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1957-05-07 第26回国会 参議院 地方行政委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月七日(火曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   委員異動 四月二十六日委員吉田萬次君及び江田 三郎辞任につき、その補欠として森 田豊壽君及び大和与一君を議長におい て指名した。 本日委員大和与一辞任につき、その 補欠として小笠原二三男君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     本多 市郎君    理事            加瀬  完君            成瀬 幡治君    委員            伊能繁次郎君            小林 武治君            小柳 牧衞君            館  哲二君            安井  謙君            吉江 勝保君            占部 秀男君           小笠原二三男君            久保  等君            鈴木  壽君            岸  良一君            森 八三一君            白木義一郎君   国務大臣    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 田中伊三次君   政府委員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁警備部長 山口 喜雄君    自治庁行政部長 藤井 貞夫君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君   事務局側    常任委員専門委    員       福永与吉郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方行政改革に関する調査の件  (知事市長等兼職制限に関する  件)  (佐賀県における行政整理問題に関  する件)   —————————————
  2. 本多市郎

    委員長本多市郎君) これより委員会を開きます。  まず、委員異動について報告いたします。四月二十六日は吉田萬次君、江田三郎君が辞任されまして、森田豊壽君、大和与一君がそれぞれ選任されました。  以上、御報告いたします。   —————————————
  3. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 次に、地方行政改革に関する調査として、知事市長等兼職制限に関する件を議題に供します。  本件につきましては、先般来種々調査を行い、また立法の問題について御協議を行なったのでございますが、ただいまお手元に配付いたしましたように、地方自治法の一部を改正する法律案として、ようやく改革草案がまとまった次第でございます。よってこの際、この改正草案議題といたします。  まず小林委員から内容説明を伺います。
  4. 小林武治

    小林武治君 ただいま委員長からお話がありましたように、地方公共団体の長は、住民の総意を体現し、全体の奉仕者として最も公正な立場にあるべきものでありますから、一部の私の利害と結ぶこと、あるいは結ぶがごとき進退が常に排斥さるべきは、当然のことであります。特に知事市長等が金銭的な利害と直接的につながる関係に立つことは、その地位の性質上最も不適当であり、厳にこれを戒めなければならないものと考えます。この意味から、現行の地方自治法におきましても、知事市町村長等につきましては、請負人等となることができないばかりでなく、また、当該団体請負関係を持つ会社役員等になることを禁止いたしておるのでありまするが、この程度では、まだ徹底を欠くうらみがあるのであります。  当委員会におきましては、ただいま申し述べました諸点につきまして、いろいろの事情をつぶさに検討しました結果、その所掌する行政事務あるいは事業の質と量の内容にかんがみ、特にこの際、都道府県知事及び五大市の市長につきましては、その地域内に事業所事務所を有する私企業を営む会社その他の団体役員等を兼ねること、また、報酬を得て、その区域内に事務所事業所を有するその他の団体役員を兼ねることを禁じ、この規定は、副知事出納長及び五大市の助役と収入役に準用することとし、また、この改正規定は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することを適当と認めまして、ここに委員会としての法案をまとめた次第でございます。  概要説明を申し上げます。
  5. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 本改正案について、さらに御意見なり、また、政府に対する御質問等がございましたら、お述べを願います。  別に御発言もなければ、本改正草案、すなわち地方自治法の一部を改正する法律案国会法第五十条の二により、委員会提出法律案として提出することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、法律案の字句の整理、委員長の本会議における提案理由説明内容等につきましては、便宜委員長に御一任願うこととして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 御異議ないと一認めて、さよう取り計らいます。  この際、本件について、小林君より発言を求められておりますので、小林君の発言許可いたします。
  8. 小林武治

    小林武治君 私は、この際政府当局に特に要望いたしておきたいのであります。  ただいま本委員会委員長提出として、知事五大市長等兼職禁止法律案承認をみたのでありまするが、この法律案そのもにつきましては、私は、なお実は都道府県知事及び五大市のほかに、市長をも加えたい、こういう意向を強く持っておったのでありますが、各般の事情からして、この際は、市長等については、なお今後の推移を見ることにいたして、これを削除いたしたのであります。しかしながら、この法案が通ったからといって、市長兼職を勝手にしてよろしい、こういう趣旨では絶対にないということを、あらためてここに私は言明をいたしておくのでありまして、それにつきまして、私は、願わくは市長等は、この法案趣旨をみずからしんしゃくし、自粛自戒されることを特に希望するのでありまして、その意味におきまして、自治庁等におきましては、市長兼職等につきましては、行政的の措置と申しますか、勧奨等によりまして、できるだけ公正な立場をとるために、これらの兼職は自発的に廃止する、こういう趣旨にお取り運び願えるならば非常に仕合せである。しこうして、これらの措置が十分参らない、こういう暁には、われわれは、この法案を修正をいたして、市長をもこれに加えたい、こういう希望を持っておるのでありまするが、この私ども意見に対して、自治庁長官の御答弁を求めておきたい、こういうふうに思います。
  9. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 法律に書いてないことを、行政指導でもってこれがうまくいくかどうかの問題があろうと思います。これは、よいかげんな話をしても、すぐわかることであります。しかしながら、こういう委員会提出の御改正をいただくということの御趣旨を尊重して、これを拡充いたしまして、今のお説の通り、何らかの形において行政指導を行いまして、御質問の御趣旨に添いたい、こういうふうに考えるわけでございます。この改正案が成立いたしました暁には、具体的には、少くとも全国の市長に対しまして、との法律案趣旨を一応説明をいたしますと同時に、それぞれ自粛を要望するという方針をとりまして、そういう意味での行政指導をやってみたい、かように考えます。   —————————————
  10. 本多市郎

    委員長本多市郎君) ただいま委員異動がございましたので、御報告いたします。大和与一君が辞任されまして、小笠原二三男君が補欠選任せられました。  以上、御報告申し上げます。   —————————————
  11. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 次に、地方行政改革に関する調査として、佐賀県における行政整理問題に関する件を議題に供します。  本件について質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  12. 加瀬完

    加瀬完君 警察庁長官大久保国務大臣も見えておられますので、今、委員長からお話がありました件について、逮捕に至るまでの経過をなるべく綿密にお話をいただきたい。
  13. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 今回、佐賀教組関係方々取調べをしなければならないという事態の起りましたことは、私どももまことに遺憾に存じておるのでございます。事の起りました内容を詳細に報告せよとの加瀬委員の御要望でございますが、すでに本件につきましては、新聞紙上等におきましても、しばしば報道をされておりまして、皆さまもよく御存じになっておられると思いますので、きわめて概要を御参考までに申し上げたいと思うのでございます。  佐賀県におきましては、県財政関係がきわめて逼迫をいたしておりまして、地方財政再建促進法に基く再建計画をかねてより立てられまして、着々それが実行に移されてこられたのであります。そういう関係からいたしまして、県の教職員の定数を大幅に削減しなければならぬ、こういう事態に相なったのでございます。聞くところによりますと、二百五十九名の定員を三十三年度予算において削減しなければならぬ、こういう問題になったのでございます。従いまして、教職員方々にとりましては、大幅の定員削減ということは、きわめて重大問題でございますので、何とかこれを有利に解決すべく、あらゆる運動関係方面に向って起されたのでございます。これは、まことに当然のことであろうと思うのでございまして、私どもも、十分その事情は了解できるのでございます。ところが、その運動も、いろいろの形において今日まで行われて参ったのでございますが、今回の問題になりましたのは、二月十四日から十六日にかけての三日間、県下の教職員の、第一日目には三割、第二日目には三割、第三日目には四割という休暇闘争戦術を、県教組執行部において方針を打ち立てられたのでございます。むろん、御承知通り、この種のいろんな運動が合法的になされることは、これは当然許されていることでありますから、かまわないのでございますが、いやしくも非合法にわたりますならば、いかに目的が正しく、事情まことにやむを得ないと申しましても、非合法の手段に訴えて、この種の運動が展開されるということになりますならば、これは、警察立場といたしましては、黙認をするわけに参らないということは、申すまでもないところで。ございます。今申し上げました、二月十四日から十六日にわたっての三日間のいわゆる休暇闘争は、先ほど申しました通り、第一日に三割、第二日に三割、第三日に四割、合計いたしまして、結局この三日間に、全教職員方々が少くとも一日は休暇をとるということに相なるわけでございます。その休暇をとることは、もとより年次有給休暇請求することは、これまた教職員方々にとっては、権利として認められることでありますから、成規手続によりまして、承認を得て休暇をとられ、休暇中許された行為をなさるということであるならば、これは、何ら問題にすべきことではないのでありますが、今回の佐賀県のこの事案の場合におきましては、三割、三割、四割といったような大幅の休暇をとられるということであっては、学校授業の正常なる運営ができないことになるという見地から、かねがね県教育委員会におかれて、また地教委におかれても、またそれらの方針を体せられて、それぞれの校長さんにおかれましては、そうした休暇を大量に一時にとって運動を展開するという行き方は、正常なる学校授業運営を阻害するものであるから、好ましくないから、中止をするようにということをしばしば勧告しておられたのでございます。にもかかわらず、ついに二月十四日から二月十六日の三日間にわたりまして、このいわゆるきめられた闘争方針に基いての休暇闘争が行われたわけでございまして、休まれた先生方佐賀あるいは唐津に集まられて、要求貫徹大会を持たれた、こういうことに相なっておるのでございます。  そこで、現地佐賀警察といたしましては、従来とも、教職員方々のいろいろな運動もありましたが、今回のように、今申しましたように、大量の職員方々が一斎に休暇をとられ、しかもそれが教育委員会なり校長さんの承認なくして学校を休んで、そうした大会を持たれたということ、しかもそれを幹部方々がいわゆるあおりそそのかすということによって、こうした結果になったということは、これは従来に例を見ないことで、地方公務員法第三十七条の違反であり、同第六十一条の罰則適用をすべき事案ではないかということに相なったのでございます。しかしながら、そうした法律違反ということで、この問題を警察が手にかけるということは、今日まで例のなかったことでございますので、佐賀警察といたしましては、慎重にこの問題を検討いたしまして、今申しました二月十四日ないし十六日のこうした大会が持たれるに至りましたいきさつ、また、それに参加された先生方状況がどういう状況であったかということ、またそうしたいわゆる闘争指令を出して、そういう方向に持っていかれた指導的立場にあった幹部方々がどういう態度をとられ、どういう行動をとられたのかというようなこと、いろいろな点につきまして、十分に調査をするために、かなりの時間を要したわけでございます。と同時にまた、これが地方公務員法違反問擬するのが適当であるかどうかという法律解釈の問題、この点につきましても、十分に検討を加えたのでございます。佐賀警察としましては、ただ単に第一線の佐賀警察のみの解釈で、軽々にこの問題を取り上げるべきでないということはもとよりでございますので、地元検察庁とも十分密接に連絡をし、意見の交換をし、法律解釈等研究ももとよりいたしたのでございます。と同時に、中央の私どもの方に対しましても、法律解釈についての相談をもちかけて参ったのでございます。また、それを受けました私どもといたしましても、法務省あるいは最高検等にも十分法律解釈等につきまして研究を進めたのでございます。その結果、遺憾ながら今回のこの事案は、地方公務員法違反として問擬に付すべき事案であるという結論に到達いたしたのでございます。地元警察におきましては、その結果、その法律解釈に基き、四月二十四日に至りまして、関係いろいろ捜査をいたしておりました資料に基きまして、県教組幹部立場にあられた方方十二名の方に対して取調べ開始をいたしたのでございます。その十二名のうち二名の方は、婦人の先生でありまして、この二人に対しましては、任意捜査をもって臨み、他の十名の方々に対しましても、当初は任意出頭を求めまして、捜査開始いたしたのでございますが、その後捜査状況にかんがみまして、強制捜査にいたしたのでございます。この強制捜査をいたしました十名の方々に対しましては、四月の二十五日に一人、残りの九名の方は四月の二十六日に、それぞれ警察から佐賀検察庁の方に送致をいたしました。自後は、検察庁の方において検事取調べに当ったのでございます。今日の段階におきましては、その十名の方のうち二名だけが検事勾留が延長になっておりまして、さらに取調べが進んでおるように承知をいたしております。さらにまた、この佐賀関係の十二名の方の取調べを進行しておる過程におきまして、今回のこの佐賀事案福岡県から応援に来ておられました福岡県の前執行委員長教宣部長、このお二人の方が関係があることがわかりまして、本月三日に、この福岡県のお二人の方に任意出頭を求めまして、取調べ開始いたしたのでございます、当初、任意出頭に応ぜられまして、取調べ開始いたしたのでございますが、その後、その捜査の必要上、これを令状を執行しまして、強制捜査をいたしたのでございます。この福岡県の二人の方は、五月五日に警察から検察庁の方に送致になっておりまして、今日ただいまは、検事取調べ段階になっておるわけでございます。  以上が本件のかいつまんだ概要であります。御報いたしておきます。
  14. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、御説明の三・三・四の休暇は、地方公務員法の第三十七条の違反である、三十七条の違反であるので、この違反に対しまして、同法の六十一条の四号を適用する、こういうことですか。
  15. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) その通りでございます。
  16. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、これは当然、前提の条件として争議行為が存在しておるし、扇動の事実が存在しておったということになるわけでありますが、三十七条のどれに一体該当するということになるんですか。
  17. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 三十七条の規定を御参考までに読み上げてみますと「職員は、地方公共団体機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体機関活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。」こういう規定があるのでございまして、この三十七条前段の項、つまり違法な争議行為をすることは、地方公務員すべての者に禁じられておるのでございます。しかし、そういう行為をした個々の人については、行政処分対象にはなりましょうが、それは直ちに刑事処分対象になるわけではないのでございまして、刑事処分対象になりますのは、この第三十七条前段の、行為遂行を共謀し、そそのかし、もしくはあおり、またはこれらの行為を企てた者が刑事処分対象になるということが地方公務員法第六十一条の四号に規定されておりますので、今回の佐賀県の問題の場合は、この六十一条の四号に該当するものといたしまして、佐賀県教組執行委員と申しますか、幹部指導的立場にあられた方々取調べ対象にいたしたわけでございます。
  18. 加瀬完

    加瀬完君 いや、三・三・四の休暇行為というものが一体争議行為に該当するかどうかという問題は、当然同じような行為が前もってあったということであれば、その前例というものが判断の重要な問題として考えられなければならないと思うのです。で、警察庁は、このたびこれを争議行為として認定をなさって行動されたわけでありますが、同種の行為が前には全然なかったという御認定ですか。前にあって、それが黙認の形で今まで来ておるということは、どうお考えになりますか。
  19. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 従来にも、いわゆる休暇闘争戦術をとられた例は、佐賀県のみならず、他府県においても前例はございます。しかしこれは、先ほども概要報告の際に申し上げましたように、職員は、年次有給休暇請求する権利を持っておられるのでございます。成規手続によりまして有給休暇申請をされ、それを許可する権限を持っておる者が許可をされた場合、成規手続によって休暇を取られて、その休暇中に、合法的な行為である限りは、何をなされようとも、それは御自由でございます。従来のいわゆる休暇闘争戦術におきましては、休暇申請され、教育委員会なり校長さんの承認を得られて、あるいは大会に参加されるなり、いろいろな行動休暇を取られた先生方がなさっておられる、これであれば、これは問題ないのであります。ところが、今回の場合は、三割、三割、四割というような、大量の先生が一時に休暇を取られるということでは、学校授業の正常な運営が阻害されるから、そういう休暇申請をしては困ると、許可はできないということをあらかじめ県教委なり地教委なり、また学校長さんがしばしば勧告を発せられておったのでございます。にもかかわらず、休暇申請され、校長はまたこれを許可しないという態度に出られたにもかかわらず、休暇を取られて大会に参加されたと、しかも、そういうふうに、先生方休暇を取られるように指導をされた幹部方々、これに対しましては、遺憾ながら先ほど来たびたび申しますように、六十一条四号の罰則適用をせざるを得ない、こういうことになったのでございます。
  20. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 関連しまして。今の質問に横やりを入れるわけじゃありませんが、事実関係を明らかにするために、はっきりしておきたいことは、有給休暇の問題でございますが、一つは、有給休暇を届け出て、これをいけないとした学校長、それで不許可のまま大会に出て参加した者はどれだけの人数か、また、許可せられて大会に出席した者はどれだけの人数であるのか、お知らせ願いたい。  もう一つは、今の石井長官の話ですと、校長承認しない、認めないということですが、有給休暇は、これは、承認とか許可とかいう問題に該当する性質のものかどうか。この見解も明らかにしていただきたい。  この二点だけです。
  21. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 第一の御質問であります、承認を得ないで休暇を取って、休暇闘争に参加した人員の点でございます。私ども現地からの報告に接しておるところによりますと、この休暇闘争に参加した者の総数、これは、第一日から第三日、三日間の集計でございますが、五千二百十五名、そのうち校長承認を受けないで参加された方が五千百九十九名、さらにその五千百九十九名の内訳といたしまして、有給休暇請求書提出したが承認されなかった者、これが五千百三十七名、有給休暇請求書提出しなかった者、つまりもう全く無断で休んだ形ですが、これが六十二名、さらに校長承認を受けた方は十六名、なお参考までに、そのほかに四十五名の方が有給休暇請求書提出はされましたが、拒否されたため、休暇闘争に参加を断念された。こういうことに相なっております。  第二点の御質問の、有給休暇は、申請をしたら当然の権利として休めるというふうな御見解のように承わったのでございますが、私どもの法の解釈といたしましては、労働基準法第三十九条に、確かに有給休暇請求する権利のあることはきわめてあります。また、特別の事情のない限り、請求があった場合には、その時期に有給休暇使用者は与えなければならぬことになっておるのでございますが、それにはただし書があるのでございます。請求された時期に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げるときにおいては、他の時期にこれを与えることができるという規定があるのでございます。今回の佐賀県の場合について申しますならば、三割、三割、四割というふうな大量の先生が一斉に休暇を取られるということでは、学校の正常な授業運営ができなくなる、妨げられるという見地から、かねがね県教委地教委あるいはそれぞれの学校長さんが、休暇申請しても許可はできないから、そういうことはしないようにということを再三勧告し、注意するように措置をとられておるのであります。にもかかわらず、休暇をあえて取られたというところに問題があるわけでございます。有給休暇申請されましても、通常の場合は、それはそのまま認められるのが通例でございますが、今申しましたように、大量の人が一度に休暇を取るということによりまして、事業の正常な運営が妨げられるというときには、使用者はそれを承認をしない。そのかわり、他の適当な時期にそれを与えることができるという労働基準法規定に相なっておりますので、今回の場合も、この法律規定から考えまして、学校長承認なしに大量の先生休暇を取られたということは適当でない、かように考えるのでございます。
  22. 占部秀男

