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1957-05-14 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十四日(火曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————   委員異動 本日委員西田信一君、斎藤昇君、佐野 廣君及び久保等君辞任につき、その補 欠として鈴木万平君、野本品吉君、西 岡ハル君及び高田なほ子君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            榊原  亨君            高野 一夫君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            勝俣  稔君            小西 英雄君            紅露 みつ君            寺本 広作君            横山 フク君            片岡 文重君            椿  繁夫君            藤田藤太郎君            山下 義信君            奥 むめお君   衆議院議員            野澤 清人君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君    運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君    郵 政 大 臣 平井 太郎君    労 働 大 臣 松浦周太郎君   政府委員    法制局次長   高辻 正巳君    厚生政務次官  中垣 國男君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    厚生省引揚援護    局長      田邊 繁雄君    運輸省鉄道監督    局長      權田 良彦君    運輸省鉄道監督   局国有鉄道部長  細田 吉藏君    運輸省電気通信    監理官     松田 英一君    労働政務次官  伊能 芳雄君    労働大臣官房総    務課長     村上 茂利君    労働省労政局長 中西  實君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○引揚者給付金等支給法案内閣提  出、衆議院送付) ○環境衛生関係営業の運営の適正化に  関する法律案衆議院提出) ○労働情勢に関する調査の件(公共企  業体等仲裁裁定に関する件)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) それではただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動報告いたします。  五月十三日付をもって草葉隆圓君が辞任し、その補欠として、小西英雄君が選任されました。  次いで、五月十四日付をもって西田信一君、斎藤昇君、佐野廣君が辞任し、その補欠として、鈴木万平君、野本品吉君、西岡ハル君が選任されました。   —————————————
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) 引揚者給付金等支給法案を議題といたします。  御質疑を願います。  なお、衆議院における修正点に対する質疑もあわせてお願いをいたします。  この際、御報告を申し上げておきますが、小西委員より要求のありました岸総理大臣衆議院社会労働委員会出席のため、池田大蔵大臣は同じく衆議院社会労働委員会出席のため、同じく林法制局長官も、同様の理由で出席いたしかねるとの連絡がございました。御報告申し上げておきます。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 山下義信

    山下義信君 議事進行について発言いたします。  先ほど委員長の御報告によりまして、小西委員の御要求になりました岸総理等出席は、ただいまお差しつかえということでありますが、私も岸総理に対しまして、本案について質疑をいたしたい点がございますので、ぜひ一つ出席の御要求を願いたいと思います。
  5. 千葉信

    委員長千葉信君) 承知いたしました。後刻またあらためてその点については手配をいたします。御了承願います。ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  6. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて下さい。
  7. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 提案者お尋ねをしたいのですけれども、この引揚者給付金等支給法案の第五条に、五十才以上から三十才、十八、十八才未満という工合に分けられておるのですけれども、これは、たとえば生活の面とか、どういうものを基準にしてこういう段階をおつけになったのか、そういう点をお聞きしておきたいと思います。
  8. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) お答えいたします。引揚者給付金の額を、年令によって差をつけましたのは、引揚者が失った外地におけるいわゆる生活基盤というものが、年令によってある程度その程度が異なってくるのではないかという考えに基くものであります。まあ大きく分けまして、十八才未満の者は、いわゆる子供でございます。十八才以上は大人で、十人才未満と十八才以上に差をつけたのでございますが、十八才以上の者のうちにおきましても、いわゆる年寄りの方は特にお気の毒ではないか、その年令を、終戦のときに五十才ということにいたしまして、老人の方には厚く給付金を支給するということにいたしたのであります。それから三十才で区分いたしましたのは、まあ三十才ともなりますと、やはり一家の生計中心になっておる方が多いので、それだけ内地に帰ってきてから、生活再建をはかる上において、いろいろの支障が多かったのではないかということを考えまして、在外年数によって引揚者給付金に差をつけるということをやめまして、年令によって差をつける方が妥当ではなかろうか、こう考えまして、かように区分をいたした次第でございます。
  9. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういう御意見を聞きますと、生活単位というのは、それは十八才と三十才とは違う。しかし、二十五、六以上になれば、一個の独立した生計を立てるというのは、これは今日の常識だと思うんです。そこらあたりが三十才から五十才、五十才以上、十八才、三十才というような段階がついておるので、その点が少し理解しにくいんです。たとえば今御説明なさったほかの要素が、このファクターを分ける内容にあるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  10. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 御承知通り引揚者側要望といたしましては、在外年数というものを基準にいたしまして、在外年数一定目上に達した者に対しまして、その年数に応じてこの給付金を支給する、こういうことを要望しておったのでございます。この考え方は、必然的に外地における世帯単位とする、こういう考え方になるわけでございます。いろいろの点から考えまして、外地における世帯を標準として、世帯単位として給付金を支給するという考え方は、理論的にも、また実際的にもいろいろ支障が多いので、私どもといたしましては、個人単位にして給付金を支給する、こういう考え方に立ったわけでございます。その際、年令によって区分するということは先ほど申し上げた通りでございまして、別段それ以外のことを考えておるわけではないのでございます。
  11. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、先日厚生大臣が、小西君の質問であったと思いますが、その答弁の中で、これは在外財産補償という概念は一つも入っていないという工合に御答弁なさったと思うんです。で、今のお話を聞いておりますと、世帯というものを中心に、この補償問題、補償と言いますか、給付金という問題が出てきたということになると、それが十分にできないで年令になった。世帯というものからくる要求と、年令からくるおのおの個々要求とが、五十才、三十才、十八才という工合に、世帯というものの要素の中でこういう年令的に分けたという根拠というものは、なかなかこれはむずかしくなってくる。そこのところがなかなか理解ができない。  もう一つはこれに関連して、在外財産補償ということではないと、それはそうかもわかりませんけれども、しかし、この法案が出てきた要素というものはこの説明書に書いておりますように、在外財産審議会がやはり答申してこの法案にまとまったということになっておるので、そうなってくると、単にこの給付金だけがぽっとどこかから浮いてきてこういう法案ができたとは考えられないと私は思うんですよ。そこのところあたり給付の仕方、それからこの今の流れてきた考え、それから法案になった要素と、こういう三つの関連というものが法律を形作っているとするなら、そこのところあたりをもう少し具体的に御説明を願わないと、私らとしては少しわかりにくい。そこのところあたりを少し……、両方どちらでもけっこうです。
  12. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいまの藤田委員お尋ねでございますが、大へんごもっともなお尋ねでございまして、政府といたしましては、この引揚者在外財産問題審議会、この審議会答申を尊重して、そして給付金法律案を作ったわけでございますが、この引揚者の問題につきましては、この答申案にもまあこういうことを言っておるのでございますが、いろいろまあいきさつを述べられた結果、こういうことをしたらどうだと、まあそのことにつきまして国家財政全般見地等を勘案して引揚者の現状に照らし適切な措置を講ずると、そのまあ第一として「給付金を支給すること。」それから第二といたしまして、生業資金の貸付、あるいは職業のあっせん及び補導、住宅事情緩和等、各般の援護更生措置を講ずるようにと、そして右の措置は、真に引揚者生活基盤再建に資するよう資金効率的使用について特に配慮せいと、あるいはまた、所得の一定金額以下である者に対して考えろと、こういうようなまあ大へん親切な内容にわたった答申でございます。そこで、まあそれを基礎といたしまして、なおまた、一面引揚者団体からも強い要望のあることも今御指摘の通りでございまして、たとえば在外の居住の年限によって一つ考慮せいとかあるいはまた、在外財産の明確なものについてはこれも一つ採用してやれと、こういうまあ非常に強い適切な御要望があったのでございますが、しかし、今申し上げましたように、審議会答申がそのようにきまり、政府もこれを採用するということになりますと、引揚者在外年数基礎とするということもこれはなかなか調査にまあ至難であったという問題、それから年限だけ基礎にいたしましても、その年限に応じた在外財産というものは必ずしもそういうふうになっておらないということ、それから在外財産基礎としようとしても、基礎とできるような資料がある地区と、それからもう全然その在外財産の証明をし得ないような地区とございますものですから、どういうようなふうにしたならば一番引揚者の気持に沿うであろうかと、しかも引き揚げの年を基準といたしますと、すでにもう十一年余たっておるような関係もございまして、これはまあ引揚者団体ともよく実は協議いたしたのでございます。それからまあこれはもうぶちまけたことでございまするが、与党、野党、自民、社会の両党の政調等とも十分なまあ御相談をいたしまして、今藤田委員がいろいろまあおつきになつた点等につきましても慎重に御相談いたしまして、さらに、この社会保障というような要素も取り入れまして、こういうような年令区分をすることが、ワクが大体まあ五百億ということに押えました関係上、このワク配分することが一番その五百億円の配分についての技術的な、しかも社会保障を加味した配分になるのではないかと、こういうような考えでございまして、特に五十才以上はまあ老齢に達しておると、今日の段階では。また、在外におられましても相当なこの年令上からいって社会的、経済的の地位をお持ちになっておられるのじゃないかというようなところを先に押えまして、そうしてまあ逐次下げていったと、こういうようなことでございまして、理論的にはっきりした説明をするということになりますると、これはちょっとも出てこないのじゃないだろうかと、むしろ引揚者団体、さらに、今申し上げました両党の政調会等とのいろいろなまあケースを例にとりましてそうして御相談した結果、まあこの案でいこうと、こういうようなふうに落ち着いたと、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はまあ大体アウトラインについて厚生大臣が御説明になったので、あまりこの問題には私追及をしようとは思いませんけれども、しかし、私はこの引揚者問題をやってから、法案になってから今日まで私は厚生省がどういう処置をとられるかということを見ておった。で、今たとえば五条のランクを分けてきたと言っても、どこからどれだけ引き揚げてきた、それでどういう年令構成の人がどの土地からいつの時期に引き揚げてきたという問題の説明がない。私は資料でお出しになることだと思っていたのだが、そういう資料もわれわれには一切きていない。私はどうもそのそこのところあたりがどうお考えになっているのかということをきょうまで見ていたのですがね。ところが、私はこの五条をきめるにいたしましても、そういう資料がなければ、われわれがこれでいいのか、これでどれだけ適確にどこまでが把握できているのかどうかという問題については、非常に私は苦慮を皆さんがしておられると思うのですよ。だから、私はその説明を何百万人適用が云々と言いましても、これは適用の限界がどこの人がどうなっていくかということがわからぬ。引揚団体厚生省のお方には——大臣はよく捕捉できる所とできない所があったと言われましたけれども、そういう実情が十分わからないということは非常に残念だと思っている。だから、そこのところあたり一つその専門の局長からお話をよく願って、そうしてあと資料を出してもらいたいと思うのです。
  14. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま藤田委員のお述べになりましたのはごもっともでございまして、実は資料は差し上げておったと思っておったのですが、まだ配付を控えておったそうでございまして、さっそくお手元に差し上げます。なお、今御質疑の点は、政府委員から十分一つ詳細に説明さしたいと思いますので、御了承願います。
  15. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) それではごく概要だけここで説明さしていただきたいと思います。  昨年の六月引揚者実情調査いたしたのでございますが、それに基きまして私の方でいろいろ計算いたしたところによりますと、こういうふうに相なっております。生存者につきましては、年令区分終戦時五十才以上十六万七千人でございます。それから終戦時三十才から五十才未満が八十二万三十人となっております。それから十八才から三十才未満が六十二万六千人、それから十八才未満が百三十二万八千人、合計二百九十四万四千人と相なっております。これは現在でも生存しておられる引揚者でございます。  次に、引き揚げてまた後、今日まですでに死亡された方々をとってみますというと、終戦時五十才以上十九万九千人、それから三十才から五十才未満が五万六千人、十八才から三十才未満が二万五千人、十八才未満が四千人、合計二十八万四千人でございます。これは引揚者の数に対します死亡統計の率をもって推算した数でございます。それから未引き揚げ中に死亡した方々の数は、終戦時十八才以上の方々が六万人、十八才未満の方が九万人、合計十五万人に相なっております。この総計が三百三十七万八千人と相なっております。  なお、昨年の六月実施いたしました引揚者実態調査集計表は後にお手元に差し上げたいと思います。これは年令別地域別等によって区分した資料がございますので、後刻お手元に差し上げるようにいたしたいと思います。
  16. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは全体、今おっしゃった生存者引き揚げ死亡したというのが、三百二十七万八千人というのは、これは全体の数ですね。そこで、あと資料をもらうのですけれども、大まかにどの地方、それからどこと国別でもいいですから……。
  17. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) それでは申し上げますというと、厚生省では引揚者統計を従来とっております。昨年の六月実施いたしました実態調査とは別に、終戦以来今日まで各地から引き揚げてきた方々の数を集計したものであります。昨年の十二月三十一日現在で申しますというと、ソ連が四十七万一千人、千島、樺太が二十九万二千人、満州が百四万五千人、大連が二十二万五千人、北鮮が三十二万二千人、中華民国が百五十三万人、香港が一万九千人、南鮮が五十九万六千人、台湾が四十七万九千人、本土近接諸島が六万二千人、蘭印が一万五千人、仏印が三万二千人、太平洋諸島が十三万人、フィリピンが十三万三千人、東南アジアが七十一万一千人、ハワイが三千人、オーストラリア地域が十三万八千人、それからその他でございますが、合計が六百二十八万人になっておりますが、そのうちで軍人軍属を除きましたシビリアンが三百十七万人と相なっております。これの数字基礎といたしまして、昨年実態調査をいたしまして、年令区分等をかみ合せまして、先ほどのような数字を計算いたした次第でございます。
  18. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、昨年の十二月三十一日現在の数字ですね、これは昨年の十二月三十一日現在で残っておると推定されるものですね。実際に残っておる統計と、残っていると推定されるものとしての数と、二つと、合計、これはどうですか。
  19. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 残っていると申しますのは現在でも……。
  20. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 現在引き揚げになっていない未帰還者の数、それの明確につかめているものと、推定と両方合せた合計……。
  21. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) これは後ほど資料として差し上げたいと思いますが、ソ連中共関係合せまして四万数千人と相なっております。これらの方は現在生存しておるという数字ではありませんので、大部分の方は古い生存資料がなくて、いわゆる状況不明の方が大部分でございます。なお、詳細につきましては後ほど……。
  22. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ソ連中共以外のところで、そこへたとえば国籍を変えるとかまたはそこで永久に生活をするとかそういう方々の人数もわかりますか。
  23. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) いわゆる南方地域であると思いますが、未帰還者が約三千人ぐらいございますが、そのうちの相当部分状況不明であり、現在生存していることがはっきりわかっている方もございますが、それらの方々は御本人たちの意思によって残留されているものと推定されるのでございます。
  24. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、その南洋方面と、中国ソ連地区推定大体五万人とおっしゃいましたね、四万何千人、その方々に対する、厚生省引揚援護局としては、どういう措置をおとりになっておるか。
  25. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 引き揚げの問題も皆様方のいろいろお力によりまして、だんだん進展して参りまして、ソ連関係では、いわゆる抑留者は一応全部内地へ帰ったと私ども考えるのでございます。従って、ソ連関係では樺太地域を除きまして集団引き揚げは一応終了したということに考えて差しつかえないと思いますが、樺太地域につきましては、このたび日ソ交渉の結果、近く集団引き揚げがあるものと考え向うからも連絡がございますので、今着々準備中でございます。残った問題につきましては、調査の問題になりますので、すでに日本側から詳細な資料を先方に提出いたしまして、その資料に基いて着々調査を実施さしているところでございまして、逐次判明していくと思います。もちろん、ソ連側資料も必ずしも完全であるとは言えませんので、全部については明確な回答があるとは期待できませんけれども、可能な限り努力していただきまして、わかった限りの資料に基いて通報をお願いしておるわけでございます。  中共関係につきましては、先般三万数千人の未帰還者の名簿を作成いたしまして、それをいろいろの点から区分をいたしまして、ジュネーヴの日本総領事から向う総領事に手渡しまして、可能な限りの調査をお願いしておるわけでございます。ただ中共関係ソ連の場合と若干事情が異なりまして、終戦直後から、いわゆる中共政府ができるまでの間の行方不明者につきましてはなかなか調査が困難と思います。少くとも、現在生存している者に関しましては相当明確な資料もお持ちであると考えられますので、その点についても向う側の協力を要望したい、また、死亡者につきましては、いろいろと現在持っておられる資料を提供願いたい、可能な限り提供願いたい、こういうことで可能な限りの手段を対内的にも対外的にも尽しまして、行方不明者状況を明らかにしていきたい、もちろん、その場合でも、どうしてもわからないというものが出てくると思います。その場合につきましては、それらの方々について最後的な適切な措置を考慮していかなければならぬ、こう考えております。そのためのいろいろの調査及びその準備を促進しているような次第でございます。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ソ連中共の方は、今までの国交回復その他の問題でいろいろ皆さんの御努力で順次引き揚げてきて、今のようなお話でだいぶ理解ができたのですけれども南方方面は大体国交回復というものは、もう早くからしている。まあ、三千人ぐらいが推定で残っておる。この方々が、まあ、十分に把握はできないという状態だと言われておりますけれども、この残っておる人たち援護の手を差しのべる必要があるのかないのか、そういう点を一つお聞きしたい。
  27. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 南方地域につきましては、それぞれ在外公館が設置されておりまするので、外務省を通じまして、在外公館の手によって希望者内地へ帰れるのだということを周知徹底をはかっております。また、一人一人について詳細な情報を提供してもらうように努力していただいております。その結果、現在生存しておられる方々については逐次資料が出てくるわけでございますが、戦闘間にいわゆる行方不明になっておられる、おそらく戦死された方であっても、戦死の確認ができない方々が相当あるわけでございます。これは先般のような大戦争になりますると、そういった方々が多数発生することはやむを得ないことでございまするので、できるだけの手を尽しまして、なおかつそれでも生存及び死亡の確認できない方に対しましては、最後的な処置を将来考慮しなければならぬと考えておる次第でございます。援護の問題につきましては、帰還を希望される方に対しましては個別帰国——便船を利用して帰る個別帰国という方法によって、日本政府といたしましては、旅費の援助をする道も開かれておりまして、その点につきましてもできるだけ周知徹底をはかるように、在外公館に依頼いたしてございます。
  28. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その残っておられる、特に南方その他で残っておられる人は、実際永住したいのかどうかという問題も一つの問題としてあるでしょう。私は関連してお聞きしたいのですけれども外地でおなくなりになられた方々遺骨の問題、これは戦時から、戦後、中国人たち遺骨送還ということで、たとえば花岡とかその他から遺骨送還する機会があって、そういう機会があった。この状況と、日本方々外地でおなくなりになった遺骨収集と言いますか、それから日本で起きた遺骨送還、こういう問題について少し説明を願いたい。
  29. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 南方地域等において戦没されました方々遺骨につきましては、御承知通り政府において遺骨収集派遣団を編成いたしまして、遺族等も加えまして、逐次実施をいたして参っております。現在残っておる地域といたしましては、南方地域におきましてフィリピンが残っております。これも実施したいと考えまして、外務省を通じて現地側といろいろ折衝を重ねておる次第でございます。あとソ連地域中共関係地域でございますが、この地域につきましても、でき得れば従来の方式によって実施したいと私ども考えておりますが、まだ国交回復をしたばかりの地域であり、また、中共関係については国交回復をしない地域でございますので、従来の方式をそのまま直ちに適用し得るとは考えておりません。しかし、何とかして向うにありまする遺骨に対しましては内地へお迎えする方法考えなければならぬとは思っておりまするが、ただ中国紅十字会の御意向といえしましては、日本側から資料を提供していただければ、それに基いて向うがその遺骨を集めて、できる限り内地に送ってもよろしいということを言っておられるようでございますので、私どもの方でも逐次資料をまとめまして向うに送ってあげるようにいたしたいと考えております。  それからもう一つは、内地……。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 内地にあった花岡の遺骨送還ですね。
  31. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 戦争中シナ大陸から日本に移送されまして労務に従事された方々で、戦争中おなくなりになられた方々がございます。これらの遺骨につきましては、従来民間団体の手によりまして遺骨収集送還ということを実施して参られたわけでございまして、今日まで相当の実情をおさめておられるわけでございます。政府側といたしましては、その方々が興安丸などに乗ってその遺骨をお届けするということに対しまして、御協力を申し上げておる次第でございますが、今後これにつきまして、もっと政府が積極的に乗り出して徹底的にやったらいいじゃないかという声がだんだんと高まっておりまするし、また、諸般の情勢から考えまして、そういった点について確かに政府側としては、もう少し積極的な態度に出た方がいいのではないかと思いますので、その方向に向っていろいろ検討は重ねております。今日までも、当参議院の委員会におきまして、遺骨送還の問題につきましては、相当御熱心にいろいろ御審議をいただきまして、政府側も参画いたしまして、いろいろと検討したのでございまするが、一つの案もできた時期もあるのでございますが、いろいろの事情によってそれが実施に至らなかったいきさつもございまするが、今日は当時とも事情も異なっておりますの、今後それらの諸情勢も考え合せまして、もっと政府側として積極的な方途を講ずるように、目下考究をいたしておる次第でございます。
  32. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大体アウト・ラインだけは御説明いただきましたので、あと資料をいただくということをお願いしておきます。  そこで、この五条に関係するわけですけれども、今のおっしゃいました人数の方々の住居その他は、今この法の適用になるという住居その他の捕捉、それから知悉ですね、その本人自身がみんなが、こういう法案ができてこうなったということを知る、そうして、たとえばこの法案ができたときに、この給付金を受け取る、こういうのに知悉さすような方法というのはどういう工合にお考えになっておるか。厚生省がおやりになるのか、引揚団体というのが、全部で、オール組織になっておるのか、そこらの点、もう少しお話を伺わしていただきたい。
  33. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) この法律の実施につきましては、この法律にも書いてあります通り、権利の認定をして都道府県の知事にお願いするということになっております。従って、該当する引揚者方々は、申請書を市町村を通じて都道府県知事に提出いたしまして、都道府県知事が引揚者側の提出いたしました申請書並びに添付書類によって、この法律に該当する引揚者であることを確認した上で認定するわけでございます。従って、あくまでも本人からの申請に基いて都道府県知事が認定する、こういう建前でございます。引揚者側におきまして、みずからが引揚者であるということを証明する資料があるかというお話でございますが、問題になって参りますが、昨年全国的な調査をいたしました結果、相当多数の着、おそらく大部分の者につきまして一応の申告の書類があるわけでございます。それが有力な資料になると思います。なお、昨年全国的な調査をやったほかに、ボーリング調査というものを実はやってみたわけでございます。谷府県にわたりまして千六百世帯につきまして、中央から係官を派遣しまして調査をいたしたわけでございます。その結果、引揚者であるということ、およびその人が外地生活本拠を持っておったということにつきましては、何らかの資料を持っておる者がほとんど大部分でございます。九十数パーセントが持っておる。在外年数という点につきましては、確実な客観的な資料を持っておる数は比較的少なかったわけでございます。従いまして、これは管後通牒等によって添付書類等を明らかにしてみなければならないと思いますが、そういった資料を御提出願いますならば、この法律に該当する引揚者であることを確認する方法は、大部分の者についてはそう困難ではないと思います。もちろん古いことでございまするし、多数の引揚者のことでございます、中にはそれを認定する資料の整備せられない方も相当あることは今後予想されますが、その際におきましては、引揚者団体その他の方々の御協力によりまして、的確な資料を持っておる者もおるわけでございます。そういった方々の証書とか、そういった方法によって確認して参りたい、こう考えております。
  34. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういう確認やその他の手続はわかりましたけれども、それじゃ、その引揚者が、こういう法案が通って、それじゃもらえるということが知らずに済んでしまう人というもりが万が一あるかもわからない、そういうものをどういう格好で、たとえば宣伝をどう格好で、知るための宣伝とか知らせる方法というのはどういう工合にされますか。そういうことは心配がないということですか。今の状態の四体の動きや、今の空気の中では漏れなくこれは適用者は支給できるという判断に立っておられるのか。また、できないという判断をするなら、どういう工合にして知らしてやるか、こういり点……。
  35. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 事務的に申しますと、都道府県あるいは市町村におきましていろいろの広報活動を行いまして、引揚者にこの法案の趣旨、内容等を周知徹底をはかっていかなければならぬと思います。また、引揚者団体も、これは引揚者団体当然の仕事として会員あるいは会員以外の引揚者の方にもそういった趣旨、内容周知徹底をはかられるということは、これは当然のお仕事でございますので、相ともにそういった方途を講じて参りますならば、そうむずかしく考えなくてもいいんじゃないかと考えております。なお知っておられても辞退せられるという方もおりましようし、まああまりてこのところはむずかしく考えなくてもいいんじゃないか、こういう気持でおります。
  36. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから、この法案が実施されるようになったら一人も漏れなく、自分の意思で辞退される人は別としても、その推定された三百何十万の方々ですか、やはり三百三十七万八千人の人は漏れなく、こういう法律があってもらえるのだというようなことがわかるような措置を私はこの法案ができたら講じなければならぬと思うのです。それでお聞きしたのですけれども、一応私の質問は資料をいただいていろいろ検討さしていただきたい。これで終ります。
  37. 山下義信

