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1957-04-08 第26回国会 参議院 本会議 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月八日(月曜日)    午前十一時三十七分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十三号   昭和三十二年四月八日    午前十時開議  第一 中小企業団体法案中小企業組織法案及び中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に関する法律案趣旨説明)  第二 公衆衛生修学資金貸与法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 結核予防法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第四 母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 社会福祉事業等施設に関する措置法案(第二十二回国会小林英三君外三名発議)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、中小企業団体法案中小企業組織法案及び中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に関する法律案趣旨説明)  三案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者及び衆議院発議者から、順次、趣旨説明を求めます。水田通商産業大臣。    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  4. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 中小企業団体法案について、その趣旨を御説明いたします。  政府といたしましては、中小企業問題の重要性にかんがみまして、かねてから各般施策を講じてその解決に努力いたして参ったのでありますが、特に中小企業組織化によって、その経営合理化競争力強化等をはかることを、その基本的対策の一として推進してきたのであります。御承知の通り、中小企業組織に関する制度といたしましては、中小企業等協同組合法による協同組合中小企業安定法による調整組合との二つがあるのでありまして、それぞれ、前者は共同経済事業による経営合理化を、また後者は調整事業による経営の安定を目途として運用してきたのであります。この二つ制度は、中小企業経済的地位維持向上のために、きわめて大きな役割を果してきたのでありまして、その意義はすこぶる大なるものがあるのであります。  しかしながら、今日なお、わが国中小企業の多くは、その資本力弱小業者相互間における過度競争等により、依然として経営の不振と不安定に悩んでおることに思いをいたしますと、この際、中小企業振興施策を思い切って強化する必要があると存ずる次第であります。昨年六月、内閣中小企業振興審議会を設置し、中小企業振興対策に関する広範な諮問を行なったのも、かかる見地から出たものであります。政府といたしましては、同審議会の答申を尊重するとともに、これに対する関係方面意見についても、慎重に検討を重ねました結果、中小企業界の現状にかんがみ、中小企業振興のための最も基本的な施策として、中小企業組織の充実、団結強化をはかることがまずもって急務であり、そのため、中小企業組織に関する基本法として本法律を制定する必要があるとの結論に到達した次第であります。  本法律案概要について申し上げますと、第一に、現行調整組合制度を廃止して、新たに調整事業共同経済事業をあわせ行うことのできる組合として、商工組合制度を設けることであります。共同経済事業をもあわせ行うことは、組合員たる中小企業者団結強化並びに経営の安定と合理化のために、きわめて適切な事柄であり、また従来の中小企業等協同組合法による協同組合中小企業安定法による調整組合の二軍設立による運営の煩を免れるためにも、最も実情に即したものと考えられます。  第二に、すべての業種について、一定の要件を備える場合には、商工組合によって調整事業実施することができるようにすることであります。中小企業安定法によりますと、特定の工業部門のみ調整事業を行うことができるようになっておりますが、現在、中小企業業界は、おしなべて激しい過当競争に悩んでおりますので、工業以外の各分野におきましても、業界秩序維持のための調整事業実施することができるようにする必要があるからであります。  第三に、組合がその調整事業に関して組合外の者と交渉を行うときは、その相手方は、誠意をもってこれに応じなければならないこととし、特に必要がある場合には、その交渉が円満に妥結するよう、政府において特に設ける調停審議会意見を聞き、適切な勧告ができるようにすることであります。業界の安定のために行う組合調整事業につきましては、組合の外にいる者にも、できるだけこれに協力してもらい、調整事業が一そう効果的に運営される必要がありますので、組合がこの趣旨によりまして、取引関係または競争関係にある組合員外のものと交渉をする場合には、その話し合いが円滑に行われるように、政府としても善処する必要があるからであります。  第四に、組合調整事業が、員外者事業活動のため効果をあげることができず、ために業界の安定に重大な悪影響があり、国民経済上もこれを放置することができない事態に立ち至りましたときは、政府は、その業界におけるすべての中小企業者組合加入せしめ、または組合員たる資格を有するすべての者の事業活動を規制する命令を出すことができるようにすることであります。いわゆる員外者行為を規制する必要がある場合、まず、中小企業業界が完全に団結すれば不況事態の克服が可能と思われるときは、中小企業のすべてを組合加入させて、自主的調整に参加させるようにし、その他の場合におきましては、現行中小企業安定法におけるがごとき員外者規制命令を発する必要があるからであります。  第五に、共同経済事業を通じて中小企業者経営合理化をはかるための組織である協同組合制度につきましては、この制度実施以来、相当の年月を経て、最近ますますその基礎を固め、制度運営効果もはなはだ大なるものがあるのでありまして、中小企業者組織化による経済的地位向上のためには、きわめて適切な制度でありますので、本法においては、この制度をそのまま取り入れ、協同組合組織運営等につきましては、従来の中小企業等協同組合法の定めるところによることとした次第であります。もちろん、過去の実施経験にかんがみ、所要の改善はなるべく近い機会に行う所存であります。  本法は、以上述べました商工組合協同組合との二つ制度一つ法律のもとに規定することにより、従来の中小企業等協同組合法中小企業安定法との二本建の法律による組合設立管理等に関する煩を避けるとともに、中小企業者がその希望するところに従い、実態に応じて、いずれの制度をも選択し得るようにし、同時に、両制度相互の移行についても、でき得る限りこれを容易に行い得るように規定する等、中小企業者一つ法律制度のもとに、みずからの経営の安定と合理化のための事業を、最も合理的かつ効果的に遂行することができるよう措置しようとするものであります。  以上が、中小企業団体法案趣旨であります。(拍手
  5. 松野鶴平

  6. 永井勝次郎

    衆議院議員永井勝次郎君) 私は、日本社会党提出中小企業組織法案中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に関する法律案について、提案理由を御説明申し上げます。わが党の法案は、去る二月十三日に提出したのでありまして、政府案提出が非常におくれ、そのそばづえを食わされて今日に至りましたことは、まことに遺憾にたえない次第であります。(拍手)  今日、中小企業の悩みは、過度競争原料高製品安金融難税金高施設の不備、技術後進性外資導入の圧迫等々、数え切れないほどありますが、要約すれば、政府の大企業重点施策中小企業へのしわ寄せがその大きな原因であることは、もはや明々白々たる事実となっておるのであります。経済企画庁の昭和三十一年六月現在で、資本金一千万円以上の大企業二千四百六十社、一千万円以下の中小企業法人十八万二千六百社を調査しました結果によりますと、売上高は、前年に比べ大企業は一九・八%の伸び中小企業は二一二%の伸びで、中小企業が大企業よりはるかに上回っておるのであります。しかるに、その営業利益は、前年に比べ、大企業は五六・七%と飛躍的に増加しているにかかわらず、中小企業はわずかに三・三%にすぎず、神武景気と言われる状況のもとにおいてすら、前年の利益率よりも下回るというみじめさとなっているのであります。さらに、売上高に占める構成比を見ますると、大企業は、原料費が非常に減って、人件費は若干増加しております。中小企業は、原料費相当にふえ、人件費は逆に下っております。中小企業生産を増加しながら、原料高製品安となり、収益が減って、奴隷的低賃金にしわ寄せされ、いかに大企業に搾取されているかが如実に示されているのであります。(拍手)このような実態の中で、ただ一片の組織法を制定するだけで、法的強制を伴う中小企業組織化をするならば、これは逆に独占資本による系列化目的に利用され、あるいは組合の内部におけるボス支配を許すこととなり、ついには零細業者強権によって整理される結果に陥りますことは明らかに予見されるところであります。消費者利益が守られないことも書を待ちません。そこでわが党は、ここに提出しました法案のほか、中小企業産業分野の確保に関する法律案商業調整法案等を、三位一体の骨組みとし、続いて金融税制その他産業経済関係立法十数件、行政措置四十数件を肉づけとして提案を準備しております。わが党の中小企業対策は、国の産業経済全体の中で考え、法律だけではなく、所要財政経済的裏づけを並行せしめ、その実効を期待せんとするものであることを御了承いただきたいと存ずる次第であります。  以下これらの法案について御説明を申し上げます。  第一は、中小企業組織法案について、その大要を御説明申し上げます。本法案は、現行中小企業等協同組合法及び中小企業安定法発展的に統合吸収し、さらに新規の協同組織を加え、それぞれ特異の機能を付与することといたしました。本法案目的は、中小企業者がその経済的地位を高め、あるいは安定をはかり、もって国民経済の健全な発展に資するに必要な協同化組織を促進強化せんとするにあります。そのためには、特に国の義務として、中小企業税制金融はもとより、経営技術等々に各般振興助成策を積極的に行わねばならぬ旨を規定いたしてあります。本法案では、中小企業とは、常時使用する従業員の数が、工業では三百人以下、商業またはサービス業では三十人以下で、かつ資本総額が一千万円以下のものと定義したのであります。組合の種類は、従来の事業協同組合信用協同組合企業組合調整組合はそのままとし、ほかに新たに零細経営者のための勤労事業協同組合、また火災共済協同組合事業調整協同組合の三つの組合を加えることといたしました。このうち調整行為を行う組織については、現行中小企業安定法に基いて、すでに設立されている調整組合はそのまま認め、これから新たに設立しようとするものは、すべて事業調整協同組合とすることといたしてあります。  次に、各組合について御説明を申し上げます。事業協同組合信用協同組合企業組合は、おおむね現行中小企業等協同組合法規定に準ずることといたしておりますが、このうち事業協同組合については、特に団体交渉権並びに団体協約権を付与することといたしました。勤労事業協同組合は、特に零細事業者対象とするものであります。従来の中小業政策の盲点として、その政策の死角に取り残されていた零細業者を特に育成するための新しい協同組織であります。生活のためにみずから働く階層でありますから、資本性事業ではなくて、勤労性事業と言うべく、企業と言うよりは生業として区別さるべきものと考えるのであります。従業員十人以下、商業またはサービス業にあっては、従業員二人以下の事業者をもって組織し、社会政策を加味した立場から金融上、税制上特別の措置々講ずることといたしております。わが党の特に苦心を払っておるところのものであります。  火災共済協同組合について申し上げます。わが国損害保険事業は、農業共済漁船保険等の一部を除きましては、少数営利会社に独占されており、その保険料率は、各社の協定により、はなはだしく高いため、損保普及率はわずかに二〇%内外という低さであり、一般中小企業者は容易に加入し得ない実情におかれているのであります。よって中小企業者火災保険共済事業をこの組織によって行い、その足らざる点を補わんとするものであります。本組織は、出資の総額百万円以上、組合員一千人以上の参加によって設立され、共済金給付契約額は三百万円を限度とし、その連合会には再保険事業を行わしめんとしているのであります。料率はずっと低くなります。余剰資金組合員協同資産として蓄積されるわけであります。これが普及により、中小企業者が不時の災害に対し、みずから保険態勢を確立し得ることともなろうかと存ずるのであります。  事業調整協同組合は、経済事業調整事業とをあわせ行う協同組織で、これが本法案の中心となるべきものであります。従来の中小企業安定法に基く調整組合は、過度競争、もしくは不況に対する事後的救済対策としての価格協定数量制度などの調整事業を行うことを建前としているのでありますが、本組織は、そのような事態に陥る以前に、予防的に常時適正なる調整を行い、不公正かつ過度競争を終息せしめ、企業適正利潤を確保せしめんとするものであります。しかしながら、この調整機能のもたらす影響の重要性にかんがみ、木組合設立に当っては、特に消費者並び関係業者利益をも考慮することといたしております。対象業種は、その生産実績中小企業に圧倒的に多い業種国民経済上重要な地位を占め、国民日常生活に密接な関係のある業種であって、しかもそれが過度競争により健全な運営が阻害されている場合に限っているのであります。また、組合の中における反対意見少数者主張が十分に反映され、不当に抑圧されないように、加入、脱退の自由の原則を建前として、あくまで懇談と納得に基く民主的な運営を期しているのであります。同時に、大企業が参加する場合の要件として、大企業加入しなければ調整機能が全うされない場合、しかも大企業加入しても中小企業者自主性が阻害されない場合と、厳格に制限し、組合自主的運営の確立を期しておる次第であります。さらに、正当な主張に基く適正な調整活動に対し、もしその組合の決定に服しない不公正な業者があって、そのため調整効果が確保できない場合には、政府案のような強権によって強制的に組合加入せしめ、員外統制を行い、あるいは刑罰をもって臨むなどの非民主的手段はとらず、学識経験者中小企業者消費者労働者等代表により民主的に構成された調整委員会裁定に従わしめることといたしておる次第であります。  次に、本法案のもう一つの重要な点は、事業協同組合勤労事業協同組合事業調整協同組合に対し、団体交渉権団体協約権を付与したことであります。これによって中小企業者一体となり、親企業に対し、その間に、単価、支払い条件に関し団体協約を結ぶ寺の交渉、また商品、原材料の仕入元との間に、取引条件についての団体協和を結ぶなどの交渉を行うことができるようにしておるのであります。団体交渉が不調に終った場合には、先ほど申し述べました調整委員会に申請され、その公正な裁定に従わしめることといたしております。もとより組合活動公共性消費者利益は、この団結権によっていささかも損傷されることがあってはならないのでありまして、そのために、本法案は、常に公正取引委員会の正当な関与を規定しておるのであります。  以上、御説明申し上げましたように、本法案は、中小企業者の自主的な協同組織の促進を通じて、中小企業経済的地位を確立し、あわせて一般消費者利益をも含めた国民経済の健全な発展を期待している次第であります。  最後に、中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に関する法律案について申し上げます。  本法案は、中小企業組織法施行に伴って不要となります関係法律整理しようとするものであります。  以上が、わが党法案提出理由及び内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。(拍手
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。小幡治和君。    〔小幡治和登壇拍手
  8. 小幡治和

