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1957-03-19 第26回国会 参議院 法務委員会 第9号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十二年三月十九日(火曜日) 午前十時五十六分開会 ――
―――――――――――
出席者
は左の
通り
。
委員長
山本
米治
君 理事 雨森 常夫君 一松 定吉君 棚橋 小虎君
委員
青山 正一君 大谷 瑩潤君
西郷吉之助
君 吉野 信次君 赤松 常子君 岡田
宗司
君 河合 義一君
宮城タマヨ
君 辻
武寿
君
国務大臣
法 務 大 臣
中村
梅吉
君
政府委員
法務政務次官
松平
勇雄
君
法務大臣官房調
査課長
位野木益雄
君
法務省矯正局長
渡部 善信君
法務省保護局長
福原 忠男君
厚生省社会局長
安田 巖君
説明員
最高裁判所長官
代理者
(
事務総局総務
局総務課長
) 海部
安昌
君
最高裁判所長官
代理者
(
事務総局刑事
局長
)
江里口清雄
君
最高裁判所長官
代理者
(
事務総局家庭
局長
)
菰渕
鋭夫君 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した
案件
○
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣送付
、
予備審査
) ○検察及び
裁判
の
運営等
に関する
調査
の件(
売春防止法
の
施行運営
に関す る件) ――
―――――――――――
山本米治
1
○
委員長
(
山本米治
君) これより本日の
会議
を開きます。
裁判所法等
の一部を
改正
する
法律案
(
予備審査
)を議題といたします。本日は、本
法律案立案
の
経過
並びに逐条的に
補足説明
を聴取いたしたいと存じます。
中村梅吉
2
○
国務大臣
(
中村梅吉
君)
最高裁判所
の
機構
を改革しようとして、
裁判所等
の
改正
の
案件
を
提案
いたしまして、御
審議
をわずらわすことになりました。先般
提案趣旨説明
で申し述べましたように、従来の
最高裁判所
の
機構
をもっていたしましては、
事件
が非常に山積をいたしまして、現に五千件
内外
の件数が積滞をいたしております。一時は七千件にわたる状態でございましたが、その後いろいろな努力をいたしまして減っては参りましたが、なお五千件
内外
の
事件
が積滞をいたしておりますような次第で、このままでは
最高裁判所
のあり方として適当でないのではないかという
議論
が数年前から各
方面
に起りまして、一面
刑事裁判
に対する
上告
の
範囲
が非常に問題になりまして、従来は
違憲関係
と、
判例変更
の事案のみが
上告
の
範囲
になっておりましたが、
民事
の方では、さらに
法令
の
違反
が
判決
に
影響
を及ぼす場合等は、
上告
の
理由
になっておりますので、これとつり合いのとれるような
改正
をすべきではないかという
議論
が強く起りまして、その
趣旨
にかんがみまして、いろいろ検討を続け、先般
提案趣旨
で御
説明
申し上げましたような
法制審議会
の長期にわたるいろいろな
論議
を尽しまして、その
答申
をここに得ましたので、今回その
提案
の運びになりましたような次第でございます。その
法制審議会
で長年
論議
をいたしました
経過
、ここにいたりまするその
経過
の
概要等
につきましては、できるだけこの
機会
に詳細に申し上げまして、皆さんの御
審議
の参考に資していただきたいと思いますので、従来この
法制審議会
の
関係事務
を担当して参りました
位野木政府委員
がおりますので、
政府委員
からむしろその詳細をこの
機会
に御
説明
を申し上げる方が適当かと思いますので、そういうふうに
一つ
いたしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
位野木益雄
3
○
政府委員
(
位野木益雄
君) この
最高裁判所
の
機構改革
及び
上告制度
の改善の問題が
論議
されるようになりましたいききつにつきましては、ただいま
法務大臣
から述べられました
通り
でございます。 なお、
経過
の
概要
につきましては、
提案理由
において述べられておりますが、この
法制審議会
で正式にこの問題が取り上げられましたのは、
昭和
二十八年の二月でございます。それまでにもすでに
民事訴訟法
の
改正
の問題、特に御
承知
のように
民事上告特例法
の問題を
中心
といたしまして、この問題がすでに
昭和
二十四年ごろから
論議
になっておったのでありますが、正式に
最高裁判所
の
機構
、
裁判所
の
機構
の問題についても
論議
をするということになりましたのは、
昭和
二十八年の二月でございます。で、その二月の二十日に
法務大臣
から
法制審議会
に対しまして、
裁判所
の
制度
を改善する必要があるか、あるとすればその
要綱
を示されたいという
諮問
を発したのです。この
諮問事項
を
審議
するために、
法制審議会
では
司法制度部会
というものを設けまして、
審議
を開始したのであります。この
司法制度部会
は
昭和
二十八年の三月から
審議
を開始いたしまして、
昭和
二十九年の一月までの間に八回も
会議
を開いて
審議
をいたしたのであります。 この
司法制度部会
で出ました
論議
で代表的なものを申し上げますと、大体三つの
種類
の
意見
に分けることができるのであります。 第一番目は、現在の
制度
をなお維持すべきだ、現在の
最高裁判所
の
制度
を維持すべきである、こういう
意見
なんです。この
意見
は、
最高裁判所
の
未済事件
が非常にふえておるけれども、これは戦後の異常な
事態
に基くものであるから、これをとらえて直ちに
最高裁判所
の
制度
の
基本的性格
に手を加えるということは早計である、今しばらく現在の
機構
のもとで
手続法
を
改正
する、あるいは
運用
を改善するというふうな
方法
によって
事態
を解決することが賢明であるし、これが十分可能である、こういうふうな見解なんであります。 第二の
グループ
の
意見
といたしましては、
最高裁判所
の
裁判官
を増員すべきであるという
意見
でございます。この
意見
は、
最高裁判所
の
未済事件
が非常にふえたのは、
裁判官
の数が
少い
からだ、昔は大審院でも四十数名の
裁判官
がいたのであるが、今は
最高裁判所
の
裁判官
は
長官
を入れまして十五人にすぎない。こういうふうに
裁判官
が
少い
から、どうしても
事件
がたまるのであるから、
裁判官
を現在の二倍あるいはそれ以上に増員すべきであるというのであります。そうして同時に、
最高裁判所
は今のように
憲法違反
とか
判例変更等
の
重要事件
を
審判
するのみではなくて、
民事
、
刑事とも
に、もう少し広く
一般
の
法令違反事件
についても
審判
するようにすべきである。すなわち
上告
の
理由
を今よりも
拡張
すべきであるということを主張するのであります。 それから第三番目の
グループ
の
意見
といたしましては、
上告事件
を取り扱うための特別の
裁判機関
を設置すべきであるという
意見
であります。この
意見
は、
東京高等裁判所
またはその他の適当な
裁判所
に
上告部
というものを設ける。あるいは現在ある
裁判所
のほかに、全く独立した別の
裁判所
、すなわち
上告裁判所
とも申すべき
裁判所
、こういうふうなものを設けて、ここで
一般
の
上告事件
の
審判
をさせる。そうして
最高裁判所
はこの
上告部
または
上告裁判所
から送致を受けた
憲法違反
とか、
判例変更等
の重要な
上告事件
のみを取り扱うことにすべきである。このようにすれば、
最高裁判所
の
負担
を軽減することができまして、
裁判
はむしろ今よりも若干減らすのが適当である。こういうふうにすることによってのみ、一方においては新しい
司法制度
の理想を貫く。他方においては
一般法令違反
をも
上告理由
として認めようとする要求に応ずることができるというのであります。
司法制度部会
では、このような
意見
を
中心
といたしまして、非常に白熱した
論議
をいたしたのであります。
資料
も集めまして検討いたしたのでありますが、この
司法制度部会
におきましては、結論を得る前に、先ほど申し上げましたいわゆる
民事上告特例法
の
有効期間
が切れかかったのであります。これは初め御
承知
のように、二年間の
有効期間
の
臨時立法
として成立したのでありますが、その後一回だけ延長いたしまして、それが二十九年の五月一ぱいで期限が切れることになっておりますが、これをもう少し延ばすか、あるいは延ばせないとすればどういうふうにしたらいいだろうかということを早くきめなければいけないという立場になったのであります。そこで、この
司法制度部会
では、
根本論議
をしばらくおきまして、この
民事上告特例法
の失効に伴う
善後措置
について
審議
を進めたのであります。その結果、
法制審議会
の会長を通じて、
法務省
の方に
中間報告意見
というものを出したのです。で、この
中間報告意見
に基きまして、
法務省
では、
裁判所法
及び
民事訴訟法等
の各一部
改正法律案
を立案いたしまして、第十九
国会
に提出いたしたのであります。この
法律案
については、十分御
承知
と思いますが、この
法律案
は、一部
修正
の上、可決されて成立いたしたのであります。この
法律
によりまして、
民事事件
につきましては
