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1957-05-08 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月八日(水曜日)    午後一時四十五分開会   —————————————   委員異動 本日委員藤原道子君及び田村文吉君辞 任につき、その補欠として久保等君及 び奥むめお君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            榊原  亨君            高野 一夫君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            勝俣  稔君            小西 英雄君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            横山 フク君            片岡 文重君            久保  等君            藤田藤太郎君            山下 義信君            奥 むめお君            竹中 恒夫君   委員外議員            高橋進太郎君   衆議院議員            亀山 孝一君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君   政府委員    法制局次長   高辻 正巳君    厚生省引揚援護    局長      田邊 繁雄君    労働政務次官  伊能 芳雄君    労働大臣官房総    務課長     村上 茂利君    労働大臣官房会    計課長     松永 正男君    労働省労働基準    局長      百田 正弘君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   説明員    労働省労働基準    局労災補償部長 三治 重信君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○環境衛生関係営業運営適正化に  関する法律案衆議院提出) ○引揚者給付金等支給法案内閣提  出、衆議院送付) ○労働福祉事業団法案内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) それではただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動を報告いたします。  五月八日付をもって、藤原道子君及び田村文吉君が辞任され、その後任として、久保等君及び奥むめお君が選任されました。   —————————————
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) この際、報告いたします。五月七日の本委員会において決定になりました請願に関する小委員は、本日、勝俣稔君、寺本広作君、藤田藤太郎君、木下友敬君、早川愼一君竹中恒夫君を委員長において指名いたしましたから、御報告いたします。
  4. 千葉信

    委員長千葉信君) 次いで環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案議題といたします。提案理由説明を願います。
  5. 亀山孝一

    衆議院議員亀山孝一君) ただいま議題となりました環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  環境衛生関係営業は、環境衛生保持増進のためにはもちろん、国民日常生活にとっても身近な関係にある重要な営業でありまして、順守すべき衛生基準を定めて、従来から指導、取締りの対象となっておりますのも、こうした理由からであると考えます。ところが、これらの営業はいずれも特殊なものを除いて、ほとんどすべてが中小企業の範疇に属すべき性格のもので、その経済的基盤はまことに脆弱であり、しかもこれら営業者は膨大な数に及んでおるのであります。こうした数多くの営業が、それぞれ互いに正しい競争をしてサービス向上に努めますことは、もとより国民生活のためにきわめて望ましいことでありますが、何分にも経済的基盤が弱く、しかも、その数が著しく多い営業であるだけに、ややもすると過度競争に陥り、その結果は、必ずしも衛生施設改善サービス向上にのみ発展するとは限らず、場合によるとかえって不合理、不健全な事態を醸成する傾向がないとは言えません。  現に最近は、例えばごく一部の業者がダンピングにもひとしい極端な低料金をもって営業し、故意に業界を混乱させつつあるものも現われまして、まじめな業者がはなはだしい迷惑をこうむつておるだけでなく、ひいては衛生基準保持も困難となって、衛生上はもとより、社会上からもいろいろの問題を惹起しております。  また、旅館等における深夜営業公衆浴場における特殊浴場映画興行における著しい長時間興行等社会的にみてもまことに憂慮すべき事実が横行しておりますのも、結局は、これら過度競争の結果にほかなりません。  こうした数々の問題は、行政上の指導監督によって改むべきではありましょうが、従来の実績からみても、手不足の関係等もあって、行政力のみによって万全を期することはきわめて困難であると考えられますから、業界自主的組織を通じ、職業自由の原則を貫きつつ、主として民主的、自粛的方法により、これら過度競争を防止し、この種営業を安定に導く措置を講ずることによって正しい競争を育成し、サービス環境衛生向上をはかろうとするのがこの法律案趣旨でございます。  次に、法律案の主たる内容について御説明を申し上げますと、まず第一に、この法律対象業種としては、現にそれぞれの法律によって守るべき衛生基準の定められている飲食店営業喫茶店営業食肉販売業及び氷雪販売業理容業美容業映画・演劇・演芸の興行場営業旅館業公衆浴場業及びクリーニング業といたしました。  第二に、加入及び脱退は営業者自由意思による方針のもとに各業種ごとにそれぞれ各都道府県単位に、総営業者の三分の二以上をもって社団的特殊法人たる組合を組織できることとし、また、これらの単位組合は、それぞれ三分の二以上をもってその全国連合会を組織できることといたしました。  第三は、組合営業施設の配置の基準の設定とその励行の指導衛生施設改善向上経営健全化等指導、資金のあっせん各種共済事業等を行い得るほか、特に過度競争を防止するため適正化規程を定めて、料金または販売価格制限営業方法制限とを行い得ることとし、この場合連合会は、適正化規程の基本となる適正化基準を設定することといたしました。  第四は、これら適正化規程適正化基準を定める場合には、厚生大臣認可を必要とし、認可に当っては、厚生大臣は、公正取引委員会と協議しなければならないことであります。なお、必要がある場合は、一応認可した適正化規程または適正化基準であっても、その変更を命じ得ることといたしました。  第五は、適正化規程適用を受けないいわゆるアウト・サイダーも含めてすべての営業者のために、営業の健全な経営が阻害される等一定の事態が発生した場合に限り厚生大臣は、公正取引委員会と協議の上、これらのものに対して、料金営業方法等制限を定め、これに従うように命令し得ることであります。  第六に、組合適正化規程に違反した組合員に対し、過怠金を課し、または除名することができることとし、他方組合員はその五分の一以上の連署をもって役員解任を請求できること、つまりリコールの制度を設けました。  第七は、組合または連合会運営が法令の規定に違反すると認められる場合等は、厚生大臣は、それぞれ役員解任の勧告、解散命令を出し得る等必要な監督規定を設けたことであります。  第八は、適正化規程認可する等の重要事項の諮問に応じ、また、この法律の施行に関する事項について、建議するため、厚生省利用者代表学識経験者業者代表等よりなる中央環境衛生適正化審議会を設けることといたしました。  第九は、この法律規定する厚生大臣権限の一部は政令の定めるところにより都道府県知事に委任できることとしたのでありますが、この場合においては、都道府県都道府県環境衛生適正化審議会を設けることといたしております。  第十は、利用者または消費者はいつでも適正化規程適正化基準等に関して、厚生大臣または都道府県知事及び環境衛生適正化審議会に対して意見を述べることができることといたしました。  第十一は、料金営業方法制限に従うべき命令に違反した者その他の違反者に対し罰金または過料の罰則を設けたことであります。以上が、この法律案趣旨並びに内容の概略であります。  何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  6. 千葉信

    委員長千葉信君) 本案に対する質疑は、次回以降にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  8. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは次に、引揚者給付金等支給法案議題といたします。  なお、衆議院修正部分に対する質疑もあわせてお願いいたします。  この際、お諮りいたしますが、委員外議員高橋進太郎君から発言許可申し出があります。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  発言願います。
  10. 高橋進太郎

    委員外議員高橋進太郎君) 皆さんのお許しを得まして、委員外発言をさせていただきましたことを厚くお礼申し上げます。  今回、多年懸案となっておりまする海外からの引揚者につきまして、一応の成案が出て本委員会に付議せられましたことは、われわれ関係のものといたしましてもきわめて時宜を得たものと思うのでございまするが、この案自体が、終戦の日以後に引き揚げた者だけを対象といたしておるのでございまするが、戦争のあの実情及び様相等から見まして、特に東南アジアその他外地から終戦前といえども終戦の日以前にも引き揚げて参りましたのは、    〔委員長退席理事高野一夫君着席〕 ほとんどその土地片々政府命令等によって引き揚げて参ったものでありまして、何ら実質終戦時以後に引き揚げ方々変りがなく、かつまた、これらの人々は長い間それらの地域に居住いたしまして、その生活の根底を失い、かつ、長い期間外地生活でございまするから、自然内地に帰りましても窮迫した生活状態にあるのでございますが、これらの人に対しましては本法適用がないということは、はなはだ、いわゆる画龍点睛を欠くきらいがあると思うのでございまするが、これらの人々に対して、どうして本法適用せられなかったのか。また、今後これらの人々については何らかの措置を講ぜられるのか。その辺を承わりたいと存じます。
  11. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) このたび御提案申し上げておりまする引揚者給付金等支給法案は、過般の大戦の終結に伴って海外からいわゆる強制的に内地引き揚げざせられた方々対象とする、こういう建前のもとに立案せられたのでございます。  お話通り終戦前、内南洋から引き揚げ方々、及び大東亜戦争開始直前蘭印等から引き揚げ方々と、これらと同様の事情方々があるのでございまするが、ただ今度の終戦に伴っての強制引揚方々は、いずれも日本国権限の及ばなくなった状態において、裸一貫で内地引き揚げてきたという特殊性があるのであります。大東亜戦争終結前におきましては、何と申しましても日本国権限の及んでおった状態でございまするので、そこに一応線を画し得るのではないかと考えた次第でございます。私ども気持におきましては、情においてまことに同情を禁じ得ない点があるのでございまして、どこかで線を引くとすれば、どうしても先ほど申し上げた点で線を引くことが一応合理的ではないかと考えた次第でございます。今後の問題といたしまして、お話の点もございまするので、十分実情について調査をいたしまして、今後とも検討をして参りたいと考えております。
  12. 高橋進太郎

