運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-31 第26回国会 参議院 本会議 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月三十一日(日曜日)    午後一時三十七分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十一号   昭和三十二年三月三十一日    午後一時開議  第一 公営企業金融公庫法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二 産業投資特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 とん税法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第四 特別とん税法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 日本国有鉄道に対する政府貸付金償還期限延期に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第六 印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第七 特定多目的ダム法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第八 健康保険法等の一部を改正する法律案(第二十五回国会内閣提出、第二十六回国会衆議院送付)(委員長報告)  第九 船員保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会内閣提出、第二十六回国会衆議院送付)(委員長報告)  第一〇 厚生年金保険法の一部を改正する法律案(第二十五回国会内閣提出、第二十六回国会衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般報告は、朗読を省略いたします。      ─────・─────
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、公営企業金融公庫法案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。地方行政委員長本多市郎君。     〔本多市郎登壇拍手
  4. 本多市郎

    本多市郎君 ただいま議題となりました公営企業金融公庫法案について、地方行政委員会における審査経過並びに結果を御報告いたします。  本法案は、公営企業の健全な運営に資するため、特に低利かつ安定した資金を必要とする地方公共団体公営企業地方債につき、当該地方公共団体に対し、その資金を融通する公営企業金融公庫を創設することとし、これに必要な事項を定めるものであります。  その内容の大体を申し上げますと、公庫は、全額政府出資の法人とし、その資本金は五億円とし、公庫の役員及び職員について定め、公庫業務は、公営企業地方債につき資金貸付を行うとともに、必要な限度において、いわゆる起債の前貸資金を貸しつけることとし、なお公庫は、業務の一部を地方公共団体及び金融機関に委託できるものとしております。また公庫は、主務大臣の認可を受け公営企業債券発行することができるものとし、その債券発行については、政府がその元利の支払いを保証するものとし、昭和三十二年度においては七十億円の発行を予定しております。この公庫には、公庫予算及び決算に関する法律適用があるほか、利益金国庫納付余裕金運用等について所要規定を設け、なお短期借入金は、公営企業債券の前借りとして、必要な場合に限り金融機関から借り入れできるものとしております。そのほか監督の規定及び罰則を設けるとともに、補則において、公庫主務大臣内閣総理大臣及び大蔵大臣とすること等がその主要点となっております。  地方行政委員会におきましては、三月七日、田中国務大臣より提案理由の説明を聞いた後、政府当局との間に質疑応答を重ねて、慎重審査に当りましたが、その詳細については会議録によって御承知願いたいと存じます。  三月三十日、討論に入り、大沢委員は、「本法案は、地方公共団体の多年の要望にこたえて、地方公共団体公営企業を推進し、住民福祉の増進に寄与せんとするものであり、地方財政上望ましい立法である」という理由で、本法案賛成する旨を述べられ、さらに次の付帯決議案を提出されました。  大沢委員提出付帯決議案は、   本法の施行に当り、政府は左の諸点に留意し、その適正かっ円滑な運営をはかるべきである。    一、公庫資本金及び政府保証による公庫債発行限度額は今後  さらに増額すること。    一、地方債計画一般会計分については全額政府資金をもって充てること。    一、公庫資金の利率は極力引き下げ、かつ公庫において既発行公募地方債につき低利借りかえを行うよう措置すること。    一、将来、公庫において地方団体に対する一時借入金の融通を行うよう措置すること。    一、公庫の融資に当っては貧弱市町村公営企業を優先せしめること。  右決議する。という内容のものであります。  かく採決の結果、全会一致をもって、本法案衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  次いで、大沢委員提出付帯決議案も、全会一致をもって、これを本委員会決議とすることに決した次第であります。  以上、御報告いたします。(拍手
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ─────・─────
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案  日程第三、とん税法案  日程第四、特別とん税法案  日程第五、日本国有鉄道に対する政府貸付金償還期限延期に関する法律の一部を改正する法律案  日程第六、印紙税法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、五案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。大蔵委員長廣瀬久忠君。    〔廣瀬久忠登壇拍手
  9. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 ただいま議題となりました五つの法律案について、大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。  産業投資特別会計は、経済再建産業開発及び貿易の振興の目的をもって設置されたものでありますが、その財源は、きわめて弾力性に乏しく、今後の経済の情勢に適応した投資を行うに際して、財源不足が見込まれますので、その財源の一部を補足すべき原資の確保をはかるため、この会計資金を設け、一般会計からの繰入金等をもってこれに充てることとし、昭和三十一年度補正予算において、三百億円を限り、この会計資金に繰り入れようとするものであります。なお資金は、設置目的から、この会計歳入歳出を通じて使用することとし、また、その資金投資に使用しない場合には、資金運用部に預託し、その利子は資金に組み入れることとしております。  委員会における審議の詳細につきましては、会議録によって御承知願いたいと存じます。  かく質疑を終了し、討論に入りましたところ、平林委員より、「剰余金と公債、借入金償還財源に関する財政法第六条の精神から見て疑問があること、また、三十一年度の自然増収は、まず緊急性のある食管会計の赤字を補てんすべきであること、また自然増収低額所得者の減税に充てるべきであるということ、さらにまた、三十三年度の繰入額百五十億円の使途は不明であるから、行き過ぎの措置と思われること、これらの理由によって本法案に反対する」との反対意見が述べられました。  採決の結果、多数をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、とん税法案について申し上げます。  今回、諸般事情よりいたしまして、現行のとん税一本の制度を改め、とん税と特別とん税との二つ法案に分ち、その税率引き上げようとするものであります。  とん税法案内容概略を申し上げますと、税率については、現行の純トン数一トンごとに五円を八円に、一年分を一時に納付する場合は一トンごとに十五円から二十四円に引き上げようとするものであります。その他、納税義務者納付の時期、納税の告知、罰則改正等所要改正を行い、全文を書き改めております。なお、この税率引き上げにより、昭和三十二年度において約一億七千六百万円の増収が見込まれております。  委員会審議におきましては、とん税と特別とん税に分けた理由いかん、とん税を地方に譲与しない理由ほどういうわけか、また、港湾施設費用等について質疑応答がありましたが、詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、大矢委員より、「とん税についても地方自治体に譲与すべきであること、また、立法形式はむしろ一本化すべきである」との反対意見が述べられました。  採決の結果、多数をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、特別とん税法案について申し上げます。  本案は、別途提出されております地方税外航船舶固定資産税引き下げ措置とも関連いたしまして、開港所在市町村等財源を譲与するため、外国貿易船開港への入港について特別とん税を新たに設けようとするものであります。  内容概略を申し上げますと、第一に、税率は、その純トン数一トンごとに十円、一年分を一時に納付する場合には三十円としております。第二は、その徴収は、税関がとん税と合わせて徴収することとし、その納税義務者納期等については、とん税の場合と同様とする等、所要事項規定いたしております。なお、この特別とん税による昭和三十二年度の収入は約五億八千六百万円と見込まれ、これは別途、他の法律で、開港所在市町村等に譲与することになっております。  委員会審議におきましては、固定資産税との関係等について質疑応答がありましたが、詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論採決の結果、多数をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、日本国有鉄道に対する政府貸付金償還期限延期に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  まず、提案理由並びに内容について申し上げます。政府は、昭和二十四年度において、日本国有鉄道歳入不足を補てんするため、三十億五千二百三十六万三千円の貸付をなし、その償還期限を、当初、昭和二十八年三月一日と定めたのであります。その後、日本国有鉄道財政状況にかんがみ、二回にわたり、その償還期限の延長の措置を講じてきたのでありますが、本年四月三十日にその償還期限が到来することとなっておるのであります。しかし、日本国有鉄道財政状況からして、予定通り政府貸付金全額を償還することが困難な状況にありますので、日本国有鉄道弁済能力を考慮して、右の政府貸付金をさらに延長し、分割償還方法によって返済せしめようとするものであります。すなわち、昭和三十二年度においては六億五千二百三十六万三千円を償還し、残余二十四億円を、昭和三十三年度から三十六年度までの各年度において六億円ずつ分割償還しようというものであります。  委員会における審議におきましては、国鉄借入金の総額及びその内訳いかん運賃改訂債務償還との関係いかん経営合理化の問題、財政再建方針等について質疑応答がありましたが、詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  かく質疑を終了し、討論に入りましたところ、平林委員より、「今回の償還計画は、運賃値上げを前提とするものであるがゆえに反対する」との反対意見が述べられ、採決の結果、多数をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  最後に、印紙税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、為替手形約束手形に関する税率改正等を行おうとするものであります。その内容概略を申し上げますと、現行税率は、記載金高にかかわらず定額十円となっておりますのを、借用証書との関連等を勘案いたしまして、最低記載金高十万円以下のもの二十円より、最高記載金高一千万円超のもの千円までの六段階階級別定額税率に改めようとするものであります。ただし、一覧払外貨表示金融機関相互間の手形については、その性格等にかんがみ、定額二十円の税率としております。その他、所要規定整備を行おうとするものであります。  なお、衆議院において、記載金高三十万円以下のもの三十円の税率段階を新設する修正が行われたのであります。  委員会審議におきましては、階級別定額に改める理由いかん税率引き上げが急激過ぎるのではないかという点、予算収入見積りが過少ではないか等の質疑応答がありましたが、詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、八木委員より、「今回の改正案は、信用取引を著しく圧迫するものである。中小企業利用する手形については、現状のままに据え置くべきである。税率引き上げは、もっと緩和した段階によるべきものである。政府実態調査については、非常に不十分な点がある。また歳入見積りは過少に過ぎる」との反対意見が述べられ、採決の結果、多数をもって、衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  10. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより五案の採決をいたします。  まず、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  11. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。     ─────・─────
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 次に、とん税法案  特別とん税法案  日本国有鉄道に対する政府貸付金償還期限延期に関する法律の一部を改正する法律案  以上、三案全部を問題に供します。三案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  13. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって三案は可決せられました。      ─────・─────
  14. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 次に、印紙税法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  15. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ─────・─────
  16. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第七、特定多目的ダム法案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。建設委員会理事岩沢忠恭君。    〔岩沢忠恭登壇拍手
  17. 岩沢忠恭

    岩沢忠恭君 ただいま議題となりました特定多目的ダム法案について、建設委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法案は、建設大臣直轄施行にかかる多目的ダム建設及び管理に関し、特別の措置を講ずるとともに、多目的ダム利用する電気事業者等に対し、ダム使用権を創設しようとするものであります。  その内容のおもなる点について申し上げます。第一は、従来、建設大臣建設しておりました多目的ダムは、電気事業者等との共同設置にかかり、工事は、当該事業者から委託を受けて施行しておりましたが、このたび特別会計設置と相待って、これを建設大臣が単独で建設することにいたしております。また、個々のダム建設に際しては、あらかじめ電気水道等の他種事業の調整をはかって、基本計画を定めることとし、この計画樹立について、関係行政機関との協議その他所要措置を設けております。第二に、電気水道事業者等は、多目的ダム建設費用の一部を負担いたしますので、これに相応する権利保護のため、物権としてダム使用権当該事業者設定いたしております。第三に、多目的ダム管理は、二つ以上の都府県にわたる河川に存するもの及び政令で定めるものについては建設大臣、その他の河川に存するものは都道府県知事が行うものといたし、ダム操作については、所要の手続を経て操作規則を定めることにいたしております。第四に、多目的ダムに貯留される流水を、電気事業者等に供する場合の水利権処分建設大臣が行うこととし、これに伴い、一般水利権処分について河川法の一部を改正いたしております。  本法案については、参考人意見を聴取し、逐条にわたり慎重に審議をいたしたのであります。その質疑のおもなる点は、ダム使用権設定において、単一の特定事業に偏し、総合開発目的に反することはないかという点、また、基本計画操作規則樹立決定の際における関係行政機関との協議が整わざるとき、建設大臣が独断でこれを運営するおそれはないかという点、その他農業用水に対する取扱い、ダム操作規則政令内容補償問題等についてでありまして、これについては政府側よりそれぞれ答弁がありました。その詳細は会議録に譲ることといたします。  かく質疑を終り、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して田中委員から、「本法案は、新しく水に関する物権を創設し、国土総合開発目的に沿うよう水の高度利用をはかり、わが国経済に寄与するものであるが、既得権たる農業用慣行水利権規定が明確でなく、農業生産及び農業者保護に欠けるうらみがあるので、次の付帯決議案を付して賛成する」旨の御意見が述べられました。すなわち、   一、多目的ダム建設及び管理に当っては、常に基本的に農業生産及び農業者の利害の存在することは自明であるから、建設大臣は、その基本計画操作規則水利関係等決定、策定に際して、農林大臣との協議を緊密に行い、いささかも農業生産及び農業者利益を侵害することのないよう措置すること。   多目的ダム建設費のうち、農業用負担部分については、その負担額を極力軽減するとともに、将来、これにダム使用権設定に関し検討すること。   一、多目的ダム建設及び管理に当って生ずる農林漁業者への被害については、国において完全に補償すべきこと。 であります。  次いで、自由民主党を代表して斎藤委員から、「本法案は、多目的ダム建設管理利用に関する従来の問題の解決に寄与するものであるが、ただ、その運用に当っては関係行政機関等と円満に協議を整えることを期待して賛成する」、また、緑風会を代表して北委員から、同様賛成発言がありました。  討論を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  続いて、田中委員提案付帯決議案について採決の結果、これまた全会一致、本法案付帯決議とすべきことと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  19. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ─────・─────
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第八、健康保険法等の一部を改正する法律案  日程第九、船員保険法の一部を改正する法律案  日程第十、厚生年金保険法の一部を改正する法律案(いずれも第二十五回国会内閣提出、第二十六回国会衆議院送付)  以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。社会労働委員長千葉信君。    [千葉信登壇拍手
  22. 千葉信

