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1957-10-22 第26回国会 参議院 商工委員会 閉会後第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十月二十二日(火曜日)    午前十時三十七分開会     —————————————   委員異動 十月十六日委員大谷贇雄君辞任につき 、その補欠として重宗雄三君を議長に おいて指名した。 十月十七日委員宗雄三辞任につき 、その補欠として大谷贇雄君議長に おいて指名した。 十月二十一日委員小瀧彬辞任につき 、その補欠として高野一夫君を議長に おいて指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     近藤 信一君    理事            青柳 秀夫君            西川弥平治君            阿部 竹松君            相馬 助治君    委員            小澤久太郎君            大谷 贇雄君            小幡 治和君            木島 虎藏君            古池 信三君            高橋進太郎君            高野 一夫君            土田國太郎君            岡  三郎君            島   清君            松澤 兼人君            河野 謙三君            梶原 茂嘉君   衆議院議員            小平 久雄君            春日 一幸君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    通商産業大臣  前尾繁三郎君   事務局側       常任委員       会専門員 小田橋貞壽君   説明員       通商産業       政務次官 小笠 公韶君     —————————————   本日の会議に付した案件 ★派遣委員報告中小企業団体法案内閣提出衆議院送付) ○中小企業団体法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案衆議院提出)     —————————————
  2. 近藤信一

    委員長近藤信一君) これより委員会を開会いたします。  まず、前回以後の委員異動について御報告申し上げます。去る十月十六日、大谷贇雄君辞任されましたが、翌十七日再び委員に復帰されました。また、昨二十一日、小瀧彬君が辞任され、後任として高野一夫君が委員に選任されました。以上御報告いたします。     —————————————
  3. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 次に、先日委員長に御一任をいただきました福岡における現地調査会派遣委員の選定につきましては、その後各派の推薦に基きまして青柳秀夫君、土田國太郎君、相馬助治君、それに私の四名が現地におもむくことになりましたので、御報告をいたします。  それではこれより議事に入ります。  まず、去る十月十一日に名古屋において行われました現地調査会に関し、派遣委員の御報告をお願いいたします。
  4. 阿部竹松

    阿部竹松君 十月十一日に名古屋商工会議所における中小企業団体等法案に関する現地調査報告をいたします。  今回の委員派遣は、名古屋市における中小企業団体法案等に関する現地調査会出席するためでありまして、派遣委員は、近藤委員長初め大谷贇雄君土田國太郎君、梶原茂嘉君と私、それに松澤兼人君が現地から参加されました。現地調査会は去る十月十一日名古屋商工会議所で開催されました。意見陳述人として愛知県中小企業等協同組合中央会会長江崎冨次郎君ほか十三名の方々の御出席を求めましてその意見を聴取したのであります。各陳述人はそれぞれの立場においてきわめて熱心に御意見の開陳があり、われわれ委員側からも種々の質疑を行なったのでありますが、それらの内容は広範にわたりますので、詳細申し上げるのは省略させていただき、そのかわりここに当日の速記録がございますから、それを会議録に掲載していただくよう委員長においてお取り計らいをお願いいたしまして、詳細はその会議録をごらん下さるようお願いしたいのであります。  最後に、今回の現地調査会開催に当りまして、御協力を賜わりました名古屋通商産業局長石井由太郎君を初め局の方々、あるいはその他の方々関係者各位に対して深く感謝の意を表しまして、私の報告を終ります。以上であります。
  5. 近藤信一

    委員長近藤信一君) ただいまの御報告に対して御質疑がございましたらお願いいたします。……別に御質疑もなければ、次に前回に引き続き、中小企業団体法案中小企業団体法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案を一括して質疑を行います。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  6. 小幡治和

    小幡治和君 本法案質疑につきましては、今まで同僚各位から相当各条項にわたって質疑がありましたので、われわれといたしましても、その中において特に、さらにただしておきたいという点を、ある程度重複するかもいたしませんが、御質問いたしたいと思います。  まず、この団体法を通読いたしまして、非常に困難な法律案になっておるように思っております。すなわち工業商業サービス業、これらすべての性質の異なるものを一本にして、この法律にまとめておる。あるいは従来の協同組合法、また安定法、そういうようなものも全部ここにたたき込んで一つ法律にいたしておる。そういうようなわけで、いろいろ突っ込んでいきますと、疑義も生ずるわけでありますが、この間からの政府お話といたしましては、とにかく非常に急いでこの法律を作りたいということをいっておられます。また社会党人たち質問を拝聴いたしますると、一連の社会党が提案した法律案が出ておる。それらを一括して審議すべきなので、何もこれ一つだけを取り上げてあわててやる必要はないじゃないか、というふうな御質問もあって、それに対する御答弁もあったように存じますが、私はまず第一に、政府としてなぜこう急いで臨時国会に出さなくちゃならぬかというような、この気持というものが徹底されてないということでは困ると思うのであります。  私自身の考えといたしましては、社会党の方からいろいろたくさん出ておる案というものと不可分じゃない、要するにそういう問題は一つ一つ積み上げていくべき問題であって、中小商工業者に対する根本の一つ基礎として、この団体法というものが早く与えられなくちゃならない。今の金融状況というものを見ていきますると、金融の非常な引き締めによりまして、中小といいましても、むしろ小商工業者人たちが非常に苦しい状況に立ち至っておる。これを、それでは金融の面で救ってやるというふうなこともよく言われますけれども、われわれが実際実態を見ていきますと、幾ら政府が今度は約百七十億、またその年末金融ということで手配すると言いますが、そういうような手配されたものを、ほんとうの零細なそういう企業、あるいは商店の人たちが実際利用しているかというと、実際店先へ行ってその金を借りようとしたって絶対に借りられない。担保もなければ、保証人といっても保証人も破産に瀕している保証人くらいしかないというようなことで、金融でめんどうを見るといっても見られないようなところまでいっておるのがいわゆる中小商工業者実態であると思います。それはなぜかというと、結局お互い共食いをして、そうして血みどろな戦いをやっておるからなんで、それを直すためには、やはり結局共食いをやめて、ともに共存していく一つ努力というものをやる場を与えてやらなくちゃならぬ。それには法律の場というものを与えてやらなくちゃいかぬということで、この団体法というものが、いわゆる中以上の中小商工業者より、むしろ零細なる商業者、あるいは工業者から非常な期待をもって、早く出してもらいたいという要望をされておるというふうに私は見ておる。今日金融引き締めがますます強くなっていくときに、そういう人たち共同の場を与えて、しっかり自分たちの仲間でけんかしないで、そうしてそこで話し合いをしてこれを切り抜けていけという意味において急ぐのじゃないかというふうにわれわれは思っておるのでありますが、まずそういう面についてなぜ急いでこれだけ一つ取り上げてこの臨時国会で出さなくちゃならぬという気持を持ったのかということが、はっきりそこに解明ざれなければならぬ。それを政府にまず一つお伺いしたいと思います。
  7. 小笠公韶

    説明員小笠公韶君) この法案成立は一日でも早い方がよい、こういう考え方をいたしておりますのは、今いろいろとお話のあったような事情からきておるのであります。従いまして日本中小企業対策としていろいろの手を打って参らなければなりませんが、その中でも組織強化をはかっていく、こういうことがいろいろな施策の大きな共通的な前提になる、こういうような見方をいたしておりますので、その共通的前提になる組織強化法律を急いだ方がよい、特に最近の経済情勢等を考えますとそういう気持がさらに強くなって参ります。こういうふうに考えておるわけであります。
  8. 小幡治和

    小幡治和君 大体私の意見と同じですから了承いたしますが、第二にそれではそういう急いで出すこの団体法というものの利益点は一体何かという問題について一つお尋ねしたいと思うのです。  まず、商業は別といたしまして、中小企業中小工業におきましては、現在協同組合法あるいは安定法があってそれぞれ調整組合を作っておる。で、本案の付則第三条を見ますると、「旧安定法による調整組合又は調整組合連合会であって、新法施行の際現に存するものは、新法施行の日においてそれぞれ新法による商工組合又は商工組合連合会になったものとみなす。」要するに現在安定法に基く調整組合というものは即新法商工組合になるというように言われておりますが、しかしいろいろ見てみるのに、安定法における調整組合のまず設立条件というものと、それから今度の団体法における商工組合設立条件というものは違っておるように見受けられる。で、私はその違っておる点が、この団体法商工組合設立条件というものは非常にきびしい、それが抽象的に書かれてあるということなんで、どの程度に一体これは認めるのかということが疑問であると思います。これについての細目はこの間の同僚諸君質問によって、政令によってきめるということでありますけれども、そこですなわちここの付則によってそういうように変っていきますが、しかし条件が違っておる。それをのんでやっていくわけですが、私としては設立条件が少しきびし過ぎやせぬか、もっとこれをもう少し、解釈の問題ですが、たくさん作らしてそうして共同の場で一つ大いに共同努力をせしめるというふうなことを考えていくべきじゃないかというようなことが第一です。  それから第二点は、それではこういうようなきびしい設立条件のもとにおいて現在の困窮しておる現状というもの、これは政府の方でもおわかりと思いますが、そういう現今の程度においてこれを不況条件と一体みなし得るのかということ、その二点。  それからもう一つは、工業のこういう安定法というものがあって、調整組合でいろいろなことをやっておりますが、それではいけないので今度団体法商工組合というものを作るとすると、一体現在の工業として、今度の新しいこの団体法では安定法よりもどこが一体得になるのか、どこが一体利益点をのか、工業として。その三点を一つお伺いいたしたいと思います。
  9. 小笠公韶

    説明員小笠公韶君) まず第一に、現在の中小企業安定法に基きます組合関係、いわゆる工業——政令によって指定された業種工業組合について、安定法によって調整組合が作られる、今度の法律案によりまして作られる、同じく工業について商工組合が作られる場合、まず第一にこの両者を比較する場合の第一点の御質問は、いわゆる要件が違わないか、設立要件が同じ工業につきましても違わないかということであります。  この点につきましては、御承知の通り中小企業安定法は第一条において、「過度競争により当該部門の製品に関する国内取引又は輸出貿易の円滑な運行が阻害されており又は阻害される虞がある場合に、適切な需給調整その他取引の安定を確保するための措置を講ずることができるようにし、」と書いてあるのであります。で、本法案におきましては第九条に規定いたしておりまするように、「一定の地域において一定の種類の事業を営む中小企業者競争が正常の程度をこえて行われているため、その中小企業者事業活動に関する取引の円滑な運行が阻害され、その相当部分経営が著しく不安定となっており、又はなるおそれがある場合」、こういうふうな表現をいたしておるのであります。これは、過度競争というふうなことを安定法では強く言っておりまするが、団体法におきましては正常の程度をこえた競争という表現を用いておるのであります。で、この両者につきましては、いずれにいたしましても競争をやり過ぎる、いわゆる行き過ぎ競争によって当該部門経営が不安定にさらされておるということに相なっておるのであります。従いまして共通的に過度競争というものが土台になりまして、その業種経営が不安定になり、またなるおそれがある場合、こういうふうなことにおいては共通なのであります。ただ違いますのは、今度の九条の規定によりましては「相当部分経営が」というふうに限定を与えておるのであります。これは安定法の第一条の規定いたしておりまする趣旨におきましては、それによりまして円滑な運行が阻害されており、適当な需給調整その他取引の安全を確保するという必要がある、という事実は、裏から言えば当該業種における相当部分のものがいわゆる過度競争にさらされて、その経営の安定が阻害されておる、こういうことであるのであります。表現は若干違っておりまするが、大体同一の条件であると考えていいと思うのであります。従いましてこの安定法の場合は政令によって指定されておる工業にのみ適用がある。しかるに今度の団体法におきましては広く中小企業というものに共通的に通ずる、特に商業部門工業部門とを一緒にして共通的な適用を見るということに相なりまするので、表現がより抽象的になったのでありますが、実質的には考え方は同じでございます。  第二の、しからばこの安定法による調整組合団体法案による商工組合工業について考える場合にどれだけの相違が出てくるかという点でありまするが、まず工業につきましては、団体法におきましては一切の工業についてこれが適用されるということになり、片一方は政令に指定された業種のみに限るという相違があることは申し上げるまでもありませんが、組合機能的に見てどういう相違が起ってくるかということが次の問題になると思うのであります。  この点につきましては、団体法一つ特色は、その機能として行いまする事業の中に、事業内容におきましては大体安定法と同じでございますが、第一点におきまして、一つ機能上の相違は、調整事業一定要件のもとにおいて不況克服のために組合制度を活用するに当って、一つ機能としていわゆる組合協約組合交渉という手を新しく認めることによって組合外に対して発言の機会を持たす、いわゆる調整事業の外円的事実に一つの手を伸ばそうという一つの試みができておることが第一点。  第二点といたしましては、この法律案の構成におきましては、安定法によりまする調整組合におきましては、原則的に当該指定業種自主的調整中心といたしております。自主的調整によってその不況克服をはからせる、しかるにその自主的調整のみをもっては不況克服ができない、こういう事態に対処いたしまして、安定法第二十九条ないし二十九条の二という規定によって、政府の支援によっていわゆる員外規制命令によってこの目的を達成させんといたしておるのであります。で、団体法案におきましては二つの考え方を入れているのであります。広く中小企業と申しましても大中小の各規模事業の並列する産業分野もございましょう、また中小規模でもっぱら構成されておる中小企業部門の業界もあるのであります。こういうような事態におきまして、今回の団体法案におきましては、まず自主的な調整によって不況克服をはからせる建前においては全く同様でございまするが、もしも自主的調整によってその目的を達成するのに、ごく一部のものが員外者であるということによってその目的が達成しがたい場合に、五十五条の規定によって自主的調整を行わせる援護として加入命令制度をしいた、政府組合に入らないごく少数のものに対しまして組合に入ることを命じ、入った上におきましてお互い話し合いの上において自主的な調整をとらしていこうという考え方を第一にとったのであります。この点は安定法による調整組合と違うのであります。しかし中小企業業種によりましては、その企業規模のいろいろな状態がございますので、必要あれば五十六条の規定によりまして、安定法における思想をそのまま踏襲いたしておるのであります。ここはいろいろ御議論があるところだと思うのでありますが、いわゆる民間団体はあくまでも自主的な調整にのみまかす。自主的調整によってその目的を達成し得ないような場合には、特に政府命令をもってこれを補完していく。論理的に申しますれば、現在の安定法による調整組合が二十九条命令、あるいは二十九条の二の命令が出た場合においては、組合組織は一応停止されたにひとしいと考えるべきだと私は思うのであります。現実の運行上そうはなっておりますが、いわゆるそれによって行い得る行為は政府行政命令が動いておると考えるのが法律的に妥当だと考えるのであります。そういうような情勢に対処いたしまして、先ほど申し上げましたような五十五条の規定加入命令というような形において自主的に不況状態克服せしめるという制度を新しく持ち込んだということが考え方としての大きな相違の第二点だと思うのであります。  第三点といたしましては、こういうふうないわゆる考え方相違をもたらしましたので、従来にも比しまして調整事業の運営に関しまして各般の点におきましていわゆる公平な、公正な活動が確保されるような規定を各部門に認めて参った——認めて参ったというよりも、それだけいろいろな制約が加わって参ったということが言えると思うのであります。こういう点が安定法による調整組合団体法による商工組合との一つの大きな相違ではないかと思うのであります。第四点といたしましては、私から申し上げるまでもなく安定法におきまする調整組合工業者の作る調整組合におきましては調整事業を行う目的をもってのみ調整組合を作るのでありまして、経済事業を認めておりません。今度の商工組合におきましては調整事業遂行と合せて、いわゆる共同仕入れとか共同保管とか、いろいろの経済事業一つ組合で行い得る道を開いておるのであります。これはもちろん調整事業遂行を支援すると、こういうような趣旨においての経済事業が主力になるべきであろうとは考えまするが、ここにいわゆる調整共同経済事業との兼営によって調整事業、特に中小企業不況克服に一歩有利ならしめようというような考え方をいたしておるのであります。大体以上申し上げましたようなところが両法案相違ではないかということでございます。  御質問の第三点につきましては、しからば、こういうふうな団体法がもし成立しました暁には、どれくらいの工業者につきまして組合ができる予想を持っておるか、こういう趣旨のお尋ねであったかと思うのでありますが、もちろん現在安定法によって成立いたしておりまする調整組合はそのまま新法に移行いたします。その他の面につきましてはその業態の実情、その意思というものを中心として成立されるものでありますから、今幾つできるかということは申し上げにくいと思いますが、私は相当数商工組合成立するものと予想いたしておるのであります。なぜかと申しますと、日本中小企業の、特に中小工業の全体を一般的に見ますると、安定法に指定されておる業種とほぼ同様な状態にある業種が相当多い。これが今日中小企業対策のいわゆる確立を急いでおるというか、やかましく言われておる理由であろうかと思いますので、相当数のものができるのではないか、かような予想をいたしておるわけであります。
  10. 小幡治和

    小幡治和君 大体工業関係におきましては、安定法条件は、大体文字は違うが同じだということですが、それと業種指定や何かがないのですから、非常にたくさんの業種が入り得るということで、相当工業関係においては大きな利益というふうなことを考え得るという結論になると思いますが、しからば、それじゃ商業の問題で、商業の方は今こういう一つ法律をバックにした力ある団体を作っていくというふうな事例がないのですから、特に今度の団体法成立を要望しておるのは、工業というよりも、むしろ商業者の方が非常に多いというふうに聞き及んでおります。そういう面からこの団体法通りますれば、商業者がこの商工組合設立認可申請を一斉にしてくるという公算というものが非常に大きいと思うのですが、さてそれじゃ今日の状況下において商業者がそういう設立認可申請を出してきたときに、今日のこういう不況現状、これは業種によっても違うでありましょうが、まあしかし大体の見当から見てやっぱり相当認可せざるを得ないような情勢に立ち至ると私は思う。その点どうかということが一つと、もう一つは、さてそれでは商業がこの商工組合を認可された場合にどういう一つ利益がそこに出てくるかということを考えてみますると、消費者との関係に直ちに入ってくるというふうに私は思われる。第十七条にいろいろ書いてありますが、そのときにまず消費者層として一番心配なのは、環境衛生法事例を見るまでもなく、すぐこの第十七条二号の販売価格の協定が行われて、相当値上りしてくるような状況になるのじゃないかということを非常に心配いたしておるわけでありますが、しかし、それにしても、第二号では、前号に掲ぐるいろいろな制限を実施した後においてこれは考えられると思いますが、一体商業においてこの一号に掲ぐるような制限というものを実施し得る余地があるのかどうか、その点一つお伺いしたい。実際いろいろな商業がやっておって、一号に掲ぐるものがあまりないということなら、すぐに第二号の価格問題に突入してくるのじゃないかというふうに思われるわけであります。工業の方は私が見まするのに、大体第一号の制限というものはどこでもやっておる。工業の方は少し困ってくれば大体今までの安定法に基くやつでもやっておるわけなんで、そうなると、すぐまたこれも工業の方も価格の問題に入ってくるというふうなことになると思います。そこが今の消費者人たちが、工業といわず特に商業等において前号に掲ぐる制限というものは、大体工業はやっておるのだ、商業としてはやる余地がそんなにないということになると、すぐ価格の問題に突っ込んでくるようになって、すぐ価格値上げということになるのじゃないかというふうな心配が出てくるというのは当然だと思われるわけでありますが、その点についてどういうふうに考えておられるかお伺いしたいと思います。
  11. 小笠公韶

    説明員小笠公韶君) 商業部門、特に小売業部門に本法案適用を認めるということは、本法案一つの大きな特色でございますが、しからばこの法案適用して、商業部門商工組合というものが相当できやせんかということでありますが、私は商業部門の中で一番問題の焦点になりますのは、率直に言って、小売業部門だと思うのであります。この小売業部門におきまして、組合が相当できるような条件があるというふうに見ておるかと、こういうことになるかと思うのでありますが、私は小売業の各業種について考えますとき、本法によりまして、不況克服をさせる必要のある組合相当数起ると見ておるのであります。しからばそういうふうな場合におきまして、小売業商工組合がどういう事業をやるか、御質問のように、法案第十七条第一項第一号規定のような事業というものは、商業部面、特に小売商部面にあまり行い得ないのじゃないかというような御質問でありまするが、私は小売商業不況克服の基本的な問題の一つは、販売方法のいわゆる規制であろうと思うのであります。それからもう一つは、いろいろな問題がございますが、小売商業というものの基本は、商品の仕入れと仕入れをしたものの販売の仕方に小売商業の基本があると思うのであります。従いまして、その仕入れの問題、あるいはまた販売の面について不当なる競争が行われる、これを一つの標準的なその業種々々によって、具体的には違うと思いまするが、それに一つの規律を与えていくということが、小売商業の私は第一に行うべき点だと考えておるのであります。従いまして、そのほかにも、たとえば営業時間の問題だとか、いろいろ問題がございましょうが、そういう問題は、業種によってはできましょうが、共通に広くいって、小売商業の現在の一つの混乱の原因というのは、私は販売方法が非常に乱雑に流れておると、そういうふうな点の一つの規制をはかるという必要性は十分あり、商工組合一つの共通的な、いわゆる事業たり得ると思うのであります。従いまして、すぐに小売商業部門商工組合ができたときに、第二号による価格の協定というところに入るということは、私はまずないと思うのであります。で、これは場合によりますればそういう事態も考えられましょうが、今日は何と申しましても買手市場であります。買手市場という現在の流通部面の実態を考えますと、そういう事態小売業の立場だけで小売値の協定をするということは、実質上これが施行が困難であるというふうに見ざるを得ないのではないかと考えておるのであります。私はそういう趣旨から、小売業部門商工組合の運営は、生産部門に比較してむずかしいと、率直には考えておりまするが、一つ小売業部門商工組合が、直ちに小売価格の協定によってのみ存立するのだ、あるいはそれを特に考えるというふうな場合は、経営者としての立場からは私はなかなかそこまでいけないというふうに実は見ておるわけであります。
  12. 小幡治和

    小幡治和君 御答弁によりますと、工業関係は相当いろいろこの団体法を運営するとバラエティの多い利益点というものがありますが、商業部門としてはこれを利用してやっていくのは非常にむずかしいでありましょうから、全国の商業者は非常にこの団体法の通過を望んでいるが、さて通過して、やってみて、あけてくやしい玉手箱というような感じになりやせぬかというような危惧も私は抱いている。そこで消費者関係、非常に遠慮深い政府の御答弁でありますけれども、私は消費者はとにかく安ければいい、これはもう当りまえなんで、生産原価を割ろうが、また店がつぶれようが、とにかくいい物で安い物が手に入れば、消費者は喜んでいるわけであります。しかしそこにはおのずからまた秩序というものがあるので、結局消費者も不当に安いことを要求しているのじゃない、不当に高くされちゃかなわぬ、この団体法を利用されて不当に高くされちゃかなわぬというだけのことで、不当に安くしろということを消費者は必ずしも私は要求しているのじゃない、またそれを要求しているとすれば、これはまた非常に酷な話なんで、そういう意味において、私は不当に安くされることを……ただ消費者という面から政府が非常に怯懦になって考えておったのじゃ、商業者がこの団体法を非常に渇望いたしているのに、何を一体与えたのかということにもなる。そういう点はもっと勇敢に、そのかわり非常に慎重にやってもらいたいのですけれども、結局価格の協定という問題も、工業の点については、過般からの質問に対する御答弁としては、何か輸出の問題だけをひっさげてきて、輸出の関係においてのみこれを許すような感じを与えている。しかし私はその必要もない、要するに輸出のみならず、商業面においても工業面においても、実際に合理的であり、実際にこれをしなければとてもやっていけないのだという状況であるならば、この団体法に基いて価格の面というものも勇敢に一つタッチさせ、タッチしていったらいいのじゃないか。そうして不当に高くするのは、これは極力押うべきでありますけれども、不当に安くして、全部が倒れていくような状況に置いておったのじゃ、中小工業の秩序というものは保たれやしない。結局中小工業の合理的救済をやると言いながら、結局法律を与えても何にもならぬということになる。その点について、政府としてもこれが通過した暁の実行においては、そういう点も配慮していただきたいということを申し添えておきます。  それから次に質問いたしたいのは、強制加入命令の問題でありますが、この問題につきましては非常に同僚諸君からいろいろ議論がありました。憲法違反じゃないかというようなことを非常に強く言われております。しかし、これに対して公共の福祉を守るという意味における限度において、憲法違反じゃないというふうな御答弁、あるいは独禁法違反じゃないかというような点に対しましても、やはり公共の福祉ということを言われて、まあ独禁法違反じゃないということを言われておりますけれども、この公共の福祉ということを、それだけを一つ言われておりますが、一体公共の福祉というものは、強制加入命令をしなくても、事業活動規制命令だけでは守れないのかということなんです。結局、あとでもまた質問いたしますが、強制加入をやって、どうしてもいやだというものは、それじゃ入らなくてもいいということになっているのですが、そうするとその入らないでもいいものに対しては、事業活動規制命令は及んでいくということになっておる。それであるならば公共の福祉というものは、そんな憲法違反だ、独禁法違反だと言われるような強制加入命令をしなくても、事業活動規制命令だけで公共の福祉というものは守り得るんじゃないかというふうな質問もしたくなるわけなんです。で、私自身の考えとしては、先ほど政務次官が言われたように、この団体法の根本趣旨というものは自主的規制ということが一つの基本なんで、そういう意味において、君たちは外にあって勝手な競争しとるからいかぬのだから、だから内にあって一つ共同で自主的にやりなさいというところに非常に強制力というか、それを与えて、そして共同の場で共同で踏み切りなさいということを言っておる。そこに強制加入命令というもののどうしても条文として置かなければならない一つの理由というものがあるというふうに思っておるわけなんですが、たたまあ公共の福祉というだけでは一体これは事業活動規制命令だけでも救い得るじゃないかという疑問も出る、で、その点についてまず明確にお答え願いたいというのが一つと、これは一つ、修正されたのでありますから政府並びに衆議院の共同提案者からも御答弁願います。  それから第二の強制加入命令に対する問題なんですが、衆議院の修正において、まあ加入命令にどうしても従うのがいやだという者は、知事に認証を得て、そして入らなくてもいいという修正をされた。で、これは一体認証とは何かということの同僚の御質問に対して、まあ春日委員ですか、これは届出と同じなんだというふうなことを言われたように記憶しておる。実際そうなのかどうか。で、もしそれが同じであるとするならば、これはもういやだと言えば届出さえすりゃ、要するにそれで必ず認証するということで、みんなもう強制加入にならないということになっちゃう。そうすると一体本文というものの、強制加入というものの根本趣旨というものは、もう完全になくなっちまうということになると思うのでして、しかもそういうふうにして強制加入しなくてもいい、勝手に加入するのがいやだという者はどんどん届出して、おれはいやだ、おれはいやだでやっちゃう。しかしそれはどうするかというと、衆議院の修正においても結局事業活動の規制命令をやって実効だけはおさめようというところで逃げておられる。そうすると、私が一番最初に質問したように、強制加入命令がなくても事業活動規制命令さえありゃそれでいいんじゃないかというふうなことにも言われると思う。で、そういう面で私はこの衆議院の修正というものは、この強制加入命令というものを完全に骨抜きにしたように感じられるわけなんで、しかし春日委員は何かこういう問題についてもプラス・アルファを、共同提案者のくせに、(笑声)まあ期待するというようなことを言われたんですが、一体プラス・アルファというものをこれにどう加えるつもりなんだ、もしその春日委員が何か非常に御名案があるならまた聞かしていただいても非常に参考になると思うのですが、結局認証というものが届出と同じであるならば、完全にいやな者は入らなくてもいいということになって、強制加入命令というものは大いに力んでやってみたもののわれわれが考えると完全に骨抜きになっているように思う。その点についての一つ政府並びに共同提案者の方から一つ御説明をお願いしたい。
  13. 小笠公韶

    説明員小笠公韶君) 御質問の要点は五十五条の加入の強制の問題に関連しまして、法律上の、特に憲法上の問題でございますが、それが公共の福祉のためにやると、従って憲法の財産権の保全、結社加入の自由の制限にならぬと、こういう考え方をいたしておるのでありますが、しからば五十六条のいわゆる員外規制命令においても同様ではないかというお話員外規制命令だけでもいいのではないか、だから憲法との関連においての問題においては、私は五十五条、五十六条というものは、いわゆる共通に公共の福祉を守る、こういう立場からきておるものと考えておるのであります。ただ機能的に見まして五十五条と五十六条というものがダブりはせぬか、いずれか一方でいいのではないか、こういうような突き詰めた御質問のように拝聴するのでありますが、私はこういうふうな考え方を実はいたしておるのであります。先ほどもお話申し上げましたように、この団体法は凡百の種類の工業商業サービス業と、いわゆる中小企業と称せられる部門に同じく一定要件を具備した場合におきましては、本法を適用して業界の組織の確立をはからしていく、そして自主的なる調整によって不況克服努力していくが、その努力が十分できない事態において政府がそれを補強する、その補強の方策としていわゆる員外規制命令として政府の省令を持ってする命令として一般にそれぞれの業界に臨んでいくという行き方が一つ考えられます。これが五十六条の考え方であろうと思うのでありますが、五十五条の考え方というものはそういうふうな多くの中小企業の各分野においてそういう事態があると仮定いたしますならば、そういうふうな場合はなるべく自主的調整によって物事を解決して不況を解決していく、その場合に政府が補強すべきものは組合加入をさせる、加入した全員が相談の上自主的に調整をさせていくということによって目的が達成されるならばその方がいいのではないか、こういうふうな考え方を実はとっておるのであります。そういう趣旨におきまして五十五条の考え方というものが、先ほど申し上げましたように、政府は外におる者を一応組合調整事業に協力してもらうというふうな趣旨であります。五十五条の命令は、私は単純に組合に入れという形式的な内容を持つのみでなく、当該商工組合が行なっておる不況克服のための調整事業に協力をせよと、こういうような趣旨をも含んだ五十五条の命令と解釈すべきものであると考えるのであります。そういうような趣旨から考えますと、私はこれからの中小企業対策としてこういう考え方というものが私は必要なんではないか、ただ本法案におきましては五十五条は中小企業者だけの、大部分がほとんど全部中小企業の場合であって、大企業に対しては五十五条の命令は及ばないということになる、こういう事態に対処しまして、五十六条というものは必要があるというような考え方をいたしておるのであります。修正案のことにつきましてはお二人がお見えになっておりますから私から答弁は差し控えたいと思います。
  14. 小平久雄

    衆議院議員(小平久雄君) 小幡先生の御質問のうち、第一点の五十五条と五十六条の関係ですが、実は衆議院におきましてはただいま小幡先生の御意見のような質問もございましたが、政府当局からこれもただいま政務次官から答弁されたような趣旨の答弁がありましたので、われわれは一応了承の上承認をいたしたのでございます。ただし、五十五条は、言うまでもなく、あくまでもその業界が自主的にとにかくやるようにと、この手助けのいわば加入命令でもございます。そこで、政府の最初の原案では、単に強制命令だけ出しまして、既存の商工組合調整規程等に従っていくと、こういうことになっておったんでありますが、それでは新たに強制命令によって入った組合員の意思というものが調整事業に反映しないのじゃないかと、新たに命令までしてせっかく入れるのでありまするからして、その人の意見をもこの調整事業に反映するという道も当然これは開くべきであると、そういう見地からいたしまして、この修正案におきましては第七項でありますが、第七項を新たに追加いたしまして、この加入命令を出した以上は、命令が出てから九十日以内にあらためてこの調整規程についての議決をしなければならぬと、こういう補完的な規定まで入れたわけであります。しこうして、どうしても自主的にできないという場合において、この第五十五条が発動すると、こういうことでございますので、われわれとしましてはこれは承認をいたしたわけであります。  それから第二点の、これは認証の問題でありますが、先般の当委員会におきまして、同僚春日衆議院議員から、認証というのは届出と同じようなもんだという趣旨の御答弁がございました。それについて、私の方の考えはどうかという御質問も当時相馬委員からでありましたか、ございましたので、その際も私はお答えをいたしておいたんでありまするが、この認証という文字を、表現をいたすにつきましては、当時われわれ自民党側と社会党側とでいろいろ協議をいたします際にも、なかなかいい表現が実はなくて苦労いたしたのであります。先ほどお話ございました通り、第五十五条の強制加入命令というものは憲法違反じゃないかというような議論も当時もございました。どうしても入るのがいやだというものを、何でもかんでも入れという命令をしっぱなしということは、あまりに、単に憲法違反云々は別問題といたしましても、むしろ実情にも沿わないのじゃないか、同じ入らない者にもいろいろ理由はあるだろう、まあそういう方の業者の立場というものもこれは当然あわせ考えてやってよろしいのじゃないかと、そういうことからしていろいろ案を練ったのでございますが、しからば、そういう加入のいやな方は、単に届出をすればもう入らなくてよろしいのだというように割り切ってしまうというと、お説のように、加入命令というものがまるで骨抜きになってしまう。また逆に、厳格な意味において行政官庁の承認がなければいかぬのだということにすると、その行政官庁の取扱いいかんということによっては、何といいますか、単に命令のしっぱなしということと実質的にまた違わなくなってしまうと、そういうことで、そのいわば中間というか、どういう色合い、どういう表現をすることがよろしいかというので、ずいぶん苦心をいたしましたが、その間、割り切った意味におけるこの届出でもなし承認でもなしというのは一体どういう表現なのかということについて実はいろいろ相談をいたしまして、その間、衆議院の法制局の職員等のお知恵も拝借をいたしまして、しからば認証という表現が一番合うのじゃないかと、こういうことでありました。  そこで先般もお答えいたしました通り、私どもの気持といたしましては、認証という表現は、形式的に申しますならば、承認の方にむしろ近い表現であり、また実質的に申しますならば、届出にどっちかといえば近いような表現ではないかというふうにまあ解しておるのであります。われわれも法律専門家でないので、果して認証というものがどう違うのか、あまりよく実はわかりません。わかりませんが、われわれの当時の気持といたしましては、ただいま申しましたような気持において認証という文字で両党ともよろしかろう、こういうことになったわけでございます。
  15. 春日一幸

    衆議院議員(春日一幸君) この五十五条で共同修正の経過について、また私どもの考え方について理解しておるところを申し述べて御参考に供したいと思います。  この五十五条がやはり加入命令でありますので私たちは反対をいたしましたが、その反対の理論の根拠となりますものは、今まで論じられて参りました通り一つは憲法論であり、一つは独占禁止法に抵触するであろう、その精神並びにその条文に抵触するであろうという、そういう立場からするものであったのであります。憲法では、申し上げるまでもなく、結社の自由、これはこの憲法が平和と民主主義と基本的人権尊重、これが憲法の生命線になっておりますのに、やたらに基本的人権が公共の福祉の名において次々と悪い前例が作られて参りますると、前例は悪例といえどもこれは前例なんだから、従って、これらの前例が前衛的な役割を次々と果して、そういう悪例が積み重ねられていくと、このことによって憲法の精神が根本からゆがめられてしまうことを最もおそれますので、従って、憲法に保障されておる基本的人権尊重というこの立場から、国民の意思に反して国民の身分の変更を来たすような、こういう命令は断じて許すべきではない、立法事項として許すべきではない。許さなければならない場合はよほどの場合で、そのことがなければその法律の効果が全然こわされてしまうというような場合以外には許すべきではない、こういう工合に理解をいたしまして、従いまして、この商工組合調整機能たるや、実に五十七、五十六条等によりまして完全に、ただいま小幡先生の御指摘になりましたような、服従命令によって機能は別途確保されておるのだから、従いまして、これは屋上屋を架するものであるからこういうものは必要ではない、そうして非常にこれは悪いことであると、こういう工合に理解をいたしまして、一つは憲法論から強くこれに反対いたしました。  それからもう一つの理論は、先般お答えをいたしたのでありまするが、これは独占禁止法がわが国の経済憲章であるという立場から、これがカルテルを認可する場合に、あらゆる基準を独占禁止法二十四条の三の四の四項に規定をいたしておりまするが、それをいろいろと研究をいたしましてわれわれが得ました結論は、すなわちこういうような加入命令を発するということについては非常な弊害もあるし、かつはまた無用であるということから、独禁法の立場から大体六つの反対理由をわれわれは指摘したわけであります。それは、すなわちアウトサイダーというものが必要である、高速度の乗りものをブレーキなしに走らせると交通事故のもとになるように、こういう経済活動の中において、しかも高度の技術を要するこういう調整機能の中においてアウトサイダーなしにこういう共同経済行為を認めますと、由来経済人というものはもうければもうけるほどもっともうけたいという性能を持っているので、従って勢いその調整計画というものは自分本位の利潤追求の立場から決定されがちなものであり、かつはそういう本来の傾向を持っておりはしないか、そういう意味でやはりアウトサイダーがおって、これは高過ぎる、こういう高い値段で暴利をむさぼる必要はない、そういう立場からアウトサイダーがいることが勢い調整計画に対して自主的におのずからなるブレーキをかける、そういう意味でアウトサイダーが非常に必要であると私たちは考えたのであります。  それから今申しましたように五十六条、五十七条の関係から屋上屋を架するから制度的に無用であるという立場、それからもう一つは、これは本質的に危険であるということであります。と申しますのは、服従命令は条文の中で御理解を願っております通り、これは調整規程を政府が参酌をいたしまして、かつ独自の判断でもって、すなわち組合調整計画を通産大臣がこれを見て、行き過ぎであるか、足らざるか、これを自分でそしゃくして、そして公正なる立場で服従命令を発することができるわけであります。ところが、この強制加入命令は、結局命令をされた本人が服従しなければならないものは結局組合自体が自主的に作ったところのその調整計画でありますから、すなわち公正なる第三者と申しましょうか、関連業者、消費者を含めての立場において瀘過されておりません。そういう意味でそういうものをいきなり第三者に服従せしめるということはやや危険がありはしないか、そういう意味であります。  それから組合のボス支配の悪い傾向を助長するのではないだろうか。と申しますのは、入りたくなければよせ、おれは大臣に申請して君に服従命令を発せしめるのだ、こういうような形で本来民主的な運営において待つべきこの協同組織が、いわば権力の介入をいたずらに期待いたしまして、そして円満なる自主的なる運営を阻害するような弊害を生じてきはしないか、これが四つ目の反論であります。  それからもう一つは、今小幡先生が御指摘になった重要な骨子に触れると思うのでありますが、これはこの法律特色として今政務次官からも御答弁になったことの中の一つに、やはり組合の中に入れることによって自主協同の形態でこの安定をはかっていこう、こういうのがこの安定法に対立して本法の独自性の一つと述べられておったのでありますが、そういたしますると、この服従命令ではなくして、加入命令が発せられるということは、結局これは権力、言うなれば官僚の組合支配という形になって参りましょうし、官僚の権力が組合に加うるにあらざれば、その組合の自主的運営というものが完璧を期しがたい、こういう結果になりまして、ことに第一条でうたっておりまする、その自主的なる運営を通じてという、これが自主的ではなくして通産大臣の加入命令を待つことによって、というような、実質的には形になって参りまして、第一条を根本的にその精神をじゅうりんするの結果を招来するのではないか、こんなふうにも考えて反対をいたしたわけでございます。  それからもう一つは、この加入命令が発せられる相手方というものは、ただひとり中小企業だけでありまして、大企業には発せられない、こういう意味で、やはりこれも機会均等を失するでありましょうし、また経済活動のそれぞれの効果を通じて、このあり方というものについてはそのまま受け取りかねる、こういうのが私どもは憲法論並びに独占禁止法の立場からこれは反対せなければならぬ、こういうことで強く反対をいたして参ったのであります。しかしながら私どもがそういう立場を固執いたしておりましては、結局当面いたしておりまする中小企業のこの窮乏を克服することのための法律成立がはばまれますので、従いまして私どもは何とかしてこの相対立する意見調整して、そうして全国の中小企業者の要望にこたえたいと、それこそ粉骨砕身の努力を両党で試みたわけでありますが、その結果、私どもの主張は当初から以上申し述べた理由によりましてこれは削除すべしという全面削除論であったのでありますが、それは自民党のお入れいただくところとはなりませんでしたが、しかし私どものこの主張は、それぞれの要所々々において相当の場面にまたがって御理解を得るに至りまして、その結果、かつて私が本委員会において理解したところを御答弁申し上げました通り、すなわちこの認証というものは届出と実際的効果が相変らないであろうという、そのような大体の共通の理解を大まかに取りつけ合うことによりまして、すなわち大臣の命令を受けた本人が支障あっていやだ、こう言った場合には、知事に届け出ることによって、すなわち認証を受けることによって、結局身分の変更を来たさない、組合に入らなくてもいい、こういうことが実質的に保障されるならば、一つこの限界において、また当時の国会がすでに会期末に差し迫っておりました情勢下において、衆議院におきまする努力はこれ以上のものが期待し得ないであろう。従いまして残されておりまする諸問題は、願わくば両院がともに自主的な立場において国民に責任を負うて審議をしておる立場において、これらの事柄は当然参議院において御論議があるであろう。かくのごとく期待をいたしまして、願わくば残されておりまする、私どもがなし得ませんでしたことが、この際において十分御検討がいただけるものと期待をいたしまして、ただいま御指摘もあり、先般御説明のありましたプラス・アルファの成果を期して、こういうようなことで私どもはこの修正の内容、実際的効果、そういうものの理解において賛成をいたしたというわけでございます。しかしながら問題はやはり五十五条が強制加入を認める、法律によって国民の身分に変更を来たさしめるという、そういうことが法律制度としてここに残されておることはまことに重大でありまして、問題は解決していないわけであります。それからまた本人が届出をすれば入らなくてもいいという共通の理解があったといたしましても、やはり大臣からその命令を受けたような中小企業者たちの精神的な影響力というようなものもこれは現実に存在するわけでございます。そういうわけで私はこの独占禁止法の法律の精神並びにその法律のそれぞれの規定に違反すると考えて反対をいたしておりまする事柄が、この程度の修正をもってしては、一つ制度として残ること、一つは精神的な、悪く言うならばどうかつ的な効果、こういうようなものが存在いたしまして、そうして自由にして公正なる経済活動に悪い影響を残していくであろう、こういうことを深く憂えまして、この五十五条がさらに明確に憲法と独占禁止法の立場において一切の疑義が払拭された形において完全な法律として国民の前にお目みえされることを強く期待をいたしておる、これが私どもの考え方であります。
  16. 相馬助治

    相馬助治君 関連して……。私はきわめて重大でありますので、関連して一言だけ政府の見解を承わっておきたいと思うのです。先ほど来の答弁によって、衆議院側の答弁がありまして、これに関連をいたしまして五十五条の基本的なものの考え方、そうしてこれが憲法違反の事実ありやいなや、こういう問題はいずれ総理大臣、通産大臣に私は質問する予定でありますが、この際明確にしておきたいと思いますることは、五十五条四項、すなわち衆議院の修正の真に意図するものが何であるかという政治論ではなくて、この法律が修正可決されまするというと、立法者の意思を離れてこの法律自身が口をきき、この法律が行政官によって施行されて参りまする際に、政府はこの四項の規定をどのように読み、どのように解釈するとお考えになるか。すなわち内容的に申しますれば、認証ということが単なる届出と同断のものであって、その精神はあくまで生かされるという春日議員の今の言葉をその通りに受け、その通りに将来にわたってこの法律が理解されるならば、小幡委員が指摘した通りに五十五条は一種の骨抜きなのであります。しかし私どもといたしましては、さようにのみは考えられない。すなわち立法者の意思を離れて法律が口をきくという建前からもさようには考えられない。そこで、五十五条の四項のこの規定政府自身はどのように解釈しているか、このことをこの際明確にしてほしいと思うのです。
  17. 小笠公韶

    説明員小笠公韶君) 五十五条に追加されました第四項で「第一項の規定による命令があったときは、その命令の対象となった中小企業者のうちその商工組合加入することに支障がある者は、その命令があった日から起算して二週間以内に行政庁にその旨の認証を求めることができる。」と、こうございます。私はこの認証を客観的に考えていくか、主観的に考えていくかという問題であろうと思うのであります。支障があるものはその旨の認証を求めることができると規定いたしておるので、その支障があるかないかの認定は主観的に命令を受けた当該中小企業者の主観によって決定すべきものと考えておるのであります。従いまして、一応中小企業者が届出をしたのと効果的には機能的、結果的といいますか、そういう点は同様になる。たとえば一応認証の届出をしたところが、行政庁の怠慢によって期限内にやらなかったという場合にはどうなるか、こういう問題が一応考えられる。私はこの認証の申し出をした場合には有効に認証を得たものと措置すべきもの、扱われるべきもの、こういうふうに考えております。
  18. 小幡治和

