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1957-05-07 第26回国会 参議院 社会労働委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月七日(火曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————   委員異動 五月六日委員井村徳二君及び柴谷要辞任につき、その補欠として谷口弥三 郎君及び山下義信君を議長において指 名した。 本日委員紅露みつ君及び大河原一次辞任につき、その補欠として小西英雄 君及び木下友敬君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            榊原  亨君            高野 一夫君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            草葉 隆圓君            小西 英雄君            谷口弥三郎君            寺本 広作君            片岡 文重君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            山下 義信君   衆議院議員            野澤 清人君   国務大臣    厚 生 大 臣 神田  博君    労 働 大 臣 松浦 清一君   政府委員    厚生大臣官房総    務課長     牛丸 義留君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省公衆衛生   局環境衛生部長  楠本 正康君    厚生省引揚援護    局長      田邊 繁雄君    労働政務次官  伊能 芳雄君    労働大臣官房総    務課長     村上 茂利君    労働省労政局長 中西  實君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   衆議院法制局側    参     事    (第二部長)  鮫島 眞男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○美容師法案衆議院提出) ○参考人出席要求に関する件 ○小委員会設置に関する件 ○引揚者給付金等支給法案内閣提  出、衆議院送付) ○労働福祉事業団法案内閣提出、衆  議院送付) ○労働情勢に関する調査の件  (公共企業体等労働争議に関する  件)   —————————————
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) それではただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動を報告します。  五月六日付をもって、井村徳二君、柴谷要君が辞任し、その補欠として、谷口弥三郎君、山下義信君が選任されました。  次いで、五月七日付をもって、紅露みつ君が辞任し、その補欠として、小西英雄君が選任されました。   —————————————
  3. 千葉信

    委員長千葉信君) 美容師法案を議題といたします。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 榊原亨

    榊原亨君 この法案提案理由といたしましては、最近美容業の著しい進歩にかんがみて、その発展を促進する意味から法案を作成したというふうに、御提案になったように書いてあるのでありますが、この在来理容師美容師法二つに分けまして、この美容師法理容師法にお分けになりましたのでありますが、そのことによって、この業の発展をやるということでありますが、ただ単に、今までの理容師美容師法二つに分けたということだけで、そのことによって、どういう理由でこれが発展になるのでありましょうか、それを一つお尋ねいたします。
  5. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) きわめて適切な、言葉じりをとられた格好ですが、この前も経過を申し上げましたように、実は昨年から美容師単独法提案されておりまして、その内容としますところは、養成施設中のインターン制度に対する根本的な改正案でございまして、しかも体裁よく言えば、実務見習い期間中に三年間経過するというと、美容師試験受験資格がつく、学校に行かなくても、講義録をとらなくても、というような表現まで出ました。これに対して、党派を超越して、自民党も、社会党の方も、まじめに検討を加えたのですが、ややともすれば、徒弟制度の復活になるのではないか、こういうふうな心配がありまして、約一年間、もみました結果が、先ほど提案理由を御説明申し上げましたように、一応その内容の改変に対しては後日の問題として、法律分離だけしよう。その分離する理由としましては、現在のこの理容業美容業との実態が、形はよく似ておりますが、内容的には非常に変ってきておる。特に最近のように、毛髪だけを中心にした、あるいは顔そり中心にした美容考え方が、全体的な、この肢体の美容にまで及ぶような、容姿の美容術というものに傾向が拡大されてきました。しかも、その問いろいろな薬物利用等も考慮されるものですから、おのずと男子のこの散髪と言われる理容業、それから化学操作を行う美容業とは、基本的な問題は別としましても、技術の分野というものはおのずと分離されてきた、ころいろ建前にありますので、従って、これらの業態を同一法律で、同一趣旨のもとに扱うことは不合理ではないか。むしろ法律二つ分離する。分離すると同時に、その養成施設、または養成期間等についても、主務官庁が十分に指導監督のできるようにしむけるべきではないか。それでは今先生の御指摘のように、何ら進歩的なものは取り入れられていないじゃないか、こういうおしかりをこうむるかもしれませんが、やはり法律そのもの分離して、全然別個の視野に立って、理容業美容業とを分離したことだけでも、これは相当の進歩であります。しかも、そり間には、養成施設等については、御承知通り理容美容とは、おのずと基本的な条件が違って参ります。従って、片方の法律では、今まで細則にあったものを、政令にあったものを、わざわざ本文に取り上げて、昼間、夜間の制度まで明文化した。ところが、理容業の方では、それを明文化せずに、従来のままおいておる。まあこの二つ法律の中で、そういうところにも差があります。なぜそういう差ができてくるかというと、低料金に基く——現在の開業しております理容業美容業との実態から見まして、理容業の方では、見習いをする者は、比較的一定の個所に、一定人が長くとどまる傾向がある。美容業の方は、短期間に転々とする傾向がある。年ごろの娘でありますから三月か、半年かで……。こういうところに、この養成施設等の問題についてもいろいろ御議論があり、新しい法律提案等もあったと思われるのであります。従って、一応この際法律分離して、との両者実態というものを根本から考え直してみる必要もあるだろうが、今ちょうど環境衛生適正化法律もあることだし、従って、なるべく広範な改正はこの際避けて、分離だけにしておこう、これが衆議院側の態度であります。決して不まじめに検討したわけじゃありませんので、御了承願いたいと思います。
  6. 榊原亨

    榊原亨君 大体その要点はわかったようでありまするが、端的に私はこれは一つ政府にお聞きしたいのでありますが、理容業と、美容業と、どこが違うのでありますか。どういう点ではっきりこれを区別することができるのでありますか。これは将来この法律二つに分れますと、従って、その適用する対象というものに非常な問題があると思うのでありますが、その点を一つ政府に承わりたいと思います。
  7. 山口正義

    政府委員山口正義君) 御質問の点は、従来は男子理容、それから女子美容というふうに、概念的に比較的以前は区別しておりましたが、最近は御承知のような、非常にその傾向と申しますか、人によっていろいろはっきりしないというような——これは個人を対象といたしました場合に、そういう問題が起ってくることは実在することでございますが、法律の中に第一条に、理容とはこれこれ、美容とはこれこれというふろに規定してございまして、さらにそれを敷衍いたしまして、政府といたしましては通牒で一応説明を加えているわけでございます。お許しを得てそれを読みたいと思いますが、「理髪とは主として頭髪の刈込み、顔そり洗髪美毛養皮白髪染等、顔面及び頭髪整容作業をいい、男子に対するパーマネントウエーブはこれを含まないのを原則」といたします。ただアイロン代用程度パーマネントウエーブと申しますか、そういう作業は、理容師においてやっても差しつかえないという解釈をいたしております。  これに対しまして、「美容とは女子及び男子に対するパーマネントウエーブ結髪化粧洗髪美毛養皮美爪白髪染等、額面、頭髪手指等整容作業をいう、ただし、顔そり作業はこれを含まないのを原則」といたします。ただ「化粧に伴うえり足等の剃毛は差しつかえない。」そういうふうな解釈指導をいたしているわけでございます。    〔委員長退席理事山木純勝君着席〕
  8. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますると、その男子に対する美容所というものもできるわけなんですか。今の御説明でございますと、男子に対する美容所というものができることになるわけですか。
  9. 山口正義

    政府委員山口正義君) 御指摘の点は、理論上はそういうことはでき得ると思うのでございますが、実際上はそういうものは現在ないと思うのでございます。
  10. 榊原亨

    榊原亨君 先ほどのお話しによりまするというと、大体この美容技術進歩いたしまして、薬物その他のものを、化学剤その他のものを使ってやるというようなことがだんだん範囲が広くなって参りましたから、従って、この法律二つに分ける必要があるのだというお話しでありますが、その点はわかっております。そういたしますると第三条の二の、「美容師免許は、精神病者又はてんかんにかかっている者には、与えない。」とありますが、それほど進歩しております技術、業務の範囲でございますならば、たとえば色盲とかあるいはおし、つんぼとか、そういうものに対する制限は必要がないのでございましょうか。在来理容師美容師でございますならばよろしゅうございますが、薬品を使いあるいは電気器具を使って参りまするというと、従って、相当の、この色盲とかあるいは不具、つんぼ、おしというような者、あるいはめくらというような者、これはそこに制限する必要があるのじゃないか、これは将来のことといたしましても、さしあたってこの法律を分けるについては非常に重大であると思うのでありますが、この点についての御提案者の御意見はいかがでございましょうか。
  11. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) そこまで提案者の方では、正直なところ考えておりません。当然そうした問題が起きてきますれば何ですが、これはおそらく私ども感じとしましては、めくらとか、おし、つんぼ等に対して特別に免許を与えようという操作があれば別ですが、これは受験資格を与えて試験される以上は、そうしたところで十分防ぎ得るのじゃないか。ただ後天的なものに対しては、健康診断等で手心を加えなければならぬと思いますが、同じおし、つんぼでも、つんぼやおし試験が行えないということはないと思います。手先仕事ですから。しかしそれが初めからわかっておりながらめくらやおし、つんぼに試験を受けて、学科ができた、実科ができたからといって免許を与えるか与えないかということは行政措置で十分できるのじゃないか、こういう感じがいたしますが、決してこだわった意見じゃありません。
  12. 榊原亨

    榊原亨君 私が申すのは、電気器具を扱いましたり、あるいは化学剤を使いましたりするのには、たとえその技術が、手先仕事だけできましても、ある程度のそういう制限ということが必要になるのじゃないかと思うのでありますが、これは御提案者に聞くのは無理なんで、実際、法を施行をされます政府の方といたされましては、その点をどうお考えになっていらっしゃいますか。
  13. 山口正義

    政府委員山口正義君) 現行法理容師美容師法におきましても、第七条で、今回の改正案の第三条と同じような精神病者てんかんだけに関する規定だけを設けておるわけでございますが、実際問題といたしましては、ただいま野澤先生もおっしゃいましたように、受験資格というようなところである程度の規制が加えられる。ただいま榊原先生指摘のような点を十分注意してやっていけるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  14. 榊原亨

    榊原亨君 現在でも、そういう制限をして試験をしていらっしゃいますか。たとえば色盲の者、どうです。
  15. 山口正義

    政府委員山口正義君) 現在、色盲者受験資格を与えないというようなことはいたしておりませんですが、しかし、御指摘のような点は、今後この業体を行う者がますます分科して参りますに従いまして、そういう点は考えていかなければならないと思います。
  16. 榊原亨

    榊原亨君 こういう美容師とか理容師になられる方は、あまり経済的にも豊かな方ではないのでございますから、それらの方に職業を与えるということについては、これは当然認容し得る限界においてやる、たとえば色盲につきましても、極度の色盲でない限りは、ある程度これは必要でありますが、現実の面において、この法律分離されるということは、御承知通り美容師のその美容術というものが進歩した、そこで化学薬品を使いましたり、電気器具を使ったりするというようなことが多くなってきたので、これを分けるというお話であります以上は、従いましてこの美容師免許を与えまする上におきましては、その化学以応につきましても、あるいは電気器具を扱う上におきましても、危害を与えない程度制限というものはやむを得ないんじゃないかと私は思うのでありますが、この法律が、単に分けただけだというお話でございますから、今急にどうこうということはありませんにいたしましても、これを実施いたします上におきましては、その点特に留意されましたり、具体的方法をもつ地方庁の方に御指示が願いたいと私ほ思うのでありますが、その点についての政府のお考えはいかがでございますか。
  17. 山口正義

    政府委員山口正義君) 実施に当りましては、御趣旨の点、十分尊重して、地方に指示をして参りたいと思います。
  18. 榊原亨

    榊原亨君 第十七条でございまするか、この前、野澤議員お話によりますと、「美容師及び美容所開設者は」というふうに、「又は」というのを及び」というふうにされるということを御希望になったと私は記憶しておるのでありますが、これが環境衛生関係営業適正化に関する法律との関係におきまして、環境衛生法律におきましては、第二条に美容業ということが対象になっておるわけです。そこでこれはこの会と申しますのは、環境衛生におきます組合別個のものを作るということを認めるというふうに——ここで、会を組織するというのは、別個のものをさして今考えて書いた次第でございましょうか、あるいは環境衛生の方の組合そのものというお考えでございましょうか。まあこれはそっちの方はまだ問題になっておりませんでありますが、そのかね合いを一つ承わりたいと思います。
  19. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) この前もちょっと申し上げましたように、これは全然別個のものと私ども考えております。環衛法の方でいきますというと、美容理容業を営む者が組合を形成する。それからこの美容師法なり理容師法なりで申します十七条または十四条では、美容または理容免許を有する者が中心になりまして、勤めている者も、開設して単独営業を営んでいる者も一緒にして技術の向上をはからなければいけない、こういう目的で組合を作る。ただし法の建前としては、なるべく同一府県内に幾つもの組合のできることは好ましくない、こういう考えで、やはり環衛法と同じように、でき縛るならば都道府県一本化された組合にまとまり上れば非常にけっこうだ、こういうような考え方をいたしております。以上の通りです。
  20. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますと、美容所開設者美容師でなければならぬというお考えでございましょうか。美容師でなくても美容所開設することができるのでありましょうか、その点を一つ
  21. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) 美容所開設者は、美容師みずからが開設する場合と、第三者資本を出して美容師を雇って開設する場合とあるということを前提にして審議いたしました。
  22. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますると、環境衛生の第二条の三に美容業とあります。ただいま問題の提案されております第六条では「美容師でなければ、美容を業としてはならない。」と書いてある。そういたしますると、環境衛生の方の法律において、美容業というものは当然美容師でなければならぬのでありまするが、環境衛生の第二条の三項においては、美容所開設するしろうとの人は入れないというお考えでございますか。
  23. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) 御質問の点ですが、「美容業規定により届出をして美容所開設することをいう。」と第二条の第三号に解説してありますが、これは、第三者開設してもそれを含むんだと、こういう意味解釈しております。美容師でなければ開設することができないんじゃなくって、美容師を雇って開設した場合に、第三者開設したものも美容業を営むものと解釈をしておるわけです。
  24. 榊原亨

    榊原亨君 ただいま提案になっております第六条は、「美容師でなければ、美容を業としてはならない。」と書いてある。その点はいかがですか。提案者でおわかりにならなければ、政府の方の御見解を伺いたい。
  25. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) この条文の解釈ですが、」第六条の「美容師でなければ、美容を業としてはならない。」、これは、あくまでも原則論でありまして、そうしますというと、資本主があって、たとえば、株式会社で法人格を持った。そこで、ちょうど薬局を開設すると同じように、美容師を雇って開設した場合に、美容師でなければ業とできない、その意味を同じに解釈してよろしいんじゃないか。従って、第三者の開業というものを認めないんじゃなくて、美容師を雇わなければ全然第三者は開業できない、こういう意味合いに解釈をしていただきたいと思うのでございますが、決して矛盾するような法文でないように感じられますが、いかがでございましょうか。
  26. 榊原亨

