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1957-04-11 第26回国会 参議院 内閣委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十一日(木曜日)    午前十時五十二分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員井村徳二君辞任につき、その 補欠として平島敏夫君を議長において 指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     亀田 得治君    理事            上原 正吉君            大谷藤之助君            秋山 長造君            竹下 豐次君    委員            泉山 三六君            木村篤太郎君            迫水 久常君            苫米地義三君            平島 敏夫君            松岡 平市君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            八木 幸吉君   国務大臣    法 務 大 臣 中村 梅吉君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    建 設 大 臣 南條 徳男君    国 務 大 臣 宇田 耕一君   政府委員    科学技術政務次    官       秋田 大助君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    法務省入国管理    局長      伊關佑二郎君    文化財保護委員    会委員長    河井 彌八君    文化財保護委員    事務局長    岡田 孝平君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    法務省入国管理    局次長     下牧  武君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○科学技術庁設置法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○国家行政組織に関する調査の件  (正倉院裏観光道路許可に関する  件) ○法務省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 亀田得治

    委員長亀田得治君) これより内閣委員会を開会いたします。まず科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題に供します。本案について御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 秋山長造

    秋山長造君 宇田国務大臣に、当面の原子力問題について若干御質問したい。承ず第一点は、先般来非常に問題になっておる原子力委員会運営、あるいは責任権限、というような点が、どうも最近いろいろな雑音によってぼやかされておるような印象を非常に強く受けるのです。大臣は、原子力委員会委員長をされておるわけですが、この原子力委員会というものを、日本原子力政策を推進していく上において、どういうようにお考えになり、また今後、この原子力委員会運営について、どういうような構想を持っておられるか、その点をまずお伺いしたい。
  4. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 原子力委員会運営根本原則は、設置法にありますように、民主自主公開の三原則によって運営をするという基本がありまして、そうしてその中で企画あるいは審議決定、そういうことについて、九項目くらいの項目に分れて権限をもたされておるわけであります。それを実際に運営いたしますのには、事務がだんだんと複雑になりますので、科学技術庁原子力局でそれの事務処理を行う。こういうふうになっております。従って、委員会運営には、ただいま申し上げましたような決定権まで持っておりますが、最後の実施については科学技術庁がこれを行う。また、これの最高行政責任内閣総理大臣がこれを持っておる。こういうふうになっております。従って、委員会運営につきましては、その法に明記してありますように、民主自主公開原則にはずれないように、そうして総理府内におけるところの総理大臣諮問機関というわけではないのですが、決定権も持っておつて総理大臣はこれを尊重する。こういう建前になっておりまして、その線にはずれないように運営をいたしたい。こういうふうに思っております。
  5. 秋山長造

    秋山長造君 今承わつたようなことは、これは法律を読めば書いてあることですけれども、私がお尋ねしているのは、この法律ではそういうふうに書いてあるし、それから一昨年の暮でしたか、本委員会で、この基本法なり設置法審議する場合に、当時の正力国務大臣からも、これらの点については、法律にうたつてあるところをよく尊重し、そしてこの線に沿うて万事やっていくということは、繰り返し言明があったわけです。宇田国務大臣も、やはり同じ線で御答弁があるということは、これはわかりきつたことですが、私がお尋ねしているのは、こういうことが法律で書いてあるのだから、当然日本における原子力開発原子力政策の促進ということについては、原子力会員会というものがやはり中心になり、そうしてまた、最高機関としてリードしていかるべきもので、この線が最近いろいろな方面から押しまくられて、原子力委員会そのものの影が非常に薄いのではないかという感じを受けるのです。その点について、実は今、大臣がおっしゃったように、あるいはきわめて事務的なことにわずらわされて、そうして大きな政策決定という本来の任務の点がおろそかになるというか、不十分になるというようなきらいがあるのじゃないか。また同時に、手足を持たないというようなこともいろいろな方面から指摘されて、そうしてそのために、原子力委員会というものが、なおさら影がどうも薄らいでおるのではないかという批判を受ける一つ理由になっておるのじゃないかと思います。現に大臣は、せんだつて新聞に発表されておるように、どうも原子力委員会だけでは弱いので、原子力懇談会というようなものをその周辺に作つて、そうして大臣のお考えでは、一種のやはり補強工作というようなことでお考えになつたのじゃないかと思うのですがね。まあそういうようなものを作らなければならぬということは、やはり原子力委員会というものかこれだけ弱体だから、別にまた、屋上屋を重ねるようなことを考えなければならぬことになってきたのじゃないかと思うのです。私、そういう具体的な問題についてお尋ねしておるわけです。
  6. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 原子力委員会は、ただいま条約関係あるいは新らしくできます障害防止に関する法律とか、予算執行に伴いまして当然裏づけを必要とする法律が何件か出て参っておりますが、それは、立法府との連絡が非常に密でなければならぬここが多いわけでございます。ところが、その放射能に関する問題とか、あるいは障害防止に関する法律等になりますと、非常にわれわれの常識にない新しい科学がそこに入ってくる関係で、立法府委員会との間で、事前によくその問題点について了解をしておく必要がある事件が多いのでありまして、そういう点につきましては、行政官庁のわれわれ責任者としては、事前によく、法律以前に理解をしておいていただかなければならぬものが非常に多いのでございます。そういう点について、行政府としては、立法府のそれぞれの法案を取り扱う責任諸君とよく話をしておきたい。それが一つ立法府行政府、簡単に申し上げますれば、原子力委員会諸君と各それぞれ専門委員会のその委員諸君と、こういう方面連絡をはかりたい、これが私の一つ考えておるところであります。  それから、法律的に申しますると、たとえば、国家公安委員会のように、直接その下部行政組織を持っておる委員会ではなくて、原子力委員会は、原子力委員会それ自身行政決定の衝に当つて原子力委員会そのもの行政措置は、科学技術庁原子力局がとる、こういうふうになっておりまして、設置法建前からいうと、科学技術庁委員会と、二つの組織があるのです。そこに、これの連絡を密にしなければならぬ点が一つつて参ります。そして、科学技術庁の中には、御承知のように、原子力研究所であるとか、あるいは燃料公社であるとか、それぞれの予算執行をする対象があるわけでして、それが原子力委員会法律的にうまくくつついていって、そうして運営を密にし、そして予算執行をうまくはからなければならぬ。そういう点もあります。従って、ただいまの設置法に基きますと、どうしてもそういう点の連絡を、九十億もの新しい予算執行していく場合には、十二分にしなければならない点が起つて参ります。そういうわけで、原子力委員会考ええておりますところの基本構想を伸べていく場合に、立法府との連絡を密にすること、それは、これから逐次出てくる法律内容をごらんになっても、十分御理解いただけると思うのです。そのほかに、今年度の予算執行するに当つて研究所あるいは燃料公社等連絡をしよつちゆうさせないと、こっちの企画原子力委員会の計画いたしておりますことがうまく連絡がいかないような法律内容もあります。そういうわけで、科学技術庁執行をする責任を持つ場合に、原子力委員会の方との連絡をどういうふうに十分に保つていくかということは、行政府の長としての私の総理大臣を助ける責任になってくるわけでありまして、それは、科学技術庁設置法によりますと、そういうふうな形になっております。そういうわけで、懇談会の形でそういうふうな懸案事項をうまく整理していきたいと、こう考えております。
  7. 秋山長造

    秋山長造君 最初、この基本法なり設置法ができたときに、私は、やはり当時の正力国務大臣に対して、まあ委員会というものは、設置法を読むと、決定権まで持つた非常に強力なもののようだけれども、しかし、何といっても手足を持たないで、この条文に書いてある通り仕事が一体実質的にできていくのかどうかということをずいぶん確かめたのです。そのときに、たとえば、科学技術庁にある原子力局が一応原子力委員会庶務をやるという形にはなっているけれども、これは全然別系統のものです。全然別系統のものが隣の家をお手伝いするというような形では、これはなかなかうまく運ばない。だから、ほんとうに民主自主公開という大原則のもとに、原子力委員会という権威を持つたこの委員会が発足する以上は、当然やはりその手足になって、よその片手間の仕事でなしに、もう専門に、その委員会手足になって動く事務局というものが必要なのではないかということをずいぶん言つたのです。果して今日に至って、この事務局がないということが、やはり原子力委員会がややもするとどうも影が薄くなるといわれる一つの大きい理由になっている。これはどうですか。大臣のお考えも、私は一つのお考えには違いないと思う。この原子力懇談会というようなもので、外堀の方から固めていくという考え方も、一つ構想には違いないと思うが、とにかくそういうものを作る前に、原子力委員会というものが、すでにこうやつてはっきりした法律に基いて作られているのです。しかも、それが原子力政策に対して審議するばかりでなしに、国家最高方針決定権まで持っているわけですから、まず外の側の方のことを考えられるよりも、このすでにできている原子力委員会そのもの拡充強化ということをまずお考えになるのが、私は順序じゃないかと思う。今のような形のままで、原子力委員会は、そのままなま殺しのようなことにして放つておいて、そうして外堀の方ばかり力を入れられると、これは全く原子力政策というものが混乱してしまうおそれがあるのじゃないか、しかも、原子力懇談会なんというものは、なるほど一つの行き方ではあるかもしれぬが、別に法的な根拠を持つわけではないし、責任権限がはっきりしているわけではないし、その点はどうお考えになりますか。
  8. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 原子力懇談会を恒久的に置いて、それを事実上の行政運用便宜的手段に使おうという、それまでには考えておりません。とりあえず、当面の処置をするのにこういう考え方はどうだろう。そういう意味で、これを立法化して、たとえば審議会のようなものにこれを育てていくかどうか、そこまでは深く考えておりません。当面の処置として、原子力委員会設置法によると、それ自身一つ意味を持たされておりますが、外交関係では、総理大臣を通じて外務省を使うとか、あるいは大学における研究機関につきましては、文部大臣を通じて、大学におけるそれぞれの講座を通じて、原子力計画に参加せしめるとか、いろいろな各省にわたる行政措置を必要とするような委員会企画立案がありますから、そういう点からいうと、当初考えられた原子力委員会というそのもの権限、そうしてそれに付随するところの下部組織の作り方というものは、科学技術庁とどういうふうに組み合すかということになると、懇談会でこれがうまくいくとはどうしても考えておりません。懇談会というものは、要するに、私が行政長官として、科学技術庁長官として、現実の問題を自分行政措置をする場合に、こういうものがあった方が便宜だと、こう考えたわけでありまして、原子力委員会そのものとして、原子力委員長として、これをどうこうしようということから出発してきたわけじやありません。それで、原子力委員会としては、一番希望する点は、何といっても、立法府原子力委員会とがどういうふうにうまく話し合いをしていくかということが、条約問題あるいはただいま提案しているいろいろの関係法規立法府への理解を深める意味では必要と考えております。それで、行政府としては、何しろ、ざつくばらんに内輪を申し上げますと、原子力研究所があります。あるいは燃料公社があります。最近、この法律通りますと、放射線の障害防止等法律通りますと、防止に関するそれぞれの技術官を指揮いたしまして、工場その他の施設についての保護対策を取り入れる必要がありますが、それに必要な人員監督教育ということになりますと、相当複雑な行政措置が起ると思っております。そういうふうな一連のものは、実は科学技術庁で、原子力局を通じて執行責任を負つていかなければならぬわけでありまして、そういうふうな面を原子力委員会に直属せしめないという、科学技術庁設置法に期待をしておる点も、一つそれは、外務省外交、あるいは文部省が文教政策を期待されておるのと一連考え方じゃないかと思うのです。そこに、原子力委員会設置法科学技術庁設置法との境が生れてくるのではないかというふうに私はまあ理解しております。そういう意味で、これをうまくどいうふうに運営していくかということについては、もっとこれは、何しろまあできて一年そこそこですから、運営の仕方をもっと工夫しなければならぬ、こういうふうに考えまして、自分自身としては、懇談会というようなことはどうだろうか、原子力委員会諸君の中にも、懇談会というのは原子力委員会の問題でなくて、科学技術庁としてそれを考えるかどうかという質問がずいぶんありまして、それはもちろん、科学技術庁長官としての自分考え方である。執行部執行していく場合に、もとの企画した諸君考え方とも食い違つちやいかぬ、そういうことのないようにしたい。それについては、裏づけの、法を作つた立法責任者の、立法府の幹部の諸君とも話をして、そうして三つ考え方が渾然一体となるように、科学技術庁長官としては配慮していきたいと思います。そういうことが根本であったわけであります。
  9. 秋山長造

    秋山長造君 その点がきわめてあいまいだと思うのです。大臣の今のお話によりますと、原子力の問題に対する最高方針というものは、あくまで原子力委員会がきめる。原子力懇談会なるものは、その原子力委員会できまつたことを、大臣長官として実施していく場合のいろいろなこの問題についての意見を聞くのだと、こういうお話ですね。それからまた、原子力局についても、原子力局原子力委員会できまつた最高方針大臣科学技術庁長官として実施していかれる場合の、その行政面についての手足になるのだ、こういうお話なんです。それはもうその通り大臣がおっしゃる通りなら、これはある程度理解できる。ある程度理解できるのだけれども、どうも原子力委員会そのもの手足を持たないということが一つと、それから、今まで財界なりあるいは国会に非公式にあった原子力合同委員会ですか、こういうようないろいろな方面から事実上やつぱりもう押しまくられているのです。そういうものが、原子力委員会できめられた方針実施に移される場合に、いろいろ意見を言つたり何をしたりということでなくて、どうももうそこらで、原子力委員会が本来やるべきことがもうきまつてしまつて原子力委員会というものは、いわゆるたな上げになつたような形が見えるのです。それから、原子力局にしても、私は同じだと思う。今、大臣のおっしゃるように、原子力委員会できまつた方針大臣長官として実行に移される場合に、その手足として忠実に働いていくというだけにとどまらないで、やはり何といっても行政をやる場合は、事務局を握つた者がなかなか一番強いのですから、事実上、だから、むしろ逆に、原子力局佐々木さんの手もとあたりで、いろいろ本来原子力委員会でやられるべきことがこの事実上相談ができて、そしてかえつて原子力委員会をつんぼさじきに置かれておる、あとから事後承諾というような格好になっておる点が私は多少ともあるのではないかと思う。それでなければ、原子力委員会というものが、今大臣のおっしゃる通りに、また法律で書いてある通りに、健全に運営されているのだったら、どうも原子力委員会が影が薄いとか、いろんな陰の方の力によって押しまくられているとか、そういうような批判が今日ほど急激に起つてくるはずはないと思うのですよ、だから私は、原子力委員会そのもの欠陥があるか、法律的な欠陥があるか、あるいはこの機構的な欠陥があるか、事務的な欠陥があるか、どういう欠陥があるか知らぬけれども、原子力委員会そのもの欠陥があるか、でなければ、宇田長官がやつておられる科学技術庁の中に、運営その他について私は欠陥があるかという、行き過ぎがある、行き足らずがある、何かそういう欠陥があるに違いないと思うのです。その点をはっきりしないで、その点は今のままにしておいて、そして新しく、何か政策権限のはっきりしない懇談会というようなものを作られても、かえつて私は、ますます日本原子力政策というものは混乱してくるのではないか、こういう疑問を持つのです。だから、先ほどもお尋ねしましたように、原子力委員会というもののあり方というものはこのままでいいのか、今日これだけ批判を受けておるにもかかわらず、このままでほおつておかれるのか、それとも原子力委員会というものを、今後大臣構想として、どいうふうにしたらいいとお考えになるか、その点についての具体的な方針をお尋ねしておる。これは、新聞なんかにもいろいろ推測的な記事が出ておりますけれども、しかし、これは非常に重要な問題で、特に今後は、アメリカあるいはイギリス・カナダ、大臣構想によれば、ソ連圏等に至るまで動力協定を結ぶというような構想を持っておられるようです。そうなると、なおさらこれは、この点のタテリをはっきりしておかないと、非常に今後混乱してくるのではないかという懸念を持たざるを得ない。原子力委員会をどうされる、今のままでいいのかどうかということ、これは、率直な一つ大臣のお考えを承わつておきたいと思います。
  10. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 委員会意義は、やはり民主自主公開ということのために、こういうような機構を必要としたものと私は思います。それで、委員会性格としては、国家公安委員会のように、直接、委員会決定執行責任の持てるような行政委員会であれば、これは委員会執行機関がついておりますから、その委員会としては、一つ行政体そのものであるわけでありますが、この原子力委員会に関する限りは、その形をとらずに、行政体決定それ自身行政執行能力を持たない特別な委員会である。ここに一つ法律上――同じ委員会であつても、行政執行体としては特別な形の性格を持つたものである、こういうふうに私は考えます。そして、総理がその決定を尊重するという法律内容になっております。従って、総理府ブレーンで、これは総理府ブレーンとして、民主的運営を期待する特殊機関である。そして、それの決定は、総理が尊重しながら、総理府科学技術庁を通じて執行せしむる、行政執行はそういうふうな形態をとつておるのであります。こういう形になっております。非常に運営がうまくいけば、これは民主公開自主原則を具体的な行政面に盛るためには、おもしろいといってはおかしいのですが、運営が妙を得れば、非常な能力を発揮するものと、こう考えております。また、この国家公安委員会のような形に持っていかないということの意義は非常にそこに生まれておる、こういうふうに思っております。ただ、行政長官としての、科学技術庁長官として、総理ブレーンとして原子力委員会にも関係しておる、こういうことになりますから、そこで、それをうまくはかつていくのにはどうしたらいいか、委員会の中に懇談会を設けるということは、今私は考えておりません。行政長官として、立法府行政府とそして委員会という特殊性格と、この三つのものを、だんだんと具体的に環境行政措置を、決定を必要とする段階が大きくなってきますが、そういう意味では、行政長官としてその間のあっせんをうまくしなくちやならない、法律の期待しているように努力しなければならない、こういうふうに思っております。それで、法律の立て方としては、非常に特殊なこれは立て方である。運営が非常にむずかしいが、運営をうまくやれば、これはよくいくもんだと思っております。ただ、衆議院の中で合同委員会というのがありますけれども、合同委員会というのは、これは私的なものであつて、公的なものでありませんから、それにわれわれ原子力委員会または民間団体を参加せしめて、そして一つの特別な形態を、立法府合同で新しい別のコンミユニテイを作るというふうなことは全然考えておりません。立法府立法府行政府行政府原子力委員会原子力委員会として、それぞれの本来の性格を十分に発揮するように、そしてそれを推進していくのには、行政長官としては、特に立法府委員会との間を円満にうまく理解が深まるようにいたしたい。それに、私の責任において懇談会を設けて、そして原子力行政についての立法措置は、思いつきだけではいけませんから、実際運営をしてみて、どういうふうに立法措置を将来考えるのが必要であるかということの準備のためにも、懇談の機会を持つことが必要だと思います。ただいまの法律で、非常に運営が困難であるとは思っておりません。ただ、できまして一年そこそこの経過にかんがみまして、これを簡単にいじらない方がいい。簡単にこれを改廃をするというふうなことに持っていかずに、やはり一種の慣習的な環境の上に円満な立法措置考える、あるいは運営の円満をはかつていくのがよろしいのじゃないか、こういうふうに思っております。
  11. 秋山長造

