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1957-03-12 第26回国会 参議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十二日(火曜日)    午後一時四十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     廣瀬 久忠君    理事            江田 三郎君            平林  剛君            天坊 裕彦君    委員            左藤 義詮君            塩見 俊二君            高橋進太郎君            土田國太郎君            苫米地英俊君            宮澤 喜一君            椿  繁夫君            野溝  勝君            杉山 昌作君   政府委員    大蔵省主計局法    規課長     中尾 博之君    建設省河川局長 山本 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    建設省河川局次    長       美馬 郁夫君    建設省河川局開    発課長     小林  泰君   —————————————連合審査会開会の件 ○特定多目的ダム建設工事特別会計法  案(内閣送付予備審査)   —————————————
  2. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) これより委員会を開きます。  本日、建設委員長より、特定多目的ダム建設工事特別会計法案、国の庁舎等使用調整等に関する特別措置法案及び国有財産特殊整理資金特別会計法案について、本委員会連合審査を行いたい旨の申し出がありました。建設委員長申し出通り連合審査会を開くことに御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお開会の日時につきましては建設委員長協議の上決定いたします。   —————————————
  4. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 次に、特定多目的ダム建設工事特別会計法案を議題とし、本案の実体法である特定多目的ダム法案について簡単に内容説明を聴取いたします。
  5. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) ただいまお示しいただきました特定多目的ダム法案概要につきまして、御説明申し上げます。  お手元に特定多目的ダム法案要綱というのがお届けしてあるはずでございますが、その要綱によりまして、概略を御説明申上げます。  第一番目といたしまして、この法律は、多目的ダム建設及び管理に関しまして、河川法の特例を定めますとともに、ダム使用権を創設いたしまして、多目的ダムの効用をすみやかに且つ十分に発揮させることを目的とする法律でございます。  第二番目といたしまして、この法律におきまして多目的ダムと申しますのは、建設大臣が直轄で建設するダムでございまして、それが合せて発電とか水道または工業用水道の用に供せられるものを多目的ダムと申すのでございます。またこの法律におきましてダム使用権というのを規定しようとしておりますが、これは多目的ダムによる一定量流水貯留を、一定の地域におきまして確保する権利ダム使用権ということにしたいと、こういうふうに考えております。  三番目といたしまして、多目的ダムによる流水貯留利用いたしまして、流水特定用途——特定用途というのは第二番目にございまする発電水道または工業用水道の用に供する——特定用途に供するものは、水利使用——水利使用というのは河川法によりまする水利使用許可でございますが、その許可によって生ずる権利を有するほか、ダム使用権というものを持っておるものでなければならないものというふうに規定したいと、こういうふうに考えております。  第四番目といたしましては、建設大臣は、多目的ダム建設しようとするときは、その多目的ダムに関しまして、貯水池利用計画並びに建設費、それからまたその建設費分担に関する事項等を定めることを内容といたしまする建設に関する基本計画を作成するものということを規定したいと思います。この場合におきましては、建設大臣関係行政機関の長に協議をいたしますとともに、関係都道府県知事、それからダム使用権設定を受ける予定者意見を十分聞きまして、その基本計画を作る旨を規定したいと存ずるのでございます。  第五番目といたしましては、ダム使用権設定予定者は、多目的ダム工事に要する費用の一部を負担しなければならないものとする規定を設けたいと思います。  第六番目といたしましては、ダム使用権は、建設大臣流水特定用途に供しようとする者の申請によって設定するものということにしたいと存じます。  第七番目は、建設大臣は、ダム使用権設定をするときには、設定目的、並びにダム使用権によりまして貯留確保される流水の最高及び最低の水位、並びに水の量を明らかにして行わなければならないということを規定したいと存じます。  第八番目といたしましては、ダム使用権は物権とみなしまして、ダム使用権登録簿に登録するものとする。  第九番目といたしましては、ダム使用権は、相続その他の一般承継、渡し、滞納処分及び強制執行並びに一般先取特権及び抵当権目的となるほか、権利目的となることができないものと規定したいと存じます。  第十番目といたしましては、河川付属物として認定された多目的ダムで、二以上の都府県の区域にわたる河川に存するもの、及び政令で定めるその他のものについては、建設大臣管理を行うものとしたいということでございます。一般のそれ以外のものは河川法の趣旨によりまして都道府県知事管理することになるわけでございます。  十一番目といたしましては、建設大臣は、あらかじめ関係行政機関の長に協議いたしますとともに、ダム使用権者意見を聞きまして、多目的ダム操作の規則を定めるということに規定したいと存じます。  第十二番目といたしましては、ダム使用権者は、多目的ダムの完成後の管理に要する費用の一部を負担しなければならないものとすること。これは国が管理する場合にいたしましても、県が管理いたします場合にいたしましても、その一部をダム使用権者負担しなければならないという規定を設けたいと存じます。  十三といたしましては、多目的ダムによって貯留される流水を、さきに申し上げました特定用途に供するため必要な水利使用許可は、建設大臣が行うものとしたい。この場合におきまして、建設大臣関係行政機関の長に協議いたしますとともに、関係都道府県知事意見を聞きまして、水利使用許可をいたしたい。これは一般水利権知事水利使用許可をいたすのでございますが、この法律規定いたしまする多目的ダムは、さきに申し上げましたダム使用権建設大臣設定するのでございますので、これに表裏一体でございまする水利使用建設大臣が行うことにしたいということでございます。  十四番目は、現に国と発電事業水道事業または工業用水道事業を営む者とが共同して設置し、または建設しているダムは、これらの事業を営む者の持ち分が国に帰属したときにおいて、多目的ダムとなるものとしまして、この法律を適用するものとすること。これは現在すでに国と電気事業者または水道等事業を営む者とが共同してダムを作っておるものがございますので、それを今まで共同事業者である電気事業者等が作った分を国が譲り受けまして、この法律を適用するダムにしたいということを規定するわけでございます。  十五番目といたしましては、さきに申し上げました十三の措置に伴いまして河川法の一部を改正いたしまして、建設大臣水利使用に関する処分をし、または都道府県知事処分につき認可をしようとするときは、関係行政機関の長に協議するものとすること。これは先ほど御説明に申し上げました多目的ダム水利使用建設大臣が行う場合に、関係行政機関の長に協議することにしたいと思っておるのでございまして、それと関連いたしまして、一般水利使用の問題につきましても、関係行政機関の長に協議するようにしたいということでございます。  十六番目といたしましては、ダム使用権設定された多目的ダムについては、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律改正し、国または都道府県市町村に対しまして交付金を交付するものとすること。これは従来の多目的ダムにおきましては、そのダム電気事業者等所有権がございましたので、それらのものが市町村に対しまして交付金を交付することになっておりましたが、今回の処置によりましてダムが国の所有になりますので、この改正が行われませんと交付金市町村に対して行かないということになりますので、従来と同じように交付金所属市町村に対して参りますように所要の改正考えておるのでございます。  以上まことに簡単でございますが、概要の御説明を終りたいと思います。
  6. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 質疑を行います。
  7. 江田三郎

