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1957-04-23 第26回国会 参議院 内閣委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十三日(火曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   委員の異動 四月二十二日委員西岡ハル辞任につ き、その補欠として小滝彬君を議長に おいて指名した。 本日委員小滝彬辞任につき、その補 欠として平島敏夫君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     亀田 得治君    理事            上原 正吉君            大谷藤之助君            秋山 長造君            竹下 豐次君    委員            植竹 春彦君            木島 虎藏君            木村篤太郎君            迫水 久常君            平島 敏夫君            前田佳都男君            松岡 平市君            松村 秀逸君            荒木正三郎君            伊藤 顕道君            永岡 光治君   衆議院議員            大平 正芳君   政府委員    人事院総裁   淺井  清君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    人事院事務総局    給与局次長   慶徳 庄意君    内閣総理大臣官    房公務員制度調    査室長     大山  正君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   参考人    東京大学教授  安藤 良雄君    日本経営者団体    連盟常任理事  入江 乕男君    朝日新聞論説委    員       江幡  清君    東京人事委員    会委員長    大野木克彦君    日本官公庁労働    組合協議会事務    局長      豊田黎一郎君    法政大学大原社   会問題研究所員  田沼  肇君    全運輸省労働組    合総連合事務局    長       松末 誠一君    日本教職員組合    中央執行委員  田中 資郎君    運輸省港湾建    設労働組合執行    委員長     樋口  緑君    官庁附属試験研    究機関労働組合    協議会代表   長嶺 晋吉君    全日本国立医療   労働組合書記長  渡邊 素良君    国立東京第一病    院総婦長    吉居 ユキ君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○一般職職員給与に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○特別職職員給与に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○防衛庁職員給与法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 亀田得治

    委員長亀田得治君) これより内閣委員会を開会いたします。  委員の変更について報告いたします。四月二十二日付西岡ハル君が辞任され、その補欠として小滝彬君が選任されました。本日付で小滝彬君が辞任され、その補欠とし平島敏夫君が選任されました。右報告いたします。   —————————————
  3. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案。以上三案を一括して議題に供します。  三案について御質疑のお有りの方は、順次御発言を願います。
  4. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、淺井人事院総裁に一、二の点で御質問いたしたい。  その一つは、人事院勧告がなされたのは昨年の七月のことでありますが、その後、相当民間においても、あるいは公務員と密接な関係にある三公社現業方面においても、かなりの給与改訂が実施されているわけです。昨年七月の人事院勧告のなされた主たる理由は、民間給与との開き相当大きいということが一つ、それから、三公社現業に比べても相当開きがあると、こういうことを是正する必要があるということが主たる理由になっているわけなんです。そういう理由勧告がなされて、給与改訂を必要とするという趣旨のものであったわけです。ところが、その勧告がなされてから、年末から春にかけて一民間方面でも、その後さらに給与改訂が行われており、特にベース改訂というふうなことが行われている。また、三公社現業においても、調停、仲裁が出まして、政府においてもこの仲裁案を受諾する、こういう形になったわけです。申すまでもなく、仲裁案の内容は、大体千二百円のベース・アップを行うという趣旨のものであります。従って、今日から見れば、人事院勧告は、昨年の四月を基礎にしてできたものであるが、その後の情勢がこういうふうに、民間においても相当給与の改善がなされているという顕著な事実があるわけなんです。こういう点を考えると、さらに人事院としては、この七月には報告しなければならぬ時期が来るわけですが、その際に、再び公務員給与改訂において勧告をすべき事情は、これは詳細な調査は必要であると思いますが、大まかに考えて、そういう事情がもうすでにあるというふうに私は判断しているわけなんです。こういう点について、淺井総裁としてはどういうふうな考えを持っておられるのか。考えというか、だんだん私は調査をせられていると思いますが、こういう民間等事情から、当然七月には給与改訂勧告が引き続いて行われる情勢にあると思うのですが、こういう点について、人事院総裁としての淺井さんの御所見を伺いたいと思います。
  5. 淺井清

    政府委員淺井清君) ごもっともなお尋ねでございますが、昨年の勧告は、ただいまお示しのように、第一には民間賃金との開き、それから次には、三公社現業との関係考えましたことは御指摘通りでございますが、人事院といたしましては、第一には、民側賃金との較差を基礎として物を言いたいと思っております。もちろん、三公社現業のことにつきましても考えるわけでございまするけれども、公務員法の建前から申しますると、これは、何といっても民間賃金との開き、こういうことが問題になる、これが昨年の勧告基礎になっております。そり後どういうふうに民間賃金が動いているかということは、それは、毎勤統計においても若干わかるわけでございますが、人事院といたしましては、いわゆる人事院方式によって従来の通り調査をただいまやっているわけでございます。そこで、昨年の七月十六日に報告及び勧告をいたしましたので、今年の七月十六日までにはその結果を明らかにし、報告をしなければならないと思っております。その場合に、勧告をするかどうかということは、これは人事院判断に基くものでございまして、ただいまのところ、白紙で臨んでおります。今日の席上において、ここに勧告をするとか、あるいはしないとかということは、申し上げる段階になっていないと思うのであります。
  6. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今、人事院判断によるのであって、ただいまのところは白紙状態であるというお話でしたが、これは、人事院判断というよりも、民間給与がどういうふうに変ったかということによって、おのずから人事院判断というものきまってくる、私は、法律の定めからいって、そういうふうに考えるのです。で、今日すでにそういう民間給与の実情から考えて、もう勧告をすべき理由というものが現に起っておるというふうに私は考えておりますが、そういう点についての御判断はいかがですか。
  7. 淺井清

    政府委員淺井清君) それは、お説の通りだと思っております。人事院といたしましては、民間賃金公務員給与との間に適当の均衡を保たせなけりゃならぬ、その方針でこれまで勧告をやっておりましたから、その点も御説の通りであると思います。  それからまた、三公社現業でございますが、これは私は、必ずしも同一水準であるということは要しないと思っておりますけれども、やはり公務員給与との間にはある程度の均衡は必要であると、かように考えております。
  8. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題は、さらにお尋ねをしても……、まだ時間もありますから、まあ七月には報告をせられるわけですから、去年したから、ことしは給与改訂勧告は控えるのだというような政治的な配慮のないように、民間給与の実態から、当然勧告すべき場合はすべきである、こういう考えでやはり私はやってもらいたいと思うのです。  その次には、地域給の問題ですが、地域給の問題については、前に、昭和二十九年五月に、地域給改訂についての勧告淺井さんの方からなされておるわけなんです。これは、御承知の通り国会でも、地域給の不合理是正する必要があるというので、ずっと前の国会ですか、この勧告が出されてから、この勧告基礎にして、相当国会の方でも成案を得つつあったわけです。それが国会の解散というふうな事態で、ついにそれがお流れになって今日まできておるわけなんですが、そこで、この地域給改正についての勧告を見ると、不合理是正はこの勧告が大体おしまいだと、こういうふうに書いてあるわけなんです。まあ町村合併等によって若干やられる点は、人事院にまかしてもらいたいというふうな趣旨が書いてあるのですが、この地域給の不合理改訂ということについては、その後も人事院としては、この勧告考え方を今日も持っておられるのかどうか、そういう点を伺っておきたいと思います。
  9. 淺井清

    政府委員淺井清君) それは、一番問題になっているところは、その勧告の出ましたあとで、市町村合併を促進する法律が制定せられ、それによって非常に多くの市村町が合併されておる。そのために、相当不便なような状態になっておるということは認めざるを得ないと思っております。
  10. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の質問をしておる要旨はですね。二十九年に勧告が出されて、実際は、今日までこの勧告は全然実施されておらないわけです。国会において努力はされましたけれども、結果から見れば、何らこの勧告は取り上げられておらない。実施されておらないということに対して、人事院総裁としてはどう考えておられるか。
  11. 淺井清

    政府委員淺井清君) 人事院は、地域給勧告はいたしましたけれども、終局においては、この地域給というものは廃止すべきものだ、こういう考え方は持っておったのであって、これは、しばしば国会においてもわれわれは言明をいたしておるのでございます。ところがその後、二十九年の勧告がそのままになっておりまするところ、今回、この地域給というものは廃止されておる、廃止されるような法案がここにある、こういう事実は、私は無視することはできないと考えます。
  12. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、人事院勧告が出されて、今日まで実施されておらないということについて、この勧告をせられた人事院総裁として、この勧告を今日においても実施してもらいたい、こういう意思を持っておられるのかどうかということですね。
  13. 淺井清

    政府委員淺井清君) それは、ただいまお答えをいたしましたのでございまするが、人事院といたしましては、その勧告をいたしました以上は、その実施を望むことは当然でございます。ところが、問題は一つ先へ参りまして、この地域給というものは今回廃止されることになった。まだその法案は成立していないわけでありますけれども、そういう状態になったので、人事院といたしましては、ここであらためて地域給是正をするという考えはもっておらないのでございます。
  14. 松岡平市

    松岡平市君 関連して、ちょっと淺井さんにその点についてお聞きしたい。  おそらく今の質問もそういう点だろうと思うのです。二十二国会であったかと思うのですが、人事院勧告が出て、それを両院の当時の人事委員会が取り上げて、ずいぶん長い間かかって、衆議院と参議院で打ち合せをして、大体委員会としては、両院とも人事院勧告に基いて一つの……相当修正はありましたけれども、地域給級別を改むべき一つ成案を得た。得たまま今日に至っておる。さて、今日政府が提案したものは、地域給廃止する、しかしながら、これにかわるものとして暫定給与というものを認めておる。暫定給与であるから、もちろんこれは永久的なものでないけれども、しかし、少くとも相当将来にわたって暫定給与を残すということは明らかであります。ところが、その暫定給与は、あなた方が地域給級別改訂しなければ不合理であるといわれた、その不合理のままの地域給基礎にして、相当将来にわたって暫定給与は残す。こういうことになっておる。そうしますというと、人事院も認め、さらに両院の当時の人事委員会で十分審査して、そして両院の少くとも委員会では一応、不合理をこう改むべきものだという一つ成案は残っておる。そして、しかもこれは無視されておる。そして従来の不合理であるという、人事院も言い、両院の当時の委員会も認めた、その不合理なものを基礎にして、暫定給与というものはその基礎のもとで将来給与する。こういうことになっていると思います。そうするというと、少くとも暫定給与支給というものは、不合理級別のままで給与される。こういう矛盾だけは、やはり私は依然として残ると思うのです。この法律を見て、この点に関して人事院は一体どう考えておられるか。少くもそのとき、当時二級地であるものを三級地に上げる。下げるものはなかったと思います。ですから、三級地を四級地に改めなければ不合理だということで、両院委員会が決定したのであります。それぞれの地域は、現在二級であるが、当時三級になる、三級は四級になるとかというようなことをそれぞれの地域で承知しておるが、それらは全然採用されずに、不合理であるといわれた前の地域給暫定給与という——地域給ではなくなりますけれども、暫定給与という形で差別がつけられる。これを私は、一体どういうふうに人事院考えておられるかということだけは、やはりここで明らかにしておいていただきませんというと、暫定給与がすぐなくなるのではございませんから、地域給はなくなるけれども、それにかわる暫定給与というものはちっとも違わずに残っておる。こういうことについての人事院考え方をはっきりしていただかぬと、ちょっと工合が悪いのじゃないか。これは、暫定給与が長く存続するならば、やはり暫定給与支給なり級別というもの、これには相当な不合理が残っておる。やがてこれはなくなる。暫定だから、多少の不合理はあっても、人事院としてはやむを得ないと認めるとか、そこのところだけはやはり、将来の問題でございますけれども、この機会にはっきり人事院意思表示をいたしていただく必要があろう。こう思うのであります。
  15. 淺井清

    政府委員淺井清君) ごもっとものお尋ねでございまして、人事院といたしましては、二十九年にやりました勧告を一度実施しておきまして、少くともあの線は実施しておいて、そうして廃止方向へ向ったらよかったと思うわけであります。その点は率直に申し上げます。
  16. 永岡光治

    永岡光治君 今、松岡委員から指摘されましたが、この前の地域給勧告が実施されてない。この前の委員会で私が人事院に尋ねましたところが、それは生きておるのだ、消えていない。人事院の権威からしても、これは、今の淺井総裁の言を借りても、実施すべきだという意向だと思う。この際ですね。それはそれとして、やはりこれは、どうしても実施しなければならぬと思うのでありますが、問題は将来の問題であります。なお、この法律改正によりますと、第二条の六号でございますが、地域給についての勧告というその方向は削除されることになりますが、この地域給は、名目は変ることになります。暫定手当ということになるわけですが、本質地域給性質を同じくするものであります。だからこそ、地域給級別区分に応じてこういう率で出すということを明示してあるから、当然その精神は生かされておると思うのです。従いまして、第二条の六号の地域給に対する勧告はなくなったとしても、当分続くであろう暫定手当について、しかも、その本質地域給と同じ性質を持っておるものであれば、当然これは勧告をしなければならぬ。しかしこれには、二条の六号がなくなると、人事院ではお困りになることはないか、こういうことで、人事院に私は念を押して尋ねたわけであります。ところが当時、次長でありましたか、人事院を代表しての答弁では、これは、第二条において、人事院はあらゆる給与についての勧告権を持っておるのでありますから、当時その問題は勧告の対象になるのだという、はっきりした、きわめて自信のある答弁をいただいたわけでありますが、今の答弁によりますと、どうもあやふやになりそうだ。暫定手当についての勧告はやはり将来もあり得る。また少くとも、松岡委員がただいま指摘されました、不合理是正を中心にするところの問題、あるいは町村合併に伴うところの不均衡是正の問題、こういう問題は当然私は、早急に人事院は何らかの勧告をきるべき性質のものではないだろうか、こう思うわけでありまして、その点で、もう一度、二十九年の勧告をこの際実施してもらいたいという希望を強く持っておるかどうかということが第一点。第二点は、将来にわたっても、暫定手当の不合理については、やはり是正勧告で行う腹である、こういうお考えがあるかどうか、この二点をお尋ねしておきたい。
  17. 淺井清

    政府委員淺井清君) 前にあった二十九年の勧告は、むろん人事院勧告したものでありますから、この実現を希望することは、これは当然であります。  第二点については、実は率直に申しますと、この地域給に関する法案というのは、人事院の立案した法律ではないのであります。そこで、人事院としては、これの解釈をはっきり申し上げることが非常に困難なのでありますが、ただいま御指摘の、二条六号が削られておる。このことは、人事院地域給勧告権を持たないようになるのじゃないかと、かように考えております。そこで、地域給というものが、つまりとの二条六号にある勤務地手当支給地域及び支給割合の適正な改訂についての勧告権、これが削られておるわけでありますので、地域給勧告権は、人事院としては持たないのじゃないかと思っております。  そこで問題は、暫定手当というものの性質でありますが、この暫定手当というものは、定額でありますけれども、これは地域給の一種じゃないだろうか。そうすると、その改訂勧告する基礎給与法にないのではないかというので、ちょっとその点、疑問になるのでありますが、その点は、なおよく研究したいと思っております。
  18. 永岡光治

    永岡光治君 そうすると、私は、今淺井総裁解釈のようなことをおそれるものですから、この削除した精神は、おそらく地域給についての同性質のものですね。そういうものについて勧告しちゃいかぬという精神じゃないだろうと思う。ただ地域給という文字が暫定手当に変ったのであります。従いまして、それはそういう精神から削除するということになったのであろうと私は思うのであります。従いまして、もちろんこれは、将来この地域給の整理をしたいという気持はありましょう。その点からもあったと思うのです。が、当分続くことはこれは間違いないわけです。それで、削除されても大丈夫かと、もし削除して、そういう権限がないということになれば、これはあらためて項を起しまして、地域給という項目を暫定手当という表現にかえなきゃならぬと私は思うのでありますが、そういうような心配はないかということを、重ねて人事院の方に質問いたしましたところが、絶対大丈夫であるということを、この委員の方全部はっきり聞いておいでになると思うのです。何回お聞きしても大丈夫、そういうことは人事院勧告ができるんだと、はっきり言うものですから、そうかなと思いながらも、できるならば、この修正の項をもう一度修正いたしまして、暫定手当ということに置きかえた方がいいのじゃないかという心配を私まだ持っておりますが、そういう意味で、もう一度淺井さんのはっきりした見解をお聞きしたいと思います。
  19. 淺井清

    政府委員淺井清君) お説の通りならば、私はそこに疑問があると思います。この法律のこのままでは、さようにお答えするより仕方がない。人事院としても、なおこの点は研究いたしたいと思っております。
  20. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の問題、なお研究したいということですが、これは、この法案審議中に、人事院見解というものをはっきり私は表明してもらわないと、この法案審議に非常な支障をきたす。これは、今永岡委員質問に対して、この法案審議中に人事院見解を明らかにしたい。それから、松岡委員質問によって非常に明らかになったわけですが、人事院としては、不合理是正を行なって、その上で、地域給廃止についてどういうふうに具体化するか、具体化する場合には、まず不合理是正を行なって、その上でやるべきであるという見解がはっきりしたわけです。それからもう一つは、地域給廃止の問題ですが、地域給の不合理是正してもなお十分……これは、不合理は依然として残ってくる問題だと思うのです。窮極においては地域給廃止するという方向であるということは、これは、われわれも大して異論をはさむわけはないわけですが、ただ問題は、どうして地域給廃止するかということです。これについては、私は前の労働大臣であった倉石さんに質問をした場合にも、既得権というものは決してそこなわないんだ、既得権を確保しながら、地域給というものをやはり廃止していきたいんだ、こういう見解を表明されておったわけであります。今度の衆議院の、地域給を廃しそれに伴う暫定手当、この移行に当って、やはり若干既得権というものがそこなわれておるわけなんです。こういうことについて、人事院としては、先ほど総裁が話されたように、地域給は、将来においては廃止すべきだという見解を持っておられる。実際に、既得権というものをそこなってでも廃止していくという見解を持っておられるのか。私は、少くとも既得権というものは、これはどうしても確保して、その上に立って具体的な措置を講ずべきだと思うのですが、そういう点についての見解を伺いたいと思います。
  21. 淺井清

    政府委員淺井清君) それは御同感であります。人事院といたしましては、既得権は、これはあくまで守っていかなければならぬ、そこで、実は人事院といたしましても、ただいま申し上げましたように、将来は廃止しなければならぬということを考えておりましたけれども、なかなか名案がないのであります。そこで、廃止勧告は、ただいままでやったことはございません。
  22. 竹下豐次

    竹下豐次君 大平さんにお尋ねしたいのですが、先ほどから同僚の質問のうちにも出ましたように、私も、この地域給廃止されて、そして暫定手当というものを新たにお作りになったという形になっておるけれども、実質はやはり地域給が残っておるんだ、違っているところは、無給地一級地に繰り上げられるということ以外に変った大きな点はないのであります。地域給そのものはお認めになっているのではないかというふうに考えておるのです。それならば、何も暫定手当という言葉に変える必要はないのではないか、それでそのままでいけるのです。これをお変えになっているのは一体どういう理由でお変えになったのか、それとも暫定手当というのは、地域給暫定手当である、あるいは暫定地域給である、あるいは家族手当暫定的のものであるという、その実質が示されるのが普通でなければならぬ。ただ、この場合の暫定手当というのは何の暫定手当か、実質をちっとも現わしてないのです。これは、ちょっと珍しい例ではないかと思うのです。そういうことについては、衆議院でいろいろ議論が出たことではないかと思いますが、その経過もお話願いたいと思います。  それから、今日までのところ、地域給は、戦争直後のあの混乱のときにできたもので、今日にはふさわしくないから、なるべくこれを早くやめなければいけないというので、今日まで衆参両院とも進んできていると思う。ところが、今日地域給というものを廃止して、そして暫定手当というものに変えたということになっても、それが、この暫定手当というものが、相当に期限を制限した暫定手当ならいいですけれども、無期限に、いつまで続くかわからないというような、この案によりますと、地域給をなるべく廃止を早くしなければならないという、今日までの衆参両院の行き方に逆行してしまって、むしろこれでもって、実質上の地域給というものが一級、二級、三級、四級と、そのままに残って、いつこれを改正するかわからない。むしろ暫定的でないような、これは逆行じゃないか、こういう気持がするのですが、そういう点の、おそらく議論の出たことではないかと思いますが、経過を一つお話を願いたい。
  23. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) 地域給の問題は、今度の給与改正に当りまして、一番腐心をいたしたところでございまして、私どもは、これを制度の問題と、既得権益の保護の問題と、将来どうするかという問題と、いろいろな角度から検討いたしたわけでございますが、第一、制度の問題といたしましては、お言葉にもありましたように、現行の勤務地手当制度は、給与の基底をなしております生計費その他客観的な経済情勢から著しく乖離してきておる。従いまして、この勤務地手当制度は、このまま放置することは許されないのだという考え方につきましては、衆議院におきましても、各委員の間に異論のないところでございました。従って、地域給をこの際思い切ってあきらめるんだという第一の考え方、これは、われわれの間に異論がなかったわけでございますが、ただ、先ほど委員からお話がございました人事院の御勧告もございましたし、政府の御提案で、国会両院におきまして、地域区分の問題で成案を得た事情も、これはよく承知いたしておりますが、すでに不合理であるということが判明いたした以上、それをさらに地域給制度の中に存する不合理是正するという考え方一つ確かにあると思いますけれども、このもの自体が客観的に全体として不合理になってきたんだから、地域区分の問題も一緒にいたしまして、これ以上不合理を拡大再生産しないようにやろうということが、今度の改正につきましての一つの基点でございました。  第二の既得権益の問題でございますが、先ほど荒木委員からもお言葉をいただきましたが、私どもは、既得権を寸毫もこれは侵害しちゃいかんという鉄則を守り抜いたと思っておるわけでございます。なるほど今度の給与改正に伴ないまして俸給表が変る。その変った程度を地域給に与えるというのは、十分手の尽された考え方だと思いますけれども、しかし、すでに廃止するのだときめて、三月三十一日現在でこれをフリーズしてしまうということをきめたわけでございまして、その限りにおきまして、何ら職員既得権を侵害しておるものとは思っておりません。  第三の将来の問題との関連でございますが、暫定手当は、今竹下委員からもお言葉をいただきましたように、きわめて内容のはっきりしない、性格のはっきりしないものだが、何らか地域給的なものではないか、その点は私もそう思います。ただ、いつまでも暫定手当のままで置かないで、行く行くは本俸に繰り入れていかなければならない部面もあれば、あるいは生計費の高い地域におられる職員に対して、別の給与体系に移行していかなければならぬ部面もあろうかと思います。そういう性格が混在いたしておりますのみならず、この暫定手当をごらんになっていただきますと、この前の勤務地手当制度とはずいぶん構造が違っております。第一は、これは、家族給を基礎としていないということでございます。従って、全然家族給を以前もらわれておられなかった独身の方々に対しましても、定額的にこれを与えるというようになっておりまして、従来の勤務地手当からは相当距離ができておるわけでございます。なぜそういうことをしたかと申しますと、これは、暫定手当暫定性がそうしたわけでございまして、定額化して、行く行く本俸への切りかえを円滑にやっていこうということをあわせて考えたわけでございます。要するに、今度の改正の第一の原理は、ともかく不合理性が非常にあらわになって参りました現行の地域給制度は、もうこの際廃止するのだという鉄則をまず確立していく。その鉄則を貫く場合におきまして、将来これをどう持っていくか、あるいは現在までの職員既得権をどう擁護するかという点をこれに併用いたしまして考えましたのが今度の改正案でございます。これによりまして、ともかくこれまでの懸案につきまして、解決の一つの前進が行われるものでないかと、かように私ども見ておるわけでございます。
  24. 竹下豐次

    竹下豐次君 今の独身の人の問題についてお話がありましたが、その御説明は、地域給の問題をここでやめるのだという説明にはなりませんで、今までは、家族を持たない者にはやらなかったという点ですね。今度はやるのだということで、地域給そのものに関する考え方は少しも昔と変らないので、範囲が広まったというだけじゃないのですか、適用の範囲が。
  25. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) そのように御解釈いただきましても、これは仕方がないと思いますが、ただ、先ほど申しましたように、暫定手当暫定性と申しますか、いずれこれは、本来の給与項目に分解されて整理されるべき運命を持っておる、そういう将来の持っていき方を考慮に入れて、やむなくそういうことをしたわけでございます。今までの勤務地手当制度とは少くとも将来併用を予想して、そういう技術的な作業を付け加えたということでございますので、新しい地域給である、あるいは地域給の拡張であるという御解釈は間違いじゃございませんけれども、私どもは、地域給に重点を置いて考えたわけじゃなくて、これを将来どうするかという、この見通しを持ちまして、内容をこのように盛り合した、こう御解釈、重点の置き方が違っておったのだと御了解願えたら仕合せだと思います。
  26. 竹下豐次

    竹下豐次君 地域給廃止の議論は、これは申すまでもなく、戦争直後の状態と違って、いなかでも都でも、大したその生活の状態が違わなくなってきたから、これを差別をつけるのはよくないという議論だったと思っておりますですが、その点をそのまま残して置いて、しかも、暫定という言葉に切り換えたがために、従来、なるべく早く廃止したい、統一したいという考え方であったのを、この法律に今度変えるがために、また無期限に、ずっと長く続いてしまうことが保障されるような格好になるのじゃないかという心配が私はあるのです。で、これはおそらく、やはり期限を切ろうじゃないかとかいうような議論が衆議院でも出たのじゃないかと思いますけれども、そんな話は出なかったのですか。そうでないと、いなかの者は結局不安を感じて、これは、今まで改めてもらうつもりだったのだが、もういかないことに大方きまってしまったのじゃないかというように、あなた方の先ほどからの御説明と逆な考え方をする人が私は相当にいなかの者には多いのじゃないかという気持がいたしますのですがね。
  27. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) その点は、お言葉でございますが、全然逆な考え方を私どもいたしております。もし勤務地手当制度をそのまま存置しておきますと、給与改訂があるたびごとに、それに比例して地域給も上って参ります、従って、地域給の比重というのは現在とちっとも変らないことになるわけでございます、だから、これを定額化したという意味は、なるべく早くこの始末をつけたい。しかも、始末をつけやすいような姿にしておくのだというようにすることは、これを廃止の終局の目的に達する場合におきまして、非常な前進であるというように考えておるわけでございます。
  28. 松岡平市

