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政府委員(山口正義君) ただいま御指摘の、
生活困窮者に対する受胎調節の器具、薬品を無料配付いたします費用、あるいは結核の健康診断に要します費用、保健所の経常費に対します費用に、非常に
不用額が多いという御指摘を受けまして、まことに恐縮に存じておりますが、
生活困窮者に対します受胎調節の問題は、これは、政府が受胎調節の普及を積極的に取り上げるようになりましたのは、
昭和二十七
年度からでございますが、
生活困窮者に対します器具、薬品を
生活困窮者に対して無料で配付してほしいという
要望がだんだん強くなって参りまして、
昭和三十
年度からこれを実施するようになったのでございますが、実際問題として、それに手をつけて実施いたしました際に、その対象者の把握あるいはそれの手続あるいは
一般の
人たちのこの
仕事に対する理解というようなことが、なかなか十分に行われておりませんでしたために、
昭和三十
年度におきましては、多額の
不用額を出しまして、私
ども、それを所管しております
厚生省当局としては、まことに申しわけない結果だと思っておるのでございます。これは、
仕事の性質がなかなかデリケートな問題をたくさん含んでおりますので、実際にそれがうまく行われ得なかったというような
実情もございまして、こういう結果になったのでございます。
昭和三十一
年度におきましては、それをさらに徹底させるようにいたしたのでございますが、
昭和三十一
年度におきましても、なかなか思うようにそれが消化され得ないような、現在までの状態では、そういうことでございます。これは、ただいま申し上げましたように、実際にその衝に当るもの、あるいはそれを受けるものが、この
仕事に対する理解と申しますか、それがなかなかうまく行われ得なかったという点もございますが、また、一面におきましては、この
補助率が現在二分の一になっておりますので、それに対して、
地方がなかなか、
地方財政の
関係で、
地方の予算を組みにくいというような、新しい問題でございましたので、組みにくいというようなこともあって、そういうふうな結果になったのでございまして、この点につきましては、私
ども、
地方庁をできるだけ督促して、予算化するように、今努力をしているわけでございまして、
昭和三十二
年度におきましても、同様の
仕事を続けていくわけでございますが、現在、各府県で県会をやって、当初予算を計上いたしておりますが、その様子によりますと、最近の私
どもの方で集めております
資料では、この予算の計上
状況が非常によくなってきたというような情報を得ておりますので、この点につきましては、今後、その原因になると
考えられました
一般の
人たちの理解の問題と
地方の予算化の問題、両方合せまして、この
仕事をできるだけ推し進めて、御指摘のような
不用額の出ないように持っていかなければならないと、こういうふうに
考えているわけでございます。
それから、結核の問題につきましては、先ほど私、健康診断というふうに申し上げたと存じますが、
昭和三十
年度におきましては、健康診断と医療費と、両方の御指摘があるのではないかと思うのでございますが、健康診断につきましては、従来は、主として三十才以下の
人たちあるいは集団
生活者を対象として、健康診断を行うという
方針で参ったのでございますが、
厚生省が
昭和二十八年から三カ年継続で実施いたしました実態
調査の成績から
考えまして、むしろ結核患者は三十才以上の人に多く見つけられる。しかも、それらの
人たちが無自覚の人が非常に多いということから
考えて、健康診断の対象を単に集団
生活者あるいは三十才以下の
人たちというふうに限定することなく、全国民を対象として、健康診断を実施しなければならないというふうに
考えまして、結核予防法の改正をお願いしまして、
昭和三十年の八月から、全国民に対して健康診断を実施するというふうにして、所要の予算を計上していただいたのでございます。ところが、集団
生活者あるいは三十才未満というような
人たちは、長い間健康診断を受けておりましたので、比較的その実施率がいいのでございます。たとえば、学校の生徒あるいは大工場の
労働者というような
人たちは、健康診断の実施率が、受診率が八〇%、九〇%というふうに高いのでございますが、
一般の家庭の婦人あるいは
一般の
市町村民の実施率と申しますか、受診率が非常に低いのでございまして、これは、現実の問題といたしまして、今まで健康診断を受けるということになれていなかった人を新しくつかんで、受けさせるようにいたしますために、非常に苦労が要るわけで、事前にいろいろ工作をして、やるのでございますが、なかなかその受診率が上らないというところに、私