    江田三郎君 この特定多目的ダム法案の方は、これは建設委員会の方で慎重審議をされると思いますが、われわれの方はこれに伴うところの特別会計の問題なんですが、しかし特別会計の問題を審議するにいたしましても、やはり基本法を抜きにしてはできないわけですから、そういう意味で若干質問したいのですが、まず第一は、この今の法案要綱説明を聞き、それからこの印刷されたものを見ても、農業用水という字は一つも出てこないわけです。これは出てこなくても当然そういうものを考えられるということになるのかもわかりませんが、従来こういうダム建設する場合、維持管理当りまして農業関係というものがややもすると軽く見られておったわけなんです。たとえば一つダムから出る水にいたしましても、その水温調整が行われなくて、農業地帯に対しては冷水の害がある、そういうことが問題になって農林省の方ではいろいろやかましく言っても、電源開発会社等はそんなことに対してあまり耳をかさなかった。建設省は近ごろどうか知りませんが。そういう問題もありましたし、あるいはまた今後水をどういうように利用するかということについて、日本農業そのものがこれから変ってこなければならぬのであって、今までのところは主として稲作用水という形だったわけですが、すでに愛知用水を見てもわかるように、今後稲作用水とは別個に畑地灌漑というものが相当問題にならなければならぬ。従って水の利用というものは農業に関しては新らしい利用部面が出てくるわけでありますが、そういう点をどのように考えているのか。あるいはまた、この費用分担の問題につきましても、農業関係とそれから水道工業用水発電等の経費のアロケーションの問題が今まであまりはっきり原則的なものを私たち聞いたことがないので、そういうことについてもいろいろ私どもとしましてもお尋ねをしなければならぬのでありますが、まずそういうことをお尋ねをする前に、農業というような言葉が出ていないのは何か意図があって出しておられないのですか。これは農業というものを最も尊重する意味で出していられないのか、どちらなんです。
  8. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 概略的にまず申し上げますと、農業河川につきまして非常に重要な面でございまして、これを尊重する点におきましては十分尊重しなければならぬことはもちろんでございまして、これは尊重することもちろんであるということでございます。それで、従来の経過につきましては、このダムを作りまして、その灌漑効果につきましては、従来河川法の四条に規定がございまして、河川工作物を作りまして、灌漑効果公利を増進する施設ということで、建設大臣がみずから河川工事として工事を施行し、大臣または河川管理者たる知事の責任におきまして渇水補給のための流量調節を行い、貯留灌漑効果確保することになっております。従って知事におきましても、農業用水等確保につきましては十分留意をいたしておるわけでございます。  それから、それではその法律におきましては灌漑というような文句がないということでございますが、建設大臣河川法の第八条で作りますダムの目途といたしましては、洪水調節はもちろんでございますが、灌漑も含めて、公利を増進し、公害を除去するという目的でやるわけでございまして、もちろん河川管理者でありまする知事も、その点につきまして十分の考慮をいたして処置をしていくわけでございます。今回の法律におきましては、先ほどお話もございましたように多目的ダム基本計画を作り、あるいはダムを作ってその貯水池操作をやるというような問題につきましては、関係行政機関の長とも十分協議いたしまして、灌漑等の問題につきましても、十分考慮を払いまして計画を作り、それからでき上った将来の操作等も行なっていきたい、こういうふうに考えております。
  9. 江田三郎

    江田三郎君 まあいろいろ問題があるんですがね。私まず第一にお聞きしたいのは、こういう多目的ダム建設する場合の建設費及びその後の管理費分担ですね、それについては一体どういう原則を持っておられますか。
  10. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) ダム建設費の各目的別分担につきましては、電源開発促進法の第六条第二項というのがございまして、それにこういうふうに共同目的別事業費を持ち寄りまして、一つダムを作る場合に、お互いの費用持ち分をきめる方法が、その今申し上げました法律に基いて総理府令が出ております。私どもがこの多目的ダムを行う場合におきましても、それに準じた方法費用分担をやっていきたいというふうに考えております。
  11. 江田三郎

    江田三郎君 今おっしゃったことはそれはその通りですが、私どもは、そういう原則から実際おやりになった結果を見ると、どうもその負担区分というものが公平妥当とは思えない。たとえば最近の問題になっているところの愛知用水の問題にしましても、農業関係ではまあ今までにない高い負担をこれからしていかなければならぬのですが、今後まあ情勢は非常に変ってきているわけでして、農業の方がどれだけの一体収益が上る事業かということになると、これはいろいろ問題がありますけれども、他面において工業用水の問題というものは、私は全国的に非常に枯渇してきていると思うんです。最近地方工場誘致等がありましても、まあ水の問題ということが一番大きな問題になる。しかも水については、工場設置者の方では相当多額の負担をしてもかまわない。今ではどこへ行ったって、そう水の自由になるところはない。北海道は別にいたしまして……。そういうようなことから、この工業用水というものは需要に対して供給が伴わぬという面が一つある。もう一つは、この工業の方の負担力というものは、ただいま申しました新しい工場を作るときに少々高くてもいいというように、この方は負担力は相当これからふえていくわけで、特に工場施設が進歩すればするほど、水に対する負担能力というものはふえていくんですが、農業の方はこれは一向にふえない。逆に、農業の今後の状態を見るというと、世界農業との関係で、むしろ農業の方は行き詰るような過程になってくるわけですが、そういう点をお考えになって、現在のアロケーションの仕方というものを、これを妥当だとお考えになっておられますか。あるいはあのアロケーションの今までやったようなやり方ではだめだ、これは改正をしなければならぬというふうにお考えになっているのか、どちらなんですか。
  12. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) ただいまのお話ごもっともなことだと思います。それで農業負担の問題につきましては、その用水確保する事業を行いましても、収益があとにならぬとなかなか上らない。それからまたその収益が返ってくるのも、相当時間が長くかかるというようなことでございますので、この法律によりまして、農民に持っていただく負担は、農業効果に応じて分配いたします事業費の約十分の一を、工事ができ上った後におきまして、年賦償還してもらうというふうな形になっておりまして、従来の土地改良で行いますような負担金の場合よりも少いように考えております。それで電気事業とか工業用水の問題につきましては、ダムを作るときに負担金建設中に出してもらう。農民負担は、でき上りまして効果が発揮するようになってから、年賦償還で取るというふうな形にしております。
  13. 江田三郎

    江田三郎君 通産省とも関係があることですが、建設省の方としては将来の工業用水というのはどのくらいに売ったらいいというようなお考えを持っておられますか。
  14. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) ちょっと課長から。
  15. 小林泰

