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1957-02-14 第26回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十四日(木曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     山本 米治君    理事            雨森 常夫君            一松 定吉君            棚橋 小虎君    委員            青山 正一君            大谷 瑩潤君            吉野 信次君            河合 義一君            宮城タマヨ君            辻  武壽君   国務大臣    法 務 大 臣 中村 梅吉君   政府委員    法務政務次官  松平 勇雄君    法務大臣官房経    理部長     竹内 壽平君    法務省矯正局長 渡部 善信君    法務省人権擁護    局長      鈴木 才藏君    公安調査庁長官 藤井五一郎君    公安調査庁次長 高橋 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局家庭    局長)     菰淵 鋭夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件  (法務行政基本方針に関する件)  (昭和三十二年度法務省関係予算に  関する件)   —————————————
  2. 山本米治

    委員長山本米治君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  本日は初めに法務行政基本方針に関する件及び昭和三十二年度法務省関係予算に関する件についてでありますが、これらにつきましては、前回、法務大臣から法務行政重要施策といたしまして、更生保護充実強化矯正行政の刷新、ことにそれらの一本化、その他、国内治安対策人権擁護活動の推進等々にわたりまして、御見解の一端を示されておりますし、また、三十二年度予算につきましては、事務当局から概略説明を聴取いたしておりますので、本日はこれら法務省関係予算ないし法務行政基本方針等につきまして、委員各位から十分な御質疑をお願いいたします。
  3. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 法務大臣に、きょうは少年法中心にいたしまして、法務省の機構について数点お伺いしたいと存じております。  大臣は、この間盛岡で新聞記者にお会いになりましたときの記事としまして、毎日新聞には、少年法改正をするつもりであるというようなことをおっしゃった記事が出ておりましたし、それから東奥日報には、少年法廃止検討しておるというような記事が出ておりました。だから改正かあるいは廃止について検討しておる、その廃止についての検討というこのことは、少年暴力事件にかんがみて、少年法廃止を必要と考え検討しておるがと、こういう記事が出ておりました。そこで、私はちょうどこの点についていつも伺いたいと思っておりましたのですが、きょうはぜひ少年法廃止とか、あるいは一部でも改正しようとかとおっしゃるその点は、どういう点でございましょうか、まず伺いたいと思います。
  4. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 実は私も東京へ帰りまして、いろいろな人から今宮城さんお話のようなことを聞かれましたが、事実とは大へん違います。ちょうど駅長室記者会見をいたしましたときに、新聞記者の諸君から、少年法改正の計画があるのか、こういう質問がありました。いや、それはどういう意味かと、年長少年に関することか、こういって聞きましたら、そうだ、なかなか地方新聞記者でも、年長少年年少少年犯罪状況なんかについては知っておると見えまして、そういう話でした。その点は省内におきましても、いろいろ議論のあるところで、大体近来の凶悪犯罪は、少年の中でも年長少年、十九才、二十才のものが多い。それから年少少年の方は、犯罪を犯してもこれを補導し矯正することは、大体において目的を達しておるけれども年長少年についてはなかなかそれが困難である、そういうことから省内において議論があるけれども、まだこれについては何らめどは立っていない、目下検討中なんだ、こう答えただけなんですけれども、何かむしろそれよりは具体的に進行をしておるのは監獄法改正の方であって、これは四十何年も前にできた監獄法を、今監獄刑務所と変り、あるいは拘置所という名称になり、それから刑罰も、だんだん応報的な観念が抜き去られて、そうして教育刑の方向へ着々と具体的に進んでおる、監獄法改正だけは、これはさらに急がなければならぬ問題だと思うという話をしただけで、少年法改正とか廃止とかいうことは言った覚えがないのですけれども新聞にはそう誤まって伝えられておるようであります。この点、私ども注意の足らなかった点もあるかと思います。今後こういうよらな、地方へ出ましたときに、誤まった報道をきれることは、した方も見識にかかわるでしょうし、された方もこれは非常に迷惑をし、いろいろ関心の深い方々に御心配をかけますから、私ども注意をいたしたい、かように考えます。
  5. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 新聞記事はともかくといたしまして、この少年法に対して、年令とかあるいはいろんな面で、何かお考えがおありではございませんでしょうか。その点を、もしおありでございましたら伺いたいのでございます。
  6. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) まだ私としましては就任早々でございますし、これをどうしたらいいという的確な見当をつけておらないような次第であります。省内なりあるいは特に検察関係の方から言いますと、年長少年の場合でも、やはり少年法の一本で参りますから、たとえば、家庭裁判所が取り扱いまして、その取扱いが非常に穏やかに過ぎて、それではとてもこれだけの犯罪を犯した少年をたわめて更生させることができないと思いましても、検事側に別段不服申し立ての権利を与えられておりませんから、検察関係から言いますと、こういう場合には、検察官意見を上級の裁判所なりどこなりべ、何か申し出る制度を作ってもらいたいという意見は一部にあるようです。しかしこれが直ちに取り上げていいことかどうか、私どもも目下これから慎重に研究をいたしたいと思っておる課題一つでございます。
