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1957-05-13 第26回国会 参議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十三日(月曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————   委員異動 五月十日委員大川光三辞任につき、 その補欠として秋山俊一郎君を議長に おいて指名した。 本日委員秋山俊一郎辞任につき、そ の補欠として大川光三君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     山本 米治君    理事            雨森 常夫君            棚橋 小虎君    委員            青山 正一君            大川 光三君            西郷吉之助君            赤松 常子君            河合 義一君            小酒井義男君            後藤 文夫君   委員外議員            高瀬荘太郎君   政府委員    法務省民事局長 村上 朝一君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   法制局側    参     事    (第二部第一課    長)      三原 次郎君   —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠互選恩赦法の一部を改正する法律案(高  瀬荘太郎君外四名発議) ○国際海上物品運送法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 山本米治

    委員長山本米治君) これより本日の会議を開きます。初めに理事補欠互選についてお諮りいたします。宮城タマヨ委員辞任に伴い、理事が一名欠員となっておりましたが、この際、その補欠互選を行いたいと存じます。  つきましては、互選成規手続を省略して、便宜委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山本米治

    委員長山本米治君) 御異議ないと認めます。それでは委員長から宮城タマヨ君を理事に選任いたします。   —————————————
  4. 山本米治

    委員長山本米治君) 次に、委員異動について報告いたします。本十三日付で秋山俊一郎君が辞任され、大川光三君が補欠選任されました。以上であります。   —————————————
  5. 山本米治

    委員長山本米治君) 次に、本日の議題に入りまして、まず、恩赦法の一部を改正する法律案議題といたします。本法案につきましては、去る四月十六日提案理由を聴取いたしておりますが、本日は、内容説明をまず伺いたいと思います。
  6. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 恩赦法の一部を改正する法律案提案理由は申し上げましたのですが、その説明をもう少し申し上げたいと思います。  この法案は、法文の形式の上から申しますと、恩赦法に第十五条として一条を加える改正であります。その第十五条は、以下御説明いたします九項から成っております。  第一項は、内閣に、恩赦審議会を設置する旨を規定いたしたものであります。提案理由説明にありました通り恩赦の決定の権限は内閣に属しておりますので、審議会内閣に置くこととしたのであります。  第二項は、審議会所掌事務について規定しております。審議会は、内閣諮問に応じて調査審議することとなっておりまして、内閣諮問を待って初めて活動することとなっております。また審議会は、いわゆる諮問機関でありまして、内閣に対しましてその諮問に応じて意見を答申する機関であります。内閣は、その等申に拘束されることはありませんが、その答申を尊重すべきことは申すまでもありません。  審議会は、大赦又は政令による減刑もしくは復権を決定することの可否と、これらの恩赦内容に関する事項調査審議します。減刑復権は、政令による場合と別個に行われる場合と二通りありますが、審議会調査審議するのは、いずれも政令による場合だけであります。また、大赦政令による場合に限りますので、結局内閣諮問し、審議会調査審議するのは、政令による恩赦の場合だけでありまして、いわゆる個別恩赦の場合には諮問もされませんし、また調査審議もしないのであります。  次に「これらの恩赦内容に関する事項」とは、大赦又は政令による減刑もしくは復権内容に関する事項、たとえば、大赦を行う場合はその対象となります罪の種類政令減刑を行う場合はその対象となります罪又は刑の種類、また政令復権を行う場合はその要件などであります。第三項は、内閣前項規定する恩赦を決定するには、前もって審議会諮問しなければならないこととしたものであります。「前項規定する恩赦」とは、大赦または政令による減刑もしくは復権をさしております。諮問内容は、これらの恩赦を決定することの可否とその内容でありまして、第二項で規定しております審議会所掌事物の範囲と全く同じものであります。第四項及び第五項は、審議会組織についての規定であります。審議会は、衆参議院議長法務大臣最高裁判所長官検事総長日本学術会議会長日本弁護士連合会会長の七人の委員組織することにしております。政令による恩赦が、社会一般に及ぼす影響はきわめて重大であり、かつ、恩赦立法権及び司法権に及ぼす影響も少くありません。かような見地から、立法機関及び司法機関の長、すなわち両議院議長最高裁判所長官委員としました。恩赦司法権に及ぼす影響は、刑事裁判の修正という面に現れて参りますが、かような見地から、刑事裁判に関与した当事者の立場として訴追側から検事総長弁護側から日本弁護士連合会会長をそれぞれ委員といたしました。また公正な世論を反伏する良識ある者として、学識経験者を代表して、日本学術会議会長委員こしました。さらに恩赦に関する事務を行う責任者たる法務大臣を加え、審議会の円滑な運営を期することとしました。なお、審議会組織運営その他の細部につきましては、第九項で政令に安任することとしております。第六項は、委員のうち、日本弁護士連合会会長につきましては、任命が必要でありますので、内閣任命する旨の規定を設けました。第七項は、委員は、非常勤である旨を明記しました。第八項は、内閣法第三条に「各大臣は、別に法律の定めるところにより、主任大臣として行政事務を分担管理する」旨の規定がありますが、この審議会を分担管理する主任大臣を、内閣の首長としての内閣総理大臣としたものであります。第九項は、審議会組織運営その他必要な事項政令に委任したものであります。以上で説明を申し上げましたが、御質問がありましたらば御質問をいただきたいと思います。
  7. 山本米治

    委員長山本米治君) 質疑のおありり方は順次発言を願います。
  8. 雨森常夫

    雨森常夫君 私はこの提案理由の御説明のあったときに委員会に出ておりませんでしたので、その点ちょっと理由説明が詳しくあったかどうかわかりませんが、重復するかもしれませんが御質問いたします。提案理由として書いてありますのは、「その適正を期するため内閣恩赦審議会を渇く必要がある。」こうなっておりますがもちろん適正を期することは当然で、必要であるわけであります。今回発議者がこの恩赦法改正を出されました直接の動機と申しますか、適正を期するため審議会を置く必要を痛感された何か理由がありますか、その点を……。
  9. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) この法案を提案するに至った特別な動機についての御質問だと思いますが、提案理由で申し上げましたように、恩赦ということは非常に重大な事柄でありますし、また、社会的にも影響の非常に強いものでありますから、むろん適正に行われなければならないものであります。それで、それを実行するにつきまして、今までの恩赦法では、内閣が自由にきめてやれることになっておるわけでありますが、こういう重大な問題を適正にやるということから申しますと、やはり内閣がそれを実行する場合には、適当の審議会諮問した上でやるという方が、適正を期する上において最も適当であろう、こういう考えから、今までの恩赦法はその点欠陥がある、こう考えて提案したわけであります。
  10. 雨森常夫

    雨森常夫君 まあ今庄で恩赦法が発布になってから後、何回もこれによって大赦が行われておる、政令が出されておるのでありますが、昭和二十二年から今日までの間に、内閣が決定した大赦恩赦について、何か今まで慎重を欠くとか、あるいは適正を欠いておるというようなことがあったのかどうか、もし非常に満足すべき適、正な処置が行われておったとすれば、審議会をここに設けるということは、今出てくるかどうかということも疑問に思うのでありますが、その点重ねて……。
  11. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 過去において幾たびか恩赦が行われたわけでありまして、それが適正を欠く場合があったかどうかということについては、これはまあ人によって見方がいろいろあると思います。また、実際にいろいろ批判もあったことは事実であります。従いまして、私どもの考えでは、過去において行われた恩赦が適切を欠いておったかどうかということに関連いたしませんでも、これはぜひ置くべきものだ、こういう見解を持っておるわけであります。
  12. 雨森常夫

