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1957-02-05 第26回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月五日(火曜日)    午前十時五十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━ 議事日程 第三号   昭和三十二年二月五日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  ただいま、ニュージーランド国会議員特別外交委員長ディ・エム・レイ氏が傍聴席に見えられましたので、諸君に御紹介いたします。    〔拍手〕      ——————————
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程に追加して、人事官任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、国家公務員法第五条第一項の規定により、神田五雄君を人事官任命することについて本院の同意を得たい旨の申し出がございました。  本件に同意することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。      ——————————
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、国務大臣演説に関する件(第二日)  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。笹森順造君。    〔笹森順造登壇拍手
  8. 笹森順造

    笹森順造君 石橋内閣施政基本方針に対し、私は参議院自由民主党を代表して若干の質問をいたし、関係各閣僚から、それぞれ明快なお答えあらんことを望みます。  第一は、内閣総理大臣臨時代理職務の限界についてであります。石橋内閣成立し、その組閣第一回の施政方針演説が期待されたのでありますが、風邪による欠席のため、直接これを聞き得ないことは遺憾とするところであります。一刻も早く健康を回復し、国会に出席して、内閣国会に対する責任の衝に当ることのすみやかならんことを心から念ずるものであります。総理の一時的事故のため、国会審議を遷延させることなからしむるため、政府総理臨時代理を置いたのでありますから、われわれは総理に対すると同様な審議を進めるに支障なからしめんがために、総理臨時代理職務権限責任の範囲について法的根拠、もしくはこれに対する政府の解釈について、まずその所信を明らかにされることを求めます。  第二の質問点は、綱紀粛正国民道義高揚教育振興に対する政府基本策についてであります。石橋内閣に対する期待の一つは、その性格からして、政界に清新の気を起し、官界に一新の実をあげるということであります。総理はかねて綱紀粛正を唱えているが、いかなる具体策を掲げてその成果をあげんとするか。信賞必罰をもって臨むというが、果して内閣、各省が思いを新たにし、一致協力し、自粛自戒、事に当り、国民信頼を得ようとするならば、そのかたい決心と粛正方途について示されたいのであります。戦後、人心の廃頽が著しかったのが、近来国力の進展と社会秩序正常化に伴って、国民的自覚社会正義の観念が漸次高まりつつあり、国民自覚による新生活運動が全国的に展開されてきておりますが、この国民の自発的な運動に対し、政府の持つ協力熱意程度を示されたいのであります。また、次の時代をになうべき青少年が、人としての自覚国民としての誇り、倫理的教養について、政府はいかなる見解方策をもって、学校教育社会教育において臨まんとするかを伺いたいのであります。最近世界各国科学技術進歩、特に原子科学発達は、瞠目に値するものがありますが、政府はその学問的な原理の研究にどれだけの熱意施策を持つか、伺いたいのであります。  第三に、石橋内閣積極政策日本経済の将来についていかなる見通しの上に立っているかを伺いたいのであります。石橋首相は、従来積極財政論者として公債の発行をも辞せないとか、インフレ政策をとるものであるとかの批評を受けたのであります。一方池田蔵相は、吉田内閣当時からの実績にみて、健全財政均衡財政主張者、すなわち、どちらかといえばデフレ論者のごとき印象を受けて参りました。石橋総理は、積極政策生産を増強し、雇用増大し、経済拡大に努めるとともに、財政はあくまで健全を保つ旨を強調せられました。大蔵大臣は、健全財政を説きながら、積極的な政策を行うことを明らかにしております。そこで、石橋内閣に対する評価は、健全財政基調とする積極政策内閣であるというふうにほぼ定まったかに見えるのであります。それならば、健全財政基調とする積極政策具体的内容と、その実行可能性と、また実行に当って予想される困難を排除する方策いかんという点まで立ち入って十分な検討を加え、これが明らかになって、初めて石橋内閣の新政策に対する国民的支持が得られるでありましょう。大蔵大臣経済企画庁長官演説に聞くがごとく、日本経済は過去二年間に目ざましい発展を遂げ、経済五カ年計画をはるかに上回る実績を上げ、神武以来の大景気とさえ言われました。しかしながら、この好況は今後もなお続くかどうか、過去二カ年の目ざましい発展は、輸出増進国際収支黒字に原因するところが大きかったのであります。この輸出好況に刺激された工場設備強化技術進歩による施設近代化、底をついた手持ち原料補充などの投資が非常な速度で伸び行き、各国経済の好調の波に乗ってわが国景気を促進したのでありました。ところが、この投資景気というのは一つ警戒線ではないかと思うのであります。すなわち、原料補充外国に求めて輸入がふくらみ、国際収支黒字が縮まってくる。宇田長官は、「輸出が今までのような顕著な割合伸びて行くことは困難なのであります」と言う。さらば、さらに激しい貿易競争によって輸出伸び悩み、昭和三十二年度の国際収支赤字に転ずる危険がある懸念さえあります。またも金融面においては投資のために資金需要増大し、金融は次第に引き締って金利はすでに下げやまり、今後は金融の逼迫を来たすのではないかと憂えられております。さらに物価の面においても、好景気の期間を通じてほぼ横ばいを続けてきたのが、最近では鉄鋼を初め基礎資材物価はジリ高となり、その傾向はようやく消費財の面にまで及ぼうとしておるのであります。すなわち、国際収支の大きな黒字金融の緩慢、物価の安定という過去の景気の特徴は、ようやく失われる様相を呈してきたようにも見えるのであります。このほかに過去二カ年間の好景気にあずかって力あった要因は、打ち続く米の豊作並びに災害割合に少かったことでありました。しかし今後は米の収量も多少は減じ、平年作あるいはそれ以下の場合にも備え、また災害も例年のようなものが発生しても、これに対処し得る堅実な方策を講ずるのが安全であります。このようなもろもろの条件変化が、日本経済の今後にどのような作用を及ぼすかを、いかに診断し、いかに見きわめて積極的健全財政策を立てようとするのかを伺いたいと思います。  第四点は、積極政策に伴うインフレ危険防止策についてであります。昭和三十二年度予算は一兆一千三百七十四億円という未曾有の大規模となり、財政投融資もまた大幅に増大を予定しております。一方に一千億円の減税並びに公務員給与のベース・アップによって、国民所得がふえ、購買力が増して参りましょう。減税は歓迎されますが、それが消費性向を刺激し、物価をつり上げる方向に働く危険性を警戒せねばなりません。そのほか鉄道運賃の値上げが、究極において産業を利するも、一時は物価をつり上げる素因たることは否定できません。またインフレ防止には財政面と並んで金融操作配慮が必要であります。ところが、市中銀行が多額のオーバー・ローンをかかえていた当時に比べて、今は日銀の金融操作能力は著しく減殺されて、ある限度に至っているのであります。よっていかにこれに対処するか、以上のような諸情勢に当面して、石橋内閣経済拡大積極政策はよほどの慎重さを必要とすると思うのであります。予想さるべきあらゆる障害を克服して、なお成果を上げ得る自信があるならば、これらの諸点に対して明確なる所見の披瀝があってしかるべきと思うのであります。  第五点は、中小企業振興に対する問題であります。わが国産業の基盤をなす全国企業数の九〇%以上を占める中小企業の健全な発達はまことに必要であります。中小企業によって取扱われる生活必需物資輸出物資が多量に上っているので非常な重要性を持っておるにもかかわらず、その信用度が低く、金融難が去らず、経営並びに技術現代化が伴わず、しかも互いの競争激しく、いまだその苦しみを脱してはおりません。近来、政府政策が大企業だけを潤わし、中小企業が恵まれないということにならぬように、中小企業の育成に格段配慮を必要とすると考えます。これについては、特に必要な中小企業組織化推進と、金融円滑化と、経営現代化につき、昨日の説明に加えて、国民金融公庫、中小企業金融公庫農林漁業金融公庫信用保証協会等についての、もっと具体的な方策について承わりたいと望むのであります。  第六点は、科学技術発達国土開発に関することであります。近代産業能率を上げるためには、発達した科学技術の応用を必要とするので、各国とも競うてこれに力を入れて、一つの革新的な発明発見は、実に従来の産業能率の幾百千倍という驚くべき生産性の向上に役立っております。特に原子力平和産業利用の面において、その効果の莫大なるを見るのであります。経済拡大をはからんとする内閣において、これに対していかなる方針方策を有するか、一例を言えば、原子力発電についての計画について明確なる御答弁を求めたいのであります。さらにまた、わが国経済国際収支を向上させるために、国内資源をもって原料自給度を高めることは最も必要なことであるがゆえに、単に低地開発後進性地方開発の趣旨ではなく、国益増進見地から、総合的なる国土開発によってこれを活用すべきであると思います。北海道、東北はもちろん、その他全国的に調査を進め、漸次これを実現し、かくてまた人口と職業の地域的配分や、雇用増大にも資すべきと思いまするが、これに対する政府所見方策を承わりたいと思います。  その七点として、雇用の問題についてお尋ねいたします。石橋総理就任の当初に強調されたのは完全雇用ということでありました。近来投資景気に乗って諸工場が活気を呈し、就職者の数が増大したのは事実でありますが、少しくその中身を検討しますと、経済情勢変化によっては、いつ失業の羽目に陥るかもわからない臨時工の増加の方が著しいことは注目すべきだと考えます。経済発展が順調に進むと、雇用は安定し、また増大するでありましょうが、もしその発展のテンポが鈍るか、あるいは万一にも景気が下降する徴候でも生じますならば、現在一ぱいに抱きかかえている臨時工失業という事態が痛切な問題となる懸念が出て参ります。政府は、日本経済伸びは順調であるとし、失業対策予算をも減額しようとするならば、これまでの景気をささえていた諸条件変化にどう対処して、完全雇用に進み、しかも繁栄に向わんとするのか、確信のある所見の発表を求むるものであります。  その八として、農業政策の問題についてお尋ねいたします。米の小売価格の据え置きと、食管会計赤字処理によって残された問題をいかに取扱うのか。これに関連して、農政の基本方針について政府見解をただしたいと思います。米の小売価格の引き上げの考えは、生産農民からも、消費国民からも、相当の反響を呼びました。中でも農民反対は、これは米の統制撤廃への一歩であり、配給価格といわゆるやみ価格との差が縮まり、やがて統制が撤廃されるならば、生産者価格も自由化されて、場合によっては低い生産者価格が現われてくるのではないかとの懸念が、農民反対の大きな理由とされてありました。また米の統制維持は、国内食糧自給度を高める農業保護政策と表裏をなすものである。もしも米の統制が撤廃され、需給が自由化されると、政府は外米の保有による米価の調節を必至とすることになり、結局、日本農民国際食糧事情の変動の大波の中に投げ込むことになる危険があるとの見方もあります。よって、この際米の小売価格の問題、食管赤字処理の問題と並んで、農業政策の基本的な方針、特に食糧自給対策農民保護方策を明らかにせられることを望むのであります。  第九の質問点は、社会保障の拡充に関する政府熱意いかんということであります。石橋内閣は、積極的に生産を興し、雇用増大し、賃金を上げ、減税を行い、物価を安定し、所得を増し、国民生活を向上させるという。その成果をあげるために、財政経済政策積極性を強調し、自由闊達なる自由主義経済による当然の果実たる繁栄をもたらすというのであります。それだけで果して国民の全部が漏れなく幸福を享受し、不幸から救い出されることができるでありましょうか。たとえ完全量用が理想通り行われたとしましても、なお働く能力を欠く人々もたくさんある。病者、不具者、幼児、未亡人、老齢者、その他不遇に悩み、住むに家なく、まとうに衣なく、食うに食を得がたい人々が、日の当らない社会谷底にあえいでいる同情すべき姿を見忘れてはならない。家族制度が打ちこわされて、よるべなき人を巷にはき出したのは、敗戦の歴史悲惨事一つであります。