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1957-03-13 第26回国会 参議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十三日(水曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————   委員異動 本日委員藤原道子君辞任につき、その 補欠として大矢正君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     廣瀬 久忠君    理事            木内 四郎君            西川甚五郎君            平林  剛君            天坊 裕彦君    委員            青木 一男君            木暮武太夫君            塩見 俊二君            土田國太郎君            苫米地英俊君            宮澤 喜一君            天田 勝正君            大矢  正君            椿  繁夫君            野溝  勝君            杉山 昌作君            前田 久吉君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君   政府委員    日本専売公社監    理官      白石 正雄君    大蔵省主税局長 原  純夫君    国税庁長官   渡邊喜久造君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○たばこ専売法の一部を改正する法律  案(平林剛君外三十八名発議) ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○租税特別措置法案内閣送付予備  審査) ○所得に対する租税に関する二重課税  の回避及び脱税の防止のための日本  国とスウェーデンとの間の条約の実  施に伴う所得税法特例等に関する  法律案内閣送付予備審査) ○揮発油税法案内閣送付予備審  査) ○地方道路税法の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査) ○印紙税法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○トランプ類税法案内閣送付予備  審査) ○とん税法案内閣送付予備審査) ○特別とん税法案内閣送付予備審  査) ○関税定率法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○関税定率法の一部を改正する法律の  一部を改正する法律案内閣送付、  予備審査)   —————————————
  2. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) これより委員会を聞きます。  まず、たばこ専売法の一部を改正する法律案平林剛君外三十八名発議)について、提案理由説明を聴取いたします。
  3. 平林剛

    平林剛君 ただいま議題となりましたたばこ専売法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  現在、たばこ専売事業は、たばこ専売法に基いて実施されているのでありますが、たばこ専売法による現行専売制度の建前は、すでに御承知の通りたばこ生産過程のうち、公社の直営するのはその製造事業に限定することとし、たばこ耕作公社がみずからこれをなさず、国民をしてこれをなさしめるのを原則としているのであります。  しかして、専売事業目的を達成するため、これに対しましては、種々の制限を設け、国家が広範囲において、たばこ耕作に関与することとといたしておるのであります。すなわち、公社葉たばこの需給を調整するため、毎年耕作区域及び耕作計画を定め、その範囲内で毎年耕作許可を与えることとするとともに、耕作者は、公社の定める方法及び手続によりその耕作を完成し、かつ、その収穫した葉たばこ公社の定める収納価格で納付する義務を負うことといたしておるのであります。  これらのことは、一面におきまして、専売事業目的達成のため必要なことではありますが、他面におきまして、これがため、たばこ耕作者経営は、はなはだ不安定な状況におかれることとなっているのであります。  特に最近におきましては、将来において予想されるいわゆる減反計画と関連して耕作者経営がとりわけ不安定な状況におかれており、また、葉たばこ収納価格につきましても、耕作者の間に不満の声が次第に高まってきておるのであります。しかして、耕作者経営を現状のごとく不安定な状況におくことは、耕作者耕作意欲専売事業に対する協力の意を失わせ、かえって専売事業の健全なる運営をはかるゆえんではないと考えるのであります。本法律案は、このような状況にかんがみまして、専売事業の本旨と耕作者利益の調和を旨とし、専売事業の健全な運営に支障のない限度において、たばこ耕作者利益を擁護し、その経済的地位の改善をはかろうとするものであります。  以下、本法律案概要を御説明申し上げます。  まず第一に、たばこ耕作者耕作権を保障するため、耕作許可有効期間を五年とするとともに、許可処分に対する異議の申立の制度を創設することといたしております。  第二に、葉たばこ収納価格決定を適正ならしめるため、葉たばこ収納価格決定基準を法定するとともに、収納価格は、公社耕作者とが協議して定めることといたしております。しかしてその協議が成立しないときは、葉たばこ耕作調停委員会調停いたすものとし、その調停がなお成立しないときは、大蔵大臣収納価格を定めることといたしております。  第三に、耕作者団結権及び団体交渉権を保障するため、耕作者団体公社と団体交渉する権限を有することとするとともに、公社が、耕作者に対し、耕作者団体に加入したこと等を理由として不利益な取扱いをすることを禁止することといたしております。また、公社耕作者団体との間に締結される団体協約は、いわゆる規範的効力を有するものといたしております。  第四に、耕作者利益を保護するため、収納代金の一部前払制度及び災害補償制度につき、所要改正を加えることといたしております。  第五に、再査定及び再鑑定制度を合理化するため、当該制度につき、再査定人及び再鑑定人は、少くともその半数を耕作者団体の推薦する者の中から選定することとすること、再鑑定の申し立てがあった場合における収納代金の仮払制度創設等所要改正をいたしております。  第六に、耕作者団体法律関係を明確化するため、耕作者団体は、大蔵大臣許可を得てこれを法人とすることができるものといたしております。  以上が、この法律案概要であります。なにとぞ、御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願いいたす次第であります。   —————————————
  4. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 本日は本案についてはこの程度にいたしまして、次に所得税法の一部を改正する法律案ほか十一件の税関係法案を、便宜一括議題といたしまして、質疑を願います。御質問のある方はお願いいたします。
  5. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 法人税法の一部を改正する法律案の第五条の問題でありますが、学校法人並びに各種学校に対して、収益事業範囲命令で定める。これに従って通牒を文部省の方へお出しになって、それが私立の各種学校で、非常な問題を起しておりますが、命令でどういうふうにお定めになったのでありますか、これを一つ承わりたい。
  6. 原純夫

    政府委員原純夫君) 五条にきめてあります公益法人収益事業所得についてかけるという、その収益事業範囲についてのお尋ねでありますが、お話通り、ただいま命令で二十八事業の、種類が規定してございます実情をみて参りまして、どうもそれでは足りないと思うのが一、二ございますので、ただいま研究中でございます。その研究中の一つに、お話のものがあるわけでありますが、各種学校の中には、たとえば芸を教えるお花の先生、あるいはお茶、その他、いわゆる技芸教授をするとともに、各種学校という形でやっておられるというものが、かなりございます。こういうものにつきましては、一般通常先生授業が、公益法人の形をとっておるというものが多いように思われますので、そういうものについて課税することに政令できめたらどうかという気持で、関係の方と相談中でありますが、まだこれは政令を出しておりません。他の条項と合せて、この法律案が成立して施行されると同時に出したいと思って進めておる次第でございます。   —————————————
  7. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) この際、委員異動について御報告いたします。本日づけで藤原道子君が辞任され、大矢正君が委員に選任されました。   —————————————
  8. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 この収益事業というもの、これをどういうふうにみておいでになりますか。今のお花の先生とかというようなのはまだ法人になっておりませんが、法人になっておる学校もあるのでございます。それも今度は含まれているらしいのですが、その収益事業というのはどういうふうな見方でおとりになるのか、それをちょっと伺たい。
  9. 原純夫

    政府委員原純夫君) 収益事業は、製造業物品販売業、あるいは運送業、その他二十八掲げてございますが、要するに、収益を得る事業として、昔からいろいろな場合の事業税、あるいは取引高税というような場合にも例がございますが、それらを参考にしてきめておるわけでありますが、物品販売業等にありましても、非常にたまに販売をする、たとえば、公益法人が年に一、二回バザーをやって販売をする、これも物品販売でありますが、これは業としたら継続的な要素がないというので、これはかけないようにしております。お尋ねの問題は、先般若干お話があったのでありますが、法人格のない社団に課税をするという場合に起るのでありますが、継続的な要素を考えて課税をしたいというふうに考えております。
  10. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 性質上物品販売などはちっともやっておらない。やっておうないものも今度の御通牒の中には含まれておるのですか。そういうものはどうなっておりますか。
  11. 原純夫

    政府委員原純夫君) それは、この収益事業が、物品販売業のほか製造業、それから運送業出版業印刷業旅館業料理店業、あるいは周旋業代理業、いろいろ書いてございます。それに加えて、まあ何と申しますか、技芸教授と言いますか、そういうようなものについて加えるかどうかといろ問題として考えているわけでございます。
  12. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 そういたしますと、授業料をとるとか、もしくは実習費を取るとかいうことは、これは収益事業とは見ないわけですね。見るわけですか。
  13. 原純夫

    政府委員原純夫君) 先ほど申しましたように、お師匠さんの仕事と同じものであるというものについて、かけるか、かけないかということを研究しているのでありますから、授業料収入に入る、そうしていろいろな経費が支出に立って、その残りが所得になるという考え方になると思います。
  14. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 今、本会議の方から要求がありまして、出席するようにとのことですから、一ぺん休憩して、そうして本会議散会後に開きます。そういうことにいたします。  それでは暫時休憩いたします。    午前十一時二分休憩    ——————————    午前十一時三十二分開会
  15. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) それでは委員会を開きます。
  16. 野溝勝

    野溝勝君 この議題になっておりまするのは、税法三法ですか、うち二、三、参考にお伺いしたいと存じます。  とりあえず所得税の方から一つお伺いするのであります。今回の税法によるというと、一千余億の減税をされたというのでありますが、それについて内容を検討してみますると、農村に関する面が具体的に示されておらないのですが、一般的には、所得の三十万円から百万円程度の人が、大体において軽くなっておる。しからば農村所得状況というものを、当局はどうつかんでおられるのですか。かつ、また今回の減税により農村への影響が有利になった内容等、わかるだけこの際御説明願いたいと存じます。
  17. 原純夫

    政府委員原純夫君) 農村にはいろいろな税がありますが、一番中心的なものは所得税であろうと思いますので、所得税をとりあえず申し上げたいと思います。今回の所得税減税によりまして、農業に対しまする申告所得税税額がどういうふうに変ってくるかということを申し上げます。  まず昭和三十一年分のことを申し上げて、それが三十二年にどうなるかというふうに申し上げます。三十一年分のことを申し上げます場合に、三十一年度農業所得税幾ら入るという見込みと、それから三十一年分の作に対する課税額幾らになるか、その二面で申し上げます。前者の数字は七十四億八千四百万円というふうに見込んでおります。それから後者の数字、つまり三十一年分の作によって課税される額、これは六十九億百万円ということが予算の見込みになっております。この両者がありますのは、三十一年分の米なり麦なりについて課税がありますものは、大部分は三十一年度に入って参りますが、一部は三十二年度にズレて入る。あるいはそのあとに入る場合もある。同様に、三十年以前の作に対する分がズレて三十一年度に入るというので、その二つの数字が若干違ってくるわけであります。  そこで三十二年度でございますが、今回の改正後、三十二年度における同様な数字はどうなるかということを申し上げますと、三十二年度における農業所得税収入見込みは三十九億三千九百万円、これは七十四億五千万円から、約半減に近いことになります。それから三十二年分の作に対する税額は、三十四億四千六百万円、これも先ほどの六十九億円のちょうど半分くらいになります。なお、納税人員は、三十一年分の納税人員見込みは五十三万三千人でございましたが、それが今回は四十九万四千人というふうに見込まれております。このほか国税の方では、一般間接諸税をいろいろな場合に負担去れるわけでありますが、それは農民を分けての数字ではございませんから、地方税の方へ参りますと、住民税、それから固定資産税というようなものがございます。この住民税固定資産税、それに、議論としては、例の農業事業税というようなものがございましたが、それらにつきましては、住民税の方も、三十二年分は従来のやり方で取る、三十三年分以降は、第一方式といわれるものにつきまして、従来府県と市町村と合せて二一%という税率でありましたのが、二六%になり、それから三十四年度以降にはそれが二八%になる。これは率は上りまするが、元になりまする所得税額が大幅に減りますので、やはり所得税法が変らない場合に比べますと、かなり減税になるわけであります。第二方式、第三方式所得税額に乗っかっておりませんから、別な方法にいたしますが、今回改正法案の中で、第一方式とあまりに不権衡にならないようにという趣旨で、基準的な率をきめるというふうになっておるようなわけであります。なお、所得税、それから住民税を通じまして、例の供出米穀石当り千四百円でございますか、その分の非課税というのが三十一年分についてはなお働いている。三十二年分は供出制度の推移によって後日措置するというようなことになっております。
  18. 野溝勝

    野溝勝君 初めてこの内容を知ることができました。そこでお伺いしたいと思うのでございますが、所得税では、農村の、減税による影響、それが数字によって今示されたのですけれども、今、局長は、地方税に対する農村負担というのが多くなってきているのを案外過小評価されておるようでございますが、大蔵当局としては、所得税減税したことによって、地方税にどのくらい農村からつかむかというようなことも十分検討されていることと思うのであります。特に地方税が逼迫している際でございますから、地方財源のない際に、中央から交付金として出すことを好まない。ざっくばらんにいえば、大蔵当局は消極的なのです。その分を地方独立財源というものを与えてやろう、その独立財源にもいいのがない、結局、百姓からしぼれというようなことになってくるのでございます。これは意識的にやるか、意識的にやらざるか知りませんが、そうなってくるのでございます。でありますから、今回一部農民所得税が少し減税されたのですが、住民税が上ったり、固定資産税中、課税標準の苛酷その他等々に対する地方税関係などと対比すると減税ではない。もちろんこれは自治庁から聞いたらよいのでございますが、特に地方税も、大蔵当局とは緊密な打ち合せの上に決定されるのでございますから、これらの点について一つ具体的にその経緯をこの際お話願い、また地方税がどんなような状態になっているかということも参考にお漏らしを願いたいと存じます。
  19. 原純夫

    政府委員原純夫君) 地方税の問題を具体的に申し上げるための資料を持ってきておりませんが、お話農業関係で申しますれば、やはりこの住民税の問題、それから固定資産税の問題、それにまあ問題としては農業事業税の問題が主となると思います。あと農業関係木材引取税というような特別な税がございますが、初めに申しましたおもなものについて、事柄の動いている実情と申しますか、それを話せということでございますから、私の記憶している限り申し上げたいと存じます。  第一に、住民税につきましては、今回、国が減税——所得税減税を大幅にやる。そうすると、住民税の第一方式の分は、国の方が減りますと、それの何パーセントと言っているので非常に減るから、住民税も減らすが、減らす程度をある程度にしたいということで、先ほど申しました三十三年度分二六%、三十四年度以降分は二八%ということになったわけでございますが、これは主としては大きな都会地が第一方式をとっておりますから、農業地帯は第二方式、第三方式——おもに第二方式ただし書きをとっておると思います。この場合につきましては、従来非常に御不満がありましたのは、これが国税所得金額から基礎控除を引いたものに対して税率をかけてきめるということになっておりまして、その税率についてかなりに任意になっておりますために、もちろん総体としての負担最高限度はきめてありますが、その他は割合にフリーであるというようなことから、かなりに第一方式に比べて重いというような御非難がありました。今回それについてできる限り是正するという意味で、何という言葉を使いましたか、通常標準税率ではないのでありますが、タイプを示して——タイプと言いますか、準則的なものを示して、何万円までは幾ら、何万円以上何万円までは幾らというふうな率の型を示して、それでできる限り規正して参るということにいたしております。  ただ第二方式、第三方式というのは、完全に第一方式と同じ税負担になるというわけのものでなくて、やはり小さいものを……、社会においては、国という大きな社会での非常に高額の所得者から低額の所得者まであるという場合の税率を使うよりも、所得の分布がより狭いというようなことから、若干この上下の差が縮まって、税負担においても若干縮まって、住民が住んでおる、そして地方団体から利益を受けるという意味で、それぞれ負担をするという思想が入っておりますから、その面も残らない……、その面が残ると思いまするが、あまりに第一方式の場合と不権衡になるのを避けるようにというようなことで、今回御提案しております地方税法改正案の中にその旨が入っております。これは農業地帯住民税に相当な影響があるだろうというふうに思います。たしか自治庁はそれによって減収を見込んでおりますのが、本年度約五十億円程度だったと思います。これは農村地帯だけではございませんが、第二方式、第三方式課税やり方の変更による分でございます。  それから事業税におきましては、農業事業税の話がありましたが、これはまあ提案に至らずということで、将来の問題に残されております。  固定資産税につきましては、固定資産評価額がきまりますと、それに税率が一・四ということでかかって参る。そしてこの評価額を、あまりに毎年変えるのはよろしくないということで、三年ごとにということにいたしております。その三年ごとが、昭和三十三年一月がその三年目になりますので、ことしの三十二年度の課税は、新たに取得された固定資産に関するものを除いて、従前通りということでありますので、まあ固定資産農業の場合に重いというような声もございますが、これは現行のままやって参る、ただし課税標準が上って重くなるということはない。三十三年には評価の問題が起って参ります。  地方税につきまして、農業関係で申し上げるとしますれば、大体非常に大ざっぱでありますが、そんなようなところが、私の承知している今までの経緯、それから要旨でございます。
  20. 野溝勝

