運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-04 第26回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月四日(月曜日)    午後一時二十三分開会   —————————————   委員異動 二月八日委員佐野廣辞任につき、そ の補欠として高野一夫君を議長におい て指名した。 二月十八日委員松村秀逸辞任につ き、その補欠として土田國太郎君を議 長において指名した。 二月二十一日委員永岡光治辞任につ き、その補欠として湯山勇君を議長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     苫米地義三君    理事            迫水 久常君            左藤 義詮君            堀木 鎌三君            安井  謙君            吉田 萬次君            天田 勝正君            吉田 法晴君            森 八三一君    委員            石坂 豊一君            木村篤太郎君            小林 武治君            小山邦太郎君            新谷寅三郎君            関根 久藏君            高野 一夫君            高橋進太郎君            土田國太郎君            苫米地英俊君            林田 正治君            一松 定吉君            前田佳都男君            曾祢  益君            中村 正雄君            湯山  勇君            加賀山之雄君            千田  正君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告   —————————————
  2. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告申し上げます。二月八日に佐野廣君、二月十八日に松村秀逸君、二月二十一日に永岡光治君が辞任されまして、その補欠として高野一夫君、土田國太郎君、湯山勇君がそれぞれ指名されました。  以上御報告申し上げます。   —————————————
  3. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) これより派遣委員報告を議題といたします。先般実施いたしました委員派遣につきまして第一班から順次御報告をお願いいたします。第一班は吉田法晴君。
  4. 吉田法晴

    吉田法晴君 第一班は苫米地義三君と私と大阪鳥取島根の一府二県を回ったのでありますが、二月十日東京を出発し、一週間にわたって大阪鳥取島根の順で、これら各府県の一般経済事情地方財政状況総合開発計画進捗状況、新農村建設の現況、防衛施設状況等について調査を行いました。  この間大阪府庁鳥取島根の両県庁を初め、鳥取、倉吉、米子境港等の各市役所、日銀大阪支店造幣局等において資料の提供を受け、かつ現地実情について詳細な説明を聞き、また日本パルプ米子工場境港港湾施設中海及び宍道湖の各干拓現場美保米軍自衛隊の両基地、大東町の新農村建設地域等を視察いたしました。  このほか大阪では同地経済的重要性にかんがみ、大阪商工会議所において杉会頭を初め関西財界人十八名との懇談会を開き、また、鳥取及び島根両県では美保基地拡張問題について、直接の利害関係を持つ多数の県民に面接をいたしまして陳情を聞くなど、でき得る限り現地の声を直接聴取することに努めた次第でございます。  以下右調査の結果を御報告申し上げます。  第一に、大阪府の経済概況でありますが、昭和三十年における大阪府の工業生産額は、全国の約一三%を占めており、昭和十年の統計では、大阪府の全国に占める割合は十六・二%であった点と比較いたしますと、戦後若干その地位は低下いたしておりますが、わが国経済の占める地位の重要なことについては大体変りはございません。ただその産業構造特徴は、繊維、雑貨、小物機械等中心で、中小企業が多く、大企業、ことに近代的な大企業が比較的少いことであります。  一般経済状況について、日銀大阪支店で聴取いたしましたところによりますと、総じて各産業とも業績良好で、法人税納付状況もきわめて好調でありました。また設備拡張が盛んで、繊維工業でも盛んに紡機の増設が行われ、綿紡は九百万錘を突破するに至っておりました。そして昨年暮あたりから好況の波が漸次大阪中小企業にも浸透してきたもののようで、三十一年中の日銀券増発高は、千百十億円のうち、大阪増発高は二百二十六億円となっており、全体の二〇・四%に当っておりますが、昨年末二十九、三十日と押し迫っての予想外に多くの日銀券が出ましたのは、中小企業好況に伴う資金需要増大によるものと思われます。好況に伴い、銀行貸し出しは急激に増加し、大阪社員銀行の三十一年中の貸出増加額は、実に千九百十億円に上りました。三十年は四百二十億円でありました、反面、貯蓄もまた順調で、実質預金増加額は三十年の八百三十六億円に対しまして、三十一年は千百五十一億円に上ったのであります。しかしながら三十年は実質預金増加貸し出し増加をはるかに上回りました。三十一年は逆に貸し出し増加実質預金増加をはるかに上回りました。このように預金貸し出しとの関係について問題がありますが、しかし消費性向は、今のところ何ら変化は認められない。問題は今後物価がどのような動向をたどるかにあるのでありまして、物価が上れば、消費性向が強まるばかりではなく、大阪は特に貿易に依存し、輸出の本場でありますから、物価動向には最も関心が強いということでありました。  昭和三十二年度予算について、大阪商工会議所が、大阪財界意見をとりまとめたところによりますと、放慢政策は、いたずらに国民インフレ心理をあおり、ひいては景気調整に努力しておる世界各国動向から乖離して、物価の高騰から輸出の不振を招き、日本経済を危殆に瀕せしめる懸念すらないとしないので、あくまでも健全財政を堅持し、いわゆる積極政策は、あくまでも財政健全性をそこなわない範囲内においてのみ遂行されなければならないとして、財政健全性確保の必要を最も強調せられておりました。  