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1957-03-11 第26回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十一日(月曜日)    午前十一時十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            堀木 鎌三君            安井  謙君            吉田 萬次君            中田 吉雄君            森 八三一君    委員            青木 一男君            石坂 豊一君            泉山 三六君            木村篤太郎君            小林 武治君            小山邦太郎君            関根 久藏君            高橋進太郎君            土田國太郎君            成田 一郎君            野本 品吉君            林田 正治君            前田佳都男君            内村 清次君            海野 三朗君            岡田 宗司君            栗山 良夫君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            羽生 三七君            山田 節男君            湯山  勇君            加賀山之雄君            梶原 茂嘉君            田村 文吉君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 岸  信介君    法 務 大 臣 中村 梅吉君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 神田  博君    農 林 大 臣 井出一太郎君    通商産業大臣  水田三喜男君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    労 働 大 臣 松浦周太郎君    建 設 大 臣 南條 徳男君    国 務 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 宇田 耕一君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 小滝  彬君   政府委員    内閣官房長官  石田 博英君    内閣官房長官 北澤 直吉君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正已君    法制局第一部長 亀岡 康夫君    憲法調査会事務    局長      武岡 憲一君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    経済企画庁調整    部長      小出 榮一君    経済企画庁計画    部長      大來佐武郎君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵大臣官房長 石原 周夫君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       宮川新一郎君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省管財局長 正示啓次郎君    農林大臣官房長 永野 正二君    食糧庁長官   小倉 武一君    通商産業大臣官    房長      松尾 金藏君    通商産業省石炭    局長      松尾泰一郎君    通商産業省石炭    局長      讃岐 喜八君    労働政務次官  伊能 芳雄君    労働省労政局長 中西  実君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十二年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十二年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから委員会を開会いたします。  昭和三十二年度一般会計予算  昭和三十二年度特別会計予算  昭和三十二年度政府関係機関予算  昭和三十一年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十一年度特別会計予算補正(特第1号)を議題といたします。  これより総括質疑に入ります。
  3. 内村清次

    内村清次君 議事進行について。ただいま委員長議題の付議につきまして、昭和三十二年度一般会計予算とさらにまた補正予算もともに議題にかけておられますが、私は、この本委員会におきまして、まず、どの予算から議題にかけられるのか、実は承わってみますると、理事会におきましては、衆議院予算可決次第、その順序を経て参議院の方ではその議題先議をするというお話がきまっておると、私は聞いておりますが、ただいまのお話では一括しておられるが、どういう順序でやられるのか、この点をお承りいたしたいと思います。
  4. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 一般予算補正予算とともに衆議院の方が通過いたして、こちらへ参っております。総括質疑に対しては一緒でよかろうと思いまして、これを共同に議題としたわけであります。
  5. 内村清次

    内村清次君 これは、予算委員会審議を円滑にいたしまする上については、やはりすべて委員長独断でなくして、理事会議題順序はきめることになっておる。それに、八日の日には、衆議院の方では補正予算可決になって来ておりまするから、当然補正予算の方から審議をするというのが、大体今のところでは建前です。だからして、この点は、十分に理事会においてお打ち合せの上に順序をきめていただかないと、今後この重要な予算案審議に当りまして、順序なくして入るということは、本委員会として前例のないことですから、この点は明確にして入っていただきたいと思います。私は、理事会でよく御検討願いたいと思います。    〔中田吉雄発言の許可を求む〕
  6. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ちょっと待って下さい。(「理事会を開いてやったらどうですか」「休憩して理事会」と呼ぶ者あり)  それじゃああらためて申し上げます。ただいま申し上げました三十一年度補正予算の方は、これは読み違えましたから取り消します。それは理事会に一ぺん諮って、さらに提案いたします。
  7. 内村清次

    内村清次君 その点を、これは早く、委員会の冒頭に当りまして大事なことですから……。この順序がわかりませんと、質疑者も困るでしょうし、また予算審議上におきましても非常に困りますから、これは大した時間はとらないと思うのですから、理事会ではっきりとおきめになった上で、そうして委員方々にも通告されて明確な順序によって、この審議を円滑にしていくというようなことを委員長職務として取り計らい願いたい。私は理事会を即刻にお聞き願いたい。与党理事ばかりそんな話し合いをしちゃあいけませんよ。
  8. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 今申し上げた通りに、昭和三十二年度一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算は、衆議院を通過した後には、その翌日からでも参議院委員会を開いてやるということだけは決定しているわけです。それから補正予算の方は、やはり予算衆議院通過後、その翌日からやろうということになっておりましたから、(「そんな相談してない」と呼ぶ者あり)私はその両方を一括しても差しつかえないと、こういうふうに考えたのですが、今御異議がございますから、その方はあらためて理事会を開いて、審議状態を……(「議事進行」と呼ぶ者あり)そしてこの前の一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算、これだけを一括して質疑に入りたいと思います。これだけならば前からもう決定済みのことですね。(「それはだめだよ」「審議日程理事会できめるべきものだ」「自分一人できめたのではだめだよ」と呼ぶ者あり)
  9. 内村清次

    内村清次君 ただいま言われましたような順序にしますと、理事会決定と全く食い違ってしまっているのですね。前後になってしまっている。というのは、委員長よく理事会のそのときの決定を記憶しておいていただきたいと思いますが、衆議院可決されたものを、この順序に従って参議院審議すると、こういうのがこの理事会決定ですね。そうしますると、八日の日には、昭和三十一年度の補正予算可決されておるのです。だから翌日からでも本委員会でやはりこれを審議しなくてはならないのですね。そうして九日の日に三十二年度の一般予算可決されてこちらへ送付されておりますからして、その順序でなさなくてはならぬ。だからして、本委員会としては一応その順序でおやりになるとすれば、理事会の一応の決定がやはり順序として審議の題目となっていくわけですが、委員長は全部くるめておられる。しかも今の点を訂正せられたのは、逆になってしまっているのですね。こういうようなことでは、委員長独断のお考え方では、委員会審議というものは、これははなはだ円滑を欠くと思う。特に一般質問をされる方々は、一体どの点に重点を置いていいか、一般予算重点を置いていいか、補正予算重点を置いていいかわからないでしょう。そういうようなことで審議がどうしてできますか。だからして、私はまず理事会を再度お開きになりまして、そうして簡単ですから、その順序を御決定をなさり、この上に立って委員会お開きになった方が、議事の円滑上、これは非常にいいと、こう進言して議事進行をやっておるわけです。この点を与党理事だけを呼んで、そうしておきめになってはいけません。やはり野党の理事もともに理事会お開きになって、ごくわずかな時間ですから、ここでおきめになって委員会に御報告願いたい。その順序によって御審議をしていただきたいということを再度私は御進言申し上げます。
  10. 左藤義詮

    左藤義詮君 先日の理事会で本予算について総括質問することについては十分御相談ができまして、順序等もきまっておるわけでございます。一日早く補正が上りましたが、これをどうするかということは、やはりまた後刻理事会を開いて御相談するべきだと思います。この前の理事会できまりましたように、本予算についての総括質問を続行されるように、これは理事会で約束ができているんですから、補正予算については、後刻理事会日程を作ればいいんですから、決定通りおやり願いたいと思います。(「与党理事意見ばかり聞くのか」と呼ぶ者あり)
  11. 小林孝平

    小林孝平君 ただいま左藤さんから、この一般予算の、三十二年度の予算についての話し合いだけをやったと、こう言われましたけれども、それは誤りであります。私は、四、五日前に理事にかわったのでありまするけれども、そのときの理事会における話し合いは、予算々々ということでやってきたのです。予算衆議院を上ったら翌日からやる、こういうことで私たちは納得しておったのです。それで今突如内村君から発言がありまして、これは実に重大なわれわれ理事があやまちを犯しておりまして、予算が上った翌日から審議するということなら、内村君が言っていたように、八日の日に三十一年度の補正予算が上ったのだから、九日の土曜日に当然やらなければいけなかったのです。それを理事会決定によらないで、このきまった翌日に審議するということをやらないで、今日まで延ばしたのは、これは理事会のあやまちです。だからもう一度理事会を開いて、われわれが理事会決定に従わなかったことを訂正しなければならない。一方的に委員長が勝手にそういうことを発言して勝手に取り消して、さらに与党理事意見だけ聞いて議事を進めるということであるならば、今後われわれはそれに担当したことをやらなければいかぬ、こういうことになります。すみやかに休憩をしてもとに戻して下さい。ちっともこれは……岡田さんの質問一般予算についてやることになっておった。(「だからやったらいい」と呼ぶ者あり)やったらいい——、その前に補正予算を先にやることになっている。衆議院が上ったら、すぐやるようになっておったのです。委員長はなぜそのとき、八日からやらなかったのです。私は臨時に理事になったのですよ。あなたは前から委員長じゃありませんか、なぜ八日から補正予算をやることを主張しなかったのですか。今それをうやむやにやろうとしたって、それはだめですよ。
  12. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) この昭和三十二年度予算が本付託になり次第、直ちに総括質疑を行うことということは、この前の理事会決定して委員会に報告をいたしております。(「その通り」と呼ぶ者あり)それで補正予算の方は上って参りましたから、総括質問だけは同時でよかろうというつもりで私はここに提案したのでありますが、もしその方に異議がありますれば、その方だけは取り消しまして、そして理事会に諮って、その方だけはきめる、補正予算だけはきめる。(「異議なし」と呼ぶ者あり)この間決定いたしました、しかも委員会に報告いたしました方法によって、本日質疑応答いたしたいと、こう思っておりますから、どうか……、(「その通り」「速記録を見なきゃわからぬ」「異議なし」「それでいいじゃないか」と呼ぶ者あり)速記録はここにあります。
  13. 湯山勇

    湯山勇君 今委員長が言われましたことは、私ども委員としては非常に了解できない点があります。それは委員長最初補正も三十二年度予算一緒総括質問をやるというように解釈しておられた。それからそのあとで言われたのは、補正予算が先に向うが上ったんだから先にやるべきだったけれども日程その他の都合で三十二年度予算をやることにするというように、委員長の独自の判断でなさったわけです。それから今またおっしゃるのはそれと違ったことをおっしゃるので、委員長自身理事会決定についての明確な解釈をしておられないままで進められようとすることは、理事の諸君の間にも意見食い違いがありますから、とうていわれわれ理事会にも出ていない委員はどうしていいのかわからないので、やはりどう進められるにしても、この際、見解統一をしてかかられることが、委員会審議を円滑にする方法でございますのでそういうふうにしていただくようにあらためて要請したいと思います。(「当然の話だ」と呼ぶ者あり)
  14. 左藤義詮

    左藤義詮君 ただいま委員長があげられた速記録にもありますように、昭和三十二年度予算を十一日から審議するということは動いておりませんので、たまたま委員長補正のことを言われましたが、このことについては委員長が取り消されたんでありますから、最初決定通り予算についての総括質疑1すでに質問の御通告もあり、順序もきまっておるのでございますから、これをお進めになるように議事進行を望みます。(「賛成々々」と呼ぶ者あり)
  15. 中田吉雄

    中田吉雄君 私も委員長理事打合会に出て、いろいろ打合会進行状態を見ますると、石橋前総理の御病気、政変等によりまして、予算審議が非常におくれたということだけで、どうして社会党を納得さして早く総括質問に入るかということだけに、私から見ていると非常にそこに重点を置いて、三十二年度予算、三十一年度予算補正等をどうするかという、やはり全体的な構想に基いての衆議院におけるような、そういうことがなかったと思う。やはり私はどうしても予算建前からいえば、三十一年度補正予算先議すべきでしょう。そういうことを考えてみると、小林委員は、予算ということでどの予算か限定がなかったとも言われていますし、やはり私たちもいたずらに議事を遷延しようとするものではありません。ですから三十二年度予算、三十一年度の補正等を含めて、やはりこれはどういうふうにするかということをお諮りになっても、いろいろやりとりしておる間にすむことで、私は決してそう手間取らぬと思うんです。そういうふうに一つ、三十一年度の補正予算が八日に回ってきているんですから、そういうことを含めてやっていただきたいと思うわけであります。ぜひともそういうふうに希望しまして、委員長の善処をお求めいたします。(「先にやるのが当りまえだ」と呼ぶ者あり)
  16. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) どうですか、これは今速記録を私が読みました通り、前の本予算の方については問題ない手続によって運んでおるわけです。(「そう、その通り」と呼ぶ者あり)それでありますから、この補正予算の方は幸いに一緒にここにかけてもよかろうというので、私は同時に総括質問だけはお願いしようと思ったんですが、それは御異議がございますから、その方だけは取り消しまして、この前にここで決定いたしましたことによってやるということに……。(「補正はやらないでいいのか」と呼ぶ者あり)その方は理事会の方に移して、理事会の何をもってやる。決定したことだけはここで一つ運んでいただきたいと思います。(「それでいいじゃないですか」「異議なし」と呼ぶ者あり)
  17. 湯山勇

    湯山勇君 建前としては、衆議院の方から先に上ってきたものをこちらでは先に審議するというというのが順序だと思います。そのことは前回地方行政委員会におきましても、地方自治法選挙法改正との先議の問題をめぐって混乱があったことからも明確です。そうすると、先に上ってきた補正予算を先にやって、そのあとで三十二年度予算をやるという順序をこわすということのためには、やはり全会一致了解がなければならないと思いますので、その点についての了解が不十分であるということは、委員長最初の御発言で明確です。従ってそういう点をやはり統一した見解に立ってやるような手続が必要ですから、そう時間もかからないというんですから、こうしておる間にぜひ理事会を開いて、その点の見解統一をはかっていただきたい。
  18. 左藤義詮

    左藤義詮君 先ほどから繰り返して申しますように、理事会で今日まで折衝して参りましたのは、三十二年度予算については、十一日から総括質問をするということは決定をいたしておるのでございまして、その方針に従って各派から発言の御通告をいただき準備をいたしたわけであります。たまたま補正予算扱いについて、委員長の御発言から問題がありましたが、この点について委員長は取り消されましたから、補正予算扱いにつきましては、後刻理事会を開きまして御相談ができることでございますので、順序お話がございますが、私どもはこの重要な三十二年度予算について理事会ですでに決定いたしましたその既定の方針に従って御審議になることが当然だと思います。そういうふうに希望いたします。
  19. 小林孝平

    小林孝平君 今左藤さんからお話がありましたけれども、それは間違いです。理事会では一度も一般会計補正予算とを離して話したことはないんです。速記録があったら見せてごらんなさい。(「速記はなかったよ」と呼ぶ者あり)私が三回にわたって出席いたしましたが、常に予算ということで話しておった。しかもその際に私は、まず衆議院で上る日程に従って考えなければいかぬじゃないかと、それでこの四者会談で三十一年度の補正予算は八日に上る、九日には一般会計が上る、こういう説明をしたら、理事の中のある人が、そういう衆議院で上る日程などを聞かなくてもいい、ともかく予算が上ったらすぐ翌日からやる、こういうふうに発言されたんです。委員長も記憶をたどられたら、おわかりになるだろうと思うんです。私はわざわざ分離して説明しようとしたら、そんなことは必要がない、ともかく衆議院で上ったら、それを翌日やろうということでやってきたんです。それで今から考えれば、その補正予算が上った翌日土曜日にやらなかったことは理事会として非常に手落ちだったから、だからわれわれはこの際反省をして、もう一度理事会を開いて、過去のあやまちを改めて、そうして新規まき直しにやったらどうです。こんなことをやってるよりも、理事会ですぐきまりますよ。将来思いやられますよ。(「質問者も困っちゃう」「休憩々々」「押し切ってはだめだ」と呼ぶ者あり)
  20. 安井謙

    安井謙君 いろいろお話がありましたが、すでに社会党さんは、岡田宗司君が関係大臣出席を要求して、質問通告をして見えておるのであります。ということは三十二年度の、おっしゃる通り予算総括質問をやろうという御意思であろうと思います。この点については理事会できまっておるのでありますから、ぜひ規定通り進行願いたい。(「理事会を開いてね、そうすれば話が早くきまる」と呼ぶ者あり)   —————————————
  21. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) じゃ改めて申し上げます。  昭和三十二年度一般会計予算  昭和三十二年度特別会計予算  昭和三十二年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより総括質疑に入ります。(「補正は含んでいませんよ」と呼ぶ者あり)
  22. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は三十二年度予算に関しまして総括質疑に入る前に、ただいま行われておりますいわゆる春季闘争に対しまして、政府がいかなる態度、いかなる方針をお持ちになっておるかについてただしたいと思う次第でございます。昨夜御承知のように、公共企業体労働組合の方におきましては、公労委決定いたしました調停案受諾をするということを決定したのであります。しかるに政府におきましてはこれは受諾できないということを明らかにされておるのでございます。公労委は御承知のように公的な機関でございます。そして長いことかかりましていろいろな条件を考慮して決定をいたしまして、公共企業体等労働組合におきましては、その要求とかなりの食い違いがありますけれども大乗的見地からこれを受諾いたしたのであります。しかるに政府におきましては、その内容が明らかでない、あるいは予算措置がどうというようなことでもって、ついにこれを受諾せず、今日なおまだその態度決定しておりません。これに対しまして、政府はまずいかなる態度をもって臨むか、これについてお伺いしたいのであります。これは一つ、まず岸総理大臣のお考えをお伺いいたしたいと存じます。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の春闘につきましては、政府としては言うまでもなく、産業の平和、一般国民の福祉の上から、これが円満に妥結されまして、争議行為の激化しないことを、われわれとしてはあらゆる方法労働組合その他争議関係ある方面に対しまして注意を喚起して参ったのであります。公労委決定に対しての政府側態度につきましては、昨日も関係の閣僚がいろいろと協議をいたしておりますが、御承知通り、いろいろ予算上の措置、その他の点もありますので、現在のところ政府としての態度は、一応これを直ちに受諾するというわけにいかないという立場をとっておりますが、十分事態を検討し、なおその内容の詳しいことに対しましては、労働大臣その他の当局から説明させることにいたしたいと思います。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは、まず労働大臣の方から何ゆえにこれが受諾ができないかということについてお伺いいたしまして、さらに私はこの点についての質疑を重ねたいと思います。
  25. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。調停案ができましたけれども労働団体の方はこれを受諾するということでありますが、企業体の方では目下検討をいたしておりまして、これをまだ受諾するという回答を持って参っておりません。われわれは公共企業体勤労者側との平和的な解決を望んでおるのであって、政府の方としてはその話し合いのつかないうちに態度決定するということはできないのでございます。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまのお話ですというと、これは公共企業体公共企業体従業員側との間の話であるように伺える。しかしながら、この問題につきましては前々から政府が公務員のベースというものをきめ、またそれぞれの公共企業体もまた政府機関である。それで予算というものはそれぞれ政府側において御決定になっておる。従いまして、この問題だけ公共企業体の方でまだきまらないから云々じゃ、担当労働大臣職務は務まらぬと思う。これはやはり政府が腹をきめてかかれば、公共企業体の方でもこれに対応する措置が至急にとれるのである。その担当労働大臣のそういうまるであやふやな、一向責任のないような態度では、私はものは決定できないと思うのですが、労働大臣のこういう問題に対するお考え方をもう一度明らかにしていただきたい。
  27. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 先ほど申し上げましたように、調停はこれは労使の間にされたものでありますから、労使の話し合いがつかないうちに政府態度決定するということはできないと思います。もし労使の話し合いがどうしてもつかないとするならば、仲裁裁定がありますから、仲裁裁定が行われた時分に政府はそれを尊重して善処すべきである、かように思っております。
  28. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは片方が受諾したのに、片方の方はいつになるかわからぬ、仲裁裁定に回ってから政府態度決定する、これでは、ただいま岸総理大臣が言われたように、なるべく円満に早く片づけたいということにはならぬではありませんか。労働大臣というものは、やはり私は政治家であろうと思う。こういう問題は、単に公共企業体とその従業員との間の問題ではない。これは全面的な広がりを持った大きな問題なのである。政府全体に関係する問題なのである。でありますから、この問題について労働大臣担当者であるならば、明確に態度をお示しになるのが当然だと思う。これはただ仲裁裁定の方に持ち越めばいいのだというような考え方で片づく問題じゃございません。これについて、それならば、なぜこれを受けられないのか、政府としてこれを受けるように各機関に勧告できないのか、その理由をもう一ぺん具体的に明示されたい。
  29. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) この種の問題は、従来もただいま申し上げましたような方法をとってきておりますが、政府として受けられないという理由というのは、それはまだ受けるとか、受けぬとかいう政府決定をいたしておりません。企業体と勤労者との間に平和裏に話し合いのつくのを待っております。
  30. 岡田宗司

    岡田宗司君 それではお伺いいたしますが、これは単に国鉄、専売公社だけの問題じゃない、郵政省の問題でもある、この点はどうお考えになりますか。
  31. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 三公社五現業とも同じように考えております。
  32. 岡田宗司

    岡田宗司君 公共企業体でない、政府自体の機関においてこの問題が起っておる。それをただ三公社五現業のように片づいておりますでは、これは済まぬ問題だ。政府自体の一部の行政官庁の問題なのです。この点どうお考えになりますか。
  33. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 政府自体の問題に対しましては、官公労の給与改訂に対する改正案を出しております。予算には六・二の増額をいたしております。これを御検討願いたいと思っております。
  34. 岡田宗司

    岡田宗司君 えらいどうも答弁が的はずれで、私がお聞きしておるのは、郵政省の現業員の問題をお聞きしておるのであります。一般の公務員のお話をお伺いしておるのじゃないのです。その点を政府機関の従業員に対して裁定が下ったならば、それをあなた方の方でお考えにならないはずはないはずなんだ。しかもきのうは閣僚懇談会を開いておる。もしあなた方が、これはまだ政府の関与すべき場合でないと言うならば、何のために閣僚懇談会をお開きになって、あなたもお出になっておるか。(「暫時休憩だ」と呼ぶ者あり)
  35. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 郵政の問題は、これは使用者としての大臣の何であって、政府としては郵政大臣のお考えになる問題であって、これは三公社五現業と私は同様だと思っております。
  36. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは郵政大臣の御出席を求めたいと思います。(「それまで暫時休憩だ」と呼ぶ者あり)  それでは郵政大臣の来るまでに一つお伺いしたいのは、何のために閣僚懇談会を開かれたか。政府の問題でない、公共企業体にまかしておいて、それからあとでやると言うならば、あわてて閣僚懇談会を開いてお話し合いになる必要もないのじゃないですか。
  37. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 春季闘争の問題については政府も重大に考えております。一日も早く解決をつけて国民に安心をさせたい、これは当然のことでありますから、調停案が出ましたものでありますから、それに対する各企業体を呼びまして、それで情報も集め、いろいろ内容を聞いたのであります。善処方を要望いたしました。
  38. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほどはまかすと言う、今度は善処方を要望すると言う、その善処方の内容をお聞きしたい。
  39. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) それは企業体と勤労者との問の話し合いを平和裏につけるように善処方を要望したのであります。
  40. 岡田宗司

    岡田宗司君 政府は重大な問題であると考えて、そうしてこの問題をなるたけ円満に片づけたいという政治的配慮を持っておられるように私は思う。先ほど岸総理大臣はそう言われておる。今もあなたはそう言われておる。そうすると、ここに調停案というものが出て、そのきっかけができておるにもかかわりませず、相当の労働大臣が、それは企業体の問題だ、いや、それじゃ郵政省の問題はどうかと言うと、それは雇い主である郵政大臣の問題だ。これでは一体何のために政府というものは労働大臣を置いて、そうして労働行政全般に対して、あるいはこういうような場合における政府のいろいろ措置を講じようとなさるのか。労働大臣は要らなくなるのじゃないですか。そこで私は労働大臣にお伺いするのだが、労働大臣としてこの問題に対処する方針をお持ちのはずだと思う。ただまかしておくのじゃ、これはかかしと同じなんだ。あなたは、もしほんとうに労働大臣であるならば、この問題に対してはこういう方針でもって政府は解決するのだということをお示しになれないわけはない。そこで労働大臣に、一体労働大臣としてこういう重大な問題が起っておるときの政府の労働政策としてこれをどう解決するかということをお伺いしたい。
  41. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) いろいろ御指摘でありますが、それはやはり公労法の精神によって話し合いを平和裏につけてもらいたい、善処してもらいたいということを政府は要望いたしておりますが、それでもできなければ仲裁裁定によるよりほかに道はないと思う。私はそれを言っております。
  42. 岡田宗司

    岡田宗司君 私がお伺いしておるのは手続の問題を申し上げておるのではない。労働大臣が労働政策の一環としてどういう方針をお持ちになっておるかということをお伺いしておる。しかも調停案であろうと、あるいは仲裁裁定に持ち出されて下された案であろうと、予算関係のある問題ならば当然政府関係のある問題でもあると思う。これは政府の直接、あるいは政府機関の従業員の問題なんだ。これに対して政府がただ手続の問題だけでもって、いやまだその段階ではないということでは、これは労働政策がない。労働大臣は先ほど私が申し上げましたように、かかし同然と言わなければならぬ。もしあなたが労働大臣としての職務をおわきまえになっておるならば、そして自信がおありになるならば、これに対して政府はこういうふうに処置をするということをはっきりできないわけはないと思う。もう一度重ねて労働大臣のこの問題をどう処置するかということの所信をお伺いしたい。
  43. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 何回申し上げましても同じでありますが、労働大臣といたしましては、できるだけ平和裏に円満に解決のつけることを要望してやみません。(「具体的に」と呼ぶ者あり)でありますから、それを望んでいるのです。けれども、それは両者の間に話し合いがどうしてもつかないとするならば、やはり仲裁裁定を待つ以外に途はない。私はこれは公労法できめられた方法であって、その方法の範囲内でやることが労働大臣の任務である、かように思っております。
  44. 岡田宗司

