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1957-09-11 第26回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年九月十一日(水曜日)    午後一時四十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員横川正市君及び千葉信君辞任 につき、その補欠として荒木正三郎君 及び光村甚助君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤田  進君    理事            上原 正吉君            大谷藤之助君            永岡 光治君            竹下 豐次君    委員            迫水 久常君            松岡 平市君            荒木正三郎君            伊藤 顕道君            亀田 得治君            鈴木  強君            光村 甚助君            八木 幸吉君   国務大臣    労 働 大 臣 石田 博英君    国 務 大 臣 津島 壽一君   事務局側    参     事    (委員部第二課    勤務)     指宿 清秀君    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    人事院総裁   淺井  清君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    人事院事務総局    給与次長    木村 又雄君    人事院事務総局   給与局第二課長  平井 迪郎君    調産庁長官   上村健太郎君    防衛政務次官  小山 長規君    防衛庁事務次官 今井  久君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告 ○国の防衛に関する調査の件  (国の防衛に関する件) ○国家公務員制度及び恩給に関する調  査の件  (公務員給与に関する件)   —————————————
  2. 藤田進

    委員長藤田進君) これより内閣委員会開会いたします。  委員変更について参事より報告いたさせます。
  3. 指宿清秀

    参事指宿清秀君) 本日付横川正市君及び千葉信君が辞任されまして、荒木正三郎君及び光村甚助君がそれぞれその補欠に選任されました。   —————————————
  4. 藤田進

    委員長藤田進君) まず先般当委員会が行いました委員派遣について、派遣委員から御報告を願います。まず中国四国班にお願いいたします。
  5. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは第二班の調査報告を申し上げます。藤田委員長大谷理事、私の三名は内閣委員会の決定に基きまして、去る六月十七日より二十三日までの七日間、広島愛媛両県下の陸上及び海上自衛隊及び国の出先機関業務運営並びに公務員の新給与制度に関する現地実情等について調査いたして参りました。視察先を申し上げますと、広島県下におきましては広島県庁下関入国管理事務所広島港出張所広島管区監察局陸上自衛隊海田市駐屯地業務隊呉調達局呉市役所海上自衛隊呉地方総監部愛媛県下におきましては愛媛県庁愛媛地方監察局農林省愛媛統計調査事務所であります。  以下調査概要を御報告申し上げます。  まず国の出先機関業務運営並びに公務員の新給与制度について一括して申し上げます。広島管区監察局愛媛地方監察局における業務運営状況を申し上げます。なおこの管区監察局及び地方監察局は本年八月一日から前国会で行われました機構改正によりまして、管区行政監察局及び地方行政監察局とそれぞれ名称変更されましたことをここに付言しておきます。出先監察局が行う監察業務は、中央行政管理庁において立てた統一計画に基きまして行なっておりますが、局長説明によりますと、管区局地方局においても、監察の結果気づいた点を随時所見表示の名のもとに関係行政機関に示して、その行政運営能率化をはかり、その結果、不正不当行為の排除及び国損防止相当寄与しているとのことでありました。  また出先監察局は数年前より本来の監察業務のほかに、行政民衆化に資するために、その窓口となって各出先行政機関行政措置についての不服や苦情一般民衆より受け付け、これらの問題の早期解決をはかる苦情相談業務を行なっておりますが、この業務実施の結果について一般民衆より非常に感謝され、また好評を博しているとのことであります。  なお、両監察局長より、人員旅費予算等不足のため周到な監察計画の樹立が困難となり、これがため自然、監察対象近接区域あるいは交通の便利な地域に偏する実情であるので、観察を周到に行い得るよう、出先監察局旅費予算について特段の配慮を切望するとともに、今回の新給与実施に際し、監察局監察業務職員構成一般行政庁に比し特殊な実情にあるので、監察局職員給与格つけについては、関係当局において十分理解を賜わるよう配慮されたい旨強い所見が述べられました。  また広島管区監察局長のあっせんによりまして、広島管区監察局職員組合代表より、職員給与について同趣旨陳情を受けました。  次に呉調達局について申し上げますと、呉調達局管轄地域内には、従来、米軍国連英連邦軍の二系統の軍隊が駐留しておりましたが、昨年十一月下旬、国連英連邦軍全面的日本全土よりの撤退によりまして、現在では呉市に将校一名が残務処理に当つているのみであるが、米軍は現在広島県下においては呉キャンプ陸軍輸送部隊呉派遣隊山口県下においては、岩国飛行場に第一海兵航空師団米海軍航空部隊、鳥取以下においては美保航空基地六一三五部隊米子通信施設、島根県下においては高尾山通信施設がおかれ、陸海空の各部隊が駐留しておりまして、これらの施設に関する業務のほかに、呉調達局は、現在施設提供懸案業務として、徳島県小松島湾水上機発着訓練場要求山口阿川無線中継所施設設置のための立ち入り予備調達要求岩国飛行場上空航空地役権要求岩国米海軍航空部隊対地爆撃演習場要求美保飛行場地区通信施設拡張用地に対する立ち入り予備調査要求等がありまして、昨年以来地元側米軍との間に折衝が重ねられておりますが、その解決は今日もなお依然としてきわめて困難が予想されているので、これらの問題の解決にはなお相当期間と努力を要するものと考えている旨、局長より所見が述べられました。  また駐留軍労務者の問題としては、本年五月美保航空基地六一三五部隊任務変更理由で、同基地軍雇用日本人労務者全員五百六十名を六月三十日付で一斉解雇する旨の解雇予告が通告されて、労務者に非常な動揺を与えたとのことでありますが、県当局極東軍司令部との折衝の結果、米陸軍部隊空軍部隊と交代することとなりますので、さきに解雇予告されている労務者をこの米陸軍部隊に引き続き七月一日付をもって雇用することの了解が成立いたしましたので、同基地労務者大量解雇問題は一応円満に解決される見通しであるとのことでありました。  次に下関入国管理事務所広島港出張所について申し上げますと、本広島港出張所は私ども参りました当時は、下関入国管理事務所管轄下にありましたが、前国会で行われました機構改正によりまして、現在では広島入国管理事務所管轄下におかれておりますが、出入国管理行政地方機関の中枢をなす入国管理事務所は、全国に十二カ所設けられており、中国地方には下関、高松及び松江の三入国管理事務所がありまして、広島市には従来独立の入国管理事務所がなく、広島港出張所があるのみで、中国地方における統一的な治安対策実施等について、関係機関との連絡にも事欠き、業務の遂行に種々不便をきたしている等の実情でありましたが、先般の法務省設置法改正によりまして、本年七月一日より広島入国管理事務所が新設されまして、広島港出張所はこの事務所管轄下編成がえとなりました。  本来、港出張所における業務は、外国人の上陸の審査及び許可に関する事項外国人及び日本人の出国並びに日本人の帰国に関する事項出入国管理に関する船舶等の長及び運送業者の責任に関する事項でありますが、本広島港出張所におきましては、特に外国人在留資格取得並びに在留期間の更新に関する事項違反審査に関する事項不法入国者防止に関する嘉禎違反調査に関する事項収容令書発付請求に関する事項収容場への護送に関する事項等業務処理をも、わずかに入国審査官一名、同警備官三名によって行なっている実情でありますので、今般の機構改革実情に即した適切な措置であることがうかがわれました。  次に農林省愛媛統計調査事務所について申し上げます。  本統計調査事務所は、農林省愛媛作物報告事務所として発足したが、その後名称変更組織改廃等が行われて、現在農林、水産、畜産業全般にわたる広範囲の調査業務を行い、その正確なる統計を期しているとの説明がありましたが、これらの調査業務がさらに一そう正確であり、かつ能率をあげるために特に機動力新規増強常勤調査員常勤的非常勤職員処遇改善庁舎新営費、旅費予算等の考慮を望む旨の要望が述べられました。また職員組合代表よりも同趣旨陳情を受けました。  次に、地方公務員給与制度改訂、並びに国の出先機関地方自治体との間における専務処理上の問題について申し上げます。  広島愛媛両県における職員給与につきましては、国家公務員給与制度改正に伴い、自治庁指導方針に沿って地方公務員給与体系改訂を行うことになりましたので、両県においては目下九月に開会予定県議会に提案すべく具体案を検討中であるが、地方公共団体としては、政府機関とは職制、機構職員構成等に若干の異差もみられるので、国家公務員給与体系をそのまま地方公務員に適用することに問題もあり、特に現員の分布状況を将来の昇進計画とを十分考慮して立案しなければならないという点で苦慮しており、この点国会においても十分御理解を願いたい旨が述べられるとともに、新制度への切りかえ措置については、国家公務員に準じて同様の切りかえ措置をとる方針であるが、この際県財政の赤字を理由に、先般来昇給ストップ等措置をとつてきたこの分の補てんをしてほしいとの要望もあるが、この問題については今回は何ら触れずに、別途考慮するとの所見が述べられました。  また事務機構の問題としては、地方事務とすべき事務を扱つている国の出先機関、すなわち職業安定所労働基準監督署陸運局等事務都道府県に統合するよう国の行政機構を改め、今日の都道府県業務実態に即応して措置せられたい旨の所見が述べられました。  次に自衛隊関係視察の結果を申し上げますと、私ども広島海田市駐屯地業務隊におもむき、この業務隊任務編成教育状況管理状況等について隊長より説明を聴取した後、その施設視察いたしました。  また海上自衛隊呉地方総監部におもむき、ここでは総監より呉地方総監部並び呉地方隊担当区域及び組織人員装備施設現状隊員の募集及び訓練状況防衛及び警備、隊内における諸物資調達状況等について詳細なる説明を聴取いたしましたが、特に総監より、海上自衛隊の小艦艇による海上勤務実情より見て、厚生施設の充実と、また基地としてぜひ必要な固有の病院施設設置の実現を強く要望する旨の所見が述べられました。  また海上自衛隊呉地方総監部所在地呉市役所におきまして、現在市当局海上自衛隊との間に懸案となっている旧海軍下士官宿舎であった呉ハウスの使用問題と、呉港湾使用問題についての実情について説明を聴取いたして参りましたが、内容を簡単に申し上げますと、呉ハウス四千坪の使用については、呉市当局においては庁舎建設に際して一時これを使用したいと考えているのに対し、海上自衛隊呉総監部においては病院施設として使用したい、しかし現在防衛庁予算との関係で当面それが実現できないので、隊員厚生施設に使用し、将来予算が計上された際に実現することにいたしたいというのであります。また港湾使用問題というのは、海上自衛隊が現在専用している港湾地区隣接地域に拡張したいという呉地方総監部要求に対し、呉市当局は、公共港湾施設として計画されている地域はその目的に沿って使用することとし、専用地区とすることには同意できないというのであります。なおこれらの問題につきましては、地元における両当局が今後さらに話し合いを行うとの意向を示しておりましたことを申し添えておきます。  以上をもちまして私ども視察調査報告を終ります。
  6. 光村甚助

    光村甚助君 議事進行議事進行について発言を求めているのですよ。
  7. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと速記やめて。    〔速記中止
  8. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をつけて。次に東北班にお願いいたします。
  9. 竹下豐次

