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1957-04-06 第26回国会 参議院 地方行政委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月六日(土曜日)    午前十時五十三分開会   —————————————   委員異動 本日委員白木義一郎君辞任につき、そ の補欠として千田正君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     本多 市郎君    理事            大沢 雄一君            小林 武治君            加瀬  完君            成瀬 幡治君    委員            伊能繁次郎君            伊能 芳雄君            小柳 牧衞君            鈴木 万平君            安井  謙君            占部 秀男君           小笠原二三男君            久保  等君            中田 吉雄君            岸  良一君            森 八三一君            千田  正君   国務大臣    国 務 大 臣 田中伊三次君   政府委員    自治政務次官  加藤 精三君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 本多市郎

    委員長本多市郎君) これより委員会を開きます。  本日委員異動がございました。白木義一郎君が辞任されまして、千田正君が補欠選任されましたので、御報告いたしておきます。   —————————————
  3. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 前回に引き続き、地方税法の一部を改正する法律案を議題として質疑を行います。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  4. 中田吉雄

    中田吉雄君 地方税法改正法案のけりをつけますためには、基地関係、まあ一種固定資産税に該当するものですから、実際それもあわせて出してもらうことが必要じゃないかと思うのですが、大体私、予算委員会の際にも、初年度五億円出てるんですから、予算が出ているのに、法案がもう二日、三日待てというようなことで、今日に至ってもなお出ないようですが、一体どういうふうになりつつあるんでしょうか。
  5. 加藤精三

    政府委員加藤精三君) 基地所在市町村助成交付金の問題でございますが、この問題につきましては、予算編成の当初から、いろいろ問題がございまして、その後各省の間に十分調整のつかないままに、大蔵省所管基地所在市町村助成交付金という名目で予算に計上されて、将来所管省がきまりましたら、予算総則によって変更しようというようなことでしておったわけです。    〔委員長退席理事大沢雄一着席〕 で、新設以前から、特にその解決につきまして、至急解決して提案するようにという参議院、衆議院双方常任委員会からのお申し出もございまして、政府の方としては、極力これが解決を現在促進しているのでございまして、大体一両日中に解決を見る予定でございます。非常に解決がおくれましたのは、申しわけないのですが、現在の段階では、もうほぼ解決が近いような状態になっておりますので、御了承を願います。その所管省の点につきましては、もはや自治庁できまったのでございます。ごく細部の点について、まだ最終決定しない部面がありますので、おそらくきょうあす中には最終決定いたすものと考えております。
  6. 中田吉雄

    中田吉雄君 一両日中にはまとまるだろうということですが、所管省はまあ自治庁だということで、大へんけっこうだと思うのですが、大体荒筋の構想はどういうふうになっておりますか。
  7. 加藤精三

    政府委員加藤精三君) 考え方の相違は自治庁側といたしましては、どういたしましても、基地交付金も、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律と同じような工合に、固定資産税というものを淵源とするところの財政調整制度というふうに考えておるのでございます。ところが、実は三十二年度の予算編成の際に、調達庁方面からも、この基地の土地の買入れその他のことをマネージして参りますのに、若干の助成金的なものがあると、大へん操作がうまくいくというような関係から、そうした意味予算の要求も出しておったのでございます。それが途中で合同して、一つ予算になったわけなのでございますが、しかしながら、予算が大体本ぎまりするときには、ほとんどこの地方財政調整固定資産税を本来ならば賦課徴収できるような形にありながら、あるいは基地であるとか、防衛庁の管理している財産であるとか、そういうような関係から、固定資産税が賦課徴収できない、そういうようなところへ。その結果、地方財政に不自由がある、十分な財源が得られないということのある場合に、それに地方財政収入を与えるチャンスを作ってやる、そういう意味考える方の考え方に大体統一されて予算が成立したものございまして、主として自治庁の努力によりまして、予算が最終妥結したわけなのでございます。しかしながら、従前から、大蔵省調達庁方面でいろいろそうした要請もあった関係から、最後までなかなかすっきりと了解が得られなかったわけでございますが、現在の段階では、法律所管省はもとよりのこと、この交付金金額決定自治庁でやるという点につきましては、まあ意見が妥結しているわけでございます。ただ、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律で、国有財産管理主体から市町村に対して交付金交付しているわけでございますので、そうした交付業務も、これは、そうした交付事務当該国有資産関係のある調達庁にやらしてくれるかというような意見最後に出てきているわけでございますが、しかしながら、調達庁というのは、そうした国有財産管理主体ではないのでございますので、若干事実上の関係なしとしないのでありますけれども、そういうふうな関係から見まして、穏当でないということを自治庁側は申しているわけでございますが、相当程度地方財政調整作用をいたしておりますので、これは地方財政地方交付税と同じような作用もいたしておるのでもありますし、交付事務もあげて自治庁の方に所管させたいという最後段階まできているわけでございまして、その点につきましては、大体妥結するのじゃないかということをまあ考えているわけでございます。
  8. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますと、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律改正でなしに、単独立法でいくわけですね、特別立法で。  それからもう一つ特別立法としますと、財政調整的な機能を含ませるということですが、交付金ではこれはやれるのですか。財政調整機能を入れるのなら、交付金でもやれぬことはないと思うのですが、それはどういう関係で、既存の法律の一部改正にならず、しかも、交付金改正でなしに、特別立法交付金のような性格を含ましていくのか。
  9. 加藤精三

    政府委員加藤精三君) 交付金とおっしゃいますのは、地方交付金じゃございませんですね。
  10. 中田吉雄

  11. 加藤精三

    政府委員加藤精三君) 交付税とは財源調達の、財源賦与の方式の立て方が違うわけでありまして、固定資産税にかわるものとしての交付金考えておりますので、財政法から見たら、助成金交付金の範疇に入るかもしれませんが、いわゆる地方財政制度の方の理念からいえば、これは税と同じような種類のものにしたいということでございます。そういう意味におきまして、自治庁でも税務部で扱っているわけですが、国有財産等所在市町村交付金納付金に関する法律も、自治庁税務部で扱っておるような次第でございます。
  12. 中田吉雄

