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1957-05-19 第26回国会 参議院 文教委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十九日(日曜日)    午後六時三十一分開会   —————————————   委員異動 五月十八日委員大野木秀次郎君、松澤 靖介君及び加賀山之雄君辞任につき、 その補欠として木島虎藏君、秋山長造 君及び岸良一君を議長において指名し た。 本日委員岡三郎君及び岸良一辞任に つき、その補欠として松澤靖介君及び 加賀山之雄君を議長において指名し た。   委員長補欠 五月十八日岡三郎委員長辞任につ き、その補欠として秋山長造君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     秋山 長造君    理事            有馬 英二君            林田 正治君            矢嶋 三義君    委員            川口爲之助君            木島 虎藏君            木村篤太郎君            左藤 義詮君            下條 康麿君            関根 久藏君            谷口弥三郎君            林屋亀次郎君            吉田 萬次君            安部 清美君            高田なほ子君            松澤 靖介君            松永 忠二君            湯山  勇君            加賀山之雄君   衆議院議員            辻  政信君   国務大臣    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君   政府委員    文部省管理局長 小林 行雄君   事務局側    常任委員会専門    員       工樂 英司君   説明員    文部省大学学術    局教職員養成課    長       村山 松雄君   —————————————   本日の会議に付した案件私立学校教職員共済組合法の一部を  改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○教育職員免許法施行法の一部を改正  する法律案衆議院提出)   —————————————
  2. 秋山長造

    委員長秋山長造君) これより文教委員会を開会いたします。  本日は、会期が一日延長されたわけでありますが、種々の事情で本日委員会を招集するに至りませんでした。先刻理事会を開き、本委員会に残っております諸案件取扱いについて協議を行なった結果、一応の結論を得ましたので、異例ではございますが、委員会を開会することにいたした次第であります。その旨御了承をお願いいたします。  まず、委員異動について報告いたします。五月十八日大野木秀次郎君、松澤靖介君、加賀山之雄君が辞任され、補欠として木島虎藏君、秋山長造君、岸良一君が選任されました。また本日、岡三郎君、岸良一君が辞任され、補欠として松澤靖介君、加賀山之雄君が選任されました。   —————————————
  3. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 先刻委員長及び理事打合会を開会いたしましたので、その経過について御報告いたします。  本日は、まず私立学校教職員共済組合法の一部を改正する法律案及び教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案について審議を行い、両案の審議が終了いたしましたならば、一たん休憩に入り、自余の案件についてはその取扱い理事会において協議することとなりました。  右の通り取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 異議ないと認めます。   —————————————
  5. 秋山長造

    委員長秋山長造君) それでは、私立学校教職員共済組合法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、先日大臣から聴取いたしました本法案提案理由補足説明を求めます。
  6. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 文部大臣説明を補足して私立学校教職員共済組合法の一部を改正する法律案内容について御説明申し上げます。  第一は、組合員資格を明確にすることであります。  現行法の第十四条は、組合員資格を単に「学校法人等に使用される者」と規定いたしておりまして、無給の者の組合員資格取扱いについて不明確な点がありますので、これを「学校法人等に使用される者で給与を受けるもの」に改めたのであります。  なお、休職者資格取扱いについても現行法ではやや不明確でありますので、今回この休職期間給与の全部または一部の支給を受ける場合は、組合員とみなすことといたしました。  第二は、標準給与の改訂であります。  今回、健康保険法改正案においては、その標準報酬について現行最低を三千円から四千円に、最高を三万六千円から五万二千円に引き上げられることになったのでありますが、この組合においても、この健康保険の例をしんしゃくして第二十二条に規定する標準給与について最低を四千円から六千円に、最高を三万六千円から五万二千円に引き上げることといたしたのであります。このことは、主として財政健全化理由に基くものでありますが、もちろん標準給与給与実態に合致させる意味を持つものであります。  第三は、組合員資格を喪失した後の継続給付受給条件新設したことであります。  現行法では、組合員資格を喪失した後、保険給付休業給付を受けるためには、国家公務員共済組合法同様組合員としての期間条件となっていないのでありますが、私立学校教職員任用関係は、公務員の場合のように明確な法的根拠がないため、国家公務員共済組合と同様に取り扱うことに無理があり、このことが同時に短期給付赤字を生ずる一つ原因ともなっておりますので、今回健康保険の例に準じてこの継続給付受給条件として組合員としての期間が一年以上であることを要する旨の規定を第二十五条の二に新設いたしたのであります。  第四は、標準給与決定について定時決定方式を採用することであります。  現行法の第二十二条に規定する標準給与決定方法は、給与異動のつど決定するといういわゆる随時決定方式でありますが、今回事務簡素化をはかるため、この随時決定方式を改め、毎年七月一日現在において同日前二カ月間の給与月額を基礎として、組合員の一年間の標準給与決定するといういわゆる定時決定方式を採用いたしたのであります。  第五は、国家公務員共済組合法改正に伴って第十七条を改正し、組合員がその資格を喪失した後再び組合員資格を取得したときは、前後の組合員であった期間を合算することといたしたことであります。この結果、前後の期間二十年に達すれば退職年金が受けられることになるわけであります。  以上のほか、「戸籍の無料証明に関する規定新設」、「運営審議会が各学校種別代表の意見を反映することができるように、その委員の定数を現在の十五人以内から二十一人以内に増加すること」、「現在準用しております国家公務員共済組合法改正に伴う読みかえ規定の整備」、「今後における国家公務員共済組合法改正の場合の経過措置が当然にこの法律にも適用される旨の規定新設」、「学校法人等強制執行を受けた場合等において掛金収入の確実を期するための納期前の掛金の繰り上げ徴収規定新設」及び「掛金その他この法律規定による徴収金に関しては、従来の書類の送達のほか収入の確実を期するため、新たに相続、解散、合併等の場合についても国税徴収法規定を準用する旨の改正規定」等につきまして所要の規定を整備いたしたのであります。  最後に、組合員たる期間計算標準給与資格喪失後の継続給付掛金徴収につきましてそれぞれ必要な経過措置規定いたしたのであります。  なお、この法律施行期日は、昭和三十二年四月一日でありますが、国家公務員共済組合法改正に伴う改正規定につきましては、別に政令で定める日から施行することといたしております。  以上が、この法律案内容の概要でございます。
  7. 秋山長造

    委員長秋山長造君) これより質疑に入ります。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  8. 高田なほ子

    高田なほ子君 今回私立学校教職員共済組合法の一部を改正することになっておりますが、すでにこの共済組合法が本委員会を通過し、また法律となりましてから、この提案理由説明の中にもありますようですが、満三年余りを経過し、その間いろいろの実績を上げておることも承知をいたしておりますが、なかなか不備な点もあるように考えます。大臣に私はこの際お尋ねしたいことは、政府はその政策の中で全国民の健康を保障していかなければならね、つまり国民保険という言葉をしきりに使われております、で私ども国民保険というこの実現については早くから党としても施策の中に掲げられておるわけでありますが、特にこの共済組合法が成立するときにも国民全体の健康保持の上からもこの法律実現はおそきに失したというようなことも申し上げておきましたが、政府考え方としては、国民保険考え方と、共済組合法がその目的に合致するために今後とらなければならないいろいろの施策があると思うのです、そこで国民保険精神と今回の共済組合法の一部改正とがどういう形でからみ合っていくものか、そしてまた今日まで不備であった点を国民保険精神にマッチさせるためにはどういう方向をおとりになろうとするのか、はなはだ基本的な抽象的な質問でございますが、大臣にこの点をお伺いしたいと思うのであります。
  9. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 国民の生活の上から申しまして、医療を保障するということは、特に重要なことであると政府といたしましては考えている次第でございます。その意味におきまして、国民保険というような目標を掲げましてこれに向って努力を傾注する考えでございます。このことは、しかし、なかなか一度にはできない問題だと思うのでありますけれども、逐次拡張いたしましてその実をおさめたいと考えるのであります。本案といたしましては、もちろん方向におきましてはその一翼をになうものでございますが、国民保険の実をあげますためには、やはり現実に行なっておりますところの医療保障制度本案で申し上げますればこの共済組合というものが堅実に運営されていかなければならないと思うのであります。施行以来今日まで三年ばかり経過いたしたわけでございますが、その施行実績に徴しまして、改めるべきところは改めまして、ことに保険財政関係におきまして心配な点もございますので、さような点につきまして適当な措置を講じまして、これを堅実なものにいたしまして逐次発展拡充方向に向って進んで参りたいと考えておる次第でございます。
  10. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょうど高田委員質疑中でありますが、高田委員質疑を続けていただく前に、この本法律案衆議院において修正議決送付されておりますので、実は修正案提出者から説明を聞きたいところですが、内容は形式的な面が多いし、ちょうど提出者もおいでになっておりませんので、政府委員の方から修正議決内容について質疑を展開する前に簡単に一つ説明いただきたいと思います。
  11. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 委員長よりこの際一言申し上げます。  先ほど本案議題といたします際に申し添えませんでしたが、本案はただいま矢嶋委員のおっしゃった通り衆議院において修正議決の上送付されておりますので、念のため申し上げておきます。この点について政府委員より御説明願います。
  12. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 衆議院におきまして私立学校教職員共済組合法の一部を改正する法律案について修正がございました。その修正の点を順次申し上げますと、付則施行期日の点で原案は「四月一日」というふうにしておりましたのを、「六月一日」ということに改めております。付則の第一項でございます。それからその他の規定については「同日以後において政令で定める日から施行する。」ということになっておりますのを、「同日から起算して二箇月をこえない範囲内において」というふうに改めております。  それから付則の第二項は、組合員である期間の合算に関する経過措置規定でございますが、この原案には、「この法律施行前」というふうにありますのを、「同項の改正規定施行の日前に」それから「この法律施行後」とありますのを、「同日以後」というふうに改めております。  第三点は、付則三項の標準給与に関する経過措置でございますが、これは全面的に改めております。と申しますのは、原案では、「この法律施行の際現に組合員である者のうち、次の各号に定める者については、それぞれ当該各号に定める額をその者の昭和三十二年四月から同年九月までの各月標準給与とする。」として一号、二号としておるのでありますが、このうちに多少期日の点から不適当と思われるものがございますので、修正案におきましては、「三十二年六月一日前に組合員たる資格を取得して同日まで引き続き組合員たる資格を有する者の同年同月」、すなわち六月、「から同年九月までの各月標準給与については、その者が同日に」すなわち六月一日に、「組合員たる資格を取得したものとみなしてこの法律による改正後の第二十二条第五項の規定を適用する」というふうに改められております。  それから付則第四項は、資格喪失後の期間に係る継続給付に関する経過措置でございます。原案では継続給付受給条件規定を適用しないというふうにしておりますのでございますが、その施行の際と、すなわち「この法律施行の際」とありますのを、第一項で申しましたように、「施行の際」とありますのが四月一日が六月一日に改められましたので、「この法律施行の際」とありますのを、「昭和三十二年六月一日において」というふうに改めております。  それから付則第五項、これは繰り上げ徴収処分及び滞納処分に関する経過措置でございますが、このうちで、「三十二年三月」というふうにありますのを、「三十二年五月」に改めておるのでございます。  以上が衆議院におきます修正の大要でございます。
  13. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣からは、私立学校のこの共済組合法についても今後国として熱意を示されて、その運営の適正をはかられる、こういう御答弁があったわけでございます。重ねて私はお尋ねしたいことは、私立学校先生方給与は非常に低い実情にあるわけです。場所によっては六千円くらいの先生私立学校にはある、八千円くらいの方もおられる、大の男で毛、ひげをはやした人でも一万円というような、かなり給与の面についても恵まれないという実態でございまして、こういう実態の中でこの共済組合法が適度なよい運営のもとに先生方福利厚生が保障されるということは実際必要以上の必要事項だと思うのです。従いまして今日までの政府の行き方としましては、健康保険法等についても赤字解消の問題についてかなりの熱意を示されてきたことを私も了承しておるわけであります。従いまして今回の大臣提案理由の中にもありますように、この若干の赤字が予想されますので云々ということがありますが、この若干の赤字解決方法については特段に私は国の施策が必要ではないのか、こういうふうに考えておるわけでありますが、この赤字解決の問題について、大臣としては具体的にどういう方法をとるべきだという考えをお持ちになっておられますか、この点をお尋ねしたい。
  14. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 組合におきまして赤字を生ずる、しかもそれが継続的に赤字が生じてくるというような事態は、これはよほど心配しなければならぬと思うのであります。ただこの赤字を克服するためには、まずもって私は組合の自主的な努力によってこれを考えてもらわなくちゃならない、また法律制度の上におきまして、適切な方途も講じなければならぬと思います。いずれにいたしましても、まずもってこの組合を中心とした努力によりましてなるべくこのむだを省くとか、いろいろな方法を講じまして赤字の克服に努力してもらいたいと思っておるのでありまして、今、今日この法案を提出いたしました考え方といたしましては、ただいま申し上げましたような趣旨において立案をいたしておる次第であります。
  15. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へん事務的な今度は計算になりますが、現在若干の赤字が予想されますので云々——これについて昭和二十九年から予想される赤字、また三年間の運営実績に照らしてどういうような赤字が出てきておりますのか、数字を上げて説明していただきたい。
  16. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 御承知のように、この私学共済組合は二十八年の一月一日から出発いたしたわけでありまして、二十八年度の実績は三千四百万の黒字でございます。それから二十九年度は一千五十三万の赤字でございます。それから三十年度は二千七百万の赤字でございます。それから三十一年度の——これはまだ決算ができ上っておりませんので決定的な数字ではございませんが、大体見込みといたしましては三千百二十四万という赤字でございます。で、これをずっと通計いたしますと三千四百八十万の赤字ということになっております。
  17. 高田なほ子