上告理由
が
憲法違反
のほか、
判決
に
影響
を及ぼすことが明らかな
法令違反
を
上告理由
とするということになったのであります。なお、
簡易裁判所
の
民事
に関する
裁判権
の
拡張
その他若干の最
最高裁判所
の
負担調整
のための
措置
が同時にとられたことは、御
承知
の
通り
であります。 このようにいたしまして、
民事上告特例法
の
執行
に伴う
善後措置
の
立法
は一応できたのでありますが、しかしこの
根本
的な問題は、今日なお残っておったわけでありまして、
国会方面
でも熱心に研究を進められておったのでありますが、
法制審議会
におきましてもこの問題を
根本
的に研究する、しかも総合的に研究して、しかもこれを促進しようということを考えまして、
昭和
二十九年の八月からは
司法制度部会
、
民事訴訟法部会
、これも
法制審議会
で民訴の
改正
について研究しておる
部会
でありまして、
司法制度部会
及び
刑事法部会
、ここでは
刑事訴訟法
の
改正
について
審議
をしております。この
司法制度部会
、
民事訴訟法部会
及び
刑事法部会
から小
委員
を出しまして、
上訴制度
に関する
合同小委員会
というものを設けて、ここで問題を総合的に
調査
、
審議
しようということになったのであります。この
合同小委員会
は、
昭和
二十九年の八月から
審議
を開始いたしたのであります。この小
委員会
の
審議
が始まりましてから間もなく、二十九年の九月には、
最高裁判所
から
最高裁判所
の
機構改革
についての
意見
が出されたのであります。この
意見
はお手元にお配りいたしました
上告制度改正
に関する諸案及び
法制審議会答申
という
資料
がございますが、この
資料
の一の2でございます。その
要旨
は、
最高裁判所
の
裁判官
は減員し、
一般法令違反
を審理するためには、別に
上告
を取扱うための
裁判機関
を設けるべきであるというのであります。
合同小委員会
におきましては、
最高裁判所側
の
委員
からこの
意見
が主張されたのであります。これに対しまして、
弁護士側
の
委員
からは、その前の
昭和
二十七年十二月に
日本弁護士連合会
で決定されまして二十八年の一月に
法務大臣あて
に提出された
裁判所法等
の
改正案
という案があるのでありますが、これは
資料
の一の1に載っております。この線に沿った
最高裁判所
の
裁判官
を増員して
上告理由
を
拡張
せよという
趣旨
の
意見
が主張されたのであります。またこれに先だちまして、
衆議院
の
法務委員会
に設置されました
上訴制度
に関する
調査小委員会
におきましては、
昭和
二十九年の十月に、今申しました
日本弁護士連合会
の案と
基本的構想
を同じくするところの
試案
を中間的に作成、発表されたのであります。これは
裁判官
を十五名に増員する、そして
上告理由
を
拡張
しようというのであります。このような次第で、
合同小委員会
における
審議
は、
最高裁判所側
の
裁判官
の
減員論
と、
弁護士側
の
裁判官増員論
とをめぐってなされたのであります。ところが
審議
を進めていくに従いまして、
最高裁判所
の側の
委員
から、前
こ最高裁判所
の発表した
意見
の中では触れられなかった点が明らかにされたのでありまして、それは、
一般法令違反
を審理するための
裁判機関
を、どういうふうに設置するかということについてでありますが、この
裁判機関
は
最高裁判所
に置くのが適当であるというふうに主張されるようになったのであります。そういたしますと、
根本
の
考え方
にはかなりの違いがあるのでありますが、出た
意見
の外形におきましては、
最高裁判所側
の
意見
と
弁護士側
の
意見
との間に、実質的に非常にまあ差異が少なかったというふうなことになるわけです。そこで、同二十九年の十一月に、
法務省
の
幹事側
から、
上告制度改正要綱試案
という
まあ案
を、
審議
の促進をはかる意味で出したわけです。この案は、
最高裁判所
は大
法廷
または小
法廷
で
事件
の
審判
をするということにいたしまして、大
法廷
は
憲法
第七十九条により
任命
される
裁判官
七人で構成する、七十九条というのは、
最高裁判所
の
裁判官
の
任命方法
であります。
内閣
で
任命
しまして
国民審査
に付する、こういう
方法
であります。その
方法
で
任命
される
裁判官
は七人として、これで大
法廷
を構成する。小
法廷
の
裁判官
は
総数
三十人といたしまして、これは
憲法
第八十条により
任命
する、こういうことにいたしたのでありますが、その八十条と申しますのは、
下級裁判所
の
裁判官
の
任命方法
であって、
最高裁判所
の指名した者の名簿によって、
内閣
で
任命
するという
方法
であります。そういうふうな
試案
を
法務省
の
幹事側
から小
委員会
に提出いたしたのでありますが、これに対しましては、
裁判所側
の
委員
及び
学界関係
の
委員
には特別な
反対
はなかったのであります。しかし、
弁護士会側
の
委員
の中からは、
反対
の
意見
が出されたのであります。その後、しばらく小
委員会
も中断いたしておったのでありますが、
昭和
三十年に入りましてから、今度は、今まで十分
論議
が尽されていなかった
上告理由
の
範囲
の問題について
審議
をしたのであります。特に、
刑事
の
上告理由
の
範囲
をいかにすべきかという問題を
中心
にして
審議
をいたしたのでありますが、これにつきましては、現状の
通り
でよろしいという
意見
から、広く
一般法令違反
全部を
上告理由
とすべきであるという
意見
に至るまで、あらゆる
種類
の
意見
が出たのでありますが、大体の
グループ
に分けますと、今申し上げました
資料
の、一の5に出ております六
通り
の案があったのであります。これは十九ページですが、
現行法
上ほかの刑訴とか、
民事上告特例法
、そのほかに出ている線に従った案でございます。それだけの案が出たのでありますが、これにつきましても、
一般法令違反
を広く
上告理由
として認めるべきであるという
弁護士会側
の
意見
と、
一般法令違反
についても、ある程度これを
上告理由
として認めるが、あまりに広く認めることは適当でないという
意見
が対立したのでありまして、この制限的に一部
法令違反
を
上告理由
として認めるべきであるという
意見
は、
裁判所側
の
委員
及び
訴訟法関係
の
学者側
の
委員
の主張するところであったのであります。ところが
合同小委員会
における
審議
も、回を重ねるに従いまして、だんだん歩みり寄の気運が強くなりまして、
昭和
三十一年の二月の
会議
では、
委員
の間で、
一つ法務省
の
幹事側
から案を出してくれというふうな要望がございまして、案を出したのであります。 これは二
通り
の案を出してみたわけでありますが、最初の案は
資料
の一の6に出ている案でございます。
甲案
というのでありますが、これは、
最高裁判所
の
機構
は変更しない。おおむね現在
通り
。なお小
法廷
の数を
運用
によってふやして四つとするとかいうような
考え方
をいたしておりますが、
法律
的には、
機構
には
改正
を加えない。
刑事
の
上告理由
の
範囲
を
拡張
はいたします。が、
機構
の
改正
を加えないで、
最高裁判所
の
負担
の
調整
のためのいろいろな方図を考えてみたのであります。これが
甲案
。 もう
一つ
の案は、
乙案
ございまして、その次に出ております。これは大
法廷
の
裁判官
を
長官
以下九人とする。小
法廷
の
裁判官
を三十人とするといたしまして、同時に
刑事
の
上告理由
を
拡張
するということにいたしたのであります。この
二つ
の案を提出いたしましたところが、
甲案
につきましてはあまり
審議
がなされませんで、
乙案
を
中心
にして
審議
が進んだのであります。結局
甲案
は取り上げられなかった。
乙案
を取り上げたということになったのであります。その
論議
といたしまして、
最高裁判所側
から、この
法務省
の
幹事
が出しました
乙案
に対しまして、
意見書
が出されました。この
意見書
は、多数
意見
と
少数意見
と
二つ
ございまして、多数
意見
の方は
資料
の中の八番目に出ております。二十六ページであります。これは、
乙案
の
趣旨
は大体けっこうだが、この
部分
はこういうふうに
修正
してもらいたいという
部分
的な
修正意見
、それから
少数意見
の方は、
資料
の九番目に出ておりますが、
乙案
に対して
根本
的に
反対
の
意見
、
最高裁判所側
からは多数
意見
と
少数意見
の
二つ
が出されたのでありますが、
弁護士会側
からも
意見書
が出されたのでありまして、これは前に
弁護士会
から出されておった
意見書
及び
衆議院
の小
委員会
の
意見書
の線に沿うものでございまして、
最高裁判所
は
長官
及び
最高裁判所判事
三十人をもって構成するという
趣旨
の
上告規定
の
改正要綱
というのであります。これは十番目に出ております。 このように
意見
が出されたのでありますが、だんだん
論議
を続けておる間に、次第に多数の
意見
の賛成を得られるような方向が明らかになりまして、昨三十一年の三月十二日の第十七回目の
合同小委員会
の
会議
におきまてし、
上告制度改正
に関する
試案
(
乙案
)というこの
法務省
の
幹事
の案に若干の
修正
を加えました内容の
合同小委員会