    岡田宗司君 調停が出ておって、片方が受諾をしておる。こういう事態においてものが解決される一歩が踏み出されておるときに、政府の方がこれに対してほうっておいて、まだ出る段階ではない、片づける段階ではない、そうしておいて他方においてなるたけ円満な解決を望む一—たわごとですよ、これは。あなたは労働大臣であるならば、こういうようにすでに調停案が出て、一方が受諾し、そうして解決の一歩が踏み出されたときに、それを、いや、まだその段階でないというようなことをおっしゃることは解決の意思を今お持ちになっておらぬ。むしろ状態が悪化するのもこれはやむを得ない、あるいは逆に何かのお考えがあって、むしろこれは悪化させた方がいいんだというふうにお考えになっておるともとられる節もある。一体どういう方針でこの問題を解決しようとされるのか、その政府方針をお伺いしておる。政府は、ただ、なるべく円満に解決してもらいたいだけでは、問題は解決できないので、これは具体的な解決方法は何にあるか、しかも手がかりはすでに与えられておる。その手がかりをほったらかしておいて、ただ円満に解決していきたいでは、あなたは労働大臣としての職務が務まりますか。  私はあらためてこの問題は岸総理大臣にお伺いしたい。この問題は、労働大臣方針を示しておられぬのであります。しかしながら、政府としては、これは政府の従案員、政府機関の従業員、並びにこの問題は全体の労働問題に関係をしておるのであります。政府政府としての政治的な方針というものをお持ちでありましょう。これは岸総理大臣が断を下せば解決でき得る問題なんでありますが、岸総理大臣はこの問題につきまして、いかなる政治的な断を下されようとするのか、そのお考えを承わりたいのであります。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど私も全体の方針につきましては申し上げたのでありますが、具体的の問題になりますれば、今、労働大臣、その他関係大臣等が十分に検討して結論を出さないというと、私自身の、内閣方針としては、あくまでもこういう争議を円満に早く解決せしめるようにということが、私の方針でありまして、その方法につきましては、十分関係閣僚におきまして検討をいたして、そうして具体的の方法をとる、かように考えております。
  46. 岡田宗司

    岡田宗司君 もしほんとうにお考えになっておられるならば、私は大乗的な見地からすみやかに断を下されてしかるべきじゃないか。と申しますのは、きょうは実は第三波が予定されておりまして、すでに各所におきまして職場大会も開かれ、あるいはいろいろな運動が行われておるのであります。もし、昨日公労協の方でもって調停案受諾いたしましたように、政府がこれに対して受諾の意思を示しておられましたならば、かような問題は今日起らないはずだ。すでにこれは解決の方向に向っておるはずだ。これをただ政府が放擲をいたしまして、すみやかなる回答を出されない。そうしてその結果ここに第三波が各地において起り、そうしてそのためにトラブルが生じておるのであります。この点については、これは片づける意思があるかどうかということを疑われる。しかもここにトラブルが起ったといたしますならば、すでに片一方においては受諾して片づける意思がある。それを政府受諾しないということになって参りますと、その結果、政府がこの争議のトラブルの一切の責任を負うべき立場になろうかと思うのであります。政府はこれをどうお考えになるか。政府の責任とお考えになるか、この点についてお伺いしたいのであります。
  47. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 事態が解決つかないでこのまま長引きますことは、国民及び国家に対して非常に迷惑をかけますから、政府の責任は十分に感じております。私は、いろいろ御指摘になりますが、ほんとうに平和裏に事の解決のつくことを望んでやまないのであります。しかしながら、公労法の精神、公労法の制度によってきめられているものですから、それを逸脱して私がやるということが、ほんとうの労働大臣のやるべきことかどうか疑問に思うのです。今、お前は政治家だから考えたらいいという仰せでありますが、私もいろいろ考えます。しかし制度の中に生きているわれわれは、この制度の範囲内において事を処理する以外に道はないと思っておりますから、御了承願いたいと思います。
  48. 岡田宗司

    岡田宗司君 私はそういうことをお聞きしているのではないのです。政府としてどういう腹をお持ちになっているかということをさっきからお聞きしているのであって、政府の腹がきまれば、何も制度をこわせとか何とかということではない。至急解決の方法はとれる。それでこの点について政府態度をお聞きしたわけなんです。これは政府でもってこの争議が起る前からいたしまして、あるいは政府自身、あるいはまた各関係政府機関に対しまして、公務員がいろいろ運動を起した場合に、これに対して厳重に取り締れ、しかも違反者は厳重に処分せよということを春闘対策として、政府関係機関でもっておきめになっておる。そうしてしかもすでに警官等の動員も行われておるのであります。政府は根本的な解決をしないで、しかも片づけるものを片づけないで、政府の努力、政府方針によって片づけるものをそのままにしておって、今度第三波が起ってそこでトラブルが起った、そうしたならば、先に政府の出しました違反者を厳重に処分せよというようなことで、弾圧をもって臨もうとされているように思いますが、かように政府がトラブルを激化させておいて、それでなお政府は、先の申し合せでありますか、協議でありますか、知りませんが、その方針に基いて違反者の厳重処分で臨むという御方針でありますかどうか、これをお伺いしたい。
  49. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) まあいろいろお話がありますが、何でもかんでも政府の責任とおっしゃるけれども、今回のスケジュール闘争は政府が始めたものではない。(「当りまえだ」と呼ぶ者あり)でありますから、そのスケジュール闘争によって法を犯してやるという場合、それをわれわれは黙って見ておることはできない。しかしながら、事態を平和裏に解決したい、愛の手をもって勤労者を救いたいということの気持は十分持っておるのです。しかしながら、法を犯した者をそのままにすることはできませんから、やはりその点については厳重に処置していくよりほか道はないものと、かように考えております。
  50. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほどから私が言っておるように、政府が大乗的な見地をもって臨めば解決ができておる。さような政府の心配されているような事態は起らない。しかも違反者を厳重に処分する必要がなくなる。ところが、政府調停案受諾されない、そうして仲裁に持ち込まれる、いつになってこれが片づくかわからない。そうなりますれば、調停案受諾した方といたしましては、政府に、これを受諾せしめよということで要求するのは当然である。そうしてまた、その結果といたしまして、政府が、これはまた厳重に取り締らなければいかぬということになって参りますれば、結局トラブルを増大せしめるものは、政府自体でなければならぬ、こういうことになるのであります。そこで私は、なるべく早く解決しないという御意思があるならば、すでに具体的な手がかりができておるのだから、政府はこの際直ちに調停案受諾を表明さるべきである、こういうふうに考えるのです。この点について、私は、もう一度岸総理大臣に、なるべくすみやかに調停案受諾ができるかどうか、政府としてその方針関係機関に対して通達をするなり、あるいはそれを申し渡すなりできるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
  51. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 調停案を経営者側において受諾できるか、また、政府が、それを受諾するように、慫慂その他の方法をとるかどうかという問題につきましては、私はさらにこの調停案内容をいろいろな点から、政府としては、そこまで責任をとるということになれば、検討しなければならぬと思います。十分検討した結果でないと、政府はそういう方針だということは、ここに言明するわけには参らないと思います。ただ、事態を、先ほど来しばしば繰り返して申していますように、平和裏になるべく早く解決したいというのが、私どもの真の意思でありますから、そういう意味において、調停案等につきましては、なお内客を検討した上に結論を出したい、かように思います。
  52. 岡田宗司

    岡田宗司君 労働大臣にお伺いしたいのですが、先ほど労働大臣は、これは、調停案については、受諾できるかできないかは、これは公社と政府機関との問題である、そうお話しになっております。そうして仲裁に持ち込むということもあるということでございますが、大体従来の経験から申しますというと、調停案と、それから仲裁の際の案とは、まあほぼ同じなんであります。従いまして、政府が、手続上の問題から、仲裁が出るまでお待ちになる。これに対して態度をきめるということになりますれば、これはまた、トラブルが長引くだけなんです。でありますから、何も仲裁に持ち込むというような方法をとらないでも、現在の段階において、これは、調停案を検討して、受諾されることが、これは大乗的見地から、問題解決の早道である。そこでやはり、すみやかに調停案を検討して、受諾するという方針で進んでもらいたいと思うのでありますが、その点に対して、労働大臣としては、すみやかに調停案を検討して、受諾する方向がいいのか、それとも、ただ手続上の問題として、この仲裁に持ち込むという方法をおとりになるのか、一体どちらを労働大臣として希望されるか、その点をお伺いしたい。
  53. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 前提に申し上げますが、なるべく早く解決することが一番望ましい。けれども、今御指摘になりましたように、これは、当事者間において今検討しておるのですから、当事者間において話がきまるかもしれないのですよ。けれども、その結果によらなければわからないのでありまして、当事者間で今検討中で、勤労代表の方は受けた。今度は企業体の方が受けるか受けぬかということを、今検討しているのですから、いましばらく推移を見て、そうしてそれがどうしても受けられぬということになれば、やはり仲裁裁定が出るでありましょうから、その仲裁裁定を尊重する以外に道はない。その仲裁裁定が現在と同じ金額だという場合に、そんなら今やったらいいじゃないかと言われますが、やはり政府としては、一つの制度の上に立っているものですから、同じであっても私は、やはりその道を踏む以外に道はないと思っております。
  54. 岡田宗司

    岡田宗司君 まことにたよりのない片お話でありまして、同じであることが大体において従来の経験からわかっているならば、大乗的見地から、早く片づけるということの方が、これが政府にとりましても、従業員にとりましても、また、国民経済全体にとりましても、得策である。そこで私は、大乗的見地に立って、仲裁まで待たずに、一つ調停案受諾の方向を示されたらどうか、最後の検討等は、これは話し合いでいくのでありましょうが、政府がそういう大方針を示されれば、これは、公社側におきましても、その方針で臨むと思うのですが、その点についての政府の指導的立場というものがあるのですから、それをどうされるかということが、それこそ政治じゃないかと私は思う。あなたは、事務官じゃないのですから、手続々々と言われないで、そういう腹を持って臨んでいただきたいと思う。
  55. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) まあいろいろ御心配の点、私もよくわかるのです。何べんも繰り返すと同じように、やはり仲裁裁定を待つ以外に私は道はないと思います。当事者間で今やっておりますから、その平和的解決を望んでやまないのであります。
  56. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど、岸総理大臣は、調停案を検討して、受諾すべきものであれば受諾する、それから今、労働大臣は、仲裁に待つよりしょうがない、こう言われる。これは重大な食い違いである。と同時に、この間に相当な日がたつのであります。それが問題なんです。だから私は、そういうことのないように、調停案について、大乗的見地でもって一つやったらどうかというしことを申し上げているのですが、これは、岸総理大臣にもう一ぺんあらためてお伺いするのですが、調停案を検討して、これを受諾するように努力されるのか、それとも、ただいま労働大臣の言われるように、仲裁まで持っていくのは仕方がないのだということで、長引くのもやむを得ないという態度をおとりになるのか。岸総理大臣のお考えを承わりたい。
  57. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私のさっきから答弁していることと、労働大臣の言っていることは、同じことを言っていると私は思うのでありますが、もちろん、法律の制度としては、先ほど来労働大臣の言っている通りであろうと思うのです。ただ、現在の状態におきまして、最初岡田君から、調停案をむしろ企業体及び政府側においてのむという方針をきめて、これでもって政府が腹をきめて、その方向に導いたらいいじゃないかという御質問であったと思うので、これに対しましては、政府としては、あくまでも、一応企業体との間の話し合い、また、その内容政府としても十分検討してみないというと、直ちに、今日の状況でもって、これに、労働者側のみならず、企業体側もこれを受諾する方向に政府が指導するとか、あるいは政府が勧告するという段階にはなっておらない。十分一つ調停案内容そのものを検討いたしまして、結論を出した上において、政府としては、政府の責任に立って、適当な措置を講じたい、かように思っております。
  58. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 岡田君に申し上げますが、先ほど御要求のありました、郵政大臣が病気引きこもり中でございますので、出席はできかねる、それから政務次官以下政府委員は、ただいま衆議院の逓信委員会に出まして、春季闘争その他について答弁中だそうですから、どうでしょう。
  59. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも誠意のない話だと思いますが、それでは私は、この春闘の問題についての質疑はこれでおきまして、首相に対する質疑に入りたいと思うのであります。  岸首相は、かつて、戦争前におきましては、満州国の最高官吏の一員といたしまして軍部に協力をせられ、さらにまた、東条内閣の一員といたしまして戦争遂行に協力され、その指導者の一人であったのであります。これは、岸氏の一人の責任ではございませんけれども、しかしながら、ついに無謀の戦争の結果、日本は敗れまして、まことに悲惨なる状態に置かれました。国民の多くは、非常な苦しみをなめておる。多くの人々は、戦争によって、あるいは戦死をし、あるいは負傷をし、あるいはまた、内地におきましても、空襲によって焼かれ、あるいは爆弾で死に、また、多くの人々は、戦争中も統制経済等によって職を失いまして、非常な悲惨な状態にある。また、海外において働いておりました人々も、内地にやむなく引き揚げざるを得なくなりました。そして今日なお、その十分なる職も得られず、生活のひどい困苦の状況にあるものもあるのであります。戦争の傷はまだいえておらんのであります。で、私は、今日のこの日本の状態に対しまして、これは、全部があなたの責任であるということは申しません。しかしながら、あなたもその責任者の一員であったということは間違いがないと思うのであります。外国におきましては、政治家の責任というものは、非常に重く考えられておるのであります。日本よりも、政治家の責任につきましては、政治家自体あるいはまた国民の問におきまして、もっと峻厳な考え方がある。これは、民主主義が進んでおれば進んでおるほど、その国におきましてはそういう状態であろうと思うのであります。同じ枢軸国の仲間でございましたが、ドイツにおきまして、今日、アデナウアー氏が首相でございますが、アデナウアー氏は、かつてのヒトラーのもとにおける内閣の閣僚ではなかったのであります。あるいはまた、今日のイタリアのセニ首相は、ムソリーニの指導下におけるイタリアの内閣の閣僚ではないのであります。それらの責任者の多くは、すでに今日姿を消しておる。死んだ人もございましょう。あるいは処刑された人もございましょう。また、多くの人々は、公的な生涯から引退をしておるのであります。今日、日本におきますごとく、戦争の責任者であるという人々が政治家として復活いたしまして、堂々と横行濶歩しておる国は、私はほかにはないと思うのであります。かくのごとき政治家を自民党が幹事長に据え、あるいはまた総裁に据えようとし、さらに今度、石橋内閣におきましては外相に、そして石橋さんが御病気で引き下られますというと、今度は首相に出されたのでございますが、私は、これは、自民党が全く政治について、国民に対して責任を持てないのだということを考えざるを得ない。すなわち自民党は、ほんとうに民主主義的な政党であるといえるかどうかということの判断に苦しむのでございます。もし岸さんがほんとうに責任を重んずる政治家であるならば、たとえ追放が解除されましても、政界に復帰すべきではなかったと私は思うし、また、党の総裁に推され、総理大臣に推されましても、これを受託すべきではなかったと思うのであります。吉田さんあるいは鳩山さん、石橋さんがそれぞれ総理大臣になられましたときに、あるいは吉田ブーム、鳩山ブーム、石橋ブームというような工合に、相当国民の間から支持もございまして、一つの大きな人気の渦も作ったのでございます。岸さんが今度総理大臣になられました場合には、何か国民が白々しい気持をもって迎えておるということは、岸さん自身も御承知だろうと思うのでありますが、これは、何のためであるかと申しますならば、これは、あなたがほんとうに政治家として、戦争の遂行に対する責任という問題について、国民を納得させるだけのものをもっておらなかったということにあるのではないか。そこで、国民が白々しい眼をもって見、あるいは岸さんの過去の経歴に対して、今後の日本の政治について、若干の疑いを持っているというところから生じているのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、岸さんは、政治家といたしまして、従来の問題に対するあなたの政治的責任をどう考えているかということを、まずお伺いしたいのであります。
  60. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の過去の政治的な経歴につきまして、いろいろお話がございました。私自身、しばしば国会におきましても、その他のところにおきましても、私の考えを述べております。戦争の当時、指導者の一人であり、また、戦争開戦当時の閣僚の一員であった私といたしましては、戦争自体が国民に及ぼした影響、また、日本の国に及ぼした影響というものについては、私は、深く厳粛に従来反省して参っております。特に戦後において、私のあるいは拘置所内における生活、あるいは追放解除後におきましても、私は、この国民の戦争によって受けている非常な悲惨な状態やその犠牲というもの、また、国自体の、国運の全体の悲惨な姿というものに対しましては、これは戦争の責任であり、戦争自体の、開戦及びその戦争指導について、当時閣僚の一人であった私自身に非常な責任があったということを考えまして、その償いとしてはどうするか。私自身、まだ相当な、体力的にも精神的にも活動力を持っている。これをいかにすることが過去のそういう責任を償う道としていいか——今お話しのありました、一切の自分の姿をあらゆる面から消すという、あるいは少くとも政治界に再び立たないという考え方も、私の当時の頭にもあった考え方一つでありますが、しかし私は、さらに積極的に、日本自身がそういうふうなことになった原因は、要するに民主政治が徹底してなかった。民主政治、それは自由と平和を念願し、国民の多数の意思によって政治が行われてゆく、民主政治というものを日本に完成しない限り、あるいはまた、自分が犯したような責任を他の人々によって行われる事態があってはならない。自分は、民主政治を日本に完成するために、自分の余生をあらゆる面において捧げ尽そう、こういう決意のもとに、実は再び選挙に出まして、政治家として立ったわけであります。その後の私の政治家としての行動は、常に日本における正しい民主政治の完成、それが日本を再び戦争に引き入れない、また、日本を再建する唯一の道である。これに向って、私のあらん限りの力を傾倒してゆくというのが、私の政治家としての信念であり、その後における私の政治行動を一貫しているところであります。もちろん、私自身の過去に対するそういう責任を私自身感じております。従って、国民の中に、そのことについての御批判があることも、もちろん当然であると思っております。また、私自身そう決意はしておりますけれども、足らざるところのあるものを常に考えつつ、民主政治家として十分に今申したように、日本の民主政治を確立するための一人として今後とも徹底してやっていきたい、かように考えております。(拍手)
  61. 岡田宗司

    岡田宗司君 総理大臣がさきに国会において述べられましたその所信におきまして、今こそ国民は民族的団結を固め、自信と希望をもって立ち上るべきである。とりわけ私は、わが国の将来をになう青年諸君が、真に国家建設の理想に燃え、純真な情熱を傾けて、その使命を達成されるよう、切に奮起を望むものであります。こう言っておられるのであります。私どもももちろん民族的団結、青年の奮起ということは、これは日本の発展にとりまして非常に大きな要素であるということをよく存じておりますし、私どももこれに大きな期待をかけておるのであります。ただこの首相の呼びかけにつきましていささか疑念を持っておる。と申しますのは、首相は戦前あるいは戦時中を通じまして、先ほど岸首相自身も言われましたように軍部と協力され、そして戦争を遂行して参られたのであります。あなたは思想的に申しますならば、これはまあ学生時代には上杉愼吉さんのお弟子さんでございまして、そして上杉博士は当時日本における右翼思想あるいは日本のファシズム思想の渕源の一つを言われておる。この上杉博士の指導のもとにあり、そしてまた同時にその学校に残られることまで希望されておったというので、思想的に共通するものを持っておられた。しかもずっと引き続き今度は役人なられましてから軍部と協力されておるのであります。おそらく固い信念を持っておやりになったと思う。あなたが事務官吏としてただ職務を遂行されただけではない、学生時代に得られました思想、またそれから長い間軍部と協力されました間にあなたが養われました思想、固められました思想というものは一朝一夕で変るものではない。なかなか確信を変えるということは困難なことでございますが、そういうようなことを考えました場合に、私は、この民族的団結あるいは青年の奮起を望むということが、もし民主主義の思想からおやりにならないで、岸さんが従来お持ちになっておりましたような思想からおやりになるといたしますと、非常な危険を伴うのではないかと、こういうふうに思うのでございます。こういうふうな疑念は私一人ではない、国民の多くが持っておるのでございますが、岸さんは先ほど言われましたように、民主主義に徹するのだと言われておりますけれども、その民主主義というものがなかなかいろいろ解釈もございます。これはむずかしい問題でありますが、私は、この民族的団結並びに青年奮起ということの具体的な目的、あるいはその根拠をなす思想というものは、どういう点であるか、この点をお伺いしたいのであります。
  62. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が民族的団結を強く呼びかけておることは、言うまでもなく、私は私どもの外交方針の場合におきましても、あるいは石橋内閣の施政方針の中におきましても、日本の自主独立を完成するということを強く申しております。敗戦後長い占領下にあり、ややともすると民族的な自信と希望を失っておるような面もあると、これに対して民族が民族の使命というものに対して自覚を持ち希望をもって、私は、民族的な団結をして、そうして日本のりっぱな独立の完成に向って、国民全部が協力をしてもらいたい、ということを強く考えておるわけであります。また青年は言うまでもなく将来の祖国の運命を双肩にになっておるものでありまして、その奮起が望まれることは、これは祖国を再建し国自体の使命を遂行していく上からいえば、当然であろうと思います。ただその思想の内容がどこにあるかということは非常な問題で、今岡田さんの言われる通り、私が先ほど申しました通り、日本の進んでいく道は民主国家としての完成にある。従ってそれは民主国家とは何ぞやということを詳細に述べますと、いろいな観点からなかなか議論があろうと思いますが、特に私ども一つはこの日本の国を福祉国家として完成せしめるという、従っていかなる意味においても日本を再び戦争に巻き込むようなことは、日本自体が積極的に侵略するというようなことをすべきものでないことは、これは言うを待たないが、そうでなくて戦争に巻き込まれることのないようにして、そうして福祉国家を完成する。そういうことに対して青年が十分に自覚をもって、これがわれわれの双肩にかかっておる大きな使命であるというふうに、青年が自覚とそうして祖国をりっぱな住みいい国にするということに、希望に燃えて立ち上るというような点、さらにその考えで日本の国内のみならず広く世界の平和と世界の人類の福祉のために、青年が奮い立って立ち上るということが、私は最も望ましいことである、こういうふうに考えまして、青年の奮起を望み、民族の団結を望んだわけでございます。
  63. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまのような考え方でありますならば、私どもと相共通するところもありましょう。しかるに最近の日本に起っております風潮から見ますと、かなり復古的な動きもあるのであります。しかも岸さんの属しておられます自民党におきましても、相当復古的な動きもある。たとえば建国祭の問題に現われました流れのごとき、あるいは最近自衛隊の内部に起りましたあの死の行進に関連する問題のごとき、いろいろと私どもは、民主主義に逆行する、これを埋没していこうというような流れがある。しかもこれは単に個人あるいは小さな流れではなくて、あなたの属しておられる自民党の中にもそういう流れがある。それであなたが今日首相になれましたに当りまして、そういうような動きが強くなるということも懸念されておるのであります。従いまして私はこの点をただしたのでございまして、そういうような風潮とあくまで戦って、そうして真に日本の国を民主主義国家として、あるいは福祉国家としてこれを育てていく、これは社会党と保守党とその考え方あるいは手段等においての相違もありましょうけれども、しかしながらそれに徹していかれるかどうか。そうしてまた今言ったような自民党の中に、あるいはかってあなたを取り巻いておりました、あなたを支持しておりました勢力の内部にあるところの、保守的なと申しますよりもむしろ復古的な、そうして日本の民主主義をはばもうとするような力、圧力と戦われるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
  64. 岸信介

    国務大臣岸信介君) われわれはいわゆる二大政党におきまして、保守政党として自由民主党というものがございます。しかし保守という意味は言うまでもなくただ単に反動的な、あるいは盲目的な復古的なことを考えておるわけではございませんで、私どもは常に進歩的な内容を持った保守政党でなければならぬと常に考えております。ただしかし、復古的という内容の問題になりますと、言葉だけで復古がいかないということもこれは言えないと思うのです。言うまでもなく、われわれが民族として歴史の上においていろいろすぐれたものを持っておる。また将来の民主国家としてありまする上におきましても、いにしえのものがすべてだめだというわけにはこれはいかぬと思います。しかし一般にいって復古的なあるいは封建的な考え方が、保守党の本質であってはならぬというのが、私ども自由民主党内におきましても常に考えておるわけでありまして、われわれ保守的立場をとっておるが進歩的な考えであり、また革新政党である社会党も社会主義の理論の上に立つけれども、常に現実と離れないということで、民主政治においては二大政党の対立によって共同の広場を持ち得るというふうに、従来二大政党の運営については私考えて参っておるのであります。その意味において保守党自体も反省しなければならぬし、あるいは社会党の方においても反省していただかなければならぬ点が私はまだある。これは今日両政党ともこれでりっぱな民主政党として完全であり、日本の民主主義は完全であるというような状態にはまだ相当ほど遠いものがありますから、もちろん考えなければならぬ。特に保守政党としては、私は常に保守の進歩性というものを持たなければいかぬ。従ってただ単にいにしえに対してあこがれを持ち、何でも復古的な考えを持つということは私自身は考えておりません。しかし今申しますように、そうかと言うて古いものにもいいものがあればこれはまた保存し、発展せしめていくべき性質のものもあろうかと思います。しかしいずれにしても民主国家として民主政治を完成する、それの政党であるという本質に常に省みてそうしてそのわれわれの政党が進んでいくという道をきめなければならぬ、かように考えております。
  65. 岡田宗司

