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1957-03-12 第26回国会 参議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十二日(火曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     山本 米治君    理事            雨森 常夫君    委員            青山 正一君            郡  祐一君            小林 英三君            田中 啓一君            岡田 宗司君            河合 義一君            小酒井義男君            宮城タマヨ君   国務大臣    法 務 大 臣 中村 梅吉君   政府委員    法務政務次官  松平 勇雄岩    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省民事局長 村 上朝一君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局総務課長)  海部 安昌君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○滞納処分強制執行等との手続の調  整に関する法律案内閣提出、衆議  院送付)   —————————————
  2. 山本米治

    委員長山本米治君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  本日は、初めに下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  御質疑の方は御発言を願います。  私が一、二御質問いたしたいと思いますが、この下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律別表に掲げてありながら、今まだ開庁していない簡易裁判所が数カ所あるということを聞いておりますが、いかがでございますか。
  3. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 御指摘の通り、今、簡易裁判所全国で五百六十カ所でございますか、約五百六十カ所ございます。そのうち六、七庁は未開庁ということになつておりまして、ほかの簡易裁判所でかわつて事務をとつておるということになつております。
  4. 山本米治

    委員長山本米治君) その事務はどこでやつておるのですか、ほかの裁判所で便宜やつておるということになるのですか。
  5. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 裁判所裁判所法規定がございまして、そういう場合に、ほかの簡易裁判所事務の取扱いができるということになつております。
  6. 山本米治

    委員長山本米治君) さらにお伺いしますが、なぜまだ開かれておらないものを別表に掲げてあるのですか。開けるようになつてから別表べ掲げたらいいわけでしよう。
  7. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) その点は初め裁判所法ができましたときに、新しく簡易裁判所というものの制度ができまして、全国のどこどこへ置くということを一斉にきめたのであります。その後、現実に開設していつた。庁舎の関係で、当時非常に戦争後で、事情が悪かつたものですから、開設できないという所がかなりあつたのですが、だんだん少くなつてきて、現在その程度になつております。
  8. 山本米治

    委員長山本米治君) その地域の住民から不便を訴えられるとか、早急に開いてくれというような要望がありますか、どうですか。
  9. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) そういう所もございますが、結局その地元の方のだんだん事情が変つて参りまして、必ずしもそれほど今のところすぐやつてくれという所ばかりではないのであります。ただ、そいつを今廃止するということになりますと、これはまたそれでは困るというふうな事情になつております。
  10. 山本米治

    委員長山本米治君) 今の未開庁の数カ所については、今後はどういう方針でいかれますか、今のように廃止しては固ると言われると、実際開けないものはやむを得ないとして、別表から削つていかれるのか、あるいは別表はそのままにしておいて、なるべく早く開庁して、別表の事実に沿うようにしていかれるか、その辺の御方針はいかがですか。
  11. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) これはもう開設後十年になりますので、いつまでもそのまま放つておくわけにいかぬと思います。私どもといたしまして見通しをつけて、廃止すべきものは廃止するというふうに、この二、三年来簡易裁判所の整理について準備を実は進めておるのでありますが、まだ準備が整わないので、御審議を仰ぐことになつておりませんが、早急に何か措置したいと思つております。
  12. 山本米治

    委員長山本米治君) ほかに御質問はございませんか。  ちよつと速記をやめて。    〔速記中止
  13. 山本米治

    委員長山本米治君) 速記を始めて。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。(「なし」「討論なし」と呼ぶ者あり)  別に御発言もなければ、討論を終結したものと認め、これより採決を行います。  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の御挙手を願います。    〔賛成者挙手
  14. 山本米治

    委員長山本米治君) 全会一致でございます。よつて本案は、全会一致をもつて原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、同じく策七十二条による自後の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 山本米治

    委員長山本米治君) 御異議ないと認めます。  それでは例により、可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     雨森 常夫  青山 正一     郡  祐一  小林 英三     田中 啓一  岡田 宗司     河合 義一  小酒井義男     宮城タマヨ   —————————————
  16. 山本米治