    秋山長造君 それでは、もう少し端的にお伺いしますが、そうすると、大臣は、原子力委員会あり方というものは、これはもう今のままでやっていく、そして別に、当面これを法律改正して強化をする、あるいは機構を改正してどうするとか、あるいは事務局をもっと整理するとかいうようなお考えは全然ないわけですね。
  12. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 法律を改廃して、取りあえずどういうふうに処置をとるかという考えはありません。ただ運営の方法として、原子力局は、法律にも明示してありますように、庶務については、原子力委員会庶務問題を整理しなければなりません責任があります。庶務とは何ぞやということになって参りますが、庶務というと、企画といい、調査といい、そういうものが当然含まれてくるところの広義の庶務と思っております。従って、それに必要な人員はあらかじめ予算でもって準備してある。また、それにかかっておるものを原子力局の内部に置いて特に原子力委員会基本計画とか、あるいは調査決定等に必要な庶務を掌理させるために、何人かを特別にその専門に使う、そういう内部措置はとつております。それをあらためて立法措置をもって、原子力委員会に局を設けて、ただいまから別の機構にこれを整理し直さなければならぬとは、考えておりません。
  13. 秋山長造

    秋山長造君 そういたしますと、大臣としては、まだ一年そこそこしかたつていないものだから、今これを改組するとか何とかいうことよりも、やはり現在のままの形で、あくまでこれを軌道に乗せていく、尊重し、また、育成という言葉はちょっと適当でないが、とにかく育成していく、あくまで原子力委員会というものをもって日本原子力計画のやはり最高責任を持つた機関として推進していく、こういうお考えと承わつてよろしゅうございますか。
  14. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) そうでございます。
  15. 秋山長造

    秋山長造君 大臣がそういうようなお考えで、原子力委員会運営に当つておられるにかかわらず、最初から私が繰り返してお尋ねしているように、原子力委員会というものについて、いろいろな疑問なり批判なりが出ているということになりますと、私はやはり、大臣がそういうように原子力委員会というものをあくまで中心にして、そうしてこれを、尊重しながらやっていくとおつしやりながら、どうも実際大臣がやられることは、原子力委員会委員長としてふさわしくないようなことが間々あるのじゃないか。たとえば、これはまあ新聞で承知するところによると、この二月一日に、いわゆる字田構想という、三百万キロワツト原子力発電というようなことがいきなりぱつと報道される。で、原子力委員会あたりではびつくりして、それはどういうわけだということで、あとから説明を聞かなければならぬというようなこと、あるいはまた、せんだつての三月二十九日の閣議で、大臣がソ連その他との間にも原子力協定を結ぶ用意があるというようなことをおっしゃった。しかも、そういうことについても、事前原子力委員会で何らの御相談がなくて、あとから原子力委員会の方へ釈明をされて、事後承諾を求められたというようなことを新聞でこれは拝見しているんです。そういうようなことがちよいちよいあるものですからどうもただいまの国務大臣の、原子力委員会はあくまで中心にし、これを尊重してやっていくんだということとは、実際やつておられることが多少食い違う場合があったのじゃないか。これは、昨年の原子力委員会の発足早々にも、前の正力国務大臣についてもあったことなんです。われわれこの委員会でこの法案についてお尋ねするときには、ただいま宇田国務大臣がおっしゃるのと同じように、あくまでこれはもうこの委員会中心主義でやっていくんだ、委員長だからといって、勝手なことは絶対に言つたりやつたりはしないんだということを言っておられながら、この法律が通つてしまうと、じきに間もなく、今度は五カ年以内に原子力発電をやるんだとか、アメリカと動力協定を結ぶんだとかいういわゆる正力構想を汽車の中で発表されて、そうして、発足早々の原子力委員会で大問題になって、あわててまたそれを取り消されるというようなことがあったんですがね。私は、やはりこういうことが原子力委員長をやつておられる正力さんや、宇田さんにあるから、そういうことが、そもそも原子力委員会というもののかなえの軽重を問われるようなことになる私は一つの大きい原因一じゃないかと思う。その点はどうお考えになりますか。
  16. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 原子力委員会運営につきましては、実は法律上にも欠点があると私は思っております。というのは、原子力委員会は三人いなかったら会議は開くことができないし、何も決定はできないということになっておるのです。従って、ただいまお話がありました三月二十九日に私が発言をしたことが非常に問題になつたというのは、事前に打ち合せができなかったのです。それは委員が旅行して、いなかった。従って委員会が開けない、委員会が開けないのですが、どうしても委員会にかけなければならぬ事項がありました。というのは、国連憲章関係の、国際連合の原子力関係機構及び国連の原子力機関の中で決定を必要としておりますところの国連のアグリーメントの原案が外務委員会にかかる、それを閣議で決定しなければならぬという案件が起つたわけです。その中に、国連に参加しておる国国が当然原子力に関するところのいろいろの取りきめ、燃料の販売あるいは燃料の分配、いろいろの重要な案件がその中に含まれております。その中に各国の名前が列記されてあります。列記されてある中には、国連に加盟しておるところのソ連もその中にあります。従って、日本としては国連の原子力機構を通じて、原子力の世界的なつながりを持つということになりますと、その中に列記されておるところの各国との関係を無視するということはできない前提に立たなければならない。従って国連の原子力関係の事項を閣議で決定し、委員会審議願うということになりますると、自分たちとしては、原子力委員会の中でこの点はどうか、この点はどうかということをもう一ぺん念を押したいことがあります。そういうわけで、原子力委員会を急に開いてもらいたいと思ったところが、ちようど折から常任の委員諸君がいない。こういうことであつて、そうして四月の四日ごろまで帰れないというような特殊事情があったわけです。従って緊急に話の十分できないままに自分考え方決定をし、そして条約関係のことでありますから、国会の日程等もありまして、それで問題点についてこういうふうに考えるのだということは自分で、あらかじめ話はしてありましたけれども、あらためて話す機会を次の原子力委員会の開かれる時期まで延ばして、あとから了解を求めるという応急処置はとりました。そういうようなわけで、三人でなければ原子力委員会が開催できない、ものの決定ができない、こういう前提が一つありましたから、それに対する手続を今後どうするかということは、なおきめておかなければならぬ。こういうふうに思う点があるのです。  それから、もう一つただいまお話がありました三百万キロワツトの問題は、これは新しい経済計画を立てる場合の問題であつて日本のエネルギーとしては昭和三十五年末に八百四十万キロワツトくらいの送電を必要とする。その中で火力が六〇%を占めておる。火力が六〇%占めるということは、石油を買わなければならぬ、石炭を掘らなければならぬ、消耗せなければならぬ、そういうものはなるべく国の実力として別に温存をしておきたいものであるから、それにかわるものとして、少くとも半分ぐらいのものは原子力でもってまかなつたらよろしいのじゃないか。経済計画としてはそういうものを当然織り込んでいきたいのだが、しかし、それだけのことをやるためには、石川ミツシヨンの報告にもあるように、第二回目のミツシヨンを出して、そして日本としてはほんとうに原子力発電に必要な、どういう形態のものをいつどれくらいの輸入が可能であるかということを、決定あるいは調査を完了しなければ、何とも言えないであろう。特に地震であるとかそういうような特殊な事情をはらんでおる日本としては、なかなか困難なことがある。しかし経済企画庁の経済五カ年計画の中で見てみると、エネルギーとしては火力発電の半分ぐらいのものを、この原子力エネルギーでまかなつたら、港湾政策にしても、輸送政策あるいは船舶の建造政策からいっても、非常にまた新しい力が日本で生まれるであろう。そういう話は、経済企画庁で記表会見のときに、フアイブ・イアー・プランの中で最もわれわれが原子力という大きなエネルギーに期待するものはそういうものである。火力発電の機械をアメリカで買うよりも、原子力の機械を別の機会に買うならば、日本作つて、そうして原子力エネルギーを昭和三十五年末の数字だけを見てみても、この火力発電に期待するものの半分ぐらいのものは、日本の技術と実力でカバーできないだろうか、こういう話はいたしました。それを記者諸君が取り上げまして、宇田構想というので発表はいたしておりますけれども、それと原子力委員会決定執行中のもの、あるいは企画中のものとは、これは問題が別でございます。原子力委員会としては、石川報告を一月十七日に受けまして、それをもとにして第二回目の調査団をイギリスないしアメリカへ送り出そうじゃないか、送り出すときの問題点は地震に対する対策、経済性に対する検討を加える、そういうふうなことでありまして、原子力委員会考えていること、決定していることと経済計画の中のエネルギーの中に原子力エネルギーが将来どれくらいのウエートを持つかということの発表の数字とは、これは一緒に組み合していくべきものではなくて、それは全然別の機会に別の所で発表いたした問題でありますから、それが一緒に組み合せられて二月の一日に発表になつたということであります。これは発表の仕方としては、別の機会に別の場で一つの総合した表現になっているわけでありまして、その点は誤解のないようにしていただきたいと思っております。
  17. 秋山長造

    秋山長造君 ただいま前段で御答弁になりました二十九日の記者会見のとき、閣議の了解を得たと発表をされ、そうしてそれをあとからこの原子力委員会で事後承認をされた、これは各委員が出張中で間に合わなかったから、やむを得なかったと、こうおっしゃるけれども、それほど今報告された内容を拝見しますと、四、五日のことが待てないというような内容のようにも思えない。しかも大臣はそれは一旦はそう言明されながら、今月の二日の閣議では、前回の閣議で了解を得たということはちょっと言い過ぎだったと言って、取り消されているわけでしよう。それから原子力局から、科学技術庁の次長から外務省とか大蔵省の次官にあてて、閣議の了承を得たのだとおっしゃった内容を公文書で連絡をされて、それもまたあとから取り消すというような、きわめてぶざまなことになって、そうして不在だった委員の事後了承ということも、一旦は事後了承してもらいながら、それもまた取り消すというような形になつたように新聞では拝見しておるのです。こういうところに、これは緊急の場合とは言いながら、やつぱりこの原子力委員会というものに対する、これは大臣のお考え方というものが、私は少し慎重さを欠いておつたのじゃないかということがまず一つ。  それから第二点として、どうもこの原子力委員会設置法法律上の欠陥があるということをはっきりおっしゃったのですが、私は先ほどそういうことも含めて、原子力委員会あり方というものについて再検討をする必要はないか、また、この法律についてももう少し再検討を加えてしかるべきじゃないかということを質問した。ところがそれに対して大臣は、いやそういう気持はない、今のままでよろしい、こう言ってきわめて肯定的な答弁をされながら、大臣の勝手のいいときには、どうも今のこの法律には欠陥があるんだ、こういうような矛盾したことを答弁されるということは、はなはだ私はどうも納得できないのですがね。どうですか、この原子力委員会あり方というものについて、どうお考えになりますか。
  18. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 原子力委員会あり方そのもの民主公開原則に基くものであつて、それは私は現在の法律に非常に欠陥があるとは思っておりません。ただ、五人の中で三人が出席しなければ開けない、こういう決定基本条件があります。基本条件が五人の中で三人いなければ決定できないということは、民主公開原則からいって、これは当然そうなるだろうと思いますけれども、ただ、それが委員が旅行等を行なっておる場合に、そのあとで、たとえば国会開会中において、外国から条約等の問題について判断を急に求めてこられた場合に、旅行者があった場合に、それを委員会で諮つて、三人いなければ民主公開原則から、これを決定できないという条件があります。そういうときに三人の決定を待つ時期をあとにして、われわれが事後報告で承認を求めなければならぬ事態があった、それは法律建前が悪いとは思いません。法律建前が悪いとは思いませんが、ただそういう場合に、それをすみやかに決定できるような方法はどういうふうにすればいいだろうか、それは考えなければならぬ、こう思っております。そういうことでございます。それが一つ。  それからもう一つは、閣議の問題は、科学技術庁長官としては国連憲章等について、法律を国会に提出するということでありましたから、その中に列記されているところの各国の名前を見てみると、ソビエトや何かも含まれております。従って国連憲章等につきまして、国連の原子力機構等につき、また国連の原子力機構の中でいろいろの取りきめをするむずかしい内容がたくさんありましたが、それを果してこういうことを実行に移して、あの条約を執行していく場合に、各国とよく話し合いをしなければならない問題がたくさん含まれておる。そういう場合に、われわれは外務省を通じて米、英、カナダあるいはその他の国、特に共産圏の各国とどういうふうにこれは話をするか、接触をしていくかということは、外務省を通じて十分にわれわれは報告を求めたいものであります。そうして原子力委員会ないし国連憲章の審議に入るときに、政府としてあるいは科学技術庁長官として、原子力委員長としては、十分な自分たちは情報を待ち、そうして原案についての判断を的確にする、情勢の変化に応じて変つて参ることがありますから、そういう点等については、もちろんソビエトとも出先のものを通じて話を――サウソデイングというのですか、打診というのですか、そういうことをする必要がめる。それで、そういうことについては、外務省を通じて、それをどういうふうにやっていくかということの判断を求めたらどうだろう、こういうことです。それは閣議の了解事項ではなくて、閣議の報告事項といいますか、そういうことを申したわけであります。それについて外務省の判断も聞かしてほしいということを言つたわけであります。そうして、その次の閣議のときに、外務省としては、こういう問題についてはこう考える、こういう問題についてはこう考える、こういう問題についてはこう考えるというふうに、詳細のことは別といたしまして、そういうような報告がありまして、その一部分を官房長官を通じて発表する、こういうふうになつたわけでございます。科学技術庁長官として、原子力委員会食員長としての希望を閣議で述べてあります。それに対して、外務省はどう考えるのだということをあわせて要求いたしてありましたが、次の機会に外務省はこう考える、この問題はこうしてほしい、こういうことについての意見がありまして、それをあらためて官房長官から発表する、こういうわけでございまして、その間にこっちが非常に意見の食い違いがあったとか、閣議で了解しておったものがひっなり返つたとか、そういう意味のものではありません。
  19. 秋山長造

