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国務大臣(
田中伊三次君) この計画の策定が、内閣の更迭その他の
事情で予想外におくれまして、まことに恐縮に存じております。
ただいまお手元に差し上げております、三十二
年度の
財政計画について、その概要を御
説明申し上げます。
三十二
年度の
地方財政計画の策定に当りましては、わが国の経済及び
地方財政の現状にかんがみまして、
地方制度調査会などの答申の
趣旨を尊重いたしました上で、三十一
年度に引き続いて、今後赤字の発生を見ないように、
地方財政計画の一そうの
合理化をはかり、さらに進んで歳入構成を是正してまた、行政水準の確保をはかることによって、
地方財政の健全化を一段と推進していくことを基本方針といたしましたわけでございます。この方針に基き、計画策定の具体的指針といたしましたのは、次の五項目であります。
まず、国税の
減税に伴う地方
財源の
減収を極力補てんするとともに、自主
財源の増強をはかることに努めました。
それから第二は、
地方税負担の
合理化についても努力しました。
第三は、一般
財源の充実と相待って、
一般会計における
地方債総額をさらに減少して、地方歳入構成の是正をはかることでございます。
第四に、
地方行政の水準を確保するため、できる限りの
財源を確保するとともに、新
市町村に対する国の援助を強化する等、その建設を一そう促進することにいたしました。
第五に、公営企業金融公庫を設置して、公募債消化の円滑化をはかり、公営
事業の拡充を期することにいたしました。
また、本計画策定の前提といたしました
地方税財政制度に関する
改正事項中のおもなものは、
第一に、
地方税負担の不
均衡の是正を中心として
地方税制度の
改正を行うこと。
第二に、地方道路税及び
軽油引取税の
税率を引き上げ、地方における道路
財源の充実をはかること。
第三に、
地方交付税法を
改正して
地方交付税の繰入率を引き上げるとともに、算定方法の
合理化をはかること。
第四に、
昭和三十一
年度分として交付すべき
地方交付税に関する
特例に関する
法律案の
規定によりまして、
昭和三十一
年度分の
地方交付税の一部を繰越使用できるものとして、
地方債の元利償還金の一部について
財源措置をすること。
第五に、基地
所在市町村に
財源を付与するための
制度を創設すること。
第六に、公営企業金融公庫を創設いたしましたこと。
第七に、特別とん税の創設に伴い、特別とん
譲与税制度を設けたこと等の諸点であります。右のほか、一般
財源の増強に伴い
一般会計における
地方債を縮減して、他面において、公営
事業会計の
地方債を
増額し、公営
事業の拡充を期することとし、なお、少額補助金を整理して一般
財源に振りかえるようにいたしたのであります。
このような前提の下に、
昭和三十二
年度の
地方財政計画を策定いたしました結果、その歳出
規模は、一兆一千四百六十一億一千五百万円となり、
昭和三十一
年度地方財政計画に比べると形式上は一千四億四千五百万円を増加することとなりました。
次に、歳出及び歳入のおもなる
内容について簡単に御
説明申し上げます。
まず第一に、歳出でございます。
その一は、給与費であります。給与費につきましては、給与改訂、昇給、
期末手当、薪炭手当の
増額等を
見込んだ結果、前
年度に比べまして、四百六億六千五百万円を増加し、四千四百三十五億六千六百万円となっております。
その二は、恩給費であります。恩給費につきましては、三十
年度決算を基礎とし、所定の増加率を考慮して算定し、これに恩給の不
均衡是正の平
年度化に要する増加経費を加算いたしました。その結果は、二百十三億八千五百万円でありますが、これは、前年に比べますと、十四億九千三百万円の増加となっております。
その三は、その他の消費的経費であります。このうち、国庫補助
負担金を伴う経費につきましては、それぞれの国の予算額を基礎として積算を行い、国庫補助
負担金を伴わない経費については、
昭和三十一
年度の