    野溝勝君 地方税関係自治庁が参りませんので、いずれまたその際にお伺いすることにいたしまして、大蔵当局に言うておきたいことがあるのです。と申すのは、住民税の五十億、これは農村課税ではないといいますが、何としても地方負担税でございます。農家が多いのでございます。都会地と違って別収入のない農村影響は大きいのでございます。その点につきましても、よく農村納税人員との関係を調べてみればすぐわかることでございまして、比重がずっと農村に多いということを御記憶願いたいと思います。さらに今、原局長さんが説明された通り農業事業税の問題、これは私ども所属している日本農民組合が強力なる反対をいたしましたので、税制審議会においても考えたらしい。大蔵当局の方でも遠慮されたと思うのでございますが、説明の中にはまだまだ事業税を諦らめ切れず、考えているようにうかがえるのでございますが、この誤まった考え方をこの際放棄してはどうか。税を、農民生産意欲を抑圧する考えをやめて、新たなる角度から再検討をしてはどうか。今後油断できませんから、当局考え方を聞いておきたいと思います。
  21. 原純夫

    政府委員原純夫君) 農業につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、事業税のほか、供出米穀代価一定部分についての非課税という問題がございます。現在の税法としては、事業税はないわけであって、この供出米穀代価の一部の非課税があるわけでありますが、これでも地域によってだいぶ差がある、それから同じ地域の中でも、規模の大きい農家と、小さい農家とで、利益を受ける程度が非常に違うというようなことから、いろいろ議論があります。それで、事業税の場合においても、他の種類所得者と比較して、税負担をずっと見て参りますと、やはり高下によってある程度のところは考えたらどうかというような議論が出るわけで、ただいまお話がありましたが、税制調査会では、やはり最初の答申は、農業事業税は、農業にはかけた方がよろしいという御議論になっております。それは、やはり府県財政が非常に苦しい、しかも府県相当部分は、農業者というものが住民かなり大きな比重を占めておる、その中には、ただいま申しましたように、上と下とで負担をずっと見ていって、どうかなという疑問が相当出る面がある、そうすると、少くとも相当程度以上のところは府県財政に寄与しようというような考え方が、調査会答申になったわけでございます。私が申しましたのは、何も私どもがそれをしようという意思を表明したというのではなくて、地方税関係農業に関する税問題についての経緯お尋ねになりましたので、率直に申したわけで、どういう態度をとりますか、今回はやらないということでありますが、将来はやはり、議論される問題点は、いつでも議論しなければならぬという意味で、問題点として申し上げたのでございます。将来また事態を十分研究いたしまして、態度をきめたいと思っております。
  22. 野溝勝

    野溝勝君 私は当局に申し上げて反省を促したいと思うのでございます。農村の事情は、経済審議庁においての統計の中にも出ておりますごとく、ある一面においては、農村消費水準などにおきましては、確かにあがっているかもしれません。だからそれが全部というわけにはいきません。ある程度は了承できるのであります。しかしその他の面について、農村がいかに困るかということについては、局長御存じだと思うのです。たとえば最近における預金の工合など見ても、一戸平均、前年度の三十六万円なにがしから見ると、本年度は三十一万五千円くらい。さらにまた国民総所得農村とを対比すれば、すぐわかる。最近の「米」という映画をごらんになって下さい。文部省においても推薦映画ですから、現政府が推薦したものとして、私は見ております。これは推薦映画でございますから、それが推薦した責任映画でございます。もしこれが冗談で推薦したというなら許しがたきものでございます。私は、この責任をもって推薦した映画には真実があると思う。いわゆる真理があると思う。私はあの映画を見ていただけば、よく農村の事情ほおわかりになると思います。その点、原さん初め大蔵省の諸君は、一日も早くそれをごらんになったらよいと思う。そうすると農村の事情がよくわかると思います。  そこで、農村におきましては所得税を取られ、地方税においては住民税固定資産税、あるいは水利税その他等々のものを取られまして、そのほかに地方には財源がないというわけで、PTAの関係者から寄付税を取られておるのでございます。これは税ということが適するか適さないか知りませんが、とにかく税金に等しいようなもの、この問題については衆議院においても問題になりました。田中自治庁長官は、寄付は今後絶対にやらせぬようにするという大見得を切った。果してそれがどういうふうに行われるか、これは疑問です。とにかくそんなわけで、農村の事情というものは非常に苦しくなっております。先程農業事業税の問題において、税制審議会においてこれを課する構想を持ったときに反対したのは、一つ理由があったからです。すなわち農業事業として見る。この事業の持つ性格から課税対象とすべきだと思う。というのは、事業には違いないかもしれません。しかし営利追求の事業と違うのです。人を頼んで、あるいは労働力を雇って利益を得るということはない。皆家庭労力をもってまかなっておる仕事、さらにこの事業というものは、自分が生きるためと、国民生活に必需品の物資を作っておる生産的な事業、そういう意味において社会事業の性格が多分です。この点は一つ局長、私の理論を玩味されたい。だから事業にしても利潤追求事業の性質と違うという点をまずつかんでから出発してほしい。この旨を審議会に強く申し入れたのであります。だから米を売るという供出農家ですら、米価が統制されている今日、一般事業と画一主義は誤まりだと思います。これが一つ。  それから第二点は、せっかくこの農業経営にも大いに近代的経営に努力をして参ったんですが、まだまだ日本農業は外国の余剰農産物……機械化による大量生産をやる外国の農業経営とは違いまして、そのコストなぞも非常に相違があるのでございます。そういう関係にあって、日本農業というものは圧迫されつつあって、実際、国際農業と太刀打ちしなければならぬにかかわらず、それだけのまだ用意ができておらないんです。今後どうしても国際農業と太刀打ちをしなければなりませんから、それがためには、反当りの生産量は日本は世界的上位にあるのです。しかし個人生産の面について考えなきゃならぬというのが、日本農業の関心事の点ではないかと思うのです。そういう意味において、今、日本農業の問題について識者の間で非常に検討論議されておるんですが、これについては、アメリカがニュー・ディール政策をやった当時、農民の保護政策をやって参りました。ところが日本におきましては、この保護政策をも分断しちゃって、最近においては補助金を打ち切り、昭和二十八年度から本年の農林予算を見ると、八百九十億ばかりしか——二十八年度の半分にもいかぬという状態なんです。こういうような、一方においては保護政策を打ち切り、一方においては外国農業との太刀打ちをしなければいかぬと、さもなければ外国の食糧が安くて日本の食糧が高いじゃないかというようなことで、この農民を抑えつけておるのでございます。かような点については、一つ大蔵当局においてはあらゆる角度から検討していただいて、日本農民の地位というものが昔より少し上ったということで農民に対するしわ寄せをする、或いは多くの財政負担を求めるというような考え方は、これは封建的で、払拭してもらいたいと思うです。もしそういう考えでないといたしましても、数字の上にはそう現われてくるのでございますから、そういう点を十分考えていただきたいと思います。今日国際農業日本農業の相違点を詳細に申し上げる必要はないのでございますけれども、特に農業事業税などの設置なんということに対する考え方があるようですから、この際、農業事情を大蔵当局に申し述べ、右事業税の矛盾であることを認識され、放棄してもういたいということを申し述べておるのであります。  次にお聞きしたいことは、国税の総額が一兆六百四十一億とか言われておりますが、三十二年度の人口九千二百万人、国民の一人当りの国税負担額が一万一千五百六十六円、三十一年の一人当りが一千七百円と対比して八百六十六円の増だということが新聞に出ておりますけれども、これは事実でございますか。また筋が通っていると考えられておられるのでございますか。その点をお伺いしたいと思います。
  23. 原純夫

    政府委員原純夫君) 三十二年度の国税収入見込み額は、地方に参ります地方道路税、入場税というようなものを入れまして、九千七百六十五億でございます。そして、それが国民一人当り幾らになるかということを計算いたしますと、一万二千三十一円ということに相成っております。これには専売益金も含めてございます。それの三十一年度の額はどうかと申しますと、一人当り一万六百五十七円ということに相成っております。
  24. 野溝勝

    野溝勝君 そうすると、まあ少し数字は違いますけれども、大体新聞の発表通りに近いですな。大体これは、税金の対象とされておる自然増収との関係は、今の御説明の中にはどういうふうに理解されているのですか。
  25. 原純夫

    政府委員原純夫君) ただいま申し上げました数字は、三十二年度の予算において見積っておる数字であります。従いまして、まず三十二年度で税法改正がない、現行法のままでいけば幾ら入るか、つまり幾ら自然増収があって幾らになるかという数字が出まして、その数字に対して、税法改正によります減税額を差し引き、増収になる分を加えて、ただいまの数字になるわけでございます。その数字を申し上げますと、現行法のままでいきますと、これは租税だけで申し上げますと、現行法のままで一兆四百三十四億、それが増減税を差し引きますと、それから六百六十八億減りまして、差引九千七百六十五億というふうな数字になって参るわけでございます。
  26. 野溝勝

    野溝勝君 自然増収というのは毎年予算年度のときにはいつも出てくるのですが、大体それを見越しておるらしいのですが、本年度の自然増収は千九百億という、ばかに大きいのでございますが、これは神武天皇以来の自然増収ですか。(笑声)
  27. 原純夫

    政府委員原純夫君) その神武天皇以来と言われると困りますが、非常に大きな自然増収でございます、しかし、たしか二十六、七年度のころの増収も相当に大きかったと思います。おそらく当時の方が若干今回よりも多かったと思います。なお調べて申し上げたいと思います。
  28. 野溝勝

    野溝勝君 しかし、その自然増収の多いということは、それはまあけっこうなんですが、今政府は、政府が宣伝したかあるいは財閥が宣伝したか知りませんが、私は、神武天皇以来の景気だということが盛んに宣伝されておりますので、それをもじって今の御質問をしたのでございますが、実際この自然増収こそ、これは全くいまだかつて聞いたことのない膨大な数字が出ておるのでございまして、実際一般的の神武以来の景気と違って、これは具体的なんです。そこでこれは悪口を言えば、私はあまりずさんだと思うのですな、これは。こんな自然増収が膨大にあるべきものじゃなくて、これは実際だれでも疑問を持つのです。だから政府の予算というものは、待てよ、まだ隠し予算があるぞ、もっと突ついて出させようということになるのであって、政府みずからの政治の貧困というわけです、ざっくばらんに言えば。ですから、一体今の局長説明だけじゃわからぬのです。私の理解では物価が上ったといろ判断のもとに、だんだんと課税評価、収税量のふえたことになったと思うのですが、そういうようなことじゃありませんか。
  29. 原純夫

    政府委員原純夫君) 大体先ほどのお尋ね数字に対して申し上げた数字で、自然増収の数字を申しておりませんので、それをちょっと申し上げます。先ほど来の数字は、地方に行く分も含めての数字でございますが、そのうち一般会計分につきまして申しますと、三十一年度予算額八千二百六十七億、三十二年度における税法改正がない場合の収入は一兆百八十九億円、千九百二十二億の自然増収となるわけであります。この自然増収がどういう事由で出てくるかということは、つづめて申しますれば、経済が非常に発展して、そして生産も伸びる、収益も伸びるということであります。その場合、当然のことでありまするが、間接租税は消費する量がどう動くかということによって変って参ります。奢侈的なものでありますれば、伸びがそういう場合は、より多いということになりまするが、概して言いまして、間接租税よりも直接税関係における伸びの方がこういう際には、はるかに多いわけであります。物価の問題は、主として直接税の関係で重要な問題になって参ります。私どもの予算の見込みにおきましては、物価は今後は横ばいである、横ばいにいくという前提ではじいておりまするが、法人税等におきましては、今までに経過いたしました事業年度から出る利益が、だんだん三月、四月というような時期に申告され、納税されるというようなことから、物価が今まで動いておれば、その影響がやはり出て参ります。物価が上ります際は、通常のマージンのほかに値上り益というようなものが出て参ります。物価はどうかと申しますと、御案内の通り消費者価格は大体横ばいで、ステデイに推移しておる。ところが卸売価格の方は、これも物によってだいぶ高低があるのでありますが、総体申しましても、過去、年間で七%前後上っておるというようなことでございます。それらが、そういう段階で仕事をいたします企業には、通常の場合よりもより多く所得を免ずるというようなことがございます。それらが一部三十二年度の予算にも反映されていくということになって参ります。数字で申しますと、ただいま申しました千九百二十二億円のうち、所得税で六百二十八億、法人税で八百二十四億、この両者だけで千四百六十二億というものが増収になるというふうに見込まれておる次第でございます。
  30. 野溝勝

    野溝勝君 きょうは、委員会大蔵大臣の見えないことは遺憾ですが、しかし、主税局長とじっくりくんで、平素から疑問に思っておることを質疑する機会を得ましたことは、委員長、まことに私はよい機会だと思っております。特に予算委員会なんというものは、ただ、時間が限っておりまして、一発打って一発答えるというだけで、二、三問答する程度でございますが、本委員会におきましては、しんみりお答えも願えるし、また私どももお聞きしたいと思っております。  そこで、今、局長は、物価の値上りは横ばいであって、もしあるとすれば小売物価ではないが卸売物価だという点においても、自然増収が多くなったことをお認めになったのであります。たとえば、生産も収益も伸びておる点において増収があったというお話であった。そこで、小売物価の方は横ばいだと言いますけれども、その答弁は信じられないのです。絶対そんなことはない。たとえば、最近百姓の使う石灰窒素が一俵三百五十円上っておる。それから河野君らの関係している飼糧なども一俵について百有余円、二百円近く上っております。農具、電気しかり、それから砂糖が上っている。局長、神武景気の名で徴税を有利にせんとしているのか。現実に小売物価が上っているんですから、横ばい、横ばいということだけで片づけることは、政府の予算編成は杜撰であると思うのです。私はこれ以上は、この問題については言いませんが、今後のいろいろ政策を立案する場合におきましても、予算的な措置を講ずる場合におきましても、十分こういうところを私は検討願いたい。  さらに、いま一つ問題は、自然増収と関連をして考えなきゃならぬのは、先ほど農村における事業税というものは一応問題にしなかったがと言いますけれども、大体、一応当局は仮想してある程度財源を用意したところが、だめになった。そのだめになった分を一体どこへ持ち込んだのでございますか。どこで一体補ったのでございますか。その点を一つ聞いておきたいと思います。
  31. 原純夫