    委員外議員高橋進太郎君) ただいま政府答弁をお聞きいたしますと、主として強制的に引き揚げたということ、それから日本国国権範囲内にあったので、従って終戦日一つのきまりとしたと、こういうふうに承知しておるのでございますが、この強制せられたという点につきましては、特に南洋群島におきましては御承知通り南洋群島自体日本領土であり、それらに約十万の住民が、その大部分農業移民の形でこれらに居住しておったのであります。ところが、御承知通り昭和十八年の末から日本領土としては最初の戦場となったので、実質上にも引き揚げざるを得ない実情にあるとともに、特に昭和十九年の四月十四日の閣議決定をもちまして、南洋群島住民については、働けるものは軍属として食糧の自給に当り、その他の邦人の老幼婦女子はこれを引き揚げさせる、こういう御前会議を中心にしての閣議決定がなされ、その国の方針に従ってこれは強制して引き揚げをさしたのであります。従って、その強制せられたということ及びこれが国の意思によって決定したということは、当時の南洋群島戦時非常措置要綱という昭和十九年四月十四日の閣議決定において明らかなのでありまして、この点は何ら終戦時以後に引き揚げたものと変りがないのじゃないか。言いかえるならば、全くこれはその引き揚げ強制に基いたものとして差しつかえないのであります。  次に、国権範囲外とこう申しますけれども、なるほど当時は日本領土でございますけれども、全く戦争下にあり、何千海里の間、生命の危険を冒してこれが引き揚げたのでありまして、その点はむしろ終戦生命の安全を保証せられた方との均衡から見ましても、むしろこういう方々こそが最もそういう戦争下生命の全くの九死に一生を得たような形において辛うじて内地引き揚げ、かつまた、引き揚げられた方はただいま申し上げました通り老幼婦女子でございまして、従って、そういう方があるいは夫を失い、父を失い、そういう形においてきわめて悲惨な状態において内地生活しておるのでございまして、その実情から見まするならば、どうしても終戦時というだけで今回の法律を切るということはきわめて不適当であり、公平を失し、これらの実情から見ますれば、きわめてこれらの引揚者に対しても本法適用を十分お考えいただかなければならぬと思うのでございますが、重ねて政府の御理解ある御答弁をお伺いしたいと思います。
  13. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 御質問の御趣旨につきましては、先ほど申し上げました通り、私ども情において全く御同情を申し上げる次第でございます。ただいまお言葉にありました閣議決定昭和十九年の四月十四日でございますが、内南洋からの引き揚げについて  これを一そう強化促進するという趣旨決定でございます。実は内南洋からの引き揚げは、この閣議決定がなされる前から、昭和十八年の暮れあたりからずっと続けて行われておりました。むしろ閣議決定以前の方が、実数から申しまして引き揚げ数が多かったようでございます。また、引き揚げの形式から申しましても、この閣議決定あとからまた変っておったかと申しますと、変っておらないようであります。閣議決定がなされた前後によって区別するということは、技術的にも、実体的にも困難ではないかと思うのでございます。  それからもう一つ強制引き揚げでございますが、先ほどお言葉にもありました通り、当時のこの内南洋の第一義的な問題は、送還というよりは、基地の増強と申しますか、そういった国防力増強と、それから食糧増産にあったようでございます。従って、そこにとどまりたいという方はどうしてもそこにとどまって働いていただく、こういう態勢にあったようです。これは男子の方々はむしろそこに抑留されたと同様の状態であったようでございます。婦女子につきましては、先ほどお言葉にありました通り、積極的に内地へ送還するということをやったわけでございますが、これも強制的に完全に行い得るものではなかったようでございまして、まあ強制し得る限度において希望者からどんどん乗せて帰したという点において、むしろ強制引き揚げというよりは、むしろ要請引き揚げといった方がいいのではないかという感じもいたしておるのであります。いずれにいたしましても、しかし、国家の要請によって内地引き揚げさぜられたという点においては、終戦後のものと実情を同じくするものがあるのでございます。ただ、私ども先ほど形式的な一つの線の引き方を申し上げましたのは、ひとり内南洋蘭印にとどまらず、終戦前の引き揚げは相当多数あちこちからあるようでございます。もう少し実情を調べまして、どこまでがこの引き揚げと同一視し得るものであるかどうか、どの程度までが同一視し得るかどうかということをもう少し検討する余地があるのではないかと思います。ことに線を引くといたしますれば、この閣議決定の要領にも書いてありまするように、内地に対する引き揚げということを実施すると同時に、内地における援護ということは十分やらにゃならぬということも書いてございまするし、また、それに即応しまして、特に内南洋からの引揚者に対しましては全額国庫負担をもちまして南洋共助義会という団体を設置いたしまして、そこで援護をしたというような事実もあるようで、さような当時のことでございまするので、十分とはあるいは申せなかったかと思いますが、一応そういうことであるようでございます。また、預貯金の払い戻し等につきましても、特別な措置を講ずることということが閣議決定に書いてございますので、まあそれやこれや考えますと、やはりこの日本政府のあるいは日本陸海軍援護権限の及んでおった状態における引き揚げというものは、終戦後の引き揚げと一応事情が違うものがあったのではなかろうかと、こう考えまして、終戦ということで線を画したような次第でございます。
  14. 高橋進太郎

    委員外議員高橋進太郎君) 援護局長よりいろいろお話しございましたが、若干援護局長のお考え違いがあると思うので、今の南洋群島についてよくお調べをいただきたいと思いますが、一つは、当時南洋群島からの引き揚げにつきましては、船舶その他の事情で今の閣議決定によって引き揚げさせるということを決定いたしましたけれども実情船舶その他の都合で、これは配船その他の都合引き揚げられなかったのでありまして、本人の意思にかかわらず、特に老幼婦女子は残るということが許されなかったのであります。と申しますのは、当時の実情を、私自身が主管課長でございましたのでよく知っておるのですが、当時老幼婦女子まで群島にそのまま置くということは、もし将来内地その他において同じような事態か起った場合におい、日本国民というものは非戦闘員戦闘員の区別がなくなるではないか、そういうことでは、国際法的にも非常に問題だということが、当時の御前会議外務大臣から特に話がありまして、そういう点からも至急一つ老幼婦女子引き揚げさせる。こういうような決定をなされて、いたしたのでございますが、何せ海上数千数海里にわたるところの地域であり、その島の数が約五、六百にも及ぶというような島々でございまして、その配船等のためにその実現はできなかったのでありまして、全くこれらの帰られました人々九死一生を得て帰ったというような実情でございまするから、この引き揚げ当時の実情をよく詳細をお考え下さいまして、私は御温情あるところの措置を講じていただきたいと思うのであります。  次に、内地引き揚げてきてから共助義会があってというお話がございましたが、これは全額国庫負担ではございませんで、当時陛下からそういう老幼婦女子内地引き揚げ、しかも強制的にその夫なり親なりは食糧増産のために残す。こういう閣議決定がある。そうすれば、帰された老幼婦女子に対して親となり夫となる形においてというので、当時陛下から御下賜金二万円をちょうだいして恩賜財団を作り、その他は民間からの所要の金額を集めて、これが援護に当ったのでございまするが、何せ戦争末期のことでございますので、十分その機能が果し得なかったというのが実情でございますので、それらの実情もともとと御勘案の上、これは南洋群島のように早くから戦場化して、その引き揚げがただいま申し上げた通り終戦日というその日で切るということがきわめて困難な地域につきまして、とくと本法適用についてお考えをいただきたいと思うのであります。この点につきまして田邊局長よりの御説明がございましたが、厚生大臣の御出席もあり、ぜひ厚生大臣からも御温情あるところの御答弁をお願いいたしたいと思います。
  15. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま高橋委員よりいろいろ御要請がございました。  元南洋群島よりの強制引揚者給付金支給をするような措置をとられたいと、こういうような意味に承わったのでございますが、この点につきましては、いろいろ本法案の審議に当りまして議題になりまして、いろいろ審議があったのでございますが、何しろ今度の引揚者給付金範囲というものが法案提案理由にも申し上げてありますように、在外財産問題審議会答申基礎になっておるわけでございまして、それを一つ政府といたしましては趣旨をくんでやろうということが骨格でございましたものですから、この中に入れることができなかったのでございまして、この点につきましては、今後なお一そう実情をよく調査いたしまして、その実態を把握することに努めまして、適当な御要望の点等につきましては十分一つ検討をいたしたい。こういうふうな政府部内の意見でもございますので、さよう一つ御了承願いまして、本案の御審議をなお一そうお願いいたしたいと、かように考えております。
  16. 高橋進太郎