    小幡治和君 今いろいろ憲法違反、独禁法違反の話も春日議員からもありまして、根本的にどうも春日議員の御答弁と、小平議員との御答弁の基礎が違う。これはやむを得ないかもしれませんが、私は憲法違反問題を言えば、結社の自由とかいろいろ自由がありますが、結局そういう自由というものも公共の福祉によって制限し得るということは憲法にはっきりいっておるのですから、そういう意味においては、公共の福祉に反するか反しないかということが憲法違反かどうかをきめることになるわけで、こういう意味において、ただそれだけで憲法違反と断ずることはこれは憲法の一部を見て他の一部を見ないという議論になると思う。そうして独禁法の違反という議論については、私はこういう気持を持っておる。独禁法というものは、要するに強いものがお互いに相提携してカルテルを作って、そうして自分たちの独占的利益を得るためにいろいろなそういう行政的な制限というものをやる、そうして弱者をいじめる。そこでこれをとめようというのが独禁法の精神だと私は思う。今度の団体法に基く問題というものは結局弱者なんです。そういう強者に圧力をかけられておるところの弱者が自分たちがこれだけいじめられて生きるか死ぬかこの岐路に立っておるときに、この団体法が発動するということをさっきからいろいろと政府が言っておる。そういうことになるならば、結局弱者が生きるか生きないかというその境において、自分たちの生存権という心、生命を守るために、共同して一つの強制加入をやり、また強制のそういうものをやって、そうして自分たちの生存権を確保するということは、これは正当防衛なのであって、私は違法性はない。独禁法の立法精神というものは、そういう弱者が死ぬか生きるかというときに、自分たちが団結して、そうして生きる生存権の主張をやっていくということ、それをとめるのじゃない。要するに強い者がカルテルを作って、独占的利益を得ようというのに対して、これをとどめていこうというのが独禁法の立法精神じゃないかというふうに私は思う。  例を言いますれば、今弱い者がみんなまとまって山登りをする。みんな一人一人が胴に綱を巻いて、みんな一緒に山登りをする。それでしっかり山を登っていくのだが、その中の一人か二人が、おれは違うのだといって、岩のところの断崖絶壁でばたばた暴れ出したらみんな落っこちてしまう。みんなが落っこちてしまうときに、お前そんなに一人で暴れたんでは、一緒につないだ綱が切れて落っこっちゃうから、強制加入命令で、ここに入っておれ、岩にぶつかっちゃいかぬじゃないかといって、そうして山に登っていくわけなんです。そういう、私は勝手な行動というものは、その共同連帯において生きていこうというそれをじゃまするという者に対しては、この強制加入命令というものがあっても、独禁法違反でもなければ、憲法違反でもないというふうに私は思う。そういう点につきまして根本的に、今春日委員も言われたように、暴利追求のために員外者が必要なのであるということを言われますけれども、私は暴利追求どこじゃない、自分たちが死ぬか生きるかというときに、そういうときに団体法というものが初めてできるのだ。団体法設立条件は、私が質問をしましたら、結局生きるか死ぬかというときじゃなくちゃ許されない。生きるか死ぬかというときに許される団体法というものによって、しかもいろいろなことをやった、それでもなお足りない。この暴れ者を何とかしなければ、結局共同連帯をしていくのがいい、全部岩から落っこちてしまうというときに、一体強制加入命令というものは、これは独禁法違反でなくてあり得るのではないかというふうに感じている。これは一つの議論になるかもしれませんが、そういう気持がある。その中において衆議院の修正というものは結局「認証」、すなわち届出と同じような結果で入らないでいい。しかもそれに対しては支障ある場合、支障というのは客観的判断かというと、小笠政務次官の答弁によると自分の主観なんだ……。正当な理由のある者というふうなものがあればこれはまた別ですけれども、正当な理由があろうがなかろうがそれはかまわない、おれにさえ支障があればそれの届出によって入らなくてもいいということになれば、完全に強制加入命令のそういう立法精神というものが空文に帰したというふうな実質的なものになり得ると思う。それほどのものをさらにまた強制加入命令を入れないということについては、私は根本的に議論がありますが、これはここで議論をしておっても、十二時になってしまったので、これは仕方ないと思うのですが、まずここで、これは私の意見なんですが、委員長どうですか、先ほど十二時になったらぴったりやめようという話がありましたが、私はまだ火災共済の問題について四、五点及びそのあとでもう一つ組合問題について一点だけあるのですけれども、もう十五分もあればできるのでありますけれども、続けていただけますか、これで切りますか。(「保留して午後やったらどうですか」「午後にやりなさい」と呼ぶ者あり)
  19. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  20. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記をつけて。
  21. 小幡治和

    小幡治和君 それでは後刻それに対する気持政府並びに春日議員からもお聞きしたいと思います。
  22. 近藤信一

    委員長近藤信一君) それでは午前中はこの程度にして、午後開会の時間的な都合もございますので、午前はこの程度にとどめて、午後は一時から再開することにいたしまして、これにて暫時休憩いたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後一時二十五分開会
  23. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き中小企業団体法案外二件を議題として質疑を続行いたします。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  24. 小幡治和

    小幡治和君 それでは午前中強制加入の問題についていろいろ私どもも所信を申し上げましたが、しかし御答弁を拝聴いたしますと、どうも議論にわたるのみにすぎないような感じもいたしますので、この程度で一応強制加入問題はやめまして、火災共済組合の問題について共同提案者の方々に少し御質問申し上げたいと思います。  まず中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案について、という面についての、第九条の七の三でありますが、この規定を拝見いたしますと、共済金額の最高限度を百五十万円か、または組合のネット・サープラスの百分の十五のいずれか低い方に押えることになっております。この問題については、とにかくネット・サープラスの額の変動に応じて一々共済金額の最高限度というものが変えられなくちゃならないというふうな格好になっておりますので、これでは毎年々々その最高限度額というものが変らなければならない。一体そういうふうな状況下において、ほんとうに安定した経営というものができるのかどうかという点、非常に疑問なきを得ないと思います。またその問題と同じような意味において、ネット・サープラスの額というものは前事業年度末の額を計算するということになっておりますけれども、そうすればいわゆる新設されたところの新しい共済事業を営むものについては、前事業年度というものはないわけであります。そうなりますと、一体何を基準にやっていくのかというふうなことも考えられまして、まあわれわれといたしましてはどうもこういう不安定な要素を含んだこと、また新しい新設の共済組合については基準にならぬようなそういう条文、そういうようなものは余分なものじゃなかったかというふうな感じもいたすわけであります。その点について一つ御答弁願いたいとともに、もう一つの問題は、この九条の七の三の五というところに「地方公共団体又は金融機関が当該組合のために支払を保証した金額」ということで現在府県の保証というものが、現在の共済の面にはある程度ありますけれども、これをとにかくここに条文の上にはっきり明記しておるというところに問題があると思います。今日各府県の財政というものは非常に赤字で苦しんでおる、しかもその財政というものも一つの予算をもって、しっかりした収支というものによって正確な予算、また執行というものをやっていかなくちゃいけない。しかしこういうふうに書かれて参りますと、結局この条文をたてにとって、共済組合としては府県の保証というものを要求して来るということになる、そうすると府県としちゃ保証せざるを得ないということになりますと、それが条文上はっきり明記されておるために府県としてはいつ不測の支出というもの、これははかり知れざる支出というものを、いつしなければならないかという非常な不安というものが財政上にできて来る、さようなことでは地方財政の面から見て非常に危険であり、また予算の編成の上から見ても非常におもしろくない結果を招来するのではないかというふうな気もいたします。こういう問題は結局現実の問題にまかしておけばいいことでありまして、条文の上にはっきり明記するということは必要ないのじゃないか、現在各府県がそれを保証するとすればそれでいいのじゃないか、一々これを条文の上にはっきり義務づける、あるいはそういう場合にはこうするということを明記しておくということは少しこういう団体法の見地からいって行き過ぎじゃないかという感じがいたす次第であります。これも私は共同提案の衆議院の段階におきまして、大体この共済組合の問題は、まあ早々の間に作られたような感じがいたしますので、共同提案者としてもなるほどそこはそういうふうなことなんだというふうな御答弁あるものと思うのでありますが、まあそういう面についてはわれわれとしては、一つ一応ここではっきりさしておいて、そうしてそういう意図であるならば、わかったというものはわかったということで一つ済ましていきたいというふうな気もいたしておる次第でありますので、その点について一つ明確なる御答弁をお願いしたいと思います。
  25. 小平久雄

    衆議院議員(小平久雄君) お答えいたします。第一点は第九条の七の三におきまして、共済金額の制限をうたっておるわけでありますが、その際に、百五十万か、またはネット・サープラスの百分の十五以内いずれか低い方と、こういうことになっておるわけであります。ところが、このネット・サープラスが上下いたしますので、その関係から保険金額の制限が非常にいわば浮動性があって不安定ではないかと、こういう御質問のようでありますが、実はその点もわれわれとしましても考えないわけではなかったのでありますが、かりに災害が起きますというと、申すまでもなくネット・サープラスが少くなる、そういう際においては、どうしても事業のいわば縮小をはかって、再出発というか再建を期せなければならぬ、そういう面も考えなければならぬであろうという点からいたしまして、このような規定にいたしたわけであります。つまり事業の堅実性をはかる意味からも、むしろこういうことが必要なんじゃなかろうかという点を考慮いたしたわけであります。  それからこの規定からいたしますと、最初に、当初に事業を始める際に、ネット・サープラスがないから困るではないかと、こういう点が第二の御質問でございますが、その点は、この本文の末尾にあります「行政庁の許可を受けた場合は、この限りでない。」こういう規定でございます。この点は第一の点とも実は関連をいたすのでありますが、第二の関係、御質問の点からいたしましても、行政庁の許可によって適宜な制限をいたしてもらう、こういうふうに考えたわけであります。  それから第三の点は、地方公共団体の保証の問題でありますが、これにつきましては先般も御質問がございましたが、この法案では別段これを強制いたしておるわけでもございません。ただ従来存しまするところの共済組合の多くにつきまして、現実の問題として地方庁が保証をしてくれておるというものが多いものですから、またそのことは地方庁が中小企業を育成助長する、その施策の一環としてせっかくこういうことをやっていただいておるわけでありますので、そういうものがあった場合には、これもネット・サープラスのうちに入れてよろしかろう、こういう趣旨でございます。それが地方の財政に非常に迷惑をかけるのじゃないかというお話もございましたが、その点は、各地方でそれぞれ財政事情等も異なりましょうので、それぞれの地方庁の自主的な御判断によって、差しつかえないという限度において御配慮願えればけっこうなんじゃないかというふうに考えております。
  26. 小幡治和

    小幡治和君 総理もお見えになりましたので、一つこの問題だけ端折って御質問を続けさしていただきたいと思いますが、今の御答弁につきましては、大体了承し得るのでありますが、まあただし書きのことも言われましたけれども、これは、要するに特殊な事情にある組合についての特種な考え方ということなので、今の御答弁としてはちょっと了承しかねるものもあるわけでありますが、その次の問題といたしましては、今度第九条の七の五の第二項におきまして、「保険募集の取締に関する法律規定は、火災共済協同組合の行う火災共済事業に準用する。」旨を規定しておりますが、その中で、「組合組合員又はその火災共済協同組合の役員若しくは職員」と、こういうふうにいたしております。しかしこれも営利保険会社の方は、会社の役員というものは使用人または大蔵大臣に登録された損害保険代理店ということになっておりまして、これは提案者の御意思も組合員全部を予定しているということじゃなくて、やはり営業保険会社と同じように登録された組合員というようなくらいの気持でお考えになっておるのじゃないかというふうにわれわれとしては考えるわけでありますが、その点について一つ御見解をただしておきたいというふうに思います。ただ単なる組合員ということにいたしますれば、共済契約者のすべてが募集行為を行えるということになりまして、非常にその点は広範囲に過ぎる、しかもそれが今度は募集行為の取締りを受けるということになれば、実に膨大なる人たちがその取締りを受けていくということになって、その間非常に矛盾した問題も生じてくるというふうになってくると存じますので、その組合員という問題を一つわれわれとしては登録された組合員というくらいなつもりで解釈いたしたいという気持を持っておりますが、その点について一つ御答弁いただきたい。
  27. 春日一幸

    衆議院議員(春日一幸君) ただいま御質問の点につきましては、この法律適用されます保険募集の取締りに関する法律は、それぞれその募集に携わる者を登録しなければ相ならぬわけであります。従いましてこの法律によりますと、組合員でも登録すれば募集の業務に携わることを妨げてはおりませんけれども、しかしこの保険募集の取締りに関する法律に基いて登録が行われまするときには、伺いますると、一件について何か百円くらいの手数料がかかる様子でございます。そういうようなおのずからなる経済上の制約等も生じて参りまして、全組合員をことごとく登録するということは、経理上の問題もからみまして、私は自動的に相当の制肘が加えられて参るという工合に考えておるわけでございます。従いまして条文をなまで読みますと、全組合員ことごとく募集に携わり得る形になっておりますが、しかし準用されまする法律のおのずからなる制約がからんで参りまして、結局相当数に圧縮されて参るものと考えられておるわけであります。
  28. 小幡治和

    小幡治和君 そうすると、あと一点だけ一つお聞きいたしたいと思います。この中の付則第二条の規定についてでありますが、そこで第九条の二項には、事業協同組合が福利厚生事業として行う共済事業については、「共済契約者一人につき共済金額の総額を三十万円をこえるものと定めてはならない。」というふうに規定されております。しかしこの付則第二条によりますと、この法律施行の際、現に福利厚生事業として火災共済事業を行なっておる事業協同組合は、本文第九条の二第二項の規定、すなわち共済金額を三十万円以下に規定するものとしている、こういう規定は一切適用しないというふうになっておる、そうするととにかくそこに現在やっておるものとそうでないものとの非常な違いも出てきておりますし、それから相対的にわれわれ考えますれば、現在実際やっておるものが引き続き共済事業を行うという点におきまして、そういう野放しの考え方でいきますと、とにかく限度を五十万また百万というふうなものにも上げていくことができるようなことにもなるわけでありますから、暫定措置といいますか、要するにその既存のそういう組合につきましては、まあ一年か二年の間だけそういうものを認めて、そうして一、二年の間に一つ、こういう面についてはもう一ぺん認可のし直しをするといいますか、もう一ぺん一つこういう問題を検討するチャンスを持つというふうにして、既存のものが新しいものに乗りかえていくのにある期限をつけて、そうしてそれが同じ一つの基準の上に立ってやっていけるというふうなものに持っていくのが至当じゃないか、またそれが経過規定としての私は当然の措置じゃないかというふうに思われるわけでありますが、それは今の条文上においてはちょっとそういう面もありますが、お気持の実際の運営としてはそういうことを考えておるということならそれでけっこうたと思うので、その点について一つただしておきたいと思います。
  29. 春日一幸

    衆議院議員(春日一幸君) 大体この気持はもとよりそこにあるわけでございますが、現在行なっております火災共済事業なるものが協同組合法によって規定されておりまするところに従って行われておる法定事業である、こういう理由をもちまして、現に行なっておるものを禁止するということについては慎重を期さなければならぬ、こういうことで経過規定についても特別の条文を設けなかったわけでございます。しかしながらこの法律によりまして、この法律適用を受けまする火災共済の協同組合は、まず印紙税法によって免税の恩典を受けますし、さらにまたこの名称制限によってその点彼我の区別がおのずから明確に相なりまするし、もう一つはすなわち五十八条の五項、六項によりまして、支払準備金、責任準備金等の義務積み立ての条項からいろいろと関連いたしまして、法人税法施行規則十四条の十四のいわゆる責任準備金その他を損金に繰り入れるという税法上の特別のフェーバーを受ける形に相なって参るわけでございます。従いまして税法上、損金に繰り入れられる、名称使用の制限、印紙税法上の保護、こういうものを受けて参りますので、結局この法律に合わして事業を行なっていった方が、今までのやり方よりもはるかにこの事業の発展が期し得る、こういう形から私どもは期せずしてみんながそのように義務づけなくても、経過規定をことさらに作らなくても、こういう工合に組織がえが行われてくるものと期待をいたしております。
  30. 近藤信一

    委員長近藤信一君) ただいま岸総理大臣が御出席になりましたので、これより総理に対する質疑を行いたいと存じます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  31. 相馬助治

    相馬助治君 この際、ただいま審議中の中小企業団体法案に関連いたしまして、首相の見解をただしたいと思います。政府与党が、現在の中小企業者のなかなか困難な状態にかんがみまして、立法措置によってその困難な事態を救おうと決意されたということに関しましては、私は敬意を表するものでございます。問題はこの中小企業団体法案一本で、現在の中小企業者がその困難な事態から脱却することが可能であるかどうかという問題であります。私どもの見解からいたしまするならば、現在中小企業者が大企業者の進出の前におののいておるという角度からいたしまするならば、当然中小企業者産業分野におけるその地位を確保する法律案を必要といたしましょうし、現在の小売商人の置かれている現実をしさいにながめて参りまするならば、当然小売商業調整法案ともいうべきものが必要であろうと、かように考えます。先の国会において衆議院段階において、自民党とわが社会党とが共同修正によってこの中小企業団体法案を可決いたしまして、本院に回した、その審議の中で話し合っていることを見ますと、わが党の主張において当然これらの関係法案が同時に成立することが望ましい旨が強調されております。今日政府が近く予想されまするところの臨時国会において是が非でも中小企業団体法案成立せしめたいと願っているやに承わっているのでありまするが、もしそれがほんとうに政府の腹であるならば、そうして中小企業者を真に救済しようとするならば、この二法案については、政府がこれを積極的に成立せしめるところの努力が必要ではないかと、かように考えるのでございまするが、首相の見解をお尋ねいたします。
  32. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 中小企業に対しまして、政府が立法的措置によってこれが確立とその安定を期したいと考えて団体法を提案をいたしたのであります。もちろんこの団体法だけでもって、すべての中小企業に関するあらゆる問題が解決されるということではないのは言うを待たないのであります。しかし中小企業実態をよく検討し、これに対する対策をいろいろ考えてみまするというと、まず中小企業というものが一つ組織を持ち、その組織を基礎にして、自主的にこの業界の安定をはかり、事業を営んでいくというこの基礎が何よりも大事なのであって、さらにこの基礎の上にいろいろの施策も将来行われなければならないものが出てくると私は考えております。しかしとにかく今の現状、また将来の中小企業というもののあり方、その基礎というものを作っていくための最も基本的なものとしてこの中小企業団体法というものを政府としてぜひ成立させたいというわけであります。今申しますように、これだけでもってすべて解決するということではございませんから、従っていろいろな問題に関しましても今後研究を要するものはあると思います。しかし私どもは、とにかくその中小企業に対する対策の一つの基本的なものとしてこの団体法成立を特に期待しておるわけであります。
  33. 相馬助治

    相馬助治君 関連法案に対しましても必要の場合には十分考えて参りたいという答弁を了解いたします。  で、これに関連して承わりたいと思いますことは、かりにこの本法が成立をいたしますというと、この団体法の持つ性格からいたしまして、前に中小企業安定法等の経験によりましても組合の統制行為というものが恒久化して参る傾向になると思うのです。すなわち不況対策でございますから事業の面におきましても雇用の面におきましても縮小されて参ります。また市場から見ましても狭隘化されて参ると思うのです。そういうことになりますると、一応中小企業者が救われる方向にあるかもしれませんけれども、その中小企業経営体の中における労働者の運命というものはもうはっきりと予見されると思うのです。そういうふうに考えて参りますならば、どうしてもこれは最低賃金制というようなものの必要がここで主張されなければならないと、かように存じますが、岸首相はこの最低賃金制というような問題についても次の通常国会等におきまして立法措置をするところの用意があるかどうか、かりにあるとするならばそれについての大体の構想でもよろしいのでありまして、もし考えがまとまっておりましたならばその辺の御見解をこの際承わっておきたいと、かように存じます。
  34. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 不況対策としてこういう自主的調整が行われ、また安定法等におきまして政府命令を出して不当な、過当な競争調整し、またこれによって業界を安定するということにいたしますというと、今御質問のように、一時的にはこの事業が縮小されるとか、あるいは拡張されるとかいうようなことになり、あるいはそれが労働者の立場にも影響を持つことは当然でありますが、われわれの経験によりますというと、そういうことによって業界が安定しますというと、安定した基礎の上にむしろ販路も拡大され、業界全体も一つの基礎ができて、むしろ事業はだんだん健全な形において拡大されていっておるという例が少くないのでありまして、永久的にこれがその事業の縮小やあるいは業界の縮小を意味するものではないと私は考えております。ただ中小企業において働いておる労働者に対する最低賃金の問題につきましては、御承知の通り中小企業内容というものは、形態なり実に複雑多岐でありまして、これを一本の最低賃金制を作るというようなことは、実際上日本の実情には合わない点が少くないと思います。ただしかしながら、中小企業に働いておる労働者の賃金が非常に低廉であって、その生活が非常に安定をしてないというようなことは、これは国全体として望ましい形でありませんから、最低賃金制の問題についても、政府としてはいろいろと今検討を命じ、研究をさしております。ただこれが、果して次の国会までに成案が得られてこれを提案し得るかどうかということは、今私はっきり申し上げることはできませんけれども、政府として、私もこの日本の将来の労務者の立場、その生活が安定し、向上し、同時にそれが産業の発展に対して、さらに勤労意欲が増していき、健全な労働ということが行われるということから申しまして、最低賃金制のごときものは、やはりこれを研究し実施し実現するという方向に進んでいかなければならぬ、それには今申しますように、十分に産業の実情なり業態の実際に適合するように、これがもしも適合しないということになると、われわれは保護し安定せしめようとして、かえって産業をつぶして労働者にも迷惑をかける結果になるのでありますから、そういう点を十分に一つ検討して、適当な最低賃金制というものを作り上げていきたい、これが私の念願でございます。
  35. 相馬助治

    相馬助治君 最低賃金制についての首相の答弁はかなりまあ含みのあるもので、非常に必要であるけれども、今早急にそういうことは考えていない、その根拠とするところは団体法ができたところでさように雇用関係が縮小し、かつ労働者がひどい状態に置かれるというようなことは予想されないと、こういう意味の御答弁でございまするが、まあこれは見解の相違になると思いまするけれども、私どもの見解をもっていたしますれば、当然そういうことが一時的にでも予想されまするので、失業対策の問題をどうするか、それから労働者の最低賃金制の問題をどうするか、こういうふうな問題については賢明なる岸首相においては当然構想があるものとして私は御質問をいたしておるのでございます。もちろんこの最低賃金制というような問題は、業種も違いまするし、労働力も違いまするし、きわめて複雑多岐でありまして、これを立法することはなかなか困難な前提条件があるということを私どもも承知をいたしております。しかし政府はこの団体法というもの一本で、工業面、商業面、サービス面、こういう複雑多岐なる中小企業者を一本の法律によって規制いたしまして、これの優遇策を考えたのであるから、そういう趣旨からいうならば、困難はあえて克服して最低賃金制というような問題についても将来一つ今首相が申されましたような方向について、十分なる努力一つお願いしておきたいと思うのです。  この法律そのものについて、もう一点承わりたいと思いますることは、現在審議中の法案は、政府が提案をいたしたものを衆議院の段階におきまして修正いたして、これがこちらに回付されておるのでございます。これは自民党の諸君も、この法律は審議をすれば審議をするほど問題が多岐複雑、しかも理解に苦しむような点もある、中小企業者のためにこの種法案の必要性は十分認識するけれども、実にむずかしいこれは問題を内蔵しておる、かように述べておるのであります。衆議院で修正いたしましてこちらに回付いたしましてから、だいぶ時間もたちましたし、聞くところによりますると、自民党の政調会やその他においては、火災共済その他につきまして再修正の意見もあるやに承わっております。私どもの社会党の立場からいたしましても、世上この団体法案に反対しているという宣伝が一部に行われておりますことをきわめて遺憾といたしております。私どももこの種法案の必要性を認識いたし、よりベターなものを作り上げたいという念願をもって、休会中といえども、こういうふうに熱心に審議に応じておるのでございます。従いまして、首相といたしまして、今度の臨時国会におきまして一体どのような形における本法案成立を期待するか。すなわち火災共済その他再修正の意見あるやに聞くがゆえに、これらのものを含めて、一つ再修正の意見等をお持ちであるか、それともまた衆議院回付のままで、この際は成立を期待するというのであるか、するとするならば、その理由は何であるか、首相の見解を承わっておきたいと思います。
  36. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 中小企業団体法内容につきましては、いろいろと私は重大な問題でありまするし、また重大な立法でありますから、衆議院におきましても参議院におきましてもそれぞれ御議論のあることは当然であって、十分御審議を尽していただいていかなければならぬと思いますが、政府は実は衆議院で修正される前の原案をもって適当なりとして提案をいたしたのでありますが、衆議院におきまして、これは衆議院の満場一致の御修正のもとにでき上ったものをこちらの参議院に回付いたして、参議院において御審議中になっておることは御承知の通りであります。私ども政府としては、衆議院のこの両党の一致した修正案というものを尊重して、その衆議院からこちらに参っております案がそのまま成立することを私どもとしては期待をいたしており、それが望ましいと考えております。
  37. 相馬助治

    相馬助治君 本法についての政府の基本的な態度は、私の質問によって、私自身もよくわかりましたが、この際首相に私は日本の産業構造に連関いたしまして、中小企業の将来性に対してどのような見解を持ち、理想像をどのように描いておるかという基本的な問題を承わっておきたいと思うのです。この時間のない質問の中にこのような基本的な問題を提起することはいささか当を得ないそしりもあるかもわかりませんけれども、私どもといたしましては日本中小企業者にとって革命的な法案であると言われるところのこの本法の審議につきましては、当然政府のその基本的な見解を承知いたし、そういう見通しの上に立って審議の万全を期したいと思いますので、あえて御質問いたし、答弁を求めるのでございます。首相も御承知のように、日本の産業構造というものは多少重化学工業化の方向には向いておりまするけれども、依然として軽工業、農業を主体といたしておりますることは申し上げるまでもございません。しかも生産物を配給するところの商業、この面に至りまするというと、零細小売業者が非常に大きな役割を演じておるのであります。そういうふうな日本の産業構造をながめて参りまするというと、一体このままで政府日本中小企業を伸ばしたいと、かように考えているのかどうか、また本法の成立によって日本中小企業の将来の運命をこの方向に開拓せしめ、将来はかかる理想像に近づけしめたいと念願する一つの基本的な態度があるのかどうか、かようなることについて私どもは伺いたいのであります。参考までに私の見た見解をもっていたしまするならば、政府が提案いたしましたところのこの団体法案なるものは、どこまでも現在の機構をそのままに温存しようというのがねらいであって、いわば基本法というよりも、現在の中小企業者が置かれている立場にかんがみて不況対策臨時措置令的なものであって、自民党が盛んにPRで非常にいい法律案を作ってやるぞと言うて官宣伝しているほどのこともない法案のようにもまあ見えるのであります。特に強制加入を認めてあるがままの体制の中に、能率よきものも、能率悪きものも全部現在の地位を確保せしめ、そうして不当なる競争者が出現しそうな場合には設備制限を行なっていく、かようなこの法律の行き方というものは一体どのような意図に出発しているのであろうか。首相は日本の産業構造の変動に対して団体法の役割がいかなるものであるとお考えになるか、この点をしかと承わりたいのであります。で、まことに失礼なことを申すようで恐縮ではございまするけれど、岸首相は戦時中には、御承知のように、中小企業の転廃業を指導し、企業整備をいたし、国家の要請のもとにおいてなされたことではありますけれども、かつてはそういうふうな統制経済のチャンピオンとして日本の経済界を指導された方なのであります。従って今日経済連その他の諸君はこの法律はおそるべき一種の官僚統制を意図するところの統制法案であるというような主張もなされておるのであります。さようなる立場からいたしまして、私どもといたしましては岸首相の、日本中小企業の現在をどのようにながめ、将来についてどのような理想像を描かれるかということを承わることはきわめて必要なことでありまして、本法審議上どうしても承知いたしたい点なのでございます。この問題に関しまして隔意なき、一つ御遠慮ない御見解をお漏らしいただきたいと思うのでございます。なお、これはお尋ねしておるのでありまして、いかような御答弁でも、それをつかんで私は議論しようという用意はありませんし、さようなる失礼は考えていないのでありまして、率直に一つ承わりたいのであります。
  38. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) ただいま相馬委員より御質問のありましたことはきわめて重大な、重要な問題であると思います。私は、私自身が戦時中の商工大臣として企業整備をやったとのお話がございまして、全くその通りでありますが、なおそういう御質問が出ましたから、私一個のことを申し上げてはなはだ恐縮でありますが、私は大正九年に当時の農商務省に入り、後に商工省にずっとおりまして、実は中小企業の問題については私自身ほとんど商工省の役人として二十年の間この問題に取り組んで参ったのであります。かつてありました重要物産同業組合法、工業組合法、輸出組合法、商業組合法、また今日の商工組合中央金庫の制度等実は私が事務官あるいは課長、局長としてこの中小企業問題の解決の一つの方策として当時の商工省の首脳部とともにこれを実現をして参りました。そういうふうにして、最後には今お話しのように、私が育成し、これを確立しようとしておった中小企業の大部分の方に企業整備の当時の事情からとは申せ御迷惑をかけたということは、私にとっては非常に忘れ得ない、一つの私の頭に強く印象づけられておることであります。私は日本中小企業というものをしさいに検討してみまするというと、これは御承知の通りきわめて複雑でありまして、中小企業全部がそうだということは言い切れませんけれども、その大部分中小企業というものは、日本の産業構成上きわめて重要な立場を、地位を占めている。特に第一次製品でなしに、第二次、第三次というような製品になりますというと、中小企業の持っている特徴というものが、日本経済の、ある意味における強さであり、輸出貿易の上にそれが非常に大きな貢献をなしている。たとえば製鉄業にしましても、溶鉱炉を持っての製鉄業というものは大企業でありますけれども、これが二次製品、三次製品となってきますというと、やはり中小企業の形において、これが加工され、いろんな機械の部分品となり、その他のものになってくる。織物についても紡績そのものは大企業のものであるけれども、織物そのものは中小企業の形において作られることがむしろ日本の産業の一つの特徴として、強みとして考えられている。こういうふうなものが少くない。また人口の構成の上から申しまして、いわゆる零細なる商業機構の小売商というものが非常に数が多いのでありますが、これまた日本人の非常な努力によるサービスを含めた小売業として、相当にわれわれの国民生活の上に大きな役割をしている。従ってこれを安定し、これを育成し、これを助長していくことは、日本の産業政策の上から見て、きわめて重要なものであるというのが根本の考えでありますが、しかし同時に、中小企業というものが、資本が小さくて設備があまり要らない。従って数も非常に多いし、業態もいろいろと千差万別であるし、その間における競争というものも、もちろん大いに自由競争をしてサービスをし、努力もして、よくしていくということも一方において必要であることは言うを待ちませんけれども、ややともすると、その競争が行き過ぎて、そのために業界全体が不安定になり、業界全体が共倒れになるような事態になることも少くないというのが、日本中小企業の実際の事情であると思います。  そこで、これは協同組合なり、あるいは協同組織を作って、そして業界の共同の力によって、その弱点を救っていくということが、中小企業に対する最も適当な方法として、従来も、今申したように重要物産同業組合以来各種の組合制度として戦前に発達をして参ったのであります。戦後これらの組合が一応協同組合という形に編成がえをせられまして今日ありますけれども、これだけではやはり足りないのであります。一面今申しましたような過当な競争ができ、そうしてそのために業界全体が不安定となって共倒れになるというような事態をも考えますというと、どうしてもやはり組合の自主的な、業者の一つの自主的な調整の方法によって、業界の安定をはかっていくということが、この中小企業に対する対策としては根本的に考えなければならない一つの大きな問題である、かように考えてこの団体法を提案いたしておるわけでありまして、中小企業そのものを現在のままに、私は永久にこれを存続せしめるということも、これは世間、社会の発達や、あるいは産業の発達から見て無理でありましょう。しかし私はやはり日本中小企業が持っている特質、今申しましたようないろいろな特徴というものは、やはりこれを助長し、その基礎としての業界の安定をはかっていく。そして近代的な設備なり、近代的のサービスなり、近代的の経営なり、あるいは近代化されるところのいろいろな制度をこれに取り入れていくということが日本の将来の産業のあり方としても望ましいことだと、決して大企業に集中していくという方向にだけ推し進めるべきものでもないし、今の中小企業をそのままにただこれを救済して現状を維持していくということでなしに、やはり日本産業の上の一つの特徴としての中小企業の特質を生かしつつ、これに近代化の線を加えていく。それにはやはり、業界が安定しているということが必要である。その安定は、業者の自主的な調整事業によってこれを安定していくという考え方に立っておるわけであります。
  39. 相馬助治

    相馬助治君 ただいまの詳細な御所見を承わりまして、参考になりました。この法律案成立いたしました暁において、最も重大な問題として国民の関心を集めつつありまする消費物価の問題について、最後に一点承わっておきたいと思います。  今日主婦連や生協その他諸団体中心といたしまして反対運動があります。しかもまた台所をあずかる奥様方がひとしく心配をいたしておりますることは、団体法案が通過した暁には消費物価が高くなりはしないかと、こういうことなのでございます。で、世の中は回り持ちと申しますが、岸首相が就任以来鋭意国政に尽瘁されておるわけでありますが、経済の波がここで値上げをせざるを得ないような段階になりまして、岸値上げ内閣と世間では申しておりますることも、ときには耳に入られると思うのです。前に生活環境法ができまして、直ちに理髪料金の問題、それからふろ賃の問題等で物議をかもしております。そうして、この団体法案ができ上るというと、たちまち消費物価が高くなるのではないかと、こういうことを世上心配をしておるのです。われわれは、委員会においてこの点をたびたび質問をいたしました。前尾通産大臣も、そういう点はあるかもしれぬけれども、しかし団体の力をもって大企業にも対抗し、原料安で仕入れることもできる、そういうことになれば当然その消費物価が高くなると一がいにきめつけることは当らない、さようなる心配はないのでございますと、こういうふうに説明をいたすのでございまするけれども、さようでありますかとこちらが納得するわけにはどうしても参らぬのでございます。中小企業者が大企業に対しまして、力関係で安く原料を買うというても限度があります。そういうことになりますと、どうしても消費者の方にしわが寄って参る。結局中小企業者を救うためにこの団体法の犠牲を消費者に負担させると、こういうふうな形がここで予想されて参るのでございます。それは懸念でなくて、この法律不況カルテルを作ることを意味しております。そういうことになりまするならば、どうしても消費物価は高くなると私どもは予想せざるを得ないのでございます。そういうふうな場合におきまして、一体岸首相はどのようにお考えであるか。もちろん、中小企業者を救うためにその団結権を許すのでございまするから、その救済の意味を含めて、価格調整その他の問題について中小企業者自身の発言権もわれわれは認めなければなりません。なりませんけれども、この法律ができることによって多くの人が迷惑をするところの消費物価の上昇が当然の問題としてここに出て参るということになりまするならば、わが党としてはこれを看過するわけに参らないのであります。これは自民党においてもそうでありますし、賢明なる岸首相においてもその懸念があると思うのです。従前政府は、さようなる懸念はございませんと、こういうふうに言っておる。なぜわれわれが信じないかと申しますと、環境衛生法の問題の場合にも、これでは物価が上るじゃないかと、こういうことを言いますると、政府は運用の妙を発揮いたしまして上らないようにいたしますと、そうして法律ができた。舌の根のかわかないうちにもう物の値が上っておる。こういうふうな現実の前に立って、団体法ができ上っても消費物価は不当に上らないのだという国民が納得するところの説明をこの際岸首相からわれわれは承わっておきたいのでございます。一つ委員会を通じまして、国民が安心するようによい返事をお聞かせ願いたいと、かように存じます。
  40. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) この法律によっての調整事業、あるいはその一つとして価格の協定をして値段をつり上げるのではないかという点を考えられておりますが、先ほども申し上げましたように、実際中小企業というものを、これは倒れてもよろしいという立場をとれば別ですけれども、また私はさっき申したように、ただ現状のままに無理にこれを維持しようとして考えておるわけではございませんけれども、中小企業がやはり日本の産業構成上非常に重要なものを持っておると、そうしてこれは安定し、これを育成していかなければならぬという立場をとって考えてみまするというと、今私どもがこういう調整事業をやらせるとか、あるいはある場合においては員外の人に命令を出して加盟させるというふうな措置をとるということは、業界がそういう人々のために非常に混乱をし、業界全体の基礎が危くなるというような場合にそういうことをやるわけでありまして、ただ小さい眼だけで見るというと、業界が倒れようがどうだろうが、安い物が買えれば投げ売りだろうが何だろうがはなはだけっこうであるという消費者だけの狭い考えで言えばあれでしょうけれども、しかし国全体から考えてみると、やはりそれぞれの地位において安定をする合理的な値段というものが——そこに特殊に不当な利益を得るとか、不当な損害をある階層の人に及ぼすというようなことは、これは政治としてそういうことがあってならぬことは言うを待ちませんけれども、私どもが団体法で考えておるそういう場合というのは非常に限られた場合であって、そうしてそのことは、中小企業全体がそれじゃあ立っていかないというような場合に、価格の協定とかいうことは、これを特に認可制度であるとか、非常な厳格な審査の上に許していくということでありまして、決して消費者が御心配になっておるように、一般にこれができたらすべての消費物価が上るだろう、われわれの何はどうしてくれるのだというふうな御心配は私は絶対にないと。しかし今言っておるように、業界が倒れても何でも、投げ売りでも何でもそれがけっこうなのであるというようなことは、これは経済政策として言えないわけでありますから、われわれは合理的な基礎の上にこれらの業態が成り立っていくと、そうしてそれが近代化され、能率化され、そうして共同施設とか何とかいう方法によってコストを安くしていく、そうしてしかも業界全体はそれで合理的な利益が得られて立っていくというふうに持っていくことが必要なのでありまして、現状のような乱雑なところに、また過当競争にまかしておくだけでは、この大事な中小企業というものが、私はこれを育成していくことはできないと、かように考えておるわけでありまして、決して岸内閣ができて、値上げ内閣が私どもの実際でないことは、よく御承知だろうと思いますが、現に環境衛生法ができましても、ふろ賃は上げないようにしておりまして、私どもといたしましても極力物価の上らないことに努力いたしておりまするから、御了承願います。
  41. 相馬助治

    相馬助治君 ただいまの首相の答弁を聞くと、やはり今までの政府側の委員の答弁と同じように、消費価格が不当に上ることはないから心配するな、こういうことです。今私がここで考えておることは、かりにその通りだとすると、問題が一つ別に起きると思うのです。今後自民党のPR活動におきまして、団体法を自民党は通してやる、そうすれば日本中小企業者は救われるのだ、こういう説明をしておるわけです。この間、高橋委員質問の中で触れたのですが、自民党の中にはこういう説明をしている人があるのです。団体法というのはどういう法律なんだ。その法律中小企業者が金回りがよくなって、税金が安くなって、金がちょんちょんと借りられる法律なんだ。ああそうか。こういうことで、中小企業者が理解しているということまで伝えられておるのです。そういたしますと、ここにも本法案が通過することを期待して傍聴している中小企業者方々が多いと思いまするが、価格調整をするにしても、非常にめんどうで、よくよくの場合でなければこの法律は口をきかないのだ、こういうことになるというと、この中小企業者の諸君は全くがっかりしちゃうと思います。この法律が通れば救われるのだ、こういうふうに考えて、そうしてこれをまさに開運のお守り袋のように考えていたところが、法律は通った、ところが案外利益がない。ただの紙っぺらにすぎなかった。今までおさい銭を上げたり、お百度参りをしていたことは、全くこれは徒労であった。こういうことになると、中小企業者ののろいというものが、あげて岸内閣のもとに私は集中するとさえおそれるのであります。従いまして見解の相違であって、議論をしても始まらぬことでありますけれども、どうか一つ、この問題につきましては、価格調整その他の問題に関連をいたしまして、運営その他においても十分消費価格を上げないところの準備と用意が必要であるということを私は指摘しておきたいのであります。  これに連関して、御答弁がありますれば承わり、なければ、私は最後に一点、これに直接関係のない問題でありまするが、お尋ねしたいと思います。御答弁ございますか。
  42. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 簡単にちょっと……。  この団体法目的は、先ほど来申し上げておりますように、業者の自主的な調整によりまして業界を安定するということが基礎になっております。価格の協定ということは、そのうちの一番最後の方法として私どもは考えております。その前に、いろいろと生産の数量を適当に調整するという問題もありましょうし、あるいは原料を共同に買うという問題もありましょうし、販売方法について協定をして、そしてなるべく共同的に、個々に競争せずに、販売の手数料なんかを安くしていくというような方法もありましょうし、またそういうことによって業界が安定をすれば、私は、銀行も安心して金を貸すようになりますから、今言われるように金をちょんちょん借りられるということになると思います。決してこれは価格協定だけが目的ではないのでありまして、これは業者が十分に自覚して、これによって業界全体が力を合せて、自分たちの業界を安定しようという意気に燃えて立ち上って、そういう組合ができてくるならば、十分私は中小企業現状の困っていることを救うのには役立つと思いますし、また価格の点において消費者に迷惑を及ぼすというようなことのないようには十分考えます。同時に私は、やはり中小企業者といっても、大部分はやはり消費者である。たとえばおとうふ屋が何かおとうふの価格を協定するといいますけれども、ほかのおとうふ屋以外の方は中小企業の人は皆消費者なんですから、やはりこういう問題は中小企業全体としてお考え下されば、私は、自分の組合だけがいい、自分の商売だけがいいというようなものじゃなくて、やはり世の中は助け合いでございますから、その辺のことにつきましては、これこそ運営の妙を発揮していきたいと考えております。
  43. 相馬助治

    相馬助治君 最後に一点ただします。  岸首相は、三悪追放ということを申されており、かつ、最近は青年にもあなたの見解を呼びかけるという態度をとられておることについては私どももまことに日本の将来を思いまするときに賛成です。そういう感覚が政治家には必要だと思います。そういう感覚をお持ちになり、正義感を持っておいでであろうところの首相に、私は、次の一点をお尋ねいたしまして、厳粛なる答弁を願いたいのであります。  それは何かと申しますと、首相は汚職追放を呼号しております。今日日本の政治にまずもって要求されなければならないことは清潔だと思うのです。政治家に向ってまず最初に要求されなければならないことは、その手を清めよ、ということだと思うのです。そういうふうなこの矢先におきまして、最近不幸なことに、売春禁止法に関する汚職のうわさが出ておるのです。私もこの問題につきまして種々調べましたところが、私の知った情報の中におきましても、まことにこれは失礼なことではありまするけれども、与党自民党の中には二十数人の方々がこれに関係していると伝えられており、その情報はかなり正確なのでございます。そういたしますと、この問題に対しまして首相はどのようにお考えになっており、どのように国民に信を求めんとするのか、その所見を承わりたいのであります。  この種の質問に対しましては、問題は司直の手にゆだねられておるのであるから、軽々しくここで論ずべきではないという答弁が普通なされるのでありますが、前段に私が申しましたように、正義感を持ち、しかも汚職追放を叫んでおられまするところの首相にして、この問題を正義的な立場から、祖国の将来を憂えるという立場から、青年にこの間のことを説明するという立場から、どのようにお考えになっておるか、この際とくと御見解を承わりたいと思うのであります。
  44. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) お話通り政治をきれいなものにする、国民に信頼されるような清潔さを政治が持たなければいかぬということについては私も強くこれを考えておりまして、三悪追放ということを国民の前に公約いたしておるのもその考えであります。それにはまず政党並びに政治家自身が国民から疑いを受けないような清廉潔白な、清潔さを持たなければいかぬ、かように考えております。  その際に、売春法に関連をいたしまして、いろいろなうわさが出ておりますことは、ただうわさであったといたしましても、私は政治の純潔を国民の前に誓っている私としては、はなはだ遺憾のことでございます。もちろん今司直の手で調べておりまして、私はどういう結果になるかはまだ明確に申し上げられませんけれども、しかしこの問題に関して、私はこれを隠蔽したり、司直の調べを少しでも妨げるとか、あるいはいいかげんにするということは絶対にいたしません。必ず(「指揮権発動は」と呼ぶ者あり)これは残念でございますけれども、ある事実はあくまでもこれをはっきりさして、そうして将来そういうことの絶対にないということを国民の前に明らかにしなければならないと思っております。  今指揮権というお言葉がございましたが、こんな問題で指揮権を発動するというようなことでないことは言うを待ちません。絶対にそういうことはいたしませんし、あくまでも事実を鮮明して、これに対する処置をとりたい、かように考えております。
  45. 阿部竹松

