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1957-04-25 第26回国会 参議院 農林水産委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十五日(木曜日)    午前十一時二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀  末治君    理事            重政 庸徳君            藤野 繁雄君            東   隆君            清澤 俊英君            河野 謙三君    委員            青山 正一君            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            柴田  栄君            仲原 善一君            堀本 宜実君            安部キミ子君            北村  暢君            小林 孝平君            羽生 三七君            上林 忠次君            島村 軍次君            千田  正君            北條 雋八君   政府委員    外務参事官   法眼 晋作君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    農林省畜産局長 谷垣 專一君    水産庁次長   奧原日出男君    通商産業省鉱山    局長      森  誓夫君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    外務省アジア局    第三課長    白幡 友敬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査の件  (畜産物等流通に関する件)  (鮮魚保存用のオーレオマイシンの  件)  (北海道近海漁業に関する件)  (第三繁栄丸不法抑留事件に関する  件)  (漁業用燃油の件)   —————————————
  2. 堀末治

    委員長堀末治君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  畜産物等流通に関する件を議題といたします。  この件について、環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案衆議院議員藤本捨助君外三十九人によって提出され、去る四月二十二日衆議院から予備審査のため当院に送付、同日社会労働委員会予備付託となったものでありますが、この法律案食肉販売業及び氷雪販売業等をその適用対象とし、環境衛生保持理由のもとに、厚生大臣所管といたして、食肉販売業及び氷雪販売業販売方法及び販売価格等に対してカルテル行為が規定され、畜産業及び水産業経営並びに国民生活に重大な影響を与え、かつ農林省の権限である畜産物及び氷の生産流通及び消費に関する事務と抵触し、行政の紛淆の因となり、わが国畜産及び水産業の円滑な運営に障害を来たすこととなることを心配されておりますので、ここにこの問題を議題にして、政府当局の所見をただし、その後においてこの問題の取扱いについて御協議を願うことにいたした次第であります。  まず、厚生当局から、続いて農林当局から説明を求めることといたします。
  3. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) ただいま御指摘のございました環境衛生関係営業運営適正化に関する法律の概要について申し上げたいと存じます。  この法律は元来政府提案ではございませんで、私どもといたしましては、実体上並びに立法技術上御協力を申し上げたという程度でございます。  この法律趣旨といたしますところは、環境衛生関係営業につきましては、それぞれ守るべき衛生基準あるいは取扱基準等が、それぞれの単行法において定められております。しかしながら、これを順守いたしますためには、ややもいたしますと、過当競争の結果、これらの衛生措置基準あるいは取扱いの適正というものが欠ける場合がなしといたしません。なおかつ、過当競争の結果は、決してサービス向上方向にのみ発展せずに、むしろ競争の結果は、逆に過剰サービスはかえって社会種々の問題を起す方向に発展するきらいなしといたしません。たとえますれば、ただいま食肉の問題のお話がございましたが、これらの問題にいたしましても、過当競争の結果は、ややもいたしますと、食肉内容があたかも羊頭を掲げて狗肉を売るような例も少くないのでございまして、従いましてこれらの取締りあるいはサービス向上徹底いたしますためには、逆に営業の安定をはかることが必要であるという考え方から出発をいたしておるものと考えます。従いまして、一口に申し上げますと、過当競争を防止し、営業を安定させることを手段といたしまして、これによって社会種々の問題を起している点を解決し、さらに衛生措置並びに取扱い正常化をはかろうとするものでございます。  従って、この点は、目下やはり国会審議されております中小企業団体法とは著しくその趣きが異なっておるところでございます。従って、私どもは、政府部内におきましては、これらの二つの法律は似たところがあるが、全く別個なものとして、両立する考え方で、通産省と話がついておる次第でございます。  次に、これらの関係対象営業でございますが、これは法律に明記しておりますように、食品衛生関係のうち特に問題の多い飲食店喫茶店及び氷雪販売業並びに食肉販売業対象といたしております。そのほか理容業美容業クリーニング公衆浴場旅館並びに興行場、特に映画館営業対象にしておるわけです。つまり、七業一種が営業対象になっております。  なお、これらの具体的な方法につきましては、それぞれの業種ごと府県別組合を結成させまして、その組合が自主的にいろいろな事業を行いますほか、特に料金並びに販売価格のほか、営業方法規制もいたし得ることになっております。この営業方法並びに料金等規制は、国民生活に至大な関係がありますので、これらの決定に当りましては、単に組合にまかせず、それぞれ審議会を設けまして、消費者代表意見等も十分に聴取いたしまして、これを決定していく。しかも、これらの問題は都道府県知事認可、あるいはさらに厚生大臣認可、さらに進んで公正取引委員会との協議を必要とすることといたしまして、これによって国民生活に不当の圧迫を加えない措置を講じている次第でございます。  さらに、この組合の結成につきましては、これは自由加入の建前をとっております。従って、もちろんアウトサイダーというものは認め得るわけでございますが、ただ営業方法並びに料金販売価格等制限につきましては、これらアウトサイダーに対しましても、必要があれば行政措置に訴えまして、組合できめました方法あるいは料金等に従うべき強制命令が発し得るようになっている次第でございます。  かようにいたしまして、主として自主的に営業適正化をはかっていこうということがこの趣旨でございまして、私どもといたしましては、これら営業方法規制等につきましては、もちろん取締りによってその徹底を期すべきことは当然でございますが、何分にも、きわめて複雑な、しかも数の多い業界でもある関係から、必ずしも行政手段のみによっては、なかなかその正常化を期し得られない面がございます。かかる面を、それぞれの組合自主的活動、自粛的な活動によりまして、これを解決し得られますことは、行政実施上もきわめて大きな利益が得られるものと考えまして、私どもといたしましては、政府部内において、これらの法案に対しまする意見といたしましては、閣議決定をもちまして、これらを適当であるということになっているわけでございまして、ただ、これらの運営につきましては、今後きわめて慎重に扱いまして、国民生活を不当に圧迫せず、しかも正常に中小企業としてのこれらの業界運営できますように、私どもとしては意を用いなければならぬと考えておる次第でございます。  なお、食品関係営業につきましては、きわめて数も多く、いろいろな種類がございます。一応、現在社会的にもいろいろ問題を起している営業、しかも厚生省がほとんど専管の立場をとっておるもののみについて、これを取り上げた次第でございまして、なおほかに、たくさんいろいろの問題もございますが、これらの問題は、他の省との関係もあり、私どもといたしましては、一応遠慮した立場になっておるわけでございます。
  4. 堀末治

    委員長堀末治君) 次いで、畜産局長谷垣君から、農林省見解を承わります。
  5. 谷垣專一

    政府委員谷垣專一君) この、今議題となっております環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案、これは昨日実は提案になったようで、私も昨日これを拝見した次第であります。  で、この法律は、先ほど厚生省環境衛生部長からお話がありましたように、衛生的見地からいたしまして、一種のカルテル行為を認め、料金または販売価格制限でありまするとか、営業方法制限でありますとか、あるいは営業施設、店舗の配置の基準の設定でありますとかいうようなことを規定する、こういう法文の内容、その他いろいろございますが、重要な点はそういうような点だと拝見いたしております。  で、ただいま政府部内で、この関係の所と合議して、これを了承したというお話がございましたが、そういうことは農林省としては承知いたしておりません。  それから、農林省の方の見解といたしましては、その他の、ここで言っておりまするたとえば理容業者パーマネント屋、あるいはふろ屋、あるいは映画劇場劇場旅館業者、あるいはクリーニング屋というようなもの等に関しましての問題は、私たちの所とは別個の管轄でございますので、その点につきましては、私の方は関係はないのでございまするが、単に衛生的な措置を問題にするということから、その点から見まして、料金規制その他経営の安定をもたらすためのいろいろな措置を講ずるということは、これは法律といたしまして、いささか行き過ぎの法律ではないかと感じております。これと同時に、あるいは以前に中小企業団体法というものが提出されておるわけでありまして、これは先ほど法律の態様が違うというお話のようでございましたが、ここで目的といたしております、団体法の方は「この法律は、中小企業者その他の者が協同して経済事業を行うために必要な組織又は中小企業者が自主的に事業活動を調整するために必要な組織を設けることができるようにし、これらの者の公正な経済活動の機会を確保し、及びその経営の安定を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」、こういうふうに第一条に目的を書いておりますが、さようにいたしますると、この法律衛生的な見地ということを除きまして、最も重要な手段として行われておるものは、まさに同じような手段がとられる、こういうことに相なるかと思うのであります。従いまして、中小企業団体法のそういう措置が行われまするならば、この問題点が大部分解消するのではないか。  中小企業団体法の問題につきましては、たとえば今例示されましたような食肉問題等農林省関係産業に関しますものは、それぞれあの法律では所管大臣等を明確にいたしまして、それぞれのそういう物資を所管いたしておりまする者が所管大臣になることに相なっておる次第でございます。で、さような観点からいたしまして、この本法に関しましては、農林省関係いたしておりまする食肉販売業、あるいは氷雪販売業等もあるかと思いますが、これらのものをこの法律規制することは、いささか妥当を欠く、かように考えております。  なお、この食肉販売業氷雪販売業等の者は、これはそれぞれの各省設置法によりまして、はっきりした所管がきまっておるわけであります。食品衛生法観点から、飲食店営業喫茶店営業等と並びまして、農林省関係のいたしております食肉販売業、あるいは魚屋であるとかいうようなものに対しましても、衛生的見地からの干渉、監督を受けることは、これは当然でございますけれども、しかし、畜産物生産消費その他の一貫いたしました産業政策としての立場のものは、これは各省設置法に明記してあります通り農林省所管に相なっておるわけであります。また、最近非常に畜産物に対しまする需要増、あるいは日本の農業一つの転換いたしまするモチーフといたしまして、畜産というものが農業の非常に大きなウエートになっておるわけでありまして、この農業におきまする畜産の増大と、その消費におきます廉価にしてかつ豊富にそれを供給いたします政策とは、これは相切り離して議論はできないと思うのであります。従いまして、農林省といたしましては、生産の増強と同時に、その消費流通の分野におきましても、種々の方策をとって参ってきているわけでございます。  で、小売の段階におきまして、これをどのように規制するかということにつきましては、これはいろいろな議論かあろうかと思います。果して、これをカルテル化いたしまして値段をきめる、あるいは営業方法制限をするというようなことが、直ちに現在の畜産あるいは食肉需要増にこたえる方法であるかどうか、こういうことはまた畜産業政策立場から慎重に議論をすべき点であると思います。しかし、もしこれをそういうような過度の競争になることを是正するという必要がございまするならば、これは中小企業団体法の規定によりまして十分に所期の目的が達成される、かように考えている次第であります。  なお、食品衛生法対象になりまする品種、職業はずいぶん多きにわたっていると思います。すし屋もあれば、うどん屋もある、魚屋もあれば、ミルクの販売業者もある、あるいはアイスクリームを製造する所もありますれば、とうふ屋もあるというふうに、ずいぶん広範にわたっているのであります。そういう中で、食肉販売業氷雪販売業のみを、このたびこの法律対象にされていかれるということ自体も、いささかどういう理由であるか解釈に苦しむのでありまするが、そういうふうに食品衛生的な見地からの問題は、これは当然に食品衛生法としてやっていただくわけでありますから、その衛生施設立場から、もっと重大な産業的な立場から議論をせなければならないカルテル行為価格等の調整、このようなことをやるということは、非常に目的手段とが相転倒しているのではないかという感じを持つのであります。そういうような点につきまして、国会におきまして慎重に御審議をお願いいただければ幸いかと思うのであります。  なお、もう一点だけつけ加えさせていただきまするならば、食肉販売におきまして、確かに、ひき肉等段階、あるいは肉の販売におきましても、牛肉と称して馬肉を売り、あるいはまたひき肉の中にいろいろな肉をまぜて売るというようなことは、通常行われ得るわけでありまするが、果してこれを衛生的見地から見て、牛肉と称して馬肉を売ることはいけないということが言えるかどうか。で、価格というものは果してどういうふうにその場合に統制するかという問題は、やはり技術的な問題として食肉の場合には起ってくる問題であろうと考えます。そういうような点につきましても、衛生的見地から議論をするといたしまするならば、それは馬肉と豚肉とを問わないのではないか、あるいは牛肉とを問わないのではないか。とにかく食肉販売という立場からいたしまするならば、価格の問題はこれは技術的に相当にむずかしい問題が包蔵されているというふうに考えるのでありまして、そのほかのパーマネント屋、あるいは最近問題になっておりまするような旅館業、あるいはふろ屋というものと同一に論ずることは、いささか問題が残っているのではないかと、かように考えるわけであります。  以上、諸点いろいろ申し述べましたが、大体こういう考え方でございます。
  6. 堀末治

    委員長堀末治君) 次に、氷雪販売業について水産庁見解を伺います。
  7. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 厚生省当局との間には、水質汚濁等の問題につきまして全く利害一致し、きわめて緊密に仕事をいたしておるつもりでありますが、ただいま御審議をいただいておりまする環境衛生法自体の問題につきましては、これは全くわれわれは見解を異にしておるということを申し上げざるを得ないのであります。  ただいま谷垣畜産局長から申し上げたことの中で、畜産物及び農業という言葉を、氷雪及び魚類並びに水産業という言葉に置きかえていただきますれば、水産庁のこの問題に対しまする見解にそのままそっくり当てはまるのでございまして、そういう意味におきまして、何とぞ慎重に御審議をお願いいたしたいと、かように存じます。
  8. 堀末治

    委員長堀末治君) ただいまの説明に対しまして御質疑がありましたら。
  9. 清澤俊英

    清澤俊英君 第一に、氷雪とはいかなる意味ですか、氷雪販売業とはいかなる形態の販売業でありますか。
  10. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 従来私ども取締り対象といたしております氷雪販売業というものは、つまりこれは食用並びに病人等冷却用使用する氷を意味しておりまして、これらのものは、私ども立場からいいますと、これは医薬品にも準ずべき重要な品物だと考えております。と申しますのは、冷却用の氷を病人が口にする、熱病患者等が口にするというようなことは、きわめて危険でございます。従って、さような観点から、私どもはこれは医薬品にも準ずべき一つの重要な品物だと考えております。なお、これらの販売方法にいたしましても、私どもがしばしば国民から苦情を聞きますことは、夜間急に熱でも出てきた、夜間急に病人が出て氷が必要になったというようなときに、なかなか手に入らない。こういうようなものは、夜間でもそういう緊急のときには氷が間に合うような方法を講じてくれないか、こういうことがしばしば言われておるのでございまして、従来とも私どもはさような方針で業界を指導して参っております。  いずれにいたしましても、これらの氷雪販売業というものは、氷雪そのもの医薬品にも準ずべき重要なこれは品物でございまして、従って、私どもはきわめて深い関心を持っておる営業でございます。もちろん、この製造方法あるいは大量にこれを魚の冷凍に使うというようなことになりますと、(「簡単に」と呼ぶ者あり)これはまた別な問題でございます。
  11. 清澤俊英

    清澤俊英君 問うたことだけ言うていただきたいです。そこまでまだ言っていませんから……。せっかくそこまで触れられましたから、一つだけお聞きしますが、私らの新潟あたりでありますと、雪を囲っておりまして、それを冷却用等に使っておりますが、これらは氷雪の中に入るのですか。これは魚の冷凍用並びに病人氷嚢用等に使っております。
  12. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 魚の冷凍用等は、この場合の氷雪販売業には入っておりません。
  13. 清澤俊英

    清澤俊英君 病人冷凍用のは……。
  14. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 病人冷凍用は、これは入っております。(笑声
  15. 千田正

    千田正君 関連して。病人冷凍用とはどういうことですか。(笑声病人使用するあれでしょう。冷凍のいわゆる氷であるとか、そういうものを言うているのでしょう。アイスクリームも入っているわけですか。
  16. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 病人冷凍用という言葉はまことに(笑声)適当でなかったと思います。病人使用する氷雪というふうに……。なお、アイスクリーム等につきましては、これは乳製品の過程でございまして、これはこの問題とは全然問題が違っております。
  17. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今の氷の問題ですが、店でよく氷をやっておりますが、それを病人用に使うのと、あるいは普通の家庭用のアイス・ボックスで魚とか野菜とか、いろいろ料理を冷やすのに使うのとの区別を、どうしてされますか。氷屋がたくさんありましょう。それが氷を売っているのに、これは魚を冷やすのに買って使おうが、あるいは病人使用にされるか、あるいはかいて食べようが、いろいろなことに使われると思いますが、それをいろいろな、今言うたような魚を冷やすとか、食料を冷やすのとは関係ないとおっしゃいますが、どうして区別されますか。
  18. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 病人用の氷につきましても、私どもといたしましては、たとえば氷嚢だけに入れるというような場合には、あえて取締りの必要はなかろうかと存じます。しかしながら、実際には、熱病患者等にいたしますと、氷嚢に入れるべき氷をまた口にしないとも限らぬ。さような心配がございますので、一応病人用のものは、このような観点から、冷却用食用も含めて病人用として考えたい、かようなことでございます。  なお、冷蔵庫に使う、あるいは魚の保存用に使うのとどこに区別があるかという点でございますが、これらは従来私ども行政指導といたしまして、できるだけその辺のはっきり区別をするように、営業を指導いたして参っておりますが、なかなか徹底を欠くうらみもございます。従いまして、今回かような組合団体ができまして、これによって自主的にその辺をはっきりさせれば、これは取締りの補完的な業務が達成されまして、きわめて整然と自主的にこの辺の営業方法規制できるのではないか、かように期待をいたしておる次第でございます。
  19. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そうしますと、使用者は、われわれが氷を使うにしましても、だれが使うにしましても、一々用途を明示して買わにゃいかぬということになりますか。
  20. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 従来家庭冷蔵庫家庭で使いますもの、あるいは病人の使いますもの等は、これは私ども食用並びに冷却用との区別をしないことの方が安全ではないか。なかなかこれは区別しにくいから、従って、ただいまもお答えを申し上げましたように、一応これは食べても差しつかえない範疇で取り締まることが妥当ではないか、かように考えております。
  21. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そうしますと、今魚を冷凍するようなものは別だとおっしゃったのとは、矛盾するように私どもは考えますが、今のお答えであると、えらいこまかいことのようですが、実際そういうことが行われるかどうかということは、非常に混乱が起りゃせぬかと思うのですがね、実際の問題として……。  それからもう一つは、いわゆる氷を食用にして売っておるのは、これは飲食店の方に入りますか。氷をかいて売るとか、かき割りにして売るとか、夏になると……。これは飲食店の中に入りますか、氷雪の部類に入りますか。
  22. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 氷水として販売いたしますのは、飲食店営業に入ります。しかしながら、その飲食店が氷の原料として買ってくるその先は、つまり氷雪販売業になるわけでございます。
  23. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 もう一つ前のやつを答えて下さい。
  24. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 御指摘のように、食用冷凍用とがなかなか使用区別が困難であることは、たびたび申し上げておる通りでございます。従って、特に病人等の場合については、私どもは、冷凍用であってもこれは食べるという公算もかなりありますので、この辺は病人用等については食べても差しつかえないという観点から、取締りをいたしてきておるわけでございます。
  25. 千田正

    千田正君 今、楠本さんが御説明になっておりますが、これは衆議院議員提案法律で、政府提案ではないのですね。
  26. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これは、御指摘のように、議員提案であります。
  27. 千田正

    千田正君 政府提案でないのに、楠本さんが御説明をしなければならないというのは……。これは立法府の提案者説明すべきものであって、楠本さんの方はむしろ、これを実行する点について、私どもはむしろ疑義がある場合に、政府としてこれをやれるかどうかということを、あなた方に御質問するのであって、提案者にその理由を私ども……。
  28. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  29. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して下さい。
  30. 千田正

    千田正君 それでは、別の見解からお尋ねいたしますが、厚生省環境衛生という行政機構は、どの面を担当されるかですね。これは非常に広範囲にわたると思うのですが、あなたの管轄する行政権内における取り締らなければならない衛生部門は、大体おもにどういうところまでの範囲を、楠本さんの方では監督あるいは指導される立場にあるのですか。
  31. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 環境衛生範囲はきわめて膨大でございまして、必ずしもきわめて狭い意味衛生だけとは考えておりません。たとえば、現在、公衆浴場入浴料金というようなものは、私どもの手元で統制を加えております。また水道料金等認可制をとっております。また映画館等につきましては、これは映画の興行時間というようなものの取締りと申しましょうか、指導をいたしております。かように考えてみますと、これらはもちろん衛生関係あることではございますけれども国民生活関係あることではございますが、必ずしも狭い衛生の面だけからは律し得られない面か多いのではないか、かような考え方で、むしろ国民生活をいかに保護育成していくかという点に大きなねらいを持っておるものと、かように考えております。
  32. 千田正

    千田正君 この法案をずっと読んでみますというと、大体環境衛生立場から今までいろいろな、たとえば食品衛生法、あるいは理容法、美容術その他に対するもの、あるいは公衆浴場とか、旅館とか、おのおのかつて法律が出ておるわけですね。なおかつ、それに対しては厚生省として、厚生省立場から指導もし、また場合によってはその規定をして取り締っておられるはずであります。それで、こういうものを見ると、こういうものを一括して環境衛生法という法律を作って、何かもっと取締りを強化し、また衛生立場をもっと明瞭にあげておるというような考え方が一貫しておるようでありますが、従来の、たとえば今農林委員会で問題になっておりますところの食肉販売業及び氷雪販売業に関しましての、食品衛生法によって取締りが十分でないという点は、どういう点なんですか。
  33. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 食品衛生関係を例にとってみましても、これらが何分にも数が多く、しかもきわめて複雑な営業形態を持っておりますために、人手の関係等もございまして、必ずしも取り締りだけでその万全を一方的に期するということは、きわめて困難な実情にあろうかと存じます。ところが、実際問題といたしますと、一番その営業方法内容がよく理解されておりますのは、業界そのものでございます。従いまして、業界組織を整然といたしまして、自主的に、しかも自粛的に、これをお互いに切磋琢磨する意味で指導をいたしますれば、これがきわめて補完的な意味が強まりまして、私ども行政取締り徹底というものがきわめて効果的になるのではないかと、かようなふうに考えておる次第でございます。
  34. 千田正

    千田正君 この法案は、読んでみますというと、第二章には、環境衛生同業組合という組合を結成させようと。しかし、今申し上げた単に食肉販売業及び氷雪販売業だけを考えても、あなたのおっしゃる通り、とうてい取締りが十分にはできないにもかかわらず、床屋さんもあり、美容師もあり、旅館もあり、公衆浴場もあり、クリーニング屋もあり、これを全部一括して環境衛生同業組合というような膨大なる組合を作ってみて、それに対してあなた方の指導がうまくいくか、われわれは非常に疑問に思うのですが、どうなんですか。  もう一つは、この法律に対して、かりに今おっしゃったような立場であるとするならば、相当監督あるいは指導するに対しても十分な信用がなければならない。これは予算の裏づけか何かあるのですか、この法律に対して。
  35. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 第一点の御指摘の、この同業組合は、これは総合したものを作らずに、それぞれ個々の、たとえば氷雪販売業の同業組合、あるいは喫茶店の同業組合、あるいはクリーニングの同業組合というようなふうに、個々の業態においてそれぞれ組合を結成していくことになっております。  それから第二点の御指摘の予算の点でございますが、この問題は、この法律は、取扱い方法は別といたしまして、かねて衆議院の中で昨年来継続審議になっておりました関係から、大蔵省とも十分に折衝いたしまして、法律が通れば通ったときに、この所要の予算的措置を講じようという約束になっておる次第でございます。
  36. 千田正