大阪商工会議所における、われわれと財界人との懇談会の席上では、主として税制改正中小企業中共貿易等の諸問題が話題に上ったのでありますが、税制改正については、特に印紙税改正が問題とせられ、大阪綿糸商協会がまとめた綿糸商五十八社についての調査によりますと、現行法による印紙税額七百九十四万円に対して、改正案によると、税額は約二十倍の一億六千百万円にも上る。今回の印紙税の増徴は、きわめてマージンの少い綿糸商に、過重な負担を負わせ、負担公平化の趣旨にも、商社強化の方針にも、全く相反するものであるとして、印紙税改正案反対現状維持要望が強く述べられたのであります。  次に、中小企業の問題については、いわゆる神武景気にかかわらず、中小企業の中には、好況の恵みに浴していないものが相当多い。中小企業対策はかけ声ばかりではなく、これだけは必ず実現してみせるという具体的な対策を示してほしい。金融税制上の措置はもちろん必要であるが、大企業との間に公正な取引が行われないという力の関係を是正するためには、中小企業組織法案団体交渉権期待をかけている。一口中小企業といっても、その幅はきわめて広いので、中小企業零細企業とを分けて対策を考える必要がある等々の意見が述べられました。中共貿易については、土地柄その拡大を切望しておったのであります。特免を拡大すべきことはもちろん、現在の個別バーター制では行きづまりつつあるので、総合バーー制に改めるよう努力してもらいたいという要望がございました。  大阪鳥取島根各県の財政状況の詳細につきましては、報告書に別に譲ることといたしまして、ここではまず簡単に結論だけを申し上げますと、大阪府の財政は、三十年度決算におきまして、十二億円の黒字、本三十一年度の現計予算は、歳入歳出とも三百三十一億円で、今後年度末に若干追加すべき経費がございますが、他方租税収入において、一般経済界好況影響によって、相当伸び期待されますので、収支の均衡は確保できる見通しであります。大阪府は東京都とともに、他府県に見られない大都市特有の特殊な財政需要があり、かつ警察の移管によって、経費増大を来たしておりますが、その財政の強みは、何としても、自主財源たる府税歳入の半分以上を占めている点にあります。  鳥取県及び島根県におきましては、県税収入は、島根県においては、歳入総額のわずか一割、また鳥取県では一割にも達しないということで、しかも農業県であるために、豊凶により租税自然増収が全く期待できず、財政難に苦しんでいる。島根県一億四千万円の赤字を出し、鳥取県は二億六千七百万円の赤字を出しておりますが、それぞれ自主再建によって解消しようとして、必死の努力をいたしております。自主財源たる県税収入が少いので、地方交付税に依存せざるを得ないのでありますが、地方交付税現行配分方法は、鳥取島根等後進県は非常に不利な立場に立たされており、この両県とも、この点是正するよう強く要望いたしております。なお、地方債は、従来財源措置の一手段として、自主財源の少い貧弱県に、かえって多く配分せられたので、元利償還に必要な公債費の累増になやまされて、抜本的な対策を切実に要望しているのであります。  次に、中海宍道湖総合開発計画についてでありますが、鳥取島根両県は、いわゆる後進開発地域であって、その一人当り県民所得全国平均の六割ないし七割程度にすぎません。これら地域において後進性を克服し、経済安定向上をはかるためには、総合開発計画を急速かつ強力に促進し、各種資源を開発して、農林水産業とともに、鉱工業の発展を期する以外にございません。  当地域総合開発は、斐伊川宍道湖中海総合開発専門委員会を設け、鳥取島根両県をはじめ、建設農林、通産、運輸各省出先機関が一体となって、直轄並びに補助による開発調査を進めており、一応三十三年で完了する予定でありますが、その進捗状況は必ずしもはかばかしくなく、今日までの進捗率は、直轄調査事業において二一・二%、補助調査事業において五六・八%、全体としては二七%にすぎない、こういう実情であります。このように計画策定のための調査進捗状況が思わしくなく、特に直轄調査において、きわめて低調であるので、早急に調査を完了し得るよう、国において適切な予算措置をとるよう両県とも切望しておりました。  中海宍道湖総合開発計画概要は、大体次の通りであります。  中海宍道湖干拓計画、これが第一。中海宍道湖の水深は平均四・六メートルであり、オランダ式干拓の最適地と認められ、中海五千町歩宍道湖五千町歩合計一万町歩を干拓し、農地造成による食糧増産をはかろうというのであります。  第二は、中海宍道湖淡水化計画中海宍道湖干拓地以外の水面を淡水化して、干拓地及び中海宍道湖周辺既耕地一万二千町歩灌漑用水に充てるとともに、ウナギ等の養殖、塩害の防止、工業用水としての利用をはかるということであります。  第三は、斐伊川流路変更計画、現在宍道湖に流入している斐伊川流路を変更し、直接日本海に流入せしめ、下流部の災害を防止する。それが第三。  第四は、斐伊川上流の多目的ダム築造計画流出土砂のせきとめ、洪水調節農業用水確保電源開発等のための多目的貯水池群斐伊川上流に構築する。  以上の諸計画案は、工業計画港湾整備計画等を、今後の検討事項として、それらを含んではおりませんが、総事業費約二百五十億円、年間の経済効果は、測定可能な直接効果のみで約二十三億円と見積られております。  本計画案問題点としては、今後解決を要する種々な技術的な問題点のほか、中海における干拓区域をどのように定めるかは、鳥取島根両県の県域に関する重要問題でありますので、当初から最も決定の困難な問題でありましたが、中海干拓地五千町歩のうち、千五百町歩鳥取弓浜半島に沿って設けることにして、一応解決をみておるようである。  鳥取県及び島根県は、右の中海宍道湖総合開発計画を、大山出雲特定地域総合開発計画に追加することを要望しており、むしろ、この中海宍道湖総合開発計画こそ、大山出雲特定地域総合開発計画の根幹となるべきものとして、全体計画を修正することの必要を指摘しております。しかしながら大山出雲特定地域総合開発計画閣議決定を得て実施されてから、すでに四カ年を経過いたしましたが、事業進捗率は、鳥取県、島根県いずれもそれぞれ二八%という低調さであります。