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説明員(
庭山慶一郎君)
中小企業の資産再評価の特例に関する
法律案につきまして、
委員長の
お話の
通り、要点を申し上げたいと思います。
資産の再評価につきましては、
昭和二十五年に第一次再評価を実施いたしまして、その後、二十六年に第二次を行いました。二十六年に行いましたのは、二十五年に再評価をすることができなかった
企業に対して補完的に行なったのでありますが、その後、三年をたちまして、その間に相当物価も上昇いたしまして、第一次、第二次の再評価では、とても十分な減価償却ができないということになりまして、二十八年になりまして、また第三次の再評価をいたしたわけでございます。第三次の再評価は二十八年、二十九年の二回、二カ年にわたりまして、その間にやりたい法人がやるということにしておったのでありますが、その場合に資本充実の
意味をもちまして、特定の会社、つまり
資本金五千万円以上の会社あるいは
資本金が五千万円はないが、三千万円以上であって、再評価資産の限度額が一億円以上であるような会社につきましては、再評価の強制をいたしたわけであります。それによりまして、大体大
企業は限度額の八〇%の、何と申しますか、十分な再評価をやったわけでありますけれ
ども、その当時まだ好況に恵まれなかった
中小企業につきましては、制度はございましたけれ
ども、当時の
中小企業というのは非常にもう日常生活にも困りておるといったような
状況でございましたので、せっかくの制度を十分使えなかったわけでございます。ところが最近に至りまして経済の好況が漸次大
企業から
中小企業に移って参りましたものでございますから、
中小企業が非常に利益が出るようになってきた。その場合に従来の圧縮された小さい簿価で償却しておって、それによって税金を納めておるのであれば、全く
資本金の蓄積と申しますか、
資金の回収もできない。どうしても
中小企業にもう一度再評価をやらしてもらいたいという声が大きくなりましたので、そういう
趣旨におきまして今度の
法律案を
提出いたした次第でございます。
従いまして、この
法律によりまして再評価を行うことができるものは、この前強制された、俗な言葉で申しますならば、大法人以外の法人に限るわけであります。もう
一つは大法人ではなかったけれ
ども、この前の第三次再評価のときに任意に八〇%以上の再評価をやった法人はもういいから、それ以外のものにやらせる。それから
個人につきましても同様でありまして、
個人も八〇%、
個人につきましてはこの前には強制ということはなかったのでありますが、八〇%以上やった
個人はもういいから、八〇%までやらなかった
個人にやらせる、そういうことになっております。それからそれ以外の点につきましては、大体この節三次の再評価と同じような方法でやるのでございますが、再評価資産の
範囲でございます。どの
範囲の資産を再評価ができるかという点につきましては、第三次再評価とは少し異なっております。このたびの分は、中小法人の設備の減価償却を促進さすということに
趣旨がございますので、その再評価資産は減価償却資産に限っております。従いまして、中小法人の持っております土地だとか、あるいは立木だとか、そういうものは今回の再評価には入らないわけでございます。これにつきましてはいろいろ議論もございましたけれ
ども、今回の
中小企業の再評価の
趣旨にかんがみまして、そういうことにいたしたわけであります。
それからその資産は、
昭和二十八年の一月一日に存在した資産であります。これはこの前の第三次再評価と同じでありますが、それより前に取得してそのときにあった資産で、再評価するときまでずっと引き続いて持っておったもの、その二十八年一月一日にあったけれ
ども売ったというものは、もちろん問題にならない。それから二十八年一月一日以後に取得したものにつきましては、これはもちろん再評価の問題は起りません。そういう
意味において第三次再評価と同じであります。
それから再評価日でございますが、再評価日は、法人につきましては、
昭和三十二年中に開始する
事業年度開始の日において行うということになっております。
個人につきましては、
昭和三十二年の一月一日において行う、法人の
事業年度が
昭和三十二年中に二回起りますような場合にはどちらでもいい、やりたい方でやればいいということにしております。
それから再評価の
基準でございますが、
基準と申しますと、どの程度まで評価をふくらませることができるかという問題でございますが、これは今度の再評価は第三次再評価の補完といいますか、補充という
意味を持っておりますので、第三次再評価と全く同じ
基準によります。これにつきましては、再評価限度額が現在は低い、これはもっと引き上げなければならないという議論もいろいろございますけれ
ども、そういう問題は全然今回の再評価には触れておりません。前の第三次再評価と同じである。ただ第三次再評価の
基準は、
昭和二十八年一月一日でございましたから、それから四年間すでにたっておりますので、四年間の減価償却額を引く、定率法によって法定減価償却額を引いて計算することになっております。
それから再評価の
税率でございますが、これは一番問題があったのでございまして、従前再評価をやりました
企業との権衡も考えまして二%ということにしたわけでございます。再評価の本来の建前は六%、再評価税というのは六%だということになっておるのでありますが、この前の第三次再評価のときの限度額に対して八〇%以上再評価をした場合に限って、限度額の六五%までは三%の税額にするが、それをこえる部分についてはゼロと、免税をするという