    榊原亨君 政府の御意見はどうです。政府の御意見一つどうぞ。
  27. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) お答えを申し上げますが、ただいまの御説明に敷衍さしていただきますが、美容師でなければ、実際問題の業、つまり、美容行為をしてはならない。ところが、美容所開設するような場合には、必ずしも美容師資格を持っている美容師でなくてもできる。従って、この点は、一方は開設者の立場であり、一方は実際に美容行為を行う者であり、両者の間に矛盾はないものと、かように考えております。
  28. 榊原亨

    榊原亨君 業とは反復して同じ行為をするもの、そういうことですね。従って、美容行為をただ一回しただけじゃ美容業じゃないわけだ。それはもうわかった。今の御説明は、この法律に関する限りはわかるんです。美容師でなければ、美容を業としてはならない。開設する者はしろうとであってもいいわけです。ところが、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の方では、第二条に美容業というものが入っておる。そういたしますると、その美容業というものは、美容師美容を業としている者でなければできないとあるんですから、この中には、いわゆるあなたの言われるしろうと開設したものは入れないおつもりですかということを承わりたい。
  29. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) まことにごもっともな御指摘でございまして、この辺に、業という言葉意味解釈にきわめて不明確な点が出て参ってきております。しかしながら、環境衛生関係営業法律におきましては、美容を業とするという場合には、これは、いわゆる開設者のみを考えて、経営者のみを考えておる業でございます。美容師法の方におきましては、第六条の業とは、直接美容に携わる行為というふうに考えられるわけでございます。
  30. 榊原亨

    榊原亨君 その点は、法律の上ではそう読めないんですね。それは、あなたの解釈はそうかもしらん。法制局一つ呼んでいただきたい。法律に出た以上は、そんなあなたの勝手気ままな解釈じゃわからぬ。
  31. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この点は、なるほど業という言葉そのものをとってみますと、きわめて不明確な点が出て参りますが、環境衛生法律におきましては、特に第二条におきまして美容業というものの定義をしてございますので、この辺は言葉が、法律におきましてはきわめてはっきりいたしておる、かように考えている次第でございます。つまり、この場合、環境衛生法におきましては、美容業とは法律によりまして届出をして美容所開設しているものというふうに定義が下してございますので、この点は法律的には意味ははっきりしていると思います。
  32. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますると、ただいま問題になっておりますこの美容師法の中にあります美容業環境衛生の方にあります美容業とは違うということですね。
  33. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) どうもまことにごもっともな御指摘でございますが、当初申し上げましたように、業という言葉意味がきわめて明確を欠いておりますので、かように法律において明確に規定をいたしておる次第でございます。従いまして、美容師法におきまする営業とそれから環境衛生法におきまする営業とは、これは意味が違っておる次第でございます。
  34. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますると、第六条で「美容師でなければ、美容を業としてはならない。」ということは言えない。美容業というのは別にまたある、同じ美容業でも違う種類の美容業があるとするならば、第六条で「美容師でなければ、美容を業としてはならない。」とは言えない。その点いかがです。
  35. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) まことに御指摘通りでございますが、環境衛生法律におきましては、これは、経営と申しますか、開設というものを業というふうに規定いたしております。美容師法におきましては、美容行為そのものを業というふうに意味しておると、かように考えております。
  36. 榊原亨

    榊原亨君 時間をとりますから、一つこれは法制局を呼んでいただいて、そうして法理論的な御解釈を承わらなければ、どうも私わかりません。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  37. 山下義信

    山下義信君 法制局の来ます間に御質疑をさせていただきたいと思います。前回、片岡委員並びに榊原委員から適切な御質疑がありましたので、お尋ねる点はないと思うのでありますが、一、二私も伺っておきたいと思います。  先ほど榊原委員からお尋ねのありましたときに、ただ理容師法美容師法を分けただけでは意味が少し足りないじゃないかという御意見がありました。私も全く同感に思うのですが、せっかく現行法二つに割られましたので、私どもとしては、この機会にできるだけ衆議院の御提案のこの法案を御審議申し上げるというよりは、公式にはそうなんでありますが、実際は現行法でありますから、この際、現行法の不備な点がありましたらば、できるだけお互いに検討しておく方がいいのじゃないかと、かように私も考えるわけです。そういう意味でいろいろ先日来まことに適切な御質疑があったのだろうと私は思うのでありますが、そこで私も一、二伺いまする第一点は、この美容師法の第二条の定義美容仕事内容がここに掲げてあります。これも私先ほど榊原委員の御質疑の中にあった御意見に全く同感で、実は私はあまり美容理容に御厄介になる柄で、ありませんので、(笑声)申し上げる資格はないかもしれませんが、ことに婦人の美容業内容なんか知りませんけれども、伝え聞くところによりますと、非常に最近進歩しておる、いろいろその仕事内容も広範かつ高度になっておるということを聞いておりますので、そこで伺っておく必要があるだろうと思うのです。ここでは「パーマネントウエーブ結髪化粧等」となっておるのでありますが、「等」という中には何が入るかということを明らかにしておく方がいいんじゃないかと思うのです。今、顔そり理髪の方に、理容の方に入るのだと、省令でありますか、通牒でありますか、に明示されましたが、「等」という中には何かはかに入るものがあるならば、この際明らかにしておく必要があるのじゃないか。そうでないと、美容師免許を持っていない者でないとできないことをここできめるのですから、「等」ということに何かはかのことがあって、無免許の者がやり得る範囲がぐんとあったらば、これはせっかく美容師の業の内容をきめておいたからといって、無免許の業者が幾らでもできることになる。何か、最近の美容進歩と言いますか、仕事範囲が広くなったために、「等」ということに含まれるものをこの際指摘しておくことがあれば指摘しておく方がいいんじゃないか、これは相談です、質問というよりは。衆議院の方にも御相談申し上げる。  そこで私が伺うのは、美顔術というのはどうなりますか。これは理容に入りますか、美容に入りますか、これ一つお尋ねしておきます。
  38. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 美顔術というのは内容がいろいろでございまして、養皮それからマッサージ、その他いろいろな種類のものが包含されております。大体美顔術というものは美容師の範疇に考えられます。
  39. 山下義信

    山下義信君 わかりました。美顔術は美容の中に一つ入ると、そこでその次に伺いますが、マニキュアは美容の中に入りますか、美容師以外の者でもできますか。
  40. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) マニキュアは当然美容の範疇に入っております。と申しますのは、もっと根本的な問題になって参りますが、この定義におきまして、容姿を整えることが理容と言っておりますが、整えるという字は、あまり人工的な操作をせずに、自然のままの姿で整然とさせるというのが整えるという意味で、一方、容姿を美しくするというのが美容趣旨でございますが、美しくするという言葉の中には多分に人工的にいろいろ操作を加えまして美しくするという、人工的な手段が含まれております。従って、化粧をするというようなことはある意味で全く本物とは違ったような格好になってくるというような場合に、その人工的な要素を加えまして美しくするという定義を加えておるわけであります。
  41. 山下義信

    山下義信君 概念はお説の通りでしょう。マニキュア、いわゆる美爪術というものは美容師でなければできないことになりますね。
  42. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 原則的にはその通りであります。
  43. 山下義信

    山下義信君 それから全身美容というのはどうなりますか。全身美容術と言いますかね、術という名をつけた方がいいでしょう。全身美容術……。
  44. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 御指摘のように、最近ぼつぼつ全身美容というような操作が行われて参っております。これらはもちろん美容の範疇に含まれるべきものであると思います。
  45. 山下義信

    山下義信君 これは、ただいま政府の見解は、これは注目すべき見解でありまして、そうすると、器具、機械その他いろいろな方法によりまして全身美容を施すという仕事は、これは美容でなければできないということになりますと、相当な影響があると思いますが、それはそれで一つの方向でありますから、この際明確にしておくということは、それだけ私はプラスだろうと思います。そういう今後方針ならば、新たな方針として私も同意いたします。  それからあざやほくろを取りますことは、これは美容師でできますか、できませんか。
  46. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 全身美容についても同様なことが言えますが、高度に進歩いたします美容行為、それから医療行為との間にはきわめて区別がむずかしくなって参ります。私どもは将来もう少しく美容実態進歩いたしまして、この点ではっきり医療行為美容行為とを分けなければならない段階になりますれば、当然そのときに十分検討をいたしまして、間違いのないことを期したいと存じますが、さしあたりはあざやほくろを取るというようなことは、これは医療行為の範疇に入るものではないか、かように考えております。そこで、美容といたしましては、その上におしろいを強くして塗るとか、あるいは外見上あざやほくろが目立たない程度にするまでは、これは美容の範疇であろう、かように考えております。
  47. 山下義信

    山下義信君 フランスのパリへ行って、パリの最近の美容術がどうなっておるかということを見てないですからわかりませんが、甘木の美容師法内容も、いつまでも髪結い式のような定義が並んでおることは、用語あるいは内容等についても私は少し古くさい陳腐なような気がいたしますので、将来はやはり業態の進歩に伴うこういう点も一つスマートな表示を考える必要がある。  着つけはどうしますか。着つけは美容の中に入りますか、入りませんか。もし入らぬとすれば、美容師が着つけ料を取るということは、業務の範囲外になるし、また、そういうことは美容師でもだれでもできるんだということになりますれば、これはまた別の考え方でありますが、美容師の行いまする大半とは申しませんが、相当これらの美容すると同時に着つけの仕事は、これらの美容師仕事の相当部分を占めておる。これはどういうふうに扱いますか。
  48. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 着つけは、これは美容師一つの重要な部分でございまして、当然美容師の業務でございます。ただし、これはもちろん業として行います場合でございまして、しろうとがちょっと頼まれて着つけをするというようなことは、これは業ではございません。
  49. 山下義信

    山下義信君 それでは美容定義のところは、私はおおむねただいまの御答弁で了承いたします。  次は美容師試験のことで、第四条関係で伺うのでありますが、私も実態をよく調査して伺っておるのじゃないので、ただ世間の風聞を耳にして、この際政府から御説明をむしろ聞きたいと思うのですが、最近美容師養成施設、すなわち美容学校が大へん数がふえて参りました。一体どのくらい美容学校というものが増加して、その生徒というものがどのくらい収容されておるかということがよく私にはわからぬ、わからぬが、想像するのに、洋裁学校や美容学校というものは最近非常に隆盛になっておりまして、相当な数の生徒を収容いたしておるのじゃないかと私は思うのです。思うと同時に、心配をいたのは、こういうふうに法律をもって美容師資格というものをきめて試験制度を行う。しかも、養成施設で学ぶべきことを要求してありまして、実際は非常な粗末な美容学校が増加して、いたずらに受験資格をとるために多くの年少の子女を非常に集めて、要するところ、入学金であるとか、あるいは月謝であるとか、受験料であるとかいうようなものの収入をはかっている。端的に申しますと、いわゆる学校屋という学校経営者、学校もうけ主義というようなものが増加すると私ははなはだ遺憾にたえないと思うのです。内容の伴わぬ程度の低い美容学校などが乱設せられるということは困る。同時に一方においては、既設の世間でも有名なと言われておるような美容学校でも、意外に内容が粗雑であっても困る、また、その学校の先生というか、講師というものがどれだけ最近の技術なり、最新の美容——美容学というものがあるかないか知りませんが、教授科目等につきましても精通しておるかどうかというふうな点も疑わしい点があるのじゃないかと思います。むしろ美容学校の講師を一ぺん試験してみる必要がある。技術もやらしてみて、どれだけ進歩した美容関係の学術にうんちくがあるかというようなことを試験してみる必要があるくらいに、私は何となしにそういう感じがする。そういう点に対する当局の指導方針、現状、将来に対しての対策等については、どういうように考えているかということを一つ承わっておきたいと思います。
  50. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) ただいま御指摘の点は、私どもも実はまことに悩みの種となっておる点でございます。現在美容師養成施設数は全国で百三十九を数えております。なお、生徒の数は昼間あるいは夜間課程、通信課程等を含めまして、年間卒業いたします者は一万七千五百名程度が見込まれております。この百三十九校の内容につきましては、ただいま御指摘のようにまことに充実を欠いております。むしろ教育機関としてふさわしくないものでございます。現に私どもはこれまで取り消しを命じたようなものも二枚ございます。なお、私どもといたしましては、これらの内容の充実に極力意を用いまして、しかも単に指導だけでなく、見方によりますれば、むしろ行き過ぎと思われる程度まで省令その他を整備いたしまして、たとえば教授科目、あるいは先生資格、あるいは入学金、授業料、その他いろいろな同窓会費、いろいろの経費もすべて規制しておるというようなことをいたして、極力この内容の充実をはかって参っております。なかなか現実は思うにまかせず困っておるのが現状でございますが、しかし、私どもといたしましては、これらのものをできるだけ今後も強力に指導いたしまして、あるいは監督をいたしまして、逐次間違いのないもりにもって参りたい、かように考えておる次第でございます。なお、私どもは今までどちらかと申しますと、私立のものがえて営利主義になりまして教育を忘れておるというような現状もございますので、できれば、今後りっぱな公立の施設等を設けまして、自然に粗末な私立が成り立たぬような状況にもっていくことが一番望ましいと存じますが、しかし、さしあたりは、私ども組合立の学校、組合経営の学校を推進いたしておる次第で、組合でありますれば大勢の人が関与して参りますのみならず、その大勢の目が光っておりますので、私立に比すればはるかに合理的な運営もでき、また、組合でありますれば、その組合が正しい組合であれば、営利主義にならずにりっぱな教育ができるので、さしあたりは組合立を中心にして指導をいたしたい考えであります。
  51. 榊原亨

    榊原亨君 ただいまの問題について関連でございますが、その組合立と言われますのは、この法律の十七条にあります会でおやりになるというのでありますか、あるいは環境衛生関係の運営に関するものの組合でおやりになるのですかその点はどちらの組合意味で御発言があったのですか。
  52. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 法律規定におきましては、美容師法におきましても組合を作ることになっております。あるいは環境衛生関係法律においても当然組合があります。その組合の性質、その他は違いますが、いずれにいたしましても、美容会がこれに関与しておる点については間違いございません。私はどちらでも、この点は差しつかえないと思っておりますが、ただ法律規定から申しますると、養成の施設は環境衛生法律の方で、その事業として組合が養成の施設をやることができるようにうたっております。しかし、私どもはどちらでもけっこうだと存じております。
  53. 山下義信

    山下義信君 法制局部長が来たようでありますから、私はいま一つ聞きまして、あとは他の委員質疑に譲ることにいたしますが、最近の美容師試験を受けます者はどのくらいの数に上っておりますか、また、その中で試験に合格する者はどの程度ありますか。
  54. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) 毎年卒業いたします生徒は、美容師におきましては、先ほど申し上げましたように一万七千五百名程度と見込まれております。これらはすべて知事の行います試験を通るわけでございますが、大体全国平均をいたしまして八〇%程度が合格をしておる。ただ府県の間に非常に合格率の低いところと高いところとございます。平均いたしますと、大体五〇%程度が合格いたしております。
  55. 山下義信