    高田なほ子君 三千四百八十万の赤字は、おそらくこの数字移り工合から見ますと、どんどんと三十二年、三十三年という工合にふえていく可能性があるわけで、この点も非常にまあ私どもとしては心配なわけですが、今回の法律改正によって、この三千四百八十万の赤字と、これから後にふえるであろうこの赤字をどういう状態で阻止できるものか、計数的に説明していただきたいのです。
  18. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 現状のままで参りますと、三十二年度にはおそらく約四千五百万程度赤字が出るのではなかろうかというふうに推測されるわけでございます。で、この赤字の対策といたしまして、これは収入面支出面両方にこれは原因があるわけでございまして、その収入面における原因といたしましては、標準給与最低最高の額が低く定められている、それから私立学校教職員給与につきましては、国立あるいは公立先生方給与の場合と違いまして、いろいろ千差万別でございます。従って標準給与の適正な決定がなかなか困難であるという実情がございます。それから支出の面における原因といたしましては、これは国立及び公立共済組合の場合に比べまして休業給付が非常に多い、これは御承知のように国立及び公立先生の場合につきましては、休職になりましても政府なり、あるいは公共団体給与をする規定になっておりまするが、私立についてはそういう規定がございませんので、従って休職になった場合に、使用者である学校法人等給与しないというケースが多いわけであります。そうなりますと、休業給付共済組合法規定する休業給付というものに頼っていくということになりまして、従って他の国家公務員共済組合、あるいは公立学校共済組合等に比べまして休業給付が非常に多いということでございます。それから私立学校先生がおやめになられ、資格を失われた後も継続給付を受けられます。継続給付の率が国家公務員、あるいは地方公務員の場合に比べまして多いということがございます。それから、これは法律規定上やをむ得ないととでありますけれども、現在におきましては組合事務費について国からの援助が十分でないというようなことがあるわけでございます。そういった収入面における原因、あるいは支出面における原因に対しまして、今回の改正ではまずその収入面原因標準給与最低最高を引き上げることをいたしております。最低四千円を六千円に引き上げる、最高三万六千円を五万二千円にそれぞれ引き上げているのであります。なお、標準給与の適正な決定が困難であると、しかしできるだけ正確な給与の把握をしたいということから、従来の随時決定方式を改めまして定時決定方式にするということにいたしているわけでございます。それから支出面原因でありますところの休業給付、ことに傷病手当金につきましては、この改正案の十四条の第二項にありますように、「学校法人等に使用される者で、公務員の場合における休職事由に相当する事由により公務員の場合における休職に相当する取扱を受け、その取扱期間中、学校校人等から給与の全部又は一部の支給を受ける」場合にこの休業給付をやるという制度に改めているわけであります。それから継続給付の場合には、健康保険と同様に一年間の期間給付条件としておくということにいたしているわけでございます。それから事務費については、法的な根拠があるわけでございますが、これは予算折衝の場合に全力をあげて努力をしていくというふうにして、この赤字解消にできるだけの努力をして参る、かように考えている次第であります。
  19. 高田なほ子

    高田なほ子君 出発後まだ日が浅いわけでありますが、当局としても非常に御苦労のあるところであり、また私立学校先生方としても、この共済組合法ができてから非常にお喜びになっておられるわけでありますが、ただいまの御説明によると、こういうような方法によって赤字が次第に解消されて黒字方向に向いていく、こういうような見通しのもとに御説明になられておるわけでありますが、大体この赤字は、この方式で参りまして、現在の給付者実績などから考えてみると、ほぼどのくらいでもってこの赤字が解消して黒字の方に回ってくるというような、そんなようなお見通しをお持ちになっておられるわけでしょうか。
  20. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 先ほど答弁の中に申し上げましたように、現状のままで推移すれば、三十二年度においては約四千五百万程度赤字が出るという見込みでございますが、この法律の一部改正が御承認いただけますれば、本年度は大体赤字がなしに、多少黒字の残が出るというような見込みでございます。
  21. 高田なほ子

    高田なほ子君 まことにけっこうな改正で、これでどんどん黒字が出ていけば、この上なしにけっこうなことでありますが、しかしこのことによって、今まで休業給付を受けていた者も、全然休業給付がもらえないという場合も生じ得ることがあるのではないかということも、これは考えられるのです。私立学校の場合は、結核等のことでお休みになった場合に、全然給与を出さないという学校もあるんじゃないでしょうか。もしそういう場合になりますと、この法の改正によって、病気で苦しみ、しかも薄給の先生方がもう頼るところがなくなってしまうんじゃないかというような気持を持つわけですが、こういうような点はいかがでしょうか。
  22. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 国家公務員につきましては、御承知のように、組合員資格につきまして、国に使用される者で国家から報酬を受ける者というふうに、はっきり明定しておるわけでございます。私学につきましては、学校法人等に使用される者ということで、現行法では給与の点には触れておらなかったのでございます。それで、無給の者に組合員資格があるかどうかということが従来いろいろ議論されましたので、今回国家公務員の例にならって、一つには資格を明確にするために、学校法人等から給与の全部または一部の支給を受ける者、全部でなくても、一部でも給与支給を受ける者というような法改正をしたいと思ったわけでございます。この規定によりまして、従来休職等の場合に、全然給与を打ち切ってしまうというようなもののないように、とにかく一部でも学校法人休職者に対して負担してもらうように、文部省としてもできるだけ指導をし、また努力して参りたいと思っております。
  23. 高田なほ子

    高田なほ子君 この点は、ぜひ大臣十分一つ指導をいただけるようにしていただきたいのです。なぜならば、やはり、この私立学校がどんどんできて参って、かなり経営の困難な私立学校もあり、先ほどから私が申し上げておるように、給与の点についても、かなり低いものがある。こういうような現状でありますから、結核等のような場合には、学校の方では、財政上やむを得ずして全部これを打ち切ってしまうということが現実問題としてあるわけなんです。そうなって参りますと、ほんとうにこれは路傍にほうられた石のごとくに、頼る道がなくなってしまう。学校法人側としては、気の毒だと思うけれども学校財政の建前から、やはりこれを切り捨ていかなければならないということになると、せっかくのこの法改正精神がこのことによって生きなくなってしまう。私は私立学校の現在の経営状態から考えても、非常にこの点を心配をしておるわけでありまして、特にこの点については、特段の御措置、御指導というものが改正について願えるように、私ははなはだくどいようでありますが、この点は大臣から一つしかとした御答弁をわずらわしたいと思っています。
  24. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お尋ねの御趣旨は、まことにごもっともに思いますので、私立学校の経営者の側に対しまして十分連絡をとりまして、できるだけ御趣旨に沿うように措置をいたしたいと思っております。
  25. 高田なほ子

    高田なほ子君 事務費の問題についてお伺いをしたいと思いますが、国から補助される事務費実績は今日までどういうふうでございましたか、またそのことによって運営上にどういうような欠陥が生じておりますか、この二つの点をお知らせいただきたい。
  26. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 事務費の実際を申し上げますと、この国から出ました補助金は、従来大体実際に必要とされました額の半額ないし六割程度でございます。国からの補助が大体六割ないし半額、これは年次によって違います。現在まで国からの補助が出ました実績を申し上げますと、昭和二十八年度には二百七十五万、二十九年度には千百万、三十年度には二千三百二十万、三十一年度には前年と同額二千三百二十万、三十二年度には二千四百五十万と、こういう数字でございます。先ほど申しましたように、全額は国から補助されておりませんので、余裕金の運用と申しますか、利率を効率運用いたしまして、その効率運用の差額をこの事務費の方にある程度補てんをいたしておる状況でございます。
  27. 高田なほ子

    高田なほ子君 この補助金は、建前からいうと、全額補助されておるものではないのでしょうか。そういたしますと、この半額または六割というのは、どういうわけで今までこのままになっておりましたものでしょうか、この点の消息をお知らせいただきたい。
  28. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) この法律には、御承知のように、現行法第三十五条に、「国は、予算の範囲内において、左の各号に掲げる経費を補助することができる。」として、その第二号に、「組合事務に要する費用」としてあるわけであります。私ども文部省の側としては、できるだけこれを全額と読みたいわけでありますけれども、「予算の範囲内において」とうたわれておりますので、現状は大体まあ半額程度しか盛られておらないというのが実情でございます。しかし、文部省としては、大蔵省と折衝する場合には、できるだけ全額補助してもらいたいということで常々折衝いたしておるわけであります。
  29. 高田なほ子

    高田なほ子君 数字から見ますと、だんだんと共済組合の活動が活発になるにつれて事務費も相当にふえてくる。また、事務費がふえてくることは必ずしも悪いことというふうには考えられませんが、来年度あたりからはいかがですか、この事務費の補助金というものは、予算の範囲内でとはいうものの、もう少し率が高くとれるような方法はないものでしょうか、少しふやしてもいいと思うのですがね。
  30. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 先ほど大臣からお答え申し上げました通り現状私学共済には赤字がある実情でございまして、まず自力でとにかく財政の再建をできるだけやってみるということでございまして、この赤字のすべての原因ではございませんけれども事務費についても、国からの補助が全額になっていないということがやはり一つ原因にも見られるのではないかと私ども考える次第でございまして、これについてはできるだけ高い率の補助を国からもらえるように、今後あらゆる努力をいたしたいと思っておる次第でございます。
  31. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちょっと関連して、この事務費の算定ですね、これは国民健康保険等については一人当り幾らというふうにきめられておりますが、この私学共済の場合は算定はどういうふうにされておるのか、ちょっと伺いたいと思います。
  32. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 初めは健康保険等の単価を実は利用したのでございます。また国家公務員の共済等の単価もいろいろ考えて実ははじいたのでございますが、私学共済につきましては、いろいろ全国にばらまかれておる私立学校を、支部というようなものもなしに本部だけで処理していくというようなことから、他の共済組合、あるいは健康保険等と同じ歩調ではいけないというので、現在ではそういう方式をとっておりません。ただ、一人当りの率を出してみても必ずしも健康保険や、国家公務員共済等に比べて低いわけじゃございませんが、私学の特殊的な立場からさらにもっと増してもらいたいという折衝をいたしておるわけであります。
  33. 湯山勇

    ○湯山勇君 現在、一人当りにすると大体どれぐらいになっておりますか。
  34. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 予算におきましては大体組合員一人当り四百三円。決算でこれを見ますと大体それより下回りまして、三百八十四円というような数字が出ております。
  35. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちょっと大き過ぎるんじゃないでしょうか。数字に間違いありませんか。一桁違うんじゃないかというような気がいたしますが……。
  36. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) おそらくこれは間違いない数字だと思います。と申しますのは、先ほど申しましたように、私学共済は健康保険等と違いまして非常に組合員数が実は少ないわけであります。たとえば健康保険ではございませんが、国家公務員共済の公立共済等に比べましても十分の一程度しかない。それから事務がかなり支部というようなものを通じません関係から、また公立共済等におきましては政府なり、あるいは府県の建物を使い、国家公務員、あるいは地方公務員を使っておる、従って人件費もかなり少くて済むわけでございますが、私学共済にはそういうこともございませんので、そういった国家公務員共済、あるいは公立学校の共済等に比べて、かなり高くなっておるような実情ではないかと思います。
  37. 湯山勇