地方財政計画の額を基礎として、これに増減経費をそれぞれ加減をいたしました。その結果、国庫補助
負担金を伴う経費は、一千九十一億八千七百万円となり、前
年度に比べて、七十億七千六百万円の増となり、国庫補助
負担金を伴わない経費の方は、一千五百四十五億四千八百万円となり、前
年度に比べると、四十八億四百万円の増となっております。なお、国庫補助
負担金を伴わない経費の
増額のうちには、
人口等の増加に伴う経費の
増額がありますが、これは二十五億一千三百万円、旅費法
改正及び運賃値上げに伴う旅費の
増額十六億四千九百万円等が含まれております。
その四は、
公債費であります。
公債費は七百六十七億三千百万円でありますが、前
年度に比べますと、百四十三億三千九百万円の増加となっております。
公債費の累増につきましては、それが
地方財政窮乏の重要な原因となっていることにかんがみ、その重圧を緩和する必要があることは申すまでもないところでありまして、とりあえず
明年度において、これが対策として
地方交付税の配分を通じて重圧の原因となっている特定の
地方債の元利償還金の一部について
財源措置を行うことといたしましたことは、午前中当
委員会における
法案説明と同様であります。この旧債にかかる
公債費負担の
軽減に資することとするほか、一般
財源の増強に伴いましてさらに
一般会計における
地方債の発行額を減少せしめ、あわせて起債条件の
合理化を考え、将来における
公債費の重圧を緩和する
措置をとりたのであります。
その五は、道路、橋梁等の維持補修費であります。この経費は、二百五十七億五千五百万円で、前
年度に比べて八億九千五百万円の増となっておりますが、これは、道路、橋梁が極度に荒廃している
状況にかんがみまして、その補修費の必要額の一部を
見込んで算定いたしたものであります。
その六は、公共
事業費であります。公共
事業費につきましては、国の予算額に基き積算いたしたのでありますが、前
年度に比べまして百五十六億八千四百万円を増し、一千八百九十一億九千三百万円となっております。
その七は、失業対策
事業費であります。失業対策
事業費につきましても公共
事業費と同様の方法によって積算をいたしましたが、前
年度に比べまして三億一千四百万円減となっており、三百二億四千万円となっております。
その八は、国庫補助
負担金を伴わない建設
事業費であります。これは三十一
年度地方財政計画の額を基礎として、下水等
環境衛生施設などの
整備に要する増六十億六千四百万円、日本住宅公団に対する地方団体の出資金の減少が四億万円、災害復旧
事業費の減一億二百万円等を
見込んで算定いたしました結果、前
年度に比べまして五十四億三千四百万円を増して七百八十七億八千九百万円となっております。
第二は歳入であります。
その一は、
地方税収入であります。
税収入のうち普通税につきましては、前
年度行われました税制
改正の平
年度化、
経済界の好況等に伴って六百七十五億五千九百万円の
自然増収が予定されるのでありますが、
地方税負担の
均衡を図るため税制
改正を行うことといたしました結果、百二億七千三百万円
減収となりますので、差引き五百七十二億八千六百万円の
増収となり、
総額四千四百九十二億二千一百万円となっております。
目的税につきましては、前
年度行われました税制
改正の平
年度化等によって三十五億二千一百万円の
自然増収が
見込まれますが、入場税が普通税から
目的税に改められましたこと及び
軽油引取税の
税率引上げによる
制度改正の増二十億二千二百万円と合算をいたしますると、
総額において、前
年度に比べて五十五億四千三百万円増の百十二億九千二百万円となっております。以上の結果
地方税総額は、四千六百五億一千三百万円と
見込まれているのでありまして、これを前
年度に比べますると、六百二十八億二千九百万円の増加となります。
その二は、地方
譲与税であります。
譲与税収入については、六十億二千五百万円の増を
見込んで二百九十六億六千六百万円と算定いたしました。これは、入場
譲与税については
自然増収が十四億八千六百万円を