  7. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうすると、今のところで一番問題になっておりますのは、年令の点でございますね。
  8. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) そうです。
  9. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 年令の点については、やはり年令が引き上げられました関係で、十九、二十というのが非常に悪質で、保安の面から申しましたら、とてもこんなものを家庭裁判所で扱わしたら大へんだということは耳よりな話なんで、ちょっとそれだけ聞きますというと、もっともらしくて、今日本全体といたしましては、やはりもう一ぺん年令引き下げる方がいいじゃないかということを申しておる向きが多いように私どもも伺っておりますし、過般当委員会の方で調査にいらっしゃいましたその報告によりましても、各所で年令の問題が問題化しているというような報告だったのでございます。そこで、私はそれでは問題になっている保安の面からどうだろうかという意味合いで、この間から調査してみましたところが、ちょうど東京の、これは家庭裁判所の昨年の六月まで、一年間の統計を見ますというと、刑事処分相当として検察官に逆送されました事件のうちで、これは道路交通取締り違反はのけまして、これはずいぶん多い数でございますが、それをのけまして、ほんとう刑事犯だけについてでございますというと、この逆送されました少年事件が百五十三件あります。その百五十三件のうちで、これはつまり家庭裁判所から検察官に送り返した事件が百五十三件であります。その結果がどうなったかということを調べてみましたら、この百五十三人のうちの男子十八才四十人、十九才九十七人になっております。それから女の方は十八才が一人、十九才が三人でございます。そして、これだけの者がどうなったかといいますというと、公判廷におきまして、ほんとう懲役刑を与えられ、言い渡されました者は八十五人でございます。有罪判決を受けた者は。その有罪判決を受けた者のうちの二十一人は執行猶予になっておりまして、それに保護観察がついております。だからこれを実際で見ますというと、実刑を受けた者というのは、逆送されましたうちの半分ないということでございます。四五%くらいがほんとうの刑を受けておりまして、あとはみんな野放し無罪放免になっております。一体この事実は何をいっているか、私どもはこの十九才、二十才を監獄べぶち込むことにしたらさぞ世の中は安心できる、つまり保安の点から安心だと思いますけれども、そうでなくて、むしろ保護観察、二十一人は保護観察に付せられておりますけれどもあとの者は、あとの五五%という者は、もう少年院保護されるのでなくて、むしろ社会野放しにされておりますから、よっぼどこれは保安の面からいっても心配なんじゃないのでございましょうか。これは実際の数はこれには二十才の者が一人も逆送されておりません。十九才と十八才が一番多いのでございますが、ところがこの少年から申しますというと、共犯で五、六人、二、三人で一緒にやりました者の一番強いのが検察庁べ逆送されておりますが、あとの者は少年院へ行っております。少年院に入った者は一年なり一年半なり少年院で窮屈な教育を受けている。だからむしろえらいことをやったら公判にかかって、そうして無罪放免になる、だから少年院へ行くよりも刑務所へ送られる建前で、行ってみたら……。しかし私どもから言えば、少年刑務所にやりたくない、あすこにやって子供がよくなると決して思っておりません。だからやりたくないのだけれども、やるすべがない。やろうと思っても、検察官が逆送を受けても、公判廷にいってみんな野放しにしてしまう、これは数が示しておることなんです。だから年令引き下げというようなことも、ただ抽象的にあんな者は出て青たら危ないそと言うけれどもほんとうに逆送されて野放しになっていることを考えたら大へんな私は問題だと思っております。だから軽々しくただ年令引き下げようというような観念的なことは、よほど私はこれは社会の人にもこういう数字を表わしまして、考えていただかなくちゃなりません。子供らもだからほんとうは逆送される方が好きなんです。まああんな少年院に長くいて拘束されるよりよっぽどいい”、だから同じやるならえらいことをやれというふうに事実はなっている。それは少年院子供についてお調べになったら皆ではございませんけれども、悪質な者はそういうことを言っておるのです。でございますから、まあ心ある日本治安について、あるいは日本の青少年保護教育、育成というようなことについて考える人は、決して私は年令引き下げるということは言えないだろうと思います。まあ私はそういうふうに数字から考えましてそういう結論を出しておりますが、法務大臣の御意見を聞かしていただきます。
  10. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私といたしましては、少年年令引き下げということは毛頭目下のところ考えておりません。  それから今御指摘になりました百五十三人のうち、有罪は八十五人しか出ておらない、こういうお話で、私どもこういう統計的な数字はまだ詳しく存じません。御指摘に従いまして十分一つこの際調査をしてみたいと思います。この八十五人を除く人たちは一体どうなっておるのか、こういうような点は非常に重要な問題だと思います。大体家庭裁判所から逆送される事件は、家庭裁判所で処理するにはふさわしぐない困難性を持った事件が逆送されるのだと思うのですが、にもかかわらず、こういう結果が数字の上に出ておるといたしますならば、それらについて制度の上においても、その他の点からも十分研究いたしたいと思います。