    政府委員原純夫君) そのお話は、農業から事業税をとるという前提で三十二年度の地方財政計画をまず組んであって、そして、これでつじつま合ったというものがあったということであると、おっしゃるような問題が生じますが、そういう段階はございませんので、三十二年度の地方財政計画を組みますずっと前にこの問題が起り、そうして、議論されてやめにしておこうということになりましたので、三十二年度の地方財政計画は当初からそれがないものとして組んでおりますから、また従来それが財源としてあったわけでもございませんから、これがはずれたら、かわりをどうするという問題は別段なしで、地方財政計画をどういうふうにバランスさせるかというだけの問題として、従来通りの、この点に関しては別に新しくなくなったから埋め合せという問題はなく処置ができておる次第でございます。
  32. 野溝勝

    野溝勝君 それではその点はこの際はまあ一つすなおにそれを黙認していくことにいたしましょう。しかし問題は先ほど固定資産税に対してとにかく評価額を一・四%……、どうですか一体あの評価額内容的に上っておるのですね、実質的に……。たとえば課税標準の見方ですね、鶏だけでも、鶏の卵が大体長野税務署におきましては二百五十から八十になっています、大体。そうすると幾ら優良アンダルシャンがいい鶏でも三百六十五生むというのはないのです。一年三百六十五日として三百六十五……、とにかく最優秀で三百近くのやつもあるそうですが、農村におきましてはそんな優良品種は飼っておりません。そうするとこの課税標準はでたらめか特種のものである。養蚕にいたしましても大体反収繭十八貫の標準を高く見ておる関係から、たとえば税率で千分の十四になったといえども、量的にそういう方からしぼられていくと収奪されていきますので、農村といたしましては非常に困っているのでございます。こういう点から今自然増収との関連においても、むしろ今度はその方に強くぐっと手を伸ばしていくことになりますると、しまいにはけつの毛まで抜かれるということになるのでございまして、生きていくことさえどうしてもできない。結局まあ自分の生活を低下して豚のような生活をやっていかなければならぬということになるのであります。この点に対するざっくばらんにしわを……、自然増収という理由のもとに所得を増しておりやせんか、こう思うのでございますが、その間の事情並びに御見解について、これは皮肉のようでございますけれども、ざっくばらんにお伺いしたいと思います。
  33. 原純夫

    政府委員原純夫君) まず、減税するのだから課税の基本となるものについて非常にきつく見るという態度は全然とらないということを申し上げたいと思います。が、同時に減税に際しまして、税務行政をどう持っていくかという点につきましては、私ども非常に深い関心を持っております。それの出発点は、現在の税法負担が非常に重いということもありまして、世間でよくいわれますのは、給与所得者負担に比較して事業所得者——営業も農業もでございますが、これの負担がやはり抜けておるということをだいぶいわれます。これはまあ地方に参りまして、住民税負担を軒並みに比較されるというような場合に、非常にはっきり出るようなケースが非常に多いと見えまして、だいぶそういう非難を聞きます。私どもとしましても年来心を痛めている事柄でありますが、それを直しますためには、一方で納税者の申告についての態度がだんだんと伸びて参るということも必要であり、税務官吏の調査についての態度なり、あるいは能力なり、知識なりが改善されていくということも必要でありますが、やはり税法があまりに重いと勢い非常に悪い気持でなくても、どうしても所得を抜かして申告しがちだ、逃げがちだということになります。それが現にかなり程度にあるのではないかというふうに思います。これはもう一般にそう言われているところだと思います。従いまして税法は改まってよくなるならば、そういう抜けはないように努めるのは当然のことである。これは税務官吏としてもまた納税者にもそれをお願いしたいと思います。ただその際、一律にそういうことが起るのではなくて、率直に申しますれば、やはり納税者の中にも、まあ言葉はなかなかむずかしいのですが、非常に悪質な者と、それから非常にまじめな人と……、税務行政においても残念ながらやはり人間がやることでありますから、きつい薄いということがなきを期しがたいと思います。その結果、全体として抜けておるということが言われる上に、営業者の間で、あるいは農業所縁者の間でのアンバランスが相当あるのじゃないかというふうに思われます。所得の申告額、あるいは把握額がかりに三割でも違いますと、税額においては倍……半分の開き以上になって参りますというようなことがありますので、ただいま申しました税法改正されて負担が納得できるものに近づくならば、それを考えて、申告も課税も改めて参りたいということは、悪質な抜けているこの納税者についてはしっかりとしてもらう。それと軒並みにまじめにきちんと納めておった人まで何割増だということをする趣旨ではない。やはりほんとうの公平な課税を実現するようにやって参りたいという気持で私どもはおる次第でございます。
  34. 野溝勝

    野溝勝君 課税標準率というのは場所々々によって違うらしいのでございますが、徴税するために大蔵当局は前年度長野県はどのくらい、また長野税務署管内の伊那税務署管内がどのくらいで、前年度に対するプラス・アルファというようなこと、大体ある程度暗示をするのじゃないですか、これが一つ。  それから第二にお伺いしておきたいのは、農民所得というものは、これは実際ごまかすことはできないものなんです。確かに今局長の言う通り悪質な者もあります。けれども、百姓の悪質というものは相場が大体わかっておるのです。リンゴ一つ隠す、鶏の卵をごまかすかで、あとは米繭の取れ高をちょいとごまかす……、それにしても大体このたんぼは上田、中田、下田、これは反収どのくらい、この反収からはどのくらい上るということは大体もうわかっておるのでございまして、なかなかそう大したいんちきはできるものではない。そういう点において昔から目一ぱいということをよく言われておるのでございますが、農村には弾力がないのでございますから、その弾力のない農村に追撃を加えていく、いわばその課税標準率を高くきめて課税していくということになりまするというと、農村といたしましてはまことに苦しくなってくるのでございます。こういう点について、一つ主税局当局におきましては一応再検討をされて、もっと納得のできるような方法を考えておるか、考えようとしておるか、その点。  第三点につきましては従来この納税について農民団体等とよく相談していくということを当局も約束されたのでございますが、その後の経過を見ますると、町村長、協同組合長程度の意見は聞くらしいんでございますが、もっと民主的団体の農民組合の意見を聞くという点については、どうもやっておる所あり、やっておらぬ所ありですが、しかし、その意見を聞いたから、それを全部取り上げにゃならぬということはないのでございますが、そういう点に欠けておりはせぬかと思うのです。  この三点に対して、局長の御意見をお伺いしておきたいと思います。
  35. 原純夫

    政府委員原純夫君) 主として税務の執行面の問題でございますが、私からお答え申し上げます。  まず、標準率と言われますのは、ただいま行なっております反当りの所得基準といいますか、こういうものについてのお話だと思います。これはおっしゃる通り、毎年反当りの所得がこの地域のこの程度の田なり畑なりならどのくらいになるという計算をいたしまして、農民が申告する場合の参考に供することにいたしております。これは何も押しつけるということではなくて、やはり所得の計算はかなりにめんどうな点がございますし、いろいろ問題点もございますので、それらをお役所が実地に調査をして、そしてお話の市町村あるいは協同組合というようなものの意見も十分聞きまして、そして農民の申告に資するというふうにいたしております。  それから第二の、目一ぱい食わせないで、農村に思いやりのある態度でやってほしいという点についてでありますが、一般論として、税務行政が過酷とか苛斂誅求であるとかいうふうになってはいかぬことはもちろんで、私どもは常々それは注意しておるつもりでございます。今後もそういう点は十分注意してやって参りたいと思いまするが、まあ現在の課税方式自体は、これを根本的に直すということはないのではなかろうか、それを実際の運用についてより穏当にやって参ることを常に心がけるということではなかろうかと思っております。  それから、反当りの標準率につきまして関係の団体に御相談をするということは、やっておりますが、ただいま実際にどの程度までやっておるか、市町村ないし農業協同組合を主として相手にしておると思います。まあこういう数字の問題になりますと、やはりそういう、いわばどこにでもあると申しますか、市町村なり農業協同組合なりを一応表に立てるというようなことが一応の考え方じゃなかろうか。もちろん、その他の団体の御意見でもできるだけは聞くという配慮が要ると思いますが、私、どの程度にやっておるかちょっと存じませんので、この点は農民全体を代表するというような意味で、適当な団体を相手にしてやっていくという、まあ筋を言えばそういうことでありますが、多くの場合に、それは市町村なり農業協同組合なりだろうというふうに考えております。
  36. 野溝勝

    野溝勝君 局長、少しはき違えておりはせぬかと思う。私の言っているのは課税標準が少し無理があるという点なんです。今言われたように、鶏の卵を二百八十というような見方、あるいは養蚕反収を繭十八貫というような見方、この見方には、全部が全部間違っておるとは言いませんが、農民全部の平均標準としては間違だ。農村あたりの鶏は、大体大部分が栄養的に飼っておるのでございまして、ですから、そんな優良な品種というものはおらない。それを最高標準で課税対象は過酷な標準であって、すなわち増税という形になるということを申しておるのでございまして、これに対して私は再検討する用意があるかどうか、または今後研究してみようという用意があるかどうかということをまず聞いたのであります。  それから所得税決定に当りまして、農村はどうしても青色申告のような数字的なことはなかなかやらんものなんです。そこで結局各団体の意見などを参考にして課税をするということになっているわけです。この前渡邊主税局長、前の平田局長当時から農民関係の団体等の意見を十分参酌するということで話し合いがついてきたのですが、特に農民組合と話し合いをしておるところは非常にうまくいっております。また場合によっては非常に抗議が出る場合もありましょう。特に山形県、新潟県等における農民組合との話し合いは成績をあげている。協同組合とか市町村団体もよろしいが、農民組合のような民主的な団体の意見も十分聞いて善処するということをより一そう私はこの際推進してもらいたいと思うのです。そういう点について、ただ市町村団体とか協同組合というのを中心ということでなく、そういうことも、やはり従来うまくいっておる点についてより一そう私は推進してもらいたいということを申し上げて、それに対する御回答を得たいと思います。
  37. 原純夫

    政府委員原純夫君) 第一の所得標準率をきつくするという点は、先ほども申しましたように、減税になるからといって、そういうものをきつくするという気持はございません。  それから第二の団体についての交渉の問題でございますが、これは私国税庁の方に伝えます。そして御要望を伝えて、もし必要でしたら別の機会にはっきり御回答を申し上げるというふうにいたしたいと思います。
  38. 平林剛

    平林剛君 関連質問と議事進行に関する私の希望を申し上げますが、初めに私ちょっと要望申し上げておきますが、きょうは大体定例の委員会でなくて、特別に大蔵委員会を開催いたしたのは、大蔵大臣がこれに出席をなさって所得税法に対する質疑を始める、こういう意味であったわけです。いまだに大蔵大臣が出席になっておらない。これは私遺憾だと思います。特に私は先般社会党を代表して本会議に上程をされた所得税三法に対し質疑を行いましたが、時間が二十分に限られておりましたから、質疑のしっぱなし、政府もまた答弁のしっぱなしということに終っておるのです。本来であれば、私どもとしてはここの質疑から始めていかなければならんところですが、委員長に協力をして大蔵委員会運営を円滑に進める協力をしておるわけです。こういう意味から、私は委員長におかれても、すみやかに大蔵大臣がこの委員会に出席をされて議事を進めることに協力をするということを強く要望していただきたい。それを希望いたしておきます。  そこで、今野溝委員から徴税強化の懸念につきましていろいろお尋ねがありました。これは私も大蔵大臣に尋ねようと思っていたことの一つでありますが、あなたが今いろいろお話をしてそのままで済むというと、あとで国民の方が原さんの答弁と実際とは違うぞということになるといけませんから、そこで私の考えを申し上げて、あなたから一つお答えを願いたいと思うのです。  私は、大体政府が立てておる千九百二十二億円の税の自然増収そのものに対しては疑問を持っておるわけでございます。大蔵大臣に対してもどうもこの自然増収の見積りが大き過ぎるのではないかという質問をいたしたわけであります。しかし大臣は、日本経済の情勢から見て千九百二十億円くらいの自然増収ははっきり出ると確信を持っておる、こういうようにお話がありました。またこの自然増収をそれだけ見たとしても、決していわゆる苛斂誅求はいたしませんと、こう答えたのでありますけれども、私としてはなお疑問が残るわけであります。なぜかというと、本会議でも私指摘しておいたのですが、各税種目の収入見込みを昨年に比べてみますというと、どれも大き目に見積っておる。それから徴収度合を高めておる。従って千九百二十億円の自然増収というのは、結局苛斂誅求はしませんとは言うものの、実際上は徴税強化ということになっていくのではないだろうか、私はそういう疑問を今でも持っておるわけであります。特に私の調査によりますというと、東京国税局の場合ですが、昨年の課税所得額に対して本年度は、青色申告で一二五%、白色で一二三%の引き上げをはかってこれを指示しておる。それからもう一つは、税務行政の監督強化をはかって、税務職員を実質的に徴税強化にかり立てるというような傾向に陥っているのではないか。たとえばこれは関東信越国税局の例でございますけれども、国税局の課長が所管の税務署に対して、今年は神武以来の景気だから相当税収が高くなるはずである。あなたの方の税務署では非常に低調だから、さっき言ったパーセントに達するまで努力をしてもらいたい、こういうようないわゆる尻たたきをやっておる実情を私は知っておるわけでございます。そうして、こういう目標に達しない税務署の職員やあるいは幹部に対しては、最近は人事考課といいますか、何かその勤務成績が悪いということで、昇給、昇格の場合においても差別待遇をする、結局それがいやなものでありますから、税務署の職員もあるいは責任者も、そのはね返りを一般国民のところへ持ってきて、それが徴税強化になる。苛斂誅求しないと言うけれども、税務行政の監督強化というところから見るというと、結局そうなっていくという傾向を私は指摘せざるを得ないのです。従来行なっていたお知らせ制度につきましては、これは衆議院の春日一幸委員大蔵大臣と十分に論議をかわしまして、結局これはやらないと、こういうことになりましたから、そういう意味では私どもが指摘した一つの点は解消はされましたけれども、同時に私は千九百二十億円の自然増収の中には、もう一つ滞納税額を二百四十億円整理するというふうに書かれておる。大体今予算書によれば、現在税の滞納額は四百五十一億円になっておるようでございますけれども、その半分が今年の間に取り立てる。今残っておる滞納はそれではどういうものかと調べてみますというと、かなり焦げつき滞納が多い。取れなければ、結局千九百二十億円の自然増収があるあると言っているものであるから、滞納分をあてにして、取れなくなればその分だけ結局一般の善良な国民の方の取り立てに回ってくるのではないか、私はこういう幾つかの事例からいきまして、やはり何だかだと言っても、徴税強化になるのじゃないだろうかという懸念を持っているわけであります。ところが大蔵大臣の本会議の答弁というものは——これは時間が短かかったせいもあるでしょう、再質問もできないような状態でありましたから——はなはだ簡単な答弁をした。私はこういう具体的な事例をあげて質問をしたのでありますけれども、答弁も十分でありません。あなた大蔵大臣じゃないけれども、一つ今、野溝委員との質疑応答の際においてもそういうことはないというお話をされておりましたから、あなた一つこのことについて具体的にお答えを願いたいと思います。
  39. 原純夫