としての案が決定されるに至ったのであります。そこでこの
合同小委員会
の案を
司法制度部会
、
民事訴訟法部会
の各
部会
において
審議
いたしましたところ、それぞれ承認が得られましたので、さらに昨年の五月八日の
法制審議会
の第十三総会において
審議
いたしました結果、ここの
資料
の最後に出ておりますような
上告制度改正要綱
という
答申案
が決定されたのであります。 この
答申案
の
趣旨
は、まず、
最高裁判所
は、今、
長官
以下十五人の
裁判官
で構成されておりますが、この
裁判官
の数は、
重要事件
を審理するためにはむしろ多きに失する。そうして一方、普通の
上告事件
を審理するためには少きに失する。こういうふうな
考え方
で、
最高裁判所
で大
法廷
を構成する
裁判官
は、
長官
及び大
法廷判事
八人で構成する。そうして小
法廷
の数は六つ設けまして、三人以上の
合議体
で審理、
裁判
をして、その
総数
は三十人にする。これは、大
法廷
と小
法廷
の
判事
を別にしまして、現在は同じ人で大
法廷
及び小
法廷
を構成していますので、別別の人で構成する。そうして、小
法廷
では、できるだけ
民事
及び
刑事
というふうに専門に別れて
裁判
をするということにしてある。で、
裁判官
は、
長官
及び大
法廷
の
判事
の
裁判官
に限りまして
国民審査
に付する。すなわち
憲法
八十条の
規定
による
任命方法
である。小
法廷
の
裁判官
は、それ以外、すなわち
下級裁判所
の
裁判官
の
任命
にする。こういう
趣旨
で、そうして大
法廷
の方の
裁判官
の
任命
につきましては、
裁判官
、検察官、
弁護士
及び
学識経験者
で構成する
選考委員会
の
意見
を聞くことにすべきであるというのが、この
最高裁判所
の
機構
についての
要綱
の
趣旨
であります。
上告理由
につきましては、
民事
につきましては
現行法通り
として変更いたしませんが、
刑事
につきましては「
判決
に
影響
を及ぼすことが明らかな
法令違反
があって原
判決
を破棄しなければ著しく正義に反すること」ということを
上告理由
として加えるという
意見
です。
要旨
はそういうふうであります。 以上が
法制審議会
における
審議
の
経過
でございます。 次に、法案のうち、重要と思われる
部分
につきまして補足して
説明
いたしたいと思います。
条文
の順序によりまして便宜御
説明
いたしたいと思います。 まず、第二条の
改正
でございます。これは新たに
下級裁判所
の一種といたしまして、
最高裁判所小法廷
という
裁判所
を設置することにいたしたものであります。
現行法
の二条一項は
下級裁判所
の
種類
について
規定
いたしておりますが、
最高裁判所小法廷
を設置することに伴いまして、
条文
の
体裁
を改めまして、
裁判所
の
種類
について
規定
すするとにいたしたのであります。で、
裁判所
の
種類
といたしましては、すでに
憲法
上設置されております
最高裁判所
のほかに、
最高裁判所小法廷
、
高等裁判所
、地方
裁判所
、
家庭裁判所
及び
簡易裁判所
を設置するという
趣旨
であります。で、結局、その
最高裁判所小法廷
というものは、新たに設置されるということになるわけでございますが、この小
法廷
は、
憲法
第七十六条のいわゆる
下級裁判所
の一種であるということになるわけであります。ただ、この
最高裁判所小法廷
は、
最高裁判所
と
事件処理
上その他におきまして非常に密接な
関係
を持っておりますので、
最高裁判所
にこれを付属して設置するというふうなことにいたしております。これは後に述べます。二条の二項の
改正
は、これは
最高裁判所小法廷
につきましては、
設立廃止
及び
管轄区域
については、別に
法律
で
規定
する
趣旨
が必要ないので、このように
改正
したいということでございます。 第五条でございますが、これは
裁判官
の
官名
をここに掲げておりますが、そこに
最高裁判所
以外の
裁判所
の
裁判官
といたしまして、
最高裁判所
の小
法廷
の設置に伴いまして、新たにこれを構成する
裁判官
として、
最高裁判所小法廷
首席判事
及び
最高裁判所小法廷判事
という二
種類
の
裁判官
を設けることにいたしたのであります。それから第三項の
改正
でございますが、これは、今、
最高裁判所
の
判事
の
人数
が十四人となっておりますが、これを八人に改めるということにいたしております。それから小
法廷
の
首席判事
及び小
法廷判事
の
人数
もそれぞれここで
規定
いたしたのでございます。それぞれ六人及び二十四人ということにいたしておるものであります。 次に第八条の二でございます。これは先ほど申し上げましたように、小
法廷
は
最高裁判所
に付属しておるということを
規定
いたしたのが第一項であります。小
法廷
は
下級裁判所
の一種でございますから、これを
最高裁判所
の
機構
から全く独立した別個の
裁判所
として設置して、別個に
長官
を置き、また
事務局
も置くということも考えられるのでありますが、小
法廷
は、
事件
の
処理
上
最高裁判所
と共同して
上告事件
を
処理
するというふうな、非常な密接な
関係
がございますので、これを
最高裁判所
の傘下に入れて、付属して設置するということにいたしたのであります。そしてその
司法行政事務
は、後に述べますように、特別のものを除きまして小
法廷
がみずから行わないで、
最高裁判所
がこれを取り扱うということにいたしております。そして
長官
、
事務局等
も別に置かないということにしたのであります。第二項は、国法上の
裁判所
としての小
法廷
が、小
法廷首席判事
及び小
法廷判事
で構成されるということを
規定
したものであります。これは
裁判所法
の十五条等で
規定
してしる
体裁
にならったものであります。 第八条の三でございますが、これは小
法廷
の
権限
について
規定
いたしております。第一項におきまして、
最高裁判所
は、第七条及び第八条の
規定
によって
裁判権
を有する
事項
につきましては、原則として小
法廷
も、
最高裁判所
と同様の
裁判権
を有するものといたしております。ただ、小
法廷
が
裁判権
を有することにするのは適当でないという場合がございますので、その場合には、
最高裁判所
は特に定めて例外を設けることができることにしたのでありまして、たとえば
裁判官
に対する
分限事件
、それから
弾劾事件等
につきましては、ここではずすということは予想されるのであります。それから第二項でございますが、小
法廷
は
固有
の
権限
を持っておる。これは、この
法律
に定める
固有
の
権限
もございますし、他の
法律
において定める
固有
の
権限
もあるという
趣旨
でございまして、この
法律
に定める
固有
の
権限
と申しますのは、小
法廷
の
裁判
に対して
異議
の
申し立て
というものを認めておりますが、その
異議
の
申し立て
があった場合に、
原裁判
の
執行停止等
の処分を命ずる
権限
あるいは一定の
範囲
内における
司法行政事務
を行う
権限等
が、この
法律
による
固有
の
権限
でございます。他の
法律
による
固有
の
権限
と申しますのは、たとえば
刑事事件
について、小
法廷
がした
裁判
に対して、
異議
の
申し立て
があった場合における
原裁判所
の刑の
執行
の
停止
、また
原裁判
の
執行
の
停止等
をさすのであります。 なお小
法廷
は、
憲法判断
を要する
事件
等につきましても、抽象的には
裁判権
を持っているのでありますが、
憲法
問題について判断をする場合とか、あるいは従来の
最高裁判所
の判例を変更しようとする場合等におきましては、小
法廷
で
裁判
をするよりも、ただちに
最高裁判所
の
審判
を受けさせるのが適当と考えられますので、こういう場合には小
法廷
は
裁判
をすることができない。そうして大
法廷
にこれを移させるということにいたしているのでありますが、その場合が第三項に
規定
いたしております。 次に第九条は、第一項は
最高裁判所
の審理、
裁判
をする場合の態様について
規定
いたしております。第二項は小
法廷
の審理、
裁判
をする場合の態様であります。 第十条は、大
法廷
すなわち
最高裁判所
と小
法廷
との間の
審判
の
方法
でございますが、結局まず小
法廷
で
事件
を審理、
裁判
をして、その中から大
法廷
で
審判
させるのを適当とする
事件
を大
法廷
に移させるという仕組みにいたしております。小
法廷
の
裁判
は三審でございますから、最終的なものにいたしてよろしいかとも考えられますが、
憲法
八十一条との
関係
から、やはり
憲法
問題につきましては、大
法廷
に
異議
の
申し立て
をすることにいたしております。 それから第十二条におきまして、小
法廷
は、司法行政的には
最高裁判所
に従属していると申しますか、小
法廷
の司法事務は、最小限度のものを除きまして
最高裁判所
に行わせるということにいたしておりまして、司法行政的には一体をなしているということもできる
規定
でございます。 それから第三十九条でございますが、これは
最高裁判所
の
裁判官
の指名または
任命
につきまして、
裁判官
任命
諮問
審議
会に
諮問
しなければならないということに
規定
いたしております。 あとはこまかい点でございますから、省略いたしまして、ただ
刑事訴訟法
の
改正
では四百五条というのがありますが、これは
刑事
の
上告理由
の
拡張