    阿部竹松君 総理に二、三点お尋ねいたします。戦争中にわが国の統制経済の最高責任者であった総理に対しまして、同僚相馬議員からの質問にはきわめて謙虚な御答弁がございましたが、私は表面も内容もその通りであっていただきたいと思うわけであります。  しかしながら、本法案内容を検討してみますると、やはり総理が謙虚な気持お話しになったようなことになっておらぬ節々があるわけであります。  そこで小さい条文はさておきまして、本法案は果して現行の日本国憲法に違反する点ありやなしや、こういう点について総理に明快にお伺いしたいわけであります。本件については今まで通産大臣を初め、次官、あるいは修正されました衆議院の自民党、社会党それぞれの代表の方からもいろいろ承わりましたけれども、しかしながら、まだ明確に納得いきませんので、果して本法案が実際憲法に違反しないかどうかという点について明確にお伺いしたいと思います。
  46. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 御質問の、憲法に違反してるかどうかという点は、いわゆる強制加入に関する規定中心としての御質問だと思います。もちろん憲法におきましては、われわれは営業の自由があり、あらゆる意味において自由が憲法上保障されておることは御承知の通りであります。しかし、この自由というものも、全然無制限、全然何らの無条件に、無制限にされるということではなしに、やはり公共の福祉という点から考えてみて、福祉に反するとか、福祉を害するというような行動をしても、なお自由ありということはいえないわけでありまして、憲法にもその趣旨が明らかにされておるわけであります。われわれがこの強制加入を命ずるというような場合というものは、この法律に非常に限定をしてありまして、すなわち先ほど来申してるように、それが競争の過当のために、もしくは少数の員外者の行動のために、業界全体が非常な危殆に瀕する——中小企業自体というものは、先ほど申しましたように、わが日本の産業構成上きわめて重要なものであって、やはりこれを育成し、維持していかなければならないにかかわらず、少数の員外者の行動によってそれが妨げられ、危殆に瀕するというような場合におきまして、われわれは非常な制限をされた状況において加入をさして、そして業界全体の自主的な調整に服せしめようということでありますので、私はこれは憲法違反ではない、こういう考えでおります。   〔委員長退席、理事相馬助治君着席〕
  47. 阿部竹松

    阿部竹松君 そうしますと、総理もさいぜんのお話では、大正九年から通商産業行政に、事務官なり、あるいは課長なり、あるいは局長としてお務めになっておったので、よく知っておるという御答弁でありましたが、当時から現在まで、あるいは終戦後の統計を御承知になっておるかどうかわかりませんけれども、終戦後の統計だけでも、年々中小企業がふえるわけであります。従って憲法違反でなければ、現在日本に二百六十万あるという中小企業をこれ以上ふやすことができないというような法文でも作れば、かえってこれは助かるということになるわけであります。しかしそういうような法律は憲法上許すことができない。それと同時に、果してそういうことが公共の福祉ということで割り切れるかどうかという点について重ねてお伺いいたします。
  48. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) もちろん根本的に企業の自由は許されております。また日本の経済は安定した基礎に私どもは着々として拡大をしていかなければならない。労働人口もふえていくことは御承知の通りでありますから、中小企業者の数もふえていくことは当然であります。また健全な基礎の上においてふえていくことが望ましいのであります。それが妨げられるような事態がこの業界においてときどき起ってくる。たとえば最近中小企業安定法あたりで、これはもちろん加盟はせずに、員外にあって、そして組合調整事業に従わなければならんという命令を出されるのでありますが、この命令を出したためにかえって業界自体が安定して、そうして業界が健全な形において伸びておるという例は、たとえば神戸を中心としての町、その他においてもわれわれが実際見ておるところであります。従いまして私はそういう員外のままで一体命令を出すのがいいか、あるいは加盟さして、そして業者の自主的な調整に、一つ業者の一人として自分も協力し、また一緒にやっていく方が望ましいかといえば、私はやはり組合に入っていた方が望ましい形である、こう思って、この団体法にはそういう規定を設けてあるわけであります。いずれにいたしましても、こういう事態命令なり、何か出してそういう強制するということは決して望ましい事態ではない。私は業者が自覚したならば、そういう員外にあって業界全体を攪乱したり、業界全体に迷惑をかけるような業者は一人もいなくなることを日本のために望むのでありますけれども、実際に、数多い中にはそういうものがあって、業界全体が困るという場合においては、やはりこういう命令を出してやるということは社会福祉のために必要なことであって、決して憲法に違反するものではないと、かように考えております。
  49. 阿部竹松

    阿部竹松君 総理は、今二つにお分けになって御答弁がなされたわけですが、   〔理事相馬助治君退席、委員長着席〕 その後段の方に一つ努力せずして、前段の項がなければならぬという話がわからないわけであります。終戦後昭和二十一年の第九十二国会ですか、第九十二国会から今日まで相当の多数の中小企業に関する法案が国会で成立を見ております。しかしながらこれでも足りない、あれでも足らぬというところで、年々年を経るごとに法律がたくさんできる。それでもまだ足らないといって本法案がまた国会に出されておるわけでありますけれども、これは総理のように、後段の項の努力をせずして、法案を作るから、仏作って魂入れず、こういうことに相なるのでありまして、なぜその後段の方にお力をお入れにならないか、こういう点について簡単にまずお伺いいたします。
  50. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 中小企業に対して戦後いろいろな法案ができ、いろいろな施策が行われたことは御承知の通りでありますが、やはりこの中小企業の……先ほど申しましたように、私自身の長い経験から申しましても、また中小企業実態をよく検討をした人の意見の一致しておるところは、やはりこれを組織化する、そうしてそれを共同の力の基礎を作るということが、いろいろな施策を行なっていく上の一番根本なことである。その根本が今日まで実はほうっておかれまして、この枝葉のところだけにいろいろな措置が講ぜられてきておるということが、私は戦後の中小企業に関する諸立法であると思う。もちろん枝葉のところにおきましても、それ相応の効果は発揮しておりますけれども、大事な根幹であり、大事な基礎であるところの業者の組織というものの基礎ができておらぬというところに中小企業の非常な弱点があり、また諸種の方策が十分その効果を上げないところがあるのでありまして、その意味において今回この基礎であるところの組織に関する団体法を提案して、これを成立せしめよう、こういう意味であります。
  51. 阿部竹松

    阿部竹松君 いろいろ御答弁があるわけですけれども、しかしながらもう一点総理にお伺いしたいことは、幾つかの法案を作って今日まで至ったということは、今御答弁の通りでありますが、われわれは立法府でございますから、法律だけ作ればよろしいのだ、あとは行政府にまかせておけばよろしいという気持はなかったにしろ、立法府のわれわれでも当然行政府に回った場合はどうなっておるかということを十分見なかった点をわれわれも反省しなければならぬと思います。しかしながら立場をかえて、総理も御承知の通り、世界各国が八十数カ国あるか九十カ国あるか、私は小さい数字はわかりませんけれども、本法案は、全部私知っておりませんけれども、少くともこういう法案ができたのは、かつてヒットラーがドイツの総統であった時代にこういう法案一つあったそうであります。それ以外今まで世界各国にこういう趣旨法案の例を見ないということを私は聞いております。総理がもしそういうことをお知りであれば——世界各国にこういう趣旨法案があったかどうかということを御承知であればお示しを願いたいと思います。私の聞いておる範囲では、これは世界で初めてであるというように聞いておるわけであります。
  52. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 外国の立法例については、私ここでお答えするだけの資料を持ちませんけれども、しかしこの団体法の全体の趣旨——もちろん戦前の立法の技術と今日の技術とは非常に違っておりまして、従ってその内容等につきましても違っておりますが、私は先ほど来申し上げておるように、私が役人として関係しておりました重要物産同業組合法、工業組合法、輸出組合法、商業組合法というものを一貫しておる業者の組織団体の基礎を作る考え方と、この法案の基礎に考えておることとは大体に同じ方向で考えておりまして、従ってそう諸外国の実例を見なくても日本の従来の立法例を見るならば、これが非常に画期的な、非常に例のない法案だとは実は考えておらないのであります。
  53. 阿部竹松

    阿部竹松君 画期的例のないところが問題なわけであります。太平洋戦争、あるいはその前、満州事変の当時に、世界に画期的例のないことをやった。また今回でも画期的例のないことをやろうとなさっておるわけです。しかしそれはさておきまして、もう一つお伺いしたいことは、さいぜん相馬委員も触れられましたが、この法案だけで、中小企業が助かるかどうかということを、一例をあげますると、ことしの春の、二十六通常国会において、われわれが百五十日かかって、本年の予算はどうなりやというところで、慎重審議をやったのは御承知の通りであります。しかしながら三カ月もたたぬうちに予算を削減しなければならない。外貨の手持ちがどうも予定をオーバーしたとか、あるいはマイナスになったとか、こういうことで百五十日間かかってわれわれが財政投融資はどうするとか、こうするとかいって国会で論議したことが何もならなくなってしまった。これは調べてみたところが、これは法的に何ら違法ではない。これは行政上の措置でできるのだというようなことに相なって、これは大企業から中小企業へしわ寄せがきた、あるいはまた大手銀行は中小企業に金を貸さぬ。あるいはまたローカル銀行も、大手には金を出すけれども、中小企業には金を出さぬ、こういうふうな状態になっているのでありまして、単にこの法案を出したところで、これはばんそうこうをはったにすぎないというような結果になりはせぬかということを非常におそれるわけであります。従いまして、これは単刀直入でけっこうでありますから、これはこうしなければならぬ、今後はこう持っていこうという決意のほどを最後にお示し願いたいと思います。
  54. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) お話通り法律を作っただけでこれで中小企業がすべて救われるものでないことは言うを待たない。私どもはよく申すのでありますが、大へん古い言葉でありますが、天はみずから助くる者を助くで、中小企業者自体がこの法制によって、これを運用する上において、ほんとうに業者が協力して、業界の安定を作るのだ、そのためにはわがままはお互いにしないということに徹して、みずからやっていただかなければ、法律を作り、取締りをするから、それでもって直ちに中小企業が救われるというふうなやさしい問題ではもちろんないと思います。現に今御指摘になりましたが、この金融引き締めに関する総合緊急対策を行います場合におきましても、中小企業が従来経済力が弱いために、そういう金融引き締めということになれば、いつもしわ寄せがくる。こないようにということで、われわれは特に本年度分の、一月ないし三月に割り当てておったところの金融のワクを十二月まで中小企業に対しては広げてやるという方針をきめてやっております。それでうまくいっておるところもありますが、そういうふうにレールを敷き、パイプを通しても、実際の水は流れぬ。実際窓口に行って中小企業者が金を借りようとしても、借りられないという不平をずいぶんわれわれは聞きます。それは一つは、われわれの考えておる政策が、下まで浸透しないという結果もあると思いますが、同時に今度は金を貸す方の銀行なり、あるいは機関なりにしてみますると、言うまでもなく、慈善事業をやっておるわけではありませんから、業界の前途がどうなるかわからぬ、この人の信用が果してその金を貸すだけの信用があるかどうかわからぬというところにもっていって、いかに金のワクをふやしても、いかないということになる。やはり業界が安定して、この業界は将来はこうだということがこの人ならわかるし、金融業者にもわかるなら、初めて金融の道がつく、それには何としても業界が安定する、安定しようとする業者の共同努力があった場合には、この法案でそういうことができる。この法案を作っただけではいけない。一番大事なことは業界の人々が、自分たちの全体の力、共同の力でとにかく業界を安定しよう、そのためには一つ苦しいことも犠牲も忍ぼうと、そして業界全体のために一つ共同の力でやろうということに徹していただくならば、私はこの法案によって業界は相当な実績を上げ得ると、かように考えております。
  55. 阿部竹松

    阿部竹松君 それではこの法案の中身には関係ありませんけれども、本法案審議に当って関係ございますのでお伺いしておきたいと思いますが、政府の発表される新聞記事を見ますと、十一月一日から臨時国会を開会なさるというふうに承わっております。それと同時に、また国会——衆議院ですが——解散説もちらりほらり出ております。従いまして、総理が早く解散されるとこれを審議する期間がなくなったり、あるいは廃案になってしまうと、こういうこともございますので、審議する参考として、(笑声)解散は一体いつごろやるかと、私どもは解散ございませんから、あまりびっくりしないので、正直なところを一つ最後にお漏らしを願いたいと思います。(笑声)
  56. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 解散の問題につきましてはいろいろと世間でも議論がありますし、意見がありますし、また国会におきましても、この前の国会以来私に対してしばしば御質問があります。私は常にそれに対して、今解散する意思がないということを一貫して申し上げてきております。今日におきましても私は解散ということを考えておらないということをはっきり申し上げておきます。
  57. 阿部竹松

    阿部竹松君 重ねてですが、今意思がないということですか、今ですか、この場のことですね。(笑声)
  58. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 解散ということは、私は民主政治でありますから、国民の世論ということを一番尊重しなければならん。またもう一つは解散ということが認められております憲法の事由から申しましても、政府として重要な政策を行おうとしてそれが行われない、その場合に国民に審判してもらうという意味において解散すべきものであって、それ以外には解散すべきものではないというのが私の解散に対する考え方であります。そういう事態は現在のところありません。また予想もつきませんから考えておらない、かように申し上げておるのであります。
  59. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 団体法に関連して二、三総理の御所見を伺いたいのですが、大体今、阿部委員の御質問に関連するのでありますが、強制加入の問題、私ここで憲法の問題なり、違反の問題を論議するつもりはありません。ただ、政府が公共の福祉の議論をここへ持ってこられたことが実は不可解千万です。お話のように、公共の福祉を念頭に入れて考えることは当然のことでありますけれども、強制加入をしなければ総理の言われる目的を達し得ないものか、そこに問題があると思う。総理も例としてあげられました現在の安定法におきましては、強制加入の道はない。しかしながらアウトサイダーがそのための調整に従わなければその業界全体が崩壊する。その場合には、員外に対する規制命令があるので、それで私は十分であると、なるほど自主的な団体加入せしめることは望ましいことかもわからない。これは総理の言われる通りであります。それは望ましいことであっても決して強制加入はそれによって合理化されたりするものではないと思う。何がゆえに強制加入命令しなければいけないか。しかも今度の団体は非常に強力な団体であります。その強力な団体が強制加入ということによってさらに裏づけをされるのであります。そこに私は一つの問題があろうと思います。なぜ員外規制命令では足りないのか、強制加入せしめなければ、その業界の何といいますか、安定がどうしても保てないということが一体言い得るのかどうか、その点を一つ大事なところでありますからお答えを願いたいと思います。
  60. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 従来、中小企業安定法で員外の人を、規制命令を出してそうして取り締りを行なってきておる例もあります。しかしこの団体法は、この中小企業安定法はごく業種を限定して、そうしてそういう員外の人に命令をしても、その効果の発揮できるような業態を選んで、そうしてこれを行なってきて相当な効果を上げていることは御承知の通りであります。しかるに中小企業団体法は広く中小企業全体の一つ組織の法として考えておるわけでありまして、業態自体が非常に千差万別でありますし、複雑でございまして、ああいうような取り上げてあるものを引き抜いてきて、そうして委員会命令をするというようなやり方では、実際の効果を上げる上からいいますというと、私は非常に不十分であります。むしろやはり業界の自主的な組織であるその組織に加盟して、そうして組織の一員として業界全体のために協力するということが効果的であり、十分その目的を達するゆえんでありまして、そうでないというと十分なる効果を発揮し得ないというのがわれわれの見解でございます。ただ単にそれが望ましいということにとどまらずして、実際の効果を上げる上においてそういう方法をとらなければ効果を上げられない。それは千差万別の業態を網羅しておる組織法たる団体法においてはそうでなければならぬというのが私どもの見解であります。
  61. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 安定法においてはそれぞれ業種が指定されておって総理の言われる通りであります。この団体法はなるほど包括的でありますけれども、しかし包括的に組合ができるわけじゃない。個々のケースにおいて、個々の業種について組合ができる。その業種についての必要なる調整規程ができるのでありまして、結果においては安定法の場合と少しも変らない。構成としては包括的であるけれども、法に発動する場合はことごとく具体的ケースになるのであります。従って、その業界の安定をはかるために調整規程ができる。それに忠実に従えば総理の言われるアウトサイダーがあっても十分効果は達するのじゃないか。それ以上に、なるほど組合に入ることは望ましいかもしれない。入った方がより効果的であるかもしれないけれども、それは若干よりいいというだけであって、そのために強制的に加入せしめなければその業界が安定できないとか、調整規程が守られないとかという懸念は私ないと思うのであります。政府の説明なり、総理の御見解に納得ができないのであります。しかしこれ以上は見解の相違になるかもしれませんが、もし御答弁いただければけっこうですし、なければないでけっこうです。  それから第二点は、これは先ほど同僚相馬委員の御質問に対する御答弁を拝聴いたしておりますると、きわめてごもっともであって、何ら批判すべき余地もないのでありますが、私総理のお考えに非常な疑問を実は持つのであります。今度の団体法は、一つは総理が繰り返して言われる中小企業組織強化する——団体強化するという一つ考え方と、それから安定法にありまするところの過当競争による不況対策としてのカルテル、この二つのことが一つになっておるのであります。そこに私問題があると思う。それで、しかもその団体というものは自主的というけれども、国の権力による強制加入命令というものがそのバックにあって非常に強力なる団体なんです。これまでこういう強力な団体があったことは今度が初めてだと思います。しかもこれが普通協同組合が行う経済行為もあわせてできる、こういう例もおそらく過去の団体にはなかったと思います。総理の言われるように、これが円滑に動いていけばなるほどそういう結果になるでしょうけれども、総理も御経験がおありの通りになかなか統制というものは、一面理論的にはいい結果が期待できますけれども、なかなかその通りに参らない。統制からくるいろいろの弊害というものがある。ちょうどわれわれ戦争中及び終戦後においてもつぶさに体験してきたと思うのであります。決してこういう強力な統制団体の運営というものが弊害なしに遂行されるとはどうしても考えられない。いろいろの弊害というものが——統制にまつわりつく弊害——統制権力に関連して起る禍悪ですね。災いというものが必ず起ってくるものである。ことに中小企業といいますけれども、ごく需細な面と、非常に大きい面が一緒になる。普通の統制の常識からいえば、私は力のある中小企業はおそらく非常に安定すると思います。しかしながら、どちらかといえば零細なメンバーですね、これはより一そう苦しい立場に追い込まれる可能性が多分にあると思う。決してこれによって私は零細な中小企業が助かると、この統制によって助かると簡単に言い切ることはできません。むしろ逆じゃないかと思う。ということを、実は懸念をするのであります。なるほどこれによって一応の過当競争というものは防がれるでしょうけれども、同時に公正な競争というものはこれによってはばまれる懸念が多分にある。この団体法を通じて見ましても、過当な競争を押えることに急であって、公正な競争を確保していくという配慮はほとんどない。そういう点は私非常に問題があろうと思う。またこの組合内部におけるいわゆる有力なる中小企業と、零細な中小企業との間の一つの問題があると同時に、外部においてはこれに対応する大企業といいますか、そういう面においても自然的に一つのカルテル式な動きが生まれてくることは私は当然だろうと思う。むしろ必然的であろうと思う——それはいい悪いは別であります——そういう傾向がある。そうしますると、あらゆる特定の業種を通じて見ますると、そこに一つの統制体制というものができ上る。こういうことが果して中小企業はもちろんのこと、日本の産業の制度として——これも臨時的ならばいいのですけれども、多分に恒久的な性格を帯びてくるとすれば、相当私は検討を要することではないか。決して総理の言われるように、いい結果ばかりは期待できないと思う。考え方によれば、一歩もし誤まりますると、何といいますか、組合ファッショといいますか、統制団体ファッショといいますか、そういうようなことに陥る懸念があるように思われるのであります。最近の状況からいえば、大きな企業面においても相当生産性の向上その他で技術面においても、設備面においても、従前になかった大きな変革というものが相当のスピードで行われつつある。そのことはおそかれ早かれ中小企業の面にも入ってくると思う。また入ってこなくちゃならない。それをそれぞれの実態に応じて適正に処理していくことが当面及び近い将来の問題であろうと思う。そこを中小企業の不安定、他との競争、もう今にも中小企業というものは崩壊するというふうな一つの——これはうわさではありませんけれども、かけ声によって全体的に統制の体制を作り上げる。しかも、結果においてどうかといえば、現在の実態というものをむしろ温存していくというふうなことになると思う。これは私単に中小企業という観点だけでなしに、全体の経済政策から見て慎重に検討を要するのではないか、かように思うのであります。ことに現在の独占法、これがいろいろ改正が論議されておる。全体的に見ますると、この制度と独占禁止法との関連性というものは、私きわめて重要な課題を持っておると思うのであります。西独においては競争禁止、防止に関する法律が最近できた。伝えられるところによれば、その法案というものは、国会において前後五カ年を通じて真剣に検討が行われて、やっとこの夏に通過をして、来年から実施されるというわけであります。いたずらに時間をかけることが決していいとは思いませんけれども、中小企業の問題を考える上において、関連するいろいろの面というものに対する配慮がないというと、私は災いがかえって起り得ると実は懸念するのであります。果して総理は、先ほど相馬君の質問に答えられたように、心配なしにこういう強度の統制というものが、単に工業面だけでなしに、広く流通面を包含して、それが適正に行われて、心配するような弊害はないと、こういうふうに安易に考えられておるかどうか。私はなはだ懸念にたえないのでありますが、総理の御見解を伺いたい。
  62. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 梶原委員の御懸念はまことにごもっともなのでありまして、私は決してこれのいい面ばかりじゃなしに、半面における御懸念のような点も、運営においては十分考えなければならぬ。いろいろな面におきまして、重要なものは認可制度にしていくとか、あるいはその認可制度を実行する上において、通産省におきましては、業者も入れ、いろいろな有識者も入れた審議会みたいなものを作りまして、これが運営に当りたいというような考え方を持っておるようであります。いずれにいたしましても、この運営は十分に考えていかなければならぬことは言うを待ちません。特に非常に留意しなければならぬのは、その組合の幹部といいますか、組合の実際の業務に当る、組合を指導する立場にある人々が、ほんとうに自分一個の私益ではなく、業界全体のためを考えて行動するというようなりっぱな幹部をもって充てる。それが一部従来の例で見ましても、組合の幹部だけが、もしも自分たちの私益といいますか、自分たちに特別に関係のあるものの立場だけを考慮するというようなことが、従来の組合の運用におきましてもありがちであったことを考えて見ますると、今後このでき上ったところの組合におけるところの組合の幹部であるとか、組合長、その他の指導的立場に立つ人々の業務の執行についての公正を期するということは非常に大事なことでありまして、十分に一つ監督官庁におきまして、そういう点について、人事並びにその業務の執行については監督していかなければならぬと、こういうように考えております。ただ戦時中の組合、あるいは戦後におきましても、ある時期には行われておりましたが、これが同時に政府の資材等の配給の統制というようなものと結びつきますというと、特にその弊害が大きく現われるおそれがある。一般に自由経済の中にあって、ただ業界の安定をはかるためにという意味の組合でありますならば、もちろん悪くいった場合の弊害は十分に考えなければなりませんけれども、かつてわれわれが経験したような非常に大きな弊害というものは、私は起り得ない。かように思っておりますし、それからまたこれは多少梶原君の誤解に基いているのじゃないかと思いますが、従来こういうものはなかったというお話でありますけれども、重要物産同業組合法も御承知の通り強制加入でありましたし、また共同事業と統制事業とを合せ行なった輸出組合工業組合というものが戦前において相当な業界の安定のために効果を持っておったことも実はあるのであります。私は運用がうまくいき、また業者が十分に自覚してこの制度を活用するということに徹底されるならば——もちろん全然弊害がないということは言えませんけれども、それについて十分な留意をするときにおいては、この効果面のいい点が十分に発揮できるのではないか。かように考えておりまして、今お話しになりましたことは、私は、御意見はごもっともだと思いまして、特に運営の上においては御意見の点を十分に頭に置いてやっていかなければならない、かように考えます。
  63. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 確かに必要な面、それからいい面が一面においてありまするけれども、大体この法案内容についても多くの中小企業者、ことに零細な業者は内容をほんとうに理解するまでにはとうてい至っておらない。そうしてこれが非常に強度のやはり統制なんです。規制なんです。従ってそれからくる弊害というものは、第一次としてはおそらくそういう規約といいますか統制がほんとうに励行されない。これはもうどの統制においても付随することでありますけれども、この自主的のこういう組織についてはなおさらそういう弊害が起るであろう。運用の結果を待たなければわかりませんけれども、プラスの面とマイナスの面とを考え合せてみれば、どちらかといえばおそらくマイナスの面が多いという結果になることを私は懸念するのであります。  それから第二点は、今、総理の言われた点でありますが、中小企業の行政は従来とも総理の言われました通りに、多分に団体行政、団体法制、これによってやっていたのであります。これは複雑な、また多数の人を対象にする関係上、勢いそうなるのであって、農業面においてもそういう傾向が行政面にあると思う。とにもかくにも戦争前まで、あるいは最近まで不十分であっても中小企業に対する団体法制というものは一応の秩序と、またその団体に即する理念と考え方、また理想というものがあって行われてきたと思うのです。ところが、この団体法が現われてみますると、今後の一体中小企業団体法制、団体制度、これをどういうふうにわれわれ考えていっていいか、実は私も混迷しておる一人であります。この協同組合は、この法案に示しておる通りに、きわめて強力なる権能を持っております。強制介入の国家権力をバックにしております。しかも大企業もこれに参加し得るのであります。決して中小企業だけじゃない。大企業者も参加し得るのであります。それから同時に、経済事業もやるのであります。同業組合のごとき当然加入で、全部加入しましたけれども、それ自体が出資をして経済事業をやるというようなことはなかったと思う。経済事業をやる。この経済事業と強制事業がどう結びつくか、これはまだ私政府当局には聞いておりませんけれども、これの結びつきも考えるわけであります。たとえば組合員の個々の仕入れは共同購入でなくちゃいかぬというような調整規程ができないとも限らない。非常に強力なる統制権能と合して経済事業をやる、しかも、経済事業をやるけれども、出資はしなくともよろしい、してもよろしい、従来の中小企業団体においては、経済事業をやる場合においては、少くともやはり金額は出資というものを基礎にしてやる、そこに一つの信用力というものが不十分ながらあったのであります。しかし、この団体は、出資しなくてもよい、しかも、経済事業はやれるというわけであります。こういう一つの巨大なる、わけのわからぬというと悪いけれども、団体を、従来の中小企業の協同組合、これと比べて見ますると、同じ業種について考えれば、ほんとうの協同組合の精神によってやっていくような協同組合というものは、その存在の必要がない。むしろ、ここへ吸収されるということに傾向としてはなるかもわからない。一体そういうことがいいのかどうかであります。  それからさらに、これは別でありますけれども、協同組合の小組合ができる。これも、協同組合と小組合との性格というものは、ただメンバーの資格が小さいというものであって、本質的には何の相違もない。しかし、小の方は、税法上なり、あるいは金融上の特典を与えられた。そうすれば、協同組合は大急ぎで小組合に改組しなければ損だということになる。こういう事態を考えますと、今後の中小企業団体法制というものは、中小企業の立場においてどう考えていくのがいいのか、また、総理として、どういうふうに団体法制といいますか、団体行政というものを今後持っていかれんとするのか、その点を一つお聞かせ願いたいと思います。
  64. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今あります協同組合というものは、御承知の通り共同事業経済事業共同的に営むということでできておるのでありまして、今度作ろうとする商工組合の一番のねらいは、調整事業というものがその本体であります。ところが、中小企業の性質によりましては、調整事業共同事業というものが非常に関連性を持っておるところもありますし、また、ある場合には、不可分な、一方から見ればそれは調整の仕事であるが、一方から見ると一種の経済的な事業であるというような点も、今おあげになりました一定の規格を持っておる原料を購入して、それに加工する、悪い原料は入れない、それが、製品をよくするための一つ調整事業としてそういうことが行われるということになると、それを共同購入することが、一定の規格の原料を仕入れる上におけるところの方法として一番望ましいということになってきますと、いわゆる調整事業共同事業というものがほとんど同じものであって、見方によるというような事態のものもあろうかと思います。従って、今日において、やはり組合の建前としては、共同事業を営み、経済事業を営むことを主たる目的とし、本体とするものが協同組合である、そういうものももちろん必要だ、しかし、同時に、調整をやっていくということが、先ほど来言っておるような、中小企業の実情から言うと必要だ、それを主たる目的として今後の商工組合ができるわけでありますが、同時に、今言ったような関係もありますし、ある場合においては、調整組合たる商工組合が経済共同事業もできるという点が認められた、そうして、そういう場合には、もちろんこの組合に出資さして、出資を認めていかなければなるまいと思います。そういうことは考えなければならぬと思いますが、大体の建前としては、今言っているように、共同経済事業を営む組合としては、やはり商工組合の存立が必要である、調整事業に主眼を置いておるところの組織の基礎であるところのこの団体法というものを認め、同時に、仕事いかんによっては、これが共同事業も営める、こういう建前をとっていきたい、こう思っております。
  65. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 総理の御説明自体は、私はよく理解するのであります。ただ、統制事業といいますか、調整事業、それに必要な限度における経済的な事業をあわせるということは、これはケースによっては考え得るわけであります。しかしながら、全体的にといいますか、原則的に両方やれるのだ、しかも、その経済事業というのは、調整事業によって統制づけて行くんだという立て方で現在の案はあるのでありますけれども、それは非常な危険をその団体自体に蔵する結果になるであろうということを申し上げておくにとどめます。
  66. 島清

    ○島清君 同僚の相馬議員、阿部議員の質問と関連をいたしましてただしておきたいと思う点があるのであります。しかる上に、私の予定されておりまする質問の事項について御説明を願いたいと思っておりますが、総理は、相馬議員の質問にお答えになりまして、本法の成立を急ぐゆえんのものは、中小企業の基本的な組織法を制定するのである、従って、日本社会党が提案をし、目下衆議院の継続審議になっておりますその他の、いわゆる中小企業三法に関する他の二法案については、目下のところ何も考えておられないような御答弁に拝聴いたしたのであります。そこで、私は、今総理がおっしゃっておられるように、単に中小企業組織化するだけであるということで本法を審議するといたしまするならば、私は、これは演説会におけるところの話にはなるかもしりませんけれども、本法案を審議する基本的な態度といたしましては、はなはだ総理の説明といたしましては不十分だと考えるのであります。なぜでございまするならば、一条に、もちろんこの法律目的をうたいまして、組織と、さらに商工組合を結成することができる、調整事業のことについて触れておりまするけれども、しかしながら、組織のことにつきましては、四条におきまして、この法律はもっぱら今までの既存の法律組織関係はゆだねておるのであります。しこうして、この法律目的といたしまするところは、後段でございます。商工組合商工組合連合会、これを結成して、そして九条にうたわれておりまするところの不況要件をどうやって克服して行くかというところにこの法律の全部的な目的が費されておる、こういう形で、私たちはこの法案と取り組んでおるのでございます。従いまして、そういったような態度でこの法案と取り組みまして、そうしてそういう見地に立ちまして、私たちは通産大臣以下の政府委員に説明を求めておるわけであります。ところが、私たちが、通産大臣以下政府の説明委員にこの態度で説明を求めたのと、さらにまた、この態度に基きまして、政府委員から答弁のございました基本的態度と、さらに相馬委員その他の同僚議員の質問に対する総理の態度とは、基本的に、何か知らないけれども食い違いがあるような気がするのでございます。従いまして、今私たちが審議をしておりまするところの法律のおもな目的は、一体中小企業組織化にあるのか、組織化にあるといたしまするならば、四条にうたわれておるだけでございまするから、既存の法律でよろしいはずでございます。この法律目的は、第一条の後段にございまする、商工組合を結成いたしまして、不況克服をするところに重大な要点があると私たちは思うのでありまするが、総理の見解はどうなんでございましょうか。もし私と同じ見解でございまするならば相馬委員にお答えになりました説明は御訂正を願わなければならない筋合いのものだと思うのでありまするが、いかがでございましょうか。
  67. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 中小企業組織についてのいろいろな法律に従来組合のことがありましたように承知いたしておりまするが、しかしそれが、本法の中小企業の基礎的な組織を固めることにならないのは、やはり私は、いざという場合において員外において過当の競争をして業界に迷惑を及ぼすというようなものに対する処置が講ぜられておらない、そういう事態は多く不況のような場合に非常に起ることはもちろんでありますが、そういうことに対する規定を持たないためにほんとうに組織化ができないというのが現在の中小企業の実情でございます。そういうことを明らかにし、そういうことができることにして初めて中小企業組織の基礎ができる、かように考えております。
  68. 島清

    ○島清君 そういたしますると、組織に関する限りにおきましては、この法律に切りかえるわけでありますから、おっしゃるような第一条の後段の方が目的であるといたしまするならば、もっぱらそういうだけの単独立法で間に合うはずでございまするが、この見解はいかがでございましょうか。
  69. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) この中小企業に関する従来の組合、すなわち協同組合というものを四条において認めることになっておりますけれども、同時に商工組合という不況に対応するところの立場をとる組合というものが従来ないわけでございます。これがないことが結局先ほど来申し上げておるように、中小企業の実情からいって、中小企業組織化する上において非常な欠陥になっておる。今度の団体法におきましては、こういう一切の中小企業に関する、団体組織に関するものを、一方従来あるところの協同組合も四条において援用し、また同時に新しい商工組合規定も入れまして、中小企業に関する団体の全部をこれに網羅して一つの法制として立てる、こういう建前をとっておるわけでございます。
  70. 島清

    ○島清君 理論にわたりまする点は、時間がございませんので省略いたします。その問題についてももっとただしておきたいと思っておるのでございまするが、後日の機会にお尋ねをしたいと思います。  もう一点は、本論に入ります前に、私たちはこの法律だけでは政府のうたっておられまするように、中小企業が盆と正月が一緒にくるというような形で救われるものではない。この法律中小企業に対しまする一つの仏である、その魂を入れるのには今大企業から盛んに侵害をされておりますところの中小企業と、大企業との分野をどうやって確保するか、さらに小売商業をどうやって振興させていくかというようなことで、社会党はその法案を出しまして、目下衆議院の委員会で継続審議になっておるということを承わっておるのであります。従いまして、総理が今おっしゃるような形で中小企業の安定と振興をはかろうとするのには、どうしてもその総合的な中小企業三法といわれるものが同時か、ないしは並立的にこれが成立しなければならない。こういう意味におきまして私たちは、政府にも、さらにはこっちに見えておられるところの自民党の代表でいらっしゃいまする小平衆議院議員にも、そういうことを問いただしておるのであります。従いまして、小平衆議院議員は、もっともであるからして、衆議院の方において今継続審議になっておるものを、一つ、その趣旨に沿うて審議を促進するように相談をいたしましょうというて、私たちに確約されておる事実があるのであります。そういたしまするならば、こっちに見えておられまする小平さんは、衆議院におきまするところの共同修正をなされたところの責任者でもありまするし、さらに、政府とつながりまするところの団体法をお出しになりました自民党の代表でもあられるわけでございます。私たちは、そういうふうに、権威ある御答弁で拝聴しておるわけでございまするが、ところが、今総理のお話を承わっておりまするというと、まず、本法だけであって、他の二法案については目下考えておられないような答弁を拝聴いたしまして、私はいささかその両者間におけるところの答弁が食い違っておるような気がするのでありまして、はなはだ満足を得るわけには参りません。その点については、私たちは一体どちらの説明を信頼してお聞きすればよろしいのか。この点は、政府与党間の何か調整がなされてないようでございまするが、そういう点について、私たちはどれを信じて——総理のお言葉を信じてよろしいのか、それとも小平議員の御説明を信じて私たちはこの審議をすればよろしいのか、ちょっと迷わざるを得ないわけでありまするが、その間の説明をお願いいたしたい。
  71. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私が先ほどの相馬さんの御質問でありましたかにお答えをしたときの気持は、政府として、この団体法というものが、すでに衆議院において全会一致でもって修正して通過して、こちらに送付になっておる。これをこのまま成立させるということが政府としての最ものねらいであるということを申し上げたわけであります。この法律に関連して、一切ほかのことは考えませんということを言うような否定の意味で申し上げたわけじゃなしに、この法案は、政府としてはそういう経過をとっておるのであるから、ぜひこの臨時国会成立さしたいということを申し上げた。私は、この法律ができれば、それでもって中小企業に対する対策はすべて終れりとは決して考えておらないのでありまして、その他のいろんなものも考えなければならんだろうけれども、政府としての考えは、衆議院を修正通過しておる案を、今度の臨時国会成立せしむることがその願いであるということを申し上げたわけでありまして、そのことはちっとも違っておりません。  それからなお、衆議院で審議されておりまする他の二法案につきまして、衆議院が十分その審議につきまして、皆様方の御意見をいれて、委員会において審議されるということは、これまた当然のことでありまして、それに対して私が反対の意見を申し述べたわけでもございません。従いましてそこに私は、非常な食い違いがあるとは実は考えておりません。
  72. 島清

    ○島清君 五十五条の強制加入、脱退の問題について、憲法違反の疑いがあるのではないか、こういうことについては、憲法違反の疑いはない、こういう御説明でございましたが、憲法に規定されておりまするところの国民の自由は、「公共の福祉に反しない限り、」こういうことになっておるわけであります。公共の福祉云々というのは、憲法の十三条に規定されておるわけでありまするが、そこで、直接に憲法違反の疑いがあるのではないかといいまする条文は、憲法の二十一条だと思います。そこで私は、公共の福祉に反しない限りとにかく自由の制限ができるわけでありまするが、この十三条に規定いたしまするところの公共の福祉に反しない限り——これは私は、この事態が、ほうっておく事態が公共の福祉に反するのだと、こういうときに積極的に公共の福祉に反するということを解釈すべきだと思うのです。そこで、そのままにほうっていても公共の福祉が別に害されるわけでもないのに、そして、この憲法二十一条に規定されておりまするところの規定を侵してまでこの強制の加入、脱退を規定されなければならないということについては、少くとも私は、学者の意見を待つまでもなく、常識的にこれは憲法違反の疑いがあると、こう思うわけでありますが、十三条の規定を積極的に解釈をされるのか、消極的に解釈をされるのか、どういうふうに解釈をされているのか、この点、御見解を承わっておきたいと思います。
  73. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほども私御説明申し上げましたように、日本中小企業というものは、日本の社会構成上から見ましても、また産業構成の上から申しましても、きわめて重要な立場を持っておるのでありまして、その業態全体が非常な危殆に瀕するというような場合においては、私は、ある少数の人の行動によってそういう事態が起っておるという場合にその人の自由を制限するということは、公共の福祉を維持する上から申しまして当然やり得ることであり、決して十三条の規定に違反するものではないというのが私の見解でありますし、また政府の見解でございます。
  74. 島清

    ○島清君 この点については、あらためて他日にその憲法論をやりたいと思いますが、私のあとに松澤委員質問を予定されておりまするし、さらに総理の時間も制限があるようでございまするので、あと一、二点ただしておきたいと思っておりまするが、私たちがこの法案を審議するに当りまして、政府の態度についていささか納得のいきかねる点がありますることは、率直に申し上げまして、総理を初めといたしまして、不必要に政府は院外でこの中小企業法案成立を宣伝しておられるわけであります。ところが、内容に至りましては、ただいま多くの議員諸君から質問がございました通り、万人をして納得せしむるというような完璧な法案であるとは私たちは言い得ないわけであります。たとえば、五十五条でございましたでしょうか、強制加入、脱退の、加盟の問題につきまして、これの救済策といたしましての項目がございまするけれども、この認証問題についてもなかなか意見がまとまってないようでございます。たとえば、政府は午前の説明の中に、小笠政務次官は、これは主観的に解釈すべきものであると……。そこで、主観的に解釈をいたしまするならば、届出主義というふうな解釈をすべきであるというふうにおっしゃっておられた。これはごまかしでございまして、はっきり申しますというと、できました法律は主観的に解釈すべきものではございません。法律というものは客観的に解釈すべきものでございまして、すべて個人的な立場に立って主観的に解釈すべきものではございません。従いまして、こういったような問題についても私たちはただしておきたいのでございまするけれども、まずもってこういうふうに法案中においても提案者間においてもまず意見調整が十二分になされてないということ、十二分になされてないところの法案に対しまして、そしていかにも、何といいましょうか、政府の威力といいましょうか、それで圧力を加えて法案成立をしたというような印象を国民に与えようとする、国民、なかんずく中小企業者の諸君に与えようとして非常に努力をしておられるように思うのです。それは私は、立場立場によりましてあるいはそのPRを十二分におやりになっても一向に悪いという意味ではございませんけれども、しかしながら、それをなさるのには、やはりそこらの疑義の点については、提案者が、よしんば政府、自民党、並びに自民党と社会党というふうに、この認証の問題にいたしましても寸分の解釈の異ならないような意見調整がなされて、初めてやっぱり、本法案は責任の地位にあられる総理大臣としては成立を希望するのだというふうにおっしゃってこそ初めて私たちは全きな法律というものが成立するのだ。こういうふうにまあ考えるわけであります。そこで私は何かほかにねらいがあってそういうふうなことをおやりになるのかもしれませんけれども、そこでざっくばらんにお聞きをいたしたいことは、私たちは今までの審議の過程におきまして通産大臣を初めといたしまする政府説明員の話を聞いておりまするというと、中小企業の安定と育成をはかるのには、一番には組織である。それはまあ総理大臣もおっしゃっておる通りでありまするけれども、二番目には税制の問題である、税金を軽くしてやることである。こういうことをおっしゃっておられる。さらには、また金融の道を円滑にやってあげることである。こういうことをおっしゃっておられます。金融の問題につきましては、後刻松澤委員から御質問があることになっておりますので、私は金融の問題には触れませんけれども、税金の問題について触れておきまするならば、もちろん私たちは政府の説明に対しまして、それは説明といたしましては了解すると、しからば税制の問題についてどういうような用意があるのだ。事業税について、あるいは物品税については天下の悪税なりとして中小企業者がしばしばの会合において決議をいたして、政府あるいは議会に要請をいたしておるのであります。この事業税、物品税に対して、しからば中小企業の育成を云々されますところの政府において、この天下の悪税として中小企業者の怨嗟の的になっておりますこの両税を廃止されるお考えがあるかどうかということをお聞きするわけでございまするけれども、われわれが納得いくような御説明を拝聴する機会を得てないわけであります。そこでざっくばらんにお尋ねをいたしますけれども、大企業に対しましては、保守党内閣は租税特別措置法というようなあの恩恵的な法律をお作りになりまして相当税制の面でも助けておられる。そこで、今は中小企業の安定、育成と言っておられまするけれども、この事業税、物品税について、この面から中小企業の育成をおはかりになるお考えがあるか。中小企業の負担を軽減せしめてやるというようなお考えがあるかどうか。おありであるといたしまするならば、具体的にはいつごろ事業税と、それから物品税の、あるいは修正、廃止というようなものを議会の方にお出しになるお考えであるか率直に御答弁をいただきたいと思います。
  75. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 中小企業の対策の一つとしまして、租税負担の軽減をしなければならぬということは私も考えております。しかし今の事業税は、御承知の通り地方税になっておりまして、地方財政の確立という問題もこれも日本の重要な問題でございます。従ってこの事業税の問題等につきましては、やはり全体の税制及び地方の財政的基礎をどうするかというような問題とあわせて考究しなければならない問題でありまして、せっかく私はそれぞれの担当の省にその研究を命じております。まだ成案を得ておりませんから、必ず次の国会に出すとか、この程度にこうするという結論を申し上げることはできませんけれども、その方向に向って努力をしておるということだけ御了承を願いたい。
  76. 島清