国がこれらの人々にあたたかい保護の手を差し伸べることについて、石橋内閣はいかなる熱意方途を持っておられるか。近代各国政治史の動向は、この福祉社会建設重点を向けてきております。石橋内閣は、わが国社会の種々相にかんがみて、切なる社会的均衡の要望にこたえなければ、国民の信をつなぐことができませんでありましょう。この点について誠意あるお答えを望むのであります。  第十点は、地方財政の問題についてであります。民主国家のあり方として、地方公共団体の健全な発達と、その円滑な運営が基礎となりますので、そのために必要な財政が伴うことを必須要件といたします。よって、国家財政地方財政との調和と均衡が保たれるべきという問題が起って参ります。ここに国と地方とを一体とした税制の確立が要望されて参ります。近来、地方公共団体で、その財政需要額自己財源で満たし得ず、困難しているのがありますので、再建計画が行われておりますが、なかなか思う通りに促進しておらない向きもあります。そこで政府は、地方財政自己財源培養策をいかに進めるか伺いたい。重圧に苦しむ地方債をいかにして解消する考えか、そしていかにして地方財政健全合理化をはかるか、国税の軽減が地方の負担とならぬかを伺いたい。また新市町村建設の助成をいかに進めて、その成果をあげんとするかを伺いたいのであります。  第十一点として、最後に外交に関する数点をお尋ねいたします。岸外相は、昨日の演説において、日ソ国交回復日本国連加盟という新事実に立って、「国連尊重と民主自由諸国家との協調を車の両輪として運用せられるべきであります」と述べております。この基本方針をゆるぎなきものとして、初めてわが国は諸外国尊敬され、またわが国主張も通ることとなりましょう。  そこで、まず国連に臨む態度について承わりたいのであります。旧来の外交は、往々にして武力を背景とした秘密の宮廷外交でありました。しかるに国連においては、すでにその古いからが脱ぎ捨てられて、正義背景とする公開言論外交となり、人類歴史の民主的な進歩を示しております。従って、国連の舞台においては常に正義に訴え、正論をはき、各国の利益を念とし、各国とともに安全繁栄にあずかる態度をもって臨むべきであります。決してある一国に片寄ったいわゆる一辺倒外交であってはならない。小国といえどもこれを重んじ、多数をもって事を決する民主主義原則によって、日本がこれに臨むべきだと思いますが、外相所信を承わりたいのであります。  しかしながら、それは決してあいまいな中立主義を意味するものではありません。すなわち正義と平和を愛する民主自由諸国家との協力出発点として、高い目標に進むものでなければならないと思う。ゆえに、私はその一つとして、日米外交の点について少しくお尋ねしたい。  およそ、外交相互善意理解に基かなければならない。日米外交においても同様であります。しかるに、近来日米親善外交に対して異なった論議をなすものもあります。その理由は、日本の正しい主張として当然米国に受け入れらるべきものが、何らかの理由で誤まり伝えられて、意見のそごを来たすことがあるからだとされております。これらは外相の言う堂々の言論をもって、条理を尽して相互善意による解決がなされたければならない。たとえば砂川その他の基地の問題、沖縄の問題、アメリカ側日本商品に対する輸入関税その他の制限措置に関する問題、また最近には原子弾頭を持った誘導兵器のための基地設定の問題などをめぐって、わが国民の正当な批判をもととして、政府日本独自の立場を堅持して、正しき主張理解させて、これを貫きつつ、日米の真の友好関係を維持増進することが期待されております。従って、これらの諸問題について、いかなる方針で円満なる解決に努力したか、また交渉せんとするかの内容について承わりたいのであります。  その次は、日ソ外交についてであります。両国の間に国交が回復し、期待された漁業条約が発効するのでありますが、その実施に関し、その後の経過はいかがになっているか、そのてんまつについてお示しありたいのであります。さらに、われわれは日ソ平和条約の準備についても重大関心を持つものでありますが、ただいまは焦点を漁業問題に集約して、特に平和条約締結の用意をいたしている政府に尋ねたいのでありますが、それは漁業海域拡大漁獲高自由決定漁撈方式自由操業等の今後の対策につき、政府はいかなる構想のもとに交渉を進めんとするか、伺いたいのであります。  その次は、インドネシアとの賠償交渉について、倭島大使に一定の腹案を示して、今後交渉が行われると伝えられておりますが、この問題に対する政府所見を伺いたいのであります。  その次は、中共関係についてであります。中共関係については、漸進的にいたし、まず経済交渉より始め、その善意と利害の一致を見きわめ、また文化交流によって相互理解尊敬を深め、その関係国際情勢の推移とともに次第に改められて後に完全に国交を結ぶのが最も自然な形であると考えますが、それにしても、日中貿易を進めるに当って問題となるのはココムの制限の問題であります。この点に関して、わが国考え米国考えとは逆であると報ぜられております。ついては、政府はこの点で米国側とどういう態度で話し合いをしているのか、また進めんとするのか、御所見を承わりたいのであります。  その五つには、日英日豪日比間の通商関係改善方針を明らかにせられたいのであります。  その次は、コロンボ計画について伺いたい。この問題は、他の諸国が積極的な協力を行なっているのに、日本協力は不十分であるとの批判も行われております。政府はどの程度積極性をもってこれに臨まんとするかを示されたいのであります。  以上、石橋内閣が、外には諸外国から尊敬を受け、内には国民信頼を得ようとするならば、ここに最も適切で賢明な施政方針について、それぞれ具体的に確信責任ある御答弁あらんことを求めて、私の質問といたします。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  最初に、総理大臣に対する質問に対しましては、総理大臣臨時代理としてお答を申し上げまして、後に、外務大臣に対する御質問に対しては、外務大臣としてお答えをいたします。第一の点、総理大臣臨時代理職務権限の問題でありますが、国務大臣任命権あるいは罷免権というふうな、内閣組織構成に関する権限はこれを除いて、その他の一切の内閣総理大臣権限は、すべて臨時代理としてこれを行うものと考えております。  第二に、行政綱紀粛正及び国民道義の点についての御質問でございますが、これはわが内閣としては最も重大視しておる点でありまして、施政方針のうちにも明らかにいたしておるごとく、まず改むべきは政治であり、政府であるという見地に立って、政府みずからを戒めるとともに、行政能率化行政監察強化して万全を期したいと考えております。  国民道義高揚の問題につきましては、教育振興とともに、特に青少年日本再建に対する自覚責任ということを十分に自覚し、これを高揚するように努めて行きたいと考えております。  科学技術振興につきましては、世界の進運におくれないように特に意を用いて各種施設をしたいと思います。財政政策の根本につきましては、われわれは均衡ある積極的な政策ということに重点を置きまして、均衡拡大というところに特に重点を置いて考えております。インフレ防止につきましては、財政健全化と同様に金融健全化考えなければなりません。国民貯蓄増大に特に格段の意を用いております。  中小企業の問題につきましては、組織強化金融の円滑、租税の低減等について特に施策をいたしますし、また設備近代化につきましても、特に予算上の措置を講じたいと思います。  学術、技術発展国土開発につきましては、特に原子力平和利用等につきまして格段の意を用いております。また雇用問題につきましては、われわれは特に働く場所を多くする、仕事を多くするというところに力を入れて考えて参りたいと思います。  食糧問題につきましては、食糧管理合理化につきまして特に意を用いて、内閣にその特別の委員会を作ってその合理化をはかって参りたい。  社会保障につきましては、特にこの内閣におきまして意を用いて、今度の予算におきましても、特別な各種医療保険制度を初め、各種の問題について予算拡大をいたしております。  地方財政再建整備の問題につきましては、これまた中央における減税と並んで、地方財政再建整備につきましては、特別の考えのもとにそれぞれの措置を講じております。  外務大臣としての御質問に対してでありますが、今後の外交方針の問題は、中心としては、昨日申し上げました通り国連尊重自由民主国家との協調を車の両輪として行くということを申し上げましたが、国連における日本発言権というものは、私は今度の総会においてみましても、きわめて各国が重要視しております。われわれはあくまでも自主的な立場から国連憲章尊重して、日本主張を積極的に、建設的な面からこれを堂々と主張するという立場を堅持して参りたいと考えております。  日米外交の問題につきましては、両国協調、提携を強化するということは、日本外交上きわめて重要なことでありますが、今日、アメリカとの間にいろいろ起っております基地問題、沖縄問題、あるいはアメリカにおける輸入制限の問題や、また原子力部隊問題等のそれぞれの問題につきましては、われわれは具体的にこれらを処理するという方針のもとに考えております。特にこの沖縄問題については、すでに現地の住民が希望しておる四原則を実現するように、アメリカ政府に対してわれわれは強力に主張をいたしております。また、輸入制限の問題につきましては、綿糸布の問題については一応片がつきましたけれども、その他の問題につきましても、これは一面において、日本側自制を要することが少くないのであります。具体的に向う側に、日本自制日本側事情を十分に認識さして、これに対する措置を講ずる、また、基地問題に関しましては、これは一面においては安保条約その他の日本の義務であると同時に、また、これらの基地拡大日本の防衛のために必要であるという見地に基いて、これを処理しなければならぬと考えております。  原子力部隊の問題につきましては、すでにアメリカの国務省及び国防省が言明しておる通り、新聞に伝えられておるようなことは事実ではないのであります。将来そういう問題が起れば、日本にこれを協議することでございまして、日本はその場合におきまして、あくまでも自主的な立場から、これを処理する考えであります。  日ソ外交の問題につきましては、私は昨日も申し上げました通り、これを階段的に処理して行く、すなわち日ソ共同宣言に基くところの善後措置にその全力をあげるつもりであります。  漁業問題につきましては、漁業委員会において漁獲高等が決定されるはずであります。漁業委員会につきましては、昨年末ソ連の代表がくることになっておりましたが、向うの事情でおくれて、二月の十日前後にこちらに着く予定になっております。  インドネシアの問題につきましては、倭島公使に具体的な案を与えて、これを向う側に提案せしむるという段階にはなっておりません。過般の公館長会議におきまして、いろいろ向うの事情も聞きましたが、さらに積極的にこの問題を解決するような意図のもとに、両者の間の主張を接近せしめるように努めたいと考えております。  中共に対する関係におきましては、貿易の拡大につきましては、従来も特別に意を用いておりますが、ココムの制限緩和についても、従来もこれを主張して参っておりますし、今後もこれをできるだけ緩和したいという見地のもとに、アメリカ及び自由主義諸国に対して、われわれの主張を貫徹するように努力するつもりであります。  日英日豪日比に対する通商問題に関しましては、それぞれ日英については通商航海条約、日豪については通商協定を交渉中でございます。日比関係の貿易問題につきましては、両者の輸入輸出が片貿易になっておりますので、特にフィリピン側における日本綿製品の特殊なものに対する輸入制限を緩和せしめるように交渉をいたしておるのであります。  以上お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  10. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  石橋内閣積極政策は、いかなる見通しを持っておるかという御質問でございまするが、およそ財政経済政策は、世界情勢を見ながら、ことに国内の現状を把握して立てなければなりません。私は戦後におきまして、日本経済の復興につきまして、その衝に当ったのでございまするが、朝鮮動乱以後におきましては、私は常にディスインフレ政策インフレを押えるようにいたしました。ことに二十八年におきましては、相当輸入伸びたにもかかわらず、凶作その他がございまして、しかも世界各国が再建の基盤を作っておる状況を見まして、一兆円予算に押えたのでございます。おかげをもちまして、予定よりも早く、一年で大体物価も安定し、基盤ができ上る土台ができたのであります。二十九年、三十年、三十一年というと、経済世界好況に見舞われまして非常な伸び方をいたしました。私は先ほど申し上げましたごとく、今後の世界経済も、この順調を私は続けて行くものと思っております。ことに、わが国世界産業合理化近代化に立ちおくれました関係上、早急にそれをやっておるのであります。民間におきまする合理化近代化は非常にできて参りました。