    ○湯山勇君 なお、一つ御検討願いたいと思いますが、国民健康保険が市町村に分れて持っておりまして、それで一人当りの事務費が実際は百十円近くかかる。ところが、昨年度までは六十五円ぐらいであったので、今回から八十五円くらいにしたということになっておるわけですが、それと比べましても、全国一本になれば少くとも町村単位よりは大きいはずですから、それらと比べてあまり違い過ぎるように思いますので、私はあとでこの赤字問題についてお尋ねいたしたいと思いますから、それまでに一つ計算を願いたいと思います。
  38. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は、総体的に申しますと今度の法改正収入の道をはかり、支出の面についてはかなり押えていくという方向が具体的にとられているようです。で、一体その共済組合精神としてはもちろん組合財政の健全をはかり、その運営を的確にするためには、収入をはかっていくということにやぶさかであってはならないと思うのでありますが、ただ単にそれが組合員の自主的な努力が大幅にあって、これに対する国の手当というものが軽きに失してはならない、そういうことでありますが、問題はこの支出の面をあまり窮屈に締めてしまうと、共済組合としてのほんとうの精神が発揮されなくならないか。私は収入支出のバランスということを考えるわけですが、特にこの赤字であるという場合に、せっかくの共済組合法で認められている給付というものの幅を狭くするというようなことが行われるということについては十分注意してやらなければならないように考えられる。そこでお尋ねしたいのですが、先ほどの御説明によると、赤字ができたその原因については、支出面が非常に多過ぎた点もある、だからこれをしぼっていくのだというふうに説明がされておるようでありますが、現在までの休業給付が他の国家公務員等に比べて多過ぎるというのは、これはどういうわけなのか。あるいはまた、継続給付が多過ぎる、こういうような御説明であったのですが、ほんとうにほかの共済組合に比べて特段に多いというのは私どうも解せないのですが、なぜそういうような御説明があったのですか。そういう前提に立ちますならば、これを切っていくというような結論も成り立つわけです。どういうわけでこういう御説明がされたのか、ちょっと数字的に説明していただきたいのです。
  39. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 先ほど申し上げましたように、私学共済におきましては、休業給付、ことに傷病手当金がほかの共済組合に比べまして非常に多いわけでございます。約十倍ぐらいの率になっているようでございます。これは先ほど申し上げましたように、国家公務員、あるいは地方公務員につきましては、復職になりましてもそれぞれ使用者である国家、あるいは地方団体等が法律給与を保障しております。ところが、私学につきましてはそういう制度がないわけでございます。私学の経営者たちが共済に入っておれば、共済の方でしてくれるのだというようなことから、従来は休職になった場合に一文もその学校法人の方で出さない。全部共済組合の方で肩がわりしてもらうというような傾向があったわけでございまして、従ってそのために他の共済組合等に比べますと非常に率が高かったわけでございます。これを先ほど申しましたように、国家公務員共済並みに、とにかく給与の全部または一部を、使用者である学校法人も持ってもらうということにいたしたわけでございます。特にこの給付を制限したというようなつもりはございません。ただその結果多少学校法人の方で持ってくれます関係から、組合としては支出が減ってくるわけでございます。それから継続給付につきましては、これは実は組合に加入いたしまして、組合員となった後間もなく病気になった、ひどい場合にはその月に病気になってしまうというような例があるわけでございます。これは御承知のように、私学につきましては、人事任用の場合につきましても、国家公務員、あるいは地方公務員等の場合のように、厳格な規定なり制度がございませんので、自由任用でございます。そういうようなところが多少乱用されるような場合も起り得るのではなかろうか、従って今回の改正健康保険並みに、それ以前一年間の組合員であった期間が必要であるという制度にいたしたわけでございます。現在の健康保険がそうなっておりますので、それと同調したのでございまして、その点をきびしく制限したというつもりはないわけでございます。
  40. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 この提案を見ますというと、ミス・プリントがあるようですから、一つお直しいただきたいと思います。それは健康保険法の一部改正でございますが、今回これを、政府が出されたときは最低三千円を四千円にと書いてありますけれども、参議院で修正いたしまして、やはり三千円だけは据え置いておりますから、最高の方は三万六千円を五万二千円にしましたけれども最低の方はそのまま据え置いておりますから、その点を一つ直していただきたいと思います。そのついでにちょっと今度はお尋ねを一つ。今まで最低が四千円であったのが六千円にされておりますが、もしわかりまするならば六千円にするとどのくらい収入が多くなりましたでしょうか、そこだけ。
  41. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) この提案の補足説明の方でございますが、これはなるほど谷口委員のおっしゃいましたように、御修正があったわけでありますが、政府原案説明をいたすことになっておるようでございますので、原案説明をそのままいたしたわけでございます。  それから標準給与最低を上げておりますが、最低最高両方上げることによりまして、大体千九百万なり二千万という収入増を認めておる次第でございます。
  42. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 あまりこまかいことは……、この最低六千円にしました部分のみの増加はどのくらいですか。
  43. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 大体千百万ないし千二百万くらいになろうかと思っております。
  44. 松永忠二

    ○松永忠二君 高田委員から御質問のあった点にも関連するわけでありますが、第二十五条の二の「資格喪失後の継続給付受給条件」この問題についてでありますが、この法律案の中にある、第三十四条第二項というのは療養とか、家族療養、三十五条二項、分べん、保育とか、傷病手当とか、出産手当、そういうような項目がそこに出ておるわけでありますが、これらの項目を、組合員資格を喪失した前日まで継続して、一年以上組合員であることを要するという、健康保険と同じような条件改正をして、どのくらい一体経費の上で節約になるのでありますか……。もし、あれでしたら後刻でよろしゅうございます。  この第二十五条の二の「一年以上組合員であったことを要する。」というのは、今度の健康保険改正によってこうなったわけであって、それを直ちに私学の方にも適用したというわけであります。  考え方であるわけでありますが、御承知のように、健康保険の十二条には共済組合の給付の種類とか、程度は、本法の給与の種類または程度以上とするということが出ておるわけです。そうすると、健康保険が新たに非常に問題があって改まった点を直ちに適用して、こういう除外規定を作るというようなことについては、共済組合精神からいうと、思わしくないというような考え方も出てくるわけでありますけれども、相当な金額をこれによって節約できるということであればまだそこに意味もあるわけでありますが、そういう点について一つお答えをいただきたいと思います。
  45. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 確かに健康保険の十二条には、そういった規定がございます。給付全体につきましては、私学共済の給付は短期給付全般につきまして健康保険よりいいわけであります。また長期につきましても、厚生年金よりはいい金額ないしは率になっておるわけでございます。ただ、この受給の条件を今回の改正では、健康保険に同調させようということでございまして、給付の内容については健康保険よりはずっと上回っておる実情でございます。
  46. 松永忠二

    ○松永忠二君 しかし、今の御答弁であるわけでございますが、健康保険も六カ月であったものを一年にしたわけであります。従前は全然なかったこの項目が突然というか、健康保険が改まって、健康保険は六カ月今まで制限したのが一年になったのに、私学については全然なかったのに、一年に飛び上ってくるということについてはよほどのやはり数字的な、一つ一つのこまかく言えば、たとえば第三十四条の二項が幾ら、この次の条項は一体幾らこれで節約できるかということでないと、これはやはりよほど問題の多い点だというふうに私は考えるわけです。こういう点について漸次改めていくということならわかるし、また先ほど高田委員から御指摘のあったように、給付を制限をして赤字を解消していくのか、それとも健康保険のように、あるいは国民保険のように、国家公務員共済組合のように、事務費を全額国庫負担をするというような形をとることによって、これを解消していくということについてなかなか議論がある点だと私は思う。特にこの第二十五条の二の制限規定をなかったものを一年にしたということについてはよほどのやはり御説明をいただかないとなかなか納得がいかないところがあると思うわけであります。そういう点を一つ考え、あるいは数字的な面から御説明をいただければと思います。
  47. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) この資格喪失後の継続給付受給条件で、大体一年間の期間を置くということによって、三十二年度では大体四百万程度支出減を見込んでおります。これは条件一つでどうだということではございません。赤字を解消して組合財政健全化していくという立場から全般的にいろいろな制度改善をいたしておるわけでございます。まずこういったことを自主的にやったあとで、また事務費についてもできるだけの努力をしたあとで、なおかつ、どうしてもこの短期給付赤字が残るというようなことでありますれば、私どもといたしましては、もうこれ以上の組合運営の合理化というものはなかなかむずかしいのではないか。これ以外には、あるいは組合員掛金を上げるというような方策しか残っていないのではないかと思われますので、そういった場合には、やはり現在の健康保険と同様に、国庫からある程度短期給付についても補助金をもらうというようなことを考えなければならぬのではないかと思っている次第でございます。
  48. 松永忠二

    ○松永忠二君 やはりこの中で、特に第三十四条の二項というのは、療養費と家族療養費の給付であります。その次は分べん費、それからその次は保育費、傷病手当、出産手当というようなものでありますが、私はあるいはこの制限をするならば、分べん費、保育費、あるいは傷病手当——傷病手当は別でありますが、出産手当というようなものが、やはりそこにも制限規定を設けていく必要があるというふうには考えられるけれども、とにかく私学先生になって勤めて、病気が出て、そのためにあるいは休職をし、あるいは退職をしなければならないという条件が出てきている。そういうものを制限していくということになれば、よほどやはりその私学先生の身分の上にも大きな影響を及ぼしてくると思うわけであります。たくさんの人の数ではなしに、ほんとうの意味で病気になったものを、特に教壇に立って相当な仕事をやられている方がなられた場合に、こういう療養家族を、一年在任してなければ適用しないというような、こういうふうな点については、私はやはり一体幾らこれで節約ができるのか。四百万円のうちの幾ら節約ができるのか。と同時に、合せて一体事務費の方で赤字昭和三十一年に一体幾ら赤字が出てきたのか。その数字一つ合せてお聞かせをいただきたいと思います。
  49. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 先ほど高田委員の御質問にお答えしたときにも申し上げたのでございますが、私学につきましては、職員あるいは教員の任用につきまして、公務員と同様な厳重な制度なり、規定というものはないわけでございます。従って、中にはかなりルーズにそういうことが行われるものもあるのじゃなかろうか。実際に共済組合の事例を見ましても、採用されたその月から病気になるというような実例もかなりあるわけでございまして、そういった意味から、健康保険と同様な受給条件を設けることは、さして酷になることはないのではなかろうかというふうに考えた次第でございます。こういったことが、将来私立学校教職員を採用する場合に任用を慎重にするということになろうと思います。また私立学校教職員運営審議会等でも、やはり自分たちの掛金が、そういった新任者の療養に非常に使われるということには、相当疑問を持っておるわけでございまして、この受給条件一年間ということについては、私学側にも意見のないところだと思います。  なお、事務費につきましては、本年度は大体全体の所要額の半額というふうに推定されております。
  50. 松永忠二

    ○松永忠二君 事務費の方で、全体の費用の半額といったならば、二千何百万円というつまり赤字だということになるわけだと思うのでありますが、そういうふうな事務費がかさむ一つ国家公務員共済組合の場合には、その仕事を取り扱う者は、公務員として採用されているものを使用する。事業上使用するというようなことができるわけでありますが、この場合できないので、こういうような赤字が出てくるわけであります。そういう赤字が今言う通り何千万というのに対して、病気になったものがそういう制度規定——たまたま非常に不仕合せなことから出てくる一つのものについて、全体でしかも四百万円しかそれが減少にならぬというときに、私はこの項目の中のどれか一つ、特に、第三十四条の第二項のようなものはこれはこの制限をはずしていくということの方が健康保険の今言った第二条の精神にも合致をする。国民保険とかいろいろな福利、社会保障制度ということからいってもまずいろいろな制限をすると同時に、国の責任も果すというようなところから考えてみて、私は妥当だと思うのです。なかなかこの点は、私は恵まれない少数のものをやはり助けていくというようなことが必要だと思うので、この制限規定というものは少し無理だというように、私は特にこの第三十四条の二項についてはそういうことを思うわけなんです。大臣一つこの点についてどうお考えになるのか。そんなたくさんな金額でも実はない。お聞かせいただきたいと思うのです。
  51. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) さっき間違っておりましたからちょっと申し上げますが、事務費の関係で、半額程度国庫が補助するという実情を申し上げたわけでございますが、しかし、その場合に、それじゃ残りが赤字になるかと申しますと、そういうものではございませんので、組合の積立金の効率運用によってそれを補てんしておるわけでございます。またその組合の負担額、組合の補てん額は、これは業務経理の方でございまして、いわゆる医療の方の短期経理とは全然経理が別でございまして、従って短期経理の方の数字をこの事務費の方に埋めるというようなことは全然ないわけでございます。
  52. 松永忠二

