに約三千人からのしわ寄せが来た、つまり実績がオーバーした原因はどこにあるとお考えになられますか。
  345. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは当時の事情では、私ども予算の積算の基礎といたしましては、十分見たつもりでございますが、なお不足が生じた。この不足の原因につきましては、一つは、当時暫定予算等もございましたので、いろいろと計画のそごがあったかと思います。
  346. 湯山勇

    ○湯山勇君 文部省から計画のそごがあったというお話しでございますから、それはそのまま認めまして、次に三十一年度の予算定員の基礎になった実績は幾らになっておりますか。
  347. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 五十三万一千八百一人でございます。
  348. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちょっと小中別に言って下さい。
  349. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 小学校が三十四万百六人でございます。中学校が十九万一千六百九十五人でございます。
  350. 湯山勇

    ○湯山勇君 三十一年度の予算基礎になった、三十年度の実績として見た、つまり五月一日のものの上に重ねたわけですね。その五月一日の、三十一年度予算基礎になった数は幾らになっておりますか、実績として。時間をとりますから私の方から言います。文部省の資料によりますと、三十三万六千四百八十一が小学校、十九万一千二十八が中学校、間違いございませんか。
  351. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 三十一年五月一日の指定統計は、お尋ねの小学校で三十四万二千二百二十人、中学校では十九万二千七百三十八人。
  352. 湯山勇

    ○湯山勇君 これは少し違うようですがね。局長、もう一ぺん見て下さい。私は、三十一年度予算のときに文部省からもらった資料で言っているんです。
  353. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 失礼いたしました。三十一年五月一日と承わりましたので。三十年五月一日でございますか。——そうでございます。
  354. 湯山勇

    ○湯山勇君 私のでいいんですね。そこで私は、この計算も実は文部省にしてもらいたいのですけれども、時間を節約するために私から申します。  ただいま申しました資料をお認めになられましたので、三十一年度におきましては五千九百七十二名ふえるべきはずのものが、二千百六十名しかふえておりません。小中学校では千四百四十六名ふえるべきものが、八百十八人しかふえておりません。つまり、ここで小中学校合せて四千四百名ばかりの減が出ておる。これは文部省はお認めになられますか。
  355. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) さようでございます。
  356. 湯山勇

    ○湯山勇君 そういうふうになって参りますと、この責任は一体どこにあるとお考えになられますか。  つまり三十年度に暫定予算が組まれたために、自治庁の指導もありましたけれども、結局年度当初に教員をふやすことができなかった。六月をこえて、本予算成立後において、やむを得ないところをいくらかふやしていった。ところが、予算作成の基礎は、五月一日の指定統計をとりますから、それが、三十年度の定員の充足ができない段階です。二十九年度に近い状態で積み重ねていきましたために、苦しい地方財政の中から、今、局長のおっしゃったように、約三千名をそれこそ涙ながらに出しました。ところが、それが無視されて、五月一日の指定統計、つまり三十年度の充足ができない上へ三十一年度の児童生徒増に見合うのをかぶせましたから地方ではびっくりして、これでは大へんだというので、三十年度にオーバーした逆のはね返しがきて、ここに四千名以上の教員減を来たした。こういう観測は文部省ではどうお考えになりますか。
  357. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) お話しのような点もございますが、これは地方財政が全体に引き締めの傾向にございますので、十分な教員数の充足ができなかったという点があると思います。
  358. 湯山勇

    ○湯山勇君 大臣もお聞きのように、三十年度で今のように三千名ばかり首を締められて、三十一年度では、今度は文部省が思っておるのよりはるかに下にいった。つまりその落差というものはうんと大きいわけです。この原因はいろいろありますけれども、今言ったように、結局暫定予算が二カ月も続いた。そういうところにあるということは今お聞きの通りです。そこで三十年度十億だけお埋めににりましたけれども、あと地方から出しておる十億はそのままです。これについては何とかするお考えはございませんか。自治庁長官に伺います。
  359. 田中伊三郎

    国務大臣田中伊三郎君) 地方持ち出し分につきましては、交付税の単位として算定のできますものはこれを算定すると、こういう方針でございます。ただし、今のような事情の場合で、普通交付税の算定のできない場合、こういう場合におきましては、特別交付税をもってこれを見よう、できるだけ工夫する、こういう方針でございます。
  360. 湯山勇