    千葉信君 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、社会労働委員会  における審議経過並びにその結果の概要を御報告申し上げます。   すでに御承知の通り、この三法案に  つきましては、去る第二十二及び第二十四国会におきまして、それぞれ一部改正法律案として提案されたのでありますが、いずれも審議未了となったの  であります。  まず、健康保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。   この改正法律案は、過ぐる第二十四国会において衆議院が修正されました部分を取り入れ、さらに一部負担金支払方法を改めて、去る第二十五国会に三たび提案されたものでありますが、衆議院におきましては、継続審査として今国会に持ち越されて審議された次第であります。  昭和二年以来実施されております健康保険制度は、わが国における社会保障制度の支柱をなす制度として、今日まで約三十年間、労働者の疾病、負傷時における療養と生活の保障を行うものとして、重要な意義を有しておりますが、近年、その医療費は年を追って増高し、特に賃金水準の低い中小企業を対象とした政府管掌健康保険におきましては、昭和二十八年以来、給付費がついに保険料収入を上回るに至り、保険財政はきわめて困難なる事態に立ち至ったのであります。  改正案内容を要約いたしますと第一に、国庫予算範囲内において、政府管掌健康保険事業執行に要する費用の一部を補助するものとすること、第二に、標準報酬等級区分最低四千円から最高五万二千円の二十四等級とすること、第三に、療養給付を受ける者の負担すべき一部負担金範囲を拡張すること、第四に、保険医療制度について、個人指定方式を取り入れた機関指定方式を採用すること、第五に、継続給付を受けるための資格期間を一年に延長すること、第六に、不正受給者に対して損失を補てんさせる措置を講ずること、第七に、被扶養者範囲明確化すること、第八に、厚生大臣または都道府県知事の検査に関する規定整備すること、第九に、社会保険診療報酬支払基金における診療報酬請求書審査機構整備すること等であります。  以上が本法律案大要であります。  次に、船員保険法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  最近数年来、船員保険は、医療給付費等支出増加のため、その財政状態が不安定になりつつあります。これに対処するため、現行制度を是正するとともに、その合理化を行うことを目途として、この改正案が提出されたというのであります。  改正の要点の第一は、国庫予算範囲内において、船員法災害補償に相当する給付に要する費用を除き、船員保険事業執行に要する費用の一部を補助するものとする旨の規定を設けることであります。第二は、将来にわたって船員保険の健全な発展を確保するため、新たに一部負担制度を設けることであります。第三は、保険料率につきましては、失業保険適用を受けるものについては千分の五、適用を受けないものについては千分の七を引き上げようとするものであります。第四は、標準報酬等級区分を改め、現行最低四千円を五千円とすることとしたのであります。第五は、報酬が歩合によって支払われる場合の報酬月額算定方法を改め、前年度における実績を基準として算定するものとしたことであります。第六は、職務外傷病に対する資格喪失後における療養給付等につき、原則として一年につき三カ月の資格期間を設けることとしたのであります。第七は、独身入院者職務外の事由による傷病手当金支給額を百分の五十とすることのほか、健康保険法改正に準じ、被扶養者範囲明確化保険医療制度整備等、各般の改正を行おうとするものであります。  以上が本法律案大要であります。  次に、厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、改正のおもなる内容を御説明申し上げます。  すなわちその第一は、健康保険法改正と歩調をあわせ、標準報酬最低現行月額三千円から月額四千円に引き上げることであります。第二は、現行厚生年金保険法施行前に被保険者資格を喪失した女子の一部に対しても、脱退手当金を支給し得るような規定を設けようとするものであります。すなわち、同様の事情にある男子に対しましては、現行厚生年金保険法により支給できるようになっておりますので、これと均衡をとりまして、女子に対しても脱退手当金を支給し得る根拠規定を設けようとするものであります。第三は、規定整備を行うことであります。現行厚生年金保険法は、第十九回国会において全面改正が行われて、その施行より約三年近くなりますが、この間の経過を検討いたしますに、多少規定の明確を欠く面がありますので、これを明らかにし、解釈上の問題が起ることを避けるため所要規定整備を行うというものであります。  以上がこの法律案の提出の理由であります。  この三法案は、それぞれ衆議院において修正議決されたのでありますが、その要旨を申し上げます。  健康保険法等の一部を改正する法律案については、第一、社会保険診療報酬支払基金法の一部改正の項を削除して、基金の審査機構については現行通りとすること、第二、これに伴い本法律案の題名を健康保険法の一部を改正する法律案に改めること、及び第三、本法の施行期日について、国庫補助に関する第七十条の三の規定は公布の日から施行し、その他の規定は公布の日から起算してニカ月をこえない範囲内で政令で定める日から施行することに改めましたほか、これに伴う規定整備を行なったことであり、船員保険法の一部を改正する法律案は、その施行期日につきまして、国庫補助に関する第五十八条の二の規定は公布の日から、報酬が歩合によって支払われる場合の標準報酬算定方法に関する第四条及び第四条の二の改正規定は、公布の日から起算して五カ月をこえない範囲内で政令で定める日から、その他の規定は公布の日から起算してニカ月をこえない範囲内で政令で定める日から施行することとするほか、これに伴う規定整備を行なったものであり、厚生年金保険法の一部を改正する法律案については、その施行の日を公布の日から起算して二カ月をこえない範囲内で政令で定める日に改めるほか、これに伴う規定整備を行なったものであります。  なお、健康保険法運営に関しましては、衆議院社会労働委員会におきまして、修正と同時に付帯決議を付せられたのであります。すなわちその要点の第一は、保険医療機関及び保険薬局に関する指定更新の手続を簡易化すること、第二は、国庫負担制度の根本理念を明らかにすること、第三は、医師、歯科医師及び薬剤師の待遇を改善すること、第四は、医師会、歯科医師会及び薬剤師協会を法制化することの四項目についてであります。  本委員会におきましては、さきに山下義信君外四名の発議による健康保険法等の一部を改正する法律案が、第二十五臨時国会提案せられ、今二十六国会継続審査となっておりますので、政府提案にかかる右三法案と一括して審議が進められた次第であります。  衆議院より送付されました政府提出の右三案は、三月十四日に本委員会に付託され、委員会においては、まず厚生大臣より提案理由の説明を聴取するとともに、野澤衆議院議員より、衆議院における修正理由の説明を聴取したのであります。本月二十五日には公聴会を開催し、二十六日に岸総理の出席を求めまして、桂会保険制度に対する岸構想について質疑応答し、二十七日より改正案の実質的審議に入ったのであります。  委員会におきましては、主として健康保険法改正問題について熱心なる質疑が集中し、今回の政府提案が、社会保険審議会に諮問すべき建前を無視して、三たび提出されたことに対する疑義について、また衆議院における修正点並びにこれに関連する部分について検討が加えられ、しかる後に改正案に対する審議を慎重に行なったのでありますが、そのうち最も論議の中心となった問題といたしましては、「衆議院付帯決議をつけた趣旨は、法律の修正だけでは不十分であるという意味であるか」との質問に対し、野澤衆議院議員は、「法律改正については、修正点だけでよいと思っているが、たまたま誤解される部分が相当あるのではないかということを配慮した結果である」との答弁があり、さらに「単価改訂の方針とその実現性及び一部負担と単価値上げとの相関性をいかに考えるか」との質問に対しては、「単価の問題はこれ以上放置できないので、これを値上げするという前提で調査を進めたい、これが実現については、多年の懸案事項で問題の焦点もきまっているから、長いことではないと思う、税制との問題もその際に考慮する、一部負担と単価値上げとは全く関連がない」と答弁し、また、「本改正案では、国庫予算範囲内において補助するという規定になっているが、これを定率化する考えはないか」という趣旨の質問に対しては、「本改正案が通過した後において、将来、国庫負担を定率に持って行くことについては考慮してみたい」という趣旨の答弁がありました。  標準報酬の問題につきましては、「標準報酬引き上げは、中小企業労働者の賃金の実態から見ても、低額所得階層に不当な圧迫を加えるものである」いう質問に対しては、「標準報酬を賃金ベースの上昇に即応して改訂したのであり、報酬額の引き上げによって影響を受ける三千円から四千円未満の者は全保険者のわずか一%に過ぎず、この点ではマイナスの面があるかもしれないが、傷病手当金が増額するのでプラスの面もある」との答弁があり、一部負担については、「一部負担の性格をどう考えるか、また初診の際に百円に満たない場合、その額を収納することは保険事務を複雑化するのではないか」との質問に対しては、「赤字を埋めるための一部負担ではなく、保険制度を完備して行く上において、国が負担すると同時に、これを健全ならしめるために患者に負担してもらう考えである。また、将来点数表の改訂によって百円未満をなくするかもしれないが、七十五円しかかからないのに百円を徴収することは妥当性を欠いている」との答弁がありました。  なお、医療機関の指定問題については、「医療機関の指定と保険医の登録については、地域指定や定員制を考慮されているのではないか」という趣旨の質問に対しましては、「かようなことは考えていない、今日の医療機関保険医指定をそのまま機関指定し、保険医の登録として行きたい」という答弁があり、「医療機関の指定が取り消された場合、何ら不正を働かない善意の保険医までが保険診療の場所を失い、生活権を奪われることになる、これは刑法的連座制の採用ではないか」との質問に対しては、「これは共同責任の原理を採用したのではない、指定の取り消しを受けた医療機関の保険医は、他の場所でなら幾らでも診療に携わることができるのであり、現在は、医師個人を医療担当者の単位と考えず、医療がいわゆる機関というものによって行われている実情を重視して、いわゆる二重指定方法を採用したのである」と答弁し、「医療機関を三つの種類に分けているが、これらの機関に対する異なる行政効果を及ぼすことによって差別待遇をするのではないか」という質問に対しては、「第四十三条の一、二、三項に規定されている諸医療機関は、不特定多数者を診療の対象とするか、特定多数を対象とするかによって、その存立目的を異にしているのであって、特に差別待遇する意図はない」との答弁がありました。  また、船員保険法の一部を改正する法律案については、「海上勤務者の標準報酬最高額を据え置きにしていることは、傷病手当金等について、陸上勤務者との間に均衡を失するところがあると思うがいかん」との趣旨の質問に対しては、「陸上と海上とのアンバランスを是正するため、その標準報酬引き上げるということは了解できるので、適当な機会に検討を加え、すみやかに改訂したい」との答弁がありました。  以上のほか、国民皆保険に対する基本方針、結核問題の根本対策、私的医療機関のあり方、医療担当者の待遇改善等の諸問題についても、きわめて熱心なる質疑応答が続けられたのであります。  なお、本改正案の重要性にかんがみまして、前述のごとく公聴会を開催したのでありますが、公聴会には、医療担当者、被保険者、事業主の各代表者、学識経験者等十名の公述人を招き、本案に対する意見の陳述を求めたのであります。各公述人は、みな本案に重大な関心を持ち、それぞれの立場から、きわめて貴重な意見の陳述がありましたが、その詳細につきましては会議録により御承知願いたいのであります。  かくて、質疑を終りましたところ、内閣提出衆議院送付の三法案について、自由民主党谷口弥三郎君外一名より、修正案が提出せられ、谷口委員より、その趣旨説明がありました。その要旨は、まず、健康保険法等の一部を改正する法律案については、「一、標準報酬等級区分最低を三千円から四千円に引き上げることは取りやめること。二、いわゆる個人開業医の機関指定の更新については、指定の期間終了前三月までの間に別段の申し出がない限り、申請がなくとも指定の申請があったものとみなすこと。三、一部負担金中、入院の場合の一日二十円三カ月を、一日三十円一カ月とすること。四、一部負担に関する規定施行期日を七月一日とし、その他の規定は、それぞれの性質に応じ、施行期日を調節すること」等であります。  次に、船員保険法の一部を改正する法律案については、「一部負担に関する規定施行期日を七月一日とし、その他の規定は、それぞれの性質に応じ施行期日を調節する」ことであります。  また、厚生年金保険法の一部を改正する法律案については、「標準報酬等級区分最低を三千円から四千円に引き上げることは取りやめること」であります。なお、本修正案は予算を伴うので、これに対する内閣の意見を求めたところ、厚生大臣より、「修正案に同意する」旨を表明されました。  次いで、三法案に対する右の各修正案及び修正部分を除く衆議院送付案を一括して討論に入りましたところ、自由民主党を代表して高野一夫君より賛成意見が述べられ、日本社会党の山下義信君より反対の意見を述べられたのであります。早川愼一君は、緑風会の多数意見を代表して賛成の意を表せられ、竹中恒夫君は、無所属クラブの多数意見を代表して反対の意を表明せられ、また、日本社会党の坂本昭君からも反対の意見が述べられたのであります。  かく討論を終了し、内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案について、おのおのその修正案並びに修正部分を除く衆議院送付案について、順次採決に入りましたところ、多数をもって、それぞれ修正議決すべきものと決定いたしました。  なおその際、日本社会党片岡文重君より、船員保険法の一部を改正する法律案に対し、付帯決議を付することの動議が提出せられ、その趣旨について説明がありました。その付帯決議案を朗読いたします。     付帯決議案   健康保険の被保険者標準報酬額を引き上げた反面、船員保険の被保険者標準報酬最高三万六千円に据え置き、しかも被保険者の一部負担制度をなすことは、船員保険療養給付の主旨から見て矛盾を感ぜられるから、船員保険法については、早急に根本的な改正について検討の必要がある。  右決議する。  右の付帯決議案について採決いたしました結果、全会一致をもって可決した次第であります。  以上、御報告を申し上げます。(拍手
  23. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 三案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。木下友敬君。    〔木下友敬君登壇拍手
  24. 木下友敬

    ○木下友敬君 私は、ただいま上程されました健康保険法船員保険法並びに厚生年金保険法の一部改正及び自由民主党提案の修正案に対し、日本社会党を代表しまして、絶対反対の討論をいたすものであります。(拍手)  まず第一に、これらの法案が今国会に提出されましたことは違法であります。すなわち健康保険法第二十四条の二、社会保障制度審議設置法第二条の二によりますと、社会保障制度に関する企画及び立法等をいたします際には、総理大臣及び関係大臣は、あらかじめその大綱を社会保険審議会並びに社会保障制度審議会に質問しなければならないことが義務づけられておるのでありますが、今日上程されておりますこれらの法案は、遺憾ながら上述の諮問を経ていないことは御承知の通りでありまして、これは明らかに違法であるのでございます。法治国の国民といたしまして、かような違法のまま本議会に提出されましたことは、まことに暴挙であるとして遺憾にたえない次第でございます。(拍手)  岸総理は就任以来、特に国会運営の正常化を強調しておられますが、今や私どもは、岸総理のこのまことしやかなる主張が、全く国法を無視し、国民を欺瞞するものであることを知るものでありまして、まことに遺憾にたえません。さらに、衆議院においても、また参議院においても、委員会審議の途中におきまして、いまだ十分論議し尽されない以前に、多数の暴威によって審議を中断された行為は、みずから国会議員の任務を怠り、かつその権利を放棄したものでありまして、九千万国民諸君に対しても、まことに申しわけないことであると思うのであります。(拍手)  さて、わが国社会保障制度の現状を見まするに、今日最も急速に取り上げなければならないのは、従業員五人未満の零細なる事業所に働く人たちを、医療保障の中に包含することであります。これら百五十万をこえる気の毒な人たちは、日の当らぬ零細企業の従業者であるばかりに、きわめて低い賃金に押えられ、しかも、何ら社会保障の恩恵がないために、一たん疾病におかされまするや、治療どころか、その日の生活にすらたえることのできない状態にありまして、疾病によっては、血を吐く思いでただ死を待たなければならない、実に同情にたえぬ状態に置かれております。これら五人未満の従業員を擁する零細事業所に働く従業員を、一般勤労者同様、被用者保険の適用対象とすることは、今日すでに常識でありまして、わが日本社会党におきましては、衆知を集め、長い日月と精細緻密なる労作を経てでき上りました、きわめてすぐれた法案を提出しておるのであります。  しかるに、政府並びに与党におきましては、実態の把握が困難である、あるいは移動の激しいという事務的な理由によりまして、全然これに手をつけていないことが、本国会審議の過程において明らかになったのでありますが、その怠慢は、私どものとうてい許すことができないところであります。現在わが国では、実に三千万に近い同胞が社会医療の面から置き去りになっております。私はその解決のため、本国会においては必ずや国民健康保険法改正案が、政府、与党によって提出されるものと期待していたのでありますが、一昨二十八日の委員会におきまして、神田厚生大臣は、国民健康保険法改正はとうてい手に負えないものとして、これを断念したことを明らかにしたのでありまして、私はその無力と無誠意にあぜんたらざるを得ないのであります。(拍手)今や国民皆保険は、全国民のひとしく切望してやまぬところであり、わが日本社会党は、早くよりその五カ年計画を意図し、詳細はわが党政策として天下に発表したところであります。このわが党の首唱に刺激されまして、自由民主党においてか、石橋内閣当時から国民皆保険を主要政策の一つに取り入れ、岸内閣またこれを受け継いで今日に及んでおります。本年度五百万人にこれを及ぼすと申しておりますが、従業員五人未満の零細事業所における従業員の保険を放置し、さらに、国民健康保険法改正すら手をつけない状態で、何の国民皆保険だと言うことができましょうか。政府、与党の無能と無誠意と無責任は、実に驚くのほかございません。  ここで、私は法案中おもなる事項について論じます。まず、私どもがこの法案を見て最も憎しみを感ずるものは、一部負担の増高でございます。そもそも一部負担増徴の構想は、三十年度の赤字六十億を解消する手段として考えられたものであります。御承知の通りわが国の健康保険の保険料率は、千分の六十の場合、すでに世界最高でございました。この六十億の赤字解消のため、三十年六月には保険料率はさらに千分の六十五に引き上げられ、一カ年一人当りの平場保険料は実に九千八百八十四円という、たくさんの額に上っております。しかし、このたびの改正案によりますと、初診時には従来の倍額、あるいはそれ以上に当るところの百円を一部負担として納めなければならない。しかも入院の場合には、毎日三十円ずつを支払って行かなければならないという仕組みになっておるのであります。このようにして、保険給付に要する費用は、すべて事業主と被保険者の醵出による保険料によってまかなわれており、国は今日までのところ、運営費のみを負担しているのにすぎない状態であるのであります。しかしながら、社会保障制度の一環として、強制加入の建前のもとに、国がみずから管理に当っている制度である以上、国が社会保障に対する責任を分担する意味において、給付費について一定率の国庫負担を行うことは当然であります。