    雨森常夫君 この改正法律案をわれわれも事前にいろいろ検討をいたしておるのでありますが、なかんずく、この構成メンバーと申しますか、審議会組織する第一項から七項まで掲げておりますが、この取り方についていろいろ疑問の点があるのであります。衆議院議長参議院議長は、これは他の衆議院議員あるいは参議院議員審議会に入っている場合には、学識経験者というような考えから入っているように私考えるのでありますが、この改正案について衆議院議長参議院議長を掲げてあるのは、学識経験者ということからでありますか、その点を一つ。
  13. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 審議会構成メンバーの問題は非常に重大でありますし、われわれとしても最も慎重に考えた点でありますが、われわれがこの審議会メンバー考える場合に、最も重要視いたしました方針としては、恩赦というものが非常に重大な特別な事項でありますので、普通の行政部門審議会とは特殊なものと考えまして、まあ委員構成につきましては、ぜひ委員はトップ・レベルのもので構成したいということと、また、いわゆる学識経験者ということにして、内閣が自由に適当な方を選任されるというようなことでなくて、まあ日本国民全体から見まして代表的な地位考えられるような地位によってメンバーをきめる、こういうふうにしたい、こういう二つのことを基本の方針として委員構成考えたわけであります。  ただいま御質問衆参両院議長をここに入れましたのは、別に衆議院を代表してとか、参議院を代表してという意味考えたわけじゃありませんで、恩赦というものが他立法権にも大へん関係のある事柄でありますから、立法関係のある方で最高地位にある方の御意見も聞く必要がある、こういうような意味衆議院議長参議院議長というものを選んだわけでございまいす。
  14. 雨森常夫

    雨森常夫君 そうすると、一から七までの委員が出るわけでありますが、この中で、学識経験者——経験者というのはちょっとこの場合語弊がありますが、学識を持った者としてお選びになっておるのはどの者ですか。
  15. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) これらの方々はいずれも全部学識もあり経験もある方と考えておるのであって、学識経験者の中から自由に選ぶというのではなくして、学識経験者の中でもって特定の地位にある方を選ぶ方が適当だと、こう考えたわけでございます。
  16. 雨森常夫

    雨森常夫君 「六、」の「日本学術会議会長」及び「七、」の「日本弁護士連合会会長」、これは任命することになっておりますが、地位は固まっておるが、任命する手続等があろうかと思います。それで、たとえばこの大赦審議をしなければならないときに、非常に時期的にそれがためにおくれてくるというような懸念がないものでしょうか。その点お考えになっておりますかどうですか。
  17. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 学術会議会長公務員になっておりますので、任命を要しないと思います。任命を要しますのは、日本弁護士連合会会長についてでありますが、日本弁護士連合会会長というものは、法令によってきまった地位でありまして、まあ申さば公務員と民間との中間くらいにあるものと考えていいんじゃないか、必ずなければならないという地位でありまして、そういう方は必ずありますし、そうして任命するのはこの法令でこれだけの規定がありますから、必要があった場合すぐやるということはできるであろう、こう信じておるわけでございます。
  18. 雨森常夫

    雨森常夫君 任命する手続そのものはすぐにできると思いますが、日本弁護士店豪快会長さんその者が、任命を拒んだ場合、相当の時日を要するだろうと思います。その点はどういうとになりますか。
  19. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 日本弁護士連合会会長以外の委員方々は、いずれも公務員の方でありますから、当然受諾されなければならない義務を持っておると、この法律ができれば義務を持つと思います。たた、お話のように、日本弁護士連合会会長は、法令できまった地位ではありますが、公務員でありませんから、拒否もできると私も解釈しております。その場合にどうなるかということが、確かにこのメンバーと関連して考えなければならない問題かと思いますが、何にしても恩赦という事柄の問題でありますし、弁護士という地位から考えましても、重大な関心を持たなければならたいし、当然人権擁護とかいろいろな立場からもこの問題を重要視して考えていくべき地位にある方でありますから、実際問題としては、任命を拒否されるというようなことはまずあるまいと予想をいたして規定したわけでございます。けれども、理論的に考えれば、確かにお話のように拒否できるとして、拒否された場合どうするかということが問題になってくるかと思います。しかしそれは今申しましたような理由から、非常に例外的な特殊な場合でありますから、これは政令においてそれの補充に関することをきめておけばいいのじゃないか、こう考えております。
  20. 雨森常夫

    雨森常夫君 ちょっと繰り返すようでありますが、今補充という御説明がありましたが、政令でどういうふうに補充を……。
  21. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 拒否された場合、日本弁護士連合会会長が拒否しました場合には、所属の弁護士連合会から指名するとか推薦するというような形において政令考えたらどうかと考えておりまして、法制局の方にその点も相談をいたしました。法制局の方の意見としましては、こういうふうにしたらどうかという意見であります。日本弁護士連合会の指名する弁護士を充てるということにしたらどうかということで、恩赦審議会令というような政令の中で、日本弁護士連合会会長たる委員を欠くときは、日本弁護士連合会のあらかじめ指名する弁護士で、内閣任命したものをもって充てること、これを政令の中に書いておけば差しつかえないだろう、こう考えております。
  22. 山本米治

    委員長山本米治君) ちょっと関連して私からお尋ねしますが、私はその政令でもってそのように定めることは、これは法律違反だろうと思うのです。今の問題の、法律の第何項ですか、四項、ここに「審議会は、委員七人でこれを組織する。」その次に、「委員は、左に掲げる者をもってこれに充てる、」として、その第七番目に「日本弁護士連合会会長」とあるわけなんです。ですから「左に掲げる者をもってこれに充てる。」のであって、連合会会長の指名する人は、連合会会長その者じゃないのですから、政令でそれをきめることは、私はかなり疑義があるのじゃないかと思いますが、その点はどういうふうに御研究なさいましたか。どういう説明でございますか、ちょっとお伺いしたい。
  23. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 私も、その問題非常にむずかしい問題でありますし、私は法律専門家でないものですから、その問題については法制局相談をいたしまして、法制局の方で差しつかえがない、こういう御意見でありましたので、法制局の方からその点を御説明申し上げたいと思います。
  24. 三原次郎

    法制局参事三原次郎君) 委任命令はどういうときにやるかといいますと、大体法律規定補充する場合とか、あるいは具体的な特例を定めるとか、あるいは法律解釈を定めるとかというようなときに委任命令ができるということに大体なっておるわけでございます。この場合に、しからばどういうことになるかと申しますと、この場合は、日本弁護士連合会会長が就任を拒否するというのが、ちょっと大体の想像では非常に稀有な場合だろうと思いますので、そういうことまで一々法律に書きますのは、法律体裁としまして非常に不体裁で、大体そういうようなことがもしあるとしましても、法律には書いてないのが普通だろうと思います。でありますから、そういう場合が起りまして困るということになりますから、その具体的な特例に応じまして、政令でそれを補充するということは一応できるのだ、そういうふうな解釈をいたしております。
  25. 山本米治

    委員長山本米治君) 重ねて質問いたしますが、私は政令というものは、法律が定めたそのワク内のさらに細部をきめるとか、そういうのが政令趣旨であって、法律のきめたワクをはずれるということは、私は政令の越権であり、無効だと思う。この場合を考えるに、「審議会は、七人で組織する。」、七人というものは、これこれのものだと特定しておる。その特定しておるものの一人を政令でもってその弁護士連合会会長の指名する者ということになったなら、どうしても、私も法律は詳しい者ではないのですが、それは法律違反だと思うが、いかがですか。解釈の問題だとすれば、水掛論になるかもしれないが、私の解釈ではそういうことになるのです。
  26. 三原次郎

    法制局参事三原次郎君) もちろん政令法律に違反することをきめてはならないのは当然でありますが、この場合は法律に反すること、本法案に反するのじゃなくて、そういう欠けた場合にどうするかということなんでございますから、反するというより、法律趣旨を活かしていくためのものでございますから、法律ワクをはずれるとか、反するとかというような事柄じゃなくて、法律の足りないところを補っているというふうに解釈できると思うわけです。
  27. 山本米治