    小幡治和君 私は自由民主党代表いたしまして、ただいま御提案になりました中小企業団体法案に対し、総理大臣並びに通産大臣及び大蔵大臣に対し、若干の御質問をいたしたいと存じます。  今日の日本政治において最も取り残されている問題は、この中小商工業対策であります。本法案には、その対象従業員三百人以下の工業及び三十人以下の商業といたしております。今、統計をもってこれを見まするに、全国工業事業所の数は四十三万四百四十ありまするが、従業員三百人以下の、いわゆる中小工業の数は四十二万八千七百八十四でありまして、まさに全国総数の九九・六%という数字を示しており、その従業員そのものの数を比較いたしますれば、全国総数五百二十八万人に対し三百八十三万、すなわち七二・四%の比率を示しておるのであります。この日本産業の大部分を占める中小商工業者、今生きるために非常な苦しみをいたしており、反面、大企業はますます資本主義的発展を遂げ、その所属する労働者は、これまた全国組織の力をもって、いわゆる労働貴族の待遇を受け、膨大な中小企業労務者との賃金格差を、ますます広げつつありますのが、今日の実相であります。  わが自由民主党は、この救われざる中小企業者並びにその従業員諸君のために、今日の中小企業日本経済の中において占むる性格を把握して、階級闘争ではなく、企業全体として拡大繁栄せしむる方策をとり来たり、今日、神武以来の好景気は、自民党の政策と相待って、この谷間の光暗き中小企業界にも、ほの明るき希望を持たしむるに至っておりますることは、御同慶の至りにたえません。しかしながら、日々その数を激増せしめつつある日本中小商工業者が、片方は大企業資本力と戦いつつ、片方に痛ましき共食いと共倒れになりつつある現況は、この際根本的なる解決をいたさざる限り、決して救われるものではありません。すなわち狭い四つの島に閉じ込められた日本において、その人口は、年々百万余を増して行くのであります。従来、潜在失業者最後のたよりの地であった農村は、農地改革のために弱小単位に分断されてしまって、もはや入るるに余地ありません。大企業はますます合理化オートメーション化を断行して、次々と失業群を放出いたしております。しこうして、これら吐き出されたる大衆が最後に生死を賭してその生活の本拠を求むるところこそ、この中小商業並びに工業分野であります。そうとするならば、日本人口政策の上から、このふえつつある人口をいかなる産業分野において働かせ、生活せしめて行くか。ある部分失業群として社会保障によって生活せしめて行くのか、完全雇用を文字通り断行して、それぞれのところにおいて繁栄せしめて行くためには、大企業部門経済五カ年計画のごとく、中小企業並びに商業部門にも、それぞれの五カ年計画あってしかるべきではないのか。これらのことは、もはや単なる中小企業対策というよりも、日本政治とし、産業経済政策の大方針として、真剣に考えなければならない問題でありまして、岸総理は、この点に関しいかなる構想を持っておらるるか、まずお聞きしたいのであります。  さて、この団体法案でありますが、私は六つの点から論じつつ、政府の御見解を承わりたいと存じます。  まず第一は、大企業者との関係においてであります。すなわち大企業者団体の御意見として、こう言われております。現今の世界市場競争の中における日本産業発展のためには、企業系列化が必要であり、親工場は子工場に対し、技術指導資金援助を行い、縦の団結のもとに、優秀なる製品が廉価に生産されて、国際競争にも勝ち、他面、中小企業者経営の安定が確保し得られるのである。それに対し、今回、団体法の制定によって横の団結ができて、強制加入団体交渉権が許されて、対立競争の激化を来たすように相なっては、日本産業の進展はとうてい期し得られないというのであります。しかし反面、中小企業者の身になってみれば、これでは全く奴隷工場でありまして、細々と生活して行くには確かに安全でありまするけれども、弱肉強食は遺憾なく行われるし、こうなったのも、団結の力を持たず、単独では経済界の荒波に抗して行けない結果、やむを得ずなったとも見られるのでありまして、かかる人たちも、今回の横の団結である団体法の成立を心より望んでおるのであります。しかし、現実産業界実情は、この縦も横も必要なことでありまして、ただ、この縦の系列化の傾向と、今回御立案の横の団結、すなわち生産割当に基く原料購入数量制限とか、購入価格制限、あるいは購入先の指定のごとき、調整事業を行わんとする場合とを、いかに調整して行くかということが問題であります。この点に関し、通産大臣は、この法律運営においていかに処理されるか、お伺いいたしたいと存じます。  第二に、今回の法案は、あまりに各方面に遠慮して作られましたせいか、商工組合設立に当りましても、「競争が正常の程度をこえて」とか、また「取引の円滑な運行が阻害され」とか、「相当部分経営が著しく不安定」とか、抽象的な言葉が羅列され、一体何を基準に認可するのか不明確であります。また、団体交渉相手方にも、「誠意をもって措置せよ」というにとどまり、また、まとまちなくても、政府は勧告するだけにとどまっております。これで一体、所期の目的が達せられるのかどうか、通産大臣にお聞きいたしたいと存じます。  第三に、社会党の案を拝見いたしますると、団体協約重点を置いており、団体交渉相手方に対しては交渉に応ずる義務を負わせております。しかも、交渉がまとまらないときには、仲裁裁定を申請することを許しており、さらに、仲裁裁定には絶対従わなければならないとして、縛ってしまう規定を設けておるのであります。しかも、交渉の当事者は、政府案には、組合代表者とのみありまするけれども、社会党案におきましては、「または組合の委任を受けた者」というものを加え、いわゆる専従者制度を認めようとしております。専従者はともすれば、業者の真の意欲と離れて職業的交渉屋になり、ボス化してしまい、その背後に政治的な手が伸びて、すべての経済行為政治闘争に巻き込まんとするごとき事態になろうとするおそれなしとしないのであります。なお、さらに社会党案は、この団体法に基く組合労働組合との団体交渉をさせるような規定を入れております。大企業に対する戦いに苦しみ抜いている現在の中小商工業者が、さらに労働組合より労働攻勢を受ければ、双方よりの挾撃にあって、自滅の道をたどるおそれなしとしないのであります。これでは、共産党のねらう革命前の態勢に近づけしめるものであると断ぜざるを得ないのであります。かかる一連の、政府案と異なる要素を総合して考えてみますと、わが国中小商工業者世界に、労使相戦う現在の労働組合構想を植えつけんとの意図あるものと見られるのでありまして、このことは相互協力自主調整を本旨とする今日の中小商工業界にとり、危険この上ないことと思うのであります。政府はこの点に関し、この団体法に基く組合交渉が、労働組合の現在行いつつある団体交渉並びに交渉手段としての労働争議権と、いかに違わせてあるのか、また、運営の上において、労使闘争現実の醜き各姿にならしめないよう、いかなる配慮をされんとするのか、通産大臣にお伺いいたしたいと思います。  第四の点は、今、全国中小商工業者は、この団体法をただ一つの救世主のように思っております。しかしながら、この団体法は、あくまでも過度競争の弊を防止するという消極的救済策にすぎないのであります。中小企業振興策としては、むしろ積極的に弱小企業体が団結して、相互扶助の精神のもとに、協同組合制度の拡充補強をこそはかるべきであると思うのでありますが、この法律施行によって、かかる積極的相互努力の重要性が見失われ、ただ商工組合によって、消極的に規正し合い、安きにつかんとする傾向を助長するおそれなきやいなや。かくては、わが産業界は、世界競争に伍して行けません。中小工業育成指導の方針として大きな問題でありますので、誤解のないよう、通産大臣のお考えをはっきりさせておいていただきたいと存じます。  なお、この際特に政府に申し上げたいのは、中小商工業者が真に困っているのは金融と税金であります。本国会において、政府はこの二つの面においても、中小商工業者に対し、種々なる配慮の法案提出され、それぞれ可決はいたしましたものの、大金業に比し、まだまだ不遇のうらみなしといたしません。将来さらに、大蔵大臣は、これらの点に関し善処さるる御方策を持っておらるるやいなや、この際お聞きいたしておきたいと存じます。  第五の問題は、この団体法の成立によって、統制経済への移行の不安なきやいなやということであります。すなわち、この法律施行に当り、組合の規正が強化され、ために優秀なる企業の独創的努力が制限せられ、あるいは新規、弱小企業が、これから大きくなろうとする意欲を押えられてしまうがごとき結果と相なることを憂えるものであります。また、反面、中小企業団結に対抗して、大企業はそのカルテル化、トラスト化をますます進めるでありましょう。そうなった暁には、中小商工業者の統制と大企業の統制との間に、必ずや政府の官僚統制が介入いたして、また再び戦時統制の経済に移行する懸念なきにしもあらずと存ずるのであります。この点に関しましては、とかく誤解をお受けがちであられる岸総理に、この際、御解明をお願いいたしておきたいと存じます。  第六の問題は、この団体法が消費大衆の利益をじゅうりんする結果にならないかということであります。特に商業の部門におきまして、全国卸小売を合わせた業者総数百六十一万四千五百軒に対し、従業員三十名以下の業者は九九・五%と相なっておりますが、この団体法によって、結局、消費者は商業者の意のままに値段も数量もきめられ、営業時間まで制限されて、不利益をしわ寄せされてしまいはせぬかとの不安であります。やりよういかんによりましては、大衆の購買は、最近各地に問題を起しつつある購買会、生活協同組合への依存にも波及しましょうし、農村においては農業協同組合との問題も生じましょう。そうなれば、これらと商工組合との規正をどうするかということも生ずるのであります。とにかくそれぞれの団体が作られ、自己利益の擁護に当るのもけっこうでありますが、全国民消費者ならざる者はないのでありまして、いわゆるこの消費者としての国民の不安の声に対し、政府はこの際、安心しなさいと、はっきり言い切っていただきたいのでありまして、この点全国民の問題でもありますので、岸総理並びに水田通産大臣の御懇切なる御答弁をお願いいたす次第であります。  以上をもって私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇拍手
  9. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 小幡君の御質問に対してお答え申し上げます。  中小企業が、わが産業上きわめて重大な、重要な地位を占めることは御意見の通りでありまして、この人口の増加を中小企業が吸収するということも、その意義は大きなものがあると思います。もちろんこの人口問題に対処するためには、産業経済の全般の拡大が必要なわけでありまして、私どもが三十二年度の予算に、また今後の経済政策の基調として考えております積極的な産業経済基盤の拡大ということは、この人口問題に対処する根本であると思います。しかして中小企業にこの人口を吸収せしめるためには、中小企業が安定して、そうして中小企業が栄えて行くという基礎ができないというと、いたずらに数が多くなって血みどろの競争をして、お互いに共倒れになるようでは、決して人口問題の解決にならぬと思います。今度の団体法がねらっておる業界の安定は、まさにそういう意義を持っておると思います。  次に、この調整事業が官僚統制になるのではないかという御疑念でありますが、この法律をごらん下さいますれば、はっきりするように、調整事業は、あくまでも組合の自主的な事業としてこれを行わしめ、また、たとえ員外の連中が、この調整事業に反対し、もしくは不当なる競争をしかけて参りまして、業界全体の安定を欠くというような場合に、組合加入せしめ、組合調整に服せしめるということも、あくまで自主的でありまして、政府は受け身の形において、これが指導監督をするというにすぎないのでありますから、決して官僚統制になることはない、こう確信をいたしております。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  10. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 最初のお尋ねでございますが、大企業との系列化を阻害するようなことはないかということでございますが、この商工組合調整事業は、自主的に、かつ組合の総意によってなされるものでございますから、今、大企業への系列化によって、仕事が、品物が優秀になり、経営も安定しているという中小企業者は、この系列化によって現に恩恵を受けているのでありますからして、従ってこの系列化を阻害するような調整事業というものは、事実上おそらくできないだろうと思います。で、もしできる場合と言いますというと、系列化中小企業と、そうでない中小企業の利害が実際において一致する問題というようなことになりますというと、お互いの不況を克服するために設備の制限をやろうというような問題は、調整事業として行われるかもしれませんが、それ以上の行き過ぎた調整というようなものは、業者自身がきめることでございますから、事実上、こういうことはあり得ない。現に安定法による調整組合でも、五年間やった結果、この系列化を阻害するというような事実は全然出ておりませんので、この点の心配は経験に徴しても大丈夫じゃないかと思っております。  それからその次の御質問で、組合交渉の問題でございますが、これは、まず交渉の内容は、調整事業に関しての交渉でございまして、自分自身が調整事業を河もしない、そうしておいて、一方の相手方に対して自分のやってないことを要望する、要求するということは許されておりません。自分も不況克服のためにこういう制限をするんだ、この程度に一つ他の関連事業も同調してもらいたい、協力してもらいたいという交渉でございますので、その点において、いわゆる労働組合団体交渉というようなものとは、内容が全く違っております。  それから方法の問題も同様でございまして、組合代表者組合のためにやるということでございまして、交渉の場合も、人数の問題とか、あるいは内容は、総会によってきめられたものをあらかじめ示しておくというような、政令でいろいろこれをきめることになっておりますが、第三者にこの交渉を頼むというようなことはございませんので、従って一般が恐れているような、何か交渉専門屋がいて、これがやたらにいろいろなことを持ち出して、中小企業と大企業とのいろいろなトラブルを起しはせぬかというような問題は、この方法において、全くできないように配慮してあるつもりでございます。  それからこの交渉効果でございますが、効果は、結局、中小企業と大金業がいろいろ不況に立ち至ったときには、話し合いの場を作るというのが趣旨でございますので、これについて国が強健的な調整をやるとかというようなことはやるべきじゃないんだ、お互いに自主的にこの交渉をやらせるんだ、ただしその話がなかなかまとまらない、まとまらないが、一般国民経済から見て、これはどうしても話し合いをまとめさせた方がいいというときには、政府がこの委員会に諮問して、その答申によって勧告することができる。で、勧告によって、もしそういう事態が改善されないというようなときには、これはいろいろ社会の批判を受けるでございましょうし、そうなればお互いに自主的な話し合いがつくということも期待されますので、あくまで強権的な性格にはしないのだ、勧告だけにとどめるというのが政府の考え方でございまして、いわゆる労働組合団体交渉というようなものとは性格が全く違っておりますので、先ほどの御質問のようなボス化の問題とか、あるいはそういういろいろな問題は起らないだろうと思い残す。  それからこの団体法は、むしろ消極的なものであるので、協同組合法の精神を積極的に生かすようにしたらどうかということでございますが、これは全く同感でございます。調整事業不況の場合の、これ以外に克服の方法がないというときの、臨時過渡的な措置として認められるものでございますので、本質的にはやはりお互いに相互扶助の精神に基いた協同組合活動によって、中小企業組織化され、伸びて行くというのが本筋だと思います。これを育成助長するために、政府関係金融機関としては、御承知のように中小企業金融公庫というようなものがございますので、公庫の運営によって、こういう協同組合を伸ばして行くということは、組織化のやはり本筋として私どもは積極的に助成したいと考えております。  それから次の問題は、消費者利益が害されはしないかということを非常に一般から危惧されておりますが、この法案におきましては、大体そういう点のないように配慮しておるつもりでございます。と申しますのは、まず他人に迷惑をかけないで、消費者とか、あるいは関連産業者に迷惑をかけないで、中小企業者が自分自身でやれることを、まず自主的にやるということが建前になっておりますので、その限りの調整事業につきましては、運用によって相当弾力のある認可の仕方を私どもはするつもりでありますが、事、価格とか、料金の制限ということになりますと、はっきり消費者利益を害するという問題が起りますので、価格制限などをやられる場合は、それ以前のあらゆる自分自身でやれる調整が全部行われる、その行われた調整とあわせて、価格、料金の調整をやるという場合にしか認められませんが、それじゃその場合にどうするかと申しますと、認可基準で、もし消費者とか、関連産業者利益を害するという問題があると見れば政府は認可しない。政府のその認定は、政府だけでやるかと申しますというと、安定委員会の意見を聞いてやる。その安定委員会の中には、消費者代表も入りますし、関連産業者代表も入る、そうして国会議員も、これは重要な問題でございますから、国会議員にもこの委員会には入っていただく、そうしてこれらの委員会において、これはやむを得ぬからやるという場合にのみ、価格制限とか、料金制限はできることになっておりますし、しかも、その場といえども公正取引委員会の同意がなければやれないというふうになっておりますので、一般に心配されているような、すぐに、商工組合を作ったら価格の制限をやって、消費者に迷惑をかけるのではないかというようなことについては、そういうことのないように、特別厳重な配慮をこの団体法において行なっているというふうに私どもは考えますので、この心配も一応ないのではないかと考えます。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  11. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  中小企業の振興につきましては、組合化が必要であると同時に、金融、租税の方面にも力を入れなけりゃならぬことは当然でございます。政府におきましては数年前からいろいろな金融機関を設け、またその事業範囲を拡充いたして参ったのでございます。従来のごとく大企業を優先するよりも、昨今では中小企業金融に力を入れておりますことは、今年の予算、産業投融資からごらんいただいてもわかることと思うのであります。なお、最近におきましては、政府関係金融機関のみならず、一般市中銀行におきましても、大企業に対しまする融資よりも、小企業に対しまする方が相当割合が多くなっていっていることは、非常に喜ばしい現象だと思います。なおまた、租税につきましても、これまた御決定を願いました本年度の各般税制の改正につきまして、中小企業に対しましては、軽減税率を強くいたしておるのであります。  なお、今後の問題におきまして、改廃は従来、原始産業、ことに農業、漁業の方面相当力を入れたのでございますが、今後は、その力を中小企業振興の方に持って行きたい、こういう気持を持っていることをまず申し添えておきます。(拍手)     —————————————