    松岡平市君 私は、地域給廃止するという方法は、しごく賛成でございます、これは、私のみならず、今日においては、地域給が不合理である、これを創設された当時に比べて意味がなくなってきたということについては、ほとんどもう異論がないと私は了解しておりますから、これを廃止するということについては、まず異議はございません。ただ廃止することについては、非常に困難である、これも認めます。従って、こうした非常に割り切れない、まあ中途半端な案も、この段階ではやむを得ない、これも了承いたします、ただし、これを今の暫定給与という形において残す、これがいつまで残るかわからない、ここに問題があると思う。これを、今言うように、片一方では既得権擁護ということで、少くとも暫定給与も、暫定給与になった日から私は既得権になると思う。そうするというと、これを解消するという方向に進まなければならぬが、結局解消する方法としては、この現在の既得権という暫定給与を、すべて既得権を侵害しないで、全公務員、これは国家公務員のみならず、地方公務員に至るまで、これを少くとも全部本俸あるいはその他の形で、均一にちゃんと給与し得る日が来なければ解消ができないと、こういうことになると思うのです、既得権を尊重するということになれば、そうすれば、いつかは全公務員に今の最高の暫定給与として残る最高のものをちゃんと給与するという日までは残る、そしてそれがちゃんと給与されるところまでは、先ほど私が淺井総裁お尋ねして明らかになったその給与支給する、あるいは支給しない、別々な段階で支給するという、その支給地域の不合理さというものだけは残るのです。問題はここにあるのだと思う。そこで私は、既得権というものの解釈ですね。既得権というものは、法律において突然これをなくするわけにいかないだろうと思う。しかしながら、少くとも予告して、こういう暫定給与というものは、向う何年間しかやれないものだと、こういうことをはっきりしさえすれば、既得権の侵害にならないのだ。それが既得権の侵害になる、それが侵害立法だということになれば、こういう暫定給与に変えるということは既得権の侵害です。何となれば、いろいろ言われたところによると、少くとも現在の地域給というものは、家族給に至るまでもちゃんとふやしてやるという約束なんです。そういうものを今度ふやしてやらない、定額にしてしまうと立法すれば、それは、厳密に言えば、既得権の侵害になりましょう。私はそれを既得権の侵害と考えませんが、同時に、この暫定給与というものは、向う五年間なら五年間、こういう制限を付して、ちゃんと明らかにしておけば、五年間だけきちっと守れば既得権侵害にならないと、こういろ解釈も成り立つのです。こういうふうに、これをいつの日にか改正しなければならない。地域給は不合理だとあなた言っていらっしゃる。そうすれば、解消する方法というものをこの際明らかにしておく一つの方便として、私は、この暫定給与というものはここまでは認めるというようなことを、どうしてあわせてお考えにならなかったかということをお聞きしたい。
  29. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) 今のお言葉でございますが、先ほど竹下委員の御質問にも、ちょっと私申しおくれたのですが、将来はどうするのか、将来の目安をはっきりせよというおぼしめしだと思いますが、われわれが改正案を立案いたしました背景になりました根本の考え方を申し上げますと、この地域給廃止方向に持っていくのだ、一体いつまでかかるのだということでございますが、それは、松岡委員のおっしゃるように、今の最高の暫定手当を受ける職員の水準まで全職員に及ぼした段階において初めてなくなるのだ、これは、原理的に私はその通りだと思う。しかし、先ほど私がちょっと触れましたように、暫定手当には二つの性格がございまして、一つは、そのように地域給の部分もあれば、やがてまた本俸に繰り入れられる部分と、二つに分解して考えておく必要があると思うんです。なぜなれば、現在六大都市等に勤務されておる方は、これは、民間給与を見ましても、依然として相当地域較差がございます。従って、これと均衡をとりまする公務員給与におきましても、この地域較差を全然無視するわけにはいかぬと思いますから、どこにしぼるかという問題は、今後の論議に待つといたしましても、ある程度の地域較差は公務員給与体系にあるべきはずだ、こう思うわけです従って、今の暫定手当の中にはそういう部分もある。しかし、そうでない部分、すなわち、本俸等に切りかえていかなければならぬものと、二つございます。われわれが改正案を立案いたしました気持といたしましては、一部、付帯決議にも盛ってございますように、昭和三十四年四月一日に今の無級地はなくなる、一級地と二級地は均衡化されるんだ、そうしますと、残りますのは、現在の二級地と三級地と四級地でございます、で、その段階までは、この際われわれとしてはお約束をいたしましてもあえて越権ではなかろう、ただ、一年たちましたあとで、そのときの地域較差をどうつけるべきかという、これは人事院の方にもお考えがございましょうし、政府国会におきましても検討をいたさなければならぬ問題じゃないかと思います。その場合のことまで、今日の段階におきまして、私どもがきめてしまっておくというようなことはいささか行き過ぎじゃないか、こう思いますので、第一段階まで、この二年の間にともかくも現在の無級地は解消してゆくんだ、それが終った段階で、現在一級地の諸君が受けておる暫定手当相当額を本俸に繰り入れてゆく、残った問題については、今後のその時点におきまして、公務員給与地域較差をどう見るかとあわせて、それまでに残っておりました暫定手番の処理を考えるべきじゃないか、今の段階で、四年先、五年先までもここできめてしまうということは、いささか大胆に過ぎるんじゃないか、まあこう考えたわけでございます。
  30. 松岡平市

    松岡平市君 私は、ここまででも、地域給廃止に向っての歩を進められたことについては敬意を表します。しかしながら、問題は残る、これだけははっきりしておきたいと思うんです。現に、昭和三十四年の三月末日ですか、ここでは、今おっしゃるように、現在の無紋地、一級地だけはなくなってしまいます。しまいますが、まず残るものは、ちゃんとここに予定しておられるように、合併市町村個々の中の問題は何ら解消されず、残っておる、これはぼつぼつ考えるということなんです。考えた場合には、もう地域給全般の、二十九年の二十二国会でやったと同じような問題が再現する。と申しますのは、これは、合併市町村の中の給与を一緒にするというだけでは、これは済みません。と申しますのは、今日の市町村合併の実情を見ますと、現に四級地あるいは三級地である市が中心になって、そうして三級地以下の無級地までの村を合併したところがあります。はなはだしい例は、一つの村が分村して、片方は三級地の市に合併しておる、そうして半分は無級地同士の村で合併して新しい町を作っておる、こういう問題があります。三十四年になって、そうして、かりに三級地の市のところにその分村した合併のものは三級地、片方はもう無級地のままになるということになりますというと、少くともかつては同じ無紋地であったところが、一方は三級地になり、片方は無級地になる、こういう事態が起って参ります。そういう場合に、これが穏やかに市に合併したものは三級地として待遇されるというようなことが、簡単に私は承服されるものでないということだけは、今からここで申し上げておいて差しつかえないと思う。こういう事態が起って参りますというと、やはり現在までいろいろ論議されておる地域給の不合理というものが再び蒸し返される、こういうことが必ず起るということ、これだけは、一つ十分お考えおき願っておきたい。  それで、今言うように、そういう問題を含みながら、しかも暫定手当という、今のあなたのお話を聞きましても、これは予測されない、少くとも廃止方向には向うけれども、少くとも将来のことについては、今から大胆な措置を考えるわけにはいかないという御答弁からいたしましても、相当将来にわたって暫定手当というものは残る。これは、大へん公平になったようでございますけれども、そうでない。というのは、本俸に繰り入れられた。そして少くとも暫定手当がつく、二級地、三級地、四級地というものは、本俸が片っ方は上って、片っ方はちゃんと、これはもう定額でございましょう、おそらく定額でございますが、これだけはぴちっとはっきり付加される。こういうことが、あなたは、やっぱり六大都市の例をあげられて、給与というものはやっぱり場所々々によって区別があるのだ、こういうようなことを言っておられるが、その区別があることは認めても、それは非常に不合理な、と申しますのは、現在の四級地も三級地も二級地も、決して正確な、ある基礎に立った級別ではない。あるものは非常に偶然な、あるいは、もう率直に申しますというと、非常に猛烈な運動によって、不当に高い級にされたという地域も現実にあるわけです。そういうものの上に立って、今言うような、はっきりした給与のほかに、ちゃんと定額が付加されるという問題が相当長い間これから残っていくということになれば、これは、暫定手当がきまりましたならば直ちに、三十四年の四月一日から暫定手当をもらえる地域に、しかも、相なるべくは、一番高い四級地の地域に自分の所を指定しろという問題は、これは私は、全国的に起ってくる、こういうことが予測されるわけであります。少くともこれをわれわれが立法する際には、それは予定しておかなきゃならぬ。そしてこれを何とかして解消する、そういうめんどうの際に、まあ全国各地域にそう大した不公正なという考えを持たせないで済むような措置をあわせて考えておかなきゃならぬ。私はこれは当然のことだと思う。で、先ほど淺井人事院総裁が、少くとも暫定手当というようなものをやるにしても、二十九年の五月に人事院勧告した、あの級別是正というものをやった上でやる方がよかったんだということについては、私は、一応衆議院修正を企図せられた方々も十分考慮に入れた上で、これをやはり将来しかるべきときには、相当修正をしなきゃならぬのだということをお考えおき願わなければならぬと思うのでございます。その点については、どういうふうにお考えになるか。この機会にもう一ぺんはっきりしていただきたい。
  31. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) 私、冒頭に申し上げましたように、この地域給の問題は、制度の問題として、地域給全体が不合理性を、弊害を暴露してきた。従って、地域給に内在する不均衡是正するということから、いろいろな御提案があり、御意見があることは、私はそれはあえてわからないものでもないのでございます。そういう考え方があるのも当然だと思うのでございますけれども、そのもとになる地域給全体がもう不合理になってきたという場合に、その地域給の内部の不均衡をどう是正するかということよりも、むしろ地域給全体を早く処理する方向考える方が政治じゃないかと、こうわれわれ考えたわけでございまして、従って、現行の支給区分も現行のままでいくんだ、これは不合理であるということをよく承知しつつ、全体が不合理になったのだから、全体の処理を考える方が優先するのじゃないか、こういう考え方考えておるわけでございます。
  32. 永岡光治

    永岡光治君 ただいまの大平さんの答弁の中で、やはり問題になることがありますので、ただしておきたいと思うのです。  この前の内閣委員会におきましても、あるいはまた本日の内閣委員会におきましても、人事院の所見を承ったわけでありますが、この勧告に当っては、地域給についての既得権益は確保される、こういう解釈を持っているわけであります。従いまして、この勧告された当時における地域給についての財源も、当然今までの地域給の指定に応じたものを支給されるものと、各該当地域の個人は既得権益として期待していると思うのであります。ところが、今のお話しによりますというと、三月三十一日の時点において既得権は守られた、こういうことをおっしゃっているわけでございますが、この法律は、三月三十一日の時点、その時点で既得権を確保しろという期待じゃないわけです。勧告をされたこれが確保されるようにということをおそらく人事院は期待していると思う。もう当然この支給を受けている方もその通りだろうと思うのでありますから、第一、その既得権を認めながら、そうして是正地域給をかりになくすという方向に進むとするならば、財源を新しく一文も使わずに、その既得権を剥奪する形で整理するというそのこと自体が、やはりもともと私は考えが間違っているのじゃないかと思うので、そういう三月三十一日の時点は、これは既得権じゃないのだ。勧告されたそのものを受けるということが既得権だと思う、その上に立って、しかしたとえば、今、松岡委員から意見が述べられたように、五年後にはこういう方向でいくのだ、こういうようなあり方が最も正しいのではないか。今の松岡委員質問に対しましても、お答えしておったようでございますが、不合理になったのだ。地域給が不合理を免じているからそれをなくすのだ。そのなくし方なんです、問題は。だから、その不合理を直せばいいのですね。地域給が今支給されている地域を直せばいいわけです。それをもとにしていけば、合理的なものができる以上、誰も文句を言わないと思う。ただ、政府において、その合理的なものにするために財源を使うということを、一文も使わないということであれば、これは問題があろうと思う。今、最初に出ている、なにもそういう財源を使わずに、できるだけ合理的なものに、不合理をなくそうといったものだから、その合理的なといったって、やはり不合理が残っている。特に既得権として認められている家族給の問題、将来、今の法律でいけば、人はふえれば、その分の地域給はもらえるわけですね。ところが、それは、この法律によってもらえなくなっちゃうのです。明らかに既得権の侵害だと思うのです。今かりに子供が二人いる。あるいは独身者だとか、その人が嫁さんをもらった。あるいは子供が集まれたということになるというと、その地域給は認めないのですよ。こういう法律になっているわけです。それが既得権の侵害なんです、明らかに。そういう形で是正するということは、不合理をあなた自身がこの中に認めているということを、明確にこれは認めなければならぬと思うのですね。だから私は、そういう考えではなしに、一応既得権を認めた形で、この人事院勧告は、既得権を認めた上で実施して、その上でこういう整理をするのだ、こういう方向に進むことが最も正しい、穏便なやり方だと思う。だから私は、資料も要求いたしておるわけでございます。どの程度財源が余るのか、よくわかりません。財源は余るわけです。人事院勧告の中には、支給分としての予算がこれだけは要るということは、明確に表現はいたしておりませんけれども、出てくるわけです、分析の結果は。既得権なんです。それは、人事院勧告による既得権なんです。それをあなた方は侵してまでも、こういう不合理なやり方をすることに問題があると思うのでありますから、念を押したいことは、三月三十一日の現在を守られたことは、決して既得権じゃないのだ、こういうふうにぜひ考えを改めておいてもらわないというと困りますということを、念を押したいと思うのですが、その点について、あなたはどういうふうにお考えでございましょうか。
  33. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) それは、永岡さんのお言葉でございますが、私は、期待権益だと思いますけれども、既得権ではないと思います。読んで字のごとく、既得権の侵害とは私ども考えておりません。また、三月三十一日現在における既得権をどうして守るかという点に苦心いたしたわけでございます。もし、お説のように、将来の期待権益をまず頭に置いてやらなければならぬとすれば、私は、地域給の整理はできないのではないかということでございます。われわれの改正案と予算との関連でございますが、これは、六・二%の給与改善原資そのものをよそに流用しようとか、あるいは整理しようとか、そういう下心は少しもないのでございます。ただ、本年度に限りまして……、国家公務員は、御承知のように、四級地、三級地が多いのでございます。地方公務員の方は、それと構造が違いまして、二級地、一級地が多いわけでございます。しかし、これを同時にしてあげないといけない。国家公務員の方をやろうと思えば、今年一年でやってしまうことができるわけでございますけれども、どうしてもこれは、足のおそい地方公務員をしばらく待っていただく、地方公務員の方は、よほどスピード・アップしなければならぬので、このまま財源を使わずに整理しようと思えば、六年余りかかるわけでございます。それを二年に短縮して、それに要する財源は国の方で心配しよう、こういうように考えたわけでございます。今度の給与改善原資について、それの全体の既得権益という観点にお立ちになれば、それを侵害したものではない、私ども、そう見ております。
  34. 永岡光治

    永岡光治君 私は、既得権の侵害だと思うのです。法律改正なかりせば、そのことを既得権というのだろうと思うのです。現在の法律における恩恵、これは既得権だと思うのです。この法律改正がないままに進みますね。今の現行法でいけば、家族がふえれば、その地域給がもらえるのですよ。あなたは、法律改正によって、この既得権をなくそうとしておるのです。そうでしょう。既得権の侵害じゃないですか。現行法律の権利の侵害じゃないですか。現行法律の権利を侵害していると言われても、それは権利を侵害されないと言う理由はないと思うのです。権利というものは、将来にわたってもそれは保有し得る権利ですからね。この法律で勤めておる限りは、公務員である限りは、この法律を適用しますよ。家族がふえれば、これだけの地域給をあげます、こういうことを明確に約束しているのです。これは権利です。それをあなたは、権利の侵害でないと言うことは、私はおかしいと思うのです。権利の侵害でなければ、どういうようにして侵害でないのかということをはっきり立証していただきたいと思う。
  35. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) それは、私どもは、あくまでも期待権でありまして、既得権ではないと考えております。
  36. 永岡光治

    永岡光治君 それは期待権でありましょうか。今の法律は実定法で、そのまま生きて適用されておる法律ですよ。家族がふえれば、その分の地域給がもらえるということは、それは侵されるじゃありませんか。それは期待権でしょうか。私はそうでないと思うのです。この法律が与えておる権利だと思うのです。
  37. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) それは、現行の法律がそのまま適用される場合はそうでございましょうけれども、四月一日から新法を適用するのだ、こういう建前でございますから、私は既得権を侵害したとは考えておりません。
  38. 竹下豐次

    竹下豐次君 今の既得権の問題ですが、先ほどから、既得権であるという前提のもとに質疑応答があったように私は了承しておったところでありますが、ただいま大平さんの御説明によると、期待権であって既得権でないという御説明で、そこにちょっと変った面が出てきたように私は感じたのであります。私は、実は、この地域給というのは、臨時法だとまかり思っておりました。ところが、それは私の勘違いであったことがよくわかりまして、第十二条に、「勤務地手当は、免許費が著しく高い特定の地域に作動する職員に対支給する。」こういう条文になっておる。これが地域給のもとになっておるのでありますが、臨時立法ではないのだ、ただ、「生計費が著しく高い特定の地域に在勤する職員」という言葉が使ってある。著しく高い特定の地域ということは、ほかの高くない所との比較の問題であって、この十二条ができた当時は、先ほど申しましたように、東京辺は非常に物資が少くて、いなかに比べて高かった。いわゆる著しく高い特定の地域であった。これは問題がありませんが、ところが、今日は、物が非常に行き渡りまして、一体著るしく高い特定の地域というものがあるかないかという問題が一つ問題になる。あったとしても、その地域は非常に限定されることになるじゃないか。ないということになれば問題ありません。限定されたという場合を仮定しましても、そういうことを条件として、著しく高くなかったならば、地域給というものはやらないでもいい法律だと思うのです。そう考えますと、社会情勢が変って、かりに著しく高い地域がないような時勢であると認定するならば、既得権侵害の問題は起らないでも済むじゃないかというふうに私は実は疑問を持って、先ほどから質問しようと思っておりましたところに、あなたの御答弁がございましたので、あなたの御意見に反しているという意味ではございませんけれども、その解釈既得権解釈すべきかいなかということは、これは、法律問題としても相当むずかしい問題じゃないかという疑問を私は先ほど来実は持っておる。これは、人事院の方では、既得権というふうに御解釈になっておりますか。大平さんの御解釈は、先ほど御説明がありましたが、人事院の方はどうお考えになっておりますか。もう一ぺん申しますと、一種の状態を条件とした地域給である。その条件が解消されたならば、これは地域的観念だから、既得権の侵害ではないのじゃないかという疑問も少くとも起り得るじゃないか、私はまだ断定的に今申し上げているわけではありません。そういう疑問を持っておるわけであります。
  39. 淺井清

    政府委員淺井清君) これは、非常にむずかしい問題でありまして、既得権というものをどう見るかということに帰着するだろうと考えております。私は、ちょっとここのところは、研究してみないとよくわからぬのでありますが、要するに、皆さんのお使いになっておる既得権という言葉は、それほど、裁判上でいうような既得権の意味じゃないだろうと思う。すでにもらっているところの金額という意味に使われていたと、私はさように解釈いたします。
  40. 竹下豐次

    竹下豐次君 私、そういう質問をいたしましたが、どうも今のお答えでは、研究なさらないとはっきりした御答弁ができないようなことでありますから、それはそれで、後日御答弁願いたいと思っておりますが、私は、実際問題として、かりにこれは既得権でないという法律解釈が下ったとしても、それは全部やめてしまっていい、今もらっておる地域給をやめちゃって、そうして所得を少くしてもいいのだ、そういうことを言っているのではない。ただ、法律解釈としてどういうふうに解釈すべきものであるかという、法律問題をお尋ねしているわけであります。既得権云々ということは、私は、ただ自分たちの感じでかれこれ言うべき言葉でなくして、やはり法律問題として、法律語として論議しなければならない。これが大事な問題だと思います。既得権の侵害ということになると、法律でそれを制限するということはよくないということになります。法律上そうでないということになったら、法律じゃ許されるけれども、実際政治上面では、そんなまずいことはしない方がいい、こういうことに移って行くわけでありますから、淺井さん、もう少し一つ考え下さいまして、その点どういうふうに御解釈になりますか。今お答え下さらぬでも、あとでもけっこうです。
  41. 淺井清

    政府委員淺井清君) 既得権でございますけれども、たとえば……。
  42. 竹下豐次

    竹下豐次君 私などがどういうつもりで言っているか、使っているかということはお考えになる必要はありません。ただ、法律家——あなた法律家ですから、法律家としてどういうふうに解釈すべきかということでけっこうです。
  43. 淺井清

    政府委員淺井清君) ドイツのワイマール憲法では、非常に明確なんでございます。それは、官吏の既得権はこれを保障す。こういうことが憲法の条文の中に入っております。そういう場合と日本のような……日本の憲法では、憲法上さような規定はない。つまり法律基礎を持っているものしかないわけであります。その点は、よほど既得権というものの意味が弱くなっているのじゃないかと思っております。でありまするから、さいぜん永岡さんの御指摘になったような点も、ドイツでの場合をいえば、これは憲法違反になるという重大問題になってくるわけでありまして、わが国においては、多少その点は違っておるように思います。
  44. 竹下豐次

    竹下豐次君 私、先ほど申しましたように、一つの条件を前提とした十二条の規定があって、その条件をきめた社会状態が変ったとすれば、既得権の侵害といろ憲法の問題が起ってこないのじゃないかというふうに思います。それでもやはり、一度与えたものは、こういうふうな条文になっておりましても、社会状態が変っても、やはり既得権の侵害ということになるという法律解釈になるものでしょうか。
  45. 淺井清

    政府委員淺井清君) それは、私お説の通りの点があると思います。なおよく研究してみたいと思います。
  46. 永岡光治

    永岡光治君 既得権、期待権は、この際論議は別といたしましても、とにかく勧告が出て、それを尊重する限りにおいては、否定すれば別でありますよ、人事院勧告を尊重するという建前をとる限りは、人事院は、この勧告によって地域給は整理しろという、このことは勧告していないのですから、やはり当然人間がふえれば家族の地域給ももらえるし、これによって新給与に切りかえられて、それに対する地域給も、二級地は一割四級地は二割もらえる。こういう勧告になっているのです。だからこれは、人事院勧告を無視するというならばこれは別です。別でありますが、いやしくも憲法によって、人事院の存在というものが憲法の精神に基いて認められたわけです。団体交渉権その他を否認して、そのために人事院というものを置いて、公務員給与は守っていくという新しい制度になったわけでありますから、それを、人事院勧告した以上は、尊重するのは当りまえなんです。だから、もしこれをやれば、さかのぼってこれは論議すれば、極端な論議をすれば、憲法違反にもなる。人事院勧告を無視するのですから。そこまで私は発展させようとは思いませんけれども、少くとも人事院勧告したものを、政府案では四月一日実施ということになっておりますが、実施は昨年の七月にやるべきであったわけです。しかも、この経緯を考えれば、二十九年一月以来ベース改訂はないわけです。給与改訂は行なわれていないわけです。そういう公務員の強い期待がある中に、地域給については、あるいはそれを完全実施した暁において整理をするというならば話はわかるけれども、そうでなく、この際少い財源でわずかな給与改善をして、しかもベース改訂しない。こういうことをしばしば答弁されておるわけです。ところが民間では、相当改訂されているわけです。ベースは、おそらく近いうちに私たちは、この七月までに、また人事院から給与改訂勧告が出されるものと期待はいたしておりますが、その際に考えてもおそくはないと思う。それも今やろうとするその政府の案なり修正案、この地域給については、衆議院の方の意向でございますが、それがその人事院勧告を無視した、つまり財源的には少くとも無視していく。期待されているところをやらずに、その範囲内でやろう。しかもそれは、国家公務員については財源が余るわけですから、そういうやり方が一体いいのかどうかということになるわけで、これは、そういう意味で、人事院勧告というものをもう少し国家も真剣に考えなければいけない。こういう意味で、地域給は非常に不合理なものである。まさに不合理だと思う。しかも、既得権、期待権等の問題がありましたけれども、少くとも公務員は三年もがまんして参りまして、新しい給与改訂に伴って、三級地はこれくらいもらえる、四級地はこれくらいもらえると計算しております、勧告が出た瞬間において。その長い公務員の希望をここで踏みにじろうといいますか、これは一つ大平さんも立案者でありまして、あまりかたいことを言わずに、参議院の修正に応じてもらわなければならぬと思う。その用意を一つ、もちろん、その用意があるなしにかかわらず、参議院が修正した場合には、その修正を受けていただかなければならぬと思いますが、それだけの一つ雅量を示していただきたいと思います。
  47. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) 今のお言葉は、私は、政治論としてそういうお考えがあることはよくわかりますが、私どもといたしましては、人事院勧告政府がお取り上げになりまして、大体それを骨組にして、今度の給与改訂が行われたと承知いたしておりますが、ただ、地域給につきましては、それにも増して、地域給の弊害が目にあまるものがあるというので、これは、われわれ政治に携わる者といたしまして、なるべく早い機会に何とかしなければならない。しかし、何とかするといたしましても、先ほど既得権の論議がございましたように、既得権を擁護するということは、これは絶対の仕事でございますので、給与改訂があるという機会でないと、そういうチャンスをつかまえないとできないわけでございます。従って、こういう給与改訂を機縁といたしまして、従来から懸案になっておりましたこの問題について、解決の糸口をとにかく作っていこう、こういう趣旨でございます。このやり方のこまかい技術につきましては、いろいろ御批判はあろうと思いますけれども、何とか一つ、懸案を早急に解決する糸口を見出したいという悲願にこたえたものがこの改正なんであります。そのように一つ御了承を賜わりたいと思います。
  48. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 地域給の問題について、相当突っ込んだ質疑がございましたが、私は、実はこの問題については、総理に質問をしてから、大平さんに質問したいと思っておりましたが、この機会ですから、やはり質問をしておきたいと思います。  先ほども申し上げましたように、地域給については、昭和二十九年に人事院勧告があったわけです。それから、もう一つ参考にすべき意見としては、いわゆる公務員制度調査会の答申があります。これは、昭和三十年の十一月に行われておりますが、その中に、やはり地域給についての見解が盛られております。それによりますと、私が申し上げるまでもないことですが、地域給は、将来においては廃止するのだ。しかし、これは一ぺんにできないから、当面は、地域給を二段階程度にしたらよかろうということを言っておられます。それから、この二段階程度にするに当って、いわゆる既得権の問題ですね。実質的な減俸を来たさないように、特に適切な調整措置を講ずることということがあるわけであります、これは、われわれ裏を返せば、既得権を侵さないようにして、しかも地域給というのを簡素化して、二段階程度にする。将来においては廃止した方がよかろう。これが公務員制度調査会の答申であるわけです。こういう答申が行われ、また、人事院からも勧告が行われておるのに、政府は今度、地域給については何らの提案もしていないわけです。私は、そういう点を総理にただしたいと思っておったのです。けれども、今回衆議院の方で、地域給についての修正が行われた。ところが、地域給廃止するのだということですが、実質的には一割五分、一割、それから五分の三段階の地域給が残るわけです。私から言えば、非常に微温的です。これで、地域給廃止するんだというようなことは、なかなか言い得ないと思うのです。ほとんど残しておいて、地域給廃止する御苦労は、私はわかります。これは、だれが考えてみても、地域給の問題は複雑であり、なかなかむずかしい。非常な御苦心をなさった点はよくわかるのです。ですから、衆議院でいろいろ御修正になり、お考えになった点には、私は非常に敬意を表しますが、しかし、地域給を将来にわたって廃止するという場合は、やはりここに二段階程度に圧縮する。そういう措置を講じなければ、将来私は、とてもこの問題を処理することができないのではないか、この点では、私は、公務員制度調査会の答申というものは、相当検討さるべき問題だ、研究さるべき、尊重さるべき問題だというふうに考えておるわけです。と同時に、既得権を侵さないのだ、実質的には減俸を来たさないようにするのだ。この二木は、私は柱だと思うのです、地域給考える場合に。それは、中には、先ほど質問がありましたように、地域給は何でもかんでも廃止するのだ、そうは私ほいかないと思うのです。やっぱり現行既得権を持っておる人たちの権利というものを奪う形において地域給廃止するということは、これは、政治の上から考えても、一大問題だと思うのです。ですから、どうしても底上げの方式によらざるを得ない。で、今度は、衆議院修正部分も、本筋において底上げの方式をとっておられる。これは、完全な底上げではないのですが、やはり精神は底上げで、五%地域給を引き上げておられる。そうして地域給の数を少くしていく。私は、この方向には賛成なんです。底をやっぱりもう少し引き上げて、五%だけでなしに、一〇%くらい引き上げる。そうすれば、同一市町村内の不合理というもの、いわゆる町村合併によって起っている不合理というものは、これによってほとんど解消するのではないか。先ほど人事院からの資料をもらいましたが、それによって残るものは、同一町村内で起る不合理というものは、一割にも足らない数になってくる。ごくわずかです。先ほど大平さんもおっしゃったのですが、こういう給与改訂のときでなければできない。確かにそういう面があると思うのです。ですから、この際やはり一〇%一割程度底上げで上げる。そういう思い切った措置をこの際とる。それから、現在地域給支給されているところの既得権は守っていく。こういうことになれば、相当の財源が要ると思うのです。さきに人事院勧告がなされたときに、その勧告を実施するのに、九十二億円の予算が要るという説明を受けております。私は、一〇%の底上げをするということになれば、相当の予算が要ると思うのです。しかし、これは、国政全般の運営を円滑にするというような大きな立場から見れば、これは、若干の予算をこの際使ってでも、やはりそういう方向にやるべきじゃないか。そういうふうな考えを持っているわけなんです。そういう点一について、なかなか予算上の制限のために、いろいろ御苦心があって、むずかしかろうと思いますが、しかし、そこを乗り切って、やはり国会としては、この際相当な予算を組んででも、使ってでも、一〇%程度の底上げをやって、いわゆる地域給廃止する大きなステップ、一段階を画すべきではないか。そうでなければ、せっかく御苦心をなさった衆議院修正案も、やはり何か、先ほどから御意見が出ておるように、究極において地域給廃止するというにはほど遠い、こういうことになるのではないかと思う。こういう点、相当予算を政府にも考慮さして、この際もう少し突っ込んでこの問題を処理する、こういうことについて御意見を伺いたいと思います。
  49. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) 政府は、地域給廃止について、公務員制度調査会の答申をどう考えているかということは、政府側から御答弁があると存じますが、私の承知している範囲では、この答申の線に沿いまして、次官会議を経まして、われわれ与党の方に御相談があったわけでございます。それで大体よろしいのではないかというような考え方で進んでおりましたやさき、私どもの方の衆議院内閣委員会における小委員会の方の審議が早く参りまして、今御提案したような内容に改正されて参ったわけでございます。政府側がわとの問題について怠慢であったというわけではないと思います。ただ、今御指摘の、二段階に思い切ってやったらどうだ、こういう考え方でございますが、私も、荒木委員と同じように、できるだけ早い機会に大またで歩いて、これを改正することには、私は方向としては賛成でございます。ただ、先ほど松岡委員の御質疑に、私がちょっと触れて申しておきましたが、二段階にきめてしまいますと、あとその二段階が残る。残った一〇%か五%というものが果して適切かどうかという問題が一つ残ると思います。生計費の実態を見ますと、全国平均から見て、一〇%ないし二%くらい高くなっている。しかし、その全国平均というのは、六大都市も含めての分でございますから、従って、もっと実態が高くなっておるわけです。一〇%で押え切れるかどうかという点は、なお人事院当局、政府当局におきまして、御検討願わなければいかぬ問題じゃないか。そういう問題が一つ含まれておるのではないか。二段階にこの際踏み切ってしまうと、そういう問題がまた残るのではないかという懸念が一つあったわけでございます。  それから、もう一つの問題は、私どもは、なるほど一段階でとどまって、この案の限りにおきましてはそうなっておりますけれども、その次の段階は、二段階を考えておるわけでございまして、ただ、それが三十四年度以降になりますから、三十四年度以降の公務員の生活の現況、経済の状況、財政の状況をその段階で見直して見て考え直すのが私は妥当な方法じゃないか。一段階でもう断念したというわけでは決してないわけでございます。  それから、第二点の既得権の問題は、これは、この答申にもありますような線に沿って、私どもも既得権を尊重するために、適切な調整措置を講じてあるものと、私どもは了解いたしているわけでございます。
  50. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 現在は、衆議院修正案は、一段階進めるわけです。私は、これはやっぱり一歩前進している面があると思うのです。ただ私は、いわゆる永岡委員からの、若干既得権を侵しておるという点が問題があると思うのです。それは別として、ここに一〇%程度底上げの方式でもし修正をするとすれば、一体どのくらい金が要るかということですね。いわゆる無級地を一〇%引き上げる、一級地は五%引き上げる。そうすれば、残りは一〇%と五%ということになりますが、非常にこれは簡単になって、次に解消するのに非常に楽になってくる。一体予算はどれくらい要るのですか。これは、人事院からでもいいですが、公務員制度の室長の方からでもいいが、こういう問題は研究されておるのですか。どのくらいの予算があれば、底上げ一〇%ぐらいでできるものか。
  51. 大山正

