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1957-04-16 第26回国会 参議院 地方行政委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十六日(火曜日)    午前十一時十二分開会   —————————————   委員異動 四月九日委員鈴木万平君、青柳秀夫 君、成田一郎君及び千田正辞任につ き、その補欠として吉江勝保君、森田 豊壽君、小柳牧衞君及び白木義一郎君 を議長において指名した。 四月十二日委員占部秀男辞任につ き、その補欠として松浦清一君を議長 において指名した。 本日委員松浦清一辞任につき、その 補欠として占部秀男君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     本多 市郎君    理事            大沢 雄一君            小林 武治君            加瀬  完君            成瀬 幡治君    委員            伊能 芳雄君            小柳 牧衞君            館  哲二君            安井  謙君            吉江 勝保君            占部 秀男君            鈴木  壽君            森 八三一君   政府委員    自治政務次官  加藤 精三君    自治庁行政部長 藤井 貞夫君    自治庁選挙部長 兼子 秀夫君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君   説明員    自治庁税務部市    町村税課長   鎌田 要人君    大蔵省主計局税    関部長     山下 武利君    農林省農林経済    局農政課長   富谷 彰介君   —————————————   本日の会議に付した案件地方行政改革に関する調査の件  (農業委員会等に関する法律の一部  改正案に関する件) ○特別とん譲与税法案内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 本多市郎

    委員長本多市郎君) これより委員会を開きます。  まず、委員異動について報告いたします。四月九日、鈴木万平君、青柳秀夫君、成田一郎君、千田正君が辞任せられまして、吉江勝保君、森田豊壽君、小柳牧衞君、白木義一郎君がそれぞれ補欠選任されました。  また、十二日に占部秀男君が辞任されまして、松浦清一君が補欠選任されましたが、本日占部君が再び委員となられました。  以上御報告申し上げます。   —————————————
  3. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 本日は、まず地方行政改革に関する調査として、農業委員会等に関する法律の一部改正案に関する件を議題に供します。長に対して陳情がありました。その陳情を聞いてみますと、今回の農業委員会等に関する法律の一部改正のその改正点の中に、農業委員会において、この農業委員選挙公選になるに伴って、その市町村単位農業委員会の中に選挙区を設けて選挙することができるようになる。その場合、選挙区を単一でやるか、二つ以上の区に分けるかということについて、分けてやるという場合には、知事承認を得て、その条例の制定をしなければならないというような点、さらにまた、農地主事任免について県知事承認を受けなければならぬ。不利益処分を受けた場合には、農林大臣意見も徴して措置しなければならぬ等のことがありまして、このことは、市町村条例に制限を加えたり、また、一般人事等に対して例外を設けるものでありまして、これは、市町村自治権という点から相当影響があるのではないかと考えましたので、私は、直ちに農林委員長をたずねまして、農林委員長に、この点について地方行政委員会において審議をしたいと思うから、できることならば、採決を少し延ばしてもらいたいという申し入れをいたしました。ところが、その午後の農林委員会理事会相談の結果、どうしてもその案件は、本日中に採決しなければならぬということになりまして、いろいろそれには、二、三年も継続審議にかかっていた問題でもあるという経緯もあって、とうとう採決されてしまったわけでございます。  そこで、昨日理事会を開きまして、どういうふうにこの問題をするか、委員会として取り上げるか取り上げないか、また、どう処置するかということについて相談をいたしましたが、いずれにしても一、地方行政に関する問題であるから、一応ただいま申し上げましたような改正点について、いかなる影響があるかということを自治庁意見も聞き、農林省意見も聞き、その上で適当な措置を講じようではないかということになって、本日第一に皆さんに御相談を申し上げる次第でございます。  以上の経過でございますので、どうぞ本件について質疑がございましたら、順次御発言を願いたいと存じます。  それじゃ、委員長から質問いたしますが、今回の農業委員会等に関する法律の一部改正案につきまして、自治庁として、どういう点がどういうふうな関係を持ち、御意見はどうであるかという点を、ちょうど選挙部長行政部長が出席されておりますので……ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  4. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 速記をつけて。  それでは、本件について、まず農林省意見を聞きます。農林省の御意見一つ
  5. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 農林経済局農政課長でございます。この農業委員会等に関する法律の一部改正案は、去る二十四国会政府案が提出されまして、そのとき以来今日まで、三回の国会にわたって継続審議となっておるものであります。二十四国会に提出されました政府案原案は、これはまた、昭和二十九年ごろから農業団体再編成問題としまして、いろいろ関係者の間で議論が重ねられた結果、一応の成案が得られて、作られたものでございます。さような経緯がございましたのでありますが、去る二十五国会におきまして、衆議院農林水産委員会の自民党及び社会党の両党一致修正案と申しますか、新しい提案でございます。これが出て参りました。それがただいま御審議になっております法律案でございます。その法律案政府案との違いを申し上げますと、今問題になっております農業委員会委員選挙方法であります。これは、政府案の場合には、部落推薦制ということをとっております。これが議員提案の場合には、公職選挙法によります選挙に変っております。この点が一番相違が大きい点であろうと思うのであります。その結果、二十五国会では継続審議となっておりまして、本国会におきまして、衆議院農林委員会におきまして、全会一致で御採決になったわけであります。それがまた参議院の方に参りまして、参議院農林水産委員会で、ただいま委員長からお話がございました通り、先週の木曜日、十一日でございますか、採決となったような経過となっております。  以上、簡単でございますが、従来の経過を申し上げました。
  6. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 意見はありませんか。議員提案並びにそれに対する意見
  7. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 国会の方でおきめになりました法律案でございますので、私どもといたしましては、この施行に当りまして、国会の御意思を尊重しまして、できるだけ適正な運用をいたしたいと、かように考えております。
  8. 兼子秀夫

    政府委員兼子秀夫君) 選挙部長でございますが、私ども関係いたします条文は、改正案の第十条の二の規定でございますが、第二項といたしまして、選挙区を設ける場合におきまして、「都道府県知事承認を受けた場合に限り、政令で定める基準に従い、条例で、」「選挙区を設けることができる。」このように規定がされておりますが、公職選挙法の第十五条の第五項に、市町村議員選挙区の規定がございまして、これは、「条例選挙区を設けることができる。」と、議会にそのまままかしておるのでございます。そのような思想から申しますと、やはり農業委員会で、選挙区につきまして、自律の原則に従いまして規定をするということが至当ではなかろうかと思うのでございます。  それから、選挙区を設けます場合に、政令基準を定めるようになっておりまするので、それで足りるのではないかというふうに考えるのでございます。知事承認を受けるという、この考え方につきましては、知事承認にかけるという考え方が果して適当かどうかという点につきまして、疑問を持っておるのでございます。  以上三点でございます。
  9. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 行政部関係問題点は二つございます。  その第一点は、二十条の三項関係でございますが、これは、農地主事任免につきましては、「都道府県知事承認を受けなければならない。」ということに相なっておるのであります。もちろんわれわれといたしましても、農地行政重要性ということは、十分に認識をいたしておるのでございまするけれども、一方、地方自治建前との間に調整をとって参らなければならないという点も、これは等閑視することができないのではないかと思っておるのであります。市町村農地主事というものも、これは市町村職員でございます。なるほど、農業委員会が任命の主体になるものでございますが、農業委員会自体市町村行政委員会でございまして、農地主事市町村職員たる身分を持っておることには、これは間違いがないのであります。ところで、その市町村職員である農地主事に対しまして、その任免について、知事承認にかからしめるということは、市町村の持っておる人事行政というものを、知事が直接規制をするということになるわけでありまして、この点、市町村自主性人事行政独立性ということを軽視することになるのではないかということで、この点、適当なる措置ではないのではないかという考え方を持っておるのであります。以上が第一点でございます。  その第二点は、二十条の六項、七項に関する問題でございます。これは、農地主事というものの職務重要性から考えて、その身分保障と申しますか、利益保護を厚からしめる趣旨に出でたものであろうとは思いますが、農地主事がその意に反して免職された場合等におきまして、「農林大臣にその事情を述べることができる。」さらに、農林大臣が、その案件について、必要な場合には、意見が述べられるという建前にされているのであります。ところで、これは、御承知のように、地方公務員法というものが地方公務員に対する基本的な法律になっておりまするが、この地方公務員法におきましては、すでに、このようないわゆる不利益処分に該当いたしまする場合には、職員人事委員会なりあるいは公平委員会に対して救済を申し立てることができる体系にされているのであります。これに対して、さらに農林大臣事情を述べるというような建前をとりますることは、必要でないのではないか、また一面、地方公務員に対する人事行政について、言いかえれば、国の関与を認めることにもなりまするので、そういう意味からいって、地方自治建前からいって、いかがなものであろうかというふうに考えているのであります。  私たちの立場といたしましては、以上申し上げた理由で、二点について疑問を実は持っているわけでございますが、なるほど、農地主事職務というものの重要性は十分わかります。しかし、これらのことが、現在の地方自治建前について相反する結果にならないかという点と、もう一つは、一番心配をいたしまするのは、各省立場から見まして、各省仕事が円滑に行われていく、法律趣旨通りにそれが実施されていくということは、何ものにも増して関心の的であるはずであります。そういう面から見まして、各省それぞれの立場から、このごろ法律では、それぞれの事務を担任をいたしまする職名を持った地方公務員が、法律等で置かれる場合が多いわけでありますが、そういうような場合に、各省が、非常に仕事が重要であるからと申しまして、おのおのの法律で、それぞれの地位にある地方公務員を個々に規制をしていく、あるいは身分保障の名において関与を認めていくということに相なりました場合において、全体として、地方公務員の制度の体系というものがくずれてしまいはしないか、ひいては、市町村自治というものについて最も重要な市町村職員任免権というようなものががんじがらめになるような可能性も出てくるのではないか、そういう点について非常に心配を申し上げているという点を、付け加えさしていただきたいと思います。
  10. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 御質疑がございましたら、順次御発言願います。
  11. 加瀬完

    加瀬完君 農林省関係の方に先に伺いますが、農地法が施行されましてから、その後、累年農地転用壊廃ということが相当の進度で進んでいるというふうに私どもは聞いているのであります。三万町歩前後というものは、大体つぶれ地になって消えていく、こういうことでありますと、一体そのつぶれ地というものを補うだけの造成計画というものが、現状政府計画では、あまりはっきりと立っておらないようでありますので、そうなって参りますと、一体つぶれ地を何とかして少くしようということが、農地確保する先決問題じゃないか、こういう意味合いでは、農地行政の方の農業委員会、旧農地委員事務の範囲というものを特に重く考えなければならないのじゃないか。それらについて、一体今までの農業委員というものは、果してこの農地確保だけの業績というものを市町村農業委員会というものは積んでおったものか、遺憾な点はなかったか、この点、まずお答えをいただきたいと思います。
  12. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 御指摘通り農地壊廃というものは、大体年々二万五千町歩から三万町歩出ておるのですが、その大部分が工場用地あるいは宅地等への転用でございまして、一方、農地造成は、土地改良の五カ年計画、ただいまの経済五カ年計画にも盛られているわけでございまして、それで、開墾あるいは干拓が行われておりますが、一方、災害によりまする壊廃もございまして、なかなか農地の増加ということは望めないような事態になっております。一方、農業委員会が、従来農地転用等につきまして、これを処理して参っているのでございますが、ただいま、昭和二十九年までの資料しか持っておりませんですが、昭和二十九年におきましては、五千六百三十六町歩転用の許可が与えられております。かような次第でございますが、御指摘の点のような、農業委員会は、今日までその職務が適切に行われなかったというような例というのは、私ども特に心当りはございません。
  13. 加瀬完

