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参考人(松崎健吉君) 御指名を受けました、中政連の松崎でございます。
今国会におきまして、いろいろ
中小企業の問題につきまして熱心に御討議下さることは、中政連としても厚く御礼申し上げるところであります。
中小企業の
団体の
組織に関する
法律その他につきまして御
意見を申し上げるわけでありますが、
結論から申し上げますと、全面的に
賛成でございます。御
承知のようにわが国の
中小企業が、
国民経済的に非常に重要な地位を占めておりながら、その個々を見ますときわめて小さく、数のみ多くて、非常に慢性的な不安定な状況にありますことは、識者のすでに認めておるところでございます。今朝来各
参考人が口をそろえて申されておるところでございます。しかるに、こういった
中小企業の問題に対しまして、
政府の施策がどうであるかと申しますと、従来きわめて不徹底でございますと同時に、弥縫的であったのであります。特に終戦以来は、荒廃した祖国
経済の再興という
立場から基礎産業、あるいは重要産業偏重の
政策が一貫してとられました結果、反面
中小企業の
対策が、とかく片手落ちになった傾向があるやに思うのであります。ところが、先ほど来話が出ましたように、わが国の過剰人口によります失業群が、とうとうとして
中小企業の部門に流れ込んで参っております。特にすぐ前の
参考人が申されましたように、商業部門には特に過剰人口が流入しておるわけでありまして、これが
中小企業の不安定をますます激成しておると思うのであります。今日におきまして、なるべく早く
中小企業対策を根本的に打ち立てませんと、ますます不安定になりまして、これが国家全体の健全な
経済の発展、あるいは社会的な安定を阻害すると思うのであります。中政連が結成されましたのも、こうした
中小企業の不安定が、国家的に非常な大きな問題であること、この不安定を除いて国家の安定を来たすには、いかにしたらいいかということで結成されたわけでありまして、結成以来いろいろ
中小企業対策につきまして検討して参ったのであります。税制の問題につきましても、金融の問題につきましても、あるいは
社会保障の問題につきましても、その他あらゆる問題について鋭意検討して参ったのでありますが、その
一つの
政策を実行いたしましょうと
考えますと、必ず他の大きな
反対にぶつかる問題が多いのであります。そこで、基本的な問題であり、かつ、比較的他に御迷惑をかけることのない方法がないものかということで、いろいろ検討いたしました結果、この
組織強化の
解決によって、
中小企業の
過当競争を防止し、大
企業その他から受けておりまする不当な圧迫を排除する、こういうことによって
中小企業が自主的にみずからの力で自分を守る方法があるのではないか、こういうことに思い至ったわけであります。これがそもそも中政連が
団体法案を提唱いたしました基本的なねらいでございます。現在、幸いに
政府におきましても非常に御研究をされていただきまして、また、自民党、
社会党におきましても非常な熱意を持っていただきまして、すでに
法案は多少の変化はありましたものの、
衆議院を通過いたしまして、ただいま
参議院の
審議にかかっておるような次第でございまして、ここまで来ましたことは、実にわれわれ
中小企業の問題を
考えております者としては、ありがたく思うのでありますが、もうすでに
参議院の会期も数日に迫っておるのでありまして、なるべく早くこの問題を
解決していただきたいのであります。
中小企業の人員はあるいは千五百万あるいは千八百万といわれておるのでありますが、私
どもが昨年の統計局の数字を基礎にいたしましていろいろ推算してみますと、実に千九百八十万になるのであります。それは経営者の数をこめてでありますが、同じときに、農民の従
業者が千六百八十万という数字が出るのでありまして、
中小企業の従
業者の方が数的にはるかに多くなっておる。前には
中小企業が千五百万で、農民が千七百二十万といわれておったのでありますが、すでに逆になりまして、
中小企業の部面に人口がなだれ込んでおる実績を、数字から推察できるわけでありまして、これだけの人たちが実は
団体法案の成立を一日千秋の思いでただいま待ちに待っておるわけであります。すでに、
団体法の期成同盟に入っております者は一千万を突破しておるのでありますが、この人たちが、毎日々々国会の状況を新聞紙上、あるいはいろいろの報道によりまして、一喜一憂待っておる次第でございまして、われわれといたしましては、非常な責任を感じますと同時に、どういたしましても、今国会ですみやかに通していただくよう懇願申し上げる次第でございます。
そこで、私
どもが
団体法のただいまの
内容を十分検討いたしますと、これは
中小企業の全部が今まで熱望しておりました最低線の最も遠慮深い形で出ておるのでありまして、これに対してそう強い