現在以上一部負担の増徴を行なって、赤字を満たそうとする考え方は、社会保障の本質をわきまえないものでありまして、これこそ資本家的搾取意識につながる暴政と言わなければならないと思うのであります。(拍手)現在、初診時の部負担は、四十六円ないし五十円でありますが、これらの支出ですら思うにまかせぬ気の毒な患者がたくさんある社会の実情を見のがしてはなりません。これらの気の毒な人たちが、もし入院でもしなければならなくなったとき、毎日三十円ものお金を支払わなければならないことになりましたら、この人たちは、被保険者でありながら入院さえできずに、みすみす死の道を急がなければならないという気の毒な状態になるのであります。為政者としては最も思いをいたさなければならない重要な点だと思うのであります。  そこで、この一部負担のねらいでありますが、もちろんこれが保険給付財源の一部になるのでありますが、そのほかに、いま一つ、一部負担を増徴することによって患者の出足が鈍るということ、これがまた政府のねらいであります。与党のねらいであります。すなわち初診時に百円を徴収することによって、受診率をぐっと押えようというのでございます。その結果は、果してどのような結果になりますか。申すまでもなく、早期診断による疾病の早期発見と早期治療、この機会を失う結果となりまして、患者をして重態に陥れるおそれがあるのでございまして、これは人道上許すことのできない重大なる問題を内蔵するものであります。(拍手)言うまでもなく、病気は人生の最大の不幸であります。のみならず、病気によって貧困がかもされ、さらに貧困によって多くの社会悪が作り出されることを思えば、この意味においても、病者を個人にまかせず、一日も早く皆で助け合って健康を取り戻して行くことが、これが近代社会におけるところの当然の法則であるのであります。(拍手)しかるに、一部負担の増高によって、あえてこのあわれむべき弱者を塗炭の苦しみに陥れようとすることは、とうてい許すべからざる行為でありまして、人命よりも財貨を重んじる資本家的色彩と、国民の幸福よりも、制度と権力を守ろうとする官僚独一善の臭気があまりにも露骨に打ち出されていることを、私は国民の一人として悲しまずにおれません。(拍手)  次に、最も奇怪なのは審査の官僚化であります。そもそも社会保険診療報酬支払基金の任務は、診療報酬の単なる支払い事務であります。それゆえに、現在においてさえも審査が支払側である基金の機構の中において、一方的に行われていることはきわめて不合理でありまして、私どもはこれが改正を叫んで参ったのでありますが、政府はそれどころか、さらにこの点を強化して、審査委員の任命権を基金幹事長の手に掌握せしめて、審査業務を全く幹事長の支配下に置くことを企図しておるのでございます。今までさえ、審査の切り捨てごめんのやり方には、診療担当者をふるい上らせたものでありまして、これが萎縮診療の原因となり、診療内容の低下を来たしておるのでありますが、一たびこの改悪案が通過いたしました暁には、この傾向は数段激化されてくることをおそれるものであります。(拍手)  次に、このたびの改正案は、被保険者並びに医療担当者に対する係官の検査、監査のはなはだしい峻厳化を企図しております。係官は、自由に家屋の中に侵入することがこの法律によって認められるのであります。しかも私どもは、単に係官の質問に対する答えに誤まりがあったというだけで一万円以下の過料に処せらるるとか、係官の質問に答えなかったということだけで健康保険医の登録を剥奪されるというごとき、きわめて苛酷な罰則規定されているのであります。さらにこれらの措置を一そう峻厳化する意図のもとに  おいて、医療担当者と医療機関をそれぞれ別々に登録、指定することを規定したのであります。実にアリのはい出るすきまもないというほどにきびしいおきてで、最も重要な協力者であるところの医療担当者を鉄の鎖で縛り上げ、むちでたたくといったような、きわめて理不尽な法案であります。一体同じく日本人でありながら、ひとり医療担当者のみが、何ゆえにかくごとき封建的屈辱にたえ忍ばなければならないのでございましょうか。私は国民がひとしく憲法によって保障されて  いる基本的人権が、国民の公僕たるべき官吏によって踏みにじられ、法によって認められた黙秘権が、一片の行政措置によって否定され、その天職たる医業までが剥奪されるという戦慄すべき超時代的法規が、公々然と多数の暴威によって押し通されるという悲しむべき事実と、これによって引き起される社会不安をおそれるものであります。岸総理は、今国会においてしばしば、心を入れかえて民主的政治家として努力すると言われましたが、今やこの法律案を通じてみても、戦時中、日本刀のごとき鋭さで、そのファッショ的政策を大上段に振りかざして中小商工業者を泣かしめた、かつてのあの岸信介氏本来の姿が、政策を通じて明々白々に露呈していることは、わが日本現下の最大の不幸と言わなければなりません。  思うに、健康保険が実施せられて、「すでに三十年を経過しております今日、なおかくごとき不安定な状態にあるは、全く歴代保守党政権の失政の跡を物語るものでありまして、私どもは、一月も早く私どもの手によって、私どもの打ち出す民主的理念による改正によって、その抜本的建て直しをしなければならないと思うのであります。まず第一に考えますのは、現在わが国の医療保険には、被用者保険だけでも、健康保険を初めとして船員保険、日雇い健康保険、共済組合保険、厚生年金保険等、多種多様でありまして、何ら一貫した体系が形作られていないのであります。これでは運営面においても、経済面においても、きわめて不合理であります、非能率であります。ここで一大英断をもちまして、各種保険を有機的に整理統合し、保険体系の再編成を敢行するとともに、運営の民主化と合理化によって、医療保障制度の確立をはかることが必要であると思うのであります。  これと同時に、重要に問題は、結核対策についてであります。今わが国には、治療を要する結核患者は実に二百九十二万人にも及んでおります。健康診断の普及と診断技術の進歩によって、要治療者は、どんどん発見されて参ります。一方、結核の治療法もいよいよ進歩して参りまして、このことが急激に結核療養費の膨張を来たし、これが健康保険その他の保険財政を大きく食いつぶしているのが真相であります。すなわち健康保険医療費の三六%は、結核医療費であります。これが今日及び将来における社会保険の運命を左右する最も重要な課題であると思うのであります。しかるに、今日御提出になっている改正案にも、また三十二年度予算案にも、この重大な問題について何らの考慮が払われていないことは、きわめて遺憾であります。結核予防については、全額公費負担を打ち出してはありますが、肝心の治療費が従来通りでありますことは、結核予防法を有名無実の骨抜きにするもので、ひいては、経済的には、相も変らず健康保険依存という寄生虫的存在に転落させるものであります。このことは、再三にわたって社会保障制度審議会が勧告して参ったところでありまして、私もまた、結核予防法を強化するにあらざれば、健康保険経済の確立は、とうてい望みがたいと信ずるものでありますが、政府の結核問題に対する施策は、きわめて微温的でありまして、とうていこの重大問題を解決する意欲と能力を持たないものと断ぜざるを得ません。まことに国民的不幸でございます。  以上、私は今日提案されておる健康保険法等の一部を改正する法律案を中心として論じましたが、船員保険法並びに厚生年金保険法の一部を改正する法律案についても、大体同様のことが当てはまるものでございます。なお、船員保険法について、わが党の片岡議員が提案いたしました付帯決議案は、きわめて重要にして欠くべからざるものであることを付言いたしておきます。  以上をもちまして、私は反対討論を終ろうとするものでありますが、最後に、強く政府の注意と猛省を促したいことが二つあります。その一つは、医療報酬の適正化、すなわち適正単価の改訂であります。現在の単価は、実に昭和二十六年以来据え置きであり、その後の社会情勢、経済動態の実情とは、全く隔絶されたきわめて不合理なものであります。これでは医療担当者は、とうてい時代の要求するがごとき医療施設の充実整備ができないのみか、その子弟の教育、さらに生活をさえ脅かされる実情であります。尊い人命を頂かる医療担当者の生活の保障なくして、何の医療保障ぞと私は言いたいのであります。私は、政府がすみやかに早急に、大幅な単価の引き上げを、万難を排して断行することを要求するものであります。  次に、医療保障の円滑なる遂行には、特に医療担当者の協力を必要とすることは申すまでもありません。保険者たる政府としては、この点に十分に力をいたさねばならないはずであります。しかるに事実はどうであるか。第二十二国会以来、全医療関係者は、一人残らず猛烈な反対を続けて参っております。従来もそうであったように、今回もまた、保険医総辞退をかけて反対を続けてておるのであります。すなわち去る三月十七日に、日本医師会幹部は、本問題に関して全会員の不信任によって総辞職を余儀なくされ、翌十八日、両国の国際スタジアムにおける日本医師会、日本歯科医師会合同の健保改悪反対、全国医師歯科医師総決起大会は、実に二万数千の医人が血の出る叫びを叫んだのでございます。しかして保守党政策の非を徹底的に糾弾したことは、すでに皆様が身にしみて感じられたことであると私は思うのである。(拍手)一方においては、全被保険者六百万の反対、一方においては十六万の医療担当者の猛烈な反撃、これで一体医療行政が、保険行政が、円滑にやって行かれるとお思いになるのでございましょうか。(拍手)  以上をもちまして、私は本日提出されました健康保険法等の一部を改正する法律案並びに自由民主党の提出になる修正案に対する反対の討論を終えるのでありますが、申すまでもなく、健康は人生最大の幸福であります。健康のないところ、政治も経済も、真にその成果をあげるものではありません。このことは前総理大臣の石橋氏の例によっても明らかであります。(拍手)そのゆえに国民の健康を守り、これを助長するための医療保障の発展拡充のためには、政治家たるものは、政党政派を超越して、全知全能を動員して、これが達成に努めなければならないと信ずるものでありますことを付言しまして、私の絶対反対の討論を終るものでございます。(拍手
  25. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 榊原亨君。    〔榊原亨君登壇拍手
  26. 榊原亨

    ○榊原亨君 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております三案に対し、修正案並びに修正部分を除く原案に賛成を表するものであります。  この法案目的は、政府提案理由一として述べましたように、健康保険事業の健全なる発展とその合理化をはかるのが目的であります。自由民主党の重要なる政策の一つであるところの国民皆保険実現のために、ぜひとも必要なる前措置の一部をなすものでありまして、すなわち国民皆保険というりっぱな殿堂を打ち建てますための土台作りの一部をなすものであります。今後、いろいろなる基礎的整備の必要なることは申すまでもありません。たまたまこの法案が、保険関係者に対する規正という、山を削るというような面が多い部分であったために、関係者から非常なる誤解と反対を示されたのでありまするが、一このことは、今後におきまして近い将来、さらにこの土台作りの全貌が示さるるに至りまして、山を削るばかりでなく、谷を埋めるという措置も、漸次その全貌を現わすに至りましたならば、必ずやこれらの方々の十分なる理解と協力を得るに至るものと、固く私どもは信ずるものであります。(拍手)  この法案は、委員長報告通り政府管掌健康保険事業執行に要する費用国庫補助を初めとし、事業主、被保険者、医療担当者に関する諸事項改正でありまするが、特に議論の中心をなしますところの国庫の補助率の問題、標準報酬の問題、診療費の被保険者の一部負担の問題、医療機関の指定と保険医の登録の問題、医療担当者に対する指導と監督の諸問題が最も重要でございまするが、審査の問題に関しましては、これはすでに衆議院において修正を受けておりますので、この問題には触れませんが、私ども自由民主党の根本的の、この問題等の解決に対するところの考え方といたしましては、何といたしましても、社会保障制度の健全なる発展をいたしまするには、一つには受益の均等化ということかまず第一番目に必要な問題であると考えております。第二の問題といたしましては、受益者の保険に対する個人的責任の自覚ということであります。弟三番目には、保険に対する費用の効率的使用ということであると思うのでとざいまするが、私がただいまあげましところの受益の均等化ということにつきましては、国の予算をいかに使うかというような議論はのけるといたしましても、社会保障の恩典を均等化して、あまねく国民に普遍的に与えるということは、特に現在、いまだ三千万に近いところの人々が保険の恩典に浴しない現状といたしましては、何といたしましても、第一番目に考えるべきことは、受益の均等化であると私は考える。先ほど木下君のお話になりましたように、国民健康保険の問題につきましても、また、五人未満の被保険者の問題につきましても、これらは、わが自由民主党といたしましても、早急に解決すべき問題とは信ずるのでございまするが、これには順を追うてやるべきでありまして、ただいまの現状といたしましては、何といたしましても、受益の均等化をはかるべきものと考えておるのであります。  第二の問題といたしましては、受益者個人の保険に対する責任の自覚ということであります。たとえば、これを、先ほど問題になりましたところの被保険者の一部負担の問題に触れてみますというと、病気になった者が受けますその受益、その受益のために、本人から受益者の負担として一部負担をするというような考え方、あるいはまた一部負担を増しまして受診率を低下させるというような考え方、これらの考え方以外に、さらに一部負担をしなければならぬというところであるのであります。と申しますのは、受益者自身が、自分の病気が被保険者全般に及ぼす影響を自覚いたしまして、進んで保険経済の健全化に寄与するために、これを自覚して、その費用の一端を負うという考えであります。そこにおいて、初めて社会保障と勤労意欲を阻害しないという二つの点について、十分なる健全化ができるのでありまして、これを外国に見ましても、また、わが国の現状を見ましても、わが自由民主党といたしましては、何といたしましても、この一部負担ということが保険の経済の上において最も必要なことと、私どもは信ずるのであります。  その第二の問題といたしましては、保険の経済の効率化ということでございまするが、この保険経済費用を最も効率的に使うという問題につきましては、今さら申し上げることはないのであります。そこで、私どもといたしましては、これらの考えに向いまして、社会保険の健全なる推進を企図しておるのであります。そこで、先ほど問題となりましたところの国庫負担にいたしましても、それは、順を追うてこの問題を解決すべきでございまして、ただいまの段階といたしましては、この法案にきめられたように、国の予算範囲において一定額を補助するということを規定し、さらに、前措置がことごとく整いました段階におきまして、さらに恒久的な定率の国庫補助ということをすべきものと私どもは考えております。  また、標準報酬の問題にいたしましても、給与ベースの上りました今日、その引き上げは適当なものと考えておるのでございまするが、今日、三千円の最低低額所得者の現存しておる現状といたしましては、修正案のごとく、三千円を据え置くということが適当と私どもは考えておるのであります。被保険者の一部負担の増額につきましては、先ほど触れたところでございまするけれども、受診率の低下とか、あるいは受益者負担というような精神のほかに、さらに私どもは、ぜひとも一部負担をさすべきと考えておりまするが、この問題につきまして、ただ問題になりますのは、(「その問題だよ」と呼ぶ者あり)ただ額が、社会的評価の上から申しまして、被保険者の非常なる負担にならないように注意しなければならぬことは当然でございます。今回の修正案によりまするというと、初診の場合に、一回だけ百円までの診療費を負担するということと、入院の場合に、一カ月だけ一日三十円を負担するというのでございまして、それは、現今の経済的な社会評価から見まして、私どもは、さほど被保険者を重い負担に追い込むものではないと考えておるのでございますがしかしながら、この場合に、特殊な場合でございまして、なおかつ、これらの負担をも負うことができないような方々がございますならば、これには、ちゃんと生活保護法という制度が待っておるのでございます。従いまして、これらの者につきましては、生活保護法に依存すべきものと考えておるのであります。従いまして、この一部負担につきましては、ただいま提案せられました修正案に賛成するものでございまするし、なおかつ、その運営を十分考えまして、その実施の時期を七月一日に延期するということにつきましても、私どもは全く適当な措置と考えておるのであります。  先ほど問題になりました医療機関の指定ということは、在来におきましても、医療担当者の個人を指定した場合、あるいは現実の面において、事実上機関を指定せざるを得ない場合があったのでありまして、それらの混乱さは、ときにはいろいろな物議をかもしてきたのであります。従いまして、筋といたしましては、医療機関を指定するということが最も機宜を得た措置でありまして医療機関を指定するという以上は、その医療担当者の終身の登録をするということも当然であると考えておるのであります。しかしながら、その場合、その指定のやり方あるいは担当者に対する再登録の問題等について、これらが非民主的に行われるということについて、私どもは重大なる関心を持っておるのでありまして、これがもし政府の考えといたしまして、地域指定、あるいは定員制、あるいはいろいろな特殊な規格を要請されるというようなことは、あるいは指定の場合に、特別に官僚統制のようなきらいがあるということについて、十分なる警戒を要するのでありまして、その点につきましては、質疑応答の上において十分私どもは了解することができた。ただ問題は三年の期限ごとに、繁雑な手続をもって、再指定を受けるということは問題でありまして、これは実際におきまして医療担当者の非常な苦痛であります。従いまして、この点を簡素化いたしました今回の修正案に対しまして、賛成の意を表するわけであります。  医療担当者の指導監督につきましても、保険運営上から申しまして、指導監督は厳正であるべきが当然でありまして、これをことさら、指導監督というものが非常にやわらかであっていやという理屈は何らないのであります。ただ、私ども為政者といたしましては、これが民主的に行われるということが非常な必要なことであるし、また、医療の特殊性を十分に考慮して行われなければならぬという点であります。指導監督ということが正しく行われるということについては異議がないはずであります。これが民主的に行われるということについて、十分なる考えを持たなければならぬと思うのでございまして、これらの点につきましても、数回にわたるところの質疑において明らかなるところでありまして、これらの点につきましては、私ども十分に了解をし得ると考えておるのでございます。これらの問題に関しまして、法律上さらにいろいろ問題がありますが、(笑声)これを実現いたしますためには、……(発言する者多し)
  27. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御静粛に願います。
  28. 榊原亨