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 近藤信一君。    〔近藤信一君登壇拍手
  13. 近藤信一

    ○近藤信一君 私は、ただいま議題となりました中小企業団体法案について、日本社会党代表して、若干の質問をいたしたいと存じます。  まず、初めに通産大臣にお伺いいたしたいのであります。政府は今日、前近代的な状態に取り残されている大部分中小企業について、その振興を唱えてこられましたが、前年度予算に比べまして、一般会計において千二十五億円の膨張を見ました。しかるに、本年度予算の中で、中小企業対策費は、わずかに一億六百万円の増額を見たにすぎません。一方、中小企業輸出振興費は、逆に七百万円も削減されたものであります。従いまして、中小企業振興費は、実質的には本年度予算増額分の千分の一にも満たないのであります。これでは、中小企業経営の近代化、合理化は達成できるものではありません。このような振興費で行われる政府中小企業対策とはいかなるものか、大臣の御所見をお伺いいたしたいと存じます。  さらに、大臣にお伺いしたいことは、今日のわが国における中小企業問題をどう把握しておられるかという点であります。一貫した中小企業政策が行われないのは、突き詰めれば、日本の産業構造に対する根本的な認識の欠除から生じてくるものと考えられるのであります。今日の中小企業問題を解決するためには、一時を糊塗するようなやり方では、何らの解決策ともなり得ず、問題の本質は深くわが国の産業構造に根ざしているのであります。すなわち、わが国における資本主義は、その過程において中小企業と農業の犠牲の上に急速な発展を遂げ、しかも、独占資本が形成された後においても、なお景気の変動に耐え得るためには、中小企業は、なくてはならないクッションとなってきたのであります。しかもなお、独占資本は市場の独占と独占価格の強制を行い、予てのため中小企業は抽出資本に従属することを余儀なくされ、その下請化、系列化することによって存立を保とうとしているのであります。このような不安定な従属的地位中小企業が置かれている限り、中小企業の健全な発展をはかることは、とうてい不可能なことであります。中小企業相互間の過度競争も、こうした産業機構に由来しているものであって、わが国の産業構造について何らの対策をも持たないで、目前の中小企業相互間の過度競争にのみ心を奪われているのでは、かえって一方で独占資本に対する中小企業系列化、従属化を促進し、他方では零細企業の淘汰、抹殺を強化する結果になり、より深刻な中小企業問題を再生産するだけであります。このことについて通産大臣の考えをただしたいのであります。  第三に、政府中小企業団体法案を今国会でぜひ通過させたいのかどうかという点であります。政府は、与党である自民党内の意見の不統一によって、昨年から準備しておったにもかかわらず、会期の押し詰った三月末にたって、ようやく総務会の決定を行い、商工委員会で慎重に審議することを条件にしております。国会で審議を慎重にすることは当然ですが、与党の総務会で、このような決定をしたのは初めてのことであろうかと思います。さらに、衆議院では、四月二日に上程する最初の予定を四日に変更し、内部調整の上、ようやく五日に上程されたのであります。大体、政府も与党も本法案について自信がないのではないでしょうか。政府が半年かかって慎重審議して決定した法案でありますが、完璧のものとは言えません。自民党の総務会で決定のように、委員会で慎重審議するには、余す会期の日数では不足すると思いますが、審議未了にするつもりか、それとも、あらかじめ継続審議になることを覚悟しての提案のように思いますが、大臣の御所見をお伺いいたします。  第五点は、法案の名称についてであります。中小企業団体法案は、最初に中小企業振興審議会からの答申の当時は、政府中小企業組織法案と仮称しておりました。今年になってからも、政府提出予定法案の中には、組織法という名称を使っていましたが、鮎川氏の中政連が、議員提案をあえて固執するものではないと言ったころから、いつの間にか、今度は政府案組織法案から団体法案に変ってきました。これは、中政連の意を迎えて団体法という名前にされたのでありましょうか。組織法団体法と、いずれがよいかと言いますと、組織法の方がいいように思います。元来、政府中小企案の振興のためには、中小企業合理化組織化が必要だと常に唱えてこられましたが、団体化という文字は全く使ったことがないではありませんか。団体と言えば、協同組合、信用組合企業組合等のほかに各種の団体がありまして、団体法は、およそ何でも団体を規制するように聞えるし、団体等規正令をも思い出させるのであります。むしろこの法案としては、組織法とか、組合法の方が適切だと思いますが、この点、どのように考えておられますか、お尋ねいたします。  さらに、団体法案なる名称についてであります。団体法案なる名称を中政連からの関係で使わなければならないとしたならば、何ゆえに団体交渉という文字を避けて、これを組合交渉に変えられたのか。団体交渉団体協約は、すでにりっぱな日本語になっております。わざわざ新しく組合交渉組合協約にした理由がわからないのであります。ことに団体協約は、すでに中小企業等協同組合法で使っておりますし、団体法案という名前がよいと思うならば、組合交渉より団体交渉の方が当然と思いますが、この点はいかがですか。いま一つ言葉の点を言いますと、政府案は、何ゆえに調整組合商工組合と言われるのか、商工組合は、前に商工組合法があって、一度使命を果したものであります。調整事業を行う組合としては、調整組合という文字が生れて、すでに数年を経過して、ようやく慣用されるに至りました。単なる名称の問題と言われるかもしれませんが、名称は実体を表わすにふさわしいものでなければならぬと思いますが、大臣のお考えをお聞かせ願いたいのであります。  次に、業種規定についてでありますが、その一つとして、強大な統制的機能を有するところの商工組合設立によって行われます調整活動は、一般消費者の立場を含めて、国民経済全体に及ぼす影響がはなはだ大きいのであります。従って、その対象となるべき業種は、国民経済全体の立場から厳密に検討され、特に法律でその対象業種を明記する必要があると考えるのでありますが、本法律案では、実質上いかなる業種でも行い得るようになっているのであります。こうした重要な事項について、何故に法律上その範囲を明確に規定しないのでありましょうか。  次に、強制加入についてでありますが、現行中小企業安定法には、いわゆる第二十九条命令があって、アウト・サイダーが調整事業の障害になる場合には、大臣の命令で、調整規定に従わせるところの命令を出せることになっております。しかるに団体法案では、このほかに強制加入命令まで出せるようになっているが、員外者規制命令でなく、強制加入を必要とするような事情は、統制経済の第一歩ということ以外に、どんな場合が予想されるのか、その具体的実例はどうか。さらに、強制加入は、憲法にいうところの自由の侵害になるのではないかという意見もあります。強制加入主張する人たちの中には、憲法第九条を無視してわが国では軍隊を持つに至ったではないか、そう言う者もあります。一体政府は、この法案が憲法違反になるかならぬか、その確信はどうか、確信があるとするならば、政府は憲法を尊重する意思があるかどうかを明確に御答弁を願います。  次に、政府案の大企業中小企業労働者に対する態度についてであります。政府案は、大企業に対してまことに弱く、中小企業に対しては冷淡であり、労働者消費者に対しては犠牲をしいるものではないでしょうか。大企業団体交渉をする場合、政府案では「その交渉に応ずるように誠意をもって措置しなければならない。」としているだけで、応諾の義務も与えておりません。また、これが協約の締結に至らない場合に、単なる主務大臣の勧告が行われるだけであります。社会党案が、「正当の理由がない限り応じなければならない。」と、応諾義務を課して、さらに協約の締結に至らない場合には、調整委員会裁定まで申請できるのと比較しまして、あまりにも大企業に遠慮しているように見えるが、政府の考え方をお聞かせ願いたいのであります。(拍手)  次に、中小企業者は、調整事業を行う場合に資金を必要とし。しかもそれは低利なることを要します。従って、中小企業安定法には、三十二条の二に、調整資金等に対する利子の補給をなし得るように規定しているのですが、政府案は、これを全く削除しております。社会党案が、この条文を第百十七条に入れているのと比較して、中小企業に対し親切を欠いているように思います。また、労働者に対しては、社会党案は、調整事業を行う場合に従業員に対し、事前に予告をしなければならないという条項がありますが、政府案にはこの親切さもありません。また、団体交渉をする場合に、調整事業組合は、組合員が使用する労働者組合とも団体交渉をすることになっておりますが、これも政府案には見当らないのであります。このように、政府案によれば、中小企業団体は、大企業に遠慮し、犠牲を労働者及び消費者にしわ寄せする傾向があると思いますが、この点いかに考えておられるか、明らかにしていただきたいのであります。  次は、公正取引委員長に対して、次の三点について質問をいたします。第  一点として、公取では、団体法案を最初に憲法違反と言って反対していましたが、強制加入命令のあるこの法案が、憲法違反でないという確信があるのでありますか、法律家のそろっている公取では、当然その点を慎重に検討されたと思いますが、その検討の結果をお聞かせ願いたいのであります。  第二点は、独禁法は漸次穴をあけられて、もはや単なる亡骸にすぎなくなっていると言う者があります。独禁法は、さらに本法案の成立の暁に、一そう大幅な除外規定を持つことになります。独禁法がなくなれば、公取の存在も危うくなってきます。従って公取としては、本法案を認めることは自殺行為にひとしいので、公取の立場としては、本法案の成立しないことを祈っているのではないかと思われますが、御所見をお聞かせ願いたいのであります。  最後に、公取との関係は、本法案の雑則の中に数カ条設けていますが、この第九十条の同意協議の項においてわずかに公取の面目を維持しようとしているように思えます。しかし、強制加入命令とか、員外者規制命令のごとき重要事項が、単なる公取との協議によって主務大臣の権限事項になっているのは、公取としては、すこぶる不満なのではないかと思います。協議さえすれば、公取が承知しなくても、主務大臣は命令を出せることになるだろう。そういうときに、公取としては、いかに員外者の自由なり、消費者利益を守ろうとされますか、明確なる御答弁をお願いいたします。  最後に、岸総理にお尋ねいたします。その第一点は、政府提出による中小企業団体法は、政府与党である自民党内部の、大企業を背景とする一部議員からの猛烈な反対があり、総務会において慎重に協議されたにもかかわらず、内部の不統一のまま、国会提出がなかなか困難であったのであります。最後に総務会では、商工常任委員会で慎重審議することを条件に、四月五日ようやく衆議院提出された、これは総理も御承知のことと思います。そこで、総務会決定の委員会での慎重審議とは、この場合、一体何を指しているものでありましょう。いかなる法律案においても委員会で慎重審議することは当然であります。しかるに、本法に対し特に慎重審議を条件としていることは、明らかに本法を継続審議にしようとすることを前提としているものだろうと思うのであります4今日、国民世論は、岸内閣は石橋内閣の身がわり内閣であるから、三十二年度予算が成立した後において、岸内閣は、当然解散して国民に信を問うべきが民主政治の根本理念であると批判しております。岸総理が真の民主政治家であるならば、この国民世論を無視することなく、内閣が解散をもってこたえられるものと私も判断いたしたいのであります。岸総理が、総理の良識によって内閣が解散を断行された場合には、政府の無責任から、継続審議として委員会に付託されている本法案並びに社会党提出による中小企業組織法案中小企業産業分野に関する法律案商業調整法案等は当然廃案のうき目を見なければなりません。従って社会党提出による組織法案外二法案の成立を心から念願してやまない全国中小企業が大きな失望を感ずることは、これまた明らかなことであります。岸総理は、かかる状況のもとに、解散する御意思をお持ちになっておられるかどうか、もし解散する御意思を持っておられるとすれば、その時期の見通しについて明確なる御答弁をお願いいたします。  次に、お尋ねいたしたいことは、社会党案政府案との相違の大きなものに、強制加入命令がないのと、あるのとの違いがあります。強制加入は何となく統制色の強化を思わせます。中政連の鮎川総裁は、三月五日の「中政連」という新聞に次のように言っておられます。「私が、中政連の仕事を始めて、そのスローガンを決定するとき、相当知識がある私の友人に相談した。そのときに、岸君にも会って「どうだ」と聞いてみた。すると先生は、すぐ貿易統制と中小企業組織化を取り上げて、この法律を作るときには強制加入制度がないとだめだ、ということをすぐ言った」。それで岸氏が総理大臣になったから、自分は大船に乗ったつもりだと、鮎川氏は言っておられます。総理と鮎川氏は、すでに統制を目ざしてこの法律の通過に努力しておられるのではないかという心配が各方面に出ております。特に岸総理が、東条内閣の商工大臣をしておられた当時の戦時統制を身をもって体験し、その脳裏に幻影としてまざまざ焼きつけられている国民としては、統制と言えばぴんとくるのは、官僚とボスとの結託の危険性であります。(拍手中小企業の振興が、官僚統制にすりかえられ、官僚統制、ボス支配に逆行せんとする危険に対し、総理はいかなる所信を持っておられるか、お尋ねいたしまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇拍手
  14. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えいたします。  中小企業組織強化して、その団結を強くしなければいかぬという声は、これは今日、中小企業に共通の強い要望であると思います。従って政府団体法を出しておるその前に、社会党組織法を出しておられるのも、全くこの中小企業が、組織強化し、その団結を強める、これによって業界の安定と中小企業の立ち直り、将来の繁栄を期するという考えに私はあると思います。従いまして、この問題は、中小企業問題にとりましては、最も大事な問題であり、また中小企業問題が日本の産業問題として、きわめて重要な意義を持っております限り、この法案というものの持つ意義はきわめて大きいと思います。従ってこの法案を十分慎重審議されまして、この国会において成立することが、中小企業者の要望であり、また日本産業界から見まして最も必要なことであると思います。従って私は、継続審議であるとか、あるいは解散とかいうものを、この問題に関連しては何ら考えておりません。  次は、調整事業の問題でありますが、いわゆる官僚統制になりはしないかという御批判なり、あるいは懸念というものが相当あることも私よく承知いたしております。なお、私自身が戦時中の商工大臣であり、いわゆる当時の戦時統制をやりました責任者であるということと結びつけて論ぜられる向きもありますが、この法案をよくごらん下さいますればわかるように、あくまでも業者の自主的な調整によって業界の安定をはかろうという考えでありまして、政府が介入するということは、あくまでも受け身でありまして、戦時統制というようなやり方とは全然違っておりまして、決してその御懸念はないものと私は信じております。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  15. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 第一の御質問は、政府中小企業対策についてでございますが、御承知のように中小企業は非常に多種多様でございますので、今年、中小企業実態調査を政府は本格的にやるという方針をきめまして、この予算を取っておりますが、実態の調査によって具体的に今後行われることと思いますが、いずれにしてもまず第一に、多種多様であっても、金融対策が中小企業にとって一番必要であるという考えから、今年度の予算におきましても、政府関係中小企業金融機関の資金量を大幅に増すというような措置をとっております。  その次に、税制の問題ですが、今度の改革によりまして、ことに個人企業者の減税は、おそらく平均三割前後の減税になっておると思いますが、中小企業の減税を中心として、私どもはいろいろと配慮をする、さらに中小企業合理化、近代化を行わせるためには、資本蓄積についての考慮をしなければなりませんので、その点の税制の改革もこの国会で行なっている、こういうようなことで、金融税制について、まず中小企業全般に対する対策をとっておりますが、いかにそういう対策をとっても、その効果があまり現われてこないということは、結局、不当競争をこのままにしておいたのでは、金融税制の対策をいかによくやっても、その効果が現われてこないということになりますので、組織化によって、初めて経営合理化とか、健全化の基礎を与えるというもう一つの仕事をしなければ、中小企業不況は克服できない、こういう考えで、今回この組織化法案を出したということになりますので、政府の考えとしましては、金融税制組織、この三つによって、中小企業の振興をはかろうというのが、大体私どもの一貫した対策であります。