    ○島清君 中小企業の本法案成立等をお急ぎになりますることと関連をいたしまして、政府はしばしば独禁法の改正をまあ声明をしておられるようであります。そこで私たちが一番心配をいたしますることは、独禁法というのは、いわゆるその大企業の資本力が中小企業の方に浸潤をして参りまして、その資本力によって中小企業の面からいたしまするならば、非常に困ってくる事態が起ってくるわけであります。そこで資本力の無制限活動を押えて、そして大企業中小企業も公正に競争をせしめようというところに、独禁法の働きを期待する面があろうと思うわけであります。ところが、中小企業のこの喜びそうな法案を通しておいて、大企業の方からかなり反対があるので、大企業の方の資本の無制限活動を少しゆるめてやろう、こういったようなねらいをお持ちになりまして独禁法の改正を考えておられるのではないかと、こういうふうな感を私たちは深くするわけであります。その一つの例といたしまして、たとえば、中小企業の基本法とうたわれておりますところの、この法案の中に、中小企業とは何ぞやというような定義に対しまして、資本力というものを意識的にこれを除いておられるのであります。そういたしまするというと、産業構造の趨勢からいたしまするならば、先刻相馬委員も御指摘になりました通り、オートメイション化いたしますし、資本力は膨大になりましても人員は減少していく。こういうような形で従業員の数によっては、中小企業であるのか、大企業であるのかわからないような状態予想されるわけであります。またそういうことがあるのであります。そこで意識的に資本力を除外されて、そしてこの法案をお通しになりまして、さらにまた大企業に対するこの法案が通過いたしました場合に、大企業の諸君がお困りになるとするならば、その代償として独禁法を改正してやろうじゃないか、こういうようなねらいがあるのではないか、こういうことを心配しているわけであります。従いまして、私は通産大臣に対しましても、この問題を質問いたしまして、一体何で独禁法の改正を、どこが不都合で、どういうふうに改正をしなければならないのだというようなことをお聞きいたしましたときに、通産大臣は、輸出の振興をはからなければならないのだ。こういう御説明でございましたけれども、こういうようなことで私たちは納得するわけには参りません。従いましてこの団体法成立も独禁法の改正と関連をいたしまして、独禁法のどこが一体不都合で、どういうふうに改正をされようとするのか、この点について疑惑がございますので明らかにしていただきたいと、こう思うわけであります。
  77. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 独禁法は御承知の通り、戦後産業の民主化と申しますか、大きな理想をもって作られた法律でございます。日本としては、従来こういう法律がなかったわけであります。その運用につきましても公正取引委員会というような制度で運営をして参っておりまして、これに対しましては、いろいろ経済界からも従来意見があることは御承知の通りであります。また最近において、いろいろな科学技術の進歩であるとか、あるいは生産性向上の問題であるとか、いろいろと産業界におきましても新しい事態ができ、またその国際的の環境において、日本の輸出を増進していくという立場をとっておりますというと、あるいは独禁法のこの規定について修正すべきだというような議論も財界にございます。私どもは今結論としてどうするという考えを持っておりませんが、従ってこの問題を取り上げて、十分権威者の公正なる一つ意見を聞きたいという意味におきまして審議会を設置いたして、これから審議してもらうつもりでおりますが、私どもの考え方は、決して団体法を作るから、大資本の人々に、何らか中小企業団体ができて、大資本に対抗するような力ができるから、これに対していろいろな議論が大企業方面にある、それを緩和するために、これを修正しようとか、あるいはそれの改正をしようとかというような意図は全然ございません。これは従来からも財界の各方面の意見、また独禁法を施行してみまして日本の国情から見てうまくいくこともありますし、どうもぎこちないところもあるということは、これまた各界の人が承知しておるところでございます。そういうことを全面的に一つ検討し、一つの結論を見出してもらおうという意味において公正な委員の選任をいたして審議をしてもらうという立場をとっておるわけであります。改正を前提としているわけでもなければ、いわんやこの団体法と関連してそういうことを考え出したわけでは毛頭ございませんので、その点は誤解のないようにお願いいたします。
  78. 島清

    ○島清君 本法案の骨子をなしておりまする一つ部分団体交渉というのがございます。団体交渉の相手はおおむね大企業の方になると思うのでありまするが、その独禁法の改正の疑いと関連をいたしまして、大企業と下請企業との関係において、たとえば団体交渉をしないとかいうような契約を入れまして、この法律の脱法行為がかりになされたと仮定いたしまする場合に、一体そういうことも契約の上では、民法の保障いたしまする契約自由の原則でございまするから成り立つわけでございまするけれども、そういたしまして、大企業中小企業との団体交渉が契約に基いて本法の適用から除外されるということになりまするというと、この団体交渉というものが処罰の規定がございませんので、大よそこの団体交渉というものは死文になるわけでございまするが、かりにそういったような契約がなされまする場合に、この法律適用と、さらにこの大企業中小企業者の諸君とのいわゆる契約がなされた場合に、どちらの方を優先するとお考えになりまするか、この点についての御見解を明確に承わっておきたいと思います。
  79. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 大へん失礼でございますが、私ちょっと御質問の御趣旨がよく理解できませんので、もう一度御趣旨一つ
  80. 島清

    ○島清君 この法律団体交渉の規定があることは御存じでいらっしゃいますですね。——しかしながら団体交渉の相手は誠意を持って応じなければならないというふうに規定しておりまするけれども、その応じない場合の罪則規定というものはなかったように記憶をいたしております。そういたしますると、本法の施行を見越しまして私たちの仄聞するところによりまするというと、大企業の諸君は下請業者、いわゆる中小企業者の諸君と契約をいたしまして、団体交渉はしないというような契約をしておると、一札をとっておると言いましょうか、早い話が一札をとっておる。こういうことがすでに行われておる。こういうことでございます。ところが、これは民法的解釈からいたしまするならば契約は自由でございまするから、契約の自由の原則でできるわけでございます、実際において。ところが、私たちが、そういうふうな契約はとられておる、仕事をもらうために契約を一札入れなければならぬという事態がある。しかしながら、中小企業者が大企業の圧力を加えられて団体交渉がそういう形において裏で約束をされて成り立たないことになりますると、大企業中小企業との団体交渉権というものを規定いたしまするこの条文は、これは死文になるわけであります。そこで、この大企業中小企業者との団体交渉をしないという契約、これはできるわけであります。契約自由の原則に基いてできるわけであります。これが優先するのか、こういうものがあっても一体この団体交渉に応じなければならぬという条文が優先するのか、どっちが優先するとお考えなのかということなんです。……私の質問に対してはしばしば答弁ができないようでございまするから大へんにその……(笑声)ごまかしの御答弁はなさらないと思いますけれども、もう一つ政府におかれまして見解を統一されまして後刻御答弁を願いたいと思います。あとは松澤さんに一つ
  81. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今の点につきましては法律的の効果の問題に関連をいたしますから、法制局とも十分打ち合せた上で正確な政府の見解を申し上げようと思います。
  82. 松澤兼人

    松澤兼人君 他の同僚委員の方からいろいろ御質問が出ておりまして、私二、三の点において確かめておきたい点がございます。  第一点は、いよいよ政府与党は十一月一日から時国会を召集する。しかし、その会期の問題については今のところまだ何らの決定もなされていないようでございますが、私どもとしましては、この団体組織法の問題をかかえておりまして、周囲の状況から審議を促進しなければならない状態になっているのであります。しかし御承知のように、この前の国会のときから、私どももこの成立については種々苦慮をいたして参りましたけれども、相当に閉会中も審議いたしましても、まだ逐条の審議に入っていないという状態でございまして、ある程度の会期がなければ十分に審議して成立させることは困難ではないかと考えているわけであります。従いまして第一にお伺いいたしたいことは政府が、あるいは自民党が現在考えておられる臨時国会の会期というものは大体どの程度のものでございますか、この点を第一にお伺いしておきたい。
  83. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 会期の点につきましては、これは御承知の通り国会がおきめになる問題でありまして、政府といたしましてはできるだけ短かいことを希望するのが従来の政府の立場でほとんど共通している点であります。われわれもなるべく短かいということを希望いたしますが、しかし今お話のごとく審議に必要な時間としてどのくらい要るかということは、参衆両院の議運におきまして十分に論議を尽されて決定されることである、かように承知いたしております。
  84. 松澤兼人

    松澤兼人君 政府としましてはできるだけ短かい会期が望ましいというお話はよくわからんのでありますが、しかし岸総理が外国へ行かれるという日程があるので、できるだけ短かい方がいいということたったらよく話がわかる。十分審議を尽すために適当な会期が必要であるということは、これはもちろんであります。これは少くとも団体組織法の関係から申しますならば、参議院の審議の状況とにらみ合せてやっていかなければならないと思います。そこでかりに会期が一週間であるとか、十日であるとかきめられましても、参議院の審議の状況によりまして、さらに日数が必要である、審議の進行上からこういうふうな結果が出て参りましたときには、私どもとしまして、それぞれの手続を通じて自民党に要請することになるかと思いますが、そのときにはこの団体法のために適当な期間を延ばしてもよろしいというお考えでありますか、この点を……。
  85. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私どもできるだけこの法案成立を強く望んでおりますので、ぜひそのために必要な御審議を尽されまして成立するということに持っていきたいと思いますから、そのために必要な御審議の日数というものは、もちろんかけなければならぬということは言うを待たないと思います。私はあらかじめ一週間であるとか、十日であるとかいうことを切って申し上げているわけではないのでございまして、希望から申し上げたら、できるだけ短かい期間の方が望ましいということを政府の立場として申し上げただけであります。
  86. 松澤兼人

    松澤兼人君 しかし現在総理の海外旅行の日程というものがきまっているわけであります。この点変更ができないであろうということを想像いたします。この点が一つ問題があると思います。それから先ほど申しましたように、参議院がこの委員会におきまして全体がもうしばらく会期を延長しなければ審議ができないという決定があった場合に、自民党といたしまして、その決定に応ずる態勢が現在できているかどうか、この点であります。
  87. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 今申し上げましたように、会期は参衆両院におきましてそれぞれ審議の状況を見て国会できめるということでありますから、もちろん私は審議に当然必要な期間というものは、これに充てられなければならぬことは言うを待たないのでありまして、院議はどこまでも尊重いたすことは当然であります。
  88. 松澤兼人

    松澤兼人君 第二の問題は、過般来この委員会で種々の論議も行われ、かつまた決議というところまでいきませんでしたけれども、各委員方々が一致して要望申し上げている中小企業に対する年末金融の問題であります。私たちは政府に対しまして年末金融として政府が考えておるような金額では、とうてい満足ではないということを申し上げているわけであります。しかし現在政府としては第四・四半期の繰り上げの分と、それから年末特別融資分といたしまして百七十億という金額をきめておられるやに聞いております。そこでこの百七十億の補正をなさるという、お出しになるというお考えを大蔵大臣も了承されて、この臨時国会に出されるのかどうか、この百七十億というものが絶対の数字であって、これ以上プラスすることができないという数字であるのか、この辺をお伺いしたい。
  89. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 中小企業の年末金融につきましては、特別に政府としてもこれに対処すべきものであって、臨時国会に必要な補正予算を出す考えでおります。ただ金額の点におきましては、今百七十億というお話がありましたが、私自身まだ確定した金額のことは大蔵大臣から聞いておりませんし、大蔵大臣において何か補正を出すという方針のもとに大蔵省に研究を命じているのが現段階でありまして、われわれとしては十分年末金融の問題については必要な措置を臨時国会において補正予算の形において対処するということをはっきり申し上げておきます。金額の点はもう少し研究する必要がある。
  90. 松澤兼人

    松澤兼人君 そういたしますと、今の段階におきましては、臨時国会においては中小企業の年末金融及び繰り上げ充当分に対する補正予算を出す、しかし補正予算の金額はまだ固まっておらない、こういうことであるようであります。もし、そうといたしますならば、私どもは社会党として次のような要請を持っておるわけであります。その詳細な理由は申し上げませんけれども、たとえば中小企業金融公庫に対しましては百億の財政投融資を新たに行うということであり、国民金融公庫に対しましては二百億の財政投融資を新たに行うということ、それから商工中金に対しましては六十億の金融債を新たに政府が引き受けるということ、それから中小企業の年末金融のため国庫余裕金より次のようにすみやかに預託を行うということ、商工中金に対しては五十億、相互銀行に対しては五十億、信用金庫に対しては三十億、信用組合に対して二十億、こういうことを政府に要請しているわけであります。百七十億の金額が絶対のものでない、最終的に決定したものでないということでありますならば、われわれの金額全体を政府においてのんでいただきたいと申しましても、いろいろ御都合があることと思いますけれども、中小企業の年末金融に対しましては、大蔵大臣が考えているようになまやさしいものではないと思います。これはぜひ岸総理の政治的な裁断によりまして、百七十億程度にとどまらず、さらにこれを増額する必要があると思いますが、この点いかがでございますか。
  91. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほどお答え申し上げました通り、金額については、実情を十分検討した上において適当な案を出すという考えのもとに検討を命じておりまして、ただいまのところまだはっきりした具体的の数字を申し上げかねる。社会党からそういう要望の出ておることも承知いたしております。また中小企業金融の実情等も考え、国家財政の見地も考えまして、最後の案を作って、提案して御審議を願う、こういうことにいたしております。
  92. 松澤兼人

    松澤兼人君 われわれは中小企業対策というものが、もちろん団体法も必要でありますが、そのほかわれわれが申しておりますところの中小企業と、大企業産業分野の確立に関する法律案でありますとか、あるいはまたは商業振興法案でありますとか、そういった一連の関連する法律案臨時国会なり、あるいは通常国会なりで審議して、これを成立せしめる必要があるということをよく申し上げているわけであります。しかしそういう立法的な措置だけでは十分でありませんので、先ほども御質問がありましたように、金融であるとか、あるいはまた税制であるとかいう点においても、政府の統合的な施策が必要であるということを申し上げているわけであります。そこで、臨時国会には、金額はわからないけれども、中小企業の年末金融及び第四・四半期の繰り上げ充当分、これらに対してある程度の補正を出すというふうにおっしゃっておられます。これは、先ほど申しましたように、さらに社会党の考えも加味されまして増額していただきたい。それにつきまして、もうそろそろ、われわれは来年度の予算の見通しということにつきましても考えてみなければならないのだろうと思うのであります。この臨時国会から通常国会に通ずる政府の予算的な考え方というものは、これは分離できない、一体として考えなければならない問題であろうと思うのであります。そうしますと、この辺で、岸総理が考えておりますところの三十三年度予算の大体の見通しというものが明らかにされてもいいのではないかと、こう思うのであります。来年度予算の編成方針、基本的な態度につきまして御説明をいただければ幸いだと思います。
  93. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 来年度予算の編成の根本の方針といたしましては、われわれは、すでに基本的方針を閣議で決定をいたしまして発表いたしております。われわれは、現下の経済界の実情にかんがみて、全体の予算規模はなるべくふやさないようにする、しかし特に重要な、重点を置かなけりゃならぬような施策は、これを行なっていく考えであるという、ごく抽象的な方針をきめて発表いたしておりますが、目下各省からそれぞれ大蔵省に新しく予算の概算要求も出ておりまして、これを検討中でございます。臨時国会になりますならば、自然こういうことに対する御質問もありますし、もう少し具体的な政府の方針をお答えできるようになると思います。現在のところでは、ごく抽象的な方針をきめているにすぎない状況でございます。
  94. 松澤兼人

    松澤兼人君 本日の新聞にも、大へん予算編成でお困りのように出ておりました。果してお困りになっていらっしゃるのか、なっていないのか、その辺のところは明らかでございませんが、いろいろ苦慮されているということは、われわれ外部におりましてもよくわかるものであります。そこで御質問いたしたいことは、現在の引き締め方針というものは、大体三十三年度も引き続いて行われるというように了解してよろしゅうございますか。
  95. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 御承知の通り、ああいう引き締めに関する緊急総合対策というものを定めて、八月以降これを実施して参っております。そのわれわれが予期した効果も一部出て参っておりまして、国際収支の関係も漸次改善を見つつございます。しかしなお、私どもはこの状態を続けていく必要があると考えます。それはほんとうに安定した基礎の上に継続的な拡大を考えていく、しっかりした安定の基盤を作るためには、なおこれを継続する必要ありというのが、今の私どもの見解でございます。それがなお、もう少しどの辺まで一体やるのか、三十三年度全部をやるのか、上期だけかというような御質問であろうと思うのでありますが、それらにつきましては、さらに経済界の推移を見た上において善処したい、かように考えております。
  96. 松澤兼人

    松澤兼人君 緊急総合対策を実施されるに当りましては、政府は下半期になれば国際収支は多少好転するというような見通しをつけておられました。事実上国際収支はやや改善されたような跡も見えるのであります。しかしこの下期における国際収支の改善ということは、これを手放しで喜んでいいのであろうかどうか、つまり逆に言いますならば、この程度のバランスで果して手直をしていいものであるかどうか。来年度になりましてからも、こういうバラスンのとれたような国際収支が持続できるかどうか、私は非常にその点は悲観的に考えております。従いまして手直し論という一部の人たち意見があるようでありますけれども、この点については十分慎重に考えなければならないと思っております。そのしわ寄せが結局中小企業に参りますので、その点を非常に心配して申し上げているわけでありますが、この下期のやや改善されたバランスというものは、これはもう安定したと考えられているのか、つまり手直し論に対して耳をお傾けになるお考えであるのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  97. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほどもちょっと申し上げたように、私どもは今日のところでは、手直をするとか、これを緩和するという考えは持っておりません。またこういう金融引き締め中小企業にしわ寄せされるという御心配につきましても、そういうことのないように実はすでに本年度分の一月ないし三月分のものを繰り上げて十二月までに出すということにいたして、実際は中小企業に対する金融引き締めのしわがいかないように考慮して参っておりますし、また年末金融についても今特別に考えようということで、しわ寄せのこないように考えております。しかし総合緊急対策というものを、今一部で言われているように、手直しする、もしくはこれをゆるめるという時期ではまだないと、こういう見地に立っております。
  98. 松澤兼人

    松澤兼人君 そこでだんだん組織法の中に入って参りますけれども、すでにわれわれ同僚委員からいろいろお尋ねしたのであります。私は前回ちょうどこの委員会委員長をしておりまして、痛切に考えますことは、私どもはいわゆる中小企業対策として総合的に各種の法律案を衆議院に提案いたしまして、まず一体として衆議院において審議ができるような態勢を固めて参ったのであります。この点は自民党の方々も十分そのわれわれの意図するところを考えていただいているのではないかと思うのでありますが、ところが政府の方はなかなか団体法の提案もおくれましたし、それからさらに小売商業特別措置法というものをお出しになったことはある。しかし私の方は商業振興という立場の法律案を出したのであります。政府の方でお出しになりましたものはきわめて粗雑なものでありまして、われわれはこれに対して非常な不満を持っております。けれどもまあこれは出てきた。ところが、団体法共同修正の上こちらの方にお送りになったけれども、特別措置法の方はもうほとんど審議なさらず、それはもう向うで継続審議になさった。で、私たちは片方の法律で交渉相手にしないということが特別措置法の方では重大な制限を受けているという格好が出て参りますので、われわれとしましては政府の考えておられるところの中小企業の振興のための立法措置というものを全体を拝見して、そして団体法に対する審議の参考にしたいと、こういうふうに考えておりました。ところが残念なことに、われわれが申します産業分野の確立に関する法律というものはとうとう政府の方からはお出しにならなかった。そしてわれわれが商業振興という内容をもって提案しておりますのに、政府の方の特別措置法の方では、はなはだまずい法律案となり、しかもこれは団体法がこちらで審議されているのに、向うでは継続審査ということでたな上げになった、こういう次第でありますので、私どもこの参議院における商工委員会が十分に審議を尽すことはできなかった。こういう事情があるのでございまして、成立を見なかった結果につきましては、われわれはもう非常に残念に思っております。けれども十分にあちらを見、こちらをながめて大所高所から団体法の正しい審議をすることができなかった政府にも、私はそこに責任があるんじゃないかと、こういうふうに実は思っておったのであります。そこで先ほどのお話がありましたこれらの関係法律、われわれはその上に、たとえば最低賃金法であるとか、あるいは家内労働法であるとか、あるいは下請代金の支払遅延防止法の一部改正であるとか、百貨店法の一部改正であるとか、というものをみんなそろえて出しておいたのであります。で、ここでお伺いしたいことは、この臨時国会が開かれますならば、いい悪いは別といたしまして、政府の出しておられる特別措置法というものが審議に適当な時期にこちらの方に参る見込みがありましょうか。あるいはこちらに適当な時期に送付されるために促進をされる御決意でございますか。この辺のところをお伺いしたいと思います。
  99. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 衆議院で継続審議になっておりますものにつきましては、なるべく衆議院において審議を促進していただくように政府としても努力する考えでございます。
  100. 松澤兼人

    松澤兼人君 私どもは中小企業の置かれた立場というものにつきましては、これを何とかして早く安定した状態に持っていきたいということを考えております。そのために私どもは先ほど申しましたように、各種の法律案を取りそろえて衆議院に提案をいたしたのであります。しかし問題はやはり中小企業というものを現状のままに置いてこれを商工組合に結成する、あるいはまたは加入しない者に対して強制加入命令を出すといったようなことももちろん必要でありますけれども、全体の日本経済の中における中小企業人口というものをどうするかということが非常に重大ではないかと思うのであります。農村が現在三年続きの豊作でありますから二、三男も農業の経営の中において吸収される可能性もあるわけであります。一たん農村が非常な不作に見舞われるというようなときになりますというと、これをどこが吸収するかといえば結局中小企業に吸収しなければならないというような状態になって参りますし、あるいは会社、官庁等の退職者がどこにいくかといえば結局そういう中小企業に流入してくるということはまことに重大な問題でありまして、現在営業しておられるところの中小企業者方々に対しては団体組織法がある程度救いの働きをするかもしれない、しかしこの全体の経済政策ということから中小企業問題を考えてみますときには、そこにわれわれとして重要な問題を考え、これに対して何らかの手を打たなければどうにも中小企業というものはならなくなるのではないかというふうに考えるのでありますが、こういう全体の経済構造の中における中小企業に従事しておる人口というものをどういうふうにして処理していくかということについて総理の御意見を伺いたいと思います。
  101. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 従来の人口構成の上から申しましても、今松澤委員の御指摘のありましたように、日本中小企業というものはこれを吸収する上において大きな役割を持って参っております。私どもが考えておることは、先ほどもそれに触れました、要するに日本中小企業というものの特質をやはり十分生かして、これの基礎を安定してそして中小企業事業を繁栄さしていくようにすることが日本経済を強める上から申しましても非常に必要なことであり、また今御指摘のありましたように、余った人口を吸収する余力もそういうふうに繁栄してくればできるわけであります。これはただ単に中小企業が激しく競争をしまして、そしてある場合においてその業界を混乱して基礎を危うくするというような事態を繰り返しておりますというと、むしろ中小企業からさらに失業者が出てくるというような事態になるわけであります。やはり私は中小企業というものの基礎を安定さして、その安定した基礎の上に中小企業が相共に繁栄できるというふうな施策を総合的にとることが必要だ、そうすれば自然にいろんな方面から出てくるところの労働人口を吸収することができるようになるだろうと、こういうふうに考えております。
  102. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 松澤先生、ちょっと総理が何か四時にどこか外交官と会う約束になっておるのですが、四時二十分になっておるから、まあここらであれしてもらえぬかということなんですが……。
  103. 松澤兼人

    松澤兼人君 私はこの団体法が外国の人たちにどういう影響を与えているかというようなことをちょっと聞いたことがありますので、それらの点につきましても、総理に御質問申し上げたいと思っておりましたが、しかし、ただいま委員長から御発言がありましたし、これらの問題はまた後日の機会に質問申し上げることにしまして、一応質問を保留して、きょうのところは質問をやめます。
  104. 西川彌平治

    西川弥平治君 本日はこの程度において散会されることを希望いたしますとともに、岸総理大臣が二時間半になんなんとする時間をおいで下さいまして、皆さんから御熱心な質疑応答がございましたことにかんがみまして、明日からの委員会の運営のことにつきまして御協議を申し上げたいと考えますので、散会後におきまして委員長並びに理事打合会を開かれることを希望いたします。
  105. 近藤信一

    委員長近藤信一君) ただいまの西川君の動議に御異議ございませんか……。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  106. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 速記を起して。  他に御発言もなければ本日はこの程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 近藤信一

    委員長近藤信一君) 御異議ないと認めます。  それでは、明日は午前十時から開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会      —————・—————   〔参照〕    中小企業団体法現地調査会記    録     開催日 昭和三十二年十月十         一日(金曜日)     場 所 名古屋商工会議所  (出席者)   ○派遣委員       委員長 近藤 信一君       理 事 阿部 竹松君           大谷 贇雄君           土田國太郎君           梶原 茂嘉君    (現地参加) 松澤 兼人君   ○事務局      商工委員      会調査員 松林 啓三君   ○通商産業省     名古屋通商     産業局長  石井由太郎君     中小企業庁     振興課長  堀合 道三君   ○意見陳述者(発言順)    愛知県商店街連盟        会長 山田 泰吉君    愛知県中小企業等協同組合中    央会        会長 江崎冨次郎君    愛知県労働組合協議会      事務局長 長谷川光夫君    名古屋商工会議所       中小企       業委員 榊原 辰雄君    トヨタ自動車工業株式会社     常務取締役 大野 修司君    名鉄百貨店       副社長 土川 元夫君    名古屋市地域婦人団体連絡協    議会        会長 横地さだゑ君    愛知県地方労働組合評議会        議長 寺門  博君    名古屋毛織工業協同組合       理事長 渡邊健之助君    刈谷生活協同組合      副理事長 石原 天童君    日本陶磁器工業協同組合連合    会      専務理事 三井 弘三君    日本損害保険協会名古屋地方    委員会       委員長 小口 孫六君    名古屋イージー・ペイメント    販売店協同組合       理事長 間瀬 鋼平君    愛知共済協同組合      専務理事 清木 隆人君     —————————————   午前十時二十五分開会
  108. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) ただいま、通商産業局長から開会の辞で述べられました通り、われわれ、参議院商工委員会において、目下、継続審査中の中小企業団体法案等につきまして、親しく現地の皆様の御意見を率直に御伺いいたしますことは、至極、欣快に存ずる次第であります。  すでに、大阪、仙台、金沢及び札幌では、このような現地調査会を実施しましたが、中小企業の大中心地たる御当地で御意見を聴く機会を持たなかったので、今回出て参ったようなわけで、よろしく願います。  皆様の御意見を伺います前にまず、ここに出席しております当委員会委員を御紹介申し上げます。  理事社会党阿部竹松君、自由民主党の大谷贇雄君土田國太郎君、緑風会梶原茂嘉君、現地参加として社会党松澤兼人君であります。なお松澤兼人君は後刻出席の予定であります。  私は、商工委員長近藤信一でありますが、不肖、この会議の座長をつとめさせて頂きますので、何分よろしく願います。  なお、参議院事務当局より、当委員会調査室の松林調査員が参っております。また通産省からも中小企業庁の堀合振興課長が見えております。  参考意見を述べて頂く方は、すでに名古屋通商産業局より御手配願いましたように、愛知県商店街連盟会長山田泰吉君外十三名の方々でございます。御多忙のところを御出席をお願いいたし、恐縮に存じております。  次に、御意見を伺うにつきまして、この会の進行について、一言申し上げます。  私どもは、参議院規則第百八十条の二の規定により派遣されて参ったのでありますが、この現地調査会も、参議院の委員会に準じた形で行うことといたします。  従いまして、御意見陳述の方の御発言は、すべて座長の指示によって行います。  この際、お断り申し上げて置きますが、この会議は説明会ではございませんので、御意見陳述の方々から、われわれ委員に対し、質疑はできないことになっております。この点、あらかじめ御了承願います。  また傍聴人の方々には、特に静粛に願い、拍手なども御遠慮願って、われわれの調査に御協力下さいますよう、お願いいたします。  御意見を伺うことになっております法案は、中小企業団体法案中小企業団体法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案以上の三法案でございます。  このほかに、衆議院では、政府提案の小売商業特別措置法案及び議員提案の中小企業産業分野確保に関する法律案商業調整法案中小企業に対する官公需の確保に関する法律案、下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案、百貨店法の一部を改正する法律案の五件、併せて六法案が継続審査になっておりますので、本日は申すまでもなく参議院で継続審査になっております最初の三法案に関する御意見を承わるのが主なる目的でありますが、これとの関連において、右の六法案に言及されることは差支えございません。  次に、本日の御意見御陳述の時間でありますが、先の日程との関連もございまして、恐縮でございますが、お一人当り十分間にお願いいたし、その順序は勝手ながら、座長にお任せ願いたいと存じます。  それから御意見を拝聴した後で、御質問申し上げることがあるかと存じますので、暫く御時間を頂き、これにお答え願いたいのでございます。  本日の議題となっております団体法案、同施行法に伴う法案及び協同組合法改正法案については、すでに各位におかれましても、新聞、その他で御承知のことと存じますしまた、お手許に若干の資料を差し上げてありますので、別に説明の必要もないと思いますが、一応その提案されました趣旨などにつき、われわれより簡単に御説明申し上げることといたします。  それでは、法案趣旨について当委員会調査室の松林調査員に簡単に説明を行わせます。
  109. 松林啓三

    ○商工委員会調査員(松林啓三君) 内閣提出の「中小企業団体法案」についてその趣旨を御説明いたします。  御承知のとおり、中小企業組織に関する制度といたしましては、中小企業等協同組合法による協同組合と、中小企業安定法による調整組合との二つがあるのでありまして、それぞれ、前者は共同経済事業による経営の合理化を、又、後者は調整事業による経営の安定を目途として運用してきたのであります。  しかしながら、今日なお、わが国の中小企業の多くは、その資本力の弱少業者相互間における過度競争等により依然として経営の不振と不安定に悩んでおりますので、政府はこの際、中小企業振興施策を思い切って強化する必要がありと考え、昨年六月、内閣に中小企業振興審議会を設置し、中小企業振興対策に関する広範な諮問を行ったのであります。政府は、同審議会の答申を検討した結果、中小企業振興のための最も基本的な施策として中小企業組織の充実、団結の強化を図ることがまずもっての急務であるとし、そのため、本法律案を提案して参ったのであります。  本法律案の概要を原案について申し上げますと、  第一に、現行の調整組合制度を廃止して、新たに調整事業共同経済事業を併せ行うことのできる組合として、商工組合制度を設けることであります。  共同経済事業をも併せ行うことは、協同組合調整組合の二重設立の煩わしさを除こうとするのであります。  第二に、総ての業種について、一定要件を備える場合には、商工組合によって調整事業を実施できるようにするのであります。  中小企業安定法によりますと、特定の工業部門のみ調整事業を行うことができるようになっておりますが、過当競争に悩んでいるならば、工業以外の各分野例えば商業サービス業等におきましても、調整事業を実施することができるようにしようとするのであります。  第三に、組合がその調整事業に関して、組合外の者と交渉を行うときは、その相手方は、誠意をもってこれに応じなければならないこととしてあります。  第四に、組合調整事業が、員外者事業活動のため効果を挙げることができず、ために業界の安定に重大な悪影響があり、国民経済上もこれを放置することができない事態に立ち至りましたときは、政府は、その業界における総ての中小企業者組合加入せしめ、または、組合員たる資格を有する総ての者の事業活動を規制する命令を出すことができるようにすることであります。  所謂員外者の行為を規制する必要がある場合、まず中小企業業界が完全に団結すれば不況事態克服が可能と思われるときは、中小企業の総てを組合加入させて自主的調整に参加させるようにし、その他の場合におきましては、現行中小企業安定法におけるが如き員外者規制命令を発するわけであります。  第五に、共同経済事業を通じて中小企業者経営の合理化を図るための組織である協同組合制度につきましては、本法においてはこの制度をそのままとりいれ、組織運営等につきましては従来の中小企業等協同組合法の定めるところによることとしてあります。  本法案は、以上述べましたように商工組合と協同組合との二つの制度一つ法律の下に規定し、中小企業者がその希望するところにしたがい、実態に応じていずれの制度をも選択し得るようにし、同時に、両制度相互の移行についてもでき得る限りこれを容易に行い得るように措置しようとするのであります。  次に同じく内閣提出の「中小企業団体法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案」について申し上げます。  この法律案は、団体法成立いたしますと中小企業安定法が廃止され、調整組合がなくなりまして、商工組合ができますので、金融上、税制上、商工組合事業協同組合と同様に取扱うための諸法律の改正を行うとともに、関係法律の中にある安定法とか調整組合という文字を、中小企業団体法とか商工組合という文字に改める等、所要の技術的な改正を行うための法律案であります。  次に「中小企業団体法案」並びに「団体法施行法案」の修正について申し上げます。  御承知の通り団体法案は去る五月七日衆議院を通過するに際し自民党、社会党共同提案にかかる修正を受けました。それに伴いまして「施行法案」にも所要の修正が加えられたのであります。  衆議院では政府提出の「中小企業団体法案」と水谷長三郎君外二十三名提出の「中小企業組織法案」とが併行して審議されておりましたが、採決は団体法案の修正という形になったのであります。そこで修正の要点を申し上げますと 第一に法律の題名を改めまして  「中小企業団体組織に関する法律」としております。 第二に組合交渉について応諾の規定強化するよう第二十九条を改めました。 第三に中小企業団体の新たなるものとして、事業協同小組合及び火災共済協同組合を設けております。 第四に商工組合設立の認可に関する第四十二条に一項を追加して、不況事態の認定にあたっては、中小企業安定審議会に諮問して定める判定の基準に従うことにしてあります。 第五に加入命令があったとき、その命令の対象となった中小企業者のうち、組合加入することに支障がある者は、命令の日から二週間以内に、行政庁にその旨の認証を求めることができるよう第五十五条を改めております。この認証は二十日以内に行うこととし、認証を受けた者でも、商工組合の行う調整事業制限には従うこととし、また検査の実施及び手数料、経費、過怠金の賦課ができることにしてあります。また右の加入命令があった日から九十日以内に、調整規程を変更するかどうかについて、総会の議決を経なければならないことという規定を加えております。 第六は設備の新設の制限又は禁止でありまして、第五十六条の規定により生産設備の制限に関する命令をする際またはした後において、特に必要がある場合には、命令の有効期間中、組合の地区内における生産設備の新設の制限又は禁止を命ずることができるという第五十八条を入れております。 第七は不服の申し立で、本法にある種々の命令、即ち加入命令、規制命令、設備新設の制限、禁止命令又は加入命令のあった商工組合調整規程に不服がある者は、その旨を書面を以って主務大臣に申し立をすることができる旨の一項を第七十条に加えております。  以上が団体法案の主なる修正点でありますが、これらの修正に伴いまして「中小企業団体法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案」についても修正が行われているのであります。  次に衆議院商工委員長提出の「中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案」について御説明申し上げます。  本改正案の骨子は、現行法に規定されております事業協同組合等の外に、新たに事業協同小組合及び火災共済協同組合制度を設けること等の改正を行おうとするものであります。  本件につきましては、「中小企業団体法案」の修正案をまとめる際に与野党間において話し合いました結果、事業協同小組合及び火災共済協同組合の構想は、現行中小企業等協同組合法の改正によって実現させるのが適当であるということに、意見が一致し、委員会提出の形式をもって、衆議院に提案、その可決となったものであります。  本改正案の内容につきまして簡単に御説明いたしますと、  まず、事業協同小組合につきましては、第一に、組合員の資格は、主として自己の勤労によって商工業、鉱業、運送業、サービス業等を行う事業者であって、使用従業員数は工業等にあっては五人以下、商業サービス業にあっては二人以下のものであります。  第二は、政府は、小組合組合員の助成に関しまして、金融上その他特別の措置を講じなければならないこととすることであります。  次に、事業協同組合及び事業協同小組合に対しましても、商工組合と同様の交渉権を与え、これに関するあつせんまたは調停の規定を設けるとあります。  次に、火災共済協同組合につきましては、  第一に、組合員の資格は、組合の地区内における中小企業者であることと、  第二に、出資金の総額は、組合にあっては二百万円、連合会にあっては、五百万円以上とし、組合員数は、千人以上を要することとしてあります。  第三は、共済金額の制限であります。即ち、契約者一人について、百五十万円を限度とし、共済金額の総額は出資、準備金、積立金、支払保証額等の合計額の十分の一・五を限度とすることであります。  なお、事業協同組合及び小組合が福利厚生事業として火災共済契約を締結いたします場合には、契約者一人につき、三十万円を限度とし、特例として、以前から、火災共済事業を行っている組合は、これを超えることができることとしております。  第四は、募集の制限についてでありまして、募集にあたるのは、当該組合組合員、役員又は職員に限ることとし  第五は、保険業法の報告徴収、立入検査、監督命令、その他の監督規定を準用することとしてあります。  第六に、所管行政庁は、通商産業大臣及び大蔵大臣とし、なお、組合設立の認可及びその他の権限の一部は、都道府県知事に委任するものとするのであります。  以上簡単でありますが三法案の説明を終ることといたします。
  110. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) それでは、これより順次御意見を拝聴いたします。  なお、愛知県商店街連盟会長山田泰吉君と愛知県中小企業等協同組合中央会会長江崎冨次郎君は御用事がおありとのことですから、このお二人に対しては御陳述が終ってから御質問を行い、その他の方々に対しましては、午前の部の御意見の発表が終ってから最後に行いたいと存じます。  まず、愛知県商店街連盟会長山田泰吉君からお願いいたします。
  111. 山田泰吉

    ○陳述者(山田泰吉君) 御指名をいただきました愛知県商店街連盟の山田でございますが、きょうは委員長近藤先生を初め諸先生方には、常に私たちが心ひそかに願っておりました機会を与えていただきまして、大へんありがとうございます。  私は中小企業者のうち、特に小売商業者の立場からお手元に提出してございます公述要旨に基きまして朗読をさせていただき、後ほど補足的に若干私の意見を述べさせていただいて、責任を果させていただきたいと思います。  お手元の公述要旨をお目通しいただきたいと思います。 一、団体組織法の必要性について イ 大企業組織労働者はおのおの法律によって守られておる。 ロ 中小企業者は何ら法律上の擁護がない。 ハ 日本経済の定安策の一環として中小企業者法律上認められる立場において団結をはかり、中小企業者意見を政治に反映し、地位の向上と生活の安定をはかる。 二、不当競争防止の必要について  従来の中小企業者の内部には非常に不当競争が激しい。これを放置すれば業者の共倒れとなり、全国家族を加えて二千万を数える中小企業者の大半は餓死する。これを防ぐには法律の恩恵による以外にない。 三、強制加入制に関する所見 イ 強制加入は官僚の指図を受けず組合員相互の良識に基いて民主的に行い、加入命令のみを政府より出してもらう。 ロ 外国商人及びメーカーとの組合交渉も一人の脱落者もない強固な団結力のある組合でなくては有利な交渉はできない。 四、団体組織法の制定と物価に対する影響について  団体法制定により物価高騰はあり得ない。中小企業者消費者の一人であるとともにこれらの独占商品のみではない。かりに高くなれば消費者は生協、購買会及び百貨店等を利用すればよいので、従って小売商は自繩自縛的な高騰策はとれない。 五、団体組織法制定の急務について  団体組織法、商業調整法、産業分野確保に関する法律案の三法はぜひとも必要である。しかし現段階においてはまず団体組織成立が急務である。  以上でございます。  そこで特に私が小売商人の立場から先生方に聞いていただきたいことは、ともいたしますと小売商の立場は、たとえば銀座であるとか広小路であるとか、代表的な地域の商店が目に映りまして、その陰にございます零細なる小売商の数が非常に多いことが私は見落されるのではなかろうかと心配するものでございます。  今日国民生活の中で最低の線で、一日十四、五時間、しかも子供に至りますまで家族全体で働きつづけておるのは零細なる小売商人以外にないと思うのでございます。しかも今日大都会のまん中におきましても、いまだ戦後そのままの焼けトタンの中で零細な一文商いをいたしておる小売商がたくさんあるのでございまして、その店全体を見ましても、この名古屋においても市役所の横の通りにはその焼けトタンの中でパンやラムネ、だんご、駄菓子等を売っておりまして商品全体で千円か千五百円しかない。こういう零細な業者がいまだたくさんおるのでございます。  これらは失業者でございますが、そういう方々が手っ取り早く、生活のために、生命を保つために次から次へと小売商へ流れてくるのでありまして、たくさんふえて参ります。小売商が共食い的になっておる現状でございます。  そしてわれわれ小売商は今日まで政治の捨て子になっておったのでございまして、大企業、農民、労働者の方々はすでに公述の中に申しました通り、りっぱに国家の法で守られております。われわれ小売商は今日まで何ら親心ある保護を受けておらないのでございます。しかもこれらが最近に至りましてようやく親があることがわかり、その親にせめて最低のおすがりをして団体法を求め、それらによってわれわれが団結して生きていくことを求めたのでございます。どうか先生方には永遠の捨て子になさらないように、ごれんびんをかけていただきたいと思うわけでございます。  特に団体法は社会においていろんな面から反対の声も聞いておりますが、私たちはこれを悪用するものではなく、どこまでも最悪のときの護身用に求めておるのでございます。業者の過剰によりますダンピング、あるいは大資本の圧力に耐えかねましていろんな問題が起きて参ります。そうしたときに最悪の事態に備えるための護身用としてこの団体法を求めておるのでございまして、宝刀というものはめったに抜くものではございません。身を守るために与えていただきたいと思うのでございます。  いま一つ物価が一片の法律によって上るということはあり得ないことである。これも別項申し上げた通りでございます。  どうかこの意味におきまして、二千万のわれわれ中小企業者を法の孤児になさいませんよう、この次の臨時国会において団体法を通過させていただきたいことをお願いいたしまして私の公述を終ります。
  112. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) ありがとうございました。  次に愛知県中小企業等協同組合中央会会長江崎冨次郎君からお願いいたします。
  113. 江崎冨次郎

    ○陳述者(江崎冨次郎君) 御指名をいただきましてどうもありがとうございます。  諸先生方には国会の休会中にもかかわらず、われわれ中小企業者を身をもって擁護してやろうという御会議をお開きになり、新聞で承ればきのうまでおやりになってきょう名古屋へお見えになり、そしてわれわれ中小企業者意見を聞いてやろうというお言葉に対してはわれわれ業者はどれほど心強く、感謝しておるのであります。どうかこれから私が申し上げますことをお聞き取り願いましてぜひとも御考慮のほどをお願いいたしたいと思います。  御承知の通り、全国に今商店街の会長さんがおっしゃった通り二千万になんなんとする中小企業者がある。愛知県にはおそらく十五万戸はあるのではないかと思います。こういう零細業者でありますが、そのうちに特にいろいろ名古屋の裏町で旋盤を一台か二台持って親子もろとも、従業員は一人か二人でほとんど二十四時間にひとしい労働をしてその日のかてをしのいでおります。また瀬戸へ参りまして陶磁器もその通りであります。繊維工業へ参りましても、先生方のお目にはとまりませんが、二十四時間の運転をしてでもその日のかてを得ようという哀れな現状であります。  それが法が、守っていただく法律が何にもありません。ただ労働基準法というのがありますので、従業員は昼を働かして朝と晩には家族が働いて、そうしてその日のかてを得ていく。それはなぜかといいますと、大資本によって一貫作業で押し通されて参っておるがために労賃がおのずと低下しつつある現状です。  これは繊維工業でありますが、事実でありますから御調査が願いたい。そういう面から考えますと、中小企業組合、特に零細企業の方面はほんとうになぜお前らは政治に目ざめぬといって呼びかけましても、政治によみがえっていくひまがない。私どもの家庭はきょうもうけねばあすのかてができぬという現状がおそらく九〇%あると思います。  そこでこの九〇%のものを救っていただきたいがために、過当競争のできぬように、大企業の圧迫から私らを少しでものがれていただいて、同じ九千万の同胞の仲間にしていただきたい。決して無理な御要求はいたしません。それと組合を作るといいましても、その組合の負担金が納まらぬがために加入できぬ、組合を作ればおそらく経費がかかります。その費用の負担金さえ出すに困るような業者でありますが、しかしこれは目ざめて組合の力によってお前らの利益を守るのだという説明をいたしましても、よくわかっておる。よくわかっておるがあすの生活に困るものがどうしてできるかという。勤労階級の方は大資本で争議をおやりになり、賃金の値上げをおやりになるが、中小企業は日に日に労働賃金が低下していくというのは設備が不完全である、能率が低下しておる。それを改革するには改造するには資金面が非常に苦しい。一番よくわかると私は思いますが、名古屋の国民金融公庫にお出かけになると、おそらく一日に百人以上の人が押しかけて十万円から二十万円の零細な金を借りに参っております。私らも頼もうと参りますとこの悲惨な状況である。これが日本人のほんとうの姿か。そうしてでも、丁寧に頼んでわずかの金を借りてでも生き長らえようという企業熱に燃えておる業者でありますから、どうしてもこの不当競争のないようにしていただきたい。  それにはやはりある程度まで組織団体を作って団体の力で工賃の価格もきめていただきたい。私はこういうことを特に先生方に御了解を得たいと思う。大企業では、八時間働いておるが、中小企業では一部制でやっておるところだと約十四時間から十五時間の労働をしております。これは町工場へお出でになりますと必ず間違いない状況であります。労働基準法は適用されております。ところがここで働く従業員は大企業の線から漏れて行くところがないから中小企業の工場へ参っております。中小企業の厚生施設は悪いのです。よくしてやりたいけれどもするだけの力が自分にはない。してやらなくちゃならぬと知っておるけれどもそれができぬという、こういう現状であります。  だからこれを救うには、やはり大企業の圧迫からのがれて、ある程度団体交渉もして労働賃金の確保がしたい。  一例を申し上げますと、かりに繊維工業でありますと御承知の通り十大紡績というのがある。人絹であれば五大メーカーがあります。これが工場のものは幾ら以外に売らぬというとそれに近いものができる。今大企業は原料を仕入れるのに四十五日の手形で原料をまかなう。生産業者が卸問屋へ売るには九十日から百二十日、多いところは百五十日の手形しかいただけない。こういうことが合理か不合理か。大企業がこれまでしてなぜ自分の身だけ擁護しなければならないのか、なぜ同じ同胞である二千万余の中小企業者を育成してともに国の繁栄に協力してやるというお心がないかということを私らは恨みを申し上げたい。  小売商には今山田先生のおっしゃったように実際において零細業者は哀れな状況であります。こういうものを救うにはやはりこの団体法を作っていただいて、その力によって不当競争をのがれていきたい。  ところが一部にはお前らが団結をすると必ず物価が高騰するではないかというお説も出ておりますが、これはむしろ私は誤解ではないかという点を御了解をいただきたい。その一例を申し上げますと、もし中小企業の業者が全部倒産して転廃業したら、どうなるでしょうか。有力メーカーだけ残りますが、これは話合いができる。数が少いのですから。自然に消費者価格が私は上ってくると思います。そこで零細業者は朝から晩まで労働時間を超過して、自分のかてを得るがために働く。消費者のために安く供給ができるということも考えられるということを私らはいいたい。団結すれば君らは何でもできるという御意見もこの前の公聴会で出ました。おそらくこれだけの零細なものがもしするにしても、一朝や二朝にしてできるものではありません。こういう点の御懸念は零細な業者がつぶれてしまったら、資本家だけが残って消費者と資本家と二本立になるとおのずと消費者に転嫁されていくのではないかと思います。その利潤を必ず多くされて消費者は高い物価に甘んじていかなければならぬという時代が来るということをわれわれは思っております。これはよく先生方も御存じだと思います。こういう面の御疑念は決して私ら小売商が自分の利潤だけの追求によって私らはこういう団体はできないと思います。生産者もその通りであります。そういうときこそ少しでも政治に目ざめて、先生方のお力によって私らも九千万国民の同胞の一員であるから平等に取り扱ってやるという御指導が願いたい。こういうことをお願い申し上げたいと思います。  もう一つ申し上げたいことは労働保険であります。五人以下は社会保険の加入を現在は認めておりませんが、これも五人以下の零細な業者にも保険の制度は社会保険として一般と平等に取り扱っていただきたい。もしこの零細な業者が倒産いたすようなことになりまして、全部つぶれたといたしましたら、七五%は中小企業に働いている人であります。こういう人も自分の工場がいかにしてつぶれぬよう、工場が伸びていくようにということで事業主とともに手をとって歩いております。賃金は三割、四割大工場より低いと思います。その零細な業者をもしやめてきょうから会社へ行こう、大企業へ行こうと思っても、これはなかなか門戸が狭くて入れません。そのできない人の七五%を中小企業で育成して参っておるから、見ようによっては社会事業のためにやっておるといってもいいと思います。だから同じ働くにも八時間大企業がしておればせめて二割増の十時間くらいで工場の経営がしていけるように御指導が願いたい。それでこそ大和民族の九千万同胞が手を握り合っておのずと国の繁栄の基礎になっていくのではないかという考えております。  どうかこの臨時国会においてぜひとも御通過下さいまして、国民がともに手を引き合ってともに国の繁栄に協力をさせていただきたいという熱意に燃えておりますから、どうかこの法案をお通し下さいましてわれわれ零細業者も同じ人間の仲間にお取扱いを願いたいということを特に懇請をいたしまして私の公述を終ります。
  114. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) ありがとうございました。  さきに申しましたように、お二人の方は特に御所用がございますので、特にお二人の方に対して御質疑のおありの方は順次発言を願います。
  115. 大谷贇雄