    ○松永忠二君 私が申し上げたのは、そっちですぐそれにはめるということではないのであって、共済組合全体の体系から考えてみた場合に、私学事務費というものが負担している赤字というものは、何千万という金だということを申し上げているわけなんです。その方をそっちからはめていくわけではないというようなことでありますので、長期給付、短期給付合せた私学全体の経理から考えてみるならば、やはりそういうようなことが言えると思うのですね。
  53. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 先ほどお答え申し上げましたように、業務経理は全然組合の事業と申しますか、長期給付、あるいは短期給付とは全然経理が別でございます。従って長期の方の収入支出、それかも短期の方の収入支出とは直接の関係はないわけでございます。もちろんこういう効率運用で生みますことによって、別に短期の方にお世話になっておる、あるいは長期の方にお世話になっておるということは直接はございません。
  54. 松永忠二

    ○松永忠二君 それではその点を一つはっきりさしていただくわけでありますが、先ほどのことでもう一つ。その点で、昭和三十一年の事務費の総額と、そしてそれに対する国家補助は幾らであるかということを先に一つお聞かせをいただきたいと思います。
  55. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 事務費の総額は四千六百九十六万でございます。それから国からの補助がその中で二千三百二十万、四九%という数字であります。
  56. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、どういうふうなところで金を出しているのですか、その赤字は。
  57. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) これは長期の積立金、これは御承知通り、長期は現在掛金が積み立てられておるわけでございまして、そうして後年度において給付がだんだんふえて、それが出されていくわけでありますが、これは法定支出がございまして、運用をしていく法定支出だけは確保しなければならぬということでございますので、これをできるだけ効率に運用して、法定以上の余裕金を見出してこの積立金をできるだけ多くしていき、この余裕金の中から一部補てんしてもらっておるわけであります。
  58. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、かりに、国家公務員共済組合、それから地方公務員共済組合公立学校教職員共済組合では、事務費の今御指摘になった四千六百九十六万というものは国が出す。また、その職員が負担をしておるので、全額国庫が負担すると同じような経理になっておるわけです。ところが、私学においては、これが二千三百二十万結局国で出しているので、あとは私学共済組合が負担をしておる。その金の出どころはどこかというと、長期給付の中から出しておるのだというお話でいいわけでございますね。
  59. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 長期給付の積立金の効率運用によって産み出しておる組合員負担額の方はそういうことでございまして、長期給付はもちろんこちらの方で直接運用しておるわけではございません。
  60. 松永忠二

    ○松永忠二君 それは結局長期給付の余剰金の利子を効率に運用して、それから出しておるということであって、他の場合においては、公立学校教職員共済組合では、それはその共済組合の会計になっておるわけであって、その利子はそのままその中に入っておるわけでありますから、全般の意味から言えば、私はやはりこの赤字私学共済組合が負担をしておるということと何ら変りがないということを私は申し上げたわけです。どういうふうに私学は全体の経理をやっておるか、それはどうかといえば、組合員である教職員の負担と、その私学を経営しておる校主の負担とによって負担されておるということは事実であります。そういうことになれば、私はやはりこの赤字の二千三百二十万というのは、やはり国の方の事務補助費を、先ほど説明のあったような工合に、予算の範囲内とは言いながら、これをだんだん高めるということによってこれを解消していくことは妥当なことだ。一方、片方の短期給付にいたしましても、この四百万円という赤字を解消するということから、先ほど申し上げました、特に傷病医療の給付のごときを常にやっていかなければできないというふうにする。今までは全然適用されなかったけれども健康保険も非常な問題を起して六カ月が一カ年になった。六か月適用するのではなく、健康保険並みに適用していくということは、やはり政治としては工合が悪いのじゃないか、やっぱりもう少しそこに配慮がほしいということを私は申し上げた。そういう点については、やはり私はこれはこの一部を取ったわけでありますが、そういう具体的な例をあげていけばほかにもあるわけで、そういうことで、文部大臣はそういう点についてどういうふうにお考えになるかということを私はお聞かせいただきたいと思うわけです。
  61. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 松永委員の御意見でございますが、そのお心持はよくわかるわけでございますが、一体どの程度条件をつけたらよろしいかということについての意見はいろいろ立ち得るであろうと思うのであります。私学共済組合実情につきまして、私はあまり詳しくはございませんけれども、いわゆる国家公務員共済組合、あるいは市町村の共済組合とはよほど実態が違っておるのではなかろうか、ことに私学もたくさんございますけれども、この共済組合組合員となっておる学校といいますか、団体というものは、いろいろ雑多になっておって、なかなかその事務の適正な運用といいますか、あるいは経営の適正なやり方をやることが、組合自体としてもかなり骨の折れる仕事じゃないかと私は考えるのです。そういう意味から申しまして、先ほど来お話がありました事務費なんかについても、案外経費がかかるということもございましょうが、同時に、各組合保険者といいますか、組合員といいますか、それと保険共済組合の給付との関係において、十分な目を届かして適正にやってもらうということはなかなか骨の折れる仕事じゃなかろうかと私は思うのであります。そういうような意味合いから申しまして、数字的なことはよくわかりませんけれども、実際の給付というもののあり方を問題にしなくちゃならないものもかなりあるのではないか、ごく言葉は悪いかもしれませんが、あるいは乱に流れておる向きがあるのではなかろうかという心配を持っておるわけでございます。  で、組合の堅実なる発展をはかって参りますためには、また将来のさらに一そう拡充をはかっていくというふうな意味合いから申しますれば、ここのところはよほど着実に進んで参らなくちゃならぬと思う。そういうふうな意味からして、この制限的な条件が出たと思うのであります。これを半年にするか、一年にするか、いろいろ御意見はございましょうけれども、私は現在の組合実態から申しまして、健康保険並みの条件をつけることが必ずしも不合理ではない、そういうふうに考えておる次第であります。
  62. 松永忠二

    ○松永忠二君 文部大臣として、また、この議案を出されている関係者としてのお考えとして、一応はその御趣旨もよくわかるわけでございます。しかし、健康保険並みにしないということは、実はほかの方できまっているわけです。それよりも多くするということはきまっている。しかし、ほかの方でいいところがあるのだから、ここで同じだっていいじゃないかという理屈もあるけれども、これは共済組合に入っていれば健康保険の方に入らないわけでありますので、そこで健康保険共済組合との関係で言えば、共済組合の給付は十分にしなければなりません。しかも国家公務員共済組合とは格段の相違を持っているわけです。しかもその条項の内容というものが、私はある意味において、これはやはり社会の責任として、国の責任としてやはり見るべき性質のもので、特にこの傷病の療養とか家族医療の費用等はそういう建前をとっているので、できるならばこういうことは避けていきたいことだけれども、やむを得ないというならば、まだ大きにわかるわけであります。しかし、まあ給付を合理的にしていかないといけぬという単なるお答えでは、私の取り上げている内容内容であるので、まことに私は困るのです。やむを得ずこうしたということではないかと私は思うわけであります。やはりできるだけ早い機会にこれを改めていくということが本筋だと私は思うのです。そういう意味の点について、大臣はどういうふうにお考えになっておるのですか。
  63. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私のお答えのものの言い方があるいは御不満であるのかもしれませんが、できるならいろいろな制限とか何とかいうことなしに、ほんとうに自由にいけば一番よろしいと思うのです。なかなかそういかないのが世の常だろうと私は思うのであります。今度の場合におきましても、何も好きこのんでさような制限をつけるということじゃございませんけれども組合の堅実な発展をはかりますためには、まずある程度条件をつけて、これからだんだんに一つ改善をしていく。将来その必要がないということが明らかになりますれば、もちろん緩和するにやぶさかじゃございません。そういうような心持でございますので、この点は一つ御了承願いたいと思います。
  64. 松永忠二

    ○松永忠二君 なおこれは、まあそういうふうなことと似ておるかもしれぬわけでありまするけれども、特に非組合員ですね、第十四条に出てきておる除外規定があるわけであります。組合員のうちで除外をされている者が一、二、三というふうに出てきているわけであります。特に、御承知のように審議会でも、大蔵省の主計局長の方に申し入れという強い形で、臨時に任用される者について、要するに国家公務員共済組合等の適用をはかっていくべきだというようなことが、申し入れという形で主計局長の方に出されておるわけです。一体、その除外規定を適用するということによって、よほどやはり経費の節約がなされるものなのか。特に、第二の「臨時に使用される者」といっても、現実においては、私学においては、小使であるとかそういう者をこういう形で任用していくことによって、私学の責任を転嫁していくということも実はないではないわけであります。こういうことについてはどういうふうな御調査があるのか。あれば一つお示しをいただくし、またどういうお考えであるのか、これについてお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  65. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 組合員資格に関するお尋ねでございますが、お話のように、臨時に使用されるいわゆる臨時職員はこの組合組合員でないわけでございまして、これは国家公務員共済等におきましても同様でございます。やはり国家公務員共済にならってこの共済組合制度をこしらえてきておりますので、これはやむを得ないことと思っております。ただ、臨時職員についても、常勤的な臨時職員についてはできるだけこの共済制度で救ってもらいたいという非常に強い要望がございまして、国家公務員共済等においてもそれについてはいろいろ審議会等で検討をされておる実情でございまして、将来そちらの方でこれを取り上げるというようなことになりますれば、この私学共済組合におきましてもやはり歩調を合せて、常勤的な臨時職員も組合員にするというようなことにされていくのではないか、かように考えております。
  66. 松永忠二

    ○松永忠二君 一般的な職員、教員については、やはり恩給をもらって私学の職員をやっているとか、あるいはいろいろな条件があって、必ずしも国家公務員というか、あるいは普通の教職員に比べてみていろいろ条件的な面は出てくると思うわけであります。特に、今申し上げた使用人のごとき者については、やはり御調査をいただくことによって徐々にそういうものの適用をはかっていくという御努力をいただきたい。そういうようなことを特に要望するわけであります。  なおもう一点、この掛金についてでありまするが、掛金は現在どのくらいで、国家公務員とはどんなふうな関係になるのか、お知らせをいただきたいと思うわけであります。
  67. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 私学共済におきましては、御承知のように短期給付だけに入っておる者、あるいは長期だけに入っておる者、あるいは長短両方に入っておるというような複雑なものでございまして、他の国家公務員共済等と多少違っておりますが、現在の掛金率を申し上げますと、短期においては標準給与月額の千分の六十六ということになっております。それから長期については千分の六十二ということになっておりまして、これは使用者である学校法人組合員が折半することになっておりまするので、短期においては、組合員は千分の三十三、長期は千分の三十一というのが組合員の負担でございます。これを他の共済組合と比較しますと、公立学校共済組合は、短期は千分の二十四、長期は千分の三十九ということになっております。それから、国家公務員文部省共済組合は、短期は千分の三十三、長期は千分の三十八という掛金率になっております。
  68. 松永忠二

    ○松永忠二君 そうすると、掛金の率については、大体低いところは千分の二十というようなところもあるというふうに聞いておるわけでありますが、そうすると、大体そうむやみに高いというものではないということですか。
  69. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 現状を申し上げますと、まあそう特に最高であるというようなふうなものではございません。まあ中くらい、率から申しますと中くらいじゃなかろうかと思います。ただ掛金を負担いたします場合に、組合員の方は別でありますが、使用者が、普通の場合は国または地方公共団体でありますが、この私学共済の場合は学校法人でございまして、これが必ずしも経営状態がそういった国あるいは地方公共団体に比べて強いというふうには言われませんので、掛金率の改訂ということは非常に大きな問題になろうかと思います。
  70. 松永忠二

