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1957-03-29 第26回国会 参議院 本会議 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十九日(金曜日)    午前十一時二十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十九号   昭和三十二年三月二十九日    午前十時開議  第一 所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約実施に伴う所得税法特例等に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二 漁船保険特別会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第四 所得税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 法人税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第六 租税特別措置法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第七 国土開発縦貫自動車道建設法案(第二十二回国会衆議院提出、第二十六回国会衆議院送付)(委員長報告)  第八 住宅金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第九 商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一〇 信用保証協会法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一一 厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一二 建設省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第一三 昭和三十一年度分として交付すべき地方交付税に関する特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一四 国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一五 昭和二十九年度一般会計歳入歳出決算昭和二十九年度特別会計歳入歳出決算昭和二十九年度国税収納金整理資金受払計算書昭和二十九年度政府関係機関決算書委員長報告)  第一六 昭和二十九年度国有財産増減及び現在額総計算書委員長報告)  第一七 昭和二十九年度国有財産無償貸付状況計算書委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  ただいま傍聴席に、チリ外務大臣鉱業大臣サントマリー・ソルコ氏の御一行が見えられましたので、諸君に御紹介いたします。    〔拍手
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) また、傍聴席 に、ペルー下院外交委員長ルイス・ デ・モーラ氏が見えられましたので、 諸君に御紹介いたします。    〔拍手〕      ——————————
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、お諮りいたします。加藤シヅエ君から、海外旅行のため九日間、請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。      ——————————
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約実施に伴う所得税法特例等に関する法律案  日程第二、漁船保険特別会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案  日程第三、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案  日程第四、所得税法の一部を改正する法律案  日程第五、法人税法の一部を改正する法律案  日程第六、租税特別措置法案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、六案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長報告を求めます。大蔵委員長廣瀬久忠君。    〔廣瀬久忠登壇拍手
  9. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 ただいま議題となりました六つの法案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約実施に伴う所得税法特例等に関する法律案について申し上げます。  今国会において、わが国スウェーデンとの間に、二重課税回避及び脱税防止するための条約が別途承認されております。本法律案は、この条約規定せられておる事項のうち、特に法律規定を要すると認められるものにつきまして、必要な立法措置を講じようとするものであります。  以下その内容について簡単に申し上げます。第一点は、使用料配当または利子に対する所得につきまして、特例を設けませんというと、百分の三十の課税となるのでありますが、条約の結果に基きまして、これを軽減するための特例として、この法律を設けまして、百分の十五といたそうとするのが第一点であります。第二点は、特許権意匠権等の譲渡により生ずる所得についても同様でありまして、現行法のままで行きますと、個人の場合でも法人の場合でも、この種の所得一般税率によって課税せられるのでありますが、今度の条約によって軽減をはかるために、百分の十五の税率をこの法律によって定めようとするものでございます。  委員会における審議の詳細につきましては、会議録によって御了承願います。  質疑を終了し、討論採決の結果、全会一致をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、漁船保険特別会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案について申し上げます。  漁船乗組員給与保険政府の再保険事業に生じました損失は、従来、一般会計からの繰入金をもってこれをうめることになっておりますが、以来、抑留漁夫の増加、抑留長期化等のために、昭和三十年度の決算において、なお約五百六十二万二千円の損失が残 り、さらに昭和三十一年度において も、本年二月末までに約八千九百十八万七千円の損失を生ずることとなりましたので、この損失をうめるために、昭和三十一年度において九千四百八十万九千円を限り、一般会計からこの会計給与保険勘定繰入金をしようとするものでございます。  委員会における審議の詳細は、会議録によって御承知願います。  質疑を終り、討論採決の結果、全会一致をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  補助金等整理については、昭和二十九年度以降、法的措置を必要とするものについて補助金等臨時特例等に関する法律を制定し、それぞれ停止または減額の措置を講じて参ったのでありますが、補助金制度合理化は、政府において今なお検討を要しますの で、本法律案は、国立公園法に基く補助金を除く他の補助金について、昭和三十三年三月三十一日まで、引き続き一年間、従来の法律を延ばして行こ う、本法有効期限を延長しよう、こういうものであります。  委員会審議の詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。  質疑を終り、討論に入りましたところ、平林委員より、「補助金等特例措置は、急場逃れ措置であり、一時的のものである、一年ごとにそれを延期して今日まで参って、今日に至る も、いまだ政府において合理的の結論を見出しておらないということは、まことに遺憾である。これは政府の怠慢と言わなければならぬ、よって賛成することができない」という旨の反対意見が述べられました。  採決の結果、多数をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、最近のわが国経済情勢及び国民税負担の非常に重い状況にかんがみまして、臨時税制調査会答申を尊重いたして、規制改正の重要な一環として、所得税について大幅の減税を、本年四月一日から行おうとするものであります。  以下、内容のおもなるものを申し上げます。  第一に、基礎控除扶養控除、それから勤労控除等の諸控除引き上げるということによって、低所得者税負担軽減するとともに、税率累進度の緩和ということに重点をおきまし て、中所得者中心とする税負担一般的軽減をはかろうとしております。これが第一であります。第二に、貯蓄奨励見地から、生命保険料控除限度額引き上げることとし、現行限度額一万五千円をこえ、三万円までの金額の二分の一相当額までの払い込み保険料について所得控除を行うこととしております。第三に、配当控除制度合理化をはかるため、課税所得一千万円までの配当所得については二割、一千万円をこえる部分配当所得については一割の控除率を適用することといたしております。第四に、所得課税制度の不合理を是正するため、資産所得について、世帯合算課税制度を新設いたし、世帯主の総所得額世帯員利子所得配当所得及び不動産所得との合算額が二百万円をこえる場合、一定条件を付して合算課税を行うことにいたしております。第五に、税制簡素合理化に資するために、簡易税額表適用範囲課税所得百万円に引き上げること、及び予定納税基準額が三千円に満たない場合には予定納税の義務がないこと等を規定いたしております。  本案審議におきましては、法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法案とともに、この所得税改正法案は非常に重要でありますから、この三案を合わせまして、公聴会を特に開いて慎重に審議をすることといたしたのであります。  なお、委員会におきましては、まず所得税法につきまして、重要なる多くの質疑がなされ、これに対して答弁がなされたのであります。その主たるものを申し上げることといたしますが、まず、資産合算課税ということは、これは憲法の両性の本質的平等という原則に反することにはならないか、また憲法個人の尊厳という建前に反することにはならないかというような質疑が行われました。それから資産合算制度は、贈与税というものがある以上、これは二重になりはしないかというような質疑も行われました。