    千田正君 第一点の、あなた方のお考えであれば、あえて環境衛生同業組合という名前を冠せずとも、すでに発足しておりますところの食肉販売業同業組合、あるいは氷雪販売業同業組合、あるいは理容師同業組合と、こういう組合が、おのおののその業種によって組合を結成しておるはずであります。それに対して、あなた方がやろうという高度の衛生を指導しあるいは規定するならば、そのおのおのの組合に対してあなた方の行おうとすることを、一部改正の法律か何かで出した方が、もっと効果的に、重点的にあなた方の目的を達せられるのじゃないかと思いますが、その点はどうなんですか。
  37. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これは御指摘通りでございまして、この法律に書いてございます環境衛生同業組合というものは、一応その性格を表わした言葉でございまして、名称独占はございません。従って、従来たとえばクリーニング協同組合というものがあるならば、それがそのままの名前で、しかも、ただたまたま法律的ないろいろな権限と申しましょうか、かようなものをこの法律の同業組合としての性格を持てばいいわけになるのでございまして、この点は別に環境衛生同業組合の名称独占はございません。この点は、御指摘通り運営していきたい所存でございます。
  38. 千田正

    千田正君 そうだとするならば、ここに並べた第一章第二条の一、二、三、四、五、六、七と七つの営業者の組合があるはずですが、それに対して、特にあなた方の方としてこれは見のがしてはいけない、たとえば公衆浴場の問題、これはいかぬじゃないか、あるいは旅館営業にしても、終夜営業をやっておると風紀上よろしくない、こういうようなのを抜本的に選び出して、その一部法律改正をやった方が、はるかに迅速にして効果的じゃないかと私は思うのですよ。あなたはそういうふうなお考えありませんか。
  39. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) ただいま議題となっております法律趣旨のことを、それぞれの母法において規定するがいいか、それとも一括して、母法を含めたものを一括したのがいいかということは、これは立法政策の問題でもございますので、私としてとやかくここで申すべき筋合いじゃないと存じます。ただしかし、かりにすべての七つの母法につきまして、それぞれ同じことを、組合結成並びにその組合の業務あるいは調整規定等を、同じことを書き並べるよりは、むしろこれらを一括して書き並べることの方が、あるいは立法技術上は、すなおな考え方ではないかとも思っておる次第でございます。
  40. 千田正

    千田正君 私は、法律的効果からいけば、この単行法では、あなた方はこれは社会衛生上よくないと。そういうものの単行法を改正した方が、経費の面においても、あるいは人間を使う面からいっても、その方が効果的であり、また法律の行き渡る点からいっても、その方がはるかに有効じゃないだろうかと思うのです。環境衛生法という法律をもって、国民全般にわたるところの法律を作ったとするならば、これは散漫になって、一応の一つの良識教育にはいいかもしれませんけれども国民衛生教育にはいいかもしらぬけれども、現実にそれを守るということになるというと、むしろ単行法において規定した方がはるかに効果的じゃないかと私は思う。  この点について、この食肉販売というようなものは、すでに御承知の通り農林省としましては、この食肉販売に対しましても従来ずっと指導もし、またその及ぼすところの関係法規に対しては十分に監督しておる。それでも間に合わない。やはり衛生的な面においては、厚生省において監督しておる。大体万遺漏はないだろうと思うのですが、価格規制、適正価格規制までもあなたの方がやるというのは、ちょっとこれは行き過ぎじゃないかと私は思うのですが、その点はどうなんですか。
  41. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この食肉等の販売価格、まあ消費価格をいかに定めるかというような問題は、どこの所管であるかということにつきましては、御指摘のように、これは必ずしも厚生省とも言い切れないと存じます。以前ほこれは物価庁が実施をいたしておりましたが、必ずしもこれほどこと言い切れないかと思いますが、先ほども申し上げましたように、私どもはむしろ料金制限、あるいは販売価格制限というようなことから、業界を安定させまして、さようなことを手段といたしまして、逆に営業方法制限させ、それから衛生措置徹底させるという方向に、手段として持っていきたい、かような考え方から、これを取り扱っておるわけでございます。
  42. 千田正

    千田正君 これだけでやめますが、非常にこれは立法技術の上において疑義があると思うのです。私はむしろ、先ほど申し上げたように、単行法を改正した方がいいという点は、罰則その他においても、単行法であれば不足な面もある程度ついでいける、強化できる。これはむしろ衛生思想の国民的な改良には役立つかもしらぬけれども、現実にそれを販売し、あるいは営業する者にとって、どれだけの効果があるかということは、非常に私は疑義があると。もう少し私は慎重に研究さしていただきたいと思います。私はこれで質問を終ります。
  43. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 どうも、衛生管理に名をかって、価格決定、しかも区域の設定までしていくというのは、私もこれは非常に行き過ぎと思う。納得がいかぬ第一番のことです。  全体の問題はさておいて、この農林関係食肉一つピックアップしてみても、いわゆる日本の農村は畜産奨励でいかなければやっていけぬということで、畜産の奨励に全力を尽しておるということは、御承知ですか。
  44. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) よくわかっております。
  45. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 厚生省といえども、非常に問題が大きいのだから、この点は常識的にも御存じだろうと思う。そうなってきます。一方畜産奨励のために食肉の奨励をせねばならぬということになると、これは当然その価格決定とか、あるいは食肉店の区域の設定まで、厚生大臣が権限を有しておるというようなことになると、非常にそこにそごを来たすのじゃないか。まず第一に、この法律農林省とよく協議しましたか。その点がまず第一。  それから閣議で決定したとおっしゃったが、いつ何日に決定いたしましたか。あるいは閣議の決定に農林大臣が列席をしておったために、その閣議決定農林省は了解したものと、こうお考えになったかどうか。まず第一番に二点をお伺いしたい。
  46. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 昨年二十四国会の終りごろ、この問題が議員提案されたわけでございますが、そのいきさつは別といたしまして、党においても慎重な検討の結果、たびたび部会等を開いて検討の結果、提案されたわけであります。政府といたしましても、その趣旨といたしますところはきわめて重大でございますので、私どもといたしましては、まず最初に公取委員会と十分に相談をいたしました。さらに、通産省ともこれは十分に相談をいたしました。なお、予算等の関係から、大蔵省とも相談いたしました。ただ、たまたまその間、具体的に農林省と御相談をすることはしなかったのでございます。さように関係各省の間で十分相談をいたしまして、異議がないということになりまして、その旨を正式に閣議において決定をいたしておる次第でございます。おそらくその席上には農林大臣もおられたと思いますし、なお官房長官からは、各省にこういうことが閣議決定になったということが正式に通知をされておる次第でございます。
  47. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 今の閣議は何日に決定したか、それからこの閣議に農林大臣が列席しておったから農林省は了承したというような考え方は、あなた方は長年役人をやって役人道徳を知らぬのですかね、役人道徳を。そういうことでものが進んでいっているのですか。その点を一つお答え願います。
  48. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 実はこの法律対象にしてくれという業界の希望等も、かなり多かったように思います。しかしながら、いずれ他の省との関係がありますので、従って、私どもとしては、これらは事務的にはできるだけ遠慮をいたして参っております。なお、党の方に対しましても、その点をはっきり申し上げておりました。従って、問題は食品関係でございますが、食品関係におきましても、できるだけ厚生省の専管的なものないしは他の省と関係のないもののみを選んであるつもりでございます。たとえば牛乳関係、あるいはカン詰類、あるいは魚介類等につきましても、業界の方ではかなり熾烈にこの対象にしてくれという希望もあったやに聞いておりますが、私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような業態は、いずれも農林省との深い関係がございますので、かようなものはできるだけお断りをいたしまして、事務的にはできるだけ厚生省専管ないしは他の省と関係のないもののみを選んで、進んで参りたいという考え方でございます。
  49. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 これは、私の質問にお答えになっておらない。畜産奨励は、日本の農村の将来のために最も大切な事業で、それで農林省はもう畜産奨励に専念しているということは知っていると、こう言われた。しかも、畜産奨励に非常に影響があるこれの価格決定とか区域の設定とかいうものは、それも御存じだろうに、それを従来の役人道徳に反して、事務的に折衝しなかった、厚生省専管のもののみをやったと。専管じゃないです、これは。しかも、この法律においてその価格決定、区域の設定等は、農林大臣がちっともタッチしておらない。しろうとの厚生大臣が、しかも、しろうとの部下の厚生省の職員が審議をして決定する、この点に不都合ないですか。畜産奨励に影響してくる。これも、こないというようにお考えになるのですか。
  50. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 先ほどからしばしばお答えを申し上げておりますように、私どもがこの法律の施行に期待いたしますところは、料金価格等決定手段といたしまして、むしろ現在いろいろ問題の多い点を解決いたしたいという趣旨でございます。特に食肉等につきましては、先ほどもお話が出ておりましたが、羊頭を掲げて狗肉を売るていのもの、あるいはなかなか見た目だけでは消費者の判断ができないというような点から、いろいろ問題も多いかに聞いております。私ども、これらの点については、鋭意監督はいたしておりますが、なかなか行き届きません。従って、かような手段によりまして、今回この対象とすることによって、この方がかような問題がむしろ自主的に円満に解決するのじゃないか、かように考えている次第であります。  なお、価格制限等につきましては、これはもちろん十分に農林省とも相談をいたしまして、より畜産の発展に資する方向に進みたいという考えを持っていることについては、申し上げるまでもございません。
  51. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 これは何も、法文にそういうことはないのだから、そこまであなた方は考えておらなかった。それから業者の強い要請による……。そこが非常に危険なんだ。業者は営利を目的としておる。畜産の、食肉奨励というようなことは別に考えておらない。それから食肉店が雨後のタケノコのように発生するものでもなし、消費者はばかではないのだから、だから、そういうことを考えると、いわゆる衛生管理に名をかって、そうしてこういう畜産奨励に障害になる権限まで厚生大臣所管するということよりほかに、われわれ受け取れない。その点、いろいろ、あなた方の考えは別として、私の申し上げることに一理あるとお考えになるのですか。これはむちゃ言いおる、これは無理な、無謀な議論をはいておるというようにお考えになるか、その点。
  52. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) もちろん、無謀な意見とは毛頭考えておりません。十分傾聴すべき御意見と思っております。
  53. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 今の閣議決定の日にちをお答え願います。
  54. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) たぶん昨年の四月二十八日ではなかったかと存じております。
  55. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 それはおかしいですよ。昨年の四月二十八日にこの法案が閣議決定になったのですか。そんなことをおっしゃって、われわれを納得さそうと思われたところが、それはちょっと無理ですよ、そういう御答弁をなさるということは。
  56. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) どうもこれは、私、議員立法でございまして、はなはだ取扱い上の問題を事務当局が申し上げることはどうかと存じますが、話がそこまで行きますと、はなはだ、これは真偽の問題でもございますので、申し上げなければならぬと存じますが、当初、これは同じ内容のものが、ただいま御提案になっておると同じ内容のものが、自民党の提案として昨年出て参ったわけでございまして、私どもは、これは事務当局でございますから、いきさつは一切存じませんが、その後、これは共同提案にするというお話が持ち上ったかに聞いておりました。それで、今回円満にその話がつきまして、提案取扱いだけが変った、かように存じております。従いまして、今回出ました法案も、この前自民党が提案いたしました法案も、ほとんど内容に変りはございません。そこで、私ども政府部内として、あらためてこれを閣議決定しようかとも考えましたが、いろいろ政府部内で相談いたしました結果、内容が全然違わないのだから、あらためて閣議決定をし直す必要はないじゃないか、こういう結論に達したわけでございます。
  57. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 それでは、前に閣議決定したということは、これは誤まりであったと、取り消しなさい。  それからもう一つ……。それを第一番に取り消していただきましょう。閣議決定したという御回答があったのですが。
  58. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この法案と全く同じ内容のものが閣議決定になっているということを申し上げているわけであります。ただ、取扱い上の問題が変ってきたのだ、こういうふうに私どもは了解しております。
  59. 仲原善一

    ○仲原善一君 関連して。同じ法案というお話を今されているようでございますけれども、その当時は、業種の指定は政令にゆだねてあったと私は聞いておりますけれども、そうなると、業種を食肉販売とか氷雪販売業というのは、表面に出ていなかったと思います。政令ですからね。そういう重大な問題が隠れておって、しかも閣議決定というので押し通されるということに、私は疑義があると思います。
  60. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この前は、御指摘のように、食品衛生法で規定されている営業のうち政令で定めるものとなっておりました。その後、それでは問題が起りやすいというので、特に法律にあげて、政令を廃したというふうに私どもは伺っております。
  61. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 そうすると、食肉という問題は、今度の法律に初めて入ってきたと、私はそう思うのですが、その点どうですか。
  62. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この前、政令で規定する内容はどういうものかということを、私どももいろいろ党の方に確かめもいたしました。そのときには、こういうことでございました。その政令の内容というものは、食品衛生関係営業のうちには、法律によって守るべき衛生措置基準、設備基準等の定められているものと定められておらぬものとがございます。私どもといたしましては、定められて、それぞれ食品衛生法において守るべき義務が規定されているものを選ぶという考え方で、進んでおったわけでございます。それはしかし、はなはだ明文を欠きますので、今回これをはっきりさした。こういうふうに一つはっきりさせて、なおかつ、それを大きくしぼってある、こういうふうに私どもは理解をしております。
  63. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 そういうことになると、われわれは、食肉はあの当時は問題の範囲外であったと、そう存じている。今いろいろ婉曲にお答えになりましたけれどもが、それが事実だろうと思う。そういうことになると、事務的にどうしても農林省とよく協議して、そうして出さねばならぬもの、これはいわゆる各省の役人道徳としても、こういうことはかつてないのですよ。その衝に当っている畜産局長が昨日知ったというような法案を議会に提案するということ、もちろんあなたが提案なさったのではない、議員提案ですけれども、あなたが指導せられているのだから、直接の指導——指導ではない、慫慂せられていると私は思うのだけれども、まあ指導でもいいが、そうすると、きわめてあなたは道徳を欠いているのですよ。そういう多少でも気持があるかどうか、お答え願います。
  64. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) だんだんのおしかりでございますが、私は、各省との間の調整には、最も意を用いております。ことに、農林省との関係におきましては、私はかねていろいろな仕事の関係で、特に農林省の味方になってものを考える立場過ぎるくらいに、非難を受けるくらいの点もございます。たとえば、黄変米の問題しかり、あるいは放射能のマグロの問題しかり、牛乳の殺菌方法の問題しかり、いずれも私は最も農林省との関係には、いろいろ深い関係がございますので、その点は私はきわめて大局的な、自分の所管を離れて、今までも農林省に御協力をしてきたつもりでございました。何もこういうことを申し上げる必要もございませんけれども、私がその気持でございまして、その点は、農林省こそ一番よく知っていただけると、私はそう思っております。
  65. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 そうすると、これはお答えは要求しませんが、今までは農林省に過ぎるくらい協調してきた。このたびは、農林省事務的な協議もしなかった、これは非常な手落ちであると了解いたします。  それから、食肉店が、あなた方が今まで衛生管理をしてこられたのですが、その衛生管理が煩にたえぬくらい、全国に食肉店が開店をやっていっている傾向なのであるか。それからまた、将来も、喫茶店等と同じく食肉店がそういう傾向になって、食品衛生管理上非常に憂うべき問題だ、こうお考えになるかどうか。
  66. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 食肉販売商につきましては、他のたとえば映画館その他の問題のように、非常に過当競争のために、施設の制限を要するというような段階ではない。なお、今後も、近い将来、これらのものが施設の制限まで要するような過当競争になるものとは考えておりません。
  67. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 そういうことになりますと、食肉店をこの法律に入れねばならぬという緊急な理由は、私は、今の御説明によると、ないものと了解いたします。御答弁は別に要求いたしません。
  68. 東隆

    ○東隆君 私はこの七十何条になりますか、アウトサイダー規制する問題ですが、これは厚生省の内部の協同組合を扱っておる関係の所、そちらの方とよくお話し合いをされておるのか。それから任意加入でありますから、強制加入でないとおっしゃっているのですから、当然生活協同組合、あるいはその他の共済会であるとか、その他がやっておるものがあろうと思いますが、そういうようなものがアウトサイダーに立っておる場合に、それに対して規制を加える、こういうお考えになりますると、私は厚生省内部において、生活協同組合に関する限りはお話し合いが行われておると思う。従って、その内容を、一つどういうようなお話し合いをされたか、それをお聞きしたい。
  69. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 現在会社、工場、官庁等が全くの福利施設として、営業を離れて、理容あるいはパーマ等の施設を持っている。これらはもともとが営業でございませんので、この法律の適用にはならないものと考えております。ところが、一方、生活協同組合等におきましていろいろ共同的な施設をいたしております。これは私どもは業という考え方で進んでおります。従いまして、生活協同組合の施設につきましては、この法律対象になるものと考えております。  しかしながら、この法律には二つの重大な目的がございます。一つ料金等制限一つ衛生措置営業方法規制でございます。この後者の営業方法制限あるいは衛生上の制限につきましては、これはたとい生協の施設であろう、これらに二通りの道があろうはずがございませんので、当然その面の規制は受けるものと存じます。ところが、前者の料金規制等につきましては、これは生協の本来の趣旨から考えまして、市価主義をもって当るということは必ずしも妥当でないと存じております。従って、その辺には十分な、料金規制等につきましては、生協の場合は十分に幅を持って考える必要があろうと、かように考える次第でございます。なお、これらの限界につきましては、厚生省内でこれを所管しております社会局とも十分に相談済みでございます。
  70. 東隆

    ○東隆君 生協と関連をして、今度は農林省の管轄になりますが、おそらく将来において農家も肉類を食べるようになる。自家消費を始めると思うのですが、その場合、一応大家畜の屠殺はできませんし、従って肉を食用に供するためには、何らかの手を通さなければならぬ。その場合には、ことごとくこれにひっかかってくるわけでございます。その場合に、協同組合食肉を配給をする、こういうような場合になりますと、おのずからひっかかってくる。多分そういうような形でもって、将来農村の食生活の改善であるとか、そういうようなものが進められていくと思うのですが、その場合には、アウトサイダーとしてやはり規制をするつもりですか。
  71. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 従来私どもは、農村の食生活改善のために、たとえば牛乳の処理、あるいはその流通方式、あるいは食肉の屠殺並びにその流通方式等につきましては、弊害が伴わない限り、これを簡易化し、あまりむずかしいことは言わないという方針で進んで参っております。従いまして、たとえこの法律が施行されましたといたしましても、それが農村の実情等から、食生活改善等に寄与できるものならば、これは実情に即して考えるべきものであって、あまりこの法律をさような共同的な事業にまでも厳格に押しつけることは、私はかえって食生活改善のために支障ある結果になりはしないか、こうも考えられますので、その辺はよく実情に即して御趣旨に沿いたい、かように考えております。
  72. 東隆

    ○東隆君 先ほど、業としてやっておるものについては十分に話し合いをして、社会局との関係は調節をするつもりだ、それからほかのものについては十分に今まで考えてきたのだから、そういうようなことをあわせて考えていくのだ、こういうお話でありますが、協同組合の仕事は、配給の仕事にいたしましても、それから利用事業としてやるところの美容事業であるとか、あるいは理容事業、こういうようなものは、利用をする組合員の仕事の延長であって、業として扱うのは間違いである、これは。しかし、勝手に業として扱って、そうしてアウトサイダーとして押えつけようとするところに問題がある。協同組合がやっておるところの仕事というものは、これは組合員の仕事の延長をやっておるのであって、組合員ができないから、組合にかわって仕事をやってもらっておるのであって、決してそれでもって利潤を上げようというような目的でもってやっておる商業とは違う。その根本的な考え方厚生省の中でもって、はっきりとつけなければいかぬ。生活協同組合法を少くとも主管されておる、実際やっておる社会局で、この考え方がはっきり立たんければいかぬ。そうして、それと同じことを農業協同組合であるとか、その他のやる場合にも、その立場でもって見てもらわなければいかぬわけです。従って、アウトサイダー規制する場合に、協同組合でもってやる仕事が、ことごとく引っかかるようなことになったら、これはもうとんでもない問題なんです。組合員の仕事の延長をやっておるのだから、何もそれでもって利益を上げようとか何とかいう考えはないのです、組合そのものは。その仕事に一々規制を加えるということになると、これはとんでもないことである。  そこで、私は、この環境衛生関係営業運営適正化に関する法律そのものは、これの一番先に起きてきた動機、原因、そういうようなものを考えてみますと、やはり美容業者であるとか、あるいは理容業者、こういうような人が非常に、共済会であるとか、あるいは生活協同組合でやっておる仕事、それがあるいは官庁がやっておるもの、そういうようなものが非常に価格を下げて困るから、何とかしてそういうようなものを一つないようにして、そうして私たちを守ってくれ、こういう要求が非常に強かった。そこに根本的なこの法案をこしらえる何がある。衛生の面においては単行法ができて、それでもって十分にやっていける。ところが、厚生省がになってやるべきところの部面というものは、かえって、たとえば社会局が扱っておる生活協同組合関係の仕事を伸ばしていくようなことをやるべきであって、逆にこういう法律をこしらえて、そいつをしばってやっていくことは、これはおかしな話です。この法案が出たその根本の原因というのは、業者が盛んに私どものところにやってきております。それは協同組合がやっておる仕事がじゃまだから、それから会社や官庁でもってやっておるのが私どもの仕事を非常にじゃまをするから、値段を下げたりなんかして困るから、そこでそいつを守ってもらいたい、これが基本的な要請です。衛生とかその他の方面の監督だの、そっちの方面の問題じゃないのです。そこで、そいつに非常に上手に便乗されて、そうして厚生省が自分の責任以外のところまで飛び出して、そうしてこれは私どもの方でもって専管をしておる関係の業種だという意味で一応あげられて、おやりになっておる。そこへたまたま農林省関係の仕事が出てきまして、そしてそれが今問題になっておるのですけれども、しかし、根本のものに私は非常に大きな矛盾があると思う。だから、環境衛生関係からやるところの仕事の範囲が、逸脱してきておると思うのです。先ほど畜産局長中小企業者団体法が出ればそういうふうなものが解決するじゃないか、こういうふうにはっきり言われた。その部面まで出てくるくらいなんです。だから、私は協同組合という関係からいって、社会党の中においても、私は非常にこれは問題があると思う。業者として取り扱って、販売業者として、あるいは理容業者としてやっておるというのは、とんでもない考え方であると思う。協同組合消費者が仕事ができないから、そいつを延長してやっておる仕事で、それでもって利潤を上げておるわけじゃないのですから、そういうふうな面をはっきり考えられて、そうして内部における問題を一つ解決をされてほしいと思います。  多少の関係をしておる問題について、しかも、そいつが衛生見地でこれで伸ばされていったら、その次には魚介類を一つやりましょう、その次には……。衛生関係のないものは世の中にないのです。みんな衛生関係しはおります。だから、そういう点をよくお考え下すって、そうして厚生省はこの際、議員提案の問題については、はなはだたくさん問題があるので、私ども見地としてはこれは少し行き過ぎておると、こういう意見が出てしかるべきだと思う。それを、先ほどからやられたのは、これは厚生省でもって一つ権限の拡大をやろうと、こういう考え方で出したけれども、それじゃ都合が悪いから、議員に一つ出させておこう、こういうふうにやられたのじゃないか、こういうふうに考えても、これはいたし方のない法案じ美いか、こういうふうに考えますが、これはあなたの方のお答えがそういうふうに出てきませんから、私は申し上げておるのですが、そうじゃないのですか。
  73. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) せっかくの御指摘でございますが、さようなことは毛頭考えておりませんので、私どもは従来、いろいろな問題で、取締りの限界というものに苦慮いたしております。旅館業法の問題についてもしかり、売春対策の問題についてもしかりで、さまざまの問題がすべて取締りの限界というものに悩み抜いております。これを単に一体役人の取締りだけで、果して徹底できるかどうか。そこで、たまたまそういうお話がございましたので、私は、かような一つの自主的なものの解決の方法、自主的な一つのものの解決というものがきわめて民主的な方法じゃないか、それが同時に役所の手の足らぬところを補完的に補われれば、これによって初めて整然とした社会が生まれてくるのではないか。これは御承知のように、現在私ども関係しております業界においては、少くとも秩序なき社会が多いのでございまして、これによって初めて秩序ある社会が生まれてくるのじゃないかという純真な気持で進んでおるのでありまして、あるいは協同組合との、あるいは生協との話につきましては、先ほどお答え申し上げました通りでございまして、決してこれによって別に私どもは、生協の仕事、あるいは協同組合的な仕事をとやかくしょうという趣旨は毛頭ございません。  それからさらに、第二点に御指摘のございました団体法で事が足りるじゃないかというお話でございますが、この点は私どもは通産省ともよく話をいたしまして、これは団体法と決して矛盾するものではない、むしろ団体法ではかようなことはなかなか扱いにくいという結論に達しまして、この点は両者の意見が完全に一致しておるのでございます。
  74. 清澤俊英