をしようという
趣旨
でございまして、
判決
に
影響
を及ぼすことが明らかな
法令
の
違反
があって原
判決
を破棄しなければ著しく正義に反することを
理由
としようとするものでありますが、御
承知
のように
判決
に
影響
を及ぼすことの明らかな
法令
の
違反
がある場合控訴の
理由
になっております。控訴の
理由
になっておりますが、
上告理由
では、それとの均衡上からも、そのままということでは広すぎるのであって、それから
上告
審の
負担
ということから、これのままでありますと、相当数の
裁判官
がなお要るということも考えられますので……。それからもう
一つ
この今の公訴
理由
で相当
判決
に
影響
を及ぼすことが明らかな
法令
なんというのは広く解釈されておりまして、たとえば刑法十四条の刑を加重する場合の限度は二十年であるというふうな
規定
がございますが、そういうふうな
規定
の適用を示すことを忘れておったというふうな場合にも当るというふうな判例もあるそうでありまして、そういうふうな場合は、必ずしもこれは原
判決
を破棄する必要がなかろうかと考えられますので、こういうふうにいたした次第であります。あと
異議
の申し立等は
裁判所法
の
規定
と同じ
趣旨
であります。
山本米治
4
○
委員長
(
山本米治
君) 本
法律案
につきましては、本日はこの程度にとどめます。
山本米治
5
○
委員長
(
山本米治
君) 次に、検察及び
裁判
の運営に関する
調査
といたしまして、
売春防止法
施行運営
に関する件、少年法等の
改正
問題に関する件を議題といたします。 質疑のおありの方は順次発言を願います。参考までに申し上げますが、
法務省
からは
中村
法務大臣
、厚生省からは安田社会
局長
、最高裁からは
菰渕
家庭
局長
、江里口
刑事
局長
が来ておられます。
宮城タマヨ
6
○
宮城タマヨ
君
売春防止法
につきまして、きょうは総理大臣、厚生大臣それから
法務大臣
の御出席を願ったのでございますけれども、
国会
の大みそかが近づいておりますので、皆さんどうも引っぱりだこで御出席を願えなかったのでございますが、厚生大臣のかわりに安田
局長
にお願い申し上げます。その第一点は、この三章にございます更生保護ということについての御
意見
でございます。実は今まで売春婦は全体といたしまして五十万と推定され、あるいは七十万、八十万という数を数えております。そのうちの大体一割くらいは、一番多い年は、ここ十年間の中で報告を聞いてみますと、八万あるいは五万程度が、これは警察、検察の手にかかっておるものでございますが、だからあとほとんど大
部分
というものは、今後やはり厚生省
関係
の厚生保護に関する人々なのでございます。この大ぜいの人々を、一体厚生省は更生保護させるということについては、更生保護とこの
法律
でうたっております字の示す内容の終局の目的を、厚生省はどういうふうにお考えでございましょうか。第一点の質問でございます。
安田巖
7
○
政府委員
(安田巖君) 更生保護と申しますのは、現在そういうふうな職業に従事しております者を、そういうところから足を洗わせまして、そうして正常な社会の仕事につかせるというのが終局のねらいだろうと思います。あるいはまた家庭に帰して結婚をやらせることだと思いますが、先ほどお話がありましたが、売春婦の例でございますけれども、昨年確かに五十万というふうな話をされた方もあります。で、私どもの調べでは二十八年に調べたのが、やはり大体十七、八万だろうと思っております。昨年私どもの方で調べました数は大体これは十四万八千六百六十二名となっておりますので、十五万前後じゃないかというふうにつかんだのであります。これは労働省の方でお調べになりました。この調べ方は存じませんけれども、十五万何がしという数と大体符合しております。私どもの調べましたのは、昨年の末ごろに各府県の衛生部を通じて、末端の保健所等を動員しまして調べた数字がそれであります。御参考までに申し上げますが、そのうちで赤線
関係
者が約五万五千、それから青線その他の
関係
者が六万八千、その他の街娼になりますと、これはなかなかっかめない数字でありますが、大体そのくらいだろうという推定をいたしまして、いろいろな
措置
を講じたいと思っております。
宮城タマヨ
8
○
宮城タマヨ
君 今の数はこれは五十万といい七十万ということもみんな推定数でございますから、しかし厚生省でも十五万と数え、十三万と数えても、やはりそれも推定数で、確かなことはわかりませんけれども、現在は赤線、青線地区というものはだんだん表面にはなくなるわけで、いよいよ来四月一日からはこれはもう罰則が施行されますから、表向きはなくなると思いますが、それにかわりまして、今白線地帯というものが、できておりますが、厚生省ではその
調査
ができておりましょうか。
安田巖
9
○
政府委員
(安田巖君) 白線というのは実は存じませんのでございますので、
調査
ができておりません。
宮城タマヨ
10
○
宮城タマヨ
君 それは大へんです。白線地帯と申しますのは、御存じなければ
説明
いたします。白はしろうとという意味です。しろうとが集まりまして、そうしてコール・ガールといっていますけれども、それは表面やっぱり職を持っておるような、あるいは会社に、あるいは常識として正当な所に職を持っておるような形をしておりますところの若い者、あるいは年寄り、あるいは未亡人、あるいは母といったようなものが、秘密の組織に加わりまして、そして秘密の組織を作っておりますものの中には、暴力団のようなものがたくさんおる。そしてそういうほんとうのしろうとで組織を作りまして、電話一本で指定地に行くという組織が白線地帯でございます。そういうものが今だいぶ広がっております。東京あたりは――東京と限らず、都市にはずいぶんおりますが、だんだん広がって、津々浦々へ行き渡ろうとしておるのでございますが、こういうものを数えますと、とてもたへんなことになる。それから結婚紹介所というのが、これは結婚を紹介するのもありましょうけれども、売春を紹介する、それから宿屋が、みんな業者が転業する、するといって転業しておりますもの大小、これは女とともに転業するという形でございまして、内容はみんな御想像ができると思いますけれども、ほんとうの転業をしておらない。これには私は
一つ
は業者の方にも無理のないところもある、というのは、今日前借をみんな女が持っております。多いのは十五万円以上だそうでございますが、大てい数万円の前借を持っておりますので、それを踏み倒されて逃げられた分には、業者もたまらないものですから、やっぱりともに転業しようといって、アベック式の宿屋がたくさんできております。それから実はこの間あんまの陳情を受けたのでございますけれども、ことに熱海なんかに五、六百人以上の美人のあんまというのがはびこっております。そうしてその美人のあんまに今までの人たちは圧倒されまして、これは大問題だから、
一つ
取り締ってほしいということを言ってきた人がございますが、内々調べておりますが、警察
関係
も聞いてみたのですが、やっぱりこれは事実らしい、まあこういうインチキあんまなんか加えますというと、これは大へんなものであります。これはもう百万以上も突破しているのじゃないかと私どもは推定しなければならない、残念でございますけれども。こういうものに対して、今、更生保護ということは、職業を持たせて生活を安定させるというお答えでございましたが、それは私はどのくらい一体厚生省が本気になってお考えなのか、ということは、厚生省の予算の方を見まして疑いが多いのでございます。これだけの予算をもって、一体十万人にしても五十万人にしても、厚生省は一体どうするつもりなのでございましょうか。一々厚生省の予算あるいは労働省の予算も見ましたのでございますが、実に微々たるもので、ことに最も必要だなと思うところには予算が
一つ
もない、これは労働省
関係
でございますけれども、一番必要な女子就職助成資金の貸付に必要な経費というのはゼロでございます。職業を授けるというのにこれはどうすればいいんでございますか、その点いかがでございますか。
安田巖
11
○
政府委員
(安田巖君) いろいろ売春の実態につきまして御教示いただきまして、まことにありがとうございました。ただ、今お話のような場合は、まあ何人いるかということはわからないわけでありましょうけれども、大体そういう者が取り締られて表に出るとか、あるいはそういう者の中から、自分はそういうことをしたくなくて更生したいのだというふうに出てこないと、今のところ白線であるとかコール・ガールといったものを一々私どもの方の組織で探して歩くということは、ちょっとできないのじゃないかという気がいたしますが、と申しますことは、今度の保護更生でございますが、これはまあ権力を伴わない、いわゆる社会福祉の仕事としての保護更生の仕事でございますから、たとえば相談所ができるとか、あるいは収容施設ができるとかいたしましても、これは収容の強制力がないということ、それからもう
一つ
は、現在まだ
法律
が刑罰
規定
につきましては施行になっておりませんから、いわゆる猶予期間中でございますので、まあそういったような
関係
からどの程度そっちの方を取り締れるか、もちろん府県条令等もございましょうけれども、しかしこの
法律
自体とすれば、そういう猶予期間中でございます。そういうことを考えあわせますと、そう一ぺんに何もかも、私どもの方で全部やるというところまではいかないのじゃないかという点も、多少予算に表われておるのじゃないかと思っております。予算が必ずしも十分とは申せませんけれども、今のやり方で参りますというと、結局婦人相談員と相談所と、それから保護施設という三つを
