○占部秀男君 私は
日本社会党を
代表いたしまして、ただいま上程されております地方税法の一部を改正する
法律案並びに地方行政委員会の修正案に対しまして、以下述べます
二つの観点から反対の意を表するものであります。(
拍手)
反対いたします第一の点は、改正される各税目の内容についてであり、特に
国民に与えるその影響に対してであります。およそ地方税の大宗は、住民税、
事業税、固定資産税であることは申すまでもありません。今度の改正によりますと、まず住民税では国の減税とは反対に、
現行の税率二十一を三十
三年度は二十六に、三十四年度以降は二十八にそれぞれ裂き上げようといたしております。実に平年度百十五億に上りますところの増税でございます。
政府は、国の減税
措置に伴う府県や市町村の減収について、この引き上げによってこれを補おうといたしております。しかしながら、地方の今回のこの減収は、もともと地方財政上、独自の
理由によって作られた減収ではございません。国の所得税の減税
措置に伴うところの税法上当然起る自動的な結果であります。しかも、この所得税の減税
措置は、現
内閣の一枚看板としての
政治的な
施策である以上、税務行政の筋道から言いましても、
国民の負担の軽減を真にはかろうとする意味から考えましても、国は減税、地方は増税、かくのごとき欺瞞的な方法によるのではなくて、別個の財源
措置によって、地方の減収を補うことが正しい
政治のあり方であると私は信ずるのであります。しかも国の減税を見ますならば、高額所得者には厚く、低額所得者には薄い。その事実を考えましたときに、国の税金に比べまして、はるかに人頭割り的な大衆課税的な性格を持つこの地方税の引き上げに対しましては、二重の意味合いから絶対に反対をいたします。(
拍手)
次に、
事業税についてでございますが、
政府は、個人と
中小法人との分について税負担の引き下げを行なったと言っておりますが、わずかに二%であります。もともと個人
事業税のごときは、その納税者の三割以上は、国へ所得税を納める必要のないほど零細な
業者に対してかけられた大衆課税であります。これを今回引き下げようとしますことは、あまりにもおそきに失し、あまりにも軽きに失しておるとわれわれは考えます。大
資本の擁護を任務とする自民党の
政府が、
中小商工業者の窮乏と倒産に対するわが党の追及に追い込まれて、おそまきながら一時を糊塗せんとする処置にすぎないと私は断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
固定資産税におきましても、造船利子の補給をようやく打ち切ったとたんに、今回のこの改正によりまして、外航船舶の課税標準の評価を半分に引き下げ、内航船舶についても特例を設けまして、九億に及ぶ減税を行おうといたしております。この減税の結果の莫大な金は、海運
資本のふところにそのまま流れ込むことは火を見るよりも明らかであります。
一方においては、県民、市民の大多数が負担する住民税を引き上げてまで、財政の窮乏を救わねばならないとするその同じ地方
団体のふところから、かくのごとく多額の金を巻き上げてまで、大
資本に追随する
理由は少しもないのであります。自民党
内閣の大
資本擁護の
政策が、あまりに露骨であるのに、あぜんたらざるを得ません。
主税においてかくのごときでありますが、他の地方税につきましては、一事が万事でございます。今後の電気ガス税の改正にいたしましても、
全国の一般家庭の料金の中に含まれておりまする税金分の引き下げではございません。一部の産業会社に対する非課税品目の追加であります。この税目には、それでなくとも、石炭、鋼材あるいはセメント、肥料等二十数品目にわたって業務用の名のもとに免税の
措置がとられております。その額は、年間百億を突破しております。今日さらに石綿を初め、数品目に免税の範囲を拡大し、製氷会社等に免税の
措置を拡大せんとする改正でございまして、わが党といたしましては、むしろこの
神武以来の好況時代に、かくのごとき免税
措置を一切
整理して、一般家庭に含まれておる電気ガス税を引き下げることが当面の任務であると考えておるのであります。また軽油引取税にいたしましても、三千円の引き上げの結果が、パスその他の乗客を通じて大衆に転嫁されることは明瞭であります。しかも
わが国の道路
政策の根本的な再検討に関連いたしましても、わが党としては、絶対に賛成することはできません。
本院の地方行政委員会におきましては、ただいま委員長から
報告がありましたように、さらに
衆議院の引き下げに追加した引き下げの修正案が出されました。多数でこれが通りました。一千円の
政府原案よりの引き下げは、引き下げとしての意味はあることとは思いますけれども、
現行の六千円に比べますならば、明らかに引き上げであります。かような意味合いから、わが党は、これまたこの引き上げに対しては反対をいたすものであります。
最後に、遊興飲食税についてでありますが、