    ○榊原亨君(続) 将来におきましても、国民皆保険の実現に向いまして、さらに基礎的ないろいろな措置を要することは、先ほど申し上げた通りでございまするが、大体重要なるものは四つに要約することができると思うのであります。  その第一は、国庫負担の定率化という問題、第二は、先ほど木下君が申されましたように、短期疾患に対するところの治療について、健康保険が主としてこれを扱っておりまするが、長期疾患に対しましては、たとえば、結核、精神病あるいは老人病というようなものに対しましては、在来、健康保険の医療の対象となることが少かったのでございまするが、今日においては、これらの問題が非常な勢いにおきまして健康保険の治療の対象になってきた。従いまして、これらにつきましては、将来十分なる考慮を払いまして、長期の疾患と短期の疾患に対するところの処置の(「問題か」と呼ぶ者あり)あり方について、さらに検討を要するのであります。第三の問題につきましては、医師の診療報酬についてでありまするが、この診療報酬につきましては、現在、公的医療機関におきましても、私的医療機関におきましても赤字でありまして、この赤字を解消いたしますためには、たとえば点数・単価の問題、あるいは支払い方式の問題、あるいは地域差一技術差、医療融資の問題、あるいは課税の問題等につきましても、相当なる考慮を払うべきであります。これらは、国民皆保険の前提をなすところの一つの措置と考えておるのであります。第四は、医療担当者の団体に対するところの法制化の問題であります。(笑声)問題々々と言うて、いろいろお笑いになりますけれども、これらの四つのことにつきましては、将来、当局においても、私ども自由民主党においても、十分なる決意をもってこれに対処しなければならぬと考えておるのであります。  健康保険が、わが国に実施せられまして三十余年、ここに発展的再編成をする時期がきたのでありまして、この法案の成立によりまして、三十一年度におけるところの三十億円の繰り入れとともに、国民皆保険の実施への第一歩を踏み入れたわけであります。前途は決して容易なものではありませんが、さらに自由民主党は、万難を排してこれが実現のために万全の準備をいたす決意を持っております。  願わくは、保険者、医療担当者、事業主、被保険者一体となりまして協力していただき、一日も早く国民皆保険の日のくるのを熱望いたしまして、私の賛成討論といたす次第であります。(拍手
  29. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 竹中恒夫君。    〔竹中恒夫君登壇拍手
  30. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 ただいま提案されました三件につきまして、無所属クラブを代表して、絶対反対の討論を申し上げたいと存じます。(拍手)  提案理由が、保健財政の再建制度合理化ということになっておりまするが、その提案理由内容とを比較いたしまするというと、全く羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいでございます。政府当局は、以前から赤字対策として考えておりましたその内容を、今日直ちに根本対策といたしておりまするが、明らかにこれは社会保障制度の後退でございまして、被保険者への経済的なるしわ寄せと、医療担当者に対しまする精神的な圧迫であって、官僚医療統制の復元であると言ってあえて過言でないのでございます。今こうした諸点について反対点に触れてみたいと思います。  第一に、原案は、十人の人が見、十指の指さす通り、最も重要なるところの結核対策が欠如いたしております。健康保険の赤字の原因が、総医療費の三分の一以上に上回っておりまするところのこの結核問題を取り上げずして、どうして根本的な対策と言い得るでありましょうか。社会保障制度審議会並びに社会保険審議会等、官製のこうした審議会においてすら、健康保険の根本対策は結核問題であるということを提言し、すみやかにこれが解決策を勧告いたしておるのであります。世に爬羅剔抉という言葉がございまするが、健康保険制度の中から結核を取り出すことこそ、根本対策の第一になすべき施策であるということを、重ねて私はここに申し上げたいと思うのでございます。長期疾患の結核を短期保険で解決するということは、あたかも木によって魚を求めるのたぐいでございまして、むしろ当局は、結核予防法の財源の貧困を、健康保険に転嫁せんとするがごとき観さえするのでございます。  第二の反対の理由は、国庫の定率負担がなされておらないことであります。先年の国会においても定率負担が論議され、付帯決議において、このことがコンクリートされたと一聞いております。当局の言われるがごとく、真に制度合理化をはからんとするなれば、年々の医療費の総額に正比例する定率負担こそ望ましいものでありまして、これこそ国の責任を明確になし得るゆえんであるのでございます。かかる見地からいたしまして、すでに国民健康保険を初め、日雇あるいは労災等、すべてに定率が行われておる今日、ひとり健保のみが定率を採用し得ない理由は絶対にございません。そもそも国庫負担の真の要因は、国民の所得の頭打ちと文化水準とのギャップ、この、ギャップは、ますますひどくなってくるのでございまして、この国民所得の頭打ち、低賃金所得の頭打ちと文化水準、すなわち医療水準の向上とのギャップは、どうしても国庫負担によらざれば解決し得ない問題でございます。(拍手)この意味合いにおきましても、私は国庫負担が定率でなければならない、かように存ずるのでございます。  第三点は、被保険者へのゆえなきしわ寄せでございます。経済的加重でございます。被保険者範囲を縮小し、縮小されて制度のらち外に放り出されたその気の毒な人を、一体どう取り扱うのか。私は、国民皆保険を唱えながら、せっかく医療保険のワク内にありまするそうした方々を、今らち外にほうり出すということは、国民皆保険の理論と全く矛盾するものでございます。これこそ全く笑止というべき、ナンセンスでございます。また同じくしわ寄せの一つといたしまして、継続受給資格の獲得の期間の延長等もせられております。特に見逃すことのできないのは、一部負担の大幅の増額でございます。先ほど一部負担を受益者負担ごとき論がなされました。私は全く奇異に感じます。制度利用する者が受益者である、病気になった場合に医療保険を利用する者が受益者であるという考え方が根底にあることが、私はこの改正案に対しまする反対の最大の点でございます。少くとも医療保険というものは、一たん病気になった場合に、肉体的な苦痛がある、精神的な苦痛がある、せめては経済的な苦痛だけは、お互いに相互共済の精神で、ふだん保険料をかけておることによって、精神的な、あるいは肉体的な苦痛は避けられなくても、経済負担だけは何とか避けようというのが健康保険のあり方でございます。もし受益者負担であるとするならば、私はあえてお尋ねいたしたい。失業保険において失業給付金を受ける場合に、この制度利用するからといって、給付金のうちから一部負担を逆に取るような考え方は成り立ちましょうか。健康保険は、失業保険と同じでございまして、要は、勤労階級の経済の援助でございます。ただ手段が医療を通じて経済負担を軽減するというのが医療保険でございます。してみれば、失業保険と何ら変るところはないのでございまして、この見地からして、一部負担の理論は成りたちません。  第四の反対の理由は、当局の検査権の拡大でございます。単なる保険行政を行い、これが給付状況を検査し調査いたしまするのに、憲法の精神を乗り越えて、黙秘権を認めない、立ち入り権を行使する、こういう必要がどこにあるでしょうか。これこそ医療の官僚統制への布石であり、強化であると言わなければならないのであります。まさに憲兵政治の復活でございます。(拍手)十万医療担当者が激憤し、盗人扱いされる改正案に対しまして医療担当者が必死の抵抗をなしまするのも、ゆえなしとしないわけでございます。果して医療担当者が、世にいわれるがごとき水増し請求、不正請求がなされたか、私はここに数字をもって解明いたしまして、世の誤解を一掃いたしたいと存じます。  昭和二十九年の政府所管の健康保険におきまして、取扱い件数が四千百二十四万件、この取扱い件数に対しまして、不正によって処分されたものが二千三百七十件、まさに〇・〇〇〇〇六%、千万分の六でございます。金額を申しますれば、三百八十二億円のうち不正の請求が百九十万円、一千万分の五でございます。百九十万円の不正を取り締るために、今回のごとき施策を必要とされるならば、一人の汚職官吏が一億円というあの膨大な金を、きわめて容易に費消し横領し得るがごとき官庁機構に対しまするところの監督権に、いかような監督規則があるでしょうか。(拍手)私は医療担当者の監督の強化よりは、むしろ官庁の峻厳なる取締り規則の制定を要望してやまないものでございます。(拍手)取り締る側の官吏の汚職は三年間に二万数千件、一日二十数件の汚職事件があるということでございます。して見れば取り締る官吏の方々の不正の率と医師の一千万分の六とをお考え下さい。どろぼうが巡査を取り締っておるような結果でございます。(拍手)私は、こういう意味合いにおきまして、今回の改正案は、被保険者にしわ寄せをし、医療担当者に精神的な圧迫を加えたものでございます。政府は申しました。赤字経済である、何とか三者がお互いに犠牲を払おう、三者共泣きしようと言われた。被保険者は三年前に保険料率を上げられて、年三二十五億円の保険料の増額を来たしております。しかして今回また一部負担金の増徴によって、この改正案通りまするならば、ゆえなくして年々五十億円以上増徴される。医療担当者は、すでに昭和二十六年以来、低単価でもって泣き続けております。被保険者が泣き、医療担当者が泣いて、もう出る涙もございません。このときに泣き得るものは政府でございます。この国庫負担によって、この社会保険を推進することこそ、最も責任政治を痛感するところの政治家のなすべき義務でございます。  私は時間がありませんので、はなはだ遺憾でございますが、以上、反対の要点を抄論いたしまして、反対討論といたします。(拍手
  31. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。委員長報告は、いずれも修正議決報告でございます。  三案の表決は記名投票をもって行います。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行
  32. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。……投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖〕
  33. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数  百七十二票   白色票     百八票   青色票    六十四票  よって三案は、委員会修正通り議決せられました。(拍手)      —————・—————   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名      百八名       森 八三一君    前田 久吉君       早川 愼一君    野田 俊作君       田村 文吉君    村上 義一君       廣瀬 久忠君    大谷 贇雄君       武藤 常介君    川口爲之助君       島村 軍次君    北 勝太郎君       鹿島守之助君    石井  桂君       松岡 平市君    伊能繁次郎君       堀末  治君    有馬 英二君       苫米地英俊君    近藤 鶴代君       上林 忠次君    佐藤 尚武君       藤野 繁雄君    谷口弥三郎君       新谷寅三郎君    森田 義衞君       後藤 文夫君    石黒 忠篤君       鶴見 祐輔君    草葉 隆圓君       仲原 善一君    成田 一郎君       堀本 宜実君    前田佳都男君       松村 秀逸君    手島  栄君       鈴木 万平君    柴田  栄君       大谷藤之助君    西川弥平治君       重政 庸徳君    高橋  衛君       斎藤  昇君    雨森 常夫君       迫水 久常君    三木與吉郎君       田中 啓一君    横川 信夫君       安井  謙君    関根 久藏君       野本 品吉君    秋山俊一郎君       岩沢 忠恭君    三浦 義男君       高野 一夫君    宮田 重文君       小柳 牧衞君    青山 正一君       左藤 義詮君    植竹 春彦君       石原幹市郎君    重宗 雄三君       苫米地義三君    中山 壽彦君       泉山 三六君    小林 英三君       大野木秀次郎君    寺尾  豊君       井村 徳二君    井上 清一君       小沢久太郎君    稲浦 鹿藏君       吉江 勝保君    平島 敏夫君       後藤 義隆君    勝俣  稔君       佐藤清一郎君    宮澤 喜一君       吉田 萬次君    横山 フク君       榊原  亨君    佐野  廣君       青柳 秀夫君    白井  勇君       大谷 瑩潤君    寺本 廣作君       剱木 亨弘君    小幡 治和君       上原 正吉君    古池 信三君       小滝  彬君    郡  祐一君       西郷吉之助君    紅露 みつ君       木暮武太夫君    石坂 豊一君       下條 康麿君    野村吉三郎君       笹森 順造君    林屋亀次郎君       杉原 荒太君    青木 一男君       木村篤太郎君    津島 壽一君       吉野 信次君    江藤  智君       林田 正治君    中野 文門君     —————————————  反対者(青色票)氏名     六十四名       大矢  正君    森中 守義君       北村  暢君    鈴木  強君       藤田藤太郎君    相澤 重明君       松永 忠二君    森 元治郎君       木下 友敬君    平林  剛君       山本 經勝君    岡  三郎君       久保  等君    柴谷  要君       大和 与一君    安部キミ子君       千葉  信君    大倉 精一君       竹中 勝男君    田畑 金光君       吉田 法晴君    中田 吉雄君       松澤 兼人君    河合 義一君       成瀬 幡治君    島   清君       田中  一君    三木 治朗君       東   隆君    荒木正三郎君       市川 房枝君    岩間 正男君       横川 正市君    長谷部ひろ君       竹中 恒夫君    大竹平八郎君       鈴木  壽君    大河原一次君       伊藤 顕道君    天坊 裕彦君       光村 甚助君    鈴木  一君       湯山  勇君    加瀬  完君       阿部 竹松君    安部 清美君       松澤 靖介君    阿具根 登君       海野 三朗君    中村 正雄君       矢嶋 三義君    相馬 助治君       小林 孝平君    小酒井義男君       永岡 光治君    高田なほ子君       片岡 文重君    羽生 三七君       佐多 忠隆君    曾禰  益君       栗山 良夫君    山下 義信君       棚橋 小虎君    山田 節男君      ─────・─────
  35. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 参事に報告させます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  特定多目的ダム建設工事特別会計法案可決報告書      ─────・─────
  36. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、特定多目的ダム建設工事特別会計法案内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員の報告を求めます。大蔵委員長廣瀬久忠君。    〔廣瀬久忠登壇拍手
  38. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 ただいま議題となりました特定多目的ダム建設工事特別会計法案について、大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、国が直轄で行う多目的ダム建設工事等に関する経理を明確にするため、特別会計設置しようとするものであります。  以下、本案の要点のみを申し上げますと、この会計においては、一般会計からの繰入金、都府県の負担金ダム使用権設定者の負担金借入金等を歳入とし、建設工事費用ダム使用権設定予定者への還付金、借入金の償還金等を歳出とすることにしようとするものであります。また、都府県の負担金に相当するものの財源に充てるため、借入金ができることとし、その借入金のうち、その年度内に借り入れをしなかったときは、その額を限度として翌年度において借り入れできることにしようとするものであります。  本案審議におきましては、建設委員会と連合審査会を開き、特定多目的ダムと農業対策との関係、建設費用配分等について質疑がなされましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了し、討論採決の結果、全会一致をもって、衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  39. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  40. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。  議事の都合により、これにて暫時休憩いたします。    午後三時三十四分休憩      ─────・─────    午後九時開議
  41. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  参事に報告させます。    〔参事朗読〕 本日衆議院から、同院において修正議決した左の内閣提出案を受領した。よって議長は即日これを大蔵委員会に付託した。  厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第八号)  船員保険特別会計法の一部を改正する法律案く第二十五回国会閣法第九号) 本日委員長から左の報告書を提出した。失業保険法の一部を改正する法律案可決報告書原子爆弾被爆者の医療等に関する法律案可決報告書  厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第八号)可決報告書  船員保険特別会計法の一部を改正する法律案(第二十五回国会閣法第九号)可決報告書  昭和三十二年度一般会計予算昭和三十二年度特別会計予算及び昭和三十二年度政府関係機関予算可決報告書      ─────・─────
  42. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、失業保険法の一部を改正する法律案  原子爆弾被爆者の医療等に関する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。社会労働委員長千葉信君。    〔千葉信登壇拍手
  44. 千葉信