幸いに二、三年前の日銀の四千億近いオーバー・ローンも、昨年の三月には二、三百億円までに減ったのでございます。こういう関係から産業投融資が非常に伸びてきた。民間における近代化合理化はできましても、そのもとをなしまする電力とか、あるいは輸送等、民間ではできない、国でやらなければならぬものが立ちおくれてきたのであります。そこで、私はこの実際の生産増強を続けて行くために、ここに積極政策を打ち出しまして、世界景気を見ながら、日本生産を伸ばして行って、ふえる人口をささえて行こうとしておるのであります。過去の経過から見まして、私はこのときこそ、今までのディスインフレ政策から積極政策にかわるべき好機であると考えたのでございます。幸いに国民の御努力によりまして、昭和三十二年度は二千億円近い自然増収を見るに至ったのであります。私は先ほど申し上げましたように、非常に高い所得税をこの際まけ、そうして片一方では経済基盤の拡充と社会保障制度に乗り出そうといたしたのであります。私は今後におきましても、この政策を続けて行くことが世界経済に貢献し、わが国経済を伸ばして行く唯一の道だと考えておるのであります。  なお、インフレ対策につきまして、金融方面からどういう考え方をしておるか。皆さん御承知の通り、従来日本におきましては財政均衡で行っておりまするが、金融につきましてこれを制御する制度がございません。従いまして、ときには四千億円の日銀の貸し出しがあり、ときにはまた二、三百億円に減り、また昨今では二千億円の貸し出しになっております。こういう場合の調節策が、今日までは高率適用、いわゆる公定歩合とか、あるいは公開市場操作によってやっておったのでございまするが、今後金融面からのインフレを起さない限り、制度としまして私は支払準備金制度を創設したい考えで、今研究をいたしておるのであります。およそ金融には、やはり繁閑がございます。われわれは昨日申し上げましたように、日銀と十分連絡をとりまして、財政が揚超のときに日銀が貸出超過になることは当然でございます。そのでこぼこを常に考えながら、今後万全の措置をとって行く考えでおります。  なお、中小企業対策といたしまして、金融面におきましては、昨日申し上げましたごとく、国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫、この二つを合わせますと、貸出が千百億円になりまして、前年に比べて両金庫で二百七十五億円ふえております。また、農林漁業金融公庫も、昨年は二百九十億円であったのを、今年は三百五十億円にいたしております。ことに農林漁業金融公庫は、昨年は財政投融資、いわゆる利子の安い、かからない分は十億円であったのを七十億円にいたします。また、商工中金におきましては、今まで無利子の分は出していないのでありますが、十五億円新たに出すことにいたしまして、金融の円滑と金利の低下をはかっておるのであります。なお私は、中小企業者に対しまして、今までやっておられなかった資産再評価について、これを今後行なって、中小企業経営のあくまで健全化合理化をはかろうといたしておるのであります。  なお税につきましても、今回の減税によりまして、所得税、あるいは住民税、あるいは法人税、あるいは法人事業税等の軽減は、主として中小企業に向ってやっておるのであります。十分ではないというお考えもあるかもわかりませんが、できるだけの努力をいたしております。ことに各府県でやっておりまする信用保証協会を私は拡充いたしまして、そうしてお金が借りやすいようにするために、十億円を一般会計から出しまして、信用保証の拡大強化をもくろんでおるのであります。(拍手)    〔国務大臣灘尾弘吉君登壇拍手
  11. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) 戦後におきまする青少年の道義の低下の問題あるいは非行、犯罪の増加の問題、まことに心配にたえないところでございます。この原因といたしましては、これを一言をもっておおうことはむずかしいと思います。戦後、激変する生活環境の中にありまして、いわゆる精神的支柱を失った、あるいはまた将来に対する夢を失ったというふうなことも言われておる次第であります。教育の面におきましても、道徳的な判断力を養成する、あるいはまた道徳的なよい習慣を作って行くというような事柄につきまして、反省を要すべき点があったことも事実であろうかと考えます。文部省といたしましては、この問題につきましては、もちろん最も重要な問題として努力をすべきことと考えておりますが、教育内容の面におきましても、さらに道徳教育の徹底をはかりまするように改善を加えて参りたいと考えます。  学校教育、また社会教育、この両面におきまして、あらゆる機会を通じまして、道徳教育の徹底、情操教育の充実、あるいはまた生活指導の強化、かような事柄につきまして、今後ますます努力を重ねたいと存じます。  また、青少年教育的環境がよくならなければならぬと思います。この点につきましては、国民一般の方々の御協力を切に求めるものであります。  次に、科学技術振興、特に原子力の平和利用の研究に関しましてお答え申し上げます。原子力を平和的に利用開発するための研究は、今日急速に促進せらるべき重要課題と考えております。文部省といたしましては、基礎科学の振興と研究者、技術者の養成を使命とする大学を中心といたしまして、原子力研究の根本をつちかう必要があると考え、大学における原子力研究体制の樹立をはかりたいと考えております。そのために、明年度におきましては、東北大学、東京工業大学、京都大学、大阪大学の四大学に、それぞれ原子力に関する研究科を設置するほか、関係講座の増設をはかる計画をいたしております。また、東京工業大学その他の大学の付置研究機関の研究部門の新設、施設設備の整備充実をはかって参りたいと存じております。そのほか、一般科学技術者養成のために、国立大学に入学科を増設するとともに、既設理工系学部学科の学生増募を計画いたしておる次第であります。  お尋ねの問題は、二つとも文部省といたしましては、最も重要な眼目と考えておる次第でございまして、今後ますますこの点の進歩発展に向って努力を続けたいと考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  12. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 中小企業組織化につきまして御質問がございましたのでお答えいたします。  従来、中小企業組織しておりました事業協同組合、信用協同組合、企業組合の制度を強化して、さらに改善いたしますと同時に、すべての業種の中小企業者に対しまして、調整事業と共同経済事業をあわせ行い得るような新しい組合組織を結成できる、こういう道を開きたいと存じております。そしてその新しい組合に強い権限を持たせたいという考えから、ただいま立法措置についての準備中でございますので、よろしくお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣井出一太郎君登壇拍手
  13. 井出一太郎

    国務大臣(井出一太郎君) 私の所管に関しましての御質問は、一つ食糧管理の問題、他の一つは日ソ漁業に関する問題でございます。すでに総理臨時代理からも答弁がありましたので、簡単に補足をいたします。  米の消費者価格の問題に、その国民経済に及ぼす影響が甚大でありますので、政府といたしましては、その取り扱いに慎重を期しまして、内閣に調査会を設置して、その結論を待って善処いたしたいと考えております。  集荷については、現行の予約制度を継続実施する方針でございまして、政府の買い入れ管理を中心とする統制の基本を動かす考えは持っておりません。農政の基本問題といたしましては、申すまでもなく、農林漁業の特殊性にかんがみ、その生産基盤の増強と経営の安定をはかる方針を堅持する考えでございます。  次に、漁業問題でありますが、昨年五月モスクワで調印された日ソ漁業条約が、去る十二月十二日、日ソ共同宣言の発効に伴いまして自動的に効力を発生いたしたのであります。よって本年度の操業準備の関係もあり、政府は昨年十二月中旬、ソ連側に対しまして、日本側委員の名簿を通知いたしますとともに、第一回の日ソ漁業委員会を十二月下旬より東京において開催したい、こういう旨を申し入れました。また、顧問以下代表団の構成をも決定して、ソ連側代表団の来日を待っておるわけでございますが、先方の都合で来日がおくれておる現状であります。最近に至りまして、クータレフ漁業次官を首席とする代表団が近々のうちに訪日をいたす旨、在モスクワ日本大使館から公式連絡に接しております。正確な日時は、なお正式連絡を待っておりますが、委員会に対するわが方の対策といたしましては、諸般の観点から必要な資料を十分に整備いたしまして、遺憾のないように万全を期しておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣神田博君登壇拍手
  14. 神田博

    国務大臣(神田博君) 社会保障の拡充に対する政府熱意いかんというお尋ねでございました。  政府におきましては、昭和三十二年度予算の編成方針といたしまして、産業経済の躍進をはかるとともに、重点施策の第一に社会保障の充実を取り上げているのでありまして、このことは昨日当議場における総理臨時代理及び蔵相の演説にも申し上げております。すなわち、明年度予算案におきましては、厚生省総予算額は前年度に比して約百十一億円の増額計上を見て、一千十四億円に達しておるのであります。そこでまず第一に、その充実が喫緊の要務である医療保障につきましては、昭和三十五年度実現を目途とする医療の国民皆保険計画を達成するため、国民健康保険全国普及四カ年計画の初年度として所要の措置を講ずるほか、政府管掌健康保険の給付費に対する国庫負担を行い、日雇健康保険の給付費国庫負担率の引き上げを行うなど、医療保険の整備強化をはかることといたしておるのであります。また医療機関の整備、特にこの僻地対策の推進に要する経費を計上いたしますとともに、今なお大きな問題となっております結核につきましても、健康診断、予防接種の全額公費負担という画期的な措置を講ずるほか、医療費公費負担の医療の範囲の拡大等、抜本的施策の推進をはかっております。  次に、一千億の減税の対象とならない低所得階層につきましては、生活保護保護基準を六・五%引き上げまして、特に緊急度の高い母子世帯の援護として、とりあえず生活保護の母子加算の引き上げを行い、また母子福祉資金を充実いたしまして、さらにこれらの措置によって保護されない低所得者の援護更生のため、世帯更生資金の充実、医療費貸付制度の創設の措置を講ずることといたしたのであります。なお母子世帯及び老齢者等の所得保障のための国民年金制度については、その準備に要する費用を計上いたしております。このほか簡易水道の布設、汚物処理施設の整備等による環境衛生の改善向上、児童福祉の向上、国立公園の整備、家族計画の普及等につきましても、前年度に比しまして相当の増額を見ておるのでありまして、以上申しましたような大幅の社会保障費の充実を基点といたしまして、さらに一そう明るい、日の当るようなより積極的な社会保障施策を推し進めて参りたいと存じておるのであります。(拍手)    〔国務大臣田中伊三次君登壇拍手
  15. 田中伊三次