    秋山長造君 その閣議のいきさつについては、私別にそれ以上は根掘り葉掘りお聞きしたいとも思いませんけれども、私のお尋ねしたいのは、大臣の談話の中に、ソ連圏を含む各国とも原子力協定の締結の可能性について打診する、こういうようなことが含まれておる。そのこと自体は私は悪いと言っておるのじゃない。私はけつこうだと思うのです。これは民主自主公開という三原則から考えましても、特定の一国とだけを相手にしていくということは非常にこの三原則から見ておもしろくない。だからいろいろな国、いろいろな立場の国と同じように協定を結んでいく、あるいは何らかの接触を保つていかれるという構想は、私はけつこうだと思うのです。ただしかし、いずれにしてもこれはやはり日本原子力政策の上からいって、きわめて重大な国策の決定なんですから、だから、これがいかに科学技術庁長官としての一つのまあ考え方というものをただ発表したにすぎないにしても、やはり同時に原子力委員会委員長という重大な責任を持っておられるわけですから、事の性質上、やはり原子力委員会というものがそのときすぐ開けなければ、これは大体毎週一回は定例的におやりこなるということは、施行令でもうたつてある。だからそのときまで、ほんのちょっとの間ですから、お待ちになって、そうしてこの原子力委員会で十分検討された上で、権威を持つたやはり御発言をなさるということの方が、私は大臣の御発言としても適当だろうと思うし、それからまた、原子力委員会というものの存在をやはり重からしめるゆえんじゃないかということを申し上げておるわけです。  それから次に移りますが、原子力委員の構成メンバーであった湯川博士がやめられてからもう相当時日がたつておる。しかも今日は動力炉を輸入するかどうかというような根本方針についても各方面で論議が沸いておるときなんです。だからどうしても原子力委員会としては、この動力炉の問題等について、早くこれはもう基本的なやはり方針を確定される必要があると思うのです。従って、原子力委員会としては、今は非常に重大な私はときだと思う。そういうきわめて重大なときに、いろいろな意味で最も有力な委員であった湯川博士がやめられて、そうしてあとがそのままにじんぜん日を過ごして、いまだにこの後任の目鼻がつかないということは、これはどういう事情でそうなっておるのか、大臣としてこの後任者の決定ということについて、何らかの対策を持っておられるのかどうか、それからまた、巷間聞くところによると、湯川博士がやめられて、あと後任者の何か推薦ということも非公式にはあったやに聞いておるのです。また、大臣の方でも、それとはまた別なこまを持っておられるやにも聞いておるのですが、これらの点についてお伺いしたい。
  20. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 湯川博士が退かれたあと、どういうふうにするかということは、いろいろの角度から、新しい国際関係、また国内関係がありまして、特にわれわれとしては常任委員として勤務してもらうのがいいじゃないかという意見がかなりあります。従って、そういうふうな特殊な条件をつけていきますると、必ずしも、みんなそれぞれの任務を持っている人であるし、またそれぞれの経過中であつて、それに応じられないという環境にある人もあるし、そういうわけで、常任委員を強く希望するか、あるいは強く希望しないで、非常動のままで勤務をし、委員に参加してもらうか、こういうふうなこともからんでおりますから、そういう意味で、適任者を求めるということは、少しワクが狭まつたこともあります。従って、なるべく早く決定いたしたいとは存じておりますけれども、そういう意味で、もう少し話し合いを進めなければならぬと思います。湯川博士からも推薦を内々された方もあります。総理のところへ推薦してこられたと思いますが、それはそれで、御意見として承わつてあります。しかし、従来の経緯にかんがみまして、学術会議でありますとか、あるいは原子力に関する産業会議でありますとか、あるいはこれは当然国会に承認を求めなければならない、国会に諮らなければならない事項でありますから、従って、立法府の方へもよく手続をとつておかなければならない、そういうことがありまして、直ちに今これを国会にかけるというところまではいっておりません。
  21. 秋山長造

    秋山長造君 湯川博士は、最高度の意味においての学会代表という形で入っておられたと思うのですが、後任についても、やはり同じような角度からの人選をなさるおつもりですかどうですか。
  22. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 湯川博士の後任でありますから、学界から必ずとらなければならない、そういうようなことかどうか。それは、私はまだ委員諸君にもその点は諮つておりません。委員会諸君にもよくその点は確かめておかなければならないと思っております。
  23. 秋山長造

    秋山長造君 この原子力委員の構成を見た場合に、四人のうち湯川博士も入れれば、三人までは学者だったわけですね。有沢さんは労働界代表ということになっているけれども、やはり一般世間は学者と見ていますから、そうすると、藤岡さんと湯川さんと有沢さんと三人が学界、財界からは石川さんが入っておられるわけです。私は、この割り振りというのは、今日までの原子力委員会あり方、あるいは性格というものを決定づける非常にこれは重大な割り振りだったと思う。ところが、原子力委員会は、最初の出発当初は、あくまで基礎研究を手がたくやり、さらに技術者の養成、専門家の養成ということを手がたくやつて、そして地固めが十分できた上において、この応用面、さらにまた、営業面というところへ漸進的に出発をしていかなければいかぬ、そういう構想で出発したと思う。そういう構想で出発されたのには、原子力委員の数、顔ぶれ、割り振りというものが非常に大きくあずかつておつたと思う。ところがその後、正力国務大臣も、大臣自身が相当たくましい企業家出身でもある。それからまた、今度の宇田国務大臣にしても、やはりこれは学者ではない、有力な企業家の一人ですね。しかも、経済界の圧力等もずいぶん加わつた関係で、だんだんこういう最初の、段階を追うて日本原子力の開発をやつていこうという構想がだんだんずれてきて、そうして、もう基礎的なことをやつてつたのでは、これは間尺に合わないので、そんなものは適当に飛び越して、いきなり応用面、あるいは営業面に飛び込んでしまおうというような空気が非常に強いわけなんです。ちようどそういうやさきに、湯川博士のような人がやめられ、そうして後任を決定するということになってきたわけですから、これは後任者の人選いかんによっては、原子力委員会そのものあり方なり、行き方というものも、相当私は、どう言いますか、ゆがめられる、私から考えれば、ゆがめられるおそれがあると思う。同時にまた、日本原子力開発計画、あるいは科学技術の基礎固めというような点から見ても、非常に不健全な形が出てくるおそれがあるのではないかと思うのです。それだけに、やつぱり湯川博士の後任を決定されるというときには、特に大臣として慎重にお考えになっていただきたい。そして、いやしくも、財界方面からの圧力に屈するというようなことの絶対にないようにしていただきたいと思うのですが、その点はどうお考えになるか。
  24. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 原子力に関する問題は、どうしても技術的に解決しなければいかぬ問題が多いのですから、当然技術関係の者がこれに参加をしていかなければならぬものと、こういうふうに思っております。ただ、技術関係諸君を参加さす場合に、簡単に申しますと、物理関係の者がいいのか、化学関係がいいのか、あるいは工学関係がいいのか、あるいは地質学関係の者がいいのか、いろいろの角度から学界の期待もあるように思うわけです。それで、湯川博士あるいは藤岡博士はそれぞれ物理学界の権威であるのですが、物理学界だけでなしに、ほかの学界の権威者をも考えてはどうかということもあるし、学界それ自身からも言われておる点もあります。また、地区的に申しまして、関東だけでなしに、関西方面からの有力な権威のある者を求めて、そうして日本全国を広くながめる考え方も入れておいたらどうかという御意見もあります。いろいろの立場々々での主張、御意見があります。従って、私といたしましては、ただいま申されたような、財界の圧力によってこの人事を歪曲するということになってはいかぬ、私はそれは当然と思います。思いますが、ただ、どういう人事を期待するかということについて、各方面の御意見を承わつてみると、それぞれの違う角度の御意見があるように思われますから、その点については、なおよく考えてみたい。こういうふうに思っております。
  25. 秋山長造

    秋山長造君 もうちょっと質問さしていただきたいのですが、大体いつごろまでに御決定になりますか。
  26. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) なるべく早くいたしたいと考えておりますが、簡単に申すと学術会議の茅きんが外国に行って、今、日本にいないのです。十五、六日ころに帰られるということを聞いております。従って、われわれはできるだけの団体の責任者に話をするということはしなければならぬと思っておりますが、そういうこととからみ合せまして、いつ決定するということは、ちょっと申し上げかねると思います。
  27. 秋山長造

    秋山長造君 そういたしますと、やはり事が事だけに学術会議の茅議長あたりの御意見は特に尊重して人選をしたい。こういうお考えですか。
  28. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 当然そういうことは重要な要素の一つ考えております。
  29. 秋山長造

    秋山長造君 それから原子力研究所のことでちょっとお尋ねしたいのですが、最初この基本法設置法ができたとき、同時に原子力研究所、あるいは日本燃料公社、こういうものができたわけですね。この原子力研究所ができ、また燃料公社ができたゆえんは、やはり先ほど申し上げましたように、日本原子力の開発は、まず基礎研究を十分やる。その上に専門家なりあるいは技術者というものの養成を十分にやつて、しかる後にこの実用化、動力化という段階を踏んでいこうということで、その第一段階の基礎研究あるいはまた日本の力で自主的な基礎研究、あるいは自主的な技術者、専門家の養成ということに特に重点を置くという趣旨から、原子力研究所、あるいは日本燃料公社というものが私はできたと思うのです。ところが先般の参議院の予算委員会の公聴会で原子力研究所の安川理事長が公述人に出られて、その原子力の問題についていろいろ発言をされたのを私聞いたのですが、安川理事長の発言されたところによりますと、どうも政府というか宇田国務大臣というか知らぬが、とにかく最近の原子力問題についての動きは、最初、段階を踏んで手固くやるというやり方が、途中からぼやけてしまつて、もう今度は基礎研究だとか、専門家、技術者の国内自給という考え方はそつとしておいて、そうしていきなり大規模な動力炉を入れて、すぐそれで実用化に飛びつこうというような傾向が非常に強い。そのために、原子力研究所等の存在意義というものがはなはだ怪しくなってきた。しかし、そういうやり方は間違いであつて、まだまだ日本のここ当分の見通しとしては、いきなり動力炉あたりに飛びつく段階ではない。あくまで基礎研究に重点を置き、もっとまじめな、じみちな努力をしなければだめだというような、いろいろ詳しくお話があったのですが、この点は、いわゆる宇田構想等とあれこれ対照してみますと、だいぶ宇田国務大臣なんかのお考えになっていることとは違うようですが、この点はどのようにお考えになりますか。最初の考え方では今の東海村に作つておる原子炉なんかにしても、あくまでこれは国産原子炉を作るための実験炉としてあれを作ろうということで始めたことなんです。ところが、その第一号の原子炉がまだできもしない前に、もうそこらを飛び越してしまつて、いきなり今度は大規模な動力炉を入れようということが業界でもずいぶん問題になり、またイギリスやアメリカからも日本へさんざん売り込み競争をやる。そうしてそれに宇田国務大臣のような方までが、どうも外部から見ておると、いきなり飛びついて行かれかねぬような格好に見えるのですが、国産炉の築造に当面全力をあげようという当初の方針は、今日はくずれたのではないかと思うのですが。国産炉の築造というような問題、あるいはウラン鉱をあつちこっち掘つておりますね。ウラン鉱の冶金技術というようなことについて、どの程度原子力委員会、あるいは政府として、力を入れ、努力をされておるのですか。それらの点お伺いしたい。
  30. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 原子力研究所の体制を従前の計画よりももっと変つたものにしよう、そういうことは別に考えておるわけではありません。また、燃料公社に対する当初の期待も、われわれはちつとも後退せしめるという考えはありませんし、現に予算は国会で承認をされましたから、それの執行に入っておりますので、その点につきまして、予算を取り巻いて当初の計画を変更しようなんということは全然ありませんから……。期待された通りの、国会の承認を経ました範囲での国費の使用については、その通りの計画をもって推進をすることに変りはありません。ただ、原子力の平和利用に関する発電関係はもちろんでありますけれども、アイソトープその他の重要な国の経済の中における要請というものが強いのと、国際環境がスピード・アツプされて需要に合うような傾向が顕著になって参っております。それで発電用の炉をどうするということだけでなくて、むしろ原子力関係のいろいろのアイソトープその他を、産業面あるいは生活面、国民経済全般に導入しようという空気が非常に盛り上ってきておりまして、それに付随するところの民間の団体の研究あるいは研究体制、これはもう最近は非常な充実を示してきておるわけでありまして、原子力研究所が持っておりますあるいは計画しておったことより以上に、民間の専門の部面では、企画が伸びておる面がかなりたくさんあります。従って、そういう面について、むしろ専門的なある面においては、原子力研究所の期待しておったよりもずっと伸びのくるような状況にあります。そういう点につきましては、研究所はもっと積極的に拡充にかからなければ、立ちおくれるのじゃないかという面があります。また、発電関係にいたしましても、国産炉を作る、それは当然国産炉のための原子力研究所は計画をもって動くのが適当と思います。ただ、火力発電でもわれわれが長年経験したように、火力発電だけの新鋭火力発電装置を見ましても、十分日本でも国産はできますが、なおかつアメリカからああいうような炉をどんどん買い入れなければならない。火力発電の機械を見てもそういうようなものでありまして、日進月歩しておるところの技術、特に冶金その他の技術を考え合せますと、火力発電設備でも最近日本でできるにかかわらず、外国と技術提携をしながらまた新鋭火力発電機械を入れておる。それならば原子力の発電の場合はどうであるかというと、おそらく同じような傾向を将来ともにとらざるを得ないのじゃないか。原子力発電のみは国産でいけ、重油ないしは石炭の新鋭火力発電の設備は、国産でなくても差しつかえない、世界の一番進んだものを買うのがよろしい、こういうような考え方とにらみ合せてみまして、われわれは一つの新しいリアクターについての考え方は、やはり火力発電に対する設備を見てみましても、もっと広い幅の考え方を持たさるを得ないことも起るのじゃないか。しかし、そういうことが国産炉の進歩、発展、企画というものを阻害するものであつてはいけない。国の政策としては、あくまでも国産炉第一主義でいくべきである、こう考えております。
  31. 秋山長造

    秋山長造君 その点は特に業界は動力炉の輸入ということに、いわば悪急ぎをされておる傾向が強いと思うのです。安川さんが予算委員会の公聴会でおっしゃった中にも、一体今すぐ動力炉を入れたところで、これを扱う技術者がいない。だから結局動力炉を入れれば、それと一緒に外国の技術者を入れて、それまかせるということになってしまう。なるほどその方が手つとり早いことにはなるかもしれぬけれども、それではいつまでたつて日本原子力ということにはならない。また、日本の技術水準というものは、いつまでたつても上らない。だから、やはりこの段階は着実に踏んでいかなければならぬということを非常に強調されておりましたが、私はしろうとながら、それが当然だと思う。最初、原子力委員会が出発したときの約束もそうだった。正力さんがこの委員会へ出てこられて、その答弁もそういう答弁を繰り返しなさつておつたと思います。この点は、私は政府の方でもよほど考えていただかないと、これはずいぶん火力発電なんかでも日本にもあるけれども、外国からも入れているじゃないかというお話もありましたけれども、これは火力発電に限らず、オートメーシヨンでも何でも、技術の革新といって、やかましく言っているのは、ほとんど外国から入れているのですね。ちつとも日本の業界自体が自分で金をつぎ込み、自分で苦労して技術の革新をやろうとはしないで、何でもかんでも外国ででき上つたものをすぽつと入れてやすきにつくという傾向が非常に強い。ですから、雇用問題でも、大臣だいぶ予算委員会等で質問を受けておられましたように、本来いえば、技術の革新をやつたら必ずしも雇用がそれによって減るというものじゃない。むしろふえる面が相当期待されるはずなんですけれども、日本の場合は、もう外国ででき上つたものばかりすぐすぽつと入れて、それに飛びつくものですから、ちつとも、技術を革新しても、雇用がふえることにならないで、減る面、マイナスの面ばかりが食つついてきておる。そういう点はよほど事の順序があるので、長官企画庁の長官もやつておられ、また技術庁の長官原子力委員会委員長もやつておられる。だから、これはよほど総合的にこういう点は考えてやつてもらわないと、これは非常な禍根を残すと思う。おそらく私は今度国会へ原子炉期成法案、これをお出しになるということを聞いておるのですが、このねらいなんかも、やはり今のようなことにあるいは役立つ面があるのではないかとも思うのですが、それらの点について、長官方針を伺いたいし、それからこの期成法案というのは、いつお出しになるのかということもついでにお伺いしておきたい。
  32. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 期成法案は、ごらん願えばよくわかるのですが、ただいま申されたようなことは、当然それに織り込まれてあります。そうして期成法案につきましては、これの関係省が非常に関係が深い面が多いのでありまして、ただいま法制局へ回って、その間の各省の希望を盛りながら、行政を一本の行政に持っていくように立法をしておりまして、それの出るのが、来週の終りごろに国会に出せる運びとなっております。
  33. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  34. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記をつけて。
  35. 秋山長造

    秋山長造君 それじや、もうきわめて端的にお伺いしますが、大臣、国会が済みましたら、アメリカヘこの原子力の問題をひつさげて行かれるということを聞いておるのですが、大体この目的は、先般来問題になっておる動力協定ですね、動力協定をやはり結ぶという目的で渡米なさるんでしょうか、その点……。
  36. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 実はこの問題ではアメリカで五月の十三日から日米の原子力会議があります。それから東南アジアからも人を迎えるのですが、その意味で向うから、今度は終つたあとで向うのAECとそれから民間の団体、そこから招待状を受けております。人をこっちへ呼んで来てもらつて、そうしてこっちは向うに呼ばれたと、こういうことになっておりまして、自身は向うのAECの、あるいは民間の団体の求めに応じて……。向うからこっちへ来てもらつたのですから、こっちとしては、そういう向うの招待に応じたい、こういうふうに考えております。そのときに、動力協定の問題を積極的に突つ込んでやれるだけの日数があるかどうか、またそこまでやらなければならぬものかどうか、私そこまで考えておりません。
  37. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、向うの原子力事情を視察されるというぐらいなことで、特定の目的を持って行かれるのではないというように了承してよろしゅうございますか。
  38. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) さようでございます。
  39. 秋山長造

