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1957-03-26 第26回国会 参議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十六日(火曜日)    午前十時五十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     堀  末治君    理事            重政 庸徳君            東   隆君            清澤 俊英君    委員            青山 正一君            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            下條 康麿君            柴田  栄君            田中 啓一君            仲原 善一君            安部キミ子君            北村  暢君            小林 孝平君            鈴木  一君            上林 忠次君            島村 軍次君            千田  正君            北條 雋八君   政府委員    農林政務次官  八木 一郎君    農林省農地局長 安田善一郎君    林野庁長官   石谷 憲男君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林省農地局管    理部長     立川 宗保君    農林省農地局建    設部長     清野  保君    林野庁林政部林    政課長     家治 清一君    林野庁指導部計    画課長     山崎  斎君    建設省河川局次    長       美馬 郁夫君    建設省河川局開    発課長     小林  泰君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○森林法の一部を改正する法律案(内  閣提出) ○農林水産政策に関する調査の件(特  定多目的ダムに関する件) ○連合審査会開会の件   —————————————
  2. 堀末治

    委員長堀末治君) これから委員会開会いたします。  森林法の一部を改正する法律案を議題に供します。
  3. 清澤俊英

    清澤俊英君 すでにもう質問も済んだようでありますけれども、たった一つお伺いしたいのは、戦時中、里山等民有林乱伐が行われまして、非常に薪炭林が不足しておるのであります。その上、農地改革等によりまして、山林地主といいますかが非常に売り惜みをしたために、木炭業者が最近製炭上非常に高価な原木を押しつけられて困っておる事実は、林野庁でもよく御承知のことだと思いますが、そうした状況の中、今までよりもまた簡易な方法伐採ができるようなことになりますとともに、後ほど北村君によって指摘せられるでありましょうが、許可制度届出制度等でやりますれば、乱伐傾向がたぶん増成せられると思うのですが、こういう木炭業者状態を緩和するために、林野庁ではどんな考え方を持っておられるのか、一応お伺いしておきたいと、こう思うのであります。
  4. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 森林薪炭生産のために使われておるという事実につきましては、非常に顕著なものがあるわけでございまして、大体わが国の二千四百万町歩近い森林の中で、現在民有林だけでも、九百万町歩薪炭林、こういう状況であるわけであります。大体昭和五年ないし十年と申しますというと、戦前平常年度ということに相なるわけでございまするか、当時の薪炭林伐採量はおおむね一億二千万石程度であったのでございまするが、先般も御説明申し上げましたように、昭和三十年度における薪炭林伐採量は八千万石ということで、約、戦前基準年次に比べまするというと、三分の一程度の減少を来たしておるというのが現状でございます。要しまするに、石炭あるいはガス、練、豆炭等の燃料によりまして、家庭用の熱源が大幅に切りかえられつつあるというような状況の反映がこの辺にあるのではなかろうか、かように私ども考えておるのでありまして、一応八千万石程度薪炭林供給というものが可能でありまするならば、そのことによりまして急激に、従来の許可制度届出制度に改めるだけで、伐採が非常に促進するというようなことは、私どもとしては大体ないというふうに判断をいたしておるわけであります。大体薪炭林需要というものが、非常に低く下ってきたままで横ばいを続けながら、しかも長い将来の見通しを立てますならば、やはり漸減という方向に向っていきつつある。かような現状からいたしまして、従来の許可制度届出制度に改めるというようにいたしたわけであります。それは、ただ単にそのことだけがねらいではないのでありまして、一方、針葉材につきましては、先般も御説明申し上げましたように、需要増大傾向というものは近年すこぶる顕著なものがあるわけでありまして、これらに対しまして、適切な許可制度の運用をはかって参るということのために、一方、それほど必要性のなくなっておるというものをやめて参ろう、こういう趣旨でありますので、そのように御了承いただきたい、かように考えるのでございます。  それから、逐次製炭業者等炭材の取得に困難を感じつつあるというような現状についての御質問だと思うのでございますか、何といたしましても、伐採対象地域が次第に奥地に移行して参るということによりまして、製炭業者それ自体の苦痛もそれ相応に加わって参るという現状にありますことは、いなめない事実であろうかと思うのであります。これと同時に、最近特に工業用原料といたしまして使われる木材消費が急速に増大をいたしているわけでございまして、従来薪炭林として利用されておった分野にまで工業用原料用材の手が伸びつつある。従いまして、そういった面の競争というものが新しくここに登場して参っているという現状につきましては、私どもも事実そのようなことを確認をいたしているわけであります。確かに薪炭林の不足が、次第に従来のような好条件では入手困難であるということにはなろうと思いますけれども、資源的に見まして非常にそれが窮屈になってくるというような状況にはないのではなかろうかと、私どもはかように考えているわけであります。
  5. 清澤俊英

    清澤俊英君 ただいま言われたような事情で、木炭業者の大部分が非常に生活の苦しさに追われて、だんだん炭も焼きずらくなっているというやつを、何か画期的な一つ方法をもって、これを救済する策が必要ではないか。それをしますのには、だんだん狭められている原料林といいますか、原料木営林署等払い下げるときば、大体において地域優先とか何とかというので、限られた人に払い下げているのでありますが、国有林等薪炭林も、薪炭に用いられる部分も非常に安い価格でそういう方に払い下げていくことができれば、いろいろの要件で現在上りつつある原料が幾らか緩和していくのじゃないかと、こう思われるのですが、そういうようなことをやって、最も恵まれない山間地帯に取り残された炭焼き業者を、何とか考える必要がないかと思うのであります。ところが、営林署等払い下げをたまに受けてみましても、そう安いものではない。非常なきつい監督といろいろなお役所式な取締りの中で焼いていかなければなりませんから、みずから、国有林でも払い下げてもらって焼くというような者は、他の関係外地域から入ってまで焼こうという者はなくなります。これはみんな半失業的な状態になって苦しんでいる。こういうものを緩和するために、国府林寺を、取扱いをもっと楽にして、そうしてこれらの者が安んじて入っていかれるような価格調整のやはり役目も果すわけにはいかないものだろうか。そうしましたならば、里山等において現に、農地改良によって、農改地革によって一つの反感を持って、そうして薪炭林払い下げをすることを中心にして、非民主的な、非常に反動的な行動をとっているものを制圧することもでき、同時に、不当な新炭料値上り等を抑圧することができるのではないかと思うのであります。そういう見地に立って何とか考えていただくことが正当じゃないかと思いますか、一応お伺いしておきたいと思います。
  6. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 国有林の場合におきましても、特に自家用薪材あるいは稼業用炭材、こういうものが山間地帯部落経済生活の上に必須のものであるというような考え方をいたしまして、地元部落に対しましては、それぞれ従来の慣行等も尊重いたしまして、毎年一定量のものを売り払って参るという森林の扱いをいたしておるわけでございます。そこで、たとえば自家用薪炭林あるいは稼業用薪炭林というものを売り払って参る場合の価格の問題でございまするが、これらはいずれも立木のままで売り払う、いわゆる立木処分をいたすということがあくまでも原則でございまして、その場合には、それから生産されまするところの製品価格というものが、付近で通常取引されます市場において、どのようなふうな価格に相なっておるかということを基点といたしまして、これらのもののために、生産のために必要な経費を差し引いて立木価格を算定する、こういうようなやり方をとっているわけでございまして、まあ、あくまでも国有林の場合におきまするというと、時価主義という考え方で売り払いをいたしておりまする関係上、まあ高きに失するとか、あるいは安きに失するというような価格で売り払ってはおらないつもりでございます。  ただし、ただいま御指摘のありました問題の中に、特に私どもといたしまして考えなきゃならないことは、要するに、売り払いますのは私どもであって、売り払いの対象となるのは関係地元人たちだという場合に、地元人たちの側から見まするというと、国有林から買わなければ他に買うものはないのだ、ぜひとも国有林から買わなきゃならぬ、こういうような双方の関係に立っているように思うわけでございまするが、要するに、当然差し引かなきゃならぬような生産費というものが、時の実状よりも非常に少く差し引かれたというようなことになりまするというと、それ相応に資材費も高くなって参るということに相なるわけでございますので、あくまでも直接生産費というものは、実態そのものに即したような生産費をよく調査をいたしまして、それを正しく引くというような計算をいたしまするならば、私といたしましては、ただいま御指摘いただいたように、非常に高いものを付近に売り払うというようなことには相ならぬ、ものだ。そういう点につきましては、管下の各機関に対しまして厳重に指導をいたさなきゃならぬし、現にやっておるというような状況でございます。
  7. 清澤俊英

    清澤俊英君 その場合、炭の値段が上れば、それを基本にしてやられる、だんだん上げていかれるということは、これはどうもおかしなものができ上るのじゃないかと思います。ある限度をきめて、まあ木炭価格等のものがどれだけの地位であればいいというようなことが中心になって、それで払い下げも行われているということは、先般も河野君が言われた通り、一番の木材を持っておられる農林省としては、考えなきゃならぬので、価格市場の安中をもはかることが当然ではないか。これは河野君の言うのが、私は非常に重要な意義を持っていると思うのです。炭の場合にも当てはまると思うのです。一方において、乱伐が行われた。その上農地改革も非常な反動的な建前をとって、薪炭林払い下げる、炭焼き薪炭林払い下げる、そのことを中心にして非常な圧迫を加える、そういうような操作が中心になって、材料はどんどん上っていく。今、山地主はもうかっている者はない。非常に資本を持っているから、それほど急いで伐採しようとしない、こういうことで製炭者が困っておるのでありますから、それを緩和するために、林野庁というよりはむしろ農林省としては、もっと国有林を大乗的な立場に立って払い下げを考え、そして今現にやっておられるような旧来の慣行による払い下げを優先的にやることでなく、他の国府林関係のない、ほんとうに薪炭林を持たない地区の者も楽に入っていかれる、こういう方法も講じていくことが私は非常に今重要性を持っているのではないか、こう思いますので、この点が何か考えられないか。  今現在やっておることが、値段をこういうふうにして出すとか、ああいうふうにして出すというのでなく、何かもっと意識的な方法で、現に薪炭林が失われつつある地区製炭業者を一面には救う方法を考え、同時に、一面には木炭価格比重等を勘案して、そうして安い薪炭林を、地域的にも、また地域外の人にも、売り出させることによって不当な価格のつり上げを防止していく、こういうような方法が考えられぬかどうか、こういうお伺いをしておるのであります。
  8. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) ただいま売り払いは時価主義で売り払うというような御説明を申し上げたのでありますが、薪炭のような場合におきましては、やはり季節的な変動というものが確かにあり得ると思いますので、私どもといたしましては、いわゆる時価というものを、既往一カ年間市場平均価格というふうに取り上げてやっておるわけであります。既往年間平均価格というものを時価と考えて、売り払いの基準にしておる、こういう状況でございます。  それから相当大量な薪炭林供給をいたしておるのだからして、何か薪炭林価格体系についての特別な対策はないのかということでございますが、国有林産物の売り払いにつきましては、あくまでも時価原則で売り払うということの拘束を受けておりまして、そういうことで現実の売り払いはやっていかなければならないというふうに考えておりますことと、もう一つは、たとえば非常に炭材が上ったような場合には、量的に大量なものを国有林としては伐採供給したらいいじゃないかというような問題も、あわせ考えられるように思うのでございますが、私どもといたしましては、国有林伐採量は、大体毎年を通じましてほぼ均等のものを供給する原則をとっておるわけでございますが、しかしながら、状況を見計らいまして、ある年には多少多く、ある年には多少減伐をいたす、標準の二割前後くらいの増伐、減伐をいたすような余地もそこに残しておりまして、実は運営いたしておるようなわけでございます。従って、冷害峠の場合におきまして、救済する対策として薪炭林を特別払い下げいたさなければならぬというような場合におきましては、この弾力性を利用いたしまして追加払い下げをすることにする、こういうような措置をあわせてとっておるような現状でございます。
  9. 仲原善一

    仲原善一君 今回の改正問題点になっておりますが、例の林業技術普及員及び林業経営指導員の名前を林業専門技術員及び林業改良指導員というふうに改めるようになったようでございますが、この問題についてますお尋ねしたいと思いますのは、今度の林業専門技術員なりあるいは改良指導員に任用されるには一定の資格要件が要るというので、これは政令にゆだねたのであります。政令または条例で定める資格に合格した者というのと、もう一つは、農林大臣学識経験等を勘案して適当であると認めた者、この二つの中から新しく資格認定によって任用するということになっておりますが、この技術員指津具の資質の向上をはかる上から申しまして、もちろんこれはけっこうな改正であろうとは考えますが、しかし現在従事している人たち改正によって、その制度の切りかえによって、新しく任用されるかどうかというところに一つ疑問があるわけでございまして、トラブルがあるわけでございます。現在の職員離職したり降職したりするような人が出やしないか、そういう犠牲を出すようなことがありはしないかということが、一つ心配になるわけであります。この点は、前回藤野委員から質問がありまして、林野庁からも一応の答弁がありましたけれども、まだ明確を欠いている点がありますので、この人たちも非常に心配しておりますし、重大な問題であると思いますので、重ねて次のような点をあらためてお伺いしたいと思います。  その一つは、今回の改正で、現在の技術普及員または経営指導員は全員、政令または条例で定める試験を受けなければならないかどうかということが一つ。第二には、農林大臣の定める資格要件の具体的な内容はどういうことになっておりますか、これが第二番目であります。それから第三番目は、現在の技術普及員または経営指導員であって、今回の改正でかりに離職あるいは降職等犠牲者が出やしないかという問題でございます。それから第四番目は、かりに犠牲者が出た場合には、どういうふうな措置取扱いをおやりになる考えであるか。それから第五番目に、この指導員なりあるいは技術員というものは、現在の人数で十分こなせるかどうか。まずこの普及員なり技術員の五つの点について、お尋ねしたいと思います。
  10. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 私どもといたしましては、今日の措置におきましては、これまで行政指導でやって参りましたそれぞれの措置資格要件基準を、特に引き上げて考えるというようなことは考えておらぬわけでございまして、従いまして、そのようなことからいたしますというと、現在任用されておる者はそのままこれに切りかえて参るというような考え方が当然とれる、かように考えまして、そのように措置をして参る、こう考えておるわけでございます。  それから次の問題は、特に農林大臣学識技能及び経験を有する者と認めるものの内容、こういう質問でございましょうか。
  11. 仲原善一

    仲原善一君 そうです。
  12. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) これにつきましては、それほど具体的な内容づけをいたしておるわけではないのですが、要するに、さきの行政指導によって行いました任用資格というものをすでに取得しておる者につきましては、それぞれのものに該当する資格技能経験等資格を持つものだ、こういうふうに私どもは読みかえて参りたい、こういうように考えておるわけでございます。  それから、この措置によりまして、一体現にそれぞれの職にある者が離職をするということがあるかというお話でございますが、私どもといたしましては、離職をするということは完全に防ぎ得るものというように考えておるわけでございまして、そこで万が一離職をする場合の措置ということにつきましての準備は、実はいたしておらないようなわけでございます。  それから現在の技術員指導員によりまして一体十分かということでございまするか、決して十分とは考えておらぬわけでございます。特に、不十分でありまする関係上、従来の二本建の制度を一本に統合いたしまして、特に従来普及員制度のうちの林業専門技術員と言っておりました者のうちの一部を、地区に振りかえて配置するというような措置までいたしまして、従来人員でもって当面の措置をいたしたい考え方でおるわけでございまするが、ただし、私どもといたしましては、当面の問題といたしまして、やはりこれらの職員給与の非常に低いということに関連をいたしまして、本年の目標といたしましては、これら職員給与改善一つ取り上げる、あわせて今後の仕事の進め方に照応いたしまして必要時の定員増をはかって参りたい、こういうような考え方で進めておりまする関係上、本年度は特に定員増の要求はいたしておりませんけれども、これだけの人間ではとうてい十分なる仕事はできない、かように考えておるわけでございます。
  13. 仲原善一