    ○湯山勇君 それでは、今回決算が確定して、義務教育費国庫負担金として十億が見られる段階では、やはり十億は特別交付金としてこれに見合う財源を与える、あるいは与えるように努力する、こう解釈してよろしゅうございますか。
  361. 田中伊三郎

    国務大臣田中伊三郎君) この分は、昨年年末の手当アップ分〇・一五分とともに、すでに、最近でございますが、特別交付税の算定が全部終っております。この分は交付済みでございます。
  362. 湯山勇

    ○湯山勇君 幾らでございましょう。
  363. 田中伊三郎

    国務大臣田中伊三郎君) 金額全体ですか。全体は今政府委員より説明させます。
  364. 湯山勇

    ○湯山勇君 これに見合う分ですね。
  365. 田中伊三郎

    国務大臣田中伊三郎君) はい、そうでございます。義務教育分全部を算定いたしておりますが、金額はちょっと手元に資料がございませんので、のちに申し上げます。
  366. 湯山勇

    ○湯山勇君 その後、地方財政の逼迫から、今のように四千あるいは六千、そういう現場からの教員が少くなったことが影響して今日起っておる事態、これを文部省から承わりたいと思います。文部省からお聞きしたいのは、まず、具体的なものがいいと思いますから、六十名以上の学級数が幾ら、それから昇給昇格の延伸、条例等で延伸した府県が幾ら、それから今年度の昇給を完全に実施していない所が幾ら、それから正規の教員じゃなくて、市町村費で負担しておる教員が幾ら、PTA等で負担している教員が幾ら、それからPTAで負担している教育費、PTAの費用じゃなくて、教育費をPTAが負担しておるものが幾ら、これを一つ文部省から御説明願いたい。
  367. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 六十名以上の学級がどのくらいあるかというお尋ねでございますが、小学校で三千九百九十二、中学校で二千三百六十八、合計六千三百六十でございます。これは三十一年五月一日の指定統計によります。なお、次に市町村費の負担の教員がどのくらいあるかというお尋ねでございますが、これは、私どもの調査でも、未報告の県が十七県ほどございますが、今まで報告の集まった資料によりますと、二千五百八十一人という数字でございます。なお、PTA関係の負担の職員については、これは明かになっておりませんです。ただ、PTAの負担が百十億程度ございます。この中には、一部分はたしかに事務職員とかあるいは教員とか、あるいは炊事婦、あるいは学校看護婦等の経費が含まれていると思います。それから、さらにお尋ねの昇給昇格でございますが、完全に三十一年度に実施いたしましたのが二十五県と記憶しております。なお不完全に延伸等のものが十四県、それ以外は、今まだ決定されてないものでございます。それから何か最後にちょっと聞き漏らしましたが。
  368. 湯山勇

    ○湯山勇君 けっこうです。これはきわめて重大なことでございまして、六十名以上が小学校、中学校で六千三百学級もある。それから市町村費で持っておる教員が二千五百八十一、そのほかに、PTA負担がわからないとおっしゃいますが、これは、私は文教委員として調査もいたしましたが、おそらく、市町村費負担と同様、あるいはそれ以上あると推定できます。これはおそらく文部大臣も御肯定になると思います。そうすると、ここに五千名余りの教育公務員でない公務員が、教壇に立っておる。この人たちは、政治教育も勝手にできます。ストライキをやろうと思えば、PTA負担などの教員はストライキをやっても法律にはひっかかりません。宗教教育も自由であるし、政治活動も自由です。全く義務教育の中に治外法権の教員が五千もいる。あるいはそれ以上おる。こういう状態を放っておっていいかどうか。さらに、またはPTAは百十億もの負担をしておる。これも放っておけない事態だと思います。それから自治庁長官は、来年度は四%の昇給をやると言明しておられますけれども、実態はこういう実態です。この原因はどこにあったかというと、三十年のゆり戻しが三十一年以下に来たのと、それから自治庁の指導によったもので、自治庁長官並びに大蔵大臣は、そういうふうに治外法権の教員が教育に当っておるとか、今文部省がおっしゃったような実態を御存じであったかどうか、これは大蔵大臣並びに自治庁長官に伺いたいと思います。
  369. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 文部大臣。
  370. 湯山勇

