運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-08 第26回国会 参議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月八日(金曜日)    午後一時三十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     亀田 得治君    理事            上原 正吉君            大谷藤之助君            秋山 長造君            竹下 豐次君    委員            松岡 平市君            荒木正三郎君            伊藤 顕道君            田畑 金光君            八木 幸吉君   国務大臣    国 務 大 臣 小滝  彬君   政府委員    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁教育局長    事務取扱    都村新次郎君    防衛庁人事局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 北島 武雄君    防衛庁装備局長 小山 雄二君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○防衛庁設置法の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査) ○自衛隊法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○国の防衛に関する調査の件  (強行軍による自衛隊員死亡事件  に関する件)   —————————————
  2. 亀田得治

    委員長亀田得治君) これより内閣委員会を開会いたします。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案両案を便宜一括して議題に供します。  まず提案理由説明を願います。
  3. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) 防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要について御説明申し上げます。  最初防衛庁設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  政府は、現下の情勢に対処し、わが国の国力と国情に応じて防衛力を整備する必要があることを認め、防衛庁職員定員を八千四百九十八人増加することといたしました。すなわち、現在の定員二十一万五千三人を二十二万三千五百一人に改めようとするものであります。この八千四面九十八人の増加分のうち、六千九百二十三人が自衛官で、残りの千五百七十五人が自衛官以外の職員であります。自衛官増加分は、千四百三十人が海上自衛官、五千四百九十一人が航空自衛官でありまして、海上自衛官にあっては、新造されまたは米国政府から引き渡される予定の艦艇の就役及び航空部隊整備充実等のため必要となる要員であり、航空自衛官にあっては、航空集団司令部新設、二航空団増設等のため必要な要員であります。  第二に、技術研究所が、部外からの委託を受け、技術的調査研究、考案、設計、試作及び試験を行うことができることとする必要を認め、その事務支障のない限りこれを行いうることとし、所要規定を整備することといたしております。  次に自衛隊法の一部を改正する法律案について申し上げます。  第一に海上自衛隊乗艦訓練のため練習隊群新設するとともに、警戒隊群を廃止してこれを自衛艦隊編成から除くこととして、その編成を改めるほか、航空防衛力整備増強のため、航空自衛隊に二航空団を基幹とする航空集団新設するとともに、二航空団を増設する等の規定をしております。  なお、航空集団新設に伴い、長官は、必要があると認める場合には、航空集団司令補給処長又は病院長指揮監督させることができることとする等所要の改正をいたしております。  第二に、防衛出動または治安出動を命ぜられた場合または海上における警備行動災害派遣訓練その他の事由により必要がある場合には、特別の部隊編成することができることとなっていますが、今回さらにこれらの場合において、特別の部隊新設するまでの措置をとることなく、所要部隊をその隷属する指揮官以外の指揮官の一部指揮下に置くことができることとし、事態に即応した自衛隊の一体的かつ能率的運用をはかることといたしております。なお、この措置により、特別に編成される部隊または同一指揮官の下に置かれる部隊が、陸上自衛隊部隊海上自衛隊部隊または航空自衛隊部隊のいずれか二以上からなる場合、その部隊に対して行う長官指揮監督について幕僚長の行う職務に関しては、長官の定めるところによることとしております。  第三に、当分の間、自衛隊任務遂行支障を生じない限度で自衛隊以外においては、その養成または教育訓練を行う施設がないと認められる一定の技術者養成または教育訓練委託を受けて、これを実施することができることとして、所要規定をいたしております。  以上両法案の提案理由及びその内、容の概要を申し上げた次第であります。なにとぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
  4. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 二月の初旬に行われました、広島県の原村演習場附近における筑三管区隊徒歩行進によりまして起りました不幸な事件につきまして、事故概要を御説明申し上げたいと思います。  今回第三管区隊で行いましたこの演習目的は、普通科部隊徒歩行進能力を強化いたしまして、強靱なる持久力養成することを目的としたものでございます。  この演習の根拠は、陸上自衛隊部隊等における訓練に関する訓令昭和三十年陸上自衛隊訓令第三十一号、及びこれに基く達によるものでございます。  この演習共通基本訓練と申しまして、新しく隊員が入りました際に二カ月半の基本訓練をいたしますが、その際は一日二十キロメートルの徒歩行進をいたし、これを終って露営をする能力を養うことにしております。この共通基本訓練の過程及びその後さらに二カ月半行います本技基本訓練、これは一日三十二キロの行進をいたしたのちに防衛能力を有することを目的といたしております。本技基本訓練及び部隊訓練分隊訓練小隊訓練中隊訓練大隊訓練、さらに野外機動訓練というのがございまして、この野外機動訓練におきましては相当遠距離の徒歩行進実施することにしておるのでございます。この三段階訓練を経ましたのち、経ました隊員に対する補備訓練段階において行いました訓練でございます。  訓練計画につきましては、先ほど申し上げました昭和三十年の訓令三十一号に基きまして、三十一年度の計画といたしまして昭和三十一年の一月十九日に陸上自衛隊一般命令をもちまして、昭和三十一年度の教育訓練実施に関する命令が出ております。この命令及びこれに基く達によって計画が立てられたものでございます。  この築三管区計画広島原村演裡場附近七十七キロメートルの徒歩行進競技でございまして、隊員装備等の重量は約三十キログラムでございます。第三管区隊の各普通科連隊よりの選抜大隊によってこの徒歩行進競技を行なったのでございまして、右の選抜予選により決定をすることにいたしまして、この予選をもちまして、管区競技会予備訓練とするという計画でございました。  次にこの計画決定に至りますまでの経緯について申し上げますと、第三管区昭和三十年の十月末から十一月の初めにかけまして、管区の各連隊が滋賀県の饗庭野演習場におきまして野外訓練実施したのでございまするが、その機会におきまして饗庭野から比叡山に至る七十二キロメートルの徒歩行進競技を行いましたその経験をもととして、今回の計画を立てておるのでございます。