○羽生三七君 私は、
日本社会党を代表して、
石橋内閣の
施政方針に関し、岸
総理大臣臨時代理を初め、
関係各閣僚に
質問を行います。
石橋内閣が発足以来、第一歩の
施政方針演説から、首相代理によって行われることは、われわれのはなはだ遺憾とするところであります。しかし、
総理が病気とあればやむを得ませんので、すみやかなる回復を念願することといたします。
そこで、
質問の第一点は、
石橋内閣はすみやかに議会を解散して、信を
国民に問うべきであると思うが、
政府の
所信はどうかということであります。(
拍手)
理由の第一は、
石橋内閣は自民党総裁の交代の結果として生まれたものでありますが、
総理大臣以下全大臣一人残らずかわっております。従って、これを単なる鳩山
内閣の延長と見ることはできません。(
拍手)
理由の第二は、
石橋内閣の
財政経済政策についてであります。
政府の
昭和三十二年度
予算案は、周知のごとく、一般会計において前年度に比し一千二十五億円、
財政投融資において六百七十三億円の大幅な増加となっております。もとよりわれわれは一兆円
予算ということに格別の意義があるとは
考えませんし、また、
国民所得が
増大すれば、
予算規模がある
程度拡大するのは当然とさえ思っております。しかし、それにもかかわらず、前
内閣に比して
財政規模の
拡大が顕著であるし、かつ、その性格も質的に相当
変化していることは事実であります。従って、これを鳩山
内閣の延長と見ることは適当でございません。(
拍手)
理由の第三は、自民党の党内
事情であります。われわれ
社会党も、みずから顧みなければならぬ問題もあることでありますから、他党の
内容についてかれこれ
批判したくはありませんが、しかしそれにしても、政権を現に担当している
政府与党としては、その党内
事情はあまりにも問題があり過ぎます。鳩山
内閣時代の日ソ
交渉途上においても、二元
外交で、
わが国が多くの不利益をこうむったことは、
国民が身にしみて味わっているところであります。今回の消費者米価決定の際も、同様の抗争が繰り返されました。さらにはなはだしいことは、副
総理すらこれを決定することができないということであります。(
拍手)
外務大臣は、
政治と
外交の一体化を説かれましたが、まず党内の一体化をはかるべきでございましょう。
さて、このように見て参りますと、
政府に残された道は、すみやかに議会を解散して、信を
国民に問うことであると存じますが、
政府の
所見をお尋ねいたします。(
拍手)
次の問題は、
石橋内閣が鳩山
内閣の延長であるとすれば、憲法改正についてはどうお
考えになりますか。鳩山
内閣の
政策の第一目標であった憲法改正は、昨年の参議院選挙の結果断念したと了解してよろしいかどうか。それとも前
内閣同様、その改正を目標とするのか、この機会に明確にされたいことを希望いたします。(
拍手)
次に、
外交問題に移りますが、まずお尋ねしたい第一点は、
日本外交の自主性についてであります。去る一月十六日行われました石橋・アリソン会談において、米側は、
日本の防衛費が
経済の
発展と照合して過少である、少な過ぎる。
日本の防衛努力が足りない等々と述べ、
日本に対して
各種の注文をつけるとともに、米側としての不満を述べたと伝えられておるが、独立後すでに時久しいわが
日本に対して、今日なおかつ、
予算編成の途上、このような牽制を他国から受けることは、われわれの
理解しがたいことであるし、かかる事柄は、
日本みずからが決定することであって、他国の容喙を絶対必要としないことだと
考えるが、これに関する
政府の
所見を伺います。(
拍手)
次の問題は、
日米安全保障条約、
日米行政協定についてであります。言うまでもなく、この条約と協定は、サンフランシスコ
平和条約締結の際に、早急の間に取りきめられたものでありますが、実に多くの欠陥に満ちた条約であり、協定でございます。しかも昨今の
国内的、
国際的
