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1957-06-12 第26回国会 参議院 逓信委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年六月十二日(水曜日)    午前十時三十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     剱木 亨弘君    理事            手島  栄君            最上 英子君            長谷部廣子君    委員            石坂 豊一君            新谷寅三郎君            中山 壽彦君            宮田 重文君            三木 治朗君            光村 甚助君            山田 節男君            横川 正市君            野田 俊作君   事務局側    常任委員会専門    員       勝矢 和三君   説明員    郵政省電波監理    局長      濱田 成徳君   参考人    日本船主協会理    事長      米田富士雄君    全日本海員組合    教育部長    中山 唯男君    船舶通信士協会    常任委員    大内 義夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○電波法の一部を改正する法律案(新  谷寅三郎君外五名発議)   —————————————
  2. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) それではただいまより委員会を開会いたします。  まず、電波法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、先般の委員会の決定により、参考人方々より御意見を伺いたいと思います。  委員長といたしまして参考人方々にごあいさつ申し上げます。  本日は大へん御多忙のところ、わざわざ御出席下さいましてまことにありがとうございました。御承知のように、ただいま電波法の一部を改正する法律案が本委員会継続審議となっておるのでございまして、電波法の一部を改正する法律案に最も御関心の深い皆様方にわざわざ御足労をいただいたわけでございますが、どうか十分御意見を述べられまして、われわれの審議に御協力願えますことをお願い申し上げます。  これより御意見を伺うわけでございますが、お一人二十分程度お願いをいたします。それではまず、日本船主協会理事長米田富士雄君にお願いいたします。
  3. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) ただいま御紹介いただきました日本船主協会理事長米田でございます。  委員長にちょっと御許可を得たいのですが、大急ぎで、資料というほどでもないのですが、ちょっと私の申し上げることをまとめましたようなものを持って参りました。皆さん一つごらんいただきたい。お許しをいただきたいと思います。  このたび電波法改正を参議院の方から御提案になりまして、いろいろ慎重に御審議をいただいておるということを承わりまして、まことに感謝にたえないところなのであります。実はわれわれ海運関係いたしておる者といたしまして、長年にわたりまして、何とかこの無線船舶通信士乗り組みを軽減する方法はないであろうかということについて研究もいたし、またお願いもいたして参ったのでありますが、それが今回お取り上げをいただきまして、ある程度その方向が出たということは、まことに感謝いたしておるところであります。それで、きょうその法律案につきまして、私どもの意見を御聴取下さるということなのでありますが、時間も今委員長から二十分程度というふうな御指定もございましたので、ごく簡単に、私たちがかねてお願い申し上げておる筋をここで皆様に御披露させていただきたいというふうに存じます。  そこで、まず通信士乗り組みのことに関する技術的な問題に入ります前に、われわれがなぜこの問題をこれほど真剣に長年にわたって考え、またお願いして参りましたかというその事情を簡単に御披露申し上げまして、一つ参考にしていただきたいと存じます。  海運は御承知のように、他の産業もそうでありましょうが、最も国際競争にさらされておる産業でありまして、たとえば横浜の港を一つ見ましても、同じ岸壁に日本の船も、アメリカの船もあるいはノルウエーの船もというように、各国の船がそこに舷々相摩すような形でつながっておりまして、それが同じ荷物を取っておるというふうな関係で、何と申しますか、これほど国際競争の激しい産業は他にあまり見当らない分野ではないかというふうに考えておるのであります。従いまして、この国際競争力に打ち勝っていって、日本海運を伸ばすということをするためには、どうしてもいろいろの条件を国際水準のところに置かないと負けるのでありまして、その点で各方面について、国際水準並みというふうなことについて努力もいたし、またお願いもいたしているのであります。ところが、戦後御承知のように、日本海運戦争のために六百万トンから百三十万トンくらいに打ちひしがれまして、しかも、戦時補償を打ち切られて船主は無一物になりました。これが今日まで約四百万トンまでこの十年間に回復して参ったのでありますが、その回復過程におきまして、まる裸にされた海運界といたしましては、借入金によるほかはないのでありまして、この借入金の結果、これだけの船ができた。そこで、いわゆる他人資本重圧というものが、ほかの海運といいますか、ほかの国の海運、たとえば英米その他のノルウエー等海運から見ますと、実にきびしいものがありまして、その点ではいつも国際競争力の劣っていることを痛感しておるのであります。しかし、これはまあ何とかその緩和策をも考えていただきながら、そういう戦争の宿命的な運命といたしましてやむを得ないものがあるのでありますが、せめてそのほかの点につきましても、何とか国際水準並み一つしていただきたいということについて、あらゆる方面努力を傾けてきておるので、あります。そのごく最近の例を申しますと、たとえば税の問題にいたしましても、日本では船舶税というふうなものがございますが、これはほかの国には実はないのであります。そこで、この船舶税、いわゆる固定資産税の面というものを何とかしてこれを調整していただいて、税の方でも一つほかの国と同じような水準にしていただきたいということを非常に研究もし、また皆様方お願い申し上げたわけでありますが、その結果、固定資産税を全廃とまではいかないけれども、それを半減いたしまして、そうして片っ方でとん税を——その見返り資金としましてとん税を三・六倍いたしまして、そしてこの半減された固定資産税の財源の方へそれを振り向けるというふうなことが、先般の国会でそういうとん税の特別な改正が実現されたのであります。私たちもこのことによりまして、税の方である程度平等なところまで参ったということで、非常に感謝いたしておるのであります。その差引計算からいたしますと、必ずしもこれでわれわれの方が満足するものではありませんが、しかし、とん税ですと、日本の船も、日本の港に入る外国の船も、みな平等にその税金を納めるということになりまして、そうして日本の船だけが重圧を感じておりました固定資産税が軽減されるということになるので、ここで、国際競争の上に数段、何といいますか、弱みがなくなったというふうな感じがいたしておるのであります。  こういうふうにいたしまして、これは一つの側でありますが、そのほかの面におきましても、いろいろ外国海運と同じ力を持ちたいということで努力して参っております。それの現われが、実はこの船舶通信士の方にも出て参っておるのであります。船舶通信士につきましては、すでにこの逓信委員会におきまして、ずいぶん長い間貴重な時間をおさきいただいて、いろいろ御審議をいただいたように、私はその委員会速記録で拝見いたしておりますので、これにつきましてとやかくここで繰り返して申す必要はありませんし、また、私以上に皆様の方が御存じかと存じますが、ただ重ねて、私の方のサイドからもう一つ重ねて申し上げさしていただきますと、ただいま大急ぎでありますが、ちょっと御配付申し上げました「船舶通信士に関する法律上の乗組定員を諸外国水準まで引戻すために必要な電波法及び船舶職員法改正について」というもので、実はこれは非常に取り急いでまとめましたので、だいぶ落ちているところもあるようでありますし、またあるいは疎漏なところもあるかと思いますが、一応私の申し上げることをこういうものでまとめてみたのであります。結局、これも先ほど申し上げましたような国際水準並みというところに底流があるわけでありまして、そこで、現在この資料でごらんいただいてもわかりますように、この表の中に、私たちの方でいろいろ取り得る表といたしまして参考資料の二というもので、各国船舶乗組員数比較表というものを一応出しておきました。これは全体の各国のものを全部網羅したものではありません。われわれの方で調べられるものに  ついて、中央労働委員会資料を拝借したわけなんでありますが、これでごらんいただきましてわかるように、各国の船がほとんど無線通信士が一人でありますのに、このカッコ内は日本無線通信士乗り組みの数を出してあるのでありますが、大体一人に対して三人というふうな割合で出ております。あるいはフィリピンとか中華民国ですか、チャイニーズあたりが二人、こういうふうな格好でありますが、いわゆる主要な海運国というものはほとんど一人でやっております。それが三人で現在やっているというふうなことが、これではっきりいたしているかと思います。これを何とかして国際水準並みにしていただきたい、私たちは何もこれによって通信士の給料がある程度セーヴされるというふうなことだけを考えているのではありませんので、こういうことによって、船舶のいわゆる限られたスペースをまた別な有効の方に使えるという道がこれで開けるというふうなことをもあわせて考えているのであります。