昭和三十年の徒歩行進競技には、第三管区隊の全普通科大隊二千九百名が参加をいたしまして、小雨の中を決行いたし、落伍者二十六名が出ております。ただし、これらの落伍者はいずれも事後の訓練支障を生ずる程度のものではなかったようであります。今回の計画昭和三十一年度の計画といたしまして初め第三・四半期考えておられたことでございますが、第三管区検閲等事情によりまして、第四・四半期特殊訓練として実施し、この場所も昨年の比叡山にかえまして廠舎の利用が可能であり、天候の比較的安定をいたしておりまする広島県の賀茂郡原村付近とし、かつ各連隊からの選抜大隊によってこれを行うことにいたしたのでございます。この徒歩行進競技に当りましての審判基準として計画いたしておりまするものは、参加率速度落伍率規律維持、隊が隊伍を正々と、あまりだらだらしないで行進をするかどうかというその規律維持、こういう点を審判基準として計画をいたしております。計画実行に当りましては第三管区隊といたしましては、現地を反覆細密に調査をしておりまして、夜間行進に備えまして道路の補修あるいは石灰等による標識の設置というふうなこともいたしております。事前予行演習実施によりまして逐次体力を増進して参りまして、不適格者をそれによって除いていくという考慮も払っております。事前健康状況調査につきましては、昭和三十一年の十一月に定期健康検査をやっております。そのほか問題の起りました第七連隊について申し上げますると、一月の二十一日に予行訓練ののちの劇務休調査をし、一月の二十九日には不適格者を申し出によりまして医官検査を受けさせまして除いておるのでございます。第七連隊について申しますると、二十四名受診をいたしまして十五名を不適格として演習参加させないようにいたしております。一月三十日に隊長が医官を同行いたしまして隊員の問診と視診をいたしております。  さらに救護措置につきましては、この七十七キロの徒走行進区間のうち二カ所に救護所設置いたしておりまして、そこには医官一名、救護員六名を配置し、ジープ一両と救急車二両を配属しております。さらに各大隊後尾収容班を配置いたしておりまして、この収容班には医官一名、救護員二名が配属になりまして、ジープ一両と救急車一両をもって後尾を追随して参っております。  次に給食の関係について調べてみますると、二月の五日の夕食時に加給食といたしまして氷砂糖及び大福もち等を与え、同夜二十三時三十分ごろに暖かい牛乳一本とあん。ハン三個を与えることにいたしております。六日の朝食は四時ごろ、昼食はおおむね十時ごろというふうに準備をいたしておりました。  次に演習実施状況について申し上げます。まず気象の状況から申し上げますると、二月五日は午前中薄曇りでございましたが、午後二時ごろから小雨になりました。夜間は雨、ときどき風やや強く屋外では寒けを感ずる程度でございました。温度は七度から八度というふうになっております。二月六日は午前は小雨やや寒いという状況でございます。午後は雨が降ったりやんだりという状況でございまして、気温は明け方が七度から八度、十時頃になりまして六度に下っております。雨量は両日を通じまして合計約二十ミリぐらいということでございます。  次に道路状況を調べてみますと、行進開始道路は雨にぬれましたが、水たまりを生ずる状況ではございませんでした。ただし一部戸坂附近及び前代本郷の区域には若干のぬかるみを呈する部分があったのでございます。行進開始に当りまして統裁部のとった措置を調べてみますと、統裁部開始前に予定のコースをだいぶ変更いたしております。すなわち標高八百メートルの野路山を当初通る予定にしておったのでありますが、天候状況考えまして、野路山を避けまして平坦路行進することに変更いたしております。また管理支援要員休憩点に先行させまして、採暖及び喫食の準備をいたさせております。さらにいよいよ行進を始めるに至りましては、事故の防止につきまして事故を出しては元も子もない、無理をしてはいけない、各人の状態装備等を再点検し、体の不調な者を排除しておけ、危険な個所に注意しろ、自分部隊能力に合せて歩け、そのペースを守れ、他の部隊に牽制されてはいけない、速度にとらわれるな、遅くとも堅実に最後まで団結を維持し正々と歩く部隊がいいのだという注意を与えておるのであります。  行進状況について申し上げますと、三個連隊からそれぞれ一個大隊選抜してこの行進参加したのでございまして、一番最初に出ましたのが策十五普通科連隊でございます。この第十五普通科連隊は五口の十六時三十五分に原村出発点を出ております。そうして六日の十二時二十四分に到着いたしております。所要時間は十九時間四十九分でございました。参加者は三百三人でございましたが、一名の落伍者もございませんでした。第二番目に出ましたものが第八普通科連隊でございます。第八普通科連隊は十七時五十九分に出発をいたしておりまして、翌日の十三時三十七分に到着をいたしております。この所要時間は十九時間三十八分でありまして、参加者二百五十一名のうち落伍者が十名でございます。問題の第七普通科連隊最後出発をいたしておりまして、この出発時刻は十九時三十一分でございます。そうして翌日の十三時四十三分に到置をいたしております。その所要時間は十八時間十二分、参加者一旦一千三名でございまして、落伍者は四人出しておる状況でございます。  行進状況を調べてみますると、出発降雨量を増しまして、途中の水越—安登、約半分を少し行った所でございますが、その辺におきまして最も激しかった状況でございます。演習統裁部におきましてはさらに雨が激化いたしますれば、岡郷附近、今の安登を少し参りました約四分の三くらいの所でございます、岡郷附近行進を打ち切るという方針のもとに、そこから廠舎までの輸送の準備を進めたのでございますが、夜が明けまして雨が小降りになりましたので、計画通りこれを実行したのでございます。部隊到着後に直ちに集結をいたしまして、行進終了後の身体の不工合のものを点検いたしまして、十一名を救護所に収容いたしましたが、この十一名のうち虫垂炎の者一名を除きまして他は翌日それぞれ原隊に復帰いたしております。この行進競技の結果の優勝は所要時間は長くかかりましたけれども、落伍者出ず隊伍正々と参りました第十五普通科連隊でありました。  次に千頭曹及び岸上士長、この御両人死亡されたのでございますが、この御両人死亡に至るまでの状況について御説明申し上げます。  まず千頭君でありますが、千頭君は昨年十一月の身体検査当時は異常はございません。十一月以降この連隊は三回の予行演習をやっておるのでございますが、この予行演習も無事に終了いたしております。五日の夕刻出発点を出まして六日の午前三時三十分ごろ、途中の宮原附近、約行程中間でございます宮原附近に参りました際に、右足全体が重く、足が前に出ないということを中隊長に申し出ましてジープに乗車いたしたのであります。ジープに乗車いたしましてしばらく進んでおりましたが、四時から四時二十分ごろの間、この部隊附近朝食をとっております。千頭君はこの朝食疲労を回復したと言って原隊に帰りまして歩行を続けております。途中ジープに乗ったり、またおりて歩いたりいたしておりまして、進行を続け全行程の約三分の二に当ります中畑附近歩行中、疲労を増し、同僚からあと押しをされて進んでおります。そうして約四分の三に近い岡郷附近から再びジープに乗車いたしております。岡郷から約一・七キロ進みました樋詰附近で、これは約十時四十分ごろでございます。介添えを受けまして統制点通過いたしました。統制点と申しますのは、この七十七キロの行程の途中に六個の地点を設けまして、その地点を歩いて通らない者が落伍になるということにしておったのでございます。統制点介添えを受けまして通過をいたし、十一時ごろジープに乗車し、その後樋詰北方一キロメートル附近容態が急におかしくなりまして、救護員応急処置をいたしますとともに医官に急報いたしました。