情勢との関連においてこれを見るときに、すみやかに再検討さるべきものであることは、ここにあらためて言うまでもないところと信じます。この片務的にして、かつ不平等な条約を再検討すべしという声は各方面から聞かれるのでありますが、しからばこれを平等な双務的なものに改正すればいいかということになれば、単なる抽象的な言葉では
解決しがたい性質が含まれていることは、
政府もすでに承知であろうと存じます。言うまでもなく、この条約の
内容とするところは、
日本国が
国内及びその周辺に
米国軍隊の駐留を認め、他面、
米国は
日本に対する外部からの攻撃に際して、
日本国の安全に寄与するため
米国軍隊を使用することができるということでございます。そこで、
日本国に対する
米国軍隊の駐留は、同条約第一条において、
アメリカの権利として規定されておりますが、
日本国に対する
アメリカの防衛は、同条約第一条に規定されているごとく「
日本国の安全に寄与するために使用することができる。」とあるだけで、何ら義務づけられておらないということが問題になっております。しかし一般的、常識的に言えば、
日本は、米軍の駐留とその
基地提供とを認め、
米国は
日本を防衛するという形で、この条約が
理解されていることは言うまでもございません。さて双務的ということが、軍事的義務を締約二国間が平等に負うことを意味するものとすれば、これは一種の軍事同盟となり、
わが国は当然海外派兵の義務を負うことになります。しかしそのようなことは、
日本国憲法の精神から見て絶対許しがたいことであるし、かつ今日の
世界情勢から見て、何ら
日本の安全保障とならないことは言うまでもございません。従って、
わが国が海外派兵の義務を負うような条約改正はとうてい
考えられないことが明瞭になります。この
日米安全保障条約、
行政協定の問題については、一昨年の夏、今はなき当時の重光
外相が渡米の際、話し合いの対象となったようでありますが、その際、ダレス長官は、
日本の憲法、海外派兵等の問題に言及し、逆に防衛力の増強を要求したと伝えられております。その折行われました
日米共同声明においては、「
日本ができるだけすみやかに自国防衛の主たる
責任をとり、
国際平和及び西太平洋の安全の維持に寄与できるような諸
条件を作ることに
協力すること、そして、このような諸
条件が整えば、現在の
安保条約を、もっと
相互的な性格のものに置きかえることが適当と認める」というのでございました。さらにその際、
米国務省スポークスマンは、記者会見において、
日米共同声明を補足していわく、「
日米安保条約を共同防衛条約にかえるならば、
日本に共同
責任が生じ、海外派兵ということになる」と説明しておるのであります。これによっても明白なように、
日米安保条約の改正は、
日本の防衛力が
増大し、しかも双務的、正確に言えば、
日本も軍事的義務を負う形でのみ、それが可能であるということを
アメリカは明示しているのであります。さらに悪いことには、
日本の防衛力がどの
程度に達したなら、つまり声明にあるように、
日本が自国の防衛に第一義的
責任を果したと認定するのか、その辺の基準も限界もないのであります。
さて、このように見て参りますと、この条約改正問題は容易ならぬ意味を含んでいることがわかるので、まあしばらくはこのままでという議論が出てくるのであります。しかし
日本の現状はどうでありましょうか。砂川問題に現われたように、軍事
基地拡張の要求を初め、さらに後に述べますように、
アメリカの原子兵器部隊の
日本派遣ということが問題となるような
条件のもとに置かれているのであります。従ってどのように問題が困難であっても、これらの条約や協定は絶体に再検討されなければなりません。しかもその方向は、軍事的
協力関係の
強化ではなく、
日本を取り巻くアジアの緊張を緩和させることによって、
日米安保条約の解消を可能とするような
条件を作り出すことでなければなりません。(
拍手)そしてまたそのような場合においては、中ソ友好同盟条約もまた解消されるべきものと
