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清澤俊英君 私、雪害地の
関係者でありますから、せっかく見えていただいたお方のお話を、先に聞いていただいた方がいいと思いまして、かけ引きなしの現地の状態をお聞き下さって、何とかしてやろうという
考え方も出て参りますことは、非常に期待するところであります。
そこで、本年の雷が、先ほどの秋山さんの御報告にあります
通り、
昭和九年、十九年、今年、これはほとんどほぼ同じであります。そこで
昭和九年の積雪量は一二百八十四センチメートル、二十年が四百二十五センチメートル、こういうようなふうで、二十年の方は雪の量が多いのであります。そして積雪期間は、九年が百四十四日、二十年が百五十七日、こういうように、二十年の方が大体、雪の量としましても、積雪期間にしましても、多くなっておるのでありますが、
昭和九年の年は何ら
政府の施策でかまわれないで、自然にまかした、こういう状態でありまして、従って、少し年をとった人はすぐわかりますが、九年の年は東北においては飢饉が起きて、松の皮まで食べた。われわれ北陸方面の人は、
農林省へ半鐘をたたいて、そうして
農民が集まって救援米の要請に出てきた。そこにはいろいろの悲劇も起きたりして、救援を願ったというような大惨事を招来したことは、少し年をとった人ならすぐわかるのであります。
ところが、二十年の年になりまして、戦争の末期でもありますし、食糧事情の窮迫から、国が思い切って、新潟県におきましては二百五十三万円という金を投じてくれたのです。これを今のレートになおすと、大体七億円から十億円くらいになりはしないか、こう言われておるのですが、これを出しました結果がどういうことになるかといいますと、収穫において
昭和九年が一石、
昭和二十年が一石二斗六升、二斗六升の増産を見ておるわけであります。条件が悪くても増産を見ておるのであります。しかも二十年の年におきましては、御
承知の
通り、農薬もないのであります。若い者は全部兵隊にとられて、労働力もない。肥料もない。ないないずくしの中で、
土地はずいぶん手放された、こういう悪条件の中で増産しておるのであります。これは、国がここで思い切って二十年のごとく施策をしていただきますならば、おそらくかまわぬでおいたら五割減くらいの凶作になるやつを、二割くらいの凶作にとめられるのではないか。
この数字は
農業共済等、この条件を調べてみましても、
昭和九年におきまするところの共済の被害率ですが、これが五・二五%になっている。二十年が四・六%になっている。二十年の年は被害率が非常に下っております。その結果、国が負担して払いました保険金が、二十年におきましては一億二千万円、それから九年の年には約二億円を支払ったのであります。今、秋山さんの言われる
通り、せいてここで共済金で散土消雪とそれから保温苗代、その他苗代の手当を今すぐやってもらいたい。そしてこれを十日間くらい早めて、ふやすことができますれば、これは少くとも半減する。二割くらいでとまるのじゃないか。共済金を全部投げ出すならば、ほかのものが全部助かるのじゃないか。そういう建前に立って計算してみますと、米の減産率において九億八千万円くらい減産するのじゃないか。その上及ぼす影響が直ちに
地方税の方へ響いて参りまして、そして
地方税はこれもとうてい徴収ができませんから、
交付金でもらわなければならぬ。要保護世帯家族はだんだんふえてくる。まだそういう状態のうちはいいですけれ
ども、道徳的に人心が頽廃して、売春がだんだんふえてきますとか、子供を遠い所へ売りますとか、犯罪が起きるとか、及ぼすところの影響は重大なものが
考えられると思う。そういうことは
考えられないことはない。今までもたくさんある。山形県でも、この間の凶作のあとには、子供を売ったというので、大騒ぎしている。こういうことを
考えましたならば、私は少くとも国がここで思い切って、今一億五千万円の金があればよろしい。