    岡田宗司君 岸総理は追放が解除されまして、政界に復帰すると直ちに憲法改正を唱えられた。これを旗じるしといたしまして政治活動を開始されたのであります。また最近では自民党の幹事長といたしまして憲法改正を積極的に進めるために、前の二十四国会におきましては強引に憲法調査会法案を押し通すということをされたのでございます。で、昨年の参議院の選挙におきまして、自民党の方の予想と反しまして、社会党並びに革新勢力の方が参議院において三分の一を上回る勢力を占めるに至りまして、遂に憲法改正ということが阻止されることに相なったのであります。けれども首相は三月八日の衆議院予算委員会におきまして、成田君に対する答弁の中で、今でも憲法改正の考え方は捨てていないのだということを言っておられるのであります。鳩山内閣時代におきましては鳩山総理も憲法改正を積極的に主張されておられた。また鳩山総裁の率いられる自民党もこれまた憲法改正に非常な積極性を示したのであります。当時の幹事長として、同じ自民党の最高首脳部として、今日総理大臣になられました岸総理は、私は、やはり憲法改正を捨ててない、この内閣も憲法改正を旗じるしとしておる、こういうふうに考えておるのでありますが、岸内閣はまた鳩山内閣と同じように憲法改正を旗じるしとしておられるのかどうか。憲法改正を行うのに積極的であるのかどうか。この点をお伺いしたいのであります。
  66. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法改正の問題は言うまでもなくきわめて日本にとりまして重大な問題であると思います。そうしてその手続等につきにしては憲法に明記いたしておるわけでありまして、国会において三分の二以上のこれの改正を支持する力がなければなりませんし、さらに国民の過半数の支持がなければできない問題であります。しかし、この憲法問題に関しましては、一方において国内において憲法改正論というものがあり、また今の平和憲法擁護論という世論もございます。いろいろな憲法に対する論議が国民の間にも行われておる。それは私自身従来もそう考え、今日も考えておることでありますが、日本憲法の制定せられました当時の経緯なりあるいは当時の状態と、いろんな関係において、国際情勢やあるいは国内情勢におきましても、この十年を経ちまして相当な変化があります。また新憲法は言うまでもなく明治憲法とは非常に根本的に変っておる。それが施行されました経緯にもかんがみまして私は、やはり検討をさるべきものである、かように考えております。私自身はやはり日本国民が自主的な立場から、日本の憲法という法律の本質上、自主憲法を作りたいという考え方を従来も持って参っております。しかしこれは一人や二人、また相当な人がそう考えたからといって、もちろん今申したような憲法の手続を経なければできないことは言うを待たないと思います。従って国民の大多数がその憲法の改正について納得と了解と、これを支持してもらわなければできないことでございます。それで国内におきまして、そういうふうに思い思いの議論が行われておるということは望ましくない。そこで憲法調査会というものを作って、権威ある調査会によってあらゆる論議が尽されて、そうして国民が納得するような結論を出したいということが憲法調査会の趣旨でございます。私は、結論として、提案したのが自民党でございまして、自民党が従来憲法改正論を持っておる、調査会を作り、途中の中間的な結論も出ておるというような点から見まして、あの調査会法案が提案されたことが憲法改正論を考えておる、自民党が、ということが言われると思いますが、私自身は当時幹事長として、実は憲法調査会法の提案につきましては社会党と話をしまして、両党の共同提案にしたいという考えのもとに社会党にもお話をしたのでありますが、しかし社会党では別の考えがありまして、自民党が提案したのでございますが、調査会法自体は初めから改正を前提として、改正の内容をきめるというのではなしに、今申したようないろいろ私自身の議論もございますし、国内におけるいろんな議論があるのだから、それを一つ網羅して十分に論議を尽して国民多数が支持されるような結論を出していこうというのが、私は憲法調査会のねらいである、かように考えておるわけであります。
  67. 岡田宗司

    岡田宗司君 憲法調査会につきまして今いろいろお話がございました。しかしあれが出されました当時の状況、やはり憲法調査会を設けそうしてここに調査を開始いたしまして、それでその構成等から見てわかりますように、結果として憲法改正草案を作ってこれを国会なりに付議する、あるいはまた国民投票にかけるという準備の段階であるということは、まぎれもない事実であるのであります。それによって出されたということは、当時の情勢から私どももそう判断し、国民もあるいは新聞その他もそう判断しておったことは、十分に御承知のことと思うのであります。しかしすでに憲法調査会は今は設けられてはおりますけれども、開店休業、こういう状態でございます。私どもは、そういういきさつでできまして、しかもこういう開店休業であって、何ら役目を果さないというものは、おやめになったらどうか。政府としてももはや今日積極的に憲法改正を旗じるしとしてやり得るような事態にないということは、これはもう私が申し上げるまでもない。鳩山内閣と岸内閣と憲法の問題について条件が変ってきておる、従いまして、この際すっぱり憲法調査会、かような死んでいるような機関をおやめになったらどうかというふうに考えるのでありますが、これをおやめになるつもりであるか、あるいは何かの形でこれを復活さして、息を入れていこうというお考えであるか、この点をお伺いしたいのであります。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は今憲法調査会を廃止する意思は持っておりません。できるだけ各方面の有識者を網羅して、憲法調査会本来の任務である憲法に関連する諸問題を研究してもらいたいと、かように考えておりまして、実は非公式ではございますけれども社会党の首脳部の方にもぜひ社会党からも憲法に関する有識の士に参加していただいて、そして十分に論議を尽して、国民の納得するような結論を一つ出すようにしたいと思うかということをお願いをしておるのでありますが、社会党の方は、なかなか御賛成をいただいて御加入の承諾を得ておりませんけれども、そういうつもりで憲法調査会をぜひ今後発足して活動していただきたいと、かように考えております。
  69. 岡田宗司

    岡田宗司君 社会党は憲法調査会のできましたいきさつ並びに社会党方針からいたしまして、憲法調査会には参加しないという方針をとっております。従いまして、政府がこれを提案されましたときのように、各政党の代表を加えるというようなわけには参らなくなってきた。おそらくこれを発足させるといたしますならば、自民党の議員の方々と、あるいは学識経験者だけになると思うのであります。これがどういう結論を出しましょうとも、それは政治的にはあまり意義のないものである。それにもかかわりませず、岸総理大臣は憲法調査会を発足させるつもりであるかどうか。これをお伺いしたいのであります。
  70. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げましたように、私の意図は、できるだけ広く、あらゆる意見がこの調査会に反映し、調査会において論議されるような構成をとりたいというのが私の念願でありまして、それがどこまで達成し得るか、私の今後の努力によって、そのことをぜひとも達成したいと、かように考えております。
  71. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすれば今の総理お話ですと、これを三十二年度から直ちに発足させて、委員を任命して、その機能を開始するというおつもりではないように私はとれるのですが、さようでございましょうか。
  72. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いつからということははっきり申し上げられませんが、なるべくすみやかにそれをやりたいと思っております。
  73. 岡田宗司

    岡田宗司君 さきに衆議院予算委員会における成田君への答弁におきまして、首相は、憲法改正の点につきまして見解を述べておられるのでありますが、私は首相に、憲法改正についていかなる点を改正すべきであるとお考えになっておるか、これをお伺いしたいのであります。
  74. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 衆議院におきまして成田君から同じような御質問がありましたのですが、私自身、過去におきまして自由党時代に、憲法調査会——自由党内に設けられました憲法調査会というものの会長をいたしておりまして、この調査会がある中間的な結論までには達したのでございますが、これが必ずしもすべてが私自身の私見であるというものでもないということは、言うを待たないのであります。私自身その際に、成田君にも、個人としてはいろいろな意見を持っているけれども、今総理大臣であり、従って私自身がこういう点を改正するというようなことを申し上げるのは適当でない、従ってこれにはお答えをいたしませんと、こうお答えをしておいたのでありますが、今日におきましても具体的の私の意見は申し上げることを善し控えたいと思います。
  75. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし天皇の位置の問題につきましては、衆議院においてお答えになっておる。つまり今日の憲法におきましては、天皇は象徴である。しかし岸総理大臣はこれは元首にしても差しつかえないということを言っておられるのであります。私はこの元首にするということにつきまして、これは重大な問題を含んでいると思うのであります。これは一たん象徴という位置になられて、これを元首に復活するということは、単にこれは文字を改正するということだけではなくて、それの及ぼす影響というもの、あるいはそれを元首にするということについてのいろいろな意図があろうかと思うのであります。そしてそれをまた昔の天皇制の復活の方向に、そのままではないけれども、その方向に進めようというような考えもある。それは日本の民主主義の発展にとりまして、いろいろ問題を起すものであると思うのであります。やはり今日におきましても成田君に答えられましたと同じよう、天皇を象徴より元首に復活したいというお考えをお持ちになっておるかどうか。
  76. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 成田君の御質問は、私が自由党の憲法調査会長をいたしておりましたときに、先ほど申した中間的な結論のうちに、天皇を象徴というのでなくして元首ということに改めるということが要綱の一つに上っておるが、そのことを、あなたが会長であってなにしておるから、そう考えてよろしいか、こういう御質問であったと記憶します。私はそのときに、そう具体的に聞かれまして、全体的としては今申したようにあまり意見は申し述べない方がいいということを、全体的にはお答えをしておいたのでありますが、特に元首問題についてそういうことがありましたから、私は調査会の当時の論議を繰り返しまして、元首ということにするけれども内容的に、政治的に、天皇の地位を変更するという意味じゃない。そうして、ただ国際的の関係等からいうと、民主主義国におきましてもあるいは大統領その他のものを元首として、国を代表する一つの立場において扱っておる。象徴という言葉自体の解釈については、いろいろな議論があるようでありますけれども、国を代表していろいろな国際的な儀礼その他のことをやられるという場合において、象徴ということよりは元首という言葉の方がぴったりくるじゃないかという考え方のもとに元首という結論が出たのでありまして、従って、そういう意味においては私は元首として差しつかえないのじゃないか、こういうことを申したわけであります。天皇制を復活するとか、あるいは天皇の政治的な権力を増加するという意味において元首とするという意味では絶対にない、こういうふうにお答えをしたわけであります。今もそういうふうに考えております。
  77. 岡田宗司

    岡田宗司君 今日、天皇が外国に向って日本国を代表されるという意味においては、憲法に象徴と現定されてありましても何ら差しつかえないのであります。ただ、元首にするということは、これは天皇主権から国民主権に移りました今日、国民主権との問題において非常な疑義がある、これは問題があると思います。しかし天皇を元首にするということが、あなたの考えられておるような意図でありましょうと、他の人々——また天皇を元首にしようとする別な考えを持っておる人々が、これをやはり国民主権から天皇主権に移そうという意図でお動きになるということを考えられるのでありまして、この点につきましては、私どもは首相にそういうお考えを自民党の憲法調査会でありますか、それの時代に持っておりましたお考えを、それを依然として続けておられることはかなりあなた自身のお考えと別なものが出てくるというようなことから、私は疑義を感ずるのであります。  それはそれといたしまして、次にお伺いいたしたいのは、衆議院の解散並びに総選挙の施行の問題でございます。これにつきましては、衆議院におきましても、また参議院の本会議におきましても、いろいろすでにお尋ねになって、お答えもされておりますので、詳しくは申し上げませんけれども、しかし私は自民党の内閣が、鳩山内閣、石橋内閣、岸内閣と三代においてかわっておる。しかも国際情勢並びに国内の情勢も刻々に変化をしておる、こういうような事態のもとにおいて、岸内閣は当然解散を行うべきではないか、この論拠等は、私はもう繰り返しません。たとえば社会党におきましては、直ちに解散をせよという決議案を上程いたしました。直ちにといいましても、私はこの予算でも通過した後に岸首相は当然解散すべきだと思うのでありますが、解散に対しまして、いかなる御意見をお持ちになっておるか、あらためて御答弁を願したいのであります。
  78. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 解散の問題に関しましては、しばしば御質問がございまして、これに対して私の考えを明確に申し上げておいたのでございますが、いろいろな御議論も拝聴いたしました。しかし私自身、この解散ということは、政治的に非常な重大なものであるのみならず、国民経済の上にもまた国民生活の上にも、解散を断行するということは、前後少くとも二カ月くらい政治上の一種の空白を生ずるような重大な問題であるがゆえに、よほど慎重に考えなければならぬし、私自身、いろいろな御議論はあるけれども、今日のところ解散する意思は持たない、また、予算が成立したならば解散するかという御質問に対しましても、自分はそういう意図は持たない、予算そのものの成立後におきましても、予算の施行について政府としての責任をぜひ果して参りたいと、かような意味におきまして申し上げたのでありますが、今日もそういう意味におきまして、解散する意思は私は持っておりません。
  79. 岡田宗司

    岡田宗司君 石橋内閣ができましたときに、官房長官、あるいは自民党の三木幹事長等は、解散のことにだいぶん触れておられまして、当時は自民党の内部においてもかなり解散論というものがあったように思うのであります。これは党略の面もありましょうけれども、私は正論であったと思います。今日岸内閣になりましてから、それらのことをきめて、岸さんは解散はしないのだということを断言された。しかも予算の施行をする上に空白ができるから解散はしないのだというお話でございますけれども予算案の成立の前と予算案が成立した後におきましては、相当情勢も違うのであります。従いまして解散いたしまして、これはまあいついたしましても若干の空白はできるでございましょう。この際おやりになった方が、私は日本の民主主義的な政治のために進歩であるというふうに考えますが、岸総理大臣は自民党の最高首脳者として、この解散について果たして自信がないのかどうか、勝つ自信があるしかも岸内閣がもっと安定するというようなお見通しであれば、解散してもいいのでありますけれども、どうもその自信のほどを……、一体解散に対して自信がおありにならないために解散を避けられるのか、どうか、それをお伺いいたしたい。
  80. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げましたように、解散ということはきわめて重大な意義を持っておるもので、もちろん解散ということについての、党内、あるいは世間におきましてもいろいろ議論はございます。しかし私は、いかなる場合においても、自分の政権をただ安定せしめるとか、あるいは自分の勢力をどうするというために選挙をすべきものじゃない。あくまでも国民全体のことを考えて結論を出さなければいけませんし、また決してそういうことが……、そんな解散の結果についての、これはまあ解散して、総選挙してみなければ、その結果を正確に言うことはできますまいけれども、これはおそらく私自身のみならず、わが党の人は、今日の衆議院に持っておる勢力というものが、圧倒的に多数でございまして、国民の要望から見ましても、選挙の結果、私は政権の移動をしなければならぬ結果は絶対にこないと思う。私の解散をしない一つの論拠は、解散後におけるむしろ岡田さんの今のその自信があまりにあり過ぎるがゆえに、結果からいうと同じことなんだということから、やらないということでございます。(笑声、拍手)
  81. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも自信過剰のように思われますが、私は党内の事情その他から解散をお避けになっておるのだ、かえって自信がないのだ、こういうふうに判断をいたします。これは見解の相違でございますから、この点はこれでとどめておきます。  次に、外交問題に関する基本方針でありますが、詳しいことは曾祢君からいずれお伺いするのでありますが、首相は先の演説におきまして、外交は自主独立の見地からすべてこれを決すべきものであると信じておる。従って日米間の調整の問題についても、さらに具体的な防衛の問題についても、すべて自主的な立場から日本の考えをきめ、これを実現することに努力することが外交の根本方針であると考えておる、こういうふうに答弁しておられるのであります。これは二月の五日に本院におきまして、羽生君に対する答弁のうちにございます。この言葉は、私どもももろともであると思うのでありますが、問題は言葉ではないのであります。それをいかに実行する意思を持つか、それをいかに実行するかということにかかっておるのであります。日米安全保障条約あるいは行政協定、それが結ばれまして、もう今日五年もたっております。この間にいろいろなできごとが起って、最近のことをあげてみましても、砂川の問題にいたしましても、あるいは相馬ヶ原の農婦の射殺の問題その他にいたしましても、これは安全保障条約あるいは行政協定からくるいろいろな問題を含んでおるのであります。で私どもは、こまかいそれぞれの条項につきまして申し上げませんけれども一、今日この二つのものは、われわれの党は、これを廃止すべしという方向でございますが、もうすでに保守党の立場から見ましても、これらはすでに改廃の時期に達しておるのではないかと思うのでありますが、この点につきまして、首相は、二月八日の衆議院予算委員会の和田君の質問に対する答弁のうちで、これを改訂、改廃するためには、必要な環境というか、準備が要る。現在はそういう環境を作る段階にある、こういう答弁をされておるのであります。これは従来の吉田内閣あるいは鳩山内閣における総理大臣並びに外務大臣の答弁から見るというと、多少変化がある、進んでおると思われるのでありますが、一体この環境とか、あるいはその準備というものをどういうふうにお考えになっておるか、それをお伺いしたいのであります。
  82. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現在の国際情勢及び日本の防衛、安全保障の立場から申しまして、日米共同によって日本の安全保障を確保しなければならぬという根本は、まだこれを改めることは私できない状態であると思います。しかし一方から言うと、この過去の安保条約や、あるいは行政協定を施行して参りました経験から見ましても、また日本民族の願いから申しましても、私は安保条約や、あるいは行政協定を現在のままに存置するということについてこれを望ましく思っていないということは、これは私だけでなしに国民の一つの願いであると思う。しかし今申すように、根本の状況は日本の安全保障から言うというと、これを根本的にこの制度を変えるわけにもいかないということから考えますというと、一面から言えば日本の自衛防衛体制というものをある程度自力で可能な程度においてこれを充実していくということ、それからさらに大事なことは国際情勢を緩和するということ、ことに国際連合にわれわれ加入しまして、この方向にさらに努力を続けていく、それから具体的のいろいろな施行の結果等にかんがみての事実についてはアメリカ側とこれは話し合いをしていくというような各種の点を考えて、そしてアメリカ側の方におきましてもこれが改訂等について協力をするというふうな機運を作り上げるということが、この際においてはわれわれが努力していかなければならない事項であろう、かように考えておるわけであります。
  83. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題は、私はもし首相が伝えられるように国会の終了後アメリカに参られるならばその際には持ち出されるのであるかどうか、これをお伺いしたいのであります。
  84. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 具体的に今私が訪米する前に何と何を持ち出すということはちょっとお答えすることははばかりますけれども、これらの問題を含めて日米の間の関係を真に対等の立場において調整しなければならぬものを調整するために私は訪米したいと思うのでありますから、いろんな問題を含めて一つ話し合いを、率直な話し合いをしてみたいと、かように考えております。
  85. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえば過日アメリカの方から原子力部隊を世界の各地に配置する。そのうちにまあ日本も候補者にあげられております。これに対しては岸総理大臣は、まあ何べんかの答弁におきまして、この部隊の配置については拒否をするというようなことを言われておるのであります。私どもももちろんこれは日本が非常な危険にさらされるものでありますから拒否をしなければならない、こう考える。ところが日米安全保障条約、あるいはまた行政協定によりますというと、アメリカが日本に配置する兵力、あるいは兵士等について何ら日本側と相談することを必要としない。アメリカの思うようにその軍人軍属を持ってきて置くことができるようになっている。こういうようなことは、たといあなたが拒否をされましてもかなり危険があると考えざるを得ない。さきのオネスト・ジョンのごときもそういうようなことを含んでおったと思うのですが、私はこういう点はさっそくこれを変えなければならぬ問題と思うのであります。たとえば昨年の十月にポーランドにああいうような事件が起りました。ゴムルカがポーランドの首脳者になりましてからソ連との間にソ連軍の駐留についての協定を改訂しておるのであります。このうちにおきましてもソ連軍の兵力あるいは兵士について、これはポーランド側と協定をするというようなことにもなっておりまして、日米安全保障条約とはだいぶ事が違ってきております。さらにまた裁判権の問題にいたしましても原則的に属地主義をはっきりさせてきておるのであります。こういうようにあのソ連とポーランドとのような関係におきましてさえこの外国の軍隊の駐留の問題につきましてはすでに変化をしておるのであります。日本が今日アメリカとの関係においていつまでもこれらの問題を放置しておくことはできない。われわれ自身がこれを変えることを堂々と主張し、そしてこれを変えていかなければならぬと思うのであります。  で、もちろん岸総理大臣兼外務大臣は今日国会においてどの点を変えるかというようなことをそう明らかにすることはできない、包括的に変えるために努力されるということでけっこうだと思うのでありますが、少くとも岸総理大臣の党であります自民党内なんかにおきましては、当然この安全保障条約並びに行政協定についてどういう点を変えるかということを明らかに打ち出されてしかるべきである。そしてまた国民がこれを要望しておるのであります。私どももこれに対してどういう態度をもって臨むかということについてさらに具体的な方策を示して政府にその善処方を求めたいと考えておるのでありますが、岸総理大臣は訪米に際しまして自民党において、政調会におきまして、この党として要求すべきことを明らかにするということをお考えになっておるかどうか、この点をお伺いしたい。
  86. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 自民党内におきましてはいろいろな、言うまでもなく社会党自体においても御研究になっているような各般の問題を研究いたしております。日米間の関係の調整についても具体的ないろいろな意見を研究をいたし、その結論を出すようにいたしております。私はもちろん先ほど申しましたような民主政治の完成ということから申しまして、国民の声また私の属しておる政党の政策、具体的政策につきましては十分これを体してその実現をはかりたいと思います。従いまして、アメリカその他外国に参る場合における政党内の意見はもちろん、国民の世論等にも十分頭を傾けて、そうして行きたいと、かように思っております。
  87. 岡田宗司

    岡田宗司君 またアメリカにおいでになる場合に、私はやはり東アにおける日本をめぐる国際情勢、それに対する日本側のいろいろ見解、あるいは方針等を述べ、そうして協議をされると思うのでありますが、特に私どもは問題になると思う点は、中国との関係の問題だろうと思うのであります。私ども社会党といたしましては、中国との国交回復が、日本が東アにおいて安定せる位置を獲得するために必要であろうというふうに考えております。これは単に日本をめぐる国際情勢を安定させるだけではない。世界の平和の方向に寄与する問題だと思っておるのであります。ところがアメリカはあくまでも中国を認めないということになっておりまして、これがやはり世界の不安定を招いている一つの原因であろうと思うのであります。岸総理大臣はしばしばまだ中国との国交回復をやるつもりはないのだ、ただ貿易を進めて行けばいいのだというようなことを言っておられるのでありますが、これは私はなかなか、貿易を進める、これを積み重ねるだけでは問題が解決できないのではないか、こういうふうに思うのであります。もちろん貿易を拡大していくということは必要でありましょう。また、これもそれへの一つ方法ではありますけれども、どっかで方針として踏み切らなければならぬところがあると思うのであります。総理大臣は、そういう踏み切った考え方をもとにして貿易を進めていくのか、ただそうではなくて、当面日本の経済情勢から賢易を拡大すればそれで事足りるのだというお考えで中国に対されておるのか、これをお伺いしたいと思います。
  88. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 中国に対する問題は御承知通り、中華民国との間に日華条約がございますし、われわれはこれとの間に国交を正常化し、また国際連合においても、この中華民国が中国の代表という形において重要なるメンバーであることは御承知通りであります。こういう状況のもとにあって、中国大陸との間の国交をすぐ正常化すということをきめるということは実際上、責任ある立場から言うと、できないことであります。われわれは今日貿易関係、これは理由いかんにかかわらず、歴史的に、地理的に、また産業的に申しまして密接な関係にある中国大陸との間の貿易を増進するということは、これは目的いかんにかかわらず、これは必要な、やらなければならぬ問題である。そういうことは、あるいは文化の面におきましても、私は相当最近においては中国大陸との間に文化交流も行われております。そういうふうないろいろな点における関係は、これは進めていく。あるいは進めていく結果は、自然中共を承認し、中共との間に国交を正常化するということになるのじゃないかという御意見もあろうと思います。私はやはり中国との関係というものをきめるのには、いろいろ基礎的なものを積み重ねていくことと、それから国際的に各種の状況というものを調整をしなければ、日本がこれを承認して国交を正常化するという段階にはこない、こう考えておりまして、貿易そのものの増強につきましては、別に特に意図を持たずにこれを増進していく、しかし、それは決して方向として悪い方向にいくものじゃない、こういうふうに私は考えておるのであります。
  89. 岡田宗司