    清澤俊英君 今、どうも局長さんのお話を聞いておりますと、自分らの手で取締りができないから何とか考えて進んだということがほんとうなのか、業者から強力な要請があってやったということがほんとうなのか、どうもそこがはっきりしないのです。その業者の要請の中には、今、東君が指摘したようなことが含まれておる、こういう指摘をせられておるが、どちらがほんとうなのか。あなたは、自分らが提案したのじゃない、これは議員提案で出てきたのだ、従ってその内容を調べて、まあ自分らもちょうど悩んでいるところを、こういうものが出てきたからそこに馬乗りして、便乗してこういう法案を出して、自分たちだけで、お役所だけでできないものをこれでもって目的を達しよう、それを業者にさせるのだ、こうお考えになって、これがいいのだときめられる。これは自主的な考え方が非常に強いのです。ところが、この法案を出すについては、業者の強力な要請があってこういう法案を出したのか、どっちがほんとうなんだ。出方によっては、これはとんでもないところに入ってしまう。どっちがほんとうなのか。
  75. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 私どもは、たまたまこういう御提案がございましたので、これこそ、私どもが従来悩んでおったところの点がこの法案の施行によって解決できるという大きな期待を持っております。業者のうちには、なるほどいろいろ陳情等もございます。これらは別にこの問題とは関係ございません。たとえば牛乳業者であるとか、魚屋であるとか、かようなものもいろいろ言っておりますが、別にこの業者の意見を聞いておるのではございません。他の業界についても、業者の意見を聞いてとやかく言うことは、私どもとしては毛頭ございません。
  76. 清澤俊英

    清澤俊英君 あなたの今までの説明からいきますと、役人だけでは取締りができない、取り締る方で。われわれの手では取締りができない、そこに悩んでおったところに、強烈な業者の要請もあったので、これでやらせるのだ、こう言っておるわけです。あなた方は、これではどうにも自分らの手でいま一歩進んで取締りをしていくには、もっと何かの方式を変えていかなければならぬと考えておられることと、業者の要請があってたまたまこういうものが出たということでは、全然別なのですよ。別なものが一本になっているところに、われわれのまことに困る問題が出てくる。これが中心になって、非常な困る問題が出てくる。今、東君が言う通りなんです。クリーニング対象になるということは、どこかしらないけれどもクリーニングの仕方に悪いところがあったら、これははだに悪いとか何とかいうことに違いない。反物につけますのりが悪かったら、これも困るから、加工していかなければならぬ、しまいにはそこまで行くだろう。東君が言うている通りなんです。すべてがみんなあなたのところへ行ってしまう。  そこで、私は最後にお伺いしますが、きょう御返答要らないと思います。いわゆる食用肉、これを生産者が作って、それから消費者の手に渡るまでには、現実においてどんな様態で流通過程を経ておるか、どういう過程でどういう機構において、それが消費者の手まで行っているのか、これを一つはっきりこの次までに、個条書か何かにして、出していただきたい。
  77. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 食肉の問題が非常に重要な問題になっておりますが、一点お伺いしたいのは、食肉というのはどの範囲をいっておるのか。生鮮食肉であるか、加工したものも、たとえばソーセージであるとかハムであるとかといったようなものも含むのであるのか、その食肉というのは何か。魚も肉の中に入ると思うのですが、今の話では、魚は入らないとおっしゃる。その食肉という範囲は、どの辺まで食肉というのか。
  78. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) ハム、ソーセージ等は、これは食肉加工業でございまして、加工業は入っておりません。食肉販売業といって私どもが考えております範疇は、これは枝肉以下のなま肉でございます。
  79. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そうすると、加工のものは衛生上別に心配はないというお考えですか。
  80. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 先ほどからだんだん申し上げておりますように、たとえば食肉加工、あるいは魚介類の加工、あるいは牛乳というような問題は、きわめて衛生上至大な問題がございます。しかし、これらは他の省との至大の関係もございまして、必ずしも厚生省のみでとやかく言う筋合いのものではないと考えまして、これは考えておらぬわけでございます。
  81. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そうすると、生肉というものも同じではありませんか。先ほどから問題になっております畜産関係の、いわゆる牛肉にしても、馬肉にしても、豚肉にしても、農林省の重要な所管の問題でありまして、むしろ厚生省よりも、主管は農林省にあるべきものということから考えますと、今の加工のものは除かれるということは、少しおかしい。それから、肉というのは何であるか。牛肉と魚肉と分けると、クジラはどうなるかといったような問題も起ってくるのです。そこ八の問題が、実際にこれを扱うときになると問題が起ってくるおそれがありますから、その点を一点伺いたい。
  82. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) これは先ほど、資料でお答えすることになっておりますが、結局食肉流通過程ということから考えまして、私どもは、食肉販売業というものは、流通過程の中の末端ではございますが、これを切り離して考えて支障ないという判断を実はいたした次第でございます。この点にまあ御批判の余地が残っているのではないかと、かように考えている次第であります。
  83. 堀末治

    委員長堀末治君) 楠本君に申し上げますが、今清澤委員から言われた資料は出していただけますね。——それではお出し下さい。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  84. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して。
  85. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 国会法の規定に基きまして、当初この法案と同じ内容の法案が議員提案されましたときには、政府の統一した見解として閣議決定をいたしております。しかし、多少その後取扱い方法も変っておりますし、またきわめて一部ではありますが、表現方法等について変ったところもございますので、これらの政府の統一した見解につきましては、さらに研究をいたしまして、善処をいたしたい所存でございます。
  86. 堀末治

    委員長堀末治君) それでは、速記をとめて。    〔速記中止
  87. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記をつけて。  鮮魚保存用のオーレオマイシンの件を議題にいたします。  鮮度保持上きわめて有効かつ必要であるオーレオマイシンの使用が、昨年七月一応禁止され、その後食品衛生調査会の結論を待って、これが取扱い方が決定されることになっているのでありますが、鮮度保持の最も必要な夏季に向うことになり、その解除方について関係方面から強く要望されておりますので、この際これの問題を議題にして、当局の処置について説明を聞き、その善処を求めることにいたします。
  88. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 魚類、特に遠洋漁業の魚類等の鮮度を保持するためにオーレオマイシンを使用する問題は、かねて広く行われておったのでございます。ところが、昨年抗生物質——オーレオマイシン等をも含めた抗生物質について、その耐性等の問題からいろいろ社会問題を起して参りました。従って、その結果、学者の間でも、これを食用に微量でも供することはどうだろうという疑義をはさむ者もだいぶ出て参りましたので、一応私どもといたしましては、別にこれを拒否するという理由ではなくて、これを一つ果して支障あるものかないものかということを、もう少しく技術的に検討をいたしてみたい。ただ、検討をしている間だけは、一応この使用は待ってほしいということで進んだわけでございます。従いまして、現在、食品衛生調査会にこのオーレオマイシンの使用の可否について諮問をいたしておる次第でございまして、一、二回論議は進められておりますが、いまだ結論は出ておらぬ状況でございます。
  89. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今までのいきさつにつきましては、ただいま委員長からお話のあった通り、また環境衛生部長からのお話のように承わっておりますが、この問題は、アメリカでもカナダでも使用を許して、鮮度の保持のために非常に効果を上げている。そしてまた日本の業者もこれを使用して、何ら今まで事故を起した例もございませんし、きわめてまたこれが微量なものでありますために、薬として用いて飲んでおる状態から見ましても、われわれ常識的に考えて、さような他の抗生物質と同じように見ることはどうかということに考えるのでありますが、特に、御承知のように、二十日ないし一カ月も沖合いで操業してくる魚は、かなり鮮度の落ちてくるものが多い。これが助かるということは、いわゆるわれわれの衛生上からいいましても、健康の保持の上からいっても、非常に有効なことであり、かつまた経済上からいっても非常な増産を見ることになる、食糧として増産を見ることになるのでありまして、業者としてはこの夏場を控えまして、今まで使ってきたものが使えないということは非常につらいわけです。そこで、何とかこの夏までの間にはこれを一つ解明して、解いてもらいたいという非常な要望があるのでありますが、われわれも、もっともだ。私としても、もと水産に関係してその実情もよく知っておりますが、これは何とか早く解決をしていただきたいというのであります。従って、今お話しの調査会というものに諮問されておっても、これはあまり活発でないらしい。そのうちにだんだん日にちはたってくるのでありますが、これはいつごろにめどがつくお見込みでございますか。
  90. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この食品衛生調査会の結論が、私どもはできるだけ急いで、実はぜひこの春先までに間に合したいというつもりで進んでおりましたが、なかなか資料等を複雑に要求される関係もございまして、思うにまかせなかったのでございますが、今後できるだけ一つどもの方も勉強いたしまして、すみやかにこの問題の結論の出るようにいたしたいと思っておりますが、ぜひ、今後暑さに向いますので、暑さに向う前に何とかこの問題の最後的な解決を一つ食品衛生調査会にお願いして、できれば暫定的にでも結論を出していただきたい、かように考えておる次第でございます。
  91. 千田正

    千田正君 これは、オーレオマイシンは各国においても使っておる。私は危険性の問題からいえば、使っておって何ら危険性がない。ただ医学治療上問題が起きただけでありまして、これを使わないことによって、公衆衛生上鮮度の落ちた魚や、あるいはたとえば伝染病に伝染しやすいところまで落ちた鮮度のものを国民が食べる方が、むしろ危険性がある。むしろ危険性を予防する立場からいえば、オーレオマイシンを使用した方が、現段階ではこれにかわるものがなかったら、使用しても差しつかえないのじゃないかと思いますが、あなたの御見解はどうですか。
  92. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 現在、御指摘のように、カナダあるいはアメリカ等におきましては、魚あるいは腸肉の鮮度保持のためにこれの使用を許しております。ただ、聞くところによりますと、問題は、かようなものはいずれも熱を加えて食事をするために支障はないというような意見もございます。ところが、日本の食生活におきましては、なまのままで食べるということもかなり広く行われておる関係から、そこに学者の間にいろいろな問題があろうかと存じます。しかし、私どもも、先ほど来申し上げておりますように、単に衛生上、きわめて狭い範囲だけでもこれは解決はできません。やはり広い立場から、一国の産業政策をも十分に考えまして、総合的な判断のもとにこの解決をしなければならぬ、かように考えております。従って、いまだこれは結論を得た段階ではございませんが、私どもは、少くともこれはどうしても日本の産業政策上からも必要である、国民の食生活をさらに豊かにする上から必要であるというならば、なんとかそこに一つ基準のようなものでも定めて、暫定的に進んでいくことがいいのではないかというようにも考えておりますが、いずれにいたしましても、この問題はよく学者あるいは世の納得を得なければなりません。さような点に今後努力をしていきたい、かように考えております。
  93. 千田正

    千田正君 時期的にもう夏に入って参ります。そうして、このまま放置しておけば、今のような鮮度の落ちた、そうして早くいえば、国民の食前にのぼすにしても、衛生上あまりかんばしくないものがかりに乗るようなことになれば、むしろやったよりもやらなかった方が、逆に国民衛生上非常な阻害になると思いますので、これは一日も早く結論を出していただいて、そうしてこの問題の解決に当っていただきたいと思います。で、いつごろになりますか。学者に勉強させて下さいよ。そのために調査会は置いてあるのですから……。
  94. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この調査会の結論は、最後的な結論でなくても、暫定的な結論でも役に立ちますので、できるだけ急ぐようにいたしたいと存じます。なお、調査会の委員の選任に当りましては、水産庁ともよく相談をいたしまして、水産庁関係からも専門家が出ておりますので、かような方にもお願いをいたしまして、できるだけ促進方を今後進めていきたいと私ども考えております。
  95. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今、千田委員からのお話通りでありますが、ペニシリン関係から、抗生物資というものを一ぺんに禁止したということによって、これがとめられておる。どうも見てみるというと、あつものにこりてなますを吹くような感じがないでもないのです。で、何ら使ってきて事故を起したことはないし、他国でも使っておる。熱を加えるとか加えないとかいうことは、果してどうか。われわれは技術的な問題はわかりませんけれども、部長はかつて放射能問題でもずいぶん苦労されて、そうして相当英断をもって処置されたのであります。どうか一つ、これは今から使わなければならぬものなのですよ。そうして、今まで使ってきたものがとめられて困っておるので、ぜひ一つ早急に結論を出していただきたい。何かここに事故が起っているなら、われわれも国民の健康を害するようなものを認めるわけにいきませんけれども、かつてそういう例もなし、また外国も使っておるということでありますから、ただ調査会の議を経なければならないものであるというなら、早急に調査会を二回でも三回でもお開き願って、あまりブレーキをかけるようなことをしていただかぬで、早急にやっていただきたい。いかがですか。
  96. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 僕は、先ほどから申し上げておりますように、これにブレーキをかけるような意思は毛頭ございません。もっぱら学者の一致した見解を得たい、かように考えて、努力をいたしております。従って、その最後的結論が出ないならば、暑さに向う折でもあり、暫定的結論でも一つこの際得たいというふうに努力をいたしております。私どもはこれにブレーキをかけるような意思は毛頭ございません。
  97. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 それは大へんけっこうでありますが、学者の意見の一致ということになりますと、多くの場合になかなか一致しないのですよ。これは賛否両論あって、なかなか一致しないのが通例です。これも一致しないからでひっぱられたんじゃ、たまらないですよ。そこで、そこはあなた方の判断で行くよりしようがないのだから、一致しないからといって、ほったらかしたら、これは何にもならない。従って、調査会をしばしば開いて、公約数ででもやってもらわなければ、一致するまで待つといったら、これはできないことです、いろいろ見解がありましょうから。その点は一つ、完全一致を待っておってはとてもだめだと思いますからね、適当にそこらは判断を下してやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  98. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) ただいま御指摘のような御趣旨を十分一つ体しまして、できるだけ暫定的な結論でも急ぐように努力をいたしたいと、かように考えております。
  99. 東隆

    ○東隆君 黄変米の問題ですが、厚生省でもっておやりになっておるのはだいぶ長くかかるようですが、黄変米は別として、これはどうですか。厚生省でもって禁止を解いて、そうしてその間に研究をさして、もし決定的に悪いということになれば、おやめになればいいので、研究も何もしないでおいて、そうしてショック死だの何だのが起きたから、これもやめますと、こういうのでやられたことが、私は非常に間違いであると思う。そこで、禁止をしたものから早く除外をしてやるのが、厚生省立場じゃないかと思う。何も暫定的な結論を早く得てどうとかというような、そんなことじゃなしにやらして、そうしてその間に徹底的に一つ研究してもらったらいいでしょう。そういうことが私はほんとうじゃないかと思う。あやふやな措置でもってやられたら、これまたなお心配になってくるのですから、やはりおやりになって、続けられていくことは差しつかえないのです。これをおやり下さって、とりあえず禁止したものを解いてもらう、これが私は正しいやり方じゃないかと思う。例証が上って、そうして頻々として被害が現われたというのなら、これは禁止をする必要があるかもしれませんけれども、そういうものはなかったのですから、それはもう英断をもってやるべき時期が来ていると思う。
  100. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) まことに御指摘通りでございまして、いまだ最後的結論を得ないものを一方的に禁止したというようなことは、確かに行き過ぎの感もございます。もちろん私どもとしては禁止するというような趣旨でなく、当初はちょっと待ってくれというような趣旨で進めましたのが、意外に結論が手間取っておるために、大へん御迷惑をおかけしておりますので、この点はあらためて、御趣旨に沿って研究をいたしてみたいと、かように考えます。
  101. 青山正一

    ○青山正一君 ビキニの問題でも、相当長引いたわけなんです。あの問題も非常に長引くということを心配しておるわけです。その点についてお伺いしたいと思います。  それから水産庁自体は、相当熱意を持ってやっておるのか、どうなんですか。たとえば主管が厚生省だからということで、全部厚生省まかせというようなことで進んでいくのですか、どうなんですか。たとえば調査会あたりに、できるだけ早く、こうしろああしろというふうなことで、いろいろ資料の提供とかそういったようなことをやっておるのですか、どうですか。その点について伺いたい。
  102. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 水産庁のような産業行政を扱っておる官庁において、ある産業活動規制する場合においては、禁止あるいは制限すべきであるという十分なる科学的結論が出たものに基いて、初めて発動するのでありまして、また緊急で暫定的にとめなければならないという際におきましては、常に経過的な措置というものを考慮をした施策を講ずるのでございます。ただいま楠本さんから御発言のありましたように、まあこれはちょっと待ってくれと、こういう趣旨だったということでございますけれども、実は、法制的には明らかにオーレオマイシンの使用がとめられたと、こういう結果に相なったのでございます。  で、水産庁の持っておるデータによりますれば、これは加熱した場合にはもちろん、ただいまお話しのように、被害はない。のみならず、刺身として食べたというふうな場合におきましても、これによりまするオーレオマイシンの摂取量はきわめて微量である。で、これを有害な量まで、一体、毎日刺身を食って蓄積していくとしますれば、六百十年かかる。まあこんなふうな計算も実はあるような次第でございます。そこで、実は、ぜひとも早くこの問題について善処してもらいたいということを、あの禁止されましてから以来、不断に厚生省の方にも御連絡申し上げておるのでございます。厚生省の方でも、ただいまお聞きのような態度でわれわれにこたえておられるのでございますので、われわれとしましては、できる限り早くその御好意を具体化していただきたいと、こういうように考えております。
  103. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 これは、学者の中間報告でもおとりになって、あるいは赤信号の方に方向が向いておるのなら、これは何だが、そうでなかったら、一つ解除したらどうですか。私、実はこういう経験があるのです。二十一年の地震で、中国、四国は沈下してしまった。ところが、その対策を、京都大学、東京大学の数学者で委員会を構成してもらって、研究にかかった。これは何ぼたっても結論が出ないのですよ。さらばいうて、ほっとかれやせず、ところが、大蔵省はその結論が出ねば予算はつけぬ、また、どんどん進めておる意味はないと、こういうことで、いかんともしようがないので、それで、実情がこうだという中間報告をしてくれ——そこで中間報告をした。その中間報告で結局予算が成立して、今に至るまで何年もたつのですけれどもが、一年に六、七億出して、ぽつぽつまあやっていっているんです。だから、中間報告をとられて、来週でもいいですよ。とにかくそうして、その方向が赤の方に向いていけぬなら、これはもうすぐ解除というわけにもいかぬが、そうでなかったら、それで一つ解除して、研究を同時に急速に進める、こういう方向をとられたらどうかと思うのですがね。しろうとで進言するのですが、どうでしょう。
  104. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 何分にも、社会的ないろいろな問題を起しておる問題でございますし、また、一方食品衛生調査会にも諮問もしてある関係で、あまり一方的に出ましても、かえって問題が混乱する危険もございます。しかし、御趣旨の点は、先ほどもお答えをいたしましたように、私としては了解できますので、できるだけこの点につきましては、御趣旨を体しまして、善処いたしたい、できるだけ急いで、中間的な報告でも了解を求めていきたい、かようなことを申し上げているわけでございます。
  105. 堀末治

    委員長堀末治君) この件については、本日はこの程度にいたします。  なお、楠本君に特にお願いをいたしますが、今お聞き及びの通りでございますので、今国会は来月の十八日に終るので、なるべくならその間に必ず何とかいい結果が得られるように、一つ御努力を特にお願いいたしておきます。  これにて暫時休憩いたします。    午後一時五分休憩    —————・—————    午後一時二十九分開会
  106. 堀末治

    委員長堀末治君) 午前に引き続いて、委員会を再開いたします。  北海道近海漁業の件を議題にいたします。  この件は、かねて再三にわたる陳情によって御了承の通り、北海道漁民が安全に適切な範囲まで接岸操業することができるように、日ソ平和条約締結までの間、近海漁業の暫定協定を締結するようにしてもらいたいという趣旨のものであります。政府においてもすでに御了承のことと存じますが、この問題について政府見解を聞くことにいたします。
  107. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) ただいまの委員長お話に対しまして、私ども見解を申し上げたいと思います。  この問題は各方面からしばしばお話がございまして、われわれといたしましても、非常にごもっともな当然の御要請であると思っております。ただ、千島、樺太その他の沿岸につきましては、領土問題との関連におきまして、非常に困難な点がございますことは、十分御了解いただけることだと思っております。そこで、領土問題に関する日本の主張に影響を及ぼすことなく、いかなる形において本件を取り上げて先方と話し合いをするかという点に、本件の困難にして非常に重要な点が存在するというのが、われわれの見方でございまして、そういう観点から、ずっと自来この問題の検討を続けているわけでございます。  ただ、歯舞、色丹につきましては、これは過ぐる日ソ共同宣言におきまして、これが現実引き渡しは、しかしながら平和条約締結の際に行うという約束ができております。従いまして、これを日本に引き渡すという原則はきまっておって、ただ現実に引き渡す時期におきましては、さような時期までこれを延ばすということでありますから、この問題につきましては、領土に関する本質論に影響を与えること少くして、先方と話し合いをつけ得る問題ではなかろうか、かような観点から、今せっかく立案中でございます。さような意味で御了解を願いたいと思うのでございます。
  108. 千田正

    千田正君 今、法眼欧亜局長からお話があった通りだと思いますが、現実は、北海道の近海漁業、しかもこれは大体零細漁民でありまして、まあソ連側の主張するところの十二海里説と、日本側が考えておる三海里説と、そういう面がある場合においてはダブっておるところもあるし、非常にこれはむずかしい問題なんですね。むずかしい問題だからといって投げておくわけにはいかないので、何か話し合いか何かをつける方法を考えていただきたいという点が問題なんですが、先般の日ソ漁業条約の前にいろいろ予備折衝としての段階において、こうした問題については何ら反響はなかったのでしょうか、どうですか。
  109. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) ただいまの御質問は、昨年のモスクワの交渉でございますか、今度の……。
  110. 千田正