    ○湯山勇君 文部大臣はよく御存じでしょうから……。
  371. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 重大な質問のようですから、文部大臣からも一つ御答弁願います。
  372. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 委員長からの御指名でありますのでお答えを申し上げます。ただいまお話になりましたような事柄は、今日まで私もあると思います。ただし、全部が普通の教員と同じような教員であるとも考えておりません。内容的にはいろいろ違った点もあろうかと思いますが、ともかく市町村負担あるいはPTA負担において教育の一部がなされておるということは、これは認めざるを得ないのであります。昨年の秋制度も変って参りましたので、その前とその後との間におきましては、あるいは相当な変化もありはしないか、かように考えますが、いずれにいたしましても、不正規な状態につきましては、これは是正しなければならぬと思います。十分実情を把握いたしまして、善処いたしたいと考えております。
  373. 田中伊三郎

    国務大臣田中伊三郎君) 数年前よりそういう教員のありますことは、聞いておるわけであります。そこで、これを指導する方針といたしましては、府県に命じまして、その種の教員をどうしても置かなければならないときは、府県の経費をもってこれを処置をせよ、そうでない場合においては、そういう種類のものは置くことはならぬ、こういう意味で数年来厳重にしてきておるわけでございますが、しかし、今日遺憾ながら相当数のこの種の教員がおるということは事実のようでございますが、その実態は、一口に申しますと、二種類のものがございまして、県が大いに締める方針をとるから、勢いその結果として、あるいは町費村費負担の教員を置くということになる場合と、そうでなしに、一定の話し合いの定員を県が承知しておるにかかわらず、にもかかわらず、その上さらに町村費においてそういう教員を置くというような場合とがございまして、一がいに言えないということと、もう一つは、どれくらいな数が全国にわたってこれがあるかということの実態がわからない、こういう事情にある。(「はっきりわかっているじゃないか」と呼ぶ者あり)
  374. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵省といたしましては、義務教育費国庫負担法に基きまして、文部省と話し合いの上、成規の手続でやっておる次第でございます。文部省から出ました資料によりまして、法律の命ずるところによって処理いたしております。
  375. 湯山勇

    ○湯山勇君 私が大蔵大臣お尋ねしておるのは、今の手続はよくわかりました。しかし、教育がこういう状態にあると、つままり六十名以上が六千学級もある。それから市町村費負担も二千六百名もある。それ以外にPTA等の負担がそれに匹敵するくらいある。しかもそれらは何ら法的に拘束を受けない。何をやってもいい。こういう状態におかれている。こういう事実を御存じかどうかということをお尋ねしたわけでございます。  それから自治庁長官は、非常に変なこと——と言ってはおかしいですけれども、こういうふうになっておる責任の一端は自治庁長官にあるということをあなた自身の口からおっしゃったわけです。それは府県に対してはそういう教員は置かないように処置せよ、置くことはならぬという指導をしてきたと、この数年。ところが今のような、地方財政をぎゅうぎゅう締められますと、県の方も持つことができない。市町村に対して置くことならぬというものですから、どうしても置かなければならないものがどんどん市町村から抜けて、全部そういう拘束を受けないPTAに移っておるのです。PTAの負担の教員がふえる傾向というのは最近です。これは再建団体に対して自治庁が今のような指導をやったことが今日の原因になっておるので、大臣は非常に簡単におっしゃいますけれども、そういう指導そのものが実態につかない指導をしたということにあることを私は重ねて自治庁長官に申し上げたい。  大蔵大臣から御答弁願います。
  376. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 六十名以上の学級があることは聞き及んでおります。この点は教員数の不足の原因もありましょう。あるいはまた学校校舎の十分でない点もあると思うのであります。いろいろ原因はございましょうが、できるだけ適正な方法に改めたい。定員の問題につきましても文部省と相談しなきゃなりませんし、また校舎不足によりまする六十名以上という分につきましては、これは校舎の増築をはからなきゃならぬ。こういうことで、本年度におきましても昨年度よりも校舎の増築を計画いたしまして、六億円近い金を見込んでおるのであります。(「時間」と呼ぶ者あり)
  377. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 湯山君、もう時間ですから。
  378. 湯山勇

