運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-02-12 第26回国会 参議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十二日(火曜日)    午後一時三十四分開会   —————————————   委員の異動 二月八日委員高橋進太郎辞任につ き、その補欠として井村徳二君を議長 において指名した。 二月九日委員寺本広作辞任につき、 その補欠として近藤鶴代君を議長にお いて指名した。 本日委員井上清一辞任につき、その 補欠として小沢久太郎君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     亀田 得治君    理事            上原 正吉君            大谷藤之介君            竹下 豐次君    委員            木村篤太郎君            迫水 久常君            松岡 平市君            松村 秀逸君            荒木正三郎君            伊藤 顕道君            田畑 金光君   国務大臣    法 務 大 臣 中村 梅吉君   政府委員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁刑事部長 中川 董治君    調達庁長官   今井  久君    調達庁総務部長 眞子 傳次君    調達庁不動産部    長       松木 豐馬君    法務省刑事局長 井本 臺吉君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国の防衛に関する調査の件  (相馬ケ原演習場事件に関する件)
  2. 亀田得治

    委員長亀田得治君) これより内閣委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  二月八日付、高橋進太郎君が辞任され、その補欠として井村徳二君が選任されました。二月九日付、寺本広作君が辞任され、その補欠として近藤鶴代君が選任されました。本日付、井上清一君が辞任され、その補欠として小沢久太郎君が選任されました。  以上御報告申し上げます。
  3. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それでは、国の防衛に関する調査として、相馬ケ原演習場事件に関する件を議題に供します。  本件に関し、警察当局及び法務省当局より、その後の経過について御報告願いたいと存じます。
  4. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 前回の当委員会におきまして、去る一月三十日に発生いたしました相馬ケ原における不祥事件につきまして、一応の概況を御報告申し上げたのでございます。その後の状況をつけ加えまして、今日までの本事件概況をここに重ねて御報告申し上げたいと思います。  事件の起りましたのは、ただいま申し上げました通り、一月三十日でございます。自来日本側捜査当局米軍側捜査機関と相協力いたしまして、鋭意捜査を進めて参ったのでございます。今日までの捜査事項の主たる点について申し上げまするならば、まず事件の発生いたしました当日である一月三十日には、現場実況検分を行うとともに、日本側目撃者からいろいろ事情を聞き取ったのでございます。翌三十一日には、群馬大学において被害者の解剖をいたしました。さらに、再び現状実況検分を行なったのでございます。二月一日になりまして、埼玉県の米軍キャンプにおきまして、事件発生の当日演習に参加いたしました者に集まってもらいまして、日本側目撃者五名の方にお願いして、被疑者の割り出し、首実験をいたしたのでございます。その結果、被疑者と目される米兵一名を確認するに至ったのでございます。そこで、直ちにその確認されました被疑者取調べに当ったのでございます。群馬警察本部刑事部長並びに捜査一課長がこれに当ったのでございます。約一時間半にわたり、被疑者に対する取調べを行なったのでございます。そのときには、前回も申し上げました通り被疑者は終始否認をいたしまして、目的を達し得なかったのでございます。  自来日本側捜査当局は、主として日本側関係目撃者その他関係者からいろいろ事情を聴取するということを主とし、米軍捜査当局には、被疑者並びにその他の米軍関係関係者から事情を聴取し、取調べを進めてもらうと、こういうふうに、一応の分担をきめまして、相互並行しまして、取調べを続行して参ったのでございます。日本側としましては、二月三日には、さらに三度目の現場実況検分を行いました。二月五日に至りまして、米軍側より、四日までの米軍捜査機関によって作成されました被疑者及び参考人供述調書をわが方に送付して参りましたので、とれについての検討を二月五日にいたしたわけでございます。そうしてとの不備な点につきましては、さらに再調査を依頼する、こういうふうに仕事を進めて参りました。逐次捜査の結果の資料を収集整備して参ったのでございます。二月九日に至りまして、日本警察側といたしましては、そのときまでに取りまとめました捜査資料に基きまして、事件傷害致死被疑事件として検察庁送致をいたしたのでございます。しかし、これは決して、警察側といたしまして一切の捜査が完了した、こういう意味合いではないのでございます。事件の性質が、御承知通り日本側裁判権米軍側裁判権が競合する事件でありまして、日米いずれに第一次裁判権が帰属するかという一つの大きな重要問題があるのでございます。これをできうるだけすみやかに確定する必要があると、かように考えまして、警察段階におきましていつまでも事件をもたもたさせておるのは適当でない。むしろある一定の時期に達して、それまでの資料に基いて一応事件を取りまとめ、検察庁送致し、自後検察庁と協力して捜査を続行していく、事実、事案の真相を究明していく、こういう方法をとることが適当であろう、かように考えまして、ただいま申し上げました通り、二月九日に、それまでに警察側といたしまして入手しました、整備しました資料に基きまして、傷害致死事件として検察庁送致をいたした。こういうことに相なっておるのでございます。さらに昨十一日、日米双方捜査機関による現場実地検証をいたしたのでございます。また、銃器薬莢等性能検査もいたしました。さらに、日本側による米兵被疑者及び参考人取調べも実施をいたしたのでございます。こういうふうに、なお捜査を続行いたしまして、今後もし新たなる証拠が得られるならば、場合によりましては、今、一応傷害致死事件として送検いたしてございますけれども、今後新たなる証拠を得るならば、殺人罪ということで起訴するということもあり得るかと思うのでございますが、私どもといたしましては、先ほど申し上げました通り、いつまでも警察段階においてのみこの事件をもたつかせるということは、策を得たるものではないという見解に立ちまして、とりあえず検察庁事件送致し、検察庁と協力のもとに、鋭意捜査を続行いたしまして、真実の究明に当ろう、かように考えておりますので、今日までの状況を、以上概況報告いたしました。
  5. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  6. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 石井長官にお伺いいたしますけれども、去る二月九日に、それまでの資料もととして、検察庁送検したのだと、そういうことですか。
  7. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) ええ。
  8. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それに関係のことを聞きたいと思うのですが、その前の日、二月八日群馬県の県警本部で、幹部の方が夜を徹して慎重審議せられ、その送検されるための罪名決定についていろいろ協議せられた。そこで、結論的には、薬莢をばらまいて招き寄せたというような点が一つと、それからねらい撃ちした事実がある、こういうような根拠から、こういう点を総合して、殺人罪という罪名で、二月九日の朝、前橋地検送検したと、そういうふうに承わっておるのですけれども、ここまではよく納得できるのですけれども、そのことに関してよく聞いてみますと、二月九日の正午ごろ、警察庁県警で打ち合せた結果、一たん殺人罪送検したものを傷害致死という罪名変更して送検したと、そういうふうに新聞報道で承わっておりますが、もしそうだとすると、これはいろいろ疑念の点も抱かれるので、一つ、果してそういうような事実があったかどうかという点が一点、罪名決定をするということは、警察側態度決定すると、そういうことになろうと思うのですが、この問題に関しては、夜を徹して慎重審議して得た結論を、一たんそういう罪名報告しておいたものがもし事実あったとすれば、非常に重大な問題だと思いますが、この点に関して一つ
  9. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) まことにごもっともな御質問でございます。二月九日に検察庁事件送致いたしましたと、先ほど申し上げたのでございますが、私が報告に接しておるところによりますれば、二月九日の午後五時半に送検をいたした、こういう報告に接しておるのでございます。群馬県警察では、この事件捜査につきましては、きわめて熱心かつ慎重に事を運んで参ったのでございます。その捜査過程におきまして、本件犯罪が何罪を構成するかということにつきましては、部内においても、しばしば幹部は鳩首協議しまして、いろいろの捜査資料に基きまして検討をいたしておるのでございます。これは、まさに当然のことでございます。その間におきまして、あるいは殺人罪に当るのじゃないか、あるいは傷害致死罪に当るのじゃないか、またさらには、もっと軽い過失傷害致死になるのじゃないかというような意見、三者三様のいろいろの意見が出たのでございます。それを最後送検する時間まで、慎重審議をいたしました結果、先ほど御報告いたしました通り傷害致死事件として送るのが適当であろうという結論に到達したのでございます。  その間に、中央の、私ども警察庁の方に、いろいろ捜査過程において連絡のあったことは、これまた事実でございます。今までに、この種事件についての判例その他先例等につきまして、群馬県警察部においては、十分その点を参考にして態度をきめたい、こういう意味合いにおいて、いろいろ連絡のあったことは事実でございます。そういう第一線の要望にこたえて、中央においていろいろ必要な資料を提供する、こういうことはいたして参りましたが、群馬警察本部殺人罪で送るべく、最後の判断を下しておりましたものを、中央警察庁から、傷害致死罪として送るべきだというふうに訂正をさせた、こういうことは全くの誤解でございます。そういう事実はないのでございます。今申しました通り最終結論を出すまでに、群馬警察本部において慎重審議しまして、その過程において、あるいは強硬意見を吐く人もありましょうし、弱い意見を吐く人もありましょうし、あれこれ議論を戦わした末に、最後結論として、先ほど申しました通り傷害致死罪として送検する、これが実情でございますので、御了承願いたいと思います。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、九日の朝、群馬県警前橋地検送検したというのが正式じゃないですか。