    秋山長造君 ただ、先般来のあの実験協定の改訂交渉ですね、あれのいきさつをずっと考えておりますと、結局アメリカ側としては、やはり一日も早く動力協定を結びたい、こういう気持のようにうかがえるのですね。そこで、大臣がアメリカへ行かれるというと、これはアメリカ側としては願つてもないチャンスということに私はなるだろうと思うのですがね。特に現在は原子力委員会でも、イギリスから動力炉を入れるというような話がかなり進んでおるように承わつておるのですが、そうなりますと、アメリカもこれに負けてはいかぬという気持が起つてくるのも当然でしようし、非常にこれは急いでいるというか、あせつているのじゃないかと思うのです。そこで、この際は、この実験協定の交渉も、大臣は一応これは打ち切つて、そうして細目協定の方へ切りかえられたということですが、この細目協定に切りかえるということを、アメリカ側が了承されたということは、その次の段階として、一気に動力協定へ持っていくという含みがあるのではないかという気がするのです。だから、大臣が行かれた場合、いきなり日本にとつて相当きつい協定を押しつけられるというか、のまされるというようなおそれがあるのじゃないかと思うのですが、そこらの点は一つはっきりしておいていただかないと、これはやはり大臣のアメリカ行きということは、相当私はいろいろな結果が予想されるので、一つそれらの点。それからいつごろアメリカヘおいでになるかということも聞いておきたいのです。  それから、ついでにもう一点お尋ねしたいことは、宇治の研究用原子炉の設置問題ですね、これが御承知のように地元で相当もめて、いまだにきまつておらない。早晩、これは原子力委員会として、いずれかにおきめにならなければならない事態だと思うのです。この問題をどういうように大臣対処されるおつもりであるか。この二点を一つお伺いしたいと思います。
  40. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) アメリカに行きますのは、日米合同会議、それから東南アジアから六十人か参りまするから、そういう諸君を迎えて、東京で将来の原子力に対するいろいろな考え方を打ち合せをし、あるいは会議をする、こういうわけでありますから、外国からお客さんを迎えておいて、その諸君が帰るというときまでは、われわれは礼儀としておらなければならぬと、こういうふうに思っておりますから、国会が終つたあと、何日それにかかるかということにつきましては、はっきりしたスケジユールが決定できない点がありますから、そのあとで向うに招かれていくということになろうかと思います。そういう点につきましては、なお向うとの連絡等もありますから、日程の決定に至っておりません。一方、総理大臣の渡米もありますから、その日程の前後、どつちがいいのかということも従って付随して起りはせぬかということも……。
  41. 秋山長造

    秋山長造君 一緒ということはありませんか。
  42. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 必ずしも緒ではありません。一緒に行けるかどうかわかりません。
  43. 秋山長造

    秋山長造君 一緒に行かれるかもしれませんか。
  44. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) かもしれません。今のところまだ私の日程については、何しろ国際会議を持ちますから、そのお客さんの関係もあつて自分だけの日程をきめてしまうというわけにいかないのです、  それから、宇治の設置の問題は、準備会を文部省で持っておりますから、それを開きまして、その開きました結果、決定に至らないので、もう一つ、まだ宇治以外に設置を期待する場所があるかないかということの話が出たそうであります。そういう点につきまして、準備委員が新たにもう一ぺん最近のうちに会合をする手はずになっている。その準備委員の会合の結果によって、何らかの方向がきまれば、そのきまつた結果を委員会に持ってきたいと思っている。こういうわけで、宇治を特に強硬に主張するという空気でもないようにも聞いております。それは、要するに私の方はまだ決定を、――最後には委員会決定をしなければいけませんけれども、決定以前に、準備に関する委員会は文部省で今やつておりまして、その準備は、ものを決定するという、宇治に決定するということに必ずしもいくという方向にないが、もう一ぺん準備委員会を開いて、そうして何らかの考え原子力委員会決定判断を求めてくる、そういう経過と聞いております。
  45. 秋山長造

    秋山長造君 もう一点。そういたします、大臣が渡米されるということは、時期はともかくとして、総理大臣と一緒に行かれるかもしれないし、あるいは別な時に行かれるかもしれぬが、いずれにしても遠からざるうちに、国会終了後アメリカに行かれるということははっきりしている。そうして、その場合に、この際はちょっと一時お預けにされた原子力実験協定の改訂交渉、あるいはまた動力協定、こういうようなものについて交渉される御意思はない。そうして、もしないとすれば、先般原子力委員会決定されたできるだけ早くアメリカ、イギリス、カナダ等と動力協定を結ぼうという方針は、一体いつごろから実行に移されることになるのか、その二点を最後に伺いたい。
  46. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 時期、方法等につきましては、あげて外務省に判断を求めることにいたしてあります。そうして、またその協定を結ぶにつきましては、当然大蔵省とかその他関係の深い省がありますが、そういう省とも打ち合せをしなければならぬことであります。従って、原子力委員会で判断をする問題として、どの点をどう判断するかということは、相手の国との交渉関係がありますから、まずその基本線については、外務省責任を持って衝に当つてもらいたい、こういうことを申し入れてあります。それは、先般の閣議で了解を得ておつて、そうして外務省がその衝に当つて、そうしてその外務省考える判断を、原子力委員会に通知をする、こういう申し入れを閣議の了解に基いてしてあります。従って、私が外国へ行って、自分動力協定に関する交渉を行うということは全然考えておりません。
  47. 秋山長造

    秋山長造君 ない。
  48. 宇田耕一

    国務大臣宇田耕一君) 今は考えておりません。
  49. 亀田得治

    委員君長(亀田得治君) 他に御質疑がなければ、質疑は尽きたものと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言がなければ、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  50. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 全会一致でございます。よって、本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。   なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 御異議ないと認めます。よって、きょう決定いたしました。それから、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は、順次御署名を願います。   多数意見者署名    平島 敏夫  松村 秀逸    松岡 平市  伊藤 顕道    大谷藤之助  苫米地義三    泉山 三六  上原 正吉    秋山 長造  竹下 豐次
  52. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは委員会は暫時休憩いたします。午後一時半から再開いたします。    午後零時三十二分休憩    ―――――・―――――     午後二時十九分開会
  53. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  国家行政組織に関する調査のうち、正倉院裏観光道路許可に関する件を議題に供します。  本件に関し、河井文化財保護委員長から発言の要求がありますので、この際、発言を許可いたします。
  54. 河井彌八

    政府委員(河井彌八君) ただいま議題となっております件につきまして、私は三月の二十八日に当委員会に出席いたしまして、そのときにすでに委員会におきましては、この史跡東大寿旧境内の現状変更、この問題につきまして、すでにそのとき委員会において決定いたしました六つの条件を申し上げて説明をいたしたのであります。そのときにはまだその外部、すなわち日本肥鉄士開発会社に対しましても、あるいは他の関係官庁に対しましても、まだその決定の通知を発するまでに至っておりませんでした。その後、三月の三十日に、前回発表いたしました六つの条件、それを肥鉄土会社に正式に通知をいたしました。それからまた、さらに関係のありまする、宮内庁とか運輸省とか建設省とか奈良県知事、奈良県の教育委員会へそれぞれ通知を発しておきました。で、そのことを申し上げておくのでございます。条件を念のために読みますか、よろしゅうございますか。この間すでに申し上げてはありますが、その通りなんです。
  55. 亀田得治

    委員長亀田得治君) けつこうです。
  56. 河井彌八

    政府委員(河井彌八君) よろしゅうございますか。それだけ申し上げておきます。よろしく……。
  57. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 本件についてて、八木委員から発言の要求があります。八木委員の発言を許可いたします。
  58. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 先日来当委員会審議されておりまた宮内庁所管の正倉院御物の汚染に関連する正倉院裏の観光道路の問題につきまして、次の決議をすることの動議を提出いたしたいと存じます。  まずその決議の案文を朗読いたします。    決  議   内閣委員会は、前後二回に亘り正倉院裏の観光道路の許、認可の経緯につき調査し来つたが、日本肥鉄士開発株式会社の行為は違法、背信と認めざるを得ない。しかも、建設、運輸両省及び文化財保護委員会が許、認可をなすに至るまでの間、相互の間において緊密なる連絡と周到なる用意を欠き、また、右許、認可の際、建設、運輸両省当局より発した通達及び同会社より提出の念証等も正倉院御物保護の上において、遺憾の点あることを、ここに指摘せざるを得ない。  当委員会は、これら各行政庁が、この際、文化財保護の趣旨の認識を新たにし、路線の変更等、正倉院御物保存の上に、万遺憾なきょう、行政運営の面において、十分に配慮されんことを強く要望する。以上であります。  次に、この決議の案文の趣旨弁明をいたしたいと存じます。  まず沿革でありますが、問題の正倉院裏の観光道路は、史跡指定地域内を通つている長さ四キロ、幅五メートルのものでありますが、日本肥鉄士開発株式会社が昭和二十六年末、無免許で開設いたしたものであります。従って、この道路は道路運送法の免許もなく、史跡指定地域内の現状変更の認可も文化財保護委員会からは受けておらず、無断勝手に施行したものであります。  次に、文化財保護委員会の態度について申し上げたいと存じますが、その後昭和二十八年十月に至って、文化財保護委員会が史跡の現状変更に気つきまして、その認可申請の手続をなすべきことを会社に勧告し、自来幾多の経過を経て二十九年六月二十六日、その既設通路と知足院北方の約三百メートルの新設路線をあわせて許可いたしたのであります。その間、文化財保護委員会は、この無断で史跡の現状を変更したことに対しては、何ら文化財保護法の規定による処罰をいたしおらないのであります。  次に運輸、建設両省の態度について申し上げますが、運輸、建設両省は、昭和二十六年以来の無断道路開設を不問に付し、かつ史跡現状変更道路であるにもかかわらず、文化財保護委員会に連絡をせず、昭和二十八年十一月十二日付で会社に対しまして自動車道営業の許可を与えておるのでありますが、その後、昭和二十九年の春に至りまして、日本肥鉄士運搬のほかに観光バスを通ずることから、東大寺との間に係争事件が起きまして、東大寺境内を通れぬことになつたのと、さきの三百メートルの路線は、法隆寺の管長が、正倉院への影響をおそれて、土地売却の契約を解除したため、その使用困難となつたので、正倉院東北のすみに連絡する四百メートルの新道路を三十年三月竣工いたしました。この工事が大部分でき上つた後に、文化財保護委員会へ史跡現状変更の申請がなされたのであります。一方、運輸、建設両省は、この四百メートルの新道路認可についても、再び文化財保護委員会には何らの連絡もいたきなかったのであります。しこうして、この四百メートルの新道路は、当初の路線に比較いたしまして位置が高かったために、より以上害が多いから、この道路のできないことを、さらに強く念願するとは、宮内庁の三井書陵部長が衆議院委員会において陳述いたしたところであります。  次に、違法行為の黙認のことについて申し上げますが、運輸、建設両省は、昭和三十年一月二十九日工事施行の認可をし、完成検査の合格指令書を出したのは同年の十月二十二日でありますが、しかも、この間約九ヵ月間、会社は、供用開始の許しもなくて、無断で観光常業を営んでおり、これは明らかに道路運送法の違反でありますが、これに対しても何らの罰則はとられなかったのであります。さらに道路運送法違反のことは、大仏殿裏へ通じ、その後使用不能となつた路線についても同様であるのであります。  一方、文化財保護委員会の違法処置としては、史跡の現状変更には、特別史跡名勝天然記念物の現状変更等の許可申請書等に関する規則の第二条の五によって、所有地主の承諾を得ることが規定されておるのでありますが、それにもかかわらず、この規定に反して、所有地主の一部承諾なしに許可を与えたのは、会社の利益のために法律の規定を無視したものであつて、まことに遺憾と申すほかはありません。いわんやこの規定を無視して、急いで許可したことが正倉院に悪影響を及ぼすものであることを思えば、その意味を了解するに苦しむものであります。  次に、会社の不誠意の一例を申し上げたいと存じますが、昭和二十九年六月十日、日本肥鉄士開発株式会社より奈良県知事にあてた念書記載の正倉院西北側の道路舗装の問題も、わずかに北側に不完全なる仮舗装がされておるにとどまり、西側道路は何ら舗装の準備に着手せず、その他芝を植える等の条件も誠実に実行されておらないのは遺憾にたえません。さらにただいま委員長から、三月三十日文化財保護委員会が許可を与えたと言われました四百メートルの新道路に対しましても、舗装、散水等の確実な実施を制約しているとのことは、文化財保護委員会の資料に記載されているところでありますが、私が去る四月七日現状について実地調査したところによりましても、四、五分間の間に自動車三台、オートバイニ台が通過して、そのためにもうもうたる塵埃が巻き上がりまして、まことに心を痛めた次第でございます。  以上は、宮内庁、文化財保護委員会、運輸、建設両省の提出資料並びに本委員会及び衆議院委員会における速記を中心として申し上げたのでありますが、文化財保護委員会並びに運輸、建設両省の連絡の不備、周到なる用意の欠如、不法なる既成事実の黙認、罰則の不適用並びに日本肥鉄士開発株式会社の違法背任行為の概要等は、ただいま申し上げた通りでありますが、しかし私は、かかる手続上の問題もさることながら、特に政府並びに文化財保護委員会の注意を喚起いたしたいことは、御承知の通り、昭和二十四年一月二十六日に法隆寺の金堂壁画の火災がわが国朝野を震駭し、これを契機として、翌二十五年に文化財保護法の成立を見たのでありますが、本法の趣旨は、申すまでもなく、遠く祖先から受け継いだ世界に誇るわが民族の文化的遺産を将来長きにわたって子孫に伝え、もって文化国家としての誇りを保ち、世界文化の進歩に貢献せんがためにほかなりません。法隆寺金堂の壁画の事故は、人にたとえれば瀕死の重傷を負つた外科的の疾患とも申すべきものでありますが、正倉院の御物の問題は、短時日にはその影響は現われませんけれども、これが長年月にわたる悪影響は、その局に当る者が十分に注意をなすべき必要のあることは、内科的の慢性の疾患がとかくなおざりにされて、重大な結果を来たすのと同様であると思うのであります。正倉院裏の観光道路のごときは、かつて奈良県教育委員会でも提案され、また、宮内庁においても詮議されたごとく、さらに文化財保護委員会が強く勧告されましたごとく、柳生街道の方に路線の変更でもすれば、現在のほこりと排気ガスの被害は避け得られるのであります。私は、千二百年にわたる世界の至宝とも言うべき正倉院御物の汚染のために、関係当局の深甚なる考慮を要望いたしますとともに、本委員会がこの決議案を満場一致で可決せられんことをお願いする次第であります。
  59. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ただいま八木委員より御提案のありました決議案を、本委員会の決議とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 御異議ないと認めます。よって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  この際、政府側より御発言がありましたら、承わりたいと存じます。
  61. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) ただいまの御決議につきましては、運輸省といたしまして、十分御趣旨に沿いまして、今後文化財保護委員会等との緊密な連絡をはかりますとともに、自動車道事業の免許を行うに際しましては、文化財保護委員会との関係よりいたしまして、その許可を得ることを確認した上に処理いたしたいと思うのであります。今日までの行政事務運営に際しまして、いろいろの手違いのあったことは、まことに遺憾にたえないところであります。特に今般の日本肥鉄士開発株式会社の経営にかかる観光道路につきましては、正倉院御物の保護に万遺憾なきを期するため、会社に厳重な監督、指導をいたして参りたいと思う次第であります。
  62. 南條徳男

    国務大臣(南條徳男君) ただいま御決議になりましたことについての所信を申し上げたいと思います。  国の文化財のきわめて貴重なることは、申すまでもないのでありまして、文化財の保存、保護のために、各省間におきましては、できるだけ緊密なる連絡をとりまして、その処置に当ることは当然なことでございます。で、本決議にありました事例にかんがみましても、今後は十分意を用いまして、この決議文の御趣旨に沿うよう、そうして遺憾のないよう、保護の措置をいたしたいと考える次第でございます。ただいま運輸大臣からも所信の表明がございましたが、全く建設省といたしましても、その趣旨に沿いまして、政府間においては、十分なる、緊密なる連絡をとりまして、今後かかる事態の起らないように処置いたしたいと考えるものであります。
  63. 河井彌八