    占部秀男君 学校運営の正常なあれが期せない。そういうような立場からということでしたが、今度のこの三、三、四の問題が学校運営の正常な運営が期せられなかったと、こういうところから、教委その他から申請的なものがあって、こういうことをされたのか。それとも、佐賀県の警察としてそういう断定をしてやられたのか。その点をお伺いいたしたい。
  23. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 警察の独自の立場で、今回の取調べ開始いたしたのでございます。教育委員会から、今回のこの問題に関連をしまして、関係者刑事処分に付してもらいたいといったような要請は受けておりません。
  24. 占部秀男

    占部秀男君 ただいまの答弁ですと、これは非常に問題があるのじゃないかと思うのですが、学校なら学校運営が正常であったかどうかということは、これは、教委が第一番に認定すべきものであって、警察教委とは別にこれは認定して、そして独自の立場から別個に取調べ開始する。こういうようなことは、ちょっと普通の常識的な考えとしては、私はあり得ない問題ではないか。たとえば、県庁あるいは市役所の場合でも、この種の同じような事件が起った場合に、市長あるいは県知事あるいはまた市町村長、いわゆる首長というものは、いや、市の行政に大した影響はない、正常な運営である。こういうように考えておっても、警察は、その人の意見を聞くでもなく、何でもなく、独自の判断でそういうことをやるということは、これは少し軽率なそしりを免れないのじゃないか、こういうように私は考えるものですが、その点はいかがですか。
  25. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほど来たびたび申し上げておりますように、今回のこの事案の発生いたします前に、県教委においても、あるいは地教委を通し、各学校長さんが、大量に一斉に休暇を取ることは正常な授業運営を妨げるから、そういうことはやめるようにということを再三勧告されておるのでございます。そのことは、とりもなおさず県教育委員会初め、地教委あるいは学校長さん、それぞれこれは、そういうやり方をしたのでは、学校の正常な授業運営を妨げるものであるという認定に立たれておったからでございます。また、結果的に見ましても、四月の初めであったかと思いますが、十一名の方が本件のために行政処分を受けておるのであります。十一名の方が行政処分を受けたということは、つまり今回のこの休暇闘争によりまして、学校の正常な運営が妨げられたという理由に基いて処分をされたものと私どもは考えておるのでございまして、現地警察におきましても、こうした行政処分がなされたということも、おそらく参考にしたことであろうと思うのでございます。
  26. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 あとで私、意見としても申し上げ、お尋ねしたいと思っておったのですが、今も占部君の方から話が出たので、ついでにこれは片づけておきたいのですが、佐賀県問題だけではございません。一般に地公法の三十七条の扱いと六十一条の扱いについては、国会でもいろいろな意見があったところであり、監督庁と申しますか、権限者である教育委員会争議行為認定して、行政処分を三十七条で行なった。従って、その認定に基いて、六十一条による刑事罰の起訴容疑事実がそこに起ってくるという関係で、警察権がこれに介入したということなのか。教育委員会措置しようが措置しまいが、警察警察で、六十一条そのものを独自の判断で発動するということをおやりになろうとしておるのか。一般的な方針として、この種の問題について、まず行政処分の方があって、警察権が初めて積極的に介入していくという形をとるのが望ましいと思っておるのか、いや、そんなことはない。警察自身が非合法だという認定さえするならば、独自の判断をもって捜査開始してかまわぬ、こういうふうにお考えになっておるのか。この地公法の成り立った経過から見て、どういう御方針をお立てになっておられるのか、一般的な問題としてお尋ねしたい。
  27. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 一般的な問題としてということでございますので、お答えいたします。  行政処分と司法処分とは、おのずから別個の立場で考えるべきであると思うのでありまして、行政行分があったものでなければ、刑事処分対象にできないという性質のものではないと思うのでございます。しかしながら、同じ一つ事案が、行政処分対象にもなり、同時に刑事処分対象にもなるという場合には、行政処分の有無というようなことを参考にするのが適当であるという場合はあり得ると思うのでございます。本質的には、行政処分と司法処分というものは、おのずから別個の立場にあるものと、かように思うのでございます。
  28. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 六十一条で、行政処分対象になる三十七条の一項前段を引用して記載しておる関係というのは、警察が勝手に、もう独自の判断でやっていいんだという精神だと御解釈になっておられるのですか。
  29. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 法律的には仰せの通り警察が独自の判断でやって差しつかえないと思うのでございます。
  30. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これは地公法の成り立った精神からいえば、当時ありました地方公共団体関係の労働組合における争議権を取って、そして人事委員会等で公務員の勤務条件その他、人権にかかわる問題を擁護するという建前にし、一方職員団体というものを認めてやった当時の立法の精神からいえば、直ちにもって、法律上は警察権はどんなものでも非合法であれば捜査すればいい建前ではあるが、この種のことに関しては慎重でなければならぬということは、衆議院の地方行政委員会等でも、あるいは当委員会の懇談会等でも話があったと私は記憶しておる。そして非常に問題のあった法律案件でありますけれども、これが通過を見たいきさつがあるのです。そういう点を考えに入れたならば、これだけの問題を扱うのに、警察は独自の判断でやっていいのだということには、必ずしも私はならないのではないか。やはり行政庁等において行政処分等も行われ、そして世間もそれを支持するという形があって、初めて警察権というようなものが客観的に捜査を進めるというようなことがあっていいのではないか。扱いの問題として私は非常に、あとでもいろいろ内容的には申し上げますが、不審を抱いておる。もう一度、この地公法というものの精神にかんがみて、長官の御見解をお聞かせ願いたい。
  31. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 法律的には、先ほど申し上げました通り警察は独自の見解をもってこの法律適用をすることが可能であるというふうに、お尋ねに対してお答えをしたのでございますが、個々具体的現実の問題としまして、特に今回の佐賀県の場合につきましては、仰せの通り現地警察におきましても、事柄の性質上、きわめて慎重でなければならぬというので、慎重なる配慮をしたものと私は思うのでございます。事案の起りましたのが二月の十四日から十六日の事柄であるにもかかわらず、四月二十四日に至るまで、その間二カ月の時日をかけたということは、それだけ慎重に、法律解釈についても、またいろいろな具体的な事実の真相把握のためにも、現地警察としては十分慎重なる配慮をしたものと、かように考えるのでございます。慎重に進めるべきであるという点は全く私も同感でございます。また行政処分が四月上旬にありましたことをも、おそらく参考にしたであろうと思うのでございます。そういう意味におきまして、現地警察としては、決して軽率にやったものとは考えません。
  32. 占部秀男

    占部秀男君 ちょっと関連して。  今長官の言われた法律一般的には行政処分の問題と司法処分の問題と別個……、それはわかるのですが、地公法を対象として考えた場合に、私は、当時の立案者といいますか、原案を作られた藤井さんの、あれに対する解釈が出ていたと思うのですが、まあそういうような面を私も読んだことがございますけれども、そうした点については、明らかに行政処分の問題をまず取り上げて、そしてあそこには解釈づけられておったと、私は二、三回読んだときに考えておるんですが、事実問題としても、行政処分の伴わない司法権の発動というものはあり得ないような状態で現在までもこられておるわけです。何か一般的にいうと、行政処分と司法処分とは別個だと、こう言われてしまうと、その点はわれわれとしても非常に問題が多いところになってくるんですが、地方公務員法の扱いとしての問題、こういう問題として、長官の方の御意見を、もう一ぺんお聞きしたいと思うんですが、法律一般というような形でどうも言われてしまうと、藤井さんの解釈とちょっと違うような私印象を受けるものですから。
  33. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほどお答えしたことを繰り返すようなことになって恐縮でございますが、純法律的の解釈としては、行政処分と司法処分とは全然別個の立場にあるべきものであるから、行政処分の有無にかかわらず、刑事処分としてこれを取り上げることは可能であることを私はお答えしたのであって、個々具体的な現実の問題に対処しては、お説の通り慎重でなければならぬから、今回の佐賀県の場合でも、行政処分のあるのを待って、それを参考にしつつ、現地警察としては刑事処分対象にした、こういういきさつになっておるのでございまして、純法律的な解釈でということで小笠原委員の御質問がありましたので、それでお答えいたしました。その辺を御了解願います。
  34. 加瀬完

    加瀬完君 警察庁としての態度が今御説明通りであるということは一応わかります。  そこで、大久保国務大臣にお伺いしたいのでありますが、この御態度は過去においても当然そうであった、将来にわたってもそうである、このように確認してよろしゅうございますね。
  35. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 司法処分の取扱いにつきましては、警察庁長官の言いましたような、同じような方針であると思います。あるいは行政処分が先になる、あるいは行政処分があとになる、あるいはまた行政処分がないような場合におきましても、警察は独自の見解においてこれをやると、ただ、実際の扱いとしては、他の方の事柄をよく把握して、それを参考にして処理をするというのが妥当な取扱いではないかと考えております。
  36. 加瀬完

    加瀬完君 関連質問の出る前に、長官は今までにこういう例はないと、今まで三、三、四というふうなものがあったにしても、もちろんそれは全部休暇をもらったんだ、佐賀県のは休暇をもらわなかった、承認を求めなかったところに問題があるんだ、こういう御説明がありました。しかし、二十九年に岩手で一斉休暇ということをやっておる。三十一年には福岡県で三、三、四の休暇をやっておる。こういう問題は行政処分も行わなければ、ましてこういうふうな刑事上の問題としての警察庁行動というものは何ら行われなかった。これは一体どうです。
  37. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 岩手県の例と福岡県の例を御指摘になりましたが、この場合におきましては、教員組合は指令を確かにお出しになったのであります。県の教育委員会もそういうことはいけないのでやめてもらいたいという通牒を各市町村の教育委員会にお出しになったと思うのであります。市町村の教育委員会のこれに対する態度、あるいは校長先生方のこれに対する態度は、必ずしも明確でない個所も若干あったように思うのであります。従いましてわれわれとしましては、地方公務員法違反の事例として取り扱います問題については、慎重な態度をもって従来からも臨んでおるわけであります。事態をいろいろと検討いたしておったのであります。ただ、今回の佐賀県の場合におきましては、御承知のように、県の教育委員会、市町村の教育委員会また校長さん方も、これは全部明確な態度をもってそういうことの行われないように勧告もされ、説得も極力されたのであります。それにもかかわりませず、先ほどお話がございましたように、全部の職員の約八九%の方が、三日間にわたってそれぞれ三、三、四割の休暇闘争を実施されたというところに問題があると思うのであります。
  38. 加瀬完

    加瀬完君 それでは文部大臣もいらしっておるようでいございますから、質問を少し他の方に向けたいと思いますが、地方公務員法の四十六条によりますれば、御存じのように、勤務条件に関する措置の要求というものの権限というものが職員に当然あるわけです。同じく五十二条や、五十五条によれば職員団体を作ることもできれば、交渉権といいますか、交渉をすることもできる組み立てになっておるわけであります。そういたしますと、当然こういう地方公務員法の性格からいっても、勤務条件その他について、佐賀県教組が交渉をするということは、これは当然認められることだと思うのです。問題は、佐賀県の勤務条件というものがどうであったかということが一つと、それから相手方に対して交渉がどんなように運ばれたか、これらの前提の問題というものを十二分に検討いたしませんでは、この休暇三、三、四の方法その他というものも、全面的な解釈が完全にいくというわけには参らないと思う。そこで文部大臣に伺いたいのでありますが、佐賀県の勤務条件というものを、どのように御認識になっておるか。たとえば教員の構成を見ると、小学校では大体佐賀と同じような、類似県といいますか、と比較をいたしましても、石川、島根、香川というようなところは六%七%くらいでありますのに、佐賀は助教諭の占める率が一七%、それから学級の規模の調査を見ましても、小学校では五十五人以上の学級というものが一年生は二八・九%二年生が二五・四%、五年生が一七・一%、六年生が一八・一%、そうすると五、六年前から見ると、一学級にたくさんの児童を入れておる率というものは、だんだん上昇しておる。教育一の水準というものが低下しておると、これだけから言えば、言えないことはないと思う。中学校でも一学級多数の生徒数と目されるものが一年生が三八・四%、二年生が三六・九%、三年生が三〇・八%、こうなっておりまして、これは類似県と比べましても、はなはだしく佐賀が劣悪ということになろうかと思います。こういう御事情を御認識になっておられますか。
  39. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 佐賀県の教育の状況は必ずしも良好でないということにつきましては、私ども承知いたしております。
  40. 加瀬完

    加瀬完君 この中に再建計画が計画をされたわけでありますが、再建計画によりますと、大体消費的経費はパーセントにしまして、計画の初年度計画の最終年度では一三%削ってあります。投資的経費は驚くなかれ六三%削ってある。投資的経費をこんなに削ってあるということは、結局職員の給与その他教育予算、こういうものを取ろうとしても取れないという条件の中におかれているということになろうかと思う。そこで、整理計画というものが非常に激しく計画されまして、二十七年度には相当多数の者が再建計画以前に整理をされております。それから三十年度で四百八名、この折にはPTAあるいは教育委員会いとうのは非常に反対したそうであります。六名の教育委員会の中で四名はこのために辞職をした。残った二名の教育委員によりまして整理が敢行された、こういうふうに私どもは聞いております。今度の再建計画になりましてから、六年間に二千五百名の新陳代謝をするという計画を立てた。三十一年度だけでも二百五十九名を整理をする。しかも再建計画期間十カ年間は昇給昇格というものは停止であります。こういう条件にありますことを、文部省としては御認識になっていられますか。
  41. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 佐賀県の財政状況が思わしくございませんので、そのために財政再建の計画をいたしているということもこれも承知いたしおります。その関係上、教育の面におきましてもかなり窮屈な思いをいたしているということも、私ども承知いたしております。つきましては、今年度の整理計画を見まして、地元の方からもいろいろ陳情もございましたが、われわれもこれを見まして、この整理計画はあまりにきつすぎるのじゃないか、もう少し計画に検討を加える必要があるのじゃないかというような考えになりまして、地方当局並びに自治庁当局ともいろいろ相談をいたしまして、この計画はある程度緩和すべく目下努力いたしている次第でございます。
  42. 加瀬完

    加瀬完君 それでは具体的に伺いますが、再建計画に対して、どのような指導、助言をなさいましたか。
  43. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 昭和三十一年度の再建計画は、二百五十九名を年間で落すということになっておりますので、半分しか計上してないわけであります。そこで三十一年度はそれは無理だということで、自治庁と話し合いました結果、三十一年度はともかく二百五十九人というものを落さないということに一応再建計画の変更を認めてもらったのであります。さらに三十二年度の変更につきましては、ただいま折衝いたしているわけであります。とにかく二百五十九人の整理は一応したけれども定員としてどの程度確保すべきかという問題を、今自治庁と交渉しておりまして、佐賀の県知事及び委員会側の御要望に沿うべく、自治庁と交渉している最中でございまして、私どもは大体佐賀県の御要望に沿い得ると信じております。
  44. 加瀬完