  11. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今大臣のおっしゃったこの材料は、刑事処分相当として検察官送致された事件はどうなったかという、これらの東京家庭裁判所の調べた統計が詳しく出ておりますから、ごらんいただきたいと思います。そこで、先ほど法務大臣のお言葉にもあったのでございますが、私自身もとの非常に悪質な子供少年審判のときは、検事を立ち会わせるというような、検事を抜きにしたというようなことを考えないで、検事を立ち会わせる、あるいは弁護人を立ち会わせるというようなことは、これは法務省でよく御研究いただきたいと思います。  私ついせんだってヨーロッパの少年裁判所の様子をみんな見て回りました。やはり重い者については検事が立ち会っております。そしてその方が結果がいいというようなことも考えておりますから、研究なさるときにそういうことも一つ加えていただきたいと思います。  今伺いました年令の点は第一点でございますが、今度その次には法務省矯正局保護局とがございますが、少年院少年鑑別所矯正局の管轄になっております。これについて大臣の御意見を伺いたいと思います。これでいいかどうか。つまり私は保護少年取扱いでございますから、保護局にこれは属さしていただきたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。
  12. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 私もあまりこういう方面のことは詳しくありませんが、在野時代からどうも少年関係はむしろ保護の方で扱ったらどうかという感じを持っておりました一人でございますので、一つまだ早々でございますから、そういうような研究を進めるいとまもございませんが、今後事務当局とよく協議をいたしまして、検討して参りたいと思います。
  13. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私が参議院に参りましてちょうど十年間法務ばかりやっておりまして、ことに子供の問題に非常に関心を持っておりますのでございますが、そういう十年間ずっと少年院なんかの成り行きを見ておりますというと、少年院のみならず、鑑別所その他見ておりますというと、非常に少年院やり方なんかが刑務所式になっているような感じがいたすのでございます。それは感じだけでなくて、実際管区の中に少年院が入れられますというと、管区長監督下にあるわけでございます。一体その管区長任命ということは、少年法中心とした取扱いについて理解を持ち、同情を持ち、ほんとう子供に対する愛情を持っているかどうかというようなことが管区長任命について考えられているだろうかということでございます。その点いかがでございましょう。そして全管区長の中で一体何人が保護関係経験のある人でございましょうか。
  14. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) それでは私からお答え申し上げます。宮城委員少年院運営刑務所式になっておるのではないかという御指摘、われわれといたしまして、さようなことがないように十二分に考慮いたしておるのでございますが、宮城委員のごらんになりましてさようにお考えになるということになりますると、まことにわれわれの今後の運営にさらに戒心していかなければならないことだと、よく今後も気をつけていきたいと思っております。ただいま少年院監督する管区長に果して少年院のことがわかっておる者があるかと、経験を持っておる者がおるかというお尋ねでございますが、その点は、任命の際に十二分に考慮いたして任命をいたしておるのでございます。現在管区長は全国八名おるのでございますが、少年院経験もしくは少年院経験を持っております、院長をいたした経験のあります者は二人ございます。それから一人は少年院長ではございませんが、昔の少年審判所長をいたしておった者が一人おります。なおその他の管区長も大体行刑出身ではございますが、現在少年問題に非常な関心を持って、少年院運営に努力をいたしておる者ばかりでございますが、その点私といたしましては、少年院運営には管区長いずれも関心を持たなければならない義務として検討いたしております。と申しますのは、行刑関係監獄関係のことは一応軌道に乗っておるのでございますけれども、いまだ少年院運営軌道に乗ったとまで私はいかないと思います。さような点から少年院運営鑑別所運営ということが矯正の分野における今一番大きな課題になっておりますので、管区長といたしましてはこの問題に非常な関心を持って運営に当っておるわけでございます。
  15. 山本米治

    委員長山本米治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  16. 山本米治

    委員長山本米治君) 速記を始めて。
  17. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ただいまの矯正局長説明を聞きますと、管区長任命について、少年法もとにしての心配はないようでございますが、実は最近こういうことがございました。ある少年が、少年院送致決定を受けましたときに、その弁護人になっていらしった方が、つい最近まで管区長をしていらしって管区長から弁護士におかわりになりましたが、その管区長、今は弁護士が、その少年院送致決定を受けた子供を弁護なさったらしいのですが、そのときに、この少年少年院に送らないでぜひ家庭に返してほしい。それは、少年院に送れば、少年院という所は絶対子供がよくなる所でないから、ぜひ家庭に返してくれといって、判事のところに願い出たという事実があるのです。そこで家庭裁判所判事が非常に憤慨なさいまして、私のところに訴えにいらしった。つい最近まで監督をしていた管区長が、少年院教育する所じゃないよ、少年を悪くする所だよというようなことを、一体どうして言えるかと、非常に憤慨のあまり訴えられたのでございますけれども、これは、しかも東京でそういうことが言えるということはおかしいと思いますが、しかし地方に行ってあんまり少年法研究しないような、そうして今まで行刑畑にいらしった方が、子供に対するいろいろな指揮をなさるという所で、私は少年院院長ども非常に苦しんでいらっしゃるようなところがあるんじゃないかと、十分に察しられる点があるのでございます。しかしこれをただ御参考までにお含み下ざいまして、今後の人選については十分お考えいただきたいというふうに思っております。  それからその次に、この前、榛名少年院事件と、その事件を起した四人の者が、東京愛光女子学園送致されるときに、手錠をはめておったかはめていなかったかということについて、お調べ願いたいということを申しておきましたが、その点を一つお答え願いたいのでございます。