そうして
局長などのお話を聞きますと、こういう指導をしてというのですが、指導はもう要らないのです。これは最近の新聞を読みますと、
農林省の
振興局農産課の鈴木技官、同局研究部橘高技官は、田辺県議、石井県
農業改良課長とともに五日、南魚等を回られた。そしていろいろそういうものを研究して帰られたが、「なお北部
改良普及所では
事務所内に豪雪対策本部を設け各農協に
農業関係相談所を開設して相談に当っているほか、地元中学生徒の協力で消雪運動を展開、また有線放送、チラシなどで豪雪克服に大わらわとなっている。」、大わらわになっているが、まだ足りないものは金だけなんです。実際問題として金だけなんです、もうあとは。この上金を出してもらえば、何も指導することもなく、一丸となってこれをやり通すことは明瞭なんです。
そうしてこれだけの国の損害、あるいはその上、ただ米だけの問題じゃありません、もしこれを放置しておいて、一朝南風とともに暖かい雨でも降って参りましたならば、これは急激に、一時に水がふえます。従って、ある地区におきましては、川を全部この
通り数千人の人間が出て、数キロにわたって掘るわけです。何のために掘るかといいますと、そういう水が出て参りますれば、直ちに雪の上を水が走って、そうしてこれは停車場です、地上から見ますれば六尺も高い所にある停車場が、この
通りの水になっている。水は下からだけ流れてくるのではありません。この降雪の中に出て参りまする水害は、天窓の一番上から水が入ってくる。寝ているところに、顔からばしゃばしゃ水が入ってくるので、縁の下から来るのじゃないのです。こういう水が落ちてきて、あらゆる被害を耕地にも与えるであろうし、堤防にも与えるであろうし、家屋にも与えるであろう。あらゆるものに与える。これはまあとうていその災害の被害があったものは、なまぬるい五億や十億、二十億の金でおさまるべき問題でないと思う。これを散土消雪することによって一時に十日間くらい消雪しますれば、その損害もまた取り除かれると思う。
こういうことを
考えてみますれば、国が、少くともすぐ閣議でも開いて、あすにも一つ一億三千万円、五千万円くらいのものを持って、
農林大臣が先頭に立って飛んで行ってもらいたい。この前われわれの所で災害のありましたときに、廣川さんが来てくれた、河野さんがきてくれた。ちゃんと見ていって帰りますと、すぐ出してくれる。これくらいのやっぱり機敏さをもって、一番年の若い井出農相は一つ、朝の「佐渡」で行って晩の「越路」で帰ってきても間に合いますから、ちゃちゃっと行って、ちゃちゃっと帰ってきて、ちゃっとやって、この二、三日の間に対策を立てていただきたい。御決心がつきませんか。
ただいまの場合でありますると、出す金がないとかどうとかいうことになりまして、ぐずぐずしている間に、みんな干上って死んでしまう。一体、大体このまま放置して過ぎましたあと、この貧
農地帯におきますところの
農業経営をどうしていくつもりなのか、これだけでも等閑に付せられない重要な問題である。すべてが山間地であります。五反百姓
地域であります。これは一つ新潟県の問題だとか何とかということを忘れて、徹底的な方策をあすにも
——あすではおそいと思う。これから一つやってもらいたいと思います。
農林大臣はけさ聞いたなんて言っておられますけれ
ども、ちょっと私は不満なんです。なぜ不満かというと、先日、くにの方で新聞を見ておりますと、
農林大臣は、石田君の陳情を受けて、ちゃんと善処しますというから、もう善処できたんだろうと思ったら、けさ聞いた、これからだ。これでは、全く現地のことがよくおわかりにならないから、そういうことになるんじゃないかと思う。現地を実際に見ていただいて、これを始末しなかったならば、あとは重大な問題が出る。やれば、今申します
通り、九年と二十年を比較したがごとく、はっきりと効果が現われる。いま一度、一つ
農林大臣のほんとうの決心を聞かしていただきたい。