    竹下豐次君 田畑委員と私、今回改正せられました公務員給与実施状況並びに陸上航空自衛隊及び国の地方支分部局監察局調達局業務運営実情調査のために、去る七月の一日から五日までの五日間にわたって、富城県及び福島県に出張いたしまして、宮城県庁仙台管区監察局仙台調達局航空自衛隊第二操縦学校福島県庁福島地方監察局及び陸上自衛隊福島駐屯部隊視察して参りました。以下調査概要を御報告申し上げます。  まず宮城県庁におきましては、第一に、今回の一般職公務員改正給与法自治庁において指示された地方公務員改正給与体系についての県当局所見、第二に寒冷地手当等についての要望点、第三に駐留軍労務者現状、第四に国の地方支分部局に対し、その機構事務運営等についての改善点等の諸点について調査をいたしたのでありますが、まず調査の第一につきましては、地方公務員給与体系地方公共団体がその条例によって自由にきめられるので、自治庁通知自体には問題はないが、国家公務員地方公務員相互間の人事交流等のため、各団体が独自の給与体系を持つことは好ましくないので、特に東北地方各県は同一方針をとり、自治庁の示した給与体系地方公務員給与を決定していきたいが、地方公務員給与実態より見て給与頭打ち等を緩和するため、上位の号俸について多少の調整をはかる必要があるとの説明がありました。この給与体系は九月の県議会で決定いたしたいとのことでありました。また暫定手当につきましては、今回の改正により無級地が解消されるのはありがたいが、宮城県のごとくほとんどの地域が無級地であるため、新たに暫定手当を支給することは財政上大きな負担となるので、特に再建団体に対しては特別の財政措置がとられるよう要望されました。  調査の第二点寒冷地手当につきましては、宮城人事委員会が昨年七月寒冷地手当適正化に対する調査を行いましたが、この調査の結果より見まして宮城県の現行級地は非常に低位にあり、他府県特に北陸地方に比較して不利な取り扱いを受けておるので、この点国会においてもよく調査の上是正せられたき旨が述べられました。  調査の第三点駐留軍労務者現状につきましては、現在駐留軍に対する労務の提供の実務は、都道府県知事に委任せられており、知事駐留軍労務者の法律上の雇用主となっているのでありますが、本年六月一日現在宮城県の雇用しておる労務者は二千八百九十一名となっております。最近駐留軍撤退及び移動等に伴う駐留軍施設閉鎖等によりまして、労務者は逐次解雇され、本年は一月から六月までにすでに三百五十八名が解雇されておりますが、今回さらに第一騎兵師団所属部隊が九月上旬までに移動を完了いたすことに決定しておりますので、それに伴い県が雇用しておる労務者約二千百名と、駐留軍が直接雇用しておる労務者約五百名が解雇されることが必至の情勢にあり、そのうち県が雇用しておる労務者については、六月二十七日までにすでに九百五十二名の整理請求が県に対して行われておるとのことであります。宮城県におきましては最近の駐留軍労務者解雇状況にかんがみ、昨年十月宮城駐留軍離職者対策本部設置し、知事本部長となりこれが対策推進に当つてきておるのでありますが、特に今回のごとく同一時期に多量の解雇者を出すと、第一に宮城県は工業が発達しておらず、千名以上の雇用者を持つ工場はわずか三カ所しかないという純農業県でありますので、県内にはその雇用力が全くない。第二に東京等駐留軍基地への配置転換についても、宿舎等関係から希望者が少ない。第三に当地の労務者は引揚者、農家等地元出身者が多い上、年配者が多く平均三名の扶養家族を抱えているなど、家庭的にも他府県への転職は容易でない等の理由によりまして、その離職後の対策に非常な困難を来たしているとのことであります。  調査の第四点、国の出先機関に対する要望につきましては、まず第一に国家機関による監査を一本化ないし簡素化してほしいという点であります。現在国家機関による監査会計検査院を初め、大蔵省、建設省、行政管理庁等中央及び地方出先機関より重複して実施されるので、これが事務処理に忙殺されている現状である、会計検査院監査以外はやめてほしいとは言わないが、検査機関はよく横の連絡をとり、地方庁がこれに対する準備が一度にでき得るようにしてほしい旨が述べられました。その第二は国及び県による二重行政の弊を改められたいという点であります。現在陸運事務所社会保険職業安定等事務知事監督下にありながら、予算及び人事権は国が持っておるため種々不便を来たしておるので、陸運事務所についてはこれを国家機関とし、社会保険等は国または県のいずれかにすつきり所属を変えてほしい旨が述べられました。  次に福島県庁におきましては宮城県庁と大体同様の調査を行なつたのでありますが、福島県庁において特に問題になりました主な点としては、その第一に義務教育職員給与の点であります。すなわち教職員給与県公務員給与のうち最も大きい面を占めておるにもかかわらず、その昇給予算については一般公務員が年間四%の予算であるのに対し教職員は二%となっており、これがため地方によっては人件費が非常に窮屈になっておるので、これが対策として年々教職員に対し退職を勧奨し、これによってその財政をまかなっておる実情とのことであります。その第二は国の地方出先機関に対する要望として、福島営林局新設の問題であります。現在福島県は前橋営林局管内にあるため地理的にも不便が多く、十分な連絡調整が困難であり、また前橋営林局管内国有林面積の約四二%に当る四十五万町歩は福島県に所在しておる現状より見て、福島市に営林局を新設せられたい、もしこれが不可能の場合には福島県は東京営林局管轄区域変更せられたい旨が強く述べられました。なおこの問題は去る昭和二十七年第十三国会において、政府より前橋営林局を廃止し、福島市に福島県及び宮城県を管轄区域とする福島営林局設置する案が提出せられたのでありますが、当委員会においてこの問題はなお検討する余地があるとの理由をもって、現状通り修正せられたのであります。このほか国の出先機関に対する要望として、統計事務を一本化してほしい旨が述べられました。すなわち現在各種統計は非常に多岐にわたっておるが、特に農林省統計調査事務所の行なっておる統計には、林業統計のごとく全く県に委嘱しておるものもあり、県の応援なくしてはでき得ない状態であり、統計調査事務所は以前と事情も変つてきた今日、その存置の必要があるかどうか疑問である、県においても多数の統計職員を配置しておるのであるから、統計事務はむしろ県へ移譲すべきではないかとの意見が述べられたのであります。  次に仙台管区監察局および福島地方監察局における監察業務現状について申し上げます。調査いたしましたおもな点は、第一に三十一年度に実施した監察の成果及び本年度第一四半期実施したおもなる監察事項内容、第二に監察局における定員及び予算に関する要望点、第三に今回の改正給与法に関する実情等であります。  まず調査の第一点につきましては、監察局においては現地において監察した結果を本庁に報告するとともに、現地において監察対象機関に対し、その監察結果を表示しその改善を求め、効果を上げておるとのことでありますが、仙台管区監察局においては、三十一年度に行なつた社会福祉行政監察郵政野業特別会計経営監察等において所見表示を行い、監察対象機関でもその指摘事項につき鋭意改善に努力し、相当効果を上げておるとのことであります。また仙台管区監察局において実施した農林漁業金融公庫が行う融資運営に関する調査において、東邦塩業株式会社という資本金百二十五万円の会社に対し、製塩施設を経常するため公庫は一億二千三百万円を融資し、しかもこの会社経営計画のずさんのため、設立以来わずか三年で事業を停止し、資金の返還も不能になっておる事例を指摘いたしておるのであります。また福島地方監察局が行なつた郵政事業特別会計経営監察においては、郵政職員に支給せられる諸手当の数が非常に多く、一般公務員に支給せられる手当以外に、特殊勤務手当が十二種類あり、その手当のうちの一つである特殊有技者手当はさらに十七種類にわかれ、中には重複または不必要と認められるものもあるので、これら諸手当圧縮整理をする必要がある旨を指摘いたしております。また本年第一四半期実施した監察のうち、福島地方監察局においては、公共専業に従与する職員等実態調査を行なっております。これは定員外職員すなわち常勤職員常勤的非常勤職員定員内に繰り入れられたいという要望に対し、適切な措置をとるための基礎資料提供するために実施したのであるとのことであります。この調査は、農地事務局建設事務所地方建設局工事事務所、及び営林署対象調査をいたしておりますが、これら常勤職員等の数は建設事務所営林署においては約五〇%、工事事務所においては約七〇%を占めており、学歴、勤務年数及び仕事内容定員内職員とほぼ同様であり、しかも相当責任ある仕事に従事しておるが、一方待遇は定員外のため非常に不利を来たしておる事実が明らかになつたとのことであります。なお監察局においては監察計画に基く監察のほか、監察上の問題点となるものを常に把握するため監察情報を収集し、また行政監察の一環として苦情相談業務を開き、それぜれ効果を上げ、特に苦情相談陳情者より非常に感謝されておるとのことであります。  調査の第二点につきましては、その定員は、管区監察局及び地方監察局も同様に、現在の監察業務を十分に遂行するためには人員不足は免れず、一人当りの業務量相当過重になっておるため、適正な定員の設定、特に下級職員の増員を配慮せられたき旨が述べられ、また予算につきましては監察旅費及び筆耕料不足を訴え、特に旅費予算の過少のため、監察計画を樹立する上において、監察対象機関は近距離に限定せられる等のため、その対象を十分に選定することができす、また監察を途中にて打ち切らざるを得ない場合も生じてくるとのことであります。特に福島県のごとく広域な県は困難を来たす場合が多いとの説明でありました。  調査の第三点につきましては、今回の改正給与法に伴う格づけ基準によれば、地方出先機関中央機関より一等級下位に格づけされることが一般原則となっておるが、監察局はその業務特殊性により高級者が多く、また監察業務実体はむしろ地方にあり、他省のごとく中央地方とにおいて業務の隔たりがない。従って格づけに当つて一般原則がそのまま適用されると、監察職員は非常に不利な立場になるため、その点特に考慮せられたき旨が述べられました。最後に、仙台管区監察局において、行政監察に関する実体法を制定せられたい旨が強く要望せられました。すなわち現在行政監察については、行政管理庁設置法にその権限が示されておるのみで実体法がない。従って現在の監察にはおのずからその限界が生ずるので、民間を含む監察対象機関の協力を得るためにも、また行政監察の永続性を確保するためにも、この際ぜひ行政監察の定義、目的、権限等を明記した実体法を制定せられたき旨が述べられたのであります。  次に仙台調達局における調達業務状況について申し上げますと、現在仙台調達局管内に駐留する米軍は、青森県三沢地区及び新潟地区の空軍部隊並びに仙台地区の陸軍部隊がそのおもなものでありますが、そのうち陸軍部隊ば昨年より逐次移動が開始されて、これに伴い種々その施設が返還されておりますが、特に従来は建物の返還が主となっておりましたが、最近は大高根演習場等を初め土地の返還が多く、これに伴う補償が重要な業務の一つになってきておるとのことであり、土地の補償処理はその性質上複雑困難な内容を含んでおるとのことであります。また駐留軍撤退に伴う労務者の解雇につきましては、各県においてその救済に当つておりますが、調達局においても関係担当官を県の対策本部に派遣し、特に今後予想せられる大量解雇に対する万全の措置を講じつつあるとのことであります。なお陸軍部隊撤退後における調達局業務量については、仙台調達局管内に駐留する米軍の主体は空軍部隊であるため、陸軍部隊撤退してもその業務量にはあまり変化を来たさないとの説明でありました。  次に調達庁を防衛庁の機関とする行政機構改革の問題につきましては、仙台調達局長は全面的に賛意を表し、調達庁の業務は国防という見地より防衛庁と一貫した仕事として行うのがよい。駐留軍施設返還後これを防衛庁へ引き継ぐ場合が多いが、その場合も仕事がやりやすくなるという理由のほかに、戦後国民と駐留軍との間に入って幾多苦労してきている職員を救済するがためにも、防衛庁と合体するのが望ましいという理由をあげて、この際ぜひ防衛庁への合体の実現を望む旨が述べられました。調達局調査終了後局長の案内によりまして、駐留軍施設のうち苦竹キャンプ、キャンプ川内を視察いたしました。このキャンプはいずれも近く日本側に返還されるとのことであります。  次に航空自衛隊第二操縦学校について申し上げますと、本校は航空自衛隊操縦者養成課程のうち第二初級操縦課程の教育を施す機関となっております。すなわち現在操縦者養成課程は英語教育隊、第一操縦学校を経て本校に入校し、六カ月間操縦教育を受け、さらに築城派遣隊において高度の教育を受けた後、航空団に配置されることになっておるのであります。本校は昭和二十九年七月発足以来六百八十八名の学生が入校し、四百九十名の卒業者を出しておるのでありますが、その教育内容は先に申し述べました第二初級操縦課程としてT6の航空機を用い、基本操縦教育を行うほか、操縦経験者の技量回復課程及び第二初級操縦教官の養成をも行なっておるとのことであります。  第二操縦学校は私ども視察当時は松島基地にその本校を置くほか、宮城県矢ノ目基地に第一分校が置かれてありましたが、八月一日に行われる航空自衛隊の新編成により、本校は宇都宮に移転いたすことになっておるとのことでありましたからすでに移転しておることと思います。私たちの参りましたときはすでに一部は宇都宮に移転を開始いたしておりました。本校移転後の松島基地には第二操縦学校の松島訓練隊及び松島派遣隊が設置されることになっており、また近く静岡県焼津に第二分校が設置される予定とのことでありました。本校においては分校をも含めT6航空機百十七機を使用しておりますが、その飛行の安全を期するため学校長の下に飛行安全班を作り、特に航空機の予防整備等を行い、事故の発生を防いでおるとのことでおります。松島基地は旧海軍飛行場であり、戦後米軍に接収され昭和三十年十月に返還されております。当基地は現在総面積六十八万坪、約六十フィートの主滑走路を持っておりますが、当基地には今回第三、第四航空団が新設されることになっており、このためジェット機の発着も可能にするため、新しく二千四百メートルの滑走路を設置するとともに、基地面積も八十六万坪に拡張することになっておりますが、これに伴う農地の買収、民家四十九戸の立ちのき等につきましても、このほど現地との間に円満な了解がつき、七月より工事に着工、十二月までには大部分が完成する予定とのことであり、これに伴い十二月には第三航空団が当地に編成されるとのことであります。  最後に陸上自衛隊福島駐屯地部隊について申し上げます。本駐屯地は昭和二十八年十月に設置され、施設大隊一カ大隊、駐屯地業務隊、警務分遣隊が駐屯いたしており、隊員は自衛官、非自衛官を合せて八百八十一名であり、隊員の約六一%は地元東北地方出身者であります。施設大隊は旧陸軍の工兵隊に該当するものであり、この部隊特殊性のため、その装備等も施設関係装備が特に目につき、このため当部隊においては特殊技能者を養成することが特に必要である旨の説明がありました。なお当部隊において特に注目をひきましたのは、部外工事が数多く実施されておることであります。すなわち部隊外より各種の建設工事を依頼されております。工事のおもなるものは学校の運動場の整地、新道の建設及び除雪作業等であり、昨年度実施した工事は十八件に上っており、地元福島県下の依頼によるものが大半を占めておりますが、最近は宮城県、新潟県等よりも依頼を受け出動しておるとのことであります。部外工事はその依頼が殺到しその処理に困るほどであるが、この種の工事は住民に非常に感謝されておるので、部隊訓練に支障のない限りできるだけ出動いたしたい考えであるとのことであります。  以上をもちまして報告を終ります。
  10. 藤田進

    委員長藤田進君) 別に御発言がなければ、本委員会派遣委員報告はこれをもって終了いたします。   —————————————
  11. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に国の防衛に関する調査を議題に供します。  本日の政府側の出席は津島防衛庁長官、石田労働大臣、上村調達庁長官小山防衛政務次官、今井防衛庁事務次官、門叶防衛庁長官官房長、加藤防衛庁防衛局長、百田労働省職業安定局長小山防衛庁装備局長、山下防衛庁経理局長、以上であります。  なお小山防衛庁防衛政務次官から、当委員会に対してあいさつを述べたいとのお申し出があります。お受けして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 藤田進

    委員長藤田進君) どうぞ。
  13. 小山長規

    説明員小山長規君) 小山でございます。今度防衛政務次官に任命されましたので、たびたび当委員会に出席する機会が多かろうと思いますがよろしくお願いいたします。
  14. 藤田進