    国務大臣(田中伊三次君) 新市町村の育成はどうする考えであるか、これを具体的に申し述べよとのお言葉でございますが、新市町村は、御承知の通りに、新市町村建設促進審議会がございまして、重要な方針をきめることになっておりますので、この審議会の意向をよく聞き取りました上で、関係各省庁との間に緊密なる連絡を遂げて、積極的に新市町村の育成策を講じて参りたいというのが基本方針でございますが、これを御質問のごとくにやや具体的に申し上げますと、御承知の通り、第一は、この合併をいたしたときの合併条件と申しますか、建設の計画がございます。この合併の際に作った新市町村の建設計画というものに、やや調整を加える必要が起っております。御承知の通りに、これを作りました当時は、それぞれの部落におけるそれぞれの立場にとらわれ過ぎてそれぞれの意向が盛られておりますので、これを一体的な見地に立って、やや科学的な立場よりこれを総合的に判断をいたしまして、調整すべき点は調整をせしめる、こういうこの建設計画に調整、変更を加えるということに事務的な経費を必要といたしますので、この方針をとりまして、本年度は約二百町村をピック・アップいたしまして、これに対しては変更を加え、また新年度におきましては、来年度は五百十二、三の町村を取り上げまして、これに対しては約七千五百万円の事務的国庫の補助金を出しまして、これによって調整の実をあげて実行をいたしたいと考えております。  それから第二の方法は、経費節減という具体的な方法でございますが、御承知の通りに、新市町村と申しますことは、かりに五つの村が集まっております場合は、五つの小学校が一つになることである。五つの役場が一つの役場になることである。また五つの消防が一個になることでありますので、それが一つになりました場合においては、役場、学校、消防等、それぞれこれに必要なる道路の新設、あるいは道路の幅員を広げるようなことがある。あるいは橋梁の関係、あるいは有線放送というようなことによりまして、五つの地域が一本の立場に立ちまして、新市町村を作りましても、りっぱにこれが一体化して行くことができますような措置を講ずるために、今年度はごくわずかでございますが、一億二千万でございますが、新年度におきましては十三億円少しこえます金額を投じまして、この方面に積極的な施策をやって参りたいということが具体的な内容でございます。  それからさらに御質問の第二は、国税の減税が行われるはずであるが、国税の減税が行われたときに地方税は減るではないか、これをどう対策を講ずるつもりであるかというお言葉でございます。その第一の方針は、申し上げるまでもなく、現行法に基く交付税の収入の減は二百億をこえるわけでございます。従って、この二百億をこえる減収を補いますためには、方法は他にございませんので、交付税の税率現行二五%を、これを二八・〇五%に引き上げてもらいたいということが私の見解でございます。そこで、わが政府におきましては、非常に慎重にこの点を考慮いたしました結果、新年度におきましては、好況に恵まれます結果、地方の税収においても、約六百億、詳細に申し上げると五百九十八億円内外の税収の増を見込んでおりますので、約六百億円の増がございますので、こういうことも勘案をいたしました結果、今年の財源の都合もあって、一%だけこれを引き上げる、すなわち七十二億円の収入の増を見込み得るように処置をしようということに決定をいたしまして、これを予算に計上することになったわけでございます。  それからさらに第二の処置は、交付税だけでなしに住民税が減収となります。そこで住民税は、この減収となります住民税の税率に調整を加えることが必要となって参りますが、御承知の通りに、現在の住民税は二一%でございます。府県及び市町村を合計いたしまして二一%でございますが、この二一%の住民税を二八%にこれを調整する。すなわち、これを調整しないといたしますならば、四百十億円内外の減収となります。これを調整して、二八%にいたしますと、それでも九十二億円の減収にとどまることになります。従って、これは二八%に改めるということは、住民税の引き上げではなくて、住民税の調整の結果、なおかつ、全国で九十二億円の減税の結果を来たすものである、こういうことが数字の上で明らかとなった結論でございます。  それから質問の第三は、問題の公債をいかに処理をするかという問題でございます、御承知の通りに、現在の公債費は五千二百億円に及んでおりますが、このうち最も重要な問題は給与費であります。百四十七億円に及ぶ給与費でございますが、この給与費の分につきましては、将来の方針といたしましては、国が元利金ともに補給をする方針でございます。なお、一般の公共事業、それから失業対策事業及び義務教育関係の学校の起債につきましては、その総額は二千六百三十億円に及んでおりまして、その来年度の償還を必要とする利息の金額は百五十五億円に及んでおりますが、この百五十五億円の関係の公債費の利息は、せめて半額程度を国庫によって補填して行こう、こういう方針のもとに、来年度におきましては、これをまず第一段といたしまして実現をする考えでございます。その財源は、数日前に閣議で決定をいたしまして、補正予算によって私の方にちょうだいをいたします百億円の交付税を、この方面に主として使う考えでございます。  さらに質問の第四は、地方財源の確立をどうするかという問題でございますが、地方財源の確立は、申し上げるまでもなく、地方財政固有の財源を充実せしむるということになっておりますが、現在は、大体必要なる経費の五割足らずより税収は確保されておらないわけでございます。今年の三十二年度における地方財政の規模は、一兆一千三百数十億円に及ぶ見通しでございますが、そのうち税収はわずかに四千九百億円を出ない、こういう状況でございますので、将来の方針といたしましては、固有の財源を極力確保をいたしまして、地方財政全体の財政需要に応ずることができますように、地方財源の確保並びに交付税の税率の引き上げによるその税収によりまして、極力これを確保をいたしまして、健全なる収支をとって行くように努力して参りたいと存ずる次第でございます。(拍手)     —————————————
  16. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 羽生三七君。    〔羽生三七君登壇拍手
  17. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、日本社会党を代表して、石橋内閣施政方針に関し、岸総理大臣臨時代理を初め、関係各閣僚に質問を行います。石橋内閣が発足以来、第一歩の施政方針演説から、首相代理によって行われることは、われわれのはなはだ遺憾とするところであります。しかし、総理が病気とあればやむを得ませんので、すみやかなる回復を念願することといたします。  そこで、質問の第一点は、石橋内閣はすみやかに議会を解散して、信を国民に問うべきであると思うが、政府所信はどうかということであります。(拍手)  理由の第一は、石橋内閣は自民党総裁の交代の結果として生まれたものでありますが、総理大臣以下全大臣一人残らずかわっております。従って、これを単なる鳩山内閣の延長と見ることはできません。(拍手理由の第二は、石橋内閣財政経済政策についてであります。政府昭和三十二年度予算案は、周知のごとく、一般会計において前年度に比し一千二十五億円、財政投融資において六百七十三億円の大幅な増加となっております。もとよりわれわれは一兆円予算ということに格別の意義があるとは考えませんし、また、国民所得増大すれば、予算規模がある程度拡大するのは当然とさえ思っております。しかし、それにもかかわらず、前内閣に比して財政規模の拡大が顕著であるし、かつ、その性格も質的に相当変化していることは事実であります。従って、これを鳩山内閣の延長と見ることは適当でございません。(拍手理由の第三は、自民党の党内事情であります。われわれ社会党も、みずから顧みなければならぬ問題もあることでありますから、他党の内容についてかれこれ批判したくはありませんが、しかしそれにしても、政権を現に担当している政府与党としては、その党内事情はあまりにも問題があり過ぎます。鳩山内閣時代の日ソ交渉途上においても、二元外交で、わが国が多くの不利益をこうむったことは、国民が身にしみて味わっているところであります。今回の消費者米価決定の際も、同様の抗争が繰り返されました。さらにはなはだしいことは、副総理すらこれを決定することができないということであります。(拍手外務大臣は、政治外交の一体化を説かれましたが、まず党内の一体化をはかるべきでございましょう。  さて、このように見て参りますと、政府に残された道は、すみやかに議会を解散して、信を国民に問うことであると存じますが、政府所見をお尋ねいたします。(拍手)  次の問題は、石橋内閣が鳩山内閣の延長であるとすれば、憲法改正についてはどうお考えになりますか。鳩山内閣政策の第一目標であった憲法改正は、昨年の参議院選挙の結果断念したと了解してよろしいかどうか。それとも前内閣同様、その改正を目標とするのか、この機会に明確にされたいことを希望いたします。(拍手)  次に、外交問題に移りますが、まずお尋ねしたい第一点は、日本外交の自主性についてであります。去る一月十六日行われました石橋・アリソン会談において、米側は、日本の防衛費が経済発展と照合して過少である、少な過ぎる。日本の防衛努力が足りない等々と述べ、日本に対して各種の注文をつけるとともに、米側としての不満を述べたと伝えられておるが、独立後すでに時久しいわが日本に対して、今日なおかつ、予算編成の途上、このような牽制を他国から受けることは、われわれの理解しがたいことであるし、かかる事柄は、日本みずからが決定することであって、他国の容喙を絶対必要としないことだと考えるが、これに関する政府所見を伺います。(拍手)  次の問題は、日米安全保障条約、日米行政協定についてであります。言うまでもなく、この条約と協定は、サンフランシスコ平和条約締結の際に、早急の間に取りきめられたものでありますが、実に多くの欠陥に満ちた条約であり、協定でございます。しかも昨今の国内的、国際情勢との関連においてこれを見るときに、すみやかに再検討さるべきものであることは、ここにあらためて言うまでもないところと信じます。この片務的にして、かつ不平等な条約を再検討すべしという声は各方面から聞かれるのでありますが、しからばこれを平等な双務的なものに改正すればいいかということになれば、単なる抽象的な言葉では解決しがたい性質が含まれていることは、政府もすでに承知であろうと存じます。言うまでもなく、この条約の内容とするところは、日本国が国内及びその周辺に米国軍隊の駐留を認め、他面、米国日本に対する外部からの攻撃に際して、日本国の安全に寄与するため米国軍隊を使用することができるということでございます。そこで、日本国に対する米国軍隊の駐留は、同条約第一条において、アメリカの権利として規定されておりますが、日本国に対するアメリカの防衛は、同条約第一条に規定されているごとく「日本国の安全に寄与するために使用することができる。」とあるだけで、何ら義務づけられておらないということが問題になっております。しかし一般的、常識的に言えば、日本は、米軍の駐留とその基地提供とを認め、米国日本を防衛するという形で、この条約が理解されていることは言うまでもございません。さて双務的ということが、軍事的義務を締約二国間が平等に負うことを意味するものとすれば、これは一種の軍事同盟となり、わが国は当然海外派兵の義務を負うことになります。しかしそのようなことは、日本国憲法の精神から見て絶対許しがたいことであるし、かつ今日の世界情勢から見て、何ら日本の安全保障とならないことは言うまでもございません。従って、わが国が海外派兵の義務を負うような条約改正はとうてい考えられないことが明瞭になります。この日米安全保障条約、行政協定の問題については、一昨年の夏、今はなき当時の重光外相が渡米の際、話し合いの対象となったようでありますが、その際、ダレス長官は、日本の憲法、海外派兵等の問題に言及し、逆に防衛力の増強を要求したと伝えられております。その折行われました日米共同声明においては、「日本ができるだけすみやかに自国防衛の主たる責任をとり、国際平和及び西太平洋の安全の維持に寄与できるような諸条件を作ることに協力すること、そして、このような諸条件が整えば、現在の安保条約を、もっと相互的な性格のものに置きかえることが適当と認める」というのでございました。さらにその際、米国務省スポークスマンは、記者会見において、日米共同声明を補足していわく、「日米安保条約を共同防衛条約にかえるならば、日本に共同責任が生じ、海外派兵ということになる」と説明しておるのであります。これによっても明白なように、日米安保条約の改正は、日本の防衛力が増大し、しかも双務的、正確に言えば、日本も軍事的義務を負う形でのみ、それが可能であるということをアメリカは明示しているのであります。さらに悪いことには、日本の防衛力がどの程度に達したなら、つまり声明にあるように、日本が自国の防衛に第一義的責任を果したと認定するのか、その辺の基準も限界もないのであります。  さて、このように見て参りますと、この条約改正問題は容易ならぬ意味を含んでいることがわかるので、まあしばらくはこのままでという議論が出てくるのであります。しかし日本の現状はどうでありましょうか。砂川問題に現われたように、軍事基地拡張の要求を初め、さらに後に述べますように、アメリカの原子兵器部隊の日本派遣ということが問題となるような条件のもとに置かれているのであります。従ってどのように問題が困難であっても、これらの条約や協定は絶体に再検討されなければなりません。しかもその方向は、軍事的協力関係強化ではなく、日本を取り巻くアジアの緊張を緩和させることによって、日米安保条約の解消を可能とするような条件を作り出すことでなければなりません。(拍手)そしてまたそのような場合においては、中ソ友好同盟条約もまた解消されるべきものと考えることは当然でございます。  さて、以上の問題と関連をして、最近のアメリカ外交の方向を見ることにいたしますが、アメリカ外交は再び逆戻りを始めたのではないかと思われます。すなわち、さきのアイゼンハワー大統領の一般教書並びに中東教書にも見られるように、力の政策強化が強くうたわれまして、一般的にダレス外交の復活とも言われる傾向を示し始めたことであります。これについては、アメリカの前国務長官のアチソン氏は、去る一月十四日、中東教書に関するアメリカ下院外交委員会での証言において、次のように述べて激しく政府を攻撃しております。すなわち、「これは全くせとぎわ政策考え方だ、はっきり言うならば、両院決議案は第三次大戦の権限を与えるものと言わなければならない。そうして中東声明の米軍出動のあいまいなる表現は、核兵器の戦争の危険をはらむものである」と断定をしております。