    山下義信君 約一万名近い者が年々美容師試験に合格して約五、六千名の者が年々新たなる美容師営業免許を受けておる。私はこれら一万名近い新たなる美容師開業希望者が続出しておるという今日の状況、それが飽和状態にあるのか、まだまだ美容師の需要が相当程度あるのか、よく存じませんけれども、現在の美容師に関して美容師法が必要であるばかりでなく、将来美容師を志しておる多くのその希望者が、唯一の拘束を受ける美容師法のあり方というものは、やはり私は十分に検討しておかなくちゃならぬと思う。  いま一つ伺いますが、通信教育の現状はどういうふうになっておりますか。つまり通信教育を受けておる者の数は、およそどのくらいおりますか。何でもこれは二ヵ年通信教育を受けて、そうして二カ月は学校に行って学校から教育を受ける。そうして受験するということでありますが、通信教育というものの効果と言いますか、この通信教育を加えますときには、私も相当関心を持ちまして、将来の運営については、いわゆる出版営利主義にならぬように、通信営業化しないように、果して通信教育というものによって期待し得るような、年数は学校の課程の倍かかるとしても、実際通信教育というもので、果してこの種の技術を取得するよろな教育が行い得られるかどうかということについては、将来についても私は卑見を述べておいたつもりでございますが、最近の通信教育の実情はどういうふうになっておりますか。この通信教育を認めた半面におきましては、ある一種の徒弟制度の温存の一つのこれは拠点にもなっておるのでありますが、これはまあ弊害の面であって、ある意味におきましては、通信教育というものにつきまして、寛容な態度で私どもも同意したのでありますが、この際、通信教育の効果とか現状とかいうようなものについて、その実績を承わる機会じゃないかと思う。私は多くは申しません。いろいろなことが耳に入っております。けれども、この席ではしばらく保留しておきますが、一応通信教育の現状についての実情をお聞きいたしておきたいと思います。
  56. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) この通信教育の現在在籍者数は、美容師通信教育におきまして約一万二千名でございます。なお、従来この美容師におきましても、通信教育の希望者は漸増をいたしつつございます。  なお、通信教育におきましては、この趣旨が、やはりたとえ一年間でも、なかなか学校に通って資格をとるということが、家庭的な事情、地理的条件等で困難な方々もおられますので、かような方々に教育の機会均等あるいは社会政策的な見地から、この通信教育の制度を設けた次第でございます。通信教育におきまして、美容師のような技術的なものが、果していくかどうかという点でございますが、外国におきましては、すでに技術教育も、広く通信教育において行われております。私は教育のこの技術的な点につきましては、技術的な教育でも通信教育において可能であると考えております。ただ、現在しからば非常にこれが理想的に行われておるかということになりますが、問題は、面接授業として、主として技術的な面を担当いたしておりますのが各学校でございます。ところが、各学校は、先ほども先生から御指摘がございましたように、中には必ずしも十分充実した教育のできないものもある実情でございます。そこにおきまして、今度は実施面といたしまして、技術的な面を担当しております等の関係もございまして、必ずしも教育として十分なことが、今後は別として、現在は欠けるところがあろうかと存じておりますが、これらの点は、できるだけ他の通信教育の例等にならいまして、今後われわれは通信教育の教育内容を十分充実さしていかなければならぬと考えております。  なお、通信教育におきまして、特にどの程度の学力があるかどうかという点は、まだ通信教育が現在制度として外に出ておりますが、ことし来月ぐらいから試験を受けることになりますので、その結果を見て一つ十分に私どもも反省をいたさなければならぬ時期だと思っております。    〔理事山本經勝君退席、委員長着席〕  それから、一方、技術面につきましては、これは主として美容所において、補助的業務に従事しておる方々がその生徒でございますので、さような意味から、教育的な効果というよりも、むしろ先生も御指摘のように、補助的業務に従事しておるために技術がみがかれておるという関係でございます。そうなりますと、えてそこに徒弟制度的な臭気が出て参ります。この点は私どもも十分に留意をいたしまして、たとえば通信教育の生徒は、どこに何年勤めなければならぬというような点は毛頭考えずに、自由な立場で通信教育の勉強ができるというふうに指導をいたしております。おおむね最近はこの趣旨が徹底して参りまして、逐次徒弟制度の温存というような考え方は一掃されつつある段階でございます。
  57. 山下義信

    山下義信君 十七条の関係は、今せっかく榊原委員質疑中でございますので、関連してあとで伺うことにいたします。  この際、私はなお関連して、環境衛生関係営業法の審議の機会にお尋ねする機会がまた与えられるかもわかりませんので、今の通信教育に関する資料を政府に要求しておきます。通信教育のそれらの教科の配付状況、また、美容師養成施設との関係、あるいはその通信教育に関する費用、通信教育講義録の料金、それらの発行に関する経営者の状況等、通信教育に関する現在の諸資料を資料として御提出を願いたい。
  58. 千葉信

    委員長千葉信君) 今の資料の提出ができるそうでございますから。
  59. 山下義信

    山下義信君 十七条のことは私も伺いたいのでございますが、せっかく榊原委員の御質疑中でありますので、あれが終りましてから……。
  60. 榊原亨

    榊原亨君 法制局の方がお見えでございますから、承わりたいのでございまするが、美容師法案の第六条にありまする「美容師でなければ、美容を業としてはならない。」ということと、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律案というところの第二条の三号に、「美容業規定により届出をして美容所開設することをいう。」という、その美容業とは、先ほど政府お話を承わりますと、その美容業が違うのだ。環境衛生でいう美容業と、この美容師法にいう美容業とは、同じ美容業というのだが、美容業内容が違うのだ。こういうお話でございまするが、そういたしますると、同じ美容業と申しましても、内容が違っておる。その違っておる場合に、第六条で、「美容師でなければ、美容を業としてはならない。」ということを規定することができるかどうかということについて、私はしろうとでございますのでわかりませんから、法律上の御見解を承わりたいと思います。
  61. 鮫島眞男

    衆議院法制局参事(鮫島眞男君) お答えいたします。  この美容師法案にございまする、第六条で「美容を業としてはならない。」とございまするこの「業」は、この美容を業とすると言いまするのは、この「業」とするというのは、同じ行為を繰り返し反復することをまあ「業」とするというふうに使っておるのでございまして、ここでも、その美容行為を反復繰り返してやってはならないというのがこの第六条の意味でございます。  それからもう一つの方の、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律案にございまする「美容業」は、そういう、今申し上げましたようなことではないのでございまして、これは、ことにもこのカッコの中で定義を与えてありまするように、この美容所開設することを美容業と言うのだと申しますのは、この美容師法案におきまして、この美容を業とする、美容行為を反復繰り返してやるということは、この美容師に限るといろ規定があるのでございまして、その「美容業」ということをこの環境衛生関係法律案において直ちに持って参りますると、そこの関係がはっきり……むしろ疑問を生じまするので、ここではまあ便宜このほかの項目との関係で「美容業」という言葉を使っておるが、それはその美容師が「業」として行うという、そういうことではないので、ここではその美容所開設するということをこの法案では美容業と言うのだという定義を与えまして、その両者の間の区別をはっきりさしたつもりでございます。
  62. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますと、美容師法の第六条の美容業というのは、環境衛生の第二条のような意味じゃないのだということをこっちでもどうして規定しておられぬのですか。片一方の方で、解釈が違うのだ。解釈が間違うとならぬから、第二条の三号では、美容業としてカッコして、「美容所開設することをいう」のだ、こういうお話であるならば、第六条では、それじゃ美容を反復して行うことだと、ここでは、ここでいう美容業と、第二条の美容業と違うのだということを、第六条においてもはっきりしなければ、これはわからぬじゃございませんか。これは、美容を業としてはならないと、こう言えば、第六条の美容業も業としてはならないとこうなると思うのでありますが、その点はいかがでございますか。  環境衛生に関するこの美容業は、この中に含まないという規定をこの六条にうたってなければ、美容を業としてはならないのだ。第二条の美容業もこの中に入るのでございますか。その点はいかがですか。
  63. 鮫島眞男

    衆議院法制局参事(鮫島眞男君) この美容師法案におきましては、この美容業というよりも、この「業」とするという点にまあ重きを置いて規定しておるのでありまして、この「業」とするというのは、いろいろな法律があるわけでございますが、それは先ほども申し上げましたように、同じ行為を反復繰り返してやるということを「業」とするというふうに、大体法律上の概念が一定しておりまするので、ここでもその美容業を営むとか何とかという言葉ではないのでありまして、その美谷と第二条に定義してございます美容という行為を業とする、繰り返し反復してはならないという意味合いでございまして、この美容業をどうするというようなことではないので、その「業」とする、繰り返し反復してはならないということが、この美容師法案の第六条の規定趣旨でございますので、今榊原委員のおっしゃいましたような表現を用いませんでも、美容を業とすると言いますると、繰り返してはならないという意味でございまして、今おっしゃいましたような、それから環境衛生法の方で便宜美容業という言葉を使って、ただそれが誤解を生ずるといけないから、ここで「美容所開設することをいう。」とはっきり書いたのでございまして、榊原委員のおっしゃいますようなふうにいたざなくても、これで意味はわかるのじゃないか、こういうのでございます。
  64. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますると、美容師美容所に雇われて美容を業としている場合は、その美容師美容業をやっておらぬということと解釈してよろしゅうございますか。
  65. 鮫島眞男

    衆議院法制局参事(鮫島眞男君) 環境衛生関係法におきまする美容業はやっておらないのでございます。
  66. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしまするというと、美容師というのは、美容はやらないで、美容を業としておるということですね。
  67. 鮫島眞男

    衆議院法制局参事(鮫島眞男君) その通りでございます。美容を業とする、結局美容行為を反復繰り返して行う者を美容業といっております。
  68. 榊原亨

    榊原亨君 これは非常に重大なことでありまして、今後美容だけでありません。たとえば医師は、医療を業として、反復して同じ行為をする、これはみな同じ言葉が使ってあります。そうすると、みなそれは、業としては——たとえば医業ということはやっていないのだ、医業というのは、医院を開設し、医療機関を開設した者だけを業というのだ、医者をやることはこれは医業じゃないのだ、こういうのですね、あなたの御解釈は。そこに一々注釈をつけていかなければならぬ。これはあなたそんな意味じゃないのです。第二条をぼんやりお書きになって——ちょっと間違ってお書きになったのじゃないかと私は思うのですが、そういう牽強付会なことで法律を全部解釈してくるとえらいことが起ってくると私は思うのです。これは間違っておるなら、間違っておるでよろしゅうございます。たとえば、これは第二条の第三号は、美容所業とか美容開設者というものをお書きになりさえすれば話はすぐ済んでしまうのじゃないか、ここに美容業と書かれたものだから、この問題で長い時間やりとりしなければならぬので、ここのところに、美容所開設することを業とするものと書かれれば、これははっきり第二条は割り切ってしまえるのじゃないかと思うのですが、どらですか。無理にどうしても、これをそういうふうに、美容業というものに二種類あって、一つ開設者で、一つ美容を業とするものだけであって、美容業じゃないのだというお話しをしていると、世の中の人はわからなくなる、私でさえわからぬ、どうですか、あなたのお間違いならお間違いだとはっきり言われる方が私はいいと思う、どうですか。
  69. 鮫島眞男

    衆議院法制局参事(鮫島眞男君) お答えいたします。環境衛生関係法律案におきましては、第二条の各号に、いろいろな営業の名前を列挙してございます。それでまあ各号との関係で、そういう関係でここで美容業というような言葉を使ったのでございまして、ただそれはその美容業というのでは、美容師法との関係で疑問が起りまするので、ここに特にこの定義をはっきりさしたというのでございまして、それは今ここで無理なお答えをしているつもりではないのでございます。それから現行法といたしましては、この地方税法の七十二条に事業税の規定があるのでございますが、この七十二条の第五項の第十八号に、理容業という言葉があるのでございます。ここでの理容業というのは、これは結局事業税でございまして、開設者意味するわけでございますが、まあ単純にそういう理容業という言葉を地方税法では使っておるのでございますけれども「私の方では、直ちにそれをそのままの言葉を持ってきますと、美容師法案でいいまする美容を業とするというのとの関係が非常にあいまいになりまするので、言葉としては美容業という言葉を使いまするが、そのかわりに、ここの意味合いをはっきりいたしまして、それは美容所開設することなんだというこ」をむしろ意識いたしましてはっきりいたしたつもりでございます。
  70. 榊原亨

    榊原亨君 もう一度、私提案者にこの十七条について承わっておかなきゃならぬのでありますが、そういたしますると、美容会と申しますか、美容師——まあ会は何でもいいのでありますが、この十七条で組織されますとこりの会と申しますものの中には、その会の会員といたしましては、美容師と、美容所開設する者と、二通り含まれておる。そうして、その会では、Tはり美容師の養成機関を設立して行うことができる。環境衛生の方におきましては、美容所開設する者だけが組合を組織いたしまして、その開設する者だけでできました組合においても養成機関を設立することができる、こういう御見解でございますか。それでよろしゅうございますか。
  71. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) その通りだと信じております。
  72. 山下義信