反対論あるいは批判が出るとは思わなかったのでありますが、実はいろいろ批判が出まして、私
どもは意外に感じておるわけであります。私、今朝来十時からずっと
参考人の御
意見その他を拝聴しておったのでありますが、いまだに非常に大きな誤解もあり、あるいは誤解でありません、
反対もありまして、実に意外の感を深くしたわけであります。これらの点につきまして、一
通り私の卑見を申し上げたいと思うのであります。
まず、一番問題になっております
加入強制の問題であります。これは憲法違反論と、あるいはアウトサイダー
規制命令があるならば不要であると、こういった点が問題の重点かと思うのであります。憲法違反論につきましては、私
どもは働いている人の四割五分が
中小企業である。この四割五分の
中小企業が非常に不安定であることは、
国民経済が非常に不安定である、社会的にも不安定である。これを安定せしめるということは、公共の福祉である。そういった公共の福祉から、基本人権の一部を厳重な要件のもとに
制限することは、決して憲法違反ではないという
結論で
考えておるわけであります。またアウト・サイダー
規制の
制度があれば、加入命令は要らぬじゃないかという御議論に対しましては、先ほど他の
参考人も申し述べましたように、まあ
政府の命令によりましてアウト・サイダーに
規制命令を出しますよりは、まず中に入っていただいて、お互いに卓を囲んで討議した上、民主的にきめた方がより適当ではないか。また、業界の実際から申しましても、その方が適宜、適切にいろいろな
仕事ができるというふうに
考えるのであります。この点につきまして、もう
一つ他の
参考人が言わない点がございますのは、われわれは実は調整規程の実施だけにつきまして加入命令を
考えておるのでありませんので、あわせて
組合交渉をやる場合に、やはりアウト・サイダーーが中に入って、一本になって
組合交渉に当った方が、交渉自体が有効にいくのではないか。こういうふうにも
考えますので、ぜひ加入命令
制度は、ただいまの形で残していただきたい、こう思うわけであります。この適切な例がいろいろあると思うのでありますが、ごく最近私
どもが聞いておりますのは、鳩森小学校のまわりの旅館業の問題であります。御
承知と思うのでありますが、鳩森小学校の周辺に百数十軒の旅館ができたわけでありますが、いろいろ無理な営業を続けておられたようであります。ところが、売春禁止法も出まして、お互に自粛しようではないかというので話し合いを進めたわけでありますが、百数十軒のうち十三軒だけがどうしても話にのらない。で、他の話し合いのできた人たちで自粛決議をやったわけであります。ネオン・サインをやめて白い電灯だけにする。運転手がお客を連れて来ましてもチップはやらない。あるいは明らかにいかがわしいお客と思われる人にはお断わりする。こういった自粛決議をやったのでありますが、十三軒ばかりはどうしてもやらない。依然としてネオン・サインを掲げ、いろいろお客を入れておるために、そのアウト・サイダーだけ非常に
利益があって繁昌しておる。これを見た決議に加わった人たちは、話が違うと、われわれは非常にそれでは損だと、われわれはもうこんな話合から飛び出すというので、せっかくの自粛決議もまさにくずれんとしておるのであります。これは
一般の営業ではございませんが、これと同じようなことが各種の業種に存在するわけでありまして、こういった
実情から見まして、
強制加入制度はぜひ存置したいのであります。われわれ中政連としまして、
加入強制の問題を
考えましたのは、単なる机上の空論ではございませんで、各種の業種のいろいろな人たちの話を聞きまして、従来の長い苦い経験の結果、どうしても加入命令
制度を置いてもらいたい。これができなければ、せっかくの
制度もだめなんだと、画竜点睛として加入命令
制度を入れてもらいたいという要望がありますので、その結果として中政連の提案の中に
最初入れたわけでありますが、それが現在では非常にしぼられた格好になっているわけです。しかし、しぼられた厳重な要件のもとでも、ありますのは非常に大事なことでありまして、ぜひこの程度のものは残しておいていただきたいと思うわけであります。
次は、
組合交渉の問題でございます。この趣旨はすでにおわかりになっておりますように、今さら私が申し上げるまでもないのでありますが、ばらばらの
業者がばらばらに大産業その他とお話をしておったんでは、不利な
条件を押しつけられる。これは理の当然でございまして、こういうことのないように、お互いに手を結んで大
企業と円満裏に話をつければ、やや対等な
条件で話ができることになるというわけでありまして、この
制度を提唱したわけでございますが、
法律を見ますと、御
承知のように、
組合交渉をやります対象たる事項につきましても、
組合交渉の相手方につきましても、かなり
制限をつけておるわけであります。しかも、