    千葉信君 ただいま議題となりました失業保険法の一部を改正する法律案並びに原子爆弾被爆者の医療等に関する法律案について、社会労働委員会における審議経過及びその結果を御報告申し上げます。  まず、失業保険法の一部を改正する法律案について申し上げますと、失業保険法は、被保険者が失業した場合、失業保険金を支給してその生活の安定をはかることを目的とし、昭和二十二年に制定され、その後、数次にわたる改正により制度整備が行われまして今日に至っております。また、日雇い労働者失業保険制度は、昭和二十四年の失業保険法の一部改正の際に創設され、今日に至ったものであります。しかしながら最近における日雇い労働者の賃金の実情からみて、現行の日雇い失業保険給付内容は、実情に沿わなくなりましたので、従来の失業保険金日額百四十円及び九十円のうち、日額九十円は、これを廃止し、新たに日額二百円を設けて保険給付内容の改善をはかるとともに、保険料額についても、賃金日額二百八十円以上の被保険者についての保険料を十円と定め、これを事業主及び被保険者に折半負担せしめんとするものであります。  次に、日雇い労働者失業保険制度適用区域は、従来、市町村単位に定めておったのでありまするが、最近の市町村合併の結果、区域が著しく拡大されましたので、これを合理的に整備するとともに、日雇い労働被保険者一般失業保険の被保険者に切りかえの取扱い、及び一般失業保険制度における失業保険金額の自動的変更について、実情に沿うよう合理化をはからんとするものであります。  本案に関しましては、委員会におきまして慎重に審議を行いましたが、質疑のおもなる点は、日雇い労働者失業保険金日額の増加、待期日数の短縮、適用区域の整備、就労日数の増加及び失業対策の強化等についてでございましたが、これらの質疑に対して、いずれも労働大臣は善処する旨答弁されました。  次いで討論に入り、採決を行なったところ、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  続いて、日本社会党藤田委員より、右の改正案に関し、付帯決議を付すべきであるとの動議が提出されました。その案文は、   政府は、日雇労働者の生活の実情にかんがみ、失業保険金日額の増額をはかるとともに、待期日数等について善処するよう最善の努力をすべきである。  右決議する。  本決議案については、提出者から趣旨説明が行われた後、採決に入りましたところ、全会一致をもって可決した次第であります。  次に、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律案について申し上げます。  本法律案の要点の第一は、原子爆弾が投下された当時、広島市、長崎市に居住していた者、その他原子爆弾の放射能の影響を受けていると考えられる者に対し、その申請により、毎年健康診断及び必要な健康上の指導等の管理を行うことであります。第二は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、または疾病にかかり、現に医療を要する状態にあるような被爆者に対しましては、その申請により必要な医療の給付を行うことであります。第三は、医療の給付は、厚生大臣審議会の意見を聞いて指定する医療機関において行うこととし、被爆者に適正な医療が行われるよう措置し、必要な監督規定を設けたことであります。第四は、被爆者の医療等に関する重要事項について調査審議するため、学識経験者等よりなる原子爆弾被爆者医療審議会を設けることであります。第五は、この法律施行に要する費用は、全額国庫負担とし、健康診断等、都道府県知事の行う事務について、広島市と長崎市の分は、広島市長及び長崎市長において、これを行うこととしたのであります。  以上が本法律案大要であります。  本法律案は、衆議院におきまして修正議決されたものであります。衆議院の修正は、本法案の付則に一項を加えて地方税法の一部を改正したことであります。すなわち、地方税法における法人事業税の課税標準の算定方法に関する規定・並びに個人事業税の課税標準の算定に関する規定を改め、本法案に基く医療につき支払いを受けた金額は、総益金または総収入金額に算入せず、また本法案に基く医療にかかる経費は、総損金または必要な経費に算入しないことといたしておるのであります。  本委員会におきましては、政府委員より提案理由について、衆議院議員亀山孝一君より衆議院における修正について、それぞれ説明を聴取した後、慎重審議をいたし、熱心な質疑が行われたのでありますが、その詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。  かくて、質疑を終了、討論に移りましたところ、格別な意見の開陳もなく、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  45. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  まず、失業保険法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  46. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ─────・─────
  47. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 次に、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  48. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ─────・─────
  49. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案  船員保険特別会計法の一部を改正する法律案(いずれも第二十五回国会内閣提出、第二十六回国会衆議院送付)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。大蔵委員長廣瀬久忠君。    〔廣瀬久忠登壇拍手
  51. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 ただいま議題となりました二つ法律案について、大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、厚生保険特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、第二十五国会に提出され、継続審査となって今国会に至ったものでありまして、今回の健康保険法改正において、政府管掌健康保険事業の経費の一部を国庫が補助することとなるのに伴いまして、この会計の健康勘定の歳入に一般会計からの受け入れ金の事項を加え、また、第二十二国会改正によって、借入金償還財源一般会計から繰り入れることとなっている措置は、昭和三十一年度以降の分を昭和三十三年度以降に繰り延べる等の改正をしようとするものであります。なお、この繰り入れ措置の繰り延べは、別途、今国会提案されております改正点をも含めまして、昭和三十三年度以降とすることに、衆議院において修正されたものであります。  次に、船員保険特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。本案も第二十五国会に提出され、継続審査となって今国会に至ったものでありまして、今回の船員保険法改正により、療養給付部門の財源の一部を補助することになるのに伴いまして、この会計法の一般会計からの受入金の精算規定は、この繰入金には適用しないこととし、また第二十二国会改正により、一般会計からこの会計給付費財源として繰り入れることとされている措置は、昭和三十一年度以降の分について、昭和三十三年度以降に繰り延べることにしようとするものであります。なお、この繰入金繰り延べの措置も、厚生保険特別会計の場合と同様の修正が衆議院においてなされたのであります。  委員会における審議の詳細は、会議録によって御承知を願います。  質疑を終了し、二案を一括して討論採決の結果、多数をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  右御報告申し上げます。(拍手
  52. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  53. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。      ─────・─────
  54. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、昭和三十二年度一般会計予算  昭和三十二年度特別会計予算  昭和三十二年度政府関係機関予算  以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。予算委員長苫米地義三君。    〔苫米地義三君登壇拍手
  56. 苫米地義三

    ○苫米地義三君 ただいま議題となりました昭和三十二年度一般会計予算外二案につきまして、予算委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、財政の規模について申し上げますと、一般会計予算は、歳入歳出とも一兆一千三百七十四億円余で、前年度当初予算に比べ、一千二十五億円余の増となっております。  次に、明年度予算に織り込まれている政府の重要施策の概要について申し上げますと、まず、一般会計歳入について、明年度においては、最近のわが国経済の好況に伴い、租税及び印紙収入、専売納付金について一千九百七十七億円余の増収が期待されておりますために、来年度において、所得税につき一千九十二億円余の減税を行うこととし、他面、租税特別措置の整理合理化、揮発油税の増収等を加減し、純減税額七百二十億円余をもって国民負担の軽減合理化をはかり、さらに、その上、一千二十五億円余を歳出増加財源として、重点的に政府の重要施策を推進することといたしておるものであります。  政府の重要施策のうち、おもな経費について、その概要を申し上げますと、社会保障関係費につきましては、一千二百二十六億円を充て、低所得者対策、国民健康保険の普及促進、結核予防措置の充実、失業対策事業の事業内容の改善等がはかられており、文教関係費につきましては、一千三百四十七億円をもって、義務教育職員の給与改訂、小中学校の統合、二部授業の解消、国立学校の施設の充実、教育研究経費の増額、学校給食及び教科書給付対象の拡大等が配意せられ、また、科学技術振興費につきましては、特に原子力研究所の整備等について、国庫債務負担行為とともに、大幅な増額が見込まれ、防衛関係費につきましては、従来の繰越額等をも勘案し、前年度とほぼ同額にとどめ、自衛力の質的増強に重点を置いて、わが国自衛体制の整備を期することとしております。  公共事業関係費につきましては、産業基盤の整備、特に輸送力の増強に重点を置き、道路、港湾等の整備をはかり、道路については、揮発油税率引き上げと並行して大幅の増額を行うとともに、北海道、東北、離島等、国土総合開発についても留意せられております。また、住宅対策費といたしましては、財政資金で約二十万戸の建設を予定し、民間建設と合わせ年間五十万戸の建設を期待するとともに、住宅規模の適正化、不燃化、高層化の促進等、質的向上をはかり、あわせて上下水道等、群竹境衛生施設の整備を促進することとせられております。  そのほか、中小企業の育成強化、貿易の振興、海外投資、国際技術協力の積極化、農林漁業の経営安定対策等につきましても、財政投融資と相待って、所要予算が計上せられておりますほかに、公務員の給与につきましても、人事院勧告の趣旨に従って、給与の改訂合理化等がはかられております。  また一、地方財政につきましては、地方交付税率を一%引き上げ地方税自然増収とも関連し、地方行政内容の充実、住民福祉の増進を期するとともに、地方公共団体間の財源調整、公債費対策等についても特に配慮せられております。  特別会計につきましては、食糧管理特別会計は、昭和三十一年度補正の後も赤字を持っておりますが、本制度の基本的問題を検討するため、政府に臨時食糧管理調査会を設置し、その結論  を待って、健全化の具体策を講ずることとし、昭和三十二年度においては現行制度を存続し、米の消費者価格は据え置くこととして予算が編成せられております。なお特別会計は、ダム建設事業及び食糧増産対策事業の促進をはかるための特定多目的ダム建設工事特別会計及び特定土地改良工事特別会計並びに国有財産の運用合理化をはかるための国有財産特殊整理資金特別会計の三特別会計が新設せられることとなっております。その結果、総数三十九となり、その歳入一兆三千二百五十八億円余、歳出は二兆二千二億円余となっております。  政府関係機関につきましては、日本国有鉄道は、昭和三十二年度を初年度として輸送力増強をはかることとし、  一千六十九億円余の建設工事を実施いたしますが、所要経費の一部不足のために、貨客平均二二%の値上げを実施することとせられております。このほか北海道開発公庫において、東北地域の開発事業資金の融資をあわせ行うよう機構を拡充するとともに、公営企業のための公募債の消化を容易にするため、公営企業金融公庫を新設して、総数十一となり、その予算総計は、収入  一兆一千四百五十億円余、支出は一兆百六十九億円余となっております。また、財政投融資につきましては、昭和三十二年度の計画資金は、三千二百四十六億円余で、前年度の計画に比べ、六百七十三億円余の増となっておりますが、最近の経済の好況に伴い増加した原資を活用し、わが国経済の隘路部門である電力、鉄鋼、輸送力等の産業基盤の整備拡充によって、なお一段と経済規模の拡大をばかり、ひいては完全雇用の推進にも努めるとともに、住宅対策、中小企業対策に重点をおいて資金運用を期せんとしております。  木三案は、二月一日国会に提出せられましたので、予算委員会におきましては、二月七日、大蔵大臣より提案理由の説明を聴取し、三月九日、衆議院よりの送付を待って、十一日より木審査に入り、委員会を十三日間、分科会を三日間開催し、慎重に審議を重ねましたが、さらにこの間二日間にわたり公聴会を開くとともに、山際日銀総裁を参考人として質疑をする等、審議の周到を期した次第であります。予算審議に当りましては、内政、外交諸般の問題について広範囲にわたり熱心な質疑応答が行われましたが、以下、そのうちおもなる事項について簡単に御報告申し上げます。  まず、「予算編成の前提としておる経済諸条件の見通しが、あまりにも楽観的に過ぎるが、世界景気の最近の基調から考え、来年度の国際収支は悪化する一方、国内においても予算規模の拡大等によるインフレのおそれが多いのではないか、また、最近、日銀のとった公定歩合の引き上げは、その警戒的措置ではないのか」との質疑がありましだが、これに対し大蔵大臣より、「世界景気は、来年度も大体好調の維持が予想せられ、経済外交の推進等、輸出の振興に努力すれば、輸出二十八億ドルの達成は可能である。輸入については輸入原材料在庫が多いので三十二億ドルに抑制し得て、国際収支は見込み通り均衡すると思われる、また、国内物価についても大体心配はない」旨答弁があり、また日銀総裁よりは、「今回の公定歩合の引き上げは、経済界、金融界の現状に対する警戒信号という意味ではないが、日銀としては今後の推移に即応して、いつでもその機能を発揮し得る態勢におくという意思表示の一つである。来年度予算は均衡財政であることは認めるが、執行に当っては、特に経済界に急激な変化を与えないよう、慎重な配慮を要望する」旨答弁がありました。  次に、減税の問題について、「政府は一千億減税を誇示するが、その実態は、高額所得階層に片寄っている、減税の恩典を受けない階層は、運賃値上げ等によって、かえって生活困窮に陥るのではないか、また、所得税減税に重点をおいて直接税、間接税の関係、所得税、法人税等の均衡についての配慮がなされていないのではないか」という質疑がありましたが、これに対し大蔵大臣より、「所得税の減税割合では、低額所得者の方が高額所得者より高率にいたしておる。直接税、間接税の現行比率はおおむね妥当と思われるが、法人税については、今回は中小法人の減税に重点をおき、法人税全般については将来の自然増収の推移に応じ軽減合理化をはかりたい。配当所得、租税特別措置等についても、将来さらに再検討して行く方針である」との答弁がありました。  次に、社会保障問題につきましては、「政府は国民皆保険を目途とし、来年度、五百万人の国民健康保険被保険者数の増加を見込んでいるが、予算で見ている事務費か過少にすぎ、地方財政窮乏の折柄、これが実現は困難ではないか、また五人未満の零細企業については、政府管掌健康保険によるべきではないか」との質疑がありましたが、厚生大臣より、「困難な事情は予想せられるが、四カ年計画の目標は堅持し、事務費についても来年度ある程度引き上げたがさらに、実態に即応した国庫負担に努め、市町村の熱意にこたえたい、零細企業については、財政負担の関係もあり、慎重に検討いたしたい」との答弁がありました。  防衛問題につきましては、日本の独立を完成するため、現行の不平等、片務的な安保条約、行政協定を改廃する意思はないか、岸首相が訪米の際、日本が海外派兵など、新たな軍事的義務を負わされることがないと約束できるか、また、原水爆兵器の持ち込みは断わるというが、革命的戦略構想の時代において、日米共同防衛の体制をとる以上、こばみ切れないのではないか」などの質疑がございました。これに対し、内閣総理大臣より、「安保条約、行政協定は全面的に再検討すべき時期に来ていると思うが、日米共同防衛の体制はなお維持する必要があり、安保条約第四条に期限をつける意思は、差し当りはない。訪米の際は、一般的な話し会いをするのであって、防衛問題にも触れるが、憲法に反するごとき軍事義務を負うようなことは考えない。原子兵器の持ち込みについては、現在まで何らアメリカ側から意思表示もなく、また、万一あるとしても、断固断わる信念である」旨答弁がありました。  次は、地方財政の問題でありますが、「地方財政健全化政策の最後に残された最も重要な問題である地方債措置について、本年度の措置はきわめて不完全であるし、これを根本的にはどう処理されるのか」という質問がございましたが、これに対し、自治庁長官より、「本年度は、さきの補正予算で計上された地方交付税のうち、八十六億円をもって、三十二年度に償還される給与関係費公債の分は全額と、一般公共事業等三種の施設費公債については、その利子の半分を交付税の中でまかなうことにした。この措置は、三十二年度に限り行うものであって、三十三年度以降については別個の法律を設けて、予算上も独立した地方債対策を講じ得るよう政府として努力したい」と答弁され、大蔵大臣は、「公債の元利償還費を基準財政需要の単位費用に入れることにも問題があり、自治庁長官の言われた方法にも問題があると思うが、将来の財政計画を十分勘案して、地方財政の健全化を進めたい」と答弁されました。  次に、国家公務員の給与改訂について、「政府は人事院勧告をどう取り扱うのか、近く三公社五現業について仲裁裁定があれば、それとの均衡をはかる必要はないか」との質疑がありましたが、内閣総理大臣より、「政府としても、勧告はできるだけ忠実に実施するのが義務であると考え、今回の給与改訂案を作成した。今後も勧告は尊重するが、仲裁裁定があっても、直ちに一般公務員につけ加える考えはない」との答弁があり、人事院総裁より、「勧告は、毎年三月を基準として調整するので、その後の推移については、七月ごろに調整を終るため、現在は全く白紙である。人事院としては、法の建前から、生計費及び民間給与との比較において勧告するものであるから、三公社等とは、ある程度の均衡は必要と考えるが、必ずしも同一水準にしなければならぬとは考えていない」との答弁がありました。そのほか、食管特別会計の赤字に関連して、米価の問題、国鉄運賃の値上げと輸送力増強五カ年計画の問題、住宅対策などにつき、活発な論議がなされましたが、これらの詳細は会議録について御承知を願います。  かくして、本日をもちまして質疑を終了いたし、討論に入りましたところ、まず、日本社会党を代表して湯山委員より反対、また、自由民主党を代表して安井委員より賛成、また、緑風会を代表して森委員より賛成の旨、それぞれ述べられました。これをもって討論を終り、採決の結果、予算委員会に付託されました昭和三十二年度予算三案は、いずれも多数をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  57. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 三案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。天田勝正君。    〔天田勝正君登壇拍手