    山下義信君 私は、この第十七条を特に今回お入れになりましたのは、美容師の、あるいは美容所開設者の希望もりつて、業界の諸君が、自分たちの団体でこういう仕事のできるように強い要望があって、おそらくその希望に沿うようにこの条項をお入れになったんだろうと思うのでありますが、間違っておれば御指摘を願いたいのでありまするが、ところで、環境衛生関係営業法とこの第十七条が関連を持ってきますので、前回御質疑があったようであります。速記録を拝見いたしますと、衆議院側の御意見も少し不明確でありまして、野澤委員の御意見では、美容師美容所開設者が一緒になって団体を作るがいいと、こういう御意見のようでもありますし、また、亀山委員の御意見は、むしろ美容師は除いて、美容所開設者だけにして、そうして環境衛生関係営業法と同じような形にして、中の仕事の仕方を少し変えたらというような御意見のようにも速記録ではうかがえるんであります。どこかで一つわれわれ参議院側とも意思統一をいたしまして、第十七条と環境衛生営業法との関係を調節していかなきゃならぬと私は思う。それで、どういう御意見でありますか、衆議院側の方の御意見を承わりまして検討さしていただかなきゃならぬと思うのでありますが、その前に、今の榊原委員の、営業者あるいは業というような似たような字句で御質疑があったのでありまするが、この第十七条を拝見しますと1私は批評はいたしません。失礼でありますから、批評はいたしませんが、少し条文の書き方が荒つぼ過ぎるんじゃないかとまあ思うんです。また、お考え方といたしましても、美容所開設者美容師とを一緒にして団体を作らして、いい面もありますが、また、一緒にするということはどういう意義を持つのか、判然といたしかねる点もある。たとえば、第十七条のおしまいの辺になりますというと、会員の指導をするという。会員の指導をいたしますといって、会員の中には開設者資格者の技術者の美容師と、どっちがどっちを一体指導するのか、開設者の方が美容師指導しますのか、美容師営業本位の開設者営業のあり方を指導しますのか、営業本位の開設者技術者を指導するのもおかしゅうございますし、技術者の方が営業方法を指導するのもおかしいのでありまするし、この美容師開設者を一緒にした団体の仕事をここに列記されてあるのでありますが、仕事のあり方等につきましても、団体がする仕事の種類につきましても、これらの二者を一緒にしまして行わせる仕事のあり方というもりにつきましては、私は第十七条に含まれておる内容というものがきわめて不明確であるといろ気持がする。一応衆議院側の御意見を聞かなきゃなりませんが、そうして一体会を組織すると言いましても、どうして組織するのか、どこに組織させるのか、どの地域にどうさせるのかというようなこともなく、細則はどこできめるのか、法律以外には規定がないのであって、まことに雑駁であって、また、何人集まれば団体を認めるのか、三人でもその会にすぐこの法律でそういう仕事を許すのか、とまかいことば省令に委任するこいう委任事項もありませんし、実際の運用においても困るのじゃないかという気持がする。とりあえず——批評してもいけませんが、衆議院側の御意見一つ聞きまして、私どもまた伺わなきやなりませんが、むしろ私は、環境衛生関係営業法の方でああいう御規定がありましたらば、ここでは美容刑の開設者、すなわちこれは営業者を規定する法律じゃない。美容師関係法律なんだ。美容師中心として美容師資格その他のあり方を規定する法律なんだ。何もここに美容所営業者をこの法律によってカバーしていかなきゃならぬ必要はない。環境衛生営業法の方で営業者を規制なさり、営業者のあり方をいろいろにそれを施策もしていかれるということになりますれば、ここは美容師に関するだけのことを御規定になればいい。せっかく団体の一つ仕事を認めてやろうという規心でありますならば、美容師の団体にだけ、美容師同士の技術の向上であるとか何とかという実際に美容師としてのお互いの向上進歩をはかる、そういうことをお認めになるということの方が適切であって、ここに営業者を、しかも、こういうことをやらせるということになれば、開設者資格というものもある程度考えておかなきゃならぬ。だれにでも開設をさせるのか、この法律は。美容所開設はこういうものでなけらねば開設はできないという資格要件はない。だれでも美容所開設届出さえすればいい。そういうものと、一定資格要件を必要とする美容師というようなものとを一緒にして団体を作るということは、これは利害関係が必ずしも衝突するとは言いません。一致する場合もありますが、私心少し考え方を整理されまして、第十七条の、せっかくそういう美容師の団体の希望などをお入れになる、また、その美容師などが技術中心として切磋琢磨、改善進歩をはかろうとするならば、そういう考え方をしぼって整理いたした方が適切じゃないかと思うのです。つい意見を私は申しましたのですが、衆議院の側の御意見、御提案者の御意見をまず伺いたいと思います。
  73. 野澤清人

    衆議院議員野澤清人君) 非常に適切な御意見でありまして、実はずさんと言えばずさんなのですが、この美容師法の審議過程におきまして、現在の環境衛生適正化法律と両立したまま提案される情勢にあればこういうこともなかったのですが、最初、昨年美容師法提案されます際に一番問題になりましたのは、美容師会を組織しましても、美容所開設しております資本主が、この美容師法の十三条ですか、あるいは十一条等の規定にもかかわらず、美容師を雇っておいてなかなか施設の改善等ができない、こういうことから、これは行政上の取締りの面からも、実際の会の運営の面からも、業者の方からかなり強く指摘されまして、ちょうど薬局の開設者と同じように、薬剤師だけ頼んでも資本主がなかなか言うことを聞かなくて、冷暗所を作らないとか、あるいはそれらの設備を持たぬのと同じように、せっかく美容所開設しましても、消毒施設等について馬耳東風というようなこともある、そのために会の運営が非常に困難だと、こういうことで、実はこれは社会党の長谷川保君から非常に強い要望がありまして、この際、今までの現行法の、この理容師美容師法にありますように、特に美容師だけで会を組織したのでは、技術の向上ははかられても、施設の改善等について手抜かりがあるんじゃないか、こういうことからあわせて研究したらどうかというので、法制局等にもお願いしまして、これをあわせて審議しました。その結果、非常にいい文章ができたというのでわれわれ安心をしておりました。今  先生から指摘されまして、適正化法律と対比してきますというと、なるほどその通りのお考え方も当然起きてくるんじゃないかと感じまして、これは決して衆議院側としてはそれを固執して、何でもかんでも開設者まで美容師と同格に扱って会を組織しなければならないという考えを強く持っているわけではございませんが、環衛法それ自体というものがあとから生まれ出まして、実際の提案をした情勢から見ればこれは美容師の方の発議が早くて、また、その後環衛法ができてきましたが、二つとも幾多法律が変遷を経ておりますので、亀山君の開設者を除いてよろしいという意見と、私の両方一緒にすべきだという食い違いがあったそうでありますが、いずれもそうしたいきさつから派生してきた条文でありますので、より以上賢明な各位におかれて御検討されることが必要だと思いますので、これは虚心たんかいに、衆議院側としては、ただ開設業者の資本主技術者の関係をどっかでつかまえなければいかぬだろうという強い要請があったためにそうした条文が生まれたわけでございます。経過だけを申し上げて、あとは皆様の御良識によって、御成立を促進願えれば仕合せだと思います。
  74. 山下義信

    山下義信君 率直にお話がありまして了承いたすのでありますが、結局今お話のありましたように、開設者、すなわち営業者は環衛法の方にあるのですから重複する必要はない。これはもう理の当然、きわめて簡単明白なんです。する仕事は同じことがあちらにもあり、こちらにもあったって一つも差しつかえない。たとえば美容師養成施設、今お話がありましたが、たとえばそういうようなものは業者が勝手にそういう施設を開設してもよろしいし、美容師の団体が作ってもよろしいし、そういうものは、仕事内容二つ、三つ重複があったってかまいませんが、営業者が団体を作ってなし得ることが、両方の法律に重複しているということは、これはもう妥当でないということはきわめて簡単明白なわけです。私はそう思うのですが、政府の見解はどうですか、こういうことに対する政府の見解は。
  75. 楠本正康

    政府委員楠本正康君) ただいま提案者野澤先生からお話があった通りでございまして、現在すでに環境衛生に関する営業法律が審議に上りまして、これで営業関係営業関係として統一した組合ができる以上、美容師におきまする団体は、あくまでもこれは技術者本位、免許を持っている技術者だけが、お互いに技術の向上その他をはかりますための団体であるというふうに考えるべきものだ、かように考えております。
  76. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  77. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を起して。  他に御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  速記をとめて。    午後零時十八分速記中止    午後零時三十四分速記開始
  79. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて下さい。  暫時休憩いたします。    午後零時三十五分休憩    —————・—————    午後二時四十九分開会
  80. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員異動を報告いたします。五月七日付をもって、大河原一次君が辞任し、その補欠として、木下友敬君が選任されました。
  81. 千葉信

    委員長千葉信君) 美容師法案を議題といたします。  この際お諮りいたします。高野委員より、委員長の手元に修正案が提出されておりますので、本修正案を議題といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  それでは、高野委員より修正案の趣旨説明を願います。
  83. 高野一夫

    ○高野一夫君 各会派共同の修正案を提出いたした次第でございますが、修正案の正文につきましては、美容師法案に対する修正案の全文について御参照を願いたいと思います。そこで修正案の要点について簡単に説明を申し上げたいと思います。  まず第一点は、無免許営業を行なった者または違反行為による免許の取り消し処分を受けた者には免許を与えないことができることとした点であります。現行法及び原案にはこの規定を欠いているために、被処分者が再び免許の申請をしてきた場合に拒否できるかどうかについて疑義を生じ、免許の取り消し処分が事実上骨抜きとなるおそれがあると考えたからであります。  第二点は、美容師の本法違反行為に対しては、すべて第一次的には業務の停止をもってし、第二次的には免許の取り消しをもつで臨むこととした点であります。原案においては、本法違反行為をなし、その他不適当な美容師に対する行政処分として次の三種があります。その一つは五千円以下の罰金刑を課し、刑が確定してから免許を取り消すもの、二つには業務の停止を行うもの、三つには免許の取り消しまたは業務の停止を行うもの、これらの措置の分配方法について、若干権衡上の疑問があり、法規制の実効性を確保するためにも整備の必要があると考えたからであります。  第三点は、疾病または本法違反行為により、免許の取り消し処分を受けた者であっても、疾病がなおり、または改俊の情が明らかなときは再免許を与えることができることとした点であります。現行法及び原案にはこの規定を欠いているために、付則二項による免許を受けたとみなざれる旧資格者は、一たん免許を取り消されると、事実上免許を再取得する道がないからであります。  第四点には、美容師の本法違反行為に対する罰則を整備し、第二点の行政処分との重複を避けるとともに、結核予防法等関係法令との調整をはかったのであります。結核予防法による美容師に対する従業禁止命令に違反したときは一万円以下の罰金でありますが、原案では五千円以下の罰金となっているのは不都合である、また、法規制の実効性を第二で行政処分によって補正することとしたので、罰則は整備すべきものであると考えたからであります。  第五点は、美容師または美容所開設者の会を美容師の会とし、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律案との調整をはかった点であります。原案にある会は、環衛法案の同業組合とその目的、性格が重複する部分があって、両者関係は明らかでない、混乱を生ずるおそれがあると考えたからであります。  第六点は、改正後の理容師法についても、上述第一から第五と同じ趣旨の手入れを行なった点であります。  第七点には、その他所要の字句の整理及び経過規定を設けたのでございます。  以上、要点だけ簡単に説明を申し上げます。
  84. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは、ただいまの修正案に対し、質疑のおありの方は順次御質疑を願います。——別に御発言もなければ、修正案に対する質疑は尽きたもりと認め、これより原案並びに修正案について討論に入りたいと存じますが、御異議ございません。    〔「異議な」」と呼ぶ者あり〕
  85. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認め、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。それでは、これより美容師法案について採決に入ります。  まず、高野委員提出の修正案を問題に供します。高野君提出の修正案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  87. 千葉信

    委員長千葉信君) 全会一致でございます。よって、高野君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  88. 千葉信

    委員長千葉信君) 全会一致でございます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。  以上の結果、本案は全会一致をもって修正すべきものと議決されました。  なお、本会議における口頭報告の内容議長に提出する報告書の作成、その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     谷口弥三郎  榊原  亨     小西 英雄  高野 一夫     山下 義信  山木 経勝     片岡 文重  藤田藤太郎     木下表敬
  90. 千葉信

    委員長千葉信君) この際、お諮りいたします。本委員会に付託されております請願につきましては、他の法律案の日程との関係もありますので、審査の都合上、請願に関する小委員会を設けることにしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。小委員会の人数及び人選等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。それでは小委員の数は六名とし、小委員の指名はあとからすることにいたします。ただいま決定いたしました請願に関する小委員会に対し、本委員会に付託の請願を審査せしめることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。よって、本委員会に付託の請願は、請願に関する小委員会において審査せしめることに決定いたしました。
  94. 千葉信

    委員長千葉信君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律案の審査のため、参考人から意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。なお、期日は五月十日とし、参考人の人選、手続、その他につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  97. 千葉信

    委員長千葉信君) それでは、次に引揚者給付金等支給法案を議題といたします。御質疑のある方は順次御発言を願います。暫時休憩いたします。    午後二時五十九分休憩    —————・—————    午後三時八分開会
  98. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続いて会議を開きます。  御質疑を願います。
  99. 小西英雄

    小西英雄君 ただいま議題となりました引揚者給付金等支給法案につきまして、私の考えといたしましては、非常に一言に申し上げますならば、全国多数の引揚者が多年の要望であったことの一部を、この在外財産補償の問題とこれは別の意味だと私はこの提案理由からも思うのでありますが、引揚者の給付金支給法の実施ができることによりまして、一段の処置が講ぜられることであるということについては、私として非常に喜ばしいことでありますが、この問題をいろいろここで論議いたしますならば相当な時間も要すし、すでに衆議院におきましては、政府原案を一部修正の上、全会一致をもって議決しておりますので、参議院におきましては、この法案は、国会会期が非常に少いのでありますので、私自身としては至急に結論を出していただきたいと考えておるのであります。従いまして、全国引揚者の多くの者からこの問題の議決を要望してくる陳情も相当参っておるので、多くの点について疑問を有することも多々ございますが、重要な点につきまして、二、三政府の所信をお伺いいたしたいと存ずるのであります。  第一に、政府は引揚者の給付金を支給する意図はどこにあったか、また、この給付金自身は在外財産問題審議会でいろいろ審議いたしました問題の重点であった私有財産の絶対権については何ら認めることもない、また、政府自身が審議会でいろいろ論議をかわした際に、憲法上、法律上の補償の義務は現段階においてないということをしばしば言明いたした関係政府側の意図ばかりによって、これは結局のところ、財外財産の補償という意味一つも含まれていない。そういう点から見ますならば、われわれは私有権の絶対という国際法規的に見るところの問題がじゅうりんされておるような感じもいたしますので、この際、この意図が政府側において簡単明瞭にわれわれにまず第一段にここで明らかにしていただきたいのであります。
  100. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) ただいま小西委員のお尋ねでございますが、引揚者に対しまして、その外地に残された私有財産の補償をどうしてしないのか、あるいはこの給付法案が一体どういう性格を持っているか、ころいうようなお尋ねのように承わったのでございます。  第一の在外私有財産の補償をなぜ政府がしないかということにつきましては、今小西委員もお述べになりましたように、この問題の審議会におきましてもこれはまあ幾多論議のありましたことは御承知通りでございまして、憲法上、法律政府といたしましては、その補償の責任はない、こういうような解釈をとっております。  そこでしからば、なぜこの支給法案提案したかといいますると、提案趣旨にも述べてありまするように、海外に多年おられまして、そして生活の基盤を持っておられた方々が戦争終結によってその全基盤を失ってしまった、そういう全基盤を失って引き揚げてこられたその状態を政府といたしましては何らかの処置をすべきものである、そこで、それらの点を考慮いたしましまして、ただいま成案をして御審議を願っておる法案をもってこの処置をいたしたい、こういうことで法案の審議を願っておる、こういう趣旨であると存じております。
  101. 小西英雄

    小西英雄君 神田厚生大臣にもう一つお尋ねいたしたいことは、そうするとこれは在外財産の補償でないということをはっきりしていていいわけですね。
  102. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) この法案建前は、そういうふうにお考えになってけっこうと思います。
  103. 小西英雄

    小西英雄君 これは法制局にちょっとお尋ねしたいのですが、だれか……。
  104. 千葉信

    委員長千葉信君) 小西君にお答えいたします。何しろ先ほど急な御要求でございましたので、御連絡申し上げましたところ、いずれも予算委員会に出席中のため、大蔵大臣もそれから法制局長官もその委員会の審議の状況によってこちらの方へ終りましたあとで出席すると、こういう連絡でございました。
  105. 小西英雄