で、その線に沿って、ことし予算が少し少いではないかというお話でございましたが、その線に沿って政府がやろうとする場合に、個々の企業への補助金を、ただ少し増額するというだけでは解決しませんので、従来やっておった技術の指導とか、あるいは合理化の補助費というようなものは、昨年よりは大幅に増額はいたしましたが、しかし全体として、むしろそういうことをするよりも、中小企業合理化金融をつけるためには保証力を拡大することが一番いいのではないか、こういうふうに考えまして、信用保証の保証能力を拡大するために、ことし十億円政府が予算に計上したというようなことで、これによって百何十億円の保証能力の拡大ということができますので、補助金を少しずつ上げて行くということより、むしろこういう政策の方が、中小企業には直接響くのではないかということで、その方に力を入れましたので、今年度の予算がそう思い切ってふえていないという事情もございますが、この点は御了承を願いたいと存じます。  それから政府及び与党は、今国会でぜひこれを通過させるつもりかというお話でございますが、これはぜひ通過させていただきたいと考えます。継続審議などということを最初から考えておるわけではございません。先ほど総務会のお話や何かがございましたが、それは継続審議にするという意味ではございませんで、これはすでに野党の方がとくに御承知のようでございますが、強制加入という問題で政府部内が完全に一致したということではございません。公取委員会からは意見が付せられております。その意見に対して、私どもが検討しました結果、公取委員会が心配する理由相当あると思います。しかし、それは政府調整事業の認可に当って、政府の認可はいいかげんじゃないか、甘いじゃないかということを前提とした意見でございまして、政府は関連産業者とか、一般消費者に迷惑をかけるようなことは、そうさせないのだ、そういうことは認可しないのだという、運用において救われる問題でございまして、政府の運用がよろしきを得たら、公正取引委員会が心配するような事態は起らぬと、私どもはこう考えまして、これを国会に閣議決定して提出した次第でございますので、その点において、そういう問題があるから、委員会で、特に一つ慎重審議をお願いしたいという意味でございまして、決してこれを継続審議にしたり、今国会で通さないつもりだというようなことで、この法案提出したのではないということを御承知願いたいと思います。  それから組織法団体法の名称の問題でございましたが、これは実際に申しまして、私どもの方には、何らの他意がございません。政府は最初、組織法という名称で政府立案をやりました。ところが途中で、これは政府立法でなくして、与党の議員立法でやったらどうかという問題が起ってきました。と申しますのは、社会党からすでに議員立法でこの組織法案というものが出されておる。与党側も、むしろそうなれば与党立法でやった方がよくはないかという話が、政府と与党の間にございましたときに、政府与党が合同してこの法案審議しておるときに、与党側の意見で、一応、団体法という名前にする方が、すでに社会党提案もあるので、まぎらわしくならぬからというような意見で、そうしただけで、ほかに少しも問題はございませんので、政府としましては、団体法案でも組織法案でも、名称の問題には一切こだわらないつもりでおります。  それから団体交渉組合交渉にかえた理由でございますが、これは先ほども申しましたように、いわゆる団体交渉という、労働組合企業家の間に行われている団体交渉という既成の言葉がはっきりございますが、内容も方法も、その効果も、全然この商工組合が行う交渉とは違っておりますので、それがあたかも類似のものであるというような印象を与えないために、その誤解を避けるために、実質が違うのですから、むしろ名前を変えるべきだということで、団体交渉というのを組合交渉ということに変えた次第でございます。  さらに、調整組合商工組合という名称にした理由はどうかというのですが、これは安定法における調整組合では、経済事業は行うことができませんでした。それからさらに、工業部門には調整組合が許されましたが、商業部門には調整組合は許されておりませんでしたが、今回新たに商業部門組合を作ることができるということに直しましたので、実際において今まで使われておった調整組合というものと変って参りましたので、むしろこの混同を避けるために、実際に実質に近い名前を与える方がいいのではないかという考えから、調整組合という名前をやめて、商工組合という名前にした次第でございます。  その次に、調整行為のできる範囲をなぜ限定しないかという問題でございますが、これは新たに商業が加わるということになりますと、なかなかその実態は多種多様でございますのと、地方的にいろいろの違いがございますので、これの範囲を一応指定するということは、事実上非常に困難だという点が一つと、そのほかにこの調整事業をやるという場合には、どうしても緊急の必要があって行う場合が多いのでございますからして、そのときに、緊急の必要が出たときに、一々政令で範囲を指定するというようなことをしますというと、それだけ組合の結成がおくれるということになりますので、むしろ非常のそういう事態克服の必要が起ったというときには、急速にこの調整事業ができるように、政令で範囲を指定するということをやめたというのがおもなる理由でございます。  それから強制加入命令はどういう場合に実際やられるかということでございましたが、これはあらゆる調整事業を行なっても、特定の員外者が非協力であるために、どうしても事態の克服ができない。しかもそれをそのまま放置しておいたら、国民経済にいろいろな影響を与えるのだというときに限って、この強制加入命令が、業界の申し出によってなされるという立場になっておるのですが、従来なら、そういう事態に立ち至ったときは、員外規制命令というものを出すというのが安定法のときのやり方でございましたが、もし商工組合が自主的にそういうものを克服できる力を持っておる、持っておる場合であったとするなら、これは員外命令政府が出すという方がむしろ強権的な措置になりますので、そういう員外者組合の中にみんな入れて、そうしてお互いに組合の中に入って、自主的に調整事業に参加させるという措置をとらせる方が、私どもはむしろ民主的なやり方ではないか。命令でやるよりも、一応中に入れて、調整に参加させるということの方がむしろ民主的だと、こういうことを考えて、いきなり員外命令ということにしないで、こういう加入命令というものを考えたわけですが、よくよくの場合でないと、こういう事態は起らないのじゃないかと思います。今私どもが考えられる問題としましては、国内のほかの産業については、こういう事態技術的にも実際的にも起らないのじゃないか、むしろ輸出企業に関して、この必要の出てくる場面が今後あるのじゃないかと一応予想している次第でございます。  その次は、消費者労働者に犠牲をしいはしないかという問題ですが、これは先ほど申しましたように、関連者に対する犠牲というようなものがはっきり見られるというときには、これは政府が認可しない、そうして先ほどの強制加入とかいうような必要が起ったときは、政府自身の認定ではやらない、関連者がみな入っていただいた審議会意見を聞いて、そうしてその十分の検討の上に行われるということになっておりますので、こういう犠牲をしいるという事態は、そう起らないだろうと思っています。で、大命業に対して非常に甘いというような問題でございましたが、これはもともと中小企業が自分自身の力で事態の克服をするということを建前にしており、その限りの調整事業に関して一般の協力を求めるという立場になっておりますので、これを強制調停をやって片づけるとかいうような性質のものではなかろうかと思います。必要な場合、政府が委員会の意見を聞いて勧告する、そうしてお互いに取引関係とか、競争関係に立つ中小企業と大企業とが話し合いによって自主的に調整して行く、そうしてそういう方向へ指導するのが、この本法案から見ても正しい行き方であって、ここに強権を入れるというような事態は避けたいというのが私どもの考えで、こういう法案にした次第でございますので、この点も御了解を願いたいと思います。  それから憲法違反の問題がありはせぬかという御質問でございましたが、これは政府部内において、法制局においても、公正取引委員会においても、こういう一般の国民の公共の福祉に関係するという事態に対する、こういう臨機過渡的な措置は、憲法違反にはならないという法律の解釈論では、政府部内は全部一致しておることも御承知願いたいと思います。(拍手)    〔政府委員横田正俊君登壇
  16. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 私に対する御質問は三点ございました。  最初の強制加入命令が違憲ではないかということにつきましては、ただいま水田通産大臣から政府の考え方をお答えいたしましたのでございます。公正取引委員会といたしましては、この加入命令の問題につきましては、終始、独占禁止法の観点から好ましくないというふうに申して参ったのでございます。その考え方は現在でも変っておりません。なお、この法律強制加入制度の具体的の運用の面につきまして、もし行き過ぎがございますれば、やはりなお憲法違反の問題は残り得るかと考えております。  それから次に、大へん大幅な適用除外規定が設けられて、独占禁止法が骨抜きになるのではないかという御心配でございまするが、この法案の原案が作られましてから後、公正取引委員会といたしましては、あくまでも独占禁止法の観点から、この法案に検討を加えまして、中小企業庁その他と鋭意折衝を重ねました結果、幾多の点におきまして、われわれの意見に基きまする修正がこの法案に加えられておりまして、大体この程度でございますれば、運用よろしきを得れば、独占禁止法が必要以上に弱まることはないというふうに考えております。  なお、強制加入命令、員外規制命令につきまして、公正取引委員会の同意を必要とせず、協議で足るという点がいかぬではないかというような御質疑でございましたが、これは御承知のように、輸出入取引法あるいは中小企業安定法におきまして、すでにそういうことになっておりまして、その同意を協議に改められましたのは、三十年の法律改正のときに、そういうふうになりました。しかしながら、その際に参議院におきましても、衆議院におきましても、同意を協議に改めても、実際の運用の面については、公正取引委員会意見を十分尊重すべきものという付帯決議を委員会においていただいておるのでございまして、従いまして、今回の法制の運用につきましても、この両院の付帯決議の御趣旨に従いまして運用いたすよう、関係官庁と十分の打ち合せも済んでおる次第でございます。     —————————————
  17. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 加藤正人君。    〔加藤正人君登壇
  18. 加藤正人

    ○加藤正人君 ただいま上程されました中小企業団体法案に対しまして、以下私に許されました十分間、主として経済的な観点から、その大綱について若干の質疑をいたしたいと思います。  もとより、中小企業組織強化して、現在のあまりに過当なる競争を抑制して、その経営の安定化をはかるということの必要なことは論を待たないことであります。今日までの立案の過程におきまして、漸次法案概要が明らかになるに伴いまして、言論界はもとより、当の中小企業自体の中からも鋭い批判が高まりつつあることが物語るように、立案者の意図するといなとを問わず、本法案には独善的な多くの行き過ぎがあり、日本経済全般の見地からも、また真の中小企業対策としての見地からも、にわかに賛同しがたい重大なる問題を内包しておるのであります。本法立案の過程におきまして、できるだけ弊害を未然に防止するために、当初の案よりは、はるかに厳重なる幾多の条件が付加された由でありますが、そのこと自体が何よりも雄弁に本法の持つ危険性を物語るものと考えねばならぬのであります。かかる見地から、私は本法案のごときものは、あえて必要とせず、現行中小企業安定法を改正、活用すれば、それで十分所期の目的は達成し得るものと考えるものであります。  そこで、質問の第一点といたしまして、私は岸総理大臣に伺いたいのでありますが、本法案は、戦後における画期的な統制法規であって、統制が統制を呼び、やがて全面化する危険性はないかという点であります。すなわち、これが画期的な統制法規であるゆえんは、生産数量の制限原料購入数量制限、あるいは料金、価格の制限等の広範なる調整措置、すなわち統制行為を、ただに工業部門に限定せずして、広く商業サービス業等、産業経済の全分野について認めておること、あるいは戦後のこの種の立法が、いずれも加入、脱退の自由の原則を貫いているのに反して、本法においては、とにかく強制加入制度を認めておること、さらには組合交渉、以下わかりやすく団体交渉と言いますが、この団体交渉の締結について、政府が勧告権を握ってこれに介入せんとしておるということ等に端的に現われておるのであります。不況克服のためのある程度の調整措置の必要なことは、もとより論を待ちません。すでにそのための立法が存在しておることはまた言うまでもないのであります。  ここで、われわれが特に注意しなければならないのは、本法案が他の同種立法と根本的にその事情を異にするということであります。すなわち、日本産業経済に占むる中小企業の圧倒的地位から見まして、これが統制化は、即日本経済の統制化であると言っても、あえて過言ではない。また一口に中小企業と申しましても、その規模、業態、あるいは利害関係等、実に千差万別、これを一本にまとめるということは、なかなか容易のわざではないと想像されるのでありまするが、一たんその統制化に乗り出した以上は、さらに統制の強化が必要となり、ついには国家権力を背景とする全国的な官僚統制へ、極言すれば経済警察的なものの復活まで発展しかねないのであります。もっとも、政府説明によれば、このような調整行為の認められるのは、過当競争によって中小企業経営がきわめて不安定になっている場合に限られるのであって、いわば臨時的、短期的のものであるということである。しかしながら、工業部門だけを対象とする現行中小企業安定法施行されて以来、すでに四十七業種について調整組合設立され、しかもいまだ、ただ一つ組合も解散されず、依然統制行為が縦続されているという事実から見ても、臨時的、短期的であるといっても、決して半年、一年の短期間のものではあり得ないのである。統制のもたらす弊害は今さら喋々を要しないところであって、この意味において、前述した中小企業の特殊性にかんがみ、統制が統制を呼ぶ危険性について、岸総理の所見はいかがでありますか。なお、これに関連して、公正取引委員長と通産大臣に伺いますが、強制加入制度は違憲であるという疑いもあり、かつ、員外者の規制の方法としては、アウト・サイダー命令だけで必要かつ十分であると思うのでありますが、かような疑いを含んでおるかような法律が、何ゆえに早急に取り上げられなければならぬか、むしろ、これはしばらく時を研究に費して、全く中小企業のためになる法律を立案すべきであろうと私は思うのであります。また、団体交渉に関する政府の勧告権は、私企業の商取引の内容に介入せんとするものであり、かつ将来裁定権へと発展するおそれもあり、官僚統制化を防ぐ意味において削除すべきであると思うが、この点についてお考えはないかということであります。  質問の第二点は、本法案はいたずらに大企業中小企業の対立を激化し、中小企業自体の立場をより困難なものとするおそれはないかという点であります。この点は岸総理に伺いたいのであります。すなわち、団体交渉権というような労働法的な概念を私企業の商取引の面に適用して、相手側に応諾の義務を課し、大企業中小企業の立場を全く対立的な関係において処理せしめんとするがごときが、果して妥当であるか。経済はすべて需要と供給との関係によって律せられることは言うまでもない。大企業中小企業関係もまたその例外ではない。先ほどこの関係を隷属的というような言葉を使われた人もありますが、今日におきましては、輸出産業の面においては隷属どころではない。互いに緊密に提携しておるわけでありまして、どちらを主としておるということはないのであります。このような経済の原則を労働法的なセンスで処理せしめんとするがごときは、有形無形の甚大なる弊害をもたらすものではないかという点であります。もちろん、この団体交渉権が常時ほしいままに許されるものでないことは当然であるが、それにしても、前述のごとき弊害を馴致するおそれがある。この点について、さらに御見解を伺いたい。なお、これに関連して、公正取引委員長と通産大臣に伺いたいのでありますが、この団体交渉に対する対抗手段として、当然大企業のカルテル化を招来して、かえって中小企業の立場を弱化するおそれはないかという点、また、大企業をして中小企業への下請発注を忌避せしめ、その結果、中小企業の活動分野をみずから狭める結果となりはしないか、御見解を伺いたいのであります。  質問の第三点といたしまして、これは通産大臣に伺いたいのでありますが、本法案は、わが国経済の至上命題である輸出振興を阻害しないかという点であります。すなわち、わが国生産流通機構は、きわめて複雑でありまするが、団体交渉権が付与される結果、この複雑な生産流通の各段階ごとに、それぞれ団体交渉が持たれるような場合、団体交渉の通弊として、くそもみそも一緒にした最も高い線が画一的に主張され、その結果は、コストが必要以上に上へ上へと押し上げられ、輸出振興上重大なる支障となるおそれはないかどうかということであります。また、現在のわが国の貿易は、大企業であるメーカーと輸出商社が海外市場を開拓し、それぞれの市場に適した商品を選定して、これを下請企業に発注するわけでありますが、この場合、大企業は優秀な中小企業を選別して、これに技術の指導をいたすということはもちろん、資金、資材面にわたって必要な援助を与えて、相ともに輸出振興に努めておるのが現状であります。このような大企業との紐帯の強い優秀な中小企業も、本法案によって横からの強い画一的の規制を受け、たとえばその企業は特別の技術のため、あるいは輸出関係等から繁忙をきわめておっても、横からの画一的な規制を受けて、縦の関係が遮断される。その結果、技術、品質の低下となって、輸出振興が阻害されるおそれがきわめて強いのであります。すなわち、グレシャムの法則が働くような心配はないかということであります。あるいは現行中小企業安定法によっても、このような顕著な弊害はなかったと説明されるかもわからぬのでありますが、中小企業安定法と本法案の影響力は、同日の断ではないと思う。これは私の最も心配するところであります。  はなはだ、十分間で意を尽さぬのでありますが、どうぞ御答弁をお願いいたします。私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇拍手