    岡田宗司君 台湾政府との関係を問題にされておると思います。御承知のようにサンフランシスコ会議が開かれましたときに、台湾政府も北京政府も、どちらもサンフランシスコ会議には招請されなかった。これはなぜかといえば、イギリスとアメリカとが意見食い違いまして、その結果、中国の代表が呼ばれなかった。そしてこのサンフランシスコ会議を主催した方のアメリカ側も、その条約ができてからあと、日本が自主的にどっちと講和条約を結ぶかきめればいいのではないかという態度をとっておる。しかるにもかかわりませず、その後ダレス長官が参りまして、吉田内閣に強圧を加えて、そして台湾政府との間に条約を結ばしたことは、これはもう申し上げるまでもないことなのであります。これは台湾との条約というものは、その成立の過程からして、どうも私ども納得できないものが多いのであります。しかも台湾の今日の状態はどうか。これは亡命政府である。アメリカの兵力によって支持されておるだけであります。もはやこれは世界における、少くとも堂々たる国家として認められる実質を備えておらぬのであります。国連における代表権も疑われておるのであります。すでに台湾政府を強く支持しておるアメリカの内部においてさえ、この問題について非常な疑義が出てきております。つい二、三日前のことでございますけれども、アイゼンハワー大統領の顧問であるメーヤー・ケストンバーカーという方は、米国は、中共が適当な条件のもとで承認され、国連加入を認められることを期待しているということを明らかにすべきだと考え、次のように言明している。私は蒋介石氏が再び中国の指導者になる望みはないと思う、私が言う適当な条件というのは、ソ連、中共の新たな態度、すなわち個人の自由に対する重要性を再強調することを意味する、こう言っておるのであります。すでにアメリカ大統領顧問さえ、こういう意見を堂々と発表しておる。またアメリカにおきましては、最近、本年の国際上の重要問題として、おそらく本年の秋開かれる国連総会において、今の台湾政府の国連における代表権が問題になるだろうということを指摘しておるのであります。これは相当大きく新聞雑誌で取り上げられておるのであります。いつまでも中国に対して首相のような態度でありましては、万事が手おくれになるのであります。もちろん、ここでもって私は首相がはっきりとした態度を声明せよというわけではございませんが、私はこの台湾政府の問題については、従来吉田内閣あるいは鳩山内閣がお考えになっておったのは違った考え方をお持ちになることが、この際、日本として考うべきことではないか、こういうふうに考えるのでありますが、われわれはこの点について、首相が台湾政府の将来についてどうお考えになっておるか、これをお伺いしたいのであります。
  90. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほども申し上げましたように、台湾との間には日華条約に基いての友好関係を結んでおる国であります。これは、吉田内閣、鳩山内閣以来日本がこの台湾の政府に対して持っておる考えと同じ考えを持っております。また、これを持っておることが、国際的に日本の、私は信用を保持する上に必要だと思います。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあそういうようなお考えでありましても、実際情勢は進行しておるのであります。私は台湾政府に対する考え方について、政府はだんだんに改めていかなければならぬ、同時に中国に対する考え方についても、あわせて考え直していく時期が来ることを確信しておるのであります。同時にそういうような見地に立つならば、やはり中共に対する政府態度については、単に貿易を進めるというだけでは問題は打開されない、こういうふうに考えておるのであります。たとえば先ほど、貿易をそのままずっと続けていく、これを拡大していくのだと言われましても、障害がすでに起っておるのであります。これが通商代表部の問題であり、また、その入国に対しての指紋の問題、こういうことは私は手続上の問題であって、これは日本政府としてそう除外例を作るのにむずかしい問題ではないと思うのでありますが、これを頑強にたとえば法務大臣等が突っ張っておりますのは、単に法律の施行というだけのことではなくて、もし、それによって通商代表部が日本に置かれ、それが公認せられたというようなことになると、これはアメリカなり、あるいはどうも台湾政府に対して何だか工合が悪い、こういうような気持からではないかと思うのでありますが、その点について通商代表部の問題並びにこの指紋の問題は、貿易を拡大する上においても障害を除くことになるし、また中国との関係を復活する上においても、小さい問題ではあるようですけれども、これは大きなじゃまものを除くことにも相なるのでありますが、この点についての総理大臣の明確なる御答弁を願いたい。
  92. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今日まで、わが内閣におきましても、中共との間の貿易増進につきましては、あくまでこれを民間レベルにおいて話し合って、その形においてこれを進めていこうというのが、私どもの根本の方針であります。従ってその貿易を促進するために、通商代表部をお互いに置くことが望ましいという、この民間同士の話し合いが、大体そういう方向に進んでいるようであります。それはあくまでも国の代表ということではなしに、民間のレベルにおける一つのそういう機関であるという考えの上に立っておるわけであります。私は民間の間の話し合いで、そういうものを民間のレベルにおいて作るということは、貿易を促進する上から望ましいことであり、また、現在の段階においては、民間のレベルでそういうものを作ってもらうということが望ましいと考えております。これに関連して、指紋の問題が今御指摘のようにあります。一応法律の解釈といたしましては、法務省がとっておりますように、特別に外交官やその他特別の公務をもって来られる者は指紋をとりませんけれども、あらゆる外国人の入国に際しては、原則としてとっているわけであります。私人に対してはみなとっておる、決して中国だけに特別にとるということじゃなしに、そういう扱いをしているわけであります。しかし、それが非常に今問題になっておりまして、業者の間においても、そのいろいろな話し合いをいたしております。私は法律の扱いの問題といたしましては、一応の法務省の解釈もございますけれども、当事者間のこの話し合いが、あるところまでまとまってき、その意向が一致すれば、それは何らか尊重して便宜の措置をとるようにしなければいかぬじゃないかというふうに考えて、業者同士の、民間同士の話し合い進行を実は見ておるわけでございます。
  93. 岡田宗司

    岡田宗司君 もし、政府が積極的に貿易を進めるというならば、単に両者の話し合いを見ているだけでなく、日本側の方に対しまして、ある程度政府が積極性を示して示唆をする、あるいは指導するということが、必要ではないかと思うのでありますが、その点についてはあくまでも受動的にお待ちになるのであるか、何かの示唆をお与えになって、積極的に進める方針をとられるかどうか、その点をお伺いしたい。
  94. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど申し上げましたように、中共との間の貿易を促進する意味において、適当な民間の通商代表部ができることは望ましいと考えております。従ってそれをスムーズに実現するために、両者の間で話し合っている話し合いというものは尊重して、政府として考えたいというのが私の今の考えでございます。
  95. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、私は大蔵大臣に対する質問をいたしたいと思います。政府は三十二年度の予算編成に当りまして、三十一年度に引き続いて三十二年度においても、引き続き国民総生産が増大し、分配国民所得も増大することを基礎にし、また世界景気が持続すること、輸出も引き続き好調を続け、国際収支はとんとんになること、国内物価は卸売物価は二%くらい上るかもしれないけれども、消費物価の方は横ばいで推移するものということが、どうも前提になっておるようでございます。で、政府が三十二年度予算に盛られました財政経済政策を施行し、政府が所期する経済効果を上げて、日本経済の拡大と発展と国民生活の水準を実現するためには、三十二年の予算の編成の基礎になっている、今申し上げましたような諸事情が、政府の予想しているように進行しなければならぬと思うのであります。もしこれが狂って参りまして、たとえば世界景気が下降するとか、または輸出入の状況が日本に非常に不利になるということになりますと、これは多かれ少かれ、政府の経済施策に大きな影響を与えてくる、そして政府の所期しておりました経済効果が減殺され、あるいは一面におきましてはデフレ的傾向、あるいは一面におきましてはインフレ的傾向も起ってくる、あるいはまた、一面においては設備過剰が起り、一面においては投資過剰の傾向へいくと、いろいろな事態が起って、経済計画がスムーズに進まないということにも相なるのではないかと思う。そこでまず第一に、この前提になっておることについて、政府の所信をただしたいのであります。  第一は、世界景気の問題でございます。これは大蔵大臣は依然として、世界景気は横ばい高原景気を続けるだろうということを繰り返し言われておるのであります。この昨年の予算が編成されました当時と今日とは、やや状況を異にしておる。アメリカにおいてもすでに警戒論が出ておることは、私が指摘するまでもない。欧州におきましても、すでに投資ブームは頭を突きまして、そして今日では多少不安があるというような状態になりまして、きわめて警戒論が多いのであります。この点について大蔵大臣は依然としてその予算編成当時、あるいはまた、ついこの間お答えになりましたような高原景気が持続するというふうにお考えになるかどうか。もしそうでありますならば、そのことの根拠を具体的にお示し願いたいのであります。
  96. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 過去二、三年来世界の景気は上昇を保って参りました。で、ずっと上昇をしておりますので、今これから不景気になるのではないかという議論が起ってきておるのであります。これは不景気が持続しておりますときに、もっと不景気になるのじゃないかという議論と同じような状況じゃないかと思います。従いまして私は各国、ことに世界経済の中心でありますアメリカの状況を見まして、やはりアメリカでもいろいろ議論があるのでございます。昭和二十八年ごろと同じようでございまするが、各雑誌、あるいは実業家、評論家の意見の一致するところは、今年の上期で頭を打ち、下期で横ばいか、あるいは下降の傾向をとるかもわからんけれども、一九五八年においては再び上昇の道をとるだろうというのが、定説のようでございます。昨年の暮から今年の二月末くらいまでは、ずっとそういう議論できておるのであります。私は今のアメリカの政府といたしまして、貿易がふえておりますし、歳出はふえてきております。また、ことに過度のインフレを抑制するために減税も押えておるというふうな状況でございますので、自動車の売れ行き、あるいは住宅の建設がしばらく落ち目になっておりますけれども、他の投資活動は、依然として旺盛でございますので、私はただいま申し上げましたように、上下の差はございましょうが、来年度はまたやはり上昇の道をたどっていく、こう考えておるのであります。  また、イギリスの方では、最近ちょっと不景気じゃないか、従ってここでもう一度金利を引き下げて景気政策をとるべきじゃないかという議論がございまするが、イギリスの大蔵省の次官、あるいは大臣も言っておりまするが、輸出は相当伸びて行っている、内需が過度に起らないことを警戒する必要があるが、今金利を再び下げて景気政策をとらなくても、まだやはりドィス・インフレ政策でいくのがいいのじゃないかというくらいに、今の景気の底力を認識しておるようでございます。また、ドイツにおきましても、最近賃金、恩給、年金等の増額がありますし、また農業の補助金も相当ふやしております。軍備の歳出も相当ふえておりますので、一般にはやはり好景気が続くだろう。ことに、先般一月の十一日に金利を下げまして、投資ブームとは言えませんが、投資の奨励をしておる状況であるのであります。また、フランスの方は、一時非常に輸入超過であえいでいましたが、相当輸出もふえております。まあ、イギリスにいたしましても一、フランスにいたしましても、スエズの影響をかなり受けておりまするが、スエズの影響がなくなったならば、再び生産の増加をして、好景気を持続するだろう、従いまして、西ドイツ、あるいはフランスにおきましても、ある程度の物価の上昇を見込んでおるようでございます。私は昨年の暮れから今年にかけまして、いろいろ注意はいたしておりまするが、予算編成方針のときと世界の事情は、変っていないと見ておるのであります。
  97. 岡田宗司

    岡田宗司君 この点については、いずれ佐多君からいろいろ御質疑があろうと思うので、私はこれ以上お聞きいたしませんが、次に国際収支の問題でございます。  貿易の見通しにつきまして、最近輸入が著しいものがあり、国際収支は実質収支バランスでは、三十一年度実績見込みでは赤字が八千万ドル、形式収支バランスでは黒字六千万ドルというふうに政府の方では見ておったんでありますが、だいぶこれは狂ってくるようでございまして、すでに蔵相も衆議院におきまして、実質的な赤字が一億七、八千万ドル、形式的収支の赤字の方は三千万ドルくらいになるだろうというふうに言われておるのであります。三十二年度におきましても、なお輸入の増大の傾向は、依然として続くのじゃないかということが、私ども予想されるのであります。これが一つ。  さらに、輸出が果して政府の予想しておるように、これに歩調を合せてふえていくかどうか。これは世界景気とも関連がありましょう、あるいはスエズの再開とも関連がありましょう。また、欧州における共同市場の成立の問題、ことにこれは植民地を含めるということになると、相当な影響もあろうと思うし、また、同時に、これから来る輸出競争の激化ということも考えられて参りますし、また、国内における内需景気の増大からいたしまして、輸出商品のコスト高というようなことから来る輸出力の減殺、あるいはまた、日本が主市場といたしますアジア諸国におけるドル不足その他からいたしまして、果してこの見込みが立つかどうか。そして三十二年度の赤字が、政府の予想しておるような状態にいかないのではないかということを、私どもはかなり懸念するのでありますが、これらの点について大蔵大臣はいかに考えられておるか。
  98. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昭和三十二年度で輸入三十二億ドル、輸出二十八億ドル、これは手放しで両方とも楽観はできません。常に輸出の奨励をやりますと同時に、輸入原材料の国内消費向けを押えるようにしなければならぬことは、当然であるのであります。三十一年度の決算見込みが先ほどお話しの通りでございまして、一月、二月、三月の輸入が予想以上に多いために、相当の実質上、形式上の赤字を出したのでございまするが、私の見るところでは、この輸入原材料の在庫品が非常にふえて参っておるのであります。しかも、その輸入原材料の国内での消費率よりも、輸出向けの原材料の増加率の方が多い状態でございまして、ただいまのところ、注意を怠らずに見ておればいいのではないかと考えております。  また、輸出の面につきましても、これはよほどの努力を要します。欧州関係の共同市場の問題は、まだ解決いたしておりませんが、この結果を見まして、われわれいろいろの施策を講じなければならぬことは当然でございますが、日本の欧州共同市場国に対しての輸出は、一億ドル程度でございます。これがどうなりますか、向うの経済が発展すれば、輸出もふやし得ると思いまするし、また、英国は全面的にこれに賛成しておるわけでもございません。従いまして、私は日本の国内物価の安定と生産増強をはかっていけば、今年の一八%、あるいは昨年の三〇%増の上に、予算で見込んでおりまする一二、三%の増は期待し、これに向って努力をしていけば、できないことはないのじゃないかと考えておるのであります。  なお、その前提条件といたしまして、国内物価の問題でございます。昨年の春ごろから、卸売物価、あるいは昨年の暮れから今年にかけまして小売物価が、上昇の傾向をいたしておりますが、卸売物価につきましても、鉄鋼、機械等の異常な上昇によるものでございます。全般的には長く続くものとも思えませず、ほかのものが安定しておりますから、私は増産と輸入によってこれを押え得るのではないかと思います。また、消費者物価も、暮れから今年にかけては、年末の特需商品、あるいは木炭、あるいは気候によりましての野菜量の下足によって、少し動いているのでありますが、長い目で見ていけば、大体私は安定し得る、また安定さすような施策を講じていかなければならぬと思うのであります。で、物価が一応われわれの見通しのようにしていけば、私が先ほど申し上げましたように、欧州におきましても、ある程度の物価の上昇は見ているようであります。また、アメリカでもある程度の物価の上昇を識者は見込んでいるようであります。できるだけ世界の物価に先だたないように、世界の物価とともに動くような方策をとっていけば、輸出の増加も期待し得るし、また、努力しなければならぬと思うのでございますが、輸入の方は、先ほど申し上げましたような状況で、相当の原材料を持っておりますので、三十二年におきましては三十数億の輸入でとまり得ると、私は考えているのであります。
  99. 岡田宗司

    岡田宗司君 今後の輸入の見通し、あるいはまた、国内物価の問題について、どうも非常に楽観的に過ぎるように思います。たとえば、輸出物価の問題でございますが、輸出商品の価格につきましては、今日のごとく石炭も上昇しておる、あるいは鉄鋼も上昇している、アルミニュームも上昇している、また、電力におきましても、だんだんコスト高になってきているというような事態、ことに、原資材はそういうふうな状況であり、また、輸入するいろいろな諸資材においても、値上りの傾向にあるといたしますと、かなり輸出の面においての危惧が感ぜられるのであります。これらもまた佐多君に十分に質問していただくことにいたしまして、私のお伺いしたいのは、三十二年度の外貨予算をどういうふうにお組みになるのか、その概要を示していただきたいと思います。
  100. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 外貨予算につきましては、ただいま事務当局で検討いたしております。輸入原材料の状況と、また今後の生産見込み等によりまして、十分に検討を加えて、今月末きめたいと思っているのであります。ここで申し上げておきたいことは、昭和三十一年度が収支で赤字になったからというので、これにおびえることなく実際の日本の経済の発展を、十分検討していきたいと思っております。
  101. 岡田宗司

    岡田宗司君 経済審議長官にお伺いしたいのですが、これは雇用の問題でございます。この日本における失業という問題は、単に政府が三十二年度の予算で予想している六十万の完全失業者の問題だけではないのであります。むしろ、人口過剰、人口の増加からくる潜在失業者の問題が大きなものです。政府は完全雇用ということを建前にしておられるわけでありますが、もちろん、三十二年度の予算において、完全雇用が達成されるとは思いません。しかしながら、この予算の基礎になっておりますいろいろな数字から見て参りまするというと、なかなかその完全雇用が達成せられる方向へいかないのじゃないか。たとえ三十二年度の予算がそのまま執行され、そうしてこれに基く経済政策がそのように効力を発生いたしましても、どうもこの潜在失業者の吸収率は小さいのであります。そして依然として同じような潜在失業者が五年、十年続いていくと思うのでありますが、この点についての経審長官の見通しをお伺いしたい。
  102. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 御指摘のように、労働力人口は昭和四十年ごろまでは増していく傾向にあります。昭和四十年を越すと、これが減少傾向をたどると、こう思っております。従って本年の消化力が約八十九万、労働力人口八十九万を消化し得ると、こう思っております。生産年令人口百三十万ありますけれども、これは三十五年ごろまでは上昇傾向をたどっていく、昭和四十年を越さないと労働力人口は減少にはならない、こう思っております。従って現在の経済の伸びを七ないし八%と、こう見て参りますというと、その伸び率で参りました場合には、まずただいまのところ、十年ないし十二年でもって現在の所要雇用量を満たし得る時期が来ると、こう思っております。
  103. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも完全雇用も、だいぶほど遠いことでございますが、これらについての問題は、もう時間がありませんので、私はこれ以上突っ込んで議論いたしません。  最後に、これは大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、三十一年度の第一次補正予算提出されておる、これはまあ五百億の地方財政と産業投資特別会計へ入れる分でありますが、当然本来ならば、食管特別会計の赤字を補てんする補正予算提出されなければならない。この問題は衆議院で大きな政治問題になりまして、ずいぶん論議がかわされたのでございますけれども、とうとう政府はこれを提出しなかった。私はもちろん提出すべきであるというふうに考えておるのでありますが、まあ、おそらく今すぐ提出するとおっしゃらないだろうが、なぜそれでは食管特別会計の赤字を埋める補正予算を今提出にならないのか、なぜそれを出さないのかということの根拠を一つお示し願いたいと思います。
  104. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 第二次補正は最近提出いたしたいと思います。その場合に三十年度の決算確定の分の赤字が三十四億円は提出する見込みでございます。そうして三十一年度の食管会計の赤字につきましては、これは組む場合もございますし、組まぬ場合もあるのであります。従って昨年は組んだのでございまするが、今年は私は食管会計の合理化につきまして、政府におきまして特別調査会を設けて再検討をするという特殊の事情もありますし、また、財政並びに食管会計の規定から申しまして、決算確定を待って一般会計から埋めることが本則であるように私は考えておるのであります。従いまして先ほど申し上げましたように、今年は特別の事由がございますので、三十一年度の食管会計の赤字見込みにつきましては、決算の確定を待って処置したいという考えでおります。
  105. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまの点は、なぜ出さないかということについての根拠が、どうも私には納得できないのであります。おそらく政府といたしましては、食管会計に関する委員会が結論を出してからということでありましょうけれども、これは大体値上げをよしとする答申があるということを予想されておることと思うのであります。大蔵大臣は本年度の予算を編成するに当りまして、生産者価格は一万円だが消費者価格は上げるという方針で臨んでおる。ところが、これは世論の反対もあり、社会党も強く反対いたしまして、また、自由党の内部におきましても、いろいろな観点から、あるいは派閥争いの面も含まれておるんでありましょうが、とにかくこれに対しまして反対が強くなりまして、ついに大蔵大臣はこれを引っ込めなければならなくなった。これの始末が問題になる。これは三十一年度においても、三十二年度においても、赤字が予想されることでありますし、このままでいけば、三十三年度も同じように赤字が予想される。そこで、どうしても値上げをするということを前提として、その答申を得ようとして、この食管特別会計に関する調査会を作られたものと私は思うのであります。そしてこれがいつから値上げになるかというその時期は、これは問題でございますが、それが出て参りましてからこの特別会計の赤字をいじる方が、赤字を少くすることができるというお考えのもとで、どうも今度は出さないという方針のように私はとるのでございます。おそらくそれが事実ではないかと思うのでありますが、この点について、政府はやはり食管特別会計に関する調査会に期待しておるところは、米価の値上げであるかどうか、そしてまた、その消費者米価の値上げが答申された場合には、この赤字が少くなるかどうか、そして赤字を処理しやすくなるんだというふうにお考えになっておるかどうか。この点を明らかにしていただきたい。
  106. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 米価の問題につきましては、当初閣議で消費者価格を引き上げることに一応はきまったのでございまするがその後いろいろな意見がございまして、党の意向を聞き、一応見合すことにいたしまして、据え置きのままで予算を組んだのでございます。しかして今回設けられました食管会計合理化に対する調査会の結論は、いかに出るかは私は存じません、しかし出た場合に、それによって処理し、しかもまた、建前が決算確定ということになっておりますので、確定を待ってやろうとしておるのであります。調査会は独自の考え方でおやりになると思います。その結論を待ちまして、政府態度をきめるわけでございまして、今からどっちになろうということの想像はいたしておりません。
  107. 岡田宗司

    岡田宗司君 想像されておらぬかもしらんけれども、期待はしておられるだろう、値上げの期待はしておられるだろう。これはこれで終りますが、三十一年度の第二次補正予算は、規模はどれくらいで、そしていつ提出されるかということを最後にお伺いしたい。
  108. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいま作成中でございまするが、大体百四十億円前後になるのではないかと思っております。提出の時期はここ三、四日、四、五日のうちにいたしたいと思っております。
  109. 岡田宗司

    岡田宗司君 最後でございますが、岸総理大臣にお伺いしたいのでありますが、それはクリスマス鳥における水爆実験の問題、すでにイギリスの飛行機がその準備のために飛び立っておるわけでございますが、こちらから第一次、第二次の抗議にもかかわりませず、返事もないような始末でございます。岸総理大臣はさきに宗教家を向うに送るというお話しでございましたが、八代さんはお断わりのようでございますが、いかなる手を打ってこれを阻止されるか、これを最後にお伺いしたい。
  110. 岸信介

    国務大臣岸信介君) クリスマス島におけるイギリスの原爆実験につきましては、再度にわたって私どもイギリス政府の反省を求めておるのであります。さらにその返事がございませんので、駐英のわが方の大使をして、向うに三回目の口頭ですけれども申し入れをし、さらに反省なり、第二回の当方の申し入れに対する回答等につきまして、話をさしております。しかし、私は従来申し上げておる通り、この問題は日本民族がほんとうにこの地上からあの人類に非常な惨害をもたすところの原水爆の使用禁止、また、実験を禁止するという強い念願を持っておるのでありまして、これはやはり国際的の世論に訴えて、その力によってこれを持っておる、また、これを実験しようとする大国の反省を求めしめてやめさすという方向に、あらゆる機会をとらえてやっていきたいと、こう考えております。従いまして、さらに私は宗教家の方にお願いしてイギリスにおもむいてもらって、イギリス政府の反省を求めるとともに、イギリスの世論の高揚にも努めたいと、かように考えておるのでありまして、その宗教家に行ってもらいます方につきましては、目下話し中でございまして、まだ結論が出ておるわけではございませんで、ぜひ適当な宗教家を送って、イギリス政府並びにイギリスの国民に訴える方法を私はとりたいと、かように思っております。
  111. 岡田宗司