一つ
にいたしました体形によりまして、自発的に出てくる者であるとか、われわれの方から目にとまる者であるとかいう者をだんだんと世話していく。そしてまた明年の四月の、法案の全部の実施期が近づくにつれまして、また状況も変ってくるかと思います。その状況に沿ったような
措置
をまたとりたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
宮城タマヨ
12
○
宮城タマヨ
君 刑罰
規定
、つまり
法務省
関係
のことは厚生省に伺っておるわけじゃありません。それは今から
法務大臣
に伺うところなのでございますが、婦人相談員あるいは婦人相談所というものについての経費というものは幾らおとりになっておるのでございますか。そして、すでにこの婦人相談員というものは昨年の十月から、あるいは場所によっては十二月から始まっておるのでございますが、それにつきまして、一体厚生省は、前にあなたとここで取っ組んだことでございますねそのときに、この資格については十分考えます、そしてりっぱな人を出しますということを、ここに速記録がございますが、おっしゃっておるのですけれども、果してそれをやっていらっしゃるかどうか。もう四県か五県かを除くと、あとみんな
任命
されておりますが、どうでしょうかということ。これは私大きい問題だと思う。それでまあ私ども知り得ておるところでございますと、自薦他薦、そうして九千円の金がほしいという者が大
部分
のように思っておりますが、その点いかがでございましょうかということ。 それからいま
一つ
。
局長
と取っ組んだという私の点は、婦人相談員であっても男の相談員を置く方がいいじゃないか。それは大事な就職につきまして、これは女の人よりもやはり男子の人で、ことに有力なという私言葉を使っておりますけれども、その内容は、まあ言ってみれば商工
会議
所の会頭であるとか、あるいは大会社、大工場を持っているような非常に有力な人を置いてほしいと、それは女の相談にじかに当らなくても、就職の点に必要、だから、それだけの男の人を持ってきてほしいということを私は言ったと思っております。 それからいま
一つ
。この女の方でございますけれども、私は今日
任命
されておる婦人の中には、ずいぶんりっぱな、実力のある方もいらっしゃると思っております。だけれども、やはり生活の足しになるからと、
一つ
の職業的に九千円の金がほしいという方もまたたくさんあることを、私ども身をもって体験しておりますからわかっております。そういうことで一体この大勢の、十万にしても、あるいは何万にしても、それは裕福でないのはしようがないとしうけれども、そこでこれは初めの更生保護というものは一体何をするかということにあとで触れますけれども、これは私は大へんな問題が起ると思う。だから、男子の資格についてはさっき申し上げましたけれども、女の資格については、やはり
一般
の婦人、それから
一般
のお母さんの協力を得るような、そういう人を先頭に立てておかなければ、これは実際こうい
売春防止法
なんという
法律
を作っても、
法律
一本でこれは実行できるなんということは絶対ないと私は思っております。これは第一に、さしあたっては日本の女性全部が協力しなかったら、できる仕事じゃないと思う。その日本全体の女を引っぱっていくという者は一体だれでありますか。それは私は婦人相談員だと思う。それだけの資格を持った、それだけの人徳を持った人が、一体選ばれておるかどうかということは、今日もう大
部分
選ばれました人たちから見ますというと、私は遺憾千万な点があると思いますが、この二点についていかがでしょう。
安田巖
13
○
政府委員
(安田巖君) 売春の防止につきましていろいろ社会の協力と理解がなければ、完全な目的は達しられないのじゃないかという点につきましては、全く同感でございまして、そういう意味から申しましても、婦人相談員というものの
任命
ということは非常に大切なことだと私は思っておるわけであります。私どもは、この資格要件といたしまして、社会的人望があって、婦人保護事業につき熱意と識見を有しておるものということと、もう
一つ
は、年令が三十歳以上というようなことを、一応通牒に書いて出しました。これを具体的に書くにはあまりに複雑な問題でございますので、やはり個々の人につきまして、この人が適当であるかどうかということを判断する以外に道はないのじゃないかということで、こういう抽象的な基準を設けたわけでございますが、御
承知
のように、これを設けます設置の主体は、府県知事とそれから大きな市でございますので、市長なり府県知事が、そういうものを置くわけでございます。現在まで、これは二月までの統計でございますが、大体三百七名ばかり置かれておりまして、そのうち男の人が八十八人で、女の人が二百十九人であります。男と女とどちらが適当かという問題は、宮城先生はこの前は大体男の方がいいのじゃないかという御
意見
でありましたし、赤松先生は女の方にしなければいけないというお話がありまして、まあ両方の御
意見
がちょうど入って、男の人が八十八人で、大体四割くらいになっておるわけであります。男を特に置いております所の言い分は、たとえばかけ込みなんかがありましたケースを取り扱う場合に、なかなか女の人では工合が悪いような問題が起きた。たとえば長野県の場合なんか、この前、赤松先生から御指摘いただきましたけれども、そういう経験を持っておりますから、男の人を置きたいということで、男の人を置いた実情でございますが、そういうことで、ほんとうに具体的に一人々々について言わなければ、抽象的にここで
議論
しましても、なかなか結論が出ないのじゃないかという気がいたします。 なお、こういう問題については、今後も各府県における訓練でありますとか、指導でありますとか、そういうことについて十分気をつけて参りたいと思います。
宮城タマヨ
14
○
宮城タマヨ
君 私は婦人相談員に男ばかり置けということを言ったことはありません。そういうことは考えません。それは大
部分
は女でいい。だけれども、その中には有力な男の人を加えておく方が、仕事に都合がいいじゃないかということ。私は、一体更生保護ということは、かかって、いい所に就職させて、金をたくさんとらせたい。それ以上に、売春婦の――もっとも
法務省
の取扱うような売春婦は別でございますけれども、そうでない売春婦はたとえば厚生省的な入れものを作ってそこへ入れる必要はないほど、右から左に就職ができて、十分金がとれればそれでけっこうです。
法務省
はぜひ入れものを作らなければならぬということを言いますけれども、厚生省
関係
で一時保護所みたいなものを作って、あそこで袋張りをさせたり、それから肩かけを編ませることで、あの人たちが一体満足して生活するかどうかという問題を考えていただきたいのです。あの人たちは右から左にりっぱに就職できて、たくさん金がほしい、それをさせてやれば、みんな更生すると私は思う。そうして私の女に対する更生保護というのは、ただ生活すればいいというのではなくて、日本の女として最後は日本のりっぱなお母さんとして、この人たちを終始させたいというのが、私の念願でございます。そういう意味合いから、男の人を入れるならば、職業あっせんの意味でりっぱな人を入れてほしい。実力のある人、婦人ももちろん必要です。このかけ込みというようなものは、まれにあるケースで、全体のことに対してはごく
少い
。そんなことは私は国全体として考えるときに、必要ないと思うくらいです。そうしてそれは当然のことなんです。私は婦人
一般
の理解があればということを真に思っておりますが、たとえば売春婦が五十万人いたら、日本のお母さんで、ほんとうに人の子か――他人の子ですけれども売春婦がかわいそうだと思う人が五十万人いたら、何もこんな
法律
を作ることも何もない。五十万人のお母さんたちが、一人ずつわが家に連れてきて、そうしてほんとうに女の生活を指導し、金のもうかることをしてくれれば、それで事は足りていると思う。現にヨーロッパなんかでは、個人の家庭ではありませんけれども、宗教団体の婦人が実にたくさん吸収してやっているのを私は見てきている。私はそういう意味で日本のお母さんたち五十万人、それから売春婦が三十万人なら三十万人でもいいけれども、一軒一軒吸収してくれればなあ、なんて言いましたら、ある人に私しかられまして、宮城さん、あんたのうちみたいに男が一人もいない、子供もおらぬというようなうちならそんなことが言えるけれども、それはとんでもないことじゃないかと言われて、もう私近ごろそれを言わなくなった。やむを得ないと思う。だけれども、私はその
考え方
の続きはずっと持っておって、やはりお母さんたちがみんなうしろだてになって、救ってやろう救ってやろうという意欲があれば、問題は非常に楽に解決すると思うのです。だから厚生省の一体
考え方
で――更生保護ということを、ただ単に職業だけと考えてそれでいいですかと私は言いたい。
安田巖
15
○
政府委員
(安田巖君) 宮城先生の御
意見
一々ごもっともでございまして、私どもの考えと全く同じなんでございます。と申しますのは、相談所を設けました
趣旨
は、そこを窓口にいたしまして、婦人相談員がいろいろ世話をいたしましたケースにいたしましても、あるいはその他民生
委員
、あるいは警察、その他の
関係
機関から送られて来ました者でも、本人、が出て参りました者でも、そこでできるだけさばくというのが実は
趣旨
なんでございまして、そこでいろいろ、郷里に帰させるとか――帰れるものは郷里に帰しますけれども、帰郷旅費がないというものは世話をします。親を呼び出した方がよければ呼び出すこともいたします。なお