  11. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) そういうことはないと思います。二月九日の午後五時半に送検をした、こういうふうに私どもの方へ報告が参っております。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 あとの方の、四時ですか、五時半とか、そういう点は問題じゃないと思いますが、その事前に、たとえ時間がどのくらい隔たっておっても、その前に一たん出したものを、これは警察庁だけではないと思うのですが、法務省関係するのでしょう、そういう点。ですから、法務省警察庁の方の意図をそんたくして、県警がそう書いたというように一応とられたので、お聞きしたのです。
  13. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 私あるいは想像いたしまするのに、ちょうど二月九日の当日、関東管区警察局公安部長、この関東管区警察局と申しますのは、関東信越地方を管轄いたしておりますので、群馬県もその管轄区域内にあるわけでございます。事件の重要件にかんがみまして、関東管区警察局公安部長現地に参りまして、県本部長と会って、いろいろこの事件について打ち合せ、協議をいたしておるのでございます。おそらく外部の新聞記者等が、そういうことからして、何か中央あるいはその管区、そういうことろから群馬警察本部がすでに態度をきめておるものを変更せしめるような措置をとったのではないかというふうに誤解をされておるのではないか、かように思うのでございます。関東管区警察局公安部長現地に参りましたのは、事件重要性にかんがみまして、時々刻々連絡報告は受けておりますけれども、さらに現地に出向いて、詳細事情を聴取し、また、場合によっては相談相手にもなる、こういう意味合いで、督励の意味もかね、出向いたものと承知をいたしておるのでございます。そういうことがらして、あるいは第一線がすでに態度をきめてるものを、上の方から態度を変更きせるために出向いてきたのではないかと、このように曲解をされておるのではないかと想像いたされます。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、関東管区公安部長、そういう関連については、詳細警察庁長官としては承知してないわけですね。
  15. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 関東管区警察局公安部長現地に参りまして、本部長と会見した結果、群馬警察本部がすでにきめておった方針を変更せしめたということは聞いておりません。また、そんなことはあり得ないことと思います。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、群馬県の警察としては、今後来兵、米軍目撃者を調べた上で、殺意を立証できるような、そういう証拠がそろった暁には、殺人の疑いで追送検することもあり得る、そういうような意図のことを言っておるわけです。ところが、その後来兵とか米軍を調べたとしても、米兵自体はもちろん、その米軍目撃者が、米兵に不利な殺意があったというような証言をすることはおそらくあり得ないと、まあ一応考えられるわけですが、ところが、一方日本人の目撃者証言で、ねらい撃ちしたという事実、あるいはまた、米兵が第一発で失敗して、さらに第二発を撃っておるというような点、それから二回とも、薬莢をさかしまにして銃口に差し込んだというような事実があると、こういうような点から、殺人罪であるというふうに断定されると思うんですけれども、それだけではまだ根拠は薄弱だと、そういうふうに断定せられるか、その点をはっきり伺いたいと思います。
  17. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 被疑者自身犯意を否認いたしておりますことは、お話通りでございます。被疑者殺意を持ってやったということは、おそらく今後といえども自供することはないであろうというふうに、私どもも考えております。しかし、その他のいろんな捜査の角度からこれを検討いたして参りまして、本人がいかに犯意を否認いたしましても、殺意があったということを立証するに足りる資料を得るならば、これは殺人罪で送るべきものだと、かように考えるのでございます。そういう点は、今後の捜査によって新たなる事実を、証拠を発見し、把握することができますならば、そういうこともできると、先ほど申し上げたのでございます。二月九日に群馬県警察の方において送検いたしましたその時期までの資料では、殺意があったというふうに断定する資料がないために、傷害致死事件として送検するというふうに申し上げたのでございます。たとえば被疑者犯意を否認していることはもちろんのこと、あの事件の起りましたときに、被疑者自身相当事の意外なる重大な結果に驚いた様子を示しておったこと、また、上司たるモーホン少尉にそういう事態の起ったことをすぐ急を告げたというようなこと、あれこれ拾い上げてみますと、むしろ消極的ではありますが、殺意がなかったというふうに受け取れる節もある、そういう疑わしい段階でありますので、傷害致死事件として送っておきました。ざらに、引き続き捜査を行いまして、先ほど申し上げました通り、新たなる証拠ができますならば、もちろんそういう措置をとりたい、かように考えております。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま一つお伺いしますが、これは、七日の内閣委員会において、竹下委員からお尋ねのあったことに関連することですが、これは新聞報道であるので、新聞への投書であったので、従ってどこまでが的確かは別といたしまして、参考になると思うのですが、かつての予備隊員であった今は一市民でありますが、かつて予備隊員であった一市民投書として、自分は予備隊にかつてあったときは、入って、そう深い訓練を受けないうちに、銃の扱い方とか、あるいは空包、あるいは実包の性能威力等についてはよく教育を受けたので、空包威力等についてはよく承知しておった、しかもその指導書は、もと米軍そのものであったことは言うまでもない、そういう点から察して、相馬ケ原米兵のあのような行動についても、その米兵が、空包の先に薬莢をつけて、どのくらいの威力があるか、全然そういう知識がなかったということは断定できない、そういうことから、空包の先に薬莢を差しはさめば、そのガス等関係でよけい威力が出る、そういうふうなことを米兵承知の上でやったとすれば、これは、いわゆる故意であったという有力な証言になるのではないか。私それを読みまして、なるほど筋の通った話だと思いまして、この点、どのような米軍教育をしておるか、それは別として、予備隊ではそういう程度のことはやっておったが、そういたしますと、それの指導書米軍そのものですから、当然にその指導は、その米軍がすることを教育しないはずはないと思います。これは、故意過失かの判定上、非常に一有力な資料となろうかと考えられますので、との点一つお聞きしたい。
  19. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) まことにごもっともの御質問でございまして、被疑者は、今日までのところ、空薬莢銃口の先に差し込んで、空包で発射して、あんな事態を起すような、それほど威力のあるものと思っていなかった、こういうふうに確かに自供いたしております。しかし私たち、今お話通り空包であっても、そういう発射をした場合に、どれだけの威力があるものかということを全然上司から今まで訓練も受けてなかったかどうかという点には、確かに疑問がありましたので、私どももその点の究明に目下努めておるととろであります。先ほど御報告いたしました通り、昨日、現場におきまして、被疑者を連れて参り実況検分をし、また銃器薬莢性能についても実験をいたしましたのも、その点からでございます。昨日いろいろ実検報告いたしました点につきましては、目下その資料検討中でございまして、そうしたものの検討の結果、先ほど来申し上げました、犯人がいかに犯意を否認しましても、殺意あったものということを認定する有力な資料がありましたならば、殺人罪をもって送検すべきものと、かように思います。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、これも新聞報道承知たんですが、相馬ヶ原のあの周辺の部落に、高崎署署員がいわゆる個別訪問して、基地反対運動をすると、たま拾いが厳禁されてしまって、食えないようになるかもしれない、そういうことをほのめかしておる。暗に基地反対運動するなと、そういうふうな意味であったと思うのですが、これはまあ、高崎署のことですから、そういうような事実があったかどうか、もしあったとすると、これは一つの弾圧になると思いますが、そういう点について、御承知でしたら伺いたいと思います。
  21. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) そういうことについては、私何ら聞いておりません。おそらくそんなことは、絶対になかったものと思っております。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ長官立場で、そうお答えになるのは当然だと思うのですけれども、しかし、承知してないことでしたら絶対になかったということも断定できないと思いますね。おそらくそういうことはあり得ないことだとは、抽象的には言えましょうけれども、具体的に高崎署員が、これは直接関係ないことですから、そこで、そういう事実があったとすれば、これは問題だと思いますので、早急にその点を調査していただいて、もしそういうようなことがあったとすれば、今後そういう弾圧めいたことをやめていただくことを御指示いただきたいと思います。
  23. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 御趣旨よくわかりました。そういう気持をもちまして、十分遺憾のないようにやって参りたいと思います。
  24. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記をやめて。    〔速記中止
  25. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 調達庁長官にお伺いしたいのですが、行政協定の十八条によりますと、御承知のように、米軍公務中に起した犯罪で、あるいは事故で、その損害は当然に、日本政府審査の上、日本側が〇・二五、アメリカ側が〇・七五、そういう負担で補償するように、法の上で承知しておるわけです。また、公務外の場合は、日本政府を通じて提出された補償申請を今度は米軍審査する、米軍審査決定して、直接被害者に支給すると、そういうふうに行政協定がなっていると思うのですが、そこで、和馬ヶ原の場合には、おそらく公務外事件であるというふうに断定され……、私はそう思いますが、そこで米軍審査となりますと、結局向う側が審査するわけですから、いろいろ補償の点で、アメリカ側が一方的に審査額決定すると、そういうような、日本側に非常に不利な点も考えられる。そういうことで、この点については、極力有利にそれが取り運ばれるよう、一つ十分な御措置をいただきたいと思います。その点について、果してそういうことになっておるかどうかという点と、それからまた、そういうことであれば、一つ、今後も十分被害者立場を考慮せられて、有利になるよう御配慮いただきたいと、こう思います。
  27. 今井久