措置をとっているわけでございます。これはこの前再評価を強制いたしました
関係もございまして、上の方をそういうように免税にしたのでありますが、今度いたします再評価は、対象が中小法人でございますので、あまりややこしいこまかい
税率の区分を設けましても実情に即しないという点もございますし、それらの点を考えまして、この前、六五%以下は三%であって、上は免税であったというようなことも勘案いたしまして、これを二%にしたわけでございます。で、この二%にいたしましても、再評価をいたしまして、それによって安くなります法人税、再評価によりまして、償却をふやすことによって減少をいたします法人税と、この二%の再評価税を比べますと、それでもなお再評価をいたしますれば、はるかに
企業の税負担は安くなります。大体、
中小企業の打っております耐用年数十五年くらいの固定設備について考えましても、再評価を実施することによって、二年間に二%の再評価税を納めても、その間に五倍の法人税が償却増加によって減税されることになる。ですから少しでも再評価資産があれば、それは再評価する方がいい。免税案というようなことも巷間にはあるようでございますが、しかし、いろいろの点を考えまして、過大な再評価を防止する必要もございますので、二%にしたわけでございます。 それから再評価の申告期限でございますが、これは法人につきましては、その再評価日を含む
事業年度の終了の日といたします。しかし、その申告の日があまりおくれますと、やはり
事務上の手続もスムーズに進みませんので、来年の五月三十一日が再評価の最終期限とする中小法人は、大体一年決算の法人が多うございまして、しかもその決算も十二月、三月に多いわけでございます。ですからほとんどの法人は来年の三月決算と見て、五月三十一日に法人税を申告するときに一緒にそのときおやりになることができると思うのであります。で
個人につきましては、
昭和三十二年分の所得税の申告と大体合せまして、来年の一月十六日から三月十五日までとする、所得税の申告は二月十六日からでございますが、これは若干税務署の
事務を考えまして、さらに早くその申告ができるような制度にしたわけであります。でありますから、法人につきましても
個人につきましても、大体来年の初めにその収益
状況を考えまして、自分の
企業について再評価すべきかすべからざるか、どの程度再評価したらいいかということを判断すればいいわけでございます。これは
中小企業の再評価の
最後の機会でございまので、なるべく景気の判断をして、その程度をあくまで見きわめさせてやることが適当だと考えられましたので、そういうふうにいたしたわけでございます。
それから再評価税の納付でございますが、これは二年間に均分納付をすることにいたしました。二%の
税率で二年間ですから、一年に一%ずつ納めることになります。再評価税の本来の
法律には、延納とか繰り上げ徴収とか、非常に複雑な制度がございますが、これは今度の再評価の
趣旨から考えまして、あまり実益もない制度でございますので、いたずらに手続が煩瑣でございますので、そういうややこしいことをやらずに、わかりやすくやっていこうという
趣旨で、これらの制度を採用いたさないことにしたわけで、簡素化いたしたわけであります。
それからその他、今申しました以外のことは、この前の資産の再評価と同じようにやるわけでありますが、再評価積立金ができましたときには、それはそのうちの十分の九はすぐに資本に組み入れてもいいが、あとの十分の一だけは、将来再評価資産を譲渡した場合に、譲渡損が出るような場合に再評価積立金をくずさなければいけませんので、そういうために留保し、
昭和三十五年の一月一日になりましたならば、全部資本に組み入れを認める、そういうふうにいたしたわけでございます。
この
条文は、現在の資産再評価法というのがございますので、それにかかってきます。何と申しますか、資産再評価が一般法で、これが特別法という
関係で、若干この
条文は少しごたごたしたような感じがいたしますが、要点は今言ったことに尽きております。
この
条文の中に、
基準日の特例資産とか、それから
個人の
事業の用に供していない資産を
事業に供した場合の
規定がございますが、
基準日の特例資産というのは、賠償指定施設とか、あるいは占領軍に接収されていた資産が、これが解除を受けたときに、その日現在で再評価ができることになっておりますが、
規定としては複雑なものになっておるのでございますが、該当は比較的少いのじゃないかと思います。
個人の場合には、
事業用でない資産を、今まで住宅として住んでおった家を今度は店にする、店舗にかえるというような場合、
個人の
事業用資産への転換というようなこともございますので、この
関係で
規定が複雑になっております。
もう
一つは、
規定が非常に複雑になっておりますのは、法人が合併いたしましたときにどういうふうにするか、合併いたしましたときの
関係を
規定しております。これは合併されたものが、合併によって消滅した法人が中小法人であるときには、合併して吸収してしまって、残っておる法人が大会社であっても、その場合には、その吸収した中小法人の分について再評価ができるということを
規定するために、非常に複雑な
条文になっておりますが、あまり実際の該当は少いのじゃないかという気がいたします。
大体、今度の
中小企業再評価の
法律案の要点は以上で尽きるのでございます。
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