医官が参りまして連続強心剤の注射をいたしましたが、重態でありまして、西条国立広島療養所救急車に乗せまして向う途中、十一時二十五分西条字田口道路東側で、車中急性心臓衰弱死亡されたのであります。  次に岸上君について申し上げます。岸上士長は十一月の身体検査当時は異常ございません。一月以降の予行演習では、三回やりましたうち、初めの二回は参加いたしておりません。最後の一回に参加いたしておりますが、この演習では落伍はいたしておりませんけれども、約四キロメートルほどジープに乗車した事実がございます。今回の演習に当りましては、五日の夕刻出発をいたしまして六日の午前四時四十分ごろ川尻附近、先ほど千頭君について申しました宮原よりか少し前進したところでございます、川尻附近の川岸の河岸道を通行中、石につまずいて転倒いたしました。その後行進速度がおくれがちになりましたので、小隊長ジープに乗車させて行進を続けております。さらに進みまして安登岡郷樋詰それぞれここに統制点があったのでありますが、これらの統制点同僚援助によりまして通過をいたしております。そうして十時五十五分から十一時半までの間、この部隊樋詰を少し越えまして中郷との中間昼食をいたしておりまするが、この昼食時には同僚とともに食事をとりましたほか、鶏卵二個を喫食いたしております事実がございます。その後さらにジープに乗車いたしまして行進を続けまして、中郷統制点に参りました。これが最後統制点でございますが、この統制点でも他の統制点と同様に同僚援助を受けて通過をいたしております。そうして十二時二十分に再びジープに乗車いたしまして、そのまま最後目標地点に午後一時四十三分に到着をいたしました。この目的地では同僚に拘かれてジープをおりておりまするが、この容態が異常であると見まして、医官が診断をいたしましたところ重態でございました。そこで直ちに救護所に収容いたし手当を加えまして、西条町の国立療養所に送る処置をとったのでございますが、八本松町の同救護所内におきまして十四時十分急性心臓麻痺により死亡されたのでございます。  以上がその大要でございます。
  5. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 本件に関し御質疑のおありの方は順次御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  6. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて。
  7. 田畑金光

    田畑金光君 小滝長官にお尋ねいたしますが、この事件について長官としてはどういうようにお考えになっておられますか。
  8. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) 私就任早々このようだ不祥な事件が起りましてまことに申しわけないと感じまして、ぜひこういうことが再発しないように最善を尽さなければならないと考えておる次第でございます。つきましては、この事件につきましてもただいま人事局長から説明いたしましたが、一応こうした状況調査いたしました上に、特にこの不幸な犠牲者を出しました点についてその原因、また当時の実情等をよく踏査するために防衛庁の本部の方からもいろいろ人を派遣いたしまして、この事情を大体調査を終了いたした次第でございます。従いまして、今後自衛隊国民からほんとうに信頼される姿でなければならないので、このような事件について責任のあった向きにつきましては、十分これに対して調査の上最も適切なる処置をとりますると同時に、今後こういうことの再発しないように、いろいろ各地に分散しておりまする各自衛隊部隊に対してこういうことのないような指示を与えるべく、いろいろその指示内容についても検討いたしておる次第でございます。これまでもすでにこの事件各地に通報いたしまして、こういう事態の起らないように注意するということは指示いたしておりまするが、さらにこれが再発を絶対にないようにするためには、もっと詳細な指示も与えなければならないと存じまして、そういう事態についても検討いたしておりまするし、さらにまた近いうちに地方に分散いたしております各自衛隊責任者を東京に招集いたしまして、十分私もひざを交えていろいろ話し合いまして、その士気を阻喪させないと同時に、こういう問題の絶対に起ることのないような細心の注意をするように十分警告を発し、またそれについての資料を与えたいという考えで進んでおる次第でございます。
  9. 田畑金光

    田畑金光君 今、加藤局長から報告がありましたが、報告を聞いて感じましたことは、まことにこれは今の戦後の日本の社会のもとで、しかもいろいろ憲法論議等もかわされて、その中から現実に出てきておる事例等の中でこのような事態がまさかあるとはわれわれも想像していなかったわけです。特にこの犠牲者の二人の最後の終末の状態を聞いておりますと、ジープに乗せられていた、そうして統制点の前に来るとおろして同僚から支えられてあるいは引っ張られて、また統制点を出るとジープに乗せて目的地に向った、まあこれあたりはちょっと想像以上のものが実感として伴ってきたわけです。こういうあり方に対して長官としてはどのようにお考えになりましょうか。
  10. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) まあ最近におきましては、いろいろ新しい兵器もありまするし、進歩したいろいろな車両もありまするが、普通科部隊というものはもちろんこうした方針訓練もしなければならない。従いましてその忍耐に耐え得るという方面の訓練が必要でありますが、しかしながらそれが実際の体力をこえて、ことに今度のような事態を起すようなことをやるということは、これは決して国民の信頼を受けるゆえんでもないし、またそれは現在のような志願の制度によって自衛隊を構成しておりまする際には、ことのほかりっぱな青年に入ってもらう機会を失うおそれさえあるわけでありまするから、こうした点については厳重注意をいたしまして、こういうことのないようにいたしたいと考える次第でございます。  今の説明にもありましたように第一連隊、第十五連隊最初に出ました連隊またその次の連隊の方は無事故で済んでおる。なるほどまん中に挾まれた部隊の方は落伍者は出たかもしれないけれども、とにかくきちんとした規律で進んでいる。ところが最後の第七連隊の第二大隊の方は、どうも訓練を真剣にやろうという心がまえにおいては間違いはなかったかもしれませんが、その実行に当りまして妥当性を欠いておったのじゃないか、行き過ぎがあったのじゃなかろうかというように考えまして、大体そうした調査に基きまして、この責任者に対しても十分適当な処分をいたし、またこういうことのないようにもっとこれまで以上に詳細な指令をむいたしまして、こういうことの再発のないように努めたいと考えておる次第でございます。
  11. 田畑金光

    田畑金光君 このような事実が発生した以上は、たとえ訓練から出たものといたしましても、当局としても十分反省されておると思いますが、世にいわゆる倒れて後やむ精神の具体的な現われであって、あたかもこれが賞賛すべき事件であったかのごとく見ておる人方もあるわけです。また敢闘精神の現われである、こういうようなことで賞賛されておる向きもあるようでありますが、長官はこういう事実を見られて敢闘精神として賞賛すべきであると判断されるか、倒れて後やむ気持の現われとしてこれをたたえられるというお気持であるか、どのように判断されていましょうか。
  12. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) 敢闘精神の現われであるというようなことをいろいろ言われた人もあるかに聞いておりますが、これは一になくなられた方が非常に責任感を持って自分任務を全うされようとしたという意味において、なくなられた方に対して敬意を表される意味で申されておることだろうと私想像いたします。私といたしましてはこのような無理をいたしますということは、各自衛隊員基本人権にも関することであって、こういうことは絶対にないようにしなければならないことで、今のもしそういうような気持があるとすれば、これはあくまでも根絶するようにわれわれの方で適当な指導を加えなければならないという考えでただいま進んでおる次第でございます。