    委員長山本米治君) 重ねてお尋ねしますが、事実問題として連合会会長は多分受けるだろう。これは九分九厘間違いないことです。私は今理論上の問題として言っているわけです。それで、この場合ですが、真正面から反するかどうかということは、あるいは問題かもしれませんが、法律は七人で組織すると書いてある。七人をこれこれだ、しかもエキス・オフィシアルです、それをきめておるのです。そのきめておる者以外にきめるようにするというのは、私は法律違反ではないかもしれないが、ワク内ではないと思う。ワク内のことをきめるのではなくて、ワクにないことである。すなわちこの法律法律自体として私は欠陥があると思う。七人で組織するといっておいて、七人のうちの一人は、もし拒否すればメンバーになれない。そうすると六人になって、それならば構成できない。組織できない。私はこの法律法律として欠陥のある法律だと考えておる。その点どうですか。
  28. 三原次郎

    法制局参事三原次郎君) たとえば北海道開発審議会というのがございますが、それには北海道知事と、北海道の議会の議長が入るというようにエキス・オフィシアルが入っておるわけであります。その場合においても、北海道開発ということを考えますと、北海道開発北海道知事が拒否するというようなことはちょっと考えられませんし、おそらくこういう場合は構成もおかしくなるのじゃないかというふうなことも考えられるかもしれませんが、それと大体似たようなことになりますが、その場合にも法律の面では書いてございませんが、そういうときに、しからばどうするかということは、やはり書かなければならないわけです。それを法律に書くか、政令に書くかという問題だけじゃないかと思うのですが、これをどちらに書いたらいいかといいますと、政令に書けるものでしたならば、政令に書いた方が、めったにないことなんですから、体裁がいいということから考えれば……。
  29. 山本米治

    委員長山本米治君) 北海道知事公務員じゃないですか。少くとも準公務員地方公務員じゃないですか。だからこの場合と違うのじゃないですか。
  30. 三原次郎

    法制局参事三原次郎君) 北海道の場合など、地方公務員国家公務員になる義務があるかどうかは問題でありますが、その点は別といたしまして、もしそういうことがあったらということなんですが……。
  31. 雨森常夫

    雨森常夫君 今の北海道知事北海道開発審議会北海道知事というのと、この法案日本弁護士連合会会長というのとは、ちょっと筋が違うのじゃないかと思う。知事には知事代理権を持っているものがおるわけなんです。この場合はそういうものがないんであろうと思うのですが、その点はどうですか、内容的にいいましてですね。
  32. 三原次郎

    法制局参事三原次郎君) その代理権を持っておる人がありませんので、あらかじめ代理権を持っておる人をきめておきたいというわけでございます。
  33. 雨森常夫

    雨森常夫君 そうすると、この法案で、先ほど提案者から御説明がありましたように、よりすぐっておる委員は、地位をもって充てているんだと、衆参両院議長であるとか、あるいは最高裁の長官であるとか、あるいは弁護士連合会会長であるとかいう、その地位できめておるわけなんで、他人が入るということは、この法案趣旨に反するのじゃないですか。
  34. 三原次郎

    法制局参事三原次郎君) おっしゃる通りでございまして、その地位で充てておりますので、他人が入るということは、多少本法案趣旨からはずれることは、これはもちろん考えられますので、おっしゃる通りだろうと思います。しかし、それがために成立しないというようなことになりましたのでは、結局そのため法案が死んでくるわけでございますから、それはやはり何としてでも避けたいと思うわけでございます。その避ける方法をしからばどうしたらいいかと申しますと、日弁連会長が欠けるわけでございますから、日弁連が指名した弁護士であれば、大体日弁連会長と同じ性質で、ほとんどまあ同一人に近いものに考えてもよろしいんじゃないかと思います。で、日弁連が指名した弁護士考えるということで……。
  35. 青山正一

    青山正一君 今のその日弁連とこういうふうにおっしゃっていますが、こういうことはもうほとんど九分九厘まで、先ほど委員長がおっしゃった通り、ないというわけですが、しかし、もしかりに、日弁連自体総意でもって、こういう案件にはちょっと委員を出すのは困ると、内容的にこういうものを検討してみて、ちょっと日弁連自体総意では、これは困ると、こういうふうなことになった場合には、これでは困るわけですからして、いっそのこと、この日本弁護士連合会会長というようなものの名を出さずに、何かはかに表現の仕方がないでしょうかな。そうしないことには、こういう問題にぶつかることはおそらくないと思いますが、もしあった場合には一体どうするかと、こういうわけなんです。つまり、日弁連役員会で、この問題にはこれは委員を出すのはちょっと困るという場合がなきにしもあらずだと、こういうわけなんですが、どうでしょうか。
  36. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) まあ日本弁護士連合会会長をこの委員に入れたいと考えましたのは、前から申し上げましたような理由であって、弁護士の側からも関係のある問題でありますから、まあそれの代表的な地位にある方にぜひ入ってもらいたいと、こういう趣旨であったわけです。まあ今おっしゃったようなことを考えていきますと、結局いわゆるだれでもいいというようなことになってしまいはしないか。任命されればだれでもいい、そういうふうになると、この問題は非常に重大な問題で、まあ世間から十分権威を認めてもらわなくちゃならない問題ですから困るだろう、こういうようなことで、地位によってきめていったわけなんです。地位によってきめていくとして、それじゃ今お話のあったような事情があるから、弁護士会等からは別に出さないようにしたらどうかということも考えられるのですが、それじゃやはり恩赦との関係からいきまして不適当だということで、これをきめたわけなんです。
  37. 青山正一

    青山正一君 たとえばこういうふうな学識経験者をはっきり明示して、他に一名ということにして、その一名は政令などに何か掲げるというふうな行き方はどうでしょうか。
  38. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 普通の審議会委員でありますと、学識経験者何名というようなことで、選定は内閣がするのが普通なんです。それで、この場合一名だけはそうしたらどうだろうという御意見になるかと思いますが、その場合、われわれの建前からいきますと、何とかそうしないで、内閣がこれを実行する場合に社会から見て、内閣のやったことに対して何か変に疑られるというような心配のできないようにしたいという立場でもって、内閣の選任についての一種のワクのようなものを考えたわけですから、そのわれわれの初めの方針と違ってくるという結果になると思いますので、できるならばこのままで実行可能のことを考えた方がいいんじゃないか、そう思っているわけなんです。
  39. 雨森常夫

    雨森常夫君 もう一つお伺いしたいのですが、この審議会諮問受けて答申をすることになるのですが、答申は、この七名の委員の多数決によって答申の内容というものは決定すると思うのでありますが、そうでございますか。
  40. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) その通りです。
  41. 雨森常夫

    雨森常夫君 そういたしますというと第三の法務大臣でありますが、もし万一審議会において法務大臣考えに反する答申が出た場合に、その恩赦するとかしないとかいう決定は総理大臣でありますが、所管大臣として非常に困る状態が起きないか、そういうようなことがあった場合に、その点はどういうことになりますか。
  42. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 法務大臣内閣の一員でありまして、恩赦を決定する内閣の一員になっているわけです。その法務大臣内閣から諮問される方のまた委員になっておるということについては、確かに一応考えなきゃならない点があるかと思う。それと関連して今お話のような問題も起きるかと思います。しかし、恩赦の実行についてのいろんな世話をすることは、法務大臣が事実上世話するだろうと思います。そういう意味で、やはり委員の中へ入った方が円滑にいくだろう、こういう考えで入れたわけです。今お話のような工合になった場合に、法務大臣立場が非常に困りはしないかということも考えられるわけでありますけれども、法務大臣内閣の一員でありますから、その諮問内閣として拘束をされるわけではありませんので、それは差しつかえないのじゃないかと思います。
  43. 雨森常夫

