○大沢雄一君 私は、一月十一日から六日間にわたりまして、占部秀男
委員とともに、岩手、
宮城両県下に
調査に参ったのであります。ここでは、若干感想を交えて二、三の点について御
報告申し上げ、別に計数を含めて
文書の形式に取りまとめたものを
委員長の手元まで
提出いたしますので、適当にお取り計らいを願いたいと存じます。
まず、岩手、
宮城県の
財政事情でございますが、両県とも
財政的には恵まれず、そして両県ともに
財政再建団体に指定されているのであります。東北地方は、現在いわゆる後進地域ということで、未
開発あるいは立地条件の不利が問題となっており、この種の経済的な悪条件が明らかに府県
財政を通してうかがわれのでございます。二十九年度に例を取りますと、岩手県の税収は十億円、
交付税は二十六億円内外、宮域県のごとき東北では、比較的恵まれている県といわれておりますものでありましても、税収は十六億円、
交付税は二十五億円で、一般財源、すなわち税収入、地方譲与税と地方
交付税の合計額の中で占める税収入の
割合は、岩手県二七%、
宮城県は三六%であります。全国府県平均六二%に比べますと、岩手県のごときは、全府県中最下位に位するのであります。
さらに、端的に申しますと、たとえば
昭和二十七年度の府県歳入歳出は、人口一人
当り全国平均五千七百円、税収は一千七百円でありますが、歳出については、岩手県六千百円、
宮城県五千六百円となっておりますが、税収入は、人口一人
当り、岩手県八百円、
宮城県同じく八百円
程度ということで、
全国平均の二分の一にすぎないのであります。以上の数字は、
自治庁調べのものによったのであります。
岩手県の
財政は、二十七年度に歳入不足を生じて以来、いわゆる
赤字は逐年累増の一途をたどり、
昭和二十九年度に至って、歳入不足二億六千三百万円、別に、
事業繰り越し、支払い繰り延べ五千九百万円となり、三億二千二百万円の実質
赤字を生じたのであります。しかし、三十年度の決算は、歳入九十九億七千三百万円、歳出百一億三千百万円となっており、歳入不足は一億五千八百万円でありまして、
事業繰越分等を差し引き、単年度五千三百万円の純黒字となっていることは、注目すべきことであります。このように、三十年度において
赤字額を減少していることは、三十年度末、
地方財政に関する
特別措置法により、一般財源が追加されたことも
関係していますが、岩手県の採用した思い切った
経費の節減、すなわち
投資的経費の抑制、人件費、物件費の節減に負うところ多いことに注意すべきであろうと思います。県
提出の数字によりますと、岩手県における義務的
経費の所要額と
使用一般財源とを比較し、その差額を求めますと、二十九年度は義務的
経費五十七億、これに充当した一般財源は三十五億でありまして、一般財源
総額三十九億の大
部分を占め、残りはわずかに約四億円にすぎない
状態であります。同様にして、三十年度は、義務的
経費六十二億、これに充当せる一般財源は三十八億でありまして、一般財源
総額四十三億、残りは五億であります。同様にして、三十一年度は、
決算見込みでありますが、義務的
経費六十五億に対し、これに充当せる一般財源は三十九億でありまして、一般財源
総額四十七億、残り八億が義務的
経費以外の
経費に充てられたるいわゆる自由財源となっております。ここで義務的
経費の中に含めておりますのは、人件費、生活保護費、児童福祉
措置費、結核予防法に基く公費負担、共済組合交付金、互助会補助、
公債費でありまして、これで見ると、岩手県の
財政は、義務的
経費に充当せる残余の一般財源が漸次
増加を示しており、国の財源
措置も、望ましき方向に向いつつあるがごとく見えるのでありますが、ただ、この数字そのものから直ちに楽観的の結論を出すことは、いささか早計と思われるのであります。いま、その
内容の一端に触れてみるに、すなわち
交付税について申しますと、二十九年度二十六億五千一百万円、三十年度二十七億八千五百万円、三十一年度三十二億五千万円となり、三十一年度は、未
開発地域の態容補正による
増加が大きいのであり、また同時に、思い切った
経費の節減としては、単独の
事業は特定財源によってまかなうこととし、その
総額は二億で、うち一般財源充当額はわずかに二千四百万円であり、その金額においても、また、充当一般財源の額においても、全国最低の部類に入ると思われるのであります。しかも、
