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説明員(東條猛猪君) それではただいま御配付申し上げますから、「年末金融対策の概要」、これから申し上げて参りたいと思います。
年末金融対策、特に中小
企業に対する年末金融対策の重要性につきましては、申し上げるまでもなく、先般参議院におかれましても御決議があったのでございます。御決議の趣旨に従いまして、順序は不同でございますが、ただいま
措置されておりますことにつきまして申し上げて参りますると、第一は
政府関係機関の貸付金額の増額でございます。
政府関係機関といたしましては、御承知のごとく、
国民金融公庫、中小
企業金融公庫というのがこの大宗でございますが、当初の計画に比べましてこの第三・四半期の貸付予定額を合計いたしますと、
国民公庫におきましては十七億円、中小公庫におきましては二十三億円の増額をはかったわけでございます。この結果
国民公庫におきましては、第三・四半期におきまするいわゆる普通貸付の合計額は百八十二億の予定でございまして、これは昨三十年度の実績が百五十九億でございましたので、
相当の増加が見られるということが申せると思います。資金源といたしましては、同公庫における回収の増加額もございますが、資金運用部で予定いたしておりました第四・四半期の貸付を十億円
程度第三・四半期に繰り上げましたというようなことも有力な対策の一つと相なっております。中小公庫はこの表で
ごらんいただきますように十五億円と、その後、八億円、合計二十三億円の増額予定になっておりまして、第三、四半期におきます貸付額は百二十五億円の予定でございます。これは同様昨年度の第三・四半期におきましては約百六億円ということでございまして、ここでも
相当額の増加が見られております。中小公庫におきましては、資金源といたしましては、回収の増加はやはりございましたが、同様第四・四半期からの資金運用部の貸付予定を八億円
程度繰り上げたということも一つの原因に相なっております。全般的に市中金融機関等におきましても、
相当中小
企業向け金融は、ここの表を
ごらんいただきますように、貸付残高において伸びておるわけでございますが、これら両公庫の資金の増加が見られるということは、中小
企業に対する金融の緩和に
相当資し得るであろうと、こう
考えております。
次は商工組合中央金庫でございますが、第三・四半期におきましては、当初貸付の純増を八十億予定いたしておりましたが、これを二十億増額いたしまして、百億円といたしましたわけであります。なお、参議院の決議の御趣旨に保険
会社の資金を中小
企業向け資金に活用をするようにという御趣旨がございましたので、御承知のように、保険
会社といたしましては、その支店網の
関係、あるいは審査機構等の事情がございまして、直接この中小
企業に対しまして貸付を実行するということにはなかなか困難が伴うような事情もございますので、むしろ商工組合中央金庫の発行いたしておりまする商中債の引き受けを、保険
会社としてその資金の一部をもって行うということが実際に即することであろうと、こう
考えまして、今、具体的な計数を損害保険協会及び生命保険協会において検討してもらっておりまして、これは商工組合中央金庫の方で具体的に数字の申し出がございますれば、
相当協力し得る態勢になっておるということが申し上げられるわけでございます。
次は、下請代金の支払い促進の問題でございますが、やはり中小
企業金融対策の一つは、下請代金支払いの促進にある、こう
考えられまして、
政府の支払いにおきましても、親
企業に支払います場合に、この下請中小
企業に対する支払いの促進につきまして遺憾のないような
措置をするということを
政府部内で申し合せをいたしますとともに、銀行その他の金融機関が融資いたします場合におきましては、融資の相手方たる親
企業から下請中小
企業への支払いを促進するということを、融資に当って窓口で指導するということを促進せられたいという
措置を通牒を発していたしております。なお、金融機関、公庫におきましても、中小
企業金融の年末対策ということでその円滑化をはかり、あるいは実際の事務の簡素化、迅速化をはかる。また、今申し上げました通牒を受けまして、取引先に対して下請代金の支払いを促進するという、あるいは金融相談所の活動を促進するということ、民間の金融機関といたしましてもできるだけ協力するという態勢を整えているわけでございます。なお、これは直接の中小