    政府委員(大山正君) 大蔵省の方から先般衆議院の方に出しました資料によりますと、二段階底上げのためには約三百億、これは、国、地方、三公社現業合せました数字でございますが、そういう資料が出ております。
  52. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで間違いないですか。
  53. 亀田得治

    委員長亀田得治君) その内訳わかりますか、三百億の——国家、地方。
  54. 大山正

    政府委員(大山正君) それでは、まず一段階の底上げでございますが、五%底上げしますために、国では三十七億九千八百万でございますが、その内一般会計は六億一千四百万、それから特別会計が一般と五現業を含みまして十八億八千六百万、三公社が十二億九千八百万、合計が、先ほど申し上げました、国の三十七億九千八百万でございます。それから地方は、一般が二十九億七千万、義務教育の関係が四十二億二千百万、合せまして地方の合計が七十一億九千百万、国と地方を合計いたしまして、一段階底上げ分が百九億八千九百万でございます。その次に、さらに五%底上げしまして、結局二段階の底上げになるわけでございますが、その次の底上げに要します費用が、国の合計が七十五億八千万でありまして、その内訳は、一般会計におきまして十七億二千百万、特別会計におきましては二十六億二千六百万、三公社におきまして三十二億三千三百万、その合計が国の合計、先ほど申し上げました七士五億八十万でございます。それから、地方の関係は、一般が五十一億二千八百万、義務教育の関係が五十四億でございまして、地方の合計が百五億二千八百万で、この二段階目の総計が百八十一億八百万、それで、係ほどの一段階底上げの百九億八千九百万と次のただいま申し上げました百八十一億八百万円を加えまして、約三百億が二段階底上げに要る全体の経費である、かように御承知を願います。
  55. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 まあ、二段階上底上げに要する経費というものは少くない。相当大きな経費であると思いますね。ですから、これを断行するということになると、政府としての予算措置に、相当やっぱり考慮しなければならぬ点があると思うのですがね。私は、それぐらいの金を出しても、これは、今日起っている地域給のいろいろな不合理、そういうものを解消することができれば、私は非常にいいことだと思うのですが、ただ、非常に困難であるとするならば、衆議院でとられているような調整措置を若干とっているのですね。調整措置を若干とっているのでしょう。そうして行う。しかも、これを二年か三年計画で行うという場合になると、ぐっと予算は減ってくるのじゃないか、そういう予算関係は、検討せられたことはありませんか。これは、政府も初め二段階ということを相当考えられたのですから、そういう予算関係についても、検討せられておるのじゃないかと思いますがね。政府は、予算のことは考えないで、そういうことを進められておったのですか。
  56. 大山正

    政府委員(大山正君) 私どもの方におきまして最初に考えておりました案は、六大部市に一〇%、あるいは現在の三級地にさらに五%残しまして、あとは全国一律に八%をつけるといろ案でございましたので、このときの案は、少くとも国家公務員につきましては持ち出しがない。大体全国平均で八%になるという案でございました。その場合に、地方公務員につきましては若干の経費が要ると、たしか私の記憶しておりますところでは、百億ぐらいの金が要る。これを五年計画ぐらいで実現しようというのが、私どもの方で考えました案の骨子でございます。
  57. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これはまあ、五年計画とか六年計画というものは、私は、実情から考えて、ほとんどナンセンスだと思うわけですがね、そういう長い期間の考え方は。一体政府は、この問題を処理するのに、あまり金を使わんでやるということは、虫がよすぎるのじゃないですかね。それはやっぱり、これだけの不合理を解消するということになれば、やっぱり相当な金を使うという腹がなければ、二十九年に人事院勧告した不合理是正をするだけでも、九十二億もう予定されておったわけです。ですから、やはり相当な金を出すということが前提にならなければ、五年も六年もかかって、しかも一部を解消するというのでは、私は工合が悪いと思うのですがね。そういう点で、衆議院の方でもせっかく修正されて、その努力には敬意を表するのですが、この際政府を鞭撻をして、金を出させるようにして、もう少し進んだ修正をするようにしたらどうかという点ですね、大平委員に私がお聞きしたい点は。
  58. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) はなはだ弱気のことを申し上げて恐縮ですけれども、給与政策というものは、いろいろな事件がございまして、一応の給与原資というものを前提にいたしまして、どのような組み立てによってやっていくかということでございまして、給与政策だけの観点から申しますと、今、荒木委員のおっしゃったようなことはよくわかるわけでございますが、一応予算その他の制約下におきまして、どういう制度を盛り込むのがよいかということが、当面考えなけりゃならぬことだったわけであります。きわめて大胆なことをやりたいのですけれども、薄い氷の上を歩くような、ごく用心深くやったわけでございます。  第二点の、この百八十億というようなものをてきぱき出して、早く大まかで片づけるということも、一応の考え方だと思いますけれども、百八十億という原資を、政策全体から考えまして、勤務地手当の整理にそれだけの財源をこの機会に使うのがいいか、それとも百八十億という金は、なおより有益な公益のために使う方がいいかという、まあ最高の政策判断が行われてしかるべきだと思います。で、私どもに与えられた立場は、現在の予算の制約のもとで精一ぱいいろいろな苦心をしてみて、こういう改正でともかくがまんしなければならぬじゃないか。ただ、私どもの改正をもっていたしましても、来年、再来年は相当の追加原資が要るわけでございますが、まあ与えられた立場でいろいろ苦心、苦悶いたしまして、ようやく作り上げたものでございます。ほかの問題も、もう少し大きな立場からの政策判断の問題になるのじゃないかと、こう思うわけであります。
  59. 永岡光治

    永岡光治君 それは大平さん、やっぱり片手落ちだと思うのです。岸内閣になってから、勧告は尊重する、仲裁裁定を尊重する。要は、衆議院の段階で、仲裁裁定にかかっているものを実施するということを尊重をしたわけで、国家公務員の方は尊重しないのです。すでに淺井総裁からもしばしば言明されているように、二十九年の是正でも九十二億要るわけですから、それくらいの財源をなぜ使えないのでしょうかね。これは、公企体の諸君は尊重したが、そういう団交権もなければ、罷業権もない公務員は、だからお前たちは、人事院勧告は尊重しないのだ。これは明らかに不公平です。あまりにひどいと思うのです。第一、この不合理是正するのに、一文も使わずに是正しようという太い考えがそもそも問題だと思う。(笑声)ほんとうですよ、これは。むしろ使わずに余しておる。そんなべらぼうな話は私はないと思う。最小限度どうあっても、人事院が二十九年に勧告した勧告の所要財源だけぐらいはぜひこの際使って、是正方向に進めていくべきだと思う。公企労の諸君は尊重するが、しかし国家公務員の場合は、もうお前たちは、一切人事院勧告を尊重しないのだ、これでは、岸内閣は片手落ちだ。それをあなた方が認めるということになると、衆議院もひどい。(笑声)そういうことを言わずに、政府の方に財源を出してもらって、前進した是正方向に、その方向に努力してもらいたいと思う。あなたが大蔵大臣に話せば、必ず出してくれると思うのです。(笑声)ほんとうです。ぜひそれをお願いしたいと思います。
  60. 大平正芳

    衆議院議員大平正芳君) 人事院勧告の尊重の問題は、これは、政府側からも御答弁がありましたように、大体の骨組みは、人事院勧告通りやっておるわけでございます。ただ、地域給制度につきましては、これは私どもの責任で、先ほど申し上げましたように、できるだけ早い機会に何とか処理したいという政治的な感覚から出発いたしたわけでございます。ただ、やり方において、みみっちいじゃないか、もっと大胆に予算を取ってやれというお考えも、先ほど申しますように、よくお気持はわかるのでございますが、今の各種の給与政策の事件を厳密に検討いたしまして、考えて苦心した案でございますので、荒木委員がおっしゃったように、お前たちの苦労もよくわかるというお言葉は、ちょうだいいたしたいような気持でおるわけであります。(笑声)
  61. 永岡光治

    永岡光治君 公企労の諸君とは、ひどいですよ、片手落ちです。
  62. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をやめて。    午後零時二十七分速記中止    —————・—————    午後零時四十五分速記開始
  63. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を起して。  暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩    —————・—————    午後一時二十三分開会
  64. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題に供します。  参考人の方々には御多忙中のところ、本委員会のためわざわざ御出席いただきありがとう存じました。いろいろと御意見もあろうかと存じますが、議事の都合上発言時間は一人十五分程度でお願いいたしたいと存じます。なお各委員より参考人に対する質疑は、委員長において適宜まとめてお願いすることにいたしますから、あらかじめ御了承願います。それでは最初に東京大学教授安藤良雄君からお願いいたします。
  65. 安藤良雄

    参考人(安藤良雄君) きわめて短い時間でございますので、全般にわたって詳しく申し上げることはとうていできません。そこで若干の問題点のみしかもかいつまんだ形で見解を申し述べまして、御審議の御参考に供したいと思います。  一口に公務員と申しましても御承知のごとくわが国の場合その数は非常に多いのでございますが、これを制度の形式的な面でなく制度の運用あるいは給与の実態という面から、この数多い公務員というものは大体三つのグループに分けることができるのではないかと存じます。第一はいわば幹部あるいは幹部候補化といったようなグループでございます。これは戦前の高文制度、高文試験、戦後の六級職の国家公務員試験、特にその法律職が主でございますが、これに合格し任用された方々であります。これらの人々は短い見習い期間を経まして、続いて課長補佐、課長、大体三十代で課長そして四十代で部長、局長、事務次官あるいは外局長官という地位に飛び石的に栄進していく層であります。この層の給与民間の一流企業のそれに比べまして、もちろん高くはございませんけれどもさして遜色のないものでございまして、年令等の点からいいますと特にそういうことが言えるのではないかと思います。そしてこのグループというものは従来非常に保護され大切にされております。たとえば行政整理というものが行われましても、この層からは事実上出血というものはないものだと思います。それから第二にはいわば専門職的なグループでございます。たとえば大学教授を初めとする教育者、あるいは研究所員とか技術者、こらいったグループであります。もちろんこのグループの中からも、第一のグループの中にまあ繰り入れられる場合もございますけれども、大体専門的な学問とか技術によってそれぞれの地位についているのでございます。そしてこれは第一のグループに比べまして能力とか職務の内容と一か経歴において、第一のグループと同等なのでございますけれども、現在までの公務員の制度あるいは給与の面においては、第一のグループに比べて相当低い、給与の面においては特に低いのでございます。私どももその一人でございまして、自分のことに関連して申し上げるのはどうもどうかと思いますけれども、具体的に御理解いただくために申し上げれば、たとえば私と同期の第一グループに属する人たちと私の給与とを比較すれば、多分月額においで一万円近い差があるのではないかと思います。第三のグループは最も多い層でございまして、いわば下級公務員の層でございます。このグループはざらに細分すれば、いわば戦前でいう判任官クラスつまり事務補助者の層、第二にいわば雇員と申しますか、雑務に従事するグループ、それから第三番目に一般労務者と称すべきグループがあるわけでございますが、この第三のグループの給与民間企業に比べても相当低いのではないかと存じます。  以上のようなのがこれが日本の従来の官僚制度と申しますか、あるいは公務員制度の実態なのでございますけれども、これにはいろいろの問題点があるのでございます。まず第一のグループ、これは先ほど申しましたように非常に優遇されております。このグループは優遇されているということ自身では非常によろしいことだと存じます。非常に優秀な人材がもとの高文試験あるいは現在の六級職の試験を通過して、公務員制度調査会答申に出ておりますいわば管理職分と申しますか、この候補者として各省に採用されている。このこと自身では非常によろしいのでございますけれども、問題は第二第三のグループが第一のグループに比べて地位が低いという点、この点が相当問題だと思うのでございます。つまり先ほど申しました第二のグループ、たとえば大学教授あるいは研究所員、技術者というようなものは、第一のグループに比べて職務内容とかあるいは能力等においては決して劣らないのでございますけれども、事実上給与が第一のグループに比べまして相当低い。たとえば、具体的に申し上げた方がかえって御理解がなりやすいと思うので申し上げますが、第一のグループの人たちには、大体課長級以上には本俸の二五%といういわゆる管理職手当がついておりますが、第二のグループ、たとえば私どもを例にとって申しますと、それは全然ない。そういったようなことで、またいわゆる給与あるいは等級の格付けというような点において、運用の面において特に非常に問題がございまして、実際上第二のグループは第一のグループより非常に低い。たとえば学問とか教育の分野をとって見ましても、このために学問とか教育というものの発展というものが相当阻害されている点があるのではないかと存じます。  それから第三のグループは、先ほども申し上げましたように非常に給与が低い。これらの層に属する方々は、多分給与が低いため子弟の教育等についても事を欠いておられるのではないかと存じます。で、この給与が低いという面から、やはり非常に小さな役得というものになじんだり、あるいはときどき問題になる下級官吏の汚職問題というようなものも、やはりこの給与が低いということ、そして前途の希望がないというようなことも相当起因している点があるのではないかと存じます。また国民からしばしば官庁はサービスが悪いとか、不親切だとか、いばるとかいうようなことがよく言われるわけでございますけれども、これらの問題も、やはり第三のグループに属する層が給与も低く前途に希望がないというような点から、そういったような弊に陥る危険があるということは、否定できないのではないかと思います。また現在公務員はいろいろな形でその組合活動に制限を加えられておりますけれども、この制限自身の当否は別といたしまして、給与が低くしかも一方において組合活動が制限されているというような場合には、やはり内攻的な形でいろいろな事態が発生するおそれがあると存じます。  ところで今回の改正案というものを拝見いたしますと、やはり以上申し上げたいろいろな問題点というものは、解決されないで残されている点が多々あるのではないかという点について考えざるを得ないのでございます。たとえば今回の改正案による等級表というのを見ますと、やはり職階制的な色彩が非常に強いわけでございますけれども、その職階制にも関連していろいろな問題があると思うのでございます。正しい意味での職階制というものは近代的な人事管理、あるいは労務管理という点において非常に必要なことだと存じますが、日本の場合は往々にしてこれが身分的な古い意味での官僚制度というものと結びつくおそれが非常にあるのでございまして、こういった点は率直に申し上げまして、今度の公務員制度調査会の答申、あるいは今回の現在問題になっております給与法改正案等についても、そういった徴候が見えないことはないと思うのでございます。公務員制度調査会の答申などを見ましても、たとえば教育職につきましては職階制を適用しないというようなことをうたっておりますが、今度の俸給表の教育職を見ますと職階制的な色彩が相当強いというようなことは、相当問題ではないかと思うのでございます。  で、私は別に利益代表的に申しておるのでは全然ないのでありまして、客観的に見た意見を申し上げているわけでございますけれども、それではどういうふうにあるべきであるかということでございますけれども、私はやはり、給与法にせよ国家公務員法自体にせよ、先ほど申し上げたようないろいろな弊害、問題点というものを十分考慮して、そういった弊害の生ずる点を十分解決した形で確立される、ということが望ましいと思うのでございますけれども、さしあたり今回提案されております改正案というものが、御審議の後に成立した場合、そうしてそれが施行された場合、やはり運用の面において、先ほど来私が申し上げましたいろいろな弊害の点、問題の点というものができるだけなくなるように運用するよう措置していただきたいということでございます。つまり給与というようなものは法律できめられているという点と同時に、この運用の面というものが非常に重要であり、また複雑なものであると思います。今回の改正案におきましても、細目は人事院規則で定められるようになっておりますのですが、その人事院規則等を定められる場合において、たとえば先ほど私が申し上げました第二のグループ、つまり専門職のグループを第一のグループと同等に、第一のグループとバランスのとれた形で運用する。たとえば改正案の第十条にございます俸給の調整、こういったものを十分運用することによって、私が申し上げました専門職の第二のグループの給与が第一のグループに比べて悪くならないように措置されることが非常に必要ではないかと存ずるのでございます。と申しますのは現行法の第十条の二、今度の改正案におきましてはやはり字句のみの修正で大体行くものと思いますが、この管理職手当というものが一方にあって、そうしてこれが第一のグループに属する者だけに適用されるということになりますと、非常に言葉は悪いのでありますが、やや、やみ給与的な意味を持たざるを得ないということになりまして、今回の改正案の実施に当りましては、特に第二のグループが第一のグループに対して不公平な扱いを受けないように措置するということが運用上必要ではないかと存じます。それから第三のグループ、つまり下級公務員給与というものも、やはり一般民間給与の水準等とも勘案いたしまして、運用の面においてできる限りの措置をいたしまして、これらのグループに属する人々が、前途に対する期待というようなものをもって、進んで国民のために奉仕する、そういった気運を醸成するように措置される必要があるのではないかと存じます。  まだ申し上げたいことはございまするが、時間でございまするので、これで失礼いたします。
  66. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは、次に日本経営者団体連盟常任理事入江乕男君にお願いいたします。
  67. 入江乕男

    参考人(入江乕男君) 時間の制限がございますので、きわめて私の話は抽象的に終るかもしれませんが、この点御了承願っておきたいと思います。具体的には数字等につきまして私が申し上げます話のうちで必要なものにつきましては、ちょうど私は日経連の賃金関係委員長をしておりますので、この方で作りました上でお手元に差し上げたいと思います。まず今次の一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、参考人として求められたのでございますが、昨年の七月十六日に人事院から勧告されました、その勧告の要点についてどういうような考えをしておるかというところに話を置きまして、話を進めていく方が適切ではないかと思います。  まず人事院勧告におきまして一般職公務員民間、五現業公社及び地方公務員に比して低いことを理由としまして、従来のベースアップ方式を避け、俸給制度の改正、約これが千円ぐらいになると思います。またはね返り等を見ますると約千五百円ぐらいの一人当りの額になると思います。それと特別手当といたしまして、三公社あたりに出している業績手当というもの、言いかえれば実質的には、これが今次の仲裁制度の中でうたわれておりますやみ給与的な、これの引き当て関係であると思います。〇・一五というものを新たに決定いたして出しております。これは毎年三月、〇・一五を出しております。この影響として原資としては幾らを要するか。大蔵省としては人事院の言う六十九億円にとどまらない。平年度において百億円。三月末の特別手当を十四億円出しまして約百十四億円を必要とする。さらにさような財政的な面から見ますと、地方公務員給与へのはね返りもやはり一応考える必要がある。たとえば義務教育費の国庫負担分等を今回も見込むといたしますと、さらに五十億が加わってくる。その上に国家公務員給与を準用しておる地方公務員のはね返りも当然起ってくる。こうしたものが約三百三十億を要する。五現業公社及び恩給などへのはね返りというものを、この上になお考慮されなければならぬのでありまして、もっとも今次公企体、三公社現業につきましての仲裁あるいは調停等におきまして出されておりまするが、またそういうものを別といたしましても、これがはね返りをかりに換算いたして参りますと約五百億円を出るのではないか。そこで人事院勧告は国民経済のワクの中で給与考えるとするならば、当然に公務員法の六十四条の生計費、民間における賃金、その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定めに従いまして、決定の重要な判断材料として民間給与の比較検討が行われておりますが、これはきわめて当然なことであります。その場合、単に定期給与、あるいは臨時給与などの名目給与の比較のみではきわめて不十分なのであります。厳密に言いますと、その基礎となるのは労働条件、労務構成、いわゆる人員構成でありまするのみならず、実物給与あるいは福利厚生施設、退職金、恩給、定年制等の有無などの諸条件を総合して比較検討を行うべきものであります。この点の配慮が勧告の中には十分であるとはその基礎において考えられない。公務員給与が過去二カ年見送られた。その間民間給与が経済界の好転によって著しく改善が行われ、両者間の給与差が増大しておるということを人事院は言っております。  しからば三十年の一年間民間給与はどういうことになっておるかと申しますと、企業努力によりましていわゆる一昨年の一年の民間給与は、昇給、ベースアップを含めまして六・六%の上昇を見ております。公務員給与改善が全然なされておらないということでございますが、民間と遜色のない年間五%の自動昇給が行われております。すなわち三十一年一月の国家公務員の平均給与水準は一万七千円でございます。これに超過勤務手当を加えれば、定例の給与は一万八千三百円であります。労働省の毎勤統計民間給与水準を見ますと、調査産業総数で一万六千四百六十一円、製造業で一万四千八百九十六円になっております。従って国家公務員を一〇〇といたしますと、全産業の給与は九〇、製造業のみを取り出しますと、国家公務員に対しまして八一というパーセンテージになるのであります。なお国家公務員の実働勤務時間は一週四十四時間となっておりますが、人事院規則一五—一、一五一二、一五一三、これは昭和二十年一月一日施行令が出されておりますが、この中からこのものを取り出してみましても、実質四十一時間になっております。民間産業の製造業の実労働時間は四十四時間になっております。従って時間当りという時間給的な考えで参りますと、この差はますますこれははなはだしくなりまして、全産業は国家公務員に対して八四、製造工業は七五となります。従って人事院の、民間企業よりも国家公務員が低いのだということは全然逆でございます。こういう点をよく検討する必要があると思います。  第三に、職種別の官民給与の比較でございますが、人事院が三十一年三月行なった、職種別民間給与実態調査によりますと、主として一般行政職と同種同等と認められる民間給与と職務の段階別に調査した結果、各職務のクラスを通じましておおむね一一%民間給与が上回っていると判断しております。人事院及び各都道府県の人事委員会を通じて、常用従業員五十人以上を雇用する全事業数二万四千六百四十六より府県、産業規模等を勘案された四千四百七十七事業所を抽出して、調査対象職種を六十三、実調査人員が十二万三千二百三十四人について、人事院は行なっております。この調査は全く恣意的な判断のもとに行われたものでありまして、たとえば企業規模五百人以上の経理部長、総務部長、資材部長、製造部長、支店長、工場長というような平均俸給相当額を、国家公務員の格付け号俸六十八号といたしております。これがいかなる根拠による格付けを行なっているのか、私たちは全く判断に苦しむ。で、労働統計に関しては毎勤統計を初めといたしまして、これは労働省の毎勤統計であります、職種別賃金等、労働省で二十九年十月に行なっておりますきわめて精細な統計が完備されている。このような労働省から発表されているのにも、これを利用されないで、何を苦しんで人事院が毎勤の調査規模三十人以上調査と異なる五十人以上、しかも小規模の独自の調査を行なっているのか理解に苦しむのであります。悪く表現しますと、たとえば統計のとり方いかんでは、どんな都合のいい結果をも生むと言っても過言ではなかろうと思います。  そこで学歴別、勤続年別官民給与の比較に次に入り込んでいきます。新制中学、年令十五才の国家公務員給与は五千八百七円であります。これに対しまして民間平均はこの年令該当者の学歴で二千六百八十円でございます。約半額にも及ばない。民間給与も年とともに漸増いたして参りまして、約二十一才では公務員とそれから民間給与というものはほぼ同水準の七千六百五十円になっております。二十七才までずっとこの水準を追って参りまして、二十八才以降は民間は漸次下降して三十一才で九〇%、あるいは四十五才、五十才では七〇%、平均いたしまして、国家公務員の一〇〇に対して八五という数字が出るのでございます。旧制中学はこのようなことで、これまた新制中学、新制高校の初任給が、民一間給与が国家公務員の一〇〇に対しまして八七であります。六千七百四十二円、以下年令の途中までは同水準で、高年令になりますと民間の方は下って参ります。平均いたしまして国家公務員の一〇〇に対しまして民間給与は九二・八、旧制あるいは短期大学になりますと、大体初任給が高いのでございます、民間と国家公務員、しかし高年令になりますると、途中段階では民間の方が高くなり、ずっと高年令になると民間の方が低くなります、国家公務員を一〇〇といたしまして一一七・一、すなわち上回っているのでございます。旧制大学、新制大学の初任給は一万六十四円と、一万六十七円、これも変りません。しかしながら、年令とともに民間は上昇して参っております。そうして、国家公務員の一〇〇に対して民間は一一〇・六%、従って、人事院勧告によりまするところの学歴別、勤続年数別給与による官民比較表に示される、一般行政職の国家公務員を一〇〇といたしました場合には、人事院では、高等小学校及び新制高校において民間より二一・二、旧制大学、短期大学が一二〇・三、旧大、新制大学が一二・六、平均二三・四民間の方が上回っているとしておりますが、以上申し上げました数字によりまして、全く人事院の数字というものは、われわれの検討と著しく異なっておるのであります。なお一般職公務員中には、いわゆる俸給の水準差によって、一般行政職より高い俸給を受けておる職種もございます。一般行政職の平均の俸給額に比しまして、これらの職種を含む全一般職公務員の平均俸給額は四・二%高いのであります。厳密に官民給与を比較するには、さらにこの分だけ調整しなければ、出てこないのであります。  そこで次に問題としてあげられますのは、勤務地手当の問題であります。勤務地手当廃止問題について、われわれは著しく矛盾を感じております。もちろん衆議院の方におきましては、修正されたもので暫定手当的なものを出されておりまするが、これはよくお考え願いたいのです。今民間給与地域差を持っておるのは、電気産業あるいは私鉄あるいは日本通運等において、全国規模において見られるのでありますが、やはり最近の消費物価、物資価格の地方及び都市の差が、主食を中心としてなくなって参ったことは事実であります。しかし生計費実態、総理府の過去において行われました二十八都市の生計費調査によれば、裸にいたしました税を組まないものでも、東京を一〇〇とすると都城市では六〇という差があるのでございます。かような国民生活の実態を無視して、勤務地手当廃止するというような方向にいくことが、果して最もわが国の国民生活の中で占める公務員のあり方につきましては、いいのか悪いのか問題点はあると思います。また民間の企業規模別格差というものは、非常に大でございます。たとえば、五百人以上の企業を一〇〇といたしますると、五十から二十人くらいのところは五三くらいにしかなりません。賃金格差がございます。これは同時に大都市と地方に散在する小規模企業との賃金格差でございます。いわゆるこういう実態を無視して、勤務地手当廃止というような乱暴なことをやっていいのかどうか。国民経済の中の取り上げ方として考えていただきたい。もちろんわれわれは地方の文化を抑制するものではありません。しかしかような政治というものの考え方の中におきましても、実情を無視したことについては非常に危険性がある。言いかえればわが国の経済のバランスをこわしていく。それから同時にこうしたことが、やはりそれでなくても中央国家公務員との関係におきまして、地方公務員相当に高いのでございます。さようなものの調整をどうされるかという問題も出てくるのじゃないか。  最後に、国家公務員民間より一一%下回っているということは全く誤りということは以上でおわかりになったと思います。全産業でむしろ一〇%、製造業で二〇%国家公務員の方が民間企業より上回っておるのであります。学歴別、年令別に見ますと、国家公務員の圧倒的多数を占める低学歴者が、一般職のうち約七四・七%を占めておりまするが、との方に給与が非常に厚うございます。先ほど安藤先生がおっしゃったのは戦前の姿で、戦後はむしろ少数の高学歴者においては民間より低いのでございます。この事実がはっきり数字に出ているのでございます。これは給与配分上の不公正のためのアンバランスであって、むしろ国家公務員給与の基準というものにつきましての再検討をやる必要があるのじゃないか。しかも国家公務員のこのような低学歴者が民間に比しまして高いというのは、理由としてはいろいろございまするが、主として、親がかりの年令層に属する最低俸給者の二級一号俸、十八才の給仕の給料が、独立の生計を営むという現実を離れました仮定のもとに、標準生計費よりきめられている点、あるいは男女同一労働、同一賃金という原則というものを、形式的に順守している点などがやはり理由のうちの主なるものとして指摘されるだろうと思います。また三公社につきましても、たとえば専売局と全逓の傾向も、やはりこうした国家公務員民間給与関係というものの傾向とほぼ同様であるということが指摘されるのであります。  時間もございませんがもう少しお許し願えますか。なければやめますが、私は自来話が長いので有名なのです。(笑声)
  68. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 少しくらいいいです。
  69. 入江乕男