    ○松永忠二君 大へんこまかいとこでありますけれども、やはり私はそういう面については、こういう委員会を通して文部大臣が聞かれるのは、非常にふだんお忙しいので、おそらくこういう機会はないと思うわけであります。私はこまかく、今の給付除外のこと、掛金のこと、なお、その他の委員からおそらくいろいろあると思いますので、実は私学と一般の公立学校の職員との共済組合の差というものは相当大きな差というものがあるわけであります。一つ一つのものについて比べていくと、それは文部大臣先ほど言われたように、いや私学というのは、これは公立学校とは条件が違うのだという、ただそういうことでは、そういう考え方だけでは実は通用できない面が相当ある。で、そういう点について、やはり共済組合法のごときものはまことに関心の薄いものではあるけれども、実はこれは金額においても、個々の組合員に対しての影響が大きいし、また考え方いかんによっては、少しの予算で非常に大きな恩恵をこうむる人も——実は少数でもある。その恩恵を受ける人の身になってみると非常に大きな恩恵を受けられるわけなのでありまして、だいぶこまかい点でありまするけれども、特に監理局長等も一つ努力をいただいて、大蔵省でもこれは係長がこれを管理しているという状態であるということを聞いておるわけでありますが、どこでもこの仕事をやっておる人は地位等もむしろ低い方がやっておられる。そういう関係で、こういうものの内容改正については非常に消極的なところが多いと思うわけであります。一つ一つの点の指摘を申し上げる余裕もありませんけれども、ぜひ一つ、そういう意味でこの問題について善処をいただくし、ほんとうの意味で福祉国家を作るという一つ一つの足場として一つ御研究をいただきたいということを特に御要望申し上げておくわけであります。その他の方からまた御質問あると思いますので、関連してまた後刻御質問する機会も得たいと思うわけであります。
  71. 松澤靖介

    松澤靖介君 灘尾文部大臣に御質問いたします。  先ほども松永委員から御質問ありましたように、岸内閣のいわゆる社会福祉拡充の問題につきまして、今回の提案されましたこの法案というものはそれに背馳したものでないかとも考えられる点が多々あるようにも存じますが、先ほども松永委員が申されました、私が一つの例を申し上げますならば、標準報酬が四千円を今度六千円に値上げしたというようなこと、この点につきましても、いわゆる薄給者に対しましての一つの圧力をかけた、いわゆる非常な負担を増加したということに相なるのじゃないかと思いますのですが、いわゆる医療の保障という問題、あるいは社会保障制度というような、拡充強化というような問題、あるいは社会福祉というような問題から、非常にこの点は重大な関係があると考えられますが、大臣として、この点に対していかがお考えか、御所見を承わりたいと存じます。
  72. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 社会保障の整備充実ということは、現内閣といたしましても最も重きを置いておる政策の一つでございます。これがためにはできるだけの努力をいたすつもりでございます。ことにこの保険の方面のことにつきましては、国民健康保険の画期的な整備充実をはかって参りたいというふうに、さしあたって考えているようなわけでございますが、ただ、私思いまするのに、社会保障の整備充実をはかるためには、一つの前提要件が要るのじゃないかというふうに思うわけであります。ただ単に一方的に困っている人に給付するということでなしに、この制度はいわば権利義務として成立しておる制度であります。そういうふうな制度を拡充発展させまするためにはどういたしましても、何と申しますか、一つの社会保障の倫理というものがなければならぬと思うのであります。これが、さようなことに対する用意なくして、ただいたずらに給付々々とやっておりますというと、しまいには全体がつぶれてしまうというようなおそれもなきにしもあらずと思うのであります。言葉は少しきついかもしれませんけれども、私は心持といたしましては、やはり着実に、堅実に制度の整備充実をはかって参らなければならぬ、またその制度の内部における運用につきましても、よほど堅実にやって参らなくてはならぬ、そして政府も、また組合も、また個々の組合員も、互いに協力してこの社会保障の整備充実をはかって参らなくてはならぬ、かような考え方を私はいたすのであります。  今回のこの法案は、なるほど今までから申しますと、ある程度締めつけるところがある、こういうふうなところもあろうかと思いまするが、その真意といたしますところは、ひとえに共済組合の堅実な発展をはかっていくと、そしてだんだんとりっぱなものに仕上げて参りたいというような気持から出発いたしておりますので、その心持を一つ御了承を願いたいと思うのでございます。
  73. 松澤靖介

    松澤靖介君 灘尾文部大臣のおっしゃることも、うなずける点もあると私は思いますが、しかしながら今回の標準報酬を四千円から六千円に上げることによりまして、千二百万以上の増額を企図いたしまして、そうしていわゆる財政健全化ということにのみ思いをいたしてこの法案改正したということに相なりますならば、先ほどの、いわゆるせっかく岸内閣が、あるいはその前の石橋内閣から大旆をかざしているところの、医療保障制度の拡充強化ということに相反するのじゃないか。ただいま権利義務のことを申されましたが、しかし権利を縮めることが私は何もこの私立学校共済組合健全化には、あるいは合理化にはならないと、かく考えますが、できるならばその権利を認めまして、そうして別の方法によりましてこれを補うというようなお考えがあってしかるべしと私は考えますが、この点に対しましていかに御所見お持ちですか。
  74. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は社会保障は、政府国民も、またいわゆる使用者と申しますか、さような関係の向きが、それぞれ協力いたしまして、その優秀な成果を上げて参らなくちゃならぬと思うのであります。従って国として考えなければならぬことは当然国も考えなければなりません。また経営者として考えなければならぬ点、経営者として負担すべきものはこれは負担してもらわなくちゃならんと思うのです。同時に個々の組合員諸君もほんとうのりっぱな組合員としてのあり方を示して参らなければならぬと思うのであります。そういう意味合いにおきまして、今日の実情から申しまするならば、ある程度制約を加えなければならぬものもあると思うのでございます。  また今のお話は、掛金に関する、標準報酬に関する問題でございますが、これもおのずから限度があると思うのであります。過去の個々の組合員に過重な負担をかけるというようなことになりますれば、これは政府考えるなり、あるいは経営者が考えるなり、そこいらに工夫しなければならぬ点があると思うのでありますが、合理的な負担の範囲内におきましては、やはり組合員もそれ相当の負担をして参らなくちゃならぬと、こういうふうに思うのであります。今回の措置が果して適当であるかどうかということにつきましては、いろいろ批判がございましょうけれども、われわれといたしましては、この程度改正は必ずしも無理ではない、そういうふうに考えておる次第であります。
  75. 松澤靖介

    松澤靖介君 灘尾文部大臣のおっしゃられること、ちょっと私ふに落ちないのですが、国民健康保険法等改正に際しまして、非常な皆さんの御審議によりまして三千円を四千円に引き上げるその線をそのままに据え置くということに相なったことは、先ほどの谷口先生の質問といいますか、さような線でおわかりのことと思います。これは何ゆえかといいますと、低額所得者に対する相当の圧力がかかるという意味合いにおいて、健康保険法のようなああいう私立学校の職員諸君よりも比較的高いといっては語弊があるかもしれませんが、それらの方々に対しての、低い、いわゆる薄給者に対しての非常な圧力ということははなはだおもしろくないということであって据え置きになったと存じます。私もその審議委員の一人といたしまして御質問申し上げました一人でありますが、いずれにいたしましても、この四千円を六千円にしろという、すなわち一千二百万というような、いわゆる非常な数の少いこの私立学校共済組合の人たちに対しまして、かような改正をなすということは、私は相当の負担を増すことになりはしないか。結局言うと、これは保険率が増さなくとも保険料の増徴ということに相なりまするので、この点は私は重大なことかと考えますので、もっと真剣に考えるべきではないか。ただ単に保険運営健全化するとか、そういう意味合いでなくて、私は薄給者に対するところのほんとうの負担の増ということを来たすようなことを少なからしめるような考えがあってしかるべきではないかと考えますが、なおこの点について御所見を承わりたいと思います。
  76. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 負担が軽くて済めば一番けっこうなことではないかと思うのでございます。無理に負担を上げなくちゃならぬということではないと考えます。その点は、心持は別にあなたと違っていないと思います。ただ国民健康保険の例を引いてのお話でございますが、国民健康保険の被保険者全体の状態と、この共済組合組合員全体の状態と、その収入の関係でいかがでありましょうか、必ずしも私は同じだとは思われない。従って国民健康保険の被保険者の状態をそっくりそのままこちらに持ってこなければならぬものというふうには考えないのです。この共済組合組合員実情に即して適当であるか適当でないかというふうに考えていい問題ではないかと思うのでございます。そういうふうな観点から申しまして、今日の共済組合財政状況を考えまして、ある程度の増収をはかって参らなければならぬということも、一つお認め願いたいと思います。その増収をはかる方法として、今回のような措置をとりましたのでありまして、これは上げなくて済めばけっこうなんでございますけれども、上げるという立場から考えました場合に、この程度措置は必ずしも不合理ではない、実情に決して背馳するものではないというふうに私ども考えておる次第でございます。
  77. 松澤靖介

    松澤靖介君 ただいまのお話は、ただこの案を無理に通すというようなお考えに私は尽きておるのじゃないかと思います。政治をなされる人といたしまして、あるいは政府といたしましても、私はできるだけ愛の精神というものはあってしかるべきじゃないか。非常に薄給で困るという所得者に対して、圧力が非常に大きいというようなことは、差し控えるべきじゃないか。参議院のこの前の健康保険法審議に際しましても、その流れによりまして、私は三千円据え置きということに相なったのじゃないかと思います。同じような意味合いにおいて、片一方が標準報酬が高くなり、片一方が据え置きなどというような、さような不均衡なことは、できるだけ私はなくすべきじゃないかと考えておるものでございますが、この点に対して、なお、しつこいかと思いますがお伺いいたします。
  78. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お心持のほどについては、私は大して違っておると実は思っておらぬのでありますが、決して何でもかんでも増収をはかりさえすればいい、負担をかければいいというような考え方ではございませんが、そこに無理があってはいけないと思います。しかし、まず合理的な負担であると認められる範囲内におきましては、今日の組合の状況から申しまして、この程度のことはお認め願いませんというと、せっかくの組合そのものが破綻に瀕してくるというふうなおそれを生ずるわけでありますので、これを守っていくという意味から申しましても、この点はお認め願いたいと思います。同時にまた、標準給与の改訂ということは、なるほど一面から申しますというと、負担の増加にはなりますけれども、同時にまた、給付の方から申しますというと、それだけまた上ってくるというふうな面もありまするし、今日私学の方面におきましても、この程度措置につきましては、大体皆賛意を表しておられると私ども考えておるのであります。
  79. 松澤靖介

    松澤靖介君 ただいまの文部大臣の御答弁は、はなはだ矛盾した私は答弁だと思います。赤字があるからこそかような措置を講ずるんだということのように理由を拝聴したのですが、今承わりますと、給付がよりよくなるというお話であるならば、どこからその給付をよくするための財源といいますか、がくるかどうか。私はその点に対して非常に矛盾といいますか、納得できないと思います。赤字解消のためにはこれくらいのことはやらなくちゃならぬという、いわゆる健全化をはかるためにやらなくちゃならぬという意味において、今度は余裕財源が出てくるというようなことを非常にお認めになって、そうして給付というものはよりよくつくという意味合いのことは、どういうためにそういうことになるのですか。その点承わりたいと思います。これは大臣にお聞きします。
  80. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) なるほど御指摘の通りに、私のお答え申し上げた点につきましては、多少矛盾したような印象をお与えしたかと思うのでありまして、私は決してその点に重点を置いて申し上げておるわけじゃございません。基本の話といたしまして、今日の組合財政ということを考えまして、この措置をとったわけであります。さように御了承願いたいと思います。
  81. 松澤靖介

    松澤靖介君 御答弁というものを、われわれは真剣になってお聞きしているのであります。それに対して言葉でごまかすような、ほんとうにつじつまの合わないようなことを御答弁されては、はなはだ私は不本意に感じます。そういう意味において、なおこの点に関して局長にお伺いいたします。  この私立学校共済組合の問題に関して、最初から無理である、こういうようなお考えがなかったかどうか。すなわち私立学校というものの組合員というものは非常に少い。なおまたその組合員を年令的に見ましても、非常に他の国家公務員とか、地方公務員というような人と、その構成が違っている。あるいは標準報酬にしても非常に低い。すなわち一口というか、一言にして言うならば、非常に悪条件のいわゆる組合員組合じゃないかと、私はかく考えているのでありますが、そういう意味において、初めからかようないわゆる赤字というものが出てくるというような素地が十分あったのじゃないか、そういう意味におきまして、この赤字問題に対しましての対策というものは、ただ単にいわゆる低額所得者だけに迷惑を及ぼす、犠牲にするようなことではなくて、もう少し大きい意味において、言いかえるならば、国庫負担をするとか、そういうような措置を講ずる、そうして無理に組合を圧縮するというような措置をしないで済むようなお考えがなかったかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  82. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 私学共済の発足に当りましては、御承知のように、この私立学校教職員についても、公立あるいは国立先生と同様の福利、あるいは共済事業を行うようにという非常に強い私学からの要望もあり、また国会等でもいろいろとそれについての御意見があったわけでございます。その趣旨に基いて、私学側の非常に強い希望によって、この私立学校の共済制度ができたわけでございます。お話の通り私立学校教職員につきましては、現実に国公立先生方に比べて、なるほど給与はかなり低いわけでございます。で、これについてはそれ以前は健保に入っておった、あるいは厚生年金に入っておったというような事例がありまして、そのままでいいのではないかというようなことも、一部には言われたのでありますけれども、しかしやはり教育の原則から申しますと、教員である以上は国公立と差のない福祉事業をやってもらいたいというのが、非常に強い要望であったわけであります。実際国公立と同様の給付内容を有する共済事業をやります場合に、これはただいまお話にもございましたように、組合員も人数としては公立共済等に比べれば非常に少い。また一面給与公立共済等に比べれば低いというようなことから、それほど余裕のある運営はできないだろうということは想像されたのでございます。しかしそれだからといって、給付をその財源において低めるということは、ただいま申し上げましたような点から、非常に困難であったわけであります。で、ただ組合の実際の最近の実績によりますと、こういうふうに赤字が出て参ってきておりますけれども、さしあたってとにかくこの赤字解消のためにできるだけ組合の内部、あるいは自治的な努力を、解消のための努力をまずいたしまして、なおかつそれによっても依然としてその赤字が残るというような場合には、ただいまお話のございましたように、国の財政面からも、その私学共済については相当援助をしてもらうように努力をしてもらいたいと思っている次第であります。
  83. 松澤靖介