    雨森常夫君 内閣を拘束をする形にならないかということで、私、質問いたしておるわけですが、答申はもちろん内閣の行政権を拘束するものではないと思うのでありますが、そういう立場において法務大臣がもし審議会において異なった意見を持っておった場合に、非常に内閣を拘束するような形が現われはしないかというふうに思いますので、質問申し上げているわけです。
  44. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) その問題は、私は、諮問機関でありますから、内閣としては尊重はしなければなりませんけれども、拘束をされないという関係にありますので、それで解決していける、こう考えております。
  45. 雨森常夫

    雨森常夫君 ほかにまだ御質問の方があるようでありますので、私の質問は、本日はこれで終ります。
  46. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 この審議会というものは、審議会構成が非常に重大な関係があると思うのですが、そこで、ここに七人の人があげられておりますけれども、生きて流動しておる世論というものと直接関係のある人がここにないわけですが、この法律案説明書によると、「また公正な世論を反映する良識ある者として学識経験者を代表して日本学術会議会長委員としました。とあるが、公正な世論を反映する良識ある者として日本学術会議会長というのは、ちょっとおかど違いのように思う。そういう者としては、たとえば言論界からでも人を出すとか、新聞記者の適当な人を加えるということが必要じゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  47. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 日本学術会議会長委員にいたしましたのは、まあ学界の人として世論を洞察して考えてもらうのに適当だと、こう考えたわけです。それから新聞界の方、あるいはその他の報道界の方も世論を代表する意味において入る方が適出だということも考えておりましたが、ただ新聞界の方の連合会とか、その他の団体が法令上きめられておる団体でない関係から、オフィシアルな地位によってこのメンバーをきめていくというようなことと矛盾して参りまして、また、そういう新聞界の団体でありますと、法令できまっておりませんので、なくなるという場合もあり得るわけでありますから、そこでここに取り入れることが適当でない、こう考えたわけであります。
  48. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 学術会議会長というような人は、学識経験者としては最も重要な人であると思います。それは一般的にいう場合でして、理化学に関する学者とか、そういったような人が会長になっておる場合もあります。そういう人は、それは学界の権威であり、学識経験者としてはりっぱな人でありましょうけれども、具体的に問題になっておるところの恩赦とか、大赦とかいうことが世論とどういう関係があるか、世論はどういうふうにこういうことに対して考えておるかということがわからない場合もあるだろうと思います。そうするならば、そういうことに対しては、やはり直接よく世論と常に接触をし、それを反映することのできるような良識のある人が入られなければならぬ。ここに「公正な世論を反映する良識ある者として学識経験者を代表して日本学術会議会長委員としたということであるが、この二つの資格を兼ねておる者としてあるのか、ここのところが私は、この二つを並行して考えることは、——片一方の条件に備わった人が、同時に片一方の条件も備わっているとはいえないと思うので、これは二つを分けて考えなければならないと私は考えるのですが、その点はいかがでしょうか。
  49. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 日本学術会議というのは学者の団体ですから、お話のようなことも考えられないわけではありません。また、事実日本学術会議会長に今までなった方は理科系統の会長で、現在もそうであります。そういう意味からいうと、お話のような点も心配はされますけれども、しかし、日本学術会議会長になられる方は、理科系統の学者でありましても、やはり社会的に相当活動をしなければならない地位にあるのでありまして、理科出身の学者でありましても、やはり政治、社会方面についての相当の良識を持った方でないと、会長が務まらないという性質のものでありますから、その点では御心配になるようなこともないと私は考えておるわけであります。そう考えますれば、やはり学識経験者としてはむろん最高の人でありますし、社会的にも相当活動をする地位にありまするので、世論を代表するということも差しつかえない地位じゃないかと考えたわけであります。
  50. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 この点、学識経験者であるところの日本学術会議会長というような方は、もちろん良識のあるりっぱな方でありますから、世論というものはどういうものであるかということもよく御存じになっており、そういう資格をお持ちになっておることとも思いますけれども、しかし、これは学者というもの、ことに学術会議なんかの会長になられるような方は、学者としておもに立ってこられた方であって、現在のいろいろな政治問題とか経済の問題とか、そういう世の中の動いておる状態ということに対しては、割合にふだんから関心が薄い方である。ところがこの大赦恩赦というような問題になってきますというと、これは非常にすぐ、その問題に対しては世論がいろいろに起って参りまして、敏感にこれに反応してくるわけなんですから、それに対して適当な方針を示さなくちゃならぬというようなことに対しましては、なかなか簡単には私は対応がむずかしいのじゃないか、こういうふうに考えまして、その二つは区別していかなくちゃならぬものじゃないかと思いますが、その点をさらに検討することにいたしまして、この七人の委員というものは、なんですか、やはり何か肩書きがこういうふうになければならぬのですか。先ほども新聞界にはそういう組織がない、言論界にはそういう者はないからというふうな御意見がありますが、そういう組織がなければ、その代表者としてこの七人に加われないものか、あるいは別にそういう肩書きがなくても、りっぱに世論を反映する良識のある者であると国民が認めておる者であれば、肩書きがない人であっても差しつかえないのか。その点はどういうお考えですか。
  51. 高瀬荘太郎

    委員外議員高瀬荘太郎君) 性質から申しますれば、肩書きはなくてもちっとも差しつかえないと考えておるのですけれども、先に申しましたように、内閣が適当だといって自由に選べるということにしますと、内閣が選んだ者に対しまして、世論の信頼が十分得られない場合がかなりあると思うのです。そういうようなことを除きますためには、別に肩書きということではないのですけれども、はっきりした地位にある方できめた方が適当だろう、こういうことでこういう七人を選んだわけであります。
  52. 山本米治