    ○湯山勇君 あとなるべく簡単に済ませます。  ただいま大蔵大臣は文部省と相談してということをおっしゃいましたけれども、これはやはり御相談願うことは非常に大事ですが、府県は実際は自治庁によって支配されておるのが実態です。そこで、市町村で教員が足りないからというので府県の教育委員会へ言っていきますと、府県の教育委員会は知事に要求する。知事は自治庁がどうもやかましいから……現に自治庁はお前のところの県は教員が多いというような指導もしておられます。そこで自治庁から押えられた府県は市町村を押え、市町村は結局またPTAにしわ寄せする。泣いておるのはそのPTAの親と、教室の子供と、受持の教員です。自治庁そのものはそれじゃどうかというと、大蔵省から締められたそのワクの中で、今年度の予算折衝を聞きましても、昨年の予算折衝を聞きましても、自治庁はずい分冷酷なことをやられたと言って憤概しておられる。けれども府県に対してはもうそれで防波堤になります。だから結局大蔵省のやり方が自治庁にいき、自治庁から府県、府県から市町村、市町村からPTA、こう将棋倒しになっておるのが今の実態です。ところがこれに対して文部省はどうかと申しますと、文部省は、そういうふうな苦しい過程を自治庁以下がやっておる。そうしてまあ実際に支出した半額を今ごろ三十年度予算に出してこれだけはちゃんと文部省は持ちますと、足らなければ補正します。実にこの態度は教育に責任を持った省のやり方ではないと思います。この辺に、私はただいま申しましたような憂うべき事実が日本の教育に起っておる原因があると思います。その要素は、ただいまの三十年度予算、決算、三十一年度予算の組み方にあった。時間もありませんから、私はこれ以上質問はいたしませんが、この状態をこのまま放っておけば、どんな事態が起るかわかりません。現にこういう無責任な先生に受け持たれておる子供の数は、概数でも二十五万ぐらいあります。この数からいきましても放っておくわけには参らないと思います。  お願いしたいことは、大蔵大臣も新しい大蔵大臣、自治庁長官も新しい自治庁長官、文部大臣も新しい文部大臣です。この三大臣が、ほんとうに協力して教育を守っていこうというお考えに立てば、私はこれは打開の道はあると思います。文部省も、義務教育費国庫負担金でしりぬぐいをするという態度を捨てて、実態を大蔵省に話せば、大蔵大臣だってよくおわかりになると思うし、自治庁長官も、ただむやみに押えるだけでなくて、やはり教育を守る、教育をくずれさしてはならないという立場に立って、もう少しあたたかい指導をしていただきたい。これをお願いして、御所見を伺って、質問を終りたいと思います。
  379. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。非常に同情のある御鞭撻をいただいたわけでございます。私どもといたしましては、御趣旨の存するところを体しまして十分努力をいたします。  なお明年度の教育費につきましては、決して十分とは申しにくいかと思いますけれども大蔵省及び自治庁におかれましても、かなり御協力をいただいたことは私はありがたいと思っております。せいぜい三省協調いたしまして、御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。
  380. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 教育の大事なことは、湯山さんと同様に考えております。先ほど申し上げましたように、校舎の不足をできるだけ早く補うと同時に、教員につきましても、東京、大阪は五十人でございまするが、府県は学童数四十五人を一教員というので計画をいたしまして、実行に移しておるのでございます。校長その他教頭で教べんをとらないところもございまするから、あるいはお話のように六十名ということがあるかもわかりません。原則はそういうふうにいたしまして、文部省とよく相談し、一番大事な教育につきましては、今まで以上に力を入れていきたいと考えております。
  381. 田中伊三郎

    国務大臣田中伊三郎君) お説にかんがみまして、慎重に検討をいたしたいと考えております。各関係省庁ともによく打ち合せをいたしまして、御意向に沿うように努力していきたいと思います。
  382. 湯山勇

    ○湯山勇君 ありがとうございました。
  383. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それでは、本日はこれにて散会いたします。  午後七時五十九分散会