    松澤靖介君 先ほど私述べましたように、この共済組合というそのものは、最初から赤字というものが起るということは予想されたのじゃないかと私は考えておる一人であります。そういう意味におきまして、この医療給付の問題につきましても、最近は変ったかどうかしりませんが、最も理想的な医療給付の一つ方式を採用したものと私は考えております。すなわち一部負担の問題をこの医療費に対して採用した、今、現在もそうなっておるかと私は思いますが、そういう意味におきまして医療費の全面的給付ということは私は考えておりません。そういう意味におきましてもこの給付というものはほかの健康保険とか、あるいは国民健康保険とか、他の共済組合よりも、この医療の給付につきまして非常に自由性のある医療給付を採用しておると私は考えております。たとえば抗生物質にいたしましても、ある抗生物質は自己負担であるというような制度をとっておるのは、私はこの私学共済組合制度のいわゆるほんとうにわれわれから見ますならば理想的な医療方式であると私は考えておるのですが、そういう場合におきましてこの赤字がなおかつ出るというところに、私が先ほど申しましたいわゆる悪条件下にあるところの組合であるというような意味におきまして、それを押し切ってこの組合を設立したというような意味におきまして、大臣は別な意味におきまして責任と権利と義務ということをおっしゃいましたが、設立いたしましたその政府当局におきましてもこれを育成するための義務というものが私はあると思います。そういう意味においてもう少しこれを、この改正によって一部を、ごまかすというと変ですけれども、一時しのぎにやるという考えじゃなくて、ほんとうにもっと国庫負担の増額をいたしましてもこれを育成するということが私は至当なことじゃないかと、そういう意味におきまして、まあ文部大臣はどうかと思いますから、局長の意見をなおお聞きいたします。
  84. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 先ほどお答え申し上げましたように、他の共済組合の場合に比べて、組合員給与も低い、また数も必ずしも多くないというようなことから、給付内容を現在通り維持していくということにつきましては相当困難もある状況でございます。しかし、だからといって、それでは掛金率を引き上げるということも、これは事実上非常に他の共済に比べてもっと困難な状況でございますので、今後なおもちろん文部省といたしましてはこの私学共済ができるだけ堅実に育って、歩んでいくような努力を続けるつもりでございますが、なお財政の面等につきましても、国としての援助ということにつきましてもできるだけの努力はするつもりでおります。
  85. 松澤靖介

    松澤靖介君 医療給付の問題につきまして、他の健康保険とか、あるいは国家公務員共済組合、あるいはまた地方公務員共済組合などと違いまして、一部負担というものを認めておると思いますが、今日も認めておるかどうか、それをお伺いいたします。
  86. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 現在までは一部負担というものはやっておりません。なお、国家公務員共済が御承知のように一部負担制度をとらなくなりました。従ってそれと同様にこの共済でも一部負担制度はとらないわけでございます。
  87. 松澤靖介

    松澤靖介君 その一部負担をとらなくなったのは、いつからとらなくなったのですか。
  88. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 初診料については、これはもう取っておるわけでございますけれども、それ以外の場合の一部負担というものは、国家公務員共済の今回の改正が継続審議になっておりますので、これは取らないわけでございます。
  89. 松澤靖介

    松澤靖介君 その問題はあまりお聞きするのは変かと思いますが、たとえば抗生物資につきましても、ある種類のものは保険で認めて、ほかのものは認めないというようなことがあったようなことがあったように思いますが、それらのものはすべて健康保険に準ずるように相なったことと承知してよろしゅうございますか。
  90. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) これは御承知のように、厚生省の診療の規程がございまして、大体それにこの共済組合も準拠しておるわけでございます。それ以上の、たとえば高度の診療を受けるような場合には、これは患者が当然負担しなければならぬと思います。
  91. 松澤靖介

    松澤靖介君 その高度の医療というものが一部負担を認めた制度であります。その意味において私は先ほどこの私立学校共済組合医療方式というものは非常に理想的な案である、これは私らも認めましたが、とにかく医師会でこれを賛成してやったものと思いますので、いわゆる高度の医療をなす場合において、自己負担、すなわち一部負担が解消したということはここで初めてお聞きしたので、いわゆる高度の医療は患者の負担であるというような、これは他の健康保険とか他の共済組合では認めておらない制度でありまして、そういう意味におきまして私は非常に理想的の案であるから、それですら、いわゆる患者が負担してもなおかつ赤字が出るというような状態であるというので、この場合に対しまして、国庫負担なりして、そうして育成する意思があるかどうかということをさっきお聞きしたのでありまして、一部負担の意味というものがちょっとお考えがわからないのでありますが、いずれにいたしましても、私はそういう意味におきまして、他のものと違っておる意味において、この最もいい理想的なこのもののあり方というものを育成する意味において、国家負担なりをして、そうして薄給の人に犠牲をしいるようなことがないようにやるべきではないかということですが、そういう場合に対してなお御意見を承わりたいと思います。
  92. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 社会保険の一般の診療指針があるわけでございまして、大体はこれに準拠して診療が組合員に対してなされるわけでございますが、これの指針以上のものについては、これは患者が負担することになろうと思います。  なお、この私学共済につきまして給付が理想的に行われるように、しかも財政の面もにらみ合せながらも給付内容を低めないように、理想的に運営されるように、文部省としてもできるだけの努力をするつもりでございます。
  93. 松澤靖介

    松澤靖介君 結局この赤字が出るということは、給付の増加ということが非常に影響があると私は考えますが、医療給付について二、三年来のその増加の仕方をお伺いしたいと思います。
  94. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) この療養の給付について申し上げますと、二十九年度の金額が二億九千八百万、それから三十年度が三億七千四百万、それから三十一年度、これは四月から十一月までの金額でございますが、二億七千八百万、こういうような実績になっております。
  95. 松澤靖介

    松澤靖介君 なお、この審査は一本になっていると思いますが、その査定される率というものが最近どういう状態になっておるか、お伺いしたいと思います。
  96. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) これは御承知のごとく、他の健康保険等とも同様に、社会保険診料報酬支払基金の方で査定をされておるわけでございまして、この共済自体としては別に特に査定をいたしてはおりません。
  97. 松澤靖介

    松澤靖介君 その基金においての査定というものがこの私立学校共済組合においてどれくらいになっておるかということは、これはある程度いわゆる知るということは非常に重要なことと私は考えますので、お聞きするのであります。
  98. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 査定率の点でございますが、一般の診療の方が九八%、それから歯科診料の方が九三%、こういう実績になっておるそうでございます。
  99. 松澤靖介

    松澤靖介君 この審査の問題についてお聞きしたのは、いわゆるいかに診療というこの内容が私はいろいろの点に学ぶべき点、あるいは今後にどうあるべきかということを私は知る意味において非常な必要な問題なるがゆえに拝聴したのであります。たとえば疑義のあるのは、非常にこの査定率が一割以上もあるというような場合……。一割に満たないというようなものであったならば、やはりこれに対するところの医療の給付というようなものも非常にわれわれとしても納得のいくというような意味にもとれるのでありまして、そういう意味において、拝聴いたしたのであります。なおこの点につきまして、この健康保険課、局といいますか、厚生省といろいろの点において打ち合せて、そうして医療基準なりあるいは査定方針なり、そういうものに対しまして万全を尽しているかどうか、そういう点をお聞きしておきたいと思います。
  100. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) もちろんこの私学共済の立場から申しましても、共済制度が現在のわが国の医療の非常に大きな部分を占めておりますわけでございまして、従ってその医療の基準になります方針、あるいは査定の仕方、あるいは率等につきましても、共済組合の立場から、私学共済の立場から、いろいろ会議等にも出席いたしまして、私学の特殊な立場等についても十分連絡をしておるつもりでございます。
  101. 松澤靖介

    松澤靖介君 前に戻るかもしれませんが、先ほど標準報酬のいわゆる四千円から六千円に上げたというようなことに対しまして、診療率、受診率の低下ということをどのくらいにお考えになっているかどうか、あるいはそういうことはないというようなことにお考えになっていれば、そういう点をお聞きしたいと思います。これは何ゆえといいますか、すなわち低額所得者に対するところの犠牲を非常にしいるということになるので、重大な問題だと考えますので、お聞きしたいと思います。
  102. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 私学の立場から申しますと、この標準報酬の改訂といいますか、標準報酬を高めることによっては、必ずしもこの受診率は現在までのところ低下しないのではないかというふうに考えております。ただし、これが健康保険と同様な一部負担制度をとるということになりますと、受診率と申しますか、医者にかかる率等は、ある程度低まってくるのではなかろうかというふうに考えます。
  103. 松澤靖介

    松澤靖介君 要するに、標準報酬を上げるということは、保除率の増強ということになるので、いわゆる患者に及ぼす影響というものは非常に大なるものがあります。たとえば国民保険を例にとりましても、一部負担の多少によって非常に受診率が違ってくる。そういう意味におきまして、いわゆる標準報酬を上げることによって保険率が高くなるということになるので、その影響というものは私は相当あるのじゃないかと、かく考えているものでありますが、大したことないといえば幸いでありますが、少くとも、たとえば初診料を認めない、国民保険の場合に、認める場合におきまして、三%ぐらいの率、そういうものの上下というものは起るということは確かなものでありまして、そういう意味においてお聞きしたのでありますが、局長はその点に対しまして影響はないとお認めであるかどうか、なお重ねて、これは今後非常に重大な問題ですから、お聞きしたいと思います。
  104. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 一部負担につきまして、たとえば初診料、あるいは入院料を一部負担させるということになりますと、ある程度の、少くともお医者さんにかかる場合現金が要るわけでございまして、そういったことから多少の受診率に対する影響というものは出てくるのじゃなかろうかと思いますが、標準報酬につきましては、これによって直ちにお医者さんにかかる場合に、それだけ負担を特に多くするというようなことではございませんので、この関係から受診率が低下するというようなことはおそらくないのではなかろうかと思っている次第であります。
  105. 松澤靖介

    松澤靖介君 それならば非常にけっこうなことなんですが、一部負担ということに対して今度の健康保険法等改正によるあの一部負担の適用というのは、やはり準用されることになると思いますが、さように承知してよろしゅうございますか。
  106. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 国家公務員共済がこの国会で改正されますれば、これを準用することにいたしておったこの私学共済におきましても、一部負担が増加するということになったわけでございますけれども国家公務員共済組合法の一部改正がこの国会では継続審議になって、成立いたしておりませんので、この私学共済の中でも一部負担が今回の改正で増加することはないわけでございます。
  107. 松澤靖介

    松澤靖介君 そういたしますと、これはもちろん政府の責任になるというふうにとりまして、非常にまちまちな結果を来たすというようなことになるので、これは文部省としても小林局長に質問するのは筋違いでございまして、厚生省の怠慢と申しますか、そういうような結果かとも存じますが、いずれにいたしましても医療制度というそのあり方がまちまちになるということはこれは非常に重大な問題と思いますが、まあいずれにいたしましても、この私立学校共済組合法というものは非常な悪条件下にあるということなのでありますが、繰り返して申しますが、そういう意味におきまして政府といたしましても、これの育成に、ただ単に犠牲を被保険者に持ってもらうというようなことだけではなくて、政府自身といたしましても、私は一翼になうべきではないかと、こう考えておるのでございますが、あまり長くなるとお腹もすいたような声もありますので、(笑声)この辺でとどめたいと思いますが、この点について最後に灘尾文部大臣にお答えを願います。
  108. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私学共済組合が堅実な足取りをもちまして、ますます発展するように政府といたしましては協力するつもりでございます。
  109. 湯山勇