  58. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和三十二年度予算三案に反対いたし、その理由を明らかにせんとするものでございます。  反対の第一の理由は、政府予算編成の前提が、全くくずれ去ったという点であります。政府予算編成の前提は、国民総生産と国民所得は増大し、世界景気は好況を持続し、輸出はますます好調を続け、国際収支はとんとんであると言い、卸売物価は若干上昇するにいたしても、消費者物価は横ばいを続け、国民生活を圧迫しないというのであったのであります。  この前提の甘いことは、予算委員会の公聴会において、稲葉秀三氏、東大の武田教授、立大の藤田教授、また京大の桑原教授等の公述によっても明らかなところであります。また、世界景気の家元アメリカの経済動向は、停滞から下降に向いつつありまするし、さらに、これが下期には下降を続けるであろうことは、私どもの指摘のみならず、岸内閣のバックである財界もひとしく憂えておるところであります。また、国際収支については、政府は本年上期の外貨予算を、委員会審議中にこれを公表することを避けてきたのでありまするが、時間切れになるところから、ようやく昨日、閣議の決定をみまして、これを公表されたのであります。この発表をもっていたしましても、赤字が上期において一億二千六百万ドルとなりまして、年間の赤字は二億五千万ドルをこえると推定されるのであります。この面からしても、政府の楽観論はくずれ去ったと言わなければなりません。  次に、消費者物価は横ばいで、国民生活を圧迫しないという詭弁は、後に詳しく申し述べたいのでございますが、要するに、国民総生産は、前時代的な労働条件を持続することを支柱といたしまして増大するではありましょうが、分配国民所得は庶民大衆のものにならないことが、予算審議を通じて明らかになされたのであります。  反対の第二の点は、政府は、さきの前提に立って一千億の積極政策と一千億の減税という、まことに国民にとっては耳ざわりのよい方針を打ち出したのでありまするが、元来この目標が掲げられるに至ったのは、きのう、きょう成立いたした岸内閣の功績では絶対にございません。歴代の保守党内閣が、いわゆる貧乏人麦食え論や、中小企業首つり論の実践をいたし、大衆を政治の庇護の圏外に放置いたしまして、大衆の耐乏生活の集積が、今次の二千億になんなんとするいわゆる税の自然増収に現われたのでございまするから、この際、何をおいても、日の当らない庶民大衆に、まず、あたたかい手を差し伸べなければならないと思うのであります。しかるに、三十二年度財政投融資計画は、三千二百四十六億円の巨額に達し、昨年度よりも六百七十三億円の増加と相なっておるのであります。この神武以来の投融資の内容は、電力、開銀等に集中いたして、ますます大資本擁護の政策を強化しておるのであります。また、昭和三十一年度補正予算において、一般会計から三百億円の資金産業投資特別会計に繰り入れまして、その使途は依然として明らかにされておらないのであります。財政法の精神をじゅうりんし、歪曲するなど、無理を重ねつつ、やがてこれまた大資本擁護に使われることは推定にかたくないのであります。かかる傾向は、断じて大衆のためのものではないと存ずるのであります。(拍手)  次に、本予算案は、昨年度に比して一千二十五億円の増額でありますが、その内訳は、五百億円は事務的自然増であり、残り五百億円が新たな施策に使われるのであります。しこうして、その増加費用の最大なるものは、地方交付税の二百三十九億円、道路整備費の二百億円等であって、確かにこれらも名目的にはけっこうな増加でありますけれども、直接には庶民の救いにはならないのであります。庶民の救いには、社会保障費、実質七十億円の増加にすぎません。これを資本擁護の諸施策と比較するとき、いかに保守党政権といえども、あまりに片手落ちと言わなければなりません。  第三に、政府が誇る一千億の減税についてでありますが、これは去る二十九日、租税三法が上程されました際、同僚、椿君の討論によってきびしく批判されましたので、ここに詳述は避けまするが、要するに一千億円の減税と言いまするが、実質は七百二十億円であることは、予算書によって亀明らかでありますし、さらに地方譲与税関係の増五十一億円を差し引きまするならば、六百六十八億円と相なります。これに鉄道運賃の値上げ三百六十五億円、また三十二年度分だけの食管の赤字百四十二億円等、大衆の負担増は、一千億減税のかけ声にもかかわらず、百六十一億円にすぎないという、バランス・シートに相なるのであります。また減税の大部分を占めまする所得税関係におきましては、減税の該当者は一千二十五万人、その家族を含めましても、わが国全人口九千三十万人のうち二七%の人々しかこの恩典に浴さず、国民の七三%六千五百万人の大衆は、かけ声のりっぱなこの減税には全く無縁の人々であることを忘れてはなりません。(拍手)さらに減税の恩典に浴する者を階層別に比較してみますると、二十五万円の所得者の軽減率は一〇〇%でございますが、減税の額は、わずかに三百七十五円にすぎません。所得五十万円の者は、軽減率は五〇・九%と下りまするけれども、減税額は二万六千七百三十円となり、所得二百万円ならば、軽減率は四〇・九%に下りますが、減税額は二十八万六千三百七十円に達するのであります。これが一千万の高額者は、軽減率は二八・六%でございまするが、減税の額は、実に百六十二万一千九百円に相なるのであります。何人も、減税の率に喜びを感ずる者はないのでございまして、税額が幾ら安くなったか、また、その税金の減額によって自分の生活が幾ら楽になったかに喜びを感ずるのだと思うのであります。以上の階層を生活の向上の面から比較いたしてみますると、所得二十五万円の者は、わずかに一万余の十五の向上にすぎません。五十万分では百分の五・三四になりまするし、二百万円では百分の一四・三一の向上に相なります。また、一千万円では一六・二一の生活向上となるのでありまして、実にこの比較をもっていたしても、高額所得者は、低額所得者に比べて生活が百倍以上楽になるのであります。この矛盾を政府も認めておるのでありまするが、その言い分は、税を納めない者に恩典の道はなく、低額納税者には、わずかしか恩典が与えられないというのであります。これは、もしこの言葉を税務官僚や経済学者が言うならばいざ知らず、政治家の言葉としては、現代には通用いたさないと存ずるのであります。(拍手)  一方、税制においても資本家擁護の政策を依然として続け、租税特別措置法の改正に当っても、税制調査会の答申を尊重したと言いながら、不徹底に終っております。改正後といえども、依然としてこの措置法によって一千三百十七億円の特典が残されておるのであり、さらに不労所得の最たる配当所得においては、控除率を引き下げて、名目的には国民の感情をやわらげながら、実体は、税率の緩和によって課税最低限を百二十八万円から百四十四万円まで無税とするのみならず、一千万円までの所得者でありましても、なお従前よりも有利にしているとともに、利子所得においも一年以上の預金は依然無税にするなど、その資本擁護の方向は実に明白であろうと思うのであります。  反対の第四点は、政府は、卸売物価は上昇しても、消費者物価を押えて生活を圧迫しないと言うのでありますけれども、物価の値上りを押えるには、まず政府みずからが範を示して、政府機関の値下げを断行すべきであろうと思うのであります。しかるにもかかわらず、今回、国鉄運賃を値上げしようとすることは、まことにもって了解しがたいところでございます。この問題も、すでに去る三十日の本議場において、同僚、柴谷要君によって論ぜられておりまするから、詳細は省きたいと思いますが、昨年、運賃値上げを言い出した当時は、経営が赤字であることを唯一の理由としたのであります。ところが今年に入りますると、この主張ほ消え去って、五カ年計画遂行のためであると、その理由を転換いたしております。これは、国鉄当局すら認めておりまする通り、三十一年度の自然増収百五十億円と言われ、経済評論家は一致して、二百億円の自然増収ありとしているのでございまして、この点からも運賃値上げ理由の一端はくずれたのであります。また、三十二年度において五%の伸びがあるということは、政府の答弁で明らかでございますから、現在、運賃値上げ理由にならないと思うのであります。(拍手政府の言うがごとく、かりに五カ年計画を遂行いたしまして、その後において輸送が三〇%増強されたとして、その三〇%が全部収益部分とならないにしても、その半分一五%が、いわゆる質的に増強され、残る半分が収益増加と見ましても、この金額は六年後には八百二十八億円となるのでありまして、別にこれに対する運営費あるいは維持改良費等が五百三十億円増加すると見込みましても、六年後には資本部分も含みまして、年間六百億の増収と推定されるのであります。もし、投下資本を財政投融資あるいは借入金などでまかないまするならば、今日、大衆負担運賃値上げは避けることができると思うのであります。  さらに、政府の主張を全面的に信頼するといたしましても、五カ年計画の年度割工事費は、毎年一千億円でありますが、この額は実に平年度の二・五倍に当ります。一方、目下の実情は、調査に手をつけるという状態でありまして、計画の仕事量は、とうてい遂行できないのであります。また、一割三分の値上げと称しておりまするけれども、旅客運賃は、最低でも一割三分であるのみならず、利用率の高い大都会の周辺では、ほとんど二割の値上げに相なっているのでありまして、その欺瞞ぶりに驚かざるを得ないのであります。かような政府の態度でありまするがゆえに、私鉄あるいはバス会社二百社のうち、すでに三分の二は、運賃値上げを申請している状態であって、ガソリン関係の税六千五百円の大幅値上りのはね返りとともに、大衆の生活を圧迫いたしますことは必至でございます。(拍手)  次に食管会計と消費者米価の問題でありますが、この問題は、補正予算審議いたすに当って、大きな問題として取り上げられたところでございますが、一応補正において、三十年度分赤字だけは補てんいたしました。しかし、三十一年度分赤字百六十一億円、三十二年度の見込百四十二億円は、依然今後の問題として残されているのであります。このために政府は、さきに消費者米価値上げによって、これを解決しようといたしまして、一たん閣議決定をいたし、その後の情勢の変化によりまして、それが、たな上げにはされましたけれども、しかし、特別調査会なるものを設けて、結局値上げを合理化しようといたしますことは、その委員の任命が政府の恣意によってできることからも、その結論はすでにきまっておると同様であろうと存ずるのであります。かくいたしますれば、消費者の生計を圧迫するのは、ただ時期がずれたにすぎないという結果になろうと思うのであります。  次には、農林関係の予算でございますが、これまた、きわめて冷淡でありまして、食糧増産費は、若干増額したとして二百七十億円を計上いたしております。しかしながら、この計上によって、食糧増産を百十万石見込んでおるのでありますが、一方におきましては、農地の壊廃、人口の増加等によって、どうしてもわが国は、毎年百五十万石を必要とするのであります。従いまして、差し引き逆に、政府の施策は四十万石の減となるということでありまして、かかることからして、政府経済計画の大綱によりましても、農家経済の伸びは、他と違いまして、わずかに四%しか見込み得ないという結果になって現われておるのであります。かような状態でありまするから、依然として、農政冷遇は保守党の政策であると言い得るのであります。  次に、地方財政でございますが、今日、国家予算は拡大予算をうたい、これに反しまして地方財政は、依然として六百億の赤字財政を放置したままであり、加えて所得税の減税に伴うその収入減には、三分の一しか補てんしたにすぎません。かかる実情の中に、地方税もまた減税すると言いつつ、一般庶民負担は増大し、これに反しまして、芸者花代の減税をはかるなど、保守党の性格、面目躍如たるものがあると思うのであります。(拍手)  次に、完全雇用の欠陥を指摘いたさなければなりません。完全雇用のかけ声は、言葉だけでも、失業者、潜在失業者にとりましては、春のそよ風のごとく快く響くのであります。しかし、政府経済計画によりましても、完全失業者は、前年度同様六十万人になっておるにもかかわらず、予算におきましては、逆にこれが二万五千人の減として計上され、しかも、売春防止法の完全実施をいたしますならば、この面からも二十万人の失業者が出て参ります。この二十万人の失業者は、何ら計画に入っておらないのでありまして、これは一体失業対策に不熱心なのか、あるいは売春防止法をやらないつもりなのか、そのいずれかであろうと思うのであります。また、全労働者二千五百四十六万人中、週六十時間以上働いておる労働者は、六百四十九万人を数、えるのでありますが、この労働者は、言うまでもなく、低賃金のため、やむなく残業と超勤によって生計を維持いたしておるのであります。一方には失業者、潜在失業者が多くあるのに、長時間労働者との調整ができませんのは、労働政策の貧困と言わなければなりません。また、共かせぎは九百五十三万人おりまするし、月四千円未満の勤労者は、八百十六万人の多数を数えるのであります。この対策も、予算審議を通じましては絶無と言わざるを得ません。ここにおいて、わが党は最低賃金法、家内労働法を先般提案いたしたのでありまして、その提案理由1は、現政府の労働政策の貧困を補わんとするものでございます。(拍手)これが審議に当っては、どうか同僚議員各位の御賛成あらんことをば、この際お願い申し上げておくものであります。(拍手)  次に、社会保障の充実、なかんずく国民皆保険の問題でありますが、これまた政府の重大施策の一つとして取り上げられたのであります。ところが、先にも述べましたように、その社会保障予算は、実質七十億円の増額にすぎません。拡大予算と高額所得者減税と対比いたしますならば、あまりに冷たい措置と言わなければならないと思うのであります。また、健康保険法の改悪案は、若干の修正を見たのでありまするけれども、残念ながら、本日この議場において可決されました。その修正の骨子は、結局、患者負担を増す点でございまして、この点から見ても、社会保障の逆行であると言い得ると思うのであります。国民皆保険のよりどころである国民健康保険法改正につきましては、去る二十八日、本院の社会労働委員会におきまして、神田厚生大臣が、改正案を今期国会には提出しないと言明したのでありまして、公約違反もはなはだしいと言わなければなりません。(拍手)  さらに住宅政策が、庶民住宅重点から高級住宅重点へと移行しつつある問題、あるいはまた防衛関係費の内容、原子兵器の持ち込みの問題等、幾多批判いたしたい点がございまするが、時間の都合上これらを省略いたします。  実に欠陥の多いこの予算案に対して、わが党は、さきに予算大綱を提示して世論に訴えまするとともに、保守党政権下におきましても、なお手直しをすることによって、よりよき予算案を作ることが可能なりと信じまして、衆議院段階において、保守党政権下、可能な修正案をもって自民党と協議をいたしたのでありますけれども、かようなささやかな修正案に対しても、頑迷にも応ずるところがなかったのであります。かような状態でございまして、ここに日本社会党は、もちろん協力関係にある勤労大衆の意思を代表いたして、この予算案に絶対反対の意思を明らかにし、ここに私の反対討論を終るものでございます。(拍手
  59. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 左藤義詮君。    〔左藤義詮君登壇拍手
  60. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 自由民主党を代表いたしまして、昭和三十二年度一般会計予算外二案に対し、賛成の意を表するものであります。  本案審議日程がかなり窮屈であったにもかかわらず、野党の諸君が公明寛大に審議に協力せられ、欠缺なく年度内に予算の成立を見ますことをまずもって喜びといたします。(拍手)二大政党下、主義、政策で堂々対立論議すべきはもちろんでありますが、過度の摩擦や闘争を避けて、国会運営を正常化することは、民主政治の最大要件でありまして、春とともに病気も快方に向いつつある石橋前首相も、さぞかし満足しておらるることと存じます。つつしんで社会党の同僚各位に深甚の敬意を表する次第であります。(拍手)  さて、本年度一般会計予算は、一兆一千三百七十四億という未曾有の大規模となりました。ただいま天田議員は、その数字の膨大を非難されましたが、ここ一両年の日本経済のすばらしい発展にかんがみますれば、決して過大なものとは言えないのであります。御承知のごとく、経済復興のテンポは、過去二年にわたって特に顕著でありまして、昭和二十九年に比べて昭和三十年度は、鉱工業生産が下五%の増、輸出が三〇%の増であり、さらに昭和三十一年度には、三十年度に比べて、生産二一%、輸出二〇%の増加となっておるのであります。昭和三十一年度の生産力を戦前に比べてみますと、実に二二七%に上るのでありまして、その生産力が国民の生活を潤し、輸出の伸張となって、わが国経済をささえておるのであります。一兆一千三百七十四億という数字は、一見いかにも膨大に見えますが、国民所得に対する予算の割合が、前年度の一四・八%に対し、本予算ではむしろ減少して一丁九%にとどまるという事実を見ましても、この数字がきわめて健全であることを物語るものであります。(拍手)  顧みて、あの惨たんたる戦中戦後、イモの葉っぱを食べたり、こじきのようなボロを下げたあの当時に比べまして、よくもここまで立ち直ったものだと、うたた感慨にたえません。あれほどのひどい打撃のどん底から、これほどすみやかに立ち直った事例は、世界の歴史にもまれでありましょう。これひとえに、勤勉にして能力高き国民諸君のたゆまざる努力と忍耐の結果にほかなりませんが、十余年間、主としてこの難局を背負ってきた保守党の財政政策が、幸いにして大過なかったことを喜びとする次第であります。(拍手)  右のごとき国民経済の上昇を反映して、国家財政も著しく改善せられ、昭和三十一年度には、税収は予算見積りをはるかに上回って、一千億という自然増が見込まれるに至りました。この勢いで参りますと、昭和三十二年度におきましては、優に二千億の自然増収が予想されるのであります。この財政の著しい改善に際会して、わが自由民主党は、一千億を減税へ、一千億は重要政策の積極的な推進に振り向けることといたしました。一千億減税、一千億施策という、わが党の予算編成方針が、どれほど歓迎せちれ、期待せられているか、ほうはいたる世論の証明するところであります。(拍手)  まず、第一の一千億減税について、申すまでもなく、わが国民は、戦後特に過重の税金にあえいで参りました。戦前に比べて約二倍、しかも戦前は、間接税が過半を占めておりましたのに、今日では租税の体系は、直接税中心となり、所得税だけについて見ますると、実に約六倍という重さになっております。所得税の課税の最低限は、今日では大体二十四万でありますが、戦前には、これが大体六十万円くらいまでは所得税を払わなくて済んだのであります。  一方、税率を見ると、これは非常に急進的でありまして、カーブが急でございまして、最初の税率一五%が、五十万円になると四〇%になり、百二十万円で五〇%、五百万円風上になりますと最高の六五%が適用され、諸外国とは比較になりません。これでは勤労意欲も向上せず、貯蓄の奨励も、資本の蓄積も十分を期することはできません。こうした国民の重い租税負担を軽減するために、わが党は、過去数回にわたって、累計四千五百四十億円の減税をいたしました。ただ、過去の減税におきましては、とりあえず諸控除の引き上げが主となって、四千五百億の八割までがそれに注がれたのであります。今回はこの不均衡を調整して、税率の引き下げに重点を置き、減税総額の大体七割を税率引き下げに、三割を控除の引き上げに充てておるのであります。戦前との比較において、中堅の所得層の租税負担が特に重くなっているのが、これによってようやく均衡に近づいたのであります。天田君は先ほど、この減税が非常に片寄っているという御説でありましたが、わが党が多年努力して参りました六回の減税を総合せられましたら、その当らざることをお悟りになるでありましょう。(拍手)減税の恩典に浴しない階層の多いことを攻撃されますが、すでに控除引き上げで所得税を納めていない人、すなわちゼロから、さらにマイナスすることは算術的に不可能なことであります。従来、最もしわの寄せられていた国民中堅層の負担を軽くして、明日からの勤労に励みと喜びとをもたらすことは、何という明るいことでございましょう。給与所得者のみならず、個人営業者においても、所得税において平年度百二十億以上の負担の軽減となるのでありますが、そのほかに、中小法人に対しては、百万円までの課税所得に対する法人税と事業親の引き下げ、個人事業に対しても年五十万円までの課税所得についての事業税の引き下げとか、中小企業の機械設備の償却には特別の考慮を払うこととし、また、中小企業を対象とする第四次の資産再評価を行なって、税負担の軽減合理化をはかったことなどによって、中小企業者は、所得税の軽減以外に、なお、年百億以上の税負担の軽減を受けることになっておるのであります。(拍手)仁徳天皇は、三年みつぎものをとどめて国を富ましめられましたが、私どもは、岸内閣が国民多数の支持によって、さらに明年も明後年も、あまねく広くこの仁政を拡充せられるよう、心から念願をいたす次第であります。  本予算の第二の柱は、一千億の新しい財渡による積極的な経済拡大、特に基礎産業の隘路を除去して、明日への経済飛躍と雇用の拡大に資せんとすることであります。