そのほか税の自然増収の問題について、政府の見積りは、初めは小さかったが非常に大きかったのじゃないか、この問題について、いろいろ自然増収の問題についての議論もございました。また株式の名義貸しの問題、この問題については、課税の公平の原則という見地から非常に熱心なる議論が繰り返されたの であります。しかしこれらの詳細については会議録において御承知を願いたいと思います。  以上は、所得税について申し上げたのであります。  次に、法人税の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法案も、今次の税制改正の重要なる一環でありまして、中小法人税負担軽減をはかる措置を講ずるとともに、重要物産についての免税制度合理化する等の改正措置を本年四月一日から行おうとするものであります。  法人課税は、現在、年所得五十万円までの所得について三五%の税率が適用されておりますが、中小方法人の今日の苦しい実情にかんがみまして、今回この五十万円の範囲引き上げまして、百万円までに拡大することといたしております。  また、重要物産免税制度につきましては、重要物産の概念をはっきりするという意味から、国民経済上重要なる新規産業であって、かつその育成が必要であるものに限定して、一定期間内に新増設された設備から生じた所得について、三年間免税措置を講ずるとともに、免税所得額一定限度を設けるということにいたしております。  さらにまた、法人格のない社団または財団収益事業を営むものの所得については、従来、税務上の取扱いにおいて、非常に多くの疑問を生じておったのでありますが、この実情にかんがみまして、今回この種のものに対し て、政令で特に定めるものについて法人税を課すること等、所要の規定整備を行うことといたしております。な お、本案については、衆議院におい て、人格なき社団等の営む収益事業規定を明確にする旨の修正議決がなされております。  本案審議に当りましては、人格なき社団財団等課税問題、この問題について、非常に熱心なる重要なる論議が展開されました。それは立法趣旨は一体どこにあるのかという点、これが非常に問題になりました。こういうワク、法律的に非常にあいまいなものを対象として、そして立法をする、しかもこれは多くは零細のものに課税されることになりはしないかという、立法趣旨について多くの議論が展開され、かつ一体人格なき社団財団について、法律上これをどういう工合に見るのか、一体その実態はどこにあるのか、どれだけあるのかというような点について非常に熱心なる論議がされました。ことにいよいよこの法律が通過した場合において、この適用範囲拡大をどうしてつかまえるか、納税者に非常な不安を与えはしないかということ、またあいまいであるがゆえに、この執行の任に当るところの税務官吏態度というもの、また税務行政態度というものが、国民に不安を与えるというようなことはないかというような点においても非常に論議がせられました。なおかつ、この問題については厳重な罰則適用があるが、これは果して適当であるかどうか、憲法上の問題にまでも及ぶのではないかというような議論も展開されたのであります。この種の人格なき社団財団課税拡大するという問題についての議論のほか に、なお、収益事業というものを行うものに課税するというのであるが、一体その収益事業というのは、どういう工合政府はそれを考えるのか、その意義はどこにあるのかということ、またその範囲をどう見るかということ、これも非常に重要なる問題であって、これまた非常に熱心なる質疑がかわされたのでありますが、その詳細は会議録によって御承知を願いたいと思います。  次に、租税特別措置法案について申し上げます。  本案は、今次の税制改正一環として、いわゆる租税上の特別措置というものについて、その整理をはかるという方針に基いて、一面には廃止をす る、一面には内容充実をするという観点に立って行われた改正でありますが、廃止については、たとえば概算控除制度廃止というものがあります。また充実の面については、貯蓄の増強、輸出奨励設備近代化等の緊要性ある特別措置、これらについては その内容充実をはかる等、現行法の全文について規定を整備して、本年四月一日から施行しようとするものであります。  内容について概略を申し上げます。第一に、貯蓄奨励見地より、今後二年間、預貯金等利子所得について は、一割の税率によって分離課税を行うこととするが、一年以上の長期預貯金利子所得については、一定期間非課税とすることとし、また配当所得に対する源泉徴収税率は、今後二年間現行通り一割の軽減税率を適用することといたしております。第二に、輸出促進をはかるため、現行輸出所得特別控除制度については、その適用期限を今後二年間延長するとともに、プラント輸出範囲を拡大することといたしております。第三に、設備合理 化、近代化を促進するため、現行特別償却制度充実合理化し、新たに鉱業及び法人の営む造林業について、その特殊性に応じた特別償却を認めることといたしております。第四に、価格変動準備金制度については、現行繰り入れ限度額を二割引き下げると共 に、欠損を生じてまで積み立てをするがごときことができないようにいたしております。第五に、交際費については、今後二年間、資本金一千万円以上の法人について、損金算入限度を二割程度引き下げることといたしております。第六に、協同組合課税を適正化すること、航空機の乗客に対する通行税軽減措置及び航空機燃料揮発油免税措置をそれぞれ延長するほか、農地等を交換する場合の登録税法特例規定しております。  本案審議に当りましては、特別措整理ということについて、政府態度は、はなはだ不徹底ではないかということが強く論ぜられました。なお、概算所得控除廃止ということは、減税をやるこの際、妥当性がないではないかというような点について熱心なる質疑がかわされたのでありますが、その詳細は会議録によって御承知を願います。  かくて質疑を終了し、三案一括し て討議に入りましたところ、大矢正委員より、「所得税法については、現在まで累次行われてきた税制改正は、いずれも資本蓄積の美名に隠れて、大金業、高所得者のための減税措置であって、従来の税制改正は決して大衆が 喜ぶような減税措置とは思われない。現在、一般大衆年平均標準生活費は三十万円であるから、今回の改正により、課税最低限が二十六万円となっても、まだ生活のうちに税金が入っておるのであって、生活はこれでは苦しいのである。これでは貧富の差が顕著とならざるを得ない。従って、この課税最低限引き上げということと、年所得五十万円以下の低所得者階級に対する税率の引き下げをはかるべきであると思う。また、法人税法については、一方において大企業に対して恩恵を与えながら、人格なき社団等のごとき、零細な利益を吸い上げるような措置を講ずることは正しい政治とは思えな い」との反対意見が述べられました。次いで、苫米地英俊委員より、「終戦以来すでに七回の税制改正が行われておる。その減税額は納四千五百億円に達し、しかも基礎控際扶養控除給与所得控除中心とする方法によっ て、低所得者階級重点を置いた減税実施したということは明瞭なる事実である。この結果、中所得者階級と低所得者階級との税負担の均衡が破れたので、これを是正し、中小企業等の発展をはかるための措置が今回の改正によって講ぜられたのである。また租税上の特別措置も、貿易など、世界経済との関連から見て、今回の改正は妥当なものであると思われる。だから賛成である」ということが述べられ、最後に、杉山昌作委員より、「本案臨時税制調査会答申に基いたものであるから、大体において満足すべきものではあるが、予想以上に自然増収が生じた現在においては、やはり消費的性格を持つ施策を切り詰めて、大部分減税に充てるべきである。特に概算所得控除制度廃止は、中小の多数納税者に非常な打撃を与えるものである。この点、政府は大いに考慮すべきであると思う。さらにまた、人格なき社団等取扱いについても、本法執行の際には、紛争など起すことのないよう親切に、かつ慎重に配慮されたい」との希望を付しまして賛成意見が述べられました。  各案について採決の結果、それぞれ多数をもって、衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  10. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。椿繁夫君。    〔椿繁夫登壇拍手
  11. 椿繁夫

    椿繁夫君 私は、ただいま議題となっております租税三法に対して、日本社会党を代表して反対討論を行わんとするものであります。  現内閣は、前石橋内閣予算案法律案を、そのまますべて踏襲することを声明して成立した政府でございまするから、ことにその公約のうち、一千億の減税、一千億の施策ということに対して、国民は多大の期待を寄せてきたのであります。しかるに、議題となっておりますこの三法案内容をさらに検討いたしますると、この三法に共通する特徴は、大企業高額所得者に喜ばれて、低額所得者中小企業者には、名目だけの減税に終っておるということを指摘しなければなりません。(拍手)特に法人税法改正法律案の中におきましては、これまで無税であったものに対してさえ、新たに法人税を課せられるような増税内容を持っておるものも含まれておるのでざいまするから、私はこの点を明らかにしつつ、反対の意思を表明いたしたいと思うのであります。  納税者の側から申しますると、直接税で、かりに一千億の減税が行われたといたしましても、間接税が別の法律で二百五十億も増税になっておる。そういたしますと、差引、これは七百五十億の減税になるということをまず明らかにしなければなりません。その上、目下審議中の鉄道運賃が一割の値上げとなって、三百六十億の増収政府は別に考えておる。揮発油税法律改正を行うことによって百二十八億の増収を考えておる。こういうことは、自然、国民生活の上にはね返って参りまするから、こういうことをあわせて、今回の減税案と比べて見ますというと、実際の純減税額というものは、まことにあいまいなものとなってくるのであります。こういう点を検討しないで、この三法に対して私は、賛成する立場の論拠、まことにあいまいであると言わなければならぬのであります。  第二は、今度の税制改革が、税率の是正に重点が置かれ、控除引き上げが軽視されておる点であります。なるほど低額所得者にも基礎控除引き上げを行い、減税を行なっておると言いますけれども、これを検討して見ますると、年収三十万円から、特に五十万円以上の高額所得者税率軽減が行われて、三十万円以下の低額所得層減税は、全く第三義的に取り扱われていると言わなければならぬのであります。千億減税の割り振りを、大体五十万円以上百万円程度の高額所得者層に、税率調整中心といたしまして、一千億のうち七百億の減税を行い、低額所得層、すなわち五十万円以下の層に対して、わずかに三百億の減税にしか相なっていないのであります。