    ○湯山勇君 私も数点お尋ねいたしたいと思います。  第一点は、松澤委員の質問と関連を持つわけですが、実は政府の方の御説明を聞いて驚いておるのは、やはりこの最低額の引き上げに伴って六千円を最低にしたことによって一千万以上の増収を見込んでおるという点でございます。それだけの多額のものが増収になるということは、言いかえれば六千円未満のものが非常に多いということを意味するのであって、その額は政府が負担する事務費の約半分に近いものであるということになるわけでございます。そこで文部大臣の方からの御答弁では、大臣としてはこの法案を御提案になった立場もあり、また健康保険法において最低額を引き上げるということを御提案になった政府の立場がございますから、当然これくらいな引き上げは適当であろうと思う、という御答弁は、大臣の立場としてはよくわかります。そうだと思いますけれども、しかし国会の意思はそうではなくして、やはりそれは無理だということから、健康保険法においてもああいう措置がとられたわけでございます。そうすると、この際この法案が通るとすれば、大臣のお立場としてはやはりこれらの低額所得者に対して何らかの方法がとられるべきであるように、またそうでなければならないように私ども考えるわけでございまして、その一つ方法としては、たとえば事務費を大幅に政府が負担をして、そうすることによって長期給付の何といいますか、余裕金を何かこういう人たちの福利施設に当てるようにしていくというような措置は当然考えられてしかるべきだと私は思うのでございますけれども先ほどの御答弁では大臣としてはこれくらいはいたし方ない、好んでやることじゃないからというような御答弁で終始したと思うのですが、何かそういうふうな面での御配慮はなされないものでしょうか、大臣から伺いたいと思います。
  110. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お尋ねの御趣旨につきましては、私ども必ずしも反対ではございません。国といたしましても、共済組合に対しましてもっと援助をいたしたいという心持も持っておりますが、事予算に関しますので、あまり軽率なことを申し上げるわけにも参りませんけれども、ことにこうしていろいろ従来に比べますというと、かなりきつい面が出てきているわけでございますので、今後の事務費の予算要求等につきましては特にその辺は頭に入れまして、一そうの努力をいたしたいと考えております。
  111. 湯山勇

    ○湯山勇君 なお、今の点については、お聞きいたしたいことがたくさんあるわけでございますけれども、非常にこの低額所得者にこの案ではかなり無理がいっておるということを十分御認識いただきたいと思います。  それから次にお尋ねいたしたいのは、やはり保険財政に関連してでございますが、都道府県の負担と申しますか、補助ですが、これは最近の傾向はどうなっておるか、どのくらいの額が都道府県によって出されておるか、これを伺いたいと思います。
  112. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 私学共済には都道府県から助成金を出すことができるという規定になっておりまして、その実績を申し上げますと、二十九年度には三十七の都道府県が四千六百六十一万円、これは所要財源の千分の八でございます。それから三十年度には三十八都道府県が所要財源の千分の八、五千四百三十六万円を助成いたしております。それから三十一年度、これは年度途中でございますが、十一月までに十五の都道府県が三千八百四十四万円を助成いたしております。
  113. 湯山勇

    ○湯山勇君 この三十一年度の見込みはどうでしょうか。
  114. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 予定としては前年度の三十年度と同様に、三十八都道府県というものを想定いたしておったわけでございます。
  115. 湯山勇

    ○湯山勇君 地方財政の窮迫から、これに影響があるのじゃないかということを私は心配しておるのですけれども、その点についてはどういう観測をしておられますか。
  116. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 地方財政も御承知のように年々——年々と申しますか、苦しくなってきておる府県もあるわけでございますが、これはそれぞれの所在地の私学関係者が都道府県にいろいろ運動をいたしまして、現在までのところ大体横ばいの状況になっておるようでございます。
  117. 湯山勇

    ○湯山勇君 これも局長の御答弁は若干楽観的な要素が入り過ぎるのじゃないかというようにも思われます。で、都道府県もこれだけ持っておるのだから、先ほどに返りますけれども、国としてももう少し考えるべきじゃないか、これは一つ御考慮を願いたいと思います。  それから次にお尋ねいたしたいのは、運営審議会の問題です。今回の改正では運営審議会について特にこのメンバーの数をふやすというような改正がなされておりますが、その意図するところはどういうところにあるか、もう少し具体的に御説明願いたいと思います。
  118. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 御承知のように、運営審議会組合運営の適正化をはかるために、組合にそういったまあ一種の委員会を設けておるわけでございまして、現在では十五人以内の委員で構成するということにいたしております。これは、この組合員が三分の一、それから組合員使用者が三分の一、学識経験者が三分の一ということでございまして、大体それぞれ五人ずつということになっておるわけでございますが、学校の段階別と申しますか、学校の種別は七つ私ども想定されますので、大学から幼稚園に至るまでの七段階をそれぞれ代表するような委員が出せるようにした方がいいのではないかということから七人の三倍の二十一人に増加をしたいというふうに考えておるわけであります。
  119. 湯山勇

    ○湯山勇君 その中で組合員の代表というのは大体どういう人たちが選ばれておりますか。
  120. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) これははっきりしたことをただいま覚えておりませんが、大体教頭以下の先生方が出ておるようでございます。
  121. 湯山勇

    ○湯山勇君 このお尋ねいたしたい点は、この運営審議会運営については相当批判もあるし、問題もあるように私ども聞いております。きょうは時間がありませんからそれに触れないことにいたしますけれども、これはよほど一つ文部省としても注意をして、この運営がほんとうにうまく行われるようにしていただきたいと思います。  それからちょっとあとへ返りますけれども政府としては一部負担を予定してこの案を出しておられるわけですから、一部負担が実現した場合には一体どれくらいの年間の収入増になるか、その数字をお聞かせ願いたいと思います。
  122. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 一部負担金の制度の創設によりまして約六百八十万程度支出減があるだろうというふうに想定いたします。
  123. 湯山勇

    ○湯山勇君 今のようないろいろな点をお聞きしてみますと必ずしも、先ほど松永委員も指摘したように休業給付受給条件、そういうことをいじらなくても私は赤字が出ないような運営ができるのじゃないかという感じを持つわけです。その一つ無給者の組合としての資格、ここで一つ規制ができますから、そうするとここでの規定は当然休業給付資格条件にも影響して参りますから、従来の通り考え方考えなくてもこの点はいいのじゃないか、そうしてしかもこれが国家公務員と、こういう差ができるということであれば、もし今回の場合は私ども別に今これを修正しようというような意思は持っておりませんけれども、できるだけ早い機会にこの初めの方の組合資格で相当明確になって参りますから、あとの方はなるべく早く緩和してもいい状態が早く来ると思うので、なるべくすみやかな機会にこのあとの方の条件はなくするように御努力願いたいと思うのですが、これは少し政策的な面が多くなると思いますので、大臣から御答弁いただきたいと思います。
  124. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 本案の目的といたしておりますところは、要するに着実に固くやっていこうというような気持から出ておるわけであります。その点に心配がなければ何もやかましいことを言う必要はないわけでありますから、この法律の実施の状況をよく見まして緩和し得べき状態でありますならば、緩和の方向に向って進みたいと思っております。
  125. 湯山勇

    ○湯山勇君 最後にお尋ねいたしたいのは、これもいろいろ条を追ってお尋ねすべきかもしれませんけれども、総括的にお伺いいたしますが、現在国家公務員共済組合法がまだ成立いたしておりません。こういう状態の中で本法が成立の場合に運営上支障がないかどうか、この点を一つ明確にお答えを願いたいと思います。これは、私どもがこの法案を上げることに対する態度を決定する非常に重要な要素になると思いますので、特に運営上支障があるかないかという点に限ってお答えを願いたいと思います。
  126. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 法の形式から申しますと、多少これは問題となり得る点も残るかと思いますけれども共済組合の事業の運営の点から申せば、特に国家公務員共済の今回の継続審議によって大きな支障を生ずるという点は私どもはないのではないかと思っております。問題の一つとして考えられますのは、組合員資格を合算するというような規定がありますが、この合算をする場合に多少一時金の返還等の問題がありますけれども、これは現実の問題として処理できると思いますので、組合の事業そのものについては障害はないと思っております。
  127. 湯山勇

    ○湯山勇君 御答弁は障害はないと思う、というような御答弁なので、そういう程度であれば局長としては支障はないと断言できるというふうに私は解釈するのですけれども、いかがでしょうか。
  128. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 文部省といたしましては、特に今回この私学共済の方を修正する必要はない。十分この運営についてやっていけるというふうにお答え申し上げることができると思います。
  129. 湯山勇

    ○湯山勇君 では終ります。
  130. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 安部委員並びに私も質疑する予定でございましたが、時間の関係上質疑を遠慮いたします。
  131. 秋山長造

    委員長秋山長造君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  132. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 速記を起して。  他に御発言もないようでありますから質疑は尽きたものと認めて、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  134. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は日本社会党を代表いたしましてただいま提出されております法律案に対して賛成の意見を表明するものであります。  私立学校教育の振興に資するために、特に教職員共済組合が三年有半前に出発して以来、各方面の努力により特に悪条件のもとにある私立学校教職員の各位は共済組合法による給付を受けつつ私立学校教育のために努力を重ねられつつあるわけであります。今回国家公務員共済組合法の一部改正に伴って本案改正が上程されたわけであります。もちろん私どもはこの改正に対して賛成の意を表する限り、本法律の目標とするところに向うべく、われわれも、また政府もともに尽力しなければならないということがここに再確認されたわけです。しかし、考えようによりましては、今回の改正によっては必ずしもこの法案内容が達成できないというようなおそれも若干拝見せざるを得ないわけであります。いろいろ討論の中にもあげられておりますが、最低標準報酬を引き上げることによって約千百万の増収を得、また継続給付資格を制限することによって約四百万の増収を得る、あるいはまた患者の一部負担によるこの増収等も六百八十万というような数字があげられております。これはもちろん組合の健全な運営のために適正な収入を増していくということはこれは何ら反対すべき筋合いのものではないわけであります。しかしながら福祉国家への常識的な歩み方としては、この収入そのものが給付内容を高め、対象人員をふやし、そしてほんとうに福祉国家国民として、またこの国民に奉仕する私立学校教職員の生活条件というものが維持される方向に行かなければならないというのが常識であると思う。しかし、今回の質問の中で明らかにせられたことは、その収入が即今申し上げたような福祉国家への道を行く条件に沿わない点が多々あることはまことに遺憾きわまりないところであり、またわれわれといたしましては、こうしたような悪条件を克服していかなければならないという思いを一そう明らかにしたわけであります。結論としてはこの法案に対して賛成申し上げる限り、事務費の全額国庫負担並びに収入をはかることによって当然給付を受けなければならない教職員の方々に不当な条件を与えることなく、また不利な条件を与えることのないような諸施策が講じられていただきたい。さらにまた、このことの完全な実施のために、単に文部当局のみならず担当行政庁である厚生当局とも十分に連絡をせられて本法案の目的並びに健保の高く掲げている理想というものが踏みにじられないように特に今後予算措置において十分な御努力をいただきたい。また組合の健全な運営は即組合員の幸福につながるものでありまして、このたび運営審議会の増員も改正の中に盛られておりまするが、過去の運営実績をさらに参酌せられ、よりこの運営が適正化するように特に条件をつけて賛成をしたいと思います。以上であります。
  135. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 各派共同提案に成る付帯決議案を朗読し、提案にかえます。    附帯決議   我が国の学校教育における私立学校の重要性と、その私立学校教職員の福祉厚生事業を行なっている共済組合財政状況にかんがみ、政府管掌健康保険における国庫補助等と同様な趣旨において、私立学校教職員共済組合短期給付及び福祉事業に対して、政府は速かに国庫補助の途を講ずべきである。   右決議する。  以上であります。
  136. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 他に御意見もないようでありますから、討論は終局したものと認めて、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。  私立学校教職員共済組合法の一部を改正する法律案衆議院修正送付を問題に供します。  本案原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  138. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 全会一致でございます。よって、本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたします。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりまするから、本案を可とされた方は順次御署名願います。   多数意見者署名     矢嶋 三義  湯山  勇     高田なほ子  松永 忠二     松澤 靖介  安部 清美     木島 虎藏  関根 久藏     木村篤太郎  谷口弥三郎     川口爲之助  加賀山之雄     吉田 萬次  林屋亀次郎     左藤 義詮  有馬 英二     林田 正治
  140. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 次に、討論中矢嶋君から各派を代表して提出されました付帯決議案を問題に供します。  本付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  141. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 全会一致であります。よって、本付帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  142. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 速記を起して。  次に、教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案議題といたします。発議者から提案理由説明を求めます。
  143. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) ただいま議題となりました教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を申し述べます。  元来、教育職員免許法施行法は、教育職員免許法制定以前の旧教員免許関係法令による教員免許状を有する者及び旧制の学校の卒業者の新免許法への切りかえについて規定したものであります。  このうち、旧制の学校の卒業者の免許状の切りかえにつきましては、旧制大学、旧制高等専門学校等比較的教員となる者の多かった学校の出身者の場合は、その修業年限及び旧免許状の授与資格等を検討し適当な新免許状への切りかえ規定が設けられております。ところが、旧軍関係学校の場合は、旧制高等専門学校と同格に認められているにかかわらずその出身者に対しては適切な切りかえが行われていなかったのであります。  現在、陸軍士官学校、陸軍航空士官学校、陸軍経理学校、海軍兵学校、海軍機関学校、及び海軍経理学校の卒業者で現に教職についている者は全国で約三百名ほどありますが、その職務内容と能力は他の学校出身者と同様でありますので、そのうち在職一年以上のものに限り旧制高等専門学校の卒業者と同様の免許状を授与することを適当と認めてこの改正案を提出することにいたしました。  何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  144. 秋山長造