    山下義信君 今の藤田委員の質問の周知徹底ですが、関係団体等にどこまで協力させるのか。前回の質疑応答の中にもそれが現われていましたが、させるともさせないとも、まあできるだけ民間の協力ということはけっこうなことであると言って大臣もあなたもお答えになって、今もその点にはお触れにならなかったが、いずれにしても、政府みずからする周知徹底であろうと、あるいは団体等の協力を求めるような場合であっても、できるだけどういいますか、一部の者の宣伝にならないように気をつけてもらいたい。私はよくこれは厳粛な気持で申し上げておきます。  本案に対しましては、自民党、われわれ社会党、両党が賛成をいたしておる、衆議の段階では。おそらく当院もそうであろうと思いますが、賛成をいたしておる問題であって、決して自民党だけがやった仕事ではない。一部の政党政派の宣伝の具に悪用されるということのないように、行政府としては厳粛に宣伝等については、あるいはその末端のいろいろの取扱いについてはよく注意をしていただかなければならぬと思いますが、厚生大臣の御所見いかがでしょう。
  38. 神田博

    国務大臣神田博君) この法律の施行に当りまして、これは十分周知徹底させまして、そして漏れなく当該本人の御希望にまかせてこの法の適用を受けるようにさせろというただいまの御意見につきましては、政府におきましては、もう十分そういうふうに配慮をいたしたい、また、関係団体がそういうことをして下さるということも、これまた今までのつながりからいってこれ母当然だと思います。そこでその場合、団体におきましては、特定の者がそのために何らかの政治的なまあ利益と申しましょうか、政治的な効果と申しましょうか、そういうようなことが片寄るようなことがあってはならないという山下委員の御発言につきましては、私も全くこれは同感でございまして、これらの点につきましては、十分さようなことの断じてないような一つ方法をとりまして、そして最善を期したい、かように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  39. 山下義信

    山下義信君 私は本案に対しまする政府当局の政治的な御方針、その他につきましては、先ほど委員長にお願いいたしましたように、岸総理の御出席を願いましたときに、総理並びにあらためて厚生大臣にも伺いますが、今は簡単に本案の中で一、二点不審に思います点がありますから御解明を願いたい。  第一は、この第二条に「終戦に伴って発生した事態に基く外国官憲の命令」と、こういうことがあります。これは具体的には何をさすのか、どういうことが具体的にあるのですか、御説明を願いたいと思います。
  40. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 台湾を含めて中国におきましては、中国政府の退去命令というものが出ておるのでございます。南鮮の場合におきましてもそれと同様の退去の命令が出ておるのでございます。たとえば南鮮の場合は、昭和二十一年の三月十八日付米軍の政庁の命令で、一定の者以外の日本人はできるだけすみやかに朝鮮を撤退、日本に帰国すべしという命令が出ております。こういった命令をさすのでございます。
  41. 山下義信

    山下義信君 こういうことは、年令とか、引き揚げの時期とか、そういう点に該当すれば引揚者はだれでももらえるとかりに思っておる、だんだん法律を執行していくにつきましては、お互いに経験しますように、実際の措置においてはだんだんしぼられていくということはいつもの行政の例でありまするから、これは大事なことなんです。外国官憲の命令で退去した者以外は、生活手段の喪失ということが要件になっておる。それ以外に「やむを得ない理由」とは何をさすかということも明確にしておかなければならぬので、この引き揚げの時期に戻って、この年令に該当しさえすればだれでももらえるのではないので、第二条はしぼられておるというので、私は今の「外国官憲の命令」とは何をさすのかということを伺ったのですが、今の御答弁では、中国の退去命令と、南鮮の退去命令、この二つをお示しになった、他にありましたならば、次回の資料御提出のときにお示しを願いたいと思います。  それから第六条ですね。これはミーンズ・テストをよほど御考慮なさったと思うのですが、所得税額が八万八千二百円、これは昭和三十一年。いま一つは昭和二十九年度から昭和三十一年度までの各年分の所得税額の平均が同様の額と、こういうことになっておる。これは議論していると切りがありませんが、私が本案賛成の立場に立って遺憾に思うのは、ミンズ・テストをなさるのもいいでしょう。一つ考え方でありますからいいでしょう。いいでありましょうが、なぜ昭和三十一年分の所得税額で線を引いたか。二十九年、三十一年も同様であります。言葉をかえますと、この間はわが国における最も重税時代なんです。すでにこの重税を不当であるといって、現政府は一千億減税をやった、三十二年度は減税を行うたのです。一番重税時代を標準にして線を引くということは私は妥当でないと思う。年収が五十万円という線はともかくとして、税額からこれは出すのでありましょうけれども、同じ線を引くのに、一番多い重税時代で線を引くということは私は同じ線を引くにしても酷だと思う。これは私は将来この点は検討すべき問題がひそんでおると思うのであります。これは何も確固不動のものでない、やってみてこの線で線を引いたらば漏れるものがあり、気の毒な状態もあるということを考えたならば、いわゆる減税時代に向ってきているこの段階で実施しようとするのでありますから、その第六条の制限は、私は将来十分検討すべきではないかと思いますが、厚生大臣の御所見はいかがでしょう。
  42. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいまのお尋ねでございますが、この審議会の方針におきましても、一定の所得額以上の者には交付金を支給するなど、こういうような答申でございまして、そこで一定の所得のある者とは、一体どの程度に押えようということが非常に議論の焦点になったのでございまして、月額三万円くらいあったらこれは自立できるというような議論もございました。しかし、それではなかなか御商売をされても基盤が浅いから、もっと月額七万円くらいの所得がなかったならば、これはむずかしいのじゃないかというようないろいろな議論がございましたが、その結果、大体勤労所得が五十万円、独身の場合に五十万円あったならば今日の経済、日本の国情においてはまず独立しておられる基盤が一応できているというふうに見ていいんじゃないか、こういうようなことに落ち着きまして、所得を五十万円ということで押えますと、所得税に直しますとこういった八万八千二百円、こういうような税額に出て参るのでございます。そこで三十一年度分にいたしませんと一番近いところがいいだろう、それではやはり三十一年度分をとりますとすぐ交付公債の対象が確定できるわけでございますして、そこで三十一年度で押えよう、こういうことになったわけでございます。ところが御承知のように、引揚者の所得というものは、非常にこれは基盤が安定しておりませんので変動がある、そこでたまたま三十一年度だけ所得が多かったということで、この交付公債を支給しないということになっては、これはこの法の精神から言ってもおもしろくないから、前三年間を平均いたしまして、そして平均額が勧労所得においても五十万円の所得があるというようなことになれば、一つそれはがまんをしていただくが、それに満たないという場合においては、交付公債を一つ支給しようじゃないか、できるだけ一つこの交付公債を支給したい、こういうような意味で三年間平均したわけでございまして、これは五カ年間にしたらどうかという議議もございましたが、そうなりますと、調査で非常に時間がかかるわけで、三年にいたしたので、大体三年間平均で、そういうような線であれば安定したというようなふうに考えていただけるのじゃないだろうか、こういうふうな気持で実はこういうふうに書いたのでございまして、最初は所得で押えたのでございますが、所得で押えまするより、税で押えた方がはっきりしていいじゃないか、こういうようなことで税の方で現わしたわけでございまして、今の山下委員お話の点も十分了承できるのでございますが、一応こういうようなふうにして進んで参った、こういういきさつでございます。
  43. 山下義信