    政府委員原純夫君) 自然増収につきましては、私どももこの千九百二十二億の自然増収は水増し見込みではないと思っております。各般の条件から見ますれば、この程度は入ると思っております。つきましては、この見込みを立てたことによって徴税が強化されるということについてのお話でありますが、先ほど来申し上げますように、これによって税務行政を過酷にするというつもりは毛頭ございません。ただし先ほども申しましたように、相当今までの納税申告の状況または税務署の調査の方もかなり脱漏があり、またアンバランスがあるということはわれわれも反省しておりますので、極力申告のよい納税者に対してはむしろ、言葉は熟しないかもしれませんが、徴税の何を弱化する、なるべく信用してやって参る。しかし抜けている、悪質であるというものに対しては、これは当然今までも強化しなければいけなかったものでありますから、そういう面は税法が大幅に改善されるという際は、そういう面でこれを改善する大事な時期だろうと思います。これは決して徴税を過酷にするというのじゃなくて、本来あるべきものにするという意味で、そういうことを考えて全般に過酷にするというようなことは考えておりません。  なお、この標準率、あるいはただいまお話のは青色は一律にいこうということではないだろうと思うのですが、年来そういう率を示して、その率が非常に固定的なものとして第一線に響くということは非常に悪影響がある。実際には各業種によって、また業種によりましても平均的にはこのくらい伸びるけれども、それはかなりの分散度合いがあるものでありますから、そういうことを十分頭に入れてそういう率を使う。率を持つこと自体は、これは税務行政として確実な所得見込みをつける、所得を判定するという上に当然持つべきものだろうと思います。ただそれを適用する場合に一律無差別にやりますれば、非常に酷になったり、かえって甘くなったりというようなことになりますので、それは年来口をすっぱくして戒めているところであります。そういうものとして御承知を願いたいというふうに思います。  重ねて申しますが、決してこれは税務行政を過酷なものにするという意図は毛頭ございません。われわれはむしろ税務の執行の度合いをゆるめ得る信頼し得る納税者が一人でもふえるようにという気持でやっております。同時に、課税は適正でなければならないから、抜けている部分については十分力を加えていきたいというつもりで申し上げておる次第であります。
  40. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) なお、質疑はたくさんありますが、ここで暫次休憩をいたしまして……。
  41. 平林剛

    平林剛君 ちょっと待って下さい、今の質問もう少し……。
  42. 野溝勝

    野溝勝君 委員長、私の質問はまだ打ち切られていません。
  43. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) それではお続け下さい。
  44. 平林剛

    平林剛君 今あなたは過酷な取り立てはしない、こう言われたけれども、そこが言葉の取りようで、その反面においては、アンバランスがあったのを調整をするとか、あるいは脱漏があったものをそうでないようにする。これは実際の面におきましては、さっき野溝委員が指摘をされていったところまで下りてくることになるわけですよ、実際問題としては。私はそういう意味では野溝委員の質問に対するあなたのお答えの中には、どうも現実の問題について言葉でそらしているような感じがするわけです。それはまあ別にして、私は後にまたこういう問題についてはこまかくお尋ねしていきますが、とりあえず現在の滞納の状況につきましてもう少しこまかいことをお聞きしたいのです。しかし今あなたは主税局長だから、これは議事進行をはかる建前もありますから、あとで現在の滞納の状況について資料の提供を一つしてもらいたい。  そこで最後の質問だけをしておきますが、徴税強化のかまえが強くなっておるという一例をちょっと申し上げます。あなたは脱漏あるいはアンバランスを直すと、こう言われるけれども、最近税金の督促状の問題が問題になっています。御承知のように所得税の申告期限は三月十五日で参ります。三月十五日までに所得税の申告をする、そういう税務行政が行われておることは、国民全部が承知しておるところでありますが、しかし今国税局ではすでに納税の督促状の発送準備が行われておる。納税を怠っている国民に対して督促状の発送準備が整えられておるというならば問題にする必要はもうとうありません。私もそれを問題にするつもりはないのです。しかし納税の申告をし、納税した者に対して督促がいくというようなことになりそうなんで、少し管轄は違うかもしれませんが、関連してあなたに指摘をしておきたいと思います。私の承知するところによりますというと、この督促状が例年に比べて時期を早めている。例年はもっとおそいのでありますが、今年は三月の二十三日に各国民のところに督促状が舞い込むようなことになっている。そうしてその督促状の納付期限も四月の二日になっている。これも例年から比べるというと、時期が早いのです。例年はもっとおそく納付期限を定めておるのでありますが、今年は四月の二日にしておる。つまりこれはどういうことを意味するかというと、督促状を早く出す、そして納付期限を早めて延滞利子が入ってくる。つまり千九百二十億円の自然増収というものを確保するためには、こういう無理なこともしなければならぬということを示しておるものだと私は思うのであります。先ほどあげた幾つかの例示と共に、この督促状の問題についても、やはりあなたはアンバランスやあるいは脱漏を防ぐのだと、こう言うけれども、そのうちにはやはり徴税強化のあせりというものが方々に現われてくる。これが予算委員会その他で指摘したように、経済界の動向がよくならぬということになれば、あるいは思ったほどよくならぬということになれば、ますますこういう手が幾つも行われてくることになりはしないか、どうでしょうか。
  45. 原純夫

    政府委員原純夫君) 税金は三月十五日に申告していただく、同時に三月十五日までに納めていただくということになっております。これを申告はされるが、納められないという場合には、税務署としては一日も早く納めていただきたいということを申すのは当然だと思います。だいぶ前には、それが非常に納付が悪いというような状態でありましたのは、年来非常に努力しまして、これは期限内に納付していただくように努力するというのは税務署として当然のことでありまして、おくれますればまた次の時期の納税期がくる、そのときに前の期のを納めなければならぬということになるわけであります。長年私ども税金をやりましたから、なかなかそういう際の実情はいろいろあると思いますけれども、一日も早く納めていただきたいという努力をする意味で、三月十五日までは申告はされたけれども、税金を納めていただいてないというのでは困るから、それを納めて下さいという通知を出すということは、仕事の段取りとしては手順に通知を出すというようなことは、あらかじめ予定して用意するということは、これはまあそうしないといけないのじゃないか。だれに督促状を出すかというようなことをきめるのじゃなくて、仕事の段取りとしてそういうものを用意するということでありますから、そういうふうになってやっていく例年のやり方を、特に強化するということ、これは強化といいますか、申告があればその納期までに納まるという目標にだんだん近づかなければ、これは私はやはり税というものはよくならない。先ほど徴収率の問題がありましたが、私どもたしか三十二年度の見積りでは収入歩合を高く見ております。これは当然そういう方向にいって、大部分のものが納期に納まるということにならなければ、やはり税というものは本式でない。そうしてまた事実現に三十一年度の経過を通して見まして、収入歩合はかなりに改善されております。これはもちろん経済情勢がよろしいということもありましょうが、同時にまた納税者、それからわれわれもできるだけの努力をしておるということの現われかと思っております。そういう実態を受けて、三十二年度の収入歩合も従来よりも多く見ている、これは決してそれを強化だと言われることはないと思います。それをやる場合に、非常に過酷なことを言って、余計納まるならなんですが、だんだん税務行政も納税者の方の用意もよくなり、そうして経済情勢もよくなって余計納める、余計の割合いに納まる、これがやはり徴収面における理想なんですから、それに一歩々々近づくということでやっておりますので、その間過酷なことをやるということは絶対にいたさないが、その目標には一歩々々近づくように努力しなければという気持でやっておる次第でございますから、御了承いただきたいと思います。
  46. 平林剛

    平林剛君 あなたにあまり質問するのはお気の毒なんでありますが、神武以来の景気とか経済界がよくなったからといっても、それが全般的なものじゃない。今のような国税局のやり方でいきますというと、自然無理が伴うということになるわけですが、その点は自然増収の立て方そのものについてもあなたの方に責任があると思うから、私は申し上げているわけでございます。言ったついででありますから、あなたの責任ではありませんけれども、一つ同じ政府部内であるし、かなり高い自然増収を見込んだ当の責任者でもありますから、私は今のことに関連してこれだけは御注文申し上げておきます。  それは督促状の時期を早めることによって国民の負担を重くすることを考えないという結果が生まれることを私は心配するわけであります。税務署の役人が仕事が忙しくなる、これはまあ大へん御苦労なことでありますが、それについては別途給与その他でめんどうみればよいことであり、ただ政府が申告所得税の納付期限を三月の二十三日までにやるということになると、十五日に申告期限が来て、八日間の間にこれだけの仕事をする、しかもその間には二十一日の祭日と、それから二十四日の日曜日、二日ありますね。その間に申告されたものはぱっと仕事をやるということになるというと、それこそ今度税の事務の面において脱漏が出てくる。税金を取り立てる脱漏ならいいけれども、事務の面の脱漏が出てくるというと、ちゃんと納めた人にまで催促状が舞い込んでしまう。よく新聞で、一体政府は何をやっておるのかということを例年聞くわけであります。私はことしはこれが激しくなるのじゃないか、去年より時期を早めて、そうして短かい間にその仕事をやり遂げるということになれば、結局二重督促が行ったり、あるいは督促をすべき所に督促が行かなかったりするようなことにならないだろうか。そうして政府はそのためにたたかれる。国民はそうでなくても税金が高いし、徴税強化がくるかもしれないというような国民感情を持っておるところにもってきて、しかも事務上の手続の上から、さらにこういう不満が高まるということは、税務署が国民の敵になるというふうに言われるようなことになっては困る。そういう意味で、そういう心配がないようにしてもらわなければ困る。政府は千九百二十億円の税金を取り立てるために、あらゆる方法を講ずる苦心はよくわかりますけれども、あらゆる面において国民に迷惑をかけるということになりますというと、これはやっぱり重大な問題です。あなたはことしは、国税庁長官いませんけれども、新聞の投書欄あたりに、二重督促が来た、一体、ちゃんと納めたのにまた来た、こんなようなことが書かれないというような確信があるかどうか。渡邊さんに聞くんだけれども、問題は、自然増収をそう大き目に見積ったから、渡邊さんの方もいろいろ無理をしなければならぬというのだから、私は原さんに聞いておる。
  47. 原純夫

    政府委員原純夫君) 自然増収は、重ねて申しますが、決して無理に水増ししておるのではございません。私ども十分これは入ると思っております。それだからお尋ねの、責任がないというようなことは申しません。一がいに、一般的に税務行政について、押しつけがましいような角度が出るということが非常にしばしばあるということは、われわれも常々反省いたしておりますから、お話の趣旨はこの際またあらためて反省の資にいたしたいと思います。所管の国税庁の方にも十分伝えまして、お話の、納めたのに督促するというような、まことに失礼千万なことでありますから、絶対にないように重ねてお話の趣旨を十分伝えるようにいたします。
  48. 野溝勝

    野溝勝君 角度を変えまして、一、二お伺いして、私はきょうの質問を打ち切りたいと思います。  所得税法の一部改正法律案法人税法の一部改正法律案全部と関連を持っておるわけでございますが、特にそのうち資料の所得税法の一部改正法律案新旧対照表、そのうち第十一条の七に生命保険料の控除という欄があります。それを見まするというと、「一万五千円とそのこえる金額(その金額が一万五千円をこえるときは、一万五千円)の二分の一に相当する金額との合計額とする。)を、その者の総所得金額、退職所得の金額又は山林所得の金額から控除する」、これが出ておるのでございます。まあ保険者から見れば控除されることはけっこうであります。しかし被保険者すなわち大衆でございますが、大衆から集めた金を財政投融資の形におきまして、巨大な産業資本の方面に投融資することは、所管はまた別になりますけれども、財源に頭を痛めておる主税当局といたしましては、せっかく免税点を設けて大衆のためにやったことが、また大衆の集めた金を、大衆の意に反した方向にもっていかれるということにつきましてはどう考えておるか、ざっくばらんに言えば、かように免税点を上げてやっておる、この財源の処置に対して、主税当局は何か発言をしたことがあるか、または意見を述べたことがあるか、この点を一つ聞いておきたいと思います。
  49. 原純夫

    政府委員原純夫君) その点は、住宅建設のための資金をこれによってまかないたいという着想がうらはらになっております。従いまして生命保険会社に対しまして、この特典の拡張による契約増と申しますか、それによる集まった資金、これをできる限りそっちに回すようにということで、相当長期にわたりまして多額のものを住宅建設の方に回すような話を別途取り進めております。年々百億ないし二百億というような数字を数カ年そっちに向けるようにというふうに別途話を取り進めておる次第でございます。
  50. 野溝勝

    野溝勝君 これは大蔵当局の権限でやることであるから、やれないことはないのでございますが、何としても保険契約をする、その契約をしなければ保険会社の基礎というものが危なくなる、そういう意味で特に保険契約のために、大衆の生命的なものではあるが、同時に保険契約をしなければ会社の維持もできない、そういう点については働く者の協力はなみなみならぬものでありますが、労働組合のものに対しましては、そういう財政投融資の問題についても一言も相談がないようでございますが、この点は法規にはありませんけれども、どういうふうにお考えになっておるか、これを原さんにお聞きするのは無理ではございますが、ざっくばらんに言えば、お互い話し合って、社会政策なりあるいは社会事業なりに投資をするということについては労組も協力するし、反対する意図はないのでございます。こういう点について私はやはり相談的に金融の、投融資をやる、投融資に使うというようなことは、その方が非常に円満にいくと思うのでございますが、どういうふうにお考えになっておられるか、別に責任のある御答弁を聞くということはあなたには無理でございますが……。
  51. 原純夫

    政府委員原純夫君) だいぶ私のお答えできるワクをこえますのですが、まあ非常に個人的ななにになりますが、いろいろな金融機関、保険会社、そういうものは資金を運用しますについて、いろいろな方面から御要望が出るというのはもちろんけっこうだと思います。ただそれが話し合いということになると、非常に制度的なものになって参りますが、そういう問題はちょっとどうも何と申しますか、どういうふうなことになるのか、おそらく声を十分聞くようにというお話だろうと思います。それはもうもちろんのことだろうと思います。
  52. 野溝勝

    野溝勝君 さような御共鳴を得るならば、特にこの保険控除の問題について、主管局長でございまする原さんから特にそれぞれの関係当局にさような話をされまして、ただいまの意見の徹底に御努力を願いたいと思います。  次に私がお伺いしておきたいことは、今回の生命保険料の控除は世界的だという御説明でございます。英国は四割、日本は五割というのでございますが、まことに歴史的な控除でございまして、私も感心して聞いておったのでございます。しかし、生命保険料の控除をすることはいいのでございますが、火災保険について考えないのはどういうわけですか。一般にいわせると、生命保険の方ばかり控除されて、火災保険は、大衆の経済契約、生活契約をしておる火災保険にかかわらずこればかりを無視されて、生命保険ばかりを控除されて特別待遇を受けるのはどういうわけだといってくるのです。この点は私も実際論理の割り切りに無理があると思う。理論的にどう説明をしたらよろしいでしょうか、原局長に伺いたい。
  53. 原純夫

    政府委員原純夫君) 生命保険に支払う保険料を所得から控除いたしますのはどういう意味合いからであるかというふうに言いますと、これは何と申しますか、いわゆる最低限というと強過ぎますが、つつましやかなベースで将来の生活の安定の保障を持つための支払いを所得から控除しようというのが本旨で、それにこれによる貯蓄推進ということがあわせて理由になっていると私どもは考えますが、損害保険の場合には、そういう観点からみまして両方ともだいぶ事情が違う。まあ損害保険をつけるというのが生活を安定させるために絶対に必要でないとは言いませんが、だいぶ損害保険は生命保険と必要度が違うということと、貯蓄奨励ということから言いますと、それは毎年ほとんど全部が火災その他の事由で保険金の支払いとして出ていってしまって、資金が特に生命保険の場合のように長期にわたってたまるというようなことはございません。そういう意味所得控除を与えることは非常に性格が違うということから、損害保険については別段の措置をしないという考えでおる次第でございます。
  54. 野溝勝