    委員長山本米治君) 次に、滞納処分強制執行等手続調整に関する法律案議題にいたします。  まず、政府から逐条説明を聴取いたします。
  17. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 本法律案につきまして、逐条的に御説明申し上げます。  まず、第一章総則の策一条でございますが、本条は、この法律滞納処分強制執行、仮差押の執行または競売とか競合する場合における手続調整のため、国税徴収法民事訴訟法競売法等規定特例を定めたものであることを明らかにいたしております。従いまして、この法律規定のない事項につましては、当然これらの法律が適用されることになるわけであります。  次の第一条は、この法律使つております二つの言葉につきまして定義をあげておるのでございますが、まず第一項は、滞納処分定義といたしまして、「国税徴収法による滞納処分及びその例による滞納処分をいう。」となつております。国税徴収法は、国税滞納がありました場合に、それを収税官吏強制的に取り立て手続を定めておるのでございますが、この国税徴収法滞納処分規定を、他の多数の租税公課等に関する法律におきまして準用いたしておるものであります。もつとも、第何条を準用するという形でなく、国税徴収法による滞納処分の例によるという形で、租税公課徴収についてこの規定を引いておりますが、それらのものをすべて含めましてこの法律において滞納処分という言葉使つておるわけでございます。  次に第二項におきまして、「収税官吏等」の定義があげてございますが、これもそれぞれの法律によりまして、収税官吏という言葉に当らない徴税吏員その他の名称で、滞納処分執行する権限を有する増すべてを含める意味で、この言葉定義をあげておるわけでございます。  第三項におきまして、有体動産不動産定義をあげてございますが、有体動産につきましては、民事訴訟法ではこの言葉使つておるのでございますけれども、国税徴収法におきましては動産という言葉でありまして、記名社債あるいは記名株式等は、勅産という言葉の中に含めませんで、これを有価証券としてあげてございます。民事訴訟法国税徴収法とで違いますので、これを一定することが必要と思いいますので、民事訴訟法にいう有体動産を指すのであるということにいたしたのでございます。従いまして、ただいま申し上げました記名株式記名公社債等民事訴訟法において有体動産として扱つておりますものを含めることになるというのであります。また不動産という言葉も、民事訴訟法におきましては、不動産に関する所有権ばかりでなく、地上権永小作権等不動産という言葉で表わしておりますが、国税徴収法の方はそうなつておりませんので、これも民事訴訟法の用語に従うということを明らかにいたしたのでございます。前回も申し上げましたけれども、強制執行なり滞納処分対象になります財産は、動産不動産船舶のほかに、いろいろな財産があるわけでございますが、債権その他の財産権のようなものは、この調整措置対象といたしておりません。それは、債権等につきましては、調整必要度が低いということから、特に必要度の高いものをこの際取り上げて調整をはかるという趣旨で、債権等は含まれておりません。また、第三項に有体動産と申しておりますが、これは民事訴訟法にいう有体動産に対する強制執行手続によつて差し押えられる財産をいうわけでありまして、動産でありましても、民事訴訟法有体動産に対する執行手続によらない動産は、おのずから除外されるというわけであります。従いまして、自動車抵当法におきまして抵当権対象になつております自動車、あるいは航空機抵当法建設機械抵当法等によつて抵当権対象になります航空機建設機械等も、調整措置対象からは除外されるわけであります。自動車などにつきましては、私債権に基く強制執行、あるいは抵当権の実行と滞納処分とが競合して行われる必要度もあり、またそれに対する要望もあるかと思うのでありますが、御承知のように、自動車につきましては、国税徴収法規定が非常に簡単でございまして、自動車差し押えたときには、登録官庁、すなわち陸運事務所でありますか、そこに差し押え登録嘱託をするという規定が一カ条あるだけであります。本来動産でありますから、収税官吏自動車占有を取得することをもつて差し押え効力を生ずるのか、あるいは不動産と同様に、債務者差し押えがあつた場合に、通知することによつてその効力を生ずるのか、ということも規定上明らかになつておりません。たまたま大蔵省の方で、国税徴収法全面改正ということの作業を始めております関係がございまして、自動車等につきましては、国税徴収法及び最高裁判所規則に定めております執行手続に関する規定、これらの整備を待つて強制対象として取り上げるということが適当であろうと考えまして、自動車等はこの法案では対象にしていないわけでございます。  次に第二章は、滞納処分が先に行われまして、その同じ財産強制執行によつて差し押えるという場合の規定でございまして、第一節で有体動産、第二節で不動産及び船舶についての規定を設けております。  