    説明員小林泰君) ただいまの江田先生の御質問の点は、要するに費用配分の際に、妥当投資額の算定に当って、どういう基準をとったらいいかという点にあるかと存じますが、その問題につきましては、先ほど局長から御説明申し上げました六条二項の費用負担政令に伴いまして、各省申し合せ事項をやっておりまして、関係各省が寄りまして妥当支出を算定する場合の基準を申し合せておるわけであります。その基準につきまして、たとえば米価が上りますと農業効果も上るように考えられますし、また用水確保が非常に困難になって参りまして、工業用水等の販売の価格の妥当な限界というものをもっと高くする必要があるというような場合には、そういう点も考慮いたしまして、逐次改訂していくというふうな考え方で申し合せができておるわけであります。ただいま直ちに全国的に、一立方メートルの工業用水に対して幾らのプリベーリング・レートを設けるのが適当であるかという点につきましては、非常に地点ごとに違っておりまして、御承知の通り瀬戸内海付近のような状態と、あるいは東北地方状態とでは、おのずからそのレートが違うわけでございます。その土地々々によって判定していくべきものと存じます。従いましてそういう点について、建設省だけでもきめかねる点がございますが、よく通産省方面協議いたしまして、そのレートを適当に定めて参りたいと思っておるわけでございます。
  16. 江田三郎

    江田三郎君 多目的ダムができまして、普通の田用水というのはとにかく今までとってきているわけなのでして、季節的に渇水等の問題はありますけれども、案外渇水というものは被害はないのですね、被害がないというては語弊がありますけれども渇水々々といって非常に騒いだときに、かえって米の増収ができるというようなものであって、これは私どもは、日本水田農業というものは、実は水を使い過ぎているのだ、こういうことを日ごろ考えているのですが、ともかくダムができたからといって、既存水田地帯としてはそうプラスにはなってこないわけで、そのプラスというものは知れているわけです。特定の異常の災害の年等にはプラスというものが考えられても、平年においてはそうプラスというものは私どもとしてはあまり考えられないのであって、従ってこのダム建設されたからといって、農民の受ける利益というものはきわめて少い。一方において工業用水の方は全国的なプラスという問題が出てくるわけです。その状態、どうも今までの考え方というものは工業用水が一立方メーター何ぼでなければ工業採算がとれぬのだというような見地から、私ははじかれているのじゃないかと思うのです。そこでそういう見地からはじかれておると、採算のとれるとれぬじゃなしに、幾らが望ましいかというような見地になってしまうのでありまして、むしろ工業の発展ということばかりに、あるいは工業採算ということばかりに重点を置いた点にとらわれすぎているんじゃないかと思うのです。私どもはやはりこの今後の工業用水というものは、これはもう日本全体の水の状態を見て、当然コストが上ってこなければならぬはずなんでありますから、その点について今までのような考え方だと依然としてこの工業面採算ばかりが重要視されて、農業負担しなくてもいいものを負担されるという結果がどうしても出てくると思うのですがね。その点をもっと根本的に工業用水レートというものについて、再検討してもらわなければ、農民にとっては至って迷惑な多目的ダムになりはしないかと思うのですが、さらにそういう点は再検討される用意があるのですか。
  17. 小林泰

    説明員小林泰君) その点につきまして先ほどの御説明をちょっと補足させていただきますが、費用配分の際に考慮いたします要素は、先ほど申し上げました一トン当りレート、それから参ります妥当投資額というものと、その地方におきまして、たとえば工業用水のみの目的でそれだけの貯水池を、必要な用量をためる貯水池を作った場合に幾らかかるかという身がわり建設費というものを考慮しておるわけであります。従いましてただいまのレートのみで投資額つまりアロケーションがきまるわけではございません。その両者のいずれか安いものでもってアロケーションがきまって参るわけであります。従いまして、その工業上の採算の面からレートが出てくるのみではございませんで、その地方のそういう身がわり工事をやりました際に、一トン当りの単価が幾らになるかという点もあわせて考慮する問題かと存じます。そういう方針によりまして費用配分が行われております。また農業補給水の問題についてでございますが、これは先ほど局長が御説明申し上げました十分の一の負担農民にかかる場合につきましては、これは専用施設、たとえば用水路とか頭首工とかいう専用施設を設けましてやる場合の受益者負担でございまして、一般用水補給のみの計画はこの法律におきましては地元負担をかけない方針になっておるわけであります。
  18. 江田三郎

    江田三郎君 そうすると、一般用水補給についてはきめないで、専用水路を作ったときということになりますと、まあたとえば愛知用水の例でいうと——愛知用水はちょっと例が悪いが、まあ今後私ども農業に対する水というものは、今までかけていないところの傾斜地ですね、つまり畑地灌漑ということが非常に重要になってくると思うのですが、そういう畑地灌漑なんかのときには、もちろん専用水路を新しく作らなければなかなか用いることができないですな。そういうときに先ほどおっしゃった十分の一ということになるのですか。
  19. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) その通りでございます。
  20. 江田三郎

    江田三郎君 そこで、あなた方の方はどういうわけか知りませんが、私どもとしてはどうしても日本農業というものが今後傾斜地農業に入っていかなければならぬ。とれだけの農民の頭数がおって、これだけの面積で、過小農の零細経営をやっておったのでは仕方がないので、そこで特に置き忘れられておる畑地灌漑というものが非常に重要になってくるのですが、こういう多目的ダム経営計画される場合には、ただ既存水田地帯ということでなしに、新規な畑地海潮というものを相当織り込まれるお考えがございますか。
  21. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) その点につきましては、従来もそうでございましたが、今後におきましては農林省あるいは県の方とよく連絡いたしまして、そういう計画を織り込みたいというふうに考えます。
  22. 江田三郎

    江田三郎君 この電源開発がやるのではなしに、国がやるということになると、私どもはいろんな点において合理的なことができると思うのですが、たとえば、従来のダムで、私先ほどちょっと申しましたけれども水温低下の問題ですね。あんな問題がありましたり、それからせっかくダムをお作りになったけれども上流治山治水ができていなくて、埋没が激しいと、こういう問題があるわけですが、そんな上流治山治水との関連、あるいは水温低下の防止というようなことについては、どういうお考えになっていますか。
  23. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 水温の問題でございますが、ダムを作りまして、そのために従来の灌漑川水よりも湿度が低くなるというような問題が起きると非常に悪いわけでございまして、それに対しましては温かい水を取水できるような施設を作る。たとえば表面水をとっていくというような施設を作るというようなことを考えまして、十分水温を上げて、温度の高いものを下流の灌漑に使うように考慮したい。実際現在までに行いましたダムによりまして、従来よりも水温が上って非常に灌漑上よかったという例も具体的にあるわけでございまして、今後におきましても、十分そういう点を考慮していきたいというふうに考えております。またダムの埋没の問題につきましても、もちろんこういうふうなダム計画は、上流から土砂がたくさん流れてくるというようなところは、なるべく避けるべきでございますが、やむを得ずある程度流出のあるところに設けようとする場合には、上流の砂防工事なりあるいはその他山を治める工事を積極的に行なって、貯水池の寿命が長く保つように努力いたしたいと、こういうように考えております。
  24. 江田三郎