    中田吉雄君 それと同じような形でいけますか。
  13. 加藤精三

    政府委員加藤精三君) 元の法律国有資産等所在市町村交付金納付金に関する法律でございますね、これと一本にして、付則でやろうかという御意見もあったのですが、しかしながら、    〔理事大沢雄一退席委員長着席〕 それには若干、たとえば、自衛隊の飛行場演習場等は、どうもこれは政府行政財産みたいな形のものでございますので、大体そういうものは、国有資産等所在市町村交付金納付金に関する法律では一応除外しておるわけなんでございますね。そんなようなものがございますし、また、なお若干、固定資産税と同じような資産評価をその固定資産税評価と同方法で、そのものずばりでその金額交付するということができない部面があるのでございます。その予算のワクとか、その他地方財政の事情を酌量することによってですね、一種特殊な率を掛けて、固定資産評価ずばりで操作しない部面もできるわけでございますので、すなわち、各種の資産の中に、十分の十で交付するものと、あるいは二分の一で交付するものというような、差をつけなければいかぬような関係もいろいろございまして、特殊な算定法をとることがありますので、国有資産等所在市町村交付金納付金に関する法律とやはり別個に、独立の法律にした方がいいのじゃないかという結論になったのでございます。
  14. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうすると、これはどっちの性格が強いのですか。財政調整的なような性格が強いのですか、固定資産税のような内容が強いのですか、どうなんですか。
  15. 加藤精三

    政府委員加藤精三君) 先ほど申しましたように、今度の基地交付金の本質は、もとより、固定資産税淵源とするところの財政調整制度であるということを貫いておるわけでございます。調整という言葉を使ったのは、うっかりして使いましたが、一種財源賦与ですから、財政補給制度です。その一部に、財政調整的な作用を若干やるものを認めるという従来からの話し合いの経過になっておるのであります。どうも申しわけありませんが、財源賦与の一方法として、租税と類似の方法をとるということになるのでございまして、財政調整という言葉を使ったのが間違いでございます。  それから、との交付事務所管について、調達庁にやらせることを主張しておるのは、先ほど調達庁と申しましたけれども、現実に会議におきまして主張しておるのは大蔵省が主張しておるので、どういうのだか、大蔵省が主張しておるので、調達庁が主張しておるのではないので、説明を正確にいたすために、その点も訂正いたします。
  16. 中田吉雄

    中田吉雄君 法案が出ましてから検討さしていただきますが、ただ、法案を作成される際に希望しておきたい点は、主観的な行政官庁裁量で、非常に幅のあるような、しかも、基地拡張の手段に使われるやもしれぬ。私はそんたくするに、調達庁人ろうという点は、やはりそういうことがあり得るのではないかと杞憂するわけです。  そこで、私としましても、できるだけこの主観的な関係行政官庁自由裁量でなしに、できるだけ客観的な基準で、結局固定資産評価基準にするわけでしょうが、そういうことを中心にして、あまり弾力的な、幅の広いようなことにしないようにしていただきたいと思うのですが、どうでしょう、その技術的な見通しは。
  17. 加藤精三

    政府委員加藤精三君) その点は、委員各位が御心配になっていると同様に、われわれも非常に心配している点でございまして、ただ、固定資産税算定と同様の方法評価するものでございますから、評価算定するものでございますから、いわゆる調達庁所管しております直接賠償、それから間接賠償というようなものに役立てるととはできないわけでございまして、それが基地財産と確定した後に、それに向って固定資産税が取れないから、そのかわりのものを交付するという形にするということでございますから、ですから、直接賠償間接賠償の用にすぐ供するわけにはいかぬのであります。  そういう関係で、ただ、お考えいただきたいのは、従来長く基地であった所と、それから、非常な美田をつぶして、それが飛行場等になったような場合と、若干の村財政に及ぼす直接の影響に差があるというような場合、そういう場合に若干しんしゃくするということは、これは、地方財政調整上、これは補給上ではなしに、調整上若干考えられるのではないか。こう思いますので、それは、どんなに多くても全体の百分の五とか、百分の八とか、地方交付税の常識みたいなようなことで処理したい存念でおりますので、十分注意いたしたいと思います。
  18. 中田吉雄

    中田吉雄君 これはこまかいことですが、奥野部長にお尋ねしますが、何か法三章的な、きわめて簡単なものにして、政令のようなものにゆだねて、かなり裁量のきくような方向にいくやの風聞も聞くのですが、その点はどうですか。
  19. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 配分につきましては、中田さんのお考えになっておりますと全く同じような考え方を持っておるわけであります。法文の上では、固定資産価格市町村財政状況等を考慮して配分する、こう規定いたしたいと考えておるわけであります。その場合に、政令基準を設けます場合には、固定資産価格等を考慮してと書いてあります言葉のように、なるべく国有財産所在市町村交付金の額に準じたい、こう考えておる次第であります。
  20. 中田吉雄

    中田吉雄君 それでは、その点は、先に申し上げましたような点を希望して、法案が出ましてから、あらためて質問いたしたいと思いますが、先日いただきました自然増収資料では、府県のやつはいただいたんですが、あるいは出ているかもしれませんが、私の手元にありませんが、一番最近の入手された資料では、府県市町村とも含めて、大体どれくらいな自然増収になるでしょうか。実は予算委員会におきましても、最終の段階で、大蔵大臣は、国税においては千百億、それを下らぬという発表をしたのですが、地方団体の方は非常に変化が富んでおって、なかなか集計も困難だと思いますが、大体どれぐらいでしょう。
  21. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 三十一年度の自然増収のことと思いますが、三百億内外というふうに考えております。府県につきましては百七、八十億、市町村につきましては百二十億程度ではなかろうかというふうに推定をいたしております。
  22. 中田吉雄

    中田吉雄君 三百億というのは、非常に少いのではないですか。それはえらい少いじゃないですか。国税が千百億とすれば、もっとやはり実際は出るのではないでしょうか。
  23. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 国税地方税とは、税の構成が違うものでありますので、そのような数字の開きになるのであります。たとえて申しますと、個人住民税でありますれば、前年度の所得税額ないしは所得額基礎になるわけでございますので、財政計画を作りますときには、大体三十年の所得税額推定ができておったわけでありまするので、そう大きな伸びはないのであります。また、固定資産税になりますと、価額が据え置かれておりますので、家屋の増築部分自然増収になってきますけれども、これにつきましても、ある程度の増を予想しておったわけであります。しかし、それほど大きな増は期待できない。結局増収の期待できますのは、主として法人所得であります。法人所得割、これは、法人税割におきましても、法人事業税におきましても、前年度の所得基礎にして課税をしていくものでありますので、伸びました場合には、その企業所得伸びに応じて、直ちに地方税におきましてもはね返りの増収が得られるわけであります。こういうものの占めますウエイトが国税の場合と違いますために、ただいま申し上げましたような数字になるのではなかろうかと想像いたしておるわけであります。
  24. 中田吉雄