それで、これを一人にしていただくというふうなことにつきましては、これも申し上げる必要がないかと存じますが、例の条約国際条約AC条約の方と、それからロンドン条約と申しますか、海上における人命の安全のための国際条約——われわれは安全条約と申しておりますが、その安全条約の両方から無線局の種別、それからそれに対する聴取時間というふうなものがきめられて参っております。それの採用を国内法で適当に調整してやるというふうなことになっているのであります。  そこで、結局この問題につきましては、後ほど申し上げますような警急受信機と申しますか、オート・アラームを使うことによって、どれが一応今申し上げました表と同じところまで参ります、こういうところになるかと存じます。ところが、そのオート・アラーム信頼性につきまして、今までいろいろの研究がなされております。実は昭和二十七年の電波法改正のときに、このオート・アラームのことが非常に問題になったように承わっております。その後いろいろ各地において試験されたその試験の結果というふうなものも承わっております。実はその結果、郵政当局において、いわゆる型式承認をされるようになったということをも聞いております。こういうふうな一つ信頼性の問題があとに残ってくるかと思います。  話は多少前後いたしますが、今申し上げました一人対二人ということがそれでは一体ほかの何と申しますか、たとえば甲板部機関部職員について、一体それがどういうふうなことになるだろうかということをちょっと御参考までに申し上げておきたいと存じます。  一体、日本の船の乗組員数というものは、総体、その絶対数からいいますと、外国船よりもかなり上回っているというふうなことになっているようでありますが、しかし、職員数というふうなもの、いわゆる甲板部士官機関部士官というふうなもの、あるいは事務部、あるいは船医というふうなものがありますが、そういうものの中で、ことに船舶の安全のために必要とする甲板部機関部というものの職員を一応、また先ほどの表と同じように、各国の船につきまして、これまた中央労働委員会で作りました資料がございますので、それを実は拝見いたしましたのですが、それによりますと、甲板部についても、機関部につきましても、大体日本乗り組み士官の数と外国士官の数は同じなのであります。機関部につきましては、むしろ場合によっては外国の方が多い場合があるようであります。これはいわゆる機関部のオフィサーとでも申しますか、ちょっと日本と制度が違っておるような関係もありますので、その多いということが、純粋の資格を持っておる人が多いというわけにはいかないかと思いますが、そういうことがございます。そこで、ドクターは、日本だけが貨物船については要求されておるところが非常に多いのでありますが、それから事務部の方も、日本が割に多いというふうに聞いておりますが、とにかく航行安全のために必要とする機関部とか、甲板部士官につきましては、大体世界水準と変らないというふうなことになっておりまして、ひとり船舶通信士だけにつきまして、今申し上げましたような数が出ておるわけであります。これは絶対にこうでなければならないのかということになるのでありますが、それにつきましては、先ほどのオート・アラーム信頼性が問題になるかというふうに存じます。オート・アラームにつきましては、戦前の日本オート・アラームはあまり信頼ができなかったというふうに承わっておりますし、また、われわれ船主の方も、これを採用することについてはかえって危ないというふうな考えを持っておったのでありますが、最近はやはりこの技術が進歩いたしまして、相当信頼ができるのではないか、少くとも人との関係において、どちらが優劣があるかということは、議論がかりにあるといたしましても、外国製オート・アラーム日本製オート・アラームというものに、われわれが今までのような格差を認めることは、もはやあまり必要がないのではないだろうかというふうに考えられてきたのであります。そこまで参りますと、これもいろいろ郵政当局昭和二十七年の電波法改正のときを契機といたしまして、オート・アラームのことについて各地で、たとえばペルシャ湾とか、インドネシア方面とか、あるいはニューヨーク方面とか、いろいろな方面で実地に御調査いただいたことも出ております。その結果、何とかこれは一つ使えるものだということがはっきりして参ったのでありまして、ことに、オート・アラーム性能といたしましては、外国性能とはそう違わないというふうなことが出て参りましたのが、それを現実に現わしておりますのが、先ほどお配りいたしました資料の最後の表に、日本のメーカーである東芝製オート・アラームとそれから日本無線で作られておるオート・アラームとが外国船にどういうふうに使われておるか、それに対してどういうふうな報告があるかというふうなことについて調査一ついたしてみました。これは最近日本が非常に、いわゆる輸出船と申しますか、外国船の注文が造船所に殺到しております。その結果、相当日本外国船を作って世界の海にどんどん流しているのであります。そういう日本造船所で作られた船、外国船が一体日本で作られたオート・アラームを皆ある程度備え付けているというふうなこともこれで見たわけであります。その結果、相当たくさんのものが各外国船に備え付けられておりまして、そうしてそれに対して何かコムプレインがあるかということにつきましては、実は今までのところ、あまりそのコムプレインを聞かないのであります。むしろ成績の報告は非常に少いのでありますが、満足しているというふうな報告も多少はあるようであります。それから報告を受けないということは、必ずしもそれに対しての苦情がないというふうに一応推定してもいいのではないだろうかというふうに考えられるのでありまして、こういうふうなことから、現実のものからいたしまして、まあ日本オート・アラームもすでに外国船に信用をもってつけられて、しかも、つけられた外国船においては、先ほどの表の通り一人ずつを乗せている。日本の場合には三人を乗せなくてはならないというのが、現行法であるというところに非常な矛盾を感ずるのであります。こういうふうなことからいたしまして、今般本委員会においていろいろ御審議いただきました結果、五千五百トン以上の貨物船につきましては、定員を今までのように二人、あるいは千六百トンから五千五百トン未満の貨物船については、乗り組みは一人でいいというふうにして、現行の全部三人というふうなものからはるかに御軽減をいただいたということは、おそらく本委員会といたしましての御検討の結果は、今三人の乗っているのを直ちに一人にするということは少し飛躍し過ぎるのではないか、現実性を持たないのではないか、そこで、現実的にはその中間的な方法でゆくべきではないだろうかというふうな御意見が相当あるのかと私は推測しておりますが、しかし、理論的に申しますと、やはりオート・アラームがもうそのように信頼性を持ってくるというふうになって、外国が一人で皆やっているということであれば、われわれの方も一人でやれないことはないのでありまして、これにつきまして、公衆通信の面その他から相当の通信量があるというふうなことで、あるいはその方の業務もお考えいただいているかのようにも拝見したところもあるのでありますが、しかし、現在の私たちの方の調査は、あるいは疎漏であるかもしれませんが、実際公衆通信量を調べてみましても、これは電電公社あたりから実は承わったのでありますが、あまりないのでありまして、一旦平均二通とか三通ぐらいというふうなことのようにもちょっと承わったのであります。外国船はそれでは公衆通信をやっておらないのかということになりますと、そうではない、やはりやっている船が大部分であるように承わっております。そうなりますと、この面からも特に国際水準を上回らなくちゃならないというふうな面はあまり出てこないのではないかと私は想像いたしますが、現実をごらんいただいて今のような結論がこの修正案としておできになったかと存じております。とにかく、理論的には私はやはり一人でいいのではないかというふうに考えております。  それからもう一つつけ加えて申させていただきたいのですが、これはあくまでも職員法と同じように、船舶の安全を確保する上においての最低の員数をきめられているのであります。従いまして、実際に船主がその船を動かす経営の便宜上、あるいはこれを上回る人を乗せる場合があるかとも想像されます。しかし、これはあくまでもその船主その他の都合からして出てくるものでありまして、安全上それが必要であるということではないわけであるのであります。法律はあくまでも安全上の一つミニマムをきめていただきたい、その上に立ってわれわれこれは今度経営方面その他からいろいろの員数を考えるというふうな方向にしていただきいたいというふうに存じます。お手元に差し上げました資料も、おそらく私の取りとめのないことを申し上げましたことを整理してそのまま書いてあるというふうに存じますが、時間もだいぶ、あるいは超過しているかもしれません。一応このくらいにさしていただきまして、あと御質問でもございましたら……。
  4. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ありがとうございました。  それでは次に、全日本海員組合教育部長中山唯男君にお願いいたします。
  5. 中山唯男