    参考人(入江乕男君) そこでこの際に、この内閣委員会で御審議になられる問題かどうかということは、私はよくわかりません。ただ問題といたしまして、今次の仲裁裁定にかかりました三公社の、特に国鉄等の問題について、触れてみたいと思います。今後の対策として要望したいことを私は二、三点申し上げたいと思います。  まずアベック闘争とかいろいろな問題が今度出ておりまするが、政府の根本的な経済政策、労働政策の樹立というものがこのときほど痛感されることはないと思います。たとえばどこに賃金政策の確立したものが立てられているかというと、遺憾ながらございません。これが今後の国際貿易の上に立ちまして、わが国のコスト高ということ、やはり経済成長の上に考える問題としまして、根本の賃金政策というものをもう少し力強く出す必要があるのじゃないか。それから今度の紛争のもととなりました問題は、厳格に罰するものを罰しないというようなことから、非常に法を軽視するというようなやはり慣行というものが、特に公企体、多数労働者を持っております国鉄を中心として持ち上っておるのであります。この公労法の改正を行う必要がある。公労法の場合は、この法律に違反した場合には解雇するということになっておりますが、解雇ではいけない、もう少し罰則行為というものをこまかくうたう必要がある。また公企体の労働委員会がこの前の改正で同一の系列に置かれた。ここにまた問題があります。と申しますのは、みずから調停を行い、その調停委員会の会長が仲裁委員となって仲裁案を出すといった場合に、調停委員会のみずからの会長の責任において出したものと違ったものが出るかというと出ない。かようなナンセンスな姿というものは変える必要があるということを感ずるのであります。  それからこういう紛争の根本問題は、やはり何としましても予算という問題がおそらくある。経済闘争になる前にきめられている、これらの補正予算とか追加予算とか、そう簡単なものではないのであります。当然に公労法の中の国会の承認の問題と、この紛争をおさめるというための経済問題は非常に矛盾したものが出てくるのであります。こうしたような問題もやはり一つ公労法の中にお取り上げ願いたいと思っております。同時にかようなたとえば若干のそういう法律の矛盾がございましても、法治国家のやはり特に公務員に準ずる公企体の職員が、争議権のないにもかかわらず争議行為を行うというようなことの責任は、厳重にこれはやはり追及する必要がある。またこの公務員と三公社現業との給与関係、今次は人事院勧告で精細なものが出されましたが、実は人事院も大蔵省でも労働省でも各省の公務員給与実態はわからないのであります。私は日経連におきまして、いわゆるわが国の給与の格差という問題につきまして、産業経済研究会を作りましてその中の部会として取り上げて、人事院の方からもお出し願っていろいろ説明を聞いたのでありますが、これはわからないというお話しであります。かようなことが納税者の国民に対して果して明朗ないき方であるか、という問題を一つとくとお考え願いたい。その間にやはりやみ給与というようなものも当然に行われるという問題も出るのじゃないかと思います。これにつきましては行政機構の問題もございましょう、いろいろな問題もございます。また公社制度のあり方がたとえばイギリスのコーポレーションの形とは全然違う。総裁はただ総裁という名目で何ら……経理上与えられた予算の中のその以上にまたがる場合、しかも収支がやはり若干可変性のある企業において、支出の関係が予算でくくられてそれ以上に動けないというようなあり方がいいかどうか、やはり本格的なコーポレーションという形になってやることも問題として考えなければならぬ。  さらにここで私は最後にもう一度申し上げておきたいことは、多数国民の税の上でまかなっている、もちろん国会で御監視になっておられるのですが、われわれの選んだ選良によって見ていただくのですから間違いないのですが、しかし給与実態というものはやはりすべて民間の消費生活の実情あるいは経済活動に関連がございます。こうしたものは議会にできるだけつまびらかにされることで、いわゆるこの公企体の争議を通じての、国鉄あるいはその他の現業者または公務員に対する給与の制度に対する民間の不信というものが払拭されるのではないかと考えます。よけいなことを申し上げまして恐縮です。
  70. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは次に朝日新聞論説委員江幡清君にお願いいたします。
  71. 江幡清

    参考人(江幡清君) 一般職職員給与に関する法律案について意見を申し述べろということでありますが、正直に申し上げましてこういう法律につきましては、私ども第三者といたしまして特にしろうとの私どもの場合には非常に理解しにくいのであります。それは二つの理由があると思いますが、一つはただいま入江さんがおっしゃいましたように、公務員給与実態というものがはっきりしておりません。たとえば人事院勧告にあります民間との比較につきましても、あれが果して正確かどうかということは、これはかなり第三者の間では問題になっております。では一体それが不正確だということを証明する資料を今、入江さんはおっしゃいましたが、それもなかなか役所の方の資料がはっきりしないためにやや不完全なところがある。入江さんに反駁するわけではありません、非常に日本の公務員給与というものは妙なものだということであります。それからいま一つは、これは非常に職務給とか技術的な問題が多過ぎる。私どもこれはしろうとでございましてはっきりしたことを申し上げるまでになっておりません。ただ私ども非常に漠然としろうとの考えでありますが、今度のように公務員給与制度あるいは給与体系を改訂するという場合には、おそらく相当程度の財源がなければ、理想的なあるいはどこからも苦情の出ないような案は困難だろうということであります。たとえば民間で申しましても、海員組合が今度の給与制度の改正に伴いまして四十何パーセントかの賃上げを要求しておるそうでありますが、やはり給与体系をいじるということになりますと、二割とか三割とかかなり大きな財源がないと理想的なものはできないのであります。従って今度のように六・二%ですか、そのくらいの財源ではこれは給与制度の手直しということは、簡単な手直しはできますが、それ以上にどこからも苦情の出ないような、だれにも満足を与えるような、あるいは理想を盛ったような、そういうふうな制度の改正というものは実際問題としてむずかしいのじゃないか、そう思うわけであります。  それじゃ将来そういうふうな改正ができる見通しがあるかと申しますると、これも私は非常に疑問があるように思います。今後二割ないし三割、そういうふうな大きなベースアップをするだけの余裕が日本の経済にあるかどうか。これは今経済五カ年計画で論ぜられておりまする経済の生長率、そういうものを考えてみましても、あるいはそういうふうな経済の生長率とそれから賃金、その中の三分の一を占めまする公務員給与、そういう問題を考えてみましてもそう大きな給与の改善というものはでき得る状態でない、これははっきりした事実であります。そういたしますと、公務員給与制度というものは非常に今後むずかしい問題が出てくるのじゃないか。つまり今の公務員給与制度は相当こんがらがっておるのでありますが、これを合理的に直したいという意欲はだれも持っておると思うのでありますが、しかし直すだけの財源というものが、これは行政整理でもしますれば別でありますが、果して今後あるのかどうか、それだけの財源が見つかるかどうか。こういう問題とからみまして非常にむずかしい問題だということも、おそらく公務員給与一つの袋小路に入っていることは間違いないと思います。従ってそういう意味でこの職員給与に関する法律案につきましても、私はどうもはっきりした意見を申し上げるだけの資格を持っていないのでありますが、ただ第三者といたしまして、あるいは国民の一人といたしまして若干の希望を申し上げれば次の点であります。  これはお尋ねの主題からは若干はずれるかもしれませんが、第一に私は思うのでありますが、やはりこの機会に公務員給与というものはどうあるべきか、そういうこと、あるいは公務員給与制度はどうあるのがいいか。さらにそういうものを含めまして、一般の賃金制度そのものを含めましたところの公務員給与に関する審議会を作って、ここでいろいろな公務員給与上の問題を審議する必要があるかと思います。先ほど申しました人事院勧告に対する数字の根拠の問題もその一つであります。それから公務員給与の実態が明らかでないという点もその一つであります。それからまたたとえば今の公務員は戦後の採用者が全体の八割になっておりますが、そのための公務員給与の頭打ちといろ問題が起っております。しかしこれをこのままに放任しておきますと、五年ないし六年後には相当えらいことになってくる。定期昇給が毎年何%ずつかあるそうでありますが、おそらくこういう状態でずっと定期昇給やって参りますると、これは五年後には相当大きな昇給財源を見込まなければ、給与法の運営ができないような状態になるかもしれない。そういう問題もございます。そういう点で相当いろいろむずかしい問題があります。  もう一つ問題でありますのは、公務員給与といいますものはやはり民間給与相当影響して参ります。公務員給与民間給与で逆に算定してきめるのでありますが、しかし現在公務員給与が地方公務員あるいは三公社現業まで入れますと、大体これは私の大ざっぱな推算でありますが、おそらく八千億から九千億に近いかと思います。全体の勤労所得の三分の一程度を公務員給与が占めておる。これは公務員の数が多いから当然でありますが、しかしそれにしてもそれだけ大きな給与でありまするから、国民経済に及ぼす影響というものは相当大きい。民間の賃金に逆にはね返る影響も相当大きい。従ってそういう点も含めまして、その給与制度というものを根本的にこの辺で考えていって、給与上の原則を作っていく、そういうふうな審議会というものをここで作る必要があるのじゃなかろうか、そう思うわけであります。もちろん現在でも人事院があり、さらに公務員制度調査会がありいろいろございます。ありますけれども、しかしあそこで行われておる審議というものは、これは一般国民の目から離れた所、つまり一般国民からはできるだけ秘密にしたところの審議であります。また官公庁におります職員の人たちの意見というものもほとんど聞いていないところの審議であります。そういうものが案としてできて、そして国会に付議されてそしてきめられるのでありますが、これはどうもその過程において不十分である。やはりもう少し第三者を入れた公明な形の審議会が必要である。そう思うわけであります。  それからいま一つ私が考えておりますのは、公務員給与上の原則の中で、これは私どもの仲間は大体一致しておりますが、教職員の俸給をもう少しよくするということであります。これは今後の日本の政治並びに経済から考えます場合に問題になるのは、やはり技術の問題とそれから教育の問題であります。特に初等・中等教育の問題でありますが、やはり初等、中等教育に相当優秀な人材を吸収する、これがどらも今後の日本の建設上技術の問題と並べて非常に大きな問題ではなかろうかと思うわけであります。ところが今日の中等、初等教員の俸給の場合を考えてみますると、これは昔からの流れがあるのでありますが、要するに俸給もあまりよくない。従ってそこにいく小学校の先生の質もその俸給に応じたものしかいかない。これはやはりそういうふうな需給関係が出ることはやむを得ない面があるのです。そしてその俸給を補うためにPTAその他からいろんな金が出てきておる、そういう現象があるわけであります。やはりそれでは困るのでありまして、今後日本が技術と教育とこの二つを重視しなければならないという点を考えますならば、小中学校の教職員の俸給というものをもう少しよくしていく、もちろん現在におきましても一般行政職よりは一号程度よいというふうにはしてあるそうでありますが、実態は果してどうなっているかわかりませんが、しかしそういうことでなくて、この俸給表を見てもわかりますように、小学校の場合には最高四万幾らとか、とにかくずっと学校の段階によって違うわけであります。やはりこういうのはどうもおかしいのでありまして、小学校であろうと中学校であろうと相当年月たてば、相当の能力があれば、相当の俸給にまで達していくような給与体系が必要であると思います。それからまた一般の行政職に比べてもっといい待遇を与えてよろしい、そういうふうな感じを私は持っているのであります。  それから地域給の問題でありますが、私はこれはやはり将来は廃止されるべきものだと思います。もちろん廃止するまでにはこれはいろいろ暫定的に、一挙に参らぬこともございましょう。特に先ほどの財源の問題でございまして、そう簡単に廃止の財源はできません。廃止といたしますれば、現在の地域給のついていない所にはやはり相当のものをプラスするわけでありますから、非常に財源上むずかしい問題があるかと思います。従って一挙にはいかないかもしれませんが、また先ほど入江さんが申されましたような経済上の問題もあります。ありますが、しかし給料というものは地域によって違うのはどうもおかしいような感じがいたすのであります。と申しますのは、なるほど東京と地方とで生活費に差があることは事実であります。ありますけれども、それは地方におればそれだけやはり生活上の不便が大きいわけです。たとえば子供を教育する場合におきましても、大都会に住む人に比べまして非常に不便であります。それからまた農村は生活費が安いと申しますが、しかし都会においてガスを使うのと農村においてまきを燃やすというのとは、これは生活上の便、不便の差ということは大きいのであります。その他の文化的な面においてもしかりといたしますならば、やはり今の地域給といいますものはいわゆる生活実態に準拠したところの給与でありましょうけれども、しかしその低い生活に伴うところの不便というものを考えていない。そういう矛盾を持っておると思う。もし今の地域給の方針でいきますならば、大都会の人は文化的な生活を営め、地方の人は生活費は安いのだけれども、しかし低い生活をしろ、そういうことであります。  大体以上の点を申し上げたいと思いますが、要するに私の結論といたしましては、この際とにかく公務員給与といいますものは、相当の財政上大きなウエートを持っておるというだけじゃなくて、一般経済に対しましても、それから民間に対しましても非常に大きな比重を占めておる。賃金政策上も非常に大きなウエートを持っておる。しかるに実態というものはそう簡単にはっきりしていない。それから将来一体どうなるかということもはっきりしていない。このまま放置しておけば、非常に混乱した様相になるということもどうも想像される。従ってこの方針でやはり公務員給与に関する審議会を作って、そうして第三者たる国民を入れて、やはり納得のいくような方針を出す必要があるということであります。特にこの場合には政府の役人だけじゃなくて第三者を入れるということが非常に重要であります。この点を申し上げまして私の意見にかえたいと思います。
  72. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは以上五名の方に対して御質疑がありましたら、一括してこの際お願いいたします。
  73. 松岡平市

    松岡平市君 私は一点入江さんにお尋ねをしたい。今江幡さんの意見とまっこうから対立したわけですが、あなたが公務員地域給廃止は疑問である、こういう意見を述べられた。現在の地域給を存置すべき方が正しいのだ、こういう御意見のように伺いましたが、その論拠につきましてもう少し私詳しくお話を伺いたいと思いますが、どういうお考えでそういうふうな意見を述べられたのですか。
  74. 入江乕男

    参考人(入江乕男君) この地域給については官庁関係では二つの意見がずっと分れてきておる。また民間の企業の実態からいたしましても、この事実を無視しては、給与が労働の質に対して、また給与の持つ生活維持というもの、本質的なものを離すわけにはいかない。たとえば労働省のかつての意見が、やはり総理庁のCPS、いわゆる世帯調査というものの、生計費の都市と地方の差というものの、先ほど申し上げました実態というものを、やはり国家公務員が無視して給与をきめてはならないという意見のようにこれまで来ておった。人事院はしかし地方の文化的な低さをそのままに置いておくというような考え方は、ひとしいこの国民生活の中で考えてはならない。このアイデアと現実の相剋がやはり政府においてもあるわけであります。民間企業におきましては、さような、かつて末弘さんが中労委において私鉄の調停を行なった場合にも、やはり地域給の私鉄に対する調停を行なった場合一〇〇対七〇という線を出した。またそのなごりが今日ずっと来ておりますが、たとえば私鉄が百五十九社、その中で大手は京浜あるいは名古屋、京阪神の十七社というものの中にも地域差はあるのですが、これは労働組合の組織のもとにみな一〇〇から九〇というような、あるいは一〇〇から八七というような同一私鉄内における格差があります、これは団体交渉の、数次にわたってストライキもまじえましてです。ところが末弘さんの地域差に対する実態は、その他の地方の私鉄にそのまま残っております。より一そう拡大されております。電気産業は御承知のように中労委の調停にかかりまして一〇〇対一三〇という地域差が、これは三年前と思いましたが、中労委の調停で一〇〇対一二五になり、たまたま公務員も一〇〇対二一五が一〇〇対一二〇と、ともに五下っております。日通の場合におきましては、このCPIいわゆる物資価格の差とそれから生計費の差というものをフィッシャー式において算出いたしまして、結論はウエートはCPSというものを三分の一、CPIというものを、物資価格の差を三分の二というような比較になると思いますが、一〇〇対二二八というような格差でずっときております。しかしながら組合内においてもこの格差を縮めるということについては、都市地方の組合機関の間に一致を見ないのであります。都市はもっと広げる、地方はもっと縮める、こういう実情を私は申し上げておる。そういうことはわが国の企業別に見た場合の、先ほど申し上げました格差というものは、同時に大企業はそういう大都市周辺にある場合に非常に賃金の格差を持っておる、低い企業はやはり地方に散在している。この差というものは同時にやはり企業及び都市地方の格差というものが同時にあるのじゃないか、こういう民間の実態、民間はともかくも収支をまかなって赤字経営ではつぶれてしまうのですから、やはり入るをはかって出ずるを制する、官庁の場合は入るをはかって出ずるを制するのではない、ですから逆でありますが、要するにこの予算経営でも、予算の経営の形が違うのであります。民間経営の場合は利潤というものがなければすべての労働条件をまかなっていく原資は出てこない、官庁の場合はそうではない、従って官庁のそういう陥りやすいところを一つこうした国会において、よく地域給廃止について是か非かということを、あるいは江幡さんが言われたように私はアイデアを持っております、アイデアを持っておりますが、アイデアと現実というものはやはり相互関連して考えていかなければならない、やはり現実の方が重いのであります。そういう点を申し上げたのであります。
  75. 松岡平市

    松岡平市君 あなたの説明を聞いておりますと、生計費指数というようなものも、給与をきめる上の重大要素であるというようなことは私も納得いたします。しかしながら現在地方と都会地というものの間に、給与の差が民間の事業体に非常に大きくあるということは、これは生計費指数というようなものからではなくて、企業体の強弱、企業体のあげる利潤の多少というようなことから、やむを得ずして弱い企業体が低い給料を払っておる、大企業体が多くの給与を払っておるので、あなた方経営者という立場からみればそれはやむを得ない、こういうことでしょう。しかしながらそれは非常に私は理想に反するものであって、現実はそうであるけれども、一日もすみやかに大企業体と同じように小企業体も払えるようになっていかなければならぬものだと私は思います。現実がそうでない。ところがまあ公務員についていえば国家公務員と地方公務員先ほど安藤先生は三つのグループに分けられたが、それより前に大きく地方公務員と国家公務員の二つに分けられると思うのですが、同じ学歴を持ち同じ仕事をしておって、地方公務員の間にどこの県であるから少くてもいいという理由は私はないと思う。国家公務員と地方公務員の間でもそういう区別はない方がいいのだ、今日無級地と四級との間には二割の差がある、給与について。そういうものが大体都会地四級地というようなものは生計費が非常に著しく高い、その補助という意味で地域給はきめられたものだ。これは明らかでございますが、今日生計費というようなものにそういう差があるかというと、われわれのいろいろ調査したところではそれほどの差はない、こういうふうに考えたのです。で、私たちはむしろ地域給というようなものは原則としてはない方が、今日の現実においては正しいのだ。ただすべてのいろいろな民間事業というものの都会と地方との給与の実態から見て、国家公務員民間給与にならえと、その現実にやはり従っていかなければならぬという立論のように思う。私たちは逆にそうではない、民間給与地域給というようなものをなくする公務員給与にならうようにやっていくべきものだと、逆な気持を私たちは持っているわけであります。その辺についてあなたが、いや、これは現実がそうであるから、生計費というようなものに著しい差一がなくても、やはり公務員地域別に給与の差をつげなければならぬという議論を、あくまでも民間の一般事業の給与から推してどうしてもそうでなければならぬという主張を、どこまでもやはりおやりにならなければ民間団体が困るのだ、こういうことでしょうか。私はちょっとそこのところに疑問を持ちます。
  76. 入江乕男

    参考人(入江乕男君) 私はそういうような狭い視野から申し上げているのじゃございません。総理府の生計費調査というものは、御承知のように二十八都市を対象といたしまして、勤労者階級も含んでおりますが、中小企業者等あらゆる層を含んでおる抽出方式でやっております。その数字が税込みにすると一〇〇対五〇くらいになります。裸にしたものでも一〇〇対六〇の差が都市とそういう地区たとえば都城市、その他の都市にあるのじゃないか。こういうような実態、やはり生活様式の差というものが事実あるのだ。私は大都市における一〇〇というやはりそういう賃金形態のもとに、またそういう一〇〇という生活実態のもとに全体がいくことは望ましいと思っております。しかし現実は許さない。さらに極言すれば、アメリカとイギリスとドイツと日本の生活様式の差による差がある、国内にも差があるのであります。その現実のバランスをただちに今国家公務員というような給与考え方でいった場合には、いわゆるこの限られた国民経済力の中でさような消費性向を高めて、しかも財源上の大きな措置ができるのか、これを私は申し上げておる。アイデアとしては、あなたの御意見に私は反対するのじゃございません。現実をよく見ていただきたい、こういうことを申し上げております。例として民間企業の実態を申し上げたので、民間企業もそうしろということを申し上げているのじゃない。  もう一つは地方公務員の中の同じ学歴者ということで、中央のたとえば東京在住の中央公務員よりも、地域差でいくと二割低いのだというお話がございましたが、地方公務員は御承知の通り各府県の場合、財源の状態が非常にまちまちでございます。たとえば本省からかりに労政当局が地方の労務課長になった場合に、一躍して給与が上っている現実、本省に帰るとこれが非常に下る現実、こういう現象が労働省においてあるわけであります。これはお調べになればわかります。各府県まちまちでありまして、地域差は地方公務員にそのまま必ずしも適用されているということはございません。実情ははっきりしております。
  77. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  78. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を起して。質疑はこの程度にいたします三名の方には大へん御苦労さんでした。それでは次に東京人事委員会委員長大野木克彦君にお願いいたします。
  79. 大野木克彦