    委員長藤田進君) 先ほど議題に供しました国の防衛に関する調査に関し、御質疑のおありの力は順次御発言を願います。
  15. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 アメリカの地上部隊撤退に伴う駐留軍労務者の失業対策について、若干労働大臣にお伺いしたいと思います。  まず御承知のように本年内に米駐留軍陸上部隊の全面的の撤退が日米両当局者によって発表されたわけですが、そのためこれら陸上関係労務者が大体約六万六千くらいと聞いておりますが、全面的に失業の脅威にされておると、こういう事態を私どもは見つめておるわけです。労働大臣としてこのような事態をどのように考えておられるか、まずお伺いしたいと思います。
  16. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 駐留軍労務者の失業の状態、見通し等につきましてはただいまお説の通りでありまして、陸軍部隊について間接雇用者は大体六万六千、これに直用労務者一万三千というものが駐留軍撤退に伴いまして順次職を失っていく状態にございます。これはその雇用の条件、あるいはその失業が地域的にも時間的にも集約的に現われるという点についてきわめて重大な問題だと考えておりまするので、政府といたしましては、前内閣に引き続き内閣に設けられてあります特需等対策協議会を中心といたしまして各般の施策を目下検討中でございます。労働省といたしましてはまず終局的にはこれら失業者、失業せられる諸君の雇用の安定を目ざして、最初の目標は、返還せられる設備その他を産業に転換をいたしまして、新しい産業の誘致等によりましてそこへ吸収して雇用の安定をはかって参りたいということを目標といたしまして、諸般の作業を進め具体的な検討を行なっておるわけでありますが、とりあえずは関係各県にありまする職業補導の機関を整備拡充をいたしまするとともに、その取扱い範囲をさらに広くいわゆる職業紹介の拡充をはかって参りまするとともに、仕事の転換その他によって生じまする住宅問題等についての解決も検討いたしておるような次第であります。それと同時に失業対策事業、あるいは特別失業対策事業、あるいは公共事業等の重点的な実施をもって恒久的な産業誘致に伴う雇用安定までのつなぎにいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。  具体的な施策といたしましては、二、三年前に呉市で発生をいたしました、国連軍の撤退に伴いまする失業問題が生じましたときにとりました処置を基準といたしまして、積極的な対策を講じつつあるのでありますが、何と申しましても今度の駐留軍労務者の失業ということは非常に広範な地域で、しかもいろいろの条件が違った状態のもとで起って参りまするから、産業誘致を行うにいたしましてもそれぞれ産業条件を整備すべき要点が違っておるのであります。従って政府といたしましては、先般関係府県知事が労働省にお見えになりましたときに、政府の力は具体的な施策に対する協力、あるいは問題の難点解決に対するあっせん等は積極的にやるつもりであるから、具体的な計画と調査とを進めてくれるようにということを私から口頭をもって依頼をいたしまするとともに、近日産業誘致計画の樹立についての政府側の、ただいま申しましたような方針を文書をもって地方官庁に通達をいたすつもりでおります。いずれにいたしましても、この駐留軍労務者の失業問題はきわめて重大であると考えられまするから、積極的にその解決に当って努力をいたして参るつもりでございます。
  17. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大臣は職員補導所とか、住宅あるいは公共非業、失対事業、このようなことで解決をはかりたい、そのような要旨であったわけですが、過去においても年々失業をしてきた者があって、これを加えますと大体十二万くらいになっていると思うのですが、しかしながら今回のごとく一度に六万六千というような大量な失業者を出そうというような事態は、これはまことに容易ならざる事態であると思うのです。今幾つか言われたようなことではなかなか解決ははかれない。よほど抜本的な方策を講じない限りは解決をはかることは不可能であろうと私どもは考えるわけです。そこで政府としては抜本的な方策をこの際樹立する必要があろうと思うのです。そういう点についてお尋ねしたいと思います。
  18. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 抜本的と申しますか、恒久的な解決は先ほども申しましたように、駐留軍撤退に伴いまする諸設備その他を利用いたしまして、新しい産業を誘致してそこにできるだけ吸収する。それからその以前にもあるいは自衛隊、あるいは既存産業にあとう限り職業補導、あるいは職業紹介の労をとって雇用を安定させるということであろうと思います。それまでのつなぎといたしましては先ほど言ったようなことをやって参りたいということであります。  そこでただいま申しましたようなことは、実はまあ非常に困難なことが多いのでありますけれども、先般先ほども申しました、呉で発生いたしましたとき処理いたしました経験を簡単に申しますると、呉で当時発生いたしました失業者は約九千名でございました。その九千名のうち現在の状態を申しますと、約三千名は撤退後誘致せられました産業に吸収されております。しかしなお三千名は目下職業安定所の窓口に来ているわけであります。残余の約三千名はそのいずれにも入っておりません。つまり言いかえると中小企業その他あるいは自家営業に帰るとか、そういう点で吸収されていったのではないかと考えるわけでございます。そこで現在職業安定所の窓口へ今でも来ております約三千名というものに対しましては、いま一方におきまして産業誘致計画が進んで、それぞれ具体化されつつございますので、その具体化される経過に従っておよそそれに近い数は吸収される見込みであるという報告は参っておるのであります。基本的にはやはり産業誘致計画を強力に推進していくということが、私は恒久的かつ抜本的対策であると考えておるわけでありますが、その産業誘致計画を強力に推進して参るに当りましても、各地によりまして返還される設備条件その他が違っているのであります。あるいはその産業誘致のための基礎条件を整備する要素もまた違っておるわけでざこいます。呉の場合におきましては、そのおもな産業誘致上の弱点と申しますかネックは工業用水の問題でございまして、そこでその当時政府は工業用水の新設に際しまして特別な融資措置をとりまして、工業用水の供給をはかりました結果、先ほど申しましたような進行を示しておるわけでございます。従って労働省としましては、関係各省と連絡いたしました上で、各種各様の条件のもとにおける産業誘致の具体的な計画の樹立を求めまして、そしてそれを実現いたしますために必要な処置を政府としてその計画に基いて協力していきたいと思っているわけであります。その計画樹立に際しましてもただ地方にまかせるというのではなくて、政府側として積極的にその指導の任に当って促進をしていきたい、こう考えておるわけであります。
  19. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 呉の場合には六億以上の失対事業費が使われたけれども、実際の結果としては一部の労務者の一時的な救済にしかならなかったというふうに私どもは把握しておるわけですが、こういう問題について一時的でなく恒久的な、たとえばこれを法律化して永久に救おうというようなお考えがあるかどうか。なおこのことについては昨年労働省の試案として次官会議と閣議に出された雇用安定基本法案ですか、こういうものはせっかく労働省の試案として作られたのに、これが閣議あるいは次官会議で決定に至らなかったということについては、非常に遺憾の意を表せざるを得ないのですが、こういうものを一つさっそく成文として、法律によって失業救済を行うという考え方はぜひ必要だろうと思うのですが、労働大臣はどのように考えられるか。
  20. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 一般的な失業対策の問題でありますが、雇用安定基本法というようなものの構想を労働省がいまだ捨てているわけではございませんが、とりあえず今の失業及び雇用の状態というものを大ざっぱに申し上げますと、昨年度約六十万おりましたものが、本年五月は約四十七万程度に減少をいたしたのであります。しかしその後政策の転換、あるいはただいまの議題になっておりまする駐留軍撤退ということに伴いまして、本年度末にはかなりの程度増加いたすのではないかと思っております。その上に今非常に危惧されておりますることは、明年新春発生をいたす、発生というと語弊がありますが、学校卒業生が約百六十万、そのうち労働人口に参加してきまするものが約百万から百五万くらいではないかと思っているのですが、そのうちからかなりの数、私は二割五分か、あるいは三割近いものになるのじゃないかと思うのでありますが、そういうものが取り残される危険がございます。従って失業問題というものは、これは本年度及び明年度の前半くらいではありましょうけれども、非常に逆に悪化しつつある状態にあるのでありまして、これに対する基本的な対策を積極的に立てて今研究中でございますが、その反面、本年七月末日現在で未充足求人が約十三万人ほど全国にございます。これは特殊な職域、職能に限られておるのでございますが、従って雇用の増大と安定のために職業訓練制慶の拡充をはかりまして、少くともこの未充足求人を満たすような方向に施策を講じて参りたいと思っておるわけでございます。しかし、先ほど呉の場合の例をとられまして、呉に特別、一般失対及び公共事業をもって六億数千万円の国費が投ぜられました。しかし、非常に遺憾なことと申しますか困ったことには、その事業によって救済をしようと思った対象の国連軍の引き揚げに伴う失業者は、その事業に参加した全員から比べますると一割五、六分にしか当らない、他はやっぱり現地の他の労働力をもってその事業を行ったという実情にございます。しかも、失業対策事業及び公共事業はあくまで御承知の通り一時的のものでございます。この安定をはかるのにはやはり何と申しましても産業条件を整備いたしまして、新しい産業を誘致する以外にはこれはないのであります。従って、少し時間はかかります、それまでのつなぎとして、公共事業及び特別一般失対事業を行うということであります。それの対象になっております失業者諸君を吸収いたすためには、施行の時期等について検討を加え、あるいは業種等について検討を加える必要があろうかと思っております。と申しますのは、失業保険が給付されております期間はなかなか参加いたして参りませんので、工事施行の時期等はその失業保険給付期間等のかね合いを考えなければならないと思っておりますが、今までの経験にかんがみまして実効ある措置をとりたいと思っております。恒久的な措置は先ほどから繰り返して申しております通り、その地方々々によりまする特殊条件を整備いたしまして、産業誘致をしてそれの大部分を吸収する。でき得るものについては自衛隊及び既存産業に吸収するという方向をとっていきたい、こう思っておるわけでございます。
  21. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いろいろ対策を打ち立てられても、法律と予算の裏付けのない限りなかなか実際には効率は上らないと思います。そういうような意味で今申し上げた雇用安定基本法案、こういうようなことに関連して駐留軍の引揚対策善後処理費というようなものを予算化することがきわめて大事だと思いますが、予算化という点についてはどのように考えておりますか。
  22. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 私は特別にそういう款項目を設けて予算化するという問題よりは、やはり現実に出て参りまする状態をつかまえて計画を立てることだと思います。一般及び特別対策事業につきまして、特別は予算を作らなくとも既存の項目による予算要求を増加することによって解決のつく問題と考えております。それから産業誘致等についての予算措置は、その誘致計画それ自身の仕事が先行しなければならないと思っておるわけであります。従って、いろいろの自立計画産業誘致計画が具体的にでき上りました際、必要とあらばそれに伴う予算措置を講じなければならないのでありますが、今のところはすみやかにその具体的計画を立てるのに今地方連絡をとりつつある状態でございます。産業誘致計画は、計画が立って実施までの問に相当時間がかかります。その時間の埋め合せを先ほど申したような措置でやる、やるのには今特別にそういう措置をとらなくとも現実的にやり得ると考えております。特別の立法措置がしばしば前にも問題になったのでありますが、それは国有財産の処理その他についてよくそういう議論が出て参ります。しかし、その国有財産の処理等につきましても、現実に一つ一つのケースによって、呉の場合はこれは当時は私が自分であっせんをいたしましたが、法律的改正を待たないでもすべて解決をいたしておるのであります。まあ最終的にどうしてもという場合が生ずれば別でありますが、そういう措置を講じなくても現在は万全の措置をとり得ると思っております。もし金融上必要であるということになりますれば、それは国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫その他に対しまして、駐留軍の引き揚げに伴う失業者の諸君が、企業組合その他による新しい事業計画を立てられた場合の融資等の処置について、別ワクの資金面を考慮するということであろうと思うのです。そういう点につきましてもあとう限りの努力をいたすつもりでございます。
  23. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと関連してお伺いしますが、聞いていると安心していいような印象を受けるのでありがたいわけですが、しかしほとんどすべてと言っていいくらい産業誘致による吸収消化ということに尽きると思うのですね。いま呉市の問題に触れられていたが、私のところに提供されている呉市当局広島県からの資料によりますと、今言われた駐留軍労務者約三千名の失業であって、あとは、三千はすでに吸収され、三千名はいずれにか吸収されるであろうということですが、数字においても相当に食い違いがあります。そこで今たまたまいい例が出たが、呉市の場合にしからばどういう産業を誘致する、地元にまかすのでなく、政府がこれを指導するとおっしゃっているのですが、現に淀川製鋼、日立競願によっていまだに国有財産の、あの旧軍施設の問題は解決しないままに放置されていて、しかも工業用水だけではなしに、他に立地条件がいろいろ問題があるわけですね。電気の問題もありましょう、また輸送その他地域的な、海軍軍港としては成り立ったけれども、そういう非常な悪条件がある。またがって平和転換法等によって誘致された、非常に期待していた工場NBC及び播磨造船、日亜製鋼等々いずれを上げてもいわゆるオートメーションという形で、雇用関係は拡大していない。まことに驚くべき小人数のために呉市、あの狭い所で一万人あまり失業者が現在いるわけです。NBC、播磨造船いわゆる造船業にしてもすでに頭打ちの形になっている。こうなりますと、産業を誘致されるといっても過剰投資過剰設備ということになるので、今度の予算編成方針を見ても引き締めを継続されるわけです。しかし、こうなってくると、産業誘致並びにこれに対して吸収するというものはいわば絵に書いたもちで、ここだけではなるほどと思われるが、現実を知っている委員会委員の方々は少し納得がいかないのじゃないだろうか。そこまで言われるとすれば、かりに呉市に対してはどういう産業をいつ誘致する手はずがあるのか。淀川なり日立の今競願になっている、市、県、そして利害関係者の両企業において、なかなか苛烈な競争が今なされておると思うのですが、これすら解決ができない。これも国有財産の処理については、失業対策ということの論争が中心になって関係者はやっきになっていると思うのです。こういう面について、もっと具体的に工場誘致については計画を盛った資料が出せるなら、後刻その資料をいただきますが、おそらくないのではないか。今度の政府方針から見ても、そんなに産業誘致、新しい工場がどんどんできてくるということは予想がつかないのです。むしろ産業設備等は整備される状態にあるのであります。
  24. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 私が呉市の場合に申し述べた数字は、それはこまかいはしばしを言ったのではなくて、九千人という数字に対して大ざっぱなつかみを申し上げたのでございますから、具体的な数字についてはいずれ詳細な資料を提出するつもりでございます。それから呉市の場合にどういう産業が誘致され、それにより吸収されてきたかということは、これは後刻、ここに資料があるようですから申し上げます。非常にこまかいものがたくさんございますから一々申し上げるまでもなかろうと思います。小さいのもたくさんありますが、大きいのだけを大ざっぱに申し上げますと、誘致の計画がすでに実施せられているものは呉興業、これは従業員が五百二名、それから大呉興産七百十名、旭糠油百名、それから呉飼糧四百七十名、中本工作所百五十三名、百名以下は申し上げませんが東洋機械百二十名、淀川製鋼の拡充によりまして千百名、日本酸素百四十名、三豊製作所三百五名、今田哲三大化ポリコー百六名、弥生工業協同組合が八百二十六名、芸南プレス百名、トキワ工業百三十名、中国工業三百五十六名、中国チップ工業二百十名、帝国金ペン百名、こういうのが問題発生後誘致され、あるいは新設せられて吸収せられたおもなあれであります。目下話し合いが進行中のものの大口を申し上げますと、日立製作所二千三百名、それから広洋興業三百七十五名、それから北星船舶工業百四十九名、大同建設産業百十五名、三和興業百五名、そういうようなものが現在建設中、あるいは話し合いが進行中のものであります。日立製作所と淀川製鋼とが今競願になっている問題は、競願になっていること自体が産業誘致計画の成功だと思うのですが、問題をそれだからといって競争さして放りっぱなしにしておけばいいというものではないので、やはりあっせんして解決をすみやかにしなければならぬと思っております。それから呉市の問題についても具体的な産業誘致上のネックが提示せられ、政府にその解決を求められれば、積極的に処理に当ることは申すまでもないことであります。それから今の経済政策と産業誘致との関係をおっしゃったのでありますが、私の今のような国際収支改善を目的とする経済政策というものは、そう長期間続くものであるとは思っておりません。日本経済はやはり当然ある程度の幅を持ってその規模を増大して行くのでありますから、私は条件の整備さえすれば、産業の誘致によっての解決は望み得るものと確信をいたしておりまするし、また雇用の安定は新しい産業の誘致以外にはほんとうの安定は今はでき得ないことでありますから、その方向に向って施策を重点的に施行して参りたいと思っております。
  25. 藤田進

    委員長藤田進君) 今言われた日立との競願が成功だと言われますけれども、一方のは材料置場にしてほとんど雇用はない。日立は今言われたように若干の雇用があるということなんです。今聞くと、その日立の方に財産の処理で軍配が上るのだというふうに聞こえるわけですが、そういうふうにきまったわけですか。
  26. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 私は国有財産の処理についてどちらに軍配を上げるという立場にはございません。しかし私どもの方から見れば、委員長は少しとおっしゃいましたが、二千三百名の雇用量をふやすということは少しとは思っておらないのでありますが、そういう点で雇用量増大の方に解決することを労働大臣としては希望をいたすわけでありますが、いずれにするかしないかは私の権限でもなく、また最終的に決定を見たという報告も受けておりません。
  27. 藤田進

    委員長藤田進君) 私が申し上げたのは、片一方は競願になっている淀川ですか、これは材料を置くだけだから人はわずかしか要らない。しかし今言われたように日立の方は相当雇用量がある。それが今きまったように委員会で発表されるから、おれの権限じゃないと言われるが、この問題を処理されるに当っては相当な発言権がなければならないはずですよ。
  28. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 片方の淀川製鋼は材料置場として前から話をしておるのであります。競願になっていることは前から聞いております。そこできまったということを言っているのでなくして、今進行中の計画の中でこういうものがするということを申し上げたのであります。そこで労働大臣としては、雇用量の増大を見込まれるようにきまることを希望をいたすのでありますが、最終的にそういうものを処理する権限を私は持っておるわけではありませんが、労働大臣としての希望はどうかと言われれば、人がたくさん雇用される方にきまることを希望いたす。こういうことであります。
  29. 藤田進

    委員長藤田進君) なお一点。希望し、かつ努力をするという趣旨ですか。
  30. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 私の責任もできるだけ失業者をなくすことにあるのでありますから、努力をすることは当然であります。
  31. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 失業労務者の自力更生という面について、政府としてこれに対しての特別措置を講ずるというようなことは、きわめて大事なことの一つだと思うのです。この例によりますと、昨年の二月三日閣議了解事項によって閣僚が行政措置による方法を講じてきたのでありますが、先ほどから私は繰り返して申し上げておるように、予算と法律の裏づけがなかったために、あまりかんばしい成果が上っていないと私どもは見ているわけです。そこで何とかして自力更生の面について、政府が具体的に一つ団体あるいは個人に対しても、特別な措置を講じていただきたいということを強く要望しておるわけであります、労務者自体が。その点についてどういうふうにお考えですか。
  32. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 自力更生の処置と申しますと、個人の計画もありますが、最近企業組合の計画が寄り寄りでき上って参っております。それに対しての金融上の便宜供与については努力をいたします。努力をいたすということは、特殊の別ワクなり何なりで処置したいと思っておりますが、具体的に自力更生の処置、それに伴う金融の援助ということをいたすためには、計画それ自身の具体性がなければならぬ。ところがなかなかそれが抽象的な要求だけで、具体的なものがないとは申しません、ぼつぼつ参っておるのでございますけれども具体的なものが乏しいので、労働省といたしましても、企業組合等の設置に際しての具体性を持ち、計画性を持つような指導や希望をいたしておるようなわけであります。そういうものについての金融その他の必要なる処置は積極的にとって参りたいと思っております。
  33. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今の点について中小企業等協同組合法ですか、この法に基いて設立された団体、それについては中小企業金融公庫とかあるいは国民金融公庫こういうものを利用しておるようでありますけれども、これらに対して特別なワクを設けて相当額を予算化しないとなかなか実効が上らないと思うわけです。そこで労務者に対しては特にワクを設けてやるべきではないかと思うのです、そういう点についてはどうですか。
  34. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) それは特需等対策協議会の重要な議題となって目下検討中でございます。ただし先ほども申します通り金融のワクの問題ももちろん必要でありましょうが、それに先行するやはり計画の具体性というものを指導いたしませんと、金を出しても使えないという状態が起る。それからもう一つは、やはりそれぞれの窓口になります地元金融機関の理解と協力がどうしても必要であります。呉の場合もそういうあっせんをしたのでありますが、そういう点についてもそれぞれの地方におきまして、そういうふうに御了解や協力を得られるように努力をしておるわけでございます。
  35. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今の点については企業体自体の信用度とかあるいは企業の実績、こういうようなことが非常にやかましく論議せられて、結局実際問題としては一般の失業者に対する面とあまり選ぶところがない、そういうような実態のようなことと聞いておるわけです。そこで特に駐留軍労務者失業者のこのような企業体に対しては、そういう点についても特別措置として別途考えるべきではないか。そうしない限りなかなかそういうりっぱな機関ができても、実際にこれを活用することは至難であろうと思うのです。そういう点についていかがですか。
  36. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) それは失業問題の発生の事情が特殊でありますから、過去の信用とか実績とかいうことによって処理することは不可能であります。従ってそういうことの今までのような融資基準だけによってやりますと、御説のようなことになることは当然であります。そういう点についての金融機関の理解を深めるために、できるだけの努力はいたして参っておるつもりでありますが、しかしその一面、他の一般の失業者の諸君の仕事とそう明確に区別するわけには参りません。それからいま一つは融資すべき金がやはり大衆から集められた預金であり、あるいは公金である限りにおいては、その対象について相当調査と指導とが必要であります。従ってその絵にもちを書くような簡単な解決はいたしませんが、具体的にケース・バイ・ケースで処理できるようにあとう限り努力をいたしておるわけであります。  それからもう一つ、先ほど私は六万六千人くらいと申しましたが、米軍の補給部隊は残るそうでありまして、六万六千という数字がそのまま失業者になるというのはちょっと誤りではないかと思いますので、それはちょいと訂正させていただきます。明確な数字はいずれ調達庁の方から説明させていただきたいと思います。
  37. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この労務省の方々が今言った自力更生するためにも、大量解雇をするこのときを機会として、更生資金として相当額の退職金を支給するということがきわめて適切な措置であろうと思うわけです。このことについては駐留軍労務者の方々が二十九年以来国会並びに政府に対して強く要望を続けてきておるわけです。なかなかに特別退職手当あるいはまた失業対策筆の面についても希望がいれられていなし実情であるわけです。この点について政府としてはどのように考えておられるか。
  38. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) ただいまの駐留軍労務者の退職資金の問題、これは私の方の所管でございます、調達庁の所管でございますから私から便宜お答えいたします。駐留軍労務離職者の退職資金の問題は長い間の懸案でございましたが、幸いにして新労務契約が十月一日から実行になることになりました。この中に退職資金の増額のことも書いてございます。その他労務管理についてのいろいろな希望が盛り込まれた契約ができたわけでありまして、実施は十月一日となっておりまするが、退職資金に関する限りはさかのぼって七月三十一日から適用する。こういう規定でございまして、これは駐留軍労務者組合においても十分了承してこれが決定した、こういう段階になっております。
  39. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そのことについては大体現行よりは七%幾つかの増である、そういうように承知しておるのです。ところが駐留軍労務者の方々の二十九年以来の要求としては、現行より三三%ほど増ということを念願しておると思うのです。こういう点についてまあ御承知だろうと思うのですが、この点についてはまことにかけ離れておるわけですけれども、この点についてどういうふうに考えておられますか。
  40. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) ただいまの御質問は率について労務者側において十分満足を得てない、こういうお話であるように承わりました。しかし担当の調達庁の報告によりますと、この内容については労務者側もこれによって了解を得て円満に協定ができ上った、こういうように報告を受けております。もし詳細なことでございましたら、ここに調達庁長官がおりますから、その方からお答えさせることにいたします。
  41. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この三三%増というこういう強い念願が大体七%くらいで了承しようはずがないと私どもは考えるのです。なおこの問題は私どもも十分検討して、次回にまた重ねてお伺いしたいと思います。額については。しかしながら先ほども自力更生の立場からも、相当額をこの際政府は捻出することが、結局失業対策の一つの有力な柱ともなろうと思う。この点については強く要望しておきたいと思うのです。
  42. 光村甚助