考えることは当然でございます。
さて、以上の問題と関連をして、最近の
アメリカ外交の方向を見ることにいたしますが、
アメリカ外交は再び逆戻りを始めたのではないかと思われます。すなわち、さきのアイゼンハワー大統領の一般教書並びに中東教書にも見られるように、力の
政策の
強化が強くうたわれまして、一般的にダレス
外交の復活とも言われる傾向を示し始めたことであります。これについては、
アメリカの前国務長官のアチソン氏は、去る一月十四日、中東教書に関する
アメリカ下院
外交委員会での証言において、次のように述べて激しく
政府を攻撃しております。すなわち、「これは全くせとぎわ
政策の
考え方だ、はっきり言うならば、両院決議案は第三次大戦の
権限を与えるものと言わなければならない。そうして中東声明の米軍出動のあいまいなる表現は、核兵器の戦争の危険をはらむものである」と断定をしております。このような
外交政策を示し始めた
米国は、さらに
予算教書において、原子兵器を中心とする戦略転換を示しておりますが、過日のUP電報によれば、
米国は、極東における
日米両軍に対する強力な支援部隊として、原子機動部隊を
日本に派遣することを考慮しておると伝えておりますが、この報道が行われた直後、モスクワ発AP電報は、
日本、トルコ、イランの諸国が
米国に対し、自国領土内の
基地をこれら兵器で装備することを許す結果として、戦争が発生すれば、同様の兵器の攻撃に見舞われるであろうと、重大警告を発したプラウダの記事を報道しております。さらにまた、一月二十八日、イギリス下院において、労働党は、米軍の英国駐留は、中東で動乱が起った場合、ソ連の原子兵器による報復を招く危険があるとして、米軍の撤退を要求する動議を提出しております。
このように見て参りますと、
日本の安全保障という問題が、原子兵器の
発達と新しい
世界情勢の中で、兵器の革命と同様に、われわれみずからの頭を革命することによって、全く別個の視角から根本的に再検討されなければならぬということが、もちろん明らかになってくると思うのであります。(
拍手)そこで、
政府にお尋ねいたしたいことは、このような原子兵器時代の安全保障をどのように
考えておるかということ、さらに、そういう
立場で
日米安保条約、
行政協定を見る場合、このままでよいと
考えるか、根本的に再検討すべき時期に立ち至ったと思うが、
政府の
所見はどうかお尋ねをいたします。さらにこの場合、もし
米国政府から原子部隊駐留のこの求めがあった場合に、
政府はいかなる
態度をもって臨むか、昨日の衆議院での答弁、ただいまのこの議場においての答弁では、そういうことはまだ聞いておらないが、そういうことが起ったら、そのときにあらためて
考えるとのことでありましたが、そういう答弁では困ります。この際、そういう話があった場合にはどうするかという明確なる
態度の表明をせられたいのであります。(
拍手)
次の問題は、今日の
世界情勢に適応した安全保障の形はどのようなものかということであります。われわれ
社会党も、単に再軍備
反対だけを唱えておれば事足りるとは
考えておりません。
日本の安全保障がいかにあるべきかということは、われわれもまた真剣に考慮しておるところでございます。われわれは、今日のような
国際情勢のもとにおける安全保障体制を、次のように
考えております。すなわち
日本、
アメリカ、ソ連、中共等の諸国、さらに場合によってはインドその他の国をも考慮しながら、これら諸国間に絶対不可侵の精神を
基調として、東西を結ぶ確固たる集団安全保障体制を確立することこそ、今日の
世界情勢に適応する真の安全保障であることを
確信するものでございます。(
拍手)さて、
政府としては、一方的な軍事
協力関係の推進だけが安全保障の唯一の方式と
考えることなく、緊張緩和
政策の推進が必要と思いますが、その意味で、鳩山
内閣が
日ソ国交回復を実現させたことが問題の一歩前進であると思います。しかし
日ソ国交回復に続くべき中共との
