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片岡文重君
労働大臣は少し誠意をもって聞いて下さい。私は
政府ばかりが
責任を負うべきものじゃない、労働者もともに
責任をもって
労使のよき慣行を樹立しなければいかぬじゃないか、この点については、これは同感です。しかも
労働組合は、特に今日の
労働組合は決して皆さんがお
考えになるように破壊的なことを
考えているわけじゃないのです。いつもまじめに建設的な方法でその労働者の権利と生活を守ろうとしておるのです。従って、
政府もやはり
労働組合の今日
考えておる
考え方を善意と友情をもって見ていかなければいかぬのですよ。特に
労働省の
責任は、その
労使の間に立って双方のよき理解者であり、援助者となって橋渡しをしてやるのが私は仕事だと思う。そこで私は申し上げたいのですが、二十三日の給料というものは土曜日です。従って、十時に支払いを開始して少くとも十二時までには終らなければならないのです。それがどうも五時になったり、七時になったのでは、これは二十三日に支払ったということは言えないのです、実質的には。特に三月二十三日というのは、皆さんは労働者の家庭経済というのを御存じないでしょうけれども、一年の間で子を持つ親たちが最も期待する勘定日なんです。この日にもらう給料や
業績手当を当てにして、四月に入る子供のランドセルを買い、進学するところの子供の参考書を買い、レイン・コートを買う金になるのです。この金を土曜日の午前中に
支給を受けて、午後から子供らが待っているところに帰らなければならない。帰りには買って帰らなければならない。それを三時から五時にもらったからといって、もらったうちに入らない。
それからもう
一つは、三時間や五時間おくれても、二十三日に払うと言っているのだからということで信用すべきだと言いますけれども、
政府がこれまでに労働者が信頼するに足るような
言明を守ったためしはないじゃないですか。公労法に示されているところの仲裁裁定も完全な実施をしておらないじゃないですか。
労働大臣は、この
委員会においていつか十何件かを実施していると言っておられました。
政府の調べた、また、この仲裁
委員会の
事務局で出しているのを調べてみても、
政府が完全に実施したというのは一体ないじゃないですか。こうして法律に定められている仲裁裁定ですら
政府は実際には守っておらないのです。そういう
政府の言うととはどうして信用することはできるのですか。しかもこの三時なり、五時になって支払われたので、十時、十二時までというこの午前中に支払うべき給料日に支払いをしなかった、しかもそのときにはまだ支払われない
状態にあったので、払ってくれるかくれないかもわからないのです。当然困っているその人が
実力行使に訴えるのはやむを得ないじゃないですか。その
実力行使に入ったからこそやむを得ず支払いに至ったじゃないですか。それをもって不信
行為ということは言えないでしょう。まあこれは
労働大臣御自身のことになって恐縮ですけれども、何か伺うところによると、
労働大臣は非常に熱心なクリスチャンであるということを伺っております。私はよく知りませんけれども、たしか聖書の中には「なんじらのうち罪なき者これを打て」という言葉があったはずです。真実に
政府が
責任なしとあなたお
考えになれますか。そういうクリスチャンの
立場からいって、従来も仲裁裁定をじゅうりんし、公労法をじゅうりんしてきておきながら、しかもその最も具体的に明瞭に
政府の不信
行為を暴露したあの二十三日の事実をもってして、しかも
責任なしとあなた言い切ることができるのですか。当然それが善意の過失によって生じた
手違いであったとしても、その起った
事態については、
政府はやはり良心をもってこれに対する何らかの、少くとも
釈明くらいはあってしかるべきです。それを一方的に
処分だけをしておいて、免れて罪なしというその
態度は常識では
考えられないじゃないですか。
国民の政治をあずかる政治家としての
態度じゃないと私は思う。特に
名古屋におけるあなたの放言の
態度というものは、残忍な資本家的根性をそのままにさらけ出しているでしょう。この際
労働大臣は、静かに
労使今後のあり方についていかにあるべきかをお
考えになって、そのためには、まず今日置かれている労働者の
政府に対する不信を一掃すべきだと思う。
労働大臣は、これからの
労働組合の信頼をまず得ることが私はこの際必要だと思う。一歩譲って、
労働大臣が言われるような
事態で二十三日をお責めになるとしても、今後の労働行政を行なっていく上に、
勤労者の信頼を
労働大臣が得るということが最も必要なことだと思うのです。
労働大臣は、一体どういうふうにして今後しからばこの
勤労者の信頼をかち得ようとするか、岸内閣に対する信頼を労働者諸君から与えられようと
考えているのか、さらにその点、一点お伺いしておきます。あなたは、詳細な点については
大蔵省、
運輸省とのやりとりについては
承知をしていないと言っておられる——そのメモは
答弁に必要なんですか、そうでなかったら、とにかく私が発言をしておるんですから、慎重に聞いておっていただきたい。
労働大臣は、この
大蔵大臣、
運輸大臣との間における詳細な取引については
承知しないと言っておられる。これは私は聞き捨てならない
一言だと思うのです。ほんとうに
労働大臣が、今まで言われるように、親心を持って労働者に対しておるということならば、
労働組合を処断する前に、そのよって来たる原因というものについては、可及的に詳細にその
状態、事情というものを知悉すべきではないですか。しかるにあれだけの騒ぎになったその根本の原因となったことについて、詳細に
調査しておらないということは、取りも直さず、一方的に労働者のみを責めて
政府の
立場を擁護せんとする
立場にほかならないでしょう、どうして詳細な
調査はできなかったのですか、どうしてこれを詳細に
調査しなかったのですか。一方の事情を詳細に知らないで、そうしてその相手方だけを一方で処断をしようとする、これはどういうところからそういう
考えになられたのか、その点も聞いておきたいと思います。