    加瀬完君 これは、地方行政の上に非常に大きな問題でありますけれども、近ごろ公団住宅関係が非常に敷地の提供を農地関係に求めておる。現状でも問題になっておりますのは、都下の日野ですか、それから埼玉県の所沢、千葉県の松戸といったような所は非常に問題になっておって、御承知通りであります。松戸の例で見ますと、帳簿上では、三割四分七厘の減歩率というものを、都市計画法を適用されて提供しなければならないという形をとらせられているのであります。実際なわ伸びを入れますと、四割近いもの、三割七分強というものを減歩率として認めさせられておる。これでは、農地所有者そのもの意思にかかわらず、一つの国策といいますか、住宅政策といいますか、あるいは都市計画といいますか、こういうものによって農地がつぶされていく。ところが、その土地農業委員会というのは、農地をつぶすことに協力して、さっぱり農地確保することには、あるいは農民利益というものを確保することには、懸命な努力を払っておらない。あるいは地方自治体農業委員会と同じになって、農地のつぶれて参ること、あるいは四割に近い減歩率というものを、本人が好まないのにもかかわらず、そういう結果を示されることを結局認めざるを得ない。こういう現状がこの東京の近くにはたくさん起っているわけでありますが、御存じでしょうか。
  14. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 御指摘通り都市近郊農地転用というのは、非常にむずかしい問題がございまして、再々そういうような事例が起っておることは承知いたしております。
  15. 加瀬完

    加瀬完君 その場合、一体農業委員会の職責というものは、少くも、それは全体の行政的な立場、あるいは国の政策的な立場から、何も土地だけを確保しなければならない、つぶれ地を一寸一分といえども起してはならないということは申しませんけれども、少くも農業生産が下降したり、あるいは農地所有者利益がつぶされたり、そういうことを唯々として見のがすという農業委員会あり方というものは、私は、はなはだ不当なあり方、ふに落ちないやり方だと思わざるを得ないのであります。その点はどうでしょう。
  16. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 都市近郊で、発展して参ります住宅のために農地がつぶれる場合には、これを許可しない方がいいのか、あるいは転用を許可する方がいいのか、この判断は、なかなかむずかしい問題でございまして、一概に農地として確保することが国のためになるということも、必ずしも申せないのじゃないかというふうに考えております。この、何と申しますか、農地転用基準というものを一般的に、だれでも納得できるような基準というものができればいいのではないかというような考え方から、農林省では、現在、転用基準というものをどういうふうに持っていったらいいだろうかという作業をいたしております。
  17. 加瀬完

    加瀬完君 その公団住宅敷地に対して都市計画法を適用する、こういうことを、農林省建設省関係と合議の上で、農林省自身も賛成をしておる。完全なる農地形態をしておるところへ、住民の都市計画をしてもらいたいという意識は全然ないにもかかわらず、公団法によって都市計画法が適用される、三割四分も減歩率で取り上げられる。それを農林省唯々として賛成しておる。これが現状で、あなた方が何と抗弁しようとも、現状はその通り法律は賛成せざるを得ないようにできておる。これでは私は、農林省農地確保というものに対して熱情を傾けておる。あるいはそういうようにつぶれ地の生ずることを最小限に防ぐところの対策を立てておるというふうにはどうしても考えられない。この点、遺憾の意はございませんか。
  18. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 確かにそういうふうに、農地都市近郊におきまして特に目立って減少して参ります事実は、食糧増産という見地から申しますれば、問題がございます。
  19. 加瀬完

    加瀬完君 結局そういうふうに、特に最近、農地のつぶれ地が多くなったり、無届け転用というものがひんぴんとして起っておりますのは、農地委員会当時よりも、農業委員会に改まってから、農地行政というものに対して農業委員会熱意というものは薄らいでおる、あるいは機構そのものが、農地委員会のときよりもはっきりしなくなってきた、こういうふうな点があるとはお感じになりませんか。もう一度申し上げますが、このように、非常に農地というものが国の保護というものからだんだん外側に置かれてきたといいましょうか、保護というものが弱められてきた。これは、かつての農地委員会よりも農業委員会性格の方が、農地確保という点においては、機構その他全般の状況から弱くなっておるためではないか、こういう点はお感じになりませんか。
  20. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 特に農地委員会から農業委員会に変ったために、そういう事態が起きたというふうには私ども考えません。経済的な事態の推移ではなかろうか、かように考えております。
  21. 加瀬完

    加瀬完君 前の小作側代表という形で出た農地委員がございましたね。三号委員というのですか、ああいう立場の人々なら、農地というものを確保するように非常に強い主張をした。ところが、農業委員会になりましてからは、そういう性格は非常に薄くなってきた。そこで、あなた方の方の改正原案にありましたような、部落代表の形で現状において非常に出ておる。その部落代表というものは、大体その部落部落における相当、農家にとりましては、悪く言うならば、ボス的な存在といいますか、小地主階層といったようなものが出ておるようなのが多い。そうすると、土地転用によりまして利益を、商業的利益を得ることにはきゅうきゅうといたしておりますけれども農地としての本質的な効果をあげようということには、自作や小作のような熱意はない。そのために転用速度、つぶれ地の速度を早めて、農業委員そのものが側面から早めて、いる。こういう結果を東京近郊では、われわれは非常に見させられてきておる。この点、私は、農業委員そのものに非常に欠陥があるというふうに考えておるのですが、そういうことをお感じになりませんか。
  22. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 地価の値上りその他によりまして、小作農民が耕作に対する情熱を失うということは、確かに御指摘通り東京近郊においては顕著にあると思います。しかしながら、御指摘の、従来の、かつての農地委員階層別選挙によりました選挙によって委員構成されていた。それがそうでたくなったということで、特にそういう現象が助長されているというふうには立ども考えておりません。
  23. 加瀬完

    加瀬完君 衆議院審議の過程におきましては、私の今申し上げましたような、具体例が出たかどうかは存じませんが、少くも、原案の、あなた方のいう原案の、部落推薦という形よりは、公選制による、新しい提案のような、議員立法によるような、との内容の方による委員の選出の方がはるかに農地確保ができるのだという、こういう御主張はなかったのですか。
  24. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 社会党の方から、ただいまの御主張のような主張がございまして、その結果、議員提案による新しい格好の選挙となったのであります。
  25. 加瀬完

    加瀬完君 全会一致ということでありますので、社会党主張だけではなくて、委員会全体の、あるいは衆議院全体の意見というものは、結局そういうふうに固まったんだというふうに考えてよくはないのですか。また、政府もそれに同意をしたのだ。そういうことじゃありませんか。
  26. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) さようでございます。
  27. 加瀬完

    加瀬完君 自治庁行政部長に伺いますが、農地事務というのは、あなたどう考えておられますか。農地事務性格というものをどう考えておられますか。
  28. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 性格という点の御質問の趣旨、どういうことであるか、ちょっとはっきりしませんが、事務種類別で申しますると、これは国家委任事務でございます。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 それがおわかりになっておるなら、さっきのような御議論は、私は成り立たないと思う。地方自治をそこなうとか、地方自治の権限を侵すとか、そういう意味のいろいろのことをおっしゃられましたけれども、国の委任事務であるならば、その委任事務である農地事務がどういうふうにすれば目的を達するか。いい進捗率をあげるかということで進めればいい。そうであるならば、委員選び方も、農地事務が進捗するような選び方が成り立つならば、その選び方ということをとるべきで、それで若干の、選挙等で摩擦が生ずるというならば、それは事務的に解決をすべきことであると思う。問題は、先ほども私は例をあげましたけれども農地はつぶれつつある。しかも、地方自治体農地行政に対する熱意欠除によってつぶされておる事実も必ずしも少くない。こういうときに、農地をつぶさないという第一目的を考えるならば、これは、農業委員を強化するというよりほかない。しかも、特に農地についての強いつぶされないように主張をするような委員をたくさん選出するような構成をする以外に私はないと思う、原則的にこういう構成あるいは方法をとるということについては、どうお考えになりますか、反対でございますか。
  30. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 農業委員会構成等につきまして、全般的に自治庁立場から御意見を申し上げるというのは、いささか僭越でございますので、細目については申し上げませんし、これは、国会でもって衆議院もすでに通っておるものでございます、とやかく申すことは差し出がましいと思いまするが、ただ、意見を当委員会で述べろというお話でございますので、申し上げておるのであります。私は、農地行政重要性は、前に申し上げましたように、十分わかっております。また、その事務性格国家事務であるということも、十分承知をいたしておるのであります。ただ、国家事務というものにつきましては、これは、自治法の別表にもございますように、農地関係事務のみならず、各省にわたって、各法律にわたって、国家事務として留保しながら、これを団体たる都道府県あるいは機関であります都道府県知事市町村に委任をいたしておるというものは、これは、数限りなくあるわけであります。その中で、私は、国家事務の遂行というものを十分に確保していくための措置というものは、これはいろいろあり得るのではないか、私たちが若干疑問に思いますのは、その確保の仕方というものが、農業委員会の任命にかかる一職員、まことにそれは重要な職責を持つものでございますので、その農業委員会任命の一職員について、任免について知事承認を得させたい、あるいは不利益処分を受けた場合に、じきじき農林大臣にその事情を述べるというような形式をとることが、果して地方自治法の建前あるいは地方公務員法体系というものから見て、いかがなことであろうかというふうに考えておる次第であります。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 市町村の固有事務ではなくて、国の委任事務である。しかも、その国の委任事務は、市町村長に直接事務として担当させることよりは行政委員会としてやらせた方がいいという性格で、農業委員会構成されておると思う。それは、極端に解釈するならば、農業行政というものは、市町村で、議会なり市町村長なりの直接な影響といいますか、支配といいますか、そういうものを波及しては困るという現実があるから、こういうふうな方法がとられておると思う。そこで、市町村農業委員であっても、身分というものを一応市町村の圧迫からカバーするという形も、これはとらざるを得ない。あなたは、市町村職員で、任免知事がするというのはおかしいじゃないかと言うけれども事務職員だって、市町村公務員であっても、その任免は必らずしも地方行政委員会なりですることはできない、これは他にも例がある。問題は、農地主事というものの身分というものを安定していかなければ、農地行政はうまくいかない。末端の行政では、利益関係の相反する場合が多いのですから、議会の勢力なり市町村長の勢力なりがかぶさってきては、農地主事が自分の身分が不安定であっては、農地行政はできませんよ。それが現実なんです。これを何とか保護してやるというのが当りまえの話なんですが、そうでなかったら、先ほどから述べておるような、農地行政の効率を上げるということはできないじゃないか、農地行政の効率を上げるということも、地方自治一つの大きな目的なんですから、職員の任命というような形式のことに私はそうこだわる必要はないと思いますが、いかがですか。
  32. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 農業委員会農地行政の主体になっておるという建前は、私は、十分意義のあることであり、そういうやり方というものは、歴史的な使命も実は果してきたと思うのであります。ただ、ごく形式的、事務的な公務員のあり方なり任免の点等で見ますと、この農地事務というものが、これは農業委員会主体でやっていくわけでありますが、農業委員会というものは行政委員会でございます。この行政委員会というものが、やはり他の事務について、一般の事務遂行について市町村長がやっていく、その補佐機関として、市町村のいろいろの職員がある。その職員については、市町村長が任免権を持っている。同じ意味におきまして、農業委員会職員については、農業委員会がこれは任免権を持つわけであります。農業委員会というものが、農地行政ということについて主体権を持たないということであれば、これはまた問題でございましょうけれども、主体である農業委員会がいろいろ事務を遂行するについて、それを補佐する職員がいる。その職員について農業委員会任免をやるということでありまして、これは、市町村長がその事務を遂行するために、その所属の職員を自分の判断によって任免をするということと全く同様でございます。教育委員会がその職員について自己の判断において任免をするという形と一向変りがないわけであります。私たちは、農地行政重要性ということはわかりますけれども、それは、農業委員会自体独立性なりというものを十分に確保するやり方ということを貫くことによって、目的が達成せられないのであろうか。それにさらに、農業委員会所属の職員でありまする、地方公務員である農地主事任免について、さらに上級官庁の知事承認を得たり、あるいは不利益処分の際に、農林大臣事情を述べるというような建前をとることが、全体の体系からいっていかがなことであろうかということを申し上げておるつもりであります。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 行政部長お話は、形式的に見れば、筋は通らないとは申しません。しかし、農業行政といいますか、農地行政というものが現行法においては非常にまずい。だから、改正しなきゃならないということに筋からいえばなっておる。しかも、まずいというのは、国の事務である農業行政、農地行政が、国の意図するような方向に末端においては行われておらないという事実があるから、委員会構成を変えたり、委員の選出方法をいろいろ論議したりという必要が生じてくるわけです。行政委員会そのものが、農業委員会そのものが、県の農業委員会の意図するように、あるいは府県や市町村農業委員会が国の意図するような方向に動いていけば、こんな改正案なんか必要はない。こういう改正案の出てきたもとはといえば、国の事務であるその事務が円滑にいってないという事実があるから、こういうことが起ってきた。そこで、円滑にいかせるためには、その末端の事務を担当するところの農地主事というものの身分というものを、最大限に保障してやるという方法をとらなければ、この効果は上ってこない。こういう必要があって、私はこの措置がとられたと思う。現実に、地方の行政委員会にまかせっぱなしにして、農地行政というものが推進していれば、この改正案は生まれてきませんよ。こういうことは、御調査になればすぐわかることです。われわれは、いやになるほど聞かされている。農地主事というものを圧迫して、そうしていろいろ転用を無理にさせる。あるいはそういうことを聞かない農地主事というものは、その位置からはねられる。こういうことでは困るということで、こういう保障の措置がとられたと思う。私はそう解釈しておる。それすらも、形式的にだめだということでいくならば、それは、農地行政そのものが国の意図するような方向には参りませんよ。そこで、おそらく私の言うような意味をも加味して、この改正案に賛成をするという態度をおそらく政府はとられただろうと思う。だから、これが衆議院を通って、参議院に送られてきたと思う。そこで、あらためて伺いたいのは、あなたの今までおっしゃっておるのは、個人の意見ですか、それとも自治庁としての御意見ですか。自治庁としては、あくまでも農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案、村松さん外七名提出のこの案件に対しては、自治庁としてはあくまでも反対である、こういうお立場ですか。
  34. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 先ほど選挙部長が申し上げました点、私から申し上げました点は、これは自治庁としての意見でございます。ただ、それと、法律としてでき上りました際に、その円満な遂行に協力をするというか、推進をはかるということとは、おのずから別問題でございます。
  35. 加瀬完