  13. 田畑金光

    田畑金光君 そういたしますと、長官としてはこのような行為あるいは度を過ぎた訓練というものは決してほめたものではない、倒れて後やむ精神、あるいは敢闘精神などと言ってほめられたものではない、こういう判断で、お気持でおられるわけですね。
  14. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) 大体その通りでありまして、訓練ももちろん必要でありまするが、部隊として十分のことはやらなければなりませんが、そういう度を過ぎたことは排撃しなければならないという気持で進んでいるわけです。
  15. 田畑金光

    田畑金光君 そのような気持であるならば、私も全く同感であるわけであります。ことに長官並びに塩原次長並びに加藤局長、いずれも文民の各位であり、良識を持っておられる各位であるわけです。しかしながら、この事件が起きました直後に、私たちは新聞でこれを見たわけでありますが、長官指揮下にある最も有能な陸上幕僚長の筒井竹雄陸将は、倒れて後やむ精神としてこれをほめている。あるいはまたこの演習を直接統裁された第三管区幕僚長の橋詰一佐は、部隊では賞賛の的になっている、まことに責任観念の強い態度であるというような考え方でいるわけです。そうしますと、文官である長官以下皆さん方の気持と、直接制服を着ておられるその人方訓練に対する考え方等々というものは、相当隔たりがあると私はお見受けするわけですが、そのように見てよろしいかどうか。
  16. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) 先ほどちょっと私言及いたしましたように、この言葉の表現は多少違っているようでありますが、あるいは今申されましたようにとれる発言があったかに思いまして、私も陸幕の幕僚長にただしてみたのでありますが、先ほど私が説明いたしましたように、決して死んでもやれという意味で言ったのじゃなくて、このなくなられました故人に対した敬意を表するという意味で言ったので、何も他意があるわけではないというようにるる説明しておったのであります。私はこの責任ある地位の連中が、そういう今御指摘のような気持で申したものじゃないと確信いたしておりますが、しかし御承知のように、戦前の軍隊にいた者も相当加わっていることでございますから、こういう間違った考えがかりにあったら大へんでございまするので、これは紙きれの上で指示をしただけじゃなかなかわかりにくいことかもしれませんから、よく意を尽してそういう点を説明して十分考えてもらいたいと思いまして、先ほど申しましたように東京において、普通の日はいろいろ委員会で忙しいものでありますから、日曜に全部に集まってもらって、私の真剣な気持をみんなに伝えて、こうした精神を体してもらうような措置をとりたいと思う次第であります。
  17. 田畑金光

    田畑金光君 この事件が起きましていろいろ長官としても心痛されたようでありますし、また増原次長以下統幕も大へん心痛されて、それぞれ現地に中央から調査に派遣され、調査の結果に基いて適切な措置をとられる、特にこの事件において責任をとるべき、あるいはとらすべき地位にある人に対しては、それぞれ相応の措置をはかるというようなことも私たちは伝え承わっておりますが、この点に対しましてどのような措置をとってこられたか、承わりたいと思います。
  18. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) この不幸な事件が起りまして、長官は非常に御心配になりまして、すぐに管下の部隊に対しましては訓令をされておりました。こういうことのないように注意しなければならないということを厳命せられております。この事故の原因の調査につきましては、当初監察隊及び人事当局の者を派遣いたしまして、東京の方で直接調べを始めておったのでございますが、その後調査に従いましてだんだんと事件が複雑になり、かつ新聞等に掲載せられましたごとく一部暴行事件のようなこともあったというふうなこともありましたので、警務隊を派遣いたしまして、警務官をして厳重なる調査をさせておる状況でございます。先ほどの大臣の御説明のごとくほぼ調査も完了いたしまして、近い機会にこの責任者の追及に関する、追及と申しますか、責任者についての処断をいたしたい、かように考えております。
  19. 田畑金光

    田畑金光君 警務官が調査されて大体調査も最終にきた。その結果に基いて責任者についてはそれ相応の措置をとられる、こういうようなお話でありますが、大体それはいつごろになる見通しでありまし、ようか。特にまたその捜査に当って、どのような観点から、この事件を当局としては究明されるように指示しておられるのでしょうか。この点について、どういう観点に立ち、どういうような角度から事件の本質を究明されておられるのか、この点を承わりたいと思います。
  20. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 再びかような事件を起してはなりませんので、こういうふうな事件を起した素因がどこにあるかということにつきまして、計画段階実施段階、また直接部隊を指揮して参りました者と、三段階に分けまして、それぞれ専門的な見地から調査を続けて参っておるのでございます。処断は数日中に行われることに相なろうと思います。
  21. 田畑金光

    田畑金光君 この事件を境といたしまして、特に世論が批判検討を加えたのはもちろんでありますが、自衛隊の内部に、しかも事件を起した部隊の中に相当批判が起きてきた。あるいは幹部のやり方に対する不満が爆発してきたことは御承知の通りでありますが、ある者は、国会に出て証言に立ってもよろしい、こういうことまで言っていたことは御承知の通りであります。ところがいつの間にか、そういうことも世論から埋没していったわけですが、私は、こういうような自衛隊の中における士気あるいは軍紀というのかどうかしりませんが、規律、秩序の弛緩の問題、こういうことを考えたとき、今の自衛隊に何かしら欠けているものがありはせぬかとこう思うのです。おそらく新しく入ってきました自衛隊員というものは戦後の教育を受けてきた者でありましょうし、これを指揮する幹部の諸君というものは、今お話の中にもありましたが、多く古い軍隊制度の規律訓練を身に体した諸君が幹部になっておるわけです。こういうように指導幹部は古き日本の旧秩序を学んできたわけです。そういうように徹底した軍隊精神を植えつけられてきた諸君です。ところが今日、隊員として訓練を受けておる者は、新しい教育を受けてきた諸君です。この三つの断層が今の自衛隊の中に強く流れておると私たちは見るわけです。このように自衛隊の実態を考えたとき、私はこの教育訓練、あるいは自衛隊の方向というものをどのように持っていくかということは、実に大きな課題であると私は考えておるわけですが、長官はこういう自衛隊に対して一片の訓令を出されるだけで、ことが済まされるとは考えられぬと思っております。長官訓令であるからけんけん服膺して、その通り動いてくれるならばありがたいわけですが、昔のように詔勅の威力を持つならばとにかく、小瀧防衛庁長官がせっかく出された訓令も、なかなかその初志の通りには浸透すまいと思いますが、それはとにかくといたしまして、小滝長官としてはどういう精神的な支柱と申しますか、自衛隊を指導していくのにどのような考え方、精神的な柱を立てて指導されていかれようとするのか。また今申し上げた二つの、幹部級と兵隊クラスとの大きく違った断層、これに対しましてどのような調整をはかっていかれようとしておられるのか、その点を承わりたいと思います。