    参考人中山唯男君) 海員組合中山であります。  改正案の趣旨は、オート・アラームをつけた場合に通信士を減員できるという、そういう案のようでありますが、海員組合といたしましては、そのような改正には反対でございます。  理由といたしましては、第一に、安全の低下になるということでございます。オート・アラームは、おそらく皆さん承知のように警急符号というものに対して、警報を発するだけの装置でございまして、遭難信号とか、あるいはその他の安全上の通信、そういったものを受信したり発信したり、そういったことができる機械ではないわけでございます。従いまして、オート・アラームがかりに非常にその性能が向上いたしたといたしましても、通信士の代用になる、そういうものではございません。現在通信士は、全部のことではございませんが、大型船においては三直制をとっておるわけでございます。この三直制によって、無線通信上から船の安全に大きな寄与をしておる、それを今いったような使命しか持っていないオート・アラームをつけることによって定員を減らすということは、それは明らかに海上の安全を低下させるということになるわけであります。で、もちろん安全度の向上と申しましてもこれは切りがないわけでございまして、幾らやったってやればやるほどいい、そういうことであるわけですが、少くとも現在までやっていることを、安全性を増大するその方の改正ならばもちろんこれはけっこうなことでございますが、現在まで長年やっていることを、安全性低下させるように改悪する、そういう必要はごうまつもない、そういうふうに考えておるわけでございます。この改正をしなければならぬという理由として、船主側といたしましては、競争力というものを言っておるわけですが、海運国際競争力における通信士定員の関連でございますが、私らの方の立場からは、通信士定員というものが、国際競争力低下の一因をなしておるというふうには考えておりません。通信士ばかりでなく、その他のすべてを含めた日本船員のいわゆる船員費というものは、外国船員費に比べて総額として低いわけでございまして、従って、船員費が、船員の面が外国の船に比べて競争力を弱化させる原因をなしておる、そういうふうには見てないわけでございます。一番大きな原因は、何と申しましても、戦争によってほとんど零になってしまった、そのことによってくる借金が非常に多い、このことが何と申しましても根本的な理由でございまして、船員費の面にはそういうことはない。人を減らせば部屋におくとか、賃金だけの問題でなく部屋があくとか、そういうことをいいますけれども、外国なんかの場合は、若干人が少ければ娯楽室があるとか、あるいは搬送室があるとか、事務室があるとか、そういったいろいろの施設の面の部屋があるわけでございますし、また一人当り床面積にしても、人が若干多ければそれだけ一人当り床面積が狭くなる、そういうようなことから大した問題じゃない。その他、たとえば今の外航船なんというものは、皆旅客をある程度積んでおります。六人から十一人、十二人以上は旅客船になりますから、大体十一人程度まではお客さんを積めるような部屋を持っておる。この旅客運賃はどうであるか知りませんが、こういったものなんかもいわゆる貨物船積載量をふやすという点から考えれば、そういう点も考えてみなければならないわけです。そういったわけで、私らとしては、国際競争力という上から通信士定員を、安全性に大きく寄与している通信士というものを減らさなければならぬという理由はないと考えております。むしろ私らは、この三直制というものを日本船舶がとっておるそのことによって、世界海上の安全ということに大きな寄与をしているわけです。オート・アラームというものをつけておっても、さきにも言ったように完備されたものであっても人間の役はしないのですが、現在はまだまだこれは不十分でございまして、誤作動があったり、作動すべきときに作動せず、作動すべからざるときに作動したりして、そのためにいろいろ安眠を妨害したり、大きな音を発しますので、そういったことのために使っていないような船もかなりある、そういうような中で日本商船隊だけが三直制をとっている、そのことのために世界における海上の安全に寄与するわけで、これは気象通報だとか、あるいは安全通信、そういった面でも実例があって、外国通信気象官庁から感謝されておるような船も多々あるわけです。戦後日本海運がなかなか伸びないそういったときに、むしろそういったほかの面ではいろいろ貧乏国でできないわけだけれども、少くとも今までやっている。世界の国が、一流海運国でもやっていないようなことを貧乏国ながら現実にやっている。そのことをむしろ日本貧乏国でも、こういうことは安全にはこれだけ寄与しているのだ、そういう形でむしろ世界に進出していく、そのことの方が私はむしろよほど日本海運の伸び方としてりっぱじゃないか、そんなものを競争力だとか何だとかいって、わずかなことで減らしてしまって安全性低下させる、そういうことはむしろとるべきじゃないのじゃないか、そういうふうに考えておるわけです。  それから特に無線というものの通信業務、あるいはそれに関連する業務なりは、これは近代的な発展をしてきたものでございますから、今後ますます発展すると思うのですが、そういう趨勢の中において、特にそういうことがいえるのじゃないか、そういうふうに考えております。  それからその次は、日本船舶の無線体制と外国船舶の違いですが、いわゆる日本の商船というものは、世界のどこの果てへ参りましても、日本の本国と直後通信をしているわけです。そのために通信、送信機、受信機とも非常に出力の大きい、規模の大きい機械をつけているわけでございます。機械が大きくなり、遠隔の地からも直接通信をやるということになりますと、その取扱いについても、保守についても、送受信についても、やはり人手がかかってくるのは当然でございまして、その結果、現状のようになっておる。それでやはりその符号なんかの関係もあるわけで、いわゆる日本のかたかなというのは日本だけにあるわけですから、外国の陸上海岸局を経由する場合は、やはり翻訳しなければならぬ、微妙のような翻訳はなかなかスムーズにいかない、あるいは一度間違ったようなやつを照会する、そういったことには非常に繁雑になる、そのためにやはり相当の高い料金を払わなければならぬ、あるいは時間がおくれる、とにかく、そういうわけで日本船舶無線体制というものは、外国のそれとは非常に違う。そういうところも沿革的な大きな理由になっておるのでございます。  それからその次に申し上げたいことは、通信士三直制ということは、一九四四年にすでに日本で法制化されているわけでございます。先ほど外国は一名で日本は三名だ、これはまさにその通りでございますが、また、だれにも非常に日本は多いじゃないか、そういう印象を与えやすいところでございますけれども、しかし、そういったことは何も今始まったことではなく、今申し上げた通りに、日本で法制化された一九四四年——昭和十九年ですが、そういったことにもはっきりしておる事実でございまして、そういったときに、法定定員として現行のものが制定された、そういう上に立って長年、もうすでに十三年になるわけですが、船舶の無線体制というものがほとんど確立されているわけでございまして、いかなる職務につく者も、やはり自分の職責というものをやはり完全に果していく、そういう意欲はだれしもあるわけでございまして、その三直制によってこそ、海上の安全ということに寄与できるわけです。また、これは通信安全性ばかりでなく、いろいろな面もございますが、そういった職責が全部完成されていく、そういうことによって、通信士ばかりでなく乗組員全体が安全上及びその他の面からも、通信のいろいろな利益を受けて現在まできておるわけであります。そういう、われわれが勝手に作ったのじゃなく、国会で作られたのですが、そういうものによりて長年一つの体制として確立されているものを、今振り出しに戻すような改正をするとこいうことには、相当大きな積極的な理由というものがなければならぬじゃないか。ところが、私らにはどうして、たとえば安全性からいっても非常な低下を来たす、日本船舶の体制にもそぐわない、あるいはそういうことによって、すでに無線の職務体制、あるいは無線体制がもうすっきりと確立されているものに根底から非常な影響を及ぼす、そういった改正をなぜこの際しなければならぬのかという積極的理由というものが、私らには全く理解ができないわけでございます。たとえば競争力にしても、今は海運がいい、もっともっと苦しい、非常な苦しい時代があった、そういうときでも乗り越えてきておるわけであります。まあ通信士協会という立場から専門的な事項もございますので、海員組合といたしましては、今申し上げたようにきわめて大ざっぱな説明を申し上げましたけれども、以上のような観点から、参議院に審議をされておりますオート・アラームを装備することによって通信士定員を減らす、そういう改正案には賛成できません。  以上申し上げます。
  6. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ありがとうございました。  それじゃ次に、船舶通信士協会常任委員であられます大内義夫君にお願いいたします。
  7. 大内義夫

    参考人(大内義夫君) 船舶通信士協会の大内でございます。私はこういう団体におりますために、船舶通信士がどういう実情にあるかということを知っておりますので、特に今回、こういう国会におきまして電波法改正されると、こういうことがわれわれ船舶通信士に伝わりまして、それがどういう状態になっておるかということをまっ先に申し上げたいと思います。  先ほど船主協会の方が言われた通り日本船舶通信士の乗組員の数が外国に比べて非常に多い、従って、定員を減らしたいと、こういう要求は毎年、戦後十年間、ほとんど毎年のように執拗に繰り返されておる、こういう事実はかねがね知っておったわけでありますけれども、今年に入りましてから、船主協会がそういう電波法を変えて通信士定員を減らすということを運動し始めたと聞きまして、それが国会において取り上げられて、今審議されておるという点を、船に乗っておる人たちが非常にそれを聞きまして、無線ニュースか何かで知りまして、非常なショックを受けたわけであります。かねがねそういうような通信士定員を減らすということは、世間の強い要望であったということは知っておったけれども、この電波法という法律まで変えて、この通信士定員の最後の息の根をとどめてしまおう、こういうような強い形が今回現われた、それについては非常なショックを受けまして、私ども知らなかったのですが、海上では毎日無線によるニュースが放送される、それを受けまして知ったんだろうと思いますけれども、私どもの団体に電報が来まして、各船からたくさん参りまして、ぜひこれは阻止していただきたい、ぜひわれわれは一丸となって、こういう点が誤解があると、われわれの正しい気持ちを伝えて、ぜひこういう改正を食いとめてもらいたい、こういう陳情意見が殺到してきておるわけです。