    加瀬完君 選挙部長に伺いますが、あなたの方は、この選挙法から、今度のこの改正案はまずいということを言っておるのです。今まで、まずいことでも便宜的にいろいろなものを出しておる、選挙部は。だから、まずいところは、事務的にまずくないようにすればいいわけだろうし、法制局もついておって立法されたわけだから、これを違法だということはまさかおっしゃらないと思うのですが、どうですか。これは違法なんですか。
  36. 兼子秀夫

    政府委員兼子秀夫君) われわれの意見は、法制局にもそのつど申し上げてございます。それで、違法かどうかという点でございますが、公職選挙法に書いてある考え方と違った考え方をこの法律に書くのでございますから、違法であるとは申し上げかねるのでございますが、考え方として果して適当かどうか、そういう点から意見を申し上げておるのでございます。
  37. 加瀬完

    加瀬完君 こういう方法が、現在の農業委員会より、よりいい農業委員会が作られるということであれば、こういう選挙法というものも認めて認められないわけではない、こう解釈してよろしいか。
  38. 兼子秀夫

    政府委員兼子秀夫君) 先ほど申し上げましたような、選挙区を作るという必要性があるといたしましても、政令基準を定めることになっておりますので、それで目的を達するのではないか、知事承認が不必要ではないか、このような技術的見解を持っておるのでございます。
  39. 本多市郎

    委員長本多市郎君) いかがでしょう。この程度で懇談したいと思いますが、ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  40. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 速記を始めて。  それでは、質疑はこの程度にいたしまして、本件の取扱いについて懇談いたします。速記をとめて。    午前十一時五十七分速記中止    —————・—————    午後零時十一分速記開始
  41. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 速記を始めて、午前はこの程度で休憩いたします。午後は一時より再開いたします。    午後零時十二分休憩    —————・—————    午後一時五十七分開会
  42. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 委員会を再開いたします。午前に引き続き、農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案に関する件を議題といたします。  森君より決議案の提出がございました。決議案についての説明を求めます。
  43. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま議題になっておりまする、農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案は、本院の農林水産委員会で審査をされておる案件でありますが、このことが地方自治にも密接な関連を持っておりますことでもあり、農林水産委員会におきましては、この法律の取扱いに関しまして、農業団体あり方について根本的な検討を加うべき旨の付帯決議等が行われておりまするいきさつ等にかんがみまして、この際、次の決議を提案いたしまして、本委員会の決議として、農林水産委員長に申し入れをしていただきたいと考えるのであります。
  44. 本多市郎

    委員長本多市郎君) ただいま森君から提出されました決議案を、当委員会の決議とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 御異議ないと認めて、さよう決定いたします。  なお、本決議文は、委員長より本院農林水産委員長にも手交し、善処方について要望いたしたいと存じますので、この点御了承願います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)  速記をとめて。    〔速記中止〕   —————————————
  46. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 速記を始めて。  次に、特別とん譲与税法案を議題に供します。  本案の提案理由の説明は、すでに聴取しておりますが、さらに内容について、説明員より説明を聴取いたします。
  47. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) それでは、特別とん譲与税法案につきまして、内容のややこまかい説明にわたって恐縮でございますが、御説明申し上げたいと思います。  まず、特別とん譲与税法案の第一条の規定でありますが、「特別とん譲与税は、特別とん税法の規定による特別とん税の収入額に相当する額とし、同法第二条の開港に係る港湾施設が設置されている市町村自治庁長官が指定するものに対して譲与するものとする。前項の港湾施設の種類は、総理府令で定める。」こういうことになっております。  そこで、御存じの通り、先般成立いたしました特別とん税法の規定によりまして、外国貿易船の開港に対します入港の際、純トン数一トン当りにつきまして十円の特別とん税を徴収するわけでございますが、その特別とん税に相当いたしまする額は、これを全額、開港所在市町村に譲与をする、こういうことになっておるわけでございます。そこで、この開港所在市町村というものは、特別とん税法第二条の「開港」にかかりまする港湾施設が設置されておる市町村で、自治庁長官が指定するもの、港湾施設は総理府令で定めるとなっておりますが、大体総理府令で定める基準といたしましては、この港湾法に申しまする港湾施設の中で、係留施設を大体予定いたしておるわけであります。係留施設が設置されておりまする市町村で、自治庁長官が指定する、その具体的な基準といたしましては、この特別とん譲与税の制度が固定資産税の中で、外航船舶に対しまする固定資産税の課税標準を現行の価額の三分の一から六分の一にいたしますので、それの見返りといたしまして、この特別とん譲与税ができた、こういう経緯に相なっておりますので、現在外航船舶にかかわりまする固定資産税の配分を受けておりまする市町村で、開港にかかわるものを指定して参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから次に、第二条の譲与の基準についてでございますが、これは、譲与の基準を定めた規定でございまして、「特別とん譲与税は、開港所在市町村に対し、当該開港への入港に係る特別とん税の収入額に相当する額を譲与する」、こういうことでございます。考え方といたしましては、大体この開港所在市町村ごとに税関がございます。その税関なりあるいは税関の支署なりあるいは出張所なり、こういったところにおきまして、その入港のつど特別とん税を徴収いたすわけでありますが、その税関なり税関の支署、出張所におきまする特別とん税の収入額に相当する額を原則として開港所在市町村に還付してやる、こういうことをまず第一の原則として考えておるわけであります。ところが、一つの開港所在市町村が二以上、その税関あるいは税関の支署あるいは出張所の管轄区域にわたっておる場合がございます。そういう場合におきましては、税関におきまして徴収いたしました特別とん税収入額をそのままこの開港所在市町村に還元する、こういうことができませんので、そういう場合におきましては、それぞれの市町村の区域におきまする税関の支署、出張所があります場合には、その所在市町村等の徴収額に応じて還付いたしますが、一つの開港にかかわります二以上の開港所在市町村の区域が、一の税関の管轄区域であります場合におきましては、分けようがございませんので、その二条の二項の後段に規定いたしますところにおきまして、当該開港にかかる港湾施設の利用状況その他の事情を参酌して、総理府令で定める基準によりまして按分する、こういうことを考えておるわけでございます。具体的には、自治庁長官が按分率を定める、こういうことになろうかと存じます。なお、参考までに申し上げますが、現在開港の数は六十六でございまして、それにかかわりまする市町村の数はおおむね八十六くらいになろうというように考えております。  次に、第三条でございますが、第三条は、特別とん譲与税の譲与の時期あるいは譲与時期ごとの譲与額に関する規定でございます。特別とん譲与税は、毎年度九月と三月の二期に分けて、それぞれ前六カ月の特別とん税の収入額に相当する額を譲与する、こういう考え方でおります。ただ、昭和三十二年度、すなわち初年度におきましては、特例を設けまして、付則第二項にありますが、十月と三月、十月におきましては、前六カ月の収納済額を配ります。三月におきましては、十月から二月までの収納済額と、それから三月以後におきまして収納すべき特別とん税の収入見込額というものを配りまして、三十三年度の九月にこの譲与いたします際に、その三月分につきましては精算をする、こういう考え方をとっておるわけでございます。  なお、譲与すべき額の算定に錯誤がありましたために、譲与した額を増加し、あるいは減少する必要が生じましたときは、自治庁長官は、次の譲与すべき時期において精算する、こういう規定を四条におきまして設けておるわけであります。  それから、第五条は、特別とん譲与税の譲与に当っては、国はその使途について条件をつけ、または制限してはならない、こういう規定でございます。これは、入場譲与税と全く同じような規定でございます。  次は、第六条でございます。第六条は、特別とん譲与税は、都の特別区の存する区域の開港にかかわります港湾施設が設置されております場合は都に譲与する、こういうことでございます。  あと、付則の関係におきましては、先ほど申し上げました三十二年度の譲与時期、譲与期間等の特例のほか、自治庁設置法の一部改正といたしまして、この事務自治庁において所管する、こういうことにいたしておるわけでございます。  以上簡単でございますが、この法律案の内容につきまして、補足さしていただいた次第でございます。
  48. 本多市郎

    委員長本多市郎君) これより質疑を行います。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  49. 森八三一

    ○森八三一君 固定資産税がとん税にかわっていくわけですが、今お話の、八十六市町村が対象になるのではないかということですが、その八十六の市町村につきまして、固定資産税は、現行の場合と、今回の譲与税に移行した場合と、どういうような具体的な変化が生れるか、その点、ちょっと御説明を願います。
  50. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 外航船舶に対します固定資産税の負担を軽減いたします結果、関係市町村の税収入の減少いたします額が四億九千六百万円であります。これに対しまして、これらの市町村に特別とん譲与税が新たに譲与されることになるのでありまして、その額が五億八千六百万円でございますので、全体といたしましては、若干増収になるわけであります。しかしながら、特別とん譲与税は、徴収地の開港所在市町村にそのまま譲与していくわけでございまするので、開港でありません港、そこにも外航船舶が寄港しておったわけでございますので、これらの市町村におきまする固定資産税の減収額は、特別とん譲与税では補てんされないことになります。こういうところが若干ございます。それ以外は、先ほど申し上げましたような数字からわかりますように、原則としてはかえって増収になるだろうというふうに思っております。
  51. 森八三一