関係
の職業あっせん機関でありますとか、その他の福祉機関に連絡をいたしまして、就職等ができる者はそこでできるだけさばきたい。一時保護所を設けましたのは、女のことでありますからして、転落防止で、今晩も泊る家がないというような女の方もあります。それからかけ込んで来ましても、あるいはそこに、ほかから送られて参りましても、二日や三日では就職ができない場合がある。そういうときにあぶのうございますから、よそへ泊っておれというわけにいきませんから、一時収容所を設けまして、大体二週間から二十日くらいそこに置き、その間にできるだけ婦人相談所の機能をフルに活用して、そこでなるべくさばきたいというような
趣旨
であります。どうしてもいけないものを保護施策に持っていきたいということでございますので全く同じ考えでございますので、そういう点について十分気をつけて参りたいと思います。
宮城タマヨ
16
○
宮城タマヨ
君 そうしますと、一時収容所とそれから保護施設と別にお作りになるのでございますか。
安田巖
17
○
政府委員
(安田巖君) 婦人相談所に必ず一時収容所というのを付設する
趣旨
でございまして、それから保護収容施設というのは全然別な所に作ります。そういう
考え方
でございます。
赤松常子
18
○赤松常子君 ちょっと婦人相談員について、先ほどの安田
局長
のお話、少し相違するところがございますので訂正いたします。 いわゆる長野県の例であります。今あなたがおっしゃいましたように、長野県はほんとうに男ばかりでございます。一週間ばかり前に私長野市に別の用事で参りまして、県庁に参りまして、その事情をよく聞いてみたのです。そういたしますと、今、安田さんのおっしゃったように、かけ込みが多いから男にしたという意味ではございませんでして、県知事は婦人も交えたいと思っていたけれども、社会部長がいろいろ操作をなされた結果、男だけになったという御
説明
でした。そこで社会部長をお呼びいたしまして、どういうわけで男ばかりになすったのですかと聞いたら、非常に苦しい答弁をなさいました。私、実はフェミニストで、婦人を非常に尊重いたします、こういう婦人相談員の方は、九千円しか月に手当がない。九千円ぼっちでりっぱな女の方はおいでになるはずはございませんから男の方にしましたと、こうおっしゃいましたから、あら、それでは今九千円で婦人相談員になっていらっしゃる男子の方はみんなそうごりっぱな方じゃないというふうにも解釈されますねと申したのでございますが、大へん苦しい――うやむやにおっしゃって、そういうかけ込みのために男子が適当であるという意味ではなかったのでございます。この点ちょっと御訂正申し上げておきますが、幸いにまだ長野市及び松本市は
任命
が未定でございましたから、それにはぜひ婦人をと、知事にも市長さんにもよくお話し申し上げて帰りました。今ちょっと付け加えますが、かけ込みの場合は、婦人がそれに当らなくても、人権擁護
委員
であるとか民生
委員
、あるいは警察の助力を得れば、十分その業者との交渉はできると思うのであります。から、かけ込みのための男子という意味は根拠がないと思うのであります。
安田巖
19
○
政府委員
(安田巖君) 実は私どもは長野県の係員に聞きましたのでございますが、今のようなことを申しておりますものですから、そのままお答え申したわけでございます。知事がそう言ったということでありましたならば、先生の御
意見
の方が正しいと思います。私どもの方は係員からそういう話を聞いておりましたものですから、そのまま申し上げた次第であります。
宮城タマヨ
20
○
宮城タマヨ
君 安田
局長
にお願い申し上げますが、全国の婦人相談員の数はこちらに出ておりますが、その資格を調べていただきたい、ごめんどうでございましょうけれども。それで、中には婦人相談員の
任命
は受けたけれども、仕事もよくわからぬという方があるのではないかと思うのです。この間ある所から来ました手紙に、毎日仕事がない、お客が来ないものですから、売春婦のあとをかけ回って追い歩くのでくたびれてしまう。九千円では安くて困るというような、全く九千円につられている。金のない人が集まってもらったのでは私は困ると思うのです。
一つ
調べて下さい。安田
局長
は、もうよろしゅうございます。 今度は
法務大臣
に伺います。
赤松常子
21
○赤松常子君 ちょっと
局長
さんに
一つ
。この間お尋ねいたしましたが、もう三月も半ばを過ぎておりますが、まだ
任命
されていない県が五つあったはずですが、その後、
任命
されたでしょうか。御督促なさったでございましょうか。
安田巖
22
○
政府委員
(安田巖君) 実はまだその県におきましては置いておりません。私どももやかましく申してりおますが、置かないことが違法だとまではまだ言えないので、来年の四月になっても、もし置きませんというと、
法律
に書いてあるじゃないかということで言えるわけでありますが、行政的に極力指導いたしまして、できるだけ今月中に置くよう努力いたしたいと思います。
赤松常子
23
○赤松常子君 なるたけ早く御
任命
いただきますようにお願いいたします。 この前の
法務委員会
で私御質問申し上げておきましたが、横須賀市の例と福島の例でございます。この前の厚生省で
調査
なさいました調書は私いただいております。それを拝見いたしましても、私、その人、個人をかれこれ申す
資料
を持っておりませんけれども、この文面だけで見ますと、あまり適格者ではないように考えるわけであります。この場合、特に福島の場合は、二十四才の男子の方であって、どういうわけかというと、これに書いてございますのは、ただ妻子があるから安心である。こういう簡単な
理由
で二十四才の方が婦人相談員になっておられます。私は妻子があるということだけでもちろん個人の熱心な点も所長が
答申
をしておられます限り、それもいろいろ限界があると思いますが、どの程度に熱心であるかという、個人によっていろいろ相違があると思います。最後に厚生省は、しばらくこの人々を変える意思はないという御
意見書
がつけ加えてございます。これも私やむを得ないことだと思いますが、六ヵ月その実績を見て、そしてあとで適格であるか適格でないかということの御判定があるやに聞いておりますが、そういう際のこまかい
規定
と申しましょうか、非常に不適格である場合は、どなたがそれを変えられるのか、それがはっきりしておりましょうか。その点心配でございますから。
安田巖
24
○
政府委員
(安田巖君) 今の地方
制度
から申しまして、こういったたとえば横須賀市の場合は横須賀の市長が置いておられると思います。福島県の場合には福島県の知事が
任命
いたしておるわけでございますから、私どもの方のいろいろな基準というものは、これは
一つ
の行政上の指導の方針でございます。はなはだしく不都合がない限りは、私の方からそれをやめさせろと言うことはどうかと思いますので、もうしばらく様子を見させていただきまして、その上で注意すべき点は注意する。ただいまのところ、福島県の問題も年は若いのでありますけれども、これは福島県の北会津の社会福祉協議会に長い間勤めておりまして、非常に勤務成績もいいということでありますし、それからこの間御指摘になりました独身という点は、妻子があるということがはっきりいたしました。それから非常に重厚な落ちついた人物で、非常にまじめなよくできる人だそうであります。県でも特にその点を問題にしながら、実際調べたけれども、この人ならば大丈夫だということで、特に認めたというようなことでございますので、それをどうも工合が悪いからやめきせるということは、もう少しお待ち願いたいと、いうような
趣旨
でございます。
宮城タマヨ
25
○
宮城タマヨ
君 もう
一つ
安田
局長
にお尋ねいたしますが、婦人相談員についての研修所といったものを考えられるのはおかしいようなことでございますけれども、研修所を建ててでもしなければならないほどこれは大事なことだと思われるのでありますが、厚生省が
一般
的に、総括的に、指導していらっしゃるような書類が何かございましたら、
一つ
提出していただきたいと思います。
安田巖
26
○
政府委員
(安田巖君) 実はこの
法律
ができまして、大急ぎで相談員、主として婦人相談員のための
資料
といたしまして、こういう「婦人保護の手引き」というものを厚生省で作りましたが、こういうものが
一つ
の
資料
でございます。
宮城タマヨ
27
○
宮城タマヨ
君 お忙がしいところをお出ましいただきまして、大へん
法務大臣
に相済みませんと思います。 私、今日お伺い申し上げたいのは、
売春防止法
の一部
改正
ということが本
国会
の初めから提出の予定法案の中にございましたのに、本
国会
には出さないということをこの間おっしゃっておった。大へんあわてておるのです。それで、これは一番重要な点で、
法律
の何章になりますか、今は三章までできておりますが、そのどこにおはさみになるつもりか存じませんが、名前は何か知りませんが、とにかく来年の四月になりますと売春をやった女たちは六ヵ月の懲役に行かなければならない、放っておいたら。それで保護
立法
をやらなければならないのでございますけれども、この保護
立法
がないためにこれはざる法案です。このざる法案というものは車の片輪で歩いてるようなもので、このできておる売春法ではとても動くことはできないのですから、その大事な保護
立法
を今
国会
に出さないとおっしゃる難点は、
立法
の一番の難点は、どこにございましょうか。
中村梅吉
28
○
国務大臣
(
中村梅吉
君) 実は
法務省
といたしましては保護処分に関する