    委員外議員高橋進太郎君) 大臣の御答弁でございますと、今後十分これらのものについては均衡をお考えいただくというお話でございますが、今の実は審議会答申ということを基礎とせられたというのですが、実は最初審議会答申にも、これらの南洋群島初め、その他の地域のものでも、実情がこれらの方々本法適用者と同じようなものについては、政令において適当に規定するというような原案であったものでありまして、われわれもその答申案並びに政府がその間において折衝せられた原案で十分だというふうに考えておったのでありますが、その後何か予算都合なりワク都合があっていろいろと変更せられたので、おそらくこれは主として予算ワク関係等もあるのだと思いますけれども、ちょうど大臣におきましてはこの実情をよく把握せられまして、せっかく海外引揚者に対してきわめて温情あるところの本法によって措置をせられたのでありまして、その間若干の漏れがあるということでございますると、やはりこういう法案がせっかく出たにかかわらず、何か気持の上で割り切れぬものが国民の間なり、あるいは引揚者の中にあるということでございますと、いわゆる画龍点睛を欠くきらいがあり、せっかくの良法案でございましても、いろいろとやはり巷で云々されるということは適当でないと思うのでございまして、その点をぜひ一つ厚生大臣は十分御留意の上において考えていただきたいと考えるものであります。
  17. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま高橋委員のお述べになりましたお気持については私も全く同感でございます。戦争終結の跡始末と申しましょうか、いろいろそういったものもこれで全部だとは言い切れないのでございまして、政府部内におきましても、今度委員会を作るという例の問題もございますし、ただいまの御意見の御趣旨通り十分一つ調査いたしまして、検討の結果、できるだけ御趣旨に沿うように努力いたしたい、かように考えております。
  18. 榊原亨

    榊原亨君 援護局長にこの点についてお尋ねいたしたいのでありますが、終戦前におきまして、ただいま高橋委員が言われましたような意味の、閣議決定によって引き揚げ要請されたあなたの言葉で言えば要請高橋先生言葉で言えば強制された、そういう例は今、高橋議員が言われましたほかにありますか。
  19. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) ただいま私どもの方で承知をいたしておりまする分といたしましては、先ほど申し上げました昭和十九年四月十四日の南洋群島戦時非常措置要綱に関する件、この中に、内南洋からの引き揚げの件がうたわれておるわけでございます。あと小笠原島につきましてどうであったのか、あるいはこれと同じようなものがあったのかとも思われますが、その点今資料を持っておりませんが、蘭印その他につきましては閣議決定はなかったようであります。
  20. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますと、小笠原島にあったかもしれぬが、そのほかは今、高橋議員が言われました例だけということでございますか、今までの御調査によりますと。
  21. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 目下のところさように存じております。
  22. 高橋進太郎

    委員外議員高橋進太郎君) 関連して。今の小笠原のやつは閣議決定はなかったと存じますが、しかし、小笠原につきましては、見舞金か何か適当な措置を講じたように聞いておりますが、どうですか。
  23. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) その通りでございます。
  24. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますと、結局問題となりますのは、今、高橋議員が言われましたもので、閣議決定によってその当時強制された者だけが高橋議員の言われる問題と、さよう承知いたしてよろしゅうございますか。
  25. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) さっき言葉が足りませんでしたが、小笠原から内地引き揚げられた方々に対する見舞金の支給は、南方連絡事務局で所管いたしておりますが、それを出しました趣旨は、私の理解する限りでは、引揚者給付金とは違った趣旨のものでございます。閣議決定による引き揚げと申しましても、内南洋の場合ですが、先ほども申し上げたように、いつからの引き揚げ閣議決定によるかということがはっきりいたしません。また、閣議決定による引き揚げというものが、形式上その以前から継続しておった引き揚げとは違うかと申しますと、違うものではありません。実態的には同じようなものでありまして、閣議決定の前後によって区別するということは困難ではなかろうかということは先ほど申し上げた通りであります。
  26. 榊原亨

    榊原亨君 とにかく閣議決定引き揚げということを決定したわけですから、それの前のはまあ別としまして、閣議決定で一応あなた方は帰れということで、その前後の状態が同じでございましても、決定前と決定後の条件が違うと思うのでございますが、その点いかがですか。
  27. 田邊繁雄

    政府委員田邊繁雄君) 閣議決定の中には引き揚げを実施するということが書いてございますが、その前から実は内南洋からの引き揚げがどんどん行われておった。昭和十八年の暮れからずっと行われておりまして、従って、閣議決定の前後と申しますか、その閣議決定の前に内南洋から引き揚げたのはだめである、その以後に引き揚げた者はよろしいという区別もできかねるのではなかろうか、また、そういうことは実情に沿わないのではないかということを申し上げたのでございまして、一体として考えるべきではないか、こういうことを申し上げたのであります。
  28. 高橋進太郎

    委員外議員高橋進太郎君) どうも援護局長、若干その間の事情を……。これはまあ無理もない話なんで、当時そういうものに携わった者でなければ、おそらく記憶もございませんからわからないのですが、実はこの閣議決定に基いて、当時海外移住組合連合会という、海外に移住を、全体として各府県で組合を作ったものの連合会がございます。これも南洋群島の移住者等も世話しておりましたので、閣議決定以後一括してこの海外移住組合連合会というものにその引揚事務を担当させましたので、閣議決定以後引き揚げてきた者については明確に、この移住組合自体の引き揚げの名簿もございますので、形式的にいうと、その点は若干、今の閣議決定に基いて連合会という、ある意味からいえば海外移住の機関に委託して、そういう事務を取り扱っておりますので、それらは実情を調べていただきたいと思うのです。  ただ実情は、その前、戦場になりましたので、閣議決定があったからというよりは、まあ閣議決定も、なお敗戦を憂慮してよけい老幼婦女子を帰したと、こういうので、実情局長のおっしゃる通りでございますが、形式的には一応そのような措置もとったのでございますから、どうぞ一つその点をお含みおき願いたいと思います。
  29. 小西英雄

    ○小西英雄君 昨日の神田厚生大臣の明快なる答弁によりまして、この引揚者給付金の問題は国家補償でないということが明らかになった以上、私たち長年の間、私有財産の不可侵の原則というものは国際的に尊重されねばならないという考えを今も持っておりますが、こういう見地から、在外財産に対する憲法上、法律上その義務なしと主張する政府の見解でありますが、これについて、どういう根拠から在外財産に対する憲法上、法律上の義務なしとするかということについて、法制局の御答弁をお願いいたしたいのであります。本日は、審議会委員であった、非常に頭のいい高辻次長がお見えになっておりまして、当時も、在外財産に対する補償の義務はこういうことも言われております。九五%という在外財産の対象となる国々とは国交が正常化してないために問題にならない、あるいはその段階でないというふうな御答弁もあったので、この際、高辻次長は、一つ国民の前にその根拠を明らかにしていただきたいと存じます。
  30. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。  ただいまお話しがございましたように、小西委員もよく御承知のように、例の在外財産問題審議会で、御指摘の点はいろいろ議論された点でございます。あの審議会答申にもございますように、その点については、法律上の補償責任の有無については、最終的な結論として一致したものが得られなかったということに相なっておりますが、ただいま御指摘のように、その審議会における論議の一方の論議でありますところの、法律上補償の責任があるというふうに断定することはむずかしいんじゃないかということについてはどうであるかということでございますので、その点についてお話を申し上げたいと思います。  ただいま御指摘がありましたように、九五%というのかどうか、それは私どもよくわかりませんが、いずれにしましても平和条約その他の取りきめが最終的に確定をしておらない、従って、そこにおける財産権の最終的な帰属がいまだ明らかにされておらないというような地域につきましては、これはただいまの状況で、その法律上の補償の責任の有無を論ずるのは少し時期が早いのではないかというように考えられるわけでありますが、そのほかの部分については、平和条約等によりまして一応とにかく帰属が明らかになっておる、それについての補償責任はどうかという点に尽きると思います。そこでその大部分は、いわゆる日本国との平和条約第十四条の2の(1)にある規定でございますが、これはごらんになればわかりますように、各連合国は、こういう財産で「その管轄の下にあるものを差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を有する。」ということに相なっております。申し上げるまでもないことでありますが、そういう国々の管轄のもとにある財産権というものは、実はその国の国法上のもとに成立する財産権でございますので、その財産権を差し押えたり処分をしたりすることは、実はその国の国内法上の問題としてどうなるかということはむろんございますが、わが国憲法の二十九条三項にあります、公共の目的のために使用する、これは言うまでもなく日本国憲法のことでございますから、日本国がその国権をもってこれを収用するという場合のことでございますので、この平和条約の十四条の2の(1)に掲げておりますような、そういう場合がぴたりと二十九条の三項の問題になると断定するのはむずかしいんじゃないか、こういうような観点からの一方の論議はそこでやられておったわけでございます。  私ここで初めて申し上げたわけではございませんで、ほかの衆議院等の委員会でも、法制局長官からそういう趣旨のことがお話がございました。まあその意を体すと申しますか、そういうような政府側の考えとして申し上げれば、今言ったような点に尽きると思います。
  31. 小西英雄