    千田正君 モスクワ及び今度の日本における交渉、両方において……。
  111. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) 私が承知いたしております限りにおきましては、昨年度のモスクワの交渉におきましても、この点は具体的に話し合いがなかったものと了解をいたしております。今回の交渉におきましても、これは交渉の実は議題外の問題であります。議題外の問題でありましても、これは話して悪いということは決してないので、十分話をしてしかるべき問題であるわけでございますけれども、何分にも、今回の交渉も昨年の交渉と同じく、これはこちらの主張を強く通すという点に重点を置いておりまして、議題外のところで先方に、ある意味から、平たく申せば、恩に着せられるということは避けたがよろしいという立場から、今回の交渉におきましても、この点につきましては先方と話をしなかったわけでございます。と申しますことは、しかしながら、これは日本の取りやめることじゃなくて、先ほど申し上げましたような観点から十分研究中で、ぜひ何とかこいつは一つやらなきゃならぬというのが、事務当局の一応の見解でございます。しかし、具体的には、今回の交渉でも、この点は触れずに済んだわけでございます。
  112. 千田正

    千田正君 これは相当むずかしい問題でして、本格的に考えた場合には、領土問題が解決しない限り、この問題は解決しない、根本的には。しかしながら、だからというて、日本の沿岸漁民が、ことに浅海の海草類であるとか、貝類をとって生計の資に供しておる、この人たちにとっては、やはり命がけでもとらなければ食っていけない。現実の段階はそうなんですから、領土問題が解決しない限りは根本的解決はできないにしても、暫定的に見て、何らかの話し合いによって一応のめどをつけていただかない限りにおいては、相変らず拿捕が続き、両国間の摩擦が決して、緩和されるというのじゃなくて、逆に深められるおそれがありますから、この点を、幸いソ連の公館も日本に設置されておりますので、現実問題として取り上げて御交渉願えるかどうか、その点はいかがでございましょうか。
  113. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) この点も全く千田先生のおっしゃる通りでありまして、御趣旨通りのことをわれわれ考えておるのであります。その趣旨に従って努力したいと考えております。
  114. 東隆

    ○東隆君 このソ連占拠地域の近海漁業の問題、今千田君が質問をした通りでありますが、私は、北洋漁業そのものが沿岸漁業に非常に——協定が沿岸漁業に非常に大きな影響を与えておると思うのです。今回の漁業協定においても、十二万トンを、北洋漁業と母船式のものとそれから四十八度線以南の流し網その他のものとの分配の関係からも、非常に影響してきておると思うのです。それで、十二万トンを、われわれが主張したように九万トンと三万トンに分配をすると、ある程度救済をされたのじゃないかと、今になって考えるわけですが、ああいうような、十万トンと二万トンというような関係に分けたので、ますます流し網その他の関係の人たちが仕事を求めなければならぬわけです。そんな関係で、それが一そう沿岸の漁家に対して圧力を加えてきておると思うのです。  それで、北海道で問題の起きておりますニシン混獲の問題であるとか、あるいは太平洋岸における十トン未満の独航船による、小さい船によるサケ、マスの漁獲の問題であるとか、こういうような問題は、これは北の方の問題が圧力を沿岸漁民に大きく与えておると、こういうことを私は考えるのですが、これは水産庁の方でどういうように考えておりますか、この問題は。
  115. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 先ほど十万トン、二万トンの配分についての御意見、拝聴したのでございますが、これは何度もおそらくこの席で繰り返された議論であろうと存じます。水産庁としましては、操業海域の状況等に基きまして、科学的な判断のもとに、最も公正な線を期した次第でございます。しかしながら、北洋におきます鮭鱒の漁獲量が、母船すなわち独航船につきましても十万トンに限定され、また流し網につきまして、条約規制区域内において二万トンに限定された。そういうことが北海道周辺におきます漁業の全体に暗い影響を与えておるということも、これもわれわれはこれを最小限度に食いとめる努力をしつつも、またこれを認めざるを得ない次第であるのであります。従いまして、ことに北海道の根室周辺のごとく、ソ連の占拠地域が非常に目の先にありますような海域におきまして、ただいま提示されておりますような問題が、われわれの希望するような線で解決されるかいなかということが、あの地方の漁民に与える福祉には非常に大きな影響を持っておる、かように考えております。
  116. 東隆

    ○東隆君 今お答えによりますと、根室付近におけるところの漁業を緩和するのには、ある程度の数量を既成の区域内において与えることが、これが唯一の解決方法でなかったかと思うのです。それで、そのことから問題を非常にこじらしてしまって、そうしてオホーツク海岸におけるところのニシン混獲の問題を、今までよりもフリーにやらせるように水産庁の方が考えておるようでありますが、これははなはだもって理に合わないやり方ではないかと思うのですが、なぜニシンの混獲問題を、今までと変えて、そうして水産庁は混獲を許すようなそういうような方針をおとりになっておるか、その点を一つ明らかにしていただきたい。
  117. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ただいま底びき網のニシンの混獲についての百貫の制限を、水産庁では撤廃しようとしておるということについての御批判をいただいたのでございます。これはもう先生方十分、どういういきさつで昭和二十九年に百貫という制限をしたかといういきさつについて、今あらためて詳しく申し上げる必要はございますまい。  そこで、その当時百貫という制限を設けましたゆえんのものは、北海道の稚内から西に張っておりまする沿岸の定置及び共同利用圏内の刺網と、機船底びき網漁業によりまするニシンの混獲という問題を調整するために、いたした次第でございます。ところが、今年は、これは全然新しい事態が発生して参ったのでございます。すなわち、ニシンを沿岸におきまして定置あるいは刺網でじっと待っておるという状況では、これはもうとうてい、海洋の変化によってニシンの回遊状況が変って参りました今の時代には、対応することができないのでありまして、従って、北海道におきましては、ニシンの不漁に対処いたしまして、これらの漁村の諸君の転業及びこれを沖刺網によってニシンをとるというふうなことに方針を転換して、今年からそれに踏み切った次第であります。  ところが、沖刺網によって沖合いに出るといたしまして、たちまち起って参ります問題は、オホーツク海におきまする機船底びき網漁業の、現在漁場を持っており、かつ、ニシンを混獲しておる漁場に、同じ時期に同じ漁種を対象といたしました両者の漁業の間に、そこに併存をはからなければならぬ、こういう問題が出て参ったのでございます。あのかいわいにおきまして、オホーツクで操業をいたしております底びき船が、約百五十隻見当かと存じておりますが、北海道が試験的に沿岸のニシン漁業者を沖刺網に転換しようといたして、今年着手いたしました隻数も百五十隻見当でございます。将来は、これを四、五百隻まで伸ばしていきたい、こういう状況でございます。そこで、百貫の混獲の制限をどうするかということは、むしろ何と申しますか、末端の問題でございまして、この両方の漁業の間をいかに調整をとるか、そうして両者をいかに併存させるか、言葉をかえますれば、沖刺網に対する漁業転換ということをいかに円滑に進めていくか、こういうことのために、この二つの漁業の間の調整をはからなければならない。もしもその調整をはかる努力なしに、これらの地帯に両方の漁業を互いに共存させるということに相なれば、必ずや非常な紛糾が起り、沖刺網の進出も全く困難になってくる、こういう事態の起りますることは、火を見るよりも明らかなのであります。  そこで水産庁当局といたしましては、そういう意味の調整を北海道庁に昨年の秋以来常に要求をして参り、また今日も強く北海道側にその要請をいたしておる次第でございます。その調整という大きな問題の中の一つの問題として、混獲限度百貫という、こういう、当事者の意思にかかわらず、混獲されるものが入ってくる、それは百貫という数量で縛っておって、それをこせばこれは違法だというふうな措置が、どういうふうに改善されるかという問題も、一つの問題として含めておる、こういうことでございます。
  118. 堀末治

    委員長堀末治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  119. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記をつけて。
  120. 千田正

    千田正君 いずれ今の、外務委員会と当委員会との間において、合同審議をやるんでしょうが、それはラッコ、オットセイの猟獲問題であります。これに対して、はなはだ残念ながら、われわれがソ連地区における、あるいはアメリカ側における海上猟獲じゃなくても、陸上猟獲でもいいのですが、それに対する国内法をわれわれは知らないのですね。日本の国内法は、われわれは長い間論議して、そしてラッコ、オットセイに対する猟獲取締法が出ておるから、わかっておりますが、向うのものはわれわれにはわからない。それで、そういう資料が外務省にありまするならば、一応何か抜き書きしてもよし、見せていただきたいと思います。なぜならば、密猟の禁止を向う側は日本側に対してだけ片務的に強制しておって、必ずしも向う側が密猟がないかどうかは、これはだれも言い切れない。逆に、われわれは共同調査上、向うに行って、陸上猟獲そのものに立ち会って、ある場合においては研究しなければならない立場に日本があるのじゃないかと思いますので、向うにも、一体そういう猟獲禁止の法律ができておるのかないのかという点を、何か外務省の方でおわかりになりましたら、資料を一ついただきたいと思うのです。
  121. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) ただいまの千田先生の資料の御要求でございますが、私は、もしあればむろんこれを提出いたします。しかし、なければ何とか入手できる方法はないかと思いまして、たとえばソ連なりその他の関係国に資料をくれろということは申せることでございますから、そういうふうに努力したいと思います。
  122. 東隆

    ○東隆君 今の論議の近海の漁業の安全操業の問題ですが、それは大よそどういうような方法でもってソ連との話し合いを進める方針にお考えになっておるのか、それをお話し願えませんか。
  123. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) ただいま千田先生の御質問の際に若干触れたわけでございますが、具体的にどういうふうな形で申し入れるかということは、まだここで申し上げる段階ではございませんので、急いで成案を得る努力をいたしております。しかし、いかなる方法で、いかなる文言を使って先方と折衝するかということは、ここで私としては申し上げる段階ではないのでございます。さように御了承願いたいと思います。
  124. 東隆

    ○東隆君 この問題は、もう十分御承知だろうと思うのですけれども、先ほど、北洋漁業によって沿岸漁民も非常に影響を受けておる、従って、日本の水産業を発展させるためには、沿岸漁民の力をつけることによって進めていくよりほかに手がないのじゃないか。今とっておるやり方というのは、あくまで企業的な漁業、そういうようなものに重点を置かれて、そして沿岸の漁民の力をそぐような、そういうような施策が行われておるのです。それで日本の近海の問題は、これを解決しなければ問題にならない。今問題になっておるような、沿岸の漁民の力をつけることによって解決をつけていかなければならぬと、そういう考え方に立つ場合に、これをいち早く進めていかなければならぬ。ことに領海の問題なんかについても、非常に大きな隔たりがある。しかし、そういうような問題を抜きにしても、話し合いだとか、そういうようなものをどんどん進めていくことを考えなければ、まだ段階に至っていないとか、そういうようなことでもって、毎年々々延ばしていくようなことになると、これは問題であると思います。  おそらく来年もまた北洋漁業の問題については会議を持つでしょうけれども、その会議に、やはりことしと同じような工合に、何も持たれないで、これはその会議には関係がない、こういうふうにまた投げられてしまう。おそらくそういう形で進むだろうと思います。それで、非常に困難な問題ではあるけれども、外務省関係がその中に入って進めるよりほかに手がないと。それでいろいろな問題に関係をつけて、この問題を解決するような方法を考えなければ、水爆実験だとか、その他いろいろな問題において、外交交渉の関係もたくさんあると思うのであります。それに関連をして、これを進めていくより手はないと思います。何かいいひっかかりがあるならば、私もそれを承わりたいと思うのですが、何かこちらから能動的に出るひっかかりがありますか。
  125. 青山正一

    ○青山正一君 関連して。ただいまの東委員の質問に関連して御質問申し上げたいと思いますが、このいろいろ領土問題に関して、国後とか択捉とかいうことは一応さておきまして、先ほど千田さんの質問にもあったように、歯舞、色丹は、何か暫定的な措置を講ずれば、領海内までこれはもう完全に操業できるというような建前になるわけなんですが、こういうような関係の協定というか、話し合いというものか、これが北洋の母船式漁業の今度の漁業協定と全然関係がないとはいえ、やはりそれに結びついて話し合いをすべきであったと思うのですが、何かこういうふうな問題について、そのときには話し合いはなかったとしても、外務省として、積極的にこの問題について、どういう過程で進んでおるのですか。非常に積極的に進んでおるのですか、どうなんですか。その点伺っておきたいと思います。
  126. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) ただいまの御質問にお答えいたします。われわれは、こういった沿岸の零細漁民を含めて、非常な日本の利益が含まれておるがゆえに、領土問題については執拗にソ連と交渉したわけでございます。しこうして、その結果はどうかということについては、御承知の通りでございまして、ソ連はいささかも譲歩しないわけでございます。わずか共同宣言におきまして、現在のところは、歯舞、色丹だけを、平和条約ができるときにこれを現実に引き渡すということを約束しておるだけでございます。そこで第二段の方法として、しからば、こういう状況のもとにおいていかにすればわれわれの目的を達し得るかということに至って、われわれは、実は先ほど千田先生が御質問になりました通り、われわれは積極的に、何とかこれを打開しようということは考えておるわけでございます。しかしながら、漁業交渉をするときに当っては、この漁業条約についてきまっておる議題というものがございまして、それで十二万トンの問題につきましても、最後まで難航いたしましたことからも御了解いただけるがごとく、先方はそういった議題以外のことは議論しないと、そういう訓令を受けていないという建前で来ているのであります。議題の中にあるああいうふうな二万トンふやす問題でも、なおかつ難航をすると、こういうことは十分御承知いただける通りと思います。われわれは、それでもなおかつ、日本漁民の置かれている立場、われわれが正当と信ずる立場から、これを主張することは決して消極的ではないのであります。順を追ってやっていこうという決心のもとに、今具体案を急いでいるという状況でございます。その点の状況は今後の成果に一つお待ちを願いたいと、こう申すのでありまして、来年も再来年も同じことを繰り返して、問題を残しておくという意思は毛頭ございません。この点は十分御了解いただきたいと思います。
  127. 東隆

    ○東隆君 漁獲資源の保護という問題が非常に大きな問題になったようですが、その場合に、私は、当然千島その他におけるところの孵化事業、こういうようなものは、日本がこれをやるならやらしてもらいたいと、こういうような提案には私は非常にいい機会でなかったかと思うのですが、何かそんなお話がございましたか。
  128. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) その問題は、全然話はいたしておりません。と申しますのは、かりに、しからば孵化事業を日本にさせろということになれば、その孵化の場所についての議論が出てきます。当然に先方は、これを全く領土問題に関する主張を認めさした上で使わしてやる、こういう態度に出てくることは火を見るより明らかであります。ゆえに、この千島を使うという問題につきましては、領土問題に関する問題ときわめて密接に結びついておりますので、これを避けたわけであります。そこで、現在の日ソの交渉の段階は、共同宣言が発せられるまでの、一昨年ロンドンにおける交渉に見ても、きわめて明白なのでございますが、領土問題については意見が対立しているわけでありますから、先方の意見に基礎を与える行動というものは、これは避けなければならぬ、こういう立場から、千島の孵化の問題であるとか、千島を使う問題でございますね、この問題につきましては要求することは差し控えたいと、こういう事情は十分御了解いただかなければならぬと思います。
  129. 青山正一

    ○青山正一君 問題は違いますが、今度の協定は、母船式漁業の規制の必要ということにあるわけでありますが、法眼さんがあの会議に御出席になっておって、いろいろ外交的な建前から考えてみて、ソビエトにおいては母船式漁業をやるとかやらないとか、あるいは日本の漁業者を使ってそういうふうな漁業をやるとかやらぬとか、そういうような問題はありましたですか、どうですか、その点を一つ
  130. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) ただいま青山先生の御質問の点でございますが、これはかつて私はどこかの委員会でもお答えした記憶がございますけれども、先方は公海における漁業をやるつもりはないということを明白に言っているわけであります。ただ、しかしながら、調査のために、いろいろな生物学的研究のために、五十トン程度のものはとることがあると、こう申しているわけであります。従いまして、現在のところは、先方が将来公海において漁業をやるという明白な意思の表示と見るべきものは、何もないわけであります。
  131. 東隆

    ○東隆君 北洋の海域における鮭鱒の問題は、そのようなお話だったろうと思うのですが、それ以外の魚の問題はどうなっておりますか。たとえばニシンの問題を一つ取り上げてみますと、これは話に聞きますと、ニシンは北洋ではソ連は母船式の形式をとっているのじゃないかと、そんな話はどういうふうになっておりましたか。
  132. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) にしんの問題につきましては、混獲限度の問題が大きい問題でありまして、いかなる形でやっておるかということについては、議論をいたしておりませんでした。ただ、混獲をどこまでやるかということにつきましては、議論の上下がありまして、これは結論に達しておりませんことは御承知の通りであります。しかしながら、母船式で先方はやっておる、どうすればいいかということについては、議論はそこまで進まなかったのであります。今回の漁業の交渉では、非常にこれが長引きましたが、大部分の時間は鮭鱒漁業の議論に終始したという実情でありまして、あとはカニ並びにニシン両者の混獲問題に大体議論が集中いたしまして、双方それに日を費したという実情でございます。
  133. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ただいまニシンの沖とりの問題についてお話が出ましたので、つけ加えて私申し上げておきたいと存じますが、ソ連はニシンの沖とりに非常に深い関心を持っておるのではないか、かように考えたのでありますが、正確な数はわかりませんが、十隻見当の底びき船を極東に回航したことは、これは事実であります。当然これらの船によりまするニシンの沖とりという問題が現われて参るのではないか、かように考えます。  なお、ソ連がニシンの工船の注文を日本の造船工場に対していたしておりますが、これはまだ条件その他によって話が折り合っていないのでありますが、聞くところによりますと、約四千トンの大きさの工船を注文している、こういうことであります。これは極東で使うというよりも、おそらくヨーロッパへ持っていくのじゃないか、かように推定されるのでありますが、いずれにいたしましても、ソ連はニシンについて相当沖とりの問題に関心を持っておる。従って、日本としましては、そういう事態に対処する対策も考慮いたしておく必要がある、かように考えております。
  134. 清澤俊英

    清澤俊英君 最近北陸の試験船が出て行ったのですね、沿海州に。これが何か拿捕するという警告を受けて帰ってきているのですね、新聞を見ますと。県庁から水産庁へ聞いたか何かしますと、それは差しつかえないからやってやれと言っているのですね。あれはどうなんです、一体。
  135. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) ただいまの御質問の点でございますが、これは私も実はけさの新聞で承知しただけなので、この事実が確定されますと、もし新聞の報道の通りであるといたしますと、領海外でやっておる操業でありますから、これに対して圧迫を加えることは許されないのでありますが、十分事実を確定した上で、その事実に従って適当な処置をとらなければいかぬ、こう考えております。
  136. 清澤俊英

    清澤俊英君 そこで、あれはまあよく見ますと、ソ連が十二海里、われわれは三海里を領海としている、この争いなんですがね。どうもそうらしいのですが、かりに今の問題がそれでないとしても、あそこにもちょっと出ていたようでありますが、十二海里並びに三海里の見解の問題は、今のいろいろな質問にございましたような事件と一緒に、何か方法を講じて片づけなければならぬ。そういう片づける今心がまえと用意と準備が、どれくらいできているのですか。
  137. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) この国際法上の十二海里と三海里の問題を解決する方法というものは、私は現在はほとんどないのではないかという見解を持っております。と申しますのは、現在の国際法では領海の範囲が三海里ときまったわけではないし、十二海里ときまったわけでもないのでございます。ただ、各国によって三海里をとっている国もあるし、十二海里をとっている国もあります。四海里あるいは二百海里まで主張しようという説が分れておりまして、現在こうでなければならぬと規制している事実はないのであります。ただ、ローマで来年三月に開かれます海に関する国際法に関する会議がございますけれども、従来国際連合のワク内でできました国際法に関する国際法典編さん委員会の中で、ある種の案ができておるわけでございますけれども、これも基本的にはたくさんの領海に関する説があるということを、事実を事実として認めておるという状況でありまして、三海里、十二海里ということは、現状におきましては抜本塞源的に解決する方法はない。ただできれば、説を異にする国の間において、実際的にどういう解決法があるかということを、便宜の問題として考えるにすぎないというのが実情でございます。
  138. 清澤俊英

    清澤俊英君 これは、黙って聞けば、そういうことになるでしょう。そこで、何かこれを打開するために、両者寄っていろいろ検討、協議するというような努力は要ると思うのですが、その努力の方法を何か考えているのか。今のようなお話だと、ぽんとほうっておくより仕方がない。仕方がないじゃ、まことにこれは仕方がない……。
  139. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) お答えいたしますが、いかなる条約を結びますときにおきましても、日本としましては、日本の三海里説を通すために、この条約に書いてあることは領海の範囲に関する両国の見解に影響を与えるものではないということを、必ず挿入することになっているわけであります。漁業条約におきましても、あらゆる条約でそういう例をとっているわけでありますが、しかし、具体的に各国がそれぞれ主張していることを打開する方法としましては、幸いにして話が成立すればよろしゅうございますけれども、両方とも異議ある状況においては、各国がその国内法によりまして、自分の主張する領海の中へ入って来たものを領海侵犯として措置をするという規定につきましては、これは抗議はできますけれども、その結果については、これをさらに高い観点から裁定する何らの方法はないということは、これはやむを得ない事実だと思います。  そこで、日ソ間の関係でございますけれども、しばしば議論がされますように、三海里と十二海里の間の安全操業ということがあるわけでございます。しかしながら、これは現在のところは、どうも解決がつかぬ問題であり、放置しておくことははなはだ不本意でございます。不本意でございますけれども……。それから先ほど来論議のありました歯舞、色丹地域の問題につきましては、この問題は事実問題として出てくるのであります。そういった意味から、今われわれはある種の立案をいたしておるわけでございますけれども、さて、それをほうっておくのはけしからぬということを言われまして、これは大いに取り上げたいのでございますけれども、相手がこれを取り上げないときは、これを強制する意味がないという意味におきまして、はなはだ厄介な問題であるということを十分御了解いただきたいと思います。
  140. 千田正

    千田正君 その三海里、十二海里の、この領海の問題は、これは国際法上各国とも非常に悩みの種になっておって、いつでも問題になるのですが、過去においてへーグの国際裁判等において領海侵犯の問題に対して、こういうような問題に対する判決を下した歴史があるかどうかということですね。私の記憶は、はなはだ不敏にして自身ながら納得できない点があるのですが、国際裁判においてなされた場合においては、その国の主張する領海をもって一応国際通念としこのその国の領海と認める。その国の自主性というものを高く買っておるのでありますが、このままで行っては、今の通りいつまでも解決しない問題であると思うので、それは国際連合その他における憲章の中に、領海、領土、領空という問題の限定というものがはっきりなされるべきであって、またある程度において、連合へ参加した日本あたりとしても、主張すべきじゃないかと私は思うので、その点はどういうふうにお考えですか。
  141. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) これは全くお説の通りであります。私は、世界の識者がみなそうなければならぬと考えておるのでございますけれども、各国のそれぞれ利害がきわめて対立いたしておりますので、これを打開する方法は非常に困難であろう。そこで、今回国際連合の方の国際法典編さん委員会から出されております案としては、領海の範囲は十二海里をこえない範囲とするということをうたっているわけであります。しかしながら、その次の条項では、現状ではいろいろな説が分れているというふうな折衷論で、それをしかやれなかったというところに、問題の困難性があるのであります。問題がはなはだ困ることであるということは、これは認めながら、解決法がないというのが、遺憾ながら現状でございます。これは世界協力して解決しなければならぬ問題でございますけれども、まさにそれはむずかしいということしか言えないのでありまして、どういう経緯をたどって、これがどうなるであろうかということは、はなはだ私としては言えない問題であります。これは関係者のひとしく難問として放置しておるところであり、努力をしておっても、まだ国際編さん委員会の法典のあれが、なおかつそういうところでしか案が出ないと、こういう状況であります。
  142. 千田正