  19. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  この団体法商工組合において調整を行うということは、言うまでもなく、中小企業過当競争による共倒れ的状態を救い、これによって業界を安定せしめるためには、この組合員が自発的に調整の仕事をしたいと、こういう考えに到達して、そうしてその調整の仕事を自主的にやるというものを、政府は受け身になって、これが円滑に行くように指導して行くという考えを持っておるのが、この団体法の根本の考え方であります。見ようによりますというと、そういう弱い力ではいかぬじゃないかという一方から批判があると同時に、一方から、そういう仕事をすれば、あるいは戦時中の戦時統制みたいなものが復活するのじゃないかという、両面からの批判があることは御承知の通りであります。加藤君もよく御承知の通り、戦前におきまして、中小企業、特に綿業等におきまして、紡績連合会と細工連との間における協力がうまく行って、そうして日本の綿業が非常に発達した過去における経験をわれわれは持っております。業界が非常に数が多く、また技術的にも、あるいは設備の上におきましても、信用の上においても、いろいろ千差万別であるところのものを、個々にただ施策して行くということは、これは非常にむずかしいので、これが組織化されるということは、これは決して中小企業だけじゃなしに、その業界全体の安定のために、また繁栄のために、また日本の貿易振興のために私は必要である、こう考えております。決して、いわゆる統制が統制を生むというような性質の調整事業内容ではないのであります。  また、いわゆる団体交渉という点でありますが、これも労働組合等の団体交渉、あるいは団体協定というようなことと本質が違うという意味におきまして、組合交渉という言葉をもって表現しておるのでありますが、これも当該組合調整事業を円滑に実現するために、大企業の協力を求めなければならないというような場合において、組合代表が大企業と話し合うということでありまして、決して労働組合等のいわゆる団体交渉権というような毛のを、この産業界の中へ入れようという考えではないのでありまして、これらは法案をよく御検討いただけば、そういう御心配は絶対にないと私は信じております。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  20. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) アウト・サイダーに対する命令だけで十分ではないかということでございましたが、これも先ほど申しましたように、もし中小企業業界自身が自主的な調整能力を持っていないという場合には、アウト・サイダー命令を出す以外には効果を期待できないと考えますが、そうじゃなくて、業界自体が自主的な調整能力を持っておると認められる場合には、員外命令ではなくて、その組合の中に加入させて、内部において調整に協力させるというやり方をとる方が、むしろ民主的なやり方である、こういうのが私どもの考え方であります。  それから組合交渉についての政府の勧告権は、すぐに裁定権へ移って行くのではないかという御心配でございますが、これはただいま総理からお答えになりましたように、労働者企業者の間の団体交渉とか、労働争議というようなものとは内容が全く違いますので、裁定というところへ持って行くべき性質のものではないという考えから、政府の勧告ということを考えた次第でございますので、この勧告が当然の道行きとして裁定へ移行するというようなことは、政府としては考えておりません。  それから、対抗手段として、大企業のカルテル化を招来するとか、あるいは中小企業への発注を忌避するようなことにならぬかということでございますが、もし調整事業相当めちゃなことをやるというようなことでしたら、大企業との問題が起るかもしれませんが、これは法案で御承知の通り、そういうことはできないことになっておりますので、その点は心配ないと思いますし、また、大企業のカルテル化を招来するというようなことでしたら、これこそが独占禁止法の最も対象としている問題でございますので、こういう問題はあり得ないことと私どもは考えております。  それから貿易振興上大きい障害を起さないかという御心配でございますが、これは今までの実績から見ますと、親企業との系列化ということが、製品の優良化とか、また中小企業自身の安定というものに非常に寄与し、輸出貿易の上に大きい寄与をしておることは御承知の通りでございます。この法案によりまして、この関係が害されることがあるかと申しますと、これもさっきお答えしましたように、そういう問題は実際には起らないだろう、と申しますのは、現に親企業との間には、下請企業は下請企業協同組合によって、すでに組合交渉というものを実際にやって円満にきておるというのが実情でございますので、今度私どもの考えておりますのは、こういう下請企業系列化企業が横の調整事業を行うということは大体認めないことになっております。従って下請組合というようなものは、この法案で認めておりませんので、むしろ親企業との関係は、協同組合によって円満にやって行くということを望んでおりますので、実際の形としては、そういう形で解決をされるでしょうし、従って商工組合の中で系列化を害するようなことについては、組合員としては賛成しないという事態が起ってくると思いますし、安定法によってみられました五年間の経験によりましても、こういう問題が起らなかったというのも、そういう点にあると思いますので、この点も、私どもはあまり心配ないじゃないかと考えております。(拍手)    〔政府委員横田正俊君登壇
  21. 横田正俊

    政府委員(横田正俊君) 強制加入制度に対しまする公正取引委員会の考え方は、先ほど申し上げた通りでございまして、その点につきましては、国会における審議の過程におきまして、ただいま通産大臣から申し上げましたように、慎重なる御検討をわずらわしたいと考えております。  なお、大企業の対抗カルテルの問題につきましては、カルテルがカルテルを呼ぶという弊害のあることは御承知の通りでございますが、大企業のカルテル化につきましては、独占禁止法の適用を除外しないことになっておりますので、この点も、われわれの方で、そういう弊害のないように十分監視して参りたいと考えております。     —————————————
  22. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 奥むめお君。    〔奥むめお君登壇拍手
  23. 奥むめお

    ○奥むめお君 今日の中小企業団体法提案に当りまして、提案者も、質問者も、回答する人も、みんなが消費者の立場を考えているということを、そろっておっしゃって下さったことは非常に満足するところであります。しかし、この中小企業団体法施行されましたならば、きっと消費生活、ひいては国民生活文化の向上に犠牲のしわ寄せを与えるであろうという不安を私は持つのでございます。  私は、まず総理大臣に伺いたいのでありますが、戦時統制の苦い経験をなまなましく今なお持っておる消費者は、物を買う生活にまで強権が発動されて、そのしわ寄せを受けるということは、とてもがまんがならない。で、医師会が診療拒絶をしまして、患者が泣いたり、ストライキで国民大衆が非常に迷惑を受けた。あるいは大企業のカルテルで、私たちが物がなくなったり、あるいは物価が上ったりして、非常に困ってきた。こういうふうなことが、また今新しい団体の暴力が、国民生活の犠牲をしいるらしいと思うこの法案の本質を、いろいろ不安に見守っているわけでございます。その点につきまして、私は例をあげて、総理に考えてもらいたいと思っていることは、これは中小企業者全体の要望によると繰り返し言われておりますけれども、中小企業者の中に、非常に反対の強い意思を持っている者もあるということ、ことに、まじめにその業にいそしんで、営業に努力を一生懸命やって行こうとしている中小企業者が、だんだんに推移して行くうちに、この法案をめぐっていろいろ変なことが行われている、圧力がかかってくる。だから、いよいよ法律の内容を見なければならなくなって、見て参りますと、これはうっかりすると、非常に自分たちの創意、営業努力まで圧迫してくるのじゃないか。これでは、やっと一生懸命にサービスに骨折って、品質を改善して消費者に喜んで買ってもらおうとしてきたのが、できなくなって、どういうことになるか、組合のボスが圧迫するようなことになるのじゃないか、こういう心配から、反対に回る者がどんどん多くなっている。で、主婦連合会のほんの一例を申し上げますならば、とうふの今値上げの問題で、一丁十五円が普通でありますが、これを同業者が集まって、機械化にいたしました。ところが機械化いたしますと非常に安い原価でできる。だからこれを八円にも売れるのだ。原価計算を持ってきて、そうしてこの通り、とうふを機械化すると安くできるのだから十円で売りたい。そこで、われわれは十円とうふというものを支持いたしました。ところが組合が、みんな一緒くたにして、とにかく十五円でなくちゃならない。そういうことで値下げを拒んでしまった。こういうことは幾らでも、私ども例を出すことができますが、値上げがきまるたびに、組合員の中から、消費者団体である主婦連合会に泣き込んできまして、あるいは原価計算表を見せたり、あるいは貯金帳まで見せて、この通り商売は成り立って行くのだ。しかし、今度組合長なり、あるいは幹部が、区会議員に立とうとしているのだ、あるいは何かの名誉職に上ろうとしている。あるいはみんなの人気をとろうと思って、私たち何も知らぬうちにそれをきめて、おっかぶせてくる。まことに困ったが、われわれから言えば、お客さんにサービスすることを第一にして、いいものを作るように努力しているのだけれども、まことに申しわけないことだ。こういう訴えがしばしばあるのでございます。こういう点につきまして、総理、また通産大臣は、いかがお考えですか、こういうことが将来いよいよ多いのじゃないか。一なお、総理に、私は営業道徳について伺いたい。営業倫理について伺いたい。それはそういう良心的な者が、業者の中にいろいろあって、一生懸命サービスしているときに、組合がこれに圧力をかけ、しかし、結局物を売ることも、作ることも、これは一般国民の消費生活のためにあるのですから、生産者も消費者も、またこれを卸しする人も、販売する人も、みんなサービス第一にして業を営むべきものであると思うのでありますけれども、この法案は、この営業の倫理性について考えていない。これはどうしたらいいのかという問題でございます。なお、自民党の経済政策の基調をなす自由主義と、官僚統制の色濃いこの法案とは矛盾するものではないか、なぜ、こういうふうなものを出すようにおなりになったか。  なお、通商産業大臣に対しまして私が伺いたいことは、過度競争を防止するためと称して、画一化をはかっているのは、これは結局国民生活の消費面を圧迫するものと考えるがどうであるか。そして流通機構の近代化ということを、私たちは一番強く願っているのでありますが、また、今こそ国内の国民生活向上のためにも、輸出の振興のためにも、日本の信用を取り戻し、不良悪貨を駆逐するためにも、やはり一番中小企業の安定ということが必要であるのでありますけれども、それはあくまでも中小企業者とともに、消費者も大企業者一体になって努力するところにあるのであって、消費者中小企業者を対立させるというこの法案は、私どもには納得がいかない。これをどうお考えになるか。また、消費者の発言の場を広めて、消費者を教育して、これを高めて行くという必要を認めていらっしゃらないかどうか。通産省は、業者に奉仕するだけであって、この業者対象である表裏一体をなすところの物を買う人、使う人、これらに対しての消費者の立場を理解すること、はなはだ薄い。また、消費者教育ということは、日本では学校の教育にも入っていない、もちろん通産省は、業界へのサービスに、まるで一生懸命のようでございますが、これを改める意思はないかどうか。また、この法律に基いて、いろいろの委員会がありますが、この中に消費者代表ということが初めにあった。ところが削られている。どうしてこれを削られたか。また、現在の業者の安定と繁栄をはかるためには、当然考えられることは、これからあとに開業したいとしている者、あるいは非常に零細で、この組合の網にもかかりかねるようなものは、勢い同業組合の話し合いによって整理されたり、あるいは規制を受けるようなことがありそうに見えるけれども、これがないという保証を持っていますかどうか、これを伺いたい。  また、本法案によりまして団体交渉をきめてありますが、これを縦の系列に従って団体交渉するのはともかくとして、横の系列、つまり横の系列の相手方については、政府できめると書いてあります。しかし消費者とか、農民とかの自主的な組織を、はっきりはずすと明記しなければならないのではありませんか。団体交渉の成果が、消費者に不利益になるときに、それでは一体どう対処するお考えであるか、これを伺いたい。  なお、大蔵大臣に対しては、先ほどのいろいろの通産大臣の御答弁でも出ましたけれども、数字を詳しく、中小企業のために税金の面、融資の面で示してもらいたい。これは、こういう一片の法律よりも、今、中小企業が生き返るために、立ち直るためには、ほしいのは金である、税金をまけてほしいことだ、そうして企業をもっと合理化したいのだ、設備をよくしたいのだ、これが一様の意見であるからであります。  なお、社会党に対しまして、私は社会党案は、初めに政府案と同じように強制加入を入れていましたけれども、今、はずしてあります。どうしておはずしになりましたかということ、団体交渉の相手から非営利的なものをはずすと書いておられますが、どういうものを非営利的なものと認めていらっしゃいますか、これを一々伺いたい。  それから価格や料金や取扱い数量や、その他の協定、規制につきまして、政府案社会党案も、公取の同意があればできるとなっておりますけれども、今も現に、いろいろこの組合による協定値段が行われて国民が困っているのであります。また、同業の商売をしている人も、それで困っているのであります。これを社会党はどうお考えになるか、どうしても、こういうことを中小企業者がするならば、中小企業者はみんな安定して救われるものだとお考えになるかどうか。これについて伺いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇拍手