  18. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 榛名女子学園で収容いたしております女の子たちが騒ぎましたために、これを東京にございます愛光女子学園に移しました事柄について、この前お尋ねでございました。詳細取調べをいたしましたので、その結果を申し上げます。
  19. 山本米治

    委員長山本米治君) なるべく大きな声で願います。
  20. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 事件は昨年の十月三十日と十一月の一日の二日にわたって群馬県下にございまする榛名女子学園子供たちが騒いだ事件があったのでございます。この榛名女子学園と申しますのは、女子ばかりを収容しておりまする中等少年院特別少年院とを併設いたした少年院でございます。この事件の発生いたしました当時、収容少年は百三名であったのでございます。この少年院の定員は二百三十六名でございますが、当時収容しておりましたのは百三名であったのであります。この少年たちがなぜさような事件を起したかと申しますと、実はこの少年院の一教官が、特別少年院送致を受けておりまするある一人の少年を特別に目をかけて可愛がつたのであります。そのことに、何と申しましょうか、端を発しまして、中等少年院に属する少年たち対立感情を起しまして、その間がうまくいかなかったのであります。自分らに対してむしろ特別少年をかわいがるということに不満を持ったことがもととなって、中等少年院子供たちが十数名ぐるになりまして騒ぎ出したのであります。先生たちやり方がべんぱだというようなことから騒ぎ出したわけでございます。当日三十日でございますが、寮舎のとびらを足で蹴とばしまして娯楽室に入って来まして手当り次第窓ガラスをこわすというような乱暴を始めましたので、職員初め院長もいろいろ説得いたしましたけれども、なかなかそれを聞き入れない。ついに室外に出まして、教官官舎が構内にございますが、その官舎に参りまして窓ガラス等を破壊するような乱暴までもいたしたのでございます。そこで院長少年たちをいろいろと説得し、会議室に集めまして、いろいろ話しました結果、ようやく沈静するに至ったのでございます。一応これでおさまったと思って一おったのでございますが、その翌日の一日の夕食が終りましてから、またまた中等少年院の一部の者がけんかを始めまして、そしてついに食堂外に飛び出し、破りましたガラスの破片を持って、それを静めようとする職員に抵抗してくる。そして院外にまで脱出しようということにまで殺到して参りましたので、職員たちが一致協力してこれを取り静め、ようやく説得いたしまして、平穏に落ちつけきせることができたのでありますが、その間一名の少年が逃走いたしたのでございます。この事態が起りましたために、さっそく管区の方からも二部長が参りましていろいろ調査をし、いかにこれを収拾するかということを少年院長にも諮りまして協議いたしたのでございますが、どうしても首謀者と目せられる十名の少年を他に移送しなければ事鮮の収拾がむずかしいという結論になりましたので、四名を東京にありまする愛光女子学園に移送し、五名を名古屋の明徳少女苑と申します少年院に移送し、残り三名を大阪にございます交野女子学院に移送するということにきめまして、四名を愛光女子学園に移送したのでありますが、その際、ただいま申し上げますごとく、非常に当時院内で乱暴をいたしました愛光女子学園に移送しまする四名の少年のうち、これは自動車ででもずっと送ればよかったのでありますが、汽車に乗せて職員がつき添って参ったのでございます。華中の乗りおり等の混雑の際逃亡のおそれもありましたので、その際手錠を使用したのでございますが、しかし上野の駅につきましてからは自動車が迎えに参っておりましたので、これに乗せて連れて打ったようなわけで、汽車の乗降の際、混雑のときに手錠をやむを得ず使用したのであります。これは女の子手錠を使用するということはまことに見苦しい格好でございまするが、四名の少年を呼び寄せてずっとつぶさに検討もいたしたのでございます。いずれもこれはなかなか相当あばれた女の子でもあります。精神医学あるいは心理学の方から十二分に検査もいたしたのであります。いずれも精神障害の疑いのある子供たちばかりであります。非常に興奮性者たちであり、現に三十日、一日と二日間にわたってあばれましたその状態からいたしまして、護送途中に逃走等のおそれのあるために、やむを得ず使用をいたした次第でございます。大体概略説明を終ります。
  21. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この事件はよくわかりましたが、少年たちが言うように、この教官が偏愛したというような事実はございましたのですか。その点いかがですか。  それと、もう一つは、もしその事実があったということであったら、その教官をどうなさいましたか。教官の処置について。  それからいま一つ心配しますのは、院長が最近におかわりになった、そういうことが私幾分事件の原因になっておるのじゃないかと心配いたしておりますが、その点いかがですか。
  22. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これは女の子たちのいろいろ感情の対立しておる面からさように感じてやったのじゃないかと思っております。それで、特別に偏愛したという事実につきましては、ちょっと確証を握るわけにも参りませず、十二分にその点は注意をいたしておるのでございますが、その確実な点は握っておりません。  なお、榛名女子学園園長が最近、昨年でございますか、かわったのは事実でございます。前の園長が定年に達して、その後任に北海道の北海少年院院長榛名女子学園園長にかえたのであります。そのかえましてからの間もなくの事故でございます。今度の園長相当年輩の方であり、しかも教育に多年携わった老巧な先生でありまして、少年たち取扱いにつきましては十二分に親心をもって対処し得るりっぱな方だと実は感じておるのでございます。