  22. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 自衛隊ができまして以来、御指摘のようにその中にはもとの軍隊におった人もありまするが、しかしこれらに対しましては、ただ単にそのままかつて教育があったから、出ていって部隊を指揮させるということではなく、十分幹部学校その他において教育をして、新しい精神を十分体得さして、そうして責任ある地位につかせるという措置をとってきているのであります。特に今こういうような問題が起った際で、私も自衛隊の方を担当することになりましたので、今御指摘のような、幹部と、そうして普通隊員との間に、ものの考え方の大きなギャップがあるというようなことでありましたら大へんでありますから、さらに今後もそうした指導訓練という点に重点を置いていきたいと思いまするが、戦前のようにただ幹部が著いつけたら絶対権力をもって下を抑えるというようなことは実際上としてもできないことでありましょう。昔のような義務でやられるものではないし、みんなが納得しなければほんとうの指揮監督もできないわけでありまして、その点は大体みんなわかっておるはずでありまするが、しかしそれを逸脱することがないように、現在の自衛隊というものはこの民主主義下においてほんとうに平和を守るためのものであり、そうしてこの国土を守るための任務を持っているのだという点につきまして、十分理解させる努力をしなければならないと思うのであります。これにつきましては私就任早々国民の皆さんに自衛隊任務自衛隊の実質というものをよくわかってもらうように、PR運動を盛んにしなければならないということを第一声として申したのでありまするが、この必要は外に対してばかりでなしに、内部の者がまずほんとうに自覚して、自分任務を自覚してかからなければならない。現在の自衛隊というものがいかなるものであるべきか、ということを自覚しなければならないのでありまするから、私はただ単に外部に対してのみならず、特にまず外部から信頼を受けるのには、内部をととのえなければならない。その意味において、ただ紙きれで何か指令をするとか、あるいは月刊とか、週刊の隊内で読まれるような雑誌、たとえば「朝雲」というようなものだけではだめであって、もっとほんとうに全部がこうした任務を理解するのには、視聴覚教育と申しますか、いろいろな方法で十分各個の人々が理解するような措置をとらなければならない。こうした考え方で、予算も限られておりまするけれども、私はいろいろ工面をいたしまして、こうした教育に特に力を尽したいと考えておる次第でございます。
  23. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 関連して長官にお伺いいたしますが、この問題は自衛隊法の以下申し上げる個条にも相当関連が深いと思うのです。第五十六条ですね、職務遂行の義務がここに明記してありまするが、読んでみますと、「隊員は、法令に従い、誠実にその職務を遂行するものとし、」、ここからが非常に大事な問題だと思いますが、「職務上の危険若しくは責任を回避し、又は上官の許可を受けないで職務を離れてはならない。」、そこで問題になるのは職務上の危険ですね。今この法文に当てはめますと、行軍隊中にあって目的地へ達する、それまでが職務になるわけですね、隊員から見ますと。そこで身に耐えられないそういう苦しさをもしのんでどうしても、そういう日ごろ訓練を受けておるわけですから、そういうところに相当の無理があった。また一方上官としては、これを昔のいわゆる軍隊がその事のいかんを問わず上官の命令には従わなければならぬ、旧軍隊ではそういう精神を、そういう訓練を強行したと思う。そういうところにこの問題が非常に関連があると思うのです。この五十六条ないし五十七条ですね、特に五十七条、「隊員は、その職務の遂行に当っては、上官の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」、ここで問題になるのが、今申し上げた、その事のいかんにかかわらずですね、ということであれば、こういう問題は絶えないと思うのですね。ただ上官が、その上官としての適格者であって、よくそういう点を了解しておればよろしいが、旧軍隊式な観念からそのことのいかんにかかわらず、もう一たん計画を立てたら死して後やむというような最後までこれを強行する、その事のいかんを検討しないで強行する。そういうところに問題があったと思うのです。これは非常に重大関連の内容だと思うわけです。この点について明確にお考えをいただきたいと思います。
  24. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) まことに仰せの通りでありまして、自衛隊は普通の官庁などと違いましてこういう部隊でありますので、この五十七条のような規定を必要とするのでありまするが、しかしその前提条件としては、最も良識のある指揮者として適格者でなければならぬというところが一番大事なわけであります。今度の件につきましても結局現地で当時の天候、あるいは実際の状況を判断して、そうしてこういう犠牲者の絶対に出ることのないような判断を下さなければならぬ。その指揮者の良識、またその人の正しい判断ということが最も重要でありまするので、その意味で先ほども申しましたように、幹部の教育というものには細心の留意をいたしまして、間違いのないようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  25. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 このことにさらに関連して、事件後上官が自衛隊の亀鑑であるというような意味のことを放言したり、先ほども御指摘のあったように、国会で真相を証言しようとする隊員の申し出があったにもかかわらずこれを押えた。こういうようなことについは自衛隊のあり方について十分再検討する必要があろうと思うのです。この点についてのお考えをいただきたいと思います。
  26. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) 私は何も亀鑑であるというようなことを言ったはずはないのですが、どういうことですか。
  27. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 新聞によりますとですね、長官ではないのです。上官がですね。
  28. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) 先ほど申しましたように、あるいはそういうような誤解を受けるような失言があったかもしれませんが、申した者はそうした趣旨ではなくして、気の毒なこの隊員の方に敬意を表するという意味で申したということであります。私はこうした誤解のないように、一つぜひこれからもしそうした考え方があればその考え方の根本を正さなければなりませんが、そうした言動についても十分注意をして皆さんの信頼を受けるような何にしなければならないと考えておるものでございます。