    岡田宗司君 これで終ります。
  112. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これにて暫時休憩いたします。一時間後に再開いたします。    午後二時十二分休憩    —————・—————    午後三時二十六分開会
  113. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) それでは委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き総括質疑を続行いたします。
  114. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 岸総理大臣兼外務大臣に対して外交の基本方針に対して御所見を承わりたいと思います。  申すまでもなく、一国の外交方針は世界観に基かなければならぬということは申すまでもないことであります。そこでつらつら考えてみまするに、現在の世界は全く二つに分れておる。すなわち、自由主義国国家群と共産主義国国家群との二つであります。この両陣営が互いに相対峙しておる。これが現在の世相であります。この対立からもろもろの事件が突発しておることは申すまでもないことであります。あるいは中近東及びその他いろいろな問題が起ったのであります。この間に処しまして、世界の国民は全く恐怖と圧迫と不安を感じておるのであります。二大陣営をどうして融和せしめるかということにつきましては、いろいろの人が考えておるでしょう。しかし、現実の問題としてはなかなか二つの陣営が一つになるということは至難のことであります。申すまでもなく、共産国家陣営の指導者たるソ連においては、いうまでもなく平和共存を唱えております。しかしながら、この平和共存論に対しても世界の人たちは、真にソビエトが平和を指向しておるかということを、疑いの眼をもって見ておるのであります。私は、ほんとうに世界平和にいく道は一つであろうと思う。すなわち、共産国家陣営が世界の共産化を放棄して、自由国家群に下るか、もしくは自由国家群が共産国家群に下るか、そうして世界は一つになることによって、初めて世界の平和が招来し得ると考えられるのです。しかし、これは夢想であります。全く夢のような話であります。御承知通り、生産国家陣営の指導者たるソ連においては、世界の赤化を目ざしておることは、かの去年の二月における第二十回党大会に経過を見ましても、きわめて明白であります。すなわち、私は将来はいざ知らず、現在においては、全くこの二つの陣営の相対立は継続するものと見なければならぬと考えております。しからばこの間に立って日本がどうすべきか、これはわれわれ一番考えなければならないわけであります。そこで私は三つの方法を考えたいと思います。すなわち、日本が中立を守っていくかどうか、もう一つは、自由国家群の一員として世界の平和に寄与するか、もしくは共産国家群の陣営にはせてその衛星国になるか、この三つが考えられるのであります。ところが、日本がこの間に処して中立を守るということは、私は許されぬと思う。この中立を守るにはもろもろの条件がそこに存在しなければならない。あるいは防衛の問題であるとか、あるいは経済上の問題であるとか、種々雑多のここに条件がなければならぬ。従って現在の段階においては、日本はどうしても中立を守っていくことは、私はできぬと考えております。しからば共産国家群陣営に走るかということであります。御承知通り、去年ポーランドにおけるあのボズナン事件であります。また、ハンガリア、ブタペストの悲劇があります。これらは何を意味するか。要するに彼ら国民は自由を求めんために起ったものと考えなければなりません。最近私はポーランドから亡命した三人の若人に会いました。全く彼らの申しますところは、われわれはパンよりも自由を欲するのだ。あのソ連衛星国家においては全く自由というのはないのである。われわれは何としても自由を求めなくちゃならぬ、そこであの悲劇が起ったのだと申しております。まことに私はしかりと考えざるを得ない。いわゆる共産国家陣に走っておりまする東欧諸国における人民の自由というものはないと申してもいいのであります。経済上の圧迫もまたしかりであります。これらのもろもろの東欧諸国の、いわゆるソ連衛星国家の状態を見まするというと、われわれは何としても共産国家陣営に走ることはできないのであります。どうしてもわれわれは自由国家陣営の一員として世界の平和に寄与して、そしてわが国の自由と平和と独立を守ってとく以外に手はないと考えております。  総理は施政方針演説並びに衆議院予算委員会においても、わが国としては今後自由国家群、特にアメリカと緊密に手を結んでいきたい、こういうことも申されたようで、私は全く同感であります。何としても今の段階においては、われわれは自由国家群と手を結び、国連を中心にしてアメリカとよく協調を保って、わが国の自由と独立と平和を守るより手がないと考えておるのであります。そこで私は今申し上げましたように、すでに施政方針なり衆議院予算委員会において、国連を中心としてアメリカと強く手を握っていきたい、こう所見を述べられておりまするが、私は重ねて総理はさような意思を持っておられるかどうかということをあらためてここにお聞きしたいのであります。
  115. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は日本の将来が自由主義民主国としてその政治を完遂するという理想を貫いていきたい、こう思っております。従って、自由を愛好するこれら民主主義国との間には緊密な連絡をとっていくことが必要であると、かように考えております。もちろん、東西両陣営と称せられる、現在の共産主義陣営と自由主義陣営とが対立しておるということから、世界に不安を与えております。この状態が望ましくないことは言うを待たないのでありまして、私どもは、あらゆる機会にその対立の緊張を緩和するように努めていかなければなりませんが、その立場は、今申すように、自由をあくまでも守り抜く、また民主政治を完成するという立場にはっきりと立って、そうして日本の外交方針なりあるいは国際的の協力関係というものをそこにおいて結んでいかなければならぬ、こういう決心でおります。
  116. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 ソ連と日本との間に近く大使の交換もされるのであろうと考えております。私は、総理も御承知通り、日ソ国交回復は、去年においては時期尚早であるという論を唱えておったのであります。その理由は、おそらくソ連が日本へ大使館を置き、その大使館のもとに多数の政治工作員が日本に向いて入り込んで、日本の内部撹乱を万一やられるならば、一体日本はどうなるであろうか、日本の国内体制は、まだ十分これらに対処すべく整備されていないのじゃないか、日本の国内体制が、いかなる工作にも対処していくだけの整備をしなければならぬ。その整備はまだできていないのじゃないか。かるがゆえに、もちろん、ソビエトの間がこのままではいかぬ、外交使節も交換しなければならぬが、時期はまだ早いのじゃないかという論を唱えてきたのであります。しかしながら、日ソ交渉は妥結いたしまして、大使の交換までできるように相なったのであります。  ここで考えられることは、御承知通り、一昨々年の九月に西ドイツとソビエトと国交回復を回復されたのであります。国交回復がされるやいなや、ボンに向いて有名なゾーリン大使がソビエトから派遣されました。そうしてあらゆる手をもって西ドイツの撹乱工作をやったことは、これは世界周知の事実であります。さすがのアデナウアーも、われ誤まれりと言ったが、非常にこれに対処すべく困難をしたことは明白な事実であります。しかしながら、さすがに西ドイツの国民は、この共産主義の何たるものかを十分承知してこれに対処して、さすがのゾーリンもなすところなく、モスクワへ引き揚げたということをいわれております。私はこの点について西ドイツが実にしっかりしておるということに敬意を表します。しかしながら、ゾーリンが帰るやいなや、アデナウアーはいわゆる共産主義者狩りをやれております。ところで、万一日本にああいう謀略家が来て、日本の内部撹乱をされるような事態が不幸にして発生したらどうなるかということを今なお心配しておる一人であります。申すまでもなくソ連は内部不干渉ということを打ち出しております。これは当然のことであります。他国の内政に干渉することはあり得べからざることであります。しかし私は、かような一片の内政不干渉というような約束でもって日本の国が安心しておるということは、毛頭できないと考えております。この大使交換がされた暁において、われわれは万一にもさような内部撹乱工作がされるようなことがあってはどうなるかということを心配しておるのです。それに対処すべきわれわれの方策をしなければならぬということが、終始頭に上っておるのであります。この点について総理は一体どういうお考えを持っておるか所見を伺いたいと思います。
  117. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は午前の岡田君の質問に対しても御答弁を申し上げたのでありますが、あくまでも日本の将来というものを民主国家として、また福祉国家としてりっぱに完成していかなければならぬ。この意味においても、国民もふるい立って民族的な団結を固め、この目的に向って全力を発揮し、また将来を担う青年諸君も、この理想をはっきりと把握して、そうして国家の繁栄を期していくようにしなければならぬという意味におきまして、私の所信を申し述べたのでありますが、この治安対策の問題の根本は、やはり今木村さんがあの西ドイツの国民を賞揚されておりましたが、私は結局国民がしっかりするということが一番大事だと思います。それには国民をして、真に祖国を民主国家とし、福祉国家として繁栄せしめるという理想をはっきりと把握して、そうしてこれのために団結するというふうに、すべての政治を持っていくことが根底だろうと思います。さらに日ソ国交正常化に伴いまして、大使が交換され、いろいろ西ドイツ等の経験に見ましても、さらに一そう治安やあるいは国内の諸施設につきまして、われわれが一段と意を配っていかなければならぬ問題があると思うのであります。いわゆる治安に関するいろいろの政府としての行なっていかなければならない治安対策の問題が当然起ってくるわけであります。私は何と申しても、今申した最初お答えしたことに中心を置いて、そうして日本が共産化したり赤化することをあくまでも防止していかなければならない。日ソ国交正常化に伴いまして、この共同宣言に盛られておる内容は、やはり忠実にこれを履行して、両国の間の友好関係を進めていくということは当然でありますけれども、これに伴って日本が万一にも撹乱されたり、あるいは治安上にいろいろな懸念を生ずるような事態のないように、各般の施設を考えていかなければならぬ、かように考えております。
  118. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 日ソの間に漁業協定も近く締結の運びに相なるかとわれわれは想像しております。次いで起る問題は平和条約の問題であります。ここで申し上げたいのは、いわゆる国後、択捉の問題であります。申すまでもなく、この両島は日本の固有の領土であります。北海道の一部であることは疑いないのであります。終戦直後ソビエトが突如としてこれに進駐して参りまして、わが国の住民を追っぱらってこの地を占拠したのであります。われわれ国民感情から申しましても、また法的から申しましても、この両島は何としても日本に返還を求めなければならぬと考えております。私は常に考えておるのでありますが、ソビエトがほんとうに日本と将来友好関係を取り結んで平和裏に事を処理すると申すならば、この両島をなぜに日本に返さないか。この両島は面積からいっても、ソ連本土のおそらく何千分の一にすぎないかと思います。こういうようなびようたる両島を何がゆえに占拠して日本に返さないか。今申し上げましたように、ソビエトが真に日本と友好裏に将来手をつないでいこうというならば、当然に日本に返還させるべきではなかろうかと、私はこう考えております。  ところで現状はどうであるかといいますと、私は特に注意を喚起いたしたいと思います。この国後、択捉にどういう施設が施されておるかということであります。申すまでもなく、あの単冠湾に優秀なるスノーゲル型の潜水艦を主力として潜水艦の基地を設けておるのであります。    〔委員長退席、理事左藤義詮君着席〕  しこうして、日本と自由国家群の貿易の要路でありまする太平洋の交通をここに脅かせる態勢は整っておるのであります。また直ちに日本を破壊し得るジェット爆撃機発着陸の大きな飛行場が存在していることも、これまた事実であります。またジェット戦闘機の発着基地は国後、択捉おのおの三カ所設けておることも事実であります。地上軍約三個師団の存在しておることも事実であります。こういう軍備の配置をなぜ必要とするかということです。私は将来やはり共産国家陣営のソビエトを考えるのであります。ソビエトといえども、日本と友好裏に手を結んでいきたい。これは日本国民もすべてそういう感じを持っているのであります。思想は対立しております。しかし国として将来手をつないでいきたいという感じはだれしも持っていると思う。しからば、ソビエトにおいても将来日本と友好関係を結んでいこうというなら、この日本を脅かすような、こういうものをなぜ配置しているか、私はその意が那辺にあるか、疑わざるを得ないのであります。私は、すべからく、日本といたしましても、ソビエトが将来日本との間に友好関係を結んでいくなら、ぜひともこの二島は日本に返還すべきである。国民感情からしても、また今申しまする軍備配置という日本に脅威を与えるような島を日本に返還をして、日本と手をつないでいこうということにならなければ相ならぬと、私は考えているのであります。そこで、おそらく近き将来においてソビエトとの間に平和条約締結の交渉も開始されることであろうと想像いたします。この際、このときに当って、私はほんとうにこういう事情を十分にソビエトにぶちまけて、そうしてソビエトに対してこの二島の返還の要求をすべきであろうと考えておりまするが、この点について総理の御所見はいかがでありましょうか。
  119. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日ソの間における懸案の大きな問題は、領土問題を含む平和条約の締結の問題であるということは、今木村君の御指摘の通りであります。私は択捉、国後に対するロンドン及びモスコーにおいて主張した、日本全権が主張したことは、これは全国民の意思を代表して言っていることである、この主張は日本国民として私はだれ一人あの主張以外のことを考えている人はないと思います。そういう意味において、日ソの永久の国交正常化、すなわち両国の間の親善友好の関係を強化するのには、どうしても領土の問題を解決しなければならぬ。その領土問題の解決に当っては、私は択捉、国後は日本に属し、日本に返されるべきであるということを内容とした主張をもって貫ぬくべきである。ただ御承知通り、この問題はロンドン及びモスコーにおいても、彼我両国の主張が真正面から一致しない問題であります。これは日ソ国交正常化により大使館が交換され、漁業問題あるいは通商問題あるいは引揚者の問題等が漸次解決されまして、十分にこの日本とソ連との間の友好関係の基礎ができ、加うるにソ連の人々が日本の国民がこの領土に対していかなる考えを持っているかということを理解することにおいて、初めてわれわれの主張を貫徹する基礎ができると思うのです。そういう意味において、日ソ交渉は段階的にこれを進めて参りたいということを申しておりますが、主張としては今木村君の言われるように、この領土に対しては日本の国民の一貫している主張を私は貫ぬくように努めたいとかように考えております。
  120. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 午前の委員会におきまして、岡田委員から原爆の問題が出ましたが、この際、私は御質問いたしたいと思います。  世界で、人類が一番今悩んでいる問題は何かと申しますると、原爆問題にほかならぬと思うのであります。原爆が実際に使用されるようなことになりますれば、おそらく全人類の破滅を来たす悲運が招来するのではないかと思います。ことに、日本は初めて原爆の洗礼を受けた第一号国であります。日本の国民は実にこの原爆について関心を持っておるのであります。最近クリスマス島においてイギリスが原水爆の実験を実施するという運びに相なっておるようでありますが、おそらく実際に実施するであろうと私は確信しております。これは、何がゆえにイギリスは原水爆の実験を実行するかという、この問題を深く掘り下げなくちゃならぬと私は考えております。ところで日本国民も、これに対して、何とかイギリスをしてこの実験を思いとどまらしめようと努力しております。総理も、午前においてこれについて丁重な御答弁がありました。まことに同感であります。しかし、ここで考えなければならぬことが一つ私はあると思う。それはソ連の問題であります。御承知通り、去年わが国衆参両議院において、水爆実験禁止の決議案が提出されて、これが可決されたことは、御承知通りであります。これに対してソ連が、いわゆる中央委員会において、まことにもっともだ、日本の衆参両議院の決議に対して最善の敬意を表する、こういうことを発表されております。これに次いで、かの有名な作家エレンブルグが、世界の子供のために原子爆弾をなくそうじゃないかということを言っております。これは世界のかっさいを拍したのであります。ところが、この言葉の終らぬ八月の三十日に原子爆弾の実験をソ連がやっておるのであります。越えて十一月の中旬にも、再び原子爆弾の実験をやっております。これは世界公知の事実であります。最近新聞の報ずるところによりますと、今月八日においてもシベリア西南において原子爆弾の実験をやったようだという。御承知通り、去年夏から秋、冬にかけて、北海道、北陸地方において放射能は非常にひんぴんとして日本に及んでおると、こういうことを伝えております。私はクリスマス島の原子爆弾禁止、これはむろんわれわれは声を大にして阻止しなければならぬと思いまするが、これだけでは私はいかぬと思う。片手落ちになる。やはりソ連に対しても、かような無警告な原子爆弾の実験はぜひとも世界人類のために取りやめなければならぬということを声を大にして叫ばなければならぬと思います。私は新聞報道者は何をしておるかと思う。私はそう考えます。新聞の報道においても、これは大きく取り上ぐべき問題である。決して、一方だけやっては、一方はやめません。私は世界人類のために、何としてもかような悲惨なことが再び起っちゃ相ならぬのでありまして、われわれは再び生くることのできないこの世の中に平和に安全に生活し得るのには、原子爆弾はなくさなければならぬと思いまするが、現状はなかなか容易じゃない。しかも、ソビエトにおいては無警告にしばしばやっております。しかも、シベリアといえば日本に最も近いのであります。これをうっちゃって、ただ単にクリスマス島のイギリスの原子爆弾実験を阻止しようと思っても、そんなことはできることじゃないと私は考えておる。われわれは、日本が中心となってほんとうに呼びかけて、世界から原子爆弾使用の禁止をせしめるべきだと思います。それについても、われわれはこのソビエトの態度いかんということに大きな関心を持っておるのであります。わが国は中心となって国連に呼びかけ、その他世界各国民に呼びかけて、世界いずれの国たるを問わず、原子爆弾の禁止をなすべきであるという方向に向って推進せしむべきであると思いまするが、総理の御所見はいかがでありましょうか。
  121. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問のように、原水爆の問題は、これは単に日本が直接それによって影響を受けるとか、被害を受けるとかいう問題で、これの禁止を強くわれわれが言っておるわけではないので、全人類のためにこれを言っておるわけであります。従って、どこで行われましても、どこの国が行なっても、日本民族の念願は、この地上でそういうものが使用されないことを目標として、実験の中止等についても、世界の世論を盛り上げることに努力をしおるわけであります。ソ連におきまして、過去においてそういう全然無警告で行われたということの事実は、これは世界の学者がもうすでに認めておることでありますし、ソ連自身も後になって発表しておることであります。そこで、国連におきまして、まず禁止への一段階として、管理制、登録制を主張したということも、そこにまあ一つの根拠あるのであります。しかし私どもは、過去の実例を見まして、クリスマス島のイギリスに対する中止についての抗議を申し入れますとともに、ソ連に対しましても、ソ連が過去に行なっておること、また将来行うであろうと考えられるこの原水爆の実験を中止してくれということにつきましては、最近私の方からソ連政府に申し入れをしまして、おそらく本日夕刻になれば、それを発表する段階だと思います。私どもは、どの国に対しても、人類のために、平和のためにこれをなくしようということでありますから、ソ連に対してもそういう措置をとっております。
  122. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 次に、私は労働問題について労働大臣から御所見を承わりたいと思います。  御承知通り、春季労働攻勢は、本日をもって開始されておるような次第であります。そこで申し上げたいのは、一体この総評が指導となって二の春季労働攻勢が行われておるのでありまするが、ほんとうに労働者の生活の向上、生活条件の改善ということを目的としてやるなれば、平和裏に労使双方が腹を割って交渉すべきであります。この交渉が成り立たない場合に、最後の宝刀をお互いに抜くということが、これは当然の事実であろうと思います。ところが、この総評は、まだ問題の起らない去年の末において、もう春季労働攻勢についてスケジュールを組んであります。これは一体何事でありますか。まだ問題の起らぬ先に、春季労働攻勢のスケジュールを組んでおる。去年もやっておる。また今年もやっておる。これは実におかしいことであります。年中行事になってしまうのではないかと思うのであります。しかも、それの波及するところはきめて深刻、国民はこれについて非常な不安の念にかられておるのであります。私は、この労働攻勢は、一般の労働者はおそらく、自分らの生活の向上、改善のためにやってもらっておるものだろうと信じておるものと思います。しかしながら、これを指導する側において一体いかなる意図を持ってやっておるか、ここを私は問題にしなければならぬと思う。真剣に労働者の生活向上、改善をはかるのなれば、もっと穏やかにやるべき方法はいくらもあろうと思います。問題の起らぬもうすでに数カ月前からスケジュールを組んで、そうして闘争を盛り上げさせていこうというのは、これは何かほかに意図があるのじゃなかろうかということが疑われるのであります。もし万一これが思想的の背景をもって日本の内部をかくらんするの意図をもってなされるとすれば、これはゆゆしき問題であると思います。われわれは一大決心をしなければならぬと思います。ここに私は大きな問題点があるのじゃなかろうかと思うのであります。ことに今度の問題は、炭労と国鉄とが組み合せでやっておる。ここに大きな疑問がある。石炭はわが産業になくてはならぬところの重要資材であります。これが万一とまるとどうなりますか。産業は麻痺であります。しかもこれがために、ある企業においては閉鎖しなきゃならぬ運命にも陥いるでありましょう。そうすれば直ちにその方面においての失業者が出るのであります。一方の労働者の闘争によって、一方の労働者が失業するというような悲運な目にあわないとも限らないのであります。ここに大きな問題点が私は伏在しておるのであろうと思います。ことに国鉄においては、一体公共企業体の従業員は、罷業権を持たないはずであります。怠業もできないはずであります。ところがこの国鉄において職場大会というのをやっております。あるいは二時間、三時間、何を大会において決議するのですか。何を諮るのでありますか。二時間も三時間も毎日職場大会を開いて、何をやろうとするのでありますか。何を議せんとするのでありますか。これは事実上の職場放棄、罷業にすぎないのであります。私はこれを罷業と見てよかろうと思う。罷業にあらずして何ぞや。しかも全国一斉に千何カ所とやるという。これがおかしい。これは全面ストにあらずして何ぞや。名は職場大会でありますが、事実上は祖業であります。これを労働大臣はどう見られておるか。万一これらの指導者が意識的に思想的背景をもって日本の内部かくらんを策する一環の現われであるということであれば、これはゆゆしき大事であります。私は特に心配した点が一つあるのであります。一体国鉄がかようなことをやりますると、将来一番問題になるのは食糧であります。東京都にどれだけの食糧の備蓄がありますか。大阪市にどれだけの備蓄がありますか。名古屋にどれだけの備蓄がありますか。おのおののこれらの大都市の食糧の備蓄を考えまするともし万一かような職場放棄を幾日も幾日もやられたときに、おそるべき結果を招来するのじゃなかろうかと思います。これに対する将来の十分なる対策を講じていかなきゃならぬ。ここに申したいのは、彼らを指導する者です。これに対する対策はいかに考えておられるかということを、私はこの際に労働大臣にお聞きしたいと思います。
  123. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答え申し上げます。木村さんからの仰せにございますように、総評のスケージユール闘争はまことに遺憾にたえないことでございます。総評の性格についていろいろお話がありました。総評ができる時分は、共産党の指導による労働運動というものは完全なる発達をしないということで、これを修正するために総評ができたのであります。従って、当時は共産党との間に共闘しないという一項目があったのでありますが、それが近年に至りましてそれを削除いたしまして、共産党とともに共闘するという裏書きがあるのであります。従って、この三百万人の総評の方々全部が私は悪いとは思いません。その大部分は善良であってかつ勤勉な、日本経済のために、日本のために働いて下さる善良な方々だと思いますが、少数の指導者の中に、今御指摘になりましたようなことがありますことは、はなはだ遺憾にたえません。今回の、けさから起っておりますところの炭労並びに国鉄の争議に対しましては、意外に被害が多いのです。きょうも昼に報告を受けましたが、意外に被害が多いのであります。政府はこういうことのないようにしばしば官房長談、あるいは私の談、あるいは政府の声明等で、いろいろと警告を与えて参りましたが、今日のような事態を起しましたことはまことに遺憾にたえません。従いまして法の命ずるところによって、これを強く罰していきたい、かように存じております。
  124. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 ただいま労働大臣の決意のほどを承わりまして、私は安心いたしております。私はこんどのこの労働争議を国民に対する挑戦と考えております。だれが迷惑するか。これは企業本体だけが迷惑するのではありません。迷惑するのは一般国民なのであります。一種の国民に対する挑戦と言っても私は過言でなかろうと思います。もう少しこの指導者は考えるべめではなかろうかと思うのであります。こういうことを毎年々々繰り返すならば、これは日本の国がどうなるか。今こそわれわれ日本人がお互いに手をつないで、ほんとうに日本の立て直しをやらなければならぬ時期なのであります。この重大なる時期に、かようなことを毎年繰り返すということは、まことに国家のために不祥事であります。国民もまたこの機会にうんと反省すべきであると思います。報道陣も筆をそろえて、かようなことを大いに筆誅すべきであろうと私は考えている。日本の国をいかんせん、まことに心痛にたえないのであります。これに対しては、私はどうか根本的にかようなことの再び起らざるように、十分な対策の御研究をお願いしたいと思います。  文部大臣がいられませんので、はなはだ遺憾でありますが、私は日教組の問題について、それでは総理に御質問申し上げたいと思います。この日教組は総評傘下に属しているのであります。私は教職員の性格から申しまして、かような組合を作って、他の労働組合と歩調を一にして問題を起すなどということは、まことに遺憾しごくであろうと思います。私、自分が平素から申しております。職業に貴賎の別はありません。何をやってもよろしいが、教職員ほど私は尊敬を受くべき職業はないと考えている。私も実は小学校の教員のせがれであります。何がゆえに教員がさように尊敬されるべき職業であるか。私は人間形成の重職にあると思います。人間を作る職責にある。将来の日本の青少年を訓育する、この重大なる職責に当るべき人なのであります。私はこの教職員に対して、ふだんから絶大なる敬意を表しておるのであります。しかるに、現在の教職員は何でありますか。肉体労働者と同じような立場をとって、こういうようなストライキに参加しております。私は去年あたりにおきましても、あの三宅坂で教職員がすわり込みをやっている。実に私は涙のこぼれるほど悲しかったのです。自分のこの重大な職業の尊厳を冒涜しておるのであります。私は教職員というものは、生徒、学生の信頼を得なくちゃならぬ、満幅の信頼を得なくちゃならぬ、満幅の尊敬を得なくちゃならぬ、これなくしてほんとうの教育は行われません。青少年の信頼を得、ここで初めてりっぱな教育が行われるのであります。しかるにもかかわらず、教職員はみずから筋肉労働者と同じような立場をとり、同じようなまねをしておる。これはどうでありましょうか。もう少しプライドを持たなくてはならぬのであります。各国の例を見ましても、教職員が組合を作って、他の労働者と一緒になって運動するなんということはありません。全く日本が唯一であります。これは何事かということです。しかも、私は日本の何十万かの教職員の方々は、りっぱな人と思っております。私の郷里、奈良県におきましてみんな反省しております。教職員はりっぱな人が多いのです。ただ、わずかの者に指導されてこういう動きをやるということは、まことに私は一般の教職員が不本意であろうと思っておるのであります。お気の毒であろうと思っておるのであります。お気の毒であろうと思っております。そこで申し上げたいのは、こういうような立場をとる指導者、これに対してどう考えられておるかということです。私は日教組の幹部諸君も大いに反省すべきだろうと思います。かようなことをやっておれば、日教組も必ずや崩壊の時期がくると思います。ほんとうに尊敬されるべき、信頼さるべき教職員であれば、かようなことをやるべきもではなかろうと、私はこう信じております。この点につきまして、総理から、文部大臣にかわって御所見のほどを承わりたいと、こう考えております。
  125. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日教組のあり方につきましては、相当に批判もございますし、私は従来の日教組の指導方針等につきましては、私自身も非常に遺憾なことだと思います。もちろん教職員諸君の就職条件であるとか、あるいは生活条件等を改善して、安定した地位にあって、そうして大事な教職の任務を果されることを私どもは望んでおるのでありますが、近来その一部の指導者のうちには、総評の指導のもとに、ストライキ類似のような行動であるとか、その他、教職員としては望ましくない世間の批判を受けるような行動に出ているということを、われわれは非常に遺憾に思っております。今回の日教組の態度につきましても、文部大臣はその指導者を招致して、十分教職員の本来の使命を逸脱しないように警告を発し、その反省を求めてきておるのでありまして、将来とも、今申したように、教職員の重大な使命を十分に理解して、それは政府におきましても、また社会的にもその重大性を認めて、いろんな点における改善を要することは改善をしていかなければならぬと思いますが、今までのような行動、組合としての行動のないように、今後とも指導していかなきゃならぬと、かように考えております。
  126. 木村篤太郎