  23. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その職員はいまだ依然としていらっしゃいますか。職員の処分はどうなさいましたか。
  24. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 別にこれは懲戒処分でも何でもございませんので、管区で異動等は、人事権は委任してある職員でございますが、これはそのまま異動はしなかったと思っております。この点はよく調査いたします、
  25. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ことに少年院において起りました事件においては、少年にもよく納得のいくように、そうして違った少年院女子少年院に移管しなければならないというような点につきましての少年の責任というものは、非常に明らかにしなければならない、うやむやのうちに過ごすということは、次のまた問題をかもすことになると同様に、私は職員の責任というようなことを、少年の前ではっきりさせたことがあったかないか。それで、あったとしたら、その職員は私はりっぱに処分していただかなければならない。なければならないということを完全に子供に了解させるようにしなければ、何でもうやむやということが、ああいう種類の子供たちを騒がせる私はもとだと思っておりますから、ほんとうにその偏愛の事実があったかなかったかというようなことは、十分矯正局でお調べ願いたいと思っております。そして、もしあったとしたならば、その職員を首切れということじゃなくて、ほんとうに責任を明らかにする方法は、教育的な方法が幾らもあると思います。  それから手錠の問題ですけれども、私さっき大臣にも、どうしても保護が行刑のにおいが濃くなるということを申しましたけれども、今日では院長の裁量によって手錠もはめてもいいことに法律はなっております。けれども、今度のその榛名から東京に参ります者が手錠をはめられたと同様に、私、名古屋べ行った少年も、それからことに大阪に行った少年も、手錠をはめられて長い距離を連れて行かれたに違いないと、こう思っておりまして、このことは研究に値することだというように思っておりますけれども、そういうふうに手錠をはめるということはやはり教育から行刑にだんだん移っていくのじゃないかというような感じを、私に持たせる大きい一つのものなのでございます。これは一つ根本問題として大臣に伺ってみたい。手錠の問題でございますから、次に移りまして、これでやめます。  それからこの女子少年院院長の問題ですけれども、榛名はあのりっぱな院長として子供らが非常に敬服しておりました方が定年でおやめになって、あとにいらしった方もまたこの道の人だったらしいのでございますけれども、その動揺があったというようなことが、やはりおさまりを悪くした一つの問題ではないかと、私は推察するのでございますが、とにかく交野にいたしましても、愛光にいたしましても、その他全国的にいえば七、八カ所の女子少年院院長は、大てい御婦人でございますが、女子少年院、たとえば榛名のような所は、ぜひ婦人の少年院長を置いていただきたい。それは婦人でいいこともあるし、悪いこともありますが、結局それを総決算してみます益というと、やはり女の院長女の子にはいいと私は思っております。それでございますのに、交野のあの有名な東院長がおやめになったあとに、ちゃんと管区から刑務所長を持っていらしったということなんか、私はまことに納得ができない。交野の東院長なんかのやり方については、実に私はりっぱなものであるというようにかねがね考えておりましたが、そのかわりにちゃんと刑務所長の古手を持っていらっしゃるということなんかは、私はやはり保護が行刑にだんだん移っていく大きい証拠の一つだと思っておりますが、局長のお考えを伺いたい。
  26. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 女子少年院長に御婦人の方が適当だということ、まことに私もさように思っております。なかなか実は御婦人のりっぱな方を得ることが困難でございまして、りっぱな御婦人を得ますれば院長におかえすること、ちっとも私ちゅうちょする者ではないのであります。実は大阪の交野の少年院長であられた東さんがおやめになって、そのあと刑務所長がなった、これはまことにおっしゃる通りさような事実があったのでございます。この東院長は非常にりっぱな院長であったのでございますが、これは現在保護関係で大阪の近畿地方更生保護委員会委員をしておられるわけでありますが、この間の御事情はよく私は存じませんが、また保護の面で本御活躍を願っておるわけでございまして、少年院でも働いていただき、また更生保護の面でも働いていただき、いろいろな面から更生して参りまする少年たち、少女たちのために尽していただきますれば全体としてけっこうではなかろうかと私は思っておる次第でございます。なお、あとかわりました刑務所長は、これは小和田所長と申しまして、名古屋の刑務所長をいたしておるのでございます。刑務官の古手というわけではないのでございまして、実は小和田所長も現在矯正におきましては優秀な所長でございます。健康を署しまして、実は少年院院長をいたしてもらったのでございますが、この万もたしか昭和八年ごろの東大を出た優秀な刑務官でございます。あらゆる面から行刑の近代化ということについては非常な熱意を持った人でございます。決していわゆる、何と申しましょうか、刑務官のこちこちというようなものとは多少趣きを異にしたりっぱな人でございます。その辺一つ御了解のほどをお願い申し上げます。