このような外交政策を示し始めた米国は、さらに予算教書において、原子兵器を中心とする戦略転換を示しておりますが、過日のUP電報によれば、米国は、極東における日米両軍に対する強力な支援部隊として、原子機動部隊を日本に派遣することを考慮しておると伝えておりますが、この報道が行われた直後、モスクワ発AP電報は、日本、トルコ、イランの諸国が米国に対し、自国領土内の基地をこれら兵器で装備することを許す結果として、戦争が発生すれば、同様の兵器の攻撃に見舞われるであろうと、重大警告を発したプラウダの記事を報道しております。さらにまた、一月二十八日、イギリス下院において、労働党は、米軍の英国駐留は、中東で動乱が起った場合、ソ連の原子兵器による報復を招く危険があるとして、米軍の撤退を要求する動議を提出しております。  このように見て参りますと、日本の安全保障という問題が、原子兵器の発達と新しい世界情勢の中で、兵器の革命と同様に、われわれみずからの頭を革命することによって、全く別個の視角から根本的に再検討されなければならぬということが、もちろん明らかになってくると思うのであります。(拍手)そこで、政府にお尋ねいたしたいことは、このような原子兵器時代の安全保障をどのように考えておるかということ、さらに、そういう立場日米安保条約行政協定を見る場合、このままでよいと考えるか、根本的に再検討すべき時期に立ち至ったと思うが、政府所見はどうかお尋ねをいたします。さらにこの場合、もし米国政府から原子部隊駐留のこの求めがあった場合に、政府はいかなる態度をもって臨むか、昨日の衆議院での答弁、ただいまのこの議場においての答弁では、そういうことはまだ聞いておらないが、そういうことが起ったら、そのときにあらためて考えるとのことでありましたが、そういう答弁では困ります。この際、そういう話があった場合にはどうするかという明確なる態度の表明をせられたいのであります。(拍手)  次の問題は、今日の世界情勢に適応した安全保障の形はどのようなものかということであります。われわれ社会党も、単に再軍備反対だけを唱えておれば事足りるとは考えておりません。日本の安全保障がいかにあるべきかということは、われわれもまた真剣に考慮しておるところでございます。われわれは、今日のような国際情勢のもとにおける安全保障体制を、次のように考えております。すなわち日本アメリカ、ソ連、中共等の諸国、さらに場合によってはインドその他の国をも考慮しながら、これら諸国間に絶対不可侵の精神を基調として、東西を結ぶ確固たる集団安全保障体制を確立することこそ、今日の世界情勢に適応する真の安全保障であることを確信するものでございます。(拍手)さて、政府としては、一方的な軍事協力関係の推進だけが安全保障の唯一の方式と考えることなく、緊張緩和政策の推進が必要と思いますが、その意味で、鳩山内閣日ソ国交回復を実現させたことが問題の一歩前進であると思います。しかし日ソ国交回復に続くべき中共との国交回復はどうされますか、政府はこの際、これが実現のために積極的な努力をなすべきであると思いますが、政府所見を承わりたいのでございます。(拍手)  なお政府は、対米関係の調整ということをしばしば述べておりますが、対米関係の調整とは具体的には何でありますか。われわれはこれを自主独立の外交を推進するものと解釈をいたしております。ところが、外務大臣方針はそうではなさそうである。鳩山内閣時代に対米関係が冷却したから、日米の親善を強化するというのが対米調整という。全く驚くのほかはないのであります。日米親善を強化するのはよろしい。われわれも賛成である。少しも異存はございません。必要でさえある。しかし親善と調整とは全く別個の問題でございます。真の調整とは、日米安保条約を再検討したり、あるいは中共との国交回復促進のためアメリカ理解を深めることでなければなりません。(拍手)しかるにもかかわらず、アジア地域公館長会議の席上、外務当局は中共を承認せずと言い、さらにまた去る二十九日、岸外相は、記者団会見の際、中共通商部代表の受け入れに水をかけるような発言を行う等、あまりにも政治性がなさすぎます。かかることは、日本経済自立の確立、アジアの緊張緩和のために、断じてとるべからざる政策といわなければなりません。このようなことで、国連加盟後の日本外交基調といわれる東西を結ぶ役割がどうして果されましょうか。鳩山内閣は閉ざされたソ連との関係に道を開きました。石橋内閣の使命は、さらに中共との国交回復に窓を開き、そして日本を取り巻くアジアの緊張を緩和させて、日米安全条約、中ソ友好同盟条約、この双方が共に解消できるような条件を作り出すことでなければなりません。(拍手)このような施策を推進することこそ、今日の原子兵器時代における安全保障の道であることを知るべきであると思います。  次に、沖縄、小笠原の返還問題についてお尋ねをいたします。この問題に関する政府及び与党の態度は、かつて日ソ交渉の際に示した領土問題に関するそれと比較いたしまして、あまりにも相違がはなはだしい。その熱意を知るのに苦しむのであります。政府はこれら諸島の返還要求に熱意をもって当るか。返還要求、かつまた、沖縄住民の苦悩をやわらげるために、当面わが国外交権を最大限に行使して、さしあたっての諸問題を解決するよう、最善の努力を払うべきであると存じますが、政府の決意を知りたいのであります。  次に、英国の水爆実験に対する政府の申し入れは、機宜を得ていると存じます。しかし政府は最後までこれに対して努力を行う用意があるか、この機会に明確にしていただきたいのであります。なお、東南アジア諸国に対する賠償問題については、政府がすみやかにこれを促進することを心より期待いたします。  さて、次に明年度予算及び一般経済についてお尋ねをいたします。さきにもいささか触れましたように、三十二年度予算は、前内閣のそれと比較いたしまして、その規模においても、その性格においても、相当顕著な相違を示しております。政府はこの予算を、千億減税、千億施策の、健康で明るい生活を作る予算と称しておりますが、果してそうでございましょうか。われわれは、以下問題に触れつつ、これを批判し、政府所見を伺いたいと存じます。  千億減税といいましても、実質的には七百二十億程度であり、また減税施策を同時に行うことを可能としたものは言うまでもなく税の自然増収であります。そこで、まず減税の実態について検討することといたしますが、今度の減税が実質的に納税者にどの程度の利益をもたらしたかと申しますと、納税者の大半を占める年収三十万円以下の所得者にとっては、その利益はきわめて少く、五十万円以上の高額所得者にとって有利となっていることは周知の通りであります。さらに減税効果の作用する人口とその作用の及ばない人口の比率を検討いたしますれば、次のようであります。  まず所得税納税者数ですが、給与所得納税人員八百四十六万七千人、申告所得納税者百八十八万七千人、合計一千三十五万四千人でございまして、これに扶養家族を乗ずる人員は約二千四百三十万人となって、昨年のわが国総人口九千三十万人の約三分の二に当る六千五百数十万人は、減税の利益に関係のない、明確に言えば所得税を納めることのできない階層に属しておるのであります。しかも、これもまた周知のように、減税の利益に浴さないこの何千万の人々が、国鉄運賃の値上げ——これは一割三分の値上げで、三百六十五億円の増収を見込んでおるのでありますが——この運賃の値上げと、さらに引き縫いて起るであろう私鉄の運賃の値上げ、さらに揮発油税増徴の結果当然予想される自動車運賃の値上げ等々で、生活上にはむしろ逆な影響を受けるということが今度の政府予算の実態であるということができるのであります。(拍手)これで昨日総理施政演説の中にあった、「国民全体の福祉をのみ念じて国政の方向を定める」ということができましょうか。国民全体は、今申し上げましたように、該当者が少くて、今度の減税の恩典にはまるで施政演説とは逆であります。あまりにも高額所得者中心の減税政策であり、われわれ大多数の国民にとっては何らの実益を伴わない非大衆的な予算であると思うが、政府見解はどうか、承わりたいのであります。しかしこの場合、政府としては、財政積極政策をとることによって産業規模を拡大し、経済活動を盛んにすることによって間接的に国民生活に寄与するという説明をされると思いますが、この考え方については、われわれも一定の条件のもとにおいてはこれを肯定するものであります。しかしこの考え方は、経済基盤の拡大財政投融資のあり方という問題は別としましても、そのままでは低い所得階級に通用するものではありません。神武以来の景気といわれる今日、実に多くの人々が日の当らぬ場所で素通り景気を眺めているのであります。これらの階級にとっては積極政策による経済の波動はなかなか及びません。この経済の間接的波動の及ばない階層にとりましては、むしろ予算面において直接的援護措置をとることが絶対に必要と思いますが、大蔵大臣の御所見はいかがでございましょうか。  しかし、このようなわれわれの質問に対しまして、大蔵大臣はおそらく、そのゆえに社会保障費を増額したと答えるかと思いますが、しかし、その内容はどうでありましょうか。確かに社会保障費は前年に対比しまして九十一億余の増となっております。その中には、国民皆保険、生活保護費の基準改訂、あるいは母子加算等、若干の増額は見られます。しかし勤労大衆の立場からこれを検討すれば、前年対比九十一億円増のうち、恩給費から遺族及び留守家族援護費へ組みかえの分十七億余を差し引いた純増七十四億円余の社会保障を受けるわけでありますが、他面においては、国鉄運賃、ガソリン税の値上り等で、僅々数十億円の社会保障費の増額など及ぶべくもない多くの損失をこうむることになります。政府社会保障の充実を約束しておりますが、その実際はあまりにもその宣伝と違うと思われますが、政府はどうお考えでありましょうか。  次に、この予算物価に対する影響及び国際収支についてお尋ねいたします。  まず物価の値上りの要因となる財政膨張の実態は、公共事業二百二十五億増、防衛費の実質増三百四十億、これは繰り越しあるいは予算外契約、継続費その他を含めてでありますが、これが三百四十億、住宅関係投融資百四十六億、開銀と電発の投融資増三百十五億、これだけで千二十五億円となりまして、一般会計財政投融資の増額合計千七百十三億円の約六割に当ることになります。そして、この大部分がまた関連独占企業強化となっているときに、農業中小企業に対する助成費は、はるかに少い。この財政膨張と、国鉄運賃、ガソリン税の値上げ等で、物価の値上りは当然予想されるが、政府は、運賃の値上りは企業過程で吸収され、実質的には物価に対する影響は起らないとの見解をとっているようであります。しかし、実際に企業過程で利潤や配当を減らして、これを吸収することが、果してできるかどうか、この見通しをお伺いいたします。  物価は昨年中は卸売物価一〇%、消費者物価三・二%の上昇でありましたが、三十二年度は、財政の膨脹と民間設備投資需要等が同時並行いたしますので、鉄鋼、輸送、電力等の生産隘路のために、通貨膨脹と生産との間に時間的なズレが生れまして、鉄鋼、セメント、石炭、重油等の基礎物資の値上りは必然となりはしませんか。この場合に、経済企画庁の想定する三十二年度卸売物価二・六%、消費者物価〇・九%という上昇見積りは甘すぎはしないかと思いますが、いかがでございますか。とにかく三十二年度政府予算及び財政投融資計画からくる財政膨張は、インフレ要因となって物価高を招来し、低額所得者にとっては、若干のベース・アップや減税を相殺する結果となり、さらに減税の利益に関係のない大多数の国民にとっては、物価の値上りだけをしょい込まされるという、ありがたからざる結果となるのではございませんか、政府見解をお尋ねいたします。(拍手)  そこで政府のこの物価の予想よりも、実際に物価高とならないのかどうか、また経済企画庁の三十二年度経済の予測は、物価の面からくずれて高物価になりながらも金融引き締めとなり、中小企業を圧迫することとならないか、これら諸問題について大蔵大臣見解を承わりたいのでございます。  次の問題は、国際収支に関してでありますが、以上、見てきたような財政膨張の結果から、国内需要が旺盛になり、コスト高と相待って、政府の言う輸出振興とは反対に、輸出の減少、輸入の増加となって、国際収支の悪化をもたらすようなことはないか。現に輸出の上昇率は最近鈍化しているのに、輸入率は上昇の一途をたどっております。この趨勢が続くとすれば、経済企画庁の想定する三十二年度の国際収支、受け取りでは輸出、特需、貿易外の合計三十六億八千万ドル、支払いでは輸入、貿易外合計三十七億三千万ドル、差引赤字が五千万ドル、ユーザンスを考慮して、形式上とんとんという推定もくずれるようなことは起らないか、これは大蔵大臣経済企画庁長官、それぞれから御答弁を願いたい。  次に、防衛関係でありますが、政府は本年度地上軍一万の増強は行わない、防衛関係費は大体前年程度と言っておりますが、しかしアメリカに対しては、一九五八アメリカ会計年度で増強を約束していると伝えられていますが、もし事実とすれば、国民を欺瞞する選挙政策と言わなければなりません。外務大臣並びに防衛庁長官からお答えをいただきます。なおまた、この機会に伺いたいことは、日本の防衛力増強には限界があるかどうか。