    仲原善一君 ほかの問題、まだたくさんありますが、二、三お伺いしたいと思います。その一つは、先般の長官の提案の趣旨説明の場合にもありましたが、特に針葉樹成長量伐採量との関係で、非常に過伐になっているというお話を承わりましたが、この問題については、当面の問題といたしましては、やはり外材輸入ということが取りあえずの問題になるのではなかろうかと思いますが、この外材輸入の問題の見通しであるとか、特に価格はどういうふうになるのか、その点を簡明に一つお答えを願いたいと思います。
  14. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 外材輸入見通しの問題でございまするが、御承知のように、終戦直後いち早く輸入の再開されましたものは、いわゆる南洋材輸入であったわけであります。当時といたしましては、港湾周辺地区にあります合板工場用資材といたしまして、加工貿易の用に供される、こういう目的で入って参ったわけでございまして、逐年これが増加の一途をたどって参りまして、近年におきましては大約七百万石、こういう線を前後しておるという状況でございます。一時加工貿易の不振でありました期間におきましては、当時の国内情勢とも見合いまして、南洋材国内材市場にとってかわるというようなこともあったわけでございますが、大宗は何と申しましても加工貿易の現在といたしましても、南方から入って参るのは七百万石前後、これはなかなか将来伸びていく見通しというものはないようでございます。と申しますのは、やはり輸出をいたしておりまするそれぞれの地域におきまして、国内で加工したものを輸出するという傾向が次第に顕著になっているというような状況からいたしまして、大体これぐらいが最高ではないかと考えておるわけでございます。  それからアメリカ材が戦後入って参ったわけでございまするが、これはやはり、何といたしましても、船運賃の問題と直接に関連をいたしておりまして、特にこの一両年は非常に輸入が低調でございます。せいぜい百万石以内という線でございまして、この場合におきましても、なかなか丸太のままの輸入ということは非常に困難であるという状況でございまするので、そう多くは望めない、かように考えておるわけでございます。  そこで一番今後について期持を持てそうに思いますのは、いわゆるソ連地域からの、特にサガレン地域からの輸入の問題でございまするが、今日までのところにおきましては、昭和三十年にごくわずかな見本輸入をいたした場合におきまして、一部ございましたが、三十一年度中に大約二十一、二万石のものが入って参る、こういう状況でございます。これはいわゆるソ連地域積出港関係、これは現在二港開港いたしておりまするが、この関係と、これを引き取ります場合の海上の条件、年間を通じまして大体百十日くらいしか操業ができないということに制約を受けまして、なかなか伸び得ないのではないかという問題と、もう一つは、船運賃の問題でございます。F OB価格をもって参りますと、現在の国内木材価格というものの体系の上に十分に乗りそうな価格であるわけでございますが、船運賃関係で、内地に入って参りますというと、どうしてもやはり一割ないし一割五分くらいは高くなって参る。大量な消費内地市場期持することはなかなか困難である、こういうような面の問題もございまして、急速にはなかなか伸びないのではないか。かように考えているわけでございまするが、一まず昭和三十二年度目標といたしましては、五十万石ないし六十万石というところを目標にいたしまして、ソ連材輸入促進をはかりたい、かように考えているわけであります。
  15. 仲原善一

    仲原善一君 針葉樹需要については、これはパルプ材が相当ウエートを持っていると思いますが、パルプ材需要実態をよく見てみますと、各社が非常に交錯輸送をしています。工場中心の山を買うのでなしに、工場から遠く離れた所の原木を買いまして、たとえば中国の木材が東北、北陸に行くとか、あるいは九州のが東海道の方に来るとか、非常にボリュームの多い原木交錯輸送を相当やっているというのが実態であろうかと考えます。輸送力が非常に困っている現状から考えて、林野庁といたされましては、この交錯輸送をもう少し何か行政的な指導で、工場中心の近くの山のものをなるべく工場に持っていくような措置を、指導方針か何かでやられる御方針はあるかないか。
  16. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) お説の通りでございまして、特に近年のパルプ工場のごとき、その伸びが急速でございますというと、それに必要な原材料を確実に入手しようとする、いわゆる原木獲得戦が非常に熾烈になって参っております。最近は非常に目につき過ぎるくらい、明瞭にそういう傾向が看取されるわけでございまするが、従いまして、各工場といたしましても、周辺地域からこれを集めるということが経済的にも願わしいということは、重々承知の上でありながら、原木獲得戦に狂奔するあまり、次第に集荷地域が広がって参る。そこに交錯輸送の問題が当然起きて参るわけでございます。もう一つは、これは地域的な問題もございまするが、パルプ原木の確保だけの問題ではありませんで、坑木との間のやはり競合というものがまた相当熾烈なものがあるのでございまして、これらが相からみまして、次第に集荷地域が広がって参って、その間の交錯輸送がまたこれにあわせて非常に顕著になって参る、こういう実態にありますことは御指摘の通りでございまして、私どもといたしましては、そのことによって、要するに工場売り価格というものがある線で押えられて参りますと、遠距離輸送の関係上、山元がそれだけ売りたたかれをするという傾向に陥ることを非常に気づかいまして、パルプ材協会、これはパルプ・メーカーの原料部門を主体といたしました協会があるわけでございますが、これらに対しまして、強くこの交錯輸送をできるだけ軽減するように、従いまして、現物の交換というものがそれぞれ行われるような指導を、実は従来からやっておるわけでございまするが、近来の目にあまるような状況に対しましては、再三そのような注意を喚起するような措置をいたしておるわけでございます。
  17. 仲原善一

    仲原善一君 今回の改正には、森林組合の問題は触れていないわけでございますが、実際は、私はこの森林組合について多少の疑念を持っておるわけでございます。と申しますのは、山村におきましては農業協同組合なりあるいは森林組合、この二つがありまして、具体的に申しますと、たとえば事業の面でも、木炭を出すような場合に、協同組合と森林組合が競合するというような形がよくございます。で、私が考えますのに、これはやはり協同組合なら協同組合一本で、結局その会員は同じ農山村に住んでいる。林業をやっている、あるいは百姓をやっている人たちでございます。それが森林組合に入ったり、あるいは協同組合に入ったり、二重手間なりあるいは二重の負担を受けることになるわけでございますが、こういう地帯については森林組合一本でも、あるいは農業協同組合一本でも、どちらでも、二つにならなくても事業ができるような体制に切りかえてもらう方が、これはほんとうの農民のためではないかというような気持がしておるわけでございますが、そういう点について長官はどういうふうなお考えを持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  18. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) ただいま御指摘の問題につきましては、当然私どもといたしましてもきわめて重要な研究課題であるということに考えまして、従来から研究をいたしておるのでございまするが、まあ御承知のように、森林組合は森林所有者の団体といたしまして、わが国民府林の生産のにない手であるということでありながら、現在は森林所有者の六割を組織しておる。そうしてその地域内の森林は全体の約八割、こういう状況であるわけでございまして、まだ完全に全森林所有者を組織し終っているという状況ではないのでございます。しかも、これらの組合、総数にいたしまして旅千余の組合があるわけでございまするが、過半数はきわめて活動不振な状態にある。従いまして、このようないわゆる不振組合というものがどのようなところに原因を持って発生して参るのかということを、いろいろ研究して参りますというと、ただいま御指摘があったような問題にも当然関連が出てくるように考えるわけでございまして、森林組合の振興と申しまするか、そのことは、やがて日本の民有林生産の強化をはかるゆえんだというような考え方から、必ずしも森林組合そのものにこだわらないで、実情に合うごとく、民有林振興に役立つ組合組織であるごとく、私どもといたしましては研究をいたして参りたいかように考えておる次第でございます。
  19. 仲原善一

    仲原善一君 ちょっと、事務的な問題をお伺いしたいと思いますが、森林組合がたとえば治山治水の事業等を請負工事をやる場合がございます。この場合にいろいろ異論がございますので、この点を明確にお知らせを願いたいと思うわけでございます。たとえば治山治水の事業等の災害復旧等もございますが、県営事業でやる場合に、地元森林組合に請け負わせる問題でございます。これが建設業法に違反するかどうかというので、いろいろまあ物議をかもす例がございますが、林野庁の御方針としては、この地元でその森林組合がその事業を請け負って施行できるものかどうかという点を、お伺いいたします。  それからもう一つは、また事務的な問題でございますが、今度の改正で、森林伐採、たとえば適正伐期齢級に達しないようなもの、あるいは達したものでも、許可によって、針葉樹については許可制が従来通りしかれるわけでございますが、許可の場合に、地方庁でこの手数料がとれるかどうか。  この点を、この二つの点だけをお伺いいたします。
  20. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 公共事業としての林道あるいは治山事業を実施して参ります場合に、森林組合が林道事業の場合におきましては施行主体となりまして、町村と並んで施行主体になって実施しておるものは、非常に近年ふえておるという状況でございます。私どもは、こういうふうな事業形態というものは当然とり得べきものだと、かように考えておるわけでございますが、ただ、治山事業の場合におきましては、いわゆる県営事業として行われるものがまあ全部だ。林政課長からその点、明確に答弁いたさせます。
  21. 家治清一

    説明員(家治清一君) ただいまの、請負の場合に建設業法にかかるかどうかという点でございますが、これはあの法律が出るとき、出たあとの農林省それから建設省の打ち合せによりまして、私の知っております限りでは、これは森林組合も、あるいは農業協同組合の場合にも同様と思いますが、建設工事、建設事業自体を業とするものでないということで、かからない、こういうように考えております。
  22. 仲原善一

    仲原善一君 手数料の問題……。
  23. 家治清一

    説明員(家治清一君) 伐採の許可の場合の手数料でございますが、これはまあ法律に明示してはおりませんし、それで普通の場合の許可には手数料をとらないのが原則でございますので、たとえば県で条件を定めて、それで許可手数料をとるかという問題になりますと、なお研究の余地はあると思いますけれども、現在はとらないという建前でやっております。
  24. 千田正

    ○千田正君 長官にお伺いしますが、今度の法案はけっこうですが、これは地方自治団体が、いわゆる市町村合併によって財産区の設定その他いろいろな混雑をした結果、その後におけるところの育成強化がうまくないというのが、相当あると私は思うのです。そういう面の調整を十分はかっていただきたいと同時に、この許可制から届出制になった場合ですね、何かわれわれが考えるときに、乱伐になるような気もするし、その後におけるところの林種の改良等におきまして、闊葉樹を植えておった所を今度伐採したときに、針葉樹に切りかえるというような、そういう方向に向うための農林省指導は、どういうふうに考えておられますか。
  25. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 許可制度をとっておりましたものを一応届出制度に改めるということは、いわば方向といたしましては、緩和の方向ということに相なったかと思うのでございますが、一体広葉樹林の従来許可制度をとっておりますものを、そのまま届出制に改めるということについての根拠でございますが、大体広葉樹林の場合におきましては、その主たるものはいわゆる薪炭林であります。そこで、ただいま御説明申し上げましたように、近年の薪炭林需要というものは大体八千万石程度のところで、次第に漸減方向をとりながら、まあ横ばいをしておるということがあるわけでございまして、要するに、需要の非常な喚起によりまして、それがそのまま森林伐採を大きく刺激して参るというような要素は、薪炭林についてはまあ大体ないというように考えておりますことが一点と、それから過去五年にわたりまして、現在の伐採制限制度を伴っております森林契約の制度というものを実施して参ったわけでございますが、これによりまするというと、広葉樹の場合におきましては全体といたしまして、伐採を許可し得る許容限度に対して、実際の申請数量というものが四割四分にしか達しなかったということ、それから全国に二千九十六という単位の森林区というものを設けまして、これごとに伐採の許容し得る限度を示し、それに基いて伐採の許可を受けつけまして、伐採を許可する、こういうことをやっておるわけでありますので、この二千九十六の森林区の中で、広葉樹用材につきまして、その限度に対して申請がオーバーしたというものは、わずかに六%であります。それから広葉樹の薪炭林の場合におきまして、大体一七%、全森林区数に従いまして九六%、用材林の場合は九四%、それから薪炭林の場合は八〇%というものは、制限制度をとっておりながら、全然その数量に申請が達しなかった、こういう過去の五年間の実績があるわけでございます。こういうような事実に基きまして、許可制度届出制度に引き直したところで、実態把握はできる、推移はこれでもって十分見当がつく、こういうことに相なりまするので、むしろその辺のところは緩和いたしまして、そこに当然余力が出て参ります。その余力は、あげて問題の多い針葉樹許可制度の円滑なる運営に役立てて参ることの方が、全体として有効じゃないかというように考えましたのが、この切りかえをいたしました原因でございます。そこで、そのことによりまして、現在林野庁が進めようといたしておりまする、いわゆる林種転換等を主体にいたします造林の拡大でございますが、まあこれも進めやすくなる、こう判断を実はいたしております。  ただいま、この造林の拡大について、何か特別な指導方策を持っているかということでございますが、従来造林につきましては、御承知のように、自家造林については補助金を出しております。これは国が三割、都道府県の義務負担が一割、大体新植樹の四割につきまして補助金を出しておったのであります。ところが、御承知のように、山につきましては、実態が千差万別でございます。そこで、平均は四割ではございましたけれども、それを運用面につきましてさまざまな因子を組み合せまして、一割八分から六割の補助金をつけまして運用しております。林種転換と申しまするのは、要するに広葉樹を切って、そうして成長率の豊かな針葉樹に植えかえて参るというわけであります。現在広葉樹の伐採跡地の針葉樹を植栽をいたしますために、いわゆる針葉樹を切った跡地の造林に比べますると、相当自己資本の経費がかかりますという実態があるわけでございます。従来平均四割から最高六割までに対して補助金をやっておりましたものが、いずれも林種転換等の対象に対して、そういう高額の補助を出しておったという現状でございますので、当然林種転換がふえて参りますからして、ことしは全体といたしまして補助金の単価をかなり引き上げておるわけであります。要するに、実際そういった困難な造林を進めるために、必要な補助額の単価引き上げというようなことによりまして、造林推進の実をはかって参るという考え方を持っておるのであります。
  26. 千田正

    ○千田正君 二点だけ、それでは最後にお伺いします。今度のこれによってもくろんでおりますところの届出制度は、相当簡便になる。これはまことにけっこうですが、その後における林種転換をするのは何パーセントぐらいに見込んでおられますか。
  27. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 現在、大体国有林民有林を合せまして、別に人工植栽をいたしました森林の面積は五百六十万町歩あります。私どもの終局目標といたしましては、千百万町歩の造林地を確保いたしたい。これがまあいわば技術的にでき得ます造林地区の最高限界であるわけであります。将来木材の需給がひどく逼迫をするという前提に立つ限りにおきましては、これくらいの造林地区というものは、一応経済的な意味合いからも成立するのじゃなかろうかというものが、十百万町歩であります。  ところが、大体これだけの造林をいたして参るわけでありますが、現在の造林地の齢級構成といいますか、年令の構成関係を見て参りまするというと、比較的若いところに山があるわけであります。従いまして、このまま推移いたしまするというと、ある時期から非常に若い山を切り始めなければならぬというような時期が、当然予想されるわけであります。そこで私どもといたしますると、そういったような点をカバーして参りまするためには、今申し上げました五百六十万町歩を一千百万町歩にするという目標を、たとえば今後二十年間に均等にやって参るというような計画には、なかなかしかねるわけであります。一応昭和三十五年までに、民有林につきまして、約六百万町歩の造林地の確保をはかりたいということを目標にいたしておるわけであります。そこで現在五百六十万町歩の中で、民有造林地は約四百六十万町歩でございます。差引いたしまして、まあ百四十万町歩から百五十万町歩というものを、今後五カ年間に一応目標を達したい。従いまして、これらがおおむね林種転換の相手にいたすものでございますので、およその見当といたしましては、昭和三十五年までの目標といたしまして、民有林におきましては百四、五十万町歩というものは林種転換をされる対象というふうに考えまして、対策を考えておるわけであります。
  28. 千田正