    加瀬完君 知事が衆議院に来ての御説明の中でも、三十二年度に定数をふやすように再建計画の変更を要求しているということは御説明がありましたので、一応私ども了解をいたしております。しかしながら三十一年度、再建計画の初年度から見て、四十年度の最終年度の消費的経費を一三%も切り落す。当然これはある程度昇給昇格というのは、再建計画においても認めるという建前だったはずなんですけれども、認めていけば、特に給与費などはある程度ふやしていかなければならならいわけですけれども、それを一三%も削っている。これでは、平均給を下げるか、あるいは人員を縮減するか、その両方をとるか、いずれかの方法をとって、素質の低下か、あるいは人員の縮減か、どちらかをとらざるを得ないと思う。そのために助教だけが一七%もいる。類似県から見てもはなはだしく、一〇%もよけいだ、こういう形をとらざるを得ない。これは再建計画の初めからわかっている。これらに対して、文部省はどういう一体指導助言、あるいは自治庁に対する交渉をなさったか。
  45. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 佐賀県の、お話しのように、定員の方で申しますと、大体先ほどもお話がありましたが、私ども調査では、大体全国平均といえると思うのであります。ただお話しのように助教諭が多いことはこれは事実でございます。これは単価が低い点もあると思うのでございます。そこで助教諭をなるべく整理をして、教諭の方へ持っていくように、佐賀も努力をしているわけなんであります。そこで佐賀県の特殊事情として、養護教諭と事務職員が全国ほとんど随一といわれるほど状況はいいわけです。多少養護教諭、事務職員の方に整理計画が強くきておる。全体として佐賀県に無理のないように、もちろん再建計画には協力しなければならぬけれども、その限度をどの程度にするかということを教育委員会と相談しているわけですが、教育委員会の御希望の数字を基礎にして、自治庁とただいま交渉をしております。ですから、今お話しのように、四十年度の先のことではなくして、どうせこれは私どもとしては、毎年々々この問題はその財政状況等によって、ある程度の変更はやむを得ないと思います。すでに三十一年度は全部変更をしていただいたわけですから、三十二年度についても変更計画を進めているわけです。ですから、今お話しのように、昭和四十年のときを想定したお話でございますので、そのときにどういう事態となるかということは、これは私ども予想がつきかねるわけであります。そのときどきに適切な手を打って、教育水準の低下を来たさないように努力をいたしておるわけでございます。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 適切な手を打つといったって、初めからもう削減される計画というものを前提として是認しておいて、その上に適切な手を打つといったって、それはもうそれによって上る、何といいますか、効率というものは、パーセントが非常に低いものだ。再建計画というのはもう教職員の定数、あるいは教育費というものにかかってくることは、初めからわかっていたわけですから、それに対する対策というものは、十二分に文部省で立てておかなければおかしいと思う。そこで、四十年はともかく、三十二年度、三十三年度という年で具体的に変更計画を進めていくというのですが、それならば、十カ年の昇給のストップという問題について、どう処理されるか。あるいは六カ年に二千五百名の新陳代謝というものを計画しておる。二千五百名が千五百名に薄まったところで、整理されるということは事実なんです。整理されるということは、現在でも類似県から見て相当劣悪な条件にあるのに、さらに劣悪な条件にされるということなんです。これを、劣悪な条件にありながらさらに劣悪な条件になっても、ある程度歩どまりがよければ仕方がないという見方は、文部省においては私は成り立たないと思う。この点はどうお考えになられるか。  もう一つ、ついでに伺いますけれども、たとえば本年度……三十一年度末ですか、今おっしゃった事務、養護だけではありませんで、共かせぎ教員などを対象にして、佐賀では退職の勧告が相当強く行われました。それによりますと、あなたがやめなければ人事に支障がある、やめなければあなたはどういうことになるかわかりませんよということで退職勧奨を強くして、その結果は、生活に支障を来たすような転任をされてどうにもならないという事例も、これは相当ある。こういうことも再建計画というものをあまりに強力に進めるために出てきた教育に対するしわです。これらも含めて、こういう具体的な問題が当然起り得るわけだから、起った場合にどうするという再建計画に対する対策というものを、佐賀県に対してどう文部省はお立てになっておったか、それによりまして、どういう指導助言を行なっておったか。三十二年度の定員の変更についてはわかりました。これだけの問題が起るのは、ひとりでに起るわけじゃない。起り得るところの原因というものは非常に内蔵されておる。それらを文部行政の上からも、当然問題を起さないように対処しなければならない。事前に、今私が申し上げたような問題に、どういう指導助言というものを綿密に行なっておったか、それらについて伺いたい。
  47. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 佐賀県の昇給につきましては、前年度を上回るような程度の昇給の財源を佐賀県も確保したのであります。もちろん国庫負担分でも必要な昇給財源は確保をしております。  定数の問題につきましては、三十二年度については、今お話した通りでありまして、今後どういうふうにするかという点につきましては、私どもは自治庁当局と十分相談いたしまして、教育水準の低下を来たさないような標準定数というものを検討しておるわけであります。すでに文部省側からも自治庁に私どもの粗案は出して検討していただいておるのであります。できるだけその標準定数を確保するように、再建団体といえどもそれを割らないように配慮願う、私どもとしては折衝を重ねております。その折衝がつきましたら、これを地方に流す、こういう考え方でおります。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 自治庁に伺いますが、文部省は今いろいろお答えになりましたが、事実は再建計画期間、御存じのように十年間の昇給停止、三十一年の一月以降は具体的に昇給昇格をストップされております。それから六カ年間に二千五百名の新陳代謝というものが計画されて、それ以前に、これに見合うくらいのものがすでに整理されておる、こういうことでありますと、勤務条件が他の府県に比してはなはだしく過酷である、このように私ども認定できると思うのですが、自治庁はどうお考えになりますか。
  49. 藤井貞夫

    政府委員(藤井貞夫君) 佐賀県の財政再建計画自体につきましては、私直接の担当ではございませんので、詳しくは存じませんが、大体今までの資料等で検討をいたしました結果は、先刻文部大臣も御答弁になりましたように、他の類似団体等と比べて、もちろんそれぞれの項目々々自体によって高低はございますけれども、必ずしも良好なものではない、むしろ悪い方であるという点は、われわれとしても認めざるを得ないのじゃないかと考えております。
  50. 加瀬完

    加瀬完君 そこで自治庁に重ねて伺いますが、そういたしますと、勤務条件が他に比して悪いということであれば、これは地方公務員法の二十四条の三項に違反するとまではいわなくとも、少くとも三項の精神からすれば、十分に考慮をしなければならない状態にある、このように思いますけれども、どうお考えになりますか、自治庁は。
  51. 藤井貞夫

    政府委員(藤井貞夫君) 再建計画というのは、これは本委員会ではいろいろの角度から論議もされておりますように、一つの大きな命題でございまして、特に国家の財政資金を導入をいたしまして財政再建をはかっていこうということで、これは何としても成し遂げなければならない目的でございます。もちろんその場合に、そのしわ寄せが公務員にだけ過酷にかかって参るということは、私たちの立場といたしましても、これは忍びないところでございます。その点の調和をどういうふうにはかっていくかということについて、いろいろ苦慮いたしておるのでございます。その点、いつも比較になりますのは、類似団体等との関係でございます。特に今御指摘になりました二十四条の三項というような点も、これの調整点を発見いたしまする際には、参考にしていくと申しますか、参考にして考えて参らなければならない一つの目標であるわけであります。その点について、われわれといたしましても、佐賀県の公務員、教育公務員のみならず、一般公務員につきましても、必ずしも良好ではないというふうに判断をいたしておるのでありまして、その点すでに県の方からもいろいろ話が参っております。先刻お話が出ておりますように、文部省の方からも再建課の方にはいろいろお話もあるようでありまして、三十一年度についてもそういう点について考慮をめぐらして参りましたし、また、三十二年度等につきましては計画改訂というようなものをやる余地があるのじゃないか。むしろその方向に向って努力を続けていくということで、目下折衝中でございまして、私の、行政部の立場といたしましては、前々申しておりますように、もちろん大きな財政再建という命題はございまするけれども、そのために不当に公務員にしわ寄せがこないように努力をして参るつもりでございます。
  52. 加瀬完

    加瀬完君 これからどうするの、これから不当に圧迫がいかないように努力するのと、そういう将来のことを私は伺っておるのじゃない。現状を、一体佐賀の状態をどう見るかということなんです。小笠原委員もさっき御指摘になりましたが、この地方公務員法が制定をされますときに、今の次長の鈴木さんがこういうことをおっしゃっておる。「労働関係法が排除されても不利益処分の審査または勤務条件に要する人事委員会、あるいは公平委員会によって十分に職員の利益をはかり得る。同時に身分保障についても法律条例により全きを期している。」こう言っておる。その一つが少くも二十四条の確保ということになろうと思う。二十四条の三項には「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」と、国及び他の地方公共団体ということが、民間というものを除いても、はっきりこれにうたっておる。「他の地方公共団体」ということで、他の類似団体ということを一つもいっておらない。自治庁の説明は、最近になると、財政の赤字で苦しんでおる貧弱団体だけを比べあわせて、似通っていればいいじゃないかという、こういうような比べ方をしておるけれども、二十四条の三項は、そういうことをいっておらない。佐賀では、先ほどから文部省が認めておるように、他の地方公共団体とは、はなはだしく、少くも教育予算あるいは教育の条件、あるいは教員の待遇というものは、他の団体から比べて劣っておる。こういう事実を認めるか認めないか。文部省は認めておられる。文部省が認めておられるということであれば、それが二十四条の三項に違反しているということになるのであります。違反しているということが大げさであれば、少くも二十四条の三項の精神から見れば、妥当を欠いた条件にあるということだけは、私は、はっきり言えると思う。これは財政部長でなくても行政部長でもお答えになれるはずですから、いかがですか、この点は。
  53. 藤井貞夫

    政府委員(藤井貞夫君) 佐賀の公務員の一般の関係、むろん条件というものが良好でないということは、私も率直にそういうふうに感じております。ただ、繰り返して申し述べますように、再建団体につきましては、財政再建という一つの大きな命題がございます。それとのからみ合せということを考えて参らぬければならぬわけでありまして、それらの点の考慮を払いまするために、二十四条三項につきましても、今お読み上げになりましたように、「その他の事情」というような点についても加味をしておるということになるわけでありまして、直ちに現在のやり方というものが二十四条三項に——加瀬委員もその点、言葉につきましては、違反とまでは言わないかというふうに仰せられたのでありますが、私たちといたしましても、直ちに二十四条三項の違反というふうにはもちろん考えておらないのであります。ただ、財政再建という問題がございますために、それとの調整を考えて、その調整のめどをどこに置くかというふうに考えて参ります際には、やはり再建団体は再建団体として、類似団体の間の均衡というものを一つの具体的目標として考えて参らなければなりませんということは、現実問題としてやむを得ないところではないかというふうに考えております。ただ、当該県の財政状況その他について、緩和される見通し、その他の有利の条件が出て参り、情勢が好転して参りまする場合におきましては、職員に対する勤務条件にしわ寄せのありますることは、できるだけこれを平常の形に戻して参るということが望ましいことは申すまでもないわけでありまして、その調整については現在までも努力をしておりまするし、今後ともそういう方向に努力をいたしたいという意味で申し上げた次第であります。
  54. 加瀬完

    加瀬完君 私は、再建団体だからといって、二十四条の第三項が変更されていいということにならないと思う。あなたは今二十四条の三項の中で、「その他の事情」というけれども、「その他の事情」というのは、公務員の方から有利に解釈した場合の有利な条件がその他にあれば、それをも参考にするということで、今言った再建団体が昇給十年間ストップしておるというこういう事情が「その他の事情」としてここの中で言われておるのではない、これは地方公務員法が提案された時の提案説明を見ても明らかである。だから再建団体であるからといって、再建団体が非常に他の団体とかけ離れたような、行政水準だけしか維持し得ないような財政事情において、これでやれ、こういう考え方というものは成り立ち得ない、これは二十四条の三項に違反する。これに違反するまで言わなくとも、これに近い状態に佐賀は置かれておった、こういう事実をお認めになるかどうか。
  55. 藤井貞夫

    政府委員(藤井貞夫君) 繰り返して申し上げることになって恐縮でございまますが、再建団体である佐賀県につきましては、いろいろ総合的に勘案をしなければならぬという点が多々あるわけでございます。従いまして、職員の給与につきましても、団体再建という命題を推し進めて参ります以上、職員の勤務条件について全然負担を分任しないということも、とうていこれは許されないところであろうと思うのであります。ただ、そのしわ寄せということが、不当に職員の勤務条件だけに現われるということは、これはたえがたいところであり、そういうふうにいたしてはならないのでありまして、それらの点の調整をはかって参るということが一番大事であろうと考えておる。それはともかくといたしまして、佐賀県の勤務条件自体が総体的にいって決していいものじゃないということは、私もそういうふうに考えておるのであります。
  56. 加瀬完

    加瀬完君 文部大臣に伺いますが、とにかくいろいろなことを言っても、自治庁御自身も佐賀県の状態は悪いと、二十四条の三項の精神からいえば、これは相当考えなければならない問題だということは、お認めになったと思う。そこで、こういう条件にあるわけでありますから、同じ公務員法の四十六条や、五十五条によりましていろいろな請求が当然出る。他の府県よりも激しく出るということは当然なことと思いますが、これはお認めになりますか。
  57. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私は先ほど申しましたように、佐賀県の状態が必ずしも良好でないということは、私もこれは認めます。ただし、著しく他府県に比して不良であるということも考えておりません。しかし、今のような問題について、教職員がその与えられた権限を行使することは何ら妨げるところではない。その意味におきましては、不満があればいろいろな要求が起ってくるであろうということは私も認めます。
  58. 加瀬完