    木村篤太郎君 持ち時間がきましたから、他は委員会に譲ります。(拍手)
  127. 田村文吉

    ○田村文吉君 私の第一にお伺いいたしたかった問題は、解散に関する問題でありまするが、これは午前中にも、またただいまの木村委員からも質問があったようでありまするので、あまり重複しないようにお尋ねをしてみたいと思うのであります。  岸総理は、先刻の答弁におきましても、解散はめったにやらぬ、今度の国会が済んでもすぐやるということは考えておらぬ、こういうような大体の御答弁であるのでありまするが、大体私の意を得たものと考えたいのであります。ただ私は、まだ自民党の中にも幾らか解散論を言うような人もあるようでありまするし、社会党は解散即行論を決議案として提出もいたしておるのであります。さような点からいたしまして、私の考えておりますることは、解散というようなことは軽々になすべきものではない。今まで常に政局の不安定のために解散をしばしばおやりになっておるのでありまするけれども、四年間の衆議院の任期というものは、できるだけ四年の間お務めを願いたい。むやみに解散するということは、非常に選挙費用のために、いわゆる政党の腐敗の因をなすことにもなるのでありまするから、特殊の場合を除いては、たとえ国会が終ろうが、また次の国会が終ろうが、みだりに解散をすべきものでない。ただ、もし内閣に新しい問題をひっさげて、これを国論に問おうというような問題がある場合、たとえば憲法調査会で憲法の草案ができた、この場合にこれを国論に問うて解散をする、かような意味ならば私は意味があると考えるのでありまするが、それ以外には、いわゆる党の都合とか党略によって解散するようなことはあり得ないことであって、今後日本の政治に対しては、できるだけこの習慣を助長して参りたい、かように考えるのでありますが、大体岸総理のお考えもさようとは存じますが、何か新しい問題を提起し、あるいはこれを世論に訴えたい、かような問題をお持ちになっておるかどうか、この二点について御質問を申し上げます。
  128. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 解散につきましては、午前私が明確に御答弁申し上げた通りでございます。今、田村君の言われるように、きわめてこれは国政上重大な影響のある問題でありまして、本来衆議院というものが四年の任期で選挙をされておりまして、原則は四年、その任期の通りにやって、そうしてその後に国民の判断によって選挙が行われるということが本来の姿であろう。ことに二大政党になれば、そういうことが私は当然原則にならなければならぬと思います。しかし解散ということは、同時に政治的な意義を持っておりまして、特に今おあげになりましたような、何か重大なことについて国民の意思をはっきりと明らかにしなければならぬ、聞くべきであるという問題があれば、そのときはその問題を掲げて解散して、国民の判断を問うということになるだろうと思います。現在私はそういう問題を持っておりませんから、午前中にお答えしたように、私は解散する意思なしということを申し上げるわけであります。
  129. 田村文吉

    ○田村文吉君 次に第二問を総理大臣にお尋ねいたしたいのでありまするが、大体先刻の木村委員から申されましたことと大同小異でありまするので、できるだけ簡略に伺いたいのであります。すなわち過去十年の日本の歩みというものはいわゆる保守陣営でありまして、しかも民主自由陣営と申しまするか、西欧陣営に入って進んで参ったのであります。もちろん日本の講和条約ができ上りまして以来の日本は、あくまでも自主独立の精神をもって進むべきであるということについては、疑いを持たぬのでありまするけれども、古い言葉に、君子は和して動ぜず。小人は動じて和せずという言葉がございまして、日本の民主陣営に対する力も行き方も進め方も、いわゆる和して動ぜずということで、自分の国の自主性を失うようなことがあってはならぬとは考えますが、大体においていわゆる西欧陣営に属して今日まで参ったのでありまするが、最近に国連の加入であるとか、あるいは日ソの平和国交回復というような問題からいたしまして、いわゆる中立主義という言葉が相当世間に唱えられてきているのであります。これは私はよき意味において考える場合においては決して害はないと思うのでありまするけれども、ややもするとこれを非常に、いわゆる甘いオブラートに包んで、そうして青年あるいは婦人会等を毒するのではないかと考えるほど、いわゆる中立主義という言葉で問題を進めて参りまするために、しかもそれがいわゆるインテリと称する人たちによって、これが一部の人によって唱えらるために非常に一般の人が誤まっている点があるんじゃないか。かように考えておりまするので、この点につきましては、先刻来木村委員に対して十分の御答弁もあったようでありまするけれども、私は特にこの中立主義というようなことが今日の日本としては従って行き得ない。あくまでも自由主義、民主主義陣営に属して、しかもアメリカと協力して、そうして進むべき日本の体制にあるということを深く感ずるのでありまするので、くどいようでありまするけれども総理のこれに対する考えと、それからこの問題は十分に啓蒙宣伝してもらわないと社会の一部の人がこれを誤まる。かようなことを考えて、政府には、また自民党の政策でありまする限り、自民党には十分にさような用意があるかどうか。かような点についてお伺いしたい。
  130. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の進んでいく道は、あくまでも根底は自主独立の立場から、日本民族が自主的に判断してわれわれの進むべき道を作っていくべきであるということは申すまでもないのでありまして、しかして日本が民主主義国として自由を愛好する、自由を確保する民主主義国家として完成していくという理想を持っております。またこれをわれわれは、成就しなければならぬのでありまするが、そういう立場から申しまして、世界の自由を愛好する民主主義国との間に緊密な連絡をとって世界平和の増進に努めていかなければならぬ。いわゆる中立主義と称せられるところのものの内容にはいろいろな内容があるように思います。たとえば無防備中立によってやるのが日本の一番平和な道だというふうな説き方もあるようであります。あるいはインド等いわゆる中立主義の国々と同じような立場をとるべきであるというような考えもあるようであります。あるいはスイス等の例を引いて、日本が東洋のスイスになるべきだというような意味において、中立主義ということを言われておる人々もあるようであります。内容はいろいろあるようでありますが、私が戦争を世界からなくしていこうという意味においては、あるいはこれらの人々の考えとの間に共通するものがあるかとも思います。しかし現実の国際の問題から申しますと、やはりわれわれは自主独立の立場から日本の安全保障を考えるけれども、しかし独力で日本というものの安全が保障されるわけではございません。従って私はあくまでも国連中心で、国連のあの憲章の理想によって世界に集団的な安全保障が作られることが一番望ましいのである。その方向としましてはあくまでも人類に自由を与え、民主的な政治を与えるところの民主主義国家と緊密な連絡をとって進んでいくことが日本の正しい進路である、かように考えております。
  131. 田村文吉

    ○田村文吉君 次にお伺いいたしたいのでありまするが、ことしもやがて近いうちに卒業式が各大学で行われることと考えるのでございまするか、昨年東京大学の総長が二千五百の学徒を前にして告辞をされたことを新聞に伝えておるのでありまするが、その新聞に伝えたところを見ますると、現に日本の政治が言論、教育に対するファッショ化である、あるいはファシズムが再登場するのじゃないか、あるいは再軍備には反対すべきではないか、さらに具体的に言いますると、あの当時の法案になっておりました放送法の改正に反対する、教育委員会法の改正にも反対する、教科書法には反対をするというような、政治上にはきわめて偏向した意見を発表されておるのであります。これはほかの人が言ったのならまだよろしいのでありまするけれども、大学の総長ともある人が、しかも五千の卒業生並びに父兄を前にして告辞を与える場合において発表された言論といたしまするということは、まさしく当時の政府に対する反抗であります。官学で、われわれの税金によってまかなわれておる大学の総長がかような偏向的な意見を発表することが、果してこれでよろしいのでありましょうか。こういう点について私は非常に疑いを持たなければならぬのであります。きわめて政府に対して非協力的な言辞である。また今日は自由民主党が多数党でありまするから、それに対する反抗でもあるのであります。むろんこのほかに一、二の私立大学の学長の中にもこれに似寄った言説を唱えておるのでありまするが、私は教育があくまでも偏向されないようにいかなければならぬのでありまするが、先刻木村君の御意見の中にも日教組の問題が出たのであります。その根本をなす大本山である大学の総長がかようなことを言っておることはいかにも私は日本の不幸である。かような人たちが今後卒業して社会に出まする場合において、社会の、官庁でも民間でも、実はさような言辞を弄する人は一人も採用したくない。かような気持さえあるのでありまするが、このような大きな食い違いが出ているということは、日本の進むべき前途に非常な大きな障害になっていると考えるのであります。これについてはどういうふうに処理される考えをお持ちになっておりまするか。また手がないから、ただ自然の世論の発酵を待つという以外に手がない、こう仰せられるのでありましょうか。岸総理の御意見を伺いたい。
  132. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 学者が学問的良心に基いて現実の政治を批判するということも、私はもちろんそれは許されているものであると、こう思います。ただ、その意見をいかなるときに発表し、いかなる形式で発表するかということについては、それぞれのその学者の地位等を考えて、良識をもって判断して行動してもらうことが望ましいと考えます。もちろん、政治上の批判にしましても、これを聞く学生や生徒が、あるいは中学であるとか、あるいは高等学校の程度と、大学の場合におきましては、おのずからその批判の程度も異なってくると私は思います。しかし、大学の総長等が、今お話のような、具体的の問題について非常に偏しておると思われるような言辞において、現実の批判、政治もしくは現実の問題をとらえて、批判を卒業式等において与えるということが、ふさわしいことであるかどうかということは、私はこれは一つ、総長その他の人々の良識に訴えて考えてもらわなければならんと思います。またこういう直接に学問の問題あるいは思想の問題等につきましては、私は直ちに政府なりあるいは官憲でこれにどうするということよりも、やはり堅実なる世論の批判によって、そういうものが是正され、また良識に従ったような行動をとられる方向に進んでいくことが最も望ましい、かように考えております。
  133. 田村文吉

    ○田村文吉君 折り返して御質問申し上げますけれども、今の総理のお考えでありますると、学者の良識を信じて、良心的に動かれることを希望されるというだけでありまするが、私は、あまりにもこの事柄が重大であって、今日のいわゆる教育上のガンというものはここにある。日本中にかようなバチルスをまいていることが、非常に恐るべき重大な問題になっているということを考えるときに、自民党あるいはまた総理といたしまして、何らかの方法をお考えになるべきでないかと思うのであります。  重ねて伺いまするが、ただ学者の良識に待つ、あるいは世論の批判に待つという、そんななまぬるいことではいかんと考えるのでありますが、どうお考えですか。
  134. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 批判の内容あるいは意見内容にもよることでありますが、私は原則としては、先ほどお答え申し上げたように、それぞれの人の良識と、社会の健全なる批判に待つという態度を根本に考えております。
  135. 田村文吉

    ○田村文吉君 その問題は、これ以上御追及申し上げても、より以上の御答弁が望まれないと思いまするので、あきらめまして、次の問題に移ります。  今三公社、五現業が問題になっておりまするが、その三公社の組織について、私はお伺いいたしたいのでありまするが、まず質問に入ります前に、自由主義を信奉する、あるいは民主主義を順奉する、結構なことでありますけれども、自由主義ということは、野放図に何もかも自由であっていいということではないことは、私の申すまでもないことであります。場合によってはその産業を国有にすることも、われわれの古い先祖がもうやっておるのであります。たとえば鉄道はかつて国有であった、電信電話も国有であったのでありまするから、かようの問題を自由主義に反するとかなんとかという意味で、批判すべき問題ではないと思います。その意味におきまして、現在の三公社がマッカーサー元帥の司令のもとに、いわゆる公社に移行したのでありまするが、総理は、かような体制が今後も持続すべく望ましき体制とお考えになっておりまするか。あるいは、私は、むしろ思いきって一つ国の絶対責任において、国有国営に還元する方がよろしいと、こういうようなお考えもあるのじゃないか、かように考えまするが、御所見を伺いたい。
  136. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 鉄道等のいわゆる公社経営の問題につきましては、私は、理論上自由主義である、自由経済であるからこういうものを国有国営にしてはいかん、それだからこうするのだ、というような考えは実は持ちません。最も能率を上げ、その本来の使命を達成するのに適当な企業形態をとることが望ましいと、こう思っております。そこで、ただこういう大きな企業体の基礎を変えるということは、いずれにしても非常な重大な問題であります。国有国営の問題からああいう公社に改め、切りかえたということも、当時は非常な変態的な状態にありましたから、それでもいろいろな支障を来たしたこともあるのでありますが、一応それで今運営されております。運営されておる結果を見ますると、望ましい点もありますが、また望ましくないような結果の点もあります。しかしその望ましくないような点が、公社の形式で果して是正できないものであるかどうか、これも研究しなければならん。せっかくああいう形態が一応できたのでありますから、これで果してやっていけるか是正することができるかできないかというようなことも検討しなければならんと思います。いずれにしましてもこの問題は私としては、理論の問題や主義の問題できめるべきじゃなしに、実際の運営や、あるいは実績、また将来の見通し等に立って考えるべき問題であって、十分検討しなければならぬ問題であると思います。
  137. 田村文吉

    ○田村文吉君 申し落しましたが、私は、国営企業に移すということの考え方も一方にあるが、一方においては三公社のうち場合によっては民営に移してもいい、かようなものも考えられるわけです。かような意味において総理は、三公社について再検討をなさるお考えはないかどうか。
  138. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国有鉄道につきましても、経営審議会を設けておりますし、また公共企業体自体につきましても審議会がございまして、それらの問題をいろいろ検討いたしております。私は十分それらの有識者の検討の結果を尊重して、将来の措置をきめていくことが望ましいのじゃないか、かように思います。
  139. 田村文吉

    ○田村文吉君 今の問題に関連いたして伺いたいのでありまするが、これは総理大臣並びに通産大臣にお尋ねいたしたい。  昨年の末から最近に至りまする東北電力の管内の電力の飢饉は、実に言語道断なのであります。一月、二月を通じましておおむね一般の産業は三割の電力の制限を受けております。三月に入りましてから日数はわずかでございましたけれども、五割の制限を受けて参ったのであります。むろん需要の増加もその一因でありましょうし、水力のみに依存しておりますることもその原因の一つではありまするけれども、このように産業ののど首を締めるようなことが、二月も三月も続いているということ、しかも一歩隣の東京電力の区域に入り、あるいは北陸電力の区域に入りまするとほとんど言うに足らない制限、ほとんど制限はないのであります。ネオンは五色をもって銀座を色どっておるのであります。電力が独占企業でありませんければ、私はさようにやかましいことは申しません。東北電力というものは、東北における電力の独占企業であります。その独占企業が、産業の三割も五割も制限させるというようなことをやって、しかもそれが、今年だけの非常の災害であるというならばよろしいのですが、当事者の説明によりますというと、来年も、もう一年はがまんしてもらわなければなるまいというようなことを言っておる。かようなことは、実に不公平千万な話であると存ずるのでありますので、これは、電力の根本の再編成の問題から、もう一つ立ち割って研究しなければならない。たとえば、福島地方における猪苗代湖の水は、全部東京に来ているのであります。新潟県の信濃川の水の電力は、全部東京に送られておるのであります。そうしておいて、その地元である各県が、三割、五割というきつい制限を受けなければならぬというようなことは、どう考えても納得ができないのであります。通産大臣は、これに対してどうお考えになっているか。どう措置なさろうとするか。その前に、岸総理に私は伺いたいのでありまするが、電力がかような状況であるということは、非常に不幸なことでありまするので、むしろ電力の再編成をやるか、あるいは思い切って全部国営にしてしまう、かような点を究明しなければならないような状況にあると考えるのでありますが、まず、岸総理の大体の御意見を伺って、通産大臣の御答弁を伺いたいと思います。
  140. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 地域的に、非常に電力の関係がいびつになっておるというような問題につきましては、十分調整の方法をつけなければならぬと思います。しかし、これがために、今直ちに電力の編成がえ、もしくはこれを国営にするという意図は持っておりません。
  141. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 電力の再編成の一番最初のとき、そういう問題がございましたが、結局、今のような再編成に落ちついたことは、御承知通りだと思います。電力料金や需給の地域差の問題を中心にして、ただいまのような御議論が最近非常に多く出て参っておりますが、しかし、何分にもこの再編成は、行なってからまだ五年ぐらいしかたっておりませんので、今すぐにこの現状をさらに再々編成するということは、需給逼迫のただいまの状況から考えまして、非常に問題だと思いますので、当分の間、この編成は現状のままで、そうして現実に支障を来たしているところの調整をやっていくよりほかに仕方なかろうと、今のところは考えております。ただいまの東北の問題は、異常な渇水期で、一番打撃を受けたところでございまして、この二月の最初から規制を行なってきたことは事実でございますが、三月に入ってやった五割というのは、これは緊急の会社自体の措置で、実は、役所側も知らないでやったというようなことでございますので、政府としましては、直ちに会社と協議いたしまして、信濃川、猪苗代湖の電力を、百二、三十万キロワットぐらいはすぐ向うへ融通するというような措置によって、大体五割、あるいは家庭電燈を三日に一ぺんずつくらいとめるというような措置はないように、きのうから処置した、こういうことになっております。今、各会社とも、自主的に電力の融通をし合うという態勢が最近できまして、この冬のときにもそういう自主的な調整で切り抜けてきておる、こういう状態になっておりますのが、この三月の初めだけ、いろんな事情で、これがうまくいかなかったということは認めますが、今後は、大体順調にいくんじゃないかと考えております。
  142. 田村文吉

    ○田村文吉君 今の問題は、大臣のお耳に入ったのは、あるいは三月かもしりませんけれども、去年の十二月の末から問題になっておる。東京では五十サイクルのサイクルを四十八に下げて、若干のお手伝いは願った。願ったのでありまするけれども、いかんせん、非常な動力の飢饉でありまするために、産業が三割も継続して休電しなければならないというようなことを放っておいていいですか。私は、かようなことについて、もう少し通産大臣は本気になってもらいたい。かようなことを半月でも一月でも続けてよろしいのか。それに対して、臨機の措置として、あるいは関西から、あるいは東京から、それぞれ電気を送るというような方法を、通産省としては、はっきりとした命令をお持ちになっているのかどうか、この点について伺います。
  143. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 三十二年度、来年度の電力需給問題については、東北、北陸は、どうしてもやはり計画上少し足らないということが予想されますので、これについては、電力を融通する諸般の措置は、全部研究済みになっております。ただいまのところだけが、さっき申しましたように、融通しても、まだ三割の制限というものがあるのですが、大体例年の例によりますと、今月の中。ころから雪解けが始まる、こういうことになりますので、今月の中ごろは大体行くんじゃないか。その間は、できるだけ電力の融通によって処置したいと考えております。
  144. 田村文吉

    ○田村文吉君 それは、通産大臣が権限を持って、関西から、東京から電気を送るだけのあれをお持ちになっているのですか。
  145. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そうでございます。
  146. 田村文吉

    ○田村文吉君 かつては、九州に、石炭が高いために電力が足りないということで、東北から電気を送った。かようなことは、もう昭和になってからはしばしばあったことなんであります。最近まであった。ところが今度東北が、こんな三割も制限しなければならぬというような状況になっておるにかかわらずだ、わずかに、東京では、五十サイクルをある数日間だけ四十八サイクルに下げて、言いわけ的に電気を助けてやったというようなことで、私は、通産行政の電気行政は勤まらぬと思う。もう少しそういう点については、しっかりとやっていただきたい、こう希望を申し上げて、私のこれに対する質疑は終ります。  次に、午前中も質問がちょっと出かけておったのでありまするが、完全雇用の問題、これは、まことにりっぱな言葉でございまするし、ぜひこれが実行されむことをこいねがうのでありまするが、一体完全雇用をするためには、どういう具体的の方法をお立てになっておるのでございますか。総理並びに経審の方から御答弁願いたい。
  147. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一般的の問題といたしましては、われわれは、経済を拡大して、そうして就職の機会を多くし、これに吸収するということを考えております。その内容の具体的な計画につきましては、経審長官からお答えいたします。
  148. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 完全雇用の問題につきましては、午前中も少し申し上げましたように、昭和四十年までは、どうしても労働力、人口が増して参ります。従って、それを早急に吸収するためには、どうしても経済の発展、伸び率を非常に高めて、要するに経済規模の拡大をはからなければならないのでありますけれども、    〔理事左藤義詮君退席、委員長着席〕それは、この国の経済の伸び率は、その実力を現在の環境に合して考えなくてはならないと、こういうふうに思っております。従って、ただいまのところでは、経済企画庁の持っております原案では、国民の分配所得をまず七ないし八%のところにみて行こう、総生産をただいま七分六厘程度のところで押えていったのが、国民に対する負担、圧力が比較的強くなくて、そうして耐え得る限界でないかと考えております。そういう伸び率を考えて参りますと、現在の労働力、人口の増加傾向をみますると、十年ないし十二年かかるだろう、こういうふうに思っております。そのうちで、特に注意しなければならないのは、やっぱり年々卒業してくる大学あるいは高等学校、中学校の卒業生、こう思っております。学生が出てきて、そうしてそれが新しい労働力人口として加わってくる、これに対して、どういう対策を立てるかということは特に重要であって、しかも、これは、教育行政に非常に影響のあることと思っておりますから、その点、われわれといたしましては、ただいまの貿易景気あるいは国内の消費傾向からみて、どうしても科学的、技術的な教育を中心として、新しい国民の経済に期待する方向に労働力人口を配分していかなければならない、こういうふうに考えております。
  149. 田村文吉

    ○田村文吉君 大体、午前中に承わった御答弁と同じようでありまするが、そこで私は、三つの問題を申し上げまして、特に通産大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。  それは、日本のように資源が少くて、人間の多い所では、どうしても精密工業をもっと進めるような必要があるのではないか、かように考えますので、私、年来主張しておりますることでございまするが、精密工業の発展について、特に助成をなさるお考えがないかどうか、これが一つ。  次に、これは、文部大臣にお伺いしたいのでありますが、ただいま、御答弁もありましたのでありますけれども、要するに、今日一番失業で困っているというのは、文科系統の大学を出られた方が一番困るのであります。でありまするから、もっと技術教育に一つ力を入れて、少くとも官学におきましては、金のかかる技術方面の教育に力を多く入れる、こういうようなことを絶対に必要にしているのではなかろうか。また、私学におきましても、特に理工科を設けるものにつきましては、十分の、一つ補助をいたしまして、技術をもっと修得できるように学科を作らしていく、そうして、文科系統のものは余り作らせないようにする、こういうようなことが必要になってきているものと思うのでありますが、これは、文部大臣のお考え、あるいは総理のお考えでけっこうでありますが、どういうふうにお考えになっておるか、第二の問題として、私は提起したいと思います。  それから、第三の問題といたしましては、終戦後、いわゆるインフレーションの時代で、食えるか食えないかという場合において、夫婦の共かせぎで、皆、婦人も職業戦線に出たのでありますけれども、だんだん世の中が落ちついて参りますと同時に、急激には参りませんけれども、結婚した婦人、子供を持った婦人は家庭に帰ってきて、家庭で自分の子供を育てることに、また、家政を守ることに専心することが望ましいことではないかと私は考えますので、できるだけさような方針で進んでいくということになりますれば、一面、男子の卒業後の就職等に十分役に立つ、かように考えまするが、これは、企画庁の方で御答弁下さってもけっこうでありまするが、この三つの問題について、私の所見に対して、お答えを承わりたいと思います。
  150. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 精密工業は、やはり新規産業一つとして、大いに育成したいと考えております。
  151. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。今日の雇用の状況から見ましても、また、日本の産業の発展の上から申しましても、科学技術に関する教育をもっと拡張しなければならぬということは、これはお話しの通りだと心得るのであります。  現在の状況から申しますれば、国立関係の大学におきましては、今日では、理工科系の学生の方が文科の学生よりも数は多くなってはおりまするけれどもお話通りに、この方面につきましては、もっともっと力を入れまして、これが拡充に努めなければならぬと考えております。三十二年度予算におきましても、学科でありますとか、講座の増設あるいは学生の増加ということを理工科系につきましては力を入れておるつもりでございますが、まだまだ不十分と考えますので、今後さらに、関係各省とも連絡をいたしまして、社会の要求に合う科学技術教育の拡大発展をはかって参りたいと考えております。  私学につきましてもお話しがございましたが、これにつきましても、私学の理工科系の方に対しましては、若干の助成をいたしておりますけれども、これもやはり、今後さらに充実した助成を行うように努力いたしたいと考えております。
  152. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) 農家とか、あるいは中小企業者の中の家族労働者の中で、特に妻の就業等の傾向はだんだん少くなる傾向がありまして、特に昨年、昭和三十一年の下期から、その傾向が顕著になって現われてきております。これは、産業構造の変化の一つの著しい例というふうに思われます。従って、そういう新しい傾向もありますから、お説のように、中小企業あるいは農家の妻の就業ということは、なるべくこれを避けて、そうして新しい労働力人口の中にこれが加わらないようにという配慮はいたしたいと考えております。
  153. 田村文吉

    ○田村文吉君 精密工業の奨励につきまして、何か予算的に御措置をなさることがありますか。あるいは今後なさる御予定がございますか、通産大臣。
  154. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 金融的な措置は十分考えておりますが、予算的な措置は、ただいまのところ考えておりません。
  155. 田村文吉

    ○田村文吉君 次に私は、独占禁止法について伺いたいのでありますが、カルテルを一概に非難いたしまするけれども、いわゆる恐慌状態あるいは不景気の状態においては、これはどうしても、産業を守るための一種の安全弁だということは、欧米の学者も皆言っておるのでありますので、一概にこれを非難するわけにはいかんのであります。ところが、独占禁止法というのは、御承知のように、昭和二十三年でございましたか、いわゆる日本の国の経済力を弱くしようというために考えられたいわゆる法律でございます。そういう法律がいまだに残っておりまするために、これを何とか救われたいということから、あらゆる産業について、特殊の立法が次から次と行われておりまして、独占禁止法というものが、かなりその形を弱められてきていることは事実であります。また、同じ禁止法の中の条文を援用いたしまして、あるいは合理化カルテルであるとか、あるいはまた、不景気のときの不況カルテルというようなものを作りまして、これを排除するような方法に向っておるのでありまするが、たまたまさような法律を作ってもらったところはよろしいのでありまするけれども、そうでない一般の産業は、いまだに独占禁止法のために非常に悩まされていることは事実なんであります。実は、このために、これから次から次と、これを排除しようという法律ができようとしておることも事実なんであります。それで、思い切ってこの際私はこの独禁法などという日本の国力を弱からしめんために作った法律ばおやめになった方がいいと、こう考えるのでありますが、これはむしろ通産行政、通産省としてそういうふうにお思いになっておるのじゃなかろうか。私はぜひそういうふうになってほしいとこういうふうに思うのでありまするが通産大臣はこれについてどうお考えになりますか。
  156. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ独禁法は御承知のように、この公正で自由な競争を促進させて、そうして国民経済を健全に発達させようという趣旨の法律でございまして、いわば産業民主化の基本法ということになっておりますので、この精神はこれでいいんじゃないか。そうしてトラストとかカルテルとかいうものによって経済力が異常に集中して、公正な競争を妨げるということは、中小企業のためにもあるいは一般消費者のためにも、これはどうしてもいわゆる産業民主化のために必要な法律であると私どもは考えております。しかしあの法律ができましてから、日本のいろんな経済の実情も変ってきましたし、この法律が非常に障害になっておる部門もたくさんございますので、御承知のように数次にわたって改正をいたしましたし、また改正を、法律そのものの改正をやらないで、繊維とか、あるいは中小企業とか、石炭とか、いろいろ特別法を作って独禁法の適用の除外ということをやって、その実情に応じて運営して参りましたが、しかし、ただいまでもなお日本の企業数が多いということから過当競争が現在起っておりますし、また経済基盤が弱いために、外国事情を非常に強く反映し過ぎるというようなところからいろいろな問題が起ってきまして、資本の蓄積を妨げたり、雇用条件の悪化を来たしたり、そういう実情が現在見られておりますので、一々特別法によってこういう問題の解決ということもこれはなかなか問題でございますので、こういう状態になれば、実情に即してどういうカルテルという行為は認めらるべきかというふうなものの再検討を行なって、独禁法自身のやはり改正をする時期じゃないかというふうに私どもは考えまして、今公取委員会の方とも、私どもの方でもこの独禁法自身の検討ということをただいま始めておるところでございます。
  157. 田村文吉