    中田吉雄君 臨時税制調査会地方制度調査会が三十二年度の予算編成を目ざしていろいろ答申をされたのですが、その当時においても、その程度自然増収を予測されておりましたか。その点……。
  25. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 相当自然増収は予想いたしておりましたけれども、現在ほど大きな増収があるとは考えておりませんでした。
  26. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は、その経済情勢の好転が税収にどうはね返ってくるかという正確な見通しが立っていなかったために、地方財政確保ということに急なあまり、地方税の持つ税の不均衡負担の過重というような問題について非常に、あとでも申し述べますが、そういう税の見積りについて適確見通しがなかったために、地方税法をどう改正するかということについて、やはり負担の過重、不均衡是正ということを非常にきらって、もう財源確保にあまりに急ではなかったか。急であったのは、やはり自然増収伸び適確に把握しなかったためじゃないかと思うのですが、その点どうでしょう。
  27. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 先ほど私が、現在ほどの増収を予想していなかったと申し上げましたのは、臨時税制調査会なり、地方制度調査会なりの審議の際においては予想していなかったということを申し上げたのであります。国会に今回提案申しております政府案を作成いたしますころには、予想はもちろんいたしておったわけでございまして、従いまして、また、御指摘になります地方税につきましても、地方財政は非常に窮乏いたしておるわけでありまして、もっぱら財源の拡充をはからなければならないような事態にありましたにもかかわりませず、あえて三十二年度におきましては、普通税におきまして百二億七千万円の減税を行なっておるわけでございます。平年度におきましては、二百十八億二千四百万円の減税を行なっておるわけでございます。従来の地方税制についてとっておりました態度からいたしますと、まさに一変した思いきった負担均衡化中心でございますけれども、あえて減収の生ずるのを押し切って改正をいたそうとしているわけでございます。
  28. 中田吉雄

    中田吉雄君 しかし、私は、この三十一年の十二月二十四日の地方財政に関する当面の措置についての答申並びに臨時税制調査会地方税に関する二つ答申を比較してみて、地方財政について相当関心を持ち、できるだけあたたかい気持をもって見ているのですが、この二つを比較してみると、私としては、やはり臨時税制調査会地方税部会といいますか、その答申がやはり税の持つ欠点についてむしろ正しい認識をしているのではないかというふうに考えるわけであります。それは、やはり当初自然増収に対する見通しが、まあ臨時税制調査会でもそうでしたが、あったためではないかと善意に解釈しているのですが、この地方税調査会のやつを見ますると、自然増収があっても、これを財源として積極的に減税に充てる余地は全然なかったというような答申で、地方財政確保に急な余り、やはり私は、時間がありませんが、あとで少し述べたいと思うのですが、地方税の持つ負担の不均衡さというようなものについて、根本的な反省がなかったのじゃないか。たとえば、この臨時税制調査会答申を見ますると、やはり昭和二十五年にやったシャウプ勧告基礎とした税の改正は、その後の情勢に見て、非常に多くの欠点を持ち、改正を要するようになったというような前提でもって、改正に対する基本方針をきめ、そして地方税におきましても、国税地方税を通じて、やはり納税者立場考えて、自然増収は一部これを起債の削減に充て、地方歳入是正をはかるとしても、国民の要望にこたえて、この際、地方減税に寄与することを最優先に考えるべきだというような点は、私はやはり相当この税に対する考えが、再建法その他いろいろ地方財政に苦慮された立場はわかりますが、そういう配慮が非常に私は少し足らぬのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。少し、とにかくこの事務当局が指導してと言っては何ですが、中心になって作られた答申だと思うのですが、自然増収があっても、もう財源として積極的に減税に充てる余地は全然ない。若干あとに、いろいろ今度改正されたような各税に対する答申はあるのですが、そういう反省が、反省といいますか、このたびは、もう昭和二十九年にやったのだから、大きな改正はやらぬのだ、いいのだというようなことがあったかもしれませんが、そういう点はどうでしょう。
  29. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 臨時税制調査会におきましても、地方制度調査会におきましても、ずいぶん相対立する激しい意見がございました。どちらかと申しますと、多数意見というものが両方答申になってきているものですから、その中で論ぜられた激しい反対的な意見というものが答申の上には現われてきていない、こういうことから両者を見ますと、ひどく違っているのじゃないか、こういう感じも出てくるのは当然じゃなかろうかと思います。しかし、その中には、同じような意見両方においてずいぶん強く主張されておったということを申し上げておきたいと思うのであります。どちらかと申しますと、臨時税制調査会の方は、国民租税負担をできる限り軽減したいという立場物事をお考えになる方々がずいぶん多かったと私承知いたしております。地方制度調査会の方の方々は、どちらかと申しますと、地方自治というものを健全に発展さしていきたい、こういう見地から物事考えられる方々が多かったように思っております。地方制度調査会答申につきまして御批判がございましたが、やはり地方財政の現状をもってしては、増収があっても、これを財源として積極的に減税余地はないというのが多数の御意見であったわけであります。その理由は、すでに御承知のように、地方団体としては、一方に多額の公債を発行しているわけでございますので、多額の借金をどんどん追加しながら減税をしていくということは、現在の住民租税負担を将来の住民租税負担に追いやるだけのことではないか、こういう気持がございました。これが一つの問題であります。  もう一つは、御承知のように、地方財政が窮屈な点もございまして、国の方から三千億円という多額ひもつき補助金地方団体は受けているわけでございます。地方自治の健全な発展ということを中心考えていきます場合には、地方団体にもし財源があるならば、あえてひもつき補助金を国から仰がなくとも、一般的な財源地方団体に保有さした方がよろしいものも私たち相当数あると思っております。地方制度調査会委員方々の多数の人たちは、このような気持をやはり持っておられたようであります。もし自然増収がある、それなら、国からひもつきで金を地方団体がもらっている部分があるなら、それをぶった切ってもいいだろう。一般財源を減らす方向において地方財政措置考えてはいけないのではないだろうか、こういうお気持が多くあったように私承知いたしているのであります。  第三には、やはり租税制度改正いたしますと、四千に上る個々地方団体財政の実態が変ってくるわけであります。国の場合には、国の財政収支と見合って、国の租税制度改正していくことができます。しかしながら、地方税制の場合には、四千に上る地方団体財政収支に直接響いていくわけであります。しかも、地方団体は現在財政再建のさなかにあるわけでありますので、財政再建のさなかにある際に、個々地方団体に不測の影響を及ぼすような措置は、国として慎しんだ方がよいのじゃなかろうか、こういうお気持も多分におありのようであったわけであります。その意味において、あまりたびたび租税制度をいじくることは避けなければならない、こういう点がその答申の中に現われてきた基本的な考え方であったように私承知いたしておるわけであります。
  30. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は、臨時税制調査会国民税負担をできるだけ軽減すべきだという立場、一方において、地方制度調査会における、できるだけ地方財源を確保するという考えは、必ずしも調和しないものではなしに、地方財源を確保しながら、やはり負担分任といいますか、そういう伝統的な考えを改めて、近代的な租税考え地方税に持ち込んでくれば、財源を確保しながらなおやり得る、そういうことが非常に少くないのじゃないかということをいろいろ申し上げたいのが実際の私の質問している趣旨であります。  いろいろ今度の地方税改正について不満な点もあるのですが、その一つは、非課税あるいは減免の国税における租税特別措置に当るものの整理が非常に足らん。全然手をつけずに、むしろ外航船舶その他拡大さえしている。この点は非常に問題があるのじゃないかと思うのですが、国税におきましては、御案内のように、千五十一億ですか、租税特別措置で、三十二年度べースで、千五十一億のうち二割、たしか二百億くらいを整理していると思うのです。そこで、お伺いしたい点は、いろいろ資料をいただいていますが、私は、三十二年度ベースでは、もっとただいまいただいている資料よりか非課税、減免の措置による減収分というものは多いと思うのですが、一体報告通りぐらいでしょうか。それに対する将来の考えをお伺いしたいと思うのですが、これは将来大きな課題だと思うのですが、田中長官はどういうふうにお考えになっておりますか。
  31. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 一応先に私からお答えさせていただきたいと思います。御指摘のように、地方税制自体におきまして、非課税規定の整理は行なっておりません。ただ、租税特別措置を国の方において整理いたしました結果、それが地方税にもはね返って、増収になってきているという面があるわけでございます。国税所得計算を地方税にも使って参ります結果、国税所得計算において特別な減免措置を講じておったのをやめますと、地方税においても増収になって参るわけでございます。そういうものが大体平年度で五十七億円ぐらいあろうか、こう考えているわけでございます。先ほど、私が地方税普通税についての減税を申し上げましたが、この五十七億円の増収を差し引きして、なおあれだけの減税をやっているということにも逆に言えばなるわけでございます。なお、地方税制全体におきますところの非課税ないし減免に伴う減収額を四百十九億円と推定をいたしております。その中には、三公社課税につきまして、その負担を二分の一にしております部分も算入いたしているわけでございます。非課税整理の問題でやはり一番大きな問題は、農業に対して事業税を課さない現行の制度がいいか悪いか、こういう問題があるのじゃないかと思っております。これにつきましては、地方制度調査会でも臨時税制調査会でも、課税すべしという御答申をいただいたわけでありますけれども、食糧について統制が加えられている現状や、あるいは農業者の生活の実態等につきまして、なおいろいろと検討すべき余地もございますので、将来の問題として考えてゆくことにいたしているわけでございます。そういうような事情もございまして、地方税としては、積極的な非課税規定の整理は行なっていないわけであります。やはり重要な問題として、なお時間をかけて検討して参りたいというふうに考えているわけであります。
  32. 中田吉雄