    ○小西英雄君 高辻次長の話す点についてどうもわれわれ納得できない点は、やはり二十九条の三項にきめられた私有財産が公共のために使われたならば、その補償の責任はおのずから政府にある。国内を問わず、国外を問わず、これは私有財産を尊重されるという基本方針は国際法にも定められてあるので、そういう意味合いから申しまして、断じて私たちはやはり政府がこれを九五%の地域が平常化してきた場合には、この補償の責任は必ず政府にあるということを、私たちは現在もごうも変ってはおりません。その証拠に、日本の外交を見ますと、日韓との問題について、現在の外務省はあくまで韓国に対して日本の財産権を放棄していない。国内においては責任の義務がないと称しながら、韓国に向っては日本の財産権は厳としてあるという主張をいたしておる。この裏書をもってしても、政府がいかに論弁を弄そうとも、私有財産というものについての、もし政府がそれを放棄したり、あるいは勝手に処断をした場合にはおのずから責任があるという私たちは考えを持っておりますが、そういう点について、岸総理も政府の立場からこら言わざるを得ぬというような答弁が、この衆議院委員会においても明言を、政府にないと言わざるを得ないという言明をいたしておりますが、自分の良心的には、一応総理という立場からそういう返事をされておるというようにわれわれこの委員会会議録で承わるのでありますが、もう一つには、日本政府は憲法上の問題より、この平和条約の条項によってこれを放棄したものか、そのときなぜもう少し日本は正々堂々とこの私有財産の問題を主張して、一歩もこれを、正義ならば敗れたりといえども主張すべきは主張しなかったのか、その例は非常に歴史の上にも、吉田軟弱外交を国民の前にさらしておる。それはイタリアが結局この平和条約において、敗戦国になった結果没収された財産は、やはり私有財産は補償するという原則のもとに締結をしておるという、これは歴史的に明らかな記録でありまして、高辻委員政府の立場にあろうとも、これは後世に国会の記録が、議会が続く以上残るのであるから、一つそういう点についての法的解釈について、国際法あるいは現在アメリカが日本が放棄したにもかかわらず、日本が無意識にこの在外財産を放棄したのであるから、これは日本側が非常に、特にへり下った外交であったというふうな証明のように、ダークセン法が今日米国の上院に全会一致で可決された。それは日本の財産といわず、ドイツの財産と、いわず、私有財産は返さなければならないという世論が現在高まっておることによりまして、ときの吉田外交というものは非常に正しい主張をしていなかったようにわれわれ考えるので、こういう点に、法制局の立場から、現在の私が先ほど申しました韓国に対して主張しておる点が、現在政府答弁と少し食い違うんじゃないかという考えを持つのでありますが、それについて御答弁一つ……。    〔理事高野一夫君退席、委員長着席〕
  32. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま申し上げましたのは、これは平和条約の十四条の解釈として申し上げたわけでございます。これにつきましては何と申しますか、いろいろ法律的な見解というものがあることは、正直に申し上げてその通りだと思います。たとえばこれについては、法律上補償の責任があるという論もございますし、それからまた、学者の論といたしまして、法律上の補償責任はないという論もあることも確かなことでございます。ところで、だんだん伺っていきますと、今後まだ平和条約なり、特別取りきめ等によりまして最終的に決定されておらない部分についてどうかというようなことになって参ったわけでございますが、むろんそういう場合に、政府が在外財産の確保につきまして万全の努力をするということは、これはもう当然なことだろうと思うわけであります。しかし、それと平和条約十四条のようなことになりまして、きまった場合の法律的な考え方というものとは実は矛盾するわけではないのでございまして、むろんあくまでも、ただいま御指摘になりましたような外務当局においてそういう努力をするのは、外務当局のみならず、政府としてそういう努力をするのは、これは当然のことだと思いますが、そうした結果としてどういう約諾がなされるものか、それについてはまだ判明をいたしておりませんので、その点について今その結果がどうなるかということはちょつとお話しできないようなわけでございます。繰り返して申し上げますが、そういう場合に、在外財産の帰属について万全の措置を講ずべく政府が努力するのは、これは当然である。また、そうした場合に、そうした結果どういうことになるかわからぬけれども、かりに平和条約の十四条のような規定ができ上っても、それは法律的な問題と、それからちょうど御審議願っております給付金が、政策的措置として講ぜられておりますように、そういう面の政策的考慮を払うということとは別のことでございますので、その点御了解願いたいと思います。
  33. 小西英雄

    ○小西英雄君 いろいろ答弁がございますが、私が非常に端的に聞きたいことは、日本と韓国との間に現在外交交渉が続けられておるにもかかわらず、当委員会において、在外財産の補償の責任が、政府において憲法上、法律上の責任がないということをここで言明するならば、韓国側が、一つも在外財産についての日本政府の補償がないならば、これは当然韓国のものであるというふうに、われわれにすがられてきた場合に、その点、法律的にどういう解釈になるか、その点法制局の見解をお伺いします。
  34. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 繰り返しになって恐縮でございますが、韓国との交渉についてどういう結果が得られたか、それがわかりませんので、その方針といたしましては、むろん先ほども申し上げましたように、在外財産の確保について、万全の努力をすべきだということは当然であるというふうに考えるわけでございますが、その結果としていかなる事態になるかが、法律的な素材としてどういうものが提供されるか、それがわかりません現在において、それについてとやかく申し上げるのは差し控えざるを得ないと考えるわけです。従って、それがどうなるかということは、実は一言も法律的には申し上げてないつもりでございますが、そこでそういう場合に際会しては、もっぱら国民の満足が得られるというような解決方策を講ずべきであろう、これはいささか法制局が申し上げる筋から逸脱いたしますけれども、あえて申し上げれば、そういうことではないかというふうに考えるわけでございます。
  35. 小西英雄

    ○小西英雄君 そうすると、もう一点お尋ねしたいことは、在外財産に対する国家補償の責任なしという理由は、日本国内の憲法によるものか、あるいはサンフランシスコにおける平和条約の条項によるものかということについてもう一言。
  36. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) この平和条約の十四条について申し上げますのは、むろん御理解されておられると思いますけれども、平和条約十四条の適用を受ける範囲において当然問題になるわけで、その部分——これは何でも全部の在外財産からいえば、きわめてわずかな部分のようでございますが、そういう部分につきまして、第十四条の解釈をいたして参ります場合に、向らにある財産権を処分をするというその処分の主体は、実は先方でございまして、先方というとはなはだ語弊がございますが、あちらの実は憲法上そういうことができるかどうかという問題がまさに起るわけで、聞くところによりますと、アメリカでもそういう問題が出ているようでございますが、その日本国の憲法の二十九条三項は、日本国国権をもってそれを収用するという場合の規定でございますので、いろいろそれについて御不審の点が出てくることはよくわかりますが、二十九条三項の問題としてぴたりと当るような、そういう性質のものではないのではないか、申し上げているその問題は、まさに十四条が問題になっている、その在外財産だけについて申し上げておるわけで、その余のことは今申し上げておらないわけでございます。
  37. 小西英雄

    ○小西英雄君 もう一つ高辻次長にお尋ねしたいことは、サンフランシスコ平和条約起草当時、法律上いろいろな見解等について、やはり重要な役割におられた高辻委員と考えておりますが、その当時連合国側に対してしいられたものか、あるいは日本の外交上独自の立場から勇んで在外財産を放棄するというふうな法文を作成したことについてのいきさつ等について、何か記憶があれば一つ答弁願いたいと思います。
  38. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいまの御質問でございますが、私確かに法制局におったわけでございますが、当時、こまかいことを申し上げると、私第一部長をやっておりまして、平和条約の審議にはあずかっておりませんけれども、しかし、あずかっておるにいたしましても、実は今御指摘の点につきましては、主として向うと、外国との折衝に当った筋合いでありませんと、責任をもってお答えするわけにいきませんので、その点あしからず御了承願いたいと思います。
  39. 小西英雄

    ○小西英雄君 もう一つお尋ねしたいことは、朝鮮は御承知のように、日韓合併は戦争にあらずして、心と心の結合によって平和裏に合併し、かつまた、戦後においても平和裏にお互いの国が分れて独立したという現状は御承知通りであるので、いろいろ在外財産の問題を論議いたします際には、政府側が口をそろえて戦争によるいろいろなことによって仕方がない、メイファーズだというような言葉が多いのでありますが、朝鮮のごときは、特に何ら戦いに臨んだことはないのでありまして、平和裏に汗とあぶらにおいて結晶された多くの私有財産が残されておるので、私は今日外務省が単独で、もしこの財産を韓国側に外交上放棄するようなことがあったら、これは大へんな問題に相なろうかと思うので、こういう点について、法律上の解釈としてどんなものであるかということを一つ、これは高辻次長に御質問はどうかと思うのですが、一ぺん一つ外務省が来ていないようですから、御答弁願いたいと思います。
  40. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 今の点については、結局は朝鮮との、韓国との関係については、平和条約上特別取りきめの次第となっている問題だと思いますので、そういう点については、先ほど申し上げたような確保をするという点を中心として、おそらくは交渉が進められる問題だろうと思いますが、しかし、われわれが法律的な見解を申し上げますのは、実はその努力した結果に基いてでありませんと、今の段階で法律的にどうということを申し上げることは、はなはだ申しわけない次第でありますが、実は私にとりましては、御説明申し上げる衝にただいまのところはありませんので、その点もまたあしからず御了承願いたいと思います。
  41. 小西英雄

    ○小西英雄君 もう一点、最後に高辻法制局次長に御納得していただきたいと思うことは、審議会におきましては、いろいろこの在外財産の問題について、憲法上、法律政府がこの支払う義務があるか、ないかについての論争がいろいろな学者において、あるいは委員の間において、政府当局ともいろいろ討論がなされた結果、これは私たちは、その二十三名においてこれを国家補償の責任があるかなしかということを決裁いたしたがったのでありますが、いろいろな諸般の事情を考えまして、これは五分と五分、その義務があるかないかということは、政府の一部あるいは学者の一部においても、なしという意見と、ありという意見が相打ちになったのでありまして、この点について、高辻次長も先ほどいろいろ御答弁下さったように、これは決してなしと断定するということには決定していなかった。今後、国際情勢の変化あるいは私有財産が相手国から返還する場合には、さらに法律的根拠ができるというわれわれ今日も考えを持っておりますので、この際、そういうふうに先ほどの答弁を了承いたしますが、この点を全然否定されたようないろいろな報告もございましたが、実はそういう状態になっておったということを私は委員会の記録にとどめまして、法制局との質疑を打ち切りたいと存じます。
  42. 千葉信