    政府委員今井久君) お答え申し上げます。補償の点につきまして、ただいまお話がございました通りでございまして、この点につきましては、行政協定第十八条に規定がございまして、お話通りに、公務によりまする場合には、第三項にその規定がございます。この場合におきましては、日本政府補償をいたしまして、その補償されたものにつきまして、米軍が四分の三を支払うということに相なっておりますことは、今御指摘通りでございます。次に、公務外の行為によって生じました場合は、行政協定第十八条第五項の規定によりまして、駐留軍側から直接慰謝料を支払うことになっておりますことは、ただいま御指摘通りでございます。この場合におきましては、私ども調達庁といたしましては、被害者側から請求がありましたことにつきまして、十分公正に請求審査いたしまして、損害額につきまして、被害者駐留軍との間に立って、十分それらの点について仲介いたしまして、被害者気持十分駐留軍に反映するように努力いたしたいと考えております。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御承知のように、坂井なかさん、今度殺された方ですが、その方の御家庭は、戦前、大正九年と記憶しておるのですが、当時旧陸軍土地接収にあって、一町五反歩を持っておったけれども、そのとき、もうすでに一町取られてしまった。いわゆる五反の貧農に落されてしまったということ、それからお子さんは六人で、家族八人で、お気の毒な家庭であるというようなことで、そういうようなものの生活の保障というような点から考えて、いろいろ被害者としては、あとの遺族としては、一日も早くそういう補償金をいただきたいということからあせって、ついわずかな涙金ごときで処置されてしまう、そういう例が今までも相当多いように聞いているので、この点については、一つ極力、そういう事情をも勘案せられて、お骨折りいただきたいと思います。
  29. 今井久

    政府委員今井久君) お答え申し上げます。被害者でありますところの坂井なかさんの御家庭は、ただいま御質疑のありました通り、御夫婦のほか、お子さんが六人あるのであります。御主人は村会議員をされておるのでありますが、私も新聞で、従来持っておられたところの畑が旧陸軍に接収されたというようなことを見まして、まことにお気の毒なことだというふうに、御同情申し上げておる次第でございます。この公務によりまする原因の場合には、その損害額根拠等も、閣議決定によりまして、その方針がきめられておるのであります。私どもといたしましても、でき得る限りのことはいたしたいというふうに考えまして、こういう事件が発生いたしました直後、前橋調達事務所に命令いたしまして、係官を動員いたしまして、所要の調査もいたさせました。また、被害者であるところの坂井さん宅にもおたずね申し上げて弔意を表し、また、これらのことについて補償がある、その補償はこういうものであるというようなことも御説明申し上げまして、その補償の申請手続も、すみやかに行われるというような観点から、米軍の賠償部等と連絡を了しておるような次第であります。補償申請が出て参りました場合には、御指摘になりました点は十分考慮に入れまして、最善の努力をいたしたいというふうに考えておる次第であります。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この補償額の基準についてですが、最近少し引き上げられたように聞いておるのですが、それにしても、まだ一般事故補償等に比べると、相当低いように聞いておりますけれども、こういう点についてはせめて一般並みの事故補償くらいに引き上げられないものですか。その点についてちょっと伺いたいと思います。
  31. 今井久

    政府委員今井久君) この補償額の点につきましては、昭和二十七年の五月の十六日の閣議決定補償金及び見舞金の支給に関する基準というものがきめられておりまして、昨年まで実施して参っておったのでございます。これらの点につきましては、先ほども申し上げました通りに、公務によります場合には、その四分の三がアメリカから支払われるというような関係もありまして、アメリカ側とも再三これらの基準につきまして検討して参ったのでございます。その結果、従来の補償基準が実情に沿わない点もあることは先ほどお話のあった通りでありまして、昨年の十月二日にこの補償基準を上げまして、そうして同日以降の損害について適用することにいたした次第でございます。この基準を上げますにつきましては、その他の事故で行われておりますところの補償基準等も十分勘案いたしましてアメリカ側と折衝しているような次第でございます。そうして今お話のありましたような点につきましては、さらに一つ十分検討してみたいと思いますが、この基準を上げます点についてはいろいろなその他の事情も十分検討いたしておるような次第であります。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これは大きな問題になると思うのです。相馬ケ原一円の所は戦前すでに五百万坪ほどの土地を取られておりますし、また米軍の軍事基地となってからも二百万坪、それほどの土地を接収せられておるような関係、それだけではないのかもしれませんけれども、そういう事情もあって、大体貧農が多いように聞いておるのです。ところが今度の事件を契機として何か対策を講じないと、また第二、第三の悲劇が引き起される。そういう心配も十分考えられるわけであります。幸い今度の石橋内閣は福祉国家実現の大きな目標を掲げられておりますので、一つそういう今身近かに起っておるこのような問題を、何とか救済する具体的な方策を今後強力に打ち立てていただきたいと思います。この事件は完全に解決したとしても、このままの措置では次々と悲劇が繰り返えされる。そうして悲劇が悲劇を生むというような事態になりますので、十分対策については具体的に御検討をいただきたいと思います。もし方法でもあったら承わりたいと思います。
  33. 今井久

    政府委員今井久君) お答え申し上げます。ただいまのお話のありました通りに、今回のような事柄が発生いたしましたことは、私といたしましてもまことに遺憾に存じておる次第でございます。この相馬ケ原につきましてはただいまお話のありましたように国有地のほかに相当多く民有地あるいはまた公有地が提供されておる次第でございます。これらの民有地につきましては借料を払っておりますほかに、占領間期中はもとより、占領後におきまする演習等によります射撃による立木の滅失等につきまして中間補償を従来やっております。また、この演習地の中の草等の林野特産物につきましても、占領がなくなりました後につきましては補償を実行しておるような次第でございます。しかしながら根本的に考えまして、ただいま御指摘のように、いろいろ各方面からこの問題については真剣に考えていかなければならぬ点もあることは、十分私どもとしても考えておる次第でございます。私どもの所管といたしましても、ただいま御指摘の点につきましては、十分拝承いたしたいと思っております。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最後一つ関連があることでお伺いしたいのですが、昨年九月七日と記憶しておりますが、例の東富士演習場で草刈りに行った御殿場の農家の方が、米兵から同じく空包薬莢を差しはさんで今度の相馬ケ原と同じようなケースで重傷を負った、そういうことを聞いております。これにつきまして、調達庁なり、警察庁としては、これは前の話だと思うのですが、まだそのことを承知していないというように聞いたのですが、その後解決したとは思いますが、その点についてもその後どうなっておりますか、関連がありますので……。
  35. 今井久

    政府委員今井久君) その点につきましては、先日御指摘のありました当時、十分わかっておりませんので調査して申し上げるとお答した次第でございます。その点につきまして、他の政府委員から詳細御説明申し上げたいと思います。
  36. 竹下豐次

    竹下豐次君 答弁のその前に関連して……。二月十日の読売新聞に「弾拾い」という題でいろいろな事例が出ております。お読みになっているだろうと思う。これを読みますというと、全く飾りのないことでもないように思われる。今の御質問に関連しておりますから、そういう問題につきましても、この際お話を承わりたいと思うわけですから、聞かせていただきたい。
  37. 今井久

    政府委員今井久君) 先ほどの御質問の点から……。
  38. 眞子傳次

    政府委員(眞子傳次君) 私からお答えを申し上げます。お尋ねの事件の真相は、ほかの省からお答え申し上げるのが本筋かもしれませんが、一応私の方でこれまで調べました結果を、わかっている分だけお答え申し上げたいと思います。  それは、昨年九月七日午前六時十分ごろ御殿場市印野畑岡地先東富士演習場内に起りました事件でございまして、被害者は同市印野六百二十一番地根上絹枝当時三十二才になる方であります。その方が、ほかの数名の人と一緒に、たま拾いに行っておりまして、当時演習中であったのですが、米軍の兵隊からやはり薬莢を詰めたたまで撃たれて傷害を受けられた。その傷は、わき下右から背中の方に向って盲貫創でありまして、当時すぐに一緒に行っておった人たちが救助して病院に連れて行きまして、入院二十五日、その後通院約三十日でなおられた、こういうことでございます。これは調達庁に届けがないのでわからなかったのでございますが、問題になりまして、調べまして、こういったことがわかりましたので、私の方ではなおその前後のことも勘案して、被害者補償請求をなさるように手続を進めさせまして、目下手続の進行中でございます。このことは、地元の警察あるいは軍の憲兵隊側がよく知っておりまして、被害者やその方面から出た私どもの情報調査でございます。以上簡単でございますが……。
  39. 今井久

    政府委員今井久君) ただいまの竹下委員の御質問にお答えいたします。演習場におきましては、演習場付近に居住の住民は、演習を妨害しない範囲におきまして、採草とかあるいは木を取るというようなことの目的のために、その区域に立ち入るということは許されておる次第でございます。しかしたまを拾うということは認められておらないのでございますけれども、御承知通りに、撃ったたまを拾いまして、これを売ります場合に非常に高い値で売れるというような現状から、現在演習場におきましては、各地におきまして、住民が入りましてたまを拾うということは事実でございます。それで、これの危険の予防等につきましては、関係府県町村におきまして、これが対策につきまして従来いろいろと腐心をされておるのでございますけれども、何分広い範囲でございまして、これを一々取り締ることができないという状態で今日まできておる次第でございます。所によりましては、町村でこれをある程度統制しまして、そしてやっておるという所もあるやに聞いておりますけれども、大体のととろはただいま申し上げたような事情になっておりまして、今回こういうことがやはりありまして、そうして相馬ケ原事件というようなことになりましたことは、まことに遺憾に存じております。今後いかにしたならばこれらの点につきまして、十分そういうような事故の起きないようにできるかということにつきましては、なかなか困難な問題だと思いますけれども関係当局と打ち合せをいたしまして、何らか適切な処置をいたしたいと実は考えておる次第でございます。
  40. 竹下豐次

    竹下豐次君 この読売新聞の記事は、大体この通りで間違いございませんか。係の人は入念にお読み下さったことと思いますが、いかがでございますか。
  41. 今井久

    政府委員今井久君) 私も大体拝見いたしまして、そういうような事情が各地にあるのじゃないか、私の方といたしましても調べていきたい、実はこういうふうに考えておる次第でございます。
  42. 竹下豐次