    ○千田正君 終戦後、だいぶ各市町村の自治団体に対して国有林払い下げましたね。その用途はいろいろありますけれども、耕地あるいはその他に転換の目的じゃなく、払い下げた。いわゆる林業自体の育成のために払い下げた。そういう目的のために地方自治団体に払い下げて、実際植林その他やっている所とやっていない所とある。何パーセントくらい一体達成しているんですか、あなた方の資料によって。そうして現在、せっかく払い下げても植林していない所は、われわれは方々に見受けるのでありますが、その点はどういう工合に、まだやっておらないのか、あるいはまた将来それに対してはどういう方針を持っていかれますか。やはり多少これに関連しますので、お伺いします。
  29. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) ただいまのお話でございまするが、昭和二十六年の第十国会におきまして、国有林野整備臨時措置法という法律が成立いたしまして、これに基きまして売り払って参りましたものが約十三万町歩ございます。これらはいずれも、林野として将来経営されることを目的に、市町村あるいは部落、県等に売り払ったものでございますが、これは国有林野整備臨時措置法の趣旨によりますると、国有林野として経営することを相当としないものということで、国有林野の側から放していいものを放そう。それに対して市町村側あるいは部落などで希望のあるもの、相対でもって、まとめて売り払うということでございます。われわれがこの売り払いましたものの中で、当時相当程度木材価格が上向きの状況にありましたような場合に、地上の立木立木のまま、かなり売り払ったというものは相当これはございます。それから土地ごと転売したというものも、これは実は若干でございますが、転売したものがございます。土地ごと売り払ったものも若干ある。その中には、やはり開墾をするとかというような他の目的に変えますために、土地ごと売り払ったというものもあるわけでございますが、多くはやはり立木づきのままで、土地ごと他に転売しておるというものもございまして、これはしかし若干でございます。それから、ただいま申し上げました地上の立木だけを切りまして売ったものは、これは相当にございます。  で、その跡の造林でございますが、この跡地造林につきましては、大体予定通りに造林計画は進んでおるという状況でございまして、これにつきまして格別林野庁がとやかく指導の手を加えなければならぬという実情にはございません。  それからその後、町村合併促進法あるいは最近の新市町村建設促進法によって売り払っておりまするものは、あくまでも新市町村の育成上必要な国有財産の造成と、こういうことで売り払っておるわけでございますが、現在までに約一万五千町歩ばかり売り払いまして、目下売り払いの過程にあるわけでございます。これはまたこの市町村の基本財産の造成という目的が売り払いにはっきりまあ掲げられております関係上、さきの場合におきまする売り払いのごとく、地上の立木がどんどん切られていくということにつきましても、相当やかましい制限なり注意をいたしております。これによって売り払いましたものにつきましても、跡地造林の場合は、さきの場合と同じように、格別のものはない、こういうふうに御了承いただきまして差しつかえはないかと思います。
  30. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 前にほかの委員からお尋ねのあったことかもしれませんが、一つ、一点伺いたいのですが、伐採許可を年二回であったものを今回四回に変えられるわけでありますが、このそうする、改正する理由を一つ承わりたい。  それからもう一つ、これは私の考え方から、想像から言います。こういうものもおそらく森林経営者の利便を増すためにやられたことと思いますが、これがために、この携わる職員が手がすくのか、あるいは非常に仕事が増すのか、この二点……。
  31. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) まあ従来は二月と六月の二回にやっておったわけでありますが、それをさらに、今回の改正によりまして三月、六月、九月、十二月の四回と、こういうように実は考えておるわけでございます。御承知のように、この森林立木の売り払いでございますが、これは多くの場合、年何回か必要な都度、木材業者あるいは製材業者が森林の所有者からこれを買い受けるというのが、まあ通例ある場合でございます。要するに、立木の所有者自体がみずから伐出をいたしまして、素材にしてこれを売り払うということは非常に希有だと。木材、製材業者が立木の所有者から立木のまま買い受けまして、自分たちのものとして伐出をするというのが普通というように、御承知おきをいただきたいのでございますが、そうしまするというと、要するに、たとえば年一回と申しまするというと、その時期から一カ年間のものにつきまして事前手当をして、そうして伐採の許可の申請をしなければならぬと、まあこういうことがあるわけでございます。ところが、なかなか立木の手当は、そのような実態にないわけでございます。そういうことも相手伝いまして、もう一回、六月という時期にふやしたわけでございます。ところが、まあおもに夏山生産あるいは冬山生産といっておりまするが、まあ春の時期あるいは秋の時期に伐採をするということに相なるわけでございまして、そういうことになりますというと、やはり年間の適当なときにできるだけ回数を適当にふやしまして、そうして受け付けができるという道を与えることが、これが森林所有者の側にとってもけっこうですし、森林生産に当る木材業者、製材業者の側にとっても非常にけっこうだ、こういうふうに相なるわけでございます。そういうふうになることは、この許可制度の運用を助けていく上に大いに意味があるのじゃないか、こういうように実は考えられましたので、許可の回数をふやすことにいたしたのでございまするが、  ところで、今度手数の問題でございますが、これを実際やって参りまする職員現状のままでやりまするというと、大体年間二十万件ぐらい針葉樹についてあると、今度やめようとする広葉樹につきましても同じように二十万件ぐらいあると思いますが、そのままではとうていどうにもならぬわけでございますけれども、幸いに広葉樹の許可制を届出制にいたしますというと、それだけの手があいて参るということで、従来の二回を四回にいたしましても、まあ事務的な能率も大体対応できるのじゃないか、こういうことで四回にいたしたわけでございます。
  32. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 四回が適当であるということは、技術的に四回が適当だということもあるいはあると思いますが、利便を与えるということから考えれば、許可を四回に限らず、もっとふやして、時期を失しないようにしてやるということが親切ではなかろうか。かように思いますので、人手があまりかからないのだったら、もう少し、もっと、まあ極端にいえば、いつでも許可を申請できるということにできないものかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  33. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) これは、たとえば伐採の許容限度に対しまして、いわゆる伐採許可の申請が非常にたくさん出て参るということになしまするというと、おのずからこの許可の順位を付しまして、そうして許可すべきものと許可しないものとをまあ分けなければならぬ、こういうことに相なるので、できるだけ時点を一つにいたしまして、一斉に許可の受付をいたしまして、そうして今も申し上げるような選択をいたさなければならぬと、こういう事態に相なるかと思うわけでございますが、先ほど御説明いたしましたように、全体は、必ずしもそうでない実は森林区もあるわけでございます。針葉樹の場合におきましては、大体七五%というものが、森林区の七五%というものが、許容の限度に対しまして許可の申請がオーバーしている森林区でございますが、そこでまあ大よその傾向といたしましては、ある程度時点を一つにいたしまして一斎に受けて、その中で取捨して、そうして許可すべきものとすべからざるものとを振り分けるという措置が必要になる。そうなりますと、年間いつでも言うてきたものに対してやるということについて、まあ問題がある、かように考えることが一点と、それから一つには、やはりこれを受け切りますところの担当事務能力の問題でございます。やはりその都度実地調査をいたしまして決定をするということになりまするので、いつでも申請を受けてその許否をきめるということは、まあ非常に至難かと思いまして、やり得る限度で最高にやります程度は大体年四回、こういうことで、年四回にいたしたわけでございます。
  34. 安部キミ子

    安部キミ子君 聞くところによりますと、広葉樹がパルプ材になるということなんですが、ほんとうでしょうか。
  35. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) その通りでございまして、まあ最近セミ・ケミカルといったような方法によりましてパルプ化をはかっておりますが、これは広葉樹はむしろいいということでございます。
  36. 安部キミ子

    安部キミ子君 パルプ会社の一カ年の使用量は、国内パルプ会社の一カ年の使用量ですね、その国内と国外と合せて幾らぐらいですか。
  37. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 現在、大約年間二千七百万石程度でございます。
  38. 安部キミ子

    安部キミ子君 この法案が出された理由の一つとして、薪炭業者の頭打ちというふうな関係もあってと、こういうふうに提案の説明がなされておるのですが、この法案が出て一番仕合せなのはパルプ会社じゃないかという話を、私はけさいなかの方からずっといろいろの所を回って帰ったのですが、どうでしょうか、この心配について。
  39. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) それは、なるほど広葉樹もパルプ資材として資材に使われ始めておりますが、何といっても、現在問題になっておりますのは針葉樹、特に若い赤松がこの問題になるわけでございます。先般の御質問にもありましたように、どんどん若い松が切られているじゃないかという御質問も出る通り、現在一番問題になっておりまして、そこで、ここで手のあいた者は、針葉樹伐採許可制度のいわば整備と申しますか、強化のために引き当てられる、こういうことになるわけでおりますので、私どもといたしましては必ずしもそうではないと、かように考えております。
  40. 安部キミ子

    安部キミ子君 針葉樹国内量も限度に来たということで、業者の人たちの考えは、何とか広葉樹の方に手を回さなければ、自分たちの会社の営業が成り立たないというので、いろいろ林野庁の方にも働きかけがあったというふうな話を聞きましたが、その点はどうですか。
  41. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) そういうことは全然ございません。
  42. 安部キミ子

    安部キミ子君 今日薪炭価格の値上りが著しくなっておる影響は、こうしたパルプ会社とかあるいは坑木とかにどんどん切り出されて、しかも高い値段で買い取られていく関係で、こうした一般大衆の経済にしわ寄せがなされておると聞きますが、その点はどうなんでしょう。
  43. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 先ほどの清澤先生の御質問に対してもお答え申し上げたのでありますが、確かに、従来薪炭以外には使われないというふうに考えられておりましたものが、パルプ、坑木等が非常に需要が大きくなったというような問題のほかにも、近来チップ・ボード、ハード・ボードとかいうようなものがどんどん出て参りまして、要するに、工業用原料としての木材消費がずっとふえて参ったということによって、従来の薪炭林以外の部門に、これらのものの原料の手が伸びつつあるという状況は、これは確かにございます。そういうのが、いわば一般の薪炭林の値上りに対しまして、ある種の影響を持っておることは事実でございます。しかし、それだけが必ずしも薪炭林の値上ったという原因じゃないと、私どもはかように考えておるわけでございます。
  44. 安部キミ子

    安部キミ子君 パルプ会社が二千七百万石も一年に材料に使うということになりますと、これはどうしても切るということになるのですが、そのことが今後の日本の薪炭生産に非常な影響を持つと思うのです。しかも値を高く買いますので、山を持っておる地主さんたちは、自分は金をたくさんもらえばいいのですから、一般零細民が困ろうと何しようと、そこらの辺まで考えては実際くれていないのですが、このことについて林野庁はどういう対策をとられますか。
  45. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 一般の傾向といたしまして、確かに広葉樹でもパルプにできるような施設を増設するとか、転換するという傾向はございますけれども、目下のところでは、何といいましても、採算面からいいましても、取得の容易な点からいいましても、やはり針葉樹にパルプ工業の目標のあることはもう事実でございます。そこでパルプ工業の場合におきましても、将来のそういった需要増大に備えまして、いわゆる手山と申しますか、自家用林を持とうというような傾向が現にできつつあるということも、やはりそういった辺の事柄を証明するものではないかと思うわけであります。従いまして、将来のやはり木材需要の趨勢からいたしまして、次第に薪炭林というものが競合の場において圧迫を受けるということは、これは大勢じゃないかと考えるわけでございます。  そこで、私どもがやはり一番問題として考えなければならぬことは、いわゆる製炭をもって副業としている農家というものがたくさんあるわけでございまして、これらの人たち生活がこういう影響を非常に顕著に受けまして、非常な深刻な状態に陥るということにつきましては、これはやはり問題として重要視して考えなければならぬというふうに考えるわけでございまするけれども薪炭林需要というものが絶対量におきまして次第に減少をするということにつきましては、私ども必ずしも資源の上から見まして悲しむべき傾向ではない、かように考えているわけであります。
  46. 安部キミ子

    安部キミ子君 今あなたのお話の中にもありましたように、パルプの原料として針葉樹の若木がたくさん要ると、こういう現実にあって、今の日本の山がどんどん切られていくということは、私は何回も強くここに申したと思うのです。東海道線の沿線を当ってみましても、山のあると思うような所では、みな若い木がどんどん切られているのです。それはもう当然パルプに使われていく材料だということは、はっきりしております。この問題に対してあなた方の方へ質問しますと、そういうことがあっても、ちゃんと特定の地域の、許可のあった所でそういう伐採が行われているのだという答弁なんですけれども、聞くところによると、そういう政府の意図に反して、若い針葉樹がどんどん切られているのが現状なんですよ。そうしてまた、針葉樹ももうなくなったという今日になって、会社は広葉樹に手を伸ばして、そうして必要な量だけごっそり取っていこうというふうな動きが見えているので、私は林野庁のこの木材の、何といいますか、政策といいますか、対策が、いわゆるこういう大会社のしたいほうだいに、なりまかせているのじゃないか、放任されているのじゃないかというような印象も受けるのです。そうしてまた、この法案が通りますと、さっそく会社の人たちは高い値で買い占めてしまって、そうしてその人たちだけいい材料、木材を持って逃げるという結果になると思うのですが、一体会社あたりを制肘するような何かの対策があるのですか。
  47. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 資源の関係がこのような状態であるからして、それに合せるごとく木材供給もあらなければならぬ、こういう意味で、たとえばパルプ会社の新増設等に対しましては、私どもはその資源の状態を明らかにいたしまして、十分に警告を発していることは、文字通りその通りでございます。しかしながら、これを増設してはならない、新設してはならぬというてどうこうするつもりというのは、林野庁当局にはない。  そこで、針葉樹の若い木がパルプとして非常にいいのだというように、私あるいは申し上げたかと思いますが、これは私はこういうことだと思うわけでございます。要するに、できるだけ林地というものを有効に利用しようといたしますと、なるべく短伐期で必要な材料というものが繰り返し生産されるということは、私どもといたしましては好ましいことだと、かように考えているわけであります。そこで、現在のいわゆる若木が切られているという実態は一体どういう状況だということに相なると思うのでございますが、それは確かに、いわゆる適正伐期齢級と申しますか、伐期平均成長量が最高に達しない以前切られているものも、決して少くはございません。相当ございます。そこで私どもは、切る場合におきまするところの成長量の最大の時期までは、せめてこれはやはり置くべきものだということからいたしまして、さきの森林法改正によってそれまでのものは伐採許可制度にかける、その年令に達した以降のものはこれは届出で切ってもよろしいという区分を設けて、実は現在の森林計画の制度を運用している、こういうわけでございます。  そこで、野放しに若い木がどんどん切られているのじゃないかということでございますが、これは先般も質疑のときに申し上げた通り、決してそうではございません。森林区という、大体民有林七千五百町歩程度含んでおります地域ごとに、伐採を許可し得る限度の数量というものを、これをそのときの立木成長量をもとに計算をいたしまして、そうしてその範囲内で伐採の許可をするということで実はやっておるわけでございますから、決して野放図に、無計画に切りほうだいに木を切らしておるというような取扱いは、実  はいたしておらぬわけであります。
  48. 安部キミ子

    安部キミ子君 あなたは、現場を全然調査なされないで、今のような発言は責任上なされないと思いますので、このことはそれとしておきまして、この法案が通過しました後に、そうした広葉樹に対する大会社のやり方に対して別に法的な制約がない以上、これはどんどん切られていくだろう、これはだれが考えても心配するところだと思うのです。こういうふうに薪炭が品不足になるというだけでなくて、山をどんどん無計画に切りますと、一朝一夕には木は大きくならないので、災害がどうしてもひどくなるということは、当然考えておいでになるだろうと思うのです。で、九州、それから中国、四国、常襲地帯の災害地では、先日も調査に参りまして、災害の原因はと聞きますと、何はおいてもこの過伐が原因だということをまっ先に言われるのです。そういうことなどを勘案しますと、ただ林野庁で計画しておられるような考え方だけでは、また災害の方でもいろんな不幸が起きてくると思うのです。  それで、私は北海道まで行きましたし、九州もずっと歩いておりますが、戦前の姿と今日の姿を比較して、どんなにひどいものであるかということは、だれが見ても、日本の国を考える者は心配しない者は私はないだろうと思う。造林したと申しましても、なかなか一朝一夕には大きくならないので、どうしても青い松、青い杉ということになれば、十年以上三十年にならなければ、一人前の木ということは言えないでしょう。そのことが、全国的に調和のとれた計画は私はなされていないと思うのです。また、この法案を出されますと、前よりか、たやすく木がどんどん切られるようになる。そうしてまた工業用に使うところの業者は、金にあかして、どんどん高い原材を買ってももうかるのだから、金にあかしてどんどん買っていく。あとに残されたものは、大衆の生活が逼迫してくる、物が高くなっていくということと、災害と、こういうものが残るだけである。大衆の人はそういうことにしわ寄せられてくると私は考えるのです。  それで、この法案が出されました後の措置を十分林野庁の方で考えていただいて、業者のそうした欲望もさることながら、これは日本の工業として当然でありましょうけれども、そういうことと並行して、災害の面とか、あるいは国民大衆の生活の面とかというふうなものも、総合的に私は善処してもらわなければならない、こういうふうに考えるわけなんですが、林野庁のお考えはどうなんでしょうか。
  49. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 現在のわが国の農山村におきまして、自家用薪炭林供給地は別でございますが、いわゆる備荒貯蓄的の意味をもって用材林を持っておる農家が相当多い。御承知のように、四百万という農家は、多少のそういった備荒貯蓄的な森林を持っておる農家が相当多いのでありまして、こういう農家の持っております森林というものは、インフレの進行しますような場合におきましても、あるいはデフレの経済下におきましても、いち早くすべてのものに優先して売り払いをしておるという実態でございます。それで、伐採許可制度、制限制度というものを非常に強化するということになると、そういったいわゆる零細農家の持っておりますいわゆる森林というものの意味を大きく阻害してしまうというような危険な場合すら、しばしばあるという実態も、十分に御承知おきいただきたいと、かように考えるわけであります。  それから、この許可制度届出制度に切りかえますと、そのことによって森林伐採が異常に進むというようなお考えでございますが、異常に進むという前提に立つ限りにおきましては、これは当然切りかえができないというふうにならざるを得ないと、かように考えておりますが、すでに御説明申し上げましたようなことからいたしまして、そう進むものでない。大体、薪炭需要というものも安定している。それから従来のいわゆるパルプその他の工業原料として木材を使う部面が、それだからといって急速に広葉樹の面に大進出するということは、大体考えなくてもよろしいということになりますと、やはり問題は針葉樹で、針葉樹の方の手は、よほど伐採制限制度を上手に運用することにより完璧を期さなければならぬ。そうして広葉樹の伐採制限をはずすことによりまして得られる手を、あげて針葉樹の方に持って参ろう、こういう趣旨でございますから、全体といたしますと、やはり日本の今後の資源の問題を考えまして、適切な面に強力に手を打っていきたいということにほかならないという趣旨を、十分御了承いただきたいと、かように考える次第であります。
  50. 安部キミ子

    安部キミ子君 適切な手ということを今おっしゃいましたが、その手ということはどういう手ですか。
  51. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 要するに、問題の少い広葉樹に対しまして手を抜くことによりまして、現状をもってはあまりに問題の多い針葉樹の方に対して、その手を加えていく、こういう趣旨でございます。
  52. 北條雋八

    ○北條雋八君 造林の促進の必要なことは申すまでもないのですが、森林法の第四条第二項の第三号に伐採の跡地に二年以内に造林をするということが明記してありますが、実際問題として、二年以内に植えておる所はないと思う。これは結局、造林というものは、新植するのには費用がかかりますが、その後の手入れに非常に金がかかるということが、大きな原因であると思います。この法案に対しまして、何か制裁あるいは罰則をつけると同時に、ある一定期間まで手入れの費用の一部分でも補助するというようなお考えはありませんでしょうか。
  53. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) お説のように、なかなか植栽しただけでは山にならない。その後の手入れに非常に費用がかさむので、なかなか造林というものができかねるのだという実情もあるいはあろうかと思います。ただいま林野庁で実施しております治山、林道、造林の三つの事業のうち、戦後造林ほど計画的に進行した事業はないのであります。私どもが、この森林法に基きまして森林区施業計画という計画の中で、その計画の実施期間中に植栽をしなければならぬ最小限度の面積というものを、指定をいたしたのであります。その面積に対しまして、毎年のいわゆる森林区実施計画の個所別の面積がきまって、造林の義務づけが行われて参る、こういう仕組で今の制度を運用して参ったわけでありますが、その実行すべき最小限度の面積に対しまして、大体近年では三割増の造林が実際問題として進んでおるという状況でございます。従いまして、特に造森をしないものに対しまして罰則規定を設けて処置をするというような必要は私は大体ないと、かように考えております。  それから現在のこの造林事業に対します補助金の考え方でございますが、これは御承知のように、新柏費に対しまして幾らという補助の仕方をしておるわけでありまして、それでその後の保育、手入れに対しますものを全然対象にしておらないということでございますが、現段階といたしまするというと、やはり保育、手入れの面につきましては、やはりそれぞれ植栽者がみずからやるという建前をとるべきではなかろうか。むしろこの新値に対しまするものにつきましては、さらに今後検討を要する規定もあろうかと思いますけれども、その後の保育、手入れにつきましては、現段階としてはやはり現状通りでよろしいのではないかと、かように私どもとしては考えておるわけであります。
  54. 北條雋八