  27. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私はうわさとして聞いておりましたのは、やはり刑務所長で任にたえられない健康状態だったから少年院長に持ってきたということをうわきとして聞いておって、けしからぬことだなと思っておりましたが、今局長に聞いたら、それは事実だと、まことにけしからぬ。私は最もりっぱな人で最も健康である人を少年院に送っていただきたいと思っておりますのに、行刑にたえないから少年院に持っていった。ことに女だからいいだろうというようなことだったかもしれませんけれども、これは局長の口からそういうことを聞くのは款ははなはだ心外にたえない。どうぞ、過ぎたことは仕方がございませんけれども、もう少し保護矯正の問題を局長考えていただきたいと思っております。大体から言いますというと、それは榛名に女子を置きたいというときには、私も局長と一緒になってぜひ女子院長をと努力したことも、また局長が非常に努力されたことも私はよく知っております。けれども、その結果適任者がなかったということになったのでございますけれども、このむずかしい仕事を、ことに女の仕事としては、女の畑としてはまだ十分に耕されていないこの面に女を採用しようということは、事実むずかしいことには違いございませんけれども、しかしもう少年院ができましてから何十年たちます。今なおこうして人が得られないというようなことは、私はこれはやっぱり法務省の責任だと思っております。なぜもっとお育てにならないか。これは家庭裁判所の方の調査官とも人事の交流というようなこともお考えになり、そうしてやはり広く勉強させていただいて、この道の人を一つ作っていただきたいと思っております。どしどし外国にも送り出して、外国の様子も見ておるりっぱな女子少年院長を作っていただくように一つ考えを願いたい。あれもこれも申しますというと、結局はこれは予算の問題にもからんで参りますことなんでございますけれども、たくさんの私は質問を持っておりますが、きょうは私はこれだけにしておきます。
  28. 山本米治

    委員長山本米治君) 私から一つ質問したいのですが、最近日本弁護士連合会の会長の海野さんから一つ要望書を受け取っておるのですが、事件は印旛少年院のことで、そこの教官の千田、戸島両教官がそこの収容少年に対して非常な暴行を加えたということなのですが、その事件について相当調査しておられますかどうか。また、どういう善後処置をとられたか、お伺いしたいと思います。
  29. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) これは実はさような趣旨の投書がございまして、ざっそく調査をいたしたのでございます。ところがさような事実がどうもあるというふうに認めましたので、さっそく千葉の検察庁に捜査をお願いいたしたのでございます。で千葉の検察庁におきまして、収容少年並びに教官につきまして、詳細なお取調べをなすったのでございますが、結局事実がございまして、それぞれ処分をいたしたのでございます。検察庁の方におかれましても、これを刑事処分に付すべきか否かということにつきまして、慎重に御検討を願ったのでございますが、少年たちの処遇について、これらの職員が熱心に補導はいたしておったのでございますが、何と申しましょうか、感情にはやりました結果、過ちをしたというふうに御認定になり、刑事処分にまでする必要はなかろうという御見解で、起訴猶予処分になったのでございます。この千田、それから戸島両教官はこの事件で最も中心的な人物であったのでございます。しかし千田教官は、たしか早稲田を出た若い教官でございます。実は印旛少年院は前にも、去年……おととし暴動を起しまして、相当新聞紙上をにぎわした少年院でございまして、ここの建て直しということについては、院長初め教官は一生懸命努力して参ったのでございます。印旛少年院特別少年院一つでございまして、相当質的に悪質な少年が比較的多く入っております関係から、非常に処遇がむずかしいのでございます。さようなところから、職務には熱心でございましたが、行き過ぎがあったという点を認められまして、結局不起訴になったのでございますが、われわれの立場といたしまして、少年に対していかなる原因があったといたしましても、さような暴行に出るということは許すべからざる、教官としての適格を欠くという見解をもちまして、千田教官並びに戸島教官は懲戒免職に付したのでございます。なおそのほかに、これに加わっておりました四名の教官は、それぞれ減俸処分に付しまして、程度の軽い者は懲戒処分に付し、それから教務課長、次長、院長はそれぞれやはり監督責任をとりまして、いずれも減俸処分に付して、一応この事件は終ったのでございますが、その後の少年院の収拾につきましては、管区の方におきましても、優秀な職員をそれぞれ配置をいたしまして、少年院の陣容の建てかえに奔走し、ようやく現在少年院を明朗に運営しつつあるわけでございます。
  30. 山本米治

    委員長山本米治君) 今後こういう事件が起らないようにするために、何か措置をおとりになっておりますか。今の事件事件としてはそれで処理されましたが、一般にそういうことのないようにはどういう処置をとっておられますか。
  31. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 少年院教官がかような暴行措置にいずるということは、これは厳に注意すべき事柄でございまして、かねがねこの点は各管区を通じ、教官に徹底するように申し伝えているのでございまして、この事件のありましてから後も、直ちに通牒を発して、厳にこの点を注意をいたしたのでございます。ただこの少年院教官が、少年たちの、乱暴しあるいは言うことを聞かない者を、いかに処置していくかということ、これは非常にむずかしい問題でございまして、思い余りますとつい直接行動に出るようなことが起りがちでございます。しかし、これらの少年たちが言うことを聞かない、あばれるということは、さらに突き進んでこれを検討しなければならない、それはこの少年たちの精神状態、ことに性格的に偏奇な少年たちがほとんどかような問題を起すのでございます。従いまして、常々この少年たちの精神状態を科学的に検討を加えて、そうしてそれに適するような処遇をしていかなければならないということを特に強調いたしまして、実は三十二年度の予算で、各少年院に精神科の医師を必ず配置するようにということの予算措置を要求いたしたのでございますけれども、ついにこれはいれられなかったのでございます。しかしながら、もしも専門のさような精神科医を置くことができなくても、これは所在の大学もしくは病院等から適当な精神科のお医者さんを嘱託いたしまして、随時来ていただいて診察をしていただく。そうしてさような問題の少年につきましては、それに相応するような処遇をかねてからとるように教官に徹底するという方法をとらしているのでございます。これは精神的に偏奇な者は一種の病人とも考えられるわけでございます。病人は病人として取り扱っていくというような観念を植えつけまして、何と申しましょうか、何でも力ずくでこれを押えていくというのじゃなくて、もっと形を変えた面からこれを押えていくという方向に指導いたしているわけでございます。