従って両県当局としては、特定地域総合開発事業閣議決定事業であるにかかわらず、ほとんど何らの優先性も実益もなく、有名無実化しつつあることを遺憾とし、すみやかにこれが改善方要望しておるのであります。  次は、美保基地拡張問題であります。  鳥取島根両県に共通した当面の重要問題の一つに、美保基地拡張問題があります。鳥取弓浜半島に所在する美保基地は、元日本海軍美保航空隊跡米軍が接収し、初めはもっぱら米空軍基地として運営していたのでありますが、昭和三十年六月以来、航空自衛隊臨時美保派遣隊、これは航空輸送隊でありますが、同基地に駐屯し、共同使用中のものであります。  昨年秋防衛庁は、ここに第五航空団を新設し、F86Fジェット戦闘機五十機を配置したいという希望のもとに、大根島の方向に中海を埋め立てて滑走路を約千メートル延長する計画を発表いたしました。これとほとんど時を同じうして、米軍側もまた航空基地に隣接する通信施設拡張計画し、基地周辺民有地約二百四十町歩立入調査調達庁を通じて要請しておりました。ところが弓浜半島にしろ、中海大根島にしろ、極度に人口稠密耕地過少農漁村でありますから、地元民生活権の擁護を主張して強硬な反対を唱え、調達庁と地元との交渉も現在全く進行しておりません。  われわれは今回の調査中、基地拡張反対する多数の地元民陳情を受けましたが、その反対のおもな理由はおおむね次の通りであります。  第一に、通信施設拡張によって、戦時中ほとんど無償同様に接収されて、さなきだに狭隘を告げていた農地はさらに圧縮され、農家経済は全く破滅に瀕する。またケーブル施設工事のため水利施設が破壊され、約一千町歩耕地が耕作不能となる。  第二に、滑走路中海を埋め立てて延長することは、現在鳥取島根両県で計画中の先ほど申しました中海干拓事業遂行上重大なる支障を来たす。また中海における航行並びに漁撈にはなはだしい制限を受けるばかりでなく、滑走路の突出によって海流に異変を起し、赤潮を生じて魚貝類あるいはモ類を全滅せしめ、中海水産業を破滅させる。さらにまた爆風、爆音並びに航空事故による被害は飛行場至近距離に人家が密集しているために特に甚大で、日常生活はもとより農業生産学校教育にも重大な悪影響を与えるというのであります。  われわれが美保基地を視察した際、派遣隊長から聞いたところによると、経済的、社会的な影響を一切抜きにして、純技術的な観点からみれば、同地は好個の航空基地でありますが、しかしながらその反面まれに見る人口密度の高い、きわめて狭隘な地域に対するジェット戦闘機の配置と、滑走路の延長とが、経済的一社会的に非常な障害を与えることも、また明白である。反対の最も強いのは言うまでもなく、通信施設拡張によって農地を買収される当該施設付近農村と、ジェット戦闘機の直下にさらされる飛行場周辺の大篠津町及び大根島中心とする基地周辺一帯地域でありますが、しかし美保基地拡張は高坂、島根県民がその実現に最も期待をかけております中海宍道湖総合開発計画に重大な支障を来たすおそれがあるという点において、この問題に対する関心がきわめて広範にわたり、ほとんど全県的規模において反対運動が展開されている現状であります。  以上簡単でございますが、御報告いたします。
  5. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 第二班、林田正治君。
  6. 林田正治

    林田正治君 第二班は海野議員及び私が福島宮城岩手三県を視察いたしたのでありまするが、その概要をこれから申し述べたいと存じます。  福島宮城岩手の三県は、一口東北といっておりましても、おのおの事情を異にいたしており、すなわち福島県は農業人口は約五二%でありますが、第二次、第三次産業がこれに次ぎ、後進東北の中では最も進んだ工業県であります。また宮城県は農業人口六〇%、大工場らしいものはほとんどないのであります。ただ仙台という東北商業圏中心地があって、第三次産業が比較的率が高い。岩手県は農業人口七〇%に近く、農業以外には第三次産業、第二次産業の順序になっており、いわゆる東北地方においても最も後進性の強い県であると思います。このようにその県によって産業構造はおのおの異なっておりまするが、いずれにいたしましても農業人口はその過半数を占め、国民所得の三六%は農林水産業であるので、地域により若干の差はあっても、この動き東北経済動きのもとになるわけであって、しこうして昨年もこの部門割合に明るかったために、一般産業といたしましては、一部に問題はありましたが、全体としては明るくなっているように見られたのであります。  まず、農業の面から申しまするならば、本年の東北の稲作は全国で最もよく、作況の指数で見ても全国平均の一 ○四%に対して、東北では一二一%となっており、東北六県の三十一年度推定実収高も千五百八万六千四百石となって、これはまさに二年続きの大豊作であります。しかし表日本福島宮城岩手等の各県は脱穀調整期に天候不順に見舞われましたるために売り渡しは相当おくれ、これがいわゆる早場格差金の流入を前年よりも約一〇%も減少せしめたと言われているのであります。農家経済は悪くはなく、信連の預金は六県合計ではありまするが、前年よりも二十億円ふえて、貸し出しは逆に四億円少くなっているのであります。しかしこういう二年続き豊作の中にあって見のがすことのできないのは、農民間の貧富の差がますます大きくなる傾向であって、家族一人当りの粗収入が十万円にも達しない零細農消費水準の上昇に追いつけず、土地を手離す者もある反面、上層農は新しい農機具を買い入れて生産力を高めたり、土地をさらに買い集めているというような現象が現われているのであります。  次に、水産業の面に目を転じますると、東北水産界春ニシンサンマ不漁のためやや沈滞気分でありました。サンマのごときは東北十五港の合計で四千四百六十万貫で昨年の半分にとどまり、東北水産界に大きな打撃を与えたようであるが、水揚高の不振のかわりに、幸いに漁価相当高かったので、金額としては昨年よりやや多く、この点では明るいといってよかろうと思います。またこの不漁影響は、肥料業界にも及び、例年一千万貫以上魚を処理するために設備その他の更新、拡充を行なったところ、今年は一昨年の二一%しか処理できず、業者の大半は設備資金の金利に苦しんでおるという状態であります。  