    政府委員(河井彌八君) ただいま御決議になりましたこれまでのいきさつを考えてみまするというと、はなはだ不行き届きでありまして、遺憾に考えるのでございます。これにつきましては、この前の委員会におきまして、かような官庁間のそご、あるいはまた、委員会と地方教育委員会との関係の問題、これなどをもっと緊密にして行政をやつてゆきたいということを申し述べたのでありますが、ちようどそのことがここに決議の一部として御採用になつたということは、私はまことにありがたく存ずるのであります。  それから、本件につきましては、すでに私がただいま申し述べましたように、あの路線は、これは採用する。しかしながら、それに対しまして、特に正倉院の建物、並びに御物に対する影響をなくするように努めるというつもりで申し上げたのでありますが、ここに路線の変更等とありますが、路線の変更をぜひやれという御趣意ではないと考えまして、私ども最善の努力を尽すことをお誓い申し上げます。かような意味におきまして、ある意味におきましては、私は、この決議がわれわれの文化財委員会のこれまでとつてきたところの無力なることを十分に御指摘下さいまして、そうして強い御支援を賜わつたものと考えて、感謝いたすのであります。かような意味をもちまして、ありがたくこの決議を拝聴いたすのであります。
  64. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  65. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて。    ―――――・―――――
  66. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 次に、法務省設置法の一部を改正する法律案(閣法第六六号)を議題に供します。質疑に入る前に、本案の内容について、政府委員より細部の説明を伺いたいと存じます。
  67. 伊關佑二郎

    政府委員伊關佑二郎君) 私、着任いたしましたばかりでございますので、御了解を得ますれば、次長から御説明いたさせたいと思います。
  68. 下牧武

    説明員(下牧武君) それでは、この法案の順序に従いまして、簡単に御説明申し上げたいと存じます。  本法律案の要点は、提案理由の説明で申し上げました通り、第一は、広島入国管理事務所の新設と、それに伴う松江入国管理事務所の廃止及びその管下の港出張所の管轄がえ、これが中心になっておるのでございます。  それから第二点は、新たに稚内、根室及び酒田、敦賀、この四港に港出張所を新設いたしまするとともに、立川空港及び板付空港、ここに出張所を設ける  それから第三点は、神戸入国管理事務所の管轄に現在ございまする、伊丹市における伊丹空港を大阪の入国管理事務所の管轄に変更するという三つの点でございます。  それで、まず広島の事務所の新設でございまするが、従来は、中国地方を管轄する事務所といたしまして、下関、それから高松及び松江と、この三つ事務所で中国地方を管轄いたしておったのでございます。と申しますのは、最初入管事務所を設置いたします場合に、特に中国地方におきましては、韓国からの密入国、これを防止する見地から、当時は松江の方面におきまして、相当密入国者がございましたので、その方面を押えようというので、松江に一つ事務所を設ける。それから、関門を中心に下関の事務所を設け、また、一部を高松の事務所に管轄させて、その港を管理しておったのでございますが、最近、松江の方面における密入国者というものが非常に減つて参りまして、最初設置いたしまして、密入国者取締りのためにその中心地を松江に置くという設置の理由が非常に薄くなって参りました反面、入管行政が国内治安と非常に密接な関係を持って参りまして、治安対策の一環としていろいろな手を打たなければならない、ところが、中国地方における各関係機関の中心地は、何と申しましても広島にかたまつておりまして、下関の事務所が主としてその連絡に当つておりまするが、下関から広島まで参りますということにつきましては、いろいろ不便もございます。そこで、この際松江の事務所を廃止いたしまして、そのかわりに広島に事務所を置く、そうして関係機関との連絡を緊密にして、統一的な治安対策の一環としての入管行政を行いたい、こういう趣旨でございます。  それから、第二の港出張所の新設でございまするが、稚内、根室、これは、日ソ協定によりまして、海難協定ができております。従来も稚内におきましては、この正規の入国者と申しますか、そういう出入国の実績もごさいましたし、それから根室には、従来実績はございませんけれども、海難協定の結果、海難にあった船員とか、そういう人たちをやはり緊急上陸させるというような手当をいたさなければならない場合も予想されますので、その手当のために、この二港に港出張所を置くことにいたしたわけでございます。  それから、酒田と敦賀でございますが、酒田は、これも、そうたくさんの数字ではございませんが、年間、昨年度におきましては、十月までの統計によりますと、十二隻の船が入って、それから約四百人ぐらいの船員を特例上陸させておるというような実績もございます。それから敦賀市は、過去の実績はあまりございませんが、従来領事館もあった所でございますし、果して敦賀に領事館が置かれるかどうかわかりませんが、日ソ間の往来が盛んにつて参りますと、当然敦賀港というものに船舶の出入が予想されますので、それに対する手当といたしまして、あらかじめ港出張所を設けておきたいという趣旨で、この二港に新設いたしたわけでございます。それから立川空港と板付空港、立川空港の方は、これは主として軍関係の人々が出入することになっておりまするが、たまにはシヴイリアンが参ることもございます。そういう場合に、今は羽田の空港から駐在員を出して、そしてその入国の審査及び出国の審査をいたしておりまするが、駐在員の派遣だけではどうしても不十分でございますので、この際、立川空港も、あらためて出張所として正式に看板を上げてやらしたい、かように考えるわけでございます。それから板付空港は、御存じのように、沖縄航路ができましたので、その関係で税関、検疫等の出張所が設けられておりますが、それにならつて、私どもの方もこの際出張所を設けたいと、かように考えるわけでございます。  それから第三点の、伊丹空港を神戸の入国管理事務所の管轄から大阪の入国管理事務所の管轄に移す問題でございますが、これは、御存じのように、日航の沖縄定期航路が開始されましてから、板付空港は軍が使つております関係上、予定通り板付空港で発着できない場合がございまして、そういう航空機が伊丹を中心にして発着するという場合が相当ふえて参りました。その関係で、そのわれわれの対象になりまする乗客の上陸及び出入国の問題のほかに、やはり乗員の、乗員と申しますか、航空機の乗組員のやはり特例上陸というような、いろいろな問題について審査をいたさなければならない場合がふえて参つたわけでございます。ところが、神戸から伊丹へ参りますのは、非常に回り道をいたさなければなりませんので、むしろ大阪からすぐかけつけた方が時間的にも早いというので、まあ能率向上の面から、伊丹空港を大阪入国管理事務所の管轄区域にいたしたい、かように考えておるわけでございます。  それで、法案の方でございますが、この法案の第一項は、これは、ただいま申し上げました伊丹空港を大阪管理事務所の管轄とするための規定でございます。それから、その次の「別表十中高松入国管理事務所」云々と、こうございます。それから、その次の広島入国管理事務所の所在地、管轄内容の規定、それから、その次の松江入国管理事務所の項を削つて、そうして下関入国管理事務所の方の項で広島県、山口県を山口県に改めるということ、これは、広島入国管理事務所の新設に伴う措置を規定したものでございます。  それから、次の「別表十一中札幌入国管理事務所」云々という項は、これは、稚内と根室の新設を規定したものでございます。それから、その次の「別表十一中仙台入国管理事務所」云云、この項は、これは酒田港の出張所の新設を規定したものでございます。それから、その次の「別表十一中東京入国管理事務所」云々、この項は、立川出張所の新設を規定いたしたものでございます。それから、「別表十一中名古屋入国管理事務所」云々と、この項は、敦賀港出張所の新設を規定いたしたものでございます。それから、その次の「別表十一中高松入国管理事務所宇野港出張所の項を削り、」云々、これは、広島入国管理事務所の新設に伴う関係港出張所の管轄の整理をいたしたものでございます。その中に、このワクの入っております表のうちで、最後の「広島入国管理事務所松江出張所、松江市」とございます。この項は、従来の松江入国管理事務所を出張所に落して存置せしめる、こういう趣旨で規定したものでございます。それから最後の項は、これは板付空港に出張所を新設する、こういう規定でございます。  簡単でございますが、一応の御説明を終りたいと思います。
  69. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 本件に関し、御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  70. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 今承わりますというと、ほとんど事務の都合での改正案のようでありまして、その点につきましては、私はまあ大した疑念も持たないのであります。  ただ一つお尋ねしたいんですが、この法務省設置法の一部を改正する法律案というのが、ただいま御説明になりました法案のほかに、刑務所の関係設置法改正案が出ておるわけであります。まあ一つの国会に、一つの省から二つの法案が別々に出るということはあまり例がないのであります。大てい一本にまとめてお出しになるのでありますが、何かやむを得ない事情があったんだろうと察しますけれども、その点を一応御説明を願いたいと思います。
  71. 下牧武

    説明員(下牧武君) これが二つに分れました理由は、もつぱら刑務所関係の改正の手続がおくれたということにございます。それで、内閣の方としましては、二月の二十六日までにこういう予算関係法律は全部閣議を通して、そうしてすぐ国会に出すことで、統一をとつてつたのでございますが、刑務所の設置問題、これはまあ私の所管じやございませんけれども、聞くところによりますると、豊多摩刑務所が今度軍の方から解放されまして、そして中野刑務所といたすと、その中野に中野刑務所として再開することについて、地元からも相当の反対もごさいましたし、政治的にもいろいろ折衝するのに困難をきわめまして、とうていこの法案というものは、この時期までには間に合わないと、しからば入管の方はどういたしましょうかと言つたら、まあ一応、それじややむを得ないから、入管の方を先に出しておいて、そしてあとの方は、政治折衝に待つた上で決定すると、こういう含みでもって、私の方を先にお願いいたしたわけであります。その後、いろいろ刑務所関係の方の話もまとまつたようでありまして、それで国会にお願いしたと、結局結果において二本建てになっておるというふうに承わつております。あまり好ましいことではないと存じますけれども、まあ事情は、ただいま申し上げたような事情でございます。
  72. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 いや、実はあなた方御両人にお尋ねするのは少し無理かと思ったのです。それでほかの、こういう点をおまとめにならなければならない責任にある人においで願わなければならないと思いましたけれども、あなた方の方には官房長はおいでになりませんが、下牧さんよく御存じだからというようなことを向うから聞きましたから、お尋ねしたわけでありますが、ただいまの御説明で一応筋は立つように思いますけれども、中野刑務所の改築の予算は、三十一年度に一億円余り含まれておりますね。そしてもう、昨年工事もやつておられますですね。  ことしもまた予算が組んである、だから、あそこを刑務所にするという問題については、法務省の方ではもう相当に早くから方針は御決定になっておつたことだろうと思うのです。それが、この今の入国管理の問題の法案をお出しになって、提出されて幾日もたたないうちに、そう間が長くおかれたわけでもありません、次の法案が出されました。わずかくらいの日のズとかない、それが一緒にされないことは、ちょっとないのじゃないか。どうも私は、法務省内部が統制がうまくいっておらぬのじゃないかと思う。私の方としては、大したことじやありませんけれども、やはり迷惑です。そして例としましてもこういう例は、まあ幾つかはあったかしりませんけれども、参議院ができて十年の間に幾つもありませんね。どの省でもやはりまとめて、少々提出の期間がおくれるとかいう心配があるなら、急いでまたやられるというようなことをして、非常に努力しておられるのです。その努力がないのじゃないか。問題が別々だから、法案を二つにしても、それは審議ができないことはありませんけれどもね。そういう点は、あまり簡単にお考えになっておつたのじゃないか。まあ先は申しません、あなたの責任じやございませんから。あなたにいろいろ申し上げるのは、お気の毒のような気がしますが、ほかに適当な人がおりませんから、その点を、もう少し事情を説明していただきたいと思います。
  73. 下牧武

    説明員(下牧武君) まことにごもっともな御指摘でございます。私どもも、そういう点を考慮いたしまして、事務的には一本で出されることが望ましい、だから、目安がつくなら、これは、私の方は一本にして出してもらつてけつこうだから、いつまでも待つと、こういうことで事務的には話しておったのでございます。それで、そのかわり、今国会をのがしてもらつちやこれは困るぞという点だけを話しておったのです。ところが、突然に、これはおそらく内閣の官房の方から指示でもございましたのか、すぐ切り離してやることになつたから、お前の方だけ先に出せと、こういうことでございました。それじやあとの方はどうかと聞いてみましたら、その当時は、まだちょっと目安がつかないから、それで、一応入管の方の関係を先に出すととにしたからと、こういう話でごさいましたから、それ以上、私としてはありがたいことで、お願いしますということでお願いしたのです。それで、その政治的な、裏の含みの点は、これはまあいろいろ上の方で問題があったようでございますが、詳細は私存じませんです。
  74. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 この法案が提出されたのは幾日ですが。
  75. 下牧武

    説明員(下牧武君) 三月二日だと思います。
  76. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 二日ですか。それから、もう一つのはいつ提出されたのですか。
  77. 下牧武

    説明員(下牧武君) 二十二日です。
  78. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 そうすると、二十日間ですね。どうもあなたには、それ以上の御説明はできないだろうということもわかりますが、私としては、それから先が聞きたいのです。どうもだらしがない。悪い言葉ですけれども、そういう気持がするのです。ほかの省じやこんなことはありませんよ。私はほとんど記憶しておりません。ことに法律家がそろって、法律で飯を食つてる人たちの役所で、こういうまずいことをどうしてされるのか。これ以上あなたに言っても仕方がありませんが、こういう質問が出て、自分にはお答えできなかったということをお伝え願いたいと思います。
  79. 下牧武

    説明員(下牧武君) ごもっともでございます。ぜひ伝えますし、私どもの方も、こういうことのないようにいたしたいと思います。
  80. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 これを見ますと、日ソ国交回復に伴う新事態に対処するため、稚内港、根室港、酒田港及び敦賀港に、それぞれ入国管理事務所の出張所を設けるということでございますけれども、これは避難港とか、あるいは貿易上の理由がこれに考えられておるのですか。その点お伺いしたいのです。
  81. 下牧武

    説明員(下牧武君) 根室と稚内の方は、主としてこの海難協定の分を考慮いたしました。それから敦賀と酒田の場合は、貿易の場合を考慮いたしまして処置いたしたわけでございます。ただ、敦賀の方は、ずっと戦時中から実績があまりございませんので、現在どうかと思いましたけれども、戦前のことを考慮いたしますると、やはりあそこが一つの中心になっておりますし、いざという場合に、直ちに手当できるだけの措置を講じておきたいと思いまして、特に敦賀をお願いいたしたわけでございます。それから酒田は、先ほども申し上げました通り、外国船の実績といたしましては、昭和二十九年に八はい、三十年に九はい、三十一年の一月から十月までに十二はい入っております。それから、特例上陸の数字も、昭和二十九年に二百五十二名、昭和三十年に百四十六名、三十一年の一月から十月までに四百名という船員の特例上陸もございましたので、これらを考慮いたしまして、一応ここに出張所を設けております。また、付近のほかの港に入るような場合には、ここから審査官を派遣して、その審査に当らしめる、その一応機動的な活動をする中心地を設けておきたいという趣旨で、お願いしたわけであります。
  82. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、警備官を派遣するということになるのですが、そういう点から防衛庁法とか、自衛隊法との改正から、何か関連しておるのじゃないでしょうか。それには関係ございませんか。
  83. 下牧武

    説明員(下牧武君) この港に配置いたしますのは、原則は入国審査官を配置して、港の出入国の審査に当らしめるというのが、これが建前でございます。ただ、私どもの役所といたしまして、審査官の数が非常に少いので、どうにも回りかねるような状況にございますので、場合によっては、入国警備官を派遣いたしまして、それに審査官の事務を兼ねて行わせるということで、入国審査事務をまかなっていきたい。こういう趣旨でございます。それから入国検査と申しますのは、これは海上保安庁の警備、あるいは自衛隊の警備というのとは全く違いまして、入国管理行政を行うための、港における違反の調査、あるいは身柄の護送というようなものに当るのが主たる役目でございます。でございますから、海上保安庁あるいは自衛隊関係の法令の改正と全く法律的には関係のないものであります。
  84. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 今まで、中国地方における治安関係機関としては、広島が中心になっておつたと思うのです。ところが、今まで広島とかは出張所になっておつて、松江に事務所を設けておつたわけですね。何かそれにはそれ相当の理由があったと思うのです。広島が中国の中心でありながら、これが出張所になっておつて、松江に事務所があるのは、相当の理由があると思いますので、その点お伺いしたい。
  85. 下牧武

    説明員(下牧武君) 先ほどもちょっと御説明いたしました通り、入国管理事務所及び港出張所が設けられました当初におきましては、港を押えるということがねらいで、機構の体制ができたのでございます。ところが、その後港の入口だけをばらばらに押えているのじや、統一的な取締りもできない。また、治安対策としても、非常に不十分なところがあるというので、どうしても、俗に私どもの方で山の審査と申しておりますが、入って来た外国人の実態を把握して管理して行くという面が非常に大切になって参つたわけであります。ところが、最初に、先ほど申しましたように、港中心に事務所を配置し、特に松江におきましては、松江方面に当時密入国者が多くございましたから、また、関門にも多くございましたから、下関、そこに中心を置いたというので、その下関からただずっと岡山県に至る長い間の港を下関と高松で管理したいという、港中心の考え方があったのです。ところが、ただいま御指摘になりましたような、広島がちようど治安機関におきましても中心になっておりまして、それとの連絡がまずくなっておりまして、どういたしましても、広島に港出張所を置かなくては本来の仕事ができない。そこで、最初のねらいから見ますれば、事務所として重きを置かなくてもいい松江を廃しまして、広島に持って行って中心にしていきたい、かように考えるわけです。
  86. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 聞きますと、松江には密入国が相当多かったというのですが、どこの国が多かったんですか。
  87. 下牧武