    加瀬完君 文部省の指定統計からいろいろ数字をあげておりますが、内藤さん、さっきいろいろおっしゃいましたが、全国の府県のうちでも、養護や事務は一番いいとおっしゃるけれども、そういう数字はあなたの方の指定統計からは出てこない。そこで、これは激しく交渉が行われるということは当然だということは、お認めになったわけでありますから、これはいろいろと交渉が行われたわけです。その交渉がたとえば定員の削減の問題を何とか食いとめようとするところの職員団体としての要求が、教育委員会知事と交渉をしてどういうふうに認められてきたか、あるいは認められないできたか。これらの経過について文部省は御承知になっておりますか。
  59. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 佐賀の話し合いはずいぶん前からあったわけであります。県の方は三十一年度はともかく二百五十九名落しておるということですから、予算的には半分しか組んでいない。それを県は非常に努力をされて、とにかく三十一年度は予算の面からは一人も落さない。二百五十九名を認めるように自治庁に働きかけられて、これはともかくその通りになったわけです。そこで、組合の方はこの間に非常に当局側の制止にもかかわらず、二月の十四、十五、十六という三日間の闘争に入られたわけです。県教育委員会地教委及び学校長は、この事態を何とか回避したいというので非常な努力を払われたと思います。一方、県の方は、先ほど申しましたように、二百五十九名を半分落す、年間半分しか組んでおりませんので、それを落すというのを、落さないように努力しておる。三十二年度の定員についても、これは地方限りでは解決しないので、再建計画の変更になりますので、中央で処理しなければならない問題である。県としてはできるだけ努力をするから、組合は闘争体制に入らぬようにということを重ねて要望したにもかかわらず、十四、十五、十六と、遺憾ながらストに、三、三、四の休暇闘争に突入せざるを得なかった、こういう事情なのであります。
  60. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ずいぶん内藤さんくわしくお調べになっておられるようであるけれども、文部省としてさもありなんと考えますが、どこへだれが行ってそういうことを調べてきたのですか。
  61. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) こういう諸統計につきましては、先ほど加瀬委員からも御指摘のあった調査統計によりますし、また本件の事件につきましては、闘争の二月十四、十五、十六に起きたあとの、二月下旬だと思いますが、二十二、三日ごろに委員長と教育長が見えまして、詳細な報告を承わっております。
  62. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 各県で、程度の差はありますが、いろいろ紛争が起る。そうして地公法、あるいは教育公務員特例法等で疑義が起ってくる。あるいは政府の一般的な方針として、文部省は教育委員会等に通達と申しますか、通牒と申しますか、それぞれ出して、一般にこの種の問題についてどういう経過であったか、また、その後どう処理されたが、そういうことを、報告を求めたがっているようです。だから佐賀県の教育委員会関係者が文部省にたずねてきて報告することは当然だろうと思います。ところがそれは報告だけではなくて、実態は、これは地公法においてはどう解釈したらいいかとか、特例法においてはどう解釈したらいいか、何条に該当するのかしないのか、そういう解釈上の地固めをしなければ、教育委員会自身だけで処分する等等の行為は、非常に自信が持てない、そういう状況にあって、いろいろのことを文部省当局に尋ねてきているようです。そうして佐賀県の場合も地方における関係者の新聞談話等で見、あるいはわが党で調査に行って参りました報告に基くというと、文部省に対していろいろ意見を聞いているようです。そうして、その文部省の見解というものもあって、これで大丈夫という考えから、三十七条の違反として行政処分に対したというふうな趣きのようです。それで文部当局としては、佐賀県の事情を御報告を受けて、三十七条違反だあるという解釈と申しますか、認定をとられたのかどうか、これをお伺いしたい。
  63. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 一般的な方針といたしまして、学校の正常な運営が阻害されないように、これは昨年の十二月五日の一斉賜暇闘争に際しても一、文部省は通達をいたしております。それから三月十一日の春闘の一環として行われた闘争にも通達をいたしております。学校における正常な運営が阻害されないようにということは、私どもはたびたび通達をしておるわけでございまして、本件に関しては特別に指示はいたしておりませんけれども、当然佐賀県は、これは三十七条違反であると、こうお考えになったと思うのでありまして、文部省にこれについての解釈を聞かれたときも、私ども佐賀県の態度を全面的に是認いたしておるのであります。
  64. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、佐賀県の教育委員会から地公法三十七条違反の疑義があると思われるが、文部省の見解はどうかと尋ねられて、全面的にそれに賛成しておる、いわゆる三十七条違反であると認定されておる。そうですか。
  65. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) さようでございます。
  66. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 内藤さんは教育家であった経験もあり、学校経営ということについても十分御承知のはずですが、大学で講座を担当しておる教授が休む、休講する、これは正常な運営ですか、運営でありまおんか。一つ二つの講座だけ専攻しておる学生にとっては、それは正常な運営ですか、運営でありませんか。
  67. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 正常な運営でないと思いますけれども、病気で休まれたりなんかでやむを得ない事情だと私は思います。
  68. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 海外出張等をすれば、講師もおれば、助教授もおり、助手もおる。といって、休講しておるものをかわって講座を担当するということは、一般的な通例としては大学関係ではないのです。休めば休みなんですね。かわるということはない。ところが、小学校とか、中学校の程度ですと、三人休もうが四人休もうが、休む方が事前に休む日が予知せられるならば、自学自習の資料を作り、あるいは同学年の勤務教員に一緒にして授業を担当してもらう。あるいは計画を与えるというようなことで、子供自身は休むことなしに、それぞれの学習が行われる措置を一般的にとるものなのです。そういうものさえとらない先生なら、それはよほどこれはなってない先生と申して過言でないでしょう。ところが、教育活動というものは一日のそういう自学自習、二日の自学自習態勢があったから正常な運営でないという法律的な断定というものは、できるのかできないのか。これは疑問の多いところなんです。他の物品製造なり、販売なりのように、一日、一日の労務の提供が、それだけの生産を生む、販売高を上げるというようなものではなくて、ある程度長期にわたっての教育活動というものの積み重ねによって教育効果が上るのですから、従って、一日の欠勤あるいは有給休暇、このことが直ちにもって正常な教育活動の運営を阻害するとか、教育活動をとめておるということには、私はならないと思っておる。ただ、これは私の判断ですから、あなたに強制しません。強制しませんが、またあなたの方でそれは正常な運営を阻害するものだという断定も、それははなはだもって軽卒な場合があり得ると思う。人数で三割休んだ。七割の教員がおる。そして学校長が経営手腕があっても、一日の学校運営ができない。そういうものであるかどうかということも、いろいろなそれは論議の沸くところでありましょう。私は一般論として申し上げておるのですよ。そういうものを直ちにもって三十七条違反であるということを、皆さん自身が、文部省当局が、佐賀県に行って調査もし、現地を見られ、そして世論にも聞き、父兄の話も客観的に聴取するとか、そういうこともなしに、教育委員会報告だけで、そういう認定をするということは、私は軽卒ではないかと思う。まして文部大臣も再三お話しになっておられる通り佐賀県の教育事情というものは、いろいろな財政面からの不都合な問題が起ってきておる。それらに端を発して各種の紛争が起っておる。そうであればあるほど、もっとこれは慎重な扱いでよかったのではないか。私はそう思う。これは文部大臣にお尋ねした方がいいと思いますが、一片の報告を聞くだけで、こういう地公法ができてきた精神というのを汲んだ上で、なおかつ三十七条違反であるという断定を下したということは、軽卒でありませんか。
  69. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 佐賀県の状況につきまして、佐賀県の教育委員会から詳細な報告を受けております。その報告を前提として考えます場合に、私は、これを三十七条違反として考えて少しも軽率ではないと考えてはおります。
  70. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 ただいま質問されておることに関連して、大臣が午後お出にならないかもわからぬという話だったので、文部大臣にお聞きいたしたいと思います。  きょうここで一番問題になっておるのは、佐賀県の先生方行政処分の問題、並びに警察の拘留処分というのですか、についての点が質問になっておるようでありまして、警察につきましては、先ほど大久保大臣から石井長官説明に対しましての御所信が表明されましたので、私は今関連しまして、第一に、内藤局長が文部省の意向である三十七条違反であるということを答弁されておりましたが、それを文部大臣はどういうように——もちろん局長が答弁されるのでありますから、文部省の意向をお話しになったことと思いますが、せっかく大臣がお越しになっておりまするので、大臣の御所信をお伺いしたい。  今回の佐賀県におきまする先生方行動に対しまして、どういうように文部省ではお考えになっておるか。また教育委員会が処置しました行政処分に対しまして、文部大臣としてどういうような御見解を持っておられますか。それを大臣からお聞きいたしたいと思います。
  71. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) この機会に、御質問が、ございましたので、私の、本件に関する心境を申し上げてみたいと思います。  私は就任以来下僚にも始終申しており、また、機会あるごとに関係の地方の当局者にも申しておったわけでありますが、今日の教員の待遇問題というようなことにつきましては、なお改善の余地ありと私も考えております。その方面のことについて努力するのは私の責任であるとさえ私は考えておる次第であります。なお、そのことにつきましては努力いたして参りたい所存でございます。ただ、学校職員団体を作り、いろいろ活動するということは、これは法律の認めておるところであります。従って、法令の範囲内において行動するということにつきましては、何ら申すことはないのでございますけれども、これが法令に違反する、法令を逸脱した行為をするということは、厳に慎しんでもらわなければならない。ことに教育者でございます。さような点につきましては十分気をつけてもらいたいという心持ちを持って指導をして参ったつもりでおります。先般の三月十一日のいわゆる一斉早退というような事柄がありました際にも、特に私は所見を発表いたしまして注意を促したのであります。さようなことは法令に違反する。法令に違反すればまた罰則に触れるおそれもある。特に自重を望む、ということを申したのでありますが、ひとえに私はかようなことのために教職員諸君が刑罰法令に触れるということのないように、慎重な態度をもって措置をしてもらいたいという心持ちから談話を発表いたしましたような次第であります。この心持ちは一貫して変らないのであります。佐賀県の今度の問題は、いろいろ地方の当局から報告もきましたが、私は明らかに地方公務員法違反だと考えております。従いまして、佐賀県教組がとりましたこと、教育界にかような事態が発発したということにつきましては、まことに遺憾に存じておりますけれども、これ自体やむを得ないとういふうに私は考えておる次第であります。
  72. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 先ほど来教育委員会のとりました態度等につきましては報告もあったのでありまするが、こういう問題が佐賀県で起っておりまするときに、学校教育に一番関係の深いPTAといいますか、こういう人たちは一体どういう動きを今度されておるのでありますか。それは、局長からでもけっこうですが、こういう大きな問題の起っておりますときに、PTAの人たちが、親たちが、こういう先生方行動に対しましてどういうような動きをされておるか、報告がありましたらお知らせ願いたいと思います。
  73. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 本件につきましては、PTAは非常にきびしい批判をしておりまして、PTAの解散決議まで出すような事態になって、それから中には、Pだけで組織しようというような一部に動きも出ております。なお、校長も、教員組合から脱退したいという強い要望があったと聞いております。
  74. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 PTAが具体的に何かそういう行動をとられた事例があるのですか。今の話は、非常に抽象的でありますが、佐賀県のPTAとして何らかの行動に出られた、あるいは意思表示をされたとか、どういうことをやられたとかというような具体的な何か話がありましたら、お聞きしたいと思います。
  75. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) この闘争に入る前に、佐賀県のPTAは、教育委員会と協力して、教組休暇戦術に入らぬように、非常に説得されたわけであります。努力されたということが第一点、それからその後にも、PTAの解散決議をするというところまでたしか声明を出されたと、私は記憶しております。
  76. 吉江勝保

    ○吉江勝保君 先ほど来、三十七条の違反であるかどうか、学校の秩序を乱しておるかどうかということについて、小笠原委員から具体的にお話があったのでありまして、全般的な話は、今の御答弁でわかるのですが、具体的に学校の教育の秩序を乱しておるかどうかというような点につきまして、私、こういうようなことを現地から来た人から聞いたのでありますが、あるいは文部省でもお聞きになっておりまするかと思うのですが、ある学校で、校長先生が、休暇を取るために学校から去ろうとする、出て行こうとする先生に対しまして、泣きすがるようにして先生をおとめになった。しかしその先生は、授業をほうって退校されてしもうた。そういう状況を見ておりました小学校の生徒たちが非常なショックを受けた。校長先生の言うことを先生方が聞かないんだ。それでは自分たちも、あの聞かない先生たちがとめておる行為をおれたちがやっても、自分たちがやってもよいのではないか。その小学校では、竹トンボというのですかを飛ばすことを禁じておるそうです。ところが、もう先生が聞かないなら、自分たちも竹トンボを飛ばそうというので、小学校では、皆でおもしろく竹トンボを飛ばした。ところが、その竹トンボがたまたま小学校の他の児童の目に当りまして、その子供が入院しておると、こういうような事態まで起してしまった。先生は、泣いて病院におる子供のところに見舞に行かれた。こういうような話も、現地から来た人から聞いておるのでありまするが、一体学校の秩序というものがこういうことで保たれるものかどうか。児童に与えております影響というものがどれほど大きいものであるかということにつきまして、文部省ではお考えになっておるかどうか。私は、一つ現地から来た人の話でありまするが、申しまして、参考にし、将来の学校教育の秩序を確立する上におきまして、もう少し校長先生の、何と申しまするか、先生方に対しまする秩序を保ってもらえるように御指導がお願いいたしたい。かように存じます。
  77. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 今同僚委員から、先生、子供、竹トンボという三題話みたいな、平仄の合ったうまいお話も伺いましたが、そういう事実があるかないかは、十分調査しなければならぬと存じます。従って、その種のことが原因して、子供がけがをするまでに立ち至ったのかどうか。これは、問題は別個に究明さるべきであろうと思いますが、私、午後文部省関係の方おられぬそうですから、内藤さんにちょっとお尋ねしますが、内藤局長のところには、この種の事件が起り、佐賀警察が、検察庁等とも慎重な連絡の上、違反の容疑を固められて、捜査に乗り出されたようでありますが、内藤局長のところには、警察庁の方から御連絡ありましたか。
  78. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 検察の検挙に際しましては、事前には連絡はございませんでしたが、事後に御連絡がございました。
  79. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それは、検察当局からですか。警察庁の方ですか。
  80. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 警察庁からでございます。
  81. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その連絡の内容は、どういうことですか。
  82. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 十人については、逮捕状を用意して、任意出頭を求められた。あと二人は任意出頭、これは女性の方だと思うのですが、任意出頭を求めたということと、四十数カ所の捜査をした。この捜査の中には、学校が分会所になっておるために、学校にも手入れをした、さように御了承願いたい。こういうことでございました。
  83. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それは、警察当局が学校にもその捜査に入り、個々の教職員についても、参考人ですが、その他でお取調べになったということの報告を受けたとのことですが、その捜査状況はどうであったかということは、文部省で御調査になっておりますか。
  84. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 捜査については、私どもは、警察からの連絡だけで、捜査の実情については存じておりません。
  85. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 教育委員会から報告を受け、そうして一種の三十七条違反であるという断定を下したりするのに役に立たせたりするのにはやるさかではない。警察当局から捜査しておるという状況報告を受けられれば、それは、そうですかと聞きっぱなし、そうしてその捜査状況が教育上どういう影響を佐賀県下に与えておるかということについては、つぶさな報告も受けなければ調査もしておられない。どうもそういう点は、内藤さんにも似合わない、首尾が一貫しない、完備しておらない。うちの党で今度調査に参った状況を聞きますと、授業中に学校へ来て、先生取調べというのでしょうか、事情聴取というのですか、専門語はわかりませんが、その種のことがある、あるいは自宅に深夜たずねて行って事情を聴取する、あるいは駐在所に呼ぶ、それらのことが広範に行われる結果、先ほどの竹トンボの話ではないが、どうも、何と申しますか、陰うつな教育環境としてはふさわしくない影響を子供に与えておるという事実はあったようです。否定できないようです。しかし、警察当局としても、石井長官みずから陣頭指揮しておやりになったのだから、相当慎重にこれはやっただろうが、それでもやはり広範に事が進めば、そういう教育活動の上で一面の悪影響が与えられる、その種の捜査なんです。そういうものは、内藤さんの方で十分な御調査がないということはまことに遺憾だと思う。これは、さっそく御調査なすって、そしてその限りにおいては、教育上子供に悪影響を与えられないような、そういう指導助言が文部省としてあってよかろうと思う。どうしても内藤さんのお話は、片手落ちであると思う。  それから、もう時間がありませんから、要望だけ申し上げておきますが、文部省は、灘尾文部大臣がお話のような、非常に学校を愛し、教育者を愛し、そしてその勤務条件その他について綿密な世話もすることによって学校教育を発展させたい、まことにこれは当然のことでもありますが、心がけとしては、りっぱなものだと思います。率直に私は敬意を表します。しかし、そうであればあるほど、この種の問題が起った原因というものを尋ねられ、また、そういう行為が起ったということであって、警察権力までが介入せざるを得なかったという事態があったとしても、文部省は司法機関ではないのですから、そういうことがあればあったで、佐賀県の教育界の発展向上ということについては、積極的に施策も考えなければならぬし、もしも今回の紛争事件が、警察権介入という客観的なこういう事実があったことについては、文部当局も、それは責任を感じなければなりませんよ。それは、法律に触れたお前たちが悪いんだ、それだけで、対岸の火災視しておるような文部省だったら、ない方がいい。占領下において、文部省が廃止されようとまでした事実もある。内藤さんたち、一生懸命でこれが存続に努めた。しかしそのことは、地方の教育機関なり、あるいは学校教育なりにサービスをする、助長していく、そういうことのために文部省というものが存在価値を認められたはずなんです。ところが、皆さんの方は、今やもう監督機関、取締り当局、そういうような形にあなた方の内側の、あなた方の仲間である教育者自身に文部当局が思われるというような、そういう印象を与えるというようなことは、これはもう、教育行政庁としてまことに遺憾にたえないことなんです。そうじゃないですか。従来やってきたことは全部そうですよ。私があえて、教育関係者出身の議員であるけれども、文部委員会に行かないのは、行ったことのないのはそこなんです。行けば、あなたたちに注文をしたいことばかり多い。他の同僚委員の時間を取り過ぎるだろうと思うから、遠慮して行かない。しかし、あの二十一年以降一貫して、文部当局というものは何を教育者のためにしたのか。ほんとうに何を学校教育のために積極的な援助を与えられたか。それは、教員組合というものはけしからぬというような話をしますけれども、あの当時、教員組合のようなものを作り、教師が団結して子供をかかえなかったら、だれがあの当時子供を面倒見ることができたか。文部当局は、自分たちが温存されることにきゅうきゅうとして暮していたじゃないですか。父兄は、食糧事情から、子供などの教育なんというものは目も与えない、世話も届かなかったじゃないか。すきっ腹をかかえてあの二、三カ年というもの、ようやく六・三・三の今回になる基礎までつないできたのは教師なんです。皆さんは、教師を行き過ぎがあるということを言われますが、事の起っている原因というものは、さまざまのことがあることは、内藤さん一番よく承知なはずなんです。そういうものを積極的に打開さえしていくならば、文部当局がもっと積極的に仕事を進めていかれるならば、だれがあえて好んで、闘争だ、闘争だということをやりますか。黙っておっても、文部当局が学校の世話を綿密に見、教師の地位なり、あるいは、勤務条件というものを良好なものに保つことについて、積極的な努力をしていただくなら、教師自身は、教育活動に専心できるんです。何を好んでよけいなことをしますか。だから、全部これは、原因結果がぐるぐるぐるぐる悪循環してきているんです。そういう点からいえば、私は、警察当局と分離して、文部当局それ自身は直接の何ら責任者でないということは法律上明らかです。明らかですが、少くとも教育行政を担当する者としては、遺憾であると同時に、責任をお感じにならなければならぬ。そうしてこの事態が収拾せられる。そうして佐賀県の教育環境というものが一段とよくなるということに努力願わなければならぬと思うのです。この問題については、文部大臣も、積極的に佐賀県教育委員会、県当局にいろいろ指導助言もせられ、自治庁の方とも御相談なすって佐賀県の教育水準が低下しているということについて、これを防止し、引き上げる積極的なそういう施策をお講じになられて、できるならば、われわれにもその結果を御報告願いたいと思うのです。大臣いかがですか、御所見は。
  86. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいまのお話は、内藤局長に向けてお話になったようでございますが、私自身に対して向けられたお言葉だとも伺うのでございます。  私どもといたしましては、一般的に申し上げまして、教育の水準というものを確保し、さらにこれを向上させることは、当然の責務としてやっていかなければならぬ。ひとり佐賀だけの問題ではありません。ことに佐賀の問題につきましては、いろいろ御注意がございましたが、もちろん十分に努力をいたしまして、できるだけその水準を高めていくべくやって参るつもりでございます。今回の事件、先ほど申しましたように、私は、教育界全体の問題といたしまして考えます場合に、また、事件全体をながめました場合に、非常に遺憾に存ずるわけでございますが、また、やむを得ざるものがあると考えておる次第でございまますが、同時に、今回検挙という事実がございます。これに対しましては、御注意もございましたが、十分気をつけますが、われわれといたしましても、事が教育者に関する問題であり、教育に影響のある問題でございますので、なるべくすみやかに取調べを進められ、また同時にその取扱いは特に一つ慎重を期してもらいたいということをお願いいたしておる次第でございまして、警察当局におかれましても、その趣旨をもって、いろいろ地方の当局を指導しておられることと信じております。
  87. 加瀬完