    委員長山本米治君) 本件につきましては、質疑は、本日はこの程度にとどめまして、次に移ります。   —————————————
  53. 山本米治

    委員長山本米治君) 次に、国際海上物品運送法案議題といたします。政府から逐条説明を求めます。
  54. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) この法律案につきまして、逐条的に御説明いたします。  まず第一条でございますが、本条は、この法律が船舶による物品運送で、船積港または陸揚港が本邦外にあるもの、すなわちいわゆる国際海上物品運送に適用するものであることを明らかにいたしており、ブラッセルでできました船荷証券の規定の統一に関する条約は、その適用範囲について地域的な制限を設けておりませんけれども、わが国は、署名の際、内国沿岸貿易についての留保をいたしておりますのと、内国沿岸貿易につきましては、この条約の規定にそのままよることは事情適当としないものもあると考えられますので、別途検討することにいたしまして、さしあたり外国航路による海上物品運送についての商法の特例を定めることにしております。  なお本条の「本邦外」という言葉につきましては、付則の第三項に「この法律の適用については、政令で定める本法の地域は、当分の間本邦外にあるものとみなす。」という規定が設けてございまして、沖縄その他の南西諸島、小笠原諸島は、政令で本邦外の地域とされる予定でございます。  次に第二条でありますが、本条は、この法律で用いております用語の定義を掲げております。  まず第一項の「船舶」の定義は、商法の用語例によって定めております。商法の規定によりますと、はしけであるとか、その他推進機を用いない舟は、船舶の定義から除外してございますので、この法律案につきましても、同様の趣旨に使っておるわけであります。  次に第二項に、「運送人」の定義が掲げてございますが、これは条約で用いております運送人という言葉と同じ意味に使っております。  ただ現行商法におきましては、運送人という言葉は、陸上運送においては使っておりますけれども、海上運送におきましては運送人というかわりに船舶所有者という言葉を使いまして、船舶賃借人につきましては、船舶所有者と同一の権利義務を有する、こういうような規定の立て方になっておりますので、商法との関連を明らかにする意味からむ、運送人の定義を掲げる必要があると考えるわけであります。なお、「傭船者」は、船舶所有者あるいは船舶賃借人に運送を委託する立場におきましては、第三項にございますように「荷送人」の側に立つわけでありますが、個々の積荷の荷主との関係におきまして、運送契約を引き受ける側に立つ場合がございます。いわゆる再運送の場合でございますが、その場合には、傭船者も運送人という定義の中に含まれるわけであります。  第二項は「荷送入」の宗義でありますが、ただいま申し上げました傭船者が、船舶所有者等に運送を委託する立場においては、運送契約の当事者として、あたかも個々の積荷の運送契約における荷送人と同様の立場に立ちますので、これを含めて用いることにしております。  次に第三条でございますが、これは運送品に関する運送人の注意義務規定しております。  第一項は、商法の七百六十六条で準用しております五百七十七条と同一の趣旨でございまして、これを海上運送に適合するように書き改めたのでございますが、第二項の規定でこれに対する大きな例外を設けておるのであります。すなわち条約の規定に従いまして、船長、海員等の航海上の過失または船舶における火災によって生じた運送品の損害については、賠償の責任を負わないことといたしております。これは商法の原則に対する大きな変更になるわけでございますが、英米その他各国において、広く、長く慣行として認められておりますところを条約に規定いたしました趣旨を尊重いたしまして、国際上の慣行に従うという意味で、この例外規定を設けたわけでございます。  次に第四条は、これも条約に従いまして、第三条についての運送人の立証責任を規定いたしております。すなわち運通人は、三条第一項に定あられました注意義務を怠らなかったことを証明しなければ、その責を免れるととができないこととしております。ただ例外といたしまして、第二項に、第一号から第十一号までに掲げております事実があります場合には、その事実があったことと、及び損害が、ここに掲げてある事実によって通常生ずべきものであることを証明すれば足りることとして、運送人の責任を軽減しております。これも、各国の国際的な慣行を基といたしまして、条約で定めておりますものと同一の内容でございます。  次に第五条は、航海にたえる能力、いわゆる船舶の堪航能力に関する規定でございます。商法におきましては、堪航能力については、運送人に無過失責任を負わせておりますけれども、条約の規定では、船舶の航海にたえる能力に関する運送人の義務について、過失主義をとっておりますので、これも商法に対する大きな改正点の一つでありますけれども、堪航能力に対する運送人の責任を、過失主義に改めたのであります。  次に第六条は、船荷証券の交付義務に関する規定でございますが、本条は、条約の第三条第三項、第七項に従いまして、運送人に船積船荷証券と受取船荷証券の交付義務を負わせることにしまして、受取船荷証券が交付された後に、船積船荷証券の交付を請求する場合には、さきに交付された受取船荷証券を回収して、船積船荷証券を出すということに広めております。現行海法におきましては、船荷誰券を発行できるのは、船積みがあった後でございまして、船積み前に船荷証券を発行することは、現行法に認めておりませんけれども、船積み前に運送人が荷物を受取ったという場合には、受取船荷証券を出して、金融その他の便宜に供するという趣旨であります。  次に第七条は、船荷証券の作成に関する規定でございますが、第一項に掲げてあります記載事項は、条約が要求しております事項及び現行商法の七百六十九条の規定及び国際海上運送における実際上の取扱いを参酌して定めたものでありまして、この趣旨におきましては、条約と全く同一でございます。  第二項におきましては、前条について御説明申し上げました受取船荷証券を発行しました場合に、これを回収して、新たに船積船荷証券を出してもよろしいし、また船積船荷証券を出すことなく、受取船荷証券に、船積みがあった旨を記載して、船荷証券の作成にかえるととができるという便法を認めております。これも条約第三条第七項の規定に従ったものであります。  次に第八条は、船荷証券の作成に関する荷送人の通告に関すみ規定であります。本条は、船荷証券の記載事項中、運送品の種類及び数量につきましては、運送人に荷送人の書面による通告の通り記載すべき義務を負わしめますとともに、運送人がその通告の通り記載することを拒絶し得る場合を定めまして、荷送人と運送人の利益の調整をはかろうとするものであります。運送品の数量に関しましては条約の規定に従い、また、運送品の種類に関しましても、いわゆるこの規定に準じて、かような規定を設けた次第でございます。  なお、第三項におきまして、荷送人に通告が正確であることを担保する責任を負わしめ、船荷証券の記載を正確ならしめ、その流通を円滑ならしめようとするものであります。これも条約第三条第五、項の規定に従ったものであります。   次に第九条は、船荷証券の不実の記載が行われた場合の規定でありますが、一たん船荷証券に、ある事項を記載しておきながら、後にそれが事実と違うということで、船荷証券所持人に対し、運送人の責任を免れるようなことがあっては、船荷証券の信用を維持することができませんので、船荷証弊の信用を高め、所持人の利益を擁護する意味で、運送人がその記載について注意が尽くされたことを証明しなければ、その記載が事実と異なることをもって、善意の船荷証券所持人に対抗することができないものとしております。もっとも条約におきましては、船荷証券について、運送人がその記載の通りの運送品を受け取ったものと推定する効力を有するという、やや異なった規定をいたしておりますが、その意味は、運送人が反証をあげれば、何どきでも船荷証券に記載してある事項の推定をくつがえすことを無制限に認めようとする趣旨ではなく、運送人がその記載について注意を尽くしたことを証明しなければ、その記載が事実と異なることをもって、善意の船荷証券所持人に対抗できない趣旨を含むものと解釈されまして、英国においても、これと同趣旨の判決がなされておるような次第でございますので、この趣旨を明らかにしたのでございます。  第十条は、この法律規定してあります船荷証券について、条約の規定の不足を補らために、商法の船荷証券に関する規定を準用しております。  次に第十一条は、危険物の処分に関する規定でございますが、危険性を有する運送品について、運送人、船長及び運送人の代理人がその危険な性質を知らないで船積みしたときは、何どきでも陸揚げし、破壊し、あるいは無害にすることができるものとし、これらの者がその性質を知って船積みしたときには、船舶または積荷に危害を及ぼすおそれが生じたときに、陸揚げし、破壊し、無害にすることができるものといたしました。