立法
措置
については、かねがね研究をし現にその具体化をはかっておるのでありますが、この保護処分については、少年法等による保護処分は、一応日本の国としても経験いたしておるのでありますが、売春婦に関する保護処分につきましては、全く新たな研究でございますので、的確な結論を得ることに非常に困難をいたしておりますが、これはしかしながらそれぞれ研究を進めまして、近くその成案を得られるかと思うのでありますが、
法務省
が一応の保護処分に関する成案を得ましても、これはいろいろな各省庁にもまたがることでありますので、
関係
各省庁と十分協議をして、その上でさらに今度はいろいろ御苦労いただいております売春対策
審議
会に
諮問
をいたきなければなりません。実は私といたしましては、できるだけすみやかに成案を得、今
国会
に
提案
をいたしたいと思っておるのでありますが、先日あのように申し上げましたのは、私どもの所だけの作業ならば的確なことを申し上げられますが、他の
関係
各省との協議、それから売春対策
審議
会に参りますと、これまたいろいろの角度から御研究をいただくことになると思いますので、その
審議
会の
答申
が一体いつ得られるかということは、私どもにもこちらだけで勝手に想定することが困難だと思うのであります。かような次第でございますから、まあおそくも来
国会
の冒頭と申し上げましたが、今
国会
のうちに私どもとしてはぜひ
提案
の運びにいたしたいと、かような熱意をもって目下その作業を進めておるような次第でございます。
宮城タマヨ
29
○
宮城タマヨ
君 私もその売春対策
審議
会の
審議
委員
の一人でございますので、大へん責任を感じているのでございます。そこで、今少年法というお話が出ましたが、私どもこの売春対策の
立法
を第二
国会
以来ここでもう鋭意研究しておりますときに、この少年法式にもしできるものなら非常に簡単ではないかと言って、初めはできない、この
立法
措置
としてできないということでございましたが、途中になりまして、いやこの
家庭裁判所
で全部取り扱うということもできるということを法制局の方からお話がございまして、私は非常に喜びましたのでございます。そこでこの少年法流に、全部この
家庭裁判所
で取り扱って、そして
家庭裁判所
でまかなわれないものは、今のこの少年
事件
と同じように検察庁に逆送するということにしまして、そしてこの
家庭裁判所
一本でいったらどうでしょうかということを私は願っておりますが、その少年法でいけないというわけはどこにございますか。
中村梅吉
30
○
国務大臣
(
中村梅吉
君) 少年法の保護処分と、またこれはよほど角度が違うんじゃないかと、そこでまあいろいろの角度から、新たな
立法
でありますから研究をいたしておるのでございますが、できるだけ早い
機会
に成案を得まして、
関係
各省との協議も済しまして、私どもといたしましてはすみやかに売春対策
審議
会に
諮問
の手続きをいたしたい、かように考えておるのであります。そこで売春対策
審議
会に正式
諮問
をいたしまして、本格的な討議をしていただきます前に、売春対策
審議
会の
幹事
会を開いていただきまして、
幹事
会の手はずなどもおきめをいただく、これらも並行して実は進めておるのでありますが、二十九日に大体売春対策
審議
会の
幹事
会を開いていただくように手配をいたしております。それと並行してこちらの準備を進めまして、
幹事
会の御相談をしていただき、
審議
会の本格的の
審議
に入っていただく、こういうような
方法
で目下鋭意進めておりますので、御了承をいただきたいと思います。
宮城タマヨ
31
○
宮城タマヨ
君 この少年法式でと申しましょうか、少年法じゃございませんから。少年法式でまかなえないという
理由
としては、こう伺っていいんでございますか。少年犯罪者と売春婦とはいろんな意味で角度が違うと、こういうふうにおっしゃったようでございますが、そうでございますか。もしそうでございましたら、実際は検挙されて警察から検察庁に送られるという今までの実情を見ますというと、これは売春だけでなくて、やっぱり窃盗その他があるんでございます。でございますから、私はこれは少年法式に扱えば一番いいと思うのです。ただ、
家庭裁判所
で取り扱われるなら、いろいろめんどうな、たとえば子供と一緒にあんなものを連れて来られても困るという、そういうことも一応考えられると思うのですけれども、これを
刑事裁判
所に持っていくといたしますと、どういうことになるだろうということが問題になるのです。
中村梅吉
32
○
国務大臣
(
中村梅吉
君) 御
承知
の
通り
売春防止法
によりますと、対価を受けてあるいは受ける約束で不特定の人と禁止された行為をするものというのが刑罰の対象になりますわけでありますが、この中には御
承知
の
通り
いろいろな内容のものがあると思うのです。たとえば職業があるけれども、かたがた不特定多数の者とそういう行為を行う者、あるいは全然職業がない結果、そういうことになっていく者、その他いろいろ分析いたしますと、内容的に異なるものが多いかと思います。少年犯罪の場合でありますと、これは
一つ
の犯罪的性格等からも参りますが、売春の場合におきましては、先ほど来も御
意見
がございましたように、職業の
関係
、いろいろな
関係
がありますから、保護の段階におきましてできるだけ解決に努めていく、どうしても保護の段階で解決のできない者について、さらに保護処分を、保護矯正処分の
方法
を講ずる、こういうような仕組みになっていくと思うのでありますが、そこで少年の問題でありますが、少年にして
売春防止法
に該当する者が出た場合には、これはもちろん
家庭裁判所
で
事件
の
処理
をし、保護処分に付すべき者は保護処分に付する、こういうことにいたしたいと、目下のところ考えておりますが、成人の場合につきましては、また少年法の
制度
とは別の角度の研究をいたしまして、別の角度の取扱い、保護処分をいたきなければならぬ、かように考えましたので、それらの点につきまして、いろいろと研究を進め、具体案を目下作りつつある次第でございます。
宮城タマヨ
33
○
宮城タマヨ
君 それでは
家庭裁判所
で扱えないとしたら、
刑事裁判
所で扱うというお考えでございますか。
中村梅吉
34
○
国務大臣
(
中村梅吉
君) まだそれらの点につきましては、具体的に結論が出ておりませんので、研究過程にございますので、いろいろ衆知を集めて適切な結論を得たいと、かように考えます。
宮城タマヨ
35
○
宮城タマヨ
君 この
家庭裁判所
……
局長
見えておりますね、もし
法務省
もまた売春対策
審議
会も
家庭裁判所
でこれを取り扱う方がいいということになりましたら、
家庭裁判所
側はどういう御
意見
をお出しになるでしょう。
菰渕鋭夫
36
○
説明員
(
菰渕
鋭夫君)
家庭裁判所
といたしますと、売春の取扱いは、今おっしゃいました
通り
に、一部少年の取扱いと共通するものもございますけれども、実際の面を考えてみますと、ことに少年では、御
承知
の
通り
そういう人が存在するということだけで、非常に気持が乱されるということもあると考えます。また家事の場合ですと、全然そういう世界を御存じない方もたくさんございますということで、また誤解を招きやすいということも考えられますので、ただいまの物的設備から申し上げますと、すぐにお引き受けすることは非常に困難ではないかと考えております。しかし別に――ただいま
家庭裁判所
の中に少年部と家事部がございます上に、もう
一つ
婦人部というものも設けることができて、別の建物でも設けることができるということになりますと、少年の取扱いになれた方々に、また同じような保護の育成の考えをもって、婦人の更生に当ることもまたいいことじゃないかと考えておりますが、ただいま私の方で研究しておりますが、
法務省
の方から正式に何らのお話もございませんで、まあ大体準備しているということが実情でございます。
宮城タマヨ
37
○
宮城タマヨ
君 一応それは承わっておきます。 保護
局長
見えておりますか、ちょっと保護
局長
に……。もし今の問題でございますね、今の問題で
家庭裁判所
で取り扱わないで、
刑事裁判
所で取り扱うということになりますと、そうすると、この第十九
国会
でございましたか、刑法の一部
改正
がございまして、初度目の
執行
猶予の保護観察を受ける、これは私も
立法
ができましたときに喜びました。ということは、これで売春婦を救えるならばいいなというので、
一般
の人の救いの手にもなりますけれども、この売春婦の取扱いについて苦労していた矢先でございますから、ことに喜んだんでございます。もしこれを
刑事裁判
所で扱わなければならないという場合の救いの手というものは、ここに非常にしぼられるであろう、こう思うのでございます。そうしますというと、今の一体保護司でまかなえるかどうか、ことしの予算を見ますというと、これはなかなか保護司があまりふえているようでもございませんけれども、あれは五万二千人だったと思いますが、それがまだ四万台でございましょうか、この点について、保護
局長
何か手をお打ちになっておりましょうかどうか、ちょっとお伺いいたします。
福原忠男
38
○
政府委員
(福原忠男君) ただいまの売春防止の
関係
で保安処分を法務当局として考慮していたんでございますが、この問題を今宮城
委員
の仰せのような初度目の
執行
猶予の場合に、保護観察に付するという形で、
刑事裁判
所の方でお取扱いになるという形自体については、まだ検討を要する面が私はあると思っております。ことに保護局の