第三条でありますが、本条は滞納処分によつて差し押えられておる有体動産に対しても、強制執行による差し押えが許されることを明らかにいたしまして、その場合の差し押え方法としては、執行吏が「差し押える旨の書面収税官吏等交付することによつてする。」となつております。一般に、動産差し押えは、執行機関が物を占有することによつて行われるのでありますが、この場合は、滞納処分によりまして、まず収税官吏等占有を取得しておりますので、後に行われる執行吏による差し押え方法として、かような特例を設けたわけでございます。第二の差し押えが行われました場合に、債務者がその事実を知らないことがあつてはいけませんので、執行吏からその旨を債務者通知することにいたしておるのであります。  第四条は、重複して差し押えが行われました場合の自後の手続に関する規定でありますが、二重に差し押えが行われまして、それぞれの手続が並行して進んでいくということになりますと、いろいろ混乱を生じますので、原則としては、初めに行われました滞納処分の力を進行いたしまして、後に行われました民事訴訟法あるいは競売法による手続は、差し押えたままの状態で進行をとどめることにいたしております。従いまして、民事訴訟法競売法による換価等手続は、滞納処分手続が進行しておる間はやらないわけでありますが、滞納処分による差し押えが、何らかの理由解除になりますと、焼化法による手続の力を進行する、かようにいたしております。四条のただし書きで「強制執行続行決定があつたときは、この限りでない。」とありますが、これは、あとに出て参ります第九条の規定による裁判所決定を指すわけでありまして、これにつきましては、後ほど御説明申し上げます。  次に第五条は、先に行われました滞納処分による差し押え解除された場合の処置でありますが、滞納処分が先に行われまして、収税官吏等差し押えております場合に、租税が納められた、滞納がなくなつたという理由によりまして、差し押え解除いたしますときに、直ちにそれを滞納者に返還いたしますと、債権者差し押えの方が目的を逃しないことになりますので、滞納処分による差し押え解除すべきときは、収税官吏がその有体動産執行吏に引き渡すということにいたしております。ただ民事訴訟法による差し押えは、債務者債権者及び債務者以外の第三者占有しております有体動産を、民事訴訟法によつて差し押えるためには、その占有しておる第三者提出をこばまない場合に限つて許されるのでありますが、国税徴収法による差し押えの方は、第三者占有をこばむ、こばまないにかかわらず、滞納処分による差し押えが行われておりますので、滞納処分解除になりまして、執行吏に引き渡す場合には、法の一般原則に基くわけであります。この場合に、占有しておりました第三、引き渡しをこばみますと、この財産に対しては、民事訴訟法による強制執行ができないことになりますので、先に行われました強制執行による差し押え効力を失うことと定めております。  次は第六条でありますが、先に行われております滞納処分手続が進行いたしまして、目的物たる財産を公売して、代金収税官吏等が取得いたしました場合に、まず滞納処分の手数の滞納処分費及び滞納期間租税等の弁済に当てるわけでありますが、それでもなお残りがありました場合には、国税徴収法によりますと、残つたものを滞納音交付することになつております。この場合は民事訴訟法または競売法による差し押えも行われておりますので、その売却代金残りというものは、滞納者交付せずに、執行吏交付することにいたしました。この執行吏が受け取つた金を、有体動産強制執行によつて換価した場合の売得金とみなすことにしたのであります。第二項におきまして「執行吏交付を受けた金銭及びその交付を受けた日は、配当に関しては、それぞれ有体動産強制執行による売得金及び競売期日とみなす。」とございますが、第一項によつて執行吏交付されました金銭を、強制執行による売得金とみなして配当するということのほかに、配当加入、つまり差し押え債権者以外の債権者配当に参加いたしますためには、競売期日までに配当加入の申し出をしなければならぬことになつておりますが、この場合は、民事訴訟法による競売というものが行われません関係上、いつまでに配当加入申し立てができるかということを明らかにする必要がございますので、第一項による交付を受けた日をもつて競売期日とみなしまして、この日までに配当加入ができるということにいたしたのでございます。収税官吏等が売却いたしました代金残りがなかつたときには、その旨を執行吏通知いたしまして、強制執行手続の方もそれで終るということになるわけであります。  次に第七条でありますが、これは第三条におきまして滞納処分が先に行われている場合の差し押え方法は、執行吏が「差し押える旨の書面収税官吏等交付することによつてする。」