  29. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 私はこの死の行軍事件については二つの大きな問題があると考えておるわけであります。一つは人権問題としてそれ自身が非常に重大な問題であるという点、これは先ほどから田畑委員が指摘されておるわけですけれども、この人権の問題。それと同等もしくはそれ以上に重大な問題が考えられるわけであります。と申します意味は、たとえば旧陸軍が、あるいはまた海軍が比島や中国でああいう残虐な行為をやったと、そういうことが考えられておるわけですが、こういう軍隊がどうしてできたかということを検討しなきゃならぬと思うわけです。旧軍隊が一切の自由とか権利を奪われて、そうしてあのような牛馬にひとしいような訓練を受けてきたと、そういう兵隊があったことを思い起していただけば、この死の行軍を強制されるこの自衛隊が将来どういう行動に出るかということもまたあわせて考えられると思うのです。そういうような意味でこれは非常に重大な問題だと思うのですね。手っとり早く言いまして、結局大陸でああいうような残虐行為をやったということは、日ごろ旧陸軍や海軍がそういう日ごろの牛馬にひとしいような人権無視の行動を受けておった。そういう訓練からこれは生まれてきたと、そこに大きな問題がある。で、問題自体人道上の問題であると同時に、将来にそういう非常に憂慮せらるべき本質が残されておるという点、こういう点で二重な問題だと思うわけですね。この点についてどういうふうにお考えですか。
  30. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) ごもっともでして、そういうことを現に現在の自衛隊がやらしておるとすれば大へんなことでありますから、さっきから申しまするように、これまでのいろいろ訓令を私もずっと調べたのでありますが、今まで各部隊で出しておるものには相当詳細な規定を設けております。こういうように救護しなければならない、あるいは何についてはどうしなければならない、からだが悪いと訴えた者についてはそれは医師に診断させなければならない、相当微に入り細に入った指令も出ております。しかしこれは何としても、紙で幾ら書きましても、本人の精神考え方というものが大事でありますので、これはただ紙切れだけではいけないのでありましょうから、この点は特に今後注意していかなければならないものであろうと考えております。でありまするからそうした面につきまして、ただ単に固い通り一ぺんの訓令というだけでなしに、もっとわれわれの考えておるところを徹底させるような手段、それは単なる一種の訓令だけでなしに、いろいろな、手段を通じまして各人の自覚を促すようにしなければならない。こういう気持で進んでおる次第でございます。
  31. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 防衛庁でいろいろ苦心せられて、いろいろまあいい条件を作られて隊員を集められると、そうして一たん集めてみられても、隊員が銃をとる理由を本人が自覚するのでなければ、銃をとる理由隊員一人々々が自覚するのでなければ結局ものにならぬというような観点から、結局強制的に外部から自衛意識を注ぎ込むと、そういうことになろうと思うのです。そういうような一つの今度の問題は現われであろうと思うわけで、そういうようなことから、死ぬほど強い訓練を課すことによって、またこれは違う問題ですが、遺髪を切らしてこれを保存させる、そういうようなことにも関連があると思うが、こういうことによって逆に自己の任務がいかに重大であるかを悟らせよう、そういう一つの現われであるように考えられるわけです。遺髪と死の行軍をあわせて考えた場合、そういう点が明白にうかがわれるわけですが、こういうような点でこれを繰り返されることになりますと、ゆゆしい問題だと思うわけです。それでこの点について一つ長官のはっきりしたお考えを伺いたいと思います。
  32. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) 今、例として御指摘になりましたつめを切らしたとかあるいは髪を切らした、ほんとうに戦前の出征のときと同じような訓練をさしたということは、確かに行き過ぎと存じまして、私どももさっそく注意を与えてきたわけでございます。何分にも自衛隊ができましてから数年足らず、そうして今二十万にもなりましたので、その間に十分な基礎もできていないまま、そうした熱心のあまり行き過ぎた行為に出る者もなきにしもあらずでございまして、この点はなはだ遺憾に思っておりますが、私は、だんだんこうした努力を私どもが払っていくことによりまして、こうしたことを根絶することといたしたい、この決意で進んでいるわけでございます。
  33. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 なおお伺いしますが、防衛庁は最近誘導弾などの高級兵器をいろいろ要求したり、それから今回の死の強行軍、あるいはまた先般のC46の航空猛訓練からこういうようなことがうかがわれるわけですが、こういう一連のつながりのある仕事は、自衛隊訓練を昨今非常に強化しようと、そういうふうに受け取られるわけです、一応は。非常に猛訓練を急がれておる、そういうふうに考えられるのです。防衛庁としては、憲法で保障されている人権尊重の点についてはどういうようにお考えか。こういう点はやはり現行憲法で明白に人権尊重をうたっているわけですから、先ほどの五十六条、五十七条との関連があるわけですが、こういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  34. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) われわれは、もちろん行政関係に携わっている者は、ことのほか憲法の条章を守らなければならないことは当然でございまして、憲法に規定されております自由、たとえば人権というようなものを侵害するというようなことは絶対にあってはならない。これはもちろん根本的な自衛隊における規律以前の最も大事な基礎でございまするので、いやしくもそれに反するようなことをさせるという意思は毛頭持っておらないことは申し上げるまでもないところであります。特に訓練を急いでそうした重大なあやまちを犯すということになれば、せっかく自衛隊をりっぱに作り上げようという意途が葬り去られることになることは当然でありまして、先ほどから申し上げますように、ほんとうに皆から信頼されるような自衛隊にならなければならない。そういたしまするならば、ただ功を急ぐということによって、かえってその結果において国民の反感を買うということでは、ほんとうの使いものになる自衛隊はできないわけであります。こういう意味で、私は最近C46の事故が起ったのも非常に遺憾に思っておりますが、必ずしも訓練を急いだという結果ではなく今調査中でございまして、結論的なことは申されませんけれども、いわば不可抗力と申しまするか、天候に災いされてああいうようなことになりました。こういうようなことが、かりにその状況が急に変じたためにそうなったといたしましても、これもまた自衛隊に対する疑惑を起す原因にもなるおそれがあると思いまするので、こうした点についても十分留意をいたしまして、自衛隊が健全に発達するように最善を尽したいと考えておるものでございます。
  35. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 現行法では証言を申し入れた隊員を説得するだけで、これを服務規律違反では処罰ができないと思うのですがね。そういう説得だけなんです、今は。証言を申し出た隊員がおったわけですね、これは説得して中止させたと思うのですけれども、服務規律では違反として処罰できない、そういうことで法を強化するような動きが内部であるように、二月十二日の「日経」で拝見しておるのですけれども、こういう事実はあったかどうかという点ですね、もしあったとしますと、今私が指摘した人権無視という点で一つの問題点だと思うわけでありますけれども、そういう事実がありましたかどうか。二月十二日の「日経」で拝見したわけですけれども。