    千田正君 それに関連しますが、これは領海と領土はそれでわかりましたが、一応今難問題であると。今度の国連におけるところの憲章におけるそういう問題を解決する際に際しまして、領空の問題があるのですね。これは昨年私は本会議においてこの問題に対しての質問に対して、外務省条約局長は、一九四三年におけるところの各国の航空条約に基く法律は、国際法じゃない、一応の約束としての法律は、成層圏をもってその国の領空として定められておったのです、航空条約は。しかし、今日におけるところの飛行機の発達は、もう成層圏を越えて飛んでおる。しからば、領空はいずれかということなんでありますが、私の質問に対しては、条約局長は、領空はその国の領土の天上無窮だというお答えをいただいたのですが、今もって局長さんは、今後ともそういう問題が出てくるのですが、やっぱり天上無窮説をとられるのですかどうですか。
  143. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) この点は私にはわかりませんので、これは一つまた機会をあらためて、条約局長その他から十分見解を聴取していただきたいと思います。私は、どうもその点につきましては、国際法上の意見を申し上げる自信と知識がございませんので、これはやはり一つ専門的に、言ってもなかなかわかりにくいものであると思いますから、さようなところで御了解願いたいと思います。
  144. 青山正一

    ○青山正一君 法眼さんに一度お聞きいたしたいと思いますが、この日米加の漁業条約ですが、あの漁業条約は、文字の上には、それは何海里とかどうとかいうことは書いてないのですが、その精神においては、たとえば距岸百五十海里とか、あるいは距岸百二十海里とかいうようなものが、ちゃんと載っておる。文章には現われておりませんですよ、その精神において。だから、ああいうふうなものがあるとすれば、いわゆる領海がどうのこうのとかいうようなことは、これはなかなかむずかしい問題だろうと思うのですが、この点についての見解一つ承わりたいということと、  それからもう一つは、これは水産庁に承わりたいと思いますが、日本の国内においてやはり底びきとかまき網とか、あるいは沿岸とかいうようなものがあるわけです。ところが、やはり県々によって、その距岸二十海里以内は底びきが入ってはいけないとか、あるいは三十八海里以内はまき網が入っていけないと、こういうふうに、国内においてすらそういうふうないろいろ問題があるわけなんです。そういう国内においてそういうふうな問題があるのだから、これは外国へ行って、三海里がどうのとかこうのとかいうようなことは、私はこれはなかなか言えないと思いますが、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  145. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) 第一の私に対する質問にお答えいたしたいと思いますけれども、私は、特定の国家の間におきましては、その相互の利害関係の合一するところから、特定の目的のために、たとえば魚族資源を保護するとか、特定の魚を保護するとか、もっぱら特定の目的のために関係国で合意をする場合には、それは領海に関する主張に関係なく、一定の協定をすることはできることだと思います。そこで、日米加における規定の精神が領海とどういう関係にあるかということについては、これは別途研究を要する問題でありまして、ここで私は簡単に議論ができないと思うのでございますけれども、原則は、領海に関する各国の主張にかかわらず、特定国の間の特定の目的のために魚族資源の保存であるとか、あるいは特殊の魚を特に保護するとか、あるいは一定の年限を限って合議することができる。しかも、それは領海に関する当該国の主張を害することなくできる。こういうことでございます。
  146. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 私の了解いたす限りにおきましては、領海とは、その領土の周辺におきまして当該国が領土主権を行使し得る区域として主張し得る範囲でございまして、従いまして、これについて、三海里あるいは十二海里等のいろいろな主張があるということは、先ほどからお話しになっている通りでございます。で、日本の国内の、農林省の法制あるいは県の規則によりまして、特定の漁業についての禁止区域を設定いたしております。しかし、これはあくまでも、それぞれの国の管轄権を特っておりまする漁船に対しまして、漁業取締りあるいは漁業調整の必要から基きました規制の線であるのでございまして、従ってこれは、それだから領海の主張について、いかなる影響を与えるものでもない、かように考えております。
  147. 小林孝平

    ○小林孝平君 ちょっとお伺いいたしますが、ごく最近、新潟、石川、秋田等の人が船団を組んで沿海州に行ったわけなんです。それで、第一回の時はよかったらしいけれども、第二回の船団に、新潟、石川、秋田三県の人が船団を組んで行ったのが十一隻、鳥取が四隻、中型機帆底びきでカレイをとるのが目的で行ったらしいのです。ところが、ごく最近ソ連の船につかまって、追い返された。その場所はウラジオの西海域で、陸から十七海里の所らしいのです。それで、こういうことは実に不当だと思うのですが、この詳しい事情、水産庁でおわかりになりますか。
  148. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 水産庁は、沖合い漁場の開発ということも、過去三年来やって参ったのでございまして、ソ連の周辺につきましても、多来加湾及び樺太の西南、また今年の仕事といたしまして、ただいま問題になっておりまする沿海州の沖合い及び北樺太の東沖合いにおきまして、底びきの漁船が漁場の調査をし、これに対して水産庁も補助を出し、その結果によりまして、内地から底びき漁業がそれぞれ漁場に進出をして、沿岸の漁獲努力を軽減していくということを、相当の成功をもって今日まで実行して参ったのであります。  今年の予算に基きまする沿海州沖合いの出漁に関しましては、考え方は、大体県の指導船を中心にいたしまして、五隻から十隻くらいの底びきの船団が、その指導のもとに、それぞれ漁場におもむいて調査をする、こういうことであるのであります。  で、ことし四月十日に第一回の沿海州沖合いの底びきの船団が出まして、これはソ連側の船にも出会ったそうでありますが、別段何のとがめも受けることなく、帰って参ったのでございます。で、今回問題になりましたのは、その二回目の船団でございまして、指導船に予定しておりました新潟の船が差しつかえましたので、農林省の監視船が指導船となりまして沿海州の沖合いに参ったのでございます。で、情報によりますと、第一回にソ連の監視船が参りまして取り調べました結果、四日ぐらいはここで操業してもいいというふうなことを申したそうであります。今回の調査は、一週間、往復四日といたしまして三日間操業する、こういう予定でございます。ところが、昨日第二回目にソ連の監視船が参りまして、直ちにこの漁場から退去して帰港せよ、しからざれば漁船も漁夫もこれを拿捕または逮捕する、こういう通告があったのでございまして、目下船団は全部帰港いたしつつあるところであります。明日新潟に帰港いたしますので、さらに詳細なその間の交渉の経緯を、われわれとしても十分具体的に掌握いたしたいと、かように考えております。
  149. 小林孝平

    ○小林孝平君 これは明日帰港されましたら、すぐ農林省は調査されるでしょうけれども、これは明らかに不法の行為だと思いますから、外務省から至急向うに抗議を申し込むなり、実情調査を要求するなりしていただきたいと思うのです。
  150. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) 先ほども同じ御質問がございましたけれども、これは事実の確定を待ちまして、事実を調べて、その結果適当な処置をしなければならぬと、こう考えております。
  151. 堀末治

    委員長堀末治君) それでは、この件についてはこの程度にとどめてよろしゅうございますか。  それじゃ、政府も、どうか関係漁民の希望に沿うように、一段の御努力を一つお願いいたします。
  152. 堀末治

    委員長堀末治君) 続いて、第三繁栄丸の件を議題にいたします。  この件については、すでにたびたび委員会で問題になり、政府当局からの回答を求められておるのでありますが、本日重ねて問題として、当局の回答を求めることといたします。  なお、この問題について政府からの出席は、ただいま申しました通り、アジア局第三課長白幡君であります。
  153. 清澤俊英

    清澤俊英君 この問題、秋山さん、柴田さん等から詳しい御質問があると思いますが、私は、先般アジア局長がここへ見えまして、これに対してどうするのだ。これは一つ特別の処置を講ずると言われるから、特別な処置とはいかなることをやるかと聞いたら、直ちに人を派して向うと交渉して解決を早める、こういう御回答がありましたが、特使は派遣せられたかどうですか。派遣しましたら、どういう状況であったか。いろいろそれをお伺いするには、相手国の国内の情勢が非常に混乱しておりますので、この二点を一つお知らせをお願いしたい。
  154. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) 前回、当委員会でアジア局長から申し上げましたことは、この問題の外交交渉が非常に行き詰って参りました場合のいわば最後的な方法といたしまして、係官を現地に派遣する、こういう意味で申し上げたことと存ずるのでございますが、前回の当委員会で問題に取り上げられました後に、また後ほど詳しく申し上げたいと存じますが、外務省で強硬な意見書を作りまして、当時在京のインドネシア総領事を招致いたしまして、これを手交いたしまして、厳重に抗議いたしました。その結果、在京インドネシア総領事は、われわれの要求を至急本国政府に取り次ぐ、そうして彼は個人的にも、この問題を大至急解決することが両国のためになることであると確信するので、あらゆる方法をもって日本の御希望に沿うように努力したいと、こういう言明がございました。ただいまその過程の途中でございます。従いまして、ただいま御質問の係官を先方に派遣するところまで至っておらないのでございます。
  155. 清澤俊英

    清澤俊英君 あのときの話は、もう非常に日がたって、いろいろやっているけれども、同じことを繰り返しているから、そこで特別の処置として人を派してもこれは急速に解決しなければならぬ……。まだ解決していないでしょう。向うの言うことだけを聞いていたって、問題にならない。ことに最近の新聞などを見ますと、非常に政変が起きている。なかなか政変の起きているような混乱した中で、話ができるかできないかということは、重大な問題ですよ。心持じゃ、事実は進まぬだろうと思う。それは非常に重大性を持っておりますよ。それをどう今後解決せられるおつもりですか。ここで約束したこととは違うのですよ。特別の処置とはいかなるものをなさるのですか、こう言ったら、特別に人を派してこの前のように解決をやらせます、こういうことを言明しておるわけです。一つも解決していないじゃないか。
  156. 千田正

    千田正君 これは、今の清澤委員の言う通り局長はここで言明したのでありますが、最近総理大臣の召喚によって倭島公使が内地に帰還したのです。で、現地の実情というものに対して、おそらく外務省あたりでは再検討をしておるわけです。その際この問題が出なかったかどうか、また倭島公使自体が外務省の訓令に基いて、この問題について当該政府との間にどういう折衝が行われたか、この点を関連しましてお答えを願いたいと思います。
  157. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) ただいま倭島公使の問題が出たのでございますが、倭島公使はもちろん、現地におりまして、日本の政府職員といたしましては、この問題について十分お考えになっていらっしゃるわけでございますが、先方に対しましては、倭島公使の立場は純粋に賠償問題の解決のために派遣せられた特派の公使であるという建前がございまして、倭島公使自身がインドネシア政府と賠償交渉以外につきまして交渉をすることはできないということになっておりますので、倭島公使自身が先方と直接話をされるということはないのでございます。本件につきまして、先ほどもちょっと申し上げましたのでございますが、インドネシアの総領事を招致いたしました際に、当委員会においてこの問題が非常に重大な関心を持たれて取り上げられておるということを説明をいたしました。もしインドネシアがこの問題をなおかつ遷延させ、しかもそのインドネシア側の言い分というものが全く論拠のないものである、そのような言い分を通すならば、今後日本とインドネシアの間にございます種々なさらに重要な問題についての解決に、いろいろと支障を来たす、少くとも感情的にそういうことになるおそれもあるということを説明いたしました。インドネシア総領事はこれを十分に了解しまして、何と申しましても、金額から申しましてもわずかな問題であるから、かようなことで時間をとっておるということはまことに自分も残念だと。たまたま今度のあちらで政変がございました。またインドネシアの外務省内の人事もだいぶ異動がございました。そこで、インドネシアの総領事は、自分が私信を書いてでも、とかくこの問題がインドネシアで政治的考慮を離れて、理屈だけでもって取り上げられておるような印象があるので、自分としては政務関係の方面に私信を書いて、至急これを連絡する、そして大至急問題の解決にかかるようにするからということを言って参りました。私ども、その事態の発展を、従来におきますよりもまあはるかに多くの期待を持っておるわけでございます。  なお、念のために申し上げたいと思いますことは、インドネシアの総領事館では、わが国の国会でこの問題が取り上げられたということにまた非常な関心を払いまして、本委員会の前回の御質問、御要望に関する議事録をほしいという希望がございましたので、私どもの方でさっそく英文にいたしまして、関係の議事録は全部相手方に渡しましてございます。
  158. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 ただいまの総領事が言明したというのは、いつでございますか。
  159. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) これは四月の四日でございます。
  160. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そうしますと、まだ二十日ぐらいしかたっておりませんが、この問題はだいぶ前から……。今年になりましても、前からやっていたのですが、政変が起るような状態にあったために遷延しておったのでありますか。またこの政変の後、いろいろ新聞等によって見ますというと、大体落ちついて、日本と賠償交渉をやっておったことも続けてやれるんだという、倭島公使の報告も新聞に現われております。そうしますというと、その政変によってそのような問題がまた新しく審議されるとか、あるいは交渉されるという段階じゃないと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  161. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) お答え申し上げます。従来とも、もちろん、今回の政変に至ります前のインドネシアの状況は、先方の政界にはいろいろ変動がございましたけれども、この種の問題が政変のために、特にその理由をもって遷延されたとは考えられません。また現在の状況は、とにかく一応内閣もできて参りました。従って、交渉は従来と同様に継続していくことができると思っております。
  162. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今、倭島公使が賠償問題の特使であるということで、賠償以外の問題には触れることができないようなお話がございましたが、実は私どもも、先般来いろいろ質疑を重ねておるうちに、もしインドネシアがその賠償をしないというならば、あるいはいろいろな事情でできないというならば、今度の賠償交渉の中に含めたらどうだ、あるいは相殺してやる手もあるんじゃないかという問題もあったのですから、全く無関係の問題じゃないと思うのです。賠償問題はこっちから払うのですけれども、向うも賠償ですね。今度の倭島公使の目的は、そういう一般的な賠償じゃなくて、日本が支払うべき賠償の問題に限られておることは、私どもも承知しておるわけですけれども、全く無関係のものではないんじゃないか。相殺すべきものは相殺したらどうだ。たとえば焦げつきの債権につきましても、今度どうのこうのという問題が起っているようであります。だからして、まあその賠償交渉とからめてやりますと、また非常に長い問題になるかもしれませんので、それはわれわれ好むところではありませんけれども、もしもそういうことで賠償で相殺しようという話ができれば、賠償はかっちりいかなくても、これはまた打つ手はあるんじゃないかと思うのですけれども、あるいは日本政府が立てかえるといったようなこともできるんじゃないかと思いますから、全く無関係のものではないので、倭島公使が日本の政府を代表して行っておって、こういう問題にまるっきり触れない。あるいは公式に触れなくても、私的にでも触れるくらいのことはあってしかるべきじゃないかと思うのですけれども、全然触れていないのでしょうか。
  163. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) これは非常に、何と申しましょうか、しかつめらしく申しますと、今まで私が申し上げました通り立場上は、倭島公使が、たとえばインドネシアの外務省に参りまして、この問題を持って行って話し合うということはできないという建前になっております。これは倭島公使が三年前初めてあそこに赴任されました際に、インドネシア側からの希望として、そういうことを言われたということを、私どもも聞いております。  それで、本件は、なるほどただいま秋山先生のおっしゃいましたように、実質的には将来支払うべき賠償問題として、関連して当然考えることができるわけでございますが、法律的にはあくまでも、これは原則論として、離して考えるべき問題でございまして、従って、私どもは、先方に対する交渉といたしまして、この賠償額の決定であるとか、それを実際に支払うということはあとでもいいじゃないか、とにかくあなた方の方で悪かったのだから、将来これに対して補償いたしますというだけの約束でよろしい、そうすれば、事実上われわれとしては賠償をどうせ払わなければなりませんので、そのときに差し引くということができるわけでございますが、そういうような原則的な了解さえつけてくれますならば、また日本の政府といたしましても、この被害を受けた船主に対してしかるべき財政的な措置がとれるのだということを強く申してございます。従いまして、とにかくまず原則的に先方がこれを認め、将来これを補償するという意思表示をしてもらうということを期待いたしまして、ただいま交渉中でございます。
  164. 青山正一

    ○青山正一君 被害を受けたということは、これは確実なんです。これは外務省もお認めになるだろうと思うのです。それからまた、非常に好意的にやったやつを非常に悪くとられちゃって、非常な被害を受けたという事実も、これは外務省は認めておるはずなんです。おそらく水産庁もお認めになっておるだろうと思うのです。そうなると、日本側の外務省なり水産庁がはっきりそういうふうに認めておるならば、今その船の船主が非常に困っておられる、まあ一日を争うような生活の問題にも困っておるというふうなことがわかったならば、少くともそれについて、これは何か道を講ずべきが僕はほんとうだろうと思うのです。たとえば以西底びき、ああいうふうな底びきの業者が韓国に拿捕された場合においても、いろいろ手配を講ぜられた。ところが、これは一隻であるから、問題にしていない。また、これは一日を争う問題であるからして、何かこれは講ずべき道があるというにもかかわらず、そういう事実があるということがわかっておりながら、向うから返事がこない、返事がこない、こういうふうにして等閑に付すべきこれは問題ではなかろうと思うのです。そういう点についての御意見を承わりたいと思うのです。これはもちろん、水産庁からも承わりたいと思います。
  165. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 本件に関しましては、私も国民の一人といたしまして、非常に御同情申し上げ、何とかこういう際の救済がもっと敏速にいかないのかということを、焦慮いたしておるのでございます。ただ、政府という立場においてこれにどういう具体的な対策があるかということにつきましては、国内的にこれに対して補償をするということは、国という立場がきわめて冷酷無情のごとくでございまするが、正面から政府がこれに損失を補償するというわけには参らないかと、かように思うのでございます。  そこで、問題は、しからばこれに対して、インドネシアが将来払う賠償を政府が立てかえるかという問題と、それから見舞金という形で金をお渡しするという問題と、さらに融資の問題と、三つの問題になって参るのでございます。で、国といたしまして、船主の経営上の損失に対しましては、実はまだ見舞金というものは出しておりません。乗組員の抑留あるいは遭難に対しましての見舞金は、これはもう御承知のごとく、韓国関係等において対処いたしておるのでございますが、こういう経営主の経営上の損失に対しましては、特殊保険というふうな制度で、保険としては対処いたしておりまするが、正面から国が見舞金を出すということは、これは全然新しいケースになるのでございます。そこで、これに対して国が見舞金を出すとすれば、これと関連する似たような事情にありまするその以外のケースとの間に、どこに線を引くかと、こういう問題に相なって参るのでありまして、実は大蔵省等ともいろいろ打ち合せばいたしておりまするが、関連するところが非常に広範に相なって参りますので、見舞金という線において踏み切るということはいたしかねておるのでございます。  しからば、インドネシアの将来よこしまする賠償金というものを前提にいたしまして、国が一時立てかえ措置を講ずる。ちょうどビキニの賠償に対する立てかえ措置を講じたごとくに、立てかえるということに関しましては、外交交渉がもう一息で何かそういう形がきまりそうな段階まで来つつ、しかも進行しかねておる、こういう状況にあるのでありまするが、まあできる限り外務省の方でいろいろ御努力を願っており、どうもインドネシア側の態度も、個人的には非常な責任を感じておるような点もあるので、われわれも一日も早くそれが形にまとまるものを期待しておるのでございます。  それから融資の問題に関しましては、実は船主の方とも私の方の担当者がよく御相談をいたしておるのでございます。何でも今、中金に千六百万円でございましたか、そのくらいの債務を持っておって、そうして自分としてはこれ以上その債務額をふやすというのはかえって困る。そこで現在の債務の条件を緩和するために努力をしてもらいたい、こういうお話がありまして、私どもの方の担当しておりまする課長から中金当局に対して、今いろいろ折衝いたしておるところでございます。
  166. 青山正一

    ○青山正一君 融資の対象になっておるということは、私は聞いておりますが、融資には必ずこれは返済の義務というものがあるわけなんです。一方においては船をとられ、あらゆる損害を受けちゃって、その船の代償として融資を受けて船を作った、ところが、いろいろそれに対して毎月納めなければならぬものが相当あると。だんだん生活も窮してきておると。それから見舞金の出す方法も何もないと。結局、それが漁業者としての位置を失うというような結果に相なるとすれば、何のためにインドネシア人を助けたかということにもなるわけなんです。助けたことによって生まれた結果がこういうふうなことになると、これは幾ら国が冷厳な建前におると仮定されましても、そういうふうな点は、もう少し、やはり政府として見舞金の道はないというふうに考えられておるにしても、何かこれは方法があるだろうと、こういうふうに私どもは考えるわけなんですが、その点いかがですか。見舞金、どうしてもだめですか。
  167. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 何ら当事者が故意または何ら過失なくして、そうしてこういう損害を受けたと。そういう条件のもとに経済上の損害を受けておりまする漁業経営者というのは、これ以外に非常にたくさんその事例が、日本の西の方の漁業者にはあるのでございまして、従って、これに対処するということは、同時に、やはりその全体に対処していくということでなければならない次第であるのであります。その辺の線の引き方がどうにも工夫がつかないというような点もございまして、大蔵省当局との間のわれわれの話し合いも、現在まだ仰せの御希望の方角には全然進んでおらない次第でございます。
  168. 千田正

    千田正君 次長の今の答弁は、非常に見解が違いますよ。あとのことはわかりましたが、第一点の、国は冷厳にして、だからそれに応ぜられないということは、これは私が船主だったら、行政訴訟しても勝ちますよ。なぜならば、海洋においてあらかじめ日本の政府の外務省に対して、われわれはいかにすべきかということを通報して、その指示を待ったに対して、日本の政府はその指示を与えたのです。因果論からしても、これは日本政府に明らかに責任があるのです。捕えられたというのは、あとの結果論です。捕えられる状況に立ち至らせたのは、日本政府の指示によって行ったのでありますから、これは因果論からいっても、日本政府はその責任を負うべきであります。それは次長の見解は、われわれは、法理論的にいっても、そういう見解は納得いきません。外務省の見解ほどうですか。あなた方の指示によって漁船が行ったわけです。どうしたらいいかということです。それに対して政府が責任を負わないという、そんなばかな話ありません。行政訴訟やったら、あなたの方が負けますよ、政府が。この見解はどうでありますか。
  169. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) 確かに当時の状況は、船の方から海上保安庁を通じまして、人命を救った、もよりの港に連れて行くがよろしいかということで、もちろん私の方でそれは了解したわけでございます。これは従来の慣行上、私どものやっております方法と全く同一な方法をとったわけであります。特にその際、私どもがいささかたりとも疑問を持ってやった行為ではございません。従いまして、それだけに私どもといたしましては、先方に対しましてこのケースだけ特にどうしてこういう問題が起きたかという、その責任を追及しているわけでございます。その際果して私どもの了解し、指示したことが、行政訴訟上政府の責任に該当いたしますかどうか、これはちょっと、そういう法律的なことはまだ研究しておりませんでございますから、ただいま御答弁いたしかねるのでございます。
  170. 千田正