ところで、給与所得者納税人員を考えてみますると、五十万円以下の低所得層の人が、全体の九二%を占めております。五十万円以上の人はわずかに八%にすぎないのでありまして、きわめて少数の階層の人が、一千億減税のうちの七百億円までこの減税恩恵に浴することに相なっておるのが、この所得税法の本体でございます。  第三は、前述の所得階層の分布から見て、控除額引き上げ中心税制改革を行うべきであるということを、私ども同僚とともに強く主張してきたのでありますけれども、政府と自民党は、原案を固執して譲るところとなりませんでした。試みに免税点である課税最低限を各国に比較して見ましょう。わが国は、標準家族で二十四万七千円、アメリカは百二十万円、英国は七十万円となっておりますが、平均国民所得は、わが国が三十八万七千円、アメリカが三百五十万一千円、これを英国の例にとって見ますと、百五十四万九千円となっておりまして、今度の改正が行われたといたしましても、わが国課税最低限は二十六万八千円余となるにすぎないのでございます。給与所得年額百万円につき、所得税負担を比較すると、同じく標準家族わが国は二三・三%となり、英国は五%、西ドイツにこれをとりますと六・三%となって、アメリカは諸控除が適用されてすべて無税となります。これを単純に計算いたしますると、わが国税負担は、イギリスに比べて四・七倍の高い税金となるのであります。同じような経済条件にある西ドイツにこれを比べて見ますというと、三・七倍となっておるのであります。しかも、これらの諸国でさえ、税をもっと安くしなければならぬという、執拗な強い国民運動が起りつつありますことは、諸君御存じ通りであります。給与所得階層の中で最も多いのは、年収二十万円ないし三十万円の人が多いのであります。この階層エンゲル係数は四五%であって、税金により最も強く家計が圧迫されておる階層であります。ところで、今回の所得税法改正によって、五人世帯年所得二十七万円で初めて免税となり、昭和三十年度内閣統計局調査によって、消費支出は五人世帯全国平均二十九万一千五百七円と報告をいたしております。これによって今回の最低額とを比較いたしましても、今なお二万円も税金生活費に食い込んでいることが明らかなのであります。われわれが年収三十二万円まで免税とすることを主張いたしました点はここにあるのであります。前述いたしました欧米諸国と比較しても、いかにわが国税負担が重いかということがおわかりいただけるだろうと存じます。減税率において年収五十万円から百万円の所得者が優遇されておるごとく申しましたが、さらに百万円をこえる高額所得者の人たちが優遇されておるということを見逃してはならぬと思います。  それは減税率でなく、手取り増加率で計算してみると明らかになるのであります。身近に例をとって、その軽減率を見ますと、月収二十万円の夫婦と子供一人の高額所得者は、今回の改正案によって月三万円の軽減となり、月収二万円の者はわずかに三百十五円の軽減にしかすぎないという、不合理きわまる数字がここに明らかになってくるのでございます。税率の不均衡を是正しなければならぬというのが政府提案のおもなる趣旨でございますが、実際に検討すると、こういう内容になるのでございまするから、まことに政府の意図、那辺にありやと理解に苦しんだ次第でございます。  次に、法人税法の一部を改正する法律案についてでありますが、中小企業税負担を軽くするために、法人税の百分の三十五の軽減率の適用範囲を拡張して、年五十万円をこえ、百万円までの所得に対してもこれを適用するものとしております。すなわち百万円まで三五%、百万円をこえるものに対しては四〇%となっておりますが、これをよく検討して見るとき、中小法人に対するまだまだ配慮が欠けておることを申し上げなければなりません。  第二に、先ほど委員長からも詳細御報告がございましたが、人格なき社団もしくは財団の場合であるが、かかる法人個人の中間に位する団体にも、収益事業を営むものには原則として法人税を課するという包括的な規定を行なっております。しかも、その細則を政令にゆだねておるのは、私ども断じて了解のできないところでございます。(拍手)こういうことを政令にゆだねます結果は、官僚支配を助長することになります。ひいては汚職を生む結果となります。ですから、できるだけ課税の客体を法律によって明らかにしなければならぬことを強調いたしたのでございますけれども、ついに政令に多くをゆだねなければならないこととなりました。人格なき社団財団と呼ばれるものの中には、PTAもございます。文化団体、青年団、職場の共済会などがある。これらの団体が代表者や管理人を置いて収益事業を営むものは、法人とみなして法人税を課するというが、しかも、その収益事業を営むという判定の基準をどこに置こうとするのであるか、何回も大蔵大臣にも主税局長にもただしましたけれども、この基準の判定が明らかにならないのであります。はっきりした基準の定められない限り、この改正案の目的である法の盲点を規正し、脱税を防ぐという目的から出たこの法律案も、きわめて危険なものになるおそれを多分に含んでおることを申し上げなければなりません。かかる包括的な規定は、釈迦に説法になるかもわかりませんけれども、租税法律主義の原則に反するものであるのみならず、法案審議の過程におきましては、政令の内容がもちろん明らかになりませんでした。またその課税団体を具体的に例示し、でき得る限りその課税範囲を縮めるべきでありますし、課税すべき対象を明確に把握しないで罰則を規定するがごときは、憲法の定める罪刑法定主義の原則を否定するものでございますから、われわれの断じて容認し得ないところであります。  次に、租税特別措置法でありますが、これは朝鮮事変以後、臨時にできたものであるが、これを全面的に今回改正をいたし、半ば恒久法化しようとするものであり、強力な経済政策を遂行するために、税制上の特別措置をとることの必要な場合もございますけれども、しかし、これを創設した当時に比べますると、その後、経済も次第に正常化し、戦後経済の再建も着々と成り、神武以来の好況とさえ言われておる今日、この減免措置整理し、合理化するべく、臨時税制調査会答申をいたしておるのであります。これに基いて今回の政府案を出したというのでございますけれども、内容を検討すると、まことに不徹底であります。今回の特別措置、すなわち税軽減整理によって、初年度二百億、平年度三百五十五億の増収を見込んではおりますが、未整理による大企業への特典は三十二年度八百五十五億、平年度に七百億の減免の特例をなお温存しておるのであります。すなわち貯蓄奨励と称し、利子所得にはなお九十一億を非課税とし、配当所得には五十五億の特例を残し、企業資本の充実、そういう名目で増資配当には七十八億を免税し、内部留保の充実といって、特定の業種に三十八億の恩典を残しながら、概算所得控除のごとき、中小企業を初め一般の低額所得層にも影響の大きい特例は、これを大胆に廃止の英断をふるっております。初年度総額二百億の整理中、七十九億の増収をこの概算所得控除整理によってはかっておるのであります。大企業と小企業間の納税の不均衡を、政府の言うこととは全く反対に、ますます拡大しておるものと言わなければならぬのであります。  今回の税制改正による不合理は、ひとり国税にとどまりません。地方税率改正にも、これを指摘することができるのであります。税体系の簡素化と称して、芸者の花代を現行の百分の三十を百分の十五に引き下げて、彼らを優遇し、その反面、勤労者の飲食三百円をこえ五百円以下のものに対しては、百分の五を百分の十に改めるなど、まことに何人のための減税であるかと言わなければならぬのであります。(拍手)  三十一年度の自然増収も、大蔵大臣によりますと、一千百億と言われております。今回、第一、第二の補正の財源として四百五十億を計上しておりますから、ことしの自然増収だけでも六百五十億の剰余金を繰り越すこととなります。現状におきましては、来年度の自然増収見込みも二千億をはるかに突破するであろうということは、今日明らかになって参りました。願わくば、今後、内閣がどのようにかわりましょうとも、良識ある国民から指弾されるような、租税特別措置法による大企業と高額不労所得者に、国家の名において保護と恩恵を与えておるような特典をすみやかに廃止をして、本年度と来年度の自然増収によって剰余金が出ます部分で、すみやかに第二の減税計画を企画するなり、食管特別会計の百四十一億の赤字などをすみやかに補てんするような対策をせられることによって、今回の税改正国民のものとなるようにしなければならぬと考えておるところであります。(拍手)  以上申し述べて、三法に対する反対の理由を明らかにした次第であります。御清聴を感謝いたします。(拍手)     —————————————
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 苫米地英俊君。    〔苫米地英俊君登壇拍手
  13. 苫米地英俊

    ○苫米地英俊君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法案の三法案に対して、賛成討論を行わんとするものであります。  本税制改革の第一は、平年度千二百五十億円、三十二年度は千九十億円に上る大幅な減税を行い、税負担軽減するとともに、その不均衡を是正すること、第二は、税法上の各種の特別措置整理合理化を行うこと、第三は、その他税制の調整、簡素化を行くことであります。  賛成の第一の理由は、今度の減税は、産業の育成、国際経済における競争力の培養に置かれている点にあります。これとともに、個人事業と法人事業との間の税負担の不均衡、中堅階層に対するきわめて重過ぎる不均衡を是正し、中小企業に対しては特に政治的配慮を加えて、所得税のほかに法人税、住民税及び事業税をも軽減して、現在なお著しく過重かつ不公平になっておる租税軽減合理化によって、国民の勤労意欲を高揚し、他面、民間資本の蓄積を促進し、健全な財政金融政策と相待って産業を育成拡大し、もって国際経済における競争力を培養強化しようとする点にあります。  第二の理由は、減税が普遍的であり、全般的施策を歩調を合わせてある点にあるのであります。終戦以来すでに七回にわたって減税か行われ、その累計は四千五百四十億円をこえにおりますが、今回の減税は、これらと全く性格を異にして、従来の減税は、低額所得者に主眼を置いて、基礎控除扶養控除、勤労控除重点を置き、他方、課税の累進率を緩和するという点については、深い関心が払われておらなかったのであります。そこで今回は、各種の控除を行うとともに、重点累進度の緩和に移されたので、断じて高額所得者に厚く、低額所得者に薄い改正ではございません。