  24. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  この法律は、先ほど来繰り返して申し上げておるように、中小企業の間における過度競争を自主的に業者団体においてやって行く、調整をして、そうして業界の安定をするというのがこの調整事業のねらいであります。決して戦時下における戦時統制のごときものを考えておるのではないのでありまして、しこうして業界が、そういう過度競争を自分たちの自主的な方法によって調整するという考えと、いわゆる自由競争経済の自由主義というものとの関係はどうだという点になりますというと、いわゆる統制経済というものが自由経済、われわれが考えておる自由経済とは対立した考え方でありますが、われわれは、自由経済のもとにおいて正常なる健全なる競争というものは、これは産業の発達、また各人の創意によって、事業のあらゆる面における発達の基礎である。かように考えておりますが、しかし、この自由競争過度になり、そうしてそれが業界全体の不安定を来たし、さらにひいて国民経済に非常な不安を与えるというようなことになれば、これはやはりいわゆる競争の弊害でありまして、そういうものについて業者が自覚して、そうして自主的に調整をしようという考えに出るのが、この法律のねらいであります。従いまして、競争が健全に行われておる限り、商工組合等の設立、いわゆる調整事業は認めないのでありまして、私は、この正常なる競争によって消費者利益が正当に擁護されるということが自由経済において必要である、こう思うのであります。もちろん産業界全体、特に商業部門やサービスの部門における商業道徳の問題及びこの倫理の問題につきましては、これは法制の問題ではなくして、私はやはり一般のこれは社会教育の問題で、また全体の社会道義の問題で解決しなければなりませんので、従ってこの法律は、そのことを直接には規定しておりませんけれども、しかし、健全な競争によって業界を安定する。不当な過度競争調整して行くということができ上りますならば、私はこれによって健全な中小企業経営というものが作り上げられる、それは望ましいことである、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  25. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいまの御質問は、商業部門調整事業を行わせることによって消費者利益を害さないかということを中心にした御質問だと存じます。  それで、先ほど例をあげられましたが、この企業を自由競争によって健全化して行かせるというのは、もうこれは方針でございますので、自由競争によって企業が成り立っている限りは、これは決して不況事態ではございませんので、そういう場合、商工組合の結成というようなことは、またあり得ないと思います。たとえば、とうふを二十円にしても三十円にしても、これがどんどん売れてお互いに競争が成り立って行くという状態でしたならば、とうふ業にとっては、これは好況現象でございまして、全然この商工組合の結成を認めるというような事態はございません。問題は、その業界がいろんなことをしてみても、お互いに景品つきの乱売を控えようとか、量目は正しくやろうじゃないか、そうしてお客サービスを満点にしながら、この不当な、共倒れのようなことにならない措置をお互いに講じようじゃないかと、そういう心配が出てきたときに初めて商工組合の結成、調整事業というものは許されるのでございますが、その場合におきましては、今申しましたように、あらゆる調整事業をやって、お客のために迷惑をかけないということをやってみても、何としてもこれでは企業が成り立たないから、値上げを少ししたいというような問題がかりに起ったとしますというと、それは先ほど申しましたように簡単にできない。いろんな調整事業とあわせて価格の制限ということもやらなければならないし、その場合には、果してそれが消費者利益を害するかどうかの認定を政府もやりますし、また、審議会がこの認定をやる、そうして公正取引委員会の同意がなければできないというような厳重な縛り方をしておりますので、先ほど申しましたように、そういう事態は、簡単にないだろうと申しましたが、その場合に、審議会の中に消費者代表を入れないということはけしからんじゃないかというお話がございましたが、これは間違いでございまして、消費者代表も、審議会の委員の中には入ることになっております。ただ法律用語として、いろいろ前例もございますので、「学識経験者」という字を使っておりますが、この中に、当然消費者代表が入ることになっておりますので、この点も御承知願いたいと存じます。    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  26. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 中小企業に対しましての金融、あるいは税制上の措置を詳しく数字をあげてというお話でございます。  本年度の予算におきましては、財政投融資方面におきまして、国民金融公庫に二百億円、中小企業金融公庫に二百億円それぞれ増加いたしました。昨年よりも相当ふえておるのでございます。また、不動産銀行に七億五千万円の出資をいたします。また、商工中金に対しまする出資並びに融資を加えますると三十五億円になっておる。合計四百四十二億ほど出しておるのであります一昨年の二百七十億に比べますると相当増加したのでございます。これを五、六年前の状況に比べまするというと、商工中金は当時二、三十億円の融資でございましたが、今年度は六、七百億円に相なります。また、新たに最近できました中小企業金融公庫も、今四年ほどやっておりまするが、これも六、七百億円の融資になっております。国民金融公庫も同様六、七百億円の融資をやっておるのであります。五、六年前に比べますれば、この政府関係金融機関の中小企業に対しまする融資は、画期的な増加状況でございます。  なおまた、民間の相互銀行あるいは信用金庫と合わせましても、大体七、八千億円の中小企業の融資が行われております。また、いろいろな組合等から考えますると、中小企業に対しまする金融は、かなり伸びて行っておるのでございまするが、今後とも政府関係機関はもちろん、民間の相互銀行、あるいは信用金庫を育成いたしまして、中小企業金融に万全を尽したいと思っておるのであります。  なお金利の点につきましても、国民金融公庫、あるいは中小企業金融公庫は相当低利でございます。問題は商工中金の金利が二年以上のものは一割一分五厘程度になっております。平均いたしまして、昭和三十二年度からは平均の金利を一割以下にするように、政府の出資もふやす等、いろいろな方法を講じまして、中小企業への金利の低下ということを考えております。また、金利の低下と資金量をふやしましても、資金状態が十分でないときには金融の道が開けませんので、信用保証協会に今回は新たに初めて十億円の出資をいたしまして、保証の道のできるようにいたしておるのであります。  次に、税金の問題につきましては、所得税につきまして大幅な減税をいたしました。また法人税につきましても、従来五十万円以下の所得の法人に対しましては三五%でございましたが、これを百万円の所得まで三五%の定率課税を伸ばして行く、また、問題の地方税でありまする事業税でございます。これは個人事業税につきましては、従来八%のものを六%に下げ、また法人事業税では五十万円以下のものを八%を六%に、一二%を一〇%に、こういうふうにいたしておるのであります。ことに今回は、固定資産の再評価を中小企業にも認めまして、減価償却の適正を期し、課税の公平をこいねがっておるのであります。  以上、簡単でございまするが、答弁といたします。(拍手)    〔衆議院議員永井勝次郎登壇拍手
  27. 永井勝次郎

    衆議院議員永井勝次郎君) 奥むめおさんのお尋ねにお答えをいたします。  わが党の中小企業に対する基本的な考え方は、中小企業の保護ではないのだ、振興である。強制ではなくて、中小企業の自主的な立ち上りを期待する組織を作るのだ。それから協同組合は、みんなが喜んで入る組合でなければならない。従って強制する必要はない。それからもちろん国民経済的な立場で問題を考えなければいけませんから、大企業のことももちろん考えますが、それよりも一番この運動を進める上にしわ寄せをされると思われる消費者などの立場については、十分に尊重しなければならない。かような考え方に立ちまして、この法律を作りました次第であります。従ってわが党は、中小企業だけの組織を作るのではなくて、国民全体の中で問題を考えます。そうして法律だけではなくて、先ほども申しました通りに、産業分野の確保に関する法律、あるいは商業調整、先ほど提案説明をいたしました組織法、この三つの骨組みとして、そのほかに金融関係税制関係、あるいは貿易関係、その他十数件の法律を作りますことを予定しております。また行政措置で四十数件、いろいろ補強工作をしなければならない分野のものを考えまして用意をいたしております。  そういうような組み合せの上に立ってこの組織法を進めて参りますならば、この組合に入らなければ損だ、従って強制しなくても喜んで入って、そうして自主的な団結、自分たちの組合として、そこを足場に発展しよう、こういう意欲がわいてくるであろうとわれわれは考えるのであります。その意味において、法的な措置ばかりでなく、経済的な措置、そういうものを裏づけとしてやって行く、ところが政府の方は、そういう裏づけは別にありません。本年度の予算を見ましても、中小企業重点に考えるのだと言いましても、十億というのは、これは信用保証協会に金利をとって貸す。こういうもので、予算の財政的な措置として組まれておるのは、わずかに一億前年度より増額しておるだけでございまして、その程度でありますならば、これは予算の総ワクが一割以上ふえておるのでありますから、その割合も、中小企業にはふえていないということであります。政府がこの法案を出して、画期的な中小企業対策をやるのだと言いながら、予算的措置や財政的な裏づけは何もしていない。従って権力で組合に入れて、首になわをつけて引っ張ってきて組合に入る、こういうことでもやらなければ、喜んで入る組合にはならないのであろうと、かようにわれわれは考えるのであります。(拍手)  さらに結社の自由あるいは営業の自由、こういうような憲法上のいろいろな問題点は別といたしましても、個人を組合に強制的に加入させるというような、こういうことは、現行の一わが国の法体系にはないところであろうと私は思います。憲法で団結権を保障されておる労働者の場合においてさえ、その労働者組合に強制的に加入させるということは、できないことになっておるわけであります。従ってわが党は、アウト・サイダーの規制、こういうことで、これは十分に目的を達成できるし、その機能は達成できる、組織化ができる、かように考えております。  それから第二点の、団体交渉の相手から、非営利的なものをはずすというが、いかなるものを考えておるか、こういうお尋ねであったと存ずるのでございますが、この点については、わが党は、厚生福祉事業として行う事業を原則としてこの団体交渉の相手からはずす、こういうふうに考えております。  それから第三点の料金協定、これは、国民が困っておるのに、こういうことを考えておるのはどういうわけか、こういうお尋ねであったと思うのでありますが、政府案は、法案で御承知のように、すべての業種、すべての地域にこれが適用できるようになっております。しかしわが党は、原則といたしましては、生産方式が特に中小企業に適正なもの、それから生産実績が中以下の企業に圧倒的に多い業種、こういうふうに原則的に規定しております上に、しかし、そういう統計であるとか、いろいろな基礎調査、そういうものの資料が不足である現在におきましては、もうすでに今までの法律、規程で、こういうもの、こういうものという規制を行なったものがあります。こういうすでに規制の洗礼を受けたもの、すなわち中小企業安定法で指定されたもの、それから機械工業振興臨時措置法で規定されたもの、当然これは中小企業の適格業種であると認められる手工業であるとか、地方的な特産の業種とか、環境衛生の業であるとか、もうすでに論議済みのそういう問題に限って、こういう調整事業を行う、その上にその結果として、機能として、いろいろな影響があることを心配いたしまして、これは調整委員会あるいは審議会、こういうものにかけて行うことにしておりますが、その構成は小売業者であるとか、製造業者であるとか、卸売業者であるとか、消費者労働者学識経験者、こういった消費者代表の人も、当然その構成員に加えまして、そうして十分に発言の機会を与えて、公正な結論が出るような措置を考えております。さらに、それだけでも不十分であると考えまして、こういう調整事業に対しましては、公正取引委員会の正当な関与を認めておる。独禁法、公正取引委員会を足げにかけて、踏みつぶして行くというような政府案とは、基本的に違っておることを御了解願いたいと思います。(拍手
  28. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は、終了したものと認めます。      —————・—————
  29. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、公衆衛生修学資金貸与法案  日程第三、結核予防法の一部を改正する法律案  日程第四、母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  日程第五、社会福祉事業等施設に関する措置法案(第二十二回国会小林英三君外三名発議)  以上、四案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。桂会労働委員長千葉信君。    〔千葉信君登壇拍手
  31. 千葉信

    ○千葉信君 ただいま議題となりました公衆衛生修学資金貸与法案外三件について、社会労働委員会における審議の経過並びにその結果を御報告申し上げます。  まず、公衆衛生修学資金貸与法案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  公衆衛生行政の第一線機関である保健所の基幹職員ともいうべき医師及び歯科医師につきましては、その現在数は所要数を大幅に下回っている実情であります。かくては、結核予防を初めとする公衆衛生諸施策実施に、また、ひいては医療保障制度全般の確立及び推進に重大な支障を生ずることが懸念されるのでありまして、この問題をより根本的に解決すべく、その一つの方法として、医学または歯学を専攻する者で、将来、保健所に勤務しようとする者を募集し、これに対して修学資金を貸与し、もって医師または歯科医師たる保健所の職員の質的並びに量的充実をはかろうとするのが、この法律案提案する理由であります。  次に、この法律案の骨子について簡単に御説明いたします。  第一は、政府は、大学において医学または歯学を専攻する者及び実地修練を行なっている者で、将来、保健所に勤務しようとする者に対し、修学資金を貸与する旨の契約を結ぶことができるものとし、この契約に基きまして、自後これらの者が実地修練を了し、または大学を卒業するまでの間、毎月修学資金を貸与することとしたことであります。第二は、修学資金の貸与を受けた者は、実地修練を了し、または大学を卒業した後、直ちに保健所の職員となった場合において、医師または歯科医師となった後の在職期間が、貸与期間の二分の三に相当する期間に達しましたときは、貸与された修学資金の全部の返還を要しないものとしたことであります。なお、在職期間がこの二分の三に相当する期間に満たない場合には、その一部を免除することができるものとなっております。以上が、本法律案概要であります。  本案に対する委員会の審議におきましては、保健所の医師、歯科医師の欠員を生ずる原因、保健所職員の待遇改善、修学資金貸与制度に対する条件の緩和、保健所経費に対する国庫補助率の引き上げ等につきまして、熱心な質疑が行われたのでありますが、その詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。  質疑を終了しましたところ、榊原委員から修正案が提出されました。その要旨は、「この法律施行期日が昭和三十二年四月一日となっているのを公布の日から施行すること」に改めることであります。  かくて討論に移りましたが、別に御意見もなく、採決の結果、修正案並びに修正部分を除く原案は、ともに全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  次に、結核予防法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  本改正案の要点は、結核予防法に基く健康診断、ツベルクリン反応検査または予防接種に要する実費を受診者またはその保護者から徴収しないこととしたことであります。従来、健康診断実施者または予防接種実施者は、結核予防法に基いて実施した健康診断、ツベルクリン反応検査または予防接種の実費を受診者またはその保護者から徴収できる旨の規定により、受診者の種別により、それぞれ実費を徴収していたのでありますが、この際、実費徴収に関する規定を削除することにより、健康診断、予防接種の実施の徹底をはかり、もって結核予防対策の一そうの推進を期そうとするものであります。以上が、この法律案の要旨であります。  本委員会におきましては、結核患者の実態とその根本対策に関する諸問題、なかんずく船員の結核対策につい  て熱心な質疑が行われたのであります。  本法案に対する質疑を終了しましたところ、榊原委員より、修正案が提出されました。その要旨は、「この法案は、公布の日から施行し、昭和三十二年四月一日から適用すること、並びに施行期日の変更に伴う条文の整理を行うこと」であります。  次いで討論に入りましたが、別段の意見もなく、採決の結果、修正案並びに修正部分を除く原案ともに、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  次に、母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  まず、その要旨を申し上げますと、母子福祉資金の貸付は、現在都道府県が貸付金の財源として計上する金額と同額の金額を国が都道府県に貸し付け、都道府県は、この合算額を財源として、母子家庭や父母のない児童に貸し付けているのであります。その財源の総額は、この法律施行以来、現在までに約三十三億円の巨額に達しており、わが国の母子福祉対策に多大の寄与をしているわけでありますが、今日までの貸付状況によりますと、貸付金の財源が十分でないために、母子家庭からの借り入れ申し込みに対し、十分応ずることができない実情であります。これは地方財政事情の窮乏とも関連するのでありますが、今回、国の貸付率を従来の二分の一から三分の二に引き上げることとし、国は都道府県が貸付金の財源として計上する金額の倍額に相当する金額を貸し付けることにより、母子家庭の福祉を一そう増進しようとするものであります。以上が、この法案の要旨であります。委員会におきましては、母子福祉対策に関する政府の方針、母子年金制度実施、母子福祉単独法の制定及び母子福祉資金の貸付状況等について、熱心な質疑応答が行われましたが、その内容は会議録によって御了承願います。  質疑を終了しましたところ、榊原委員より、本案に対する修正案が提出されたのであります。