    江田三郎君 この水温低下の防止施設をやるんだということでありますが、しかし今まで建設省はいろいろダムを手がけて関係しておられましたが、従来そういうことできちんとおやりになっておりますか。
  25. 小林泰

    説明員小林泰君) 水温の対策でございますが、従来、河川総合開発事業計画におきましては、そういうものをほとんど大部分のものについては取り入れております。それを一番最初に取り入れましたのは岡山県の旭川のダムでございますが、これが総合開発事業として県営として完成いたしました最初のものでございますが、これにおいてその取り入れには角落しを入れまして、その角落しを水深に応じて入れていくという方法によりまして温水施設を設けて相当の成果を上げているわけであります。それから、その他の県営につきましても、水温の問題が問題になりますところにつきましては、温水取り入れの施設を設けると同時に、直轄の方におきましても、そういうものを設けておりますが、電力会社が実施いたします電源開発ダム、そういうものに伴いました温水施設としては、水利使用処分の際にそういう条件をつけて実施しております。これは東北地方等においては、特にそういう問題が多いもの、でありますから、条件によって実施さしております。
  26. 江田三郎

    江田三郎君 この直轄及び県営の場合には、そういう施設をやるようにしておるというのは、何年以降の工事について言われるのか。旭川ダムということになると三、四年前ですか、できたのは。
  27. 小林泰

    説明員小林泰君) 昭和……。
  28. 江田三郎

    江田三郎君 何年でもよろしいが、何年度以降、建設省がそういう方針をお取りになったか、そういう方針をお取りになって以降は、その例外はないということを確信をもっておられますかどうかということと、それから、電源開発会社がやった場合にはそれだけの条件がついているということでありますけれども、この条件というのは、私どもとしましては、どうでも勝手にできるような条件になっていると思うのです。あらためて減収等があった場合に、実地調査をして云々ということになっておりますのはいいのでありますが、そんなものはなかなかうまくは実行できないで、ややともするというと、つかみ金で問題の解決をつけていくという場合が多いのでありますが、なぜ一体電源開発会社がやった場合には、そういう県営なりあるいは直轄についておやりになると同じような方向をこの電源会社にお求めにならなかったのか。だから私がお聞きしたいのは、なぜ電源開発会社に対しては強い態度をお取りにならなかったかということと、国営の直轄及び県営については、何年度以降今おっしゃった方針を厳重にお取りになっておるかというその二点。
  29. 小林泰

    説明員小林泰君) 旭川ダムの完成のころに溝口先生の御提案で、いろいろそういう問題が私どもの方にも提案されて参りまして、又地元の方もそういう点について相当意見がございましたのですが、大体、はっきりした記憶かどうか何ですが、昭和二十八年ごろからそういう方針を取っていると思います。それからまた、電源開発会社あるいは九電力会社におきましても、空文でなく実施さしております。たとえば、佐久間ダムにおきましても、あるいは利根川上流の須田貝ダムにおきましても、東北地方ダムにおきましても、そういう措置を取らして実施さしております。
  30. 江田三郎

    江田三郎君 昭和二十七、八年ごろからのちには、そういうことができているはずだということですが、私はその後にできた工事についても、そんなものができていないように聞いている例を若干持っているわけですが、これはまたいずれ私も正確に調べてあなた方にお尋ねしたいと思いますが、ただ水温低下の問題は、この角落しであるとか、あるいはうわ水を取るとか、そういうようなことだけでいいのかどうか。長い隧道を通ることによっての水温低下の問題については、あなた方の方ではどういうお考えを持っておられるのか。角落しなりその他のことをやって、うわ水を取るような施設をやって、長い隧道を通って出てきた水をそのまま田用水に使っていいとお考えになっているのかどうか。その点どうです。
  31. 小林泰

    説明員小林泰君) 隧道の問題につきましては、実は水利使用処分の際に二、三従来問題になった場合がございます。しかし、水温に関する調査というものが、一般に非常に調査資料が不足しておりまして、果して、隧道によってどれだけ水温低下したかということの正確な資料は、たしか北海道に一カ所そういう資料があったかと存じますが、非常に少い状態でございます。また場合によっては隧道によって水温が上昇するというような場合もあるように言われております。しかしこういう点につきまして、非常におっしゃる通り重要な問題でありながら、まだ調査が十分進められておらない問題でございますので、関係各省、たとえば通産省農林省建設省等が集まりまして、現在水温調査会というものを設けて、試験施設も設けて、目下研究中でございます。正確な御返事ができないのを印し訳ないと思います。現在の状況ではそういう調査会によって実態をきわめて、その対策を確立して参りたいという方向に進んでおるわけであります。
  32. 江田三郎

    江田三郎君 この問題が溝口君から提起されたのはもう相当前でして、溝口君のときには、あまり隧道のことは触れておられなかったけれども、その後大きなダム建設が進むと同時に、やはり隧道による水温低下という問題は相当指摘されておるわけでして、私どもそういうことがどうも建設省の方はあまり農業に対しては思いやりがないと言っては悪いかもしれませんが、ともかくこの法案説明を見ても、農業という言葉が、出なくてもいいのでしょうけれども、私どもとしてはちょっと気になりますよ。それほどやはり農業関係ということについてお考えになる点が少いように思うのでありまして、これは私またあらためて建設大臣にでも来ていただいて、もっとこの点をはっきりしていただかんと、今後多目的ダムなり、ダムがだんだん大きなものになっていけばいくほど、この問題は農民にとっては深刻な問題でありまして、水温が一度違う、あるいは二、度違うということは、稲作にどれほど影響があるかということはなかなかこれは深刻な問題でありますから、あなたがたの方ももう少し真剣にやっていただきたいと思うのであります。調査をやろうという気になれば、どこだってできるのですから、今まで調査ができないというのは少し農業というものに対して思いやりがなさ過ぎると思うのです。  それからもう一つついでにお尋ねしたいのでありますが、こういう事業になると、当然水没地帯というものができるわけでありまして、その水没地帯の対策というものをどうお考えになっておるのか。従来水没地帯については主として金銭的な補償ということで片づけられておりましたが、金銭的な補償ということは、一時、金は入りますけれども、数年後にはもうすっかりどこへその金が行ったかわからんということになってくる。そこで幾ら金をもらったって、農民農業から離れてしまったのでは、それはもうおかに上ったカッパと同じことでありまして、何年か後にはその金は行方不明になってしまうわけなんです。そういうことについてあなた方の方では基本的にどうお考えになっておるのか。代替地を与えて農業経営ができるようにするということをよく言われますけれども、実際問題としては私はそんなことをおやりになっていないように思うのです。例外的にそんなことがありましても、実際にはそんなことはおやりになっていないのじゃないかと思うのです。さらに金の問題になりましても、たとえば電源開発会社がやるというような場合には、相当思い切った補償をされる、あるいは補償の出し過ぎではないかということもちょいちょい言われますけれども、しかし逆に建設省とか県営ということになると、非常にシビアに当っていただいて、犠牲者としては、片方でどこやらの会社のダムのそういう条件を一方に見て、一方に国なり県なりがやっているような条件を見ると、何だか国に対していい気持はしないわけなんですがね。そういう点は一体基本的にどうお考えになっておるのですか。
  33. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) ダムを作りまするときに一番大きな問題は、仰せの通り補償問題でございまして、そのために他に移転しなければならない、あるいは農耕地を取られてしまうというような方は、まことにお気の毒な次第でございまして、仰せの通り、従来におきましては金銭を払いまして、それでどこでなり生活をしろというような点もございました。最近におきましてはかえ地等を、まあ国なり——国ではまあ自分ではなかなかできない部分もありますので、地元の県のあっせん等によりまして、かえ地等をあっせんした例も、たとえば長野県等にはございますわけでございます。そういうふうな、今後におきましても、非常にかえ地を得るというようなことが非常に困難でございますので、そういう点につきましても十分留意をいたしまして、各省にお願いしたり、また県の尽力を得たりいたしまして、できるだけかえ地を心配いたしまして、移転ができるように、しかも、そこへ行きまして、従来と同じような生活ができるように努力したいと思っております。  それから補償の基準の問題でございますが、電力会社とかあるいはその他の会社におきまして行う補償と、国や県でやりまする補償というものの額が違っておるというのは、確かに事実でございます。それでまあ国や県が公共事業をやります際には、ほかの道路事業であるとか河川事業だとか、そういうふうな問題との関連もございまして、とうてい営利的な会社がやる金までの分は、なかなかそれまでの基準にはいけないと思いますけれども、しかし、被害を受ける方々にとりましては重要な問題でございますので、今後におきましても、その補償の方法につきましてはさらに検討いたしまして、できるだけ実情に沿うように持っていきたいというふうに考えております。
  34. 江田三郎