    光村甚助君 労働大臣お急ぎのようですから先に質問をいたします。  さっき労働大臣の答弁では、基礎産業に吸収するとか新しい産業を誘致するとか、こういうことは大体これは実際小学生か中学生の作文のようなもので、一つのこれははったりだと私は思っている。基礎産業に吸収するというような簡単なことで失業者がなくなるなら、今までに失業者があるはずがないし、大体幾らか吸収するということも部分的には少しあると思いますが、大部分の産業が、ことに紡績あたりは一時帰郷するというような不景気なときに、この失業者を基礎鷹巣に吸収するとかまた新しい産業を誘致するといいますが、打ち出の小づちでぽんとたたけばここに一つの会社ができるというようなそういう甘いものでなくして、どこの基地にどういう会社を誘致してそこに何人くらいの人を吸収するかというくらいのやはりそういう実を示さなければ、アメリカ軍が帰ったらあしたから飯が食えないと思って戦戦きょうきょうとしている失業者を、新しい産業を誘致するからそれで安心だというような考え方というものは、これは一つの作文だと思うのです。全く労働大臣のいつものはったりとしかわれわれは考えられない。  それからもう一つ失業救済事業、そういうもので救済するとおっしゃいますが、政府事業の中でも百億以上というような事業の繰り延べをやる。一つの省を例にとっても数十億というようないわゆる建設事業の繰り延べをやっておる。こういうような中で失業者を救済するのに政府事業でやる……これだけ聞いても全く労働大臣の言っていることは現実と私は合わないと思う。こういう点でただここにきて作文的にはったりでなくして、私がほんとうにさっき言ったように、どこの基地には何々会社を持ってきて、そこに幾らくらいの人を吸収するのだというような案があるなら発表してもらわなければ、おそらく数万の労働者は安心しておられぬと思う。その点をお聞きしたい。
  43. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 小学生の作文ではなくて、先ほど興市の場合に具体的に実行しております具体的な事例をあげて申し上げました。従ってこれは努力によっては当然でき得るものであると思っており、現在やっておることを具体的に事例をあげて申し上げたのであります。  それからどこの基地、どこの返還される施設に対してどれだけのものを吸収されるかというような計画は、それぞれ条件が違いますから、その条件整備にどういうことが必要であるか、それは一つ一つの具体的に生じてくる場合に応じて研究をいたさなければならないと思う。また各地方庁には呉市の事例を示して、かくのごとく政府としては処理する方針であるから、それぞれの土地によって返還される対象物を目当てとして、いかなる産業が適当であるか、あるいはその産業誘致にいかなる条件整備が必要であるか、そういうことについてすみやかなる調査と計画を立てるようにということを指示いたしております。さらに近く文書をもってその指示をするつもりでおります。それを今日ただいま日本中にあるものについていかなる産業をどうするかというようなことは、産業誘致については相手ももちろんでございまするし、競合、競争もありましょうが、それを今日ここで数字をあげて明らかにしろということは、私の先ほど申しました方針が小学生の作文とするなら、それは逆に神様か何かに八卦見のようなことを言えということに私はなるのじゃないかと思うのであります。
  44. 光村甚助

    光村甚助君 だから、あしたから首になるという人間が、将来ここへこれからどういう調査研究してそこの土地にく合った会社を持ってくるというだけでは安心ならないというのですよ、私の言っていることは。だから少くとも具体的にそういうことが、何会社をあしたから持ってくるということができなければ、もう少し調査研究というものは具体性をもってそうしなければ、数万の人間が近いうちに首になるのですよ。将来会社を持ってくるんだからそれでしんぼうしろと言っただけでば、ほんとうの労働者の失業の救済にならないということを私は言っているのです。
  45. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 従って私はむしろ逆に言いたいことは、今地方庁あるいは各組合の方からいろいろな陳情要求があります。問題はたとえば、自力更生についての処置を要求する前に、ここに具体的な自力更生のどういう方法があるかということを計画を立てて持ってくることが先決である。それを地方庁の場合におきましては、その地方その地方における、先ほどから申しました立地条件にのっとった計画を立て、あるいはその条件整備に必要な要求というものを具体的に立て、持ってきてもらうことが先であるということを、しばしば私は労働大臣でなく官房長官の時代からも申し上げておきましたし、また呉の問題を処理しておりますときに、これは呉だけでなく将来日本中各地に波及する問題であるから、呉の問題にならって早く今のうちからそういう具体的計画を立てるべきであるということを、神奈川県、宮城県その他問題の生ずべき地域に対してはしばしば申しておったのであります。ところが残念なことには、一般的な金額の要求であるとか、あるいは立法措置要求であるとかいうことは持って参りますけれども、具体的な問題の計画は幾ら指示しても今日までに、呉の場合は別ですが、呉は積極的に政府方針に協力いたしまして、非常に熱心に産業誘致計画というものを立てました結果、先ほど私が読み上げましたような実績を上げておる。従って相互に呼吸を含わせてやりますならば、政府は十分にその問題の処理についての熱意と準備がありますから、具体的な計画を立てて納得のいく方法を要求されるなら、現に呉において解決をしておるのでありますから、その通りやり得るのだということを申しているのであります。従ってそれに今までもっと早くやってもらえばよかったのでありますが、なかなかやらない。しかし今そんなことも言っていられないでありましょうから、先月の八月二十六日であったと記憶しているのでありますが、関係府県知事が私のところへ参りましたときに、呉市の実例をあげた資料を添えてすみやかに計画の樹立を要求いたしておきました。従って各地方においてはその準備をすでに行なっておるのでありましょうし、私どもの方から督促もいたします。また内閣の特に特需等の協議会においても協議いたしました結果、そういう具体的指示も行いたいと思っておるわけであります。そのつなぎとして特別、一般失対事業あるいは公共事業あるいはその前にはいうまでもないことでありますが、失業保険の給付であるとか、それはつなぎであってそれで十分だとは思っておりません。それから事業の繰り延べ、あるいは圧縮というようなことは行われておりますが、私は三十三年度予算編成に当りましても、その予算及び財政政策の転換に伴いまして、当然その転換の結果として生ずる失業問題でありまするから、それに対する施策の予算はこれは当然別個に確保せらるべきものであると考えております。
  46. 光村甚助

    光村甚助君 労働大臣とここで議論したって失業者が救われるわけじゃありませんから、私は希望を申し上げておるのですから、とにかくどういう基地にはなるべく早くどういう仕事ができるのだということをなるべく早く調査研究だけじゃなくして、実行に移すようにしてもらいたいということを要望しておきます。
  47. 永岡光治

    ○永岡光治君 防衛庁長官おいでになりますから、この際私は次の問題についてどういう経過になっているのか全貌を明確にしていただいて、それから質問に移りたいと思うのですが、それは、この何回か今安保委員会が開催されておるわけでありますけれども、その概括的な経過、特にあなたの立場からその経過を説明していただきたいのですが、その中で駐留軍撤退という問題が論議されているはずでありますが、その計画の全貌はどうなっておるのか。それからそれに対する対策、それは国の防衛対策もあります、それから今問題になっておりました駐留軍撤退に伴う労務者の失業についての対策、これは労働大臣から報告がありましたが、また調達庁長官をもあなたは兼務されておるわけでありますが、そういう関係からどういう考えでおるのか。特に駐留軍の諸君からはいきなり何千名あるいは何万名の整理の通告があっても、その準備ができないという問題もありますし、そういう関係もこの際一つ詳しく御説明をいただき、さらに失業になるそれらの労務者の諸君から、当座の生活の保障といいましょうか、そういう問題についての要望がしばしばなされておると思うのですが、そういう問題についてどういうように考えて、そうしてどういうように実行されているのか。そういう問題を一つ御説明願いたい。  もう一つは、この前の本参議院の内閣委員会におきまして、機密保護法というものを政府は制定するというような考えがあるのではないか、こういう質問をいたしました際に、今すぐどうということは考えておりませんが、そういうことになるであろうと、こういうような御答弁があったわけでありますが、そうであるならばその進捗状況といいましょうか、あるいは何といいましょうか作業状況といいましょうか、そういう問題を今どう考えておるのか、その状況をあわせてこの際概括的に報告をいただきたいと思うのであります。
  48. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 永岡委員の御質問にお答えいたします。  第一点は、日米安保委員会の経過はどうか。特に駐留軍撤退、またこれに関連した問題、並びに労務者対策、こういうことに関連しての日米安保委員会の経過はどうか。こういうことが第一点だったと思います。御承知のように、日米安保委員会は第一回は八月十六日に開かれました。第二回は九月四日、今日まで二回開いたのでございます。第一回はこれは新聞で発表したところでございまして、御承知でございまするが、米側委員としてマッカーサー大使及び委員代理という意味でスミス司令官、日本側からは藤山外相、私と四人が出たのでございます。で、この会合におきましては、当局の問題でありまする進駐軍の撤退に関して質問応答をいたしました。これより先八月一日また八日に第一騎兵師団の撤退、並びに第三海兵師団の撤退とかいうことが日本に話し合いがあったことでございますが、発表になったと、こういう事態を受けましてそういった議題が協議されたと、こういうわけでございます。で、将来どの程度に撤退をするかという全貌はまだ決定しておらない模様でありますが、陸軍の戦闘部隊はすみやかに撤退する、こういう方針でございます。  ただし、先ほどの質疑応答の中にありましたが、陸軍関係においても補給関係のものはこれをすぐ撤退するという計画はない、なお、今後の撤退の問題は十分打ち合せて実行する、こういう建前でございました。これに伴ってわが方といたしましては、相当多数の陸上戦闘部隊の引き揚げといった事態に関しまして、施設の返還ということが起ります。これも一挙に多数の施設が引き継がれるわけではございません。これらについては時期、方法等について今後十分な打ち合せをしようということに相なったのでございます。なお、駐留軍労務者離職という問題が当然考慮される問題でございます。この点については、長い間この駐留軍のために、また大きく申しますればわが国のために、非常な苦労をして勤務された方々が、こういった政策上の変化で離職するといったようなことは、まことに同情にたえないし、政府においても万全の施策を講ずると同時に、現に勤務しておる米側においても、できる限りの援助をしてもらいたい、便宜を与えてもらいたい、こういった話があったわけでございます。どの具体的の便宜であるかというところまでは、この委員会として協議する段階には、ほかの問題もあったために、なかったわけでございます。こういったのが第一回の会合の大体でございます。  第二回の九月四日は、これまた新聞発表の通りでございまして、ハワイから委員であるスタンプ司令官が出席されまして、他の委員とともに協議をしたわけでございます。その際はスタンプ司令官初めての出席でありますし、いろいろ極東全体の軍事の情勢についての陳述を聞いたわけでございます。なお、撤退に関連し施設の返還といったような問題についても、第一回の話の続きをしたということでございます。今の御質問に関する限りはそういった状況でございまして、この会談はきわめて形式を抜いて、いわゆる率直なる意見の交換、情報の交換、こういったものに終始したものでございます。  大体が以上の通りでございまして、御了承を願いたいと存じます。  なお、第二の御質問の点、すなわち秘密保護法の問題でございます。この問題につきましては、八月十六日の当委員会において、私は藤田委員長の御質問に対して一応の答弁をいたし、また過日これは二日と思いますが、総理大臣からも衆議院の内閣委員会において答弁があったわけでございます。その当時と今日と何ら考え方は違っておりませんでございます。なお、どういった研究を続けておるかという具体的の問題でございますが、こういった問題は常に検討は進めております。しかし、具体化する段階に至っておらない点、前回の委員会で申し上げたという事態が今日の現状である、こういうことを申し上げるほかないと思います。
  49. 永岡光治

    ○永岡光治君 大体安保委員会の経過はわかったようでありますが、駐留軍陸上戦闘部隊は全部撤退する、こういうことになっておるわけでありますが、そのわが国の今政府で考えておる防衛対策、これはどういうものか。こういう撤退という事態が起きても、この前五月でしたか、六月でしたか、岸さんが向うに行く前に防衛計画は作成されたように承わっておりますが、そういう計画に何ら変更の必要がないのかどうか、あるとすればどういう方面にどのように計画を変えようと考えておるのか、その辺の対策が今検討されておるかどうか、具体的にそれが、今日の段階の時点でけっこうでございますが、どうなっておるか御説明願いたい。
  50. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 米駐留軍陸上部隊撤退に伴って、わが国の防衛整備計画が何らかの変更を受けるか、またこれに対応する措置はどうであるか、こういうような御質疑だと拝承いたしました。この米軍撤退問題は、御承知のように岸総理が六月に渡米されて、アイゼンハワーその他の幹部とのお話し合いの中に出たものでありまして、同時に一方わが国の国防会議の基本方針並びに防衛整備の目標といったものも、国防会議で決定したその直後でございまして、私ども総理から承わったところによると、この方針並びに防衛整備計画というものを先方に話をした、そうして先方は、コミュニケの文句を引用すれば、これを先方は歓迎した。そうして同時に駐留軍撤退の問題もここに話されて、そうしてああいったコミュニケが出たわけであります。従って、この撤退により、つまりこの防衛整備計画にかりにもしそこに何らかの変更を加える必要があれば、そのときに問題があるわけでございます。当方の防衛整備計画というものはよく知ってやるわけであります。私どもはこの防衛整備計画を、今後、来年度から三年間、あるものは五年間といったその計画に対しては、この駐留軍撤退というものによって変更を受け、改廃をする必要はないと認めます。しかし、とにかく米陸上部隊撤退は、私どもの自衛隊の責任を非常に加重するものであるということは当然のことでありまして、特に陸に対しては、十分防衛の態勢を完備してやるという建前になるべきだと思います。しかしながら、全体の目標はこれを変更する必要は認めておりません。来年度の計画としては、今これから予算を作るところでございまするが、いわゆる業務計画という一つの計画でございますが、内部の計画であります、それによっては、陸上自衛隊は一万人増強したい、二万人を増強する目標に対してやりたい。こういう必要を特に感じてこの計画を予算化すべく、今防衛庁内部で作業をいたしておるという状況でございます。
  51. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういたしますと、今のお話によれば、岸さんが渡米する前に一応計画を決定をいたしましたそのことを変える考えはない、こういう今の御説明のようであります。だとしますならば、この防衛計画をきめる際において、たとえば日米双方の話し合いによって出るであろう陸上戦闘部隊の全部の撤退というものを予想してあの計画は立てられておったのかどうか、そういうことを考慮せずにあの計画というものは考えておったのかどうか、その辺はどういう事情になっておるのでありましょうか。
  52. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 精細な事実は、私当時、局におりませんでしたから、ここに確言するということはおこがましいことだと思います。しかしながら、米軍撤退問題は、今日具体化したのでありますけれども、安保条約制定以来の懸案でございます。日本の自衛隊が、防衛計画がだんだん整備されるとともに、米軍撤退と、そうしてあるいは変るべき安全保障の機構ができた時分に、この安保条約そのものも廃止するのだということが既定の方針であります。そこで、国防会議においては、数年にわたって研究したこの防衛庁の試案というものを、ここに事態に即応するためにああいったような決定を見たわけでございます。でありますから、具体的にこの部隊がいつ帰るかというような問題を相談してやったわけではなく、端的に言えば、総理も言っておるように、国防会議は国防会議として、わが国が増強すべき自衛隊の計画を自主的にきめたと、そういうことで、それに応じて具体的な撤退が始まった、こういうのが順序になっておる、こう思っております。
  53. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういたしますと、お話の中から感じとれることは、安保条約というものを廃止したいという考えから出発を当初からしておる、そのためには日本が自衛力を増強しなければこれは廃棄にならないのだ、こういう意識があって、それに従って防衛計画も暗に立てられてきたようにも受けとれるのですが、そういう意味で今の自衛力増強というものを考えておられるのか、念のためにお尋ねいたしたいと思います。
  54. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 安保条約を廃止する目的をもって国防の長期計画、整備計画ができたと、こういうことになっておらぬと思います。と申しますのは、あの防衛計画そのものの実現によっても、果して今日の内外の情勢からいって、わが国が果して独力で防衛の力を持ち得るかどうかは疑問であります。しかしながら、いわゆる安保条約の精神としては、日本が自衛体制を作ること々期待しておるという文句があるのでございます。その精神からいって、日本は自分の国は自分で守るという体制を作るというその気持を持って、常に増強の計画が行われてきたというわけでございます。すぐこれだけできれば安保条約が廃止になるのだという目途であの国防会議の基本方針が作られたのだと、こういうことになっておらぬわけであります。
  55. 永岡光治

    ○永岡光治君 その辺のところはデリケートなことになるかもしれませんが、どうもやはりお話を承わると安保条約を作った当初からこれではやはりよくないという一つの要望といいますか、欲望があって、そうして防衛計画を立てる、つまり増強という方向でこれを進めてきた、今度の防衛計画においてもやはりアメリカと連絡するようなことはなしに、今のお話によれば、アメリカ軍が撤退しょうとしまいにかかわらず、こういうものを計画をきめたのだと、こういうことになりますと、それではもし撤返しないとすればそれでも日本がそれを受けて、やはり今の防衛計画でよろしいと、こういうことを考えておったというふうにとれるわけですが、そうなりますと、駐留軍に対する防衛費の負担ということは、御承知の通りきめられておるのですが、そういうものも考慮しつつ、私は防衛計画を立てられたとするならば、アメリカ軍も撤退しない、それから防衛計画はあれでいいという前提も考えて、これを作ったというようにも考えるわけですが、そういうこともやっぱり考えておるのでしょうか。そうなると、今の政府方針というものが何だか私は明確になってないように、従来の答弁から受けとれば違っておるような印象を受けるのですが、どうなんでしょうか。やはり自衛力を増強することによって安保条約を廃止したい、こういうように先ほどの答弁から受け取れるわけですが、それが本心ではないでしょうか。
  56. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) この安保条約締結の当時と、事態は非常に変っているわけです。従って、この条約自体にも、これが暫定的の措置であるということに相なっているわけです。この言葉は岸アイゼンハワー共同声明にも、安保条約が暫定的のものであるということは、お互いに確認したという格好になっているわけです。で、その意味においては、これは永久条約ではないわけです。戦後占領軍の管下にあって防御を担当しておった異常な事態であって、そのためにこういった組織、いわゆる条約機構ができたわけでございます。それが今日まで長く続いてきて、だんだん防衛の強化というものができた、その機会にまず陸上部隊を引き揚げようという段階に今日は来た、で、今後どうなるかということは、これは内外の情勢等も非常に考慮しなければならぬわけでございまして、また、空海の方面においてはなかなか整備ということは相当の時間を要する問題であろうと思うのでございまして、安保条約を直ちに廃止する目途のもとに、防衛整備計画をすぐ立てたというふうには考えられないのでございます。
  57. 永岡光治