    竹下豐次君 この記事を見ますと、いろいろ、たとえば宮城県の演習場では不発弾事故が百十件、死傷が百三十六名に達していると数字までこうはっきり書いてあるのです。こういうことはやはり役所の方でも、そういう記事はさっそくお調べになっておいた方がいいじゃないかと思います。新聞記事でありますけれども、私などが読むときには、ほかにたよるものがありませんので、やはりこういうものを信ずるようになってしまいます。国民一般から見ましても、ここにはっきりした数字まで出ている、まずこれを否認するとか、打ち消すという材料がない限り、そのままに思い込んでしまうわけであります。今おわかりでありませんでしたら、お調べ下さいまして、ここに書いてあることだけでなく、警察庁と調達庁との連絡も、先ほどのお話で聞いておりますと、どうかというようにも疑惑をいだくわけであります。この連絡も一そう緊密にやっていただきたいと思います。
  43. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほど、今後の事故がないように対策を講じていただく、こういうことについてはお願いしたのですが、今竹下委員から御指摘になったように、今までいろいろこういう問題も起ったと思う。知られていない問題も多いと思う。これは事故があってから、その手続をするまでに何年間というような時効の期限なんかあるのですか、そういうものは別にございませんか。
  44. 今井久

    政府委員今井久君) お答え申し上げます。これはたしか一年以内に補償申請をするということになっていると思います。補償の申請がありました場合には、私どもの方ですみやかにこれの調査をいたしまして、先ほど申し上げました遜りに、米軍の賠償部等とも打ち合せをいたしまして、すみやかにこれをいたします。従来の例で申し上げますと、ほとんど九割までは二カ月以内に片づいているというような状況でございます。ただ公務によるかよらないかという点で、なかなかきまらなかったというのでおくれた場合もございますが、大体ただいま申し上げたようなことで片づいているように聞いております。
  45. 竹下豐次

    竹下豐次君 石井長官にお尋ねいたしますが、加害者はやはりもとのように、上の方を向いて空包を撃っただけだということを今でも言い張っているのでしょうか。それとも殺意——殺そうなんていうことは考えなかったけれども、まあねらって撃ったということだけは自供しているのでございましょうか。
  46. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 前回の当委員会において御報告いたしました当時の被疑者の本自供におきましては、空の方に向って発射をしたものであるということになっておったのでございますが、その後の自供によりましては人のいる方に向けて発射をしたというところまでは自供いたしております。
  47. 竹下豐次

    竹下豐次君 そうすると、それが薬莢が当ったならばけがをするかもしれないぐらいのことは考えておったということまでは言っておりますか。
  48. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほどもお答えいたしました通り被疑者空包によるから薬莢の発射が、それほど威力があるものとは思っていなかった、こういう言い方をいたしているのでございまして、それが当ったならば相当のけがをするであろうという認識があったかどうかということについては、自供いたしておりません。しかし私どもはこれが発射されるならば、少くとも相当の傷害を与えるということは、当然言えることでありますので、傷害致死事件として送るべきだという一つの判断をいたしたわけであります。
  49. 竹下豐次

    竹下豐次君 今日までのところ、米軍態度、これはやはりあなた方の方で一応お認めになった——一 一応といいましても確信があるわけでしょうが、今のところ、とにかく確信を持って傷害致死ということで送検されたのじゃないかと思いますが、アメリカ軍側でも、その点は、やはりさように考えている意思表示でもあなたの方に対してありましたでしょうか。
  50. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 米軍側決定的な意見というものは、もとよりまだ捜査過程でございますのでわかりませんが、いろいろ双方緊密に連係をとって、協力捜査をいたして参っております。今日までの経過にかんがみますのに、米軍側では、今回の事件は、公務上の事故であるという考え方に立っておるのではないかというふうに考、えられるのでございます。そうしますと、いわゆる第一次裁判権偏屈の問題にかかってくるわけであります。そういう関係もありまして、米軍側では、まだこれに対する最終的な意見と申しますか、そういったものは、私ども十分うかがい知ることはできないのでございます。目下お互いに必要な捜査資料を双方の手で入手したものを交換し、また、不足な点はさらにこれを整備していくというふうな作業を続行しておるのでございます。米軍捜査当局はきわめて協力的であります。その点は、私どもも満足に思っておるのでございます。今後もおそらく十分に協力していただけるものと考えます。
  51. 竹下豐次

    竹下豐次君 そうしますと、実はこの前のお話のときに、米軍とこちらの方とは別にやっているけれども、お互いに協力してやっていくというお話でありましたから、今もお尋ねしたわけで、こちらの方で傷害致死ということの認定をされたということになれば、こちらで自供したくらいのことは、向うでも自供しておるはずである、そう想像されます、本人は。そうすると、向うでもやはりあなたの方の判断と同じような罪状というふうに認めるのがまあ常識的ではないかというふうに考えましたので、あるいはあなたの方で送検されるということを伝え聞いております。自分の方で言うくらいのことは言っておるのじゃないか、こういう感をしたわけでありますけれども、そこまでもまだ行っておりませんか。
  52. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 米軍側が最終的にどういう結論に到達しているか、まだその点は、私どもよく承知をいたしておりません。今後それらも明白になるかと思います。
  53. 竹下豐次

    竹下豐次君 最終的にと申しますと、いわゆる裁判が、かりに向うの裁判が傷害があるということになりますれば、裁判が確定するまでには最終的の意思表示ができないわけでありますから、今最終的の意思表示をするはずがないと思っておりますが、大体そういうふうに察したいと思っております。それ以上は、ここでお答え下さいませんでも……。それから管轄権の問題は、まだ今のお話の中でも、きまらないようでありますように承わっておるのでありますが、これはまた非常に大事な問題でありまして、この前も、委員の数人の方から、しきりにそれを質問されたわけであります。私としても、これはぜひ何とか早く解決してもらわなければならぬと思っております。まだ今日まできまっていないというのならば、いろいろな事情もおありだろうと思いますが、重ねて私、一刻も早くこの問題を解決してもらうように御努力を願いたいと思います。それだけのことを希望申し上げておきます。
  54. 田畑金光

    ○田畑金光君 法務大臣が出席されましたので、お尋ねしたいと思いますが、七日のこの委員会で、その当時の捜査状況に基き、いろいろ大臣にお尋ねしたわけでありますが、二月八日の朝、閣議を開かれまして、政府としましても、との問題について相当熱心な意見の交換がなされたことを新聞を通じて承知したわけであります。政府がこの問題に初めて閣議等を開かれて討議をされたということは、国会において問題が取り上げられて、また、世論がこの問題の処理いかんということを注目して、初めて取り上げられたような感がするわけで、それまでの政府の態度については、まことに遺憾であると、とう考えるわけであります。お尋ねしたいことは、八日の閣議で、再発防止を強く結論として、お出しになったようでありますが、この閣議に現われた政府の意見というものは、どういう形でアメリカ側に伝達をきれたのであるか、それをまず伺いたいと思います。
  55. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) これは、ちょうどその日であったかと思いますが、アメリカの代理大使が日本の岸外務大臣を訪問されまして、本件について遺憾の意を表しに来る、こういうことになりまして、夕刻、外務大臣は外務省で会見をされました。その際に、外務大臣から代理大使に対して、両国の親善関係の上にも非常に障害となるできごとであるから、今後注意方を喚起する意味の話をしていただきましたようなわけでございます。なお、それ以外に、事務的には、日本側の刑事裁判権分科委員長から先方の委員長に対して、この事件が起きましてから数回会見をしておるようでありますが、その機会に、その旨を十分また伝えさせておるような次第でございます。
  56. 田畑金光

    ○田畑金光君 八日の朝に閣議を開かれて、この問題についてのいろいろ意見の交換がなされ、閣議としても、まことに今回の事件は遺憾であり、米軍に対しても、再発防止について強く要請される、こういう結論が出たということは、先ほど申し上げたように、新聞を通じて承知したわけでありますが、同時に、同じ日の夕刻、今お話しのように、アメリカの代理大使から岸外相に対して、遺憾の意が表明されたととも承わっておるわけであります。この点に関しまして、これは政府から正規にアメリカ側に対しまして、その朝の閣議の意思というものを伝えられて、代理大使の外相訪問になったのかどうか、その間はこれはどういうことになっているのか、それをお尋ねしたわけです。
  57. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) それは、その前に日米合同委員会日本側代表、これは欧米局長が当っておるようでありますが、日本側代表からアメリカ側代表に大体同一趣旨のことを話し、それに基いて、こちらから呼んだわけではなしに、アメリカの方から、代理大使が外務大伍の都合のいい時間に訪問して遺憾の意を表したい、こういう連絡が来るようになりまして、幸いの機会でありますから、その機会に、外務大臣から十分今後の善処方について要望してもらう、かような順序になったわけでございます。
  58. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど、調達庁の御答弁によりまずと、たとえば昨年九月に、同じく東富士の演習場で同様な、たま拾いの際に、根上絹枝さんという人が米兵から狙撃されて、傷害を受けておる。ところが、こういう問題が今日まで取り上げられないで放任されてきたということ、この事件が起きて、ようやく昨年の事件調査しておるというこの不始末、また、今回の事件に対しましても、すでに国会の論議以前に、政府としては取り上げて、当然この問題に対する政府側としての立場を明らかにすべきであったにかかわらず、国会や世論が批判し始めて、初めて問題を取り上げたということ、この点は、われわれとしてまことに遺憾なことだと考えるわけです。ことに、もしこの事件が国会の開かれていないときとするならば、おそらく政府のこの事件に対する取り組む態度、熱意、こういうものに大きなわれわれは疑問を持っておるわけです。この点につきまして、法務大臣としては、どのようなお考え方をお持ちであるか、お尋ねしたいと思います。
  59. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) これは、国会の開会中であるといなとを問わず、この種の事件については、もちろん適正な処置を講ずべきであると、かように考えます。ただ、ややもすれば、事件現地警察くらいのところで処理されてしまって、なお、法務当局の中心なり、検察当局にも連絡がなかったというできごとがあるようでございまして、これは、まことに遺憾な事態でありますけれども、一面、禁止区域に入ってたまを拾うというその人たちの心理状態も、まあ内済にしてほしいというようなことから、きっとそういう経路をたどったものが出てきておるのだとは思いますが、しかしながら、こういうような相馬ケ原事件が起きましたので、今後は、一そう御指摘の点について注意をいたしまして、善処をするように努めて参りたいと、かように考えております。
  60. 田畑金光