    野溝勝君 性格が違うというのでございますが、それはどの点が違うのか、私たちの判断からいたしますると、生命保険も大事だが、死んだあとのことはわからない。生きておるうちだけでもなんとか不安を最少にしてやっていきたい、そうするには家が焼けてしまっては困るので、私なども生命保険のせの字も入っていないが、火災保険だけは入っております。契約五百万円をしております。これはうそでもなんでもありません。入っております。私のような考えは大部分であると思うのです。生命保険もいいでしょう、しかし現実の実際生活には火災保険は直接です。だから家あるいは不動産にしても何にしてもこれはほとんど全部が入っておるのじゃないですか、原局長は性格が違うという意味はどういう意味で言うのだか、死後の問題ということと今日生きるという経済ということと違うというならそれも確かに性格が違うからいいのでございますが、経済的に私どもは考えておるのです。そこで特に私はそれだけの理論的説明では区別をした理由がわからないのです。損害保険の方においては通常危険準備金については毎決算期積み立てる義務がある。収入保険料の大体五五%、これには免税されておる。しかし異常危険が非常に重大問題だと思うのです。特に損害保険などは政府の援助も補助もない。一朝異常危険があると、たとえば大火であるとかあるいは風水害であるとか、そういうような場合は加入しておるところの被保険者は非常に心配になってくるわけです。こういうことに対して政府はこの方面での免税点を設けるあるいは控除が個人でないならば無税にするとかして加入者の有利の道がはかれないか、そして加入者に心配かけないよう政府は協力すべきだ。異常危険の分だけでもこの際免税点など設定される必要がありはせぬかと思うのです。こういう点について原局長はどういうふうに考えておるか。むしろ私から申し上げるならば、やはりこの保険会社なら保険会社は公平に扱っていくべきものであるし、またむしろそうした異常災害などに対しましては被保険者が心配のないようにさせておかなければならぬと思うのです。それには政府が裏づけするならいいけれども、裏づけがない、なければその会社などが十分内容的にも充実する用意をしておく必要がありはしないか、かように思うのです。その用意に対する点については会社がこれを勝手に左右するということは問題が起ります。その点は政府が厳重に監督するというようなことをやれば、私はその間の誤まりはないと思うのでございますが、こういう点について生命保険と、損害保険とが政治上、政策上の待遇に非常に違いのある点ほどうしても割り切れないのでございます。こういう点についていま少し御説明願いたい。
  55. 原純夫

    政府委員原純夫君) 異常危険準備金のお話でございますが、これは現に異常な危険に備えて、所得のうち特定の部分を税金を払わないで留保するということを認めておるのでございます。そこで今のお話は税金を払わないで積める限度を広げたらどうかというお話でございますが、実は大へん申しわけない御返事になるのですが、今日その限度を若干下げようと思っております。その理由は何かと申しますと、いわゆる特別措置全般の整理の一環として各種準備金、引当金につきましても検討いたしました結論がさようになったのでございます。どういう角度からの検討かと言いますと、準備金、引当金、いろいろございます。貸倒れ準備金、価格変動準備金、あるいは渇水準備金、またこの異常準備金、その他なおございますが、それらにつきましてどういう制度かというと、従来といいますか、昔のやり方では所得になって税金を納めなければいけないものを、特定の事由によって準備金とし、あるいは引当金とするならば、それは現在税金を納める必要はない、将来それをくずして利益になるという場合には納めなさいという制度なんでありますが、そのためにはどういう事由でそういうふうに準備させ、引き当てさせるかという事由とからんでその限度を考えなければいけない。この各種の準備金の中にもいろいろそういう意味で妥当性と申しますか、事由の厚薄があります。またそれぞれの理由に従って、限度を付すべからざるものと、それから特定の限度をつけるというようなものがございます。今回考えました中で、貸倒れ準備金、異常危険準備金、これらにつきましてはどういう理由かと言いますと、将来貸倒れが生ずるかもしれない、それから異常な大火があるかもしれない、異常な海難があるかもしれない、その際に困るからということでありますが、原則論として言いますと、税としては将来どんな何が起るかもしれないということで、所得に税をかけないということは、これは非常に異例のことで、原則論としてはどうもとり得ないというように思います。それをやりましても、各種の企業につきましても、あるいは勤労者の家計におきましても、どういう事態が起るかもしれないということは、まあ数限りなくあるわけなんでございます。従いましてそういう制度についてはどの程度積めておるかということも考え、またそういう偶発的な損が経験上どの程度起っているか、それをまかなえるか、まかなえないか、今積んでいる程度のものでまかなえるか、まかなえないかということも調べて限度をきめなければならぬ、この異常危険準備金の場合には調べてみますと、近年相当の期間にわたってこれをくずさんならぬという事例がほとんどないようになって参りました。これは保険会社の単位が大きいか、小さいかによっても当然違いますが、だいぶ戦前に比べて単位が大きいというようなこともあって、ほとんど該当の事例がないというようなことでありまするので、またある程度積むところは積んできたということで、ただいまこれを毎年積み得る限度をある程度低くするということを考えております。が、これは他の準備金等々との権衡等を考えてのことであって、私どもの見解では、それで損害保険会社の異常危険に対する準備は大体できるのではないか、また一方にこの再保険制度というものが戦後年を経つにつれてだんだんと利用し得る度合いもふえ、その基礎も確立してきておるわけでありますから、両々合せて考えれば、そういう点についての心配は大体こたえていけるのではなかろうかという気持でおる次第でございます。
  56. 野溝勝

    野溝勝君 その御説明でわかったようなわからないようなことになっておるのですが、大体生命保険の方は非常に政策上に優遇されており、損害保険料率は前年、一応は引き下げられた、この問題については、これは労組からいろいろ意見があったけれども、引き下げられることは被保険者としてはよいと思うのです。ただ保険金支払の場合をも同時に考えてほしい、また労組といたしましては、引き下げることはいいとしても、会社が経営が不振だというようなことから、そのしわを従業員にもってこられたのではかなわんということで、一時問題の起ったことは主税局長もすでに御承知のことと思うのです。そこで今またこういうふうに一方的に生命保険の方は優遇されて、そして損害保険の方は押えられてくるということになりますと、ここに従業員からも問題が提起されてくるのです。先ほどの説明だけではどうしても理論的に納得ができない。たとえばその場合には政府で保証するか、裏づけをするとかどうとか、はっきりわかっておればよろしゅうございますが、そういう点が明らかにならぬと、今後大火のあるいは風水害の場合においても、これから原子力の時代においてどんな事態が起るかわかりませんが、いろいろの意味において相当損害保険の危険範囲が拡大され、国際的にも私は重要な段階になってくると思うのです。もちろんこれは国営とか何とかになれば別でございますが、さもない段階においては、日本の産業のいんしん、発展を期すべきは当然であります。その場合に、事業の萎縮するように押えられてきたのでは、国際的の業界における戦いができるかどうかという問題なのです。そのことも考えておったのかどうかということが一つと。  それから第二点におきましては、何が故にこの異常危険準備金に対して、従来より虐待といいますか、従来は十%損金に算入されておったのが、今度はこれを七%としたのですが、そういう点について、明らかにされぬと、業界も従業員組合もともに行く末を不安がっておるのでありますから、この点をもっとわかるように一つ説明してもらいたいと思います。
  57. 原純夫

    政府委員原純夫君) まず第一の、これで異常な危険が起きた場合に大丈夫かという点について申し上げます。私の手元にありますのは、昭和五年度から昭和二十九年度までの火災及び海上保険につきましての損害率、毎年の正味収入保険料と申しますのは、総収入保険料から再保険料として払った額を引いたものであります。その大体の保険料の総収入額だと思ってよろしいのであります。それに対して五割をこえる損害がありますと、そのこえる部分が異常危険だということになっております。それじゃ、昭和五年度から最近までで五割をこえる年があったかといいますと、火災保険につきましてはたった一度昭和二十一年に五三・二%という年がございます。自余の年は四割台がたったその間に二年でありました。その他は三割台、二割台、一割台の年もございます。これは、ですから異常危険がないどころか、通常の損害も、これ以上は異常危険で、ここまでは通常だといっているもののはるかに下のわけです。海上の損保におきましては、どうかといいますと、海上の損保の場合は、ただいま申しましたこれをこえればというのは八割でございます。正味収入保険料の八割をこえる部分が異常危険ということになっておりますが、これは昭和五年以来最近まで全然該当する年度がございません。一番高い年が昭和二十一年で七割四分二厘というのがございます。以下六割台、五割台、四割台、最低は三割台の年もございます。これは全部の損害率でありますから、そのうち保険会社個々にはこれに高下があります。従いまして出て参る分もあろうかと思いますが、こういう事業はやはり相当な単位でやらなければ本来成り立たないというので、事実それが戦後は戦前に比べてずっと単位が大きくなっているわけでありまして、実際に各社にあてはめてもほとんど適用がないということであって五割をこえるかこえないかというところで、ほとんどこえるものがないということでありますから、この正味収入保険料の今一〇〇%まで無税で積めるということになっておりますので、今後まあどういうことが起るかわかりませんが、まずまず私どもの考えでは大丈夫ではないか、ちなみに額を申しますと、昭和二十九年度分の数字しか手元にございませんが、正味収入保険料五百三億でありますが、それに対して三十年三月末でどれだけ準備金を積んでおるかといいますと二百七億という額が無税で積まれております。相当な準備金になっておるというふうに私は思います。つまり今申しました五割をこえて、五百三億の五割ですから二百五十億、それをこして二百七億分の異常危険があっても大丈夫だということですから、万々間違いなかろう、そうすると現在の程度でいいかということになりますが、これはまだ四割一分にしかならないので、今後まだ相当積む余地が残してある。その積む余地なりテンポなりが、どうもこの辺である程度ゆるんでもよろしいという判断をしたものですから、先ほど申しましたふうに毎年の繰入限度を押える、累積限度は押えないというふうにいたしております。  なお、生命保険とどうも不均衡じゃないかというお話ですが、生命保険の場合はもちろんそれによって保険契約額がふえれば、会社も利益するわけでありますが、生命保険料控除というのは、各所得者個人に対する控除であって、たくさんの人がこの生命保険料を払えば、それを所得から控除してもらうという制度でありますが、損害保険の方は、これは保険に入っている人に対するなんではなくて、保険会社の利益をそこに無税のまま積ましておこうということであって、その結果、ある保険会社では、こういう制度を認めない場合に比べて約三分の一だけ所得課税からはずれると、相当大きな利益になっているわけでございます。そういうのは年来続いてそういう累積したものが非課税のまま会社は持っているということになっておりますので、だいぶその辺の感触も違うのではなかろうか。それはもちろんそういう感触というよりも、それぞれの制度意味に従って異常危険に備えるという見地から純粋に考えるべきだと思いますし、その面では先ほど申したような考え方から、私どもそういうふうな若干の制限を加えたいと思っている次第でございますから、御了承をいただきたいと思います。
  58. 野溝勝

    野溝勝君 最後に一言お聞きして私は打ち切りたいと思う。  改正法案の中の今の損害保険の異常危険準備金は、準備金が正味収入保険料の五〇%に達するまで毎年の積増額の七%を損金算入と、前は一〇%でしたね……。それをこういうふうに引き下げる。それは被保険者には関係がない。会社も確かにそうでしょう。それならこういうような損金算入の積増額の引き下げをやるよりは、むしろそういう場合には、被保険者にはこの場合はこういう契約でやったらどうかというような、被保険者のことを考えて、どうしてこの問題の処理に当ってくれなかったかということを聞きたいと思います。
  59. 原純夫

    政府委員原純夫君) その問題は、この保険料率の合理化と申しますか、常にこれを引き下げる努力をするという問題だろうと思います。そういう面としては私の所管外ですが、年来そういう角度で努力をしておられるように思います。お活の趣旨を十分関係の方に伝えることにいたします。
  60. 野溝勝

    野溝勝君 最後に、ぜひ一つこういう場合には被保険者の気持等とにらみ合せて処理するように、主税局長の方から関係の部局に善処方を願いたいと思います。
  61. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) なお、午後質疑を続行することにいたしまして、二時半まで休憩いたします。    午後一時三十六分休憩    ——————————    午後二時四十六分開会
  62. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
  63. 土田國太郎

    土田國太郎君 今年の所得税減税についてちょっとわからないところがありまするから、局長にお伺いいたしたいと存じます。  大体、私のお聞きしたいところは、十一条の三ですが、大体はわかりますが、もし間違ったらいけませんが……、これはこう、いうことですか、夫に対して妻は無条件で合体計算の所得にされるということですか、まあ一問一答で言いますがね、要点だけですから。
  64. 原純夫

    政府委員原純夫君) その通りでございます。
  65. 土田國太郎

    土田國太郎君 それで次の二に「父又は母とその世帯に属する子」としていますが、ただしこれは、資産所得以外の九万円の収入のあるものは、妻子を持っておるものは父に合算しない、こういうことですか、間違いましたでしょうか。
  66. 原純夫

    政府委員原純夫君) その通りでございます。
  67. 土田國太郎

    土田國太郎君 それから「祖父又は祖母とその世帯に属する孫」、これも資産以外の所程九万円の収入があれば、これも合算されないのですか。
  68. 原純夫

    政府委員原純夫君) その通りでございます。
  69. 土田國太郎

    土田國太郎君 今の祖父母の問題ですね、これも妻がなければいかぬですか、その孫は。
  70. 原純夫

    政府委員原純夫君) 孫に配偶者または子があるという場合はそれではずれる、また九万円をこえる資産所得以外の所得があるという場合もはずれる、いずれかあればはずれるということです。
  71. 土田國太郎

    土田國太郎君 わかりました。それからお聞きしたいのは、この合体計算ですね、総合計算というやつですか、この当該世帯主は非常な増税に相なるわけですね、その高率になったものは、その所有主が税金を納める、収入者が、世帯員が納める、こういうことになっているようですが、妻なりまた子供がそのためにえらい多額の税金を従来と違って納税しなければならないというようなことになるのですが、そういうことは、減税をされるという今の政府の方針に対して少し違ってはしないかというような感じもあるのですが、局長はどうお考えですか。
  72. 原純夫

    政府委員原純夫君) これは資産所得を合算して税額をはじくという根本の理由お尋ねになっていることになるわけでございますが、この問題につきましては、年来非常に議論のあったところでありまするし、またわが国におきましても、昭和二十四年以前は、もちろん資産所得だけでなくて全部合算しております。シャウプ勧告で二十五年に改正になりましたときも、資産所得と扶養親族の所得は合算課税するということになっておりました。諸外国においても、こういう所得は合算して課税するという例が多うございます。その理由は、資産所得というものを担税力に応じて課税するというのに一番よい方法は、やはり世帯員相互間と申しまするか、あるいは少くともある程度範囲の親族の間では、一体として担税力を計算して、それによって税率計算をする方がよろしいということに出るわけであります。そのもとには、やはり生計を一にするという親族の間に、お互いに共同の関係があるというようなこともありまするし、また資産所得の場合には資産が分割される場合が多い。分割によって税負担が個々になるということは非常によろしくないし、実際問題としてそういう場合には主たる所得者に集めて税額を計算するということの方が、より担税力に合うであろうという考え方であります。
  73. 土田國太郎