    千田正君 これは私自身の見解からいえば、日本政府の指示によって回航したことによって生まれた結果の損失であるから、因果論からいえば、当然指示した政府において責任を負わなくちゃいかぬ。これは行政訴訟法上からいえば、当然、私がもし船主であったならば、被害者であったならば、必ずやりますよ。そうして勝ちますよ。これは研究してごらんなさい。  それから、先ほど外務当局が、倭島公使はいわゆる賠償公使としての立場しかとれない。当時のアグレマンとしてのあれは、賠償としての公使の交換ですか。賠償以外におけるところの、日本国民のその地におけるところの生活の安寧一切を守るという、外交上の交換文書の中には、倭島公使以外にしからばだれが責任をもってインドネシアにおけるところの公館を開館したのか。
  171. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) ただいま倭島公使の立場はちょっと特殊な例でございまして、御承知の通り、インドネシアと日本との間にまだ正常な国交が回復しておりません。従いまして、公使あるいは大使——先方の政府に信任された大使あるいは公使というものを派遣するということは、ないわけでございます。インドネシアに対します通常の、賠償以外の貿易その他、日本人の保護であるとかそういう問題につきましては、現地の総領事がその責任者になっております。ただいま総領事はおりませんので、総領事代理がやっております。
  172. 千田正

    千田正君 そうしますと、倭島公使は別といたしまして、今のような問題は、現実においては、日本人の生命財産をインドネシアにおいて保護する。その他の問題についても、外交上の責任を負って日本の立場を、外交上の措置としては総領事ですか、代理公使ですか、そういう人がおって、その人がやるということなんですね。  今のあれだけは研究してごらんなさい。それは政府の責任として、これは当然行政訴訟をして、私だったら勝ちますよ。
  173. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この問題はそろそろ二年になると思うのですよ、事件が起ってから。自来いろいろ折衝を重ねてきて、いまだに目鼻がつかないということで、もう近いもう近いと言って、果して近いのかどうか。先ほどからいろいろ問題になっておりますように、この問題は全然、ほんとうに、国内にでもおれば、赤ん坊一人助けても表彰されるような程度のことなんですよ。外国人を七人も助けたものが、おまけに船はひっぱって行かれて、長い間抑留されたというケースは、おそらく世界中にないと思うのです。これに対して二年もずるずるしておるということは、いかに国交が回復していないといいましても、総領事を置いておる日本政府として、あまりにもどうもやりっぱなしのような気がする。やりっぱなしでないかもしれませんけれども、日本の国の威信という点から考えても、これはこのままほうっておくということは、どうしてもわれわれは納得がいかない。  従いまして、私は、先ほどからいろいろお話があるように、見舞金を出さない、あるいは立てかえの方法も今のところまだないというような状態であるならば、この前アジア局長が言明されたように、特使というほどのものではないかもしれませんが、外務省の方なり何なりが、特にこの問題をひっさげて乗り込んで行って、日本の政府の希望あるいは国民の感情というものを十分に訴えて、何か早く問題を解決するという方法をとるより仕方がないと思いますが、その後どうなんですか。二年間もたっていますよ。そうして、こう片がつく、片がつくといっても、われわれはそれを信じていられませんよ。ともかく、どこにも悪いところがない。私はどう考えても、いいことはしたけれども、悪いことをしたことはないと思う。それを何か悪いことをしたとか何とかいうことがあれば、それはそれとして、また考えなければなりませんが、そういうことは一ぺんも聞いていない、インドネシアに非があるのにもかかわらず、二年もこれが片がつかないということは、全然不可解千万で、われわれは一に外務省を責めざるを得ないと思うのですが、どうですか。
  174. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) インドネシアの漁民人命救助という問題は、このケースだけではございません。このほかにも例があった。その場合は幸か不幸か日本まで、いろいろな便宜上連れて帰ってきております。その際にも、東京にございます総領事館から、船を救いました日本の船会社に対して、かかりました諸経費はきれいに払っております。また、それ相応の礼状も出してきております。しかるに、この問題だけがひっかかりまして、こじれてしまいました。その原因は、これは私ども立場を弁解するわけではございませんが、運悪く一番インドネシアの遠隔の地でありまして、その地方官憲というものの無知というか、無経験、それからまた当時は、中央政府と地方との間の事務的な連絡が十分できていなかったというような、そういうようなものがいろいろと入り込みまして、そうして、結局その後になりますというと、インドネシアの中央政府では、これを何とかへ理屈をつけて、自分たちの立場というものを、こういうものを擁護しようというようなことで、始終してきておるのではないかと思われます。  幸いにして、先ほど申し上げましたように、ちょうど賠償問題というものも非常に大詰めに来たような感じがございまして、インドネシア側といたしましても、この賠償問題解決の重要性ということにもかんがみまして、こういう比較的小さな問題は、早く賠償問題の以前に解決しておくことが必要であるというふうな考え方をしておると、私どもは思っております。おそらく、今回は何とか早く問題が解決されるのではないかというふうに、期待をいたしております。
  175. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 それでは、人を派するというような意思はまだございませんか。
  176. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) ただいまのところでは、まだそこまで行っておりません。一応東京の総領事館を通じて向うに出しました抗議に対しまして、先方がどういう反響をするか、その反響次第によっては、もちろん人を派遣するようにいたしたいと思います。
  177. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 それは、抗議とかそういう、総領事館を通じてやったことは、ずいぶん前からやっておるのでしょう。今年に限って、それが早急に何か返事が来るというような期待でも持てるのですか。
  178. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) 従来もやはり、こちらの総領事館や、また現地の総領事館を通じてやっておったのでございますが、実はこれは、前回、当委員会でもって問題が取り上げられまして、皆さん方からいろいろ御要望がございましたし、また強い御注意がございました。これがやはり非常に一つの外交上の力になりまして、インドネシアの当地の総領事も——これは被害者の船主の方が従来、インドネシア総領事館に行っておったのでございますが、当時は比較的冷淡と申しますか、態度でもって応接されておったのです。ところが、この委員会で取り上げられまして、その内容も非常に強い御要望があるということを向うに伝えまして、それ以後、急に先方の態度も変って参りまして、船主の方がその後インドネシア総領事館に参りましたら、非常に丁寧な扱い方であったということを言っておられました。おそらくそういうことがあって、最近急に変ってきたのじゃないかというような感じがするのでございます。
  179. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 総領事は今、インドネシアに帰っておるのですか、こちらにおるのですか。
  180. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) 東京におります。
  181. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この問題は、やっぱり従来とあまりそう変っていい解決が出るようには受け取れかねますので、一つこれは早急に話をまたつけて、依然としてぐずぐずするようなら、アジア局長の言明の通り一つ人を派してもらいたい。これは一業者の損失という問題だけじゃないですよ。国の問題ですよ。そういうことを強く要望しておきます。
  182. 安部キミ子

    安部キミ子君 最近、岸総理が韓国の抑留者の釈放の問題の解決は……。韓国の問題、わかりますか。
  183. 堀末治

    委員長堀末治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  184. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記をつけて。
  185. 千田正

    千田正君 この第三繁栄丸の事件は、たとえば政府が訓令を出し、指令を出した場合は、それは当然政府が責任を負わなくちゃならないと私は思うのですが、その点はどうなんです。外務省が指令を出した場合には、その最高責任者は外務大臣だと私は思うのです。今日に至って何ら責任を痛感しないとするならば、われわれは別個の考えをしなければならない。私は、さっきの水産庁の次長。お話は、国の方ではどうも責任を十分負えないというような意味のものであった。私は、これはあくまでも指令を出した政府が、農林省なら農林省、外務省なら外務省、その指令に動いた結果がこうした損失を招いたとするならば、当然指令を出したもとであるその省に最高責任がある、責任を負わなければならぬという観点に、私は立っている。あなたの方の観点はどういう観点ですか。指令を出したが、出しっぱなしで責任をとらないという、そんなばかな話はないと思うのですよ。
  186. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) もちろん、私の方で指令を出し、了解を与えたのでございますので、その観点からも、極力外交交渉を促進したい。ただいまそれに専念しておるわけでございます。どうしても外交交渉でそれが解決ができないということになりますれば、またあらためてこの問題についての考え方をしなければならないと思っております。
  187. 安部キミ子

    安部キミ子君 ちょっと、外務省がわからなければ、水産庁の方も全然他人事じゃないだろうし、この問題は前からいきさつがあるから、ある程度のことはもちろん……。
  188. 堀末治

    委員長堀末治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  189. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記つけて。
  190. 安部キミ子

    安部キミ子君 総理大臣はアメリカへ行く前に、この問題を解決する、李承晩大統領も、あちらの方からこれを応ずる、それから金公使とアジア局長との間に事務的折衝までしておるという話を、最近しておられますが、水産庁の方ではこの問題について、いつごろできるかという見通しを持っておられるのですか。御相談でもありましたか、その点だけ。
  191. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 韓国の抑留漁夫の釈放問題及び日韓交渉の再開ということにつきまして、水産庁は外務省の事務当局とはふだんに連絡をとっております。ただ、岸総理のおっしゃっておられたそのお考えについては、これは私たち推測以上のことは何も申し上げられませんから、お答えをいたしません。今日までの事務当局が連絡をされておるところにおきましては、もはやそこにこの問題をおくらせるようないかなる支障も起っておらない、こういうふうに私たちは了解をいたしております。
  192. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうすると、岸さんが六月の中旬ごろには渡米なさる予定らしいのですけれども、そのころまでには解決できる、こういうように見通しておられるのでしょうか。
  193. 奧原日出男

    政府委員(奥原日出男君) 水産庁事務当局といたしまして、ただいまの御質問に対して時点をお答えすることは、これは差し控えさしていただきたいと思います。
  194. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうしましたら、この次の委員会には岸総理を呼んでいただきたい。それができなかったら、責任者を呼んで下さい。以上です。
  195. 清澤俊英

    清澤俊英君 さっきの問題で一つ残っている。ということは、これは外務省の人にも水産庁次長にもはっきりしておかなければならぬが、私が言うよりは千田君が質問した方がいいと思います。予算委員会で千田君がこの問題を出して、総理大臣兼外務大臣に、これをどうするのだ。そうしたら、農林大臣と相談をして何らかの措置をとる、こらはっきり言っている。その後農林大臣がここへ来られましたから、その御相談がありましたかと言ったら、まだ相談を受けておりません、そういう御答弁になったことは承知しております。それで、いろいろ事務当局にそれに対して善処するように言いつけてあります、こういうふうにはっきり言っております。その後、一体どうなっておるのですか。  ということは、さっきも秋山君が言われる通りに、事態としては二カ年もほうってある、海員法からいえば、そういう場合にこれを救助することは、これはきまりきったことで、そういう責任をもっておる。それから大正三年ですか、海難救助相互条約なんというものができておるので、インドネシアが入っているか入っていないか知らぬけれども、それなどを見ましても、そういう場合には、もうどうしても助けに行かなければならぬ、こういう義務を負わされているのですから、その行為をして、その上この船をどこへ入れたらいいのか、入港の手続について、さっきも千田君が言う通り、外務省に問い合せて、どこへつけたらいいか。ここへ入れ。入る所へ入って、こんな目にあっておるのでありますから、この国会の予算委員会において総理大臣が何とか片をつけると言った限りにおいては、今でも片をつけなくちゃならぬ問題だと思う、どれくらい大体片がついているか。外務省と農林省の間における、もうある程度の片をつけるという大局がきまれば、事務当局ではやっておるに違いないと思う。ほうっておけば、千年たってもこれは片づかないと思う。総理大臣にその点を聞いて、外務大臣にその点を聞いて、そうしてこれを一つ急速に片づければいいじゃないか。  ただ、法律がないといったって、これほどはっきりしたものなら、単行法でも何でも作ったらどうなんです。出してもいけるのじゃないか。これだけのものなら、法律に出しても、何もそれが恥かしいことは私はないと思う。それよりは、毎日の新聞を見てごらんなさい。あの悲惨な、忌まわしい事件がたくさん起きておる。人心の荒廃、今ははなはだしいですよ。正直なことをやっておる者が食えなければ、あんなことをするのは当りまえの話だと思う。わずかの賠償とか何とかいう問題よりも、そういう正直に一生懸命やった人間がばかをみるというのでは、国会を中心にして、から回りしておる、政治は。これをかまわぬということになったら、ああいう妙ちくりんなものがたくさんできてくるということは、当りまえだと思う。そこに思いを及ぼしましたならば、このわずか五百万円か一千万円の金は、これは問題じゃないと思う。どうしてこれを本気になってやっていただけないものだろうか。あなた方自身が。しかも、相手国はどうかと申しますれば、現に内乱が起きておる。それはどうおさまったかは知りませんが、今伺いますれば、まだそう安心した程度ではないらしい。それを相手にして片づけようとしたって、片づくわけはないでしょう。ことに賠償のような妙ちくりんなものも、そこにまだ残っておるのですから、何か別な手を打って、事務当局で相談して、総理大臣がそれまでのことを言っておるのですから、何かそれを進行させる方法はないものか。お二人に一つ伺いたい。
  196. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) 先ほども水産庁次長からお話がありましたように、国内措置といたしまして、いろいろ融資という面から考えております。外務省といたしましては、いろいろ先方の政情の問題もございますが、先ほど申し上げましたように、とにかくこの問題の責任の所在を認めろ、これさえ認めてくれるならば、日本側としてもいろいろ措置もとりやすくなるからということで、実際の賠償額の算定とか支払い時期とかは、とにかくあと回しにしても、責任だけは認めろということで進んでおります。従いまして、この筋だけでやって参りましたならば、まあ先ほど来繰り返し申し上げますように、先方の情勢もすでに変ってきておりますし、またこの問題が非常に重大な問題になってきておるということも、最近になってだんだんわかって参りました。おそらく先方も、その責任を認めるということについて、期待のできるような動きをするのではないかというふうに考えます。
  197. 清澤俊英

    清澤俊英君 これで、もうあと質問をやめますが、大体その言質を得ますまでに、どれだけかかる見積りですか。一週間ぐらいでできるのでしょうか。
  198. 白幡友敬

    説明員(白幡友敬君) これは実は、今までいろいろ遷延いたしております理由一つも、先方の事務手続が非常におそいということが原因になっております。すでに、先ほども申し上げましたように、今月の初めに先方へ公文書を送っておりますので、おそらくその後じきに手続はとってくれただろうと思います。先方も、それから私どもの方もジャカルタの総領事館に同じ内容のものを送りまして、ジャカルタにおいても向うの政府に働きかけるようにという指令は出してございます。何分にも時間が、先方の事務的な能率が悪うございますために、おくれておりますので、一週間というような時間を切って御返事申し上げることは、ただいまはちょっとできかねます。
  199. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記をとめて。    〔速記中止
  200. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して。  この問題はこの程度にとどめたいと思いますが、つきましては、政府におかれても、今までのこの委員会の経過にかんがみて、すみやかに対策を決定することを特に希望いたしておきます。   —————————————
  201. 堀末治

    委員長堀末治君) 次に、漁業用燃油の件を議題にいたします。  先刻陳情をお聞きを願い、またお手元に陳情書と関係資料もお配りしてありますが、この問題について質問の御要求がありますので、この際御質問を願うことにいたします。  なお、この点については、通産省の鉱山局長の森君が見えております。御質疑をお願いいたします。
  202. 河野謙三

    ○河野謙三君 いろいろ質問をする前提として伺いたいのは、今の原油の輸入のCIFの価格というか、これと末端の製品の価格というものと、どのくらいの開きがあるかということを聞きたい、というのは、もちろんその間において、精油の加工賃、輸送料、そういうものを、通常のものを入れてあなたの方は考えて、原油の価格と末端の価格と相当の開きがあると思うのですが、それはどういうことになっておりますか。
  203. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 原油のCIF価格につきましては、お手元に配付した資料に数字が出ております。それを申し上げますと、昭和三十二年一—三月分というのがございますが、一—三月が最近では一番運賃の高い時期でございまして、これについて申し上げますると、原油の一キロリットル当りの輸入CIFにいろいろな諸掛りを加えましたものが八千六百円、それに精製費が大体二千三百円、それで一万九百円程度のものになるわけでございます。で、これが揮発油あるいは重油その他のものに分れてくるわけでございます。そういう製品の種類別に、あとの価格は少しずつ違って参るわけでありますが、こうした精製工場から特約店に行く段階、これがおおむねその間の経費が三千円程度だとわれわれは見ております。これが、しかし油種別に、つまりガソリンとか重油とかそういうものになりますと、少しずつ変って参ります。大体その販売価格で三千円というのを開いて計算いたしておりますので、ガソリン等はそれよりも高くなるし、重油は若干それより安くなるということになりますが、おしなべて申しますると、特約店に至るまでに大体三千円ぐらいが加算されるということであります。それから特約店から消費者に行く場合も、これはいろいろ特約店のもとにさらに副特約店等を使う場合がございましょう。あるいは小口で売る場合、大口で売る場合、また相手方の決済の期間等で、いろいろ変化がありますが、それらを大ざっぱに申し上げますと、重油等について申し上げますれば、一番低いところは千二百円程度プラスされることになりましょう。それから小口のもので条件が悪いというようなものは、二千五百円前後というものが、特約店で加算されるというふうなことになって参ると考えております。
  204. 河野謙三

    ○河野謙三君 その特約店なり販売店の口銭も、私はちょっと高過ぎると思うけれども、それを私、聞いているのじゃなくて、現在の市価は一体どうなっているかというのです。一万九百六十五円のこの価格に対して、それにあと特約店なり販売店の手数料を加えて出たものが、あなたの計算される三千円とか二千五百円を加えましても、一万六千円でございますね。一万六千円に対して、これはいろいろ油の別にすればこまかい計算になるでしょうけれども、現在の市価は一体どのくらいになっているかということです。
  205. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 市価の調査は、末端の価格の調査として、第三者の機関で調べたものが実はございません。ただ卸売物価につきましては、日銀とかあるいは経済企画庁の内局である経済調査会等がありまして、調べております。従って、卸売価格あるいは大口取引、これについては信頼すべき数字があるのであって、それについて申し上げます。
  206. 河野謙三

    ○河野謙三君 ちょっと待って下さい。こういう原油の割当を実需者がもらって、そして委託加工してやりたいというのは、今のそういう要求をする側からいえば、今の市価が通産省なり農林省が考えておる価格よりも、理論価格よりもあまりに高いので、そういう不当なものを、しかも外国資本が半分も入った石油会社に取られることは、大きくいえば国民として耐えかねるから、だから、原油の需要者割当をもらって、そして委託加工をすれば、今の市価よりも安くできるからということが、私は出発点だと思っている。だから、こういう要求がしきりと出るのは、要するに、市価が不当に高いからこういう要求が出るのだと思う。だから、こういう要求が出る以上は、あなたはまず市価に対して強い関心を持っていなければならない。日銀の卸売物価とかそんなのんきな問題ではない。現にこういう要求が両三年来、あなたの方に猛烈に出るわけだ。だから、それについて常に市価の調査というものがなければならないと思うのです。よろしいですか。それはないのですか。それがもしなければ、農林省の方はあるのですか。これは問題は、市価が通常の価格であるなら、問題はないのです。われわれもあえてこういうことを言う必要はないのだ。
  207. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 末端価格の調査については、われわれとしては石油連盟——これは精製元売の団体ですが、それから全石連——全国石油業協同組合連合会、そういうところをして調査をさしております。しかし、これは自分たちに利害関係がある調査でございまするので、これはやはり百パーセント信頼はできないと思って、多少それは割引をしていろいろ考えて、それによってわれわれは市価が大体適正であるかどうかという判断をしておるわけであります。それ以外には、遺憾ながら、今客観的な信頼し得る末端価格の調査機関というものはないわけであります。
  208. 河野謙三

    ○河野謙三君 責任の立場にある局長は、今の油の市価は安定していると、公正な価格において安定しているということを言い切れますか。
  209. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 私の方では大体、日銀の卸売物価とか、経済調査会の大口取引の数字、価格をずっと見ておりますが、それによって判定いたしますところによりますと、そう不当に高いものではないというふうに考えております。
  210. 河野謙三

    ○河野謙三君 不当に高いということは、一体どういうことなのですか。高いことは認めるのですか。
  211. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) いろいろ議論をすれば、いろんな議論は起ることと思いますけれども、しかし、これがそんなに非難されるほど高いものではないというふうに考えておるわけであります。
  212. 河野謙三

    ○河野謙三君 しからば、具体的にどのくらい、あなたの常識でどのくらい高いですか。百円でもいい、二百円でも、三百円でもいいです。
  213. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) その百円、二百円ぐらいになりますると、これはなかなか正確なことは言えないのであります。われわれとしては、今後価格の低位安定をはかるために、さらに努力をしなければいけないということを感じております。その意味において、ただいまのようなことを申し上げたのでありますが、それは現在の価格が不当に高い——これはおしなべて申し上げての話でありますが、不当に高いということは言えないというふうに考えております。
  214. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は、各論に入る前に、総論的に伺いますが、あなたも不当に高くないと言う。かりに不当でなくとも、高いことは認めているわけだ。この石油の業界というものは、私は今前段申しましたように、精製から始まって販売に至るまで、外国の資本がずっとたれ下っていて、大体日本の石油の販売の半分は外国資本でしょう。そうすると、もうかったものは半分向うに持っていかれるでしょう。そういう観念であなた、石油行政をやっておられますか。国内の金を日本人が回しておるのではない。僕はこの問題が一番大事だと思う。この石油行政は、その出発点はそうです。あなたはどうですか。あなたのおっしゃるように、大体半分の資本は向うの資本だ、われわれは石油の精製から始まって販売まで、大ざっぱの議論ですけれども。そういう観念でやっておられますか。
  215. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 外資の入っておりまする石油会社の生産量は、全生産量の大体七割くらいだと思っております。その半分がつまり外資、その会社の大体半分くらいが外資によって充足されておるわけですから、三割五分、つまり売り上げの利益の三割五分といいますか、配当されるものの総額の三割五分が外国へ行くということは承知いたしておりますが、しかし、これは配当率の問題でありまして、その配当率が異常なものでない限り、その利益が外国へ行くということも、特にこれを阻止しなければいけないという必要は感じておりません。
  216. 河野謙三

    ○河野謙三君 じゃ、これは認めるでしょう。今までは精製ですか、この段階までだったのだね。この外資の入っておる会社が、精製の段階からだんだん地方の販売段階まで、ずっとたれ下ってきておる。この傾向はお認めになりましょうか。
  217. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 販売関係に外国商社が入っておるということは、一部のものについてございます。
  218. 河野謙三

    ○河野謙三君 そうしますと、先ほどちょっと言われました特約店関係で三千円の口銭とか、その下で千二百円ないし二千五百円とか、全部ではありませんが、そういう段階までずっと外国資本がたれ下ってきておるということは、この段階の口銭までやはりアメリカその他の外国に持っていかれるということでしょう。そうではありませんか。
  219. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) そういう販売関係のものは、外貨の送金ということで、大体大蔵省の規制を受けながら操作されておるということになっております。
  220. 河野謙三