    江田三郎君 まあそういう答えがいつも出て、そうして実行はいつもされないということになるので、私もあまり期待もしませんけれども一つよくお考えになって上げたいと思うのです。  それで、これはあなたの方へお聞きするのは無理かと思うのですが、こういう特別会計を、一方では農林省の方で今度も土地改良特別会計というものが出てくる、ここでまた多目的ダム特別会計というのが出てくる、あるいは今後道路が出てき、いろいろな住宅が出てき、というふうに次々と特別会計というのが生まれたのもあるし、また生まれてくるのではないかと思いますが、こんなものは、個々にそういう特別会計を持つことの方が合理的だとお考えになりますか。あるいはもっと総合して、たとえば国土総合開発の特別会計というような方法でいくということは、あなた方の仕事からいうとお困りになりますか。私は、事業そのものは、多目的ダムというものが同時に他の総合開発というものと非常に関連がある。たとえば、土地改良とも関係があるし、道路とも関係があろうし、いろいろな面において関係が出てくるわけだろうと思うのですが、そんなものが一体一本の特別会計というものを作った場合には、あなた方の事業の遂行しお困りになりますか、どうですか。
  35. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 総合開発事業全体の特別会計にしたらどうかというようなお話でございますが、そういう点につきましては、私どもも詳しく検討はしたことはないのでございまして、今直ちに意見を申し上げることができないのは、まことに残念でございますが、このダムにつきまして特別会計を作りたいという希望が生まれました理由から考えますると、ほかの事業に比べると、やはりこのダム特別会計でやった方が非常に今までよりもよろしいという理由だけは私ども確かであろうと確信しておりますが、それは特別会計の御説明でもあったと思いますが、従来ダムを作りますときに共同事業一つのものを作っておった、そういうことで資金も両方から入っておった。その資金の入り方がちんばであったというようなことも実際はあるわけでございます。それから仕事をするときに帳簿を二つにしまして、金も二つに分けておかなければならぬ、支出も二つにしておかなければならぬというような点もございまして、そういう点が今度の特別会計によりまして非常に合理化されるという点から考えまして、このダム特別会計にしてもらうと非常に都合がよろしい。従来のものに比べまして都合がよろしいという点におきましては、ほかの事業は私はつまびらかにいたしませんけれども、そういう点におきましての利益はこのダムが非常に多いものじゃないかというふうに考えております。
  36. 江田三郎

    江田三郎君 これはちょっと河川局長さんに言うたってしょうがないと思うのですけれども、やはりこういう事業というものは、私どもは、総合的な開発の一環として行われるものであって、ただ、ここに多目的ダムができたということは、ダム建設だけで終るのじゃなしに、それに伴ってその地方の総合口開発が進められていかなければならないのだ、そういう点からいくと、そういう単独の法律が次々にできてき、それから単独の特別会計というものが次々にできるということは、かえってなわ張り争いになって、総合開発という点からいくというとマイナスになるのじゃないか。あなた方は、今の金が両方から入ったとか何だとかという答弁の方からいうと、なるほどその通りでしょうけれども、大きな総合開発という点から見ると、もう少しとういう点は検討を要するのじゃないかと思いますが、この点はあなたに言ったってしょうがないのですから、問題は残しますが、野溝さんが待っておられますから、最後にもう一点お聞きさしますが、一体、将来建設省としては、こういうダムをお作りになるのに、立地条件によって、あるいは工事の規模によって違いますが、何年くらいで完成しようという方針を持っておられますか。従来、建設省が直轄河川を手がけておられたやつで、一番長くかかっているのは何年でございますか。
  37. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 直轄で行いましたダムで、たしか一番長いように感ずるダムは、鬼怒川の五十里ダムでございますが、あれが二十五年の暮に着手いたしまして、本年度竣工しております。ですからまる七年くらいかかっております。今後におきまして、この特別会計考えるようなダムは、今後の大体の計画といたしましては、十分な設計を作る等の調査をやりましてあと、工事の規模にもよりますけれども、小さいもので三年、それから大きなものによりましては四年、結局調査の期間を含めまして四年ないし五年で作り上げる、こういうふうに考えております。
  38. 江田三郎

    江田三郎君 そういうテンポというものは、一般の民間の九電力なり電源開発会社等がやるテンポに比べて、工事テンポはどうでしょうか。
  39. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 電力会社等に比較いたしまして大体歩調が合っているわけでございまして、結局そこに施設する設備とかに見比べまして、それが経済的に動くような段取りで、予算もそれに合わして工事を進めていきたいというところから、そういう年限が出てきております。
  40. 江田三郎

    江田三郎君 工事のやり方は、これは直轄でおやりになるのですか、請負でお出しになるのですか、どちらでおやりになるのですか。
  41. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 直轄の事業でございますけれども、請負に出して仕事を行います。
  42. 江田三郎