    ○森八三一君 今御説明のトータルでは、一億前後、全体の市町村の受くべき額はふえるという見込みであることにつきましては、過般来の説明でよく了承をいたしておりますが、ただいまお話がありましたように、この制度の変革によって、今まで受けておった固定資産税が若干減るという程度であるという御説明でしたけれども、その若干減るという額が、その当該市町村にとっては、非常な財政上の問題を引き起す危険がある町村も起きるのではないかということをしろうとながら考えるのですが、そういうような危険、心配というものは、全然ないというお見込みであるのか、その若干云々という御説明の具体的な内容を承わりたいのです。
  52. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) たとえば、兵庫県の姫路におきましては、富士製鉄の広畑製鉄所、その関係もございまして、外航船舶がかなり入っております。しかしながら、開港には指定されておりません。また、開港に指定してもらいたいという動きがかなり強くなって参ったようであります。もし開港に指定されますと、問題は何ら起りません。しかし、開港に指定されませんと、姫路におきまして、千五百万円ぐらいの減収になるわけであります。そういう市町村が若干あるわけでございまして、一番顕著な例を私申し上げたわけでございます。そこで、外航船舶に対します固定資産税は、港への入港回数によって課税標準額を按分いたしております。その場合に、開港とそうでない港との間でウェートの差をつけた方が正しいのではないか、こういう考え方を持っておりまして、従いまして、開港に一回入ったものならば、開港でない港に外航船舶が入った場合には、二倍に計算したらどうだろうかという考え方も持っておるわけでございまして、こういうことを検討いたしておるわけでございます。  なお、そういうようなことで、もし適当に補てんの措置が見つかりません場合には、制度的な変革でございますので、特別交付税制度の運用をいたさなければならないということになろうかと思います。しかし、具体的の問題といたしましては、今申し上げましたような措置を検討いたしましたり、あるいはその他大規模償却資産に対しまする固定資産税の課税限度額の拡張というような問題もございますので、全体としては、市町村に不測の減収を与えていくということもなかろうというふうに存じております。しかし、実際の運用に当りましては、十分市町村の実態に入って検討いたしたい考えでおります。
  53. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまの御説明で、制度の変革によって、従来市町村の受けておった固定資産税に急激な変化が生じて、町村の財政の上に非常な圧迫を招来するというような懸念のある部分につきましては、固定資産税の関係なり、あるいはその他の交付税の関係なりの調整によって、そういうような異常な不測の差異が生じないような措置を講ずるということでありますので、その点については、今後の措置に期待をし、一応了解をするところでありますが、その次にお伺いしたいのは、この第四条で、譲与した額の修正をするような規定があるように思うんですが、一体譲与すべき額は、収入済みの額を与えるんですか。こういう事態がどういうときに発生するのか、その具体的な事例を一つあげて御説明願います。
  54. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) とん税の徴収自体におきましても、あるいは収入が多過ぎたと、あるいはまた、少な過ぎたという問題が起ろうかと思います。その場合には、徴収地にそのまま譲与して参りますので、特別とん税の徴収が多過ぎたというような場合には、戻さなければならないというような事態も起ろうかと思っております。とん税は、御承知のように、純トンを基礎にして課税をして参るわけでございますので、その積算について問題がある場合もございましょうし、また、一開港につきまして五回分を一度に納付いたしますと、一年間とん税は支払わなくてもよろしいと、こういうようなことになっているわけでございまして、そういう場合に、期間計算上間違いも起るというような場合もあろうかと思うのであります。  なお、私、先ほど姫路を例にとりまして、千五百万円減るかもしらぬということを申し上げたのでありますが、もし開港でない港への入港回数を固定資産税の配分に当ってウェートをつけるというようなことにいたしますと、減収はないようであります。先ほど千五百万円という数字を申し上げましたが、これは三十二年度のそうした場合の収入見込みであったようであります。そう大きな激減を来たすようなところは、まずないんじゃないだろうかというふうに思っております。
  55. 加瀬完

    加瀬完君 今、部長から、船舶税がなくなって、特別とん譲与税になっても、市町村の出入りというのはないというお話がございましたが、私はそういうわけには参らぬと思う。それは、外航船舶だけの固定資産税と、いわゆる船舶税と特別とん税だけ比べれば、大した出入りがないということになりますけれども、内航船舶の固定資産税も減ってるんですから、その内航船舶の固定資産税の減る分だけはどうしても減らざるを得ない。それは、蒸し返しの質問のようでございますが、今私がそれを例に出しましたのは、一体この法案の目的がどこにあるのかということを私は伺いたいんです。この法案を制定するときには、この提案の説明にありましたように、開港所在市町村に対しまして、特別とん譲与税というものを新しくプラスするんだと、そういう考えで出発したんじゃないかと、それは、船舶税をそのままにしておいてという前提に立って、そういうふうに考えられたんじゃないか。ところが、特別とん譲与税が出てくると、船舶税が外航船舶、内航船舶の両面にわたって減ってきてしまった。また、減らしたといいますか、減らしてきてしまった。そこで、初め特別とん譲与税だけをプラスしようとしたところが、その初めの計画とそごを来たしているというのが実情じゃないかと私は推測するんです。この点は、そうじゃないんですか。初めから船舶税を減らして、その穴埋めに特別とん譲与税というものを考えたんだ。初めからこういう構想でしょうか。
  56. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 私、先ほど森さんの御質問を、外航船舶との関連における問題だというふうに理解してお答えいたしたわけでございます。今、加瀬さんのお話でございますと内航船舶も加えての問題として御指摘になったようでございまして、漁船その他の船舶に対しまする固定資産税の軽減の問題もあわせて考えますと、御指摘通り、減収になる団体が相当数出て参るわけでございます。開港じゃございませんので、開港への入港に際しまして徴収されました特別とん税というものを譲与できない。従って、固定資産税が減っただけは、そのまま補てんされないで終るということになるわけであります。この問題の経緯は、外航船舶は外国の船との間で競争関係に立つ。外国の船舶については、その国の法制によっては、固定資産税が課せられないところがたくさんある。そこで、日本の船舶だけが重い負担を背負って国際競争をやっていくことになるものだから、船舶に対する固定資産税をむしろ廃してもらいたい、こういうような考え方が非常に強かったことは事実であります。しかし、関係市町村としては、収入が激減するわけでもございますし、また、固定資産税の体系そのものも乱したくないというような気持を私たちとしては持っておったわけであります。ところが、わが国のとん税は、外国と比べました場合に、逆に非常に安いようであります。そういうところから、もしとん税を引き上げるならば、日本の船舶だけじゃなしに、外国の船舶も同じように負担することになるんだから、そのとん税を引き上げて、その収入額で固定資産税の穴埋めをしたらどうかという考え方が出て参りました。そういうところから、外航船舶に対しまする固定資産税を軽減し、その穴埋めは、とん税の税率が引き上げられる、その収入の一部を関係市町村に譲与しよう、こういうことで話ができて参ったわけであります。内航船舶の問題は、特別とん税とは全然別個の問題でございます。  また、外航船舶の負担を軽減する関係から、内航船舶なり漁船なりの固定資産税を軽減することは、むしろ権衡の道ではなかろうかというようなことがその後に起って参ったことも事実でございます。
  57. 加瀬完

    加瀬完君 経緯は、今御説明の通りでしょうけれども、この特別とん譲与税というものを考えました当初におきましては、今までの地方税の上に、その地方税というものは、もちろん船舶税も含めての地方税の上にとん税を乗っける、こういう形で考えられたんじゃないか。ところが、特別とん譲与税というものがある程度の額になるということになりまして、外国との関係どもからみ合って参りましたので、今度は船舶税を引き下げるということに移ったんじゃないか。初めから、政府考え方といいますか、自治庁考え方は、いわゆる船舶税による地方財源を減らしてまで、特別とん税に変える方が合理的であるという考え方じゃなかったんじゃないか。そうであるとするならば、少しおかしいと思うんですが、どうでしょう。
  58. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 国際競争を行なっております船舶につきまして、日本の船舶であるか、外国の船舶であるかによりまして、税負担が非常に違っているということは適当ではないという考え方は持っておったわけでございます。その場合に、固定資産税でありますと、日本の船舶にだけ課税されるわけであります。とん税でありますと、日本の船舶でありましょうと、外国の船舶でありましょうと、同じように負担をかけるわけであります。そこで、固定資産税が軽減できるならば、日本の船舶が特に重い負担を背負って国際競争をやっておった、それがある程度緩和されるわけでありますので、もし他に財源がありますならば、それが望ましいことではないかという考え方であったわけであります。  御指摘になりましたように、とん税を地方税に持ってくるというような考え方でこれが出発したのではございませんで、とん税には増税の余地がある。この増税されたとん税の一部を市町村に譲与しても、別段国の財源が従来あったものがなくなったことにもならないだろう。とん税を引き上げて、その一部を市町村に譲与する場合に、むしろ譲与する部分だけは、別個な名前の税にした方が、国におきましても、一般会計を通さないでも済むことになりまして、直接特別会計にその特別とん税の収入を入れていくこともできるわけでございますので、そういうような予算操作の便宜等から、特別とん税という名前にされたわけであります。  要するに、とん税には引き上げる余地がある。引き上げた一部は、関係市町村に譲与してもよいじゃなかろうか。譲与するについては、一部を譲与することにしないで、譲与する部分だけを別個に特別とん税とした方が、予算操作その他において便宜だろう、こういう考え方に立ったわけでございます。
  59. 加瀬完

    加瀬完君 特別とん譲与税というものをそういう構想でお考えになるということは、一向差しつかえない問題だと私は思う。  地方財政なり地方税制なりのもっと基盤的といいますか、広い立場で見ていくときに、特別とん譲与税というものと船舶税というものと、一方を下げる、一方は取るということに何か関係があるという見方をせざるを得ないじゃないか、こういうふうに考えられる。なぜかと言いますと、たとえば、数年前は、船舶会社というものは非常に窮迫の状態にあった。ああいう大きな問題を起してまで、利子補給その他の立法、援護立法と言いますか、救済立法までもしなければならないという事態であった。しかし、そのときでも、船舶税を軽減しなければならないとか、船舶税を減免しなければならないという問題は起らなかった。今は、船会社はみな景気がいいというのが定評なんです。そのときに、特にここで船舶税というものを下げなければならない理由はどこにあるか。もし外国とのつり合いとか何とかというならば、それは、個人の生活にしたって、他の業者にしたって、外国とのつり合いということを考えれば、もっと税を合理的にしてもらはなければならない産業の種類が非常に多い。ただ、外国と競争するということだけで、船舶だけが特別保護される理由は一つもない。  そこで、船舶税だけを特別こういうように下げたのは、一体全然特別とん譲与税とからみ合いがないと言い得るか。まあ内航船舶も含めまして、現行でいきますと、三十二年度には二十億九千六百万船舶税が上るはずです。それが改正案によりますと十二億千四百万で、その差が八億八千二百万になるわけです。自治庁の資料によりますと、八億八千二百万も市町村の財政というものからマイナスをしてまでも、船舶会社が外国の競争にたえ得ないからといって税の減免措置をしなければならない理由がどこにあるか。こういう疑問をわれわれは持たざるを得ない。この点はどう考えられますか。
  60. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 船舶に対しまする固定資産税は、特に外航船舶を中心といたしまして、いろいろと曲折を経て参ってきておるわけであります。  昭和二十五年以前の税制でありますと、船舶税というものがございまして、今の固定資産税よりはずっと軽い負担で、別個な独立税になっておったわけであります。二十五年に、船舶につきましても、他の償却資産と同じように、固定資産税の範疇の中に置かれて参ったわけであります。その後二十八年でありますか、そのころに、利子補給を受けます船舶につきましてだけ、たしかその負担を四分の一にしたのじゃないだろうかというふうに思っております。その後、二十九年に三分の一にいたしたわけであります。その後も、船主協会その他外航船舶の関係の人たちからは、外国の税制と日本の税制とを比較いたしまして、固定資産税の負担につきまして、いろいろ御意見があったわけであります。その場合に、外航船舶については、固定資産税からはずしてもらえぬだろうか。そのかわりとん税は思い切って引き上げてもらってもいいのだ、とん税であれば、外国の船舶も日本の船舶も、同じベースで競争していけるのだ、こういう話があったわけであります。これに対しまして、私たちとしては、とん税と固定資産税とは別個の性格の税制でありますので、とん税を引き上げたから固定資産税をやめてしまうということになりますと、固定資産税の体系が乱れてくるのではないかという実は心配を持っておったのであります。もう一つは、関係市町村の財源が減ってくるという問題であります。こういう問題がずっと続いておったわけであります。今回、とん税を引き上げたらどうだろうかという話になり、同時に、今申しましたような議論もあわせて検討いたしました結果、外航船舶であっても、固定資産税を全廃することは適当でない。しかし、思い切って負担を軽減した方が、こういう外国との競争関係を考えた場合に適当じゃないだろうか。そこで、別途にとん税の増収があるから、その一部を市町村に譲ってもらう、こういう話し合いで、この案ができて参ったわけであります。その結果、外航船舶の所有者は、固定資産税では軽減になり、とん税と特別とん税では負担がふえてくるわけであります。差引いたしますと、一億四千四百万円だけ負担が軽減されるわけであります。ところが、外国人の所有しております外国の外航船舶でございますと、固定資産税の問題はございませんでして、特別とん税ととん税との負担がふえてくるわけでございますので、両者合せまして、四億円足らずの負担の増加になるわけであります。その外国の船舶の負担の増加によりまして、日本の外航船舶の所有者の負担が一億四千四百万円軽減になり、地方団体の収入が六千百万円増加になり、国庫の収入が一億七千六百万円増加になる、こういう結果が出て参っておるわけであります。いずれにいたしましても、わが国の外航船舶というものが、外国の船舶との間で、同じようなベースで負担をしながら競争していけるというところに一つの大きな特徴があるのではなかろうか、こう私たちとしては考えておるわけであります。
  61. 加瀬完

