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平林剛君 この名義貸しの支払い調書の提出の限度額の最終決定をおくらせておりますのは、きわめて政治的なにおいを私は感ずるのであります。慎重を期するという
理由は、先般も大蔵大臣が来まして、
経済界に与える影響がある、角をためて牛を毅すことはしたくないと、こう言われますが、その裏からは、証券金融業者に対する影響のにおいがするわけであります。また、大衆投資家に与える影響も考えなければいけないという御
意見もありましたけれ
ども、すぐその裏には、むしろ大口投資家を擁護しておるのではないかというにおいがする。そういう
意味で、私はこの最終決定をおくらせておるというのは非常に政治的である。幸い与党の議員の方もおられますから、私の見解を少しお聞きを願いたいと思うのであります。
これは、今
議論をしております零細な大衆
団体に対する
課税の方式がいろいろ疑問があるにもかかわらず、広げられておることと比較すると明瞭になってくると思うのであります。特に私は最近の証券金融業と、それからそれに対する
課税の仕方ということを歴史的に見ると、今度の名義貸しの問題をおくらせておるということについても、まことに遺憾なことだということが皆さんにもわかってもらえると思う。私がこの間調べてみましたら、たしか
昭和二十七年ごろまでは株式の譲渡に対しては譲渡
課税があった。そこで当時これはだいぶ大騒ぎになりましたけれ
ども、国税局が一齊に株式譲渡の税捕捉のために調査を大々的に
実施したことがある。これは大騒ぎになりました。結局それにもかかわらず、いわゆる四大証券と呼ばれるものは税務官吏の
質問調査権に対しても断り続けた。そういうふうに騒いでいる間に株の譲渡に対する税については、
法律ががらりと変っちゃって、今度はそれはとらなくなってしまった。こういう工合に証券金融業界の抵抗のために
法律が改正になったということが歴史的に見るとあるわけです。それから
昭和二十九年ですか、三十年であったかもしれませんが、そのときに
租税特別措置法の
法律案が提出せられまして、このときの税制改正でも、
政府が提出をした後において、いわゆる銀行利子に対する免税
措置が行われた。この名目は、貯蓄奨励という名目で、銀行利子には税金をかけないという
法律でありましたが、ところがそれが出されるというと、今度は証券金融業界から猛烈な運動がありまして、銀行利子に免税をするなら株の配当
所得に対しても何とかしてもらいたい、こういうことで、結局保守党の議員さんの間で御相談がまとまって、そうして
租税特別措置法の改正が行われた、こういう事例がありまして、一時は本
委員会におきましても、この問題について政治的なにおいがあるということで
議論をされたこともあったと私は記憶しているわけであります。今回は、
所得税法第六十一条に、いわゆる名義貸しということを指摘しまして、大蔵大臣がそれを探し出した。池田大蔵大臣が、私がこれは指摘したのだ、こうおっしゃった。そうしてそれは
課税の公平ということで、
脱税を許さないという趣旨で、今度は支払い調書の提出を義務づけるのだ
——まことにお説ごもっともで、この限りにおいては私は正しい方向だと思うのです。ところが今度、支払い調書の提出義務を一定額の限度に押える、こういう運動がありまして、先般来から、私三回にわたりて
質疑を行いました
ように、実質的にこれを骨抜きにし
ようとする。私はそういうことであっては、国民的な立場から見て、まことに不純なものを感ずるから、この限度額はむしろない方がよろしい。もしいろいろな
理由をつけてやるにしても、ごく厳正にしなければならぬということを要望しておいたわけであります。これを何回も追及しますというと、そういうことについてあまりきついことをいうと、
経済界に動揺を与える、あるいは大衆投資家に迷惑がかかるという
ようなことを
お話になるのだけれ
ども、もうその理屈は、これを指摘したときに始まっているはずですね。私
どもが限度額について
議論をするよりも、大蔵大臣がこの名義貸しの問題について指摘をしたときに、すでに
経済界にいろいろな波紋を投げているので、一方においてはそういういいことに気づきながら、その
あとでそれを骨抜きにする
ようなことを、
法律の審議が続いているのにかかわらず、それは胸三寸におさめておいて、そうしてなかなか決定しない。こういうことは、非常に政治的な感じが私はするわけです。私はそういう
意味で
委員長におかれましても、一日も早くこの
内容が明らかになる
ように、
政府に対してそれを要望してもらいたい、こういうことを要望するわけです。そういうわけでありますから、主税
局長においても早く御相談なさって、大体あしたかあさってに上ろうとしているわけでありますから、お約束の
通りに提出する
ように御
努力願いたい、こういうことを要望いたしておきます。