    参考人大野木克彦君) 公述の機会をお与え下さいましたことをお礼申し上げます。また私の職分上、地方公務員のことに触れますので、その点お許しを願いたいと存じます。  全体といたしまして、この法案の内容につきましては、御承知のように、これは人事院勧告、さかのぼりましては公務員制度調査会の答申に沿っているものでございまして、人事院勧告にございますような頭打ち、ワク外、その他の幾多の現在の給与制度が持っております、もしくは現在の給与制度から生じます不合理是正しようとするものであり、また日本経済の安定に伴いまして、給与をその職務の複雑、困難と責任に基くように、いわば職務給本来の姿である職務給化しようとするものでありまして、この点につきましては、賛意を表するものでございます。  また衆議院修正並びに付帯決議等につきましても、従来の給与体系からの移行に際しまして生ずるいろいろな摩擦を、なるべく少くしようとするものでありまして、これまたこういう制度の変革の際の措置としては適当なものだと考えております。  ただ労務技能職の問題につきましては、国の場合はそれほどでもないと思いますが、あとに述べます地方におきましては、地方の事務の性質上これが相当重大な意味を持っておりますので、将来はさらにこの点は研究されなければならない問題であろうと存じております。  またこの法案の六条三項によりまして、級の分類の基準となる標準的な職務の内容は、人事院が定めることになっておりまして、特に今回の改正におきましては、その基準は職務の複雑、困難と責任の度によるということがはっきり書かれております。従って、先ほど申し上げました職務給の色彩がここでもはっきり出てきているのでありますが、この格づけの問題が今度の改正への移行についての一番大きな問題になるだろうと存じます。それで、この格づけは人事院規則の問題になるわけでございますが、その際に十分御考慮を願いまして、このためにいたずらに行政組織の複雑を来たす原因となりませんように、具体的に申し上げますと、係長とか課長とかいうことになりませんと、ある職級にはなれないということになりますと、どうしてもそのために課や係が設けられるということになりますので、こういう点につきまして人事院規則を作られる場合に、十分の御配慮が必要じゃないかと存ずる次第でございます。  またこれはこの給与に関する法律の問題よりも、むしろ定員法の問題かと思いますが、級別定数に関しましては従来通り、この法律にも八条にございますように、人事院においてこれをきめられるようなことになるのでございますが、結局、級別定数の積み重なったものが総定員になるわけでございまして、この人事院級別定数は要するに人事管理の面から見られるものであり、一方主計局は予算上の立場からこれを見ていくだろうと思います。また一方行政管理庁は行政組織の面から定員を見ていくわけでありますけれども、それもやはり全体として行政機関の権限と任務とに照らし合せて、どういう人員がどのくらい要るかということが、やはり行政管理の問題として考えられなければならないのでありますので、この三つの間の調整をどうするか。この問題は結局むしろ定員法の問題かとも存じまするけれども、これも前からある問題でございますが、今度いよいよはっきりして参りましたので、問題のあることを申し上げておきたいと存じます、  次に、国家公務員給与と地方公務員給与との関係について申し上げたいと存じますが、御承知の通り地方公務員法におきましては、地方公務員給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員、並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならないというようなことになっておりまして、国家公務員給与というものは、非常に地方公務員給与をきめます上に準拠となるべきものと相なっております。かつ昭和二十三年以来地方公務員給与は、国家公務員給与改訂に相伴いまして改訂せられてきております。かつまた現在の地方におきましても、昭和二十三年の改正以来十年を経過いたしまして、その間やはり国家公務員におけると同じような形の不合理が出てきております。ことに地方におきましては終戦後急激に人員が増加した形もありまして、必ずしも一般に言われておりますようなピラミッド型ではなくて、円筒形と申しますか、擬宝珠型といいますか、そういうような形ができてきておりまして、今後の財政等から考えましても相当問題として考えなければならないような状況に相なっておりますので、このたび国の公務員の体系が改正せられるに当りましては、地方も同時に少くともそれに準じた改正が行われることが必要であろうかと存じておる次第でございます。で、その際まずそれに準ずる形といたしましては、やはり地方公務員も全体として国政の一部を担当するものでございますので、国家公務員となるべく給与の間におきましても一体性を維持することができるようにすることが必要だろうと存じます。先ほどからもお話がございますように、今日地方におきましてはその財政力によりまして相当な違いが出てきております。また昇給とか、昇格、初任給等の制度につきましても差異があるのでございますが、先ほど申し上げました地方公務員法精神から申しましても、また地方財政に対する国のいろいろなお世話、また人事交流それから国の事務が相当地方に委任されておりますような点から考えましても、なるべく国の方と一体性を保ち、従ってまた各地方相互の間においても権衡がとれまするように、なるべくそちらの方へ向って改正されていくことが必要だと考えております。ただ先ほどから申し上げますように、地方におきましては何分従来からのいろいろな沿革もございますし、今日の地方の状況は必ずしも簡単にあの姿になったわけでもございませんし、また地方の特殊事情もありますので、それらの地方の実情というものをよく考慮いたしまして、そしてその実情に合うように、またある意味におきましては地方の給与に関する自主性が維持せられるということも必要だと存じますが、いずれにせよこの国の公務員給与改訂の内容に準じまして、よく地方の職務並びに給与の実態を分析し、そして国の給与の実態もまた分析いたしまして、それらを互いに照合いたしまして、そしてその国との一体性が保たれるようなふうに改善することが必要だろうと存じます。その際に、同じ仕事でありましても国の場合と地方の場合では価値判断相当違うような場合もありますので、たとえば先ほど申し上げました労務などに対する考え方も、国の場合におきましては、まあ主として補助的な労務が多いのでございましょうが、地方ことに大都市等におきましては、労務そのものが非常に大きな行政の一環をなしている場合がございます。また地方には公営企業を持っておるところが少くございません。それらの労務関係等につきましては、地方独特の考え方相当見なければならないと存じます。そういういろいろな特殊な事情もございますけれども、方向といたしましては、今回の国の給与の改善に準じまして地方も改善されることが必要であり、その際には合理的な地方の自主性というようなものが、十分考慮される必要があるだろうと存じます。  大体以上で私の公述を終ります。
  80. 亀田得治

  81. 豊田黎一郎

    参考人豊田黎一郎君) 給与の問題について私どもの考え方、見方を少し申してみたいと思います。  御承知のように今回のこの給与法改正につきましては、人事院の昨年の七月の勧告がこの政府案の基礎になっておるわけであります。さらにこの人事院勧告に出されましたあの給与の俸給表の体系というものは、これは昭和…十年の十一月に答申をされました公務員制度調査会の答申に基いておる体系のように感じておるわけであります。そういうような経過をたどって昭和二十九年以来今日、ようやく一般職公務員給与に関する法律改正が提案をされたわけでありますけれども、この俸給表の体系の問題と金額の点につきましては、官公庁職員は非常に大きな不満を持っておるわけでありまして、この法律案に全面的に賛成をすることはできない、こういうのが私どもの態度でございます。特に昭和二十三年まで、これも御承知のように国家公務員にも、民間の労働者と同じように労働基本権の適用があったわけでありますが、それが公務員は国民全体の奉仕者である、こういう考えから昭和二十三年にこの労働基本権が奪われまして、そして今日では公務員というものは政治的には争議権も、団体交渉権も持たない、こういうような立場に置かれております。さらにその労働・基本権を取られる際には、少くとも公務員の処遇というものは、民間の産業に従事をしておる労働者の諸君と、給与についてはこれは大体同等程度を支給をするのが妥当である、こういうような不文律と申しますか、こういうような精神的な事項も当時はあったように私どもは聞いておるわけでありますが、その後今日まで約十回程度に及びまして、人事院政府国会に対して給与改訂やあるいは体系の変更等についての勧告をいたしておりますが、しかしながらその勧告が今日まで満足に政府からこれが実施をされる、こういうことはきわめて少なかったのであります。しかも昨年の、この人事院のお考えになりました俸給体系の変更につきましては、公務員の代表には全然これは御相談もなく、職員団体の代表が人事院の責任者の方々にお会いをして、いろいろとこういう点も一つ勧告に織り込んでもらいたい、こういうことはしばしば申し上げたのでありますが、事この給与の体系については、きわめて人事院の独自の判断勧告をされた、こういう格好になっておるわけであります。私どもの立場から見ますと、少くとも公務員の労働権の代表としての人事院であるし、ある点においてはこれは団体交渉のかわりに人事院勧告をすべきものである。こういうように考えておりますから、こういう点から申し上げますと、少くとも何百万かの官公庁に従事をする職員に影響を与えるような給与体系の変更等については、一言あるいは二言程度は職員団体にも相談があってもしかるべきじゃないか、こういう考えを強く持っておるわけであります。この点は非常に不満を持っておるところであります。  さらにまた私どもは国家公務員法という法律によりまして、いろんな服務や、あるいは給与やその他の問題が規制をされておるわけでありますが、この国家公務員法の第一条の目的を見まするに、すなわちこの公務員法というのはあらゆる各般の基準というものを定めて、そうして職員が十分能率を発揮できるように、そのためにいろんな基準を定めるのがこの法律の目的である、こういうことが言われております。さらにまたこの給与につきましては、その根本基準を国家公務員法の六十二条に書いておるわけでありまして、そうして職員給与というものは職務と責任によってこれは支給をすべきものである、こういうようになっております。さらにまたこれを具体化をいたしました一般職職員給与に関する法律を見ますと、その四条に職員の俸給というものは職務の複雑あるいは困難、責任並びに勤労の強度、勤務時間、それから勤労環境、あらゆるものを考慮をしてこの給与をきめなければならない。こういうようになっておるわけでありますが、こういう点が今日までなかなかこの法律通りに実施されておらない、こういうことも言えるのではないか、かように思っておるわけであります。特に日本の職階法という法律を見ますと、こういうように給与法の中ではあらゆるものを考慮をすべきであるということが言われておりますが、今までのこの実績を見ますと、特に責任だけは非常にこれは職務給の中においてウエートを占めておる。従って今回の改正案の中にも出ておりますように、等級別の区分を厳格にし、一般の係員よりも上級の係員の方が責任が重たいんだ、さらに係長の方がまだ重い、さらに課長の方がまだ重い、こういうようにはっきり責任によりまして等級を区別をしておる、こういう、ことになっておるわけであります。さらにまた今までの特に昔の給与ベースのときに職務の級の分析をいたしまして、そうしてこれをどういう一体職務にあてはめるかというような場合に、あらゆるものを考慮しなくて、ただ単に学歴と勤続年数のみでこの職階法に基く基準にあてはめてきておる。こういうのが、これが昨年人事院勧告の際に書いておりましたような数個の級に同一官職がまたがるとか、あるいは同じ級の中にも上下の官職ができたとか、こういうような職階制の矛盾というものがすでにこの職階法の中から生じてきたのではなかろうか、かように思うわけであります。  そこで特に今度の給与体系の中でどういう点が私どもとしては一番気に食わないか、こういうことを申し上げますと、これは日本の有力新聞の論説委員の方々の座談会にもそういうお話が出ておるわけでありますが、今度のこの政府案の給与体系を見ると、これは昔高文を通ってそうして現在役所に勤めておる人々が作ったものであろう、だからつまり中級とかあるいは下級職員といって多くの人数を占める官公庁職員の中から、当然これは反撃が出るのは当然だ、こういうようなことを言っておる記事を私は見たことがありますが、つまり非常に等級別の区分というものが今の給与体系以上に刻まれてきておる、つまり一級から八級までというものは一つの身分的な区別が非常にこれは克明に区別をされておる点であります。従って考えようによりましては、これは身分的な官吏制復活、こういうようになるのではない今昔の官吏制度に対するノスタルジアが今度の改正の中に出ておるのではなかろうかと、こういうように感じます。  次に下級者の昇給カーブが非常に悪いということであります。上の等級にいくほど昇給金額や昇給期間等もいいのでありますが、今回の政府案を見ますと、どうも中級から初級というような係員の人々は昇給率も非常に悪い、つまり昇給条件が非常に悪い、こういうことが非常に多くの不満の要素であります。一例を申し上げますと、金額にいたしまして一万六千三百円という本俸までいくのに政府案によりますと十八年、約十九年かかるわけであります、順調にいって。しかもこれが七等級の最高であります二万二千六百円というような額にいくのには、これはよほど順調にいきましても二十五年というような期間がかかる。さらにこれが役づきにならなければこれ以上にはなかなか上らないし、かりに上るとしても非常にこれは長年月を要する、こういうのが私どもが指摘をしておる点であります。  さらにもう一つは、こういうようにポストに応じて給与がきめられ、しかもそのポストが上にいかなければ上の等級に進めない、こういうようなことになりますと、勢いこれは勤務評定制度というものが強化をされてくる可能性が非常に強いというように感じておるのであります。勤務評定制度そのものにも、今日の段階ではいろいろとやり方その他の問題で疑義を持っておる節が相当多いのでありますが、今後はますますこういうような俸給体系になって参りますと、やはり職員同士で大いにこれは競争心をあぶりまして、そうして上のポストにつくために上役にいろいろとこびへつらいをするとか、あるいはまたいろいろなみつぎものをするとか、こういうような好ましくないような結果がやはり人間の気持の中から出てくるようなおそれもあるわけでございまして、従って勤務評定というものが非常に強く、しかもこれがまた昔のような封建的な格好で実施をされる、こういうような可能性も出てくるわけであります。  こまかい問題等につきましては、いずれまた後ほど申し上げたいと思いますが、さらに次に公務員給与の額の問題でございます。これはしばしば公務員給与というものは国家全体の財政の中でとかくの議論がされるところであります。国民の方々も非常に大きな関心を持っておるところでありましょうが、私どもとしては次のような点から公務員給与は決してこれは不当に高いものではない、こういう反論を試みたいのであります。今日公務員の中で、現在の給与でありますが、これを年令別に見ますと、最も年令別に高いのは四十五才から四十九才の人々であります。この人々の平均は、東京の場合でありますが二万四千八百六十円という、この平均給与になるわけであります。その次には五十才から五十四才までの人でありまして、これは多少下りまして二万四千六百五十三円、こういう平均になります。次に四十才から四十四才の人々が二万三千三百九十三円。こういうように、四十五から四十九の人が一番平均給与が高い。こういう数字が出ておるわけであります。これ以下、これ以上の年令においては、これよりだんだんと下ってくるということは申すまでもないわけであります。こういうようになっておりますが、一方内閣統計局の家計調査によりますと、東京都における一般の家計支出は、二万九千二百円という数字になっております。これは今年の一月現在だったと思いますが、さらに今日の公務員給与の平均は一万七千円程度のベースでありまして、こういうような家計調査あるいはまた公務員の年令、階層別の平均給与を見ましても、この東京都の家計調査の一般平均よりもはるかに及ばない。こういう事実がはっきりいたしております。次に昭和二十四年に実施をされました六千三百七円ベースというのがございます。これは公務員給与については一応戦後において標準的な体系である。こういうように言われておりますが、この六、三べースと現在のベースとを比較をしてみますと、大学を卒業いたしまして入りました方の初任給でありますが、これは六、三べースにおいては五千四百九十円、こういうことになります。現在の給与においては一万四百四十円。従って、その倍率は一・九倍ということになります。昭和二十四年の一六、三べースに比べまして、今日の今の給与から見れば今の方が一・九倍になっておる、こういう事実があります。次に係長クラスの人でありますが、これは六、三ベースの場合が七千七百三円、現行ベースが一万五千七百二十円、二倍という数字になるわけであります。さらにでは一体物価はどうなっておるかということでありますが、これは昭和二十四年から昨年の十一月までを見ますと、その間の上昇率は一・三倍になっておるわけでございます。だから物価の上昇から見ると、公務員給与はいいではないか。こういうことが出てくるわけでありますけれども、しかしながらその間において、民間給与の水準は毎月勤労統計によりますと二・四倍に上昇をいたしておるし、さらに一般化計費の指数というものは二・一倍になっておりますし、さらに消費水準、消費をする水準の指数は二十四年に比べて一・三倍に達しておる。こういう全体的な統計を見ますと公務員の生活の水準というものはまだまだ低い。こういうことがはっきり言えるというように私どもは考えます。  簡単に申し上げます。次に一般の給与水準というものは、よく日経連やあるいはその他の方々から言われるところでありますが、戦前の一・二倍になっておるということが言われております。しかしながら昭和十年当時の物価と、それから公務員給与と、今日のものを比較をいたしてみますと、大臣クラスにして十年に比べて約五六%、それから大学卒の初任給にして五五%というように出るわけでありまして、戦前に比べて公務員の場合は約二分の一である、こういうことが言われておるわけであります。さらにまた公務員給与ペースというものは、先ほど申し上げたように比較的高く見えるのでありますけれども、これは単に公務員給与ベース民間給与ベースを比較をしただけでは、まだまだ資料として不十分であろうと思います。なぜならば、民間公務員の場合とでは構成の比率と異動の率が違うわけであります。公務員の構成の特色というものは、まず男女別に見まずと圧倒的に男が多いわけであります。さらに学歴別に見ますと、民間に比べまして比較的高学力者が多い。こういうことが言えます。さらに労務職員ベースという労職別に見ますと、職員が圧倒的に多いわけであります。こういうふうに構成の点が違うという点が一点であります。  次に異動の点でありますが、これも民間の年々労働人口の増加に伴いまして、雇用量が増大いたしておりますが、公務員の場合は昭和二十五年の定員法かしかれて以来ほとんど変りがないのでありまして、特に転入転出のパーセンテージをあげれば民間の方は一年間に二〇%の転入転出がある、一般公務員の方はそれらは五%以下である。つまり人が動かない、こういうことから比較的平均するベースが高く見えるようでありますけれども、全体的にはこういうようなもろもろの比較が大事でありまして、そういう結果公務員ベース民間ベースを比較をすべきであると、こういうように考えておるところであります。  最後に私どもは決してこれは公務員だけに特権を与え、かつ最も高いベースを要求をしておるわけではありません。少くとも人事院で言っておりますように、民間の五十人程度以上の事業所に勤める労働者の平均給与と、同じ程度のものを一つもらいたい。そのためにはやはり今回の政府の方では六二形の給与の引き上げをやろうという意図のようでありますが、私どもとしてはこの点は昨年の人事院報告書に出ておりますように、一般的に言うならばまだまだ一一%の差があるということも言われておるわけでありまして、もう少しこういうような人事院報告に基いて、給与額の改正をお願いをしたい、かように考えております。なお給与体系につきましては先ほども朝日新聞の江幡さんがおっしゃっておられましたが、やはりこういう問題の多い給与体系については、やはりこれは官公庁の代表の人々とも十分相談をしてきめた方がいいのではないか、とこういう気持を未だに持っておりまするから、できるならば給与審議会というようなこういう場の中で十分検討をして、そうして大多数の公務員の方々が納得をされるような給与の体系ができるならば、非常にこれは幸いなことだろうというように考えております。  以上をもって公述を終ります。
  82. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 引き続き法政大学大原社会問題研究所貝田沼肇君にお願いたします。
  83. 田沼肇

    参考人(田沼肇君) 法政大学の田沼でございます、わが国の賃金問題を研究しておるところの立場から、いくつかの意見を申し述べたいと思うのであります。時間が限られておりますから主として給与体系、それから俸給表、この二点について申し上げたいと思います。  本論にはいります前にその前置きとして申し上げておきたいのですけれども、賃金体系ということの検討の場合には、やはり賃金水準が高いか低いかということを前提としなければならないということは、強調する必要があると思うのであります。今日賃金体系の検討をする場合に、賃金水準の高低を抜きにしていろいろ論ずる立場があるようですが、私はこれをとらないのです。特に日本の公務員の賃金の場合には、今日はこれは私の公述の中心テーマでありませんから、賃金水準について申し述べないのでありますけれども、外国との比較をしてみますと、たとえばフランスにおいて一九四六年十月十九日法の中で、公務員の俸給というものは最低生活費できめることにしており、その三十二条第三項で、最低生活費とは欠くことも圧縮するとともできないと考えられる、人間の個人的、社会的慾望がそれ以下では、もはや満足し得ない金額の意味でなければならない、というふうに最低生活費を規定し、さらにその最低生活費によって公務員の俸給を規定しております。本来ならばここから論じなければならないと思うわけでありますけれども、本日はその点、省かせていただきたいと思います。  以上前置きして、本論に入ります。賃金体系、給与体系とそれから俸給表についてこれから具体的に申し述べたいと思うのですけれども、今日公務員給与体系並びにその俸給表に見られる特徴というものが、やはり日本の賃金政策全体に共通したものであるという点を最初に指摘しておきます。最近日経連から出ました現下の賃金政策と賃金問題の中で、当面の賃金政策の基本課題を提起しておりまして、その中に五項目ありますが、五項目全部がきょう問題ではなくて、特にその中で最後の第五項で言っている賃金制度についての日経連の見解というのは重要だと思うので、短いですから読んでみますと、賃金制度として職能給化の方向を明示し、漸進させるとともに——次第に進ませるとともに、賃金上昇を長期経済計画の一環として将来に向って安定的に確保し得る経路として、定期昇給制を確立し、かつ労働力の最適配分に適合的な賃金格差政策を考案すべきである。ここでこの日経連が提起している賃金制度の重点というものは、職能給化への漸進的な方向ですね。つまり次第に進む。それから二番目に定期昇給制の確立、三番目に賃金格差政策を考えていくべきである、この三点に要約されると思うわけであります。こういう全体の賃金政策の展望の中で、今回の一般職公務員の賃金についてどういう問題が提起されておるか。またそれについて私どもはどういうふうに考えているかをお話いたしたいと思います。  まず、賃金体系についての検討でありますけれども、申すまでもなくわが国の公務員の賃金体系において、戦後分水嶺のような役割を果したのは、昭和二十三年の二千九百二十円ベースであります。この二千九百二十円ベースにおいて、日本の公務員賃金というものが職階制賃金の方向へ一歩歩み出したわけでありますけれども、今日これが非常に問題とされている。今日その公務員の賃金が非常に問題とされている淵源は、この二千九百二十円ベースの中にひそんでいると言っても差しつかえないと思うのであります。衆議院内閣委員会速記録を読んでみますと、人事院給与局長は、先月の二十六日に同委員会で、これが、これがと申しますのはこの二千九百二十円ベースが、職階制として完全にいかなかったのは、それは司令部がありました当時にできましたものだから、というふうに答弁しておられますけれども、この点、私は若干意見が違うものであります。それは、司令部があったからということもあるいはありましょうが、もっと客観的な根拠がわが国にあったからこそ、二千九百二十円ベースで採用されようとした職階制が、いろいろな問題をはらみ、ついに今日でもいろいろ論ぜられ、また問題とされることになってきたのだと思うのであります。二千九百二十円ベースでは御承知の通り、その現行の、その十五級の職務の級別制度というものが採用されて、まあそれが暫定職階として採用されてきたわけでありますが、それは級別定数と、それから級別比較基準表に基いて昇進するという制度でありまして、このことは言いかえますと、特に級別比較基準表というものは、給与決定の基礎条件が、結局は学歴と勤続にあるということになっております。言葉の上では経験年数ということになっておりますけれども、実質は勤続であるというふうに私は考えておりますが、二九ベース当時のこの日本で採用された級別比較基準というものは、結局のところ、学歴と勤続であったと言わなければならないと思います。もう少しこれを詳しく考察してみますと、次のようなことが言えるのではないか、そういうふうに思います。つまり本来の職階級賃金ということであるならば、人とは分離された職務の分類を行なって、それで賃金を決定していくわけでありますけれども、人と分離された職務の分類ということは行わずに、あくまでも職員の職務を、それまでの人事慣行やそれから職種間の序列というものによって分類することによって、二九ベース当時スタートした日本型の職階制は、その身分制を受け継いでいる。古い日本の身分制を、いろいろ変った形であるが、受け継いでいるものであったと言わなければならないと思うのであります。  さらに大事なことは、こういうつまり身分制を変った形で、変貌した形で受け継いだことによって、公務員賃金の身分的格差、ほかのいろいろ格差はございますが、身分的格差ということに限定して考えても、すでに二九ベースのときに従来の六倍から十倍にその格差が拡大し、その後のベースアップごとに格差が拡大するという状態になっているわけであります。  以上申し上げたところが、今から約八年前の二九ベースがすでにはらんでおった矛盾であります。その後の一連のベース・アップ、それからそのベース・アップが打ち続くうちに、賃金制度としてもこの公務員賃金制度がいろいろの矛盾をはらんできたために、私たちの見るところでは、いよいよこの時期に賃金体系そのものに手を加えなければならないということになったのが、今日私たちの当面しておるこの公務員の賃金問題であるというように考えております。従いまして、この法律の立案者の側で言っておられるこの法律は、まだ職階制そのものではない、従ってこれはいわば職務給であるという主張が問題になるわけでありますけれども、言うまでもなく職務分析が行われず、また職務明細書が作られない、そういった職階制がないことは言うまでもありませんけれども、同時に、これがまた職務給である、従ってそれは職階給と違うのだという主張にも私は疑問を感ずるものです。言うならば、日本型の職階給、日本型の職階制賃金へと近づくための一段階であることは間違いないのではないか。つまり先ほど日経連の今回出された文献に言われている言葉を使えば、漸進する、次第に進む、そのワン・ステップであるというふうに考えて間違いないというふうに私は思っております。しかも日本型といわれる特性は、旧来の身分制と非常にしっかり結びついている、そこに問題があるのだと私は考えるものであります。  以上が賃金体系というものについて私の考えているところを申し上げました。で、本来ならば、このことは公務員制度そのものと、公務員の賃金制度そのものとが、どういう関連をしているかというところまで考察をしないと、全貌は明らかでありませんけれども、私に与えられている課題を逸脱しますから、その点は省かせていただきます。  次に、俸給表についての若干の問題点でありますが、俸給表については、大ざっぱに言って四つのことが問題になると思います。第一点が俸給表の種類、それから第二点が俸給表における等級と号俸の組み合せについて。第三点が昇給制度について。第四点が初任、給について。この点は人事院給与局長が書かれたりあるいは国会で発言されたりしておるものを拝見いたしましても、私があげた四つとは完全に一致しておりませんけれども、俸給表というものの性格は、以上のように指摘しておられると私は考えます。俸給表の種類につきましては、特に申し上げるほどのこともないと思うのでありますが、私としてぜひ指摘しておきたいと思うことは、公務員制度調査会の答申の中にある問題であります。衆議院修正議決によって、今日私の手元に配られております法律案については、この点変っておりますけれども、公務員制度調査会の答申の中では、やはり一番大事な点は、行政職俸給表と技能労務職俸給表とを区別する考え方のいわば出発が見出される点であります。これは歴史的に見ても、敗戦前の日本において、官吏と私法上の雇用契約関係にある者との差別、つまり一番露骨な身分制というものが二千九百二十円ベース廃止されたにもかかわらず、いささかそれに逆行する見解なのではないかというように考えられるので、今回の衆議院修正議決がその点を改められておられるのは、私として大いに賛成したいと考えております。  それから俸給表についての二番目として、等級と号俸の組合せでありますけれども、これは次のような点を申し上げたいと思います。二点ございます。  第一点は、十五級の区分を七等級にするということを通じまして、実際上起り得ることは何か、ということを考えてみますと、いろいろ世上言われておりますけれども、今日特に私がここで申し上げたいことは、学歴と経験年数あるいは勤続年数に依存するという現在の格付け、あるいはこれからは等級付けの方向がくずれていくのではないか、くずれていくということは、客観的な動きでもありますけれども、同時に、今回の改正によって促進されるのではないかと考えます。つまり、今回の改正が職階制ではないのだというお言葉にもかかわらず、事実上その職務評価を基準とする職階級本来の姿に一歩々々近づいていくのではないか、そのことが、この十五級から七等級への変更ということの中にうかがえるのではないか、そう考えます。  それから第二点は、等級が異なれば、金額は同じでも昇給期間について差があるという問題、これはぜひ指摘しておかなければなりません。修正議決の一般行政職八等級の九号俸九千八百円から、もし八等級のままですと十五ヵ月間たって一万六百円になるところが、七等級の場合にはそれが一年間で一万六百円に昇給するという、こういった等級間にある差別の問題、これは通し号俸制の問題と関連して重視しなければならない、そういうふうに考えております。  以上二点が俸給表の第二番目の問題、等級と号俸の組合せについての私が特に指摘したい点であります。  それから第三点として、昇給期間と昇給金額の問題でございます。つまり総じて昇給制度のことでありますが、昇給制度については、私が現在までに入手することのできた資料によれば、二つの点が今回の政府案の基礎になっているように思われます。一つは、事務の簡素化ということであります。それからもう一つは、民間企業においても昇給期間は一年であるからそうしたいというのが、大ざっぱに言って二つの点だと思います。  この事務の簡素化云々については、私は実情もよく知りませんし、申し上げる資格がないのでありますが、二番目の点、民間の昇給期間も一年だから公務員の昇給期間も一年にしてよろしい、従来の六ヵ月、九ヵ月、十二ヵ月を、原則として一年にしてよろしいという点について、考えを述べてみたいと思います。この点については、これまでいろいろといわれておる点は、全部省かせていただいて、いわれておることのほかに大事なことは、定期昇給制度という問題が全体として提起されておる中で、この昇給期間一年の問題が出てきた点ではないかと、そう考えておる次第であります。先ほど引用しました日経連の現下の賃金政策と賃金問題という非常に大事な文献の中で、定期昇給制度についてはわざわざ一章を設けて論じておられますけれども、私どももこの定期昇給制度との関連で、この昇給期間一年の問題を考えなければならない。つまり、低賃金労働者においては、昇給期間が小刻みでないと、事実上非常に困ったことになる。これは生活の実態からいって、証明するまでもないことであるという点が、人事院勧告ではなくて、公務員制度調査会の答申によって政府案が決定されておるということについて、私は疑問を感じております。しかも、この昇給制度そのものについては、上位者の場合に有利な点が二点ございます。それは、上位等級の昇給率は、現行と変らないか、部分的に有利な点があるように私としては思われました。それから二番目に、四等級以上の俸給表の昇給期間は、現行の担当職級のトップまでは一年できめられているし、先がやはり延ばされているのではないか、私が検討した範囲の資料ではそうなっているので、昇給制度については上位者に有利な点がある、そういうことを指摘したいと思います。  時間がきましたので、以下は省略させていただきますが、初任給の問題については特に申し上げることはございません。  最後に、私の結論といたしましては、今給与体系と俸給表の二つに分けて意見を申させていただきましたが、特に大事なのは、やはり俸給表よりは、今日の給与体系改正として問題が提起されておることの中にある問題、これが大事なのではないか、そのことが俸給表というものの構成を決定しているのではないかと、こういうふうに考えます。従って、ぜひ給与体系そのものについての検討というものを慎重にしていかなければならないのではないか。これが私の見解でございます。  以上であります。
  84. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ありがとうございました。  それでは以上五名の方につきまして、一括して、御質疑がありましたらこの際お願いいたします——それでは質疑はないものと認め、先に進むことにいたします。御三名の方には、大へんお忙しいところをありがとうございました。  次に、全運輸省労働組合総連合事務局長松末誠一君にお願いいたします。
  85. 松末誠一