法律で
組合交渉を
保護しております
規定といたしましては、応諾義務を掲げておるということと、交渉がうまくまとまります際に、主務大臣から勧告が出るというだけの二点でございます。それ以外にこれといった特典は与えておらないのであります。労働
組合の
団体交渉と御比較下されば十分におわかりと思うのであります。で、御
承知のように現在の調整
組合、あるいは事業
協同組合におきましても、
団体協約の締結は認められております。言いかえれば、行為能力としては
団体協約ができるのであります。その前提として事実的に
団体交渉をやることもまた、行為能力として認められておるわけであります。で、今回のはただ、ただいま申しました二点において従来の
法律と違うだけでありまして、この問題をそうやかましく取り上げるほどの問題ではないかと思うのであります。大
企業から見ますと、多少
団体交渉的な
組合交渉を受けますと、うるさいということはございますが、先ほ
ども話がありましたように、大
企業と
中小企業とは、共存共栄の間柄であるのでありまして、この程度の煩は
一つ忍んでいただきまして、
中小企業の円満な発達のために、おおらかな気持でこの
制度をお入れ願いたいと思うのであります。
次は、きょうもだいぶ出ましたが、大産業系列下にある優秀な
中小企業が、他の優秀でない
中小企業と悪平等化されて、その結果生産性向上とか、あるいは
企業の合理化とか、そういった
方面の熱意がにぶると、その結果ひいては輸出振興を阻害すると、こういった御議論が聞えたのであります。これにつきまして、私
どもは非常に意外に感ずるわけであります。で、現在ございます調整
組合でも、優秀な
企業が系列下に入っておりますが、その優秀な
企業が調整
組合に入ったからと申しまして、生産性の向上に対する熱意を欠いたりするということは、まずなかろうと思うのでありまして、また、悪平等化されるという事実も、おそらくはないと思うのであります。いまだそういう話を聞いたこともないのであります。と申しますのは、調整
組合の中にありましても、系列下に入っておるような事業は、大体優秀事業でございまして、その優秀事業はその実力上、
組合内部におきましても自然発言力を持っておりますので、不自然な悪平等化の
規定に
賛成するはずは、まずなかろうと思うのであります。こういった
関係で、その御心配もまず杞憂ではないかと思うわけであります。次は、これが非常にきょうも御議論になりました、消費者の
利益を不当に害するという
反対論であります。この点も非常に私たち意外に感じておるのでありますが、さっきも話がありましたように、商人というものは、お客をなくすことを最もおそれるのであります。その結果値段をつり上げるということは、そうできるものではないのであります。現に——商人ではありませんが、調整
組合が三十六業種についてできております。その調整
組合のできました以降、今まで値段の協定をやったものはマッチ一種類に限られております。それ以外は値段の協定ということは行われておらないのであります。それくらい値段の協定というものはむずかしいのでありますが、また、
中小企業の商人の場合を
考えますと値段を上げるなんということは、とても
考えられない。われわれにはデパートという大きな敵がある。また、地方の都市に行きますと、
生協が非常に発達しておる。こういった有力な競争者を前にして、われわれがどうして値段をつり上げていい気になることができましょうか。こういうことを異口同音に申しておるのであります。
また、これも先ほど出たのでありますが、消費者、あるいは主婦と申しましても、別に主婦というグループがあるわけではなく、また、消費者という別の階層があるわけじゃないのでありまして、消費者あるいは主婦の四割五分は、
中小企業者の主婦であり、
中小企業者なのであります。その半分に近い
中小企業者が、自分で自分の首をくくるような不利な価格のつり上げをどうしてやりましょうか。われわれは
業者の声をそのままここに申し上げるわけです。
なお、われわれ
考えますと、今回の
団体法の
規定をよく見ますと、価格につきましては、特に慎重な手を打っておりまして、たとえば調整規程を作ります場合にも、消費者に不当に不
利益を与える場合には認可ができないことになっております。また、価格の調整をやります場合には、さらに厳重な要件をつけておりまして、あらゆる手段を講じた最後のときでなければ、価格の問題に手をつけてはいかん。しかも、価格の問題に手をつけます場合には、公正取引
委員会の同意を要する。こういった非常な強いしぼり方であります。実際上、価格の調整ということは、非常に特殊な場合に発動されるのだろうと私は
考えるのであります。
そのくらいならば、この