    江田三郎君 私は若干基本的な問題についてやはり建設大臣お尋ねしたいと思いますので、委員長の方でまた適当な機会に、この特別会計の審議を終了するまでに、そういうことを考えていただきたいと思います。野溝さんもおられますからまあこの点……。
  43. 野溝勝

    ○野溝勝君 大体要点は、今、江田さんの方から御質問がありましたので、重複を避けたいと思うのでございますが、今お聞きの通り真剣に、この簡単なような法案であって、農民生活にとって簡単でない法案です。特にこれが農民に及ぼす影響は大きいのです。今、答弁を聞いていると、あなた方にも自信のない点があるのです。農業経営だの農業生産の関係の問題は、机上で割り切れる容易なことじゃないのです。小林課長の答弁は、なかなか正直そうに見えて、好感持てるのでございますが、実際私にしても江田君にしても、農民に直接影響がある本法案として、慎重を期しておるわけです。また、地方税との関係もありますから自治庁当局、さらには農林当局、この諸君と協議したか、建設大臣が知っておるかどうか、責任者でありますから、いずれ委員会に来てもらって、最後の仕上げをしたい、こういうふうに考えておるわけであります。  そこでこの法案の精神が、第一、現河川法だけでは措置するに欠陥もあり、やりにくい点が出てくるとの説明で、大体わかるし、また、われわれも理解ができます。それなら河川法にも一体ダムのことが具体的に規定してある法文があるのですか。私の知る範囲では見当らぬが、ダムのことについて具体的に規定根拠なくてやってきた。それを今急に必要になってきたということは冒険であって、よく今までダムに対する具体的な規定なり、なくてもやってきたのでございますが、その間の経緯を明らかにしてほしい。
  44. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) お説の通り河川法にはダムという字はないのでございまして、私どもダムを行なって参りましたのは、河川工事という範疇に入るものといたしましてダム工事を行なってきたわけでございます。
  45. 野溝勝

    ○野溝勝君 ここではそんなことを言っても、死んだ子の年を数えるようなもので仕方がないけれども、これだから心配なのです。実際、あるときにはこの法文の根拠によってと言う、あるときには大体これに準拠を置きましてというようなことで、まことに立法府としては遺憾千万なんです、この点は。特に衆議院あたりより一そう慎重な検討を加えるのが参議院でございますから、参議院においては慎重の上にも慎重を期さなければなりません。この点あなた方も考えてもらいたいと思うのです。私の質問をせんとする意図といいましょうか、考えがあることを十分御了承願っておきたい。  次に、私は聞いておきたいのは、先ほど山木さんの話によりますると、この法案地方自治庁、農林省等との関係もあるし、通産省との関係もあるから、各官庁と相談の上ということを言われましたが、具体的に協議の上に策定した法案でございますか。
  46. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 法案を作るときにはもちろん協議いたしまして、次官会議、閣議におきまして決定されたものでございます。
  47. 野溝勝

    ○野溝勝君 各官庁といいましても、農林省もこれに参加しておりますか。
  48. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 参加しております。
  49. 野溝勝

    ○野溝勝君 それでは農林省が来た際にお伺いをするのでございますが、先ほど江田さんの話にありましたごとく、水と百姓との間、これは切っても切れない関係にあるのでございまして、かような構想と、さらに農村中心とする経済、具体的に言うならば、従来の府県並びに会社等にあった所有権初め権利を国に移すことになるのでございますから、法案とうらはらの法案であって、特に農業経営の関連が深いのにかかわらず、農業問題の配慮に欠けている。先ほど二音半句も触れてないという話でございますが、ここには一言だけは触れておる。「農業効果等を目的とする」、抽象的な言葉が出ておるだけでございます。農業が水との関係において離れることができないということは、すでに皆さん御承知だと思う。ところが今日までこの河川の問題を審議する場合におきましても、農民の意向というものは重きを置かれなかった。たまたまこの河川の問題などでいつでも問題になるのは漁民の関係です。漁民の方の問題についてはある程度補償条件というものが入れられている。ところが農民の場合におきましては、会社と契約をしておきましても、その用水水路の変更ないしは水量取り入れの点等に対しまして、電力会社ができる当初に契約をしておりましても、その契約が今日まで実行に移されておらない。局長諸君御承知のごとく、天龍川における沿岸の農民が、すでに電力会社との間に契約が結ばれているが、機構が変るたびごとに変っていって、今日まで実行されておりません。水との関係においては重大な問題があるのでございます。特に政府当局である、責任者でございます局長は、先ほど来の質疑の間で、慎重に考えて善処するということを何回も抽象的に答弁されているが、ダムを作る場合において諸問題について具体的に考えて立案されたと思う。たとえば、水温の問題ももちろんでございますし、農民の家屋の移動、それから、代替地をもらってもすぐそれが農業経営に役立たないというようなこと、そういうようなことがたくさんうっせきされておるのでございますが、この特定多目的ダム特別会計を策定するに当り本法と関係に対し具体的にどう措置しようと考えておるか。さらにこの法案の中に示されましたる通り法案第二十四条「この法律に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。」ということになっておりまして、1、2、3、その3の中で、ダム工事をやる場所が八カ所ここに発表になっております。これに対する大体のダムの面積、それからどのくらい水量貯水のダムか、またできることによって農家が駆逐されるか、表現は離村といわれている、事実は駆逐だ。おる場所を追い出されてしまうわけですから、おれなくなるが、それに対してどれくらいの補償しようとするのか、一応その案ができておるはずだと思います。  私は時間の都合で、質問をとぎれとぎれでなくて継続的にいたします。具体的に申すならば、たとえば天龍川美和ダム建設工事は三十二年度においては八億三千五百五十万円だ、各建設工事においてそれぞれの予算が出ておるわけでございますが、その裏付けとなるべき予算に対する内容でございます。その点をここで御発表願いたい。もしお手元にないとするならば一つ資料を出していただきたい。  以上、質問します。
  50. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) この附則の三項にあげてありまするダムにつきましての補償物件あるいはそれに対する具体的の資料というお話でございますが、ただいまくわしい資料を持ち合せておりませんので、その点は後ほど資料を差し上げたいと思います。  それからこういうダムを作りましていろいろと支障が起きるというお話でございますが、それらにつきましては、河川管理者でありまする知事さんが、いろいろと農民の方々あるいは電力会社の方との間に入りまして、いろいろあっせんをいたしまして、支障のないように努力はいたしておるわけでございますが、なおそういう点につきましてまだ不十分の点も考えられるのでございますので、建設省といたしましても府県の方とよく相談いたしまして、そういう点に遺憾のないように期していきたい、こういう考えであります。
  51. 野溝勝