その要旨は、「この法律施行期日を、公布の日からに改め、国が母子福祉資金の財源として都道府県に貸し付ける部分規定については、昭和三十二年四月一日から適用する」ものとしたことであります。  かくて討論に入りましたところ、山下委員より、日本社会党代表して、修正案並びに修正部分を除く原案に賛意を表された後、特に政府に対し、「母子年金制度の実現、母子福祉対策の強化推進並びに母子福祉関係団体の指導監督等について格段の配慮方を要望」されたのであります。次いで自由民主党の紅露委員は、修正案並びに修正部分を除く原案に賛意を表され、あわせて「母子相談員の活動を促進するため、これに要する費用は、国からひもつきとして補助するよう、政府に対し強く要望」されたのであります。討論を終り、修正案並びに修正部分を除く原案に対し、順次採決いたしました結果、本法案は、全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。なお、本法案に対しましては、政府委員より、「討論の際に述べられました御意見は十分にこれを尊重いたし、ての趣旨に沿うよう努力いたしたい」百の所信を表明されたのであります。  最後に、社会福祉事業等施設に関する措置法案について御報告申し上げます。  この法律案は、本院議員小林英三君外三名より、第二十二回国会に提出されて以来、引き続き本委員会に継続審査に相なっておった法律案でございます。  まず、本法律案提出理由並びにその要旨を申し上げます。わが国における社会福祉事業経営の実際におきましては、都道府県知事または市町村長の委託に基きまして、その事業経営する社会福祉法人が少くないのでありまして、これらのものは、もとより所定の委託費を交付されているのでありますが、施設に要する経費につきましては交付されていない実情であります。このゆえに、委託を受けて事業遂行に当る社会福祉法人は、過当の負担を招き、ひいてはその事業の健全な発達を阻害する原因ともなっているのであります。右の関係は、更生保護の事業につきましても同様であります。以上のような事情にかんがみまして、社会福祉法人、更生保護会等が、国または地方公共団体から委託を受けて要保護者の収容その他の措置を行なっている場合におきましては、国有財産の無償貸付を受け得る道を開くようにいたそうというのが、本法案提出の主たる理由であります。  次に、本法案の要旨を申し上げます。国が国有財産たる普通財産を無償で貸付し得る場合は、主として次の三つの場合であります。第一は、社会福祉法人が、生活保護法に基きまして、都道府県知事または市町村長の委託を受けて行う保護の用に約八割を充てる施設として用いる場合であります。第二は、社会福祉法人が、児童福祉法に基きまして、都道府県知事または市町村長の委託を受けて行う児童福祉施設への入所の措置のために約八割以上を充てる施設として用いる場合であります。第三は、更生保護会が、国の委託を受けて行う更生保護の事業のために約八割以上を充てる施設として用いる場合であります。なお、地方公共団体につきましても、社会福祉事業及び更生保護の事業を行うことがありますので、これを無償貸付の対象としてあります。右のほか、貸付を受けた者に対する監督規定及びこれに違反した者に対する処分の規定を設けてあります。以上が本法律案概要であります。  本法案につきましては、第二十二回国会以来十分に検討を加えてありますので、委員会においてはあらためて質疑が行われず、ただ、国の予算に関係がありますので、本法案に対する内閣意見を求めましたところ、政府委員より、「本法案は、社会福祉を増進せしめるものとして賛意を表する。実施後は、その趣旨に沿うよう協力したい」旨、意見を表明されました。  かくて討論に移りましたところ、別段の意見もなく、採決いたしました結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  32. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより四案の採決をいたします。  まず、公衆衛生修学資金貸与法案  結核予防法の一部を改正する法律案  母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案  以上、三案全部を問題に供します。  委員長の報告は、いずれも修正議決報告でございます。委員長報告の通わ修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  33. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって三案は、全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。      —————・—————
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 次に、社会福祉事業等施設に関する措置法案全部を問題に供します。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  35. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      —————・—————
  36. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 参事に報告させます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  地方税の一部を改正する法律案修正議決報告書      ─────・─────
  37. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、地方税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長本多市郎君。    〔本多市郎君登壇拍手
  39. 本多市郎

    ○本多市郎君 ただいま議題となりました地方税法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。  まず、政府原案について申し上げますが、その内容は、地方税制の現況にかんがみ、負担の均衡化と合理化、税務行政の適正化のために、現行法に若干の改正を加えようとするものであります。  その改正の骨子は、第一に、住民税については、所得税の減税に伴い自動的に生ずる住民税の減収をできるだけ回避するため、その税率、現行の二一%を昭和三十三年度二六%、三十四年度以降二八%に調整し、また、課税方式を異にすることによる負担の不均衡を緩和するため、いわゆる第二課税方式及び第三課税方式についても、その課税標準額に段階を区分し、当該区分ごとの金額に応じて順次に適用されるべき率を法定し、市町村はこれに準じてその税率を定めるものとしております。  第二に、事業税について、中小企業の税負担を軽減するため、所得を課税標準とする事業を行う一般法人については、現在の所得五十万円以下一〇%を八%に引き下げるほか、さらに軽減税率の適用範囲を広げて、年五十万円をこえ年百万円までの部分を、従来の一二%から一〇%に引き下げ、個人の第一種事業についても、所得年五十万円、基礎控除前六十二万円までの部分を、従来の八%から六%に引き下げ、また、バス事業との間における負担の均衡をはかるため、地方鉄道事業及び軌道事業の課税標準を、現行の収入金額から所得に改め、さらに公衆浴場業を第一種事業から第三種事業に移すことといたしております。  第三に、娯楽施設利用税について、スケート場を法定の課税対象施設の範囲から除くとともに、ゴルフ場の利用に対して外形課税の道を開き、条例の定めるところにより、利用の日ごとに定額により課税できることとして、その標準税率を一人一につき二百円としております。  第四に、遊興飲食税について、租税負担の合理化と税徴収事務の簡素化のために、(一)芸者等の花代に対する税率現行三〇%を、他の遊興行為に対するものと一律にして一五%とし、(二)旅館について、新たに一人一泊につき八百円の免税点を設け、免税点をこえる宿泊及びこれに伴う飲食料金については、現行通り五百円を基礎控除して、税率はすべて一〇%とし、(三)普通飲食店における一人一回の飲食についての免税点を、従来の二百円から三百円に引き上げ、免税点をこえる飲食に対する税率は、すべて一〇%とし、(四)チケット制の食堂等における一品ごとの免税点を従来の百円から百五十円に引き上げ、免税点をこえる品目に対する税率を一〇%に改め、(五)従来、飲食店において二百円から五百円までのものについては公給領収証の使用を要しないものとされていたのを、今後は免税点をこえるものについては、すべて領収証を発行することに改めることといたしております。  第五に、固定資産税について、(一)国際競争を考慮し、外航船舶に対する固定資産税の課税標準を、価格の三分の一から六分の一に引き下げ、これとの均衡上、その他の船舶についての課税標準を価格の三分の二に改め、(二)大規模償却資産に対して、所在の市町村が固定資産税を課し得る人口段階ごとの価格の限度をそれぞれ引き上げるとともに、この規定を適用した結果、当該市町村の基準財政収入見込額が基準財政需要額の一定割合に相当する額を下回る場合の財源保障の割合を、百分の二十から百分の三十に引き上げ、国新たに建設された工場または発電所の用に供する大規模償却資産については、これらの資産の建設当初における市町村の財政需要の増高等を考慮して、右の財源保障率を、最初の年度から五年度分の固定資産税に限り特に引き上げるものとし、最初の二年度は百分の百八十、次の二年度は百分の百六十、最終の年度は百分の百四十とすることといたしております。  第六は、電気ガス税について、(一)漁民保護の見地から、漁業協同組合等が、その設置する製氷工場において製造する氷を、もっぱら漁船などにおける水産物保存の用に供している場合には、当該工場で直接氷の製造に使用する電気を非課税とし、またこれらの工場に併置する水産物冷凍専用の冷蔵倉庫で直接水産物の冷凍に使用する電気を同様に非課税とし、(二)基礎資材製造等について、原材料課税となるようなことを避けるために、水銀鉱、焼成燐肥等の掘採または製造のために使用する電気を非課税とすることといたしております。  第七に、木材引取税について、価格を課税標準として課する場合における標準税率現行百分の五を百分の四に、制限税率現行百分の六を百分の五に、それぞれ引き下げ、第八に、入湯税について、これを環境衛生施設その他観光施設の整備に充てるための目的税に改めることといたしております。  第九に、軽油引取税について、道路整備事業充実の財源として、別途計画されている揮発油に君する税率の引き上げに対応して、軽油引取税の税率を、四月から一キロリットルにつき従来の六千円から九千円に引き上げ、その他各税目を通じて規定の整備を行おうとするものでありますが、かくのごとき内容の政府原案に対し、衆議院においては、軽油引取税の税率、軽油一キロリットルにつき現行六千円を九千円に引き上げる原案を八千四百円に改め、また経過規定により、軽油の引き取りとみなされる場合の税率、軽油一キロリットルにつき原案三千円を二千四百円に改めるという修正を加えて、本院に送付して参った次第であります。  以上、地方税法の一部改正案について、地方行政委員会におきましては、二月二十八日には田中国務大臣より提案理由説明を聞き、三月二十九日には亀山衆議院議員より衆議院修正理由説明を聞いた後、連日、政府側との間に質疑応答を重ねるほか、特に本法案重要性にかんがみ、三月二十九日には一橋大学学長井藤半弥君その他六人の参考人より意見の公述を聞き、また四月二日には、本法案に関連して、揮発油税法案につき、大蔵、地方行政、運輸、建設各委員会の連合審査会を開く等、熱心かつ慎重に審査を行なったのでありますが、その詳細は会議録によってごらんを願いたいのであります。  四月八日、軽油引取税の税率を八千四百円から八千円に引き下げ、同様に経過規定により、軽油の引き取りとみなされる場合の税率二千四百円を二千円に引き下げるとともに、この法律施行期日、昭和三十二年四月一日を、公布の日の翌日に改めるという意味の修正案が、森委員より提案されました。  次いで討論に入り、占部委員は日本社会党代表して、「修正案並びに原案を通覧するに、財源を中央に温存して地方にこれをしわ寄せするものである等の理由により反対である」旨を述べられました。大沢委員は、「本法案は、修正案を含めて、従来の税制調査会その他の答申、さきの当委員会付帯決議等の線に沿い、内容おおむね妥当であるから、これに賛成である」旨を述べられ、次の付帯決議案を提出されました。すなわち、    付帯決議案   地方税制の内容については、なお検討の余地があるものと認められる。政府は左の諸点につき検討を加え、昭和三十三年度において適当に措置すべきである。   一、遊興飲食税に関しては、遊興面の徴税に重点を置くとともに、普通飲食の免税範囲をさらに拡張するほか、徴収実績等を勘案して、公給領収証制度の検討と負担の合理化、徴収事務の簡素化をはかること。   二、住民税は方式が錯雑し、かつ負担はその居住地域の異同によって著しく不均衡を生じ、特に給与所得者には過酷となる場合が多いから、これが軽減につき適当の考慮を加えること。   三、軽油引取税については、これが取扱いにつき、将来、適宜考慮を加えること。   四、冷凍、冷蔵事業に対する電気ガス税の免除は、製氷事業に付置せざるもの及び農畜産物等についても将来これを考慮すること。   右決議する。という内容のものであります。  次に森委員は、「本法案には修正案を含めて賛成、なおこの際、税制の基本について政府の最善の留意を望む」旨を述べられ、千田委員は、「内容に税負担の均衡化に逆行する点が見ちれる等の理由で、修正案及び原案いずれにも反対」の旨を述べられました。  かくて採決の結果、修正案並びに修正部分を除く衆議院送付原案は、いずれも多数をもってこれを可決すべきものと決定いたしました。よって本案は、修正議決すべきものと決した次第であります。  次に、大沢君提出の付帯決議案は、採決の結果、多数をもって、これを本委員会の決議とすることに決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  40. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。占部秀男君。    〔占部秀男君登壇拍手
  41. 占部秀男

    ○占部秀男君 私は日本社会党代表いたしまして、ただいま上程されております地方税法の一部を改正する法律案並びに地方行政委員会の修正案に対しまして、以下述べます二つの観点から反対の意を表するものであります。(拍手)  反対いたします第一の点は、改正される各税目の内容についてであり、特に国民に与えるその影響に対してであります。およそ地方税の大宗は、住民税、事業税、固定資産税であることは申すまでもありません。今度の改正によりますと、まず住民税では国の減税とは反対に、現行の税率二十一を三十  三年度は二十六に、三十四年度以降は二十八にそれぞれ裂き上げようといたしております。実に平年度百十五億に上りますところの増税でございます。政府は、国の減税措置に伴う府県や市町村の減収について、この引き上げによってこれを補おうといたしております。しかしながら、地方の今回のこの減収は、もともと地方財政上、独自の理由によって作られた減収ではございません。国の所得税の減税措置に伴うところの税法上当然起る自動的な結果であります。しかも、この所得税の減税措置は、現内閣の一枚看板としての政治的な施策である以上、税務行政の筋道から言いましても、国民の負担の軽減を真にはかろうとする意味から考えましても、国は減税、地方は増税、かくのごとき欺瞞的な方法によるのではなくて、別個の財源措置によって、地方の減収を補うことが正しい政治のあり方であると私は信ずるのであります。しかも国の減税を見ますならば、高額所得者には厚く、低額所得者には薄い。その事実を考えましたときに、国の税金に比べまして、はるかに人頭割り的な大衆課税的な性格を持つこの地方税の引き上げに対しましては、二重の意味合いから絶対に反対をいたします。(拍手)  次に、事業税についてでございますが、政府は、個人と中小法人との分について税負担の引き下げを行なったと言っておりますが、わずかに二%であります。もともと個人事業税のごときは、その納税者の三割以上は、国へ所得税を納める必要のないほど零細な業者に対してかけられた大衆課税であります。これを今回引き下げようとしますことは、あまりにもおそきに失し、あまりにも軽きに失しておるとわれわれは考えます。大資本の擁護を任務とする自民党の政府が、中小商工業者の窮乏と倒産に対するわが党の追及に追い込まれて、おそまきながら一時を糊塗せんとする処置にすぎないと私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  固定資産税におきましても、造船利子の補給をようやく打ち切ったとたんに、今回のこの改正によりまして、外航船舶の課税標準の評価を半分に引き下げ、内航船舶についても特例を設けまして、九億に及ぶ減税を行おうといたしております。この減税の結果の莫大な金は、海運資本のふところにそのまま流れ込むことは火を見るよりも明らかであります。  一方においては、県民、市民の大多数が負担する住民税を引き上げてまで、財政の窮乏を救わねばならないとするその同じ地方団体のふところから、かくのごとく多額の金を巻き上げてまで、大資本に追随する理由は少しもないのであります。自民党内閣の大資本擁護の政策が、あまりに露骨であるのに、あぜんたらざるを得ません。  