なぜこういうような強く通信士がショックを受けたかと申しますと、実は電波法は戦後できた法律でございますけれども、船舶通信士は、電波法という法律は自分らにとっては一つの憲法になっておるのです。電波法によって定められたいろんな条件によってわれわれの無線通信士という資格が与えられておるのです。さらに、それによって与えられた資格を持って船に乗った場合、船舶無線電信局に服務した場合は、こういうような仕事をしなければならぬ、こういう条件、こういう状態の中でこういう服務をしなければならぬ、全部仕事の基準は電波法で支えられておる、自分の一個の職業として最も忠実に働くための一切の根拠は電波法にある、従いまして、通信士としましては、電波法一つの憲法になっておる、その憲法のうちの一番主要な根幹になる電波法第五十条を変えるということになりますと、致命的な打撃なんです。電波法第五十条は、船舶無線電信局の局種別を定めて、どういう船が第何種に相当するか、こういう船はこういうような資格を持った通信士を乗り込ませなければいけない、こういう種別の局はこういう時間を執務しなければならぬ、ところが、電波法は、われわれ移動業務というか、船に乗っておる通信士にとっては、特に第五十条というのは致命的な、一番生命になる条項であります。これを変えてそうして通信士定員を減らす、こういう点が明らかになったために、これはいよいよ大へんなことになった、われわれの職業的な生命、われわれの常に考えておった航海の安全、ひいては日本海運寄与するための海上無線通信の機能、それを唯一の信頼とし、それをもって職業的な誇りとしてこれをもって一生自分の職業としようと考えておった通信士は、これでは自分の信頼し得るよりどころを一挙に崩壊してしまう、こういうような痛烈な印象を受けたのであります。なぜかと申しますと、特にわれわれ戦前からの船の通信士でございますけれども、最近商船の数もふえまして、大体日本の商船の通信士として乗っておる現職通信士の数は三千名程度であります。これは戦後最高の数字なんで、やはり船がふえまして、通信もこれによってふえる、従事する通信士もふえるわけですが、そのうちの大体三分の一程度の人は、新しい電波法ができて、この無線電信はこういうものである、無線通信というものはこういうものであると、電波法ができてから電波法の中で教育される、こういうものだと思って教育されてそして乗っている人が三分の一くらいである。乗っていて非常に驚くことは、法律で定められた条項によって働いている、ところが、これでは人が多いのだ、君たち法律で定められているためにやむを得なくて三人乗せているのだ、だから法律を変えて三人乗っているところを一人でもいい、二人でもいいというような問題を、職場についたとたんにそういうことを耳にするわけです。これでは一生自分の職業としてやろうと思ったところが、そういうようなことでは非常に不安である、そういうような心理影響を受けているわけなんです。さらに、じゃ、なぜ船主の方は減らすか、減らす条件とは何かといった場合には、これはオート・アラームというものがある、もう一つは、外国船と比べまして日本の場合は非常に多いのだというような、こういうような相関連した一つ理由で、電波法改正が可能であるし、またそうするのが正しいと、こういうようにわれわれは聞いておるわけであります。ところが、その一つ一つについては、通信士は絶対納得できない。第一、オート・アラームは人にかわるものでない。これはよく知れわたっておるところなんですけれども、これは他船が遭難した場合に信号を打つ、他の船が航海中危険に陥った、そういうことを機械の力で探知する、そういう性能を持ったものがオート・アラームである。ところが、われわれ三人乗っているのは、自船の安全航行のために必要だと思って乗っている。だから他船の遭難を知るための機械でもって、自船の安全のために乗っておる者がそこでおろされるということが納得できない。それからオート・アラーム性能は、なるほど戦前に比べて多少はよくなりましたけれども、やはり最近のはやりの言葉でいえばオートメーションという概念からは違った機械でありまして、たまたまそれだけしかこれを受ける能力というものがないわけです。非常に高い金を出して単なるロボットに機械をかえてそれで減らす。そういうことは通信士としての資格を持ち、技術を持っている立場からしますというと全然これは問題にならない。それからもう一つは、外国船と比べて日本通信士が多い、こういうことなんであります。これについても、私たち全部各国の例を詳しく知っておるわけでありませんけれども、大体船の無線通信の運用の状態というものは相当違います。それからいろいろな海運企業上においての問題にも関連しまして、大分日本の場合と事情が違うわけです。現在日本の船は戦前と同じように世界各国の至るところに就航しておりますが、戦前においては台湾あるいは、もちろん沖縄を含めまして南洋群島、そういうような非常に広い範囲であったのが、戦後は本州だけに限定されてしまって、地球の裏側へ行って毎日のように日本と連絡をとらなければいけない、これは口でいえば非常に簡単でございますけれども、戦後短波通信というものが非常に利用されまして、これは南極から日本へ直接通信できる世の中でございますから、これは可能なわけです。ところが、船の移動通信に供する周波数の問題というものがありますと、同じ波を使っていろいろな各国の船がやるわけです。混信というのが非常に多いわけです。その中を選んで日本に向って地球のすみずみから通信しなければならぬ、これは非常に労苦を伴う仕事なんです。ただ仕事がえらいというだけでなくて、これは通信できる可能性でありますけれども、その時間だとか、走っている地域の条件によってはいつでもできるとは限らないわけです。たった一通の電報しかないのだから、たった一通の電報のために何人もかかる必要がないと言われるけれども、そうではなくて、相手をつかまえまして銚子なら銚子が返事してくれた、それからそれに対してこっちの船から電報を送るということは、わずか一分かそこらでできる。ところが、一分の時間をつかまえるために二十四時間いつでも、最も自分の都合のいい時間をつかまえるという態勢は容易ならぬことです。それからそれに機械の性能ですね。これは外国船あるいは日本船を一目見てわかりますけれども、日本船の場合は、一キロというのが非常に強い電力ですけれども、あるいは、それ以下の五百ワットという電力でやっている。大体五百ワットの電力があればこれは熟練した通信士であれば、世界のすみずみに行きましても日本の内地とは連絡できます。さらに優秀な船は、一キロというような非常に強いパワーを持った設備をするわけです。そういうような優秀な設備は外国に比べてない。なぜ外国船はそういうような簡単な機械でいいかというと、外国船の場合は百五十ワットとか、非常に簡単な機械でよろしいのです。それはイギリスの船であろうとアメリカの船であろうと、本国に通信する場合には、どこにも中継地というのがある。同じ電報料金でもって、たとえばイギリスの船がロンドンを出発して日本に来る。途中に香港がある。そうすれば香港に打てばいい。日本の近海に来てロンドンを呼ぶ必要はない。途中スエズもあればインドもある。ですから百マイル、二百マイルの近距離から通信ができる、そういう設備を持っている。簡単に通信ができて、しかも、料金も国内電報と同じような通信料金で打つことができます。それで一通打つために、二十四時間一秒間の休みもなく波をつかまえる、そういう努力をする状態が、だいぶ違う。アメリカ船の場合でも大体そういうわけです。  それからもう一つは、通信士というのはこういう仕事をするのだということが、日本外国の場合違います。アメリカ船のごときは、ただ機械を運用する、通信をするというだけの仕事の内容ですけれども、機械がこわれた、修理するというような場合にはタッチしない場合が多い。それは自分の責任外の仕事である。従って、船主協会の方もちょっと言われましたけれども、通信士に限った任務は多いけれども、他の乗組員は大体他の外国船と同じ程度である。ただし、エンジニアの場合は多少上回っているようなこともあるようだということを船主協会の方も言われましたけれども、そういう点はあると思います。それは電気士というような職名を持った人がおりまして、場合によったら無線のようなローラン、電源関係はもちろんのこと、いろいろな修理、つまり日本でいえば、技術程度の知識内容を持った人がおりまして、そういう場合にはレーダーであるとか何がこわれた場合には修理する、こういう性能を持った、職能を持ったエンジニアがおるわけです。ですから日本の場合は、三人乗っておりましても全部単に無線電信の機械ばかりでなくして、最近はレーダーであるとか、ローランであるとか、航海上非常に便利な機械ができまして、そういうものは全部その船の無線局の仕事の一つになっております。保守、修理の設備というのは通信士の仕事になっております。こういう点がだいぶ違うわけです。  それからもう一つは、船主協会で言われますことは、日本海運国際競争力をはかるためにどうしても外国船並みにして、そして三人を二人あるいは一人にして、日本海運の対外競争力を強めたいということは、おそらくこれは船主としては当然の要望だと思います。従って、私どもは立場は違いますから、また意見が違う、これは当然ですけれども、ただし、私らどうしても納得できないのは、事実に対する見方がやはり間違っている、これはどうしても納得できない。オート・アラームは、外国船と同じような性能を持っているからこれはいいんだとか、それからあるいは外国船が一人でやっているところを三人でやるのはおかしいとかいう点は、それに対応する条件等を無視して、ただ員数だけで比べた上でそういうことを言われる。ぜひ、そういう外国船日本船の場合は、こういうような状態が違うということを一つ一つよく見ていただかないというと、私どもの言うことが、単に自分の職業を守るための職業的な利己心だけで言っておるのだ、こういうふうにとられてしまう。