    委員長千葉信君) 御質疑のある方は順次発言を願います。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  43. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。本案に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。
  45. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは、次に労働福祉事業団法案議題といたします。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  46. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて下さい。  御質疑願います。
  47. 片岡文重

    ○片岡文重君 実はまだ法案全体について十分な勉強をいたしておりませんから、あるいは御質疑申し上げることがその内容に明記されておるかもしれませんが、もしそういうところがありましたら一つ御容赦願いたいと思いますけれども、この御説明によりますと、従来あった労災病院二十四カ所、傷疾者訓練所二カ所、総合職業補導所二十三カ所、簡易宿泊所十二カ所、これらを全部引っくるめ、さらに今後新設されるであろうところの施設をも引っくるめての経営管理等の機関として、福祉事業団というものを設けられるということのようでありますが、その福祉事業団を設けてこれらを統括していくに至ったのは、今までのそれらの施設の経営なりあるいは管理運営等について個々ではいけなかったという事例が、どういう問題が一体起っているのか。言いかえれば、どうしてこれを今やらなければならないようになったのか、そういう点をもう少しわかりやすく、この御説明のような抽象的ではなしに、でき得れば一つ具体的な事例をあげて御説明をいただけたらと思うのです。
  48. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 片岡委員の御質問まことにごもっともに思います。労災病院の方は、この提案説明にもありましたように、労災病院を二十四カ所も経営しておるのでありますが、この経営を特別会計である政府が直接運営すべきでありますが、今まで実際はそういうことには非常に不なれな点もありますので、その運営を労災協会という民間団体——財団法人に委任しておった。この財団法人はわずか二十万円の資本金でやっておるという団体でありまして、一番初め二つくらいの労災病院を当時の進駐軍からの勧奨もあって始めた。それを運営するためにこれが適当であろうというのでやったのでありますから、その後二つの病院が二十四にもなっていきますというと、こういう団体に委任しておくことは適当でないという事実がいろいろ出て参ったのであります。そこにもっと責任をはっきりさせた態勢、そうして政府が自分でやるよりはもっと能率的にやれるという考え方、こういうことがこの事業団にもってくる一つ理由であります。  総合職業補導所の方は、これまた失業保険法に基く失業保険の特別会計によって行うところの給付、これに付帯して行うところの失業防止また職業の安定というような面から考えられまして、主として被保険者あるいは被保険者たるべきような人を対象とするところの職業訓練、そういうものをねらって昭和二十八年に始めたのであります。当時いろいろな事情からこれを県に委任して、県と委任契約を結んで実行して参ったのであります。そこで、本来、特別会計である国が直接行うべきところのこの事業を県にまかせておいていいかどうかという問題が基本的な問題として起って参ったので、本来であればこれまた直接特別会計である政府が行うべきものである。しかしながら、実際上の運営においては、地方のいろいろな事情を勘案してやっていかなければならないし、当時非常に今でもまだありますが、総合職業補導所をぜひ地方でやってくれという要望も非常に強いために、地方団体から相当土地その他寄付と申しましょうか、提供してきております。そういうような関係から、ただいままで府県に委任し、従って、府県におきましては、府県の職員としてこれを今までやってきているのでありますが、当然政府が責任をもって行うという上から考えますときに、そういう形では少し無責任になりはしないだろうか。そこで、政府みずから行うべきであるという考え方、それに政府直接行うということは、安定業務それ自体ならばともかくも、補導というような業務は何か適当な機関にやらせることが、全国的な立場からやっていく方が適当であろうというところから、この二つの考え方を結び合せて、この事業団に一本でやらせよう、これが適当であろうということになったのでありまして、今日のこのままでやることが適当でないということについては大体御了解願えると思うのでありますが、さらばこれを国みずからが行うのが適当であるか、あるいは何らかそうした全国的にたくさんあるこうした機関を、適当な団体を作ってその団体に代行せしめるのが適当であるかということを最後的に勘案の結果、これはやはり監督を厳重にしながら法的機関を作って、そうしてこれをして代行せしめるのが適当であるという結論に達しまして、この法案を出すに至った次第でございます。なお、いろいろ今までありました、適当でないというような事例ということでありましたが、そういうことを特に申し上げることが適当であるとすれば、総務課長その他直接今まで運営にかなり深くタッチしておりました主管局長からさらに詳しく申し上げることにいたしたいと存じます。
  49. 片岡文重

    ○片岡文重君 全体の事例でなくてもけっこうですが、大体この法案審議に当ってわれわれが参考にし得る程度でけっこうでありますので、特に二十四カ所も現在設置されておる労災病院等が今日依然としてその経営を続けておられるということは、考えようによれば、今直ちにこれを、経営の管理の方式を改めて簡易宿泊所等々、一見連絡もないような施設等を全部統合してこれが管理に当るような機関を設けなければならないという考え方に直ちに納得しがたい点もありますから、そういう点で、なるほどとわれわれが理解できるような事例があるならば、それを一つお示しいただきたいと思います。
  50. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 概括的なことは政務次官から御答弁申し上げたのでありますが、一例を労災協会にとってみますると、先ほど政務次官から申し上げましたように、基本財産二十万円の財団法人が十億になんなんとする予算規模で二十四の病院を経営しているということでございます。その二十四の病院は労働省で設置いたしておりまして、国有財産でございますが、その運営に当る職員は労災協会という民間団体の職員でございまして、民間人でございます。そういう点から今日まで経理上その他問題になった点は幸いにしてございませんでしたが、今後、将来においてこの施設の充実とともに現在の体制で十分であるかということになりますと、若干危惧の念がございますので、この際、責任性を明確にして事業運営に当らしめたい、こういう考えから、政府の代行機関としての事業団方式を考えたわけであります。事業団方式をとった場合には、その職員の身分も事業団の職員、こういうことになりまして、これはえらい固い話でございますが、刑法等罰則の適用については公務に従事する職員とみなす、こういう体制になるわけでございます。で、これらの施設の職員が公務員と見なされる立場において労災保険事業を、保険施設の運営という非常に労働者に直接のかかわりのある大事な事業を営んでいく、こういう形になるわけでございまして、そういった点、現在の体制よりはるかに責任体制が明確になるのではなかろうか、かように思うわけでございます。  それから現在の形は、労災協会に委託費を交付いたしまして、その政府からの委託費をつぎ込んで病院経営をいたしておるわけでございますが、御承知のように、委託経営の場合には、相当大小となくこまかい点まで予算経理上の監督は受けるのでございますが、一面非常に事業運営の弾力性に欠ける面がございまして、たとえば施設に若干弾力的な運営ができるならば施設の完成も早くなるというのが、全くの委託費で、俗な言葉で申しますと、あてがい扶持のような形で金縛りになっているというのが現状でございます。そういった点、政府の代行機関としての手業団を設立いたしまして、ある程度の独立性と責任性を持たして運営させましたならば、その施設の整備充実並びに運営の面が現状よりはるかにうまくいくのじゃなかろうか、こういう点か考えられるわけでございます。一例といたしまして、病院の関係を申し上げたわけでございます。
  51. 片岡文重

    ○片岡文重君 今むしろ地方で望んでおるのは、病院をもっと作ってもらいたい。訓練所をもっと作ってくれ、補導所をもっと新設して内容を充実してくれ、こういうことだろうと思うのです。で、経営の面については、それぞれ地方が自主的な立場で、それぞれの事情に応じて、できるだけの努力を払って、地方によっては、むしろ公共団体の理事者等がそれらの施設をむしろ誇りとするように進んでやっている。しかし、労働省のこれらに対する予算等を見れば、必ずしも地方のそういう意欲とマッチしておるとは言えないと思う。で、今これを事業団を作られて、せっかく地方で誇りを持って他府県に誇るような施設を作りたい、やっていきたいということで、国家の補助の薄いにもかかわらず、困難な地方財政の中からこういうものに力を尽している。その熱意をむしろそぐような形にもなりはせぬかと思います。年々の決算報告書等によって指摘せられる不正批難事項等を見た場合に、当然もっと政府がそういう批難されるような事項の撃滅のために具体的の方策をとったらよかろうと思われるようなものに対しては、あまり積極的な熱意がないにかかわらず、いまだ指摘されるような事態の起らないこの種の施設の経営に当って先手を打って、この福祉事業団を組織されるということは、この事故が起らない前に手を打つということについては、私ども決して反対をするものではありません。むしろけっこうなことだと思いますが、しかし、それはあくまでもその施設の性格によるものではなかろうかと思う。そういう点から考えてみますれば、この今日の状態でせっかく地方公共団体が熱を入れてやっている、しかも、その地方団体でやっているということは、その地方心々の特殊な事情等を十分にしんしゃくし、それに適応する施設としてやっているものと思うのです。従って、それらを地方の公共団体の自主性というものが拘束されるようなことにでもなれば、せっかく伸びつつあるこれらの諸施設の前途に水をかけるような結果になりはしないかと思うのですが、そういう点については、政府としてそういうことのないということが、つまり地方の自主性なり、特殊的な事情等は十分に少くとも従来通り、できれば従来以上に、この特殊性というものが存置されるのか、育成されるのかどうか。その点についての何と言いますか、方策と言いますか、それがこの団体法の中に措置されているかどうか。この点についてお伺いしたいと思います。
  52. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 確かに今片岡委員のおっしゃいますように、地方側が非常に御熱心にこれをいわゆる誘致されたという事実は確かにあるのでありまして、従って、これに対する完成に向っては非常に熱意を持っておられる地方も多かったということは私どもも非常に感謝しておる次第でありますが、ところで、今回この責任の体制あるいは能率を上げていくというような考え方から、この事業団にいたしましてもそうした地方の熱意は十分受け入れる用意もしておるのであります。第十条には「地方公共団体は、当分の間、自治庁長官の承認を受けて、事業団に出資することができる。」こういう規定を残しておるのもそのゆえんでありまして、地方側が、特別会計からこのくらいしか出せないのだ、それじゃもっと大きなものにして地方側の要望にも応じてもらいたいというような強い御希望のある場合には、こうした条文を生かしていただいて、そしてりっぱなものにしていただく道も開いておりますが、ただどっちが責任があるのかはっきりしないような形ではおもしろくないので、はっきり責任は政府が責任を持ち、従って、その政府の代行機関のその団体が責任を持っていくと、こういう考え方にしたいというのがこの法案趣旨でありまして、そうした御熱意に対しては十分受け入れることにはやぶさかでないばかりでなく、そうした熱意が今後も失われないように運営していきたいと、かように考えておる次第であります。
  53. 山本經勝