  36. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 私どももそういうふうなことがあったやに実は新聞で承知しておるのでございます。ただ防衛庁としましては、長官が他の機会に申されましておりますごとく、この事件防衛庁を通じてお調べを、国会の方で厳重な御審議をいただきたいということで、国会の方にお願いをして参っておるわけでございまして、直接その隊員自体に対しまして、証言しちゃいけないとかあるいは国会に出頭しちゃいけないというようなことを言うた事実はございません。
  37. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 先ほど繰り返し申し上げたように、五十六条、五十七条、非常に問題点はあるわけなんですが、こういうことにも関連して、もしもかりにこれだけでも私どもは強過ぎると思うのですよ、このことが。先ほども申し上げたように職務上の危険はあっても、これはどうしても回避してはならない、そういう意味なんですね、五十六条は。そうして五十七条はそのことのいかんを問わずというふうにもとれるわけですね。そういうことで、長官がこれは人の問題だから適格者の有無ということがそのときの問題だと、そういう意味のことを言われたわけですけれども、法規としてはこういう明文が五十六条、五十七条にあるわけです。これでも私ども非常に強く感じておるわけです。この上二月十二日の「日経」の報道のごとく、さらに法を強化しようというような動きがあるとすれば、これは非常に問題だということを今申し上げたわけで、そういう点を今お伺いしたわけであります。そういう動きは全然ないわけでございますね。
  38. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) お尋ねはまことにごもっともだと思うのでございますが、五十六条、五十七条の規定につきましては、私どもといたしましてはやはりこれは基本的人権の問題とか、常識的に自衛隊任務等に即応して考えてみまして、許され得る限度のことをここでは命じておるのだと思うのであります。決して違法の命令だろうがどんな命令だろうが従わなければならないのだ、というふうには私は了解いたしておりません。
  39. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 その点は了解できますがね。そこでそれ以外に自衛隊法の五十六条、五十七条に拘泥せず、別途動きとして、先ほど申し上げたような点があっては問題だということを今申し上げたわけであります。必ずしも五十六条、五十七条をさらに強化とかそういう意味で申し上げたのじゃない。
  40. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) お尋ねの点は隊員が証人に出ることを押えるかどうかということであろうと思いますが、私どもといたしましては現実の問題になりました場合にはいろいろ考えなければならないことがあると思いまするが、私どもといたしましては、今のところ防衛庁を通じて国会の方で御審議いただくことを希望しておるということを申し上げたいのでございます。
  41. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 倒れてしこうして後やむという敢闘精神の問題ですね。衆議院でもそういう質問応答があったように新聞で聞き及ぶのであります。  結論から私の気持を申しますると、私は敢闘精神養成ということはきわめて必要である、かように考えております。これはひとり自衛隊だけではありません、われわれ政治家にいたしましても、実業家にいたしましても、教育家にいたしましても、職務を忠実に実行しようとする人は、その敢闘精神が絶対私は必要だと、こう思っております。どういう気持でどなたでしたかね、おっしゃった……。
  42. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 筒井幕僚長……。
  43. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 その気持は私にはわからないのでありますけれども、今長官のお話によりますると、なくなられた人に敬意を表するというような気持でおっしゃったのじゃなかろうかというようなお話でありました。私は筒井さんのお気持は、それだけでなくして、やはりそういう教育が必要であるということをしっかり頭の中に入れておいて発言されたのじゃないか、こういうふうに私は想像しておったわけであります。私は各個人が職務に忠実であって、倒れてしこうして後やむというところまで決心をしているということは、非常に貴重なことで、各自がそうあることを心から私は希望する。しかしそのことと、上司が下の者に無理して、自分で判断して、そうして事実、敢闘精神のない者を無理に引きずって、死ぬまで働かせるというようなことは、これは絶対にいけないと思う。その二つの使い分けははっきりしておかなければならないのであって、どうも新聞ではそこがはっきりしませんね。いろいろな質問に対して政府当局が遠慮がちに言いたいことも言い切らずにいらっしゃるのじゃないかというような感じを私は新聞を見て感じておりました。それでは困ると思うのです。ことに自衛隊隊員というものは、いざというときにはほんとうに命がけで第一線に立たなければならぬ、その人たちに対する教育が倒れて後やむ、正しい意味で倒れて後やむのだという精神を持たないような教育、これでは私はほんとうに筋金の通った自衛隊はできないのではないか、かように私は考えております。その二つの使い分けがはっきりできることということは、きわめて必要なことでありますから、これはこの下級の自衛隊員にも自主的にすべてを判断して、いやしくも生命を軽んじ過ぎるようなむちゃな判断をして、みずからを誤まることがないように、これは絶対に教育しなければならない。上の方ではまた職務に熱心のあまりはき違えて、下の者に無理のいかぬように、また自分自身もそういうことのないようによく教育してやらなければならない。こういうふうに使い分けをはっきりされて、そしてこの精神はどこまでも強く、やっぱり教育してもらうように私は切に希望しておるわけでありますが、その点は長官どうでございましょうか。どういうふうにお考えになるのでございますか。
  44. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) 私申しましたのは、本人が非常な責任感をもってやられたことに対して敬意を表するという、それは言いかえれば敢闘精神をもってやられたことに対して敬意を表するという意味で納得しておるのでございますが、ただこれに批判を加えられると同時に、敢闘精神を大いに賞賛すべきことであるということを幕僚長が言ったということは、そういうことをやらせておいて、それがよろしいという弁護の辞であるというように、一般的にはとられておるから、そういう意味で言ったのではないかという意味でありまして、幕僚長も、私は詳細には本人でございませんから申されませんが、先ほど田畑さんにお答えしたような趣旨で申したものであると思います。私といたしましては、隊員が困苦に耐える精神を養わなければならない必要は十分に認めておるものであり、そういう指揮をいたしておりまするが、しかしいやしくもこれを指揮する者が、これは敢闘精神だからよろしいというような考えであってはならないのであって、あくまで生命を重んじ、そうして国民も、この程度はなるほど国を守る任務につく者としては持っていなければならない、納得される限度においてこれを指揮する者としてはやるべきものであるということを申したつもりでございます。