国交回復はどうされますか、
政府はこの際、これが実現のために積極的な努力をなすべきであると思いますが、
政府の
所見を承わりたいのでございます。(
拍手)
なお
政府は、対米
関係の調整ということをしばしば述べておりますが、対米
関係の調整とは具体的には何でありますか。われわれはこれを自主独立の
外交を推進するものと解釈をいたしております。ところが、
外務大臣の
方針はそうではなさそうである。鳩山
内閣時代に対米
関係が冷却したから、
日米の親善を
強化するというのが対米調整という。全く驚くのほかはないのであります。
日米親善を
強化するのはよろしい。われわれも
賛成である。少しも異存はございません。必要でさえある。しかし親善と調整とは全く別個の問題でございます。真の調整とは、
日米安保条約を再検討したり、あるいは中共との
国交回復促進のため
アメリカの
理解を深めることでなければなりません。(
拍手)しかるにもかかわらず、アジア地域公館長会議の席上、外務当局は中共を承認せずと言い、さらにまた去る二十九日、
岸外相は、記者団会見の際、中共通商部代表の受け入れに水をかけるような発言を行う等、あまりにも
政治性がなさすぎます。かかることは、
日本の
経済自立の確立、アジアの緊張緩和のために、断じてとるべからざる
政策といわなければなりません。このようなことで、
国連加盟後の
日本の
外交の
基調といわれる東西を結ぶ役割がどうして果されましょうか。鳩山
内閣は閉ざされたソ連との
関係に道を開きました。
石橋内閣の使命は、さらに中共との
国交回復に窓を開き、そして
日本を取り巻くアジアの緊張を緩和させて、
日米安全条約、中ソ友好同盟条約、この双方が共に解消できるような
条件を作り出すことでなければなりません。(
拍手)このような
施策を推進することこそ、今日の原子兵器時代における安全保障の道であることを知るべきであると思います。
次に、沖縄、小笠原の返還問題についてお尋ねをいたします。この問題に関する
政府及び与党の
態度は、かつて日ソ
交渉の際に示した領土問題に関するそれと比較いたしまして、あまりにも相違がはなはだしい。その
熱意を知るのに苦しむのであります。
政府はこれら諸島の返還要求に
熱意をもって当るか。返還要求、かつまた、沖縄住民の苦悩をやわらげるために、当面
わが国の
外交権を最大限に行使して、さしあたっての諸問題を
解決するよう、最善の努力を払うべきであると存じますが、
政府の決意を知りたいのであります。
次に、英国の水爆実験に対する
政府の申し入れは、機宜を得ていると存じます。しかし
政府は最後までこれに対して努力を行う用意があるか、この機会に明確にしていただきたいのであります。なお、東南アジア諸国に対する賠償問題については、
政府がすみやかにこれを促進することを心より期待いたします。
さて、次に明年度
予算及び一般
経済についてお尋ねをいたします。さきにもいささか触れましたように、三十二年度
予算は、前
内閣のそれと比較いたしまして、その規模においても、その性格においても、相当顕著な相違を示しております。
政府はこの
予算を、千億
減税、千億
施策の、健康で明るい
生活を作る
予算と称しておりますが、果してそうでございましょうか。われわれは、以下問題に触れつつ、これを
批判し、
政府の
所見を伺いたいと存じます。
千億
減税といいましても、実質的には七百二十億
程度であり、また
減税と
施策を同時に行うことを可能としたものは言うまでもなく税の自然増収であります。そこで、まず
減税の実態について検討することといたしますが、今度の
減税が実質的に納税者にどの
程度の利益をもたらしたかと申しますと、納税者の大半を占める年収三十万円以下の
所得者にとっては、その利益はきわめて少く、五十万円以上の高額
所得者にとって有利となっていることは周知の
通りであります。さらに
減税効果の作用する人口とその作用の及ばない人口の比率を検討いたしますれば、次のようであります。