    土田國太郎君 今、局長の御説明は、外国もそうだというようことでありまするが、これは外国においても、英・米・仏というような、従来われわれの生活とレベルの違った多大の収入を得ておる国柄の話であって、貧乏国に果してそういうような制度がとられておるかどうか。たとえばイタリーのごとき、ああいうような非常に日本と同じように困っている国は、この合算制度はどうなっておりますか、英・米はわかっておりますが……。
  74. 原純夫

    政府委員原純夫君) イギリス、アメリカは、おっしゃる通り合算であります。イタリーの例は、私ちょっとここに持ち合わせておりませんが、西ドイツ——ここはたしか平均の国民所得日本の三倍ちょっとだったと思いますが、ここでも夫婦と十八才未満の同居の子女の所得は合算する。ただし子女が父母と関係のない事業で得た勤労所得は合算されないというようなことになっております。フランスもこの合算課税する。ただし、その場合に税率適用について特例がありますが、合算課税するというふうになっております。
  75. 土田國太郎

    土田國太郎君 今、現在の税法からいって申し上げまするというと、財産相続をしない以前に、家族間で財産の譲り渡し、譲り受けについては、十万円以上は税金がかかるわけですね。それらは、つまり家族間独立の資産というものをお認めになっておるからこそ、その譲渡というものに対する譲渡税を政府はお取りになっているのではないかと思いまするが、こういう制度ですね、おのおのの家族間の財産を認めておるというときに、今度は逆に合算して一本にして税金をとるというようなことは、少し違っていやしないですか。同じ税法でありながら、一方は家族間でおのおの夫も妻も別に財産というものを認めておって、それを譲るときには譲渡の税金を納めなければならないというように、一方は税金を取っているのですからね、おかしいじゃないですか。それをまた合算して一本にする。しかも今度高い上積みの税金が世帯員の負担になるということは、私は税法の精神が那辺にありやということを疑わざるを得なくなってくるのですがね。
  76. 原純夫

    政府委員原純夫君) 資産所得を合算します場合、先ほどもちょっと申しました二つの理由がございますが、その一つである資産の分割ですね、資産を世帯員に分けることによって、御主人が全部資産所得を持っているという場合よりも税負担が相当軽くなってくるというのは、所得の性格から見ておもしろくないというのが一つの強い理由でありますが、その場合に、子供なら子供に資産を与えたと、贈与税を取るじゃないかと、贈与税を取るということは、その子供の個性といいますか、子供の独立の地位を認めるのではないかという御疑問でありますが、その点は私どもこう考えております。贈与税はなるほど取ると、しかし贈与税を払って子供のものにいってしまえば、それはもう完全に子供のものとして課税すべきだという議論は当らないと。何となれば、計算だけをいたしますと、贈与税というものは、いずれ子供に財産がいく場合に相続税がかかる、それのいわば前取りといいますか、相続税に対応するものとしてそういう場合に観念されるわけであります。だから、それはいずれ取られなければならぬものであります。ところが、そういうふうに分割することによって所得税の方は非常に軽くなるということをしますと、もう従来の税率ですと、数年にして贈与税を払った分は所得税が軽くなってとんとんになるというようなことになります。やはり贈与税を取るから独立だということでなくて、所得課税として、毎年の収益に対する所得課税が担税力に合うようにするためには、やはりお願い申し上げております範囲のグループの中においては、一体として課税しなければいかぬのではないかというふうに思います。それじゃ、そうするのなら、贈与しても贈与税をかけなければいいじゃないかという議論も出ようかと思います。それは、そうする考え方も確かにあると思いますが、そこで私ども実際問題として困ると思いますのは、それではその御主人が何年か何十年かたってなくなったというときに、名義は子供のものになり妻のものになっておるというのを、贈与税がかかっている、かかっていないかというのを、何年、何十年にわたって振り返ってみなければいかぬわけです。そういう実際上の見地から、やはり贈与税の方はかける、同時に所得については、このグループにおいては合算して税率の適用を考えるというふうにいたさざるを得ないと思う次第でございます。
  77. 土田國太郎

    土田國太郎君 今の局長の御意見は、そういうものもあるのですよ、家庭によって……。しかしながら、実際において贈与を受けて、その収入によって自分の一身をまかなっておるというものもたくさんあるのですよ、実際問題として……。あなたの見方と逆な見方ですね。事実贈与された品物によって得た収入で生活すると、家庭は同じにおっても、部屋が違うとか、自分の女房や身の回りというものをその収入によってやっておるというのがたくさんあるのです。あなたの見方のものもあるし、私が主張するようなものもあるわけなんです。そういうものもありとすれば、はなはだそれは迷惑するわけですがね。そういうことを大蔵省じゃお考えにならぬのですか。はなはだその高いところに持っていかれるのは迷惑だ。実際そのグループで使っておりながら、子供の三才や、学校生徒とわけの違う人ですよ。ほかに収入があったり、贈与を受けたものの収入によっていろいろやっていく、こういうものがあるわけですから。
  78. 原純夫

    政府委員原純夫君) 自分でやっておるというのが、その世帯員が自分で親からもらった、たとえば株の配当金以外に、自分で相当な収入があるという場合は、この合算からはずれることは、冒頭のお尋ねにお答えした通りなんでございます。しからば、収入はもう親からもらった株の配当なり、あるいはもらった貸家の家賃なりしかない、それで食べておる、これはまあ独立独歩、自分で食べておるといいましても、その場合には、大体親がそもそも持っておって、そうしてそれを親の収入として子供に食べさせるというのがまあ通例の場合でありましょう。それを子供に分けたからといって、その配当なり家賃なりに対する課税が大幅に減ってくるということは、やはり担税力に対する照応という関係からしてよろしくないというふうな考えなんです。子供が他の所得がわずか九万円をこしますれば、これはまあそれで独立独歩というまでいえるかどうか実は疑問かもしれませんが、いずれ独立もしようということで、また配偶者を持ち、子供を持つという場合はそれはもうはずすというふうにしておりますので、ほんとうの独立独歩というものについては、はっきり合算からはずすということにいたしておるわけでございます。
  79. 土田國太郎

    土田國太郎君 親子や祖父、孫は、まあ一応あなたがおっしゃる通りにするとしても、妻なるがゆえに無条件で置くということは、少し妻に対してかわいそうじゃありませんか。私の言うのは、妻も資産所得以外に、九万円の収入があった場合の話ですよ。それは一般の家族並みにしてもいいんじゃないですか。どうですか。
  80. 原純夫

    政府委員原純夫君) その点は、先ほど来、二つ理由があると申し上げましたもう一つの方なんで、この合算の理由の、何と申しますか、実体的なもとになるものは、やはり生計を一にするというところにおいては、担税力をそれを単位としてはかるというような立場がある。それは現在の税法では必ずしも全面的にはとってないし、まあ改正の経過を考えれば、それと逆の方向に若干近いような状態がありますけれども、資産所得というようなものについては、やはりそういう考え方で単位を考えた方がいいんじゃないかという考え方があるわけです。それをまあ子供、孫というものまで及ぼすのはいかがかと、しかし夫婦の間では、これはまあ夫が妻に分けたという場合もありましょうし、妻が嫁入りのときに持ってきたといろ場合もありましょうし、あるいは妻が自分でいろいろ事業をやり、あるいは勤労してためたという場合もありましょうが、夫婦の場合にはそれらの理由を問わず、担税力の単位として一体として考えるという要素が非常に強く働いてしかるべきだという考えから、夫婦の間にあっては九万円をこえる他の所得がある場合にははずすというようなことを規定しないという考え方に考えた次第でございます。
  81. 土田國太郎

    土田國太郎君 今の、妻の資産の構成が、全くそう夫の世話にもならず、実家から持ってきたとか、あるいは自分が働いて月給をもらったとかいうようなことで九万円以上のものがあり、それで夫の世話にならない、資産を持っていながら、それを夫のところに持ってくるというのは、均衡上いかぬというような意味ですかね、あなたのおっしゃることは。税の負担の公正を期し得ないという論拠のようですが、実際において自分の力で生み、自分の力で九万円取っておるものを、わざわざそういうところに持ってくることは、あなたの理由程度……これを合算に入れるということは、少し私は無理じゃないかという感じを持つのですがね。そういうことは大蔵省の取らんかな主義、こういうことになるのじゃないか。何でもこういうことであればけっこうだ、理屈をつけては税金を取ろう、これじゃはなはだ国民が迷惑だ。一般に家族並みにお扱いになったらどうです。利息は違いますよ。
  82. 原純夫

    政府委員原純夫君) 繰り返すことになりますが、課税の単位として何を考えるかという問題が一つありまして、生計を一にする世帯員については、実際問題として所得が一緒のどんぶりに入る、そうしてそれで食べていくというような事実があるわけであります。あらゆる所得についてそういう考え方でいくというのは行き過ぎであるにしても、資産所得については、この所得の性格から考えましても、そういう考慮をより強くしてよろしい。今回の合算課税制度をお願いしておるわけですが、その場合にも実情に応じてその度合いを考える。まず合算する世帯員の範囲は、先ほど来申しますように、まあ九万円こえるというごくわずかなところですが、それがあればはずす。それから妻子があればはずすということにいたしております。一方で夫婦の場合には、ただいま申しました、一体として課税するという方が、その担税力によく合うという態度が一番強い関係であるというふうに考えて、その場合にはそういう考え方から無条件に合算するということにいたしたい。まあいろいろな場合があると思いますが、やはり多くは分割によって妻に持たしておるという場合が多いのじゃなかろうかと思いますが、根本は、ただいま申しましたような、一番合算が担税力に合うという性格の強い関係が夫婦の関係であるということから、こういうふうにお願いしておる趣旨でございます。
  83. 平林剛

    平林剛君 今の条項で私もちょっと疑問があるのですが、この法律のねらいについては、今御説明があったところでわかるのでありますが、憲法上の問題からいって、どういうふうな解釈を持っておるかということについてお伺いしたいと思います。男女同権という最近の考え方からいきますというと、妻であるがゆえにこのグループのように区分をされてしまうということになりますというと、憲法の上から見て少し疑義があるのじゃないか、こういう疑問を持つのであります。この点について政府の見解をお聞かせ願いたいと思います。
  84. 原純夫

    政府委員原純夫君) 憲法の規定に照らしてという面で考えましたのは、第二十四条がおもな問題だと思います。それに関連して第十三条というような点ではなかろうかと思います。第二十四条には、二項に、「配偶者の選択、財産権、相続、」云々、「及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」ということが書いてございます。十三条の力には、個人の尊重と公共の福祉ということで、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、」云々というような規定がございます。ここでは財産権があまり表に出ておりませんが、個人として尊重される、個人主義的な考え方が出ているということが言えるかと思います。そこで、第二十四条の二項の、両性の本質的平等、それから個人の尊厳の十三条の趣旨も、この辺に合せて申し上げてよろしいと思うのでありますが、そういう点について考えましたところを申し上げます。  第一に、両性の本質的平等に反するかどうかという問題でありますが、この合算の場合においては、両性をどっちを立てて、どっちを従にするということはいたしておりません。ただいまお話の例として、夫が主たる所得者である場合を考えて申し上げておりましたが、妻の方が資産所得以外の所得が多いという場合には、夫の資産所得が妻に合算されるということになるのでありまして、要するに資産所得以外の所得が一番多い人、子供の一人がそれが一番多ければ、その人に合算されるということで、性別でどうしようというものではありませんから、その辺の批判はなかろうかと思っております。  しからば、財産権に関して、個人の尊厳に立脚して法律は制定されなければならんという点でありますが、これもただいまお願いしておりますことが、これに矛盾するということはないと、私ども思います。と申しますのは、税は担税力に応じて公平に課税するというのが、一番理想的なことであります、ただいまお願いしておりますのは、要するに、担税力に応じて一番適正になるような税制にいたしたい。決してそれで個人の尊厳を害するということでなく、担税力に応ずる課税にする。合算々々といいますと、いかにも自分の所得が主たる所得者に持っていかれてしまって、そしてその人のものになるというような誤解を受けやすいのですが、それはそうではありませんので、夫が主たる所得者であれば、妻の資産所得、それから子供の資産所得について、税率計算は夫に合算したところでやる。しかしその税額は、それぞれ各世帯員に税額を按分して、子供の税額幾ら、妻の税額幾ら、こうやりまして、要するに負担する税額をはじく率をどこで計算するかということだけなんであります。これが個人の尊厳を害するということは私どもないと、税はやはり担税力にぴたりと合う形で課税するという一方の要求が、決して個人の尊厳を害しているということは言えないのではなかろうかというふうに私ども思います。  なお、その他に問題がありますれば研究いたしたいと思いますが、概略私どもの考えを申し上げました。
  85. 土田國太郎

    土田國太郎君 今、原さんの説明は、これは原さんの見た立場からおっしゃっておることで、実際において妻として、この税法成立の上は、被害を受けるものも多々これはできる実情であります。あなたのおっしゃるように、みんな女房の所得も一緒にして二人で使うというふうなことは、全部が全部あり得ないということなんですから、そういうところに見方の違いがあるので、あなた方は政府の有利のように解釈に相なるのだから、これはまあやむを得ない。私自身としては、このやり方は公平を欠き、かつ、今の憲法問題も、公平論も、私は了承しがたい点がありますが、これは水かけ論になりまするから、この程度でこの点は一応打ち切っておきます。
  86. 平林剛

    平林剛君 今のことに関連して。憲法上の解釈についてはもう少し私ども研究して、別の機会に御意見を伺いたいと思っております。  一番この法律で問題になりそうなのは「生計を一にする」という表現だと思うのです、法律のねらいについてはよくわかりましたけれども、「生計を一にする」という判定をどういうふうにしてやるか。これは非常にむずかしいのじゃないかと思うのですね。たとえば夫と妻がいるそうしてそれぞれ資産所得がある。ところがその対象者の説明によっては、いや、私は生計を一にしていないのだ、夫と妻のいわゆる夫婦関係にはあるけれども、それぞれは自立してやっているんですよ。ただ共同の住いを持っているにすぎません。こういうふうにやられた場合には、一体どういうことになるか。こういう意味で私が一番この法律の中でどういうふうに一体判定するのかなと思っておりますのは、「生計を一にする」という言葉なんですが、こういう点についてはどういうふうに解釈しておりますか、またどういうふうにして判定しようとしておるのか。
  87. 原純夫

    政府委員原純夫君) 同様の言葉が第八条、これは扶養親族等の定義を与えているところでありますが、そこにございます。私どもその「生計を一にする」ということについてはこういうふうに解釈しております。その意味は、有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいうのであるというのが大原則であります。従いまして、例示として、公務員、会社員等が、勤務の都合上妻子等と別居し、または就学、療養中の子弟等と起居をともにしていないような場合でも、常に生活費、学資金、または療養費等を送金して扶養しているというような場合は、生計を一にするものである。逆に同一家屋に起居する親族であっても、互いに相独立して、日常生活の資料を共通にしていないという場合には、生計を一にするものでないという解釈をして、それで実際の場合を判定しております。もちろん、このなまの事態を、どちらに属するかということの判定は、非常にむずかしい問題でありますから、十分慎重にやらなければいけませんし、実際には同居しているという場合は、一応まあ生計の資料を一にしておりはせんかというような感じで臨みますが、よく伺って、これはまあ独立しているという場合にはそれからはずしますとか、子供さんでも大きくなって勤めている、いわんや奥さんをもらって、そうして同居はしているけれども、夫婦で何しているというような場合は、生計を一にしていないというような場合が多かろうと思いますが、ただいま申しました原則でこの場合判定いたすということを申し上げてよろしいと思います。
  88. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 平林委員から憲法上の疑義がないかというお話があったわけでありますが、主税局長の見解としてはこれは大丈夫だ、こういう御答弁のように承わっております。相続税法におきまして、かりに家屋相続の制度、相続に対する課税ですね。いわゆる遺産税的な課税、これをやめまして、個別的な相続税に改めた。こういうふうなただいまのような解釈でいけば、将来遺産税的な性格の相続税がより公平だ、こういう見解に立てば、やはり遺産税的なものを復活するというお考えですか。
  89. 原純夫