    大谷贇雄委員 ただいま非常に有益な御意見を承りまして感銘の深いものがあります。  山田さんにお尋ねをいたしたいのですが、山田さんは愛知県の商店街連盟の会長をしておいでになるわけです。きのうも実は国会でこの問題に質疑があったのですが、この法案によりますと商工組合ということになっております。ところが皆さん方の方では商店街連盟というものを全国各地に自主的に御結成になっておる。それとの関係はどういうふうにお考えになっておりますか。その点をお尋ねしておきたいと思います。
  116. 山田泰吉

    ○陳述者(山田泰吉君) お尋ねにお答えいたします。商工組合となっておりまして、商と工と一緒に同一歩調でいかなければならないということでありますが、中小企業者の立場において同じ運命をたどっておりますので、この問題は双方妥結ができるのではなかろうかと考えております。
  117. 大谷贇雄

    大谷贇雄委員 その点でなしに、商工組合が今度できる。従ってそれに加入をなさる。従来の商店街連盟というものについては、これを解消して入ろうということになるのか。この商店街連盟は商店街連盟でそのまま残しておくかということになりますと、二重に業者が加入をしなきゃならぬ。またその方が便利だということから、そういう事態が起ってくるのではないかということが、きのうもあったわけでありますが、その点についてはどういうようなお考えですか。
  118. 山田泰吉

    ○陳述者(山田泰吉君) お答えいたしますが、その点につきましては、この法案が通過いたしますれば、発展的に解消して、商店街は御承知のように地域組合でございますから、横の組合として溶け込むことができると考えております。
  119. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉委員 山田さんにちょっとお伺いしたいのですが、山田さんの御熱意とお気持は私よく理解されるのですが、ただ現在出ております団体法法案のその内容とお考えの点が果してうまく調子が合っているかどうか。その点が実は私かねがね疑問にしておった点なんです。たとえば商店街について考えますと、商店街の組合というものは愛知県においても各商店街でずいぶん数が多いと思います。それを商工組合にする場合においては、この法案によりますと相当厳重な制約がある。第一はその商店街で非常に競争が不当に激しくて、その商店街の相当部分がもうやっていけないという場合でなければ、認可にならないという原則があるのです。やろうというだけではできないので、その商店街自体が競争が激しいという条件がある。ところが商店街は申すまでもなくいろいろの業種、たくさんの業種がある。従ってそのたくさんある業種の間に非常に猛烈な不当な競争があるかどうか、その点私は相当疑問じゃないかと思います。かりにそういう状況があるとすれば、それはそこでできるわけです。従ってそういうふうな実態にある商店街もあろうし、そうじゃないところもあろう。だから常識的に考えますと、ある商店街においては商工組合ができて調整事業といいますかをやる事態になるわけであります。命令をするとか、いやなものも無理に入れるとか、調整規定を設けてやるとか、非常に厳重なことになる。片方はそれほどの不当な競争がないというのでできないということで、これは同じ商店街であっても、団体についてもいろいろな姿になる。  それからもう一つの疑問は業種別の商工組合ができると、お話のようにたとえば繊維関係の小売商人の組合ができるとすれば、これは相当広い範囲になる。そうすると商店街の商工組合にも入る、広い地域の商工組合にも繊維関係なら繊維関係で入る。両方の組合商工業者の立場からいえば入ることになる。また調整事業というものは従って違ってくる。違ってきた二つのものを受けなくちゃいかぬということになるわけであります。そういうことが商店街あたりを基礎にして考えて、うまくこの法律というものが運用されるといいますか、動くかどうかが疑問です。ことに工業面でいうと小さい工場といえども一つの設備を持っておってやっておるのです。小売屋さんにしても一つ業種でも愛知県だけでも何百、何千というものがある。これを全部網羅して、一つの強制的な組合になるわけですからうまくそれが運営できるであろうか。またそういうことがどの業種についても必要であるかどうか。そういう実態とこの法律の意図する内容というものがうまく合うかどうか。どうも私は合わないのではないかという疑念を持っております。どういうものでしょうか。
  120. 山田泰吉

    ○陳述者(山田泰吉君) お答えいたしますが、この問題は現在でも商店街は地域組合と縦の組合業種別、これはたいてい二本立で皆さんが入っておられるわけであります。そのことについては大した問題は起らないのではないかという考えを持っております。  いま一つお尋ねがありました商店街、一つのどこかの商店街が非常な競争をするという問題は、現在まではあまり起きておりませんので、特に地域的な商店街でよく取り上げられます問題は、特殊なメーカーであるとか問屋さんが非常に小売行為をなさるとか、いろんな面で小売屋を困らせる場合が往々にあるわけでございますが、そういった問題に対してはどの業種も大体同一歩調がとれて参りますので、御懸念の点は大体話し合っていけるのではないかと思います。
  121. 松澤兼人

    松澤兼人委員 山田さんにお伺いいたしたいのですが、これは団体組織法以外の問題なんですが、ちょうど山田さんの御発言がありましたのでお尋ねをいたしたいと思います。  それは現在の業者は、中小企業者はこの法律でしばられるかもしれませんが、しかし景気のいいときでも悪いときでも、やはり中小企業への人口の流入といいますか、新しい業者が新規に開業するということはこの法律ではちょっと食い止められないと思うのです。特殊の業種につきましては、戦前たとえば酒場であるとかふろ屋であるとかは制限というものがありましたが、一般の中小企業にはそういうものはない。従って今後そういう新しい人口がさらに流入してきて過当競争の原因を作るということについては何かお考えがございますか。今後どういう法的な、あるいは行政的な措置を講じたらいいとお考えになりますか。その点をひとつ。
  122. 山田泰吉

    ○陳述者(山田泰吉君) お答えいたしますが、第一の過当競争になる原因に業者が限りなくふえて参りますこと。これはなるほど団体法では解決つかないと思います。しかし私たちが今回までこうした大きな法の恵みを受けておりませんので団結力が非常に弱い。特に長い歴史の中で個人主義が発達いたしまして、自分がけ助かればいいというのがわれわれ小売者の中に非常に発達しております。そのため自主的に団結ができないという現状でございますので、こういう法案ができれば非常にその団結の面が強くなって政治に目ざめてくると思います。そこで限りなく業者がふえて参り、失業者のはけ口のようになっておりますのがこの小売商でございますが、この問題は大体都市の町作りを私は変えてもらわなければ解決つかないのではなかろうか。国家財政の上からむずかしいのですが、ようやく最近御承知のように公庫、公団で高層のアパートがふえて参りましたので、だんだんああいう高層建築に都市がなって参りますれば、小売商は自然と限定されて参ると思います。そういう面の運動をいたしますにも現状のような団結力のないものではなかなか政治的に働きかけられませんので、この団体法で私たちすべてが助かるとは考えておりませんが、せめて団体法ができて、まず団結の意識を高めていただければ、次に政治に目ざめてきて次第に解決点に向っていける。かように考えているわけであります。
  123. 阿部竹松

    阿部竹松委員 山田さんばかりに御質問するので非常に恐縮ですが、一点だけお伺いいたします。  このいただいた要旨の中に、三番目の強制加入に関する所見ということがございますけれども、これは五十五条をさしておられると思いますが、強制加入は官僚の指図を受けず組合員相互の良識に基いて民主的に行い、加入命令のみを政府より出してもらう。この加入命令を聞かなかった場合どういうふうになるというお考えはございませんか。
  124. 山田泰吉

    ○陳述者(山田泰吉君) お答えいたしますが、加入命令を聞かなかった場合。これは大へんむずかしい問題だと思いますが、それに対しましてはでき得るならばやはり加入命令、一般組合員がやむを得ないあり方ではございましょうが、それに従わなければならないというような法規で加入命令を出していただきたいと考えております。
  125. 阿部竹松

    阿部竹松委員 それで正直に申しまして、私全部の中小企業の代表の方に会ったのでないからわかりませんけれども、やはり中小企業の中にもこれはどうもうまくないという人が百分の一か千分の一かはおるわけです。ところがこの五十五条の強制加入命令が発動されても、愛知県知事に認証を受ければよろしいと除外される。除外されると当然会員ではなくなったけれども過怠金を払わなければならない、きめたわくに従わなければならない。こういう法律は明治、大正、昭和を通じて前例がないわけです。組合員でないものに過怠金をかけたり、あるいは会員でないのにわくを受けるということは……。ですからこれはお考えがあればもう少し明確にお答え願いたいわけであります。労働組合というものも法律によって守られておるということが第一項目に書いてありますが、労働組合も強制加入ではないために、第二組合、第三組合ができたりするのです。今度の法律でいくとそういう自由は絶対あり得ない。組合員ではないかもしれないがちゃんとわくがかかっておる。そうすると本来の趣旨が非常にあいまいもことなってくるのですが、その点はいかがでしょう。
  126. 山田泰吉

    ○陳述者(山田泰吉君) 大へんむずかしい御質問でございまして、私も実は明快な答えを持っておりませんが、御承知のように、さいぜんも申し上げたのですが、小売商は徳川時代からずっと政治から離れておりまして、八方美人というような言葉を使って、法で守られずに参りましただけに、団体生活にも慣れておりませんので、どんな場合でも自分だけいいことをしてのがれていこうというのがかなりおりますので、かなりその点をしばっていかなければ法の運営がうまく行かないのではなかろうかと考えておりますが、お尋ねのそういうことをどうするんだということはいま少し時間をちょうだいいたしたいと思います。次の臨時国会までにまとめまして御陳情に上りたいと思います。
  127. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) 他に御発言もないようでありますから、お二人の方は御所用で御退席になります。どうもありがとうございました。
  128. 江崎冨次郎

    ○陳述者(江崎冨次郎君) 勝手なお願いばかり申しておりますが、今度団体法を通していただいてわれわれを御援護していただくと、その次に損保という問題が出ております。これは火災保険であります。火災保険についてはやはり大企業中小企業の等差があってしかるべきではないか。火災共済というものが愛知県でもあるいは他府県でも大体できておりますが、その上にもう一つ組合においてもこういうものを結成していただいて、小さい組合の業者の擁護はあるいは低廉な保険料で私はいいのではないか、こういうことも考えております。こういう点も御認識の上、ひとつぜひやっていただきたいと思います。
  129. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) 次に愛知県労働組合協議会事務局長長谷川光夫君からお願いいたします。
  130. 長谷川光夫

    ○陳述者(長谷川光夫君) 実はお呼び出しをいただきましてから日が若干少かったということもありますし、私自身のこの法案に対する研究がややもすれば十分でなかったという点もありますので、十分に御期待に添える御意見が出させていただけないかもしれませんが、この点はひとつお許しを願いたいと思います。  この法案が衆議院を出ましてから参議院に継続審議に相なりましてからいろいろ研究させていただいた点を簡単に申し上げれば、まず法案の影響というものがどのようになるか。たとえていえば期待される面もある、期待されない点もあるだろう。またこの法案が出ることによって矛盾と弊害が拡大するのではないか。こういうような問題点が出てくるというように考えます。  まず日本の国土に、狭いところに九千万人の人たちがおりまして、そして日本の全産業に対して中小企業の地位というものは圧倒的に大きな比重を占めているということはよく御存じの点であります。このように国家に寄与している中小企業人たちが一番恵まれない、こういうことも事実であると思います。幸いに二十六国会において中小企業の問題を取り上げていただいて、政府並びに国会議員各位には非常に敬意を表する次第であります。しかしながら、この問題が立法化の過程においては利害得失から国内の各層にそれぞれ与える影響は大きいものがあり、かつ今後においていずれ決定されるでしょうが、それまでは今後ともに慎重なる取扱いをお願いしたい、かように考える次第であります。  ところでこのような法案が制定されればどういう影響が現われるだろうか。このことについては中小企業対策として相当の期待をしておるものと、現行の安定法による調整組合の補強の程度でないか、こういうように見る向きと、中小企業の持つ矛盾や一般国民に及ぼす悪影響の方が拡大されるのではないか、かように見る向きと、三つに大別されるわけであります。  まず一点として期待される問題、成果についていえば、中小企業組織化が進んでくる。総合的な中小企業対策のよりどころとなってくる。二つには商工組合を通じ組織化と団結が達成され、しかも従来圧迫されてきた大企業には組合交渉という手段がとれるようになる。三つには今まで何らの保護措置を受けなかった商業者サービス業者にとっては効果が大きい。四つ目には強制加入命令が出れば同業者や同一地区の業者は同じように調整事業に従うことになったので、中小企業者安定化への一歩前進だ。五つには零細業者も団交が一応保障されたことは中小企業対策としては前進である。こういうように期待される向きが概略あるわけでございます。  それでは期待するほどではない、先ほど申し上げたことのうらはら的な面で考えてみると、組合交渉ができるということになっているがはっきりと義務づけられたものではない。罰則規定の裏づけもない。二つにはいわゆる団交といっても調整規定に基く調整事業という範囲が限定されているんじゃないか。三つ目には強制加入命令もその業種、あるいは地区内の四分の三以上が組合に入っていてその他法で規定される要件がそろわないと出せない。命令が出ても例外ということが認められるのではないか。四つ目には商工組合の結成は過当競争により経営が不安定になったときという、いわゆる不況条件を結成の要件としているけれども、慢性不況状態にある中小小売商にとってはその判定はむずかしくて、実際問題としては組織というものが困難ではないか。五つには従って現行の中小企業安定法による調整組合の補強程度に団交制度を取り入れただけではないか。六はしかし大企業に対抗策を促進をさせて、たとえば従来下請工場に発注していたものを自社製造といったような形、中小企業活動分野を制約をする、こういうような問題もあるのではないか。  その三点の問題としては、矛盾と弊害が拡大されるのではないかという点については、その半面一つとして商業、サービス部門商工組合結成を与えることは価格協定ということで価格引上げも可能になり、消費者に対する影響は黙過できない。二つ目には過当競争の排除から進んで、価格技術の公正な競争意欲が希薄になっていくのではないか。三つ目には中小企業者自体は元来協同、行動、連帯観念に薄く、権力に弱いことからして民主的な組合運営などが望めそうにもない。それだけに組合は一部のボス支配と官僚による統制強化を促進するということになるのではないか。こういうような点が矛盾と弊害の拡大については概略考えられるというように思います。  しからばこういうような問題点があるものを進めていく上において、具体的な政策ということが急務を要するのではなかろうか。当初この問題が出てから各界からいろいろの批判が出され紆余曲折を経て修正をされた。このことは逆説的にいうならば、中小企業者自体により自主的に自己の地位の安全向上のための諸活動が推進されぬ限り、期待するような団体法は制定されるものでないということを知ることができたのであろう。しかしながらいろいろな意味でこの法案の上程をきっかけにして中小企業者人たち組織に対する関心と意欲を高めたかもしれない。しかしより大切なことは組織法が制定をされれば中小企業者の当面する諸問題が解決されるごとく打ち出している政府のごまかしということを知らなくてはならないであろう。これによってもっと地道に推進しなければならぬ多面的な施策がこれをなおざりにされているというずるさを私どもは見抜かなければならない。中小企業振興対策費と中小企業設備近代化の補助金など合せて、前年度の予算よりわずか一億円しか増加されていないことは自民党内閣の中小企業振興政策の実体を暴露しておるものである。このような僅少な予算をもって広範な中小企業者組織の網だけをかぶせようというのが実情ではないであろうか。  従って真の中小企業対策の推進は、それらの企業に働く勤労者の生活の安定、向上の具体的措置と並行的に推し進めなくては達成されぬことを真剣に考えなければなりません。そこに最低賃金の法制化の問題や中小企業の労働者の組織化を促進するとかこれを基盤として最低賃金制の確立をはかってやるとか自由と民主主義を守ることが実質的な中小企業の安定向上をはかるために欠くことのできない重要要件一つであるということを考えなければならない。  私たちは中小企業対策の基本的な考え方としてまず国家による中小企業助成のための財政措置を大いに考えてもらわなければいけない。  二つには現在参議院において継続審議ということになっておりますこの法案について私たちが見た範囲によれば社会党の案に沿ってやっていただきたいということを考えているわけであります。  三つ目には現在日本生産性本部というものができてぼつぼつ批判の中にありながら活動を続けておる。こういうものも一番問題になるのは大企業よりもむしろ中小企業に問題が多い。従って生産性本部と中小企業の生産性向上に努力をしてもらうと同時にわれわれはこういう面には協力をしていきたい。  四つ目には中小企業の安定と向上のためには資金、設備、技術、管理部門の改善が必要なことはいうまでもない。労使関係の近代化をはかることなくしてそれが実現は困難であるばかりでなく労働問題の合理的解決、近代的労使関係を協約上に明確にする。  こういう基本的な条件を考えて実施されることによって中小企業の繁栄がされるのではないか。こういうような場合には私たちは労働組合というものの労働者の立場からも喜んで協力をするということができるのではなかろうか。  大体ずさんながら以上のような労働組合という立場からものを見た判断として以上のような意見を申し上げる次第であります。
  131. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に名古屋商工会議所中小企業委員榊原辰雄君にお願いいたします。
  132. 榊原辰雄

    ○陳述者(榊原辰雄君) 御指名をいただきました榊原でございます。  きょうは諸先生方が大挙してお越しいただきまして、私どもの声を聞いていただくことになり、まずもって感謝いたします。  大体の要旨はプリントして差し上げてありまするから、それをごらんいただきたいと思います。  日本中小企業は従来から御承知の通り過当競争に悩み続けたような次第であります。人口の過剰からそれがますます激しく深刻になって参っておるのでございます。その結果正当なる利潤もあげられず、設備の近代化等の経営の改善も遅れて参っておりまして、大企業との格差が非常に大きくなって参っておるのでございます。  これは従業員の待遇にも現われておりまして、わが国の中小企業の従業員の給与が経営規模が小さくなれば小さくなるほど低くなるのに外国のそれは大企業と同一水準にあるのを見ても、わが国の中小企業がいかにみじめな状態にあるかということがわかるのでございます。この低い賃金は付加価値の低いためで、それを引き上げるためには生産性の向上を初め経営上の改善を推進しなければならぬのが、現状の激烈な生存競争によってはとうてい不可能であるのであります。  この難局を打開して、まじめな業者が企業努力を重ねて、かつ同業者間の協調を円満にはかっても常に一部の業者に市場を攪乱されて安定をしない。お互い大きな損失を重ねてきておるというのが現在の状態で、先生方がすでに御承知の通りであります。これを救いますためには中小企業安定法が制定されております。これは工業部門だけに適用されておりますが、その規定や運営にもいろいろまだ問題があります。  私どもの名古屋商工会議所では、この中小企業委員会で昨年の春ごろから、こういう形のものを何とかしてまとめなければならないという意見がたくさん出ましたのでございまして、これに対しましては大阪の商工会議所中小企業委員方々、あるいは東京の方々と回を重ねて会談いたしまして、日本商工会議所意見といたしまして皆様方のお手元へもすでにいろいろの要望を差し上げておることは御承知の通りであります。  従いまして現在国会で継続審議中の法案は私どもから申しますればまだ十分というわけでもありませんけれど、せめてこの程度のものは通過させていただきたいというのが私どもの心持でございます。  法律の中でおもな点で問題になって参りますのは強制加入という問題であります。この点に関しましてあるいは強制という文字があまり強く響き過ぎておるのではなかろうかということを私ども考えておるのであります。あるいは強制という文字が強く響いておるならばあるいは統合加入とかなんとかいう文字にした方がいいんじゃないかということを考えております。なおこういう文字が問題になっておりますのは、憲法のもとにおけるお互いの自由を侵すという点に触れてくるというわけではなかろうかとも考えております。私はこの自由というものの問題に対しましてもお互いが常識上に立ちました規律あるところの自由はどこまでも尊重しなければならないと考えますけれども、無規律な、無秩序なほどの得手勝手の、自分だけよければいいなどというこういうような自由というものを、憲法の自由をはき違えて考えて反対をしていられる方があるのではなかろうか、こういうように考えますので、私は自由加入の問題に対してはぜひそうしていただかなければならないけれども、自由、強制という文字がどうも反対者の方々の頭に響くのが強過ぎるのではなかろうかと思います。内容の点について現在の法案でけっこうと私は思います。  それから調整規定組合の協約の認可の問題でございますけれども、これは大臣が受理してから二カ月以内に認可、不認可の通知を発せねばならない。現行の中小企業安定法では調整規定の認可は一カ月以内となっております。しかも申請者に報告を求める期間がこの二カ月から除外されておりますが、こういうことになって参りますと御回答の期間が非常に遅れてくることになります。この調整ということが時をはずれるかのような状態になるのではなかろうかということを非常に懸念しておる次第であります。  それから加入命令事業活動の規制命令は「主務大臣は遅滞なく命令するかどうかを決定し云々」とあります。手続といたしましては聴聞を行い、安定審議会にかけることになっておりますが、これでは現在の安定法以上に複雑で発効まで日数がかかります。今申し上げたような次第で、これはもっと短かい期間にしていただく方が、時を忘れたころにようやくそういうことが出てくる。そういう情勢でなかろうかということを一番心配しているものであります。  結論といたしましてこの法律はわれわれとしては満足ではないが現在の中小企業を改善するためにはこの程度のものはぜひひとつ通していただきたいと考えます。世間一般はこの法律によって中小企業が大企業と対抗するがごとくお考えになっておる方がまだ世間の一部にありますけれども、われわれ名古屋商工会議所中小企業委員会といたしましては、大企業中小企業との話合いの場がこれで新しく設けられるのだ。そこでお互いが腹を割って円満にお話合いをするということがかえってこのためにできるのではなかろうかということを考えるのであります。  なおまた団体交渉等によりまして一部値段が上るとかそういうことにつきまして一般に団体交渉は悪影響を来たすのではなかろうかというような議論をなさる方もありまするが、私どもが現在考えておりますにはそういう考えは持っておりません。たとえばふろ屋の十七円値上りも御承知の通り十五円に据置となっている。これはいわゆる世論というものがあります。私どもがいくら団体交渉をいたしましても、自分らの背景に世論が支持してくれてないものはとうてい事はできないのです。どうかこういう点をお考えいただきまして、いずれの場合におきましてもすべては世論に従わなければならぬというのが民主国家の現状であります。従いまして私はこの団体交渉というようなことについて非常に御心配をなすっておられる方がございますけれども、これはこの法律ができましても一種の憂いにすぎないだろうということを私は特に申し上げておきたいと思います。  私どもはどうかしてこういう法案を持っていただきまして、中小企業者のレベルを少しでも上げる。できますならば対等の位置に持っていきましてそうして公正なる経済の活動の機会を与えていただく、それによりましてお互い中小企業事業を安定さしていただく。従いまして物価の、経済の安定に相なる次第でございますから、そういう点からでもぜひこれを皆様方のお力によりまして通過さしていただくことを特にお願いする次第でございます。  今申し上げました強制加入あるいは団体交渉とかいうような点は重ねて申しまするけれど、私はお互いが謙虚な立場に立ちまして世論ということをお互いが胸にしてお話合いをいたします。たとえば近藤さんもおられますけれども、終戦後私ども近藤さんたちとも手を握り合いまして愛知県の復興協会を設立、樹立いたしまして、それをお互いが労働者も経営者もよく話し合いましてこの復興の一端を助けたということはよく御当人も御承知の通りです。そういう心持でどうかこの法案をこのままお通しいただくことを重ねてお願い申し上げる次第であります。  以上をもちまして私の公述といたす次第でございます。
  133. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) どうもありがとうございました。  次にトヨタ自動車工業株式会社常務取締役大野修司君からお願いいたします。
  134. 大野修司

    ○陳述者(大野修司君) 御指名をいただきました大野でございます。  今回のこの中小企業団体法については各方面からいろいろその影響等がありますので御議論があると思いますが、私は自動車産業に従事しております関係から、自動車産業を中心といたしましてこれに対する私見を述べたいと存じます。  御承知のように自動車産業は総合工業でございますので、多くの協力工場を持っております。この協力工場の大部分中小企業に属する範囲にございます。さような関係から中小企業と申しましょうか、この協力工場の問題については常に心をいたしておるわけでございまして、さような立場からこの法案について意見を述べさせていただきます。  自動車工業は一種の総合工業、すなわち造船工業、自動車工業その他多々ございますけれども、われわれが願っておるところの使命は何であるかということをわれわれは常に念頭に置いております。その問題は日本のごとく資源の少い国家におきましてはどうしてもその材料なりあるいはその原料の輸入をまたねばならない点が多々あるのでございまして、同時にわれわれは意を使いまして国内の需要のみならずこれを輸出産業に持っていかなければならぬという使命がわれわれの最大の使命であると存じておるわけでございます。また政府におかれましてもこの自動車産業を輸出産業に持っていくためにいろいろと施策を御検討いただいておる点についても感謝をいたしておる次第であります。  さような観点からこの自動車工業のわれわれは大体売上げの八〇%近くは外部に支払いをする金額でございまして、それだけ多くの外部の協力を得なければ完成しない仕事であるという点もこの機会に御了承をいただきたいと思うのでございます。  さような自動車工業でありますために、どんなふうに中小工業との関係を持っておるか。この点もあわせて御説明をいたしたい。  先ほど申しましたように政府においてもこの産業を輸出産業に移行するために昨年六月御承知のごとく機械工業振興臨時措置法のごときも出されました。この部品関係、いわゆるその協力工場に属する部品工場等に対しましては、もちろん一そう国際競争に勝てるような良品を安価に作るために、そしてそれを通じて国民経済の安定をするためにかような法案を作られた。しかもこの法案はその中の優秀なものに対して重点的に資金の裏づけという点まで積極的な施策をとられておるわけでございます。  これと同様にわれわれが今日協力工場と申しますいわゆる中小企業に対してどういう手段をとっておるか。この内容は技術の指導はむろんのこと、あるいは設備の更新、あるいは材料の購入等に至るまでいろいろとこの後援をして参っておりまするし、あるいはまたその工場の運営については愛知県を初め名古屋市その他の応援を得まして工場診断を常に行なっております。幸いにその結果当社の協力工場の中には二十数社、今日ここにお出でになります中小企業庁からの表彰も受けておるような次第でございます。なおかつこれに資金をたやすく回すためには当社は毎月二回の支払いをこれに行なっております。  かような方法をもちまして、親会社といわゆる下請工場とは血のつながった密接な関係を持ち今日まで至っておるわけでございます。これはいわゆる大企業と申しましょうか、中小企業とのつながりというものはかように緊密な関係を持っていくべきものである。その点は通産省方面におかれても十分な御指導と相まちまして今日の成果を得、幸いにただいまではこの自動車も輸入の事業から進めて輸出の産業へこれがややもしますと向いているような状態でございます。  かような関係にあります、中小企業との非常に密接な関係を持つ自動車工業のわれわれが今回のこの中小企業団体法に対しましてはいろいろ不満、危惧の念を抱いているということも事実であります。この団体法の精神は全くわれわれは賛成するところでありまして、今申し上げたような事実、われわれはそのつながりを強固にし、しかもその発展を希望しておるのでありまするけれども、その運営なりその方法についてはいささか疑義を持つものであるのでございます。その点についていささか申し上げたいと存じます。  今回のこの団体法の問題は、中小企業をほんとうに救おうとするならば、先ほど来、いろいろお話のありましたごとく、その技術、あるいはその設備、あるいはその資金、それらについて十分なる施策を施していただく。これが第一要件であろうと思います。当然またその親工業も、その中小企業すなわち協力工場の発展のためには、自己の会社と同じような努力をもって迎えるべきであるとかように私たちは存じ、しかも実行しているわけでございますが、今回のこの法案によりますると、何か中小企業不況対策に対して、その責任が一般消費者にあるがごとき、あるいは大企業の責任であるがごときさような疑念を感じさせるのでありまして、この点についてはいささか私は不満を感じるとともに、かような施策において果して経済運行の上に支障なく施策し得るかどうか、この点についての疑問を生ずるわけでございます。  また不況対策といたしまして価格の協定というような問題もございますけれども、私はこの協定のきめ方それ自体が、いわゆる国際経済の中にある日本といたしまして独自に独占的な価格をもってこれをきめるというようなことがあるならば、日本の産業の将来の発展については非常に支障を来たすのではなかろうかと、かように考えられます。  また不況の折にコストを制限し、あるいは製造を制限し、あるいは価格を引き上げるということが果してこの中小企業を救う道になるかどうか。私は不況の場合においても常々合理化をしコストを下げ、そして国内の需要を喚起しこれを輸出に向ける。こういう手段が上乗であるように考えられる点から、今回のこの問題についてはいささかの不安を感じるわけであります。  同時にまた交渉権の問題でございますが、私交渉権について反対するわけではございませんけれども、果してこの交渉権が妥当に運用されない。あるいは乱用される危険なしとはいたしません。かような場合におきましては取引の自由、経済運行の円満なる運行というものにおいての阻害をすることがある面が起きはせぬか。かような面についても案じる次第であります。  さような面等を考え合せますると、今回の中小企業団体法、その精神においてこれは全く賛成を申し上げますけれども、その運用の点については先ほど来申し上げましたように、より実質的に中小企業内容を拡張し、あるいはそのレベル・アップできるような具体的な、もう少し真剣な手段をお考えをいただきたい。かように考える次第でございます。さような方法があるならば、今のような方法であるならば私は現在行われております中小企業安定法あるいは中小企業等協同組合法、これらの運用にプラス先ほど申しましたようにより具体的な、それは技術的にもあるいは資金的にも、設備の上においてもより一そうの方法を積極的にとっていただく方が、より私はこの目的が達することができるであろう。かように考えまして、自動車工業から見ましたこの中小企業すなわちわれわれの協力工場に対する考え方を一応申し上げまして説明いたしました。
  135. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) ありがとうございました。時間の関係もありますので、午前中の陳述はこの程度にいたしまして御質疑をいたしたいと思います。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  136. 阿部竹松

    阿部竹松委員 榊原さんにお伺いをいたしたいと思います。最前のお話の中に人間として消費者と大企業中小企業が対等になるようにしてほしい、こういうお話がございましたが、これは人間は対等なんですから、経済的な、あるいは組織的なことで対等にしてくれということだと思います。そこで最前のお話を承わっておりますと、大企業の方とも円満にいって問題が起きない、あるいは消費者とも円満にいって問題が起きない、こういうふうに聞きとれる節があるわけです。しかし正直に申し上げまして、これは経済法なんですが、実はライター一つ外国へ輸出するにしても千円もするのです。大阪に行ってみたところが、大体十ドルくらいのミシンが百二十五ドルで出ておる。こういうものにワクをかければ問題が起きないでしょう。しかしながら、団体交渉をやって、大手のものが少しもうけすぎるから安い品物を問屋から卸せとか、あるいは消費者にもう少し高く買ってもらうというような結果になるわけです。つまりこれは経済法だから同じなんです。どなたかのポケットから出してどなたかのポケットに入る。こういうことになるのですから、外国取引は別として、大手のものが若干利益中小企業に出すか、あるいは消費者が出すことになる。この法律が実施された場合に、消費者が高いものを買うことが明確になってくるのです。国会において、中小企業方々が、毎日のように押しかけて、一刻も早く通せということをいっております。しかし私どもは、この法律が実施される場合に、国民に経済的にどういう影響を与えるかということを一番心配するわけです。ですから、榊原さんのお話のように、うまくいけば大手の方ももめないし、消費者ももめないのですけれども、実際そこが問題なんです。従って私はあなたのお話に不安があるのですが、これはそこをどのように具体的にやるかということなんです。経済法ですから理論では解決できないのです。そういう点、ざっくばらんに影響のないというところをお聞きしたいと思います。
  137. 榊原辰雄

    ○陳述者(榊原辰雄君) お答えいたします。阿部先生のお説はごもっともでございますが、しかし私どもの考えておりますのは、たとえば輸出産業の考え方といたしましても、この工賃の面は、外国の工賃と日本の工賃はどういうふうになっておるかということは、私が申し上げるまでもなく皆様御承知の通りであります。雲泥の差があります。それだから、私どもは、この工賃というそのものは、まだ日本は上げるべき性性質のものがある。あるいは社会党のあたりから、自由党のあたりからも最低賃金制を敷くような話が出ております。これはごもっともな話であります。しかしこれを上げるというのは、プライスを上げるのみではありません。これはお互いが自分にふり返ってみまして、自分の工場の設備を改善するとか、あるいは費用をさらに検討して、そういう費用を、コストを少くするとか、こういう手段を講じなければならぬ。しかし値段ということも、今百円で売っておる、これが正しいかどうかということは問題であります。あるいはお互い中小企業みずから食うに食われず、やむを得ず百円で売っておるのであって、そのものの実質的なものはあるいは百二十円かもしれません。そういったようなときに、お互い団体交渉をしまして、われわれは実際こういうような状態にあって、血みどろになっておって、百円で売りたくはないけれども、やむを得ず百円で売っておるのだ、おふろ屋の、十七円に上げたいとおっしゃる、われわれはそこまでもっていって、その場合に、世論は私どもはなるべく検討して、これが十七円が至当であるということになれば、これは十七円を認める状態になると思います。しかし私どもの知る範囲におきましては、大阪府の府会議員の三分の二以上がふろ屋からお金をもらっておるということです。あなた方の部下であるところの府会議員のこのような実情からみますれば、そんなところにいたずらに不公正な金が使われておる。従いまして私どもは、物にたとえまして、どういうものが幾らなら適正である、至当であるということはすぐお答えはできませんけれども、そういうものがありましたら、われわれはみずから検討いたしまして、適正価格を出し、あるいは世論の方々にそれをよく申し上げまして世論の批判を受けて公正価格を考えていきたい、こういうふうにいたしたいと考えております。  それから団体交渉の一例が出ましたけれども、ただいま大野さんから大野さんの会社の御自体をよく御説明申されましたが、私はさすがはトヨタさんだと感心いたしております。ここでは余談になりますけれども、世間全般がオールトヨタさんならけっこうですが、さもないところは今の現状では、私の申し上げたいことは、先生方の御努力によりまして、御配慮願いたいのに私どもの下請賃金の遅配の問題があります。この問題が法律に盛られまして、たとえば私どもは納入の日から十日以内に検査を完了しなければならない。それから三十日以内に現金またはそれにかわるもので支払わなければならないということに相なりまして、もしそういうことが不当に行われておりましたならば、独占禁止法で公正取引委員会の監視を受けまして、そこで勧告を受けなければならない、こういうような状態にあります。しかしながら、私ども現状によって調べて参りますところによりますと、機械鍛冶屋——鍛造工業協同組合組合員である三十五社について調べました。その三十五社で現に法律通りに支払われておるものが十八社あります。残り二十七社はいずれも払いがおくれております。あるいは手形で、それも百五十日、百六十日たたないと現金にかわらないような手形で受けておる。それの法律的解釈となると非常にむずかしくなって参りますけれども、今銀行に持って参りまして、お互いワクの範囲におきまして、割引手形が九十日から百五日くらい、商工中金に持って参りましてよくお願いいたしましても百三十日くらいです。これが百六十日、百七十日になりますと、われわれは三十日もふところに入れておらなければ、これが現金にかわらないというような、そういうような状態が現実に現われております。それではお前が公正取引委員会へそれを申告したらいいじゃないか、こういうことにもなりましょう。しかし一たび私らがこういうことをいうと、親会社はあくる日から、榊原、お前のところはもうけっこうということになるのです。せっかく法律ができておるのに、それで守られないというのが現状であります。こういう場合に、団体交渉のようなことが幸いできましたならば、われわれ中小企業者が全国一致いたしましてこういうことでは困るということを訴えましても、非常に力強い点であります。ところが今の現状ではそういうことはできません。それから組合が全部全国一致して入っておりませんから、あるいはわれわれがそういうことを申し入れてましても、アウトサイダーの方は、私はよろしゅうございますというようなことで、その仕事を請負ってしまうということになるのであります。下請工場を擁護する法律が出ておりますけれども、先だって私ども中小企業委員会で、公正取引委員会方々をお招きいたしまして、いろいろと現在の状況をお尋ね申し上げました。しかるところが、昨年の五月から本年の四月までの期間の調べで、名古屋の支所は愛知県、岐阜県、三重県、長野県、石川県、富山県の管轄いたします。それで昨年の五月から本年の四月までの調査は、かなり大きな会社へ書類を出しまして、そこから返事があって、それによったものなのです。私どもの遅払いが目の前に現われて参りましたのが、御承知の五月八日の日銀の公定日歩二厘引き上げ以来のことです。今現に一番苦しんでおりますのは、六月、七月、八月と今月初めの状況です。しかしながら公正取引委員会方々は、ことしの四月のことをお調べになっておる。そこで私らは、この報告では実情をよく見ていただいておるかどうか、はなはだ疑問に考えております。しかしながら、当地の公取委の方々に無理な点、これは先生方に特にお願いしておきたいと思いますが、先ほど申し上げておきました地区の管轄を受け持っておられる方はわずか三人であります。三人の方々にそれだけの仕事をやれということは、これは無理です。これは予算の関係上そういうところにそういう人を配置転換をしてやるということはできない現状であります。これを私ども会議所といたしましても、あなた方にも公正取引委員会にも近々要望いたしまして、若干手をつけていただきたい、こういうふうに考えております状態でありますけれども、そういうような事態が起きて参りますときに、遺憾ながら団体交渉をやらざるを得ないということでありますから、そういう方面も考えていただきたいということを特にお願いいたしておきたい。  もう一つお願い申し上げたいことは、先生方のいろいろの御努力によりまして、いろいろの法律が作られまして、いろいろな法律成立いたします。しかしながら、その法律が完全に、法治国におきまして完全に施行されておるかどうか、どういう状態にあるかということに対しては、先生方はいささか御検討する機会は少いのじゃないか、私どもはそういう点を非常に遺憾としております。どうか今後におきましては、この法案が通過いたしましたならば、この法案が国民全体に円滑に運営されているかどうか、ということを、その点もぜひ委員会あたりで御研究をしていただきたいということを心からお願いを申し上げる次第でございます。
  138. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉委員 榊原さんにちょっとお尋ねしたいのですが、愛知県名古屋あたりは、場所的に一番いいと思いますが、法律というものは、御承知のように、たとえば中小企業といえばわれわれ常識的に何でもないわけです。法律にある通り、三百人とかで線をすっと引いてしまう。しかしながら、先ほど来お話があったように、中小企業内容にもいろいろあって、五人、六人、あるいはそれ以下の零細な工場とかある。それを法律では三百人とやってしまう。三百人の従業員を使っておる工場といいますか、業者、この間の差というものは——三百一人いると大企業になるのですから、それとの差を見てみますと、私は中小企業の内部における差の方が場合によっては性質やいろいろな点で大きな場合があると思われるのです。それを今度は一組にして中小企業の観念のもとに、形式的に取り扱ってしまう、それが果していいのかどうか、それが一つ。それから今一つは、この中小企業団体法は名前通りでありますけれども、御承知のように、先ほど問題のあった強制加入の問題もありますけれども、とにかく大企業といえども、同じ仕事をやっていれば組合員の資格を与えて入れるというわけです。なるほど中小企業の方は数が多い、大企業の方が数は少いけれども、今度はそれが入ってくるわけです。それが入ってくれば考え方によりますけれども、一体それが中小企業団体かどうか、性格的に考えてもふに落ちない場合が出てきますが、そういうあなたのいわれておる大企業が入りますと、そして今後運営されるわけですが、それが果して中小企業団体としてうまくいくのかどうか、こういうような点をどうお考えになりますか。これが私の疑問の点です。
  139. 榊原辰雄

    ○陳述者(榊原辰雄君) お答えいたします。梶原先生の御説の通り中小企業の方でも零細企業があります。その中小企業の中と小と、小ではなくて親、女房、子供の三人でやっておる零細企業も、これを一つ法律にまとめまして、あるいは二百九十九人を使っておる人と同じ方法で扱っていくということは、実際問題としてむずかしいことだと思います。そこでどういうふうにこれを運用していくかということは、私は、たとえば組合ができますれば、組合の責任者のよき見通しと、その人の人格によってそういうことを、やっぱり考えなければならぬ。あるいは私どもよくいわれておりますけれども、サービス業に対する組合一つにできるような法案を作る、あるいはそういうふうにしていただければ、その点に摩擦が避けられるのじゃなかろうか。たとえば山田さんの御質問にあったように、業種別の組合、あるいは地域別の組合が重なる場合があるかどうかという御心配がありましたが、これも同様だと私は思います。  それからあるいはこの法案によりますると、あるいは業種団体によりますと、あるいは大企業の方が業種関係で入ってくるという関係において御心配になっていらっしゃる。その点に対しまして、私は事実をもってお答え申し上げます。私どもの鍛造工業というものが各地区にそれぞれ協同組合を設立しております。それが今度、ことしで十年になりますが、十年以来大企業と提携いたしまして、法人組織になっておりますけれども、日本の鍛造業者で鍛工工業会を設立しておる。これには協同組合も入っておりますし、大企業の鍛造を業とするものも入っております。今日まで十年を経過いたしておりますけれども、今日までの経過においては、そういうような、わだかまりになるような困乱するような状態は一回も引き起しておりません。ただいい方面におきまして、お互い金融をつける場合……。
  140. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉委員 私その点が非常に大事だと思うのです。と申しますのは、鍛工工業会ですか、そこには各方面の大企業の方もお入りになっておって、きわめて円満、なごやかに資金の心配もし合ってやっております。その点非常にけっこうだと思います。ところが今度は、そういうふうな話合いでいくというが、厳格になる、法律になるのです。たとえばできた商工組合が、どこからか一緒に仕入れてくる。それを割り当てるとか、価格をきめるとかいうことになるんです。従って割当量いかんによっては非常な組合員間にもんちゃくが起るわけです。だから今お話のそういう精神と違った実態が起きてくるという心配があるのです。そこにいろいろな問題があるのじゃないか。今度は強制ですから従わなければならない。いやでも従わなければならない。そうすると、今あなたのおっしゃった趣旨とかわったような実態になる、というところに本質的な問題がある。たとえば一つの工場がありましても、三百人の工場がある、一方大企業の四百、五百人というものが入ってくる。そうするとおのずから統制的なものが強くなる。そこに五人、六人の工場が一緒になる。こういう一つの姿になるのです。しかもすべて調整規定で、相当厳格な規定で数量の割当とか価格を協定するとか、こういうことになって、お話のように、うまくいくとしても、一応そういうことも想定してみることは大切なことではないかと思います。
  141. 榊原辰雄