といたしましたのと対応するわけでありまして、かようにして行われました後の強制執行による差し押え解除する場合の解除方法も、差し押え解除するという書面収税官吏交付することによつてするということにしておるのでございます。  次に第八条でありますが、これは滞納処分がまず行われた後に、強制執行による差し押えが行われました場合に、滞納処分手続が何らかの理由で進行しない。その間債権者が待つていなければならないということから、いろいろな弊害や不公平も生じておるのでございます。提案理由の際に述べられましたように、債務者債権者からの債権執行を、取り立てを回避するために、ことさら租税滞納いたしまして、収税官吏等による差し押えをしたまま放つておくという事例がしばしばございまして、そのために債権取り立てがむずかしいという非難が非常に多かつたのであります。しかも債権者の油断を見澄まして租税を納めて滞納処分解除してもらい、直ちに財産をほかへ処分してしまうということによつて、ある財産に対する債権者の追及をのがれてしまうという例も少くなかつたのでございます。かような場合に滞納処分手続の方を原則としては進行するわけでありますけれども、例外的に滞納処分手続をとめまして、強制執行なり競売法手続の方を進行する道を開く必要があるのではないかというところから、第八条に強制執行続行決定申請という規定を設けたわけであります。  この申請がありました場合には、第九条によりまして裁判所が相当と認めるときには強制執行の方を続行するという決定をするわけでありますが、この決定がございますと、先に行われております滞納処分の方はそのままの状態で停止いたしまして、後に行われました強制執行手続の方が准行していくわけであります。第九条で「相当と認めるときは、」という言葉使つてございまして、「相当と認めるとき」というのは一体どういう意味であるかということが衆議院における審議の際にも御質疑があつたのでありますが、この強制執行手続の方を進行いたしましても、何らの実益のないような場合がございます。たとえば強制執行によつて目的物を換価いたしましても、租税その他の公課原則として私債権よりも優先して徴収できることになつておりますので、手続の費用及び優先する租税公課を支払いますと、債権者の受け取るものは何も残らないような見通しのような場合、かような場合に強制執行続行いたしましても、実益がございませんので、かような場合は相当と認められない事例であろうと思うのであります。相当と認める場合というのは、先ほど申し上げましたように、債権者債権取り立てを回避するために、ことさらに滞納処分を、まあ今の差し押えをそのままにしておくというような場合は、まさにこれに当ると思うのであります。いろいろ具体的な事情につきまして、債権者滞納者、双方の事情をしんしやくいたしまして、ことに強制執行の方を続行することによつて債権者の受ける利益またそれによつて債務者の受ける不利益等を比較考量いたしまして、裁判所の判断で強制執行の方を続行すべきであるという事情がある場合に、続行決定が許されるということになつておるのであります。どういう場合ということは、個々に列挙することは非常に場合が多いだけに困難であると思いますので、かような抽象的な表現になつておるわけであります。  次に第十条でありますが、これは続行決定のあつた場合の効果でありまして、先ほど申し上げましたように続行決定がありますと、滞納処分の方の執行をとめまして、強制執行手続を進行するということになりますが、この法律は、後に行われた手続原則として進行させない建前をとつておりますので、この法律の適用については、滞納処分による場合においては、強制執行による差し押えの後にされたものとみなしまして、強制執行による手続の方を進行するということにいたしたのであります。第三項におきまして「強制執行続行決定があつたときは、収税官吏等は、滞納処分による差し押に係る国税及びその滞納処分費並びに地方税その他の徴収金徴収するには、執行吏にその交付を求めなければならない。」となつておりますが、これは滞納処分手続におきまして滞納処分にかかる租税のみならずその他の租税公課についても収税官吏の方に交付要求が出ておるわけでありますが、強制執行続行する場合に、当然その交付要求が、強制執行手続において効力を保存するものといたしますと、配当に当ります裁判所事情が明らかでない場合が出て参りますので、強制執行手続において交付を求めようとする租税その他の公課は、あらためて執行吏の方にその交付要求を出さなければならぬということにいたしたのであります。  第十一条は仮差し押えが後に行われる場合の規定でございまして、大体において滞納処分あと強制執行が行われる場合と同様でありますので、その規定を準用しておりますけれども、ただ、仮差し押えの性質上、配当というようなことがまだ行われない状況にありますので、若干の差異を設けておるわけであります。  次に第二節は不動産または船舶に対する強制執行でありますが、第十二条におきまして競売開始通知規定を設けております。