    ○野溝勝君 局長さんの御答弁はこれはいつも、もうほとんど画一的なのでございまして、そういう答弁は先ほどの江田さんのときもよく聞いておるのですが、現に長野県などは、局長さんも御存じの通り、会社との解決がつかないので悩みの種であり、困っていますよ。特に天龍水電会社当時今日の中配の関係などは解決ついておらないのです。特別会計ができましてさようなものを処理するときに特に問題になってくるのは、今の地方の財政の苦しい際に、いわば地方の財源が国に移行するわけでございますが、そうするとこの間に一応話し合いはついたことと思いますが、過去における未決の問題を一体どう扱うのですか。
  52. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) この特別会計におきましては、従来いずれも直轄工事でやっておったダムでございますので、そのダムに関連いたしました関係事項は、依然といたしまして同じ形態で進めるわけでございます。
  53. 野溝勝

    ○野溝勝君 そうするとこれは直轄工事だけに限るのですか。
  54. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) そうでございます。
  55. 野溝勝

    ○野溝勝君 それではここにある提案理由の説明の中で、委託工事というのがあるのでございますが、それは直轄工事のうちの委託工事と、こういうのですか。
  56. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) 御質問の点、提案理由のどこにございますか。
  57. 野溝勝

    ○野溝勝君 最初でございます。「従来、国が直轄で行ういわゆる多目的ダム建設工事に関する経理につきましては、その事業のうち発電、上水道等用水確保目的とする事業分については、委託工事」ということがあります。それは直轄工事のうちの委託工事ですか。
  58. 美馬郁夫

    説明員(美馬郁夫君) これはダム、堰堤自体の問題でありまして、堰堤を従来の直轄工事で申しますと、国とそれから電気事業者の県なら県、あるいは電源開発株式会社なら株式会社と、こういうものが一つの堰堤を共同事業でやっておった、こういうわけでございます。これは委託事業で、相手方から委託を受けて国がやっておったと、こういうわけであります。
  59. 野溝勝

    ○野溝勝君 そうですか、わかりました。もう一点局長さんに聞いておきたいことは、先ほど来、江田さんからもくどいほど質問をされたのですが、この用水確保ということなんですが、具体的に言えば、この用水にはいろいろあるわけですね。工業用水もあれば農業用水もあればいろいろある。そうするとこの用水確保ということは具体的にどうして確保されるか、いろいろの場合をさして説明されたい。ただ用水確保という抽象的ではわからぬのです。たとえばダムを作ることによって水量の貯水何トンできる、そうすると下流にはどのくらいの水田面積がある、どういう工場がある、それに必要量がどのくらいという計数が立てられるわけですね。ですからそういう点について具体的に調査をされたことと思うのですが、これは個々のダムによって違いますから、個々のダム並びに下流の関係あるいは工場等の関係で違いますから。ですけれども、大体の計画に基いて建設されたと思うのです。そういう点について当局のこのダム設置に至るまでの用水確保の見解を、むずかしい注文ですけれども聞きたい。
  60. 小林泰

    説明員小林泰君) お説の通りダム計画によりましてその水の、貯水池の容量を決定する場合の基準が違うわけでございます。従いまして、あるダムでは農業用水が非常に多い、あるダムではそれほどの農業用水確保する必要はないというような関係にございますが、私どもこのダム基本計画を決定いたします際には、まず土砂の堆積その他に備えまして、必要な死水を取っておりまして、その上に下流の灌漑その他、湯水期に必要とする貯水量、たとえば天龍川の美和ダムにおきましては四百万トンということで、それを上に取りまして、さらにその上に洪水調節に必要な貯水量を取るわけでございます。そういうものを合計いたしまして、貯水池の全体の必要な容量を決定いたしておりますが、洪水期には洪水調節に必要な容量だけはからにしておく必要がございますので、ちょうど、洪水期と灌漑期とは一致いたしますので、そのからになった下に必要な貯水容量を確保するというふうに計画を定めております。ところによりましては、海潮用水のほかに工業用水が何百万トンあるいは何千万トンというふうに、それぞれ下流の土地改良計画と関連いたしまして必要な水量を、既往の渇水年、これは計画渇水年と称しておりますが、農林省の調査と相待ちまして、必要な貯水容量を算定いたして決定しておるわけでございます。
  61. 野溝勝

    ○野溝勝君 ではいま一点だけお伺いいたしまして、いずれまた農林省の来た際に一緒にお伺いいたしたいと思います。  先ほどの質問の中で、当局のお答えの際に、この一般用水は無料という解釈でしたね。それから専用用水については有料、その有料のうち、負担分の説明がなされたのでございますが、もう一回、水田用の方はどう、工業用の方はどうというようにお話し願いたい。
  62. 小林泰

    説明員小林泰君) 最初ダム建設費がたとえば三十億なら三十億と出ますと、その費用は、ダム使用権者と、洪水調節灌漑用水等の目的によってそれぞれ配分される必要があるわけです。それでその費用配分の際には、経済効果の方から算定いたしました、妥当投資額と称しておりますが、いわゆる年間の便益を資本還元いたしまして求めた投資源、それからもう一つは、たとえば灌漑用水が四百万トン必要だというふうに算定されました場合には、その四百万トンを貯水する単独の目的ダム計画をそこに立てるわけでございます。それに要する費用を算定いたしまして、これを見がわり建設費と申しております。それでそれぞれの目的について、妥当投資額と見がわり建設費とを求めまして、それぞれのいずれか安い方の比率によってダム費用を割り振るわけなんです。それで農業用水の際に一般用水補給、いわゆる専用施設を設けない用水補給については、企業の分担は、受益者負担はいたしませんが、専用のものについて、先ほど申し上げましたように受益者負担を一割取ることになるわけです。それでその他の発電工業用水水道等ダム使用権者に対しましては、その割り振りました費用の全額を負担させるということであります。それで洪水調節については、これは農業用水と同様に国が負担いたすわけでございます。それで国の負担に対して地方分担金がございますので、国から投下いたします一般会計よりの繰入金と、それから地方分担金相当額の借入金と、そういうものを合せて農業用水関係と、これを公利のための貯水と申しておりますが、洪水調節の貯水と両方の分に対しては、そういう割合で国と地方分担金、それから特定灌漑用水については、十分の一の受益者負担、そういうものが合わさりまして維持されるわけであります。
  63. 野溝勝

    ○野溝勝君 ただいま答えられた受益者負担ですけれども農民は最初、どうも自然の水を利用して維持してきたのですが、そのうちにこの水の権利が会社に取られたり、団体に取られたりいたしまして、それから税金で取られることになったり、あるいは勝手に命の綱である水量をかげんされ、制肘されるようになったりして、農民の生活がだんだん窮迫してきた。今またこのダムができて、国家に権益が移ったのでありますが、それでも権益が国に移ったにもかかわらず、これまた受益者負担の名において収奪されるということになると大問題なんですが、この点は具体的には百姓から金を取るのですか、取らぬのですか。はっきりして下さい。
  64. 小林泰