まず、鉄鋼については、輸入税の免除によって、鉄鋼需給の安定化をはかるとともに、設備の近代化による増産に全力を傾注いたします。  輸送においては、道路の整備と国鉄輸送力の増強、本年度三百五十億円であった道路費を、一挙に二百億円増額して五百五十億円とし、別に道路公団の事業費を八十七億から百三十五億に増額しており、この予算によって、一般国道は、前年度に比し約六割の増、公団道路については、倍増の建設が可能となり、多年の懸案であった関門トンネルが完成するほか、名古屋、神戸間の高速自動車道も、いよいよ着工の運びとなるのであります。国鉄の輸送力につきましては、三十二年度を起点として、五カ年間、約六千億の巨費を投じて、幹線輸送、通勤輸送の改善、電化その他の近代化の促進に乗り出すことになり、本年度予算におきましては、前年度の倍に近い一千六十九億円の工事費を計上しております。その画期的な五カ年計画遂行のために、国鉄運賃が一割三分の引き上げを余儀なくされましたが、もともと国鉄の運賃は、他の一般物価の値上りに比較して非常な割安になっており、一般物価の戦前比三百四十倍に対し、貨物運賃は百六十七倍、旅客運賃はわずかに百二十倍にとどまっているという実情を考えますとき、国鉄輸送力の画期的な増強のためには、この程度の運賃の値上げは、やむを得ないものとして了承せざるを得ないのであります。これによる物価の値上りを心配されますが、運賃の影響はわずかに一%、それよりも滞貨を一掃して流通をよくする方が、はるかに物価を押えるのであります。  隘路の第三、電力につきましても、開発銀行の融資の増額、電源開発会社の開発費の増額、公営発電への政府資金供給額の増加、その他三十二年度に財政から供給する電力開発関係の資金は、前年度の六百二億に対して二百十四億も増額され、八百十六億に達しており、これによって三十二年度の発電量は、前年度よりも丁八%の増加を見るのであります。このように経済拡大の隘路打開のために、大幅な資金増額が行われておるほか、国土総合開発の促進、科学技術の振興、貿易の振興、食糧増産及び農林漁業の振興等、経済拡大に資するための経費が著しく増額されておるのでありますが、時間の関係上詳述を避けまして、ただ一点、中小企業の育成振興について、国民金融公庫中小企業金融公庫資金の大幅増額、商工中金の金利引き下げ、信用保証協会の保証業務の拡充等、各般の措置をいたしております。さきに申しました税制上の優遇と相待ち、さらには目下審議中の中小企業団体法のもたらす企業の安定化とともに、中小企業の振興に大いに役立つものと確信するのであります。(拍手)  最後に、本予算案の最大の特色とするところは、民生の安定、向上、特に住宅建設の促進と社会保障の拡充であります。わが党は、昭和三十年鳩山内閣当時、住宅建設十カ年計画を樹立し、二百七十万戸に及ぶ住宅不足の解消に努力して参りましたが、その期間をさらに短縮して、おおむね五カ年をもって住宅不足の解消をはかることとし、このため公営住宅、住宅公団、住宅金融公庫資金を思い切って増額しておるのであります。一世帯一住宅の夢が実現するのも決して遠い将来ではありません。(拍手)  また、社会保障の面におきましては、生活保護の基準の引き上げ、母子加算の増額、児童保護費の増額、母子福祉貸付金の国の負担率の引き上げ、遺族に対する援護費の増額等、社会保障の充実に努めておりますが、なかんずく特筆すべきは、国民皆保険、母子年金、老齢年金制度創設への第一歩を踏み出したことであります。国民保険法の改正が、今国会の間に合いかねたことは、まことに遺憾でありますが、予算面におきましては、新たに五百万八の加入者の増加が予定されております。母子年金、老齢年金の制度は、とりあえず創設準備費が計上されておりますが、この実施に踏み切ったことは、非常に大きな意味を持つものであり、明年度以降には、大きな財政負担が約束されているのであります。これは、わが国社会保障制度における画期的な前進でありまして、天田君が、先ほど仰せられました日の当らぬ階層、減税の恩恵に浴しない人々に対し、わが党は、かくごとく力を注いでいるのであります。社会主義政党が、多年夢想せられた社会保障は、まさにわが党によって現実化しようとしているのであります。(拍手)  かくごとく、昭和三十二年度予算は、大幅な減税を行うとともに、一方において、経済拡大の基盤を整備するために多大の資金を振り向け、他方において、社会福祉の向上に資すべきもろもろの施策を取り入れており、健全にして積極的な予算であるとして、われわれは全面的に賛成の意を表するものであります。(拍手)  さきに天田君は、愛国の至誠をこめて、本予算がインフレを招来しないかと心配せられましたが、公聴会における公述を聞きましても、また財界や新聞の見通しを見ましても、本年度は、インフレにもならず、デフレにもならない中間の道を行くであろうという意見が大勢を占めておるのであります。ただ、少数とはいえ、天田君のごとく、インフレに対する強い警告があるという事実は、政府においても率直に認めなければなりません。特にインフレ助長の心理的要素、すなわちインフレ警戒論が、架空の需要を呼び起すときこそ、物価の騰勢に拍車がかけられるのであります。政府が、財政金融の緊密なる連繋によって、厳にインフレーションの要因を押えることを要望するとともに、祖国を愛し、子孫を思うまじめな国民諸君が、あくまで浮華を戒め、勤倹を励まれんことを、この壇上から切に念願いたすものであります。  政治の要諦は、先んじて憂い、おくれて楽しむにあり、綱紀粛正を使命とする岸内閣が、本予算執行に当り、あくまで厳粛、慎重に、厘毛といえども、この国民の膏血をおろそかにしないよう、特に要望いたしまして、私の討論を終る次第であります。(拍手
  61. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 千田正君。    〔千田正君登壇拍手
  62. 千田正

    ○千田正君 私は、ただいま議題となりました昭和三十二年度一般会計及び特別会計並びに政府関係機関予算について、反対の意を表するものであります。(拍手)  なぜなれば、政府並びに与党の諸君があまりにも朗らかならっぱを吹き過ぎて、われわれ国民は、非常に不安の念にかられているからであります。真に国を憂い、真に民生を憂うるものは、まさに万世のために命を断つというだけの信念を持たなければ、今後の日本の独立は期せられないと思うから、私は反落するのであります。  池田大蔵大臣は、その財政方針を述ぶるに当りまして、三十二年度予算は、収支が均衡さえしておれば、財政規模は大した問題ではないと言明して、インフレ化の心配がないがごとく豪語しておられるのでありまするが、一千億円の予算規模拡大と、財政投融資の増加六百七十三億円を合わせると、これが物資への購買を刺激して、特に生産財の需給を窮屈にし、輸入増を来たして、国際収支のアンバランスとなり、国内インフレ必至の方向へ進むことは、火を見るより明らかであります。  以下、その理由を述べて、政府の考慮を促したいと思うのであります。  反対理由の第一点は、本予算及び財政投融資計画が、内外経済の現状、見通しから見ましても、インフレ要因を包蔵しているということであります。池田蔵相は、国会における財政演説で、世界の景況は、多少の波動はあるにしましても、今後もなお高水準を持ち続けると言われてはおりますが、われわれは手放しに池田蔵相の言葉を信ずるわけには参りません。その理由の一つとしては、国際収支のバランスは、本年に入って、二月の国際収支を見ましても、一月に引き続き六千三百万ドルの赤字であります。これは、仏貨債の支払いや特需収入が少かった点もありまするが、根本的には、輸出が伸び悩んで、二月は二億千三百万ドルと、三十一年度の月平均約二億ドルと変らないのに対して、輸入は二億七千八百万ドルと、最近にない最高の数字を示しておるからであります。しかも、三十二年度上半期外貨予算の発表によりますというと、上期二十六億四千三百万ドルを公表するに至って、石炭、石油、食糧、繊維原料あるいは肥料原料、鉄鋼原料の輸入に十分の予算を計上したから、物価は上らないというのは、あまりに甘い見通しではないでしょうか。むしろ輸出の前途には楽観を許さぬ悲観材料が多いのであります。国際収支バランスの不均衡が財政に及ぼす影響は多く、インフレ要因十分とわれわれは見ざるを得ません。  反対理由の第二点は、いわゆる一千億の減税施策により、国民生活の上に、あるいは国民所得分配の上に、ますます不均衡を拡大さして行くということであります。すなわち千九十二億円の所得税減税の恩典は、先ほども天田君が指摘しておりましたが、国民の七三%、六千五百六十八万人に達する所得税を納めていない低所得層の人々には及ばないのであります。しかもこのような低い所得層は、地方税、間接税を多額に納めており、三十二年度においては、四百億円前後の間接税が、この低所得層から増徴され、高額所得層の減税の財源に充てられるという矛盾があるからであります。一方、減税内容を見まするに、年所得五十万円をこえる納税者数は、全体のわずかに七%にすぎないのに、減税額は七百億円、これに対し、五十万円以下の納税者数は九三%を占めるのに、減税額三百億円という、上に厚く下に薄いという不均衡があるのであります。さらに鉄道運賃の二二%の引き上げによる増収三百六十五億の約七〇%、約二百五十五億円、私鉄バスの値上げ、タバコの増収五十五億円等は、この低所得層の負担増加となり、ますます苦しい生活にやがて追いやられる結果となると私は断ぜざるを得ないのであります。  反対理由の第三は、完全雇用についてであります。政府は一千億施策について、完全雇用を掲げておりまするが、経済企画庁の三十二年度経済の見通しを見まするというと、明年度新たに加わる労働力約九十万人に対し、国民総生産七・六%の伸びによって、八十九万人を吸収すると見込まれておるのでありまするが、この数字は、労働人口の増加見込数と一致し、雇用者数はふえても、失業者数は変らないということになります。現在六十万人の完全失業者、さらに一千万になんなんとする潜在失業者や不完全就労者は、全く救われないということになっております。一方において、今日この程度に顕在的な失業者が食いとめられておるという事実は、農村における過剰就業という事実を土台にして成り立っているということで、この点も見のがすわけにはいきません。政府が標榜しておるところの完全雇用の道は、農業においては過剰就業あるいは潜在的大量の失業者をかかえたままで、他産業における雇用の問題を解決するという形では、完全雇用の解決にはならないのであります。さらに、インフレ的積極政策で、たとえ一時的に雇用が増大しましても、完全雇用への着実な発展は望めないと私は思うのであります。  反対理由の第四点は、農林漁業対策並びに公共事業費についてであります。農林予算の拡大予算総額に対する比率は、一そう低下いたしまして、食糧増産対策費百七十億円で百十万石の食糧増産が見込まれても、農地の壊廃あるいは人口増によるところの増産必要量百五十万石に対しては四十万石の後退となっておるのであります。さらに明年度経済計画の大綱に、鉱工業生産の伸びを一二・五%に予定しておるのに対し、農林生産の伸びは、わずかに〇・四%にしかすぎないのであります。農林省の推計によりましても、食糧の生産並びに国内における消費が現状のままに推移いたしますと、消費人口の増加と農地の壊廃によって、昭和三十五年における米麦の不足量は、約六百万トンを推定されるのであります。これは米に換算して約四千万石ということになります。このような問題が出ておるときに、食糧自給に対する予算は、前にも述べましたように年々減少してきておりまして、農村あるいは漁村等におけるところのいわゆる基礎産業は圧迫されつつあるのであります。ことに増産のため、必死の開拓者に対しまする開拓行政は、新たなる観点のもとに立って、この人たちの意欲を十分に伸ばすべきではないでありましょうかと、私はつくづく、こうした問題についての現政府の政治の貧困を嘆かざるを得ません。  次に、災害復旧費は昨年度に比べて四十四億円の減少になっております。災害復旧率は、・三十二年度末において、昭和二十八年の災害が八五%、二十五年の災害がようやく一〇〇%復旧されるにすぎないという現N状において、災害復旧費が約一〇%も減少しているということは、災害復旧に対して誠意のないことを立証しておるのであります。三年間に完全復旧してこそ、年々災害に悩む国民の要望にこたえるゆえんであると思うのであります。  反対理由の第五は、社会保障費についてであります。社会保障費は、間接税の増徴や、あるいは国鉄運賃の値上げの被害を受け、減税の恩恵に浴しない約六千万の低所得層に対しまして、わずか九十一億円の増額にすぎません。生活保護費の面については、保護基準を引き上げる反面、生活保護者の標準をきびしくして十九万人を減らしたことは冷酷であり、生活保護は受けていないが、ボーダー・ライン層は、全国で九百万から一千万人に上ると言われる、この階層に対しては、何ら見出すべきところの対策は打ち出されておらないのであります。さらに、失業対策の対象人員を三十一年度の二十四万八千人を二十二万五千人に減らし、失業対策費は、給付単価を五%引上げたにもかかわらず、三十一年度より三億円削っておるのであります。給付単価五%の引き上げも、運賃やバス代の値上りにより相殺されるということになるのであります。さらに、住宅問題あるいは国民健康保険の問題等、数えれば数限りのないほど政治の貧困を私は追及せざるを得ないのであります。  最後に、地方財政におきましては、地方財政再建促進特別措置法により再建整備をやっておりますが、それは行政水準の切り下げによって、地方住民の福祉の犠牲において、この赤字を整理しているという状態になっておるのであります。全く地方財政は、行政内容の低下によって憂うべき状態にあると、自治庁すら指摘しているのであります。地方交付税につきましても、所得税の減税に伴う欠陥は、交付税の繰入率を三・〇五%引き上げなければそれを補うのに十分でないのに、地方自治体側の要求が三%引き上げに対し、わずか一%の引き上げしか認められておらないのであります。実質的には、二・〇五%は少くなったと言わざるを得ません。さらにまた、国の財政は拡大均衡予算地方財政は六百億円という借金予算の計画では、中央と地方財政の不均衡を拡大するものであり、地方債の現在高実に五千二百億、ここ数年を出でずして、地方債の償還額と借入額がひとしくなると言われている地方財政の現状から考えますと、三十二年度の公債費の元利補給九十五億円は、三十一年度分の地方交付税の自然増を回すというからくりをしており、自主財源たるべき交付税を特定財源に充当いたしますならば、不当な処置というべきであり、かくごとき処置では、地方債の重圧から地方財政の窮乏を救うことはできないと思うのであります。  以上、六点をあげましたが、このほかに、戦後十二年、いまだに戦争の犠牲の問題があります。外に向っては、国の賠償の問題、国内においては戦争犠牲者に対する問題等ありまするが、今次予算審議の過程からみまして、神武以来の景気どころか、社会不安への断崖へと進みつつあると断言せざるを得ません。私は政府に対し、真に国民生活の安定を期し、さらに健全財政の理想を達するためには、明らかに今度の財政というものは、むしろ不安へ不安へと進む財政政策であるということを、あえて究明いたしまして、政府の猛反省を促して、私の反対討論を終ることにいたします。(拍手
  63. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 森八三一君    〔森八三一君登壇拍手
  64. 森八三一

    ○森八三一君 私は緑風会議員総会の決定に基きまして、ただいま議題となっております昭和三十二年度一般会計予算外二件に対しまして、以下申し上げます数点を指摘し、政府の善処を求め、原案に対し賛成の意を表明する次第であります。   一般会計予算は一兆一千三百七十四億円であります。前年度に比べまして千余億円の増加であり、財政投融資におきましても六百七十億円の増加が計上されております。さらに、昭和三十  一年度予算補正におきまして追加計上せられまして、そうしてそれが三十二年度に持ち越して使用することになっておりまする二百億円を加えますれば、まさに二千億円になんなんとする膨張を見るのであります。貨幣価値が変動しておるとは申しますものの、予算規模におきましては、まさに神武以来の大予算と言うべきであります。  最近における産業経済の異常な発展と、国民所得が八兆をこえるという見込みに立ち得る現状等からいたしますれば、さして驚くに足らないというような説明がなされているのではありますが、この膨大なる財政規模自身がインフレ的要素を持っておりますことは、委員会におきまして一同僚委員多数の諸君が指摘したところでありまして、否定するわけには参らないところであります。さらに他面、鉄道運賃の値上げ三百六十五億円が計画されていること、ガソリン消費税の引き上げ、軽油引取税の増徴等が実施されんとしているのでありまして計算上一般物価に影響するところはきわめて僅少であるとの説明でありますが、これらが物価に及ぼす影響は、ただ単にその部分だけを平面的に計算した程度にとどまる秀のでないことは今さら申し上げるまでもありません。ここにインフレを招来し、せっかく安定拡大の堅実な発展を示して参りました日本経済を、根底から破壊するに至ることをおそれるのでありまして、いたずらなる消費は徹底的に抑制さるべきであり、進んで貯蓄等、資本の蓄積増成には、格段の努力が払われなければなりません。特に金融と財政の緊密、有機的な運営に遺憾なきを期さなければなりません。政府は異常の決意をもってインフレの回避に対処されたいのであります。  次に、本予算は、最近の経済界の好況を反映する二千億円に達する自然増収を引き当てとして、一千億円減税、一千億円施策を打ち出しているところに特徴を見出すのであります。自然増収の半額が、財政支出に当てられておりますことにつきましては議論のあるところでありますが、ここでは、一応その議論は避けることにいたしますが、いわゆる一千億円減税であります。もちろん、所得の増加がありますので、平面的に計算することば当らないのではありまするが、予算面だけから見ますれば、三十一年度に対して所得税の軽減は三百二十億円にすきないのであります。他面、間接税の増徴四百億国鉄運賃の値上げ三百六十五億等を考えますと、財布から出て行く金額は、大して軽減されないばかりか、階層によりましては、かえってふえるかと存じます。所得の増加をたな上げにしておいて、負担だけを論ずるのは虫がよ過ぎるということではありましょうけれども、重税に苦しんでいる国民の多数は、現実に財布から出て行く金の軽減を期待しておるのであります。実際問題として、これが具体的解決は、非常にむずかしいことではありまするが、将来の課題として留意されなければなりません。さらに今日、九千万国民中、七三%、六千五百万は非課税者であり、納税者は二七%、二千五百万であります。その九三%が五十万円以下のいわゆる低額所得階層に属し、軽減額おおむね三百億、残りの七百億が七%の五十万円以上の所得層に対する軽減になるかと存じます。  以上のようなことからいたしまして、いわゆる低額所得者及び非課税者は、比較的減税の恩典に浴し得ないのであります。これらの階層中、社会保障施策の対象となっておる人々に対しましては、十分ではなくとも、それぞれ別途に対策が講ぜられておりますから、これらの階層に属する人々を除きまして、残された多数の諸君に対する処遇をいかにするかということが問題であると存じます。大蔵大臣は、かつて、「この問題は、世界の政治家が税を取り扱うときに、きわめて大きな悩みとしておるところでありまして、解決はきわめて困難であります。大切なことであるから、鋭意研究して善処したい」というように申されました。研究の結果、ここで問題になっておる人々が、主として構成しておる各種協同組合の剰余金は、一般営利法人の利益と同一視さるべきものではないことは当然でありまして、戦前、いずれも特殊法人として非課税の取扱いがなされておりましたことに思いをいたされまして、一般法人税四二%に対して三五%に軽減の措置をとられたのであります。これらの特殊法人に対する法人税を全免いたしますることは、まさに問題解決の一方策であることは間違いないところであろうと存ずる次第でありまして、すみやかにこれが実現を期せられまするよう希望するのであります。なお、特別措置法の整理について不徹底な部分を存しておるのでありまして、今後さらに検討されまして、税法上の不均衡を是正するとともに、今日法人税が高きに失し、企業の発展を阻害しておると思われる幾多の問題が存していることにかんがみ、合理的な特別措置を含めて、平均三〇%を軽減すべきであろうと存ずる次第であります。