規定を置く必要がないではないかと、さっき問題があったようでありますが、やはりこの問題は必要である。たとえて申しますと、これは商人にお聞きになった方がよくわかるのであります。これも商人の受け売りでございますが、ある商人がおとり商品を出しまして、非常に安い価格で乱売する場合、これが例になりまして波及するおそれがありますので、そういうことのないように、おとり商品が出ました場合に、これの最低価格を協定するというようなことは、まず
考えるところじゃないかと思うのであります。
その次は、
団体法ができますと、
組合の
ボス支配が起る。こういうことが先ほ
ども問題になったのでありますが、私
どもは今まで
中小企業が非常に因襲的でありまして、長いものには巻かれろという気持がある。一方朝から晩まで非常に忙しい
生活をやっておりますので、
組合運営に対して熱意がないために、今までの
協同組合におきましても、ボス発生の温床が確かにあったと思うのであります。しかし、最近われわれの見るところでは、
中小企業全般が非常に自覚の度を進めて参っております。しかも、
法律を見ますと、ボス発生にならないように、あらゆる用意周到な
規定が置かれておるのであります。たとえば商工
組合においては、特定の
組合員のために
仕事をしてはならん。こう善いてございます。また選挙権あるいは議決権は、出資額の多少にかかわらず一
組合員一票である。また、調整規程は認可を要しますが、その認可基準として不当に差別的でないことという認可基準が加えられておるのであります。こういったふうに、あらゆる点においてボスが発生しない周到な
規定が置かれておりますので、
組合員が自覚いたしまして
組合運営に当りますれば、ボス発生は起らない。こう
考えるのであります。いかに
規定をうまく作りましても、
組合員が自覚いたしませんければ、だめでありますが、私は最近の
中小企業者の自覚の度が進んでおります状況を見表して、ボス発生のおそれは、例外としてはどうかわかりませんが、全体的な傾向としては心配は要らんと
考える次第であります。
次は、官僚統制だという御議論があるようでありますが、われわれ中政連といたしましては、官僚統制を実は最もきらっておるのであります。それは業界で官僚統制を最もきらっておるからであります。従って、中政連の昨年末に出しました要望書の中にも、官僚統制を排除する
一つの特別な項目を入れておるくらいであります。この
法律をよく見ますと、なるほど役所の命令とか、あるいは役所の認可という事項が非常に多いのであります。しかし、これは
法律技術上の問題でありまして、やはり
業者にいろいろな束縛がありますが、これを押し切って行き過ぎになった場合に、公益代表として旗振りの
仕事がどうしても必要だ。その場合やはり役所の
立場を活用する必要があるのでありまして、これは非常に好まないのでありますが、どうしても必要な措置として、われわれは認めざるを得ないのであります。ただこれがあまり行き過ぎになりますと、官僚統制的なにおいが出て参りますので、民主的な
審議会
制度によって、その官僚統制になるおそれをできるだけないようにする。こういうわけで、われわれは調停
審議会あるいは安定
審議会の活発な運営を期待しておるわけであります。
次は、戦時
経済の復活だとか、あるいは統制
経済の復活だというようなことが、だいぶ言われるのでありますが、私は、これはまことに、ばかげたことだと思う。項目といたしましても最後に持ってきたわけであります。と申しますのは、
法律をずっと御通覧下されば、すぐもうおわかりの
通り、この
法律はどこまでも
組合の自主的な
立場で、
組合がみずから動くときだけに働くのでありまして、国家が国家目的のために一方的にコントロールするというものではないのであります。
資本主義あるいは民主主義のワク内におきまして、どうも行き過ぎになりますために、かえって公正取引が抑制されるというような場合に、それを調整すなわちアジャストする
意味で、最小限度の
仕事をするというわけであります。全面的に統制
経済になるようなことは、とうてい
考えられないわけであります。
なお、ついででございますが、
団体法が
中小企業の問題として非常に重要でございましても、これが
万能薬ではないと、この点につきましては今まで
参考人その他のお話しになりました点と、私も同感でありまして、申し上げる必要はないのでありますが、われわれ、先ほど申しましたように、いろいろな施策を、できるなら一緒にやりたいのでありますが、他に御迷惑のかかるような施策では、すぐ実現しない。最も
反対の少なかろうと思うこの
法律の問題で、
業者の自主的な運営を願った
組織問題を取り上げたわけでありますが、この
団体法が幸いに国会を通過させていただくならば、次はぜひとも金融是正、
社会保障、その他全般の問題につきまして、引き続いてできるだけの施策を講じていただきたいということを念願するわけであります。
以上一
通り申し上げましたが、非常に短時間でございますので、意を尽しませんが、一応の説明を終らしていただきます。