    小西英雄君 そうすると、国家補償の在外財産の補償でないということが明らかになりましたので、私たちは海外に行っておりました一員といたしまして、多くは国家の要請において行った者が多い。あるいは悪い人の口を借りて言いますならば、一旗組もおったというふうに言われますが、実際には何百万の人は、国家の要請において行った者が、われわれ調査したところではほとんど九五%以上である。大ていの者がいろいろな産業の戦士として、あるいは開拓団員として行った者が多かったことを見まして、かような引揚者に対する、おそまきではあったが、今回のような処置がとられたことであると私たちは解しておりますが、私たちがここで大蔵省あるいは外務省等に対しましていろいろお尋ねしたい点がたくさんございますが、その問題は最後の総論の質疑をいたす際まで控えまして、厚生大臣に、これを引揚者の立場から私はざらに質疑を続けたいと思います。  まず、これは実施に当っての関係でありますが、第一に、引揚者給付金の支給の業務の一部を引揚者の団体に委嘱してはどうかということであります。昨年厚生省令をもって実施いたしました引揚者の在外事実調査の業務の一部を引揚者の団体に委嘱いたしました結果、きわめて短期間のうちに所期の目的を達することができ、しかも引揚者の団体の組織の力によって、よく法の趣旨徹底をはかることができたからであります。不正の防止の実績をあげることができたのでありまして、昨年のこの体験をさらに活用したならば、今回この法実施に当って、より以上に好成績をおさめられるのではないかと私は考えております。  そこで、次のような業務の一部を引揚者団体に委嘱する御意思があるかどうかということをお尋ねいたしたいと存じます。第一番に、全連の、この引揚者団体に対して全国的統一した宣伝、啓蒙を昨年もやりましたが、この調査の際にこういうことをやるのだということをポスター等において各府県段階において、いろいろ連絡をいたしたようなことがありましたことについてどうか、もう一つは、これらに対する請求の手続の補佐、請求の適正化、認定資料の収集、宣伝、啓蒙、これらの問題も、われわれ長い間の結合団体である引揚者の団体で手もすいておるので、何とか政府の方の意図によったらできるのではないか。もう一つは、地域団体として朝鮮引揚者、樺太、台湾、満蒙等いろいろの団体があります。これらについても、帰ってきた人の状態も非常によくわかっておるので、不正の請求についても、そういうことを利用すれば特にはっきりするのじゃないか、こういうことであります。まあこういうことについて、厚生省が何か次官通牒か何かで都道府県に通達して、こういうことができればという考えを持っておりますがこれについて一つ意見を承わりたい。
  106. 田邊繁雄

    政府委員(田邊繁雄君) お答えいたします。この法律が成立した暁におきまして、実施の段階になりますというと、何分にも膨大な件数でございますので、相当困難な作業になると思います。一番大事なことは認定でございまするが、これは都道府県知事に認定を一任する考えでおるわけでございます。従って、各府県認定がばらばらになるようなことがあってはなりませんので、全国的に、画一的にそこは統制をとっていかなきゃならぬと思うのでございます。そこでお尋ねの、法の施行の一部を引揚者団体に委嘱してはどうかということでございますが、法の施行はどこまでも国及び都道府県、市町村の系統において実施することでありますので、これは国の責任において行うべきものと考えております。ただいま御指摘の周知徹底ということ、あるいは請求手続の補佐というようなことは、これは団体として当然なさることでございまして、国が別に委嘱するということを待たなくても、当然団体本来の御活動としてなさってしかるべきことではないかと考えております。数ある引揚者の中には、引揚者であることの証明についていろいろ困難を感ずる向きがあるかもしれません。従って、好資料保有者の何と言いますか、発見という点についてもいろいろ困難を感ずる点があるかと存じますので、さような場合におきましては、引揚者団体等におきまして好資料をごあっせんいただくというような場合もあろうかと思っております。そういう意味におきまして、御協力をいただくということはまことにけっこうであると考えておりますが、法の施行の事務を一部引揚者団体に委嘱するということは考えておらないのであります。
  107. 小西英雄

    小西英雄君 田邊局長ちょっと曲解しておられる。法のあれをさしてくれというのではないので、昨年のあの実地調査の際にポスターを張るとか、いろいろな宣伝その他の業務を一部委嘱したような関係があったかどうか、そうじゃないですか。
  108. 田邊繁雄

    政府委員(田邊繁雄君) 昨年はこの調査の仕事を都道府県知事に実施せしめたのでございますが、都道府県知事におきましては、引揚者団体等の実情をよく見た上で組織等の整備しているところにおきましては、引揚者団体とも話し合いまして、業務の全部または一部を各府県ごとに委嘱をしたという事実はあったのでございます。今度の場合は法の施行でございまするので、一件々々権利者から申請書を取りましてそれを審査して認定をする、こういう事務でございますので、その事務的なことを引揚者団体に委嘱するということは考えておらないのでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、法の趣旨を普及徹底するというようなことはこれは当然必要なことでございまして、国の方でも都道府県、市町村系統を通じて行いますけれども、引揚者のための引揚者の団体でございますので、引揚者のためにこの法の趣旨等を十分周知徹底せしめ、これを十分承知しない向きにおきましては、適切なる御指導を願うということにつきましては、まことに適切なことだと考えております。
  109. 小西英雄

    小西英雄君 わかりました。昨年はそうすると、県庁が単位でそうした団体にいろいろな啓蒙その他宣伝等は委嘱したのですね。それについてちょっともう一点……。
  110. 田邊繁雄

    政府委員(田邊繁雄君) さようでございます。都道府県単位ごとに行なったのでございます。
  111. 小西英雄

    小西英雄君 第二に、今度いよいよ実施に向っていただくわけでありますが、公債担保融資のワクをもう少し私たちは拡大してもらいたいのであります。最近多くの引揚者の中に、老人や生活困窮者が公債の償還期限を一つ短かくしてほしい。現在の十年をせめて七年か五年にしてほしいということが非常に痛烈に運動して参っておるのでございますが、これは一つ大蔵省の問題ですが、何とかならんですか。
  112. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) ただいまの小西委員の御要望は、よく私どもも耳にいたしておりまして、この法案を審議の際におきまして、大蔵当局とはよく連絡をとりまして、まあ御承知のように、五年間に約百億でございますから、五分の一の貸し出しを最低限一つ約束しよう、それからそれもまた、引揚者の実情いかんによっては、できるだけ多く上回るような処置を講ずる。とりあえず最低限度として一年二十億、五年間百億と、こういうようなことを約束しておるんでございまして、今お尋ねのような気持と申しましょうか、考え方を持って大蔵当局と話し合いがついておりますので、御了解を願いたいと思います。
  113. 小西英雄

    小西英雄君 神田厚生大臣の今の答弁の百億というのは、当時折衝中に公債を担保として五カ年に百億を貸そうというものではなくして、公債がなくても更生資金としてあるいは自分たち引揚者に対する特別措置として、百億のうち二十億円ずつ貸そうというたことに私たちは記憶いたしておりますが、今の大臣の答弁は、この公債担保について五分の一の百億を貸すということとだいぶ話が違うのですが、その点もう一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  114. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 少し言葉が足りなかったと思いますが、公債担保あるいは一時的な無担保貸付もより以上してもらうと、最低一応二十億というめどをつけようと、需要があればなお考えようと、こういう話し合いでございまして、まあとりあえずそういうふろに一つのワクをつけたというようにお考え願いたいと思います。  ただ御参考までですが、引揚者団体からはできるだけ公債のワクということにしてくれんかという要望があったように聞いております。
  115. 小西英雄

    小西英雄君 わかりました。それと関連してもう一つ、引揚者の方の要望といたしましては、国民金融公庫だけではなくして、もう少し農林中金とかあるいは開銀とかということに対しても、あるいは団体として借り受けたいといろ希望を相当持っておるのでありまして、私たちはこの際一つ、厚生大臣が非常に熱心に引揚者のために御努力下さっておるということ、よくわかりますが、団体行為として引揚者が国有財産などを一般に払い下げる際に、この公債によって取ってもらえぬかという要望が強いのですが、それを一つ何とかなるような方法はないものでしょうか。
  116. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 引揚者の更生の問題につきましては、いろいろの方法がなお考えられると思います。今お述べになられたようなことも、あるいは出てくることも予想されないわけではございませんが、そういう場合にやはりケース・バイ・ケースとして、その具体的な内容によりまして大蔵当局に一つよく連絡をとりまして、できるだけすみやかに、引揚者が生業を十分生A発展していただくようなことを厚生省といたしましては努力いたしてみたい、こういうふうに考えております。
  117. 小西英雄

    小西英雄君 この給付金と関連いたしまして、いろいろ審議会の意思を相当尊重下さったことはわれわれ非常に多とするところでございますが、もう一つ抜けておりますことは、住宅の問題について、特別ワクで相当量を五カ年に建てるというようないろいろなお話でございましたが、あまり衆議院の方の会議録に載っておりませんが、厚生大臣は、現在とも変らぬ御意思であるのかどうか、一つその構想をお述べ願いたいと思います。
  118. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 当時の大蔵省とのお約束と申しましょうか、この給付金等支給法案の決定の要綱の中に、五カ年間に引揚者のために二万戸の小住宅を建てる。この年度割については、今年度一千戸でございますか、残りの一万九千戸を来年度以降四カ年でこれを建てる、こういうふうに話し合いがついております。  四カ年の年度割をそれじゃ一体どういうふうにするかということについては、三十三年度の予算編成までに、それをはっきり一つ年度割をきめよう、こういうような打ち合せになっております。
  119. 小西英雄

    小西英雄君 今年度はその五カ年間の二十分の一ということは、発足に当って非常にりょうりょうたる住宅でございますが、神田厚生大臣のように、非常に引揚者に御理解のある大臣が出れば別ですが、来年またかわるようなことが断じてない(笑声)ということを、一つここで、この際、御返答を伺いたいのですが。
  120. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) これはまあことしの一千戸というのは、御承知のように、予算をもろ編成してしまったあとでこの方の問題がきまったものでございますから、との方がもし先でありますれば、一千戸というような、そういった一まあ五カ年間に二万戸建てるのを非常に一千戸ということは少いのでございまして、これは御納得をしていただくのに、はなはだ私どもも恐縮しておるわけでありますが、残りの一万九千戸をあとの四カ年で建てるということは、これは両省のはっきりした約束でもあり、しかも、これは閣議の決定事項でございますから、私はこの閣議の決定というものは、当該大臣の進退等によってですな、これは変るというようなことは、私は政府の政治的段階から言ってもこれはあり得ないのじゃないか、こういうふうに考えておりまして、その点は御心配ないと思っております。
  121. 小西英雄

    小西英雄君 うまく答弁をやるので、われわれ非常に安心いたしましたが、閣議決定も今日は非常に威厳があるそうですが、引揚者の問題につきましては、昭和二十一年に時の内閣で石橋大蔵大臣が、引揚者には閣議決定として一世帯二万五千円、そういうものを支給するということをきめたそうでありますが、そのときはマッカーサーの命令下にあって実施できなかった。十三年も十二年も引っぱられて、当時の金の概算にいたしまするならば、一世帯三十七万円のところが、世帯割にいたしまするならば、五万円以下といろところでこれが落ちついたのでありまして、必ずしも前の閣議決定の線が決定的に法律みたいなようにわれわれは信用できませんが、今の神田厚生大臣の熱意ある御答弁で、われわれ引揚者に十分に周知徹底いたしておりまして、だれにかわってもこの約束は守っていただきたいういうことを念願いたしておきます。  もう一点は、この法案の二条にありますように、外地におって六カ月を越した者にのみこれを支給するという、この線が、どの辺から打ち出されたか、私たちはむしろ五ヵ月前には戦争の終末でありまして、末期でありまして、いた人間が幾らもないのに、わずか六カ月以上のものときめたということについては、われわれふに落ちぬ点、あるいは今後そういう問題が起きてくると、また、同じ引揚者の立場にあっても、六カ月たっていなかった子供に対しては、何の処置もしない。知は子供は無意識で、全然引き揚げてきた辛さといったものはわからなかったと思いますが、その母親たるや、子供をかかえて、六カ月や、七カ月の子供を抱いて、国に帰ったその労苦に対しても、最低その七千円程度のものはこの際やってもらうことが、いろいろな、今後に問題を残さなかったろうと思うのですが、そういう点について一つ大臣からお聞きしたい。
  122. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) ただいまの川西委員の、この支給資格の滞在制限をどういう趣旨で一体六カ月としたか、こういうようなお尋ねと承わるのでございますが、この居住制限を一体どの程度に線を引くかということにつきましては、いろいろ議論がございまして、少くとも外地に居住して、そしてまあ生業をしたというようなふうに見るらば、一年以上が至当であるとか、あるいはまあもっと多い方がいいのじゃないかというような議論もあったようでございます。しかし、太平洋戦争のあの様相を考えますときに、もう大体戦争終結半年前というようなころは、海を渡って外地に行くというようなことも、まあ大体において考えられないのじゃないだろうか。引揚団体等におきましても、まあ最初は一年というような線で、これは原案があったのでございまして、一年ではどうも納得できないから、もう少し一つ幅を縮めてくれぬかというような御要望もございまして、これはまあぶちまけたお話でございますが、いろいろ大蔵省と打ち合せの際にも、これはもめたことでございますが、とにかくまあ半年ということにしようじゃないかというようなことで、引揚団体の方も半年なら了承できるというようなことでございまして、どこで引いたことが一番いいか、今の小西さんのようなお考えも私はよく事情はわかります。わかりますが、どこかでやはり引かないと、支給資格がつかめないものでございますから、そこでやむを得ず六カ月というようなことで引いたようなわけでございまして、別に六カ月未満にすると予算がどうとかという意味じゃなく、一応の線を、一つその辺でどうだろうかということで話がついたようなわけでございまして、まあ赤ちゃんの生まれたような例を考えますると、多少今おっしゃったような気持もわかるのでございますが、しかし、生活の全基盤を失った、そこで政府としてその基盤を失ったということを土台として、いろいろな意味でこれは一つ公債を支給しようという趣旨から言うと、やはり期間を半年くらいは制限することが、後世説明としてもこれはやはり筋の立つことじゃなかろうかというような、常識的な意味のいろいろ意見がございまして、まあそこに落ちついた、こういうふうに相なっております。
  123. 小西英雄