まず
所得税納税者数ですが、給与
所得納税人員八百四十六万七千人、申告
所得納税者百八十八万七千人、合計一千三十五万四千人でございまして、これに扶養家族を乗ずる人員は約二千四百三十万人となって、昨年の
わが国総人口九千三十万人の約三分の二に当る六千五百数十万人は、
減税の利益に
関係のない、明確に言えば
所得税を納めることのできない階層に属しておるのであります。しかも、これもまた周知のように、
減税の利益に浴さないこの何千万の
人々が、国鉄運賃の値上げ——これは一割三分の値上げで、三百六十五億円の増収を見込んでおるのでありますが——この運賃の値上げと、さらに引き縫いて起るであろう私鉄の運賃の値上げ、さらに揮発油税増徴の結果当然予想される自動車運賃の値上げ等々で、
生活上にはむしろ逆な影響を受けるということが今度の
政府の
予算の実態であるということができるのであります。(
拍手)これで昨日
総理の
施政演説の中にあった、「
国民全体の福祉をのみ念じて国政の方向を定める」ということができましょうか。
国民全体は、今申し上げましたように、該当者が少くて、今度の
減税の恩典にはまるで
施政演説とは逆であります。あまりにも高額
所得者中心の
減税政策であり、われわれ大多数の
国民にとっては何らの実益を伴わない非大衆的な
予算であると思うが、
政府の
見解はどうか、承わりたいのであります。しかしこの場合、
政府としては、
財政上
積極政策をとることによって
産業規模を
拡大し、
経済活動を盛んにすることによって間接的に
国民生活に寄与するという説明をされると思いますが、この
考え方については、われわれも一定の
条件のもとにおいてはこれを肯定するものであります。しかしこの
考え方は、
経済基盤の
拡大と
財政投融資のあり方という問題は別としましても、そのままでは低い
所得階級に通用するものではありません。神武以来の
景気といわれる今日、実に多くの
人々が日の当らぬ場所で素
通りの
景気を眺めているのであります。これらの階級にとっては
積極政策による
経済の波動はなかなか及びません。この
経済の間接的波動の及ばない階層にとりましては、むしろ
予算面において直接的援護
措置をとることが絶対に必要と思いますが、
大蔵大臣の御
所見はいかがでございましょうか。
しかし、このようなわれわれの
質問に対しまして、
大蔵大臣はおそらく、そのゆえに
社会保障費を増額したと答えるかと思いますが、しかし、その
内容はどうでありましょうか。確かに
社会保障費は前年に対比しまして九十一億余の増となっております。その中には、
国民皆保険、
生活保護費の基準改訂、あるいは母子加算等、若干の増額は見られます。しかし勤労大衆の
立場からこれを検討すれば、前年対比九十一億円増のうち、恩給費から遺族及び留守家族援護費へ組みかえの分十七億余を差し引いた純増七十四億円余の
社会保障を受けるわけでありますが、他面においては、国鉄運賃、ガソリン税の値上り等で、僅々数十億円の
社会保障費の増額など及ぶべくもない多くの損失をこうむることになります。
政府は
社会保障の充実を約束しておりますが、その実際はあまりにもその宣伝と違うと思われますが、
政府はどうお
考えでありましょうか。
次に、この
予算の
物価に対する影響及び
国際収支についてお尋ねいたします。
まず
物価の値上りの要因となる
財政膨張の実態は、公共事業二百二十五億増、防衛費の実質増三百四十億、これは繰り越しあるいは
予算外契約、継続費その他を含めてでありますが、これが三百四十億、住宅
関係投融資百四十六億、開銀と電発の投融資増三百十五億、これだけで千二十五億円となりまして、一般会計
財政投融資の増額合計千七百十三億円の約六割に当ることになります。そして、この大部分がまた関連独占
企業の
強化となっているときに、
農業、
中小企業に対する助成費は、はるかに少い。この
財政膨張と、国鉄運賃、ガソリン税の値上げ等で、
物価の値上りは当然予想されるが、