    参考人(松末誠一君) 私は現行給与法の中で一般俸給表の適用を受けております職員の中で、今度の改正案によりまして行政職俸給表の(一)に適用をされるであろうという職員としての立場から意見を申し上げたいと思うわけでございます。  具体的な問題に入ります前に、若干述べさしていただきたいのでありますが、今度の改正案の持っております給与制度の根本的な変革の本質というものに対しましては、私どもは次のようなものであるというように判断をいたしておるわけでございます。  第一に、七等級制と地方、中央の二分割の問題でありますが、これは御存じのように、衆議院の段階で形式的には修正をされまして、八等級制というようになっておるわけではございまするけれども、原案の意図は変化はないと、こういうふうに考えておるわけでございます。こういうふうな等級制にされましたのは、現在の級別区分というものが職務の実態に沿わない、こういう理由で行われておるわけでございますけれども、その実は、先ほどからも指摘がありましたように、むしろ職務の内容というよりも、形式的な、ポストと等級をがっちり結びつけることによりまして、そのポストに対応する賃金を給与の面で非常に優遇をはかっていく、こういうふうな制度をはっきり確立をいたしたいのだ。いわゆる職階制の日本的適用である身分制賃金制度を確立するという、こういう本質を持っておるのではないか、こういうふうに考えておるのであります。  第二番目といたしまして、昇給制度の合理化という名の改悪が行われておるわけでございますが、さきの等級制と密接不可分の関係にあることは事実でありまして、むしろこれは等級制を支える大きな柱となっているばかりでなく、格差の増大をされておる。それから職員の競争を強めて能率を上げていく、こういうことによってさらに身分制賃金制度というものの内容を強化をしておる、こういうように考えておるわけでございます。また、全般的な昇給期間の延長すなわち六ヵ月、九カ月、十二ヵ月というものが、十二ヵ月を最短期間にしたような全般的な延長の問題と、それから同一等級内の昇給期間が変っておる。こういうことにつきましては、従来のワク外昇給というものを俸給表に温存するだけでなしに、将来の賃金総額の減少をねらうものである、こういうふうに考えておるわけでございます。これらにつきましては、私どもの立場から申し上げますならば、生活給を無視をして、身分制賃金というものを職務給という名でさらに強化をして、格差政策と職制支配の強化によりまして、職員を自発的な競争に追いやり、能率を上げさせようとする意図を持つ公務員制度の全般的な改悪の重要な一環である、こういうふうに思います。  このことにつきましては、私どもは人事院勧告が出ましたときから指摘し続けて参りましたし、関係方面にもこのような給与体系の改悪はやめてもらいたい、こういうふうに陳情をいたしたわけでございますけれども、現在に至りましても、ついに私どもの望むところとならないままに今日に至っておるわけであります。幸い本日、本委員会で意見を述べさしていただく機会を得ましたので、なお二つの事実を指摘しまして、本委員会の参考にしていただきたいというふうに考えております。なお、できれば本委員会の良識ある措置によりまして、このような事実を少しでもなくする、こういう立場から、私どもが最後に申し上げます具体的な意見をとり入れていただくようにお願いいたしたいと思う次第であります。  二つの事実の第一点は、給与の改善の仕方それ自体が、格差をさらに強めておるという事実でございます。現在公務員のうちで防衛庁などの特別職や、国会、裁判所の職員を除く一般職員は、三十六万一千二百五十四名ございますが、これの平均本俸につきましては、大蔵省の給与実態調査報告書によりますれば、昨年の七月におきまして、一万四千四百五十五円に相なっておるわけでございます。この額は、現行の給与法の通し号俸で申し上げますと、大体三十五号俸と三十六号俸との中間に対応する金額でありますし、一般俸給表で申し上げますと、七級の八号、八級の三号、これが一万四千百円、これと七級の九号、八級の四号一万四千六百円との中間の金額でございます。ところがこの平均本俸以下の、すなわち通し号俸三十五号俸以下の一般職職員が約二十二万四千名おるわけでございます。全体の六二%を占めているわけでございます。一般俸給表の適用者のみ例にとりますと、六五%に達しておるわけであります。ところが、今度の給与改善は、現行の体系で一号アップに三・七%、新俸給への切りかえ〇・五%、昇給期間の短縮に二%、年間を通じまして合計六・二%のアップによる改善であると、こういうふうに御説明をされておるわけでございますし、四月一日に予定されている改善につきましては、六%を若干下回るのではないか、こういうふうな御説明もされておるわけでございますが、この給与の改善の中に相当のからくりもあるわけでございます。今四月一日で新俸給表に切りかえられました場合のアップ分、これを見かけのアップというふうにいたします。それから昇給期間の短縮があるわけでございますから、この影響を加えました年間の増加分を十二で除しまして、一ヵ月分に換算したものをいわゆる実質、アップと、こういうふうにかりに名づけまして、公務員制度調査室提出の行政職俸給表(一)の切りかえ説明の資料で計算いたしまして、この二つのアップ分の関係を明らかにいたしますと、現行の昇給期間の六カ月の者につきましては、これは現在の平均本俸以下の人数とほぼ同じ人数でございます。これは四月一日に上る分と一カ年十二で割ったものと、すなわち見かけのアップと実質のアップと等しいわけでございまして、平均賃金以上の三八%以上に上る職員は、昇給期間が九ヵ月ないし十二ヵ月の方々でございますけれども、この層におきましては、四月一日に上る見かけのアップよりも一年間を通じて上る実質アップの方が上回っておる。この上回り方は、高い給料の者ほどその増大する割合が大きくなっております。このことは、どういうふうな点から出てきたかというふうにいろいろ判断したわけでございますけれども、結局、最終的には三カ月短縮の影響が現われておるというふうに考えるよりほかはないわけでございますけれども、見たととろでは、全然とういうものは表面に現われないわけでございます。しかも実質手取りの面で格差が非常に増大する、こういうふうに非常に巧妙な、合理的なやり方であるというふうに思っておるわけでございますけれども、この内容を具体的に表で示しますと、お配りしましたものの通りでございますけれども、この表から言えます特徴は、四月一日切りかえでは、下級の職員よりも上級の職員のアップ率が少い。たとえば六十九号俸十四級の五号の方でありますと、四月一日のアップ率は三・九先であります。六級一号の二十二号俸では四日日のアップ率が五・七五%になっております。ところが、そのように下級の者が多く給与が改善されておる、こういうふうに見えるのでありますけれども、実質的なアップを見てみますと、むしろ上位の等級の方々、特に先ほどちょっと言われましたけれども、十二級、大体四等級ないし三等級に入ると思いますが、こういった方々以上の職員のアップ率が、一番下の者のアップ率を相当上回って改善されておるわけでございます。従いまして、アップ率がそのように違うということは、今度の給与の改善によりまして、表面的にはなるほど最高最低の格差というものは縮まっております。これは一四・七から一四・一に縮まっておりますが、中間的な格差というものはざらに増大するわけでございます。これは本俸だけで今申し上げたわけでございますけれど一も、減税の影響というものが年額五十万円ないし百万円のクラスに重点がおかれていること それから最高二五%に及ぶ特別調整額へのはね返りを考えに入れますと、この格差はさらに増大をするといこういうふうに考えるわけでございます。これが第一点でございます。  第二点は、昇給制度を含めまして、政府の言われます給与体系の合理化の中に、さらに格差の増大のあることを見るわけでございます。現行俸給表におきまして、通し号俸制度は、人事院細則九の八の二によりましてほとんど無意味になっていることは事実でありますが、私どもにとりましては、この通し号俸制というものは、賃金体系を考えます場合において非常に重要な部分でありますし、経験の増大あるいは熟練度の向上に伴う賃金の上昇に対応するものとしてはもちろんのこと、年令に対応して増大する生活費を保障する要素であるわけでございますが、このような通し号俸制がくずれること、すなわち頭打ちやワク外昇給というものが起ることは、最低生活を保障することが不可能となってくるわけでありまして、私たちにとりましては、先ほど申し上げましたように、生活を脅かすものとなってくるわけでございまして、この意味から、最後までその存続を私どもは主張したわけでございますけれども、残念ながら、これが否定されたわけでございます。  この具体的な内容を数字で御説明申し上げますと、現在局長のポストにある職員につきましては、現行十四級でございますけれども、五年間に八千円の昇給をするわけでございますが、一年の昇給金頭は千六百円でございます。そして、五万七百円までいきますと、頭打ちをして、あとはワク外昇給を次官にならない限りするわけでございます。ところが、改正案によりますと、十二年間の耐用年数を持っております。しかも、一年間の昇給速度というもの、昇給金額というものは、さきの千六百円から約千八百五十円と上回っておるわけであります。そして、しかも六万四千八百円までこの速度で昇給ができるように相なっております。このことは、現行よりさらに一万三千八百円も多く昇給ができるようになっておるわけでございまして、確かに、政府の言われるように、まさに合理的に改善をされておるわけでございます。また、本省課長クラスの方々に例をとりてみますと、現行制度では八年三ヵ月、これは十二級ないし十三級を普通昇給でいくわけでございますから、八年一ヵ月あるわけですが、この間を千六百円の昇給速度で上っていくわけです。そして、最高四万二千七百円をもって頭打ちをいたしておりましたものが、同じ八年三ヵ月間を千七百五十円の速度で進む、こういうふうに相なっております。それ以後、五年三ヵ月間は若干速度が落ちますけれども、最高五万一千円、すなわち現在の局長の最高の金額と同じところまで、現在より八千三百円も多く現在の昇給速度とほとんど変らない形で昇給ができるように相なっております。これも、やはり政府のおっしゃいますように、合理的な改善措置であろうというというふうに私ども思うのでありますけれども、これに比しまして、一般職職員の新制高校卒業程度のものを例にとってみますと、現在、九の八の二の運用いかんで若干の差が、あることは事実でありますけれども、大体実態は六級で一回、あるいは七級で一回から三回程度頭打ちをします。大体まあ八級の最高程度までは行けます。さらに八級で頭打ち二回程度いたしますと、まあ専門職あるいはまた係長待遇といういうような名称で九級に昇格する措置がとられておるわけでございますが、この昇給速度と到達金額というものは、現在の改正案の分でいきますと、八等級の昇給期間の延長されておる部分に入りまして、最後まで行く、そして七等級へ昇格しまして、その最高まで行く間の速度と到達金額といこういうものと、そう大した改善の措置になっておらないというふうに私どもは考えておるわけでございます。途中の分野における若干の改善を最高が若干上回っておりますけれども、先ほどの二つの例と比較をいたしました場合には、あまりにも少ない改善措置であるというふうに言わねばならぬというわけでございます。ここにも政府の言われます昇給制度の合理化というものの本質がはっきり格差政策として現れてきておるのではないかというふうに考えられるわけでございます。  このような制度の改正に伴う給与の改善措置というものは、私どもにとりましては喜んで受け入れられるものではないことはすでにおわかりのことと存じますが貴重な国民の税金によりまして、二年間も放置された公務員給与改善を行われるならば、大多数の者が喜んで受け入れられるように改善されることを望む者でありまして、この意味で、私たちは現行体系の上に、百五十六億の金の範囲でも、最悪の場合にはやむを得ないから、いわゆるベース・アップ方式で給与の改善を希望してきたわけでございます。  しかしながら、すでに衆議院の段階ではありますけれども、国民の意思がこの法案の一部修正、こういう形で現われております関係からも、現存提案されております修正法案に沿いまして、私どもの気持に少しでも近づくように生活保障するという観点から、格差増大をせない、こういう立場に立って、さらに次に申上げます三点についての法案修正をお願いいたしたいと思うわけでございます。  第一点は、先ほども申し上げましたように、上位の等級にある者の改善に見合うように下位の等級の職員にもこれを及ぼす、こういうふうな意味におきましても、行政職俸給表一の六、七、八等級というものを一本化していただきたい、あるいは少くとも七等級と六等級を一本化にしていただきたい。  第二点は、下級職員につきましては、六ヵ月、九ヵ月の昇給期間を設けて、期間短縮というものによる改善の影響をほとんど受けておらない面をカバーする措置を講ずるとともに、十五一ヵ月以上の昇給期間については三ヵ月程度の期間短縮をしていただきたいと思うわけでございます。  さらに第三点としましては、初任給をせめて短大卒業まで引き上げるか、あるいは新中新高卒引き上げに伴う手直しの分野を八千円まで及ぼしていただきたいと思うわけでございます。  以上三点にわたる法律修正が本院におきまして不適当と判断される場合におきましても、先ほど私が申し上げましたような点につきまして、運用面でその精神が生かされるような措置を講じていただくよう、善処方を最後にお願いを申し上げまして、意見を終らしていただきます。
  86. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 次に、日本教職員組合中央執行委員田中資郎君にお願いします。
  87. 田中資郎

    参考人(田中資郎君) 田中でございます。先ほど来より公務員給与の現状、あるいは今回政府提案にかかります給与法の一部的正法律案に対する一般的な意見につきましては、すでに、Aグループ、Bグループの方々から申し述べられておりますので、私は、特に今回の給与改訂の中心をなす俸給表を中心といたしまして、教育職俸給表の適用を受ける立場から、以下意見を申し述べたいと考えております。  まず、今回の俸給表は、等級、それから昇給期間、昇給間差、最高号俸、初任給、この五つの要素によって構成をされているわけでございますが、そこで、現行の制度、すなわち二十三年の二千九百二十円ベースによって確立されました現行の制度から移行するに当りまして、幾つかの問題点やあるいは教育現場の実態に合致しない点があるわけでございます。以下それらの点につきまして、具体的にその事実を申し上げていきたいと思います。  まず、第一点は、三等級区分の問題でございます。等級別賃金の是非につきましては、先ほど来よりいろいろと申し述べられておりますので、これは省略さしていただきたいと思います。教育職員の場合に、三等級区分がどういった影響を及ぼしているかということを申し述べたいと思うわけでございます。昨年の七月人事院勧告が出まして、さらに、本年の当初から、公務員制度調査室におきまして、政府原案の作業が続けられ、三月の六日に国会に提出になったわけでございますが、この間を通しまして一、私たちが反対をした最たる理由は、職階級賃金を強化するものであるという点にかかっておったわけでございます。この職階級賃金という点に関しましては、衆議院段階における審議の経過を議事録を通して拝見したわけでございますが、職階給、職務給という点についていろいろと御議論がなされておるわけでございますが、そのいずれかは別といたしましても、たとえば行政職で、課長の場合には三等級、こうしたように完全に結合さしているという点につきましては事実であるわけでございます。そこで、この原案は八種類、衆議院段階における修正によって七種類、この俸給表の中心をなす行政職俸給表における職階系列化というものに対しまして、教育職俸給表も右へならえをする、こういうところに大きな問題があろうかと考える次第でございます。従いまして、具体的には、一等級は校長だ、二等級が教諭、三等級が助教諭、このように等級区分がなされているわけでございますが、一般行政職の局長、課長、係長という形態と校長、教諭、助教諭というものは、性格上大きな差異があるわけでございます。で、その本質につきましては、二十三年に制定されました学校教育法の第二十八条におきましても、校長の任務、教諭の任務、助教諭の任務については明記されて、いるわけでございますが、すなわち、校長は校務をつかさどる、職員を監督する、教諭は児童の教育をつかさどる、助教諭は教諭の職を助けると、このように規定されているわけでございまして、直ちにこれが給与面における一等級、二等級、三等級制に結合するとは考えられませんし、また、結合さすことによって教育現場の実態と合致しない結果が出てくるものであるというように考えておるわけでございます。こうした点から、一昨年十一月に、政府に対して公務員制度調査会から答申されたわけでございますが、この答申事項の中におきましても、教育職研究職、医療職あるいは検察官等は、職階制を適用しないことということが明確に書かれているわけでございます。このことは、やはり職階制を教育現場に適用することによって生じる矛盾ということを考えました際に、至当なことであろうというように私たちとしても考えている点でございます。  第二点といたしまして、昇給期間と間差の問題についてでございますが、特に特徴的にその矛盾が指摘できる点といたしまして、私たち教育活動に従事している者といたしましては、教諭、助教諭によって、同一期間勤務しても昇給間差が違うという結果が、政府原案には出ているわけでございますが、衆議院段階における審議の経過からも、職務の内容がより複雑で、責任の度合いがより商い場合には、同一期間勤務しても異なる昇給金額を受けても至当ではないかという見解も述べられているわけでございますが、私たちの場合を考えますと、なるほど法文上は助教諭は教諭の職を助けることになっておりまするが、今日の教員定数の中におきまして、助教諭が第二義的な位置に立っているということはございません。現在、全国的に約五万の方々がいるわけでございますが、そのほとんどすべてが教諭と全く同様の職務に携わっているという事実でございます。たとえば、五十名の子供を対象にいたしまして、同一の教育内容を同一の責任を持って行なっているというのが今日の教育現場の実態でございます。こうした実態から考えて参りますと、単に、等級区分による昇給期間の差、同一職給間における昇給間差というものは、先ほども申し上げましたが、責任の度合いあるいは職務内容の複雑さから当然だということは、教育職員の場合に当てはまらないじゃないかという点を、私たちとして考えている次第でございます。また、一般行政職と違いまして、経験年数の面から考えましても、学校を卒業して補助的な任務につくというのではなくして、学校を卒業して、同時に長い経験を持つ者と同様の職務についていくのが今日の実態でございますので、この点を十分御了察いただきまして、ぜひ教育現の実態に合致するように改めていただきたい。このように考えているわけでございます。  第三点の問題といたしまして、人事交流の角度から、今回の政府案を考えました際に、阻害をする結果になるという点でございます。こうした人事交流が円滑に行われるためにも、各俸給間の俸給金額の統一をぜひはかっていただきたいという点でございます。具体的に、教育職の場合には、一、二、三に分れておりますが、単に教育職だけの俸給金額の統一でなくして、さらに全体の俸給金額の統一をお願いしたいわけでございますが、特に人事交流の面から考えますと、その必要性を痛感しているわけでございます。現行の、六三三四制の学制が二十三年に制定せられましてから今日まで、この新学制を完全に実施していく立場からも、学校種別間の人事交流は好ましいものであるという観点に立って、現実に学校種別間の人事交流は行われてきているわけでございます。ところが、今回、各俸給表により、俸給金額の統一がはかられていないために、人事交流の場合に、いかなる結果が現われてくるか、との点につきましては、注文の中で俸給表あるいは初任給を異にする異動を行なった場合には、人事院規則で定めるということとがうたわれているわけでございますが、一般的に考えまして、俸給表を異にして異動した場合には、再計算をするかあるいは直近上位の俸給月額を受けるか、そのいずれになろうと考えるわけでございます。その場合に、前者を採用するならば、高等学校から義務制学校に転任した場合に、俸給月額が下るという結果が出ると思うわけでございます。また後者を採用した場合には、学校種別間の異動が特定の人につき数多く行われた場合には、現行の体系からかけ離れた俸給月額というものが、学校種別間の異動が原因となって現われてくるだろう、このように考えているわけでございます。こうした面を考えますと、やはりぜひとも学校種別間の人事交流が円滑にできますような俸給金額の統一をはかっていただきたい、この点を申し上げたわけでございます。  第四点といたしまして、学歴の問題があるわけでございます。今回の初任給において学歴差を考え、体系内に学歴差を持ち込まないという考え方につきましては、私たちも同意するところでございます。しかし、現実の体系における学歴別の経験年数を基礎にした級別資格基準表に基きましてカーブを描きますと、それぞれ三本——新大、旧大、短大という学歴区分ごとに一定のカーブが描けるわけでございます。そこで今回の各等級ごとによる一木のカーブに変更されるわけでございますが、この場合に、いずれの学歴を基礎にして新しい俸給表のカーブを設定したのかという点が大きな問題になろうかと思います。私たちもこの点につきましてはいろいろと作業をし、検討をしたわけでございますが、その結果教育職俸給表目(三)小、中学校でございますが、この二等級のカーブは、短期大学を基礎にしておるということが明らかになったわけでございます。主な教育職俸給表(二)の二等級は高等学校の教諭でございますが、との場合には新大を基礎にして体系を設定しているということが明らかになったわけでございますが、そこで、現行の小、中学校における学歴区分別の構成を考えますと、その多数を短期大学卒業者が占めているということは事実でございますが、制度上は、小、中、高等学校を問わず、新制大学卒業生が教職についていくというのがあるべき姿として考えられているわけでございます。また、現実にその傾向をだんだんと示してきておるわけでございます。このことは一例でございますが、たとえば大阪府における中学校で学歴区分による人員構成がどうなっておるかという点を申し上げてみますと、旧制大学が五百六十一名新制大学が四千四百四十五名 短大が三千三十人名、以上のように、標準として採用されました短期大学の学歴よりも、考えられなかった旧大、新大の方々の方がより多く占めているという事実でございます。単にこのことは大阪だけの現象として考えるのでなくして、今後の正常な姿としてはこういう結果になるのだという点を十分お考えいただきまして、ぜひ基準とすべき標準学歴についての再検討をお願い申し上げたい、このように考えている次第でございます。  時間が参りましたので、さらに大事な点だけ、あと二、三点申し上げたいと思うわけでございますが、その一点は、大学俸給表における大学院を置く大学と大学院を置かない大学の間に教授の最高号俸に差等があるという点でございます。この点につきましては、現行自体に差があるわけでございますが、何もこのことが、引き続き差を温存する理由にはならないと考えるわけでございます。二十三年の学校教育法ができて以来、その修業年数が規定され、本質的には大学相互間に差がないのが当然であろうと考えます。しかしながら、現実の面を考えますと、大学総長の俸給月額にいたしましても、旧東京帝大、京都帝大あるいは他の旧五帝大あるいは旧官立大学、このような三段階区分によりまして大学間の格差を設けているというのが実態でございますが、この点はぜひ今回の給与改訂の段階で改めていただきたいというように私たちとして考えているところでございます。  いま一点は、直接この政府提案にかかる給与法一部改正案に関係はないわけでございますが、この機会にお願い申し上げたい点は、われわれ地方公務員の場合に、全国的に見まして昇給昇格の問題が大きな問題として残されているわけでございます。二十八年以降それぞれの県におきまして昇給のストップあるいは延伸、こういったことが軒並みに起って参りまして、今日の段階では、給与法に定められた正常な運営の行われているのはわずかに八県にすぎない現状でございます。今回給与改訂が行われるに当り、当然地方公務員法趣旨から考えましても、地方公務員に実施されるわけでございますが、こうした関連におきまして、国政の場におきましてこのような不均衡の解決のためにも一そうの御尽力をお願い申し上げたい、このように考えている次第でございます。  時間を経過しましたが、以上で終らせていただきます。
  88. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 次に、運輸省港湾建設労働組合執行委員長樋口緑君にお願いいたします。
  89. 樋口緑