免税点以下の階層に対して、減税に何らの恩恵がないことは事実であります。これに対しては、物品税の増徴を行わず、他面、生活保障、社会福祉などの諸施策によって、でき得る限りの努力が払われております。国鉄運賃の値上げは、私鉄運賃、トラック、バス等の料金の値上げを誘致し、米価もおそかれ早かれ引き上げられるから、低額所得者生活を脅威するという説がございます。理由がないとは申し上げませんしかし、国鉄運賃や米価は、全く別個の問題であって、減税があろうとなかろうと、別個に考慮せらるべき性質のものであります。これを減税にからませて、今回の減税は欺瞞で、低所得者の方に負担を転嫁したものであるとするのは、まことに不可解な解釈であります。むしろ経済の正常化、産業の隘路打開が、コストを引き下げ、今後の減税に寄与するかどうかという観点からこれを考えるのが常識であると私は存ずるのであります。  第三の理由は、インフレなき経済の拡大、好況の持続を信ずるからであります。反対論者は、予算編成の出発点である政府の経済予測、財政規模の見方が甘過ぎ、大幅の減税と積極政策とをあわせ行わんとすることは暴挙であり、設備投融資の過剰、ベース・アップ、減税によって生ずる余裕が消費に流れ、インフレを招来するおそれがあるとしているのであります。また、一般社会も最大の関心をここに集中していることは、私も承知しておりますが、私は、これらの危険性があるということを否定するものではありませんが、四千百二十五億円の巨額が、予算で産業投融資に計上された面だけを見る人だけが、かような危険を感ずるのであります。一応ごもっともであります。また、アメリカやヨーロッパ各国の最近の情勢に敏感なわが国民がインフレを心配するのも無理からないことと存じます。しかし、二十九年以来、諸君の痛烈な攻撃と批判を受けましたあの緊縮財政、一兆億円予算は、経済を安定し、通貨価値に対する国民の信頼が高まり、預貯金も本年度一兆二千三百四十七億円という膨大な額に上ったようであります。さらにこの情勢を伸ばすために、長期預金利子所得を非課税にし、利子所得分離課税配当所得に対する源泉課税率、配当控除合理化生命保険料控除額の引き上げ国民貯蓄組合の非課税限度引き上げなど、貯蓄奨励措置が多分に講ぜられておるのでありますから、預貯金の増大に十分期待を持ち得ると信じます。この預貯金を基調として、弾力的金融政策が運用されますならば、収支均衡のとれた健全財政のもとに、繁栄の持続、拡大に対しては、大いに期待が持てると私は信ずるのであります。  最後に、租税特別措置法は、必ずしも一から十まで賛成するものではありません。しかし、その大部分は、貯蓄の増大、産業の合理化企業の健全化の構想がその中に織り込まれてあり、資本の蓄積、資本の構成の改善、輸出貿易振興に欠くことのできない措置であり、かつ、他方、税制の急激なる変革が、財界、産業界に及ぼす甚大な影響をも十二分に考慮に入れてあるのでありますから、私は、これに賛意を表するのは、けだし当然なことであると存ずるのであります。  法人税についての問題点は、人格なき社団財団に対する課税であります。これが今日まで見のがされてきたのは、むしろ不思議とさえ考えられます。こういう団体が、非常な税をのがれて、暴行をむさぼっておることは周知の事実であります。しかし、収益事業の限界をいかようにきめるか、そのきめ方によっては、また税を取り扱う税務官吏の、公務員の態度によっては、角をためて牛を殺すおそれもなきにしもあらずと考えられます。しかしこの点は、当局から十分慎重に行うという話もありますので、私は、その通りにあってほしいと念願いたすものであります。  以上をもって、私の討論を終ります。(拍手
  14. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより六案の採決をいたします。  まず、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約実施に伴う所得税法特例等に関する法律案  漁船保険特別会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案  以上、両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  15. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  16. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 次に、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  17. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。    ————・—————
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 次に、所得税法の一部を改正する法律案  法人税法の一部を改正する法律案  租税特別措置法案   以上、三案全部を問題に供します。三案に賛成諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  19. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって三案は可決せられました。    ————・—————
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第七、国土開発縦貫自動車道建設法案(第二十二回国会衆議院提出、第二十六回国会衆議院送付)  日程第八、住宅金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)   以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長報告を求めます。建設委員長中山福藏君。    〔中山福藏君登壇拍手
  22. 中山福藏

    ○中山福藏君 ただいま議題となりました国土開発縦貫自動車道建設法案につきまして、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法案は、衆議院議員提出にかかり、第二十二回国会に上程、衆議院可決、本院に送付、本院において第二十四回国会まで審査を継続いたし、同国会において修正可決、衆議院に送付いたしましたところ、今国会、再び修正を加え本院に送付されたものであります。  本院に再送付されました衆議院修正案は、昭和三十二年度における事業の円滑なる遂行をはかるため必要最小限度にとどめるものであります。すなわち修正案の第一点は、国土開発縦貫自動車道建設法案の別表予定路線中、小牧市付近より吹田市付近に至る区間につきましては、すでに調査完了し、昭和三十二年度予算案にも事業費の一部が計上せられておりまするので、この区間に関しては、別に本法案規定せられている所要の立法措置をとらず、本法案自体でこれを決定すること。第二点は、国土開発縦貫自動車道建設審議会の委員に、道路交通取締上の観点から、国家公安委員会委員長を加えることであります。  本委員会における質疑のおもなる点は、国会に提出すべき法律案内容たるべき国土開発縦貫自動車道の予定路線の決定並びに予定路線の建設に関する基本計画の立案決定は、内閣総理大臣の権限と定められているが、事実 上、これらの立案並びに立案のための調査については、建設大臣並びに運輸大臣が担当するものと思うが、この法案内容調査に支障はないかという点についてであります。これについ て、提案者衆議院議員二階堂進君及び中島巖君から、「後日、運用上支障を来たすようなことがあれば再考慮したい」との言明があり、南條国務大臣からも同様の発言がありました。  かくて質疑を終り、討論に入りましたところ、緑風会を代表して村上委員から、「衆議院の修正は時宜に適した措置であること、また、調査立案の運営については危惧される点もあるが、重大な支障がある場合には、事前に適切なる方策がとられるのであるから賛成する」旨の御発言があり、次いで、自由民主党を代表して石井委員、社会党を代表して重盛委員からも、同様趣旨の発言があり、特に国土開発縦貫自動車道建設の促進をはかるよう希望が述べられました。  かくして討論を終り、衆議院送付案について採決いたしました結果、全会一致、可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。  次に、住宅金融公庫法の一部を改正する法律案について、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  住宅金融公庫は、昭和二十五年六月設立以来、今日までに約四十万戸の住宅建設資金を融通し、住宅不足の緩和に貢献して参ったのであります。このたび、その業務を拡張して、災害により滅失損傷した住宅の復興に必要な資金の貸付を行うことができるように し、また、土地の合理的利用及び災 防止のために、中高層耐火建築物の建設に必要な資金の貸付を行い、住宅不足の緩和に寄与しようとするのが本法案趣旨であります。  以下、おもなる内容について申しあげますると、第一は、災害住宅の融通についてであります。すなわち従来 は、災害により損傷した住宅を補修するために必要な資金を融通する道がなく、また、公庫融資によって建設する場合には、貸付金の償還期間の三年据置の特別措置のほかは、一般の貸付と同様の手続によっておりましたのを、補修資金について新たに融通の道を開くとともに、小規模な住宅の復興に必要な資金の貸付を行うこととしたわけであります。この場合、金額の限度は政令で定めることといたしました。また、これらの貸付の条件は年利五分五厘、償還期間は据置期間を含め、補修にあっては八年以内、建設については十五年以内としております。また、災害発生の場合、災害復興住宅の建設または補修を、罹災地の実情に即して、貸付及び回収に関する業務の一部を府県、市町村にも委託することができるよういたしたのであります。  第二は、都市における中高層耐火建築物の建設に関する融資措置についてであります。すなわち従来は、地上三階以上の耐火構造の家屋で、その床面積の三分の二以上が住宅部分であるものについて、耐火建築促進法に基く防火建築帯内に建設される場合及び特に必要と認められる場合に限り、非住宅部分についても、主要構造部の建設に必要な標準建設費を貸し付けることができるようになっておりました。今回の改正は、地上三階以上の耐火構造及び簡易耐火構造の建築物並びに防火建築帯内に建設される耐火構造の建築物で、相当の部分の住宅を有するものに限り、住宅部分並びに住宅部分の床面積に相当する商店、事務所等の非住宅部分に対し、それらの標準建設費の七割五分を貸し付けることにしたわけであります。