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政府委員(
松尾泰一郎君) お手元に
輸出入取引法改正要綱が配られておりますので、それをごらん願いたいと思います。この
改正要綱を読みながら簡単に御
説明を申し上げます。
第一は、輸入
協定の締結事由の
制限の緩和であります。「輸入
業者は、次の各号の一に掲げる事由がある場合において、それぞれ各号の事由を除去するため必要あるときは、輸入に関する
協定を締結することができることとすること。一、輸出国における輸出の
競争制限、その輸出国からの他の外国の輸入の
競争制限、
わが国の輸入
過当競争等の原因により、国際的
取引条件等に比して著しく不利な輸入
取引条件が課せられ、またはそのおそれがあること。二、通商
協定の
実施のため、貨物の輸入が必要である場合に、その貨物の価格が高いか品質が異なるため輸入が困難となり、またはそのおそれがあること。三、外国における資源開発促進のため、その開発によって
生産される貨物の継続的な輸入を共同して保障する必要があること。」
この一、二、三のうち、二は
現行法
通りでありまして、一号は現在も若干の規定がありますが、後ほど御
説明申し上げますように、若干
改正になりましたことと、三号が新しく今回つけ加えられたのであります。
まず、第一号を御
説明を申し上げますが、
現行法によりますと、相手国の輸出取引における
競争が実質的に
制限せられておるとか、または輸入取引における
競争が
過度に行われることによりまして、不利な輸入
取引条件を課せられる場合でありましても、それは国内の
関係事業者または
一般消費者の
利益を著しく害するようなときでなければ、この輸入
協定の締結が認められないことになっておるのであります。しかしながら、最近におきます輸入取引の
現状なり、あるいは
政府による直接的な輸入管理が順次緩和されまして、いわゆる外貨資金割当制から自動承認制等への移行が進められる趨勢に伴いまして、輸入取引における自主的協調体制の
確立が順次急務となって参りつつあるような情勢にかんがみまして、
現行法のごとき厳重な輸入
協定締結事由の
制限は、やや
事態に即応しませんのみならず、輸入取引秩序の
確立、輸入貿易の健全な
発展にも支障を生じておるのではないかと思うのであります。従いましてかような情勢に対処しまして、かつ、
わが国内の
関係事業者、または
一般消費者への
影響も考慮しながら、少くとも国際的
取引条件に比して不利な輸入
取引条件が課せられる場合は、これを改善するために輸入
業者が
協定を締結し得るようにしたいというのが、第一号の
趣旨であります。ここに、輸出国における輸出の
競争制限、または
わが国の輸入
過当競争というのは、もちろん
現行法でも同様な表現になっておるのでありますが、
一に、原因の
一つとして入れました「その輸出国からの他の外国の輸入の
競争制限」と申しますと、若干わかりにくい点もあろうかと思いますので、
説明を申し上げますと、たとえばアメリカからくず鉄を日本が輸入するその場合におきまして、イギリスが一元的に独占的の機関でもってアメリカからのくず鉄の買付をやっておる。こういうふうな場合は、いわゆる日本の
競争国が独占的な、あるいは一元的な買付行動をやっておる。こういう場合を予想しておるのであります。また、たとえばエジプトの綿花を日本が輸入する場合におきまして、共産国諸国が一元的な綿の買付方をしている。こういう場合に、日本も対抗的に輸入
業者が
協定を締結する必要があるという場合は、新しくその輸出国から他の外国の輸入の
競争制限という表現を入れたのであります。
二号は、先ほど申しましたように
現行法
通りでありますので、
説明を省略します。
第三号でありますが、最近におきます外国の資源開発の進展にかんがみまして、資源開発に資するための
協定を新しく認めんとするものでありまして、御存じのごとく資源の開発というきわめてリスクな
事業を行おうとする場合、まずその貨物が継続的に需要されるかどうかという保障が必要とされるわけでありまして、
わが国の
関係の輸入
業者が長期にわたりまして、その貨物を輸入することを
協定をしたい。さらに、その
協定を補完するために、必要な限度におきましては、他の船積地からの輸入は、同種もしくは類似の貨物との
調整を行う
協定を
実施いたしまして、その資源の開発に協力する体制を整えるために輸入
業者が
協定しようということを認めんとするのが、第三号の
趣旨でございます。
次に移ります。「第二、アウトサイダー
規制命令にかかわる事務の処理、