    ○山本經勝君 関連して。  先ほどの御答弁を伺っておると、福祉事業団という公法人を作ってやる方が現行の状態よりもいいのだという根拠がきわめて薄弱なように思うのです。第一番に、総合職業補導所は都道府県運営がまかされている。これについては無責任だということが言われている。いわゆる労働省が直接所管をされるのだから、何と言いますか、直接手がけて運営をされるというのが本筋でしょうが、これはいろいろな関係上、実際の業務の運営が当該都道府県でやっていく方が円滑である、あるいは有効である、こういうことから出発しておるように思っている。ところが、そういう形は無責任であるという理由でこれがいわゆる事業団という形にしている。それからまた、労災病院等については労災協会、すなわち私法人である労災協会が基本財産はわずかに二十万円で設立されておるから膨大な資産の管理を、あるいは運営をまかさせるのには適当でない、こういうことを言われておる。これは全く私理解がいかない。  いま一つ私重大だと思うのは、この運営が、申し上げるように数十億に上る莫大な資産ではあるでしょうが、私法人である労災協会はわずかな基本財産を持っておるにすぎない。そこで民間人がこれをしかも運営している。財務上の、管理上の問題は今まで起らなかったが、将来起るかもわからないというようなことが言われている。ところが、よく考えてみるというと、民間人であれ、あるいはいわゆる言葉は悪いのですが、官僚であれ、いろいろな問題が今まで起っている。最近ではひんぴんと起る汚職事件など見ますと、私はそういう心配が全体にないとは言えないと思うのですが、そういう点で民間人では心配でまかせられない、こういうような考え方は私率直に申し上げてどうかと思う。そこで、次官にお伺いしたいのは、都道府県で総合職業補導所を事実上運営をしておる、その施設の運営には不都合があったのかどうか、この点をはっきりとお話し願わぬといけないと思う。それからいま一つは、労災協会が私法人であり、わずかな基本財産ではあるけれども、それの運営で不都合があったということを聞いておらない。また、先ほどの答弁でも、財務管理上の問題はなかったと言われておる。現打の運営状況を見ましても、大体において目的に沿った運営がなされておると判断するのですが、これに対して具体的な不都合があって、これを直さなければならぬ。公法人の事業団によってむしろよくなるのだという何の根拠もない。こうなってくる、この目的そのものがあいまいになってくると思う。その点あわせて重ねて御答弁をお願いしておきたい。
  54. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 地方団体が、県ですが、総合職業補導所を運営していく上において、不都合であったという事実を私は別に申し上げたつもりはないのでありますが、責任という考え方から考えますというと、失業保険法の特別会計で政府がやるべきものをこの地方にあるものは県にまかせる、こっちの地方にあるものも県にまかせるというので、県にまかせ切りにしておるということであっては、政府として、労働大臣としてまことにこれではもし適当でないことがあったときに申わけがない、こういう感じがむしろするのでありまして、こうした多数の被保険者のためにある保険制度の付帯施設がもっと責任のはっきりしたもので運営すべきであるということは、決して県が今まで投げやりにしておったとか、そういう考え方ではなく、法律によってはっきりこの責任体制をはっきりしておきたい。政府が自分でやるべきであるか、あるいは自分でやるのが過当でないとするならば、公的機関であるこうした事業団に代行させるというように筋をはっきり立てたいというのがむしろこの趣旨でありまして、もちろんそれに付随して、この代行機関である事業団にやらせることが適当であるということで、理由は付随的にはいろいろありますけれども、主たる根本的な理由は、国がほんとうにやるべきなのを、労働大臣の名において地方団体と委任契約を結んで委任してしまっておるというような無責任な投げやりのようなことにしておってはいけない。地方側が投げやりというのではなくて、労働大臣として、政府がそれでは無責任ではないか、こういう考え方が第一の理由なんであります。労災病院にいたしますならば、労災協会がちっぽけな団体だからいけないということよりも、やはり私が申し上げましたように、政府が自分で行うか、そうでなければはっきりした国会に御審議を願った法律によって、公的機関に代行せしめるということをはっきりしておきたい。つまり、責任体制をはっきりいたしたい。いやしくも全国数百万の被保険者に対して、こうした労働大臣がこそこそとやるわけではありませんけれども、私的な契約によって委任契約をしておくというようなことでなく、はっきり国民の前に国会を通じて御審議を願った団体に堂々とやらせたい、これが主たるねらいであります。いろいろな不便とか何とかいら理由は他につけ加えますけれども、根本は私はそこにある、こう考えております。
  55. 山本經勝

    ○山本經勝君 続けてお伺いしたいのですが、都道府県に総合職業補導所というのを運営きせる委託契約という形は、今お話だと、私的な契約と言われたのですが、その私的な契約とはどういうことなんですか。
  56. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) これは民法上の契約でやっておりまして、それで私、私的と申しました。別に、どっちも労働大臣であり、府県知事という公的な機関ではありますけれども、その契約自体は民法上の委任契約でやっております。そこ、そう申し上げたわけであります。
  57. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうすると、この委任契約県側の方の話を伺いますとね、委任契約を一方的に政府が破棄したということを言っている。で、事前にこのことについては協議があったのかどうか、そこら辺詳細にお話を願っておきたいと思いますがね。
  58. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 実は政務次官から申し上げました点に尽きるわけでございますが、この総合補導所を始めましたときに、私ども考えましたのは、総合補導所というのは、これは失業保険法に基く失業保険福祉施設でございます。従って、被保険者、つまり保険料を納めます被保険者がむしろ主たる対象になるわけでございます。で、現在府県で経営いたしております一般の職業補導事業は、法律規定にありますように、その地方々々の労務の需給に応じまして、失業した者を補導所に入れて訓練するという建前になっておりますが、失業保険の場合におきましては、これは被保険者を対象にした失業予防あるいは福祉増進の施設を行うというのが建前になっているわけでございます。で、現在総合職業補導所としてやっておりますのは準備その他の関係が整いませんために、現在やっております総合職業補導所では、一般の職業補導と同種の事業だけを現在取り上げてやっているわけでございます。従いまして、この運営につきましては、取りあえず私ども、府県の知事と民法上の委託契約を結びまして、そうして毎年、これは一年ごとに更新する建前になっております。で、今お話のように、この知事の事前の了解を得なかったんじゃないかというようなお話でございましたが、もちろんこの総合補導所を設置いたしております県は二十二、三県でございまして、全国の知事会議というようなものに正式にお諮りはいたしておりませんけれども関係があります県の係の者、部長クラスには十分事前に話し合いはしておるつもりでございます。そういうことで民法上の委託契約で一年ごとに更新をするということでございます。まだ契約は解除いたしておりません。  それから今お話がございました不都合があったかということでございますが、これは先ほど申し上げましたように、特に非常な大きな不都合があるということではございません。ただ現実の問題といたしましては、相当の府県におきましては、府県で負担を相当さしておるわけでございますが、この負担について困っておるというのが実情でございます。自治庁でも府県に負担をさせるということは困るということでございます。しかしながら、各府県の熱烈な要望もございました関係上、相当大幅に新設をいたしました関係上、若干過去におきましては、この運営費につきまして負担をしていただいたということもございますが、これについては各府県も相当困るということを申しておるわけでございます。それから、これは特に不都合ということでもございませんけれども、補導所で一番大事なのは、私は指導員、つまり先生、これだと思いますが、現在府県によりましては、補導所の先生は正式の定員に組みこまないで、臨時職員という形で運営しておるものが相当ございます。府県の経費の不足という点もございましょうが、要するに、これらの点につきましては、私ども事業団の発足に当りまして、全国的な視野におきまして、人事交流等も行うことができますし、優秀な指導員を置くということも相当改善されていくのではないか。根本的には最初に申し上げましたように、失業保険施設でございまして、被保険者の失業の予防、それから福祉の増進というのが建前になっておるという点を御了承願いたいと思います。
  59. 山本經勝