不動産または船舶につきましては、動産の場合のように執行機関占有取得するという差し押え方法でなく、競売手続開始決定という裁判所の裁判によつて差し押えが行われるのでありますが、滞納処分によつて不動産または船舶差し押えられております場合にも、競売手続開始決定、すなわち言いかえますと、強制執行または競売法による差し押えが行われるものであることを明らかにいたしております。第二項では、その開始決定が行われたこと、すなわち差し押えがあつたことを執行裁判所から収税官吏等通知することになつております。  次に第十三条でありますが、これは動産についての第四条の規定と同様でありまして、後に行われました強制執行または競売法による競売手続は、滞納処分による差し押え解除された後でなければ手続をすることができないことといたしておりまして、原則としては滞納処分の方を進行するという建前をとつております。  十四条は、滞納処分による差し押え解除通知でありますが、これは収税官吏不動産について滞納処分による差し押え解除しました場合には、自後裁判所の方で民事訴訟法または競売法による手続を進行しなければなりませんので、収税官吏等通知をさせることにいたしております。  またその半面、後に行われた民事訴訟法または競売法による手続の方が完結いたしました場合に、取り下げその他の理由によりまして後の手続の方が終了いたしました場合には、そのことを収税官吏等通知しなければならぬということにしたのが第十五条でございます。  十六条は競売申立登記の抹消であります。不動産または船舶について民事訴訟法または競売法による差し押え、すなわち競売手続開始決定がありますと、執行裁判所嘱託によりまして、登記官吏は、競売申し立てがあつたことを登記をするわけでありますけれども、滞納処分の方が進行いたしまして、競売によつては権利が移転したという登記をするところまで参りますと、もはや民事訴訟法または競売法による手続を進行する余地がなくなりますので、この登記を職権で抹消するということにしております。  第十七条は、滞納処分の方の手続が遊行して売却代金収税官吏等が得ました場合に、その代金残り、すなわち滞納処分費滞納にかかる租税公課あるいは交付要求にかかる租税公課等に充てました残りがあつた場合の処置につきまして、不動産の場合と同様の規定を設けておるわけであります。第十八条は、仮差し押え執行についての規定でありますが、趣旨は、動産の場合の仮差し押えについての第十一条の規定と同様であります。この場合、第二項、第三項は少しおわかりにくいかと思いますが、滞納処分の方の手続が進行いたしまして、売却代金残りがあつたという場合に、国税徴収法によれば、その滞納者交付することになるわけでありますけれども、第二の差し押えがありますために、これを滞納者交付せずに、不動産に対する強制執行の管轄裁判所交付しておくわけでありますが、これが仮差し押えでなく、本差し押えでありますと、直ちにこの代金を一般債権者配当に充て得るわけでありますけれども、仮差し押えでありますので、仮差し押え債権者債権額に相当するものは供託をいたしまして、なお残りがあればこれを債務者に返すことになりますが、かような関係は、ちようど仮差し押え執行がされている不動産を、他の債権のための強制競売によりまして売却いたしました場合の売却代金の場合と同様になりますので、これと同様のものとみなすことにしたのであります。  次の第十九条でありますが、第十八条までは不動産に対する強制執行なり、滞納処分についての規定を設けましたが、登記される船舶というものは、不動産に準じて扱われることになつておりました手続上、ほとんど不動産の場合と差異がないのであります。不動産に関する規定登記される船舶に準用いたしております。この登記される船舶と申しますのは、二十トン以上または二百石以上の船だけが登記されることになつております。  次の第二十条でありますが、これも前条までの規定は民事訟訴法による競売、いわゆる強制競売の場合の規定として書いてございますので、競売法による競売、すなわち抵当権執行のための競売につきましては、そのつど同じところに規定を設けずにおきまして、第二十条で一括して強制競売の場合の規定を準用するという形にいたしております。  次の第三章は、強制執行が先に行われまして、後に滞納処分が行われる場合の規定でありまして、その第一節は、有体動産滞納処分する場合であります。  第二十一条におきまして、強制執行による差し押えがされている有体動産に対しても、滞納処分としての差し押えができるということ、及びその差し押え方法なり通知なりにつきまして、第二章の場合と同様の規定を設けております。  また第二十二条は、強制執行が先に行われました場合に、滞納処分の方の手続原則として進行しないという趣旨を表わしておるわけでありまして、第二章の場合と照応する規定であります。