    ○河野謙三君 だんだん話がこまかくなりますから、こまかい話はまたあとで私は伺いますけれども、いずれにしても、そういうふうな外資が非常に入っておる事業でありますから、あなたが先ほどおっしゃったように、不当には高くないのだ、高いことは認めるのだ、そういうのんきなことではいかぬと思う。もっと鋭敏にこの石油の工業に対しましては、また石油の販売業に対しては、外国のものなのか、日本のものなのかということで、もう少し公正な価格ということに対しては、あなた方はもう少し敏感でなければならぬと思うのですが、そうではないですか。従って、具体的に常に市価の調査を自分で積極的にやって、通産局なんかあるのですから、あなたの方の末端機関があるのだから、そうしてこの市価についての厳重なる監督をし、指導をする私は責任があると思うのですが、そういうことは、過去は別として、今後おやりになる御意思がありますか。
  221. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 今年の一月—三月の間に、特に中東紛争の影響を受けまして石油の価格が上ったわけでありますが、その場合に、価格についていろいろな需要者の不平が起る。これを通産局においてその苦情を処理する、整理する制度をやっておるわけであります。今後通産局等を使いまして、末端価格の把握に努力をいたしたい。またそのほかのやり方によっても、そういう末端価格を客観的に把握するという方法を研究をいたしておるわけでありますが、将来そういう方向を大いに進めていきたいと考えております。
  222. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は最後に一つだけ要求しますが、この実需者割当の是非の議論というのは、現在の市価が当を得ているかいないかということが出発点なんでしょう。従って、通産省でこの次の機会までに現在の市価をできるだけ詳細に調査をして、その資料を一つ、ABCの各品種別に調査したものを、資料として出して下さい。もしそれをやるために非常に日数がかかるなら、あとう限りにおいてできるものでけっこうでございますから、私は私で自分の手で調べますけれども、あなたの方で責任ある数字を一つ出して下さい。それが出ませんと、この議論の出発点はできないのですよ。出していただけますか。
  223. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) それは非常にむずかしい問題だと思うのでありますが、その取り上げた事例が適正な事例であるかどうかということに、非常に問題があるわけでございます。取引条件はすべて各個の場合に違うのでありまして、従って非常にむずかしいのでありますが、そういうことを御了解の上で、集め得る限りの調査をやってみたいと思います。
  224. 河野謙三

    ○河野謙三君 段階別のものは別として、最終末端で漁民なら漁民、その他各消費者が幾らで買っておるかということは、わかるでしょう。これはわれわれだってわかりますよ。これはわかるでしょう。これは出していただけますか。油の種類別に、現在最終末端の消費価格はどうなっておるか、これを出していただけますか。
  225. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) それはいろいろな油種をやると大へんだと思うのですが、重油の範囲だろうと思いますが、そうして二、三のものについてピックアップ式の調査をするということでしたら、できると思います。ただ、すでに全石油連盟とかいったような、特約店団体ですが、そういうもので調査した資料でしたら、これはすぐにでもお出しできるのです。
  226. 河野謙三

    ○河野謙三君 そんなものはだめですよ。
  227. 千田正

    千田正君 関連して。どうも今までの河野委員に対する局長お答えは……。石油行政というものは単に販売行政だけでないと、私は思う。通産省というものは、日本の政府の一環としてある限りにおいては、需要者と販売業者との間の中に立っておる政府の機関である以上は、販売価格を処理することはもちろんそれは必要であるし、需要者がどういう価格において石油を得ているかということをあなた方が調査しなかったら、正確な石油行政というものはできないのじゃないですか。それはどうです。それはあなたの方の責任ですよ。今までの石油連盟の値段を聞かなければというのでは……。これは日本の国民の需要、供給者も需要者の立場も十分に調査した上でなければ、りっぱな石油行政というものはできないはずであります。どうなんです。通産省はなぜ、販売業者立場に立ってだけ考えるのですか。
  228. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 末端の需要者の価格というものは、先ほども申し上げたように、条件が非常に違っておりまして、これは非常にむずかしいのです。われわれは別に怠慢であるわけではございませんが、そこでわれわれとしては、価格の適正を期するやり方といたしましては、精製業者とか元売業者の仕切り価格というものをよく注視いたしております。これは現在報告さしておるわけでありますが、そうしてそれから下の特約店の販売価格につきましては、その元売業者に責任を持たせまして、もしどこからか不当に高いという異議が起れば、精製業者とか元売業者の責任においてそれを直させる。もし直さなければ、われわれはその元売に対する外貨の割当を操作する、減すというやり方でやっておるのでありまして、大口取引の価格でしたならば、比較的容易にこれはつかめるわけで、そういうものをわれわれは今日よく注視をいたしまして、そうして一方供給量をふやすということにすれば、末端におきまして需給の不均衡から生ずる異常な価格の値上りは起らないだろう。こういうふうな考え方で、従来価格についての行政をやっておるのであります。
  229. 千田正

    千田正君 だから、僕は、あなた方のやっていることに対しては、精製業者なんかの力が非常に強く働いて、そして政府の責任者であるあなた方の声が通らない。その一例といたしましては、本年のスエズの問題が起きた場合に、あの人たちが勝手に値段を高くしょうとした。あなた方は非常に苦労をしたでしょう。そして勝手に上げちゃいかないといって、結局、ああした製油業者などの力によって左右されている。しかも、あなたは、スエズのあれでああいうように、上ったからといっても、ああした外貨の割当を受けて、そして入れた——小さい業者は別として、大きな業者というものは、長期の契約でフレートをつかんでおる。スエズ問題をいいことにして、そして勝手に値上げしようとしておるじゃないか。それに対してあなた方は、力が及ばなかった。そうして出したところの問題は、フレートを安く手に入れたものについては外貨の割当をあげようといっても、今ごろ船が使えるかというのです、二月、三月に。今こそようやくダウンしてきたけれども、業者にばかり注視されていてはだめですよ。政府立場というものは、販売業者立場を考えると同時に、これによって生産し、生きている人たちのことを考えるのが、通産省の責任あるところの行政であると私は考えるのですが、局長はどうお考えですか、この点について。
  230. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) スエズ紛争の影響で石油製品の価格が上り始めたのは、一月—三月の間でありますが、この間に、われわれといたしましては、精製元売業者に対して、まず仕切り価格の報告を求めました。これは特約店へ卸す価格でございますが、自今これを改訂する場合には政府の承認を受けろということにして、指導して参っております。これが無視されておるということは、私は考えておりません。その通り守られておると考えております。従って、ただいま仰せられたような、われわれが石油業者のなすがままになっているという状態はないと思っております。そして一—三月の価格は据置という申し合せも、業者間にわれわれの指導によってやらせておりまして、一—三月間の価格の状態は異常に高いものであるということは言えないと思うのであります。  現に計数によってみましても、たとえばA重油についていいますと、昨年の九月と比較して、一—三月を見ますと、七百円程度の値上りであります。これは日銀の調査による卸売りのものでございますが、この七百円の値上りというのは、私たちが原油の値上りなりあるいは製品輸入した場合のFOB価格の値上り、あるいは運賃の値上り、これらから計算してみたところに比べまして、これは決して高いものではないというふうに考えております。ただ末端におきまして、大ぜいの特約店、あるいはその副特約店がございますので、それらのうちに心得違いの者があって、あるいは場合によっては不当に高く売っておるということもあるかもしれませんが、大勢としては、精製、元売の仕切り価格、あるいはその下の卸売価格、これは中東紛争のために異常に上っているということは、私は考えておりません。
  231. 千田正

    千田正君 それは異常に上っていないということは、私から言わせれば、ロング・タイムを契約しているのですからね。スエズ紛争で上ってから、しからばフレートをつかまえた会社は幾つありますか。スエズ紛争以前から、半年とか一年とかいう契約で、すでに紛争以前に契約しているからこそ、そういうことをあなた方が言えるのであって、ああいう商売人は、あなた方が指導なんて言っている連中ではない。それは長い一年とか半年とかいう契約であったからこそ、スエズ紛争が起きても、ある程度はあなた方の指導を納得したのであって、それではスエズの紛争ができてから、それならばどれだけの新しいフレートをつかまえて輸入したか。つかまえて輸入した会社がありますか。
  232. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 私のところには、毎月の船の契約と、その契約船賃というものがわかっております。一—三月について見ますと、原油の場合は、長期のものは多うございますが、A重油と、重油の製品輸入をするものについては、いわゆるスポットのものの契約が相当ございます。そうして全体の輸入量の中で、大ざっぱにいいまして、一割五分くらいのものがスポットのものでございます。従って、そのものはスエズ紛争の影響を受けた高い運賃の船をつかむということになるわけであります。そこで、その運賃はUSMCプラス二〇〇という程度の非常に高いものであります。紛争前はUSMCマイナス三〇という程度のものでありますから、およそ三倍ぐらいの船賃になっておりますから、そういうものが入ってきておりますために、全体としてのA重油の価格が高くなってきておるわけでありまして、そういうものを計算してみて、私たちは現在の値上りが適切であるかどうかということを検討しておるわけであります。
  233. 千田正

    千田正君 それはよくわかりますよ、そのことは。しかし、私は今言ったように、スポットでつかまえてきたのは、それは高いのは当然であって、それをならした場合において、今の出てきた価格は一応相当だと考えるのは無理もない。そうであるべきなんだ。しからば四月に入ってからのフレートは、すでにスエズの紛争以前と大差ないマイナスになってきておるでしょう、どうですか。
  234. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 四月のフレートにつきましては、まだたくさんの資料は集まっておりません。ときどき仄聞する程度のものでございますが、それによりますと、プラス二〇〇のものが、六〇とか七〇とかというものが、ぼつぼつ出ておるという話であります。
  235. 千田正

    千田正君 もう二五を下回っておるのじゃないですか、あなた方、その調査をしていないのですか。
  236. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 四月のものにつきましては、まだまとまった数字を持っていないのでございます。
  237. 青山正一

    ○青山正一君 A重油の、原油精製のA重油と製品輸入のA重油ですね、これが大へんアンバランスになっておるのですが、たとえば昨年は百二十万キロ輸入のあった原油が、今年度は七十五万、それから製品輸入のものは、昨年は三十万キロのやつが八十万キロにふえておる。こういった事柄は、石油の精製業者が、非常に割高に売れる製品をたくさん作って供給しなければならぬ、漁業用のA重油をたくさん輸入するということはこれは困る、こういうふうに考えて、こういう結果が生まれたのだろうと思いますが、当局もそういうふうに指導しておるのと違いますか。その点、お伺いしたいと思います。
  238. 森誓夫

    ○政時委員(森誓夫君) 原油から、どういう種類の製品をどういう割合で作るか、これは得率の問題でございますが、これは一つの油種の得率をふやせば、他の油種の生産が減るということになりまして、品種的な石油製品の需給バランスが、うかつなことをやりますと、くずれて参ります。そういう意味で、従来われわれとしては得率をどうこうしろというような指導はして参っておりません。
  239. 青山正一

    ○青山正一君 ただ昨年度の場合は、非常に百二十万キロというふうにして多かったやつが、今年度は七十五万、約半数です。ところが、もうけのある1輸入業者か何か、そういうところに非常にもうけのある方面には、製品の輸入が非常に少なかったやつが、今年度は二倍以上になっておる。何かはかに原因があるのではないかと思うのですが、どうなんですか、その点は。
  240. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 大勢から申しますると、最近高オクタン価のガソリンを使う設備は、接触分解装置、接触改質装置、こういうものがだんだん完備して参りまして、これは石油事業全体からいえば、近代化の歩を進めたことになるのでありますが、そういうものが完備して参りますると、A重油等の生産は減らしまして、ガソリン等の方に向っていくという傾向が起きざるを得ないのであります。そのほか、B重油あるいはC重油の方は、石炭と非常に関連をしておりまして、そちらの方の不足のためにB、C重油の需要が非常にふえていくという傾向もございます。そういう意味で、A重油の得率が若干低下の傾向をたどっておるというふうに、われわれは理解しておるのであります。
  241. 千田正

    千田正君 青山さんの質問に対するお答えと、さっき河野委員の御質問に関連あるのですが、通産省の石油行政としての輸入に対する割当の原則基準というものは、何を標準としてやっているのですか。たとえば、われわれとしては、さっき河野委員が言われた、外国商社が相当入っている、ほとんどこれはもう油に関する限り、日本の金を外国にやるということになるのであって、そこで日本の国内の生産に寄与するところに重点を置かなければならないにもかかわらず、輸入しているのは、今の御説明がある通り、できるだけ軽油あるいはガソリンであるとか、あるいはB、C重油であるとか、灯油であるとかという問題に比較的重点を置いて、国内の重要産業であるところの問題に対しての割当というものは、案外そのバランスからいくというと、重要なのであるにもかかわらず、もうけの方に重点を置いて、実際に国内の産業の育成というような、あるいは日本の国民の生活に必需であるところの生産に対して向ける量というものが、むしろ少いじゃないか、私はそう思うのですが、あなたの方の石油行政としては、どういう立場をとってこの外貨問題その他をやっているのですか。
  242. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 石油外貨の総ワクをきめる場合のやり方について申し上げますると、一応毎年の油種別の需要量を各需要部門からとりまして見るわけであります。そうしてガソリンの需要が幾ら、あるいは重油の需要が幾らであるということを、それぞれの需要部門からとって、一応その数字が適正であるかを査定してきめるわけでありますが、それから後は、まずガソリンの製造に必要な原油の数量は幾らであるということを計算しまして、そうして原油の要輸入量を算出するわけであります。そうしますと、得率の関係で、重油関係はどうしても、国内精製のものでは追っつかないわけであります。不足分は製品輸入でもってまかなうということにしておりますが、その製品輸入量等も、各需要部門の全体の重油の需要量というものを充足する程度のものに外貨を組むわけでございまして、そういうふうにして、重要な産業部門の必要な石油製品は、必ず充足するという考え方で、外貨を組んでいるわけでございます。
  243. 千田正

    千田正君 その趣旨はよくわかりますが、充足する方が比較的多いのじゃないか。ということは、いわゆる原油を精製した場合に、A重油のようなあまりもうけのないものはあまり入れないで、そうしてもうけのある方に使う原油を入れて、そうして足りないというて精製油をよけい輸入するような結果になりはしないかということを、われわれ心配するのです。それは、精製した油になるというと、国際マーケットあるいは今のフレートや何かの関係上、相当高い物を買わせられる。それだけ外国へわれわれの金を払わなければならない。国内におけるところの財政に及ぼす影響は、非常に大きいと思う。最近におけるところの日本財政の危機を唱えられているというのは、国際収支のバランスが合わない、輸入超過にある、こういう現実のいわゆる国の姿に立って、われわれは考えた場合においては、やはり国内の産業であるところの漁業とか、農業とか、あるいはその他の重要産業を重点として、もうけは少くても、A重油を特に必要とするとか、A重油を必要とする原油に重点を置いて輸入するのが、根本政策でなければならないと私は思うのですが、あなたのお考えはどうなんですか。
  244. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 重要産業の必要とする石油製品を十分に供給するという考え方で、われわれは石油の外貨予算を組んでおるわけでございますが、それが実際どういう得率として各精製業者がその原油を処理して製品を作るかということは、一応のわれわれの最近のいろんな性向等から作り上げた見通しで考えておるわけであります。そして、どうしてもそれで現実がそれと違って動いた場合に、不足を生ずれば、それに対してあとからまた追加輸入をやるというようなことで、重要な部門には必要な量の油が行くということについてわれわれは努力をいたしておるわけであります。  それからA重油につきましては、昨年の七月AA制になりまして、重油の輸入が全く自由になっております。で、これはA重油の価格の上に一時は非常にいい効果もたらしたのでございまして、統計から見ましても、昨年の九月ごろからA重油の卸売価格は少し下ってきております。これは主として、A重油がAA制になって大量に入ってくるようになったいい面だと思っております。ただ、それが中東紛争のために、製品輸入をするものが非常に高くなってきている。ために、その需要部門はお困りになっている実情でございますが、しかし、これがまた中東紛争の影響も解決しまして平静になりますれば、また昨年の秋のような輸入品と国内精製のものとが、そう違わないようになってくるものと考えておりますが、そうすれば、A重油も去年の秋のように、非常に安い価格で十分に需要部門が処理できるという事態になるものと考えております。
  245. 千田正

    千田正君 去年の秋のAAになったからという意味ばかりじゃなく、それはむしろ私は、私の考えからすれば、三十年において漁連に対してあなた方の方は外貨割当を与えたのでしょう。そして外貨の割当によって安い油が手に入って、そうしてさっき言ったいわゆる業者、あるいはその他の卸売業者のオンリーの力だけでやっていたのが、一応生産者であるところの漁連その他が、真剣になって油に取っ組んだ結果が、ある程度の値上りを防ぎつつ、そのAA制のところまで持っていったという僕は結論を持っているのですが、あなたのお考えはどうなんですか。大体漁連に外貨を与えた結果として好結果になったか、悪結果になったかということは、われわれはまだ判断に対しては慎重に考えますけれども、あなたの方としてはどう考えておりますか。
  246. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) これは統計が証明しておると思うのでありますが、日銀の卸売物価の傾向を見ますると、昨年の九月ごろになってA重油は少し下って参っております。それまでは変動がございません。ただ、われわれの個々のキャッチした情報によりますと、昨年の春ごろから末端価格は漸次軟化してきているということもあります。これは先生のおっしゃるごとく、全漁連にA重油の外貨をひもつき割当をしたという結果ではないかというふうに、われわれも考えております。
  247. 河野謙三

    ○河野謙三君 もう一度、さっきの話の重複になるかもしれませんけれども、結局この市価の安定のために、あなたのところで、その輸入の価格を、CIF価格を千円下げる、二千円下げるということは、僕はあなたの手じゃ不可能だと思うのです、これは。ところが、国内の価格をあなたの方の行政指導いかんによって千円、二千円下げることは、簡単だとは申しませんけれども、これは非常に可能なんですよ。現に今あなたのお認めになったように、全漁連の油と一般の油とは、千五百円ないし二千円末端において市価に開きがあることは、これは現実にあるのですよ。これらのところをとらえて、これだけじゃありませんけれども、国内の価格をいかにして下げるかということをもうちょっと、いろいろあなたの方で御苦労なすったら、ぼくは簡単にいくと思うんだが、外国の価格と違って、国内価格でありますから、あなたはやりにくいでしょう。私はこの前石橋通産大臣のときに聞きましたが、通産省のあなたの先輩等でどこの業界へ一番たくさん行っているかということを、私は名簿までもらいましたけれども、あなたの先輩はずいぶん精製業界にたくさん行っております。局長や次官、こういう連中が、それはあなたの先輩として圧力を加えるから、やりにくいでしょうけれども、これはお察ししますよ。しかし、これは日本の重要産業に一番大きな影響力を持つのは油でありますから、これは一つぜひ御努力を願いたい。私はいずれこまかいことは、先ほど御要求いたしました資料をいただいて、私の質問はこの次にいたします。
  248. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) ただいま河野先生からお話ありましたが、われわれの先輩が石油業界に行っているという意味は、どういう意味か存じませんけれども、就職しているという意味でございましたら、そういうことはございません。
  249. 河野謙三

    ○河野謙三君 あなた、それはあなたが知らなければ、非常に不明ですよ。私は資料を要求して、昭和何年、大正何年に、あなたの方の何をしていた人、僕は全部名簿をもらっているのですよ。それがどこの会社に行っているという……。もしあなたはそういうことがないというなら、私は資料を、戸棚を探して、この次持ってきてやりますよ。あなたの方から出したんです、全部。それは断言しますがね。あなたの方の通産省から出した資料によって、私は申し上げている。それは、あなた、そうじゃないと言われますか、そんなのないと言われますか。冗談言っちゃいけませんよ。でたらめ言いませんよ、議員というものは。われわれはわれわれの発言に責任を持っているのです。就職している人です。冗談言っちゃいけないよ、取り消して下さい。
  250. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 私は非常に狭く解釈いたしましたが、次官とか局長とかいうことを言われたので、そういうふうにお答え申しましたが、きわめて若干、局長級の人というのはほんの若干でございます。それは別としまして……。
  251. 河野謙三

    ○河野謙三君 それは取り消しなさい、行っていないなんということは。それは私が困るじゃないですか。
  252. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 次官は行っておりませんが、局長が行っているということは否定いたしません。しかし、きわめて少数でございます。また、われわれがそういう人の圧力を受けてやりにくいということはございません。私はそういうことを考えないで仕事をしております。そのことをちょっと申し上げます。  それから価格を引き下げる対策でございまするが、今後われわれとしては、供給量をふやすということが価格引き下げには一番自然な、一番いいやり方であると考えて、実は昨年の暮、中東紛争で相当価格が上りそうだということを見ましたので、約百五十六万キロほどの原油を追加輸入をいたしました。一カ月半分くらいになりましょう。これが最近入ってきまして、だんだん製品となって出ているわけで、御承知のごとく、最近石油の製品の市価はだんだん低下して、ガソリン等は特にそういう軟化の傾向を示しておりますが、価格を低位に安定させるということは、外貨をできるだけたくさんとって、原油なり石油製品の輸入量をきわめて豊富にするということであると考えております。そのほか必要があれば、いろいろ行政指導をやっている。現に特定の大きい重要な需要部門については、価格のあっせんということも行政指導として努力をいたしておるようなわけでございます。
  253. 千田正

    千田正君 水産庁次長に聞きたいが、今通産省から石油の問題についてお話がありましたが、水産庁としては通産省との間に、今の漁業用の燃油に対して、どういう申し入れをし、かつまた漁民の生活の安定のためにも、生産のためにも、あるいは育成強化のためにも、どの程度本年の割当を要求しておられますか、あるいはどういう協議をしておられますか。具体的な問題を一つお話し願いたい。
  254. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 先ほど御説明のございましたように、この一—三月におきまして石油の価格は非常に値上りをいたしたのでございまして、現在全漁連が共同購入いたしておりますのが、昨年の十二月まで一万七百円で仕切っておりましたものが、三月におきましては、会社によってだんだん違いますが、一万一千九百五十円から一万三千三百円くらいに値上りをいたしたのでございます。そこで、燃料費は漁業経営費の三三%という、たしか昭和三十年の漁家経済調査であったかと存じますが、これはもうこの状態を放置しておくことはできないのであります。で、ただいまお話の出ましたように、共同購買事業によって、まとまった数量の油を取り扱うということが、一般の市価に対して良好なる牽制の効果を今日まで発揮してきておるのでございます。そこで、このまあ非常に困難なスエズ以後の情勢下におきましても、共同購買事業の基礎を依然として安定させて、これを伸長させることこそ、この事態において対処する水産行政の最も重要なる課題ではないか、かように考えておるのでございます。  そういう観点から、実は鉱山局と水産庁との間におきまして、しかも局長段階同士でなしに、もっと高いレベルの段階におきましても、まあそれぞれお話し合いを願っておりまして、ある程度原則的な点につきましては話し合いのまあまとまっておる点もあるのでございますが、しかし具体的に、共同購買事業の数量をどのくらいにするか、あるいはまた精製工場渡しの価格を幾らにするか、こういうふうな数字をかためますることにつきましては、まだ両方の話し合いは具体的な結論には到達をいたしておりません。しかし、これも近々に話がまとめ得るのではないか、かようにまあ考えておる次第であります。
  255. 千田正

    千田正君 それでは、大ざっぱでありますが、全漁業の必要量の何%くらい、しからば全漁連なら全漁連の手を通じて傘下の単協に割り当てられるのか、あるいは漁家経済の安定のためにやらせるというような意味で、全必要量の何%くらいを鉱山局の方と話し合いをしているのですか。
  256. 奧原日出男