    参考人(樋口緑君) 樋口でございます。私は運輸省の港湾局に所属しております組合の責任者でございます。  給与法全般にわたります問題については、それぞれ御意見が出ておりますので、私からは、特に私の所属しております運輸省の港湾局あるいは建設省、北海道開発庁、農林省農地局、こういう国の公共事業の実施官庁であります所に他の省庁より非常に多く含まれております技能労務職員の問題について、特に一つ二つ意見を申し上げてみたいと思います。  俗に技能労務といいますと、非常に単純な労務だというふうに考えられがちでありますが、ほかにもいろいろあると思いますが、私たちの職場だけをとってみましても、非常に多種多様にわたっております。御承知の方もあると思いますが、一例をあげてみますと、港の建設をやるためにはいろいろな船舶が要ります。これはもちろん特殊作業船であります。自分から推進する力を持たない船もありますが、自分から推進する力を持っておる船舶、こういうのが大体大きいのは一千トン、小さいので二十トンくらいまでありますが、これに乗り組んでおります船長、機関長以下全員が、この労務職員の対象になるわけであります。それからモーター・プール、建設省なんかによくありますが、モーター・プール、機械工場こういう所の、十数人だとかあるいは数十人の女工さんを直接指揮監督しております職長さん、伍長さん、こういうのもすべて技能職員に入ります。そのほかたとえば橋梁だとかダムだとか港、こういう作業現場で非常に多種多様な経験と技能を要します現場の直接の監督をやります工長とか組長、こういうものもすべてこの技能職員の対象になっておるわけでございます。この点まず御理解をいただきまして、以下意見を申し上げたいと思います。  まず第一点に申し上げたい点は、私たちは、技能労務職の俸給表を新らしく作られるということに対して、どうしても賛成いたしかねるということであります。衆議院修正では、技能労務職俸給表というものは廃止されまして、行政職俸給表の(二)ということになっておりますが、これは単に名前が変っただけで、その本質には何ら変りがないという考え方をもって、以下行政職俸給表の(二)を技能労務職俸給表の口に置きかえて意見を申し上げたいのであります。  この俸給表の新設に反対いたします一番大きな理由は、先ほどの御意見にもちらっと触れてありましたけれども、公務員制度の改正ということが、よくいわれておりますが、この公務員制度の改正のレールの上に乗って俸給表の新設が考えられておるのじゃないか。このことが労務職員公務員からの分離と結びついているということを考えるからであります。戦前、役所に雇用員制度というものがありました。今ここで問題にしております技能労務職員が、その当時用人として扱われておったわけでありますが、その当時、給与の面が劣悪であるということは、これは申し上げるまでもないことでありますが、そのほかの、いわゆる身分的な面からくる差別待遇というものは、全くひどいもので、当時の肉体労働軽視というこういう観念からきておったとはいいながら、私たち、非常にそのひどさは今もって忘れることができないのであります。  一昨年の十一月十五日に公務員制度調査会の答申が出ておりますが、その中に、単純な労務に従事するものの私法上の雇用契約にして公務員に属さないものとする、こういう答申が出ておりますが、このことは、直ちに用人制度の復活であるというふうに断定するには至らないかもしれませんが、真にわが国情に適した簡素かつ能率的な制度に改める、という表現がありますが、こういう表現などからいろいろ勘案をいたしますと、これらの労務職員の分離が、管理職制度というものの設置と相待って、身分的、恩恵的な官僚制度とつながった用人制度が再び作られないという保証はないのであります。従って、この俸給表を二つに分けるということが、用人制度を作りやすくするという絶対の条件ではないかもしれませんが、少くともこのことを容易にする、こういう意味合いからこの俸給表の新設に反対をするわけでございます。  第一点の理由といたしましては、職務の実態に応じた賃金という、非常に一見合理的な表現を用いられておりますけれども、技能労務軽視の身分的差別賃金を作ろうとされておるのではないか。しかもそのことが行政職に比して非常に低賃金に据え置かれるという低賃金のくぎづけをねらわれておるのではないか、こういうふうに思うから反対をするわけでございます。技能職は机に向って仕事をしておる行政職、いわゆる管理職とは本質的にその内容が異なるのだから、俸給表も当然別にして、その特殊性を生かすのがほんとうではないか、こういう意見があるわけでございますが、そのためには、次のごとき条件が必要ではないか、こういうふうに判断をいたします。それは、技能職は特殊なものを除きますと、比較的短年月で相当程度の技能に達し得るわけでございます。特にタイピストだとか、国家試験を必要とします自動車の運転手または機械器具の運転、こういう職種を見ますると、このことが容易にうかがえると思います。従って技能職俸給表は、当然初任給は行政職に比して相当程度高くなければいけないと思うのでございます。このことが一つ。  もう一つは、昇給の速度でございますが、これは大体二万円から二万四、五千円に達するのには、行政職よりも早い期間にそこまで達し得る。もちろんそのあとは漸次昇給速度が行政職に比してゆるまっていくというのはやむを得ないといたしましても、二万円から二万五千円に達するまでは早くそこまで達し得る、こういうようなものがもし考えられるとするならば、当初申し上げましたいわゆる職務の実態に対応した合理的なものだという理屈が通ってくるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。ところが提案されております原案並びに衆議院修正議決されております原案で見てみますると、例を申し上げてみますが、行政の一でいきますと、新制高校卒で新規採用者が最短期間で昇給していった場合、七等十三号、従ってこれは地方の官庁でも係長になれない、行政職でいいますと一番最悪のコースをたどった場合、この人が二万三百円に達するのには大体二十年三ヵ月必要なわけであります。ところが、一方行政職の二、いわゆる技能労務職にこの点を比較してみますと、新制中学卒業で、これも最短期間で昇給していったとしまして、同じように二万三百円に達しますのに二十八年三ヵ月、これを必要とするわけでございます。もちろん行政職について、二十年で二万円というのは十分でないかもしれませんが、同じ二万三百円、二万五百円に達するのに八年三ヵ月も違うというのはいささかひど過ぎるのではないか。新制中学と新制高校の年限差一年間を差し引きましても、五年間という開きがあるわけでございます。この点、電々公社の俸給表をちなみに例を見てみますると、これは昨年の三月二日の調停事項でありますので、今年問題になりました裁定は含まっていないわけでございますが、これによって見てみますると、一番悪いコースをたどったとしましても、二万五百円に達しますのに二十三年でいけるようになっております。私たちのいわゆる一般職公務員の場合と比べますと、五年の開きが出ておるわけであります。このことは、今私が申し上げましたのは、今から入ってくる人がこういうような形になっていく、こういうことでありまして、この際特に申し上げておきたい点は、現に在職しております技能職員、特に四十才から五十才くらいのいわゆる中堅技能職員の場合をとりますと、先ほどちょっと触れました戦前の用人制度のもとにおける低賃金が、そのままこの現行の俸給表に切り変っておりますために、全般的に非常に水準が低いのでございます。新しく今提案されております俸給表によりますと、行政職俸給表の(二)二等級で二万六千五百円あるいは一等級で三万一千三百円までいけるのだということがあるわけでございますが、このような四十才から五十才の中堅技能職は、現在が非常に標準よりも低いために、最高号俸に達する前に老年退職、こういう事態になるわけであります。全く俸給表には非常に高い金額になってよくなったのではないかといわれておりますが、私たちの場合には、まさに絵に描いた餅こういうふうに私たちは思っているのであります。それからいろいろ不満があるだろう、しかし今度の俸給表には頭打ちがなくなっておる、従って今までよりも有利になったんではないか、こういう声があるのでありますが、これは大へんな誤解だというふうに判断をしております。たしかに形の上では頭打ちはなくなっております。しかしながら、これはただ単に現在の制度の上における頭打ち、ワク外昇給、こういうものの速度をそのまま俸給表として作ったにすぎないのでありまして、何らの改善になっていない、こういうふうに思っておるわけでございます。  以上申し上げましたごとく、国家公務員の場合には、技能労務職俸給表というものがその職務の特殊性に応対した俸給表とはならず、技能職は行政職よりも低い、いわゆる低位である、こういう身分的格差賃金に据え置かれておるのがその実態であるわけであります。どのことは、衆議院におきます付帯決議を見てみましてもうかがえるわけであります。すなわち「行政職俸給表の(二)に該当する職員で、鑑定、模写、工芸品製作、欧文ステノタイプその他高度の特殊技能を有する考及び特に規模の大きい官庁における配車係長その他技能関係の高度の管理的業務に従事する者は、行政職俸給表(一)を適用させること。」こういうふうに付帯決議になっておるわけでありますが、このことは、技能職であってもある程度の高度技能に達すれば行政の(一)にいけるのだ、こういう善意に基いた付帯決議であろうというふうに判断をいたしますが、このことを裏返してみますと、技能職俸給表は行政職俸給表よりも低位にあることを言外に証明しているのではないか、こういうふうに思うわけでございます。技能職の実態に合うその特殊性を生かす俸給表、すなわち職務に対応する俸給表であらせようとするならば、その行政職にいける道を作るというのではなく、行政職の(二)いわゆる技能労務職俸給表そのものを改善するという方法がとられてこそ、本来の提案の意味があったのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  以上申し上げました諸点よりしまして、この技能労務職俸給表の新設には賛成することができないわけであります。このことは、今まで機会あるごとに要望も、陳情申し上げてきたのでありますが、残念ながら衆議院におきます審議では、このことがいれられずに、すでに議決を見ております。しかしながら本院におかれては、以上の諸点を審議の参考にされまして、でき得ますならばとの俸給表を廃止するように修正をされるようにお願いしたいと思うわけでございます。万一廃止が不適当だというふうに判断されましたならば、先ほどからいろいろ申し上げました諸点をくみ入れられまして、技能労務職俸給表が、ほんとうにその職務の特殊性を生かしたものになるように修正議決されますようにお願い申し上げまして、私の意見を終ります。
  90. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 以上三名の参考人の方々に対して、質疑がありましたら、この際、一括してお願いいたしたいと存じます。
  91. 永岡光治

    永岡光治君 松末参考人お尋ねいたしますが、あなたからお配りいただきました給与改善の比率ということで、一般職と一般行政職を例にとっておりますが、見かけのアップと実質のアップと、お話によれば、実質のアップというのは、昇給の諸期間を三ヵ月短縮する、その結果こういう状態が現われておるということでありますが、そうでない見かけのアップについても、それぞれの号俸によって昇給額の。パーセンテージが非常にまちまちになっているわけですね。特にその度合いが実質のアップを見ると、さらにひどくなっているわけです。そうしますと、との衆議院修正案によりますと、暫定手当というものを今度地域給に変えて作ろうとしておる際に、六・二%ベース・アップしたのだから、その分を一応差し引くというような計算になっておるわけです。そうしてこれは一月三十一日の現在の給与に引き直すのだということになっておりますが、これと非常にまた矛盾してくると思うのですが、ああいうことになると、皆さんの方でこれは了解しにくい結果になると思うのですが、これはもちろんベース・アップ方式をとらなかったところに大きな原因があろうかと思うのですが、この点についてあなた方はどう考えておいでになりますかね、それをお尋ねいたしたいと思います。
  92. 松末誠一

    参考人(松末誠一君) 質問の御趣旨地域給に関連をしてだと思うのですが、私は地域給のことにつきましては、具体的にあまり詳しくないわけでございますけれども、もともと地域給暫定措置にして凍結をするという考え方は、私ども反対を申し上げておるわけなんでございますけれども、万一、一律に六・二%差し引いて凍結をするという方式がとられるといたしますると、ここにありますように、アップ率がそれぞれの金額においてアンバランスが出て参りますから、非常に大きな問題が出てくるであろう、こういうふうに申し上げたいのであります。
  93. 永岡光治

    永岡光治君 それから松末さんにもう一つお尋ねしたいのですが、先ほど修正の要望がございました、できることなら等級の六、七、八を一本化してもらいたい、どんな事態においても七、八は譲れない、こういうことでございます。さらにそれに加えて、もし手直しをやる、それと合せて手直しについてもこの一初任給の引き上げに伴って、つまり新制中学校、高等学校の初任給の引き上げによって手直しを八千円にやってもらいたい、ごもっともだと思うのですが、ちょっと方法があるかどうかお尋ねするわけですが、今のお話の中で、もしこれが、金額が直らなかった際には、何らかそういう措置がとられるようにというお話でございましたが、それは具体的にどうすれば解決できるのか、参考のためですから、参考のために聞いておきたいと思うのですが。
  94. 松末誠一

    参考人(松末誠一君) 全般的に私が申し上げました格差を縮めていくという方向と、それからもう一点は、生活をできるだけ保障していくという考え方で、俸給表全般に対しての修正をしていただきたい、こういうことを申し上げているわけでございますけれども、やはり一番大きな問題は、六、七、八を一本にするという考え方の根底と申しますのは、少くとも通し号俸、完全な通し号俸制度というふうなものは望み得ないにしましても、その程度の金額までは、上位の等級の方々の改善措置に関連をいたしまして、一般職員につきましても通し号俸の運用が可能となるような、そういう措置をとっていただきたいということを申し上げているわけでございます。  第二点の初任給の問題につきましては、これは具体的に俸給表の修正をいたしませんと、なかなか困難ではないかというふうに考えております。
  95. 永岡光治

    永岡光治君 それから田中参考人お尋ねいたしますが、新大卒及び短大卒の問題にだいぶ触れておいでになったようでありますが、これを修正するということになれば、大体どの程度引き上げを要望されておるのか。
  96. 田中資郎

    参考人(田中資郎君) 教育職俸給表の(二)並びに(三)の間における俸給金額の差は、一つは現行の給与体系が三本立てになっているという点から出ているわけでございます。この点は別といたしまして、標準学歴の差異による差、この点はぜひなくしていただきたい。いわゆる新大を教育職俸給表(三)の二等級の標準学歴といたしまして、現行の三本立に伴う一号差を除外した段階まではぜひとも引き上げていただきたい。このような考えに立っているわけでございます。
  97. 永岡光治

    永岡光治君 田中参考人お尋ねいたしますが、この教育職の俸給表の(三)の二等級を短大卒ですか、新大卒に直すのですか基準を。そうしますと、初任給はどこから始まることになりますか。
  98. 田中資郎

    参考人(田中資郎君) 教育職俸給表の(二)が九千八百円からスタートしておるわけでございます。従いましてこれが本俸給表を作成されました仮定初任給であるというように判断いたしておるわけでございます。従いまして教育職俸給表日におきましても、スタートを八千円、これが想定された短大の初任給というように判断をいたしておるわけでございますが、これからスタートされる点については、現実におられるわけでございますから、かまわないと思うわけでございます。ただ、九千八百円、四号俸でございますが、九千八百円以上について、本標準学歴を新大とした場合に描けるカーブを基礎にして俸給金額の設定をお願いしたい、このように考えているわけでございます。
  99. 永岡光治

    永岡光治君 田中参考人先ほどの公述の中で、私たちが承わっておりまして、もっともだと思う点がたくさんあるわけで、特に、助教諭だから、あるいは教諭だからということで区別をつけるべきではない、同じ生徒、たとえば五十人なら五十人受け持っておる助教諭であっても、教諭並みの責任があるじゃないか、全く同じ教育を扱っておる、教諭が最も重大な教育をしておる、言うなれば、責任の度合いから、もう複雑さも同じではないかと、にもかかわらず、一方は三等級で一方は二等級、こういうようなことで、これはまことに不合理だと思うのでありますが、大体これは教員の定員の不足からくるところもあると思うのでありますが、助教諭で大体どの程度実際その教育を受け持っておりますか、その。パーセンテージがもしおわかりでしたら、どこでもいいですが。どこの学校の場合でもいいですが。
  100. 田中資郎

    参考人(田中資郎君) 具体的な計数を持ち合せていないわけでございますが、毎年度各学校の教員定数を配当される場合には、教諭、助教諭の区別なくして、一定基準により配当されておりますので、現実には小、中学校合せまして約五万の助教諭の方々がいるわけでございますが、そういった配当の結果、当然ほとんどすべての方々が、教育現場で教壇活動を行なっておられる、このように私たちとして判断をいたしておるわけでございます。
  101. 永岡光治

    永岡光治君 人事院給与局長がおいでになっておるようでございますが、ついでにお尋ねいたしたいと思うのですが、この格づけの差異によって、そういう場合は当然この原案でかりにいくといたしましても、格づけにおいてはやはりそれはみんな二等級で格づけしていくのかどうか、助教諭も。
  102. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 衆議院の付帯決議がございますが、これがこのまま通るかどうか、その通った場合を予想いたしまして、われわれは衆議院におきまする付帯決議の精神というものは、十分生かしていかなければならぬというように考えております、ただ、教育職の場合におきましては、御存じのようにこれは資格というものが非常に大きな要素になりまして、級がきまっておるわけでございます。助教諭というようなことでありますれば、定数の関係で教員になれない方がおられるのかもしれませんが、場合によりましたら資格を持っておる場合があり得るだろうと思うのであります。そのような場合には、これは十分考慮する余地があるのじゃないか、助教諭、講師というような方々におきましても、現実の教育活動におきまして、教諭と何ら異なったことをやっておられない。しかも資格を持っておられる。これらの場合におきましては十分考える余地かあろうかと、このように考えております
  103. 永岡光治

    永岡光治君 資格を持っておれば考える余地があるが、持っていなければ考える余地がないという、これこそ人事院における責任とその職務の複雑の度合いによってきめるのだという原則に反すると思うのでありますが、現実に五十人なら五十人の生徒を受け持ち、小学校の初めの教育は、子供は二葉の教育が非常に大切になっているわけですから、非常に国民としても重視しなければならぬのですが、それを同じに扱っているのに区別をつけるというのは、どういうわけですか。
  104. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 大体給与法によりまして、職務の責任に応じまして給与支給されるということは原則でございます。今回の人事院勧告並びに、政府提出法律案におきましても、これは完全な職階性を採用しておるものではない。このことは参考人もしばしば引例されておるところでございまするが、そうは申しましても、職務と責任に基いてやるという原則に従いまして、行政職そのほかの俸給表というものはさまっておるわけでございます。そういうふうな原案が作成されておるのでございまするが、教育職のところにつきましては、むしろそういうことが非常にむずかしい。また、先ほど公務員制度調査会の答申の引用もございましたが、公務員制度調査会の答申によりますると、教育職なんかむしろ職階性を適用しないがよろしいということになっております。今回われわれがやりました人事院勧告というものは、これは職階制ではもちろんございませんで、各俸給表とバランスをとりまするために、便宜、校長でありますならば一等級というような言葉を使っております。しかし、教諭については、従来でありますならば一般俸給表が適用されまして、職務の級別が幾つかございまして、これは職務と責任に応じてきまるべき職務の級でありますが、その職務級というものが同じ教育をやっておられる教諭について、いろいろな種類があるということになっておったのでありますが、今回のわれわれの勧告におきましては、教諭である限りは同じ扱いにしていく、こういうことになりまして、その間の級の差別というものはなくしておるのであります。そういうわけでございまして、教育の場合には、むしろ職階制を採用するということよりも、むしろ資格によりまして、教諭たる資格を持っておるということを基礎にいたしまして、区別しないということが、今回の人事院勧告の原案におきましては基礎にいたしておるわけであります。ただ、教員の場合に、助教諭でも何でも教育活動に従事しておる者は同じに取り扱ったらいいではないか、その話もわからないわけではございませんけれども、やはり教員の場合は一資格というか、それが非常に大きな教育職員の諸般の基礎になっておるわけであります。従いまして、そういう基準に従いまして、われわれは教育職員の場合におきましては、職務の段階というものはございませんけれども、資格という点は、やはり給与をきめていきまする場合に、基本の原則であろう、このように考えておる次第であります。
  105. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  106. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を起して。
  107. 永岡光治

    永岡光治君 ただいまの給与局長答弁納得できませんから、いずれ審議のときにあれしたいと思います。樋口参考人お尋ねいたしますが、承われば承わるほど涙の出るような実は話なんで、ほんとうのことなんですけれども、技能労務職なるがゆえに、国家公務員からはずされるというその危険も多分に私も察知されると思うのです。それで、承わると、たとえば一千トン級の船長さんでも、それが場合によれば海事職にもなっていないし、技能労務職たる(二)表を適用されるというのですが、これはまことに私はだれが聞いてももっともな話だと思うのでございますが、これは資料を一つお願いいたしたいと思うのですが、そういう付帯決議では「高度」という表現をいたしておりますが、そういう意味では高度なんという言葉はこれは除いた方がいいように思うわけですね、付帯決議そのままの場合を解釈いたしましても。同時に、そういう職種をもうちょっと細部にわたった資料を提出できれば、それを一つ出していただきたいと思うのです。これによると、付帯決議の場合ですと、だいぶ(一)にもいけるような道は開かれていますけれども、ここに限定されておる職は非常に少いと思うので、ですからそういう意味で、ぜひそういう職種をいろいろあなたの方で御経験になっておりましょうから、あらゆる職種にわたって一つ御提示をいただきたいと思うのです。特に質問する必要も……。話を聞けばその通りでありまして、全くこれは技能労務職なるがゆえに、かつての用人みたいなことになっても、新憲法時代の公務員全体としても好ましくないので、その点はぜひ本委員会でも検討しなければならぬと思います。資料の提出をお願いいたします。
  108. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 資料の提出できますね。
  109. 樋口緑

    参考人(樋口緑君) はあ、できます。
  110. 亀田得治

    委員長亀田得治君) じゃなるべく早くお願いしておきます。それでは以上で質疑は大体終了したものと認めて、次に移りたいと思います。御苦労さま。  それでは次に、官庁附属試験研究機関労働組合協議会の代表、長嶺普吉君にお願いいたします。
  111. 長嶺晋吉

    参考人(長嶺晋吉君) 私、長嶺でございます。官庁附属試験研究機関の職員を代表いたしまして、研究職の給与について意見を申し述べてみたいと思います。  まず最初に、研究職の給与が行政職に比べまして著しく劣っているという現状につきまして、もうこのことにつきましては、すでに政府みずからが認めている事実でありますが、簡単にここにその実情を申し述べてみたいと思います。お手元にさし上げてあります表でもおわかりのように、この厚生省の研究機関で調査いたしました厚生省における大学卒の本省事務官それから医学部卒の本省技官それから医学部及び薬学部を出ました研究機関の技官との俸給を比較してみますと、本省事務官に比べまして、研究機関の技官は十一級以下の者におきましては一級の差、それから十一級以上の者においては二級の差があります。さらに本省技官に比べてみましても十二級以下の者におきましては平均約三号それからそれ以上におきましては一級の差があるのであります。例をあげてみまするに、昭和十六年に大学を出ました高文出の方は、現在十三級、しかるに研究機関における同年の医学部卒の者は十一級で、金額にしまして約一万二千円の差があるのであります。また、昭和十九年に出た者は、両者の間に十二級対十級の差があり、昭和二十一年卒の者は十一級対九級、こういうふうに完全に二級の差があるのであります。医学部は修業年数が四年間という長いにもかかわらず、どうしてこのような大きな開きがあるのか、全く理解に苦しむところであります。このことは、他の研究機関においても同様でありまして、さらに大蔵省のいろいろな給与実態調査の資料においても明かであります。このような原因がどこにあるかということを考えてみまするに、その根本のものは、旧来の技術軽視の思想にあろうかと思いますが、直接の原因は、第一に行政職においては役付けの乱造が非常に多いということであります。工業技術院の調査資料によって見まするに、本省関係におきましては課長以上の職務を除きましても、課長補佐それから係長の役付けは実に全職員の七〇%にも及んでいるのであります。これに対しまして、研究機関のそれに相当する役付けは僅かに四〇%にすぎないのであります。また、全然そういった役付けのない研究機関も非常に多いのであります。これは研究という仕事が、ポストによって業績を上げるものではなく、能力によってのみその業績を上げるというその研究機関の特殊性によるものであるからであります。このような研究機関の特殊性を無視しまして、職階給を研究機関に画一的に適用するということが、さきに申しましたような格差を生じている原因であろうかと思います。これは、職階給は研究職にとって全く不合理きわまりないものであるということを示すものであろうと思います。  次に第二の理由といたしましては、研究機関においては人の新陳代謝が非常に少く、従いまして人事が固定性を持っておるということであります。これもこの研究機関におきましては、専門技術者を尊重するところの研究機関の一つの特殊性であろうかと思います。このようなために、研究機関の職員はこの紋別定数に縛られまして、結果において悪くなっておるという現状であります。  まあ以上二点が、研究職の給与を著しく悪くしている直接の原因と考えますが、以上の研究機関の不利な点につきましては、今日まで学術会議それから研究機関の所長連絡会議等から再三、再四政府にもその改善方を要望して参っております。さらに公務員制度改革要綱の答申案の中にも、研究公務員の待遇改善をはかるべきであるというような趣旨がうたってありますが、今回の給与制度の改革案の中には、このような改善の跡が全然見られないのであります。  以上の理由から、私たちは給与制度改革において、次の諸点につきましてその改善方を要望したいと思います。  まず第一に、研究職の俸給は大学教育職の俸給と少くとも同等にしていただきたいということであります。これの理由は、研究機関がその質を向上せしむるためには、大学との人事交流が必要であるということであります。研究機関から大学の教授になって出ていく者は非常に多いのでありますが、大学から研究機関に入って来るという者はほとんどないのであります。これは明らかに大学と研究機関との給与の格差、これによることは明らかであります。研究機関から優秀な者が教授となって出ていきまして、これに対して優秀な人材が研究機関に入って来ないというこの現状は、まさに研究機関の内容を停滞せしめ、それから質を低下せしめる大きな原因であります。まことに国の科学技術の発展の上に大きな損失であろうかと存じます。大学で基礎実験をしっかりやった者が研究機関の中堅になって入るということは、その研究機関の質を向上せしめる上に重要なキイであろうかと私は考えます。以上のような理由から、研究職の俸給をやはり大学の俸給と同等にすることを要望する次第でございます。  第二に、研究職の給与体系には職階制を適用しないことでございます。これの理由につきましては先に申し述べました通りでございまして、私たちとしましては通し号俸にすることが最も望ましいものであるというふうに考えるのでありますが、しかし給与制度改革案が現在衆議院を通ったときにおきましては、給与に関するこの衆議院の小委員会決定事項の三の(ハ)の内容、すなわち「研究職員で部長、課長、室長等の役職名のない職員についても、その研究業績、職務内容等に応じて研究職俸給表の四等級以上の等級へ格付ける。」という内容をもっと具体的なはっきりしたものにいたしまして、一等級、二等級に所長、二、三等級に部長、三、四等級に室長クラス、四、五等級に研究員を、それから六、七等級に補助研究員をというふうに明示してもらいたいと思うのであります。このような方法によって、研究職の俸給表の低い面が運用の面で少くとも改善ざれることができると思うのであります。ただ単に特別研究員としてカッコにくくるだけでは、従来の人事院のやり方から見ましてほんの一部の特定の人間にのみ限られまして、またときによってはただ単に恩恵的人事に終ってしまうというおそれが十分にあるのであります。でありますから先ほど申し述べました通りに、この資格基準表にはっきりと以上のことを明記してもらいたいというふうに考えるのであります。さらに人事院としましてはその実態を十分に調査されまして、研究機関とも協議の上にこの格づけを行なってもらいたいというふうに考えるのであります。  第三に、医学部卒の国家試験合格者の初任給は、研究職におきましても教育職、医療職と同等にするということであります。政府案によりますと、医大卒の国家試験合格者の初任給は、教育職並びに医療職は一万一千八百円となっておりますが、研究職は一万一千四百円になっているのであります。このような設定もまことにおかしいものでございます。これでは研究する者は給与は悪くてもよいといったような、技術研究軽視の考え方としかとれないのでございます。このようなことでは研究機関に優秀な人材を集めることは不可能であると思うのであります。  第四に、研究職の二等級を改善していただきたいということであります。研究職の二等級は行政職に比べまして悪い点があるのでございます。それは表を見ますと、研究職の二等級は、昇給期間が十二ヵ月になっておるのは四万八千八百円まででございますが、行政職俸給表の(一)の二等級は、昇給期間十二ヵ月までの額は五万、二千二百円になっております。このように昇給期間に差があるのでございます。で、研究職の二等級が行政職に比べて悪い、というこのこともまた理解に苦しむところでございます。本省のこの局長や部長に比べまして研究職の所長や部長が低くなければならない、ということも全く合点のいかないところでございます。研究機関の所長や部長にはその道の権威者もたくさんいることでございます。ところが人事院は研究機関を大学の一講座と同等にみなして、所長や部長を大学の教授以下にどうも評価しておるというふうに考えられるのでございます。国が国の研究機関を低く評価するということは、まさに国の研究機関の発展を阻害するものと考えるのであります。  第五に、研究機関の研究と関係のあるところの技術者は、補助研究員に含めるべきであるということであります。これの理由は、研究機関の技術関係者、まあたとえば機器の製作、ガラスとかあるいは分析技術、こういうものは高度の技術、熟練を要しまして、研究と並行しまして頭脳的考案というものを必要とするのであります。従いまして単純な技術工とは異なるものでありまして、同一にすべきものではないというふうに考えるのであります。次に研究技術者をこの労務職に分離いたしますと、実際の研究上円滑を欠くという事実が生じて参るのであります。最初研究職の俸給表が五等級までしがなかったけれども、七等級まで増したということは、これは各研究機関の所長たちが以上の意味で要求して参ったことによるものであろうかと思うのであります。ところが政府は研究技術者を労務職に分離する考えのようでございます。これは研究職が七等級までできた趣旨に反するものではないかというふうに考えます。で、研究と密接につながる研究技術者を分離して、全体の機能を低下せしめるということがないように、研究職一本にすべきが妥当であると考えます。  第六に、新俸給表への切りかえは研究職員の現在の不均衡是正した後行なってもらいたいということであります。これはもう当然な要望であろうかと存じます。現在のままで切りかえられるならば研究職員の不利は依然として残り、研究職に対する何らの改善にもならないことになってしまうのであります。第七に、研究機関の大小という理由で格づけ上の差異を設けないということであります。単に研究機関の組織の大小、人員の多少、組織、名称の違い、こういうものによって各研究機関における研究職員の格づけが異なるということがあるならば、これはまことに研究の本質を理解しないもはなはだしいものといわなければならないと思います。ところが現実にこのような矛盾が存在しているのであります。同一の経験年数、同一の能力を持つと思われる者が、研究機関によってその格づけが著しく違っているのであります。このような不合理な例は非常に現在見られるのであります。研究というものはその組織の規模の大小にかかわらず、その専門業務の学問的探求の深さという点におきましては何ら変りのないものであります。要はその業績のいかんに研究機関の能率はあるのであります。ところが人事院はこれを形式的に考えて、格づけを行なっているのが現状であります。どうかこのような格づけが行われないように十分な御考慮をお願いしたいと思います。  以上七点をもちまして私の意見を終るのでありますが、これはわれわれにとってはしごく妥当な要望であろうかと思います。どうか慎重審議の上この参議院の内閣委員会におきまして、決議をもって私たちの要望が実現されますようお願いするものであります。私の公述を終ります。
  112. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 次に全日本国立医療労働組合書記長渡邊素良君にお願いいたします。
  113. 渡邊素良