    ○山本經勝君 この職業補導所の問題は、今お話のように、被保険者の施設あるいは職業補導という名の通りなのです。そういうことはわかるのですが、そこで、職業補導所は失業保険の特別会計でもってまかなわれる。それで、今度は労災病院は労働者災害補償保険法の資金でまかなわれる。そこで、実際上、これは政府が特別な出資をしてやるというのは、そこに配置する職員と、それからその事務所、つまり事業団その一ものの事務所、こういうようなものになろうかと思う。そうすると実際上は、これはもう労働省が特に莫大な資金を投じていわゆるこの事業団を作るわけではないと思うのです。そこら辺の関係はどうなんですか。私は一応ここで考えられることは、総合職業補導所は失業保険の特別会計によってまかなわれる、ちっとも労働省が負担するわけじゃない。そこでまた、労災病院は、経営者が負担する労災保険の特別会計がこれは負担している。痛くもかゆくもないわけです、労働省は。ですから、労働省が悪く言えば、事業団なるものを公法人で作って、そうして労働大臣の管轄下に直接握っていくという考え方を持っておるのじゃないか、こういうふうな解釈もできると思うのです。その点、次官の方から一つ御解明を願っておかないと、根本問題であるので、きわめて重要ですからお願いします。
  60. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 労災保険及び失業保険というのは何かこう政府の行なっていることでないようなふうに聞えますが、負担は確かにこれは労災保険の保険料というものは大部分使用者であるということには間違いないわけでございます。政府も相当のこれに対して負担をさらにして、そうして特別会計ができておって、その特別会計の運営の責任者は政府であります。また、失業保険の方は、労使おのおの負担する、そのほかに、また、政府一般会計から負担する、この三者の負担になりますが、この給付の仕事はもちろん、付帯するこうした事業もこの費用から行われる。これはやはり特別会計として政府の責任において行う、これが建前になっておりますが、その給付は、もちろん特別会計みずから行うことは当然でありますが、それに付帯して行う、こういう施設の運営についても、政府が行うのが当然なことであるけれども、これを代行機関をしてやらせようというのがこの法案でありますから、何か被保険者のものをとっていって、政府が勝手にこういう団体に、労働大臣の管轄にしてしまうのだというふうなお言葉でありましたが、現在、労働大臣自体が責任者として自分が行うべき仕事の一部をこの団体をして行わせる、しかもそれは、民法上の委任契約というのでなく、国会を通じて国民の前にはっきりした団体とし、その法律に基いてこれを経営させよう、こういうことでありますから、どうぞ一つその点、誤解のないようにお願いしておきます。
  61. 山下義信

    ○山下義信君 今の問題に関連して。今の山本委員質疑に対する伊能政務次官のお答えは、政府の建前としてはそうでしょう。御答弁通りです。山本委員質疑の要旨を私承わっておると、結局労災特別会計のものと失業保険特別会計のものを持っていって事業団を組織するのであって、そこに新たに政府が金をつぎ込むということをせぬじゃないかと思う。言いかえれば、ただで事業団を作ろうとしておるじゃないかということなんです。その失業保険特別会計や、労災保険特別会計に政府の金が入ってないというのじやない。ですけれども政府の金が入っていても、その政府の金はすぐ福利施設に使えといって入っているのじゃない、労災だって失業だってそうなんです。特別会計の主として給付の負担をやっておるのであって、ひっくるめて理論的に言えば、結局両特別会計のものを持ち出したということだけは間違いがないので、そこに、何も持ち出す場合に、特別に政府がこの事業団を作るのに、一つこれだけ新たに負担をして、金をかけてやろうじゃないかというところが見えぬじゃないかと思う。私どもよくわからないのですが、ですからそこを聞いておるのです。私も聞きたいのですが、何かこの事業団を作るについて、労働省は三十二年度予算に新たに事業団につぎ込む金を、あるいは当初予算で三十億か五十億要求したか、どれだけの新たな金を持ち出して事業団につぎ込もうとしておるかということを一つ聞こうというのです。法律の中では、あれは何ですか、交付金というのですか、政府が出すということができるということになっていて、一体交付金を幾らもらうつもりであるか私どもも聞きたいのですが、そういうことが大蔵当局と約束ができておるか。交付金を必ず出す、どのくらい出すという金額までも話し合いがついていなければ、こういう事業団の設立というものの基礎政府の方できまっておるとも実際に言えない。会社を設立するのに、どれだけの金を出すという約束もなくしてばっと発起人がやるという手はありませんから、政府がそういう、ある程度犠牲を払ってこの事業団を大きくするというのか、どういうのか、これから聞いてみなければわからぬけれども、そういう新たな負担をしてないじゃないか。両特別会計の中を持ち出しただけじゃないかと、こういう質問ですから、その点を一つ明確にお答えになったらいいのじゃないかと思います。
  62. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 私が少し山本委員の御質問の趣旨を勘違いしたかもしれません。お言葉のように、事業団を作るのなら事業団を作るということのゆえに特別に政府が持ち出さないかということであるとするならば、実は打ちあけて申し上げれば、この法案が固まったのは、予算編成が今年はできてからなんです。従って、どういうふうにするかといえば、今年度は委託費として考えておるものを交付金に回されるということなんでありますが、これができることによって、一般会計からもっと出させよくなるということが私どものねらいの大きいものでありまして、それでは今年度どれだけ出すかということになれば、今年度はこの事業団を作ることによって一般会計から持ち出すというものはありません。普通の特別会計に出すものを、予算に組んでおる分はこれはもちろん執行されますが、それ以外に、事業団を作るがゆえに特別な交付金というものはありません。ただ今後こうして、これが地方側の非常に要望が強いものをどんどん拡張していく上におきまして、こういう団体にしておけばなお一そう一般会計からも出しよくなるということは言えると思うので、今まで特別会計に対して政府が出資したそれ以上のものを私どもは今後には相当期待しておるのでありますが、今年度はそういうわけで、予算が本年度固まってからこの法案が固まったという順序から申し上げまして、本年度この事業団ができることによって特別な交付金を期待するわけには参らないと、こういう次第でございます。
  63. 榊原亨

    榊原亨君 関連して、ちょっと別の方面から承わるのでありますが、たとえばこの事業団ができまして、予算をお組みになって、労災病院の方の会計と補導所の方の会計とは全然別個で流用を許さないのでありますか。それとも中で流用されるというお見込みでありますか。この点いかがですか。
  64. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 両特別会計はもちろん流用を許しませんが、この事業団自体のの運営というものは、一応労災部、それから失業保険部というふうに、二本建に運営としては——経理としてはなると思いますが、その共通の部分については、たとえば理事長の俸給だとか、理事の俸給というものは、これはもう一緒になるわけであります。
  65. 榊原亨

    榊原亨君 労災部と失業部ということですが、そうすると労災部の中では、たとえば労災病院の収入をもちまして傷癖者訓練所の方の費用に流用されることがありますか、ありませんか、別々でありますか。
  66. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 労災病院と傷癖者訓練所、この関係は非常に密接な関係があるものでありまして、これはどうしても一体として運営されるようになると思います。
  67. 榊原亨

    榊原亨君 関連質問でありますからあとで別にお聞きしますが、そうすると、総合職業補填所と簡易宿泊所の会計も有無相通ずるんですか。失業保険の方からいく関係でありますから、これはやっぱり一緒に運営される、かように考えます。
  68. 榊原亨

    榊原亨君 先ほど資本金が二十万円で、労災病院の経営もなかなかむずかしい、あるいはそのほかのことにつきましても、いろいろ補導所のことについてもいろいろ問題があるというような場合に、本部を作られて、そうしてそこへ全然政府が金を出さずにおけば、どうも、もともとのようなことと思うのです。まあその点だけで、政務次官でなくても、ほかの方からでも一つ……。
  69. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先ほど政務次官から御答弁申し上げましたように、一般会計から支出するお金は全然予定しておりませんが、両特別会計から出資金と交付金という二本建でお金が出るわけでございます。その場合に、ただいま政務次官から申し上げましたように、労災保険施設につきましては、労災保険施設勘定、それから失業保険の方は失業保険勘定という勘定別にはなりますが、別途、本部費と共通経理については共通勘定というのが設定される予定でございます。その場合に共通勘定でございますので、両保険の勘定からあらかじめ一定部分を共通勘定の方へ出しておきまして、そうして一本で共通する勘定は経営する、こういうことになるわけでございます。あるいは舌足らずかとも存じますが、一応経理上はそういうことになると思います。
  70. 片岡文重