次は、鉱工業、いわゆるマイニングでありますが、東北鉱工業全国的好況の余波と輸出の好調によりまして、業種を問わず、全般的に好況に恵まれ、これを仙台通産局調査によりまするというと、鉱工業生産指数は二十四年を一〇〇として三十年が二一八、三十一年は二五四%というように二八%も上回っており、これを全国平均の二一%に比べますると、多少は落ちまするが、大体において活況を呈しておると言っても差しつかえないと思います。特にここに注意すべきは、二十八年、九年の両年の間その不況に呻吟しておったところの常磐地区石炭業が市況の好調と低品位石炭の活用の見通しによりまして石炭ブームと言われるような二十六年、二十七年に近い好況を続けておる事実であってしこうしてこの部門でも他の部門と同じく中小企業零細企業は相変らず原料高製品安に苦しんでおるとのことで、大企業中小企業との差がますます大きくなりつつある現象を見るのであります。また鉱工業生産好調の一因となった輸出も昨年に比べますると、約七%も増加いたしておるのであります。  次に、電力の問題でありまするが、このように、今申し述べましたような鉱工業生産の著るしい伸びもその動力源であるところの電力の面からは相当大きな制約を受けておるのであって、すなわち東北電源開発は最近の好況によるところの電力消費量伸びに追い付かず、三十二年度には十三億キロワット・アワー不足する見込みである。この需用伸びに加えて昨年来異常渇水に見舞われて出水率は十二月が九五・二%、一月に入ってはさらに渇水が著るしくなって八〇%台にまで落ちたのであります。そのためほかの電力からの、他の会社からの電力の融通を受けるほか、一月十七日から週一回休電、大口需用の三割制限という三、四年来見られなかったような強力な法的制限が行われておったのであります。  次に、結局こういうような電力の隘路のために輸送の方面にも大きな影響を受けて、例年でありまするならば滞貨は夏には減り、冬がふえるのが普通であるのに、昨年は夏から滞貨がふえて、国鉄はその目標を八万トンもこえるような輸送実績を示したにもかかわらず、滞貨は七月までに前年度に比べまして五割もふえておるのであります。二月の十日現在で滞貨は盛岡、秋田、仙台監理局合計で四十二万トンにも相なって、その滞貨の量は例年の四倍ないし五倍というような状態である。これらの問題は直接的には産業界活況とあるいは大雪等に原因がありましょうけれども、根本的には鉄道の複線化、あるいは電化、貨車操作場の能力の拡充というような根本的の解決をはからなければこの滞貨解決はできないじゃないかというように相なっておるのであります。  次に、東北商況の概観を申し上げまするならば、東北商況は先ほど申し上げました産業界好況豊作影響を受けて一般には昨年よりも好況を呈したのでありますが、その背景により非常に厚薄の差がはなはだしいのであって、すなわち福島市、石巻市の売上高のことときは昨年の四割増しと言われておるに反して、サンマ不漁に大打撃を受けましたるところの塩釜、気仙沼あるいは岩手県の南部海岸の諸都市のごときは売り上げが前年の二割減に相なっておるのであります。昨年の東北景気の性格は米景気というより産業界全国的好況に負うているものと言うことができます。従って全般的に見て都市景気がいいようでありまするけれども、農村は凡調であるといって差しつかえないと思います。  次に、労働の問題について若干申し述べてみたいと思います。好況の波のおそい東北でも、労働雇用状況の緩和がやや見られてきたようであります。すなわちこれを東北労働指標で見ますると、新規求人の数は三十一年にいって五百人ないし三千人を上回り続けておるのに、求職者の数はむしろ減って参っておるのであって、また解雇者数も各月とも前年の同期を千人前後下回っておるのであって、賃金の不払いというような現象もだんだん減って参っておるのであります。このような労働事情の好転も、全国のそれにははるかに及ばないのでありましょうけれども、しかしながら後進東北にもやはり経済好況影響がここに及んだものといっても差しつかえないと思います。  次に、金融の面について申し述べまするならば、金融の面に見られるところの特徴は、中央がやや金詰まり傾向にある今日、東北におきましてはまだまだそういうような状況に至らずして、むしろ緩慢なる状態にあって、中央とは相当に時期的なずれが見られるのであります。すなわち預金は本年度東北地方の全金融機関貯蓄目標は、前年度より五十一億円、増しの四百五十五億円と定められておったのが、年度の内第三・四半期までの増加実績はすでに六百五億円に上り、前年同期の増加額五百四十億円を大きく上回って、達成率におきましても、有史以来の成績であるといっていいような状態であるのであって、一方貸し出しの面におきましても旺盛なるところの資金需要を反映して、十一月までは増勢を続けたのであるが、十二月に入ってからは目立った繁忙を呈せず、単位農協を除く十二月の預貸率は前年同月の八〇・三%を下回って七八・二%にとどまったのであります。手形交換の高は枚数、金額ともに前年度を大きく上回っておるのでありまするが、不渡り手形の交換高に対するところの割合は大きくまたこれも下回っておる。一枚当りの金額は小口化し、零細企業におけるところの資金繰りの窮屈さをこの点では物語っておると思ったのであります。  次に、地方財政の点について申し述べたいと思いますが、東北地方における地方公共団体の財政も、三十年度、三十一年度におけるところの国の地方財政に対する特別措置と、地方公共団体の積極的なるところの努力及び一般経済界好況を反映しての税収入の増加によって全般的に好転して参り、赤字増加はようやくとどまり財政の再建が軌道に乗りつつあるものと思われるのであります。しかしながら反面赤字団体は、税収が少い上に税収の七〇ないし八〇%を占むるところの公債費の処理に頭を悩しておるのが現状であります。これを福島県、宮城県、岩手県の県財政で見てみますると、すなわち福島県は三十年度赤字二十一億四百万円を再建債の借り入れにより、十カ年計画により再建せんとするものであります。再建の年次計画に従えば、三十一年度末が五千九百万円の赤字にとどまる予定になっておるが、冷害、水害、公債費等の増加のために税収の自然増にもかかわらず、決算見込みは一億七千万円の赤字と予想されるのであります。