この場合の利率は、年六分五厘、償還期間は十年であります。  第三に、公庫の行う宅地造成事業について、これまでは、公庫の貸付金にかかる住宅の建設のために必要な資金の貸付を行なってきたのでありますが、今後は、貸付金にかかる住宅のための宅地造成にあわせて、地方公共団体または公益法人等の建設する住宅のための宅地造成事業についても、資金の貸付を行うことにしております。その他、増築貸付の場合の対象家屋の一戸当り床面積の引き上げ、公庫の役員等について改正をいたしております。  次に、委員会における質疑のおもなる点について申し上げますと、「中高層耐火建築物に対する融資が、住宅部分について年六分五厘で十年償還では、従来より後退ではないか」という点でありますが、これについては、「産業労働者住宅資金融通の考えと同趣旨であり、個人住宅または協会住宅等、公益法人の供給する住宅については、一般貸付によるようすすめて行きたい」とのことでありました。次に、「中高層耐火建築物の促進をどのようにはかって行くか、また、この貸付業務を、建築行政を担当する六大都市に委託する考えはないか」という点につきましては、公庫総裁から、「六大都市の中心市街地並びに中小都市の防火建築帯の指定地域に重点を置いて行きたいこと、また、業務については慎重を要するので、公庫で行う考えであるが、実情を勘案して善処して行きたい」との発言があり、政府からは、「市側の要望もあり、府県とも連絡の上、能力あるところには業務の一部を委託するような指導をして行きたい」との答弁がありました。その他、災害復興住宅に関する貸付業務の市町村委託の場合における措置、役員等について質疑が行われましたが、詳細は会議録で御承知を願いたいと思います。  かくて質疑を終り、討論を省略して採決に入りましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  23. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  まず、国土開発縦貫自動車道建設法案全部を問題に供します。本案賛成諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  25. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 次に、住宅金融公庫法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  26. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  27. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第九、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案  日程第十、信用保証協会法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長報告を求めます。商工委員長松澤兼人君。     —————————————    〔審査報告書は都合により追録に掲載〕     —————————————    〔松澤兼人君登壇拍手
  29. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ただいま議題となりました中小企業金融関係の二法律案について、商工委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。  商工組合中央金庫は、中小企業等協同組合の系統金融機関として、中小企業金融の重要な一翼をになっておりますが、この際その機能の強化充実をはかり、中小企業の組織化の推進、中小企業金融の円滑化に資するために、本法律案が提案されたのであります。  本法律案内容を御説明申し上げますと、第一点は、商工中金に対する政府出資金を昭和三十二年度において十五億円増加することであります。商工中金の貸出金利は、最近における数次の引き下げにもかかわらず、なお割高であり、一そうの引き下げをはかることが当面の問題でありますので、政府出資金の増加によって、貸出金利の引き下げをはかろうとするものであります。  第二点は、内国為替業務に関する制限を撤廃することであります。現在、商工中金が行う為替業務の範囲は、所属組合またはその構成員のために行うものだけに制限されておりますが、この制限を除いて、員外者のためにも内国為替業務をすることができるようにするものであります。  第三点は、一商工中金が金融機関等の貸付業務を代理したときは、その貸付につき員外者のためにも債務の保証をすることができることとすることであります。これは、同金庫が中小企業金融公庫の貸付業務を代理した場合、必要に応じ員外者にも貸付を行うことができる道を開いたものでありまして、商工中金の機能を十分活用しようとする趣旨によるものであります。  第四点は、商工中金がその余裕金を運用できる範囲を拡大することであります。同金庫の余裕金の運用の範囲については、法律に列挙されておりますが、今回、新たに中小企業等協同組合またはその構成員の事業の発達をはかるため必要な施設を行う法人、たとえば中小企業等協同組合中央会、共販会社等に対しても短期貸付をすることができることとするものであります。  以上が、本法律案の概要でありますが、本委員会におきましては、慎重に審議を行い、今回の商工中金に対する政府出資金の増加により、同金庫の貸出金利がどのぐらい低下されるか、また、他の中小企業金融専門機関との貸出金利の比較、商工中金の貸出金利をさらに引き下げる方策、資金運用部からの直接貸付の問題、あるいは員外者にも代理貸付できるようにしたことは、中小企業の組織強化と矛盾しないであろうかどうか等の問題が質疑応答の中心となりましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論に入りましたところ豊田委員から、次の付帯決議を付して賛意が表明されました。その付帯決議を申し上げますと、   政府は、商工組合中央金庫の中小企業組織化に果すべき使命にかんがみ、左記の事項につき特段の配慮を加うべきである。   一、商工組合中央金庫の資金源充実に努め、さらに金利低下をはかるため、資金運用部より直接低利資金の貸付を行い得るよう、すみやかに必要な措置を講ずること。   二、商工組合中央金庫の組合員外者に対する公庫代理業務は、中小企業組織化の目的に背馳せざるように特に注意すること。   三、信用組合の育成強化に努め、あわせて商工組合中央金庫の資金源の拡充と金利引下げに資せしむること。 というのであります。  討論を終り、採決いたしましたところ、本法律案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、豊田委員から提案されました付帯決議案も、これまた全会一致を もって原案通り委員会の決議とすることに決定いたしました。  次に、信用保証協会法の一部を改正する法律案につきまして、御報告いたします。  信用保証協会は、御承知通り、債務の保証を通じて中小企業の信用補完のため重要な役割を果すものでありまして、昭和二十八年に制定の信用保証協会法により特殊法人となりまして、現在、全国で五十二に達し、その債務保証承諾額の累計は、昨年末までに約三千五百億円に上っておりますが、その基金は、ほとんど地方公共団体の財政援助に依存しているのであります。しかるに、中小企業のうちでも、特に零細企業の金融を円滑にするには、この保証協会の機能を拡充する必要が強く認められておりますが、今後その資金的な援助を地方公共団体のみにゆだねますことは、現状から押して困難と思われますので、政府が同協会に対して、低利資金の貸付ができるようにする措置が必要となって参りました。 よって本改正法案の提出を見た次第であります。  次に、本改正案の要点は、第一に、政府が信用保証協会に対して、保証能力の拡充のために、必要な長期及び短期の資金を融通できるようにするこ と、第二に、この貸付金の利息を年三分五厘以内とすること、第三に、この貸付に際しては、主務大臣は必要に応じて条件をつけ得ること、第四に、右の融資業務は、通商産業大臣が大蔵大臣と協議して実行すること、以上であります。  なお、当委員会審議中における政府当局との質疑応答のおもなるものは次の通りであります。すなわち、信用保証機構の一元化については、「当初、中央機構の充実について考慮したが、さらに検討するつもりである」との答えがあり「保証基金の増大については、将来とも増加させる方針であ る」との答弁がありました。「十億円を各保証協会へ配分する基準に関しては、過去の実績などによる一律貸付を避けて、提出される計画案等に基いて効果的に行う」旨の答弁がありました。  また、「政府貸付金の利息については、長期、短期ともに極力低いものにするよう善処する」との答弁があり、次に、「銀行が貸付の対象として了解したものでなければ、保証協会が保証しないという事例が多いと聞くが、それでは協会の自主性がないではない か」との質問に対しては、「確かにそうした例は多いが、一面において協会が保証して銀行に貸出をあっせんする、いわゆるあっせん保証を行なっているが、今後はこれが多くなるよう積極的に指導する」との答弁がありました。次に、「銀行の退職者が保証協会の役員になるなどという人的な関係から、両者間に種々なれ合いを生じていないか」との質問に対しては、「今回の政府貸付によって協会の監督がやりよくなるから、十分に注意する」との答弁がありました。その他、保証協会が、弱小業者からも担保をとっていることに関しては、「なるべく対人信用で行くべきであるが、放漫な保証にならぬよう考慮している」との答弁がありましたが、詳細は会議録に譲りたいと存じます。  かくして質疑を終り、討論に入りましたところ、阿具根委員より、次のような付帯決議をつけて本改正案に賛成する旨の意見開陳がありました。すなわち、   本改正によって信用保証協会に対し資金貸付を実施するに当り、政府は零細金融の円滑化をはかるため、特に左記の諸点につき配慮すべきである。   一、信用保証協会においては、短期小口保証に重点を置き、長期大口保証は中小企業信用保険に移すよう指導すること。   二、信用保証協会をして、堅実にして物的担保に不足する小企業者の信用補完に徹せしめるよう行政措置を積極化すること。   三、信用保証制度の画期的拡充強化と自主性の確保をはかるため、今後、政府資金貸付額の増大、貸付金利の引下げはもちろん、適切なる根本的施策をすみやかに樹立すること。  討論を終って、まず、本改正案に対して採決に入りましたところ、全会一致をもって、本改正案は、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、阿具根委員より提出された付帯決議案につきましても、全会一致をもちまして、原案通り委員会の決議とすることに決定いたしました。  右、御報告いたします。(拍手