    ○陳述者(榊原辰雄君) お答えいたします。先生方は先の先まで、かくのごとく御心配をしていただいておるということに対しまして、私は非常な敬意と感謝を持っております。しかしながら、おのずから個人にも性質がありましょう。経営者においても経営上の一つの信念がおありでありましょう。しかし小さいものは小さいなりに一つの信念がありますから、その間の調整ということは、一がいにうまくいくとも、いかぬとも、今日において将来の結果を申し上げることはできないと思いますけれども、ただ私は、たびたび申し上げまするけれども、すべて正しいものが勝つ世の中です。それと同時に世論というものは一番大切なわけです。小さい方々の不利のようなことでも、その世論の意見を尊重し、われわれも正しくこれが運用をしなければならない。そういうふうに話合いをもっていきますならば、私はそういう面のお話はつくだろうと思います。もしそういう話合いがつかないような場合におきましては、私はこの法案内容をよく朗読しておりませんけれども、審議会のお立場もありますし、そういう方々の御意見もむろん尊重されると思いますから、そういう方々が第三者として公正な御意見を持っておられますから、そういう方々の立場の御判断にまかせて、自分らはこうきめたから、お前らはこういうふうにいかなければいかぬのじゃないか、というような考えは持っておりません。こういう点はどうか私は杞憂に終るように、お互いが自重して今後の、せっかく法案成立しましたならば、お互いがそういう観点のもとに善処しなければならないという気持でおります。そういう点は絶無であるかということに対しましては、私はイエスとは申し上げられません。お互いがそれぞれの立場におきまして考え方も違って参ります。いろいろの点で意見相違も出て参るでありましょうけれども、そういうところは公正なる考え方のもとに、御処理していただければ、先生方がそこまで御心配していただくことは、おそらく杞憂にすぎなくなるだろうと思いますけれども、それも将来はどうなるか断言はできないと思いますけれども、私は固くそう信じております。
  142. 土田國太郎

    土田國太郎委員 榊原さんにちょっとお尋ねしますが、事業協同小組合ですけれども、いわゆる零細業者、この組合に対しまして税制上、金融上特別の措置をしなければならない、こういうことになっておりますが、これらの点につきまして何らか御研究されているのですか。もしされておりますれば具体的にこういう方法がいいのじゃないか、金融上はこういう方法があるとか、こういうことをしてもらいたいというようなお考えがありますれば御発表願いたいと思います。
  143. 榊原辰雄

    ○陳述者(榊原辰雄君) お答えいたします。これは私ども現在行なっておる範囲のことを実例を申し上げましてお答えにかえたいと思います。なかなか三人四人という方々が、あるいは金融上の問題に対しまして、おいそれと銀行に行って、どうしようこうしようといってもなかなかうまくいかない。その場合にやはりこういう協同組合というものは、お互いにやっていこうじゃないか。今江崎君がお留守でありますけれども、江崎君あたりの組合の実例をみましてもわかりますように、たとえば一軒で、機織機を二基、三基とわずかしか持っておりません。それに対しまして共同でお金を借りようという場合でも県の信用保証協会の保証をやらなければならぬ。それと同時にお互い業者は五人なら五人をワン・グループにもってくる、五人は五人の範囲でお互い共同責任の受け判をする。そして商工中金あたりでお金を借りる、こういう現状であります。私はそういうような場合におきまして、破綻を来したところの実例もありますけれども、まずもってお互いが連名でそういう金融をつけて、借りたものは何をおいても先に払うのです。ある鉄工業者は支払いがおくれてもおそらくお互い同士の面目において払ってきておるのが実情であります。私の組合も、昨年におきまして、二、三破産をしております。しかし組合のそういう負担金など、ほかの組合員には御迷惑をかけたかのように聞いておりますけれども、組合に対しましてはそういう迷惑をかけておりません、江崎君の組合なんかでは、東海銀行の融資を受けておる組合員が二百五十何社あります。約五千万のお金を借りております。しかしこれは今申しましたように、すべて組合としておやりになっている。すでに五年くらいこれでやっていると記憶しております。そういうような実例からみましても、三、四人の方が団体を作って、お互い団体責任をもってお金を商工中金あたりから拝借する機会をもつということが何よりではないかと思います。
  144. 土田國太郎

    土田國太郎委員 税制の方は……。
  145. 榊原辰雄

    ○陳述者(榊原辰雄君) 税金のことはよく存じませんけれども、これはなかなかむずかしいお話でありまして、互いに税金を出さずもうけを多くしようとすることは、やはり零細企業方々に多いと思います。
  146. 阿部竹松

    阿部竹松委員 最後に榊原さんにもう一つ伺います。お尋ねする前に、最前大阪のおふろ賃の問題で、府会議員の三分の二のものがお金をもらっておる。それがあなた方の子分だという話ですが、これは速記録になって国会にきますから、それが公けになるとわれわれは国会議員の子分ではないとお叱りを受けるといけませんから御訂正を願います。  先ほど適正価格といってもだれかが損になりますよ、といいましたところが、適正価格は十分考慮してやるんだというです。そうなりますと、大手にはたたかれ、消費者には買いたたかれ、適正価格で売れない。そういうことからとにかく団体法を作って団結して訴え、十分話をしてやっていく、こういうことなんです。それでお聞きしたいのですが、松澤さんは兵庫県出身で、一緒に神戸の三宮に行ったことがあるのです。ところがそこでもお話がありましたけれども、中小企業がどんどんどんどん毎年々々ふえておるのです。ことしの四月以降の統計を見ておりませんからわかりませんけれども、四月までに相当ふえておるのです。兵庫県では何とかふやさぬように法律を作ってくれということでありましたが、憲法に違反するのでそういうことはできませんということをいいました。名古屋もふえております。こういうことに対して榊原さんは、たまたま商工会議所関係中小企業をやっておられるようですから、何か簡単に御研究がおありでしたら承わっておきたいと思います。
  147. 榊原辰雄

    ○陳述者(榊原辰雄君) まっさきに記録になっておるので、そういうことははなはだ穏当でないということはお説の通りであります。私は国民の心持として、ちょっと言いすぎたかもしれませんが、その点は速記録の方から削除していただきたいと思います。それと同時に、あるいは言いすぎたことに対しては御容赦願いたいと思いますが、そういった気持でいる国民もあるということだけは、お笑い話の上にも御承知おき願いたいと思います。  今阿部先生のおっしゃったところの、いわゆる一つ団体ができ、そこで一つのアウト・サイダーを強制加入せしめて頭数を制限する。そこで出てくる問題は、今度新しく仕事を始めよう、こういうような人が出てくるかもしれません窯業関係なんか、直接その点に触れてきております。そういう場合にそうすることはいろいろむずかしい問題が生じてくるだろうと思います。たとえば山田さんがおっしゃったように、今まで工場にいた方が退職をして退職金をもらって失業した。そういう場合手っとり早いのは、お互い中小企業の、零細の商売です。そのときこの地域はこの範囲でやっておるから、そういうことをやってもらっては困るということは無理なことであります。そういう点に対しましては、これは将来でも皆様方の御心配をいただくと同時に、私もいわゆる俗に申します二男、三男というものの将来の対策という問題も起って参りますけれども、そういう面からも一つ考えていかなければならぬ問題ではなかろうか。お互いに何をしようと自由であるという今の世の中に、それをお前はこういう商売をしてはいかぬということは、これは実際において無理だと思います。将来におきましてもそういう点には、私は相当な摩擦も生じてくるだろうと思います。これはお互いよく考えなければならぬ将来の問題でありまして、まだ会議所あたりではそういうものをどういう方法で解決するかという考えは、遺憾ながら持ち合わしておりません。これはやはり日本の人口の多いところによって来る結果ですから、私はそういうふうにお答えするよりいたし方ないと思います。
  148. 松澤兼人

    松澤兼人委員 先ほどトヨタさんの方からお話があったのですが、非常に遠慮深く、こういう法律ができ、これまで非常にトヨタさんとかと下請関係にある各種の中小企業との間に友好的な、しかも建設的ないろいろの協力をしておいでになるわけで、通産省の方からもいろいろ御指導を受けるというような結果にあったのであるが、何か遠慮深いいい回し方ではありましたけれども、団体法によってそういう非常に協力関係がそこなわれていくのではないかという御心配があったようでありますがもう少し率直におっしゃっていただいて、団体法による中小企業と大企業関係及び現在の協力中小企業と大企業との関係というものがこの法律によって、何か変化があるか、ほかに特に悪い影響があるのかということを簡単でよろしゅうございますから率直に言っていただきたいと思います。
  149. 大野修司

    ○陳述者(大野修司君) 先ほど私が申し上げましたのは、大企業中小企業というものと別々に考えるのではなく、これは一貫して考えるべきものだ、というのがわれわれの思想であります。何となれば必要なときだけに買うというような下請なら別でありますけれども、当社本年で既に二十年経過しておりまして、その長い年月の間、協力工場と固く手をつないで仕事をしております。しかも先ほど申し上げましたように、売上金の八〇%近くはその協力工場からものを納めていただいております。そのような関係を今日まで結んでこの自動車工業を作り上げ、おくればせながら国際競争に持っていくまでに今日進めておるわけであります。そういう関係から申しますと、何か今回の法案によりまして、協力工場というものは別なんだ。そして協力工場には団結権を持たして、いざという場合には親工場と団体交渉の席において解決するんだ、こういうようなことが規定されておる。私はこれは非常に残念なことだと思うのです。なぜならば、われわれはそういうことをやったことがないし、またする必要もなかったし、また親工場はそれをすべきでない、こういう信念で今日まできておるわけであります。しかも日本の産業と今後の国民経済を引き上げということにつきましては、どうしても輸出という問題を考えなければならないのが、日本産業のおかれている立場であります。そういたしますると、これは親工場、協力工場とも、そこにおいて一つになって進んでいくというのがわれわれの方針でありまして、今日まで当社の設備改善とともに、協力工場の設備改善にも同じような努力をしております。当社の資金で足りない場合には、当社の信用において銀行からの借り入れの御援助もいたしますし、あるいは当社の技術者も派遣をいたしまして、共同研究をいたしております。さようにして、おくれたこの産業のとり返しのため今努力を続けておりますから、私は今後こういうふうな法案によって、当然協力工場と親工場は、今私が申し上げたような状態において、今後ますます緊密にしていかなければならぬときに、こういう法案のために、もしも先ほど申しましたような団体交渉をもってこれを解決するというようなことは好ましくないところであります。またその必要を私は感じておりません。ただし私の申し上げたことは、前段申し上げたように、自動車工業を取り上げ、しかも当社の例でありましたので、範囲は非常に狭いと思いますけれども、今さように考えております。  それからもう一つこの協力工場という言葉は、これは大体は今の中小企業の該当する工場が多いのでございますが、より根本的に考えますのは、日本中小企業の一般としては、技術、設備、賃金、この三つの問題があります。働くことはわれわれと同じような気持で、しかも日本の産業育成のために努力をされておりますから、こういう点もっと適切な方法を取っていただく方が、ほんとうに中小企業を救うゆえんではなかろうかということを私は申し上げたわけであります。この中小企業を救うために、ただ単に不況のときに値段の協定をするとか、あるいは生産の制限をするとか、こういうことだけでは果して中小企業が救われるかどうか、この点私は疑念を持っております。もちろん中小企業を救うということは、全体的に日本の産業をより大きく発展させるという前提がなければ、しかもより積極的な施策が必要であるにもかかわらず、今回のこの目的は、何か消費者によって、あるいは大企業によって、その違いがあるがごとき結果になりはせんか、何か階級的な意識も入ってくるのではなかろうか。私どもはむしろそういうものよりも一本化されていく、われわれは今後仕事を自分の手でやりたいというところも、適当な協力工場があるから、それらの方々の協力を得てこの仕事を完成したいというのが、トヨタ自動車の方針であります。それにかんがみましたときに、今申し上げましたように、この法案については疑問があるということが考えられるわけであります。さようなことをお答えいたしたいと思います。
  150. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) 別に御発言もないようでありますから、午前中の部はこのくらいにいたしたいと思います。  午前中御意見を述べていただきました皆様方には、御多忙なところ、貴重な御意見の開陳をいただきまして、まことにありがとうございました。皆様方の御意見は商工委員会の席上で報告いたし、今後の法案審査に際しまして、十分参考にいたす所存であります。重ねてお礼を申し上げます。  それでは暫時休憩いたします。午後は一時半から開きます。   午後零時二十分休憩     —————————————   午後一時三十六分開会
  151. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) それでは午前に引き続き現地調査会を再開いたします。  それではこれより御意見を拝聴いたします。  名鉄百貨店副社長の土川元夫君が所用のためにずっとおられないので、最初にまず御意見を述べて頂き、それから再び四時頃にここに来ていただいて御答弁をされるということになっておりますから、その点委員側においてもあらかじめ御了承願いたいと存じます。では名鉄百貨店副社長土川元夫君からお願いいたします。
  152. 土川元夫

    ○陳述者(土川元夫君) 私ただいま御指名をいただきました土川であります。中小企業団体法案はきわめて重要なものと考えておりまするとき、今回参議院の商工委員会の皆さんがわざわざ現地までおいでになりまして、私どもの御意見を聞いていただくことはまことにしあわせと存じまして、厚く御礼申し上げるわけであります。この法案につきましては私は業界の代表という意味であろうと考えておりまするので、中部百貨店協会の意見を御説明させていただきます。  今回の法律案は、百貨店と多年にわたって円満な取引関係にありますところの中小企業、あるいは共存関係にありまする小売商との関係を、ややもすれば破壊され、いたずらに対立抗争関係に追いやると存ぜられます。またその結果一般消費者大衆の利益を害することともなるおそれがあるように思われますので、本法案をそのまま成立させるということには反対いたしたいと思うものであります。  われわれは、中小企業の振興対策についてはいささかも反対の意向を持つものではなく、むしろこれが合理的な振興対策につきましてはその必要性を痛感するものでありまするが、懸案中の団体法案によりましては、国民経済の円満な発展を期する上に少からざる支障を来たす点があると考えられますので、こい願わくば事情の許す限り時間をかけて慎重な再検討を加えていただきたく、強く望んでおるものであります。しかしながら、諸般の情勢上これを成立させることがどうしても避けられないといたしますれば、百貨店協会といたしましては次の点について考慮を加えていただきたく申し上げるものであります。  第一の点は、商店街組合についてであります。第十条ただし書きにおきましては、業種別の商工組合のほかに、特に商店街に限って異種業種の集団である商店街組合制度を認め、業種別の組合の地区との重複を許しておいでになるのでありますが、他の産業にも許されていない地区の重複の禁止に関する例外が、小売業のみに許されておることになっておる規定は削除をいたしていただきたいと思うのであります。  第二に、商工組合の設立並びに調整規程の認可についてでありますが、組合の設立並びに調整規程の認可については、それぞれの個々の申請につきまして、資格事業者についてはその規模の大小を問わず、さらに資格事業と関連ある事業者並びに一般消費者等、広く利害関係人の意見を聞いて、厳格公正な認可を期すべく、また調整規程については、そのいかなる事項についても公取の同意を要すること等に改めるなど、所要の措置を定めることが絶対に必要であると存じております。また慎重を期すべき趣旨から、組合の設立並びに調整規程の認可——組合協約の認可について準用される場合も含めてでありますが、認可につきましては、申請してから二カ月を経過すれば、自動的に認可があったものとみなすという規定は削除していただきたく存ずるのであります。  第三に、組合交渉につきましては種々申し上げることが多いのでありまするが、協会といたしましては、この規定は削除をいたしていただきたいと思うものであります。しかしながら、諸般の情勢上これを削除することがどうしてもできないといたしまするならば、次の諸点に配慮を加えることによりまして、行きすぎた組合交渉から生ずる弊害防止に留意を願いたいと存ずるのであります。第一は、組合交渉応諾の義務規定を削除していただき、無法な交渉内容の押しつけによりまする混乱をなくす道をお考え願いたい。次には、組合交渉の代表者から連合会の代表者等を除外していただき、ほんとうに関係のある団体の代表者を少人数に限定されまして、最も容易に話し合いの実をあげやすいようにしていただきたいと思うのであります。第三には、交渉事項から調整規程の「案」を除外して、認可を受けた調整規程をもってしなければ交渉ができないというふうに具体的にお願いしたいと思うのであります。また中小企業等協同組合法の一部改正案の中の、組合交渉及びこれに関するあつせんまたは調停の規定は、容易に設立できる事業協同組合や小組合に殊更に現在以上の強い権限を与えていただいて、一方あつせんまたは調停によっては商取引への行政庁の介入を認めることと相なるのでありまして、かえって混乱を招くと存ずるのでありまして、この点は削除いたすべきものであろうと存ずるのであります。  第四は加入命令についてでありますが、加入命令は削除するか、または命令がありました場合に正当な理由を有する者への適用除外として調整規程の制限を受けないように考慮さるべきものであると存ずるのであります。  第五は、事業活動の規制命令についてでありまするが、組合員たる資格を有する者を対象といたしまする事業活動の規制命令は、これもまた各方面への影響が大きいと思われまするので、公取への協議は同意を要することと改める等、その他命令発動には、調整規程の認可と同様の慎重を期すべき配慮をお願いいたしたく存ずるような次第であります。  以上、申し述べましたのが、百貨店協会として本法案に対する意見であります。どうか御趣旨をよく御了承願いたいと存ずるわけであります。
  153. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に、名古屋市地域婦人団体連絡協議会会長横地さだゑ君にお願いいたします。
  154. 横地さだゑ

    ○陳述者(横地さだゑ君) 私は、今日ここにこの法案に対して所見を述べる機会を与えていただきましたことについて、心から感謝を申し上げるわけであります。ただ私は非常に知識が乏しく、この責任を果し得るかどうか非常な危惧を感ずるものでございますことを、ここにお断りを申し上げまして、私の考えておりまする問題点について申し上げたいと思います。  私は、まずこの法案は原則的には賛成いたすものでございます。すなわち第九条に規定されておりまするように、経済不況の中にさらされております中小企業方々の回生への道を開く法案として、私は歓迎されていいものではないかと思うものでございます。ただ本案の五十五条に規定されております加入命令の条項につきましては、私どもが憲法に保障をされておりまする結社の自由という基本的人権に侵害を与えるものではないかという理由と、もう一つには経済憲章とも言われるあの独禁法の中にも、不況カルテルの場合といえども、加入脱退の自由は原則として認めなければならない、犯してはならないということが規定されておりますことから考えまして、私はこの強制加入加入命令の項については十分考慮をしなければならないものではないかと思うものでございます。第二十六国会におきまして、社会党並びに自民党の共同修正によりまして、加入命令を受けました当人は、その加入に対して支障を来たした場合には、知事に届出をすれば加入をしなくてもよろしいことになっておるようでございます。しかしながら、実際にこれが運用せられる場合に、私は非常に複雑微妙な人間心理を考えまして、この問題には非常な危惧を感ずるものでございます。かてて加えて組合の公正な円満な運営は組合員各自の自覚にまたなければならないことは当然なことでございまして、強制加入というような状態の中で、たとえてみればいやいや加入した組合員が、その組合の円満な運営のために協力をしない、あるいは協力はいやいやするというような状況の中で、この組合が円満な成長を遂げていけようとは私は考えられないと思うのでございます。こういう意味合いにおきましてこの強制加入の項目は、今後ぜひ参議院におきまして削除していただけるような御努力が願いたいということをここに申し上げるものでございます。  なお、この法案には価額協定を行い得る場合を規定いたしておりますが、すなわち価格協定を行う場合、これは組合が決議をする、大臣への許可申請をする、大臣はさらに公取への協議をする、公取の同意を求める、あるいはまた中小企業安定審議会に諮問をする、あるいはまた利害関係者の方々の公聴会を開く、あるいは当人の異議申請をする、こういう段階を経て初めて価額協定というものが成立するものであるということを規定しておるようでございますが、実質的に私どもはこういうことによって何となく消費者にだけしわ寄せがくるものではないかという大きな危惧を持つものでございます。何となれば、すでに成立をいたしております、施行をみております例の環境衛生法によりまして、私ども消費者は著しく家庭生活、消費経済の恐慌を感じておる現状でございますので、この点につきまして特にわたくしは御考慮を願いたいものだということを強くお願いしたいのでございます。もっともこの価額協定というようなことが、はたして私ども消費者にどの程度の脅威と圧迫を加えるかというような問題は、一にかかって運用の如何にあるのではないかと思うものでございますが、この運用に関しましては政令に大へん広くまたがってゆだねられているようでございますので、今後この法案の審議の過程におきましては、この法律消費者の立場を不当に侵害しないようにということを、政令の御審議の際に十分慎重に論議をお尽しになっていただきまして、だんだん弱いところへしわ寄せをされるものではないかというこの消費者の不安を、ぜひ除去していただくような御努力が願いたいものだと思うものでございます。  なおこの法律案は、私ども考えますのに非常な不況事態をとにかく解決するための、ただその目的のためのいわば臨時措置法的な法律のように考えられますが、私は中小企業方々のほんとうの振興と発展を、国会並びに政府がお考えいただきますならば、もっともっと抜本的な対策をお立ていただくことでなければ、中小企業方々は救われないのではないかと危惧するものであります。すなわちわが国の資本主義経済は大企業あるいは大資本を野放図に擁護をするような政策をもって参り、現在百貨店法は制定されましたが、私どもの知るところによれば、すでにその売場は戦前の五倍になっているということを聞きます。また先ほどどなたかも公述なさいましたが、実際に中小企業方々も戦前の三倍にもふえているというような事情であるということでございます。どうか政府におかせられましては、国会におかせられましては、ぜひこの中小企業方々へのあたたかい態度をもって、ほんとうに抜本的な対策を講じていただいて、ただいま継続審議中の中小企業産業分野の確保に関する法律案、あるいは商業調整法だとかあるいは家内労働法だとか最低賃金法というような、こういう法案をなるべくすみやかに成立をさせていただくような方途をお考えいただきますと同時に、ぜひ一つ大資本、大企業方々中小企業方々の苦境に十分あたたかいお心を持っていただくということ。先ほどから何かこの法案が大企業、大資本と中小企業との摩擦を招来するものではないかという杞憂をお持ちになるようなお話を承ったのでございますが、私は事もなければ決して相争うものでないと思います。そのときにもすなわち持つ人達、恵まれた方々が比較的恵まれない方々へあたたかい配慮と理解をもって臨んでいただく、こういう態度によって私は決して摩擦を招来することもみんなの努力で解決するものではないかと期待するものでございます。私ども消費者の側から率直に申し上げれば、ぜひ一つ低物価政策を堅持していただきまして、貨幣価値の安定をさせていただくということ、貨幣価値の安定なくして私どもの消費生活の安定は期し得られないものであることを強く信じるものでございます。  なおもう一つ申し上げておきたいことは、中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案の中にお取り上げになっております火災共済協同組合の問題でございますが、私はこの火災共済協同組合の問題につきましては、ぜひ原案通り通過せしめるような御努力が願いたいと思うのでございます。これはわれわれ愛知県におきましてもすでにこの火災共済の組合が発足をいたしておりますが、これによって既設の営利を目的としておりましたあの火災保険会社、そういうようなところがどんどんと保険の料率を引き下げて下さいました。この事実にかんがみましても、私どもは火災共済の協同組合についての法律成立いたしますことを心から希求するものでございます。  以上、公述させていただきましたが、これをもって終ります。
  155. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に愛知県地方労働組合評議会議長寺門博君に願います。
  156. 寺門博

    ○陳述者(寺門博君) 私は衆議院から参議院に回った中小企業団体法案、それに関する二つの法案について、このまま通してもらっては非常に国民生活に影響があるばかりでなしに、中小企業を救おうとする目的がかえって救われない。特に最初の陳述者からあったように、零細企業に至ってははなはだしくこの法案成立によってかえって滅びていく、こういうことを私は心配をいたしております。そういうことから私の陳述を申し上げてみたいと思うのであります。  従ってこの法案お互いに研究し、それから国会において審議をしていただくに当っては、日本の経済の総合的な構成の中で考えなければならぬ。そのために私は第一に世界の経済と産業の中にある日本の経済、産業を比較的に見てみる。自分の中だけを見るのでなしに、世界的に比較をして見てみることが必要である。そうすると特に次の三つの点が顕著なことと見られると思うのであります。  第一には非常に低い賃金で働いておる労働者が多いということであります。そしてさらに、働くことのできない失業者が非常に多いということであります。わが国の労働人口は、御承知のように大体四千万人以上でございまして、その中で潜在失業者が一千万、こういうことを言われておるのであります。さらに労働基準法を適用されておる労働者数が一千二百七十九万人、これは昭和三十一年十二月現在の調べでございますが、そういうふうになっております。そして六千円以下の低賃金で働いておる労働者が約二百万以上、八千円以下の賃金で働いておる労働者が三百八十万、こう言われておるのであります。しかも完全失業者は六十万人ある、こういうような低賃金の労働者が非常に多いということが一つであります。  第二には中小企業が非常に多い。わが国の経済の中で中小企業の占める地位というものは非常に大きいのでございまするけれども、中小企業はわが国事業場の数の約九九%を占めておるという事実であります。中小企業に働くこれらの労働者は総雇用数の八三%であって、これらがまた非常に低賃金で働いておるということであります。しかも中小企業の生産する生産量というものは、わが国の生産量の約六〇%を占めておる、こういうことを私どもは見逃してはならぬと思うのであります。  第三には零細なる農民と漁民が多いということであります。  この三つの労働者、世界的に比べて非常に低い低賃金で働いておる労働者、それからこの中小企業者、漁、農民が一貫して救済が行われない限り、日本の経済、産業はよくならぬということを見逃してはならぬと私は思っております。そういう観点に立って終戦後の日本においての中小企業に対する積極的な援助、対策はどうなっておるかということを見なければならぬと思います。  戦後御承知のように海外市場を失いました。その海外市場を失ったわが国においては、いきおい狭い国内市場において激しい競争が行われる。こういうことになっておるわけです。しかも大企業に対するところのすべを知らない中小企業は、口を開けば中小企業対策を宣伝する政府、しかもこれという政策をしてくれない政府を恨みつつ、大企業とまたは中小企業同士が激しい競争を行なっていることを忘れてはならぬと思うのであります。そして中小企業はこういう競争の中であるいは変動する経済の中で倒産をし、あるいは激流の中に流れるあわのようにお互いがぶつかり合っている。そして上からは圧迫をされる。しかも相互に激しい競争をしておる。その中で生きておるというのが中小企業状態であります。しかもその数の多い中小企業の中で、大企業のあるいは独占企業の系列の中に結びついて生きておるものはわずかでございます。こういうことを私どもは忘れてはならぬと思うのです。そう考えて参りますと、中小企業の問題というものはこれは社会問題でございます。中小企業の生産量及びサービス量はきわめて大きい。しかもそれに従事するところの経営者も含めて労働者も含めて非常に多い人口になっておるのであります。ですから私は中小企業問題は経済問題ではなくて社会問題として考えなければならぬ、こういうふうに思っておるのであります。  次に世界経済の一環としての日本経済の中に、中小企業の生きる道、中小企業の近代化と健全な発展を遂げる道はどういう道であるかということを考えてみなければならぬと思います。それは第一には中小企業お互いに自主的に団結するということでございます。これは戦争前において中小企業を救おうと官僚統制が行われました。その官僚統制の結果、零細企業特に小企業はつぶれておる事実を私どもは考えなければならぬと思うのであります。そういう観点から中小企業が相互に自主的に団結をするという方途が講じられなければならぬと思うのであります。第二には、その団結を成功あらしめるために民主的な諸立法が必要であります。そしてさらに市場の拡大を必要とするのであります。前に申し上げたように、海外市場を失ったわが国においては、どうしても国内における市場の拡大、併せて国外における市場の拡大を考えなければ中小企業は救われない。こう思うのであります。そこでまず官僚統制のおそれを排除するということが一つ組織内においてはボス支配を作らない、民主的自主的な団結が必要であるということが一つ。次は独占企業の系列化、零細企業者が力によって整理、排除されるというこの強制力を私は除かなければならぬと思うのであります。次に、今度は大企業が市場を独占をしておる。こういうことを排除する。そのためには先ほど横地さんからもお話しがあったように、大企業産業分野はどうであり、中小企業産業分野はこうであるという産業分野の明確化が行われなければならぬと思うのであります。次に、中小企業の近代化と合理化のためには積極的な財政援助が行われなければならぬと思うわけであります。このためには中小企業に対する税制の改革あるいは金融の措置などが積極的に行われる必要があると思います。  以上のようなことをするために、もう一回要約しますと、自主的な組織であるということ。産業分野が明確にされて中小企業が保護されるということ。さらにその中小企業の中に働く低賃金労働者がもう少し待遇が改善されるための最低賃金制が実施をされるということ。そのことによって国内市場が拡大をされるこういうことになると私は思います。以上のようなことが考えられない限り、今回衆議院から参議院に回った中小企業団体法案の単なる一片の組織法案をもっては中小企業は救われない。特に強調したいことは、零細企業、弱い企業はみずからこの組織の中で倒されていくということを忘れてはならぬと思うのであります。  以上のような観点から中小企業団体法案を見るときに、第一には今日すでに中小企業はきわめて困難な状態になっております。ところがこの法律案を見ると今日の段階においては組織は許さない。過当競争が行われて非常事態になったときにそういうことを認めたときに組織をさせるというのでございますから、今日あえいでおる中小企業者は救われない。この困難な事態が救われないということが大きな問題であります。第九条の定めによるところの商工組合設立要件では、今日のような困難な状態が救われない。これは私ははっきりと見きわめなければならぬと思うのであります。  第二には、法案規定されたところの一地区、県、全国に一つ組合、連合会しかできないということ。並びに第五十五条以下第六十六条までの定めですが、これは加入を強制し、命令によって事業活動を規制する、私はこういうことが非常に問題であると思うのであります。従って商工組合の民主的、自主的組織化の団結がはばまれることになります。ですからこのことは官制による組合である。こういうことになるわけです。第二には強制加入とその規制の定めは実質的に私はカルテルを作るんではないかということを心配いたすのであります。世界中尋ねてもこういう法案はないのでありますから、結局カルテルを作り、弱いものが生きて、救われようとする零細企業、弱小企業は滅びていく、こういうことが出てくるのではないか。次は民主的、自主的な組織でないからボス支配を助長するのではないか、次は労働組合のクローズド・ショップは憲法違反であって、人権じゅうりんであるという主張が政府並びに国会の中であったことは事実であります。にもかかわらず、この法案によりますというとクローズド・ショップなんです。強制加入なんです。この前に国会において強調された主張が、この法案によってはゆがめられておる、逸脱をしておる。そういう主張はつねに民主国家においては一貫をしてこなければならぬと思うのであります。この矛盾をこの法案の中にはらんでおるのでございますから、これはどうしても改めてもらわなければならぬと思うのであります。次に、調整は主務大臣の認可、不認可とするのであって、もちろんその規程がございまするけれども、主務大臣の認可、不認可とするのである。それから強制加入調整などとにらみ合せて、これは先ほど申し上げたように、官僚統制のおそれが非常に濃いのであります。  次に財政上の援助が不十分であります。先ほどもお話しがあったように、この中ではいろいろ税制改革その他をやってあげると申しておりますが、そのくらいでは救われないのであります。  次は従業労働者の生活が考えられておらない。すなわち最低賃金制の問題については同時に考えられなければならぬものがこれは考えられておらない。  次に農業協同組合です。農業協同組合商工組合の交渉相手から除かれておるのでありまするけれども、生活協同組合と購買会が交渉相手になっておるということは私は不当である、こう思っておるのであります。  以上考えて参って、どうしてもこの法案は参議院の良識によって超党派的に政党政派を乗り越えて慎重なる審議がなされ、修正をされなければならぬと思うのであります。その要点は、まず中小企業が官僚権力から自由に解放されて、民主的、自主的に生きる道を切り開くための方途が講じられなければなりません。次にこれら中小企業が実質的に特定の政治上の目的を持つ勢力に利用されることがないようにしなければならぬと思うのであります。しかるにこの法案を見ると、たしかに政治上の権力によって支配されないという建前が文字では書いてありますけれども、盛られておる内容は官僚統制であり、しかも主務大臣がこれの認可、許可権を持っておるのでございますから、私はこの額面通りにはなかなか受け取り難い点があるのではないかと思うのであります。それから特に日本中小企業の問題は大企業の系列化になっておる。この間もアメリカから帰ってきた人の話を聞くと、アメリカにおける中小企業は大企業の系列下に入っておらない、そして独自の製品を作ってそれを大企業に自由に販売をしておる。先ほども商工会議所の榊原さんからお話しがあったが、大企業が系列外の中小企業をシャット・アウトをしておる、こういう状態日本中小企業状態でありますから、どうしても中小企業組織化していこうという法律的なことによってやっていくならば、大企業からの圧迫と系列化を排除するような方途が考えられなければならぬと私は思っておるのであります。しかも中小企業に一番大切なことは、生産をなさる中小企業あるいはサービスをなさる中小企業は国民とともに生きる企業でございますから、日本経済、産業構造の重要な役割を果しておる企業でございまして、その発展するためには次のような点が修正され、さらに追加をされることが必要であろうと思うのであります。それにはまず加入のためには自主的であって、運営は民主的であること、従ってこの中小企業団体を作るために、非常事態になってから作るというのではなくて、お互いが自主的に加入をし、自主的に団結をし、自主的に民主的に運営ができるという段階においてそういう政策ができるような方途が考えられなければならぬのではないか、こう思うのであります。しかもその組合はカルテル性を除く、いろいろな価額の調整あるいはどういうふうにしてものを考えるか。こういうことがこの組合によって規制をされるということになりますと、これは明らかにカルテル性を発揮するのでございますからこれを排除する。第三には、くどいようでございますが、強いものが生存をして弱いものが滅びていく、いわゆる規制の一率化というものが排除されなければならぬ。こう思うのであります。次は交渉相手からは生活協同組合と購買会は農業協同組合の例にならってこれは除かなければならぬ、こう思うのであります。しかも調整は民主的機関においてやってもらう、主務大臣が実権を握っておる、こういうことでは私は相ならぬと思うのであります。同時に先ほど申し上げたように、日本の市場を拡大し、あるいはそれら中小企業の中に働いておる労働者の生活を向上させるために最低賃金制を実施し、同時に産業分野を明確にして、しかも中小企業に対する税制と金融措置が強力に展開をされることを私は望んでおるわけです。  以上のような点を一つ十分御審議の過程に入れていただいて、この衆議院から回付された法案がそのまま通るということのないように、参議院の御良識をお願いいたしたいということを申し上げて私の陳述を終りたいと思うのであります。
  157. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に名古屋毛織工業協同組合理事長渡邊健之助君に願います。
  158. 渡邊健之助

    ○陳述者(渡邊健之助君) 私毛織物業の中小企業を営んでおるものでございます。  愛知県の毛織物は全国の生産額の約三分の二を占めておりまして、その九〇%までは中小企業によって占められておるものであります。全国的に見ましてもその八〇%までは中小企業の生産品でございますので、内需物はもとよりといたしまして、輸出物につきましても中小企業が圧倒的な産業の一つであるということが言えるのであります。これに反しましてわれわれの原料といたしますところの毛糸でございますが、これは梳毛糸ではその九〇%が大企業でございます。それから紡毛糸につきましてもその約半分が大企業によって生産されておりまするので、毛織業では原料高で製品安ということが常態なのでございます。これから断ち切られるということはきわめて困難だと思います。もっとも昨今は金融引締めという事態がございますので、原料も安い、製品はもっと安い、こういう具合に言い換えられなければならぬと思いますが、実情はその通りでございます。その中小企業の毛織業といたしましては、協同組合調整組合が各産地にございまして、調整組合では二十九条による強制命令によりまして設備の登録と制限をやっておるのでございます。しかし組合に設備を登録はいたしておりますけれども、組合へは入らないというアウトサイダーが相当ございますので、実際上登録制度の維持は当然の結果として組合に入っておるものだけが負担してやっておるということになるわけでございます。  調整組合というものは、そのものがわれわれから見ますときわめて弱体な形なのでございまして、たとえば出資が認められないということのために、組合の事務所だとかその他の施設なくして組合はあり得ないわけでございますが、そういうものについてはその予算期における組合員に分担金をかけてそれで取るよりほかに方法はないわけであります。実際にはそういうことはできませんので、現実の問題としてはそれより早く基礎のできておるところの協同組合がそれを全部負担しておる、協同組合におんぶしてようやく調整組合というものが成り立っておるというのが実情なんでございます。これは調整組合というものが理念的に組み立てられた結果、実情に沿っていないわけでございまして、今度の法案におきましては、商工組合という形で両者を兼ねることができるということはきわめて妥当なことであるという具合に考えるわけであります。そこで加入命令の問題でございますが、今日の調整組合事業が登録ということだけでとどまっておる場合は、わずかな経費の負担問題にすぎないように見えますが、もし今後もっと事態が進みまして、生産または取引のいろいろな面につきましての各種の調整事業が行われるという場合には、アウトサイダーというものがきわめて重要なものになってくるのでございまして、これを放っといたのではその目的を果すことができないことになる。従ってこの中小企業安定ということを目的といたしますにはやはり強制加入がどうしても必要になってくるという具合にわれわれは考えるものでございます。  なお組合交渉の問題でございますが、これは中小企業組織強化されております場合は実力によって組合交渉ができるわけでございます。そういったような業種もあるのでございますが、その場合は問題がないのであります。それを持っていない業種、弱体であるからそういうものが持ち得ないという場合に、これを何とかしてやらなければならぬということは当然なことなのでございます。中小企業の振興をしよう、あるいは強化をしようという観点から見て当然なことなので、これに対する反論が成り立つはずがないわけであります。中小企業は大企業に対してものも言えぬような弱体のままで放っとくべきだという根拠は全くないわけでございまして、われわれといたしましては中小企業対策というものがあるならば、これは当然の帰結であって議論の余地もないものだという考え方を持つわけでございます。  中小企業組織に関する強化の問題、これは本法案に盛られた以外にもいろいろあると思うのでございますが、この強化対策というものは実際問題として強過ぎるから弊害が起るかどうかということなのでございますが、われわれはそういうことはあり得ないと信ずるものでございます。なぜならば、中小企業というものは本来きわめて団結のきらいなものだ。これは数が多いということもございますし、なかなか同業者同士の利害というものが一致しないのであります。他を押しのけて自分だけやった方が得だ、事実協定を破って自分だけやったら得に決っておるのでありますが、そういう連中も実は少くない。これはよく言えば独立心が強いんだという言い方が成り立つかもしれませんが、実質上協同精神に統一するということは全くむずかしいわけです。これを組織していこうと思います場合にいろいろの強化方法があるわけでございますが、これは非常な困難を克服して組合というものをやっていくのだということを御理解願いたいと思うのでございます。しかもこの組合がいろいろな調整を実施していこうと思います場合に、最後のぎりぎりのところでこういう例が出てくるわけであります。すなわち、食っていけないから統制を破らざるを得ない、こういう業者がやはり各業界の中に必ず出てくるのでございます。この問題はわれわれだけで解決が実際問題としてできない問題です。人口過剰だとかあるいは資源だとか資本の不足というようなところから出てくるわけでございますから、われわれでは解決がつかないのでございます。しかもわれわれとしてはそういう場合にも何かの妥協を試みつつも何とかして目的を果していかなければ、われわれが成り立っていかないわけであります。従ってそういう場合にわれわれといたしましては幾多の譲歩、妥協を行なってそれをなし遂げていこうとするわけでございます。従ってわれわれ組合を運営いたしております立場におきましては、われわれからそういうことは言いにくいわけでございますが、率直なところ組合による統制は十をねらって七つできるならば大成功だ。五つでもりっぱなものだ、三つでもやらぬよりましだ。こういった程度をねらって努力をしておるわけでございます。三つを獲得するだけでも非常な努力がいるんだということなのでございます。従ってわれわれはこの団体法ができ上った場合に、われわれの強化ということの結果消費者利益を侵害するというようなことが起り得るだろうか。とてもそんなことはわれわれとしては考えも及ばないことなのでございまして、中小企業自体が壊滅の危機をそれでどうにか回避できる程度ではないか、今度の強化によってどうにかそのくらいができるようなことになるのではないか、このように考えるわけでございます。  しかもこれに反しまして大企業がカルテルを作りました場合には決してそのようなものではないのでございます。大企業はみんななかなか自信たっぷりでやっておりますから、自分から進んでカルテルを無視したというようなことはなかなかやらないようでございますけれども、しかし、もし一ぺんでき上るとこれはきわめて強力でございまして、消費者並びに関連の中小企業というところに及ぼすところの影響というものはきわめて強いものであります。この大企業に対するところの組織法と申しますか、そういうものが実は従来にすでに簡単にでき上りつつあるという事実をわれわれは忘れることができぬのであります。すなわち独禁法の除外例として大企業を守るところの法律が単独法として続々とでき上りつつあるのであります。われわれの関係といたしましては、昨年できました繊維設備の臨時措置法、それがこの一つであります。紡績並びに染色整理の設備を新設するのを禁止するということでございますが、ただし本法はその運用をいささか誤まったために逆にかけ込みの設備が大へんたくさんふえまして、今日では設備の過剰に悩んでおるような次第でございます。全く逆の効果が出ておるのでございますが、しかし今後の事態如何によりましては、消費者なりあるいは関連中小企業にとって影響が必ず起ってくるということをわれわれは断言してはばからないのでございます。既得権を持っていないところの中小企業が、既設の紡績業やあるいは染色整理業に参加することはできないのでございまして、われわれの買い入れ価格に必ず影響が出てくるということをわれわれは信じておるのでございます。この大企業強化法に関するところの審議会が開かれましたとき、われわれ中小企業はもちろん反対を述べたのでありますが、まことに遺憾なことでございましたが、消費者団体あるいはその他労働組合方々はこれを傍観し、あるいはこれに消極的ながら賛成をいたしておるのであります。これらの点につきましては、われわれは中小企業団体法にのみ強硬な反対をせられるということにいささか理論が統一されていないということを感ずるものでございます。中小企業の安定と申しましてもこれは総体的なものでございまして、一方において大企業強化が行われるならば、これは相対的に考えましてわれわれは昨年から非常に弱体化されたということが言い得ると思います。この弱体化を幾らかでも旧に復する方法は、やはり本法を原案通り施行していただく、これはぎりぎり決着最低の線がそういう具合であるというふうに考えるのでございます。  なお最後に火災保険の共済組合について一言述べます。  われわれ中小企業におきますところの火災保険の普及率というものはきわめて低いのでございます。戦前も低うございましたが、昨今では特に低いのでございます。保険思想というようなものを忘れてしまったのではないかと思われるくらいでございますが、実際問題として事故があってからあわてふためいておるというのが事実のようでございます。これは中小企業というものは保険料を払う余地がないという言い方もございますが、実際問題として分散をいたしております。ことにわれわれの業界はいなかにずっと散らばっておるのでございますので、危険がきわめて少い。しかも個人企業が多うございますから、自分工場だというわけで管理も相当行き届いておることも事実でございます。従って事故はきわめて少い、にもかかわらず保険料はきわめて高い。これでは保険に入る人がないというのは当然なんでございます。このような形では実際問題として企業としても安定したものと考えるわけにいかぬわけでございますから、組合といたしましては保険という点についていろいろな努力をいたしておるのであります。たとえば組合の中でお互いの間の共済というような方法も考えたりいろいろいたしておるのでございますが、幸い愛知県では共済組合が設立されましたので、われわれといたしましてはそちらと共同いたしまして、保険の普及——きわめて小さな口でございますけれども、その普及に努めておるのでございますが、今日まで相当の成果をあげておるわけなんでございます。われわれはこの共済組合強化されるということは、もっと安心して突っ込んでいけるという意味におきましても、中小企業に保険を普及するのに最もいい方法だということを考えるわけでございます。  かつて協同組合法成立いたしましたときだと思いますが、われわれ承っておりました原案に載っておった保険組合の項目が一夜にして消滅した事実をわれわれは記憶いたしておるのでございます。今度はそういうことのございませんようにわれわれ中小企業を振興させるのにやはり有力なる組織であるということについてよろしくお願いしたい。こう思うわけでございます。  結論といたしまして、私どもは原案通りの実施を切望いたすものでございます。
  159. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) どうもありがとうございました。ちょっと申し上げますが、名古屋毛織工業協同組合理事長の渡邊さんと、名古屋市地域婦人団体連絡協議会会長横地さだゑ君は、やむを得ぬ御用事がおありとのことですから、このお二人に対する質問等を先にやりたいと思います。お二人に対し御質問のおありの方は御質問をお許しいたします。
  160. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉委員 組合として、統制といいますか、強制といいますか、そういうものを強化していく上にいろいろ御苦心をされておるわけでありますが、どうしてもアウト・サイダーをそのままにしておいたのではうまくいかない、従って強制的にでも加入せしめなくてはならぬ、こういう御見解でありますが、現在の法律では強制加入命令はない。しかしながらアウト・サイダーに対してその強制に服するように、といいますか、従えという道はあるのです。そのアウト・サイダーに対して統制なり強制に従えという道だけでは不十分であって、何としても組合員にしなければならぬ。組合員にした上で従わしめるというふうにもっていかなければどうしてもいかぬか、その点を御説明願いたいと思います。
  161. 渡邊健之助