そこでこの一億一千百万円の狂いが生じたのでありますが、三十一年度補正予算が成立すれば、計画通りにいく予定であるとのことであったのであります。また地方債の現在額は、三十一年度財政規模の半分に近い七十一億円に達し、公債費は八億八千百万円で、起債額が二十八億八百万円であるから、再建債分を除いた新規起債額よりも返済額の方が多いわけに相なるのであって、また県税収入は二十億円であるからして、借金の利払いに約半分持っていかれるというような勘定に相なるのであります。  次に宮城県の財政を見てみると、同県は三十年度末十三億六千九百万円の赤字を再建債の借り入れによって、九カ年計画で再建しようといたしておるのでありますが、再建の年次計画に従えば、三十一年度赤字は千五百万円にとどまる見込みであったのが、決算見込みは逆に二千九百万円の黒字が予想されておるのであります。また地方債の現在額は三十一年度で七十二億円で、財政規模百三十五億円の半ばをこえておるし、公債費県税収入の六割に及んでおるのであります。  次の岩手県は三十年度末の赤字は三億二千六百万円で、これを五カ年計画で再建しようといたしておるのであります。三十一年度末の収支は当初計画によれば、三千五百万円の赤字の見込みであったものが、赤字が大体出ない見通しであるのであります。公債費は三十一年度には六億八千万円であって、県税収入の十一億八千万円に対しましてその半ばをこえておるのであります。このように東北の各県は、公債費負担にあえいでいるのであって、東北地方後進性を脱却するためには、どうしても開発を進めなければならないが、同時に開発を進めるには、県税収入が少ないので、勢い起債に頼るほかは道がない、この公債費財政の一番の圧迫となっておることは先ほど申した通りであります。そこで昨年から行われておるところの交付税の投資補正をさらに強化し、一歩を進めて地方債の元利補給の問題はこれは慎重に検討を要する問題であると考えておるのであります。  次に、開発計画進捗状況について申し上げてみたいと思いますが、東北地方は面積も広く、天然資源も多いので、開発は国民経済の要請にもひとしいと言っても差しつかえないのであります。しかして東北全体を通じて、県民の所得の水準も全国平均の七〇%というような低い状態を脱却するためには、どうしてもこの開発が必要であると言わざるを得ないのであります。すなわち福島県では具体的にこの例を申すならば、福島県では、鮫川総合開発と、只見特定地域総合開発の二つが現在行われておりまするが、前者は常磐炭田、小名浜港を中心として第二の京浜地帯を作るところの計画であるが、工業用水道の事業、小名浜港の浚渫の事業がまだ残されておるのでありまして、また只見地区はすでに国土総合開発法に基くところの指定を受けて、三十一年度より十カ年で完成される計画であるが、電源開発と鉄道を除きましては、その進捗率は遺憾ながらわずか一〇%以下の状態であります。  宮城県においては北上地区、三陸地区、仙塩地区、仙南地域の四カ所でありますが、特に特定地域総合開発として指定されましたる事業は北上地区だけであり、三陸、仙南地区はいずれも県の現在のところ単独事業であり、仙塩地区は調査の段階にあるような状態であります。また北上総合開発は、岩手県と両方にまたがるものであり、この宮城県分は発電所建設中心としたところの公企業的なB種公共事業は二七%に進んでいるが、一般のA種公共事業、国土保全、交通施設の方面はまだ二五%であるというように両方の間には多少の差があるのであります。  岩手県におきましては、前述の北上川を中心としたところの北上特定地域総合開発と北上山脈の東部を中心としたところの北奥羽地域総合開発の二カ所の計画がありまするが、指定を受けた事業は北上地区だけであって、この進捗率は十カ年計画の期間をすでに四カ年経過したにもかかわらず、三十一年度ではまだまだ二〇%であって非常におくれておるのであります。  また北奥羽地域総合開発計画は指定を受けていないため、県単独事業として進められており、全体計画の一六%程度しか進んでいないのであり、北上特定地域総合開発全国第一号として指定されただけあって、その必要度は現地を見てひとしく痛感いたしたところであります。北上川をはさんで一奥羽、北上の両山脈があり、一ノ関付近において急に川幅がせまくなり、雨量が少し多いとたちまち洪水となる地形ができているのであって、この治水と利水をかねるところの事業はほんとうにわれわれは現地を見ましたる場合において、絶対にその必要を痛感いたしたのであります。  このように開発計画がおくれておるのは、国家財政の緊縮政策に災いされたことも事実であるが、また県の財政赤字であり、再建団体に指定されたるために事業制限を受けておることにも大きな原因があると言わなければなりません。いずれにいたしましても、後進地開発のため必要な事業につきましては、赤字団体であっても、この事業制限をはずすことが必要であり、さらには指定事業に対するところの補助率も北海道並みに引き上げる必要があると私たちは痛感いたしたのであります。  次に、最後にこういうような見地からいたしまして、現地の方々が要望されたるところの問題を結論として申し述べます。  全部の要望事項を申し述べることと、とうていこれは許さないのでありまして、ここではその大きなる問題だけを申し述べておきたいと思いまするが、第一は、東北開発促進法の制定であります。赤字財政現状と、開発の促進に関連して、どうしてもこの特定地域として指定を受けた事業については、補助率を北海道並みに上げること、第二は、交付税率を二八・〇五%に引き上げること。公債費が多く、自己財源が乏しい現状では、これよりほかには道がないのであって、第三は、二月初めに、岩手県の三陸沿岸を襲いましたるところの暴風浪の災害対策であります。これは漁港施設と漁業施設に約一億一千万円の災害を受けたものであって、これに対するところの救済を要望されたのであります。第四は、駐留軍の離職者の対策であります。