    説明員(下牧武君) ほとんど大部分は韓国から、南鮮から参る朝鮮人でございます。
  88. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 それから次に、特例上陸の場合に、出入国管理令十四条の三項、これによって指紋をとるようになっておるのですがね。その指紋の状況はどういうふうになっておりますか。
  89. 下牧武

    説明員(下牧武君) 指紋をとつておりますのは、わが国へ入国して六十日をこえて本邦に在留する者ということになっております。しかも、十四歳末満の者にはこれを適用しないのでございますから、特例上陸で指紋を押させなければならないというケースは、違反として、特例上陸でもって日本に上りまして、それから期間が来ても帰国せずに、そのまま居すわつて違反になつたケース、これは別といたしまして、ほとんど特例上陸のケースは指紋の対象にはならない、こういうふうに実情はなっております。
  90. 伊藤顕道

    ○伊藤顕君 その場合、国によって差別待遇をしているような場合はございませんか。ある国人については特に優遇してとらないが、特定の国の者にはとるとか、そういう差別待遇ですね、そういうようなことはないと思いますが、どういう状況になっておりますか、その点。
  91. 下牧武

    説明員(下牧武君) 外国人を国籍によって差別することはいたしておりません。御存じのように、中共の通商代表部なんかの設置について、いろいろ問題になっておりますが、そこに特例を設けますと、ほかの外国人と差別することになりますので、われわれは、法律上差別することも許されませんし、また適当でもないと存じます。それが非常な現在の懸案になっているような状況でございます。
  92. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 これから中国との貿易がだんだん盛んになってくると思いますが、そうなってきますと、中国の通商代表部も日本に置かれるようになるということも考えられると思うのですが、そういう際に、やはり代表部員の指紋をとるような態度で臨むわけですか。そういう点について……。
  93. 下牧武

    説明員(下牧武君) この点は、ほかの国の外国人と区別して扱うことはできないと考えております。ただ、一般の外国人につきまして、外交官及びわが国の承認した外国政府あるいは国際機関の公務を帯びて入国する者、俗に公用者と申しておりますが、これにつきましては、国際慣例といたしまして、指紋をとつておりません。で、そういうふうな身分で考える人々には、これはやはり国籍のいかんを問わず、同じような取扱いをいたす、こういうふうなつもりでございます。
  94. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 羽田空港を前には増員されて、今度立川も新設されるということになりますが、そうなりますと、米軍の基地という特殊事情に対しては優遇しているということになるわけですけれども、この提案理由では、機構上の不備というのは、一方においては治安対策の強化、一方においては特殊事情のサービス、そういうふうのことを意味しているのかどうか、その点をお伺いしたい。
  95. 下牧武

    説明員(下牧武君) この立川空港の場合は、サービスと申し上げますよりも、むしろ私どもの考え方は、シビリアンが入って参りまして、そうしてわれわの出入国の審査を受けずに出入りするということは、はなはだ好ましくないと考えております。ですから、その面の実効を確保いたしますために、特にこれを出張所といたしまして、それで所長に責任を持たせて、その仕事をやらせたいというつもりでございます。
  96. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 今度は、方面を変えてお伺いしますが、この資料を見ますと、刑務所の関係ですが、札幌、宮城、前橋、松江その他数カ所の刑務所では、施設が非常に老朽であるということに関連して、いろいろ陳情を受けておるけれども、一カ所刑務所を作るのに五億内外を要するので、なかなかその実現はむずかしいと、そういうふうにこの資料にございますけれども、この札幌、宮城、前橋、松江、こういうようなところの建設の年月日は大体どのくらいなんですか、老朽といっても。
  97. 下牧武

    説明員(下牧武君) ただいまの御質問は、これは、原局は矯正局になっておりますので、ちょっと私存じ上げませんので、御了承願いたいと存じます。
  98. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 じやあけつこうです。
  99. 秋山長造

    秋山長造君 入国管理局の定員ですが、これは今、全部で何名になっていて、それで本局がどれほどで、出先がどれほどということをちょっとお伺いしたいと思います。
  100. 下牧武

    説明員(下牧武君) 現在の定員を申し上げますと、本局が百二十四名、地方機関が千百九十五名、合せて千三百十九名になっております。
  101. 秋山長造

    秋山長造君 あなたの方は、駐留軍人関係の出入りはどの程度タツチされるのですか。
  102. 下牧武

    説明員(下牧武君) 軍関係の出入国そのものには直接タツチいたしておりません。ただ、軍と一緒に参りましたシビリアンがございますが、そのシビリアンはわれわれの方がタツチして、その出入国を審査する、こういう建前になっております。
  103. 秋山長造

    秋山長造君 それは、アメリカ軍の場合は、行政協定その他の別個な法律があると思うのですが、それ以外の国の軍人についてはどうなんです。
  104. 下牧武

    説明員(下牧武君) 行政協定外の出入国につきましては、本来ならば、私どもの方が審査をいたした上で、それの許否を決定するということになるべきだと存じます。ただ、遺憾なことには、ときどき連絡不十分で、連絡不十分というよりも、無断でやつて参りまして、中には、審査を受けずに、軍の構内から出ていくというのも事実あるように考えておりますので、そういう人々を押えるべく、いろいろ苦心しておるわけでございます。それで、そういう場合が判明いたしますと、ある程度、直接または外務省を通じまして、それで軍の方に、そういうことをしてもらつちや困る、場合によってはこちらも覚悟があるからというくらいに、相当強い態度で交渉をしてもらつております。そういう場合には、大体今までの出方を考えますと、申しわけなかったから、将来気をつけるからというようなあいさつがございますが、しかし、事実われわれの手を抜けて、たとえば、韓国の軍人が米軍機でやつて参りまして、そうしてすうつと抜けていくということが今ないかと申しますと、それが絶対に、そこまでしつかりわれわれの方で締めておるというところまで申し上げる自信はございません。中にはやはり抜けているのがあるのじゃないか、そういうこともございますので、そのデータをできるだけ積み上げまして、そうしてしつかりしたデータでもって十分交渉いたしたいと、実はこういうことで、調査を今命じておる最中でございます。
  105. 秋山長造

    秋山長造君 駐留軍関係の軍人の出入りについては、われわれの方の権限内にあるべきだというお話なんですが、あるべきだというのは、これは、法律ではっきりそうだときまつているのでしよう。入国管理局でこれは管理するのだということはきまつているんじゃないんですか。
  106. 下牧武

    説明員(下牧武君) 行政協定で除外されている以外の外国人は、いかなる身分で参りましても、全部われわれの管理を受けなければならないと、これは、法律上当然そうなっております。
  107. 秋山長造

    秋山長造君 にもかかわらず、やはりあなた方の窓口を通さないで出入りをする者があるということを、一応確認はされておるわけですね、それは年間どのくらいあるようですか。
  108. 下牧武

    説明員(下牧武君) どうもはっきりした数字がつかめませんので、年間の推定人数を申し上げることはできかねますが、昨年私どもが確認いたしまして、これじや困ると申し入れた件数が四、五件あったように記憶しております。それで、これは、対象は韓国軍人でございましたが、場合によっては、こちらで強制収容して、法律上の措置をとるからということで申し入れをいたしたこともございます。その場合には、これは基地の参謀長から外務省を通じて文書までよこしまして、まあ申しわけなかったが、将来はこういうことがないように気をつけるから、今度だけこらえてくれというような申し入れもございまして、一応それに応じまして、将来は間違いないようにということで話をしたことがございます。ただどうも、それをしたから、それじや全部押えているかと申しますと、必ずしも、私どもが見ているところでは、そうにもなっていないように感じておりますので、立川の方に命じまして、できるだけそういう資料を集めるように、こういうふうに今、調査さしておるところでございます。
  109. 秋山長造

    秋山長造君 私は、いろんな方面から聞いたところによりますと、そういうのが四、五件とおっしゃったけれども、四、五件程度にとどまらないで、年間を通じますと、相当数やはり米軍基地への出入りという者があるのじゃないかと思うのですね。それで、いつだったか、おととしの、三十年の春でしたかね。横田の基地に国府軍の軍人が相当数やつてきて、そうして米軍の基地の中で教育を受けておつたという事件がありましたね。あれなんかは、やはりこれにひつかかるわけでしよう。この今私が御質問していることに該当するケースでしよう。
  110. 下牧武

    説明員(下牧武君) 形式を見れば、一応私どもはやはりこれに該当するものと思いますが、まあ国連軍の要員として参りましたのか、あるいは国府の軍人として参りましたのか、その辺のところはやはりはっきりいたしませんと、そういうことによって結論が違つて参るかと存じます。
  111. 秋山長造

    秋山長造君 あのときは、相当新聞なんかへも書かれたし、国会でも問題になつたんですね。問題になつたけれども、結局けしからぬけしからぬということで、しり切れトンボになってしまつたのです、うやむやに。あの場合なんかは、あなたの方では一体、結論的にはどういうふうに処理されたのですか。
  112. 下牧武

    説明員(下牧武君) あのときは、いろいろ政治的な何もございまして、この際、入管の方だけで、すぐいわゆる法律上の手続に乗せるのはいかがかと存じまして、その後にそういうことのないように、また、ある場合には、あらかじめちゃんと外務省の方に連絡をとつて、それで、こういうことで来るからということをはっきりきして将来やつてもらうようにというようなことで、外務省の方にもお願いしておいて、そのままで、特に事件としては、違反事件としては調査しなかったわけでございます。
  113. 秋山長造

    秋山長造君 あれに類するような問題が現在はどうですか。どこかの基地にやはりあれに類するようなことがあるのじゃないですか。
  114. 下牧武

    説明員(下牧武君) 現在は聞いておりませんですけれども、ただ私どもが、まあどうもおかしいなと思うのは、連絡将校のような、あるいは情報将校とかいうような、そういう先生たちがどうも黙つて少し、ある程度出入りしているのじゃないかというふうなことが考えられます。それ以外の一般の純然たるシビリアンを連れてきたような場合には、大体私どもの事務所の方に連絡がございまして、それで審査を受けておるのでございますが、中には、そういうのがある程度どうもあるやに、あるような傾向も感じているという程度でございます。
  115. 秋山長造

    秋山長造君 どうもその点が、私お聞きしておつて、ぴんとこないのですがね。入国管理局で、行政協定による駐留軍人以外の一切の外国人というものを管理するということになっておりながら、事実上その網を抜けて、相当数の者は始終出たり入つたりしておるというような状態がどうもそのままにされて、ただ仕方がないということで放つておいていいものじゃないと思うのですがね。そういう点は、何かもう少しはっきりした対策というものはないのですか。政府の方で、またそういう点、外交手段によってか、何かの方法によってそこらをはっきりできないですか。
  116. 下牧武

    説明員(下牧武君) 羽田の方は、大体軍の飛行機が着きまするというと、そつちの方にすぐ審査官を派遣いたしまして、そうして軍人と一緒に審査官もそのシビリアンを相手に審査するという仕組みになっております。ところが、立川の方は、軍の構内にわれわれの事務所を設けさせてくれないわけであります。そこで、事務所が軍の構内のすぐ脇にあるわけでございます。でございますから、一般に、始終出入するという者は、気をつけておればわかりますが、しばらく軍の構内にとどまつてつて、ぽつと抜けられますと、なかなかそこまで目が届かない。そういう者を発見いたしました場合には、先ほども申し上げました通り、相当強硬な方法でもって申し入れもいたしておりますし、場合によっては、私どもは、もうそれでもそういうことが絶えなければ、そういうケースが発見できれば、違反のケースにかけて、それで手続に従って処理したいとさえぐらい考えておるわけであります。それと、もう一方、軍の構内にわれわれのオフイスを設けさせてくれるようにということをいろいろ交渉しておるのでございますけれども、なかなかまだそこまで運んでおりません。私どもの将来の考え方としては、そういうふうな、なるべく不法な出入国というもののデータをつかんで、外交的な手段でもって申し入れをすることが一つ。それから、立川の場合には、基地の構内にれわれのオフイスを設けることを承認してもらうというような方向に持っていきたいことが一つ。それから最後は、いよいよそういうことをやつてもきかない場合に、これは、明らかな違反ケースを発見した場合は、今度は手続に従って、はっきり違反調査の対象にして、収容をして調べるというぐらいのところまでやる覚悟を持っているわけでございます。大体、今考えております対策というのは、今申し上げた程度を考慮いたしておるわけでございます。
  117. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 ちょっと関連、先ほど朝鮮の軍人が法を犯して入って来た、たしかこういう話でしたね。これは、そのときに何のためにそういう違法なことをしたかということはお調べになりましたでしょうか。
  118. 下牧武

    説明員(下牧武君) どの程度申し上げていいか、一応の当時の状況を申し上げますというと、そのときは、相当私どもの役所の方でも強く出まして、それで収容するというところまで申し入れしたわけであります。最後の腹もきめまして、一つつてみようじゃないか、しかし不意打ちを食らわすのもあまりおもしろくないから、やはりこれは、一応先方に伝えた上でやらした方がいいということで、その申し入れをしたわけでございます。そこを何とか考えてくれないかという申し入れもございましたが、私どもの方では、それをきかなかったわけであります。それでございますから、今度参謀長の方から、それじやいつ幾日までに帰すから、だから、手荒なことはやめてもらいたいという申し入れがございました。そうして、将来こういうことにするからというので、必ず入管事務所にこれを出頭させて、そして出国、帰国の手続をちゃんとさせるということがございましたので、その当時はそれで了承いたしました。その点を韓国の方にもちょっと連絡いたしまして、韓国の方はむしろ情報将校でございます。連絡将校でございますが、連絡将校は何も自分が好んで来たのでなくて、おい、飛行機で行けということで、すぐ飛行機に乗せてこられたので、それはわれわれに文句を言われるのは文句の筋が違うということで、むしろ韓国の将校の方は、またそれで、まあ私どもが憤慨するというよりも、そういうふうな措置をとつた方面に憤慨しておるようなことをしておった状況であります。そこで、もつぱらこれはやはり軍の方針として、厳密にそれをそういう不法な処置をとらないということで、何と申しますか、そういうことを徹底して取締りを内部的にぴしつとやつてくれれば、それは問題はないと存じます。でございますから、そのケースはわれわれが申し入れましてから、あれはたしか二週間ぐらいの間に全部帰りました。そしてそのうち一名か二名だと存じますが、当時四名ぐらいでございましたが、一名か二名だと思いますが、正規に、この者はこういうことで入国したいからということで、今度は正規の在留を認めて、そして手続を踏んで入れさしたという事情でございます。
  119. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 もう昨年ぐらいだったと記憶しておりますが、南方の軍人を日本に連れて来て、日本でアメリカの軍隊が訓練してやつたことがけしからんという問題が起つたことがありましたね、国府軍でしたか。それを私はちょっと頭に浮べたのです。朝鮮の今の問題、そういうふうなことで、日本に表向き気がねして、そして内緒にアメリカが連れて来て訓練する、訓練してやるというようなことを、かりにやつたとすれば、これは非常に不徳義な、朝鮮人もよくないけれども、アメリカ側も非常に不信な行為をしたのじゃないかという疑問を、ちょっと私は起してみたんです。まああれ以来そんなことはないだろうと思いますが、今のお話と、まるつきりこれは違いますね。今のお話を聞きますと、まるつきりそれとは関係なしに、ただ連絡のために来てすぐ帰つたんだ、連絡のために来たんだという、その目的はあなたの方じや確認されたわけなんですね。
  120. 下牧武

    説明員(下牧武君) 違反審査にかけて調べたわけじやございませんから、こまかい何は突つ込んでおりませんですけれども、しかし、ただいまおっしゃったような、訓練とか何とかいうことで入って来たんじゃないことは確実でございます。いわゆる連絡将校というのは、よく参りますので、それで事情を聞いてみますと、すぐ飛行機がたつ、おい、お前行けということで、ぱつと非常に軽くやつておるようでございますが、これじや困りますから、基地の構内におる限りにおいては、これはまあやむを得ないといたしまして、そこから日本の何へいわゆる上陸をいたしまして、そこで堂々活躍されるようなことがあつちや、これはとんでもないということで、これは将来とも、そういうことは私どもとしては相当ぴしつとした態度でもってやつて行きたいと、かように考えております。
  121. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、基地の構内にとどまる限りは来てもかまわぬのですか。
  122. 下牧武