    加瀬完君 それなりには、その説明はうなずけないわけではないのですよ。しかし、税体系から見れば、船主協会の申し入れだけを大幅に取り入れられる必要がどこにあるか。たとえば、国の施設であっても、公社の施設であっても、固定資産税を新しく吹っかけている。あるいは固定資産税に見合うものをかけている。こういう現状なんですね。国の施設や公社の施設にまで固定資産税的なものをかけなければ地方財政がやっていけないという現状に、現在非常に利潤を大幅に生みつつある船会社に対して、税金を負けてやるというのは、非常に妥当性とか、合理性とかいうことがはなはだ希薄になるようにならないか。かりに一歩譲って、それが妥当であるという前提に立ったとしても、あなたの御説明によると、外航船舶の固定資産税が減免になった分とか、それから特別とん譲与税で入る分で、トータルから見れば、地方の方が有利になるというけれども、私はそうじゃないと思う。特別とん譲与税の入る一定の、特定の市町村については、そういう現象があるかもしれんけれども、内航、外航全体の船舶に関する固定資産税というものの市町村が受けておったトータルと、とん譲与税で受けるトータルとを比べれば、二億九千六百万という地方に減収という数字が出てくるのですよ。非常に零細な数字まで減収を防ごう、増収をはかろうと思ってやっておる自治庁が、この船舶関係の固定資産税、いわゆる旧来の船舶税だけに対して外国との競争に打ち勝たなければならないからといって、大幅に固定資産税を減税させる理由というものが、他の税種目と比べると非常に均衡を失する。また初め特別とん譲与税が出てきたときにおいて、船舶だけを減免するというような話はあまりなかった。その減免の仕方が、利子補給をしなければならないような窮迫のときにおいてすら四分の一だった。課税標準価格の四分の一に対して固定資産税をかけた、今度六分の一でしょう、減免の仕方が、かつての船会社の窮迫時代よりもさらに有利な条件を与えておる、こういうことをしなければならない理由がどこにありますか。しかも特別とん譲与税の提案説明の最後にもあるように、外航船舶に対する固定資産税を軽減することによって市町村の税収入が減少をするところがある、これについては別に考えるということなんです。別に考えなければならないような理由が生ずることが事前にわかっておりながら、こういう担税能力のあるところに特別な減税措置を講ずるというのは一体どういうわけなのですか。これは自治庁の案なのか、政府が党と話し合いの上に、党の案としてこういう船舶に対する固定資産税の減免措置というものが出てきたのか、これは政務次官どっちですか。初めから自治庁事務的な案だったのか、あったとしたならば、これは大問題、ほかのものもみんなまけてもらわなければならぬ。それとも自由民主党の、これは政府案なのか、政務次官、どっちです。
  62. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 一応私からお答えさせていただきます。  外航船舶に対しまする固定資産税は長い間の懸案問題だということはできると思います。この案をきめますときには、自治庁と大蔵省と運輸省、この三者が相談し合ってきめたわけであります。党から特にこの方式でやれというお指図は受けておりません。ただ自由民主党の税制改革特別委員会で、税制改革についての方針をおきめになりまして、その最後のところに一つのまあ研究問題と言いましょうか、外航船舶に対しまする固定資産税をやめる、そのかわりとん税を思い切って引き上げる、その引き上げたとん税を市町村に譲与して行く、そういうようなやり方があるのじゃないだろうか、こういう一つの研究課題があったことは事実であります。しかしながら、従来からの懸案の問題であり、またそういう研究問題でもあり、そこで自治庁と大蔵省と運輸省、この三者がいろいろ検討いたしました結果、外航船舶に対する固定資産税の制度をやめるわけではない、思い切って軽減をしよう、逆にとん税は思い切って引き上げよう、これは日本の船舶も負担をするわけであります。そして市町村の困らないように相当額を補てんのために譲与しようというようなことで、こうきまって参ったわけであります。外航船舶は固定資産税としては五億二千五百万円の軽減を受けるわけでありますが、とん税と特別とん税とでは三億六千百万円の負担の増加になるわけでありまして、こういうようなものを合わせて考えて参りますと、利子補給を受けておった時代よりも、さらに軽減しているということにもならないのじゃなかろうかというふうに思っております。また、そのときの負担がいいか悪いか、今の方がいいか悪いか、食い違っているとか、どうこうという問題じゃございませんが、固定資産税は軽減しておりますが、特別とん税の方では相当の負担増加になることも事実であるわけであります。
  63. 加瀬完

    加瀬完君 政務次官にお答えをいただく前に、もう少し部長に伺いますが、軽減することが悪いということじゃない、私の質問は。軽減のつり合いがとれていないじゃないか、こういう点なんです。たとえば税を減免してもらいたい希望というものは、各種産業、各種業界全部これは望んでおらないところは一つもないと思う。担税能力が非常に出てきた船舶会社だけに対して、ここで固定資産税をある程度減免してやるという措置を特別にとらなければならなかった理由というのは非常に希薄じゃないか。とん譲与税というものを上げたところで、新らしく設けたところで、特別とん譲与税というものをとった意味一つもないじゃないか。結局とんとんということになる。これはおかしいじゃないか、担税能力が増したのだから。固定資産税も今まで通り払っておってしかるべきじゃないか。しかも外航船舶の固定資産税だけを減免させれば、それだけにはとどまらない。当然内航船舶の固定資産税にも波及してくる。外航船舶から波及された内航船舶は、課税標準が価格そのものでありましたものが、今度は三分の二に落しても、やはりここで現行法で行けば十億七千二百万円ですかのものが七億一千五百万というふうに減ってくる。そこで地方には、固定資産税の分と特別とん譲与税の分を合わせて差し引いても二億九千六百万という減収になっている。地方の減収を招くことが明らかにわかっておってまで、固定資産税をこうしておろして行くというのは、他の固定資産税が非常におろされたというのなら別ですけれども、どうも妥当を欠くのじゃないか。それから目的税じゃないはずですね。第五条ですか、使途について条件をつけてはならないということがありますから、これは目的税ではない。目的税でないというのなら、一般財源の固定資産税を減らして特別とん譲与税をふやしたって意味がないじゃないか。それから特別とん譲与税というものは、いわゆるトン税の歴史から考えれば、これは手数料、港の入港手数料みたいなものから発達してきたと思う。これを手数料に、あるいは港湾施設にだけかける目的税というのならば話は別だけれども、そうじゃない。一般財源として扱っている。そうならば、船舶の固定資産税と特別とん譲与税というものは、あわせて考えなければならない。そしてトータルにおいては地方において二億九千六百万損している。こういう結果の出るような減免措置を考えるということは不当じゃないですか。もうかっている船舶会社に、担税能力が増大したときに、地方が赤字を生じてまで、もうかっているところに減免をするというのは不当じゃないか。外国との競争とか何とかいうことだけでは説明がつかないと私どもは考えざるを得ない。その点どうでしょう。
  64. 加藤精三

    政府委員(加藤精三君) 御指摘のような点は実はあるのでございますが、これはわれわれ立案のときにずいぶん研究したのでございまして、日本の国際貿易に従事します船舶は、対外競争力という点におきましては、まだ相当これを保護しなければならない状況にあるという認識の上に立っているのでございます。それで、私の記憶によれば、日本人の所有しております外航船舶の負担は、従前に比し一%ばかり下っているように記憶しております。その程度の保護助長ということは、現在利子補給も廃止されましたし、まだ必要だという見解に立って立案したのでございまして、その均衡上、この内航船舶の方も減税したのでございまするが、それはそうした国際競争力の関係の税制上の処置というものは、国民が苦しくても国内ではできるだけ辛抱して、そして将来貿易の振興による国内産業の開発するまでがまんするというような気持で、内航船舶の軽減率は三分の一にとどめたというような考えでございますので……。
  65. 加瀬完

    加瀬完君 それがはなはだおかしい。外国との競争力にたえるために保護施策をやりたいというならば、それは国の負担においてやるべきことなんです。たとえば利子補給というものがやれないならば、ほかの方法保護施策を立てればいい、国の財政計画として。何もそれを地方の財政の貧困の上に上塗りをするような形で地方に持ち込んで保護政策をしなくてもいい。外航船舶といったような、国として対策を立てなければならないようなものを、なぜ一億九千六百万という、ささいといっても、その町村にすれば大きな財源、そういうものまでをマイナスして、一体保護政策に名をかりて地方財政を圧迫しなければならない理由があるか、これは筋が通らない話だ。
  66. 加藤精三

    政府委員(加藤精三君) お説でございますけれども、まことにそれは、国の施策を地方財政の力をかりてやるというような点はよろしくないという一つの前提があるわけでございますけれども、そういう点はわれわれも逐次改善して行きたいのでございますが、現在外国の産業と日本の産業とを太刀打ちさせますために、基礎資材等の生産に対しましては相当減税いたしまして、国際競争力ということを考えているのでございまして、御承知のように電気ガス税等の場合もそれに当るのでございます。そのようなことでございますので、その外国人の所有している外航船の特別とん譲与税等を加えますと、そう大した開港市町村の減収にはならないのでございまして、そういう限度におきまして地方財政が対外競争力のお役に立てばということでございまして、著しい歳入欠陥を生ぜしめるほどでもないので、こういう立案をしたわけでございます。御了承願いたいと思うのでございます。
  67. 加瀬完