  32. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 先だって当院におきまして出張の御報告がございましたときに、榛名少年院について御報告の中に榛名は半数以上が矯正教育に適していない者が入れてあったということがございましたのです。一体少年院で半数以上もその教育のむずかしいというものがあったなんていうことは、これは考え方ではゆゆしい問題です。そうしてこの責任は一体だれがおとりくださればいいかという問題なんです。もしも審判の決定によ的まして送られましたその決定が、つまり判事に日がなかったということになれば、判事の責任だと思いますけれども、しかしこれは旧少年法とは違いまして、新しい少年法では、やはり決定と執行とが別になっておりますから、執行の責任まで判事が負うわけではないので、つまり執行後に送られた少年院での成績については、表面は判事がどうすることもできない建前になっておりますけれども、これは憲法なり少年法なりの解釈というものが一体何かないものかどうか、私はやっぱり普通の裁判と違いますから、判事決定をなさいましても、やっぱり最後まで、社会に出るまでその子の行く先というものを見て下さるのが、私は大事なことじゃないかと、こういうふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。そこで、私は旧少年法のように処分変更というようなことがもしできるものなら、判事によって処分変更していただくのが、今では伺ってみますというと、まあ今できますことは、初等から中等とか、あるいは中等から特少に移すというようなことは、これはできるようになっておりますが、その結果を裁判官に報告するくらいな程度でございましょうと思っておりますが、この辺の問題、一体矯正局が責任を負うべきか、それとも少年裁判所の方が責任を負うべきか、一体どちらなんでございましょうか、御答弁願います。
  33. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 質問にちょっと関連。今のお話がございましたのは、先般私が出張いたしまして、現地で聞いたことを報告いたしたのでありますが、今数字はちょっと記憶しておりませんけれども、半数ばかりの者が適してないということは申し上げなかったはずで、教化するのに困難がある、困難性を感ずるのだということを申し上げたのでございまして、榛名少年院では困難を克服して非常に努力しておることは認められました。その点ちょっとつけ加えておきます。
  34. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ああそうですか。
  35. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 私からちょっと申し上げます。今雨森委員からお話がございまして御了解になっていただいたことと思いますが、ただいま御説明のありましたごとく、非常に困難性を感じておるということの実情を申し上げたので、保護処遇に適してないという趣旨で申し上げたのではなかったということを申してきております。あるいは自分の説明が拙劣であったために、さようにおとりになったかもわからないけれども、実はそういう趣旨なんだということを申しております。そこで、榛名の関係でもさような数字が出ておると思いますが、少年院全体の関係から申し上げましても、そういうふうな数字が実は出ておるのでございます。昨年の十二月十五日現在の在院少年たちの精神状態を調べました数字が出ておりますので、御参考までにちょっと申し上げてみたいと思うのでございます。調査いたしました少年たち全体が男子、女子を合わせまして九千一百二十三名、この少年たち調査しました結果、正常な者が千九百一名、これが大体二〇・八%となっております。それから準正常の者が四千四百三十六名、これが四八・六%、それから精神障害の者が二千七百八十六名、これが三〇・五%ということになっております。そこで、これらの少年たちの処遇の困難性、難易につきまして調べてみますると、普通の者が約五四%、それからややむずかしい者が一八%、それからなかなか処遇がむずかしい者が一八%ということになっておりまして、大体半数ぐらいのところちょっと手のやける少年たちが多いということを申し上げておきます。
  36. 菰淵鋭夫

    説明員菰淵鋭夫君) ただいま榛名少年院のことで御質問ございましたけれども、裁判官は一つ事件を個々に切り離してやりますものですから、あるいはその結果榛名少年院にそういう矯正が非常に困難な者だけが集まりまして、少年院が大へん御苦労なさることが起るかもしれません。裁判官はおそらくその一つ事件につきましては、この少年特別少年院に送った方がよろしいというふうにお考えなすったことがおありだと考えております。ただいまの法制のもとにおきましては裁判とその執行とが機関を別にしておりますので、実に少年に関する限り、裁判と執行とを一つにして、なお裁判後のアフター・ケアーについても、裁判した人が関与し得るのが一番望ましいのではないかというふうにも考えておりますけれども、これは大へんな大きな問題でございまして、絶えず研究はしておりますけれども、まだ結論を得ませんし、また関係の方面でもそれぞれ御研究なすっていると思いますけれども、やはり同様になかなか結論が出ないことじゃないかと考えておりますが、なお会同その他の機会がございましたら、各裁判官にこういう実例があったからなお審判については慎重におやり下さるようにお願いするということを、もう少し伝えるつもりでございます。