    ○永岡光治君 それで念のために一点だけ。この問題についてはお尋ねしておきたいんですが、政府の今の考えは駐留軍撤退してもらいたい、こういう意思があるのかどうか、このままとどまってもらいたいという意思があるのか、それともやはり撤退してもらいたいというそういう方向で努力しようとしているのか、どっちなんでありましょうか。
  58. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) その問題は非常にむずかしい問題でございまして、駐留軍とおっしゃるのは陸海空全部を含めてという問題でございます。それは希望としてはわが国をわが国の防衛組織の力で守っていくということは、これは当然あるべきです。しかし、現実の政治としては、ただみんなそう言って帰ってもらったらいいということを、防衛当局者としては、今日の段階で申し上げることは、非常に私は、何というか言い過ぎになると思うのでございまして、これは一に国際情勢その他を考えてやるべきことでありまして、これは自分の国がすべての整備、軍艦その他を持ってやっていくという事態になることは、これはけっこうなことだと思うのでありますが、実際の政治面において果して可能であるか、現状においては。また一方世界の平和というものはどういう格好で維持されていくかという問題にも関連するわけです。ただ、こういった念願をここで言ったところが、防衛庁長官としてはどうも一定の方針にはならぬだろうと思う、具体的の政治の方針には。まあそういうことで御了承を願いたいと思います。
  59. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは重要な問題ですが、やはり防衛計画を立てるものと関連して参りますが、やはりそのとき、そのときの国際情勢というものはもちろん判断されましょうが、その際におけるやはり政府の考えておる防衛規模というものがあろうかと思うのですが、その際に一つやはり意欲、目標がなくては計画が立たないと思うのですが、やはり来年すべて撤退してもらいたいという希望があるかどうかは、それは別として、やはり方向として政府の考えは駐留軍撤退してもらって、日本で自衛力を増強してこれを守ってゆこう、こういう一つの方向で進みつつあるのか。その度合いはその年次年次によって変ってくることは、政府の考え方もあり得ると思うんですが、方向としてどうなんですか、ただ漠然として、撤退をしてもらうというような、そういう考えも別段ない、そして防御計画というものは向うが撤退したならばこっちが作ろう、増強してゆこう、そういう程度にとどまるものなのかどうか。これはやはり大きな方針になると思うのですが、そういう方針がなくて防衛計画を立てるということは、これは無定見じゃないかと私は思うんですが、あってしかるべきじゃないかと思うんですが、その点をもう一度私は防衛庁長官の立場から御答弁をいただきたいと思います。
  60. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 現在の防衛整備計画、この実行の暁において、国際情勢のいかんによっては、まだ日本を自分の力で守るだけの整備はできないと思います。空において特に、また海においても同様でございましょう。でありまするから希望として、わが国が全部の整備を完成して、そうして共同防衛の体制をなくしてもいいという段階にはなかなか私は至らないものと思うのです。現在の計画として具体化されたものならば、私は、その段階は、もし世界の平和というものの状況がこういう状態であれば、私はその実現はむずかしいのじゃないかと思うのです。希望はどうだということであれば、これは日本の国力相応、国情に相応した最小限度の負担をかけて、徐々にいわゆる漸増していこうという体制が基本の方針でございます。これを非常な大きな強力な金をかけて急激にやるということは、これはわれわれの防衛方針じゃないわけであります。また国民の意思もそこにないと思うわけでございますから、いわゆるステップ・バイ・ステップ、漸増の方針で、まず三十五年、あるものについては三十七年までの計画というものを実行する。この程度ならば国力相応である。そういったような趣旨で基本方針が立てられて今日できておるわけでございます。で、防備の体制とかいろいろな問題は、今後の情勢によって変るでございましょう。あるいは遠くから共同防衛の手段を講じ得るというような装備の方法もあるかもわかりません。そういうような将来のいろいろなあらゆる条件々考慮して、こうあるべきだという議論になりますと、これは非常に複雑になってくると思うので、まあ今言ったようなことで御了承願いたいと思います。
  61. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと関連して。言葉をかえてお伺いしてみるのですが、どうもあなたの御答弁で私ども把握しにくいわけですが、津島防衛庁長官とされては、安全保障条約の建前から見て、日本の国土を守る防衛の見地からした場合に、その防衛責任というものがアメリカと日本の共同責任なのかわが国のことだから日本が責任をとるのか、日本政府が。そういう点はどう考えておるか。
  62. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) その点は、守るのは第一義的には、日本なら日本というものが第一義的でございましょう。それに対して共同防衛の体制でこれが援助するという格好なら、主体はやっぱりその国すなわち日本の防衛は日本でやる。しかしながら、いわゆる不時の面接侵害であるとか、まあ間接侵害も含んで、そういったような場合にこれを援助すると、こういう建前になっておると思います。
  63. 藤田進

    委員長藤田進君) そういたしますと、安全保障条約面から見た場合に、日本が防衛の責任があるので、一方アメリカはそれを援助するにとどまる、援助しないといえば援助しないこともできる。そう解釈されるわけですか。
  64. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) これは、日本の防御が侵略によって危殆に陥った場合に、アメリカはこれは共同の防衛をやる。しかし、日本がまず自分の国を守るというのは第一義的であるが、あわせて一緒にやろうということに安全保障条約はなっておるわけですね。行政協定においても、そういった事態が起ったという場合は、協議してその措置をとる。こういうわけになっているのであります。
  65. 藤田進

    委員長藤田進君) ですから日本の安全を保障するためには、日米共同でこれを守ろうというのではなくて、それでは日本がまず第一義的に守っていく、アメリカがこれを援助するというふうに解釈されているようにも思うし、共同で相談していくのだと行政協定になっておるというならば、二つの解釈に立たれて、どちらかということは、私はこれからやはり出発するものと思うのですが。
  66. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) まず日本の防衛は自分でやるということは、条約の文面の問題じゃないのです。これは日本国民の覚悟として考えるべきことであり、条約の文筆の中で、日本は自分が守るのだ、自分はこれを援助するという、こういったようないわゆる法制的の、条約の文章じゃないのであります。私が言ったのは、そういった趣旨で守るのだという、これは道徳、徳義的の問題であるか、祖国愛の問題であるか、条約の法律的の問題ではなくして、そうあるべきだ、こういう趣旨なんでございます。
  67. 藤田進

    委員長藤田進君) ですからポイントがずれていたのですが、私のお伺いしているのは日米安全保障条約から見ますと、防衛責任はいずくにあるのか、共同なのか、単独に日本だけなのか、それをどう解釈されているかという条約上の解釈をお尋ねしているわけです。
  68. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 文章は、共同とか単独とか援助とかいうことはございません。しかし、やはり共同で防衛するという結果になる、そういうわけでございます。
  69. 藤田進

    委員長藤田進君) そう解釈される、しかし共同責任において日本を守る。それは一方においてはアメリカを守るための安全保障条約という議論もございましょうが、あなたの考えとしては共同して日本を守ってくれるのだ、こういうふうに解釈されると思うのですね。そういたしますと防衛を百パーセント全からしめるために、これは事態において、時期において違うでしよう。相手国のいわゆる仮想敵国というか、その防衛力なり兵器なりによって違うでしょうが、いずれにしても百パーセント守っていくのだという前提のもとに防衛計画を立てるならば、アメリカが百を持っていてわが方がゼロの場合、またあなたの御発言でいまますと、漸増主義で一〇%、三〇%、五〇%、そしてやがて百パーセントわが方で守っていく、こういうふうになれば相手国のアメリカとしては漸次九〇%から八〇%、七〇%、五〇%、二〇%、ゼロと撤退なり何なりする、こういうふうになると思われるのですね。そうすれば岸総理の言われたというのを引用されての御答弁である、わが国の防衛計画については自主的に独自の立場でこれはやるべきであって、アメリカとは全然関係ないのたとおっしゃる点は少しどうも今の計画から見て筋が違うのではなかろうか。アメリカの方の撤退防衛力の漸減、わが国の漸増、寄せて百パーセント常にあれば、アメリカのそういう撤退計画なりその他新兵器の配置状況なり、そういうものを相談しつつこれに補足するように、漸増でそれではわが方の防備はこういうふうに増強しよう、こういうことが当然出てくるのじゃないですか。その点を強く否定されるところが私どもよくわからない。
  70. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 自主的の防衛計画を立てるという言葉の問題であろうと思うのですが、これは、過去何年間にわたって、先方の軍事ないし政府当局とは、日本の防衛力をどの程度に増強するかという話し合いはあったと思います。これは数年前からあったと思います。今回のこの防衛整備計画なり、防衛方針としてきまったものは、それらの事実は考慮したでしょう。しかしながら、日本でこの程度のものはでき得、現在の状態においてはこれが適切であるという案は、その案自体のことである。それは、国防会議においてきまったものは、ここにきまった後に向うへ持っていった、こういう意味です。自主的という意味は、今回の決定に当っては、国防会議においてきめた案は、わが政府としてこれで適当であるということを決定した、その意味が自主的という意味です。一緒になってこうしようじゃないかというような手続というものはなかった。しかし、過去の沿革はいろいろあったということは、これは見逃し得ない事実であろうと思うのであります。
  71. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 長官の先ほどの説明は、日本が自衛力をだんだん増強していけば、その結果安保条約は当然廃止になる、これは安保条約締結当時の趣旨である、こういうふうに説明されたと思う。それからもう一つの表現を使われたのは、日本は独力で防衛できないのだ、だから安保条約によって共同で守っていくのだ。それから国際情勢の変化がない限り安保条約は廃止にならない、こういう表現をしておられる。これは若干取り方が違ってくると思うのですが、若干内容も異なってくると私は考えるのですが、長官はどういうふうにお考えになっておりますか。
  72. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 今の安保条約の規定するところによると、日本の増強を期待するということはある、しかしながら、日本の兵力の増強によって安保条約はなくなるのだということは書いてないのです。これは御承知のように第四条に、平和維持のために十分なところの国際連合の措置とか、または個別保障、集団保障というものができた時分には、これはそう認めたときは、両国でこの安全保障の条約は自然に効力を失うと書いてある。日本の増強を希望してやるということは事実だけれども、どの程度増強すればこれは廃棄になるという法律上の規定というか、条約上の明文はないわけです。これは実際問題としてはどうあるかということは別ですけれども、今の安保条約の規定自体は、そういったような平和安全を守り得るだけの国際連合の措置なり、または個別的集団安全保障のあれができた時分に、両国がそれを認めたときは、この安保条約は効力を失う、こう書いてあるわけです。だから法律上の問題を、現行はどうなっているかという問題と、今後どういう事態が起るかということとは、別の問題じゃないかと思うのです。
  73. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、各地の演説会で、政府並びに自民党の皆さんがおっしゃっていることは、日本が自衛力を増強すればアメリカさんは帰っていくのだ、アメリカさんに帰ってもらおうと思えば、自衛力をふやさなきやしようがないのだと、こういう演説を政府の方もしておられますし、大臣の方もそれから自民党の代議士の皆さんもしておられる、これは間違いですか。
  74. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) その問題は別でございます。日本の増強に伴って現在おるものが何万人帰るか、これはだんだん増強の度合いによって撤退する、しかし、安保条約はそれで廃棄するかどうかという問題とは、これは別な問題でございます。二つあると思います。安保条約上の駐留軍の配置とか、その他の関係においてだんだんその増強の状態に応じて撤退していくということはあり得るわけです。現にそれが今行われつつあるわけです。であるから、日本の増強と同時にだんたん撤退するということは、これは現実の政策の問題で、しかし、それならばいつ安保条約がすぐ当然に効力を失うのかという問題がここに条約上の規定としてあるのであります。これは条約上の問題でございます。そういうわけでございます。二つあると思うのであります。
  75. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、先ほど言ったように、皆さんがおっしゃっておるのは、日本が自衛力を増強すればアメリカさんは帰るのだということは、一部分帰るのだ、こういうことですか。私はアメリカ軍が全部帰ってしまえば、安保条約は要らないと思うのです。今の安保条約の内容は、アメリカ軍が日本に駐留しないのに安保条約というものは存在する意義がないと思う。そういう意味で、自衛力を増強していけばアメリカさんは帰るのだということは、これは違うということは言えないと思う。アメリカ軍が駐留しない安保条約というものは考えられないのですよ。アメリカ軍が撤退するといえば、当然安保条約というものはそのときに廃棄になるのが当然ではないですか。同じことですよ。どこが違うのです。
  76. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 日本の自衛力の増強は、段階があるわけでございます。それで、漸増の度合いに応じて米駐留軍撤退するということは、われわれは期待しているわけです。しかし、全部帰ってしまうという時期が、今の国防のいわゆる整備計画において、あるいは予想されるところのその程度において、すぐみんな帰ってしまうかどうかということは、私はまあ明言できないことだと思うのです。特に空においてはなかなか日本の増強というものはそう急速には行われない事情がある。これは事実問題でございます。もし全部がいなくなれば、安保条約はどうなるか、そういった場合において、これはその事態に応じてあらためて協議されるべき問題であろうと思うのでございます。撤退はしない、幾ら増しても。そういうことは私は申し上げておるわけではございません。現実にそういった事態が起っておるわけでございますから……。今後もあるいは空その他の海の部面においても、これは岸総理、アイゼンハワーの共同声明の中にも書いてある、全体の軍隊について漸次撤退するのだということが書いてある。特に陸上戦闘部隊については、すみやかに撤退する、こういうわけです。全部とは書いてありませんが、その他の部隊について、それは逐次情勢に応じて撤退する、こういうことはわれわれも期待し、また共同声名にも載っておるわけです。それであるから、安保条約はそのときになくなるかどうかという問題、一人もいなくなった場合は、これは仮定の問題でございますが、そういった事態においては、これは当然に再検討されるか、現実において行政協定の規定なんというものはほとんど必要なくなる問題だと思います。そういう事態だと思います。
  77. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは政府の私は方針を伺っておきたいと思うのですが、政府は、国力に応じた自衛力の増強をやりたいということで、どんどん進められておるわけです。そこで、今日の段階では、アメリカの陸上の戦闘部隊は一応撤退するという段階にきておるわけです。政府としてはさらにアメリカの空軍あるいは海軍、それから日本の基地は当然関連しますが、空軍、海軍そういうものが撤退するということを、そういう条件を作り出すという方向で、この日本の自衛力の増強の問題を考えておられるのかどうか、その方針をはっきりしていただきたいと思います。
  78. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 陸のことについては申し上げた通りでございます。今のは海空の問題であろうと思います。特に空の問題が非常に重大だと思います。そうして航空自衛隊の増強に応じて、先方の航空部隊あるいは施設、それがだんだん縮小されるという方向には向っております。そういったような事態に進行しております。その程度は急速にいっていないのですけれども、あるいは施設の面からいっても、航空施設等については、日本自衛隊——航空自衛隊の方に織き継ぐといったようなものが、徐々に出てきておるわけでございます。
  79. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の現状の問題もさることながら、将来政府方針として、アメリカの海、空軍については全部引き揚げてもらうのだ、そういうための方針といいますか、日本の自衛力の増強ということは、そういうことも考えているのですか。その三カ年計画を言っているのじゃないのです。
  80. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 将来という意味は、いつごろまでのことを想像されて言っておるのでありますか、今の具体的の計画においては、どうしてもある程度空軍というものは、今の防衛計画においては残るだろうと予想されるわけです。しかし、国力の充実に応じて必要な自衛隊というものを、今度は充実するということになったならば、だんだん事態が変ってくるだろうと思うのです。将来とはどういうことか、その期間等についてはなかなか今日逆睹しがたいものがあると思うのでございます。
  81. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではもう一つの表現、日本は自力で防衛できないのだ、だから安保条約が必要なんだ、国際情勢が変らない限り、この安保条約は廃棄できないのだ、こういう表現をしておられる。これは従来政府もしばしば安保条約を締結するときもそういう説明をしておられるわけです。国際情勢の変化ということは、私は端的に伺いますが、米ソの対立が緩和すれば、これは安保条約は廃棄になる、こういうふうにお考えになっていいのですか。
  82. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 対立緩和ということは、どの程度にこれが行われるか、どの程度にいけばこういう条約を廃棄できるか、将来長きにわたってそういった安定があるかどうかということも、考慮に入れなくちゃならぬわけです。一時の安定であるか、相当長期にわたる永久的な安定であるかということも考えなくちゃいかぬので、単純に、いわゆる対立緩和、安定という事態がここに目先に見えたというので、直ちに今日これを廃止するということは、ちょっと不可能だろうと思います。
  83. 永岡光治