    山下義信君 私はこの点は将来の問題点であるということを指摘しておきたいと思います。  それから勤労者の源泉徴収されます者と、それからその他の事業所得者との間の実際の生計状態と言いますか、資産状態と言いますかというものの間には大いに研究すべき点があるのでありまして、将来の問題点であるということを指摘して、当局も十分実施後におきましては、果してこの線の引き方が本案の趣旨に適するかどうか、十分御検討願いたいと思う。  それからいま一つは、第八条でありますが、第八条は遺族給付金の支給をするについて、外地でどういう者が死んでそしてその死んだ者の遺族には遺族給付金をやるということの死んだ者の資格がここに規定してあるのでございますね、その死亡者を二十五才以上と切ったのはどういうわけですか。私はこれは不審でならぬ。どういうわけで死亡時の年令を二十五才に切ったかということ。また、その年令をきめなければならぬのは、どういうわけで年令をきめたかという点ですね、引き揚げ以前に外地で、しかも引き揚げ以前と言いましても、第八条の規定を見ると、引き揚げなければならぬような事態になったものであって、そしてその引き揚げの時期までの間に死んだ者、そういうものを、あなた引き揚げの時期を二十年の八月十五日と切ってあって、そうして引き揚げなければならぬということに差し迫って、そういう状況に置かれたときで、しかもその中で二十五才以上という年令を切ったということが私にはわからぬ……。  私が勘違いをしておったようですから、第三号の説明をして下さい。
  44. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 遺族給付金につきましては、引き揚げるまでの間に外地でなくなった方の遺族給付金と、それから内地へ帰ってきたあとで、つまり引揚者になってからあとでなくなった方の遺族給付金と二つにまあ分けてございます。  前段の外地死亡された場合の遺族給付金につきましては、死亡者年令制限はございません。
  45. 山下義信

    山下義信君 その点はわかりました。
  46. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) それから内地に帰ってからなくなったものにつきましては、これはすでになくなった方でございますので、引揚者給付金の性格と申しますか、答申の線から申しまするというと、どうも出さぬでもいいではないかという理屈も出てくるのでございまするが、この給付金は、上陸した際に、その際差し上げてしかるべきものであったものが、いろいろの事情で今日までおくれておったものであるので、今までの間に在外財産というようなこと、あるいは給付金ということに思いをしながら、いろいろ生活再建に悪戦苦闘された方々でなくなった方に対して何もしないということはどらであろうか、しかし、これはまあ、現在生きている方の問題とは違い、すでになくなった方でございますので、まあ本来の趣旨とは違うが、恩典優遇である以上、給付金を差し上げよう、こういう考え方でございます。従って、まあ、その結果世帯中心であった方々死亡のときに二十五才に達しておったような方々の場合は、残された遺族の方もお気の毒ではないか、こういった趣旨も加えまして、年令制限をいたした次第でございまして、いわば内地に帰って日本の故郷の山河を見てなくなった方に対しましては、死亡したときに一定年令以上の方々に対しましてのみ、その遺族の立場を考え給付金を差し上げよう、こういうふうにいたした次第でございます。
  47. 山下義信

    山下義信君 わかりました、前段は……。  そうすると、この第三号で二十五才以下というのは少いのですか、どのくらいありますか。さっきの調査された表でいきますと……。
  48. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) これは先ほど申し上げたように、引き揚げあと死亡した方の集計はとっておりませんが、引揚者に対しまして一般の死亡率をかけ合せまして推算しておるのでございますが、二十五才以下の死亡率というのは御承知通り、低率でございますので、現在の数からいたしましても、人数はそう多くないと思いますが、数字は後刻……。
  49. 山下義信

    山下義信君  数字あとでよろしゅうございますから……、私は対象者の性格がよくわからぬです、実は。二十五才と切るでしょう、二十五才以上というでしょう。かりに二十五才としますと二十五才の人はですね、数ですね。
  50. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 二万五千人でございます。
  51. 山下義信

    山下義信君 二万五千人ある、二十上才以下が。かりに二十五、六才ですね、二十五才以下ですね、二十五才以下の人は昭和三十二年三月三十一日以前の死亡ですが、二十五才以下の人は引き揚げのときは、死亡を三十二年とかりにしますと、引き揚のときは十二三才ですね。少くとも年令の若い人です。それがかりに支給の対象にならない人は終戦時の引き揚げのときはどういう状態にあった人でしょう。それの遺族も何もないとかりにしたとするね、私の質問がわかりませんか、わかりますか。
  52. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) どういう状態であったかと申しますと、まあ当時の年令がどらであったかということにいたしますと、死亡の時期によって違うわけでございます。たとえば二十四才で引き揚げてきて、半年たってからなくなった方は二十五才未満ということになります。それから帰ってから五年たってから死んだ場合、引き揚げたときに十九才であれば死亡したときは二十四才になる。従って、引き揚げたときの時期は同じであっても、死亡した時期があとへずれればずれるほど、これに該当する率が多くなってくる、こういうことになるわけでございます。従って、問題は死亡したときにあと残される遺族の立場というものも考慮した結果、二十五才という年令制限がついた、二十五才以下の方はまあ一家の生計中心でもないし、残った遺族の方も困っていないだろうから御遠慮いただく、こういう趣旨でございます。
  53. 山下義信

    山下義信君 私は今法案内容について不明な点があるのでお尋ねしておる点は、この点だけなんです。これだけなんです。戻って死んで二十五才以下の者には遺族給付金は出さないというのでしょう、戻って二十五才以下で死ぬという者はやらないというのでしょうね、そのやらないというのは、戻って内地ではそういう人たちが一家の世帯主のような状態になっていないからというのでしょう。終戦前はその人たち年令が若くて死んでも本法の給付金の支給の対象になるのでしょう、それを戻って死んだら年令で制限がされて、外地で死んだら年令が制限されないというのはどういうわけですか、私にはわからない。私の質問が無理でしょうかね。
  54. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) ごもっともな御質問ですので、それは考え方としましては、引揚者給付金というものは現在生きておる引揚者だけに限定する、まあこういう考え方でございます。と申しますのは、在外財産という考え方で申しまするならば、どこで死のうが、いつ死のうが、これは関係のない問題でございまして、かりに本人がなくなりましてもあとに遺族に必ずくっついてくる問題であると思います。しかし、こういったある援護的な色彩を持たせた性格を若干持った給付金というものは、やはり現状に照らすということにならざるを得ないのであります。外地で死んだ方の問題は、むしろ生命に対する弔慰的な性格が入って参るわけでございますので、年令制限というものを除外しているわけでございます。そこでこういった方々でなくなった方は、これはいろいろの原因でなくなっておられるわけでございまして、国家的の災難によってなくなったというふうには考えられないのでございます。それぞれの事情によって、お気の毒でございますが、おなくなりになっておられるわけでございます。国で弔慰的な性格をもってこの給付金を差し上げるというものではないのでございます。それじゃ何だということになりますが、それは先ほど申し上げましたように、引揚給付金の本来のこの法律の建前から申しますれば、本来の性格のものではないのであって、いわば、この際そういった方々に対する恩典優遇的な性格を持ったものである、こう私どもでは考えているわけであります。従って、外地でなくなった方に対しては、国が生命を尊重する、生命に対する弔慰的という見地からこの遺族給付金を差し上げる。そこで帰ってからなくなった方の問題はそれじゃ何もしないのかということになると、どうもいろいろの情勢から考えまして、何もしないというわけにはいかぬのじゃないか、そこで何と申しますか、言葉は悪いんですが、妥協的な気持でそれじゃ一家の生計中心であったような方々だけにこれを差し上げることにした、その他の方には御遠慮いただきたい、こういう考え方であるのでございます。外地で死んだ方に対して出す気持と、それから内地へ帰ってきてからなくなった方に対する気持とは、そこに違うものがあるということを御了解いただきたいと思うのでございす。
  55. 山下義信

    山下義信君 ちょっと速記をとめていただきたい。
  56. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記をとめて。    午前十一時五十人分速記中止    —————・—————    午後零時十一分速記開始
  57. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。  この際、山下委員に申し上げますが、岸総理大臣衆議院外務委員会及び外国使臣信任状奉呈式立ち会いのため、午後も出席困難である旨の連絡があり、さらに引き続いて出席要求いたしましたところ、今のところ、あすも出席についての見通しがつきかねるという連絡が秘書官からございました。従いまして、なお委員長としては、総理大臣出席について強く今交渉中でございますので、御了承願いたいと思います。  本案に対する本日の質疑はこの程度にしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  59. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは次に、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律案を議題といたします。御質疑を願います。
  60. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は野澤衆議院議員、本日説明役においで願っているので見解を伺っておきたいと思うのでありますが、昨日山下委員の御質問に対しまして、説明役でお見えになった亀山衆議院議員の御答弁の中に、ともすれば誤解を招くおそれがあるような文句があったように私は感じたので、その点を明確にしておきたいと思います。山下委員お尋ねは、環境衛生関係の同業組合と中小企業団体組織法案による組合との差別、そういうものについての、たしか御質問ではなかったかと思うわけです。それに対する亀山議員は、この環境衛生同業組合は任意加入であるけれども、中小企業の方は強制加入であるというような意味の御説明があったと思う。これは考えようによると非常に誤解を招くので、この機会に明確にしておきたいと思うのでありますが、私の考えでは、また、私が亀山議員の説明を受け取ったその理解の仕方におきましては、御承知通りの中小企業団体組織法案による組合のうちで、六個の協同組合が、これは中小企業等協同亀合法によるものだから、もちろん加入脱退は任意である。それから商工組合も、これも原則としては加入脱退は任意であるけれども、しかしながら、アウトサイダーが相変らず経済的撹乱をするような場合は、主務大臣が入会を、組合に入ることを命ずることができる。それでもなおかつ入るのがいやだ、こういう場合は認証を受ければいい、こういうふうに私はなっているように一方の方の法律案理解しているのです。そこで、考えようによっては、特殊な組合は、結果によっては強制加入みたような形に見える、こういうようなことで、その前提の説明を亀山議員は省略されて、その特殊な場合の一点だけの説明があったのではないか、こういうふうに私は受け取ったわけなんです。そこで、本日亀山議員にかわっておいでになった野澤衆議院議員から、この点について衆議院側の御見解をはっきり承わっておいた方がよかろうと思います。
  61. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) ただいま高野委員の申されたことは、その通りでありまして、昨日、亀山議員から御説明した際の、亀山議員の申し上げようとしたことは、おそらく衆議院において審議されました結果を申し上げましたのでなく、最初団体法として提案された当時、単に強制加入だという言葉にとらわれて、参議院に回ってきました法律内容をさして申し上げたのでなしに、提案当時の環営法と団体法との差について、あくまで環営法は自主的な法律として任意加入にする、また、団体法の方は強制加入ができるのだ、こういう事柄のいきさつを説明しようとして誤まったのだと思います。  昨日の委員会が終りましてから念を押しましたところが、明らかに自分の誤まりであるということも申しておりましたので、あらためて本日高野委員の御質疑通り、この問題については亀山委員の失言であったということを明らかにいたしておきたいと存じます。
  62. 山下義信

    山下義信君 今の高野委員質疑応答を承わっておったのでありますが、中小企業団体法と環営法との組合加入の、強制加入か自由加入か、また、任意加入であっても、いわゆる適正化規程その他の厚生大臣の強制命令、すなわちアウトサイダーに対しての強制命令という実質的な点においては、環営法もこの強制命令が及ぶであろうというような、昨日の私の質疑応答に関連して、亀山委員の御答弁に対して入念な再確認をなさったのでありますが、    〔委員長退席、理事山本經勝君着席〕  その御質問の中の一部を伺いますと、これは私の昨日の最終の生活協同組合に対する環営法の関係質疑と関連があるようでありまして、結局、アウトサイダーに対する強制命令は生活協同組合にも及ぶであろうという御趣旨も含まれているように思いましたが、それは別でありますか。
  63. 高野一夫

    ○高野一夫君 ちょっと速記をとめて。
  64. 山本經勝

    ○理事(山本經勝君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  65. 山本經勝

    ○理事(山本經勝君) 速記を始めて。
  66. 山下義信

    山下義信君 私は昨日の質疑に続きまして、第二条に掲げる本法適用の営業者七種類の営業者がここに列挙されてある。そこで生活協同組合は本法の適用を受けるのかどうかという点を質疑をいたしたのでございます。昨日の政府の答弁を見ますというと、受けるようでもあるし、受けないようでもあるし、一部分は受けるし、一部分はこの適用を受けないのだ、また、受けるにしても適用外になる場合もあるのだということではっきりいたしませんので、もう一度その点を整理をいたしたいと思うのであります。そこで問題は、第二条の第一項の本文に、「この法律は、次の各号に掲げる営業につき適用する、」こういうことでありますから、生活協同組合がこの七種の業務に関係があり、この七種の業務のいずれかをやっておるとかりにいたし、ました場合、その生活協同組合が第二余り営業者ということになるのか、ならぬのかということを原則としてきめておく必要があると思う。それでおそらく提案者のお考えでは、私推測するのに、立法者の御意思としては、生協も包含をするという立法の御意思じゃないかと私は想像しておるのです。ところが、法律の方を見るというと、立法意思がそうあっても、生協は当然この法律から言えば除外されておると見ざるを得ないのです。そこで、第二条をどう解釈するか、つまり生協をどう見ていくかということを一つここで明確にしておかなきゃならぬと思う。それで、提案者はその点を一つ明確にしていただきたいと思います。
  67. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) ただいまの点につきましては、すでに昨日政府の方からもその見解が述べられたようでありますが、衆議院の審議の過程におきましては、生協もこの法律適用を受ける、こういう解釈で参る、ただしこれらの法律のうちで、価格の点につきまして適正化規程等を適用する際には、これは協同組合に対して除くべきである、こういうことで一応はっきりした了承のもとにこの法律を成立さしたわけでありますから、御了解願いたいと思います。
  68. 山下義信

    山下義信君 そこで、どうして生協に適用ができるのでありましょうか。この第二条の条文から参りますと、生協は当然除外されなければならぬのではないかと私は解釈するのです。換言いたしますと、言うまでもなく、生協は生活協同組合法がありまして、生活協同組合は営利を行なってはならないとある、この第二条は、非営利の業務であって包含するということはどこにも書いてないのです。営利を目的とする業種を本法の対象にするのです。これは第二条の第一項の本文がきわめて明快にそれは示されてある。生活協同組合は生活協同組合法によって非営利であって、営利を営んではならないと規定してある。営業という文字は少しも生活協同組合法の中には扱っていないのですね。それが本法第二条に「次の各号に掲げる営業につき適用する。」という中に、他の法律によって非営利事業であるぞと規定してあるその対象をここに包含するということは、法律解釈としては少し無理ではないでしょうか。
  69. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) ただいまの御意見でありますが、実は昨日も御議論がありましたようですが、この法律があくまでも経済立法かどうかという点ですが、大体経営の安定ということを主眼にしまして、衛生措置を順守させよう、施設の改善をはかろうということがこの法律の目的であります。従って、第一条にも書いてあります通りに「衛生措置基準を遵守させ、及び衛生施設の改善向上を図るため、これらの営業者の組織の自主的活動を促進するとともに、当該営業における過度の競争により適正な衛生措置を講ずることが阻害され、又は阻害されるおそれがある場合に、料金等の規制その他経営の安定をもたらすための措置を講ずることができる」こういうことになっておりまして、あくまでもこの法律というものは、公衆衛生の向上及び増進に資することを目的とするとはっきり断わっております。従って、料金、その他の経済行為に対して、ただいま先生の御指摘のように、営業という面からいきますと、経済行為そのものに対しては、当然生活協同組合はお説の通り別の扱いをして差しつかえないのではないか。けれども、施設、その他公衆衛生、環境衛生等の面から考えていきますならば、当然その施設等には従わなければならぬのではないか、同時に、この法律の業種の選定基準というものが、御承知通り、免許を受けたもの、一定の施設によって営業するもの、または認可営業であって、許可営業であって一定の施設を有するもの、施設が基本条件になって、この七団体というものは選定されております。従って、生活協同組合も営業に関しまして、法律の規制を受けないかというと、現在でも受けておるように聞いておりますので、この法律の公衆衛生の面に関しましては、当然適用を受けるのは至当だ。ただし、経済行為に対するその内部における価格の問題については、一般のものと区別して差しつかえない、かように小委員会等において了承されて通過させたものでございます。    〔理事山本經勝君退席、委員長着席〕
  70. 山下義信