政府は芸者の花代に対する税金分を三〇%から一五%に一挙に半分に引き下げました。同時に大衆飲食につきましては三百円から五百円、旅館の宿泊につきましては八百円から千円までのいわゆる大衆料金に対しては、
現行五分の税率を一割に引き上げております。およそ大衆
生活に無縁な芸者の花代に対する税金を引き下げ、大衆
生活に直結する飲食宿泊の税金を引き上げるところに、現岸
内閣の階級的な性格がはっきりといたしておると思います。(
拍手)
以上、私はおもなる税目につきまして、その個々の検討をいたしましたが、総推して申し上げますならば、
政府は今回の改正によりまして、総体的には地方税は引き下げたと言っております。しかしその内容を分析するならば、大衆収奪の
強化と一部の
資本家の
利益の奉仕、この
二つを土台として組み立てられた改悪案でありまして、わが党は、今回の改正については絶対に反対をいたすものであります。(
拍手)
次に、反対する第二の点は、この改正が地方財政全体に対して及ぼす影響についてであり、特にかかる改正を強行しようとする
政府の基本的な
政策に関連してであります。今、地方財政は
神武以来の赤字をしょって、押しつぶされようといたしておることは御存じの通りであります。幸い三十二年度には、国の税の
伸びと並んで七百十億を突破する税の自然増が予想されておりまして、行政水準の引き上げ、地方債の処理など、当面の地方問題を
解決する絶好の機会であると言われております。しかるに
政府は、三十二年度の地方財政計画の策定に当りましては、これらの懸案事項の
解決はそのまま放置しておいて、この地方税の自然増に籍口して、国から当然地方に支給すべき諸種の元利補給二百億になんなんとするものを、ほおかむりいたしております。しかも国の所得税の減税
措置に伴う地方交付税の減収約二百四、五十億に対しましては、わずかに交付税率の一%の引き上げ、すなわち七十二億で打ち切っております。それでなくとも、三十二年度の各地方
団体は、
政府の一千億積極
施策の影響を受けまして、補助
事業、公共
事業などの地方負担分の増加は、今や二百億を突破しようといたしておりまして、せっかくの自然増は、かくのごとき国からのしわ寄せによって、その大半が食いつぶされようといたしておるのであります。しかも、かかる事情の上に、今回の地方税の改正によりまして、地方は譲与税、
目的税を含めましても、さらに平年度百三十億の減収を押しつけられる結果となるのであります。知事会、市長会等の
主張するように、たばこ消費税の分与率を引き上げることなどの方策によりまして、減税財源を補てんしない限り、地方財政の現状を無視した、無責任きわまる地方税の改正であると言わなければなりません。しかも、問題であることは、なぜ
政府は、かかる
施策、かかる改正を強行しようとしているかの一点であります。一言にして言うならば、
政府は三十二年度の国の予算を温存するために、地方にしわ寄せをしているのが、この現状であると考えます。
政府は、吉田
内閣以来、四代にわたりまして、再軍備の
強化と
資本の蓄積に偏重した予算を組んで来ましたが、今度の国家予算もまた同じ本質を持っておりますことは、わが党の同僚議員がしばしば追及した通りであります。この
政府のやり方に対し、高まりつつある
国民大衆の不満を押えるために、三十二年度の予算編成に当りましては、一方では再軍備と
資本の蓄積、他方に減税と積極
施策という、限られた予算の中では相矛盾する
二つの要素を同時に実行しなければならない窮地に
政府は追い込められたのであります。この窮地を切り抜けるためには、国の財源をできるだけ保持する方法をとらねばならぬ。そのためには地方に回す財源を極度に切り詰め、国の責任分までも地方に転嫁させるところの、すなわち地方財政にしわ寄せをさせるところの地方財政計画を策定せざるを得なかったのであります。地方税の今回の改正も、
政府のかかる
施策の一環としてのものにすぎないことは、私の言うまでもないところであります。
最後に、特に強調しておきたいことは、地方にしわ寄せさせる方法として、
政府は、
昭和の善政と称して、国の税金は引き下げるが、他方、地方の税金は引き上げを強行しようとしております。
国民大衆は、自分のふところから出ている汗とあぶらの結晶である税金が、多年にわたって再軍備と
資本の蓄積に片寄って使われている事実を、苦しい
生活の体験の中からようやく悟るに至りました。その攻撃のほこ先は、あげて
政府に向けて集中しつつあるこのときに国税を引き下げ、地方税を引き上げることによって、
政府はその攻撃の目標を、
一つの中央
政府から、六千に余る地方の知事、市長、町村長に巧みに分散し、巧みに転嫁し、巧妙に回避しようとする
政治的謀略の
一つの表われであることを、われわれは記憶しなければならないと思います。(
拍手)
かかる
二つの観点から、今回の地方税法の一部改正案に対しましては、
日本社会党といたしましては、絶対に反対を表するものであります。(
拍手)
—————————————