ただし書きに「滞納処分続行承認の決定」という言葉がございますが、これは第二十六条におきまして、裁判所滞納処分の方の続行を承認する決定をすることになつておりまして、すなわち滞納処分手続が後に始まつたにもかかわらず、その方の手続を進行するという場合には、滞納処分続行してよろしいという裁判を裁判所がするわけであります。その場合のほかは、後に行われた滞納処分手続は進行しないということになるわけであります。  第二十三条は、先に行われました強制執行差し押え解除する場合の規定でありまして、これも第二章の逆の場合に照応する規定であります。  第二十四条は、滞納処分による差し押え解除の場合に、解除通知執行吏にするということでありまして、これも第二章と同様の規定であります。  第二十五条、これは強制執行を中止玄たは停止された場合に、後に出された滞納処分の方を進行してもらいたいということを収税官吏から裁判所に請求することができることにいたしたのであります。租税その他の公課は、原則として一般私債権よりも優先して取れることになつておりますので、強制執行手続で換価金に換えられましても、租税その他の効果は優先的に支払われるわけでありますから、そちらの手続を進行したからといつて、特に租税公課徴収に不利であるということもないのでありますが、たまたま債権者債務者が通謀いたしまして、租税徴収をのがれるために強制執行による差し押えをしておくというような場合があるといたしますと、いつまでも弁済の猶予をすることによつて強制執行による差し押えがされたまま手続が進行せずにおるということも考え得るのであります。さような場合には、収税口吏の方から滞納処分続行の承認を求めることができることにしたわけであります。  第二十六条は、その場合の裁判の規定でありますが、この場合にも、裁判所が今あげましたような滞納処分の方を続行させる方がいいと認めるに足る事情がありますれば、滞納処分続行を承認するという決定をするわけであります。  その決定がありましたときは、滞納処分の方が、後に行われたにかかわらず、手続を進行いたしまして、強制執行手続の方はとまつてしまうということになるわけであります。そのことが第二十七条に規定してございます。  第二十八条は、初めに仮差し押え執行がございまして、それに対して後に滞納処分による差し押えをする場合の規定でありますが、これにつきましては、第二章の手続と大体同様でございますので、これを準用することにいたしております。  次に第二節は、不動産または船舶に対する滞納処分でありますが、第二十九条におきまして、初めに民事訴訟法による競売手続開始決定があつた不動産に対しても、滞納処分差し押えをすることができるということを明らかにしております。  第三十条で、この場合でも、初めの手続解除にならない限りあと手続は進行しない。ただ続行承認の決定があつたときだけ、後に出された滞納処分手続を進行するという趣旨でありまして、動産の場合と同様の規定であります。  第三十一条は、初めに行われました民事訴訟法による競売手続の力が、申し立ての取り下げ等によりしまして、競落に至らずして完結いたしましたときに、それを収税官吏通知する規定であります。  三十二条は、滞納処分に関する差し押え登記の抹消の規定でありまして、これは十六条に相当する同趣旨規定であります。  三十三条は、これは動産に対する滞納処分続行承認の決定等の規定を、不動産の場合にも津川しておるのであります。  第三十四条は、仮差し押え不動産に対しまして、後に滞納処分による差し押えが行われる場合の規定でありますが、これも動産の場合と同様の規定を設けております。  第三十五条は、船舶についての規定であります。これも不動産とほぼ同様の手続になりますので、それを準用いたしております。  次に三十六条でありますが、これは競売法による競売、すなわち抵当権実行のための競売につきまして、民事訴訟法規定による競売の場合の規定を準用しているわけであります。  第四童に雑則といたしまして、第三十七条として、政令及び最高裁判所規則べの委任の規定がございますが、相当詳細な規定が設けてございますけれども、収税機関と裁判所執行機関という二つの系統の違つた役所の間の手続でございますので、いろいろこまかい点につきまして、法律執行のための規定が必要かと存じまして、滞納処分に関する事項は政令、強制執行競売に関する事項の方は最高裁判所規則の方で定めるという規定を設けているのであります。  附則の第一次でありますが、これは前回申し上げましたように、収税官吏及び執行吏その他の執行機関に対しまして、この法律趣旨を十分周知徹底させますために相当期間が要りますので、施行期日を本年の十月一日からと規定いたしております。  なお、附則の二聖、三項は、従来の不動産につきまして、不動産または登記された船舶に対しまして、仮差し押え執行が重複して行われている場合がございますので、これらの場合を本法による手続にのせていくというための経過規定でございます。  以上をもつて逐条説明を終ります。
  18. 山本米治