    小西英雄君 厚生大臣の意図もよくわかるのでありますが、私たちは、今年大幅にこの問題を、おそくなっておるのだから解決していただきたいという意図とは、多少そこに見解の相違があるので、今のようにわずか六カ月で——幾らもないのならなおさらのこと、そういう問題を解決していただきたいという感を私たちが持つと同時に、もう一つ衆議院の方でもいろいろそういう議論が出たかと存じますが、やはり南方諸地域に相当日本人が戦争前から生活を営んでおった者に対して、その当時の軍の要請によって強制送還をした、それらに対する人の処置も載っていない。私たちはこういう点について、これらも一応こういうふうな温情ある処置をおそまきながらやったとするならば、それらの人にもなぜしないかというふうの疑問を持っておるのでありますが、やがてこれはいろいろ遺族の問題につきましても、一応の線でやっておいて、ことしできない点はあくる年やつておりますが、こういう点について、これは大きな数じゃない、予算的にも大したことはないと思うのですが、一応そういうことについて政府考えたことがあるかどうか。
  124. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 今度のいわゆる引揚者給付金の対象になりましたものは、終戦の措置に伴って、まあ日本の権限というものは及ばなかった、要するに、ああいったような無条件降伏下において、日本の国威というものが全然保たれなくなった。そして本人の意思でなく、ある期間まあ捕虜というような、抑留者の生活もして、そしていろいろな制限下に生活して引き揚げられた、まあその全生活の基盤を失ったということについて、給付金をいろいろな意味から考えまして、そして差し上げよう、こういう趣旨から出たものでございまして、ただいま小西委員のお述べになりましたように、たとえば南洋群島であるとかあるいは蘭印からの戦時下、軍の要請によって、同時に承り保護によって引き揚げられた方々とは非常に事情が違うのではないだろうか。そういう面を考慮いたしまして、これらの問題をどうするかということについては、これはいろいろ将来の問題としてこれは考える、要望もございますので、考慮の問題も私はあろうと思いますが、今度のは、日本国の権限がもうなくなってそうして特殊な事情によって帰らざるを得なくなった、国威が及んでおってその保護のもとに帰った者とは違う、そこがケースが違うから、その者はこの中には触れなかった、こういうふうにお考え願いたいのでございます。
  125. 小西英雄

    小西英雄君 いろいろ憲法上、条約上、法律上の問題については、外務省あるいはこの法制局その他大蔵省等に関係があることについてお尋ねをいたしたいのでありますが、現在急ですかまあ最後に、厚生省に対してもう一つお願いしたいことは、引揚者の死亡者、当時いろいろ開拓団の人あるいは基盤を失ったために住むに住居なく、凍え死んだ人その他いろいろな多くの悲惨事が新聞でも報道せられましたように、繰り返されておったのでありまして、それらの霊に対して、政府がどういう処置もしない、国家として、していないということが現状でありまして、私はこの際、いろいろな見地からあたたかい政府のこの給付処置と同時にお願いしたいことは、引揚者の、大体現地において——こちらにたどり着いて死亡した人の数が現在四十万をわれわれの調査でこえております。昭和二十七年だったかと思いますが、占領下のために戦死した人の霊をも慰められなかった悲しい時代を過ぎ去りました際に、ちょうどあの公債が遺族に渡された際に慰霊祭を施行したのであります。そこで多くの遺族の方々が、われわれの子供も、兄弟も、これで静かに安めるということを私たち衆議院の引揚委員の当時でありましたが、相当感銘いたしたのでありますが、この際、一つ厚生省におきまして、何とか一つこれらの四十万の霊に対して、国家的行事として慰霊祭を行なってもらいたい。それらについて一つ厚生大臣が率先してこの慰霊祭を行うことについての一つ決意をしていただきたいので、御答弁をお願いしたのですが……。
  126. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) ただいま小西委員の御要望の気持は、私もよく了解できるつもりでございます。お述べになりましたように新宿御苑でございますか、政府におきまして、戦没者の、戦争によってなくなられた方々の慰霊祭を行いましたことは、一回行いましたことは御承知通りでございまして、その後、そういうことはやっておらないという状態。それから今年度におきましては、無名戦士の碑を建立するという予算もちょうだいいたしておりますので、これらも一つ今年度におきまして完成いたしたい、こういうふうに考えております。なお、この幾多の遺骨等、まだ収集中でございますので、そういう外地におきまする戦没者等の遺骨等が引き揚げになりまして、そうして一応完結するというような際に、これは国民的行事として戦没者の慰霊祭をさらに新たにするということについては、これは政府といたしましても、何らか処置をとりたいというような気持を持って、話し合いと申しましょうか、そういう意図を披瀝した内輪の機会がございますが、今、小西委員のお述べになられましたように、引揚者が内地へ帰られて四十万からという大へん多くの方々がなくなられておる、これに対して政府が慰霊祭をしたらどうか、こういうことにつきましては、実はそこまでのまだ話し合いと申しましょうか、考えは及んでおらないのでございまして、今初めてそういうことを同情はいたしておりまするが、お気持はよくわかるのでございますが、それをどうするかということになりますと、新しい問題としてまた、これは十分検討しなければならないと、こういうふうに相なろうかと思うのでございます。ただいまのところ、とにかく一度政府といたしましては、新宿御苑で、盛大と申しましょうか、厳粛な慰霊祭を行いまして、その後、遺骨の収集をやっておる、また、いろいろ収集した結果、なかなか御遺族の方々に、この遺骨がどうしても届かない、姓名がはっきりしないとか、あるいは遺族の住所がはっきりしないというようなことで、たくさん厚生省の本省の中、その他の所におきまして安置しておるような状態でございまして、なお、今後収集する遺骨等も御遺族の方々にお引き取り願うというようなことができないものも相当出るだろうということが想像されますので、これらを一つまとめまして、安らかに眠っていただこうということで、戦没将士の、無名戦士の墓と申しましょうか、そういうことをしたいということで、予算が今年度認められたことは御承知通りでございまして、よく一ついろいろの点等につきまして検討を加えまして、この戦争終結の締め括りをつける意味において、何らかあたたかい気持で、われわれ国民一同がみたまを安らかに眠っていただく、また、われわれの気持も、一つ新しい気持をもっておなぐさめするというようなことを一つ検討をいたしたい、かように考える次第でございます。
  127. 小西英雄

    小西英雄君 厚生大臣 少し広範囲考えて御返答願ったのでありますが、私が申し上げることは、むしろ例を満州にとりますならば、ソ連が参戦した際には、関東軍というものが、ほとんど、朝鮮の方に近いところの通化といいますか、あそこへ下りまして、前線に残った者はほとんど開拓民でありして、開拓民が銃をとり、そうして、相当戦いもし、かつまた、多くの人が死なれておる、外地で。そういうふうな満鉄の社員その他の死んだ人が、四十万のうちの相当数がそれらの人でありまして、それらの人に対する政府が今回の処置は、政府の保護を離れて混乱中にいろいろなことが起って生活の根拠を失ったという、非常にあたたかい意味のこれはわれわれお見舞金のように考えておりますので、その予算の一部予算はどうなりますか、わずかなものだと思いますが、そういう意味合いにおいて、海外に行って、海外で、だれの見ておるところでなく、いろいろな戦闘に参加した者あるいは道中で凍え死んだ人、これはやはり軍人に劣らぬ、国としての立場から見たら。多くの人に対する処置といたしまして、政府が何とかこれらの慰霊祭を行なっても何らほかの人との均衡を破るものでもないと私たちはこう考えておりますので、一つ厚生大臣は率先してこういう実情をおくみ取り下さいまして、もしああいうふうな戦没遺族に対するような処置のようにできなければ、何かそれに近い例で一つやってほしいというのが引揚者三百万の要望でありますので、さらに一つお願いしたいと存じます。
  128. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 外地に、終戦直前のあの混乱の際に、今お述べになられましたような事情のもとにおいて犠牲になられましたわれわれの同胞につきまして、そのみたまを安らかにお慰め申そうということにつきましては、これはもう政府といたしましてもまことに同感でございまして、御趣旨まことにけっこうに考えておりますので、十分一つ検討を加えまして調査を進めて、適当な時期に何らかそうした国としての気持を表わしたい、かように考えておることを申し上げまして、お答えにかえる次第であります。
  129. 小西英雄

    小西英雄君  法制局の方は……。
  130. 千葉信

    委員長千葉信君) まだお見えになる模様はございません。
  131. 小西英雄

    小西英雄君  大蔵省の方は……。
  132. 千葉信

    委員長千葉信君) 同様でございます。
  133. 小西英雄

    小西英雄君 それでは私は一応これで終ります。
  134. 千葉信

    委員長千葉信君) 本案に対する本日の質疑は、この程度にしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  136. 千葉信

    委員長千葉信君) それじゃ速記を始めて下さい。  労働福祉事業団法案を議題といたします。提案理由説明を願います。
  137. 伊能芳雄

    政府委員(伊能芳雄君) ただいま議題になりました労働福祉事業団体法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  御承知のごとく、政府におきましては、労働者災害補償保険事業及び失業保険事業の一環といたしまして、昭和二十四年以来労災病院、傷痍者訓練所その他の労働者災害補償保険施設を、また、昭和二十八年以来総合職業補導所、簡易宿泊所その他の失業保険施設の設置及び運営を行なって参ったのでありますが、これらの保険施設は、逐年増加の一途をたどり、現在その数は、未完成のものも含めて、労災病院二十四カ所、傷痍者訓練所二カ所、総合職業補導所二十三カ所、簡易宿泊所十二カ所の多きを数えるに至っておるのであります。  しかして、これらの保険施設の運営の実情を見まするに、まず、労働者災害補償保険関係の施設につきましては、その施設のうち、労災病院等の経営は、委託契約により、一財団法人に委託してこれを行わせているのでありますが、労災病院の数が少かった間はともかく、すでに二十四にも達せんとする労災病院の経営を一民間団体に行わせることは、その事務能力、財政能力等の点から申しましても、責任態勢に欠けるところがあり、適当とは言いがたいのみならず、さらに今後この種の施設の拡張発展に伴い、その適切かつ能率的運営を期するためには、その方法等について根本的に検討を加える必要があると存ずる次第であります。  他方、失業保険関係の施設につきましては、総合職業補導所等の施設の経営は、委託契約により、当該施設の存する都道府県等に委託してこれを行わせているのでありますが、これは、あくまで一時的かつ便宜的理由によるものでありまして、総合職業補導所のごとく、国家的見地から統一的運営を必要とする施設を永続的に都道府県に委託経営せしめることは、その性格にかんがみ、必ずしも適切な方法であるとは認めがたいものがあるのであります。  右のごとき事情を考慮いたしますとき、これらの保険施設の設置及び運営を適切かつ能率的に行うためには、政府みずからがこれらの施設の設置及び運営に当る方式が考えられるのでありますが、国が直営することは、行政機構の拡大等のおそれもあり、また、その能率性等から見て、必ずしも最善の策とは考えられないのでありまして、むしろ、この際、これらの保険施設の設置及び運営のごとき業務は、国の代行機関たる性格を有する労働福祉事業団を設立し、これに行わせることがより適切であると思料されるのであります。以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。  次に法案内容について、概略御説明申し上げます。  この法案は、労働者災害補償保険及び失業保険の保険施設の設置及び運営を適切かつ能率的に行わせるため、労働福祉事業団を設立することを定めるとともに、その組織、業務、財務、会計、監督等に関し、所要の規定を設けたものであります。  すなわち、第一に、労働福祉事業団は、法人といたしますとともに、その当初の資本金は、事業団の成立に際しまして、政府が出資する額と地方公共団体が自治庁長官の承認を受けて出資する額の合計額といたしております。しかして政府は、事業団の成立に際しましては、労災病院、傷痍者訓練所、総合職業補導所、簡易宿泊所等の用に供している国有の不動産、これに附属する物品等を事業団に現物出資することといたしております。  第二に、事業団の役員として、理事長一人、理事四人以内及び監事二人以内を置くこととし、その任期は、それぞれ四年といたしております。  第三に、事業団の行う業務といたしましては、労災病院、傷痍者訓練所等の労働者災害補償保険施設及び総合職業補導所、簡易宿泊所等の失業保険施設の設置及び運営を行うことを主たる業務とし、あわせて前述の業務を行うに支障のない範囲内で、委託を受けて、これらの保険施設を利用して労働者の福祉の増進をはかるため必要な業務をも行うことができることといたしております。  第四に、事業団の財務及び会計でありますが、事業団の予算、事業計画、資金計画、財務諸表、借入金等につきましては、その業務が国の代行業務たる性格にかんがみ、労働大臣の認可または承認を受けることを要するものといたしております。  第五に、事業団は、労働大臣の監督に服するものとし、労働大臣は、事業団に対して、監督上必要な命令等をすることができることとし、また、事業団の業務の監督等に当らせるため、特に労働省に労働福祉事業団監理官一人を置くことといたしております。  なお、設立初年度の特例といたしまして、労働福祉事業団が昭和三十二年度に行う業務は、これら保険施設の運営のみを行い、設置は行わないことにいたしております。  以上がこの法案提案理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さるようお願いいたします。
  138. 千葉信

    委員長千葉信君) 本案に対する質疑は、次回以降にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。
  140. 千葉信

    委員長千葉信君) 次に、労働情勢の調査に関する件を議題といたします。御質疑のある方は順次発言を願います。
  141. 片岡文重

    片岡文重君 私はこの際、労働大臣に所見をお伺いしたいのですが、いわゆる春闘なる問題に関して、政府は、しばしば国鉄その他の公労関係の幹部諸君の処罰を放送しておられるようです。しかし、この公労協の関係の諸君のとられた態度並びにこれのとってきた原因等を考えてみますれば、かりに百歩を譲って、政府がその処罰をあるいは処分というものを考えるとしても、この起ってきた責任を政府考え、かつ、この処分をするということになるならば、政府としては、十分にあたたかい気持と言いましょうか、いわゆる泣いて馬謖を切るというこの気持がなければならない。しかるに、去る三日、名古屋における労働大臣の談話なるものを新聞、ニュース等によってわれわれが聞くところでは、むしろ得々として、意気揚々として現政府の公労協幹部に対する処分を指図しておるかのごとき感想を与えております。いささかも政府が事態を惹起せしめた責任を痛感しておらないばかりでなしに、処分ということをさながら何か特権であるかのごとくもてあそんでおるかのごとき印象すら与えておるのですが、一体名古屋におけるこの談話を発表した意図は那辺にあるのか、まずそこからお伺いしたいと思います。
  142. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 政府は最初から申し上げておりますように、今度の春闘は、スケジュール闘争はおもしろくないという考え方を持っておる、もう一点は、これは仲裁裁定をどこまでも尊重する、しかし、法を犯した者は、これはお気の毒ではあるけれども、身をもって償いをしてもらいたいということは、終始変らざる行き方でございました。この間、名古屋におきまして新聞が非常に大きく扱ったのでありますが、あの模様は先ほども予算委員会でいろいろ申し上げたのでありますが、三十人ばかりの記者こっちから行った人、向うの人が集まりまして、記者会見を正式にいたしました。それで名古屋駐在の人、名古屋の人々は帰りまして、残ったのは東京から行った人たちだけであります。そこでいろいろな座談をやり、雑談をやっておりました。その中に、今の新聞に出ている事項がいろいろ話されましたから、私もまた自分の持っている総合情報というものをそこに話し合ったのであります。ところが、ほんとうはあんなに大きく私は出るとは思ってない、それも当りまえに言いました。発表は、記者会見というものが終った後でありますから。ところが、翌朝あの新聞を見て驚いたのでありますが、いずれにいたしましても、そういう重要な問題を新聞、座談なんかでは言うものでないということを考えずに、ああいう動機を与えたということに対しましては、私はその責任は重大であると思って、その責任を感じておる次第であります。新聞記事全体の責任は私は持てません、新聞によっていろいろ扱い方が違っておりますから。先ほどもねらい撃ちなんということを新聞を読んで指摘されましたが、そんなことを私は全然言っておりません。しかし、ああいう記事が出る動機を与えたということは、労働大臣としての資格の上からいってまことに遺憾なことでございます。その責任は十分自覚いたしております。
  143. 片岡文重