企業金融対策とは申し上げかねるのでありまするが、最近の金融の引き締り状況にかんがみまして、資金運用部の余裕金をもちまして市中銀行の持っておりますところの公社債、金融債、これは原則は十二月に引き受けたものでありまするが、それの買い入れを行う。ただし、これは一時の金繰りの
方法でございまして、おそくも年度末までにはもう一応市中に売り戻すという条件つきでございますが、資金運用部でさような短期の金融の緩和をはかって参りたい。これによりまして、やはり年末金融の緩和に資するところもあろうかと思っております。
もう一つは、これは、これも直接中小
企業の
関係はございませんが、
日本銀行では従来行なっておりまする短資業者に対する貸出の金額をやはり四十五億円
程度増額をいたしまして、年末市中資金の緩和をはかりたい、かようなことでございます。
年末金融対策の問題といたしましては、一応この
程度にとどめまして、あとまたお尋ねがございましたならば……。
次は、金融
制度調査会の最近の審議の状況でございますが、先般の国会で
調査会の設置に関する法律案を御決定いただきまして、その後最近まで十一回開いております。
最初の三回に、現在の金融
制度上どういう
問題点があるか、またどこから取り上げていくのが適当であるかということの審議が行われまして、まず第一に、いわゆる支払い準備
制度の問題、それから次いで預金者の保護に関する
制度の審議を行うということにきめられました次第でございます。
支払い準備
制度の問題でありまするが、これにつきましては審議が五回行われております。
調査会の大体の空気といたしましては、
制度の創設という
方向に向っているのでありまするが、まだ
最終的の
結論には達しておりません。ただいままでこの
制度の創設の可否、あるいは作られると仮定いたしました場合の内容につきまして申し上げて参りますると、第一に、
意見の
方向がほぼ明らかになったと思われる事項でありまするが、いわゆる市中金融機関が中央銀行に対しまして所定の預金をするということがこの
制度でありますことは、御承知の
通りでありまするが、この
制度は一面から見ますると、市中の金融機関の預金者保護ということにもなるということも
考えられるのでありまするが、
日本におきましてこの
制度の可否を論ずる場合においては、さような預金者保護という
観点は第二次的と申しますか、これはしばらくおきまして、むしろ中央銀行、
日本銀行の通貨調節に関する
制度であるというふうに
考えるべきである、この点が
意見の一致を見ております。それから中央銀行に対する預け金は、いわばそのときの金融情勢に応じましてその率がきまるわけでありまして、強制的なのが性質でございますので、契約によるよりは、むしろ法律の根拠が適当だろうというのが、これまた、ただいまのところ
意見の一致を見ております。
それから内容の問題といたしまして、やはり通貨調節ということに重点を——通貨調節機能ということからスタートいたすわけでございます。
対象金融機関は余り広げずに狭い範囲にとどめるのがよろしかろう。それから支払い準備の計算の基礎は、市中金融機関の預金残高ということが適当であろうと、それから支払い準備の内容といたしましては、
日本銀行の預け金でありまするが、これは無利子とするのが適当であろう、それから支払い準備率でありまするが、これをそのときの金融情勢に応じまして上げ下げ
調整をいたすことで通貨信用調節の機能が果されるわけでありますが、現在のところでは市中金融機関の預かり金と
日本銀行への預け金の比率は一%にも達しない、〇・二、三%という低い数字になっておりまするが、そういう実情からスタートするということであるならば、最高限はきめますが、むしろ最低限は設けずにスタートいたしまして、実情に応じた金融操作が適当であろうというのが内容についての
意見のほぼ一致した点であります。それから申すまでもなく、通貨調節の手段といたしましては、公定歩合政策あるいは公開市場操作という他の二つの手段との関連が問題になるわけでありまするが、いろいろ
議論がございましたけれども、やはり他の二つの通貨調節手段とあわせてそのときそのときの金融情勢に応じまして運用していくのが適当であろうという
考え方が有力でございました。諸外国におきましては、むしろこの支払い準備
制度というのは、いわば金融の基調に変化を与えるような長期的な
観点から用いるのが適当であるという一部の
議論があるようでありますけれども、まあ
日本の場合においてはいろいろ
考えてみると、そういうふうに運用のプリンシプルをきめずに、やはり信用調節手段というのは機動的に運用すべきであるという