    ○北條雋八君 昔、森林資源造成法案というのがありまして、植えないときには代行してこれを植えまして、強制的に植えなければならぬという観念を持たせる法律もあったと思いますが、罰則というよりも、むしろこういうような方便もとれるのじゃないかと思うのですか。
  55. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 戦後制定されましたあの造林臨時措置法の中におきましては、いわゆる代執行の規定を設けられておりましたが、現在の森林法ではそれがないわけであります。しかしながら現状は、私ただいま申し上げましたように、大体造林につきましてはそういう特別な措置を講じなくても植えられておるという状況でございますので、私どもといたしましては、造林を強制するような特別措置というものは考えておらぬわけであります。
  56. 北條雋八

    ○北條雋八君 現在の伐採成長量の三倍も過伐をしているといいますけれども、これはすでに開発された森林だけについてのことでありまして、全体からいえば、いただいた資料で計算しますと、一・四倍ぐらいの程度だと思うのです。それで、これは現在開発された森林だけで考えないでも、年々林道は延長かあるいは新設されるのですから、全体について考えていいんじゃないかと思うわけです。その点につきまして御所見を伺いたいのです。
  57. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 仰せの通り、いわゆる潜在林力としては——手一ぱいのものとの対比でけっこうじゃないかと思うわけでございますが、なかなか計画通りに奥地の開発も進んでおらないという状況からいたしますというと、そのおくれというものはやはり既開発林にかぶさってくるということになりますので、一つのやはり過伐進捗の危険信号といたしましては、既開発林の成長量に対するというものもあながち意味がないということではないと考えまして、両者の場合かをいつも比較することにいたしております。
  58. 北條雋八

    ○北條雋八君 安全をとる上におきまして非常にけっこうと思いますが、既開発林を伐採している間に、いわゆる延長の林道とか新設の林道もできますので、あながち成長量の三倍を過伐しているということまで考えないでもいいんじゃないかと思うので、伺ったような次第なのでございます。いずれにしましても、過伐を一刻も早く安定させるために、林道の開設、あるいは林種の転換、あるいは育種事業の促進とか、あるいは最近では林地施肥というようなことで研究をされていることは、よくわかりますけれども、先だって私は九州に参りまして見たのでありますが、非常に阿蘇山の山麓とか、あるいは東北地方にもありますが、入会の原野というものが非常にむだにされているように思うのであります。こういう採草原野地、また特に九州地方ではボタ山の造林ということまで考えさせられるわけでありますが、まだ林地になる所があるんじゃないかというような気がいたした次第でございますので、こういうような意味から、政府の方でなお採草原野地の改修というようなことを考えておられるかどうか、伺いたいと思います。
  59. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) なるほど、御指摘のように、阿蘇山麓一帯につきましては膨大な原野状態の所があるわけでございまして、ああいった所をどうしてほおっておくのかという問題があるわけでございますが、そういう所につきましては、御承知のように、なかなか造林が困難だというようなこともございまして、従来なかなか思い通り進んでおらないという実情にあるわけでございますが、現在の地域に対しましては、県といたしましてあの地域の利用化という問題を大きく取り上げておるわけでございます。私どもは、それを一つの県の造林推進の中心題目といたしまして推進していくというようなはからいを、実はいたそうかと考えておるわけでございます。また福岡県におきましては、ただいま御指摘のように、ボタ山の造林というようなところまで問題が進んでおるわけでございます。こういうところにつきましても、すでに安定いたしましたものにつきましては、造林事業として取り上げて参りたい、かように考えております。
  60. 北條雋八

    ○北條雋八君 現在ボタ山の造林に着手されて、その実績はどのくらいあるのですか。
  61. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) ほんのまだ、本年度に着手をしたというような状況で、至って微々たるものでございます。ただ、あれが全部やれるということになりますと、相当広大なものが造林対象になるというふうに、私ども承知しておるわけでございます。
  62. 北條雋八

    ○北條雋八君 先ほど外材輸入につきまして委員から御質問がございましたが、日ソ協定もできました今日、漁業の方でも現在折衝中でありますが、将来は、日本の林力を休めるために、できるだけ外材輸入を多くするために、特に北洋材、それに対して何か将来手を打つというようなお考えは、現在はお持ちでありましょうか、どうでしょうか。
  63. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 国内針葉樹資源の急激な減少に対応いたしまして、できるだけこれらの状態を緩和するということのために、外材、なかんずく針葉樹材の輸入を期待いたしたいことは、御指摘の通りでございまして、先ほどの御質問に対しましてお答え申し上げましたように、やはり今後私どもの期待いたします地域はソ連でございまして、現在のところいろいろと隘路はございまするが、ぜひともこれを軌道に乗っけまして、できるだけすみやかに大量に入って参りますような状況に対して、大いに私どもといたしましても研究し、かつ進めて参る必要がある、かように考えておる次第でございます。
  64. 北條雋八

    ○北條雋八君 これはぜひ将来、もっと積極的にお考えになっていただきたいと思う次第でございます。  なお、時間がございませんから、もう一点だけ伺いたいのでございますが、まあ林業国でありまするわが日本の林業技術というものを、中南米その他の林業移民と申しますか、そういう方面に生かして、森林資源のまあ節約と申しますか、また人口問題、住宅問題にもからめて考えていく余地はないでしょうか、どうでしょうか。そのお考えを伺いたいと思います。
  65. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 御指摘の事柄につきましては、十分に研究させていただきたいと、かように思っております。
  66. 柴田栄

    ○柴田栄君 日本の特殊な気象等からいって、治山治水の問題と林業というものは、切っても切れない宿命と思われるわけですが、それと関連して、まあ現状においては伐採と植栽とが非常にアンバランスになっておるということで、いろいろ苦慮されて、一面において生産を増すこととあわせて、造林を思い切って促進して、成長量を増してバランスをとっていきたいと、こう考えておられることも非常によくわかるわけですが、まあ現在において最大の努力をしても、昭和七十年度においてまだバランスがとれないんだという状況下において、現在治山治水を主体として保安林の整備を進めておられるはずですが、保安林の整備も、実は施業を制限し経済的な活動を制限するということになれば、何か現在以上に国家が相当補償するということがはっきりしないと、この施業を完全に保安林として守らせるということは、相当困難があるんじゃないかという気がするが、その点はどうなんですか。
  67. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) お話のように、国有林野整備臨時措置法によりまして、現在主として河川流域の上流地帯にありまする森林についての保安林の整備事業を進めておるような段階でございまするが、お話のように、保安林を保安林として的確に扱って参りまするためには、当然特殊な施業上の制約というものが行われて参らなければならない。現在地域的に指定をしております公益保安林の中には、当然そういうような意味合いからいたしまして、極力許し得る限りの施業の完成をはかられる地帯も含まれておりますが、保安林の本質に徴しまするならば、やはり施業制限が重要事項の一点に相なってくることは当然と考えるわけであります。そういうことになりまするというと、適切な補償制度というものが、うらはらで運用されない限りにおきましては、なかなか保安林制度の効果を維持するという点について問題があろうかと、かように考えておるわけでありまして、これは必ずしも補償制度の問題と直接に関連するわけじゃございませんが、同じく先の法案に基きまして、昭和二十九年以来、重要保安林の一部を国で買い上げまして、その後民間にやらせるということをやって参っておるわけでありますが、やはり依然として補償制度の問題は重要だと、私はかように考えておるわけでありますが、いまだなかなか的確な補償制度の案を得るという段階に至っておらぬわけでありますが、さらに研究を進めまして、すみやかに成案を得たいと、かように考えておるわけであります。
  68. 柴田栄

    ○柴田栄君 保安林整備が臨時措置法によって進行していると思っておりますが、大体計画通り進んでおりますか。
  69. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 二十九年度におきましては、御承知通り、一応十五億の買い上げ予算があったわけでございまするが、それによりまして五万町歩森林を買い上げるという予定が、五万二千町歩買い上げまして、金額といたしまして二十億五千万円使ったわけでございます。翌三十年度におきましては、約三万五千町歩、金額にして約十二億でございます。本三十一年度におきましては、これは国有林野事業特別会計の益金をもって買う仕組に相なっておりますので、この会計の内容が非常に苦しかったということから、大体見込みといたしましては一万二千町歩に相なっております。金額といたしまして約四億の見込みでありますが、明三十二年度の予算案におきましては、一応会計といたしまして十億を計上しておりますが、これは現在の見通しからいたしまするならば、ほぼ完全に実行し得る、かように考えておるわけであります。従いまして、予定といたしましては、年間五万目標というものばだいぶズレておりますけれども、次第にこの会計の好転とともに、目標計画に近づいていきたい、かように考えておるわけであります。
  70. 柴田栄

    ○柴田栄君 まあ整備計画、あるいは整備計画に伴う重要保安林の買い上げ等は、多少のズレはあるかもしれませんけれども、進行しておると、こう思われるんですが、かりに買い上げが予定通り進行しても、まだ重要な保安林について、民有で経営してもらわなければならぬものが相当残るというふうに考えられますが、これは将来の植伐の均衡、林産物の需給のバランスという点からいって、造林計画を長期に進めておられるようですが、今後の長期造林増大計画というのは、文字の上では割合に簡単に、現在の民有の造林地五百万町歩前後というものを、将来八百万町歩にするんだ、国有林が現在百万町歩前後だというものを、三百万町歩までふやすんだ、こういう御計画なんで、国有林については、これはやる希望ならばできるということにはなると思うんだが、全森林の、しかも経営可能の森林の五〇%近いものを人工植栽林にして、成長量増大し確保するということには、相当以上の手を打たないと、実はなかなかむずかしい、こういう気がするんですがね。  まあそのことを考えると、もちろんそれはあらゆる手を講じてやってもらわなければならぬのだが、将来を考えると、どうしてもこれは国土保全、治山治水のために、保安林の十分なる機能を発揮する最低限度の保安をしていただかなければならぬ、こういうふうに考えるわけで、今回の森林法改正には、主として事務的な問題を多く取り上げられたようですが、近い将来にこの問題を検討して、ぜひとも保安林の制度にまで法的な整備をしていただきたい、こういう気がいたしますが、これに対するお考えはいかがですか。
  71. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 御承知通り、この現行森林法の中で、保安制度部分というものは非常に重要でもあり、かなり大きな部分を占めておるわけであります。昭和二十六年に本法律の改正がありました以後、保安林整備臨時措置法といったようなものによりまして、緊急に保安林整備対策を打ち出しておるという状況にも相なっておりますので、ただいまの趣旨を十分に取り入れまして、すみやかな機会にそれらの問題を取り入れての森林法改正といったようなことにつきましての研究を進めて参りたい、かように考えるわけであります。
  72. 上林忠次

    ○上林忠次君 本日の審議を聞いておりまして、私考えるのに、今の森林でさえ、日本の資源としての山は、十分利用されておらぬじゃないかというところに重点が置かれておると思うのであります。われわれがあちこち回りますときに見かけます、はげ山がたくさんある。山を切ったままで、あと植栽されておらぬ。農林省におきましては、相当厳重にこれを監視しながら、また規制をしながら、すぐに植栽に移れるという準備をしておられる、計画のもとに進んでおられるということを聞いておりますけれども、そのやり方がまだ緩慢じゃないか。そのやり方がわれわれの目に映って、これは惜しいじゃないか、この山はどうするのか、これほど植栽々々ということをやかましく叫びながら、植栽の実は上っておらぬじゃないか、どこかに手落ちがあるんじゃないかということを、私も実は感じるのであります。  伐採した山は、規則によりまして、二年以内とか三年以内に植栽すべしというふうなことになっているかどうか知りませんが、二年、三年というその間がブランクができているじゃないか、早くそのブランクをなくさなければいけないじゃないか、それほど日本の森林の植栽という問題は熱を出さなくちゃいかぬ大問題じゃないか。ドイツあたりが盛んに植栽をやかましく言ったあの当時の規則は、どうなっておりますか、それも参考にしていただきたいんですけれども、この狭い日本の国を考えますときに、特に日本においてはそういうような伐採後の植栽、これをやかましく言わにゃいかぬじゃないか、まだ言い足らぬところがあるんじゃないかと思うのであります。私は前にも、苗床が少い、苗圃が少い、果して切ったあとすぐ植えるだけの苗床の準備がないじゃないか。それだけ植える期間がおくれる。おくれるだけそれだけ山がはげになるんだ、それを早く取り戻さなくちゃいかぬ。それには、政府で苗床は早く準備する。準備して、それを切った跡にはすぐ植えるという計画をする。また民間におきましても、相当な苗木の準備ができない限り切らさぬぞと、伐採ささぬぞ、期限が来ておっても伐採ささぬというところまでいかないと、はげ山は絶えないのじゃないか。その結果はまた、一雨降ると、ちょっと異常な雨が降ると、すぐ日本では災害が起きる。こういうような土地はないじゃないか。日本のようなこういうような、まあ風が吹くと電灯が消えたり、電車が、交通機関がとまったり、山が荒れる、海岸線が特に荒らされるというような、こういうような特殊な土地は、早いところ、この林野関係仕事をしている皆さんが、もっとこの安全な日本の地帯を造成するということに努力してもらわなければいかぬじゃないかと、私は考えるのであります。  またもう一つ考えられますのは、日本は耕地は相当ローテーションをうまくやりまして、有効に利用しておりますけれども、これに比べると、山の方は至って放任主義になっているじゃないか。相当な規制はあっても、その規制がまだ行き渡らぬところがある。また規制が甘いという点で、畑に比べては、この狭い日本でありながら、十分に土地は利用されておらぬということを痛感するのであります。今回も大きな問題として、樹種の問題が出てきております。適地適作、これは農作物ではとうから叫ばれている問題でありますが、こういうことが言われておるのは最近の問題じゃないか。有用な材を造成して、まきのような安いものはなるべく転換していく、時代に即したわれわれの産業のバックになりますような樹種をふやしていく、これももっと早くやらなければいかぬ問題であります。私は今回のこの農林省の植栽の将来の方向、これに対しては満幅の賛意を表するのでありますけれども、それでは今の民間で使っておる燃料へのこの規制はどうしているか、自由にふろにたかし、かまどにもたかしている。何とかかまどの改造、ふろの改造というようなことも早くやらなければいかぬじゃないか。でたらめに山を切らして、これをふんだんに燃料として使っている、こういう点からも、また農林省のこの森林関係を受け持っておられる皆さんとしては、消極的な増産ということにももっと力を尽してもらわなければいかぬじゃないかということを考えるのであります。そういうようなことについてどういう工合な手を今から考えておられるか。  もう、お聞きしたいのでありますけれども、まあ時間が逼迫しておりますので、私あまり御返答をいただくのも恐縮ですが、そういうようなことも考えますし、森林が自由に、ほんとうに日本の森林として自由に使えるような有用な効果を現わすためには、今の民間で放置しておいてはこれはもうなまぬるいというなら、これはいつかもお聞きしたことでありますけれども、山を国有にしたらどうか。国でちゃんと伐採期間をきめて、これに対する準備を、あとの植栽の準備をしながら、うまくローテーションをやっていくというところまでいかないと、まあ先ほどの災害の問題から考えましても、今のままじゃあまりに甘過ぎるやり方じゃないか。  それから、これはちょっと局部的な問題になりますけれども、まあ適地適作というところから考えて、ショウノウの原料であります樟樹、これの植栽計画、将来に対する見込みですな、このショウノウ事業の見込み、こういうようなことに対してはどういう工合にお考えになっておりますか。どういうような計画で今立案されておりますか。  その雑多な点でありますけれども一つかみにしてお話し願いたいのであります。
  73. 石谷憲男