昨日の答弁で、岸外相は防衛力を増強して安保条約改正について話し合うと述べていたが、その限界はどこまでであるか、お答えを願います。  このほか地方財政国会運営、労働、教育、農村、中小企業問題等、幾多の重要問題がございますが、明日の同僚議員の質問にゆだねます。  結論をいたしますが、石橋内閣の実態は、外交的には自主独立の気魄さらになく、むしろ対米追随への逆行を示し、国内的には働く勤労大衆の利益よりも、資本の利益を中心とする政策と断定せざるを得ません。どこかでこの予算をあげ底予算と評しておりましたが、評してまことに妙を得ていると思う。見かけは大きいが、底が上っておりますから、中身は少い。真の積極政策は、その利益が全勤労大衆に及ぶものでなければなりません。政府はこの際、議会を解散して信を国民に問うべきことが唯一の道であることを付言いたしまして、私の質問を終ることにいたします。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 羽生君の御質問お答え申し上げます。  第一は、解散問題でありますが、言うまでもなく、議会の解散はきわめて重大なことでありまして、国民世論の動向や各種政治情勢を見て判断すべき問題でありまして、現在のところ、政府は解散する意思を持っておりません。  第二は、憲法改正問題でございますが、この点に関しましては、御承知の通り、第二十四回国会におきまして、憲法を再検討し、これに関連する諸問題を研究調査するというために、憲法調査会法が設けられております。これを実施する、また実現することにつきましては、政府としては慎重に現在検討中でございます。  第三は、日本外交の自主性についてのお考えでありますが、私ども、もちろん外交は自主独立の見地からすべてこれを決すべきものであると信じております。従いまして、日米間の調整の問題にいたしましても、さらに具体的に防衛の問題にいたしましても、すべて自主的な立場から日本考えをきめて、そうしてこれを実現する二とに努力するのが私は外交の根本方針であると考えております。安保条約行政協定の改訂の問題につきましては、羽生君自身からも、るる御説明がありましたように、きわめて重大で、かつその及ぼすところの関係も広範でありますがゆえに、私は今日これを改訂するとか何とかいう段階ではないと思います。しかしながら、これに対して各種情勢を十分に検討して、日本の自主的立場から、日本のために改訂しなければならぬ事項につきましては改訂して行く、こういう態度をとりたいと思います。  原子兵器の問題に関しましては、これは禁止せられ、原子力の戦争等がなくなることが全国民の念願であり、われわれもこれを目指して努力をしなければならぬことは言うを待ちませんが、しかしながら、現在の国際情勢におきましては、私は大へん遺憾でありますけれども、この問題を含む軍縮問題等に関する国連の会議も御承知の通り行き詰っております。私はこれらの原子兵器を持っておる大国が、十分にわれわれの主張を受け入れて、そうしてこれに対する解決が行われることを望んでおります。ただ、それに向って行くのには、できるだけ、一歩々々でもそれに近づくようにわれわれはあらゆる機会をとらえて努力をしたいと考えております。  私どもが両陣営の対立を緩和する問題につきましては、これは私どもの立場から最も望ましいことであり、また日本が一方、自由民主主義国の立場を堅持しておりますけれども、同時に共産圏に対しても国交正常化し、とびらを開いて、日ソ国交の調整をいたした立場から申しまして、国連を通じて、この対立が、緊張が緩和されるように、あらゆる機会に努力するのが日本の務めであると考えております。  中共との国交回復の問題は、私は現在の段階におきましては、まだその時期でないと思います。われわれは、今日においては中共との間には経済関係、貿易関係、文化関係等の面において、できるだけ関係を緊密にし、進めて行くという段階であって、まだこれとの間に国交正常化し、国交を回復するという段階ではないと考えております。  沖縄、小笠原の問題に関しましては、施政権の返還について、すでに御承知の通り、参衆両院においても決議がなされております。政府も従来その実現に、アメリカ側交渉いたしておりますが、アメリカ側におきましては、現在の戦略的な意義から、なおこれが管理を必要とするとして、われわれの希望は通っておりません。しかし、あらゆる機会にわれわれの、国民の要望を実現するように交渉をして参りたいと考えております。  最後に、防衛の問題に関して、アメリカとの間に、来年度一万名の陸上部隊を増加するという約束をした事実は絶対にございません。このことを明確に申し上げておきます。(拍手、「原子部隊が入るのはどうするのか」と呼ぶ者あり)  先ほど原子兵器の問題について申し上げましたように、この原子爆弾の実験の禁止につきましても国会の決議がございます。アメリカ及びイギリスがこれを行う場合に、わが方に通告をよこした場合におきましては、わが方は厳重にこれに抗議を申しております。しかし、ソ連においては、われわれは非常に遺憾でありますけれども、通告せずにこれが行われておるという現状であります。私は、しかしながら、あくまでもそういう事態はこれを禁止するという、やめてもらうということが、日本国民一致した希望でありまして、その意味を受けて、イギリスに対して強力に注意を喚起しておるゆえんであります。  また、アメリカの原子部隊が日本に来るという問題につきましては、アメリカ責任ある国務省及び国防省は、これを否定しておることも御承知の通りであります。しこうして私どもは、何らの通告も今日受けておりません。私どもは、この問題に関しては、もしもアメリカ側からそういう提議があった場合において、これは必ず協議することになっておりますから、協議があった場合においては、日本の自主的立場からこの問題を処理して参りたい、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  19. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  およそ民主主義政治というものは、国全体をよくするように考えなければなりません。財政経済におきましても、今までの不均衡をできるだけ早く直すことが必要であるのであります。私は現行の所得税は、負担の公平から申しましても、外国の例、それなんかと比べまして、高過ぎると考えるのであります。お話の通りに、今、納税者は、源泉あるいは申告を通じまして一千万人余りでありまするが、この一千万人余りの方々の納めておられます所得税は、非常に高いのであります。私はこの自然増収のこの状況を見まして、どうしても高過ぎる税金を、この自然増収の多いときに軽減すべき筋合いだと考えております。(拍手)従いまして、九千万人の人口の中の一千万人でございます。そうして扶養家族その他を除いて、六千万人はこれを納めていない、これが高過ぎるのであります。これは、全部には行き渡りませんが、一千万人の方々につきまして、できるだけ階級の下の方の人から軽減の割合を多くしようといたして税制改正をしたのであります。しこうして、こういうふうに経済全体、財政全体を合理化すれば、今お話のありましたように、国全体がよくなって行く、ここで減税を受けない方々も、国全体の経済がよくなって、間接的に減税の効果を得られるのが今の自由主義、資本主義経済原則でございます。そこで私は、直接に好影響を受けられる人と間接に受けられる人を考えて、思い切った減税をいたしたのでございます。また、減税の恩典に浴せない方々につきましても、一般公務員の給与を六・二%引き上げまして、平均月千円余りの増収に相なるのでございます。また、給与の引き上げも受けない方、こういう方々につきましては、実は社会保障費の増額をしたのであります。日雇労務者につきましても、一日平均二百八十二円のものを二十円上げまして、三百二円といたしました。また、生活保護費につきましても、基準額をふやしますとか、あらゆる方面で社会保障制度の拡充をいたしておるのであります。皆さん、ずっと過去のことを考えましても、経済がよくなるにつれて、一番影響を受けているのは低額所得者でございます。賃金が上って、高額の所得者よりも低額の所得者の方の賃金が上ってくるのであります。私はこういう事例を見まして、とにかく国全体の経済をよくしようという考えで行っております。  なお、今回の予算物価に影響はないか。これは物価に影響のあるような財政金融政策をやったら、これは根底からくつがえるのであります。予算の規模から申しましても、国民所得の増加に比べまして、今までにない少い規模に相なっておるのであります。また運賃の引き上げをいたしましても、私は大体吸収できると考えております。運賃の引き上げについては、今われわれの考えなければならぬことは、早くうまく運搬することが経済のためになるのであります。私は国鉄運賃の引き上げによって、輸送力の強化をいたして、物価にできるだけ影響のないようにいたしておるのもこの意味でございます。  また、輸出関係国際収支のことについての御質問でございましたが、御承知の通り、二十八年には三億ドルの赤字、二十九年には逆に三億四千万、三十年には五億、こういうふうに相なって参っておりまするが、今年度におきましては、十二月末までは一億六千万ドルくらいの黒字でございます。一月になりまして相当輸入がありまして、今年度大体五、六千万ドルくらいの黒字で終るのではないかと思っております。しかし今の輸入の増加は、輸出の原材料が相当入っておりますので、私は昨年、一昨年に比べまして黒字が減っても、そう心配していないことは、昨日の財政演説で申し上げた通りでございます。私はこういう意味から、ほんとうに日本経済拡大して行くためには、何も黒字が常に出なければならぬ、こうは考えておりません。(拍手)    〔国務大臣宇田耕一君登壇拍手
  20. 宇田耕一

    国務大臣(宇田耕一君) お答えいたします。  財政膨張と運賃値上げ等でインフレ要因が多くなった、物価の上昇は避けがたいのではないかという御質問でございましたが、三十二年度の予算は、経済の成長に応じた適正規模で編成されております。しかも予算全体を通じまして、収支の均衡を保持し、健全財政方針を貫いております。また、運賃値上げ等の影響は、全体として見ればきわめて微弱なものと考えております。従って予算の実施に伴いましてインフレの危険が起るものとは考えておりません。  物価はかように部分的には値上り要素もないわけではありませんが、過去の投資によるところの生産力の効果の増大や、弾力的な金融措置の採用に加えまして、原材料その他必要物資につきましては、国際収支均衡を保ちつつ極力輸入の確保をはかる等、通貨価値の安定を目途とするところの各般の施策を実施して参りますので、物価水準の基調は全体としてはさしたる変動はないという見込みであります。  国内需要の増大とコスト高で輸出減、輸入増となる、従って国際収支の悪化が起らないかという御質問でありましたが、わが国におきましては、所要の輸入を確保するためにも常々積極的に輸出振興をはからなければならないのはもちろんでありますが、昭和三十二年度におきましては、隘路部門を中心とする拡充強化に努めるとともに、それ以外の産業につきましても、合理化近代化を一そう推進いたしますので、過去の投資の効果が発現をいたしますのと、供給量の増加、コストの低下等が期待できると考えております。従ってわが国経済国際競争力の強化国内自給度の向上が漸次はかられて行くと思われますので、これと並行して経済協力等の輸出振興方策を推進して行きますれば、必要な輸入増加に見合うだけの輸出増加は可能と考えております。  減税の利益の及ばない階級にとっては、運賃の値上げその他で生活は逆に苦しくなるのではないかという御質問でありましたが、運賃の値上げが家計及び流通経済に及ぼす影響は、今後の経済力の基調が引き続き堅実であると見込まれておりますので、その影響はきわめて微弱なものであると考えております。その上、三十二年度におきましては、国民経済はさらに七・五%程度成長することが予想されております。国民所得水準も上昇ずることと思われますので、運賃値上げ等の要素は相当吸収されると考えております。(拍手)     —————————————
  21. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 常岡一郎君。    〔常岡一郎君登壇拍手