    中田吉雄君 この租税特別措置による減免にしても、あるいは地方税における非課税あるいは減免規定によるこういう特殊な産業その他に対する措置というものは、いわば隠れたる補助金ということで、これが一たんできますと、そういう措置をとった当時とは経済情勢が非常に変っても存続する。それから、補助金とは違って、割合批判の対象にならぬで、恩恵の受けっぱなしというような、非常に悪い面も多いと思うのです。たとえば、造船利子の補給のように、あれほど大きな問題が起きたのでも、利子補給ということでありますれば、海運界の好況その他で、やはり相当業界の圧力があってもこれが整理される、もう情勢が必要としないようになったら整理されるというふうで、やはり負担の公平等から考えても、私はこの隠れたる補助金というものは、だんだん国税は、池田大蔵大臣も明らかに整理する方向をとるということですが、地方税においても、やはりこういう制度を毎年のように拡大してゆくと、その恩恵を受けぬものが標準課税よりたくさん取られたり、非常に重くなったり、アンバランスが起きたりすると思うので、そういう措置をとった当時とは情勢も変ったものもできていますし、来年度は、一つぜひとも産業その他に及ぼす影響等も考慮されて、四百億にも五百億にも及ぶ非課税減免規定に対しては、やはり根本的にメスを入れる段階だと思うのですが、長官いかがでしょう。
  33. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 一たん非課税の特別措置を講じますと、お説の通り、なかなか元にはもどりにくいものであります。これにはよほどの重大なる決意を必要といたしますが、国税についてのこの種の措置を再検討を加える方針でありますが、その方針に従いまして、やはり地方税につきましても、この地方税自体の減免措置につきましては、慎重に再検討を加えて、改めるべきを改めて参りたい。それには相当重大なる決意をしなければならぬ点がございますので、明年度、明々年度以降におきましては、しっかりした決意をもちまして、この問題に対処して、御期待に沿いたいと存じます。
  34. 中田吉雄

    中田吉雄君 今度は、漁業協同組合等に対する製氷ですが、あれはコストの中で幾ら占めるというのですか。協同組合だからああいうふうにしたのですか。あれはどうなんですか。
  35. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 両方でございます。
  36. 中田吉雄

    中田吉雄君 あの電気ガス税の非課税は、あれは大体コストの何%くらいまでを基準にしているのでしたか。五%くらいですか、幾らですか。
  37. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 当初非課税の範囲をきめましたときは、基礎資材の製造に使われている電気であるということが一点、国の方から価格補給金を交付しているということが第二点、製造原価の中で電気の料金が五%以上を占めておるということが第三点、そういうことで線を引いたわけでありまして、これはしかし、当初の非課税の範囲を設けましたときの考え方でございます。
  38. 中田吉雄

    中田吉雄君 今度のコストの中ではどれくらいになるのですか。何%くらいになるのですか。
  39. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 三%から四%くらいじゃないだろうかと思います。
  40. 加瀬完

    ○加瀬完君 今度の税制の改正の全般を見ても、地方団体の独立財源を強化するということについては、まだ問題の解決にはなっておらないと思うのです。特に住民税等を変えましても、この問題はますます目的が遠のいたという形にも見られると思うのです。こういう点、結局地方財政の基本的な税制の解決というものは、まだ本年度においては何ら解決をしておらないのだと、こうお認めになりますか、大臣。
  41. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 一応の措置をしたという程度と心得ておりまして、基本的な問題を一切これで方針的に解決をしたというふうには考えておりません。
  42. 加瀬完