    政府委員(奥原日出男君) 漁業用のA重油の需要量が、三十二年におきまして八十万トンと考えられております。漁船等に使います分を控除いたしましても、七十七万トンをこえて、全漁連の取り扱っております実績でございますが、昭和三十一年度のスエズ紛争前後の経緯におきましては、取扱いの萎縮しております状態は、これは私は実績としてこれをベースにして考えることには参らないじゃないか。昭和三十年度の下半期におきまして、A重油の外割を十万キロリットルにいたしたわけでございますが、これを基礎にして考えるべきものではないかと、かような見解を持っておるのでございます。そういたしまして、一体それをどういうふうに取扱い量を両省の間で話をまとめていくかということにつきましては、目下まだ意見の一致を見ておりません。いろいろ折衝いたしておる最中でございますので、この程度に一つ申し上げておきます。
  257. 東隆

    ○東隆君 漁業の燃油に対して関税を免除しておる理由は、どういうところにあるか、一つ鉱山局長にお聞きをしたいのですが、何のために関税を免除しておるか。
  258. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 一昨年の七月に原油と一部の重油につきまして、B、C重油につきまして関税を課したのでありますが、その際、海上用のものにつきまして関税を実質的に免除するような扱いになったわけでございます。これは水産用に限りません、海運業等も一緒でございますが、まあ事業に対する影響の重大さを考えて、関税を課することをしなかったというふうに考えます。
  259. 東隆

    ○東隆君 製品を輸入するときの価格と、原油でもってやる場合の価格との間に、相当の開きのできておることは、先ほどお話があった。そこで、私は、この前の外貨の割当を全漁連にするときに、あなたの前の局長が非常に反対された。それで、結果は石橋通産大臣が中に入られて、そうして全漁連に外貨の割当をした。その経過は御承知であろうと思う。そこで、それはあくまで漁業用の燃油は安いものをできるだけ供給をしなければならぬという見地からでありますが、そうすると、AA制になりますと、今原油を輸入してそれを加工したものとの間に相当の開きがある。そうすると、当然そのときの精神からいえば、原油を全漁連に輸入を割り当てて、そうしてやるべきじゃないか、こういう考え方は当然出てくるのです。この点はどうですか。
  260. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 最近は水産用のみならず、自動車業界、あるいは製鉄業、あるいは電力業界、さらには化学工業界が、同様の要望をいたしております。その際に、水産用だけを特別な扱いにするということは、われわれとしては非常に困難だろうというふうに考えます。  それから、もう一つは、いずれも、ただいま申し上げました需要業界、いずれも原油自身をみずから消費するものではなくして、あるものはガソリンを消費し、あるものは重油を消費するのであります。ところで、一つの原油からガソリンも重油も出るわけであります。従って、自動車業界の要望と水産業界の要望とかりに満たすといたしますと、同一の原油について二重の外貨割当をしなければならぬ、こういうことになってくると思います。さらに、製鉄とか、化学とか、電気とか、いろいろ需要部門はたくさんありますが、それらのものに対して、同一の原油について、その何種類もの製品についての割当をしていくということは、事務的にはこれは実に困難な問題であろうというふうに考えておるわけでございます。
  261. 東隆

    ○東隆君 ガソリンを中心に先ほどお考えのようで、水産方面の使うA重油は、これは日本だけが使っておる、こういうふうに聞いております。従って、日本が重油を輸入する場合には、それに従って精製をしなければならない、こういうような事情があるようですが、これは水産庁の方が詳しいと思いますが、その点はどうですか。
  262. 奧原日出男

    政府委員(奥原日出男君) 私も石油について十分な知識は持っておらぬのでございますが、しかし、ただいま先生のお話しのように、A重油は日本のみが主として消費し、しかも、その消費のきわめて高い割合は漁業用に使っております、こういうことに承知をいたしております。
  263. 東隆

    ○東隆君 そのことを鉱山局長、お知りになりませんかね。おもに日本の注文によって精製をしているというのですよ。それほど日本のA重油を使う形が顕著なんです。そうでなければ、ないと早くおっしゃればいいんだし……。
  264. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 外国のことは、私、どうもまだ存じませんので、申しわけございませんが、従って、日本が特に顕著であるかどうかは言えないわけでございますが、ただ、規格は外国と日本じゃ非常に違うようでございます。しかし、日本へのA重油の輸入はきわめて自由に入ってきております。特に取得が困難であるということはないようでございます。
  265. 東隆

    ○東隆君 こちらの方から注文をするから、従って入ってくるのであって、アメリカなんかの関係なんかはどういうふうになっているかというと、日本がA重油がほしいから、それに従って精製をしてよこしておる。その事実がはっきりすると、どういうことになるかと、こういう問題が起きましょう。原油の中には、A重油を十分に取り得る原油があると思うのです。その原油を輸入すればいいわけです、それはどうなんです。
  266. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 原油の産地によっては、原油が全体として得率が非常に多いというものはございます。しかし、それが入りますると、他の方でまた輸入が減るとか、他の方で調節をつけて、国全体の油の需給の調整をとる、こういうことになってくると考えます。
  267. 東隆

    ○東隆君 私は、だれが困るかという問題だろうと思います。その場合に、これは原油の中で軽い原油があるはずです。これを輸入して、そうして主としてA重油をとればいいんであります。今の獲得率の問題ですね、こういうような問題でもって計算をして、しかもそれは利益になるということばかり考えてですね、従来やった結果が、結局AA制でもって輸入する分が、A重油ですが、これが非常に多くなってくる。しかも、それは高いやつが水産業者の方に回される、こういう結果になっているんですから、水産業者に安いA重油を与えるようにするためには、原油を輸入して、しかもその原油はA重油がたくさんとれる原油を輸入してやればいい。ガソリンはたくさん出ないんですから、そうすれば十分に調節がとれるのだから、従って、外貨の割当をするときに全漁連の方に割り当てる分は、これは原油のうちでA重油がたくさんとれる原油を輸入するということにして、割り当てればいい。ガソリンがたくさんできようと、ほかのものがたくさんできるなんて、そういう心配をする必要はありません、調節する必要はない、そういう点で。その問題、はっきりしないようですから、少しお調べになって、そうして資料を一つおそろえになって、お答えを願いたい。
  268. 河野謙三

    ○河野謙三君 ちょっと局長に伺いますが、局長はね、本年に入ってから油の販売業者の会合へ行って、何か実需者割当につきまして御意見を発表されたことはありますか。全漁連の割当につきまして、何かあなたの御意見販売業者の会合で発表されたことはありますか。
  269. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) そういうことはございます。
  270. 河野謙三

    ○河野謙三君 そのときには、どういうお話をされましたか。はなはだ立ち入っておそれ入りますが……。
  271. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 最近いろいろ自動車業界あるいは水産業界、それから製鉄とか、電気とか、いろいろな業界から原油の割当の要求があるけれども、これについては、先ほど申しましたような理由ですが、そういうことで非常にこの実現は困難なものであると考えているということを申し述べてあります。
  272. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は、あまり記憶ははっきりしませんがね、私の友人のーこの際名前は申しません、販売業者から、あなたが出てきて、全漁連の割当等は絶対にこれはいたしません、こういうことを言われたという話を聞いた記憶がある。そうすると、大体——絶対という言葉を使ったかどうかわかりませんが、あなたの話と合うわけだ。そうすると、私はおかしく思うのは、農林省と通産省の間で、同じ政府の中でも見解の相違で、大いにディスカスすることは必要です。これは見解は違っていいと思う。しかし、まだ農林省と通産省とディスカスしている最中に、それ以前にあなたが第三者の、しかも販売業者の所へ行って、そういう意見の発表をされたことは、ちょっと順序が違いはしないかと思うんですが、どうですか。それでも、また農林省はいいんですか。それなら、あなたは交渉をやめなさいよ。
  273. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 農林省との話はずっと従来やっておりますのは、全漁連に対して通産省が、適正な価格で必要な量の重油を供給をすることについて、あっせんをするというお話でございます。原油の外貨割当等の問題、それが中心ではございません。
  274. 河野謙三

    ○河野謙三君 じゃ、農林省に伺いますが、農林省は一切そういうことは考えていないんですか。
  275. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 農林省立場としては、かつて全漁連に対しまして、全漁連の発注いたしました精製業者に対して、A重油の外割をしたことがあるのであります。従って、この際対処いたしまする方策としましては、それと似たようないろいろな方策が考えられるのじゃないか、この希望は通産省にも申し上げてございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、両方で話し合ってきめました大ワクと申しますものを、さらに具体的に申し上げますれば、全漁連の取り扱いますA重油の量のうちで、半分を国内の精製工場から国内の精製価格で売り渡させるように、通産省において行政指導をしていただく。また全漁連は、製品の輸入をいたしましたものを、その輸入価格でその希望する会社から買っていく。まあこういうふうなものの組み合せによりまして、全体としての全漁連の配給の原価を、国内精製及び製品輸入を半々と見た原価に落ちつけていく、こういうことについて国内精製分の、国内精製工場からの全漁連に対する供給ということについて、通産省において御指導を願う、こういうことに話し合いが一致いたしておるのでございます。それに対しまして、それ以上石油行政の上で、どういうふうにいろいろな指導を具体化されるかということについては、農林省としましての、いろいろな指図は、差し控えておる次第でございます。
  276. 河野謙三

    ○河野謙三君 今非常に御丁寧な御答弁がございましたが、いずれにしても、漁民により安い油を給供するためには、どうしたらいいか、その一つ手段方法として、前にやられた実需者割当というものも一つ手段方法として、農林省の要求の中に入っているでしょう。それは全然捨てちゃった人ですか。それはやはり通産省との打ち合せの中の手段方法としての一つじゃないですか。そういうことはまだ論議の最中なんでしょう。そうじゃないのですか。
  277. 奧原日出男

    政府委員(奥原日出男君) 農林省としては、そういう希望を通産省にも申し上げておるのでございます。しかし、今両方の間で意見が一致いたしました点は、先ほど私の申し上げた通りのことでありまして、従いまして、通産省でそういうふうな行政指導をされることについての具体的な方法について、まあ農林省の方からいろいろ申し上げることを差し控える、こういう態度で今おる次第でございます。
  278. 河野謙三

    ○河野謙三君 今お聞きのように、鉱山局長農林省でもこの実需者割当に限らず、いかなる手段方法において、漁民により安い油を出してもらうかということについて、いろいろな意見があり、それをあなたの方で折衝中なんですね。ところが、あなたの方では、その一つ方法である実需者割当については考慮の余地なし、私はそういうことはやりませんということを、もしあなたが言われたとすれば、これは政府部内の不統一の問題だろうと思うのですが、タイミングが合わないじゃないですか。これは通産農林両省、両大臣の間にもまだ不統一の問題だと思う。それに国会が入って、国会でもいろいろな意見があるわけです。こういう重大な段階に、業者の会合においてあなたがそういうことを言われたということは、これは私は行き過ぎだと思うが、そうじゃないですか。鬼の首でも取ったように、あなたがこういうことを言ったと言っていますよ。
  279. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) まあ過去のいろいろな例を見ましても、通産省が主張しておったことが、他の省と折衝した結果、変るということもございます。現在のところでは、私たち大臣の御指示を受けまして、原油の外貨を需要者の方面に割当をするということは、したくないという考えでおるわけでありまして、それを話のついでに言ったということでございます。
  280. 河野謙三

    ○河野謙三君 はなはだ追及するようで済みませんが、それは通産大臣と農林大臣の意見が違うことは、常にあることである。また、あってしかるべきである。あなたと農林省水産庁長官と意見が違うことも、あることです。そうだからといって、今相談最中に、あたかも政府を代表するかのごとく受ける方では政府代表ですよ、石油行政担当の局長ですから。そういうことは考慮の余地なし、私は絶対にやりませんということを言われたとすれば、私ほおかしいと思う。今後もそういう言明を続けられますか、そういう会合があったときに。
  281. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 現在のところ、通産省の方針はそういうことでございます。ただ、あまり他を刺激するようなことは、今後なるべく言わないようにしたいと思っております。
  282. 河野謙三

    ○河野謙三君 通産大臣が、あなたにそういうことを言って差しつかえないという、十分打ち合せの上ではないと思います。またそういうことは、これは農林省の方も、逆に今度は実需者割当を必ず取って見せるというようなことを言いもしないし、言ったら、同様にいかぬ。事は、われわれ国会でも取り上げている問題である。私はもう少し慎重であってほしいということを、この際お願い申し上げておきます。
  283. 千田正

    千田正君 今、河野委員の言うようなことがあったとすれば、局長個人でそういう考えを持っておるかもしれませんが、大臣の指示だとすれば、僕は大臣を追及しなければならぬ。ということは、水産庁に聞きますが、水産の輸出においての外貨を獲得しておる日本の現況は、どれだけ外貨を獲得しておりますか。
  284. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 一億六千万ドル見当だったかと、かように考えております。
  285. 千田正

    千田正君 そのうち、一般の漁業の面において獲得している面は、どれだけですか。
  286. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) そのうち、北洋の母船式漁業で獲得いたしておるものを全部差し引きますれば、これが要するに日本のカツオ、マグロ、あるいはイワシ、サンマ等の沿岸漁業で獲得しておるものであるのでございます。北洋で獲得いたしておりますものが、日本の金額にいたしまして、鮭鱒関係で、たしか百六十億円くらいだったかと思います。それからカニの関係が、おそらく十七億円くらいだったと思います。残りは全部沿岸の漁業、カツオ、マグロを含めました沿岸漁業で獲得しておるわけであります。
  287. 千田正

    千田正君 私の記憶に間違いがなければ、一億八千万ドルくらいの外貨の獲得をやっておる。そのうちの半額は、いわゆる捕鯨その他であって、実際の沿岸の漁民のカツオ、マグロは、北洋漁業の大体半額である。ところが、私は寡聞にして、日本でガソリンを使った生産業者が外貨を獲得したということは聞いていないですが、局長、ありますか。どれくらいの額がありますか。
  288. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 米軍等に納めておる油が若干ございますが、これはそう大した額ではございません。しかし、外貨を獲得した産業だから油を優遇する、あるいは外貨を獲得しない産業だから優遇しない、こういう考え方をわれわれはいたすべきじゃないと思います。たとえば電気事業にしても、実は直接に外貨をかせいでおりません。しかし、重油は相当量供給いたしておるわけでございます。そういうわけで、やはりどの産業も重要な産業でございまするので、その国家的重要性に応じて油の供給の確保をはかるということを考えていきたいと存じます。
  289. 千田正

    千田正君 通産省の局長がそういうことを言うのは、おかしいと思う。少くとも日本の財政というものの根幹を考えた場合は、そういうお答えはできるはずはないと思います。どの産業も大事である。どの産業も大事であるが、外貨を獲得する産業に対しては、一応還元する政策をやらなければ、通産の今のような行政というものではほんとうの効果を達成できないのじゃないですか。みんな外貨を外国に払って、そうして出た……。国の産業だ、国の産業だというので、ぜいたく三まいに使うようなものに重点を置いて、海外から外貨を獲得してくるもののそうした産業に対して、割当等に対して、ブレーキをかけるというようなそういう政策というものは、私は真の通産行政ではないと思う。あなたはそれでも、実際国家の役人として、正しい財政計画のもとにやっておるというお考えを持っていらっしゃるのか、それじゃ。
  290. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 通商の振興ということは、通産省の政策としても最も大きいことでございます。しかし、それとあわせて、いろいろエネルギー政策とか、また他の重要な項目もあるわけでありますので、もちろんそのむだなことに外貨を使うような、そういう事業については、同情する必要はないと考えます。
  291. 千田正

    千田正君 だから、私が言うのはですね、外貨を獲得しておるような、一応貿易というような問題に対して、ある程度懸命なる努力を続けておるところの日本の産業に対しては、通産行政としてはですね、そういうところにはある程度の還元するような方策をやるのが、至当ではないか。私の考えは間違っておりますか。あなたの考えと私とは矛盾していますよ。どうなんです。外貨を獲得しておるような産業に対して、ある程度還元するような政策をやるのが、一つのいわゆる日本の政策であるべきである。岸内閣はそういうことを主張しておりますよ。そういう主張に対してあなたが忠実でなかったとするならば、私はおかしいと思うのですよ。どうなんですか。
  292. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 輸出に貢献する産業に対しては、まあいろいろな国の助成方策を講じていく、振興方策を講じていくということは、これはやるべきことであると考えております。ただ、あまりこまかい意味で、ここはこれだけ外貨を稼いだからこれだけ外貨を還元するということをやっていきますと、日本の経済はまた反面、非常な矛盾に逢着するということになるかと思います。たとえば国内の資源産業、電気事業のごとき、そういう外貨の獲得はしないが、しかし非常にやはり経済の基盤にあって、非常に重要な役割を演じているというような事業がございます。こういうものに対しても、やはり同様な、十分な助成法を持つべきであると考えております。
  293. 千田正

    千田正君 そういう電気事業だとか、造船とかいうものに、あるいは機械工業に割り当てるなと言うのではありませんよ。さっきも水産庁の次長が言っておるのはですね、漁民の使う油の中の、油が七十五万キロリッターですか、そういった中で、漁民には幾ら使わせるのだ。で、幾らの一体割当をあれして、真に系統的なやり方をするのだということに対して、わずかに昨年は十万キロである……。
  294. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 半年で十万キロ……。
  295. 千田正

    千田正君 一カ年を通じてどのくらい……。
  296. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 一年で二十万、三十年の四月から……。
  297. 千田正

    千田正君 それを一体勘定してみたら、三分の一かそこらでしょう。だから、もう少しそういうことを考えてだね、割り当てる考えを持っておるかどうかということですよ。局長、どうですか。私は全部よこせとか、そういうことを言っておるのじゃない。
  298. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) これは先ほど申し上げましたように、技術的に見ても、現有の外貨をそういう一部の石油製品の需要部門に割り当てるということは、これは技術的に見ても混乱があるから、これは避けたい。そのかわり、できるだけ行政指導によって、安い油が十分に獲得できるように、われわれとしても御努力を申し上げたい、こういうふうに考えているわけなんです。
  299. 千田正

    千田正君 現在の段階においては、昨年よりも、より一歩量をふやして、前進した行き方によって、あなた方では行政指導をやろう、こういう親切なお考えを持っておられますか、どうなんです。
  300. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) ただいま問題になっておりまするのは、全漁連に対する需要量のあっせんの問題でございますが、これは大体従来の実績量を基礎にして、その程度のもので、あっせんをしていく。あとはその上で、情勢の推移を見てから、また扱い量については考えたいというふうに一1これは通産省だけの考えでございます。水産庁は必ずしもそれについては満足をしておりませんが、今後そういう点については、まだ話し合いをする余地は多分に残っておると思いますが、今のところ、通産省はそういう考え方をとっております。
  301. 千田正

    千田正君 水産庁次長、どうですか。あなた方のですね、国内における農業とか、水産とかいうものは、基礎産業である。一つのね。この産業の育成強化というのは、あなた方に与えられたところの重大な使命であると思うのですよ。その使命遂行のために、今のお話に対して、どういう一体確信を持って、通産省と交渉していかれるのか。
  302. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ただいまこの鉱山局長からお話のありましたのは、両省の交渉中におきまする、鉱山局の今まで述べておられる態度であります。で、水産庁事務当局といたしましては、共同購入事業というものは、これは水産政策の根幹といたしまして、漁業者の経済力を推進するということのために、ぜひとも推進を進めていかなければならないことでありまして、実績等を取り上げてみましても、昭和三十年当時と、それから今日とでは、全体の需要量の相当な伸びがそこにあるのでありまして、さらにまた先ほど申し上げましたような趣旨から申し上げましても、まあ今までの実績だけで引っ込むということでは、これはもうとうていわれわれとして了承することができない次第でありまして、従って、これは非常に高い段階をも含めました両省の間において話し合いをする、こういうことで、この問題は今まだ具体的にきめておらない状況にある次第でございます。
  303. 島村軍次

    ○島村軍次君 端的に伺いますがね、三十年に、漁連に対して石油割当を、外貨割当をされた。それはほかのいろいろな事情があって、今日はおやめになっておるようでありますが、ただいまの理由を承わりますと、自動車業とか、あるいは鉄鋼業、電力事業者と、こういうことですが、われわれは、これらのいわゆる需要者と漁連というものの性格も違っておると思いますがね。その点はどうお考えになりますか。
  304. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) あるいはそういう見方も成り立つかもしれませんが、しかし通産省の側から見ますると、これはこの分は優遇して、この分は別な扱いをすると、こういう線をはっきりと引くということは、大へんむずかしいことであると考えております。
  305. 島村軍次

    ○島村軍次君 漁連の性格については、まあ私が講釈を申し上げんでもいいと思うのですが、水産庁からよくお聞きになってもおりましょうし、今ほかの委員の方からだんだんお話しになったように、いろいろな観点から見て、相当これは他の産業よりは、少くとも石油の割当については考慮をもっとしていただかにゃならぬものじゃないかと、私は思う。それと同時に、漁連の仕事は、需要者である漁業者のいわゆる協同組織であって、それを法律の上で一つ販売事業としてこう認めておるわけです。だから、自動車業者というものは、その自分ですぐ使って。だから、電気業者というものも、それを使うのです。漁連そのものの仕事は、利益があれば還元していくというのが建前なんです。だから、他の産業でも外貨割当に、協同組合等の組織に外貨割当をされた例もあるわけです、たくさん。石油についてだけそういうことをおとりになることは、これはもう一つ御考慮願っていいものじゃないかと、こう思うのです。その点はいかがですか。
  306. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 石油の外貨は、石油製品として入れる場合の外貨と、原油の外貨と、二種類あるわけでございますが、おそらく先ほどのお話は……。
  307. 島村軍次

    ○島村軍次君 原油の方です。
  308. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) 原油の外貨割当ということは、この原油をその割当を受けた所で処理加工するという所でないと、割当をいたしておりません。どういう事例かわかりませんが、そういうことは、この外貨割当の一般的な考え方からして、われわれとしては採用いたしていないのでございます。
  309. 島村軍次

    ○島村軍次君 それはわかっておりますがね。しかし、前回割り当てたときには、これは全漁連は精製を委託してやられた。それから他の産業において外貨割当をやられたものでも、みずからがいわゆる精製をせぬでも、委託でやって精製をするというような割当の仕方のものも、ほかにもあるわけです。だから、そういう点については他の例も一つお考えになって、それから、さらに特殊の事情であるということを御検討をされる必要があると思うのですが、今のお話では、全然そういう御考慮の余地がないようですが、もっとさらに再検討をされる御用意がありますか、どうですか。
  310. 森誓夫

    政府委員(森誓夫君) ここで断定的なことを申し上げるのも少し僭越かと考えますが、ただ現在のところの事務当局としての考え方を申し上げさしていただきますと、いろいろ研究はいたしますが、非常に困難だという考えでございます。
  311. 島村軍次

    ○島村軍次君 重ねてお伺いいたしておきますが、他の例をも考えた上で、しかも既往に実績もあるし、しかして他の委員等のお述べになったようなところで、さらに頭を切りかえて、一つ御検討をお願い申し上げます。
  312. 千田正

    千田正君 ただいまの島村委員の発言に対してのお答えですね、どうもさっきからの御返答を承わっても、必ずしもわれわれは満足するところへまでは行っていません。ということは、それは事務当局のお考えでも、局長にしろ、次長にしろ、私ども国会議員からいえば、日本の国策の立場、岸内閣の性格の立場、公約の立場から、私どもが論議しようと思うので、両大臣の出席を次の機会に求めまして、政策遂行上の疑義を私はただしたいと思います。そういう意味でお考えおき願いたいと思います。
  313. 堀末治

    委員長堀末治君) そういうことに取り計らいましょう。  では、本件についてはこの程度にとどめて、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会