    加瀬完君 小笠原委員から、本質的の問題で結論を出されておるわけでありますが、大臣午後おられないそうでございますので、先ほどの内藤さんの御説明通りに受け取られては困る点がございますので、一つ御確認いただきたいと思います。それは、内藤さんの御説明によりますと、佐賀教職員組合の要求しておった問題はある程度通ったと、通った上で、ああいうことが行われたんだというように受け取られる御説明がありましたが、私が初め述べたいろいろの問題は、全然解決されておらない。それは、先日衆議院の参考人として参りました知事の鍋島さんがこのようにおっしゃっている。教育委員会意見や、県財政の実態からして、自治庁と交渉した結果、三十一年度計画では二百五十名前後オーバーすることを許されたが、三十二年度は計画通りとなった。しかし、教育委員会の強い要望と県民の世論に顧み、百二十名の人員を配置し、自治庁に計画変更を承認してもらっている。この程度の水準はぜひ保っていきたいが、なお百二十名の問題が残っており、これ以上の無理はできないと思う。こう言っておるのでございますから、佐賀の問題は、内藤さんのおっしゃるように、ある程度解決をしておるということにはならないという御確認はしていただかなければ困る。他については、午後質問を行います。
  88. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 内藤局長、この問題について御答弁ありますか。
  89. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 今の点ですね。ちょっと誤解があるといけないので、申し上げさしていただきたいのですが、三十一年度の地方財政計画は、佐賀につきましては、二百五十九名を落すということで、予算的には半分しか見てない。それを自治庁との交渉で、ともかく二百五十九名落さないように財源措置をしたことが第一点。三十二年度の計画変更は、鍋島知事お話のように、二百五十九人のうちどうしても百二十人だけは無理である、こういう結論に佐賀県は到達されたため、百二十名をバックするように、これを自治庁と今交渉中でございます。こういう意味でございます。
  90. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 本件に関する残余の質疑は、さらに午後継続することといたしまして、午前の委員会は、これをもって休憩いたします。午後は二時から再開いたしたいと思います。    午後零時五十二分休憩    —————・—————    午後二時二十二分開会
  91. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続き、佐賀県における行政整理問題に関する件を議題として質疑を行います。質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  92. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 国家公安委員長にお伺いしますが、今度の事案については、公安委員会としましては、どういう報告警察庁から受け、また指示を与えて今日まで至っておるのか、お話し願いたい。
  93. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 佐賀県の事件につきまして、公安委員会といたしましては、何べんか報告を受けております。報告内容はさきに警察庁長官が話したような経過でありまして、また繰り返す必要もないと思います。こちらから、委員会としての取り立ててこうせいという指示はいたしません。ただ報告を聞いただけであります。
  94. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それでは、この問題を取り上げるに当って、警察庁は、検察庁との問に連絡協議等があったのか、あるいは出先の佐賀警察が地検の方からの指示、指令等をもらって捜査に乗り出したのか、検察の方との関係についてお知らせ願いたい。
  95. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 地元佐賀警察といたしましては、もとより、午前中にも申し上げました通り事案性質にかんがみまして、きわめて慎重な態度をとり、現在地元佐賀地方検察庁との間にも緊密な連絡をとったように報告に接しております。私どもは、また法律解釈につきまして、地元佐賀警察から照会に接しましたので、その点につきましては、中央の相互機関同士、つまり法務省並びに最高検との間において折衝いたしました。
  96. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、今度の事件について、法解釈等については、法務省刑事局あるいは最高検、警察庁意見が一致しておるという結果を見ているわけですね。
  97. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) その通りでございます。
  98. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 地検の方の検事正の話等によりますと、佐賀県教組は、今回のみならず、過去においても幾多のトラブルがある。しかも、今回教育委員会行政処分があったあとでも、反省の色がなく、人事委員会等に提訴をしておる。従って、この種の挙に出たのだという理由を社会党の調査団には言うておるようでありまするが、一方、あなたの方では、客観的に非合法である、そういうものは取り締らなけりゃならぬ、もうものさしがあるんだから、ものさし通りやるんだというような御意見のようにも聞いたのですが、やはり反省の色があるという結果が行政処分の上から現われてくれば、この種の挙に出なかったのか。これらにかかわらず、これはやはり捜査対象として取り上げなければならなかったのか、お伺いしたい。
  99. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) およそ罪を犯した者が、その後において前非を悔いると申しますか、罪を犯したことが悪かったという反省があるかないかというようなことは、情状酌量の場合の参考になるべきものではないかと思うのでありまして、罪を犯したあと、反省の色があるから、これは犯罪として、いわゆる司法事件として取り上げないというふうに断定でき得るものではないと思っております。むろん、いわゆるボーダー・ラインと申しますか、刑事事件として取り上げるかどうかという境目の場合には、反省の色があるというようなことが一つの考慮の条件といいますか、そういうこともかみ合せまして、刑事事件として取り上げることをしばらく見合すという場合も、時と場合によってはあり得るかと思います。そういう意味におきまして、反省の色があるないということと、刑事事件として取り上げるかどうかということとは、全然無関係ではございませんけれども、今申しましたような意味においての若干の関係はあろうかと思いますが、佐賀検事正がどういう見解を表明されましたか、詳細については、正確には承知いたしておりません。地元の新聞等の報ずるところによりまして、私ども、今御指摘のような御発言をされたようなことも聞いております。
  100. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 地検と警察当局とが緊密な連絡をとって、捜査に乗り出したということであれば、私は、そこに立ち至るまでの理由というものは明らかになっておるはずだと思うのですね。ところが、反省の色がないからやったのだというようなことであれば、これもちょっとおかしい話だというふうにまあ聞きとっておるわけですが、それはともかくとして、そうしますと、警察は、あくまでも地検の指揮を受けて捜査に乗り出したのだということですか。
  101. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 地検の指揮を受けてではありません。地検との間に、相互に緊密な連係をとって、双方意見の一致をみて取締りに着手した。こういうふうに私どもは考えておるのでございます。御承知のように、現在の刑事訴訟法におきましては、警察は独立した捜査権を持っておるのでございまして、旧刑事訴訟法時代のように、個々の点について、すべて検事の指揮を受けるという建前ではないのでございます。
  102. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それでは、この強制捜査に立ち至った理由として、地検に逮捕状を求め、それを持ってはおるが、任意出頭取調べをしようとした。ところが、がえんじなかったので、逮捕して、強制捜査に入ったのだというふうな答弁に承わったのですが、一般に教員であり、また県教組指導的な立場にある者が、任意出頭を求めて、逃亡でもするというおそれをお感じになり、あるいは証拠隠滅をされるというおそれをお感じになって、あらかじめ逮捕状を用意しておられたのですか。それはどういう理由で、あらかじめ初めから逮捕状を用意せられておったのですか。
  103. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) あらかじめ逮捕令状を用意いたしましたのは、証拠隠滅のおそれがあるからというふうに、私ども報告に接しております。およそ捜査のあり方といたしましては、私ども、常々第一線の諸君に要望をいたしておるのでなければならない。従って、でき得べくんば、いわゆる任意捜査任意出頭に応じていただいて、捜査の目的を達成するといういき方が最も望ましい。それによって目的が達成されることが最も望ましいことであるというふうに考えておるのでありまして、第一線の捜査に当る者といたしましても、努めてそういう点に着眼いたしまして、まず任意捜査で事を始める。従って、任意出頭を求める。こういうやり方をしておるのでございますが、不幸にして、それでは捜査の目的が達せられないというときに、初めていわゆる強制捜査、逮捕令状を執行する、こういういき方にならざるを得ないのでございます。
  104. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 午前の御答弁では、この事件は任意捜査でやりたいと思った。しかし、任意出頭の求めに応じない等のことがあって、強制捜査をせざるが、この事件に関しては、証拠隠滅のおそれがあるから、逮捕をして究極の問題としては調べなければならぬ。あらかじめそういう計画のもとに、逮捕状を請求しておられたということになりますね。
  105. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 捜査当局としましては、万一の場合を考えまして、先ほど申しました通り任意出頭をもって目的が達せられるならば、それが望ましいのでありますが、もしそうでない場合には、途中で強制捜査に切りかえなければならぬという意味で、あらかじめ逮捕令状を用意しておった。しかし、最初は任意捜査でまず臨む、不幸にしてそれで目的が達せられないというので、令状の執行をせざるを得なかった、こういうことに相なっているのでございます。午前中御報告申し上げた際に、ごく概略を申し上げましたために、その辺のところが正確に申し上げてなかったかと思いますが、最初はいずれも任意出頭を求めたのでございます。中には、任意出頭に応ぜられた方もあります。任意出頭を拒否されたも。ございます。任意出頭を拒否された方につきましては、最初から逮捕令状を執行せざるを得なかった。任意出頭に応ぜられた方については、任意出頭によって取調べ開始いたしたのでございますが、その後の取調べ状況にかんがみまして、自後、強制捜査を必要としたので、そのときに初めて逮捕令状を執行したこういうことに相なるのでございます。
  106. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 現行犯等において、緊急逮捕をして取り調べる、むろんこれはその通りのことですが、一般に任意捜査任意出頭という形式をもって呼んでおいて、直ちに留めてしまうということは、もう例外でなくて、捜査の原則みたいに現実はどこでもなっているように思う。これは一般の私の観測ですよ。そうして、石井長官は、国会に出て、この種の質問があると、人権擁護論を打って、慎重にやっているというふうに御答弁になる。指導的地位にある立場として、それはまことに当然のことでもあり、そうでなければならぬと思う。ところが実態はもうそうではない。逮捕状で留めている。これが、拘束をすることが、自供するなり何をするなり、容易な捜査になるということで、安易にといえば、はなはだ警察官に対して失敬かもしれませんが、その方法をとるのが道が早いという、もう一般的な考え方を持っているので、ないかというふうに私は思うのですが、あなた方は、実際の捜査状況を見て、そうお感じにはなりませんか。これは一般論ですよ。
  107. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 私が国会で諸先生からいろいろ御質問を受けるときには、きれいごとを答弁しているが、現実の第一線の状況はそうではないというふうな御指摘でございますが、あるいは、数多い中には、安易に逮捕令状を請求して、捜査の便宜をはかるというものが、数多い中に、絶対にないという保証は、私もちょっといたしませんが、この点につきましては、先ほど申しました通り捜査のあり方として、基本的人権の尊重ということをまず何といっても基礎理念として、その上に、合理的、科学的捜査を進めて、真実の発見に努めるということが、民主主義下の新しい警察捜査のあり方であるということを、私は機会あるごとに強調し、第一線の諸君もまた、その線に沿って努力し、勉強し、関係者指導、教養に、幹部は努めて参っているのでございまして、いまだ不十分な点があるのをもって、ただいま御指摘のような事例があるいは一部においてあるかもしれませんが、そういうことは今後ないように、極力真にあるべき捜査の姿というものを具現するように、私は今後努めて参りたいと思っているのでございます。今日、御承知のように、命状の請求は、ただ単に請求したからといって、直ちに捜査当局の要望通りいただけるものではないのであります。これは、裁判官に対して逮捕令状を請求するわけでございますが、それには、いわゆる疎明資料というものを提出して、なるほどそれなら逮捕令状を出す必要ありと裁判官が認定して、初めて令状が発付されるわけでございまして、ただ単に、第一線の捜査当局の者が、安易に、令状をもらうことが捜査上非常にやりいいからという便官主義で請求いたしましても、理由がなければ令状は発付されないのでございます。また令状を請求する者も、従って、そういう点から、できるだけ慎重でなければならぬというので、かつては下級警察官でも令状請求の権限はありましたけれども、現在は警部以上でなければ逮捕令状を請求することができない。警部以上のものも、すべてできるというわけじゃなくて、捜査関係のある警部以上のものは、令状請求権者としてあらかじめ指定をされて、その人を通じてでなければ逮捕令状の請求はできない、こういうふうに厳格に制約をいたしておるような状況でございまして、決して権利の乱用にならないように、私ども部内関係者は十分自粛自戒するように努めております。今後においては、そういうことは間違いがないように、理想的に権利を執行して行くように努めさせて参りたいと考えております。
  108. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その通り答弁になるのは、長官としての当然のそれは建前でございましょう。しかし今も話したように、裁判所が出すのだ。従って相当の理由がなければ出さないものなのだ。これは法律上はみなきちんと行っています。しかし、やはり裁判その他になるというと、特にその理由はなくて釈放になる場合もあるし、いろいろまああるようですが、私は逮捕状を請求し、逮捕してもいいものであっても、そこまで行かないで、任意捜査でもなし得るのも、逮捕令状をもって身柄を拘束して捜査を進めるという方向に、えてしてなりがちな捜査方法と言いますか、そういうものがあるのではないかということを申し上げておるのです。その点、長官は、数多い中にはなしとしないかもしれぬということで、ないと断言し切れないのですね。ところがやはり民主警察の長官なら、われわれのように意地悪い、こういう質問をするやつに対しては、けしからぬやつだというくらいの気概を持って、断じてないのだというくらいに明快な御答弁があるくらい、自粛自戒と申しますか、科学的な捜査というものに、もう民主警察何年かの訓練を経ているから、なっていなくちゃならぬ。それが数多い中にはということでお話しになっておられる限りにおいては、やはりこれは指導的な立場にある幹部において、綿密な配慮をすべきではないかと私は思います。で、この事件に移りますが、そういうことで、強制捜査をしなければ証拠がつかめないという種のものであるというふうに長官も御認定になりますか。と申し上げるのは、あなたの方でお調べになったように、現実に県民の見ている前で団体的に有給休暇をとったか、あるいはとらぬかは、これは私はこの際触れません。事実として二会場で大会を持った。その間教員は学校にいない。事実関係は明らかです。あるいは県教組なり、支部、分会等において文書等も出ておるでしょう。その文書を隠すことが、この団体活動で可能であるわけはない。あるいは、かりに可能であるとしましても、事実行為が厳然としてある。どこが微妙な強制捜査をしなければならぬ実態なのか。およそ今の段階では、検察庁の方に問題が移っていますから、警察当局の手を離れておるように私聞いておるのですから、お答え願えると思うのです、その点は。強制捜査をしなければならない実態がどこにあるか。今の話ですと、証拠隠滅のおそれがあるという御認定のようだったのですが、どういう証拠が隠滅されると心配をされるのか、個人が秘密裏に個々に目に映ったことではなく、公公歴然たる一つの事実があるのですが、どういうことなんですか。
  109. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) まず、先ほど私がお答えした中で、逮捕令状の請求を安易になす向きが絶無ではない。絶対にないと答弁すべきではないかという御叱正をいただいたのでございますが、これはむしろ正直に申し上げたのであります。理想を言うならば、私は絶無であるとありたいのであって、そういう指導をいたしておるのでございますが、全国数多い事件を私が全部知っておるわけじゃないのでございます。それを簡単に、ここで諸先生の前でたんかを切るのはきわめて簡単でございます。しかし、よく調べて見たところが、こういう事例があるじゃないかということであとでお叱りを受けるということであっては、かえって私、非常に良心に恥ずるのであります。不正直ではないか。全部が全部知っておりもしないくせに何だというお叱りを受けることを顧慮いたしまして、むしろ大事をとりまして、数多い中にはそういうこともあり得る、そういうことがないことを私は念願し、理想として、そういう方針で日ごろ指導いたしておるのでございますけれども、全国の数多い事件の一つ一つを私が全部知っておるわけじゃございません。また現在の警察制度の建前からいたしまして、日常個々のケースを全部私が指揮しておるわけじゃございません。一定の限られたこと、しかも私は直接都道府県警察を指揮する権限がないのでございます。むしろ大部分の日常の刑事事件というものは、都道府県警察本部長が最高の執行の責任者としてこれを行なっておるのであります。私が一々指揮する権限さえないのであります。それだけに、全国の日常の数多い事件のすべてについて、捜査の進め方がどうであるかということを詳細に承知しておるわけじゃございませんので、その点、自信がないゆえに、あえて正直にお答えを申し上げたのでございまして、理想は、御指摘の通り絶無を期して、私は及ばずながら第一線の諸君を日ごろ指導いたしておるつもりでございますので、その点を御了承願いたいと思うのでございます。  次に御指摘の、今回の佐賀県の場合に、なぜ、どうしても強制捜査しなければならなかったか、この事実は公々然として、県民多数の目の前で行われたではないか、まさに事柄はその通りでございます。表面的に多衆の目に触れた点に関する限りは、それは今回の関係先生方が幾ら否認されましても、歴然たる事実でありますから、これは証拠十分であるということも言えましょう。いわゆる物的証拠ですね。いろいろな文書その他の形によって指令されたものとか、また二月十四日から十六日の間に何名のものが参加されて大会をされたか、そういうようなことはもう明らかに客観的事実として存在するから、そういうものに関する限りは、今度の関係先生方がいかように供述されましょうとも、事実は事実としてはっきりしておると思いますが、問題は、秘密裡に会合されて、いわゆる幹部方々がどういうお互い意思疎通をはかられたか、いわゆる共謀された点がどういうことになっておるか、そういう点は必ずしも物的証拠と申しますか、傍証だけで固まらない点もあるのでございます。そういう点の捜査が十分に終らないうちに、各人それぞれ任意出頭で、きょうはこれまでお聞きしたから、あすまたおいでいただきたいということでお帰り願ったのでは、その間にそれらの関係方々の問に、いわゆる通謀によりまして証拠を隠滅されるおそれがある、こういうことから、やむを得ず強制捜査をしなければならなかった、かように私どもは了承しておる次第でございます。
  110. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、やっぱり今度の事件は、初めから強制捜査をする計画のもとに、ただ任意出頭を求められたということであって、任意捜査で行こうなどということは初めから考えになかった、こういうことですね。
  111. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 任意捜査で目的が達せられることを念願をしておったことには間違いございません。先ほどお答えした通りでございます。それが不幸にして、捜査目的がそれでは達せられないので、そういう強制捜査という措置をとらざるを得なかったのでございます。またすべての人に対してでなく、従って重要な役割をになっておられた関係者と申しますか、そういう人によってもこの点は考えなきゃならぬ点もございまして、たとえば婦人の先生お二人につきましては終始任意出頭を求めて取調べを完了した、こういうことに相なっておるのでございます。
  112. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 今のお話から、ちょっと関連してお聞きしたいと思うのですが、初めから強制的な取調べをするつもりはなかったと、こういう今のお話でございますが、私は率直にお聞きしますが、これは長い間、あなた方とも十分打ち合せの上で、こういう措置に出られたことは、これはあなた方の口からもうすでにはっきり言われておりますから……。で、その間に強制的なこういう措置をする、もっと具体的に申しますと、逮捕令状の用意をしてやるというようなことについては、あなた方了解を与えておりませんか、どうですか。
  113. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほども申し上げました通り、個々の捜査について私どもが直接指揮する権限はないのであります。これは第一線の、今度の場合で言えば佐賀県の本部長が最高の執行責任者として実施するのでありまして、捜査のどういう進め方を、いつ、だれに対してするかということは、これは佐賀県の本部長がきめて、自分の部下を使ってこれをやらしめるというのでありまして、私どもの方から、いつ、何名に対してこういう捜査のやり方をしてやるべしということは、むしろこれは越権行為になるわけでございますので、そういうことはいたしておりません。