仙台におけるところの駐留軍労務者は、昨年初めから千八百名の解雇を見たのであるが、現在なお三千六百名の労務者がおりまするが、しかし近く予想されるところの米軍引揚が実現されるならば、その被解雇者が、さらに多くの数に上ることは、これは見えすいた現象でありまするが、これに対して、これを吸収し得るところの産業に乏しい宮城県といたしましては、非常に困ったる現象であって、これによって社会不安を生ずるおそれがあるので、これは何とか国家におきましても、相当措置を講じてもらいたいということでありました。第五は、東北の横断鉄道と道路の開設であります。東北の鉄道は、東北中央をつなぐところの縦断鉄道が割合に便利に発達しておるけれども、表と裏をつなぐところの横断鉄道は、未発達、不便であり、これが東北の開発を非常におくらかしておるといっても差しつかえないのであります。道路もまた同様であります。岩手県の釜石港と花巻を結ぶところの道路のごとき、冬季は途絶し、鉄道以外にたよるものがないのである。これではせっかく世界三大漁場の一つであるところの三陸漁場をもっていても、消費地に直送の便がないために、非常な不経済になっておるのであります。われわれは現地において、今計画されておとるころの仙人墜導の開さくにより釜石と花巻を結ぶところの道路の開設の悲痛な願いを聞いて、さっそく実現の必要を痛感いたしたのであります。  以上の五項目は、最も切実なるところの要求であり、慎重にこれが対策を検討し、財政の許す限度において、その実現を努力すべきものであると、感じたのであります。  以上で大体われわれの視察の状況報告を終りまするが、要するに、東北におきましては、この神武以来の景気といいながらも、まだまだその浸透の度合は、都市農村とによっての差が見られ、産業にあっても、大企業零細企業、富農と貧農との差、そういうような事実が認められておるのでありまして、どうしてもこういうような観点からいたしましても、東北の開発の急務なることを痛感いたしたのであります。
  7. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 第三班、小山邦太郎君。
  8. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 御報告いたします。第三班は、野本品吉君と小山邦太郎の二名で、二月の十三日から十八日の六日間にわたりまして、富山県及び福井県における産業経済並びに財政、公共事業及び電源開発等の実況を調査いたして参りました。以下その概要を御報告申し上げます。  産業経済実情につきまして申し上げますると、富山県は、その人口百万のうち、約四十万が農家で、米の収穫高は、昭和三十一年度において百七十万石、そのうち百万石近くが供出されておるのであります。工業は、電力と水に恵まれまして、金属工業、化学工業が発達いたし、化学工業では、カーバイト、硫安、石灰窒素、苛性ソーダ、化学薬品等が盛んなものでありまして、金属工業では電気銑鉄、合金鉄が全国の二〇%から三〇%の間が生産されておる次第でございます。繊維工業では、紡績、スフ紡績が盛んで、特に綿紡績は、総錘数が五十九万錘に達しておりまして、全国で第五位と相なっております。機械器具工業では、軸受、工具等の精密工業が発達しており、また紙パルプ、人絹パルプ等のパルプ工業の発達も見るべきものがございます。  福井県の人口は約七十五万で、その四割に当る二十九万が農村であります。この県は湿地帯が多く、米の収穫高は百十一万石と称せられております。また絹、人絹織物工業の主要地といたして、その工場数は実に二千七百の多きに達し、これは全国工場に比較いたしまするならば、その比率は、まさに一割二分に相当いたしております。設備台数は六万二千台で、これまた全国の二割八分を占めておる規模でございます。昭和三十年の織物生産高は四億五千四百万平方ヤールで全国生産高の実に四〇%を占め、そのおもなる輸出先は、インドネシア、アフリカ、セイロン及びシンガポール等で、その地域だけに対するものも、およそ二億七千三百万平方ヤールと相なっております。さりながら、福井県における織物生産の企業形態は、これを大別して見ますと、いわゆる自己生産に属するものと、賃織生産の形態によるものとに分れておりまして、賃織生産は、紡績、化繊等のメーカーよりは、商社と密接な関係を保っておりまして、その生産高の六〇%を占めております。これらは一応安定操業をいたしておりまするが、その他の非系列工場の多くは、原料は高く、織物は安いという状態で、あえぎあえぎいたしておるというような実情でございます。さらに合成繊維の発達がまことに盛んでありまするために、各工場とも、それぞれその設備の転換に日も足らない状況でありまして、一方、世界における合成繊維の著しい発展の現状を見まするときに、工場設備の近代化は、これを一日もおろそかにすることができない実情であるということを痛感いたしました。  北陸における産業開発に関連いたしまして見逃すことのできないものは、武生—具谷間の有料道路であります。輸送力の増強、これは福井、富山両県の当局が、ともに熱望しておるところでありまして、われわれは折柄の雪を冒しまして、この実情調査に参りました。春日野部落の工事事務所を訪れ、工事現場を視察し、工事の実況を調査をいたした次第でございます。一級国道の八号線の武生妙法寺—具谷間に至る一万一千三百二十メートルの区間は勾配が急で、しかもその曲折がはなはだしいので、これにかわるものとして、春日野にトンネルを開さくいたしまして、平坦地をたどる工事が、すなわちこの有料道路であります。この工事は、第一工区、第二工区及び第三工区に分れて施工が進められております。現在のところ第一工区(トンネルを含むもの)はその二割七分で、第三工区はその四分程度の工事が進みまして、第二工区の工事は契約を終ったばかりではありまするが、工事の進渉状況は非常によろしいと見て参りました。本工事は、昭和三十二年度末にはおそらく完成することと思われます。そのときは、本有料道路は京阪神並びに中京方面と北陸各県とを結ぶ重要なる路線となることであろうことは疑いありません。本路線は、さらに具谷—敦賀の間の道路の改修を待って初めてその威力を発揮するものであります。従って具谷—敦賀間の改修工事を一日もすみやかに進めることは、地方の熱望しているところでございまして、この具谷—敦賀間は長さ三十二キロで海岸に沿います。