関係
といたしましては、その点についてはいわば疑問と申しましょうか、一応の懐疑の念を持っている、たとえば今の初度目の
執行
猶予につきまして、保護観察に付するということ自体の実績も、実はこれは先生方の御努力でああいうような画期的なものを日本の法制に持ち込んだのでありますが、それの実績は、必ずしも皆様の御期待に浴っているというように考えられない実情であります。従いまして、その点につきましてはなお研究きしていただきたいということを前提といたしまして、御質問の点につきましては、これをたとえば保護観察に付する、保安処分の一種としての保護観察ということも考えられましょう。そのような場合も、受け入れ側の保護司
制度
というものが、御存じのようにこれはいろいろな、あるいは釈迦に説法かもしれませんが、民間の方にお願いするということが保護観察の本質的な面で効果があるということで、これは全くの民間の方のいわば自発的な人道愛的な気持の御発露として、ほとんど
法律
の上でも全く無給の
制度
として保護司
制度
が置かれております。この方々に保護観察の大事な面を実行していただいておるわけでありますが、従いましてわれわれといたしましては、そのような
制度
が、たとえば
刑事裁判
所を通じまして保安処分としての保護観察あるいは初度目の
執行
猶予に付されますところの保護観察というような
制度
になりますところで、これを受けます保護司の方の実績があがらなければ、これは期待するところが必ずしも実現できないと、こう考えますので、実はいかなる
制度
になりましょうとも、この保護司
制度
の充実ということが、当面保護局としての最大の眼目でございますので、実は昨年以来先生方などにお願いいたしたり、または
国会
の
方面
に、いわば今まで割合に
法務省
的にじみにやっておりまして御理解を願えていない
部分
があると思いますので、昨年度はかなりこの
方面
において努力いたしたつもりでございますが、実は予算に組みましたところ、必ずしもわれわれの要求するところの何分の一にも当らないような、多少の増額は認められましたが、なお至らないものでございますので、まあ保護司
制度
の拡充ということは、一に今かかって予算の拡充ということにあると思っておりますので、その
方面
で十分努力いたしまするし、皆様方の御理解ある御援助を願いたいと、こう考えております。
宮城タマヨ
39
○
宮城タマヨ
君 それは実際は、私はこの前の
委員会
でも申しましたけれども、売春婦自体を
内閣
が甘く見ているのじゃないかと思っているのです。どうして一体
法務省
で、今話はこの保護観察の保護司の問題ですけれども、一体今年度で保護司を充実しておかなかったら、この仕事はどうなりましょうかということなんです。だけれども予算面では削られ削られ、影も形もなくなっておりますが、これは実際この
法律
を実施したら、私は大へんな問題が起るのじゃないかと、ほんとうは心配しているのでございます。けれども今の御
説明
で一応は納得することにいたしまして、それで今度は
法務大臣
にお伺いしたいのですけれども、一体女の入れものをどうしようとお考えになっているのでございますか。これは厚生省は一時保護所やあるいは保護施設を作るという、これは大事なことですけれども、それ以上に私は迫っている問題は、一体
法務省
の施設をどうするかということでございますね。これをまあ保安処分の作り方によっていろいろあるとはいいながら、どちらにしても、今ある刑務所を使うか、少年院を使うか、そうでなかったら完全なものを作るというこの三つよりほかに私はないと思っておりますが、どういうお考えでございましょうか。しかし予算に
一つ
も計上されていない現状でございますが、
一つ
お答え願いたいのでございます。
中村梅吉
40
○
国務大臣
(
中村梅吉
君) 場所によりましては、既設の刑務所の一部を使用しなければならないこともやむを得ないかと思いますが、私どもの目下の考えといたしましては、何とかして大都市だけでも売春婦
関係
の保護矯正の処分をいたしまする施設をぜひ作るようにいたしたいと、かように今熱意をもって現在の保護処分に関する法制の研究とあわせて、将来のことを実は考えておるような次第であります。そういう意味からいいましても、私といたしましては売春の処罰
関係
の方を担当しておりまする人間として、できるだけ早く保護処分に関する法制を立案を終りまして
国会
に
提案
をして、そうして今
国会
中に議決を願えれば非常に仕合せでありますし、もしどうしても売春婦対策
審議
会等の
審議
が日数を要してその運びにならないまでも、今
国会
で
提案
をして、継続御
審議
をいただいておきますならば、来年度の予算を予算化す上において、次の
国会
で
提案
をいたしまするよりもよほど運び方が順調にいくのではないかと、かように考えまして、鋭意事務当局を督励いたしまして、その成案を実は急いでおりまするような次第であります。
宮城タマヨ
41
○
宮城タマヨ
君 やむを得なければ刑務所を使うと、今の状態でございますと、結果としたらそういうことになるかしれませんが、私はどうしてもこれは犯罪者扱いは、犯罪者の入れられている女子刑務所に入れることは不賛成でございます。ということは、もうこれは少年の年令なんかも今やかましくいわれておりまして、悪いことをしたやつは皆処分したらいいじゃないか、というような
一般
の風潮が流れておりますが、私はそうじゃなくて、やはりあの少年の犯罪者といえども、せめて二十才くらいはどうかして教育をして、刑務所へ入れないでやっていきたいという願いを持っております。その私の願い心は、女たちに対してやっぱり刑罰として入れるその刑務所でなしに、新たな構想によって……、しかし処遇については私はかなりきびしい考えを持っておりますけれども、刑務所に入れないように、施設を新たに作っていただきたい。そうしてこの厚生省
関係
の更生保護のことを先ほどちょっと申しましたけれども、これは
刑事
処分を受けるような婦人でございましても、終局の目的はやっぱり日本のりっぱな、押しも押されもしないお母さんを作るということが、私はこの
刑事
処分の終局の目的じゃないかというように考えております。そういう意味合いにおいて、やっぱりその生活補導や職業指導をするといったようなことを主にしました
一つ
りっぱな施設を、これは金を使っていただいてもよろしゅうございますから、考えていただきたいと思いますが、それにしましてはもう日にちがございません。もうあと一カ年でございますから、大へん気がせいておりますけれども、何とか御処置を願いたいと、特に
法務大臣
にお願い申しておきます。私はきょうはこれだけでよろしゅうごがいます。
赤松常子
42
○赤松常子君 最後に一点。今の家庭
局長
に宮城
委員
がお尋ねになったその御答弁の中に、家裁の中でそういう問題を取り扱うところすらもできていない、こういう非常に心配な御答弁でございましたのですが、こういうこともまた家裁のやはり
機構
の
改正
充実ということになると思うのでございます。そういう点で具体的に何かお考えがございましょうか。法務当局にそういう点のお考えがすでにございましょうか。非常に心配でございますので、そういう点ございましたら教えていただきたいと思います。
菰渕鋭夫
43
○
説明員
(
菰渕
鋭夫君) 御質問の
趣旨
は、こういう売春のことを取り扱う部ができてないということでございますか。
赤松常子
44
○赤松常子君 婦人部を作ってというようなお話で、私大へんいいと思うのでございますが、大へんまだまだ追ってというお考えの段階なのでしょうか。もう少しそこをどういうふうに
機構
を改革するという構想を練っておられましょうかということです。
菰渕鋭夫
45
○
説明員
(
菰渕
鋭夫君) 成年の売春につきまして家裁で扱うということになりますと、家裁の性格がちょっと変ってくると思いますが、何しろそういうものを、成年の売春婦の保安処分とか、保護更生について、決定を家裁でするか、あるいは普通の
裁判所
でするかということにつきまして、まだ成案について何らの私らも知識を持っておりませんので、内々研究はいたしておりまするけれども、まだ確定的なお話を、
一つ
も
関係
方面
からいただいておりませんので、ちょっとそれはこうするとすぐには申し上げかねますけれども、もし皆様がそうするのが一番適当だとおっしやれば、またある程度それをすぐに具体化する準備は研究はしておりますけれども、今
法律
上はそういうものがございませんので、そういかないというように申し上げたわけであります。
赤松常子
46
○赤松常子君 四月からそういう
事態
が起ることは明白なんでございまして、いろいろそれに対して業者との問題があるとか、中に入っている人のいろいろないざこざであるとか、きっと持ち込まれることは明瞭でございますので、そういうことに関して早く扱う窓口をお作りいただきますように、これは
法務大臣
にも早くその点をどちらが扱うかということ、それに対してどういう処置をなさるか、その基準でございますね、早く早くお急ぎいただきたいことを要望申し上げる次第でございます。
菰渕鋭夫
47
○
説明員
(
菰渕
鋭夫君) 個々のケースにつきましては、未成年の売春婦につきまして、各地方の条例の
違反
もございまして、そういうものを取り扱っておりますから、そういうものと同じように今のところは考えて、成年ですからその点は変るかもしれませんけれども、その準備は、個々のケースについては、各
裁判官
がそれぞれ心組みができております。
山本米治
48
○
委員長
(
山本米治
君) 本日は、これにて散会いたします。 午後零時五十六分散会