  114. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 私お聞きしたのは、これは法の解釈なりで、たとえば三十七条違反とか、そういう事柄についての考え方は、これは地方とあなた方との間で十分打ち合せをしたと思うのです、あなた方もはっきりそれはさっき認めておったところですから。と同時に、具体的にだれをどうするとか、何月何日にどこへ連れてくるとかいうようなことは、これはもちろんあなた方は指示をなさらなかったと思うのです。しかし実際の取調べ一つの大筋については話が出たのじゃないか、また、あなた方も了解したのじゃないかというふうに私あなたの話から感じたわけです。というのは、今あなたの小笠原委員に対する答弁の中に、初めは任意出頭でやって行こうと思っておった、こういうこと、これはあるいはその通りかもしれません。と同時に、話の中に、物的証拠じゃない、物的証拠以外のものについてのことについて強制的なこういうことをしたのだ、物的以外のものについては、これは初めから、あなたにしてみれば予想しておったことなんです。そうでないと、そういうお話が出てこない。文書とか、指令、そういうものについては何も心配しておらない、それ以外のことについて調べなきゃいかぬ、こういうことなんですから、それ以外のことを調べるについては、今とったような措置を当然しなければいけないと、こうおっしゃるんですから、そうしますと、最初からそういうことで行くという順序というものは考えておられたんじゃないか、あなた方と一緒に行く、コースまで大体考えられておったのじゃないか、こういう私は疑問を持つわけなんです。単に、いわゆる証拠物件の隠滅とか、棄損とかいうことをおそれるのであったなら、それはそうかもしれませんけれども、あなた方はすでにそういうことじゃなく、別の、いわゆる共謀と言いますか、話し合いと言いますか、秘密裡にやった、そういうことを探りたいのだと、こう言っておられるのですから、それではもう最初から、何も隠す——いわゆる物的のそれじゃないのですから、ですから私は当然、具体的にだれをどうするとか、何月の何日にどうするということでは、もちろんあなた方は指示は与えておらないでしょうけれども、大体のやり方について、たとえば逮捕状を用意してかかるというようなことについては、すでに了解があったのじゃないかというふうに感じたわけですが、その点どうでしょう。
  115. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 私が先ほど来お答えをしておることは、すべて現地報告に基いて、それをお伝えをしておるわけでございまして、私が申し上げておることは、私が指揮してこういうふうにさせたということを申し上げておるのじゃないのでありまして、現地警察が、当初は任意出頭を求め、それによって捜査目的が達成されるならば、それで事は終ったでありましょう。それで目的が達せられなかったので逮捕令状を執行した。そういう執行をしなければならぬような状態になるかもしれないということを、あらかじめ予想されたので、あのときは逮捕状を用意しておった、それを不本意ながら執行せざるを得なかったと、こういう事実関係を、私は現地報告をそのままお伝えをしておるのであります。
  116. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 私何もあなたが指揮したと、こういうことじゃないので、ただあなたの午前中からのいろいろな御説明の中に、これをどう扱うかについては、あなた方十分相談したはずなんですよ、それははっきりあなた認めておられる。法務省とも打ち合せをしたし、最高検とも打ち合せをしたしと、いろいろこうおっしゃっておる。ですから私はあなたの今の答弁のように、単なる現地からの報告だけであなたがここでものを言っておると思わない。聞きたいところはそこなんですよ。私が不思議に思うのは、こういう全国初めてのケースに当って、単に出先だけでこんなことはやれるとは思わない。だれが考えてもそんなことは言えないと思う。十分あなた方と打ち合せの上でやったということは、しかもあなた自身の午前中の説明から指摘し得ることなんで、記録に残っておるはずなんです。そこでその場合に、打ち合せをしたという内容の中に、地公法の三十七条によってやるのか、従って六十一条のそれによってやるのか、これはそういう意味での法の解釈なり適用なりについて十分打ち合せがあったと思うことが一つ。さらに、いわゆる検挙のような格好で、こういうふうにやって行くことについて、取調べの過程においても、これはさっき言ったように、何月何日だれそれということはもちろんなくても、大まかな筋というものは十分あなた方と打ち合せてやったと思うのですよ。これはさっきも言ったように、物的証拠でないものをあなた方はつかもうとしておるのですから、そのために逮捕状を用意したと、こういうのです。またそれを執行したと、こういうのです。ですから、初めからその物的の証拠でないものをつかもうとするためには、あなた方の用意は周到であった。しかし周到であるだけに、あなた方は、あなたは指揮しないかもしらぬけれども、そういうことについての十分の打ち合せがあったのじゃないかと、こう私は思わざるを得ないわけなんです。その点重ねてお聞きしたいと思うのですが、いかがですか。
  117. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 私が午前中申し上げましたのは、地方公務員法第三十七条違反、従って同六十一条罰則適用のケースとして警察が取り上げる最初のケースであるだけに、この法律解釈を誤まってはならないということで、現地の方では、これでやるのが相当と思うがどうだろうかということで中央のわれわれの意見を確かめておった。それでわれわれもそれを受けて、これは十分に研究に価する、慎重に研究すべきものであるということで、法務省あるいは最高検との間にも、十分にこれについて法解釈をめぐっていろいろ研究をした、その結果結論を出し、現地へ連絡してやったということなんでございます。その点に関する限りは、第一線と中央との間には、緊密な連携と申しますか、そういうことは確かにあったのでございますが、それ以外の実際の個々のやり方については、先ほど来申し上げた通り佐賀警察本部長が執行の最高責任者でありますので、一々私の方から、こうすべし、ああすべしという権限もあませんし、またそれを一々どうしましょうかと言って伺いを立ててくるような不見識な本部長で。ございません。本部長は十分その見識に応じて実際にやりまして、そのやった結果については、これは重大な世人の関心を集めている問題でもございますので、逐一私どもの方に報告はむろん参っております。われわれはそれを冷静に、報告に接して、これを検討し、もしその間に行き過ぎがありますれば、それはわれわれの方でまた助言してやらなければならぬこともありましょうが、そういう意味におきまして、第一線の報告に対しましては、忠実にこれを慎重に検討して今日に至っておるのでございます。
  118. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 そうすると、お話はまだ十分に納得できませんが、それはあなたのおっしゃる通りでしょうから、その点はあまり触れないことにします。ただ、今のお話の最後の段階ですが、現地の行き過ぎとか、その他については十分やって行くというお言葉ですけれども、これは今回のこういう事件、事件というよりも捜査の方法、強制的なやり方については、行き過ぎとはお考えになりませんか、その点を端的にお聞きしましょう。
  119. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 行き過ぎとは考えておりません。第一線の佐賀警察本部長は、きわめて慎重に考慮いたしまして今日に至っておるように私ども考えております。
  120. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 行き過ぎと考えておらないということなんですが、そこで私は、ちょっとくどくなるようでございますが、こういうケースのあなた方の見方、必要があるならば取調べもやむを得ないでしょう。しかし、こういうケースというものについての、いわゆる共謀した、陰でいろいろ策謀しておるとか、あるいはその結果によってそそのかしたとかいうようなこと、これはあなたの午前の説明では、共謀した、そういうことが問題だと、こうおっしゃっていますね。そこでお聞きしたいのですが、あなた方が現地状況からどういうふうにこの問題を把握しておるかという点についてでございますが、これは私の聞くところによりますと、言葉はどういうふうになりますか、いずれ、こういう教組の人たちの挙に出たことにつきましては、これは単に、いわゆる組合の幹部とか、執行部とかいう、そういう人たちが陰でこそこそやって共謀したとか何とかいうことではなしに、大会決定に基いて行われたというふうに聞いておりますが、この点どうでしょうか。
  121. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 教職員の方方の賛否の意見を集められたということは、確かに聞いております。その人員が何名であったか、これも報告が来ておりましたが、今正確に覚えておりませんが、賛成の方が三分の二くらいで、反対の方が三分の一くらいであったかと思います。かりに、そういうふうに全部の職員の方の意見を徴したところ、いわゆる多数決で、賛成の方が多かったから、それを機械的に受けて、組合の幹部の方が執行したわけであると、こういうことはちょっと簡単には言い切れないのではないかと思うのでございます。
  122. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 私はまだそこまで聞いていない。それはあなた方の調べでは、大会ですか、それとも教職員一人々々についての何か文書によって回答をとったのですか、どっちなんですか。
  123. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 無記名投票されたように聞いております。
  124. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 無記名投票ということは、集会の場においての無記名投票であるのか、あなた方のさっきのお話では、別に何か各自からどっかの場所に郵便か何かで送られているようにもとれるような賛否の方法であったかのように聞えましたから、その大会の席上で、無記名であろうが、記名であろうが、そういう投票をしてきめたのか、どうでしょう。
  125. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 大会の前に各自の投票をしていただいたものを、大会の席でその結果を発表したというふうに聞いております。
  126. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 そこで、私これからお聞きしたいことは、あなたがさっきちょっと言ったのでは、事前にやって、大会において発表してやったというのですから、最終的には大会における決定とこう見るのが普通の見方だと思うのですが、大会の決定によってきめられた、そういう事柄に対して、執行部がそれを忠実に行うことは当然なんです、組合のルールからいってね。この点はあなた方どういうふうに考えていらっしゃいますか。
  127. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) それは組合の規約に基きまして、執行部大会の決定を実施に移されるということは、これは普通の場合そうであると思います。ただ、大会でそういうふうにして決定をする、それまでに執行部におきまして、いろいろと事前に御協議等になったこともあるようにお伺いしております。さらに、何月何日を期してというような具体的な方法を指示して、そういうことを実行するように指令を出されたという点は、やはり問題が残るんじゃないかと、かように考えております。
  128. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 これはあなた方、組合というものをおわかりにならないのではないですかね。大会までの間に執行部がいろいろやる、これはどこでもあることなのであって、そのことがいいか悪いか、大会に集まった人たちの意思によって決定されるのです。それまでの準備行動にすぎない。さらに大会決定は、たとえば今回の事件について申しますと、何月何日、何人、こういうことをするというような、おそらくそういうこまいことまでは大会ではきめてないと私は思います。そういう時期とか、方法については、こういう大会では、いわゆる執行部に一任するという、これは大会、いわゆる組合の最高の意思機関によって決定されることなんです。そういうことを一任された決議は、当然私はあると思う。そういうことによって一任された結果、たとえば何月にやると、こういうことの指令を出すのは、また執行部としての当然な責務なんです。そういうことを、共謀だとか、教唆だとか、そそのかしたとか、あおるとかいう見方で見るということは、あなた方の組合の運営というものについて、はなはだ認識の不足なことを暴露しておるのではないかと思うのですが、これはいかがでございましょうかね。
  129. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それについて一緒に答弁してもらいたい。鈴木君が質問しておることがぴたっと警備部長の方に届いていない点があるかもしれません。筋はこうなんです。最初に各学校におられる教職員に、これこれのことについてどう思うか、こうすべきである、ああすべきである、そうして賛否を求め、賛成多数によって大会を持ち、そして大会決定となって指令指示した。ところがその指令指示というものは、学校長許可があろうが、なかろうが、二会場へ全員集合せいという、そんな素朴な指示ではないと思うのです。有給休暇をとって、そして学校運営上は、これこれの措置をとって、児童生徒の学習に支障のないようにして、そうして合法的に大会に参加するというふうな指令指示、ただ単に、休暇もとらぬで逃げ出してこい、学校なんかおっぽり出してこいなどという、そんな不穏当な指令や指示は出してないのだと思います。ただ結果は、石井長官お話しのように、校長承認を与えなかったとかというような部分が事実関係としては現われたかもしれませんけれども、脱法行為をもってこうやれという指示になっておったのか、おらぬのか、この点を御答弁いただくとともに、有給休暇をとって集合することを指示しておるということであれば、そのこと自身は、直ちに共謀、教唆、こういうことに該当するのかどうか、この点も明らかにしていただきたい。
  130. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 鈴木委員から御質問のありました点は、各分会ごとに投票して、こういう大会を行うという意思を表明させる前に、いろいろな相談、協議等が行われておるわけであります。この点がやはり一つ問題となって参るのであります。なお、大会でそういう投票の結果、一応組合員の意思が表示されたといたします。これは組合員がそういう意思を表示したにとどまるわけであります。それを具体的に何月何日どこでというような方法をもって指示をされるということは、やはりそこに一つ問題が出て参ると思います。なおかつ、もう一つ御留意いただきたいと思いますのは、かりに組合の大会の決定が行われたといたしましても、そのことを実現するに当りまして、違法な行為にわたるような問題があります場合には、これはやはり組合の執行部とされましても、その点につきましては、やはり十分に御注意をされて、指令その他を出されるに当りましては、慎重な御配慮がなければならないのではないかと、私どもはそういうふうに考えております。なお、有給休暇をとって決起大会に集まるように……なるほどその文章自体には、承認を受けようが受けまいが、そういうように強行するようにという文章は、その指令自体の中には入っておりません。しかしながら、そういう指令を出されると同時に、今回問題になっておられる方々は、事前に、あるいは決起大会当日におきまして、各分会を回られまして、そして中央が出した指令を完全に実施するようにというようにして、各組合に対していろいろと説得をされておられるのであります。この点は、やはり一つ問題が出てくるわけであります。大体そういうようなわけであります。
  131. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 時間の関係がありますから私これでやめますが、今のお話の、大会決定に至るまでの執行部の動きに問題がある、さらに決定以後の、たとえば日時の指示と言いますか、指令と言いますか、そういうことに至るまでのことにおいても問題がある、こういうことでありまして、それからこれは時間がないから申し上げませんが、最後に、執行部が各学校等に出て歩いて、忠実に指令を守るようにということを指導して歩いた、これも問題がある、何も問題のない、当りまえのことなんですね。これが問題があるというところに、労働組合のルール並びに労働組合の運営なんというものについて、あなた方認識に欠けておるじゃないかと先ほど私指摘しましたが、そういうことをあらためて感じなければいけないと思うのですよ。決定事項を忠実に執行するのが執行部の役目なんです。しかも、その決定というものは、大会において決定されておる。執行部が勝手に作ったそれじゃないのです。忠実に執行できるようにといって組合に対していろいろな話をすることが、これが問題があるというのは、まことに不可解な言葉だと思うのですがね。頭つから組合のそういう決定までの、あるいは執行までのことについての、何というか、正当な認識を持たないで、はなつからどうも何か悪いことをしておるのだというふうな頭で、あれにも問題、これにも問題というふうにあなた方は考えておられるじゃないかと思うのですね。立場を変えて言えば、山口さん、あなた何かの団体執行部になってごらんなさい。その団体の総会できまったことをあなたは忠実に執行しなければいけないでしょう。そうして、その団体の構成員の中にはいろいろな意見のある人もあるでございましょう。そういう人に対しては、やはりあなたは、団体の総会においてきまったことに対して、あなた方執行部の責任上、ぜひ執行してもらわなければいけない、こういうふうにしてもらわなければいけない、当然なことなんですよ。そこに何ら共謀とかあおるとか、何とかという、いわゆる三十七条のこれによって、あなた方がこれはどうしても六十一条を適用しなければいかぬというように考えなければいけない何もそこにはないと思うのですがね。問題は、あるいは校長許可なしに職場を離れたというところにあるかもしれません。問題は、私はその限りだと思うのですがね。あなた方初めから一つ、何と言いますか、物を考えて物を言っていらっしゃるのじゃないかという感じを強くしますが、最後ですから、その点だけをお答えいただいて、あとはまた関連質問でございますから、あとの機会にしますから、その点一つ……。
  132. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 先ほどもお答えいたしましたが、そういう大会決定に至るまでの執行部の協議、相談、いろいろな動き、これはやはり問題として私は十分検討すべきものを持っておる、さらに、そういう組合員の意思が表明されました場合におきましても、その行わんとする内容が違法な問題を含んでおるというような場合におきましては、何月何日を期して、どこでどういう方法をもってとかいう具体的な最後の指令を出される際には、やはり執行部としては、いろいろと御配慮になるべき問題を持っておると、かように思うのであります。先ほど申しましたように、この有給休暇をとって大会を開くために集まるというそのこと自体の内容が、先ほどから問題になっておりますように、違法な問題であるかどうか、これはわれわれは、今回のとられました方法は違法な行為であると考えております。その違法な行為について、そういうことをするように企てたり、あるいはほかの人をそそのかしたり、あるいはそういうことをするようにといってあおったりする行為が刑事上の事件として問題になり得る規定がある、従ってわれわれはその規定適用について、先ほどからお話しがありましたように、いろいろの事項を調べ、証拠を収集して取調べに当っておるわけであります。
  133. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 ちょっと、一つ聞きのがされないことがありますから……。有給休暇をとってやることが違法だとあなた方は初めから考えておられるですね、今の言葉から。間違いないですね。
  134. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 管理責任者の承認なくして有給休暇をとっておやりになったところに問題があると思います。
  135. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 そこで、初めからこの大会決定なり、あるいは執行部の指令なんというものは、初めから有給休暇許可なしにやれということじゃないはずなんです。それをあなた方は初めから——出た結果はそういうことになっているかもしれません。先ほどの大臣のお話しでは、ちゃんと許可をとれば何もないのだと、これはその通りですよ。そこで問題は、私あとで時間を少しもらってやりますが、問題になるのは、教員が校長からの許可をとれなかった、にもかかわらず学校から出たと、こういう一つの、それだけの問題になってくると思うのです、私は。それをあなた方は初めから、何と言いますか、あたかも指令なり大会決定というものは、校長許可なしに休暇と称して学校から出て大会場へ行って、集まってこういうことをやれと、こういうふうにやっている、こういうふうに見ておるところに、私は根本的な問題のあり方があると思うのですが、この点一つ。(「それは見解だ」「また違う意見もある」「争議行為とは何ぞやということ」「事実の認定の問題だよ」と呼ぶ者あり)お答えないんですか。
  136. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) その問題につきましては、たとえば教員組合におかれまして、有給休暇のとり方について、やはり一つ法律上の解釈を持っておられると思うのであります。これは従来までいろいろと各方面に伝達されておるのであります。これは法律上の解釈でございますから、いろいろととりょうはあると思いますが、有給休暇は、申し出ればそれでとれるのだと、承認を受けるという必要はないのだというような御解釈のもとに、この有給休暇の問題を取り扱っておられるようにお伺いいたしておるのであります。(「そんなことじゃない」と呼ぶ者あり)私ども有給休暇というものは申し出をされまして、そうして承認を受けられて初めて正当な有給休暇としての事柄が成立するわけでございます。有給休暇の申し出をされましても、承認なくして行われるということになりますれば、それがやり方いかんによりましては地方公務員法の第三十七条の第一項の違反になる場合があり得ると、こういうようにわれわれは考えておるわけでございます。
  137. 鈴木壽

