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政府委員(足立篤郎君) ただいま議題となりました
接収貴金属等の処理に関する
法律案の提案の理由を御説明申し上げます。
終戦後、連合国占領軍は、本邦において
政府及び民間から金、銀、白金、ダイヤモンド等の貴金属等を接収したのでありますが、平和条約の発効と同時に、これらの貴金属等を
日本政府に引き渡したのであります。そこで、
政府といたしましては、さきに
接収貴金属等の数量等の報告に関する
法律によって貴金属等を接収された者から必要な報告を徴し、その
内容の
調査を進める一方、連合国占領軍から引き渡された貴金属等の
調査を
実施し、その
状況もおおむね明らかになりましたので、今回、これら
接収貴金属等について返還その他の処理をいたしますため、本
法案を
提出した次第であります。
以下、本
法案の概略を御説明申し上げます。
まず第一に、貴金属等の被接収者は、
法律施行の日から五ヵ月以内に、
大蔵大臣に対しその接収された貴金属等の返還を請求することとし、被接収者が右の請求をしない場合には、接収された貴金属等の所有者が、
法律施行の日から七ヵ月以内に、請求を行うことを認める等、返還請求の手続を定めることといたしました。
第二に、この返還の請求に対しまして、
大蔵大臣は、当該貴金属等の種類、形状、品位及び個数または重量を、接収の事実を明らかにする証拠等によって認定することとし、認定された貴金属等につきましては、それが
政府の保管している貴金属等のうちで特定する場合には、そのものを返還し、特定しない場合には、各貴金属等の種類、形状、品位及び重量のそれぞれの明確度と、各貴金属等が溶解されて変形している可能性、あるいは、その代替物がある可能性に応じて、特定するもの以外の残余の保管している貴金属等を、接収された貴金属等の個数または評価額の割合により按分して返還することといたしました。
第三に、この
法律により返還される貴金属等につきましては、国、公共企業体、地方公共団体及び
日本銀行の所有にかかるものを除き、連合国占領軍から引き渡しを受けて以来返還されるまでの保管費用等に
相当する額として返還を受けた価額の一割に当る金額を国に納付せしめることとし、なお、これに伴う課税上の必要な調整措置を
規定いたしました。
第四に、接収された貴金属等のうちには、交易営団、社団法人中央物資活用協会または社団法人金銀運営会が、戦時中、
政府の金、銀、白金またはダイヤモンドの回収方針に基き、
政府の委託によって民間から回収したもの、金属配給統制株式会社が
政府の指示に基いて、交易営団または中央物資活用協会の回収した貴金属を買い入れたもの、金銀運営会が、戦時中、
政府の指示に基き、旧
日本占領地域における通貨価値の維持等の目的をもって金製品を輸出するため、旧金
資金特別会計から払い下げを受けたもの、及び軍需品の製造に従事していた者が、軍需品を製造または修理するため、その材料として、戦時中、旧軍または軍需省から買い入れたものがありますが、これらは、すべて国に帰属させるとともに、これらの者に対しては、右貴金属等を取得し、または加工した際の代金及び手数料等に
相当するものをそれぞれ交付することといたしました。
第五に、以上の認定、返還その他の重要事項の処理の万全を期するため、
大蔵省に
接収貴金属等処理審議会を設けることといたしましたほか、認定等に対する不服の申し立て、虚偽の請求に対する罰則等所要の
規定を設けることといたしました。なお、国に帰属または返還された貴金属等で一般会計に所属するものは、無償で、貴金属特別会計の所属に移して管理することといたしました。
第六に、
接収貴金属等の処理につきましては、その数量が膨大である上に、きわめて困難な事務であり、また、かねて行政監察特別
委員会で議題として取り上げられた経緯もあり、その処理は特に慎重かつ厳正に行う必要がありますので、
大蔵省管財局に臨時貴金属処理部を新設して、これらの事務を専担させるのが適当であると認めた次第でございます。なお、この処理部は、あくまでも臨時的なものでございまして、
接収貴金属等の処理に関する
法律案との
関係がきわめて密接でありますから、同
法律案の付則に
規定する
大蔵省設置法の改正
規定中に所要の修正をすることといたしました。
以上が提案の趣旨及びその
内容の概略でございますが、なお、衆議院におきまして修正された
内容及び審議の経過等につきまして管財
局長に簡単に補足説明をいたさせたいと存じます。
何とぞよろしく御審議の上すみやかに御可決賜わらんことをお願いいたします。