  22. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 私は緑風会を代表いたしまして、石橋内閣施政方針演説に対しまして、岸首相臨時代理並びに関係各大臣に質問をいたしたいと思います。  吉田内閣によって、米英初め自由主義の国々と講和を結び、昨年は鳩山内閣によってソ連との国交が開かれるに至り、しかも、今や国民待望の国連加入ができましたので、いわば日本は新しい第一歩が始まったとも言えます。この時局を担当する石橋内閣責任は実に大きく、その一歩を誤まれば、悔を他日に残すことをおそれますがために、気にかかります問題に対しましてお尋ねをいたします。  その質問の第一点は、国会正常化すると言われておりますが、その正常ならざる原因をどこにおいておられるか、そうしてその正常化に対する具体的方法を持っておられるか、もしあるならばお示し願いたいということであります。石橋内閣は、成立の当初から五つの誓いの第一に国会運営の正常化をうたっておられます。また昨日の岸首相代理も施政方針演説の劈頭にこれを述べておられます。それならば正常化する方法はどうすればいいかという問題について、昨日の演説では、両政党が率直に意見をかわす慣行を作り、互いに力をあわせ、相互協力を惜しまずやって行くということを言っておられます。また両党の国会対策委員長の対談が新聞に出ておりましたが、そこにも話し合いと自制によって運営がうまく行くようにということが言われております。それほど自制と話し合いだけでうまく行くということであるならば、まことにけっこうであり、もちろん言論の府でございますから、そうあらねばならぬ、そうあってもらいたいと、実にみずからも深く感ずるものであります。しかし、今度の防衛庁長官をおきめになります場合にさえ一カ月もかかって、そのまとまりのつかない姿が相当天下に知られております。自分の党の統制さえもそれほどむずかしいのに、それほど執行部の命令も通りかねるほど統一ができかねるのに、派閥の全く違いました反対党と利害対立した場合に、それをみごとに話し合いだけで正常化ができるとお考えになっておるのでありましょうか。(拍手)これだけはどうしても譲れないというような大事な議案、そういう問題について激突する場合には、相当感情までも加わる場合があると考えねばなりませんが、そういう際でさえも、うまく行くと考えるのは甘い考えではないでしょうかということを申し上げます。だから人だけに頼らないで、もっと制度の活用によって、そのだれでもがうなずけるような具体的方法はお持ちでないかということをお尋ねするのであります。  第二点、国会の二院制度が、本来のあり方を正すことによってその正常化ができるとはお考ににならないでしょうか。二大政党の対立して行くことは、これは議会政治運営の理想の姿と一言われております。    〔議長退席、副議長着席〕  しかし長所には、また欠点もつきやすいものでありまして、今、日本はその理想の姿になって、中間地帯がなくなった。そのために暗い不明朗なる取引がなくなったことはまことに喜ばしいことであります。しかし、何でも直接両党が話し合わねばならなくなりましたために、仲を取り持つ者のない、ゆとりを失った姿から、常識まで疑われるような感情的な争いが行われやすい結果もあると思います。こういう場合をおそれて、これを調整するために参議院制度が生まれたのではないかと考えます。衆議院は政党対立によって互いに政策をみがき合う、これを理想とすれば、参議院は政党、階級の自己の立場だけにとらわれないで、もっと高い立場から、これをこえて公正、全国民立場に立って不偏不党、政府及び衆議院の行き過ぎに対し調節することこそ、重大な使命と考えるのが政治の常識ではないかと考えます。われわれは参議院の正しきあり方を願い、崇高なる権威を保持したいがために、参議院までが政党化することを強くおそれますので、二院制度の根本がくずれないようにこれをやってもらいたいと願うのであります。国会運営の正常化のために、政府は自民、社会両党の話し合いと言うが、その前に、まず衆議院と参議院との関係正常化することが必要と思わないか、それはもちろん現行憲法や国会法の規定が明確を欠いておるきらいがありますが、政府与党の国会運営に対する心がまえによって、運営のやり方によって、ある程度の是正はできるものと思いますので、政府所信をお伺い申し上げます。  外交についてお尋ねをいたします。政府日本外交の基本を国連中心に置くと言っておられる。それならば国連の本体は現在どんなものであるか、その現状をどう見ておられるかという点についてますお尋ねをいたします。国民は長い間国連に入ることを願って参りました。今やそれが許されて国際的発言の機会を得ました。十年の長い間、ものの言えなかった、国際的の発言を持たなかった日本が、この自由にものの言える広場を与えられたということは、日本民族にとっては実に喜びの大きいものであります。世界各国と友好の結ばれる機会を得、さらに明るき希望がおどっておりますのは、世界平和と安全を守る大運動にわれわれもまた参加したという感激であります。だから政府が、この国連を中心としたその外交の道を進むことを、確信をもって天下に発表されたのは当然だと思いますが、それだけに、国連の現状と、その現状を生んだ根本となるものについて、はっきり見きわめをつけねばならないのではないでしょうか。国連憲章の差し示す方向は、世界平和の大道であります。その輝かしき理想をささえるものは、全世界八十カ国の加盟国のみならず、二つの大戦にしいたげられて、戦争をきらい、平和を求める二十幾億の人々の心が国連の理想をささえております。それほど高き理想にささえられておるものであるならば、すくすくと伸び育って行くはずであります。ところが、国連が生まれて十年余りになりますが、その現状は、掲げた平和の理想から言ったならば、かなりほど遠いものがあるのではないかと思います。国連加盟国の間でさえも、今争いの渦巻が起っております。スエズ問題をめぐり、ハンガリー問題をめぐって、中近東の風雲はまさに急であるとも言えます。これを見れば、今の国連は非常な危険を内に抱いて苦悶を続けておることがわかります。表面は平和の殿堂であり、中は息づまる米ソの対立、まさになぐり合いの一歩手前といった感じであります。世界で一番仲の悪い者同士が一つの家の中に住んでおるこの現状を、政府はよく見つめて、この悩みの根底はどこにあるか、これを見つめた上で、国連中心の基本外交をおきめになったのですかということをお尋ねするものであります。  質問の第二点、もし病根が除かれないのに、このままで、今の方向と速度で進んで参りましたならば、国連はあくまで平和の殿堂であり得ると思っておられますか。このままの、病根を持ったままの国連中心で行けば、戦争に巻き込まれるおそれはないと考えになりますか。この点について、原水爆乱れ飛ぶ次の戦争は、おそらく戦場に使われただけでも、その民族は亡びなければならないことを思うとき、日本民族は興亡の岐路に立ちますから、お尋ね申し上げる次第でございます。病根となる機構に不備を見つけて、あくまで世界正義のために世界世論を巻き起す積極的な手を打ってもらいたいと思いますが、政府のこの点に関する所信を承わりたいのであります。  ただいま私は、国連は大きい悩みを持っておる、悩みの根となるものがあると申しましたが、それは国連そのものを非難しておるのでありません。ほんとうにたよりにしようとするならば、そのたよりにしようとするものの、その相手のほんとうの姿を知り、もしもそこに悪い点があるならば、その悩みとなる点を、あくまでこれを剔抉して、すこやかなる発展を願ってやまない情熱からであるということを、お考え願いたいのであります。  国連の中で、五大国の中には、世界平和を口にしながら、人類の幸福を願いながら、陰では必死に戦争の準備をしております。この悩ましき戦争の悪い種はどこから生まれたか。五大国が拒否権を持っておるという点もありましょう。また、わがままな、自己を守らんとする心から出発している点もあるでありましょうが、ここに奇怪なことは、国連憲章の精神を幾度踏みにじっても、五大国は追放されないように機構ができておるということであります。この機構のからくりがある間は、国連の中に争いとわがままの種は除かれないのではないかと考えられる。むしろそれが助長され、おそるべき結果が生まれるのではないかと見るのが、現下の見通しではないかと私は思っておりますが、これに対して政府はいかなるお考えを持っておられるのであるか。このまま進んで参りますならば、ついに世界大戦の危険があるということを考えますので、積極的に、こういうようなことの生まれないだけの国連機構に対する思い切った改革の行われるような、積極的運動をする意思ありや、情熱ありやということもお尋ねいたします。  第三、原水爆禁止についてお尋ねを申し上げます。原水爆の実験禁止は、全世界人々の悲願であります。原水爆の悲しき犠牲となった日本人の特に願ってやまない問題でありますから、たびたびこれを三強国に訴えております。しかし、アメリカも、イギリスも、ソ連も、数人の指導者たちは、これを耳に入れようとしておらない。イギリスには西大使を通じて、クリスマス島で原爆実験をすることをやめてもらいたいと申し出たと言われますが、その返事もなく、近くやるような手配をやっているとさえ言われております。またソ連も、日ソ共同宣言案の中に、原水爆禁止について両国協力するという言葉を入れておったのに、それをあとで、筋が通らないという意味で抜かれましたが、しかし、それからその後に、実験禁止を破って、実験をやっております。アメリカもたびたびやっておる。こういうようなことを考えるときに、大国のやり方は、平和を守る国連の理想とは全く遠く離れておる狂暴な姿であるとして、憤りを感ずるものであります。(拍手)これに対して、原水爆禁止の運動は、あらゆる機会にたゆまざる努力をもって続けられねばなりませんが、政府は、その三国いずれに対してでも、この禁止の抗議を申し込んだかということをお尋ねいたします。  次に、自主外交をやると言われるが、その具体的な方策を承わりたいのであります。昔の戦争ならば、たとえ戦場に使われても、その国民は何とか逃げ隠れる道もあったのでありますがい原水爆の乱れ飛ぶ次の戦争を思うとき、戦争にみずからは入らなくとも、戦場に使用されるだけで、その国も人も全滅のほかはないのであります。日本は二大陣営の中に立っております。戦場になるおそれはないとは断言できないような状態にも考えられます。日清戦争前の朝鮮、日露の間に立った満州、第一次世界大戦の起る前のバルカン、第二次世界大戦にはさまれたポーランド、こういう国々にかなり似た点があるように思われます。これらの国々のことを考えてみましても、みずから守る力なく、不正不義に抗議する国論なく、いずれか一方の陣営のみにたよって他の陣営の疑心暗鬼の的となり、ついに摩擦の焦点となり、摩擦するところに熱が起り、ついに戦場にさらされております。みずからは戦争をしないでも、罪なくして廃墟となった哀れな姿があることを思うときに、実に日本の前途を憂える上から、自主外交の確立を願ってやまないのでありますが、この自主外交方策について承わりたいのであります。  次に、自主外交方策を進めんとする場合には、だれが考えても、日米安全保障条約や行政協定がどうもじゃまになるのではないかと考えられます。(拍手)従って、これに対し、これを不都合でないと考えるか、もし不都合であると思う点があるならば、これを改正する準備は進められておるかということをお尋ねいたします。(拍手)今の条約と協定は、日本が占領されていた当時の事情に基いて作られております。そうして講和とともに結ばれておりますが、今の日本事情ははるかに当時とは変っております。今や独立国として、また国連に加盟した今日の日本は、日米対等の立場に立ち、この条約、協定を改正することが当然ではないかと考えざるを得ないのであります。こういう意味において、積極的に改正の用意ありやということをお尋ねいたします。  次に、小瀧防衛庁長官にお尋ねします。就任の第一声において、「国連に加盟したからといって直ちに海外派兵ということに結びつけて考えるということは妥当でない」と述べておられるが、自衛隊ね、国内的には軍隊ではないとの見解をとっておるけれども、対外的には明らかに軍隊であるというふうに考えられておりますが、国連の一員としては、当然集団安全保障を義務づけられることを思うときに、わが国の場合、実際問題として、海外派兵を断わり得るでありましょうか、もし断わり得るとするならば、その法的根拠について具体的に説明を願いたいのであります。(拍手)  次に、道義の高揚について、首相代理並びに文相の御意見を承わりたいのであります。十六の少年が強盗殺人をやったり、目に余る無軌道な青少年の犯罪が至るところに目につく、自由の名のもとにわがままがはびこり、終戦以来十年、道義はすたれたと嘆かれております。この物心両面の廃墟の上に立たされた青少年の心中を思えば、また涙なきを得ないものがあります。目標も与えられず、新たなる道をつけてもらえず、これまでに野放しに放り出されていた姿を思いますときに、実に責任の重大なるを感ずるのであります。こういう点から考えて参りますときに、道義はすたれ、青少年の魅力が競馬、競輪、パチンコ、こういう方面に進んで魅力を持って参りましたことは、まことに悲しき姿でありますから、これを一日も早く正しく導く方策をお持ちであるかということをお尋ねいたします。今までは、一国の文教の責任を負うた文相になられた方々が、その経歴から考えましても、単なる行政技術面にのみ終始して、精神的かおりも、道義の尊さを導くそのゆかしさも持たなかった人が多かったように意われます。私は石橋首相がまだ在野の時代に、四国に旅をしましたときに、車中で、「あなたが内閣を作るとぎに河が一番むずかしい思いますか」と聞いたら「文部大臣ですね」と言っておられた。これは「なぜか」と聞いたら「一国の文教の責任を持つのだから、行政技術のうまさだけではいかぬ、人格、見識の高く、しかも行政に明るい人でなければならぬからむずかしいのだ」と、しみじみ言っておられたことを思い出します。