政府は、運賃の値上りは
企業過程で吸収され、実質的には
物価に対する影響は起らないとの
見解をとっているようであります。しかし、実際に
企業過程で利潤や配当を減らして、これを吸収することが、果してできるかどうか、この見通しをお伺いいたします。
物価は昨年中は卸売
物価一〇%、消費者
物価三・二%の上昇でありましたが、三十二年度は、
財政の膨脹と民間
設備投資需要等が同時並行いたしますので、鉄鋼、輸送、電力等の
生産隘路のために、通貨膨脹と
生産との間に時間的なズレが生れまして、鉄鋼、セメント、石炭、重油等の
基礎物資の値上りは必然となりはしませんか。この場合に、
経済企画庁の想定する三十二年度卸売
物価二・六%、消費者
物価〇・九%という上昇見積りは甘すぎはしないかと思いますが、いかがでございますか。とにかく三十二年度
政府予算及び
財政投融資計画からくる
財政膨張は、
インフレ要因となって
物価高を招来し、低額
所得者にとっては、若干のベース・アップや
減税を相殺する結果となり、さらに
減税の利益に
関係のない大多数の
国民にとっては、
物価の値上りだけをしょい込まされるという、ありがたからざる結果となるのではございませんか、
政府の
見解をお尋ねいたします。(
拍手)
そこで
政府のこの
物価の予想よりも、実際に
物価高とならないのかどうか、また
経済企画庁の三十二年度
経済の予測は、
物価の面からくずれて高
物価になりながらも
金融引き締めとなり、
中小企業を圧迫することとならないか、これら諸問題について
大蔵大臣の
見解を承わりたいのでございます。
次の問題は、
国際収支に関してでありますが、以上、見てきたような
財政膨張の結果から、
国内需要が旺盛になり、コスト高と相待って、
政府の言う
輸出の
振興とは
反対に、
輸出の減少、
輸入の増加となって、
国際収支の悪化をもたらすようなことはないか。現に
輸出の上昇率は最近鈍化しているのに、
輸入率は上昇の一途をたどっております。この趨勢が続くとすれば、
経済企画庁の想定する三十二年度の
国際収支、受け取りでは
輸出、特需、貿易外の合計三十六億八千万ドル、支払いでは
輸入、貿易外合計三十七億三千万ドル、差引
赤字が五千万ドル、ユーザンスを考慮して、形式上とんとんという推定もくずれるようなことは起らないか、これは
大蔵大臣、
経済企画庁長官、それぞれから御答弁を願いたい。
次に、防衛
関係でありますが、
政府は本年度地上軍一万の増強は行わない、防衛
関係費は大体前年
程度と言っておりますが、しかし
アメリカに対しては、一九五八
アメリカ会計年度で増強を約束していると伝えられていますが、もし事実とすれば、
国民を欺瞞する選挙
政策と言わなければなりません。
外務大臣並びに防衛庁長官から
お答えをいただきます。なおまた、この機会に伺いたいことは、
日本の防衛力増強には限界があるかどうか。昨日の答弁で、
岸外相は防衛力を増強して
安保条約改正について話し合うと述べていたが、その限界はどこまでであるか、
お答えを願います。
このほか
地方財政、
国会運営、労働、
教育、農村、
中小企業問題等、幾多の重要問題がございますが、明日の同僚議員の
質問にゆだねます。
結論をいたしますが、
石橋内閣の実態は、
外交的には自主独立の気魄さらになく、むしろ対米追随への逆行を示し、
国内的には働く勤労大衆の利益よりも、資本の利益を中心とする
政策と断定せざるを得ません。どこかでこの
予算をあげ底
予算と評しておりましたが、評してまことに妙を得ていると思う。見かけは大きいが、底が上っておりますから、中身は少い。真の
積極政策は、その利益が全勤労大衆に及ぶものでなければなりません。
政府はこの際、議会を解散して信を
国民に問うべきことが唯一の道であることを付言いたしまして、私の
質問を終ることにいたします。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君
登壇、
拍手〕