    参考人(渡邊素良君) 国立病院や国立療養所の職員で組織しております全医労の書記長の渡邊でございます。先ほどから多くの参考人から今回の給与体系改正と申しますか、に関する多くの意見が出されたことと思いますので、私は特に国立病院、療養所の職員関係の深い職種の供給表につきまして意見を申し述べたいと思います。私たち病院、療養所の職員の俸給表は、今回の改正によりまして、現在まで一般職俸給表一本でありましたものが、行政職俸給表の(一)、行政職俸給表の(二)、また医療職俸給表の(一)、(二)、(三)、この五つの俸給表の適用が行われることになるわけでございますが、行政職俸給表の(一)及び口につきましては、それぞれ先ほど参考人の方から御意見が出たことと思いますので、後ほど少しく触れるということにいたしまして、この際は医療職俸給表の(一)、(二)、(三)についておもに意見を申し述べたいと思うわけでございます。お手元に「医療職俸給表に対する意見」と書きましたお粗末なものでございますが、資料を差し出してございますので、御参考にしていただきながらお聞き願いたいと思います。  まず冒頭に書いてございますのは「医療職俸給表の等級について」、今のように各俸給表の間で、医療職俸給表の(一)は五等級、表の(二)は六等級、表の日は四等級と分れておりますが、これが実際に病院、療養所の運営のためには全く不都合であるというように思われるのでございます。でありますので、衆議院におけるいろいろな討議もあり、社会党、自民党両党一致による修正というふうに決定をしたわけでございますが、当参議院内閣委員会におかれましては、いま一度この点については病院、療養所の実情をあわせ考えられて、各俸給表間の等級の差をなくするように御審議を願いたいと思うわけです。  その理由と申しますのは、まずこのように一つの俸給表の中に等級を分けることが、病院、療養所の実態から非常に無理ではないかというふうに思うものでございます。また先ほど人事院給与局長も申しておられましたが、昭和三十年の十一月に出されました公務員制度調査会の答申案には教育、研究、医療の各職権につきましては、職階制を導入することは非常に無理であるというふうな答申が出されているわけです。この点については人事院は、今回の人事院勧告は職階制をそのまま導入したものではないということをあらゆる機会に申し述べておられるようでございますが、どう言われましょうともわれわれが考える限り各課長、係長、部長、そういうものについて俸給表の等級を分けていくということは、職階制の導入であるというふうに断ぜざるを得ないわけです。で、そういうふうな職階制の導入が病院、療養所でいかに無理であるか、あとしばらく意見を申し述べたいと思うわけですが、そこの表に出しております現在の病院、療養所における医師の定員の分布をまずごらん願いたいと思うわけです。  それをごらんいただくとおわかりになりますように、病院長におきましても十一級からの病院長がおります。ところが実際には十三級の医員がいるわけでございまして、十三級の医員にとりますと、自分と同じ給与及びそれ以下の病院長が全国で二百二名もいるということになっております。これが今回こういう職階的なものが医療職の俸給表に導入されました場合、果して院長ということで上の等級に格づけされ、平医員ということで下の等級に格づけされるということは、全く矛盾が起きてくるというふうに思うわけです。御存じのように病院、療養所の形態というものは国立病院、療養所においても一本ではございません。非常に大きい病院もあれば小さい病院もある。そういう場合におきましては、大施設の平医員、という言葉は非常に失礼でございますが、わかりやすいのでそれを使うといたしますと、往々にして大施設の平医員より小施設の院長の方が、学識、経験、手腕ともに下であるという場合が多いのでございます。そういうことにつきまして、これを職階制を導入いたしました各等級に分けますと、どういう矛盾が起きてくるかということは大体御想像いただけると思うわけです。  またこの点につきましては非常に卑近な例ではございますが、取り上げてみるとなお一そう御理解がいただけるのではないかと思います。まず結核の治療等に関して非常に世間にも高名であられる方に、この近くの清瀬病院の島村院長、またおやめになりましたが東京療養所の宮本という先生がおられました。また現在、昨年の参議院選挙で参議院議員に当選をなさいましたが、元、高知療養所の坂本先生といろ方がおられます。この三人の先生方は大学においてはそれぞれ同期である、そういうふうなことであったわけですが、そういうことで大体今までは俸給等におきましてもほぼ似通った上昇率を示して参っているものだというふうにわれわれは理解をしておるわけです。ところがもしも新しく今回衆議院修正決定されましたようなものが通過いたしますならば、そうしてその運用において大いなる考慮が払われません場合には、この同じような手腕を持ち、また同じようにそれぞれ患者から信頼をされ、同じ学歴を持っておられる方々の間に俸給において差が出て参りますし、また今後の昇給においても大きな差が出てくるというような非常に矛盾した事実が生ずるわけでございます。そういう点からまずこういうことをなくするためには、この医療職俸給表の(一)におきまして等級の差を全部なくして、1から5まですべてを通し号俸にするということでなければ、今の欠点は克服されないというふうにわれわれは思うものでございます。  ただこれらにつきましては、ごく最近出されました人事院の資料等を拝見いたしますと、そういう状態が起ることを考慮いたしまして、病院長及び副院長等に準ずる医師については二等級まで進めるというふうな取りきめをいたしておるようでございますが、そこまで進める取りきめをいたしますならば、何のためにこういう等級の区別をつけなければならないのか、また一そう理解に苦しむところでございます。今、医師の場合について一つ非常に卑近な例を申し上げたわけですが、医師が医療職の場合の非常に代表的な職種であるということから、なお医師の場合にこういう等級の区別をつけることがいかに無理かという例を少しく申し述べたいと思います。  まずこれはいいことか悪いことかは別といたしまして、現在病院、療養所の医師等は、それぞれ各大半の出先機関というと語弊がございますが、いささかその傾向を持っておるわけです。たとえば国立東京第一病院はかりに東大であるとするならば東大系の方で占める、またある療養所は慶応系で占める、そうしてその間におきまして大学とその施設との間の交流はございましても、施設同士の交流ということは望みがたいという状態が起きておるわけです。ですからかりに職階的な医者の場合の俸給表の取りきめをいたしました場合、ある程度技術が上ってきた場合には、小施設の医務課長なりまた副院長なりに出していく、そうしてそこで腕が上ると大きい病院の副院長に戻す、そこからまた小施設の院長に出していくという交流がスムースにかりに行われるとすれば、この等級によって差をつけるというようなことも理解ができないわけではないのですが、現実においては全くそういうことは行われておらない。そういうことからもこの等級差を医師の場合につけることは全く不合理である、無理であるというふうにわれわれは思うものです。また現在施設長等においては管理職手当というようなものがついておりますので、同一の学歴を持った人がどんどん俸給が上っていく、ある人はその病院管理の能力を買われて副院長になり院長になっていく、そういう場合においては昇給によって差をつけるのでなく、管理職手当というものによってその職務に応じた給与を支払えばいいではないか。こういうようにも考えられますので、そういう点からも医師の場合、等級によって俸給表を分けるということの不合理が生じてくるわけです。  また御存じであると思いますが、各専門科、内科とか外科とか小児科とか耳鼻科とかいうものによって、先生方の専門的に区分けがされておるわけですが、たとえば耳鼻科なら耳鼻科、眼科なら眼科ということでは神様のようにいわれている方でありましても、大病院に行きましてはなかなか院長になれないというふうなことも往々あるわけでございます。そういう場合に果してその先生方に報いる十分な給料が、こういう俸給別に分けた場合に払い得るかどうかという点については、全く疑問であると思うわけです。そういうことから今非常に医師の場合を中心にして申し上げたわけですが、医療職全般について等級別に分けていくことについては、われわれとしてはこれは実情に全くそぐわないものである、これを通じて一本にすべきであるというふうな意見を強く持っておるものでございます。ただしこれを早急に一本に統合することが不可能であるといたしますならば、そこに書いてございますように、医療職俸給表(一)については一等級を二つ別とし、二、三等級すなわち病院長と施設長を一本にくくり、また四等級、五等級を続けて、一、二、三の三等級制にしたらどうであろうか。また医療職俸給表の(二)及び(三)につきましても、そこに資料に出しておりますような区分けをいたしましたならば、ただいま申しましたような矛盾がいささかでも解消するのではないかというふうにまあ考えておるわけです。  以上は主としてわれわれ医療職関係につきまして、等級によって俸給を区別することの不合理さを申し述べたのでございますが、今度の俸給表に給与体系の変えられるに当ってわれわれが一番強く希望いたしたいことは、医療従業員の給与が全般に低いということを強く申し述べたいと思うわけです。その点は二番目の意見としてそのお手元の資料に書いてございますが、これは昨年一月人事院調査したと称せられておる数字でございまして、これは正式に発表されておらないかと思うのでございますが、それにあげられておる数字を見てみますと、民間給与に比べて大体一割から二割はみな少いということがはっきり出ておるわけです。われわれが実際に体験しております数字としてはこんな差ではない、もっと民間の数字とわれわれとの間には差があるというふうに感じております。それは多くの民間の医師では、たとえば往診をしたときにそれに対する補助が出るとか、また研究手当と称して、実際は研究等に使わなくても済む費用がいろいろな名目で出されておる。こういうふうなことを知っておりますがゆえに、こういうふうな差ではないと思いますが、一応現われた数字を見てみましても、二〇%の開きは出ているということははっきりしておるわけです。これを非常に卑近な例で申し上げますと、現在国立病院、療養所は非常に医師不足に悩んでおりますが、北海道、東北、北陸の地方におきましては医者が少いということもございますが、それぞれの地方の大学で派遣基準をきめておるわけです。たとえば北海道の場合経験五年の医師であるならば、少くとも四万ないし五万の手取りがなければ大学から派遣をしないというふうな内規がひそんでおるようでございます。それに対して現存のといいますか、今度給与を引きげたというふうに政府が言っておられます今度の俸給表を適用してみますと、五年の医師がわずか一万七千円にすぎないのでございます。三分の一以下の給料で果して優秀な医者が喜んで赴任して来るかどうか、この点は詳しく申すまでもなく御理解いただけることだと思うわけです。そういう点から医師のこういう俸給表の改訂に当りましては、医師を中心とし、医療従業員全般の給料をもっと引き上げることに十分御考慮を願いたいと思うわけです。また医師の場合インターンというものが終戦後できたわけですが、このインターンができたことによる一年間の空白といいますか、実際は自分の医学というものをより一そう深めるための期間でございますから空白ではないわけですが、これが給与行政の上では空白として扱われ、そのために今までの医者との間に開きが出てきておる。またこれは教育職関係のお医者さんとの間に開きが出ておったことも事実でございます。これは今度の給与改訂では是正をされたというふうに聞いておるのですが、またその辺もはっきりとは伺いませんが一応是正されたといたしましても、現在の三月三十一日の給与を基準として切りかえます場合に、二号俸だけ低い、一年分だけ低い給与の医者に対してどういう措置がとられるのか、ということも大きな矛盾でございます。この点は非常にわずかな額のようですが、先ほどから申しましたような医者の俸給表が総体にぐっと低い、このことは人事院総裁初め給与局長その他がわれわれに対して、いつも認めておられたことでございますが、この解消がされなければならない。その中では非常にわずかな額でも、われわれとしてはぜひこの改訂に当って織込んでもらいたいという希望を強く持っているものでございます。  また次の二枚目にありますが、医療職俸給表三の看護婦の俸給表についてでございます。この点につきましては、あと参考人として国立東京第一病院の総婦長さんがお見えになっておられますので、この点を中心にお話いただけると思いまするから、私としてはごく簡単に申し述べますが、まず分れております四等級、いわゆる准看護婦の俸給表が現行よりはるかに低くなっている、ということを次の表でごらんいただきたいと思うわけであります。実線は現行俸給であり点線が今度の新しい改訂案でございますが、とのような措置は人事院としてはとらないということがいろいろ言明されているやに聞きますが、准看護婦は看護婦と違う、今までは給与がよかったということで、現在持っている権利といいますか、当然そこまで上るべき俸給を下げられるというふうなことは、私たちとしては何としても了解に苦しむところであります。この点あとの参考人から意見を開陳されると思いますが、十分お考えをいただきたいと思うわけであります。なお准看護婦は現存新制中学卒業後二年間の学歴を持ち、都道府県の試験を受けて准看護婦になるわけでありますが、旧制の看護婦法によりまずそれと同等の資格であり、昔は乙種看護婦と申しておりましたが、それの一部をもこの准看護婦俸給表、すなわち医療職俸給表目の四等級に入れるということを、人事院として進められているやに聞いておりますが、そういたしますと、この准看護婦及び旧制乙種看護婦の方にとりましては、先ほど申しましたように、現在持っております既得権が侵されてくるというようなととが明々白々として出てくるわけであります。この点については当参議院の審議段階において御修正をいただきたいと思うのであります。  なお医療職全般について詳しく申し上げますならば、医療職俸給表の(二)に入ります各種の職種がございますが、その職種の関係の中でも、特に医療職に非常に深い、医療職としてまた代表的なエックス線技師とか病理細菌技師とかが入る、また栄養士とか歯科技工士、歯科衛生士、マッサージ師というものが入るというふうに聞いておりますが、またそれに非常に密接な関係を持つ医療従業員として国立病院、療養所の医療に携わっておりますたとえば療工である、磨工と申しますが、病院に行きますといろいろ機械をといだりしております。これも医療関係の非常に経験を必要とする職種があるのでございます。また物療関係というのがございます、また義肢工と申しまして義手義足を作っている職種の者もおります。そういうもの、また結核療養所、精神療養所に行きますと作業療法指導員というふうな者もおります。またほかに非常に最近伸びたものとして、行政職の中に入れられるのだと思いますが、メディカル・ケースワーカーの仕事、医療社会事業の仕事というものも、非常に専門的な医療知識を持って仕事をいたしております。それらのそれぞれがその職務の能力及び責任に応じて格づけされているかというと、なかなかそうわれわれは理解が持てないという状態でございます。この点につきましても適当な、当然受けるべき地位にそれを上げるよう、一つこの参議院段階において御討議をいただきたいと思うわけでございます。  なお時間もきたようでございますのであと簡単に申し述べますが、このように一つの俸給表における号俸のワクを大きく伸ばしましたために、次のような点に矛盾が起きるのじゃないかということを憂えております。それは現在人事院規則九の八の二におきまして、初任給のものの格づけの場合に、大体原則としてその等給の一号俸に格づけされる、ただし、たとえば一年の昇給期間であるならば、一年半の経験があれば上の号俸に、一号上につけるというふうになっていたものでございますが、そういうような規則をもし今後もずっと適用されるといたしますならば、経験五年、七、八年、十年なんというふうな長期間の経験を持った者が病院、療養所に参りました場合に非常に低いところに格づけされるのじゃないかというおそれが生ずるわけでございます。この点も運用の問題ではあろうと思いますが、非常に医療従業員の全体の給与が低いということは、先ほどからも繰り返し申し述べたような状態でございますので、そういう点においてもこまかい点に一つ御配慮をいただきたいと思うわけです。また現在医師の給与等が低いと申し上げましたが、その低い医師の給与が、新しい俸給表によって、なお一カ所新俸給表の方が低くなる個所が出ておるのでございます。それは現在医者になりまして七年経験を持つ者は一万九千八百円の俸給に達するわけですが、これが新俸給表によりますと一万九千四百円になるという、非常におかしな例が出て参るわけです。こういう点もなぜかと申しますと、今までは七級から八級へ、八級から九級、九級から十級に上ります場合、それぞれ飛び抜けて上るというふうな状態を運用上されておったわけですが、今度非常に一つの等級の号俸の幅が延び接したために昇格が延びてくる。早く二年なり三年なりで昇格ができない。こういうふうな状態から今申しましたような矛盾が生じてくると思うのでございますが、こういう点につきましても俸給表等の審議の際に十分御検討をいただきたいと思うわけです。  以上非常にこまかい、われわれ病院、療養所の職員が仕事に当っておりながら、この新しい俸給体系、俸給表について検討をいたしました結果を申し述べたわけでございますが、総体のいわゆる給与体系改正の意図がどこにあるのか、またどういう矛盾が生じているかというふうな点につきましては、今ここで触れるのは避けます。具体的な事例としてわれわれ病院、療養所の医療従業員がこの俸給表について不満に思い、なおかつ修正を希望いたしております点について意見を申し述べた次第でございます。どうか参議院の内閣委員会における討議の中で、十分われわれ病院、療養所従業員の意見をお汲み取りいただきまして、妥当な修正をいただきたいと思う次第でございます。
  114. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは最後に国立東京第一病院総婦長吉居ユキ君にお願いいたします。
  115. 吉居ユキ

    参考人吉居ユキ君) 吉居でございます。私は医療職(三)の看護婦の俸給についてぜひお願い申し上げたいのでございます。  まず考えられますことは第一に学歴、経験等から見まして、全般的にこの看護婦の俸給は、最高俸給額が非常に低く、しかも昇給期間が、他の職種に比較いたしまして、いずれの等級も非常に長きに過ままして、全体的にこれを考えますとき非常に不均衡ということになるのでございます。従いまして、看護婦全体を不当に低く評価されていると言わなければならないと思います。これを具体的に申しあげてみますと、お手元に配付いたしましたカーブの表がございますが、これをごらんいただきたいのでございますが、その最後の医療職の(三)の看護婦の部をお開きいただきとうございます。これを見ますと、そのうちの三等級の看護婦の部だけは現行法よりも少しはよくなっているように見えるのでございますが、実際にはあまりいいことはないのでございます。大体学歴から申し上げまして、最も看護婦に近い薬剤師の方の俸給表と比較いたしますとき、初任給は三百円違っております。薬剤師と同じ学歴の看護婦も本年から出て参りましたが、ただいままでの看護婦は大部分は一年だけ短いのでございますが、国家試験を受けますことも同じでございまして、非常に近い職種でございますので、それを例に取ったのでございますが、初任給は三百円の違いでございますが、この三等級の看護婦と薬剤師の俸給とを比較いたしますとき、最高は七千九百円の差ができているのでございます。それから次に、看護婦と薬剤師との差はそういうふうでございますが、さらに一等級、二等級などと比較いたしますと、もう一万円以上の差ができてくるわけでございます。こうした誰はどこから出たのでございましょうか。それから看護婦の一等級あるいは二等級、また准看護婦の部の四等級というふうなところは、全部現行よりも悪くなっているのでございます。これを他の職種と比較いたしますとき、非常に不均衡になっております。このことにつきまして私どもが関係官庁へ参りましていろいろお聞きいたしましたところによりますと、今度の俸給表は現行よりは悪くしないというふうに強調していらっしたにかかわらず、私ども看護婦だけがこういうふうに低くなっているということは、どうしても納得がいかないのでございます。これを考えますとき、一方に是正されまして高くなったところがございますのでございますが、これは高くなるのは当然高くなったのではございましょうが、そのしわ寄せが最も弱い、最も声の低い看護婦にしわ寄せされたのではないかと考えるのでございます。  第二に申し上げたいことは勤務時間でございます。公務員のほとんどが四十四時間の勤務でございますにかかわらず、ひとり看護婦のみ一週間四十八時間の長きに過ぎる勤務時間でございます。それに加えまして、公務員ことに女子である看護婦が深夜業に服さなければならないのでございます。こういう深夜業に服します女子は、少数の特例はあるかとも考えられますが、ほとんど看護婦と申しても過言ではないと思うのでございます。ことに厳寒の候暖房の設備もほとんどございません非常に不完全な病院で、大体生物が安らかに眠っておりますそのころに、看護婦のみがひたすら患者の看護に心身をすり減らしておる状態でございます。このようにどの公務員よりも最も長い勤務時間と、そうして深夜というような非常に過労な勤務についております看護婦の俸給表が、このように低いということは、何らこうした勤務時間とかあるいは勤務の過労というようなことを、全然考慮されてないやに考えられるのでございます。  それから次に第三は、私ども看護婦の意見と申しましょうか、私どもの声が非常に十分聞いていただけないということでございます。私どもは最も大切な人の生命をあずかっております職業でございます関係から、職場を放棄いたしましてこうした俸給を是正していただきたいというような闘争をすることは、良心的にとうていできないことでございます。従いまして、私ども総婦長の代表者が関係官庁あるいは国会の向きに、これまで幾たびか勤務時間外に具体的に詳しく御説明申し上げて請願して参りましたが、まだその意思が十分徹底していないようでございます。その点この内閣委員会におきまして、皆様にぜひぜひ私どもの要望をいれていただきたいと思うのでございます。  それで、そこへお配りいたしました請願書の最後に私どもの希望案としてつけてございますのでございますが、大体カッコ内が私どもの希望案でございますが、ちょっと説明さしていただきます。一等級は政府案以外に別に作成いたしまして、三万二千七百円から最高四万六千円といたしまして、大体五十六才まで昇給可能としていただきたい。他の医療職におきましても、人事院勧告案の一等級以外に別に一等級を加えて、以下順次下げている関係上、医療職(三)についても同様の見解から当然別に一等級を加える必要があると考えたのでございます。第二の、試案の一等級を一等級といたしまして、最高額を四万円とし五十四才まで昇給可能といたします。そのために号俸を二十号まで延長してもらいたい。それから次は二等級を三等級といたしまして、最高額を三万二千円といたしまして四十七才まで昇給可能としてもらいたい。次の三等級をまた四等級といたしまして、最高額を二万五千百円までといたしまして、四十才まで昇給可能とするというようにしていただきたいのでございます。次は四等級を五等級といたしまして、最高額を一万九千五百円までといたしまして、大体三十七才まで昇給可能としていただきたいというふうに考えたのでございます。また昇給期間をカッコしてございますが、いずれの等級も昇給期間を希望案のようにぜひ短縮していただきたいと思うのであります。  以上非常に簡単でございますが、ぜひぜひこの公明な参議院の内閣委員会の皆様に、切に私どもの要求を入れていただきたく懇願する次第でございます。
  116. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは一括して以上五名の参考人に対する質疑をお願いいたします。
  117. 秋山長造

    ○秋山長造君 渡邊さんでも吉居さんでもどちらでもいいですが、この政府の原案でいきますと、国立病院の総婦長は一等級になりますね。それでこの一等級で最高給が三万五千百円なんですが、この三万五千百円に達するのは、年令にして幾才くらいになりますか、現状。
  118. 吉居ユキ

    参考人吉居ユキ君) 大体五十五才くらいになると思います。
  119. 秋山長造

    ○秋山長造君 私の質問がちょっと悪かったのです。私のお尋ねしておるのは、皆さんの現在の実情を、この政府案の表に当てはめてお答えを願いたい。
  120. 吉居ユキ

    参考人吉居ユキ君) ただいまではでございますね、これまで非常に男女別がございまして、そういうころの婦長が非常に多うございますから、現在は相当年令に達しているのでございます。現在は総婦長が大体五十才くらいで最高に達しておるのであります。
  121. 渡邊素良

    参考人(渡邊素良君) ただいまの御質問吉居総婦長から実情がある程度述べられましたが、これは戦前の看護婦の地位ということとからめてお考えいただかないと御理解むずかしいのではないかと思います。戦前は病院、療養所の中における看護婦の地位というものが非常に低くて、医者の召使といいますかそういうふうな地位待遇しか与えられておりませんでした。そういうことから終戦後、これは占領軍の指導等もありましたでしょうが、急速に看護婦の給与が伸びて参った。こういう状態があるわけですが、戦前があまりに低きに失しておりましたために、現在総婦長になっておられる方はほとんど戦前からの看護婦さんであるわけでありますが、戦前が低かったために現在の俸給も総婦長としての格づけが非常に低いところにとどまっているのではないか。現在の一般職の俸給表であれば十一級の総婦長さんが全国で十数名おられるわけでありますが、十一級のトップにいたしましても本俸が三万円そこそこ、こういうふうな状態になっております。だから現在をもとにいたしまして幾らか引き上げたという人事院勧告趣旨であろうと思います。この点につきましては、戦前が非常に低かったためにその後の伸びが行き悩んでおる、という点もあわせてお考えをいただきたいと思います。
  122. 永岡光治

    永岡光治君 今の渡邊さんや吉居さんのお話で、大へん私は重大な発言を承わったわけですが、現状より悪くなるということでしたが、これは研究して現在の俸給表と対照してみればわかる一と思いますが、もうちょっと具体的に内容を説明して下さいませんか。俸給表でこうなるんだということを。
  123. 渡邊素良

    参考人(渡邊素良君) この点につきましては、医療職俸給表の(三)の四等級をまずごらんいただきたいと思います。これで大体、私どもの医療職俸給表に関しての意見というところにカーブが書いてあるわけですが、これでは額がわかりませんので、この点を数字によって御説明いたしたいと思いますが、大体六年経過いたしました準看護婦では、新しい俸給表では一万二百円となっております。この四等級七号俸一万二百円というのが、六年経過の準看護婦の俸給になるわけでございます。ところが現在この準看護婦制度が発足いたしましてわずかに三年しかなりませんので、こういう者はおらないわけですが、かりに六年たちましたと、いたしますならば一万四百円という数字になります。現在の俸給表で六の十三というのはございませんが、現在は準看護婦は五級の一号で採用になります。それから一年に二回昇給をいたしますと、六年たちますと五級の十三、五級は十五号俸までしかございませんから、六級に上るといたしまして、一万四百円というのが、当然現在三年経過しております準看護婦の方が、あと一三年経過すれば受けられる俸給でございます。ところがいわゆる新俸給表によりますと、六年たちましても一万二百円にしかならない、こういうのがわれわれのカーブにも出しておりますが、それがもう少し十年、十一年ということになりますと、よけいに差が開いてくるということになります。
  124. 永岡光治

    永岡光治君 長嶺さんにお尋ねいたしますが、行政職に入った同じ大学を出た人ですね、それと比較してみたいのですが、行政職のお宅は厚生省だと思うのですが、厚生省でそういう比較をした例があればどれだけの開きがあるか、お示しをいただきたいと思います。
  125. 長嶺晋吉

    参考人(長嶺晋吉君) お手元に差し上げてございますが、これは厚生省内の医学部を出ましたいわゆる厚生医官と、研究機関におります医学部出の技官、この比較が示されておるのでございますが、それが十二級以下におきましては平均約三号からの差があるのでございます。それからさらにこれが十二級以上になりますと、完全に一級の差が出てきておるというふうになっておるのでございます。
  126. 永岡光治

    永岡光治君 先ほどちょっと聞き漏らしましたが、七〇%、四〇%の役付きの比較をおっしゃいましたが、もう少し、そこのところよくわかりませんでしたから。
  127. 長嶺晋吉

    参考人(長嶺晋吉君) これは工業技術院で調査された資料でございますが、調査された対象は非常に多うございますが、それによりますと、課長以上を除きまして課長補佐、係長、こういう者の役付きの数が全職員の約七〇%を占めておる。ですから課長以上も加えますとまだ八〇%くらいに上るという、こういう資料が出ております。それに比べまして研究機関はその資料によりますと、大体四〇%くらい。それからこれは研究機関によって違いまして、ある研究機関におきましてはピラミッド式に部長から課長、係長、こういうふうに段階的になっている所もありますが、そのような組織が全然ないといった所もたくさんあるわけでございます。そういういわゆる格づけの差によって、それが現在研究機関によって違ってきているというのが実情でございます。
  128. 永岡光治

    永岡光治君 吉居さんの方にお尋ねいたしますが、先ほどの御説明で大体看護婦の方は医療俸給表の(三)の分に相当するわけですが、現存も非常にみな低くなっておるというようなことですが、大体そういうことですか。
  129. 吉居ユキ

    参考人吉居ユキ君) (三)の方はごらんいただきますと、カーブを見ますと割合によくなっておるようではございますが、看護婦そのものは全体的に非常に低く評価されているので、薬剤師の方なんかと比較いたしますと最高が非常に低いということでございます。
  130. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは以上をもちまして、参考人の意見開陳並びに参考人に対する質疑は、全部終了したと認めます。  参考人の方々には長時間にわたり、きわめて貴重なる御意見の御開陳をいただきまして、本案の審査に重要なる参考となりましたことを、委員一同にかわって厚くお礼申し上げます。それでは本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後五時四十二分散会