    ○陳述者(渡邊健之助君) たとえば現在二十九条で、こういう事についてアウト・サイダーも従わなければならないという命令がでれば、アウト・サイダーといえども従わなければならない。しかし二十九条が発令されるということにつきましては、まことに容易でないものがあるのです。しかもそれは非常に狭い範囲で行われるだけである。従って実際問題として、できるならば数量的条件をつけない方がいいと思われるようなことがきわめて多いのでございます。われわれとしては、もっとできるならば、できるだけ理想的にいって二十九条にお願いするようなことをなくした方がいいのじゃないか。もっとも二十九条で事をやりました場合には、これを違反いたしました場合に、法的にいろいろなことを考えなければならぬ。従って二十九条できめ得ることはきわめて限定されることが多いのだろう。しかし実際問題としてわれわれが組合強化し、あるいは中小企業の弱いところを補っていくとするには、そんなつっ込んだところまでではなしに、その一歩前で解決でき得ることが相当あるということを信じておるのです。現に二十九条にまで至らない形で、できるだけの努力をいたしまして、その成果を上げておることが相当あるわけであります。従ってそういうことをやる場合に、やはり組合員に入っておって、少くともその規定によるところの罰則だけでも仕事がやってもらえないだろうか、ということをわれわれ切望するのでありまして、従って、そういうような点からいいまして強制命令も必要でありますが、やはり組合の中に入って、みんなと一緒に自主的な調整の線を徹底してもらうというところにもっていきたいというのがわれわれの、実は念願なのであります。
  162. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉委員 その御考えなりお気持は私もよく理解されるのです。ところが先般御議論のありましたように、どうしても、やはり自分としてはある考え方があって入らない。しかしその業界の安定のために、必要な規制には従いましょう、こういうことがあり得るのじゃないか、しかしそれも、もっとほかにも自主的にやり得ることがあるのであろうし、法があるからいやいやでも入ってもらうという考え方なんです。これは安定法と今度の団体法一つの違う点でありますけれども、お考えのように趣旨はわかります。  それから今一点お話したいのは、団体交渉の点なんです。この団体法案で認めておる団体交渉権全般は、当然のことだというお考えでありますが、これも理解がされるわけであります。ただ私がちょっとお話したいのは、大企業の方でも、おそらくはこれまでにおいてそういう傾向があったのですけれども、こういう制度が新しくできて、法的に団体交渉の道が拡がるとすれば、大企業のものもそれに対抗した一つの施策といいますか、実質的なカルテル、こういうような施策が当然行われてくる。ですから渡邊さんが御心配されておるような点が非常に強化されてくるというふうに考えられるかどうかという点であります。それを一つ……。
  163. 渡邊健之助

    ○陳述者(渡邊健之助君) これは見通しの問題でございますが、われわれといたしましてはすでに中小企業の方がそういった強化をいたさなくとも、すでに大企業における運動が着々と功を奏しつつあるというのが現実だと思うのです。そのもとでやはりわれわれとしては、その交渉ということの方で道を開くことが必要である、このように考えます。
  164. 阿部竹松

    阿部竹松委員 渡邊さんにお願いいたします。今、同僚の梶原先生からも御質問があったことに関連するのですが、この独禁法ですが、これは横地さんも関連して御発言がありましたが、この法案は独禁法にかかるわけです。従って除外例を設けておるわけです。そうしますと、今まで独禁法にひっかかる法案を、幾つかの法案が全部除外例を設けておる。従って独禁法は昭和二十二年七月にできてから何回も、今度で三回ですが、改正をやっております。一昨日も公取の横田委員長のお出を願って聞いたわけでありますが、独禁法の改正をやる、こういうことについては御承知の通り、大企業は独禁法をなくしてくれ、というのが本心ですから、そうしますとこれは除外例を設けてくれ、独禁法は守ってくれということは、中小企業が弱いからということでありましょうけれども、もう現在独禁法は骨抜きになっておるのです。そういう点について自分の方は独禁法を除外してやってほしい。しかし独禁法は厳正公明に守ってほしいということについて少し矛盾したように感ずるのですが、その点はいかがでしょうか。
  165. 渡邊健之助

    ○陳述者(渡邊健之助君) 独禁法というものは、たとえばそれを適用されないような共同行為があってはいかぬということではなしに、共同行為があることによって消費者なり、あるいは社会全般に悪い影響があるということが基本にあるのだ、こう思うのです。中小企業におきまするこういう共同行為という問題については、私申し上げましたように、弊害が実際問題としてないということが、従来の経験からみましてもある、かように考えるのです。その意味におきまして、大企業が独禁法除外規定をどんどん作っていくということは、実際上大企業におけるカルテルなりがどんどんでき上っていくということです。そのことは消費者に、あるいは関連産業にとっても非常に大きな影響があるということは事実であります。その意味においてこれは押えるべきだ、こう思うのです。しかし中小企業共同行為を行うということは、実際問題としてそこまでやってもらってもなおかつ強固な形はできにくいというのが実情のように考えます。その意味におきまして、従来から、独禁法ができ上ります前から中小企業に対するところの立法は除外例としてでき上っておるということだと、われわれはそう思うのです。
  166. 阿部竹松

    阿部竹松委員 横地さんに一言お伺いいたします。最前渡邊さんのお話の中に、この法案が通ることによって、消費者に影響するということは思いも及びません、こういうお話がございました。そこで私は横地さんが、責任者になっておられる団体は、消費者だけの団体であるか、それとも中小企業の奥さん方のお入りになっておられる団体かよく知りませんが、横地さんの団体の御見解は、この法案が通ることによって物価が上るとかいうことについて、今の渡邊さんのような御見解であるかどうかをお伺いしたいと思います。
  167. 横地さだゑ

    ○陳述者(横地さだゑ君) お尋ねの件ですが、私どもは今渡邊さんからの御説明によりますと、消費者に対する脅威は全く御心配はない、ということでございます。私どももぜひそうありたいと思うのでございますが、例を取りますれば、環境衛生法が、環境衛生的な面を十分考慮して法が制定されたと思うのでありますが、それにより、すでに値上の申請あるいはそういった攻勢が非常に顕著に現われてきたという一つの事実にかんがみましても、なかなか理論通りにいかぬのじゃないか、こういうことを非常に危惧するものでございます。そこで私はこの団体法があくまでも経済恐慌にさらされている中小企業方々を臨時措置法的なこの措置によって回生の道を開いていただくための法案として認めていただかなければならないと思うのでございますが、しかしながら、この際その方が認められるということの裏返しに、そのしわ寄せを消費者に転化されるというようなことがありはしないか、ということを実質的に非常な疑問を持つものでございます。私どもの団体は純粋な家庭人ではございますが、その中には純粋な消費生活を行なっておる方もあれば、あるいはまた中小企業に御関係のある家庭の方もございますので、私はそういったようなことは別として、純粋な消費者の立場からぜひ一つ価格協定というような問題につきましては、あくまでも消費者の立場を著しく侵害しないという、その裏づけを十分考慮せられるということをぜひ願いたいと思うのでございます。先ほど申し上げましたように、価格協定が成立するまでの段階に入るというようなことは、私ども法の上から十分理解いたすのでございますが、実際にはなかなか困難が伴うのではないか。それで先ほど総評の寺門先生もちょっとおっしゃいましたが、この組合組織強化のためには大きく役所の力がそこに介在するというようなことは、こういうことに一つ消費者の立場というようなことも十分考慮され、また公取委におきましても考慮せられるべき問題ではありますことは、了承いたしますが、何と申しますか、この価格協定が成立するまでの段階に一応消費者の立場を反映するという直接の機関が考えられていないものでしたから、何か非常な不安を感じる。ただ関係者より公聴会を開く、こういうような段階があるのでございますが、こういう機関など運用に際しまして、私どもはぜひ法の精神を生かして、十分に消費者の立場が同時に守られていくということが、かね合うように考慮が願いたいということを重ねて申し上げたいと思います。
  168. 松澤兼人

    松澤兼人委員 横地さんにお伺いするのですが、婦人団体としては、消費者の立場ということは最も大切なことだと思うのです。そういう立場を、今後の商工組合の経済活動に対して反映せしめるという固まった力となるためには、どういうことが考えられますか。一つは審議会というものの中に消費者代表というものが入るということは可能性がある。しかし消費者は何といってもばらばらですから弱い立場にあります。それを固った力として、反映させるということは、なかなかむずかしいこことだと思います。先ほどお話があったのでありますが、世論にさからってまで経済行為とかをするということは、われわれとしては考えられないというお話があったと思いますが、そういった方面を消費者の立場が最も強く反映するということは大切だろうと思うのです。どういう形でこれを反映させるか、これが問題じゃないかと思います。あなたのお考えを承わりたいと思います。
  169. 横地さだゑ

    ○陳述者(横地さだゑ君) ただいまのお尋ねの件に、私の考えを述べさしていただきたいと思いますが、先ほどから申し上げますように、この組織法があくまでも危殆に瀕したその中小企業の方を回生させるための、その組織である、こういうことを前提として公述をするものでございます。中小企業方々の、何と申しますか、実質的な振興と、そして発展を期するために、私は抜本的なその法の真の対策が行われなければならないことを、先ほど申し上げたのでございますが、ただ消費者団体、こうしたものの声が率直に反映されるための諮問機関というようなものを、この組合等と話合いの上で、各地域でもつというようなことも許されるならば、非常にけっこうではないか、こういうようなことを私は考えておるものでありますが、戦時中もそうでございましたが、いわゆる適正価格というようなものを、私ども消費者の側に立ちますものはあくまでも生産者、あるいはまた販売業務に携わる方々に、その立場に対しても十分なる理解を持たなければならないので、安いほどけっこうだということには参らないと思うのであります。こういう建前におきまして、私はあくまでも消費者側の声、つまり消費者の世論というようなものを反映させていくための、最初にそういう審議会、諮問機関をもっていただくことが望ましいと考えております。環境衛生法につきましても、適正価格の審議会が設けられることになっておりまして、消費者代表から六大府県は、十名のうち五名を占めるというようなことも規定せられているようでございますが、私どもがそういう機会にぜひ純粋の消費者の声を代表するような、代表を選んでそしてよく業者の方々、あるいは生産者の方々、こういう方々とゆくっりひざを交えて承わり、かつまた私どもの立場をよく御了解をいただくようにして、そこから適正な価格を、私どももそういう理解の中で認めていけるようにしていきたいものだ、こういうことを祈念いたしております。
  170. 松澤兼人

    松澤兼人委員 もう一つだけお伺いしますが、横地さんは生活協同組合関係がおありかどうか存じませんけれども、この問題につきましては一方生活協同組合の立場というものを、具体的にいいますと、地域の小売業者の立場といつも違っておりまして、消費者の側からいえばよくサービスしてくれて、適正な価格といいますか、消費者価格からいえば、なるべく安く売ってもらえる店で買いたい。それが小売業者であろうと、あるいはまた協同組合であろうと、どちらでも、消費者にとってはよいことであり、こういうようなふうにも考えられるし、またそういう立場を主張される方もあります。末端における生活協同組合小売業者の競合の問題につきましては、どういうふうなお考えでございますか。
  171. 横地さだゑ

    ○陳述者(横地さだゑ君) 私は生活協同組合には直接関係を持っておりませんので、まことに残念でございますが、この実質的な運営についても詳細を存じませんので、非常に失礼でございますが、ただ私が考えますことは、生活協同組合の、その協同組合組織する会員の方々の生活を守っていくということの建前として、法によって許された一つの機関であると思うのであります。このことにつきましては、末端の小売業者の方々とあつれきを生ずる心配はないか、こういうようなことのお尋ねだと思うのでありますが、終戦後生活協同組合を設立することにつきまして、いろいろ奨励も受けまして、しかしながら実質的には不慣れなため、消費者が実際こうした生活協同組合を公正に運営をしていくというようなことについての知識と時間的な余裕というものを持たないものがございまして、非常に残念ではございますが、示唆は受けましたが実際的には、私ども消費者の側の一般家庭の消費者のものは、生活協同組合というものは実際において育たなかったのが現状ではないかと思います。しかしながら、戦後の物資の非常に足りない時代におきましては、私どもも目をおおいたい実情の中で、生活協同組合の結成、運営というようなものに、非常な関心を持ったのでございますが、現在におきましては物資も豊かになって参りまして、そして中小企業方々もやはり消費者の立場というようなものも十分な協力を惜まないようになって参りました今日では、私は特にそうした実際の機関の運営などについて十分な知識を持たない私どもが、今進んでこれを行わなければならないことは考えていないのです。ただこの機関の運営について十分、何と申しますか、実質的な運営が可能な機関であれば、私はこの生活協同組合のあり方というものは消費者にとってはいいものであるとは考えておりますけれども、実際にうまく育っていないというのは、そういう事情だろうと思います。
  172. 土田國太郎

    土田國太郎委員 横地さんにお尋ねいたしますが、今の火災共済組合でありますが、これは御承知のように、地方公共団体が予算外支出の責任を負うということになっております。ただしこれは県議会の議決を要する問題であるが、議決されなければこの負担に任じられないということになっておりますが、これはこれからの問題でありますけれども、県議会には商工の関係の出身者もあり、農林関係の出身者もあると思いますが、これは責任あるあなたの答弁を要求する意味ではなくて、農林方面にもこの保証というようなことについてうまく、スムーズにいかれる見通しはどうですか。
  173. 横地さだゑ

    ○陳述者(横地さだゑ君) ただいまお尋ねをいただきました点につきまして、非常に、この組合でありますが、私は都市の生活をいたしておりますし、そういう関係でこの火災共済組合に非常な期待をいたしておったのでありますが、今度の改正する法律案の中で、一県に一つ組合を認めるというようなことでございますので、ただいま御指摘のような農林関係方々の保証の問題の額というようなことが、当然起ってくるのではないかと考えておるわけであります。しかしながら、私は、先ほど渡邊さんがおっしゃっていただきまして、これは相互扶助の機関でありまして、望ましいものではございますが、御承知のように住宅関係は農村は非常に住居が点在しております。そしてほとんど、何と申しますか、自分の家である、こういうようなことのために、比較的火災などによる脅威というのは、農村の方々は都市に住む人ほどお感じになっていないのじゃないか、そういうようなことで、現実には火災保険を利用していらっしゃる、あるいは加入をしていらっしゃるという方々は、農村においては、ごく少数ではないか、こういうふうに考えられるのでございます。これは中小企業関係の火災共済組合でございますので、農村の方では、繁華商店の方々は自由に御加盟ができるのでございまして、その点は比較的心配はいただくことはないのじゃないか、私はそういうふうに考えております。
  174. 土田國太郎

    土田國太郎委員 渡邊さんにお伺いいたしますが、幸いあなたは事業家でありますのでけっこうだと思います。この中小企業ですが、これの範囲が、たとえば資本金が一千万円、あるいは従業員三百人未満ということが中小企業のワクとして、範囲としてあると思います。これをもっと多くした方がいいとか、あるいは少い方がいいというような、これによってその範囲に入る、入らぬで、御本人の利害関係も生じてくるということになるわけでありますが、あなたのお考えは資本、あるいは従業員等につきまして、どの程度が、中小企業の水準からみてよいかということを事業家としてお伺いしたいと思います。
  175. 渡邊健之助

    ○陳述者(渡邊健之助君) 非常にむずかしいお尋ねでございます。これが完全にお答えできたら、大へんな学者になれるという気がいたします。(笑声)これはなぜそういう工合にむずかしいかといいますと、これはやはり業種、業態によって違うのだということが言い得るのじゃないか、その点が一番むずかしい、問題をむずかしくする問題のように思うのでございまして、また今後いろいろ設備の自動化ということが行われました場合も、人数によるところの制約もまことにむずかしいということでございます。われわれただいまの人数が三百人以内、資本金が一千万円以内という点について、やはりそれでは少し少すぎるのじゃないかということは、人数よりはもっと資本金の点についてそういうことを考えられまして、それぞれわれわれの組合、全国に十幾つございますが、みんな一部にそういう組合員を持っておりまして、これはやはり独禁法の届けをしなければならない。そのやっかいな届出を毎年やっておるのですが、たとえば資本金などにいたしましても、設備の再評価のできておる資本金と、そうでない資本金とではまるっきり大きな違いがありますから、大へんそこには矛盾があると思っておりますが、それが現在の線でありまして、そして公取委の方から別にその後のお達しもないという現状のままで、現在のところやや不満足でありますが、資本金だけ強化したらいいと思いますが、大体こんなところでいいのじゃないかという気がいたすのであります。
  176. 大谷贇雄

    大谷贇雄委員 火災共済組合の問題について、無条件に御賛成のようでありますが、その対策として先ほど愛知県の共済組合の話が出まして、そのために一般の人が保険料を納めたらいいというようなことのお話がございましたが、実はこの問題につきまして私ども非常に心配しておるわけでありますが、秋田に御承知のように大火が起って被害があるというような問題、愛知県の共済組合については当事者の方々が非常に御熱心にやっていただいております。また県の方でも県議会でも非常に御心配になっていらっしゃって、工合よくやっておると思うのですが、地方によるとなかなか御困難があるのじゃないかというような点を考えておるわけでありますが、そういうような点につきましての御心配とかあるいは御研究とかいうようなことが御見解としてあったかどうかという、その点について一つ……。
  177. 横地さだゑ

    ○陳述者(横地さだゑ君) ただいまお尋ねいただきました点についてお答えを申し上げたいと思います。  私は実際にこの火災共済の、何と申しますか、経済運営、部内運営というふうなところまで立ちいって存じませんので、非常に皮相的な見解で恐縮でありますが、承わりますというと、秋田の場合などはごく小口の加入であって、それがために火災共済組合の経済的基盤を十分確立されなかった点があるのじゃないか、こういう点に私どもはやはり十分な考慮が払われなければならない。いたずらに小口だけを規定するということになりますと、御承知のように、一応私どもがちょっとした仕事をいたしました場合でもそうでございますが、小さな仕事をいたしましても結局労働あるいは人件費というようなものは、小口を扱っても、大口を扱っても同じようなことなんであります、それではいわば冗費が非常にかさんでくるということはいなめないのであります。昔から安物買いの銭失いということがいわれておりますが、たとえば私どもの洋服を仕立てる場合に、化繊などのごく安いもので洋服を仕立てましても、仕立て賃は上等のものでも同じことなんであります。ところが実際にこれの耐久力とか、そういうような点からみますと、安いものが悪いというわけではございませんけれども、着くずれするのが非常に早い、あるいはまた化繊などですと、予期しなかったところからほころびてくる。もったいないと思うこともある。安いからと思って買ったけれども、とんでもないことだというようなことがままあるわけであります。従ってこれの実質的な、合理的な運営というようなことにつきましては、それぞれ御研究を願わなければならないことじゃないかと思うのでございますが、私が秋田の場合のお話を承わったところによりますと、この保険契約額が非常に少額のものが多かった、こういうことのために、この火災共済の経済的基盤が確立していなかった、こういうようなことがあるやに承わっているわけであります。こういう点からぜひ一つ十分考慮していただいて、現行の通り修正をなさることがいいだろうと思います。
  178. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) お二人の方には大へんお忙しいところ御意見を述べていただきまして、大へんありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  次に刈谷生活協同組合副理事長石原天童君に願います。
  179. 石原天童

    ○陳述者(石原天童君) 御指名を受けました、刈谷生活協同組合の石原天童でございます。私は本地方調査会の主題となっておりますところの中小企業団体法は、消費者及び零細企業を不当に弾圧する結果になるというふうに考えますので、以下四点にわたって反対の理由を説明いたしたいと思います。特に参議院におかれましては、これら反対理由について慎重に御審議あらんことを要望申し上げる次第でございます。  その反対の理由の第一点といたしましては、この法案は現在工業、加工業のみに適用されておりまする中小企業安定法と同様なカルテル行為を、商業サービス業にも適用し、政府権力の介入によって調整を行おうとするものであるというふうに考えられるからであります。現行の中小企業安定法では、工業、加工業だけカルテルを認め、商業サービス業を除いておりますが、もし商業サービス業にカルテルを認めた場合、一つ消費者利益を直接侵害するおそれが多分にあるということと、また一つにはこれら第三次産業の部面はきわめて複雑な状況にあるので、いわゆる強制的にカルテル統制を行う場合に、数多くの違反者を出すであろうというようなことが、そのおもなる理由であったと思うのであります。このような事情は、現在においても少しも変っていないのでありまして、かかる法案は不備であるというよりも、むしろ有害無益であるという方が適当であると思いますし、現行の中小企業等協同組合法による自主的な調整で十分であると考えるのであります。もしこの立法によりまして、カルテル行為が無制限に近い形で認められるといたしますならば、現在消費者にとって、ただ一つの保護法であります私的独占禁止法は骨抜となりまして、消費者利益は全く侵害される結果となることは、必定であると思うからであります。  第二点といたしましては、中小企業部門における過当競争は、本質的な原因を取り除くことがない限り、現状をおおって、強制的な調整を行おうとすれば、かえって逆効果を生み出す結果になると考えるからであります。この法案の提案といたしまして、業界の過当競争が、きわめて深刻である。その程度が公共の福祉を侵害するほどになっているから、国家権力の介入によって、その整備をするための立案であるというふうにいわれておりますけれども、しかしながらこの過当競争中小企業人口の過大すぎるところからきておるものであり、中小企業部門政府の長年にわたる政策の欠陥からくる厖大な失業人口のたまり場とされておるところから起っておりまして、社会保障制度や、完全雇用制度の完備に対する根本的な国家政策によらなければ、絶対解決できない問題であります。従って現在のもとにおいて、もし強権的な統制法が実施されるといたしますならば、特に救われるべき対象となる零細企業者は逆に合法的に整理、淘汰を受け、かえって社会問題を激発すると考えられるからであります。すなわちこの法案によりまして、商工組合が、今の調整規定などは、現在の状態から見ますならば、その組合の中で有力者、あるいは繁盛している店の意向を中心にして決定せられる傾向が多分にあると思われます。こういうような状態の中で、協定された同一条件や、同一料金のもとにおいては、消費者は当然繁盛しておる店に行ってしまい、条件の悪い零細企業は立いかなくなることは必定であると思うのであります。さらにこのような、事業内容の全般にわたって協定を行うことは、事業者間の競争をなくしてしまうので、自由な創意工夫による独創性がなくなり、消費者へのサービスは低下し、結局経済全般の発展は、はなはだしく阻害されることになると思います。こうした点は、戦時中の統制で十分経験しておるところであり、多言を要しないところであると思うのであります。  第三点といたしましては、この法案内容には既存の諸法律に違反すると思われるようなもの、あるいは常識的に見ても非常に不明瞭であり、あるいは矛盾を感ぜしめるような場所が非常に多いことであります。例を挙げてみますれば、第九条、第十七条、第五十五条、第五十六条等、いずれの場合におきましてもきわめて重要な要件として過当競争並びに不況状況規定されており、調整規定には一般消費者利益を著しく害さないというような規定が設けられておりますけれども、これを認定するところの基準が明確でないのであります。特に第五十五条、第五十六条に至りましては、憲法に集会、結社の自由の定めとしてある団体に、その部外者が政府の権力で加入を命ぜられたり、この内部規定に拘束されておる規定のために、第二十一条がある限り、明らかに憲法違反といわなければならぬと思うのであります。この法案の立案者にいわしむめるならば、中小企業にも労働基準法に比すべき団体権をもたせることは当然だというかもしれませんが、最低の生活権を守るところの労働組合ですら組合員の加入、脱退は自由でありまして、場合によっては第一組合、第二組合、第三組合もでき得るのであります。労働者が最低の生活を守るために有する権利を、小なりといえども事業者としての中小企業者が、その中小企業を守る権利とは、おのずから相違があるのが当然でありまして、憲法違反になるような強制加入の権限を与えることは、絶対不当であると確信するものであります。  なお第九十三条、第六十八条等、行政庁の職員が、検査を行なったり、あるいは商工組合の役員を解任することができるというようなことは、全く時代逆行の、非民主的な官僚統制であって、人権問題や汚職問題を引き起す可能性が十分にあるといわなければなりません。この法律の実施に当って、いろいろな審議会を設けることになっておりますけれども、その構成に消費者を代表するものを入れるということは明確になっていないのであります。なお審議会は単なる諮問機関であって、何らの拘束力を持っていないことなど、考えてみれば数知れないものがあるのであります。  第四点といたしましては、第二十九条の団体交渉権について私は非常な疑義を持つものでございます。この法律によって、商工組合団体交渉権を持つのでありますが、中小企業者は労働者と異なり、流通または生産過程における中間的な存在でありますので、その問題はきわめて複雑微妙な利害関係を生じ、結果としてはボスの温床となるか、あるいは値上げへの傾向を持つという危険性が多分にあると思うのであります。また団体交渉権が、真に弱者の立場を守るものであるといたしますならば、流通過程における最末端であるところの消費者こそ、小売業者や問屋、メーカー等に対して団体交渉権が与えられなければならないと思うのであります。この法案の中には、これが与えられていないのであります。なおこの団体交渉権によって、現状からみますと、小売業者の問屋、メーカーに対する団体交渉は、生活協同組合などのような、非営利団体に対する荷止めを条件とする団体交渉が行われる傾向が非常に強く、この法律案にもいわゆる不公正取引に該当するような行為が多くなる危険性があることなどにいろいろ考えてみますと、団体交渉の問題につきましては非常に多くの疑義を持つものでございます、以上四点にわたりまして反対の理由を説明いたしましたが、中小企業団体法成立しない今日においても、薬品、化粧品、電気器具など多くの業種にわたって相当不当な価格協定が行われておるのであります。特に環衛法が通過いたしました今日、正規の手続をまだ終えていないのに実績を作るためにデモンストレイションと申しますか、すでに値上げの問題やあるいはこういったことがすみやかに協議され、あるいは相当強力に進められている実績があるのでありまして、この法案が通過いたすといたしますならば、一般消費物価が一斉につり上げられていくということについては火を見るより明らかだといっても差しつかえないと思うのであります。運賃や電気料金等の値上げによりまして、減税の夢もあえなく破れ、かてて実際消費者としては非常に困窮した立場にある今日、なおこうしたような法律が通過いたすとするならば、非常な物価の高騰を来すものと考えますので、私どもは強くこれに反対するものであります。以上反対の理由を陳述いたします。
  180. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) ありがとうございました。次は日本陶磁器工業協同組合連合会専務理事三井弘三君。
  181. 三井弘三

    ○陳述者(三井弘三君) 陶磁器業界の立場から、団体法に対する意見を申し述べさしていただきます。  最初に結論から申し上げますと、私たちの業界では全員一致して本法律のすみやかな成立を望んでおりますとともに、さきに衆議院において、本法律の付帯決議として決定を見ました輸出品に対する弾力性ある措置を、現実の運用において真に活用していただくことを特に希望するものであります。  実を申しますと、わが陶磁器業界におきましては、この法律より、まだもっともっと強い法律を望んでおるのでありまして、このため、早くより陶磁器のみの独立法を制定すべしとの要望もあり、またこれが実現について運動もいたしたのでありますが、現状においては、まづまづこの程度団体法で辛棒せねばならない模様でもありますので、若干の不満はありますがとにかく、一日も早く本法律の通過を願い、さらに漸を追って、改正強化をはかっていただきたいと考えておるのであります。  特に陶磁器業界は、輸出に重点をおいております関係上、この法律を基盤として強力な輸出振興の施策を推進したい希望でありますので、輸出品については、大幅な弾力性ある措置が講ぜられるよう、国会に要望いたしました結果、先ほど述べました例の付帯決議が決定されましたことは、喜こばしいことでございまして、今後、この趣旨をくんで運用の簡素強力化ができるよう、期待いたしておるものであります御承知の通り、輸出陶磁器は、同業者の余りにも激しい競争のために身を削る不当廉売を続けておる次第であり、このため、常に倒産が絶えません。  元来、日本の陶磁器は、外国製品に比して値段の安いことで絶対に強味があり、今価格を二倍や三倍引上げてでも、裕に他国品に比して競争余力を持っているにもかかわらず、国内業者の競争によって、不必要な廉売を行うことは、外貨獲得上まことに愚かなことであります。しかも、余りにも値段が安いためにかえって外国の同業者から非難され、輸入制限や関税引き上げの問題等を起しておりますことは、愚かさの上にさらに愚かさを重ねることといわねばなりません。  幸い、今回御提案のような団体法成立しますれば、業界の態勢整備に非常に役立つこととなり、安定した取引によって、輸出振興に寄与し得るものと信ずる次第であります。  聞くところによりますと、本法に反対される側の御意見として、強制加入が行き過ぎであるとか、組合による団体交渉が不当であるとか、あるいは消費者を不利に陥れるものであるとか申しておられるようでありますが、かかる御意見は真に中小企業実態を知らない方の偏見であろうと思います。  長い間、中小企業に接し、またその中で生きて来ました私たちは、中小企業の無力さということを、しみじみと痛感しておりまするが、それは全く救い難い社会悪であるとさえ思います。  かりに今回のような法律ができましても、中小企業消費者に脅威を与えたり、大企業を圧迫したりするなどということは思いもよらないことで、中小企業実態を知っておる方々には、このことは十分に納得されることと思います。  私たちの業界を見ましても、従業員五人未満の工場が総数の四割近くにまで達しておりまするが、これらいわゆる家内労働者といったような工場主は大工場の工員にはるかに及ばない低収入に甘んじて、みずから休むひまもなく労働しておるのです。いわんや、その工員に至っては、推して知るべきでありましょう。  最近、陶磁器の最大市場であるアメリカにおいては、日本の陶磁器業者の工賃が、米国のそれに比して十分の一以下であり、かかるチープ・レーバーの国だから安売りをするのだということで、賃銀の低い国ほど、輸入制限強化すべしとの法案さえ立案されておりまするが私たちは、何も好んで賃金を安くしているのではなく、中小企業の現在の採算からやむを得ず、そうなっておるのでありまして、これは日本中小企業全般の宿命的な悩みとでもいえましょう。  国鉄の従業者が、汽車をとめたりしてさわいでいる時に、中小企業主及びその従業員はどこに訴えるところもなく、黙々と低収入で働いているのです。  しかも、こうした中小企業日本の産業における大きなウェイトを占めておるのであり、それらの人々の幾分でも向上に資する本法律が出ることは当然許されねばなりませんしむしろおそきに失しているというべきです。  このように考えますと、この法律でも強力どころか、まだまだ不十分であるということができます。  ところで、この法律内容について輸出陶磁器の立場から若干具体的に希望したいことを申し上げますと、まづ第一は、法律適用対象となる規模の定義であります。  原則は、従業員三〇〇人以下といことになっておりまするが、内需品はとにかくとして、輸出品については三〇〇人以上たると以下たるとを問わず、全業者が一体となって、同一歩調のもとに輸出政策を推進することが絶対必要でありますので、輸出品に対する工場については、衆議院の付帯決議にあるが如く、その制限に大幅な緩和措置をとられることを希望する次第であります。  第二は、組合事業に関する規定において、組合で行う価格の協定はまづ生産制限を実施して効果が上らない場合とか、あるいは生産制限が技術的な理由により実施できない場合のみ価格の協定ができることになっておるが、これも輸出品については不合理であります。  輸出品は、いずれの事業でも条件なしに必要に応じ、単独かつ自由に運営できる規定とすることによって、輸出政策の適切なる措置が講ぜられるのであります。  この点もまた、衆議院付帯決議の趣旨を十分くんで運用されるならばけっこうでありまするが、いたづらに法律の字句にとらわれたしゃくし定規の取扱いとなってはせっかくの法律も無意味になりますので、将来運用上の考慮を特にお願いするものであります。  第三には、団体法における加入命令あるいは事業活動の規制に関する命令、さらに団体協約の認可等に関する規定であります。  これらの規定適用条件は、いわゆる不況要件といわれているものでありまするが、輸出品については輸出政策の大局から必要と認めたときは必ずしも不況要件を備えなくとも、これらの法律を敏速に適用することができるようにしていただかなければなりません。  この点についても、衆議院の付帯決議の趣旨を広く解釈して、輸出品に対する運用の妥当をはかることを強く要望するものであります。  要するに、われわれ陶業界といたしましては、本法律並びに衆議院の付帯決議が、すみやかに国会において通過することを切望いたしている次第でありますが、ここに露骨な表現をかりますれば、この法律の通過に反対するような議員に対しましては、われわれ中小企業者は遺憾ながら、一致してこれを支持しないということになるわけであります(笑声)  どうか、以上の趣旨を御高察願いまして御高配をお願いする次第であります。  以上をもって概略ながら公述といたします。
  182. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) 大へんありがとうございました。  次に日本損害保険協会名古屋地方委員会委員長小口孫六君にお願いいたします。
  183. 小口孫六

    ○陳述者(小口孫六君) ただいま御指名を受けました小口であります。  損害保険事業に携わっております関係上、私は中小企業等協同組合法の一部改正に関する法律案のうち火災共済協同組合の件について申し上げたいと存じます。  近年各地において、協同組合が共済事業の名称のもとに実質的な火災保険事業を行なっておりますが、われわれとしてはこのような社会情勢にかんがみまして、保険業法に認められた保険会社のほかに、協同組合組織で火災保険事業を営み得ることを法的にはっきりときめて、しかしてその健全な発展をはかり、組合員の利益を保護するために、協同組合による保険事業に関する監督法規を早急に制定すべきことを早くから要望して参ったのでございます。  しかしながら、現在国会で審議中の本法案は、すでに前国会においても各方面から指摘しております通り、幾多の欠陥を含んでいることはすでに御承知の通りでございます。われわれ保険会社は保険業法に基き、事業経営の上に大蔵省の厳重な監督を受けて参ったのでありますが、監督法規というものは、年来の経験に徴しましても保険事業の健全な運営のためにはきわめて重要であることを認めておるものでありまして、同じ保険事業組合組織でやる場合にも、やはり同じように厳格な監督があってしかるべきだと思うのでございます。とにかく主眼を健全な保険事業経営という点において本法案を検討いたしますとき、いろいろ指摘すべき点は多くございますが、最小限度にしぼりまして後に申し上げます程度の修正がぜひ必要であると存ずる次第でございます。  重ねて申し上げますが、われわれ保険業者がその利害関係から申しているのではなく、過去の経験から割り出しまして、健全な組合保険の育成を願うからにほかならないのであります。何とぞわが国の保険制度の健全な発達のために、慎重審議してりっぱな法律とされるようにお願いしたいと存ずる次第でございます。  修正意見を申し上げますれば、まず名称の点でございまするが、全文に通じております共済という文字はこれを保険という文字に改めていただきたいと存じます。保険という言葉は商法にも規定がございまして、適切な法の規制が加えられておりまするが、共済の法律関係は不明確でございます。その実体がすでに保険であるにもかかわらず、これを共済として取り扱うとは共済観念の濫用でもあり、保険制度の混乱を来たす由来でもございます。  次に都道府県の支払い保証でございまするが、保険金制限額を算出する基礎となる金額のうちに、都道府県の支払い保証金額を加えております。これは削除すべきであると考えます。都道府県の保証は、組合が支払い不能になった場合における資金の融通を確保するための措置でございまして、出資金、積立金のような組合の基金ではございません。従って保険金制限額算出の基礎とすべきではないと存ずるのでございます。  元来都道府県の支払に保証は左記に申し上げる理由によりまして、それ自体きわめて不当な措置であって、これは今後全廃すべきものであると思います。  その一つは大火の発生は両三年の経験によっても決してまれではございません。現在地方公共団体の財政はほとんどが赤字で、三、四黒字のところがある程度だと承っております。都道府県が組合の損失を填補し、またこれに融資の保証をすることが地方財政を悪化させ、これを危うくするものであることはいうまでもない次第でございます。  その二は大火の発生によって生じた組合の損失を填補する趣旨でありまするが、ひいては誤まった経営の結果を全住民の負担、すなわち税金においてこれを救済することになりまして、自然これは事業経営を放漫にさせるおそれがあるのであります。この措置は全く公正な社会通念にもとるものだと考える次第でございます。  その三はわれわれ民営の保険業者について考えてみますれば、組合の保険事業に法的な公営的な色彩を与えまして民営を圧迫するものであると考えるのでございます。  その次には保証には限度があるから大火の際における保険契約者の十分な保護政策とはならないのでございます。保険事業は御承知の通りに、これら大火の際の密集の危険による損害を分散して填補するために再保険制度がございます。再保険取引は相互の経営に対する信用を根幹といたしますが、保険会社の料率も逐次引き下げております。この協同組合との料率差も僅少になって参り、かつ協同組合が厳格な法規による監督のもとに健全な運営によってその基礎を固め、信頼するに足りる内容を備えるに至りますれば、保険事業の発達のために、これは私見ではございまするが、保険会社は何らかの方法を講じまして協同組合との間に再保険取引を設け、組合の大損害を分担して経営上の危険防止に協力することも不可能ではないと考える次第でございます。都道府県の支払い保証といえども無制限ではあり得ませんので、大火に際し次年度分の保証まで前借りして支払って、かつなお支払い額を大幅に切り下げなければならなかった前例も多うございます。かかることは中小企業者を保護するゆえんでもなく、かえってその信頼を裏切りまして窮地に陥れるほかの何ものでもないと考える次第でございます。  次に保険金の制限金額でございまするが、保険金額は契約者一人につき百五十万円または出資金、積立金等の合計額の百分の十五をこえてはならないとなっておりますのを、組合員の一世帯または一法人の財産につき百万円または百分の十をこえてはならないというように修正すべきだと考えます。  本来、保険組合は小規模、簡素な経営を旨といたすものでございますので、引き受け金額も火災保険において多年の経験に徴しましてせいぜい三十万円程度経営の安定を期するゆえんであると考えます。たとい、その基礎が強固になった場合におきましても、申し上げたような金額が妥当ではないかと考える次第でございます。  第四に監督官庁の問題でございまするが、都道府県知事に設立の認可その他、監督権限の一部を委任することはよろしくないと存ずる次第でございます。  保険事業においては幾多の契約者から零細な保険料を収受し、これを管理し、罹災の場合迅速な支払いを確保しなければならない事業でありますから、保険料率、責任準備金、資産の運用等について厳重な監督が必要でございます。火災共済が保険事業であります点から、その監督官庁は現在の保険事業の監督官庁である大蔵大臣及びその出先機関とすることは当然であると考えます。ただ通産大臣にも関与する事項につきましてはこれを共管とすべきだと考えます。特に設立認可にかかわる監督は、事業の性質からいって専門的知識に基き慎重、厳格に行わるべきものでありますから、これを都道府県知事に委任することはよろしくないと考える次第でございます。  第五は募集の制限でございまするが、保険募集の取締りに関する法律を準用してその読みかえ規定によって組合員にも契約募集ができることになっておりますが、これは組合の役職員に限定する必要があると考えます。  組合員とはとりもなおさず保険契約者でございます。これに手数料を支払って契約を募集させることは非常な弊害を伴うものと考えます。また募集に際して消防団員または消防署員による強制のおそれを排除するためにも役職員に限定すべきものだと考える次第でございます。  次には既存組合の取扱いについてでありまするが、既存の共済事業に本法を適用しないということは非常に片手落ちであると考えます。  この種の組合保険につき立法する以上は将来設立される組合のみならず、従来から全国に多数存在する組合についても適正な監督法規を設けることが、保険契約者の利益を保護し、組合保険の健全な発達を期するに緊急のことであると考えます。  その次には出資総額の件でございまするが、二百万円となっておりますのを五百万円、連合会につきましては五百万円というのを二千万円に修正すべきだと考えます。  事業の性質から考えまして二百万円、五百万円の出資金ではあまりにも基礎が薄弱であると考えるわけでございます。  その八は福利厚生事業の範囲でございますが、共済契約者一人につき三十万円以下となっております。三十万円以下のものはこの法律に従わなくてもよろしいということになっておりますが、これは組合員の一世帯または一法人の財産につき十万円以下とすべきだと考えます。  事業協同組合等が本法の適用を受けずに行い得る福利厚生事業の範囲を一人につき三十万円としているが、これは高額に過ぎて危険であると私は考えます。いわゆる見舞金程度にとどめるべきであると考える次第でございます。  以上申し上げた諸点でございまするが、終りに臨みまして申し上げたいことは三十年度の新潟の大火、また昨年度の能代、大館、芦原、魚津等の大火における支払いは、新潟の十三億余を筆頭にいたしまして、いずれも何億かの多額に達しております。その間これらの地域に事業を営んでおりました協同組合は満足な支払いができず、ためにまた解散したようなものもできております。一般の非難を浴びまして、また組合の監督につきましても手きびしい批判をされて参ったことは御記憶に新たなことと存じます。  本法案を検討いたしまして最も重要な点のみにしぼって以上申し上げましたが、前国会において衆議院を通過いたす本法案の審議過程を振り返ってみますれば、まことに不十分のものであったと私は考えます。記録によりますれば、商工委員会の審議におきまして委員外の質問は三十分限度というようなことが書いてございました。幸い参議院におきまして継続審議になりました。今日でも熱心に御審議願っておることはしあわせでございます。かかる民生の安定と保護を目的とする法律は十分な審査を重ねる必要がありまするので、その成立を急がず、期間の長い次期通常国会にまでも持ち越しまして慎重な御審議をなされるよう商工委員各位に切望してやまない次第でございます。
  184. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に名古屋イージーペイメント販売店協同組合理事長間瀬鋼平君にお願いいたします。
  185. 間瀬鋼平