  37. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この矯正教育の対象にならないということと、その矯正教育にするのにはなはだむずかしい、てこずるということとは、言葉は大分違いますけれども、しかし内容をせんじ詰めてみたら結局こういうことになって、日本全体の統計を見ましても、やっぱり非常にむずかしいものが多いということは、私は承知するわけなんでございますが、だがここにそんな矯正教育のむずかしい、言いかえてみれば、矯正教育ではなおらない、対象にならないといったようなそういう者が半分以上もいるというようなことを、一体このまま放っておいていいか悪いかということが根本問題じゃないか、ことに私は法制上の欠陥が非常にあるだろうと思っておりますが、こういう点にも触れてみたいと思いますけれども、次回に譲ります。この問題は、私これでおきますが、菰淵局長が見えましたから、ちょっと伺いたい。  一点は家庭裁判所判事というものに女の判事を使う意思はありませんか、ありましようか、そのお考えはどうでしょうかということ、それは、私は、司法官の試験が、女の人で、通りましてからりっぱに研修をした人を、大体におきまして検事には採用しないそうです。それから判事に採用されたとしましても、判事補として十年間、判事補のうちは数回転任をさせられるのだそうでございますが、女子はやはり結婚ということがありますから、こもやっぱり行ってみるというと判事補で続かない。家庭生活と両立しないということになる。それじゃ仕方がないから、結局はほんとに努力してなった司法官で判検事ができないと、今度は弁護士、このまた弁護士ということになると、そんなかけ出しの女を頼むよりも、やはり同じ金を出すなら、ちゃんとした男の経験のある弁護士をたのみたいというのは、これは私は人情だろうと思います。そうすると、結論になりますが、司法官の試験は通っても、女は役に立たない、その地位が与えられないということになって、大へんこれはお気の毒な、また個人的な気の毒だけでなくて、これは問題じゃないかというように思うのでございます。そこで、この家庭裁判所判事、ことに少年係の事件なんていうものは、私は腰を据えてじっくりお母さん心でやって下さるなら、むしろ女の方がいいんじゃないか。そして転任ということもそれで大体解決がつくだろうし、そういう道が開けないものかと、かねがね考えておりましたのですが、まあ東京あたりの家庭裁判所東京のみならず大都市の家庭裁判所におきましては、りっぱな裁判官があって、少年法もりっぱに運営されておりますけれども地方に参りますというと、刑事事件をおやりになった判事ざんが、もう自分の仕事が済んだ合間仕事のように、四時過ぎになってちょこちょこと子供の裁判をなさるというような所が事実あるのでございます、全国を歩いてみますと、それではまことに困るので、やっぱりじっくりその裁判と取り組んでいただくように、まあそのためには地方裁判所から家庭裁判所を独立させていただかなければならないなんていうようなことも先決問題かもしれませんが、その婦人の判事について何かお考えはございませんでしょうか。
  38. 菰淵鋭夫

    説明員菰淵鋭夫君) この御婦人の裁判官につきまして、いろいろ御心配があると思いますが、家庭事件、ことに少年事件になりますと、私も少年事件を多少経験がございましたが、なかなかただいま矯正局長がおっしゃいましたように、普通の少年ではございませんので、非常に反抗する人もありますし、また非常にあわれみを請うような人もあります。普通の刑事被告人を取り扱うよりもずっとむずかしいのでございます。御婦人のみならず、裁判官になりたての方ですと、年令と申しますか、やはり社会経験を経てないというようなことのために、少年と相対していろいろ審問なさいますけれども、やはり何となく信頼性が薄いというような感じ少年に与えるのじゃないかと思います。これはあえて御婦人の裁判官のみでございませんで、若い方がおやりになりますと、その困難を皆さんが訴えられておるわけであります。まだ御婦人の裁判官が実際に仕事をやられてから十年たつかたたないのでございますし、また非常に数も少うございますし、年もお若いというようなことで、案外少年事件をやっておられませんけれども、やがてもう少し皆さんが判事としての御経験もお積みになりまして、また社会的な経験もお積みになりましたら、少年係をやっていただくと、非常に慈母のような気持でじゅんじゅんと説いて下されば、少年も、全部とはいきませんけれども相当のものが、それでもってよくわかるのじゃないかと私は思いますが、ただ、今のところは、裁判官としての経験も少いというようなことからいろいろな障害が起って、また裁判官としての経験を積んでいただくために、民事、刑事とか普通の陪席をしていただくというようなことになっておりますので、外観的には、ちょうど少年につきまして御婦人をことさらに忌避したというような形になっておるかもしれませんが、そういうわけでございませんので、私も関西におりまして、時間的に短かいものでございましたが、裁判所の様子もよくわかっておりますけれども、結局そういうところから少年係の裁判官として非常に御苦労なさる、その御苦労なさっておるととろを、ほかの方が気の毒だというようなところで、その御苦労も峠を越されれば案外よかったのでしょうけれども、そこで、こっちにして上げましょうというようなところがあったのと、やはりほかの裁判官としての経験を積んでいただくということで、ほかの仕事にお願いするというようなことがあったと思うのであります。もうあと四、五年しまして、皆さんが相当のいわゆる判事におなりになりますならば、相当経験を経られまして、少年係とか、あるいは家事の裁判官としても適任になるのじゃないかというように考えております。
  39. 山本米治

    委員長山本米治君) ほかに三十二年度の法務省関係予算について御質問のある方は御発言願います。——では、本日はこれにて散会いたします。    午後零時七分散会