それは非常に残念なんです。われわれは絶対に、無線三直制というのは、当面は正しいものと思いますけれども、ただ、今三人で乗るかわりに、こういうような条件があって、こういう条件ができたから、従って、これはオート・アラームというようなことがあれば、それはわかりませんけれども、今出されている問題は、オート・アラームというものが外国製と変らないのだというだけが根拠になっておりますから、私どもは絶対に承服できない。もっとそれにかわるような、こういう方法を講じて、こういう設備をしたから、こういう条件を作ったから、従って、外国と船同じようにしたからどうかと言われた場合には、これはどうかわかりません。しかし、われわれは当面そういうことはあり得ないと思っております。ですから、現在の電波法のこの第五十条、これは法律できめる場合には、いつの場合でも最低なんでありまして、われわれは法律で定めたものが最低の基準である、こういうことを固く信じているわけでございます。特に、先ほど海員組合の方が言われましたけれども、昭和十九年の国会におきまして、船舶職員法というものが改正され、それによって初めて日本の商船に乗っている通信士は、船舶職員という法律上の待遇が取り入れられたわけです。それにあわせましてこういう船には三直制が必要だというので、いわゆる従来の無線関係の法規もありましたけれども、法律上の建前として、無線通信士三直制船舶職員法によって初めて確立したようなわけです。長い間のわれわれの要望や努力がありまして、そういうことを国として取り上げていただいて、国の意思として、船舶通信士三直制でもって運営されるのがいいのだということを、最初に船舶職員法によって法律的に認めていただいた。それが昭和二十六年の改正、あるいは今般の改正にも、ことごとに通信士の資格というようなものが問題にされて、これをくずそうとして、船舶職員法だけいじったのではどうにもならぬから、根本は電波法から直していかなければならぬ、その電波法のうち、特に第五十条だけが問題だからこれを何とかこわして、これで最終的に息の根をとめてしまおう、こういうことになったのだろうと思います。ただ、電波法の五十条をそういうことで改正するということになりますと、われわれは法律のことは門外漢でありますけれども、どうしても無線通信士の立場から見ましても、電波法の五十条だけを変えた場合には、電波法の性格は根本的に変らないと思う。ただ電波法の五十条関係だけをいじったところで、これは完全な法律体系というものができるかどうか疑問に思っております。われわれが職務に従事しておる場合に、われわれ職能的な使命であり、われわれはまずそれを誇りとしておるようなものを奪い去ろうとしていることに対しては、どうしても承服しがたいのです。  私どもはこれからもいろいろ資料を集めまして、皆さんにもぜひとも御了解願っていただくようないろんな資料調査資料というものをそろえまして、これからもお願いに上りたいと思いますけれども、本日は、時間の関係もありまして、簡単に要点だけを申し上げておきます。
  8. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ありがとうございました。  一応参考人の方の御意見は、この程度にしまして、参考人の御意見に対しまして、御質疑がございましたら御発言を願います。
  9. 山田節男

    ○山田節男君 本件に関する内容を持った問題は、これはおそらく昭和二十八年ごろだったと私、思います。オート・アラームの問題で、当時の電気通信委員会で論議したことがあるわけです。その後、無線機器が非常に発達したということは認めるものでありますが、最初に公述された米田参考人にお伺いするのですが、この問題は従来船主協会としては政府に——今日は郵政省の電波監理局がやってるわけですが、船主協会としては従来政府に対していろいろ強く、今あなたがおっしゃったことを申し出をしておられるだろうと思うのですが、しかるに、政府がこれを了承しないので、こういう議員立法になったのじゃないかと思うのですが、一体政府はどういうように——今のあなたの御主張に対して、政府はどういうことを言っておるか。経過についてお聞かせ願いたい。
  10. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 私の方からも実はぜひ機会あるたびに政府御当局の方にお願いしておったのです。今日までのところ、私たちが承わっておりましたのは、オート・アラームに対する信頼性の問題が主である、まだ信頼できない、信頼できないということが大体主であって、参ったわけであります。ただいまのいろいろの通信士の方から言われた需給の問題とか、あるいは生活不安の問題とかいうふうなことは、私たちに対しては十分申されたことはありません。信頼性の問題だけが今まであった。ところが、最近になりまして、それが政府御自身でその信頼性をお認めになってきたというふうなことになりまして、そこで、私の方ではぜひお願いいたしたいというふうなことになったんです。
  11. 山田節男

    ○山田節男君 政府はそれで了承すれば、政府がこれはもうみずから提案すべきだ、政府はしないので議員立法ということになると、これは申すまでもなく電波法は基本法であります。基本法の一つであります。電波法は、ですからこれは容易に変えるべきではない。もしそういう客観的情勢あるいは今あなたのおっしゃったように、特に技術的に進歩して、当然これはものになるものならば、みずから政府が修正すべきだ、それをやらないから非常に異例な議員立法で提案するということになっておる。ですから私からお伺いしたいのは、政府はこういう機器の信頼性を認めても、なおこの電波法の修正ということまでには賛成しないというように了解していいのですか。
  12. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 私といたしましては、端的に申しますと、政府がなぜここまで技術が進歩してきたのに、それを採用しないかということに対しては、絶対に承知ができないのです。わからない。ここまで政府が——どうして政府御自身が、二十七年改正以来いろいろ機械の進歩の状態とか、テストをされたりして、そうしていろいろ型式承認をおやりになるということまでやって、そうして私の方で調べたものによると、外国の船会社では日本のものを採用してそしてそれを使ってりっぱにしてやっておるのです。ここまで来ておるのに、政府がなぜそれをやらないかということに対して、納得できない。議員立法でおやりになっていただいて、これはこういう法律案をいわゆるお作りになるのに、政府から立案されて、そうして国会で御審議いただくということが順序であるか知りません。私たちといたしましては、そういうことがとうてい望めない。今度になってこういう議員立法でということで、これをお取り上げいただいたということに対して非常に感謝しています。わかりません、なぜそういうことをやっておるか。
  13. 山田節男

    ○山田節男君 今あなたのお持ちになったこれによると、東芝、日本無線で作ったオート・アラームをペルシャ湾、インドネシア、ニューヨーク三方面でテストされて、しかも、それには政府の郵政省の電波監理局の課員が乗り組んでテストしたように書いてある。しかも、結論の概要を見れば、あなたがおっしゃったように政府がこれはコンパウンドしておるようなことが書いてある、にもかかわらず、政府がなおちゅうちょしているというのは、まだほかにファクターがあるのではないか。それは先ほど通信士協会の大内参考人の言われた、要するにこの日本無線通信員の服務の内容、この点が私は政府をして非常にこの電波法の、あなたたちの非常に熾烈な御要求にかかわらず、これに手を下し得ないということそういう点があるのではないかと思うのです。この点については、どうですか。今参考人のお二人の方から述べられたことに対して、あなたはその事実に反するのか、あるいは今中山、大内両参考人の言われた事実はこれは事実として認めざるを得ないのか、ここで一つあなたの立場からお伺いしたい。
  14. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 実は、私今中山さんと大内さんからのお話を承わっておったのですが、何か少し思想が混乱しているのじゃないかという感じがします。この電波法オート・アラームをつけて、そして一人でいいということは、船舶安全上必要とするミニマムを一つ申し上げたのです。これでけっこうだ、こういうことは外国その他でやっているのです。ところが、それ以外に通信業務がある。その通信業務があることは私も認めます。そこで必要とするものとこれは別なものです。これは電波法とかあるいは船舶の方でいえば、職員法できめるべきものではなくて、いわゆる船主とか組合とか何か、でその必要の量に応じてきめていくべきものではないか。安全法とか電波法とか職員法とかいうものは、あくまでも安全の立場からきめるべきものであるというふうに考えております。ですから今お二人の証言を私は聞いておりまして、その点は非常に混乱しておる。  それからもう一つ、私はことさらに避けたのでありますが、需給の問題の不安定というものをこの際ここに持ってくるということは、これまた混乱しているのではないかというふうに考えます。まあ需給の方からいえば、私たち今これをやっていただくことは非常にいいと思いますが、しかし、私は需給の関係からこれを私どもの方でお願いしているのではないのでありまして、あくまでも安全上これでいいということになったのでお願いしているのであります。  もう一つは、もし政府がお二人と同じような立場でわれわれの立場を拒否していられるとすれば、政府御自身も少し混乱しているのではないかというふうに考えます。
  15. 山田節男

    ○山田節男君 今の米田参考人の御意見に対して、大内君でも中山君でもどちらでもいいから一つ
  16. 中山唯男