従って、首相として今組閣された今日、灘尾文相には大きな期待がかけられておるのではないかと考えます。政府は放送や映画が与えるその影響力の偉大さを思うときに、これに対し何か無軌道にならないような考え方を持っておられるか、その具体的な方策を承わりたい。  第二点、現在の教育制度はあまりに法文科系統の偏重で、理科系統、科学技術系統の教育が軽視されておる傾向があるようであります。技術教育振興は、卒業者の受け入れ側にも非常に待たれるものがあり、産業界においても要望されておるところでありますが、現在の法文科系を偏重する教育制度は、インテリ失業群を非常に増大させて、青少年罪悪の根底にもなる場合がありますので、政府の意図する雇用増大反対の結果を招いておりますが、これについて改善の意図があるか、もしあるならば、具体的方策をお示し願いたいのであります。  最後に、経済問題について、外相、蔵相、通産相にお尋ねいたします。  政府は、中共貿易の拡大を期待していられるが、このほど、米国は非公式ながらココムの制限強化を提案してきた。岸外相は、米国からのココムの制限強化しようと、正式かつ具体的に提案を受けたわけではないから、日本は従来の態度で進んで差しつかえないと、依然として中共貿易の拡大方針をお持ちであるようですが、国際情勢の緊張は、必然的にココムあるいはチンコムの制限強化の方向に向くのではないかと思われる。このような情勢下にあって、政府は対中共貿易の制限緩和についてどんな手を打っておられるか、承わりたい。また、政府の積極的政策インフレを引き起しはしないかという懸念が持たれておりますが、インフレ防止について政府はどんな具体策を持っておられるか明示されたいことを申しまして、私の質問演説を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  国会運営の正常化につきましては、施政方針においても述べましたように、政府としては特にこれを重要視しております。と申しますのは、国会国民信頼を裏切るようなことがあってはならぬ。最近数回の国会におきましては、運営が決して国民の期待するように行っておらなかったことを、私どもは非常に遺憾とするのであります。この点につきましては、二大政党になった以上は、こういう大きな責任を持っておる二大政党が、十分共通の広場を広くして話し合うことによってこれをやらなければならぬ。同時に、国会法その他の法制上、国会の運営を正常化するに必要なことにつきましては、十分話し合って、必要なる改正等を行なって行く要があると考えております。  なお、この問題に関連して、二院制度の問題につきましては、お話の通り、現在の憲法におけるこの二院制度というものを尊重すべきことは当然であり、また、二院制度のあり方について考えるべきことは当然であると思うのであります。一方、衆議院が二大政党になった関係上、さらに参議院においても、その政党が衆議院と同様に勢力を持ってくることは当然でありますけれども、同時に、両院制度の本質にかんがみまして、衆議院とはおのずから行き方を別にしなければならない点があると思います。これらの点につきましては、十分関係の方面において研究をされ、また話し合って、ぜひとも国会運営を正常化して、国民国会に対する信頼をますます固めて行くことが民主主義政治の私は根底であると考えております。  外交方針といたしまして、国連中心主義を私どもは堅持するものでありますが、お説の通り国連の現状はきわめて複雑な事情がございます。この中におきまして、日本が将来国連の一員として、積極的に、かつ建設的に世界の平和を増進いたしまするためには、あくまでも国連憲章の精神を堅持して、そうしていわゆる対立しておると考えられておる東西両陣営の緊張を緩和するために、またA・Aグループ、その他の西欧諸国との対立を緩和するために、日本の自主的な立場から、正々堂々、日本主張を述べて、そうして国際的の世論を喚起することに努めたいと考えております。  原水爆の使用禁止並びに実験禁止の問題に関しましては、すでに私も答弁をいたしました通り、全日本国民のこれは悲願である。従って、これをあらゆる機会に、この原水爆を持っておる米ソ初め英国等の国々に対して、その実験を行う場合においては、これを禁止するように、われわれはあらゆる注意を喚起し、またそれに努力をいたしております。  自主外交の点でありますが、もちろん、われわれは自主独立の立場から日本外交を推し進めることは当然でありまして、この見地から、安保条約行政協定の改訂の問題が当然起ってくるのでありますけれども、これらのものを改訂いたしますのには、やはり改訂するに必要な諸種の条件と申しますか、環境を作り上げなければならない。たとえば日本みずからが自力的な防衛をある程度充実する、完成するということも必要でありましょうし、また、日本側のこれを必要とする考え方を、十分相手方たるアメリカに了解せしめるというようなことも必要でありましょうし、また、どういうふうにこれを改訂するかというような点も具体的に研究する必要があると思います。これらの点につきましては、十分今申しましたような諸種の条件を案じつつ進んで参りたい、かように考えております。  国民道義高揚の問題は、これは一国の中心的な問題でありまして、私どもは特に日本の将来をになうべき青少年の、戦後における御指摘のように目標を失い、希望を失って、また、これに対する施策を誤まったために、いろいろな弊害の出てきておる現状を考えまして、特にこの点については留意して施策をしたい考えであります。  ココムの制限緩和の問題につきましては、これは従来われわれはその方向で進んで参っておって、米国初め自由主義国に、その日本の希望をいれるように交渉をして参っております。この方針は、私はやはり今日においても依然として変えるべき問題ではないと思います。ハンガリー問題等に刺激されまして、アメリカ側において、そういう制限強化しようというような意向を持って非公式な打診がありましたけれども、私どもはやはり従来の方針のように、合理的にこれを緩和して行く、この範囲内において中共貿易をあくまでも増進して行きたい。いろんな見本市の問題や、両国の間におけるところの視察団の交換、あるいは最近問題となっております通商代表部を民間のレベルにおいて認めるというような、各種施策を講じて、中共貿易の増大をはかって行きたい考えであります。(拍手)    〔国務大臣小滝彬君登壇拍手
  24. 小滝彬

    国務大臣(小滝彬君) ただいまの常岡さんの御質問お答えいたします。  私が、国連に入っても海外派兵をしない、また派兵をする必要はないと申しました第一の理由は、すでに本院におきまして、また衆議院におきまして、全会一致をもって海外派兵反対の決議がせられておりまするので、政府としては、当然この皆さんの趣旨を体して行動しなければならないと思っておるからでございます。  第二は、集団安全保障努力への協力ができぬじゃないかというように御質問がございましたけれども、世界の一角に紛争が起った際、集団安全保障の措置をとる場合、兵力を必ず派遣しなきゃならぬというのではなくして、経済的な措置もございまするし、その他の便宜によって協力するということもできますから、これによって国連協力ができないという心配もないと存ずるのであります。  なお最後に、法的根拠いかんとおっしゃいましたが、国連憲章の四十三条には、なるほどこういう場合を予想した特別取りきめの規定がございますけれども、これに加入した国はないし、また取りきめはできておりません。こういう取りきめによって、あらかじめそういう義務を負うという立場日本もございませんし、どの国もございませんから、法的立場から申しましても、これによって国連に対する協力にそごを来たすということはないと御承知を願います。(拍手)    〔国務大臣灘尾弘吉君登壇拍手
  25. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) 私に対する御質問の第一点は、今までの文教政策行政技術的であって、精神的な面が欠けておるのではないか、こういうような御趣旨の御質問と伺ったのであります。戦後新しい制度を実施することになりまして、これに関連いたしまして教育行政の問題、あるいは財政問題等が、かなり大きく取り扱われて参りまして、あたかもこれが文教政策の中心であるかのごとき観を呈したことも事実であろうかと考えるのであります。しかしながら、何と申しましても、教育の目的は、教育基本法にもございますように、人格の完成を目ざすものでございます。従いまして、私どもといたしましては、御指摘のような今日の青少年の状況でもございますので、特に学校教育並びに社会教育の両面におきまして、先ほど笹森さんにもお答え申しましたごとく、あらゆる機会を通じまして、道徳教育、あるいはまた生活指導というような事柄について、さらに一そうの努力を重ねて参りたいと考えておる次第でございます。また、青少年を取り巻く社会の環境につきましても、よほど考えなければならぬと思います。これにつきましては、社会一般の御注意をわずらわし、また自粛をお願いしたいと考えておるのでありますが、われわれといたしましては、さらに、あるいは明朗健全なスポーツを奨励をいたしますとか、また優良な映画、音楽等の推奨、あるいは普及等の措置を講じまして、いろいろな施設をもちまして、青少年の明るい健全な生活の建設に資したいと思うのでございます。  第二の御質問は、雇用問題と教育との関連においての御質問のように伺ったのでございます。学校を卒業せんとする者の最も悩みとするところは就職問題でございます。この問題がうまく解決することによって、青少年の前途も、まことに明るくなるわけでありまして、今日憂えられておるような状態も、この雇用問題がうまく解決すれば、よほど緩和せられるということは間違いないと思います。従来、ともすれば日本の学校が、いわゆる法文科系に片寄って、理工科系が少いというような事実もございましたが、今、日本産業経済が大きな発展を示しておりまする際に、必要な人材が十分に供給せられないうらみもございますので、この雇用問題と関連いたしまして、私どもは特にこの理工科系の教育を今日重視しなければならないと考えておるのでございます。政府といたしましては、明年度予算に、大学における関係学科の新設、既設理工系学部学科の学生の増員、原子力関係等の講座の新設、その他研究費の増額、施設の整備等、この理工科系に関する所要な経費を増額いたしまして計上いたした次第でございます。また、高等学校以下における理科教育産業教育に要する経費を増額いたしまして、あわせて科学技術者養成の充実をはかりたいと考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  26. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  インフレ対策といたしましては、昨日財政演説で申し上げた通りでございまして、まず、政府財政均衡にいたしますることはもちろんでございまするが、民間におきましても、あくまで金融均衡いたしていなければなりません。しこうして、国民の貯蓄の増加をお願いいたしまして、生産増大をはかり、物価を安定する、これよりほかにはないのでございます。政府はこの方針で進んで行きたいと考えている次第でございます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  27. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。  中共との貿易は、すでに御承知のように、昨年一月から十二月までの輸出が約六千七百万ドル、輸入が約八千四百万ドルでございまして、わが国からの輸出が飛躍的に増大いたしておりますが、中共側の希望は、あくまでも輸出輸入均衡にあるようでございますので、これ以上の輸出わが国からするためには、どうしても輸入を多くしなければいけないという状態になっております。そのためには、現在の協定に見られるような貿易方式、決済方式では非常にむずかしいと思いますので、これらの問題を改善するために、今年五月までに民間協定が成立することを期待している次第でございます。  なお、戦略物資の輸出につきましては、先ほど外務大臣からお答えがございました通り国際協調のもとにおきまして制限緩和に極力努力する、そうして、さしあたり例外措置というようなものを、できるだけ活用して行くという従来の方針に現在のところ変りはございません。(拍手
  28. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 寺尾豊

    ○副議長(寺尾豊君) 御異議ないと認めます。  次会は、明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十三分散会      —————————— ○本日の会議に付した案件  一、人事官任命に関する件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)