県当局の
説明によれば、事務的
経費において、三十年度中昇給の延伸等で、人件費の節減九千五百万円、その他約五千万円、計一億四、五千万円を節約したとのことであり、部局の整理のごときも、三十年度中、本庁九部一局三十五課を五部一局三十二課に改めているのであります。
なお、岩手県の
財政再建計画については、後に、
宮城県のそれと合わせて、簡単に触れることにしたいと思います。
宮城県も、同じく三十一年度より
財政再建団体となっておりますが、
財政事情は、岩手県よりもさらに悪いように思われます。
宮城県の三十年度の決算は、歳入百十六億五千五百万円、歳出百二十九億九千六百万円、差引不足額十三億四千百万円これは、繰上充用となっております。実質
赤字の額は、二十七年度二億八千六百万円、二十八年度九億七千八百万円、二十九年度十四億三千六百万円、三十年度十四億一千二百万円となっているのであります。
宮城県も、二十九年度以降、極力予算の節減、合理化に努め、見るべきものがあるようでありますが、税収の伸びが少く、特に
交付税法上の計算について、不利な地位に置かれていることを
県当局は強調しているようであります。つまり、税収入の伸びが思うにまかせず、税収は十七、八億内外ということで落ち着いているのに対し、未
開発地域の態容補正による
財政需要の増額がほとんど認められないというのであります。地方
交付税は、二十九年度二十五億、三十年度三十一億、三十一年度三十一億となっております。岩手県が三十一年度において急激に相当の
増加を見たのとは異なっているのであります。税収は、二十九年度十五億五千三百万円、三十年度十七億七千五百万円、三十一年度十八億九千八百万円であります。従って、一般財源と義務的
経費との比較を見ましても、
財政内容は一こうによくなっていないこともわかるのでありまして、二十九年度は、一般財源
総額四十三億のうち、義務的
経費充当所要額三十九億で、残り四億、三十年度は、一般財源
総額五十億のうち、義務的
経費充当所要額四十七億で、残り三億、三十一年度は、同じく五十三億のうち五十一億で、残りのいわゆる自由財源はわずかに二億というように、
財政の余裕は漸減しているのであります。ここで申し上げた一般財源は県税、地方
交付税、入場譲与税の合計額、義務費は人件費、
公債費の合計額で、県
提出の数字によったものでありますが、逐年
財政困難を加えている主たる
原因は、人件費、
公債費の
増加にあると思われるのであります。簡単に、その数字だけ申し上げますと、人件費は年々三、四億の
増加であり、
公債費は、二十九年度五億一千八百万円、三十年度八億七千九百万円、三十一年度九億七千五百万円となっております。
自治庁調べによりますと、公債の三十一年度元利
償還費の一般財源に対する比率は、
全国平均一一%、
宮城県一七%であり、また、標準税収入に対する比率は、
全国平均一七%に対し、
宮城県は四〇%に達しており、全国中、
公債費の重圧が最もはなはだしい府県の
一つと思われるのであります。
次に、
財政再建計画についてでありますが、両県ともに、
歳出面においては、その抑制及び節減、
行政事務の合理化と簡素化、歳入面においては、増収を確保するということをその根幹としていることは、他の府県と同様であります。ただ、二、三注目すべき点を申し述べます。
岩手県は、
再建債三億で、
計画期間五ヵ年間、
宮城県は、十三億三千万円で、
計画期間九ヵ年間ということになっております。いずれも二十九年度
赤字額を基礎として借入額を決定したものであります。そして
再建計画の
内容は、三十一年度当初予算の
内容を基準として策定されていますので、住民福祉の確保を目的とすべき府県の
財政計画としては、相当無理な点がうかがわれるのであります。一例をあげれば、極端なる単独
事業、
投資的
事業の圧縮等のごとき、また、長期間における昇給昇格の人件費の抑制のごときは、県政の
長期計画としては、当然問題とさるべきであると思います。以上のほか、岩手県においては、三十二年度より、県民税、
事業税、不動産取得税、
自動車税については二割、家畜税については一割の増徴を行い、計一億五千万円の増収を期する
計画でありますが、国税が減税の方向にある際、かつ節約の強行によるものとはいえ、収支決算上、すでに相当