意見が有力でございます。
その次の問題は、この支払い準備
制度はだれが運用するかという問題でありまするが、ただいまの状況では、現行の
制度の
もとにおいては
日本銀行の政策
委員会がこの運用の権限を持つのがよろしいという
意見が多うございます。しかしその場合におきましても
政府の金融政策に関する責任、あるいは特にこれが強制力を伴うような
制度であるという
観点をも
考えまして、
政府に拒否権と申しますか、あるいは留保権と申しますか、そういうものを持たさなければならないという
意見もございました。
なお支払い準備
制度に伴います要望事項といたしましては、過去の
政府なりあるいは
日本銀行の公定歩合政策あるいは公開市場操作というのは、必ずしも弾力的に機動的に運営せられていたとは思われないので、一そう有効に行われるような条件を整えるように努力いたすべきである。それから支払い準備
制度を設けるといたしましても、
財政のしわのいわゆる金融に寄らないように健全
財政を堅持すべきである。それからこの支払い準備
制度を設けた結果、直接間接中小
企業金融が阻害されるようなことがないように運用を考慮すべきである。それからまた、支払い準備
制度を設ける場合におきましても、国庫収支の
調整について配慮すべきであるというような
意見がございました。その後、この支払い準備
制度の問題につきましては小
委員会を設けることになっておりまして、ただいま小
委員会が作られまして、さらに内容の具体的な細目につきまして検討が行われておる現状でございます。
その次は、頭金者保護の問題でございますが、預金者の保護につきましては過去三回審議が行われております。それで、はなはだ預金者保護と申し上げますと範囲が広いのでありまするが、問題の重点を、経営が困難に陥った、
つまり経営が非常にむずかしくなった、あるいはなるおそれのある金融機関について預金者の保護をはかるのにはどういう手段が
制度上に
考えられるべきであるかということに問題をしぼって審議が重ねられておるわけでございます。この問題につきましても小
委員会が設けられることになりまして、これから具体的な細目の検討が行われるわけであります。
預金者保護の一つの問題といたしましては、およそ金融機関ということで
政府の大蔵大臣の免許を受けておるような金融機関は社会的信用が非常に高いことは当然でございますが、しろうとの
考え方といたしましては、金融機関が万一倒れましたときに預金者の損失というものは、その一方、預金者がその金融機関を選択したのだからやむを得ないのだというような
考え方もあり得るわけでございますが、そういう
考え方でいいかどうかということが問題のスタートであると思うわけであります。しかし、現在の社会情勢なりあるいは金融情勢からそういうふうに預金者のみに責任を
負担せしめるわけにいかないという
考え方をとりました場合におきまして、理論的な問題といたしまして、預金はすべて保護せらるべきものである、あるいは
一定額までの零細預金あるいは小額預金と申しますか、
一定額までの預金を保護するのは必要であるという
考え方をすべきであると、またかりに後者の
考え方をとりました場合に優先支払い、その他いわゆる支払いの順位によってカバーするということにするか、あるいはそういう事態に対処いたしまして何か新しい
制度を設ける必要はないかという
考え方もあるわけであります。
第二の問題は、経営が困難に陥りまして、再建資金を供給する場合において、何か一つの仕組を作って、この再建資金を供給するような
考え方をしたらどうか、こういう問題であります。今、
調査会及び小
委員会で御検討願っておる問題は、一と二の問題をあわせまして、これは仮称でありますが、預金の相互救済に関する資金を作ってはどうか、その資金はやはり原則といたしましては金融機関からの出捐により、そして借入の道を開いておきまして、一に書きましたような金融機関が破綻をするという場合におきましては、その基金が預金の
一定額までの支払いは確保すると、また、そういう事態に陥らない場合におきましても、金を出せば再建の見込みがあるという金融機関に対しましては、その基金から再建資金を供給するという
考え方はどうであろうかということで、いろいろと御検討を願っておるわけであります。現在相互銀行あるいは信用金庫におきましては自主的なそういう機構があるわけでありますが、どうもその金額あるいは条件等において必ずしも十分でないのではなかろうかという角度から問題の検討をやっているわけであります。第三番目は、経営の管理の問題でございまして、経営は困難に陥りましたが、再建の見込みのある金融機関に対しまして、現行の