    加瀬完君 特別とん譲与税というような新らしい法案を作って出すからには、それが若干なりとも地方財政にプラスするということでなければ、法案を出した意義を失うと思う、よろしいですか。あなたは外航船舶関係だけを問題にして、それと特別とん譲与税というものだけでもってトータルを見ておるけれども、そうじゃないのです。外航船舶の固定資産税を下げたので、内航船舶の固定資産税もひとりでにまた下ってきた。そこで今いわゆる通称船舶税と言われるものを見ると、外航船舶関係では五億二千五百万、内航船舶関係では三億五千七百万、合計八億八千二百万というものが地方にとっては減免されておる。そこで特別とん税でふえたものは五億八千六百万、結局一億九千六百万というものは、これはトータルにおいて地方は下げられている。下げられているということは、あなた方の資料によって説明しているから間違いない。二億九千六百万、三億足らず、しかし地方にとっては大金だ。国にとっては何でもない。それならば、三億だけの外航船舶に対する保護対策というものを立てたいというならば、それらの金は国の方から出せば、ささいなものじゃないか。それを出し惜しんで、地方の少い財源にしわ寄せをする必要はごうもあるまい。またさっきも申しましたけれども、国の施設や公社の施設までから税金を取り立てている地方財政であるのに、もうかっている船会社に何も、三億たりとも地方にしわ寄せをして保護政策を立てて行くということは筋が通らないじゃないか。
  68. 加藤精三

    政府委員(加藤精三君) その点はたびたび申しますけれども、このわが国の海運というのは、まあ、もうかる、もうからないということの点は、かなり世界の海運事情にも左右されるのでございまして、大体海運という事業が非常にもうかるときと、もうからないときとの盛衰が、あらゆる産業の中で最もあるものだということになっておりますけれども、まだ現在の好況が、たとえばスエズ運河の開航によりまして、非常にまた違ってくるということもございます。そうしたような非常に移動性のあるものでありまして、国の大きな立場から見まして、日本の海運を国際競争場裏に育てますためには、まだ十分に自己資本も充実しておりませんし、また建設時期におきましての借入金等が返済が終っておるわけでもございませんので、そうした面からの海外貿易関係の優遇ということの至上命令に基くものでございまして、それから内航船舶の問題は、これはまた別途の観点からでございまして、これは時勢の変動によりまして、非常に内航船舶関係が現在苦しんでおるのでございます。それに、御承知のごとく現在の経済界で最も困難しております、そして解決しなければならない命題の四つばかりございますうちに、電力、輸送力、それから鉄鋼、石炭、その現在の経済界のネックの解消の政策に関するものでございまして、そういう面からの要請が強くございますので、政策的な要請がございますので、これを単なる均衡と申しましたのは語弊があったのでございますが、そういう面から政策審議をいたしまして、これは機帆船、木造船その他が若干でも総合輸送力の増強に役立つであろう、またこの港湾を改修するということには莫大な積極的な予算を本年度予算で組んだわけでありますけれども、それだけでは十分ではないというような見地もございまして、やったのでございまして、また漁船の方もこれに繰り入れましたことは、御承知のごとく最近沿海漁業が極度の不振でございまして、中小企業の問題よりも、より深刻なものがあるので、比例上それも同時に減税したわけでございます。それぞれ私たちは理由があって原案を作ったわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  69. 加瀬完

    加瀬完君 私は理由がないとは申しません。しかしその理由は、はなはだふに落ちない理由だ。それから地方財政や地方行政について、自治庁の説明をされておった今までの御態度とは、まるっきりうらはらな理由だというふうに考えるから質問する。一つは、船舶競争に負けないために、いろいろな優遇対策を立てて行くということに私は何も反対するものではない、それを地方財政にしわを寄せて優遇策を考えるということは当を得ないのじゃないか、なぜ国の予算で国の政策としてやらないか、それが一つ。二つ目は、外交船舶と特別とん税ばかりを問題にしておりますけれども、そうじゃなく、たびたび言うように、内航船舶の固定資産税は、それらに影響して当然下ってくるのです。特別とん譲与税を作るかわりに、幾らかでも地方財政にプラスをするという趣旨で始まったに違いない、ところが、ふたをあけて見ればマイナスになっている、そういうことでは地方財政の強化にはならない、こういう点が筋が合わないんじゃないか。もう一つは、海運業を振興させるのが至上命令だと言うけれども、あなた方の至上命令は、国民の負担を軽減し、国民の福祉を増進するということが至上命令なんです。ところが国民は、ガソリン税だ、軽油引取税だということで負担は非常に増加されておる。あるいは国の減税で当然住民税が減るかと思えば、率を上げて調節をしている、そういうふうに個人の負担を増してまでも、個人の負担を重くしてまでも地方財政を強化しなければならないという立場に地方財政は置かれておる。それだのに、何も船会社だけに特別優遇ということでいろいろ考える必要はあるまい。地方税でそういうことを考えるのは、総体的に見てつり合いがとれないんじゃないか、こういうことを言っておるんです。なぜ一体地方税だけにしわを寄せてこういう措置をとったか、特別とん譲与税なんておよそインチキで、ふたをあけて見れば結局トータルで損をしておる、こんな一体ばかな話があるか、こういうことを言っておるんです。それに答えてもらいたい。
  70. 加藤精三

    政府委員(加藤精三君) ただいまの第一段の、国際競争力の強化、その他の国の産業上の要請、貿易振興上の要請というようなものを、地方税の操作で若干強力措置をしていいか悪いかという問題になるわけでありますが、それは従来ともそういう方法相当やっておるのでございまして、今回初めてやるわけではないのでございます。それで従前から相当強力に、たとえば新しく起る産業、その他すべての産業に通ずる基礎資材の生産に要する電気の電気ガス税等は、現にそういうふうな措置を強力にとっているのでございまして、とること自体が悪いということはあり得ないんじゃないかと思うのでございます。ことに利子補給政策というような強力な政策も、三十一年度限り廃止にもなっているのでございまして、かれこれ考え合せまして、必ずしも非常に悪い措置だということは当らないんじゃないかと、まあ考えるのでございます。第二に、その減収をほったらかすのは、あまりひどいじゃないかということでございますが、この地方財政の減収の問題は、一つの種類の税をいじりますれば必ずどこかに響いてくるのでございます。響くのでございますが、それに応ずるために、今、日本の地方財政制度では各種の財政調整制度がございまして、それでそれを全体として見ましたときに、著しき支障のないような仕組になっておりますることは御承知通りでございます。その財政調幣制席の最大のものが地方交付税の制度であるというふうなことを考えまする際には、比較的、税の自然増収に毛唐生れておりまするところの外国貿易の開港場所存市町村のような地方団体でございまするから、そう財政的な打撃は激甚ではないと、相当財政調整の作用で相殺もできる面があるだろうというふうに考えておりますのでございまして、しかしながら、まあ地方財政全般及び個々の地方団体の財政の立場をよくお考えになっての御心配でございますので、われわれとしては大へんありがたい御意見でございますのでありまして、将来の立法に当りましては十分そういうような点を考慮いたしたいと、こう考えております。
  71. 加瀬完

    加瀬完君 だんだん説明をされておりますとわかってきました。利子補給を三十二年度からやめるから、利子補給に見合う分として固定資産税を引いて行くのだ、こういうことですね。それから国際競争力にたえ得るようにするためには、どうしても船舶の固定資産税を引いて行かなければならないということでありますが、船舶関係の国際競争力ということだけから考えても、港湾施設ということは重要な問題になってくる。ところが港湾施設というものは、今度のようなやり方をされれば、港湾施設にかける費用というものは減少してくる。船ばかりに力を入れても、外国船なんかが入ってくるところは、港の施設ということに金がかけられないということになったら、一体この問題はどうなるか。足りないところは交付税などでまかなうということであるけれども、それならば、なぜ一体船舶関係の固定資産税の減った分だけを、港湾施設なら港湾施設の単位費用を改訂して、交付税によってそれだけの埋め合せをつけるという、単位費用の改訂というものを先にやらないか。そしてさらにその国際競争力に打ち勝つというならば、これを目的税にして、昔の手数料みたいに目的税にして、まるまる港湾施設に使えるようになぜしないか。扱い方は一般財源として扱って、そして不足分は交付税の単位費用の改訂として補うという方法は少しも考慮しておられない。それでは次官の言うことは少しおかしいじゃないか。それとも政府は交付税の率をもっと上げて、単位費用も改訂して港湾施設などに事欠かないように、今後対策を立てるというお考えなんですか、これはどうですか。
  72. 加藤精三

    政府委員(加藤精三君) 三十二年度の国の政策といたしましては、特に道路、港湾に対しまして巨額の予算を見積りまして、政府自身もその直轄ないし国庫補助の予算を非常に大きく見積りまして、これに応ずる地方の支出も導き出して、そして本格的に総合輸送力の増強に役に立つように施設をすることにいたしておりますことは御承知通りでございます。で、そうしたような重要な港湾は、たまたまこの経済界の状況から見ましても、相当自然増収の多い地方団体にもなっておりますので、そうした点が目的通り進行し得るものだろうというようなふうにわれわれは考えておるのでございます。
  73. 加瀬完

    加瀬完君 開港場などの港湾施設というものは、地方団体だけにまかせればいいというわけじゃない。今度の道路、港湾と言いますけれども、地方団体にとりましてやらなければならない道路とか、港湾とかいうものは、こういう開港場施設などに関係のある部面というものは非常に少ない。しかし経費は国の支出だからと言ったって、国だけでまかなうわけにいかないで、開港施設があれば、当然これは地方団体がいろいろな負担を必要とする、それが現在の船舶の固定資産税だけではどうにもならなかった。横浜などから私陳情を受けたのでありますが、昔の手数料のようなものを復活してもらって、直接港湾関係だけに使えるような何か財源というものをほしいというふうな御意見もたびたび私は承わっておる。ところが今度はそういうふうな形の財源ではない。しかも財源のトータルは減っておる。こういうことでは筋が通らないじゃないか、減ってもしかし増収があると、こうおっしゃる。自然増収というのは、自然増収があるから地方団体は新しい計画なり施策というものを伸ばし得るわけなんで、自然増収を政府がそういうように頭を押えておけば、いつまでたっても地方の貧弱団体は貧弱団体、CクラスはCクラスでいなければならない。CクラスがBクラスに伸びて、貧弱団体が幾分かでも平均を保つには、自然増収なり他の新しい財源なりによってのみ伸びられるわけです。それを政府の税制の改正によってマイナス面が生じたところを自然増収で補えということでは、地方財政を豊富にする、あるいは地方に新しい財源を与えるということには一つもならないわけなんです。そこであらためて伺いますが、特別とん譲与税というものは、これは船舶の固定資産税とからみ合せたときには、国際競争力に打ち勝つような船舶会社を保護する税であって、特別に地方に新しい財源を付与するという意味のものではない、こういうことに解釈せざるを得ないのですけれども、それでよろしいですね。
  74. 加藤精三

    政府委員(加藤精三君) だいぶ突き詰めての御意見でございまして、まあわれわれはこの地方税制というものは、一つの税の種目が、それに特別関係ある市町村との結び付きだけを重視して税制をきめるのだというふうには、どうしても考えないのでございますが、まあそれ以外にいろいろな税というものの社会的な影響力とか、経済に対する諸般の顧慮とかいうものが加わるものだと思っているのでございます。で、そういう面も多々あろうと思うのでございますが、ただ現在の、今度の固定資産税関係の船に関する諸般の税の関係で、具体的にこの影響を与える関係地方団体の影響はどうかという問題として、まあ取り上げられたのでございますが、それに関する限りにおきましては、そう非常な大きな影響ではないだろうから、まあがまんができる程度だ。しかもその地方団体が、減収傾向にある地方団体でないものが大部分でございまして、まあ自然増を皆それに注げというような、税の自然増収を全部それに注ぎ込め、その減収補てんに全部ぶち込めというほど、大げさな激変を来たしているものではないのでありますから、それはがまんのできる程度だということを申し上げたのであります。それから特別とん譲与税、特別とん税との関係は、従来のとん税が世界の海運の操作におきまして、日本のとん税だけが非常に軽い税金であって、国際的関係の均衡から言いましても、もう少し重加することが適当だというような顧慮もあるのでございまして、かれこれ諸種の要素を合わせて今度のような立案になったわけでございまして、その点をもお含みおき願いたいと思います。
  75. 加瀬完