    ○陳述者(間瀬鋼平君) 私は現在小売商の団体の世話をしております。従いまして申し上げる点は小売商の立場から申し上げる点が多いと存じます。  先ほど来いろいろ皆さんからお説がございまして、私劈頭に申し上げておきたいのはいずれもけっこうな御意見でございますが、このたびの三つの法案に対しまする制定の根本理由というものをお忘れになった御意見ばかりであると、かように考えるのでございます。何がゆえにこういう法律が必要であるかということをまず前提に置いてお考えを願いますれば、あのような御意見は出ぬものであると、かように思うのでございます。私やむを得ずこの三つの法案の制定を希望いたしました。私自身としてはかような内容法律ではまだまだ手ぬるいものであるとかように思うのでございます。  先生方も御承知のように中小企業対策は、これはいわゆる国家の問題になりまして、前議会におきましても内閣直属の審議会ができまして、その方面からもそれぞれの意見が出ております。それに基きまして企業庁等におきましていろいろ法案の制定について御努力を願いました。その過程におきましていろいろの何と申しますか雑音が入りまして、企業庁等の法案内容がそのつどだんだん骨抜きになって、今の団体法というものは骨抜き、換骨奪胎の法案でございます。さようなものでございますが、ないよりはましだという意味で、われわれは熱心に今臨時議会で通過することに努力をしておる次第でございます。という理由につきまして以下意見を申し述べたいと存じます。  先ほど来の御意見を総合いたしますると、大体この団体法の反対の理由のおもなものは強制加入団体交渉、価格の協定、これがおもなる皆さんの御心配のようでございます。しこうして、ある御意見ではこの法案一つの臨時措置的な法案だというような御意見がございましたが、われわれは決してさように思わないのでございます。この法案中小企業に対しまする基本法である。また基本法典の性質を帯ぶるところの内容法律を作ってほしいということがわれわれの要望でございます。  もうすでに御承知でございましょうが、これまた先生方がお作りになったことでございますが、労働者に対しましてはいわゆる労働三法がある。農民に対しましては農地特別措置法初めあらゆる基本法律がございます。しかるに現在無力の点におきましては農民、労働者各位よりはるかに無力であり、しかもしいたげられております。中小企業者に対しましては、何らの基本法典すらありません。従いましてこのしいたげれらた国民に対しまして、やはり同じ国民の一人として同等な扱いをしようという政治家各位の親心があるならば、一日も早くこの法律を制定していただくということを私はお願い申し上げたいのでございます。  やれ衆議院の委員会、あるいは本会議等で議員諸君が質疑応答がございましたが、その記録を見ますると、独禁法に違反する、あるいは憲法に違反するというような御議論が盛んでございますが、必要の前には、あるいは解釈のいかんによりましては憲法に違反する問題もございましょう。あるいは独禁法に違反する問題もございましょうが、先生方に特にお聞きを願いたいことは、現在日本にはジェット機があり、戦車があり、軍艦がある。これはわれわれの解釈からいえばいわゆる軍隊であると思うのでございますが、皆様の御解釈ではあれは軍隊ではないんだというような御解釈のようでございます。われわれ古い頭からいきますと所有権は絶対的なものでございます。しかるに皆様方は先祖伝来の土地を取り上げて、ほとんどただ同様に取り上げて、しいたげられておる小作農にそれをお与えになって農民の安定をはかっておる。これらは必要があれば、あるいは解釈の問題にいたしましても、あるいはまた法律、いささか現行法に抵触するような点がありましても、それはいわゆる憲法の公共の福祉に害があるという建前から先生方がさような御解釈をなさり、さような処置をなさったと思うのでございます。  従いまして、今回の団体法があるいはそういうようなきらいが若干あるかもしれないが、現在の中小企業というものの立場がややもすればこれ以上放置をすれば公共の福祉を害するというような建前であると思うのでございます。質疑応答の中にはもっぱら経済立法として質疑応答がございましたが、もちろん経済立法の性質もございますが、私は多分に社会立法の性質があるのだ、経済的よりも社会立法的な色彩が濃厚な法律である、またそういう内容法律でなければ現在の中小企業は救われないものである、ということをまず先生方に十分御理解、御納得をいただきたい、かように思うのでございます。  従いまして、私の申し上げることはいささか独禁法あるいは憲法に、そういうような問題につきまして御議論を進めるというような皆さんにはお聞き苦しいであろうと存じますが、そもそも日本の現在の憲法というものとあるいは独禁法の制定された時期、これを皆さん方、先生方にお考えを願いたいと思います。あの憲法、あの独禁法というものはアメリカさんの支配のもとにこういうものを作れというのであのカーキ色の思うままのものができておるのだ。全く日本政府、議員の皆様方がお考えになっていない、皆様方日本の純粋な独自の立場で政治ができる政府であればああいうような内容のものはできなかったと思うのでございます。あの内容はもちろん時代とともに、国情あるいは人情というもの、社会というもの、これは変遷いたします。基本法典でありまするからそうしばしば変えるべきではございませんが、あの時期にできたものは、いわゆる占領政策の落し子でございます。ああいう占領政策の落し子には時代の変化とともに改正を要する点はいくらでもあると思うのでございます。従って、先ほど冒頭にも申し上げたように、憲法は改正はできぬから戦車あるいは大砲も軍艦もジェット機も何もかもこれは軍隊でないという解釈を先生方はおとりになっている。また既存の法律で最後の解釈を下すものは最高裁でございますから、最高裁の判例におきましても既存の法律を現在の人情というものをよく加味いたしまして、現在の社会事情、人情というものに合致するような解釈のもとに幾多の判例が出ておることも先生方はよく御承知でございます。現在の社会、国情、人情というものに適さないものはしかるべく良識をもって御解釈を願っていささかも間違いのないものである。そうしてこそ初めて法が生きるのであるということを強く先生方に申し上げたいと思うのでございます。  最後に特に申し上げておきたいことは強制加入はいわゆる官僚統制に移行するというような御心配がございました。もちろんわれわれ中小企業におきましても、いわゆる自主的にすべてを運ぶ。これを念願といたしまして、また平素それに努力をいたしておりますが、いかんせんこの中小企業は先ほど中小企業の代表の皆さんからも申し述べたように、まことにちりぢりばらばらであります。これはいかんともしがたいのであります。商店街などになりますると、口ではお互いに朝のおはようはいうが、あいつが早くつぶれておれのところ一軒になればいいというような状態でございます。これが実際でございます。そういうような状態を自主的に団結させろ、自主的に集めろといってみたところが、それはいわゆる理想でございまして、全く中小企業界、ことに小売商業の内面、実際というものを御存じないいわゆる理想論にすぎぬのでございます。現在の中小企業、ことに小売商業界の事情というものはさような理想を待って、あるいは五十年、百年待っておったらみな餓死するという状態でございます。現実に即した考えでできないものを自主的にやれということはすこぶる御無理でございます。ことに労働組合方面からその声が特に多いようでございます。労働組合は何らの統制がなくてもずいぶん強固に団結ができるじゃないかという。その立場、皆さんの労働組合としての立場からごらんになるから、自分たちもりっぱに団結をできるのに中小企業ができぬのは変だというお考えのもとにあるいは御議論が出ると思いますが、先ほど来申し上げたように、中小企業ことに小売の立場におきましてはなかなか業種も違いますし、戸をあければお互いに表面はともかく腹の中は敵愾心に燃えているというようなものであります。労働者の各位が同じ工場の中で、同じ賃金ベースをもらって働いておるというようなものと全然違うのでございますので、その点よく御理解をたまわりたいと思うのでございます。これはやむを得ざる強制加入である。しかも先ほど申し上げたようにだんだん骨抜きになりまして、いろいろの条件がついて参ってきておるわけでございます。これでもなおいけないというような御心配は全然ないと思うのでございます。  次は団体協約でございますが、先ほど百貨店の代表からこの法案に対する反対意見がございました。百貨店業界が一番おそれるものはこの団体協約でございます。御案内のように彼らは口を聞きますると取引の自由というようなことをいいます。それを表看板にいたしておりますが、その取引の自由ということはもし彼らがいうがごときものならば私はこういうふうに言いたい。彼らは買いたたきの自由、返品の自由、違反の自由、そういうことを彼らが自由というならばそれは当てはまりまするが、商業の自由、取引の自由に当てはめるに至りましては実にこっけい千万でございます。彼らは自分に勝手に値をつけまして、これなら持ってこい。さもなくばお前のところは取引停止だということになります。また親工場でもそうであります。この品物はどれだけ作れ、できぬならお前のところはもう下請はオミットする、こういう自由を彼らが持っております。われわれはさような自由はまっぴらごめんこうむりたいのであります。いわゆる団体協約によりましてそういう自由をオミットいたしまして、全く親会社あるいは百貨店、こういうものと正々堂々と取引の自由を行うために団体交渉をしたいというのが、この法案の制定を要望する理由でございます。  それから第三に価格がつり上るだろうという御心配がすこぶる濃厚でございます。私はこれまた全くの消費者の杞憂である無用な心配であると申し上げたいのでございます。いなむしろ、これができることによってある種の物品は安くなるということを消費者の皆様に申し上げたいと思うのでございます。先生方もすでに御承知のように、だいぶオートメーション化されましていろいろの製品が多量に生産されていってしまう。大資本があるが上にひととこに集まるという傾向でございます。従いまして、いわゆる独占的の大企業はだんだんふえて参ります。従って大企業者は現在かってに自分の腹ぐあいのいいように、自分自身もうかるように、大企業者は自分でかってに値段を決めます。これは問屋にも小売商にも消費者にも何の相談もありません。たとえば電気製品においてしかり、自動車においてしかり、売薬においてしかり、化粧品においてしかり、また繊維製品においてしかりでございます。彼らは大企業ばかりでございますが、彼らはみな大企業自体のもうかる値段をかってにつける。そうしてこの値段で売れと、こう来るのです。しかたがないから小売業者はその値段で売るというのが現実の状態でございます。中にはそれではあまり高すぎる、消費者がお気の毒だというので、メーカーで指定する価格より安く売ります。そうするとお前はけしからぬからおれのところの会社の系列からはずしてしまう、おれの商品はお前のところに卸してやらぬということになる。これが現在の実情であります。ゆえに価格協定あるいは団体交渉というものを、この法律によりまして、われわれ中小企業者が持つことは、かえって消費者を守る、救済に至るということを御認識をいただきたいと思うのであります。  また環境衛生法が実施された。その結果環境衛生業者が一部値上げの相談をするというようなことが新聞によく出ました。あの場合と一般の物品の値上げが同じような足取りをたどるというふうに御心配になることは、これまたまことに杞憂にすぎぬのでございます。一般の小売の商品というものがいかに種類が多いものであるかということをお考え下されば一ぺんにわかります。たとえば一本の万年筆にいたしましても数百種類がございます。種類の少いものでもそうでございます。いや繊維製品に至りましてはくつ下一足でも数百種の種類がある。そういうように数え上げていきますと、実際小売価格を協定するというようなことは、これはいわゆる湯川秀樹博士のように非常に数学的の天才であるところの人間が出てきてやれば別でございますが、一般の数学の頭で小売物価を協定して引き上げるというようなことはこれは痴人の夢でございます。もしわれわれ中小企業者でそういうようなことを期待しているようなものがあれば、それは大ばか者といわなければならぬと思うのでございます。と同時に消費者の皆様の一種の御心配にすぎないということを強く申し上げたいと思うのでございます。それにかてて加えて、消費者は小売屋で買おうとどこで買おうと、また自分自身で経営するところの生協でお買いになろうと全く自由なのであります。かりに万一小売屋が協定して小売価格を上げるというようなことができるといたしますれば、共済、いわゆる生活協同組合がある、購買会がある。その方で御選択してお買いになればその心配はいささかもないのでございます。同時にまた一般中小企業、ことに小売業者がさように消費者の各位が独自の立場においてどこでもかってに買えるのだから、その場合に消費者に何と申しますか、反感を持たれるような価格協定をしてつり上げるというばか者は一人もございません。もしそんなことをやればみずからおのれ自身の首を絞めるということと同じ結果になるのでございます。ゆえにその御心配も全然ないのでございます。  いまさら私ども現在の団体法初め関連諸法案強化してくれということを申し上げても、これは無理なことでございますからさような無理なことは申しません。衆議院におきましては朝野両党よく協議いたしまして可決されている法案でございます。ぜひ参議院におきましてもその事情をよく御理解下さいまして、今臨時議会で通過をするように先生方に特にお願い申し上げたいのでございます。  最後に一言火災共済について触れたいと存じます。  ただいま保険協会の代表の方からいろいろ修正意見が出ました。あるいはまた露骨にいえば全然否決された方がいいというような御意見のようでございますが、それは全くいわゆる保険屋さんの立場でお述べになったことでございます。一般の保険屋さんとこの火災共済というものとはいささか性質が違うのでございます。ことに共済なんというような名前はけしからぬから、保険という文字を使っておけというような御意見がございました。その保険という文字が現在生命あるいは火災、それに対しまして果して実際適当な文字であるかどうかすら私疑っておる一員でございます。われわれ協同組合、あるいは将来できるところの組合におきましても、これは協同組合を作る本旨がお互いに弱小資本の同士が集まりまして、資本の上におきましても、すべて事業面におきましてもお互いに相互扶助をするという精神のもとに組合ができるのでございます。従ってその組合事業に共済という文字が妥当でない、保険という文字を混乱に陥れるからそんな文字はやめてしまえというのは、自分だけのかってな御議論であって、これは社会通念に反するといわれたが、それ自体が社会通念に反するのであります。  また金額の制限をせよというような御議論がございました。あるいはまた募集する人間を制限しろ。監督を強化しろというようないろいろ盛りだくさんの御意見がございましたが、金額にいたしましてももちろん法におきましては最高額を決めるのでございます。組合の責任者になるほどの人間はおのれの経済力をよく存じております。危険になるほどこの金額を最初から募集するとは思いません。ゆえに積立金あるいは資本金が少い間は、その組合において十分に責を果し得る程度の金額におのずから制限して運営することはこれは常識でございます。それを最初から新潟の例はこうだ、あそこの例がこうだ、ゆえにこうしろということは、これは暴論といわざるを得ないのであります。また保険の勧誘はこれに対して法規があるようでございますが、これは保険屋であるがゆえにそういう法規が必要でございます。組合お互い組合員がおのおのの協力によって一つ組合を盛り立てていくものでございます。ゆえに職員でなければいけない、役員でなければいけないといった議論がどこにあるか。組合員一人々々がその組合経営者であるのであります。その経営者が保険の募集をしてはいかぬというたわけた御議論がどこから出てくるかとこう思うのでございます。  まだいろいろ申し上げたいこともございますが、とうに時間も経過しておるようでございますから以上で終りますが、私の念願は、ないよりましであるから、この現在の継続審議法案を今臨時議会でぜひとも制定をしていただくということを最後にお願い申し上げて終ります。まことに失礼いたしました。
  186. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) どうもありがとうございました。  次に愛知共済協同組合専務理事清木隆人君にお願いいたします。
  187. 清木隆人

    ○陳述者(清木隆人君) 今お呼び出しに預かりました清木でございます。  今般は継続審議になっております私どもの事業関係しておりますこの法案について御諮問に預かりましてまことに光栄でありまするし、かつ非常に喜んではせ参じたわけであります。いささか愚見を述べて、時間もございませんので、簡単に皆さんのお手元に差し上げましたところに基いて愚見を述べさせていただきたいと思います。すでにただいまお隣にいらっしゃる間瀬先生から非常に保険会社を反駁されたことでもあり、あまり私が手前みそでくどくど申し上げるということはどうかと思いますので、すこぶる簡単に申し上げたいと思います。  大体保険会社の業界新聞などを見ますと、いろいろなこの組合法に対する御意見が毎日のように業界新聞に出ております。また業界新聞に大蔵省の保険課の意見としてたびたび出てくるところの意見は、これはどういうものでございますか、これは今私らにはわかりませんが、あたかも保険会社のおっしゃることをそのまま大蔵省の保険課の意見として絶えずいろいろ流していらっしゃるのではないか。あるいはまたこの前皆様方が参議院で御審議中にもいろいろ先ほども出ましたが、魚津の共済組合とかあるいは秋田がどうしたとかいうような、あるいは愛知共済が非常に支払いに困ってにっちもさっちもならぬというような、何の事実をとっつかまえていわれるかわからぬような、いわゆるデマの材料と称するようなものがたくさんに流されて出たということも、私ども共済をやっている側から見ると、これは実にお役所としても私は奇妙きてれつに感ずるのでございます。あるいは保険会社というものとこの大蔵省の保険課というものとが、どういうわけか知りませんが、全然一致した利害関係にあるかのような感を私らは抱くのであります。私らをしていわしめれば、今度のこの火災共済法案につきましては保険会社の方では非常に不平がおありのようでありまするが、またこの共済の方の運動をやっているわれわれ、全国に連合会がございますが、寄るとさわるともうほとんどこれではやれぬ、こういうような規制のしかたは組合の発達を頭から阻害する目的ではないかなどというような不平もたくさん出るのであります。要するにここに書きましたように、この法案が衆議院で審議されている場合には、おそらく十分既存の営利を目的とするところの従来の保険会社の利益というものをずいぶん考慮されておった、また一方には今盛んに起りつつあるところの共済組合運動というものをやはりだんだんと助成してやろうという親心、この二つが合致しまして今度の法案が成り立ったように見えます。第三者として見れば案外公平なものではないかと私どもは思うのであります。  大体この火災保険の普及率ということを世間で申しますが、この普及率ということが往々誤解されておりますのでちょっと一言御説明を申し上げますと、火災保険のその土地の契約の総件数をその土地の世帯数で割った数字が一般に普及率と申されておるのであります。一世帯でも妻は妻で加入する、夫は夫で加入することもありますし、子供が加入することもありますし、また一つ会社に春に一回料金をかけるが、都合上秋にも入る。二度にも三度にも入る人がございますし、またいろいろ保険の勧誘の都合で東京海上さんにもつけたが安田火災にもつけるというように、二つも三つもの会社につける方もありますから、大体その普及率というものは、戦前の東京などでは一〇〇%をこしております。外国でも二〇〇%くらいになるところはたくさんある。百軒の家が二〇〇%の契約をしているのはおかしいようでありますが、そういう数字にしてありまして、この普及率というものは国民がほとんど保険に入っている場合は必ず百数十パーセント以上になるのでございます。  戦後に独禁法というものができますや、この損保会社の方では火災保険料率算出団体法あるいは保険募集取締りに関する法律というような法律を制定いたしまして、完全にこの独占禁止法からのがれた独占企業になったのであります。それによりましてこの料率というものが戦前の三倍、四倍というようなふうに上ったところが非常にたくさんできたのであります。その当時の保険課長はここにいられる東京海上の現在幹部社員である長崎正造さん、その当時は保険課長だったのであります。またその当時の大蔵委員などを見ても保険会社出身の代議士もおられたのであります。そうしてこの普及率が大体戦前は四十何パーセントとかなんとかという程度のものであったのが、そういうようなにわかに料率を引き上げた結果として一八%、一七%に低下したのであります。しかもその契約は戦前中に契約した三万円とか五万円とかあるいは十万円程度のものが大部分の契約でありまして、一件当りの契約というものは物価に比して非常に低いものになったのであります。  こういうように率が上ったために、期せずして一番先に起きたのは地方の市町村物件とかあるいは公有物件がそれではいかぬというので共済組合を起し、引き続いてそのとき制定されましたところの消費生活協同組合、あるいは農協とか水産協とかいうような、そういう協同組合によりましてこの火災共済組合運動が起ったのであります。この中小企業法によっての共済組合運動は御承知のように共済というはっきりした文面に現われておりませんので、ただ福利厚生ということになっております。これも火災保険組合というものが御承知のように実行されようとしたのでありますが、これはどういうわけか一夜にして、委員会を通過したものが廃止になりましたために非常に遅れて福利厚生施設としてこの共済組合運動が起ったのでございます。ところがこの共済組合運動が起りますというと、保険会社の何分の一かという料率でみなどんどんやったものですから、営利事業であるところの損保もこれではどうもならないというところから、毎年その後一回、二回というような料率の引下げ作用が起ってきたのであります。この春料率を相当大幅に引き下げたのでありますが、また再び今月の一日から一割何分かというような料率を下げたのであります。その結果はこの火災共済を除きましての契約は、ようやく普及率も、おそらく今のところは統計が表われておりませんが、三〇%をこしていることだと思うのであります。この料率の引下げということは世間の批判が非常にやかましい、あるいはいろいろな関係から、あるいは皆さんもいろいろ国会でおっしゃるようでありますが、そういうことから大蔵当局が非常に会社を圧迫されて料率がだんだん下っていくという面もありますが、そのよい素因をなしたのは、直接、間接の原因の重要な素因となったのは、やはり全国に行われますところの共済組合運動というものが比較的刺激をもって、非営利の公共的な力をもって圧迫してきたということはだれが見ても今日これは明らかなのであります。  損保会社がもしすわっておって、数年前のように高い料率であまりよけいつけぬでももうけだけもうけたいということになると、これは共済組合運動は全くじゃまでじゃまでしようがないでありましょうけれども、しかし一方で国民の火災保険の普及率がどんどん上昇していきまして、四、五年前から三万円か五万円かしか契約しなかった人たち価格一ぱいの百万、二百万円というような契約にだんだん向上してきますということは、要するに日本の国民の保険市場というものがだんだん増加、拡大されまして、保険会社も数年前に比べますとその火災保険収入が何倍というように増加をいたしております。収入が増加するということはあるいは収益率は低くなるかもしれませんが、またよぶんに働くことにはなりましょうけれども、しかし国民経済に寄与するというお互いの国民としての事業観念からいえばこれは大いに喜ばしいことだとわれわれは感じておるのであります。  もちろんこの火災保険というものは、原価計算が工場でもって物品を生産するように数字的に計算することは困難な事業でありまするから、一つのやはり協定とかカルテルというようなことも、これはある程度はやむを得ないだろうと思うのであります。しかしながら一国の保険市場というものを全然営利専門の会社が数社で独占しなければならない、そこに公共的な色彩のある共済組合は発達さしてはいけない。こういうことになると、あまり我利的の考えになりますので、一般国民としてはこれを受け入れがたいことではないかと思われるのであります。今日までの損保側の主張もしくは大蔵省の保険課の主張というものは、組合経営の健全化とか、あるいは契約者の利益の保護とかいうようなことがすぐ口をついて出ますが、われわれこういう事業をやっておるものの側からそれをよく見ますと、こういう法制化を行うことによってこの組合の発達を極度に阻止し、あるいは組合をまがよければ解散させようというような、そこに言葉にない目的しかどうしても認められないのであります。  今ここに損保側から代表していろんなことをおっしゃいましたが、これは仄聞しますると十月三日の日に商工委員の皆さんのところに損保協会の意見として届けられていることだと思うのであります。  それについて簡単に先ほど小口氏から申されましたところの保険の名称、こういうようなものについて申し上げるならば、どういうわけで、今日たとえば農林省系の組合でもあるいは厚生省の消費生活協同組合でもみんな共済といっているのに、この中小企業団体法によるものだけがどういうわけで保険と改めなければ混乱するとか矛盾するとかいわれるのであろうかと思うのであります。たとえば生協法でやっております酒販消費生活協同組合は一件当り百万円も契約しておるのであります。またたいてい酒屋というものは塩を売っておりますが、塩の販売の生協で入るのも百万円でやっておるのであります。またああいうところではタバコを売っておりますが、タバコの小売の共済組合が百万円。すると同一人が三百万円の共済契約ができておるのが現実のことでございます。それをどういうわけで中小企業等協同組合法のものだけが保険と改めなければ日本の経済を混乱させるのか、ということは私どもには別途に目的があるものとしか解釈できないのであります。  それから都道府県の支払い保証ということを絶えずやかましくいわれるのであります。これは中小企業者を、皆さんが衆議院におかれても参議院におかれても日本中小企業をどうするかということが絶えず問題になるように、やはり都道府県におかれても議員さん方は中小企業者を何とか育成して保護してやらなきゃならぬという、いわゆる時代の流れと申しますか、国家政策と申しますか、そういう経済政策によりまして、これは何も金をくれるわけではない、安心してみなが加入してみずからの力を結成するようにこれは考案されておるのであります。これは支払い能力と見てはいけない。しかしいざというときにはそれによって金融業者も金融してくれて支払いが堅実に行われる。従いましてそういうことが非常に国民経済のじゃまになるとか、あるいは圧迫であるとかいうならば、金を借りるのに地方の保証協会で保証してもらってもこれはみな圧迫ということになって、これはどうも自分たちの商売が共済が発達しては困るということのほかは利己的の反対ではないかと思われるのであります。  これに関連しまして共済金額の制限という意見が盛んにあるのでございます。これもやはり営利の既存の会社が自分の利益のために主張している。そのほかにはどうしても考えられないのであります。金額が多くて悪ければ紡績連合会などが自家保険と称して互いに金を積んで、あれは御承知の通り大火等が多いのでございます。そういうふうに類焼がないというところから大きな金額をもって紡績連合会が共済組合をやった時代もあるのであります。外国にも大きな工場は大きな工場同士で共済組合をやっておる例はたくさんあるのでございます。要するにこれはその収入と危険がどういうふうに分割されるかということによって、完全にこれはいざという場合に支払いができるかどうかという技術的な面から、この支払いの制限なりあるいは金額の制限なりするならばこれは完全であるのであります。単に金額が多ければあぶないというようなことはこれは非常に無意味な議論になりまして、保険とかあるいは共済というものを技術的に見た人にはとうてい納得できない議論にならざるを得ないのであります。現に北海道共済は百五十万円限度でありまして、共済組合が出発間もなく岩内の大火で大へん焼けたのでありますが、四千数百万円をあのときは損保会社よりも早く全額を払っておるのであります。それならば金額の僅少な秋田県の能代の大火のときはどうであったか。この山本地区の消費生活協同組合というものは御承知のように二十万円限度になっておりますが、こんな組合でも支払い不能に陥っておるのであります。もし金額だけを個々に制限するならば、かえって手数と経費のみがかかって、組合の中に支払い準備金というものができなくなってしまうのです。途中でみなついえてしまうのです。要するに類焼の可能性の多い、気象上非常に乾燥しやすいとかなんとかいうような東北、たとえば能代あるいは大館、いろいろ気象学上危険なところがございますけれども、そういうところはかなり類焼しますからその危険を分散しておくということがこれは根本的に大事なことでありまして、たかが共済組合であるから見舞金くらいの程度にして二十万円か三十万円でやるのがあたりまえだ。それではあまり実質的に中小企業者の役に立たぬようにしてしまわなければ共済組合ではないというような議論は、これは要するに、現在ここにも春日代議士が見えますが、衆議院でもそういうことはいろいろな角度から御検討なさって、そうして百五十万円にきまったものだろうと私は思うのであります。それをさらに百万円を最高にせよとか、あるいはネット・サープラスというような問題はこれはやはり保険会社の方がいい出した問題であります。あの手この手をやって要するに金額を小さくしてそうして立ち行かぬようにしてしまえばいい、こういう目的をもって契約者の安全であるとか、いろいろなことをいうのはこれは要するに羊頭狗肉の策ということになるのであります。
  188. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) 時間もだいぶ迫って参りましたので要点だけをいって下さい。
  189. 清木隆人

    ○陳述者(清木隆人君) それでは次に監督官庁に対する意見でありますが、これは私はほかの共済組合同様、農協もあります、水産もあります、あるいは厚生省もございます。それと同様に中小企業庁を通じて取り締っていって一向さしつかえないと思うのであります。  それから募集の制限もしろということでありますが、今間瀬さんからいわれた通り意見であります。  また既存の組合を強制的に今度の立法で金額なり何なりを一時制限せよとこういわれるのでありますが、これはここにも梶原先生もいらっしゃるのでありますが、従来から相当大きい金額でやって完全にその任務を果しているものをみんなこれでしばってしまえあるいは申合組合、任意組合など大きな火災共済を行なっているところを全部しばってしまって立ち行かぬようにしまえというようなことは、これは非常に重大問題ではないかと考えております。  それから出資の総額を二百万円ではいけないということであるが、要するに組合というものは危険のちらばったものが年々かけていくところの金がこれが実質的の出資金でありまして、最初の出発の金が五百万円ならいい、二百万円ではあぶないというようなものではない。この組合というものの事業の実質を考えれば、そんな考えは出ないはずであります。これももう二百万円ということはすでにわれわれ共済運動をしているものからいうともはや限度以上に行っているのであります。これをさらに五百万円にしろということになりますと、千円の掛金をするために組合員が、さらに組合員になるために別に五千円出資をしなければならないというようなことは実質的に組合の運動に終止符を打つということになるのであります。  従来の福利厚生というものを十万円に制限せよというような議論も、これも地域的な生協でも一人当り二十万円、夫婦なら四十万円というように現在全国で行なっておるのであります。これを中小企業者を対象としてやる場合に十万円に制限せよというようなことになりますと、実際の世の中の相場というものとあまりにかけ離れた保険会社の望む実質のないものになってきはせぬか、かく存ずるのであります。  どうぞこいねがわくば皆さんのおはからいによりまして、すでにあらゆる角度からこの共済組合については研究されておると思うので、どうかこのまま直ちに今度の臨時議会で通過をさせていただきたいということを切にお願いする次第でございます。
  190. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) どうもありがとうございました。これにて陳述者の方々の御意見の陳述は終ったわけでございます。従って御質疑がありましたらお願いいたします。
  191. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉委員 寺門博君に一点お伺いしたいのであります。  御見解の中で、この制度が実施されれば中小企業の中できわめて零細な部門は苦境に陥るであろうという御意見があったのでありますが、具体的にどういうふうな事情でそういうことが起ってくるであろうかということです。私も若干そういう懸念はするのでありますけれども、具体的にどういう事情でそういう結果になるかということですが、それについてのお考えを承りたいと思います。
  192. 寺門博

    ○陳述者(寺門博君) 私は、ここには労働組合議長ということになっておりまするが、国民の一人として全般的な意見を今申し上げたわけです。従って、私どもの労働者の中には親爺さんを中小企業に持っている人もおりますし、親戚もおるわけです。そればかりでなしに、先ほど申し上げたような国民の一人としてこの法案を憂慮するがゆえに申し上げたわけでございます。そういう意味から、今先生からお話しがあった点でございますが、第一に今の中小企業、特に中と申しましても先生からお話しがあったように、どこが中でどこが小でどこが零細だということが問題になると思うのですが、総体的にいって現在中小企業が困っておることは事実なんです。ところが、この法案内容を見ますというと、過当競争が行われてお互いが成り立たなくなる時期にそれを判断して法律を制定するんだ、施行をするんだ、効力を発効するんだという、ここが私は問題だと思うのです。一般の中小企業の方は、この法案さえ参議院を通ればただちに組合ができておれ達が救済をされるんだ、こういう錯覚に一つは陥っているわけです。それ以前に中小企業の大部分はだんだん倒産が続いて困っていくわけです。その救済方法がこの法案にはないということです。それが一つ。  もう一つ施行をされて実施をされる段階になりますと、そういう先ほど申し上げたような企業は救われない段階になっていく。たとえば私のところへ相談に来るのは、寺門さん私は戦争でもって手をなくしたんだが、理髪屋さんをやっておる。百二十円ではとてもやれぬので百円でやっておる。あるいはうどん屋さんが来る。こういう店を開いてお客さんが来るんであるけれども、この法律によって規制をされるということです。われわれ零細企業中小企業の中では救われない。この問題を考えてもらわない限り、この法律だけを通してもらったのではなお一そう落伍するだけである。こういう切実な話があるわけです。そういう点で私が申し上げましたので、必ずしも先ほどお話しがあったように、これが実施されると中小企業は全体として救われる、こういうふうにはならないと思っておるわけです。
  193. 松澤兼人

    松澤兼人委員 先ほど陶磁器の代表の方からお話しがありましたが、輸出に関しては特別に弾力性ある措置を講じてもらいたい。それが衆議院の付帯決議となっておる。輸出奨励やあるいは外貨獲得という点から考えまして適当な御要望であることはよくわかるのでありますが、ここに書いてありますように、外国製品に比べて非常に日本の陶磁器が安い、だから二倍や三倍に引き上げてもかまわないし、逆に日本の製品の安いのはチープレーバーによっているものだから、かえってそういうものの輸入は制限しなければならないということですが、この点はよくわかるわけです。しかし陶磁器をこしらえていらっしゃる方が、外国品に対しては今まであまりに不当に安かったんだから二倍、三倍というように価格を引き上げても、同じ工場でできている国内需要向けの陶磁器の値段を上げないで、国外だけに値段を上げて販売できるか。やはり片方が上がれば片方も上げるというような点、その点についてお伺いいたします。
  194. 三井弘三

    ○陳述者(三井弘三君) 私達業界では陶磁器の輸出品と内需品をはじめから生産の過程、商品が異なっております。一部若干重複するものがございまするが、内需物の方が全体的に輸出品より高い現状にあります。輸出品の方が安いのであります。そして絵つけ、デザイン、生地等今デパートに出ておるものと、われわれが現実に輸出しておるものとほとんど根本的に変っておりますので、輸出陶磁器のために単独立法をしてくれと言ったところで、そういうようにほとんど内需と異なり、また現実にダブるようなことはしない、こういう現実でありますので、他産業のことはいざ知らず、私達はそれが決して迷惑を及ぼさない、こう考えておると申し上げたわけであります。
  195. 松澤兼人

    松澤兼人委員 そこで、今内需と外需とはじめから違っておるということはよくわかりましたが、ところで輸出品を今までよりも二倍、三倍に引き上げられるという条件が整って、今度輸出しようという場合に、今まで安かったものを一挙に二倍、三倍にしてくるということはけしからんじゃないかと輸入する側の業者から言ってくるようなことはないですか。それはあるいはカルテル行為に当るというような非難を受けることはどうか。
  196. 三井弘三

    ○陳述者(三井弘三君) 二倍、三倍に引き上げが可能であるという可能の範囲は事例としてお示ししましたが、われわれは現実においてそのようなことは今おっしゃったように不可能なことは承知しております。現にアメリカにおいてカルテル行為をやっておりますが、三%、五%、一〇%、究極において二倍、三倍になるかもしれませんが、そういうように現実においてやっております。いわゆる適正価格の増加ということで現実にはやっております。その点は、かりにわれわれが可能であっても、実際の商売には通りませんから御心配は御無用です。
  197. 松澤兼人

    松澤兼人委員 あまり文章の中で、また先ほどの御発言の中ではっきり二倍、三倍という言葉が出て参りましたので、心配したわけであります。ありがとうございました。  それから刈谷の生協の石原さんにお伺いいたします。何と申しましても生協の活動と末端の小売業者との競合いの問題なんです。これは松江だとか米子とかいろいろそういう尖鋭化した具体的な事実がありますが、この問題については国会において審議する場合に、いつも一番むずかしい問題とわれわれも了解しておるのですが、お宅あたりで実際に末端の小売業者の方々が非常に尖鋭な対立をしておるのでございましょうか、あるいはまた何か話し合いができて、円満に業者とも真に共存できるような状態にございますか、あるいは全体としてそういう摩擦が将来起らないものであろうか、あるいはどうすればそういう摩擦を防ぐことができるか、それについてお聞きしたいと思います。
  198. 石原天童

    ○陳述者(石原天童君) 第一点の、現状において摩擦があるかないかという問題でございます。生協といえども一つ事業でございまして、決して組合員の捻出する費用で運営しておるものではございません。従いまして相当の経費を要するのでございます。従って生協なるがゆえにむやみに安くするということは実際においてできないのであります。従って刈谷の地方におきましてはあまり極端な対立はございません。しかしある組合については多少の摩擦を起しておる組合もございます。  第二点の問題でございますが、でき得る限り摩擦を避けるために、前もって同業組合のあるところには組合の役員などに話をいたしまして、生協の実情、実際の構成の内容などを話まして了解を求めておる次第であります。具体的に申しますと、たとえばうちの理容部門に理髪とかパーマとかいうものをやっておりますけれども、これらの開始につきましても理髪業側の組合長とよく話しをいたしまして、組合長の方もせめて九十円ぐらいでやってくれぬかというお話であったのであります。当時理髪は刈谷においては百四十円でやっておりましたが、その程度でやってくれないかという話しでございましたので、その料金でやっておるわけです。その後組合の方では一応協議をされた結果百二十円に下げておりますけれども、その間、別に問題を起しておりません。パーマなどにおきましても同じような傾向をとっておるわけであります。私はいろいろ中小企業者から言われますけれども、しかし生活協同組合は先ほど申し上げました通り一つ事業でございまして、しかも雇い人によって正規の時間勤め、管理者まで非常に複雑な管理機構をもってやっておるのであります。たとえば具体的に申しますと、第一線で活躍する人に対して、事務関係の人は五人に一人というような割合でついております。こういうような形で運営をしておってどうやら収支が償っていく、しかもある程度一般市場物価よりも安くやっていけるという状態にあることは、言い方を換えますと結局小売商の利益の取り方が多過ぎるんではないかというふうに考えておりますし、将来ほんとうに生業としてやっていくというような方々のために、生協の存在がじゃまになるということはないと思うのであります。現在実際問題として、生協の価格よりもなお安くやっておる末端の零細業者はたくさんあります。そういうような状態でございますので、私は大きな摩擦を来たすものとは考えません。
  199. 松澤兼人

    松澤兼人委員 もう二つお伺いしたいのですが……。お宅の組合などで、いわゆる員外販売はどの程度やっていらっしゃるのですか。もう一つ、たとえば薬など安く売ったという事実がございますか。あるいは薬ばかりでなしに問屋から何か他の品物でも、お前のところは安く売って周囲の小売業者から非常に反対があって困る、定価で販売をしなければ商品を卸さないぞというようなことを言われた御経験がございますか。
  200. 石原天童

    ○陳述者(石原天童君) 員外販売の点につきましては、大体二割程度はあると思います。  御承知かも存じませんが、刈谷は非常に大工場の多いところでございまして、刈谷の一世帯の中には必ず一人ぐらいはどこかの従業員がおるというような形になっておるようでございますので、ほとんど組合員外の方というのは、きわめて刈谷の人口の上からいっても少いわけであります。従いまして員外利用というのは大きい率には上らないと思いますし、またこのことについて一般業者からの小言があったことは一度もございません。  なお荷止めなどの問題でございますが、私のところの組合といたしましては直接的な荷止め行為にあったことはございません。ただ写真機などについて、組合からある程度の苦情を申し込まれたことがございますが、しかしこれは話し合いの上で、やはり業者の方が下げてやっておるというのが実情でございます。しかしながらトヨタの生協あたりでは電気器具の荷止めを何度も受けておるところがあるようですし、愛知県下としては化粧品などの荷止めが具体的にあった実例があることは事実です。
  201. 阿部竹松

    阿部竹松委員 非常に時間がおそくなりまして恐縮ですが、三井さんに一つお伺いいたします。最前の最後の御発言では、この法案を支持しなければ支持しないんだというようなお言葉がございましたので、よくお伺いしておかぬと永久に相まみえる機会がないと思いますので、よくお伺いしておきます。  そこで、むずかしい法律論とかは抜きにいたしまして、きょうここで皆さん方が愛知県下で、特に名古屋中心としてのお集まりの方々でも意見が違うわけです。なお意見の違う点については通産局長が非常に努力されて、われわれ共に異なった意見を十分に聞かせたいということで判断されて、異なった意見の方をお集まり願ったのだと思いますが、これと同じように九州から北海道までそれぞれの代表にお会いしてもやはり違った意見が出るわけです。意見が強いか弱いかよりも、やはり一番弱い人のために法律を作ってやらなければならぬということはりくつを抜きにしてわかるわけです。五十五条その他があるのですが、最前も間瀬さんからのお言葉にあった憲法違反だとか公取に引っかかるとかいうことは抜きにして、実際問題としてあなた方の中小陶磁器業の中に、これはどうもうまくないという方もあるわけですね。それからまた公取委員会中小企業庁との話し合いの中で、七条、八条で引っかかったのがあったそうです。しかしいろいろ話し合いの結果全部落ち着いたけれども、この五十五条は公取委員会中小企業庁の間で最後まで了解点に到達しなかったと言われております。それから衆議院の法制局の方はどうか知りませんけれども、参議院の法制局にいろいろと相談をしてみましたところが、これは憲法違反であるかどうかは別として、憲法の方は公共の福祉に影響するというふうに割り切っても、除外例にはなっておるけれども、しかしながら実際問題として三、四点引っかかる、日本国では前例がないから自信が持てませんという回答なんですが、やはりこういう御心配があるわけです。従いまして、あなたの最前の御発言では、絶対にこれが必要であるというあなたのおっしゃった言葉を百パーセント受け入れて、こういう問題をもし国会が通過させたら各地で問題が起きぬかということを心配するのであります。  先日東京で中小企業の代表だといって三菱鉛筆の社長が出ました。三菱鉛筆という会社はトンボ鉛筆と一緒に天下の大メーカーで、私どもの常識論でいけば中小企業の代表とは思わぬ。それが中小企業の代表として参議院の公聴会に出られて御意見を開陳せられたわけです。そういう人達が入りまじっておるので、反対もある。反対があるから強力にそれを除去するという御意見かもしれませんが、そういうところとうまくいくかどうか、ざっくばらんにその点だけをお伺いしたいと思います。
  202. 三井弘三

    ○陳述者(三井弘三君) 私の最後の表現につきましては、他の産業のことはいざ知りませんが、私達陶磁器業界におきましては、このために特別な期成同盟まで作りまして気勢を上げております。従いましてその切実な気持をそういうような言葉で表現をしたというふうに御解釈をお願いしたい。  それから今の強制加入の問題、その他の問題がはたして現実にそれほど切実な前例があるかどうか、またそれほど必要があるかどうかということにつきましては、これは内需品についてはいざ知らず、私達輸出品部門におきましては、一社の値くずし、一社の安い値のオッファーというものが、すでに政府のライセンスにも影響します。インドネシアなんかは、たとえば五十四セントというようなオッファーが出ますと、それ以上高いものは買う必要がないと言って下しません。倒産して投げ売りしたというようなやむを得ない場合であっても、その影響がはたはたと私どもに参ります。内需におきましては消費者と生産者との間には情報もありますし、意見お互いに聞くことができますけれども、輸出におきましてはこのように一つ事例が出ますれば、それが全体的に影響するということは、しばしば私達は痛感いたしております。こういうことは、輸出に関する限りは一つの強い力によってやっていただかなければ困るということを痛感いたしております。そして私達は、本法の規定は業界全体のために、そういう規定が背後に控えておるんだという一つの気がまえだけでも持っていただきますればと思っております。
  203. 松澤兼人

    松澤兼人委員 寺門さん、先ほどの御発言の中にもございましたし、刷り物の中にもありますが、商工組合の交渉相手の中に、生活協同組合と購買会が入っておるのはけしからぬ、修正追加の項目の中で、交渉相手から生活協同組合、購買会を除くということを御要望になっておりましたが、ここには衆議院のその当時の共同修正の責任者であります加藤君なり春日君なりが見えております。衆議院の段階でこの点は修正になりまして、交渉相手としないということになりましたので、一応誤解があるといけませんからこのことだけを申しておきます。
  204. 石原天童

    ○陳述者(石原天童君) 先ほどの松澤先生の質問について、誤解をされると困ると思いますので、補足的に答弁させていただきたいと思います。  刈谷の実情といたしましては先ほど申し上げた通りであります。しかしながらこの法案がもし通るといたしますと、刈谷としましても先ほど申し上げましたような荷止めの方法とか、あるいは一般的な苦情がずいぶん出てくるんではないかというふうに考えるわけでございます。私はやはり全国的に見ましても生協自体が、あるいはまた中小企業者がみずから話し合うという気持でいくならば、決して大きな摩擦を起さずに、しかも生協という使命を果しながらいく道は絶対にあるというふうに信じておるものでございますので、特にこういう気持に対して団体交渉などで荷止めの方向へ持っていかれて荷物が入らぬということになりますと、非常に組合員をたくさん持っております関係上、大きな問題を引き起す心配もあるように思いますから、団体交渉などの問題につきましてはそういうことにならないように、また制限規定を設けてもらうというようなことが必要ではないかと思うわけでございます。
  205. 松澤兼人

    松澤兼人委員 私がお尋ねしたのは、刈谷なり愛知県なりの生活協同組合に対して、一般の小売業者の方々がどういうふうに考えておるかということをお尋ねしたのでありまして、その限りにおきましては、あなたの御答弁に私満足しておるわけではありません。先ほども寺門さんに申し上げましたように、一応は生活協同組合は衆議院の修正によりまして相手にしないということになっておりますが、衆議院の継続審議になっております小売商業特別措置法などを見ますと、員外活動に対する相当きつい規制もございますから、この点は将来の問題といたしまして、私達は広い高い立場から審議したいと思っておるわけであります。
  206. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉委員 間瀬さんに一つお伺いしたいのですが、まず具体的に一つお伺いしたいのは、この法律通りましたときに、小売商の中のどの業種について組合を作る必要があるか。それからその業種でどういう規制をまず第一に行うかということについて、お考えがありましたらお伺いしたいと思います。
  207. 間瀬鋼平

    ○陳述者(間瀬鋼平君) 小売業は御案内のようにあらゆる種類がございまして、全般にわたっての状況を私存じませんが、先ほど申し上げましたように、まず第一にわれわれが考えなければならぬことは百貨店に対しまする要望が一つ、それからメーカーに対しまする要望がございます。ゆえにそれらに関連を持っておりまする業種はすみやかに商工組合を作りまして、それぞれ団体交渉権を行使すべきである、かように考えておるわけであります。
  208. 近藤信一

    ○座長(近藤信一君) 別に御発言もないようでありまするから、御意見を拝聴するこの会は、このくらいにいたしたいと存じます。  参考意見をお聞かせ下さった方々には、御多忙中にもかかわらず、終始御熱心に貴重なる御意見を御開陳下さいまして、まことにありがとうございました。  皆様の御意見は、帰京の後委員会の席上で報告いたし、今後の法案審議に際しまして十分参考にする所存でございます。  申すまでもなく、中小企業団体法案等法律内容といい、また形式といい、きわめて画期的な法律でありますだけに慎重なる審議を行う必要があるのであります。前国会では残念ながら審議時間が短かかったため、やむを得ず継続審査ということになったものであります。商工委員会といたしましては、昨日まで四日間国会閉会中にもかかわらず審議いたしましたが、本日の各位の御意見をも参考にして、今後慎重に論議を尽し、中小企業振興対策の一環として本法案に対処して参りたいと存じます。  終りに臨み、御意見をたまわった方々はもちろんのこと、この調査会開会について御尽力下さいました名古屋通商産業局の各位及び中小企業庁振興課長、さらには最後まで静粛にこの会の進行に御協力下さいました傍聴者の皆様に対し、改めて厚くお礼申し上げる次第であります。  それではこれにて閉会いたします。   午後五時十五分閉会