    委員長山本米治君) これより質疑に入ります。次回に主税局、国税庁、自治庁、最高裁判所等に質問したいと思いますが、今日は主として法務省関係質疑をお願いします。
  19. 小林英三

    小林英三君 第一条の趣旨でありますが、国税徴収法による滞納処分民事訴訟法による強制執行、仮差し押え競売法競売等の手続調整をはかるために規定特例を定めるということでありますが、この法律ができるまでは、かなりいろいろのいきさつがあつたと思いますけれども、今回はじめてこういうような規定特例を設けられるというのですが、今までにどうしてこういう法律を長い問出さなかつたのか、その理由を伺います。
  20. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 御承知のように、滞納処分の行われました動産不動産に対しては、重複して民事訴訟法による差し押えは許されないということ、また逆に民事訴訟法による差し押えが行われております財産に対しては、滞納処分手続を重複して行うことができないという解釈が、多年一般の通説となつているのでありますが、それでは先ほど例に申し上げましたような、一力におきまして債権取り立てを回避するために滞納処分を悪用する。逆に税金の追及をまぬがれるために債権者とぐるになつて強制執行をしているというようなことを防ぐことができないわけでありまして、多年在野法曹その他からもかような調整規定が必要であるということは言われて参つたのであります。大蔵省が主としてこの徴税の力の主管庁でありますが、大蔵省と当時司法省との間で相当折衝があつたようでありますが、詳細な経過は存じませんけれども、大へん要望があつたにもかかわらず、かような調整についての両省間の意見の一致を見なかつたというように承知をいたしております。最近におきまして、完全に大蔵省と法務省との間に意見の一致を見まして、かような調整措置を具体化する法案を立案することになつたわけであります。
  21. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 これは法務省べ聞くのが適当か何かわかりませんが、収税官吏ですが、それから徴税吏員なんというのは、どういう資格のある者でございますか。そしてどこで養成しているのでございますか。
  22. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) その点につきましては衆議院の法務委員会でも御質疑がありまして、国税庁及び自治庁の財務部の方からいろいろ答弁をいたしたのでありますが、それを聞いておりますと、資格と申しては別段定めていないようでありますけれども、研修等の機会をできるだけ活用いたしまして、徴税吏員収税常夏に対する訓練には万全を期しているというふうに聞いております。詳細な内容につきましては、それぞれ所管の政府委員から御説明申し上げる方が適当かと存じます。
  23. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうしましよう。
  24. 山本米治

    委員長山本米治君) 他に御質問はありませんか。  それでは本日は本案に対する質疑はこの程度にとどめまして、次回には大蔵省、自治庁、最高裁当局等の出席を求めて質疑続行いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午前十一時五十三分散会