    ○田畑金光君 国会の開かれておるといなとにかかわらず、こういうお言葉でありますが、しかし、政府の今日までこういう種類の事件と取り組んでこられた態度を見て参りますと、国会があるからとそ、政府はこの問題に積極的であり、真剣に取り組もうとする気持を出しておるのです。たとえば本日の新聞でありましたか、例の防衛庁では、今度自衛隊で起きておる死の行軍の問題でも、なぜああいう事件が起きたかという根本問題を検討する前に、国会の答弁をどう切り抜けるかということが、防衛庁当局の頭を悩ましておる姿のようです。たとえば、先ほど私が申しました、この東富士の事件です。これは、二月八日の毎日新聞の記事によりますが、昨年の秋、御殿場の米軍東富士演習場に発生した農婦の負傷事件も全く同じケースで、国会で取り上げられたために、これは新聞記事を借用いたしますが、あわてて関係調達局の富士調達事務所等が再調査に当っておる。私はこの通りだと思うのです。どうも国会がなければ、今の相馬ケ原事件の問題でも、おそらく事務当局の間でうやむやのうちに葬り去され、ああいう大きな、人権侵害と申しますか、生命の軽視というものが闇から闇に葬むられたと思う。一体どういうわけで、この東富士事件も、似通ったケースでありますが、今日までこれが放擲されて、今改めて、同じケースだのに、こうして取り上げられておるのか、こういう政府の態度というものは、われわれとしては、まことに納得がいかない。自主性のない、あるいは見識のない態度だと、こう考えますが、東富士事件等に関連いたしまして、大臣のお考えはどうであるか、改めてお尋ねしたいと思います。
  61. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) お説のようなきらいが全然なかったとはいえないかと思います。今後は十分注意いたしまして、この種の問題につきまして、たとえ被害者が立入り禁止の区域に入ったという一つの、何といいますか、内済を望むようななにがありましても、適正な処理をするように、一つ最善を期したいと考えます。
  62. 田畑金光

    ○田畑金光君 東冨士事件を初め、また先般の新聞では、福岡でも似通った事件が発生したように見受けております。しかし、これは、新聞に現われない私は多くの事例が、基地演習場等で起きておるものと見るわけですが、政府等においては、少くともこういう事件については、統計等において数字が出ておると思いますが、持ち合せておられるかどうか、この点一つお尋ねいたします。
  63. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) ただいま資料を持ち合せておりません。調査いたしますればわかることと考えますので、さっそく調べたいと思います。
  64. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど警察庁長官の御答弁、また、私ども新聞承知いたしておりますが、九口の日でありますか、この事件送検になっておるわけであります。本日の新聞記事等によりますと、明日、検察当局においては、この問題等に関して、首脳部の会議を持たれるように見えておるわけであります。で、この問題に対しまして、今後検察庁として、どういう態度で解決促進処理のために臨まれるか、法務大臣から方針を承わりたいと思います。
  65. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 御承知通り、昨日、双方立会いのもとに、被疑者現地に招致しまして、検証を行なったのでございます。引き続き、日本側としましては、被疑者及び関係者の取り調べを厳重に進めまして、最も適切な結論を得て、解決をはかりたいと、かように考えております。
  66. 田畑金光

    ○田畑金光君 適切な解決をはかるということは、これは当然のことだと、こう見ておりますが、われわれの心配することは、この間も申し上げましたが、この種事件は、ともすれば長引いて相当時間がかかる。またその間に、問題の起きた当初に考えていたことと、最終的な決定段階においては、相当に違ってくる心配もなきにしもあらずと、こう見ておるわけで、一体この種著作の取扱いというものは、私は時間というものが一番大事な要素であると思うのですが、その点について、その他の刑事事件と同様にこの問題を扱われるということは、まことに遺憾であって、解決促進のために、どのような態度を持っておられるのか、それを私はお尋ねしているわけです。
  67. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) これは遅滞なく、最も敏速な努力によりまして、結論を得たいと考えております。決して事態を遷延さしたり、普通事件を取り扱うような結果にならないように、できるだけ最短距離で結論を得るようにいたしたいと、かように考えております。
  68. 田畑金光

    ○田畑金光君 問題のかぎは、この間の質問等の中でも出したわけでありますが、公務であるか、公務外であるかという問題にかかってきょうと思うわけであります。しかし、今までの捜査当局から説明を受けた報告を見ましても、また、私たちが報告の中から判断する私たちの見方からいたしましても、この問題は、明らかに公務外であろうと考えるわけであります。当然そのような立場において、今後検察庁も進められるものとは判断いたしますが、かりにこれが公務外という認定に立ちました場合、今後のこの事件の運営というもの、処理というものは、たとえば裁判の進行についてはどういうことになるのか、具体的に申しますと、公訴を提起した場合に、身分は当然日本側に移して進めることになると考えておりますが、そのような点についてどういうようなことになるのか、お尋ねしたいと思います。
  69. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 従来の事例を一つ政府委員から申し上げまして、それからお答えをいたしたいと思います。
  70. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 被告人の身柄を留めて、そのままで裁判をいたします事例が相当ございます。アメリカ軍人の事例につきましては、当初は、捜査の当時から日本側でその身柄を引き取って調べておったのでございますが、日本側の設備が不十分でありまして、調べ以外の処遇の問題で、いろいろ困難な問題が生じますので、アメリカ側の留置場に預けまして、必要に応じてこちらに引き取って裁判を続けていったのでありまし三大体全国的に、刑事被告人の段階におきましては、多少の例外はございますけれどもアメリカ側に預けて、必要に応じて日本側の裁判所に出頭させまして、そこで裁判をいたします。その結果、判決確定いたしますると、その刑の執行は、日本側に引き取りまして、日本側で刑の執行をしておるということになるわけでございます。本件の具体的な事情につきましては、日本側でこれから裁判をやるかどうか、まだ最後的な段階に至っておりませんので、その段階に至りましてから、最も適当な方法に出たいと考えておる次第でございます。
  71. 田畑金光

    ○田畑金光君 当初は、日本側が引き取って裁判等もやっていたが、その後、処遇や施設の関係等で、アメリカ側の留置場を使って、そのつど日本側で裁判等に呼んでおるということでありますが、今度の場合も、もしかりに、これはあくまでも公務外という認定が立った場合の話でありますが、同様な考え方でこれを進めようとなさるのであるかどうか、その点どうですか。
  72. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 先ほど申しましたように、いよいよこちらで裁判をするという段階になりまして、そのときの事情によって、最も適当な方法に出るのが相当であるというように考えております。
  73. 田畑金光

    ○田畑金光君 その際、日米合同委員会の中に持たれておる刑事裁判権の小委員会等との関係はどういうことになるのか、刑事裁判権の小委員会、あるいは日米合同委員会等において、今後また、こういうような問題の話し合い等が必要なのかどうか、これはどうなるわけですか。
  74. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) この犯罪が、公務執行中の作為不作為による犯罪であるかどうかということにつきまして、日本側アメリカ側との間に意見の相違を来たした場合には、合同委員会で協議してきめるということになっておりまするが、身柄の処置につきましては、これは当事者の間できめれば簡単に片づくことでありまして、ことに身柄を留めるかどうかということの問題もあります。すでに調べが全部終って、証拠隠滅のおそれもないし、逃亡のおそれもないという状況でありますれば、日本人でありますれば、原則としてその家から通わせて調べておるというようなわけでございますので、この事件につきましても、おそらく公務問題が片づきますれば、すべての証拠が整いまして、身柄拘束の必要があるという段階にはならないという予想を持っております。
  75. 田畑金光

    ○田畑金光君 先に、大臣にも私はお尋ねいたしましたが、明日開かれる最高検における首脳灘会議で、相馬ケ原事件に対し、検察側の結論を出すということに聞いておりますが、この点はどうなっておるのですか。
  76. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 前橋地方検察庁におきましては、検事正以下全力をあげてこの事件捜査に当っております。調べが完結いたしますれば、即刻その結果をもたらしまして、東京へ参ると思います。その際には、最高検察庁、高等検察庁関係者が集まって、その報告を聞きまして、ある程度の結論を出すと存じまするが、新聞に伝えられましたような、十三日に最高検察庁で会議をやるというようなことは、私どもその報告を受けておりませんし、おそらくその会議は、新聞に伝えられるような工合に開かれるということはないと存じます。
  77. 田畑金光