    説明員小林泰君) 河川流水は、御承知の通り非常に渇水期に減少いたしまして、旱魃が起るわけでありますが、その旱魃に対して被害の起きないようにこのダムも貯水いたすわけであります。従いまして、従来、たとえば三峰川のダムの地点でありますと、十年間の渇水量が大体三・八トン毎秒ぐらいの量であります。ところがこのダムの築造によりまして、その渇水量が七トンないし八トンぐらいに増量されるわけであります。従いまして、従来の旱魃がそれによって防止される結果になりまして、従来農業水利として水利権を持っておりましても、渇水のときにはやむを得ず水が取れないという状態が、このダムの機能によりまして改善されるわけであります。従いまして、そういう場合に専用施設を設けて用水を取水する場合、それは利益が非常に明らかに算定されます。明らかでございますので、受益者負担をその場合にはかけるということにいたしたのであります。
  65. 野溝勝

    ○野溝勝君 それだから反対だというのですよ。そこがあいまいであって、この法案の中に了解ならぬ点なんです。大体諸君と先ほどからの質疑している中にその全貌がわかった。そこで明らかにしておきたいのは、私は美和ダムの三峰川の下流で生活しておりますので、本ダムの創設当初からの経緯はよくわかっております。農民運動をやって四十年になります。その歴史から当地の事情特に下流で渇水になって、米がとれなかったというようなことは少く、もしあっても、ほんのわずかな土地だけです。農業生産は風水害より、少々の渇水というときはかえって米初め農産物がとれる場合が多い。よく調べて下さい。ただそのことよりは、美和ダム設置の問題は電力の必要からなんですよ。それを総合開発の名で登場したのです。私は産業の開発だから、農民生活を脅かさず話をすることで賛成した。しかし賛成ではあるが、その後の動きから見て、農民の利益というものは、かえってあのダムのできることによって心配な問題が派生した。特に今言う通り水温の装置をするとか言っていますけれども、三峰川ダムにどの水温装置をするか、まだ私は知りません。今後またやっても相当の年月を経なければ、どれだけの効果があるかという統計の資料も出ません。そんなことは、あなた方も科学者じゃないから、私はそんな決定的な答えができるものじゃないと思う。だから無理な統計を根拠にしてその説明の材料にするということでなくて、卒直にこのダムを作る動機、性格、それからそれが及ぼす農民への影響、こういうことを考えるならば、私黙っていられない。農民が土から追い出されたり、立ちのきを命ぜられて、わずかの金で、自分の生地を失うという悲劇がここに起っておる。さらにその下流の者は旱害よりは水害の心配が多かっただけに他地域のダム設置の意向と違います。そういう点、一般産業開発の点から、賛成はしますけれども、同時にこの追われていくところの農民の姿、下流の農業の生産事情の現況というものを十分考えていかなきゃならぬ。そこで今お話のありましたように、専用施設を施す場合は金を取るというのですけれども、私はそんな必要は絶対にないと思うのです。また取ることは間違っておる。むしろそんなことは発電会社の、電力を利用してもうける工場から取る方が当りまえじゃないですか。
  66. 小林泰

    説明員小林泰君) 実は私、先ほど説明が十分でございませんでしたが、この法律の十条に、専用施設に関連する受益者負担がございますが、すでに現在工事中の事業につきましては、専用施設のある場合でも付則を設けまして、付則によりまして、それは受益者負担を取らないことにいたしております。それから三峰川の場合には、開田計画もあわせて考えられておりまして、その方面に対する水の使用もダム効果一つの大きなねらいとして考えられておるわけであります。
  67. 野溝勝

    ○野溝勝君 この点は事務当局の局長さんや課長さんとの間に、特に明快にしておきたいし、明確の回答を得ておかなきゃならぬのです。もしきょう回答を得ぬとするならば、きょうでなくてもよろしゅうございますから、この次の機会に相談して回答して下さい。というのは、あなた方の回答いかんによっては、今日までダムに対しては、あの農民諸君の憤激と心配にもかかわらず、私は産業開発の意味から前目黒局長当時から間接に協力してきたつもりです。しかるにこの基本法案によって、下流の者までが負担をさせられるということになりますならば、私は直ちに帰ってこれから農民大会を開きます。そうしてその問題に対して直ちに運動を起し、政府当局の欺瞞性をつき、農民がたえがたいダム建設であることを訴え、私は戦いを宣しなきゃならない。というのは、今が今までさようなことないと思ってやってきたのです。だからいろいろの角度から疑問の点を問うてきたのです。私は地元の代表として、農民の代表として重大な責任問題になります。諸君は職権をもってやるかもしれぬが、欺瞞してきた当局が強引に押し切るか、農民大衆の正当性が通るか、私は全力をあげて美和ダムの中止のために戦います。はっきりしない以上は、私はのっぴきならぬ羽目に陥るのでございますから、この際、当局の見解を明らかにしていただきたいと思います。
  68. 山本三郎

    政府委員山本三郎君) 特定多目的ダム法案の附則の三項に、「この法律の施行の際、現に建設大臣建設しているダム政令で定めるものについては、第十条の規定は、適用しない。」という規定がございまして、現在の実施中のダムにつきましては、農業の受益負担は取らないという条項がございまして、これによりまして、今の三峰川の問題も農民の皆様からの受益負担は取らないことになっております。
  69. 野溝勝

    ○野溝勝君 多目的ダム法第十条中、例外として政令に美和ダムを含むという明確なる御回答をいただきまして、よくわかりました。私はそういう点が明らかになりますならば、積極的に協力して、産業開発に努力するつもりであります。
  70. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) ただいままで御両君から実体法たるダム法案について非常に有益なる御質疑がございましたが、なお、このダム建設特別会計法案につきまして、これが本議題になっておるわけなんですが、御質疑がありましたら非常に仕合せと思いますが……。
  71. 江田三郎

    江田三郎君 特別会計のやつはいずれ質問があるのですがね。ところが特別会計というものは、今の食管会計のようなああいうことをやられておるのでは、われわれとして新しく特別会計を設けるということになかなか賛成できない。これは大蔵大臣に来てもらって、特別会計についてどういう基本的な考え方をしておるかということを聞かぬと、怪々しく審議に移れぬということなんです。
  72. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) きょうは大蔵省から所管の課長は来ておりますが、じゃよしますか。
  73. 江田三郎

    江田三郎君 食管会計のように、ああいうようないき方をとられておるのでは、特別会計というものは、赤字を出されてほったらかしておくというのでは困るから、一ぺん池田先生おいでになって……。
  74. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 事務的なことをやったらどうですか。
  75. 廣瀬久忠

    委員長廣瀬久忠君) 今の特別会計の問題についての大きな問題は、それじゃ大蔵大臣に質疑することにしまして、事務的の御質疑でもありましたら、大蔵省のその係の課長来ておりますから、御質疑を願いたいと思います。——では他に御質疑もなければ、それではどうですが、所得税法、法人税法及び特別措置法等についての事務的の御質疑でも願いたいと思いますが、いかがでしょうか……。  それでは本日はこの程度にして散会いたします。    午後三時十七分散会