    ○鈴木壽君 あなたのお話から、私は三十七条の問題についてなり、あるいは基準法の有給休暇の問題を、今私それを言っているんじゃないんです。それはあなたのおっしゃるように、必ずしも申し出だけでいいというふうな解釈もないでございましょう、ただし書きがありますから。これで二つかね合せて考えた場合に、必ずしも、届出れば、それでいいという解釈にならない場合もあると思いますが、それを問題にして、一方的に届出で効力があるんだ、こういうことを言っておるんじゃないんです。事前にあなた方が大会決定に至るまでの執行部の動きに問題があると、こうおっしゃったんです。問題があるということは、はなつから許可なしにこういうことを指令しようとしたり、許可なしに休みをとって、届出だけで大衆が集まって何かやろうとした、そういうふうなことをあなた方計画したというふうに考えておられるんじゃないか。決して、組合の幹部と言いますか、執行部と言いますか、許可なしにやれとか何とかいったことじゃないと思うのです。休暇をとってやれということなんです。現実の問題として休暇はとれなかったかもしれません。初めから休暇はとれなくても、何でもかんでもしゃにむに集まれということでなかったんで、それをあなた方が、はなつから問題があるように考えておるところに納得のできないあなた方の考えがあるというふうに言うんです。あとの問題についても、執行についても私同様なんですが、そう点ですね。ですから、これは何べんもやってもらったから、一つあとで私の時間のときにやりますから、あとで時間をいただきたいと思います。
  138. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 山口さんのおっしゃるのは、教員組合自身が、何も佐賀県教組のみならず、一つの法制解釈として、有給休暇のとり方については、申し出をすれば有給休暇をとれるんだという解釈があるんだから、佐賀県教組執行部も、いよいよとなったらそういうことでも休暇はとれる、合法性ありということで指示をしたのだから、校長承認なしに出た者も、初めからそういう解釈で大丈夫だと言われておって出ておるのだが、われわれとしてはそれは非合法だと認められるんだ、従ってそこに事犯の容疑があるので、教唆扇動の疑いで執行部を検挙し強制捜査をしたんだ。しぼって行くと、そういうことになるように思いますが、そうですが。……その答えに真正面から答えられないならば、今度は裏返しに質問してみますが、裏返しの質問ということは、三割休もうが二割休もうが、それは程度のことではない。有給休暇があなたの方の法解釈のように、学校長承認があって出る限りにおいては、午前の長官の答弁のように、合法的に休暇をとっている措置であれば警察権の介入する地公法違反の容疑はない、こういうことになりますか。
  139. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 教育委員会が、そういうように多数の者が一時に有給休暇をとって大会等に参加することは控えてもらいたいという意思を明確に指示されました場合に、校長さんが、それにもかかわらず自分のところは有給休暇を出すということをもしされました場合には、その限りにおきまして有給休暇をとられたことは、これは合法的でございます。私はそう思います。ただし、その場合におきまして、校長さんのとられたその措置が正しいかどうかという問題は、これは残ると思います。残りますが、とられました有給休暇は合法であると、私はそう考えます。
  140. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その後段の部分ですね。教育委員会職員休暇を与える、    〔委員長退席、理事成瀬幡治君着席〕  欠勤のそれを許可する、これらの権限はない、校長にしかない。従って校達の権限をもって、教育委員会がいかように言おうとも、学校経営上支障なしとして許可を与える、そして休校する、その限りにおいては何でもない、当然だと思います。また校長自身に問題が残るといっても、それは警察自身の地公法違反の容疑の対象にはならない、これも明らかであると思います。それで今回の場合、この大会決定の内容が違法な問題を包蔵しておるという答弁はあなたがしておるのですが、違法になる場合もあり、ならない場合もあり得る、こういう二面の問題を持つ内容であるということであろうと思うのです。で、違法であると、違法になる可能性があるということは、無許可であるという点だろうと思う。で、無許可であるということが違法であるとした場合には、その無許可であることが有給休暇にはなるのかならぬのかという法解釈の問題になると思います。で、労働基準法におけるただし書き条項というものは、午前中に長官もいろいろ話しておりますが、これはいろいろ学者間でも見解のあるところなんです。ですから現実問題として、今日の状況下においては、裁判においてこの問題は明らかになるところでありましょう。そう思います。しかし県の執行部がいろいろな相談をせられて大会原案を作る、そういうようなことをしましても、その内容自身が無許可でもいいから集まれ、そういう教唆扇動をした事実、容疑があるということであるかどうかという点を明らかにしてもらいたい。
  141. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 先ほど言いましたように、一つ法律上の解釈をお持ちになりまして、    〔理事成瀬幡治君退席、委員長着席〕  これはたびたびの場合に中央から流された、さらに地方におきまして、それは各分会に対して法律上の解釈として流されておるのであります。その解釈は、有給休暇というものは、申し出をすれば、承認を得ようが得まいが、承認を与えようが与えまいが、申し出をすれば権利としてとり得るんだ、逆から申しますと、たとえ承認がなくて休んでもそれは合法であると、こういう御解釈に立って事を進められておるのであります。従いまして、そういう解釈のもとに、それを前提として有給休暇をとって大会に集まるようにという指示が出されまして、その事前事後におきましても、県の教育委員会、市町村教育委員会あるいは校長さん方から、そういうことをしないようにということを極力説得されたにもかかわらず、なおかつ行われておるということであれば、われわれといたしましては、地方公務員法の三十七条違反の容疑をもちまして取り調べをいたさざるを得ない、こういうことになる。
  142. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そういう中央の組織からの法解釈があり、その法解釈によって、申し出さえすればいいのだから集まれという指示をした、こういうことですか。
  143. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) そういう法解釈は、これは従前から一貫して組合としてはとっておられるわけで、少くとも執行部としてはそういう考えをとっておられる、そういうことを前提にいたしまして、有給休暇をとって集まれという指令を出され、各方面に反対があるにもかかわらず、あえてそれを強行された、しかも執行部の人々は、この今回の指令を完全に実施するようにということで各分会を回られて、いろいろと説得をされるということであれば、三十七条違反の容疑が出て参る、私はかように考えます。
  144. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そういうやり方で法律上違法である、違法の容疑があるということであれば、それはその解釈を自分のものとして大会決定に基いて組合員が行動した、その組合員の職場離脱なり何なりという職務上の問題として、行政上の問題として阻止されることではないのですか、争議行為というものではなくて、二十九条等によって、個々の教職員がそれぞれの該当する事項として行政上の措置をされるのが至当なのであって、警察権が三十七条でこれに介入してくるということはおかしいじゃないですか、どうですか、その点は。それは教職員校長との個々の関係に立っておるのですから。そして明らかに指令、指示等でこの法解釈を押しつけて、そしてそれによって出ろ、また説得するのにも校長許可なしでもいいのだから出て行けということになるのですか。
  145. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) ちょっと最後のところ……。
  146. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 執行部が大いに説得して歩いたということですが、これは大会決定に基いて完全に履行されるように説得して歩くのは、それは執行部の責任であって、事のいかんにかかわらず何事でも、その場合でも校長許可がなくてもかまわないのだ、申し入れだけしてさっさと大会に出てくれ、こういうことで教唆扇動をしたということですか。
  147. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 先ほど申しましたように、有給休暇についての一つ解釈を前提とされまして、そしてあの指令を完全に実施するように説得して参る、一方においては教育委員会学校長、いわゆる管理責任を持っておられる方々が、そういうことはしないようにと言って、極力説得をしておられる、しかも一方においては、あの指令を完全に実施して一時休みをとって集まるようにと、こういうことになっておるわけでありますから、これはやはり三十七条の違法な行為を、あおり、そそのかすという三十七条の一項、それから六十一条四号の容疑が出て参る、私どもはそういうふうに考えております。
  148. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 この問題は、結局現実問題となって、ここまでくれば、裁判によって争うということにならざるを得ないだろうと思いますが、しかし、さっきも申し上げましたように、有給休暇のとり方については、これは解釈上いろいろの論議のあるところである。あなた方の考え方というものが成り立つか成り立たぬか、これは争ってみなければわからぬことだと、私はそういうふうに思います。従って時間もありませんから、またあとの人たちがこの点はお話しになるだろうと思いますが、少くともこの種の問題が起る場合に、初めから有給休暇をとる形式が非合法であってもかまわぬというような意思をもって、教育者である者が行動に出たとは私自身信ぜられない。解釈上の問題でいろいろ紛争が起ってきておるというふうに私は考える。だから、まあこれは将来の問題といたしますが、さて、さっきの私お尋ねしておりましたこの強制捜査にからんで行き過ぎがあったか、なかったかという点については、逐一事情を御調査になっておられますか。
  149. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 今回の捜査につきましては、現地としては、もちろん検挙に着手しますまでに非常に慎重に考慮いたしました。着手しまして後も、特に学校あるいは教育、子供に及ぼす影響というものを考えまして、慎重の上に慎重に行なっておると私は思います。そういういろいろな報告を聞きましても、そういう跡が十分にうかがわれると私は思うのであります。従いまして、今回の強制捜査につきましては、私どもといたしましては行き過ぎの点があったというようには実は考えておりません。たとえば任意出頭を当初求めましたのは、先ほど長官が言われた通りであります。そして途中で何か県の教組の方から、きょうこれから緊急の代表者会議を開くので、任意出頭を求められておる者を全部帰してもらいたい、出席するようにという御連絡が実はあった、私の方はそれをやはり御本人にお伝えいたしております。こういう会議があるということで、皆帰ってこいという連絡がきたのだがどうされますかと、こう申したところが、それじゃ私は帰りますと言われる方もありました。そういう場合、これはやむを得ず、証拠隠滅のおそれあり、通謀のおそれありということで、その場で逮捕状を執行いたしましたという事例もあります。しかしながら、今回の捜査全般を通じまして、私どもといたしましては、現地警察の行いましたことは十分に慎重の上に慎重の配慮をいたしましてやっておるものと、かように考えております。
  150. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そんなにまで任意出頭を求めた者に、帰ってこいと言ってきておりますが、どうしますか、帰りますと言ったら、とたんに逮捕状を出した、(笑声)やむを得ず。そんなことは慎重の置きどころが違う、ここで答弁する限りではない。長官の方は、強制捜査しなければ徴細な点については証拠隠滅のおそれがあるから逮捕状を請求しているのだということを言っている。警備部長もなかなかうまいことを言うものだから、まあそれはその点でいいが、検事正は深夜取調べたこともある、この点は行さ過ぎであったということを言っておる、そういうこともなかったのですか、その報告はありませんか。
  151. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 特に深夜にわたりまして長時間に調べたというような報告は受けておりません。ただ、御承知のように取調べに時間の制約があります。いろいろと取調べ状況いかんによりましては、場合によっては夜間において取調べをするということもあり得ますが、今回のことにつきましては、現地警察としましては、非常に細心の注意を払ってやっておるということは、私ども十分にその報告その他によりましてうかがえると思うのであります。御指摘のような点につきましては、私どもといたしましては、捜査の行さ過ぎ、あるいは人権じゅうりんというようなことにわたるようなことはなかったものと確信を持っております。
  152. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 最後のこれはお尋ねになるのですが、長官は、先ほど来の鈴木君の質問に対して、本部は法解釈によって佐賀警察本部長の解釈通りでいいということだけを伝えておるので、本部長の責任で一切の捜査に当っておるということを言いましたが、県の執行部と言いましても、佐賀県教組はたぶん各郡支部等もあり、あるいは連合体ではなかったかとも思われますが、この点ははっきりしませんからお尋ねしませんが、県の執行部の範囲にとどめて強制捜査をし、その県で共同謀議の事実を確めて行くこと等にからんで、何ら警察庁自身が協議しておらない、全部本部長の責任だということで、実際全国的な重大な事案、ことに国会等で問題になるような問題を、そういうふうな扱いでまかせ切っておられるのですか、そうして報告だけ受けて、行き過ぎのないように、行き過ぎのないようにと御心配だけなさっておられるのですか。
  153. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほどもお答えしました通り、現在の警察法の建前からいたしまして、個々の地方における日常生起する事件につきましての捜査については、私はこれを指揮する権限を持っておらないのでありまして、国の公安にかかるというような、ある限定されたことについてのみ権限はありますけれども、それ以外につきましては、実際の都道府県における本部長が最高の責任者でありますので、もし私がああしろ、こうしろと言えばこれは越権行為になる。ただ、今回の佐賀の問題のように、地方公務員法違反として初めて取り上げるというような問題でありますから、私は私なりに、慎重にやるようにという抽象的な助言はいたすこともできます、またやりました。そういう事以外につきましては、先ほど来お話しいたした通りでありまして、法解釈等について照会があれば、それに対して連絡をしてやるというのは、私ども立場でできるわけであります。警察法の精神にのっとり、私どもは忠実に行動しているつもりでございますので御了承願います。