    片岡文重君 談話の発表の形式等ももちろんわれわれとしては十分、大臣みずから認められるように考えなければならぬところであるし、深い関心を持たざるを得ません。しかし、それ以前の問題があるはずです。つまり談話の形式、方法等のいかんではなくして、労働大臣が考えておるその考え方こそが私は問題だろうと思う。いわばこの処分等に当って、何かネコが獲物でも扱うように得々としてこの処分をもてあそんでおる、こういう態度があるからこそ、そういう雑談の際に、知らず知らずの間に本心が流露される。結局その事柄が重要ですから、その雑談の間にかわされたとしても、これは事柄があまりにも重大であるというので、この事態に対する感覚を持つ新聞記者諸君が取り上げた、これは当然のことだろうと思う。その処分に対して、労働大臣は一体どういうふうなお気持でおられるのか、それをお伺いしたい。
  144. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) と公労法の精神によって、公共企業体に働く人たちは、公共企業体の公共性にかんがみまして、ストライキその他のことはやっちゃいかぬということになっておりますから、それを犯した場合は、私はほんとうにお気の毒ではあるけれども、法秩序維持のためにやっぱり責任をとって、その違法に対して身をもってその償いをしてもらいたい。こういうことでありまして、労使の関係の中に立って、労使の融和、労使の正常な慣行というものを作っていき、将来の日本の労使というものをよくしたい、そのためには勤労者に対する非常な同情を持たなきやいかぬということは忘れないのです。けれども、この春行われましたようなことは、何ぼ同情いたしましても、多数の国民がああいう迷惑をいたしましたことについて、全然責任者が出ないということでは、政府の行政上の問題から言ってどういうものであろうと、私は自分の子であっても、法を犯して多数の人に迷惑をかけたということであるならば、身をもってその責任を持ってもらうように親は勧むべきである、それが国家民族の秩序を維持するゆえんである、かように思いますから、今御指摘になりましたように、ほんとうに泣いて責任をとってもらいたい、こういう心境に私はおるのでございます。
  145. 片岡文重

    片岡文重君 新聞ニュース等に伝えられるところの労働大臣の談話などを拝見すれば、とても私たちはそういう気持を汲み取るわけには参りません。で国民に大きな迷惑をかけた、そして責任を身をもってとるべきであると言っておりますけれども、かりにそういう事実があったとしても、多数の人に迷惑をかけたというならば、仲裁裁定という公労法で認められた機関によってなされた裁定に従がわなかった政府の責任は一体どうしてとるのですか。これはこの事態を惹起した責任でもあったわけです。今回は裁定を尊重して実施すると言っておる。しかし、これもまた、いわゆるあげ底実施であって完全実施ではない。しかも、一方的な立場を利用して、いかにも完全かつ十分な実施をしておるかのごとくに放送して国民を欺瞞しておる。今度完全実施だというその完全実施ですらあげ底実施である。今までには実施されたためしがない。この実施されないことによって多数の労働者に非常な迷惑をかけておる。この責任は一体政府はいつどこでとろうとしておるのですか。
  146. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) その問題は、従来の裁定二十二回のうち九回は完全に実施しております。十一回は期日が延びたのでございます。ほんとうに実施されない、金額の上において半分以下になったというような場合はそれは一回であります。一回は今検討中であります。で今度の場合すでに衆議院でいろいろ論争いたしましたからもうお聞きのことと思いますが、裁定の第一項すなわち理由の第一に述べてあることは、予算単価の上に千二百円を乗っければそれでもう責任はいいということになっておるのです。でありますから、この第一項理由第一の考え方から言うならば、もう俗に言う余分に払われておったというもののうちで八十円しか見られないということになります。一応業績手当の分は本給に繰り入れる、あとの六百円のうちで五百二十円が今申しましたような余分に払われておるというようなものは直さなければいかぬということが規定してありますから、第一項だけで言うならば、法律上八十円だ、その八十円だけ増したのでは、御指摘になりましたような今日の労働紛争を解決するゆえんにならない。だからして五百二十円は相当な給与改善が行われるように政府はやるべきだということが指摘してあります。従いまして、われわれはこの五百二十円というもののうち約三百五十円というものを千二百円の上に乗っけたのです。それだけのプラス・アルファの方法をとっておりますから、これは完全実施であると私どもは思っておりますし、また、藤林さんの御発言でも、政府はそうやることは差しつかえないのだと言っておりますし、また、この間の質問に対する指示事項に対しても、大体衆議院でお答えになりましたと同じようなものが文章として出されております。ここにその文章を持っておりますけれども、けさ新聞に発表になっておりますから申し上げる必要はないと思いますが、そういうことで、今度の裁定は完全実施したとわれわれは確信を持っております。
  147. 片岡文重

    片岡文重君 今回の裁定実施は完全実施ではありません。第一項の主文だけを取っておられますけれども内容をごらんになれば今大臣が説明したようなわけではない。やはりこの労使の紛争を解決するのに最善の措置を講ずべきことが指示されております。従って、その完全な労使のしかも従来のとってきた労使の協定等を全然無視して、これをやみ給与という勝手な言葉で片づけておる、この経過をたどっていけば、決して完全実施ではありません。今ここで私が追及しようというのは、問題としてここでお尋ねしようとしていることは、この仲裁裁定という点は、時間の都合でもってあとにしますが、一体この処分に対する労働大臣の所見をさらに私はお聞きしておきたいのですが、大体処分とか、措置とかいうものは、対象となるものの行為によって定めらるべきものであると私は思う。政治的な意図とか、あるいは政府の政治的な振り合いとか、そういうことによって決定すべきものではもちろんないと思う。しかるに、大臣の発表されたものだということで伝えられるところによれば、人数も四十人、三十一人、十八人、この三案があるということで伝えられております。こういうことは、この行為が明白になって、どうしても事情やむを得ずして処分するのだという結論がなされて初めて人数というものは浮び上ってくるはずです。最初に人数が出されておって、そしてその処分を決定するということは、明らかに行為による処分ではなくて、政治的なかけ引き、あるいは政府の何らか意図するところによってはじき出された数字であると考えられますけれども、労働大臣は、この点はどうしてこの数字を出されたのですか。
  148. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それは先ほども予算委員会でお答えしたのでありますが、政府が内部において決定した事項でもなく、その関係の大臣から聞いたのでもありません。それは大体各方面のニュースを総合しまして、総合情報として私が判断して発表したのでございまして、それもいろいろな話し方をしておったけれども、そういうふうに聞いた新聞社の方々が綴られたのであって、その中にいろいろなことが書いてあるようです。また、新聞紙によって書き方が違っておるようでありますが、この新聞発表の内容は、私は責任を持ちませんが、そういう記事になるようなことを雑談の中に言ったということは、労働大臣としても責任を痛感いたしておるのでございます。
  149. 片岡文重

    片岡文重君 雑談の中にも、とにかく四十人といい、あるいは三十一人といい、十八人という、これら数字でも抽象的な表現ではなくして、明確に、数字をはっきり言明されたことは事実でしょう。従って、何人にするかということ、どの程度にするかということ、これについて、その行為よりもどのくらいを出そうか、どのくらい出したらどういう影響があるだろうかということのみに重点が置かれてこの数字は出ているのでしょう。この数字というものは明らかに記者諸君の前で言明されておるのに違いない。
  150. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それは総合情報によったものでございます。
  151. 片岡文重

    片岡文重君 おかしいじゃないですか。これは抽象的な表現ではないですよ、明らかに四十人とか、三十一人、十八人、私はくどく繰り返すようですけれども、こういう数字を並べたということは、これは抽象的には出せない数字です。明らかに労働大臣の口から、あるときは四十人といい、あるときは三十一人といい、あるときは十八人という明確なる、数字が出たので、ここで総合判断をするという事態が起きてきたのでしょう。全然物を、数字を出さなければ、あるいはこれは何人であるか、百人であるかこれはわからないでしょう。この数字が出たということは、この雑談の中に、大臣がたとえば何回言ったかわからないが、とにかく言っていることは事実でしょう。言っておるとするならば、この数字というものはどこから出てきたのですか。
  152. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それはまあ私はその問題については責任を持っておりますから、いろいろお聞きになっても、だれそれが言ったとも言えず、私は聞かれるその数字を、そういうふうに聞かれたものですから、うなづいてまあそういう風評もあるとつけ加えておりますけれども、それでは新聞記事にはならないのでありまして、はっきり僕がそういうあらゆる問題を話したようなふうに取り扱われたと思うのですけれども、その点は不用意にでも、不用意にそういうところでそういうことを言ったということの大臣としての責任は痛感いたしておりまして、はっきりとこまかしい数字をだれそれがこう言ったと言ったことは全然ないのであります。けれども、そんなことを言いのがれするときではなくして、私がそこに立ち会ってそういう記事になるような動機を与えたことは、若い記者の責任ではなくて、私の責任であります。
  153. 片岡文重

    片岡文重君 ではこういう談を労働大臣は発表したのではなくて、とにかく記者諸君によって総合的に判断をされ、これが新聞記事として発表された。その内容はともかくとして、そういう発表がなされて、それによって大きな影響を与えたことについては大臣として大きな責任を感ずる、一体その責任はどうしてしからばとられるのですか、具体的に。
  154. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それは私の胸にあることであります。
  155. 片岡文重

    片岡文重君 大へん含蓄のあるお言葉を伺ったわけですが、大臣がどのような責任をとるという姿を具体的に現わされるかわかりませんが、この影響というものは大臣がとられる具体的な責任のいかんによって解消するものでは私はなかろうと思うのです、この事態を解消せしめる。こういう大きな影響を与えたことは、単に名古屋における炉辺談話にすぎなかったのだということになるためには、この発表された談話の内容がことごとく空文にならなければ私はならないと思う。この発表されたしからば内容はすべて空文になるということは、ここで言明できるのですか。
  156. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 空文になるとは思っておりません。もう日本全国の人の耳に入っておるのでありますから、いまさら取り消しても効果はないと思っております。
  157. 片岡文重

    片岡文重君 そこでますます私はお伺いしなければならなくなってくるのですが、大臣が発表され、また、責任をとられたことによって空文にはならない。しかし、ここで真に責任をとられて、この事態をもとに返すということは、この談話の内容として伝えられる事態をことごとく空文と言いますか、ほごにされることがもしできるならば、この与えたことは、労働大臣の名古屋における一席の炉辺談話にすぎなかったということになると思うのです。大臣として、この内容を空文にするということができないのですか。つまり、こういう処分ということについては白紙に返すということはできないのですか。
  158. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 先ほど申しましたように、公労法を完全にその精神を生かして、また、公労法の番人として立っておりますわれわれといたしましては、お気の毒ではございますけれども、その数字が幾らになるかわかりません。けれども、その犯した違法行為の償いはやはり持ってもらわなければなりませんから、私の今の力でこれを全部無処分に済ますなんということを言ったところが、これはもう多数の国民が迷惑をして体験しておるのですから、あれで一人も処分が出なかったというようなことは、これは私としてはできませんし、また、そうすべきものではないと、お気の毒ではあるが、法律を維持するためには、犯した方はその身をもって法の尊厳を維持してもらいたいということが私の念願でございます。これはまことにお気の毒でございますけれども、これはやむを得ないことと思いますが、それを今全部御破算にするように政治的に努力せいと言われましても、私の力ではとうていできないものであると思います。
  159. 片岡文重

    片岡文重君 取り消すこともできないし、そういう措置もとろうとすることもできないという御答弁のようですが、しからば、この処分に対しては、あくまでも私は行為対象としてなすべきものであると考えますが、この談話の内容からみれば、行為ではなくして、政府考えている処分の対象と言いましょうか、方法はあくまでも政治的な観点からこれを行う、こういう見解であるように考えますが、そう解釈をしてよろしいですか。
  160. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 私は公労法を守る立場におりますが、その処分の一人々々の処分の内容検討については、使用者がいろいろにらみ合して決定すべきものであって、その監督は直接運輸大臣であり、郵政大臣であると思います。しかし、私どもはこの公労法の精神並びにその法の尊厳を維持するための努力は常にこれらの人々と相談してやらなければならぬと、かように思っております。
  161. 片岡文重

    片岡文重君 公労法を守るべき立場にある労働大臣が、その所管の大臣である運輸大臣も、郵政大臣もともに処分はしたくない、また、処分をする必要はないと言っているときに、公労法を守って労使の円満な運行を仲介し、助成していくべき労働大臣が、先頭に立って処分をしなければならぬ、処分をすべきである、しかも人数は何人である、国鉄のごときは七百余人に及ぶだろう、全逓、全電通も百人は下らぬだろう、こう発表しておちれる。そういう数字をあげての発表であるから、処分というものは大体決定をしておる。そうして労働大臣としてはそれを承知の上で発表したものである。労働大臣は言うまでもなく、岸内閣の閣僚の一人として岸内閣を代表しての発言であろうと思うから、今私はお尋ねしているのです。従って、その処分の考え方というものは明確に打ち出さるべきであると思いますが……。
  162. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 先ほど申しましたように、私どもは、やはり第一次監督の人々がおきめになることを要望いたしております。しかし、そのことがおくれるということは、みだりにいろいろな揣摩憶測が飛び、事柄の紛争が一そうひどくなりますから、やるならば早くやって、国民も、また、いろいろ従業員の諸君も安心した方がいいと私は思うので、いつまでもぐずぐずしておくよりも早くやる方がいいと思います。やるならば……。やらないならばはっきりやらないと言った方がいいと思います。今の政府の方針といたしましては、裁定は十分尊重して実施せしめる、と同時に、法を犯した者は償いをとってもらいたいという方針なんですから、それを私はいろんな総合情勢を集めて座談的にそういうことを申し上げたのが新聞に出たわけなんですが、大体風聞はいろいろな数字がありますけれども、そういう数字がまあ新聞に載ったわけでございます。
  163. 片岡文重

    片岡文重君 風聞とか何とかいう問題ではなくて、とにかく労働大臣がどんな態度にせよ、どんな方法にせよ、とにかく話をされたからそれを記者がまとめて発表したのですから、それに対する内容については、やはり大臣としては十分な責任があるのでしょうが、しかも、この所管の大臣がいまだ意見の発表もしておらないし、実情の調査はもちろんしておるでしょう。そういうときに、公労法を守る立場としばしば言われますが、公労法を守るということは、この処分をしたり、あるいは労使の紛争を激化せしめることが公労法を守ることではないでしょう。むしろ、その労使の間における意見の相違、紛争等について、できる限り仲介あっせんの労をとり、労使の円満な提携を助成していく、これが公労法を守る者の立場でしょう。その立場にある労働大臣が、率先して大なたをふり上げて、意気揚々として談を発表されるこの立場が、私たちには解せない。しかもその対象として話をされたのがこの処分の数字である。しかも一方では、処分の必要はないと言っている。これに対しては振り合い上もしなければならぬ。これでは不公平であるから、両組合とも二、三人ずつの解雇者は出るであろう、こういうことをはっきりあなたは言っておられるはずです。これは数字が出ておるから言ったのか、数字を出したいから言ったのか、そのしからばいずれなのですか。
  164. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 今の、数字を出したいからとは……。
  165. 片岡文重