しかも地すべり地帯でありまするので、この間を国の直轄工事として改修し、輸送力を増強せられたいと、両県の最も熱烈なる要望があった次第であります。  次に、財政事情について報告申し上げますると、富山県の昭和三十年度歳入総額九十億日余、越出総額八十九億円余で、これに前年度繰越予算財源を引き当てまして翌年度の支払額を差引しますと実に実質収支六億五千万円の赤字と相なります。そのうち政府直轄事業負担金の交付公債納付額を控除いたしましても、ほぼ四千万円の赤字となる実情であります。昭和三十一年度予算規模は九十二億円で、どうやら赤字なしに運営できる見込みでございまするが、福井県の財政事情昭和三十年度歳入七十九億余円、歳出七十七億余円、これに継続費繰り越し、事業繰り越し等を差引いたしまして、実質収支は二千万円程度の黒字であります。昭和三十一年度歳入八十六億七千万円、歳出八十六億四千五百万円で、差引二千万円の黒字という実情であります。  財政の再建については、富山県、福井県ともにきわめて積極的で、赤字解消に努めておる姿は、実に涙ぐましいものがございます。ことに福井県においては県庁職員の希望退職による人員整理、あるいは交際費等の徹底的節約を行い、県財政の整備には並々ならぬ努力の跡が見受けられた次第でございます。従いまして、福井県当局からも、府政は赤字に対する積極的な努力をいたしておる県に対しましては、特にその財政の健全化に向って国の特別なる施策を施していただきたいことの要望がありました。  次に県債の償還額の状況でございまするが、富山県では、昭和三十一年度で約六億円、昭和三十二年度で七億七千万円、これが漸増いたして、昭和三十五年度がピークで、約九億になります。これを境といたしまして漸減の傾向でございます。福井県では、昭和三十一年度が六億六千万円、以後漸増いたしまして、昭和三十四年度は八億円、この年度を境といたしまして、漸減する傾向であります。これを要するに、県債の償還額の状況は、ほぼ同じ傾向をたどっておる次第でございます。このように県債の償還費は、両県ともその財政に重圧を加えておる状況であります。  以上が富山県及び福井県における産業経済事情、及び財政事情概要でございまするが、右の調査の間に、福井県におきましては、福井製練株式会社の工場を視察し、富山県におきましては萩浦橋の架設工事を視察し、さらに不二越鋼材工業株式会社、倉敷レーヨン等を視察し、県の伝統的産業として有名なる家庭薬品の製造に当っておりまする広貫堂等の工場もそれぞれ視察をいたして参りました。また北陸電力株式会社において、北陸地区における電力の需給状況、及び有峰電源開発状況、さらに関西電力株式会社の黒部川第四水力発電所建設事務所においても、黒部水系電源開発実情をつぶさに調査をいたして参った次第でございます。  なお、この調査に際して、両県当局から種々要望がありましたが、そのおもなるものを申し上げますれば、  冨山県当局といたしては、地方交付税交付率の引き上げについてでありますが、昭和三十二年度政府予算においては、いわゆる一千億減税が織込まれておるが、これは直ちに地方交付税、及び地方税収入の欠陥となって、地方財政影響を及ぼすものが著しいので、国税減税の影響を地方財政に及ぼさないように、地方交付税交付率の引き上げをはかられたいということであります。公債の合理化のための、利子補給。これについては、終戦以来、地方財政赤字補填のために、毎年度相当額の地方債を発行してきましたが、これが償還費は毎年累増しても地方財政の重圧となっておりまするので、これが根本的解決策として、地方債をもって処理すべきものでなかった起債、すなわち政府施策により実施した公共事業に対する起債等については、元利補給制度を確立せられて、公債費の合理化をはかられたいということであります。  福井県当局におきましては、まず地盤変動対策、すなわち昭和二十三年福井県の穀倉地帯を襲いました福井地震の影響で、地盤の沈下、あるいは隆起がありました。そのために灌漑排水その他に少なからぬ被害をこうむっておるので県といたしましては、抜本的な対策として、大土地改良工事を計画しておるのでございまするが、これが遂行に当りましては、国として格別の援助を与えられたいとのことでございます。北陸本線の輸送力の増強。これは福井県のみではなく、富山県当局からも強く要望しておるところでありまして、北陸本線の輸送力増強は、何といたしましても電化に待たなければならない。昭和三十二年九月には、幸いにして米原—敦賀問が電化される予定でありまするが、北陸本線の隘路は、これは敦賀—今庄間でありまして、その間に新トンネルを開いて、急速に電化して、輸送力の増強をはかられたいとのことでございます。  以上簡単でございまするが御報告といたします。
  9. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 第四班関根久藏君。
  10. 関根久藏

    ○関根久藏君 御報告を申し上げます。  第四班は、中田委員と私の二人であります。二月十三日から六日間にわたって、大蔵省の四国財務局につきまして、四国地方におきます産業経済状況金融情勢並びに地方財政状況一般概況につきまして調査いたしました。香川県庁及び愛媛県庁につきましては、それぞれその財政状況及び管内におきます産業経済各般の事情につきまして調査をいたしましたほかに、現在当面の問題となっております香川県内の製塩業及び愛媛県内の急傾斜地帯振興事業実情等につきまして現地調査をいたして参りました。  その概要につきまして御報告申し上げますと、四国地方におきます産業経済金融情勢は、昭和三十年度好況に引き続きまして、米の豊作を初め、塩の生産、鉱工業生産中小企業等、いずれもおおむね活況を呈しまして、雇用情勢等もこれに伴いましてかなりの安定を取り戻し、金融情勢もおおむね順調に推移しておったようであります。一方鉄道輸送電力事情等の悪化、消費需要の増大に伴います物価の騰勢、一部金利の上昇等、今後の生産に悪影響及ぼすおそれのある傾向も若干見え始め、これが対策につきまして配慮、検討せられておる状況であります。  地方財政状況につきましては、四国地方四県、二十四市、二百四十九町村全般におきます実質赤字合計金額は、昭和三十一年度は前年度に比し著しく減ずる見込みでありまして、地方財政再建促進特別措置法または自主的再建計画等によります各地方公共団体の努力はもちろん、経済好況等の結果によるものと思われますが、実地に調査した香川県におきましては、従来の黒字財政昭和三十一年度より赤字財政に転ずるおそれがあります。