制度を整備改善すべき必要はないかという問題でございます。申すまでもなく、金融機関は経営者によって勝負がきまるわけでございますが、経営者が適当でないと
考えられる場合におきましては、経営管理のために
制度を設ける必要はないか、あるいは現在の経営者が適当でないような場合において、経営の管理まではいかんにいたしましても、株主
総会あるいは総代会というものの決議を一時たな上げいたしまして、新しい公正な経営者の選任を適当とするような事例があり得るように思いますが、
制度的にどう考うべきか、あるいはそういう人的な問題は離れまして、物的な面の業務等の改善命令につきましてどう
考えるかというような問題でございます。それからその他の問題といたしましては、合併、営業譲渡をさらに促進容易ならしめるような
考え方はどうであろうか、あるいはいわゆる導入預金の取締りはどういうように考うべきか、これをどう検討すべきかというようなことであります。さらにこの金融
制度調査会につきましては引き続き御検討を願いまして、成案を得ましたならば、法律案といたしまして、それぞれ御審議をいただきたいと、こう
考えております。
第三番目は、「金融情勢の諸指標」でございますが、これはときどき
ごらんをいただいております
資料でございまして、一枚めくっていただきますと、目次が出ておりまして、
日本銀行券の発行高の推移、これは二十八年、二十九年、三十年、三十一年ということでずっと数字をあげてございますので、
ごらんをいただきたいと思います。三十一年度におきましては、三十年度よりは
相当やはり通貨の発行が伸びておる。しかし、これはまあ
経済の拡大と申し上げますか、そういうようなことに伴う問題でございまして、ただいまのところ、われわれといたしましても、日銀券の発行高自体が非常に大きいという
考え方は、どこで
もとられておらないというふうに
考えております。むしろこういう通貨の発行高と相なっておる基本的な
経済情勢についてどういう
考え方をすべきであるかということが問題の中心であろうと存ずることは、申すまでもないところであります。
第二表は、さような
日本銀行券の発行高になるわけでありまするが、もちろん、これは
財政の
関係、あるいは
日本銀行の貸し出しの
関係、あるいはその他の
関係ということでこの日銀券の発行が生じて参りますので、一応それを原因別に
ごらんをいただきたい、そういう表でございます。
第三番目は、東西のコール市場の情勢でありまして、これも
ごらんをいただきたいのでありまするが、
相当、三十一年になりますると、前年同期に比べまして、資金がふえておるということをこの表で
ごらんをいただきたいという趣旨でございます。
次は、第四表は、全国銀行の預金、貸出金の推移表でございまして、預金でございますと、むしろ第二番目の「実質預金」の欄を
ごらんをいただきました方がわかるかと思いますが、預金にいたしましても、貸し出しにいたしましても、かような状況で推移をいたしておるという表でございます。
その次の第五表は、各全国銀行の中で、中小
企業向けの融資の状況がどういうふうに相なっておるかという表でございます。統計がやや古くって恐縮でありまするが、この表で
ごらんをいただきますように、もちろん徐々ではございますが、堅実に中小
企業向けの融資の総額はふえておるということは申し上げられるかと存じます。
第六表は、五表で
ごらんをいただきました全国銀行の貸し出しのほか、その他の金融機関を通計いたしまして、全体として中小
企業向けの金融の状況はどうなっておるか、
最後の欄の「中小
企業貸出計」という欄を
ごらんをいただきたいのでございます。
つまり九月末で申し上げますると二兆二千六百五十四億になっておるというのがこの表の
ごらんをいただきたい趣旨でございます。
第七表は、いわゆる預貯金、これを銀行その他の金融機関に分けて機関刑に
ごらんをいただきたい、いわゆる預貯金の趨勢でございますが、ごく概括して申し上げますと、いろいろ波はございますが、ただいままでのところ、まあ
消費性向と申しますか、これはもちろん上ってはおりまするが、堅実な足並みをたどっておる。その結果、この預貯金の増加は当初
考えておりますように
相当堅実に増加の趨勢をたどっておるということが、概括でございまするが申し上げられると思います。
はなはだ雑駁で恐縮でございましたが、一応御
説明を終らせていただきます。