    ○片岡文重君 まあ出資の問題に入っておるようですけれども、先ほど政務次官の引用された条文というのは、たしかこの法案の附則の十条のことを言っておられたと思うのですが、現在設置されておるこれらの施設は、もちろん国の要求によって作られたところもあるでしょうけれども、大部分は現に設置されておる、特に職業補導所のごときはそうだと思うのですが、設置されておる都道府県の地方的な要求によって設置されたものが非常に多いと思う。従って、それらの地方においてはこれの施設なり、あるいは設備なりにできるだけの投資をしておるはずですが、これをこの一片の法律によって全部吸収してしまうのかどうか。その場合に、先ほど民法契約に基いてやっているというお話でしたが、相手方にも話は十分してやるというお話だったが、私どもの聞くところでは、あまり十分な話し合いはなされておらぬのではなかろうかと思います。かりに御説明通りに、十分な話がついている、話し合いをしたということであったとしても、相手方がもしこれを、投下した、すでに投じたところの資本、費用等を考慮し、また、地方的な事情等も考慮してこの事業団に出資することをがえんじなかった場合には、一体政府はどういう処置をとられるか。この事業団に強制的にこれを吸収してしまうのか。その点を伺っておきたいと思います。
  71. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) その地元に対する了解につきましては、先ほど江下安定局長からお答え申し上げておりますが、さらに重ねて江下局長からお答えすることといたしまして、私から、今お話の、地方側がこれに、出資に応じないという場合にはどうするかということでありますが、この問題につきましては、この受益者というのは何と申しましても地方団体であり、地方住民であるのであります。この今までの委任契約を解除する、そうしてこういう団体をして経営せしめるのだということにしたことによって、地方側が、それならおれの方の出資分の土地はもうそこへ貸さないとか、あるいは出資しないというような団体は万ないと私は信じ、またもし、そういうようなことがあるとするならば、十分事情を話して、そうして先方の事情も聞き、また、希望も聞きまして、そうして地方とは、今後の運営におきましては、事業団がやるにいたしましても、よほど連絡を密にしてやっていかなければならない、こう考えておる次第でありまして、これを出資しないから土地を返せ、建物の一部を寄付した、出資した分があるから、あれをそれに提供するのは困るから返せというようなことは万ないと私は信じて進んでいる次第であります。
  72. 山本經勝

    ○山本經勝君 先ほど質問申し上げた点で、特に政府が出資する額、それから地方公共団体が出す金とで、やはり事業団が構成されるということなんですが、一体この金額については全然構想もなく、それは現在のところで、ただある府県の財産でしょう。これはいずれも、つまり先ほど申し上げたように、労災保険特別会計あるいは失業保険特別会計の施設ですね。施設をそのまま事業団という機関の中に管理、運営をすることで一まとめにする。そうすると、政府は何にも出さんで、実際はその財産を基礎にして、公法人である事業団というものを作るという構想なんですか。これは念のためにはっきり確かめておきたいのです。局長でもけっこうです。
  73. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 先ほど山下委員から敷衍して御質問がありましたのにお答えしましたように、両特別会計にはそれぞれ政府の一般会計から相当の額の繰り入れがあることは御承知通りであります。本年度におきましてはこの事業団に移行するかしないかによってこの額は変更はしないということも、先ほど申し上げた通りであります。一般会計から繰り入れば、これはすでに予算が成立しておりますので、既定の事実として両会計に一般会計からの繰り入れは相当額あるわけでありまして、この特別会計のうちの一部がこの運営費になるわけであります。今まで労災病院が、昭和二十四年から四十九億ほどを特別会計からすでに投資しております。これは今日再評価しますというとさらに多い額になって参ります。が、また、失業保険の方は昭和二十八年から今日まで十七億ほどの施設をしております。これもいずれもその年度の予算を積算したのでありますから、再評価いたしますと、もう少し多くなる、これだけの額のものが今日、国の建物としてあるわけであります。そのほかに地方団体側が負担しております土地その他がございますから、それらはまた評価委員に評価させて、そうして総額をもって出資の額と、こういうことになるわけであります。
  74. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと関連して……。今の労災保険の四十九億出資というのは、どの会計からどこへ行ったのか、そこのところの関係を明らかにしてほしいと思います。年々どうなっておるか……。
  75. 三治重信

    説明員(三治重信君) 今政務次官からお話のありましたのは、毎年の予算で労災病院の建設費と、それから病院の開設に伴う機械器具費、それを積算したやつで、運営のためのいわゆる運営費として労災協会に毎年経営の赤字分を補っていた分は入れてない数字でございます。
  76. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 四十九億というのは、労災保険の特別会計からその施設その他に出した金でしょう。そういうことでしょう。それで問題は、先ほど次官が盛んに言われるように、政府から労災保険に金を出しているというのは、どういう格好で出しているか、それを聞きたい。
  77. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 労災保険の方は私の考え違いで、失業保険の方で、労災保険には政府の資金は入っておりません。
  78. 山本經勝

    ○山本經勝君 ここで政府の出資と言われるのは、つまり失業保険特別会計に政府が渡している補助と言いますか、その金が入っておるから、それでその金を今日まで、過去にさかのぼっていろいろな施設等に投資された分を積算したものを出資した、こういうことになるような御答弁なんです。そうしますと、先ほど申したように、それは今まですでにそれぞれ特別会計に属する二つの、何と言いますか、特別会計の施設となって、財産となってあるわけなんですね。だから、それなれば当然労働省が管理している所管事項の中にあるから事業団に直しても適当ではないか、そうして全国的な統一した指導管理というところに持っていきたいというような意味に受け取れるのですが、そういうことでございますか。
  79. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 大体そういう趣旨であります。
  80. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうすると、ここでは新しく出資をするということでは全然ない。それで、初めに申し上げたように、失業保険特別会計と労働者災害補償保険法の特別会計、それの施設として作られている、すでに投資されたものを、改めて政府が出すということにならぬじゃないですか。これはどうなんですか、その点は。
  81. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) もちろん、現在政府が所有し、管理しておるものを、この事業団に出資すると、政府出資になると、こういう意味でありまして、新しいものを今政府が一般会計から持ち出すというようなことは含んでおりません。
  82. 山本經勝

    ○山本經勝君 その点が実におかしいのですよ。それはそれぞれ、先ほどから言われておるように、運営、管理が行われている。それで、今まで出したものを、今度一つに集めて——二つの店になっているのを一つに集めて、そうして新しい看板だけ書きかえる、こういうことになると思うのです。こういうこと自体がこの法改正の目的であるということになったら、全く私は意味のないものになると思うのですよ。そんなことをしなくても、現在のままで十分運営はできると言っているし、しかも関係府県では反対陳情をしていましょう。むしろこの二つの労災病院なり、あるいはまた、ここでは特に大きな部分が職業補導所でしょう、その他宿泊所等もありますが、それらは私は微々たるものだと思う。主として問題はこれらにあるのですが、しかもこの二つの問題は、それぞれ当該府県で今までの形で委託運営で十分やれている。ところが、さっきから話を聞いておるというと、いろいろ責任問題や、あるいは将来における管理、運営上の問題が起りやしないだろうか。そこで、非常に労働省は親心を示されておるようですが、実は資金は一つも出さぬ。今まであったものをそのまま一つに集めて、新しい看板だけを書きかえる、こういうことになってくると思う。全く意味がないと思うのですが、これは次官の方から一つ、かくしてぜひとも必要であるという根拠をお示し願いたい。先ほどは、今までの施設が悪かったという点を伺っておったが、今度はかくして必要であるという根拠をお示し願わぬといろと、これは困る、根本問題ですから。
  83. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) 先ほど私からこうするのが責任上ぜひ必要であるということを申し上げたのは、あるいはまだよく御理解できなかったかと思うのですが、労災病院を労災協会と労働大臣との間において民法上の契約で運営さしておるというような形が、労働大臣の失業保険の運営という上から考えて、給付という問題はともかくも、こうした事業の運営ということについて直接労働大臣が行うのは適当でないからというので、私法上の契約で、私法人に委任しておるというようなことは、事柄の性質上適当でないと、どこまでもこれは法律上の問題として国会で御審議を願って、そうして、こういうふうにして経営するのだということを、国民、特に被保険者の方にもはっきりさしておきたいというのが、労災病院に関する問題であります。  また、職業補導所につきましては、やはり同様に、なるほど初めのうちは、だんだん大きくなるとも思わないものですから、地元の県が非常に御熱心であるから、まあ一つ地元の県でやっていただこうというようなことで、やはり民法上の契約としてやってきたのでありますが、いやしくも政府が自分で行うか、しからずんば、公法上の公的なものとして運営させることが適当であると、こういう観点から、この事業団法の御審議を願うことになったわけでありまして、つまりこうしたものを民法上の契約というようなことでやっていくことは、こうした両特別会計の制度としては適当でない、であるから、もっと明朗なはっきりさした立場から、責任をはっきりさせて運営していきたいというのが一次的なものでありまして、今までいろいろ、これに付随しては、こういうこともある、ああいうこともあると、あるいは労災協会が二十万円で少いのなら、もっと大きな団体でも作らして、使用者側に訴えて、あるいは労働組合に訴えて、もっと大きな資本でやったらいいじゃないかという問題もあり得ると思うのでありますが、そういうことではなく、責任の体制をはっきりしたいということなんですが、これが二百万になっても、二千万の団体であっても、そういうものよりも、もっとこうしたはっきりした公法上の公的な代行機関にしたい、政府みずから行うかわりにやるのですから、法律上の代行機関というものでやりたいというのが、この法のねらいであります。
  84. 千葉信

    委員長千葉信君) ちょっと速記を  とめて。    〔速記中止〕
  85. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午後三時五十八分休憩    —————・—————    午後四時三十五分開会
  86. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。   この際お諮りいたします。ただいま労働大臣と連絡をとりましたところが、依然として、予算委員会において答弁中であるから出席不可能であるという連絡でございます。私どもといたしましては、本日、明確に出席を約束のもとにこの法律案審議に入った次第でありますが、以上のような状態で、提案者側たる労働大臣の誠意を認めるわけにいかない態度であります。従いまして、かかる態度に始終される限りは、当分の間、本法律案審議を停止することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時三十六分散会