    政府委員原純夫君) 相続税法におきまして、ただいま取得者課税という建前に立っておるのを遺産課税方式に改めることが、こういう考え方と照応するのじゃないかというお話であります。これは非常に大きな問題で、私どもも目下いろいろと研究中でございます。研究を十分積みました上申し上げるのが筋合いかと思いますが、まあ率直に申しまして、どうもやはり遺産課税にした方がよろしいのじゃないかという意見の方が多いようでございます。なお、これはいわば相続税法の本質的な型を変えます問題でありますから、なお各界の御意見も承わって十分慎重に研究いたしたいと思います。
  90. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) ただいま、本委員会の要求によりまして、大蔵大臣が出席されたのでありますが、予算委員会審議の都合上、大体三十分間ということに相なっておりますので、この点お含みの上で御質疑をお願いしたいと思います。よろしゅうございますか。
  91. 平林剛

    平林剛君 大蔵大臣は、大へん予算案の審議その他で御多忙のことと思いますけれども、もう少し大蔵委員会の出席率をよくしてもらわないというと、参議院の大蔵委員会審議というものは進展しないわけであります。私ども、今度の国会が開催されましてから、何回か大蔵委員会に出席をいたしましたけれども、もう少し都合をつけてこの委員会に御出席になっていただきたい。せっかくおいでになったのに、最初にこんな注文を出しますのは失礼でありますけれども、大蔵大臣からそのことにつきまして少しお考えを聞きたいと思うのであります。
  92. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 御承知の通り、国会が始まりまして、衆議院の方の予算委員会、それからまた引き続きまして参議院の予算委員会がございまして、自分としては不本意ながら、こちらの方へ参りますことはもちろん、今せっかく審議しておりまする衆議院の大蔵委員会の方も一時間程度、二回しかまだ出ていない状況でございます。御不満の点は重々わかっておりますけれども、実は寸時のひまもないという状況でございまして、その点は御了承願いたいと思います。何分にもまだ、実は決算委員も一回しか出ないというので非常にしかられておる状態で、今日もまた、今、特に直接関係のないのが参議院の予算委員会で、二十分ないし三十分、それが済んだらすぐ来いというようなあれでございます。まことに不本意でございますが、政府委員をして答弁さしておる状況でございます。御了承願いたいと思います。
  93. 平林剛

    平林剛君 御承知のように、この委員会審議中の法律案は、所得税法の一部を改正する法律案など、いわゆる国の基本法としての税法審議をやっておるわけで、これは国家予算の歳入とも重大な関係があることは御承知の通りであります。そこで、私は今まで大蔵大臣が予算審議を中心に御努力をなさっておるということはよくわかるのでありますけれども、しかし、国家予算の歳入と重大な関係のある税法審議についてもう少し力を入れるべきではないか、こういう見解を持っておるわけであります。特に、もしも所得税法が大幅な修正を受けることになりますと、歳入の面に大きな変化があるわけであります。これは租税特別措置法やあるいは法人税法においても同じことが言えます。特に岸内閣は、いわゆる一千億円減税と、それから一千億円の積極財政、この二つが柱であるとまで言われておるわけでありまして、大蔵委員会審議をされようとする税制改正は、従来とはかなり違った意義があるのではないかと思うのであります。また、一般的に言えば、今回の税制改正は、高額所得者を中心にしたものである、一部の特権階層を擁護しておる税制だという批判が強くて、私もこれからの審議を通じて、こういう点について政府がもっと租税の公平課税の原則を守って、低額所得者に対しても、さらに配慮を加えるべきであるという点をお願いしたいと思うわけであります。他の同僚議員においても、そういう意味で真剣に税法の問題に取り組もうと考えておる。ところが、この税法審議は、予算案との関係において、どうも議院における審議状況についても私は矛盾があるじゃないだろうか、政府の態度にもそれがうかがわれるように思うのであります。具体的に申し上げると、昭和三十二年度の国家予算はすでに三月九日に衆議院を通過してしまっている。ところが、所得税その他の税三法についてはまだ審議が継続されておる。すると私は、大蔵委員会というものは、一体所得税法その他に対して十分な質疑を行い、必要な修正を加えることが可能であるのかどうか、こういう疑問を持つのであります。この年度におきましては相当自然増収がある、こういう際にもっと大幅な減税をしてもらいたいという声がありましても、そういう希望は、この委員会審議を通じて果し得るものであるかどうか、政府としては、自分の出した法律案が現在としては最良なものであるから、これを一つ通過さしてもらいたいと希望されるとは思いますけれども、それではこの大蔵委員会に出席しておるところの各関係議員は、どれだけ審議権の幅を持つのかということに相なってくるわけであります。私は、この税三法の、審議と予算案の成立との関係において、議院の運営そのものにも矛盾があると思いますけれども、政府にもそういう態度がうかがわれますので、この機会に、税三法の審議と国家予算の審議との関連について、大蔵大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。
  94. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 予算案と租税関係法案とは一体をなすものでございます。政府といたしましては、両者とも政府案原通り審議願うことを熱望いたしておるのであります。しこうして大蔵大臣委員会における出席その他につきましては、何も自分が自発的に予算委員会の方へ行きたい、大蔵委員会の方へ行きたいというようなことでなしに、国会自体で、委員長間でおきめ下さるような状況に相なっておるのであります。もちろん、従来の例とは違いまして、今年の租税関係法の改正はまれに見る大改正でございますので、自分としても十分注意はいたします。きょうも大蔵委員長お話がございましたので、予算委員長の御了解を得て来ておるような状況でございます。何もそこに厚薄のあろうわけはないのでございます。
  95. 平林剛

    平林剛君 いや、もう私は大蔵大臣の分配、いや、分配というよりも、こちらの方に出てもらいたいというこういう要望については、先ほど申し上げた通りであります。これからもできるだけ出席をお願いしたいと、こう申し上げたいのであります。  しかし、今の質問は、その点をちょっと少し変えまして、従来の慣行で行なってきておるのでありますけれども、この機会に大蔵大臣の見解を聞きたいと思うのであります。つまり、国家予算はまずその歳入がきまらなければ、歳出についても計画の立てようがないじゃないか。だからそういう意味では、まず政府は税三法の方に主力を注いで、大体今年の税収はこういうことになる、あるいは減税の幅はこうだ、こういうことがきまらないというと、予算案を上げてしまったり、あるいはそれがまとまってしまうということには、国会審議上どうも疑問があるのではないだろうか。こういうことについて大蔵大臣の御見解をお伺いしておるわけでありますから、その点をもう一度お答えを願いたいと思うのであります。
  96. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほど申し上げましたように予算案とこの税制案とは一体をなしておるものでございます。両方とも原案通り審議御可決を願いたい、別々の筋合いのものではございません。
  97. 平林剛

    平林剛君 まあ表裏一体であることは、私もよく承知しておるわけでありますが、しかし今大臣にばかりこれを追及するというのは筋違いかもしれません。国会全般の運営がそうなっておりますから、そういう意味では院の運営そのものにももちろん問題があると思います。ただ私はその国家予算が通過してしまい、まとまってしまって、もう歳入歳出面については大筋においてきまってしまう。そのあと所得税法あるいは税三法の審議をしても意味がないのじゃないか、こういうことをお尋ねをいたしておるわけであります。そういう意味大蔵大臣の御見解を聞いておるわけであります。どうかその私の質問しておる要所を聞違えず、今後それならば、まず税三法が上った後において予算を通過させるとかいうような意味に、筋を通していくというやり方もあるわけであります。そういうことについて一つ大蔵大臣の御見解をもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  98. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 一体をなしておるものでございまするから、どちらも同時に御審議、御決定を願いたいと思うのであります。予算案の方が衆議院を通過いたしましたが、税制改正案の方はまだ審議中でございます。二、三日のうちに済むのではないかと思います。しかし、それだからといって、時期が前後しましたから、一体の原則を破るとも私は考えておりません。国会全体の問題でございまするから、皆様方の方で政府の意のあるところを汲んで御協力をお願いいたしたいと思います。
  99. 平林剛

    平林剛君 まあこの問題は大蔵大臣と何回繰り返しても同じことでありますから、これ以上申し上げません。ただ私は、今までの税法審議は、百億とか、百五十億とか割合と小さい幅の減税法案が多かったので、こういう疑問も割合と解消ができておったのではないかと思うのでありまするが、今回のように大幅な減税ということになりますというと、大蔵委員会審議権というものについて非常な矛盾を感ずるのであります。将来の国会の運営、特に最近は国会運営の正常化ということが叫ばれておるわけでありますから、このことについては、十分政府におきましても検討していただいて、審議やり方について矛盾のないような配慮をお互いにするように、今後の検討課題にしてもらいたい、こういうことを要望いたしまして、税法に関する質問を行いたいと思うのであります。  先般、本会議におきまして、私が社会党を代表して政府にお尋ねいたしました項目につきまして、時間が短かかった関係で、まだ質問のしっ放し、政府の方も答弁のしっ放しになっておりますから、私はまずこの本会議において質問をしたところで十分意の尽せなかった点について、政府の見解をお伺いいたしたいと思うのであります。  第一の問題は、租税特別措置法に関することであります。租税特別措置法に関する国民感情は、直接税の負担増とともに近年痛烈な批判となりまして、この撤廃を求める声が高まってきております。税制調査会でもこの問題は議論しましたが、私は、その構成を分析してみますというと、それぞれ業界を代表したものが多いので、どうも特別措置の整備に徹底を欠いたうらみがあると、こう思っておるのであります。ところが政府の提案になるというと、なおいろいろな理由を付して、答申案の内容を破って、結局初年度二百億、平年度三百五十五億円と、特別措置の幾つかを温存してしまっておる。まことに国民感情からいいましても、また現実問題から考えても、けしからぬ話だと私は思うのであります。私がこれを本会議で指摘いたしましたところが、岸総理大臣——当時は臨時代理でありましたが、臨時税制調査会答申参考にしたけれども、各種の事情を十分考えてこれを適当に調整し、今回の税制改正をしているというお答えがありました。私はきょうはこの政府の態度につきまして、大蔵大臣にもっと納得のできる答弁を願いたいと、こう考えておるわけであります。しかも、この租税特別措置法の法律案の体裁を見ますというと、従来の法律の体裁を整備して、結局その租税の特別措置法という感じが、何となくこの法律案そのものを整備してしまったものですから、恒久的な存在を認めるような法律の印象を感じておるのであります。これらの特別措置に対する政府提案の心がまえというものを、大蔵大臣からお伺いをいたしたいと思うのであります。
  100. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 租税特別措置法は、一方では租税の公平の原則を維持しつつ、他方では国の産業政策の観点からある程度の減免措置をいたしておるのであります。これは各国においてもやっておりますことでございまして、われわれも、日本経済の急速なる発展を期するために、従来からやっておるのであります。しかし、この負担の公平を叫ばれておりまする今日、しかもまた現在振り返って見ますると、ある程度これを縮小する必要があるんではないかという観点から、臨時租税制度調査会に諮問をいたしたのでございます。しこうしてその答申案を私は再検討いたしまして、政府の見るところによりまして、是正を加えまして、御審議願っておるような状況でございます。
  101. 平林剛

    平林剛君 どうも時間の都合があるかもしれませんけれども、大臣の答弁は簡単過ぎて、あなたのお答えで国民が納得するかどうか非常に疑問を感じておるわけであります。租税特別措置法が租税の原則である負担の公平を破って、政策的な配慮がなされ過ぎて、非常に強い批判があるということは、もうきょうは繰り返しません。私はこういう措置は、いつかは全面的に整理してしまわなければならぬ、こういうことを痛感をしておるわけであります。しかしそれぞれ特別措置の条項を検討して参りますと、その整理には関係者の利害というものがどうしても伴うわけでありますから、撤廃し、あるいは相当大幅に修正するというためには、政府、それから政治家においても相当の大英断が必要である、こういうことは感ずるのであります。そういう意味からいくと、今回のように千九百二十何億も自然増収が見込まれて、国民の関心が非常に高まっておるときに英断をふるって整理をする、こういうことはまことに時期を得ておる、こういう時期でなければ批判の強い特別措置を整理するなんということはなかなか困難だと思うのであります。こういう時期をのがせば、結局いろいろ期限を付して提案してきてますけれども、そういうものは期限的な租税特別措置ということではなくて、恒久的なものにされてしまうおそれがある。今回特に税制調査会において答申をしたにもかかわらず、それをある程度越えて、政府の政策のもとに、期限を付した租税特別措置を温存しておるわけであります。私は大蔵大臣に、これらの期限を付して、答申案を破って提出をされた税の特別措置、こういうものについては、もう期限が来たら再延期はしないんだと、そういうくらいの不退転の気持がないというと、先ほど私が指摘したように機会を失って、ずるずるいってしまうということになる。大蔵大臣一つ、特別措置の期限を付してあるものについては再延期はしないというような決心があってこの法律案を提出されておるかどうか、この点を一つお伺いしたいと思うのであります。
  102. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 租税特別措置法は、御承知の通り産業政策からきておるのでございます。期限の付してあるものにつきましても、また期限の付してないものにつきましても、常に経済の変遷を見ながら、またわが国の産業の実態を考慮しながら、徐々にこれを縮小するとか、あるいはまた将来のために、新規に出てくる場合におきましては、これはやむを得ぬ場合もございまするが、建前といたしましては、その国の経済事情の見通しによりまして、こういうものはなきにこしたことはない、しかしこれは、租税のいろいろの原則がございまするけれども、最も肝心な公平の原則を、経済政策の点からある程度曲げておるのでございます。本筋からいえばこれはないにこしたことはない。しかし経済界の将来、また現在の複雑なる事情から考えまして……。これは最小限度にとどむべきことはもちろんでございます。私はそういう方針で今後この租税措置法を考えていきたいと思っております。
  103. 平林剛