    ○田村文吉君 特に通産大臣の御注意を喚起いたしたいことは、独別法ができました場合には、必ずアウトサイダーを認めないような強制加入が大ていついておるのでありまするから、独禁法のある時代において特別法を作れば、それによってアウトサイダーというものはほとんど存在を許さないようなことになるのであります。ところが独禁法がなくて、カルテルを作るとか何とかいう場合には、加入するしないは自由勝手でありますから、過去の実例から見まするというと、その方がいかに民衆のために、横暴する場合にもすぐアウトサイダーが出てくるということで救済されておったのであります。ところが今のような特別法をお作りになると、アウトサイダーをほとんど許さぬ場合が多いのであります。こういうことになりますというと、かえって大衆のために非常な不利益を与えておる、こういうことをお考えいただいて、せっかく御研究中でありまするならば、私はこの際抜本的にもうこの法律はおやめになることが一番賢明な方法である、こう考えられまするが、もしそれに対してのはっきりした御答弁が願えませんければ、私の希望だけ申し上げておきます。  次に大蔵大臣に一つお伺いしたいのでありまするが、法人税が非常に私はまだ高いと思っております。幸いに個人の所得税については十分にお考えいただいた上にいわゆる大幅減税と称するものが行われたのでございまするけれども、今日の直接税はお示しの表によりまするというと五〇・〇二、間接税は四六・三であります。これが昭和九年——十一年、基準年度で見ますると、直接税は三四・八、間接税は五七・一であります。そこで現在の国民所得をその当時に、戦前の基準年度に比べてみまするというと、五百七十倍になっております。予算の総額は五百三倍になっております。専売益金は六百倍でありまして、酒の税金は九百倍であります。ところが所得税と法人税はもとはこれ一つでございましたので、合併で比較いたすのでありまするけれども、実に二千八百倍、まあ大へん税金はお下げになったようで、私ども喜んで賛意を表するのではありまするけれども、いまだにこの直接税である所得税と法人税の合算は、戦前に比べますると二千八百倍に相なっております。これは私は非常にノーマルな状態でないと、かように考えますので、これは多年私は池田大蔵大臣にもお願いして参ったのでありまするが、この際所得税の軽減とあわせて今後法人税について思い切って大体三割程度にお引き下げになるということが必要じゃないか、なぜ私は三割ということを申しますかと申しますると、大体実効税率が今日は三〇%だそうであります。でありまするから各種の特別措置方法等をやめますれば、実は法人税は三割だ、でありまするから不公平のないように、上も下も、もうかる人ももうからぬ人も、大きな大工業も小工業の人も、みんな均霑のできるようにすべてを三割ぐらいにお下げになることが至当ではなかろうかと考えるのでありまして、これがそれじゃ財源は場合によって足らぬ場合にはどういうふうにするかという問題が起ってくると思うのでありまするが、これは私は目的税をつけた奢侈品に課税する、このようなことも考えてもいいだろうと思いまするが、貿易額が実はかなりにふえて参りまして、戦前に比べますると、大体四百四十倍になっております。ところが関税収入は二百六十五倍にしかなっておりません。こういうような関税でももう少しく御整理をなさる余地があるのじゃなかろうか。それから今申し上げた特別措置の問題もございまするし、最後にどうしても、財源がない場合には、非常に多くもうかるところに対しては、超過利得として今日の法人税の税率ぐらいを最後の超過利得に対してつけるというようなこともできると思うのでありまするが、善政を施しになられました大蔵大臣は、一つこの次にはもっと一つ法人税に対しても善政を施しにならんことを私は希望する次第でありまするが、その御実行ができませんでしょうかどうか。
  158. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  まず第一の直接税と間接税の比率でございまするが、国により、また時によっていろいろ差はあるのでございます。私はただいまの状態では直接税、間接程——まあ間接税というのは流通税も加えての間接税でございまするが、大体五〇、五〇ぐらいでやむを得ないのじゃないか、まあ適当ではなかろうかと考えております。  しこうして次に法人税の軽減のお話しでございまするが、これは今回もまず所得税を減税して余裕があれば法人税という考え方もあったのでございます。しかし、何よりも所得税を大幅に減税することが目下の急務であるというので、所得税減税をいたしたのであります。しこうして片一方では、租税特別措置法によりまして恩恵をこうむっている企業につきましては、これを縮めていこう、こういうことで租税特別措置法の法人関係の分にかなりきつくいたしておるのであります。何と申しましても財政支出というものが将来減るとは考えられません。そうしてみますると、国民経済の発展によって自然増加をはかっていく、で増収がありました場合におきまして、これを施策の方面と減税に充てるべきだと思います。で法人税の税率ただいま税法では四〇でございまするが、地方税が加わっておりますので大体五〇%余りになっていると思います。私は、この五〇%の税率というのはやはり相当高い、安くしたいと思うのでありまするが、外国の例を見ますと、大体その程度以上ぐらいに相なっておるのであります。外国はいずれにいたしましても、税金を少くするということは産業の発展にぜひ必要なことでございますので、将来の自然増収を見ながら、法人税の税率につきましても軽減をしていきたいという考え方を持っております。しこうして、かわり財源として目的税あるいは奢侈品税を設けるというお話でございますが、この奢侈品税によりまして相当の増収を上げるということはなかなか困難でございます。物品税におきましても、ほとんど大部分の税収というものは、田村さん御存じのような奢侈であるか何であるかわからない紙なんかに課税しておるのが大部分でございますので、これまた多くの収入を望むことはできません。しかし、それならばまた法人の超過所得税というふうなこともお考えのようでございまするが、この超過所得税は、何を基準にしてやるかということが非常に問題でございます。昔は超過所得税をやったりあるいは臨時利得税をやって、いろいろ課税の実際面において紛議を起しておったのでございます。私は、ただいまのところ超過所得税あるいは臨時利得税的のものをやるより、やはりフラットな税率をもっていくのが今の経済事情に合っているのじゃないか。しこうして、中小企業その他の分につきましては、まず第一にそういう小所得者の分を負け、そしてこの所得税の方に持っていく、今の法人税を超過所得あるいは臨時利得税的のものに変えるということは少し行き過ぎではないかと、こう考えておるのでございます。
  159. 田村文吉

    ○田村文吉君 関税はどうですか。
  160. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 関税の問題につきましても、最近輸入がふえて参りまして、税収も相当上っておりまするが、これはやはり間接税的のものは物価に相当影響がありますので、そうしてまた外国との取引の関係もございますので、まあ最後の手段としてはそれでございまするが、私は、やはり今物価問題その他外交の問題が厄介なときでございまするから、これに多くを期待することは無理ではないかと思います。
  161. 田村文吉

    ○田村文吉君 貿易が四百四十倍にもなっているのに、関税が二百六十五倍の率にとまっているということはちょっと不思議なんですが、これは何か特殊の理由がございますか。ちょっとおわかりでしたら説明をお願いしたいのであります。  それから、ただ、私がなぜ法人税をお下げなさいということを言うかと申しますると、今日の経済の状況は、もう大蔵大臣がよく御承知通りでございまして、非常につまり自己資本というものは少いのですね。で、幾らか貯蓄をして自己資金を使おうと考える場合は皆税金で持っていかれる。これはもう実際事業をやっている人たちは非常な苦しみをしているわけなんです。それで賢い人たちは、何とかしてこの特別措置方法であの点この点というようなことを言ってお願いをして、そして下げてもらっているのですが、そういう企業者というのはどうかというと、いわゆるもうかる強い企業者なんです。弱い中小企業でありまするとか、その他の企業になりますると、それができんのですね。そういう点は大蔵大臣はよく御承知ではあろうと思うのでありまするが、私は、その意味で平均に一つ三割ぐらいに税金を下げておしまいになっても実際の税収は狂わないと、こういうことを申し上げて御再考をいただきたい、こう考えるのです。
  162. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 貿易がふえましたにかかわらず関税収入が昔ほど上って参りませんのは、国内物価の関係上、臨時的に免税しておるのが多いのでございます。米にいたしましても鉄鋼にいたしましても、今度は無税にしようと思っておりまするが、物価政策上かなり暫定的に免税をしたのが多いのでございます。ただいまのところそういう事情で上らないのでございます。  なお法人税につきましては、お話通りに特別措置法で減免税したのもございますが、これは将来だんだんもとに戻していきたいという気持を持っております。従いまして、先ほど申し上げましたように、経済力増加に、発展に伴いまする増収分を見合いながら、法人税についても将来減税していきたいという気持は持っておるのでございます。
  163. 田村文吉

    ○田村文吉君 来年度は……。
  164. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 来年度は、御承知通り千九百二十億円の自然増収を見ております。しかしこれ以上の好況を来たすようならば、相当また自然増収が出るかもわかりません。今のところは出るつもりはございません。しかし将来のことはわかりませんが、将来万が一増収が出るというようなことがあれば、政府の積極施策を増加いたしまするとともに、同時に減税にも充てていきたい、こういう考えでございます。
  165. 田村文吉

    ○田村文吉君 次に総理にお伺いいたしたいのでありまするが、先ほども労働大臣に対して、春季闘争の問題について質問があったのでありまするが、私は総理大臣にこの問題はお伺いしたい。また、労働大臣に対しては、私も専門委員会でお尋ねする機会もたくさんあると思うのでありますので、まず総理にお伺いいたしたいのでありまするが、実は毎年もう繰り返して春季闘争とか、秋季闘争とか、年末闘争とかいって、実に世間を騒がしていて、しかも国民に迷惑をかけておるような状況にあるのであります。しかもその主軸をなすものは何かと申しますと、いわゆる官公労でございます。三公社五現業というものが非常に大きな国民に負担を与えてやっておるのでありますが、一体この争議の相手はだれかということを考えますと、先刻も木村委員からお話があったように、相手は実は国民なんです。国民を相手にして争議をやっている。こういうようなことが毎年行われておって、しかもこういう問題はタブーで、なるべく触れない方がいいというので、歴代の労働行政というものが推移して参りまして、私どもが労働委員として、なぜもっと政府はしっかりした強い腰でもってやらないか、言いかえれば自民党というものは、自分の党を張り込んでこの問題について一つやって見るがいい、そうして世論が果して自民党を支持するのか、あるいは階級闘争を主張している労働組合を支持するのか、こういう問題については私はもっとはっきりともうなさるべき時期にきているんじゃないか、こういうふうに私は考えております。で、あまりに今までの行き方というものが、なまぬるい方法で事なかれ主義でお済ましになっていればいるほど、こういう問題は、毎年いわゆる国民全部迷惑するような状況にあるのであります。でございまするから、私は今度の春季闘争の問題につきまして、一々あるいは仲裁裁定にいくことがいいとか悪いとかいう議論はこれは私はここで申しません、申しませんが、もう少し自民党として、また今の内閣総理大臣としては、この問題についてほんとうに取っ組んで、国民の不安というものを一掃するようなお考えがないかどうか。官業に対してはさようでございまするし、私は民業に対しても、願わくば話し合いで話がつけばということを先刻お話があったが、これはなかなか困難でありまするから、どうしても仲裁裁定の方法によって民業といえども、お互いがしかめっつらでにらめっこしておるようなことをやらず、労働裁判所のようなものによりまして問題を解決する、こういう慣行を作っていかなければならぬ、こう考えておるのでありまするが、まず第一に官公労の問題ですね、この問題について思い切ってこの際一つ手をお打ちになるべきじゃないか。こう考えるのでありまするが、それに対する御所信を伺い、次に民間の問題については、たびたび労働省に対して私は申し入れをしておるのでございまするから、これはあえて労働大臣のきょう御答弁がなくてもけっこうであります。ありまするが、もし御答弁願えるようでしたら、一つあわせてお願いいたします。
  166. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いわゆる三月攻勢というようなことがほとんど年中行事のような形になっておりますことは、日本の国民生活の上から申しても、産業の上から申しても、非常に嘆かわしい事態であると思います。今回の事態そのものは、かねて申し上げているように、われわれはできるだけ平和裏に早く解決することを望んでおります。その方向にあらゆる努力を尽したいと思います。ただこの攻勢なるものが、総評のいわゆる画一的な計画闘争によって指導されておる。しかも総評のうちにおきましては、数から申しましても官公労に属しておるものが非常に多い。また、これらの人々は争議行為は禁止されておるにかかわらず、いろいろそれに違反するような事態も従来あったのであります。私ども昨年のいわゆる春季闘争に際しましては、当時自民党内に、この争議に対する対策本部を作りまして、公務員がその本来の職務に反し、法律の規定を無視しているような行動に出ていくということのないように、あらゆる意味において監視し、また不幸にしてそういう事態があれば政府と緊密な連絡をとって、これに対しては処罰するという方針のもとに昨年の三月もそういう態度で臨んだわけであります。今回におきましても、われわれはやはり昨年の経験、またそれより以前のいろいろな事態を考えまして、公務員がその本来の本分を逸脱して法律違反を犯すようなことのないように、あるいは官房長官の談話において、あるいは労働大臣の談話において、また政府部内におきまして各省の責任者を呼んで、そうして会議をする等によりまして、それが徹底をはかりますとともに、わか党としても、この重大な問題に処するために対策本部を作りまして、やはりこれら逸脱の行為のないように監視もいたしますし、いろいろ勧告もいたしますし、政府と連絡してこれに善処するようにやっております。私どもはあくまでも公務員は公務員としての給与の、待遇の問題については人事院の勧告を尊重してこれが改善をするという立場をとるとともに、それが公務員法やその他の法規に違反し抵触して公務員の本分を逸脱するというものに対しては、やはり厳格な態度でもって、そういうことの事態に対しては処罰してそうして両々相待って公務員の本来の職責を尽すようにもっていきたい、かように考えております。
  167. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。田村さんの憂国の至情あふれる、ただいまの御発言には敬意を表するものであります。民業の争議に対しましては政府は不介入の態度をもちまして両者自主的に話をきめてもらいたい、平和裏にきめてもらいたいということを声明を発し、あるいは使用者、勤労者の代表を呼びまして、いろいろ警告を与えて参ってきております。幸いに私鉄が本日全部片づきましたことは御同慶にたえません。炭労も近いうちに解決するような究気でございますから、さらに両者に向って平和裏に一日も早く安定するように警告をするつもりでざざいます。
  168. 田村文吉

    ○田村文吉君 最後に繰り返して申し上げますが今の民業関係の方はそういうように平和裏に話し合って——話し合ってけっこうなんです。それはだれでもこいねがうところでございますけれども、過去においては、また今後そうであろうと思うのですが、なかなか平和な話し合いができない。できないからいろいろな不幸のことが起るのです。それでこれはこの問題と合わせて官業の問題にも関連するのでありますが、ただお互いに自省し合ってそういう問題についての解決をはかるというだけではいかぬので私は新たに法律を作ってでもこれはこういう問題に対する国民の安心のできるような問題に解決を導いていただきたい。こう考えますので、それで私は今の不法行為を行なった者に対して峻厳なる態度で臨むということはおやりになるでしょう。またそれはしかるべきことは当然であります。でありまするが、それだけではなかなかこれはおさまりがつかんのでありまして、もっと私は法律ではっきりとこういうものはきめると、こういうような必要があるのでありますが、歴代の労働行政がどうもそこまでこないのです。私はこれが段階は単なる労使の争いというだけの問題であればいいですけれども、国民の全部がこれがために不幸に陥るということを考えるときに、だまっていられない。自民党はよろしくそういう問題について御意見、主張があるならば、それを張り出して、そして政党をはって一つ世論に訴えるというくらいの御決心がなければいかん。ここまで私は時代がきていると考えますので、あえて岸総理に、ただ不法行為の者は処断するとか、あるいは行政処分をするというだけの問題ではないと思う。そうでないと毎年々々これは繰り返されておる。しかもいろいろのものが入ってきまして、これをある階級の人たちが利用したり引用したりするのでありますから、これはもう少ししっかりと労働行政についてはおやりにならなければならぬと思いますが、あえて所信を伺いまして、私の質問を終ります。
  169. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん労働政策として保守党は保守党の立場からしっかりした労働政策を持たなければならぬことは言うを待ちません。従いまして政府としても、政党としてもその立場からはっきりした労働政策を持って、労働者の福祉の増進をはかると同時に、一面から申せば、単に労使の間の問題だけではなしに、それが及ぼす国民経済、あるいは国民の生活の意味からわれわれはきわめて重大な何であると思いますから、政府並びに政党としては、その立場をはっきりしたものを持っていかなければならぬと言われる田村君のお説には私は全然同感でございます。その点十分考えて参りたいと思います。
  170. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 千田正君。    〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕
  171. 湯山勇

    湯山勇君 ただいま田村委員の御質問の中に、東京大学の矢内原総長の昨年の卒業式における講演の問題が出て参りました。この問題は、昨年教育委員会法の審議のときにも文教委員会において問題になったのでございますが、これについては明確な政府側見解もないままになっておったわけでございます。ところがたまたまお取り上げいただいてしかもその御質問内容は場合によれば総長の一身上にも及ぶような意味の御質問であったし、それからこれに対する総理の御答弁も必ずしも明確ではなかったと思います。で、私どもが聞いておるのでは、ことに前清瀬文部大臣のこれに対する御見解は、総長の講演はそうではなかろうかというような問題提起の形で取り上げられておるんだというような御見解もありましたが、総理はそういう内容をよく御存じないと思いますが、ただいまの田村委員の御質問の事実をそのまま御肯定になったかのような御答弁があったようでございます。すでに卒業の時期を控えて、全国の国立大学の学長は卒業生にそれぞれはなむけの言葉を贈らなければならない時期に到達しております。またたくさんの学生が学生が学校を出ていく時期になっております。こういう時期に当ってただいまのような問題が取り上げられ、そしてこれがこのままに本日の質疑応答のままで放置されるということは、全国の大学の学長なり、あるいは卒業する学生、それらに与える影響も決して小さくないと思いますので、委員長にお願い申し上げたいのは、この問題について私ども一般質問の段階においてもう少しこの問題を明確にいたしたいと思います。ついては理事会において、一般質問の段階で矢内原総長を当委員会に参考人としてお呼び下さるようにおはからい下さいますことを委員長にお願い申し上げたいのでございます。(「同感」「異議なし」と呼ぶ者あり)
  172. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 後刻理事会に諮ってきめたいと思います。(「二、三日これでかかるぞ」「おどかしちゃいかぬ」「あしたあした」と呼ぶ者あり)  千田君どうですか。(「散会々々」と呼ぶ者あり)千田君に発言許したんですが……(「やれやれ」と呼ぶ者あり)千田正君発言しませんか。
  173. 千田正

    ○千田正君 発言はいいんですが、理事会の諸君で話し合いがまとまらないので話し合いをして下さい、私はいつでも発言してかまいません。(「一日に五時間ないし六時間やることになっているのに、きょうは午後二時間しかやってないんだ」「限界をこえているよ」「そんなに無理する必要はないよ」「まだ大丈夫」「散会々々」「もう少しやりましょう」「理事会を開いてやればいいだろう」「続行々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  174. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) どうですか、千田君に発言を許したんですから、一つ発言さしていただきたいと思いますがね。(「あした協力するわ」と呼ぶ者あり)いいでしょう。(「委員長、取り消しばかりしておってはだめだ」と呼ぶ者あり)千田君に発言を許したのですから、一つそれだけ承知してもらいたいですな。千田正君。
  175. 千田正

    ○千田正君 理事方々話し合いして、話がまとまったところでもって、発言を許して下さい。そうでなければ、将来の運営に同じようなことを繰り返すのじゃ、私は非常に不満足です。もう少し話し合って、どうしてもやれというなら、いつでも私はやりますから……。
  176. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) どうですか。(「委員長、どうですかというけれども、千田さんも理事なんです「理事じゃないよ」「正式に理事会を開いて下さい」「理事会をこのままでやりましょう」と呼ぶ者あり)
  177. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 千田正君。(拍手)
  178. 千田正

    ○千田正君 岸総理大臣に特にお伺いしたい点がありますが、簡潔に、時間もありませんので、聞きます。  それは、先般の総理の施政方針演説の中に、戦争の犠牲者に対して、特に引揚者に対するところの在外資産問題を解決する、こういう演説がありましたが、その後、新聞紙上で見ますというと、大体政府並びに与党と、引揚団体の代表者との間に話し合いがついて、そして五百億程度の国債を給付する、こういう問題であります。この際特に所信をただしておきたいのは、昭和二十一年十月、当時の第一次吉田内閣のときに、石橋蔵相が、引揚者百万世帯に対して、一世帯一万五千円の一応の融資をはかって、引揚者の生活の保障をしようという話し合いがついたのでありまするが、当時の駐留軍の命令によって、これは一時ストップした。その後二回にわたり、衆参両院におきまして、引揚者に対するところのこの問題を即急に解決すべきところの決議がなされたのであります。このたび、政府の提案してありますところの五百億という問題は、これは暫定措置であるのか、あるいはこれをもって打ち切るのか、しかもその性質が、いわゆる国家保障の性質なのか、あるいは社会保障の一環としてこれを行うものであるか伺いたいのであります。  かつてサンフランシスコ条約の際に、当時の吉田内閣が、アメリカとの間のいわゆる日米条約において、個人の私有財産は放棄するという二とを明言したのであります。当時の駐留軍の一方的な換算から考えましても、当時の私有財産が約七兆と称されておりました。こうした引揚的の犠牲の上に一応の国策が遂行されておる今日において、五百億という程度は、私は、これをもって打ち切るということは、はなはだ残酷ではないか、いわゆる国家補償の意味を含んでおるとするならば、非常に残酷であると思う。この点の総理大臣としてのお考えを一応お答えをいただきたいと思うのであります。
  179. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 引揚者の在外資産の補償の問題につきましては、戦後ずっと十数年の、非常に長い沿革を持っております。昨年、私は当時自民党の幹事長をいたしておりまして、引揚者の国体の方々と話をいたしまして、この問題を解決するために、内閣に財産問題に関する審議会を作る。それには広く政治家も入れ、また引揚者の団体の代表者も入れて、そうしてこの問題を早急に解決したい。従来あった委員会が、ほとんど動かずにおるのを改組いたしまして、そういうものを作るということを誓約いたしまして、昨年そういう委員会が置かれたのであります。これの答申の線に沿うてこれを解決するということを、最初から約束をいたしておりまして、その約束通り、その答申が出ましたので、答申の線に従って今度の解決案を政府としては立案したのであります。給付金として約五百億程度のもの、それにさらに生業資金の貸付について特別の考慮を払う、住宅問題について特別の考慮を払って、そうしてこの問題についてはこれをもって最終的な問題処理の方法として立案して、今国会の承認を得ようと、こういう考えで立案をしておるわけでございます。
  180. 千田正

    ○千田正君 ただいまの総理お話によりますというと、これをもって最終的な段階の処理にしたい。しかるに、先般日韓問題が行き詰まった場合に、岸総理大臣のお考えは、日韓外交問題が再開されるに際しては、かつての韓国に在住しておったところの引揚者の私有財産も放棄するという前提を一つの重要問題として打ち出しておるように、われわれには感じられるのでありますが、この点はどうであるかという点と、先ほどのお答えの中に、私は核心に触れていただきたい質問をしたのであります。それは、いわゆる国家補償の性質を帯びておるのか、あるいは社会保障の一環としてその対策を考えるのか、この点についてのお答えがなかったようでありますので、この点もあわせてお伺いしたいと思います。
  181. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今度の給付金が、国家補償の意味を持つものであるか、あるいは社会保障の意味であるかという点の御質問にお答えをするのを落しましたが、実は、審議会におきまして、補償すべきものであるかどうかということがいろんな点から論議されたのであります。ところが、これに対しましては、補償する義務ありという意見も一部ありましたし、補償する義務はないという議論もございました。この問題については本質を決定することができないというのが、その当時の審議会の議論でありました。政府が補償するならば、補償する義務がはっきりしたものに対しては政府は補償するのでありますけれども、その根拠が明らかならないものを補償するということは、私は政府としてはできないと思うのであります。そこで、答申の趣旨も、引き揚げてきて、非常な犠牲を払って、しかも相当長く内地にいないために内地の生活の根拠も失っておる、そうして生活上もいろいろな点において非常な苦しみをしておるという見地が明らかにされまして、そういうものに対しては、国家は、給付金その他、今申しますような生業資金の問題や、住宅の問題等について特別に意を払って、この問題を処理すべきだという結論から、私どもはそういう工合にしたわけであります。  それから、韓国の財産権の問題に関しましては、これまた過去の日韓会談におきまして、非常に解決の困難な、両方の意見の違っておる重要問題の一つであったのであります。私は、日韓の間の恒久的な友好関係を作り、こういう戦後の状況のような事態を一日も早くなくしていかなければならないという見地から、日韓会談を再開する前提として、まず抑留者を相互に解放し合う、釈放し合う、次いで日韓会談を再開する。再開するに当っては、あくまでも日韓の恒久的な友好関係を作り上げるに必要な公正かつ現実的な立場に立って会談をしよう。従って、従来われわれが主張しておったことに私は必ずしもこだわるものでなはい。今財産権をすぐ放棄するとかいうようなことをきめることはもちろんできないけれども、われわれは、あくまでも公正で、かつ現実的に考えて、あまり理論的な何に拘泥して会談を不能ならしめるようなことはしたくない。その意味から、従来の主張に必ずしも拘泥するものにあらずということは申しておりますけれども、今直ちに財産権を放棄するとか放棄しないとかいうふうな具体的な話し合いにまでは、もちろんいっておらないのでありまして、今後日韓会談が再開されますれば、具体的にこれに対しまする意見をきめなければならぬけれども、私としては、従来の事情に必ずしも拘泥せずに、現実的に、かつ公正な見地から、両国の友好関係回復に努めたい、かように考えております。
  182. 千田正