    ○永岡光治君 どうも防衛庁長官の御答弁を聞いておりますと、やはりもやもやしたまま、はっきりしないのですが、たとえば、撤退の問題にいたしましても、日本が増強いたしました結果、向うが撤退することに、なるだろうという、そういう表現ですね。言うならば、結果としてそれが出てくる。だから、そこには撤退してもらいたいために増強するという意欲はないわけです。その表現法をもってすれば。かと思うと、この防衛計画を策定するに当っては、アメリカと相談する、しないという表現は別として、自主的にきめる際においても、撤退するであろうということを、この程度撤退するからこの程度増強しなければならぬということで計画をした、こういうことで、非常にあいまいなんですが、その点を一つ明確にしてもらいたいと思います。  もう一つ。私はなぜこれを問題にするかというと、この前の当委員会において、岸総理に質問いたしましたところが、日米安保委員会において、あなたは何を一番重点において論議をしようとしているのかという質問に対して、岸総理は、はっきりこう言っているわけです。それは、安保条約の改正と言いましょうか、改廃と言いましょうか、そういうものを意図しておる、こういうことを言っておる。だとするならば、どういう具体的なものを考えているのか、その改正というものは、これはやはり当然向うの撤退、そういうものが予想されるのですよ。でなければ、改正とか何とかいう問題は出てこないと思うのですがね。そういう点とも関連があるのでして、これは一つ明確にしておいてもらいたいと思います。
  84. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 前の点でございますが、地上部隊、普通の地上部隊、外国の軍隊が内地に長期にわたって駐在するということは、これは非常に両国のためにも好ましくないいろんな影響が起るわけです。これは、なるべく早く撤退してもらいたいというのは、私は国民の輿望だろうと思います。それについては、わが方で、国防の方針、特に地上部隊にかわるべきわが陸上自御隊の強化増強をはかって、そうして撤退の実現を期する、こういうことは当然にあるわけです。今日の陸上戦闘隊の撤退も、そういったような日本のつまり事情、また、自衛隊の増強その他もすっかり考慮に入れて、これが急速に実現した、こう思っておるわけでございます。でありますから、外国の軍隊なり、そういったものが外国に、日本なら日本に長く駐在、駐屯するということは、あまり好ましいことではない、これは最小限度にとどめるべきだと思っております。そういった感じは当然に皆さんもお持ちだろうと、こう思うのであります。  それから第二の、安保条約の改正問題、これが日米安保委員会で議題になる、こういう問題でございます。これは、岸総理の言われた通り、いろいろ当面の問題を今議論しておるわけでございますが、そこで、あの課題と申しますか、議事事項、協議事項の第三にもございますように、すべての問題を通じて、両国の国民の願望に沿うようなことについて協議する、こういう築三の項目があるわけです。これは直接には安保条約の改正とか何とかいう問題を指してはおりません。しかしながら、だんだん協議の事項の進展というか、に伴って、われわれ国民の願望をそこで協議するという段階にもくるものだと思っております。しかし、この問題は、なかなかアメリカ側にとっても相当重大な問題でございまして、今日はまだその問題を協議する段階には至っていなかったというのが事実でございます。しかしながら、今日の事態において、あれを廃止するということを議論するというようなところまでは、この安保委員会でやる問題外であろうと、私は委員の一員としてそう考えておるわけでございます。
  85. 上原正吉

    ○上原正吉君 ちょっとお伺いしたいのですが、安保条約なるものは、日本にアメリカ軍が駐留するから必要な条約である、アメリカ軍が日本に駐留するのは、日本が日本の自衛力だけで日本を十分守り得ると、日本も認め、アメリカも認めた場合には駐留軍撤退する、私はこう了解しておるのですが、それで間違いないのかどうか、ということと、いま一つ、そうして日本もアメリカも、日本の自衛力は日本を守るに十分だと認めて、駐留軍撤退したときに、安保条約というものはそのまま消滅するものなのか、条約は存続していく、また必要が起れば、駐留は開始されるものなのかどうか、これを一つ伺っておきたい。
  86. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) そういった場合には、当然この問題は実効のない条約になる。適用のない……。でありますから、形式的にこれを効力をなくするといったような事態だろうと思う。そういう、全部撤退して、日本の安全保障というものはやっていけるという事態ができれば、これは撤退するでしょう。そういった場合には、安全保障条約、これに伴う行政協定の規定は、全部アメリカの駐留軍に関連したいろいろな行政措置が書いてあるので、適用のないものだ、当然、何というか、適用のないものであるということで、形式的にこれを廃止すると宣言するかどうかという条約の手続は別であろうと思いますが、そうだろうと思います。
  87. 上原正吉

    ○上原正吉君 私がお尋ねしているのは、そういうことになって、駐留軍撤退したら、そのまま条約は自然と消滅するものなのか、あるいはまた、条約は残っておって、必要が生じたら、つまり、日本の自衛力が日本を守るに足りなくなったと、日本も認め、アメリカも認めたら、また駐留が再開されるかどうかということを伺っているのです。
  88. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) これは、条約の文言の解釈だろうと思います。この前文には、日本は自衛権を持っておる、しかしながら、それを実行する手段を有しないと書いてある。それからこれは発足しているわけです。今度は、手段を持っておる、こういう事態が起ったならば、これは当然に、この条約というものは、いわゆる前文から見ましても効力がなくなる。あるいはこれを法律的に見て——これは専門家に聞こうと思いますが、これは廃止するものとするという一方的の宣言でこれは効力があるかどうか。これは条約の専門家にただしたいのですが、法律問題だろうと思います。
  89. 永岡光治

    ○永岡光治君 今のお話ですと、安保条約の廃止というまでは考えていないということ、それから問題にはなかなか困難だというような、そういう安保条約の改正についてもなかなか困難だというような答弁がありましたが、これは岸総理の本委員会における答弁と全く食い違った答弁なんですが、岸総理は、この前の委員会では、日米安保委員会に何を期待するのか、何を一番最重点としてこの委員会に期待するものがあるのかと言ったところが、それは、安保条約の改正と言ったか、改廃と言ったか、よくわかりませんが、少くとも改正になるわけですが、それを期待するとはっきり答弁しておられる。そういうことになれば、また私も当然そうだろうと思うのですが、そうであれば、防衛計画と不可分では考えられない問題だと思う。ですから、私は、一体改正の具体的な項目について、こういうように改正したいという日本の願望があってしかるべきだと思う。そういうものがなしに、ただ改正を期待すると言っても、私は問題にはならぬと思うのですが、そういうものは全然今お持ち合せになっていないですか。
  90. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) ちょっと前段に御質問があった点ですが、岸総理の発言と違っておるという点、私が今申し上げたのは、改正問題については、いずれある段階において協議する時期がくるだろう、こう言ったのです。改正問題は触れないということは申し上げたことはない。ただ、これを廃止するかどうかということを、この委員会で協議するかといえば、これを廃止する議論をあすこでするということには私は考えておらぬ。委員の一員としてそういうことを申し上げたので、岸総理も、あれは廃止するということでこの委員会でやらすのだと、もしそういったことがございますれば、これは私の今のお答と矛盾する、食い違いがあると思いますが、そういう趣旨じゃないと思います。前段の方の岸総理の委員会における答弁と私の答弁とに食い違いがあるとは私思っておりませんが、それはまあそれといたしまして、いかなる問題がこのうちで協議の問題になるかという具体的の問題でございます。これは研究中でございます。しかし、少くともこのうちで、まあ言葉としては悪いですが、一方的になっておる問題は、条文の上にあるわけです。たとえば、アメリカ軍が合衆国は日本に軍を駐留する権利を持っているというような言葉があるのでございます。まあその他研究すればある問題でございまして、どのポイントどのポイントをこの協議の問題にするかという具体的のことはちょっと今言明することを差し控えることをお許し願いたい。慎重に研究しておる問題でございます。
  91. 永岡光治

    ○永岡光治君 それでは次に、今の二回にわたる日米安保委員会の話し合いの結果が報告されたわけでありますが、今のお話によりましても、撤退の全貌というものはまだ決定されていないと、こういう話ですね。これに実は問題があるわけです。そういうことがあるために、たとえば相模工場等の問題に例をとりましても、絶えず浮動しているわけですね。しばらくは大丈夫たという言明をしてみるかと思うと、一週間後には何千名かの首切りを強要してきた。こういうことで非常に混乱をしておる事態があるわけですから、私は当然これは全貌を明確にして、それに対する対策も計画的に行なって混乱のないようにすべきが当然だと思うのですが、いまだにその全貌がはっきりされていない。そしてまた、時々刻刻に起る、緊急に向うからいきなりこれをやめてくれとか言われることになりますと混乱が起るのですが、そういう混乱を、防衛庁長官としてあるいは調達庁長官としてどういうふうに解釈しているか。非常に大きな問題だと思うのです。
  92. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 今の御質問は、まことに私も同感するものであります。撤退計画の全貌、またそれに伴う人員解雇の全貌ですね、そういったことは、この委員会でも特に私は要求をいたしておるわけです。先方としてもその事情は十分了承いたしております。しかし、何分にも広範にわたり、また輸送関係、向う側の配置転換の計画といったようなことで、十分にまだ確定しないものが相当あるのでございます。そういうものがはっきりしてくれば、これは一つ全貌を出していこうということは申しております。この点は非常に大事な点でございます。今日まで、何月にどこが帰ってどこがあくといったような時期的に見てもはっきりしたものは、今日は向うで検討中であると、こういう事態でありまして、私どもは、お説のようにはっきりとした、また具体的なそういったものを希望いたしておる次第であります。
  93. 永岡光治

    ○永岡光治君 それは何かこちらから早く示せというようなことをおそらく要望されておると思うのです。お話によっても、何か見通しをつけるようなあれはないのですが、全然今は五里霧中で、ただ向うから言われるままに混乱が起きている、そういうことなのでしょうか。
  94. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) これは、二回にわたって非常に強く申しておきました。そういうものができ上り次第これを差し出すということになっております。今日はその程度でございます。ある施設については、これとこれとは返すと、これは全貌とは言えないものでございまするが、相当の数の話はございました。相当の数の施設の返還の計画ですね。しかし、それは全部じゃないのです。そういった次第です。
  95. 竹下豐次

    竹下豐次君 先ほどからの質問、お答えを聞いておりました中に、はっきりしない点がありますから、念のためにお伺いしたいと思います。  日本からアメリカがすべての軍隊を撤退するというような事態になったときには、安保条約というのは当然消滅すべきものじゃなかろうか、消滅さしてもいいんじゃなかろうか、こういう御質問に対して、お考えがありましたけれども、そうであるかのようなお答えであったように聞きましたけれども、どうもはっきりしませんでした。私といたしましては、こういう場合も予想されるように思うのです。全部アメリカの兵隊を撤退するということ、日本の防衛が安全であるということは合致しないのじゃなかろうか。日本の近辺に、アメリカの空軍等が装備を完全にしておるならば日本だけで防衛が完全にできない場合でも飛んできて、また一緒に共同防衛に当って日本を守るということも考えられる。そうしまするというと、日本からアメリカ兵が全部撤退したらすぐに安保条約が不必要になるのだという結論は当然に出てこないのじゃないか。私はこういうふうに思っておりますが、その点に対するお答えが、私は十分了解することができませんでしたから、もう一ぺん御説明を願いたい。
  96. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) それは条約の効力の法律問題ろうと思います。私も確信をもって先ほど言ったわけではございません。全部いなくなれば適用する客体がないわけでございますね。それは、行政協定で、宿舎はどうするとか、何はどうするとか、こういうものは適用のないものが残る。しかしこれは、そういった場合、宣言を出して、これはないものとするか、または、これは眠った状態に置くかという法律上の問題もあり、その事態においてのまた政策上の問題もあると思うのです。しかし、全部帰ってしまうということによって当然に条約が廃止になるということには今の規定はできてない、こういう意味でございます。実質上の客体がなくなって、適用のないものになるのじゃないかということを今申し上げたのです。こういう趣旨でございますから、この問題は、条約上の解釈の問題でございまして、この集団安全保障で十分な安全を企図できるような場合を両国が認めた場合には、これは効力がなくなるということの場合は書いてある。しかし、撤退の場合はこの条約がなくなるということは書いてない問題でございますから、これは、条約上の解釈としては、専門的な法律の解釈を必要とすると、私はその方の専門じゃないですから確言はできかねる。こういうことでございます。
  97. 竹下豐次

    竹下豐次君 私は、実際上の問題としては、先に申しましたようにアメリカでは全部撤退しても、衣だ両方安保条約を存続しておく必要のある場合が残り得るという実態の生ずることもあるであろうということが一つと、それからもう一つは、完全に日本が日本だけで防衛ができる、アメリカの加勢を仰がないでもいいんだという実態ができておるか否かということは考え方によりて違う、認識によって違うのでありまして、もう絶対にないのだということをはっきりだれにも言い得るか否かが問題なのであって、しかもただ一方的にそういう状態であるからもう効力がなくなったのだとか、まだそうでないから効力が残っているんだからというようなことを、勝手に両方で言い出すようなことになったら、これはその問題だけでも両方の争いが起ってくる。だから条約の解釈としては、私はやはりそういう場合には両方の意思表示をはっきりしておくというところまでいかなければ間違いじゃないか。こういうふうに私は法律解釈としては考えておるわけです。その点がはっきりしませんでしたから重ねてお伺いいたしましたが、大体今の答弁で見当がついた次第であります。
  98. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) この安保条約の規定では、単純に撤退する事態が全部ですね。これはいつあるかどうかということは、ほとんどこれは仮定の問題ですが、その場合に効力がなくなるのか、当然に廃止になるのかという御質問があった。実際問題として日本の防衛が、先ほど申しましたように、今考慮されておるような整備計画において単独に、かりにこれがなくなっても防備が完全になる、安全が保障できるかといったら、私は、まだその段階に至らないのでありますから、いわゆる日米共同という言葉はどうですか、この安保条約における防備体制というものは必要だろうということでございます。それから、この条約を廃止する時分には、個別的かまたは集団安全保障でこの日本の安全を保障できるという、できたということを両国が認めた時分には、これにかわるものとしてそれが出てくるのだと、いうことでございますから、そういったようなことが予見されているのだと思うのです。たとえば国際連合の集団安全保障措置ですね、これがあれば、これで十分だと言えればこれは効力がなくなる。その時の両国のいわゆる考え方、認定でございます。それによって初めて効力を失う。またそれによらないでも、外の形体の集団安全保障ができるということによって安全が保障される場合には、もうこれにかわるものとして乗り移ろうということが書いてあるわけでございます。現実の問題としては、私は今の防衛…だびたび繰り返しますが、現在われわれの作っておる防衛計画が達成されたからといって、これは直ちに単独な事態で安全が保障できるという認定は、私は困難であろうと思うのです。そういう事実なんでございます。
  99. 竹下豐次

    竹下豐次君 もう一つお尋ねいたしますが、九月四日の朝日新聞に出ておるのを私ちょっと見たのであります。それを見ますというと、自民党の辻政信氏が質問しておるわけです。「日本とアメリカとの間に共同防衛に関する協定ができていないのか。」こういう質問に対しまして長官が「防衛庁としてはないが、自衛隊と米軍の幕僚との間ですでに話し合いが行われているので、その点に関する了解はあると思う。」と、これだけしか新聞に出ておりませんが、速記録を私見ておりませんから、実はその問答の意味を了解しかねておるので、今お尋ねしておるわけですが、こういう疑問を起しましたのは、実はこれと直接関係があるのかどうか、ほかのことかもしれませんが、前にこの委員会におきまして問題になったのが、昨年九州方面で行われた防空演習の問題であります。そのときにアメリカの空軍と日本の空軍とが一緒に作戦をしたと申しますが、演習をした、その時に両方が協議してやったのか別々にやったのか。ほかの言葉で言うならば、向うに従属した形で演習が行われたのではないかという質問が出たことがあります。それに対して別々だったというようなお答えが、その当時の防衛庁長官からありました。私といたしましては、別々にやると言っても、両翼張って編隊飛行しているような場合、まちまちで左と右が相談なくやれるはずのものじゃないじゃないかというようなことの質問をしたのでありますが、どうも返事がはっきりしなかったのであります。あるいはそういうことと、この新聞に出ております問答が関係があるのか、あるいは全く別のことでありますのか、この点がはっきりしませんのでお伺いしておるのでございますが、これはどういうことだったのでしょうか、御記憶だろうと思いますが。
  100. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) その質問は、衆議院の内閣委員会だったと思います。辻委員からの質問であったと思います。それで、日米間において防衛の具体的計画というものについて協定ができているか、文書によってそういうものができておるか、こういう質問だったと思います。それについて私は、そういった協定はできておりません、しかし、幕僚会議においては、そういったような防衛に関したいろいろ協議なり、また意思の疎通をはかって、いろいろ検討しておるものと思います。しかしながら、そういった具体的計画の今日日米間に協定があるかということは、これはございません。こう申し上げたわけであります。お話の今の航空関係の訓練ですが、演習の問題については、これは、二年前か何かだったと思いますが、十分に私は話をまだ聞いておりません。ここに防衛局長がおりますから、その当時の様子をお答えいたします。
  101. 加藤陽三

    説明員(加藤陽三君) あの演習は、昨年の秋にたしか行われたと思います。米空軍が日本及び韓国の上空におきまして独自の演習計画を立ててやったわけであります。それに対しまして、わが方の航空自衛隊といたしましても参加をいたしました。向うと連絡をとりながら、源田空将を司令とする演習部隊編成いたしまして、F86数機、T33十機くらいだろうと思います。北海道及び九州方面の上空におきまして、それぞれ目標機及び要撃機と会って訓練をしたということでございます。
  102. 竹下豐次