これも条約の規定通りでございます。  次に第十二条は荷受人の通知義務でありますが、運送品が一部滅失または損傷がありました場合に、運送品引き渡しの際、立ち会いによって確認された場合を除きまして、荷受人または船荷証券所持人にその性質を書面で通知すべき義務を負わせまして、その義務を怠った場合の制裁として、運送品が滅失及び損傷なくして引き渡されたものと推定し、立証上の不利益を与えようとするものであります。この規定が現行商法と異なる主要点は、荷受人が通知義務を怠った場合におきまして、商法の規定によりますと、荷送人の損害賠償請求権を消滅させることにしておりますが、本条は、単に立証上の不利益を与えるにすぎないのでありまして、その意味におきましては、運送人の利益よりもむしろ荷受人側の利益を保護することになるわけでありますが、その規定も条約の第三条第六項の趣旨に従ったものでございます。  次に第十三条は、運送人の責任の限度を定めた規定でございます。第一項は、運送人の運送品に関する損害賠償責任につきまして、一包みまたは一単位について十万円を限度とすることにしております。運送人は、あらかじめ運送品の種類及び価額が通告されない限り運送品の価額のいかんにかかわらず、同様の注意をもって運送するのでありますから、この運送品に損害を生じた場合に、予期しない金額の賠償の責任を負うということは負担にたえないところであり、荷送人としては特別な取扱いを要求して高額な運送賃を支払うよりも、万一の場合の損害賠償額は少くても、運送賃の安い方を望むものでありますので、早くから損害賠償額に限度を設ける約款をつけることが行われているのであります。条約は、このような慣行を認めつつ、次の十四条の規定と相持って、賠償金額の最低限を定め、運送人の利益を保護することとしたのであります。現行商法におきましては、このような約款は禁止されておりますが、条約の認める世界的慣行に反してまでも荷主の利益を保護するととは適当でないと考えられまして、この条約に従ってこの規定を置いたわけであります。条約には責任限度額を一包みまたは一単位についてスターリング貨百ポンドと定めており、この金額は、現在の為替和場によりますと邦貨十万八百円に相当いたしますが、この法律におきましては、条約第九条に端数のない金額に換算してよろしいということになっておりますので、十万円を責任限度額と定めたのであります。  第二項は、荷送人の利益を考慮いたしまして、あらかじめ運送品の種類及び価額を通告し、船荷証券に記載されたときは、第一項の規定を適用せず、実損額の賠償を求め得ることといたしました。  第三項以下は、荷送人が運送品の価額について虚偽の通告をした場合に対する制裁を規定し、荷送人等が不当に賠償額を要求することを防止しております。この規定も条約の定めるところと同趣旨でございます。  第十四条は、運送人の運送品に関する損害賠償責任につきまして、「一年以内に裁判上の請求がされないときは、消滅する。」ということにいたしまして、除斥期間を設けたわけであります。これも、条約の解釈上、この一年という期間は除斥期間であるというふうに解釈されますので、第十四条におきましては、除斥期間と規定したわけであります。  次に第十五条は、特約禁止の規定でございますが、第一項は、条約第三条第八項の規定に従いまして、運送人の運送品に関する損害賠償についての規定に反して、荷送人、荷受人または船荷証券所持人に不利益な特約をすることを禁止しております。条約は、当時欧米において無制限に行われておりました運送人の免責約款の乱用を抑制することを主たる目的として締結されたのでありますから、運送人の運送品に関する損害賠償義務の最小限度を条約に規定しまして、この義務を免除しまたは軽減する等、荷送人等に不利益な特約を禁止したのであります。  第二項は、第一項がただ荷送人等に不利益な特約を禁止するだけの意味であって、運送人に不利益な特約まで禁止する趣旨でないことを明らかにしております。でありますから、たとえば第十三条の責任限度額につきましても、責任限度額を五万円と制限することは、十五条の規矩によって無効な約款となりますけれども、これを二十万円と規定しますことは、第上五条第一項の禁止するところでなく、第二項によりまして有効な約款になるわけであります。  また第三項は、条約の趣旨及び各国の立法を参酌しまして、第一項の免責約款禁止が、運送品の船積みから荷揚げまでの間に生じた事実に基く損害についてのみ適用があることを明らかにしております。条約におきましては、運送品の船積みから荷揚げまでの間についてのみ海上運送の特殊性を認め、その間に免じた事実に基く損害についてのみ免責約款の禁止を適用することにしまして、運送品の船積み前または荷揚げ後に生じた事実に基く損害につきましては、各国の自由にゆだねているのでありますが、わが国におきましても、各国立法の実情にさからってかかる免責約款を禁止する必要もないと考えますので、運送品の船積み前または荷揚げ後に生じた事実に基く損害につきましては、第一項の免責約款禁止の規定を適用しないものとしております。  次に第十六条は傭船契約についてでありますが、傭船契約の当事者間の関係は、各国の立法の実情から見ましても、免責約款の禁止を及ぼす必要がないものと考え、運送人と船荷証券所持人との関係についてのみ、条約に従って、免責約款の禁止を及ぼすことと定めたのであります。条約は、傭船契約につきましては、運送人と船荷証券所持人との間の関係についてのみ条約を適用するということにいたしまして、傭船契約の直接の当事者間の関係につきましては、各国の立法にゆだねているのでありまするが、それは、傭船者が船舶所有者と同様に船舶を利用する海上企業者でありまして、海運の事情に通じておりますし、船舶所有者と対等の立場において契約をなし得るというところから、条約において進んで傭船者のための免責約款を禁止しなくても、当事者の自治にまかせて弊害を生じないという理由によるものと解釈されるのであります。国内立法といたしましても、この見解に従ったわけであります。  次に第十七条は、特殊の運送についての規定でありますが、条約第六条の規定に従いまして、特殊の運送については免責約款禁止の例外を認めることにしております。運送品の性質もしくは状態が特殊であるとか、または、運送が特殊の事情において行われる場合、たとえば座礁した船舶のぬれた積荷を、積みかえて運送するような場合に、運送人の運送品に関する責任を免除しまたは軽減することが相当と認められる場合があるのでありまして、このような場合にも、免責約款禁止を強行するということになりますと、特殊の運送は事実上不可能となるおそれもありますので、かような場合には免責約款禁止を適用しないものとしております。ただ、船荷証券所持人は、かような特殊性を知るよしもないのでありますので、船荷証券所持人に対する関係においては、免責約款禁止の効力を及ぼすこととしたのであります。  次に第十八条は、生動物の運送及び甲板積の運送についての免責約款禁止の例外規定であります。条約は、生動物の運送及び甲板積の運送につきましては、条約の規定を適用しないものとしているのでありますが、これらの運送は、特殊の運送の一つの場合とも考えられますし、その特殊性にかんがみて、これらの運送についての運送人の責任を、通常の運送についての運送人の責任よりも軽くする必要はあっても、重くする必要はないのであります。従いまして、これらの運送につきましても、原則として条約の規定を適用させるものとして、ただ、免責約款禁止に関する第十七条第一項の規定は、特殊の運送の場合と同様、これらの運送に適用しないことにしております。なお、との場合には、生動物の運送または甲板積の運送であるととが、船荷証券上に明らかにするととができるのでありますから、免責約款を船荷証券に記載する限り、その所持人に対抗ができることとしております。  次に第十九条は、船舶先取特権に関する規定でありますが、再運送契約の場合におきまして、運送品に関して生じた損害について、傭船者に対して賠償の請求をすることができる者が、船舶及びその属具の上に先取特権を有することを定めたものであります。再運送の場合の荷送人の利益を保護するために設けた規定であります。  第二十条は、この法律で定めております国際海上物品運送につきましては、この法律規定と矛盾する商法の規定の適用を排除いたしますとともに、この法律規定のない事項については、商法を適用する等、商法の規定とこの法律規定との調整をはかったものでございます。  第二十一条は、郵便物の運送について、その郵便物たる特殊性にかんがみまして、この法律を適用しないものとしております。  付則の第一項は、施行期日を定めた規定でございますが、条約の方は批准書を寄託した時から六カ月を経て効力を生ずることになっておりますので、この法律も、条約がわが国について効力を生ずる日から施行することにしております。たとえば本年七月一日に条約の批准書を寄託したといたしますと、条約及びこの法律は来年の一月一日から施行されるということになるわけであります。  以上、簡単でございますが、逐条説明を終ります。
  55. 山本米治