    委員長秋山長造君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  145. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 速記を起して。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  146. 安部清美

    ○安部清美君 私一、二点お伺いしたいと思うのですが、旧軍関係の学校卒業者を特にお考えになって資格の付与の問題をお出しになっておるようでございますが、現在までこういう人たちがとっております資格ですね、どういう程度のものになっておりますか、また資格をとった過程ですね、これを御説明願いたい。
  147. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) 今までは旧軍人としまして、例のマッカーサーの追放を受けまして、なかなか公職につけない、その追放解除後もその惰性が残っておりまして、現在は各府県ごとに教職員の足りないところにおきましては、いわゆる臨時免許状を持っておるわけであります。昔の代用教員でございます。この臨時免許状と申しますのは、三年たったらまたその免許状をもらい直さなければいけない。それからもう一つは、常に整理の対象になりまして、子供をかかえながら首をなぜておるというようなかわいそうな状態です。それを今度は、昔の言葉で申しますと、代用教員を正教員にしてもらいたい、これがこの案の骨子でございまして、社会党と私の党が慎重に協議をしまして、特に社会党諸君の非常な御同情あるあれによりまして提出した次第でございます。
  148. 安部清美

    ○安部清美君 今の御答弁によりますと、旧軍人であるがゆえに特別扱いをされておったから、この際こういう免許状措置をしようということなんでございますか。
  149. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) その通りです。
  150. 安部清美

    ○安部清美君 その中にも、今の提案理由説明の中に、特に一年以上という年数を区切っておられますが、一年というのはどういうところから来たものでございますか。
  151. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) 最初私どもの方の考えでは、現在教職にある者はその期限を制限せずに全部やってほしかったのでございます。これは社会党の方の御要求がありまして、一年という一つ期限をつけてほしい、現実におきまして一年以内の者はほとんどないような状態でございます。ずっと古くから入っておりまして、古い者は二年、三年勤めております。でありますから、社会党の修正条件を入れましたのは、大した実害はない、ごくわずかにはありましょうが、それで実は修正した次第でございます。
  152. 安部清美

    ○安部清美君 これはちょっと妙な皮肉な質問になるかもしれませんが、現在大学を卒業した有資格先生が就職難で非常に困っておる現状において、特にこういうふうな資格付与をやろうということには相当何だか矛盾があるような感じがするのであります。この点はいかがでありますか。
  153. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) ごもっともであると思いますが、この数が全国で大体二百七十名、まあ私どもの調査では三百名近いものとなっておりますが、そういうわけでございますのと、それから古い人はもう六、七年も勤めている、代用教員で……。そういうのが大部分でございます。そういう意味におきまして三百名の者を今いわゆる代用教員から正教員にしていただきましても、数の上において大したことじゃないじゃないか、将来ふえるのじゃございませんから、今まであるやつを一つかわいがっていこうという案でございます。どうぞ一つお願いいたします。
  154. 安部清美

    ○安部清美君 これはまたちょっと皮肉な質問になりますが、この旧軍人の関係の学校の卒業生ということをうたって出しますと、何だかいわゆる再軍備というような問題が盛んに言われております際に、そういうふうなにおいのするような感じがするのでありますが、この実態についてはおそらくいろいろ各県の教育委員会あたりで十分適当であると認められておる人が長く勤めておるものと思いますが、御調査になったことがございますか。
  155. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) 調査しますと、案外旧軍人出身ですが進歩的な者が多くて、日教組の幹部になっておる者もいます。(笑声)
  156. 安部清美

    ○安部清美君 文部省の当局がおられるようでございますが、他の免許法の法令ですね、それとの関係は別にございませんですか。
  157. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) これを厳密に言いますと、他の免許状をとりますときには、いわゆる所定の単位があるわけでございます。それで士官学校、海軍兵学校等のいわゆる授業内容の単位を検討いたしますというと、まあ国漢文と歴史、地理、語学、数学というものは規定の単位の二倍ないし三倍とっております。ただ足りないのが憲法、憲法は二単位ということになっておりますが、これはちょっと足りませんが、まあ居眠りせずに勉強しましたからその辺は一つ大目に見てもらいたい。私どものときには清水澄博士の憲法講義を二十時間聞きました。これによりますと、二単位ですから三十時間聞く必要がある。それにまあ比較いたしますというと、単位が多少足りないという点がございますが、そのほかのことは時間の数から申しましても能力から申しましても大体オーバーしているのではないか、こういうふうに考えます。
  158. 秋山長造

    委員長秋山長造君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  159. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 速記を起して。
  160. 湯山勇

    ○湯山勇君 一点だけお尋ねいたします。今の提案者の御説明では、相当まあ長年にわたってやっておる人もある。当時各県ともに認定講習というのを実施いたしまして、単位取得についてはずいぶん便宜をはかったはずでございます。現在もなお通信教育その他で単位取得の方法はあるわけですけれども、特にそういう人たちが今日まで単位がとれなかったということについては、何か特別な事情があるのじゃないか。まあおそらく優秀な人ばかりですからやろうと思えばもうとっくにとれているじゃないかということもございますので、それらの事情はどういうふうになっておるか、伺いたいと思います。
  161. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) 詳細に調べた資料によりますと、ほとんどの者が所定の単位をとり終っております。それは士官学校の教科内容では足りないところは、卒業いたしましたところは、今おっしゃいました方法で勉強いたしましてとっておるわけでございます。
  162. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 先ほどの安部君の質問に対して文部省の方からお答えいただきたいと思います。
  163. 村山松雄

    説明員(村山松雄君) 軍関係学校の卒業者に対して三年の現職経歴を加えることによりまして、専門学校相当と取り扱い、二級の免許状を授与することにつきまして、他の学校との均衡はどうであったかという質問でございますが、免許法の施行法は大学並びに旧制の高等専門学校並びにこれと同等の学校につきましては、網羅的に新免許状に切りかえの規定が設けられております。無線電信講習所ないし文部省所管でなかった時代の高等商船学校等につきましても、それぞれ適切な免許状のケースが規定されております。ただ軍関係学校だけは、これは従来旧制の免許法令によりまして免許状が与えられなかった関係もありまして、専門学校に準ずる取扱いになっておりまして、学校程度を比較いたしますと若干低い取扱いになっております。今回の改正によりまして、専門学校と同等の取扱いをすることになるはずでございますが、結果におきましてそれほど他の学校の卒業者とバランスを失することにはならないと考えております。  なお、この改正によりまして、直ちに自動的に免許状が切りかわるわけじゃございませんので、免許状の切りかえをなす場合には、さらに授与権者、すなわち県の教育委員会または県知事において検定の上、適当と認める免許状を出すことになっております。そこにおきまして、授与権者におきまして妥当と認める者について免許状の切りかえをなすわけでございますから、内容の伴わぬ者まで自動的に切りかわるという弊害はないと考えております。
  164. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと一言。これは意見にわたるかもしれませんが、先ほどまあこういう兵学校や士官学校を出た者はちょっと進歩的な者が多くて、日教組の幹部などになっておるという御発言で、それを責めるわけではないのでありますが、これは私事にわたるのですが、私のむすこも海軍兵学校に入って、途中で戦争に破れてしまった。それで今度高等学校へ入るということになったら兵学校に入学しておった者は入れぬということで非常に彼らは犠牲をこうむった。だから現在彼らの持っている考え方は、国の方針によって変れば自分が非常に不遇な状態に陥れられる。だから、もう再び国の方針が変ったから不遇に陥れられるということがないように自分自体として真理をきわめていこう、正しいと思うことのためにはやはり憲法を守ってがっしりやろうというそういう精神に徹していることは、私のむすこを一人見ただけではわかりませんが、これは非常に家族の中でも一番憲法を守ろうとする、非常に過去の犠牲において強い考えを持っているので、あえてそれを進歩的であるというふうにお考えにならないで、それが彼らのためになるのだと、こういうふうに御訂正した御意見にしていただきたいと思います。(拍手)失礼な言い方でございますが……。
  165. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) どうも……私の子供も兵隊にはこんりんざいならぬと言って、おやじが閉口しておるのでありますが、これは冗談になりましたけれども、あの終戦後のきびしい社会相に触れまして、若い人たちは非常に反省すると同時に、またきわめて穏健な道を歩いております。今おっしゃった通りであります。(矢嶋三義君「再軍備論者に発展せぬように一つして下さい」と述ぶ)
  166. 松永忠二

    ○松永忠二君 ちょっと疑義があるので、これはどういうふうな解釈なんですか。「一年以上小学校、中学校又は高等学校の教員の職にあるものは、この法律規定の適用については、」云々とあるが、第六号によれば、「臨時免許状」、第七号によれば、小中高等学校の「二級普通免許状」であるので、これはどっちで切りかえていくということなんですか。
  167. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) これは教育職員免許法施行法の第二条の欄の六号というのがございますが、この六号のところに、六号の上段の終りの方のカッコの中に「(この表の第十五号の上欄に掲げる者を除く。)」と、こういうふうになっているのであります。そこにさらに詳しく申しますというと、陸軍士官学校、航空士官学校、海軍兵学校というものを含むというふうに、こういうふうに実は原案はなっておったのであります。御了解下さいますか……。
  168. 松永忠二

    ○松永忠二君 それで……。
  169. 辻政信

    衆議院議員(辻政信君) それで、社会党の方から、それでは工合が悪いので、この付則改正をやってくれぬかという御意見がございまして、付則の4を新しく作りまして、そこに旧陸海軍学校というように、ばく然と書いておりましたやつを、学校の名前を一つ拾ってくれんかという、こういう御意見がありまして、私ども原案を調整した次第であります。(「了解」と呼ぶ者あり)
  170. 松永忠二

    ○松永忠二君 わかりました。
  171. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は尽きたものと認めて、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  172. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  173. 安部清美

    ○安部清美君 私は日本社会党を代表しまして提案されました本法律案に賛成の意を表したいと思うのであります。賛成の内容につきましては、いろいろ申し上げる必要もないと思うのであります。提案の理由にも明確にしてあるところでございますし、ごく少数の人であって、しかも軍関係の学校に入学しておったために特別の取扱いを受けておった人たちに対する免許状授与の法案だと思いますので、そういう意味におきまして賛成をいたす次第であります。
  174. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 他に御意見もないようでありますから、討論は終局したものと認めて、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  175. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。  教育職員免許法施行法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  176. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 全会一致でございます。よって、本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたします。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     矢嶋 三義  湯山  勇     高田なほ子  左藤 義詮     松澤 靖介  松永 忠二     安部 清美  木島 虎藏     関根 久藏  木村篤太郎     谷口弥三郎  川口爲之助     加賀山之雄  吉田 萬次     林屋亀次郎  有馬 英二
  178. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 休憩いたします。    午後九時二十九分休憩    —————・—————    午後十一時五十九分開会
  179. 秋山長造

    委員長秋山長造君) 委員会を再開いたします。  これにて散会いたします。    午後十二時散会