    竹下豐次君 そうしますと、もう一ぺん加藤さんにお伺いいたしますが、この新聞に出ております衆議院の内閣委員会の問答は、去年の演習の問題とは全く関係のないことでありますか。私ちょっと想像しますのは、あの問題についてこの委員会でも問題になったことがあって、この委員会では必ずしも政府の答弁に満足した形でなくて済んでしまったわけであります。だからそういう問題を含めて、この際、アメリカと日本との間に話し合いがあって、そうしてこの後の方策を御協議になったのかもしれない、こういう疑問を持って新聞を読んだわけでありますが、それは違いますか。
  103. 加藤陽三

    説明員(加藤陽三君) お答え申し上げます。  昨年の演習は、米空軍が毎年行なっております演習の一つなんでございます。そのときに演習の計画を立てましたときに参加をしないかというお話がございました。当時の長官の御承認を得まして、演習に参加をしたのでございます。この間衆議院の内閣委員会で問題になりましたのは、これとは別の事柄であると承知をいたしております。
  104. 竹下豐次

    竹下豐次君 この新聞記事によりまして、もう一つ疑問にいたしましたのは、政府の方では協定はないのだ、しかし米軍の幕僚と日本の自衛隊との間に話し合いが行われている、こういうお答えがあったわけであります。これは米軍の幕僚と自衛隊との間で話し合いが行われておるということは、政府方針を考えないで、勝手に両方で話し合いをしているはずはないと、まあ想像されるわけであります。この話し合いを進めるということについては、もとより政府の方でも了承しておられるのだろうと思っております。もしそうであったならば、話し合いが進まないと、あと政府同士にまた協定でも結ぶというふうにお考えになっておるのでありますか。
  105. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) それは、防衛庁設置法にもありますように、幕僚会議というのがございまして、そういった計画を策定する機関であります。しかし、これはあくまでも防衛庁長官の補佐機関でございます。常にその研究をし、情報により、また米側とも意思の疎通をはかるということは、これは当然やるべきことだと思います。しかしながら、一致したところの計画、またそれが具体化したものであって、防衛庁長官がこれをいいと認めるかどうかというような段階にはまだきておりません。でありますから、幕僚はあくまでも補佐機関でございます。それは決定機関でも何でもないのでございます。そういったような研究をやっているということだけを申し上げまして、政府間でどうしようかというようなところまでには今日まではいっておらぬ、こういうことを申し上げたわけでございます。
  106. 竹下豐次

    竹下豐次君 私いろいろお尋ねいたしましたが、私の気持は、両方でできるだけ確かな協定を作って、そして日本の防衛を完全にしていただきたい、こういう気持を強く持っておるわけであります。で、別に協定をされる、その準備中であるから、それがいけないのだというような意味でお尋ねしておるわけじゃございません。むしろ逆でありますから、その点は十分御了解をお願いしておきたいと思います。
  107. 永岡光治

    ○永岡光治君 先ほど竹下委員の安保条約の効力の問題についての質問に対して答弁されたので、またちょっと疑問が出てきましたので、明確にしておきたいと思うのですが、先ほど、上原委員の質問に対しては、実情から効力がなくなったのだ、あと手続の問題だけが残っておる。つまり日本が防衛力を増強されまして、アメリカが撤退してしまった、そういう事態においてこの効力があるのかないのかという質問に対して、それは効力がなくなっているのだけれども、それをどういう外交方式といいましょうか、条約の方式の上でどうするかということは研究してもらいたいがというようなことを言っておりましたが、私は、ここでもう一つ明確にしてもらいたいことは、イエスかノーか、簡単でいいのですが、日本の考えで、アメリカ軍が撤退した、日本も、これでもって増強して守り得る、自分の力で守り得る兵力は日本が認定した、アメリカは認定しないというときに、この安保条約は残るのか残らないのか、その点はどうなのですか。
  108. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 先ほど申しましたように、現行の安保条約の第四条では、両国が安全が保障できるということがまずきまって、その上でこれが効力をなくする。その場合に、ただ撤退したらどうだということは一つの事実でございまして、他にかわるべき個別または集団の安全保障の体制ができて、安心だということを両国が認めた場合にこれが効力がなくなると、こういうわけでございます。
  109. 永岡光治

    ○永岡光治君 明確にしておきますが、安保条約の日本の守り得るのかどうかというかというその認定は、自主的に日本がこれを増強したから安保条約は要らないのだといって主張しておる。ところが、日本が完全に守られるかどうかということは、日本の意思ではきまらぬ、アメリカの意思によってきまる、こういうことですね結局は。
  110. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) これは、日本とアメリカ合衆国の政府が認めたときはと、こういうわけで、日本が今はもういいのだというだけで、これ自体が効力がなくなるという条約の規定にはなっていないわけでございます。現行のこの条約は、一方的に判断して、これで自分の安全は守れるということを認定したからといって、これは効力がなくなったということにはならぬように現行条約はなっておる、こういう事実を申し上げております。
  111. 永岡光治

    ○永岡光治君 もう一問念を押したいのですが、自分の国を守る自衛力が完全であるかどうかという認定は、つまり日本の防衛力に関する限りは、日本には自主的に決定権がない。いかに日本ががんばってみたところで、アメリカがこれがだめだと言えばそれまでだと、日本の防衛力が完全であるかどうかということは、日本の認定じゃなくして、アメリカの認定によってきまる、こういうことなのですね。
  112. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) これは、条約の場合、同国でもって作ったものでありますから、アメリカが単独で認めても、これはわれわれが認めぬ場合もある。相互的になっているわけです。そういうような規定である、こういうわけでございます。
  113. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 防衛庁長官にお伺いいたします。  御承知の通り、ICBMの実験にソ連が成功したと報ぜられておりますが、アメリカでも、相当軍の方面でいろいろ再検討を加えておる、こういうふうに伝えられておりますが、また、原水爆のソ連、アメリカにおける貯蔵量も相当ふえておる。こういう状態から、全面戦争は相当遠のいておるのではないかというふうに一般的に言われておるわけであります。そこで、当面の日本の自衛隊は、まず極東における局地戦に対応するということが第一段階の任務であろうと、かように考えるわけでありますが、この局地戦に、つまり相手方が原子兵器を持たない国に対して日本がその侵略を完全に防御できる、こういう少くとも今の自衛隊の体制になっておるかどうかという点を第一に伺ってみたいと思います。
  114. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 今日、核兵器が非常な急速な進歩をいたしておるわけであります。わが自衛隊は、この核兵器を持たぬという方針で訓練され、またこれが編成されておるわけでございます。こういった場合に、万一の事態が起った場合にどういった事態になるかということは、まことに重大なことであろうと思います。しかしながら、今日のどの国もそうだと思いますが、大体一国の防備で、そういったような、これが局地戦であれ、全面戦争であれ、完全なる防備を持っておるということに自信を持っておる国というものはほとんど私はないのじゃないかと思っておるわけです。その意味において、わが国は核兵器進歩の時代、ことに非常な誘導弾の発展した時代において、現在の装備、また編成において、一国でもってこれを守り得るかということを御質問になれば、非常な困難が伴う。しかしながら、とにかく侵略のあった場合に、最善を尽してこれを破砕するといったあらゆる方途を講じなければならなぬことはもちろんでございます。しかし、そこにわれわれは、国際連合の集団安全保障、また先ほど来の問題になりました日米の安全保障の規定というものは、おのずからここに生きておるわけございます。そういったような点において、われわれは自分で自分のできるだけのことをやる。そうしてまた、こういったような力と相待ってこれをやっていく。こういう体制で押し進む、こういう方針でございます。
  115. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私のお伺いしたいのは、日本は核兵器を持たない、こういう前提であり、局地戦の相手方も核兵器を持っていない。両方とも核兵器を持っていない。在来の兵器で対戦した場合に、さような国から侵略を受けたときに、少くともこれを完全に防げるというだけの現在の防衛体制になっておるか、こういうことを実は伺うわけであります。
  116. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) それは、その事態の大小その他の具体的の場合に関連があると思います。核兵器の利用されるその兵器の種類等もありましょう。また非常にこれが防備に困難なものもありましょう。そういった場合に、困難な場合と、ややこれと対抗し得る場合もあると思います。これは一般的に、いけないとか、これは不可能であるというようなことを言うのは、これはきわめて抽象的な問題になるのであって、適切でないと思うのでございます。そこで、万一一国でもって防備できない程度の核兵器のここに実力行使があったという場合に守り得るかということを、もしそういった質問であれば、私はなかなか困難であろうと思うのです。
  117. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ちょっと質問がこんがらがって、私の申し上げるのは、敵が核兵器を持たない、その仮想敵国が在来兵器で攻めてきた場合に、在来兵器しか持っていない日本がこれを少くとも防ぐだけの防衛体制を今持っておりますか、こういうことを伺っておるのです。
  118. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) その点は、今申しましたように、どの程度の先方の兵力によってわが国を直接侵略するかという程度の問題でございます。核兵器を持っていない国が全力をあげて、またそれが非常な強力なるところの軍備を持っておる国であるか、あるいはそれが全面的に動いてくるか、そういったような条件もあろうと思う。しかしながら、わが国は現在の防衛態勢、いわゆる今回確立した国防基本方針並びに計画においては、これは相当の私は、国防の自衛の態勢というものはでき上るものだ、こう考えております。
  119. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そうしますと、ちょっと観点を変えて伺いますが、三十五年度に完成されるという防衛目標である陸上十八万、海上十二万四千、航空千三百機、これの数字のよって来るその根拠になっている大体の、何と申しますか、目安はどの程度ならこれでいけるという大体の基本、仮想敵国というと語弊があるかもしれませんが、大体の基本があるはずでありますが、その点はいかがですか。
  120. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 陸上自衛隊は十八万にしようと、こういうわけです。そうして十単位の陸上部隊を全国に配置しよう、こういうわけであります。守るばかりでありまするが、敵の攻めるのに対しては、かえって陸上部隊は守りに強いという点があるので、これは相当の兵力を迎え撃つことができる。これは、十単位の戦闘部隊というか、自衛隊もこれででき上ろう、こういうわけでございます。それから、海上につきましては十三万四千、これは沿岸の防備、港湾の防衛並びに海上船団の護衛ということなんです。護衛ということであります。これは、わが国の輸出入の物資の運送等のいろいろな状況々見計らって、この護衛並びに沿岸防御に当ろうという計画として、十二万四万並びにこれに伴う航空機を整備しよう、こういうことでございます。空につきましては、大体千三百機というものをここで整備しよう、こういうわけでございます。これでどの程度空においての防備が達成できるかどうかという問題は、一に相手方の侵略態様その他戦力のいかんによることでございます。これは、単独で空を守り通せるかという問題になると、この計画では、私は十分でないと思うが、しかし、今日のわが国の国力その他に応じて、この程度のいわゆる航空防備、こういうものを整備していくということに今日の段階では妥当である、こういうことになったわけです。
  121. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 例としては必ずしも妥当でないと思いますが、現在陸上約六十万、海、空も相当装備をしているという朝鮮の装備と、日本の三十五年度における自衛隊の装備と比べて見まして、かりにこれが両方戦うというような場合に、防ぎ得るというだけの一体力があるのかないのか伺いたい。
  122. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 実は、はなはだ、韓国の軍備の内府ですね、ばく然とは知っていますが、どの程度の装備があって、まあ内容、実力がどういうものであるかというところの確実な情報を打っていないわけでございます。でありまするから、今の御質問に対して、的確なる御答弁をここに申し上げることはちょっと差し控えたいと思いますが、お許し願いたいと思います。
  123. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 どうも日本がどれだけ一体強いのか、われわれとしては非常に不安なんですけれども、まあそれ以上に立ち入ることを差し控えますが、第二回の安全保障委員会で、スタンプ司令官から極東の情勢についてお話があった、こういうことを先ほど長官もお話しになりましたが、その内容の詳細は、むろん御発表はいかがかと思いますが、われわれに、つまり当分戦争はないのだ、あるいはどれぐらいまでは日本は安心であるのだという、いわゆる国代に対する安心感を与える意味で、差しつかえない限りの極東の軍事情勢ということをこの際、アウト・ラインだけでもいいですから、伺いたいと思うのです。
  124. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 防御局長の力から答弁さしていただきます。
  125. 加藤陽三

    説明員(加藤陽三君) 八木先生のお尋ねも、スタンプ司令官のお話の内容ということにも限らないようでございますので、巷間の資料によりまして、どれくらいの兵力が現在極東に配置されておるかということを参考のために申し上げたいと思います。これはもう御承知だろうと思いますが、ことしの七月一日のAPのニュースでございます。太平洋戦略における米軍の配置について申しますと、兵員が約五十万、航空機七千余機、艦艇四百隻、内訳は、海軍は、第七艦隊及び第一艦隊、艦船四百隻、航空機六千機余り、兵員二十万、空軍は航空機千百機余り、うち九〇%はジェット機、兵員が九万、陸軍が四個師団、兵員九万、海兵師団六個師団、兵員六万というのが極東における兵員の配置でございます。  相手方という意味で申しては国際信義に反すると思いますが、ソ連の方が、これも巷間の資料によりますと、バイカル等の兵力は陸上約五十万、艦艇七百隻、空軍四千九百ということでございます。
  126. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今私が伺ったのは、相手国が核兵器を持っていないということを前提として伺ったのですが、現在のこの世界の軍事情勢からいえば、原子力部隊が軍備の中心になるということは世界の趨勢であろうと思う。そこで、もし核兵器によって日本が不正急迫した侵略を受けた場合には、当然これは、日米安保条約によって米軍がこれを迎え撃つ、こういうことに私はなろうと思うのでありますが、その米軍がかような原子兵器による日本の侵略を迎え撃つということは、言葉をかえていえば、米軍がやはり原子兵器によってこの原子兵器の侵略に対応する、こういうことになるわけでありますが、その場合における自衛隊の任務としては何カ月間か、衆議院の内閣委員会における長官のお話によれば、抽象的な、短期間自衛隊が持ちこたえ得るだけの力は少くとも持たなければならない。これは私はわかるのですが、この短期間日本が持ちこたえた後に、米軍とその侵略を予想される原子兵器を持つ部隊とが衝突した場合には、やはり日本は結局原子戦争の戦場になるということに私はなると思うのです。そういたしますと、岸総理の言われる、原子兵器を日本が持たないということを非常に強調されることは、これは国民感情としてはもっともでもあり、また、原子戦が行われるということは、人類の滅亡を意味するわけでありますから、いかなる方法をもってもこれは防がなければならないということは当然でありますが、しかし、安保条約によって米軍がこれに対して対戦するということと、日本が原子兵器を持って、これに対応するということとは、日本国そのものが原子戦の戦場になるということでは同じではないか、結果においてかように考えるのでありますが、その点について、長官はいかがお考えになりますか。
  127. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 日本が核兵器を装備しない、また米の核兵器持ち込みを受け入れない、こういう方針は一貫したものでございます。それで、万一の場合に、そういったような核兵器を用いる戦闘が起って、日本を直接侵略にするといったような事態が起った場合にどう対処するか、これはお説の通りであります。わが国自体でこれに防備し得る限界以上をこえたものは、これは日米安全保障条約の建前、また国際連合の集団保障といったものによってこれを防備するということは、これは現状としては仕方がないと思うのであります。それがどういった形になって現われるかということは、一にそれは、そのときの戦争の様相である。日本自身がこれを持ち込むことにするということは、今日言うわけにはいかないし、また日本としては、国民感情からいっても、またそういうものを認めるということでは……、防御の力というものは国民の共鳴、理解と認識と協力によらなくてはいかぬ、防衛の力というものは、単純に人数の問題とか装備の問題だけではないという見解で、われわれは防衛力というものの増強を考えているわけでございます。そういった場合でございまして、ただいまのような仮想の場合にどうするかという問題は、これは一にその情勢によることだと思うのです。しかし日本としては、核兵器、核戦争というものをやるというような意向はないということだけははっきり申し上げておきます。
  128. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 日本が核兵器の持ち込みを歓迎しない、またそれを使う意思はない。これはもう政府——総理初め御当局のしばしばの言明で、きわめてはっきりしているのですが、しかし何時に、今の戦争では、核兵器のもし攻撃があった場合には、核兵器によってこれがなされるということも、これは十分予想される事実である。そういたしますと、これに対応するために、米軍はやはり核兵器を日本が好むと好まざるとにかかわらず防御のためには持つ、これを使うということもまた十分予想されるところでありますし、これを使うか使わぬかということは、これは持っている国が考えるべきことで、日本がそれに非常に強力に反対をいたしましても、時と場合によってはこれを使わなければ日本が防衛ができないというときには、アメリカそのものが使う可能性は十分あるわけでありますから、そういうときには、結局日本が原子戦の戦場になるおそれがないとは言えない。であれば、日本が持たなくても同じ結果になるのではないかという心配をするのですが、その点はどうですか、重ねて伺います。
  129. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 今日の事態においては、核兵器持ち込みないしは使用ということは、やらないという方針であります。今のおっしゃった点は、万一こういう場合があればどうなるか、こういう問題だろうと思うのであります。これは、現在の法制では、かりにこの場合、アメリカといたしまして、それの使用なり、また実際に直接侵略があった場合においての、出動するに当っての協議をすることになっております。協議、そういうことになっております。それなしには、単独にやらない、こういう建前になっておる。その場合の問題だろうと思うのです。日本は、そういった点において、従来の方針というものを慎重に、またこれを自己の方針として持っておるという事態でなければならぬ。いろいろな場合もあると思いますが、これはそういった事態は応じて考慮する問題だろうと思います。
  130. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 この問題はこの程度にしておきまして、次に移りますが、この前の八月十六日のこの委員会で、藤田委員長から総理に対して、核兵器を持たないという信念ならば、戦争に負けてもいいのか、やむを得ないという総理の御答弁がありました。その問題は、衆議院の内閣委員会で非常にまた再燃されて、いろいろな質問応答があったことを私は速記録で拝見したわけでありますが、そのときに岸総理は、こういうことを言っておられる。つまりICBMの実験成効の問題に関連してですが、そういうような日本に攻撃があった場合に、「科学的な研究をして、日本の防衛の立場を十分に果していかなければなりませんので、こういうものをとらえ、途中においてこれがその効力を失うようにする研究も同時に行われておるわけでありまして、」云々と、こういうことを岸総理がおっしゃっておるわけであります。これは結局、原爆を使わなければ、有力な誘導兵器に普通の火薬を装てんして、ICBMなり、あるいはIRBMなり、先方から来る弾頭兵器を途中で叩き落す、こういうことを私は意味しておると思うのですが、その誘導兵器の先に原子弾頭を装着しなくても、普通の火薬だけでさようなものを叩き落す確率というものは相当強いかどうかということを、これは長官かだれかに一つ御返事をいただきたいのですが。
  131. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 今のは、非常に専門的なことでございまして、いろいろと技術研究所においては、誘導弾兵器に関しては研究部を設け、また熱心に研究いたしております。まだ詳細の報告を聞く時間もないのでございますが、それは、装備局長からでもお答えした方がいいだろうと思います。
  132. 小山雄二

