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国務大臣(
灘尾弘吉君) 当面の
文教政策についての御
説明でございますが、
昭和三十二年度の
予算の大綱につきまして先般御
説明を申し上げたのでございまするが、その中におきまして、いかなる点に私が
重点を置いたかというようなことを申し上げますれば、大体今日私の
考えております点の御
了承をいただけるかと思うのでございます。申すまでもなく、これは古い言葉でございまするけれ
ども、
文教の問題を
考えます場合に、私は
知育、
徳育、
体育、この三点についてバランスのとれた、いずれもその
向上発展を期して参らなければならないかと存ずるのでございます。
今日
青少年の問題がとかく世上問題となっておりますことは、まことに遺憾に存じておる次第でございますが、さような点から
考えましても、特にこの
徳育という問題につきましては、
重点を置いて
考えて参らなければならないかと存ずる次第であります。もっとも
徳育というようなことにつきましては、これは必ずしも
予算の問題ではないと
考えるのでございます。
予算上どこに
徳育の
予算があるかと申されますというと、特別取り立てて申し上げるほどのこともございませんけれ
ども、
学校教育の
内容につきまして、また平素あらゆる機会、あらゆる場所において、この
道徳教育ということは徹底しなければならない問題と
考えまして、さような点については特に留意して参るつもりでございます。
今度の
予算を通じて
ごらんをいただけますように、特にこの
科学教育、
科学水準の
向上ということにつきましては、特別に力を入れたつもりでございます。
日本の今日の
科学水準というものが、まだまだ高まって参らなければならぬということは、諸
外国に比較いたしまして当然
考えられることでございます。だいぶ立ちおくれをいたしておるような点も少くないようでございますが、われわれといたしましては、諸
外国に伍して遜色のない
科学水準に到達することをすみやかにやって参らなければならぬ、そういう
考え方をいたしておりますので、今度の
予算におきましても、
日本の
科学水準を高めるために必要ないわゆる
科学教育方面につきましては、それぞれ
配意をいたしたつもりでございます。同時にまた、
産業経済界等の
実情から申しましても、
科学技術に関する教養を身につけた者を非常に要望いたしておるわけでございます。さような
意味合いからいたしましても、この
方面につきましては
重点を置いて参らなければならないと存じまして、特に
国立大学の諸
施設を
整備する、あるいは
国立大学の
研究に幾らかでも便宜を与えますために、教官の
研究費を
増額いたしますとか、
学生経費の
増額をはかるというようなことにも留意して参りましたつもりでございます。
私学の
方面につきましても、や
はり理科教育方面を伸ばす必要があると
考えますので、不十分ではございますけれ
ども、
理科教育設備等につきましては若干の
予算の
増額をはかりましたような次第でございまして、今日
国立大学方面におきましては、
理科系統の
学生の数が
法文科系統の
学生の数よりもだいぶ多くなっておりますが、
私学系統におきましては、まだまだ
理科系統の方がおくれておりますので、漸次この
方面に力を入れて参りたいと
考えておる次第でございます。
また、
公立文教の
施設等につきましては、これが
整備充実をはからなければならないことは、申すまでもないことでございます。年来やって参っておることでございまするが、今年の
予算におきましても、新町村の育成というようなこととも
関連いたしまして、
学校の統合、あるいは不
正常授業の
解消等につきまして留意いたしたつもりでございます。
さらにまた、
体育でございますが、
スポーツの
振興ということに今後力を入れて参りたいと
考えております。今日
青少年の状況を見ておりましても、また
国民生活全体の
状態から
考えましても、私はこの
スポーツを奨励することによりまして健全明朗な社会を実現するその一助といたしたいと
考えまして、できるだけこの
方面には力を注いで参りたいと
考えております。今度の
予算におきましては、御
承知の
通り、きわめてわずかでございますけれ
ども、この
スポーツ振興のために
経費を計上いたしておりますような次第でございます。そのほか、
国立競技場の
設置に要する
経費でありますとか、あるいは
体育団体に対する助成の道を開くというようなことも
考えておりますようなわけであります。
また、これらと相並びまして、今日
日本の置かれておりますところの
国際的地位、ことに
国際連合に加盟いたしました今後の
日本といたしましては、
国際間のいろいろな
交流というものが行われて参りまするし、またわが
国民の
国際的な理解を高めますというようなことも必要であろうかと
考えますので、
国際文化の
交流ということにつきましては、今後とも力を入れて参りたいと存ずる次第であります。これは
国際文化の
交流ということとは必ずしも直接の
関係はないかもしれませんけれ
ども、従来
外国に対して派遣いたしますところの
留学生の数がきわめて少いのでありまして、戦前に比べますというと、比較にならないような
状態でございますが、一時にというわけにも参りませんけれ
ども、漸次海外に対する
留学生もふやして参りたいと
考えております。同時にまた、
外国からの学者の招聘でありますとか、あるいはまた特に
外国からの
留学生の招致、なかんずく
東南アジア方面からの
留学生というような問題につきましては、一そう力を入れて参りたいと思うのでありまして、これがあたたかい
受け入れ態勢を
整備すると同時に、
留学生の数を漸次増して参りたいというような
意味合いにおきまして、
予算を計上いたしましたような次第でございます。
いずれにいたしましても、この
知育、
徳育、
体育、これをあわせて奨励をするということが私の
考えの
根本でございますが、戦後いろいろと新しい
制度のもとに
関係者が苦労して今日まで参っております。
制度の問題もようやく整ったかと思うのでありますが、同時に新しい
制度に対するいろいろな
経験からいたしまして、これにつきましてさらにまた
改善を要望する声も少くないのでございまして、
制度の
根本につきましては慎重に
検討を進めて参りたいと思いますけれ
ども、とりあえずの当面の
措置といたしましては、いろいろ新しく実施せられております
制度の
内容の
充実、
内容の
整備ということにまずもって力を入れて参りたいと思うのであります。いろいろたくさんの
大学があると、
大学が多過ぎるというような声もしばしば聞くのでございますけれ
ども、私といたしましては、これらの
大学につきまして、それぞれ
内容を
整備充実いたしまして、世間の需要にこたえたいと思っておるような次第でございます。問題はまさに
内容の
検討に入るべき時期ではないかと思うのでございまして、
教科内容につきましても、またいわゆる
職業教育でありますとか、そういう点につきましても
十分実情を
検討いたしまして、漸次
改善の実を上げて参りたい、かように
考えておるような次第であります。
以上まことに簡単でございますけれ
ども、一応私の
考えております点を申し上げた次第であります。