通商産業大臣は、アウトサイダー
規制命令の円滑な
実施をはかるため必要があると認めるときは、その
命令にかかわる事務の一部を輸出
組合、輸入
組合または輸出入
組合に処理させることができることとすること。なお、との場合において、
通商産業大臣は、その
組合の役員が
命令にかかわる事務を不当に処理した場合等には、これを解任することができることとすること。」
現行法におきましては、輸出
組合の
調整事業を補完をいたしまするいわゆる
規制命令を出します場合には、いわば
政府が直接に輸出
業者に対して、輸出の承認を与えるというごとく、いわゆる
政府が直接管理をしておるのであります。
現行法の二十八条の第二項におきましても、輸出
業者が
通商産業大臣の輸出の承認を受くるべきものとされておるのでありまして、この承認に関する事務を処理するため、特に必要がある場合には、
通商産業大臣の
指定する輸出
組合を経由して承認申請に関する書類を
提出すべきものとなっておるのであります。現在までに日本自転率輸出
組合、あるいは、日本生糸輸出
組合、日本繊維製品輸出
組合、日本冷凍食品輸出
組合、日本雑貨輸出
組合の五
組合が、それぞれ
関係の貨物に関する承認申請に関しまして、いわゆる経由
組合に
指定をされておるのであります。このような経由
組合の
制度は、輸出取引秩序
確立のためには、
政府による直接管理のほか、
業界における相互監視
機能を活用することが望ましく、かつ効率的であるという考えに基くのでありまするが、最近における輸出
組合の
機能の
強化と、各種の
協定活動を活発に営むようになりました
現状にかんがみますと、この経由
組合の
制度を一歩進めまして、単なる書類の経由事務にとどまらず、アウトサイダー
規制にかかる
相当の事務を抽出
組合に処理させることができるようにしたいというのが、この
改正の
趣旨であります。輸出
組合に処理させる事務の範囲は、具体的に政令で定められるのでありますが、たとえば書類の受付、交付、もしくは通知または確認事務のほか、
通商産業大臣が承認の可否を形式的かつ最終的に決定する際の実質的な
内容審査事務を合せて行うこととなるであろうと思うのであります。これらの事務を
関係の
組合に処理させるというのは、他の
中小企業団体法等でも同様な体系になっておるのであります。
なお、この
組合のなした
行為に対しまして不服のある者は、もちろん不服の申し立てができる規定も設けられております。なお、かようにしまして、
組合に事務の一部を取り扱わせます
関係上、
組合の役員がもしこの事務を不当に処理したり、あるいは
組合員たるにふさわしくないような非行があった場合には、解任することができるようにしたのであります。これはまた解任をせずに、この
組合自体に対する事務処理の撤回を行うというようなことも考えられるかと思うのでありますが、一たんこの
組合に事務の処理をやらすことになる以上、この事務処理の行政的な必要にかんがみまして、その撤回を行うよりも、当該役員を解任するという方が、より適切ではなかろうかということで、こういう規定にしたのであります。
次に、第三に移ります。「第三
指定機関、輸出貨物の国内取引に係る適法な共同
行為によりその貨物の一元的な講入又は販売の機関が
設立されており、かつ、その機関が次の各号に該当する場合であって、しかも輸出取引の秩序の
確立又は輸出貿易の健全な
発展に対して生じている著しい支障を除去するため必要があり、かつ、適当であると認められるときに、政令でその機関を
指定した場合、輸出
業者はその
指定を受けた機関(以下「
指定機関」という。)から講入したものでなければ、その貨物を輸出してはならないこととすること。一、輸出
業者がその購入又は販売の機関から購入して輸出している額がその貨物の総輸出額に対し
相当の比率を占めていること。二、その購入又は販売の機関が十分な経済的基礎を有していること。三、その購入又は販売の機関が
指定機関として
指定されたい旨の申出をしたこと。」
「2
指定機関の業務の方法、
事業計画等業務に関する重要な事項について
通商産業大臣及び当該貨物についての
主務大臣は
所要の監督を行うこととすること。3、独占禁止法の規定は、
指定機関の行う正当な
行為には、適用しないこととすること。」
まず第一項でございますが、これは輸出
業者と生
産業者、または販売
業者との間に特別な必要のある場合は、一元的な購入または販売の機関の設定をいたしまして、そこから購入したものでなければ、
特定の仕向地に、
特定の種類の貨物を輸出してはならないという旨を定める規定であります。御存じのように