特に公債費の支出がなお数年間増加する傾向にありまして、歳出の徹底的節約等により建て直しに努力しておりまして、また愛媛県におきましては、昭和二十七年度以降赤字財政に転落いたしまして、特に公債費は年々膨張し、昭和三十一年度より法の一部適用により再建計画を樹立し、鋭意建て直しに努力中でありますが、両県とも昭和三十二年度以降の国税減税の影響による減収等を考慮いたしまして、地方交付税の税率引き上げ等を特に要望しておるのでありますが、最近の地方税収の伸びは、経済好況に恵まれ、相当の成績でありまして、今後の自然増収等の推移とも関連して、相当検討を要するものがあると思われたのであります。  次に、現地視察いたしました製塩事業につきましては、昭和三十年来の異常渇水と、従来の入浜式に比較いたしまして生産が倍増するといわれております流下式塩田への転換が最近著しく進捗いたしましたため、本年度も生産の好調が見込まれておりますが、設備資金の投下は現在の段階が最高でありまして、将来外国塩と対抗し得るためにも、いわゆる国家資金の増額、一般市中金利の引き下げとともに、今しばらく塩の収納価格の引き下げも見合せてもらいたい、こういう要望が強かったのであります。また、現在は転換に伴います工事就労のため表面化しておりませんが、将来は労力費が従来の一ないし二割で間に合うというところから、失業問題に対します国の対策は早晩要求をされ、確立される要が迫っておると思うのであります。  また、全国の大半を占めております愛媛県の急傾斜地帯、いわゆる段々畠の振興の問題は、昭和二十七年度以降の実績は、計画額の七・二%に過ぎませんで、昭和三十二年度よりの新五カ年計画が再度繰り越しとならぬよう、国庫負担の増額、補助率の引き上げ等による適地適作、経営の合理化、技術の向上等の諸施策の重点的実施とともに、本事業に対する恒久的対策がきわめて強く要望されておったのであります。  なお、急傾斜地帯は、おおむね半漁半農の経営形態のために、昨年の潮流異変等によりますイワシ漁業の不振のため、漁償災害補償制度の確立が強く要望されておったのであります。  最後に、四国地方は全般的に農業県のため、農業水利および電源開発工場用水等の、工業立地条件の整備のための総合開発計画に対する国の助成対策が、これまた強く要望せられたのであります。  以上、簡単でありますが、調査概要について御報告申し上げ、詳細は別冊に報告書を作成いたしておきましたから、会議録に掲載するようお取り運びを申し上げたいと思うのであります。  以上でもって報告を終ります。
  11. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 第五班、吉田萬次君。
  12. 吉田萬次

    吉田萬次君 第五班は、私吉田萬次と、委員梶原茂嘉君、千田正君の三名により構成せられ、二月十日より同月十七日まで八日間にわたり、大分、宮崎、鹿児島の三県を一般経済事情、地方財政事情総合開発計画、災害復旧などの進捗状況等をおもに視察して参りました。  日程は、二月十一日、大分県庁で地方財政事情の説明を聴取、同県大南町の新農村建設計画の実施状況を視察し、十二日は大分県佐伯市の日本セメント工場、蒲江漁港を視察、十三日、宮崎県に入り、旭化成延岡工場および日向市の細島臨海工業地帯を視察、十四日は宮崎県庁で同県の財政事情を初め、一般経済事情等諸般の問題にわたる説明聴取のあと、都城市周辺における特殊土壌地帯を視察、十五日、鹿児島県庁で同県の財政経済事情の説明聴取後、末吉町でシラス地帯を、福山町牧ケ原地区でボラ地帯を視察し、全日程を完全に終了し、十七日帰京いたしました次第であります。  最初に一般経済事情について申し上げます。ここ数年来、日本経済は正常な規模拡大がみられ、戦後最高の好景気と称せられておりまするが、これを視察いたしました現地について見ますと、三県は経済中心から遠隔の地にあるという地理的条件、また経済構造が第一次産業中心で、住民の大多数は農林漁業に頼って生活しておりまする関係、そのほか例年台風に見舞われるという悪条件に災いされ、当地方の資本蓄積も低く、ために工業等の第二次産業がはなはだふるわない結果、経済的には後進県であり、県民所得はきはめて低い地位に放置せられ、好景気から取り残された、日の当らない場所となっております。これら農業県にも二年続き豊作で明るさを増し、預貯金も伸び、県税等の徴収成績もよくなってきております。これらの事実からうかがえるように、徐々にではありまするが、好景気の波が、これら遠境の地にも波及しつつあるものと存ずるものであります。  次に、地方財政事情につき申し上げますと、視察三県のうち、大分県は自主再建団体であり、鹿児島県は地方財政再建特別措置法の適用を受けている再建団体であります。三県の地方団体に共通して言えますことは、県税収入が県の財政収入の一割程度という貧弱な財政基盤の上に立っておるということでございます。各眼とも年を追うて公債費が県財政を圧迫し、人件費の過大と公債費赤字県転落の主要な原因となっております。  以上のように貧弱な自主財源の上に膨大な行政事務をかかえておりますこれら三県の現状打開の道は、地理的悪条件を克服し、後進性を取り戻すことにより、産業構造の高度化をはかり、労働生産性と県民所得水準の向上をはかることが財政経済発展の一大前提であります。当地方開発のために政府資金の投下が強く要望されておりました。  これらと合わせ、地方自治制度の再検討により事務能率の向上をはかること、地方税の面において税源の偏在是正、自主財源確保を考慮すること、公債費補給の幅を拡げること、国庫補助率の引き上げ等に関し地方自治団体より強い要望がございました。  視察の概略を御報告いたしましたが、ほかに詳細の報告書委員長の手元に提出しておりますから、委員会議録に掲載いたすようにお取り計らいをお願いいたします。
  13. 苫米地義三

    委員長苫米地義三君) 以上で派遣委員報告を終りました。  これで暫時休憩いたします。    午後二時四十五分休憩    〔休憩後開会にいたらなかった〕