    ○加瀬完君 国税地方税が非常にまだ私はアンバランスじゃないかと思うのです。自治庁の方からいただきました資料によりますと、二十八年を押えますと、二十八年度から三十一年度で、国税は一%しかふえていない。ところが、地方税は一九%ふえておる。これは、相当地方税が増徴の仕方といいますか、ふやし方がきびしくなっているのじゃないか。そこへさらに、ことしある程度。プラスしておるのですけれども、これは見込みが少し大き過ぎる、もっと国税地方税というものをバランスをとる考え方というものに立っていいじゃないか、これは交付税とからんだ問題にもなりますが、こう私どもは思いますが、大臣いかがですか。
  43. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 一応私からお答えさしていただきます。  国民から租税として徴収いたします全体の分量の中で、国の手で徴収しますのと地方団体の手で徴収しますのとの割合が、戦前におきましては、国が六五%、地方が三五%であったわけであります。それがだんだん地方税のウエイトが下って参ったわけでありますが、最近また漸次これがふえて参ってきております。二十五年が二五%、二十十年が二六%、二十九年が二八%、三十年が二九先、三十一年も二九%、三十二年は三〇%と、こういうように、だんだんと地方税のウエイトは戦前に復しつつあるわけであります。しかしながら、戦前よりもなお低いという状態でございます。それじゃ国民租税負担として支払ったものを国で使っているのがどの程度であり、地方で使っているのがどの程度かということを見て参りますと、言いかえれば、国税として徴収いたしましても、国から地方団体に対しまして補助金として交付する、あるいは地方交付税として交付する、こういうものは、国の方から減額いたしまして、地方の方にプラスするわけであります。こういう計算をしていきますと、戦前におきます地方団体の使用いたしました分量は四七%であります。言いかえれば、残りの五三%を国で使ったわけであります。これが昭和二十五年には五四%、二十八年には五九%、二十九年には六二%と、だんだん上って参りまして、現在では六三%であります。言いかえれば、国がみずから使いますのは三七%にすぎないわけでございます。こういうように、行政の比重が、これはもとより、軍事費の問題が大きな影響を持っておると思うのでありますが、地方に移っている。言いかえれば、行政を民主的に運営するという意味においては、地方団体の手によって行なっていくということが望ましいという考え方も基本的にあろうかと思うのでありますが、こういう姿になっておるわけであります。従いまして、税の面だけで全体を律してしまいますこともいかがかと思うのでありまして、自分の手で徴収いたしますのは、戦前に比べますとなお低いわけでありますけれども、それにいたしましても、ほぼ戦前に近いところまできておるわけであります。ただ、地方団体の手で使って参りますのが、四七%が六三%にもふえてきておるわけでございまして、これだけの財源地方団体考え方法としては、独立税一本でもいきにくいのじゃないかと、こう考えるわけであります。その結果が、今日のように、地方交付税制度、地方譲与税制度、国庫負担金制度というようなものが並行的に採用されて参ってきている点を御了解いただきたいと思うのであります。
  44. 加瀬完

    ○加瀬完君 今の比率は、地方の行政事務が義務教育の面とか、あるいは社会労働の面とか、広がっておるわけですから、事務範囲の拡大というものを考えないで、その比率だけで比較をしていくというのも私は無理があると思うのです。私の言いたいのは、国から幾ら地方財源がよけい流れてきたか、あるいは独立財源がどうだというふうなことではなくて、地方財源といろものだけでは地方財政というものをまかなうことができない。交付税なりその他のものとにらみ合せて考えなければならないということが結局基本的になっている。そこで問題は、地方税法改正が一応ここに上っておるわけでありますけれども、この改正というものは、少くとも独立財源を強化するという方向に強力に働かなければならないであろうのに、そういう傾向というのは、まだ目的達成にはほど遠いじゃないか。たとえば、住民税というものは改める、そうするとはね返ってきて、今度は財政計画等がアンバランスを生ずる、こういうことでは、ほんとうの意味の税制の改正にはならないじゃないか。こういう問題もまだ残っておる。この問題の解決を一体どうするのか、こういうことなのです。大臣どうでしょうか、この点。
  45. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 先ほども申し上げましたように、地方団体国民の総租税負担のうちの六三%を使っておるわけであります。国民の総租税負担のうちの三〇%は、地方団体みずからその手で徴収して参りますものであります。地方譲与税が国民租税負担の中の二%、地方交付税が一二%、ひもつきの国庫補助負担金が一九%、こういうことになっております。地方自治という見地を主体に考えて参りますと、地方独立税が日取も望ましい。その次には地方譲与税、その次には地方交付税、次は国庫補助負担金、こういうことになるのではなかろうかと思うのであります。地方譲与税、地方交付税を独立税に加算して参りますと、四四%という数字になりまして、戦前よりもずっと大きなウエイトを占めるわけであります。言いかえれば、国から支配されないで使っていく財源、いわゆる一般財源がこういう大きな分量を占めておるわけでございますので、ある意味においては、戦前よりも財源構成はよくなっているといろ言い方もできないわけじゃなかろうと思うのであります。しかしながら、御指摘になりましたように、できる限り独立税で地方財源を構成しながら、しかも、各地方団体を通じまして、普遍的に財政需要に見合った財源が与えられるような考え方ができれば適当だと思うのであります。しかしながら、他の経済状態、社会状態等も並行して考えていかなければならない問題でございますので、なかなかむずかしいことだろうと思います。現在において考えられるものとしては、まあこのようなところではなかろうかと思うのでありますが、加瀬さんのおっしゃいました理想に向って、なお今後とも研究はいたしていかなければならないことだろうと存じております。
  46. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は、国と地方とを見れば、国の方に税源が片寄り過ぎている。もっと税源の偏在というものを地方の方へ持ってきていい部面というものがあるのじゃないか。地方自体から見ても、税源が偏向し過ぎておって、一部の富裕の団体はますます富裕になる。貧弱団体は、このような税の改正をしても、それほどは暖まってこない。こういう偏在の問題というものを基本的に解決をしていかなければ、税制の改正という目的が達しられないのじゃないか。こういう点は、これからまた審議される法案にも関係があるわけでありますから、そのときに伺いたいと思います。そこで、こういう傾向がさっぱり今度の改正是正されないという具体的な私は二、三の点について伺いたいと思うのです。たとえば、先ほどからも質問に繰り返されておるわけでありますが、船舶税というものを、客体の評価を低くする、あるいは軌道関係で、外形標準の課税をしておったんですけれども、これを所得にする。とういうふうにして参りますと、結局地方の収入が減ってくる。しかしこれは、税の不合理を是正するという建前ですから、非常にそれは一面において不合理の是正という点はいいと、それなら、他の面にも不合理是正という線を一本貫かなければだめじゃないか。たとえば、このままでいくならば、私は、地方住民税は、ある程度均等割がふえてくるという傾向を捨てておけばたどらざるを得ないと思うのです。また、事業税などにしても、今度は六%下げられたわけでありますが、何といいますか、勤労を提供して、ほとんど勤労所得と見た方がいいと思われるような、大工とか左官とか板金工とか、こういうものが若干の請負類似の行為をするからといって、これをやはり六%にしておくといったようなことは、不合理是正という線を貫くなら、ここらにも若干不合理が残っているのじゃないか、もう少しあんばいのしようというものがあるのじゃないか。こういうことも私は考えられるのじゃないかと思う。あるいは大衆普通飲食税と芸者の花代の問題は、きのうたびたび論ぜられましたが、それでもやっぱり不合理というものは、その中にもきのう御説明があったように若干残っている。不合理の是正ということであるならば、不合理の是正をどこまでも正していくということでなければ意味がなくて、何かこう、一部の面には非常に不合理の是正という名のもとに減税措置、あるいは課税対象から除くという措置を講じているけれども、一面では、当然この不合理の是正がさるべき面をそのまま取り残しておる。こういう点がまだ残っておるのじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。具体的に伺いたい点は、たとえば、不合理の是正をしたことは、それでけっこうです。それならば、見合って、事業税あるいは住民税等、そういうところでも、不合理の是正というものが当然行われるはずであるのに、こういう点が残されておる面がないかどうか、こういう点です。
  47. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 事業税について、大工、板金等の方々の勤労を主体とするような面についての配慮が足りないという御指摘がございました。御承知のように、大工、板金工で、もし日雇いでありますならば、これは事業税の対象にならないわけであります。請負業に属する部分がございますと、その部分につきまして、所得を課税標準として事業税が課せられることになるわけであります。そういたしますと、請負業というものも、ずいぶん範囲が広くなって参ります。そうかといいまして、請負業の中で、大工、左官、板金工の方々が行われまする請負業だけを取り出しまして、特別な税率を定めることもなかなかむずかしいことであります。同じようなことを考えて参りますと、物品販売業でありましても百貨店のような物品販売業もありますれば、夜店のような物品販売業もあるわけであります。その夜店の物品販売業の方々は、あるいは基礎控除その他によりまして、結局は課税にならないかもしれませんが、課税になる方もおありであろうかと思うのであります。そういうようなところから、特にそういう業態だけを抜き出すことはむずかしい。しかし、何か考えなければならない。そういうところから相当な減収を生ずるわけでありますけれども、第一種事業でありましても、年所得六十二万円以下の部分につきましては、あえて税率を二%軽減する措置をとったわけであります。不合理の是正措置を行わないわけじゃないのでありまして、私たちといたしましては、積極的に不合理の是正を行なったという気持を持っておるのだという点をお許しをいただきたいと思うのであります。  また、住民税の問題におきましても、どちらかといいますると、寒村におきまする住民税の負担がかなり第二方式の採用等によりまして重かったのであります。住民の担税力がないのに、かえって所得に対しまする税負担の割合というものが重いのであります。そこで、四十九億円というような大きな減収が生ずるのでありますが、あえて第二課税方式につきましても、準拠すべき率を三十二年度から法定して参ったわけであります。今後もなお、私たちといたしましては、不合理の発見に努めまして、積極的に是正をはかっていきたいという考え方でおります点を御了解いただきたいと思うのであります。
  48. 加瀬完