    ○田畑金光君 当局としては、今の出先の検察、前橋の検察庁、地方検察庁でありますか、検事正を筆頭に真剣に取っ組んでおられるようであり益ますが、それらの進行の状況から判断されて、大体いつごろ、検察当局としての態度が出せるという見通しを持っておられるのか、その点伺いたいと思います。
  78. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 実は東京から、九日の日に、東京高等検察庁の軽部刑事部長現地に参りまして、いろいろ指示、指揮をしております。できるだけ早くこの事件結論を得なければならぬと存じますが、何月何日に結論が出るかということも、ちょっと予測いたしかねる状況でありまして、これが三月も四月もかかるというようなことはございませんので、ごく短時日のうちに、何らかの結論を至急に出したいと考えます。
  79. 田畑金光

    ○田畑金光君 先週の木曜日でありましたか、この内閣委員会で、警察当局質問いたしましたが、警察当局としては、急いで結論を出し、ずみやかに送検をはかりたい、今週中にはというお答えがあったわけですが、新聞によると、なるほど今週中にということで、二月九日送検されているわけです。で、まあわれわれといたしましては、検察当局としても、すでに警察の方で相当この事件についての捜査はあったものと判断するわけで、従いましてわれわれといたしましては、この新聞に伝えられるごとくに、あすあたりは、検察庁首脳部会議が開かれて、この問題に対する結論が出るものであろうと期待しているわけであります。お聞きいたしますと、できるだけすみやかにというお話でありますが、少くともやはりこの問題の処理に当っておられる当局としては、大体いつごろには検察当局としての結論を出し得るということはめどがついておると見るわけです。また、そうでなければ、当初申し上げたように、私はこの事件の解決の重大なかぎというものは、時間の要素というものが加わっておると考えますので、この点あらためて法務大臣からお聞きいたしたいと思います。
  80. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) ただいま刑事局長からお答えいたしましたように、私どもとして、急速に最終的な結論を得る努力は、決して怠らずにやって参りますが、さてしからば、明日、明後日とか、何日にその最終的な結論を得られますということは、実は今の状態で申しかねるのでございまして、いましばらく、そういう意味において御了解を願いたいと思います。
  81. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大臣にお伺いしますが、そのことに関連して。これを解決する問題は、しばしば出ておりまする公務中か公務外かと、こういうことが重大な問題だと思うのです。ところが、公務中か公務外かという第一義的に決定する権利は、米軍側にあるわけですね。公務中か公務外か、第一義的に決定権を持つのは米国側と、もちろんこのことに対しても、日本側は当然遺憾の意を表することをもって、それで日米合同委員会、そういうものに持ち込まれると思うのですけれども、ところが、過去の事例を見ますと、なかなか両者の意見が一致しないで、調整がとれないで、一年以上もかかったというような事例が相当あるわけです。そういうことについて、今回の問題も、これは両者の意見が対立のまま並行している間は、これは一年が二年でも解決しないと思う。そこで、お伺いしたいのは、過去の事例によって、一年以上もたつと、結局向う側——米軍側からうやむやにされてしまうということも、今まであったんではないかというふうに心配されるわけだ。この点について、どこまでも対立しておる場合はどうするのか、そういうことなんですが、その場合はどうするか。
  82. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 公務執行中の作為、不作為に基く犯罪であるかどうかということで、日本側アメリカ側意見が違いまして、一年近くもかかったという事例は、自動車による業務上過失傷害の事件がございまして、われわれ日本側といたしましては、従来公務執行妨害などの法律解釈といたしまして、ごく狭い範囲で公務執行中ということを考えていたのでありますが、アメリカにおきましては、自分の公舎から役所まで自動車で出勤して参りまするその途中の事故並びに役所から自分の官舎に帰ります帰途の事故、それらのものも公務執行中と認めてもらいたいということを申して参り、日本側ではさようなのは公務執行中とは認められないということで、これが両方の争点となりまして論議して参ったのでございますが、しからば諸外国ではどういうふうに扱っておるかということで、外務省を通じまして世界各国の例をいろいろ集めました。そのために長時間かかったわけでございますが、結局さような官舎から役所に直接出勤して参る途中も公務の執行中というのが大体の世界的な傾向でございます。そのほか日本側におきましても、公務災害などで補償金を払うというような場合には、出勤の途上において災害を受けたというようなものは公務補償金を受けております。さような意味をいろいろ勘案いたしまして、これはアメリカ側の方にある程度折れるのが相当であろうという結論になりまして、直接役所に出て参る途中の事故はこれは公務執行中と認めよう。並びに直接役所から自宅へ帰る事故もこれと同じように認めよう。ただし役所から料亭べ寄って酒を飲んで帰ったとか、あるいは役所におきましても公務が終って一ぱい飲んで酔っぱらって帰ったというようなときには、これには酒を飲んで娯楽、楽しみをしたということで、公務はそこで切れるのだという解釈をとりまして、その点もアメリカ側は了解をいたしたので、そこで日本側アメリカ側は完全に意見の一致をみまして、この問題の懸案になっていた事件全部一掃したわけでございます。さようなことで、相当長くかかりましたのでありますが、一般的にはさように長く問題がかかるとは考えておりません。この本件の事案なども、事実がはっきり確定いたしますれば、法律問題といたしましてはそうむずかしい問題はないと私は考えるのでございます。たとえば一部の方々のお話のように、薬莢を取りに来た者をいたずら半分に撃ち殺したというようなことになりますれば、さようなものが公務執行中のはずであると言えるはずのことはございません。ところがアメリカ側が主張したというように伝えられておりますが、群衆を追い払うために空に向けて発砲したところが、間違ってそれが過失でたまが当ってしまったというような認定がかりにありといたしますれば、さようなものは相当公務性を持っておりますので、問題が少しく複雑になってくるというように考えるのでございます。それから問題の、との公務の時間中であるかないかという問題は、昭和三十年の三月三日に最高裁判所で判例がありまして、これはMPが巡視中に人の家に入りまして強姦をした事件でございますが、巡視中、時間中でございますので、さようなものも公務中であるという問題が提起されたのでございますが、日本側は強姦をするようなととが公務であるはずはないということで、公務の時間中ではございましたが、公務ではないということで、その問題は日本側で外人裁判権を行使いたしまして、結局最高裁判所で、昭和三十年三月三日に判例が出まして、はっきり公務ではないという判決がおりまして、この問題につきましてはアメリカ側もその判決を容認しております。さようなことで、この問題も事実の確定をいたしますれば、そうむずかしい問題ではないので、短期間に結論が出るというように予想をしております。
  83. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今諸外国の事例も調べて見たというふうなお話ですけれどもね、北大西洋条約ですか、あれによると、今のような場合、両者の意見が対立して意見が出ない場合に、米軍の駐留するところの最高の学識経験者の判定に持つ、それにアメリカも当該国も従う、そういうような規定になっているわけですけれどもね。ところが日本の行政協定にはそういう規定はないわけです。今の大西洋条約のこのような規定は、非常に問題をうやむやにしないために、解決するためには非常にいい条約だと思うんですけれども、そこで、大臣はこのようないい前例もあるので、今の行政協定には非常に不満の点があるというような観点から、何とかこういうところこそ今後改善することが至当だと思うわけです。また、外務大臣も前に本会議で答弁をして、とにかく今安保条約や行政協定はかえる段階ではない、ただし日本のために必要ならばかえる、そういうことをはっきり言われておる。これはその一こまだと思うわけですが、こういうふうにそういう一部を改善することによって、問題をうやむやにしないで解決する、こういうりっぱな北大西洋条約のような事例もあるわけです。こういう点についての見解を承わりたいと思います。
  84. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 結局両方の意見が一致いたしません場合には、双方に刑事裁判権分科小委員会ができておりまして、この委員会にかけて双方の資料を出し合って討論をして解決をする、この委員会最後の管轄関係の裁きをすることになっておるわけでありますが、そこで従来若干交通事故の問題、通勤が公務かどうか、あるいは先ほど京都のパトロールの事件のように、パトロールの勤務時間、服務中に公務であるという主張を向うは一時したのでありますが、これは結局日本の最高裁で服務中といえども服務中即公務という解釈はできない、服務中であっても公務に属することと属せざることがあるのだということで、それは判例が出ましてアメリカ側も承認しておるようでありますが、そういうような若干の意見の食い違いは従来あったようでありますが、そのような基本的な問題を除いては、基本的な観念上の問題を除いては、具体的な、しからば管轄をどうするかというようなことは、双方資料を出しまして議論をいたしますと、割合今まではフェアーに解決がつきまして、それで両国対立したというようなことはないように聞いております。でありますから、本件の場合は、問題は、射殺いたしました米軍上司が、その時間に日本人のたま拾いに入っておる人たちを外へ追い出すように明確な指示をしたかどうかということで、指示をしておると公務ということになる可能性が非常に強い、その点がおそらく私ども東京で判断をしておるものとしましては重要なポイントになってきておるのじゃないか、従ってわが方といたしましても、そういう点が実際どうなっておるか、これは直接の上司であったモーホン少尉ですか、の言い分が、こう言ったからといって、直ちにわれわれはそれを信ずる必要もありませんし、その他の取り調べを進めまして、そういう当該者がどう弁明をしようとも、その弁明を是認できないものである以上はわが方としては十分の資料をもって主張をして、その主張は貫くべきであると、かように私ども考えております。
  85. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで公務外ということになった場合でも、米軍の方で特に必要と判断をした場合には、日本側裁判権放棄を要求することができると、そういうことになっておるわけですけれども、そういう際に、日本側はそれに好意的考慮を払わなければならない、こういうふうに承知しておるわけですが、こういうような従属国的な事例が今まであったかどうかということを、これを承わりたいと思います。
  86. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 定めておる規定には、お互いにその好意的考慮を払って解決をするようにということであって、日本だけが好意的考慮を払えということではないようであります。従来、今お話しのような事例は一度もないそうでございます。私の感じておるところでは、日本の裁判権というものがございまして、公務である場合には日本の裁判権を除くということになっておりますから、これは私どもの法律常識から申しますと、いわば例外的なことでありますから、公務であるという証明は、この証拠責任から申しますならば、先方が公務であることを主張する方が立証責任があるのだ、こういう感じを持っておるわけでございます。
  87. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今の場合ですね、米軍側が主張ありと認めた場合、日本側裁判権の放棄の要求はできるのですか。
  88. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) やってやれぬことはございません。ございませんが、こちらで裁判権を放棄したという例は一件もございません。
  89. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 しかし規定にはそうなっておるのじゃないですか。
  90. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) ただいま申し上げましたように、やればやれることは確かにやれますが、こちらで放棄した実例は一件もないということを申し上げたわけでございます。
  91. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで規定にあるけれども、まだそういう放棄した事例はない、そういうように解釈していいわけですね。
  92. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) はあ。
  93. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど大臣の御答弁の中に、上司がこの被疑者に指示をしたかどうか、これが公務であるかの判定のかぎであるという御答弁がありましたが、この事件の性質というものを見たとき、ちょうど先ほど引例されたパトロール中の憲兵が強姦に入ったのと何も変らぬ問題だと、こう見るわけであります。従いまして、私は先般来井本刑事局長が、この問題に関して公務であるかないかという明確な解釈態度をとっておられるわけで、この点はそういう態度でなければならぬ、こら強く私は信じておるのです。そういう立場から見ました場合、井木局長の説明によりますと、この事実の調査がはっきりすれば、私が先ほどお尋ねした検察庁首脳部会議等は持たれる、結論をすみやかに出し得る、こういうことになるわけでしょうが、おそくても今週中には事件の経緯から見て、捜査の進行状況からの判断からいっても、おそくとも今週中には検察側の結論は出るかと期待しておりますが、この点はどうでしょうか。
  94. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) われわれの方の最終結論日本側最終結論となりますので、足らなかったから追加するというわけには参りませんから、最後的にきめなくちゃならぬのでございます。従いまして、何月何日に結論を出すと申し上げても、うそになるとこれは困りますので、できるだけ早く結論を出しますから、どうかそのことだけ御信用いただきまして、しばらく御猶予を願いたいと思います。
  95. 田畑金光