    説明員(下牧武君) これは行政協定を厳密に解釈いたしますると、やはりこれも私は行政協定違反じゃないかと考えます、そういう場合も。ただまあ、ここは常識問題だろうと思いますが、船で実は入港して、上陸せずに、港にとまつているような場合も、本来ならば、これはちゃんと旅券、ビザを持ってこなければいけない、その中にそういう正規のものを持っていない者があったという場合に、さあ、それをつかまえてすぐやることがいいか悪いか、これは当、妥当の問題があろうかと思いますが、その意味で申し上げましたので、法律的に厳密な意味で申し上げますると、そういうのが、軍の要員じゃない者が軍の飛行機で基地に入ってくること自体が、行政協定にむしろ正面から違反するかどうかちょっと解釈上疑義があるかと思いまするけれども、少くとも行政協定の趣旨には含まれない、こう見ていいのじゃないかと、かように私どもは考えております。
  123. 秋山長造

    秋山長造君 その点は、おっしゃるほど、ばく然としているのでなしに、これははっきり違法なんじゃないでしよか。つまり行政協定というものは、別に韓国や国府と結んだわけじゃないし、もちろんこの行政協定の恩恵を受けるのは、これはアメリカ軍人だけにとどまることなんでしようね。だから、もし今あなたのおっしゃるように、基地の中から一歩も出さえしなければ、必ずしも違反とは言えないということであったら、きつき来お話のあった、台湾の国府の兵隊を横浜に連れて来て基地の中で教育するということも、これは違反にならぬことになるのですか、そこらはどうですか、政府としては。これは重大な問題ですがね。そこらをはっきりしておかなかったなら、幾ら抗議を申し込もうと何しようと、ナシのつぶてで、申し入れ放しで済んでしまうのじゃないか。
  124. 下牧武

    説明員(下牧武君) 法律的には私は行政協定違反だと思っているのでございますが、ただ、そういうことをはっきり、それじやそれは違反だという、記録に残つているかと言いますと、そういうのは記録上はちょっと調べさせてみたのでございますが、はっきりしていないようでございます。ただシビリアン、いわゆる軍関係以外の者が入る場合には、ちゃんと入る港を指定している建前になっておりますから、立川はその中に入っていないのでありますから、そういうところに連れてくること自体これはやはり行政協定違反じゃないかと、実はそういうところから、私どもそういうふうに考えているのであります。その場合に、全然それじや軍関係の者に限つて、それからまあ一歩も出ないその者を、軍関係以外の者がたまたま飛行機に同乗して来たという場合に、すべてそれを全部行政協定違反ということできめつけられるかというと、これはちょっとそこに疑義があるのじゃないかと、かように考えているわけであります。かりにそこで違反といたしまして、先ほど申し上げたようなことで、それをすぐ外交的に、そういう違反を犯してもらつちや困るという申し入れをすることは、これは一つの適当な妥当な方法だと思います。が、私どもが乗り出して行って、さあ違反だというところまで行くケースとしては、ちょっとそこまでは行き過ぎじゃないか、ただそれがいわゆる上陸したという形になって、そうして日本の国内で活動するというようなことになりましては、これはもう当然捨てて置けないということで、そういう面にきた場合、それは相当覚悟をいたして管理して行きたい、こういうふうに考えております。ちょっと法律論と何とは少し食い違いがございますが、法律的に違反だからといって、すぐ飛びつくのも考えものでございます。それだからといって、ゆるめ過ぎちや困るから、最後の一線は、上陸をして国内活動をされるようになつちや黙つておれないから、その場合は、これは思い切つて法律上の手続でぴしつとやりたいと考えているのが、私どもの線であります。
  125. 秋山長造

    秋山長造君 そういたしますと、立川なら立川の基地に入って来て、その基地から出さえせねば、これは違反ということにもならないというようなことでありますと、あなたの方で基地の周辺を毎日・人の出入りをずっとにらんでおれるわけじゃないし、それはどつからか一緒に、ぞろぞろ出たり入つたりするというようなことになってくれば、結局やはり立川というような所を、トンネルを通つて、いろいろな軍関係以外の者が、あたかも軍関係のような顔をして自由に出入りするようなことに、どうしても流れがちになるのじゃないかと思うのですがね。あの立川の基地を通じて密輸入なんかが、せんだつて新聞にあがつておりましたが、ああいう種類のことにまでやつぱり行きがちなんじゃないかというように考えるのですがね。この立川の基地の内部の問題は一応別問題としても、その基地と、それから基地の外部との間の出入りということは、あなたのところで立川に出張所を置かれて、これでもう確実に捕捉できるのですか、どうですか。
  126. 下牧武

    説明員(下牧武君) この事務所を置いたことによって、将来そういうものを全部にらめるかと申しますと、ちょっとそこまで申し上げる自信はございません。やはりその中で、もぐつて出るのも中にはあるかと思いますが、まあそういう場合にも、できるだけ協力関係において向うから自発的に連絡させる、それから場合によっては構内にわれわれのオフイスを設けるというようなことで、ある程度様子を見る。それから飛行機が参りました場合に、その飛行機の乗客及び乗員の状況も厳にその場で把握して、どういう関係のものがまじつているかというようなことも見ることができるようにいたしたいというのが念願でございまして、そういう交渉もいたしております。ただ、外部にやはり出張所を設けましても、そういうことで構内にオフイスができない場合には、どういたしましても、やはり現在通り外部に置くよりしようがないと思います。そうなりますと、そこをもぐつて出る者がある場合も、それを見逃すようなこともまああるかと存じます。ただその場合にも、そういうふうな関係を何とかしてつかまえて、それで、これはまあ私どもの役所だけじやございませんで、警察にも応援を頼みまして、そして何とかそういうものの実態をはっきりつかんで、ケースが出れば、それでこちらも腹をきめておるから、そういうデーターを一つきちんと固めた上で、最後にもう一つ申し入れをするなら強行に申し入れをやりたいというようなことで、今そういうことを、いろいろ飛行機の出入りがあるたびに、目を光らしてデーターをとるように調べておるのが現状でございます。できるだけ押えたいと存じますが、全然それじやもう見逃すことなしに押えられるかとおつしやられると、ちょっと自信がない、はなはだ自信のないことでございますが、見逃すこともやむを得ない場合も、心ならずも見逃す場合も出  てくるかと思います。
  127. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 この立川ですね。「従来駐在官を派遣して」と、こう書いてあるのですが、これはよそに勤務している者を臨時に派遣されたのですか、やつぱり何人か派遣された人が常駐しているわけなんですか、現在は。「派遣して出入国管理事務に当らしめておりました」、臨時出張派遣というのか、そこに常駐しているのか伺いたい。
  128. 下牧武

    説明員(下牧武君) 現在常駐させております。人数は三名。
  129. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 それが今度出張所になりますというと増員されるわけですか、出張所を新しく作られるわけですね。
  130. 下牧武

    説明員(下牧武君) 警備官を一名増員いたしまして、それで四名にする予定でおります。
  131. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 五名が四名になるのですが、それだけで今まであなたの手の届かなかったところを、これからしつかりやろうというお話しですが、そんなことでできるのですか、似通ったことじゃないかと今いう気持なんですが。
  132. 下牧武

    説明員(下牧武君) ほんとうに立川を押えようとすれば、どてもこの人数じやむずかしいかと存じますけれども、そのほかに私どもの方じや、羽田がどんどん出入国はふえて参りますし、もう各港ともほとんど手を上げているような状況なんで、それで本年度幸いにして三十名の増員を得ましたので、大部分をそれを港の方へ向けたい。しかし何と申しましても、羽田とか、こういうところを中心にいたしませんと、そのために常駐する者を多くふやすということは、ちょっと不可能かと存じます。それで一応四名配置いたしまするけれども、現在調べている状況によりまして、ある程度の見当がつきますれば、あるいは一斉にばつとやることも考えなければいかぬかと思います。そういう場合には応援の人員をまた派遣し、あるいは警察の方の協力も得て、そしてやるときは十分な人数で取締りの方をぴしやつと一つ網をかぶせてみたい。実はかように考えておるわけでございます。
  133. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 現在は三人常駐しているのだが、それを一名ふやして、それを出張所とまあ改める、こういうことですが、出張所ということになるというと、そこに在勤している人の権限が広くなるとか、強くなるとかいうような関係でもあるのですか。それがなかったら、実際一人よけいに派遣すればいいわけで、何も出張所という名前を改めんでもいいじゃないかということが起る、権限がちょっと違いますか。仕事をするのに便宜に簡単に早くやれるというようなことでもあるのでしょうか。
  134. 下牧武

    説明員(下牧武君) 案質的に面を申しますれば、入国審査の権限といたしましては、これは同じでございます。ただ出張所となりますというと、そこにやはり責任者ができまして、それで羽田からただ駐在を命ぜられているということじやなくて、出張所長としてのやはり行政的な監督権も発動いたします。その面においてやはり動き自体が違つて参ります。そこへ据える人物もある程度所長としての事務に通じた、練達な者を置かなければなるまいかと存じます。そういう意味権限としては同じでございますが、実質的には相当強化されるのではないかというふうに考えております。それがまあねらいということになると思います。
  135. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 板付空港についても、やはり立川と同じような状態だと承わつておいてよろしいのでございますか。
  136. 下牧武

    説明員(下牧武君) 板付空港の場合は立川とはちょっと趣きを異にしておりまして、現在おっしゃるような問題はあまり出ておりません。ただ板付空港の場合は、税関にいたしましても検疫にいたしましても、ちゃんとした出張所として発足しておりますし、それからイミグレーシヨンの場合だけが何か駐在官のような、よそへ派遣されるというような形になりまして、これはいわゆる一般の外国人に対する建前といたしまして、まず第一に外国に入って対象になるのはイミグレーシヨンだと、こういう観念で、入ってくるそういう外人に、入管の出張所もないということではやはりおもしろくない。そういう意味がありまして、主として板付の方はそういう意味でこれは出張所にいたしてあります。こういう趣旨でございます。
  137. 秋山長造

    秋山長造君 どうも先ほど伊藤さんからもちょっと質問があったのですが、日ソ国交回復等の関係で、稚内、根室、酒田、敦賀というようなところの入国管理事務が非常に強化されるわけですけれども、こういう方面は、どうせソ連人が出入りするにしても、これは必ず各港を通ずるわけですから非常に捕捉がやさしいのですね。ところが逆に、先ほど来の立川その他いわゆる米軍基地関係の外国人の出入り、これは非常にむずかしいと思うのです。むずかしいということは、今度は相手から見れば非常に出入りがやさしい、こういうことになってくる。しかも、それが、だんだんとわき道にそれて、よく新聞なんかで問題にされているような、密輸入なんかのルートに悪用されがちだというようなことですから、これは何とかして、とにかく基地における外人の出入りということを、もっと何かしつかりした対策を考えて捕捉しなきゃならぬ。一番いいことは、基地がなくなれば、これは解消しますけれども、解消するまでの間でも、何か今のような態勢では、これはもうきわめて不十分だと思う。どうも北海道や何かの遠方の方ばかり気をとられて、肝心かなめの東京の日本の心臓部がどうも風穴があいておつては、これはさつぱり話にならぬのですが、とりあえずの方法としては、今おっしゃるように、基地の構内にあなたの方のオフイスを置くという交渉をしたいと、これは今までもしてこられたように、さつ刷き承わつたのですが、基地の中にオフイスを置くということは、それはどういう理由で応じないのですか。
  138. 下牧武

    説明員(下牧武君) どうもはっきりした理由はあまり言わないようでございますけれども、やはり工合が悪いというところで、なかなかうんと言わぬで渋つているというような形でございます。ずっとまあ交渉を続けておるのでございますが、これだからいけないというようなことのはっきりした何もあまりない、といって、うんとは言わないというような、ずるずるしたようなかけ合いみたいな形になっております。できるだけ、はっきりしたデータでも出まするというと、それを基礎にいたしまして、また交渉もしやすくなるかと思いまして、それやこれやを考えまして、とにかく現に出入りして違反になっているケースというものを、これをできるだけつかんでみようじゃないかということで、それを今つかむことに努力しているというのが現状でございます。
  139. 秋山長造

    秋山長造君 それは、基地の構内に入国管理局のオフイスを置きたいということは、立川に限らず、その他あちこちに空港があるわけですね、どこの空港についても大体そういう交渉をしておられるわけですか。
  140. 下牧武

    説明員(下牧武君) 羽田は二つ出入口がございまして、一般の乗客がやつてくる場合と、それから軍関係の者がやつてくる場合と二つに分けてございます。その両方とも、出入口のところに入国審査官が、飛行機が入ってきたそのつどにらんでいるわけでございます。羽田の方は問題が片づいているわけです。板付の方は、まだそこまでの問題は、現在までのところあまり起きていないようです。その中心は立川になっているわけで、もつぱら私どもの方では、立川を中心に……、ところが軍の方も立川を相当重く見ている傾向がございまして、立川の方は羽田のようにスムースにわれわれの要望に応じないという、こういう状況でございます。
  141. 秋山長造

    秋山長造君 それは、やはり何か軍の機密を侵されるというようなことが理由になっているようですか、どうですか。
  142. 伊關佑二郎

    政府委員伊關佑二郎君) 私が出て来ます直前に報告を見ておりましたら、立川の私の方の派遣駐在員が、あそこの米軍の司令官に手紙を出しまして、それに対します返事をちようどけさ見たのであります。あそこの司令官自体として、そういう事務所をあの飛行場内に開くことに対して、イエス、ノーを言う権限を持たない、もっと上のレベルで交渉してくれという返事がきております。私はこれはおそらく日米合同委員会で、取り上げる問題だと、こう思っております。さつそく外務省の方と連絡するように、従来も立川につきましては、合同委員会で取り上げたケースも、あると思いますので、従来の経緯もよく調べて、合同委員会でこの問題を取り上げるように指示をして、ここへ出て来ました。ちようどけさその報告を見ました。
  143. 秋山長造

    秋山長造君 これは今、局長がおっしゃるように、合同委員会なら合同委員会でもいいですが、とにかく早急にこれは何とか話をつけて、いわゆる構内にオフイスを置くくらいのことは、これはもう当然向うも了承してしかるべきものだとも思うし、そうでもしなければ、ただ基地の外の方に出張所を作つて、一人だけ増員してみたところで、どうも私ども大した効果が期待されるようにも思えないのですね。まあ局長は幸い合同委員会日本側の委員をしておられたこともあるのですから、そこら辺の事情は非常に詳しいと思うのですが、これはぜひ一つ強力にやらるべきだと私は思うのです。これは次の合同委員会にお出しになりますか。
  144. 伊關佑二郎

    政府委員伊關佑二郎君) あれは二週間に一度開いておりますので、次に間に合いますか、どうですか、従来の過去のレコードを全部調べまして、やはりこちらから申し出ますときには、違反の事実というものを集めまして申し入れませんと効力がございませんから、違反がわからないうちに行われておるというのでは、米軍自体も知らぬような場合があるかもしれませんから、とにかく違反の事実をなるべく集めまして、過去のことは、私しばらくおりませんので、私がやつておりました時代のことは覚えておりますが、二、三年のギヤツプがございますので、その間にどんな交渉があったか調べなければわかりませんので、次の委員会ということは申し上げかねますけれども、なるべく早くと思っております。
  145. 秋山長造

    秋山長造君 先ほど指紋の問題で伊藤委員からちょっと御質問があったのですが、指紋は外国人登録法第十四条できめられているわけですが、ただ、外交官あるいはこれに準ずる者については免除して行くということですね。これはその運用の面で免除しておられるのですか、これははっきり何か法的な根拠があつて免除しておられるわけですか。
  146. 下牧武

    説明員(下牧武君) ただいまの指紋免除の問題は、法文の明文があるわけじやございません。ただ一般に国際慣例、慣習法と申してもいいと存じますが、外交官及び公用者について。指紋をとらないというふうな国際慣例になっておりますので、その国際慣例として私どももそれを免除しておるという関係にございます。
  147. 秋山長造

    秋山長造君 そういたしますと、先ほど伊藤委員からお話がありましたが、今問題になっている中日貿易に関連して、中国の通商代表部あるいはこれに準ずるものを日本に設けるという場合に、この代表部の職員の指紋をとる、とらぬということが相当問題である。これに対して政府の方の結論はまだ出ておらぬということですが、これなんかも、当然貿易代表部を認める以上は、これは外交官あるいは公務者というワクに入るのだから、指紋をとる、とらぬというようなことは、これはもう事新しく論議をする必要はないのじゃないかと思うのですが、そこらの点はあなたの方でどういうふうにお考えですか。
  148. 下牧武

    説明員(下牧武君) 私どもの方は、これは主として、外務省と申すよりも、内閣のもとで決定される事項で、事務的にとやかく申すことではないと存じますが、もし通商代表部の用員で、あるいは全部、あるいはその一部に対して外交官の取扱いをする、または公用者の取扱いをするということになりますれば、そういう身分で日本に入って参りますれば、当然われわれの外国人登録法の建前からもはずれて行くということになると思います。そうじゃなくて、一般のいわゆる商業者という形で入ってきて、そういう身分で入ってきながら、しかも指紋だけを免除するということになりますと、これは無差別取扱いということになります。これは法律的にもできないというのが私どもの考えでございます。
  149. 秋山長造