    ○加瀬完君 住民税などでは、資産関係というものが全然考慮されないで、所得だけできめられていく関係上、従来の財産といいますか、そういう見方からすれば、すこぶる奇異の感を生じていると思うのです。たとえば、山林農家なんかに参りますと、立木なんかの価値というものは非常に高い。それの収入というものが相当ある。しかし、それが勤労所得のような、表面に出てきて課税対象として捕捉するということはなかなか困難であります。そういう面も、一般の勤労者などからすれば、一つの不平が、住民税に対する不平の対象になっているのじゃないか。そこで、住民税の将来の考え方に、資産割などというものを入れる考えはお持ちかどうか、これが一点。  それから、前のお答えに対する質問になりますが、たとえば、確かに大工、板金、そういった労務提供のような者が請負をしても六%に下った。しかし、六%にそれだけ下げたというならば、確かにバランスが合ったということになりますが、ほかにもいろいろ下っておる。一緒に下っておる。それから現在、第三種であっても四%の税率のものもある。あるいは公衆浴場は、政府案によって、第三種六%に改めることにしておるわけですね。そういうものと比べ合せたときに、これは何も税率を下げろとは言わない。たとえば、今までのような、従来の大工、従来の左官屋さん、こういう形で経営をしておりますと、まあ知り人を連れてきて、二人で一つの仕事をする、三人で一つの仕事をするというようなこともありがちなのであります。しかし、それを税関係だけを考えて、きちんと経理をさせておくというふうな能力というふうなものは、従来からのしきたりで、そう一般の商家のように堪能ではない。それで、ほんとうは税をかけられないものを、記載その他の点で不備があったために税をかけられるというようなことも、私はありがちだと思うのであります。こういう点に何か、行政的措置でもいい、何かの救済策というものを考えてやってもよろしいのではないか、こういう点、何かお考えがあるかどうか、二つの点。
  49. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 大工、左官に対しまする事業税につきましては、どちらかといいますと、給与所得と見る部分と事業所得と見る部分との振り分けにつきまして適正な配慮を加えまして、なるべく事業税の対象にならないように心がけた方がいいのじゃないかと思うのでありますが、その点につきまして、将来なおよく検討して参りたいと思います。  第二の住民税の資産割の問題につきましては、従前の戸数割は、御指摘のような資産割を特に重視しておったわけでありますが、固定資産税もあることでありますので、むしろ均等割と資産割の二本建ての方がよろしいのではないか、こういう考え方を持っておるわけであります。しかし、地方におきましては、住民感情とか、いろいろな点もあるわけでございますので、やはりこの問題につきましても、なお十分研究は加えていくべき問題だろうと思っております。
  50. 加瀬完

    ○加瀬完君 最後一つ、この地方税法がここでとり上げられた一番最初に論じられました、結局第二、第三課税方式をとっておった市町村が、新しい準率がきまることによりまして、四十九億ぐらいの収入減になるであろう、この収入減については、特別交付税で一応考えたい、こういうお答えでありましたが、この四十九億円の問題と、それから外形課税方式を取られるために、地方財政地方税その他で減ってくる、これらは交付税の方で当然財源的な措置がされると了解してよろしゅうございますか。
  51. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) その通りに考えております。
  52. 中田吉雄