    政府委員石谷憲男君) 植栽事業が、いろいろ林野庁でも力を入れておるにかかわらず、なかなか進んでおらないという実態が至る所に散見できるじゃないかというお話でございますが、先ほど御説明申し上げましたように、終戦後の昭和二十五年におきましては百十五万町歩のいわゆる造林未済地というものがあったにもかかわらず、本三十一年度にはそれらが全部解消された。従いまして、さらに将来の木材に対しまする需要増大というものを見通しまして、今から林種転換等により拡大造林を実施して参りたいと、こういう状況にあることを申し上げたのでございますが、今回のこの森林法改正案の中にも一つ取り入れておりますけれども、まあ国有林民有林とあまたある中で、一番やはり荒廃の顕著なのはいわゆる公有林であるわけであります。公有林の場合におきましても、都道府県有林あるいは市町村有林に対しまして、いわゆる部落有林というものが非常に荒廃している。これは複雑な入会権等がありまする関係上、なかなか的確な造林の対象にならぬ、こういうような姿が実はあるわけでございます。そこでこれらを救済いたしまするために、昨年の二十四国会におきましては、公有林野官行造林法の一部改正をいたしまして、従来造林の対象になり得なかった部落有林に対しましてもこれを百行造林事業の対象にしよう、こういうことを実はもくろんでおるようなわけでございまして、おそらく御旅行なさいましていろいろと目につきます対象は、そういったこの入会のある部落有林というようなものじゃないか、かように考えておるわけでございます。国有林はもとよりでございまするが、この一般の私有林につきましても、事実造林事業の実績は顕著に上っております。それほどの御心配をいただくような状況は現在のところはまあないわけでございますから……。ただし、先ほども柴田先生の御指摘がありましたように、私どもの掲げておりまする目標を相当に追及して参ります場合には、幾多問題があると、かように私ども考えるわけでございます。  苗木の点でございますが、これは終戦後におきましては、確かに苗木不足というものが造林推進の実の上らなかった大きな原因であったわけでございますか、今日におきましては、地域的に多少過剰苗木ができるくらいまで、苗木の準備というものは、国、民間ともに充実をいたしておるという状況でございまして、苗木問題については大した心配は要らないと私どもは考えております。  それからもう少し的確に、国有化すべきものはして、強力にやったらいいじゃないかということでございますが、ただいまも申し上げましたように、重要な水源地にありますような民有林につきましては、やはり国有林化が至当だという考え方から、これを国で買い上げて、その後の維持管理に当るというようなことで、現にやっておるわけでございますが、普通林につきましては、私ども必ずしも国有林化することが政策上正しい方法だとは考えておらぬ。すべての森林立木につきましては、とにかく許可かあるいは届出ということでやっております。現行森林法の的確な運営を期するだけでも、まあ私どもといたしましては、かなりやかましい桎梏が森林仕事にはあるものだというふうにお考えいただけるのじゃなかろうかと、かように考えておるわけでございます。あげて森林法の適切な運用によりまして、ただいまの御不満のある向きにつきましては善処して参りたいと、かように考えているわけでございます。  それから、ただいまショウノウの原料になりまするクス林の話が出たのでございますが、私どもといたしましては、これは御承知のように、主として適地は九州南部にあるわけでありますが、天然生林につきまして、これをショウノウの用途に当てるということはもとよりのこと、適地につきましては、やはり必要の契約に従いまして新しい造成を考えて参りたい、こういう方針であるわけでございます。
  74. 堀末治

    委員長堀末治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  75. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して。  他に御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 堀末治

    委員長堀末治君) 御異議ないと認めます。  それでは、これから討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明かにしてお述べを願います。
  77. 北村暢

    北村暢君 私は、この法案につきまして付帯決議案を付して賛成をいたしたいと思います。  ここで述べられておりますように、森林伐採は、毎年の生長量に比較いたしまして相当の過伐になっているのが現況であります。この際において、広葉樹の伐採規制の緩和をするということは、これの裏づけとなる造林事業の強化がなければ、はなはだ危険であると思うのであります。しかも、今度の改正案の趣旨によります林種転換を主体とするところの造林事業、これは従来の造林未済地の解消を主体とする造林事業よりも、はるかに技術的にも経済的にも困難であると思われるのであります。そういう点からしまして、私は、林種転換を主体とする今後の造林事業を完遂するためには、どうしても政府の適切な処置というものが必要でありまするので、以下付帯決議をつけたいと思うのでございます。次に読み上げますので、御賛同をいただきたいと思います。    付帯決議案   林種転換を主体とする造林事業を  完遂するためには、次の諸点につい  て政府はいかんなく措置すべきであ  る。  一、事業の困難性にかんがみ強力な   る助長の途を講ずること。  一、薪炭林面積の縮小にともなう原   料林の減産防止のため、残存薪炭   林の改良の方図を講ずること。  一、造林樹種の選定に誤りなきを期   するため適地適木調査を全国的に   実施すること。  一、造林成績を向上せしめるため、   優良種苗を確保すること。  以上でございます。
  78. 堀末治

    委員長堀末治君) 他に御発言ございませんか。  他に御発言がなければ、これより採決をいたします。森林法の一部を改正する法律案を、原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  79. 堀末治

    委員長堀末治君) 全員一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、討論中述べられました北村君の提出の付帯決議案を議題といたします。北村君提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに、賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  80. 堀末治

    委員長堀末治君) 全会一致と認めます。よって北村君提出の付帯決議案は、全会一致をもって、本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容、議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によって、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 堀末治

    委員長堀末治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。なお本案を可とせられた方は順次、御署名を願います。    多数意見者署名重政 庸徳清澤俊英秋山俊一郎佐藤清一郎下條 康麿仲原 善一北村  暢上林 忠次島村 軍次東  隆青山 正一雨森 常夫柴田 栄田中 啓一安部キミ子鈴木  一北條 雋八千田  正
  82. 堀末治

    委員長堀末治君) なお、ただいまの付帯決議案に対しまして、農林政務次官から発言を求められておりますから、この際発言を許します。
  83. 八木一郎

    政府委員(八木一郎君) ただいま全会一致御決議になりました御趣旨は、政府におきましてもこれを尊重し、適正な法律の施行と相待って、御期待にこたえることにつきまして、一段と努力をいたす覚悟でございます。
  84. 堀末治

    委員長堀末治君) これにて、暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩    —————・—————    午後二時三十九分開会
  85. 堀末治

    委員長堀末治君) それでは、午前に引き続き、委員会を再開いたします。  特定多目的ダムに関する件を議題にいたします。  この件について、過日内閣から特定多目的ダム法案及び特定多目的ダム建設工事特別会計法案が予備審査のため送付され、前者は建設委員会、後者は大蔵委員会にそれぞれ予備付託になって審査中のものでありますが、これらの法律案はいずれも農林水産業に大きな関係があるものと考えられますので、当委員会においても当局から説明を聞き、その取扱い方について御協議を願う必要があると存じまして、本日議題といたした次第であります。  なお、この問題については、政府からの出席は建設省河川局次長の美馬君、開発課長小林君、農林省理部長の立川君が見えております。  まず、当局の説明を求めます。
  86. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) それではざっと、提案理由は、要綱を抜粋したものでありますから、要綱を中心お話を進めて参りたいと思います。  それでは、この要綱に入る前に、この法律を提出するに至りました理由でございますが、これは提案理由にはございますが、この多目的ダム法は、多目的ダム建設工事特別会計法と、この二つの法律がうらはらになっておりまして、これによりまして、私ども昭和二十五年以来河川総合開発事業といたしまして、いろいろ多目的ダムの建設を推進してきたのでありますが、近時多目的ダムの建設につきましては事業をできるだけ促進したいと。と申しますのは、民間あたりでやるダムのスピードに比べまして、予算等の関係からなかなか政府予算では思うように進捗が伸びないというような点であるとか、あるいは従来この多目的ダムにつきましては共同工事と申しまして、国と電気事業者、たとえて申しますと県営電気であれば県でございますし、それから電源開発会社とかあるいは電力会社とか等と、共同事業という形でやっておったのでありますが、その共同事業という形をとりますと、途中の経理等につきまして二重帳簿等を整えなければならず、そのやりくり等が非常に不明朗でありましたので、この際こういう点を是正すること、すなわち経理の不明確化を是正することと、それからでき上りましたダムの管理が、従来の形で申しますと、共同施行のために一つのダムにつきまして共同の所有権があるというふうな形で、これが非常に不自然な形でありましたので、こういう点を解決する意味合いにおきまして、この法案を提案したような次第であります。  この提案の理由はそういうことでございますが、内容を申しますか、お手元にお配りいたしましたこの法案要綱というものに基いて御説明申し上げたいと思いますが、まず最初の法律の目的でありますが、「この法律は、多目的ダムの建設及び管理に関し、河川法の特例を定めるとともに、ダム使用権を創設し、もって多目的ダムの効用を速やかに、かつ、十分に発揮させることを目的とするものとする」、これは従来私ども多目的ダムは法律の根拠は、河川法という法律がありまして、この河川法に基いてやっておったのでありますが、ただ多目的ダムは新しい形をとっております関係上、この河川法ではなかなか処置し切れないいろいろな問題がございますので、そういう点を、この法律を作りまして河川法の特例としてやろうということでございます。  第二はダムの定義でございますが、「この法律において「多目的ダム」とは、建設大臣が直轄で建設するダムで併せて発電、水道又は工業用水道の用(以下「特定用途」という。)に供せられるものをいうものとすること。」、この法律において多目的ダムとは、私ども総合開発事業といたしまして直営事業、補助事業をやっておりますが、補助事業の方はこの法律では多目的ダムとは申しませんで、直営事業だけを多目的ダムとして扱っております。  それから四でございますが、「建設大臣は、多目的ダムを建設しようとするときは、建設しようとする多目的ダムに関し、貯水池の利用計画並びに建設費及びその分担に関する事項等を定めてその建設に関する基本計画を作成するものとすること。この場合において建設大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県及びダム使用権の設定予定者の意見を聞くものとすること。」、これは、従来とても私ども総合開発事業をやる場合におきましては、各省と事実上においてはいろいろ意見の交換をしておったのでありますが、今回法律によりまして、正式に基本計画を立てるときには、関係各省並びに関係府県の知事等の意見を聞いたり、協議したりするというふうにいたしまして、横の連絡の密接なることをはかったのでございます。  それから五項でございますが、「ダム使用権の設定予定者は、多目的ダムの工事に要する費用の一部を負担しなければならないものとすること。」、これは今度の法律によりますと、従来共同施行という形をとっておりましたが、今度は国が一元的に施行いたしまして、そのかわりに、相手方に対してそれ相当な必要な経費を分担してもらうということでございますから、その経費の分担の根本原則を法律に規定いたしまして、この分担の根本原則は、電源開発促進法にございますいろいろ共同事業をやった場合に各目的者が持ち合う率を大体踏襲していこうと、こういうふうな構想でございます。  それから七、八でございますが、「建設大臣は、ダム使用権の設定をするときは、設定の目的並びにダム使用権により貯留が確保される流水の最高及び最低の水位並びに量を明らかにして行わなければならないものとすること。」「ダム使用権は物権とみなし、ダム使用権登録簿に登録するものとすること。」、これは主として今回特定用途の利用に対して与えられまする。ダム使用権について規定したのでございまして、従来は共同事業という形におきまして、相手方は、中途半端ではございますが、共有というような一部の所有権を持っておったのでありますが、今回はその所有権関係はございませんで、そのかわりに、はっきり物権の取扱いをいたしましたダム使用権というのを設定いたしまして、従来の立場と全く同一な強みを持たしたのでありまして、そういうダム使用権を物権関係としたための必要な規定を入れておきました。  それから十でございますが、「河川の附属物として認定された多目的ダムで、二以上の都府県の区域にわたる河川に存するもの及び政令で定めるその他のものについては、建設大臣が管理を行うものとすること。」、これはこういうふうにしてできました多目的ダムの管理をだれがやろうかということでございます。現在の河川法の建前から申しますと、こういう河川の工作物は河川管理者である知事が管理するという建前ではございますが、しかし現行法におきましても、これが二府県以上にわたったり、あるいは非常に技術的に困難な場合が出たり、建設大臣が直轄工事をしたような分については、建設大臣がみずから管理をすることができるということになっておりますので、その意を受けまして、このダムにつきまして、二府県以上にわたる区域のダムであるとか、あるいは一府県内のダムでありましても操作が非常に困難であるものとか、あるいはまたダム群が存在しまして、その一連操作をやはり大臣がやらなきゃならぬというふうな場合におきまして、これを建設大臣がやろうという構想でございます。  十一でございますが、「建設大臣は、あらかじめ関係行政機関の長に協議するとともに、ダム使用権者の意見を聞いて多目的ダムの操作規則を定めるものとすること。」、これはできましたダムの操作規則でございますが、この操作規則はダム管理上非常に根本的な方針を定めるものでございますが、こういう操作規則を定めるについては、相手方、ダム使用権者の意見は十分に聞いた上、さらに所管の各関係省庁の意見を十分に聞いて規則を定めようと、こういう趣旨でございます。  それから十三でございますが、「多目的ダムによって貯留される流水を特定用途に供するため必要な水利使用の許可は、建設大臣が行うものとすること。この場合において、建設大臣は関係行政機関の長に協議するとともに関係都道府県知事の意見を聞くものとすること。」、これは現行河川法では、水利使用の許可は知事がやることの建前になっておりますが、この建設大臣が直営するダムにつきましては、ダム使用権も建設大臣が与えることになりますから、それとうらはら、一体の関係でありまする水利使用の許可も、相手方の立場も十分考えまして、これは建設大臣がみずからやるというふうな建前をとったわけでございます。  十四、「現に国と発電事業、水道事業又は工業用水道事業を営む者とが共同して設置し、又は建設しているダムは、これらの事業を営む者の持分が国に帰属した時において、多目的ダムとなるものとし、この法律を適用するものとすること。」これはこの法律を施行するための経過規定でございまして、従来、この三十二年度におきましても、建設大臣がすでにこういう意図のもとにやっているダムがございますから、そういうダムにつきましては、相手方と話し合いをして、相手方が承諾しまして、この持分が国に帰属したときにおいて初めてこの法律の適用があるという建前をとっております。  十五でございますが、「十三の措置に伴い、河川法の一部を改正し、建設大臣が水利使用に関する処分をし、又は都道府県知事の処分につき認可をしようとするときは、関係行政機関の長に協議するものとすること。」、これは、先ほど水利使用の問題がありましたが、この際、従来各省間で問題になっておりました水利の処分につきましては、横の連絡を密接にする意味におきまして、この法律をもちまして河川法の一部を改正いたしまして、建設大臣が処分をしようとする場合には、農業に関係ある分は農林大臣、発電に関係ある分は通産大臣と、それぞれ関係の所管の大臣に十分協議いたしまして円滑なる遂行をやりたい、こういう趣旨改正でございます。  以上簡単ではございますが、特定多目的ダム法案の概略を御説明申し上げました。
  87. 堀末治

    委員長堀末治君) 農林省の農地局管理部長、何かあなたの方の立場から、これに対する御意見ありませんか。
  88. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 特定多目的ダム法案でございますが、ただいま御説明のありましたような内容法律案でございまして、その運用あるいは法律の適用の際に、農業関係に関与するところがいろいろ出てくるわけでございます。そこで、この法律案を政府の内部で立案をいたします過程におきましては、建設省とも十分よく打ち合せをいたしまして、この法律の実施について、法律の内容について、農業関係の問題が円滑に処理されまするように十分協議をいたした次第でございます。  で、その内容は、ただいま御説明がございましたように、農業関係にいろいろ影響のありまする事項につきましては、一つ一つ個別の問題につきまして関係の省庁と相談をするということ、それから重要な内容のものにつきましては政令でもっていろいろ規定をする。かようなことによりまして、十分農業関係との運用は円滑にいくだろうという工合に考えておる次第でございます。
  89. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 第二条において、多目的ダムの定義を規定してありますが、これによりますと、河川法の規定によって建設大臣が新築するダムで、発電、水道または工業用水の目的に供与されると思うのでありますが、現に建設省において建設せられておるダムも、この農業用水、いわゆる灌漑用水を適用する場合が相当ある、この取扱いはどういうようにやりますか。
  90. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 私ども灌漑の場合に、まあ一般的な湯水増というふうな立場である程度、専用的な立場が比較的少い、一般的に増水するというような場合がございますが、こういうふうな場合は、この第二条にあります河川法第八条の第一規定によりみずから行うダムと、こういう前段に入っておると考えておりますが、特定施設等を設けまして、また土地改良あたりがやる場合がございますが、それはこの法律案では七ページの第十条に「専用の施設を新設し、又は拡張して、新築される多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水をかんがいの用に供する者は」、というふうなことで第十条に規定をしておりますが、これによってやはりやっていこうというふうな気持を持っております。
  91. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 各省庁とよく協議すると申されますが、従来、建設省において施行したいわゆる多目的ダムで、農業用水の関係農林省との協議が完全にととのわないのに施行した例が相当あるのですが、そういうときにはどうやるお考えですか。
  92. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 私ども、この多目的ダムを実施いたします場合には、もちろんこういう法律上の根拠も必要でございますが、現実にはこの予算がつきまして実施するわけでございます。従来こういう法律はございませんが、予算の折衝のときに、現実の問題として各省間で話がつきませんと、予算がつかなかったのであります。こういう建前でございまして、私ども現実に事実上の連絡を農林省なり通産省とやって参っておったわけでありまして、意見が全然食い違って一方的にやったということは従来はないと、こういうふうに考えております。
  93. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 私はあるように思うのですがね。そうすると、今度は多目的ダムの特別会計に入れた各ダムの経過実情ですね、協議のそれを示してもらいたい。私はあると思うのだが、あなた方はないと言うが……。
  94. 小林泰