    山下義信君 私は生活協同組合に対しては中小企業団体法でもこれを除外いたしまして、その独自の性格というものがよく考慮されてある。また、生協は生協としてその目的が別途の建前として確立されてある。環営法におきまして、その点がきわめてあいまいでありまして、もし今お話になりましたような衛生上のいろいろの施設、あるいは技術面等々に対しまする点は、生協であろうが、何であろうが、規制していかなければならぬ。それはそれぞれの、理容楽なら理容業の、その他の業についてそれぞれの持っておるところの今の法律で十分規制ができるじゃありませんか。何もこの中において、それらに対しての生協のその部分に対しての規制をしなくても、それぞれの持ち前の法律によって十分規制の目的が達せられるじゃありませんか、無理に環営法の中に取り込んで、生協のその部分を規制しようとし、その他の経済行為等については、これは除外する考えであるという御趣旨であるならば、私は現在のそれぞれの関係法律で十分でないかと考える。その点の御所見はいかがでしょうか。
  71. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) これは衆議院でもかなり議論のあった問題でありますけれども、生協に対する過去の実績と申しますか、経過から見ましてかなり行き過ぎた面があるやに聞いておりますので、その環境衛生上の施設その他の面については、どうしても同一歩調にいけないような場合が想定される。従って、生協の施設等については、当然同一歩調でいくべきではないかということで、全体の衆議院の審議の過程におきましては、小委員会におきましても十分そうした話し合いが持たれまして、もちろん価格の面につきましても、組合員だけの利用対象というものに限定されることが当然でありますが、昨今のように、員外者の利用度というものがかなり伸びておるという状況もあるので、これらを適正化するためには、いたずらに中小企業者の圧迫を来たさないようにすべきでないか、しかもその基本となるべき施設その他については、それぞれの法律で取り締りができるのじゃないかという先生の御発言でありますが、実際その通りでありますけれども、少くとも中小企業者を指導しよう、あるいは育成しようという環営法自体の法の精神から申しますと、団体法とは全くその目的が異なっておりまして、単に経済面だけの保護育成というばかりでなしに、衛生上のことを強く取り上げて、公衆衛生の向上発展に資したい、こういう目的をもってやられるのでありますから、あげてこの点は賢明な先生の方でよく御了解を願い、また、御賛同を願いたいと思うわけであります。
  72. 山下義信

    山下義信君 楠木環境衛生部長、現在の環境衛生関係法律では、環境衛生面の施設の維持、改善、向上等については、とうていその法律ではやっていけないから、生協も環営法の中へ取り込んで、ここでやっていかなければならないと、こういうことについて政府もそう考えるのですか。
  73. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 生協あるいはその他の協同組合等の事業に関しましても、それがそれぞれの食品衛生法その他母法において、取り締られておるのであります。従いまして、現在の生協の事業におきましても、法律のあるものはやはり法律において取り締りを受けております。そこで、ただいま野澤先生からもお話がございましたように、ただいま御審議をいただいております法律は、衛生上の措置の徹底等を目的といたしておりますので、その意味から当然これらの法律の対象になるものと考えます。なおこれらは、なるほどこれらの営業はすべて母法がございまして、それによって取り締られております。母法の執行状況によりまして、衛生上の問題は解決するのではないかということもよくわかるのでありますが、何分にも複雑な業界でございますので、必ずしも取締りの強化だけで一方的に十分な効果をあげることは、これはきわめて困難な状況もございます。そこで、一方取締りの強化とともに、一方ではこれらの業界が自粛いたしまして、お互いが自主的に一つ衛生上の問題を守っていこう、あるいは社会上いろいろ非難を受けるような営業方法一つお互いに自粛し合うというような活動と相待って、初めて万全の効果が期し得るものと考えた次第でございます。さような観点からいたしますと、やはり生協のこの種の事業につきましては、経済行為の点は別といたしまして、衛生上の観点からは、あるいは営業の整然化を目的といたしました活動は、当然含まれておるべきではないかという考えを持っておる次第でございます。
  74. 山下義信

    山下義信君 質疑でありますから私は議論はいたしませんが、提案者並びに政府の御見解は、生協というものの特質を無視して、生協もまた営利を目的とする営業者なりという前提に立って、そうして営利を目的とする同業者に対するところの環営法の目的を、そのまま非営利事業が本質である生協の特質を無視して、そうして衛生上の設備等については、これは同列であるべきという一端をつかまえて、そうして環営法の中へ取り込んで、同種の業者と生協との競争をここで調節しようとか、ここでその施策を行おうとすることは、いささか無理ではないかと私は思うのであります。そういう点について、生協の行き過ぎがある、是正すべき点があれば、生活協同組合法を改正してもよろしいし、また、あなた方が最近小売商特別調整法ですか、というもので一般小売業者と生協との調節をするところの法案がすでに出ている、そういう面で十分調節すればよろしいのであって、本質の異なる、一応表面は類似しておっても、非営利を目的とするという公益的な性格の生協というものと、それから営利を目的とするところの営業者というものと、それをとく一部分をつかまえて必要性を強調して、この中へ取り込んできている、そうして制約のワクをはめていく、一般の同業者との間の調節の問題を片づけていこうということは、少しく無理ではないかと、こう思う。これは見解でございますから……そうして今提案者並びに政府の言われるがごとき一部を、必要ありと称して、本法の対象にしても、すでにこの環営法に規定する同業組合に入れた以上は、諸般の規制がかかってくるのであって、たとえば適正化の規定も、その同業組合に加入した組合員の中で、これこれのものにはこれこれは適用しないというようなことを、法令で規定しますか、この法律の上には書いてはないのですけれども、環営法にはありませんが、法令でそういう除外例を規定するのですか。規定するならば、この法律に規定の根拠がなくちゃならぬ。
  75. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) ごもっともな山下委員の御発言で、私も議論を申し上げるつもりでありませんので、ただ見解の相違しております点だけを明らかにしておきたいと思いますが、この法律自体というものは、あくまでもその事業を対象として選んだからというて、必ずしも強制的に加入させようという気持のない法律であります。従って、生協等は性格的にみて、おのずとアウトサイダーの性格をもってくるのでないかということも論議されました。従って、ただいま先生のおっしゃられるように、この法律に取り入れて一つの橋頭堡を作って、生活協同組合の性格を無視し、じゅうりんするのだと、あたかも悪いことをわざわざここで拾ったように開けるのでありますが、この点に関しては、少くともこの法律を立法しました内容、あるいは対象人員、また、その法律の効果等をねらいましたことは、弱小企業というか、中小企業者のうちでも、きわめて零細な企業の保護育成を目的としたものであります。しかもそれらを手段として、今度は大きな国家の保健衛生、環境衛生の面の向上を促進したい、また、充実したいという目的で出たものでありますから、いかなる法律によって、特殊な権益がありましょうとも、一応環境衛生という、あるいは公衆衛生という面からいきますならば、施設その他については連繋していただくことが当然であるし、また、それを野放しにしておいて、喧嘩させようとか、圧迫しよう、競争させようという気持は衆議院側においては毛頭ございません。ただそうした面において、アウトサイダーならアウトサイダーとして参りましても、一応法律の建前から、施設その他については御協力が願いたい、こういう意味合いでありますので、お互いにこれは主張してみましたところが観点の差でありますので、私はこれ以上は申し上げたくないと思いますが、ただ御賢明な山下委員の方でわかり過ぎるほどわかったところに議論をしますというと、いろいろ理屈が出てきますので、ぜひ一つご明解な御了承を願いたいと存じます。
  76. 榊原亨

    ○榊原亨君  関連賛同。ただいまの御答弁で大体意図するところはわかるのでございますが、そういたしますると、この法律の第二条にございます、並びに第十五条にございまする営業という言葉は、営利を目的として行う業務以外のものも包含ずるのでございますか。その点について承わりたいと思います。
  77. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) その通りでございます。
  78. 榊原亨

    ○榊原亨君 営業という言葉は、営利を目的とするということが普通だと思うのでありますが、たとえれば、団体法におきましては、事業を行うという言葉と、事業を営むという言葉をもって、一方は営利を目的としないようなことを区別しているのでありますが、そうすると、この法律で営業というのは事業を行う者をも含める意味であると、こういうふうに解釈をいたしましていいのでございますか。その点をはっきり伺いたい。
  79. 野澤清人

    衆議院委員(野澤清人君) むずかしい点ですから、間違うといけませんから、政府委員から答弁いたさせます。
  80. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) この営業の見解、字句の見解でございますが、私どもは、料金を受けまして多数人が反復して継続して行なっている業は、これをそれが営利が目的であろうがなかろうが、営業というものだというふうに考えている次第であります。
  81. 山下義信

    山下義信君 榊原委員から助言をしていただいたのですがね。妙な解釈を政府がするのですね、営業ということについて。そういう、料金をもらって反復して同一の仕事をやれば、行為をすれば営業と称する。それは営利でなくても、料金をとって同一な行為を繰り返してやれば営業とする、そういう解釈の他の立法例がどこにありますか。料金必ずしも営利じゃありませんよ。実費というのもありまするし、手数料という……、料金とは何をさすのです。料金というのはおおむねその中には利益が含まれてあって、その利潤というものが含まれてあって、その代償を受けておる、言いかえれば、あなたの料金というのは代償を受けてという意味でしょうね、代償を受けて同一なことを繰り返してやればそれが営業だと、こう言うのでしょう。営利というものには関係ないというのでしょう。そういう営業というものを、営利を目的としなくても、つまりいえば利益を目的としなくても、手数料、手間科をもらうてやっておれば営業だ、こういう解釈というものをしておる他の立法例がどこにありますか。
  82. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) これらの営業にはそれぞれ母法がございます。これらの母法におきましては、すべて営利をそのような解釈のもとに現在法律の執行を行なっておる次第でございます。
  83. 山下義信

    山下義信君 それでは、その具体的な代償を受けて同一の行為を繰り返しておれば、それは営利事業でなくてもすべて営業者の中に入れるんだと、こういうことですね。そうすると、そういう解釈と言いますか、そういう母法……他の立法例があるということでありますが、それ一つ具体的にあとで出して下さい。そうすると、生活協同組合法はたちまち違反しますね。生活協同組合法はまず第一番に、営利事業を行なってはならないと、こう規定しておる。そうして代価を受けて各般のものをやっておるのですね。そうすると、それはあなたの解釈からいえばもうすぐに違反しておることになる。つまり言いかえると、代償を受けて行うことはすべて営利事業である、こういうことになるのですよ。
  84. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 代価を受けて多数人に対しまして反復して同一の行為を繰り返して行なっておることが営業でございます。営業というものにつきましては、私どもは営利があるものとないものがあろうかと存じます。現にこれらの営業の母法となっております、たとえば旅館業法あるいは食品衛生法、理容師法等におきましても、これらの衛生上の取締り、あるいはこのいろいろな基準適用というようなものは、これらの法律がすべて、まあ理容師法は別といたしまして、旅館業法、興行場法等は、これが純然たる営業法であるにもかかわらず、そのままこれを他の非営利事業にも適用をいたしておる次第でございまして、従いまして、これはただ事務的に法律上の取扱いを申し上げてあるだけでございますが、一つさような状況に相なっておるわけでございます。
  85. 山下義信

    山下義信君 この点は見解が相違しますから、次の機会に明らかにすることにしまして、質問の次に移りたいと思いますが、第八条には何業組合の事業が九号にわたって列挙されてあるのです。これは私は、質問というよりはむしろ小言になりますが、私はこの第八条の書き方は妙だと思うのですね。本法の目的が、言うても言うても、実は公衆衛生の向上が目的だとおっしゃる。経済立法が目的ではないと、こうおっしゃる。その御言明にかかわらず、第八条に、この九種類の事業が掲げてあるのですね。これは小言になりますのでありますが、提案者の御所見を承わりたいのですが、どういうわけで衛生的な関係、公衆衛生の向上というようなことをまず事業の目的の最初に特筆大書なさらぬのですか。経済立法ではない、ないと言いながら、この九号の事業の目的には中心がない。何を主眼点とするかということが事業の中にない。私もつまびらかにいたしませんが、団体法の方を見ますというと、同じ組合の事業にも、まず第一番にこれをするぞよということが第十七条に書いてある。この団体法に加入したところの組合は、まずこういう事業が主目的であるよ、その事業をしてから次の各号の仕事もできるのであるぞと、こういう規定になっております。一号にまず中心の事業が、組合のなすべきところの商工組合の事業が主眼としてここに掲げてある。それができて、初めてあとの付随の仕事ができるのだよというまあ大体の書き方である。環営法も公衆衛生の向上が、これが目的になれば大体この八条の事業項目の中で、あなた方が環境衛生上非常に重大というのを、まず第一に、これを組合の事業として行わせて、そういう目的の仕事をするならば、こういう経済的な点についてもまた考慮をしてやろうとか、あるいは考慮すべきである、こういう仕事も考えてもよろしいというのならいいけれども、そういう羅列して、組合の事業の中に主目的を置かれない、主眼点が置かれないというのは、これは小言になるのですが、何かそういう点についての御考慮がなされたことがあるでしょうか。
  86. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) ごもっともな御意見ですが、ただいまの御指摘になりましたような点に関しまして、実はこの業種自体の母法をごらん願いますというと、それぞれ詳しく施設を持たなければならない、あるいは措置を講じなければならぬということが一応規定されてありまして、従って、この法律を立案します際に、そうした細部についてはおそらく手ぬかりをしたのだと感じます。従いまして、この法律は、第一条に規定してあります通りに、衛生措置基準を作るとか、あるいはそれを順守させる、衛生施設の改善をはかるということを主たる目的として運営していきます場合に、第二義的に、実際はその弱小企業者の経済行為がやはり裏づけにならなければならぬ、どんな基準を設け、施設を向上させようと思っても、経済的に行き詰っておったのでは、とうてい国の、あるいは社会の要請する面にマッチできない、こういうことから、経済的な意味を含ましたわけでありまして、当初から申し上げておりますように、この法律が経済立法でないということは、私たち申し上げておらないのでありまして、あくまでも一つの目的の前に経済立法の意味も加味しました法律であると考えております。そうした経済基盤を確立することによって、衛生施設やあるいはまた施設の改善、向上等がはかれる、こういう考えでありますので、御了承を願いたいと存じます。
  87. 山下義信