    中田吉雄君 どうも委員長、えらい急いでおられるもので恐縮ですが、住民税のことを少し……。まあ来年度はぜひとも検討していただきたいという考えから、少し質問いたしたいと思うわけであります。奥野部長が行くところ必ず、たとえば、財政部長をしておられるときには地方財政の問題と所在、税務部長をしておられるときには、最近、地方税の分析、地方税の概観ですかの問題というふうに、りっぱな資料を整えていただくことは、私非常に感謝しておるものであります。ただそこで、ぜひとも御検討願いたいのは、その地方税の現状分析という中に、地方税の原則というのがあって、この負担の分任制、それから地方団体の行政または施設との関連性ということで応益制、この負担の分任制と応益制というようなことでこの地方税を貫くということは、再検討を要するのではないか。これは、加瀬委員が質問された点でもあるし、少くとも国税においては利益を受ける限度で、まあガソリン税なんかはありますが、ほとんど近代的な租税理論というものは。応能原則でやはり貫かれておるわけであります。私は、これはやはりぜひとも再検討していただかんと、負担の分任制、応益の原則というようなことでやると、どうしても大衆課税になり、わが党としては、やはり非常に問題がある点だと思うのですが、そういう点から、たとえば均等割というものは、もうすでに私は住民税の中から除くべきじゃないか。やるとすれば、それを所得割に吸収させるべきじゃないかというふうな考えを持つものですし、その応能原則、能力のある者が負担するという国税における原則は、私は、地方自治においても治外法権ではない。やはり地方自治でもその原則で、税をもう一ぺんそういう角度からやはり検討すべきじゃないかというふうに考えるのですが、いかがでしょう。住民税等において特に均等割……。
  53. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) いろいろな租税があるわけでありますが、これを国と地方とにどう配分するかということを考えます場合には、地方団体の施設に応じて相当な利益を受けて、その利益を受けている人たちが税金を負担する形になっておるものでありますならば、私は、国税に持っていきますよりは、地方税に持っていった方がよろしいと思うのであります。その意味におきまして、やはり応益原則というものを、国税とするか地方税とするかということを考えていきます場合には、一つの基本的な考え方として持っておってよろしいのではないか、こう思っておるわけであります。また、負担分任の問題にいたしましても、たとえば、青年団とか婦人会というような団体につきまして、その青年団なり婦人会なりの一部の人たちが会費を負担するのだ、大部分は会の経費を分担しないのだ、これでは自主的な青年団、自主的な婦人会が発展することはむずかしいのではないか、こういう考え方を持っているのであります。地方団体ごとの自治運営の健全な発展を願っていきますならば、なるべく多くの皆さんが、幾らかでもよろしいわけでありますから、その団体の経費の分担をいたした方がよろしいのではないか、こういう考え方を持っております。ただ、住民税の均等割はどの程度でよろしいかということは、いろいろと考えなければならぬと思います。また、中田さんの御指摘になりました、租税は原則として能力に応じて負担するもので大きな分量を占めているべきである、こういう考え方には私も賛成でございます。
  54. 中田吉雄

    中田吉雄君 まあ荻田さんの書きました「地方財政講義」等にも、ただいまのような分任制、応益というふうなことがありますが、原則として能力に応じて、そして地方自治の実態から言うと、そういう考えからしても、私は、今度の住民税は、まだただいま奥野さんがしまいに発言されたような趣旨が十分くまれていないというふうに思うものであります。実際、たとえば均等割を見ましても、そうすれば、この千億あまりの住民税の中で約百億、府県で二十二億、市町村で七十二億、九十四億というものがまあ均等割になっおるようであります。これが負担分任で、地方自治に対する関心を持たしたり、いろいろやるという考えもあると思うのですが、私は、それにしても、やはりとにかく地方自治において、近代租税理論が持っている応能の原則というものを置いていく、それには、戸数割の色彩を多分に持っているこの均等割をもう一ぺんやっぱり再検討してもらう。特に地方自治において、社会政策的な、所得を平均化するような施設をあまりやらない地方自治においては、私は非常に問題ではないかというふうに考えるわけであります。そうしてこの均等割を、個人と法人ともっと比率を変えるということはいかがなものでしょうか。若干応益とか負担の分任のことを考えても、受益の程度からいっても、個人もですが、大きな法人が受ける応益というものは非常に大きいと思うのですが、府県税にしても市町村税にしても、法人の均等割というものが非常に少い。たった十一億です。府県において二億六千五百万、市町村において九億七百万、十一億七千二百万、地方自治から受ける応益、負担分任の精神が現われるために、私は、これはやはり均等割百億のうちで、個人と法人とのこの比率について検討してみる必要があるじゃないかというふうに考えるのですが、これはいかがなものでしょうか。
  55. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 昭和二十五年に定められましたころと比較いたしますと、均等割では、全体として百円下げられております。逆に所得割の方は、国民所得伸びておりますから、ずっとふえてきておるわけであります。そういう意味においては、あるいは中田さんの御指摘のような仕方になってきているのかもしれません。しかし、もとより、均等割をどの程度にするというようなことにつきましては、私は、中田さんの御意見もあれば、反対の意見もあろうかと思いますけれども、法人の均等割だけ特に増額すればいいじゃないかという問題になってきますと、総額で御比較になりましたけれども、個人の納税義務者は二千二百万、法人の納税義務者は三十万から四十万くらいであります。従いまして、全体の額で御比較になることはいかがなものかと思うのであります。法人というものにいたしましても、大きなものから小さなものがあるのですから、小さいものを中心にして考えますと、あまり上げられないというようなことになるが、しかし、やはり大へん重大な問題でありますので、将来この問題については、どの程度になって参るかということに対しては、検討を怠らないようにいたして参りたいと思います。
  56. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は、均等割だけでなしに、法人と個人で、均等割、所得割と両方に、同時に、法人でも先に言われたように弱小の法人もあれば、大法一人もある。そういう考えからいっても、法人をもっと、受益の程度がこの均等割の度合いではとうていこれは人口段階に応じてきまっているわけでしょう。これが非常に、たとえば、人口五十万以上は幾ら、人口五万から五十万まで、その他は市町村というような均等割で、大法人が非常にこういう点ではやはり、もう一ぺん同じその法人内部の段階ももっと考えてみてもいいじゃないか。ただ都市だけの区分でなしに、都市の規模だけでなしに、やはりもっと、受益の程度からいっても、ただ都市の大きさで受益がきまるのではないので、その点はどうでしょう。
  57. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 大法人と小法人との区別をつける意味において、小法人税割の制度とかいうふうに私は考えておるわけであります。しかし私、均等割をさらに引き上げていくのだということを考えます場合には、法人の資本金の額に応じて若干の段差を設けるということも一つ方法であろうかと思います。いずれにいたしましても、よく検討すべき性質の問題だろうと思っております。
  58. 中田吉雄