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  31. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  32. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第十一、厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)  日程第十二、建設省設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長報告を求めます。内閣委員長亀田得治君。     —————————————    〔審査報告書は都合により追録に掲載〕     —————————————    〔亀田得治君登壇拍手
  34. 亀田得治

    ○亀田得治君 ただいま議題となりました厚生省設置法の一部を改正する法律案及び建設省設置法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を報告いたします。  まず、厚生省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。    〔議長退席、副議長着席〕  本法律案改正の要点を申し上げますと、その第一点は、社会保障制度の著しい進展に伴いまして、厚生省の所管する事務が量、質ともに著しく拡充されたが、これらの事務を一体的に処理するとともに、官房事務の効率的な運用をはかるがため、大臣官房に官房長を置く点であります。  その第二点は、身体障害者福祉法に規定するろうあ者を収容し、その更生に必要な治療及び訓練を行うなど、その福祉の向上をはかるため、厚生省に付属機関として、国立ろうあ者更生指導所を設置する点であります。  その第三点は、精神薄弱児のうち、特にその程度が著しい児童または盲もしくはろうあとの二重の障害を持つ児童に対しましては、一般の精神薄弱児とは別個に、特別の保護及び指導を行う必要があるので、これらの児童を収容し、早期より一貫した保護及び指導を行い、その福祉の向上をはかるため、厚生省に付属機関として国立精神薄弱児施設を設置する点であります。  その第四点は、水道及び下水道の事務は、従来、厚生、建設両省の共管となっておりましたが、今回この権限の分界を明らかにし、水道及び下水道に関する事務のうち、水道及び下水道の終末処理場を厚生省において、また、終末処理場以外の下水道を建設省において、それぞれ処理する政府の方針が決定いたしましたのに伴い、この際、この点に関する厚生省の権限及び所掌事務に所要の改正を加える点であります。  なお、本法律案に伴う昭和三十二年度の予算におきましては、国立ろうあ者更生指導所の設置費及び運営費として五千七百六十八万八千円、国立精神薄弱児施設の設置費及び運営費として五千七百六十四万九千円が計上されております。  内閣委員会は、前後三回委員会を開き、その間、神田厚生大臣その他関係政府委員の出席を求めまして、本法律案審議に当りましたが、その詳細は委員会会議録に譲ります。  かくて、昨日の委員会におきましては、質疑を終り、次いで討論に入りましたところ、緑風会を代表して竹下委員、自由民主党を代表して上原委員、日本社会党を代表して片岡委員、最後に八木委員より、それぞれ本法律案賛成の旨の討論がなされました。かくて討論を終り、直ちに本法律案につき採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定せられました。  次に、建設省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  まず、本法律案改正のおもな点を申し上げますと、第一に、建設省の付属機関として建設研修所を設置すること、第二に、同じく付属機関として河川審議会を設置すること、第三に、水道及び下水道に関する権限の規定を改めること、第四に、産業開発青年隊に関する規定を整備すること等の諸点であります。  内閣委員会は、委員会を三回開きまして、本法律案審議に当りましたが、その詳細は委員会会議録に譲ることといたします。  昨日の委員会におきまして、質疑を終り、別に討論もなく、よって直ちに本法律案について採決いたしましたところ、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定せられました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  35. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  36. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  37. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 日程第十三、昭和三十一年度分として交付すべき地方交付税に関する特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。地方行政委員長本多市郎君。     —————————————    〔審査報告書は都合により追録に掲載〕     —————————————    〔本多市郎君登壇拍手
  38. 本多市郎

    ○本多市郎君 ただいま議題となりました昭和三十一年度分として交付すべき地方交付税に関する特例に関する法律案について、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法案は、別途、所得税及び法人税増収を財源として、昭和三十一年度地方交付税を百十億円だけ増加する予算補正が行われたのに伴い、その総額から、昭和三十一年度内に緊急措置を必要とする額、すなわち交付税の増額に伴い当然に交付すべきこととなる普通交付税の調整減額復活分と、昨年末の期末手当の増額支給に伴い必要を生じた財源所要額との合計約二十四億円を除いた八十六億円を、昭和三十一年度内に交付しないで、三十二年度の地方交付税の総額に加算して交付することができるという特例を設けるものであります。  地方行政委員会におきましては、二月二十八日、田中国務大臣より提案理由の説明を聞いた後、当局との間に質疑応答を重ねましたが、その中で、この特例の結果、本来ならば、当然昭和三十三年度において交付を期待される交付税の額に累を及ぼすことにならないかという問題が論議の焦点となりましたので、特に池田大蔵大臣、田中自治庁長官の出席を求めてこれをただす等、きわめて熱心、慎重な審査を行なったのでありますが、その詳細は会議録によってごらんを願います。  三月二十八日、討討に入り、鈴木委員は日本社会党を代表して、「本法案内容は、本来、地方固有の財源たる地方交付税を、将来の補てんを約束しないまま、先食いするものであって、政府の呼号する公債費対質としては、まさに羊頭狗肉とも言うべきずさんきわまるものである等の理由で、本法案反対する」旨を述べられ、大沢委員は、「本法案には、不満足の点も多いが、本案によって八十六億円が現実に公債償還費の財源として地方に交付されることは、政府の公債費対策に一歩を踏み出すだけの意義はあるものとして、本法案賛成する」旨を述べられ、その際、次の付帯決議案を提出されました。  大沢委員提出の付帯決議案は、   本特例は、深刻な公債費問題の対策としては、きわめて不明確不十分、かつ不合理であってとうてい満足できない。よって、政府はこの際、進んで公債費処理の根本的方策を樹立して昭和三十三年度以降地方財政の確立を期すべきである。   右決議する。 という内容であります。  かくて採決の結果、本法案は、多数をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、大沢委員提出の付帯決議案は、全会一致をもって、これを本委員会の決議とすることに決した次第であります。  以上、御報告を終ります。(拍手
  39. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。鈴木壽君。   〔鈴木壽君登壇拍手
  40. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 ただいま議題となっております昭和三十一年度分として交付すべき地方交付税に関する特例に関する法律案につきまして、私は日本社会党を代表いたしまして、反対の意見を述べるものでございます。  本案内容とするところは、ただいま委員長報告にもありましたように、第一次、第二次補正による地方交付税増額交付分百十億円から、二、三の財源所要額を差し引いた八十六億円をもって、近年とみに地方財政に対する圧迫の度を加え、明年度以降さらにその重圧が予想されます公債費に対する措置を講じようとして、明年度の地方債の元利償還費の一部に充てようとするものであります。政府は、これをもって年々地方債の元利償還費に悩む地方団体の窮状を打開、緩和し、地方財政健全化のための効果的な措置であるとして、いわゆる公債費対策成れりと、大いに自慢をいたしており、宣伝これ努めておるところでございますが、しさいに検討をいたしました場合、われわれは、とうていこれには賛成の意を表するわけには参らないのでございます。  地方財政逼迫の状況、またその不健全なる様相につきましては、今さら事新しく述べるまでもないことでありますが、今や地方団体の大部分のものは、赤字の重圧のもとに呻吟し、地方自治体としての本来の機能を喪失し、あるものは再建団体の指定を受け、あるものは自主再建と称して、ともにあらゆる部面におきますところの行政水準の切り下げと住民生活の大きな犠牲において、この苦境を切り抜けようとして、必死の努力を続けていることは御承知通りでございます。しかしてわれわれは、この地方財政の逼迫、危機をもたらした原因の大きなものとして、公債費問題のあることを見のがしてはならないのでございます。累年増高を続けてきた地方債の額は、三十一年度末におきまして、普通会計分のみでも五千二百七十億円という驚くべき巨額に達しており、従ってその元利償還費も年々増大の一途をたどるありさまでありまして、昭和二十九年度におきまして三百五十四億円であったものが、三十年度におきましては四百九十六億円、三十一年度は六百二十四億円とふえて参り、三十二年度七百七十八億円、三十三年度におきましては八百二十七億、かくして数年後におきましては、一千億をこすものと推定されるに至ったのでございます。