    参考人中山唯男君) 今米田さんは私らの言っていることを混乱していると言われましたけれども、混乱してないと思います。私は、その反対の理由として第一にあげたいのは、安全上の低下を来たす、少くとも現在やっている三直制というものをオート・アラームをつけることによって定員を減らすということは、安全上の低下だということであります。それが第一の理由であります。第二には、船舶の無線体制というものは違うということを言いましたけれども、その業務体制というか、通信体制というか、そういったものがきわめて特殊な船の場合であったら、これは問題は別であるけれども、日本外航船舶というものはおしなべてそういう体制にある。現在そういうものも一つ理由にあげて差しつかえないと思いますから、それも第二の理由としてつけ加えたわけであります。
  17. 大内義夫

    参考人(大内義夫君) ただいま中山さんが言われた以外に、もし米田さんが言われた通り、大体航行安全ということの考えが違っていると、こういうふうに言われますと、私はこれは非常に重要な問題であると思います。というのは、私たち通信士は、少くともこういう船にはこういう資格を持った通信士を乗せて、こういう仕事をしなさいというふうにきめた趣旨は、やはり航海における無線通信の運用を、安全の見地からこうしなければいけないというふうに電波法は定められておると、こういうように教えられ、そのようにわれわれは理解しているわけです。電波法にも明らかにされておる通り、義務船舶局というような名称がありまして、これは船舶安全法から来まして、こういう船には無線電信を施設しなければいけない、しかも、こういうトン数の船こういう航路の船には、こういう資格を持った通信士を何人乗せなければいけないということを法律できめてある、その根拠は、やはり安全のための設備だというふうにわれわれは教えられている、そういうふうに理解しなければいけないとわれわれは言われて、お前はそういうことを理解しているから、無線通信士の資格をやると言われて、それでやってきたわけです。ですから、これはこういうふうに服務をして、船主さんの企業上の利益に寄与をしなさいというだけの目的で電波法という法律があるのではない、やはり国際法、国際安全条約であるとか、あるいはそれによって国内法船舶安全法、それに基いて電波法のこれこれの条項がある、つまり私どもは、航海の安全というのは、たとえば船長や機関長、甲板部機関部の人たちが、いろんなしけや狭い水域をどうしてうまく船をあやつって安全に航海させるかという任務が、甲板部の仕事であり、機関部の仕事であります。ところがわれわれは無線通信士ですから、無線通信運用の上において、航海の安全に役立つように運用をしなければならぬ、われわれは少くとも航行安全のために無線通信の運用は、われわれ通信士全員に課せられた義務だと思う、こういうふうに理解して、他船に何か緊急な状態がいつ起るかわからないというので、二十四時間、五百キロサイクルの波でもって航海中ずっと聞いておるわけです。そうして自船の安全が阻害されないように、あらゆる航路警報や気象その他各船との動向連絡をとりながらやるのが無線通信本来の職務である、こういうふうに理解しておる。それをもって誇りとしている。従って、航行安全という観念におきましては、むしろ米田さんの方が誤解されているのじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  18. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 委員長、ちょっと漏れたから発言してよろしゅうございますか。
  19. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) どうぞ。
  20. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 実は先ほど山田先生のお話のときに、ちょっと申し上げておきたいと思ったのを忘れたのです。それをちょうど中山さんが指摘されたのですが、安全の低下という問題を言われたわけですが、実はわれわれは人をたくさん——三人でも五人でも乗せて、そうしてやっていればこれはこの方がいいということは確かです。しかし、この航行安全ということを世界的にきめているのは、安全条約なんです。この安全条約世界的な一つの基準を示している。それと無線条約との関係、そこで、この安全条約というのは、ひとり無線のことだけいっているわけではありません。船舶の構造全般についていっております。世界の各海運国がそれをそのまま採用して、日本の場合におきましては、たとえば船舶安全法という一つ法律になっております。あるいはその条約そのものをすぐ法律に変えて、イギリスあたりは使っております。で、その標準、それだけで十分だということがいわゆる安全条約できめてあるのです。それ以上に上回るというふうなことは、今のところ、日本の無線以外にはどこもやっておりません。日本だけが安全度について、無線だけに上回るということをなぜわれわれが是認しなくちゃならぬのかということになりますと、私は非常な疑問を持ちます。  それから船員費が非常に安いというようなことを言われておりましたが、それは全般的船員費は安いのです。しかし、ニューヨーク航路でアメリカと日本とはしのぎを削って今競争をやっております。そのときに、アメリカの船員費というのは日本船員費と比べて、裸にすると高いです。高いけれども、アメリカはそれに莫大な補助金を出しておる。その結果として、コスト計算してみますと、一トン当りのコスト計算なんかを見ますと、日本の方がむしろ一トン当り船員費は高くなっておりますが、それほどの補助を片方でしておるのです。ですから何もわれわれは、向うがやっておるからこっちもやってくれというのじゃなくて、せめて世界的な水準のところで押えてくれ、最も権威ある安全条約がそれをきめて、われわれはそれで満足する、こういうことをお願いしておるのであります。
  21. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ちょっと申し上げますが、これは参考人意見につきまして委員の方から質疑を申し上げまして、質疑応答という形でいきたいと思います。参考人方々の間の御意見などを、それを討論するということは、この際、お避け願いたいと思います。一応委員長として申し上げます。
  22. 山田節男

    ○山田節男君 これはまあ相反した、立場が違うためにいろいろ異論があるのは、これは当然だと思います。今の米田さんのおっしゃったこと、それから大内参考人のおっしゃったことも、なるほどロンドン条約によって海上における人命の安全に関する条約ですか、これで一つの基準が設けられておる、これできておるわけです。その限りにおきましては、人命に関する問題は、これは念には念を入れてもいいわけです。しかし、問題は、今米田参考人がおっしゃるように、人件費の問題もある、国際競争上という能力の問題がある、これは重要な問題であることはもちろんわかるわけです。そこで、今あなたのお出しになったことではありませんが、現行電波法の第五十条による場合と、それから今議員立法で出されておる電波法の一部改正法案の第五十条に、先ほど大内参考人が、現行法では約三千人の無線通信員がおる、しかも、そのうちの三分の二は現在のこの電波法による規格によって入っている、そうしますと、大体改正電波法第五十条によると、三千名のうちでどのくらい人員の節約ができるか、これを船主協会としてもし数字があればお示し願いたい。
  23. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 先ほど大内さんから実は現在の乗組員数について、約三千幾らというふうにおっしゃったようですが、私どもの方で調べた資料とだいぶ違っております。私どもの方では、現在乗組員のものと予備として入っているものと全部合して二千二百六十人というふうな数で、いわゆるもっと内訳を言いますと、現実に乗り組んでいるのは千八百五十七人、予備でおかに上っておるのが四百三人、合計いたしまして二千二百六十人というふうなことになります。そこで、これを、ちょっと今の御質問の端的なお答えからそれるかもしれませんが、最近の船舶建造の旺盛な情勢と合わして参りますと、三十二年の九月には大体百三十人不足して参ります。それから三十三年の三月ごろには三百六十七人不足して参ります。そういうふうなことで、われわれが現在船舶の建造を見通し得る量を一応想定しまして、三十四年の三月末で押えてみますと、六百七十二人というものが現状のままで参りますと、不足するということになります。またこの中には供給の方も相当大学校とかあるいはその他の方面から出た者も入れてそういう数になって参ります。そこで、今私は繰り返して申し上げますが、この需給の関係からこれをやめてくれということを申しているのじゃありません。たまたま御質問がありましたので、それにまあお答えいたしておるわけでありますが、もし一人にしますと、かなり余って参ります。大体百八名くらい——今不足の三十四年のときに合せまして、余って参ります。それから二人にしますと、やはりそれだけのものがふえて参りますので、かなりまた窮屈になって参るというふうな数字が出てきます。実はこれも先ほどから繰り返し申し上げておりますように、安全上必要の限界が一人ということなんでありまして、船主経営上の問題、あるいはその他の日本の特殊性の問題等もありまして、もしよけいに乗せる方がいいということになりますと、さらにその点はよけいに入ってきますので、私の見通しではこういうふうな措置を今日おとりになるということによりまして、深刻な失業問題が起るということは想像いたしておりません。
  24. 山田節男