    中田吉雄君 次に、この所得割といいますか、個人と法人で、結局府県市町村を通じて、個人が昭和三十二年度に負担する分が六百五十二億法人が四百十五億というふうで、個人の方が非常に大きいわけであります。二百五十億多いです。法人割と個人の所得割と、府県市町村を合計してみると、個人が六百五十二億、法人が四百十五億、これも私は、シャウプさんが来たときの法人擬制説というような考えもいろいろあったりして、こういうふうになったりしていると思うのですが、今度の改正は、国税におきましては、この所得税が三十一年度、二千六百二十三億であったものが二千三百億に減ってくる。法人は二千百九十億であったものが三千百億に、国税においては所得税よりかも法人が千億近く、七百億も法人が持つというふうに変ってきているのです。そういう点でやはり私は、国税における改正についてわが党はいろいろ言っておりますが、やはりおそらく自然増収等が伸びれば、なお所得税はもっと軽減されて、国税における法人税所得税の割合はもっと開いてくると思うのです。やはり私は、住民税に対して、先に申し上げましたように、応能の原則をもっと取り入れる、そういう点で、均等割について再検討すると同時に、住民税のうちで所得割を個人と法人との比率について、やはり国税におけるような変化を取り入れて、所得割を個人と法人との比率について再検討していくと、こういうことが必要ではないかと思うのですが、いかがでしよう。
  59. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 法人所得から得られます収入につきましては、地方税としては、別途法人事業税があるわけであります。法人事業税は、千億近い大きな地方財源になって参っておりますので、この点もあわせてお考えいただきたいと思うのであります。また、住民税につきまして、所得税額を課税標準といたします個人所得割と、法人税額を課税標準といたします法人税割と、税率は同じであればよろしいのじゃないか、こういう考え方も私ども成り立つと思っております。しかし、住民税の内部におけるバランスだけを考えないで、法人税所得税と  いった国税とあわせて総合的に考えてきめてもよろしいのじゃないか、こうも思うわけであります。そういう意味におきまして、税額を課税標準といたします税率が、住民税におきましては、個人所得分は若干高い、法人所得の方が若干低いと、こういう結果になっておるのであります。その方が財源が普遍的に市町村に与えられていくことを考えて参りますと、あるいはまた、自治運営ということから考えて参りますと、いいのではないかという、こういう考えに立っているわけであります。住民税だけのバランスを考えないで、法人税所得税もあわせて考えて行きたい。そうして地方自治運営なり、地方団体に与えます財源付与の姿なりとも照応して検討して行かなければならないのではないかと、こう考えているわけであります。
  60. 中田吉雄

    中田吉雄君 国税地方税住民税、事業税というような、多角的に考えてもやはり資本蓄積ということを、戦後の荒廃したあの段階法人擬制説を導入して、こういう資本蓄積に便利なような、そういうときとは情勢も変って、やはり私は一千億以上の所得税の四割にも当る地方税中心的な税である住民税を、これから育てて行こうという考えからみれば、やはり応能の原則から考えて均等割を再検討するということと同時に、事業税との関係考えても、なお私はやはりこの個人と法人関係をもう一ぺん考えてもいいのじゃないかというふうに思うのですが、無理でしょうか。
  61. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) これはいろいろな立場によりまして、いろいろの考え方のある問題だと思います。おっしゃっておりますような点も考えに置いて、将来とも研究して行くべきだろうと思っております。
  62. 中田吉雄

    中田吉雄君 まあ負担の分任、応益というようなこと、そういう原則から必然的に税率のきめ方が、比例税と言いますか、そういう形になってくると思うのですが、累進的な考えもいろいろ入れて行くということはめんどうですか。むしろ私は、シャウプがおいでになって、地方財源の自主性というようなことから標準税率をきめて、それ以外に制限税率までして超過課税をするというような考えで、かえって大衆的な方に自主性の強化ということがなるのですが、それをそうでなしに、もうやはり応能の考えを入れて、そういうふうにやったらどんなものでしょうか。
  63. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 住民税の個人所得割の第一方式の場合には所得税額が課税標準であります。この所得税額そのものがかなりきびしい累進税率を採用しているわけでございますので、住民税の個人所得割もかなり所得段階におきまして累進で負担になっていると考えております。法人税割につきましては、法人性格から言いますと、かなり問題があるわけでありますが、御承知のように、法人税自体におきまして、年所得を百万円以下の部分については三五%、それ以上の部分につきましては四〇%という税率になっております。累退税率と呼んでよろしいのか、累進税率といっても差しつかえないと思うのですが、そういう問題でありますが、こういう税率によって算定されました税額を基礎にして法人税割を課しているわけでありますから、法人税割自体につきましても若干の段差があるというふうに考えております。
  64. 中田吉雄

    中田吉雄君 もう時間がありませんので、一つぜひとも住民税一千億以上を府県税、市町村税でとる。そうしてまあ直接税を重く見るという考えから行けば、将来ともこの税を相当育てて行かねばならぬ。そういう考えから、一つこれが非常に負担所得のない人に重くならぬような、やはり考慮を払って、近代的な市町村における所得税と言いますか、そういうふうに育てるように一つぜひとも検討していただきたいことを希望しておきます。  それから最終に、いろいろ今度第二、第三課税方式について、ああいう改正が試みられているのですが、これがまあ第二、第三課税方式が、第一方式よりか二倍も三倍ももっと重く課せられて、地域的に非常なアンバランスがあるということの是正のためにされたのですが、その趣旨が正しく生かされるためには、やはり今度の暫定措置として、特に市町村に対してこの趣旨が生かされる措置と言いますか、助言と言いますか、やはり今度の改正について、地方課長等を通じていろいろ説明されると思うのですが、その趣旨が生かされて、たとえば今では非常に二倍も三倍もかかるというので、私の知った人でも住民登録を変えて、この負担を免れるというようなずいぶん例があるのです。そういうことも防げて行けるような措置はどうなんでしょう。これまで質問もあったと思うのですが、いかがでしょう。
  65. 奧野誠亮

    政府委員奧野誠亮君) 今回の住民税についての改正の趣旨は、地方団体に浸透するように、あるいは文書、あるいは会議を通じて話をして参りたいと思っております。同時にまたその結果起ります財政上の欠陥につきましては、特別交付税制度をもって交付補てんするのだということも明らかにして参りたいと存じております。
  66. 中田吉雄

    中田吉雄君 では一つその点を強く希望して、いろいろ質問したいことがありますが、この程度にしておきます。
  67. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 他に御発言はございませんか。……御発言もなければ、本案についての質疑はこれにて終局することとして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  討論の準備、付帯決議案についての協議等もございますので、討論、採決は次回に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十八分散会