現行法によりましても、いろいろ輸出
組合等で
調整規定を作りまして、この輸出価格の安定等につきましてはかなり活発な活動ができておるのでありますが、なお、最近の事例なり、
現状から見ますると、依然としていわゆるリベート
行為が裏面に行われておりまして、輸出価格の維持安定ということは、非常にむずかしいような場合が多いのであります。従いまして、この輸出
業者と生
産業者との中間にあります機関を認めよう、といいますのは、申し上げるまでもなく、この輸出
業者の海外輸入
業者に対しまする、いわゆるリベート
行為を防止しまして、輸出取引の秩序を
確立するということが
目的でありますし、また、輸出
業者のリベート等の源になりますところの生
産業者等からの買いたたきによる輸出貨物の安値購入を防止しようというのが
趣旨なのであります。なお、このような一元的な購入または販売機関は、輸出
業者、生
産業者、販売
業者等
関係事業者の自主協調体制があって、かつその協調体制によって定められている
一定購入または販売機関から申出があった場合に、しかも輸出取引の秩序の
確立または輸出貿易の健全な
発展に対して生じている著しい支障を除去するため、必要かつ適当と認められるときにのみ、政令で貨物の種類ごとに
指定機関たる法人を
指定しようとするものであります。決して
政府が一方的独断的に
指定するものではないのであります。
そこで、まず輸出貨物の国内取引における適法な共同
行為と申しますと、現在の
輸出入取引法あるいは現在の
中小企業安定法、あるいは輸出水
産業の振興に関する
法律、それぞれの規定によりまして、あるいは輸出
業者相互間、あるいは輸出
業者と生
産業者との間、あるいは生
産業者または販売
業者相互の間の共同
行為でありまして、今申しますような
法律によりまして、認可を受けて認められた共同
行為であるわけであります。従いまして言いかえてみますと、まず
業界の共同
行為がありましてそういう機関が存在しておる、それでその機関から申し出があった場合に、役所側でここに書いておりますようないろいろ判断のもとに、適当かつ必要と認めて
指定をする、こういう体制であるわけであります。で、一号は別段御
説明申し上げるまでもないと思いますが、要するにその機関から輸出
業者が
相当の比率のものを買っていくということが、まず必要の条件と考えるのであります。言いかえてみますると、結果的には輸出
業者にその機関から購入するということを強制することになるわけでありますが、そういうことを強制することになりましても、全輸出
業者に対しまして、著しい不
利益とならないほど
業界の多数意思が反映されているという場合に限る
趣旨をもちまして、
相当の比率のものがこの
指定機関から買われているというふうに規定をしているのであります。
第二号は、十分な経理的な基礎を有していること。こういうふうな独占的な
事業を営みますので、もちろん商品の種類によりまして、経理的基礎というようなものにつきましても、かなり差はもちろんありましょうし、少くともそういう機関で多額の商品の売り買いをいたしまするので、十分な経理的基礎を有しておるということは
一つの
要件として必要と考えたのであります。
第三号は、先ほども申しましたように、
指定機関の側から申し出があって、それを
政府が受けて立つという体制であります。
その次の二項の監督規定でありますが、今も申しまするごとく、こうして
指定される機関は、かなり独占的な機関にするわけです。生
産業者の方に対しましても、輸出
業者の方に対しましても、かなりの
影響を持つものであります
関係上、必要な監督をする必要があるということで業務の方法、あるいは
事業計画その他たとえば役員の選任、解任あるいは定款の変更、
利益金の処分等につきましても、認可制にして監督を十分にいたそう、こういうわけであります。
なお、これは、
生産と貿易と両方にかかりますので、通商を所管する
通商産業大臣、貨物を所管するいわゆる
生産担当の大臣との共管という体制をとったのであります。もちろん、この業務方法書その他につきましては、認可に当りまして
公正取引委員会に協議することは当然であります。なお、この
指定機関の
指定に関しまする政令の制定につきましては、輸出入取引
審議会に
諮問することになっておるのであります。
第三項は、いわゆるこういう独占機関でありますので、独禁法の適用を除外をしておるのであります。もちろん、
指定機関の行う正当な
行為について、独禁法の除外をいたしておるのであります。
以上簡単でございますが、
説明を終ります。