    加瀬完君 さっき政務次官が、政策的な要請によるのだという御説明があったのでありますが、たしかに金額からすれば、必ずしも財政計画全体から見れば、多いということにはならないと思います。しかしながら、その性格とか、精神とかいうものを検討するときに、これはやっぱりふに落ちない点が多いのです。たとえば、あなた方の方で、まあ地方税のときにいろいろ問題になりましたが、芸者の花代税というものを二分の一に下げた。それは何だと言うと、これは税の徴収の事務的な簡便化のためだと、こう言う。それのみでは筋が通ると思う。しかしたとえば大衆飲食とか、旅館宿泊というものの税は今度は五%を一〇%に上げた。これも手数をはぶくという点ではいいかもしれませんが、しかしその税の性格というものを見ると、花代税を二分の一に減額するということは、どういう一体大衆に与える性格というものを持っているか。今度の場合でも政策的な要請だといって、もうかっておるところの船会社には減免措置をする、しかしながら、ガソリン税なり、あるいは軽油引取税なり、こういうものの大衆課税的なものは、これは幾らでも増額させる、こういうことでは、あなた方の対象としているものはどこなんです。税の対象として考えているのはどこなんです。たとえば、あるいは税の合理性というものを進めて行かねばならぬ対象として考えているのはどこなんです、ということに疑問を持たざるを得ないのです。あなたのおっしゃるように、これは利子補給というものがなくなったから利子補給のかわりだと、こうおっしゃるのであるなら、少くも今の政府がこういう資本家と言いますか、あるいは資本と言いますか、こういうものに対しましては、非常に税の合理性というものを説く、しかし一般大衆、国民というものに対しましては、税の、国民の希望するところの妥当性なり合理性なりというものはあまり尊重してくれない、こういう解釈をいたさざるを得ない。しかも地方財政のマイナスになる面というものに対しては、十分マイナスを救済するという方策を考えない。もっと極端にいうならば、地方財政のマイナスをカバーしようか、資本家のマイナスをカバーしようかというときは、地方財政を捨てても、そちらを優先に考える、こういうどうも考え方に立っている、税体系を立てるときに。少くも特別とん譲与税と船舶税を考えるときには、そういうふうな考え方に立ったのではないかと疑わざるを得ないと思うのですが、それで、そう解釈してよろしゅうございますか。
  76. 加藤精三

    政府委員(加藤精三君) ただいままで加瀬完生からいろいろ御議論がありましたけれども、どうも私たちの側からの考え方とは若干違うのでありまして、まあこのたび保守党で組織しました内閣の性格をよく経済的合理主義という言葉で申しておりますが、この経済的合理主義ということは、今度の税制改正では、ずっと一貫した主張になっているのでございまして、たとえば先ほど御指摘になりました問題のごときも、これは芸者の花代と申しましても、これはこれを改正することによって課税の適正化が得られる、公平が得られる。またこの立てかえ金その他というふうにして脱税をしている分が、かえって徴収しやすくなるとか、その他諸種の均衡を考えたのでございまして、単に私ども徴税の手数が少くなるというようなことを考えているわけじゃないのでございます。その経済的合理主義というような立場から一貫しているわけでございます。先ほど外航船の利子補給をやめたから、この特別とん税及び固定資産税を合わせても、かえって減税の結果となるような税制を作ったかということでございますが、とても外航船の利子補給というような、そうした措置に比べますれば、決してそんな大きな軽減措置じゃないのでございまして、私が申しました言葉が悪いかもしれませんが、税制をいじるときには、若干いずれかの方面には影響があるものだ。しかしながら、それが影響があっても、これは状況上その措置が国の財政地方財政等全般から見て意義のあるものであるならば、そういう改正がなされ得る場合もあるということを申したので、特別とん譲与税、固定資産税の税率改正等を一括して、それでわが国の外航船舶会社に特別に有利に持って行こうとか、資本家を擁護しようというほどの大げさなことは、とても行われることで毛ありませんし、そういう意図はみじんもないのでございまして、わが国の海運業界は対外競争力の増強ということをまだ努むべき時期にある、これは治にいて乱を忘れずで、平素からそういう心がけをもって事に処することによって、ある程度の国際的打撃がありましても、わが国の海運業がこれが急激に壊滅したりしないようになるわけでございまして、そうしたことでございまして、決して利子補給政策をやめたかわりに今度の措置をとったというようなわけでは決してございません。そういうような時期でもございますし、対外競争力という面もかれこれ考え合せまして、外航船舶を所有する会社の負担が著しく高くなるようなことのないようにというような気持で立案しているわけでありますので、その点は十分誤解のないようにお願いしたいわけでございます。
  77. 加瀬完

    加瀬完君 特別とん譲与税というものを作りましたのは、地方に新しい財源を与えたいという趣旨だろうと私どもは考えている。少くとも提案の説明によれば、こういうふうに了解できる。ところが現実は特別とん譲与税に一番関係のある船舶関係の固定資産税というものを下げておるので、トータルでは地方財政を新しく与えたことにはならない。それではなぜ一体船舶税をこういうふうに軽減するかと伺いますと、これは国際競争力に耐えるように、新しく保護をしなければならないとおっしゃるけれども、蒸し返しになって恐縮ですけれども、利子補給をしなければならないほど窮迫したときでも、固定資産税について課税標準を価格の四分の一と押えて、それに耐えてきたんです。またそれだけかけなければ地方財政という見地からは財源の確保ができなかった。ところが現実は、それらの条件よりもはるかに船舶の会社が有利になっておるにもかかわらず、特別に軽減措置を新しく加えて、しかも地方の財源までも減らして行くという必要はごうもないではないか、当を得ておらないではないか、こういう点を伺っておるのであります。適正化、公正化ということはけっこうです。均衡化ということもけっこうです。しかしその適正化、公正化というものは、資本力をさらに蓄積するような方向にだけ適正化、公正化を行われては地方税制としては非常に困る。もっと国民の負担に均衡さしてもらわなければ困る。地方税全体の税種目あるいは地方住民の全体の負担から適正であり、公正でなければならない。こういう点で私はどうもふに落ちないのだ、こう申し上げておるのであります。しかし議論になりますので、大蔵省の税関部長、早くから来てお待ちでありますので、大蔵省関係で伺いたいと思いますが、それから自治庁の税務部長にもあわせてお答えをいただきたいと思いますが、特別とん譲与税は特別とん税と一緒にして、これは国の税として、目的税にして港湾に与えた方が、はるかに港湾施設に利用される率もいいし、税の目的からいってもその方がいいじゃないか、なぜ目的税にしなかったかということが一つ。それから特別とん譲与税は全部で五億八千六百万という推定でありますが、五億八千六百万くらいの金額を地方財源を新しく増すということで、こういう特別の、税務部長のたびたびの御説明によるならば、徴税事務の複雑化を来たすような税種目を新しく作るような理由がどこにあるか。それによって固定資産税を減らしてしまう。だからこれはこれで国に返して、あるいは国に帰属させて、それだけの財源は何か別の方法を考えたって考えられるじゃないか。特別とん譲与税というものをここで特別に設けなければならなかったという理由はどこにあったか、こういう点をそれぞれ税務部長、税関部長から承わりたい。
  78. 山下武利

    説明員(山下武利君) とん税と申しますのは、御承知のように、外国貿易船が開港に入りましたときに課します一種の流通税でありまして、港湾法に定められております入港手数料のようなものとは、いささか趣きを異にしておるわけであります。日本では明治以来ずっと国税として一本で取っております。各国の例を見ますと、国税の場合もあり、地方税として取る場合もあり、あるいは両方の合体のような場合もあるわけでありますが、どちらかと申しますと、国税として取っておる場合が多いようであります。それからこれを国税で取って目的税に還元しておる例というものは、よくわかりませんけれども、私の存ずるところではありません。日本ではもとより国税一木として一般会計の歳入に入れておりまして、これは沿革的にもそういう例がなかったわけであります。そこで、これを一木にして地方に還元してはどうかということでありますが、これはまた立法論として、そういうことも考え得ないことはありません。しかしながら、港湾に金がかかると申しますのは、結局港湾管理者に金がかかるわけでありまして、還元を受ける対象としては、結局港湾管理者を考えなければならぬわけでありますが、現在開港所在の地方団体で港湾管理者になっておりますのは、必ずしも市町村でなく、むしろ半分以上は府県がなっておるわけであります。従って今度固定資産税が減収になりますのは、市町村でありますから、その財源の補てんという意味でもって還元いたします場合には、港湾管理者に返すということは技術的にできないわけであります。従ってこれを一本の国税といたしまして徴収いたしまして、その一部を固定資産税の減収になりますところの港湾所在市町村に還元するという趣旨でもってできた次第でございます。そこで第二のお答えがすぐそれに関連して行くと思うのでございますが、それでは一本の国税として、とん税を五円から十八円に上げて、その中から適当な額、たとえば十円だけ地方に還元してはどうか、つまり同じような内容を持つ法律を二本作ることは煩瑣ではないかということでありますが、これはまことにごもっともだと思います。私どももできればとん税一本にしたいと思って、ずいぶん内部で研究いたしたのでありますが、どうもそれが法制的に困難だという結論に達しました。もし、これを一本にするといたしますというと、一たん一般会計の歳入に上げまして、交付税、譲与税、配付金、特別会計への繰り入れという歳出に、一方十円分を立てることになるわけであります。しかしながら、一般会計の歳出に立てます以上は、予算の歳出権に拘束されるわけでありますから、かりにその年度途中で非常にとん税の収入がふえてきたという場合にも、地方に還元される部分は、予算に計上された分をこえることができないわけであります。従って、この固定資産税を軽減した市町村に対する財源の補てんとしては、一本のとん税では不完全ではあるまいかということから、やむを得ず二本の法律にいたした次第であります。しかし、立法の趣旨といたしましては、あくまでも五円という非常に安過ぎるとん税を十八円という比較的国際的水準に近いところまで引き上げまして、その一部を固定資産税の減収を見ます市町村に遠州する、こういう趣旨でございます。
  79. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 外航船舶に対します固定資産税軽減の結果起ります市町村の減収を補てんするために、特別譲与税を譲与することにするわけであります。固定資産税が普通税でありますので、その穴埋めを一般財源として譲与することが適当と考えたわけであります。
  80. 加瀬完

    加瀬完君 それだというと、私は最初の説明で私の了解しておった点と若干食い違いが生じてくるわけです。特別とん譲与税というものは、それはそれできめて、固定資産税の軽減というものは別の問題だ、こういう御説明に聞き取っておったわけですが、今の御説明ではそうではない。そうであるならば、固定資産税というものは何も、国際競争に耐え得るために固定資産税を引くというけれども、それは固定資産税でやらないで、固定資産税は固定資産税として、地方としては財源確保につとめた方がよろしいのではないか。それから特別とん譲与税というものを五億八千六百万円ぐらいとって、そういう操作をするならば、こんなめんどうくさいものはやめてしまって、交付税なら交付税というはっきりしたもので何パーセントあげるということをやるか、あるいはもっと交付税を上げて、これらの町村に見合うような単位費用の考え方を、こういうものを新しく作り出すということにも、その方がすっきりしていいのではないか。非常に手数の多い割に、地方財政にさっぱりプラスにならないようなものをごてごてと御丁寧にやっておるが、それは花代とか、いろいろな問題で税収の簡素化をはかった趣旨とも非常に矛盾をすると思うし、これらのところもふに落ちない。こういうことを伺いたいわけであります。
  81. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 地方団体だけの立場から考えて参りますと、固定資産税に国の政策をあまり持ち込んでくることはおもしろいことではないと思います。しかしながら、地方税制でありましても、国の大きな制度の一つでございますので、この中にいろいろな経済政策を入れることは決して間違いではございませんでしょうし、またいろいろ加わっておるものもあるわけであります。外航船舶を考えます場合には、やはり日本の所有にかかわります船舶と外国の所有にかかわります船舶との間における負担の均衡というものも考慮に入れなければならないのじゃないか。そうしますと、外国の税制と日本の税制とが食い違っておりますから、外航船舶につきまして、他の一般の固定資産に対します固定資産税の負担と若干違えて参りますことも、これもうなずけることだと思うのであります。現にまた今まで違えて参ったわけでありまして、それをさらに一そう日本の船舶の負担が外国の船舶よりも特に重いという点を是正しようと考えておりまするのが、今回の措置になっておるわけであります。第二に、関係市町村の減収を地方交付税で補てんするのも、御指摘のように一つ方法だと思います。しかしながら、できるだけ地方団体といたしましては、自分で予測できます自主的な財源で財政運営ができる方が望ましいと考えるのであります。外航船舶に対します固定資産税は、港に入港いたしますその港の所在地におきまして、固定資産税を課しておるわけでありますし、また、とん税も開港への入港に際して徴収するわけでありますから、外航船舶に対します固定資産税の課税団体と、とん税の徴収地とが同じになるわけであります。原則として同じになるわけでありますから、とん税収入をそのまま関係市町村に譲与することにいたしました方が、同じように国の収入のふえます場合でありましても、このようなものの方が、地方団体の財政運営の自主性というものを強める上には役立つのではないか、かように考えておるわけであります。
  82. 加瀬完