従って地方団体の中では、数年ならずして公債費の額が年間の総税収入と、とんとんという、まことに憂慮にたえぬ事態に立ち至ること明らかであるという団体も現われているのでございます。  一体、公債費の問題が、今日のごときまことに憂うべき事態を招来した原因は何であろうか。この責任の所在いずこにありやと考えた場合、私は、過去の歴代の保守党政府のとり来たった地方財政に対する誤まれる施策の累積が、今日このような結果を招来したものと指摘せざるを得ないのでございます。従って、公債費問題の大半の責任は、現在の政府におきましても、当然背負うべきものと断ぜざるを得ないのでございます。(拍手昭和二十五年、かの平衡交付金制度ができまして以来、地方財政計画の策定に当りましては、交付金のワクをできるだけ圧縮し、ために不当に地方財政の規模が縮小され、ゆがめられてきたのみならず、そのゆがめられた計画における収支のバランスを、地方債のワクの拡大という、ゆがめられた不合理きわまる措置によって、ようやく保持させてきたのであります。かような実に大きな過誤を繰り返してきた事実は、何ぴとといえども、これを否定することはできないでありましょう。昭和二十六、二十七両年度におきまして、赤字補てん及び給与費の増加に要する経費についてすら、一般財源を与えることなく、百三十億に上る起債によってまかなわせた事実、また、公共事業費の起債充当率を満度近くまで引き上げることによって、財政収支のつじつまを合わせるという措置さえもあえてとってきたこと等、その具体的な例でございますが、従って地方債は財源補てん的な意味において配分せられ、一般財源が乏しく、償還能力の少い弱小団体に多く配分されるという、およそ起債本来の意義と姿とは、かけ離れた変則的な状態が続けられてきておったのであります。かくのごとく不正常な形において措置させ、問題の解決を後日に持ち越してきたものであり、この負担が地方団体の財政においては、とうていささえきれない重荷になっております今日、これら過去の地方債問題の解決は、当然国として、政府の責任としてなさねばならぬことであることは明白であるというべきであります。  しかるに、今回、政府のとろうとしております措置は、きわめて不明確な態度と、不合理かつ欺瞞的な方法をもってする許すべからざるものであると言わなければなりません。公債費対策は国の責任であり、政府の当然なすベき義務であるというようなことをにおわせながら、その実、何ら責任のある別途の財源措置を講ずることなく、当然、将来地方に増額交付さるべき交付税を先食いさせ、あたかも政府の新しい恩恵施策であるかのごとき態度に出ていることには断じて賛成し得ないところでございます。(拍手)偽わりの看板を掲げ、それこそ羊頭を掲げて狗肉を売るのたとえより、さらに悪らつな仕打ちと言わなければなりません。われわれの反対する第一の理由は、実にこの点にあるのであります。  さらに、かりに百歩を譲り、言うがごとく、本年度限りの特異な措置として認められたといたしましても、ここに問題となるのは、将来この先食いの穴を補てんするかどうかという点でございます。田中長官は、「補てんすべきものであると思うが、政府態度としてはまだきまっていない。きめられない事情がある。」、こういうふうに答弁を繰り返すだけでございます。池田大蔵大臣は、「法的に公債費を国の責任で見てやるということはできない。今回は、ただ交付税を増額交付しただけであって、今回の措置で、先食いとも、従って穴があいたとも考えられない。すなわち、補てんの責任はない。」と、はっきり言い切っておるのでございます。まことに奇怪しごくのことと言わなければなりません。われわれは前述の観点から、法律以前の政府の政治的な責任を問題といたしておるのでございます。政府施策として異例の措置をとり、特殊な立法措置まで講じ、これが公債費対策であるとしている態度としては、まことに無責任きわまるものと言うべきであり、そうしてまた各大臣間の思想の統一を欠いた、いわゆる閣内不統一の様相をはしなくもここに暴露したものであり、こっけいきわまるものと言うべきであります。われわれは、将来において当然補てんすべき筋合いのものであり、地方公共団体の当然の権利であると考えること、いわば人さまの金を勝手に使っておいて、知らぬ存ぜぬ返さぬというような理屈が成り立たないと同様でございます。さらにまた、現在の定められた率での交付税のワクの中では、理論的にも、実質的にも、操作不可能なことをなそうとしている不合理をなくするためにも、後日きれいに補てん、精算すべきであるという建前からして、かかる政府の不合理、不都合な態度には反対するものであります。  第二の反対の理由は、この法案及びこれに関連する措置は、交付税法、地方財政法の趣旨反対するものであるという点でございます。交付税は地方の独立財源であり、使途を規定したり、条件をつけたりし得ないことは、交付税法第三条に明らかでございます。また地方財政法第二条におきましては、地方財政の自主性を尊重することは国の責務であると規定してあるのに、政府の御都合主義、便宜主義、人気取り政策によって、これら法の精神を踏みにじり、特別立法さえすればよろしいというようなことは、許されるべきではないと思うのであります。また、交付税の増額交付された場合、さらに地方団体の余裕金のある場合につきましては、地方財政法第四条、同じく第七条によって処置できるのにかかわらず、かような法案を持ち出す真意那辺にありやと言わざるを得ないのでございまして、かくのごとく、政府の勝手な御都合、そのつど思いつき政策によって、法の趣旨に違反し、その精神を踏みにじる態度には、強く反対をいたし、反省を求めなければならぬと思うものでございます。  反対の第三の理由といたしまして、公債費対策として、政府の責任において解決すべき措置として見るならば、交付団体にのみ元利償還費の一部として補給をするのは片手落ちであるということでございます。今回考えられておりますところの補給対象になる起債そのものは、ひとり交付団体にのみ存するものではないからでございまして、いやしくも政府の公債費対策として筋の通ったやり方をするといたしますならば、これはどうしても納得できないのでございます。将来において交付団体の分も見るというのであればともかく、言うがごとく明年度一年限りの措置とするならば、別途何らかの措置を講じて交付団体にも補給をすべきであると思うのでありますが、それのできぬ政府の今回の措置は、きわめて不明確、不合理な、それこそ、つじつまの合わぬその場しのぎの思いつき施策というべきものであります。(拍手)  反対の第四点といたしまして、すでにしばしば指摘したところでございますが、政府の公債費対策は、一貫した、かつ総合的な計画が用意されておらない、きわめてずさんなものであることをあげなければならないのでございます。言うまでもなく、地方財政において重大な問題である公債費問題を、しかもその多くの部面を政府の責任において解決しなければならない現段階におきましては、まず第一に、明確に政府の責任所在を規定し、それに基いて一貫かつ総合的な施策を打ち立て、計画的にこれを遂行しなければならないのに、単なる思いつきの手段や、行き当りばったり、その場しのぎの措置は、地方団体の財政運営を混乱させ、せっかく軌道に乗って明るい見通しをつけておる団体には、迷惑しごくな措置ともなることがあることを忘れてはならぬのでございます。従って、既往の起債に対する措置、また今後の起債政策を、将来の地方財政の確かな見通しの上に立って、具体的、計画的に、そうして合理的に措置すべきであって、このことなしにとられた今度の措置は、そのゆえにこそ種々の矛盾撞着を露呈しておるのでございまして、われわれの賛成し得ない第四の点でございます。(拍手)  以上要するに、本法案並びにこれに関連してとられます一連のいわゆる政府の公債費対策は、不合理、不明確きわまるものであり、また、ずさんきわまるものでありまして、そこには政府の責任も誠意も汲み取ることのできぬ、ごまかし政策である以外の何ものでもないことを明らかにいたしまして、反対の意を表明するものでございますが、私、最後に、これらの諸点につきましては、与党の諸君も十分認めておるところでございまして、委員会におきますところの審議の過程あるいは討論の際にも、はっきり指摘をいたしておることであることをつけ加えまして、御参考に供し、反対討論を終るものでございます。(拍手
  41. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) これにて討論の通告者の発言は、終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより本案採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  42. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  43. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 日程第十四、国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。文教委員長岡三郎君。     —————————————    〔審査報告書は都合により追録に掲載〕    〔岡三郎君登壇拍手
  44. 岡三郎

    ○岡三郎君 ただいま議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審議の経過とその結果を御報告申し上げます。  まず、本法律案の提案理由と、その内容を御説明申し上げます。本法律案は、国立大学の名称及び大学付置の研究施設の設置について改正をしようとするものであります。  すなわち改正の第一点は、東京水産大学及び商船大学の位置をそれぞれ神奈川県及び静岡県から東京都に移すとともに、商船大学の名称を東京商船大学と改めることであります。改正の第二点は、共同利用の研究施設として、東京大学に物性に関する実験的研究及びこれに関連する理論的研究を目的とする物性研究所を設置することであります。  委員会審議におきましては、各委員から活発な質疑がなされましたが、それらの詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。  討論に入りましたところ、日本社会党を代表して松永委員より、「商船、水産両大学の施設、設備充実、物性研究所の運営に遺憾のないことを要望して本案賛成」の意見が述べられ、続いて自由民主党を代表して野本委員より、「本案賛成」の旨が述べられました。  討論を終り、採決の結果、本法律案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  45. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  46. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  47. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 日程第十五、昭和二十九年度一般会計歳入歳出決算昭和二十九年度特別会計歳入歳出決算昭和二十九年度国税収納金整理資金受払計算書昭和二十九年度政府関係機関決算書  日程第十六、昭和二十九年度国有財産増減及び現在額総計算書  日程第十七、昭和二十九年度国有財産無償貸付状況計算書  以上、三件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 御異議ないと認めます。まず、委員長報告を求めます。決算委員長三浦義男君。    〔三浦義男君登壇拍手