    秋山長造君 その点は今おっしゃるところを聞くとはっきりしておるので、通商代表部だとか、あるいは貿易代表部、あるいはこれに準ずるようなものが開設されるという場合は、その職員は、これはいわゆる公用者、あるいはこれに準ずる者として当然指紋は免除される。ただ全く民間の一般商業者として入ってきた場合は指紋はとつてもらわなければいかぬ、こういうことですね。
  150. 下牧武

    説明員(下牧武君) ちょっと説明の言葉が不足だったかも存じませんが、そういう趣旨で申し上げたのではございませんので、通商代表部の職員、これは日本外交方針にも関係してくることと思いますが、それが外交官待遇あるいは公用者という身分で入れるということになりますれば、これはわれわれとしては指紋の押捺を求めるものじゃない。しかし、そういう身分じやなくて、一般の商業者ということで入ってきて、しかも指紋を免除しろと言われても、これは法律的には私どもとしてはいかんともしがたい、こういう考えでございます。でございますから、通商代表部の部員を全部公用者で入れるか、外交官として入れるかということは、これはまだ決定しておりません問題ですし、もっとハイ・レベルで考慮されるべき問題だろうと思います。
  151. 秋山長造

    秋山長造君 そういたしますと、この問題は、結局、政府の認定いかんということになるわけですね。
  152. 下牧武

    説明員(下牧武君) 認定ということになりますか、その取扱いをどういう身分で入れるかということが基本になると思います。
  153. 秋山長造

    秋山長造君 せんだつて参議院の予算委員会だったと思うのですが、岸総理大臣の質問に対する答弁で、この通商代表部の職員について指紋をとる、とらぬという問題は、できるだけ好意的に解決したいと考えたいというような意味の答弁をしておられたのを私傍聴して聞いたのですが、その点は、だからやつぱり今おっしゃるように、もっとハイ・レベルで政治的に解決さるべきであつて、だからあなたのあれは、政府の方が貿易代表部の開設を認め、そうしてその職員を公用者、あるいはこれに準ずる者という扱いをするということにすれば、これは当然自動的に国際慣例に基いて指紋は免除する、こういう結果が出てくるわけですね。
  154. 下牧武

    説明員(下牧武君) おっしゃる通りであります。
  155. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をとめて下さい。    午後四時五分速記中止    ―――――・―――――    午後四時二十八分速記開始
  156. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて。
  157. 秋山長造

    秋山長造君 簡単に二、三点、大臣にお伺いいたします。  実は大臣が見える前に、主として立川の空港を中心に、米軍基地に対する外人の出入りをどのようにして取り締るかという、取り締るというよりも、出入国をどういうように管理して行くかという問題を局長なり次長なりにお尋ねしておったわけですが、どうも今日までのところ、やはりああいう特殊地帯のために、あなたの方としてもきめ手がないような話なんです。この基地関係の出入国の管理事務というものを、今後、大臣としてどういうように持って行こうという御方針でおられるのでしょうか、その点をまず第一にお尋ねしておきたい。
  158. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御承知の通り、軍用機を利用した入国者が事実上ございますので、そういう関係から、ことに立川基地にそれがあるものですから、あそこへ出張所を設けたい、そうして出入国の管理事務の万全を期したい。こういうことで今回の設置法改正の中にその点もお願いをいたしておいた次第でございます。なお、アメリカ側との話し合いが今後円満につきますならば、ぜひ飛行場の中に事務所を設けるようにしたい。こう考えておりますが、現在のところ飛行場の管理は米軍側にございますから、こちらだけで勝手にきめるわけには参りませんが、ぜひできるならば話し合いをいたしまして、できるだけ出張所設置の目的を十分に果し得るようにいたしたい、かように考えております。
  159. 秋山長造

    秋山長造君 今度の改正で、北海道あるいは東北、それから北陸方面事務所が相当強化されるようですが、これはソ連に対する対策として考えられておることだと思いますけれども、ソ連に対して、あつちこっちずいぶん強化され、人員も相当配置されているのですが、問題の立川あたりは、現在駐在官が三名いるのをただ一名ふやすというだけのことなんですけれども、これはむしろ、先ほども言つたのですが、北の方の関係はどうせ船で港に入ってくるということで、これはもう捕捉が非常に簡単なわけなんですね。問題はやはり立川なんかのような基地に対して、日本側の管理権というものが及ばない、ああいう特殊な地帯に対する人の出入りというものを確実に捕捉して行くということの方が、やはり困難でもあり、またそれだけ問題だと思う。にもかかわらず、一名程度立川にふやすということで、この問題をやり過ごしてしまうということは、どうも私不十分なように思うのですけれども、やつぱり立川の場合は、これはアメリカ関係だからまあ適当に大目に見てやる。それからソ連関係は、国交は回復したけれども、どうもいろいろ物騒だから、必要以上にこの関所を厳重にして行くというような感じにとれないこともないのですけれども、その点はどのようにお考えですか。
  160. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) これは大体昔で言いますと、開港場と言いますか、船の寄港をする寄港地の港を中心に北の方面に出張所を設けるようにいたしましたので、これらの人員は、私ども承知いたしておるところでは二、三名、事務量の見通しを大体立てまして、その事務処理に必要最小限度の人員配置をする。こういうように考えておりますが、なお詳細は何でしたら事務当局の方から御説明いたさせます。
  161. 秋山長造

    秋山長造君 事務当局の方はけつこうです。それからもう一点お尋ねいたしたいのは、中共貿易の関係ですね。中共貿易関係で、また近く第四次の貿易協定も結ばれるという段階になっている。それから、まあいずれにいたしましても貿易代表部を交換する、国交回復に至るまでの暫定措置として通商代表部を交換する。あるいは日本における中国の通商代表部の設置を認めるというようなことになるだろうと思うのですが、通商代表部を認めた場合には、その通商代表部の職員というものについては、これは指紋の問題ですが、まあ今までいろいろ政治的ないききつがあるのですが、指紋の問題は、政府としては、これはもうすつきり免除してやつて行くということに、方針はもう今日の段階できまつておるのですか、どうですか。
  162. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) この点は、大体まあ外務省の取扱い方針いかんということになるわけでありますが、日本からもし中共の方に通商代表機関を置くといたしましても、これは日本の商業関係の民間レベルの機関ができると、こういうことになるわけでございますので、実は中共の通商代表機関日本にできます場合にも、まあ中共は国柄が違いますから、そういったような機関の職務に当る人は、向うではおそらく役人で、政府の職員であると思いますが、日本に参ります場合には、民間レベルの資格において来てもらいたいというのが日本政府側の現在の考え方でございます。で、民間レベルの人として参られる場合におきましては、日本の国としては外国人登録法に基きまして、いかなる国の国民に対しても一律に登録をいたしておりますので、中共との特殊事情にかんがみて、中共の人だけについて指紋を免除し、外国人登録法の適用を除外するということは、ほかの国の国民に対する影響が非常にございますので、法務省側としてはやるわけにいかない、こういう建前に立たざるを得ない次第でございます。ただ、その場合に、将来いろいろな折衝が重ねられまして、今度日本からも中共に行かれる人があるようでありますが、いろいろな折衝の結果、外務省が、中共から日本に設けられる通商の機関に対して、公務員としての入国を認める段階が起きますならば、それは外交機関及び公務員の入国を日本国が承諾した者については、各国とも一律に指紋を免除いたしておりますから、やはり同様の取扱いになると思うのでありますが、現在のところでは、まだ外務省の方ではそれだけの踏み切りもないようでございますから、法務省といたしましては、あくまで各国民に対して同一の取扱いをする以外には方法がないと、こういう建前に立っておりますような次第でございます。
  163. 秋山長造

    秋山長造君 まあ今の御答弁は、法務省の事務当局としてのお考え方だと思うのです。私あえて大臣にお尋ねするのは、そういう形式的な問題でなしに、やはり先ほども局長や次長にお尋ねしたのですけれども、これはやつぱり事務的には今おっしゃるようなことだけれども、やはり今のこの問題はもっとハイ・レベルの、政治的な問題なんです。やつぱり政府の方で、その扱いは政治的に決定されれば事務当局としてはそれに従うと、こういうようなお話だった。私もそれはそうだろうと思う。だからそういう高いレベルでの国務大臣としてのお考えを私承わりたいと思って質問したわけです。
  164. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 実はこの点につきましては、外務大臣、通産大臣、私どもで今まで協議をいたしたこともあるのでございますが、中共との国交が開かれていない現段階でございますから、公式の機関として認めることは、いわば暗黙に国家の独立承認をしたような本質にも入って行く傾向になりますので、この点は十分慎重を期してその取扱いをいたしたいので、まだ各関係大臣間における協議におきましては、公務入国を承認するまでの結論を得ておらない次第でございます。
  165. 秋山長造

    秋山長造君 公務とはっきり認めるということについて難点があるということは、政府の立場としてわからぬでもないのですが、しかし公務に準ずる、あるいは公用に準ずるというようなワクで考えてみようというお考えがあるのじゃないですか。せんだつて、岸総理大臣予算委員会でそういうような答弁をなさつてつたのを私拝聴したのですが、その点はいかがです。
  166. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 実はまだはっきりした結論を得ておりませんが、関係大臣間におきまして、十分この点は今後研究をして、適当な結論を得たいと、かように考えております。
  167. 秋山長造

    秋山長造君 それから、最後にもう一点お尋ねしますが、これはこの法案と直接関係はないのですけれども、相馬ケ原の例の問題です。あれは先月の二十六日でしたか、第二回の裁判管轄権分科委員会があったはずです。あなたの方の秘書課長がそれに出席されたはずなんです。第一回の分科委員会がありました直後、秘書課長にこの委員会に出席してもらいまして、第一回の分科委員会の様子と、それから今後の見通しということについて話を聞いたわけです。そのときの話では、大体もう第二回、三月二十六日の分科委員会で結論が出るような話を聞いておつたのです。そしてその第二回の分科委員会の結果については、またこの内閣委員会に報告をするという約束だったのです。ところが今日までその約束を果されていないし、それから第二回目の分科委員会の様子というのは、新聞等にも全然報道されていない。直接にも間接にも私どもは聞いていないのです。この点はどういうようになっているのか、法務大臣御存じだと思いますので、この機会に一つお伺いしておきたいと思います。
  168. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) これは多分きょうの午後と思いますが、裁判管轄の分科委員会が両国の間にあるはずでございます。そこで、今度の委員会で結論が出せるようにということで、私の方の委員長であります津田秘書課長に、数日来私話をしておるのでありますが、どうも前回の模様から見ると、きょうももう幾日か待ってくれということになるのじゃないかというのが、昨日あたりになってからの津田委員長の大体観測でございます。なぜそういうふうに、この前の分科委員会のときにも結論が出ないのかということで、私もいろいろ確めてみました。津田分科委員長の話では、津田君自身もアメリカ側の分科委員の方へだいぶ織りたたんで突つ込んだらしいのです。もう結論が出なければならない時期ではないかということを追及したようでありますが、先方の弁明としましては、全くこういう管轄の問題は新しいケースである。従来いろいろ管轄については、交通事犯、その他の事犯について争いになつたことはありますが、それらも大体解決をして、それぞれ一つの似たようなケースについての考え方というものはきまつてきておつて、その後は何にも衝突なしに管轄問題が解決してきた。相馬ケ原の事件は全く新しいケースで、アメリカ側としてはいろいろな機関に協議をしなければ、はっきりした結論の返答をしかねるのだ、こういうことであるそうです。各関係機関が非常に多いのだということを言っておるそうです。関係機関が多いということは、本国のワシントンの方へも問い合せなければいかぬという意味かと、こういうことまで津田君は突つ込んだらしいのですが、まあそこまで具体的には言いかねるが、関係機関に協議をして、その協議が整わないと確答をいたしかねるから待ってもらいたいというのが前回の会合であったそうであります。数日来、私その点を気にいたしまして確めておつたのでありますが、今日の会合に結論が出ることはむずかしそうである。また少くも数日は待ってもらいたいということになりそうだということでごさいました。いずれ今日の様子が、まだ私聞いておりませんが、明確になり次第、こちらの委員会にも適当な機会に御報告、御説明申し上げるようにいたしたいと、かように考えております。
  169. 秋山長造

    秋山長造君 どうもこの点、今の大臣お話しを聞きますと、最初、合同委員会が取り上げ、それを分科委員会に付託して、一回、二回、きょうで三回と、こう回を重ねてくる、この間のいろいろいききつを知っておるわれわれとして、今のようなアメリカ側の出方というものは、非常に意外な感じを持たざるを得ないのですね。第一回の約束のときにも次回まで待ってほしい。必ずそれまでに意見をまとめておくからということで第二回まで待たされた。それがまた今日に至っても、また次まで待ってくれというようなことで、ただ協議するのだ、協議するのだというようなことで、これをこのまま放つておいていいものだろうかと私思うのですがね。こういう場合には、なるほど分科委員会でやつていることではあるが、事は非常に緊急を要する問題なんですが、政府対政府の関係で、何か別な、これこそハイ・レベルで早く解決をつけるように促進をするような努力がなされてしかるべきじゃないか。全然もう日本側は法務省の秘書課長にまかせつきりということで、この問題を一日延しに延して行かれるということは、いろいろな面から考えて私は非常に遺憾だと思うのですがね、どのようにお考えになっておりますか。
  170. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) ただこの点は、犯罪の実態と、それから主として法理論的な問題になると思うのです。政治的に妥協すればいいという問題でありませんから、できるだけ私どもとしては、そういう法律知識のある両国の専門家によって、単なる妥協とか、話し合いでなしに、明確な筋を通してきめておく必要があるのではないか。今後こういうことが二度と繰り返されることは絶対に避けなければなりませんし、あつてはならないことと思いますけれども、一つのやはり新しい取扱い上の基準になることでありますから、できるだけこちらの事実として主張すべき点、法理論的に主張すべき点、これを主張いたしまして、その筋を通して明確な結論を得るようにいたしたい。今までさように考えておつたわけであります。しかし思うように近近のうちにどうしても解決つかないということであれば、両国のハイ・レベルの機関において何とか解決について処置をしなければならないかもしれませんが。また、私どもとしては、担当者がそういうふうにむずかしいという見通しのようでありますが、ごく近々のうちに結論が出るならば、そういうふうな方法で結論が出ることが好ましいことである、かように考えておる次第でございます。もし、いつまでもずれて参りますような情勢になるときが万一ありましたら、さらに私どもとしては適当な考えを、お説の通りしなければならないかと、かように考えております。
  171. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 時間の関係で、一点だけ大臣にお伺いしますが、日中両国の関係が、地理的、歴史的、また政治的、経済的に見ても非常に緊密な関係にあると思いますが、特にまた通商代表部というような面で貿易の伸展が考えられているわけですけれども、そういう面で、通商代表部に、先ほどの指紋の件ですが、指紋をとるというようなことは、友好親善の上からも、貿易伸展の上からも、決してプラスにならぬと思うのです。しかも出入国管理令の十四条三項を見ますと、「指紋を押なつさせることができる。」、任意法になっている。ぜひしなければならないということになっているわけではない。この法令を見ますと、はっきり、「押なつさせることができる。」、しなければならない」じゃないのです。任意法になっているわけですね。これは間違いないでしよう。任意法でしよう。あなたの方からいただいた資料です。そういうことになりますと、あえて中国の通商代表部に、任意法であるものをたてにとつて、指紋を押させなければならぬというような考え方については、十分これは是正をしていただく要があろうと思うので、そういう点について、大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
  172. 下牧武

    説明員(下牧武君) 私からお答えいたします。指紋押捺の根拠法は、外国人登録法第十四条でございます。それによりますると、「外国人は第三条第一項、」、これは新規の入国の場合、それから「第六条第一項、第七条第一項又は第十一条第一項の申請する場合には、」、切りかえの申請あるいは再交付の申請、そういうものをいたします場合、登録証明書の期間が切れまして、それの切りかえの申請、あるいはそれを紛失したような場合に再交付の申請をする、そういう場合には、「登録原票、登録証明書及び指紋原紙二葉に、指紋を押なつしなければならない。」、これが根拠法でございます。外国人登録法によって一律に、外国人はこの切りかえ、登録証明書の新規登録をいたします場合は、六十日をこえて本邦に滞在する場合に、そういう義務を生じますので、六十日をこえて本邦に滞在する外国人は、この規定によって全部指紋を押さなければならない。そこで、外交官と公用旅行者は、先ほど大臣が申されました通り、国際慣例として免除している、こういう関係になります。今御指摘の条文は、これは管理令としての規定で、寄港地上陸の場合に指紋押捺をさせることができるということで、いわゆる指紋押捺の問題は、この管理令の問題ではございませんで、むしろ外国人登録法の第十四条の問題になる、こういう関係にございます。
  173. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 別に御発言がなければ、質疑は尽きたものと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御意見がなければ、討論は終局したものと認めます。  それではこれより採決に入ります。法務省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  174. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成その他自後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  175. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名    伊藤 顕道  迫水 久常    木村篤太郎  苫米地義三    松岡 平市  大谷藤之助    上原 正吉  秋山 長造    竹下 豐次
  176. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 委員会はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会