    加瀬完君 その外国船舶との負担の均衡とか、公平とかいうことを言いますが、それは確かに外国船舶と日本船舶との、船舶に対する税関係を均衡に、あるいは競争力に耐え得るように負担を公平にということは、理論としては考えられることなんです。しかしながら、そうであるならば、外航船舶にのみそういう均衡とか、公平論を言うのはおかしいじゃないか。そうならば、産業としても、あるいはその他のいろいろな税対象にしても、外国との負担の公平や、あるいは均衡というものを失しているものはたくさんある。それ以上、私は国内の負担の不公平というものを来たしてまで、一体外航船舶というものだけを保護する理由がどこにあるか。この船舶関係でも、たとえば固定資産税が初めから課税標準の現行価額の三分の一、それを六分の一に外航船舶に対してはしたわけです。内航船舶に対しては現行は価額全部、それを価額の三分の二にしたわけです。六分の一と三分の二と、また外航船舶と内航船舶についても、こういうふうに引き方が違っている。ところが大資本というものや大産業というものには、非常にウエートがかかっているけれども、中小企業と言いますか、小資本と言いますか、こういうものには税の軽減のウエートがかかっておらないということが言われるわけです。こういうやり方がおかしいと思う。軽減させる、こういうならば、特に漁業関係なんかはいろいろな問題で、昔日の漁業のような盛大さはないと思うのです。こういうものにこそ、もっと税関係で減免の措置というものを考えていい。船そのものについても、こういう船については考えていい。ところがそういう点は大資本、大産業の船に対しては軽減率が高い、小資本、小産業の船に対しては軽減率は低い。国の中そのものにも非常に負担の不公平がある。これらを押しのけてまでやるということは、結局、政府そのものの政策というものの傾斜がどっちに傾いているかということが、こういう表現になると私は思うのです。これは意見になりますから、質問じゃありませんから、もうやめますけれども、こういう考え方というものは、少くも地方住民に対する地方税については改めてもらいたい。特別とん税というものを作りました。しかしそれらに関係するところの地方の財源、収入というものは減りましたと、こういう結論の出るような税改正というものはやってもらいたくない。結論はそれだけですけれども、この意見に対しては奥野部長賛成してくれますか、結論だけでいいです。
  83. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) できるだけ地方財源を国の政策の犠牲に供することのないようにしたいということにつきましては同感であります。
  84. 加瀬完

    加瀬完君 あんまり長いと何とやらですから……。
  85. 鈴木壽

    鈴木壽君 ちょっと関連してお聞きしますが、いただいた資料で見ますと、今も加瀬さんからいろいろ数字的なことがございましたが、外航船舶の固定資産税関係で減になるのが五億二千五百万円でございますね、トータルとしてそうですね。それから特別とん税の譲与税の収入見込み額が五億八千六百万円ですが、これはしかし国内船と言いますか、日本の船と外国船があるのでしょう。これは大体一対一の割合だと思いますが、大体半額ずつぐらいだと見て、二億九千三百万円ぐらいずっと推定しておられるわけですね、これはいいですね。
  86. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) ええ。
  87. 鈴木壽

    鈴木壽君 そうしますと、これからすると、国内船でいわゆる特別とん税として負担するのは二億九千三百万円、一方固定資産税関係で減額になる分は五億二千五百万円ですから、二億三千二百万円ばかり外航船舶は負担の軽減になっている格好になるわけですが、それはそういう数字になってきますね。この今の特別とん税の譲与額だけで言えばそういうことですね。そこで、とん税は三円上ってますね。三円上ったことによってどのくらいの増収になりますか。
  88. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 八千八百万円。
  89. 鈴木壽

    鈴木壽君 そうでしょう。二億九千三百万円の大体三分の一近く、三分の一かちょっとぐらいだと思いますね。八千八百万円ですか。そうやっても、それをプラスしてもなおかつ相当の、一億五千万円くらいの減になりますな。こういうところを見ますと、やっぱりこれは一つ事務的なことじゃなく、政策の問題だと思うのですが、どうも僕ら納得できないところがある、どうでしょう、これは。事実上トータルにおいては、部長さんがおっしゃるように譲与税との間では、直接的に固定資産税と特別とん譲与税だけではあまり大した差異は出てきませんが、しかしもっと今言ったように内容を見ますと、外国船の負担も入っていますから、国内のいわゆる外航船の場合のそれだけをとって見ますと、とん税を加えてもなおかつ一億五千万円くらいの、これは大きな金高とは言えないけれども、とにかく少い負担になって、負担がそれだけ軽減されておると、こういうわけなんですね。ですから、私どうもやっぱりこういう税を考える場合に、ほんとうに負担能力がなくてとか、またあまりに過大な負担を背負わせているというような場合には、もちろん軽減ということを考えて参らなければいけないけれども、こういうふうに何か軽減の伸びだけが、少し常識的な言い分で、私は的確に数字をつかんでいるわけじゃございませんけれども、景気がいいと言われる船舶が、こういう税の格好において負担の軽減を今回はかられておるということになりますと、何かちょっと割り切れないような感じがしますね。
  90. 加藤精三

    政府委員(加藤精三君) ただいまの鈴木委員さんからの御意見は、私たちも一応ごもっともと思うのでございますが、ただ、今の内閣というか、政府考え方は、すべて今後の国の政策を経済的合理主義で割り切ろうというような一貫した何ものかがある、一種の性格があるのでございまして、そういう意味から、どうも国際経済力というようなものが、今の海運界に非常に十分であるかどうかということです。スエズ運河の閉鎖なんかで海運界がべらぼうにいいとか何とかいうことがありましても、また世界経済界の一種の好況である時期は非常にいいこともありますけれども、その国際競争力という観点からみて、十分に安心のできない時期には、貿易保護政策をとるということがあってもよさそうに思うのでございますが、そういう意味から経済的合理主義というか、経済政策優先というような一つ考え方は、これはすべての流れている中心の一つの政策として、その地方財政の上にそれが非常に悪影響を与えるなら別でございますけれども、そう非常な大きな程度の打撃でもない場合は、すなわち減収の金額がそう多額に上っているわけでもない、それが数十の地方団体に影響が分散されるわけでございますし、その分散されました影響も、地方交付税制度その他五つの財政調整制度で、ある程度また希釈されるわけでございます。そういう意味からみまして、非常に大きな悪政でもないというようなふうにお考えになっていただければ大へんありがたいと、そう考えておるわけでございます。
  91. 鈴木壽

    鈴木壽君 加藤さんのお話ですが、これはあなたは率直におっしゃるんですが、しかしもっと私ども議論めいたことを申し上げますと、一応経済政策なり、あないは外国との貿易関係においての対抗上、あるいはバランスをとって行くというような点からいうと、保護政策を立てなければいけないということもわかります。僕らそういうことを全然否定するんじゃなくて、ほかの方にもこれに類するようなこともあると思います。どうしてもこの産業は、あるいはこの業種は育成をして行かなければいけないとか、保護して行かなければいけないとかいうことはあり得ると思うのです。僕らそれを否定しているんじゃなくて、ただその場合に見えてくることは、何と言いますか、少しいやらしいというところまでやられるというと、これは私の邪推かもしれませんけれども、そういうところに少し鼻につくような感じがしてくるわけなんです。問題はそこなんです。金額はもちろん大きくございません。しかし金額が大きい場合は、あなた方だって踏み切れなかったと思う。金額が小さいからといって、またそういうような思想のもとに、まあまあというようなことでやることはおかしいじゃないか。そこに保護政策を立てるなら立てる。そこに大体一つの助成的な方法を講ずるならそれでいいですが、それは私、国の政策として、あなた方の内閣の政策として別途に、私は加瀬さんのお話のように講ずべきだと思います。ちっぽけな、こういうところにしわ寄せしておいて、本来の保護政策にならぬじゃないか。むしろこれは、まああなた方がそういう意図じゃないとおっしゃるんですけれども、やはり利子補給がなくなった、これで少しでもというようなことを、あなたは考えないかもしれませんが、何かもっと、どこかにそんなことを考えたんじゃないかなというふうな気持すら持たざるを得ないわけです。これはしかし今言ったように邪推かもしれませんから、それはもしそうでなかったらけっこうでございますが、そういう印象を与えるような、こういう措置というものは、私はとるべきじゃないというふうに思うわけです。ですから金高の大きい小さいということもさることながら、やっぱりこういう格好は、かりに一億でも二億でも、地方の今なけなしの、いろいろなことで苦しんでおる、そういうところの地方財政に対する影響なり、あるいは心理的なそういうものも、私は小さくないものだと思うので、これは将来国の助成の必要な部面は、私は基本的に別途に考えるというような方法をとるべきじゃないかと思うわけなんです。こうなりますと、さっきも申し上げましたように、お互いに議論になってしまいますからやめますが、どうも今回のは特にどこかふに落ちないようなところがある。しかも今言ったように、国内のこういう船を持っておる、そういうのでは、ここまで検討しないとわからないような格好で、相当もうけておるのではないかというような印象を与えますし、これは政策としてはまずいあなた方の政策じゃないかと思うのですな。もっと大胆に、外国との競争を対抗上やらなければいけないというなら、私は、田中さんがよく使う、別の柱で堂々とやるべきじゃないかと思うのですが、しかしここまで言ってしまうと意見になりますから……。じゃ具体的にあれですか、たとえば関連して具体的にさっき部長からもあげられました姫路の港とか、どこそこの港というような、これは相当あなた方は、影響することですから検討なされたと思うのですがね。現在のままで行った場合、現行の場合と、それから今度この特別とん譲与税で行った場合とのいろいろな違いというようなものは検討なされているのでしょうね。
  92. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 一応各港湾所在市町村につきまして調査をいたしております。制度的には、先ほど申し上げましたように、開港であるか、開港でないかということによって食い違ってくるわけであります。外航船舶だけを考えてみました場合には、減収になる市町村は非常に少数になるということになって参るわけであります。
  93. 鈴木壽

    鈴木壽君 ちょっと資料でお伺いしますが、このいただいたこれは、とん税の額だけが三十年度のやつに入っていますね。これからだけでは、今のやつを聞くとわかりませんが、何かわかるようなものは他に……、何もそれによってどうこうと言うのじゃないのです。参考のために、あとで鎌田さんの方からでも、比較したのがあったらでございますが。
  94. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 鈴木さんのお手元に印刷した資料がございますので、お渡しいたしてあります。もし特定の市町村でありましたら、今でもお答えいたします。
  95. 本多市郎

    委員長本多市郎君) それじゃ質疑は次回に続行することとして、本日はこの程度で散会いたします。    午後三時五十四分散会