    説明員小林泰君) 今の御質問でございますが、多目的ダムの計画を建設省で実施いたしましたのは昭和二十四、五年ごろからでございますが、その当時多少関係各省との協議か不十分であった問題は、御指摘の通り過去においてはあると存じます。ところが、電源開発調整審議会に関連しまして、つまり電源開発促進法の費用負担の政令が出まして以来は、関係各省の間に覚書がございまして、そういう多目的計画につきましては、関係各省で予算要求前に十分な協議をするという協定になっておりまして、実はここにあげております特別会計の十二地点につきましてでございますが、特に農林省の問題に限定して申し上げますと、荒川の二瀬につきましても農林当局との協議をととのえまして、すでに最近費用配分の決定をみることになっております。それから肱川は農業用水の関係でございませんが、岩木川につきましては、これも農林省の農地局と御相談の上、最近費用配分が決定されることになりまして、先週関係各省の協議をととのえてございます。それから岩手県の和賀川につきましては、これは農業の開墾事業の方がまだ調査中でございまして、最終的な計画の決定がされておりませんが、ダムに対する費用負担について農林省の意見は、一応私どもの方へ事務連絡として提出されておりまして、これについてはただいま直ちに費用配分を決定する段階まで至っておりませんが、三十二年度早々において協議いたしたいと存じます。それから球磨川の計画につきましては、これは農林本省の方でも、ダムの費用負担について、最近最終的な費用負担の限界というものについての案がまとめられたような結果になっておりまして、これも最終的な費用配分の決定は、和賀川同様、三十二年度に入りまして、なるべく早い機会に決定するというところまで協議がととのっております。それから新規の事業といたしまして、宮城県の名坂川の計画がございます。これにつきましては、農林当局としても、県の方からの意見の申し出が多少おくれた関係がございましたが、三十二年度の予算決定の前に両省の協議がととのって、農林省からの意見の提出が私どもの方へ参っております。それによりまして大蔵省の予算決定を見たわけでございます。  それから実施計画の調査が、地点が三カ地点ございまして、雄物川と鬼怒川と揖斐川、この三河川でございますが、これは来年度におきまして、ダムの多目的計画の基本計画を確定する段階にまで調査計画を進めることになっておりまして、これにつきましては、鬼怒川については、農林省としても、鬼怒川筋の渇水補給上緊急に実施してほしいという御要望がございました。それから皆瀬川につきましては、かねてから農林省も渇水補給の調査を進めておった地点でございまして、この雄物川の計画については、農林省としても費用負担の問題については最終的な結論はまだ出ておりませんが、このダムの実施に当っては異議はないというふうな意見を印し出ております。それから揖斐川の横山につきましては、農業の方の調査が実はまだ県の方の調査の段階でございまして、ほかの地点に比べますと、農業の関係調査が多少おくれておりますが、揖斐川水系付近として、水の不足が著しい関係から、この横山において貯水池を建設することについては、農林省としても異議はないという御回答を得ております。
  95. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 河川局の次長ですかの今の御答弁によると、各省の調停がつけば予算がついたり、各省の調停がつかねば予算がつかぬという、そういう考えでやるから、ものを間違えると思う。そんな原則はないので、それは非常に重大なる過失ですよ。そういう考えで仕事を進める例をあげると、これは直接建設省の関係でないかもわからぬけれどもが、しかし建設省が認可している。これは昨年私はこの席で問題にした北海道の糖平ダム、電源開発でやっている。これは下流の二千町歩の農業用水というものの意向も聞かずに、一方的に電源開発のダムを認可してしまった。この問題は御承知でしょう。それで、ここで取り上げて、初めて建設省なり通産省なり、北海道庁なり開発庁なりが問題にした。まだ解決しておらない。そういう重大な過失がある。これも予算がついて仕事をしておるでしょう。だから、そういう考えをもってやるということになると、私は必ずしもこの多目的ダムには反対ではないけれどもが、そういう施行のやり方を、観念をもってやるとなると、これは反対せざるを得ない。君、間違っているのじゃないですか。
  96. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 私の申し上げようが多少誤解を与えたようで恐縮に存じますが、私ども、予算の点でそういうことを申し上げたのじゃなくて、従来とてもこの多目的ダムの問題につきましては、関係各省、特に農業の問題につきましては農林省と、円滑に事実上の連絡はとっておったということを申し上げたのであります。今度この法律によりましてその点ははっきり、基本計画を決定する上におきまして、関係各省が協議いたして、そこで初めて意見の一致をみてやるという建前に立っているのでありまして、その点は従来とてもやはり、今後とも同じような気持でやっていきたい、関係各省の連絡は十分とっていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  97. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 そうすると、前の御答弁が間違いで、とにかく各省の連絡協調がとれねば予算ができぬ、従って、予算が確立したら、各省の連絡協調がとれたように思うというのは、間違いでしょう。
  98. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) そういうことは間違いでございます。
  99. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 次に、第十条におきまして、灌漑用に供する場合の受益者負担金を規定してありますが、従来かかる制度はなかったように思うのです。このたび何ゆえにこの農民の負担制度をここで初めて設定したか、しかもこの「十分の一以内」というような規定を設けてあるのは、これはどういう理由ですか。
  100. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) なるほど仰せの通り、この規定は従来事実上にはやっておらなかったのでありまして、現在私どもが特別会計で計画しておりまする継続中の、すでに基本計画が事実上まとまりましてやっておる七つのダムにつきましては、この法律の適用はしないということを付則でやっております。ですから、十条が新しく適用していくのは、今後新しい計画を作ってやっていくこれからのダムについての問題でございます。  じゃ、なぜそういうふうな立場をとったかということでございますが、これは私どもの解釈では、従来、こういうものは従来のやり方でいいのじゃないかというふうな意見でもございましたが、しかし一方農林省の方でやっておりまする土地改良事業等のバランスもございまして、そういう点で政府内部の問題をよく比較バランスをとりまして、こういう十分の一という、一割というふうな額をきめたのでございますが、この一割の問題につきましても、なぜ土地改良とぴったり数字が合わないのかというふうな意見もございますと思いますが、これは二つ理由がございまして、一つは、大体従来のいきさつで全然とっておらなかったのでございまして、これを今後新しいダムからとるというふうな一つの立場をとったために、従来のまあ歴史的と申しましょうか、そういうふうな立場から一割にきめたのと、それからもう一つは、土地改良事業で行われる事業は単一目的でございまして、直接その効果を確保することを目的とするものでございますが、この点、多目的ダムの場合には、出水の状況に応じまして洪水調節を行う等、その操作によってそれぞれの目的に対する効用を調整する立場があるのでございまして、こういう点と前に申しました歴史的な従来のいきさつから申しまして、全部の費用の一割という率をきめたわけでございます。
  101. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 どうも、一割の基本というものがはなはだどうも明らかでないように思うのですが、それはさておいて、この農民の負担をとるのはどういう法律によってとるのですか、あるいは土地改良法によって徴収するのですか。
  102. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) これはこの多目的ダム法によって、この規定に基いてとるわけです。
  103. 東隆

    ○東隆君 ちょっと関連して。今の場合に農民が負担をするというのですが、逆にですね、この多目的ダムでもってたとえば電源のために水道を通す、水を供給する、そして非常に冷水がたんぼに流れてくるので、そのために非常に大きな損害を受けるような例が、寒冷地にはたくさんある。そういう事態がたくさんあるのです。それはいつも電気会社と折衝をするのだけれども、なかなかうまくいかない。それに対する何か救済の規定がこの中にありますか。
  104. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その問題は直接にはございません。
  105. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 そうすると、農民から、多目的ダムの法律によると、何か徴収の規定でもあるのかどうかしらぬが、農民個々からとるのですか。おそらく個々からとるということになるのじゃないかと思うのですが、どういう農民の個人からとるのですか。
  106. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 私どもの方で考えておりますのは、土地改良区等を対象にしておりますが、結局個々から徴収されるということになるだろうと思います。
  107. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 それはおかしいので、農業団体、土地改良区からとるならば、土地改良法によって徴収するよりほかに方法がないと思う。払わぬというときにはどうするのですか。そういう場合が生じてくるだろうと思うのだが、こういうやり方をすると。
  108. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その点につきましては、現行河川法でも、受益者から受益者負担金をとるという規定がございまして、その点と、この点につきましてはあまり変らない。それを専用施設の場合にははっきりさせただけでございまして、差しつかえないと思います。
  109. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 実は、これは農民個々からとるように解釈するより方法がないと思うのですがね。農業団体からとるといっても、土地改良区からとろうといっても、土地改良区は出しはしませんよ。土地改良法によらねばとれない。徴収規定があるのだ。それが農民個々からおとりになるというならば、それは別です。そうでしょう。どうお考えになるのでしょうか。私はそれより方法がないと思います。
  110. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その点は、やはり受益者でありますから、農民個々から徴収する、こういうことになるだろうと思います。
  111. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 出さぬ場合には、これは何かの徴収規定があるのですか。
  112. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 強制徴収の規定がございます。この法律の建前が、そういうふうに一般会計から入れる分とか、いろいろ農民——今の場合は負担金という形をとっておりますが、負担金とか、あるいは一般会計から入れた分とか、あるいは府県の負担金とか、こういうものが一緒になりましてこの工事をやることになっておりますから、それはやはりどうしても出していただかなければならぬ。それがあって初めて、仕事ができるのだと思います。
  113. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 これは農民が納得した場合には、それはもうやすいでしょう、出すことは。土地改良団体、土地改良区というものがあるのだから、その土地改良区で出そう、こういうことになる。ところが、納得せぬ場合には、農民個々から、何千人、何千戸という農民からとろうといっても、それは事実不可能じゃありませんか。まあ、それであなた方が個々からとると言われるならば、それでいいですがね。  そうすると、次に、御承知のように、十条で農民は受益者負担をいたしておりますね。この場合の農民の組織する団体はダムの使用権を、発電あるいは水道または工業用水道と同様に、私は有する権利があると思うのです、負担をする以上は。ところが、この法律では農業団体だけはずして、そうして農業用水だけはずして、工業用水及び電気とかというようなものだけこの使用権を認めておるというのは、これはどうしてそういう差別的な取扱いをするかということです。
  114. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その点は、そういう御疑問を持たれるだろうと実は私どもも考えておったのでございますが、これは特に農民のためを思って、わざわざこの第二条からはずしておるのでございます。と申しますのは、第二条で特定用途にいたしますと、そのための経費の全額を持たなければならぬという建前になってくるわけでございます。と申しますのは、この第二条で、多目的ダムをやる場合に、各用途の経費の負担が、御承知のように、電源開発促進法による費用割り振りの政令に基きまして、あの政令の効用分を全部持つという建前をとっておるのでありまして、これはこの原則を農業に適用するのは、従来のいきさつもあり、そういう点を考えると適当ではございませんので、特に第十条に専用施設という受益者負担の原則を利用いたしまして、特に一割というふうにしぼっておるのでありまして、私どもは農民の立場を考えてわざわざこういうふうにして参ったというふうな気持でおります。
  115. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 電源開発促進法の政令によりますと、ダムは共用工事であるから、農民の組織する団体が、水利権のみならず、ダムを共用する権利を有するというように解してもいいのですか。
  116. 小林泰

    説明員小林泰君) もう一度、どういうことですか。
  117. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 電源開発促進法の政令によりますと、ダムは共用工事であるから、農民の組織する団体が、水利権のみならず、ダムを共用する権利を有するというように解してもいいですか、この多目的ダムについて。
  118. 小林泰

    説明員小林泰君) 電源開発法六条二項の規定は、共同して施行する場合の規定でございますから、先生のおっしゃる通り、共用の場合の規定でございます。しかしこの法律に言います費用配分は電源開発法六条二項の方法基準としてやるだけでございまして、このダムそのものは国の所有でございます。従いまして、今美馬次長から申し上げましたように、建設大臣がみずから施行する河川工事の中に用水補給の目的を含まれたものとして、建設大臣の責任においてそういう用水補給も行なっていくという考え方でございます。
  119. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 少くともやはり一割の負担ということが、法律の規定の上では、農民はその負担の義務を負わされておるのですからね。だから、前の御答弁の通りに、あとの費用というものはどういうものですか、維持管理費用ですか、そういう費用は当然負担せぬでも、同じ権利を与えて至当じゃないかと思う。それを、のがしてやるから、特定の電源開発とか工業用水とかいう団体よりもその共用の権利をはずすというのは、ちょっと時代おくれじゃないかと思う。たとえていえば、昔の選挙権みたいに、何円かより多く納税した者が選挙権を有するというように、非常に私は時代おくれの考え方じゃないかと思うがね。
  120. 小林泰

    説明員小林泰君) お答え申し上げます。先生の御質問、御心配はごもっともでございますが、もうちょっと具体的に申しますと、もうちょっとはっきり御説明申し上げられると思いますので、ダム使用権なりダムの容量の操作についての具体的な考え方を申し上げたいと存じます。ダムの計画を定めますときに、一番下の方に、貯水池が土砂で埋まらないために、御承知のように、死水、ゲットーウオーターをとってあるわけでございまして、その上に、灌漑期に必要な農業水利あるいは工業用水等の下流に、必要な容量の貯水をとりまして、その上に洪水調節に必要な容量をとっておる。従いまして、ただいま申し上げました下流の農業用水等に必要な容量の水位まで水位が下って参りますと、それから下のダムにおける発電所の放流は、下流の必要な流量に従って、それに制約されながら運転するような水利使用の内容を、発電所の方へ負わせておるわけです。そういう考え方のもとに立って、ダムの操作規程を作って参る考えでございます。従って、灌漑等の下流に必要な量につきましては、むしろ発電がそれに制約されながら運転するということになるわけであります。
  121. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 ちょっと関連して。今のお話、農業のお話ですが、私は水産の立場から考えると、水が非常に少くなってくると、魚がいなくなってくるのですが、その必要な流量を流すために、漁業者からも負担金をとるのですか。ダムができますね。そうすると、ダムができて、そこから灌漑用水その他の必要な流量のものは、デッド・ウォーターとか何とかで流していく。その流量は一定の量をきめてあるでしょうが、それが川なら、魚がとれているのでね。ところが、水量が少くなれば魚は生息しなくなる。それを生息する程度の水を流していくということによって、農業者の受益者と同じように負担金をとるのですか。
  122. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) それは全然とりません。
  123. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 農業とどういう割り振りになるのですか。農業者からはとっていく、水産業者からはとれないということになると……。
  124. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) それは、そのダムを作るときに水利権というものが与えられますから、そのダムを作るときの水利権に、その魚に必要な水は流しなさいという処置をしておりますから、これはこの法案とは直接関係はございませんで、そういう場合にはその水を当然権利の内容で放流しなければなりませんので、別に放流したから負担金をとるということは起りません。
  125. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 ところが、そうすれば農民からとるのは少しおかしいように感じますが、これはどうなんですか。
  126. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) これはやはり、ダムを作るときにそのダムと一緒に、そのダムを利用して一つの専用施設を設けて、そして水をとって特定の新しい開墾をやるとか、そういう新しい施設を新しく作っていくわけですね。そういう場合は、特殊の問題として負担金をかけていこうという建前でございます。
  127. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 これは農林省はどうお考えになりますか。今農民の立場において私は質問するのだが、今言うように、負担の義務を負わすだけで、そうしてその権利は異なって差別的待遇を受けておる。この点、農林省側とすればどうお考えになりますか。
  128. 安田善一郎

    政府委員安田善一郎君) 第十条の規定につきましては、いろいろ意見があるかと思いますが、農林省といたしましては、多目的ダムによる流水の貯留を利用する場合に、直接農業用の専用の施設を設けて、専用の施設を新設または拡張する場合だけ、そういうふうにしまして灌漑の用に供するもの、その場合にだけ費用の負担をするので、あとはさせられないというふうに解釈したいと思っておるわけでございまして、また重政先生の、費用負担をしましても、その費用負担は専用施設によりますところの水利権にしておるということで、提出されました法案は理解したいと思っております。
  129. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 どうもはっきりよくわからぬのですけれどもね。私は簡単に、やはりそういう場合でなければもちろん負担する必要はないので、そのほかのことを論じておるのではないのだが、負担する以上は、とにかく差別的な、特定業者ですか、特定団体ですか、というようなこの特定な何を設ける必要はない。負担する場合においては、そのダムに対する権利は同等にあるべきじゃないか。
  130. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その点、もう少し私から御説明申し上げますが、なぜそうしたかと申しますと、先ほど申しましたように、十割とらないで一割とるためにやったのでございます。それじゃ、なぜ特定用途の方に入れなかったかということでございますが、こちらへ入れますと、電気とか農業とか水道なんかの場合に、一方電気、水道を一割にして、農業を十割にする理由がなかなかつけにくいのでございます。ですから、わざわざ受益者負金担という制度をとりまして、そちらなら、この率のきめ方は受益の限度ということで、必ずしも全額とる必要がございませんから、それで一割という建前をとったのでありまして、別にこれは特定の用途に入れなかったから農民を差別待遇をしたというような気持は持っておりませんので、むしろ逆な立場からわれわれはこうしているのだというふうに御了解いただきたいと思います。
  131. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 ところが、従来はとる規定はなかったでしょう。ここに新しくとるということを規定したのでしょう、法律で。だから、今の説明ではどうもふに落ちない。
  132. 田中啓一

    ○田中啓一君 関連をいたしまして。今度の多目的ダムの法律でやろうとしていらっしゃる、また私もやってみなければわからぬと思っておりますが、この揖斐川ですね、横山ダム、これは開発課長なり次長なり、大体具体的に揖斐川ダム、御存じでしょうか。そうでないと、質問しても意味がない。私は具体的に十条を聞いていこうと思っている。お答えになる必要はございませんが、大体御承知でしょうね。
  133. 小林泰

    説明員小林泰君) 存じておりますが、先生に御満足いただけますかどうか。
  134. 田中啓一

    ○田中啓一君 困らすためではないのですよ。そうしますと、木曾川、揖斐川、長良川と三つ並んでおりまして……。
  135. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 それは関連質問ですか。
  136. 田中啓一