    説明員小山雄二君) われわれ目下研究開発をしておりますのは、現実的な攻撃のやり方としては、現在では、爆撃機からかりに核兵器を核弾頭を持ったもので攻撃する、あるいは爆撃機その他の航空機から誘導弾で攻撃する、核弾頭を持ったようなもので攻撃する、あるいは潜水艦から攻撃するというような形が現在では非常に現実的なものですから、われわれの研究は、そういうことを目標にいたしまして、空から、航空機から向うの爆撃機を打つ誘導弾、それから地から爆撃機等を要撃する誘導弾、あるいはその他潜水艦を捕捉する訓練だとか、装備の研究とか、そういうことを研究開発しておる段階であります。それで、ただいまお話の対BMに対する、弾道弾に対する要撃の問題でございますが、これは、新聞情報等によりますると、米英でも研究を始めたということがありますので、こういうものの技術情報、資料等はなかなか入手がむずかしいと思いますが、われわれとしても、そういうものは入手にできる限り努めまして、できればそういうものの検討もしていかなければならぬと、こういうふうに考えておる段階でございます。今聞きますと、向うが原子あるいは水爆の弾頭を持ったICBM、IRBMを持ってきまして、かりにそれを要撃するBMを考える場合には、原子弾頭は要らぬだろう、原子弾頭でもTNTでも、普通の爆撃機で落せば済むだろう、要するに向うの弾道をうまくつかまえてぶつければ済むという段取りでございます。私も直接の専門家でございませんけれども、そういう要撃の場合には、必ずしも核兵器はこっちは要らぬだろうと、こういうことを専門家は言っております。
  133. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私もまた聞きまた読みで、はっきりしたことはわからぬのですが、その弾頭兵器を核兵器なしに落す確率というものは非常に薄いのだ、これが原子弾頭をつけて相当広い範囲で爆撃すれば、ICBMが飛び出てきまして、そこで捉えられるけれども、そうでない、原子弾頭のないものであれば、非常に確率は薄いのだと、こういうことをくろうとからしばしば私は聞かされておるので、それでなしに、今のお話のように、原子弾頭をつけないで、しかも誘導兵器でそれが落されるということなら、これは岸さんの思ったつぼに当てはまるので、非常に日本国民としてもけっこうだと思うのでありますけれども、どうも少し楽観に過ぎるじゃないかと思うのでありますが、これ以上申し上げましても、御返事は得られぬと思いますが、別にアメリカでは、すでに二千五百マイルの地点、つまりICBMなら十五分間まだ飛んで来るだけの時間的余裕があるところに、すでにレーダーで向うの来たことをキャッチすることができるというようなものが発明されたということがニューズウイーク誌に出ているが、きょうの東京新聞にも、やはり同じように、四千キロのところまではキャッチできるということがコロンビヤ大学やあるいはベル研究所ですでにわかってきておるというふうなことが出ておりますが、防衛庁の方はさような何か情報をお持ちですか。
  134. 加藤陽三

    説明員(加藤陽三君) 私どもも、新聞等によりましてさようなことを承知いたしております。米国といたしましては、先ほどもお話にありましたごとく、ICBMともなりますれば、非常な長距離を飛ぶわけでありますから、早くこれをキャッチするということで、相当努力しておるようでございます。早くキャッチできますれば、それの対抗策も考えられるということで、ICBMに対する有効な方策の一つといたしまして、非常に長距離に有効なるレーダー等を考えているようであります。
  135. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  136. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をつけて。
  137. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 スイスの誘導弾エリコンが来るそうですが、これには原子弾頭はつけられないということを長官この前おっしゃったようですが、そうなのですか。これは、内閣委員会でさような御答弁があったのですが。
  138. 小山雄二

    説明員小山雄二君) エリコンの誘導弾には、原子弾頭はつけられないのであります。
  139. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それから今度は、技術研究所の予算のことを伺いたいのですが、毎年防衛庁は、御承知の通り、二百五十億余りの金を余しておられる。技術研究所の予算も、三十年度は十三億六千万円で、九億二千万円余っている。三十一年度は、十八億のうち十四億円余り余っておると伝えられていますが、これは技術研究所本来の予算と、ほかに移しかえられたのと、両方なんですが、もう少しやはり、御承知の通り、アメリカなんかでも、一九六 ○年代には、航空機とそれから誘導兵器とに使用する金額はほぼ四十億ドル以上も、同等ぐらい金を使うといっているのですが、技術研究所の予算ももう少し、なぜこんなに余っておるのか、その点簡単でいいですが、伺いたいのです。
  140. 小山雄二

    説明員小山雄二君) 従来技術研究所の施策あるいは外部に委託してやります調査、研究、これは、事柄が非常に新らしいものでもむずかしいというようなことのために、設計その他の関係で時間を要しまして、防衛庁全体の繰り越しから見ますと金額はわずかですが、比率から見ますと相当繰り越しを出しておりまして、非常に遺憾に存じております。これを極力促進しょうということにいたしておりまして、予算的に見ますと、大体今の人件費だとか、設備費だとか、機械器具費等は除いて、純粋の研究施策費等でございますが、要するに、研究のものになって出てくるものといたしましては、大体誘導弾関係が三分の一、航空機関係が三分の一、その他水中武器等その他のもので合せて三分の一ということで、相当重点をしぼりまして、また、研究の遅延の問題も、ことしはこの問題のみならず、繰越金全体の問題につきまして、長官の御趣旨もありまして、非常に段取りを早くしておりまして、ちょうど研究の進み工合も、去年の二月頃の状態まで準備ができているというようなことで、総体的にも促進しているわけでありまして、今後はなるべくあてがわれた予算は、完全に消化するようにしたいと思っております。
  141. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 これは、長官に伺いたいのですが、アメリカなんかも、ペントミック軍と名づけられる特殊の軍に改編されつつあるが、日本も、原子攻撃に対応するために、師団編成をやはり細分化して、小隊や大隊をやめて、小銃中隊を中心とする師団に編成がえされるというようなことはありますか。そういったような、原子攻撃に対応する軍の編成を変えるというような計画がおありになりますか、従来のままでございますか。
  142. 加藤陽三

    説明員(加藤陽三君) 米国の方におきましては、従来の歩兵師団の編成は一万八千名あまりでありますが、ペントミックが改まりまして、一万三千名ぐらいの縮小編成をいたしまして、非常に融通性と機動性を持った編成をしたいということで、相当数の師団は改編をしているようであります。日本の陸上自衛隊におきましても、御承知のように、管区隊と申しますのは一万二千七百名になっております。機甲団と申しますものは、六千百名の編成になっております。私どもといたしましては、やはり将来は、機甲団というものを中心といたしまして、非常に融通性のある、機動力のあるものに変えていきたいと思っております。ただいまのところ、今すぐ米国の例にならいまして、ペントミックのようなものにするということは考えておりません。
  143. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 もう一点だけ、これは長官に伺うのですが、ナイキの基地が沖繩で八カ所、すでに入札に付されたというようなことが新聞に出ております。その問題をこの前の委員会で、岸総理に、安保委員会で議題になりますかと、お伺いしましたら、そういう問題もやはり議題にすることになりましょうが、さしあたっては、安保条約の問題の方が中心になるのじゃないかというような、ぼやっとした返事だったのですが、長官は、衆議院の内閣委員会では、あまりこの問題についてはくわしく知らないといったようなふうな御答弁があったように、ちょっと拝見したのでございますけれども、ナイキの基地があるということは、逆に申して、沖繩が原子攻撃を受けるというプロバビリティというのは非常に多いわけなんですが、長官は、このことを御存じないでしょうか。あるいは安保委員会で問題にならないのでしょうか。重ねて伺ってみたいと思います。
  144. 津島壽一

    ○国務大臣(津島壽一君) 沖繩にナイキの基地があるということの情報は聞いております。しかし、安保委員会でこの問題が取り上げられて、具体的に話し合いがあるかという点については、大体安保委員会は、間接には非常な重大なことがありましょう。これは情勢として話がある場合です。しかし、日本におけるアメリカ軍の配置、使用というものについて協議しようというような安保委員会の題目でございますね。そういうところから、この委員会というものは三つの課題をもって協議するというようになっておる。今後の運営の如何によっては、そういった問題が起るかもしれません。しかしながら、今日までのところ、日本内におけるアメリカの、何というか、駐留軍というか、軍隊その他の設備等について、われわれが協議の題目としてやるかということについては、私ははっきりした見通しを持っておりません。情報としてはそういったようなことは聞いておりますということでございます。
  145. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 まだ私伺いたいことがたくさんございますが、二十一日にまた委員会がおありになるということで、そこで、これは議事進行に関連するのですが、一言委員長にお願いをしておきたいと思います。と申しますのは、この前の委員会で、岸総理が、御承知の通り、核兵器を持たなくて負けてもしようがないというお話がございました。それから後に、ソ連のICBMの実験の成功の報告がございました。そこで、イギリスの方では、この核兵器を完全に防ぐ方法はないから、自分の方でもそれを持って、威圧によってこれを防ごう、こういう考えのようです。ところが日本の方はそうでなくて、平和攻勢によって何とかかような戦争を防止したいということに非常な熱烈な気持を持っておられるのですが、そこで私は、これは非常に重要な問題でありますから、この前の委員会も、総理は二時間ばかりここにおいでになりましたけれども、あとで自由民主党の方の政治計画の会か何かにおいでになって、一時間半ばかり講義なさるそうですが、もう少し時間をとって、この委員会でも、外交でもつまり全面戦争を防ぐだけの国防の最も大きなポイントを持つわけですから、ほんとうならば私は、外務大臣の列席の上でこの委員会に出席をお願いしたいのでありますけれども、外相は十四日にお立ちになるそうでありますから、少く上もこの次の委員会では、この前の委員会に関連する跡始末として、国民に安心感を与えることが——防衛庁長官はもちろんのことでありますが、岸総理にももう少し時間をとって、納得のいくまで質問することができるように、総理の出席を、委員長の方で各理事ともお打ち合せの上で、次の委員会にお出ましを願うようにということを、特にこの機会にお願いをいたしておきまして、以下の質問は次の委員会に譲ります。
  146. 藤田進

    委員長藤田進君) ただいまの総理出席の件は、委員長としては異議はございませんが、しかし、委員長理事打合会等をもちまして、今の八木委員の御希望がいれられるように努力はいたしますが、この点なお各会派の理事等にも、もっと趣旨が徹底するように、八木委員からもお働きかけ願いたいと思います。   —————————————
  147. 藤田進

    委員長藤田進君) 次は、国家公務員制度及び恩給に関する調査のうち、公務員給与に関する件を議題に供します。  なお、本件につきましては、委員長理事打会におきまして、暫時懇談の形で人事院総裁等との質疑をし、要望をすべきものを要望したらどうだろうということになっておりますから、委員長としては、さように取りはからいたいと思います。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  148. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をとって下さい。  まず、私が委員の皆さんの意向をいわば代表したような形でお伺いをし、要望をいたしたいのでありますが、相当御苦心をされておることは認めるのでありますが、当委員会としては、過般の法律成立に関連して、御承知の付帯決議を付しましてこれを成立さしたわけでありますけれども、その後の作業状況等を見、さらに漏れ聞くところによると、必ずしも付帯決議の趣旨を万全に生かしての御処理になっていないようにも受け取れるわけであります。ここでしかし抽象的に議論いたしましても、ただ時間を空費するだけでありますので、若干の事例を申し上げて、これに対する御所見なり、また資料に対する態度なりをお伺いいたしたいと思うのであります。  その第一の点は、付帯決議に十六項目ありましたが、それが全部が全部付帯決議の通りになっていないとは申し上げていないのであります。特に、たとえば行政管理庁のような特殊な人的構成、あるいはその主査、官補といったような職制、またこれに類する各省庁の中の一部の職種等については、表面的にバランスのとれたように見えても、事実上相当なアンバランスを生じているやに思われるわけです。会計検査院においては、四等級以下の事情を仄聞しても、まだ公式に伺っておりませんから、真偽は別といたしましても、百パーセントの格付けがなされるのに、他の省庁においてはそれがなされていないのではないかというような点もあって、当委員会としては、これら各省庁に勤務せられる幹部その他の職員に対しても、もし付帯決議が生かされていないとすれば、意に反するわけでありまして、現在各省庁の中でもかなり問題になっているし、またわれわれ議会側としても、実は委員間にもそれぞれの話があるわけでありまして、かかる状態が巷間に伝えられるという形では、議論の対象に実はなりませんので、少くともこの際作業が完了し、御発表になり、あるいはやがて手直しをするという段取りになるかもしれないが、その前に、各省庁それぞれにおいて現在査定がなされているわけですから、その各省庁の定数比較表といいますか、格付比較表というか、これがもし外部に発表等が事の性質上困ると言われれば、その扱いは十分慎重に扱うといたしましても、ぜひこれの御提示を願いたいし、先ほど来申し上げたように、行政管理庁あるいは医療職のうちの研究職であるとかいうような、特殊な職員に対しての措置についても、私が今申し上げたような、実質的にアンバランスないものが、具体的にこのようになるのだということについての御説明と、この二つの点について御答弁なり、資料については提出できるかできないかの御答弁をいただきたいと思うのであります。
  149. 淺井清

    説明員(淺井清君) 具体的のことは、給与局長から申し上げさせることにいたしますが、われわれといたしましては、国会の付帯決議は十分尊重するつもりで、人事院会議等におきましても、そのことをやかましく申しまして、給与局におきましても、そのつもりでやっておると思いますし、今後もそのつもりでやるつもりでございます。その具体的の事例につきましては、給与局長から一々御答弁をさせたいと思います。  それから、その次の級別定数は、これは人事院指令をもって出されておりますので、これはいつでもお目にかけることができると思っております。
  150. 瀧本忠男

    説明員瀧本忠男君) これは今、人事院総裁が申し上げましたように、人事院といたしましては、七月三十一日までに新しい給与法に基きまする等級別定数というものを設定いたしまして、そうしてこれに基きまして、各省庁におきましては、これは任命権者がやられるわけでありまするが、その範囲で個々の職員の格づけをされたわけであります。で、これは何回も申し上げておりますが、人事院といたしましては、法律の通過後七月三十一日までという期間は非常に短かかった。その前に、われわれはいろいろ準備はいたしておいたのでございますけれども、なおかつ、その期間に問題を十分よく見きわめて処理するということが事実上できなかった。それは、各省庁から提出されまする資料に不十分なものもございましたし、また、時間的に余裕がなかったというようなこともあるのであります。しかし、七月三十一日の定数配分におきましては、われわれは、付帯決議の趣旨はでき得る限りこれを尊示したつもりでおるのであります。まあ行政管理庁のような例もお出しになりましたが、これは、各省庁と比較してこれをごらん願えれば、われわれが付帯決議の趣旨を、各省庁の均衡の上に、考え得る限度におるということも御理解願えるのではなかろうかというふうに思うのでありますが、なおかつ、われわれとしましても、これはもう一度補正をする必要があるということで、現在各省庁に、実際格付された現状等はどういうふうになっておるかということにつきまして照会させております。これは、各省におきまして作業が手間どりましたために、われわれの力にその解答が参っておるものがまだごくわずかでございます。これは、催促をいたしておるのでありまするが、これが出次第、十分われわれとしては検討いたしまして、さらに均衡がとれるように、十月にこの問題をもう一度調整しよう、こういうことでやっておるのであります。現在のところ、まだそれが調査が十分われわれのところに届いていないという現状であります。われわれとしまして提出し得る資料と申しますものは、いわゆる等級別定数表、これは人事院指令できめておりますが、それでございまして、これは、個々の職員がそれでどういうふうに決定されておるかということは、それではわからないという資料でございます。それは御提出いたします。
  151. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をとめて下さい。    午後五時二十二分速記中止    —————・—————    午後五時四十九分速記開始
  152. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をつけて下さい。  速記をとめて、暫時懇談をいたしましたが、なお問題もあるようでありますし、次期委員会にまた調査を進めることといたしたいと思います。なお資料を要求いたしましたが、本件については、二十一日の委員会までに間に合うように御提出を願うことといたしまして、本日はこれにて敬会いたします。    午後五時五十一分散会