ども非常に悩みを持っているのでございます。
昭和三十
年度におきましては、そういう、
一般市町村民に対する健康診断を
年度の途中から始めますために、その実施
状況が非常に悪かったのでございまして、率直に申し上げますと、予定いたしましたその人員に対して、
一般市町村民におきましては、一〇%そこそこというような状態でございまして、三十一
年度におきましては、これをさらに上回って、多く実施いたしております。三十二
年度におきましても、さらにだんだんと実施率を上げるという
方向に持ってきております。地区によって、九〇%以上の実施率を受けているという地区も相当多数に出てきているような
状況でございまして、この健康診断に要します費用が、相当多く
不用額になりましたということにつきましては、そのような事情で、新しい
仕事を途中から始めますために、その消化
状況が非常に悪かったということでございます。その点は、
一般のこの健康診断に対する理解を深める、同時に私
どもの方の
行政当局の実施能力も整備して、それを上げて、この実施率を高めて、御指摘のような
不用額の出ないように、今後持っていかなければならないと思うのでございます。
なお、この結核
関係の予算につきましては、現在、
市町村が実施いたします場合には、
市町村が三分の一、県が三分の一、国が三分の一というような費用
負担になっておりす。県が実施いたします場合には、県が二分の一、国が二分の一というような
状況になっているのでございます。ただいま、国会で法律を御審議願っております、また予算でも御審議願っておるのでございますが、
昭和三十二
年度からは、健康診断、予防接種を全額公費で実施したいというように
考えているのでございます。そういたしますと、
地方の
財政の需要も
負担も大きくなって参りますので、私
どもとしましては、将来、この
地方の
財政需要等から
考えまして、国庫
補助率をできるだけ大きく上げ得られるように努力していきたいと、そういうふうに
考えているわけでございます。
それから、保健所の問題でございますが、これは現在、保健所の人員の充足率が非常に悪い。従って、結核対策を初め、家族計画もそうでございますが、
一般公衆衛生対策が十分に行われ得ないのではないかという御指摘をしばしば受けているのでございますが、これは現在、保健所の建設費に対しましては、国庫
補助率が二分の一、経常費に対しましては、三分の一というような状態になっておりますので、三分の一の
補助率というのが、
地方財政の現在の状態から
考えますと、非常に低いのでございますので、従って、
地方としても、なかなかその
補助率では予算化しにくいというような
状況があるのでございます。従って、折角国庫
補助を計上して、予算を計上していただきながら、それが
地方で十分消化され得ないというような
状況になっているのでございます。この点につきましては、私
ども、この保健所の整備ということにつきましては、公衆衛生
行政の根幹になる
仕事でございますので、何とかして、
地方がこれを十分に予算化して、保健所の整備をはかり得ますように、国庫
補助率を少くとも二分の一まで上げていきたいということで、両三年努力して参ってきておるのでございますが、残念ながら、まだ、諸般の情勢から、
昭和三十二
年度に実現し得なかったというような
状況でございます。
そのような、ただいま申し上げましたような、家族計画あるいは結核の健康中断というようなことにつきましては、新しい
仕事で、しかも、
年度途中からやりましたというようなことで、十分に徹底しなかったというようなことでございます。保健所につきましては、
補助率の
関係がございまして、十分に消化されていないという
状況でございます。これは、私
どもも非常に遺憾に存じておりますので、ただいまお答え申し上げましたように、それらの
仕事をさらに徹底さしていきますためには、
一般の
人たちの理解を深めるとともに、やはり国として、できるだけの
地方に対する
財政的なつっかい棒をする必要があるのではないか、そういうふうに
考えているわけでございます。
なお、母子福祉貸付金につきましては、これは私、所管でございませんので、私からお答え申し上げるのは適当でないかと存じますが、所管の
局長も参っておりませんので、ただ、私の
承知いたしておりますことだけを一言申し上げさしていただきますと、これは、やはり国庫
補助率の問題があったようでございまして、これは、
昭和三十二
年度におきましては、従来の三分の一の
補助率を三分の二に引き上げるように、一応案を作って、法律案並びに予算案を現在国会で御審議を願っている最中でございます。