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国務大臣(
水田三喜男君) これは非常に大きい問題でございますが、私
どもの
考えを率直に申しますと、経済の拡大
政策を私
どもがとって、その拡大のための経済
計画というものを持っている以上は、この線に沿ってあくまで
計画を実行したいと私
どもは
考えております。今進んでいる経済の動向がその線から見てそれておるかと申しますと、私はあまり経済情勢は当初の私
どもの
計画の線からそれていないと思っています。と申しますのは、まず輸出は比較的順調で、一月から四月までの状態を見ましても、二十八億ドル大体いくだろうという線をたどっておりますので、この点はやはり最初の
計画通りいくのじゃないか。そうしますというと、それに対応した
産業施設の投資需要というようなものもそう過大のはずはないんで、当初の
計画程度のものがあってもいいのじゃないかと、そうすればその
産業投資
計画に従った輸入需要というものがある
程度多くて輸入が
相当ふえていくという
方向もこれは最初から予期しておった
方向であるということが言えようと思います。ところが、最近金融事情のいろいろな変化から、何か
産業設備投資の需要が過大であり、この
計画が何か放漫で過剰投資の問題がたくさんあるような印象を与えておって、少しここでいろいろ締める必要があるのだというような声が、各所から出てきましたために、そうしますというと、かえって設備需要というものは、よその
会社がやめるのなら、その間に自分の方は設備の更新をやるのだというふうに競争的な意識も手伝いまして、そういう
方向が何か過剰でありそうで締めるのだというような声が非常に強くなると、かえってその投資需要というものはふえる。それから、何か輸入が過大過ぎるような宣伝が行われて、これは将来輸入を締めなければならぬというような
方向へ行くだろうという声が出てくるというと、かえってこの際急いで必要なものは輸入しておけというような傾向を起しやすいものでして、今回の問題にも、そういう傾向がやはり
相当強く現われたんじゃないかと私
どもは
考えております。
そこで、その実態がどうなっているかを私
どもはあらためて検討してみますというと、
産業設備投資の問題も、前に御報告しましたように、各業界の一定
企業というものをとって
調査しますというと、本年度の需要は八千五百億円ということでございますが、八千五百億円の
内容をさらに検討してみますというと、その八割というものはもうすでに今まで
計画を立てて実行してきたこの継続費というものでございまして、今あらためて出てきた需要じゃなくて、前から予定された需要というのが八割を占めております。で、新規の需要は二割でございますが、この二割の中を検討しますというと、新規の二割分のうちの六割というのは
隘路産業の設備投資部門でございまして、そのほかは……二割のうちの四割という数字でございますので、そういう点から見ますというと、
産業設備投資という点から見ると、今のところはっきりこれは要らない設備だ、過剰な設備だというようなものは出て参りません。従って私は、今まで
政府が立てた
計画を遂行していくためには、このくらいの投資需要があっても不健全でないと
考えていますが、それでもなお金融が詰まっておるというのは、どこに
原因があるかと申しますというと、
産業設備投資でない部門に
相当の需要があって、そこについての貸し付けにおいて、今まで金融機関側に
相当放漫な点がなかったかということを今私
どもは
考えていますが、そういう点は
相当にあったと思います。現に昨年あたり金融が緩んできたときには貸し出し競争をやっている。貸し出し競争をやっている過程において、果して
産業設備投資だけ必要な、
政府の
計画産業の設備投資だけ金が流れているか、よそへいっているかということは
相当疑問でございまして、そういう形で金融梗塞が起ったというときに、何か
産業投資
計画だけが
一つずさんであって、これを締めることが当面必要だというような形で金融
政策が現われてくることは、われわれとしては迷惑だという
考えで、私
どもはいろいろこの問題に対処してきましたが、すでにそういう現象を起してしまって、同じ設備投資でも、一年ならして一定の所要額が要るようならいいのですが、この上半期に皆集中してくるという傾向は、これはやはり是正しなければ、金融
政策としても困る問題が当面の問題として出ておりますので、銀行がむしろ時期的に選別融資をやるというようなことは必要であると思いまして、今度の日銀の
政策については、これはやむを得ないと私
どもも
賛成はしましたが、これは過渡的な、一時的な処置だというふうに私は了解して
賛成しておりますので、金融状態がまた違って、少し直ってきましたときには、これは臨時
措置として弾力性のある
政策を金融
当局に私はとってもらいたいと、こういうふうに思っております。で、輸入はそういう工合で、引き締めの
影響で、この少し多く刺戟されたということと、昨年下半期にあれだけのものを買っているのですから、その
支払いが今立ってきた、たくさん出てきたという問題と、それから過去五年の統計を見ましても、三、四、五というような月は、毎月の輸入
影響を一〇〇と見ますというと一二〇というぐらいの数字を示すときで、八月から少しずつ下って、九、十、十一というふうになると、九月あたりになると、もう八〇という台の指数になっておるのが、過去五年の統計上から見た傾向でございますので、この
期間に輸入が
相当支払いが多くなってきているというようなことは、これはある
程度やむを得ないことであって、私はそう心配しなくてもいいんじゃないかと思っております。で、現にもう今月の末になって少し輸入のふえる傾向というようなものは変ってきまして、減る傾向が見えてきたんですが、これは私は今度の金融
政策の結果の現われとはあまり思っておりません。あの
金利を二円上げるとかというような
金利政策の
影響というのは、過去の経験から見ましても、半年くらいたってからほんとうに現われてくるというのが
実情でございますので、一時的な処置としてああいうものはとりましたが、輸出が伸びて輸入が下半期へいってずっと抑制されて、最後にいくと外貨の均衡というものはそう心配しないところに落ちつくのじゃないか。よし若干外貨が減ったにしても、それだけの原材料をわれわれが使わないで国内に手持ちされるというのでしたら、これは物で持っているか金で持っているかという問題で、その点もあまり神経質にならなくてもいいんじゃないかという感じでおりますので、今一時的な処置としてああいう
措置をとったんですが、しかしこれは早晩元へ戻させる
措置であると、同時に
日本の経済の基調というものは、宣伝されるようにあまり変っていない。現に物価の問題にしましても、輸出の問題にしましても、世間がいろいろ、悲観論者が警戒信号を出しておるのですが、
日本経済の実態というのは、私はそう悪い方には今いっていないので、やはり私
どもが当初
考えておった線に乗って順調に伸びておるのだ、こういう私
どもは見解を持っております。