  49. 三浦義男

    ○三浦義男君 ただいま議題となりました昭和二十九年度一般会計歳入歳出決算外三件につきまして、決算委員会における審議の経過及び結果の概要を御報告申し上げます。  本件は、昨年一月十二日国会に提出され、今回審査を終えたものであります。  まず、本件の内容の概略を申し上げます。一般会計では、歳入決算額一兆千八百五十億余万円、歳出決算額一兆四百七億余万円であって、差引千四百四十二億余万円の剰余を生じましたが、このうち、二十九年度で新たに生じた純剰余金は三百八十億余万円であります。また、年度内に使用し得る歳出予算現額一兆千二百六億余万円に対して、前述の歳出決算額のほかに、翌年度への繰越額が六百五十四億余万円あったので、百四十四億余万円が不用額となりました。  次に、予備費は予算額八十億円に対し、ほとんど全部使用されました。また、国庫債務負担行為のうち、(1)、財政法第十五条第一項に基くものは、限度額百十五億余万円に対し、実際に負担した債務額は三十五億余万円であり、(2)、同条第二項に基くものは、限度額三十億円に対し、実際に負担した債務額は三千二百余万円でありました。公債は、年度首現在額五千百五億余万円、年度中発行額百九十七億余万円、同じく償還その他で減少額二百七十億余万円、従って年度末現在額五千三十一億余万円であり、借入金は、年度首現在額六百十一億余万円、年度中借入額十二億余万円、同じく償還その他で減少額百十二億余万円、従って年度末現在額五百十一億余万円であります。  特別会計は、その数が三十三でありまして、各特別会計決算額の総計は、歳入決算額が一兆六千六百一億余万円、歳出決算額が一兆五千二百二十億余万円であります。  政府関係機関は、その数九でありまして、各機関の決算額の総計は、収入決算額八千四百四十六億余万円、支出決算額七千百二十億余万円であります。  以上が決算の概略でありますが、詳細は決算書類についてごらんを願います。  本件については、関係各省及び会計検査院から説明を聞いた後、四十数回にわたり慎重審議を重ねました。その詳細は会議録によってごらんを願います。審議の終了に当りまして、防衛庁、農林省、運輸省及び日本国有鉄道に対しては、それぞれの警告を発したのであります。また、審査の結果といたしまして、内閣に対し、審査報告書に記載しました通りの警告を与えることを必要と認めました。  これらの問題点の大筋を申し上げますと、まず第一に、綱紀の粛正であります。これが実効をあげますためには、各省庁等における上層者が、その地位と職責に基き、忠実清廉を堅持し、みずからの行動を慎しむとともに、責任の所在を明確にし、また部下職員の指導監督に万全を期し、不当責任者に対する処分を厳正にして、粛正の実をあげることが必要であります。  第二は、財政管理における内部統制、内部監査及び公社、公庫等に対する所管大臣の監督であります。会計検査院の検査は厳正に行われますが、何といっても根本は、当局の部内における内部統制を十分にし、内部監査もあわせ行なって、不当事態を未然に防止することであります。特に、防衛庁、日本国有鉄道、その他の省庁、公社における物資の調達、工事の施行などに見られる弛緩の現状は、すみやかに強く引き締める必要があります。  第三に、今後の予算編成上、考慮を要する問題であります。予算の編成は、厳密合理的な基礎に立つはもちろん、科目や金額についても再検討を加えることが必要であります。  第四に、制度及び運営の整備改善であります。たとえば食糧管理特別会計、農業共済再保険、各種の補助金日本国有鉄道の制度及び運営や経理などがあげられるのであります。  問題の点をあげれば、概略以上のようなことでありますが、特に強調されましたのは、これらの問題がすべて数年前から繰り返し警告されているにかかわらず、今日なお、十分に改められていない点であります。この点については、政府の改善措置が逐次行われつつありとは言え、会計検査院の指摘事項が毎年二千件、数十億円を数えておることからも、巨額の国損が推測されるのでありまして、政府の強い反省が要望されるのであります。  以上は、決算委員会として党派をこえた一致の意見でありまして、これは本件の採決の際における各委員の熱心な討論によっても明らかであります。  今、各委員の御意見の要旨を申し上げますと、まず、自由民主党を代表する大谷委員から、「承認するに当って、政府に次のことを要望する。不当事項の関係者は、責任を痛感し、真剣に改善の工夫努力をすること、不当経理の善後処置と関係者の行政処分を厳正に行うことが必要である」との御意見がありました。次に、日本社会党を代表する久保委員から、「本件を承認はするが、検査報告の批難件数は二十八年度よりも増加しており、金額も七十三億円に上っている。政府が改善に努力を払ったかどうかは疑問を持つ、ことに今回警告を発した防衛庁などの四者は、二十八年度決算についても警告を受けているのである、政府は責任体制を確立し、関係者の処分を厳正にしなければならない。国民は、処分の軽いことに対して不満を感じておる。また、審議の過程において、政府当局の決算に対する認識に欠けておると思われる節があるのは遺憾しごくである」との御意見が述べられました。次に、緑風会を代表する奥委員から、「承認に当って政府に反省を求めたい。不正不当の事実が年々繰り返され、さらに悪質を加えておること、責任の所在が明らかでないこと、行政処分が軽いことなどは、毎年警告しておるのに、少しも改まらない。一方で重税に苦しみ、生活に困っている人々があり、小学校の校舎さえ不足しているのに政府では巨額の未収金をそのままにしていたり、防衛庁の予算が使い切れないで数百億円の繰り越しと不用額を生じておる。また、政府が行う購買、払い下げ、政策転換等の場合に、資金がむだに流れておるとの声を聞くのは、まことに残念にたえない」との御意見がありました。次に、無所属クラブの大竹委員から、「政府決算について、ただ国会に提出しさえすれば、それで責任は終ったという古い時代の考え方を保持しており、不当事態の善後処置について誠意が認められない。関係者の処分も不徹底で、ことに監督の立場にある者に対しては、きわめて軽い処置で済ましている。多久島事件なども、その例としてあげられる。被害金の回収もはなはだ手ぬるい。また、毎年追及している病変米の処分がまだそのままになっているなど、不満な点は多いが、審査報告には賛成する」との意見が述べられました。次に、共産党の岩間委員から、「決算については、なお究明しなければならない点があるが、審査報告には賛成する。綱紀の粛正が常に叫ばれていながら、一向に実行されないのは、政府の政治に対する態勢そのものがきぜんとしないからである。一体、いまだに米国に依存していて、真に独立性を確立していないのは遺憾しごくである。それは調達庁の行政にはっきり現われている。安全保障諸費の使い方、日米合同委員会のあり方などを改革せねば民族の繁栄はできぬ。決算には不満であるが、将来の反省を期待して賛成する」との御意見が述べられました。  以上の討論を終りまして、採決の結果、満場一致をもって審査報告書の通り異議ないものと議決した次第であります。なお、社会党の高田なほ子委員から、決算経理上の制度及び運営に関して熱心な御発言があったことを付言いたします。  以上をもって、報告を終ります。  次に、昭和二十九年度国有財産増減及び現在額総計算書並びに昭和二十九年度国有財産無償貸付状況計算書に関する決算委員会審議の経過並びに結果を御報告いたします。  まず、本件の内容の概略を申し上げますと、昭和二十九年度において、一般会計、特別会計を合計いたしました国有財産の増加額は七千二百七十五億余万円、減少額は五百六十六億余万円、差引純増加額は六千七百九億余万円でありまして、年度末、すなわち昭和三十年三月三十一日における国有財産の現在額は一兆四千三百三億余万円となっております。この内訳は、行政財産七千六百六十六億余万円、普通財産六千六百三十六億余万円でありまして、行政財産をさらに分類いたしますと、公用財産九百九十一億余万円、公共用財産一億余万円、皇室用財産三億余万円、企業用財産六千六百七十億余万円となっております。  次に、国有財産の無償貸付は、一般会計、特別会計を合計して、昭和二十九年度におきまする増加額は一億三千万余円、減少額は一億二千万余円、差引純増加額は一千万余円でありまして、年度末における無償貸付の現在額は二億余万円となっております。  決算委員会は、右二件につきまして、政府の説明並びに会計検査院の検査報告の説明を聴取いたしました上、昭和二十九年度決算と並行して慎重審議いたしましたが、本件の内容をなしますところの国有財産の取得、管理及び処分に関し、処理の適正でない点につきましては、別途、昭和二十九年度決算において審査を行いましたので、この二件の計算書については異議がないことを議決いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  50. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより三件の採決をいたします。  三件全部を問題に供します。三件は、委員長報告通り決することに賛成諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  51. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって三件は、全会一致をもって委員長報告通り決せられました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。  次会の議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時四十八分散会