  154. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 午前中に、長官は行政処分その他のことにかかわらず、非合法なことがあれば、やはり警察取調べをし、犯罪事件として臨検するのは当然のことだということを言っておられる。それから先ほどは山口警備部長は、佐賀県教組執行部のそれに対して、非合法なことを指示し、指令しておる。従ってこれを取調べるんだということを言っておりますが、それに関連して、私、結果として、校長承認を得る得ないが合法か合法でないかはわからぬので、あなたがかりにおっしゃる通り校長に合法的に措置して有給休暇をとって大会に集まれというのに対して、そういう指令をしたのに対して、出先のものがそうでないような形で大会に集まった。従って、はね返って県の執行部の共同謀議責任を追及すると、こういうことでかりにあるとすれば、それに似通ったことを私お尋ねしたいのですが、この間の新聞で見ると、福岡県の高裁における菅生事件の戸高なる者は、警察官が駐在所へ脅迫状を書いて出したのです。あるいは、ダイナマイトを非合法に持ち出してある者に手渡した。この点だけは明らかになっているようですね。しかしこれは共産党の非合法活動を、うちに入って捜査するがための指令を、大分県警察本部長ですか、警備部長ですか、わからぬのですが、それから指令を受けてこの人間はその行為に出た、こういうのであります。従ってその二つの行為が、まずこの犯罪容疑ありなしということが問題です。まあスパイ捜査の限界というものもあるでしょうが、世論はこの戸高という者のやった行為は許しがたいものとしておるようです。行き過ぎのように考えておるようです。私もそう思います。そうすると、職権によって命令された戸高は、命令の範囲内なりと心得てこの種の行為に出た。しかしこれは非合法なことをやっておる。指令、指示した者は大分県の警察幹部である。そうすると、この指令、指示を与えた警察幹部は、なぜ、強制逮捕、取調べを受けないで、便々として新潟県あたりで警察官をしておるのですか。
  155. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 御指摘になりました菅生事件の場合は、これは警察として犯罪を予防し、あるいは犯罪を検挙、また公安を維持するという職責を持っておるのであります。従って当時の共産党のいわゆる非合法な軍事方針というものは、警察当局として十分にその職責上察知しなければならない。そのためにはいろいろな方法もございましょうが、強固な地下の組織を持っております軍事組織の中のことは、なかなか容易にとれるものではなかった。従いまして、もう万やむを得ず、当時の警備部長が、党の軍事活動の実体をつかむために戸高君を、潜入と言いますか、党組織の中に入るように話して、入って行ったわけであります。御承知のように、後藤被告の命を受けまして、そのレポ文を持ちまして、これをだれだれのところへ行って、向うの渡す物を持ってこいと、こう言われたものですから行きました。そしてその渡された物を持って帰って来た。そしてそれを本人に直ちに渡した。そのことは上司である警備部長に逐一報告がしてあるのであります。脅迫文につきましては、やはり後藤被告が、自分が書くと、おれの字は、癖があってすぐわかるから、お前は来て早早だし、お前がおれの言う通り書けということで、あの被告が見ておる目の前で、後藤という被告が口述するところに従ってそのまま書いたわけであります。そしてそれを本人に渡した。これを後藤ともう一人の被告が持って行って投げ込んだというのが、これが実情であります。これを、それは共犯というか、犯罪の容疑ありというようにお考えになるのも一つの考え方でありましょう。しかしわれわれとしましては、これは当時の警察、また当時の情勢のもとにおける警察あるいは警察官の職務活動としまして、違法性を阻却するものとわれわれは考えております。しかしながら、この問題について、あるいは検察庁等におかれまして、独自の立場から戸高君等につきまして取調べの必要があるということであれば、私どもはそれは戸高君等もお取調べを受けるつもりでおる、かように申し上げたわけであります。なぜ警察が調べないかということを盛んに言われたわけでありますが、この段階におきましてわれわれが取調べをするということは、そうでなくてもいろいろな目でごらんになられやすいのでありますから、そういう疑惑を避け、公正な御調査を願うという意味におきまして、これを検察当局にわれわれとしては全く御一任いたしておるというのが現在の段階でございます。
  156. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それも解釈、これも解釈では、これはまことに御都合主義のように聞えて、非常に私警察に対して不愉快な感じを持ちます。少くとも脅迫文を、自分の意思にあらず、手が勝手に書いたというわけのものではない。同じ党員としてその中に入って、そうして党員としての活動としてそういうことをやったのです。あるいはダイナマイトを運んだ。そればただ運搬しただけで、しかし、その、ダイナマイトはいわゆる地下工作で危険なことに使われるかもしれない。もしもそのダイナマイトが使われてどこかで爆発したとなったら、それはおれが運んで行っただけなんだから、おれの関係ではないということになりますか、一般の民間でそういうばかなことをやって。それはスパイで、初めから上司に報告しているのだから、警察官同士でなれ合って、報告し合ってさえおれば犯罪の容疑はないということになりますか。あんまり勝手なことですよ、それは。
  157. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) それは警察官が犯罪捜査の、あるいは犯罪の情報収集の目的をもってそういう行動をした場合に違法性を阻却するかどうかという問題でありまして、一般の者がした場合に犯罪になりますかという御質問でしたが、これは全く論外のことであろうと私は思います。警察官が職務上そういう行為をやむを得ずやった場合に、違法性を阻却するか、しないかというところが問題の点であります。
  158. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そういう点がまだ問題だぐらいにしておるのですか。石井長官、やむを得ず警察官として犯罪捜査の必要があれば、目的さえが犯罪捜査ということであれば、その種の行為をやろうが、どの種の行為をやろうがかまわない、それは警察官の特権だというようなことが警察法なり何なりのどこに書いてあるか。そういうことを警察法が期待していますか。予期していますか。われわれはそうは思わない。今日の自治体警察から国警になる。われわれ社会党としては反対した。その理由は、民主警察という建前が阻害されるのじゃないかという心配があった。しかし、反対したからといって、今日の国警なら国警に対して、われわれ自身がこれを否定し、反対しておるものではない。石井長官並びに幹部が再三言うように、民主警察として、そしていかなる政治権力にも屈しない、ほんとうにしっかりした民主国家にふさわしい警察、あるいはその警察権を執行するということをわれわれ常に期待しておる。そういう意味においては、われわれといえどもこの委員会を通じて協力しておる。単に反対のための反対を石井さんその他の方々に申し上げたことは私はない。それは、スパイ捜査そのものはやむを得ない場合として認められるということがあろうとも、いかようなことをやってもいいということにはならない。限界はある。世間はやはり、この警察に対して不審を抱くでありましょう。私だけですか、山口警備部長が今言うようなことを世間が承認しますか。それは断じて承認しない。抽象的に言うならば、その問題が発展するならば、われわれ一般国民の身辺がスパイ捜査せられる。人権が侵害せられる。そういう恐怖の念を持つということは当然ですよ。それも一つの問題であるということだけで済ましておられる問題ですか。しかも、その戸高君なる者が、その事実があってから、何年どこを歩いたか。世間は、これも警察側においてそれぞれ保護したか、隠匿したか、かばっておったんだろうというふうに、新聞記事その他から類推しておる。警察がそういうことまでしたというようなことを思われて、それでいいのだということにもならないだろうし、私も遺憾だと思う。石井長官の私は見解をお聞きしたい。このことは、当委員会等でも取り上げて云々するという問題としては、やっぱり慎重に考えらるべきこととして、多分委員長としてもお扱いになったと思う。しかし、佐賀教組事件について、こういう指示があったから、出先の者が、そういうようなことをやったから、指示した者がひっくくられるんだということであれば、この菅生事件でもそうじゃないか。端的に、常識的に私はそう考えたから、これを申し上げるので、石井長官は、いやなことを聞きやがったなと、腹の中では思っておるかもしらん。私もこれはいやなことです。聞きたくないことです。しかし、山口部長があまりりっぱなことを答弁するから、やっぱり言葉が走って、長官にまで答弁を求めなければならなくなった。ほんとうに警備部長が考えている通り、天地神明に恥じない、戸高をしてそうせしめたことは当然であると言明できますか。
  159. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 民主社会における警察のあり方につきましては、機会あるごとに、諸先生からもいろいろと御教示をいただいております。全く私どもも同感に考え、現在の民主警察のあり方については、絶えず、中央といわず地方といわず、真剣に反省し、精進を続けておるのでございます。いまだ必ずしも理想的な域に達していない点が若干と申しますか、多々あるかと思いますが、そういう点は、まだわれわれの努力精進の足らないところであると、常に反省を加えつつ、今後一そうの努力精進を続けて参りたいと、私自身はもとより、第一線の警察官も、常にその点に心を砕いて、精進をいたしておるのでございます。その点は、御了承を願いたいと思うのでございます。  ただいま、菅生事件に関連をしましての御発言がありまして、警察は、職責遂行のためには、いかなる方法手段をとってもいいのか、許されるのかというお尋ねであったかと思うのでありますが、やはり警察の職責遂行といえども、法に許されたる範囲で行われねばならぬことは申すまでもないところでございます。ただしかし、正当な職務執行のためには違法性を阻却されるという問題が、これは刑法の規定にもございますので、そういう場合も、ときにおいてはあり得るということになろうかと思うのでございますが、ただいま例示されました菅生事件の場合も、戸高君の行為が、ただいま警備部長のお答えしましたように、違法性を阻却する問題であるかどうかという点は、確かに重要なポイントであろうと思うのでございますが、当時の社会情勢下に起ったあの場合のああいうケースといったものは、これは全く異例なことであると思うのであります。今日の情勢の違う現状におきましては、そういうことは簡単にあり得ないことであろうと思うのです。あの当時の社会情勢の中における警察の置かれた立場上、職責遂行上、やむを得ざる例外的な措置としてとられた。当時の大分県警察本部の警備部長の指示に基く戸高巡査部長の行動が果して違法性を阻却するものであるかという点は、確かに重要な研究課題であると思うのでありますが、私ども今日までの研究の結果におきましては、ただいま警備部長がお答えしたような見解を持っておるのでございますが、しかし、さらに公正な第三者の立場においては、そうではないという意見も確かにあろうかと思うのであります。その点は、警備部長がただいまお答えしましたように、公正な立場において、検察当局がこれを調査する必要があるならば調査していただき、それがまた、事件として取り上げなければならぬということであるならば、また指摘をしていただかねばならぬのであって、われわれが警察立場で取り上げるということであれば、とかくそうでなくとも何に見られるおそれがありますので、私どもは、この問題に関する限りは、検察当局におまかせをする、こういう態度をとっておるのでございます。今後この種のことがそれでは、今後でなしに、現在においてもあちらこちらに隠されてあるのではないか、こういう御疑惑を受けますならば、私まことに不本意でございまして、社会情勢の違う今日におきましては、私たちは、そういうことは絶対にないと確信をいたしております。また、今後そういう疑惑を受けるようなことがないように十分戒心して参りたいと思います。
  160. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私は、この事件の方は、福岡の高裁で進行中ですから、その結果を見て、また当委員会が取り上げるなら、取り上げるまで待つ方がむしろ即断しないという意味でいいだろうと思いますから、これだけにとどめ、また公安委員会見解というものも実は聞きたいのですが、この機会に聞くことは適当でないと思いますから、あえてお尋ねしません。が、少くとも、社会情勢がああいう事態で緊迫しておった、そういうことであればやむを得ないのだという考え方、こういうものは、民主警察のあり方としては取り去って、あくまでも科学的な捜査ということで御研究を願いたいということを要望申し上げておきたいのです。しかも、えてして小さな事件でも大きな事件でも——いやなことを石井長官に申し上げるようで、はなはだ相済まぬのですが、警察官の非行であるか、あるいはボーダーラインであるか、それらのものに対して、信賞必罰という制度がはっきりしない。かばう。俗に言う、かばうという印象が濃いならば、これはやっぱりこの警察一家とか、あるいは警察権乱用、警察ファッショというようなそしりは免れないだろうと思う。国鉄一家なんて言って、つつかれた部分だけちょっと問題が出る。そして、直ったかと思うと、またつつかれるとまた出てくる、こういうあり方は、私はいけないのではないかと思います。しかしまた、一方警察官の士気にも関することとして、幹部である皆さんがいろいろ配慮せらるるということも、これは十分考えられる点である。しかし、もう限界限度というもの、けじめというものははっきりしなければならぬ。われわれしろうとですからわからぬので、抽象的にはそう言えるのじゃないかと思う。少くとも警察一家、警察部内のことなら警察内においてそういう解釈もある、こういう解釈もあると抗弁し、そうしておさまってしまう、そういう印象を与えることでは、ほんとうに民主警察としての信頼を国民につなぐゆえんにはならぬと思う。この点においては、戸高問題等についても、それは検察庁の客観的なあれを待つのだ、そしてわれわれ警察当局の見解はこうなんだということだけで済まし得るものかどうか、これは、今後において十分検討してもらいたいし、われわれもこれは検討しなければならぬと思います。  話が横道にそれましたが、少くとも警察官というものはいいもんだなという変な誤解は与えないような、りっぱな警察になるように、石井さん日ごろ主張しておられるようにやっていただきたい。佐賀県教組事件については、非違があったらまたあとでただすことにしまして、委員長から時間時間と言われるから、まあ本日は、この程度にいたします。
  161. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) お答えをさせていただきます。警察がくさいものに蓋と申しますか、警察官に非行があっても、えてしてそれをかばい立てして、世間の目をごまかすと申しますか、そういったことがあってはならぬという御叱正をいただいたのでございますが、私も全く同感でございまして、従来数多い警察官の中には、警察官として好ましくない、品位を傷つけるような非行をあえてしたものも数多いのでございますが、そういうものに対しましては、いわゆる信賞必罰の原則にのっとりまして、泣いて馬謖を切ると申しますか、罰すべきものは大いに罰すると同時に、半面、先ほどもありました通り警察官の士気高揚ということも考えなければなりませんから、ほんとうによく職務に忠実に精励する者に対しては、これを賞するという点も十分考えて、いわゆる信賞必罰の原則を明らかにして、明朗にして闊達なる、しかも職務に忠実な、国民の信頼と期待にこたえる警察官たらしめるべく、日ごろ指導、教養におきましては、十分努めておるのでございますが、何分にも教育というものは非常にむずかしいことであり、また、相当時間をかけなければ、その成果というもののあがらないことは、御承知通りでございまして、私ども、今日民主主義下の警察官一人々々をりっぱな紳士たらしむべく、教養には相当な金もかけ、時間もかけ、また貴重な国費、地方費もこれに相当注いで、努力しているのでございます。何分にも問題がきわめて重大な問題でありますので、短時間にしてわれわれの希望するような成果を上げ得ないようなうらみがありますけれども、今後とも、その点につきましては、さらに努力をし、精進いたしまして、ただいま御指摘になりましたような点につきましては、十分反省いたしまして、りっぱな紳士たらしめ、国民の信頼と期待にこたえ得る警察官たらしむべく、今後一そうの精進をすることをお約束いたしまして、お答えといたします。
  162. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 本件に関する残余の質疑は、後日に譲ることにいたしまして、本日は、これにて散会いたします。    午後四時十五分散会