    山下義信君 小言ですからね、私は追及はしませんがね、経済立法ではないとはおっしゃらぬのです。経済立法を主とはしておらぬとこうおっしやる。環境衛生の向上が主たる目的である。言えども言えども頭隠して尻隠さすであって、こういうところに化けの皮が現われてくる。環境衛生の向上と称しながら、要するところは、特定の別の目的をもってこの法案を立法したのではないかと邪推せられるような節々がところどころに露呈しておる小言でありますから——私はこれは、この第八条の条文の書き方は、団体法か、非常に入念に主たる目的を掲げて、まずその励行を求めていると同じように、本法においても、環境衛生上のこうした改善を主として本法は要請して、その必要がそれに付随する、その目的のためには当然経済行為の援助を本法が与えてやるということが、私は法の建前としてはこれが正当ではないかと思う。そうなっておりますと、この法に従うところの業者も、この法の精神がおのずとここに現われてくるのでありますが、この法律の書き方からしますというと、私は遺憾の面があります。  もう一つ伺いますが、談ますます佳境に入りますが、適用営業、第二条第一項であります。第一項の食品衛生法の云々の中から飲食店営業、喫茶店営業、食肉販売業、氷雪販売業、この四つを選んだ。このことはあとで伺いますが、まずそれらの業者の中で同業組合を作らせるのは政令できめる、こういうことでありますね。第三条によりますというと、その同業組合を作らせる業種は政令できめると、こうありますね。この飲食店営業というもの、これは内容はどういうふうでありましょうか。私が調べてみますと——調べが足りませんかわかりませんが、そば屋、すし屋、洋食専門店、和食専門店、仕出し屋、こういろいろあるのですね。そして旅館、バー、キャバレーというものも飲食店営業に入るのですか。それでこの飲食店営業の中には、盾をかまえてやる店舗の営業もあれば、屋台の営業もあるんですね。そば屋、すし屋などのようなのは、どういうふうにして同業組合を作らせる——業種の組み合せ方ですね、これはどういうふうに……。皆別々にずっと、一品ごとの種類ごとに中華そばは中華そば屋ずっと、それから中華料理は中華料理、そしてフランス料理はフランス料理ずっと、各営業の種類ごとにやらせるのでありますか。どういうふうに、この政令の定め方は、同業組合を作らせる業種の組み合せ方と言いますか、それはどういう御方針でありますか。
  88. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) この業種の選定に関しましては、後ほど政府委員から、専門的な立場からどういう方針でいくかということの御解説を願いたいと存じますが、衆議院委員会でいろいろ検討されました際に、一番苦労しましたのがこの飲食店の営業でありまして、特に食品衛生法の第二十条によりまして、営業施設の基準ということが設けられておりまして、そしてその説明には、「外食券食堂、一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、レストラン、カフェー、バー、キャバレーその他食品を調理し、文は設備を設けて客に飲食させる営業をいい、次号に該当する営業を除く。」こういうふうに規定してありますので、一応衆議院委員会では、これらの業態のうちから政令をまとめていくということに了承をいたしたんであります。しかし、実際問題といたしましては、ただいま先生のおっしやられたように、各種各業態がありますものを、一つ々々こまかく細分して政令を出すか、ある程度までこれをまとめて出すかということが、今後の行政官庁としての考え方だと思いますので、その点に関しては政府委員より答弁さしたいと存じます。
  89. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) お答えを申し上げたいと存じますが、まず飲食営業に関しましては、ただいま御指摘のように、いろいろ種類がございます。そのらち、私どもは、従来の慣行を尊重いたしまして、慣行とは、たとえばそば屋というようなものは現在すでに一つの組合を作っております。かような慣行を尊重いたしまして、しかもそのうちから特に問題の多い業種を業種ごとに選んで参りたいと存じます。たとえますれば、現在飲食店というものには二つの問題があろうかと存じます。一つは風紀営業との関係における、いわゆる売春等との関係におきまする問題点が一つございます。もう一点はこの現在の飲食店というものが、まだ家庭の延長としての飲食店の形態をとっておらぬものが多いために、共かせぎの若い夫婦等には、あるいはわれわれの家庭生活におきましても、家庭の延長としての飲食店が少いために、その性格がないために、国民に不便を与えている点が多いので、できるだけ、今後は対象といたしましては、家庭の延長としての飲食店というようなものを発展さしていきたいという点からそのように考えて、一つ処理をいたしたいと存じます。従いまして、とりあえずは、築地あるいはその辺にあります大きな高級料理店等あるいはキャバレー等を対象にする意思はございません。もっと大衆的なものを、従来の慣行にならいましてそれぞれ組合の一つの小分けの対象にいたしたいと存じます。その点は、たとえば旅館業につきましても、現在一般旅館もございますし、また、簡易旅館というようなものもございますので、これらは、それぞれ慣行上別な業態になっておりますので、これらは政令によって小分けをいたして参りたいと、かように考えておる次第でございます。
  90. 山下義信

    山下義信君 そうしますと、同じ料理店でも同業組合に入れない、この組合外にはずしていく料理店があると、こういうことでありますか。
  91. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 今のところは、私どもは、キャバレーあるいは築地、赤坂等のいわゆる高級料理店というようなものを、この法律の対象にあえてする必要はないという考え方を持っております。
  92. 山下義信

    山下義信君 今の政令のお考えを、具体的に各種の、ここに掲げられました飲食店営業、喫茶店営業等々につきまして、できるだけ、政府側の考えておられまする、提案者考えておられまする御腹案を、次回までに資料としてお出しいただきたいと思います。  で、今の問題に関連しまして、私はこの点であとは次の機会に譲りますが、食肉販売業及び氷雪販売業を特に本法の対象にお入れになりました真意について、この際御解明おきを願いたいと思います。
  93. 野澤清人

    衆議院議員(野澤清人君) 実は、昨日も亀山委員に御質疑がありました際に、はっきりしたお答えがなかったものですから、その解説と一緒に申し上げたいと思うんですが、実は、この環営法を立案します際の過程といたしましては、各種中小心素のうちでも、特に一般に言われる自主的な失業対策の業態というようなことが基本条件になっておる。つまり、官公署をやめて退職資金をもらって、簡単な営業で飯を食いたいというような階層の業態が主体になりまして調査が進められたのでありますが、その途上において、先ほども申し上げましたように、免許を持つものと、施設だけで許可になるものとの業態ということで、ずっと拾ってきました。それで、許可営業ということが主体になって法律そのものが立案されて参ったのでありますが、その当時に、あくまでもこの環営法の対象となるべきものは、大資本と弱小企業という対立のない業態というものが中心で選定されてきました。そういう発生過程からずっと参ったのでありますけれども、たまたま食品衛生法の問題に入りました際に、かなりの議論がありまして、どの業態をどれだけとるかということでありましたが、どうしても、この業種のうちで飲食店とか、あるいは喫茶営業というものは、当然これは選定しなきゃならぬだろう。そこへ強い業者の要請と言いますか、世間の要請と言いますか、食肉販売あるいは製氷等の問題が出てきまして、その業種が出ましたときには、かなりいろいろな複雑した議論も提示されまして、むしろ、これは団体法でいくべきものでないかという議論もかわされたのであります。かわされたのでありますが、少くとも食肉の方は、枝肉となった以上は一つの商品である。しかも、これの取扱いあるいは施設等をおろそかにしたならば、直ちに人命にも影響することであるから、何とかこれを環営法の中に取り上げろ、こういうお話も出、また、製氷関係に対しましても、取り残されたような零細企業であるんだから、これを何としてでも環宮法に入れてくれという要請等もありまして、これは、衆議院側において自民党と社会党との小委員会においても、むしろ、これは政令で発表するようにして、業種は指定しないでおこうじゃないか、こういう審議上の経過もあったのでありますけれども、反面、厚生省としましても、いろんな業態から陳情を受けて、これも入れい、あれも入れいということになってきますと、食品営業がちょうど法律できめられたものが二十種類あります。そういう陳情戦を受けたのではとうてい厚生省としても耐えられない、こういうことから、それじゃ最小限度にしぼろうということになりまして、両党相談の上に、飲食店、喫茶店営業以外に氷雪営業と食肉営業とを入れたわけでありまして、その性格から申しますというと、いろいろ議論の余地はあると思いますが、小委員会で数回もんだ結果の結論でありますので、ぜひ御了承を願いたいと存じます。
  94. 山下義信

    山下義信君 この点は、問題点が多々ありますから、次回に譲りますが、ただ本日の程度で切っておきますのは、食肉というのはどこまで入るのかという点ですね。氷雪というのはどこまでを言うのかという限界点はどうなっておりますか。
  95. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) 私どもが規耐の対象といたしております氷雪は、主として食用の氷雪でございます。食べる氷でございます。従いまして、魚を冷凍したりいたします氷雪は、私どもの少くともこの氷雪の対象外だと考えております。ただ、一点、限界点といたしまして、病人用の氷雪は、これはきわめて重要なものでございます。従来とも、われわれはたとえ夜間でも小雪が手に入るように業界を指導して参っております。なかなか徹底をいたしておりませんが、いつ何どきでも手に入るような営業方法をとらせたいと思っております。それから一方、食用の氷と冷凍用の氷との差は、中に空気を入れることによりまして白く氷ができますので、冷凍用の氷は必ずこれを明らかにするために空気を入れて作るように、それから食べる氷の方は空気を除いて透明にしておくように指導をいたしておりますが、これらの点も、今後組合の自主活動によって徹底をいたしたい所存でございます。一方、食肉につきましては、これは家畜市場、屠殺という複雑な段階を入って食肉体系になりますが私どもはこの場合はあくまで枝肉以降、枝肉取引が終った以降というふうに考えております。
  96. 山下義信

    山下義信君 そうしますと、食肉については枝肉は入らない、それから氷雪販売業については冷凍用の氷は入らない、たとえば冷蔵庫に使うようなものは入らないと、こういう後見解だということですね。
  97. 楠本正康

    政府委員(楠本正康君) はあ。
  98. 千葉信

    委員長千葉信君) 残余の質疑は、時間の都合で次回に譲らさせていただきます。本案に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  午後二時まで休憩いたします。    午後一時九分休憩    —————・—————    午後三時三十三分開会
  100. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員異動報告いたします。五月十四日付をもって久保等君が辞任し、その補欠として、高田なほ子君が選任されました。   —————————————
  101. 千葉信

    委員長千葉信君) 労働情勢に関する調査の一環として、公共企業体等仲裁裁定に関する件を議題といたします。  まずこの際御報告申し上げておきます。岸総理出席については午前中に御報告申し上げましたが、なお、池田大蔵大臣は目下衆議院の大蔵委員会に出席中のため、出席いたしかねるという連絡がございました。宮澤運輸相、平井郵政相はすぐお見えになるはずでございます。御質疑を願います。
  102. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 昨日も釈明いたしましたが、まだ不十分でありますからもう一度釈明させていただきます。  八日の社会労働委員会は、私としては閣僚懇談会終了長に出席するつもりでありましたが、閣僚懇談会終了後、総理大臣らとそのまま予算委員会に行ってしまいまして、社会労働委員会の審議に至大の支障を来たさせましたことに対してはまことに遺憾に存じます。以後十分注意いたします。
  103. 千葉信

    委員長千葉信君) なおこの際、村上総務課長からも発言を求められておりますので、発言を許します。
  104. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) ただいま労働大臣から釈明がございましたが、私当日、大臣出席につきまして、責任を持って大臣出席委員長にお約束申し上げておいたのでございますが、私政府委員として労働福祉事業団法の質疑に気持が奪われておりまして、閣僚懇談会終了後に連絡を十分いたさず、ために大臣の御出席を得ませんでした。審議に多大な御迷惑をおかけしましたことはまことに申しわけなく存じております。ここにつつしんでおわび申し上げる次第でございます。
  105. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは本件についての質疑に入ります。御質疑のある方は順次発言を願います。
  106. 片岡文重

    ○片岡文重君 宮澤運輸大臣に二、三点お伺いしたいのですが、昨日も労働大臣に対して、今回の仲裁裁定関係のある問題について御質疑を申し上げたのですけれども、十分私どもの納得できるような御答弁をいただくことはできませんでした。さらにその答弁の中には、運輸大臣、大蔵大臣に質問せよという御答弁もあったわけであります。それらの問題もあわせてお伺いしたいのですが、その仲裁問題に入る前に一つ御前見を伺っておきたいことは、先般国鉄労働組合の小柳委員長を初めとして多数の処分者を出しました。この処分の仕方につきましても、私どもははなはだ不可解な点が多い。大体元来処分というものは私はその人の行為に対して行わるべきものであって、いやしくも政治的な関係や思惑で、あるいは何らかほかに意図するところがあって行わるべきものでは断じてないと思うのですけれども政府として一応のワクを定めて、そのワクに当てはめるような処分を行なっている。これは明らかに行為に対する処分ではなくして、政治的な意図による処分と考えざるを得ないわけです。しかし、この問題についてもいずれお伺いをいたしますが、とにもかくにもそういう処分が一応行われて、組合側としても今後の組合運営についても十分な配慮をし、これからの闘争等についても十分考えていくことでありましょう。で、その結果として国鉄労使の間に必ずしも円満な運営が期待されるとは限りません。この国鉄運営の監督の立場にある運輸大臣として、将来この国鉄労使の間をいかようにみていこうとされるのか、どのように国鉄の労使を円満にやっていかせようとされるのか。そういう点について運輸大臣はお考えになっておられるのかどうか。お考えになっているとするならばそういう点について具体的に一つお聞かせをいただきたいと思います。
  107. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) このたびのような事態を惹起いたしましたことは、それぞれの立場において理由はあることと思いまするけれども、やはり国鉄当局者と労組との間に相互に十分な理解と信頼とがなかったことによってこういうことが起こったのではないかと思います。お互いに相手を理解し信頼することのできなかったということは、やはり過去におけるいきさつを見ますと、国鉄当局者としてももっと自主的に動いていきたい、自主性を持って仕事をやりたい、これも無理からぬことと思います。また、労組の側においてもやはりそれに応じて自分たちの立場をもっとよく理解させるということにしたいと、こう考えておられることと思うのでありまして、その点を私は今後両者の間に相互理解の上に立った信頼というものを築いていってもらえば、こういうことは漸次解消していくのではないか、こら考えておりまするので、そういう点について、今後でき得るだけの私どもの力の至せる部分はいたしていきたい、かように考えております。
  108. 片岡文重

    ○片岡文重君 郵政大臣は何か時間の都合で早く退席を希望されておられるそうですから、この際、一、二点やはりお聞きしておきたいと思います。  全逓の山村委員長初めとして、やはり相当の処分者を出しておるようであります。この処分の仕方につきましては、今も宮澤運輸大臣に申し上げたところですけれども、はなはだ私どもとしては不可解な点が多い。特にこの処分に当って政治的な配慮のもとになされておるという疑いが多分に持たれる。もし山村委員長初め、あるいは電通の委員長等にしてもそうですが、その行為によって処罰をしたというのであるならば、あらかじめワクを定めるということは一体どういうところから考えつかれたのか、行為を見て、それによってかりに処断に値いするものだということであるならば、極端に言うならば、全職員にことごとくその処断に——不法行為をするならば処断に当るかもしれない、あるいは一人も処断をするに値いしないかもしれない、その一人々々の行為を克明に検討して初めてこれは処断に値いするかいなかが決定されるであろうし、その処断に値いするという決定がなされて初めてその軽重も判断をされてくるでありましょう。おのずから数もきまってくるはずであります。全国数万という組合の行動に対して、そう短かい期間に解職とか停職とか減給とか、直ちに本人の生活に脅威するような残酷な処分がなされるということは、どう考えてみてもそれに対する慎重な態度というものが足りないのであり、言いかえればあたたかい気持というものがなかったのではないか、一体どういう程度にその一人々々についての検討をされたのか、その点を一つお伺いをいたしたい。  それからいま一つは、今も宮澤運輸大臣にお伺いをしておったところですが、この不当処分によって、労使双方の間にきん然とした融和した気持はなくなっていくであろう、むしろ一そう尖鋭化して、その労使の円滑な慣行を破壊するようなことがあっても、期待する方向に向うようなことははなはだ困難ではなかろうか、一そう公共企業体という性格にマイナスの面が多くなってくるのではないかと考えられます。そういうことがあっては、政府がしばしば言われる言葉が、円満な運営を期待するとか、国民の迷惑をなくするとかいう、こういうこのきれいな言葉というものは口頭禅に終って、結果はむしろ事業の円満な遂行にも支障を来たすであろうし、場合によっては、さらに国民にも大きな迷惑を与えるようなことがなしとしないでありましょう。私たちはやはり労使の、特に労働者諸君の善意ある協力がなければ日本の今後の発展というものは期し得られないと思う。この労働者諸君のあたたかい協力を得るためには、やはり政府は善意と誠意をもって臨まなければなりますまい。しかるに今度とられた措置を見れば、いささかもそういう書意もなければ、労働者に対する政府の誠意というものも認められない。一体今後どういろようにしてこの労使の関係を円満な方向にもっていこうとされるのか、そういう点についてお考えをなされたことがあるならば、一つその具体的にこういうふうにやっていきたいという御所見を伺いたい。
  109. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) お答え申し上げます。今回の処分は決して御指摘のような政治的な圧力、政治的な配慮によって処分をいたしたものでは決してございません。今回の処分というものは、郵政大臣といたしましては十分考慮をいたし、独自の判断のもとに立ちまして今回処分をいたしたのでございます。そこで、御指摘のように、ワクを最初からきめて、そのワクの中で範囲をきめ、そこで処分をしたというようなことも、これも当然ございません。慎重に慎重を重ねて十分処分をいたしたのでございまして、御指摘のような、ワクをきめて、そのワクの中で何とか工夫をして処置をしたということは決してございません。  それから一人々々の問題をいかにやったかという問題でございまするが、これは関係当局——関係当局とは郵政省における事務当局、その他こうした処分をつかさどる関係者が十分一人々々の行いを検討いたして、今回の処分の結果を見たわけでございます。  第二の御指摘の点、今後こうした多量の処分をして労使が円満にいくか、この点でございまするが、私といたしましては、郵政大臣に就任当初、労働者の幹部諸君とひざを交えて、今後の労使はこうあるべきであるという話し合いをともにいたし、ともにお互いの立場になって理解をし合い、今後円満に労使の運営をやっていこうではないか、こういう話し合いもいたしておりますし、また、私自身といたしましても、労働問題は今までの郵政大臣に決して劣らないという立場において真心から労働問題に対しては取り組んでおるので、その点は労働者各位も十分私の意を了とされておるように私は存じておるのでございます。
  110. 片岡文重