改善が見られている際、地方税二割の増徴
計画は、いろいろな問題があると思います。
次に、
市町村の
財政事情でありますが、まず、岩手県について申し上げます。
三十年度の決算額は、歳入六十八億二千五百万円、歳出七十四億八千百万円、差引不足額六億五千六百万円でありますが、
事業繰越、支払繰延額を合算したいわゆる実質的
赤字は八億七千一百万円であります。これは、前年度に比べて、六千八百万円の
増加を示しております。しかして、総数六十九
市町村の約四〇・五%に当る二十八
市町村が
赤字団体で、前年度に比べますと、十二
市町村を減少しており、そのうち
再建法の適用を申し出た団体は八市三町あり、五億一千三百万円の
再建債を起し、かつ、三十年度における単年度
赤字を含めた六億五千一百万円の
赤字を三ヵ年ないし十ヵ年
計画で解消しようと努めております。
赤字団体のうち二市七
町村は、自主
再建の
計画を策定いたしており、二ヵ年から五ヵ年の
計画によって、三億四千八百万円の
赤字の解消を期してあります。
宮城県の
市町村の三十年度決算は、歳入七十六億一千七百万円、歳出八十一億九千二百万円、差引不足額五億七千五百万円でありますが、いわゆる実質的
赤字は九億三千四百万円でありまして、前年度に比べますと、一千五百万円ばかり
増加しております。
赤字団体数は、五十五
市町村となっております。そのうち
再建法の適用を受けている団体は、石巻市を初めとする五市十五
町村でありまして、残りの三十五団体は、自主
再建を目ざしております。現在のところ、
赤字の解消は、
計画通り実施されていると言ってよいようであります。
町村合併は、
自治庁調べ
全国平均の
進捗率は、国の
合併基本計画に対して九八%、都道府県の
合併計画に対して八九%、岩手県の
進捗率は、国の
計画に対しては一〇七・四%、県の
計画に対しましては九六・四%となっております。
宮城県では、国の
計画に対して一〇六・八%、県の
計画に対しては八六・五%となっております。岩手県では、三十二年一月一日現在で、従来の五市二百十六
町村は十一市五十八
町村に統合、
宮城県では、三十一年九月三十日現在で、従来の五市百八十二
町村が六市七十三
町村に統合されたのであります。
未
合併町村については、
建設促進審議会の意見を徴し、あるいは内閣総理大臣と協議する等のことをいたしまして、両県ともに進行中のようであります。ただ、この際十分に
地元の希望を参酌し、強制にならぬよう留意する必要もあろうかと思います。
市町村は数も多く、その
行財政の
内容も千差万別でありますので、詳細は
文書による
報告に譲り、ここでは、
財政再建、新
市町村建設等を通じて、
現地の責任者より述べられた希望の条項を御紹介しておくことにとどめたいと思います。
まず、
行財政一般については、一、すみやかに地方公務員の停年制を
実施すること。一、
町村議会に事務局専任職員を置くよう自治法を改正されたい。一、積雪寒冷による生活費、
事業費の
増加に対し、
所得税法上特別控除制を設けられたい。一、貧弱団体と富裕団体間、特に都市と農村の偏在財源を調整されたい。一、未
開発地域の補正を
市町村に対しても行われたい。一、
起債の許可を
自治庁大蔵省一本化されたい。一、
地方債の利子補給が望ましい。一、失対
事業は、補助を増額しても
起債は押えられることとなっているが、これを改められたい。一、
簡易水道については、国庫補助四分の一を大幅に引き上げられたい。一、補助金は、十二月に入って交付されるものもあり、適正化法は、寒冷地では不可能な
事業の適正執行をしいることとなる場合がある。一、
農業共済は、
市町村の
行政事務に改める方が補助金を効率的に
使用することになるから、改められたい。
次に、
財政再建については、一、
再建団体につき
投資的経費の押え方、上水道、
国民健康
保険への一般会計よりの繰り入れを制限するやり方は無理であるから
考慮されたい。一、
再建承認後、
再建債を許されるまでの間の利子補給をされたい。
また、新
市町村建設については、国の財源
措置の確保と、
関係各省の一体化を中心として、諸種の希望意見が出されたのであります。
なお、岩手、
宮城の両県からも
要望意見が出ましたが、その
内容は、全国知事会のものと同一でありますので、ここには省略いたします。
以上、
概要を御
報告申し上げます。