    ○田中啓一君 それでは、関連の意味を先に明らかにしておきます。「専用の施設を新設し、又は拡張して、」という、これは「流水の貯留を利用して」にかかりているのだと思いますが、その意味です。そこで従来ございますあの川筋に、十ばかり留水場が残っておりますね。灌漑設備がありますね。それには関係ございませんね。
  137. 小林泰

    説明員小林泰君) 従来ございます用水の自然増に対してはございません。受益者負担、十条の規定は適用されません。
  138. 田中啓一

    ○田中啓一君 ところが、なかなか取り入れ口はうまくいきませんので、ほとんどしょっちゅう取り入れ口をいろいろなぶっております。そうすると、まあこの法律でいくと「拡張し」とか何とかいうことにとられがちなのですが、大丈夫でありますか。
  139. 小林泰

    説明員小林泰君) 先生のおっしゃるのは、おそらく河床の変化、土砂の堆積その他でもって頭首工の位置を変えるとか、そういう局部的な改良の意味だと思いますが、そういうものはここでは考えておりません。
  140. 田中啓一

    ○田中啓一君 そうしますと、結局問題は、この横山ダムのできるのに関連しまして、新たに相当大規模な灌漑というものが計画された。ところが、まだこれまで取っておらない水を新たに取るのですから、おそらく河川法による許可を得なければ、ダムのできるできないは別として、取れないのだろうと思いますが、まあ相当、何トンかの水を、横山ダムができればその下の所から水を取り入れて、そしてまあだいぶ広範な所へかけたらどうだろうかと、こういうので、今のお話のように相当県は計画も進め、また農林省にも相談中だという段階にあることは私もよく存じております、ところが、それは非常に大きい水になれば、ダムの手加減をしょっちゅうしてもらわないと、灌漑はうまくいかないだろうと思いますが、ある程度の水ならまだ揖斐川から取れたのじゃなかろうか。そう考えると、まあその水の分量全部がこのダムのおかげによるというふうにも考えられないじゃないかとも、私は思うのですよ。そこで、まあそういうこともあるから、十条で一割という、ほかの負担者に比べれば一割ということにしてやるのだ、こういうお話なんですが、どうも先ほど重政君から問題にされたように、一割と頭ごなしに言われたから、もっと小さくなり得るでしょうけれども、この「以内」の「内」のところが、何かもう少し基準というものはあり得ないものだろうか。まるまるただということも欲が深過ぎるということも、言えぬこともないと思うのですよ。何かそこらにもう少し基準がありそうなものだと思いますか、いかがでございますか。
  141. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) まことに残念なことでございますが、これはいきさつから申しまして、一割ということになっております。
  142. 田中啓一

    ○田中啓一君 沿革から申しましてといっても、沿革はないでしょう。重政さんが指摘される通り……。この法律で初めてできたということで、沿革というのは私はないと思いますが、いかがですか。
  143. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) これはこの法律を作る場合の政府部内の申し合せが、一割でいこう……。もちろん先ほど申しましたように、従来沿革はございませんが、河川法におきましては受益者負担金の規定がございまして、私どもはそういう規定はありましたが、まあ沿革的にこれを取っておらなかったのでございますが、今回この多目的ダム法を作るのに際しまして、土地改良等とのバランスも考えた方がいいのじゃないかというふうな意見もございまして、一割ということでこの話が落ちついておるのでございます。
  144. 田中啓一

    ○田中啓一君 私は、その御答弁は非常に満足できないと思います。政府部内できまりましたから、それでやるのですと。政府に向って私は質問しておるのですから、部内でどういう御議論をなさろうが何なさろうが、食い違えばまた食い違いで、いろいろ問題も出ましょうけれども、私はそういうことを言うつもりはさらにないのですよ。それよりも、どういうおつもりでこういうことになさったかとお伺いするのですから、議会に対しては御説明なさらなければいけないと思います。
  145. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 一割の根拠の説明を科学的にやれというお話だと思いますが、これはなかなか科学的にやりにくいのでございまして、従来のいきさつをいろいろ尊重いたしまして、一割ということになったのでございまして、理屈を科学的に説明せよと申されましても、非常に苦しいのでございますが、まあ従来ゼロであった点、それから土地改良等の点等を考慮いたしまして、一割という考えをとっておるわけでございます。
  146. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 この多目的ダムは、もちろん農業用水も貯留することができるようになっているが、この法令の目的はやっぱし治水が主目的でしょう。この点はどういうことですか。
  147. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 法律上はこの定義に、「この法律において「多目的ダム」とは、建設大臣が」これこれということで、別に治水が主目的という表現をとっておりませんが、実際問題としては、私どもはそういうものを多目的ダムとして運用していこう、現在、実態もそうでございますし、さういうふうに考えております。
  148. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 そういうことになりますと、やはり農業用水との関係は、非常に協調をとってやらにゃいかぬのですよ。従来これは、治水目的のいわゆる河川改修にしろ、その洪水防止には、もちろんそれが目的になるのだけれども、農業用水から考えると、実際河床が下る。下らなければ工事の目的が達しないのですけれども、下るために、あの利根川の例を見ても、岐阜の田中君の生まれたところの長良川の例を見ても、とにかく従来の取り入れが不可能になるのですよ。水位が下ってきて、そうして上流まで取り入れが延ばされるわけです。これが非常に多い。これはやはり河川改修及びこういうダムの結果——まあダムはそれを目的でやっておる、河川改修はそれを目的でやっておるけれども、そういう協議が従来農林省でとれておらぬのですか。農林省もどうかしていると、私はそう思う。だから、こういう場合においては、やはり次長が説明せられたように、予算がついたらもう協調しておるのだからやるというようなお考えでなしに、予算は予算でつくのですよ。だからこれはよく協調をとってもらわなければならぬ。  それから先ほどの御答弁で、予算はついても、とにかく各省のそういうような協議がととのわなければ事業は実施せぬと、こういうふうに御答弁になったととってもよろしいのですか。それが当然だろうと思う。
  149. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) それは、その通りでございます。
  150. 田中啓一

    ○田中啓一君 今一割ということは、それは科学的には説明できぬと。いろいろこれまで話し合いその他のいきさつもあり、まあ腰だめで一割以内なら何とかおさまらぬか、こういうことできめたと。それもわからぬことはありません。それはよろしいが、そういたしますと、一割以内の「内」が非常に問題なんで、もともとゼロであったのだから、ここには相当相談の余地があるのじゃないか、これが一つ。一割とるぞということではないであろうし、「内」もだんだん何だから、何しろ金額の大きいことなんだから、以内でも、一割か、〇・五か、〇・一かで、だいぶ話が違うのだから、そこらについても十分考慮を払われたいのですよ。  それから、理窟を言いますと、今重政君の質問にもありましたように、逆にこの十条では、直接とられることはないけれども、上流にしっかりしたいいダムができて、洪水調節ができれば、それは下流はいいことなんですが、ただ、灌漑の設備は、今話が出ましたように、河床が下って、頭首工の拡張工事をやらなければならない。現に木曾川などは顕著な例だと思いますけれども、大騒ぎをして堰堤まで作ろうと、こういうことなんです。そうすると、まあ一般的にはいいことだけれども、灌漑設備を持っておるものは、ダムができたので相当の負担をして頭首工の拡張工事をやらなければならない、こういうことになります。けれどもそれは、ダムの方は別段そういうものを負担するとはおっしゃらない。でありますから、そこらをかれこれその及ぼす影響を考えられて、しかもどうかすると、その負担金を払う方は、同じように農民が払う場合がまたあり得るのですね。でありますから、私は詳しく御承知かと聞いたのはそれなんですが、実はあの揖斐川の場合は、負担者が同一の区域もあるのですよ。二重になるわけです。でありますから、十条の適用につきましては、私は、もともとが腰だめでありますから、少し長い間の農民の河川の水利用の慣習も考えて、一つやっていただきたいものだという注文をしまして、質問をこれでやめます。
  151. 安部キミ子

    安部キミ子君 この法案が通過しますと、従来の建設大臣に置かれた権限よりも非常に強化されるということになるとお思いになりませんか。建設大臣の権限が強化されるということになるとお思いになりませんか。
  152. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) いろいろダムの建設から管理までの段階がございますが、中にはおそらくそういう建設大臣の権限が強化される部分もあると思います。
  153. 安部キミ子

    安部キミ子君 提案説明、法案の要綱にもありますように、「関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事及びダム使用権の設定予定者の意見を聞くものとする」、ここが一つ。それから、ずっとそのあとにも、特定多目的ダム法案要綱の十のところにも、「二以上の都府県の区域にわたる河川に存するもの及び政令で定めるその他のものについては、建設大臣が管理を行うものとする」、それからそのほかにも、知事と協議をするとか、関係者と協議をするというふうな項目がたくさんございます。しかし、要するに、今私が質問しましたように、大臣の権限が非常に強化される、こういうことになりますと、あるいは発電事業、水道事業、工業用水、農業用水というふうな各水を要望する所から、自分の方に有利なような条件にしてもらいたいというので、それぞれの立場から非常な圧力をもって、すべてのいわゆる水利権、使用権、物権、管理権を持っておる建設大臣に働きかけがなされるのではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  154. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その点は、一番問題は、要綱の四にございまする基本計画の決定だろうと思いますが、この点につきましては、これは法律上書くとこういうぎょうぎょうしいような形をとりますが、実際には、現在私どもずっと過去からやっておりまする多目的ダムの現実のやり方は、こういうやり方をやっておるのでありまして、別にこういうふうに法文にしたから特別にどうこうということはないというふうに考えております。この場合にも、もちろん各省大臣とよく協議をいたしまして、その場合にももちろん各省大臣は、各省の立場において正々堂々たる意見を申し述べまして、私どもと折衝するわけでございます。そういうことでございますから、特別にこれができたからどうというふうなことはないと思います。  また、要綱の十五でございますが、この十五は、現在なかったところでございまして、現在水利使用につきましては、建設大臣が河川法によりまして一方的にやれるという建前の法律でございますが、これは、この法律を改正いたしまして、それぞれ所管の行政庁によく相談して意見調整をやってからやろうというふうな建前をとっておるわけでございます。
  155. 安部キミ子

    安部キミ子君 今あなたの御説明のように、円滑にいくことを私も希望しますけれども、この水利権という問題は、非常にあらゆるところで命がけの戦いがなされておるわけなんですね。でありますから、私は、トラブルが起る心配があるこういう法律を、建設大臣が一手に権限を持っておるというふうなことは、やはり何かしら先々心配が残るわけなんです。その点、あなた方の方でそういうことは絶対にないという言明がなされれば、私はこの法律を通すことに何ら異存はないのですが、どうですか。
  156. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その点でございますが、この法律を出す場合において、関係各省とそういう点につきましてはいろいろ折衝を重ねまして、各省の言い分も私どもよく十分に尊重してこの法律を作っておるのでございまして、トラブル等は私ども起らないと思いますし、また、そういう問題がありましても、よく連絡をとりまして、円満にいくように心がけたい、こういうふうに考えております。
  157. 安部キミ子

    安部キミ子君 そういうことになれば大へんけっこうでございますから、何も私は申すことはありません。  もう一つ、先ほど受益者の負担という問題で、農民からもとる、こういう話でございましたが、御承知のように、下松の温見ダムの問題で負担という問題があって、地元では大へんさわいでいるのは御存じでございましょうか。
  158. 小林泰

    説明員小林泰君) 温見ダムの仕事農林省所管になっております。私どもには関係ございません。
  159. 安部キミ子

    安部キミ子君 それでは、農林省の方にあの問題をちょっとお話ししていただきたいのです。
  160. 清野保

    説明員(清野保君) 温見ダムは昭和十六年に県営事業としまして承認になりまして、戦時中、決戦非常措置という法律によりまして工事を中止し、終戦後再開されて、一昨年、昭和三十年度にダムが完成いたしました。このダムは農業用水と同時に工業用水の保水をする目的をもちまして、工業用水並びに農業の間でもって費用の振り合いをいたしましたところが、その後農民の費用の負担につきまして地元の農民の間で問題が起りまして、現在、土地改良区の総代会を解散いたしまして、その総代をあらためて選挙し直す。たしか数日前に選挙を終りまして、新しい総代会ができましたので、その新しい総代会が、施行団体でありますところの県と十分協議をして、その費用の負担問題等についての解決をはかるように、目下指導いたしております。
  161. 安部キミ子

    安部キミ子君 ただいまのお話で、大体皆さんお聞きになったと思いますが、農民から負担をとるということは非常に困難なんですね。ことに、ダムというふうなものの建設に当って、農民が負担する。そうして実際にその受益者である場合もあるでしょうが、受益者でない場合も、ここの場合は負担しなければならないということで、ますます火に油をかけたような状態になったわけです。それで、重政先生が先ほどお話しになりましたように、わずかな負担だから、こう思いましても、個人個人から負担の金を徴収するということは、実際には私はむずかしいと思うのです。そこで、この法律もその点もう一度考える余地はないかどうかと思うのですが、その点どうですか。
  162. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 一割以内の問題については、私ここで申しませんが、具体的なとり方の問題につきましては、県の条例を作って、そのときに具体的に即応したその個々の地点々々の実情をよくしんしゃくしたようなとり方になると思います。ですから、お説のような点は十分に事情を考慮いたしましてやっていきたい、こういう経過であります。
  163. 安部キミ子

    安部キミ子君 先ほどお話の中にも、県の方でもこの問題をあっせんして、何とか円満解決しようと努力しておられます。けれども、問題は、農民から負担をとるというこの原則をくずさない以上、いわばこれをとらないということにしない以上は、この問題は解決しないんです。そこで私は今度のこの法律でも、せっかく、十分の一といえどもその以内ですから、十分の十となれば大きいでしょうけれども、それが何ぼになるか、その以内だから少くなるでしょうけれども、それほどぐらいの金なら、当然農民の福祉を考えて、権利もすべての権限を建設大臣が持たれるのだから、国庫が見たらどうかと思うのです。その点、どうですか。
  164. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その点、御意見は十分わかるのでございますが、私どもやはりあくまでも、農民の場合におきましても、利益がはっきりして、専門施設を設ける者は十分の一以内をとるようにしていきたい、こういうふうに考えております。
  165. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 私、ちょっとおくれて来ましたので、重複するかもしれませんが、お伺いしたいのですが、第二条に農業水利を入れるか入れないかというようなことを、この法案を作成される前によく御検討になったことがあるのかどうか、もしあるとすれば、なぜここにあげられなかったかということを、まず一つお伺いしたい。
  166. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) それは、先ほどからいろいろ先生方からも御意見が出ておったところでございまして、私ども、その点は十分議論いたしました。農林省とも連絡をとりまして、こういうふうな建前にしたのでございまして、と申しますのは、この第二条で、特定用途というふうなところに灌漑を入れますと、この第二条に入ってきた場合のダム使用権が設定された場合ですと、効用の全額十割を負担するという建前に当然なってくるのでありまして、農民の場合にはそういう十割負担というわけには参りませんから、第十条で、農民の場合は専用施設を設けても一割負担という建前をとっておるために、二条に入れませんで、第十条でわざわざ受益者負担というふうな建前をとりましてやったのでございまして、主として経費負担の建前からそういうふうな立て方をやったわけでございます。
  167. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 その一割以下というお話をさっきから聞いておるのですが、今のお話聞きますというと、そのアロケーションは、農業につきましては効用の一割以内、こういうことですか。
  168. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 農業分の一割でございます。
  169. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 農業分の一割……。そうするというと、第四条で、計画に、建設費用の負担というものは初めから出るわけなんですか。そのときに農業関係の効用が何%になっているかということがあらかじめ出るわけですね、計画のときに。
  170. 小林泰

    説明員小林泰君) 第四条の基本計画の六号に「建設に要する費用及びその負担に関する事項」とございますが、この内容といたしまして私ども考えておりますのは、関係各省とのもちろん協議によるわけでございますが、治水の効果あるいは投資額、そういったものに見合った治水の費用負担、それから農業の効果、それに見合った負担、それから発電その他の特定用途に見合った負担額というふうに、それぞれ規定される内容になると思います。しかし、ただいま問題になっております第十条に該当いたしますものにつきましては、この中の専用施設に関連のある農業分におきましても、専用施設に関連のあるものだけについての部分が、その中に内容として含まれてくることになるかと存じます。
  171. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 ちょっとわかりかねるのですけれども、そうすると、具体的に申しますと、現在までは農林省でも同じようなものをやっておる、それから建設省でもやっておられる、こういうことになっておるのですが、その区分は、この法案が成立した場合にはどういうふうに考えていかれる御予定ですか。
  172. 小林泰

    説明員小林泰君) 建設省の河川工事の考え方といたしましては、御承知通り、河川法の規定によりまして「公利ヲ増進シ又ハ公害ヲ除却若ハ軽減スル為ニ」する工事ということになっております。建設省関係で従来も河川の流量を増加調節するという考え方は、すでに昭和十二、三年ごろからとられておりまして、それに基きまして建設省の方でもそういう流量調整の仕事を河水統制事業としてやって参っておるわけでございます。これは先生も御承知通りであると存じますが、そういう仕事につきまして、ここに多目的ダムの法律に該当して参るものは定義の第二条にございます内容でございますが、実質的には治水のために必要とするようなダム、それに伴って、それを多目的化した方が国家的に経済であるというふうな場合に、下流に用水不足その他工業用水の不足があるふうな場合に、そういう渇水補給を行うという場合には、河川工事の一環としてそれを建設省の予算から処理して参りたいという考え方でございます。
  173. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 そうすると、計画を作るときにいろいろの目的がある。その目的に経済効用が、たとえば農業は三〇%、洪水調節が五〇%、工業用水が二〇%というようなそういうふうな場合に、農業は三〇%というものはこの多目的ダムには入らないので、農業は一〇%以内であるという場合に多目的ダムに該当するわけですか。
  174. 小林泰