    ○片岡文重君 今後の労使の円満なる慣行樹立のためにただ誠意をもって話し合うということだけであって、それ以上に何も考えてはおらぬということですか。
  111. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 私は、今後はますます労使は相ともに手を携え、お互いの欠点があれば欠点はお互いに反省をいたし、十分研究の余地があれば研究の道を見出だす、ともに相語る時間をたくさんに持つという方法において、今後平和裡に問題の解決をはかり、円満な労政をやっていきたい、かように念じております。
  112. 片岡文重

    ○片岡文重君 労使の間で話し合いの時間を長く持って了解をさせるようにしていきたい、長い時間を話し合うことが目的ではなくて、またそれがねらいではなくて、私はやはり労働者諸君が郵政大臣信ずるに足るという何物かを具体的に与えられなければならないと思うのです。あたたかい握手をしようといって手を出しても、その手の中にイバラが隠されておったのでは何にもならない。握手をしようといってわき見をして舌を出されておったのでは何にもならぬのですね。仲裁裁定の取扱いを見ましても、この主文第一号上を、示された三項目を完全に一体実施しているだろうかということになれば、あなた方はしばしば実施したと言っておりますけれども、この主文には、お読みになればおわかりになるごとく、労使協議の上実施せよということを言っておられます。一体どの程度の協議をしたかということですけれども、ほとんどこれは協議したことはないといっていいぐらいでしょう。しかもその内容には、初任給の問題にしても、その他の問題にしても、実際には完全な実施をしておらない、こういうことで誠意をもって一つうまくやろうではないか、なるほど政府としてはうまくやろうではないかということは言えるかもしれませんけれども、言われる方の身になってみれば、当然与えられるべきもの、当然に受諾する権利のあるものが与えられないで、そうして気に入らなければ段平を振りかざし、常に推力をもって弾圧し、処分をするという、こういう態度では残念ながら労働想念も出された手に握手を与えるわけには参らぬと私は思う。で、将来、従来のような態度をもって誠意をもってきたというようなことであるならば、将来の誠意たるや残念ながら労働組合は認めるわけには参らぬでありましょう。そういうことじゃなしに、これからの誠意というものは具体的に労働者のやはり不満足であっても一応了承する程度の協議と妥結がなければならぬと私は思う。今後そういう少くとも百パーセントの満足は与えられなくとも、調停なり、仲裁裁定に対しては、特に仲裁裁定等の場合には、労働組合の諸君が一応は納得するというところまでの話し合いをしていくぐらいの誠意をもっておるのかどうか、そういう点を私はお伺いしておるのです。
  113. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 労使ともにおのおのの立場がある、また、おのおののやはり問題には限界点というものかございます。そこで、双方はお互いの立場を理解し合って十分立場々々になって、その範囲の許す最大限をお互いに手を握り合って、しかしてものの解決をはかっていくということで私は事が足りると思うわけでございます。そこでわれわれの許されておる範囲の最大限誠意を示し、また、組合側でももちろんそうした立場におありだろうと思います。そこはいわゆる相互理解と誠心誠意の気持をお互いに披瀝しながら十分話し合ってものを解決に導いたなれば、物事は決してむずかしい問題はございません。だから私は労使の問題は、お互いの立場になって理解をし合って、真心を示し合うということにおいてのみ解決ができ得ると強く信じております。
  114. 片岡文重

    ○片岡文重君 抽象的なそういう誠意とか話し合いとかいうことではなしに、そういう言葉は今までもう何十回、何百回も繰り返されてきた言葉です。しかし、そういう言葉では、現実に不当処分を出しておるような結果を生んでおるのです。そういうことを私は聞いておるのではなくて、ほんとうにこれからそういう処分者を出すようなことのないように、労使慣行を樹立しようとする決意が今日所管の大臣としてあってしかるべきだと思う。つまり自分の所管下にある労働者の生活の面を考えてやらなければならない。ほんとうに自分の所管する事業が国民の納得するような運営をされなければならないという責任感がおありになるなれば、今回行われた処分というものに対しては、私は十分自責の念があってしかるべきだと思う。真にそういう責任感がおありになるならば、そういう抽象的なことではなしに、たとえば労働組合との間にさらに何らかの機関を設けるとか、あるいは少くとも今日極端なといっても差しつかえないほど政府並びに当局に対する不信感を持っておる労働組合に対して、将来の仲裁裁定の取扱いに当っては、たとえ不満足ではあっても一応の了承を得られる程度の話し合いはする、協議はするというくらいのやはりお約束はあってしかるべきだと思う。つまりそういう責任のある、しかも将来具体的に労働者諸君を納得させるようなことについてお考えはないのかどうかということをお尋ねしておるのです。
  115. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 私の立場といたしましては、決して処分は喜んでおりません。また、今後ともかような多量な処分者を出さないことを心から念じておるのでございます。従いまして、将来ともこうした問題が起らないように心がけることは、これは当然でございまして、御指摘のように、何とか処分が起らない、楽しい労使の円満な慣行ができ上ることを念じておるのでございまして、将来ともそういう事柄において研究すべき問題がございますならば、大いに検討いたして御期待に沿うような線で考えてみたいと思います。
  116. 片岡文重

    ○片岡文重君 抽象的なことを繰り返しておられたのでは、もう時間が惜しいので長いことは言いませんが、今回私ども立案者の一人となって郵政関係諸君の退職年金制度を改正する法案準備いたしております。こういう問題は、当然政府が先頭に立って御処置なさってしかるべき問題だと思う。特に平素非常な薄給におかれている従事員諸君が老後になって生活の保障も与えておらない現状においては、特に国鉄等においては、すでに昨年、これも遺憾ながら議員立法ではありましたけれども、この共済組合制度というものが制定されました。従来から比べれば、若干の進歩はあるようですけれども、郵政省等にしても、こういう点についてはやはり歩調を合せて、当然政府が一歩おくれたことを恥じて、さらにいいものを立案し、これを上程すべきだと私は思うけれども、そういう措置もとっておらないようだし、おそらくお聞きになってもおられるかどうか疑問だと思う。そういうことで果してこれが誠意のある態度だと言えるでしょうか。その一例をもってしても私は具体的に、真実に従業員の生活というものを考え、従業員の気持というものを考えて、今後の労働問題を処置していこう、労働者の希望というものを、要求というものを虚心たんかいに胸襟を開いて聞いていこう、こういう気持になれるかどうかということは、私は疑問だと思う。もし真実に郵政大臣がそういうお気持を持っておられるとするならば、この際、将来に対する約束が与えられて私はしかるべきだと思う。しかもその約束たるや、具体的な一つの事例を示しての約束をしろというのではありませんけれども、少くともこういう場合には、この程度のことはするぞ、こういうことぐらいはなければ、組合にとってはこれは誠意だ、話し合いだというような、今までと全然変らない言葉で説明をされたのでは納得できますまい。少くとも将来は了解をし合って進む、相手方の了承ある上に立って処置をしていく、こういう態度はとられてしかるべきだと思いますが、郵政大臣は、そういう点については、やはりお考えになれませんか。
  117. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 御指摘の点は、十分郵政大臣といたしましてもよくわかりますので、今後大いに組合側の御意見も聞き、十分善処していきたいと、かように思います。
  118. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 郵政大臣と運輸大臣にお伺いしたい。私は公労協の関係法規があって、それに基いて三公社五現業の労働問題が行われる。この委員会で私たちが労働大臣中心に、たとえば公社の問題を論じておると、公社に対しては経済上、経営上、一切の権限がまかされておる、こういうことを言われておる。私はそういう工合理解しておる。そこで問題は、先日首切りの発表なんかがあって、この委員会でもいろいろ問題になりました。労働大臣が釈明されたことも事実ですが、そういう格好でまかしておられるというこの事態が、どうもぼんやりぼやけてしまって、どうもわれわれになかなか理解ができない、監督権が片方ではまかしておって、給与の問題なんかを一つとってみましても、たとえば公務員は現員現給制と、三公社五現業の方では総ワク制によって賃金、経営権の一切をまかしておるのだから、建前としては労使の問題というのはまかされたところで、それがきまっていくというのが私は事実だと思う。そこで、いろいろ新聞その他でアベック闘争が云々というような問題が出てきたり、当局にも、労働者にも、責任があるというようなことが、政府方々の口から出てきたり、こういう格好で今日までの経過をたどってきておる。片岡君の質問も、そういうところに問題点の追及が今あったと私は思うのです。それでたとえば今度のやみ給与云々というような問題が出ていると思うし、今までの仲裁裁定というものが、この前二十幾つ実施されているという発言が、政府委員からの答弁でありましたけれども、実際問題として、仲裁の概念からいって、仲裁というものは尊重するのじゃなしに、それに従らというのが国際概念だと思う。ですから、そういう概念を明確にこの公労法に書きながら、実際上の実施ということになってくると、予算上資金上ということでそこでまたぼやかしてしまう、それで起ってくる労働者の怒りや抗議に対しては、法に照らして云々ということで処分をする、当局には何らその処分をしない、責任があるというなら、責任はどういう格好でとったかということを追及すると、これから責任の問題は調べるのだというような労働大臣の答弁がある。ますますもってわれわれはわからない。労働者にしても、たとえば今度やみ給与云々という問題が起きておりますけれども、独立して経営をやり、経営一切をまかされているところにおいては、国民のために業績をあけなければならない、労働者自身も、一から一半、二という工合に、物を作り上げるところに勤労の喜びがあり、生活への希望があり、国の経済の中で生きていこうという熱意が私はあると思う。そういう形で一切政府はまかしてあると言いながら、そこできめて、夫施したことはやみだといって、働かすことはうんと働かすが、それに報ゆるものは一銭たりとも、予算上資金上ということで出してはいかんというのか今日の状態だと思う。国鉄の二十三日の状態なんかをつぶさに検討してみると、これはもう、一つの歴然たる例だと私は思うのです。私はそういう格好の状態を変えて、正しい労使関係におこうということをしないで、そうして労働者の運動に対して頭から押えたり、断圧をしたりしていくという物の唱え方が、どうしても私たちにはわからぬ。そういうところが今の質疑の私は中心点だと思っているのだが、今後よくやります云々ということじゃなしに、私は今のような法律的にも具体的にも、労使関係、企業のあり方と言いますか、そういう関係で、ただ現象が起れば労働者は何をやられてもいい、ちょっとでもそれに不服を言ったり、活動すれば、弾圧や処分が出てくるというような格好で、うまくやります、うまくやりますと言ったって、さてどうやるか、私はそこのところあたりを、今後どうやっていったらいいかということの見解を聞きたい。
  119. 平井太郎