    委員長山本米治君) 御質疑の方の発言を願います。
  56. 大川光三

    大川光三君 ただいま議題となっておりまする国際海上物品運送法案は、わが商法の特別法として新たに制定されるものでありまして、学界並びに業界にとりましても非常に重要な法案かと存じます。従いまして、これを厳密に検討いたしますれば、理論的にも実際的にも、いろいろ疑問となる個所が相当に多いと存じますが、私はそのうちで特に問題とたる諸点について、簡単に質問をいたしたいと存じます。  御提案の理由を承わりますると、その冒頭において「この法律案は、一九二四年八月二十五日ブラッセルで署名された船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約の批准に伴い、これを国内法として立法化しようとするものであります。」と述べられておりますが、これによりますと、わが国が船荷証券の統一に関する国際条約に署名いたしましてから今日まで、実に三十三年間を経過いたしております。しかも、ほとんどすべての条約国がこれを批准し、次いで多数の条約国は、これに基く国内法を制定実施いたしておるにもかかわらず、ひとりわが国のみがじんぜんとして今日に至ったことは、どういう理由に基くものでありましょう。ことに、わが学界、保険界、保険業界、貿易業界などから、従来条約批准及びこれに伴う立法措置をしきりに要望されてきたことは御承知の通りでございまして、特に配付されました資料の示すところによりましても、昭和二十九年の五月に日本海法学会は、決議をもって右条約をすみやかに批准し、かつ商法第四編第三章の規定を右条約に基いて急速に改正することを政府に勧告いたしておるのでありますが、かかる重要法案について、何ゆえ批准及び立法化をすみやかに実現しなかったか、その間の事情をまず伺いたいのであります。
  57. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) この条約が署名されましたのが一九二四年でございまして、この条約は、最初に批准した国の批准が行われてから一年を経て効力を生ずるということになっておりますので、効力を生じましたのが一九三一年であります。すなわち昭和六年になるのでありますが、その後、わが国としましては、この条約を批准すべきかどうか、あるいはその条約に従った国内法を制定すべきかどうかという点については、これを全然放資しておいたというわけではございませんので、その後間もなく、当時の司法省に設けられておりました法制審議会におきまして、商法の商行為編及び海商編の全般についての改正を検討しておりましたが、昭和十年に発表されました改正要綱によりますと、海上運送についてはブラッセル条約に従って規定を改めるべきであるという答申をしておるのでございます。その後直ちに司法省事務当局において国内法の立案に着手したようでありますけれども、何分にも商行為編、海上編の全般にわたっての改正要綱という関係上、相当の日一時を要したであろうと想像されるのでありますが、申すまでもなく支那事変が始まり、大東亜戦争に入りまして、かような立法事業を一切中止されてしまったのでございます。戦争が終りましても、占領期間中は憲法の改正に伴って早急に基本法を改めなければならぬという問題や、占領政策の必要上、立法すべき事項等もありまして、なかなか手が回らなかった関係と、占領中は基本的な法律については早急に立法をしない方が適当だというふうに考えられておりましたので、平和条約発効後に、法務省に設けられました法制審議会においてこの問題を取り上げたわけでございます。  ただいま御指摘になりました昭和二十九年の日本海法学会の決議の趣旨は、さような次第でございますので、すでにこの条約が署名され、効力が生じました当時から、学会の意向がこういうことであったのでありまして、二十九年に日本海法学会の決議がございましたので、打ちに商工会議所その他保険業界、貿易業界等に正式に諮問して意見を照会しました結果、資料としてお配りいたしましたような、いずれもこれをすみやかに批准して立法化すべきであるという各界の一致した意見であったわけであります。特に東京商工会議所からは、経済界全般の要望といたしまして、強くこの要望がありました。かような状況でございましたので、法制審議会の商法部会でこれを取り上げまして検討いたしました結果、先ほど御指摘のありましたように、署名後あまりにも年数がたっているので、あるいはこの条約自体改正等の気運があるのではなかろうかという疑問もございまして、昭和三十年の暮でしたか、三十一年の初めでしたか、東大の商法の石井教授が外国に行かれました際に、特に外国の情勢等もお調べ願ったわけでありますが、この条約に関しては改正の気運はない、日本はなぜ条約に加入しないかという質問を、至る所で受けたというようなお話でございました。そこで条約を批准するものとして、国内法としてはどういう形で立法すべきかということを検討したのでございますけれども、海商法の改正ということになりますと、内国沿岸貿易を含めた改正になりますが、内国沿岸貿易につきましては、果してこの条約の通りでよろしいかどうか、たとえば責任限度額にいたしましても、外国航路と同様でよろしいかどうか、また、船荷証券の交付義務についても同様でいいかどうかというような、いろいろな疑問がございました。なお、実情をいろいろ調査した上でなければ、沿岸外国貿易を含めた海商法全般の改正が困難ではないかということで、また、そこまでやるとなりますと、相当年数を要しますので、業界から特にすみやかな批准及び立案を要望されておりました関係もございまして、外国航路に関する、いわゆる国際海上物品運送に関する特例法として、特別法を提案することをすみやかに立法化するのが適当であろうと考えて、かような形で立案をした次第でございます。
  58. 大川光三

    大川光三君 条約批准後立法化が非常におくれておったという事情につきましては、ただいまの御答弁によって大体了承いたしましたが、さらに少し具体的に伺いますが、この政府の補足説明によりますと、わが国の船主の責任は現行商法のために外国船主の責任に比べてきわめて重い、従って条約の趣旨が船主の責任を強化するにあるにもかかわらず、わが国船主にとってはかえって責任が軽減される結果となることが明らかであるとの旨を述べられておりまするが、そこで疑問といたしますのは、一体わが国は、かかる船主の責任軽減の結果を希望して条約に署名したかどうか、もししかりとすれば、なるほどあるいは支那事変あるいは大東亜戦争等の支障もあったでございましょうが、それ以前においてすみやかにこれを批准ざれなければならぬと考えるのでありますが、なぜそのことがはかったのであろうか、あるいは荷主側の反対が強かったために早急にこれが実現を見なかったかどうかという点が疑問になりますので、その点を伺いたい。
  59. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) 私の承知しております限りでは、条約の批准がおくれました事情は、先ほど申し上げましたように、条約を批准した場合に直ちに必要になる国内立法措置の準備が長引いたという事情によるものでありまして、荷主側の反対が強いために批准ずることを躊躇したということはなかったように承知しております。
  60. 大川光三

    大川光三君 次に条文について具体的なことを伺いますが、法案第四条第二項の第一号、これによりますと、一として「海上その他可航水域に特有の危険」とありますが、この「特有」とは一体どういう意味でありましょうか。条約の方を見ますると、第四条第二項の(c)におきましては、こういうような制限は受けてない。ただ「災害、危険又は事故」と書いてありますが、法案の場合、一体遇発的な損害を含まないという趣旨かどうか。
  61. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) 「海上その他可航水域に特有な危険」という条項の「特有」という文字に当るものは、なるほど条約にはございません。ここに「可航水域に特有の危険」と書いてございますのは、暴風雨による沈没であるとか、他の船舶側の過失による衝突、あるいは氷山の漂流等にぶつかって船が沈没するというような事故、津波に会う、浅瀬に乗り上げるというような、海上その他、運河、河川等、水の上にあるがゆえの危険というわけであります。条約では特有という文字に当るものは用いておりませんけれども、条約の第四条第二項にあげてあります天災でありますとか、火災でありますとか、その他の事故は、これはいずれも可航水域における事故であります。船舶が常に可航水域に浮いておるわけでありますから、単にこれを可航水域における災害、危険または事故といたしますと、ほかの事故も全部入ってしまうことになります。これは船主の免責約款の発展いたしました経緯と申しますか、ある事故がありまして、船主の責任が問題になり、船主に不利な判決等がございますと、そのつど免責約款を追加していきました関係上、必ずしも理論的に条約ができていないわけであります。条約はさようにしてでき上りました慣行等をもとにしてございます関係上、理論的に必ずしもできていないわけでありまして、ここにあげてあります天災、戦争、公敵行為、その他ここに列挙するものといたしますと、条約に書いてあります「海上その他の可航水域の災害、危険又は事故」という意味は、先ほど申しましたような可航水域、すなわち水の上にあるがゆえに生ずる危険であるということに解釈するほかないと考えまして、国内法の体裁としては「可航水域に特有の危険」という文字を用いまして、第二号以下の事故と区別する方が適当であろう、かような趣旨でございます。
  62. 大川光三

    大川光三君 法案の第四条第二項の各号にあげてあります免責事由というものは、これは要するに、運送人の故意、過失によらない原因から生じた積荷の滅失、損害について、運送人の免責を認める趣旨かと思われますが、もしそうであるといたしますならば、条約第四条第二項(q)のように「その他運送人又はその代理人若しくは使用人の故意又は過失によらない原因。」ということをも規定する方がいいのではないか、こう思いますが、その点はどうでございましょうか。
  63. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) 御指摘になりました条約の第四条第二項のローマ字の(q)に当ります規定は、この法律案の第三条第一項及び第四条の第一項に規定しておるわけでございまして、つまり一般的に運送人は自己またはその使用人が注意を怠ったことによって生じた損害については、賠償の責任を負うということを、三条の第一項に規定し、四条の第一項におきまして立証責任の規定を設けてておりますので、条約の趣旨は国内法と同様であろうと考えております。
  64. 大川光三