    平林剛君 どうも租税特別措置法の提案をしておる考え方についてはわかるんでありますけれども、期限を付してるものについてはもうこれ以上は延ばさないんだという気持についてお尋ねをしている答えがございません。私はなぜこんなことを言うかというと、租税特別措置法の中で最も批判の強いものは利子所得の免税であります。あるいは配当所得に対する特例というものがあります。臨時税制調査会は、利子所得非課税の措置は、経過的に緩和措置は講じたけれども、昭和三十二年の適用期限をもって廃止をするという結論に達しておるのであります。配当所得控除についても五%の配当控除割当の制度はこれを廃止するとある。政府はこの答申に反して租税上の特別措置を継続した理由については、今概括的にお答えがありましたように、資本の蓄積あるいは貯蓄の奨励、こういうことにあると思いますけれども、これはどうも私は納得できない。なぜかというと、貯蓄の奨励とか資本の蓄積ということは、それが国民全般の福祉に連なる限りいつの時代においても必要だ。貯蓄の奨励とかあるいは資本の蓄積というのは、これはいつの時代でも必要なことです。大蔵大臣は本会議においても、昭和三十年には幾ら幾らの資本蓄積があった、昭和三十二年度は一兆一千五百億円あるいは一兆二千億円の貯蓄目標をするのだ、こういう答弁がありましたけれども、私はそのために当然国家の税収入になる利子所得の百十億円、配当所得に対する税収六十五億円を犠牲にすることは、そろばんと国民感情に合わない、こういうふうに指摘をしたのでありますけれども、いつの時代においても必要な貯蓄の奨励、資本の蓄積、こういうことになってきますというと、いつまでたってもこの特別措置を廃止することにならない。あなたの答弁によると、これは恒久的な税法ということになってしまうじゃありませんか。私はそういう意味で、経済政策上のいろいろな説明はありますけれども、これでは租税特別措置ではなくなる、こういうことを申し上げておるわけであります。その点についてもう一度お答えを願いたいと思います。
  104. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 期限の付してあるもの、あるいは付してないものにつきましても、これは同様に根本的な考え方は、先ほど申し上げた通りであります。しこうして今具体的に御指摘になりました長期預貯金に対しましての過去二年間の減税措置を、今なお二年間続けていこうという問題についてお答え申し上げまするが、御承知の通り、昨年の春ごろにおきましては非常に日本の経済が金融緩慢でございましたが、昨年の暮ごろから非常に逼迫をいたしておるのであります。こういう場合におきましては、私は税制調査会委員の方々にも相談いたしましたが、よほど事情が違ってきている。では私は今、日本の消費傾向というものは非常に安定しております。消費傾向は非常によくなりました。また限界消費性向も非常にいい。しこうして今回非常に大きい減税をいたしましたときに、私はこの減税分を長期預貯金にしてもらいたい、こういう気持から、特に今までの措置を長期預貯金について延長したのでございます。で、御承知の通り、戦争中あるいは戦後におきましては、利子課税につきましては、私は、これは不労所得だというので非常に高い率を、自分は主税局長あるいは国税局長としてきめてきたのであります。時には源泉を選択した場合は五五%以上——半分以上税でとるということもございました。しかし今の状況から申しますると、あなたは貯蓄の増強はいつでも必要だ、もちろんそうでございます。しかし今より必要なときはないというぐらいに私は考えまして、特に六ヵ月定期の分は免税はいたしませんが、一年以上のものにつきましては、この際もうしばらくやってみたいという気持でいたしておるのでございます。
  105. 平林剛

    平林剛君 私は税制調査会のメンバーを見たり、答申案のこまかい内容全部検討してみまして、これらの人も、国家全般のことを考えながらいろいろ議論をされておる。貯蓄の奨励であるとか資本の蓄積であるとかいうことについても、これらのメンバーの人が十分検討して、その上で答申案を出されておる。そういう十分な検討をして出された答申案でも、あなたの言われたようなことを十分考慮されても、なおかつ銀行利子免税や株の配当控除率の問題についてはこれは廃止をし、修正をすべきである、こういうふうな見解を述べられておるわけであります。大蔵大臣は、これは今、政府の一番重鎮として、あなたのお考えを通すということも、その立場からいってまあ当然かもしれません。どうもこれらの人たちの意見とあなたの政府の責任者としての意見が違うというのは、どちらかに見解の違いが現われてきているということになる。私に言わせれば、どうも大蔵大臣はこの点について少し一つのスローガンに追われて、そして国民の税負担の公平を破っておるというような声をあまり無視しているんじゃないか、そういう感じがするんであります。特に世間というものはうるさいもので、こういう特別措置を許しておるのは、結局これで一番だれが得するか、政府は結局、そういう一部の人たちの声に押されて認めてしまったんだ、先回の参議院の選挙のときもそうでしたけれども、政府に対し政治献金がたくさんあった。これはまあ中央選挙管理委員会に届けられたものだけを私は調べてみたんでありますが、総計で二億九千五百九十三万円である、その中に経済再建懇談会一億二千三百万、あるいは丸善石油千万、日本船主協会、どこを見てもみんな租税特別措置を受けて、恩典を受けている人たちの献金なんです。そうなるというと世間というものは口がうるさいから、経済政策でというような名目をとって特例を許しているけれども、実際にはこういうところの政治に問題があるのだ、そしてそこから一つの疑惑というものが生まれてくると、私は思うのであります。私はそこで岸内閣の名誉にかけたって悪名の高い利子免税と配当課税の特例は、本来ならば今回廃止すべきである、期限がきたならば、もうそれ以上再延長しないという気持で所信を通される、こういうことでないというと、世間のうわさやあるいは政府に対する疑惑というものが強まってくる結果にならざるを得ない。特にこの利子の免税については、大蔵大臣は一部の経済団体のことを考えてるんじゃなくて、国民全般の福祉のことを考えてるんだと、こう説明をしたいと思うのでありますけれども、大体現在までの貯蓄の奨励という目標を中心にしてこれを調べてみますというと、これは私古い資料でありますけれども、銀行預金の現在高が昭和三十一年の三月で、個人のものですが、一兆四千三百一億八百万円、この預金者の九九%までは大体一口五十万円以下、一口平均すると約三万円、少し違っているかもしれませんけれども、こういう資料があるわけであります。だから利子免税というものがかりに税の特別措置としてありましても、一口平均三万円程度の利子免税なんていうものは、あったってなくったってそれほど恩典というものはありません。だから政府の方で貯蓄奨励のために銀行の利子は免税をして上げると、こう言ったって、この人たちにとっては、あろうがなかろうが大して変りはないところです。ところが利子免税で得をしているのはだれかというと、悪く言えば一握りの資本家です。この三十一年三月の調査で一千万円以上の預金者は約六百口、金額にして百十二億円、この辺の人たちが政府の経済政策で一番潤い、また利害の強い層であるということが私はわかると思うのです。そういう意味では、大蔵大臣は経済政策全般のことでお考えになっておると御説明になりますけれども、結局一番得をさせておるのはこういう人たちであるということが言えるわけであります。私は、だから政府は、この悪名の高い租税特別措置法の、特に利子免税等を提案してくるというときには、少くとも経済界と十分話をつけて、世論が非常にやかましいから、もうこれ以上期限がきたならば再延長はしないよというくらいの話し合いをつけて提案をされるのが、順序だと思うのであります。大蔵大臣一つその点の御見解をお聞きしたいと思います。
  106. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先ほど申し上げました通りに、全体としてはない方がいいのでございますけれども、やはりその時の経済事情によりまして、こういう手を打つ方が、今の現在の経済としては望ましいと考えておるのであります。二年間たってやめるか、あるいはまたあと一年延ばすか、これはただその時の経済事情によることと思います。ちょっと誤解があるのではないかと思いまするが、実は配当課税につきましては、臨時税制調査会答申よりも私はきつくいたしておるのでございます。臨時税制調査会は源泉と付加課税の場合に合せて三十五を控除する、こういうことでございまして、私はそれを、それではいかぬ、三十五の控除はいかぬ、三十にしろ、こういうふうに言っておるのでございますから、誤解のないように、私は株式の控除につきましては税制調査会よりもきつくいたしております。お話の点になるとゆるくしたようにお考えになっておるのではないかと思いますが、これはきつくいたしております。
  107. 平林剛

    平林剛君 その配当控除の率の問題については、具体例を申し上げますと、率は下げたけれども、実際には前のときよりも配当所得がたくさんあっても税金はとられないという実例をあとで示します。今大臣にお話をしても、こまかいことでありますから、しかしあなたがそういうふうに率の点で言われておりますけれども、実際上配当所得のある者にとっての具体的な例を示しますと、そういうふうになってない。これはまた政府の当局者が解説をした本の中にもちゃんと書いてある、そういうことからいきまして、率だけではちょっとごまかしがきかないことになっておりますから、別の機会に申し上げます。大蔵大臣お忙しいようでありますから、私はぜひこの機会に大蔵大臣に聞いておきたいことについて質問を続けたいと思います。  そこで少し方面を変えます。所得税法改正の中でぜひ大蔵大臣に聞いておきたい点があります。それはいわゆる名義貸しのことで、第六十一条の支払調書に関連をしてお尋ねをします。  この法律改正は、御説明によりますと、脱税なき税の公平の建前から名義人として配当を受ける者に対する措置を定めたものだと聞いたのであります。これはまあ事務当局でもけっこうでありますが、四大証券の名義貸しの金額は一体幾らになっておるのか。その元本と配当所得の額を一つ御提示願いたいと思います。御提示があってから質問を続けたいと思います。
  108. 原純夫

    政府委員原純夫君) 数字のことでございますから、私からお答え申し上げます。と申しまして、数字はわかりませんということをお答え申す以外にないのであります。ただいままで調書をとることができないということもあり、これにつきましてはまあ相当額あるとは思いますけれども、幾らかということはわかっておりません。一つ御了承願います。
  109. 平林剛

    平林剛君 理財局と主税局にはこの資料の提出があるはずです。私はそれを提示してもらいたい。こう申し上げたんです。大体それで、わからないと、こう言うけれども、わからなければこの支払調書の第六十一条の意義というものは、ただ納税する人の良心にまかせるということになってしまうではありませんか。これは一つ大蔵大臣でも原さんでもけっこうですから、お答え願いたいと思います。
  110. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) その問題はあとから主税局長に聞くとおっしゃるかもしれませんが、私の気持についてお話し申し上げたいと思います。  まず初めの配当所得についての控除でございまするが、これは私が言い出して、臨時税制調査会の案はこれは甘過ぎるぞ、これを下げろ、こういうので実は下げたのであります。その気持のゆえんのものは、今、預金の利子で利子をかせぐというときに、百万円を一年間預金いたしますと六万円の利子で、そうして源泉で一割取られると五万四千円になります。しこうして百万円で株を買って、たとえば東京電力なら東京電力を買いますると、相当これは今の控除の関係で利回りがいいわけです。これは預金利子をいじめ過ぎるのではないか。株の方が少しよ過ぎるのではないか。しかしそこに今の擬制説の問題があるのであります。で、私は税制調査会の決議をアジャストする意味におきまして、長期預貯金の分はこれはいましばらく免税を続けよう、そうして配当所得の控除は徐々にこれを引き下げていきたい、こういう気持でやっておるのであります。しかし何分にも税率の引き下げが非常に多くなっておりまする関係上、従来は八十万円超過だったら五%かかる、今度は二百万円を超える場合に五%かかるというふうになりますので、これの調整をしなければいかぬというので、五%下げたわけであります。この問題は法人擬制説とのあれもありますので、徐々に是正していきたい。これは各国の例を調べまして、私はただいまのところはこういう処置にいたしておるのであります。しこうして、また私は税制調査会の意見と違っておるのは夫婦の合算でございます。これはほとんど各国もやっております。わが国におきましても昭和二十三年までは夫婦は合算している、家族も合算している、子供も合算しておったのでありますが、今回は資産所得についてもこれを総合していこう、そうして夫婦は一体と見て累進税率の適用を受けるべきじゃないか、本然の負担の公平からいってやるべきじゃないか、こういうことで、これまた税制調査会考え方よりも一つ進んでおると思うのであります。その場合において名義課税と申しまするか、株式の所有者が証券会社等に預けて、そうして自分が総合を受けないという場合が今行われておりますので、これを是正しなければいかぬ、そうしてほんとうの所有者が株式配当に対しての所定の課税負担すべきだ、こういう私は考えのもとに、名義貸しの問題につきましても今後調査して、本然の姿に返るべきじゃないかと、こういう考えのもとに今回やったのでございます。従いまして、この法律が通過いたしましたあとは、調査いたしまして、私の念願いたしているように公平な課税に一歩々々近づいていきたいと、こういう気持で進んでおるのであります。
  111. 平林剛

    平林剛君 私は先ほど要求いたしました四大証券の名義貸しの金額、元本、配当所得の額は、わかりませんでは通らない。それについては別に提出されるよう、要求しておきますから……私の得ている情報によりますと、これは約三百億円くらいある。そこでこの法律の第六十一条の文面で大へんわからないのは、「左に掲げる者は、命令の定めるところにより、」と、こう書いてある。それから第六十一条の二項におきましても中ごろに、「命令の定めるところにより、」云々と書いてありまして、命令が一体何をさすかわからない。そこでこの「命令の定めるところにより、」という内容について、いろいろ業界からも、あるいは政府部内においても議論があるということを聞いておるわけです。業界の方では、この命令の定あるところによるという基準を、一口百万円までは何とかしてくれ、政府の方では何といっているか知りません。しかし一体、四大証券と大蔵大臣との間にどういうふうな話が今進められているか、この法律審議に当りまして、私はその点をあるいはその経緯を明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  112. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 名義株と申しますか、今度新たに調査しようといたしますものにつきまして、私は業界からまだ陳情を受けておりません。
  113. 平林剛

    平林剛君 経緯については今お話のことを信じましょう。しかし一体、支払調書を出すところの基準額を幾らにするか、これはこの法律によっては少しも明らかでありません。一体、支払調書を出す限度をどの辺に定めようとしているのか、これを一つお聞かせを願いたいと思います。
  114. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) まだどの程度にするか腹はきまっておりません。事務当局等で十分練りまして、私のところへくると思っております。
  115. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 予算委員会から大臣に出席してくれという要求が参りました。大臣に対する残余の質疑はまた次の機会に継続いたしていただくことにいたしまして、大臣はこれにてお約束ですからお帰りいただきます。  それでは、引き続き政府委員に対する質疑を願いたいと存じます。   速記をとめて。    〔速記中止〕
  116. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 速記をつけて。
  117. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 先ほどの衆議院の委員会におきまして、例のお知らせ制度をやめるというふうな御発言があったように聞いておるのです。このお知らせ制度は、これは長官も御承知の通り、私自身はかねがね賛成をしていない制度であったわけであります。今回これをやめられるというような御発言があった。どういうふうなお考え方で、従来の方針に若干の変更を加えられたか、お伺いしたいと思います。
  118. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 現在の所得税につきましては、御承知のように申告納税の建前になっております。従いまして、納税者が自分の所得を計算し、申告し、納税していただく、これが本来の当然の建前でございます。ただ現状におきまして、納税者の実情というのは、少くとも今までにおきましては、まだ帳簿が十分完備していない。青色申告の方はそうではないのですが、白色の方におきまして必ずしも帳簿が完備していない。極端に言いますれば、御自分で自分の所得が必ずしも計算できないという方さえ見受けられる——全部じゃもちろんございません、といったようなこともございまして、従来一応税務署で調査した調査額をお知らせしていたということでありますが、しかしこの点につきましては、どうも税務署の調査額を申告前に納税者に知らせるというのは、納税者を心理的に圧迫するのじゃないかといったような御批判もございまして、だいぶ青色申告もふえて参りましたし、われわれの方でも白色に対するお知らせを順次減らしてゆくというつもりでありまして、今年も去年に比べますと、ある程度減らしてはきておりましたが、いろいろな御批判もあり、申告納税本来の制度の建前からすれば、あまりおもしろくない制度であるというので、この機会に明年以降はこれをやめよう、三十二年分で、来年の三月十五日の申告期からはやめよう、こういう方針をきめ、過般の衆議院の大蔵委員会におきましてその趣旨を発言したわけであります。
  119. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 このお知らせ制度は、何と申しましても更正決定的なにおいのする方法であります。せっかく今回やめられることを衆議院で言明されましたので、まことにこれは私はいい方向に進んでいるのじゃないかと思います。ぜひ御実行願いたいと思います。
  120. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) それではちょっとこの機会に申し上げておきますが、建設委員会との連合審査の日時について申し上げます。建設委員長と打ち合せの結果、来たる十八日月曜日午後一時から連合審査をいたすことに決定いたしましたから、御了承を願います。  他に御質疑がなければ、本日はこれにて散会をいたします。    午後四時十六分散会