    国務大臣(平井太郎君) 御指摘の問題は、公社の問題かと思います。今回電電公社の処分の問題につきましては、郵政大臣としては監督的な立場に立ちまして、公社自体の立場から自主的に判断、処分をし、郵政大臣にそれを示したわけでございます。従いまして郵政大臣といたしましては、監督上の立場においてそれを検討をいたし、了承いたしたわけであります。決して郵政大臣といたしましては、圧力を加えたり、また、自分の意見を十分並べたりすることは、今回の処分上の問題につきましては決してございません。あくまでもやはり公社自身の問題として、処置をさしておりますから、御心配のような御懸念はないと思います。
  120. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 先ほど片岡さんにお答えした通り、私は今後の問題としては、当局者と労組の相互信頼のできるような道を開いていくということに一つ考えていくことが重要じゃはいかと、こう考えております。
  121. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の運輸大臣のお答えでいきますと、当局と組合との間に正常な、理解できる労働関係ができるように努力をしたいとこうおっしゃるわけですね。そのことはだから今のような労働者だけを弾圧したりするような状態を作らず、これを解消しようということをしたい、こういう工合におっしゃるわけですね。
  122. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) まあこういうことを申し上げては当然のことで、当りまえとおっしゃるかもしれませんが、こういう紛争が起ることは、私は一方だけが悪くて一方だけがいいという場合には起り得ない。やはりそれが起るからには、両方の立場から見て、自分の立場がいい、正しいんだ、こういうような誤解から生じてきていると思うのであります。今回の問題も私は労組のやったことは全部正しく、政府並びに当局者のやったことは全部間違いだというようなことはやはり私は行き過ぎた見方だと思う。両者とも反省をしていくところに相互の信頼というものが起きていくので、そういう意味におきまして、どちらも自分の行き過ぎを改めていくということに努力していかなければならぬ。その道を開いていくということが必要であろうと考えるのであります。たとえばその意味におきまして、このたびの、もう私は岸内閣といたしましては、私まあ労働関係事情に暗いのでありまするけれども、ここでお話を聞くと、今日まで仲裁裁定並びに調停というものを実施したことはなかった、今日まで。しかし、このたびはいろいろな御議論がありますが、私は完全に仲裁の本旨に沿って実施したと思っておるのでございます、私は。それですから、そういうことも一つやはりこのたびは労使の問題の上に新しい行き方を政府は示したのであります。そういうような意味におきまして順次それを相互においてこれを理解し合っていくことが必要ではないかと、こら考えております。
  123. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 運輸大臣は今お話を聞いていると、問題が起るときには両方の責任がある。そういうところから出発するんだとこう言われた。今ここで労働者だけが全部よく、政府だけが全部悪いというような議論をここでしているわけじゃないのですから、今運輸大臣は双方にある、双方が反省しなきゃならぬ、こういうことをおっしゃいました。双方が反省するということは、当局、政府、片や労働者だと私は思うのですね。その労働組合には今も郵政大臣は、あれは公社がやったことだから云々、政府は、と言われましたけれども、運輸大臣の立場もそういう御釈明があるかもわかりませんけれども、私は両方に責任があるというなら、政府や当局の責任はどういう工合に、労働組合だけを処分されたんだから、政府や当局の責任というものはどういう工合にされたか、それをお聞かせ願いたい。
  124. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) ただいまの私の申し上げた問題と、責任という問題になればおのずから違うと思うのであります。たとえば私どもは責任という見方もいろいろありますが、国鉄を監督する立場にある運輸大臣としてこのたびの事態からして国民に非常な迷惑を及ぼした。そういうことに対して、お前は責任を感じないのかと言われれば、私はそういうことに責任を感じませんとは申し上げられないと思うのであります。自分の監督をする国鉄の事態からして、乗客の上に、貨物の上に、ことにこの社会秩序もやはりこれによって相当乱されている、こういう事態が生じたことに対して、国家国民に対して御迷惑をかけたその責任をと言えば、私は感じないとは思わないのであります。しかしながら、この間からこの国会において御審議になっておる、たとえば二十三日の抜き打ちストに対して政府並びに国鉄当局に責任があるかというと、私どもはその点に関しては自分のしたことに手落ちはなかったと思っておる。
  125. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 二十三日のときに責任がなかった、で、どういう工合のところまでが責任があったかなかったかということを私は理解がしにくい。局と組合との間に二十三日に業績賞与を支払うという。土曜日というのは半どんだと思うのです。ね、半どんというのは大体午後休み。こういう格好。ところがですね、二十三日になってみてもそり支払いが行われない。いろいろの生活上の予定したそのお金がもらえないから、労働者がこれは困るじゃないかということを言っていく。ところが、当局との間では、いや、払う予定もして準備もしておったが、大蔵省が払えと言わぬから払えないのだということで、あの二十三日の問題は自然発生的に起ってきた。国民に迷惑をかけたことについては、それはその面から言って全体のあの両方から起きたことについては申しわけない問題でありますけれども、その問題のよってきた根源というものはそういうことであって、夜の五時ごろになって普通ならば休みの状態、時間外の状態の中でその問題が、その賞与が払われたというこの現実ですね、こういうものでも労働者に責任があって、当局の責任がないと、こういう工合におっしゃるわけですか。
  126. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 私はたびたびこのいきさつは申し上げたと思いますが、あらためて御質問のこの機会ですから、もう一度その当時の事情を申し上げますが、三月十五日に業績手当を出す問題について、この十六日、十七日の実力行使について、国鉄当局者と組合との話し合いがありました。一で、私はそのときは仲裁にかかっておるときでありますから、従って、国鉄の総裁が団交をする場合の参考のために、政府のというか、私自体の気持を総裁にお伝えしたのであります。それは政府仲裁裁定を誠意を持って尊重すると言っておるけれども、これを私の立場から具体的に言えば、完全に実施するつもりだ。そり腹を持って一つ十六日、明日からの事態を惹起しないように話をしてもらう方が適当であると考える。こういうことを申し伝えたのであります。その結果であるか、まあ諸般の他の事情もありましょうが、その団交が妥結いたしまして、十六日、十七日の……十六日問題は解決いたしました。それから十八日ころに至ってその業績、私は業績手当というものは払う時期をそんなに制限されるとは思っておらなかった。しかし、年度末にもで払うものだろうと思っておった。ところが、十八日でしたか、十九日ころになって、二十三旧に払うという約束をしてあるのだと。大体二十三日に払うように政府のつまり認可を得るようにしておるのだと、こういうことを運輸省の事務当局から聞きました。それは払えるのかしらんと言った。ところが、いや払うについては、やはりこれは大蔵省とも話し合いをしなければならぬ点があります、資金源の問題で。そうですか、じゃあ話し合いをして払ったらいいでしょうと私は簡単に言っておりましたら、事務当局も、この話し合いは別に困難なことはないというような意味で、平然としてその交渉を続けて話し合いをしておったそうであります。しかるに、二十二日の夕刻に至りまして、夕刻でもない、夜の八時ごろですか、電話がありまして、聞くというと、あの話し合いについて、どうもまだ大蔵省とはっきりつかないところがある。これは大臣に話をしてもらわなければいけないと思うからということですから、それなら話をしようというので、池田大蔵大臣に電話をかけたところが、留守で、十時ごろ電話がかかってきまして、その話をしますと、いや、ちっとも私は知りません。さっそくきょうといってもいけないから、あしたの朝早く会いたいというので、八時半に院内において、大蔵大臣と両次官を連れて会いました。その結果、大蔵省と私の間に、大体これはきょう払うということに大蔵大臣と話をきめて、ただ両次官同士で、もう少し業績手当で払う分と、運輸大臣一個の弾力条項で出すべき資金とり計数の関係があるので、その関係だけをきめたら、もうそれでやりましょう、おやりなさい、私の方はかまいませんと大蔵大臣は言った。それが九時前であります。そこで、私は国鉄の当局者にさらに電話をしております。しかし、二十二日の晩においても、私は交渉において、大蔵省が不服ならば払えないなんということを一言も言ったことはありません。大蔵省が聞かないのは間違いで、聞かせるというのが腹でありますから、私はですから事務当局に向っても、大蔵省と話がつかないからこれがひっくり返るなんということは、夢にも考えない。どんなことがあろうとも、払うと約束した以上は、私は払わせる。私はそのときに社会党の井上君その他が見えたときに、これがもしのなたがそれでは実現すると言って、それで政府が最後に聞かなかったらどうします。私は政府が最後に聞かなかったら、自分は辞職するなんというけちなことはしません。政府をつぶしても私は聞かせるまでは聞かしてみせますと、こう言って、井上良二君や何にお話しをしておる。それで私まあ言ったのであります。従って、私は自分の信念として、大蔵省が聞かないからこれができないなんということは、夢にも考えない。聞くことは当然のことだ、こら考えておりましたから、払うことは払うんだ、そんなことを心配することはない。しかし、それで間違いが起るといけませんから、九時前に国鉄当局者に電話をさせて、払う、しかし、時間がちょっとずれるから、私は昼ごろはできると思いました。しかし、もし間違いがあると、こういうことはいけないから、私が掛け値をして、午後五時と私は言った。午後五時までには必ずちゃんと出せることになるから、心配をしないでよくそのことを伝えるようにということを、国鉄の当局者をして、朝の九時から言わせました。しかるに、その言い方がどうであったか、十時になっても、十一時になっても、もう払えないとかいうようなことが伝わったそうですが、そういうことのあるべきはずがないと私は信じております。それから三時になりまして妥結いたしましたから、では三時四十分に国鉄の当局者に払うように手続をさせる、その結果、五時に払ったわけでありますが、そこで今あなたのお話にもありましたが、土曜日であって、その日の給料に、その日の袋に入らないとか、抜けたとかいう話がありますが、私は当時、午後五時と言った。常識から考えれば、二十三日に払うということをはっきりしさえすれば、金は二十六日になろうが、二十七日になろうが、賞与などというものは、一日や二日、払うときめたら、事実渡すことのおくれることは一向差しつかえない。これはもう社会的の、われわれの生活の上の常識で、賞与が一日おくれた。ただそこに私は相互信頼のなかったということは、いかに国鉄の労組の人々といえども、ほんとうに払うということにきまったならば、一日おくれるからといって、そのためにあの事態を惹起するということはないはずだと私は思っております。その点は、とにかく給料が一日おくれるということから、もしくは二日おくれる、まあ二十四日は日曜日でありますから、結局二十五日になるわけです。二十五日になるわけですけれども、普通常識のある、普通当りまえの何からいえば、それが月曜日になったからといって、あれだけの事態を起さなければならぬはずは私はないはずである。その点は、私はあれだけの事態を起すには、やはりその以外に、何らかの意図があったのか、また、それを十分に承知してなされたのかは知りませんけれども、とにかく私どもはそういう事態の起るべきはずはないことである。ですからその意味におきまして、私はそのことから、私どもがその事態を起した人と、法的な違反を起した人と同一の責任をとらなければならぬということは理解に苦しむ、こういうわけであります。
  127. 片岡文重

    ○片岡文重君 宮澤運輸大臣の私はお話を伺って、今までの大臣にないところを一つやはり私は伺いました。その今のお話で、私はやはりその伺った大臣のお気持を十分了としてこの御質問を続けたいと思う。ということは、大体今までの大臣というのは、責任をとれといえば、やめるというのがこれは常識のようでした。しかし、政府をつぶしても払う、こういう決意をもってこの交渉に当って下さったということを、私は実は今初めて知りましたが、そういうお気持をもってこの二十三日の事態をながめておりましたならば、なるほどそれは労働組合の諸君がわからなさ過ぎたとお考えになったかもしれない。けれども、それだけのお考えがあるならば、もう一歩進んで、なぜこれだけの気持が組合員にわからないだろうか。労働組合の幹部といえどもやはり人間ですから、これは人間の気持のわからぬはずはないんです。なぜこれだけの気持がわからぬのだろうかということをお考えになって下されば、従来保守党内閣がとり来たったところの労働政策というものに、一応御検討の目を向けていただかなければならぬと思う。さっき大臣がいみじくもおっしゃったごとくに、従来の内閣では、仲裁裁定の取扱いに当って、予算措置を講じたことは、ただの一ぺんもなかったはずです。これはそこにおいでになる労働大臣も、この委員会の席上でおっしゃった。今まではそういうことはなかったが、今度は予算措置を講じますといって、ここで言明をされた。ところがその言明は、はしなくも、閣内では相当大きな問題になったということを、私はあとで伺いました。それほどに今までの内閣というものは、この公労法というものをじゅうりんしてきている。ですから、しかもそのじゅうりんするに当ってね、いつも公労法をじゅうりんするといってじゅうりんしたためしはない。公労法の精神に従って、これをできるだけ尊重しますという言葉を残してじゅうりんをしてきているのです。ですから労働組合としては、政府の言うたことは、目の前に現実となって現われてこなければ信用することはできなかったのです。そういうことをやはり十分にお考えになっていただきたい。  それからもう一つは、ここで二十三日の話を私はまた繰り返そうとは思っておらなかったんですけれども、今、大臣から御説明ですから、この際せっかくの機会ですから、一つ労働者の家庭経済というものの状態もやはり知っておいていただきたいと私は思う。二十三日に払うということであれば、二日や三日おくれても、また、賞与とか業績手当というものはおくれても、これはわれわれの生活の常識だとおっしゃいましたが、国鉄の給料は、今八日と二十三日に支払われております。そうして八日の給料では、前半の全部が払われる。これには税金も引かなければ、購買その他でもって買った物品の代金も引かれない。月賦のものも引かれない、全部が渡ってくる。ところが、二十三日の給料では、税金から、共済組合の掛金から、購買物品の月賦の代金から、一切を差し引かれるのです。極端なものになると、二十三日の給料では、袋だけもらうんです、中身は入っておらない。さらにひどいのは、二十三日の給料袋に、赤字で書いた数字が書き込まれる。これはつまりマイナスになってしまったんです。ですから八日の給料でこのマイナス分を支払うことになる。そうでなければ、その日にこっちから持っていかなければならない。二十三日の業績手当、期末手当というものは、新しく進学する小学校の子供のランドセルや服やくつの金、あるいは中学や高校の進学、入学等の子供たちのものを買わなければならぬ。従って、二十三日に支払われるということの業績手当は、前々からもう十分に予算の中に組まれておる金なんです、職員にとっては。しかもこれが払われないということになっておれば、そこまでは厳格には考えてなかったでしょう。けれども、これは大臣もご存じでしょうが、総裁と労働組合委員長との間に取りかわされた協定によって、三月二十三日に支払うよう認可の手続をとるということをはっきりいってある。二十三日に支払うようにということをいってあるのです。従って、組合では、また、当局も二十二日の給料袋に一緒に入れますよという約束をしてあるのです。そこで職場に出る人たちは、特に二十三日に明け番になる者は九時か十時には職場はひけてしまう、それまでに手に入らなければ三時、五時に渡されても、それはその日に入らない。二十五日に出ていかなければ経理関係の者が出てこないのです、手に入らない。当然従来の例からいえば、二十三日の日に支払うといわれるその二十三日の朝に、それがもらえるものとして職員は出ています。二十二日の日に、二十二日の朝出勤するに当って、その小学校に入る子供たち、中学に入る子供たちには、明日の朝お父さんは何時ごろ帰ってくる、十時ごろには帰ってきて、お前たちを連れてランドセルを買いにいくよ、くつを買いに行くよという約束をして職場に出てきておるわけです。しかもそういう人たちに限って、給料袋の中にはその業績手当がなければランドセル一つ、くつを一足買うような金はないのですよ。そういう状態で出てきた者が、きょうは当局の手落ち、政府の手違いによってもらわなかったということで、果してその父親たちがわが子のところへ帰っていけるでしょうか、こういうやはり職員の苦しい家庭経済というものをやはり御認識いただきたいと思うのです。そういう状態の中に生活をしておる職員が、いつもいつも誠意を持って尊重すると言いながら、じゅうりんをされてきたこれまでの事情をやはり御検討いただき、お考え下さるならば、労働組合のみを責めるということにはお考えがならないのじゃないかと思うのです。確かに大臣がおっしゃるように、私は政府ばかりが悪いと言っておるのではありません。労働組合も政府もともにやはり日本の経済の発展のために、日本の発達のためには、ともにやはり手を携えてやっていくべき考えは持っております。また、そうでなければならぬと思うのです。そういう気持を持っておって、なおかつそれが実施、実行できないからには、そこに実行できないだけの問題があるに相違ない。その実行できないということは信頼をすることができないからということです。双方が円満に労使の慣行を樹立しようとするならば、やはりそこに信頼がなければならぬ。信頼はやはり誠意によって生まれると思うのですよ。現実に誠意を示さないで、そうしてしかも実力行使をすれば、一方的に権力を振り上げて処分する、こういうやり方では残念ながら円満な何は、労使の慣行というものは樹立できないと思います。で、先ほどから予算委員会あるいは運輸委員会あるいは衆議院の各委員会等においても宮澤運輸大臣は二十二日のいきさつについてはしばしば御説明になっておられます。また、ここで御説明になられました。その御説明を伺っておっても、少くとも運輸大臣の御説明になっておる点は、国鉄並びに運輸大臣、大蔵大臣という当局と政府間のいきさつであります。つまり二十三日の所定の時間に支払いできなかったといういきさつを述べておられる。これはです、明らかにその所定の十時なり、十二時までに支払いできなかったという事態を引き起したいきさつを述べておるだけであって、それが労働組合に少しも責任を負わすべき責任であるということには私はならないと思う。そのいきさつはあくまでもいきさつであって、そういう事態になったところの責任というものは、やはり政府として負わなければならないでしょう。当局としてやはりこれは考えるべきだと思うのです。しいて法規上そういう責任がないとおっしゃられても、少くともそういう事態になった、たとえば今大臣は支払い時期も御存じないし、そういうとにかく大臣もそういう詳しい事情を御存じなかった、大蔵大臣も二十三日になるまでそれを知らなかった。こういう手違いというものは明らかにこれは政府部内における手違いである。従って、そういう手違いを来たしたということについての道義的な責任はやはり負わなければならないでしょう。私は当然これは組合を処断する以上、むしろ権力を握っている立場としては、組合を処断する以前にまずみずから反省をし、その反省の実を示すべくその責任を負うて、しかる後に組合処断の挙に出すべきが心ある政治家の態度であると思う。しかるに、再三再四その経緯のみを説明されて、そういう経緯をたどるのやむなきに至った責任というものを大臣は少しもお考えになっておらない。これはせっかく政府をつぶしても支払ってやるという、その男一匹の気概をもって臨まれたその大臣としてはなはだ不可解だと思う。将来円満なる労使の慣行を樹立していこうというお気持がもしおありになるならば、この際、私は率直にお気持を披瀝されて、組合に対しても遺憾の意を表明されてしかるべきじゃないかと思うんですけれども大臣はまだそういうことにはお考えにならぬでしょうか。
  128. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) お話しの通り、二十二日の晩に至るまでのこと、その他のことは、それは政府部内の問題であります。政府部内の問題であります。しかし、政府部内の問題でありますが、私が十人目になって二十三日に払うことを知ったということがそれはおそ過ぎたということでもないと思います。また、大蔵大臣が、事務的にできてしまえばこういう協議が済みましたという報告くらいは受けて、何もその晩まで大蔵大臣は知らなんでも、当然できるべき事務的のことで、できなかったから大蔵大臣の耳に入りましたけれども、できてしまえば事後に報告するくらいで済むことと思うんです。できなかったから私と大蔵大臣と話をしたというのが二十三日の朝になったわけです。従って、そのいきさつを承知すれば、国鉄当局者はそれを労組に話さないわけがありません。また、話したと言っております。直ちに電話をもってそれを通じて、もう払うことになるから待てと、こう言った。それから二十三日の、今の土曜日であり、組合員なり、職員の方々が八日と二十三日に受け取る給与のうち、二十三日はそういう事情であるということはお話しの通りだと思います。また、三月の末に当って、家庭の事情によってお子さんを初め、入学者その他についての心持も今あなたのお話しの通りだと私は思います。しかしながら、それは私どもの常識から考えれば、その日に渡してくれないとそれは困るじゃないか、おれたちの立身はないじゃないかといって駅長なり、経理の当局者に苦情を申し込んでいくという程度のことが私は人のすべき常識、それを汽車をとめる、荷物をとめる、まあ今日戦後でありますけれども、戦前、私ども古いからですが、汽車のとまるなんということは夢にも考えられなかった重大事態であります。今日においてこれがそういう事柄で行われるということが、私ども古い頭かもしれませんが、常識をもってしてはどうしてもその行動には理解できないのであります。
  129. 片岡文重