    片岡文重君 郵政大臣が、この新聞に伝えるところによれば、郵政大臣としては、解雇処分の必要はないと、こう言っておられるのに対して、これはおそらく新聞記者からあなたに対する質問が出たのでしょう。それに対して、それでは国鉄だけでは不公平であるから、この全逓、全電通の組合にも二、三名の解雇者は出すべきである、こうあなたはお答えになっておられる。だからこの数字まであけて話のやりとりをしておられるところを見れば、明らかにこの処分の対象がきまっておるのか、そうでなければ、少くとも政治的な見地から、あるいは政府の立場かち、その他いろいろな観点からこれだけの人数、この程度の者は処分をしたいと、こうあなたはお考えになっておるか、いずれかなのでしょう。そのところを……。
  166. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それは二、三人であるということは私は申し上げました。それは今の平井郵政大臣から聞いたものではありません。総合情報によって、大体そういうことになるのじゃないかということを考えたものですから、私は申し上げました。それからもう一点は、この先ほど来いろいろ御議論がありますが、公労法を守るといったって守る態度じゃないじゃないかということでありますが、現在の現象は、これは応急的な処置なのです。今度の春闘並びに公労法のあり方、まあ公共企業体のあり方というものは、今度の闘争を見ましてずいぶんこれは直さなけりゃならぬところがあると思うのです。その直さなけりゃならぬことは、まず第一に、公共企業体というものは一つどうしても直さなきゃならぬ、この公共企業体の直し方によって公労法もそれと見合って考えなきゃならぬ、いわゆる公共企業体の現在は一つの使用者ではあるけれども政府の相当の制約があって、一般の民間におけるような勤労者と経営者がほんとうに血眼になって戦い合って、そこに真理を見出すというふうになっていないのでありますから、どうしても公共企業体一つのこの自由主義下における資本家としての立場を守り抜くくらいのものがなければいかぬと思うのです。それと勤労者の団体交渉とが血みどろになって真剣に戦わされて、そこに初めてりっぱな考え方が出てくるのでありますが、現在のアベックとか何とかいうことが世の中に、あまりいい言葉じゃありませんけれども、流布されるというような実情は、これはやはり今度の闘争を見まして改善していかなければならぬ。その改善していき、また、それに対して公労法も見合って直していく、将来そういう紛争のないように、起らないように、順次改善していくことが基本的な問題であって、たとえて言えば、大きな木がある。その根を培養して大きくすることは恒久的なものであって、枝にばい菌がついている、そのばい菌の一部を切り落して、全部の木に影響しないような方向に持っていくのが応急手当であるということで、私は切るだけがこの今度の公労法を完全に守って、将来よりよい慣行を作るゆえんではないと思っております。恒久的にはやはり今申しましたような基本的な問題を直して、再びそういうことの起らないように持っていくことが大事であると思いますから、そのようにやっていきたいと思っております。
  167. 片岡文重

    片岡文重君 所管の郵政大臣がですね、処分を必要としないと言っておる。しかも、その調査は労働省にもまだ通知をしておらない。そのときに労働大臣は、今二、三人というこの数字については言ったと今おっしゃった。所管の大臣から通知がこないのに、労働大臣が、この公労法を守る立場にある労働大臣が、数字をあげて言明をする。この態度はわれわれははなはだ解せないと思うのですが、所管の大臣が通知もしてない、連絡もしてない数字を、どうして労働大臣があげるのですか。あげるところを見れば明らかにこの数字ははっきりきまっておる。そうでなければ、何らかほかに意図するところがあってこの数字をあげたのですか、この点どうなんですか。
  168. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それもその程度じゃないかというふうに言っておるのであって、すぱっと言ったんじゃない。けれども、郵政大臣がどういうことを御決定になるかということは、今後の問題でありますから、それは今私はそれについてお答えできません。
  169. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私も労働大臣に一つ聞いておきたい。労働大臣は、片岡委員質問したのに、四十人、三十一人、十八人、これは言ったか言わぬかわからぬような答弁で、炉辺談話と言いますか、雑談の中に出たというが、今の答弁を聞いていると、全逓、全電通には三人という問題が出てくる。それじゃ裏付けは四つの段階で数字もはっきり言ったということが裏付けされてくる。これはここで言っておる。これは新聞の発表で、大臣はいろいろな角度からこの問題は雑談だと言っておりますけれども政府の態度として発表されておる。今話を聞いておると、先日の石田官房長官の話では、当局が、公社が責任を持つものだと言っておる。大臣も今ここではそういうあり方が好ましいと、こういう工合に言っておられる。そこでだんだん問題が進んでいきますと、ここに労働大臣は、その新聞の雑談か発表か知りませんが、そのあとで、名古屋労働組合の代表、寺内地評議長ですか、この今の会見のときには当局にも責任をとらす。国鉄当局も責任をとるべきだ。こういうことをはっきり、三つの問題の一つとしてはっきり言っておられる。それじゃ当局にはどういう責任をとらそうとしておられるか、私はそこのところを聞きたい。
  170. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) その名古屋の労働代表と会いましたときに、それを言ったか言わないか私は記憶しておりません。けれども、きょうの衆議院質問応答の中にそれが出てきました。私はこういうふうに考えております。この公労法によってですね、この勤労者の違法に対する責めは負わせると同時に、もしこの経営者の方にも違法があれば、それは十分調査しまして、違法があれば、その違法に対する責めは経営者の方でも負わなければならぬだろうという考えなんですりあるいはそういう考えをしておりますから、名古屋でそういう質問があったときに答えたのかもしれませんけれども、名古屋で答えたことは、その問題については今記憶ありませんけれども、きょうの衆議院の社労の委員会におきましてはそういうふうに申し上げました。しかし、それが、だれが悪いか、どこが悪いかと言われても、それは返事できません。それはとにかく機関をもって調査しまして、経営者であろうが、勤労者であろうが、同じ法律を犯した者は、違法行為をやった者は、その違法行為に対する責任はとるべきである。それは経営者も勤労者もかわりはない。法の尊厳は、天下万民公平でなければならないという意味でそういうふうに申し上げました。
  171. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ますます今の労働大臣の答弁を聞いて理解に苦しむ。今の人数の問題、時期の問題、その他は雑談だ。少くとも私は政府を代表した労働大臣が、雑談の中で数字まであげて、あとで聞いてみると、言ったということでない。労働者の首切り、解雇の問題、労働者の生活権が奪われるという問題、これは公労法云々の責任の問題の追及、両方に責任があるということを明確に言ったのか、その点ぼやかしたのか知りませんけれども、片方でこのような人間の首切りというような重要な問題を雑談の中で新聞記者に発表するという、私はこの態度というものが、政府の責任者の態度として非常に疑問に思う。  もう一つの点は、閣内において、直ちに石田官房長官が取り消して、それは公社やその他現業庁の当局が問題にすべきなんであって、直接政府そのものがやるべきものでないということまで言っている。それでもう一つ追及していくと、当局にも責任があるように言っておいて、そこのところでは、これから調べてみなければわからぬ。片方だけは発表してしまう。責任は二つ並行して出しておいて、片方だけは首切りの問題を出しておいて、片方はこれから調べてみなければわからぬというような立場は、私は労働者を守る労働省の長官としての意見としてあるまじきような感じを受ける。この点どうなんですか。
  172. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それは大体十五日の晩のことであろうと思うのですけれども、その点は、われわれは十分報告を受けていないのです。しかし、あるというのですから、これから調査するということであって、いろいろの評判がありますけれども、運輸省から労働省はその報告を受けておりません。でありますが、しかし、皆さんがこういうことがあるじゃないかと御指摘になるものですから、それならば一つ十分に調査して、この法を犯したようなことがあるならば、それは責任をとらすべきである、こう言っておるのであって、私どもは正式に通告がないものですから、今そういう態度をとらざるを得ないのであります。
  173. 片岡文重

    片岡文重君 あと一、二点簡単に質問いたします。両方が責任をとるべきだという今御答弁のようでしたが、今度の処分に当っては、二十三日の、いわゆる抜き打ちストといわれる行為については処分をしない。なぜ処分をしないか。その二十三日の行為について処分をしないかというと、この二十三日の問題については、政府並びに国鉄当局にも責任があって、組合を処分すれば、当然政府も当局も処分を追及されるであろう、だから処分をしないんだ、こうあなたはおっしゃっているでしょう。この考え方は、これはもうあなた自身申しているじゃないですか。一方的な責任追及であって、政府や当局には責任を感じない、こういうことを明らかに言っているじゃないですか。
  174. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) その問題については、向うの記者諸君の聞き方は、二十三日のはどうするかということに起因をいたしておるのであって、あとの言葉は私はつけ加えておりません。  それからもう一点は、二十三日の問題ばかりじゃなくて、総合的に、十一日、十二日、その争議期間を通じてこれは考えるべきものであって、あのときはいかぬ、このときはいかぬというような行き方じゃないと思うのです。その点は、記者諸君にお聞き下さっても、私の言葉が足りなかったのか、あるいはどういう考えかわかりませんけれども、私はその場合には二十三日ばかりでなく、十一日、十二日、十五日までの分を全体やるべきだ、こういうようなことを考えておりましたので、そのまま申し上げたのであります。
  175. 片岡文重

    片岡文重君 大事なときに時間だということで、はなはだ残念ですが、今の御答弁についても、もちろん納得ができませんが、時間の都合で次の点をお尋ねします。国会終了後に、早急に公共企業体審議会を内閣に設置するということでやはり談話を発表しておられるようです。これは国会が現在開かれておる。その内容は別として、この国会中に御提案になるというのならまだわかりますが、立法の措置として、すみやかに国会閉会後に、特別に、この特別法である公労法を拘束するような審議会を設けようとする、これは非常に非民主的なやり方であると思いますが、一体その内容はどういうものであり、どういう構想でありますか。
  176. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) それはどの新聞に出ておりますか、公労法のことは、私はこういうふうに言ったんです。公共企業体というものを、どうしても直さなければいかぬというのがわれわれみんな考えておるものですから、公共企業体の審議機関を作りたい。それが完全にできましたならば、それと見合って、さらに公労法のことも考えなければなるまい。しかし、公共企業体というもののあり方が、さっきもちょっと言いましたけれども、アベックだとか何とかいわれるような行き方ではいけないから、これを一つ合理的に審議機関を作って審議してそうしてこれは朝野を問わずやるべきである、こういうふうに私は申し上げたんです。そういう話をしたところが、いろいろに書かれておりますが、私は今申し上げたような方向で申し上げたのであります。
  177. 片岡文重

    片岡文重君 ますます重大なことになるじゃないですか。公共企業体全体をひっくるめての制度を拘束し、あるいは改悪するような結果を招来するところの審議会を作るというのであるならば、これはたとえば国鉄法とか、あるいは電電法とかいうことでなしに、それ以上のものになってくるわけですから、これは単に内閣だけの力、考え方で、あるいは内閣だけの組織で作ろう、こういうことは、これはますますもって非民主的じゃないですか。そういうやり方は、とうてい国会としては無視できないと思うんですが、それはどういう構想で、いつごろから始めるお考えですか。
  178. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 政府内部において、まだいつからどうするということはきまっておりませんけれども、この公共企業体の審議機関を作るということは、大体政府内部で意見は一致しておりますが、いつ、どういう法律内容で作るということはきまっておりません。でありますから、結局この国会後になるということを申し上げておりますから、次の国会になるか、あるいはその期間の間に用意しておいて、次の国会の始まったときに法律案を出して、国会審議中でもやるかということは、まだきまっておりません。
  179. 片岡文重

    片岡文重君 最後にもう一つ。公労協は十三億からの資金を持っておって、この処分が発表された後には、報復ストをやる、これに一億円を準備しておる。その何パーセントかは社会党に渡っておる、こういうことを言っておられるようです。一体どのくらいの金が社会党に渡っておるのか。それから、さらに、この場合には、総評から公認料をもらって、春闘における総評の意向等について、政府とのあっせんも社会党はやっておる、こういうことも放送しておられるようです。一体どのくらいの金を社会党はもらっておるのか、一つお聞かせ願いたい。
  180. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 一億円の積立金をして、今度もし政府がやるならば、報復ストをやろうということは、総評の方で私は話を聞いております。だから、下手にしているとわれわれやるぞということを、会見のときに直接聞いております。それから百円ずつ資金カンパを国鉄に向ってやるということも聞いております。それから炭労その他同情ストをやるものには、五十円ずつ出させるということも、会見のときに総評の方の方々から聞いております。どの人が言われたかは記憶いたしておりませんが、その会見の場で聞いております。社会党云々のことについては、私は申し上げた記憶がございません。
  181. 片岡文重

    片岡文重君 これはいわゆる二大政党として、今日国民の信頼のもとに国会運営に当っておる社会党にとっては、これは重大な問題だと思います。特に私は今、毎日新聞をここに持ってきておる。これには明らかに今私が申し上げたようなことが書いてある。で、今労働大臣が述べられた一億円準備等については、総評でも相当の決意を持ってこの政府の不当な措置に対処するであろうということはわれわれも聞いております。しかし、そのための資金カンパが、社会党に何%かを渡してあるとか、その資金を公認料にとっておるとか、こういうことは、これはたとえ冗談にもせよ、軽々に、特に閣僚の一員である労働大臣の口にすべき言葉でなかろうと私は思う。事実、これは放送したことではない、話したものではないというものならば、これは場合によっては、ここに当時の新聞記者諸君にでも御苦労でも来ていただいて対決をしなけりゃならぬ問題だと私は思うが、労働大臣としては、しからば、これは全然話しておらないことを記者諸君の憶測なり、推測等によってつけ足されたものである、こうはっきりとここでは言明されるわけですか。
  182. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 私の言った分については肯定します。言わないことはずいぶん書いておりますが、これは私は責任を持てません。
  183. 片岡文重

    片岡文重君  私が今伺っておるのは、この一億円の中から、あるいはその十三億の中からかはわかりませんが、とにかく総評からそういう金がこの問題に関連して社会党に渡っておると、こういうことを労働大臣は、その場合にはしからばおっしゃっておるのですか。
  184. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) その点は触れておりません。
  185. 片岡文重

    片岡文重君 しからば、総評から公認料をもらっておる。そうして春闘で云々と、こういうことも言っておられるようですが、この点はどうですか。
  186. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) その点は、対社会党の問題は触れておりません。ただ一億円とか、百円とか五十円とかいう問題は、私は責任があります。
  187. 片岡文重

    片岡文重君 しからば、この総評の準備しておる資金の中から社会党に何%か渡っておる、あるいは総評から公認料をもらって春闘のあっせんをしておる、こういうことは全然言っておらないということをここで明言できるわけですか。
  188. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) ええ、言っておりません。
  189. 片岡文重

    片岡文重君 さらに質問はあるのですけれども、先ほどから時間という約束ですから、一応これで留保しておきます。
  190. 千葉信

    委員長千葉信君) 本問題に対する本日の調査は、この程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後五時二分散会