    ○千田正君 今の五百億円をめぐりまして、私は大蔵大臣にお伺いしたいのでありまするが、今度の当初予算に、これの利子の分として十億を見込んでおるのであります。先般衆議院でいろいろ問題になったようでありまするが、かりに五百億としますと、十億では足りないじゃないか、三十億ぐらい要るんじゃないか。年間を通じての問題になるのか、あるいはこれをどういうふうに生かしてこの五百億にマッチする利息として考えられておるか、その点が一点と、  それからもう一つは、ただいま総理からもお話がありましたように、この給付によって引揚者が一日も早く何らかの方途を見出すようにという考えであるならば、特に六十才以上の老齢者は一日も早く現金化したい、こういう気持ちがあるわけであります。ところが、今度の国民金融公庫に貸し付けるところの融資のワクが二十億。二十億では、大体現在の老齢者の数からいうと、二十五人に一人ぐらいしかその恩恵に当らない。これに対しますところの、いわゆる国民金融公庫に対する貸付金のワクをふやすお考えはないか。この点をお伺いしたいのであります。
  183. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいまのところ、五百億円の交付公債を出すことに法律案を立案中でございまするが、何分にも、三百万人程度の人になるかと思います。従いまして、法案通過後全国的に調査をいたしますると、かなりの時間がかかると思うのであります。従いまして、利払い期は、昭和三十二年度一回程度じゃないかと思います。それが半年分になりますか、五カ月分になりますか、いずれにいたしましても、五カ月あるいは半年分になりますると、年六分でございまするから、少し足らないようになるじゃないか。その場合におきましては、足りない場合につきましては、御承知通り、大蔵省証券の利子を二億七千万円ほど見込んでおります。御承知通り、一応大蔵省証券の利子は三億近く見込んでおりまするが、三十年あるいは三十一年あるいは三十一年度の実績を見ますると、国庫の余裕金がございまして、発行しない場合が相当ありますので、私は、調査が済みまして、いよいよ利払いというときには、十億円をもとといたしましていろいろ工夫し得るものと考えておるのであります。従いまして、いつ御本人に渡るか、発行するかによりまして数字が動きまするが、これにつきましては、十分善処いたしたいと思っております。  第二の、交付公債によって国民金融公庫から融資を受けられる場合につきましては、一応二十億と予定いたしておるのでございます。しかし、これはさまった数字で動かせぬということでもございません。国民金融公庫の情勢によりまして動かし得ると思うのでありまするが、一応は二十億円なら大体まかないつくのではないかと考えております。
  184. 千田正

    ○千田正君 神田厚生大臣にお伺いしますが、この問題の処理は、いずれ厚生大臣のもとで行われると思いますので、この暫定法が発案される際に、今まで厚生省の仕事の一環としてこうした問題の実態調査を社団法人の全国引揚者団体連合会がお手伝いしてきております、協力してきておりますが、将来ともなかなかむずかしい問題でありますので、実態を把握しておるところのこういう団体を協力団体として、業務の一端をあるいは委託するというような方法をお考えになっておられませんかどうか。もし、あるならば、考えてしかるべきじゃないかと思うのですが、いかがでありますか。
  185. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいまのところは、府県市町村を通してと、こういうふうに考えて進んでおります。
  186. 千田正

    ○千田正君 次の問題としましては、一応これで引揚者の問題はある程度の段階を築き上げつつある。ただ、ここにもう一つ、まことにみじめな人たちがいるということを総理は御承知と思うのであります。それは、いわゆる未帰還者、いまだ帰らざる人は、行方不明であるのか、あるいは現存しているのか、こういう者は大体五万人と称されております。一体この人たちの将来はどうなるのか。かりに、留守家族は、結婚したくともやれない。死亡というような問題に対しても、はっきりした公報も入っておらない。そういう告知は一体いつ出すのか、こういうことが留守家族の人たちは非常に焦慮をしている。海外に向っては調査をどしどし進行していかなければならないし、また国内においてはそうした悲惨な立場にあるところの家族を救ってやらなければならない。これに対する具体的方針が何かおありでありますならば明示していただきたいと思うのであります。
  187. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お話通り、未帰還者の問題は、私、最も御同情申し上げている問題でありまして、日ソ国交正常化によりまして、マリク名簿の大部分の人が帰られたのでありますけれども、なお、その一部は残っておる、また、それ以外にソ連で消息不明になっている者が一万名以上ある、この問題につきましては、日ソ交渉の際におきましても特に鳩山全権は重大な問題として取り上げて、わかっている者はすぐ帰すのみならず、消息不明の者については、至急にこれが調査をすることについてソ連政府が協力するという話し合いになっておりました。今回、大使館を両方に交換する場合におきまして、門脇大使が昨日向うに着任したようでありますが、私は特に門脇大使に、ソ連に着任したらば最初にこの問題をソ連政府に申し入れて、そうしてできる限り、一日も早くその消息を明らかにするようにということを言ってあります。なお、ソ連の大使館には、特に引き揚げについて、厚生省においてその方の事務を扱っておりました者を大使館員としてモスコーに駐在せしめて、この仕事をさらに進捗せしめるつもりであります。  また、中共には、御承知通り、なお戦犯関係の者が撫順にある数残っております。これにつきましては、中共政府はすでに戦犯の扱いを受けた者に対して、相当日本に帰してきております。残っておる者についても、さらに中共政府と話をして一日も早く帰れるように交渉を進めて参りたいと思っておりますが、同時に、消息不明の者が中共におきまして相当、われわれの方におきましても、数万の者があります。それについては、厚生省におきまして、各個人についてできるだけの資料のできますものを整えて、そうして、一応ジュネーブのわが国の総領事から中共の総領事に手渡ししまして、中共政府のこれに対する協力を求めるつもりでおります。さらに、それを有効ならしめる方法として、その結果を見て、さらに私は、いろいろの方法を考えて参りたい。たとえば引き揚げの特別委員会委員方々に行ってもらって、この問題をさらに進めるという方法もありましょうし、あるいは、さらに進んで、国交は回復しておりませんけれども、私は、これは人道問題としてこういう問題については、ある程度政府間において話をすることも辞すべきものではないのじゃないか、こういうふうに考えて、できるだけ早く、一日も早くこれらの消息を明らかにして、そうしてまたその人々が帰ってこられるように措置したい、こう考えております。
  188. 千田正

    ○千田正君 総理並びに外務大臣としてお答えをいただきたいのは次の問題であります。あるいは農林大臣がおいででありますから、農林大臣もともにお伺いしたい。それは、ただいま日ソ漁業委員会が開かれておりますが、すでに御承知通り、八万トン—十万トンという不漁年、豊漁年の問題をめぐっていまだに解決を見ておらない。これはかつて前河野農林大臣とソ連のイシコフ漁業相との間に話し合いをつけてきたところの問題であるが、そのときの八万トン—十万トンという問題は、これはこれからの条約の期限である六年間というものは、絶対動かせないところの一体基礎的な問題であるかどうか。あるならば、そのときのソ連側の主張しているところの八—十というものは、ソ連側の漁獲高はどれだけを確認して八という、十という問題が起きたのか、このときのソ連側の主張はどれだけの漁獲高を中心として八—十ときめたのですか、その点をお答え願いたいと思います。
  189. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 昨年モスコーにおきまする日ソ漁業条約交渉の際、日本側の漁獲量は一応八万ないし十万、こういう線で話し合いができましたことは、河野前大臣からも国会において報告があったわけでございます。それで、これは一応の基準であって、ソ連側の漁獲量と見合って定めることに相なっておる、かように承知をしておるのでございますが、当時ソ連の示した計画量というものは八万二千七百トン、こういうことが一つの目安に相なっておるようでございます。しかしながら、条約上におきましても、これは科学的な基礎の上に立って漁獲量をきめるのである。その協議決定をいたしまするのが今回の日ソ漁業委員会の任務でございまするので、ただいまその観点に立ちまして鋭意折衝をいたしておるわけでございます。
  190. 千田正

    ○千田正君 そうしますと十万トン、八万トンというのは、一応ソ連側で八万二千トンを漁獲するという計画のもとに一応の基準を定めた、かように了承してよろしゅうございますか。そうしますと、ただいまの日ソ漁業委員会においてデッド・ロックに乗り上げておるというのは、ソ連側の本年度のこれからの漁獲量というものは、相当多数見込んでおるというふうに新聞やあるいはラジオで報ぜられておりますが、そうだとするならば、日本側でも当然、従来ありましたいろいろなデータがあると思いますから、相当の量の要求をしても決して八十というその基準をはずれるということはあり得ない、私はそう思っておるのですが、その点はいかがであるかということと、大体漁期の仕込み期が近づいてきているという点もありますので、一応の目安がいつごらになるとできるかというような観点がおわかりでございましたら、この際お答え願いたいと思います。
  191. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) お答え申し上げます。ソ連側の本年の計画量はおよそ十四万トンという数字を示しておるのであります。従いまして、これがわれわれの見合うべき一つの標準というように考えておりまするので、ただいま鋭意折衝を続けおるさなかでございまして、もうしばらくの御猶予をいただければ仕合せと存じます。
  192. 千田正

    ○千田正君 総理大臣にお伺いしますが、先ほど木村委員からのお尋ねのいわゆる原子爆弾の実験の問題等に関しましてですが、先般のビキニの問題のときは、日本側は三十億の損害賠償を、いわゆる国家賠償を時の岡崎外務大臣のもとに要求したのでありますが、アメリカ側は国家賠償には応じなかった。見舞金という名目のもとに十億足らずの金を日本側に支払っておる。今後もおそらくアメリカ側はネバダ、ビキニ等において実験を継続すると言うておるし、クリスマス島の英国の実験は真近に迫っておると思います。こうした国際間の問題に、不幸にして日本がその被害を受けた場合には、見舞金というもので私は受け取るべき問題ではないと考えるのでありますが、その点につきましては、今から心がまえを持っていただきたいと思いますがゆえに、総理大臣のお考えを承わっておきたいと思います。
  193. 岸信介

    国務大臣岸信介君) クリスマス島のイギリスの実験に対しましては、再度にわたり抗議を申し込んでおりますが、同時に、われわれはこれから生ずるところの損害が、もしもどうしてもそれがわれわれの抗議に対してやめないという場合においては、それから生ずる損害の一切については、イギリス政府の責任であるということを明瞭に申し入れております。私は、もしも不幸にしてまたそういうことが行われ、またそれによってわが国が損害を生じたという場合においては、イギリス政府が責任として損害を賠償すべきものである、かように考えております。
  194. 千田正

    ○千田正君 一昨年開かれました国際地球観測年の特別委員会決定によりまして、日本はプリンスハラルド海岸で観測することになって、ただいま日本の南極調査班は活動中でありますが、ここの南極において無人島等を発見した場合において、日本の領土としてこれを確認する方法があるかないかという問題を考えますときに、かつて日本とアメリカとの平和条約の条項の第二条の領地権の放棄に関する条項でありますが、そのうちの(C)項に「日本国は、日本国民の活動に由来するか又は他に由来するかを問わず、南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。」、こういうことを平和条約において、かつての吉田内閣は結んでおりますが、これは当時の状況において結ばれたのであって、今後ともこういう問題が継続しておるのかどうか。日本は寸土といえどもほしい現状におきまして、しかも幾多の苦難を経て、幾多の危険を冒して、そうしてかりに南極において日本の名を冠するような島を発見した場合において、この条約に基くというと放棄しなければならないのか。この点をお伺いすると同時に、こういう条約は改訂してしかるべきであると思いますが、総理大臣のお考えはいかがでございますか。
  195. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今おあげになりましたサンフランシスコ条約の規定は、この条約にわれわれが署名するまでの間、それ前においてそういうものがあったとすれば、それを一切放棄するというので、将来における日本人の活動なり努力というものをそれで制約しているものとは解釈いたしておりません。
  196. 千田正

    ○千田正君 ここに一つの私は世にも不思議な物語ということがありますが、まことに不思議な陳情書を受け取っております。それは昭和二十四年九月に、当時北海道に駐屯しておりましたアメリカの駐留軍の情報部から、ソ連側に行ってスパイをするようにという半ば命令的な、半ば話し合いというようなことで、当時の日魯漁業の第十一あけぼの丸という船によってソ連側に密航した——密航する途中においてアメリカから借りたところのゴム・ボートがパンクして遂にソ連監視船のもとに発見されて、機関士はそこで銃殺された、あとの五名の者はソ連地域に拉致されて二十年の刑期を受け、七年半の収容生活を送って、先般最終の帰還船で帰ってきた。当時の約束によるというと、留守家族に対しては十分に金を与えるから心配ない、こういう約束で行ったのにもかかわらず、帰ってきてみたところが、十分なる生活もできない状況、七年半の獄中におけるところの精神的苦痛というものは耐えられない、それでどうかしてアメリカ側にこの問題を交渉して、何らかの道義的慰謝料なり、あるいは見舞金、こういうものを考えてもらえぬかということを言ったところが、アメリカ側からは、この第十一あけぼの丸、美幸丸のこの船員に対しての問題は、日本政府話し合いの上にすでに解決済みである、であるからわれわれはお前たちには一文も払うわけにはいかぬのだ、こういう答えを得て、まことに遺憾である。しかも、昭和二十四年というときは、当時の駐留軍のいわゆるわれわれ戦敗国としてほとんど何事も言えない状況のもとにソ連のスパイを命ぜられ、もしこれを他人に口外するよりな場合においては、君の生命は危ないぞというような半ば強制的な立場のもとに追いやられて、そうしてつかまって刑を受けて帰ってきた者が、家族も食うや食わずの状況である、こういう問題に対しては、私は法の問題を研究する必要はあると同時に、また道義的な国際信義に基いて、こういう問題を解決する方法がないのか日本の外務省当局はもう少し誠心誠意にこういう問題についても交渉するべきではないかと思いますが、外務大臣を兼任しておられますところの総理の御見解はいかがでございますか。
  197. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その問題に関しましては、一昨年の暮れに利害関係人からの要請がございまして、米軍側と非公式に外務省としては話し合いをしたのであります。ところが、当時のことが文書その他になっているわけではございませんで、きわめて内容がはっきりしない。米軍側としては、本件についてある程度の金を家族等に手渡したということを申しておりまして、何分にも内容がはっきりしない面がありますし、また、外務省として正式に交渉するという性質のものでもございませんので、一応われわれの方の非公式の話し合いの結果、米軍側としては家族に相当な、ある程度のことをしてあるという言明を得たにとどまっておりまして、それ以上のことは政府はしておらないのでございます。
  198. 千田正

    ○千田正君 これは当時の占領されておったときの日本の国民感情からして、しかも、そのときいろいろなことを言われておるわけであります。日本は将来アメリカのためにお前たちはやらなくちゃならないのだ、当然それは日本の義務なんだからお前たちは行けと、いうようなそういう約束のもとに行って、実際は約束が実行されておらない、こういう問題はやはり外務省でもう少し慎重に取り上げて御研究なされて交渉する余裕があるならば、一応やはりこの問題につきましても、正式な機関にかけなくとも、そうした人たちのために、一応考えてみる必要があると思いますので、これは大臣としましてももう一度御研究願いたいと思います。  もう一つは、第三繁栄丸、これは昭和三十年の七月二十二日ですが、セレベス島の東北線上におきましてマグロを操業しておりますときに、いわゆるインドネシアの男が七名遭難しておるのを見つけて救助しておる。そうしてこれをどうしようかと、外務省に向って室戸の無線局を通じまして、人命救助をした、シャウ島へ緊急入港いたしたいと思うが、手続をとられたいということを打電いたしましたのに対しまして、二十三日、外務省は、シャウ島入港差しつかえなしという電報を打っておるのであります。そこで、この第三繁栄丸は、遭難者七名を連れて、乗船させて、シャウ島ウル港に入港いたしましたところが、理由のいかんを問わずに直ちに監禁され、抑留された。そして翌三十日は港に回航せしめられて、八月二十三日に至るまで、約三十日間不当抑留をされておる。国際信義上から、他国の国民が死に瀕しておるような遭難者を救って、しかも、それをその祖国に送り届けたというものに対しまして、不法に監禁するというようなことは、これは国際信義上許すべからざる問題であると同時に、外務省としても強くこれはインドネシアの政府にかけ合うべき問題である。この一年半を経ました今日においても何らの解決の方法を見出しておらない。しかもこれを、どこに入ったらいいかという電報に対して、外務省はおそらくインドネシア政府との相談の上に打った電報だろうと思いますが、シャウ島に回航して差しつかえないという返電を打っておって、その指令のもとにこの漁船が行ったのにかかわらず、ついに監禁されておる。いわゆる恩をあだによって報ぜられているということに対しては、これは将来とも日本の自主独立の外交の立場からも強く要求すべき問題である。損害の賠償をこれは要求しておりまするが、こうした問題についての要求はあくまで強く要求すべき問題ではないかと思いまするが、これは総理はいかがお考えになりますか。
  199. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御指摘のごとく、この事件はきわめて遺憾のきわみでありまして、外務省としましても十分当時の事情を明確にして、そしてこれに対する救済の方法を交渉いたしております。今までまだ解決しておらないことは非常に遺憾でありますから、今後といえどもできるだけ早く解決するように努力いたしたいと考えます。
  200. 千田正

    ○千田正君 これは、この船主の人たちは、中小漁業者のために非常に苦しんでおるのでありまして、それで、国内的に、それが賠償が当然取れるという性質のものであったなら、国内的に何とか方法を講ずるべき問題じゃないかと思いますが、その問題は何ら解決しておらないようでありますが、農林省あるいは水産庁あるいは何らかの方法において、この問題を解決すべきであると思いますが、いかがでありますか。
  201. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 何分にも今交渉中でございまして、私どもは、当然これは対してはインドネシアとして相当な補償をすべきものであると、こう考えて交渉いたしておりますが、まだ相手国がその義務があることも承認をいたさないという状況でございます。従って、政府としてその取れる補償の内払いとか、前払いとかという意味で国内で処置することはできませんけれども、その業者が非常に困っておる二とに対しては、水産庁、農林省等と相談をいたしまして、融資なり何かの方法で適当に救済するようにいたしたいと思います。
  202. 千田正

    ○千田正君 インドネシアの賠償問題とからんで解決せられるようなことであっては、非常にこれは問題の性質が違うのでありますから、そういうことのないように、できるだけ強く主張して、一日も早く解決されるよう要望いたします。  最後に、時間もありませんが、ただ一点だけ池田大蔵大臣にお伺いしておきたい。池田大蔵大臣は、いろいろ今度の予算の御説明によって、まことに景気のいいお話をしておられますが、その点で、私はただ一点だけ非常に杞憂を持つ点があるのであります。それは、この外国貿易の国際収支バランスが非常に順調に進んでいくと、二月の十一日ですかの記者会見で蔵相は、三十二年度の輸出が計画通り二十八億ドルになるかどうかを疑う人が多いけれども、二十八億ドルになるのではなくて二十八億ドルにするのだ、世界貿易の伸びは年々八%程度だが、日本の輸出は二割、三割と伸びているから、三十二年度の輸出を二二%の二十八億ドルに見込んだのは不適当な数字ではないということを御発表になっておるようでありますが、私はこれは非常に甘いお考えじゃないかと思う、こう思うのであります。というのは、まことにそういうふうにとんとん拍子にいけばけっこうでありますけれども、これは国外の事情はそう簡単ではない。外貨の手持があるから、それで安心して三十二年度も十分やれるのじゃないかというお考えもお持ちかもしれませんが、最近のアメリカの日本に対するところのいわゆる輸出制限に対する幾多の問題が起きております。御承知通り綿輸出の問題その他幾多の問題が次から次へと、アメリカの国会には日本の輸出を阻止するようないわゆる制限措置法が次々と提出されておる。それで、従来、輸出の大宗でありましたアメリカの市場というものは決して先行きは安心できないのじゃないか。もう一つは、最近の三十一年度の状況を見ましても、アジア大陸、そしてアフリカに非常に輸出のマーケットは伸びておりますけれども、この辺としましても、向う様の外貨手持ちが必ずしも十分じゃない、そこで、支払い決算におきまして、決してわれわれが要望しておるような簡単なうまい工合にいくかどうかということは、これはどうもそうも思われない。あるいは国内におけるところの市場等におきましてもいろいろな問題があります。時間がありませんからあまり詳しくはお尋ねしませんけれども、いろいろな山積しておるところの国際あるいは国内の事情によって、蔵相がお考えになっておるような輸出貿易が相当上昇していくのじゃないかという考えは、私はどうも杞憂であるかもしれませんが、そう確信ができないのでありますが、もしも確信ができるような何か蔵相において方針があるとするならば、この際、一応お示しを願いたいと思うのであります。
  203. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げまするが、輸出並びに輸入につきましては、輸出はできるだけ伸ばしていこうと、こういうのでございまして、これを二十八億やるんだということは、決心のほどを言っておる。安易な気持で言っておる表現ではないので、どうしてもこれだけやらなければいけない、そうしてまた輸入の三十二億ドルもできるだけこの程度でとどめたい、こういうのでございまして、決して安易には考えておりません。ただ、世界の貿易が今後やっぱり全体として伸びていきます。大体八%くらい全体として伸びると見込まれておるのでありまするが、われわれは日本の置かれた事情によりまして、世界の貿易が八%伸びる場合においては、日本は少くとも輸出において一三%伸ばそう、こういう努力目標で、私はまたそれが達成できる、それには国内の生産を伸ばし物価を安定させることが必要であることは当然であるのであります。で、過去の実績から見まして、またわれわれの努力次第により、そうしてかつ、輸出振興に対しましての特別措置は依然として置いております。とにかく二十八億ドルの輸出はぜひともやるのだという決心でもって進んで参っておるわけであります。
  204. 千田正

    ○千田正君 最後に一点。これはただいま大蔵大臣の非常な御決心を披瀝されまして、その通り行けばわが日本の財政も万々歳でありますが、ただいろいろなネックがある。特にガットに新加入いたしましたが、そのガットに加入した後における実際の仕事に対しては、日本はある程度マークされておる。これは現実じゃないかと思います。そしてそれがやはり日本の貿易というものに一つのブレーキをかけておられるようにわれわれは考えられる。この点につきましては、外務大臣として、あるいは大蔵大臣も御存じかもしれませんが、このガット加入の実績を実際にほかの国と同等にフル・パワーを動かせるという見通しがあるのかどうか。この点ともう一つは、最近アメリカ側は、日本側の貿易の状況を見ると年々中共及びソ連、アジア地域におけるところの市場の開拓をしておる。これに対してかどうかしれませんけれども、世界政策の一環としましてココムに対するところの新しい制限をさらに強化しよう、各国のこれに対するところの協力を要請しておるということを、われわれはアメリカの新聞なり雑誌で見ておりますが、ココムに対するところの強力な一応の制限を加えるということになると、せっかくある程度軌道に乗ってきましたところのアジアの貿易、あるいはソ連と条約締結後におけるところの貿易、中共との貿易等に一応の抑制されるところの政策が行われるのじゃないか。現実にアメリカ側の意向のもとに動いておるところの日本の現在といたしましては、ある程度の抑制が加わってくるのではないか。そうしますというと、ただいまの大蔵大臣のおっしゃるような二十八億ドルまでの躍進的な日本の貿易というものは、決して楽観ができないと私は考えますが、総理大臣としまして、ただいまのガットの問題並びにココム制度に対するお考えを一応承わっておきたいと思います。
  205. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の輸出貿易を伸ばす上におきまして、ガットのいわゆる三十五条の運用の問題もありますし、またココムの制限の問題もございます。私どもは、できるだけガットに加入した利益を百パーセントに享受できるように、あらゆる機会に努力をいたしたいと思っております。またココムの制限の問題に関しまして、アメリカ側から非公式にこれを一そう強化したいというような意向で、わが方の意向を非公式に打診して参っております。これはわが国だけでなしに、ココムに加入しておる諸国に対してもやっておるわけであります。私ども諸国の動向等も十分観察をしておりますし、日本としては、従来ココムの制限の緩和の方向にアメリカ側とも折衝をし、努力をして参っております。従いまして、アメリカのその非公式なる意向打診につきましては、わが方としては、これを受け入れるという考えはございません。なお、日本だけでなしに、これに参加しておる他の自由主義諸国とも連絡をとりまして、この問題に関しては、われわれは緩和の方向に向って今後とも努力を続けていきたい、かように考えております。
  206. 千田正

    ○千田正君 私の質問を終ります。
  207. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 本日は、これをもって散会いたします。    午後六時三十二分散会