    ○田畑金光君 大臣にお尋ねいたしますが、たまたま基地演習場でこういうたま拾い問題が起きて、このような遺憾な事件が発生した、相当閣議においてはいろいろな角度から検討されたと思いますが、大臣といたしましてはたま拾いについてはどういう考え方をお持ちであるか、これを一つ承わりたいと思います。
  96. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) まだ政府部内としては、これは法務省だけではありませんので、ことに調達庁が第一次的の関係を持っておると思うのであります。その他外交関係、いろいろ関係がございますので、十分議をまとめて参りたいと思うのでありますが、法務大臣の私自身といたしましては、こういった事故をアメリカ側にも、締対に二度と起らないように注意を喚起する必要がありますと同時に、これを十分やるべきであるということと、一面において、日本側におきましてもたま拾いというものを、何とかこれを合理化する必要があるのではなかろうか。しかしながら現地住民の、所得といいますか、たまを拾うことによって得る所得との関係もございますから、簡単には参らないと思いますけれども、各所在府県の当局、並びに市町村の当局、政府関係米軍関係、これらが何らかの方法で協議をいたしまして、アメリカとしては、撃ったたまの薬莢はもう回収をして、それを再生するということはやっていないのでありますから、演習場の清掃をして得たそれらのものをどうするか、こういうようなことをもっと合理化する必要があるのではなかろうか。この努力を政府としても、各関係府県、市町村にも要請して、なかなかこれは住民の利害との関係もありますから、簡単ではないと思いますが、その努力をしてみる必要がある。かように私は考えております。この、なかさんの一命を失うという重大な犠牲のあった際でありますから、住民の方でもたま拾いということによって損であるとか得であるとかいうことよりも、それらの点について協力を求めるのには最も必要な段階ではないか。こういうように実は私自身としては目下考えておる次第でございます。
  97. 田畑金光

    ○田畑金光君 合理化するという見解はもっともだと、こう思います。問題は、大臣個人の意見ではなくして、閣議等においてこういう矛盾をどう解決するかというところに問題の重点があろうと、こう考えるわけであります。危険を冒してたま拾いをしなければならぬ、この現実の問題にどう政府が対処し、妥当な、適切な処理の方針を見出すかということは、同時にまた大事な問題だと考えるわけなんです。とにかく突き詰めてみますと、表面的にはそういうような危険な場所でたま拾いをしなければならぬ。着弾距離の近くにタコつぼを掘って、たまが破裂したら競ってその破片を拾いにいくという、新聞等の記事も見受けましたが、こういう問題は、形式的に見ますと、住民の軽率さということをわれわれもうかがい得ますが、同時にまた、なぜそうしなければならぬかという根本問題にさかのぼる必要がありはせぬか、かかる事例は単に今初めて起きたのではなくして、昨年五月の北富士でも同様でありますし、おそらく事例はたくさんあったのだが、やみからやみにこの問題は葬り去られて来たと見ておるのです。こういうことを見ましたときに、もう少し私は基地問題そのもの、しかもこれは基地設定のために、土地をだんだん侵されて来た人方が、生活に追われて、こうせざるを得なかった。こういうことを考えてみましたとき、問題は、基地問題そのものに取り組まなければならぬ。こう私たちは判断するわけです。しかし基地問題そのものに取り組む前に、今の客観的条件のもとにおいて、政府は何をなすべきかということは、おのずから閣議の中で十分論議されてしかるべきものと、こう見ておるわけですが、そのようなことが閣議に上せられたのかどうか。また政府はこういう問題に対して、合理化するとお話がありましたが、もう少し私は掘り下げて問題の中心を洗うべきだと、こう思うのですが、この点について政府の見解と申しますか、閣議等において論議されたならば、その方向を重ねて承わりたいと思います。
  98. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) このたま拾いの合理化の点も、私どもとしても先ほど申し上げたように、何か合理化しなければならぬと考慮いたしておりますが、さしあたりとにかく本件は非常に注目すべき重大なる事件でありますから、この事件に対する国民感情からも、納得のいくような適切な解決を遂げて、それに引続いてそういう処置をとることがいいのではないか、これをそのままにしておいて、一方そういうことだけを進めることがいいか悪いか、こういうことも目下考慮中でございます。なお基地問題の根本的な問題につきましては、これは岸首相代理が、衆議院本会議であったかと思いますが、述べましたように、あるいは予算委員会であったか知れませんが、述べましたように、まあ、私どもとしては、現在の政府としては、日本の自衛力の充実と相待って、できるだけアメリカ軍の撤退と基地の撤廃を期するような素地を作っていきたいという方向で努力しておりまするわけで、この方向に遊んで、できるだけ早期に米軍の撤退のできるようなことにいたしたい、かように基本的には考えておるような次第でございます。
  99. 田畑金光

    ○田畑金光君 私の質問の趣旨を誤解されたら困りますが、私の先ほど質問したことは、あくまでも現実に起きた現象について正しい解決はすみやかにはかってもらわなければならぬということを前提に申し上げておるわけなんです。その現象、当面起きておる現象が解決されたならば、私は先ほど申し上げたような根本問題についても、同時に政府は考えてもらわなくちゃならぬ、こう考えておるわけです。今の大臣の御答弁を承わりますと、今の政府といたしましても、結局基地とか演習地を設けて、国内にこういう姿があるということは、日本の完全独立のためにもよろしくない、こういう御見解だと私たちは承わるわけであります。従いましてこの基地問題を発展さして参りますと、どうしてもこの基地を許しておるということから、あるいは基地問題から派生しておる各種の独立国家としてふさわしくないいろいろな民族的な悲劇が起きてきておる、こういうことを見たとき、さらに私は基地問題の発展は行政協定や、日米安保条約そのものまでも触れていくのではなかろうか、こういう政治的な重大なる問題が結局は問題の本質ではなかろうか、こういうように判断をいたすわけであります。この点は大臣の見解を承わっておきたいと思います。
  100. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) お説の通り日本の独立完成のために、また基地問題の現状等から見ましても、そういう方向にわれわれとしては努力すべきであると、かように考えております。
  101. 田畑金光

    ○田畑金光君 この間私は大臣にお勢ねいたしましたが、この問題の解決いかんにかかわらず、たとえば先日この事件が発生しますと、国務省等から一つの見解が出された、あるいは米軍の第一騎兵師団の当局から声明書が出された、こういうわけで、日本政府は常に後手に回っておる。私は、その後米国側から、代理大使から陳謝の意が表せられたとしても、ただそれだけで問題を終らすべきではない。今後このような事故発生をできるだけ阻止するためには、この際政府は毅然たる態度をもってアメリカ政府等に対しても抗議すべきは抗議すべきだ、しなきゃならぬ。こういうふうに私は考えているわけです。政府としては、向うから陳謝の意が表明されたから、これはまあこの辺でおしまいにしよう、こういうような態度ですか、どうでしょうか。その辺承わりたいと思います。
  102. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) 日本側としては、日本側捜査に基く正しい、なりと信ずるところをあくまで主張し、それを貫くべきである。かように考えております。決して適当に解決をうやむやにするというようなととは毛頭考えておりません。あくまで厳正適切な解決を遂げるべきである、かように考えております。
  103. 田畑金光