    ○山田節男君 この法律改正案が上程されたときに、郵政省の濱田電波監理局長をここに呼んで——さっき私が申し上げたように、濱田君の前任者の長谷電波監理局長の時代だと思いますが、この場合と同じような答弁をしている。それはやはりオート・アラームの機器としての性能信頼できないこと、それから第二は、人的要素、日本通信士の労務の内容がきわめて複雑でしかも、過重である、これは政府も認めている。今大内参考人からの証言によって、それを裏書きするかのごとき、私は符節を合せたかのごときことを政府から聞くのです。今大内、中山参考人が申した労務の内容、たとえばアメリカの場合には通信士は単に機器をあやつるだけである、修理、保守については、責任を持たない。しかるに、日本の場合にはその通信機械の保守に任ずるのみならず、レーダーとか、あるいはローラン、あるいはさらに進んでターカンとかいったようなものまでこれをケアしなければならないとか、そこに日本の労務慣行のどうも不明確な点があるから、労務者側としては、実際非常な労務の過重になる、裸人員をオート・アラームがあることによって一人減らし二人減らせばいいじゃないかということを、これは業者から申せば当然オートメーション化ということになるが、実際の通信員の労務の内容を見ますと、あなたのおっしゃることはよくわかります。労務の内容というものが過重であり、複雑であるというこの事態を何とかしなければ、ただ単にオート・アラームを施設することによって人員を減らすということにはなり得ないのじゃないか。申すまでもなく、今日の事業は人的要素、労務の内容ということを厳密に考えなければならぬ、しかも、この問題は人命の安全を期する、これは少々金がかかっても念には念を入れるということは、人道的見地からいえば、むしろ日本としては当然だと思う。それに今の常識としての国際競争上という点から非常にハンディキャップを持たれている、これもわれわれ認めるわけです。その点どうですか。今労務者の労務内容というものを、今あなたたちが主張されたことと適合するように、もっと単純化して運営できるのかどうかこの点を伺います。
  25. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) もう少しくだいて申し上げます。先ほどそういうことを、三人乗っておればその三人で電気設備、保守をやるということは当然なんであります。実は私が機関士が外国船で多少多いところもあるということを申し上げたのでありますが、それは機関士の免状の受有者であります。いわゆる機関士という名前で船舶職員となっている資格の者は、向うでは低い者も入れております。こちらでいえば、一般の属員士官でない者まで適用して入れておりますが、これを全体内に見ますと、普通船員の方でそういうものはある程度カバーしております。そこで、全体的な数字から申しますと、日本の乗組員の方が多い、その点で私はこの点はそう無理がない、ことに、各国でもやっているのですから、そう無理はないと思います。  もう一つ御心配の点は、私どももわかります。それは結局、安全上絶対必要だということじゃなくて、私が繰り返して申し上げておりますように、船舶経営上、船主あるいは今度勤務上労働者の方からいって必要ということになれば、その法規によって強制されるのじゃなくて、お互いの協約とか——あるいは自発的にそういうものを船主は乗せていくべきだ。たとえば通信が非常に多いということになりますれば、なるほど安全上の見地からは一人でいいのだが、しかし、その面からいってよけい乗せる方がいいということになれば、乗せるようになります。それからオート・アラームは、これはかえってお叱りを受けるようなことになるかもしれませんが、余分なことですが、自分自身の船の安全ということじゃなくて、ほかの船が遭難しているものを受ける、受けてそしてそれによって、こういう今危険にあるのだということを受けて、受けることによって、今度は通信を始めるわけです。自分自身の船の安全というものから考えると、もう一つ先の問題がオート・アラームの問題であります。そういう点からして、私は国際条約オート・アラームを乗せる場合には、一人でいいというふうにきめている精神があるのではないかしらぬというふうに思っております。で、日本だけがこれをどうしてもやれということは、それはよく私もわかりますが、しかし、日本海運の今の力というものが、とても外国の船会社、外国海運の力を上回っていろいろなことをやるというだけのものは、今のところ私はないと思います。ですから、せいぜい向うと同じところでゆきたいというふうに考えております。
  26. 山田節男

    ○山田節男君 最後にもう一つお伺いしておきたいと思います。これはちょっと問題が違いますが、今の船員の労務の問題ですが、呉にNBCという造船所がある。これは御承知のように最初から三万トン、今日、八万トンの油送船あるいは鉱石船、オアー・キャリアですか、これを作っております。この船が、巨大なタンカーあるいは鉱石船がほとんどアフリカのリベリアの国籍を持っているわけです。で、過日六万四千トンの進水式があったときに、私は呉に行きまして、あそこの支配人のハンという男がおりますが、そのハンに、お前らの船はリベリアの国籍に全部切りかえているようだが、なぜそうするのかということ聞きましたならば、労働条件が非常にいいのだ、これだけだ、税金は問題でないのだ、税金じゃないのだ、タックスじゃないのだと、こういうことを言っておったのですが、こういう労働条件の問題は、賃金だけのことかどうか、私は知りませんが、たとえば今ここで問題になっているような、こういうようなものについて、国際規格というものがロンドン条約によってあるわけですが、たとえ鉱石船、客船じゃなくても、こういうものは今みんな持っているわけですか。  それからもう一つ、この労働条件が、たとえば日本の場合とアフリカのリベリアの場合は、非常にリベリアの方が有利だというのは、どういう意味か、これは船主としてもしおわかりになっておれば、一つお聞かせいただきたい。
  27. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 今のお話、実は日本海運界としても非常な悩みでありますが、実は世界海運界の悩みになっております。今差し上げた表の中でグリークのタンカーがありますが、こういうものの中には、やはりリベリアとかパナマというふうなところへ船籍をやっているわけです。これは一つは労働条件、どんなものを乗せていくかということで、それに対するいわゆる労働基準法的な一つのものはそういう意味でない。ですからまあ勝手なものです。その点につきましては、われわれ海員組合の方も、そういうことはやっちゃいかぬ、人道上いかぬということで非常な反対運動を起しております。  それからもう一つは、設備的に申しますと、検査が、われわれの方は年に一回定時検査、四年に一回特別検査、これは相当な費用がかかります。それで船舶の安全を維持しております。そういう検査については、向うは非常に簡略にしているようであります。  それからもう一つは、税の問題、税が非常に安い。これはもうあすこへみな持っていくような格好になりますが、たとえばイギリスそれ自身が非常に困りまして、やはりイギリスではバミューダあたりへ船籍を移している。それがイギリスの一流の船会社です。そして税の問題をのがれようとしている。そういうふうな工夫が非常に見えております。そこで、つい最近、イギリスのマクミラン首相は、それはいかぬというふうなことで、イギリスの船に対して、新造船価の四割について特別の償却制度を認めることになりました。それで向うへ移ることを何とかして防ごうというふうなことで、税の問題というものは非常に大きな問題であります。そういうふうなことがいろいろからんで参っているのでありまして、われわれの方で、俗に擬装転籍という、偽わって向うへ持っていく擬装転籍というふうな言葉を使っておりますが、それは世界海運界がみな非難しております。日本の、実は先生方ごらんになったかもしれませんが、造船所へ参りまして、最近輸出船の大部分というものはリベリア船、パナマ船であります。今おっしゃいましたようなNBCも、ああいう大きなものもみなやっております。ですからあのときの進水式はその船主はグリークーギリシャ人であります。それから船籍は、リベリア、ですから進水式のときの国歌は、リベリアの国歌とギリシャの国歌を歌って船を進水しております。こういうことが世界のガンであり、日本海運の今後発展していく上において非常な妨げになる、その一つの問題が今のNBCで作った八万トン・タンカーというふうなところへ現われてきている、そういうことがある。しかしながら、無線につきましては、やはり一人が一応そういうオート・アラームでやっているということは事実です。
  28. 手島栄

    ○手島栄君 時間もあまりありませんので、一、二御質問したいと思いますが、米田君にちょっとお伺いしますがね。今あなたの意見を聞いていますと、この定員の定め方は、主として安全の方から来ているのだというお話があるようです。実は、私らも改正法案を作るときに、初めはその見当で研究したのです。ところがだんだんやっているうちに、この無線、この法律できめているのは、そのほかに公衆通信の方もある程度含んでいるということがだんだんわかりまして、それで改正案定員というものは、両方からの意味を含めてああいう案を出した。オート・アラームをつければあとは一人でいいということは、これは安全から来ているので、これだけできまればものは簡単であった。ところが、そのほかに公衆通信というものもある程度定員を持つ要素になるということになりまして、だんだんそれをいろんな意見を聞いておりますと、日本公衆通信の方の、今の機械なんかは割合大型を使っているとか、あるいは外国と事情が違うというようなことがわかって、今改正法律案に出ているような定員に落ちついたのです。だからね、あなたの言われるように、安全の見地からのみこの定員がきまったのだというお考えとは、だいぶ私たちは違っている。それでもう一つ聞きたいことは、今申し上げたように、安全の問題と公衆通信のある程度の仕事を含めたもので最低定員というものはきめたのだ、それ以上の仕事はなおあるかといえば、今、通信協会の方の方からお話がありましたように、日本のオペレーターには保守までやらせるとか、まあ極端にいえば、無線の機械以外の電気の設備まで修繕させるとか、見させるというようなことまでやっておられるという話でありますが、これはいずれにしても、今の法律案には関係ない仕事なんでありまして、そういう仕事までやらせるかどうかは船主船員の方との協定でおやりになることであります。そうしますと、一つ疑問になるのは、現在でも、法律では定員が定めてあるのにかかわらず、それをあなたの方ではそこまで下げられないものがずいぶんあるのですね、それはどういうわけか。その通信の問題以外の仕事が多いために、わざわざ法律の最低制限を置きながら、ほとんどそこまで近づいていないという事情なのか、それから、今度かりに今の法律案が通った場合に、やはり実際は今のままだということならば、君が今ここで日本海運のためには人をうんと減さなければならない、むだなものは減さなければならないという議論は正しいが、実際になるとちっとも減さないというような事情なのか、それをちょっと承わりたいと思います。