見込み、一百七十七億七百万円、それから地方道路
譲与税については
自然増収及び
税率引上げによる増三十九億五千三百万円を
見込み、百十三億七千三百万円と算定いたし、これに新たに設けられる特別とん
譲与税五億八千六百万円を加算いたしたものであります。
その三は、
地方交付税であります。
地方交付税の
総額は千九百四十三億七千二百万円を
見込みましたが、これは、
法定の繰入率を一%引上げることといたしまして、
減税後の国税三税の収入
見込額七千二百六億八千七百万円となって、二六%の額から
昭和三十
年度の精算分六億六百万円を引きました額の外に、
昭和三十一
年度分として交付すべき
地方交付税に関する
特例に関する
法律案の
規定によりまして、
昭和三十一
年度から七十六億百万円を
限度として繰越し使用される分がございますので、これをその
限度まで繰越すものとして加算いたしたものでありまして、これによりまして、実質的には前
年度に比べまして三百十五億七千四百万円の増となっております。
その四は、国庫補助
負担金であります。国庫補助
負担金は、義務教育費
負担金において七十七億五千百万円の増となっております。その他の普通補助
負担金において二十二億四千二百万円の増、公共
事業費補助
負担金において八十一億九千五百万円の増、失業対策
事業費
負担金において四億一千七百万円の減でありまして、これをかれこれ総計いたしまして、前
年度に比べますると、一百七十七億七千百万円の増加となりその
総額は二千九百五十六億百万円となっております。
その五は、
地方債であります。
地方債につきましては、地方団体の歳入構成をできるだけ健全化するため、一般
財源の増強に伴いまして、
一般会計における
地方債を減少せしめることを基本方針といたしまして、
地方財政計画に計上する
地方債は、前
年度に比べまして百九十五億円減じまして、五百二十億円といたしたのであります。
なお、
明年度における
地方債としましては、このほかに、公営企業債四百七十億円と、
明年度より
財政計画外の取扱いをいたします収益的建設
事業債五十億円及び退職手当債三十億円を準備いたしております。これを合せますと、その
総額は一千七十億円に上るのであります。その資金別の内訳は、
政府資金八百四十億円、公募二百三十億円であります。
その六は、雑収入であります。雑収入につきましては、
昭和三十一
年度の
地方財政計画額を基礎としまして、これに
所要の増減を行なった結果、一千百三十四億六千四百万円となり、前
年度に比べて十二億四千七百万円の増となっております。おもな増加
内容は、高等学校の生徒増に伴う授業料の増加とそれから給与費の増に伴う恩給納付金の増加であります。
以上が
昭和三十二
年度地方財政計画の概要でありますが、これを要約いたしますと、
経済界の好況によりまして、
地方税法の
改正により、普通税において百億円余の
減収が考えられるにもかかわらず、なお七百億円に近い
増収が
見込まれるのでありまして、これに加うるに、三百億円をこえる
地方交付税の増加を加えまして、一般
財源は、かなり充実することとなり、これによって、義務的経費の増その他
昭和三十二
年度における国の諸施策に伴う必要経費を賄うことができますほか、二百億円に近い
地方債を減額して、歳入構成の是正をはかり、さらに、従来果さんとして果し得なかった行政水準確保のために約百数十億円の経費を計上することができたのであります。このようにして、
地方財政計画は、従前に比べましてかなり改善され、
地方財政は、実質的意味においても、健全性の回復に一歩を進めることができるものと考えるのでありますが、地方行
財政の
実態にかんがみまするときは、この
程度では、もとより、なお十分とはいうことはできませんが、
政府といたしましては、さらに、
地方財政計画の
合理化に一そうの努力を重ねて参りたいと存じております。それとともに、この
地方財政計画の実施を通じまして、各地方団体の健全な
財政運営に深く期待をするとともに、
地方財政の健全性の回復、維持ないしは
財政構造の
合理化を極力はかって参りたいと存じております。