主税においてかくのごときでありますが、他の地方税につきましては、一事が万事でございます。今後の電気ガス税の改正にいたしましても、全国の一般家庭の料金の中に含まれておりまする税金分の引き下げではございません。一部の産業会社に対する非課税品目の追加であります。この税目には、それでなくとも、石炭、鋼材あるいはセメント、肥料等二十数品目にわたって業務用の名のもとに免税の措置がとられております。その額は、年間百億を突破しております。今日さらに石綿を初め、数品目に免税の範囲を拡大し、製氷会社等に免税の措置を拡大せんとする改正でございまして、わが党といたしましては、むしろこの神武以来の好況時代に、かくのごとき免税措置を一切整理して、一般家庭に含まれておる電気ガス税を引き下げることが当面の任務であると考えておるのであります。また軽油引取税にいたしましても、三千円の引き上げの結果が、パスその他の乗客を通じて大衆に転嫁されることは明瞭であります。しかもわが国の道路政策の根本的な再検討に関連いたしましても、わが党としては、絶対に賛成することはできません。  本院の地方行政委員会におきましては、ただいま委員長から報告がありましたように、さらに衆議院の引き下げに追加した引き下げの修正案が出されました。多数でこれが通りました。一千円の政府原案よりの引き下げは、引き下げとしての意味はあることとは思いますけれども、現行の六千円に比べますならば、明らかに引き上げであります。かような意味合いから、わが党は、これまたこの引き上げに対しては反対をいたすものであります。  最後に、遊興飲食税についてでありますが、政府は芸者の花代に対する税金分を三〇%から一五%に一挙に半分に引き下げました。同時に大衆飲食につきましては三百円から五百円、旅館の宿泊につきましては八百円から千円までのいわゆる大衆料金に対しては、現行五分の税率を一割に引き上げております。およそ大衆生活に無縁な芸者の花代に対する税金を引き下げ、大衆生活に直結する飲食宿泊の税金を引き上げるところに、現岸内閣の階級的な性格がはっきりといたしておると思います。(拍手)  以上、私はおもなる税目につきまして、その個々の検討をいたしましたが、総推して申し上げますならば、政府は今回の改正によりまして、総体的には地方税は引き下げたと言っております。しかしその内容を分析するならば、大衆収奪の強化と一部の資本家の利益の奉仕、この二つを土台として組み立てられた改悪案でありまして、わが党は、今回の改正については絶対に反対をいたすものであります。(拍手)  次に、反対する第二の点は、この改正が地方財政全体に対して及ぼす影響についてであり、特にかかる改正を強行しようとする政府の基本的な政策に関連してであります。今、地方財政は神武以来の赤字をしょって、押しつぶされようといたしておることは御存じの通りであります。幸い三十二年度には、国の税の伸びと並んで七百十億を突破する税の自然増が予想されておりまして、行政水準の引き上げ、地方債の処理など、当面の地方問題を解決する絶好の機会であると言われております。しかるに政府は、三十二年度の地方財政計画の策定に当りましては、これらの懸案事項の解決はそのまま放置しておいて、この地方税の自然増に籍口して、国から当然地方に支給すべき諸種の元利補給二百億になんなんとするものを、ほおかむりいたしております。しかも国の所得税の減税措置に伴う地方交付税の減収約二百四、五十億に対しましては、わずかに交付税率の一%の引き上げ、すなわち七十二億で打ち切っております。それでなくとも、三十二年度の各地方団体は、政府の一千億積極施策の影響を受けまして、補助事業、公共事業などの地方負担分の増加は、今や二百億を突破しようといたしておりまして、せっかくの自然増は、かくのごとき国からのしわ寄せによって、その大半が食いつぶされようといたしておるのであります。しかも、かかる事情の上に、今回の地方税の改正によりまして、地方は譲与税、目的税を含めましても、さらに平年度百三十億の減収を押しつけられる結果となるのであります。知事会、市長会等の主張するように、たばこ消費税の分与率を引き上げることなどの方策によりまして、減税財源を補てんしない限り、地方財政の現状を無視した、無責任きわまる地方税の改正であると言わなければなりません。しかも、問題であることは、なぜ政府は、かかる施策、かかる改正を強行しようとしているかの一点であります。一言にして言うならば、政府は三十二年度の国の予算を温存するために、地方にしわ寄せをしているのが、この現状であると考えます。政府は、吉田内閣以来、四代にわたりまして、再軍備の強化資本の蓄積に偏重した予算を組んで来ましたが、今度の国家予算もまた同じ本質を持っておりますことは、わが党の同僚議員がしばしば追及した通りであります。この政府のやり方に対し、高まりつつある国民大衆の不満を押えるために、三十二年度の予算編成に当りましては、一方では再軍備と資本の蓄積、他方に減税と積極施策という、限られた予算の中では相矛盾する二つの要素を同時に実行しなければならない窮地に政府は追い込められたのであります。この窮地を切り抜けるためには、国の財源をできるだけ保持する方法をとらねばならぬ。そのためには地方に回す財源を極度に切り詰め、国の責任分までも地方に転嫁させるところの、すなわち地方財政にしわ寄せをさせるところの地方財政計画を策定せざるを得なかったのであります。地方税の今回の改正も、政府のかかる施策の一環としてのものにすぎないことは、私の言うまでもないところであります。  最後に、特に強調しておきたいことは、地方にしわ寄せさせる方法として、政府は、昭和の善政と称して、国の税金は引き下げるが、他方、地方の税金は引き上げを強行しようとしております。国民大衆は、自分のふところから出ている汗とあぶらの結晶である税金が、多年にわたって再軍備と資本の蓄積に片寄って使われている事実を、苦しい生活の体験の中からようやく悟るに至りました。その攻撃のほこ先は、あげて政府に向けて集中しつつあるこのときに国税を引き下げ、地方税を引き上げることによって、政府はその攻撃の目標を、一つの中央政府から、六千に余る地方の知事、市長、町村長に巧みに分散し、巧みに転嫁し、巧妙に回避しようとする政治的謀略の一つの表われであることを、われわれは記憶しなければならないと思います。(拍手)  かかる二つの観点から、今回の地方税法の一部改正案に対しましては、日本社会党といたしましては、絶対に反対を表するものであります。(拍手)     —————————————
  42. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 大沢雄一君。    〔大沢雄一君登壇拍手
  43. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 私は、ただいま上程されました修正案及び修正部分を除く原案に対しまして、自由民主党代表いたしまして、賛成の討論をいたしたいと存じます。  地方税の問題は、申すまでもなく、地方自治の根幹をなすものでございまして、その団体を維持し運営するために、住民はおのおのその能力に応じて公共の経費を負担すべきは当然のことであります。同時に、このことあるによって、その団体をわがものとする協同社会意識、すなわち自治の精神がつちかわれるわけでございます。しかして、このことは反面におきまして、もし地方税制において内容に欠陥あらば、直ちに住民の不満を買い、協同社会意識を棄損して、自治の基盤をくずすことにもなるのであります。地方税制の当否は、その意義きわめて重大なるものと言わねばなりません。私は以上の認識に立って、今回の改正案並びに修正案の内容について、つぶさに検討いたしたのでありまするが、これを適切妥当なるものと結論いたした次第でございます。  私は、もとより現在のわが国民の税負担が、なお欧米先進諸国に比し過重であり、税制の内容についても、国民所得の現状あるいは個々の納税者の実情等を考え合せまして、なお改善すべき余地の多いことを嘆くものでございますが、かかる際におきまして、政府が今回国税一千億の大幅減税を断行いたしましたことは、きわめて意義深く、国民諸君の一大歓迎を受けたことは、けだし当然であると考えるのであります。これと同様の意味合いにおきまして、地方税負担についても、地方住民間に減税の必要とその希望が強いことを否定するものではございません。しかしながら、他面地方税は、地方団体にとって欠くことのできない歳入の基本として、一定のワクを堅持せしめることが、地方団体存立の基盤として重要であります。戦後、国家財政の均衡保持のため、やむを得ざる成り行きとは申しながら、いわゆる一兆円予算、国家財政に圧迫されることを常といたしました地方財政過去の苦しい経験は、私どもに深く考えさせるものがあると思うのであります。この点、今回の政府案は、地方税については、積極的に減税を行うというよりは、むしろ国税の減税に伴う地方税の減収分を適当の範囲で補てんすることを主とし、あわせて住民負担の軽減と徴税の合理化、適正化をほからんとするものでありまして、地方財政再建促進措置法の実施関係者の努力と相待って、ようやくにして破綻から再建への緒についた地方財政の現状におきましては、きわめて適宜の措置というべきであります。(拍手)  次に、改正案の骨子とする税目でありまするが、まず第一、住民税であります。これについては、所得割の税率を三十三年度以降、引き上げたことが一つの問題となるのであります。このことは国税と矛盾する地方税の増税として、案発表の当初、少からざる誤解と非難をこうむったところであります。御承知の通り、住民税、すなわち道府県民税及び市町村民税の所得割は、前年度の所得額あるいは所得税額に課するのでありまして、特に所得税額を標準といたします場合は、今回の所得税の減税が直接に響いてくるのでありまして、その額は、初年度百六十五億円、平年度二百二十八億円に上りまして、これを完全に補てんするには、現行住民税二一%のものを三十数パーセントにも引き上げねばならぬのであります。これに対しまして政府案は、税率の引き上げにより国税減税の効果をいささかも減殺せざることを絶対の方針といたしまして、三十三年度二六%、三十四年度以降二八%といたしているのでございます。この結果、住民税は税率の引き上げにもかかわらず、所得年千三百万円以下の納税者は、すべて所得税と同じく住民税の所得割においても相当の減税に浴するわけであります。この減税合計額は、初年度七十九億円、平年度百十六億円の巨額に上りまして、国税一千億円の減税額は、これによりましてさらに一割程度プラスされることを銘記すべきでありましょう。また住民税中、所得そのものを基準として課する第二、第三方式についても、所得金額に段階を区分し、これに対する適用の準率を定め、あるいは扶養親族数に応ずる税額控除を行うなどいたしまして、同じ程度の所得者でありながら、課税方式を異にする市町村に居住するため、所得割の額が二倍、三倍の差があるがごときことが今後はないよう均衡を保持する措置をとったのであります。この措置によって生ずる所得割の減税額は、これまた四十九億円程度と見込まれるのでありまして、住民税負担の合理化、適正化の方向に踏み切ったものではありますが、反面、これが関係市町村の財政に及ぼす影響は少からざるものがあることを看過できないのであります。これに対して政府当局は、当面、特別交付税の配分をもって歳入欠陥を補てん調整するとの答弁であり、過渡的対策としては是認されるのであります。市町村関係者は、これにかわる恒久財源として、市町村たばこ消費税の増率を要望しておりますが、その当否はしばらくおき、恒久対策としては、将来さらに市町村一般財源強化の方途を講ずべきものと考えます。  第二に、事業税については、中小企業の現状にかんがみ、法人、個人を通じて所得の低額部分につき税率を引き下げ、初年度五十八億、平年度七十億の減税を行うものでありまして、きわめて適切なる措置と思います。またバス事業との均衡上、地方鉄道及び軌道の課税を、従来の収入課税を改めて所得課税といたしたのでありますが、これらは従来本院におきまする付帯決議の趣旨に沿えるものと考えます。  第三は、遊興飲食税についてであります。本税については、相当批判の多いところでありまするが、本改正は、主として徴税の合理化、簡素化という見地から、大衆飲食及び旅館の宿泊につき、家庭の延長として思い切って免税点を引き上げました。大かた課税の対象から大衆をはずすとともに、これをこえる金額の消費に対しては、奢侈的消費一五%、しからざる消費一〇%に税率を統一したのであります。政府は、これによって納税義務者の本税に対する理解、協力と、特別徴収義務者の徴収事務負担の軽減をはかり、両者相待って徴税成績の向上と納税の明朗化とを期したものでありまして、その限りにおいて、本改正は適当の改正と言い得べく、かつ、大衆の負担を相当軽減せる効果を軍視すべきであると考えます。また、花代課税の引き下げが、大かたの論議を喚起せることは、質実の風潮の健在を証するものとして、為政者は深く考うべき事柄であると考えます。この引き下げは、もとよりいささかも奢侈的消費の増加や、ことに芸妓の増加等を期待するものではないのでございまして、課税その他の圧迫のために急速にその数を減じつつあるものに対し、類似行為を営業とし、しかも課税面において捕捉しがたい競業者との間に、公平を期せんとする趣旨にすぎないのであります。しかしながら政府は、世論の底にあるものに顧みまして、将来さらに普通飲食等における負担の軽減と、あわせて奢侈的行為の抑制、質実剛健の気風の奨励につき方途を講ずべきものと信じます。  第四、軽油引取税については、最も異論のあったところでありまして、政府原案は、本院において今、再修正の運命に直面いたしております。私は二十四国会において、本税の創設に当り、参議院において、「税率の軽減その他適切な措置を講ずること」と、付帯決議を付しておりまする経緯にかんがみましても、政府は原案作成に当って、もっと慎重なる考慮を払うべきであったと思います。もとより私は、わが党の重点施策たる道路の画期的整備のため、国道、指定府県道とあわせて一般地方道路整備の必要性について、十二分の認識を有し、その実現の一日も早からんことを望んでやまないものであります。しかも、すでに三十二年度予算の成立に伴い、地方財政計画も一応策定を終えておりまする段階にあることを思いまして、院議の尊重と、揮発油税との均衡その他彼此較量、勘案いたしまして、修正案の通り、税額一キロリットルにつき二千円引き上げの八千円課税に修正するを妥当と認めるものであります。しかしながら、政府はこの際、荒廃せるわが国道路の整備財源を、主として現在の自動車関係者の負担にのみ依存せしめんとするがごとき態勢に無理のあることにつきまして、深く反省すべきであると同時に、さらに本税に関しましては、軽油消費の実勢並びに徴税の実情等をつまびらかに検討いたされまして、将来なお本税を地方税として存続せしむるが是であるか、あるいはまたこれを国税として、その税額を地方に譲与税として譲与するが適当であるかについて、検討することを望むものであります。  第五に、電気ガス税は簡単なようで実は問題を多く含んでおるのであります。料金の地域的不均衡、基礎的産業の保護育成を市町村税たる本税の免税にかからしむる点等、根本的に検討すべきものがあると思うのでございますが、新興基礎産業の奨励と漁民保護の趣旨によって、今回はその非課税の範囲をさらに拡充することといたしたのでありまして、現状やむを得ないことであると存ずるのであります。私はこの趣旨は、当然、漁民同様、零細なる農業者あるいはその団体生産する農畜産物等にも免税の恩恵を及ぼすべき理となるものと存じまして、将来における検討を要望したいのであります。  これを要するに、今回の地方税法の改正は、国税については所得税の大幅な減税を断行せるところ、地方税においては、経済界の好況等に伴う普通税における自然増収見込み額約六百七十五億余円中、地方税負担の均衡をはかって税制改正を行う結果、約百三億円の減収となり、差引五百七十二億余円の自然増収をもって、地方団体の自主財源の強化に資することを根幹とするものでありまして、普通税以外の税目における改正も、またそれぞれ適当と認めるものであります。従って本改正は、人件費、公債償還費の累増等、義務的経費の増加にあえぎつつも、地方自治の根幹たる地方財政の再建と、地方団体の使命とする行政の水準維持向上のため、日夜たゆまざる努力を傾倒しつつある地方団体の現状に即応せるものと言うべきであります。  以上の理由をもちまして、私は修正案及び修正部分を除く原案に対しまして賛成するものであります。何とぞ満場一致の御賛成をお願いして、私の討論を終ります。(拍手
  44. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。  委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  45. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は、委員会修正通り議決せられました。  次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時十五分散会      —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 中小企業団体法案中小企業組織法案及び中小企業組織法施行に伴う関係法律整理に関する法律案趣旨説明)  一、日程第二 公衆衛生修学資金貸与法案  一、日程第三 結核予防法の一部を改正する法律案  一、日程第四 母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第五 社会福祉事業施設に関する措地法案  一、地方税の一部を改正する法律案