  29. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 今手島先生のお話で、この改正案にいろいろ御苦心をいただいたことは、実は私も想像いたしておりましたし、今承わりましてはっきりいたしました。まことにごもっともであると、こういうふうに思っておるのであります。ただ、先ほどからどうも私、安全上ということを申し上げましたのですが、船舶法律でこうきまりまして、それから後で、今までの例を見ますと、船主団体と海員組合との間に今度は団体協約をやるのであります。何人乗せるかというと、これは一体法律をベースにして、その仕事の分量によってやるというふうなことが出ておるわけです。そこで、あるいは二人となっているのが、三人とかいうふうなことが実際の分量なんかでそういうふうになるのかもしれませんので、その場合に団体協約の中の内容といいますのは、安全上のこと、それ以外のこと、全部を含めてこれだけの分量になるということになると思います。そこで、何人ということになるのでありますが、あるいはおっしゃるような点は、私も実は心配したと申しますと少し強過ぎるかもしれませんが、想像しておらないではなかったのであります。ただ、非常に端的に違う場合が起ってくるのであります。それは、安全上ここで一人というふうにきめていただくと、そうすると、どっかの港で通信士に何か故障が起ります。船をおりなくちゃならない場合がある。そのときに、もし三人だというふうにきめてあれば、どうしても三人乗っけなければ船は動きません。とまります。安全上は必要はないけれども、次の港でもってそれを補充すればいいというぐらいのことは安全上できるのです、この仕事の分量からいって。それでも、法律がそうなっている以上は、そこで乗せなければなりません。ところが、これが一人であれば、そのときに何かそういう事故があった場合には、一応補充できない——補充しないでいくというずるい考えでなくて、どうしても補充できない場合には、そこを出て、そうして一応次の港に行って、今言ったような団体協約できめられている一つの数を乗っけるというふうなことが出てくると思います。この点は、かりに御心配になっているように、今のように現実には三人だということなら、今乗っけるのは三人じゃないかということになっても、これは電波法とか職員法で安全上強制されているか、いないかということで、船を動かす上に非常に違ったものが出てくるというように私は考えております。私は、一人であることは理論上正しい、それからまた、保守その他でもっていろいろありますが、しかし、それは現在三人という数だからそれができる、もし三人でなくなれば、だれかほかの者が分担すると考えられるというふうにも一応思うのでありますが、しかし、それがいろいろなことで二人になった、かりに三人乗っけるということが気象業務その他からいろいろ出てやった場合にしても、それが法律上一人であるというふうなこと、それから現実にそういう経営の必要上三人乗っけている場合と、法律上三人というふうになっているのと、非常に違ったものが出てくるのではないかというふうに私は考えております。
  30. 手島栄

    ○手島栄君 私の言ったのは、安全のためなら大体オート・アラームは一人でいいじゃないかと思うが、今度大型の方は二人というのがありますね。あれはいわゆる通信の方まで含めて最低二名ということにしたので、大体SOSの関係通信の方を含めれば大型の方は二人でいいのじゃないかということで私らは法律改正をやっておるわけなのでありますが、それ以上ずっと三人でなければならぬということになると、通信、安全を除いたほかの関係であなた方は三人乗せられるか、それはまあ自由なことでありますが、そうなれば、法律だけ最低限をやかましく言っておって、今までの実績から見ると、実際問題はあまり変らぬということになれば、意味がないのではないかという懸念で申し上げたのでございます。  それから、中山さんでしたか、今ちょっと議論になりかけておりましたが、オート・アラームをつけた場合と三直制の場合とは、三直制がいいことはもうだれもよくわかっているのですね。オート・アラームというものは機械なんで、不完全なもので、まあ大体完全になったといっても、人間が四六時中聞いておるよりも悪いことはわかっておる。それをつけた場合には、今までの安全保障に対する日本船舶のサービスよりはある程度落ちるということは、これはだれもが納得しておるのですよ。しかしながら、それが国際的の仁義がそこまでしか要求していないというならば、日本だけが非常な犠牲を払って今までのような高度のサービスをする必要がないのではないかということが、今度の法律案の根本問題です。今まで非常な高度の犠牲を払っているのだから、それが長い間の慣習になっておるのだから、ほかの方がどういう機械ができてサービスを落しても、日本だけは今まで通りやるのが海運界に対する日本の誇りだというような考えで私はやらなかったので、当然機械を使った場合には、三直制よりもサービスは悪くなる、悪くなっても、その悪くなった程度世界共通の標準だから、それでそこはまあ許してもらおうということでやっておりまして、必ずしもオート・アラームができたから、それが今までの人の力を全部カバーするようなものだというような考えは私は実は持っていないので、その点はどうでしょうか。広い見解から見て、日本世界標準並みのサービスをやれば仕方がないということで、お考えはまとまらないものでしょうか。どうしても日本というのは特別なサービスをしなければいかぬのだと……。
  31. 中山唯男

    参考人中山唯男君) それじゃ申し上げます。現在世界と同じように一名であって、そうして三名にすればより安全性は高まるわけですね。従って、海員組合から三名にしてくれと、こういう陳情をして、それは世界的な標準から見ても一名でいいのだと、こういう場合であれば、やむを得ぬと思うのです、三名の方がいいと思ってそういうことを要望しても。しかし、先ほど私が言ったのは、三名というのは十何年前から日本がやっておるではないか、海運界がきわめて不況なときでもやっておるじゃないか、そういう実績というものがあって、それによっていろいろなすべての仕組みが確立されておる、そういうものを振り出しに戻すようなことをやる必要はないじゃないかということを言ったわけです。もちろん、そういうふうになっても安全性が高まるのであったら、それはやむを得ませんが。船の中にオート・ジャイロという機械がありますが、これは操舵員のかわりにかじをとる機械です。これはもう完全に人間のかわりにかじをとるのです。そのために操舵員というものをなくなしてはおりません。しかし、五名のところを四名にし、四名のところを三名にすると、そういうふうに完全に減らしております。オート・アラームは、御承知のように警報を発するだけです。それと国際条約の線といいますけれども、国際条約というものは世界共通の一つのベースの上に立った条約です。従って、その条約をベースにして、各国々々の気象、海象、そういったものの変化に対応して、各国が特殊性を持って国際条約の線よりも高めてもそれは差しつかえないわけです。少くとも昭和十九年のきめられた精神は、国際条約並み、その時分は今の条約とは若干違いますけれども、そういう日本の近海というものは——やはり日本の船ですから世界各国に参りましても、日本の近海で就航するという時間が一番長いわけですから、この近海の特異な気象、海象というものを加味してやはり考えていく、そういうふうに理解しております。  それからこの際ですから、もう一言申し上げますが、船の中には甲板部機関部事務部、無線部、それともう一つつけ加えれば医務部、そういったものもございます。そのうち甲板、機関、事務という三つの部は船舶職員のほかに、普通船員——法律用語では属員と申しますが、普通船員というものがおるわけです。一例を申しますと、機関部でいえば、船舶職員が四名ないし五名、そのほかに普通船員というものが十五、六名おります。これは甲板部も医務部も同じです。ところが、無線部に限っては通信士だけしかいない。普通船員は一人もいない。従って職務内容は、先ほど説明があった通りですが、それを減らすと、ロードというのがすべて通信士にかかってくる。機関部のような場合は、たとえば機関士を減らしても普通船員の機関員というものを十分訓練すれば、やはり船舶職員のある程度の補助ができる、そういうことができるのですが、通信士という。パートは通信士だけしかおりません。そういう点もございます。
  32. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ほかにございませんか。——それでは参考人の御意見はこの程度にいたします。  本日は、長時間にわたりまして、お忙しいところおいで願って、適切な御意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  33. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 速記を始めて  本日は、これにて散会いたします。    午後零時二十四分散会