    ○田畑金光君 私のお尋ねしておるのは、もうそのことは先ほど来の御答弁でわかりましたが、政府としては、この問題をどこまでも刑事事件として解決をする、裁判にかけて適当な処罰をする、あるいはこの犠牲にあった坂井ざん一家に適当な補償をするようにあっせんをする、ただそれだけでおしまいなのかどうか、あるいはこの事件を契機として、しかも振り返ってみると、多くの同様な事件が起きたにかかわらず、表面化されないで、やみからやみに葬られていた、こういうことを考えたとき、基地問題がある限り、米軍が駐留する限りにおいては、なお今後もこのような事件が予測されるわけだから、この際、政府としては自主独立の外交の立場からいって、アメリカに対しても政治上あるいは外交上のしかるべき警告等が発せられて当然じゃないか、こう考えますが、その点等についてはどうお考えになりましょうか。この点をお尋ねしておきます。
  104. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) かような事故が再発しないように十分アメリカ側の注意を喚起して、抗議すべきは抗議をして参りたいと、かように考えております。
  105. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは政府が閣議等を経て今後抗議するところは抗議する、こういうようなことですね。そのように理解してよろしいですか。
  106. 中村梅吉

    ○国務大臣(中村梅吉君) それは閣議決定をすべき事項であるかどうか、私もどうかと思いますが、いずれにいたしましても政府としての考え方を十分にアメリカ側にも伝えまして、こういう事故の再発しないように最善を尽したいと考えます。
  107. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、大臣に対する質問は本日これで終りますが、先ほど来調達庁の方からも御説明がありまして、遺憾にたえないことは、東富士事件のような問題が初めて今回表面化された、そこで、この種の事件等について、警察の方でも十分資料等もお持ちだろうと思いますので、どこが担当されるかは別として、すみやかにこういう事件等について資料を提出していただきたい、このことを要望申し上げておきます。
  108. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと速記をやめて。    〔速記中止
  109. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 速記を始めて。  最後に、私二、三お尋ねいたします。米軍側の見解の中で、日本側の見解と違っている点がいろいろ御説明があったわけですが、大体想像はつくわけですが、念のためにお聞きしたいわけですが、米軍側でも被疑者の行為は過失だ、本人の考えは別として、米軍側でもいろいろ検討しておるでしょうが、米軍側の大体の考え方は過失だ、こういうふうな考え方に立っておるわけでしょうか。
  110. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 米軍側のはっきりした見解をまだ私報告を受けておらないのですが、大体お話のように、これは過失に基く殺害事件で、公務執行中であるとかいうところを主張するのではないかと考えられます。しかしながらさらに調べが進みまして、事実がはっきりいたしますれば、その主張をどこまでも固執するかどうかという点については、むしろ固執しないのじゃないかというように私は考えております。
  111. 亀田得治

    委員長亀田得治君) もう一点ですが、裁判権の問題に関連して、上官の命令、指示があったかどうかという点ですが、たとえ上官の方でそういう空包を撃って、そうして音で脅かして、たま拾いの方を追い払えという指示がかりにあったとしても、実際にこの被疑者がやった行為自体は、その命令とは相反しておる行為ですね。その点が言えると思うのですよ。だからたとえそういう指示が上官からあったとしても、それだけでこれは公務中というふうには必ずしも私はならないと思うのですが、そういう点はどういうふうに日本側の事務当局の方は御見解を持っていらっしゃるのですか。
  112. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 上官が命令するにいたしましても、まきか日本のたま拾いを狙撃すべしという命令があるはずもございません。空に向って空包を発射して脅かせというぐらいな命令があるいは出たかもしれません。その限度で本人が空に向けて発砲したということでありますれば、これは公務執行中の問題になるかとも考えますが、現実の問題は、からの薬莢被害者の背中に突き刺さっておるのでありまして、さような点を考えますると、この命令が、かような、何といいますか、日本人のたま拾いを鉄砲を発射して脅かせというような命令の中に属しておるかどうか、それだけの事実でも相当問題があると思います。さらに進んでまあ犬ネコを脅かすようにたまを投げてこれをぶち殺したというふうなことになりますれば、それが公務執行中の作為、不作為に基く犯罪でないということは、そうなれば明瞭でありますので、早くその間の事情をはっきり聞きたいということで、せっかく努力しておるようなわけでございます。
  113. 亀田得治

    委員長亀田得治君) これはまあ一つ十分にそういう角度から私ども追及してもらいたいと思います。まあ先だって法務大臣も否定されたわけですが、米軍側から一応新聞で発表されたようなああいう声明が出た、ああいうところからも私どもがそういうふうに非常に心配しておるわけでありますが、日本政府として十分抜りないようにやってもらいたい。そこで、事実関係捜査は大体まあ終って、もう法務省なり検察当局で意見を固める段階なんだろうと思うのですが、そのところはどうなんでしょうか。さらにまた事実関係捜査まで必要があるでしょうか。
  114. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 送致は二月九日に受けておるのでございますが、日本側目撃者の調べも実は私、調書などを電話で報告を受けたのでありますけれども、まだ調べが十分できているとは考えません。またアメリカ側関係者の調べもこまかいところまで調べができているとは思いませんので、そのために昨日関係者現場に連れ出して、検証をしながら調べたものと考えております。従って日がかかってまことに恐縮でございますが、事実の調べが済んで、その判断だけが残されておるというような段階とは、まだ私は考えていないので、いましばらく調べを進める余地があるというふうに見通しを立てております。
  115. 亀田得治

    委員長亀田得治君) もう一つ最後に、合同委員会で裁判管轄権の所属を検討した場合に、意見日米双方で合わない、そういう事態が起きた場合、どういうふうに処理するのか。行政協定では、合同委員会で合わない場合には、政府間の話し合いにすると、一応そういう条項がありますが、まあ政府間の話し合いにするということだって、これはまあ両方から違った意見が出てくるわけです。ただ平行線であることは同じことなんです。だれか、第三者の仲裁を待つとか、どうしても合わない場合には日本側の見解を重んずるとか、そういう規定があれば、これは解決できる規定なんですが、それが行政協定にはないようなんです。どうしてもそれが合わないような状態になった場合には、これはどういうふうな処理になるのでしょうか。
  116. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 結局考えといたしましては、日米合同委員会の刑事裁判権分科委員会で協議して、ある程度結論を出す。それができなければ、合同委員会なり、それができなければ、外交交渉の方に持っていくというのが筋だと思いますが、割合にアメリカ側も法律判断につきましては公正といろか、無理押しをしないのでありまして、今までわれわれの経験では、お互いに自分の考えているところを率直に吐露して討議いたしますれば、必ずある程度妥当な結論が出るというように考えておりますので、その見通しにつきましてはそら悲観をしていないのでございます。
  117. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 双方で意見が合わない場合に、日本側の判断だけでこちらの裁判権を行使する、こういうことは規定上は違法になるのでしょうねどうなんですか。
  118. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) これは行政協定によりまして、勝手にこっちで裁判をやってしまうというわけには参りません。
  119. 亀田得治

    委員長亀田得治君) それはどの条文でなりますか。そういう点の解決条項というものはないように思うのですがね。ちょっと不穏当というふうな感じもしますが、明らかに規定違反だというふうに断定できるのかどうか。
  120. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 事実上、何といいまするか、被告たるべき者がアメリカ側の実力の範囲内に入っていると思いますので、そういうものはこちらで裁判のしようがありませんので、結局納得ずくでやるということが最も妥当な解決方法でありまするし、また事件が先ほど申し上げましたMPのパトロール中の犯罪のごときも、筋が通れば決して無理押しをするような連中では、今までの経験では、ございませんので、この結論は妥当な結論で終局し得るようになるというようにまあ考えております。
  121. 亀田得治

    委員長亀田得治君) ちょっと私の質問と合わないのですが、双方の意見が合同委員会等で合わない、そういう状態のままで、おれの方に裁判権があるのだという措置は、そういうことをしたのでは、これは明らかに行政協定違反になるかならぬか。まあ日本側がやる場合もありますがね。今の日本人の気持でしたらその気持が強いでしょう。しかし逆に、反対に、アメリカ側がおれの方の裁判権だ、それが合わなかったら、おれの方が身柄を持っているのだから、今指摘されたようにおれの方で裁判にかけるのだ、これは過失だということで簡単に処理されたら、妙な格好になる。そういうことは日本側にしろ米側にしろ、明らかにできないのか。
  122. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) かつて意見が合わないのに、向うが勝手に裁判してしまった例は全然ないのです。またいろいろな自動車の事件などでも、一年近くもんでおったのですが、その間、先方はじっと待っておりまして、結局お互いに意見がそこで一致して全部片づくというようなことで、勝手にこちらでは公務執行中の犯罪でないということで一次裁判権を主張するし、向うは公務執行中であるからアメリカ側裁判権ありということで、合同委員会でもんでいるうちに、向うは向うで勝手に裁判をしてしまうとか、アメリカに置きかえてしまうというようなことは、行政協定でもできませんし、実際上またそういうことはいたしておりません。
  123. 亀田得治

    委員長亀田得治君) 行政協定でできないというその規定上の根拠ですね。そういう点はっきりしておくと、私どもいろいろ今後の判断に参考になるわけですが。
  124. 井本臺吉

    政府委員(井本臺吉君) 結局私は十六条の「日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に、政治的活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。」ということは、もう十六条にはっきり書いてございますが、お互いに協定と日本の法律を尊重しようということは、はっきりここに表われているので、この益精神に照しまして、そんな勝手なことはできないというように考えます。
  125. 亀田得治

    委員長亀田得治君) まあこの程度にしておきましょう。  ほかに御質疑がなければ、本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後三時四十八分散会