  45. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 先ほど申しましたように、私は政府の答弁のいかんによりましては、隊員の士気を阻喪せしめる危険が大いにあるというように心配いたしておりますので、その点の内容にはっきりしただれでもそういう誤解の起らないような答弁をやっていただきたいと、こう思ったわけであります。  ついでにお伺いしますが、これはあなた方にお伺いするのは少し無理かもしれませんが、戦前旧軍隊時代に今度起ったような行軍中の事故というものは相当一に起ったのじゃないか、それが世間にわからずにおったのじゃないかという気持がしておるのです。私も実は知りませんけれども、そうしますと元軍人であった幹部の人たちがやっぱり古い自分たちの経験になれ過ぎちゃって無理をしでかす、というようなことが繰り返される心配がありほしないかと思うのでありますが、戦前の事例、などお聞きになったことはございませんか。
  46. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 私の方でも調べてみたのでありますが、ちょっと手元に資料を持ち合せておりませんが、記憶によりますと、富士の演習場から相模ヶ原にかけての行軍中に数十名の者が倒れたという事実があるようであります。
  47. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 戦前ですか。
  48. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 戦前であります。  しかし今自衛隊に入っておる旧軍人の諸君もたくさんおられますが、隊員庁死に至らしめるような訓練でもよいのだというようなことを考えておる者は、私は一人もいないと思います。やはり訓練は正当でなければなりませんけれども、隊員死亡するような訓練をしてよいと考えておる者は一人もいないと思います。
  49. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 この事例で一部の隊にはこれが起った、一部の隊にはそれが起らないということなんですね。そういうことから考えてみますと、一部の人にはやはりそういう無理な考え方が昔ながらに残っておった結果が、こういうことになったのじゃなかろうかという疑いも起るわけなんですね。それでお尋ねしておるわけであります。今お話のように、ないということなら非常にけっこうなことだと思いますが、その点は十分に御注意願いたいと思っております。
  50. 田畑金光

    田畑金光君 私の質問しようと思っていたことが、それぞれ関連質問の中ですでに取り上げられたわけであります。私は特にこの自衛隊法の、先ほど伊藤委員からも御発言がございましたが、五十六条と五十七条、それから刑法二百十一条との関係についてお尋ねしてみたいと思うのです。  第五十六条は「隊員は、法令に従い、誠実にその職務を遂行するものとし、職務上の危険若しくは責任を回避し、又は上官の許可を受けないで職務を離れてはならない。」この規定の解釈ですが、それは加藤人事局長のような良識で判断する問題だと思うのです。ただしかしこの条文は主として自衛隊というものの任務とかあるいは自衛隊あおかれた目的、こういうことを考えたときに、やはりこれは何らかの天災というものを予定しておる。そういうことを考えたとき、五十六条というものが生きてくる条文であろうと考えておるわけなんです。で、第五十七条の一隊員は、その職務の遂行に当っては、上官の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」私はここに少し掘り下げてみる必要がありやせぬか、そういう条文でなかろうかと考えておるわけです。というのは、今回のようないわゆる死の行軍、こう呼ばれておりますが、これは上官の職務上の命令として忠実に従わねばならぬものであるかどうか、これは隊員は上官の命令を忠実に服するというならば、その命令自体に私は問題があると思うのです。命令が行動を求めるならばそこに限界があるだろうと思うのです。今回の死の行軍というものは、一体上官の命令に服従する義務を持つものであるのかどうか。それともですね、もしその命令の限界を越えておるとするならば、しからばどこにだれが責任を負うか。こうなってきますと、私は刑法二百十一条の業務上の過失致死罪、こういう問題になってこようと思うのです。業務上の必要な注意を怠り、よって人を死傷に至らしめた、これは今回のこの事件において当然問題として出てくると考えるわけなんです。で、私が今回のこの死の行軍の事件、しぼりますと二名の人を死亡に至らしめた、しかもその最後は惨たんたるものです。後ほどこれについてばお尋ねいたしますが。で、この場合に一体結果として出てきたこの事実に対し、小瀧防衛庁長官は五十七条の上官の命令に服従する義務としてこれは処理されようというのか、それとも服従する義務の限界を越えておるとするならば、刑法二百十一条の業務上の過失致死罪として処断しようとされるのか、どういう判断でおられるか、これを承わりたいと思います。
  51. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) この行進訓練の一つとしてやったのでございまして、これは私は隊員といたしましては従うべきものであると思います。ただ御質問にありましたようにこの隊長がこの行進指揮監督したのでございます。この隊長の指揮監督された隊の管理につきまして業務上必要な注意を欠いておったかどうかということは、私はこれとはやはり別の問題であろうと思います。この点を私の方でもいろんな角度から現在調査をいたしておる段階であります。
  52. 田畑金光

    田畑金光君 二つは性格は異なる、そうしますと皆さん方が責任を追求される、調査の結果に基いては処罰すべきは処罰する、こういうことを御答弁になりましたが、その場合に処罰の内容というものばあくまでも行政処分というような形で考えておられるのか。それともこのように、それは予測されざる事態、予測されざる状況、あるいは予測しがたい、予見せざる、自分の知らざる地域においてたまたま起った事件ではないのです。加藤局長が御報告になりましたように、とにかく歩けない、だからジープに乗せる、注射をする、統制点の所に行くとおろしてそして綱で引っぱる、はたでお互いが支え合う、青竹でたたいてやる、そして統制点通過させジープに乗せる、注射をうつ、それはもう相当時間は経過しておるのです。にもかかわらずそれが刑法上の問題には何ら抵触しない、こういうようなことで行政上の処分だけで考えておる。こういうことになって参りますと、皆さんが、特に長官が先ほど処罰をすると言われた内容というものは、まことにこれは問題にならぬ。こう私は見るわけですが、長官としてこの点どのようにお考えになりますか。
  53. 小滝彬

    国務大臣小滝彬君) この行政処分は、もちろん防衛庁の方で考えなければならないと思うのであります。その計画実施においてやましくはなかったか、それが重大なる過失というようなものがある場合には、もちろん行政関係においてはその点について処分しなければなりません。しかしあなたのおっしゃいますような過失致死というような点につきましては、警備隊は特別司法警察官の資格を持っておるものでございまして、この調査の結果は全部検察庁の方に報告するものであって、これがこの刑法上の犯罪になるかならないかということは検察庁で決定するところでありますから、結局行政処分は一面で考えなければならぬ。同時にこれは詳細向うに連絡し、そして刑法上の点については検察庁の方で処断される。こういうことになるわけでありまして、それがどういうふうになりますか、その辺は検察庁の方で考えなければならない。防衛庁に関しまする限りは行政処分ということについて検討しておる次第でございます。
  54. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記とめて。    〔速記中止
  55. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記をつけて。  本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後三時一分散会