    大川光三君 本法案をずっと通覧いたしまして、いわゆる通し船荷証券に関する規定の設けがございませんが、社団法人日本貿易会の昭和三十年三月二十五日付の船荷証券統一条約の批準に関する意見書によりますと、通し運送及び通し船荷語弊に関する規定を設けることを強く要望しておりますが、何ゆえ通し船荷証券の規定を設けなかったのか、その点の理由を御説明をいただきたい。
  65. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) 通し船荷証券に関する規定は、条約にも、また商法にも何ら規定がないのでございますが、陸上運送と海上運送と双方にまたがる規定でございまして、もし適当な規定が設けられるといたしますならば、商法自体に規定を置くことが適当かと考えます。それで、この法律案の建前といたしましては、条約の国内立法措置を講ずるといろところに目標を限りまして、商法自体の不備をこの際改めるということになりますと、またさらに相当期間も要ると思いますので、次の機会に譲ったわけであります。
  66. 大川光三

    大川光三君 なお、先ほど申しました貿易業者からの意見書によりますと、国際取引の紛争に対して、外国裁判所の判決を求めることは、費用及び証拠、ことに証人の出廷に関して、著しい障害に直面し、やむなく不当要求に服せざるを得ない実情にあるので、船荷証券の国際性を顧みつつ、裁判管轄について国際法の規定を設けること、なお、条約が許す限り、国際商事仲裁をもって訴訟にかわり得るように考究せられたいという要望がございますが、政府のこれに対する御意見を、この機会に伺いたい。
  67. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) 国際取引について生じました紛争を、外国の裁判所に持ち出さなければならぬということは、費用その他の点から申しまして、非常に苦痛なことでございまして、これは日本の業者ばかりでなく、外国の業者も同様であろうと思うのでございます。各国ともその点について、たとえば訴訟を起す場合に、管轄裁判所をどうするというようなことも、多大の関心をもっておりますし、国際的の商事仲裁条項の執行について、各国が協力する必要があるというようなことで、昭和二十七年に外国仲裁判断の執行に関する条約というのができまして、これはわが国も加入しておりますが、さらにまた近くその条約の実施の状況に顧み、その条約を改正すべきかどうかというような国際会議も開かれるように聞いておりますが、わが国といたしましても、できるだけかような方向に協力すベきものと考えております。
  68. 大川光三

    大川光三君 最後にいま一点伺いたいと存じますが、法案の付則第三項一に、「この法律の適用については、政令で定ある本邦の地域は、当分の間、本邦外にあるものとみなす。」とありまするが、そのうちで第一に政令で定める本邦外の地域というのは、どこのことをさすのであるか。先ほどの逐条の御説明のときに、沖縄、小笠原島ということをおあげになったようでありますが、いま少し詳しくこの点を伺いたいというのがその一つ、そうしていま一つは、その地域を「本邦外にあるものとみなす。」という、その理由を伺いたいのであります。
  69. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) 政令で定めることに予定しております地域は、わが国の領土ではありますけれども、現にわが国の統治権が行われていない地域をあげるつもりでございまして、具体的に申し上げますと、硫黄島島及び伊平屋島、並びに北緯二十七度以南の南西諸島で大東諸島を含む地域とか、もう一つは孀婦岩の南の南方諸島、すなわち小笠原群島、西之島及び火山列島を含むということになろうと考えます。  これらの地域を、この法律の適用上、本邦外とみなす理由はどうかということでございましたが、これらの地域には、現に日本の統治権が行われていないわけでありまして、この法律もまた施行される地域ではないわけであります。もっぱら外国の施政が行われております関係上、海上運送につきましては、外国と同様に取扱うことが、貿易の実情に適するものと、かように考える次第でございます。
  70. 大川光三

    大川光三君 私の質問は、これで終ります。
  71. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 この国際海上物品の運送について、わが国の海運業者と外国の荷主との間に、過去に紛議が発生した、その紛議の概況と、それからしていわゆる免責約款というものは無効と解せられて、わが国の海運業者は不利な立場に立ったという何か具体的な事例を伺いたいのですが。
  72. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) 国際海上運送につきましては、先般も申し上げましたように、この条約と日本の国内商法とは、内容を異にしておりますにもかかわらず、日本の海運業者も、ほとんどすべて条約と同様の内容の約款をもって運送をしているわけでございます。これは国際競争上、外国の海運業者と異なった、運送に有利な約款で外国の荷主と契約をするということは非常に困難であることは想像できるのでありまして、国際慣行となっておりますこの条約と同様の内容の約款をもって取引しているのでございまして、そのために外国の荷主が、ことに日本の海運業者との運送契約が、運送人に有利過ぎる、あるいは荷受人なり荷主にとって不利益であるということで紛争が起きるということはなかったと思うのでございますが、この条約と同様の内容の運送約款をつけておりましても、たとえば商法の七百三十九条等によりますと、「船舶所有号(特約ヲ為シタルトキト難モ自己ノ過失、船員其他ノ使用人ノ悪意若クハ重大ナル過失又ハ船舶カ航海ニ堪へサルニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ヲ免ルルコトヲ得ス」とありまして、免責約款の形で特約をいたしましても、この責任を免かれることができないという強行規定になっておるわけでございます。外国荷主としては、日本の海運業者に対してクレームをつけることが、戦後かなりあるというふうに聞いておりますけれども、それが裁判所の判決等になって現われた事例はないのでありまして、ただ紛議を解決いたします際に、こういう規定があるということが、日本の船主にとって、はなはだ不利であるということを、船主側は申すのであります。すなわち、多くの紛議は、調停なり仲裁によって解決されているのでありますが、それらの解決条件等を定めるにつきましても、いよいよ裁判所に持ち出せば、日本商法七百三十九条によって、この免責約款は無効になるんだという裏づけがございますと、船主にとって、はなはだ都合が悪い、不利であるということを申すのであります。ただ、私ども運輸省を通じて、また海運業者を通じて、そういう事例が戦後特にふえたということは聞いておりますが、いつ幾日どこでどういう事件があったというような具体的なことまでは存じておりませんので、その程度でお許しを願います。
  73. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 わが国の商法でもって、それが免責約款は無効とするということがあるとしても、法例の第七条などによる「法律行為ノ成立及ヒ効カニ付テハ当事者ノ意思二従ヒ其何レノ国ノ法律二依ルヘキカ定ム」という規定もある。当事者の意思が法例の規定に従ってやるべきものであるという考え方でやっておった場合に、それがこの海上運送法の規定によって無効になるというと、これは矛盾もあると思いますけれども、その点はどういうことになるわけですか。
  74. 村上朝一

    政府委員(村上朝一君) 法例の第七条によりまして、準拠法は、原則として当事者の意思によってやらなければならぬ。外国法によるという合意があります場合には、外国法が準拠法になるわけでありますけれども、法例の三十条によりまして、外国法によるべき場合において、その規定が日本の公序良俗に反する場合に外国法を適用しない、いわゆる公序に関する規定がございます。商法の七百三十九条が、この法例の第三十条にいう公序良俗に反する場合の一つであるかどうかについては、あるいは議論もあるかと存じますが、七百三十九条の強行規定に反する外国法は、法例三十条によって、日本の裁判所で問題となったときには、適用しないことになるんではないか、かような見解が多いようでございまして、その点から、外国荷主との紛争の解決上、不利を招いているのではないか、かように考えております。
  75. 山本米治

    委員長山本米治君) 他に御質問がなければ、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十七分散会