    ○片岡文重君 先ほど私申し上げました通り政府が今までその約束をし、また、表明せられたことを具体的に実施されて、労働組合というものが、政府が一たび言明をすれば必ずこれは実施されるものだという確信を持っておれば、何を好んでそういう実力行使なんということをするものですか。労働組合がやはり実力行使をするためにはそれだけの労力も用い、金もかかるんです。何を好んで世論の非難をあびるようなことをするものですか。やはり今もなお組合の諸君は、はなはだお気の毒ですけれども実力行使をやったから二十三日おそくなっても出たのではないかと考えております。そういう今日不信の念を抱かせておいたということにも——これは宮澤運輸大臣の御責任ではなくとも、従来の歴代保守党内閣が誠意を披瀝しておらなかった、現一実に具体的に実施しておらなかったというところにその原因があるのですから、この点についてもやはり十分にお考えになっていただかなければならないし、かりに今の運輸大臣お話で、大蔵大臣と運輸大臣との間に手落ちがなかったとしても——私はないとは思わない。それは運輸大臣としては相当な御努力をなさったということは今の説明で率直に私は認めます。大臣のお言葉をそのまま私は了承をいたします。けれどもですよ、そういうスムースに二十三日の所定の時間に所定の給料袋に入れて渡されるような事態にならなかったことについてもう少し考えていただかなければならぬじゃないでしょうか。この労働組合の諸君が、また、国鉄当局が二十三日には支払うという言明をされておるのですから、かりに大臣の言われた通り政府部内に責任がないとしても、その見通しを誤まった、しからば、国鉄当局の責任はどうなりますか。これはやはり手落ちがないとは言えないでしょう。二十三日のその所定の給料袋に入れることができなかったという、こういう事態に立ち至った、しからば、国鉄の手落ちということはどうなるのですか。見込み違いということについては大臣はどうお考えになりますか。
  130. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 私は国鉄の当局者がこの春闘を初め去年から引き続いて業績手当を支給することに対して、世間から言えば、アベック闘争だとか、やみ給与をやったとかという実に心外な言葉を投げられておるにもかかわらず、それをがまんしてあの重大な責任を果すために、また、このたびの処分についてもこの処分をするに至るまでの血のにじむような苦心をしておるところを見まして、私は国鉄の当局者は非常な努力をもってその責任を尽すために懸命であったと、こう思って信頼をしておるわけであります。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  131. 高野一夫

    ○高野一夫君 昨日からこの問題についての各委員の御質問の内容を静かに伺っておりまするというと、甲の委員からも乙の委員からも同じ問題が繰り返し繰り返し質問せられる。これは質問しちゃいかぬということは毛頭ないわけでありますが、委員会の運営を円滑にして時間も倹約したいために……。
  132. 千葉信

    委員長千葉信君) ちょっと待って下さい。(高野一夫君「今私は議事進行発言中……」と述ぶ)速記をとめて。    〔速記中止
  133. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて下さい。
  134. 片岡文重

    ○片岡文重君 運輸大臣に重ねてお伺いいたしますが、国鉄当局も非常に熱心にこれは組合員のことをお考えになっておられます。これはむしろ——むしろじゃない、考えるのは当然ですよ。朝夕に顔を会しており、しかも自分の子も同じように、自分の職場に働いておる者のことですから、これは一番だれよりも、どなたよりも一番熱心に私は考えるのは当然だと思う。従って、それらの諸君が全然努力もせず、誠意も示さぬと言っているのではない。国鉄従業員の諸君が今度処分をされました。この処分をされた諸君も——あるいは減俸となり、停職を受け、戒告を受けたりした諸君も、日々職場にあってはきわめて忠実な職員です。これは善良な職員です。けれども、あなた方はこれを処分をされておられる、従って、日常の生活というもの、日常の勤務というもの、日常の服務というものについては考えておられない。極端な例は、もう職員が一生を文字通り人生を傾け尽して国鉄に勤めてきて、そうしてようやくにしてあこがれの的である功績賞というものをもらいます。その功績賞をもらった職員でさえあなたは処分をしているのじゃないですか。従って、これは政府みずから努力ということを、平素の努力ということと、責任を追及するということとは判然と区別をしておられるのです。国鉄当局、政府がいかにこの問題について誠意を披瀝し、努力をされようとも、起ってきた結果については十分にやはり責任を考えなければならぬでしょう。少くとも国鉄当局がしからば二十三日に所定の時期に支払うという約束をしておきながら、その所定の時間に支払い得なかった、見通しを誤まったという点については、これは否定することはできないでしょう。今運輸大臣もこれを軽率に考えたということも、これまた非難されて弁解の余地はないと思う、大蔵大臣がそういう問題が所管内にありながら、なおかつこれを知らないで、しかもああいう不測な事態を起した間接の原因を作っておるということ、この点もまた責任を回避することはできぬはずです。私はいたずらに憎しみをもって問題を解決しようとは考えない。追及しようとは考えません。やはり将来労使ともに、特に公共企業体関係にある労相者諸君は、この際政府がたとえ不満であっても予算措置を講じたということだけでも非常な前進であると考えておる。従って、今後の労働相合の運動についても十分に考えているでしょう。これを機会にです、私はこれを機会に、政府も労働者も謙虚な気持に立って将来は——過去はともあれ、将来は円満な労使の慣行を樹立して無益な紛争は繰り返さない、国民に不要の迷惑をかけないという状態に持っていきたいと思う。そのためにはやはり労働組合に反省を求めるとともに、政府みずからまず反省の実を示していくべきでないかと、やはりあたたかい心を持つ政治家ならば自分みずからを責めて、しかる後に処断をすべきです。きのうも私は労働大臣に申し上げました。「なんじらのうち罪なき者これを打て」というバイブルの言葉があります。自分一人罪なしと断じて、そうしてその日の生活に脅威を与えるような不当な処分をして、がんとしてその責任を思わない、こういう態度は私は心ある政治家の態度とは考えない。政府をつぶしてもという決意があるならば、その男一匹の気持があるなら、どうして率直に、なるほど手違いがあった、なるほど国鉄の見込み違いがあったということが言えないのですか。私は労働大臣の男らしい態度を切にこの際希望しておきます。(「労働大臣か」と呼ぶ者あり)いや、失礼しました。宮澤運輸大臣です。
  135. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 最後にお述べになりました、今後お互いに一つ信頼し合っていい労働慣行を作っていこうということには全然同感でありまするけれども、その他の点につきまして、まあ私は先ほども申し上げますように、責任とか、そういう感ずることも程度の問題とか、また、種類によりまするが、先ほど来ずっと答弁いたしましたことをもって私の一つの心境と御理解願います。
  136. 千葉信

    委員長千葉信君) 委員長からお諮り申し上げますが、労働大臣出席中でございますので、御質疑ある方は順次御発言を願いたいと思います。
  137. 片岡文重

    ○片岡文重君 労働大臣に対しては私ほきのうも質疑を重ね、それで運輸大出並びに大蔵大臣について聞けということで、きょうの御質問を申し上げております。従って、この御答弁によってはお伺いしなければなりませんし、さらに今後の労働慣行等についても私は労働政策等について十分納得のいく御説明をいただきたいと思う。しかし、きょうの委員長からの私どもに対するお話では、総理大臣もきょうは御出席になる、大蔵大臣も御出席ということで、そういう出席を得られるという上に立っての質問をいたしておりまするので、もし、運輸、労働両大臣以外に本日御出席がないというのなら、私は、自後の御質問は御出席あって後にいたしたいと思います。
  138. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は運輸大臣にまず一つ、先ほどの関連で少しお尋ねをしてみたい。  国鉄公社は経営一切をまかしておって、そこでは生産を上げるということになっておる。生産は、働け働けということで、業績によって給与が行われる。こういう問題が、十六条、三十五条によって、予算上資金上というような格好で、一銭も出したらいかぬというような格好のものを、他の生産機関と対比して見たときどうなるか。あなたや私らの一般的な良識によって考えてみたときに、生産業績を上げる、それによって報いて、また、次の生産に、それが再生産の基礎になっていく、こういう形のものが、生産に対する設備投資、労働という形の中で私は生産向上というものが生まれてくるんだと思うんです。で、そういう実際の苦労を知らない大蔵省がさじかげんで出すとか出さぬとかいうようなことが起きてるから、今度の二十三日のような問題が起きた。そこで、私の今聞きたいのは、当局と組合との間において、日々の給与のワクの中で積み上げてきたものを、やみ給与云々ということで一切これを取っておいて、それで政府は完全実施だと言われるんだが、なかなかわれわれには理解できないんだが、一つ裏返した私の前段の話について、業績を上げる、生産を上げる、それに対する労働再生産と言いますか、物をたくさん作って、その生産に対する見返りを労働者が受けるというこの感情というものを頭から抹殺していこうとしている今日の公社の現状について、あなたはどうしたらいいとお思いになりますか、一つそこのところをお聞かせ願いたい。
  139. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 私は、ですから、過去においても、相互に理解と信頼の欠けたところがあったからであると思う。聞くところによりますと、先ほど来、私よく知りませんけれども仲裁裁定政府は実施しなかったと言いますけれども、だんだん期日がおくれて、後には順次それはやつぱし実施しておるんだそうであります。それから、私の承知する範囲において、世間で言う予算単価と実行単価の差額、すなわち、世間ではこれをやみ給与やみ給与と言っておりますが、この範囲も、あとからは順次政府が認めて、国鉄当局者の団交で妥結したものを根本から否認して出さなんだということはないわけです。順次認めてきて出しておるわけです。それがだんだんおくれて、そして、ここで一つ総決算をするということになってきて、こないだの仲裁裁定において、将来に向って一つこの五百二十円の問題も解決しろ、また、政府もするために、このたび三分の二を残して、そうして三分の一を消し、将来またこれをどういうふうにして消していくかということによって、今度は予算単価と実行単価というようなものをなくして、これだけの大きな組織ですから、これは法規の上で、規則の上できめていかなけりゃできないことです。運用できないことはむろんでありますから、規則通りに行わしていこう。私は、この近年の状態において労使の関係に、少くともこの内閣において一歩正しい方面に踏み出しておるということだけは明確であろうと思うのであります。
  140. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 運輸大臣、今までの仲裁裁定は実施せないと言うけれども、順次実現してきた、こういうことを言われた裏から、今度やみ給与云々という問題は、五百二十円一ぺんに精算するんだと言われたら、実施してきたことと一ぺんに精算するということとどうなるんです。これが第一点。おかしいじゃないですか。差っ引いてしまうのじゃないですか。これが第一点です。  それからもう一つは、私の言っているのは、汗水流して生産を上げて、より以上の生産を上げて、その報いと言いますか、その代償と言いますか、それに対する給与というものが、普通の生産機関ならある。そういうものが当局と組合との間において協定されるのを今度のような格好で、たとえば将来と言いますか、こういう裁定のときに差っ引く、そういうものは一切差っ引いてしまうというものの考え方社会一般の良識ですかどうですかということを聞いている。
  141. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 順次してきたが、今度のことで話が食い違っておる、おかしいじゃないかというお話ですが、今度のことはつまり私どものやったことでなくて、仲裁裁定が出たんでございますから、仲裁裁定は過去のいきさつをここで一掃してはっきりしたものにしようという気持であの裁定をしたと思う。その裁定に私どもは従う、こういうことでございます。その従い方にまだ御不満があるということだろうと思うのですが、しかしながら、仲裁裁定で五百二十円との差は四百二十円となったわけでありますが、その事態を今日五百二十円というものを一ぱいに出せばそれで仲裁裁定を実施したものと、労組やその他政府処置に反対をせられる諸君は同じになっておりますが、あの仲裁裁定が出てはっきりしたときに、労組は、ほとんど公式に四百五十円出せばいいという声明をしております。そういう常識的な観点からすれば、どうしても五百二十円出さにゃならぬという解釈は出てこない。政府が今度やりました四百二十円というものは、相当実施したものとして、そうしてあとこれから後にこれを解消していくという裁定の趣旨にのっとってやっていこうというのですから、この点は裁定に従うということでありまして、過去においても、おくれても裁定は実施してきた、今度はおくれないで裁定を実施していこう、こういう次第であります。
  142. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 第二点を……。
  143. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) 失礼しました。第二点はどういうことですか。
  144. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 各企業で生産が上れば、その企業の労働者の業績に対する報いをするということが……。
  145. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) その点は、業績手当で残っておりますから、できていきます。
  146. 片岡文重

    ○片岡文重君 まことに忠実な助言者がおられるようですけれども、私たちは今まではしておらなかったと申し上げたところが、いや、時期をおくらして実施したとおっしゃる。時期をおくらせて、しからばたとえば二十三日の業績手当の時期をおくらしてその金額が、裁定に示された金額が支給されたのならば、これは時期をおくらして実施したことになりましょう。けれども、この仲裁委員会の事務局で出しておる資料を、これはその記録です、これを私は全部拝見いたしましたが、時期をおくらせて実施したのはないのです。それは、その仲裁に示された金額を実施したのが、金額といいますか、月額を実施していったのが、たとえば一つの例を申し上げるならば、裁定書番号の八号です。これは、八月から実施せよと言っておる。これを実施するためには百七十九億一千七百万円かかるのです。ところが、これは十一月以降に実施しております。従って、百五億一千九百万円、ざっと見て七十四億という金が実施されていないじゃないですか。つまり、時期をおくらせて実施したということは、そのおくらせた期間といもうのは万全に不履行じゃありませんか。だから、これを称して、今まで労働大臣も同じようなことをおっしゃっておられた。だからこれは聞き流しておくわけにはいかない、あくまでも労働大臣の今までの御答弁によって、給料の支払時期、方法等もよく御存じないようですから、この際御認識をいただきたいのですけれども、時期をおくらせて実施したということは、そのおくれた間たけはカットされている、実施されておらないということをこの際、御承知になっていただきたいということを私は申し上げたかったのです。
  147. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今宮澤運輸大臣は業績手当が残っておる。国鉄が業績を上げて、この五百二十円差っ引くと言いますけれども、国鉄はその間、それは裁定が出まして、裁定の中で将来ということが書いてある。それを今度三分の一引かれたわけですけれども、国鉄が、労働者が業績を上げて、そしてその少いワクの中で働いて、人員の中で働いてきたものを、今度一気に差っ引くということにはならないのじゃないですか、それは仲裁委員会でも発表されているように、将来の適当な時期に、この問題は業績の形で出てきたんだから、将来ということに、今度三分の一引いて完全実施と言えるのですか、それは。
  148. 宮澤胤勇

    国務大臣(宮澤胤勇君) それについてはそれぞれの立場で議論があると思います。で、私どもが完全実施と、これは私はもう心からそう思っておりますが、それは疑問があったために、政府も国鉄当局も、労組もみな仲裁委員に質問をしております。その質問の返事を見ましても、政府のとった今度の予算措置はこれでいいかといえば、それでいいんだということをはっきりとこの間からも言っております。また、これは言う、言わないにかかわらず、私どもは、この見方からして当然だと、それから私が先ほども、まあ数字にこだわるわけではありませんが、十円でも違えばいけますまいかもしれませんが、これに対しては、国鉄労組その他があのときに公式に発表した意見に、四百二十円取ればいいのだと言っている気持をみても、私はこれはおわかりのことだと、こう思うのでありまして、ですからこれをして完全実施したものでない、仲裁裁定に不足すると言うことは、これは私はどうかと考えているわけです。
  149. 千葉信

    委員長千葉信君) 本件につきましは、明日午後三時半から岸総理大臣が本委員会に出席される予定になっておりますので、本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。せっかく労働大臣に御出席願いましたが、質疑の順序の都合で大へん……またあらためて……。  本日はこれをもって散会いたします。    午後五時四分散会