政府の考慮を求める次第であります。  第三に、地方財政の問題であります。今日、地方公共団体が多額の赤字に苦しんでおりますることは周知のことであります。今やまさに、自治体としての機能を停止しなければならぬ最悪の状態にあるものもないわけではありません。もちろん、地方財政が放漫に流れることは厳に慎しむべきであって、自治庁の厳正な監督指導を望むものでありまするが、本件は、一日も放置のできない緊急、喫緊の要事であります。市町村合併促進法、再建整備法が、この問題の解決に一歩を進めておりますることは申すまでもありませんが、何といたしましても、当面公債費の問題を急速に解決することであろうと存じます。政府もここに思いをいたされまして、三十一年度補正予算中、八十六億円を、三十二年度にこれが対策のために支出することを計画され、所要法律が制定されました。しかしながら、この措置は、地方交付税に特例を設け先ものでありまして、たまたま三税の自然増収が生じたからのことであります。元来、地方交付税法に特例を設けることにつきましても、問題点がないわけではありませんが、その欠陥は、将来補完するという政府の言明に信頼することといたしまするが、自然増収がもしなかったといたしますれば、本施策は行われなかったであろうことは想像にかたくないところであります。政府は、国家財政がきわめて恵まれておる今日、地方財政の健全化を講じまするために、絶好のチャンスであろうと存ずる次第であります。すみやかに根本的、合理的にして、かつ十分な地方公債費問題の解決に対する具体的方策を樹立し、実行されますことを強く要請するものであります。  次に、世界的好況に伴って、政府経済五カ年計画を根底から改変しなければならぬという、異常な産業経済の進展をみましたことは御同慶の至りであります。しかるに、電力、鉄鋼等の基幹産業開発がこれに伴わず、きわめて重大な隘路を出現しておる現状にかんがみ、三十二年度予算において、あわてて電力、鉄鋼、運輸等の拡充を計画されておるのでありまして、はなはだ残念な次第でありますが、今からでもおそくはない、すみやかにこれが計画の達成を望むものであります。ところが、これらの計画を具現いたしますことと、住宅問題の解決、五十万戸の新設等、いずれも莫大な資材を所要するのでありますが、委員会質疑を通じ、所要資材の計画的生産、配給に対する計画がきわめてずさんであるように理解されたのであります。かくては計画の達成はもちろん、その間物価のいたずらなる値上りを招来する危険なしとは申されません。政府は、諸般の実情に十二分の注意をなし、資材の確保に、その価格に支障を生じませぬよう、格段の措置を望むものであります。  第五に食糧問題であります。まず、昭和三十二年度食管特別会計におきまして、百四十二億の赤字が予見されていること、三十一年度赤字が百六十二億持ち越されていること等を考えますれば、三十二年度予算が均衡を得た健全財政であるとは申しがたいのであります。ここにもインフレ的要素をみることは、はなはだ残念のきわみであります。そのことは別といたしましても、すでに三十一年度補正予算討論におきまして申し述べましたごとく、臨時調査会を設けて、これらの問題の解決を含めて食管会計合理化対策を発見されんといたしておるのでありますが、世上、調査会は、消費者米価値上げを理論づけるためのものであるというような心配がなされておる次第でありまして、政府は、あくまでもこれらの心配が雲散するよう対処されんことを重ねて要求する次第であります。  特に重視しなければならぬことは、三十二年度の国際収支の見通しでありますが、輸出二十八億ドル、輸入三十二億ドルでありまして、貿易外の特需等に依存して、ようやく収支の均衡を得しめているという状況であります。現に公聴会におきまする公述にみましても、参考人として意見を聴取いたしました日銀山際総裁の話によりましても、国際収支のバランスをとることは容易ならざる困難事であるとされております。ここで問題になりますことは、輸入の王座を占めている食糧の自給度向上のことであります。三十二年度予算からいたしますれば、食糧増産対策費二百七十億でありまして、約百十万石の増産ということでありますが、無計画とは申しがたいまでも、各省庁間に有機的な連絡が不徹底な関係等からいたしまして、年々歳々相当の美田が壊滅している実情を勘案いたしますれば、人口増加とともに、百五十万石程度の補給を要すると思うのでありますから、差し引き四十万石の輸入増加ということになり、さらに国際収支に悪材料を提供していることになると存じます。さらに、予約売り渡し制度は存続するという総理の言明でありますが、本制度実施以来行われて参りました予約奨励金石当り百円、並びに時期別価格差奨励金を削除いたしておりますることは、理論的には理解できるといたしましても、生産者は、すでに米価の一部として受け取っておる現状からいたしますれば、生産意欲を減殺する結果となるでありましょう。かくごとく、積極的な増産施策が不十分であり、消極的に生産増強を後退せしむるがごときは、食糧自給度向上を重要な政策として掲げておる政府の方針に反するものであると申しても、差しつかえないかと思われる次第であります。それが、わが国の平和再建上における絶対の命題である経済自立の基本的要素である国際収支に悪影響を及ぼすことになるといたしますれば、きわめて遺憾なことでありまして、政府の特に再考を要するところであります。農村が常に労働人口の調節的役割を果して参りました功績と、現に多数の潜在失業者を包容しておるという実態からいたしまして、さらに国民の約半数を占める農民の購買力の消長が、国内経済、特に中小企業の盛衰に重大な関係を有することにかんがみますれば、農林水産業の原始産業に対し、政府の施策が、漸次後退しておりますることは、前述の国際収支問題と相関連して遺憾にたえません。将来この問題に関し、特段の留意を願う次第であります。  今日、産業の拡大と輸出貿易の進展を期するための重要課題は、下積みとなっている多数の中小企業の正常な発展を期することでありましょう。これが対策は、もちろん一にして足らないのでありまするが、その動脈をなすものは、組織化と金融の問題であります。政府は常に、業者の協同化を推進すると述べられておりまして、われわれの同意するところでありますが、その組織の強化を行いまするためには、金融がその組織を通じて行われるがごとき体系を確立することでなければなりません。しかるに、中小企業に対する金融体系がきわめて複雑であるとともに、協同組織を強化する方向を示しておりませんことは、いかがかと思う次第でありまして、この際、協同組合の系統組織を強化するという基本的態度を根幹とする金融体系の強化確立と、その金利の低下に格別の関心を払われますよう、要求をする次第であります。  最後に、競輪等射幸的娯楽はすみやかに整理さるべきものであり、さきに本院の付帯決議も、その内容を包蔵していたものでありまして、地方実施団体に対する施設費等直接的な財政上の負担を考慮しつつ、すみやかに具体的な対策の樹立を望む次第であります。  以上、希望の数点を申し述べまして、政府の誠意ある措置を期待し、予算三案の原案に賛成の意を表して、討論を終る次第であります。(拍手
  65. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 八木幸吉君。    〔八木幸吉君登壇拍手
  66. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は、昭和三十二年度予算三案に対し反対するものであります。(拍手)  反対理由の第一は、自然増収に比較して減税額が少いことであります。臨時税制調査会の答申の基礎は、自然増収六百億円であって、その後の経済界の情勢により、所得税で一千億円の減税と、特別措置の整理、間接税の増徴によって、差引六百二十九億円の純減税をする案でありました。本予算案では、自然増収を約二千億円と見込み所得税で一千九十一億円減税し、これに対し、租税特別措置の整理、合理化、揮発油税、印紙税等の増徴で、差引純減税額は七百二十億円であります。しかるに、その後の国民所得の増高等を考えるならば、なおこの上に八百五十億円の自然増収も見込まれるとする学者もあります。私は、公共事業費、各種補助金等の徹底的整理、予算の効率的使用をはかるならば、一般歳出のための多額の財源捻出も可能であって、従って、自然増収のうちから、なお相当の減税をなし得ると信ずるものであります。現在、国民一人当りの租税負担額が一万七千百八十円であることからしても、財政規模の増大よりも、減税を主張するゆえんであります。  第二は、食管制度のあり方についてであります。政府は、米価の決定を臨時食糧管理調査会の答申に期待されておるようでありますが、その答申によって、一応赤字補てんの問題は片づいても、やみ米の問題は片づきません。供給量及び価格の両面から見ても、また、やみに流れる米の数量が千七百数十万石に及んでおる事実から見ましても、すでに食糧管理制度は、崩壊しておると見ねばなりません。この事実を直視せずして、当面の赤字補てんの問題にのみ重点を置く政府の態度には賛成できません。ことに、順法精神から一大勇断を下すべき時であります。  第三に、国鉄運賃値上げの問題でありますが、国鉄全線の八割までが赤字であり、また赤字路線の四割まで経費が収入の二倍以上である事実に対し、国鉄当局者は、何らの積極的対策を有せざることは遺憾であります。また、建設資金の増加四百八十三億円の七割六分まで運賃値上げによっているのは不合理であります。政府は、運賃値上げをする前に、まず内部の経営刷新と、外郭団体の整理、並びにその企業形態の根本的検討をなすべきであります。(拍手)  第四に、政府は、今回、各官庁を通じて、約三千人の定員の増加を要求しておりますが、その個々の事情はともかく、根本において、戦前に比較して行政機構が膨大、複雑化している現状にかんがみ、その簡素化、能率化のためにも、これが一大改革を準備すべき時代であります。予算上、これが片りんさえも現われておらないのは遺憾であります。  最後に、私は独立国として軍備の必要を認めるものであります。しかしながら、自衛隊が憲法第九条に違反することは明白であります。従って、現状の規模における自衛隊の予算は、憲法を改正せざる限り、これを認めることはできません。  以上をもって、私の反対討論を終ります。(拍手
  67. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 野坂参三君    〔野坂参三君登壇拍手
  68. 野坂參三

    ○野坂参三君 私は、日本共産党を代表して、本予算案に反対するものであります。  政府は、本予算案は国民負担の大幅な軽減並びに社会福祉の推進をはかるものであると称しております。しかし、このスローガンは、政府が大資本家の利益のために国民をだます看板にすぎません。(拍手)その理由は、第一に、政府の減税とは、実は高額所得者に対する大幅な減税のことにほかならないのであります。その証拠に、人口の七割三分に及ぶ大多数の国民にとっては、減税どころか、運賃、米価の引き上げ、間接税の増徴などによって、かえって負担が増しております。これが事実です。  第二に、政府は、社会保障の拡充などと言っておりますが、たとえば健康保険法の改悪から見ても、医療費その他の負担がますます国民に転嫁されようとしております。政府の掲げた羊頭狗肉の国民皆保険さえ、早くもその実施を延ばそうとしておるではありませんか。(拍手)  さらに政府は、中小企業に対しては、投融資をわずかばかりふやしたにすぎず、中小業者が熱望する低利の金融、大幅な減税は実質的に無視され、ことに、零細企業は捨てて顧みられない状態にあります。加うるに、独占資本による中小企業の系統的な搾取は、かえってひどくなろうとしております。  また、農業に対しては、依然として低米価政策を続け、土地改良など、日本農業の自主的発展に必要な施策は、ほとんど何ら予算には盛られておりません。  以上のことから、われわれは、この予算は国民の大多数の生活を少しも改善せず、逆に国民の負担を増大させるものであるということを私は断言できます。いわゆる国民負担の軽減とか、社会福祉の推進などとは、一体どこを押せば、このような声音が出てくるのでありましょうか。しかし、本予算案は、他方では、大企業の利益のために、できる限りの手厚い施策を盛り込んでおります。大企業を優遇する税の特別措置は、その大半が残されているばかりか、さらにこれをふやそうとさえしております。その上に、隘路の打開など、いろいろな名目で、電力、鉄鋼、海運、石油化学、原子力工業など  の独占企業に対しては、膨大な財政支出を集中しております。ことに、アメリカの新しい戦争政策に協力するために、防衛庁費を実質的に二百七十億円も増額し、近代兵器の生産に六百億円をこえる巨費を投じようとしているのであります。  さらに、この予算案は、中国、ソビエト同盟との経済交流の発展を、むしろ押えることを前提としております。政府は、対アメリカ貿易では、アメリカの言うままに譲歩しながら、他方、中国通商代表部の設置を渋り、日ソ通商協定の締結を意識的におくらせております。  以上に述べたことが、本予算案の本質であり、特徴であります。要するに、この予算案は、国民生活を犠牲にし、日本経済の平和的な、自主的な発展を妨げ、日本を軍事的にアメリカに従属させながら、少数独占資本だけを富ませ強める反国民的な予算であると断定せざるを得ないのであります。皆さん方には耳が痛いでしょう。  私は、以上の理由に基き、本予算案に対し、全面的に反対するものであります。(拍手
  69. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。  三案の表決は、記名投票をもって行います。三案に賛成諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行
  70. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖〕
  71. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  72. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数    二百九票   白色票    百三十二票   青色票     七十七票  よって三案は可決せられました。(拍手)      —————・—————   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名      百三十二名       森 八三一君    前田 久吉君       早川 愼一君    野田 俊作君       田村 文吉君    村上 義一君       廣瀬 久忠君    大谷 贇雄君       武藤 常介君    川口爲之助君       島村 軍次君    鹿島守之助君       石井  桂君    松岡 平市君       伊能繁次郎君    梶原 茂嘉君       加賀山之雄君    堀末  治君       有馬 英二君    苫米地英俊君       近藤 鶴代君    上林 忠次君       佐藤 尚武君    井野 碩哉君       藤野 繁雄君    西川甚五郎君       谷口弥三郎君    新谷寅三郎君       森田 義衞君    杉山 昌作君       後藤 文夫君    石黒 忠篤君       本多 市郎君    鶴見 祐輔君       草葉 隆圓君    仲原 善一君       成田 一郎君    堀本 宜実君       前田佳都男君    松村 秀逸君       手島  栄君    鈴木 万平君       柴田  栄君    大谷藤之助君       大沢 雄一君    西川弥平治君       重政 庸徳君    高橋  衛君       土田國太郎君    斎藤  昇君       雨森 常夫君    永野  護君       迫水 久常君    三木與吉郎君       田中 啓一君    横川 信夫君       木島 虎藏君    安井  謙君       関根 久藏君    野本 品吉君       秋山俊一郎君    岩沢 忠恭君       三浦 義男君    高野 一夫君       宮田 重文君    小柳 牧衞君       木内 四郎君    青山 正一君       左藤 義詮君    植竹 春彦君       石原幹市郎君    黒川 武雄君       重宗 雄三君    苫米地義三君       中山 壽彦君    泉山 三六君       平井 太郎君    小林 英三君       大野木秀次郎君    寺尾  豊君       松平 勇雄君    井村 徳二君       伊能 芳雄君    井上 清一君       小沢久太郎君    西田 信一君       稲浦 鹿藏君    吉江 勝保君       平島 敏夫君    後藤 義隆君       勝俣  稔君    小西 英雄君       佐藤清一郎君    西岡 ハル君       宮澤 喜一君    吉田 萬次君       横山 フク君    榊原  亨君       佐野  廣君    青柳 秀夫君       白井  勇君    高橋進太郎君       山本 米治君    大谷 瑩潤君       寺本 廣作君    剱木 亨弘君       小幡 治和君    上原 正吉君       岡崎 真一君    古池 信三君       小滝  彬君    館  哲二君       郡  祐一君    西郷吉之助君       小林 武治君    紅露 みつ君       小山邦太郎君    木暮武太夫君       石坂 豊一君    下條 康麿君       野村吉三郎君    笹森 順造君       林屋亀次郎君    青木 一男君       木村篤太郎君    津島 壽一君       吉野 信次君    江藤  智君       林田 正治君    中野 文門君       大竹平八郎君    天坊 裕彦君     —————————————  反対者(青色票)氏名      七十七名       大矢  正君    森中 守義君       北村  暢君    鈴木  強君       藤田藤太郎君    相澤 重明君       松永 忠二君    占部 秀男君       森 元治郎君    木下 友敬君       平林  剛君    山本 經勝君       岡  三郎君    久保  等君       柴谷  要君    大和 与一君       安部キミ子君    近藤 信一君       千葉  信君    戸叶  武君       大倉 精一君    竹中 勝男君       田畑 金光君    吉田 法晴君       中田 吉雄君    松澤 兼人君       河合 義一君    成瀬 幡治君       島   清君    田中  一君       松本治一郎君    三木 治朗君       東   隆君    荒木正三郎君       市川 房枝君    八木 幸吉君       野坂 參三君    岩間 正男君       横川 正市君    長谷部ひろ君       竹中 恒夫君    鈴木  壽君       大河原一次君    伊藤 顕道君       千田  正君    光村 甚助君       鈴木  一君    湯山  勇君       加瀬  完君    阿部 竹松君       安部 清美君    松澤 靖介君       椿  繁夫君    阿具根 登君       山口 重彦君    海野 三朗君       中村 正雄君    矢嶋 三義君       相馬 助治君    小林 孝平君       小酒井義男君    永岡 光治君       松浦 清一君    天田 勝正君       高田なほ子君    片岡 文重君       重盛 壽治君    羽生 三七君       岡田 宗司君    佐多 忠隆君       曾禰   益君    栗山 良夫君       山下 義信君    清澤 俊英君       棚橋 小虎君    内村 清次君       山田 節男君      —————・—————
  73. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後十一時十二分散会