    説明員小林泰君) 先生のおっしゃる一〇%というのは、費用配分が農業の部分について一〇%という御質問かと存じますが、そういう意味ではなくて、この一〇%は、今先生の例におあげになりました農業の三〇%、その中にもし専用施設の関係のものが二〇%あったといたしますと、その二〇%の中の一割、つまり二%が地元の負担ということになります。
  175. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 今のお話の数字でもっていえば、二〇%あった、そのうち一〇%だけは農家負担。そうすると、そのあとの一〇%はどこの負担になるのか。
  176. 小林泰

    説明員小林泰君) 三〇%が全体農業の効果といたしまして、そのうち専用施設に属するものが二〇%、それからその他いわゆる自然に流量が増加して従来の施設をもって利用される灌漑、それが一〇%になるわけでございます。専用施設のものがもし全体の二〇%としますと、その中の一割の、全体に見ますと二%が地元の負担になるわけでございます。それでその一〇%とそれから一八%、つまり二八%は河川工事として国と地元の県が持つわけです。
  177. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 それじゃそうするというと、初めの分けたパーセントが次々とだんだんと狂ってくるじゃありませんか。当初三〇%と今例示でしたが、三〇%というそのものが変ってくるわけですね。国なり県なりが——農家に負担させない部分を国と県が持つんだということになると、そのパーセントがおのおのまた変ってきやしませんか。
  178. 小林泰

    説明員小林泰君) 治水の分が五〇%でございまして、それからいわゆる用水の関係の効果として三〇%あります、今申し上げた例では。公共事業の関係が、全体の七八%が公共事業の関係ということになるわけでございます。それから二%が流量に基く受益者負担、それからあとの二〇%が電気あるいは水道の負担ということになりまして、七八%というものを公共事業の対象といたしまして、それに対して直轄河川工事の例にならってこれが行われるわけでございます。
  179. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 最後に一つ農林省との話し合いで、そうするというと、農業の関係の負担分と申しますか、今の例でいえば三〇%の例ですが、その農業の関係の負担効用率が何%くらいまでは多目的ダムになるのだというような考え方ですね。何かきまっておるのですか。
  180. 小林泰

    説明員小林泰君) それについては特に何%までという数字でもって御協議申し上げたことはないのでありますが、現在実施しております例によりますと、ただいまちょっとその詳しい資料が手元にございませんが、現在実施しておりますものはほとんど電気が一八%くらいになっておりまして、治水の関係が五〇%以上になっておると存じます。なお、詳しい資料は後ほどまた御説明申し上げます。
  181. 千田正

    ○千田正君 今、雨森委員からの御質問に対して建設省のお答えは、電気が一八%、治水関係が五〇%ですかというと、これは現在まではその程度である。ただ、私は多目的ダムという用語を使った以上は、その目的の内容においておのずからウェートがあるだろう。これは河川法その他、基本において建設大臣が今までの行政管理のたとえば使用権、管理権を中心として多目的ダムの使用権を建設大臣が握るということになったんでしょうか。多目的ダムという名前を出して法案を作る以上は、その目的の量及び質において、それがかりに農業が五〇%、あるいは電気の方は三〇%、治水が二〇%ということもあり得ると私は思う。多目的ダムの目的の効用性の内容によって、その管理権を使わせなければうそだと私は思うのですがね。
  182. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その点につきましては、この法案を制定いたしますときに、農林省なり通産省と覚書の問題もございまして、たとえば農林省の問題で申しますと、灌漑を主とするようなダムはこれには入れない、通産で申しますと、発電を主として治水がちょっぴりしたダムは載せないという覚書をやってありまして、私どもとしてはそういうふうに紳士的にやっていきたいと考えております。
  183. 千田正

    ○千田正君 この法案を一貫して流れる問題は、ことに重点としては、この使用権は建設大臣にあるということでしょうね。これは権利ははっきりここにうたわれてありますが、義務は何かあると思うのですが、建設大臣としての義務はどういう義務を、あなた方、この法案を通じて考えられますか。
  184. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) それは、使用権が物権でありまして、御承知のように、物権でございますと、物権が民法によって保護しておられるのでありまして、その規定があらゆる場合に当然働くのであります。もちろん建設大臣といえどもこれを侵害するわけに参りません。そういう建前になっております。
  185. 千田正

    ○千田正君 そうしますと、法的解釈でいえば、たとえば物権として取り扱われておる以上は、民法の規定に基いて、いろいろな問題が起きた場合には、民法の規定に従うという義務があるということですね。
  186. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) この法律にもそういう救済規定も所々にはございますが、それでないところは、もちろん民法の保護を十分受けるというふうに解釈しております。
  187. 田中啓一

    ○田中啓一君 ダム使用権者というものの範囲についてお尋ねしたいのでありますが、それは本法によりますと、第五条あるいは第十五条あたりにあるわけですね。それから具体的に申し上げますが、その今の揖斐川筋で今度催されておる農業用水の土地改良区ですね、これはダム使用権者になりますか。
  188. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 土地改良区はダム使用権者にはなりません。
  189. 田中啓一

    ○田中啓一君 しかし、どうもこの法文を見ると、たとえば十五条を見ましても、「申請人が多目的ダムによる流水の貯留を利用して流水を当該特定用途に供することが、河川の総合開発の目的に適合すること。」、以下二号の規定にも合っていますし、使用権者になるように思いますが、そうはならないのですか。
  190. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その関係は、定義の第二条に特定用途という定義がございまして、特定別途に入らなければダム使用権の対象にしたいという建前になっておりますので、灌漑はダム使用権になっておりませんから、ダム使用権の対象にはならないということであります。
  191. 田中啓一

    ○田中啓一君 それは第何条かに書いてありましたがね。
  192. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 二条でございます。
  193. 田中啓一

    ○田中啓一君 二条じゃないですな、二条はそういうふうには……。二条は多目的ダムの定義なんですね。そうしてそれを「「特定用途」という」と、そう書いてあるのですね、二条は。どこかの条文に特定用途のものでなければならぬという条文があったでしょう。何か、私は前にざっと読んだときにあったような気がしたのだけれども
  194. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 十五条でございます。
  195. 田中啓一

    ○田中啓一君 十五条の二号でそういうことになるわけですか。
  196. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 十五条に「ダム使用権は、建設大臣が、流水を特定用途に供しようとする者の申請によって設定する。」と、こういう規定がございまして、この特定出途の定義は二条にございますから、そういう関係でございます。
  197. 田中啓一

    ○田中啓一君 わかりました。
  198. 千田正

    ○千田正君 多目的ダムばかりじゃなしに、ダムの建設の場合に、いろいろとい補償問題か起きますね。損害の補償、これに対する規定はこの中には含んでおりませんか。
  199. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) そういう規定は含んでおりません。
  200. 千田正

    ○千田正君 そういう補償がここに起きた場合に、やはりこれに対する補償は建設大臣が責任をもってやらなくちゃならないということじゃないですか、どうなんですか。
  201. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) それは、この補償の問題は、直接にはこの多目的ダム法には載っておりませんが、これはやはり多目的ダムをやります場合には、もちろん水利権の問題も出てきますし、河川法の関係で十分水利権をやる場合の調整の問題とか、補償の問題、必ず新しい権利を出す場合に補償の規定は入りますから、そういうところで解決していきたいというふうに考えております。
  202. 千田正

    ○千田正君 それは別個な……。それじゃ、多目的ダムの法案には載っていないが、そういう問題が起きた場合には、河川法なりその他の方で補充していくという考え方なんですか。
  203. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) この多目的ダム法は、最初提案理由にも説明しましたように、河川法の特例になっておりまして、現在の河川法にない部分だけを規定した点でございまして、あとは原則の法律に基いてやっていくという建前になっております。
  204. 田中啓一

    ○田中啓一君 これは、先ほど重政委員との問答のむし返しにもなるやにも思いますが、どうもふに落ちないのは、このダムができることによって新たに農業用水をやろうとしておる団体、それから従来からその河川を使っておった団体、いずれもダム建設並びにダムの用水、この貯留量の用途、配分、あるいは管理規則ということには、相当影響を受けるわけなんですね。ところが、これはいずれも使用権者ではない。なるほど、この法律でそうなっておることは明瞭ですね。そこで、帳かの使用、これは使用権者たる実質は本来持っておるのですよ。持っておるけれども、お前らにはどうも一ぱいの経費を負担さすには忍びぬから、経費は一割でもまけてやるぞよと。これは私非常にその点けっこうですか、そのかわり、お前らには一切相談はしないぞよ、農林省には相談してやる、こういうような建前になってくるように見えるのですね。一面それもありがたいけれども、ものを言うなといわれるのも、これはなかなか辛い話で、私は実は地元関係が非常にある人間なものですから、大へん問題を具体的なものをお伺いして何ですけれども、その辺のお心持ちは実はいかがですか。
  205. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) その点は、これはダム使用権はもちろん、そういう場合には、この特定施設の場合にはやりませんが、これは水利権という別な河川法に基く処分がありまして、それによって権利保護なり権利調整は十分できましてやるのでありますから、ここでダム使用権を設定しなくても、ここは第十条の専用でいきましても、十分その関係の保護はできるというふうに私ども考えております。
  206. 田中啓一

    ○田中啓一君 そうしますと、ダム使用権者としてではないが、河川法による水利権者としては、貯留雄の用途別配分についても、あるいはダムの管理規則についても、それは相談するぞよと、こういうことでありますか。
  207. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) それは、河川法の原則からして、水利権の十分の保護を受けるような建前になると思います。
  208. 雨森常夫

    ○雨森常夫君 今の、既得権の話のようなんですが、たとえば上流にその多目的ダムを作ろうという計画があるときに、その下流の農業水利権を持っている者が、今までそれでは足りないからダムを利用するように一口乗りたいということで、金は出しますと、こういうふうなことで、またほかにもう一つダムを作る場所もない、この際仲間入りをしたいというようなときには、発言権はないじゃないのですか。
  209. 小林泰

    説明員小林泰君) 実は、この農業関係の計画が、やはり基本計画の内容としては、多目的ダムである以上非常に重要な内容であることは、先生方の御指摘の通りでございまして、実はこの基本計画を作る際に、ここには関係行政機関の長に協議するということになっておりますが、実際は各省が集まって衆知を集めて作るという内容になるわけであります。従いまして、まず私どもの出先機関において細部の実設計を立てるわけであります。その際に、農林関係の方の出先機関にも十分御協議して、そこでこういう計画を立てるような協議をしばしばやっていただくことになる。そういうような過程において、今御指摘のような下流の用水不足地に対して、一口乗りたい、また金は出すというような、まあ非常に、この法律でいえば必ずしも金は出さないでも乗れるわけなんですけれども、そういうような場合には、第九条に受益者負担金の一般の例がございまして、十条以外の受益者負担の負担をさせることができるという規定がここにございまして、そういう負担金の徴収は受けられるようになっております。
  210. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 そうすると、今のに関連して。農林省は各水系におけるいわゆる農地と水量との関係というものを、急速に確保しなければならぬ。そうすれば、建設省のこの多目的ダムの協議をせられるときに、軽々にここは許すということは言われぬ。そういう準備ができておりますか。あるいはそういう準備もこれからやろうとしておるか、その点は農林省から一つ御答弁を願いたい。
  211. 安田善一郎

    政府委員安田善一郎君) この法案によりますと、先生の御意見の通りになりますので、準備ができておるものについては、意見が合いますれば協議をすることになっております。まだ不十分である場合は十分に調査をし、意見ができた上でないと協議を整えるわけに参らぬと、こう思っております。  ただ、本法を制定され、法案を作成されるに当りましての御協議は、河川法の特例という法律を作る建前であくまでおられるというわけでございまして、河川法そのものは土地改良区、あるいはその他の関係地元関係者の意見を聞く等の措置が、法律の全文にわたりまして一つも見受けられませんので、立法論としてはいろいろ意見もありますが、その特殊の条章についてだけの例外だということの建前を一応了承しまして、従来とは違いまして、意見が整わなければ建設大臣は勝手にやってもらっては困る。今後は河川法の運用においてもそうですが、特にこの特定多目的ダム法においては、詳細十分に建設大臣は農林大臣と協議をつとめていただきまして、また地方の建設局と農地事務局、都道府県の関係部局は土木関係と農林関係で、必ず十分協議をつとめていただくように約束して、了承したのであります。
  212. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 そうすると、建設省はとにかく農林省とか関係省庁と協議するということになっている。今御説明のように、地元の利害者等にその意思を諮問するということになっておらぬわけで、まあそういうことになると、農林省はかわって、地元の権利者及び利害者、たとえていえば土地改良区というような権利者に諮問していただかなければ、回答できぬということになると思うのですが、その点どうですか。
  213. 安田善一郎

    政府委員安田善一郎君) そういうことでありませんと、十分なる国民の意思を取り次ぐこと及び関係官庁と協議を整えるということはできないかと思います。
  214. 田中啓一

    ○田中啓一君 第九条の「多目的ダムの建設によって著しく利益を受ける者」というのは、これはどういう者をおよそ和心像して書いておられますか。
  215. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) これは主としては、そこにありますように、「その者が流水を政令で定める用途に供する者であるときは建設大臣、」、この政令で定める用途にあるときというのは、これは電気のことを言った場合でありまして、そのダムを作った場合に下流の発電所が非常に利益を受けるというようなのが中心であります。「その他の者であるときは都道府県知事」という規定でございますが、これは従来の河川法もこういう規定がございまして、まあ万一の場合の救済規定というふうに考えております。
  216. 千田正

    ○千田正君 この第四条第三項の「建設大臣は、基本計画を作成し、変更し、又は廃止しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係都道府県知事及び基本計画に定められるべき、又は定められたダム使用権の設定予定者の意見をきかなければならない。」、意見を聞いて、いやそれはノーと拒否された場合は、たとえば、多目的ダムでありますから、通産大臣あるいは農林大臣、片っ方のいれずかが拒否した場合は、多目的ダムが建設されないということですか。ただ法文にうたっただけで、聞かなくちゃならないのだが実行するのだという意味ですか、どっちなんですか。
  217. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 私どもは、そういう点はあくまでも、何剛も何回も繰り返して、最後まで調整するというふうな立場でおりまして、意見が合わないということはないと考えております。
  218. 千田正

    ○千田正君 私はそれは非常に甘い考えだと思う。過去においてダム建設の場合に、通産省と農林省のアロケーションがはっきりきまらないために、何カ年という間多目的ダムがそのまま論争の目標にだけなって、そしてちっとも運びに至らなかった実例か幾らもあります。そういうものを調整する意味からも、こういう法案が必要だとするならば、一体どういうふうな調整の仕方をして実行に移していくか。
  219. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) この法律によりますと、基本計画におきまして、各省間に不幸にも意見が最終的に一致しなければ、これは多目的ダムとして採用できないということになるだろうと思います。
  220. 千田正

    ○千田正君 これは経済審議庁とは関係ありませんか。
  221. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) もちろん、この多目的ダムの基本計画につきましては、経済審議庁も関係各省ということで入っておりまして、十分協議をしなければならぬと思います。
  222. 清澤俊英

    清澤俊英君 第二条のところがはっきりわからない。と申しますのは、特定用途が単一であった場合は今まで通りにやっていく、この法案を適用しないのですか、単一である場合は。信濃川をふさいで電気を起すという一つのものがありますから、国鉄がやっているような……。単一の場合にはこれは適用しないのですか。
  223. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) それは関係ございません。
  224. 清澤俊英

    清澤俊英君 それから第二番目は、ああいうような大工事を起した場合、下流の、ダムに関係せざる地区の用水が枯渇して、数キロ上流から取り入れを開始しなければならぬということで、弁償問題が非常にやかましい問題が出て参りますが、そういうときはこれは全部建設省が相手で、このダムのためにそういうものが下流に起きた場合、これは全部、弁償とかそういうものは建設省が全部負担せられるものかどうか。
  225. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 質問趣旨が……。具体的に。
  226. 清澤俊英

    清澤俊英君 質問趣旨はですね、ダムに関係して、ダムを作りましたために、下流の方が水が下ります、水が少くくるために。従って、今までありました既設の用水路を上流へ持っていかなければならぬ。上流から取り入れなければならぬ。それがために、場所の悪い所では隧道を掘ったりして、非常に経費がかかる。こういう場合に、その損害の賠償の責任は当然建設省が持たれるのですか。
  227. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) これは多目的ダムの問題だけではないのでありまして、一般の問題の河川改修工事あたりとも関連すると思いますが、そういう工事によって、既得のそういうものに影響を与えるような場合には、従来もそうですが、その補償工事なり付帯工事で損害を償っていくということになるだろうと思います。
  228. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  229. 堀末治

    委員長堀末治君) 速記を起して。  それでは、ただいま御懇談を願いました連合審査の件についてお諮りいたします。本院規則第三十六条に基き、特定多目的ダム法案について、建設委員会と連合審査を開会することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 堀末治

    委員長堀末治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  ただいまの決議に基き、委員長は建設委員会に申し入れることにいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十九分散会